夏の陽炎型 (69)
陽炎から秋雲まで。
陽炎型姉妹実装14人分。
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【 陽炎 】
『 メロンパンの中にメロンは入っていない 』
おやつを頬張る雪風に、真実を告げられないままでいる。
『 メロンソーダの中にメロンは入っていない 』
笑顔でガッツポーズの時津風に、未だ言えないままでいる。
駄目なお姉ちゃんを、許してほしい。
陽炎はまだまだ未熟です。
黒潮「陽炎」
不知火「陽炎」
陽炎「無理無理無理!絶対無理!」
黒潮「だって言わんと」
不知火「恥をかくのは雪風達です」
陽炎「だから無理って!サンタの時だって、大変な騒ぎになったじゃない!」
黒潮「あー…」トオイメ
不知火「あー…」トオイメ
陽炎「もうちょっと大きくなったら、絶対言うから!ね!ね!」
【 不知火 】
プリキュアに選ばれた時の為に、名前を色々と考えている。
沈着冷静。いつだって準備は怠らない。
◇◇◇
春雨と決闘する事になった。
勝った方がキュアピンク襲名。
春雨が負けたらキュアマーボー、不知火が負けたらキュアオチドに、それぞれ名称変更。
負けられない戦いがここにある。
不知火「」シクシク
春雨「」メソメソ
黒潮「どないしたん、あの二人?」
浜風「途中から漣が飛んできたらしくて」
陽炎「あー初期艦…」
初風「そりゃ練度が違うもの」
漣「キュアピンクですが、何か?」キタコレ!
吹雪「キュアスノーです!」フンス
五月雨「あの、キュアブルーです」テレ
電「きゅ、キュアサンダーなのです」オズオズ
叢雲「…キュアクラウド」ゲンナリ
磯風「キュアツンデレじゃないのか」
五月雨「それは曙ちゃんが」
浦風「そうなん?」
漣「負けちゃうと、キュアクソテイトクになるんで。さすがに」
谷風「なるほどー」
叢雲「もう帰っていいかしら」グッタリ
【 黒潮 】
今日は恒例のたこパの日。みんなでたこ焼きパーティーや。
よーさんあるから、みんなじゃんじゃん食べような。
秋雲「あ゛ぁ゛~、やっぱこれ最高よねー」
舞風「あたしエビ入りが好きー!」
野分「たくさんあるから、慌てなくても大丈夫ですよ」
谷風「そういや、そろそろ夏祭りだなあ」
浜風「楽しみです」
磯風「今年は有名人が来るらしいぞ」
浦風「マジか!誰やろ、楽しみじゃのぉ」
時津風「屋台もたくさん出るんだよ!」
天津風「年々大規模になっていくわね」
雪風「雪風は!とうもろこしを、食べるのですっ!」
初風「はあ…子供なんだから」
黒潮「うーん、ウチはやっぱりたこ焼きかなあ」
不知火「黒潮、どれだけ好きなんですか」
陽炎「まあ、黒潮らしいけどね」
ベタ、と言われるかもしれんけど。
うん。ウチはやっぱり、たこ焼きが一番好きや。
お店でも買うし、自分でも作る。鳳翔さんに無理言って、作ってもらった事もある。
でも屋台で食べるたこ焼きが、多分世界で一番美味しい。
理由なんて決まってる。
特別な場所と、特別な時間。やっぱりあれは、特別な味なんや。
【 初風 】
提督に渡せなかったバレンタインのチョコを、机の奥底にしまい込む(二年連続、二回目)
冬が終わり夏が来ても、初風の春はまだ遠い。
陽炎「ちょっと初風!あんたの机、凄い事になってるわよ?」
不知火「蟻だらけです」
黒潮「大惨事やなー」
初風「」
陽炎「何なの?ジュースでもこぼしたの」
不知火「去年も確か、この時期に」
黒潮「風物詩やなー」
初風「私、片付けるから!あっち行って!」
雪風「甘い匂いがするのです」ヒョコッ
時津風「チョコレートだよ、チョコレート!」ピョンピョン
初風「あっち行ってて!」ムキーッ!
来年こそは。来年こそは。
初風は遠い真冬の明日を想い、夏に熱く誓うのでした。
【 雪風 】
鳳翔のめんつゆトラップが炸裂し、雪風涙の途中退場(三年連続五回目、今シーズン初)
時津風「雪風はお馬鹿さんだね」ヤレヤレ
時津風「シールの貼ってある方が、麦茶だよ」ゴクゴク
時津風「」バタン
時津風被弾により途中退場(三年連続五回目、今シーズン初)
陽炎「今年もそんな季節なのねー」
不知火「去年も確か、この時期に」
黒潮「風物詩やなー」
【 天津風 】
どうかあのひとを奪らないで。
あのひとを好きにならないで。
自分勝手な願い事、口に出せる筈もなく。ただ胸の奥へとしまい込む。
あたしでは敵わない。
あたしの願いは叶わない。
半盛りのそうめんを前に、ため息をつく。
食欲が全くない。完全に夏バテだ。
向かいの席では足柄が、カツをモリモリ食べていた。
足柄「カツ食べなさい。カツ。ほら、あげるから」ヒョイ
天津風「いらないわよ。おそうめんあるもの」モドシ
足柄「そんなんじゃ足りないでしょ。カツ食べなさい。カツ」
天津風「ゴリラじゃないんだから、そんなに食べられないわよ」
足柄「誰が長門よ」
天津風「知らないわよ」
足柄「いいから食べなさい。ほら、カツよ」ヒョイ
天津風「だからいらないから」ビシッ!
足柄「何でそんなに嫌がるのよ」
天津風「繊細なのよあたしは!誰かさんと違ってね!」
足柄「長門ならいないわよ」
天津風「長門さん違うから」
こうして悪態をついてはみるが。
実のところあたしは、彼女の事を心の底から尊敬してる。
メンタル、フィジカル、テクニック。マナー、モラル、エチケット。
戦場からサロンまで。艤装からカクテルまで。
戦闘も戦術も。化粧も社交も何もかも。
惜しげもなく教えてもらった知識の数は、数え挙げれば切りがない。
言い切ってしまえばあたしは、憧れているのだ。
彼女のようになりたいと。
足柄「ほら、これあげるから」ドサ
天津風「いらないから。これ、ノウ、サンキュー、デス」ペシッ
足柄「何よ、欲張りね。仕方ないわね、特別よ」ドササ
天津風「違うから。大きいのが欲しいんじゃないから」ペシシッ
足柄「あ、ゴメンね。こっちだったか」ドバー
天津風「そうじゃなくて!ソースじゃなくてね!」
柔らかく伸びた髪と、端正な顔立ち。
透き通った肌に洗練されたプロポーション。
性格は明るく常に前向き。社交的で人望も厚い。
優れた技術と強靭な精神力。餓狼と称されるスタイルは勇猛にしてまた果敢。
豊富な知識と経験を生かし、後進の教育もそつなくこなす。
足柄「なに難しい顔してんのよ。カツ食べなさい。ほら」ヒョイ
天津風「いらないわよ。お腹空いてるんじゃないから」ペシ
足柄「美味しいのよ?」
天津風「知ってるわよ」
足柄「たくさんあるわよ?」
天津風「見れば分かるわ」
足柄「勝利のカツよ!」
天津風「ああ、もう!うっさい!」ムキーッ!
あたしがもしも男なら、何があっても彼女を選ぶ。誰を措いても彼女を選ぶ。
多分彼女が本気を出せば、倒せない敵はいないだろう。
多分彼女が本気を出せば、落とせない男はいないだろう。
強く優しく美しく。完成された大人の魅力。
あのひとはきっと彼女を選ぶ。誰もがきっと彼女を選ぶ。
到底あたしでは敵わない。
あたしの願いは叶わない。
足柄「カツ食べなさい。美味しいわよ、ほらほら」
天津風「いらないから。もう、そうめんに乗せないでよ」
足柄「天ざるとかあるじゃない?」
天津風「カツそうめんなんてないでしょ!」
足柄「でも、カツがなかったら、ただのそうめんよ」
天津風「いいの!それで全然いいの!」
足柄「私なんてカツ丼にもカツ乗せるわよ」
天津風「姉さんだけだから!あたし違うから!」
足柄「美味しいのに…」
天津風「そんなに食べなくても毎日カツじゃない」
足柄「そんな事ないわ。昨日はカレーだったし、その前はサンドイッチよ」
天津風「カツは?」
足柄「両方入っているわよ」フフン
天津風「意味ないじゃない!」ウガーッ!
戦士としても女としても、彼女には遠く及ばない。
それでもいつかいつの日か、立ち向かわなければならない時が来る。
敵う筈もないけれど、及ぶ筈もないけれど。
あたしがあたしである為に、あたしがあたしを赦せる為に。
あたしの全部で戦って、あたしの全部が負けたって。
あたしはきっと胸張って、あたしの全部を誇るだろう。
足柄「あー美味し。あー美味し」ヒョイパク ヒョイパク
天津風「真夏によくそんなもの食べられるわね」
足柄「あら?暑い夏こそ揚げ物よ。油断大敵って言うじゃない」
天津風「それ使い方違うから」
足柄「でも、こんなに美味しいとビールでも欲しくなるわね」
天津風「ちょっと」
足柄「小瓶なら大丈夫かしら?」
天津風「妙高姉さんに言いつけるわよ」
足柄「私、まだ死にたくないなー」アハハ
天津風「まったく…仕事中に何言ってんのよ」
足柄「そうね。飲む事じゃなくて、今は食べるのが仕事だわ」
天津風「む」
足柄「ガソリンがなきゃ、車だって動かない」
天津風「う、分かってるわよ、食べるわよ!」
足柄「はい、じゃあこれ。カツ」ヒョヒョーイ
天津風「お約束いいから!おそうめん食べるから」ビシバシッ!
足柄「そう?つまんないの」ヒリヒリ
天津風「まったくもう…」ズズズー
天津風「 」
足柄「?」ドシタ?
天津風「麦茶だ!これ!」ダンッ!
天津風被弾(二年連続二回目。今シーズン初)
【 時津風 】
いつも同じ所ばかり撫でるせいで、最近時津風の毛並みが悪い。
本人達は気付いてないが、ぶっちゃけそこだけ少しハゲてきてる。
初風「時津風どうしたの?」
陽炎「泣き疲れて寝ちゃったわ」
不知火「毛が生え揃うまで、ナデナデは禁止らしいです」
黒潮「そら、しゃーないな」
初風「ふ、ふーん」
◇◇◇
初風「提督」
提督「やあ、初風。時津風の様子はどうかな」
初風「もう落ち着いたみたい。でも少しションボリしているわ」
提督「そうか…代わりに何かしてあげないとな」
初風「…ねえ、提督」
提督「ん?」
初風「私は、サラサラよ」
提督「は?」
初風「だから、私は大丈夫なの」
提督「う、うん?」
初風「だからっ!その…私も今回は頑張ったの!」
提督「……ああ!ああ、そうだな、初風もそうだよな」
初風「あの…だから」
提督「うん、お疲れ様。よく頑張ってくれたね初風」ナデナデ
初風「あ… ///」
提督「いつもありがとう」ヨシヨシ
初風「…ん ///」ウットリ
不知火「司令、失礼します」ドアガチャバタン!
初風「何、勝手に触ってんのよ!この馬鹿っ!」ドゲシッ!
提督「ぐはあッ!?」ズサーッ!
初風「今度やったら妙高姉さんに言いつけるわよ!」ツカツカツカ
初風「じゃあね!失礼するわ!」ドアガチャバタンッ!
不知火「司令!大丈夫ですか?」
司令「う、うん。いつもの事だからね」
不知火「申し訳ありません。後で不知火がキツく叱っておきます」
司令「いや、いいんだ。大丈夫だよ」
不知火「ですが…」
司令「本当に平気だから。それより随分慌てて来たようだけど、どうしたのかな?」
不知火「それは──!いえ、急用という程の事でもないのですが…」シドロ
司令「うん」
不知火「不知火は、その…」モドロ
司令「うん、不知火は?」
不知火「不知火は、あの、フサフサです!」
司令「ふさ?」
不知火「はい、ですから問題はありません」
司令「は、はは……」
不知火「ですから、その…」
司令(姉妹だなあ……)
不知火「…司令?」
司令「いや、うん。不知火も今回よく働いてくれたよね?」
不知火「──!は、はい!不知火も頑張りました!」
司令「ありがとう。不知火のおかげだよ」ナデナデ
不知火「あ、司令… ///」
司令(今日は忙しくなりそうかな…)ナデナデ
不知火「…… ///」ヌイヌイ
天津風「天津風よ、失礼するわ」ドアガチャバタン!
不知火「不知火を怒らせたわね!」ズバシッイ!
司令「ぐほおッ!?」ドサーッ!
不知火「次、同じ事をしたら、徹底的に追い詰めますから」ツカツカツカ
不知火「それでは!失礼します」ドアガチャバタンッ!
天津風「ああ、酷い…こんなに腫れて」
提督「いてて…いや、大丈夫だよ」
天津風「待ってて、いま救急箱を持ってくるから」
提督「平気さ、頑丈なのだけが取り柄なんだ」ハハ
天津風「無理はしないで…あなたに何かあったらあたし…」
提督「ありがとう天津風、心配しなくていいよ。ところで今日はどうしたのかな?」
天津風「あ、うん。あのね…」
提督「うん、何かな?」
天津風「あの…実は、あたしの髪ね───」
【 浦風 】
確かにその髪型は可憐だし、またとても似合っているとは思うけど。
いかんせん手間と時間が多分に掛る。
特別に朝が強い訳でもないし、どちらかといえばガサツなタイプ。
それにも構わずいつものように、寝起きの度に髪を結い、湯浴みの度にまた髪を編む。
果たして今日も浦風は、自慢の青髪さらりと揺らし、足取り軽く駆けていく。
焼き菓子片手に笑顔のままで、敬愛の彼女に会いにいく。
◇◇◇
浦風「こんちはー!金剛姉さん。皆さんも」
金剛「HEY!浦風!待っていたヨー」
霧島「こんにちは浦風。今日も元気ね」
浦風「今日はウチの妹らを連れてきたんよ」
磯風「磯風だ。よろしく頼む」
浜風「浜風です。急にお邪魔してすみません」
金剛「No!浦風のsisterならいつでも大歓迎デース」
比叡「紅茶もお菓子もたくさんありますから!」
榛名「ゆっくりしていってくださいね」
金剛「今日は榛名がapple pieを焼いてくれマシタ」
榛名「はい!榛名の自信作です!」
磯風「――美味しい」
浜風「本当にすごく美味しいです」
比叡「榛名は金剛型の名パティシエですから!」
榛名「ありがとうございます」テレテレ
霧島「浦風のクッキーも美味しいわよ」
浦風「あはは、何だか恥ずかしいわー」
金剛「二人もお菓子を作ったりしマスか?」
浜風「時々は…でもこんなに上手くはないです」
磯風「お菓子は作った事がないな。だが料理は最近始めてみた」
金剛「Oh!それは素敵ですネー」
磯風「うむ。始めたばかりだが、なかなか楽しいものだ」
霧島「磯風と言えば噂に名高い武勲艦」
霧島「この霧島の計算なら、料理の腕前も相当なものと予測されます」メガネ、クイッ
比叡「ひえー!文武両道ですかー」
磯風「はっはっは。いやそれほどでも」
比叡「そういえば、以前司令が、磯風の料理の話をしてました」
霧島「ほう」
比叡「確か‥記憶に残る料理とか、忘れられない一日になったとか…」
榛名「榛名も聞きました。個性的で衝撃的な味だったって」
榛名「榛名は普通の料理しか作れないから羨ましいです」
霧島「やはりそうでしたか…只者ではないと霧島は最初から見抜いていました」クイッ、クイッ
磯風「はっはっは。いや司令にも困ったものだな」
浦風「磯風」
浜風「磯風」
金剛「そんなにgreatなのデスか?私もぜひ食べてみたいデース」
霧島「あの司令を唸らせる腕前ですからね…興味があります」
磯風「いやいや、そんなに持ち上げないでくれ。私などまだまだ若輩の身で」
霧島「この謙虚さ…!それでいて漂う余裕、溢れる自信。流石は武勲艦の風格という奴かな」メガネ、キラーン
浦風「霧島」
浜風「霧島」
磯風「ふむ。そこまで言ってもらえるなら、どうだろうか?私で良ければ、何か手料理でも」
浦風「磯風」
浜風「磯風」
比叡「いいんですか!」
榛名「それでは、今度皆さんでパーティでもしませんか?」
金剛「Yes!それはgood ideaデース!」
霧島「楽しいパーティになりそうですね」メガネ、キラキラー
浜風「何なのこの霧島さん。マゾなの?死にたがりなの?」ヒソヒソ
浦風「違うんじゃ、姉さんは天才じゃけどお馬鹿なんじゃ。分かり易く言うと頭のいいゴリラじゃ」ボソボソ
浜風「それって長門さんじゃないですか」
浦風「姉さんを馬鹿にすんな。それだとただのゴリラじゃろうが」
浜風「えっと、じゃあ…綺麗なゴリラ?」
浦風「それならよし」
浜風「いいんだ」
比叡「なになに?何の話?」
浦風「いえ何も」ニコ
浜風「今日もいい天気ですね」ニコッ
浦風「あとキレると手がつけられん」ボソボソ
浜風「優しそうに見えますけど」ヒソヒソ
浦風「大口径の主砲があるのに、素手で敵艦ブン殴って沈めるのはあの二人ぐらいじゃ」
浜風「ゴリラどころかゴジラじゃないですか!そんなの大和さんでもしませんよ!?」
霧島「どうかしましたか?」
浦風「いえ何も」ニココッ
浜風「素敵なメガネですね」ニコニコーッ
霧島「スケジュールについてはこの霧島にお任せを。大淀と相談して調整します」メガネ、キラッ
浦風「霧島」
浜風「霧島」
比叡「場所はどうしましょうか」
霧島「海辺のデッキはどうでしょう。涼しくて雰囲気も最高です」キラッキラッ
金剛「それはgood choiceネー」
浜風「待って下さい」
霧島「何か問題でも?」
浜風「いえ、私達(ほぼ磯風)はまだまだ未熟で…!」
浦風「そうじゃそうじゃ、ウチら(9割方磯風)が人様に料理なんて、とてもとても」
比叡「またまたー。ご謙遜をー」
霧島「実力は確かな筈ですが…乗り気でないという事ですか?」
浦風「い、いや、そんな事は全然ないで!なあ浜風?」
浜風「は、はいっ!浜風は全然大丈夫です」(磯風とは言ってない)
磯風「私も大丈夫だ。ノリノリと言ってもいい」
浦風「磯風」
浜風「磯風」
榛名「あ…あの、もしかしてご迷惑なのでは…」ウルッ
金剛「そうなのデスか?」シュン
浦風「いやいやいや!そんな事は決して!断じて!なあ浜風?」
浜風「は、はい!迷惑だなんてそんな」
磯風「うむ。気にしないで欲しい。むしろ待ちかねている」
浦風「磯風」
浜風「磯風」
比叡「でも…もしホントに嫌だったら我慢しなくていいよ」ションボリ
霧島「ええ、無理をする必要はありません」ショボーン
浦風「い、いや!そんな事は全然、全く、これっぽっちも!なあっ浜風?」
浜風「は、はいっ!もちろんですっ!大歓迎ですよ、ねっ!磯風?」
磯風「その通り。この磯風が責任を持って、手厚い歓待を約束しよう」
比叡「本当ですか!うわー良かったぁ!」
榛名「榛名、感激です!今からウキウキが止まりません♪」
霧島「信じていましたよ、あなた達」ニッコリ
金剛「それじゃ磯風、メインディッシュは頼みましたネー!」
磯風「任せてくれ。はっはっは、腕が鳴るなー」
浦風「」
浜風「」
◇◇◇
お土産持った帰り道。浦風だけが浮かぬ顔。
浦風(はあ…大変な事になってしもうた。やっぱ連れてくるんじゃなかったかのう…)
浜風「──みんな綺麗で優しくて、いい人ばかりでしたね」
磯風「うむ。それでいて強さも兼ね備えている。理想的な女性像だな」
浜風「なんだか憧れてしまいます」
磯風「ああ、全くだ」
浦風「……」
浦風「…まあ、ええか」
浜風「どうしたんですか、浦風?」
磯風「何ボーッとしているんだ。早く帰ってパーティーのメニューを考えるぞ」
浦風「やかましいわ!お前は今から、ウチと料理の特訓じゃ!徹底的に仕込んじゃるけぇ覚悟しとれよ!」
【 磯風 】
鬼神の如き武勲艦だと知ってはいるが。
それがどうにも目の前の姿と重ならない。
オムライスを頬張りポロポロと米粒をこぼす様は、殊更に幼く見えた。
陽炎型 八番艦 駆逐艦“ 雪風 ”
泣く子も黙る鎮守府屈指の駆逐艦。
じっとみつめるこちらに対し、首を傾げ視線を返す。
その澄んだ眼差しが、幼さにまた拍車を掛ける。
磯風「何でもないよ、お姉ちゃん」
どこか小馬鹿にしたような物言いに、言ってしまって後悔するが。
当の本人は気にもせず、頭を撫でられ にへら と笑う。
雪風「はい、雪風はお姉ちゃんです!」
磯風「じゃあこれも全部食べような」
雪風「う」
磯風「お姉ちゃんだもんな」
皿の端に除けられた、付け合わせのピーマンを指し示す。
自分の皿と磯風の笑顔を交互に見つめ、雪風は力なく俯いた。
雪風「…これは苦いのです」アウー
磯風「知ってるよ」ニコ
雪風「違うのです!これは磯風が知っているより苦いのです!」
磯風「そうなのか?」
雪風「ウソだと思うなら食べてみてください!」
磯風「大丈夫。磯風はお姉ちゃんを信じてるよ」
雪風「はう」
とりとめのない会話。他愛のないおしゃべり。周りのテーブルがそうであるように。
遅い昼食をとる姉妹の席にもまた、穏やかな風が吹いていた。
「きゃあああぁぁーーッ!!ゴキブリーーーッッ!!?」
「!?」「!?」「!?」
緩やかに流れる食堂の午後を、誰かの悲鳴が切り裂いた。
耳に障る忌まわしき名称に、思考と身体が数瞬凍る。
大絶叫に呼応して、そこに居る者ほとんどが、反射的に席を立った。
姿かたちは見えないが、確実に在る気配。
悲鳴に悲鳴が重なって、世界はちょっとした地獄になった。
見たくない。触れたくない。ネガティブな感情が渦を巻く。
ひときわ大きな悲鳴に押され、振り返った視界の隅に、黒い影が舞っていた。
絶望の光景に息を呑む。痺れる脳裏に真実をひとつ思い出す。
『 - G-SHOCK - 奴らは、空を、駆ける 』
高速で飛びこちらへ向かう黒い悪魔。
完全に不意を突かれ、目で追う事すらままならない。
(顔ッ!顔にッ、当たるッ!?間に合わない───ッ!!)
視界と意識が黒に染まった。
数秒のブラックアウト。
きつく閉じた両目を薄く開くと、雪風の小さな手があった。
潰さぬように。逃がさぬように。
指で組まれた檻の中には、囚われの虫の姿があった。
雪風「…カナブンです」
雪風の声で我に返る。
響く歓声。大きな安堵。
目の前では雪風が、感謝と称賛を浴びていた。
そのまま窓際に歩み外に放つと、カナブンは遠く空に消えていった。
小さな勇者の活躍で、昼下がりはまた平穏を取り戻す。
磯風「雪風…おまえ、素手で」
雪風「あ、はい。ちゃんと手を洗います」
磯風「あの…雪風」
雪風「はい!雪風はお姉ちゃんですから!」
いつもと変わらぬ笑顔を見せて、雪風はニコリと笑ってみせた。
そのまま食べ終えた食器を持って、お先に、と小走りに駆けていく。
何も言えず、何も出来ずに磯風は、消えゆく背中をただ黙って見るだけだった。
ぺたり、と。
席に戻った磯風は力なく腰をおろす。
自分は何だ…。
虫一匹に無様に怯え、挙句の果てに危機を前に目を瞑るなど。
馬鹿か。屑か。
汚れたら、拭けばいい。洗えばいい。子供でも分かる理屈だ。
そんな簡単な事が、この自分には何故出来ない。
ヨーイ、ドン!の声がなければ、戦う事すら出来ぬのか。
呆然と空を仰ぐ。……自分は、いったい何なのだ。
ふと、自分の皿に目を遣れば、先程のピーマンが端に静かに座ってた。
磯風「はっ…は、ははっ…」
意識せず、乾いた笑いが衝いて出た。
あの状況で。あの混乱の中で、雪風は。
その時 私は、何をしていた?木偶のように突っ立って、震える以外の何をした?
フォークで刺したピーマンを、口の中に放り込む。
(敵わないな……)
自虐と共に噛んだ緑は、思いのほか苦かった。
やり直そう。全部。最初から全部、何もかも。
今のままでは足りない。今のままでは駄目だ。
訓練の密度も量も二倍にしよう。神通にも指導を乞おう。
やれない事は、今知った。やるべき事は、もう知っている。
汚れたら洗えばいい。届かなければ伸びればいい。
食べかけのパスタを乱暴にかきこみ、冷たい水で流し込む。
口を拭い、食器を持って席を立つ。
先に行った雪風を追うために。
(……今は、まだ!)
磯風は、前を、向いた。
◇◇◇
後日。
陸奥「最近磯風凄いわね」
長門「ああ、元々才能はズバ抜けているからな。努力を覚えれば、もう手がつけられん」
陸奥「何かあったのかしら?」
長門「きっかけか?いや、それは分からんが…」
雪風「長門さん!おやつがもうなくなりました!」タッタッタ
長門「おお、そうか。戸棚にみたらしがあるから食べるといい」
雪風「はーい」ニコー
時津風「ずるいよ、ずるいよ!雪風ばっかり!」タタターッ
雪風「雪風はお姉ちゃんなのです!」キシャーッ!
時津風「わたしもお団子食べるー!食べるー!」キャンキャン
陸奥「はいはい、時津風の分もちゃんとあるから」
長門「喧嘩せずに食べるんだぞ」
雪風「はーい」ニコー
時津風「わーい」ニコー
【 浜風 】
行儀よく並べられた貯金箱。二匹の仔豚を神妙な顔で割っていた。
一年間必死で貯めた小遣いを、首からさげた財布に詰める。
パンパンに膨らんだガマ口には、夢と希望が詰まってる。
待ちに待ち、焦がれに焦がれた今日の日は、二人にとっての聖戦らしい。
雪風「雪風の本気を見るのですっ!!」
時津風「時津風は負けないよっ!!」
◆◇◆今日は楽しい夏祭り◆◇◆
初風「あー、うるさい」
天津風「昨日からずっとあの調子よ」
今年の夏祭りには大物のスターが来るらしい。
せっかくだからと色紙を持って会場に行ったら、おめかしした那珂ちゃんがいた。眩暈がした。
バックダンサーに舞風と野分までいた。もう言葉にならない。
ミンナアリガトー! ナカチャンダヨー! ダイスキダヨー!
歓声は終始途切れる事がなく、興奮と熱狂が会場の隅々にまで行き渡る。
初めはどうなる事かと思ったが、結果から言えばライブは大成功だった。
とにかく那珂ちゃんが最高だった。本当に素晴らしかった。
ステージ狭しと駆け回り、歌い、踊るその姿は、まさしくアイドルそのものだった。
舞風のダンスも見事だったし、フリフリ衣装の野分を見た時には、思わず変な声が出た。
いつもよりずっとずっと輝いて見えたのは、きっと立派な照明だけのせいじゃない。
夢のようなひととき。繰り返されたアンコール。
最後の曲が終わっても、大きな拍手と歓声はいつまでも続いていた。
◇◇◇
帰り際、楽屋をチラリと覗いてみると、ちょうど那珂ちゃん達がいた。
声を掛けようと思ったが、スタッフと談笑しているのを見て、今回は遠慮する事にした。
感想はまた後日にしよう。
◇◇◇
大盛況のライブが終わり、観衆は大通りへと流れゆく。
那珂ちゃんのライブも良かったけれど、雪風達にとってはここからが本番だろう。
幅広く真っ直ぐに伸びたその道の、両側にひしめき並ぶ屋台の灯り。
ただ眺めゆくだけで、こんなにも心が躍る。
幼い彼女らのスイッチが入るのも致し方ない所か。姉なのだが。しかも二人も。
秋雲「そんなわけで~、そろそろ秋雲さんは行ってきま~す!」
陽炎「はいはい、はしゃぎ過ぎないのよ」
谷風「およ?秋雲はドコに行くんでい?」
黒潮「屋台は夕雲型の娘らと周るんやて」
浜風「秋雲は友達が多いですね」
磯風「まあ、あの性格だからな」
浦風「鎮守府の外にも顔が広いしのぉ」
谷風「おっ!?何だよおいおい!粋な出店があんじゃねーか!」
谷風が屋台に飛び込んで、水風船をいきなり三個も買ってきた。
全開の笑顔で振り回し、これで勝つると極めてうるさい。
磯風「しかしすごい規模だな」
浦風「人も屋台も去年より全然多いのぉ」
浜風「それでは、はぐれないように気をつけて行きましょう」
一秒、目を離したその隙に、雪風と時津風は迷子になった。
どれだけ万全の準備をしても、あの二人は常に、その上をいく。
やるせなさ満載で空を見上げる。星が綺麗だった。
陽炎「子供じゃないんだから大丈夫よ」
黒潮「浜風は心配性やなー」
陽炎「今日くらいは、何も考えずに楽しみなさい」
そう言ってニッコリ笑う陽炎の後ろでは、谷風が四つ目の水風船を買っていた。
最初からアクセル全開。谷風はいつもそうだ。
彼女のエンジンには、フリーダムというニトロが積んである。
谷風「ボヤボヤしてると置いてくぜえっ!」
強引に引っ張られ、ようやく一歩前に出る。出足が鈍いのは相変わらずだ。
難しく考える事はない。今日を楽しめばそれでいいのだ。
彼女の笑顔が証明してる。私もようやくエンジンに火を入れた。
チョコバナナとイカ焼きを買ってみた。
メチャクチャな組み合わせだが、不思議と相性は悪くない。
歩きながら食べるのは行儀が悪いし、チョコやソースで汚れるのも上品とはいえない。
けれども今日はそれでいい。今日はそれが正解なのだ。
お祭りの作法に従って、ペロリと指のソースを舐めた。
今日は特別な夜なのだ。冷たいラムネが嬉しかった。
振り返ると谷風が、買ったばかりの水風船を落として全部割っていた。
全く同じ光景を、去年もここで目にした記憶がある。
身長も胸囲も行動も、一年前から一ミリも成長していない。
『変わらないでいる事は、変わっていく事よりも難しい』
以前提督が、寂しそうに語っていた言葉を思い出す。
今こそ彼に伝えたい。おめでとうございます。谷風は今日も元気です。
隣を見れば黒潮が一箱目のたこ焼きを食べ終わり、二軒目を果敢に攻めていた。
朝昼と、食事を抜いていたのはこのせいか。子供よりも動きがいい。
大人なのに。お姉さんなのに。女の子なのに。
黒潮「ふっふーん。逃さへんで!」
浦風は屋台の人と楽しげに話してる。
お互い威勢が良いせいか、妙に馬が合うよだ。
冷やし飴はないんか?と、大きな声で喋ってた。
懐かしいけど、そんなマイナーなのある訳ないよ。
浦風「あったでー!」
浜風「あるんだ!?」
今年の屋台はレベルが高い。
谷風がまた水風船を買っている。何度でも蘇るさ、とやたらうるさい。
割った分を買い直し、更に上乗せで色違いを買っている。
これには屋台のオヤジも苦笑い。無駄遣いのレベルが違う。
ひとつおまけしてもらい、情熱的に吠えていた。
谷風「こいつは粋な計らいだね!」
陽炎はかき氷を買っていた。
食べ物ではあまり冒険をしないタイプ。
屋台でもやはり定番がお好みのようだ。
オヤジ「らっしゃい」
陽炎「ひとつ下さい」
オヤジ「あいよ。シロップは、イチゴかな?」
陽炎「レインボーで」
オヤジ「嬢ちゃん、通だねえ!」
浜風「レインボーって何だろう…?」
磯風が両手にクレープを買ってきた。イチゴとバナナで迷ったようだ。
余計なバルジがつくからと、普段はおやつもあまり食べないのだが。
両方買うとは意外だった。今夜はやはり特別らしい。
磯風「たまにはいいだろう」
そう言って笑う横顔は、いつもよりずっと可愛らしかった。
一口ずつ貰ってみたが、どちらも甲乙つけ難かった。
どうやら両方買うのが正解だったようだ。
谷風がビニール袋いっぱいに、スーパーボールを持ってきた。
あんず飴を舐めながら、たくさん取れたと上機嫌。
好きなのあげると言われたが、正直ひとつも欲しくない。
部屋に帰れば同じのが、100個くらいはある筈だ。
どうしてこの江戸っ子は、毎年同じ行動をするのだろうか。
谷風「よっしゃあ!これで勝つる!」
祭りの熱気に当てられて、財布の紐も自然と緩む。
安物の景品は、子供だましの言葉通りに、甘く優しい嘘をつく。
眩し過ぎる電球と、香ばしいソースの香り。
喧噪は途切れる事もなく、雑多な全てが混ざり合う。
お囃子の交じる夜の風が、涼しげに頬を撫ぜた。
今日という日が心地よかった。
磯風「さて、そろそろ探してくるか」
浦風「ほうじゃの、ええ時間じゃ」
浜風「大丈夫ですか?」
賑やかな祭りの最中、人波が途切れる事はない。
前にも後ろにも隙間なく。遥か先まで延々続く。
磯風「なに、一番騒がしい所に行けばいい。あいつらのいる所が大抵そうだ」
浦風「見つけるのはみやすいけど、捕まえるのはたいぎそうじゃのぉ」
磯風は白手袋を嵌め直し、浦風は首に手を当て、音を鳴らす。
困った困ったと言いながら、全く困ってなさそうだ。
磯風「それじゃあ、行ってくる」
浦風「すぐ戻るわ」
そう言って前に進むと、二人は音もなく波に溶けた。
黒潮「今日イチの出来やわ。あのおばちゃん只者ちゃうわ」
気が付けば黒潮が、またたこ焼きを食べている。
温厚な常識人の彼女だが、趣味嗜好に関しては一部極端な所がある。
何がそんなに黒潮を駆り立てるのか。ソースに麻薬でも入ってるのか。
毎日毎日カツばかり食べる足柄に通じるものがある。
黒潮も相当だが、足柄もまた大概だ。一種の病気と言ってもいい。
あれだけは理解出来ないと、以前天津風も苦笑していた。
彼女達の未来の旦那様方は、きっと少しだけ大変だ。
───天津風といえば。
何か用事があるとかで、今回は別行動をする事になった。初風もそうだ。
二人ともあまり人混みを好むタイプではないし、それも関係しているのだろうか。
浜風「何かあったのでしょうか」
陽炎「全然平気。何にも心配しなくていいわ」
黒潮「せやで。馬に蹴られたないやろ?」
浜風「うま?」
陽炎「まあ今日が決戦の日なのは、何も雪風や谷風に限った話じゃないって事」
黒潮「先駆け、抜け駆け、一騎駆け。あちらの戦も華やかやなー」
そういえば不知火の姿もない。
迷子の心配はないだろうが、体調でも悪いのだろうか。
陽炎「別に病気じゃないから大丈夫よ」
陽炎「あ、でも病ではあるか」
黒潮「せやけど医者でも治せんしなー」
全てを見透かしたような顔をして、陽炎が愉快に笑う。
陽炎「はてさて、誰が勝鬨を上げるやら」
ぴーひゃら♪と、お囃子が呑気に鳴っていた。
◇◇◇
磯風「電池切れだ」
浦風「寝てしもーたわ」
程なく戻った二人の背には、天使が安らかに眠ってた。
充実しきった寝顔から、達成感が見て取れる。
二人の一年戦争は、完全勝利 S で終わったらしい。
浜風「やれやれ。家に帰るまでが夏祭りですよ」
柔らかな頬をつついてみると、えう、と小さく寝言が漏れた。
陽炎「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか」
黒潮「せやな、お土産買うて帰ろうかー」
浜風「たこ焼きはもういりません」
黒潮「んー?よー聞こえへんわー」
谷風「よっしゃ!それじゃ、この谷風さんに任しときな!」
浜風「水風船も!結構です!!」
磯風「最後まで騒がしいな」
浦風「いつも通りじゃの」
また来年と、屋台通りを後にする。
財布は空になったけど、代わりに思い出が手に入る。
谷風の水風船は、結局八個にまで増えていた。去年よりも二個多い。
成長と見るか、退化と見るか。専門家の間でも意見が分かれる所だ。
◇◇◇
後日。
浜風「お疲れ様でした」
那珂「ありがとー、来てくれたんだ」
浜風「二人も頑張ってましたね」
舞風「ありがと~、ステージから見えてたよ!」
浜風「ホントですか」
野分「野分は舞い上がって全然でした」
浜風「でも、可愛かったですよ」
野分「も、もう、やりません ///」
那珂「えー、のわっち勿体ないよ、次もやろうよー」
野分「のわっち言わないで下さい ///」
舞風「でも気持ちよかったでしょー」
野分「う…それは、まあ、ハイ ///」
浜風「でも、本当に素敵でした」
那珂「ありがとー。次もまた頑張るよー!」
舞風「実はね、次の予定も決まってるんだ」
野分「今回好評だったらしく、別の所から招待されたんです」
浜風「え、すごいじゃないですか?」
那珂「もっと素敵になっちゃった!きゃは♪」
舞風「次は、どんなステップで踊る? んー、どうしよっか?」
野分「評価されるのは嬉しいものですね」
那珂「いやー、でも浜風ちゃんも大変だったみたいだねー」
浜風「はい。──え?」
那珂「雪風ちゃんから聞いたよ!迷子になったんだってね」
浜風「」
舞風「まさか浜風が泣くなんてね、意外だったよー」
野分「こら、舞風!…でも確かにすごい人出だったみたいだし、仕方ありませんね」
那珂「時津風ちゃんが助けに来てくれたんだってね。偉いね~」
舞風「意外としっかりしてるんだよね、二人とも」
野分「ああ見えて姉ですから。見直しました」
浜風「」
那珂「あ!そういえばこれ、主催者さんから差し入れで貰ったんだ」
舞風「お菓子だよ~、たくさんあるからみんなで分けてね」
野分「当分おやつには困りませんね」
浜風「あ、ありがとうございます」
那珂「それじゃ、次のライブの打ち合わせがあるから、またね~」
舞風「さあ、次も元気に頑張りまっしょーう!」
野分「浜風、今日はわざわざありがとう。それではまた夜に」バイバイ
◇◇◇
浜風「……」トコトコ
雪風「何だか甘い匂いがするよっ!?」ヒョコッ
時津風「キャンディなの?キャンディなの?」チョーダイ チョーダイ
浜風「……二人とも、ちょうどいい所に」ガシ
雪風「う?」
時津風「はう?」
浜風「……舞風から聞きました」ニコ
雪風「」
時津風「」
浜風「ちょっと、ゆっくりとお話をしましょうか」ニコ
雪風「ゆ、雪風知らないよ?雪風は悪くないよ!」
時津風「わた、わたしも違うよ!時津風じゃないよ!」
浜風「さあ、行きましょう」ニッコリ
雪風「」
時津風「」
【 谷風 】
祭りの屋台で散財し、夏なのに懐は秋の風。
宵越しの銭は持たねぇと、江戸っ子は強がってみせるが本当は間宮が少し恋しい。
今日も砂糖水にジャムを溶かし、氷を浮かべてひとり飲む。
磯風「アイスがなければ」つ 製氷機
浜風「かき氷を食べればいいじゃない」つ かき氷機
谷風「!?」
野分「こんにちは。マリー・アントワネットです」シャカシャカ
舞風「さあ、そのイチゴシロップをここに」シャカシャカ
浦風「明石姉さんと夕張姉さんに造ってもろうたんじゃ」シャカシャカ
秋雲「食べ放題だよー!」ドッサリ
谷風「!!」パアアァァ!
【 野分 】
顔に畳の跡をつけたまま、午後の執務室にやってきた。
頬や額に見事な刻印。意外と寝相が悪いのか?
愉快な模様とあいまって、澄まし顔がやたらと可愛い。
しかしクールでしっかり者の野分が、こんな凡ミスをするなんて。
かなりレア、というか初めてか?よく見れば後ろにも寝癖が少し。
夏の和室でのお昼寝は、さぞかし快適であったようだ。
さて、この生真面目な秘書艦に何を言おうか、何をしようか。
司令は悪戯っぽく、少し笑った
野分「さあ司令。午後からも頑張りましょう」
司令「うん。でもその前に野分、ちょっと写真を撮ろう」
野分「は?」
司令「記念にね」
野分「え、野分をですか」
司令「うん」
野分「それは構いませんが…でも何でですか?」
司令「野分が可愛いからかなー」
野分「か、可愛っ…!何ですかいきなり ///」
司令「いつも可愛いけど今日はまた一段とね」ニコッ
野分「は、え、はあー? ///」
司令「そういえばこうやって写真を撮るのは初めてだね」
野分「り、理由になってません ///」
司令「たくさん撮っちゃうよー」
野分「嫌です、そんな事を言われると何だか恥ずかしいです ///」
司令「いいからほら、楽にして。すぐに終わるよ」
野分「え、あの司令 ///」ンアー
◇◇◇
野分「司令、酷いです」プクー
司令「ゴメンゴメン。でも可愛く撮れてるよ」
野分「可愛くないです。こんなのみっともないです」
司令「他の人には見せないから大丈夫」
野分「駄目です、返して下さい」
司令「さ、私室に飾ろうかな」
野分「そんなの駄目です!駄目です ///」
司令「じやあ、今度またちゃんとしたのを撮ろうね」
野分「う…もう、知りませんっ! ///」プイッ
◇◇◇
野分「///」ポーッ
浦風「どしたんや野分、そんな赤い顔して」
野分「///」ボソボソ
磯風「ふむふむ、先程?」
浜風「執務室で、司令に?」
秋雲「恥ずかしい写真を撮られまし…た?」
浦風「」
磯風「」
浜風「」
秋雲「///」ワーオ
磯風「よし、分かった。殺そう」ジャキンッ!
浦風「ええい離せ浜風!ウチがあの馬鹿シバいちゃるけえ!」ゴルァ!
秋雲「で、どんな感じ?どんな写真?」
野分「///」テレテレ
舞風「ふむふむ、自分は嫌だと言ったけど?」
谷風「初めてだね、可愛いよ、と司令が?」
秋雲「強引に、何枚も、いろんな角度から…?」
浦風「」
磯風「」
浜風「」
秋雲「提督やるねー ///」
磯風「任せろ。迅速に確実に徹底的に、殺す」ジャカ ジャキンッ!
浦風「じゃけぇ離せゆうとろうが浜風!ウチがタマとったらあぁーッ!」ゴラゴラーッ!
【 舞風 】
演習で凛々しく戦う他の鎮守府の長門を見て、ウチで甘いものばかり食べている戦艦は偽物なんだと気付く。
が、時々お菓子をくれたり頭をなでてくれるので、舞風はこっちの方が好きだ。
こないだはカステラをくれた。
舞風「見ててね?ほらっ!」クルクル ターンッ!
長門「うむ。舞風は踊りが上手だなぁ」ナデナデ
清霜「長門さん!あたしね、また強くなったよ!」
長門「そうか、清霜は凄いなぁ」ナデナデ
卯月「うーちゃん、長門の絵を描いてきたぴょん!」
長門「それは嬉しいな。ありがとう卯月」ナデナデ
長門「よし、じゃあみんなでおやつを食べよう。今日は間宮の水羊羹だぞー」
舞清卯「やったー」ワーイ
陸奥「大人気ね」
武蔵「全く仕事する気がないな」
◇◇◇
大和「長門さんは駆逐艦に甘すぎです!」クワッ!
長門「いや、そんなつもりはないぞ」
大和「だらしない顔して甘いものばかり!」ガミガミ
長門「いや、あれは指導の一環でだな…」
大和「そんな事では周りに示しがつきません!」ウガー
長門「」
陸奥「仲がいいわね」
武蔵「喧嘩してるように見えるが」
大和「演習でも負けてばっかり!そんなだから他の鎮守府から馬鹿にされるんです!」
長門「その分おまえが強いからいいじゃないか」
大和「もう…またそうやって。本気になれば私なんかより強いのに」
長門「…本当の姿など、おまえが知っていればそれでいい」
長門「他の鎮守府などどうでもいい。おまえが分かってくれているなら、周りの声など関係ないさ」
長門「大切なのは」カベドン
大和「え?あの…」ドキ
長門「…おまえだけさ」ササヤキ
大和「///」カー
陸奥「チョロいわね」
武蔵「チョロ過ぎだろ」
【 秋雲 】
近代的な設備はあれど、無駄遣いする電気代はない。
記録的な猛暑の中、クーラーを止められた部屋で姉達が死んでいた。
音が不快という理由で粉々にされていた風鈴には、実弾を使った形跡がある。怖い。
ガサゴソと音をたて、コンビニの袋から差し入れのアイスをチラ見せしたら動き出した。
公園で袋詰めの豆をボリボリ食べながら、破竹の勢いで鳩に襲われた雪風の気持ちを、少しだけ理解する。
オイテケー オイテケー ダッツオイテケー
オイテケー ワタシパルムー ズルイワタシモー
こんな状況でも、あずきバーは人気がない。
◇◇◇
陽炎「しかし危ない所だったわね」 ジャイアントコーン
不知火「熱中症寸前でした」 クーリッシュ
黒潮「秋雲のおかげやわ。ありがとうな」 バニラモナカジャンボ
初風「ところで、誰よ風鈴割ったの」 ピノ
雪風「雪風じゃないよ!雪風じゃないよ!」 ガリガリ君
天津風「じゃあ、時津風?」 ハーゲンダッツ
時津風「わたしも違うよ!いい子にしてたよ!」 パピコ
浦風「…」 爽
磯風「おい」 パルム
浜風「はあ…後で説教ですね」 白くま
谷風「まあ、元々拾ってきたモンだからタダなんだけどな」 スーパーカップ
野分「いえ、それでも罪には変わりません。罰則はどうしましょう?」 BLACK
舞風「舞風もう一個アイス食べたーい!」 パナップ
秋雲「はい!判決出ましたー!」 あずきバー
全員「ゴチになりまーす♪」
浦風「な、なんじゃこりゃああぁーーッ!」(迫真)
以上です。
読んでくれた人ありがとう。
このSSまとめへのコメント
これはいいものです
ニヤニヤが止まらなかった