女騎士「くっ殺せ!」 オーク「本当にいいんだな?」 (40)

女騎士「ああ、構わない」

オーク「薄情な騎士だなぁ、こいつは! 自分が助かるために他の兵を犠牲にするとは!」

女騎士「場所はさっきも言ったがちゃんと覚えているか?」

オーク「分かってるよ、今他の兵どもを向かわせたところだ!」

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女騎士「それで、早く拘束を解いてくれないか?」

オーク「お前の仲間を皆殺しにしてからだよ、決まってんだろぉ?」

女騎士「な、ならば他の兵の居場所も教えよう! 場所は西の山の麓だ! そいつらを殺せ!」

オーク「……はっはっは! コイツはイカれた騎士だぜ! おいお前ら、そっちに向かえ!」

女騎士「よし、約束通り拘束を外してくれ!」

オーク「ほらよ」ガシャガシャ

女騎士「…………」

オーク「どうした?」

女騎士「部屋の鍵も開けてくれ。さっき鍵をかけていただろう?」

オーク「おいおい、お前は拘束を解けとしか言ってないだろう?」

女騎士「なっ、騙したな?!」

オーク「騙してなんかいねえさ」

女騎士「くっ、この近辺にはもう兵士がいない……ならばどうすれば解放してくれる?!」

オーク「そうだな……」

オーク「この基地には捕虜がいる。お前が助けようとしていた捕虜だ。そいつを殺していいのな――」

女騎士「殺せ!」

オーク「は?」

女騎士「え?」

オーク「こ、こいつは相当狂ってる女だぜ……よし、お前。今から捕虜のいる部屋に行って殺して来い」

部下「はっ」

女騎士「よし、これで晴れて自由の身だ」

女騎士(……よし。二箇所に兵が向かったお陰でだいぶ兵は少なくなっているな)

女騎士(それより、この泉が奴らの水の供給源か。ここにこの猛毒を混ぜれば……)

女騎士(馬鹿な豚共め。きちんと隅々まで所持品はチェックしておくんだな!)

オーク兵「なっ、貴様ここで何をしている!」

女騎士「何!? しまった!」

女騎士(剣を使えば血で他の豚に気づかれるな……いや、剣はそもそも取り上げられていたか)

女騎士(適当に殴り倒すか)

女騎士「オラァ! 死ね豚ァ!」ボカッガスッ

オーク兵「や、やめろ……うっ……」ガク

女騎士「気絶したか……それとも死んだか。どちらにせよ外に出してきちんと処分しないと一発で気づかれるな」

女騎士(それより、改めてこの毒を投入するとするか……)

女騎士(私の才能を妬んで糞みたいな嫌がらせをする兵も、ここの醜いオークたちも死に……)

女騎士(私だけが生き残る!)

女騎士「くっくっくっ……アーハッハッハッハ!!!!」

オーク兵「うぅ……」

女騎士(この糞重い豚が! ここから離れたらカラスにでも死体を貪らせてやる)

女騎士(あぁー、しかもくせえ! 何を食ったらこんなに臭くなれるんだ?)

女騎士「それより、ここが出口か……」

女騎士(今頃は糞のような兵と臭いオークが殺し合いか。はっ、滑稽なものだ!)

女騎士(ここまで離れれば大丈夫だろう。この豚の始末をしないとな)

女騎士(おっと、剣は無かったか。殴り殺すのは時間もかかるし手が汚れる)

女騎士(どうしたものか。高所から突き落とすか。いや、ここは見渡す限り荒野だな)

オーク兵「く……ここは?」

女騎士「おお、丁度いいときに目覚めたな」

オーク兵「わざわざ生かしておいて、何が目的だ? 私は友や仲間は決して売らないぞ?!」

女騎士「顔が醜いやつは心も醜いものだ」

オーク兵「私を愚弄する気か?! ……卑劣な手段で拷問でもするのなら、いっそ殺せ!」

女騎士「ほう、誰を殺すんだ?」

オーク兵「は……?」

女騎士「だから、誰を殺すのかと聞いているんだ。あ、あのオークの隊長か? アレはやばいな。今まで見たもので一番醜い」

オーク兵「な、何を言っているんだ? お前は?」

女騎士「え? 今殺せと言っただろう? 他の連中を殺して自分は生き残るために」

オーク兵「な、何を馬鹿なことを! 私を殺せと言っているんだ!」

女騎士「自殺願望か? イカれた奴だ……」

オーク兵(い、イカれてるのはどっちだ……)

オーク兵「ま、まさか。お前は捕虜だったが、そうやって仲間を売って逃げおおせたのか!?」

女騎士「ああ、その通りだが?」

オーク兵(あ、悪魔め……)

オーク兵「我々の情報を知る気がないなら、何故私をここまで連れてきた?」

女騎士「……オークとはつくづく知能の低いものだな。そのままにしておくと他の連中に気づかれるだろう?」

オーク兵「た、確かにそうだが、我々の体重は人間の数倍近く……」

女騎士「あっはっはっは! 体重の心配をするオークとは、これは愉快だな! ……まぁもっとも、あそこの連中は既に死んでいるだろうがな」

オーク兵「何!? どういうことだ!?」

女騎士「貴様らの水の供給源である泉に猛毒を混ぜたんだ。一滴で生物を死に至らせるものだ。私は全てにおいて長けているからな。毒薬の調合なんてお手の物だ」

オーク兵「なっ……! 貴様! 許さん!」バッ

女騎士「なんだ、もう動けるのか」

女騎士「おら! くせえんだよ豚が!」ガスッ

オーク兵「ぐっ……がはっ……」

女騎士「お? 貴様、いいもの持ってるじゃないか。オークにお似合いの不恰好な斧だ」

オーク兵(つ、強すぎる……ここで死ぬのか……)

女騎士「それじゃあズバっと……ん!?」ヒュン

オーク兵「な、何故斧を投げ――」

???「ぐはぁ!」

女騎士「……この醜い声、オークの追っ手か。しかし一人とは、他の連中はやはり死んだか」

オーク兵「オークだと?! おい、しっかりしろ!」ダッ

オーク兵(そ、即死だ……斧が頭を叩き割っている)

オーク兵(ここからあの女騎士の位置までは結構距離がある。その距離を、しかもこの重い斧を後ろに投げて頭に命中させるとは……)

オーク兵(な、なんて女だ……)

オーク兵「くっ……仲間よ……」

女騎士「どうした、なんでそんなに悲しんでる。むしろそいつのお陰で貴様の寿命が長引いたのだぞ? 喜ぶところだろう」

オーク兵「貴様! どうして仲間の死で喜べるというのだ!」

女騎士「……相当イカれた奴だ。オークは皆こうなのか?」

女騎士「……ふっ、今は殺さないでおくとするか……」

オーク兵「何故だ!?」

女騎士「お前と行動を続けて、その奇行が何度見られるか気になったのでね」

オーク兵「奇行だと!?」

女騎士「それ以外に何か言葉があるか?」

オーク兵「くっ……」

オーク兵(敵についていくとは、なんたる恥だ……いや、我々の生き残りもいるかもしれない。彼らを助けるためには仕方ないことか……)

オーク兵「分かった。我々の情報を聞き出すつもりはないんだな?」

女騎士「当然だ。そんな無価値なもの。あ、でもくれぐれも近づくな。臭いからな」

女騎士「おらぁ!」ドゴォ

女騎士「……今日の飯はシカに決定か」

オーク兵(……相変わらず凄いものだな。肉食ではないにしろ、獣を拳一発で仕留めるとは)

女騎士「ほら、早く野営の準備をすませるんだ!」

オーク兵「あ、ああ。分かった……」

オーク兵(このような強者が何故あのような考え方になったのか……)

オーク兵(いや、強者だからこそ、このような考え方になってしまったのだろうか)

女騎士「おらぁ!」ドゴォ

女騎士「……今日の飯はシカに決定か」

オーク兵(……相変わらず凄いものだな。肉食ではないにしろ、獣を拳一発で仕留めるとは)

女騎士「ほら、早く野営の準備をすませるんだ!」

オーク兵「あ、ああ。分かった……」

オーク兵(このような強者が何故あのような考え方になったのか……)

オーク兵(いや、強者だからこそ、このような考え方になってしまったのだろうか)

うわ連投してもた

オーク兵「なぁ、女騎士よ」

女騎士「なんだ。喋ると臭いから簡潔に済ませろ」

オーク兵「これからどうするつもりなのだ?」

女騎士「おそらく国内では私が仲間を売ったと既に考えられていられるだろう。それに豚も連れているし、国内へは入れないだろう」

オーク兵「では、どうするのだ」

女騎士「しばらくは旅を続ける」

オーク兵「当ての無い旅か?」

女騎士「まぁ、そんなところだ」

オーク兵「あ、あれを見ろ。見たところ人間の兵の陣営じゃないのか?」

女騎士「そのようだな」

オーク兵「お前だけでも行って合流したらどうだ? 私は入れそうに無いから捨て置いてくれて構わない」

女騎士「……ああ」


オーク兵(随分遅いな……)

オーク兵(私は入れそうにないが、様子だけでも伺ってみるか?)

オーク兵「なっ、これは! 兵が全員死んでいる?!」

女騎士「なんだ、結局来たのか」

オーク兵「こ、これはお前一人でやったのか?」

女騎士「ああ。これで当面の食料と武器は確保出来た」

オーク兵「……仲間を手にかけるとは、正気か?!」

女騎士「正気も何も、食料がないとさすがの私も生きられないからな。おっと、奇怪な言動一発目だ」

オーク兵「こ、こいつ……」

オーク兵「なあ、一つ疑問に思ったことがあるのだが……」

オーク兵「お前ほどの強者がなぜ我々の捕虜になったのだ? 情けないが、我々の仲間ではお前に到底敵いそうもない」

女騎士「なんだ、そんなことか。大したことではない。こっちの兵に薬を盛られてな」

オーク兵「な!? それは本当か?!」

女騎士「なぁに、日頃から私の才能を妬んで嫌がらせをしてくる連中だったよ。まぁお陰で奴らは今頃豚と戦って死んでいるだろうがな」

オーク兵「あの日売った仲間というのは……」

女騎士「ああ、私に薬を盛ったやつもその一人だったな」

オーク兵「では、今までのお前の卑劣な行動は復讐のものだったのか?」

女騎士「復讐なんかじゃないさ。私が気に入らない奴は殺すだけだ。もっとも、最終的に私だけが生き残ることになるだろうがな」

オーク兵「ということは、他の者達全員に恨みを持っているのか?」

女騎士「そうだな……まぁ、私が知っている人物は全員気に食わないな……おっと、お前はどうだっただろうか」

オーク兵「私か? 散々臭いだの言っていたじゃないか」

女騎士「いや、面白い奴だと思うぞ。しかしそうなると最終的に私とお前の二人が生き残るのか? なんとも魅力のない世界だ……」

オーク兵(私にはまだ失望していないというわけか……)

オーク兵「しかし、さっきから辺りが騒がしいな……」

女騎士「ああ、そういえば兵の一人が救援信号を出していたな」

オーク兵「な、何故そんなことを黙って!?」

女騎士「来るのはどうせ私が気に入らない連中だろう。ならば同じことだ」

オーク兵「しかし雰囲気だけでもかなりの量だぞ! いくらお前だろうと無茶だ!」

女騎士「……余計な心配を。お、突入してきたみたいだぞ」

オーク兵「おい、女騎士!」

女騎士「おらぁ! 死ねェ糞共!!」

オーク兵「つ、強すぎる……なんなんだあいつは……」

女騎士「ひゃはは! くたばれゴミクズがァ!」

オーク兵(ん? あちらの兵が出したもの……あれは何――)

ドォン!

オーク兵(ば、爆発した!?)

オーク兵「お、女騎士! ……辛うじて外れたか」

敵将「化け物が、中々悪運が強いようだな。しかし何発もやれば当たるだろう」

敵将「しかし素晴らしい威力だな! この最新の爆弾は! もっと追加しろ!」

オーク兵(ば、爆弾だと!? 一対多数というだけでも充分卑怯だというのに、そんなものまでだと!)

オーク兵(しかし、そうと分かればいくらあやつでもマズイ。早く逃げるよう言わないと……!)

オーク兵「女騎士! 早く逃げ……」

女騎士「よ、呼んだか、豚……糞、脚が……」

オーク兵「なんだ、近くに……な、脚が……!」

女騎士「それにしてもあの声、あのクズか……こんな所にまで……糞……」

オーク兵「な、なんとか逃げれないか!」

女騎士「この脚だ。無理だろう」

オーク兵「ならば、私を売れ!」

女騎士「あのクズは交渉に応じるようなやつじゃない。それに……」

女騎士「……気に入らない奴じゃない奴は、売れない……」

オーク兵「女騎士……」

女騎士「それにしてもあのクズ……私の人生をメチャクチャにしたやつの一人……!」

オーク兵「…………」

オーク兵「事情はよく分からないが、あの敵将を殺したいんだな?」

女騎士「この大群相手にアイツを仕留められるのか……?」

オーク兵「あちらはまだ私には気づいていない。ずっと物陰にいたからな」

女騎士「このまま何もしなければ、お前だけでも逃げられるかもしれないぞ……」

オーク兵「……お前を裏切って生きていくなんて、私には出来ない」

女騎士「お前のその奇行も、あまり見れなかったな……」

オーク兵「……では、行くとする」

女騎士「待て……」

オーク兵「なんだ?」

女騎士「お前は……臭いし、醜いが、気に入ったぞ」

オーク兵「……それは何よりだ」

オーク兵(敵に気づかれないようギリギリまで近づいて、斧を投げる)

オーク兵(正直、当てる自信はほとんどないが……)

オーク兵(…………)

オーク兵(あの時のあやつのように、か……)

オーク兵「……せぃ!」

兵達「なんだ!?」「オークだ! オークが潜んでいた!」「急いで仕留めろ!」

オーク兵「ぐっ……ここまでか……」

オーク兵(や、やったのか……? 確認できないが……やれることはやった……はず……)

女騎士(出血のせいで意識が薄れている……もう時間がない、か……)

女騎士(あの豚……オーク兵は、どうなった?)

女騎士(確かめもできない……か)

女騎士(ん? この騒ぎ……)

兵達「オークを仕留めろ! 敵将様がやられた!」「斧だ! 斧が頭を……!」

女騎士(オーク兵……やったのか!? クソ、意識が薄れ……て……)

女騎士(…………)

女騎士(ありがとう……)


おわり

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