浦風「たまにで、ええけえ」 (75)




~自宅~


カチッ カチカチ カチッ


男「あー」


男「夏イベまでもうすぐだな。備蓄でもすっか」


男「とはいえレベリングもしなきゃいけんし、空母の安定力も上げたい」


男「でもそうなってくると随伴艦の駆逐も絶対いるよなあ。まあでも、島風雪風夕立あたりは育ってるし」


男「もう一人くらい、主力駆逐を増やすかー。うーん、誰がいいかな」


睦月 LV32
谷風 LV41
野分 LV33
浦風 LV14


男「んー・・・この中だと・・・」


男「睦月は改二になるし、谷風はオレ好み。野分はレア艦だし、優先度高いな」


男「浦風は・・・うーん。同じ広島弁喋るから、好きなんじゃけど・・・なんか実家思い出してしまうんよなあ」


男「ってことで、浦風にはごめんだけど、今回は別の3人育てるか!夏イベに間に合えばええなあ」


男「ん・・・おっと。もう出社の時間じゃねえか。やべえやべえ。遠征に出して・・・っと」カチカチ


男「んじゃ、いってきまーす」バタン


PC「・・・・・・」


PC「・・・・・・」




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・・・・・・・夜


男「あー・・・今日も疲れたあ」


男「残業するのはええけどのお。なんでわしが上司の残り仕事やらんにゃあいけんのじゃ」


男「おっと、また広島弁出てもーたわ、気をつけんにゃ。東京じゃたまにバカにされるけえのお」


男「さーて。部屋帰ってビールでも開けるか」


ガチャ


男「ただいまー」


浦風「おー、おかえりい、提督さん」


男「・・・・・・」


浦風「もうちょっと待っとってね。今メバルの煮付けできるけえね」


男「え・・・えっ?」


浦風「んー?なにしょうるん?ドア開けてつったってからに」


男「いや、あの・・・」


男「へ、部屋間違えました!ごめんなさい!」


浦風「何ようるんね。あんたの部屋であっとるけえ」


男「へ・・・へえ!?」




浦風「うちはあんたが帰ってくるの、待っとったんよ?」


男「・・・・・・」


浦風「どしたんねー? 鳩が豆鉄砲食らったような顔してからに」


男「いや、あ、あの・・・」


浦風「んー?」


男「あなた・・・誰?」


浦風「おどりゃあああ!!」


男「ひっ!!」


浦風「うちあんたと毎日顔合わしとるやないの!なんで忘れよんね!?」


浦風「うちは浦風じゃ!!」


男「う、浦・・・?」


男「浦風!!?か、艦これの!?」


浦風「そうじゃ」


男「な、なななななんでこんなとこに浦風が!?ゲームから出てきたっての!?」


浦風「うーん。まあ、そういうことになるねえ」


男「いやいやおかしいおかしい」




浦風「まあまあ、ええやないの。うち提督さんに会いたかったし」


男「・・・」


浦風「んー? なんなん。会えたのがうちじゃ嬉しくないん?」


男「いや、そ、そういうことじゃないけど・・・!」


浦風「うふふ。まあ、気にせんでええよ。うちあんま育ってなかったしね。提督は、他に好きな艦娘さんがおるじゃろうし」


男「あ、いや。そ、その」


浦風「あはは。ごめんごめん、怒っとるように見えたんかな?大丈夫よ。怒ってないけえ。むしろ、満遍なく艦娘を育ててくれる提督さんは、うち好きじゃけえ」


男「・・・あ、ありがとう・・・」


浦風「とりあえず部屋入りんさいや。蚊が入ってくるけえね」


男「う、うん」


バタリ


浦風「さーて、そろそろメバルの煮付けができるねえ。提督さんは、机で待っといてもらえる?今ご飯持ってくけえ」


男「え、料理作ってくれてたの?」


浦風「もちろんじゃ。提督さん疲れとると思うてねー。ほらほら、先に休んどきー」


男「う、うん」





男(・・・・・・)


男(・・・・・・なんだこれ)


男(ゲームからキャラが出てくる!? いや、確かにそういう展開のラノベとかSSよくあるし、実際すごいことなんだけど)


男(なんでよりによって浦風!?)


男(そんなに育ててなかったし、貧乳好きなオレとしてはそこまで好んでなかった艦娘だ)


男(こういう展開ってさ。ほら、自分の一番好きな艦娘が出てきたりするじゃん!龍驤とか、瑞鶴とか、大鳳とかさ!)


男(うわ・・・しかもオレ、今日朝浦風育てないって言ってたしな・・・嬉しいことは嬉しいけど・・・なんか気まずいな・・・)


浦風「なにぶつぶつ言ーよるんね。提督さん」


男「わっ!!ご、ごめん!」


浦風「?? なんで謝るん? まあええわ」


浦風「ご飯できたよー」ゴトリ


男「うおお・・・!」


・炊きたてご飯
・わかめと豆腐の味噌汁
・メバルの煮付け
・広島菜の漬物
・甘めの卵焼き


男「す、すっげ・・・! うまそう・・・!」


浦風「そりゃあ、うちが作ったけえね。うまいに決まっとるよ」


男「食べて・・・いいの?これ」


浦風「うん。もちろんじゃ」




男「じゃ、じゃあ。遠慮なく」パク


男「!」


男「うまあああああーーい!!」


浦風「・・・ニコッ・・・うふふ、良かったわあ。おかわりもあるけえね。遠慮なく言いんさい」


男「え、あ、う、うん」


男「や、でも。お金とか、食材とかどうしたの?」


浦風「ああ。今日たまたま提督さんの実家から荷物届いたんよ。そこから使わせてもらわしたわ」


浦風「勝手に使うて、ごめんね?」


男「いや、ぜ、全然いいけど・・・ていうか、うまっ!卵焼きもうまっ!」


浦風「ふふ。瑞鳳さんにも負けちゃおらんじゃろ?うちは料理も得意じゃけえね」


男「そう、なんだな。うん、いや、マジでうまいよ」


男「あ」


浦風「ん?」


男「ごめん、オレだけ先に食っちゃって。浦風さんは食べなくていいの?」


浦風「ええんよ。旦那より早くご飯食べる嫁なんかダメじゃけえね。でも、ありがとう。んじゃうちも一緒に食べようかな」


男「う、うん。色々聞きたいこともあるしさ。ご飯食べながらでも話そう」


浦風「ほうじゃね。じゃあ、うちもご飯とか持ってくるけえ」





浦風「それと提督さん。うちのことは浦風って呼び捨てでええけえね?さんとかつけられるとこしょばゆいわ」


男「あ、うん。ごめんよ。なんかさ、はは、緊張しちゃって」


浦風「まあ、いきなりゲーム世界から人が出てきたら、そうなるよねえ」


男「そ、そうだね」


男(浦風はすごい冷静だなあ)


男(それになんていうか、その・・・お母さんみたい)


浦風「んー?なにうちの胸見よるんね?」


男「あ、いや」


浦風「なーんてね。提督さんがおっぱいに興味ないのは知っとるよ。からかっただけじゃけえ」


男「・・・・・・」


浦風「んじゃあうちも。いただきまーす」


男「・・・・・・」


浦風「んー!我ながら力作じゃ!ぶちうまいねえ!やっぱメバルは瀬戸内海産が一番じゃ」


男「・・・・・・」


浦風「どしたん提督さん。このままじゃうちが全部食べてしまうでえ?ふふ」


男「あ、う、うん。すまん」


男(浦風ってこんなに可愛かったのか・・・やっべ。なんか見とれてしまってたわ・・・)




男「・・・んで、その、浦風」


浦風「んー?」


男「その、直球な質問するけど・・・なんで出てこれたの?」


浦風「・・・・・・」


浦風「うちが提督さんに、会いたかったから、かな?」


男「そ、そんなんで来れるのか」


浦風「うふふ。うちも最初びっくりしたんじゃけどね。そういう風に願っとったら、なんかいきなり体引っ張られて、気づいたら見慣れた提督さんの部屋じゃったんよ」


男「・・・あ、なるほど。じゃあ浦風も、なんで出てこれたのか分かってないわけか」


浦風「そういうことじゃねえ」


男「・・・・・・すごいなあ・・・・・・こんなこと、あるんだなあ」


浦風「でも、ちょっと困るのは」


男「ん?」


浦風「うちがゲームに帰れるか、いうとこやね」


男「あー。まあ、そうだな」


浦風「提督さんに会えたのは嬉しいけど、うちは提督さんとこの鎮守府の、戦闘娘じゃけえね」


浦風「あんまり使ってくれんとはいえ、うちも一応艦隊の戦力じゃけえ、帰らんにゃいけんもんね」


男(う・・・悪気はないんだろうけど、使ってくれてないと言われると、結構くるものがあるな。ごめんよ浦風)




浦風「でも、まあ。うち提督さんのこと好きじゃし、別に帰れんでもええけどね」


男「うお、ス、ストレートだなあ」


浦風「いやあ、その恋とか愛とかじゃなくて。単に艦娘の扱いで好き言う話よ?」


男「ん?」


浦風「提督さん、今まで轟沈させた艦娘おらんじゃろう? 疲労溜まった子を無理やり連れ出すようなこともせんし」


男「・・・まあ。でもそれ、艦これの中では常識っちゃ常識だろ」


浦風「そんなことないよ。雑な扱いする人おるけえね。海域突破するために、駆逐艦を犠牲にして轟沈させたりとか」


男「へえ、そんな人もいるんだな」


浦風「うん。じゃけえうちは提督さんのやり方は好きじゃ。無理せずじゃけど、ちゃんと毎日頑張ってうちらに会いにきてくれるしね」


男「あはは、まあ、毎日の趣味みたいなもんだからね」


男(彼女できなさすぎて、趣味というか生きがいなんだけど、そこはひかれそうだから黙っておこう)


浦風「・・・まー最近。やけに大型建造に夢中なのは・・・ちょっと考えもんじゃけどねえ」


男「ぎくり」


浦風「うふふ。提督さんの趣味なら、きっと大鳳さんを狙うとるんじゃろう?」


男「うー・・・そこまでバレてるとは」


浦風「そりゃあバレるわいね。露骨に小さい子ばかり育てとるんじゃけえ」


男「いや、その、ごめん」




浦風「ま、そこは好みの問題じゃけえ、そんなうるさく言うつもりはないけどね」


男「お、おう」


浦風「でも」


浦風「腕もなまるし、提督さんの顔みんな見たがっとるし、自分好みじゃない艦娘も使うてね?」


浦風「たまにで、ええけえ」


男「・・・ああ」


浦風「うふふ」


浦風「さー、食べたねえ。後片付けしょーかあ」


男「あいや、手伝うよ」


浦風「なに言うとるんね。皿洗いは嫁の仕事じゃ。提督さんは他にやることあるじゃろう?」


男「え?」


浦風「もう忘れたん? たーまーにーはー?」


男「あ、そうか。うん、そだな。使ってない子、出撃させるよ」


浦風「えへへ。分かっとるならよーし!でもまあ、まずはお風呂かねえ。ほじゃあうち、皿洗ってくるけえね」


男「ああ、じゃあ風呂入ってレベリングするとするよ」


浦風「うん!」





・・・・・・お風呂後



男「ふー。上がったよ、浦風」


浦風「んん?早かったねえ。ちゃんと湯う溜めたんね?」


男「いやあ。お金もかさむし、毎日シャワーだよ」


浦風「そんなんじゃけえ、いっつも疲れた顔しとるんよ!夜くらいお風呂浸からんといけんよお?」


男「そ、そうだけどさ、はは」


浦風「まあええわ。じゃあ、うちもお風呂入るよ?」


男「うん、どうぞどうぞ」


浦風「・・・覗いちゃダメじゃけえね?提督さん」


男「覗かないよ。オレがおっぱいに興味ないってもう知ってるんだろ」


浦風「うふふ。冗談じゃけえ。それに提督さんは男の中の男じゃけえ安心じゃ」


男「・・・なんだよそれ」


浦風「昔は広島でぶいぶい言わしとったんじゃろ~?」


男「いや、そんなの・・・田舎の学校で威張ってただけだ。井の中の蛙ってやつだよ」


浦風「そういうこと言わんの。うちも同じ呉で育ったんじゃけえ、自信持ちんさいや」


男「・・・・・・」


浦風「呉人は優しくて強いんじゃけえ。・・・ほいじゃ、お風呂頂いてくるけえね」


男「あ・・・おう」





男「・・・・・・」


男「・・・呉ねえ」


男(高卒で上京してきて、もう10年以上立つ)


男(なんにも周りが見えてなかったオレは、職場でバリバリの広島弁を話し、皆に怖がられたり珍獣扱いされた)


男(そんなオレじゃ結婚適齢期を過ぎても結婚できないのは当たり前。逆に【噂されること】に怖くなり、だんだんと社交的な性格は内向的になっていった)


男(そこで出会ったのが艦これ。もともと二次元が好きだったし、貧乳キャラもたくさんいた艦これに、オレはのめり込んだ)


男(無駄な浪費もなくなったし、他の人と喋るようなことも少なくなった。まあでも、後悔はなかった。だんだん人と話すことが苦手になったオレとしては)


男「・・・さあ、んじゃレベリングするかあ」


男(東京の荒波に飲まれ・・・いつしか広島で培った自信もなくなり・・・毎日がくそったれな人生だった)


男(気まずい空気の中仕事して・・・付き合いたくもない残業)


男(客観的に見ればブラウザゲーにハマっちまったただの社会人。まあそんなのよくいる)


男(今の状態が良いとは言えないけど、まあ、悪くもない)


男「・・・・・・」カチ カチ


男「・・・・・・そういや、最近・・・・・・」カチ カチ


男「実家、帰ってねえなあ・・・」





浦風「て、て、提督さぁぁぁあああああん!!!」


男「うおっ、な、なんだ?」


男「風呂場から・・・? 浦風?」


タッ タッ タッ


男「おー、どうした?なんかあったか?浦風」カベゴシ


浦風「やってしもおた・・・」


男「んー?」


浦風「うち、替えの下着ないわ!!」


男「・・・あ・・・」


浦風「提督さん、どうしょーか!」


男「えーっと、どうしよっかな・・・あー、コンビニで下着買ってこようか?」


浦風「ええ?それって、お金かかるんじゃろ?」


男「・・・まあ」


浦風「いや、そこまでしてくれんでええよ。ほうじゃねえ、提督さんの上着、今夜借りてええかねえ?」


男「そ、そりゃあいいけど・・・お、オレの臭い染み付いてるかも」


浦風「臭いなんか気にせんよ。大丈夫。ほいじゃあ悪いんじゃけど、上着バスルームの前に置いといてくれんかねえ?」


男「あ、おう。分かった」





その時____男は感じ取った




男「はっ____!!」



男(これはまさか・・・!!)



男(夢の・・・夢の、カッターシャツ上着だけエロい格好作戦の、絶好の機会!!!!)



男(くぅーーー!!ざ、残念ながら・・・残念ながら・・・!!オレは巨乳ではなく、貧乳好きだが・・・!!)



男(こんなチャンス、二度とくるものか・・・!!!)



男(やってやる!!やってやるぞ!!!)



男(浦風に・・・オレの白カッターシャツを着てもらうッ!!!)



男(もちろん、下着は・・・なしだ!!!)



男(うおおおおおおおおおお!!!! いっけえええええええ!!!!!)








・・・・・・10分後



浦風「ふーー、いい風呂じゃったわあ」


男「・・・・・・」


浦風「服も用意してくれたんじゃね、ありがとね」


男「お、おー」


浦風「しかしあれじゃねえ。このカッターシャツ? って、スースーするねえ」


男「・・・・・・」


浦風「まあ、インナーの服と、短パンあって良かったわあ。ありがとね、提督さん」


男「・・・・・・う、うん」


男「ま、まさかな。呉人が、女性に下着用意しない訳ないだろ?」


男「カッターシャツだけだったら、その。はは。大事なとこも透けて見えちゃうしな」



※ダメでした



浦風「もう!エッチなこと言わんの! ふふ。でもまあ、呉人は優しいけえね。ありがとね、提督さん」


男「・・・・・・」



____男ッッ!



_______一生の後悔ッッッ!!!





浦風「お」


男「ん?」カチカチ


浦風「おー。レベルが低い子、使ってくれとるんやね」


男「ああ。まあ、久しぶりにね」パンパカパーン


浦風「偉い偉い。うちの意見聞いてくれてありがとね、提督さん」


男「まあ、オレも正直育てたかった子だしさ」


男「自分の好みの子だけ育てるっていうのも、なんか、後味悪いしね」バカメ,トイッテサシアゲマスワ!


浦風「そうよお。みんな適材適所があるんじゃけえ。いつか絶対活躍する日が来るけえね」


男「はは・・・」


浦風「さって。それじゃあそろそろ、布団用意しょーか」


男「あ、そうだったな。でもうち、ベッド一つしかないから、オレソファで寝るよ」


浦風「はあ?なに言いよるん?ソファで疲れが取れる訳ないじゃろ!?」


男「い、いや、だってさ」


浦風「一緒に寝りゃあええじゃん。うち提督さんのこと信頼しとるけえ、大丈夫よ」


男「・・・・・・」


浦風「あー。分かった」


男「ん?」


浦風「嫁艦のことが、気になっとるんじゃろう?」


男「あ、いや、はは」




浦風「ふふん。せっかくやし聞いとこかー?提督さんの嫁艦は誰なん?」


男「ええ・・・い、いうの?」


浦風「まあせっかく、提督さんに会えたんじゃけえね」


浦風「それに、鎮守府じゃみんなそのこと気にしとるんよ」


男「・・・えーっと・・・」


男「ぜ、絶対言うなよ?みんなに」


浦風「わーかっとる。うちと提督さんの約束じゃ」


男「・・・・・・」


男「ず、瑞鶴」


浦風「ほおー!やっぱりかあ。まあ、一番レベル上げとったもんねえ」


男「あ、あと・・・」


浦風「ん?」


男「龍驤、とか、瑞鳳」


浦風「浮気は許さんでええええええええ!!!!」


男「ひっ」


浦風「一人に絞らんかい!!!嫁3艦てなんよ!!男じゃろあんた!!」


男「いや、だって、可愛いからさ、みんな」


浦風「そ、そこは・・・まあ、艦娘としては嬉しいけど・・・」




男「それにさ、結局ケッコンシステムもあるし、別に一人に選ばなくてもいいじゃないか」


浦風「・・・むう。まあ、ゲームシステムのことを言われたらなんも言えんねえ」


浦風「それにしても、あれじゃわ」


男「ん?」


浦風「提督さん。ほんまに胸ちっさい子が好きなんじゃねえ・・・」


男「・・・は、はい」


浦風「なんでなん?胸がおっきい子は嫌いなん?」


男「いや嫌いじゃないよ。付き合う彼女が胸大きいなら、それはそれで嬉しいだろうし。まあ、胸よりスタイル重視なのかな」


浦風「むう・・・じゃあ、うちの胸とかあんま好きじゃないんかいね?」


男「だから、好きとか嫌いの問題じゃないって。好きになったら胸の大きさなんか関係ないったら」


浦風「・・・あれ。提督さん、なかなか男前なこと言うねえ」


男「あはは。昔ぶいぶい言わしてた、呉人だからね」


浦風「・・・・・・」


ピリリリリリッ


男「あれ、電話だ」


男「懐かしいな。小学校の同級生からだ」


浦風「・・・・・・」


男「ごめん浦風、ちょっと電話出るな」


浦風「・・・うん」



男「はい。男です」


《よーーー!久しぶりじゃねえ!男お!》


男「ああ、久しぶりだな」


《東京の生活、どうよお?》


男「まあ、ぼちぼちやってるよ。社畜ってやつだ、はは」


《おお?なんか広島弁話さんようになったのお。気持ち悪いでえ》


男「なんかまあ、東京弁に慣れちゃってさ」


《なんじゃそりゃ。はは。で、どーよ、盆くらいは帰ってこんのん?》


男「・・・あー。まあ、盆も仕事だろうなあ。金もないし、今年も帰れんかもねえ」


《ありゃあ、やっぱ東京は大変じゃのお》


《たまには帰ってきんさいや。こないだお前のお母さんとたまたま会ってのお。寂しい寂しい言よーたで》


男「・・・・・・」


《あ、それと別の話があるんじゃけど・・・》


男「あ、ごめん、来客じゃわ。また電話する」


《えっ。あ、おい・・・!》


プツッ


ツーツーツー


男「・・・・・・」


浦風「ありゃ?切ってしもうたん?」


男「・・・ああ」




浦風「なんで?久しぶりの友達だったんじゃろ?」


男「・・・・・・」


浦風「別にお客さんなんかおらんし、ゆっくり喋っても良かったんじゃない?」


男「・・・いや、いいんだ」


浦風「なんで」


男「・・・いいだろ。別に」


浦風「いんや。良くないじゃろ」


男「・・・・・・」


浦風「せっかく電話かかって来たんよ?なんで嘘ついてまで電話切るん」


男「・・・・・・」


浦風「・・・今の情けない姿を、昔の仲間に見せたくなかったん?」


男「!」


男「いや、違う!!」


浦風「じゃあ、次はゆっくり話しんさいや」


浦風「仲間を大事にせん提督さん。うちは好きじゃないけえ」


男「・・・・・・」


男「・・・・・・ああ」


浦風「・・・・・・」


男「・・・・・・なあ、浦風」


浦風「・・・ん?」




男「オレさ・・・」


浦風「うん」


男「・・・その・・・」


浦風「・・・うん」


男「・・・みんなに、ビッグになってやるから!って大見得切って、上京してきたんだ」


浦風「・・・・・・」


男「片親の母さん残してさ」


浦風「・・・・・・」


男「それなのに・・・結果は、三流企業の下請け社員」


男「朝晩必死に働いてさ。少ない給料で」


浦風「・・・・・・」


男「・・・今更・・・実家の友達に、言えないよ」


男「オレはしょーもないところで働いて、休みの日はもっぱらブラゲーしてます、なんて」


浦風「・・・提督さんは・・・」


男「・・・ん?」


浦風「・・・何になりたかったん?」


男「・・・・・・」




提督「・・・笑うなよ」


浦風「・・・笑わんよ」


提督「・・・・・・」


提督「・・・・・・小説家」


浦風「・・・え?」


提督「っ・・・小説家、だよ」


浦風「へえ!!そうだったん!?」


提督「・・・・・・おかしくない?」


浦風「おかしくないよ!!すごいじゃん!かっこええね!」


提督「・・・・・・でも・・・・・・今は・・・・・・」


提督「その仕事に関係ない、印刷会社の雑用をしてるみたいなもんだ」


浦風「印刷会社!?それでも凄いねえ!」


提督「・・・・・・」


浦風「提督さんなら絶対できるよ!小説家!!今も趣味で書いてたりはするんじゃろ?」


提督「・・・・・・いや」


提督「書いて・・・ないんだ。ここ最近。全然」


浦風「えっ」




提督「・・・なんかさ。疲れちゃって」


浦風「・・・・・・」


提督「東京に来れば、色々見えてくると思ってたんだけど・・・結局は、高い壁の現実を見ただけだった」


提督「必死で考えたお話も、佳作にすら引っかからないし」


提督「・・・もともと、才能なんてなかったんだよ。オレには、さ」


浦風「・・・・・・」


提督「はは・・・本でも出して・・・それで母さんを楽にできればな、って思ってたんだけどさ」


提督「ま、現実はそう甘くないよな」ハハ


浦風「・・・・・・」


提督「今はまあ、SS?っていうのかな。セリフだけで構成されたやつ。あれをたまに書くくらいだ」


浦風「そうなんじゃ・・・」


提督「・・・うん」


提督「だからさ・・・今更、昔の友達に言えないよ」


提督「オレ小説家無理だった、って。オレ・・・東京で社畜してます、って」


浦風「・・・・・・」


提督「だから・・・懐かしい奴から電話かかってきてもさ・・・すごく、情けない気分になるんだよね」


提督「はは。まあ、情けないんだけどさ。オレ」


浦風「・・・そんなこと、ないけえ」


やっべ。男が提督になってましたw
続きは明日。またよろしくお願いします。



男「・・・・・・」


浦風「提督さんは情けなくなんかないよ。ちゃんと一人でも、頑張っとるじゃん」


浦風「・・・ちゃあんと実家にはお金も送っとるし、お母さんも喜んどるはずじゃろ?」


男「でも・・・」


男「あれだけ大見え切ったのにさ。・・・実際、何もできてないよ」


浦風「もう!ネガティブじゃねえ!そんなんじゃあ瑞鶴さんに振り向いてもらえんで!?」


浦風「それに小説じゃないにしろ、文章書くのはやっとるんじゃけえ。それが無駄になることはありゃせんよ」


男「・・・あ、ああ」


浦風「ふふ。まあええわ。そういう気分の時は、あったかくして寝るのが一番じゃ」


男「ん?」


浦風「ほらおいで?提督さん」ベッドイン


浦風「うちが一緒に寝ちゃるけえ」


男「い、いや、そんな。恥ずかしいよ」


浦風「今の提督さんには、温かさが必要なんじゃ」


浦風「瑞鶴さんには黙っとくけえ。ほら、一緒に寝ようや」


男「・・・・・・」


男(瑞鶴・・・・・・)


男(ごめん!!!)


男「じゃ、じゃあ、失礼します」


浦風「うん!ええ子じゃあ提督さんは」




モフッ


浦風「んー・・・?どうしたん、背中向けて」


男「あ、いや」


男「ちょ、ちょっと恥ずかしくてさ」


浦風「んふふ。まあええよ。嫁艦さんに悪いと思うとんじゃね」


男「はは」


浦風「じゃあ、後ろからこうしちゃろうかね」ギュ


男「うおっ!!」


男(せ、背中から抱きしめられて・・・浦風の胸が・・・)


男(浦パイがああああああああああ!!!)


浦風「ふふ。どうじゃ?あったかいじゃろ?」


男「あ、あったかいというか・・・柔らかいというか・・・」


浦風「うちは、胸の大きさには自信あるけえね」


男「・・・・・・」


男(い、いかん。理性を失ってしまいそうだ・・・いや違う!瑞鶴!違うんだああああああ)


浦風「・・・スー・・・」


男「・・・・・・」


浦風「・・・スー・・・スー・・・」


男「・・・浦風?」


浦風「・・・スー・・・」


男(寝た・・・のか・・・)



男(しかしこれ・・・本当、なんなんだろうな)


男(ゲームから人が出てくる。しかもちゃんと体もあるし、触ることもできる)


男(なんで浦風?か分かんないけど、喋ることもできるし、オレのことを提督と知っていた)


男(でもまあ、普通に考えたら警察に通報ものなんだろうけど・・・ゲームの内容まできちんと知ってたし)


男(・・・本当に・・・あの浦風なんだろう、な)


浦風「・・・スー・・・スー・・・」


男(ね、寝顔が見たい・・・!)


男(きっと可愛いんだろうな)


浦風「・・・スー・・・スー・・・」


男(・・・とはいえ、なんかこう。抱きたい!!って感情は出ないのはなんでだろう)


男(貧乳じゃないから?いや、オレだって男だ。さすがに隣に女の子が寝てたらムラムラしてくるはず)


男(でも、そういうのじゃないんだよなあ。なんでか分からんけど)


男(なんか・・・すげえ・・・温かい・・・)


男(気持ちええわ・・・)


男「・・・クー・・・スー・・・」




・・・・・・


ピリリリリリリ


男「はっ!!」


男「あれ、いつの間にか、寝てた・・・?」


男「うお、もう7時半か。出社の準備しなきゃ」


男「・・・ってか。浦風は・・・ベッドにいないな」


男(・・・やっぱ、夢だったんだろうか)


浦風「おはよー!提督さん!朝じゃねえ!」


男「・・・夢じゃなかった」


浦風「んー?どうしたん、自分の頬つねって」


男「あ、はは・・・」


浦風「朝ごはんはもうできとるけえね!先に顔洗ってきんさい」


男「え、嘘、朝ごはん作ってくれたの?」


浦風「もちろんじゃ」


男「やだこの子マジ良妻」


浦風「あはは、その言葉も瑞鶴さんには内緒にせんとねえ。ちゅーかこれくらい、嫁さんなら当然なことじゃろう?」


男「・・・まるで、うちの母さんみたいだなあ」


浦風「何いうとるんね。うちは提督さんのお母さんくらい歳取ってないよぉ」


男「ていうか、浦風って実際今の年齢は何歳なんだ?」


浦風「提督さぁん。女性に歳聞くんはご法度じゃって知らん?」


男「あいや、その。すまん」



浦風「あはは。冗談よ。厳密に言うとうちら艦娘には歳言うもんはないんじゃ」


男「え、そうなの?」


浦風「うん。結局はみんなの想像でええんよ、ゲームってそういうもんじゃけえ」


男「・・・・・・」


浦風「駆逐艦なんかは幼い容姿の子が多いけど、お酒だって飲めるんよ?」


浦風「提督さんも最近模様替えしてバー仕様にしたけど、駆逐艦の秘書官でもビールとか並んどるの見るじゃろ」


男「ああ。まあ確かに」


浦風「じゃけえ年齢っちゅーのも厳密に決まっとるもんじゃないんよ。うちだってお酒好きじゃしね」


男「・・・なんか」


浦風「ん?」


男「淡々と話すなあ。自分のことなのに」


浦風「といわれても、事実そうじゃけえねえ」


男「・・・・・・」


浦風「とはいえ、うちもお腹空いたわあ!はよご飯食べようや」


男「お、おう。じゃあちょっと顔洗ってくる」


浦風「うん!待っとるけえね」



・・・・・・


浦風「ごちそうさまでしたー」


男「うまかったあ。ご馳走様。ありがとう浦風」


浦風「あはは、お粗末様でした。ほじゃあ食器片づけるねえ」


男「・・・さって、じゃあオレも仕事行かなきゃな」


男「ん・・・あれ、待てよ」


浦風「んー?」


男「浦風、オレが外出してる時、どうする?」


浦風「ああ、心配せんでええよ。掃除でもしとくけえ」


男「いやそんな、悪いよ。それに来客とか来たらどうすんだ」


浦風「別に、出なきゃええんじゃない?」


浦風「出たとしても、普通に対応すりゃええじゃろ」


男「・・・ま、まあ。考えてみればそうか。普通に見れば人間の恰好してるんだし」


浦風「そーそ。じゃけえ気にしなさんな。心配せんでも外出して提督さんの迷惑をかけるようなことはせんけえ」


男「お、おう。なら安心だな」


浦風「まあ。とりあえずあれじゃね」


浦風「タンスの一番下のエロ本は、処分させてもらうけえね」


男「・・・し、知ってたのか!」


浦風「当たり前じゃ。うちを誰と思うとるん?」


男「えっ、そういうのって、もしかして他の艦娘も・・・?」


浦風「うふふ、大丈夫よ。知ってるのはうちだけじゃ。バラしたりせんけえ安心しんさい」


男「お、おう。しかし浦風にはなんでもお見通しなんだな・・・」


浦風「同じ呉育ちじゃけえねえ~。それくらい分かるよ」


男「いやでも確か浦風、生まれは大阪だろ?」


浦風「そうよ。でも呉での生活の方が長いけえ、すっかり広島弁に染まってしもうたわ」


浦風「エセ広島弁・・・とか言われよるけど、たまに関西弁が混じるのはそのせいじゃねえ」


男「あー。そうだったんだなあ」


男「ていうかさ」


浦風「ん?」


男「浦風は、野球はどっちファンなの?広島と阪神」


浦風「おどりゃあああああ!!」


男「えっ」


浦風「そんなもん広島に決まっとるじゃろーが!カープ語らずして広島弁は使えんけえ!堪忍やでほんま!!」


男「いや最後関西弁じゃないか」


浦風「うっ!・・・そうなんよ・・・感情高ぶるとたまに出てしまうんよね・・・」


男「あはは。まあどっちでも可愛いけど」


浦風「ふぁっ!?」


男「・・・・・・ん?」


浦風「て、提督さん~、あんたは瑞鶴さんという人がおりながら~!」


男「えっ、な、何、何!?」


浦風「そういう口説き文句は禁止じゃっ!!ドキッとしてしまうじゃろ!はよう仕事行ってきんさい!!」


男「あ・・・う、うん」


男「じゃあ、行ってきまーす」


浦風「いってらっしゃーい。他の子にも、そういう口説き文句言ったらいけんよ~!」


男(とはいえ、やっぱ浦風、普通に可愛いな)


男(・・・行ってらっしゃい、って言われるの、実家ぶりだし・・・)


男(なんか・・・心があったけえや・・・)



~仕事場~


上司「おぅい、男よお」


男「あ、はい!」


上司「まーた広告の塗り間違ってんじゃねえか。ここ紫じゃねえよ。青っつったろ」


男「あ・・・すみません!すぐ発注直しを・・・!」


上司「もう間に合わねえよ。あーマジ、オレが部長に怒られるんだからなー。勘弁してくれよ」


男「申し訳ないです・・・」


上司「後お前、目指してた小説家、どうなってんだ?」


男「あ・・・いや・・・」


上司「後輩に教えてもらってよ。一回ネットに投稿したとかいうお前の作品、見たよ」


男「え・・・」


上司「才能ねえと思うぞ。いやマジ」


上司「いつまでもくだらん夢追っかけてないで、しゃんと仕事に集中しろよ。どうせ徹夜して物語でも書いてんだろ。それ辞めりゃあミスも減る」


男「・・・・・・」


上司「なんだよその顔。本当のこと言っただけだろ」


男「・・・・・・はい」


男「すみません」


上司「・・・・・・けっ・・・・・・イルンダヨナー・・・コウイウイツマデモゲンジツミエテネーヤツ・・・ブツブツ」


男「・・・・・・」





~仕事終わり~



ガチャッ


男「・・・ただいまー」


浦風「おかえりい!提督さん!」


男「・・・・・・」


浦風「ん?どうしたん?ぽけーっとして」


男「・・・いや、なんか」


男「泣きそうになった」


浦風「あはは、何言よーるんね。うちの顔見て嬉しかったん?ふふ」


男「・・・うん、嬉しかった」


浦風「お、おう。まともにそう言われると思ってなかったわ。まあええ、はよう入りんさい。御飯作って待っとったけえ」


浦風「それともお風呂にする?」


男「・・・浦風がいい」


浦風「・・・・・・殴るよ」


男「あ、はは。いやそういうのお決まりじゃないか。ごめんごめん、ちょっと冗談言いたかっただけ」


浦風「これは瑞鶴さんに報告じゃね」


男「やめてえええええええええ!!!」


男「そんなこと言ったら・・・絶対爆撃されるじゃんオレ・・・!」


浦風「まあ冗談じゃけえ。言わんけえ安心しんさいや。提督さんはほんま、肝が小さいねえ」


男「し、仕方ないだろ・・・こういう性格なんだからさ」


浦風「それはそうと、今日は大荷物じゃね。なんか買ってきてくれたん?」


男「え、あ。そうだ」


男「ほいこれ。一応サイズに合ったもの買ってきたつもりだ」


浦風「なんよこれ。ん?服?」


男「うん。いつまでもオレの服着させる訳にいかないしさ。それに、料理や家事のお礼もしたかったから」


浦風「わああ、めっちゃかわええねえ。うちこんなん似合うんじゃろうか」


男「似合うよ。だって元がいいんだし」


浦風「・・・分かったわ。提督さん実は、天然たらしじゃろう?」


男「え?」


浦風「ふふ、まあええわ。じゃあ早速着替えようかいね。ありがとね、提督さん」


男「おう。喜んでもらえて嬉しいよ」



・・・・・・


浦風「じゃーん!」


男「おお!」


浦風「白のワンピースとか、素敵じゃねえ♪ ぶち嬉しいわあ」


男「・・・うん、似合ってるね。浦風は白が似合うなあ」


浦風「うふふ。褒めてもなんも出んよ?」


男「いや本当。冗談抜きですっげえ似合ってる」


浦風「この麦わら帽子もつけた方がええかね」


男「あー、それ外出用だからさ、外出た時につけたらいいよ」


浦風「おっ!うちも外出てええん?」


男「・・・まあ、一生ゲームに戻れなかったら、君も人として生活してもらわないといけないし」


浦風「うおお。考えてみりゃそうじゃねえ。てかうちほんと、戻れるんじゃろうか」


男「そうだねえ。PCとか触ってみた? こう、中に入れるようになったりしないかな」


浦風「試した試した。んでもこんなちっこいのにゃ入れんわ。なんか別の方法で戻るしかないんかねえ」


男「・・・帰れなくなったら、それはそれで、いいけどね」


浦風「えっ?」


男「あ、や、その。一緒にご飯とか食べるの、楽しいし」


男「いってらっしゃい、とか、おかえりって言ってくれる人がいるの、嬉しいよ」


浦風「・・・・・・」


浦風「・・・・・・でも」


男「ん?」


浦風「うちは結局・・・人間じゃないけえねえ」


男「・・・・・・」


浦風「所詮、ゲームの中の、一人のキャラクターじゃ」


男「・・・そんなことないだろ。こうして、オレの前に現れたんだし」


男「それだけで、なんかその、特別って感じがするよ」


浦風「・・・まあ、うちも提督さんに会えたのは嬉しいけどさ」


男「・・・・・・」


浦風「・・・・・・」


浦風「あー、なんかごめん!辛気臭くなってしもおたね!」


浦風「ご飯食べよう、ご飯!」


男「あ、おう」


浦風「今日は広島らしく、お好み焼き焼いたけえね。牡蠣入りじゃけえ美味いよ~?」


男「おおー、美味しそうだね」


男「あ、そうだ」


浦風「ん?」


男「明日明後日休みだし、酒買ってきたよ」


浦風「えっ、ほんま!?ええねええね、開けようやあ」


男「うん!んじゃグラス用意するよ。浦風は料理持ってきてくれる?」


浦風「OK!うちに任しとき~」


男(おお、艦これの名言だ。すげー。やっぱ本物の浦風なんだなあ)


・・・・・・


男「んじゃ、かんぱーい」


浦風「うん!乾杯乾杯」


ゴキュゴキュゴキュ


男「ぷはーーっ!!うまいね」


浦風「あー!最っ高じゃねえ」


男「さてさてじゃあ、お手製のお好み焼きをば、っと」パク


男「うん!これも美味い!」


浦風「うふふん。もっと褒めてくれても、ええんよ?」


男「どこのドイツ艦のマネですか」


浦風「ビスコさん、浦風バージョンってやつやね」


男「あははっ、なんだそれ」


浦風「ねえ、提督さん」


男「んー?」


浦風「こっちの世界って、どんな感じなん?」


男「どんな、って・・・何が?」


浦風「いや、深海棲艦とか」


男「・・・ああ。そっか。浦風は艦隊これくしょんの世界なんだもんな」


男「こっちの世界は、そんな化物はいないんだ。オレのいる国は日本ってとこで、今は戦争とかもなくて平和だ」


浦風「へえ・・・そうなんじゃね」


男「昔は各国で戦争してたんだ。いわば、君らの相手している深海棲艦というのが、人間同士だったんだよ」


浦風「・・・・・・悲しいねえ。人間同士で殺し合うとか。仲良くすりゃあええのにね」


男「・・・まあ、色んな理由があるのさ。それに日本以外では、今も戦争してる国はたくさんある」


浦風「ふーん」



男「とはいえ、日本もそう安心してられないよ。新しく法律ができてさ、日本も戦争の場に行かないといけないかもしれない」


浦風「・・・・・・」


男「せっかく、君のような立派な艦が奮闘してくれたのにね」


男「結果日本は戦争に負けちゃったけど。以後平和な世界を望んだんだ。二度と戦争しませんーって」


浦風「ほうなんじゃ」


男「うん。ま、日本も国としておんぶに抱っこじゃいけないんだろうけど・・・じゃあ、君の船に乗ってた、命を賭けた昔の人の意思は、どうなるのかなって」


浦風「・・・・・・」


男「・・・あ、ごめんよ。暗い話して。昔社会とか世界史だけは詳しくてさ。なんか、愚痴っちゃった」


浦風「・・・提督さんは、平和な世界が好きなんじゃね」


男「え・・・ま、まあ」


浦風「うちと同じじゃ」


男「・・・・・・」


浦風「なんでか知らんけど、提督さんがそう言ってくれるのは、うち嬉しいんよ。すごく」


男「・・・・・・そ、そう?」


浦風「うん」




ピリリリリリリ・・・


男「ん」


浦風「お、電話?」


男「ああ」


男「昨日と同じ奴。実家の近くの同級生だよ」


浦風「・・・今日は切っちゃいけんよ?大事な報告かもしれんのんじゃし」


男「・・・ああ。そだな」


男「浦風のおかげで・・・なんか勇気出たよ」


浦風「うふふ」


ピッ


男「はい。もしもし」


《おー、男かいや。昨日はごめんのお。来客中に》


男「いや、オレの方こそすまん。突然切っちゃって」


《いやいや、まあ久しぶりに元気な声聞けたけえ、ええよ》


男「で、どした?」


《おう。ちょっと相談ごとがあっての》


男「・・・相談ごと」


男(内心、また同級生の結婚報告かと思ってちょっとびびってたわ。なんだろうな相談って)



《わしらの中学校の壁画、覚えちょるか?》


男「・・・・・・壁画? ああ。龍の絵が書いてあるやつだよな。オレらが卒業するとき、みんなで学校の壁に横幅50メートルくらいのでっかい絵を書いたんよなあ」


《おーそうそう。よお覚えちょるのお。嬉しいで》


男「んで、その壁画がどうかしたの?」


《いや、わしらも卒業して15年くらいたつじゃろ?ほじゃけえ、だいぶ壁画の色が落ち始めてきたんよ》


男「・・・ま、15年もたてばな・・・」


《わしら1人1人の名前も消えてきょーるし、なんとか復活させたい思ての》


男「復活って・・・そりゃやりたいけど、あんな長さの壁画を修正しようと思ったらどれだけ時間かかると思ってんだ」


《まあ、一日二日じゃ終わらんのお》


男「それに今みんな社会人で忙しくしてるし・・・人数も集まらないんじゃないかな」


《まあねえ。ほじゃけえ、男に電話したんよ》


男「・・・はあ?」


《男は昔から、みんなからの人望があったじゃろ?男が声掛けしてくれるなら、みんな集まってくれるよ》


男「・・・・・・そんな訳ないだろ。誰が声かけても一緒だって」


《いんや。皆を集められるのは男しかおらんよ》


《わしらん中で、東京行ってビッグになる!言うた一人者のリーダーやないか》


男「・・・・・・」



男「・・・いや・・・オレは・・・」


《・・・ま、もうすぐお盆じゃけえ。その時までに集める感じでええよ。集められんならまあ、しゃーないし》


男「・・・・・・」


《重荷背負わして悪いけど、お前しかおらんのんよ、適任がさ》


男「・・・・・・」


《大丈夫じゃ。男が声掛けすりゃあ、みんなひょいひょい集まるけえ》


男「だから、そんなんじゃねえって・・・」


《あはは。そー言いながら、お前はいっつもやってくれる男じゃったよ。期待しとるで。たまにゃあみんなで集まってワイワイやろーやあ》


男「・・・う・・・」


《あ、ついでじゃけど。わし、12月に結婚することになったけ。また来てくれいや》


男「それついでかよ!!普通そっちの報告が先じゃろ!」


《あっはは。相変わらずキレの良えツッコミじゃのお。んじゃ頼んだでー》


男「お、おい!」


プツッ


ツーツーツー

男「・・・・・・あの野郎」



浦風「どうしたん?なんかあったん?」


男「あーいや。実家の友達が、盆に集まろうってさ」


男「んでその時に、オレが卒業した中学校の壁画を塗り直そうって」


浦風「壁画!すごいねえ、そんなのあるんじゃ!」


男「・・・もう15年も前の話だよ。海の近くで華のない中学校だったからさ、せめて色鮮やかにしようって、卒業前にクラスのみんなで描いたんだ」


浦風「うわあ、楽しそうじゃねえ~。提督さんにも若い頃があったんじゃねえ~」


男「いやそらそーだろ」


浦風「うちらはそういうの、ないけえね」


男「あっ」


男「いや、すまん」


浦風「いやいや、気にせんでええんよ。そういうモノなんじゃけ」


男「・・・・・・」


浦風「ねえ、提督さん!」


男「ん?」


浦風「うちもその壁画、見に行きたい!」


男「え、ええ?」


男「そんなの・・・無理に決まってるだろ」


浦風「ええ?なんでえ。盆は休みなんじゃろ?」


男「いや、休みだけどさ」


浦風「じゃあええじゃん。一緒に行こーやあ。うちも呉久しぶりに行きたいし」


男「・・・でも・・・」


浦風「なんなんねえ。しゃんとせんねえ。せっかく友達が誘ってくれとんじゃけえ、行ってあげんさいやあ」


男「・・・・・・」


浦風「何を迷うとるん?みんなに会うのが怖いん?」


男「そ、そんなんじゃないけど・・・」


浦風「じゃあ決まりじゃ」


男「・・・・・・」


浦風「うちと提督さんは、盆に一緒に呉に帰る!ええね?」


男「・・・まあ・・・」


男「それまで浦風が、ゲームに引き返されなきゃいいけどな」


浦風「うぐっ、た、確かにその通りじゃね。あはは」


浦風「ま、大丈夫じゃろ。多分」


男「だといいけどね」






・・・・・・んで







~東京駅~


浦風「うおおおーーーっ!!これが新幹線ってやつかいねえ!?」


男「お、おう」


浦風「すごいねえ、でっかいねえ!なんや可愛らしい顔しとるけど、ぶち早いんじゃろ?これ」


男「あー、うん。めっちゃ早い」


浦風「やばいわあ。提督さん、はよ乗ろ乗ろ!」


男「・・・おう」



※全然帰りませんでした



男(あれから2週間・・・浦風はゲームに帰る気配どころか、ずっとオレの家で家事してくれてた)


男(色々と試してみたけど結局どれも受け付けず、どうやら本当に彼女はこちらの世界の住人になったようだ)


男(青髪で目立つ容姿をしているのに、不思議と周りの人は彼女に注目しない。まるで他の人には見えていないように)


男(まさか、幻?いやでも、オレ自身は彼女に触れられるし、彼女もオレ自身に触れることができる。一体なんなんだろう。これは)


男(とりあえず約束したこともあるし、オレは浦風とともに、盆に実家へ帰省することとなった)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月01日 (火) 01:34:01   ID: 3DDXkKqu

いいねー。痺れるねー!

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