大井「お断りします」 (27)
提督「……これ、どうにかならないでしょうか」
大井「なりません。さっさと突き返して下さい」ニコ
提督「その。僕もちょっとびっくりしてると言うか困惑しているというか」
大井「あら、言い訳ですか? あんまり寝惚けたこと言ってると撃ちますよ?」ジャキ
提督「はい」
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大井「……提督、最初から確認させてください」
提督「お願いします」
大井「今度の演習は、特別に浜辺でビーチバレーをすることになったんですよね」
提督「はい。鎮守府対抗で競う形になりました」
大井「艤装や服が砂だらけになったら困るから、水着を用意することになったんですよね」
提督「そうですね、チーム分けの意味合いもあるみたいです」
大井「その試着を私がすることになったんですよね」
提督「すみません、大井さんなら適任かと思ったので」
大井「まぁそれに関しては別に構いません。むしろ光栄な事です」
大井「一応これでも秘書官ですし。真っ先に頼ってくれるのは悪い気しませんから」
提督「そう言って下さると助かります」
大井「でも何でこんな際どいの持ってくるんですか!?」
大井「いくら水着でもこれ着て動いたら見えちゃうでしょ!?これなら下着でやった方がまだマシじゃない!!!」
提督「すみませんっ!」
大井「………一応聞いておきますけれど。提督の趣味ですか?」
提督「違いますよ!」
提督「僕が最初聞いてた時はもっと違うタイプだったんですよ。でも―――」
大井「でも?」
『激しい運動と可動域に配慮しつつ、夏らしい健康的な趣向を取り入れるべきである!!』
提督「―――との進言が上からあったみたいで」
大井「あンのエロ親父共……見つけ次第殺す」
提督「や、そこまでしたら大事に」
大井「提督は黙っててください」
提督「はい」
大井「そもそもどうしてもっと早く教えてくれなかったんですか? 予め知ってたら私からも言えることがあったかもしれないのに」
提督「その、言い訳になっちゃうんですけれど」
大井「この際構いません」
提督「本来請け負うはずだった方が急用で。それで僕に回ってきたんです」
大井「………………ああ。要は押しつけられたんですね」
提督「やっぱりそうなんでしょうか」
大井「今回の件に限らず提督は何でも安請け合いし過ぎなんです!」
大井「提督の考えもある程度は理解はしていますけれど、それでももうちょっと慎重になって下さい!」
大井「そんなだからいつまで経っても頭も?も上がらないペーペーなのよ。ったく」
提督「ぐう」
大井「…………まあ、でも。命令なら仕方ないです」
提督「え」
大井「仮にも上からの要請ですし、一度引き受けたものを反意にするわけにもいかないでしょう?」
提督「でも大井さん、嫌なんですよね」
大井「嫌に決まってるじゃない、こんな貧乏くじ」
大井「でもまだ検討段階で決まった訳じゃないですし。何より北上さんがこんなの着て衆目に晒されるなんて耐えられません!」
提督「………うーん」
大井「どうかご命令ください。この場の少しくらいなら我慢しますから」
提督「いや、その必要はありません。やっぱり僕の方から断っておきます」
大井「は?」
提督「着る本人が嫌がっているなら無理矢理すべきじゃないです。第一僕が引き受けなければよかっただけの話ですから」
大井「ちょっと待って。それ、そのまま返すつもり?」
提督「はい」
大井「はいって。上にはどう説明するつもりですか?」
提督「そのまま伝えますよ、これじゃ見世物になっちゃいますし」
大井「……それじゃ提督の立場が悪くなるだけじゃないの」
提督「もう慣れっこですから」
大井「」イライラ
大井「……さっきは『どうにかならないか』って聞いてきたじゃない」
提督「今思えば失礼な事を言ってしまいましたね。ごめんなさい」
大井「提督。命令さえして下されば我慢できますから、後々に尾を引くような事は」
提督「何もしない方がよっぽど尾を引いちゃいます。大丈夫、何とかしますから」
大井「―――ああ、もう!!」
提督「へ?」
大井「ほんっとうに鈍いわね!!少しはこっちの意図くらい読み取りなさいよ!!」
提督「お、大井さん?」
大井「いつもいつも手間ばっかりかけるんだから……! これお借りします!!」
\シャッ/
大井「お待たせしました。これでいいんでしょう!?」
提督「うわ!?」
大井「『激しい運動には不向きで機能性も皆無、加えて艦娘や提督からの評判も最悪。改善を強く要望する』―――以上です!!」
提督「え、あ。はい」
大井「……断るにしても一応の理由を並べれば体裁は保てるでしょう」
大井「何でもかんでも断って謝ればいいってもんじゃないんだから。少しは考えてください!!」
提督「すみません大井さん、無理させてしまって」
大井「……善意や好意に詫びで返すのは失礼と前にも言ったはずです」
提督「あ、すみま―――じゃなくて。ありがとうございます、大井さん」
大井「……一応言っておきますけれど、提督のためじゃないですから」
大井「あくまでもこんな物を北上さんや他の皆さんに着せないためです。勘違いしないでくださいね!?」
提督「分かっています、きちんと伝えますから」
大井「はぁ。………いつまで見てるんですか」
提督「え、あ。すみません!」
大井「もう」
―――――――――
―――――――――
大井「あれからどうなったんですか?」
提督「結局再検討になりました。艦娘達だけじゃなく提督側からも反対多かったみたいです」
大井「ま、当然ね。あれを採用しようとした人の気がしれないわ」
提督「大井さんのお蔭ですよ。あれが後押しになったみたいですから」
大井「私は着た分損したけどね……はぁ」
提督「ありがとうございます。無理なお願い聞いて下さって」
大井「次からはきちんとその場で確認してくださいね」
提督「けど僕は大井さんの水着姿がみれて役得だったかなー……なんて」
大井「……ていとく?」ニコ
提督「う」
大井「成る程、提督には女性に卑猥な衣装を着用させて悦に浸るご趣味があったんですね」
大井「健康的な殿方である以上そのような性癖は否定致しませんが、それを艦娘に強要するとは驚きです」
大井「普段から作戦中の被弾が多いのは私の至らなさも多分にあったと思っていましたが、それを織り込み済みで指揮を執っていたのかしら?」
大井「でも気になさることはないですよ。殿方が劣情を抱きかねない少女の容姿をしていたとしても艦娘は兵器。それをどう扱うかは指揮官である提督の」
提督「いえ、あの、その。……冗談です」
大井「あら、冗談でしたか。てっきり私は今回の私の労をねぎらう意味で貴重なお話をして下さったものかと」ゴゴゴ
提督「すみません、変なこと言って」
大井「今の、フォローにすらなってないですからね。私は別に構わないけど……疑われないよう少しは考えてください」
提督「重ね重ねすみません」
大井「すみませんばっかり。ほら、くだらないこと言う暇あったらさっさと仕事片付ける!」
提督「はいっ」
大井「……本当にはっきりしない人なんだから、もう」
おわり
以上でお終いです。ここまでありがとうございました。
大井っちの魅力は尻を叩きながら支えてくれる面倒見の良さにあると思います。
このSSまとめへのコメント
大井っちツンデレかわいい