美波・アーニャ「Even dream on behalf of memories」 (109)

モバマスSSです

・台本形式

・アニメ設定

・若干百合っぽい(キスなどの直接的な描写は無し)

・ラブライカ尊い

最後まで書けているので、ゆっくり投下していきます。ここに投下するのは初めてなんで、何かおかしかったらすみません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435883941




~とあるステージ~

美波「ありがとうございましたー!」

アーニャ「スパシーバ、ありがとうございまーす」

ワアアアア



武内P「お疲れ様でした」

二人「お疲れ様です」

武内P「今日の仕事は以上になりますが、一度、プロジェクトルームに戻ります。車を用意しますので、待っていて下さい」

美波「はい」

アーニャ「ダー」

武内P「戻った後、新田さんには、新しい仕事について、お話したい事があるのですが……」

美波「えっ……? でしたら、車の中ででもーー」

武内P「いえ、それが、その……」クビサワル

二人「……?」



~346プロダクション ロビー~

未央「あっ、みなみん、アーニャちゃん、おつかれー!」タッタッタッ

卯月「お疲れ様です!」

美波「……あっ、みんな。うん、お疲れ様……」

凛「……? なんか、元気ないね。どうかしたの?」

美波「…………」

アーニャ「んと、お仕事、入りました」

未央「……の、割に、浮かない顔だね?」

美波「……私だけなの」

卯月「え……?」キョトン

美波「ソロのお仕事、だって……」




~346プロダクション ロビー~

未央「あっ、みなみん、アーニャちゃん、おつかれー!」タッタッタッ

卯月「お疲れ様です!」

美波「……あっ、みんな。うん、お疲れ様……」

凛「……? なんか、元気ないね。どうかしたの?」

美波「…………」

アーニャ「んと、お仕事、入りました」

未央「……の、割に、浮かない顔だね?」

美波「……私だけなの」

卯月「え……?」キョトン

美波「ソロのお仕事、だって……」


~シンデレラプロジェクトルーム~

みりあ「“ソロ”って、どういうこと?」

みく「要するに、美波ちゃん一人だけでお仕事するってことにゃ」

みりあ「えー! 美波ちゃん、ラブライカやめちゃうのー!?」

みく「そういうことじゃないにゃ!」

きらり「たとえばぁ、ドラマや映画のお仕事だにぃ♪」

蘭子「ふむ、魂の寄り代となる器か(役者さんですかー)」

みりあ「あっ、そっかぁ……。女優さんは一人じゃないと出来ないよね」

卯月「でも、今別々になって、大丈夫なんでしょうか? 確か、またラブライカでステージのお仕事ありましたよね?」

凛「どうするんだろう、美波……」

みく「それは……」チラッ

みく「今、行われている話し合いの結果次第にゃ」


~武内Pのオフィス~

武内P「以前、テレビに出演した時の映像を見たディレクターが、企画中の撮影で新田さんを使ってみたい、と」

美波「私だけ、ですか」

アーニャ「……」

武内P「ユニットとして活動していますので、こちらとしても、できればアナスタシアさんとも一緒にして頂きたかったのですが……」クビサワル

武内P「こちらが資料です」

美波「……なるほど、コンセプトがハッキリしている以上、単独が望ましい。そうですね?」

武内P「……はい。ですが、二週間後にステージもありますので、ユニットでの活動に支障が無いようにするとは言っていました」

武内P「“問題が出そうなら、それも仕方ない。お試しのつもりでやってみて欲しい”との事です」

美波「…………」

武内P「どうしますか? 元々、ステージに集中して頂く為に、別の仕事はありません。断っても、問題はありませんが……」

美波「…………私は……」


アーニャ「受けてください、ミナミ」

武内P「!?」

美波「アーニャちゃん!?」

アーニャ「んー、ワタシ、ホントはまだ、ちゃんと分かってないと、思います」

アーニャ「でも、ミナミが呼ばれたのって、とてもすごいと思います」

アーニャ「だったら、ミナミに頑張って欲しいです。そしたら、もっとすごいアイドルになります」

アーニャ「だから、プロデューサーもこのお話をした。あー、合って、ましたか?」

武内P「……その通りです」

美波「でも、アーニャちゃんは……」

アーニャ「ワタシは、大丈夫、です。ミナミみたいになれるように、たくさん、レッスンします」

アーニャ「それに、ミナミ。“約束”ですよ」

美波「あっ……」

武内P「……?」

アーニャ「だから、お仕事、してください」

美波「アーニャちゃん……」

美波「………………そうね」

美波「それが、アイドルとしてのステップアップになるなら――」

美波「私、やります!」


~シンデレラプロジェクトルーム~

ガチャっ

武内P「!?」

未央「うわっ!?」

美波「みんな!? どうしたの、一体」

未央「エヘヘ……。イヤー、やっぱり気になっちゃって……」

凛「美波、ソロの仕事、どうするの?」

美波「うん……。アーニャちゃんやプロデューサーさんと話し合ったけど、受けてみることにする」

凛「……そう」

みりあ「ライブはどうするの?」

アーニャ「美波がお仕事のあいだは、ワタシ、レッスン頑張ります」

卯月「えっ、一人でやるんですか?」

美波「ずっと、別々というわけでもないから……。ちゃんと合わせる時間も作れるの。ソロの仕事も、融通を利かせてくれるみたいだから」

きらり「う~ん、でもぉ、やっぱり大変じゃないかなぁ?」

みりあ「あっ、だったら、フェスの時みたいに、蘭子ちゃんと一緒にやればいいんじゃないかな?」

蘭子「うぇっ!?」

武内P「それも考えたのですが、神崎さんは、ソロユニットということもあって、スケジュールの変更が難しいんです。新田さんの穴を埋められるかというと……」クビヲカク

みりあ「そっかぁ……」

蘭子「うう……」シュン

一同「うーん……」


未央「……じゃあ、さ。みんなでサポートしようよ」

アーニャ「?」

未央「らんらんだけじゃなくて、みんなでさ。一緒にレッスンしたり、差し入れ作ったりして、二人の事サポートしようよ!」

美波「そんな、みんなだって忙しいのに……」

凛「いいんじゃないかな。都合の合うメンバーで、レッスンや動きの確認するだけでも、結構違うと思うよ」

みく「もしかしたら、自分達のユニットにはない、いい所も見つかるかもしれないにゃ!」

莉嘉「なんか、楽しそうー!」

卯月「プロデューサーさんは、どう思いますか?」

武内P「そうですね……。確かに、一人だけでレッスンを続けるよりも、いいと思います。スケジュールを合わせることも、十分出来るはずです」

武内P「もちろん、お二人が良ければ、ですが……」

アーニャ「みなさん、本当に、いいんですか?」

未央「もちろん!」

卯月「はい! みんなで頑張りましょう!」

アーニャ「スパシーバ! ありがとう、ございます!」

未央「よーし! みんなでラブライカの応援、やるぞぉ~!」

一同「おー!」


凛「…………ふふ」チラ

凛「……?」

美波「………………」

凛(美波……?)


~数時間後 武内Pのオフィス~

コンコン

武内P「どうぞ」

凛「ちょっと、いい?」

武内P「何でしょうか?」

凛「その……。美波の事、どう思う?」

武内P「と、言いますと?」

凛「私の気のせいならいいんだけど……なんか、美波の様子が変な気がして」

武内P「……お気づき、でしたか」

凛「あっ、プロデューサーも気づいていたの?」

武内P「はい。今回の話をした辺りから、どこか上の空のようにも……」

凛「……大丈夫なの?」

武内P「……恐らく、初めて一人で仕事をするので、不安があるのだと思います。仕事自体は、負担がかからないとは思うのですが……」

凛「……美波の事、ちゃんと見ててあげて。フェスの時みたいに倒れさせちゃ、ダメだよ?」

武内P「もちろんです。こちらからも、アナスタシアさんの事、お願いします」

凛「うん」


~翌日 346プロダクション 入り口~

武内P「では、夕方には戻りますので。戻る際には、アナスタシアさんに連絡を入れます」

アーニャ「ハイ。ミナミ、頑張ってください」

美波「……うん。アーニャちゃんも、怪我しないように気をつけてね」

アーニャ「はい!」

バタン、ブーン……

未央「よーし、じゃあ、私達もやろっか!」

一同「うん!」


~レッスンルーム~

アーニャ「……フッ!」

凛「……ふぅ-。どうだった?」

アーニャ「はい、どれくらい動けるか、分かった気がします。ありがとう、リン」

みりあ「でも、アーニャちゃん、なんかぎこちない感じしてたよ?」

未央「うーん、らんらんがいないし、みなみんに一番近いのは、しぶりんだと思ったんだけどなー」

卯月「やっぱり、慣れてないと難しいんでしょうか……」

凛「まあ、アーニャの動きを確認出来ただけでも、良しとしようよ。無理に合わせようとして、変な動きになっても困るし」


莉嘉「ねえねぇ、次はアタシにやらせてー!」

みりあ「わたしもやりたーい!」

きらり「二人ともぉ、その前に、ちょっと休憩した方がいいと思うにぃ☆」

未央「じゃあ、なんか飲み物買ってこようか?」

アーニャ「あー、だったら、ワタシもいっしょに行きます」

卯月「ええ? いいですよ、アーニャちゃん、今終わったばかりなのに」

アーニャ「大丈夫、です。それに、運動の後も、少し動いた方がいいと、ミナミに教えてもらいました」

未央「それなら、一緒に行こっか」

アーニャ「はい」

凛「私も、少しダウンやっておこうかな……。卯月、手伝ってくれる?」

卯月「あっ、はい!」


~自動販売機~

ガコン!

未央「うん、これで全員分だね」

アーニャ「あっ、まだ一本足りないですよ?」

未央「えっ? 私達と、凸レーションと、アーニャ……。7本あるよ?」

アーニャ「……? ミナミのは……」

未央「えっ?」

アーニャ「………………。…………あっ」

未央「……ぷっ! も、もしかして、みなみんの分も買おうとしたの?」

アーニャ「あー、恥ずかしい、です……」

未央「今はいないよー。ふふっ、ふふふ……!」

アーニャ「うー……。ミオ、あまり、笑わないでください……」

未央「ははっ、ごめん、ごめん。アーニャって、本当にみなみんの事、好きなんだなと思ってね」


アーニャ「あー、そう、思います、か?」

未央「うん。私達も仲良しだとは思うけど、二人には負けちゃうかも! なんか、仲の良い姉妹みたい!」

アーニャ「……そう言ってもらえると、嬉しい、です。ワタシ、ミナミのこと、大好きです」

未央「お、おお……。そんなにストレートに言われると、なんか私まで照れちゃうなぁ……」

アーニャ「アイドルやることになって、ワタシ、不安でした。でも、ミナミと一緒だったから、アイドル頑張れました」

アーニャ「だから、今度はワタシがミナミの為に頑張りたいです。ミナミと一緒に、すごいアイドルに、なれるように」

未央「………………っ」

アーニャ「それにーー。……? ミオ、どうか、しました?」

未央「アーニャっ!!」ガシッ

アーニャ「は、はい?」

未央「アーニャの気持ち、ものすごく伝わったよ! 私、感動した!」

アーニャ「ミオ……」

未央「頑張ろうね、アーニャ! 今度のステージ、成功出来るように、私達も頑張る!」

アーニャ「あっ……。はい!ありがとうございます」


~撮影スタジオ~

美波「新田美波です。よろしくお願いします!」

ディレクター(以下D)「こっちこそよろしく。無理言ってすまないねぇ」

美波「いえ、ご指名頂いて、光栄です」

武内P「打ち合わせをしてきますので、準備をお願いします。何かあったら、呼んで下さい」

美波「はい、わかりました」



~控え室~

美波「………………」

美波(すごく、緊張しているのが、自分でも分かる)

美波(………………)

スッ……

美波「あっ……」

美波(そうだ……。今日は、私、一人だけ。アーニャちゃんはいないんだ)

美波(分かっているつもり、だったけどな)

美波(……よし!)パンッ

美波(プロデューサーさんもついてくれる。アーニャちゃんも頑張っているんだから、しっかりしないと!)


~撮影スタジオ 撮影ブース~

カメラマン「はーい、目線こっちにくださーい」

カシャッ!

カメラマン「うーん、もうちょっと笑顔見せてー!」

美波「……っ」

カシャッ!

カメラマン「……うーん」



D「ちょっと固いんだよねー。やっぱり、慣れてないからかな? 一人の仕事、初めてなんだよね?」

武内P「はい……」

D「まあ、まだ撮影始まったばかりだし、徐々に慣れてもらおうか。悪いけど、別の撮影あるから、今日はコレまでで」

武内P「……分かりました。本日はありがとうございます」

D「こっちもありがとうね。ライブの練習も頑張ってって、彼女に伝えといて」

武内P「はい」

D「……あー、それと」

武内P「?」

D「アナスタシアちゃんと一緒に、サインを貰えないか、頼んでおいてくれないかな? ……息子、そう、息子がファンなんだよ」

武内P「………………」クビサワル


~数時間後 346プロダクション レッスンルーム~

ガチャッ

美波「遅れてごめんなさい!」

アーニャ「……あっ、ミナミっ」

蘭子「闇に呑まれよ!(お疲れ様です!)」

かな子「お疲れ様です!」

美波「すぐ、着替えてくるから、待っててね」

アーニャ「……ミナミ。大丈夫、ですか?」

美波「えっ、何が?」

杏「いや、美波ちゃん今戻ってきたばかりじゃん……」

かな子「休まなくて大丈夫ですか?」

美波「ふふっ、ありがとう。でも大丈夫よ。車の中で休んだから」

アーニャ「でも……」

美波「アーニャちゃんも頑張っているのに、私だけ休んでなんていられないよ」

杏「……いやぁ、実は杏達もそろそろ休憩にしようかって話していたんだよ」

美波「えっ?」

杏「ちょっと根を詰めすぎだと思っていたし、ねぇ?」チラッ

智絵里「あっ……。そ、そうなんですっ」

かな子「お菓子もありますから、食べませんか?」

美波「みんな……。ありがとう、それじゃ、お言葉に甘えようかな」


アーニャ「あー、だったらワタシ、お手洗いに行きます」

バタン

美波「…………。ごめんなさい、気を遣わせちゃったね」

杏「あー……。まあ、休みたかったのは本当だし、気にしなくていいよ」

美波「……うん。蘭子ちゃんもありがとう。時間少ないのに、手伝ってくれて」

蘭子「ふふっ……。この我が敬愛する忠犬を想えば,この程度,造作も無い事よ(ラブライカのお二人の為だったら、このくらいへっちゃらですよ!)」

杏「蘭子ちゃんはバッチリだったからねー。杏達は必要なかったよ……」

智絵里「で、でも、蘭子ちゃんが来るまでは、私達だけだったから……」

かな子「ちょっと、辛かったよね……」

美波「………………。あの、レッスンってどれくらいやっていたの?」

杏「杏達が変わってからは、ずっとじゃない? それまでに、ちょいちょい休憩は取っていたけど」

美波「ええっ!?」


かな子「アーニャちゃん、やっているうちにどんどんテンション上がっちゃたみたいで……」

智絵里「やりすぎって言いたかったけど、アーニャちゃん、すごく真剣だったから、言いにくかったんです……」

蘭子「正に魂の宿りし舞……。この我に武者震いをさせたのだからな(鬼気迫るって感じでしたねー。私もビックリしちゃいました)」

美波「そうだったの……」

杏「ホント、美波ちゃんもアーニャちゃんもよくやるよ。ユニットでも大変なのに、一人で仕事やレッスンなんて、杏には絶対無理だな」

智絵里「でも、すごいと思う……。二人とも人気なのに、もっと上を目指して頑張れるんだから」

智絵里「やっぱり、二人がお互いを信頼しているから、なのかな?」

美波「信頼?」

かな子「そうだね、アーニャちゃんも美波さんの事信じているから、レッスン頑張れるんですよ」

美波「……そうね、アーニャちゃんが頑張っているんだから、私も頑張らないと」

杏「……」

美波「先に着替えてくるね。かな子ちゃん、お菓子用意しておいてもらえない?」

かな子「あっ、はい」

期待


バタン

杏「……あの優しさ、いいところなんだか悪いところなんだか」

智絵里「えっ、杏ちゃん、何か言った?」

杏「……一人言だよ。気にしないで」


美波「1、2、3、4。で、ここで!」

アーニャ「……ふっ!」

~~♪

杏「おおー、スゴいスゴい。バッチリじゃん」パチパチ

蘭子「流石、女神と妖精。魂が通じ合っておるわ!(やっぱり、二人だと息ぴったりですね!)」

美波「ありがとう。……あ、もうこんな時間」

杏「そろそろ帰ろうか! うん、それがいい!」

かな子「あ、杏ちゃん……」

アーニャ「ふふっ。あ、ミナミ、帰りに食事、していきませんか?」

美波「えっと……ごめんね。今日は帰って明日の確認をしておきたくて……」

アーニャ「そう、ですか……」

杏「別にいいんじゃない、食事くらい? せっかく時間が取れたんだから」

美波「今日の撮影、あまり上手く出来なかったから、明日からはちゃんとしたいの。……ごめんね、アーニャちゃん」

アーニャ「いえ、ミナミには、頑張ってもらいたいです。大丈夫、です」

アーニャ「そうだ、ランコ。帰った後で、また付き合ってくれませんか?」

蘭子「へっ?」

杏「まだ、やる気なの? スゴいな……」

智絵里「さ、さすがにやり過ぎじゃ……」


アーニャ「でも、ワタシーー」

美波「そうよ、アーニャちゃん」

一同『え?』

美波「今日はほとんど休んでないんでしょう? やり過ぎて体を壊したら、元も子もないわ」

アーニャ「ミナミ?」

美波「蘭子ちゃんも仕事があるんだから、あまり付き合わせるのも良くないと思うの。だから今日は、ゆっくり休んでて、ね?」

アーニャ「……ハイ。では、先に着替えてきます」

蘭子「あっ、私も……」

バタン

智絵里「ちょっと……ビックリしました」

美波「えっ?」

かな子「美波さんにしては、はっきり言うなって思って……」

美波「そ、そんなにきつかったかしら?」

かな子「い、いえ、そんなことないと思いますけど……」


杏「……。美波ちゃんさぁ」

美波「ん? なに、杏ちゃん?」

杏「……イヤ、やっぱなんでもない」

美波「? 変なの」クス

杏「………………」

かな子「変なのと言えば、さっき未央ちゃんに聞いたんですけど、アーニャちゃん、美波さんが居ない時に、美波さんの飲み物も買おうとしたらしいですよ?」

美波「えっ……」

杏「いつもの癖で、ってヤツ?」

智絵里「ふふっ、やっぱり仲良しなんですね」

かな子「あっ、アーニャちゃんには言わないでくださいね? すごく恥ずかしがっていましたから……」

美波「う、うん……」


~ロッカールーム~

バタン

アーニャ「………………」

蘭子「あっ、あの……」

アーニャ「ん、ランコ、どうしました?」

蘭子「そのっ……大丈夫?」

アーニャ「? はい、大丈夫、ですよ?」

蘭子「……」


~数日後 撮影スタジオ~

カシャッ!

カメラマン「はい、OKでーす!」

美波「ありがとうございました」



D「うんうん、何回かやって固さは取れたね。けど、まだいい表情は出来ると思うんだ」

武内P「はい」

D「資料渡しとくから、確認よろしく。……ところで」チラ

武内P「?」

D「サインの件はどうなったかな? あー、何日かたつから、娘に急かされちゃってね。参った参った」チラッチラッ

武内P「………………」クビサワル


~移動中 車内~

美波「…………」

美波(求められている仕事は出来た、はず)

美波(でも、どうしてだろう。嬉しくないという訳ではないけど)

美波(何か、胸の中で引っかかっている)

美波(これは、一体ーー)

武内P「新田さん?」

美波「えっ? あっ、はい!」

武内P「お疲れ、でしょうか? 何度か声をかけたのですが、返事が無かったので」

美波「い、いえ、すみません。少し、ぼーっとしていたみたいです」

武内P「なら、良いのですが……」

美波「えっと、それで、なんのお話でしょうか?」

武内P「ああ、いえ、それ程大したことではありません。戻ってからでも出来る話ですので……」

美波「そう、ですか……?」

武内P「それより、仕事の方はどうですか?」

美波「あっ……」

武内P「不慣れで分からないこともあると思います。私に出来ることがあれば、おっしゃってください」

美波「……ありがとうございます」

美波「………………」




美波「アーニャちゃん」

アーニャ「ハイ、どうしました、ミナミ?」

美波「私、ソロデビューすることになったの」

アーニャ(――えっ?)

美波「だから、アーニャちゃんとはもうお仕事出来ない」

アーニャ(どうして?)

美波「これからは、一人で頑張って」

アーニャ(やめて、ミナミ、待って)

美波「それじゃあ、私、行かなくちゃ」

アーニャ(待って! ミナミ、行かないで!)

アーニャ(行かないで、お願い――)




美波「サヨナラ」



アーニャ(ミナミぃー!!)



――……ニャ……ん……

――ちゃん……!


~シンデレラプロジェクトルーム~

美波「アーニャちゃん!!」

アーニャ「ッ!?」

未央「あっ、良かった、起きた!」

アーニャ「……ワタ、シ……?」

未央「みなみんが帰って来て、アーニャを探していたら、ここで休んでいるって聞いたから……」

凛「うなされていたよ、大丈夫?」

アーニャ「……ミナミ?」

美波「アーニャちゃん……」

アーニャ「……ハイ、大丈夫、です……。ごめんなさい、行きます……」

未央「ちょ、ちょっと!?」

凛「行くってどこに!?」

アーニャ「レッスン、行かないと。トレーナーさん、待ってます」

卯月「だ、ダメですよ! アーニャちゃん、酷い顔色です!」

アーニャ「でも、ミナミが、戻ってきたから。一緒にレッスン、しないと、時間ありません」

美波「……っ!」

アーニャ「行きましょう、ミナミ?」

美波「………………」


アーニャ「……ミナミ?」

美波「アーニャちゃん、私、決めた」

アーニャ「?」

美波「ソロのお仕事、辞める……!」

アーニャ「!?」

卯月・凛・未央『ええっ!?』

凛「辞めるって……どういうこと、美波!?」

美波「言った通りよ。ソロの仕事はキャンセルしてもらって、次のライブに集中する」

凛「そうじゃなくて、なんで、いきなりそんなこと……」

未央「そうだよ! お仕事、うまく行ってないの?」

美波「そんなことない。いい調子で出来ている。ラブライカとは違う目線で仕事出来るのも、楽しい」

未央「だったら――」


美波「でも!」

未央「っ!?」

美波「こんなアーニャちゃんを放っておいて、仕事なんて出来ない!」

アーニャ「えっ――」

美波「みんなにアーニャちゃんの様子を聞いても、無理をしているとしか思えない」

美波「私は、アーニャちゃんに無理をさせてまで、仕事をしたくない!」

アーニャ「……っ!」

美波「アーニャちゃん、今日は帰って、ゆっくり休んで。でないと――」


アーニャ「……どうして……」

美波「……?」

アーニャ「どうして、ミナミはいつもそうなんですか……?」

美波「アーニャちゃん……?」

アーニャ「ミナミは、いつもそうです! 自分のことは後回しにして、人の心配ばかり! 宣材の時も、デビューしてからも、フェスの時も!」

アーニャ「今だって……! ワタシのためって言って、それじゃあ、ミナミはどうなるんですか!?」

アーニャ「ミナミ、言いました。『アイドルのステップアップになるなら』って……」

アーニャ「だから、ワタシ、背中、押しました。ミナミには、頑張って欲しいから」

アーニャ「なのに、どうして、そんなこと言うんですか……?」

美波「それ、は……」

アーニャ「ワタシのために……ワタシのせいで、ミナミが仕事出来ないなんて、そんなのダメです!」

美波「アーニャ、ちゃん」


アーニャ「ワタシ、は、ミナミの邪魔になりたくない……!」

アーニャ「だから、頑張って、ミナミの隣に立てるアイドルになりたかったのに! ミナミはわかってくれないんですか!?」

美波「っ!?」

アーニャ「一緒にアイドル、頑張りたいって思っていたの、ワタシだけですか!?」

美波「っ、違う! 違うよ、アーニャちゃん!! 私、そんなつもりじゃ――」

アーニャ「だったら!!」

美波「っ!!」

アーニャ「……なんで、仕事やめるなんて言うんですか……?」

アーニャ「なんで、一人で勝手に決めるんですか……?」




アーニャ「――なんで、ワタシのこと、信じてくれないんですか!?」



美波「――っ!?」

アーニャ「……っ……あっ……!」

ガチャッ

全員『!?』

武内P「お疲れ様です。……?」

アーニャ「……っ!」ダッ

武内P「アナスタシアさん……!?」

未央「アーニャ!」

バタンッ!

武内P「……。何が、あったんですか?」

凛「……ちゃんと、話すよ。でも、今は、美波を……」

卯月「美波さん……」




美波「…………違う…………違うの…………」



美波「そんな、つもりじゃ…………!」



~数日後 346プロダクション~

アーニャ「あっ……」

美波「お、おはよう……アーニャちゃ――」

アーニャ「……っ」スタスタ

美波「………………」


~レッスンルーム~

ベテトレ「そこまで!」

アーニャ「っ……」

美波「はあっ……はあっ……」

ベテトレ「……どうしたんだ、お前達? まるで動きが合っていないぞ!」

美波「……すみません」

ベテトレ「……はあ。お前達、今日はもう帰れ」

アーニャ「!?」

美波「そんな!? まだ、時間はあります! どうして――」

ベテトレ「言われなければ分からんか? それとも、言われたいのか? 言わせたいのか?」

美波「っ――。……いえ、すみませんでした……」

ベテトレ「……ステージは明日だ。リハーサルまでにはなんとかしておけ」

美波「……はい」


~ロッカールーム~

アーニャ「…………先、帰ります」

美波「…………うん」

アーニャ「っ……」

ガチャッ バタン

美波「………………」


~シンデレラプロジェクトルーム~

莉嘉「なんとかならないの!?」

みりあ「このままじゃ、ホントに解散しちゃうよ!」

みく「いや、なんで……」

李衣菜「あたし達に聞くの……?」

莉嘉「だって、解散してもすぐ仲直りするじゃん!」

みりあ「コツとか知ってるんじゃないの!?」

みく「いや、そんなこと言われても……」

李衣菜「……あの二人が喧嘩するなんて、考えたこともなかったし。どうすればいいかなんて、あたしたちが聞きたいよ……」

みく「Pチャンは、なんて?」

凛「少し、考えさせて欲しいって……」

卯月「私たちに、出来ることって、何もないんでしょうか……」

一同『………………』


杏「どうもしなくていいんじゃない?」

一同『えっ?』

杏「杏たちが無理に何かしようとしても、却ってこじれるだけだよ」

李衣菜「ちょっと、その言い方は冷たくない?」

みりあ「杏ちゃんは、二人がこのままでいいの!?」

杏「……良いわけないじゃん」

みりあ「えっ……」

杏「杏に言わせれば、喧嘩なんてよほどのことがない限り、両方に問題があるもんだよ」

杏「でも、原因がなんであれ、喧嘩をするのも仲直りするのも二人だからね。……だったら、杏はどうもしない」

凛「二人が仲直りするのを待つ、ってこと?」

杏「杏に出来ることなんて、それぐらいだからね。……ホント、それぐらい」

みく「杏チャン……」

杏「……ゴメン、八つ当たりだ」

みりあ「……ううん。わたしも、ごめんなさい……」


未央「……杏ちゃんの言う通りかもね」

凛「未央?」

未央「でも、友達が困っているのに、何もしないで見ているだけっていうのも、私には出来ないよ」

未央「杏ちゃんを否定する訳じゃないんだけど……ゴメン」

杏「別にいいよ? 杏は未央ちゃんじゃあないし。自分に出来ることをやればいいんだよ」

未央「エヘヘ、ありがとう……」

蘭子「……自分に、出来ること」

蘭子「……」

蘭子「あ……あのっ!」

一同『?』


~数時間後 346プロダクション 女子寮 アナスタシアの部屋~

アーニャ「………………」

アーニャ(帰って来たけど、何も、する気になれない)

アーニャ(頭の中がグチャグチャで、塗りつぶされて、何も、考えたくない)

アーニャ(せめて、寝てしまえば、何も考えずに済むのに)

アーニャ(目を閉じると、ミナミの顔が浮かぶーー)

アーニャ(あの時の、ミナミの顔が。傷ついた、ミナミの顔が)

アーニャ(ワタシが、傷つけたーー)

アーニャ「ーー!」ギュッ

アーニャ「……ミナミ……!」


コンコン

アーニャ「っ!」ビクッ

コンコン

アーニャ「……ハイ?」スタスタ

ガチャッ

アーニャ「……あっ」

未央「ヤッホー!」

卯月「こ、こんにちは……」

凛「もう、帰ったって、聞いたから」

アーニャ「どうしました? 皆さん、お揃い、ですね」

卯月「えっと、その、私たち……」

未央「たまには、アーニャともじっくり話したいなーって、思って」

アーニャ「……イズビニーチェ、ごめんなさい。今日は、その、気分が良くないので……」


蘭子「っ、待って!」

アーニャ「ランコっ?」

蘭子「……分かってる。強引だってことも、お節介だってことも。でも!」

アーニャ「……」

凛「アーニャ」

アーニャ「リン……」

凛「話しにくいことなら、話さなくてもいいよ。でも、一人で抱えなくてもいいんじゃないかな」

アーニャ「……」

凛「……それに。アーニャのこと、プロデューサーに頼まれたから」

アーニャ「……。……入って、ください」


~346プロダクション 駐車場~

美波「……」

美波(もう、行かないといけない時間なのに、プロデューサーさん、遅いな……)

武内P「新田さんっ」タッタッタッ

美波「あっ、プロデューサーさん」

武内P「お待たせして、申し訳ありません」

美波「いえ。それじゃあ、行きましょう」

武内P「新田さん、それなんですが」

美波「?」

武内P「先ほど、撮影スタジオから連絡がありまして。どうも、機材にトラブルが起きたらしく……」

美波「えっ……?」

武内P「ですので、本日の撮影は中止にしてもらいたいと……」

美波「そう、なんですか……」

武内P「……」

武内P「新田さん」

美波「はい?」

武内P「よろしければ、少し、お時間を頂けないでしょうか?」

美波「………………」

美波「……へっ?」


~武内Pのオフィス~

美波「…………それで、プロデューサーさん。お話というのは……?」

武内P「……これを」スッ

美波「……? 色紙、ですか?」

武内P「コマーシャルのディレクターが、その。……ご家族に頼まれたそうで」

美波「……言ってくれれば、いつでもやりましたよ?」

武内P「……。その色紙には、アナスタシアさんと二人でサインを書いて頂きたいんです」

美波「ーー」

武内P「……アナスタシアさんとは、まだ?」

美波「………………はい」

武内P「……申し訳ありません」

美波「どうして、プロデューサーさんが謝るんですか?」

武内P「今回の仕事、やはり受けるべきではありませんでした。せめて、ステージイベントが終わるまでは待つべきだったと」


美波「……いいえ。それは、関係ありません」

武内P「……新田さん」

美波「私が、悪いんです。私が、アーニャちゃんを裏切ったから」

武内P「……」

美波「私は、私はただ、アーニャちゃんが寂しがっているんじゃないかって、思って」

美波「でも、初めて見たんです。アーニャちゃんがあんなに怒ったところ」

美波「“信じてくれなかった”って言われて。私、何も言えませんでした」

美波「今だって、そうです。アーニャちゃんに、何か言わないといけないって、頭の中では分かっているのに、何を言えばいいのか、どんな顔で話せばいいのか、分からない……」

美波「もう、どうしたらいいのかさえ……!」

武内P「………………」

武内P「ーー新田さん」

武内P「少し、私の話を聞いてもらっても、よろしいでしょうか?」


~女子寮 アーニャの部屋~

アーニャ「夢を、見ました」

アーニャ「ミナミが、ワタシから離れて、遠くへ行ってしまうんです」

アーニャ「ワタシは、行かないで、と手を伸ばしますけど、届かなくて」

アーニャ「最後に、ミナミに“サヨナラ”と言われて、目が覚めました」

卯月「そんな、夢を……」

アーニャ「ワタシは、ミナミと一緒にいたかった。……いいえ、見捨てられたくなかった」

凛「見捨てるって……。美波はそんなーー」

アーニャ「分かってます! でも、ワタシ、ずっと、ずっと、不安でした」

アーニャ「ワタシは本当にアイドル出来ているのか、ミナミの迷惑になっていないか」

アーニャ「いつか、ミナミに、必要にされなくなるんじゃないかって」

蘭子「レッスンをあんなに頑張っていたのも、それで?」

アーニャ「……ハイ」


アーニャ「……ミナミにソロのお仕事来た時、本当は受けてほしくなんてなかったんです」

未央「えっ……」

アーニャ「一緒にいて欲しかった。ワタシと一緒じゃなきゃイヤだって、言ってほしかった」

卯月「でも、アーニャちゃん……」

アーニャ「……ハイ、言えませんでした。ミナミを困らせたくなかったから」

アーニャ「それに、約束していたんです。『やりたいことが出来たら、背中を押そう』って」

アーニャ「少し、違っていましたが、ミナミに頑張ってほしくて、受けてくださいって言ったんです」

未央「そう、だったんだ……」


アーニャ「……」

アーニャ「なのに、ミナミは、分かって、くれなかった……」

未央「っ!」

アーニャ「一緒にいたいです。でも、ミナミがワタシのために我慢したら、ミナミは先に進めません……」

アーニャ「ミナミは、ワタシの目標でもあります。だから、それじゃダメなんです……」

アーニャ「ワタシが、ミナミのいる場所まで行かなきゃいけないから、なのに……!」

凛「……それで、あんなことを?」

アーニャ「…………」

未央「そっか……。……うん、そっかぁ……」

未央「………………」

卯月「……未央ちゃん?」


未央「アーニャ、ちょっと、こっち向いて」

アーニャ「えっ?」

未央「ていっ」

ポカッ!

アーニャ「ひゃうっ!?」

蘭子「……チョップ?」

卯月「み、未央ちゃんっ!?」

凛「何やってんの!?」

未央「……ダメだよ、アーニャ」

アーニャ「えっ……」

未央「それは、甘えているだけだよ……」


~武内Pのオフィス~

武内P「初ライブの時の、本田さんの件を、覚えていますか?」

美波「……はい」

武内P「……私が至らなかったことで、本田さんは、アイドルを辞めると言うまで追い詰められました」

武内P「そして、渋谷さんも、私を信じることが出来ず、アイドルを辞めるところでした」

武内P「情けない話ですが、私があのような事態を招いたのは、あれが初めてではありません」

美波「えっ……」

武内P「……私はあなた方のプロデューサーになる前に、アイドルを追い詰めて、辞めさせてしまったことがあります」

武内P「本田さんと渋谷さんは、私を信じる気になって貰えて、戻って来ましたが、……以前の時は……」

美波「それって……」

美波(前に、今西部長が話していた……?)

武内P「何か?」

美波「い、いえ。……続けて下さい」


武内P「……本田さん達の件以来、考えていました。ーー向き合うとは、どういう事なのか、と」

武内P「言い訳にしかなりませんが、私は、自分なりに、彼女達の事を大切にしていたつもりでした」

武内P「彼女達がステージで輝けるように、夢を掴めるように。それが、彼女達の為に自分が出来る事だと思って」

武内P「ですが、結局、彼女達は、舞台から去ってしまいました」

武内P「……シンデレラプロジェクトを担当する事になった時は、以前のような事を繰り返さないように、私は皆さんへの接触は最低限のものにしようと決めました」

武内P「レッスンを受けさせ、曲、衣装、そしてステージを用意する。自分がすべきはそれだけなのだと」

武内P「ですが、それも間違いでした」

武内P「……私は結局、逃げていただけだったんです」

武内P「あなた達と向き合う事から。彼女達がどうして欲しかったのかを知る事から。何より、自分が傷つく事を恐れていただけだと認める事から」

美波「プロデューサーさん……」


武内P「そうして考えて、思ったんです。ーー大切にする事と、大切に想う事は、似ているようで違う事なのではないか、と」

美波「………………」

武内P「新田さん、あなたは、アナスタシアさんを大切にしています。彼女の事を気遣い、周囲に馴染めるように、怪我や体調不良を起こさないように助けていました」

武内P「アナスタシアさんは、新田さんを大切に想っています。あなたの為に何が出来るか、何をすれば良いかを考えて動いていた」

武内P「だからこそ、アナスタシアさんはあなたに怒りをぶつけてしまったのではないでしょうか?」

美波「!」

武内P「アナスタシアさんはーーきっと、あなたと、対等な関係になりたかったのでしょう」

美波「対等ーー」

武内P「はい。あなたに支えてもらうだけではなく、あなたを支える事の出来る存在に」

武内P「もちろん、新田さんがアナスタシアさんを想っていない、と言う事ではありません」

武内P「しかし、今回は、大切にしようとする余り、それがアナスタシアさんの怒りに触れてしまった……。私は、そう考えています」

美波「………………」


武内P「新田さん。私は、今のあなたの気持ちが、よく分かります。この話をしたのも、あなたが私と重なって見えたからです」

武内P「だからこそ、アナスタシアさんと、話をして欲しい。……これは、あなた方のプロデューサーとしてだけではなく、私個人の願いでもあります」

美波「……でも、私、何をどうすれば……。それに、アーニャちゃんは、きっと私なんて、もう……!」

武内P「……そんなことはありません、新田さん!」

美波「っ!?」

武内P「あなた達二人が、どれだけ深い絆で結ばれているか、私は見てきました。アナスタシアさんも、本当はあなたと話したいと思っているはずです!」

美波「プロデューサーさん……。でも、でも……!」

武内P「あの時の私になかったものを、今のあなたは持っています。大丈夫、あなたはまだ、間に合います!」

美波「……えっ……?」


~女子寮 アーニャの部屋~

アーニャ「……どういう、意味ですか?」

未央「…………私ね、三人兄弟の真ん中なんだ」

アーニャ「……?」

未央「上も下も男だけどさ、お姉ちゃんで妹の私には、二人の気持ち、なんとなく分かるんだ」

未央「アーニャの気持ちも、みなみんの気持ちも」

未央「だから、言わせてもらう。アーニャは、みなみんに甘えている」

アーニャ「っ! どうしてですか!? ワタシは、ミナミと一緒にいたいから、頑張って――」

未央「それだよ」

アーニャ「えっ――」

未央「アーニャの気持ち、スッゴく伝わったよ。一緒にいたいってことも、だからみなみんに怒っちゃったことも、よく分かる」

アーニャ「………………」

未央「……でも、さ。アーニャ、一番大事なこと、忘れているよ」

アーニャ「……大事な、こと?」


未央「アーニャ、さっき、こう言ったね。『ミナミは分かってくれなかった』って。でも――」

未央「その気持ちは、みなみんに伝えたの?」

アーニャ「っ……?」

未央「『一緒にいたいから、自分のことを信じて』って、ちゃんと、伝えたの?」

アーニャ「……!?」

未央「……言いづらかったのかもしれない。もし、ちゃんと言っていたんだったら、ごめん」

未央「でも、自分の気持ちをちゃんと伝えてないのに、“信じてくれなかった”なんて、言っちゃダメだよ……」

アーニャ「……っ」

未央「“お姉ちゃん”って、頼ってもらえるの、嬉しいんだ。だけど、頼ることと甘えることは違うよ……。『分かってもらえる』と思って、何も言わないのはダメだよ……!」

未央「寂しいならーー苦しいなら苦しいって、言わなきゃダメだよ……!」


アーニャ「………………」

未央「ごめん……。あたし、アーニャに酷いこと言ってる。でも――。……?」

卯月「アーニャちゃん」

アーニャ「……?」

ギュッ

アーニャ「ウヅキ……?」

卯月「大丈夫ですよ、アーニャちゃん。未央ちゃんも、ちゃんと分かっています」

未央「しまむー……」

卯月「アーニャちゃんは、頑張って、美波さんに喜んでもらいたかったんですよね」

アーニャ「……うっ……」

卯月「それで、ちょっと、不安だったのが重なって、溢れちゃっただけなんですよね」

アーニャ「ふっ……くっ……」ジワ

卯月「辛かった、ですよね。怖かったですよね。……大事な人が離れてしまうのは、イヤですよね」

アーニャ「うっ、ううっ……!」


アーニャ「わ、ワタシ……。あ、あんなこと、言うつもり、なくて……!」

卯月「うん……」

アーニャ「でも、なのに、頭、熱くなって、気がついたら、あ、あんな、ヒドイこと……!」

卯月「うん、うん……」

アーニャ「ミナミのあんな顔、見たこと、ありません、でした……! ワタシの、ワタシが、あんな……!」

蘭子「アーニャちゃん……」

卯月「……いいんですよ」

アーニャ「えっ……」

卯月「アーニャちゃんは、すごくいい子なんだから、ちょっとくらい、ワガママ言っていいと思います」

卯月「もちろん、アーニャちゃんがやったことは、あまり、良いことじゃないです」

アーニャ「……」

卯月「でも、アーニャちゃんは、今後悔しているじゃないですか。美波さんに酷いことを言ったって、反省しているじゃないですか」

卯月「だったらーー。だったら、もういいじゃないですか。自分を追い詰めて、そんな悲しい顔をしなくても、いいじゃないですか……」

アーニャ「ウヅキ……」


蘭子「……アーニャちゃん」

アーニャ「……ランコ」

蘭子「気持ちを伝えるのって、すごく難しくて……。それで、傷ついたり、悲しくさせてしまうことも、あると思う」

蘭子「でも……それで諦めたりしたら、そこで止まったりしたら、きっと何も変わらない」

アーニャ「!」

蘭子「美波さんと、話そう? 私も、二人のこと大好きだから、……このまま、終わって欲しくなんて、ないよ」

アーニャ「ランコ……!」

未央「もちろん、私たちもだよ」

凛「アーニャの素直な気持ちを、美波に伝えてあげよう?」

アーニャ「皆さん……」


~346プロダクション ロビー~

きらり「ん……」

きらり「みーなーみちゃんっ☆」

美波「……あっ、きらりちゃん。お疲れ様。今日はレッスン終わったの?」

きらり「うん! 隣、座っていいかなぁ?」

美波「もちろん、いいよ」

きらり「ありがとう☆ 美波ちゃんは、どうしたの?」

美波「……ちょっと、考え事」

きらり「……そう」

美波「………………」

きらり「美波ちゃん、お疲れ様かにぃ?」

美波「えっ……?」

きらり「きらりねぇ、美波ちゃんのこと、スゴいと思っているんだぁ。レッスン頑張って、お仕事頑張って、みんなのリーダーも頑張って。……疲れちゃうよね」

美波「そんなこと、ないよ」

きらり「……でもね、だから、ちょおっと心配なんだぁ」

美波「?」


きらり「美波ちゃんは優しいから、やりたいことあっても我慢しているのかなぁ、とかぁ。ホントは辛いのに、無理しているんじゃないかなぁ、って」

きらり「ときどき、そんな風に考えちゃうの」

美波「きらりちゃん……」

きらり「美波ちゃんはぁ、今アイドルたのすぃ?」

美波「えっ……?」

きらり「どうせならぁ、“リーダーだから”とか、“迷惑を掛けたくないから”とかよりもぉ、まず、自分がはぴはぴできるようにした方がいいよぉ☆」

美波「……どういう、意味?」


~~~♪

きらり「あっ、ゴメンね、きらりだ。……はーい、きらりだよぉ」

きらり「今? ロビーに居るよぉ。……うん。……えー?」

きらり「うん……。りょーかいっ☆ きらりにお任せっ☆」

きらり「二人はぁ、準備をしておいてぇ。大丈夫、ちゃんと連れて行くよ。うん、バイバーイ☆」

美波「どうしたの?」

きらり「杏ちゃん、またレッスンサボってどこかに行ったんだって! だからぁ、これから、探しに行くの☆」

美波「……手伝おうか?」

きらり「ありがとー☆ でも、大丈夫♪ それにぃ……」

美波「?」

きらり「……美波ちゃん、他にしなくちゃいけないこと……ううん。したいこと、あるんじゃないかなぁっ?」

美波「ーー」

きらり「……そうだ! コレ、あげゆ☆」

美波「えっ?」

きらり「杏ちゃんにあげてるオススメの飴玉。美波ちゃんにもどーぞ☆」

美波「きらりちゃん……」

きらり「前に杏ちゃんに聞いたんだけどぉ、『大抵の問題は、飴玉一つ舐めている間に、心の中で解決出来る。後は、それを実行出来るかどうかだ』なんだってぇ。何かのアニメで言っていたらすぃよぉ☆」

美波「そ、そうなんだ……?」

きらり「……あれ? 飴玉だったかなぁ? どうだったっけ?」




武内P『あの時の私になかったものを、今のあなたは持っています』



美波「あっ……」

きらり「ん~。まあ、いっか! じゃあ、美波ちゃん、まったね~♪」スタスタ

美波「………………。……きらりちゃん!!」

きらり「……」ピタ

美波「……ありがとう!」

きらり「……どういたしまして☆」ニッコリ

タッタッタ…

美波「……まずは、私が楽しめるように、か」

美波「…………」

美波「……!」ギュッ




時計(カチッ)



~女子寮 アーニャの部屋~

~~~♪♪♪

アーニャ「!!」

凛「これ、『Memories』……?」

アーニャ「ミナミ……!」スッ

一同『!』

~~~♪♪♪

アーニャ「っ………………!」

凛「……代わりに、出ようか?」

アーニャ「………………いえ。ワタシが、出ます。…………」

ピッ

アーニャ「……はい」

美波『もしもし……アーニャちゃん?』

アーニャ「はい……」

美波『……今から、二人で、会いたい』

アーニャ「ーーーー」


美波『ダメ、かな』

アーニャ「………………。ミナミ、今、どこに居ますか?」

美波『えっ……。……。事務所に、居るよ』

アーニャ「……分かりました。じゃあ、待っていて、ください」

美波『えっ、でも……』

アーニャ「お願いします。ミナミのところに……行かせて、ください」

美波『ーー。ーー分かった。屋上に居る。待っているから、気をつけて来てね』

アーニャ「……ハイ」

ピッ

未央「……みなみん、なんて?」

アーニャ「……ランコ」

蘭子「な、なに?」

アーニャ「寮の人に、今日は遅く帰るって、伝えてもらって、いいですか?」

蘭子「えっ? ……うん!」

凛「……行くんだね? 美波に会いに」

アーニャ「はい」


~女子寮前~

卯月「……一緒に、行きましょうか?」

アーニャ「ありがとうございます。でも……一人で、行かせてください」

卯月「……はい、分かりました」

アーニャ「……行ってきます」

凛「頑張って」

未央「……アーニャ!」

アーニャ「?」クルッ

未央「明日のステージ、みんなで行くから! 楽しみにしてるから!」

アーニャ「! ……はい!」

タッタッタ……


アーニャ(ーー会いたい)

アーニャ(会いたい……!)

アーニャ(さっきまで、すごく怖かった。でも、今はーー)

アーニャ(ミナミに会いたい!)

アーニャ(声が聞きたい!)

アーニャ(ミナミとーー話がしたい!)

アーニャ「ミナミ……!」


~346プロダクション 屋上~

美波「………………」

コツ、コツ

美波「っ!」

アーニャ「……ミナミ」

美波「……待っていたよ、アーニャちゃん」

アーニャ「……ミナミ、ワタシーー」

美波「アーニャちゃん。まずは、ちょっと落ち着こう?」

アーニャ「あっ……。……はい」

美波「そうだ。飴、舐める? さっきもらったんだけど」

アーニャ「………………」

美波「……アーニャちゃん?」

アーニャ「……ミナミは、ホントに優しいですね」

美波「……」


アーニャ「いつも、他の皆さんや、ワタシのために頑張っていましたね」

美波「………………」

アーニャ「夏フェスの時も、ミナミ、リーダーとても頑張ってました。……頑張りすぎて、倒れました」

美波「……うん」

アーニャ「あの時、ワタシ、とてもくやしくて、悲しくて、イヤでした」

アーニャ「ミナミが辛いの気がつかなくて、くやしかった。一緒にステージ立てなくて、悲しかった。なにもできないワタシが、とてもイヤでした……!」

美波「うん……」

アーニャ「フェスが終わった後、決めました。もっと、強くなろうって。ミナミを支えることができるくらいに、ミナミが一人で頑張らなくていいように」

アーニャ「そうすれば、もうミナミが倒れないって……。そう決めたのに……!」

美波「アーニャちゃん……」

アーニャ「ミナミは色々出来るのに、ワタシは、ミナミに追いついていない……。一度そう思ったら少しずつ、怖くなりました」

アーニャ「ワタシ、ミナミの邪魔になっているんじゃないかって。もしかして、ワタシはミナミに必要ないんじゃないかって」

美波「っ……!?」


アーニャ「ホントは、ソロの仕事もしてほしくなかったです。ミナミが、遠くに行ってしまうようで……」

アーニャ「ずっと、怖かったんです! でも、ミナミにこんなこと言ったら、きっとミナミは先に進めなくなる……」

アーニャ「勘違いなら、それでもいいですっ。ミナミは優しいから、きっとワタシの為に、手を出してくれるって」

アーニャ「でも、ワタシは、アイドルのミナミも好きだから、ワタシのせいで止まるなんてダメでした」

アーニャ「だけど、不安がどんどん大きくなってっ。ミナミに“サヨナラ”って言われる夢まで見て! ずっと、ずっと怖かった!」

美波「……もしかして、あの時も?」

アーニャ「……」コクン

アーニャ「ミナミのそばにいたくて、でも、ミナミに止まって欲しくなくて、もう、ワタシ、わからなくなって」

アーニャ「気がついたら、あんな、ヒドいことを……!」

美波「そう、だったの……」

アーニャ「……ごめんなさい、ミナミ……」

アーニャ「ミナミは、ワタシのこと考えて言ってくれたのに、ワタシ、ミナミのこと何も考えなくて」

アーニャ「“ミナミだったら、ワタシのこと、分かってくれる”って、勝手に思い込んで……!」

アーニャ「ワタシが、ミナミのこと信じてませんでした……!」

美波「……」

アーニャ「ごめんなさい……ごめんなさい……!」

美波「……アーニャちゃん。…………」


美波「……謝らないといけないのは、私もだよ」

アーニャ「……えっ……」

美波「アーニャちゃんがどういう気持ちで頑張っているのか。そんなこと考えもしないで、ただ、アーニャちゃんは寂しいんだろうな、とか、倒れないようにしなきゃって。そんな、自分だけの考えだったの」

美波「アーニャちゃんの言った通り。私、アーニャちゃんを信じてなかった」

アーニャ「っ!」

美波「私は年上で、お姉さん。だから、アーニャちゃんがちゃんとアイドル出来るように、見てなきゃいけないって思っていた。支えなくちゃダメなんだって思っていたの」

美波「でも、私はアーニャちゃんの気持ちを考えていなかった。アーニャちゃんは、私を支えてくれようと、ずっと頑張ってくれていのに。私は、それに気づかなかった。気づこうともしなかった」

美波「ごめんなさい……」

アーニャ「……」

美波「一人で仕事をしている時、ずっと何か胸に引っかかっているみたいだった。あれは、不安だったんだ」

アーニャ「不安、ですか?」

美波「うん。なんて言えばいいのかな……。頼ってくれる人がいなくて、自分がどうすればいいのか、逆に分からなくなったの」

美波「二人で仕事をする時は、アーニャちゃんが分からないことがあれば頼って来て、上手くいけば二人で喜んで」


美波「でも、一人で仕事をやってみると、自分のことを考えるのがかえって難しくて。……手を繋ごうとしていた」

アーニャ「えっ?」

美波「アーニャちゃんはいないって、分かっていたのにね。気がついたら、手を伸ばしていたの」

美波「その時は、いつもの癖が出たくらいにしか思わなかったけど、本当は違った

美波「きっと、私は、一人で仕事をするのが不安だった。隣に誰もいなくて、寂しかった」

美波「寂しかったのは……甘えていたのは、私の方だったんだ」

美波「プロデューサーさんと話してね、やっと分かったの」

美波「デビューの時も、合宿の時も、アーニャちゃんに不安を半分こしてもらえたから、今の私がいるんだって」

美波「支えられていたのは、私の方だったんだって、そんなことも、分かってなかったの」

美波「なのに、私は、アーニャちゃんの気持ちを考えないで、勝手に仕事まで辞めようとして……。お姉さんとしても、アイドルとしても失格……」

アーニャ「ミナミ……」


美波「……でもね」

アーニャ「?」

美波「考えたの。私はどうしたいのか。どうすれば、アイドル楽しめるのか」

美波「アーニャちゃんが来るまでに、何度も何度も考えてーー答えは、同じだった」



美波「ーー私、アーニャちゃんと一緒にいたい。一緒にアイドル、続けたい!」



アーニャ「……!」


美波「だけど今度は、私も強くなりたい。甘えっぱなしじゃなくて、お互いに支えあえる関係になりたい」

美波「アーニャちゃんが辛くなったら、力になれる私になりたい」

美波「そうすれば、あの時見た景色よりも、もっともっと素敵な景色が見られるって思うから」

アーニャ「………………」

美波「自分勝手なこと言っているのは、分かっているつもり……! だけどーー」

アーニャ「……どうして……?」

美波「……?」

アーニャ「あんなにヒドいこと言ったのに……。ワタシ、ミナミを傷つけたのに……。ワタシ、逃げ出したのに……」

アーニャ「どうして、ミナミはそんなことを言ってくれるんですか……?」

美波「………………」

美波「……そんなの簡単だよ」

アーニャ「えっ……?」




美波「アーニャちゃんのことが、大好きだからーー」


あら^~


アーニャ「…………!!」

美波「私はアーニャちゃんのことも、自分のことも分かってなかった。自分はしっかりしていないといけないって思って、ずっと目をそらしていた」

美波「でも、今は分かる。私と一緒にユニットを組んで、私を支えてくれていたアーニャちゃんは、私にとってかけがえのない存在なんだって」

美波「あの時、アーニャちゃんが手を繋いでくれなかったら、あの素敵な景色は見ることができなかった」

美波「アーニャちゃんが手を繋いでくれたから、私はアイドルを続けたいって、思えたの」

アーニャ「ミナ、ミ……」



美波「ありがとう。一緒のユニットになってくれて」



美波「ありがとう。今まで私を、支えてくれて」





美波「ありがとう……手を繋いでくれて」



アーニャ「ぁっ……」

美波「アーニャちゃんがいたから、私はアイドルを楽しめるんだって、分かったから」

アーニャ「ミナ、ミ……!!」

美波「……アーニャちゃん、泣いているの……?」

アーニャ「……ワタシ、変、です。ミナミに、一緒にいたいって、大好きって言ってもらえて、嬉しいのに。嬉しくて胸が痛いくらいなのに……!」

アーニャ「涙が、止まりません……!!」

アーニャ「いいんですか……ミナミ?」

美波「何が……?」

アーニャ「ワタシ、きっとこれからも、たくさんミナミに迷惑かけます」

アーニャ「もしかしたら、もっとミナミを傷つけるかもしれないです」

アーニャ「ワガママ言って、ミナミを困らせるかもしれないです」

アーニャ「それでも……いいんですか? ワタシ、ミナミのそばにいていいんですか?」

美波「……うん、もちろん。だって……私も、同じ気持ちなんだから……」

美波「私の方こそ、また迷ったり、立ち止まったりすると思う」

美波「また、アーニャちゃんに寂しい思いや辛い思いをさせるかもしれない」

美波「けど、それでも、アーニャちゃんと一緒にいたいって思うこの気持ちは、間違いなく本物だから……!」


アーニャ「……ミナミ!」

ギュウッ

アーニャ「私も、ミナミと一緒にいたい。……美波とアイドル、続けたいです!」

美波「っ……! うん、うん……! ありがとう……アーニャ……! 大好き……!!」


~翌日 ラブライカ・ステージイベント会場~

凛「仲直りは出来たみたいだけど、ステージは大丈夫なのかな……」

未央「練習の時間は、ほとんどなかったよね……」

卯月「美波さん、アーニャちゃん……」

蘭子「…………きっと、ううん。絶対、大丈夫」

凛「……蘭子」

未央「……そうだね! あの二人なら、絶対大丈夫!」


~イベント会場 舞台袖~

武内P「……それでは、お願いします」

美波・アーニャ『はい!』

アーニャ「………………」

アーニャ(最後の方、練習、ほとんど、できていない……)

アーニャ(美波だって、時間はなかった)

アーニャ(どうしよう……不安が、広がってーー)

美波「……アーニャ」

アーニャ「っ?」

スッ

美波「ルカパジャーチィ」

アーニャ「あっ……」

美波「……ふふっ」

アーニャ「……ありがとう、美波」


司会「それでは、早速ラブライカのお二方に登場して頂きましょう! 歌ってもらうのは、もちろんこの曲!」

司会「『Memories』!」


~ステージ~

美波(……分かる)

アーニャ(練習は出来ていなかったけど、)

美波(どう歌えばいいか、)

アーニャ(どう動けばいいか、)

美波(アーニャちゃんがどう動きたいか、)

アーニャ(美波がどう動いてほしいのか、)

美波・アーニャ(はっきりと分かる)

アーニャ(『Memories』は別れの、愛する人と別れた人をイメージした歌)

美波(私たちも、いつか、離ればなれになる日が来る……)

アーニャ(ーーでも)

美波(だけどーー)

アーニャ(例え夢のような日々に、別れの時が来ても)

美波(いつか思い出になる日が訪れようとも)

アーニャ(この歌のように)

美波(この人のように)

アーニャ(輝いていたい)

美波(強くありたい)

アーニャ(そしてきっと)

美波(私たちなら、そうなれる)

アーニャ(だって、そうーー)

美波(この人も、私たちもーー)

アーニャ(確かに相手のことをーー)

美波(過ごした日々のことをーー)



美波・アーニャ(愛しているのだから!)



ワアアアアアアアア……!!



~ステージ終了後 楽屋近く~

タッタッタッ……

未央「すごかった! ホントすごかったよ!」

凛「今までで、一番スゴいステージだったんじゃない!?」

卯月「わ、わたし、感動で、もうなんと言っていいかぁ……」

凛「もう、卯月、落ち着きなってっ」

未央「へへっ、そういうしぶりんも興奮してんじゃん! しょうがないけど!」

凛「も、もう、未央!」

蘭子「良かった……! 二人とも、本当に……!」

未央「……あっ、プロデューサー! みなみんたちは……」

武内P「! ………………」シーッ

四人『……?』

四人『…………』ノゾキコム

四人『……あっ』


~楽屋~

美波「すぅ……すぅ…」

アーニャ「んっ……ふぅ……」

武内P「……ずっと気を張っていましたから、安心してしまったのでしょう」

凛「このまま寝かせてあげよっか……」

武内P「はい。それがいいでしょう。私は、他のスタッフにこのことを伝えてきますので、皆さんもお静かに……」

四人『はーい……』

未央「それにしても……幸せそうな寝顔だね……」

卯月「……あっ、見てください……。二人とも、手を繋いだまま寝ています」

凛「……ホントだ」

アーニャ「んっ、美波……」

蘭子「お、起こしちゃった……?」

アーニャ「ずっと、一緒………………」

美波「……うん、一緒だよ……アーニャ…………すぅ……」

凛「……寝言で会話している」

未央「……ふふっ、全く。本当、二人には負けちゃうなあ……」


~数日後 撮影スタジオ~

美波「これ、頼まれていた物です」

D「おおー! わざわざありがとうね。コレで、その、カミさんも喜ぶよ」

武内P「………………」

美波「ふふっ、良かったですね」

D「いやいや、この前、体調が良くないから休むって聞いた時は、無理させたかなって思ったけど、その様子じゃ大丈夫そうだね」

美波「……えっ? この前って……?」

D「ホラ、ライブの前の日だよ。ああ、そうだ、ライブ見たよ! その、家族と一緒に」

美波(……プロデューサーさん、まさか……?)チラッ

武内P「っ! ………………」クビサワル

美波(……ありがとうございます)フフッ


~数日後 シンデレラプロジェクトルーム~

みりあ「うわー! 美波ちゃん、キレー!」

莉嘉「あっ、撮影のサンプル、あたしも見たーい!」



かな子「二人の仲直りのお祝いに、お菓子を作ってきましたー!」

智絵里「私たち三人で作ったんです。おいしくなかったら、ごめんなさい……」

美波「ありがとう……って、もしかして、杏ちゃんも作ったの?」

杏「んー? まあ、適当にやっただけだよ」

かな子「……ふふっ。杏ちゃん、汗だくになるくらい真剣に作ったんですよ~」

杏「ちょっ! かな子ちゃん!?」

智絵里「『私には何も出来ないから、戻って来た時の為に何かしたい』って、お菓子作りも杏ちゃんが提案してくれたんです」

美波「杏ちゃん……!」

杏「うあー! やめろー! 思い出すだけで恥ずかしいいいいっ! あんなの、杏のキャラじゃなーい!」

アーニャ「アンズ」

杏「……うっ?」

アーニャ「ありがとうございます♪」ニッコリ

杏「………………」

杏「ま、まあ、杏が誰かの為に何かするなんてレアなんだから、しっかり味わって食べてね!」

アーニャ「ハイ♪」

美波「ありがとう!」


みく「じゃあ、ソロのお仕事は続けるの?」

美波「うん。二人で一緒に頑張るためにも、自分のこともちゃんとしようって、アーニャちゃんと話して決めたの」

アーニャ「プロデューサーも、いいと言ってくれました」

美波「みんなも、ごめんなさい。私たちのことなのに、心配かけちゃって」

みく「いいにゃ、いいにゃ。仲が良くても、ケンカすることだってあるにゃ」

李衣菜「そうそう、あたしたちなんてしょっちゅうしてるし。まあ、大体みくが悪いんだけど」

みく「はあっ!? 悪いのは李衣菜ちゃんの方でしょ!?」

李衣菜「んな、なに言ってんの!? 自分が悪いってのもわかんないわけ!?」

みく「こっちのセリフにゃ! 大体、李衣菜ちゃんは――」


イチイチウルサイヨ!
ヤッテランナイニャ!
アスタリスク!
カイサンニャ!

アーニャ「……ミクとリーナは、ケンカしているのに、仲良しですね?」

美波「あ、あはは……。……ねえ、アーニャちゃん、前に今西部長が話した、プロデューサーさんの昔の話、覚えている?」

アーニャ「? ハイ」

美波「プロデューサーさんに言われたんだけど、私は昔のプロデューサーさんが持っていなかったものを持っているんだって」

アーニャ「プロデューサーが、持っていなかったもの……?」

美波「それはきっと、みんなのことーー仲間のことなんじゃないかって思うの」

アーニャ「仲間……」

美波「きっと、昔のプロデューサーさんは、誰にも相談しなかった……ううん、頼れる人がいなくて、相談できなかったんじゃないかな」

美波「未央ちゃんたちの時もそうだった。一人でなんとかしようとして、でも、ダメだったんだと思う」

美波「もしもの話だけど、プロデューサーさんに頼れる人がいたら、プロデューサーさんを助けたいと思う人がいたら、結果は変わっていたかもしれない」

美波「私たちもそう。みんなが助けてくれなかったら、きっと、私たちは……」

アーニャ「……みんなのおかげ、ですね」

美波「うん。だからね、今度は私たちで、みんなを助けたいの。……もちろん、何もないのが一番だけどね」


アーニャ「ハイ。ワタシも、そうしたいです。……ところで、美波?」

美波「なに?」

アーニャ「もう、『アーニャ』って、呼び捨てでは呼んでくれないんですか?」

美波「へっ?」

アーニャ「ワタシ、呼び捨てにしてほしいです」

美波「あっ、あれは、その、勢いで言っちゃっただけというか……。……その、ちょっと恥ずかしいというか……」

アーニャ「ダメ、ですか……?」シュン

美波「~~~! あっ、ううっ……」


美波「………………ふ、」

アーニャ「ふ?」

美波「二人だけの、時なら……いいよ」

アーニャ「……美波!」ダキッ

美波「きゃっ、もうアーニャちゃん、いきなり抱きつかないで?」

アーニャ「ふふっ、美波♪」

アーニャ「ずっと一緒、ですよ?」

美波「ーー」




美波「うん、ずっと一緒だよ、アーニャ!」



Fin.

以上です。読んでくださってありがとうございました

乙!

乙。
あなたふと

あっ、HTML化っていうのしないといけないんでしたっけ。
それと、良ければ、意見感想質問批評ございましたらお願いします。

すっごく良かったです!乙!!
お互いがお互いを凄く大切にしてるのがとても麗しかったです

尊い()
何語だよ

新田ーニャのSS少ないから嬉しい
乙でした
また新田ーニャ書いてくだしあ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年11月15日 (日) 23:21:34   ID: tdMyHEI7

尊い…

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