ほんと、誰得なの!?って感じのクロスですが、スロー更新で書いていこうと思うやすー
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『さようなら、のび太くん』
そう言ってドラえもんは未来に帰って行った。
彼が家に来てから約2年、本当に色んなことがあった。おかげさまで僕は遅刻の回数は減ったし、いや、決して無くなったわけじゃないけど…、テストで0点を取ることも無くなったし、まぁ、良い点かどうかは別として…、ジャイアンにだって1人で立ち向かえる様になった!全戦全敗だけど…
宿題は、うん、偶に忘れる。
あれ?僕あんまり成長してない?
とにかく!ドラえもんのお陰で、僕は少しはマシになった!(ヤケクソ)
6年生になった日、ドラえもんは僕にこう言った。
『のび太くん、僕はね。君が中学生になったら、未来へ帰るよ。』
……薄々分かってはいたんだ。
あのエイプリルフールの日、ドラえもんが帰って来て、僕はすっごく嬉しかったけど、それと同時に、いつかはドラえもんと、離れなければいけない日が来ると、ドラえもんから卒業しなければいけない日が来ることを、理解してしまった。
いつまでも、子供じゃいられないってことを……
ドラえもんはある道具を取り出した。
忘れろ草EX
広範囲に渡って、設定したものの記憶を消去する花粉を飛ばす道具らしい。
それで、ドラえもんは自分に関する記憶を全て消す、と言っていた。
どうやら、ドラえもんの道具について少しでも記憶を持っている者がいれば、それが巨大なパラドックス現象を起こしてしまう可能性があるようだった。
当時の僕は何を言っているのかさっぱりだった(いや、たぶん今懇切丁寧に説明されたところでさっぱりだけど)、でも、僕はそれだけはやめてくれ、と泣きながら頼んだ。
ドラえもんがここに来た理由は、僕を真っ当な人間にするためだ。
けど、そんなこと関係なく、僕はドラえもんを友達だと思っている。
友達のことを忘れるなんて、絶対に嫌だった。
そして未来の規則を調べあげ、未来の道具に関する記憶及び、ドラえもんの機能、構造に関する記憶の消去だけすれば、なんとか大丈夫ということで落ち着いた。
そして卒業式の日、みんな僕の部屋に集まった。
しずかちゃん、スネ夫、ジャイアン、出木杉、ジャイ子、パパ、ママ。
全員が引き出しに体半分出してるドラえもんと向き合っている。
『さようなら、のび太くん』
そう言って忘れろ草を振るドラえもん。
きっとドラえもんとは、もう会うことは無いのだろう。だから、別れの言葉は『さようなら』で間違ってはいない。
でもその言い方が、まるで僕たちとの関係まで終わらせてしまうようで、すごく気に食わなかった。
だから、空気中を漂う金色の花粉が僕に届く前に、僕は堪えきれなかった涙を流しながら、こう言った。
『またね。ドラえもん──』
瞬きすると、ドラえもんはいなくて、引き出しを開けてみると、中の鉛筆がコロコロと転がっただけだった──。
「──のーびくん!」
目を開けると、そこに居たのは女の子。特徴的なアホ毛に少し癖のある黒髪。小さな八重歯の覗く口元。
同じ学年の比企谷小町さんが、目一杯の笑顔で目の前にいた。
っていうか近い!
「おはよ!」
「ひ、比企谷さん!」
どうやらいつの間にか寝てたらしい、慌てて椅子を引いて距離を取り、どもりながらも言葉を返す。
「もー!小町でいいって言ってるじゃん!ポイント低いよ!」
そう言ってぷくーっと頬を膨らます。その仕草は可愛くて思わずほっぺをツンツンしたくなる衝動にかられなくはないけど、なんとか理性が頑張ってくれた。
「いや、流石にそれはちょっと……」
女子の名前呼びなんて高レベルな事、恥ずかしくてできるわけがない。小学生のころは普通にやってまたけど……
「えー!でもでも、しずかちゃんの事はたまに呼び捨てで呼ぶじゃん!」
「そ、それは……彼女とは幼なじみだから、その名残が…ですね……」
何故か敬語になる僕。いや本当、思春期というものは複雑だ。あの頃はあんなに好きな子に積極的にいってたのに、今では変な恥ずかしさから、名字呼びでなんかよそよそしくなってしまった。
当時の事を思い出して、思わず布団の中で叫びたくなる。特に、「子作りしよう」なんて言ってしまった10歳の僕、殴りたい!
鶴が子供を運んでくると信じてた無邪気な僕の馬鹿!いや、それ本当にタダの馬鹿でした。
比企谷さんは僕の言い分に納得しないように唸っていたが、突然ポンと手を叩くと、椅子を僕の隣に持ってして座り、少し下の位置から顔を覗き込む。
「……もっと、のび君と仲良くなりたいなー」
ダメ?と、潤んだ瞳で上目遣いで見つめてくる比企谷さんは妙に扇情的で、思わずゴクリと生唾を飲み込む。
こんな風にお願いをされて断れる男がいるのだろうか?いや、いない。
裏返りそうになるのを堪えながら、震える声を絞り出す。
「こ、こま──」
「随分と楽しそうな事してるわね?」
突如、静かに冷水の風呂に沈められたかのような、そんな声が聞こえた。
恐る恐るそっちへ顔を向けると、そこにはティラノサウルスとか、宇宙最強のガンマンとか、そんなものよりもっと怖い少女が、背後に冷気のようなオーラを漂わせて立っていた。
「あ、しずかちゃん!やっはろー!!」
「こんにちは小町さん。それでのび太さん、極刑と終身刑、どちらがいいか選んで?」
「捕まることは確定なの!?」
しかもそれを決定する権利が君にあるの?!
しず……源さんは軽くため息をつくと、長机の僕と反対側の席に座る。
この数年間、彼女は変わった。
天真爛漫だった性格が、どこかクールな雰囲気を纏いつつ、でもどこか、あの頃の優しさはそのままで。でも、僕への当たりは少し強くなったかも。
そして何より、見違えるほど美人になった。
子供の頃からクラスのアイドル的な存在だった彼女だが、今ではまさに学校のアイドル……下駄箱には毎日漫画のようにラブレターの山が入っているとか。
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