凛「西木野☆星空シアター!4本目!」真姫「グランドフィナーレを目指して」 (858)

真姫「西木野☆星空シアター、ついに4スレ目よ」

凛「一行目からこれだと初見さんバイバイすぎるね」

真姫「もう既に4スレも費やしているSSを最初から見始めよう、って人もそうそういないかもしれないけど…」

真姫「だけどできるだけ興味を持ってもらうために最大限魅力的に説明すると!」

真姫「謎の時空を超えるクリニックで色々な世界に行っては厄介事を起こす私、西木野真姫と星空凛」

凛「…という設定のSSがこれの前にあったんです」

真姫「そんな折、そのクリニックから時空転移の途中、足を滑らせて時空の狭間へと投げ出されてしまう私」

真姫「流れ流されたどり着いた世界ではなんと、音ノ木坂学院が既に廃校となっていた!」

真姫「そんな世界でとりあえず凛の助けを待つことにした私はその世界の西木野家へと侵入したんだけど…」

真姫「まだ学校に居てもいいはずの時間なのに、その世界の私は既に家にいて、鉢合わせしてしまったの!」

真姫「とっさの機転で難を逃れた私。なんの気なしにクローゼットに手をかけ、開いてみるとそこにあったのは…」

真姫「…ほとんど使われた形跡のない、UTX学院の制服だったのよ」

真姫「音ノ木坂が廃校になったことで、μ'sの面々は全員UTXへと入学していた世界」

真姫「けれどその世界では、私たちの世界にはない、歪みが存在していた」

真姫「アイドルになりたくないと涙する花陽、どこまでも冷静で冷徹な穂乃果に、海未に至ってはなんと…!」

真姫「そんな、もしかしたらこんな世界もあったかもしれない、新たなラブライブ!の物語」

真姫「『もしライブ! ~もしもμ'sのみんながUTX学院生だったら~』」

真姫「…って話を延々とやり続けて今第9話にさしかかろうというところなのよね」

凛「あとそれと同時進行で記憶力がすこぶる悪くなるお薬を飲まされたμ'sがなんやかんやラブライブ!優勝を目指すお話」

凛「ストーリーはほぼほぼアニメ2期をなぞっただけ!『うろライブ!2期』もやってたにゃ」

真姫「こちらは無事最終回に…って、事細かに説明してたら読む気も失せるわね、これじゃ」

凛「下にリンク貼っておくから気になったらこちらからどうぞ」

真姫「続いて読んでくれてる方はこれからもよろしくね」

真姫「それでは…、西木野☆星空シアター!おそらくこのスレが終幕になると信じて!」

凛「開幕にゃ!」




前スレ



真姫「西木野☆星空シアター!」凛「二本立てにゃ!」
真姫「西木野☆星空シアター!」凛「二本立てにゃ!」 - SSまとめ速報
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凛「西木野☆星空シアター!2本目!」真姫「お楽しみはこれからよ!」
凛「西木野☆星空シアター!2本目!」真姫「お楽しみはこれからよ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1424/14249/1424960858.html))


真姫「西木野☆星空シアター!3本目!」凛「まだまだ終わらない!!」
真姫「西木野☆星空シアター!3本目!」凛「まだまだ終わらない!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1429368032/))


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1435161328

真姫「ついにもしライブ!も9話まで来たわね…」

凛「…ついに、って言っていいのかどうかわかんないよ」

凛「人によっては『え!4スレもやってるのにまだ9話!?』ってなるにゃ」

真姫「…言えてるわね」

真姫「けど終わりは近くなってきた!…はずよ」

凛「6thライブがやってる頃にも続いてたら笑えないね」

真姫「…えー、じゃあ前回までのあらすじをちゃちゃっと紹介して、凛」

凛「ん。えーっと、前回はなんやかんやでうろ世界の真姫ちゃんがアイドル専攻側になって」

凛「引き戻すべく希ちゃんがなんやかんや頑張ってその間真姫ちゃんはなんやかんやクリニックで凛たちの世界に戻ってきて」

凛「なんやかんやあってうろ世界に戻りなんやかんやクリニック大破の希ちゃんがんばりーの真姫ちゃん心開きーの」

凛「絵里ちゃんゲスいーの希ちゃんもアイドルやりーの真姫ちゃんが抜けて真姫ちゃんが入るーのだったね」

真姫「…訳がわからないわ」

凛「8話は何度見ても面白いからそっちを読んでね!」

真姫「あらすじの役目放棄しない。まぁ、ここで長々と語るより9話に余力を注ぎ込む方がいいとは思うけれどね」

凛「まだ序盤の序盤しか出来上がってないにゃぁ…」

真姫「絶賛搾り出し中よ!」

凛「そんな未完成にも程があるもしライブ!第9話!」

凛「スタートにゃー!」

ぱしん。ぱしん。



上がって、下がって。いったり、きたり。



ぱしん。ぱしん。



一定のリズムで刻まれる、地面を叩く音。



ぱしん。ぱしん。



閉じて開いてを繰り返す、一筋の細いトビラのむこう。



土煙の幕で薄くぼやけた、誰かが見える。



ぱしん。ぱしん。



それはとっても近くのようで、とっても遠くて。



それはとっても遠くのようで、とっても近い。



むこうのあの子は、どんな顔をしているのだろう。



煙に隠れて、よく見えない。



ぱしん。ぱしん。



会いに行きたい。



よし、会いに行こう。



少しためらったけど、でもすぐに。



トビラに向かって、大きな一歩を踏み出した。

休み時間

花陽の教室


「「こ、小泉さんっ!!」」



花陽「…はい?」

女生徒A「さ、サインくださいっ!」

花陽「サイン…?なんの?」

女生徒B「決まってるじゃない!C☆cuteとしての…!」

「「キャー!」」

花陽「えっ…、私のサイン…!?それってアイドルとしてのってこと!?」

女生徒A「そうだよー!」

花陽「わ、私のサインが欲しいって…えぇぇぇっ!!?」

女生徒B「私たちだけじゃないんだよ!えっと…ほら、こんなに!」

女生徒A「小泉さんとあまり親しくない子からも頼まれちゃって。ね、お願い!」

花陽「え、え、そのぉ…!」


真姫「今、プライベートなんで」


女生徒A「あ、西木野さん…」

真姫「プライベートだから、サインだめ」

花陽「キノちゃ…じゃない、真姫ちゃん…」

真姫「…なによ」

花陽「人と話すときはちゃんとこっち向いて話そ?」

真姫「わ、分かってるわよっ!」

真姫「あ、あのね!わ、わわ…私たちは、その…アイ、ドルトハイエドモ…」

女生徒B「え?なんて?」

真姫「…///」

花陽「ひ、人見知りだから。まぁ、真姫ちゃんが言いたいこともわかったけど…」

花陽「私のサインで良ければ書けるだけ書いてみる!私も…ちょっと憧れてた節あるし」

女生徒A「いいのっ!?」

花陽「うんっ」

女生徒A・B「「やったー!」」


カキカキ…


花陽(…サイン、かぁ)

花陽(なんだか、信じられないや…)

昼休み

アイドル応援部


海未「…サイン、ですか」


ことり「ふふ、私何枚か書いちゃった!子供の頃に考えていたサイン、試したかったし!」

海未「…恥ずかしながら私も、幾度か応えてしまいました」

希「ええんやない?羨ましいわー。うちはまだお声がかからんのよ?」

花陽「ま、まぁ…希さんはつい最近入ったばかりだし」

ことり「キノちゃんは?」

花陽「き、キノちゃんは…」

真姫「…」ブスッ

花陽「アイドルでも身分は学生だから、って頑なに拒否…」

花陽「…したいみたいなんですけど、言い寄られると断れないとかで…何枚か」

花陽「しかも結構可愛らしい…」

真姫「も、もうっ!そこまで言わなくていいじゃない!」

海未「誰かと話すのがイヤでしたら背中に『サインお断り!』と書かれた張り紙などしてはどうでしょうか…」

ことり「さ、流石にそれは…」

真姫「ナイスアイデアだわ!」

ことり「いいの!?」

希「誰かと話すのをいつまでも怖がってたら人見知りは治らんよ~?」

真姫「…う、うぅ…」


真姫☆「しかしこれは、いい兆候ね」


海未「…うわぁっ!!?ま、真姫っ…!いたんですか!?」

真姫☆「いたわよずっと」

ことり「えっ…見えなかったんだけど」

真姫☆「ふふふ…うちの世界の技術担当に作らせたのよ。ジャジャーン!透明マント」ガバッ

真姫「わ…、すごい。首が浮いているみたい…」

真姫☆「なんでも金曜ナントカショーでのナントカポッターを見てて思いついたらしいわ」

花陽「思いつきで作れる品じゃないよね…」

真姫☆「これさえあれば学校から出て行く手間も省けるし、昼休みに集まって会議もできるしね」

真姫☆「これからは私がC☆cuteのプロデュースをしていくんだから」

希「…それはいいとして真姫ちゃん。いい兆候って言うんは?」

海未「サインをねだられるのがいい兆候なのですか?」

真姫☆「えぇ、なにせ…UTXがC☆cuteに傾いてきている証拠だから」

真姫☆「まぁ、まだ実情の人気はまだわからないけどね。A-RISEはファンからのふれあいを一切禁じられているから」

真姫☆「代わりにC☆cuteにその…うっぷんっていうのかしら、A-RISEに関われない分、積極的にふれあいを求めてきているんでしょう」

ことり「でもそれ、A-RISEの代替ってことは…結局はA-RISEありきってことじゃないの?」

真姫☆「ふふ…甘いわね。今やC☆cuteはA-RISEの代替になりうる、って考えるの」

真姫☆「トップスターへのサインの代わりに道端のミュージシャンで済ませて満足する人はいないでしょう?」

真姫☆「もうC☆cuteは、A-RISEと並ぶ存在にまで上り詰めた、って言っても過言ではないわ」

ことり「そ、そっか…!」

希「ま、並んだかどうかはまだわからないけど、それでも人気なのは間違いないよね」

真姫「そうよね…!このまま平穏無事にこの人気を上手いこと維持していければ…!」

真姫☆「何言ってるのよ!」

真姫「えっ…」

真姫☆「そんな考えでいいわけ無いでしょ!」

ことり「いい兆候なのに、いいわけないの?」

海未「精神分裂病ですか?」

真姫☆「違うわ!そーゆーこと言ってるんじゃなくて…」

真姫☆「C☆cuteの人気が絶頂期の今こそ、A-RISEを…アイドル専攻をひっくり返すチャンスだってことよ!」

真姫☆「今の人気をただ保っているだけじゃ、UTX学院に革命は起こせないわ。動くなら今、ってこと」

真姫「か、革命…。物騒な単語ね」

花陽「真姫ちゃんが言っているのは、アイドル専攻が原因で悲しみの涙を流す人を無くしたい、ってことなんだよね?」

真姫☆「…えぇ、今のアイドル専攻の体制をぶっ壊す。そうしなくちゃ、これから先、また誰かがアイドルを嫌いになっていっちゃうかも知れないからね」

希「…えりちのやり方を変える、ってことかな」

海未「もしくはアイドル専攻自体を無くすか、ってところでしょうか」

海未「…これは少し乱暴すぎる気はしますが」

花陽「アイドル専攻がなくなったらA-RISEはどうなっちゃうんだろう…」

ことり「また別の方法で決めることになるとは思うけど…真姫ちゃんが言ってるやり方はそう…じゃないんだよね?」

真姫☆「…うん。絵里のやり方を変える必要も、アイドル専攻を変える必要もない」

真姫☆「みんなの、アイドルに対する意識を変えればそれでいい」

真姫「意識を変える…」

ことり「今まではみんな、A-RISEが一番で、A-RISEっていう栄光だけを求めてアイドルを続けてきていた」

海未「…頂点、それ以外は意味のないものだと、アイドル専攻で教え込まれてきていたようですからね」

花陽「でもそうじゃない。一人でも、二人からだって始められる!涙なんかなくたって、トップスターになれるんだ、って気付ければ!」

希「泣いたっていい、また笑顔になれるアイドルもある、ってみんなが分かってくれれば…!」

真姫☆「…今のアイドル専攻は大きく変わるわ。頂点への希望。それを私たちが示すことができれば」

真姫☆「人間の希望の強さは凄まじいものだから、絵里一人ではどうすることもできないはずよ」

希「…つまることろいよいよ、A-RISEとの決着、ってことかな?」

真姫「け、決着って…!戦うってことなの!?」

海未「そうしなければスクールアイドルの頂点の座を獲ることはできませんからね」

花陽「ついに、ってところまでやってきちゃった…!でも、どうやって優劣を決めるつもり?」

真姫☆「計画は考えてある。彼女たちに…いえ、絵里にとって、どうしても予断の許さない状態へ持っていく」

真姫☆「絵里がこだわっているA-RISE一強を妨げるような状況を作るの」

ことり「どんな風に?」

真姫☆「それはっ…!」

放課後

3年の教室前 廊下


カツカツ…


絵里「…」ツメカリカリ




「ほらこれ見てー!」「わぁ…!C☆cuteのグッズじゃん!羨ましいー!」

「前のC☆cuteのライブ映像なんだけどー…!」「可愛かったよねー!」




絵里「…ッ!!」


絵里(面白くない)

絵里(私のUTXから、私のA-RISE以外の話題が挙がることが)

絵里(手塩にかけて育て上げたアイドル専攻の環境に、彼女たちが徐々に侵食してきていることが)

絵里(腹立たしいぃっ…!!)



凛「…うわっ」


絵里「…あんっ?」ギロッ

凛「ひぃっ!!」

絵里「…なんだ、凛。どうしたの?珍しいわね、3年の教室前まで」

凛「や、やー…練習前に明日のスケジュールが聞きたくて…」

凛「最近別のアイドルの話題が多くなってきたから、ちょっと悔しくてって思って、早めに…にゃぁ…」

絵里「…そう。あなたも同じ気持ちなのね」

凛「は、はい!…でもライブは正直かっこよかったかななんて…」

絵里「何か言ったかしら…?」

凛「な、何でもないです!」

絵里「…そう。ならいいけど」

絵里「そうね。年末も近いことだし、今日は次のA-RISEのライブのー…」

凛「うんうん…!」

絵里「…ふふ、どうしたのよそんなに目を血走らせて。もしかしてにこや穂乃果が一度下位落ちしかけたから不安なの?」

凛「えっ…」

絵里「もしかしたら次は自分かも…なんて思ってるんじゃない?」

凛「そ、そんなことない…です。興奮してたのは単に練習が楽しみだっただけで…」

絵里「そう。ならいいけどね。…安心して、凛。あなたは特別よ」

凛「へ?特別…?」

絵里「あなたほどの逸材はそうそういないわ。私にとってもあなたを手放すのは夢の成就から遠ざかることだし」

凛「ほ、ほわぁぁっ…!そんな風に思われてたんですかー!?わ、わぁい、嬉しいにゃぁっ!!」

絵里「…ふふ、えぇ。これは…私にとっても本心よ」

凛「よぉーしっ!テンション上がるにゃー!」

凛「今日は早めに行って歌のレッスンだにゃー!」ピョンピョコピョンピョコ


絵里「あっ…、明日のスケジュールまだ言ってないのに…」

絵里「まぁいいわ。練習後に伝えてあげましょう」


絵里(凛が手放せない、っていうのは彼女にも伝えたとおり、私の本心)

絵里(彼女の才能は目を見張るものがある。…それ以外にも、持っているものも、あるのだけど)

絵里(でも今の状況を鑑みて、凛だけじゃない…穂乃果も、にこも、もう手放すわけには行かなくなってきた)

絵里(彼女たちの替えととなる才能なんて、今のアイドル専攻には育っていない)

絵里(私の夢を…野望を達成するためには、もはや誰ひとり欠けてはいけない)

絵里(そして目障りなC☆cute…希に、真姫…!)

絵里(彼女たちをどうにかしないことには…!!)



「…ねぇ、さっきさぁ…」

「C☆cuteが……に入っていくところを見かけて」



絵里「っ!!」

絵里(…なっ、なんですって…!?)


絵里「ど、どこって…!今どこでC☆cuteを見かけたって言ったの!?」

女生徒「うわっ!!?え、絵里ちゃん…?」

絵里「早く教えて!!」

女生徒「え、だから…」




理事長室



ガチャッ


真姫☆「…失礼します」

花陽「ししし、失礼しますっ…!」

ことり「おじゃましまーす」

海未「こ、ことりっ…!もっと恭しく…」

希「大所帯でごめんなさい」

真姫「…」←透明マント着用


バタン


理事長「あ、あらぁ…?あなたたちは…」



真姫☆「ご相談したいことが、ありまして」

理事長「えと…スクールアイドルの子、だったかしらぁ…?どうしてここに…?」


真姫☆(UTX学院理事長。ことりの母親ではなく、おっとり目の美人なお姉さん…って言うには年齢を重ねてはいるけど)

真姫☆(UTXが様々な学科を内包し、様々な部活で溢れかえっているのは、ひとえに彼女の…おっとりさが原因なのかも)

真姫☆(聞くところによると、優柔不断な欲張りさんなようで、とにかくいいと思ったものは取り入れていくスタイルだそう)

真姫☆(こんな人がトップでいいのかと思うけど…決めるところは決めてくれる人、だとも聞く)

真姫☆(…生徒会長就任式で一回見たきりだけど、そのときは堂々とした喋り口だったし)

真姫☆(正直ここに来て見かけて、その喋り方にちょっと驚いたくらい)


理事長「こ、こんな大勢で来てくれるなんて…、お茶とお菓子、用意したほうがいいかしら…?」

希「お、お構いなく」

花陽「わ、私たち、お頼みしたいことがあって此度参った次第でごじゃりましてぇぇぇっ…!!」

海未「テンパりすぎです!もっと落ち着いて…」

ことり「うわ、高そうな食器が置いてる…。すごーい」

海未「あなたは落ち着きすぎですっ!」

真姫「…(バレないか心配だわ)」ドキドキ


理事長「頼みたいこと…?私に?なにかしら…」

真姫☆「それが…これの件について、なんです」スッ…

理事長「ん?これ…」

理事長「うちの…UTX学院の、パンフレット…?」

真姫☆「はい、去年の」

真姫☆「UTX学院のパンフレットでは色々な学科を紹介されていますよね。数が多いので一部を抜粋してますが」

真姫☆「芸能科では歌手専攻やモデル専攻の人たちを写真とともに紹介しています」

真姫☆「その横…一際大きく紹介されている、この学校唯一、だった、スクールアイドル…A-RISE」

理事長「えぇ…。あぁ、これね。去年の…あ、東條さん。えっと…東條さんと同じ部活だった…」

希「絢瀬絵里…ですね」

理事長「そうそう。絢瀬さんに勧められて、大々的にパンフレットで紹介することにしたの。グッズも、近くで公式で販売しているし…ってこともあって」

真姫☆「はい、そうですね。そこで私たちが相談したいこと、なんですけど…」

真姫☆「来年度のパンフレット、もう既に作っていますか?」

理事長「え?えぇ…そうねぇ…。入学希望者へのものは…」

真姫☆「なら新入生へのパンフレットは?」

理事長「それはまだ…」

真姫☆「でしたら!」

真姫☆「その新入生向けパンフレットに!」

真姫☆「私たち…C☆cuteも紹介していただけませんか!」

理事長「はぁ…、…え?」

理事長「あなたたちを紹介…?」

真姫☆「はい!どうでしょう!」

理事長「え、えと…」

理事長「難しいお願いね…。うぅん…、そうね…」

花陽「お願いしますっ!その…A-RISEだけがスクールアイドルじゃないんだ、って新入生にもわかってもらいたいんです!」

理事長「でも…、あなたたちがやってるのはその…部活動、のようなものでしょう?」

理事長「一応、学校公認であるA-RISEと並べるのは…ちょっと…」

ことり「並べなくて結構です!A-RISEの横に小さく、非公式でこういうアイドルもいます!って写真を載せてくれるだけでいいんで!」

海未「部活動の写真でしたら他のページに数箇所ありますし、スクールアイドルとしてA-RISEと比較するように並べる程度なら許されると思います!」

理事長「う、うん…?確かにそう言われれば…そうかもしれないわね…」

希「それに、今のうちらの人気、知ってます~?もう学内でもそこそこの噂になってるんですよ~?」

希「…この期に乗じて、非公式でも推していけば、学校の人気上昇にも繋がる、かもかも~…?」

理事長「人気、上昇…!それなら…!」

真姫「…!(思いよ届けっ…!!)」ビビビビ

理事長「そうねっ…!一考してみる余地はあるかも…!」

真姫☆「っ…!!」



真姫☆(来たっ…!)

真姫☆(ここでA-RISE以外にもスクールアイドルがいると、新入生に知れ渡ってしまえば)

真姫☆(来年以降のアイドル専攻の体制は、大きく崩れることになる)

真姫☆(甘い考えは持ってほしくはないけど、『アイドル専攻が向いてないなら、アイドルを自分たちで始めればいい』という精神的な逃げ道を確保できる)

真姫☆(それに来年までに知名度をもっともっと上げてしまえば、非公式のUTXのスクールアイドル、ってだけでC☆cuteってわかってもらえるかも知れない)

真姫☆(そうなれば私たちに憧れて、アイドル専攻にすら入らずに、初めから自分たちだけの力で、って子も中にはいるかも知れない)

真姫☆(どちらにしろ、絵里の野望を妨げるには十分すぎるわ)

真姫☆(そして更に、このことが公になったら…!!)



「「お願いしますっ!!」」


理事長「わかったわ。今すぐ決定、ってわけには行かないけれど、職員と話し合って…」



バンッ!!


「待ってくださいっ!!」



海未「な、何事…!?」

真姫「ひっ…!」

理事長「あれ今変なところから声が」

ことり「き、気のせい気のせい」

花陽「あなたは…!」

希「…えりち」



絵里「…そんな提案、認められないわ」

真姫☆「絵里っ…!どうして…」

真姫☆(このことが公になれば、必ず絵里が抗議しに来る…と思っていたんだけど)

真姫☆(まさか公になる前に来るなんて…早すぎでしょ)


絵里「理事長っ!そのお考えは即刻取りやめてくださいっ!」

理事長「え…でも…」

絵里「学校公認のアイドルはA-RISEただ一つのみです!パンフレットで紹介してしまえばそれは認めたということになるでしょう!」

理事長「あ、あぁ…確かに…」

希「その言い分は違うんやない?」

絵里「あぁんっ…!?」

希「A-RISEにはUTXの大型モニター…オーロラビジョンを独占できる権利があるはずや」

希「それに学校に認められているからこそ、一般のアイドル雑誌からの取材、取り上げも許される」

希「それに比べればパンフレットの一部で紹介されるくらい、些細なことやないかなぁ?」

理事長「そ、そうよね…。わかるわかる…」

絵里「くっ…!しかしUTX所属スクールアイドルの人気が二分すれば、提携しているグッズの売上にも響きます!」

絵里「非公式であるがゆえに彼女たちのグッズは作られてもUTXに利益を与えません!その件に関してはいかがお考えですか!」

理事長「うぅん…それも言えてるような…」

花陽「待ってください!私たちが人気になったとしても、A-RISEの公式グッズには特有のユーティリティがあります!!」

ことり「ゆ、ゆーてぃり…何?」

花陽「それ自体がもたらす有用性のことです!公式ゆえに他の同人グッズでは得られないクオリティの高さや、本人たちのデザイン…」

花陽「UTXやA-RISE自身が関わっていなければ存在し得ないレア度の高いものが揃っています!」

花陽「それゆえグッズの売上はスクールアイドル界隈で他の追随を許しません…!」

花陽「なので!グッズの売上それ自体と私たちの知名度は関係ないものだと思われます!!」

真姫☆「さすが花陽…こういう時の頼もしさがハンパないわ…」

海未「それに、A-RISEもスクールアイドルとしての活動が第一です。グッズの売上は二の次でしょう」

海未「本分に関わることでもないことで他の生徒の活動を抑制する権利は、いくらあなたといえども持ち合わせてはいないはずでは?」

絵里「ぐ、うっ…!…キッ!」

絵里「理事長!!彼女らの言葉に耳を傾けてはいけません!何せこの真姫はっ…!」

真姫「えっ…」←透明マント着用

絵里「9月から彼女の姉を替え玉に代返を行っていたのですからっ!!」

真姫「っ!!」ビクゥッ!!

理事長「え…そうなの?」

希「どこでそんなこと…」

絵里「ハッ…!私を舐めないことね…!!一年とは言えども私の息がかかった子はたくさんいる…!」

絵里「その程度の情報くらい、簡単に…」

真姫☆「…ハァ?姉ぇ…?何言ってるのかしら」

絵里「何…?」

真姫☆「私に、お姉ちゃんなんかいないんですけどぉ」

絵里「なぁっ…!」

真姫☆「調べてもらったらわかるわ。私の家族に姉は存在しない」

理事長「そ、そうね…。西木野さん…?は確か、一人っ子だったと…」

絵里「えっ…!?」

真姫「…そんな意義…、ミトメラレナイワァ?」

絵里「ッ…!!」イラッ

希「おぉ…煽りよる煽りよる」

希(えりちも真姫ちゃん…西木野さんの家庭にまでは詳しくない)

希(同じ姿をした真姫ちゃんが二人いるという自体は理解していたみたいやけど…)

希(まさか、別次元から同一人物が来た、とまでは把握できんかったんやろうね…)

希(そして一年生から得た情報を鵜呑みにして…今の事態に)


絵里「そんなっ…!何かの間違いよっ!!私は、彼女が二人いるって事実を知っている!!」

真姫☆「何言ってるのよ」

真姫☆「…同じ人物が二人いるなんて、ありえないでしょう?」

絵里「ぐっ…!!ま、真姫ィィッ…!!」

真姫☆「変な夢でも見たんじゃないの?それか…」


グワンッ…


真姫☆「…っ!!?う、うあぁっ…!!」ヨロッ…

ガクンッ…

絵里「えっ…ど、どうしたの…?」

希「あっ…真姫ちゃん!もしかして、またっ…!!」ガシィッ

ことり「例の目眩…?」

真姫☆「へ、平気…。急に来るから、怖いわよね…」

絵里「…こ、こんな状態の彼女にアイドルを任せていいんですかっ!ライブ中に倒れでもしたら…」

理事長「落ち着いて、絢瀬さん」

絵里「UTXの評判は地に落ちっ!!安全性を考慮した上でも…」

理事長「落ち着きなさいっ!!」

絵里「っ!!」

理事長「…あなたの話もわかるけど、ここは会議室じゃないのよ」

理事長「私の意見を言わせてもらえば、私自身は彼女たちの提案を受け入れることに意義はありません」

絵里「そ、そんなっ…」

理事長「…だから、あなたがどうしても受け入れられないというのであれば…当事者で解決して」

理事長「大声を聞きすぎて…耳がキーンってなっちゃうから、ね?お願い」

絵里「う、うぅっ…!」タラッ…


真姫☆(絵里の額から一筋の汗が流れ落ちる)

真姫☆(先程までのなりふり構わない抗議を見ればわかるように、彼女はかなり焦っている)

真姫☆(自らの手中から、夢がこぼれ落ちていきそうなことに)

真姫☆(…その瞬間が、絶好のチャンス)

真姫☆(こちらからの提案を、すかさず挟み込むっ…!!)


真姫☆「…絵里。あなたの言いたいことも分かるわ。あなたの焦りも、手に取るように分かる」

絵里「真姫…?」

真姫☆「でもあなたと私たちの意見はどこまで行っても平行線、決して交わることはないわ」

真姫☆「ならもういっそ…決着をつけましょう」

絵里「…なにを、するつもり」



真姫☆「ライブよ」

今日はここまで
まだ8話ほど克明にストーリーが思い浮かんでるわけではないのでゆっくり目になるかもですがよろしく
もし!以外はやらないか、やっても話の区切りのインターバルに挟んでいく形となるので、途中で中断してモヤモヤすることはこのスレではもうないはず
そんなわけで、また次回まで ほなな

うん、意義じゃなくて異議やね 真姫ちゃんが言ってる方もそれ 変換ミスは多々あるだろうから察して
あと日本語の文法ミスだったり思い込みで間違った知識を書いちゃうこともあるので気づいたら無視するか指摘していただけると助かる
前の短編でも後々ミスを指摘されてて顔が真っ赤っかになっちゃったからね! そいじゃ、始めていくよ

理事長室前


希「うるさいからって追い出されちゃったね」

花陽「でも、理事長先生はパンフレットのこと、前向きに検討してくれてるみたいだし…」

海未「しかし…」


絵里「…詳しく聞かせてもらおうかしら、ライブのこと」

真姫☆「えぇ」


ことり「…大変なことにならないといいけど」

真姫「…」コクリ


真姫☆「この学校の終業式は12月24日、その日は午前までに下校となるわ」

真姫☆「それからすぐ、となると下校時の生徒の邪魔になるから…」

真姫☆「終業式の日の午後3時から、UTX前、オーロラビジョンが見える場所でC☆cuteとA-RISEの合同ライブを行いたいの」

絵里「…」

真姫☆「流石に外部も、となるとパニックになると思うから、UTX生限定で」

真姫☆「ライブ終了時点でライブを見に来てくれたUTX生に投票をお願いする」

真姫☆「票数が多い方が、勝者となる」

真姫☆「私たちが勝った場合、来年度の新入生パンフレットに私たちのことを紹介してもらう。あなたたちもそれに対して口出しはしない」

真姫☆「けれどあなたたちが勝った場合は…素直に引き下がるわ」

絵里「…正気?」

絵里「まだ活動を初めて数ヶ月のあなたたちが…ハッ。A-RISEを相手取るなんて…」

絵里「無謀にも程がある、とは思わないのかしら」

絵里「それにね。A-RISEは既に年末にイベントで…」

真姫☆「話は最後まで聞いて」

絵里「…なんですって?」

真姫☆「A-RISEと言ったけど、私たちが相手したいのは、今のA-RISEじゃ、ない」

真姫☆「未来の、A-RISEよ」

絵里「それは、つまり…」

絵里「…穂乃果、にこ、凛の3人で、…ということ?」

真姫☆「えぇ。今のバックダンサーズ。もうすでに来期のA-RISEであることは決まっているんでしょう?」

真姫☆「私たちと決着をつけるなら、彼女たちが相応しいわ」

真姫☆「A-RISEという誉れある看板を背負って1年間練習してきた彼女たちと、無名からここまで上り詰めた私たち」

真姫☆「どちらが優っているか…あなたも興味あるんじゃないの?」

絵里「…」

真姫☆「今からの猶予は約2週間…スケジュール的にはキツいところもあるかもしれないけど」

真姫☆「UTX生へのクリスマスプレゼント、って考えると趣があるでしょう?」

真姫☆「さぁ、どうかしら?一緒にライブ…してくれるわよね?」

絵里「…」

真姫☆「…」ゴクリッ




絵里「…断らせてもらうわ」

真姫☆「なっ…!」

希「どうして?」

絵里「…フッ」

絵里「そんなライブなんかやらなくても…私のA-RISEが優っていることなんて明らかだもの…」

絵里「今更不必要だわ!あなたたちに構っているヒマもないしね」

花陽「で、でもっ…!そうなる来年度のパンフレットにC☆cuteが載ることは順調に決まっちゃうんじゃ…」

海未「理事長は前向きに検討してくださっていましたし…」

絵里「…ふふ、別にいいわよ?理事長がなんと言おうと…」

絵里「来年までに、あなたたちが…居なくなれば問題ないんだもの…!!」


「っ!!」


ことり「そ、それ、どういう意味ですかっ…!!」

絵里「…真姫、あなたにも言ったはずよ?どんな手を使ってでも私は私のA-RISEを一番にしなくちゃけないんだって」

絵里「そのためにはどんな汚い手だって使う。あなたたちがこれ以上、スクールアイドルができなくなるようなことだって、簡単に…!」

希「え、えりちっ…!!またそんなことっ…!!」

真姫「…」プルプル…

真姫☆「…させないわよ。そんなこと」

真姫☆「もしそんなことがあったら…私が身を呈してでもあなたを…」

絵里「アハッ…、別にいいわよ?私が仮に瀕死になっても…私に忠実な子はたくさんいるのだから」

絵里「あなた一人じゃ私は止められない…!!フフフフッ…アハハハハッ!!」

ことり「な、なんだか怖い…」

海未「…完全に、目がイってしまってます」

花陽「絵里先輩…」

真姫☆「…」


真姫☆(…確かに彼女の瞳孔は開いて、顔は青ざめているように見える)

真姫☆(けれど、その眼光の奥に…)

真姫☆(隙あらば獲物を噛み砕こうとする、獣の如き鋭さが、垣間見えている)

真姫☆(まさか、絵里は…)


絵里「…それじゃ、困るでしょう?あなたたちも…」

真姫☆「それはまぁ…困るわね」

希「えりちが本気でうちらを潰しにかかれば…容易いことやもしれんからね」

絵里「だから、折衷案を考えてあげる」

真姫☆「…折衷案?」

絵里「ライブよ」

絵里「参加してあげてもいい」

希「え…?でも…」

絵里「その代わり…私たちがあなたたちに勝利したその時…」

絵里「あなたたち、C☆cuteの…」


絵里「解散を約束しなさい」

ことり「っ…!!?」

海未「なぁっ…!!」

希「解散…!!?」

真姫「っ!」ビクッ

花陽「解、散…」


真姫☆「…」タラッ

絵里「ふふふ…、焦っているようね、真姫…」

絵里「攻めていたのは自分だと思っていたら、気づけば喉元に牙を当てられていた」

絵里「気分はどう…?」

真姫☆「…ふ、ふふ…、心臓が縮みそう」

希「か、解散なんて…そんなん認められへんよっ!」

絵里「認められない…?あぁそう、じゃあ…」

絵里「…まずは、部室が荒れ放題、なんてどう?」

海未「っ…!脅迫、ですか…!!」

ことり「ライブでの条件追加を飲まなければ…私たちを潰す…ってこと」

絵里「うん、そういうことよ。だってあなたたちが提示した条件は私たちに利益を与えてくれないもの」

絵里「仮に負けたとしても、また頑張ればいい。いくらでも立ち直れる方法はある」

絵里「それじゃ…王者たるA-RISEを動かさせる条件には程遠いわ」

絵里「自分たちの居場所を賭けるくらいしてもらわないと、釣り合わないのよ」

花陽「そんな…」

絵里「さぁ、どうする?解散が怖くて逃げ出す?それとも私と心中する?」

絵里「フフフフフフ…!」

真姫☆「…」ゴクリッ…

希「ま、真姫ちゃ…」


真姫☆「…」

真姫☆「…いいでしょう。その条件、飲むわ」


「「「「「っ!!」」」」」


絵里「…いいのね?敗北すれば解散、再結成は許されないわよ?」

真姫☆「えぇ。でもこちらが勝った場合、あなたも二度とC☆cuteに手は出さないと約束しなさい」

絵里「…ハラショー。約束しましょう。これ以上ゴネても話が長引くだけだし」

真姫☆「約束を破ればその時こそ、あなたの命はないものと思いなさい」

絵里「わかってるってば。じゃあ…決戦の日、クリスマスイブ。その日まで…ダスヴィダーニャ」スタスタ…


花陽「ま、真姫ちゃぁぁぁん…!!」

海未「あなた、なんてことを…」

真姫☆「…自分でも分かってる。今はとにかく、部室に戻りましょう」

真姫☆「これからのこと、色々と話し合う必要があるわ」

アイドル応援部部室


ことり「と、とんでもない約束しちゃった…!」

真姫「ど、どうするのよぉっ!!?私アイドルになって1ヶ月で引退させられるハメになるの!?」

真姫☆「お、落ち着きなさい。負けたら、の話でしょ」

海未「…しかし、相手はバックダンサーと言えども、約一年間あのアイドル専攻で技術を磨いてきたA-RISEです…」

花陽「しかも相手は凛ちゃんやにこさん…穂乃果さん」

希「…負ける可能性は十分あるよね」

海未「ど、どうして受けてしまったのですか!もう少し交渉しても…!」

真姫☆「…いえ、絵里は譲らないでしょう」

ことり「どうしてそんなことが言えるの?」

真姫☆「彼女の目的は、最初から私たちをライブで負かせて、潰すこと、だからよ」

花陽「えっ…?」

真姫「ど、どういうことよ」

真姫☆「絵里は折衷案、なんて言ってたけど、彼女の本当の狙いは最初から自分の意見を通すことだった」

真姫☆「しかし私たちのパンフレットの件は理事長にも認められてるし、絵里が彼女の意見を通すには状況が不利過ぎた」

真姫☆「だから彼女は、自分の持てる最大限の力を行使する…フリを見せたのよ」

ことり「フリ?」

海未「な、なるほど…!つまり彼女は元から部下に私たちを攻撃させるつもりはなかった、ということですね」

真姫☆「うん。いくら絵里と言えども、私に抵抗されて大怪我を負ったりするのはイヤなはずだし」

真姫☆「私が何もしなくても、もしかすれば下級生にそういうことさせてる証拠が見つかって、退学になる可能性だってありうる」

真姫☆「そんな諸刃の剣を通すのは彼女にとっても危険。けれど私たちだって相当な痛手を負う」

花陽「絵里先輩は私たちに自分の条件を飲まざるを得ない状況に無理やり持っていった…ってことかな」

海未「あの不気味な薄ら笑いは、半分演技…といったところだったのでしょうか…」

希「追い込まれてヤケクソになったと思い込ませて、実は心の奥で自分の戦略を練っていた…」

希「さすが、えりちと言わざるを得ないね…。あんな状況でも冷静に自分の有利な条件を飲ませるなんて」

真姫「絵里…」

ことり「…?よ、よくわかんないや。とりあえず私たち、もし負けちゃったらおしまい、って考えていいんだよね…?」

真姫☆「そうね。次期A-RISEに負ければその時点でゲームオーバー。コンティニューは許されない、ってところね」

真姫「…リスポーンされないFPSなんか、ただの戦場じゃない。死にたくないわよ、私…」

花陽「し、死ぬ…!うぅっ…」

真姫☆「…ごめんなさい、花陽。あなたにとってはこの勝負、余りにもリスクが高すぎるわよね」

海未「そうですね…。花陽以外の我々にとっては最悪、解散しても夢を叶えることはできますが…」

希「花陽ちゃんは、笑顔のスクールアイドルをみんなに見せつけるってことが夢、なんやものね」

ことり「ここでのゲームオーバーが、まさしく花陽ちゃんの夢のゲームオーバー…なんだね…」

花陽「…っ!」

真姫☆「花陽…」

花陽「…大丈夫。大丈夫だよ」

花陽「私の夢を叶えるには、どちらにしろここで負けるわけにはいかないんだから」

花陽「勝って、凛ちゃんに悔しい顔させてあげるんだもんっ…!絶対に、勝つんだもんっ…!!」

真姫☆「っ…。花陽…!」

真姫☆「…ふふっ、そうね。勝ちましょう」

真姫☆「これが正真正銘、夢への最後の戦い…になるかもしれないんだからね」

真姫「さ、最後、って…演技でもないこと言わないでよ…」

真姫☆「そういうつもりじゃないわ。最後は最後でも、最後の戦い」

真姫☆「この戦いに勝利し、UTXに…アイドル専攻に、A-RISEだけが絶対じゃないって分からせれば」

真姫☆「もう私たちが争う必要はない。今まで泣いていた人たちだって、笑顔にできるんだから」

真姫☆「そういう意味での、最後の戦いなのよ」

花陽「…その戦いが終われば、真姫ちゃんは…」

花陽「帰っちゃうの?元の世界に…」

ことり「…」

海未「…」

希「…」

真姫「…」


真姫☆「…」

真姫☆「…かも、しれないわね」


花陽「…そう、なっちゃうんだ」

真姫☆「元々、私は花陽の夢を叶えてあげるためにこの世界に残ったんだし」

真姫☆「UTXで、花陽の夢見た世界を現実のものにできれば、私はこれ以上この世界に居座る必要はないわよ」

真姫☆「…いずれ、別れが来るのは必然なんだから」

花陽「…」

真姫☆「それにほら!この立派なパンフレットにあなたたちのことが紹介されるのよ!?」ババンッ

真姫☆「それが私が…私たちが頑張った成果だって考えたら、誇らしいことじゃない」

花陽「…ふふ、そう…だね。真姫ちゃんがいてくれたおかげで、ここまで来られたんだし」

ことり「真姫ちゃんがいなければアイドルなんかしてなかったかも!」

海未「あなたが去ったとしても、パンフレットに私たちが紹介された、という功績は永遠に残りますからね」

希「そのためには、勝たないといけない…!真姫ちゃんのために、なによりうちら自身のために、頑張らんとね!!」

真姫「そうですね…。私もまだ、アイドル活動に満足してないもの!負けられないわよ!」

真姫☆「えぇ、その調子その調子。頑張りましょう」

真姫☆「…それにしても凝ってるわよね、UTXのパンフ…。さすが人気校なだけ…ん?」

海未「えぇ、ここに入学する前も一際目を引く学校案内だったと記憶して…」

真姫☆「ねぇちょっとまって。こ、このUTXって…~~年に設立されたの?」

ことり「え?うん、今から大体~~年前くらい?だよね」

花陽「はい。私たちが生まれる前…だよね?」

希「それがどうしたん?」

真姫☆「…私の世界のUTXと違う」

真姫☆「私の世界じゃUTX学院はつい最近…私たちが中学か小学生の頃にできたものなのに…そんな前に」

真姫「へぇ…そうなのね」

真姫☆「…そっか」

真姫☆(だから音ノ木坂はもう、廃校になっていたのね)

真姫☆(十数年も前からUTXに生徒を横取りされていたせいで、学校の維持ができなくなって)

真姫☆(こんなところの違いが、結果的に今の歪みを生んでるんだと思うと…)

真姫☆「バタフライ・エフェクトって怖いわね…」

ことり「エビフライ?」

真姫☆「…なんでもない。さぁ、次はこれからのことについての話し合い!ちゃっちゃとやるわよ!」

多目的ホール


凛「遅いねー…絵里先輩」

にこ「何してるのかしら…よっ、と…」グググ…

凛「イタタタタ!いたいにゃー!」

にこ「えぇ…。この程度で痛がる?身体固くなったんじゃない?凛」

凛「そんなことないよ!にこ先輩の押し方が悪いんだにゃ!ほら」グイッ

にこ「あらホント。柔らかいじゃない。おかしいわねー…」

凛「凛は一人でも柔軟できるから、穂乃果先輩の方に行ってきたら?」

にこ「はいはい、わかったわよ」


穂乃果「…っしょ」グググ…

にこ「柔軟、手伝おうか?」

穂乃果「あ、にこちゃん。お願いしようかな」

にこ「はい、よいしょっ…」グググ…

穂乃果「よ、ととと…」

にこ「…そういえばアンタ、絵里にケンカ売っといてよく平気で来られるわね」

にこ「私なら怖くて不登校になるわよ」

穂乃果「…別に、ケンカ売ったとは思ってないよ」

穂乃果「私は自分の考えを正直に言っただけ。私の思う強さを求めたい、って思ったから」

穂乃果「その結果、彼女の反感を買ったとしても…私に後悔はないよ」

にこ「…すごいわね、アンタ」

穂乃果「にこちゃんも、絵里先輩のこと、呼び捨てにしていいの?先輩だよ」

にこ「…いいのよ。私、アイツのこと気に入らないし。実際は同じ年齢だし、見てないところで呼び捨てくらいいいじゃない」

穂乃果「…同じ、年齢…なの?」

にこ「あっ…そっか。まだ言ってなかったっけ。私、浪人してるのよ。ここ入るために」

穂乃果「…そう、だったんだ。言っていいの?そんなこと…」

にこ「同じA-RISEのメンバーになるんだから、これくらい知り合っておかないとファンに笑われるわよ」

にこ「メンバーの年齢も知らないアイドルグループがあるらしい、ってね」

穂乃果「そう…だね。思えば私たち、お互いのこと何も知らないのかも…」

穂乃果「…そういうところも、直していった方が、いいのかな」

にこ「ん?何か言った?」

穂乃果「うぅん、なんでも…」


ガチャッ


絵里「…」スタスタ…


凛「あ、やっと来たにゃー!もー先輩!まだ明日のスケジュ…ぎょっ」


にこ「…ぎょっ?なんて声…うげっ!」

穂乃果「にこちゃんまでどんな反応…うわ」

穂乃果(顔すごい怖い)


絵里「…話があるの。聞いて」

にこ「は、はぁ…」

穂乃果「ライブ…」

にこ「ライブ…っ!?」

凛「ライブーっ!?や、やったあああっ!!」

にこ「え、えぇっ…!そうね!つ、ついに私たちがライブ、できるのよねっ…!?」

凛「いえーいっ!ハイタッチだにゃ!」

にこ「う、うんっ…!」パシンッ


絵里「…はしゃがない。ただのライブじゃ、ないわ」

絵里「明確に勝ち負けが決まるライブ。そして、絶対に負けの許されないライブよ」


にこ「…っ!そ、そう、なのよね…。でも、勝ったら…」

穂乃果「C☆cuteは解散…」

凛「えへへーっ!知ったことじゃないにゃ!凛たちにとってはどっちでもいいことだよ!」

穂乃果「そう、だね…。その条件を飲んだ、彼女たちに責任があるよ」

にこ「…解散、ね。何もそこまで…」

絵里「にこ。生半可な気持ちじゃ、足元を掬われるわよ?」

にこ「うっ…」

絵里「C☆cuteはすでに最強のA-RISEにとって脅威になりつつある」

絵里「ここで彼女らを葬っておくことが、将来のA-RISEのためなのよ」

絵里「…理解できたかしら?」

にこ「…わかり、ました」

絵里「そして、そのためには」

絵里「穂乃果。にこ。凛」

絵里「あなたたち一人たりとも、欠けることは許されない」

絵里「もう、後には引けない状況まで来ている」

絵里「穂乃果。あなたが私のやり方に納得できないということは理解したわ」

絵里「にこ。あなたを犠牲にしようとしたこと、恨まれても仕方がないことよ」

絵里「凛。あなたがへこたれないことを逆手に、ハードな練習を強要してきたかもしれない」

絵里「…でも、それでも。ここまで来たからには、私に従って…」

絵里「いいえ、私に、ついてきて欲しい。命令じゃなく、お願いよ」

絵里「私の悲願を達成するために、ここは…絶対に負けることの許されない戦い」

絵里「だからこそ、こんな私に…あなたたちの意思で、私についてきて欲しいの」

絵里「お願い…っ!」



「「「…」」」

「…」

「分かりました」


絵里「…っ」

穂乃果「元々、そのつもりでしたし」

絵里「穂乃果…」

にこ「意外ね、アンタが最初に返事するなんて」

穂乃果「…今の先輩は、純粋に勝利を願っているように見えたので」

穂乃果「いつもその調子だと、私も信頼できるんですけどね」

絵里「…ふふ、そう…。精進するわ」

凛「凛も!先輩の悔しさ、十二分に凛も理解できるにゃ!」

凛「…小泉さんなんかに、絶対に負けない。コテンパンにして泣かせてやるんだから」

絵里「頼もしいわね…凛」

にこ「…仕方ないから、私も。いえ、生半可じゃダメ、なのよね」

にこ「勝負になるなら、絶対に勝つ。あっちが負けたら解散だろうと、貪欲に獲りに行くわ」

絵里「えぇ…、そうよ。勝ちましょう」

絵里「ありがとう3人とも。私に応えてくれて」

絵里「決戦は2週間後、これからはひたすらライブのための練習を続けていきましょう」

絵里「今までよりも更に過酷なものになるかもしれないわ。下位組のように、遅くまで居残りもあるでしょう」

絵里「…それでも、付いてきてくれるのね」

穂乃果「えぇ」

凛「もちろん!」

にこ「そのつもり」

絵里「わかった。覚悟は出来てるのね」

絵里「…だったら、走り続けましょう。…私の、夢のためにも」



凛「にゃー…、ライブかぁ…。楽しみだなぁ…!」

にこ「ついに、って感じよね。うぅ…、今から緊張してきたぁ…!」

凛「やっと歌えるって思うと胸が高鳴って仕方ないよっ!わーいっ!!」ブンブンッ!!

にこ「おわぁっ!!?ちょっと!?腕が強く降りすぎぃぃ!!」

穂乃果「…」

凛「にゃ?どうしたの穂乃果先輩。今から練習なのにぼーっとしちゃって」

穂乃果「…うぅん、なんでも」

穂乃果「行こっか」

凛「うん!楽しみですなぁ…!」トットコトー

にこ「…あいつだけは毎日毎日楽しそうね」

穂乃果「…そうだね」


穂乃果(…夢)

穂乃果(夢、か…)

若干短いけどここまで 次回をお楽しみに
明日は映画行ってきます 創作意欲エナジーをもらえたらいいな ほなな

わざわざここで映画のネタバレをするつもりはないから安心して!ことりが「穂乃果ちゃんヒーローみたーい」ってセリフを言ってたってことくらいしか
あと映画は色紙目当てだったので普通のやつです かよちんだったよ それでは思いつく限り、やっていきますよ

音楽室


希「そんじゃ、ひとまず解散のことは置いておいて、クリスマスライブのことを考えよう」

海未「置いておいて、と言われても…やはり心のどこかでは重荷になりますよ…」

海未「…負ければ終了、だなんて」

ことり「もう海未ちゃん!今からそんなに弱気でどうするの~!?」

ことり「穂乃果ちゃんだって少しずつ変わってきてる…。それにもう海未ちゃんは昔の海未ちゃんじゃないって証明しちゃうんだよ!」

ことり「そしたら穂乃果ちゃん、海未ちゃんに教えを乞うてきたりして…!」

海未「あの穂乃果が…?ぷふっ、ありえませんよ」

ことり「そのくらい、穂乃果ちゃんがビックリするくらいカッコイイライブができるようになって、そして勝てばいいんだよ」

ことり「それが私たちの願い…だからね」

海未「…ことり」

海未「そう、ですね…。不安になっていても夢は叶いませんものね」

希「うんうん。勝って当然、みたいな感じで気楽に行こう!」

真姫☆「どうせ今からどうしようと私たちが劇的に変われるわけでもないしね」

花陽「え…」

真姫☆「私たちはいつも通り。いつも通り、心の底から笑顔で」

真姫☆「そうやって勝ってこその、私たち、でしょう?」

花陽「あ…!うんっ!そうだよね!!」

希「よし、心の整理もついたところで…歌う曲についてやけど」

海未「そうですね…。やはりここは最も自信のある…キノも踊ることですし、前回のライブで使った…」

真姫「新曲で行きましょう」

海未「えぇ、新曲で…」

海未「…ええぇぇぇっ!!!?」

ことり「し、新曲っ!?」

真姫「…ダメなの?」

花陽「だ、ダメじゃない、けど…2週間後、なんだよ!?」

希「流石に練習できる期間が短すぎるんじゃ…。今から1から、ってことでしょ?」

真姫☆「…もしかしてアナタ、何か…」

真姫「…えぇ」

真姫☆「っ…!」


真姫☆(…やはり、腐ってもこの世界の私)

真姫☆(突拍子のない提案に思えても、何か考えを巡らせている、ってことなのね)

真姫☆(さすがだわ…!)


真姫「…だって」



真姫「もし負けちゃったら私一回も作曲できずに終わっちゃうじゃない!!」

「………」

「…は?」


真姫「私だって…さ、作曲したいわよ」

真姫「み、みんなと…仲間?になったんだし…。でも、もし負けちゃったら、解散しちゃうし…」

真姫「だから…せめて最低でも一回は、私の作った歌を残しておきたいって思って…」

海未「そ、それが理由…ですかぁ…?」

真姫「ナニヨ!!…いい、でしょぉ…?」

ことり「ち、ちょっとワガママ、じゃないかなぁ…?」

希「勝てばそれからいくらでも作れるんやし、ここは前の曲で行こ?」

真姫「あう…、そ、そう…よね。ごめんなさい…私…」


花陽「…うぅん」

花陽「私、いいと思う。キノちゃんの新曲」


真姫☆「え…」

ことり「花陽ちゃん…?」

花陽「C☆cuteに入って、何かを残したいって気持ち、よくわかるもん」

花陽「真姫ちゃんは作曲、ことりちゃんは衣装、海未さんは作詞。ダンスはみんなで考えて、だったけど…」

花陽「ずっと近くで見てて、私も自分だけのなにかが出来たら、って思ってたんだ」

花陽「…でも私は、やっぱりこうしてアイドルとして踊れることが一番の喜びだから、それだけでも十分なのかな、って思ってた」

花陽「けど、キノちゃんが作曲をしたい、って思ってるなら、やったほうがいい」

花陽「やりたいと思ったらやってみる。…でしょ?」

真姫☆「は、花陽…」

真姫「花陽ぉぉ…!!うぅぅぅぅ…!ありがとぉぉ…!」ギュゥッ

花陽「や、やぁっ…、恥ずかしいよキノちゃん…」

海未「し、しかし…作詞は頑張ればなんとかなるでしょうが、衣装はどうするんです?」

希「練習しながら二週間で新しい衣装を仕立てるんはスケジュールが辛いし…」

ことり「着まわしで頑張る?」

花陽「うーん…やっぱりこういう時は…」

真姫☆「よし、誰かに頼りましょう。花陽親衛隊とか」

海未「い、いいんですか…?他力本願ではありませんか?」

真姫☆「いいのよ。だって私たちはスクールアイドルなんだもの」

真姫☆「私たちだけの力で成り立ってるんじゃない。応援してくれるみんなが支えてくれているから成り立っているの」

真姫☆「もちろん、彼女たちの都合が悪ければ新曲は取り下げることになるけど…でも」

真姫☆「クリスマスイブのプレゼント、どうせなら魔法のように新しい曲を引き連れて、驚かせてあげましょうよ」

ことり「サプライズっ!そうだよね、つい2週間前に新曲出したのに、クリスマスにも新曲だったら…」

希「それもダンスも衣装も新調…まるで魔法で作り出したかのよう、やね」

真姫「魔法…」

海未「…みんなの驚く顔、ですか…。それを聞いてしまうと、自分の中の謎のメイドが騒ぎ出してしまいそうです」

真姫☆「でしょう?こんな楽しいこと、しでかしちゃったら最高にクールじゃない!」

花陽「うんっ!そ、そのためにはみんなの協力は不可欠、だよね…!流石に今日は無理かなぁ…」

真姫☆「話が付きそうな子だけでも連絡してみたら?」

花陽「あ、そっか!そうしてみるね!」ピピピ…

花陽「あ、もしもし…私…」


真姫☆「…花陽」

真姫☆(本当なら私も、キノの意見には反対するつもりだった)

真姫☆(負ければ後のない状況で、新しい曲は無謀すぎる、って)

真姫☆(…でも、そうよね)

真姫☆(花陽の言うとおり。やりたいと思ったことを、やる)

真姫☆(今までもずっとそうやってきたじゃない)

真姫☆(無茶だろうとなんだろうと、突っ走ってきた。道を逸れそうな時は仲間が支えてくれた)

真姫☆(だからこれからも、それでいいのよ…ね)

真姫☆(私の世界の穂乃果から教わった、頂点へ導く方法)

真姫☆(まさか私より先に、花陽に言われちゃう、なんて…)

真姫☆「…ふふっ」



海未「協力していただける人員の確保は花陽に任せるとして…キノ。どういう曲を作る気、なのですか?」

真姫「作る気…っていうか、実はもう…作ってあるのよ」

ことり「え…本当?」

真姫「えぇ…『私』に作曲の方法を習いながら、家で一人でね」

希「そうなんや…。で、どういう曲にしたの?」

真姫「どういう…と言われると難しいんだけど…」

真姫「…そうね。その時の気持ちを素直に曲にした…かしら」

真姫☆「その時の、気持ち…?」

真姫「こんな私を、C☆cuteに誘ってくれたあなたたちへの感謝…」

真姫「そして、嫌いだった学校を、大好きにしてくれた喜びを、そのまま詰め込んだ」

真姫「だから…うん、言うなれば…『学校に来たくなる』曲ね」

ことり「あははは、それいいね。サボり学生には最高だ!」

海未「しかしなにげに、その命題は今のこの状況にピッタリ、当てはまっているかもしれませんね」

希「アイドル専攻のせいで学校に…UTX学院に行きたくない、って子は、今でもたくさん生まれてるからね」

希「その曲を聞いてUTXが好きになってくれるなら…それはまさに夢のような曲やよ。うちにとって」

真姫「そ、そう…?そんなに言われると照れちゃうわね…」

真姫「自分ではいいものができた、って思ってるけど…拙かったらごめんなさい」スッ

真姫☆「そしたら私がちょこっと直してあげるわよ。もちろん、直さないでいい出来を期待しているけどね」

海未「ではまずはじめに…ここは希さんが行くべきでしょうね」

希「あ、うち?」

ことり「キノちゃんがそういう気持ちになれたのは希ちゃんのおかげが大半だもん!一番最初に聞くべきだよ!」

真姫「うん…私もそうしてほしい。お願いします、希先輩」

希「わかった…。よいしょ」スポッ

希「…」~♪

真姫「…」ドキドキ

希「…ふふっ」

真姫「っ…!その笑みはどっちの…!?」

ことり「ぷふっ…!キノちゃんの顔、おもしろーい」

真姫☆「凝視しすぎよ…ふふ」

希「…」

真姫「ど、どうだった…?」

海未「判定は…?」

希「…うん」

希「すごいいいやん!うち、この曲好きや!」

真姫「っ!!ほ、本当に…!?」

希「うんうんっ!なんだか聞いててワクワクする…!」

真姫☆「どれどれ?」スポッ

ことり「わ、私も…!」スポッ

海未「あぁっ…、ことり…!私にも聞かせて…」



花陽「聞いて!親衛隊の子達で協力してくれるって子が今の連絡だけでなんと…!」

花陽「…って、アレ?」

ことり「はわぁぁぁぁ…!こ、これ…!真姫ちゃんの曲より好きかも…!」

海未「なんでしょう…。子供の頃の無邪気さを思い出させてくれるような…」

真姫☆「むっ…!ち、ちょーっと甘めの作りだけどね!ほんの少し直せばもっと良くなるわ!」

真姫「そ、そう?…あ、花陽!これ、私の曲!聞いて聞いて!」

花陽「わ、私の話も聞いて欲しいなぁ…ま、いいけどね」



真姫☆(案の定キノの曲は花陽にも大好評)

真姫☆(この曲を活かさないのはもったいない、ということで、めでたくクリスマスライブ、キノの作った新曲を採用することに)

真姫☆(私はちょっとジェラシー抱いちゃうけど…うん、これでいいのよね)

真姫☆(花陽の呼びかけで集まってくれる子も、すでに2桁を突破してるようで)

真姫☆(新曲を使ったライブには、かろうじて間に合いそうな勢い)

真姫☆(今日は基礎的なダンス練習と、振り付けの案をみんなで出し合ったところで、下校時刻となった)




キーンコーンカーンコーン…


真姫「ふぅっ…はぁ…。つ、疲れるわ…」

海未「まだ基礎連で疲れているのですか…?それじゃダメ、ですよ」

ことり「この程度は汗ひとつかかないくらいでなきゃ!」

真姫「は、はぁい…」

花陽「ま、まぁ…キノちゃんはまだ始めたばっかりだし…」

真姫☆「じゃあ、今日はここまでね。海未、歌詞…お願いね」

海未「あ、そのことなんですが…」

希「ん?どしたん?」

海未「…今回の曲の歌詞は」

海未「花陽と一緒に考えたいのですが、どうでしょうか」

花陽「へぇー…」

花陽「…」

花陽「えぇぇぇっ!!?」

多目的ホール


キュッ… タタタタンッ…!!

ダッ ガシィッ!!


ピタッ…


穂乃果「ハァッ…!ハァッ…!!」

にこ「ぜぇぇっ…!はぁぁぁっ…!!」

凛「ふぅっ…」



絵里「…まだよ。全然揃ってない」

絵里「この曲はもっと機械のように完全に揃えてこそ映えるもの」

絵里「あと表情も。無表情と笑顔を使い分けなさい」

絵里「もう一回…は、休憩後ね」


キーンコーンカーンコーン…


にこ「い、いつもならこのチャイムで帰ってるのに…ハァッ…まだ、帰れない…!」

穂乃果「…頑張ろう…。もっと、完璧に揃う、まで…!」

凛「ごくごく…ぷはーっ。凛、歌が歌いたいにゃー」

にこ「あ、アンタ…はぁっ…つ、疲れないのぉ…?」

穂乃果「あんなに激しいダンスして…い、息一つ切れてないなんてっ…はぁっ…すごいね…」

凛「うん。このくらいは平気。なんだかここに入ってから疲れづらい体質になったの!」

凛「最初の頃はゲロ吐くくらい辛かったけど、今はどれだけ練習してもケロッとしてるにゃー!」

にこ「は、ハハ…まさにバケモノね…。私、今がそのゲロ吐きそ…うえっ…」

穂乃果「…トイレ、一緒に行こう…」


スタスタ…


凛「大変だねー、ふたりとも。…ごくごく」

凛「ぷふっ…、あ、絵里先輩!明日はなにするんですか?」

絵里「明日?そう…ね。はっきりは決まってないんだけど…」

絵里「凛がとても歌いたそうだし、明日は歌の練習を重点的にしましょうか」

凛「ホントっ!?わーい!やったー!」

絵里「ふふふ…そんなに歌いたいの?凛はダンスの方が好きそうに見えるのに」

凛「ん?まぁ、ダンスも好きですけど、歌は…」

凛「歌、は…」

絵里「…どうしたの?凛」

凛「…どうして凛、歌が好きなんだったっけ」

絵里「え?」

凛「うーん、よくわかんないや…。でも、歌うと気分が明るくなって楽しいから!」

凛「うん、だから好きなんです!ダンスは授業でも散々やってるから飽きてきちゃうしー」

絵里「そう…。まぁ、好きな理由なんてどうでもいいんだけど」

絵里「…さ、そろそろ二人も戻ってくる頃だし、ダンス練習再開の準備、お願いね」

凛「わかったにゃ!」

2時間後…



タタタンッ… ピタッ



絵里「…」

絵里「…もうこれ以上は無理そうね」


バターンッ!!


穂乃果「はぁーっ…!!はぁーっ…!!」

にこ「ごほっ!!が、はぁっ…!はぁっ…はぁっ…!」

凛「ふひぃ…疲れたぁ…」


絵里「これ以上の練習でパフォーマンスの向上は望めないわね」

絵里「今日は帰っていいわ。明日、穂乃果以外は朝一でね」

にこ「な、なんで穂乃果…あぁ、生徒会…」

穂乃果「…ごめん、にこちゃん」

凛「じゃあ歌にしましょうよ!3人じゃなくても揃えやすいし!」

絵里「そうね。明日は朝から歌のレッスン。…って言っても、音程を外さず発声できるかの特訓だけど」

にこ「う…苦手なやつじゃない…」

穂乃果「避けてても上手くはならないよ。…きっとあっちも、頑張ってることだし」

にこ「…そうよね」

凛「あっち?小泉さんのほう?」

凛「どうかなぁ?どうせヌルい練習で満足して帰ってるんだよ」

凛「…ホント、イラつくなぁ。絶対に解散させてやるんだもん」

絵里「凛のやる気は十分のようね。…じゃ、解散。着替えて速やかに休息をとること」

絵里「…そこの…あなたたちも。学校が閉まるまでには下校するのよ」

絵里「…あと、吐瀉物は片付けるように」




UTX学院 正門前


にこ「うわ…久しぶりの真っ暗だわ」

凛「星空が綺麗~!」

穂乃果「…私、帰るね」

凛「あ、一緒に帰らないんですかー?友達もう帰っちゃったから寂しいにゃー」

穂乃果「家族が、心配してるかもしれないから」

にこ「…そっか。そうね、私も…」

凛「ふーん、そう…。じゃあ凛は寂しく一人で帰るにゃー」

にこ「夜道には気をつけなさいよ」

穂乃果「じゃ、バイバイ。また明日、放課後にね」

凛「バイバーイ」

穂むら


ガララッ…


穂乃果「…ただいま」


雪穂「あ、おかえりー。遅かったね、今日」

穂乃果「うん。クリスマスイブにライブが決まってね。その練習で」

雪穂「へー、すごいじゃん!A-RISEとして初ライブ?」

穂乃果「そう…なるかな」

雪穂「ねぇねぇ!私も見に行っていいの?それ」

穂乃果「…残念だけど、UTX生限定なんだって」

雪穂「そっかぁ…。おねえちゃんの晴れ舞台なのになー」

雪穂「あ、お風呂、温め直しとくね。ご飯、キッチンに用意してあるから食べておいて」

穂乃果「…うん。ありがと、雪穂」



穂乃果「…ふぅ。お風呂、上がったよ」

雪穂「私もう入ったー」

穂乃果「そっか。じゃあ閉めとくね」

雪穂「いいよ。お姉ちゃんはどっしり構えてて。私が閉めとくから」

穂乃果「…雪穂ばっかりに任せちゃ、悪いよ」

雪穂「いいから。あ、身体凝ってるでしょ?そこ、寝転がって」

雪穂「いつものマッサージ~♪」

穂乃果「…お風呂は?」

雪穂「寝て準備しててってこと!」タタタッ…

穂乃果「ふぅ…、全く」


雪穂「よっ…」グググ…

雪穂「…はぁっ。凝ってるねー、すごい筋肉」

穂乃果「いちち…雪穂が、毎晩こうしてくれるおかげで…うぎゅっ…なんとか保ててるんだよ…」

穂乃果「そうじゃなきゃとっくに、倒れてた、かも…」

雪穂「へー。じゃあお姉ちゃんにとって私が、心の支え?」

穂乃果「…そう、だね…あたたたっ!!痛いよっ!」

雪穂「へへ、小っ恥ずかしいこと言ってるから」

穂乃果「もー…」

雪穂「…でも、今こうしてお姉ちゃんの役に立てるのは、嬉しいよ」

雪穂「去年の今頃なんか…荒れに荒れてたじゃん。お姉ちゃん」

穂乃果「…」

雪穂「トップ争いに必死でさ。海未さんやことりさんとも絶交しちゃって…」

雪穂「…毎晩寝言でうなされてたじゃん。『海未ちゃん、ことりちゃん、ごめんね』ってさ」

穂乃果「…もう、いいじゃん」

穂乃果「おかげで、こうしてA-RISEになれたんだし」

雪穂「でもさ、ホントにそれで…」

雪穂「…うぅん、なんでもない。お姉ちゃん、頑張ったんだもんね」

穂乃果「…」

雪穂「で、念願のA-RISEはどう?楽しい?」

穂乃果「…アイドルは楽しむものじゃないよ。楽しませるもの」

雪穂「でもやりたかったことなんでしょ?やりたいことやってれば楽しいと思うけどなぁ」

穂乃果「それは…多分ライブをやってからでないと」

雪穂「そっか。まだ実際にライブやったわけじゃないもんね」

雪穂「うぅ…見に行きたいなぁ…。こっそり忍び込めばバレないんじゃ…」

穂乃果「…ダメだよ?」

雪穂「はいはい。分かっております生徒会長どの」

穂乃果「ふふ…来年、雪穂がUTX生になったら…いくらでも見せてあげるから」

雪穂「…あ」

穂乃果「ん?どうしたの?」

雪穂「…そのこと、なんだけどさ」


雪穂「私…、UTX、行かない」


穂乃果「…」

穂乃果「…どうして?」

雪穂「え、えっと…仲のいい友達がどうしてもUTXに行きたくない、って言ってて」

雪穂「私もその子と同じ学校に行きたいから、だから…都内の別の高校を選んでるんだ」

穂乃果「…そう、なんだ」

雪穂「…ごめん。お姉ちゃん」

穂乃果「別に、いいよ。雪穂とはこうして、夜会えれば」

穂乃果「…けど、雪穂自体はどう思ってるの?」

雪穂「え?」

穂乃果「…いや、いいや。こんなの、どうでもいい…」

雪穂「…っ」

雪穂「わ、私もっ…!」

雪穂「…私も、今のUTXは、行きたくない…かな」

穂乃果「…」

雪穂「今のA-RISEも好きだし、お姉ちゃんだって、バックダンサーだって大好きだけど…」

雪穂「…でも、それでUTXに行きたいか、って言われると…行きたくない」

雪穂「なんか、怖いから…。今のUTXって」

穂乃果「…怖い、か」

雪穂「あ、でもさ、UTXって今…あ、やっぱいいや…」

穂乃果「言いなさい」

雪穂「…今、新しいスクールアイドル、いるんでしょ?」

雪穂「しーきゅーと…?だっけ」

雪穂「ライブ見たよ。…すごかった」

穂乃果「A-RISEと、どっちがすごい?」

雪穂「それは…A-RISEだよ。絶対」

穂乃果「…そう」

雪穂「…けど」

雪穂「なんか、楽しかった」

穂乃果「…楽しい?」

雪穂「A-RISEを見るとさ、すげー、とか、かっけー、とか…感嘆符ばっかり出てくるんだけど」

雪穂「C☆cuteはそれより、楽しそう、だったり、やってみたい、だったり…そう思わせてくれたの」

雪穂「私ね、…C☆cuteを見るためなら、…うぅん、C☆cuteになるためなら、UTX入ってもいいかな、って、ちょっとだけ思った」

雪穂「夢に溢れてた、から…」

穂乃果「…夢」

穂乃果「夢、って…なに?」

雪穂「え?」

穂乃果「ねぇ、雪穂の夢は?」

雪穂「ど、どうしたの突然…」

穂乃果「おしえて」

雪穂「…え、えっと…そうだなぁ…」

雪穂「お、お嫁さん!…なんちて」

穂乃果「ふふっ…あははははっ!雪穂っぽい!いいんじゃないのー?お嫁さん」

雪穂「お、おぉ…!お姉ちゃん笑った!」

穂乃果「えっ…、あっ…」

雪穂「…なんだ、まだ笑えるんじゃん」

穂乃果「…バカ。ごめん、もう寝るね」

雪穂「ん。おやすみ。明日も…頑張ってね」



穂乃果の部屋


ガチャッ

穂乃果「…ふぅ」

穂乃果「お嫁さん、か…。ふふっ…、ふふふふっ…」

穂乃果「…夢」

穂乃果「妹の夢すら、知らなかった」

穂乃果「…ましてや、他人の夢なんて」


穂乃果(絵里先輩が度々語る、夢)

穂乃果(何度も耳にした言葉。夢のために、夢を実現するために)

穂乃果(彼女はそのために、あらゆる手段を使ってA-RISEを強くしてきた)

穂乃果(でも私は、その夢の内容を一度も聞いたことはない)

穂乃果(彼女の夢って…何なんだろう)

穂乃果(彼女はA-RISEを強くして、どうしたいんだろう)

穂乃果(…強くなって、行き着く先は、どこ?)

穂乃果(私が欲しかった頂点って…)


穂乃果「…やめよう」

穂乃果「考えても…無駄なことだよ」

穂乃果「今はただ…目指すんだ。迷いなく、突き進む」

穂乃果「トップアイドルに…なる」

穂乃果「…だから今日はもう…おやすみ」

今日はここまでです
実は9話の新曲に歌詞をつけたいのだけどオリジナルの歌は引かれないだろうか心配 まだなんにも考えてないけどさ
特に気にしない人が多ければちょいちょい考えて行きたいと思います 自分には無理だと思ったら簡素に済ませます じゃ、ほなな

歌詞頑張ります まだサビのほんの一部しかできてないけど
今日は色々あってまとめて貼ります リアタイで追ってる人はおるまいし関係ないだろうけど

小泉家


花陽「えと、そうだなぁ…ここはー…」

海未『あまり気負わないように、思ったままの言葉がいいと真姫も言っていましたよ』

花陽「そっか…うーんと、じゃあ…」



~回想~


海未「今回の曲の歌詞は、花陽と一緒に考えたいのですが、どうでしょうか」


花陽「えぇぇぇっ!!?」

ことり「花陽ちゃんと?」

真姫☆「ど、どうしてよ…?どういう風の吹き回しなの?」

海未「先ほど、花陽が言っていたじゃないですか」

海未「私も自分だけのなにかが出来たら、と」

花陽「い、言ってたけど…」

海未「けれど、アイドルとして活動できることで十分だと、自分では納得していたのでしょう?」

海未「しかし、私にはそれは、自分を無理やり納得させているように思えてならなくて」

希「海未ちゃんは花陽ちゃんがまだそういったこと、したがってるって思うん?」

海未「まだ…というより、一度でもしたい、って感情があったのならやるべきです」

海未「あなたがそう言ったんでしょう?花陽」

花陽「うっ…!い、言ったけど…!」

真姫「んふふ、いいじゃない。花陽、初挑戦同士、一つの曲を作り上げましょうよ」

ことり「うん、キノちゃんと花陽ちゃんの曲…今までとは毛色の違った、面白い曲になるかも!」

真姫☆「まぁ…たまにはそういうのも悪くないかもね」

希「うち賛成~!」

花陽「ひえぇぇぇぇぇっ!!?」


~回想おわり~



花陽「…はぁ。作詞かぁ…」

海未『作曲や衣装作りはさておき、作詞などその気になれば誰でも出来ることです』

海未『そもそも脚本専攻だからといって私に作詞を頼む方がおかしいと思います。…中学の頃には似たようなことはしてましたが』

花陽「え?なんて…?」

海未『なんでもありません!ですから初挑戦であろうとも難しいことなんて何一つありません!』

海未『ちょっとかっこよくて可愛らしい詩的な文章を綴ってしまえば、ほら、出来上がりです』

花陽「そんな簡単に出来たら苦労しないよぉぉ…」

海未『簡単だと思うのですが…』

花陽(…やっぱり海未さん、作詞の才能があるんだなぁ…)

花陽(…でも)


花陽「少し、懐かしいなぁ…」

海未『…懐かしい?』

花陽「あのね、実は…初挑戦、って決めつけられてたけど」

花陽「私、昔自分の曲を作ったことがあったの」

海未『そう、なんですか…?』

花陽「うん。作詞だけじゃなくて、作曲も」

花陽「って言っても、本当に簡単な、誰でも作れそうな曲なんだけど」

海未『どんな歌、だったんですか?聞かせて頂けませんか?』

花陽「えっ…、うーん…もう忘れちゃったよ」

花陽「頭の中で考えたメロディに、感謝の思いをそのまま乗せた歌詞だったから」

花陽「歌ったのも、多分…一度きりだったと思う」

海未『そうですか。残念ですね…』

海未『…感謝の思い、とは?誰かに向けて歌ったものなんですか?』

花陽「うん。泣いてた私に、手を差し伸べてくれた人に向けて歌った曲」

花陽「それが私の…生まれて初めての誰かに見せたライブ、だったのかも…」

海未『…ライブ。ただ歌っただけではなく…?』

花陽「えっ…、あぁ、ほとんど歌だけだったよ。ただ身体をゆらゆらさせて、ちっさな砂場のお立ち台でのライブ」

花陽「それだけでもとても緊張して、歌いきった後はちょっぴり泣いちゃったけど」

花陽「…あの時のたった一人だけの拍手が、今も胸に残り続けて…歌うための原動力になっているのかも」

海未『…いい話ですね。その話を歌詞にしてみては?』

花陽「えぇっ!?だ、ダメだよ…キノちゃんはこの歌を学校に行きたくなる曲として書いたんだから…」

花陽「私の勝手な思い出を乗せたら別の曲になっちゃうよ。それはダメでしょ?」

海未『ふふ、そうですね。わかっていました』

海未『メロディと言葉がチグハグでは良い物語は生まれませんからね』

花陽「おぉ…!海未さん、さすが…!脚本家って感じです!」

海未『…つい最近授業で似たような言葉を聞いただけですよ。受け売りです』

海未『しかしまぁ…感謝という意味では共通する点もあることですし、その時の気持ちを参考にするのも悪い方法ではないと思います』

花陽「はい、分かりました。それも一緒に考えてみるね」

海未『よろしい。…っと、そろそろ夜も更けてきた頃ですね。明日も朝から大変でしょうし…』

花陽「うん、おやすみなさい」

海未『えぇ、また明日』

翌日 早朝

多目的ホール



凛「ふんふんふふんふふ~ん…ふんふんふふ~んふんふんふふ~ん…」



ガチャッ

にこ「よしっ、一番のり…って、凛…」

凛「あ!おはよう!」

にこ「あ、アンタ…いつからいたのよ?」

凛「んー?昨日のおさらいとー、発声練習してたから~…」

凛「1時間前くらい?」

にこ「うぇっ…!学校が開いて直後くらいじゃないの、それ…?」

凛「開く前から来てたよ?」

にこ「えぇ…どんだけ練習が楽しみなのよ…。昨日もアンタだって倒れるくらい疲れてたのに…」

にこ「休息は十分…なんでしょうね?」

凛「全然ピンピンしてるよ!一睡すれば全快!ほらほらっ!」ピョンコピョンコッ

にこ「し、信じらんない…。私だって今日は歌の練習だから早起きできたようなものなのに…」

にこ「…ホントに、平気なの?」

凛「もー、しつこいなぁにこ先輩!先輩とは身体の作りが違うの~!」

凛「さぁさぁ、絵里先輩が来る前に発声練習、やっちゃおうよ!」

にこ「わ、わかった…」



音楽室


真姫☆「…」

ことり「…」

海未「…」

希「…」

真姫「…」


真姫☆「…花陽が、来ない…」


ことり「ま、まさかっ…!またなにか事件に…!?」

真姫☆「流石にそれは、ないと思うけど…」

希「…電話、してみよか」

海未「まさか…」



花陽「お、遅れましたぁぁっ!!」ガタンッ!!


真姫「は、花陽…、何してたのよ」

海未「もしかして、花陽…あなた、作詞のことを考えて…」

花陽「…はい。ずっと眠れなくて…」

海未「や、やっぱりですか…」

ことり「よくあることなの?」

海未「えぇ…作詞を始めた頃は考え出すと夜も眠れなくて」

海未「あの頃は私はアイドルをしていませんでしたから、まだ良かったのですが…」

希「花陽ちゃん、疲れてる上に作詞で眠れないとなると…」

真姫「体力が回復しないわよ?大丈夫なの?」

花陽「だ、大丈夫ぅぅ…!」

真姫☆「…寝坊してくる人が言えたことじゃないわね」

花陽「うぅ…ごめん真姫ちゃん…」

真姫☆「仕方ない。今日は練習メニューを急遽変更ね」

ことり「変更?」

真姫☆「振り付けの考案とダンスの基礎をやるつもりだったけど…」

真姫☆「花陽の心配事をなくすために、作詞を全員で手伝いましょう」

花陽「て、手伝う…って、こ、これは私が任されたことだし…」

真姫☆「別に、直接歌詞を考える、とかじゃなくて」

真姫☆「アイデアの手助けになりそうなワードをみんなで考えましょう、ってこと」

海未「歌の世界観を皆で語り合えば、自ずとそれに見合った歌詞が浮かんでくるものです」

花陽「は、はぁ…」

希「世界観…。西木野さんはこの歌を学校に来たくなる、って思いで書いてたんよね?」

真姫「うーん…、私のそのままの気持ちをあえて言葉にすればそう、ってわけだから、正確にはそうじゃないのだけど…」

真姫「でも大体はそんな感じね…です」

ことり「キノちゃんまだ希ちゃんには敬語が抜けないねーえへへ」

希「うちも西木野さんのままやからねー…人のこと言えないわ」

真姫☆「…というわけだから、みんなで学校…つまりUTXのことについて語りましょう」

海未「UTX…ですか。しかし…」

花陽「前も同じようなことしたような…。取材の時だったっけ」

ことり「あの時も、UTXは混然一体とした異世界みたいなところ、ってイメージでステージを作ったんだよね」

真姫「異世界…。そうね…、そうとも言えるかもしれないけど…」

真姫「…けど、私にとってUTXは…過ごしやすい場所にはなったけれど、異世界とは思えないわ」

真姫「だって私が過ごしているのは教室と歌手専攻のクラスと、アイドル応援部だけだもの」

希「一日中歌と触れ合ってる西木野さんにとってUTXは異世界ってほどカオスな空間じゃない…もんね」

真姫☆「だけどUTXがカオスな空間だっていうのは間違いないことよ。それは個人にとってはそういう見方もあるけれど…」

真姫「でも!この歌は私の感情で作ったものよ!事実はそうだとしても私にとってはそうじゃないわ!」

海未「…ふむ、なるほど。つまり…」

海未「前の曲の場合は、客観的なUTXを、外部に紹介する、…そういうコンセプトであったのに対して」

海未「今回は…そう、主観的。個人がそれぞれ抱く、UTXの魅力…それを前面に出していく方針…でしょうか」

花陽「主観的な…UTX…」

真姫「思わず学校に行きたくなるような魅力…。なるほどね!」

希「それは西木野さんにとってのうちら、みたいな感じ?」

ことり「そうなる…かも?」

花陽「そ、それだったら私にとっても身近なものですし、いけそう…!よし、C☆cuteを題材に…」

真姫☆「待って!」

花陽「え?」

真姫☆「…あなたねぇ、それはキノと、そしてあなたにとっての魅力でしょ?」

花陽「え…そうだけど…それがいけないの?」

真姫☆「確かにそれは主観での魅力かもしれないけど、それが他人にとっての魅力とは限らないでしょ」

花陽「え?え?ど、どういうこと…?」

海未「…真姫が言いたいのはこういうことです」

海未「主観的な、とは言いましたが、そもそもUTXの魅力が歌を聴いてくれている人にも伝わらなければ意味がない」

海未「誰かの経験をそのまま歌にしても、その魅力が十分に伝わるとは考えにくいでしょう」

海未「はっきりと、誰しもに共通する…UTXでの日々を過ごせば、確かに伝わってくる魅力」

海未「そんな客観的な、主観的魅力を文章にするべきだ、ということです」

花陽「き、客観的で、主観的ぃぃ…!?」

ことり「い、意味がわからないよ…」

希「…誰もが感じ方が違っていても、その中で共通する想いがある」

希「それを抜き出せ…って言いたいのかな?」

真姫☆「えぇ、そういうこと」

花陽「む、無茶だよ…。だって私は私の感じたことしかわからないんだもん…」

花陽「誰かの感じ方と比較する、なんて…」

真姫「初心者に対して、注文がキツすぎるんじゃない?もっと気楽に…」

真姫☆「ダメよ!」 海未「ダメです!」

真姫「ひっ…!ゴメンナサイ」

希「流れるような謝罪やね」

海未「作詞に妥協は許されません!キノの感じた思いを全ての人に、限りなく平等に伝えられるような…そんな歌詞を考えるべきです!」

真姫☆「ベストを尽くさなければA-RISEに打ち勝つなんて到底無理…!舐めてかかったら私たちの命はないのよ!」

花陽「そ、そうなんだよね…うぅん…思った以上に大変だなぁ…」

ことり「作詞って難しいんだねー…。私がやらなくてよかった」

真姫☆(…あなたも別世界ではやってたんだけど)

真姫☆「だから、そのノルマを達成するためにこれからみんなで…」


ガタンッ!!


親衛隊A「は、花陽っ!!」


真姫「あ、あなたは…」

花陽「こんな朝早くにどうしたの?あ、そっか!昨日手伝ってくれるって言ってたからそれの…」

親衛隊A「そ、そのつもりだったんだけど…!それがねっ…!!」

花陽「…ん?」

廊下


花陽「こ、これはっ…!」


『決戦!A-RISEvsC☆cute!勝つのはどちらのスクールアイドルか!』

『クリスマスイブに火花散る!運命の女神が微笑むのは果たして…!?』


ことり「校内新聞…」

希「…が、掲示してあるね」

海未「って、昨日の今日ですよ…?まだ誰にも言ってないはずなのに…」

親衛隊A「ってことはこれ、ガセネタじゃない、ってことだよね…?」

親衛隊F「い、いったい誰がこんな…」

親衛隊C「…謎ですわ」

親衛隊E「そ、そうですね…」

真姫「ていうかあなたたち…朝からこんな集まって…」

親衛隊B「昨日小泉さんに衣装作りを手伝って欲しい、って言われたから、とりあえず自分だけでも行って話を聞こう…って思ってたら」

親衛隊C「みんな、考えることは同じだったようですわね…」

親衛隊E「え、えへへ…」

真姫☆「花陽の人徳には毎回驚かされるわね。…まぁ、それはいいとしてこれは…」


写真部部長「…おのれ…」ヌッ…


真姫☆「ひゃわぁっ!!?」ガバッ←透明マント装備

写真部部長「…あれ?西木野さん…消えた?」

真姫「え、わ、私ならここにいるけど…?」

写真部部長「ホントだー…。じゃあ今のはー…?」

希「そ、それは置いといて…これ、あなたがやったんやないん?」

写真部部長「…当たり前っすわー。うちは、写真部ですしー…」

海未「ということは、これを貼ったのは…」

写真部部長「…UTXのハイエナ…こと、新聞部の連中だねー。ハァ…手の早いことで…」

ことり「そうなんだ…。って、部長さんはどうしてこんなに早く学校に?」

写真部部長「…これを、うちが先にやろうとして…、追い抜かされちったー…」

真姫「あ、アナタも人のこと言えないじゃない…」

親衛隊B「…新聞部って前のステージ製作のときは…」

親衛隊D「来てなかったよねぇ…?」

写真部部長「アイツらはー…、注目集めないようなことはー…やらない主義だかんね…」

写真部部長「あんときはまだあなたたち無名だったしー…手伝うなんてことはしなかったけどー…」

写真部部長「最近知名度が出てきたわけでー…格好のネタとして食らいついてきたってわけだわー…」

海未「にしても耳が早すぎませんか…」

希「あなたもすでに知ってたんよね?うちらがA-RISEとライブ対決するって」

写真部部長「うん、独自のルートで…。アイツらはそれ以上に目ざといってことー…」

花陽「へぇ…」

親衛隊E「あ、あの…その、西木野さん、のお姉さん…今、消えなかった…?」ヒソヒソ…

親衛隊A「ま、まぁ彼女のことだし消えるくらいアリなんじゃないの…?」ヒソヒソ…

親衛隊F「真姫ちゃん、多分もっとヤバい秘密抱えてそうだしね…」ヒソヒソ…



真姫☆「…」


真姫☆(…新聞部、ねぇ)

真姫☆(おそらく既に学校中の掲示板に同じ新聞が掲示されてるはず)

真姫☆(今日、みんなが登校してくる頃には大きな噂になってくるでしょう…)

真姫☆(A-RISEとC☆cuteが対決する…、UTX始まって史上、これほどエキサイティングなイベントもないでしょうから)

真姫☆(…ふむ)


チョンチョン

真姫「ひゃぁっ!?な、なに…?」

真姫☆「…私よ」ヒソヒソ

真姫「え、な、どうしたの…?」

真姫☆「みんなに提案したいことがあるから、あなた私の代わりに口パクして」

真姫「へっ?」

真姫☆「コ○ン君がア○サ博士がいるときに変声機でやるやつよ。お願い」

真姫「え、あ、そのっ…」


「みんな、聞いて」



親衛隊C「ん?西木野さん、どうしましたの?」


真姫「へっ…、あ、え、あっと…」

真姫☆「これは、あなたたちにも話してなかったわよね。A-RISEとの対決」

真姫「…!」パクパク

親衛隊B「う、うん…新しい曲を使ったライブ、としか聞いてなかった…」

親衛隊D「てか、A-RISEとの勝負って…ホンキ!?」

真姫☆「えぇ。…A-RISEと言っても、来年のA-RISE、今のバックダンサーと、だけどね」

写真部部長「へー…だけどそれでも無謀だと思うなー…」

真姫☆「…かもしれない。まぁ、いいのよ。勝負って言っても結局はライブだし」

真姫☆「勝ち負けなんて大した問題じゃない。要はどちらが観客を沸かせられるか、の問題だからね」


花陽「…えっ?」


真姫☆「ライブ自体は、いつもどおりやるだけのことよ。それはいいんだけど…」

真姫☆「こんな新聞を貼り付けられたら、きっとUTXは大騒ぎになるわよね」

親衛隊A「そ、そうだよ!あなたたちとA-RISEだなんて…大事になるよ!?」

親衛隊E「い、いいの西木野さん…!?いまっ…、今すぐ取り下げてもらったほうがいいんじゃ…」

真姫☆「逆よ」

一同「…え?」


真姫☆「もっとこのことを、新聞部には取り上げてもらいましょう」

真姫☆「このUTXを…熱狂の渦に巻き込むほどに!」

アイドル応援部 部室


海未「な、なにを考えているのですっ!新聞部のスクープをさらに大きなものにするだなんて!」

真姫「わ、私が言ったんじゃないわよ!!」

希「…どういうことかわかってるん?真姫ちゃん」

ことり「騒ぎが大きくなればそれだけ、真姫ちゃんの存在も…」

真姫☆「…知られるかもしれない。それはわかっているわ」

真姫☆「でもそれ以上に、こちらに有利な状況を作れるかもしれないのよ」

花陽「有利な状況…?」

真姫☆「これまでのUTXは、限りなく近い存在としてA-RISEがいたにも関わらず、規律によって一定以上の熱狂を封じられていた」

希「生徒とA-RISEは会話をすることはできない…そういう決まりがあるんよね。アイドル専攻が、えりちがそう…決めてたはず」

海未「学生は学生として、アイドルとは別のものという考え方からプライベートでの触れ合いは禁じられているのでしたね」

真姫「え、そうなんだ…。知らなかったわ」

花陽「もちろん生徒としての身分で、なら大丈夫なんだけど、アイドル活動に関わる会話は一切しちゃいけないんだ」

真姫☆「そう。彼女らの内面を知ることができるのは彼女たち自身かアイドル専攻生のほんの一部…そして絵里くらいね」

真姫☆「あとは雑誌の取材とか…触れ合える機会が少ないせいで普段はどうしても盛り上がりに欠けちゃうのよね」

花陽「それをプロ級のパフォーマンスで補う…そうしてA-RISEは人気を不動のものにしてるんだよね」

ことり「そう考えるとA-RISEってすごいね…」

真姫☆「けど今回のライブ対決、大々的に宣伝することでUTX生にライブまでの時間の熱狂を味わってもらうのよ」

真姫☆「新聞部の取材を受け、一般の生徒にも手伝ってもらったり、なんにせよ多くの人と関わる」

真姫☆「それまで抑圧されてきた、『日常での盛り上がり』を、UTX全体に感じてもらえれば」

真姫☆「アイドル専攻の暗闇も吹き飛ばすほどの、明るいスクールアイドル…そういうのが存在するんだって、みんなもわかってくれると思うの」

ことり「明るい…、花陽ちゃんの夢見た笑顔のスクールアイドルを見せつけるっ…!」

希「それを、このタイミングで成し遂げるってこと?」

真姫☆「…そういうこと」

花陽「ま、真姫ちゃんっ…!」

真姫☆「私たちの活動をみんなに奥深くまで知ってもらえれば、もしも私たちが負けて、解散してしまっても」

真姫☆「私たちの意思を継いでくれる人も出てくるかもしれない。そういう意味でも、今は盛り上げることを重視したほうがいいと…」

真姫「待ってよ!」

花陽「…キノ、ちゃん…?」

真姫「本当に、大丈夫なの…?その、新聞部に頼って」

真姫「盛り上げるより前に、彼女らがA-RISEの肩を持ったらどうするのよ…」

海未「…そうですね。あることないことを記事にされて、逆効果になる可能性だって考えられうる」

海未「それは考慮していないのですか?」

真姫☆「…」

花陽「それは…」

ことり「そっか…。悪評を書かれたとして、いざこざが起こってしまえばそれだけで時間が奪われちゃう…」

希「今でもギリギリなうちらにとってそれは致命的やね…。…真姫ちゃん」

真姫☆「…」

真姫☆「…それは」

真姫☆「たぶん、大丈夫…だと思う」

海未「…大丈夫?」

真姫「なんでそう言えるのよ」

真姫☆「…あの新聞記事、全部読んだ?」

ことり「全部…はまだかなぁ…?色々話してて意識がバラけてたし」

希「あぁ…、真姫ちゃんは会話に参加してなかったから新聞全部読めたんか」

海未「それが、なにか…?」

真姫☆「…あの新聞、私たちの会話を盗み聞きしてたかのような正確な内容だったわ」

真姫☆「多分、盗み聞きしていたのでしょうね」

真姫「や、やり口が狡猾じゃない…!やっぱり信用できないわ!」

希「…盗聴は、いかんよね…うん、せやよね…」

真姫「あ、えっと…先輩のことを言ったわけじゃ…」

真姫☆「…でもそれにしては、重要な要素が書かれていなかった」

ことり「なにそれ?」

花陽「あっ…!もしかしてっ…」

真姫☆「…そう。勝利した際の条件。私たちならばパンフレットへの掲載。彼女たちならばC☆cuteの解散」

真姫☆「あの会話を聞いていたならば確実に耳を引くはずのその情報をあの新聞は書いていなかった」

花陽「だから真姫ちゃん、親衛隊の子たちに『勝ち負けなんて大した問題じゃない』って言ってたんだ…!」

海未「しかし、それはなぜ…?そんなマスコミならば真っ先に食いつきそうなネタを…」

真姫☆「…きっと新聞部は、そんな誰かが不利になるような情報は書かない。そういうポリシーを持っているのよ、多分」

真姫☆「私たちが理事長にパンフレットへの掲載を直訴しに行ったなんて知れたら、他の部からの反感を買うかもしれない」

真姫☆「絵里が私たちの解散を提示したのが知れたら、私たちのファンや良識を持った人々の反感を買うかもしれない」

真姫☆「あの記事はそういう誰かが嫌な思いをしそうな内容を排除した上で書かれていた」

真姫☆「…きょうび、珍しいくらい誠実な新聞記事だったわ」

ことり「ってことはっ…!あの新聞を書いた新聞部のこと…!」

真姫☆「私は、信用してもいいと思う」

真姫☆「彼女たちはきっと、このUTXを盛り上げるのに一役買ってくれる…私たちの味方になってくれる」

海未「そうですか…。わかりました。そこまで言われては私も賛同せざるを得ませんね」

真姫「顔も見たことない人たちを信頼…。私には考えられないけれど…」

花陽「…それでいいと思う。私たちだってそうだもん」

花陽「私たちが見たこともないような人に、どこかで応援されているかもしれないんだし」

花陽「私たちも、応援してくれるその人たちを信頼したい。だってスクールアイドルなんだから」

希「色々な人に支えられて大きくなっていく…花陽ちゃんの夢が本当に実現しつつあるんやもんね」

花陽「はいっ!」


真姫☆「…」

真姫☆(…『ファンの熱狂』っていうのは人気を保つ上でとても大事なことのはず)

真姫☆(絵里はそれをあえて切り捨て、実力だけでA-RISEを頂点へと誘おうとしている)

真姫☆(アイドル専攻を絶望で染めて、数少ない強い才能を見つけ出すのならばわかるけど…)

真姫☆(わざわざファンとの触れ合いの一切を禁止にして、UTX全体の熱狂を抑えた理由は何…?)

真姫☆(前は『憧れ』を大きくして人気に繋げようとしてるのかとも思ったけど、熱狂に勝るほどのものじゃないのは絵里だってわかってるはず)

真姫☆(やはり、そうしてこそA-RISEが真の強さにたどり着けると信じてのもの…なのかしら)

海未「ふぅ…今日は話し合いだけで貴重な朝の時間を消費してしまいましたね」

ことり「でも有意義な時間だったと思う!」

花陽「はいっ…!それにほんの少し、作詞にも役立ちそうな感じが…!」

真姫「ホント?よかったじゃない!」

希「意外と順調に来てるんと違う?」


真姫☆「…さてと」バサッ←透明マント装備


海未「真姫?どうしたのですか、いきなり透明になって…」

真姫☆「そろそろ、ってところかしらね…」

真姫☆「あなたたちも、覚悟しといたほうがいいわよ」

希「へ?」


ダダダダッ…!!


ことり「な、何…?地面が揺れて…地震?」

花陽「この音はっ…!?」


ガチャンッ!!


「あのっ!C☆cuteがA-RISEと対戦するってホントですか!!?」「A-RISEと一緒にライブするんですか!?」

「それとも別々の場所で!?」「あ、海未ちゃん!ファンなのサイン頂戴!」「あぁ~!花陽ちゃん近くで見るとすっごいかわいい!」

「A-RISEと交流があるって噂ホントですか!?」「明日の空いてる時間教えてください!!」「希先輩は卒業してもC☆cuteに在籍する予定は!?」



ことり「ひぃぃっ!!?雪崩のように人が流れ込んできたっ!?」

海未「ちょっ…わぷっ!登校してきた人々があの記事を読んでっ…!」

希「覚悟しろ、って…このことかいなぁぁぁっ!!」

真姫「あ、あ、あ、ひ、人…人がぁぁあぁぁぁ…!!あわわわわわ…ガクリ」

花陽「き、キノちゃああぁぁんっ!キノちゃんが意識を失っちゃった!!」


ガヤガヤ…



ノソノソ…


プルルルル… プルルルル… ピッ


真姫☆「はい、もしもし」

親衛隊F『こちら親衛隊。真姫ちゃん、だよね?』

真姫☆「えぇ、姉の方のね。…で、そっちは?」

親衛隊F『うん、それが…って、なんか騒がしくない?』

真姫☆「気にしないで。ちゃんと聞こえてるから」

親衛隊F『あ、あぁ…それならいいんだけど。新聞部との取材の件だけど』

親衛隊F『あちらは是非、だってさ。時間の許す限り、いつでも頼みたいって』

真姫☆「…オッケー。じゃあ今日の昼。早速取材を取り付けて欲しいの」

親衛隊F『了解。ふふっ…楽しいことになってきちゃったね』

真姫☆「えぇ。…最高に楽しいパーティよ。パーティ会場は、UTX学院全ての、ね」

今日はここまで この調子だと9話は…もとい9話もかなり長くなってしまうと思われる
最近は5レスに3時間ほどかけてしまうようになってしまったので隔日か3日に1更新のペースになります やる気があれば続けてもありうる
それじゃ次回をお楽しみに ほなな

若干スランプ気味なので今日の夜も更新できないかも
どうしてもアレな場合唐突に何かが挟まる可能性もありなん

どうもこんばんは 相変わらず脳みそ動かないので小休止挟みます
もう数日休ませれば使い物になるはず で、クリニックでもやろうかなと思ってたのですが
上でデュエルの話が出てたので全く頭使わずに済むそっちで行きます つまり遊戯王SSです
知らぬ人にはさっぱりだろうが今回は始めたての人も真似できるスタンスで行く予定なんで良ければ見てってね! じゃ、始めます

真姫「ハロー。ドクター真姫よ」

凛「べーたかよちん!凛だにゃ」

真姫「ノンストップエンドレスな世界をババババーンと書き連ねていくつもりだったんだけど」

真姫「どうやら完全な創作を続けてると脳髄がオーバーヒートを起こしてしまう体質だったようね」

凛「…えー、途中でなにか挟まることはない、と言っておきながらも挟まってしまったにゃ」

凛「まぁ、前スレ以前でも同じ感じだったしいいんじゃないかな」

真姫「少しでも長文を書くためのリハビリになればいいんだけどね」

凛「で、今日の題材は…」

真姫「遊戯王ね」

凛「…なんでそうなるの」

真姫「最近アニメが面白い展開になってきているわよ!」

真姫「5D'sで止まっている人も過去のキャラクターとのクロスオーバーが繰り広げられてるからおすすめよ!」

凛「へー。凛は魔界劇団のフィールド魔法が出てきたあたりで見るのやめちゃったからそこら辺わかんないなぁ」

真姫「最新話しっかり見てるんじゃない!」

凛「まぁまぁ。けどさー、アニメを見て遊戯王のカードゲームにも興味を持ったとして、まずなにを始めればいいの?」

真姫「まず何を…ね。半端な気持ちでデュエルの世界に入ってくると怖いお兄さんにボコボコにされる可能性があるけど…」

凛「え、マジで?」

真姫「でも現実世界じゃ滅多にないから安心ね。気楽に始めるとするなら、そうね…」

真姫「やはり名前にもあるようにスターターデッキを買うといいんじゃない?」

凛「あー、そうだね。最低限は戦えるように作ってあるし」

凛「でもでも!スターターデッキって言ってもさ!実際は初心者向け過ぎると思わない!?」

凛「召喚方法に何があるか知らない人レベルだよあんなの!2015だけ買ってもペンデュラム召喚も満足に出来ないにゃ!」

真姫「満足…!?」

凛「え?」

真姫「…ごめんなさい、何でもないわ。なぜかその単語に反応してしまっただけ」

凛「は、はぁ…」

真姫「でも、そうね。モノにもよるけれどスターターは効果が控えめのものが多くてアニメのような過激なデュエルを期待している人たちには少々物足りないかも」

真姫「…ホープレイVとかは除いてね」

凛「もっとド派手なデュエルが楽しみたい!そんなときはー?」

真姫「ふふっ、そういう人のために、構築済み40枚ほどのデッキ、ストラクチャーデッキが存在するのよ!」

凛「おぉー!!そうそう!そういうのだよ!」

凛「ストラクチャーデッキっていうのは、スターターデッキとは違いテーマを重視して作られているデッキなの!」

凛「共通のカテゴリ、えっと…なんたらと名のつく~的なカードのことね。…に属するカードを多く収録しており、回し方さえ理解できればあとは少しの工夫ですごく強いデッキになるの!」

真姫「ただ難点なのは、一つ買っただけじゃまともに使えないことね。そうじゃない場合もなくはないけど、大半がそう」

凛「ストラクチャーデッキのほとんどはハイランダーに近い構築、つまりほとんど一枚ずつしかカードが収録されてないんだにゃ!」

凛「有用なカードは3枚入れても足りないくらいなのにそれじゃ満足できない!だから…基本的にストラクチャーデッキは3つ購入が基本なんだよねー」

真姫「同じ商品を3つも購入するなんて気が引けるって人もいるかもしれないけど…え?いない?…そうよね、ラブライバーに同じ商品を3つ購入する程度で気が引ける人なんていないわよね」

凛「それは偏見じゃないかなぁ…」

真姫「って言われてもやっぱりどうすればいいかわかんないよー、…ってことで」

真姫「今回は私たちでストラクチャーデッキ3つをそれぞれ購入してきて、エクストラは何枚か自分のを流用して戦ってみましょうか」

凛「おぉー!いいねいいね!」

凛「凛まだマスター・オブ・ペンデュラム3箱買ってなかったんだー!ぬふふ、ちょうどいい腕試しに…!」

真姫「ただし」

真姫「…今回購入するのは、同じストラクチャーデッキ3箱、ではないわ」

凛「え?」

真姫「数多く存在するストラクチャーデッキの中から3つ選んで、1箱ずつ購入するの!」

真姫「そしてその3つを組み合わせてデュエルしましょう!」

凛「えぇぇぇっ!!?そんなのやったことないよ!?」

凛「これ初心者のための『私にもデュエル、始められるかな?』講座じゃなかったの!?」

凛「ストラク1個ずつなんて縛りプレイ以外の何者でもないよ!」

真姫「確かにそのつもりよ。でもね…」

真姫「最近のストラクチャーデッキは強いわ。そりゃもう3つ購入して組み合わせるだけでとてつもなく強い。ダークロウとかダークロウとか、あとダークロウとか」

真姫「でも初めからその強さに酔ってしまうと、ガチデッキで勝利をリスペクトすることしか考えられなくなってしまうのよ」

真姫「思い出して、凛。持っているカードも財布の中身も少なかった時代を。あなたにもあったはずよ」

真姫「ストレージから使えそうなカードをひたすら探し続け、10円のカードだけで作ったデッキとか、そんなことあったんじゃない?」

凛「っは!確かに…!パックを買ってとりあえず出たカードで紙束のようなデッキを組んでた時代も、凛にはあったよ…!」

凛「話にならないほど弱かったけど、その中から自分なりの勝ち筋を見つけることが楽しくて、時間を忘れてデュエルしてたにゃ…!」

真姫「そうよね。決められた強さに従うより、自分が頭をひねって考え出した、ほんの一筋の光」

真姫「それを追い求めるのが、ロマンってものじゃないかしら…!」

凛「…つまりガチデッカーじゃなくてファンデッカーに仕立てあげたいんだね」

真姫「そうよ!意味なく二つのテーマを合体させて『うわー、これ純でやった方がいいわ』って思うようなファンデッカーになりなさい!」

凛「…」

凛「でも遊戯王のカードプールは広くて、様々な効果を持っているものだにゃ」

凛「一つのテーマを突き詰めるのも一つの楽しみだけど、思いもよらない組み合わせで奇抜な動きを見つけるのもまた楽しみのひとつなんだよね」

真姫「だから、あなたたちも遊戯王始める際は思考停止で同じストラクを3つ買うより別のストラクを3つ買うくらいの冒険心を持つべきよ。わかった!?」

凛「誰に言ってるの…。じゃあ凛たちも今から買いにいくんだよね?」

真姫「えぇ。その前に詳しいルールを」

真姫「デッキの枚数は40枚以上60枚以下なら何枚でも構わないわ。ただし、メインデッキには購入したストラク以外のカードは使用しないこと」

真姫「エクストラはそうね…余りにもなさすぎると面白みのないデュエルになりそうだから、7枚まで自分のものを追加できることにしましょう」

真姫「どうせカードも余りまくることだし、サイドも作ってマッチ戦と行きましょう。先に2勝した方の勝利ね」

凛「わかったにゃー!よーし、カードショップに、いっくにゃー!!」

真姫「あぁもう…そんなにはしゃがないの。転ぶわよ」

数十分後…


凛「真姫ちゃんと色々相談して買ってきたにゃ」

真姫「ふたりとも購入するデッキが被らないようにね」

凛「既に絶版のストラクは過去に行ってわざわざ購入してきたんだよー。下手すると新札使ってたんじゃないかとヒヤヒヤしたにゃ」

真姫「それじゃあ、今から頭を捻ってデッキ構築に勤しみましょう」

凛「了解にゃ!」



さらに数十分後…


真姫「できたっ!そっちは?」

凛「まだできてないよ。真姫ちゃん先にデッキ紹介しててー」

真姫「仕方ないわね。わかったわ」

真姫「今回私が購入したストラクチャーデッキは、『ドラゴニック・レギオン』、『青眼龍轟臨』と、『ドラグニティ・ドライブ』…」

真姫「…ではなく、『シンクロン・エクストリーム』の3種類よ。ドラゴン関係と思わせておいて裏切っていくわ」

真姫「この3つを《青眼の白龍》を軸に組み立てて、《ジャンク・シンクロン》で1チューナーを釣ったりして、《蒼眼の銀龍》をシンクロ召喚して戦線を維持するデッキよ」

真姫「あとはドラゴニック・レギオンに収録されてる《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》、通称レダメを《エクリプス・ワイバーン》の効果で持ってくる…っていうのは基本ね」

真姫「追加のエクストラは…ホントはランク4エクシーズの《竜魔人 クィーン・ドラグーン》も入れたかったんだけど…」

真姫「7枚制限だと主力のシンクロを突っ込むくらいしかできなかったわ」

真姫「問題は非常に強い効果持ちの《青き眼の乙女》の効果を能動的に発動させる手段が乏しい、ってことね…」

真姫「その効果を持っているのはエクストラの《閃こう竜 スターダスト》くらい。本当ならもっとバシバシ効果は使いたいんだけど…」

真姫「仕方ないわ。乙女を立たせておけば相手も迂闊に攻撃も除去もできないし、戦線維持程度には役に立ってくれるはずよ」

真姫「デッキはこれ(http://i.imgur.com/Zr53DDs.jpg)ね。その名も『青眼ニック・レギシンクリーム』!!なんて安直なのかしら」

真姫「追加したエクストラのカードは右から7つね。完全にシンクロ主体になってるわね…」

真姫「《スターダスト・ウォリアー》が出せると気持ちいいんだけど…どうかしらね」

凛「シャドールとセフィラは元々組み合わせる想定で作られたものだからちょっと違う気がするにゃ…」

真姫「は?いきなりなによ」

凛「あぁごめん、独り言にゃ。凛もできたよー!」

真姫「どれどれ、見せてよ」

凛「えぇー、凛だけ戦法公開ですかー?まぁいいけどー」

凛「ふふふ…時に真姫ちゃん」

真姫「な、なによ。不敵な笑みを浮かべて」

凛「今のカードプールで最も厄介なカードってなにか知ってる…?」

真姫「最も厄介なカード…?そうね、厄介と言えば…っは!ま、まさか凛、あなたっ…!」

真姫「凛の購入していたストラクにはアレがあった…!あなたそのつもりで!」

凛「そのとおりにゃ!凛が購入したストラクは『マシンナーズ・コマンド』、『HERO's STRIKE』、そして…!」

凛「『機光竜襲雷』!そう、凛が軸に据えたカード、それは…《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》だにゃ!」

真姫「こ、コイツ…!完全に勝利をリスペクトすることに飢えているわ…!」

凛「凛のことはヘルカイザー凛と呼べばいいにゃ!そしてさらにさらに!豪華特典として真姫ちゃんの大っきらいな《M・HERO ダークロウ》も入ってるよ!」

凛「ストラクの中でも比較的レベル4が並びやすいHEROストラクで、ノヴァからのランクアップだけじゃなく、《星守の騎士 プトレマイオス》からのランクアップも狙う!」

真姫「これがあの悪名高きプトレノヴァインフィニティね…。テンプレ中のテンプレじゃない…。ファンデッカーとはなんだったのか」

凛「むしろインフィニティを出すことに特化してるからファンであることには違いないにゃ!」

凛「あとは《マシンナーズ・フォートレス》もなかなかウザいカードだよね。今回のデッキはいやらしいことを徹底してやっていくよ!」

真姫「私が戦線維持を目的とした着々とアドバンテージを稼いでいくデッキとしたら、凛は搦手で相手を掬い取るデッキ、ってところ?」

凛「ところがどっこい!いざってときには《パワー・ボンド》がある!これで《サイバー・ツイン・ドラゴン》のニレンダァ!!は強力にゃ!」

真姫「ときには最大火力で応戦して来るって事ね…侮れないわ」

凛「デッキはこんな感じ(http://imgur.com/qUn9Q2s)!その名も『機甲ナーズ・STRIKE』!!」

真姫「機光の字間違ってるじゃない」

凛「わ、わざとわざと(震え声)。エクストラは右から順に…あ、ツインも入ってる…」

真姫「これもわざと?」

凛「…間違えました」

真姫「…って、見事なまでにインフィニティ特化ね…。デルタテロスまで入れて」

真姫「そのコンセプトで言えば《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》はなんか…卑怯じゃない?」

凛「困ったときのダベリだにゃ!それなら真姫ちゃんのヴァルカンだってずるいよ!マグネティックトゥデイ」

真姫「にこちゃんとの曲は関係ないでしょ…。っていうか、二人とも仲良く41枚体制ね…」

凛「入れたいカードに困ったら一枚くらいありでしょな姿勢なんだよね」

真姫「しかし…カオスとかガイアとか…いつ出すのよ、これ」

凛「エクストラが余ってるから入れただけ!カミカゼもほとんど出す機会なさそうだにゃ」

凛「これで大体真姫ちゃんのエクストラと枚数的には一緒でしょ!」

真姫「まぁ…そうね。よし、紹介だけで結構時間かかっちゃったけど、やりましょうか」

凛「うー…疼くにゃーっ!」

凛「あ、まちがえてアップローダーのURL貼っちゃったよ。ホントはこっち(http://i.imgur.com/qUn9Q2s.jpg)だね」

真姫「あなた今回間違えすぎじゃない?」

凛「う、うるさいなぁ」

凛「はい、じゃんけーんぽんっ」

真姫「あ、勝ったわ」

凛「どっち?」

真姫「…そうね。やはりハンド・アドバンテージは侮れないわ。後攻を貰うわね」

凛「くっ…、こっちも後攻が良かったにゃ」

真姫「まぁサイバーだしね」

凛「よーし、気を取り直していくよっ!アレ!」

真姫「アレ…えぇ、アレね、わかったわ」

凛「んんっ…、戦いのクリニックに集いしデュエリストたちが!」

真姫「モンスターと共に地を蹴ることも、宙を舞うこともなく!」

凛「淡々と座って行う!」

真姫「見よ!これがデュエルの通常形態!」

凛「普通の~…」


真姫・凛「「デュエル!!」」



凛「先行はもらったにゃ!」

真姫「私があげたんだって。言っておくけど先行は1ターン目、ドロー…」

凛「できないのは知ってるって!えっと…」

凛「うーん、この手札ならそうだなぁ…よし!」

凛「凛は手札から《サイバー・ヴァリー》を通常召喚!」ババーン



《サイバー・ヴァリー》

効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 0/守 0
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、
このカードを除外して発動できる。
デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。
●自分のメインフェイズ時に発動できる。
このカードと自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする。
●自分のメインフェイズ時に、
自分の墓地のカード1枚を選択して発動できる。
このカードと手札1枚を除外し、その後選択したカードをデッキの一番上に戻す。



真姫「攻撃すれば相手にドローを許した上、バトルフェイズも強制終了…」

真姫「優位に経とうとすれば効果による除去を強要される…。放っておくと2ドローもありうる、厄介なカードね」

凛「特に伏せるカードもないし…凛はこれでターンエンドだにゃ!」

真姫「私のターン、ドローよ!」

真姫「私は魔法カード、《テラ・フォーミング》を発動!」



《テラ・フォーミング》

通常魔法
(1):デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。



真姫「私はこのカードで《竜の渓谷》を手札に加えるわ」

凛「おぉ、墓地肥やしにゃ。でもドラグニティは入ってないんだよね」

真姫「そしてさらに魔法カード、《ワン・フォー・ワン》を発動よ!」



《ワン・フォー・ワン》

通常魔法(制限カード)
(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。
手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。



凛「手札コストはあるけど強力なカードだにゃ!レベル1をデッキから呼んで来られるからね!」

真姫「私はここで《ドッペル・ウォリアー》を墓地に送り…《青き眼の乙女》を特殊召喚!」



《青き眼の乙女》

チューナー(効果モンスター)
星1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
このカードが攻撃対象に選択された時に発動できる。
その攻撃を無効にし、このカードの表示形式を変更する。
その後、自分の手札・デッキ・墓地から「青眼の白龍」1体を選んで特殊召喚できる。
また、フィールド上に表側表示で存在するこのカードが
カードの効果の対象になった時に発動できる。
自分の手札・デッキ・墓地から「青眼の白龍」1体を選んで特殊召喚する。
「青き眼の乙女」の効果は1ターンに1度しか使用できない。



凛「倒そうとしても効果でどこからでも《青眼の白龍》を呼んでくるこれもめんどくさいカードにゃ」

凛「《マスクチェンジ・セカンド》の対象にすると光牙とブルーアイズが並んですごい強い子になるよ」

凛「あれも戦線維持には役立つカードだね…。どうするの?」

真姫「手札には通常召喚して強いカードはない…。攻撃して手札を増えさせるのも嫌だしここはターンエンドよ!」



現在の盤面

真姫LP8000 凛LP8000

手札真姫4枚 凛4枚


http://i.imgur.com/Pbdpua0.jpg

凛「凛のターン、ドロー!…ふむ」

凛「凛は手札から魔法カード、《増援》を発動にゃ!」


《増援》

通常魔法(制限カード)
(1):デッキからレベル4以下の戦士族モンスター1体を手札に加える。


真姫「戦士モンスターのサーチカードね。何を加えるの?」

凛「凛が加えるのは《E・HERO エアーマン》!そのまま通常召喚!」


《E・HERO エアーマン》

効果モンスター(制限カード)
星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●このカード以外の自分フィールドの
「HERO」モンスターの数まで、
フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。
●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。


真姫「制限カードの応酬ね!笑えるわ!」

凛「そのくらいしないと張り合いがないにゃ!凛はエアーマンの隠されていない効果を発動!」

凛「デッキから『HERO』と名のついたモンスターを手札に加えるよ!」

凛「うーんと、そうだなぁ…シャドー・ミストを手札に持ってきても特殊召喚するすべがないし…」

凛「よし、バブルマンを加えるにゃ!」

真姫「手札がバブルマンだけのとき特殊召喚できるカードね…。エクシーズ登場から評価が見直されたカードだわ」

凛「凛はカードを1枚セット!攻撃したらブルーアイズが駆けつけてくるしー…これでターンエンドね!」

真姫「私のターン、ドロー!…へぇ」

真姫「そうね、これなら…私はフィールド魔法《竜の渓谷》を発動するわ!」


《竜の渓谷》

フィールド魔法(制限カード)
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札を1枚捨て、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
●デッキからレベル4以下の
「ドラグニティ」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
●デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る。


凛「うわぁ、また制限カード」

真姫「この子は何も悪くないの!悪いのは征竜ってやつなのよ!!」

真姫「私は手札の《ジェット・シンクロン》を捨て、デッキからドラゴン族を墓地に送る方の効果を選択!」

真姫「私は墓地に我が最愛のしもべ、《青眼の白龍》を送るわ!」

凛「ほうほう、それでそれで?」

真姫「ふっ…もうここからの展開なんてわかりきっているでしょう?」

真姫「私は手札から、魔法カード《銀龍の轟咆》を発動するわ!」


《銀龍の轟咆》

速攻魔法
自分の墓地のドラゴン族の通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。
「銀龍の轟咆」は1ターンに1枚しか発動できない。


真姫「たった今墓地へ送ったブルーアイズを蘇生させる!」

真姫「おいでなさい!《青眼の白龍》!!」

凛「お、おぉぉっ…!!」


《青眼の白龍》

通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。
どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。


真姫「ふふっ…!このモンスターでエアーマンを粉砕してから《蒼眼の銀龍》へと…」

凛「あ、特殊召喚時奈落で」

真姫「」


《奈落の落とし穴》

通常罠(準制限カード)
(1):相手が攻撃力1500以上のモンスターを
召喚・反転召喚・特殊召喚した時に発動できる。
その攻撃力1500以上のモンスターを破壊し除外する。


真姫「わ、私のブルーアイズが…!除外されちゃったじゃない!!」

凛「それが勝負だよ」

真姫(…っく、『このカード』さえさっきのターンに伏せていれば…)

真姫「…私はカードを1枚伏せてターンエンドよ」


現在の盤面

真姫LP8000 凛LP8000

手札真姫1枚 凛4枚


http://i.imgur.com/pHmeO2g.jpg

凛「凛のターン、ドロー!」シュバッ

凛「…ふふっ、そっちが何もしてこないならー…」

凛「こっちも着々と準備を進めさせてもらおうかにゃー?」

真姫「なんですって…」

凛「凛は手札から《サイバー・ドラゴン・ドライ》を通常召喚!」


《サイバー・ドラゴン・ドライ》

効果モンスター
星4/光属性/機械族/攻1800/守 800
このカードが召喚に成功した時、
自分フィールド上の全ての「サイバー・ドラゴン」のレベルを5にできる。
この効果を発動するターン、自分は機械族以外のモンスターを特殊召喚できない。
また、このカードが除外された場合、
自分フィールド上の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して発動できる。
選択したモンスターはこのターン、戦闘及びカードの効果では破壊されない。
このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う


凛「効果で全ての『サイバー・ドラゴン』のレベルを5にできるけどー…今はいいや」

凛「そして凛は、ターンエンドにゃ」

真姫「なっ…、もう?!」

凛「ふふっ…、凛の野望を果たすためにはここで動く時じゃないのだ」

凛「さ、どうぞ?」

真姫「くっ…、アレを狙ってるってわけね…!」

真姫(ここで何か引かなければ…私の敗色が濃厚となるわ…!)

真姫「私のターン、ドローよっ!」ビシィッ!!

真姫「…っ!くっ…」

凛「その調子だと、凛の盤面を崩すカードは引けなかったのかなー?」

真姫「…私はカードをセット。そして《竜の渓谷》の効果を発動するわ」

真姫「《増殖するG》を捨て、デッキから2体目の《青眼の白龍》を落とす。そして…ターンエンドよ」

凛「おやおや、増Gを捨ててまで墓地肥やし…よっぽど切羽詰まってるみたいだね」

凛「だったら遠慮なく…その首を掻っ切るまでだよ!」

真姫(凛はテンション上がるとロールプレイが激しくなるわね)


現在の盤面

真姫LP8000 凛LP8000

手札真姫1枚 凛4枚


http://i.imgur.com/Zj7BFNf.jpg

凛「凛のターンっ!ドロー!!」シュバァッ!!

凛(引いたのは《サイバー・ドラゴン》…でも今は関係ない!)

凛「さぁ、見せる時が来たようだね!凛は手札からレベル4モンスター、《E・HERO バブルマン》を通常召喚!」

凛「そして凛は3体のレベル4モンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

凛「その光以て勝利を星空に導け!ランク4!《星守の騎士 プトレマイオス》!!」ババーン


《星守の騎士 プトレマイオス》

エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻 550/守2600
レベル4モンスター×2体以上
(1):このカードのX素材を3つまたは7つ取り除いて発動できる。
●3つ:「No.」モンスター以外の、このカードよりランクが1つ高いXモンスター1体を、
自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
●7つ:次の相手ターンをスキップする。
(2):お互いのエンドフェイズ毎に発動できる。
自分のエクストラデッキの「ステラナイト」カード1枚を選び、
このカードの下に重ねてX素材とする。


真姫「エクシーズ素材を取り除いた数で効果が変わるカード…相手ターンをスキップする効果もあるけどこれはオマケ程度」

真姫「真価はあのモンスター単体で『No.』以外のあらゆるランク5モンスターをエクシーズ召喚できるところ…!!」

凛「凛はプトレマイオスの一つ目の効果を発動!エクシーズ素材を3つ取り除き、ランク5モンスターへとランクアップさせるにゃ!」

真姫「っ…!私は!このタイミングで罠カード、《リビングデッドの呼び声》を発動よ!」


《リビングデッドの呼び声》

永続罠
(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。
そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。


真姫「墓地から《青眼の白龍》を攻撃表示で特殊召喚!」

凛「ハッ!インフィニティにリビデの発動を邪魔されるのが怖くて先に発動しちゃったのかな?でも無駄だよ!どんなモンスターもインフィニティは吸収する!」

凛「プトレマイオスの効果を処理!いでよ!《サイバードラゴン・ノヴァ》!!」


《サイバードラゴン・ノヴァ》

エクシーズ・効果モンスター
ランク5/光属性/機械族/攻2100/守1600
機械族レベル5モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して特殊召喚する。
また、1ターンに1度、自分の手札・フィールド上の
「サイバー・ドラゴン」1体を除外して発動できる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、2100ポイントアップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
このカードが相手の効果によって墓地へ送られた場合、
機械族の融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚できる。


凛「そしてこのカードはノヴァの上へと重ねることでエクシーズ召喚が可能…!!」ゴゴゴゴ…

凛「凛が最強の切り札…!無慈悲なるその効果でフィールドを蹂躙するにゃ!!」

凛「《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》!!」


《サイバー・ドラゴン・インフィニティ》

エクシーズ・効果モンスター
ランク6/光属性/機械族/攻2100/守1600
機械族・光属性レベル6モンスター×3
「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は1ターンに1度、
自分フィールドの「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」の上に重ねてX召喚する事もできる。
(1):このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×200アップする。
(2):1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。
(3):1ターンに1度、カードの効果が発動した時、
このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

凛「アハハハハッ!もう強いことしか書いてないにゃ!」

凛「攻撃力増強効果!アークナイトの吸収!クェーサーの無効!」

凛「まさに現OCG最強のカード!それが今凛のフィールドに降臨して…」

凛「し、て…?」

真姫「…」

凛「なっ…!そんなっ…!!?」

凛「凛のフィールドに…インフィニティが、…いないっ!?」

凛「何を…したのっ!」

真姫「…ふ、私がただ無駄にブルーアイズを召喚したと思っていたのかしら」

凛「なっ…!」

真姫「いつから、インフィニティの召喚に成功したと思っていた?」

凛「ま、まさかっ…!」

真姫「私はインフィニティ特殊召喚時にカウンター罠、《王者の看破》を発動していたのよ!!」


《王者の看破》

カウンター罠
自分フィールド上にレベル7以上の通常モンスターが
存在する場合に発動できる。
魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚の
どれか1つを無効にし破壊する。


凛「なっ…せ、宣言してよ!」

真姫「アニメならまかり通るわ」

凛「で、でもっ…インフィニティはカードの効果を無効にして破壊できるっ…!そんなカード、無効にゃ!」

真姫「甘いわね、凛」

真姫「カウンター罠はスペルスピード3…、カウンター罠でしか無効にすることはできないのよっ!!」

凛「が、がーん!」

真姫「儚く散るがいいわ。インフィニティ」

凛「く、くそぉっ…!どうして凛に気持ちよくデュエルさせてくれないの!凛は真姫ちゃんの悔しがる顔が見たいんだよぉっ!!」

真姫「残念だけどファンサービスは遠慮しておくわ」

凛「ぐ、ぐぬぬぬ…!おのれぇぇぇっ…!!ターンエンドにゃ…!」

真姫「私のターン、ドローっ!!」

真姫「…」

真姫(…《ゾンビキャリア》か)

真姫(カッコつけたはいいものの、ヴァリーを突破する手立てはまだない…)

真姫(仕方ないわね。ここは…)


真姫「私はレベル8の《青眼の白龍》に、レベル1の《青き眼の乙女》をチューニング!」

真姫「レベル合計は9!シンクロ召喚!!」

真姫「降臨せよ!《蒼眼の銀龍》!!」


《蒼眼の銀龍》

シンクロ・効果モンスター
星9/光属性/ドラゴン族/攻2500/守3000
チューナー+チューナー以外の通常モンスター1体以上
このカードが特殊召喚に成功した時に発動する。
自分フィールド上のドラゴン族モンスターは次のターンの終了時まで、
カードの効果の対象にならず、カードの効果では破壊されない。
また、1ターンに1度、自分のスタンバイフェイズ時に発動できる。
自分の墓地の通常モンスター1体を選択して特殊召喚する。


真姫「《蒼眼の銀龍》は特殊召喚成功時、自身の効果で強靭な効果破壊耐性を得るわ」

真姫「そして表示形式は守備。守備力は3000…容易に突破できる相手ではないわよ」

真姫「さらに《竜の渓谷》効果発動。手札のゾンキャリを切って、デッキから…そうね、《真紅眼の黒竜》を墓地に落としましょう」

真姫「そして次のターン…《蒼眼の銀龍》の効果で通常モンスターを蘇生できる」

真姫「墓地には自己蘇生が可能なゾンキャリにジェックロン…シンクロ召喚は容易いわ」

真姫「じっくりと盤面を整えさせてもらうわよ。ターンエンド」

凛「ぐ、ぐぬぬぬぬ…!」


現在の盤面

真姫LP8000 凛LP8000

手札真姫0枚 凛4枚


http://i.imgur.com/XQNLpfP.jpg

凛(…と悔しがってる素振りはしてるけど、実際銀龍の突破は簡単なんだよね…)

凛(でもこんなところで使うべきかなぁ…。なんだか泥仕合になりそうだにゃ)

凛(凛はもっとインパクトのあるデュエルを望んでたんだけど…仕方ないよね…、寄せ集めじゃ…)

凛「凛のターン、ドロー!」

凛(またサイドラ、これで2枚目だにゃ)

凛(…はぁ。二枚も同じカードあったって…)



凛「…あっ!」


真姫「ん?どうしたのよ」

凛「…」

凛「…ふ、ふふふふ」

凛「にゃはははははははははっ!!!」

真姫「へっ…?」

凛「勝利の方程式は…全て揃った!」

真姫「なっ…」

凛「これが…最後のターン!!」

凛「凛は手札から魔法カード、《パワー・ボンド》を発動!!」

真姫「う、嘘ッ…!?この状況でパワボン…!」


《パワー・ボンド》

通常魔法
自分の手札・フィールド上から、
融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、
機械族のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、その元々の攻撃力分アップする。
このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、
自分はこのカードの効果でアップした数値分のダメージを受ける。


凛「こいつ自体は最初から持ってた…!でも素材はたった今揃ったにゃ!」

凛「凛は手札のサイドラ二体を墓地へ送り…!」

凛「《サイバー・ツイン・ドラゴン》を融合召喚扱いとして特殊召喚っ!!」


《サイバー・ツイン・ドラゴン》

融合・効果モンスター
星8/光属性/機械族/攻2800/守2100
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。


真姫「素サイドラ手札融合…!?あなた…、カイザーにでもなったの!?」

凛「ふふっ…!これには自分でもびっくりだにゃ…!」

凛「そして《パワー・ボンド》で特殊召喚されたカードの攻撃力は2倍!2ばい2ばーい!」

凛「つまり…攻撃力5600!!」

真姫「ぐ、うぅっ…!!」

真姫「くっ…、銀龍は破壊されダイレクトアタックで5600のダメージ…」

真姫「状況は絶望的だけど、まだ可能性はある…死者蘇生とか引けばインフィニティを蘇生して…」

真姫「次のドローに賭けるしか…」

凛「はぁ?何言ってるのかなぁ?」

真姫「…何?」

凛「凛、言ったよね?『これが最後のターン』だって」

凛「真姫ちゃんに、次のドローはやってこないっ…!!」

真姫「なぁっ…!?」

凛「バトルだっ!!…なにげにこのデュエル始まって初のバトルフェイズ突入!」

凛「凛はサイバー・ツインで、銀龍に攻撃っ!」

真姫「無情にも破壊されるけど…」

凛「…ダメステ、入っていいかにゃ?」

真姫「まっ…、まさかっ…!!」

凛「凛は手札からモンスターカード、《オネスト》の効果を発動!!エヴォリューション・ツイン・バースト、第一打ァッ!!」


《オネスト》

効果モンスター(準制限カード)
星4/光属性/天使族/攻1100/守1900
(1):自分メインフェイズに発動できる。
フィールドの表側表示のこのカードを手札に戻す。
(2):自分の光属性モンスターが
戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、
このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、
戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。


凛「ダメステ開始時にこのカードを捨てることで光属性モンスターの攻撃力を戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップするにゃ!」

凛「本来は攻撃力が上回っている相手モンスターに対して戦闘破壊するために使うカード。ましてや攻撃力が優っている状況で守備表示モンスターに使うカードじゃない」

凛「でもこの場合サイバー・ツインは…!!」

真姫「に、二回攻撃っ…!」

凛「《オネスト》の効果はターン終了時まで有効だよ!つまり上がった攻撃力のまま二回目の攻撃が可能っ!」

凛「まずは銀龍を木っ端微塵に破壊するにゃっ!!」

真姫「ぐぅぅっ!!」

凛「そしてオネストの効果により上昇したサイバー・ツインの攻撃力の値は、銀龍の攻撃力2500を攻撃力5600に足した…」

凛「8100!」

真姫「わ、ワンショットキル圏内、ですってぇぇぇっ!!?」

凛「骨だけは拾って帰ってやるにゃ!砕け散れ!」

凛「エヴォリューション・ツイン・バースト!!ダイニダァァァァァァァァッ!!!」

真姫「ぐぅっ…ぐあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ドカーン


真姫 LP8000→LP0

凛 WIN!!


凛「ガッチャ!楽しいデュエルだったにゃ!!」

真姫「それライバルのセリフ…」

凛「ふぅ…途中までは泥仕合だったけど最後は派手に決まったね」

真姫「…第一試合は凛の勝利ね…。でもまだあと2試合ある!油断するのは早いわ!」

凛「え、まだやるの…?」

真姫「まぁ、また今度ね。それまではサイドを見直すことにするわ」

凛「良かったにゃ。もう眠いよぉぉ…」

真姫「書くのは簡単なんだけど意外と時間かかっちゃうのが仮想決闘SSの辛いところね」

凛「今回はカードの効果の掲載に盤面のスクショも用意してたしね」

真姫「あんまりわかんない、って人もこれで多少は理解してくれると助かるわね」

凛「次また続きを書くのに難儀し始めたら唐突に挟まる予定にゃ」

真姫「これを期に遊戯王はじめてみよう!って思ってくれると嬉しいわね」

凛「まずはアニメを見るべきだよ。ARC-Vは面白いにゃ!」

真姫「燃える展開の連続よね。シンクロ時代で止まってるって人は今のタイミングで見てみるとすごいカードのリメイクが…」

凛「続きもどうなるか見ものだね!」

真姫「えぇ。続きが気になるといえば、もしライブ!はどうなるのかしらね?割と終わりに近づいているような…」

凛「経験者の真姫ちゃんが言っても白々しいだけにゃ」

真姫「…そうね。さて、今回が最終回になるのかしら?」

凛「それは終わってからのお楽しみ!それじゃ今日の西木野☆星空…何?」

真姫「西木野☆星空ショータイムはここまで!」

凛「次に満足って言葉を忘れちまうのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

うん看破で無効にされたから蘇生無理ですね 手札ゼロフィールドゼロの状況で真姫ちゃんの勝ち筋が他に思いつかなかったんや…
ギリギリ吸収効果に対して発動していたって解釈でまぁなんとかなる

遊戯王は一見複雑そうに見えて複雑で特殊召喚制限とか蘇生制限とか色々あるけどやってくうちになれるので是非やってみてね
青眼の白龍とかはサポートカードも多いのでまともに組んだら普通に戦えます 魔法ならブラックホールが現役
ちょっと眠たいけど今ならなんか行けそうな気がするので自分を追い込むためにももし!始めます宣言 ダメだったらすまん じゃやってきます

昼休み

アイドル応援部 部室


花陽「…」 ことり「…」 海未「…」 希「…」 真姫「…」

ドキドキ…


真姫☆「じゃ、あとは頼んだわよ」バサッ


海未「ちょっと!?どうしてあなたが透明になるのですか!」

真姫「そうよ!私に貸しなさい!渉外に私がいたって役に立たないんだから!」

真姫☆「胸張って言わないの!あなたが緊張する気持ちもわかるけど」

真姫☆「いつまでも私に頼りっきりじゃダメよ。そろそろ、私がいない時の立ち振る舞いも身につけないと」

真姫「うぅ…」

ことり「うーんと、じゃあ真姫ちゃんは新聞部の取材には参加しない、ってことかな?」

真姫☆「そうね。あなたたちだけで頑張って」

海未「真姫が新聞部の取材を受けようと言い出したのではありませんか…」

希「でも遅かれ早かれ、新聞部の取材には応じてたと思うし…。今までリーダー張ってた真姫ちゃんもいつかは帰っちゃうんだもんね」

希「今のうちからリーダーのいない状況に慣れておくのも手かも」

花陽「それで…、そのリーダーがいない状況での主な受け答えって誰が…?」

真姫「やっぱり希先輩かしら。部長だし」

希「うち?んー、うちでもいいんやけど…」

ことり「いずれ真姫ちゃんがいなくなったときの練習だよ?もうすぐ卒業しちゃう希ちゃんに任せても意味ないよ」

真姫「あぁ、そっか…」

海未「となると…」

ことり「しっかりものの海未ちゃん!…って言いたいところだけど」

ことり「海未ちゃんは意外なところでしっかりしてませんからなぁ。穂乃果ちゃんの話が出ただけでパニクって泡吹いて失神しちゃうかも」

海未「そこまではありえませんよ!?…しかし、私がこういう場面であがり症であるのは否定できません」

海未「そこで…、私は花陽を次のリーダーとして推薦したいと思います」

花陽「ハァァッ!?」

真姫☆「うん、散水…じゃなくて、私も賛成」

花陽「ままま、待ってぇっ!?なんで私!?私だってあがり症だし!初対面の人と堂々と話すなんてみゅりぃぃぃぃっ!!」

真姫「…でもねぇ、それで言えばみんな似たような…」

希「せやねー」

真姫☆「花陽。考えても見なさい。私がいなくなったら一番初めにこのスクールアイドルを作ったのは誰になるのか」

真姫☆「アイドルを、そしてC☆cuteを最も愛しているのは花陽、あなたでしかありえない。だから私は、あなたがリーダーになるのが適任だと思う」

花陽「真姫、ちゃん…」

海未「ふふ、全て言われてしまいましたね。自信を持ってください花陽。あなたには真姫にも持ち得ない唯一無二の力だって持ち合わせているんですから」

花陽「な、なんですかそれ…」

海未「テキトーです」

花陽「ふえぇぇっ!!?」

ことり「まー、なんやかんやいって花陽ちゃんがリーダーになるのが一番だよ!」

真姫「いいじゃない。十分頼もしいわよ、新リーダー」

花陽「そんなぁ…」

希「来年のアイドル応援部の部長もやってみる?」

花陽「それは絶対にダメですぅっ!!」

真姫☆「そんなわけだから、あとはよろしくね」バサッ


花陽「け、結局私が真姫ちゃんの代わり…!?」

希「がんばりよー」

海未「真姫ほどグイグイ行く必要はありません。いざとなればこちらも助け舟を出しますので安心していてください」

花陽「わ、分かりました…」

ことり「で、でも…取材だよ…!?前は私たちがする側だったのに、今度はされる側になるなんて…!」

真姫「き、緊張する…!うまく話せるかしら…!!」

真姫☆「…あなたはC☆cuteについてそんなに詳しくないんだから無理して喋る必要はないわよ。ボロが出るかもしれないし」

真姫「…あ、そうね」


コツッ コツッ


希「…そんな話をしてたら外から足音が…!」

ことり「つ、ついにくるっ…!」


ガチャッ


一同「…!」


ダラララララッ!!

シュバッ!!


花陽「ひぃっ!?」

海未「なっ…!こんなに大勢!?しかも一糸乱れぬ整列…!」

真姫「軍隊を思わせるほどの統率された動きね…」

希「…さっき、外から聞こえてきた足音は一つ思ってたんやけど…」

ことり「やけに響くと思ったら、大勢がまったく同じ歩調で歩いてたからなんだ…!」

真姫☆(何この人たち…)


パチパチ…

「うん、よろしい。記者たるもの礼儀正しく、規律を以て事に当たるべし」



花陽「あなたは…?」


新聞部部長「ふふ、この度はお忙しいところお伺いして申し訳ありません」

新聞部部長「ボクはこの新聞部の部長です。以後お見知りおきを」


海未「とても、礼儀がなっています…。素晴らしい…」

ことり「ホントにいたんだ…!ぼ、ボクっ娘…!ほわぁぁぁぁぁ…///」

希「え、そこなん…?」


新聞部部長「えー…、ごほん。それでは少し楽にさせていただいて…」

新聞部部長「今回のA-RISE対C☆cuteの件と、それからあなたたちC☆cute自体について何点か…」

花陽「あ、あのっ!」

新聞部部長「…はい?」


花陽「その前に、聞いておきたいことが…!」

新聞部部長「聞いておきたいこと…」


真姫☆(おおっ!やるじゃない花陽!)

真姫☆(流れに圧倒されたままなし崩しで取材に持って行かれそうになったのをすかさず食い止めた…!あとは…)



花陽「あの、あのっ…そのぉっ…!!」

新聞部部長「…」

花陽「えっと、ですねっ…、それが、あれで、うーんと、お、お…」

花陽「お胸が、大きいですねっ!!」



シーン…


新聞部部員一同「…」

新聞部部長「…それは」

新聞部部長「ボクに対する嫌味、かな?」

花陽「ち、違うんですっ!そういうつもりじゃなくて!!」

ことり「…どう見ても花陽ちゃんの方が大きいからねー…」

新聞部部長「あなたも一言余計じゃない…?」

真姫☆(…花陽ぉ…)

海未「…んんっ!すみません、彼女は緊張していまして。突拍子もない失言をしてしまいました」

海未「おそらく彼女が聞きたいのは、あなた方がどこまで知っていらっしゃるのか、ということだと思います」

新聞部部長「…どういう意味でしょう?」

希「今日、掲示されてた新聞、あれは理事長室でのうちらの会話を聞いてないと知ることのできないことやけど」

希「そのうちのどこまでを聞いたのか、ってことやよ」

新聞部部長「…あぁ、そういうことですか」

新聞部部長「それはもちろん、全て。新聞部の耳は地獄耳ですから」

真姫「って、ことはっ…!絵里との…!」

新聞部部長「はい。勝てばパンフレットに掲載、負ければ解散…でしたよね」

花陽「知っていたのなら、どうしてそのことを新聞に書かなかったのか…教えてもらえますか?」


真姫☆(そうそう…。私は信頼できる証左の一つだと思ってるんだけど…)

真姫☆(…実際のところ、彼女らはどういう思いで記事にそのことを載せなかったのかは気になる…)

真姫☆(私たちの肩を持つわけでも、絵里の肩を持つわけでもない、新聞部の真意はいったい…)


新聞部部長「それは…」

新聞部部長「…そうですね。難しいな…」

新聞部部長「いつもはこちらが聞く側に回るものだから、こうして聞かれるのは新鮮でハッキリと言葉にするのは難しい…」

新聞部部長「ただ…、納得されるかはわかりませんが、理由の一つとしては…」

新聞部部長「私たちが、プロではないから…ですか、ね」


花陽「…プロじゃないから?」

希「それは新聞のプロじゃない…マスコミではないってことかな?」

新聞部部長「はい、その解釈であってます」

ことり「それと今回の話とどう関係が…?」

新聞部部長「えー…、そうですね。つまり、だから…」

新聞部部員A「…部長、落ち着いてください」

新聞部部員B「予定にないこと尋ねられるとすぐパニクっちゃうんだもんね…」

新聞部部長「そこ、余計なことを口にしない」

海未「す、すみません…大丈夫ですか?」

新聞部部長「平気です。…ありがとう、意見が固まりました」

新聞部部長「そう、プロの…プロの報道記者、マスコミであれば、その人の人生がかかっていますから」

新聞部部長「どのような手段を用いても人々の興味を引くことが重要になってきます」

新聞部部長「それが楽しいことであれ、悲しいことであれ」

新聞部部長「しかしボクたちはプロではありません。あくまで全て自分たちの趣味の範囲内…となりますから」

新聞部部長「わざわざ、人が不快になるようなことを記事にしても…面白くないでしょう?」

花陽「今回の勝敗の条件は、誰かが不快になりそうなことだって判断して…ってこと?」

新聞部部長「そうです。いわば賭けのようなものですから。それに条件が解散は、ネガティブなイメージをどうしても持ちかねません」

新聞部部長「そうなると…この戦いでの投票が片方の解散を招くものだと知ってしまえば、純粋に楽しめなくなる…と、ボクたちは考えたのです」

新聞部部長「あ、今回の取材であなた方がその情報を開示して構わないとのことでしたら、一方的に勝利条件のみを公開、ということは可能ですが」

新聞部部長「敗北条件の方はA-RISE側の印象が悪くなる可能性もありますからね」

ことり「そ、そんなことまで考えて記事を作ってるの…!?すごい…」

新聞部部長「はい。楽しい学校生活にさらなる彩りを。嫌な話は見なかったことに。それが我が…我らが新聞部の伝統ある誇りですから」

新聞部部長「きっとボクたちは…新聞部なんてやってますけど、マスコミにはなれないでしょうね」

希「いやいや…、理事長室の会話を盗み聞きするんはかなりレベルの高い技術やと思うよ?どうやって…」

新聞部部長「それは、秘密。新聞部は情報に飢えたハイエナですので」

新聞部部長「何か盛り上がりそうなネタさえ嗅ぎつければ、それがどこであろうと食いつくのみ、です」

真姫「この人…、優しそうに見えて強かね…」

ことり「でも私、部長さんの考え方…好きかな。つまり、知る必要のないことは知らなくていい…ってことだよね」

海未「いいのですか…?あまりいい印象のない言葉なのですがそれは…」

希「楽しむことに必要のない情報はいらないってことやん?うちらにとっては生きるか死ぬかの瀬戸際であっても…」

希「その緊張感を見ている子たちにまで与える必要はない。ただ楽しかったな、で終わらせられたら、それが一番やん」

新聞部部長「わかっていただけますか?信用して頂けたなら取材に移らさせても…」

花陽「あ、じゃああと…ほんの一つだけ、質問…いいですか?」

新聞部部長「はい、なんですか?」

花陽「…あなたは、この学校が…UTXが、好きですか?」

新聞部部長「…ふふっ」

新聞部部長「うんっ!すごくっ…大好きっ!!」


真姫☆(そう語る彼女の笑顔に、嘘なんて微塵も感じられなかった)

真姫☆(やはり私の見込みどおりね。新聞部はきっと…この学校に革命を起こす火付け役になってくれる!)

真姫☆(そして彼女の言葉を聞いた花陽の笑顔も、私にはとても印象的で)

真姫☆(以前の、UTXが…アイドル専攻が嫌いだと言っていた花陽が、今ではUTXを好きになってくれたのには)

真姫☆(なんだか私も…嬉しくなった)

真姫☆(そんなこんなでやっぱり最終的に新聞部を信じることとなったC☆cuteは、そのまま取材を受けた)

真姫☆(対決の内容やら、C☆cuteの成り立ちやら。時にはこちらからの質問も交えつつ)


カキカキカキ…

新聞部部長「…ではその時の決意…気持ちをお聞かせ願いますか?」

希「うん、そのときは…」


カキカキカキ… カキカキカキ… カキカキカキ…


希「…えー、あの、さっきから気になってたんやけど…たった5人への取材でどうしてそんなにずらりとメモ取る人が必要なん?」

新聞部部長「あ、気になります?」

真姫「そりゃあね…なんだか落ち着かないわよ」

新聞部部長「これもボクたち独自の方法でして…、活字は感情を持ちませんから」

新聞部部長「なるべく取材対象の話すとき、聞くときの一挙手一投足を事細かに書き記して、あたかも生きているかのように文章を書き上げる技法…です」

海未「そんなことやってる新聞部、他の学校にはいないでしょうに…」

新聞部部長「あははは…、そうでしょうね。私も入部時はバカバカしいと思っていましたが…今は面白い方法だと思っています」

新聞部部長「確かに労力は必要ですが、UTXで最もイベントに富んだアイドル専攻には一切の取材が禁じられていますし…」

新聞部部長「この学校には文化祭もありませんからね。たまのイベントにたっぷりと労力が掛けられます」

新聞部部長「おかげで観察力と速筆は身に付きますが…将来的に役に立つかは怪しいところですね」

希「そんなことはないと思うけどねー…。相変わらずUTX学院の生徒は専門性の高い子ばっかりやね…」

新聞部部長「みんなそうですね。だからこそ、このUTXは面白い。全く違う分野のプロフェッショナルが入り組んだ学校。芸能科もボクたちにとっては別次元の話、みたいなものですよ」

花陽「UTXは、異世界…」

新聞部部長「けれどそんな別次元の話からも、とても魅力的な情報が飛び出してくることがある。それらを取り込んで成長できる…。素晴らしいところだと思います。UTXは」

花陽「っ…!わ、私もそう思いますっ!」ガタンッ

真姫「ち、ちょっと花陽…身体のり出しすぎ…」

新聞部部長「あはは…えっと、では先ほどの…あっ…、ふむ、そろそろ休み時間も終わりですね」

新聞部部長「ではこれまで取材させていただいた話を基に、C☆cuteのこととクリスマスライブに向けた特集記事を組みたいと思います」

ことり「あ、よろしくお願いしますっ!どうか…盛り上げてくださいね!」

新聞部部長「はい。あなた方も負けないよう頑張ってください。応援しています」

希「…あ、最後にうちからも質問、いいかな?」

新聞部部長「はい…?」

希「理事長室の会話を事細かに聞き取れるくらいや。取材が禁じられてるって言っても知ってるんでしょ?アイドル専攻の実情」

希「絢瀬絵里が、生徒たちにどんなことをしているのかってこと。それを糾弾したり…って考えたりしないん?」

希「いくら誰かが悲しい気持ちになる記事はダメだって言っても、多くの証拠を以てえりちを追い詰めればこれ以上心が壊される子だって…!」

真姫「希…先輩…」

新聞部部長「…その気持ちはわかりますが、ボクの一存で記事が決定するわけではないので。新聞部の伝統ある掟も感情で破るわけにはいきませんし」

新聞部部長「それに…情報を集めていると、知りすぎてしまうことも多々あります。ですから…」

新聞部部長「…いえ、何でもありません。では、本当にこれで…」

ことり「あ!最後の最後に私からも!!」

海未「な、なんですかことりまで…」

ことり「部長さんはA-RISEか私たち、どっち派ですか?」

新聞部部長「えっ!え、えーっと…そうですね…その…、応援してますと言っておいてなんですが、A-RISE…ですね。正直に言えば」

花陽「そ、そうですか…」

新聞部部長「…ふふ、まぁでも…『今は』、ですけどね」

真姫☆(新聞部の取材の成果は翌日には既に出来上がっていて)

真姫☆(クリスマスライブの詳細と、C☆cuteの詳しい成り立ちについての記事が全校に貼り巡らされた)

真姫☆(その熱狂はたちまちUTXを包み込み、今までにない興奮の坩堝と化した)

真姫☆(アイドルに対して閉鎖的だったUTXが盛り上がってきている。それだけで私たちの希望は大きくなってゆく)

真姫☆(もう二度と、アイドルが嫌いだなんて誰も言わなくていい学校になれば、希も後腐れなくこの学校を卒業できるしね)

真姫☆(ただ盛り上がってくるとやっぱり…)



数日後 放課後

音楽室


真姫☆「えーっと…、じゃあその振り付けを今度はー…」


花陽「…あの、真姫ちゃん」

真姫☆「ナニヨ」

ことり「透明マントから顔だけ出してるの、余りにもシュールだなぁ…って」

花陽「練習に集中できなくて…」

真姫☆「仕方ないでしょ…。いつ来るかわかんないんだし」

海未「…まぁ、そうですね…。先程も演劇部の…」


ガチャッ

「ういーっす!やってるー?」


真姫☆「はふぶっ!」バサッ

真姫「…突然の来訪者に対応するためにはこうでもしないとね…」

希「あ、キミは…」

花陽「パーツモデル部の部長さん!お久しぶりです!」

パモ部部長「あー、もう長いからパモ部でいいよ。うちもそう改名したしね」

海未「えらく思い切った改名をしましたね…。初見じゃ意味がわかりませんよ」

パモ部部長「まぁそれはいいんだけど、ステージってどうなってる?」

ことり「ステージ…ですか?」

パモ部部長「いやねー?またうちの木材が役に立つかなーって、いやむしろなんか手伝いたいなって!手伝わせろって!」

希「暇なん?」

パモ部部長「そんなことないわよー!ただ学校中熱気で包まれてんじゃない!?なんかしたくてそわそわしてるのよー!」

海未「…その気持ちはありがたいのですが、ステージ製作は全てアイドル専攻の指示のもと有志が既に集められて制作されておりまして…」

真姫「意見があるなら言っておいて、こっちで賄うから、ってことなのよね…」

花陽「だからごめんなさい。ステージ製作は手伝ってもらえないかも…です」

パモ部部長「そっか…、残念…」

パモ部部長「…って逃げ出すようなガラじゃないのよね!アタシ!」

花陽「へ…?」

パモ部部長「ステージは手を出すなってんなら、それ以外ならオッケーでしょ!」

パモ部部長「アタシC☆cute応援するなんか作る!そういうの好きな友達いるんだ!いいでしょ!?」

ことり「え、えっとぉ…」

希「先生に言って許可貰ったなら、いいん違う?うちらは文句はないけど」

パモ部部長「オッケー!!よっしゃテンション上がってきたフー!らんららんららーん!」ガチャッ バタンッ

真姫☆「…テンション高いわね、あの人」

真姫☆(私たちを応援してくれる人たちが、自主的にそういったものを作ってくれるようにもなった)

真姫☆(もちろんのこと、C☆cuteだけではなく、A-RISE派も対抗して)

真姫☆(ありがたいことに学校側も容認してくれて、まるで季節はずれの文化祭のように学校中が楽しげで)

真姫☆(そういえばどうしてこの学校にはこんなにも多数の部活や学科が存在しているのに文化祭がないのか、聞いてみたところによると…)


海未「本当の話かどうかは不確かですが、余りにも部活が多いせいでUTX校内で文化祭を行うととてもややこしいことになると聞いたことがあります」

ことり「学生の数も多いし、その上来賓の方まで含めちゃうと学校中わちゃわちゃしちゃいそうだしねー」

真姫「あぁ…確かにそうね。学生の家族が来ただけでも大変なことになりそう…」

希「今回のライブは学生だけでの、って条件付きやったから、学校もちょっとは寛容になってくれてるんかな?」

花陽「あ、でも一部の専攻や部活は別の場所で合同研究ってやったりするらしいね」

海未「あぁ、ありましたね!演劇学科全体による演劇大会というのが少し前にありました」

海未「あれは面白かったですね…。しかしあれだけでもたくさんの方が来られていましたし…やはり人数が多いと催し物が行いにくくなるのは確かかもしれません」

真姫☆「混乱を避けた判断は正しかったわけね!よぉし…!ならこのままもっと巻き込んでいきましょう!」


真姫☆(基本真面目な生徒が多い故に、はっちゃけるときはそのテンションも凄まじく)

真姫☆(多数の学科、部活の入り混じる…非常にカオスな空間を形成していたのだった)

真姫☆(まさに、UTXの形そのものね…なんて、私は思ってたんだけど)

真姫☆(…でもその中に、別のものを感じた子も、いたみたい)




ガヤガヤ… ガヤガヤ…


ことり「はわぁぁ…!すごいね…、10分の休み時間だっていうのに、始まった途端にみんなライブのことで話し始めてる…!」

海未「自主制作でオリジナルグッズや応援アイテムを用意している人々も多いと聞きます」

希「みんな自分の持てる技能を最大限に発揮してくれてるね…。もう毎日目まぐるしいくらい」

真姫「こ、こう見てるとやっぱり…混然一体…いえ、混沌そのものよね。UTX…」

真姫☆「まぁ、そうね…。誰もがみんな別の世界の住人みたいなもんなんだから、合わさるとそうなって…」←透明


花陽「…うぅん。違うよっ!」


ことり「うん?花陽ちゃん…?」

花陽「違う、違うんだっ…!これは、混沌じゃないんです!」

真姫「ど、どうしたのよ、花陽」

海未「…もしかして、見つかったんですか?作詞の決め手となるUTXの魅力が」

花陽「はいっ!!確かに、傍目から…客観的に見ればUTXのこの現状は混沌とした、まるで異世界がグチャグチャと混ざり込んでるように見えるかもしれない…!」

花陽「でも、あの人たち一人一人の観点からすれば、それは異世界じゃないんですっ…!」

花陽「みんな、自分たちの世界を…楽しいって思える情報を、他のいろんな世界から少しずつ貰ってゆく…!」

希「新聞部の部長さんも言ってたこと…やね」

花陽「そう、それは…新聞部だけじゃなくて、みんなみんな、同じこと…だったんです」

花陽「みんな自分だけの世界を…、しかも、他の学校じゃ絶対に作り得ない、様々な楽しいことが詰まった、特別な世界…!!」

花陽「そんな、自分だけの理想の空間を成していける…!無限の可能性の中で!!」

花陽「UTXって…UTXの魅力って、そう言うところだと思うんですっ!!」

真姫「自分だけの、理想…」

海未「確かに、このC☆cuteも、ただ芸能科が集まっただけでは形成されなかったかもしれませんね」

ことり「歌を作る人がいて、唄を書く人がいて、洋服を作る人がいて、ダンスを考える人がいて、それらを纏める人がいて…」

希「そうしてやっと作ることができた。それはうちらだけやなくて、A-RISEだって同じこと」

希「うぅん、きっと他の部活も、いろんな学科から人が集まって、その学科特有の観点から発展を遂げていったのかもしれない」

真姫☆「…プロじゃないから、型にはまらず、楽しいと思ったことなら貪欲に取り入れていく」

真姫☆「そういえば、それがスクールアイドルってもの…だったのかもね」

花陽「そして、UTXにはそれが詰まってるって思うの!多分…他のどんな学校よりも、たくさん!」

花陽「誰もが何かしら一つの、理想の世界を持っているっ…、最高の場所だって!」

真姫「理想の世界ね…。カッコイイ言い方をすれば、理想郷…ってところかしら」

海未「理想郷…ですか。少し壮大な感じもありますが…花陽の考え方にはピッタリ当てはまるかもしれませんね」

海未「どこにも存在しない場所…。あるのは、それぞれの胸の内に。決して外からは覗けず、けれど確かに感じられる、暖かい居場所」

花陽「おぉ!詩的です!カッコイイ!!」

海未「て、照れます…」

ことり「でも理想郷…理想郷ってちょっと固いよねー。もっと別の言い方にできない?」

希「理想郷を別の言い方…そうやね…」

希「…ユートピア?」

ことり「あっ…!ユートピア!それそれ!」

真姫☆「…utopia。UTopiaね…ふふっ、UTXに相応しいじゃない。決定ね」

海未「花陽。今のその感情、そのまま書きなぐってしまいましょう!さぁ今から、授業中でもお構いなく!」

花陽「えっ…わ、分かりましたっ!!ノートがすり減るまで書きます!」

真姫「そこまではしなくていいから…」

ことり「授業も聞かないとダメだよー」



真姫☆(曲のイメージを掴んだ花陽。ついにC☆cuteの全ての想いが、目標から夢へと向かって走り出した)

真姫☆(既に手を伸ばせば届くところまで来ている。あとは…)

真姫☆(来る日まで、全力を出し尽くすのみ…!!)

放課後

一年教室前廊下


ザワザワ… ガヤガヤ…


凛「…」スタスタ

凛「…みんな、楽しそうだなぁ」



凛(こんなふうに、ライブを楽しみにしてくれる生徒、今まで見たことあったっけ)

凛(凛にアイドル関係のお話をする人は少ないし、いても嫌味か励ましの言葉くらいだった)

凛(今はみんなの情熱が一つの方向に向いている)

凛(きっとライブ本番の時、その方向が凛たちに向けられるものになるんだ)

凛(そのことを考えるだけで、胸がはちきれそうなほど興奮する)

凛(ワクワクする)

凛(やっと…やっと歓声の中で歌えるんだ)

凛(踊りと歌で、ステージを魅了して)

凛(雷のような拍手と喝采を浴びるんだ)

凛(もう何百回も、何万回も夢に見た光景)

凛(今度こそ、実現する)



凛「ふ、ふふっ…あははははは…」

凛「あはははははははっ!!わーいわーいっ!!あははははははははははははっ!!」


テッテケテー


凛「あはっ!あははははっ!!もう練習が待ちきれないにゃーっ!!」

凛「穂乃果先輩、にこ先輩っ!今日の凛に追いつけるかにゃーっ?」

凛「あはははははははっ!!わーっはっははははははははははははっ!!」



凛(心の奥底から笑いが止まらない)

凛(凛の血反吐を吐くような努力が…いや途中から吐かなくはなったけど!)

凛(それがついに成就する!)

凛(最高のパフォーマンスで小泉さんたちのエセアイドルなんかけちょんけちょんにのしてやるんだ!)

凛(今の凛を止められるものなんか…)



凛「誰もいなーいっ!!あははははははははははっ!!!!」

3年教室前廊下


ザワザワ… ガヤガヤ…


絵里「…」カリカリ… パキィッ

絵里「…痛っ。チッ…!!」



絵里(爪の噛みすぎで深爪になってしまった)

絵里(この喧騒は、それだけ私に苛立ちを与えてくれる)

絵里(今まで私が成してきた理想の国が、とんだ外様に崩壊させられようとしている)

絵里(それが、何よりも許せない)



絵里「…絶対にさせない」

絵里「私の夢を…、野望を叶えるために…!」

絵里「西木野真姫ィィィ…!!」



絵里(だけどもう、彼女をどうこうしただけでは私の夢は叶わない)

絵里(私の野望は、私のA-RISEが最強でなければ成し遂げられないのだから…!!)

絵里(どんなことにも屈しないよう育ててきた私のかわいいA-RISE…)

絵里(彼女たちには完膚なきまでに、実力差を見せつけてもらわないと困るの)

絵里(圧倒的な力の差で、C☆cuteもその取り巻きも黙らせる)

絵里(そして解散に追い込めば、もう誰もA-RISEに歯向かおうとする人間はいなくなるはず)

絵里(…そのための、一心不乱な猛練習)

絵里(一切の乱れを許さない、今までで最もハードな練習)

絵里(その程度ではもう、彼女たちの心は折れはしない)

絵里(私がそう、育てたのだから)



絵里「…にこは少し、予想外ではあったけど」

絵里「でも、もう少し…あと少しなのよ」

絵里「手が、届きそうなところまで来ているのよ…!」

絵里「私の夢…そう…」

絵里「『復讐』の達成まで…!!」

多目的ホール


「はぁっ…!!はぁぁっ…!!が、はぁっ…!げほっ!ごほっごほっ!!」


穂乃果「はぁっ…、うぶっ…。はぁぁっ…!」

にこ「ひぃっ…、ひぃっ…けふっ…ごがぁっ…」

凛「ふぅ…」



絵里「…一旦休憩。10分の水分補給のうち、またダンスに戻りなさい」

凛「歌はー?」

絵里「歌の練習は規定時間が過ぎてからよ。どんな体力でも腹の底から声を出せなきゃ意味がないわ」

絵里「そして明日からはいよいよライブの形式での練習になる」

絵里「この程度で息を上げてることを後悔するから、そのことも鑑みるようにね」



にこ「ごくごくごく…っく、はぁっ…!し、死ぬ…!」

穂乃果「流石にこれは…やりすぎ、だと思う…」

穂乃果「本番前に倒れたりしたらっ…台無し…だよ…」

凛「えー、先輩たちそんなヤワなんですかー?」

にこ「アンタねぇっ…。みんながみんな、アンタみたいに疲れ知らずじゃ…げっほっ!ごほはぁっ…!」

穂乃果「大声出すと…肺が驚くからやめよう…。ゆっくり、慣らしていかないと…」

凛「ふーん、大変なんだねぇ…」

凛「凛はこの休憩時間で歌の練習でもするにゃー。ふんふんふふんふふ~ん…ふんふんふふ~んふんふんふふ~ん…」

穂乃果「…?何その歌…A-RISEの曲じゃない…よね…」

凛「ん?テキトーにゃ。発声練習だよー」

にこ「鼻歌が発声練習になるの…?はぁ、別にいいけど…」

にこ「私も…あんたみたいに底なしの元気だったら…楽なんだけどねぇ…。羨ましいわ…」

凛「まぁまぁ!にこ先輩程度じゃ凛には追いつけないにゃ!せいぜい可愛さくらいかなー?」

穂乃果「可愛さは認めてるんだね…」

凛「でも凛が元気でもこの部屋が元気なくなってきちゃうと困るよねー。いつか床抜けちゃうんじゃない?」

にこ「はぁ…?どういう意味よ」

凛「だってさー。練習ずっとここでやってたからか、ダンスしてる時床ミシミシ言ってるじゃん」

凛「老朽化かなんか知らないけど、少しテンポ崩されるから何とかして欲しいにゃ。そう思うでしょ?」

にこ「え、えっと…凛…。気のせいじゃない?私、踊ってて床が軋む音なんて聞かないけど…」

凛「え…?そんなはず…」

穂乃果「…このホールは床も特別丈夫に作られてるはずだよ。大勢が激しい運動しても下の階まで響かないように」

穂乃果「経年劣化の心配も、比較的新しく建てられたホールなはずだからありえないと思う。それなら他のほとんどの教室が傷んでることになるし」

にこ「アンタがダンスに気合入れすぎて床が痛がってる声か、それか神経質になりすぎて幻聴でも聞こえてるんじゃないの?」

凛「えぇ…」

穂乃果「身体が疲れない分、聴覚がノイズも敏感に拾ってるんじゃないかな。落ち着けば聞こえなくなると思うよ」

にこ「そうそう。逆にちょっとくらい疲れなさいって話よ!」

凛「うん…」


凛「…でも、確かに聞こえるんだよなぁ…。ミシミシって音…」

今日はここまで
遊戯王と仮面ライダーに興味がある人はユートピアをいろんな意味で捉えちゃうから大変やな!
ちなみに作詞のテーマは決まりましたが未だに全く進捗ないです 頑張れ俺 ほなな

この話で人が死ぬなんてそんなそんな…ははは(遠い目)
で、まだお話固まってないけどなるべく間空けたくないので可能な限り更新していきます

別の日


ガヤガヤ…


英玲奈「…相変わらず、休み時間の声は収まることがないな」

あんじゅ「それだけクリスマスライブを楽しみにしてるってことでしょう?」

あんじゅ「…私たちは出ないっていうのに。失礼しちゃうわ。ぷんぷん」

ツバサ「まぁまぁ、いいじゃない。最近のどことなく暗かったUTXの雰囲気が、一気に払拭された感じで」

あんじゅ「うん…、それはいいんだけどね…」

英玲奈「我々がそれをなすことができなかった、というのは複雑な気持ちだな」

あんじゅ「この空気…、すごく羨ましいって思うの。あーあ、私たちも今からお願いしてライブに参加させてもらう?」

ツバサ「あはは、それもいいかも…って言いたいけど、私たちは私たちで年末のライブの練習で忙しいでしょ?」

ツバサ「この盛り上がりは彼女たちの努力の結果なんだし、私たちが邪魔するのもおかしいじゃない」

あんじゅ「そうね…。はぁ、やっぱり羨ましい」

英玲奈「どれだけ羨ましがってるんだお前は…。私たちのライブだって相当に盛り上がっているのに不満なの?」

あんじゅ「そうじゃないの。不満って言うのも少しはあるんだけど…」

あんじゅ「競い合えるライバルが、身近にいるっていうのは…私たちにはなかったことじゃない」

英玲奈「…あぁ」

あんじゅ「必死で頑張ってA-RISEになって、血反吐を吐くほど努力して日本一のスクールアイドルになった」

あんじゅ「でもそれって、全て私たちの中で完結してるお話。主役の私たちだけが目立つ…面白くないお話よ」

英玲奈「…私たちにも私たちの物語はあっただろう?あんじゅ」

あんじゅ「そうだけど!…でも、もっと…他のスクールアイドルの子たちとも知り合いになりたかったわ」

ツバサ「他のスクールアイドルとは会えたとしても、ラブライブでの会場だけ…だったからね」

ツバサ「研鑽し会える…切磋琢磨できるライバル…。そういう存在と出会える前に私たちは」

ツバサ「日本一になってしまった…のよね」

あんじゅ「…なんだか、一等賞って孤独なのね」

英玲奈「場合にもよるんじゃないか?私たちは出会えなかった…というだけだ」

あんじゅ「あぁんっ!だから羨ましいっ!もう一回入学しちゃおうかなぁ…」

ツバサ「バカ言わないの。…きっと、これからいつか出会えるわよ」

ツバサ「プロの世界に出れば、私たちはもう日本一じゃなくなる。また挫折の日々の連続でしょうけど」

ツバサ「そうなれば足りないものを補わせてくれるライバルに、どこかで会えるわ」

英玲奈「…あぁ」

あんじゅ「私は高校時代に会っておきたかったのー!そうすれば…別の大学はどうこうってお話ができたじゃなーい!」

あんじゅ「あ、希ちゃんがいるわ!あぁでも彼女は卒業したらもうアイドルじゃなくなるのかしら…うーん…」

英玲奈「悩ましいのはいいが…そろそろ場所を移動しようか」

ツバサ「…囲まれちゃったわね」


ワイワイガヤガヤ…


英玲奈「ははっ、こうしてみれば、私たちの人気も捨てたものじゃ…ないよなっ!」ガシッ ダダッ

あんじゅ「きゃっ!急に掴まないでよ英玲奈っ!」タッタッタッ…

ツバサ「ふふふっ…、日本一はこうでなくちゃ!追われる気分っていいわよねっ!あはははっ!!」

放課後 音楽室


真姫☆(ほんの少し海未による修正は入ったものの、花陽は見事作曲を成し遂げた)

真姫☆(海未の歌詞にも負けず劣らず…明るさに満ち溢れたいい歌詞だって思うわ)

真姫☆(花陽独特の、ほんわかした温かみも感じられる、いつもとはまたひと味違う歌に仕上がったわね)

真姫☆(そしてついに…本当にやっと、本格的なライブの練習)

真姫☆(ダンスはまだ未完成。探り探り、こうしたらいいんじゃないかなんて、親衛隊の子たちにもアドバイスを貰いながら)

真姫☆(衣装はデザインは既にできているけど、製作が本番ギリギリになりそうでヒヤッとする)

真姫☆(綱渡りにも程があるスケジュールだけど…、これが私たちなんだもの)

真姫☆(無理でもなんでもやればできる。その意志の塊が、C☆cuteなんだから)



真姫☆「ワンツースリーフォー…」パンパン…

タンタタンタッ… 


親衛隊A「…しかし今でもまだ信じられないよね」

親衛隊B「こっちの西木野さんが、異世界の住人だなんて」

親衛隊C「いきなり打ち明けられた時は何言ってるんですの?って感じでしたけど…」

親衛隊D「こうして生首浮いてるところを見せられちゃ…ねぇ?」

親衛隊E「べ、別の世界って…こんな魔法みたいなグッズが売ってるんですね…!私も少し欲しい…かも」

親衛隊F「いや、なんでも真姫ちゃんの相棒がこの世界にあるものだけで作ったって話だよ?」

親衛隊G「うぇっ!?ってことは私たちも頑張れば作れるってこと!?なにそれ夢広がりすぎ!」

親衛隊H「透明マントなんてあったら…むふふふ…色々し放題だよねぇ…」

親衛隊I「何か不純なこと考えてませんか?あなた…」


真姫☆「こらそこぉっ!!見学はいいけど声大きいっての!」

真姫☆「練習の邪魔するのなら出て行ってよね!」


親衛隊ズ「…ご、ごめんなさい」


花陽「あははは…私たちは大丈夫だけどね。集中してるから」

ことり「それに、私たちの活動を見てくれたらアイドルってこういうものだってわかってくれる子も口伝えで増えて…」

真姫☆「いや、あの子たち私の話しかしてなかったわよ」

ことり「あ、そうなんだ…」

海未「確かに、あまり騒がしくされては集中が乱されるのは事実ですね。リズムに狂いも生じるでしょうし」

海未「あと少しだけ、声のボリュームは下げてもらえませんか?」

親衛隊ズ「ワカリマシター…」

真姫「…っていうか、あの子たちがいる意味あるの?もうことりちゃんとの衣装の打ち合わせは終わったんでしょう?」

希「んー、まぁいて悪いってことはないし、それにいざってとき…」


ガララッ

パモ部部長「ういーっすっ!」


ババババッ!!

パモ部部長「おわっ!?何!?急に整列して!」

親衛隊ズ「なんでもありません!!」


希「…真姫ちゃん隠しに使えるし」

花陽「ぱ、パモ部の部長さんくらいならいいと思うけどね…」

真姫☆(…身近にいない人までにバラしちゃ何が原因で漏洩するかわからないでしょうが)

花陽「そ、そっか…」


海未「…あの、どうされました?何か御用でしょうか」

パモ部部長「ん?あ、そうそうそう!言っておきたいことがあってさ!」

真姫「言っておきたいこと?」

パモ部部長「この間さー、アタシも仲間と一緒になんか作るって話してたじゃない?」

ことり「あー、そういえば…」

パモ部部長「最初は立て看板みたいなものにしようかなー、なんて思ってたんだけど…」

パモ部部長「ステージ周りはアイドル専攻が管理してて迂闊にそういうの置けないらしいのよ!」

希「あ、そうなんや。…でもステージ近くに何も作れないんやったら他に場所なくない?」

花陽「学校前の限られたスペースですもんね…。客席も含めればかなり狭いほうだし…」

パモ部部長「そう!悲観に暮れた私たちだったけど…ここで妙案が思いついたの!」

パモ部部長「それが…これだっ!」ババンッ

ことり「なにこれ?」

海未「見取り図…?UTXとステージがあって…あれ、UTXに貼り付けられたようなこれは…?」

パモ部部長「これこそアタシたちの考えた計画!屋上から垂れ幕をかけるっ!」

真姫・真姫☆「「た、垂れ幕ぅっ!?」」

パモ部部長「あれ、今真姫ちゃんの声二重じゃなかった?」

希「き、気のせい気のせい…。でも垂れ幕って…あのデパート開店した時とかにかけるでっかいやつよね?」

花陽「今から作るんですか…?もう本番まで一週間と少し程度なのに…」

パモ部部長「アタシの人脈の広さを舐めないでよ!そういうのはプロに任せればちゃちゃっと完成さ!」

パモ部部長「ま、ギリギリなんだけどねー…。前日の23日に屋上に運び込まれる予定」

海未「その…学校側に許可は取ったんですか?」

パモ部部長「モチのロン!理事長に直訴しに行ったら『うーん…いいんじゃ、ない…?多分。始まる直前くらいにかけるなら』みたいな曖昧な許可をもらったわよ!」

ことり「もう理事長も何が良くて何がダメなのかわからなくなってきてそうだね…」

パモ部部長「てなわけで、本番当日を楽しみにしててよね!どでかく応援幕垂れ流してあげるからさっ!ほなな!」ガチャッ バタンッ


真姫☆「…嵐のような人ね…」

海未「提案もハチャメチャでしたし…しかし垂れ幕ですか…。カッコイイですね」

花陽「え、海未さん…?」

海未「え?かっこよくありませんか?大きな文字がババンッって。まさか実現できるとは思いませんでしたが…」

ことり「海未ちゃんこういうところもある子だから」

真姫「…未だに海未をわかりかねてるわ」

希「安心して。うちもやから」

夕方

UTX学院校門前


海未「…はぁ」

ことり「うん?どうしたの海未ちゃん」

海未「こんな時間に下校していて、穂乃果たちに太刀打ちできるのでしょうか…」

真姫☆「仕方ないでしょ。アイドル専攻以外は下校時間には絶対に下校しなきゃいけないんだから」

真姫「…よくよく考えると不気味よね。アイドル専攻って」

希「学校の決まりごとから尽く逸脱しているからね。…それだけえりちに権力があるってことよ」

花陽「ま、まぁ!こうやって夕日を見ながら帰れるって思えば!ね?」

海未「…ふふ、そうですね。っと、そういえば…」

海未「本番は、この校門前でライブするのでしたね」

希「UTXのオーロラビジョンが眺められるこの場所で、やね」

ことり「で、この大きな校舎の屋上から…垂れ幕がだばーって降りるんだよね」

真姫「ちょうどステージ上から見上げる形で…って、ライブ中は誰も眺められないんじゃない?」

花陽「あ、ホントだ…。近すぎて下の方しかわかんないよね…」

真姫☆「どこに向けて私たちのライブを宣伝する気なのよ…。対外向けじゃないっていうのに」

希「あははは、いいやんっ。どうせ完全に封鎖するわけでもないんやし」

希「あのモニターを通してならそこそこ遠くの場所にもライブは届く。広い立ち見席なら、他のお客さんも見れるやん!」

真姫☆「…そうかもね。どれだけのお客さんが集まるのかしら?」

海未「うぅ…混乱が起こって中止などにならなければ良いのですが…あ、いえ!それならばノーコンテストで我々が解散する必要がなくなるのでは…!?」

ことり「もう海未ちゃんっ!ライブ前から不吉なこと言わないのっ!」

海未「ご、ごめんなさい…」

真姫☆「勝つ気でいかないと勝てる勝負も勝てないわ。負けることなんか今から考えていてもしょうがないでしょ」

真姫「そうそう。負けたとは負けてから考えればいいのよ。芋砂にやられたら回り込んで…」

希「何の話…?」

花陽「とにかくがんばろーってことだよね!よぉし、これからダンスの練習だー!」

真姫「え、今からまだ…?」

真姫☆「神田明神なら空いてそうだし、自主練習をしたいならすればいいんじゃない?」

海未「そうですね。行きましょう」

真姫「うぅ…もう疲れた…」

神田明神


真姫「ハァ…ハァ…。この階段…いつ登っても辛い…」

海未「まだ言ってるんですか?ほら、行きますよ!」

真姫「ま、待ってぇ…」

ことり「海未ちゃん、元気だねー」

花陽「それだけ負けたくない…うぅん、勝ちたいんだよ。勝って取り戻したいんだよね」

ことり「穂乃果ちゃんとの日々を…か。うん、私も…取り戻したい」

真姫☆「…」


タッタッタッ…

海未「よし、一番乗りっ!…あれ?」

真姫「はぁ…はぁ…な、なんなのよー?」

希「ありゃりゃ…先客やん」


ことり「どうしたの?」

海未「既に境内前のスペースを使われていました…。これではダンスの練習は難しそうですね…」

真姫☆「珍しい…いったい誰が?」


パシンッ パシンッ


真姫「…?何してるのあれ…。縄跳びをくぐって…」

希「あれはダブルダッチやね。ダンスの一種みたいなもんかな」

真姫☆「現代版リンボーダンスみたいなものよ。参加させてもらったら?」

真姫「い、いいわよ」

海未「使われていたなら仕方ありませんね…。今日は解散しますか」

ことり「そうだねー…」

真姫「はぁ…よかった」



花陽「…なわとび」



真姫☆「…ん?花陽…どうしたの?」

花陽「…」

真姫☆「花陽っ、みんな行っちゃうわよ?」

花陽「えっ?あ、あぁ…うん、わかった。今行くね」



海未「では、私たちはこちらなので」

ことり「また明日ね」

真姫「うん、バイバイ。私は…こっちね。さようなら」

希「うん、ほなぁ。じゃ、うちらは一緒に…あ」

花陽「うん?どうしたんですか?」

希「…ごめん、今日スーパーに買い出しに行く予定やったんや。忘れてた」

希「真姫ちゃん、先帰ってて。り…同居人ちゃんには晩ご飯少し遅れるって伝えておいてね。じゃ!」タッタッタッ…

真姫☆「あっ…、言ってくれたら私も付き合ったのに…。まぁいいわ。花陽、久しぶりの二人きりね」

花陽「あ、…そうだねー」

スタスタ…


花陽「…」

真姫☆「…」

真姫☆「…花陽」

花陽「…」

真姫☆「花陽っ」

花陽「ふえっ?な、何かな…?」

真姫☆「さっきからぼーっとしてどうしたのよ?病気?」

花陽「あ、うぅん…違うの。えっと…」

花陽「…思い出してたの。昔のこと」

真姫☆「昔の…?」

花陽「うん」

花陽「あの…なわとびを見て、思い出したんだ」

真姫☆「ダブルダッチのアレ?」

花陽「そう。昔…大なわとびってあったじゃない。グルグル回して、一人ずつくぐっていくの。体育の授業でよくある」

真姫☆「あぁ…あるわね」

花陽「私、あれが怖くて…。ムチで叩かれるような怖さで。みんなが飛んだあと、ずっと立ち尽くして、震えてて…」

花陽「涙をボロボロ流して、あわやおもらしする直前で、逃げ出そうとも思った時…」

花陽「そんな私を見かねて、大なわとびを逆から飛んで、私に手を差し伸べてくれた子がいたの」

花陽「『こわくないよ。簡単だよ。いっしょに飛ぼう?』って」

花陽「『いやだよ。あたったら痛いもん』って私がダダをこねても、諦めず私を励ましてくれて」

花陽「ついに私は、その子と一緒に大縄跳びを飛んで。…思ったよりずっと簡単で、怖いものなんてなくて」

花陽「『ね、簡単だったでしょ?』って笑って言ってくれて。私も『うん、簡単だね』って返して」

花陽「でも心の中では、こう付け足して。『あなたがいてくれたから、簡単だったんだよ』って」

花陽「それから私とその子は、とても仲良しになって…遊びに行くときも、トイレに行く時も一緒の、大の仲良しに、親友になれた」

真姫☆「…それが」

花陽「星空凛ちゃん」

真姫☆「…」

花陽「思い出したんだ。あれがあったから私…、凛ちゃんと仲良しになれたんだって」

花陽「私がどんくさい子じゃなかったら。凛ちゃんが私を励ましてくれなかったら」

花陽「あんな仲良しには、なれてなかったのかもしれないなぁって」

真姫☆「そう…」

花陽「なんて、もしかしたらまた別のところで出会ってたのかもしれないけどね」

花陽「けれど、私にとってなわとびは…出会いの一つだったから」

花陽「凛ちゃんに出会わせてくれた、細い扉」

花陽「…あ」

真姫☆「うん?」

花陽「もう一つ、思い出した」

花陽「私を助けてくれた凛ちゃんに送った、お礼の歌」

花陽「私が…漢字もろくに書けない私が、言葉もほとんど知らない私が、知ってる言葉を紡いで作った」

花陽「生まれて初めての、ライブの…歌」

花陽「…すぅっ」



「  ありがとうって あふれ出してくる  」


「  夢が 少しずつ 近づいて  」


「  ありがとうって あふれ出してくる  」


「  ありがとう  」


「  嬉しくて 嬉しくて 幸せすぎると  」


「  泣けちゃうの ごめんね  」



花陽「…」

真姫☆「…ふふ」パチパチパチ…

花陽「わっ…!は、恥ずかしい…」

真姫☆「何よ。いい曲じゃない」

花陽「…そう、かな?ふふ、ありがと」

花陽「凛ちゃんもお歌が終わったあとに大きな拍手をくれて、すごく嬉しかった」

花陽「ただ『最後にごめんね、っていうのはかよちんっぽいね』って言われたの、すごく覚えてるかも」

真姫☆「ふふ、ホントね。最後までありがとうでいいのに」

花陽「だって、怖くても泣いて、幸せでも泣いて…泣いてばっかりできっと凛ちゃんもうろたえちゃうだろうなって思いで」

花陽「こんなに泣いてごめんね、って気持ちで書いたんだったと思う」

花陽「ふふ…変なの」

真姫☆「ん?何が変なの?」

花陽「だってね、私…この歌のこと、ほとんど覚えてなかったんだ」

花陽「メロディも、歌詞も何もかも忘れてて。なのに今は、どんな気持ちで作っていたのかも思い出せる」

花陽「だから可笑しいな、って思って」

真姫☆「それは、あなたの気持ちが過去に戻ってるから…じゃないかしら」

花陽「過去に?」

真姫☆「えぇ。なわとびを見て、あの頃の気持ちを思い出して」

真姫☆「その時と全く同じ思いをしているから、忘れていたことも鮮明に思い出せるようになったのよ」

花陽「…そっか」

真姫☆「だから…凛にも思い出させてあげて。その頃の純粋な気持ち」

真姫☆「あなたと、友達になりたいって思っていた頃の凛の気持ちに、あなたの歌で戻してあげるのよ」

花陽「…うんっ!私たちのライブで…凛ちゃんともう一度…お友達になるんだっ…!!」

真姫☆「凛には敗北の悔し涙を浮かべさせるより、感動の涙を流させてあげたいわね」

真姫☆「そうすればきっと悲しみの連鎖も…終わりを告げるはずよ」

花陽「そう、だね…。あぁぁ…、ドキドキしてきた!」

花陽「ごめん真姫ちゃん!私先帰るね!お風呂の中で歌の練習してくる!」

真姫☆「え、あ…頑張って」

花陽「うおおぉぉっ!凛ちゃああぁぁぁんっ!!」ダダダダッ…!!

真姫☆「…」

真姫☆「…まぁ、元気なのは大切よね」





真姫☆(花陽の決意も新たに、決戦へと歩みを進み続ける私たち)


真姫☆(それぞれの思惑を胸に、C☆cuteもA-RISEも、勝利を求めて練習に励む)


真姫☆(ダンスも完成して、C☆cuteの衣装も一つ、また一つと出来上がり)


真姫☆(ほどよい緊張と、日が近づくにつれてなお増し続けるUTXの熱狂に包まれ)


真姫☆(きっとこのライブは、勝っても負けても素晴らしいものになるに違いないと)


真姫☆(私たちの誰もがそう思っていた)


真姫☆(そんな、ライブ本番4日前の、放課後)




真姫☆(事件は、起きた)


真姫☆(起きるべくして、起こってしまった)



今日はここまで
既存曲に独自の解釈加えちゃったけど二次創作だし寛容な心で見逃してください
あとダブルダッチはリンボー関係ないです バンブーダンスって言いたかった それも若干違うか
それじゃ次回まで ほなな

そいじゃ再開です
文法的には「起こるべくして」が正しかったね 間違い見つけるたびに恥ずかしくなるにゃ

12月20日 土曜日

朝 神田明神


真姫☆「…」←透明マント


花陽「あぁ…」

海未「うぅっ…」

ことり「あはは…」

希「これは…」

真姫「ちょっと…」



野次馬ズ「「「わあぁぁぁぁ…!」」」ガヤガヤ…



希「朝からこんなに人が集まるなんて…」

ことり「最近音楽室の前に見学者が来ることは度々あったけど…」

海未「休日であることと、神田明神という開けた場所であるがゆえに、たくさん人が来たようですね…」

真姫「に、人気があるのがわかっていいんじゃない?」

花陽「でも神社の人に迷惑じゃないかなぁ…?」

希「うーん、神主さんはおおらかな人やし、お正月に比べれば全然少ないほうやからそこはいいやろうけど…」

ことり「…これじゃ真姫ちゃん、顔出しできないよね」

海未「今ここで真姫が二人いることが知られてしまえば学校側にも伝わるでしょうしね」

真姫「それは困るわね…」

花陽「どうする…?人払いしたほうがいいかなぁ…」

真姫☆「…今日は土曜日よ。休日だからどれだけの人がいつ来るかわかんないし、人が来るたび人払いなんてしている余裕もないわ」

真姫☆「練習を見学されるのはまぁ…別に悪いことじゃないと思うわよ。これを参考に自分もアイドルはじめよう、って思ってくれればありがたいしね」

希「でも真姫ちゃんはどうするん?ずっと透明?」

真姫☆「マントの中から手拍子してもほとんど聞こえないわ、音楽室ならまだしも開けた場所じゃあね…」

真姫☆「…はぁ、仕方ないわ」

海未「どうするつもりですか?」

真姫☆「今日はコーチはナシよ。あなたたちで練習して頂戴」

ことり「えっ…」

真姫☆「できるでしょ?もうあとは追い込みだけなんだし」

真姫☆「私はここにいるよりどこか別の場所にいたほうが安全よ」

花陽「そ、そっか…。そうだね」

真姫☆「それじゃ、あとはよろしくね。また夕方頃に会いに来るわ」

花陽「うん、頑張るね。よーしっ、じゃあ練習だ!」

「おーっ!」



スタスタ…

真姫☆「…とはいったものの」

真姫☆「どこで暇を潰しておこうかしら」

UTX

多目的ホール



絵里「…」


穂乃果「はっ…!せいっ、やっ…」

にこ「よっ…、とっ…」

凛「へっ…、ほっ…」



絵里「…うん」

絵里「なかなか仕上がってきたわね。完璧にはまだ至っていないけれど」


穂乃果「はぁっ…はぁっ…、そう、ですか…」

絵里「あと、疲れがたたって笑顔がおざなりになっているわね。もっと笑うこと」

にこ「はい…」

絵里「じゃ、次はライブ本番と同じ体で…」

凛「あ、ちょっと待って…」

凛「ととと…」プシュー

穂乃果「…そんなに酷いの?筋肉痛」

凛「うん、ここ最近足が痛くて…」

にこ「さっきから何回目よ、クールダウン」

凛「ご、ごめんなさい…」

絵里「…今日は休む?練習に支障が出るなら…」

凛「や、やれますっ!足手まといにはなりませんからっ!」

穂乃果「明日にも痛みが治まらなかったら、本番に備えて明日は休もうね」

凛「うん…でも、今日は行けるにゃっ!さ、さぁ!ライブライブ!」

にこ「…ホントに平気なのかな」


凛(こんなところでへこたれてられないよ…!)

凛(痛みくらいガマンすれば平気!)

凛(もう4日後にはライブなんだ…!ここで休んでちゃ二人に遅れを取っちゃうよ…!)

凛(夢の舞台へはもう後一歩…!後一歩でたどり着くんだからっ…!!)




絵里「…足が、痛い…?」

絵里「いえ、まさか…まさかね」


絵里「…まだ、大丈夫なはず」

秋葉原


真姫☆「凛ー…?凛はどこー?」

真姫☆「…はぁ。いないわよね」


真姫☆(凛の最近の楽しみは朝からアキバに繰り出してジャンクパーツを漁ることなんだけど)

真姫☆(広い秋葉原から凛を探すのは無謀だったわね…)

真姫☆(見つけられたら二人でショッピングでも…と思ってたんだけど)

真姫☆(凛の携帯は着陸時の衝撃でぶっ壊れちゃって連絡の方法がない…)

真姫☆(…そもそも別世界の携帯がなんで使用できるのかは…考えないでおきましょう)


真姫☆「このままアキバをうろついていても仕方ないわよね…」

グゥゥゥ…

真姫☆「…う。お腹すいた」

真姫☆「もうそんな時間…。どこか適当な場所でお昼にでもしましょうか」



喫茶店


真姫☆「…もぐもぐ」

真姫☆「ふぅ、おいしかった。最近外食してなかったから新鮮ね」

真姫☆「さてと、…やることがなくなっちゃったわ」

真姫☆「あぁ…、どうしよう…」

真姫☆「…あ、そうだわ!いいこと思いついちゃった」

真姫☆「透明マントがあればA-RISEの練習にこっそり忍び込めるんじゃないかしら…!」

真姫☆「そして敵情視察…!してどうなるってわけでもないけど」

真姫☆「…まぁ、どんな曲をやるのか知っておいて損はないでしょ」

真姫☆「よし、決まりね。目標はUTXよ!」



UTX 多目的ホール



絵里「…それじゃ、一旦1時間ほどの休憩を取るわね。その間に昼食と水分補給。よろしくね」


穂乃果「はぁっ…、ふぅ…。疲れた…」

にこ「…身体に疲れが溜まってきてるわね…。少しの運動でかなり疲れるようになってきてる…」

穂乃果「その分気合を入れないと…、んぐっ…んぐっ…」

にこ「ご飯もいっぱい食べなきゃね!むふふ~…」カパッ

穂乃果「…うわ、多いね。よくそんなに入るなぁ…」

にこ「ご飯は栄養あるものをたっぷり食べないと身体が持たないって学んだのよ!あ、凛!凛も一緒に…」


凛「ふっ…く、うぅっ…」ギュッ ギュッ…


にこ「…凛。足、そんなに痛む?」

凛「へ、平気っ…!筋肉痛くらい我慢すれば大丈夫だもん!」

凛「マッサージで凝り固まった筋肉をほぐしてあげればすぐに…!」グイグイ…

穂乃果「…力任せにマッサージしても凝りはほぐれないよ」

穂乃果「手伝おうか?」

凛「い、いい…です。ちゃんとケータイで調べてやってるから平気だもん…!」

凛「よっ…たっ…」クニクニ…

穂乃果「…」

にこ「…凛がいいって言ってるならいいんじゃないの。大丈夫よ、あの凛だもん」

にこ「その代わり、明日は絶対休むのよ?一日休めばタフな凛のことだからすぐ良くなるわ!」

凛「えへへ…、ごめんね。そうするにゃ」


穂乃果「…本当に」

穂乃果「本当に筋肉痛なの…?凛ちゃん…」

穂乃果「…嫌な、予感がする」




絵里「はい、ワンツースリーフォー…」パンパン…


凛「ららら~…!」タンタタンッ


凛(痛いっ…、痛いっ…!!)

凛(でもこのくらいどうってことない!!前はもっと辛い思いだってしたんだから…!)

凛(そうだ…!忘れちゃえ…!忘れちゃうんだ…!!)

凛(疲れを忘れたように、この痛みだって忘れちゃえばなんてことないよっ…!!)

凛(そうすれば…立ち止まることなく前に進めるっ…!!)

凛(後一歩を、踏み出せるっ…!!!)

凛(一歩を…こうやって!!)


凛「はぁっ!」ダンッ




パキンッ

UTX学院


真姫☆「ふふふ~、さてさて…」

真姫☆「休日に学校に忍び込む…なんだか趣があるわよね」

真姫☆「さてと…アイドル専攻が練習しているホールまで行きましょうか」



多目的ホール前


真姫☆「よし、たどり着いたわ」

真姫☆「中ではどんな鬼畜なことが…」


グワンッ…!!


真姫☆「ッ…!!?」

真姫☆「あ、ぐぅっ…!!揺れがっ…!」

真姫☆「こんな、時に時空の揺れ…!う、ぐっ…立っていられない…」ヨロッ…


パサッ…


真姫☆「あ、マントが…。く、ぅっ…」

真姫☆「ううぅ…か、はぁっ…」

真姫☆「はぁ…はぁ…。だいぶ収まって、きた…」

真姫☆「全く…厄介すぎるわ…。しかし、こんな…ホールの前で寄りかかってるところなんて目撃されたら…」

真姫☆「また出待ちか何かと勘違いされるんじゃ…あの時優木あんじゅに出会ったみたいに今度はまた…」



英玲奈「…何、している?」



真姫☆「…」

真姫☆「…会っちゃったし」

英玲奈「お前は確か…西木野真姫?練習はどうした?そもそも今日は休日なのにどうしてここにいる?」

真姫☆「あ、その…実は…あ、うぅっ…」ヨロッ

英玲奈「っ…、大丈夫か?気分が悪いのか?」

真姫☆「…ごめんなさい。一過性のものだから気にしないで…」

英玲奈「そうか、ならいいが…いや良くない!なんでここにいるのか説明してもら…あ、いや今気分が悪いなら後ででも…」

真姫☆「色々と気を遣ってもらって申し訳ないわね…」

真姫☆(でもここにいる理由…どう説明したものかしら…)



「うぅっ…、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」



真姫☆・英玲奈「「っ!!?」」


英玲奈「何だっ…今の声…!?ホールの中から…!?」

真姫☆「今のっ…凛!?凛に何かあったんじゃ…!!」

真姫☆「凛っ!!」ダダッ

英玲奈「あ、おいお前…くっ、今は仕方ないか…」タタッ

多目的ホール


凛「ぎぃっ…!!?」


穂乃果「…何、今の音…」

にこ「なんか、パキンって聞こえなかった…?」


凛「うぅっ…」

凛「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!」


穂乃果・にこ・絵里「「「っ…!?」」」


凛「痛いっ…!!痛い痛いぃぃっ!!あああああぁぁぁっ!!!」

凛「ぐぎぃぃっ…、うぎゅううぅぅっ!!あ、ああぁぁぁぁっ…足があぁぁっ…」


にこ「り、凛っ…!?」

穂乃果「凛ちゃん…、ど、どうし…」


真姫☆「凛っ!!」バダンッ


絵里「ま、真姫っ…!?あなた、どうしてここに…」

真姫☆「話は後よ!凛…凛、どうしたの!?」

凛「痛いっ…!!いたいいぃぃぃ!!!」

穂乃果「わからない…急に足を押さえて痛がり出して…」

にこ「あ、足をくじいたんじゃ…!凛、保健室行きましょう!」

絵里「そうね…肩貸してあげるから、ひどくならないうちに…」


真姫☆「動かさないでっ!!」


絵里「っ…、どうして」

真姫☆「…捻挫かどうかまだわからないわ」

凛「ひぃっ…、ふひいぃぃぃっ…!!」

真姫☆「凛の痛がりようが尋常じゃない…。もしかしたら…」

真姫☆「凛、聞こえる?返事、できる?」

凛「西木野…さん?う、ぐぅっ…」

真姫☆「足のどこが痛いの?どっちの足?」

凛「ぎぃっ…、み、右足の…すねの、とこぉぉ…はぁっ…!はぁぁぁっ…」

穂乃果「脛…って、じゃあくじいたわけじゃない…?」

真姫☆「…足が赤黒く変色してる。内出血を起こしているんだわ」

真姫☆「と、なるとこれは…っく、なんて、こと…!」

にこ「ど、どうしたの…?凛、どうなったの…?」

真姫☆「にこちゃん!すぐに棒みたいなもの、持ってきて!なかったら傘でもいいから!」

にこ「えっ…?」

真姫☆「早くっ!!」

にこ「わ、わかったわ…」タタタッ…

穂乃果「…棒?どうするつもり…?」

真姫☆「足を固定するために使うの。凛は…」


真姫☆「…骨折しているわ」

絵里「っ…、嘘っ…!」

穂乃果「骨折っ…!?」

真姫☆「…多分、間違いない」


凛「う、うぅぅっ…!!」


穂乃果「そんな、どうして…?ただ普通に練習してただけなのに…」

絵里「…」

穂乃果「…でもそういえば、倒れる直前にパキンって音が聞こえたけど…あれが…?」

真姫☆「間違いないわね。凛の足の骨が折れる音…」

真姫☆「…折れた骨が中の肉を傷つけて内出血を起こしている…。何か冷やすものない?」

穂乃果「冷やすもの…。あっ、凛ちゃんが筋肉痛のために持ってきてたコールドスプレーが…」

真姫☆「それでいい。…あとガムテープとかもあると助かるんだけど」

穂乃果「さ、探してくるっ…!」タタッ…

真姫☆「…あとは…」ピポパッ

真姫☆「…あ、私。うん…え?あぁ…と、友達の携帯電話貸してもらったのよ。だから…」

真姫☆「それより…友達が骨折したの。病院に運びたいから救急車、学校まで送って欲しい」

真姫☆「…お願い。ありがとうパパ、愛してるわ。それじゃ…」ピッ

真姫☆「…電話番号も違ってるなんてね。流石に想定してなかったわ」

絵里「…凛を、どうするつもり」

真姫☆「聞いててわからなかったの?病院に…」


絵里「ダメよっ!!」


真姫☆「…なんですって?」

にこ「真姫ちゃん、傘っ…え、何…?」

絵里「ダメっ…絶対にダメッ!!」

絵里「凛を連れて行かないで!!今…今凛に抜けられたら困るのよっ!!」

真姫☆「なっ…何を言ってるのあなた!?」

絵里「怪我だろうが骨折だろうが関係ないわ…!凛が居なくなればA-RISEは…!A-RISEはっ…!!」

絵里「凛はどこにも行かせないッ…!誰にも渡さないんだからっ!!離れてっ!凛から離れなさいっ!!」ガッ

真姫☆「な、やめてっ…!動かしたら凛がっ…」

絵里「凛っ…!!凛ッ!!!」



スパシィィンッ!!



絵里「ぶっ…!」

ドテーンッ…!!


にこ「なっ…」


真姫☆「…」

真姫☆「…英玲奈、さん」



英玲奈「少し落ち着け、絢瀬」

絵里「え、れ、な…」

英玲奈「…」

絵里「え、英玲奈あぁぁぁっ!!」ガシィッ

英玲奈「落ち着けと言っているんだっ!!」

絵里「っ…」

英玲奈「今は西木野の判断に任せよう。本当に骨折なら…お前がどうこうできる問題じゃない」

絵里「でもっ…、でもぉっ…!!」

英玲奈「…少なくともこの痛がりようじゃ、…もうクリスマスのライブは無理だ」

絵里「っ…!」

英玲奈「今はおとなしく引け。…わかったな?」

絵里「…わかったわ」



にこ「…か、カッコイイ…。あの絵里をあんなふうにおとなしくさせるなんて…」

真姫☆「そうね…」

穂乃果「真姫ちゃん、ガムテープ…、…何かあったの?」

真姫☆「…いえ。じゃあとにかく、応急処置…」


真姫☆(傘を凛の足に固定させ、ガムテープでガチガチに縛り付ける)

真姫☆(むやみに足を動かせば骨が筋肉をどう傷つけるかわからない)

真姫☆(出血したところにはコールドスプレーを吹きかける。これでひとまずは…)


真姫☆「…凛、どう?痛い?」

凛「痛い…けど、さっきよりかは、マシかも…」

真姫☆「そう。よかった…」

真姫☆「…凛、筋肉痛だって言ってたけど…本当に筋肉痛なの?」

穂乃果「えっ…、わかんない…。凛ちゃんが自分で筋肉痛だって言ってただけだから…」

真姫☆「…じゃあ多分、そうじゃないんだわ。傷んでいたのは筋肉じゃなく、骨だったのよ」

にこ「えっ…それじゃあ…」

真姫☆「前々から兆候は出ていた…。多分骨に細かいヒビが入っていて…何かの衝撃で折れてしまったのね」

真姫☆「原因はおそらく、疲労の蓄積。それによる…疲労骨折」

凛「疲労、骨折…」

にこ「ど、どうなのそれ…?凛、どうなっちゃうの…?」

真姫☆「…そこまでは私もわからない。軽度か重度か…それによるわね」

穂乃果「…」

真姫☆「…そろそろ救急車が来る頃ね。私は凛についていくつもりだけど」

真姫☆「あなたたちは、どうする?」

穂乃果「えっ…」

にこ「…私は」

にこ「私もついていくわ!凛っ…、いいわよね?」

凛「せんぱ、い…」

穂乃果「…私も、行く。大切な仲間が怪我をしたんだもの…行くに決まってるよ」

真姫☆「…わかったわ」

絵里「なっ…あなたたちまでっ…!」

絵里「ふざけないでっ!残りなさいっ!!まだ昼なのよ!?練習はっ…!」

真姫☆「っ…あなたねぇっ!!どこまでっ…」

英玲奈「…絢瀬。大切な仲間の安否を心配するのは当然のことだ」

英玲奈「今から練習したところで、練習に身が入ると思うか?」

絵里「当たり前でしょうっ!誰かが散っていったところで気にしていたら、一番にはなれないっ!頂点には立てないのよ!!」

英玲奈「怪我と挫折は違う。それに、お前の目指しているものは…それでは頂点ではない」

英玲奈「ただの、孤独だよ」

絵里「ッ…!うる、さいぃっ…!!」

英玲奈「うるさくて結構。専攻生の健康の管理もできないお前に、頂点を獲るなど言えたことではない」

英玲奈「…この責任は、後々響いてくるぞ。覚悟しておけ」

絵里「…っ、ぐ、うぅっ…」

真姫☆「…ありがとう、英玲奈さん。絵里を宥めてくれて」

英玲奈「当然のことだ。あとは…私に任せてくれ。先生には事情を説明しておく。コイツのことも、含めてな」

絵里「…」

真姫☆「…えぇ。お願い」



救急車


真姫☆(救急車に3人も同乗するのはありえないんだけど、どうしてもとお願いしたらなんとか乗せてくれた)

真姫☆(事故時の状況説明や普段の素行を聞くためには一人くらいは必要だけど、普通はそんなにいらないしね)

真姫☆(心配そうに見守る穂乃果に、涙ながらに凛の手を握り締めるにこちゃん)

真姫☆(凛は汗ばんだ額でにこの必死な問いかけに答えていたけど、疲れが祟ったのか、やがて静かに眠りについた)

真姫☆(…私があのタイミングでUTXに来ていて助かった。絵里に任せていたらどうなってたことか…)

真姫☆(とにかく今私ができることは、凛の家族に連絡することと、そして…)

真姫☆(…花陽にも、知らせておかないと)



西木野総合病院


真姫☆「…ってこと、らしいです。お願いします」


穂乃果「…あ、西木野さん」

真姫☆「どうだった?そっちは」

にこ「色々と聞かれたわ。普段はどんなことをしてたのか、って…」

にこ「明らかに過労…ですって。知ってるわよ、そのくらい…」

真姫☆「…そうね」

穂乃果「凛ちゃん、治療にどれくらい…かかるのかな」

穂乃果「…ねぇ、西木野さん…。私たち…凛ちゃんと一緒に、スクールアイドル…できるの、かな…?」

にこ「穂乃果…」

穂乃果「嫌だよ…、あんなに頑張ってた凛ちゃんが…」

穂乃果「歌うことを楽しみにしていた凛ちゃんが、A-RISEになれないなんて…ここまできて、そんなの…」

穂乃果「嫌だよ…嫌だよ…う、うぅうぅっ…!!凛ちゃんっ…!!」

真姫☆「…私の口からは、何も言えないわ」

真姫☆「治療と診断をして、結果が出てから。…それまでは、どうとも」

穂乃果「うぅっ…、うぅぅぅっ…」

真姫☆(それから時間が過ぎて)

真姫☆(夕方頃になってから、凛の家族が駆けつけた。仕事を切り上げてやっと来られたらしい)

真姫☆(足にギプスと包帯を巻かれた凛は、病室で家族たちと話していた)

真姫☆(思ったより元気で、退院したら美味しいもの食べたい、だとか…そんな話をしていた)

真姫☆(家族が帰ったあとは、穂乃果とにこが)

真姫☆(これからのことと、クリスマスのライブのことについて)

真姫☆(…A-RISEは、二人でもライブを行うと結論が出たみたい。凛は不服だったけれど…それは仕方のないことでしょう)

真姫☆(あとはほんの少し会話をして…それから、帰り際に二人に凛のことを告げた)

真姫☆(二人にとっても凛にとっても残酷なことだったが、告げなければいけないことだった)

真姫☆(にこちゃんは目を伏せて、穂乃果は声を殺すように嗚咽をあげ、帰っていった)

真姫☆(…そして、面会時間が終わるほんの少し前に)

真姫☆(花陽が来た)



凛の病室


コンコン


凛「…どうぞ」


ガチャッ

花陽「…は、入るね」

真姫☆「…」


凛「なんだ、小泉さん。来たんだ」

花陽「そ、そりゃ…くるよ…。怪我したんだもん」

凛「…ただの骨折だよ。運動を抑えたらすぐ治るにゃ」

花陽「そ、そうだよね。あ、これ…お見舞い。大したものは買えなかったけど…」

凛「あ、凛の好きなカップラーメン!へぇ~…覚えてたんだ…」

花陽「うん!小さい頃、二人でよく食べたよね。覚えてるよ~」

凛「そっかー…。凛は覚えてないなぁ…」

花陽「そう?」

凛「うん…。忘れちゃったよもう…昔のことなんて」

花陽「…そう、なんだ」

凛「…、っ…!む、昔はもういいでしょ!重要なのはこれから、だにゃ!」

凛「ら、ライブは…ライブは出られなくなっちゃったけどでもっ…来年はっ…絶対に小泉さんを泣かせてやるんだもん!」

凛「だからその時まで覚悟しておくんだね!ふんっ!」

花陽「うん…待ってるから、だから凛ちゃんも…」


真姫☆「…ごめんなさい。花陽、その後は言わないで」


花陽「え…?」

真姫☆「凛、あなたに言わなくちゃいけないことがある。どうしても」

凛「…え、何?」

真姫☆「これ以上長引かせても、あなたが傷つくだけだから、だから…言うわね」



真姫☆「凛、あなたは…A-RISEにはなれない」

凛「へ…?」


真姫☆「…疲労骨折はただの骨折じゃないの。骨に小さいヒビが徐々に入って、ある日ほんの衝撃で砕ける骨折」

真姫☆「あなたの場合、それが…かなりひどい」

真姫☆「レントゲンで、あなたの骨に無数のヒビがあることがわかったわ。骨折した右足だけでなく、左足にも」

真姫☆「これら全てを完治するにはかなりの日数が必要になる」

花陽「かなりの日数って…どれくらいの…?」

真姫☆「…多分、全治に…3ヶ月くらい」

凛「3、ヶ月…。さ、3ヶ月なんでしょ…!?それじゃ治るのは3月じゃんっ…!」

凛「それからなら、まだA-RISEはやれるっ…!!全然大丈夫じゃんっ…」

真姫☆「…そして」

真姫☆「リハビリに半年以上」

凛「え…?」

真姫☆「知ってる?動かさない筋肉がどうなってしまうか」

真姫☆「3ヶ月も歩くことをしなければ…筋肉はやせ衰える。ダンスはもちろんのこと、走ることも飛ぶことも…歩くことすらできない」

真姫☆「その足を動かせるようになるまでの時間が、半年いるってことよ」

凛「…ウソ」

真姫☆「嘘じゃない」

真姫☆「半年のリハビリを終えたとして、それは普通に過ごすことのできる身体になるだけ」

真姫☆「今の…常人をはるかに凌駕するほどの運動能力は、もう宿っていないでしょう」

真姫☆「きっと、来年の1年生のダンサー専攻にすら、劣る運動能力になってると思う」

真姫☆「…それじゃもう、A-RISEは…できないわ」

凛「…ウソだ」

真姫☆「嘘じゃ、ない」

凛「ウソ…だよ」

凛「ウソって…言ってよ」

凛「だったら…だったら何のために凛は…いままで…」

凛「いままで…バカみたいに頑張ってきたの…?」

凛「ウソ、なんじゃないの…?ねぇ、ウソだって…ウソでしょう…?」

真姫☆「…嘘じゃ、ないのよ」

凛「…そう」

凛「そう、なんだ」

凛「…」

花陽「凛、ちゃん…」

真姫☆「…8時。もう面会時間が終わるわ」

真姫☆「帰るわよ、花陽。…お見舞いはまた、明日」

花陽「…う、うん…。凛ちゃん…あの、か、帰るね…」

花陽「バイバイ…」

凛「…」



凛「…そう、なんだ」

凛「アイドル…なれないん、だ…」

凛「は、はは…ははっ…ふ…、うぅぅっ…!!うぅぅぅぅぅぅぅっ…」

凛「く、くぅぅっ…!!う、ぐ、ぐぅぅっ…うああぁぁぁあぁ…、ああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁああぁぁぁ…!!」

今日はここまで また誰かが泣いてしまった
今日も映画見に行きます ネタバレ→凛ちゃんはすごく元気 ほなな

感想はそれぞれあると思いますがなるべく前向きに捉えて頂ければありがたい
今日は書き溜めてきたので一気に貼ります 短めですが じゃ、やってくよ

帰り道


トコトコ…

花陽「…」

真姫☆「…」

花陽「…」

真姫☆「…花陽」

花陽「んっ…?な、何?」

真姫☆「…ごめんなさいね。せっかくお見舞いに来てくれたのに、凛の怪我の話で時間を消費してしまって」

真姫☆「本当はもっと話したいこともあったと思うのに…、気が利かなくて」

花陽「えっ…、あぁ…、うぅん。いいの…」

花陽「…凛ちゃんがもう…スクールアイドルできないって知らずに、色々余計なこと言っちゃう前に止めてくれて良かったと思う」

花陽「言ってたら、それが凛ちゃんの重荷になってたかもしれないから…ありがとう」

真姫☆「…うん」

花陽「…」

真姫☆「…」

真姫☆「…凛はね」

花陽「ん?」

真姫☆「凛は多分…いずれああなってしまう運命だったと思うの」

花陽「運命…?どういうこと?」

真姫☆「凛がアイドル専攻でバケモノ呼ばわりされてるって…知ってる?」

花陽「あ、あぁ…うん。一年生で二年生のすべての子を凌ぐほどのすごい体力の持ち主だから、って…」

真姫☆「うん。にこちゃんもそんな風に言ってた。それで…こうも言ってた」

真姫☆「いつか壊れてしまうんじゃないか、って」

花陽「…いつか、壊れて…」

真姫☆「これは私の推測に過ぎないんだけど」

真姫☆「…凛は特別体力に満ち溢れていたわけじゃなかった」

花陽「えっ…?でも…」

真姫☆「確かに常人以上ではあったかもしれないけど、それでも超人並みの体力は持ってなかった」

真姫☆「凛はおそらく…疲れを忘れたのよ」

花陽「忘れた…?」

真姫☆「えぇ。疲れという肉体からの抑制を、無視して運動し続けた」

真姫☆「アイドル専攻の厳しい練習体制に打ち勝つ為に、凛は…どこかでそういうリミッターを外してしまったの」

花陽「そ、そんな…そんなこと、できるの…?」

真姫☆「…わからない。でも、ランナーズハイのように肉体が限界を突破すれば普段以上の力を出すことができる、って事例もある」

真姫☆「凛はそれの常時型だった…と言えるかもしれないの。今回の検査で、なんとなくそう感じた」

真姫☆「…でなければ、あの肉体にかかった疲労…、既に倒れていてもおかしくない」

真姫☆「疲労は無視…忘れることができても、肉体は覚えている。限界を超えた疲労は徐々に凛の体を蝕んでいく」

真姫☆「そして今日ついに…骨を砕くほどの疲れが累積して、凛を襲ったってわけ」

花陽「…」

真姫☆「…凛の肉体の疲れは足だけじゃなくて、全身にまで及んでいる」

真姫☆「あともう少し運動を続けていれば凛は最悪…」

真姫☆「…っ」

花陽「…」

真姫☆「…まぁ、だからある意味では…今凛の足の骨が折れてくれたのは幸いでもあったってことよ」

花陽「そう…なの、かな…」

真姫☆「えぇ、そう。間違いないわ」

真姫☆「人間…生きてさえいればいずれやり直せるんだもの」

花陽「…やり直す」

真姫☆「そのために…花陽。あなたが支えになってあげて欲しい」

花陽「えっ…?」

真姫☆「今の凛は…とてつもなく深い傷を心に負ってしまっている」

真姫☆「今まで必死に紡いできた努力の成果を、一夜にして失ってしまったわけだから」

真姫☆「凛も…アイドル専攻で夢に破れた子のように…ダメになってしまうかもしれない」

花陽「…っ。そ、そう…だよね…!」

真姫☆「だから…そんな凛を救って。花陽」

花陽「わ、私が…?」

真姫☆「そう。あなたしかいない」

真姫☆「凛を誰よりも知っているのは…あなたでしょう?」

花陽「…う、うん…」

花陽「でも私は…今の凛ちゃんを…どれだけ理解できるか…」

真姫☆「…やる前から諦めちゃダメ。そんなに不安にならないで」

真姫☆「きっと…凛は昔の凛を忘れきってはいないわ」

花陽「え、ホント…?凛ちゃん、昔のことはもう忘れたって…」

真姫☆「人間ね、そう簡単に忘れられないものもあるのよ」

真姫☆「誰にも負けないために、疲れを忘れられたとしても」

真姫☆「大切な思い出を、そうそう忘れることなんてできない」

真姫☆「凛との思い出を一番持っているあなたなら…彼女の眠っている思い出を引き出して、思い出させることだってできるはず」

真姫☆「凛を助けてあげて。…花陽」

花陽「…」

花陽「…私が、凛ちゃんを…助ける…」

花陽「…っ!わかった…!」

花陽「凛ちゃんを深い闇から救い出して、前に進む希望を与える…!」

花陽「それは私にしかできないこと…なんだよね!だったら…やるっ!」

花陽「どれだけ拒絶されても、今度こそ…逃げたりしないから!」

真姫☆「…うん。その調子。あ、それにね…」

真姫☆「凛は…A-RISEができなくなったのは確かだけど」

真姫☆「…スクールアイドルができなくなった、までは言ってないわよ?」

花陽「え…、あっ!」

真姫☆「リハビリが終わって、動けるようになれば」

真姫☆「いつだってスクールアイドルを目指せる。それが…」

花陽「私の夢っ!私の…スクールアイドル!」

真姫☆「…そう」

花陽「そうだよっ…!凛ちゃんはまだアイドルになれるんだ…!」

花陽「絶対に諦めさせたりなんて…させないっ!」

希の家


ガチャッ


真姫☆「…ただいま」


希「おかえり。…お疲れ様」

凛「おかえりー」

真姫☆「…あなたは元気ね。凛」

凛「ぶー、何よー。元気じゃダメ?」

真姫☆「そういうこと言ってるわけじゃないわ。…ごめんなさい」

凛「うぇ…、真姫ちゃんいつもよりしおらしいにゃ…」

希「凛ちゃん、大怪我しちゃったわけやもんね。あ、こっちの世界のね」

真姫☆「…自分が情けないわ。これでも医者の娘で、多少は医療についてもかじってるはずなのに」

真姫☆「凛の身体に気づくことができなかったなんて。…もう少し私が早く気づけていれば」

真姫☆「絵里を、止めることができたなら…」

希「…えりちを止めたとしても、凛ちゃんは止まらんかったと思うよ」

希「強くなるために、必死で練習してそして…壊れていたと思う」

希「凛ちゃんの不調に気づけなかったのは…もう仕方のないことやん。自分を責めても詮無いことよ」

真姫☆「…」

凛「そ、そうだよー…。元気だしてよ真姫ちゃん…」

凛「真姫ちゃんが元気ないとみーんなしょんぼりしちゃうにゃ…。お願い…」

凛「あ!そうだ!クリニックが治ったら凛が怪我する前まで戻ればいいんじゃない?」

凛「そうすれば怪我を未然に防げるはず!うわー凛賢い」

真姫☆「できるの…?そんなこと…」

凛「うん!できるよ!…ただ時空壁がなければの話だけど」

真姫☆「…じゃあダメね。凛が怪我する直前に、時空振動の揺れを感じたわ。あれが時空壁生成の余波なんでしょ?」

凛「あぁ…そだね。真姫ちゃんが観測しちゃった時点でそれ以前の過去にはいけないにゃ…。残念」

真姫☆「…それがなくてもどちらにしろ、11月時点に戻ったところで凛の身体はボロボロ…。説得の仕方もわからないんじゃ意味がないわね…」

希「…よ、よくわからん話やね…。時空がどうとかとか…」

希「まぁ、今考えてもどうにもならないことならとりあえず置いておいて…真姫ちゃんも精神的に疲れきってるならご飯にしよう」

希「いざって時に動かせる身体を作っておかないと、それこそ後悔しちゃうからね!」

真姫☆「…そうね。うん、そういえばお腹もすいてるし…いただくわ、ご飯」

凛「うんうん!お腹すいたにゃー!」

真姫☆「…あ、それと凛」

凛「うん?何?」

真姫☆「携帯、直しておいてよ。連絡が取れないと不便だわ」

凛「あー…携帯ね。わかったにゃ。でもまだいじったことないからいつ直るか…」

真姫☆「なるべく早く。お願いね」

凛「了解にゃー」

翌日

12月21日 日曜日




UTX学院 多目的ホール前ロッカールーム


穂乃果「…」キガエキガエ


にこ「…おはよ」

穂乃果「おはよう、にこちゃん」

にこ「…もう、平気なの?」

穂乃果「…何が?」

にこ「昨日…ずっと泣いてたじゃない」

にこ「凛がもう…A-RISEできないって真姫ちゃんから聞いてから」

にこ「相当へこんでるって思ってたんだけど…もう大丈夫なのかなって」

穂乃果「…うん。もう心配ないよ。ごめんね、不安にさせて」

にこ「い、いや別に…不安とかじゃなくてただの…気遣いだし」

穂乃果「大丈夫。涙は全部昨日で出し尽くしたから」

穂乃果「こんなところで…立ち止まるわけにはいかない」

穂乃果「『たかがメンバーが一人欠けたくらい』で、私までダメになってたら…」

穂乃果「…凛ちゃんに、怒られるよ」

にこ「…えぇ、そうよね」

穂乃果「クリスマスのライブは二人でやろう。来年のA-RISEは、まだどうなるかはわからないけど」

穂乃果「とにかく今を全力でやり抜く。それが…アイドルだもん」

にこ「ふふ…かっこいいこと言うじゃない。さすがA-RISEのリーダーね」

穂乃果「…いつの間にリーダーに」

にこ「にこよりずっと相応しいわよ。…それにしても」

にこ「今日…絵里、来てないのよね」

穂乃果「…あぁ、そういえば」

にこ「凛の一件、英玲奈さんが学校に報告しておく、って言ってたからもしかして…」

穂乃果「…そうかもしれないね。だとすると…指導は誰がするんだろう」

にこ「今までは絵里と、絵里のお抱えの2年生がやってたけど…」

穂乃果「絵里先輩が指導から外されたら、その2年生も指導の権利は失われるはずだし…」

にこ「今日は自主練習…?」

多目的ホール


にこ「な、な…なぁぁぁっ…!!」

穂乃果「…まさか、そんな…」



「…えー、ゴホン」

「今日より、指導係代行としてあなたたちの世話をすることになりましたー…」

ツバサ「…現、A-RISEよ。よろしくね」



「「っ…!」」

「「わああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」」



英玲奈「…静かに!」


シーン…


ツバサ「…ふぅ。急にそうなったらまぁ…驚くわよね」

あんじゅ「疑問質問もあるだろうけど、今はおとなしくしててねー」

英玲奈「…皆も知っていると思うが、昨日ここで怪我をした生徒がいる」

英玲奈「原因はその生徒の不注意…ではなく、明らかに監督不行届の結果と言える」

英玲奈「私たちはこの結果を受け入れ、…現在の指導方法は誤りであったと結論を出し、先生とも話し合った結果…」

あんじゅ「今までの指導を行っていた絢瀬さんには、一度お休みを取ってもらうことになりました」

英玲奈「教師たちも良い結果さえ出せれば過程を見過ごす、というスタンスで今までアイドル専攻を甘く見ていたようだが」

英玲奈「それを続けていたゆえに、ついに大怪我を負う生徒まで出てしまった」

ツバサ「一度抜本的にアイドル専攻を変えていかなきゃいけない…ってことになったんだけど」

あんじゅ「それをするのは誰か…ってなった挙句、それが見つかるまで私たちがあなたたちの指導をすることになっちゃったの」

ツバサ「まぁ、こっちも忙しいから交代制ではあるけどね。これからよろしく、有望なアイドル専攻の子たち」



にこ「…す、すごい…!嘘みたい…!まさか、A-RISEが私たちに指導を…!?」

穂乃果「私たちじゃなくて、多分…A-RISE候補生を重点的に教育するんだろうけどね」

にこ「う、うぅっ…!今なら下位落ちしてもいい…!」

穂乃果「変なこと言わないの…」


ツバサ「…おはよう、穂乃果、にこ」


穂乃果「あっ…ツバサさん!おはようございます!」

にこ「おお、お、おはようございますっ!!こんなところで話せるなんて…!!感激ぃぃっ…!」

ツバサ「もう、何言ってるの。いつもライブ前は気合入れ合ってたじゃない」

にこ「そ、そうですけど」

穂乃果「…でも、どうしてわざわざA-RISEの皆さんが直接指導を…?」

ツバサ「昨日あれから、私たちと…絵里も含めて話し合ったのよ」

ツバサ「無理な練習が祟って大怪我人を出したことについて、色々とね」

ツバサ「特に英玲奈が…今までのストレスを晴らすかのように絵里に強く当たってたけど」

ツバサ「でもその状況に今まで不干渉すぎた私たちにも責任があるんじゃないか、ってことになって」

ツバサ「とりあえず、適任者を探し出せるまで、私たちが交代制でやろうってなったの。…まぁ、一種の罰ね」

穂乃果「そうだったんですか…」

ツバサ「中には…この状況を楽しんでる子もいるみたいだけど」



あんじゅ「んー…全然ダメダメね。なってない!」

専攻生A「ご、ごめんなさいぃぃ…えへへ…」

あんじゅ「もう、笑顔だけは合格ね!もう少し引き締まったら満点だけど!」



にこ「あぁ…」

穂乃果「あんじゅさん、後輩のお友達を欲しがってましたもんね…」

ツバサ「後は…英玲奈も英玲奈で、意外と…」



英玲奈「もっとシャキっとする!気の抜けた姿勢はだらしなく見えるだけだ!」

専攻生B「わかりましたぁぁっ…!!」ピシッ

英玲奈「うん、やればできるな。偉いぞ」

専攻生「あ、ありがとうございますぅぅぅ…」ヘナッ

英玲奈「気を緩めるなぁぁぁっ!!」ビシッ



ツバサ「…楽しそうだけど」

にこ「指導される側もとっても嬉しそうだし」

穂乃果「それはまぁ…このアイドル専攻でA-RISEのファンじゃない子なんていないし」

穂乃果「その憧れの現A-RISEに直接指導される、なんて…まさしく夢のような出来事だろうからね」

ツバサ「今日は初日ってこともあるし、私たち全員でお相手しようと思うの」

にこ「ってことは、ツバサ様は私たちを…!!」

ツバサ「うん。見させてもらうわね」

にこ「い、いやったああああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!!」

穂乃果「ありがとうございます。ツバサさんの技術を吸収できれば、心強いです」

ツバサ「ふふふ、私なんて大したことないわよ。…あ、それより」

ツバサ「絵里が指導を外されたことで、あなたたちと彼女たち…C☆cuteとの契約も破棄されたわ」

穂乃果「…こちらが勝てば、彼女らの解散…ですか」

ツバサ「えぇ。もうそれはナシってこと。これは決定事項よ。あちらにも伝えておいた」

ツバサ「…だから今度こそ、心おきなく…C☆cuteを叩き潰してあげてちょうだい」

ツバサ「代々受け継がれてきたA-RISEの称号を超えるなんて、簡単には許されないってことを教えてあげるの。いい?」

にこ「…っ!はいっ!!」

穂乃果「凛ちゃんの想いも受け継いで…絶対に勝ちますっ!!」

ツバサ「ふふっ、よろしい」

ツバサ「さぁ、行くわよ…練習開始!!」

神田明神


希「…ふぅん。そっか…」


海未「…希さん?どうしたんですか、携帯を眺めて…」

真姫「メール?だれから?」


希「…うぅん、なんでもない。ただのメルマガやよ」サッ

希「さ、練習練習!油断してたらA-RISEに足元すくわれちゃうよ?」

ことり「そ、そうだよ…!いくら凛ちゃんが怪我して出られないからって…」

海未「負けたら解散、は変わりませんからね…。引き締まっていきましょう!」

花陽「う、うんっ…!!」



希「…今はこれでいい。適度な緊張感も必要やからね」

希「それより、あっちは…大丈夫かな」





西木野総合病院 凛の病室



凛「…」


コンコン


凛「…」


真姫☆「…凛、入るわよ」ガチャッ


凛「…西木野、さん…」


真姫☆「聞いたんだけど、昨日の夜から何も食べてないらしいじゃない」

真姫☆「…食べないと、動ける身体もすぐ動かなくなるわ。復帰に時間もかかる」

真姫☆「美味しくないかもしれないけど、病院食は栄養も豊富で…」


凛「…るさい…」

真姫☆「え?」

凛「うるさいなぁぁっ!!西木野さんは関係ないでしょっ!?」

凛「凛の身体がどうなろうと、凛の勝手じゃないっ!!」

真姫☆「…そうじゃない。このままだとあなたは死ぬのよ?死んでもらっちゃ困るの」

凛「死んだからなんなの!?動かなくなるから何っ!?動いたってA-RISEはできやしないのにっ!動く意味なんてない!!」

凛「復帰って…A-RISEにはもうなれないのに、関係ないよっ!!」

真姫☆「関係なくない!まだA-RISEじゃない、他のスクールアイドルって道も残されてるのよっ!?生きてさえいれば…」

凛「一番以外意味なんかないんだよぉぉっ!!それ以外は…クズなんだからっ…!!」

真姫☆「その考え方は捨てなさいっ!あなたを悪いようにしかしないから!!」

凛「うるさいっ…!うるさぁぁぁいっ!!出てってよ!凛の病室から出てって!!」

真姫☆「っ…、わかったわ。ただご飯だけはちゃんと食べて。いざって時に動ける身体を作るためにね」


ガチャッ… バタン


凛「…どうだっていいんだ…。もう…どうだって…」

凛の病室の前


真姫☆「…」

真姫☆「…やっぱり私じゃ、ダメかもね」

真姫☆「諦めるな、って人に言っておいてアレだけど…あまり刺激するより、ここは…」

真姫☆「…花陽に任せるのが、得策かも知れない」

真姫☆「今は私にできることをしておくべき…かしらね」


ピピピ… プルルルル…

ガチャッ

真姫☆「あ、もしもし…」

親衛隊A『ん?あ、西木野さん?どうしたの?』

真姫☆「いえ、そちらの進捗はどうなのかな、って思って」

真姫☆「滞ってるようなら手伝いに…」

親衛隊A『それがねーっ!衣装、やっと全員分できたの!』

親衛隊A『今からみんなで打ち上げに行こうって話してたんだけど、西木野さんも来る?』

真姫☆「…うぅん、忙しくないのならいいわ。衣装作り、手伝ってくれてありがとうね」

親衛隊A『これくらい簡単だって!来ないのは残念だけど…ま、忙しいもんね!』

親衛隊A『それじゃ、花陽にもよろしく言っておいて!またね~』

ピッ

真姫☆「…」

真姫☆「…パモ部はどうかしら」ペポパ…

ガチャッ

パモ部部長『ういっす!ん?真姫ちゃんかしらー?』

真姫☆「うん。そっちの状況はどうかな、って」

パモ部部長『状況?あ、もしかして垂れ幕のこと?』

パモ部部長『あれは業者に発注してて今やれることは特にないよー?明後日間に合うことをただ祈るだけですわ』

真姫☆「…あぁ、そうなのね。そういえば明後日屋上に…って言ってたけど、いつもは屋上、閉鎖されてるはずじゃ…」

パモ部部長『あー、それに関しては大丈夫!ちゃんと先生に行ってその日は開放してもらうことにしたから』

パモ部部長『ただいつ来るかはっきりとはわからないから、ずっと開けっ放しになってるんだよね。ま、どうでもいいけど』

真姫☆「あぁ…開放されてるんだ。えっと…私がその日手伝えることとかって、ない?」

パモ部部長『んー?垂れ幕は業者の人とウチの若い衆…ってアタシが一番若いんだけど、まぁ、その人たちに運んでもらうから』

パモ部部長『真姫ちゃんは本番前日なんだし、練習か身体休めるのに集中してたら?』

真姫☆「…あ、あぁ…そうね。ありがと、そうさせてもらうわ」

パモ部部長『要件はそれだけー?』

真姫☆「あ、えっと…えぇ、それだけ」

パモ部部長『おっけ。真姫ちゃんも練習ガンバッテねー。ほななー』ピッ

真姫☆「…」

真姫☆「…やることがない」

真姫☆「また手持ち無沙汰…!ぬおぉぉぉぉ…!」

真姫☆「…一人で作曲でもしてましょう」

夕方

神田明神


希「…ふぅ。ダンスはもうほぼ完璧、違うかな?」

ことり「うん!後は歌…だけど」

海未「神田明神で大声は出せませんし、休日に学校は使えませんから…」

真姫「…今からカラオケでも行く?」

花陽「い、今から…」

海未「そうですね。歌の方はカラオケに行って合わせて…」

花陽「ごめんなさい!私…それには行けない」

ことり「えっ…?あ…」

真姫「星空凛さん…のことよね?」

花陽「…うん。今は私が、凛ちゃんの支えになってあげないといけないから」

花陽「歌の練習は、家でなんとか頑張るから今は…」

希「うん、行ってき。誰も文句は言わんよ」

ことり「今から行っても1、2時間しか喋られないんだもんね…。悩む前にさっさと行っちゃえ!」

海未「となるとライブを合わせられるのは明日が最後…少々キツいですが、…まぁ、なんとかなるでしょう」

真姫「頑張ってね、花陽」

花陽「…うんっ!!」



西木野総合病院 凛の病室


コンコン

凛「…」ペラ…ペラ…


花陽「凛ちゃん…?いる?入るよ…?」ガチャッ

花陽「あ、いた…。読書中?ごめんね、邪魔して…」


凛「…」パタンッ… スッ


花陽「…あの、凛ちゃん?き、聞こえてる?」


凛「…なんで、来たの」

花陽「えっ…、なんで、って…」

凛「凛をバカにしに来たの…!?」

凛「こんな身体になってアイドルができなくなった凛を嘲笑いに来たの!?」

凛「あはっ…さすがはクズの小泉さんだ!嫌がらせに容赦ないよね!」

凛「クズは帰ってよ!目障りだからさぁぁっ!!帰ってってば!!」

花陽「っ…!!」

花陽「…」

凛「…帰ってよ」

花陽「…」


(花陽「わかった…今日は、帰るね…」)


花陽「…ッ!うぅん…違うっ!」

花陽「帰らないっ…!凛ちゃんに、前に進む勇気を与えるまでは…!」

ここまで このあとの展開に頭ひねらせてるのでまた間空くやもしれませぬ
明後日か明明後日までにはなんとか あと作詞もできてない じゃ、次回をお楽しみに ほなな

屋上「とべるよ」

屋上「とべるよ」

展開を色々予想されていますが期待にそぐえるか少々不安
ま、気にせずやっていきます 今日も書きだめ貼るだけ

凛「はぁ…?」

花陽「り、凛ちゃんっ!お腹すいてるでしょ!ほら、カップラーメン!」ヌッ

凛「…なにそれ、いらない」

花陽「いらなくないよ!あ、昨日渡したやつもまだ食べてない…」

花陽「ね、一緒に食べよ?私も練習でクタクタでお腹すいてるから」

凛「すいてないから、いらない」

花陽「…じゃあ、私がお腹すいたから、食べるね」

花陽「あ、ちょうどいいところに電子ケトル。お水ついでこよ」テコテコ…

凛「…」


花陽「ふんふんふ~ん…」コポコポ…

凛「…」

花陽「はぁぁ~…いい匂い…。この塩とんこつラーメン、ついついお米が食べたくなる味だよね~」

凛「…ウザい。どっかいってよっ…!」

凛「食べるんならここじゃなくてもできるでしょ!とっとと帰ってってば!」

花陽「私は、凛ちゃんと一緒にラーメンが食べたいの。凛ちゃんも食べたいよね?」

凛「ば、バカ言わないでよっ!食べたくなんてっ…」


グギュルルルルルル~…


凛「ー…ッ!!」

花陽「…ぷふっ」

凛「笑うなっ!!」

花陽「ご、ごめんごめんっ…。ほら、お湯、ふたり分あるから」

花陽「凛ちゃんも、食べよ?」

凛「…」

凛「…食べる」

花陽「うんっ」


凛「ずるるるっ…もぐもぐ…」

花陽「はぁぁぁぁ~…美味しいねぇ…」

凛「…うん、美味しい」

花陽「ご飯が欲しくなっちゃうよねぇ…」

凛「…ご飯なら、もう少しで病院食が来るから」

花陽「えっ!あ、そっか…。ご飯前なのに凛ちゃん、ラーメン食べちゃマズかったかな…」

凛「いらないから、ご飯食べていいよ」

花陽「え、ダメだよ~…。ちゃんとご飯食べないと、骨がくっつかないんだよ…」

凛「もう、いいんだ…。くっつかなくても…」

花陽「ど、どうして…」

凛「…治っても、もうA-RISEにはなれない。それじゃ、やる意味なんて…ないよ」

花陽「そんな…」

凛「…ずるずる…もぐもぐ…」

花陽「…」

花陽「…意味、ない…って」

花陽「じゃあ凛ちゃんは、何のためにアイドル、やろうとしてたの…?」

凛「…何のために?フンッ、一番になるために決まってるじゃん」

花陽「本当に、それだけ?」

凛「え…」

花陽「一番になるためだけに、アイドルをやってたの?」

花陽「違うよ…、それなら凛ちゃんの得意な陸上競技の方が、ずっと簡単に一番になれてたかもしれないのに」

花陽「凛ちゃんは、もっと他にやりたいこと、あったんじゃないの…?」

凛「凛の、やりたいこと…?」

花陽「うん…。アイドルでないと、いけなかったこと」

凛「…」

凛「やりたい、こと…」


凛「歌…」


花陽「うん?」

凛「…歌いたかった。歌を」

凛「ライブで、凛の歌を披露して…拍手をもらいたかった」

花陽「それが、凛ちゃんのやりたかったこと…?」

凛「…わからない」

花陽「わからない?」

凛「だって、どうしてっ…どうしてそう思ったかわからないんだもん…っ」

凛「でも確かに、歌を歌いたいって気持ちがあって…それで、アイドルをやりたくて…」

凛「一番になって、いっぱいの人から、大きな拍手をもらいたいって思ってて…」

凛「…それが、凛の夢だった」

花陽「凛ちゃん…」

凛「っ…!ど、どうしてこんなこと小泉さんに話さないといけないのっ!!?」

凛「もう、関係ないんだっ…!A-RISEになれない今は、もう…万雷の拍手なんて、夢のまた夢…!」

凛「凛の足の骨と同時に、壊れちゃったんだからっ…!」

花陽「…」

花陽「…そんなこと、ないよ」

凛「へ…?」

花陽「それが、凛ちゃんの本当の気持ちなら…凛ちゃんはもう一度、スクールアイドルになれる」

花陽「絶対に、…絶対に」

凛「なっ…」

凛「何いい加減なこと言ってるの!もう無理なんだって!できっこないっ!!やりたくもないっ!!」

凛「一番になって、一番大きな拍手をもらえないと…結局、侘しいだけじゃんっ…!」

凛「惨めな気持ちに、なるだけ…!それなら、そんな拍手なら、いらなっ…」

花陽「凛ちゃんっ!!」

凛「っ…」

花陽「…私、知ってるんだ」

花陽「一生懸命、心を込めて歌った歌なら、たった一人の拍手であっても」

花陽「すごく、すごく…嬉しいってこと」

凛「え…」

凛「何を根拠にそんなこと…」

花陽「私がそうだったから」

花陽「…私が、アイドルを本気で目指す原動力になったのが、たった一人の拍手、だったから」

凛「…」

花陽「凛ちゃんも知ってるでしょ…?小学校の頃の私」

花陽「運動も満足に出来なくて、みんなからおいてけぼりのどんくさい子だった私…」

花陽「そんな私でも、こうして…凛ちゃんに追いつけるほどのアイドルになれたんだよっ!」

花陽「凛ちゃんなら、ちょっとくらい動けなくたって…すぐにみんなを追い抜けるほどのすごいアイドルになれるよ!」

花陽「凛ちゃん、私よりずっとずっと頑張ってたじゃない!」

花陽「だからっ…こんなところで諦めちゃ、ダメだよっ…!!」

凛「…」

花陽「凛ちゃん…」


花陽(必死に説得をしてみても、凛ちゃんの沈んだ顔が明るくなることはありません…)

花陽(でも、お願い…気づいて凛ちゃん)

花陽(何度挫折したって、いくらだってやり直せるんだってこと…!)


花陽「ほ、ほら…リハビリが完了して、動けるようになるのは来年の9月くらいでしょ?」

花陽「それなら今年の私たちと状況は同じだよ!十分スクールアイドルの頂点は目指せるんだよ!」

花陽「そのために…少しでも早く動ける身体を作らないと!」

凛「…動ける、身体…」

花陽「そう!一歩前に踏み出せる身体…!今は辛いかもしれないけど、でも諦めるなんて勿体ないから…!」

花陽「だからたくさん栄養のあるもの食べて、早く骨がくっつくように努力して…それから、未来の夢をイメージするの!」

花陽「私にはわかるよっ…!来年の今頃、凛ちゃんは…私たちと同じステージで、一緒に踊ってるって!」

凛「一緒に…踊る…」

花陽「ねぇ…、やり直そう!一からのスタートだって、凛ちゃんなら…絶対にできるはずだよっ!とってもすごいアイドル!」

花陽「一人の拍手が、大勢の拍手に変わるまで…私も凛ちゃんに付き添うから…だから…、ねぇ…」

凛「…」

花陽「凛ちゃんっ…!!」

凛「…」


花陽(やっぱり、私の説得じゃ、ダメだったのかなぁ…?)

花陽(私の想いは、凛ちゃんには届かなかったのかな…)

花陽(…うぅんっ…!私も、諦めちゃダメなんだ…!)

花陽(届いてっ…!届けっ!私の…心っ…!!)



凛「…ふ」

花陽「え…?」

花陽(凛ちゃんの口元が、微かに動いたような…)

花陽(もしかして…笑った…?)

凛「…そう、だね」

凛「何もしなければ…始まらない、か…」

花陽「り、凛ちゃんっ…!」

凛「…凛も、このままはイヤだ」

凛「動けないまま…成り行きを見守るだけなんて…イヤ」

凛「…小泉さんの言うとおりだね。ただ諦めて、全てを投げ出してちゃ…ダメなんだって」

凛「ありがと。ちょっと、希望が見えたかも」

花陽「ほ、ホント…っ!?凛、ちゃんっ…!!」

凛「うん。少なくとも、ここで塞ぎ込んでるよりかは…前向きな選択だと思う」

花陽「じ、じゃあ…!」

凛「…約束だよ?」

花陽「え、約束…って?」

凛「同じステージで、一緒に踊る約束」

凛「凛も、イメージしたから」

凛「…かよちんも、約束ね」

花陽「…っ!」

花陽「う、うんっ!!約束っ!絶対に一緒にライブしよう!指きりげんまんだよっ!!」ギュッギュッ

凛「あははっ…痛いよかよちーんっ!あはははははっ!」

花陽「あはっ…、あははははっ…!!うぅっ…凛ちゃぁぁんっ…!」

凛「えへへ…」


花陽(届いてくれた)

花陽(私の、必死な気持ち)

花陽(少しだけでも、凛ちゃんに夢を、希望を…笑顔を与えられたのかな)

花陽(今まで、別の世界で生きてきた凛ちゃんに、私の世界から、明るい光を分け与えることができたのかな)

花陽(これから作る、新しい凛ちゃんの居場所を、…凛ちゃんにとっての、理想郷にすることが…)

花陽(…これからの、私の夢になりそうです)



花陽「はい、あーん」

凛「あーん…もぐっ…。もぐもぐ…って手は怪我してないんだから、一人でも食べられるって!」

花陽「あ、ごめん…」

凛「うぅん。これもかよちんの気遣いなんだねー。ちょっぴり昔のこと、思い出したよ」

凛「かよちん、ずっと、ごめんごめんばっかりだったのも、思い出したにゃー」

花陽「あぅ…」

凛「でもそんなかよちんだったから…凛も、友達になれたのかも」

花陽「凛、ちゃん…」

凛「…」

凛「ねぇ、かよちん…。今まで、ひどいこと、いっぱいいっぱい言ってきて、こんなこと言うのも…変な話だけど」

凛「ちょっとだけでも…凛と、友達になってくれる?」

花陽「っ…!も、もちろんだよっ!ちょっとなんて言わず、ずーっと友達だよっ!!うぅん、私の中ではずっと友達だったもん!」

凛「ホント?えへ…勇気を出して言ってみるものだねー…」

凛「これもかよちんの与えてくれた一歩前へ踏み出せる勇気のおかげだにゃ!」

花陽「うんっ…!うんっ!」

花陽(それから凛ちゃんと、面会時間が過ぎるまでいろんな、他愛もない話を続けた)

花陽(それは途方もなく久しぶりの出来事で、話しているうちに何度も涙が出そうになって)

花陽(でも、我慢した)

花陽(こんなところで泣いたら、また凛ちゃんがうろたえちゃうかも知れないもんね)

花陽(また、「ごめんね」って口をついて出そうになっちゃうもん)

花陽(今は、そう…ごめんね、より)


花陽「…ありがとう。凛ちゃん」

凛「…ん?何が?」

花陽「うぅん、なんでも♪…あ、そろそろ帰らないと」

凛「えー、もうそんな時間!?もっと話したーいー!」

花陽「えへへ…ダメだよ。明日も来るから、今日はまたね」

凛「ぶーぶー!…て、あはは…今日の凛、ちょっと変かも」

凛「怪我しちゃって切なくて甘えんぼさんになってるのかな?」

凛「色々吹っ切れちゃってかよちんにべったりしちゃってるんだー…。えへへ…」

花陽「そうかも知れないね。あ、でも…明日は学校終わりだから、ちょっと遅くなっちゃうかも…」

凛「…そっか。でも仕方ないよね」

凛「少しでも会えたら凛はそれでいいよ。バイバイ、かよちん」

花陽「うん、バイバイ」

凛「…あ、その前に」

花陽「ん、何?」

凛「おしっこ付き合って」

花陽「…え」



凛「よいしょっ…よいしょっ…」

花陽「まだ松葉杖で移動するの、慣れてないもんね…」

凛「明日…暇な時間練習しとかないと…」

花陽「ま、まだそんなに動いちゃダメなんじゃない…?」

凛「平気平気!っと…、着いた。じゃあしてくるにゃー。ありがと、先帰ってていいよ」

花陽「え、ダメだよ。帰りどうするの?」

凛「でも、もう面会時間…」

花陽「少しくらい看護師さんも許してくれるって。凛ちゃんの用が終わるまで、待ってるから」

凛「へへ…、じゃあお言葉に甘えて。かよちんは優しいねー」

花陽「ふふ、どういたしまして」



凛「…う、っと…」ドサッ

凛「ふぅ…疲れた。ほんの少しの距離を移動するだけで疲れるねー…」

花陽「少しずつ慣れていこ。私も練習、付き合うから」

凛「うん、そうするね。…じゃ、今度こそバイバイ」

花陽「うん、またね。凛ちゃん」

凛「またねー!」

西木野総合病院前


花陽「ふふふ…」

花陽「凛ちゃん、元気になってくれてよかった…!」

花陽「あ、ここから凛ちゃんの病室が見える…おーい、凛ちゃーん!」


凛「…あ!かよちーん!また明日ー!」


花陽「うん、また明日ねー!…ふふ」

花陽「ふ…ふぇっくちゅっ!!…うぅ…外は寒い…。早く帰ろう…」トボトボ…




凛「…また、明日」

凛「一緒に、ステージで踊る…イメージか」

凛「夢みたいな話だけど、でも…きっと叶うよね…」

凛「今のままなんて、イヤだから…」

凛「…」

凛「…よし!今からちょっとでも歌う練習しておこ!でも夜だから、小さい声で…」

凛「ふんふんふふんふふ~ん…ふんふんふふ~んふんふんふふ~ん…」



翌日 12月22日 月曜日


早朝

多目的ホール


ダンッ ダダンッ ピタッ


にこ「…はぁ。寂しいわね…」

にこ「凛はいないし、穂乃果は生徒会長の仕事だし…」

にこ「…!集中集中!昨日ツバサ様から教わったダンスのノウハウ!活かしきるんだから!」

にこ「後は…嫌いな自分を嫌いで居続けるコツもね!」

にこ「ッハ!ちびっちょい身体して!そんなミニサイズのボディを人様に晒して恥ずかしくないわけ!?」ビシィッ

にこ「そうよね!恥ずかしいに決まってるわ!でも、そんな恥ずかしい身体を可愛いって思ってもらえるように頑張るのよ!私!」

にこ「…ふっ、一人のホールでアホみたい…」

あんじゅ「聞いてたわよー?」

にこ「あんぎゃああぁぁぁぁっ!!?あ、あ、あんじゅぅっ…!?」

あんじゅ「むふふふ…にこちゃんってばツバサちゃんみたいな真似して…。可愛いんだから!」モギュッ

にこ「ふひええぇぇぇぇぇっ!!そっちも練習中じゃ…あはぁぁぁでも幸せぇぇぇぇ…!」

あんじゅ「今日は英玲奈もツバサちゃんも用事で朝来れないのー。だからヒマー」

にこ「こ、こっちと状況が似てるわね…」

あんじゅ「だからこうして後輩を弄って遊ぶことに決めたの。もにゅもにゅ」

にこ「ひょっ…ひゃめ…ほっぺはふにふにやめぇぇ…」




校門前


「おはようございまーす!」「おはようございます!」



穂乃果「おはようございます」

生徒会役員B「もう、会長。明後日はライブ本番なんでしょ?会長職なんてサボって練習行ったほうがいいんじゃないの?」

生徒会役員A「せ、先輩の言うとおりです!律儀なのはいいことですが、こんな日にまで貴重な時間を…」

穂乃果「…いいの。規律には従わないといけないし。私が生徒会長である以上、健康であれば職務を放棄することはできないよ」

穂乃果「それに…」

生徒会役員A「それに?」

穂乃果「…うぅん、なんでもない。ほら、無駄口叩いてないで、挨拶挨拶。おはようございます!」

生徒会役員B「はぁ…会長がいいって言うならいいんだけど。真面目っていうか、融通が利かないっていうか」

生徒会役員A「それが会長のいいところですよ、ね、会長?」

穂乃果「…無駄口」

生徒会役員A・B「「おはようございます!!」」

穂乃果「…ふぅ」


穂乃果(…それに、今日ここへ来たのは)

穂乃果(彼女が、学校へ来るか…それを確かめるためでもある)

穂乃果(彼女の持てる権力の全てを奪われた、絵里さん)

穂乃果(…どういう心境なんだろう)

穂乃果「おはようございます」

女生徒「おはようございます!」


キャー!! ホノカサントアイサツシター!!



穂乃果「…」

生徒会役員A「あはは…最近は前にも増して人気ですね…」

生徒会役員B「あっちのスクールアイドルのおかげで学校中賑わってるからねー」

穂乃果「…こう挨拶するたびに盛り上がられるのも、少し疲れるよ」

生徒会役員A「いいじゃないですかー。人気な証拠ですしー」

穂乃果「まぁ悪い気は…、…っ!」ダッ

生徒会役員B「えっ…どこ行くんだよ!?」

穂乃果「ごめん、ちょっと…!」


タッタッタッ…

穂乃果「…おはようございますっ…!」

穂乃果「…絵里さん」


絵里「…」


穂乃果「…えっと」

穂乃果「元気…ですか?その…昨日は…」

絵里「…」

穂乃果「絵里、さん…。…指導の件は、色々あったとは言え…人間の限界を鑑みなかったあなたの…」

絵里「…」

穂乃果「…絵里さん?」

絵里「…ごめんなさい」

穂乃果「え…?」

絵里「ごめんなさい…ごめんなさい…」ブツブツ…

絵里「…ごめん、なさい…」トボトボ…

穂乃果「え、ちょっと…」

絵里「ごめんなさい、ごめんなさい…」

絵里「私は成し得なかった…私にはできなかった…」

絵里「何もかもが狂ってしまった…すべて、終わってしまった…」

絵里「あぁ…ごめんなさい…何もできなくて…ごめんなさい…ごめんなさい…」

絵里「私の3年間は…無意味、だった…」トボトボ…

穂乃果「…ぁ」

穂乃果「…」



穂乃果(どこか遠くを見るような、精気の抜けた瞳で)

穂乃果(目の下にドス黒い隈を蓄えた、やつれた面持ちで)

穂乃果(うわ言のように謝罪の言葉を呟く、かつての憧れを)

穂乃果(ただ黙って見送るしか、私にはできなかった)

昼休み 食堂


希「それホント?」

花陽「…はい。凛ちゃん、少しは元気になってくれて…」

ことり「よ、よかったねぇぇ…!うぅぅ…!」

海未「何も泣くことは…しかし、花陽の熱い説得が星空さんに伝わった、ということでしょう」

海未「さすが、リーダー…ですね」

花陽「り、リーダーはやめてよぉぉ…」

真姫「一緒に踊る…それって星空さんを、将来的にC☆cuteのメンバーにするってこと?」

花陽「ん?んー…それでもいいし、あえて別のアイドルになって…共演する、っていうのも夢があっていいよね」

花陽「まだそこまでは考えてないや。凛ちゃんの考えにもよるし」

希「凛ちゃんなら、あるいは自力でA-RISEに舞い戻る、なんてこともありうるかもしれんしね」

真姫「…そうなるといよいよバケモノじみてるけど」

海未「しかし、星空さんは1年であるがゆえにその可能性も無きにしも非ず…」

ことり「燃える展開ではあるよね!」

ことり「『あの時の約束をー…、果たす時が来たようだにゃぁぁ…!』みたいな!」

花陽「ぷっ…、なんですかその喋り方…!」

海未「誰の真似なんですか…星空さんはそんな喋り方でもない気が…」

希「…でも、来年の今のA-RISEがどういう在り方になっているかは、まだ…」

真姫「うん?」

希「あ、いや…独り言。うーん、いやぁしかし…久しぶりに食堂に来てみたけど、賑やかやね…」

花陽「あぁ、いつも部室で一人、なんでしたっけ…」

希「うん。賑やかなところでご飯食べるのが少し怖かったんやけど…まぁそのトラウマも克服しないとね」

希「でも思ってたよりなんてことないかも。こんだけ大勢でいれば当たり前やけど」

海未「逆に…置いてきた彼女が気にかかりますね…」

ことり「いつもは希ちゃんと一緒にご飯食べてたけど…今は一人ぼっちか」

真姫「…どういう気持ちなのかしら」



アイドル応援部 部室


真姫☆「…もぐもぐ」

真姫☆「…なんてことないわ。去年の春も私はこうして…もぐもぐ…」

真姫☆「…はぁ」

真姫☆「うぅ…寂しい…。流石にマントしながらご飯は食べられないもんね…ぐすん」

真姫☆「けど、アイドル専攻の指導から絵里が外れ、それにより彼女の権威も地に落ち…」

真姫☆「これからアイドル専攻もまた変化するのだとしたら」

真姫☆「…もうそろそろ、私の役目も…おしまいってところかしらね」

真姫☆「あとはあの子達だけで、なんとかしてくれる」

真姫☆「楽しい夢のスクールアイドル…これからは、あなたたちが作り上げていってね」

真姫☆「もぐもぐ…ごくんっ」

真姫☆「…ごちそうさま」

放課後 音楽室


ザワザワ…


ことり「うわっ…、今日も人でいっぱい…」

海未「A-RISEと差をつけるために出待ち、見学等は禁止していないとは言え…」

真姫「こ、こう注目されちゃ落ち着かないわね…」

希「せっかくならライブは新鮮な気持ちで見て欲しいっていうのもあるしね」

花陽「今日は学校で練習できる最終日…本格的にライブを合わせられるのは今日が最後だし…」

真姫「今日だけは人払いする?」

海未「それも考えましたが、それでも限度がありますし…仕方ありません。奥の手です」

ことり「奥の手…?」



講堂


花陽「はわわぁぁぁぁ…!広ぉぉい…!」

希「ホントにここ、使っていいの?」

海未「はい。演劇部の先輩の方に頼み込んで、今日一日だけ稽古場所を変えていただきました」

ことり「海未ちゃん、いつの間にそんな人脈が…!」

真姫「ここなら出来上がった衣装で踊れるわね。スペースも十分だし、本番と同じ感じでライブができる…!」

花陽「観客ゼロのライブ…。寂しいけど、面白そうかも」

真姫「『私』…真姫がいれば観客は一人いるはずだけど…あれ、そういえばいないわね」

花陽「あ、真姫ちゃんなら先に病院に行ったんだって。いても仕方ないからって」

希「音楽室じゃなくて講堂でやる、って言ってたら人に見られる心配もなかったし、残ってくれてたのにね…」

海未「仕方ありません。講堂を使うと決めたのはつい先ほどですし…なんなら呼び戻しますか?」

花陽「そ、そこまではしなくてもいいんじゃない?」

ことり「新衣装でのライブは真姫ちゃんにも本番まで内緒にしちゃおう!」

真姫「ふふ…そうね。これまでC☆cuteを支えてきてくれた彼女への、ほんの少しのサプライズになるかも」

海未「…分かりました。では控え室がありますので、そちらで衣装に着替えましょう!」

希「見返す用に、カメラも設置して…よし、いいやん!」

花陽「C☆cuteの命運が決まるライブ…!でも、最後まで笑顔で頑張ろう!」

一同「うんっ!」

数時間後…



~♪

一同「…」ジー…


希「…うん、今度こそ完璧やん!」

ことり「やったあぁぁぁっ!!」

真姫「これが…私たち…!」

海未「泣いても笑っても、これで決着、ですね…!」

花陽「ライブはこれでいいとして、うん…明日は細かい部分の調整だけに…あっ!」

真姫「どうしたの?」

花陽「ご、ごめん…もう行かなきゃ!」

希「病院?」

花陽「うん…、今からだと凛ちゃんと話せるのがほんの少しになっちゃう…!もうちょっと早めに行くつもりだったのに…」

海未「明日、たくさん話せばいいのでは?」

花陽「そ、そうですけど…でも、今日もいっぱい喋りたいから!じゃ、着替えてきます!お疲れ様でした!」ダダッ

ことり「あ、行っちゃった…」

真姫「大切な友達だものね。少しでも多く話したいって気持ちは…ちょっとは理解できるわ」

希「…せやね」



UTX学院 校門前


花陽「はぁっ…はぁっ…!」タッタッタッ…


プップー!!


花陽「ひゃっ…!?な、何…?」


ウィーン…

真姫☆「花陽、こっち」


花陽「真姫ちゃん…?そのタクシーは…?」

真姫☆「歩いて行くよりこっちのが早いでしょ?乗りなさい」

花陽「待っててくれたの…?」

真姫☆「今の私にできるのはこれくらいしかないからね。さ、早く」

花陽「う、うんっ…!ありがとう!」

西木野総合病院 凛の病室


ガチャッ


花陽「凛ちゃんっ!」


凛「うわっ…!こ、小泉さ…じゃなかった、かよちん。どうしたのそんなに慌てて…?」

花陽「お、遅れちゃってごめん…!もっと早くに来ればよかったんだけど…」

凛「え?あはは、そんなこと?気にしなくていいよ」

花陽「そ、そう…?」

凛「ね、聞いて聞いて!松葉杖で歩くの、上手になったんだよ!よいしょっ…」


カッツカッツ…


花陽「わぁ…!ホントだ!」

凛「えへへ、今日練習してたんだ!これでもうトイレに一人で行けるね!」

花陽「うんうん!あ、でもまだ激しく動いたら骨が…」

凛「ゆ、ゆっくりだから大丈夫にゃ…多分」

花陽「ホントー?ふふ…」

凛「えへへへ…」



凛「…でねー?凛の友達ってば一人もお見舞いに来てくれないんだ」

凛「来てくれるのはかよちんだけ!うぅ…、やっぱりかよちんは友達だよぉぉ~!」

花陽「もう、最初からそう言ってるでしょ。凛ちゃんとはずっとずっと、友達」

凛「…うん。あ、あとね…」




花陽「…あははは!そっかー…」

凛「うん!だから…」

花陽「…あ」

凛「うん?」

花陽「もう、8時だ…。あと10分くらいで…」

凛「え、もうそんな?」

花陽「話し込んでると時間、忘れちゃうもんね…」

凛「そだねー…」

花陽「今日はもう、帰るね。あ、それと…」

花陽「…明後日って、外出許可、降りるかな」

凛「明後日…ライブの日、かにゃ…?」

花陽「…うん。凛ちゃんには少し、辛いことかもしれないけど」

花陽「でも、私たちのライブ…見に来て欲しい」

凛「…」

花陽「今回の曲…実はね、新曲なんだけど。『学校に来たくなる』ってテーマなの」

花陽「きっと凛ちゃんの身体にもよく作用して、治りがよくなるかも…って、これはバカバカしいけど」

花陽「でも…見て欲しいな。ダメ…?」

凛「…うーん、どうだろう…。多分、難しいかなぁ…」

花陽「そっか…」

凛「で、でもっ…!」

凛「…きっと、見に行けると思う。かよちんに一番近い場所で、一緒に感じられるよ」

花陽「ん?…そっか、そうだと、いいね…」

凛「そうだよ!どんな曲かな?楽しみにゃ!」

花陽「ふふ、私が作詞した曲なんだよ~。あ、そういえば…」

花陽「凛ちゃん、覚えてるかな?私が昔作った…」

凛「うん?」

花陽「…」

花陽「…うぅん。やっぱりいい!」

凛「え、なんでなんで?気になる~!」

花陽「これは、また今度ね。じゃあ、私はこれで…」

凛「あっ…」


ギュッ


花陽「…っとと…。ど、どうしたの、凛ちゃん…。袖掴んだら帰れないよ」

凛「…」

花陽「凛ちゃん?」

凛「…やっぱり、もう少し一緒にいて」

花陽「な、なんで?もう面会時間過ぎちゃう…」

凛「お願いっ!」

花陽「…凛、ちゃん…」

花陽「もう少し、って、どれくらい?」

凛「…消灯時間くらい」

花陽「え…そ、そこまでは無理だよ…」

凛「だ、だって!だって…その…」

凛「…」プルプル…

花陽「どうしたの…?震えてるよ?」

凛「…怖いの」

花陽「怖い…?」

凛「…うん」

花陽「何が怖いの…?」

凛「このまま、一人になるのが怖くて…」

凛「…だって、だってぇっ…!」

凛「…っ」ゴクリッ

凛「…ゆ」

凛「幽霊が、出るかもしれないから…!」

花陽「…はぇ?」

花陽「幽霊…?あ、あははは!凛ちゃん、そういうの怖い子だったっけ?」

凛「わ、笑わないでよぉぉ…。昨日の夜もすっごい怖かったんだからー…」

凛「お母さんが持ってきてくれた本の中に幽霊に関するお話が乗ってて、それで…」

花陽「あぁ、昨日読んでたアレ?」

凛「うん。…かよちん、地縛霊って知ってる?」

花陽「じばくれい?…爆発する幽霊?」

凛「そうじゃないよ!なんでも、死んじゃったらその土地に縛られちゃうって幽霊なの」

凛「ずっとずっと、未来永劫そこに居続けるんだって。だから病院は地縛霊が溜まりやすい場所なの…!」

凛「暗い夜、トイレに行きたくなって廊下を歩いていると…向こう側から青白い顔のお化けがぁあぁぁぁぁっ…!」

花陽「ひぃっ…!」

凛「…ってことはなかったんだけど。でも、地縛霊ってホントにいそうじゃない?」

凛「凛は、いると思うんだ」

花陽「そ、そうなの…?でも、だからって消灯時間まで一緒に…っていうのは無理だよ。明日も、絶対にお見舞いに来るから。だから、ね?」

凛「うーん…わかったよ。なるべく目をキツく瞑って寝るにゃ」

花陽「うん。それじゃ、バイバイ、また明日」

凛「…」

花陽「凛ちゃん?」

凛「え、あっ…うん。バイバイ、かよちん」

花陽「うん。バイバイ、凛ちゃん」



西木野総合病院前


花陽「ふぅ…今日も話し込んじゃったなぁ…凛ちゃん、ライブに来られるといいな…」


真姫☆「終わったわね。タクシー、待たせてあるわ」

花陽「あ、真姫ちゃん…。帰りまで…ありがとう」

真姫☆「早く。寒いし、風邪ひいたら元も子もないわよ」

花陽「うん。あ、その前に…凛ちゃーん!また明日ねー!」

花陽「…あれ、聞こえてないのかな?」

真姫☆「あ、気づいた」


凛「あ、かーよちーん!さよならー!ライブ、楽しみにしてるー!」


花陽「さよならー!また明日ー!来られるといいねー!」

真姫☆「挨拶は済んだ?」

花陽「うん。じゃ、帰ろっか」

真姫☆「…えぇ」



タクシー内


花陽「…」

真姫☆「…どうしたの?さっきから、口数少ない気がするけど」

花陽「え?そう、かな…。あ、ただね…」

花陽「やっぱり、もう少し一緒にいればよかったかな、って思ってたの」

真姫☆「明日また、会えるじゃない。少しの辛抱でしょ」

花陽「…うん、そうだね」

ここまでです また次回まで ほなな

展開を予想されて当てられても即座に別の展開を考えられるほど賢くないです
今回はかなりわかりやすいから仕方ないね それじゃ、貼っていきます

12月22日 夜

西木野総合病院 凛の病室


凛「…」

凛「…さよなら、かよちん」

凛「ライブ…一緒に頑張ろうね…」







12月23日 朝

神田明神


ザワザワ…


ことり「うわぁ…相変わらず人が多い…」

海未「休日の上、多くの人にここで練習していることが知られてしまったようですからね…」

真姫「…ったく、他にやることないのかしら」

花陽「あはは…」

希「でも人が多いせいで真姫ちゃんのコーチがつけられないのは…ちょっと」

花陽「あー…そうですね…。今何してるのかな…」

真姫「またうちの病院かしら…。パパにバレなきゃいいけど。もうひとりの私だってこと」

海未「…今真姫のことを気にしても仕方ありません。今の曲に関しては、既に彼女のコーチを必要としないレベルで完成してると思います」

海未「ですから今日はとりあえず、細かいところの調整のみを行い、明日に備えて休息…でしたよね?」

花陽「あ、はい!」

ことり「じゃあ、どこからする?あっ、すいませーん!そこ使うので空けてくださーい!」

花陽「えっと…って、私が決めるんですか!?」

希「花陽ちゃんがリーダーやもん。当たり前やん!」

真姫「早く決めて。リーダー」

花陽「だからリーダーはやめてって…うぅん、そうだなぁ…じゃあサビ前の…」


ピリリリリ… ピリリリリ…


花陽「…んっ?電話…」

海未「こんな時にだれから?」

花陽「あ…真姫ちゃんだ…。なんだろう…」ポチリッ

花陽「はい、もしもし?真姫ちゃ…」

真姫☆『…花陽、落ち着いて聞いて』

花陽「え?あ…うん、何?」



真姫☆『…凛が、病室からいなくなった』

花陽「…え?」


真姫☆『ついさっき、凛の病室を覗きに病院へ来たのだけど』

真姫☆『…ベッドがもぬけの殻だった』


花陽「え、ど、どういう…こと…?」

希「どうしたん?真姫ちゃんなんて?」

花陽「り、凛ちゃんがっ…凛ちゃんが病院からいなく、なったって…」

ことり「えっ…!?」

花陽「と、トイレ、とか…!?」


真姫☆『…今院内を探し回っている。凛の病室から一番近くのトイレは既に探したけど、いなかった』

真姫☆『彼女が使ってた松葉づえも一緒になくなってるから、もしかしたら遠くへ行ってる可能性も高い』

真姫☆『病院の職員総出で彼女の行方を追ってる…。親御さんにも既に連絡して…一緒に探してもらっている』

真姫☆『あなたたちにまで探して…とは言わないわ。明日はライブだし。きっとすぐ見つかる…はずだから』

真姫☆『…でももし、凛を見つけたのなら、連絡して。嫌な予感が…するの』


花陽「…うん」ピッ

海未「星空さん…どうなったんですか?見つかっては…」

花陽「まだ見つかってない…。もしかしたら病院を出て遠くにきてるかもしれないから、見つけたら教えて、って…」

真姫「な、何やってるのよ凛って子…!足の骨が折れて重症だっていうのに、外出歩くなんて…バカじゃないの?」

花陽「…」

真姫「あっ…ご、ごめんなさい。友達だったのよね…」

花陽「あ、うぅん。…いいの」

ことり「でも、仮に病院の外にいるのだとしたら、どうして…?何をしたくて外に出たのかなぁ…?」

海未「松葉づえではそう遠くへはいけないと思いますが…」

希「…花陽ちゃん、平気?凛ちゃん、うちらも一緒に探そうか…?」

花陽「い、いえ…!大丈夫です!きっと真姫ちゃんが見つけてくれると思うから…」

花陽「今はライブのことを一番に考えましょう!」

西木野総合病院


ピッ…

真姫☆「…」

真姫☆「凛…」

真姫☆「くっ…今彼女達に負担をかけさせるわけにはいかない…けどっ…!」

真姫☆「どこほっつき歩いてるのよ…!あのバカっ…!」

真姫☆「とにかく、凛が行きそうなところに目星をつけて、当たってみるしかない…!」

真姫☆「…あの凛が行きそうなところ…。…やっぱり最初は…」



ピリリリリ… ピリリリリ…

真姫☆「…」イライラ…

ピッ

『…はい、もしもし?』

真姫☆「あ、やっと出た!もしもし!にこちゃんっ!?」

にこ『ま、真姫ちゃんっ!?なんなのよ…こんな朝から…。まだ休憩入ってないんだけど?』

真姫☆「そんなことどうでもよくて!」 にこ『ど、どうでもいいって…』

真姫☆「そっちに、凛がいない!?」

にこ『…はぁ?』



UTX 多目的ホール


穂乃果「…なんて?」

にこ「り、凛がいないか、ですって…」

ツバサ「…凛?どうして…?」

真姫☆『いるの!?いないの!?』

にこ「い、いるわけないでしょ!凛は大怪我してるのよ!?来られるわけないじゃない!」

真姫☆『…っ、そう、よね…。もし、凛がそっちに来たら私に連絡して。すぐに行くから』

にこ「えっ…ちょ、ちょっとどういうこと!?凛…何かあったの!?」

真姫☆『…病院からいなくなったの。病院内を探したけど見つからなくて、身一つでどこかに出て行っている可能性が高い』

にこ「り、凛がいなくなった!?」

穂乃果「っ…!にこちゃん、貸してっ…!」

穂乃果「凛ちゃんがいなくなったって…!西木野さん!?」

真姫☆『穂乃果っ…。ねぇ、もしかして、絵里のしわざってことは…』

穂乃果「それは…」

穂乃果「…それはないよ。多分」

穂乃果「絵里さんは…昨日見た絵里さんは、抜け殻のような状態だったから…凛ちゃんに何かできる…とは思えない」

穂乃果「多分、凛ちゃんの意志で…」

真姫☆『…そう。ありがとう、少しは参考になったわ。もし凛を見つけたら連絡してね』

穂乃果「わかった。…お願い、凛ちゃんを…探し出して」

真姫☆『言われなくても、そのつもりよ。それじゃ…心配かけたわね』ピッ

穂乃果「…」

にこ「…凛。病院を脱走したって…ことかしら」

ツバサ「でも、ここじゃないとしたら…どこに?凛は何をしに病院を抜け出したのかしら…」

西木野総合病院


真姫☆「…A-RISEでもない、とするなら…。あぁもうっ…!親族の人に聞くべきかしら…!」

真姫☆「…いや、アテになるとは思えないわ。こうなったら…」

ダダッ!!


真姫☆「…足で探すしかないっ…!!」

真姫☆「パジャマ姿に松葉づえなんてすぐに見つかるでしょっ…!って言っても凛の行きそうな場所なんて…」

真姫☆「そうだ!本人に聞けばいいのよ!」

真姫☆「…流石にそろそろ携帯治ってる頃でしょ…!凛っ!!」ピポパッ…


『おかけになった電話は、電源が入っていないか電波の届かない…』


真姫☆「ぬあーっ!もうっ!!こんな時に役に立たないわねぇぇっ!!」

真姫☆「…仕方ないっ!アイツが行きそうな場所…!アキバとかぁ…!?」

真姫☆「もうどこでもいいっ…!とりあえず走って見つけるわよ!」

真姫☆「なんて手間かけさせやがるのよアイツは…!どこの世界でも厄介ねっ…!」



UTX 多目的ホール


穂乃果「…」

にこ「凛…」

ツバサ「…どうする?早めの休憩?」

にこ「そ、そんなわけっ…」

穂乃果「そうさせてください」

にこ「えっ…!?ちょっ…」

ツバサ「ふぅん…心配なんだ」

穂乃果「…はい。もう、彼女はA-RISEではないですけど…」

穂乃果「大事な、友達だから」

ツバサ「…そうよね。わかった。少し早いけど休憩ね」

にこ「い、いいの…!?本番は明日なのよ…っ!?」

穂乃果「にこちゃんこそ、凛ちゃんを放っておけるの…!?私にはできないよっ!」

にこ「っ…穂乃果…!」

穂乃果「とにかく、なんでもいいから居場所を探ろう…!まずは凛ちゃんに直接電話して…」ポチポチ…

穂乃果「あっ!これ私の携帯じゃないじゃん!ロックかかってる…にこちゃん!ロック解除して!」

にこ「え、あ…うん…」ポチポチ…

穂乃果「凛ちゃんっ…凛ちゃんはっ…あれ!?凛ちゃんの番号ない…」

にこ「あっ…そっか…、凛とはアプリ通話しかしてなかったから…」

穂乃果「何やってるのバカーっ!じ、自分のとってこなきゃっ…!!」ダダッ…

にこ「…」

ツバサ「…あんな子だっけ?穂乃果」

にこ「わ、私も驚いてます…」

穂乃果「…繋がらない」

穂乃果「凛ちゃんっ…!どこにいるの…!?」

にこ「ほ、ほっといても夜には帰ってくるって…。今はライブに集中しましょうよ…」

穂乃果「…っ」

穂乃果「そうっ…だよ、ね…。私が焦っても、どうしようも…ないん、だもん…」

にこ「穂乃果…。ここ最近、色々あって不安なのはわかるけど…」

にこ「強く、なるんでしょう?凛はひとまず、真姫ちゃんに任せよう…?」

穂乃果「…」

穂乃果「強く、か…。難しい、ね…強いって…」

ツバサ「…そうね」

にこ「さ、練習練習!もう休憩も終わりに…」

穂乃果「その前にっ!」

にこ「ガクッ…な、なによ…」

穂乃果「最後にもうひとり…かけたい人がいるの」

にこ「だ、誰?」

穂乃果「…絵里さん」

プルルルル… プルルルル…


穂乃果(真姫ちゃんには、絵里さんの仕業ではないって伝えたけれど)

穂乃果(私の判断であり、確信の持てる情報ではない)

穂乃果(トチ狂った絵里さんが、凛ちゃんを何らかの方法で外に連れ出した…って可能性も、考えられなくはないから)

穂乃果(その可能性を、潰しておきたくて、彼女に連絡を…している、はず)

穂乃果(…彼女が、心配だからでは…ないと、思う)



穂乃果「…出ない」

にこ「もう諦めたら?」

穂乃果「うぅん…、もう少し…」

ピッ

『はい、もしもし…』

穂乃果「あ、もしもし絵里さんっ!?今どこに…」

『きゃっ…!?だ、誰ですか…?』

穂乃果「…絵里さんじゃ、ない…?あなた…誰?」

『あ、えっと…すみません。姉は今電話に出られない状況で…代わりに私が』

穂乃果「ということは…あなたは絵里さんの妹さん…?」

『はい!えっと…、姉に何か御用でしょうか?お聞きします』

穂乃果「…絵里さんは、そこにいるんですか?そこはどこでしょうか?」

『え?あ、はい…姉はいます。ここは家です』

穂乃果「あ、そう、ですか…。分かりました。高坂穂乃果から電話がかかってきた、とでも絵里さんには伝えて…」

『こ、高坂穂乃果ぁぁっ!?』

穂乃果「ほぇっ!?」


にこ「ど、どうしたのよ…」

ツバサ「いきなり電話から飛び退いて…」


穂乃果「な、何…?」

『こ、高坂穂乃果って…あのA-RISEのバックダンサーの高坂穂乃果さんですか!?』

穂乃果「は、はぁ…」

『だ、だ、だ…』

『大ファンっ、ですっ!!』

穂乃果「え、あ…そうなんだ…。ありがとう…」

『えっと、えっと…!ど、どうしよう…!あの、お姉ちゃんの指導で、その…なんですよね!?』

穂乃果「な、何が?」

『ご、ごめんなさい…うまく話せなくて…。あっ、その、雪穂からお噂はかねがね!』

穂乃果「えっ…?雪穂を知ってるの?」

『はいっ!一番仲のいい友人です!多分、来年進学する高校も同じ高校にする予定で…』

『な、何度かそちらへお伺いしたのですが、タイミングが悪くて一度も会えなくて残念でしたけどっ…!』

『こうして直接お話ができて…う、嬉しいですっ!』

穂乃果「そ、そう…」

穂乃果「…ん?」

穂乃果(一番仲のいい友人…確か雪穂も前、そんなこと…)



(雪穂「え、えっと…仲のいい友達がどうしてもUTXに行きたくない、って言ってて」)

(雪穂「私もその子と同じ学校に行きたいから、だから…都内の別の高校を選んでるんだ」)



穂乃果(…そっか。多分この子が、UTXに行きたくないって言ってる子…まさか、絵里さんの妹だったなんて)

穂乃果(でもどうして、絵里さんの妹が…UTXに行きたがらないの?)

穂乃果(A-RISEに憧れてくれているなら、来たがってもおかしくないはず…なのに)

穂乃果「ねぇ、一つ質問…いいかな?」

『は、はい…?なんですか?』

穂乃果「キミ…UTX学院に行きたくない、って言ってた子?」

『えっなんで…あ、雪穂からですか?』

穂乃果「…うん。どうしてなのかな、って…A-RISEが好き、なんでしょ?」

穂乃果「どうしてもUTX学院に来たくない理由があるのかなって疑問に思って」

にこ「何聞いてるのよ…もう凛と絵里は関係ないってわかったんじゃ…」

穂乃果「…ごめん、少しだけだから」

『い、いえ…確かにA-RISEは好きなんですけど…』

ツバサ「絵里が怖いからとか?」

穂乃果「な、何を…」

『はい?お姉ちゃんは優しくていいお姉ちゃんですけど…』

穂乃果「そ、そうなんだ…。じゃあ、どうして?」

『…その、私に理由があるわけじゃなくて…』

『お姉ちゃんが言うんです。「絶対に、UTX学院へは入学するな」って…だから』

穂乃果「絵里さんが…っ?どうして…」

『わかりません。でも、どうしてもって』

穂乃果「…」

穂乃果「…わかった。ありがとう…絵里さん、元気になるといいね」

『あ、はいっ…。言っておきます!それでは!』

ピッ…


穂乃果「…どういう、ことなの…?」

穂乃果「まさか…」

アキバ


真姫☆「はぁっ…!はぁっ…!!」

真姫☆「パジャマで、松葉づえ…!いないっ…!!」

真姫☆「多くの人に聞きまわっても誰も見てないって…そもそも凛はそこそこ顔も売れてるはずだから、道行く人なら気づいてもいいはず…」

真姫☆「じゃあやっぱりこっちには来てないってこと…!?だったらどこに…!」

真姫☆「っ…!アイツが行く場所なんてわかるわけないじゃないっ…!何か、他に方法は…」


プルルルル… プルルルル…

真姫☆「…電話?あ、こっちの凛からっ…!」ピッ

真姫☆「もしもしっ…」

凛『もしもし真姫ちゃーん?携帯やっと直せたの!でねー…えへへー朗報だよ朗報!なんとっ…』

真姫☆「今はどうでもいい!凛っ!あなた、凛の居場所わかる!?」

凛『は?ど、どうでもいいって…凛は今クリニックだけど…』

真姫☆「あなたじゃなくて、この世界の凛よ!同じ存在の凛ならちょっとは居場所の見当がつくんじゃないの?」

凛『えぇ…?そんなこと言われても…っていうか、こっちの世界の凛って今骨折してるはずじゃ…』

真姫☆「いなくなったのよ!それで必死になって探してるの!」

凛『え、マジで?そかー…大変だね』

真姫☆「た、他人行儀なんだからっ…」

真姫☆「…というか、どうして凛もクリニックにいるのよ。今更壊れたクリニックに何の用が…」

凛『ん?それ聞いちゃう?んふふーなんとねー…じゃじゃーん!飛行エンジンが完成しましたー!』

真姫☆「…っ!そうなの!?」

凛『うん!って言っても取り付けてもいないし、クリニックの修復にも時間がかかるから動かせるのは明日以降になりそうだけど…』

真姫☆「明日ぁ…!?それじゃクリニックで空を飛んで凛を探すのは…」

真姫☆「っ…!!で、できるじゃないっ!」

凛『え?』

真姫☆「モニターよ!そのクリニックにはその世界のμ'sメンバーを即座に発見できるモニターが備え付けられているはずだわ!」

凛『あ、そういえば!長らく使ってなかったから忘れてた!』

真姫☆「空を飛んでいない状態でも使える?」

凛『カメラに捉えることはできないけど、場所ならわかるはず!冴えてるね、真姫ちゃん!』

真姫☆「…今まで思い出せなかった自分がバカらしいわ」

凛『じゃあ早速、この世界の凛の居場所を…検索にゃー!』

凛『んん?ここって…』

真姫☆「ど、どこにいるの?凛…」

凛『え、えっと、それが…』

凛『UTX学院の、屋上にゃ』

真姫☆「屋上…!?まさか、そんな…あそこは締め切られて…」

真姫☆「あっ!そうか、垂れ幕で今日は…!一日中開けっ放し…!」

真姫☆「まさか…、凛の病室の前でパモ部部長と話してたから…ドア越しに聞かれてたのかしら…」

凛『屋上へ行ってどうする気なんだろ…』

真姫☆「屋上へ行って…ッ!ま、まさかっ…!!」

真姫☆「嘘、でしょっ…!?凛っ!!」ダダッ

凛『え、あ、ちょっ…真姫ちゃんっ!?真姫ちゃんっ!』ピッ


真姫☆「急がないとっ…凛がっ…!!」

タッタッタッタッタッ…


真姫☆「はぁっ…!!はぁぁっ…!!」

真姫☆「凛っ…!凛っ…!早まっちゃ…ダメぇぇっ…!!」



UTX学院


真姫☆「え、エレベーターで、屋上に…っ!」ポチリッ


ウィーンッ…


真姫☆「お願いっ…!お願い、間に合ってっ…!!」



UTX学院

屋上



真姫☆「凛っ!!」ダッ!!



凛「…あ」

凛「見つかっちゃった」



真姫☆「り、ん…!!」



真姫☆(おどけた顔で、かくれんぼでもしていたかのように呟く凛は)

真姫☆(UTX学院、屋上の縁で)

真姫☆(申し訳程度に建てられた、胸元あたりまである柵の)

真姫☆(外側に立って、微笑んでいた)



真姫☆「凛、まさか…」

真姫☆「そこから、飛び降りる、気じゃ」


凛「そうだよ」


真姫☆「っ…!」




凛「もう、A-RISEができないのなら」

凛「生きていたって仕方ないから」

凛「今日、ここから飛び降りて」


凛「凛は、死ぬんだ」

というわけでここまで 大方の予想通り屋上でした
まぁここまでは想定内さ 続きはできれば明日 できねば明後日 ほなな

UTXの屋上までは一応エレベーターがある設定なのでまぁなんとか
UTXまでの道のりは見つかっても気にされなかったと判断して頂ければ それじゃあやります

真姫☆「どう、してっ…」

真姫☆「なんでなのよっ!?あなたはっ…!!」ジリッ


凛「それ以上、近づかないで」


真姫☆「なっ…」


凛「それ以上近づいたら、凛はここからすぐに飛び降りる」

凛「だから、それ以上近づくのはやめて」


真姫☆「…どういう意味よ。近づかなければ、飛び降りを思いとどまってくれるの?」


凛「…うぅん。そうじゃないけど」

凛「最後に、ここに来てくれた人が…凛の知ってる人だったら」

凛「少し、お話がしたいって考えてたんだ」

凛「穂乃果先輩やにこ先輩や…かよちんなら、よかったんだけど…まぁ、西木野さんでもいいよ」


真姫☆「あなた…」


凛「…それに、もしかしたら西木野さんの説得で、思いとどまるかも?」

凛「だから、最後にお話しよう?さ、西木野さんから話していいよ」

凛「そこは、絶対に動かないようにね」


真姫☆「…」

真姫☆「…わかったわ」

真姫☆「じゃあ聞くけど…あなたは、花陽と仲良く話していたじゃない。ここ最近…」

真姫☆「あれは…なんだったの?前向きに生きよう、って…決めたのじゃなかったわけ?」


凛「うん?前向き、だったよ。…あぁ、でも」

凛「前向きに、死のう…って考えたんだったね」

凛「このまま惨めに、夢のステージを眺めるしかできないなら死んじゃおうって」

凛「そう考えたら、不意に頭がスッキリしたんだ。今まで見下してきた小泉さんも…どうでもよくなるくらい」

凛「もう凛には強さなんていらない。好きなように振舞おう、せめて、死ぬまでは…ってね」


真姫☆「好きなようにって…花陽と話す時間を楽しみにしてたんじゃないの!?どうして、わざわざ死ぬことを選ぶのよ!?」

真姫☆「そんなことが前向きだなんて…ふざけてる…っ!!」


凛「…かよちんと話すのは、楽しかったよ。かよちん…思ってたよりずっといい子だった」

凛「でも…A-RISEの栄光と比べると、それのどれほど小さいことか。くだらない…ただ楽しいだけの日々…」

凛「…そんなモノのために、凛は今まで血反吐を吐いて、疲れを忘れて、骨を砕いてきたんじゃない」

凛「それにね、前向きなのは間違いないよ?だって…」

凛「凛は、明日…かよちんと一緒に、ライブをするって決めてるんだもん」


真姫☆「えっ…?」



凛「西木野さん、地縛霊、って知ってる?」

真姫☆「地縛霊…」


凛「うん。土地に縛られた幽霊…」

凛「この世に未練を遺して死んでいく人が、なってしまうとされている霊」


真姫☆「知ってるけど…それが、なんだって言うのよ…?」


凛「…凛は、この世に未練しかない」

凛「A-RISEになれないまま、死にたくないし…そもそも普通に死にたくない」


真姫☆「ハァ…!?じゃあ、死ななきゃいいじゃないっ!!」

真姫☆「なんで…屋上から飛び降りるなんて道を選んでるのよっ…!!」


凛「だって、このまま生きていてもA-RISEにはなれないから」

凛「だからね…凛は地縛霊になっちゃう道を選んだの」

凛「ここから落ちれば…どうなると思う?」


真姫☆「どうなる、って…それは…あなたが…死ぬ…ってこと、だけど…」


凛「…うん。そして、死んだ土地に縛られる」

凛「その死んだ土地、明日はどうなってるかな?ここまで言えばわかる?」


真姫☆「…っ!ここから、落ちれば…」

真姫☆「この真下は…明日、ステージがある場所っ…!まさか、凛、あなたっ…!!」


凛「うん」

凛「…凛は幽霊になってね。かよちんの横で踊るんだ」

凛「もちろん、A-RISEとしても」

凛「そして、みんなに喝采をもらうの」

凛「かよちんの隣で。A-RISEの隣で」

凛「こんなの、生きていたら絶対に味わえないエンターテインメントだよ」

凛「そうは思わないかにゃぁ?」

凛「ね?前向きでしょ?」



真姫☆「っ…!!」


真姫☆(凛の発想は私の想像の遥か斜め上を行っていた)

真姫☆(彼女は自分の夢を叶えるために…地縛霊になる道を選択しようという)

真姫☆(馬鹿げている。地縛霊なんて存在しない)

真姫☆(死んでも…何も変わらない。何も残らない)

真姫☆(その言葉を口に出そうとしても、出なかった)

真姫☆(あまりのことに、唖然としすぎて。そして)

真姫☆(凛の顔が…希望に満ち溢れていたから)



凛「…西木野さんは、これ以上の喜びを凛に与えてくれる人?」

凛「動けない凛を、A-RISEと…かよちんと一緒に踊らせてくれる人?」

凛「答えてよ」

真姫☆「っ…」



真姫☆(…先程から私は)

真姫☆(後ろ手に携帯電話を弄っていた)

真姫☆(スマートフォンのせいで、イマイチ感覚は掴めないけど)

真姫☆(日頃から行っている行為だから、感じられなくても体に染み付いた動き)

真姫☆(おそらく、C☆cuteの誰かに電話をかけている…はず)

真姫☆(本当にかけているかどうかの確信はない…けど…でも、お願い…!誰かに伝わって…今の状況…!!)

真姫☆(私はなるべく、凛との会話を長引かせる…!それしか、凛を生存させる道を考えられない…!)



真姫☆「…私は…」

真姫☆「凛、なら…凛なら、また、やり直せるって…」


凛「あはっ」

凛「あははははははははっ!!そればっかりっ!かよちんも同じこと言ってたよ!」

凛「やり直せるって保証は!?こんな大怪我で、半年以上もまともに動けないのに!」

凛「一から始めるなんて、出来るわけないっ!もう二度と…こんな辛い思いなんか、したくないのにっ…!!」


真姫☆「もうそんな辛い思いをする必要はないわっ!もう既にUTXはっ…アイドル専攻は変わりつつあるのだからっ!」

真姫☆「あなたが体験したような…血反吐を吐くような地獄を、味わう必要なんてなくなるっ!」


凛「ハンッ、そんな生ぬるい環境で得られるものなんて、たかがしれてるよっ!」

凛「アイドルは頂点以外意味はないんだって…西木野さんだって知ってるはずでしょっ…!!」


真姫☆「そんなことないっ!!アイドルは…それ自体が最高に楽しくてっ…頂点なんか、どうでもいいことなのよっ!!」

真姫☆「結果的に認めてもらえて、一番になれるなら…それはとっても嬉しいことだわっ!!でもっ…」

真姫☆「最初から一番だけを目指すなんて…そんなの…本当のアイドルじゃないっ…!アイドルは、誰かを楽しませてこその…」


凛「…ふぅん」

凛「凛は違う…。誰かを楽しませるのは手段でしかない」

凛「一番の栄光を掴むまでの…多くの人から注目されて、喝采を浴びるためのもの」

凛「凛はアイドルに憧れてからずっと、そう教わったもん」

凛「やっぱり、西木野さんとは…相容れなかったね」

凛「…お話は、もうおしまいにしようか」


真姫☆「待っ…!まだ…!!」


凛「んー?ぷっ…あはははは!慌てっぷりおもしろ!あははははは!」

凛「安心してー。まだ死なないよ」

凛「…最後に、肝心の…ライブが残ってるから」


真姫☆「ライ、ブ…?」


凛「…うん。ライブ」

凛「観客ひとりのライブ」

凛「本当にそんなので、アイドルを目指す原動力になるのか」

凛「最後の最後に、試すんだ」

真姫☆「観客ひとりの、ライブ…!?」

真姫☆「それはっ…」


凛「ん?ふふ…おかしいでしょ?観客ひとりでライブ、なんて」

凛「かよちんが凛を元気づけるためにいった、戯言だよ」

凛「可笑しくって笑っちゃった。ありえないもん」

凛「ただ惨めなだけのそんな行為が、慰めになると思ったのかな?ふふふっ…」

凛「…でも、もしかしたら」

凛「本当に希望を貰えるのかも、ってほんの少しだけ、思っちゃった」

凛「だから、最後に試して、それで…」

凛「…うまくいったら、やめよっかなって。自殺」


真姫☆「り、凛っ!聞いてっ…その、観客っていうのはっ…!!」


凛「あぁもううるさいなぁっ!!こっちが今から歌おうとしてるところなんだよ!?」

凛「凛の人生で最初で最後のソロライブなの!そんなのも黙って聞けないワケ!?」

凛「いいじゃん…自殺、辞めるかもしれないって言ってんだから」

凛「西木野さんにとっては、凛がここから落ちたら、明日のライブに響くから嫌なんだよね?」

凛「そのためなんだから、ちょっとくらい我慢して」


真姫☆「ねぇっ…!凛…そういうことじゃ、なくてぇっ…!!お願いっ…!」


凛「黙れって言ってるのっ!!」

凛「次喋ったら、死ぬから」


真姫☆「ッ…!く、ぅぅっ…!!」


凛「うん、黙ったね」

凛「じゃあはじまりはじまり~。凛の人生最後?のソロライブ!にゃはは~ん」

凛「んーと、じゃあまずはね~…凛の大好きな、Shocking Partyからかにゃ!アカペラだと滑稽だけど…ごほんっ」

凛「それじゃいくねー…だんしんだんしんどんすとっぱだんしん…」



真姫☆(そうして奇妙な二人きりのライブが始まった)

真姫☆(このまま歌が続けば、携帯の通話で気づいた誰かがこちらに来てくれる時間が稼げる…)

真姫☆(せめて、あと10分…どうやったら助けられるかは、私でも思いつかないけどっ…でも、とにかく誰か…!!)

真姫☆(そして、凛にどうしても伝えたい…!)

真姫☆(花陽の心を強く支え続けた、観客ひとりのライブ)

真姫☆(その観客というのが誰なのか…きっと凛は気づいていないんだっ…!!)

真姫☆(だから伝えたいのにっ…下手に声を出せないっ…!!)

真姫☆(凛っ…死ぬなんて、選んじゃ、ダメっ…!!)

真姫☆(きっと、あなたにはっ…!)

真姫☆(曲の中盤あたり、急に凛が歌を止めた)


凛「…」


真姫☆「…?」


凛「…やっぱり、違うなぁ」

凛「ライブっていうのは、踊ってこそだもん…」

凛「歌だけじゃ、全然面白くない…。A-RISEの曲はアップテンポでダンサブルな曲ばかりだし…」

凛「アカペラで歌ったって…ライブじゃないよ、こんなの…」

凛「つまらない…」


真姫☆「り、凛っ…」


凛「喋るなって言ってるでしょっ!!!」


真姫☆「…っ」


凛「…まぁ、いいや」

凛「観客がひとりのライブなんて、こんなものだったって、それだけ」

凛「そろそろ、終わりにしよっか」


真姫☆(そ、そんなっ…!まだ時間が…!!)


凛「あ、最後にもう一曲だけ」

凛「曲名も歌詞も、何もわからないけど」

凛「凛の、心に残ってる…大好きな歌」

凛「聞いてください。…すぅっ」



凛「ふんふんふふんふふ~ん…ふんふんふふ~んふんふんふふ~ん…」



真姫☆「ッ…!!!」

真姫☆「その、曲、はっ…!!」



凛「これなら、アカペラでも多少は様になったかな…」

凛「…さよなら、西木野さん」

凛「明日また、ステージで会おうね」



真姫☆(そう言って凛は、手すりからゆっくりと手を放し)

真姫☆(後ろ側に倒れこむように)


真姫☆「ッ…り、りぃぃぃぃぃぃんっ!!!!!」ダダッ


真姫☆(その瞬間を見逃さず、駆け出すっ…!)

真姫☆(後ろ手に握った携帯なんか、放り出して)

真姫☆(彼女が歌っている間、気づかれない程度にジリジリと近づいて)

真姫☆(この距離なら…全力で走って、全力で掴みにかかれば)

真姫☆(間に合う自信がある。そう予感していた)



真姫☆(けれど)

真姫☆(世界はよそ者の私に、容赦はしてくれなくて)



グワンッ…!!



真姫☆「く、あぁっ…!!?」

真姫☆「こんな、とき、にっ…!!!!!!」


真姫☆(強烈なめまいが私を襲う)

真姫☆(もはや前がどちらか、上下すら認識できないほどの、激しい頭の揺れ)

真姫☆(時空振動が、私に猛威を振るった)

真姫☆(まっすぐ伸びた私の腕は、すぐに勢いを失い)

真姫☆(足はもつれ、フラフラと行き場を無くす)

真姫☆(あとほんの少しの距離なのに、後一歩、歩くことができれば、掴める距離ってところで)

真姫☆(最後の一歩が、踏み出せない)

真姫☆(時空壁が生成されたということは)

真姫☆(もうタイムマシンで、この時間に戻ることも許されない)

真姫☆(死んでしまった凛を救い出すことは、できなくなる)

真姫☆(だからここで、彼女に触れられないと)

真姫☆(終わってしまう。全てが)

真姫☆(踏み出せ。最後の一歩をっ…!)

真姫☆(スローモーションのように倒れていく彼女の体を)

真姫☆(この手で引っ張り上げるためにっ!!)

真姫☆(踏み出せっ!届けっ!!踏み出せぇぇっ!!届けェええっぇぇぇっ!!!!)



真姫☆「届けえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!!」



真姫☆(骨が軋むほどの意地と根性を持って)


真姫☆(私は、一歩を踏み出した)


真姫☆(己が全力を右足と右腕に込め)


真姫☆(後ろに倒れこむ凛の首元を)



真姫☆(私の腕が、掴んだ)










真姫☆(…と、錯覚した)


真姫☆(私の腕が掴んだと感じたのは、一瞬前の、凛の幻影で)


真姫☆(実際はただ虚しく、私の手は空を切るのみ)


真姫☆(後ろに倒れこむ凛を止めることは叶わず)


真姫☆(地についた凛の左足は)


真姫☆(空へ、投げ出された)



真姫☆「ぁっ…!!!」



真姫☆(私の差し出した腕は、無力にも…届かなかった)


真姫☆(凛を救うことは)


真姫☆(私には)


真姫☆(できな、かった)

おやすみ ほなな

あ、ごめん 寝たのは嘘です
というわけで続き

無限のように感じられる、一瞬の時間。


ふわり、と空中へ投げ出される、凛の身体。


もう一段あると思っていた階段が、なかったかのような。


寝ぼけて、ベッドから落ちたときのような。


ジェットコースターで急降下しているような。


そんな浮遊感を、全身で感じてる。


気持ちいい、って思った。


それから、あぁ、死ぬんだ、って思った。


ちょっと怖いけど、明日が楽しみ。


幽霊になって、喝采を浴びることができる。


そのあとは…UTX学院の七不思議の一つになろう。


夜、遅くまで居残ってると幽霊に襲われる、みたいな。


ふふ、それも面白いかも。


なんて考えながら、目を瞑る。


忘れたと思っていた、過去の出来事が次々と瞼の裏に浮かぶ。


おぉ!これがそうまとー?ってやつかにゃ!?


アイドル専攻での数々の出来事。辛かったたくさんのことと、楽しかった少しのこと。


中学での陸上部の経験も、休日に友達と出かけた思い出も。


みんな浮かんでは消えてゆく。


凛が見る、最後の風景ってなんなのかな。


凛だけが見えるシアターで、凛だけの幕引きを心待ちにする。


ふと、声が聞こえた。


うぅん、違う。


歌…聞いたことのある、歌。


そう。凛が歌っていた、あの…鼻歌。


思い出した。あの曲の、歌詞は…。




「ありが、とう…って…あふれ、だして…くる…」

凛「あれ…?」



気がつくと、知らない場所に、凛は立っていた。


知らない場所?…違う、ここ、知ってる。


見たことのある、運動場だ。


でも、おかしい。


運動場しか…ない。


凛の知ってる場所なら、すぐ後ろに小学校があったはずなのに。


もしかしてこれは…。



凛「凛の記憶の中…?」



ぱしんっ。ぱしんっ。


地面に鞭を打つような音が、どこからか聞こえてくる。


ぱしんっ。ぱしんっ。


すぐ近く。振り返ると…。



凛「あ…」



いた。


大縄跳びを飛んでる、何人かの子供たち。


でも今は、誰も飛んでない。


縄跳びを順番に飛んで、8の字を描くように循環するはずが、一箇所で止まっている。


一人が、立ち止まってるんだ。


震えて縮こまって、泣いて、しゃがみこんでいる。


子供がみんな、迷惑そうにその子を睨んでいる。


このままじゃいけない。


凛が、その子を助けようとしたとき。



その縄跳びの逆の方から。


細いトビラをくぐって、ひとりの女の子が、飛び出してきた。


泣いてるその少女に向かって、手を差し出して、



「こわくないよ。簡単だよ。いっしょに飛ぼう?」

凛「…あれっ?」



瞬間、風景が変わる。


小学校のときの、凛の教室。


何年生の、頃だったっけ。


不親切な夢だ。何の脈絡もなく場面が入れ替わる。


まぁ、夢ってそんなものだよね。



「…これ、なんて読むの?」



横から声が聞こえた。


さっきの女の子の声だ。



「か、と……たいようの、よう…?」


「はなよ、だよ」


「かよう…?かようび?」


「は、はなよっ…だよぉ…!」


「かよー?」


「はーなーよっ!」


「あはは、おおきな声!きれいで、かわいいこえ!」


「あ、…ごめん、なさい…」


「?…どうしてあやまるにゃ?」


「…え、その…ごめん」



とりとめのない、よくわからない会話。


どこかぼんやりとして凛の耳を通り、内容を理解することができない。


でも、どこか懐かしいって感じる。


当たり前か。


凛の、記憶なんだから。

また場面が変わる。


次は近所の公園だ。


何人かの子供たちが、遊具で遊んでいるのが見える。



「どけよ!」



ナマイキそうな、少年の声。


高い滑り台の方。子供たちが集まる、特に人気の遊具だった。



「え、でもっ…」


「ここはおれたちが使うんだ!!」

「どっか別のところいけ!」


「だけど、さ、先に…使おうと…」


「どっかいけ!どっかいけ!どっかいけ!どっかいけ!」

「どっかいけ!どっかいけ!どっかいけ!どっかいけ!」


「う、うぅぅぅぅ…!!」



縄跳びの前でしゃがんでいた、眼鏡の女の子が、今にも泣き出しそうだった。


すると、やはりといった感じで。



「こらー!かよちんをいじめるなーっ!!!」


「げっ!ガキ大将のりんだ!」

「ころされる!にげろー!!」



「かよちん、大丈夫?あいつらにひどいこと、されてないかにゃ?」


「うん、うん…ごめん、ね…」


「あやまらなくていいの!そういうときは、ありがとう、だよ?」


「うん、でも…ごめん」


「うーん…。まぁいいや!遊ぼう!」



元気な女の子が、眼鏡の女の子の手を取って滑り台へ引っ張る。


高い高い、空へも届きそうな滑り台。


そう思ってたのに…。



凛「…こんなに、小さかったんだ」

また、別の場所。


ここは、秋葉原かな?


お母さんたちに連れてきてもらって。


色々なお店を回って。


帰りは疲れて、車の中でぐっすり。


また、別の場所。


ここは、凛の家。


ゲームしたり、歌を歌ったり。


庭を走り回って、汗かいて。


一緒にお風呂に入ったりも、したよね。


楽しいことを語らいながら、同じ布団で寄り添いあって。


また、別の場所。


ここは――。


何かを思う前に、風景が変わる。


また変わり、次も、次も、色々な風景が凛だけを取り残して目まぐるしく入れ替わる。


どんな場面にも、二人の少女がいて。


どんな場面でも、そのふたりは笑っていて。


楽しいルーレットに入れられて、回されているみたいに。


凛も自然に、笑顔になっていた。


楽しい。


こんな気分になったのは、いつぶりだろうか。


もう、思い出せないかもしれない。


それだけ、貴重なものだった。


ありふれているようで、かけがえのない、大切な思い出だった。


手放すことのできない――。



手放す、ことの――。

メリーゴーランドのように回転していた風景が、ピタリと止まった。


また、公園。


今度は、あまり人気のなかった、小さな砂場。


その砂場に、やっぱり二人の女の子。


ひとりは砂場の前で小さく体育座りをして。


もうひとりは、みかん箱の上に立って、おもちゃのマイクを手にして。


これから何が始まるんだろう?


どうせだから凛も、その子の隣に体育座り、してみることにした。



「あれ?お姉ちゃん、誰にゃ?」


「まぁまぁ、いいからいいから。始まっちゃうよ?」



眼鏡の女の子はみかん箱の上で、ぷるぷると震えている。


緊張、しているのかな?


数秒待ったあとで、万を持して彼女が口を開く。



「あ、あのっ…凛ちゃんっ!」

「今まで…り、凛ちゃんと…いっぱい、いっぱい遊んできた、よね…」

「でもあの時…なわとびのところで、凛ちゃんがたすけてくれなかったら…もしかしたら、そうじゃなかったかもしれないって思って」

「だから、今こうしていっしょに遊んでくれる凛ちゃんに、思いをつたえるライブがしたいの!」

「あのときの、なわとびがとべなかったことを歌にして、アイドルみたいに…歌いたいの」

「それともうひとつ。いままで『ごめんね』ばかりで、あんまりいえなかった『ありがとう』を…伝えたくて」

「だから、歌うね。きいてください」


「うんっ!たのしみだにゃ~…」


凛「…うん。楽しみだにゃ」



そっか、ライブか…。


こんな小さな会場で、観客もふたりだけ。


子供なら、それでも楽しいんだろうな。


だけど、今の凛も、ワクワクしていた。


子供の頃の純粋な気持ちを、思い出して。



「歌いますっ…『なわとび』」

「  出会いが私を 変えたみたい  」


「  なりたい自分を 見つけたの  」



眼鏡の女の子が身体を揺らして歌う。


ただリズムをとっているだけでなく、小さな仕草も随所に入れて。


動きが小さすぎて、何をやっているかよくわからない、拙い動き。


ダンスと言えるものでは到底ない、その動きが、なんだか。


凛の心を、激しく揺さぶる。



「  子供みたい ためらいながら  」


「  いつも待っていたの 君を  」



子供みたい、と子供が言うと、少し滑稽だ。


凛は苦笑する。


でも、どこか懐かしいな、この歌。どこで、聞いたんだっけ。


あれ?でも、確かこの歌は…。


この子が…。



「  あきらめかけた時 ささえてくれた  」


「  優しい手の そのぬくもり  」


「  好きだよ  」



凛「あっ…!」



「  ありがとうって あふれ出してくる  」


「  夢が 少しずつ 近づいて  」


「  ありがとうって あふれ出してくる  」


「…ありがとう」


「  嬉しくて 嬉しくて 幸せすぎると  」


「  泣けちゃうの ごめんね  」



この、歌、だった。


凛の、心に、いつまでも残っていた…歌。


こんな、ところで…。

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」


ぱちぱちぱちぱちぱちぱち!!


隣の少女が大きく拍手をする。


目を輝かせて、満面の笑みで。


その少女は、凛だった。


そうだ。凛が、かよちんに向かって、大きく拍手をしたんだった。


そう、それで…。



「かっわいいっ!かよちん!可愛いよ!!」


「あ、ありがとう…」


「えへへ、でも最後にごめんね、っていうのはかよちんっぽいね」


「あ、あうぅ…あ、ありがとう…」


「そこはごめんねでいいんだよー!あはははは!」


「う、ごめん…ぷっ、あはははは…あはははははっ!」


「あははは…かわいったよ、かよちん…!いいなぁ…」



「凛も、あんなふうに歌えたら、いいのになぁ…」



「え?凛ちゃんだって歌えるよー!」


「ダメダメ!凛は歌、下手っぴだし、アイドルはかわいいかっこして歌うんだよね?」

「そんなのできないにゃー!凛がもーっとかよちんみたいにかわいかったらいいのに!って思ったの!」


「えー!?凛ちゃん、かわいいよ!凛ちゃんならできるよ!」


「無理無理!ぜったいに、ムリー!」タタタタッ…


「あー!凛ちゃんっ!待ってー!」タタタタッ…



凛「…」



ここだ。


凛は、ここで…「歌いたい」って、思ったんだ。


かよちんが、たったひとりの拍手で、アイドルをやりたいと強く思ったように。


私は…凛はっ…たったひとりのために向けた歌を聞いて、歌いたいって思ったんだっ…!


凛も、こんなふうに歌いたいって思ったんだ!!


たったひとりのための歌をっ…歌いたかったんだっ!!!

目を覚ます。


凛は、空中にいて。


運動場も、公園も、アキバも、家も…そこには地面も何もない場所で。


二人の少女は、そこにはいなくて。


笑顔の少女たちは、いなくて。


忘れていたことなんてもう、何もなくて。


疲れも、痛みも。


夢も、はじまりも。


恐怖も、未練も。


仲間も。


友達も。


生きたいって気持ちも。


大切な、歌も。


全て、思い出した。



「たすけてっ…」



その声は宙に浮いて、誰にも届かない。


ただ、無残に落ちるのを待つのみ。



そんなの、いやだ。



「たすけてぇぇっ!!!」




不意に、息が詰まる。



浮遊感が、止んだ。

真姫☆(私の差し出した腕は、無力にも…届かなかった)


真姫☆(凛を救うことは)


真姫☆(私には)


真姫☆(できな、かった)




真姫☆(…私、には)




真姫☆(光を蹴散らすような速さで屋上を駆け)


真姫☆(弾丸をも上回る勢いで凛に手を伸ばし)


真姫☆(柵から身を乗り出し、凛の首元を掴んだ彼女)


真姫☆(凛が掴む腕は、私じゃない)


真姫☆(そう、よね…)



真姫☆「…花、陽っ…!!」




花陽「はぁっ…!!はぁっ…!!」


凛「ごがっ…か、よちっ…!」


花陽「凛ちゃんっ!!」




花陽「掴んでっ!!」




凛「あ…!う、ぅ…!!」


花陽「早くっ…!!お願いぃぃっ…!!もう、これ以上…!!」


凛「う、ん…!!」ガシィッ…!!



ズルッ…

花陽「ひっ…!!落ちっ…!!?」


真姫☆「ふっ…!!」ガシッ


花陽「あ、真姫ちゃっ…!!」

真姫☆「体は…私に任せて…!凛を、絶対に離しちゃダメ、だからねっ…!!!」

花陽「…っ!うんっ…!!!」

凛「はぁっ…!!はぁっ…!!」


花陽「はぁっ…、ま、間に合った…」

真姫☆「花陽…どうして、ここが…」

花陽「…真姫ちゃんが電話をくれた、とき…」

花陽「真姫ちゃんの声が、して…屋上から、飛び降りる、って…」

花陽「そこから私、神田明神から走って…」

真姫☆「でも、そんな時間…」

花陽「わからない…夢中でかけてたから…どうして間に合ったのか…」

花陽「…私が屋上についたのも、凛ちゃんが落ちそうな寸前、で…」

花陽「私が屋上の端から端まで…あんな一瞬で駆け抜けたの…?」

真姫☆「…どうやら、事実だけを見ればそう、みたいね…」

真姫☆「凛のことを予感して…火事場の馬鹿力が働いたのかしら。…凛が疲れを忘れたように、花陽は限界を一時的に忘れたのね」

真姫☆「片腕だけで、一瞬でも凛を支えられたのも多分…そのおかげだと思う」

花陽「なんだかわからないけど、よかっ…痛っ…!」

真姫☆「っ…花陽、肩を…!」

花陽「うん、さっきの凛ちゃんを支えた時に…」

真姫☆「そんなっ…!あなたまで怪我を…!?」

花陽「…平気。そんな激しい痛みじゃないから…後で病院には、行くけど」

花陽「でも、その前に…」

真姫☆「…」


凛「…かよ、ちん…」

花陽「…」

凛「あの、ね…凛…凛…」


パシィンンッ!!


凛「っ…」


真姫☆「は、花陽っ…」


花陽「…」

凛「かよちん…?」

花陽「うっ…うぅっ…!!うぅぅぅっ…!!」

花陽「なんで、あんなバカなことっ…!バカッ…!!バカだよ凛ちゃんはっ!!」

花陽「自分が何をしたか、わかってるのっ!!?」

凛「…ぅ。っ…!!」

凛「よ、余計なことだよっ!!あのまま落ちたら…明日、幽霊になってかよちんと…」

花陽「ばかぁぁぁっ!!」

凛「っ…!」

花陽「たすけてって…言ってたよ…。凛ちゃん…!」

凛「えっ…?」

花陽「こっちを見て、たすけてって言ったんだよ…!」

花陽「本当は…死にたく、ないんでしょ…?」

凛「…」

凛「…おもい、だしたんだっ…」

凛「凛がどうして、アイドルになりたかったのか…。歌を、歌いたかったのか…」

凛「それは…かよちんが凛のために歌ってくれた歌がきっかけだったって…」

花陽「それ…なわとびのうた?」

凛「…うん。あんなふうに歌いたいって…思ってた」

凛「でも、そのことを忘れて、一番になることしか次第に考えられなくなって…」

凛「そのせいで凛は…手放すことのできないはずの大切な思い出を…命を…」

凛「手放そうとしちゃったんだ…!!」

凛「でも、おぼえてた、からっ…だから、たすけてって…!」

凛「落ちる寸前に、思い出せたっ…!」

花陽「…」

花陽「…うぅん、違うよ」

凛「えっ…?」

花陽「凛ちゃん…昨日、私を呼び止めたよね?」

凛「うん…」

花陽「もっと話したいからって。…あれは」

花陽「きっと凛ちゃんが、助けを求めてたんだよ。私に」

花陽「怖いから、たすけて、って」

花陽「私がまた明日、って言っても凛ちゃんは『また明日』って返してくれなかった。バイバイ、や、さよなら、しか、返してくれなかった」

花陽「明日はもう会えないって、私に教えてくれていたんだ」

花陽「…でもそれは、きっと凛ちゃんの心の叫びだっだんだよ」

花陽「死にたくないって思いが、凛ちゃんの中にはちゃんと残ってたんだよ」

花陽「凛ちゃんの叫びが、私に不安を残してくれた」

花陽「だから、ここまでたどり着けた」

花陽「…ありがとう。凛ちゃんっ…」ギュゥッ…!!

凛「っ…!!うっ…うぅ…」

凛「う、うぅぅぅっ…!!うああああああぁぁぁぁぁっ…!!うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」

凛「ごめんなさいっ…!ごめん、ごめんねかよちいぃぃんんっ!!いっ、いままでひどいこといって…!!」

凛「ともだぢだっだのにっ…じゅっとともだちだったのに…!!りん、ばかだからっ…だがらっ…!!」

凛「たいせつなともだちも、うたもっ…あったのにっ…!!しんじゃおうなんてしてっ…!!じにだぐながっだのにぃぃっ…!!」

凛「とびおりようなんがしでっ…ずずっ…!ううぇえぇえぇぇぇんっ…!!ええぇぇぇぇぇんっ…!!ごめんっ…!ごべんねぇぇぇえぇぇぇっ…!!」

凛「ごめん、なさいぃぃぃっ…!!」

花陽「…うん、うん…、怖かったね。でも、そうじゃないでしょ、凛ちゃん」

凛「え…?」

花陽「助けられて、嬉しいなら…」


花陽「…こういう時は、『ありがとう』って言うんだよ。…でしょ?」


凛「…うんっ…!!ありがどっ…かよ、ちんっ…!!」

花陽「うんっ…帰ろう。いっしょに…」


真姫☆「…ふふ」


真姫☆(その日は、突き抜けるような青一色の空で)

真姫☆(ホワイトクリスマスにはなりようのない、晴れた一日だった)

というわけで今日はここまで
ホントに一瞬でも「え?凛ちゃんマジで死んだん?」という『浮遊感』を味わえて貰えたら嬉しいです
終わったと思ったら終わってない詐欺が久々にできて良かったよ! 程よくレスつけてくれた人もありがとう!
しかし9話はまだまだ終わらない! 肝心のライブが残ってるからね!それもお楽しみに!ほなな!

すまぬ 遅くなり申した
主に作詞が全く思い浮かばなかったせいだがなんとかついさっき完成しました 
そんじゃ、まだ最後まで書ききってはいないけど行けると見切り発車

12月24日 水曜日

終業式

UTX学院 講堂



理事長「…そして、残された時間を自分のために有意義に使っていってください」

理事長「では、次に会うのは年明け…、ちょっと成長したあなたたちを、見れることを期待していましゅ…いますっ」


『え、えー…理事長からのお言葉でした』



ことり「…今、噛んだよね」

海未「しっかりしているようで…あの理事長ですね、やはり」



『では次に、生徒会長から生徒へ向けての挨拶を』



穂乃果「…はい」

穂乃果「UTX学院生徒会長、高坂穂乃果です。本日は室内ながらも晴天に恵まれ、春の陽気を感じさせる…」


穂乃果(…)

穂乃果(口では今朝覚え込んだ文章を語らいながら、思考は全く別のことを)

穂乃果(三年生の席あたり…、一人一人を、目で確認する)

穂乃果(…意識の分散、か…)



穂乃果「意識の分散…ですか?」

絵里「えぇ、アイドルにとって、なくてはならないもの」

絵里「歌とダンスを同時に完璧にこなすには、どちらか片方をほぼ無意識状態でこなすくらいでなければいけない」

絵里「それに加え、その場に沿った表情でのパフォーマンス、ステージ上を確認し即座に状況に対応する判断…」

絵里「何より、観客を見据えること。全てを同時にこなしてこそ、真のアイドルとなれる」

にこ「…そんなのできる気がしないんですが」

凛「せ、先輩はできるんですかー!?」

絵里「えぇ、もちろん。片手でけん玉しながらもう片手で皿回し、それをホッピングで玉乗りして早口言葉を言いつつ天体観測ができるくらい」

にこ「それもう大道芸人じゃない!?」

絵里「ふふ…まぁ、これはさすがに言い過ぎたけど。でも、それを目標くらいには頑張ってもらうわよ?」

絵里「あなたたちはこれから、A-RISEのバックダンサーとしての道を歩むことになるんだから」

穂乃果「…はい」



穂乃果(…いない)

穂乃果(やはり…彼女は、もう…)


穂乃果「…以上、私からの言葉として締めさせて頂きます」


『はい、ありがとうございました!では次に…』



穂乃果(…そういえば、この意識の分散、って…)

穂乃果(海未ちゃん、得意だったな)

花陽の教室


親衛隊C「明日から冬休み…ですわね。私、冬休みは実家に帰ることにしているので、お会いできませんが…」

花陽「うん、そうだったね。あ、年賀状、書くから!」

親衛隊F「無理しなくていいよ~?花陽ちゃんが年賀状書いたら大変じゃん!」

親衛隊E「た、たくさん書く事になっちゃう…。親衛隊の子、み、みんなの分は辛いんじゃ…」

花陽「平気平気!もう年賀状いっぱい買い込んでるんだから!気合入れて書いちゃうよ~!」

親衛隊A「ははは…私らはそんなに多くないんだけどねー…」

親衛隊D「親衛隊の中でもそんなに親しくない子もいるしね…」

親衛隊X「そうっちゅね。あんまりお話しない子も結構いるっちゅ」

親衛隊B「いやアンタ誰!?」

花陽「あははは…、あ…」


真姫「…」



教室前廊下


花陽「どうしたの?キノちゃん…用事?」

真姫「え、あぁ…ごめんね、会話の邪魔してしまって」

花陽「あぁ…うぅん、大丈夫」

真姫「それで…、右肩…、いけそうなの?」

花陽「…そのこと」

真姫「昨日痛めたって聞いてから、その後どうなったか聞いてなかったから…」

花陽「今日のライブのことなら大丈夫!一日くらい動かす程度なら、許容範囲内だってお医者さんも言ってくれたし」

花陽「ただ、明日からは安静…だから、今年はもう一緒に練習はできなさそう…かな」

真姫「…そう。よかった、あなたまでその…アイドルができないなんてことになったら、私…」

花陽「そ、そんなにひどくないってちゃんと言ったでしょ!もぅ…キノちゃんは心配性なんだから…」

真姫「…えぇ、そうね。ごめんなさい、余計な心配だったわね。今日のライブ、頑張りましょう!」

花陽「うんっ!もちろん…!絶対にA-RISEには負けないっ…!」

真姫「それじゃ、そろそろ自分の教室に戻るわ!また、後でね!」

花陽「うん、バイバイ」

花陽「…」



花陽(…右肩を痛めてしまったことより)

花陽(昨日の凛ちゃんの、飛び降り自殺未遂の件のせいで、今日凛ちゃんには外出許可が下りなかった)

花陽(そのことが、とても悔やまれる)

花陽(せめて、A-RISEのライブだけでも、凛ちゃんには見させてあげたかった…)

花陽(…そして願わくば、私たちの歌も、聞いて欲しかった)


花陽「凛ちゃん…」

花陽「…っ!」グッ…

花陽「よしっ…!」

西木野総合病院

凛の病室


凛「…」


真姫☆「…おはよう。凛」


凛「あ…西木野、さん…」

真姫☆「ご飯、ちゃんと食べてる?」

凛「うん…、美味しかったよ。西木野さんは、どうして…?」

真姫☆「…まぁ、色々あるのよ。今の時間はその…ね」

凛「ふぅん…まぁ、いいけど」

凛「…」

真姫☆「…気になる?花陽のこと」

凛「…うん」

真姫☆「やけに素直ね。悪いものでも食べた?」

凛「自分の家族が経営する病院の病院食を悪いもの扱いするのはどうかと思うにゃ」

真姫☆「そういえばそうね…。お見舞いはラーメンしか口にしてないみたいだし…」

凛「…別に、今更斜に振舞ったところで意味ないことだしね。ちょっとくらい素直にもなるよ」

真姫☆「へぇ…でもまぁ…憎たらしさは抜けきってないみたいね」

真姫☆「もっとフレンドリーに明るい性格になったら、花陽も喜んでくれるわよ?」

凛「ハッ…なにそれ。どしてそこまでしてかよちんに喜ばれなきゃいけないの?」

真姫☆「あなたねぇ…、友達なんだから…」

凛「…友達なんだったら、自然にするのが一番だよ」

凛「自然に接して、ゆっくりと打ち解けていくほうが…きっといいと思うんだ」

真姫☆「…」

真姫☆「…そうね。私から言うことは、あなたたちの間では何もないのかもしれないわね」

真姫☆「フフ、でも私は明るい凛が好きだからもっと明るく振舞って欲しいなー?」

凛「ハァ?どうして凛が西木野さんの好みに合わせないといけないの…」

真姫☆「いいじゃない。凛~♪」

凛「…うっざ。かよちんとは友達になったけど、アナタと友達になった覚えはないんですけど」

凛「そもそもいきなり呼び捨てとか馴れ馴れしすぎるよ!何様なの!?」

真姫☆「そ、そんなに嫌…?仕方ないわね…、ほ、星空…さん…」

凛「…」

真姫☆「…」

凛「…なんか気持ち悪いからやっぱり凛でいい」

真姫☆「そう、ね…私も凛がいい」



UTX学院


キーンコーンカーンコーン…


真姫「お待たせ、花陽」

花陽「うぅん。それじゃ、行こっか」



アイドル応援部 部室


ガチャッ

花陽「こんにちは~」


海未「おや、花陽にキノ…これで全員、でしょうか」

花陽「あれ、真姫ちゃんは…?」

希「真姫ちゃんはまだ病院のほう、違うかな?始まる直前くらいにはくる、って言ってたよ」

ことり「じゃあそれまでは来ないんだよね。…どうしよっか」

真姫「…今からリハーサルを兼ねて練習…する?」

花陽「さすがに今更過ぎるよ…。昨日練習できなかった分はあるけど、きっと大丈夫!」

ことり「うーん、だったら…」


グウゥゥゥゥゥゥ…


海未「…誰ですか」

希「ごめんうち」

花陽「…ご飯、食べに行きましょうか」

真姫「…賛成」



食堂


海未「おや、今日はそんなに人がいませんね…」

希「いるといえばいるけど、まばらやね。昼までで学校終わりやから、わざわざ学食で食べていく人が少ないから違うかな?」

真姫「…美味しいのに、もったいないわね」

ことり「でも日頃は埋まってて使えない大きなテーブルでお昼ご飯、食べられるよ!」

花陽「ホントだ…。今日はあそこでご飯を…」


「…ちょっと、いいかしら?」


花陽「はい?なんでしょ…はわぁぁぁっ!!!?」

海未「なんですか突然、大きな声を…のわぁぁぁっ!!!?」

ことり「う、海未ちゃんまで何を…えぇっ!!?」

希「…ツバサちゃんに、れなっち…あんじゅちゃんまで…」

あんじゅ「はろ~。元気?」

英玲奈「…れなっちはやめろ」

真姫「…な、なんのよう、ですか…?」

ツバサ「うふ、こんな日だし、提案なんだけど…」


ツバサ「今日くらい、一緒にご飯、食べない?」

にこ「うふふふ~…まさかA-RISEとお昼ご飯ご一緒できるなんて夢のようだわ…!」

穂乃果「…そうだね。有意義な話ができるといいね」


ツバサ「あ、穂乃果、にこ!こっちこっち!」


にこ「ツバサさーん!今行きま…うぇっ!!?」

穂乃果「こ、これは…」



数分後…


ツバサ「じゃあみんな、お昼ご飯は揃ったわね?」

ツバサ「じゃ、手を合わせて…せーのっ」


「「「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」」」


あんじゅ「ふふ、ツバサちゃん、学校の先生みたいね」

英玲奈「こんな大所帯でお昼ご飯を食べるのは久々だな」


花陽「え、えっと…」

にこ「…何見てるのよ」

ことり「見てる、というか…」

穂乃果「…」

海未「見ざるを得ないというか…」

真姫「…どんな状況よ、これ」

希「ツバサちゃん、説明してくれへん?なんでここにうちらと穂乃果ちゃんたちを集めたん?」

希「わざわざA-RISEまで勢ぞろいして…」

ツバサ「説明も何も…気まぐれよ、気まぐれ」

ツバサ「もしあなたたちも食堂に来てたら、一緒にご飯食べられたら楽しいかも、って思ってただけ」

海未「無茶苦茶ですね…」

花陽「いいんですか…?私たちとご飯食べる、なんて…」

あんじゅ「うーん、いいんじゃない?もう誰が怒るってわけでもないし…」

英玲奈「私たちはツバサのやりたいことに従うだけだよ」

にこ「そ、それでいいの…?」

ツバサ「こうしてA-RISEとバックダンサー…それに、C☆cuteの面々が揃って話し合うなんて機会、そうそうないじゃない」

ツバサ「いえ、話し合うつもりはないけれど。ただ和気藹々にご飯を食べようってことで…ずるずるっ…うん、美味しい」

ことり「ご、強引だね…」

あんじゅ「そこがうちのリーダーの魅力なのよー」

希「…ま、いいんやないかな。そういうことなら」

花陽「そうですね。せっかく大きなテーブルが空いているんだし、みんなで使わないともったいないよ!」

花陽「じゃあ改めて…いただきます!もぐもぐもぐ…」

穂乃果「…いただきます。あむっ…もぐもぐ…」

海未「い、いいんのでしょうか、食べ始めてしまって…」

ことり「もうこの空気に乗るしかないよ…はむっ…もぐもぐ…」

真姫「…シラナイヒトコワイ…モグモグ…」

にこ「…そういえば、真姫ちゃん、いないのね」

花陽「えっ…?」

真姫「わ、私ならいるけど…!?」

にこ「あぁ…そうね。いたわ、ごめんなさい。…真姫」

真姫「はぁ…?」

希「…くすっ」

英玲奈「なんだ東條…変な笑みを浮かべて。気持ちわるいぞ」

希「なんでもー?あ、れなっち、その海老天ちょうだいっ!」

英玲奈「はぁっ!?おい待てっ!天丼の主役だぞバカっ!」

あんじゅ「あー、英玲奈ばっかり希ちゃんとずるーい!うぅん、でもここは新規開拓?」

あんじゅ「じゃ、ことりちゃん、あーんしましょ?」

ことり「へっ…!?」

穂乃果「…あんじゅさん」

あんじゅ「なにー?嫉妬かしらー?」

穂乃果「…別に。ただ、あまり食事中にふざけるのも良くないかと」

あんじゅ「そう?ふざけてなんかいないんだけどなー」

海未「あの、穂乃果…」

穂乃果「…ごめん。食事中は話さない主義なんだ。後でね」

海未「はぁ…」

ツバサ「…あ、そうだ。あなたたち、穂乃果の幼馴染なんですってね?幼い頃の穂乃果ってどんな感じだったの?」

穂乃果「ぶっ…!つ、ツバサさっ…」

希「お、それうちも知りたい!」

ことり「ちっちゃい頃の穂乃果ちゃん…?うーん、そうだなぁ…」

海未「よくおねしょして泣きべそかいてましたね」

ことり「あーそうそう!お泊りしてて隣の布団までしみちゃうくらいのいっぱいの…」

穂乃果「ど、どれだけ昔の話してるのっ!!ツバサさんもっ…!!」

ツバサ「へぇ~…穂乃果がねぇ…ふふふ…」

英玲奈「うわ…ツバサの目がいやらしいこと考えているときの目になっているな…」

にこ「あんまりファンに見せられる顔じゃないわね…」


花陽「…ふふふっ」

真姫「花陽…?どうしたの?」

花陽「え?あ、うぅん…なんだか楽しくなってきちゃって」

花陽「こんなふうに、A-RISEとC☆cuteが会話することが…ホントに夢みたいで」

花陽「私の夢が、叶ったような気がして…」

ツバサ「夢じゃないわ、小泉花陽さん」

花陽「は、は、はいっ!?」

ツバサ「これは現実。れっきとした、ね」

ツバサ「そしてこれから、夢にしていくのよ。いがみ合いなんて存在しない、そんなUTXに」

花陽「あ…」

ツバサ「まだ叶った気でいられたら、困るわよ?」

花陽「は、はいっ!頑張りますっ!!」

数分後…


あんじゅ「ふー…、お腹いっぱい」

ことり「ごちそうさまー」

英玲奈「…今頃、ステージが作られているのだろうか」

希「あ、それやん!えりちがその…アレやのに、ステージ作る子はいてくれてるん?」

海未「アレ…?」

希「あぁ、まぁまぁ…」

ツバサ「確かにステージの作成は絵里の呼びかけによって集まった有志の子たちだけど…」

ツバサ「大丈夫。任せられたことを途中で投げ出すような子達ではないわ」

希「…そう。それなら良かった」

ツバサ「…さてと、みんなもう食べ終えた頃ね。じゃあそろそろ…」

穂乃果「解散、ですか?」

ツバサ「あなたたちに話しておきたいことを言おうと思って」

にこ「い、今から本題…?」

ツバサ「軽い激励みたいなものよ。…それじゃあ」

ツバサ「新A-RISE、並びに、C☆cuteの皆さん」

ツバサ「今日のライブ、全力で臨んでいってね」

あんじゅ「なんなら私たちをゲスト出演…もがっ」

英玲奈「余計なことを言うな」

ツバサ「そして、最高に楽しいライブを。どちらが勝っても悔いのない勝負を。お客さんに今日一番の喜びを」

ツバサ「あなたたちはライバルで、…そして、同じUTXのスクールアイドルでもある」

ツバサ「敵であり、仲間でもある。…覚えていてね」

穂乃果「…はい」

花陽「わ、わかりましたっ…!!」

あんじゅ「そう!私たちはこの丼の元に一つ!」

英玲奈「何言ってるんだお前…」

あんじゅ「同じ釜の飯を食べた仲って言うじゃない?それみたいなものよ~」

にこ「…そうね。ご飯を一緒に食べればみんな仲良しよ!」

真姫「な、仲良し…。まぁ…悪くない響きだけど」

希「それじゃ、今度はうちが締めようかな?いい?」

ツバサ「えぇ。あの頃みたいに、お願いね?」

希「任せといて。…それじゃ、手を合わせて。ぱしんっ!せーのっ…」



「「「「「「「「「「「ごちそうさまでしたっ!!」」」」」」」」」」」

UTX学院 屋上


パモ部部長「やーやー!今日は私のために集まってくれてどうもありがとう!」

親衛隊A「別にあなたのためってわけじゃ…」

パモ部部長「一人じゃこのどでかい垂れ幕は下ろせないからねー!…仲間がいたのに…、あいつら先にご飯食べに行っちゃって…ぐすん」

親衛隊E「か、帰ってきてから垂らせばいいのでは…?」

パモ部部長「1時過ぎたら垂らしていいって言われたんだもん!早く見たいじゃん!」

パモ部部長「じゃ、指示するから屋上の手すりに引っかかるようにフックかけてねー。あ、そこの君はそれを…」

親衛隊D「あなたが動くんじゃないんですね…」

パモ部部長「…高所恐怖症なんだアタシ」

親衛隊C「そ、それなら仕方ないですわね。みなさん、して差し上げましょう!」

親衛隊F「仕方ないなー。C☆cuteの応援垂れ幕だもんね!いっちょやっちゃいますか!」

パモ部部長「うぅっ…!持つべきものは後輩だなぁぁ…!アタシ感激だよ!」


ガチャッ…


真姫☆「…」チラッ


パモ部部長「ありゃぁ?真姫ちゃん、どうしたの?みんなは?」

真姫☆「え、あぁ…まぁ。あなたたちの様子を見にちょっとね」

パモ部部長「ふぅーん。あ、そこもうちょい左で!」

真姫☆「あれが垂れ幕?…えらく巨大なロールね…」

パモ部部長「このでっかいUTXに垂らすくらいだからね!あれくらい長くないと!」

親衛隊B「用意できました!」

パモ部部長「よっしゃぁっ!それじゃみんなで持ち上げて落とすよっ!」


グググッ…

親衛隊ズ「お、重っ…!!」

パモ部部長「頑張れー!がんばれー!!もう少しだぁぁぁぁっ!」

親衛隊ズ「ふんぬー!!」グオンッ…!!


バサァァッ!!


親衛隊ズ「おおぉー!!」

パモ部部長「行ったぁぁっ!垂れ幕大成功!!」

真姫☆「…なんて書いてあるの?」

パモ部部長「えーっと、『ライブ対決!A-RISEvsC☆cute!果たして勝利を手にするのは!?どっちも頑張れ☆』だったと思う」

真姫☆「私たちを応援してくれるんじゃなかったの!?」

パモ部部長「な、なんか大きな垂れ幕一つにC☆cuteのことだけ書くのはもったいない気がして…てへぺろにゃん」

真姫☆「まぁいいけど…」

パモ部部長「しかしたっかいねー…!よく作ったもんだなぁ…。下まで届きそうなくらいじゃーん…」

親衛隊C「ぶ、部長…?高所恐怖症だったのでは?」

パモ部部長「あ」

親衛隊A「コイツ嘘ついてやがったなぁぁぁっ!!コンチクショー!!」

パモ部部長「うひぃっ!!ごめんって!アタシの美しい腕に重労働は似合わないからさあぁぁぁぁっ!!」

ガヤガヤ… ワイワイ…


真姫☆「…ふふ」


ガチャッ… バタンッ



親衛隊A「こいつっ…!突き落としてやろうかっ!!」

パモ部部長「ひーっ!ご勘弁をー!!」

親衛隊F「…あれ、真姫ちゃんは?」

親衛隊D「そういえば…いなくなってる…?」



UTX学院 廊下


プルルルル… プルルルル… ピッ

真姫☆「…もしもし、私」

凛『あ、真姫ちゃん…どったの?』

真姫☆「クリニックの方は順調?」

凛『うん。もうほぼ直ったにゃ。あと2、3時間くらいで完成』

真姫☆「…そう」

凛『いいの?ホントに…今日、帰るって』

真姫☆「いいの。クリニックの修理が終わったならいつまでもここに居座る理由はないわ」

真姫☆「もうこのUTXは、私がいなくても…回っていけるから」

凛『ふふーん、自意識過剰だにゃー。凛は別にどっちでもいいけどね』

凛『でも、やり残したことが本当にないか、最後まで考えてから、帰ろうね』

真姫☆「あなたに言われなくてもわかってる。…わかっているわ」

真姫☆「じゃ、修理頑張ってね。…バイバイ」ピッ

真姫☆「…」

真姫☆「…やり残したこと、か」

真姫☆「考えれば考えるほど、…彼女たちとやりたいことは、尽きないけれど」

真姫☆「でも、ここは私の居場所ではないから。…だから」

真姫☆「そろそろ、お別れね。…UTX」

最後まで行けませんでした 続きは明日書きます ほなな

話を終わらせようとするのが自分はどうやら苦手みたいだ… ラスボス前で止まっちゃう系人間だからねしょうがないね
それじゃ、9話ラストまで一気に行きます

花陽(数々の人の思いが、今日という日に交錯していて。緊張と楽しみで、私も胸がはちきれそうで…!)

花陽(そして、やると決めたことを…ちゃんとなせるかどうか。それも胸の高鳴りを増長させていて…)

花陽(ついに、いよいよ…!)



控え室


ガヤガヤ…


真姫「ついにライブ直前…」

海未「客席も騒がしくなってきましたね…」

希「ステージを囲っていた柵の外からも見学人がわっさわっさ…。ちょっとした混乱やね…」

ことり「やっぱり野外でするべきじゃなかったかもね…」

花陽「うぅんっ…!私は屋外でよかったと思うっ…!」

真姫「え…?」

花陽「室内と違って、絶対に声が届かない…ってことはないから」

ことり「どういうこと?」

希「…まぁ、今はいいやん。それより…真姫ちゃん来ないね」

海未「そういえば…どうしたのでしょうか」


ガチャッ

穂乃果「…今、いい?」


海未「っ…!穂乃果っ…」

ことり「何?」

穂乃果「いや、あのっ…その…」

希「?珍しくうろたえて…」

にこ「ほら、あなたがやろう、って言ったんでしょ。…はい」

穂乃果「…うん。海未ちゃん、ことりちゃん」

海未「は、はいっ…!」

穂乃果「お互いに、みんなを笑顔にできるライブをしよう。観客だけでなく…私たちも心からの笑顔になれるライブを」

ことり「穂乃果、ちゃんっ…」

にこ「全く…口下手なんだから」

海未「穂乃果っ…!はいっ!やりましょう!!」

ことり「もちろんっ、私たちのライブで穂乃果ちゃんも笑顔にさせてあげるんだからっ!覚悟しててよね!」

穂乃果「うん、期待してる。…あと花陽ちゃん」

花陽「は、はいっ…?」

穂乃果「凛ちゃんの分まで…頑張ろう」

花陽「っ…!はいっ!!」

穂乃果「それじゃ、私たちはこれで…」

にこ「下手なライブ見せたら承知しないんだからね!わかった!?」

希「言われんでもっ。にこっちも頑張りね!」


真姫「…いいわね」

希「ん?何が?」

真姫「こういう励まし合ったり、憎まれ口叩けるライバルが、そばにいるのって…すごい、嬉しいことだと思うわ」

希「…うん。そう、やね…」

真姫☆「…ふぅ、間に合ったわね」


花陽「あ、真姫ちゃんっ…」

海未「どこ行っていたんですか?直前も直前過ぎるのでは…」

真姫☆「まぁ、ちょっとね。…あら、それが衣装?」

ことり「うんっ!可愛いでしょ~?」

真姫☆「えぇ、羨ましい。私も着たかったわ」

真姫「い、今から交代する?私、まだ足が震えて…」

真姫☆「しないわよ。ダンスも踊れるかわかんないし」

真姫☆「私からできるのは、ただ最後に声をかけることだけ。…ことり」

ことり「うん?」

真姫☆「衣装は完璧だから、あとは最大限自分を可愛く見せてあげましょう」

ことり「おっけー!わかってますって!」

真姫☆「…海未。あなたの言葉ではない初めての歌よ。ある意味貴重だから、存分に堪能してきてね」

海未「えぇ。ちゃんとキノと花陽の感情も理解したつもりです」

真姫☆「希。きっと、あなたが慰めてあげた子たちもこれを見てる。…今度こそ、最高の元気を与えてあげるのよ」

希「任せといて!うちのパワーをみんなにたっぷり注入してあげるんや!」

真姫☆「キノ。…対外ライブばっかりで緊張しっぱなしでしょうけど、自分を信じて。あなたは、可愛いんだから」

真姫「っ…わ、わかってるわよ!歌だってダンスだって…みんなに負けないよう必死で練習したんだから!」

真姫☆「…花陽」

花陽「…うん」

真姫☆「あなたの見たかった景色。私の見せたかった景色」

真姫☆「…これで、見せられたかな?」

花陽「…うん。これが…真姫ちゃんが見てた世界、なんだね」

花陽「真姫ちゃんの世界が、私の世界と溶け合って混じり合って」

花陽「…私だけの理想郷になってくれた。真姫ちゃんがいてくれたおかげ、だよ」

真姫☆「そう言ってくれると、嬉しいわ。…それじゃ、私はマント被って客席にいるから」

真姫☆「最高のライブ、お願いするわね」

花陽「うんっ!」


海未「なんだか、真姫には似合いませんでしたね。こんなしんみりした空気にさせるなんて」

ことり「真姫ちゃんにも思うところがあるんだよ。今までやってきて」

真姫「3ヶ月でここまで来たんだものね…。ホント、すごいと思うわ」

希「…せやね」

花陽「よしっ!じゃあ気合入れるために…、アレやろう!」

花陽「行くよっ…!1っ!」

ことり「2っ!」

海未「3っ!」

希「4っ!」

真姫「5っ!」

花陽「C☆cute…、ミュージック~…!」


「「「「「スタートっ!!」」」」」

西木野総合病院

凛の病室


凛「…」

凛「…今頃、ライブ、やってるのかな」

凛「ここからじゃ、何も見えないし、聞こえない」

凛「…少し、寂しいな」



UTX学院前

即席ライブ会場


『え~…それでは…』


キャアアアアアアアァァァァッ!!


『しっ、お静かに!今日の主役は私たちじゃないんだから…。えっと、今日司会を務めるはずだった絢瀬絵里さんが欠席ということで』


ツバサ『私がライブの司会を務めることになりましたー。今は、ただのUTX学院3年生の綺羅ツバサです』


キャアアアアアアアァァァァッ!!


ツバサ「…うぅ、やっぱり引き受けたのは間違いだったわ…。こんな盛り上がってて大丈夫かしら」

ツバサ『ごほんっ。では、早速ライブを始めましょう!』

ツバサ『まず一番手は…わずか3ヶ月の活動でA-RISEに匹敵するほどの人気を持つ、新進気鋭のシンデレラたち!』

ツバサ『UTX学院第二のスクールアイドル、C☆cuteよ!』


パチパチパチパチパチパチ!!

マキチャーン!!ハナヨチャーン!!コトリサーン!!ウミチャー!!ノゾミサーン!!


花陽「っ…」ゴクリッ

ことり「ふぅっ…」

海未「ぅ…!」

希「っし…!」

真姫「あわわわわ…」


ツバサ『それでは早速行きましょう!ミュージック~…』


花陽「っ…!ま、待ってくださいっ!!」


ツバサ『っと…な、何かしら?』


花陽「わ、私っ…ライブが始まる前に言いたいことがあるんですっ!」

海未「花陽…?」

真姫「き、聞いてないんだけど…?希さん?」

希「…うちも」

ことり「何を…」


ツバサ『…いいでしょう。どうぞ?』


花陽「はいっ…じゃあ…!」

花陽「…っ」ゴクリッ…


花陽(き、緊張する…!)

花陽(なんの打ち合わせもしてない、私の言葉を発信するのは初めてだから…!)

花陽(ライブよりも怖い…けど…!)

花陽(…言うんだ、私っ…!!)

花陽(凛ちゃんにも、歌が届くようにっ…!)



真姫☆「…花陽」



花陽「…えっと、今から歌う曲は…」

花陽「『学校に来たくなる曲』をテーマに作った曲です!」

花陽「私はこのUTX学院が大好きですっ…!C☆cuteのみんなも、UTX学院が好き、だと思います…!」

花陽「でも、今私が好きでいられるのは、そうさせてくれた人がいたから」

花陽「…もし、私がこうしてスクールアイドルになっていなかったら、私は今でもUTX学院を嫌いだったかもしれません」

花陽「そして、これを聞いてくれている人の中にももしかしたら…UTX学院のことを、そんなに好きじゃない…って人も、いるかもしれない」

花陽「学校なんか行きたくない…アイドルなんか嫌い…そう思っていた人も、いるかもしれない」

花陽「私の…私のお友達も、心に大きな傷を負ってしまった一人でした」

花陽「大怪我を負って、必死で追いかけていた夢をあきらめざるを得なくなって」

花陽「一時は…命まで投げ出そうとして、なんとか助かりましたが…でも、多分…まだその子の心の傷は、癒えきっていないと思うんです」

花陽「私はその子にこそ、この歌を聴いて欲しくて…でも今、その子はここにはいませんっ…!!」

花陽「だからっ!!」


花陽「お願いしますっ!!私たちの歌っ…!その子にも届くようにっ!」

花陽「観客の皆さんも全力でっ…も、盛り上がってくださいっ!!!」


「…っ」

「…っいぇええええええええええええええええええええええいっ!!!!!」

ヒューヒュー!! ガンバレー!! 


花陽「っ…!あ、ありがとうっ!」

花陽「その子だけじゃなくてっ…、ここにいるみんなにも、そして世界中のしょんぼりしたみんなにも届くような、とびっきりの元気をっ!」


ことり「花陽、ちゃん…」

海未「いつもオドオドしていた花陽が…こんなにも観客を沸かせているなんて…」

真姫「リーダー任されて、いつも以上に気合入ってるって感じかしら?」

希「…いや、あれが…あの花陽ちゃんが、本当の花陽ちゃんなんよ。きっと」


花陽「それじゃ行くよ、みんなっ!!」

花陽「ミュージックッ…、スタートっ!!」


ツバサ「あ、私のセリフ…」

~♪


「あれ、これっ…」「新曲!?」「嘘っ…ちょっと前に曲出してたのに…すごっ」



真姫☆(…始まった)

真姫☆(私の曲じゃないC☆cuteの歌が)

真姫☆(見せてちょうだい。あなたたちの全力をっ…!)



花陽「すぅっ…!」



『  透明な心の キャンバスに描いた  』

『  自分だけの楽しい物語(ユメ)を みんな持ってる  』


『  隠したい気持ち 誰もが抱くけれど  』

『  重ねてみようよ 今だけと言わずに さぁ  』



真姫☆「…っ」

真姫☆(…花陽の右腕が上がりきってない…。やっぱり、昨日の怪我が響いて…)



『  夕やけ滲んだ「ごめんね」だって  』

『  泥んこまみれの「ありがとう」だって  』

『  全部全部色褪せない そうさ 君と僕の世界なんだよ  』



花陽(ッ…痛い、けどっ…!でも、全力でっ!!)

花陽(凛ちゃんにっ!!)


花陽「…だからっ!」バッ!!



『  こっちおいで へこんでないで  』

『  手を伸ばせば 届く距離さ  』


『  顔上げて 涙拭いて  』

『  一緒に歩もう いつも隣で  』


『  笑って泣いて 歌って踊って  』

『  君の全てが輝くピースになる  』


『  新しい場所 来たれ理想郷(ユートピア)  』

花陽「…ふぅっ…!」


ザワッ…

ウオオォォォォォォォォォォォォォォッ!!


パチパチパチパチ…!!


花陽「あっ…、ありがとうございましたっ!C☆cute、でしたっ!!」



穂乃果「…」

にこ「…すごい盛り上がり、ね…。飲み込まれてない?大丈夫?」

穂乃果「当たり前、だよ…。私たちはただ、私たちの全力を出し切るだけっ…!」

にこ「えぇ、そのとおり!…行くわよ」

穂乃果「…うん」



控え室


真姫「よ、よしっ!なんとかやりきったわ!!」

ことり「特に目立ったミスもなかったし…いけるかなっ!?」

海未「彼女らのライブがどうなるかが問題ですっ…!お願いです、勝っていますように…!」

海未「まだこんなところで、解散なんてしたく、ありませんっ…!!」

ことり「私もっ…!もっといっぱいいっぱいライブがしたいよっ…!」

希「せ、せやねー…」

希(いつ言い出そうか…解散の話はなくなったって)

花陽「A-RISEのライブ、もうすぐ始まるよ!舞台袖で見に行こう?」

真姫「わ、私パス…。もう一歩も動けない…」

希「西木野さんとうちは控え室で待っとくから、花陽ちゃんたち行ってき?」

海未「わ、分かりましたっ…!うぅ、ドキドキしますっ…」



ライブ会場


ツバサ『ふふっ!すごいステージでもう会場は割れんばかりの大声援!近所の人が何事かと詰めかけそう!』

ツバサ『でもでもっ?まだライブは終わりじゃないわよ!』

ツバサ『多くの精鋭の中から勝ち残ったほんの一粒のダイヤモンド!その輝きはまさしく一級品!』

ツバサ『A-RISEバックダンサー…いえ、次期A-RISE!登場よっ!!』


あんじゅ「ツバサちゃんノリノリだねー」

英玲奈「アイツも初めての司会でテンション上がってるんだろうな」



穂乃果「…」

にこ「…っし!」


ツバサ『あなたたちは何も言うことはないわねっ!?なら今度こそ行くわよっ!』

ツバサ『ミュージック~…スタートっ!!』

~♪


真姫☆(…!すごいっ…!!)

真姫☆(ダンスの完成度、歌唱力、パフォーマン…どれをとってもホントにプロ並み…!)

真姫☆(言い方は失礼だけど…私の世界の穂乃果とにこちゃんを遥かに上回る精度…)

真姫☆(これがアイドル専攻を勝ち抜き、そして耐え抜いてきた二人の真の実力っ…!)



ことり「ひえぇっ…!か、カッコイイ…!!」

海未「人間ってあんな動き、できるんですね…」

花陽「っ…!」



真姫☆(曲は既存曲ではあるもののダンスは二人用にアレンジが加えられている…)

真姫☆(凛が抜けてから数日でここまで完成度の高いアレンジに仕上げるなんて…これは)

真姫☆(…本当に勝てるのかしら。あの二人にっ…!!)



穂乃果「…ふっ!!」ビシッ!!

にこ「はっ!」ビシッ!!


デーン…


キャアアアアァァァァァァァァァァッ!!

パチパチパチパチパチパチ!!



穂乃果「…ありがとうみんなっ!次期A-RISE…、これからも応援よろしくね!」

にこ「それじゃっ…にっこにっこにー!!」


ツバサ『はい、ありがとっ!両者、ライブを終えました!』

ツバサ『短いけれど、これにてライブは終了よ!手元の投票券を、出口のところにある投票BOXに投入してね!』

ツバサ『集計に時間がかかりそうなので、発表はまた後日!というわけでこれにて解散!』


エッ… ザワザワ…



海未「え、この場で発表しないんですか…?」

ことり「うーん、まぁ見に来てくれている人はライブ目的で、優劣付けるためじゃないからいい…のかな?」

花陽「今日中に会場を片付けないといけないから早めに終わらせないといけないって理由もあるみたいです…」

海未「しかし、私たちにとってはここからも重要っ…!」

花陽「っ…!ど、どうなるんだろうっ…!!」

数十分後…

UTX学院 一室


ツバサ「…集計結果が出たみたい」


花陽「っ…!」

ことり「う…!」

海未「…っ」ドキドキ

真姫「はわわわわ…!」

希「あ、あー…っと…えーっと」


穂乃果「…」

にこ「ま、負けてませんようにっ…!!」



ツバサ「票数差…わずか3票」

ツバサ「勝者っ…!!」


一同「ッ…!!」ザワッ




「…A-RISE」





にこ「っ…いぃ、やったああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

穂乃果「か、勝ったっ…!良かった…」



海未「ま、負け…負けた…!?」

真姫「3票…だなんて…」

ことり「うぅっ…!そんなっ…」

花陽「こ、これでっ…解散、か…」

花陽「でも、…いいの。私はもう、見たかった世界が見れたから…」

花陽「きっと、これからのUTXも…笑顔のスクールアイドルが…うぅっ…ぐすっ…」

海未「泣いてはいけませんっ…!!泣いてはっ…!!」

ことり「でもぉっ…ううぇええぇぇぇぇぇぇぇんっ…!!」

真姫「よくやったわよっ…私たち…!3票差まで、行ったんだもんっ…!うぅっ…!」

希「あ、あのー…」


ツバサ「…解散?あの話はなくなったって…希の携帯に連絡したはずだけど?」



ぱなことうみまき「え?」

希「あははははは…」

アイドル応援部 部室


真姫☆「あははは…3票差で敗北、ね。さすがだわ、A-RISE」

花陽「うん、やっぱりすごいよ。A-RISEは…。凛ちゃんもいなかったのに…」

真姫☆「あなただって、右腕が上がらないハンデ抱えてたじゃない。あれがなければもしかしたら…」

花陽「そう、かもしれないけど…でももう済んだことだし。それに…」


海未「私がどれだけ心を痛めたと思っているんですかぁあぁぁぁぁぁっ!!!」

希「ごご、ごめんて!言うタイミング逃してもてんもん!」

ことり「許しません!キノちゃん!」

真姫「はいっ!」ササッ

希「な、何をする気なん…!?」

海未「…このアイドル応援部に未来永劫、メンバーの寿命を縮めた大戦犯として…」

海未「マジックで落書きをした希さんの写真を飾ることとします」キュポッ

希「えぇっ!?ちょっ…堪忍して!ひぃぃっ!!うぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」



数分後…


花陽「えー、では…ごほんっ!」

花陽「ライブが無事に終わったことを祝してっ…かんぱーい!」


「かんぱーいっ!!」



ことり「…じゃあ、パンフレットの件も?」

希「うん、大丈夫みたい。えりちのアイドル専攻に関する権利の全てが失効した、みたいなもんやから…」

希「今回の勝ち負けでの処遇も、なかったことになったんやって」

真姫「へぇ、それはよかっ…ぶふぉっ!!」

希「…いつまで笑ってんねんよ」

海未「ぷふっ…!我ながら…最高の落書きですっ…!あははははははははっ!!」

真姫☆「確かにまぁ…センスあるわね」

花陽「こ、これを部室に飾るの?」

海未「えぇ!」

希「…末代までの大恥になりそうや」

真姫☆「まぁいいじゃない。アイドル応援部創立者の肖像画にはピッタリよ?」

ことり「うんうん!ぷふふふふっ…あはははは!」

希「こんな顔いややーっ!」

花陽(ライブでの勝負には負けてしまったけれど)



ことり「はいポテチ!あーんっ!」

海未「あ、あーん…」

ことり「ダメー!あむっ!」

海未「こ、このぉっ!!」



花陽(私たちの笑顔は、何一つ曇っていません)



真姫「の、希先輩っ!ひとりでポップコーン食べ過ぎ!」

希「んふふ、うちこのポップコーン好きなんよ!はぁぁ~おいし…」

海未「ずるいですっ!私も!」

ことり「このバター醤油の香りがクセになるよね~…」



花陽(そうだよ。アイドルは勝ち負けなんかじゃない)



真姫「…そういえば緊張してサビ前の足、逆に出しちゃったのよね」

海未「それですね。負けた原因は」

希「西木野さんの足さえ合ってれば勝ってたのになー」

ことり「これは戦犯かな?」

真姫「落書きだけはやめてーっ!!」

「あははははははは…」



花陽(最初から最後まで、ずっと笑顔でいられる、そんな…夢のような)




真姫「…花陽?はーなーよっ」

花陽「え?何…?」

真姫「みんなで最後に記念撮影しよう、って」

花陽「あ、そうなんだ…。うん、わかった!」


海未「リーダーは真ん中で!」

ことり「さぁさ、おいでおいで!」

希「ここやよここ!」

花陽「え、いいんですか?じゃあ…えへへへ…」


真姫「じゃ、タイマーセットするわねー…っと」タタタタッ…

花陽「あれ?そういえば…」


花陽(…真姫ちゃんは?)


真姫「はい、チーズっ!」


パシャッ

ガチャッ… バタンッ


真姫☆「…」

真姫☆「お待たせ」





西木野総合病院


花陽(…結局真姫ちゃんは、部室には戻ってこず)

花陽(行方が少し心配だったけど、…まぁ真姫ちゃんだから大丈夫だと思って)

花陽(打ち上げが終わった直後に、凛ちゃんのお見舞いに)



花陽「…ふふ、これ見たらどんな顔するかな。凛ちゃん…」

花陽「ん?…えっ…!?」


ツバサ「…あら。こんなところでも出会うなんて…偶然ね」

英玲奈「小泉か…。いいライブだったぞ」

あんじゅ「あ、花陽ちゃんっ!残念だったわね~」


花陽「あ、A-RISEのみなさんっ…!?どうしてここに…!」


英玲奈「お見舞いだ」

あんじゅ「凛ちゃんのね」

ツバサ「今回のライブの指導が忙しくて、直接彼女のお見舞いをしてなくて」

ツバサ「時間ができたし、今更だけど…ね」


花陽「あ、ありがとうございますっ!凛ちゃん、喜んでましたか!?」


あんじゅ「えぇ、もちろん。なんてったってA-RISEだものね」

英玲奈「自分で言うな。…でも、思っていたより明るかった」

英玲奈「きっと、君のおかげだ。…小泉花陽」

花陽「あ、ど、どうもっ…!」

ツバサ「それじゃ、私たちはこれで。凛のこと、よろしくね」

花陽「は、はいっ!」



凛の病室


ガララッ

花陽「…お邪魔します」


凛「あ、かよちん!」

花陽「ごめんね、遅くなって」

凛「ホントだよ!ライブ終わったの結構前でしょー?もっと早く来てくれても良かったのに!」

花陽「み、みんなと打ち上げしてて…。お詫びと言ってはなんだけど、これ」

凛「にゃ?これって…?」

花陽「…今日、クリスマスイブでしょ?だから、私から凛ちゃんへのクリスマスプレゼント」

花陽「昨日、あれから考えて、買ってきたんだ。…開けてみて」

凛「お、おぉぉぉぉおっ!かよちんからのクリスマスプレゼント!嬉しいにゃ!!」

凛「えへへ~、何かな何かな~?」ガサゴソ…

凛「…にゃ?これって…」

花陽「アンクレット。今はギプスがあって付けられないけど」

花陽「外れた後、なるべく怪我の治りが早くなるように、っておまじないを込めて」

花陽「どうかな?」

凛「綺麗な色…。二色の透明な石で作られてて…なんだか凛とかよちんみたいだね」

凛「うん!すごく嬉しい!ありがとっ!!」ギュッ

花陽「はわわわわぁぁっ!!り、凛ちゃんっ…!急に抱きしめられたら照れるよぉぉっ…」

凛「ふふ…いつかこれをつけて…かよちんの隣で踊りたいなぁ…」

花陽「…うん。私も、凛ちゃんと一緒に踊りたい」

凛「歌もね!」

花陽「うん、歌も」

凛「あ、そうだ!今日ライブだったよね!どっちが勝ったの!?」

花陽「え…あー…A-RISEだよ」

凛「わー、やっぱりかー。さすが先輩たち!」

花陽「ツバサさんたちには聞かなかったの?お見舞い、先に来てたんでしょ?」

凛「ん?あぁ…A-RISEの人たちとは、ちょっと別のことをね」

花陽「そう…?でも、惜しかったんだよ!ほんの少しの差だったの!」

凛「そうなんだ…。じゃあね!だったら!」

花陽「うんっ?」

凛「凛は、C☆cuteに一票入れるにゃ!」

花陽「えっ…」

凛「そしたらどう?勝てた?」

花陽「…2票差になるかな」

凛「あー、惜しい。でも3票差かー…すごいじゃんかよちん!!」

凛「やっぱり、かよちんも努力してたんだよね…。すごいなぁ…」

花陽「うん、私も…必死だったよ。A-RISEに追いつくために」

花陽「ギリギリで、追い越すことはできなかったけど、でも…3票差っていうのは、誇りだよ」

凛「うんうん!あ、2票差だからね!」

花陽「あはは、そうだったね。…でも、どうしてC☆cuteに入れたの?」

花陽「凛ちゃんなら、A-RISEに入れそうだし…なにより、私たちのライブだって…」

凛「…うぅん」

花陽「えっ?」



凛「聞こえたよ。かよちんの声」

凛「ちゃんと、凛にも」

凛「…すぅっ」


凛「だからこっちおいでへこんでないでーてをのばせばーとどくーきょりさー」

凛「顔上げて涙拭いてー…えっと、なんだったっけ」



花陽「そ、それ…私たちの歌っ…!?どうして…」

凛「だから、聞こえたんだもん」

凛「不思議だけど、この病院にも届いたんだ。C☆cuteの歌声、そして、それを見ている人たちの歓声が」

凛「凛も、病院の窓から応援してたよ。だから、凛だってライブに参加してたんだ」

凛「これなら、凛にも投票権あったっていいよね?」

花陽「ホントに…届いた…?」

凛「うんっ」

花陽「私たちの、歌が…」

凛「…これで、二つだね」

花陽「え、何が…?」

凛「凛の、大切な歌」

凛「なわとびの歌と、今日の歌」

花陽「あ…」

凛「…凛、学校、嫌いにならないよ」

凛「アイドルだって、ずっと好きなままでいる」

凛「怪我が治ったら、また学校に行ってね、それで…」


凛「…やりたいことも、見つかったから」


花陽「やりたいこと…?凛ちゃんのやりたいことって、何?」

凛「怪我が治って、リハビリしながらでもできること」

凛「凛の夢と…かよちんの夢のお手伝いができる、とっても素敵なこと」

花陽「それは…?」

凛「それはねっ…」









もしライブ! 第9話

おわり

真姫「…というわけで、もしライブ!第9話だったわ」

凛「いやー、相変わらず長かったにゃ」

真姫「どうせこのスレで終わらせるからどれだけ長引いても構わないわ、と思ってたら」

真姫「思ってたより長引いてしまったわね…9話始めたのが一ヶ月前よ」

凛「今回の終わり方は8話ほどスパッ、としたものじゃないから若干満足が行ってないんだけど」

真姫「でも、今回みたいな光に包まれてそうな終わり方も結構好きよ」

真姫「あ、後ついにお披露目したオリジナル曲」

凛「タイトルは『来たれ理想郷』と書いて『きたれユートピア』にゃ!」

真姫「今までで最長の難産だったわ…!辛かった…!!」

凛「作詞とSSはまた別物なんだと思い知らされたにゃ」

真姫「でもある意味で裏ワザを使ったおかげでなんとかできたわ。…やっぱり一から全てを考えるなんて素人にはできることではないからね」

凛「今回の歌詞に隠されたテーマに気づいてくれる人がいたらそれはとっても嬉しいなって」

真姫「えー、というわけで、長々とやってきたもしライブ!だけど」

真姫「次回、10話が最終回となるわ」

凛「うわぁ、さらっと言うね」

真姫「もう終わらせる空気ムンムン出してたでしょうが」

凛「まぁ、そうだね…」

真姫「さすがに9話で終わらせる気はないわ。まだ、色々残っているし」

真姫「…最初に言っておくけど、劇的なエンドは期待しないでね」

凛「と言ってハードルを下げておくことによって驚きの展開による…」

真姫「そんなつもりはないから!」

凛「んーと、あとこれは予定なんだけどー…」

凛「このスレが終わったら、また新たにもしライブ!だけをまとめたスレを建てようと思ってるんだー」

真姫「新規さんにも読んでもらえるようにと、あと後の展開の辻褄が合うようにと、若干文章に修正や追加を加えたりしてね」

凛「自分でも読み返すの結構めんどくさいから自分用でもある…これは有名な哲学者アリストテレスの言葉である」

真姫「捏造しない。あともう一つこのスレでやろうと考えていることもあるんだけど…まぁこれはまだ未定だから後々ね」

凛「じゃ、いよいよ大詰めなもしライブ!…いつ終わるかわかんないけど、楽しみにしててね!」

真姫「そして今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次に終わりを迎えるのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

>凛「タイトルは『来たれ理想郷』と書いて『きたれユートピア』にゃ!」
来るぞ、遊馬!(No.39感)

未だに一年以上前の処女作を読み返しては「昔の俺天才だな」とか思っちゃう自惚れ屋なのでそんなの平気さ!

あと今回の歌詞のAメロは一行ずつかよちんのセンター曲から言葉をいただいています
そしてBメロはなわとびなのでかよちんづくしな歌詞だったのです

実はもう一つやりたい未定のことは、その劇場版うろライブ!だったのよね
今度こそ本当になんの映像も見ず、書く方もうろ覚えでやってやろうと思って
ただ今日風呂場でストーリーの追走をしたら笑えないレベルで台詞を覚えていなかったのですごく不安ではある
あとどのタイミングでやるのかも難しいところだ とりあえず、間を空けずにもしライブ!最終回の幕を開けるとしましょう

真姫「ついにもしライブ!最終回ね」

凛「どんだけ長くなるかわかんないけどねー」

真姫「ただ考えている限りでは、9話ほど長くなる予定はないわね」

真姫「逆に、どれだけ引き伸ばせるかがちょっと不安なところよ」

凛「ストレートにやっちゃうとすぐ終わっちゃうレベルの内容の薄さってことにゃ」

真姫「でも、面白くないってことはないはずだから安心してね!」

凛「それじゃ、ついに終わりを迎えるもしライブ!最後に何ができるのか!」

真姫☆「第10話、最終回…ミュージック、スタートよ」

1月1日 早朝



スタスタ…


ことり「ふわあぁぁ~~…」

海未「大きな欠伸ですね、ことり」

ことり「うーん…、だって眠たいんだもん…。いつもは寝てる時間だし…」

海未「これから初詣に行くというのに、そんな緩んだ気ではいけませんよ?」

海未「これからの一年を占う重要な一日なのですから」

ことり「そんなこと言われても出ちゃうものは…ふわぁぁぁぁ…」

海未「全く…」



スタスタ…


ことり「…あ」

海未「ここは…」

ことり「毎年の癖でつい…」

海未「…穂むらに来てしまいましたね」

ことり「電気、点いてるね。起きてるのかな?」

海未「どう、でしょうか…」

ことり「…誘ってみる?」

海未「えっ…」

ことり「穂乃果ちゃん。初詣、一緒にいかないかって」

海未「っ…、それは…」

ことり「どうする?」

海未「…」

海未「…やめておきましょう」

海未「今は穂乃果にも、穂乃果の友人がいるのですから」

ことり「…そっか」

海未「さ、行きましょう」

ことり「…海未ちゃんのいくじなし」ボソッ

海未「何か言いましたか?」

ことり「なんでもない~」

海未「…気になりますが、きっと皆も神社の前で待っているはずです。急ぎましょう」

ことり「うん、そうだね」

神田明神前


スタスタ…


海未「毎年のことですが…人がいっぱいですね」

ことり「そだね~…うぅ寒っ…。離れないようにくっつかなきゃ~」ギュッ

海未「うぅっ…!は、恥ずかしいからやめてください!」バッ

ことり「むぅ~、ノリが悪いですなぁ~」

海未「この人ごみの中から花陽たちを探すだけでも一苦労だというのに…」

ことり「…あ!いたよ!花陽ちゃん!」

海未「え、ホントですか?」



花陽「おーいっ!ことりちゃーんっ!海未さーんっ!!」


ことり「花陽ちゃんっ!」

花陽「えへへ、久しぶりだね」

海未「クリスマスライブ以来、でしょうか。お久しぶりです。あけましておめでとうございます」

花陽「あ、あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!」

ことり「あけおめだよ!あれ、花陽ちゃんはひとり?」

花陽「あ、えっと…私は真姫ちゃんと…」

花陽「…じゃなかった、キノちゃんと、一緒」

海未「しかしキノの姿が見当たりませんが…」

花陽「あ、あそこ…」

ことり「うん?」


真姫「ひ、ひぃぃぃぃ~…!花陽、タスケテ…!!」


花陽「人ごみが怖くて震えてるみたい…」

海未「いつまで対人恐怖症続くのですか…」

ことり「キノちゃん!こっちこっち!」

真姫「…こ、ことりちゃん…。海未も。よ、良かった…やっと知ってる人に会えた…」

花陽「私と二人じゃ心細かった?」

真姫「だって花陽、歩くのはやい…」

花陽「えー、普通に歩いてたよ…?真姫ちゃんの歩幅が極端に狭まってたんじゃ…」

海未「知らない人にもっと慣れる練習をしましょうね」

真姫「…分かりました」

ことり「んーと…じゃああとは…」

ことり「…希ちゃんかな?」

花陽「そろそろ来る頃だと…」

真姫「あ、来た!の、希先輩っ!!」

希「ん…?」


タッタッタッ…

真姫「希せんぱぁぁぁぁ~~~いっ!!」ダダッ

ダキッ

希「おっわっ!?真姫ちゃっ…じゃない、西木野さんっ!急に抱きついてきて何…?」

真姫「あぅぅ…人ごみ怖い…」

希「あぁ…、そうね。頑張った頑張った」ナデナデ

真姫「えへへ…」

花陽「希さん、あけましておめでとうございます」

希「うん、あけましておめでと、花陽ちゃん」

ことり「わっ…、希ちゃんその服…!」

希「えへ、どうどう?成人式兼用で今から振袖、買ってもらったんよ!」

海未「か、可愛いです…!」

真姫「素敵…。わ、私も着てこようか迷ったけど、良かった…着てこなくて」

花陽「今までは振袖、着たことなかったんですか?」

希「うーん…いつもは毎年神田明神でバイトしてたんやけどね。今年はやめちゃってたから」

海未「あぁ…そういえばそうでしたね」

希「まぁ、年末年始だけ手伝う、って言うんもアリやってんけど、どうせやし参拝客側の気分も久々に味わおう思って!」

希「んふっ。これで世の男性のハートをわしわしMAXかな?」

真姫「な、なにそれ…」

ことり「んーと、じゃあこれで…」


ことり「全員、揃ったかな」


花陽「…」

海未「…えぇ、そうですね」

希「そろそろ、行こか」

真姫「そう、ね…」

花陽「…うん」



花陽「真姫、ちゃん…」

神田明神


花陽「…」

花陽「…っ」

花陽「…ぷ、ふっ…!」

花陽「あははははははっ!!か、可愛いっ!」


真姫☆「…」

凛☆「うん、良く似合ってるにゃ。巫女服」


海未「えぇ、とてもよく似合っていますよ、真姫」

ことり「真姫ちゃん世界の凛ちゃんも、可愛い!」

凛☆「でしょでしょ~?ほら、真姫ちゃん!もっとしゃんとする!」

真姫☆「…まさか1年で二回も初詣に行くことになるとは思わなかったわ」

真姫☆「しかも今度は巫女さんで…なんてね」

希「うちが巫女の手伝いしに行く、って言ってたんを止めたんは真姫ちゃんやん?」

真姫「希先輩が参拝客として参加できるように、って計らってね」

真姫☆「…でも、その代わりとしてバイトをさせられるとは思ってなかったのよ…」

希「手伝いがいないと大変やん?」

花陽「ふふふっ…、私、真姫ちゃんの巫女姿すっごい楽しみにしてきてたんだよ~!来てよかった~!」

花陽「あと…凛ちゃんも」

凛☆「お、ありがとかよちん!…こっちの世界の凛も来られたら良かったのにね」

海未「仕方ありません。けが人をこんな朝早くから人の多い中で引っ張り回すわけには行きませんからね」

花陽「凛ちゃんの分まで今年の願掛け、たっくさんお願いしないと!ふんっ!」

ことり「お、花陽ちゃん気合入ってる~。じゃ、いつまでもここにいるとほかのお客さんに迷惑だからそろそろ…」

真姫☆「えぇ、また後でね」


真姫☆「…ふぅ」

凛☆「あ、真姫ちゃーん!この荷物、そっちに運んどいてだって!」

真姫☆「はいはい…。はぁ…、ホントはもういなくなる予定、だったのに…」

凛☆「まだまだやりたいこととやるべきことが残ってるんでしょ~?そうそう簡単に帰しちゃくれないってことですにゃ~」

真姫☆「チッ…ったく、よいしょっ…」


グワンッ…!!


真姫☆「ッ…!!が、く、ぅっ…!!」

凛☆「ま、真姫ちゃんっ!!はい、お薬!!」

真姫☆「あ、りがと…!ごくっ…く、はぁっ…!はぁっ…!」

真姫☆「…対時空振動用の吐き気止め、即効性があって助かるわ…。ふぅっ…」

凛☆「…凛もできることなら、早く真姫ちゃんを帰してあげたいにゃ。それに、凛だってもしかしたらいつか…」

真姫☆「世界は、こんなにも私を拒絶しているのに…ね」

真姫☆「…大勢の想いって、そう簡単にはいかないものだわ」

ガヤガヤ…


希「卒業してもご縁がありますよう…にっ!」ヒュンッ

チャリンッ

希「おぉ!ナイッシュー!」

海未「そういう競技ではありません…」

花陽「お賽銭箱まで結構遠いのに…」

ことり「お、じゃあ私もやりますかな~?ていっ!!」ヒュンッ


コンッ


「いっ…!?痛~~!!??誰よっ!?私の頭に小銭ぶつけたやつは!」


海未「こ、ことり!別の参拝客に当たってしまいましたよ!?」

ことり「う、海未ちゃんダメなんだぁ~~!!小銭投げちゃぁ~~!」

真姫「まさかの責任転嫁!?」

花陽「ち、ちゃんと謝らないとダメだよ…」


「…?あんたら…」


希「あ、すいません!危ないことして…って」

希「にこっち…?それに…」


にこ「希…」

穂乃果「…希さん。海未ちゃんに、ことり、ちゃん…。C☆cuteのみんなで…」

花陽「穂乃果さん!」

海未「穂乃果…来て、いたのですか…」

穂乃果「あっ…。ごめん、もしかして…誘おうとしてくれてた?」

ことり「うぅん。海未ちゃんはやめておこうって。私は誘おうとしたのに」

海未「け、結局はにこと一緒に来ていたのだから正解だったではないですか!」

にこ「…私だけじゃないわよ」

真姫「え…?」


ツバサ「あらあら、楽しそうじゃない」

あんじゅ「大声出したら周りに迷惑よぉ?」

英玲奈「ただでさえ私たちは声の大きい方なのだからな」


花陽「げ、現A-RISEまで…!」

希「クリスマスイブの食堂再現やね…」

ツバサ「私たちはちょうど参拝終えて帰るところ、だけどね」

あんじゅ「2年生組とはお別れね~」

英玲奈「まぁ、私たちといるより新鮮だろう。あとは任せた」

にこ「え、ちょっ…」


スタスタ…


真姫「行っちゃったわね…」

にこ「これは…仲良くC☆cuteと参拝しろ、ってことかしら」

穂乃果「そう…みたいだね」

チャリンチャリンチャリン…

パンッパンッ…


「…」


希「ふぅ、おしまい…っと」

希「ね、花陽ちゃんは何お願いしたん?」

花陽「あ、私は…」

花陽「…凛ちゃんの足が早く良くなって、アイドルがもう一度できるようになりますように、って」

ことり「そっか…。わ、私もそうしてあげたら良かったかな!?」

花陽「えっ…ことりちゃんは何お願いしたの?」

ことり「わ、私は…えへへ、これからも可愛いお洋服を作れますように…って」

ことり「ちょっと自己中だったかなぁ…?」

真姫「そんなことないんじゃない?つまりそれ、ずっとC☆cuteを続けたい、ってことでしょ」

真姫「きっとみんなも、そう思ってるはずだわ」

海未「そういう真姫は、何を?」

真姫「私は…人見知りが少しでも改善しますように、と…あと、もっとダンスと歌が上手になりますようにって」

希「あー…西木野さん、まだ少しみんなに比べたら遅れているところ、あるもんね」

にこ「…十分上手だったわよ。私が見る限りじゃ」

真姫「えっ…、あ、そ、そう…?」

海未「私もアイドルを続けられるようにと、いずれ大会などで結果を残せるように、と願っておきました」

海未「にこは、何を願いましたか?」

にこ「え、私に振るの…?まぁいいけど…」

にこ「私は、A-RISEの名に恥じないような活躍ができますように、って」

にこ「他にも色々、思うところはあったけど…あんまり多く願っちゃっても叶わないかもしれないしね」

希「んふふー、にこっちは貧乏性やねー。どうせならいっぱいお願いしちゃえばいいのに!」

にこ「い、いいでしょ別に!私はこれが一番のお願いなんだからっ…で、穂乃果は?」

穂乃果「え…?」

にこ「何お願いしたかって聞いてるの」

穂乃果「私は…」

穂乃果「…」

穂乃果「…私も、A-RISEとして活躍できますように、って」

花陽「じ、上昇志向ですね…!見習わないと…」

海未「では、そろそろ帰りましょうか」

ことり「うん、そうだねー」



穂乃果「…」

穂乃果「…絵里、さん」

スタスタ…


希「そんでねー、あの時のにこっちが傑作で…」

にこ「ちょっ…それは内緒にしてって…!!」

ことり「ほほぉ…!応援部時代のにこちゃんにそんな…」


穂乃果「…」スタスタ…

穂乃果「ん…?あ…っ!」


にこ「…ん、どうしたの?穂乃…」


穂乃果「にこちゃん、あと皆さん…先、帰ってて」


海未「えっ…何を…」

穂乃果「用事ができたから。…それじゃあ」タッタッタッ…

真姫「彼女まで行っちゃったわね」

ことり「久しぶりに一緒に帰れると思ったのに…」

花陽「用事、って…何なんだろう…」



タッタッタッ…

穂乃果「…西木野さん、いたんだ」


真姫☆「あ、穂乃果…」

凛☆「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「り、凛ちゃっ…!?」

真姫☆「あぁっ…!えっと、彼女は…私と同じような感じよ」

穂乃果「…もうひとりの、凛ちゃんってこと?」

凛☆「そういうことにゃ。驚かせてごめんね」

真姫☆「目立たないようになるべく裏方で働いてはいるんだけど…それより、何のようかしら?」

穂乃果「…例の件、進捗具合を聞いておこうと思って」

凛☆「例の…あぁ、アレ?」

真姫☆「えぇ、あなたにも頼んでおいたやつよ」

凛☆「へぇ…穂乃果ちゃんからの『依頼』だったんだ」

真姫☆「色々調べてはいるけど…まだ完全にわかってはいないわ」

穂乃果「…そう」

真姫☆「…これのせいで、帰れなくて困ってるんだからね」

~回想~


12月24日 ライブ後

UTX学院 一室



ガチャッ バタン…


真姫☆「…」

真姫☆「おまたせ」



穂乃果「…遅いよ」


真姫☆「打ち上げ、してたのよ。それでね」

穂乃果「学校で飲食?まぁ…ほどほどにね」

真姫☆「それで、…私を呼び出してどういうつもりかしら?」

真姫☆「ライブ前にC☆cuteの控え室でばったり出会った瞬間に、話があるから後で会おう、…なんて」

真姫☆「今までのあなたには考えられないんだけど…」

穂乃果「…」

真姫☆「…何か、よほど手に余ることがあるのかしら?」

穂乃果「まぁ…ね」

穂乃果「…こればっかりは、私一人じゃどうしようもない、から」

穂乃果「西木野さんなら、もしかして…って思ったんだ」

真姫☆「それは何?」


穂乃果「…私から、西木野さんへ…依頼したい」

穂乃果「絵里さんを、救って欲しい」


真姫☆「…絵里を、救う…?」

穂乃果「今、絵里さんは…学校に来ていない」

穂乃果「それどころか、電話にすら出られないような精神状態…なんだ」

穂乃果「自らの根城が奪われて、持っていた権力全てを剥ぎ取られて…」

穂乃果「そして、自身の夢が音を立てて崩壊していっていることに、とてつもないダメージを受けている」

穂乃果「放っておけば彼女は…彼女が他のアイドル専攻生にしていたのと同じように…」

穂乃果「自分の才能に焼かれて…死んでいく。精神が…ね」

真姫☆「…だから、私に絵里を救え…って?」

真姫☆「…笑わせるわ。私は絵里に顔面の筋肉を麻痺させられかけたのよ?強力なスタンガンでね」

真姫☆「C☆cute自体への損害は結果的には少なかったものの、UTXの生徒を何人も傷つけてきた事…」

真姫☆「生徒の夢を肥やし程度に食いつぶして来た事を…知らないわけじゃない」

真姫☆「正直なところ私は…この世界の絵里に、情けなんてかけたくない」

真姫☆「…死ぬんなら、勝手に死ねばいいわ」

穂乃果「っ…!!…」

穂乃果「…そう、だよね…。確かに、そう…思われても仕方がない」

穂乃果「彼女はどこか…歪んでいたから…。ただ、強さを求めるだけの人間では、なかった…」

穂乃果「でもっ…!それでも、私にとってはっ!!」

穂乃果「…憧れ、だったんだよ…」

真姫☆「…」

穂乃果「彼女の強さに憧れて…、目標に向かってひたむきな姿に憧れて…」

穂乃果「絵里さんみたいになりたい、って…思ったこともあった」

穂乃果「彼女は許されないことをしたかもしれない。…だけど」

穂乃果「だからって私は…見捨てたくないの!」

穂乃果「他の誰もが見向きすらしなくても、夢を奪われた誰かに、恨まれていようとも…」

穂乃果「そんなの、関係ないっ!!私はっ…絵里さんを救ってあげたいって…思うからっ…!!」

真姫☆「…理屈じゃ、ないのね?」

穂乃果「うん。理屈じゃない」

穂乃果「心が、魂が…そうしたいって叫んでるんだ」

真姫☆「ふふっ…魂、ね」

真姫☆「…訂正するわ」

穂乃果「え?」

真姫☆「やっぱりあなたは…私のよく知ってる穂乃果、だった」

穂乃果「は…?」

真姫☆「…何でもない。いいわ、その依頼…引き受けましょう」

穂乃果「ホントっ…!?」

真姫☆「ただしっ!」

真姫☆「…条件があるわ」

穂乃果「条件…?」

真姫☆「今後、アイドル専攻をまた…絵里の指導のような体制にさせないことを約束して」

真姫☆「夢を追う誰かが、泣くような事態がもう二度とないように、計らいなさい」

穂乃果「…わかった。絶対に…そうする」

真姫☆「後…、C☆cuteのみんなと、ちょっとは仲良くしてあげて」

真姫☆「一応私たちは、UTX学院のスクールアイドル同士なんだから…仲間、みたいなものでしょう?」

穂乃果「仲間…。あははっ…」

真姫☆「な、なによ」

穂乃果「…それ、ツバサさんも同じこと言ってたよ」

真姫☆「き、綺羅ツバサが…?」

穂乃果「わかった。仲良く…してみる」

穂乃果「…私、不器用だから、時間はかかるかもしれないけど」

穂乃果「やってみるよ…。また、海未ちゃんやことりちゃんと…友達になれるよう、に」

真姫☆「…えぇ。そうしてくれると、私も嬉しいわ」



~回想終わり~

真姫☆「…簡単に引き受けてしまったけど、ヒト一人を救うことがどれだけ大変かは…」

真姫☆「にこちゃんとキノで十分身に染みているのよね…」

凛☆「計画性ないにゃー。絵里ちゃんを救えなかったらどうするの?救えるまでこの世界にいるつもり?」

真姫☆「だからなるべく早く帰れるように今奮闘しているんでしょうが!」

穂乃果「具体的に、どうすれば救えるか…明確なビジョンはあるの?」

真姫☆「明確、ってほどじゃないけど…でも穂乃果の話を聞くに重要なのは…」

真姫☆「彼女を縛り付けていた『夢』…ね」

穂乃果「絵里さんは、事あるごとに『私の夢のため』…って言っていた」

穂乃果「前まではそれが、『A-RISEを最強のスクールアイドルにすること』、だと思っていたんだけど」

穂乃果「でも絵里さんは、ただ強さを求めているわけじゃない…。どこか、何か別の目的があるように感じられる」

真姫☆「人の精神を積極的にボッキボキに折りに来ているしね…。それも夢のため、なのかしら」

穂乃果「わからないけど…ただ」

穂乃果「絵里さんは中学生の妹に『UTX学院には絶対に入学するな』って言っていた…っていう事実もある」

凛☆「亜里沙ちゃん、絵里ちゃんには悪いイメージは持ってなかったみたい、なんだよね?」

真姫☆「だからこそその言いつけも忠実に守ろうとして、UTXへの入学を拒否した…」

真姫☆「…でも、不自然な気もする。自分の行っていた高校に、絶対に、までつけて入学させないことに」

凛☆「UTX学院には絵里ちゃんの最大の功績であるA-RISEがいるわけだもんね?まだその頃は凛も怪我してなかったわけだし」

穂乃果「妹さんをアイドル専攻の熾烈な争いに参加させたくなかった、と考えれば辻褄は合うけど…」

真姫☆「でもそれだけじゃ…絵里の夢が何かはわからないわね」

真姫☆「ったく…本人に直接聞ければ早いのに」

凛☆「今電話に出るのも難しいんでしょー?直接聞くなんてムリに決まってるにゃ!」

穂乃果「そもそも、今絵里さんはロシアにいるだろうからね。物理的にも無理なんじゃないかな」

真姫☆「…ロシアに、ね。憔悴しきった絵里を見て家族はどう思うのかしらね」

穂乃果「少しでも気分転換になれば、と思ってロシアに帰ったんじゃないかな…。幼い頃はロシアでバレエをしていたらしいから」

穂乃果「その頃の武勇伝、いくつか聞かされてね。いくつものコンクールで金賞を受賞したって…」

凛☆「へー、すごいにゃー」

真姫☆「…え?待って…金賞?」

穂乃果「え、うん…。そう聞いたけど。写真も見せてもらったことあるし…」

真姫☆「…私の知っている絵里は、確かにバレエをしていた経験はあるみたいだけれど」

真姫☆「そんな結果を残せた、とまでは聞いてないわ…。せいぜい銀賞止まりだったって」

凛☆「あ、そういえばそうだよ!少し歴史が変わってる?」

穂乃果「…君たち、薄々感づいてはいたけど…異世界人なんだ。さっきから世界がどうこう言ってるし」

真姫☆「あ、ま、まぁね…。しかし…歴史の差異…これが絵里の夢の動機と何か関係があるの…かしら」

穂乃果「まだよくわからないけど…そろそろ、仕事の邪魔するのも悪いから、これで」

穂乃果「また何か気づいたら、連絡するよ。そっちも何かあったら教えてね。…それじゃあ」

凛☆「うん、バイバーイ!」

真姫☆「…差異。私たちの世界との…」

真姫☆「前にも、こんなことあったような…?」

今日はここまで ここからは今までにバラまいた伏線を回収する作業が始まる
展開を予想するのはいいけれどあまり表には出さないで頂きたいです これを先に当てられると屋上自殺の比じゃなく痛いので
確固とした予想を持っている人はなんかそれっぽいリアクションしていただけると見ていて喜びます
絵里の夢とは何か、個人で推理して楽しんでいただけると書いてるヤツ冥利に尽きます それじゃ、また次回をお楽しみに ほなな

遅くなったにゃ 自分の中の燃え展開に繋げられるように手探りで頑張ってます
ほな、今日も貼り付けるだけー

凛☆「真姫ちゃん?考え事かにゃ?」

真姫☆「…いえ、今はいいわ。そういえば」

真姫☆「穂乃果から依頼された絵里のこともあるんだけど…」

真姫☆「…もう一つ、やらなきゃいけないこと、あるのよね」

凛☆「あー…かよちんの?」



~回想~


クリスマスライブ後の12月某日

希の家


真姫☆「凛、絵里の事、何か収穫は?」

凛「色々調べてはいるんだけど…特に何もなしにゃ」

真姫☆「まぁ、そうよね…。人の夢、なんてそう簡単に探れるものでもないし…」

真姫☆「その上ふさぎこんでいる絵里を立ち直らせるなんて…ホントにできるの?」

凛「真姫ちゃんまた安請け合いしちゃって~。悪い癖だよ?」

真姫☆「…わかってる。でも性格だから仕方ないでしょ」

真姫☆「なんとか限られた時間の中で精一杯…」


プルルルル… プルルルル…


凛「あ、電話だにゃ」

真姫☆「私…?誰から…あ、花陽だ」ピッ

真姫☆「もしもし?花陽、何か用?」

花陽『うぅん…ただ暇だったから』

真姫☆「あぁ…そっか。花陽も練習できないんだったわね」

花陽『怪我しちゃって冬休み中は練習に参加、できなさそうだから』

花陽『時間を持て余しちゃってるの…誰か助けて~…』

真姫☆「ちょっと待ってて~…いや、何もする気はないんだけどね」

花陽『真姫ちゃんは何かしてた?』

真姫☆「え?…あぁ、まぁ特に何も」

花陽『そっかー。真姫ちゃんも最近は他の人に顔見られちゃうと危ないから練習に参加できないんだもんね』

真姫☆「うん、それもあるけど…もう私がいなくても何とかできるでしょ。C☆cuteは」

花陽『んー、そんなことないよ。真姫ちゃんがいてくれた方が助かるよ?』

真姫☆「助かる、程度でしょ。もういなくても十分やっていける。支える人は…もう必要ないわ」

花陽『…真姫ちゃん、帰っちゃうの?』

真姫☆「…」

真姫☆「…まだ、帰らないわよ。ただ…近い未来には、ね」

花陽『…そっか』


「「…」」


花陽『ね、真姫ちゃん。覚えてる?』

真姫☆「ん、何?」

花陽『にこ先輩が希さんの家に泊まりに来た日のこと』

真姫☆「にこちゃんが…?」

花陽『あの日、一緒にお風呂入ったりしたよね』

真姫☆「あぁ、そうね…。お風呂の中で身を寄せ合って…」

凛「えっ!?真姫ちゃんかよちんとお風呂で身を寄せ合ったの!?なんて羨ましい…」

花陽『あれっ!?今凛ちゃんの声…』

真姫☆「あ、その…今のは」

凛「真姫ちゃんの世界の凛です。初めまして」

花陽『あ、あぁ…!真姫ちゃんと同じ世界の子って凛ちゃんだったのぉっ!?』

真姫☆「えぇ、まだ紹介してなくてごめんなさい。前まではこの世界の凛との関係があまり良好じゃなかったし、知らせるべきじゃないかも、って思ってて」

真姫☆「今度、みんなにも紹介しておくわ」

凛「凛も☆のステッカー貼っておこ…ぺたりっと」

凛☆「よし、これでオッケー!」

花陽『あ、なんか区別つく気がする…。同じ声なのに』

真姫☆「…それより、話の続きは?」

花陽『あ、そうそう。で、お風呂に入ったとき…いつか旅行に行こうね、って話したの覚えてる?』

真姫☆「え?そ、そんなこと言ってた?」

花陽『言ってた、って真姫ちゃんが言ったんだよ?必ず行きましょう、って』

真姫☆「そういえば言ってた気がする…」

花陽『もう帰る時が近いのなら、せっかくの冬休みなんだし…どこか旅行、行かない?』

花陽『きっともう、最後の機会だよ』

真姫☆「…」

花陽『真姫ちゃん?』

真姫☆「…うん。そうね、行きましょう。えーっと…いつにする?」

花陽『んーと…確かUTX学院って終業式が遅い代わりに始業式も少し遅めで…』

花陽『二週目の月曜日からで…あ、その日は休日だから火曜日からだね』

花陽『その日までならいつでも。まだ私たちだけの予定だから、みんなにも聞いてから決めようね』

真姫☆「うん。わかった。そうするわ。…」


真姫☆(それから、少しのあいだ会話をして、電話を切った)


真姫☆「…旅行、ね」

凛☆「どうするのー?穂乃果ちゃんの依頼もやらなきゃいけないんでしょ?」

真姫☆「わかってる。わかってるわよ…」

真姫☆「…はぁ」



~回想終わり~


凛☆「そしてただでさえ忙しいのに巫女のバイトまで入れちゃってまぁ」

真姫☆「し、仕方ないでしょそれは!…希にみんなと一緒に参拝してほしかったから」

凛☆「その心遣いは立派だと思うけどねー。もっとスケジュール、考えるべきだと思うよー?」

真姫☆「凛に言われるまでもないわよ…ったく。さ、無駄話が長くなっちゃったし…バイト、再開しましょ」

凛☆「うい。精力的にお守りを押し売りまくるにゃ!」

真姫☆「そんなことはしなくていいから」

明神前


にこ「…穂乃果、遅いわね」

海未「何しているのでしょうか…」

希「先帰ってて、って言ってたんやし、行ってていいん違う?」

ことり「うーん…。海未ちゃん、待ってても気まずい空気流れるけどいいの?」

海未「う…、ま、待ちます!せめて帰りだけでも一緒に…!」

花陽「海未さん…」

にこ「…仕方ないわねー。海未とことりだけ待ってればいいんじゃないの?私、もう帰るわ」

希「あ、にこっち…」

花陽「そうですね…。私たちは先、帰ろっか。キノちゃんは?」

真姫「私も帰る。穂乃果先輩はちょっとなんか…怖いし」

希「…というわけやから、あとはお二人さんで頑張ってね」

スタスタ…


ことり「気、遣われちゃったのかな?」

海未「…待ってて余計なことを、などと思われないでしょうか…。や、やはり帰った方が…」

ことり「もう、せっかく勇気出したんだから最後まで頑張ろう?」

海未「…はい」



スタスタ…

希「ふんふふん~…あ、にこっち、さっきの話の続き…」

にこ「い、いいからもう!」

真姫「えぇ?私聞きたいな」

にこ「いいんだってば!あ、わ、私ここでお別れね…」

希「えー?にこっちのうちはもっと向こうやったような~?」

にこ「いいって言ってるでしょぉぉぉぉっ!!」ダダッ

花陽「あ、行っちゃった…」

真姫「そんなに知られたくない過去なのね…アイドル応援部時代…」

希「可愛いんやけどね~…ん?」


ツバサ「待ってたわよ、希」


希「ツバサちゃん…?」

花陽「A-RISEの皆さん…?こんなところで何を…?」

英玲奈「東條に話があって」

あんじゅ「私たちと、希ちゃんだけでね~?だからお二人にはちょっと外してもらいたんだけど…いいかしら?」

花陽「私は別に…キノちゃんは?」

真姫「えぇ…希先輩と一緒に帰れると思っていたのに…」

ツバサ「ごめんなさいね。邪魔しちゃって」

希「…なんか大事そうな話やし、ごめんね西木野さん。また今度、一緒に帰ろうね?」

真姫「…わかったわよ」

英玲奈「了承も取れたことだし…行こうか」


花陽「…なんの話、なのかな?」

真姫「さぁ…」

喫茶店


希「そんで、話って?」

ツバサ「卒業後のことよ」

希「…アイドルを続けるかどうか…みたいな?」

英玲奈「それはもう決まっている。…ツバサは、辞めたくないと」

あんじゅ「綺麗な終わり、っていうのも悪くないんだけど、ツバサちゃんのいつものワガママでね」

ツバサ「悪かったわね、ワガママで。あたたちが言ってくれたんじゃない。『あなたについていく』って」

あんじゅ「うん。リーダーですもの」

希「じゃあうちに何を…」

英玲奈「これ」スッ…

希「これは…?」

あんじゅ「卒業後に私たちをマネージメントしてくれるチームよ。既に契約を交わしているの」

ツバサ「これからはプロとして、学業の合間に活動していくことになるからね。これまでよりも厳しい世界に足を踏み入れることになるわ」

英玲奈「…そこで相談なのだが、東條。お前も…来てくれないか?」

希「え、うちに…?」

英玲奈「卒業後、お前にアイドルを続けるつもりがないのなら、是非私たちのマネージメントの一端を担ってもらいたい」

あんじゅ「チームの一員として加わって欲しい…ってこと」

希「どうしてうち…?」

ツバサ「私たちがA-RISEとなる前から、最も信頼の置ける友人は…希、あなただった」

ツバサ「あなたの専攻生への管理能力は目を見張るものがあった。…結果的には権力は失ってしまったけれど」

ツバサ「でも、今でもあるんでしょう?誰かの役に立ちたい、って気持ち…」

希「…」

あんじゅ「無理に、とは言わないわ。もちろんね」

あんじゅ「けれど私個人としては…希ちゃんとはこれからも繋がりを持っていたいの。友達として、仲間として」

英玲奈「あらかじめ言っておくが…UTX学院内で声をかけている人間はお前だけだ」

英玲奈「東條の力を信頼してのことなんだ。既にチームとの話もつけてある。いつでも歓迎する。…どうかな?」

希「…えっと、うち、は…」

あんじゅ「嫌?かしら…」

希「い、嫌ってことはない!すごい…とっても嬉しいんよ…。うちの力が認められた、ってことを思うと」

希「でも、今のうちには…」

ツバサ「…」

ツバサ「いきなり言われても、戸惑うわよね。仕方ないわ」

ツバサ「だから、時間を置きましょう。せめて、卒業までには決めておいて」

ツバサ「私たちについてきてくれるか、こないか。お願い、希」

希「…わかった」

英玲奈「頼んだぞ東條。いい答えを期待している」

あんじゅ「それじゃ、またね~。バーイ♪」


希「…」

希「マネージメント、か…」

希「…どうしよっか」

スタスタ…

花陽「こうして二人だけで帰るの、なんか新鮮だね」

真姫「そ、そうね…」

花陽「ねぇ、キノちゃんは…」

真姫「…二人きりの時くらい、それ、やめてよ」

花陽「え?」

真姫「『キノ』ってあだ名!なんだか…あっちの私に真姫って名前を取られてる感じで…」

真姫「区別をつけるためのあだ名なんでしょう?二人きりなら…真姫でいいじゃない」

花陽「そ、そう?私はキノちゃんってあだ名気に入ってるんだけどなぁ…」

花陽「でも、…真姫ちゃんがそっちのほうがいい、っていうならそうする。真姫ちゃん」

真姫「っ…///」

花陽「え、どうしたの…?」

真姫「あ、改めて名前で呼ばれるのも恥ずかしいな、って…別にいいんだけどね!」

花陽「ふふふ、照れてるんだ。可愛いね、真姫ちゃん」

真姫「も、もぅ…。…」

真姫「…でも、い、いつまで経っても人見知りが治せないのって、どうなのかしらね…」

花陽「え、いきなり何…?」

真姫「む、昔はこうじゃなかったのよ!こんな、人に名前呼ばれて照れるような私じゃなかったのに…」

真姫「半年間の引きこもりで、すっかり人に対する恐怖心が強まっちゃって…」

真姫「今でも、あなたたち以外の子と話すのは…少し疲れるわ」

花陽「真姫ちゃん…でも、アイドルはきちんとこなせてるし…」

真姫「アイドルのそれとは別。頭のスイッチの入り方が違うのよ…」

真姫「いつまでもこんなじゃ、…希先輩に申し訳が立たないわ」

真姫「あの人は私に救いの手を差し伸べてくれたのに、まだ私は抜けきっていないんだもの」

真姫「…人と接することの恐怖から」

花陽「…」

真姫「花陽!友人と見込んであなたに頼みがあるのっ…!」

花陽「ふぇっ!?」

真姫「ひ、人見知りを治すやり方…一緒に考えてくれない!?みんなには内緒で…」

花陽「え、い、いいけど…どうしてみんなに内緒なの?みんなで話せば…」

真姫「大勢で私のこと構われるのが…なんだか気恥ずかしいの!友達である花陽だけなら、大丈夫だし…」

花陽「そ、そういうところをなんとか治していけばいいんじゃ…」

真姫「人見知りは私のウィークポイントなのよっ!そんなところをみんなに曝け出して治療法を探してもらうのは…ちょっとランクが高いわ!」

真姫「もっと低ランクなところから徐々に治していきたいから…ダメかしら…」

花陽「わ、わかるはわかるよ…。真姫ちゃんがそういう気持ちなら私も協力したいと思うけど…」

花陽「…人見知りの治し方…。うぅん…、具体的な方法は思いつかないかも…」

真姫「うぇ…」

花陽「そういえば…人に接することに恐怖している、といえば…海未さんもだよね」

花陽「海未さんとことりちゃん…穂乃果さんと合流できたのかな…?」

神田明神前


スタスタ…

穂乃果「…」


海未「あ、穂乃果っ…!」

ことり「穂乃果ちゃんっ!」


穂乃果「…二人共…」

穂乃果「先帰ってて、って言ったのに」

海未「いいではないですか。せめて帰りくらい一緒でも」

ことり「何してたの?」

穂乃果「西木野さんがいたから、少し話をね」

海未「なんの話でしょうか…?」

穂乃果「…別に。二人には関係ない話、だよ」

穂乃果「じゃあ、行こう」

ことり「えっ…」

穂乃果「帰るんでしょ?」

海未「あ、あぁ…そうですね」


スタスタ…

穂乃果「…」

海未「…ぅ」

ことり「海未ちゃん、何か喋って」

海未「ど、どうして私に振るんですか…ことりも何か…」

穂乃果「そういえば」

海未「ひっ…!なんでしょう…?」

穂乃果「…この道を3人で帰るのは、何日ぶりだろう」

ことり「あ、そうだね…。神社から穂むらまでの帰り道…」

ことり「子供の頃はよく通った道だね」

海未「…えぇ、そうですね。神社までかけっこで競争したり、境内ではしゃいで神主様に怒られてしまったり…」

穂乃果「懐かしいね」

海未「は、はい…懐かしいです、ね…」

穂乃果「…うん」

海未「…」

穂乃果「…」

ことり「ど、どうしてそこで会話が終わっちゃうの…?もっと何かあるでしょ!」

穂乃果「…ごめん、私こういう時…上手く喋れなくて」

ことり「穂乃果ちゃんはこういう時上手に喋れる穂乃果ちゃんだったでしょ!?」

穂乃果「…もう、昔のことだよ」

海未「昔…。そう、かもしれませんね。あれから随分と時間も経ってしまいましたし…」

海未「今の距離感はこれで…自然なのかもしれません」

ことり「えっ…」

海未「無理やりに過去をやり直さずとも、今を続けていくという選択も…それはそれで…」


ことり「い、嫌だよっ!!」

穂乃果「っ…、ことりちゃ…」

海未「ことり…」


ことり「っ…!そんなの、私嫌だ…!」

ことり「だって、私は穂乃果ちゃんと海未ちゃんと…子供の時みたいに笑い合いたいもん!」

ことり「穂乃果ちゃんが無茶して私たちを引っ張って、私と海未ちゃんがそれに困らせられて…!」

ことり「だけど最後は、それでもよかったって思える…そんな昔をやり直したいって…!!」

ことり「それが私の夢だからっ…!」

穂乃果「…」

ことり「穂乃果ちゃんはもう、昔みたいに笑えないのっ…?」

海未「…」

ことり「海未ちゃんはもう、穂乃果ちゃんと仲良くしたくないのっ…!?」

海未「な、仲良くはこれからもしていきたいですが…、また一から関係を築いていくというのも…」

ことり「それじゃダメなのっ!!」

穂乃果「…どうして、ダメなの?」

ことり「だってそれじゃ…穂乃果ちゃんと海未ちゃんが傷ついたって事実が残っちゃうよ…」

ことり「去年の出来事なんて、もう思い出したくないのに…」

海未「…っ」

穂乃果「私は傷ついてなんか…」

ことり「あんな暗い思い出なんか、なかったことにしたいっ…!だから私は『変わる』じゃなくて『やり直す』ことを選んだの!」

ことり「辛さを抱えたまま、先に進みたくないから…」

海未「ことり…」

穂乃果「…」


ガララッ…


雪穂「な、なんの声…?あ、おねえちゃ…海未さんっ!?ことりさんっ!?」


穂乃果「雪穂…、いつの間にか穂むらの前まで帰ってきてたんだ…」

雪穂「雪穂、じゃないよ!海未さんとことりさんと仲直りしたの!?」

海未「え、えっと…それは」

ことり「仲直りは…した、のかな…?」

穂乃果「…少なくとも、前より険悪ではなくなったと思う」

雪穂「よ、よかったぁぁっ…!!よかったねお姉ちゃんっ!!本当に…!」

穂乃果「…」

雪穂「あ、じゃあ…二人共中へどうぞ!おぜんざい、用意しますね!」

海未「え、いやっ…お気遣いなく…」

雪穂「海未さんとことりさんがうちに来るの久々だ~!!やははー!」タタタッ…

ことり「聞こえてないね…」

穂乃果「雪穂…」

穂乃果「…仕方ないや。二人共、上がっていって」

穂乃果「お茶、用意するね」

海未「あ…、はぁ…」

穂むら


ことり「なんだか変な空気のままお邪魔することになっちゃったね…」

海未「こ、ことりのせいですよ…!私は今の穂乃果とまた関係を築く選択をしようとしたのに…」

ことり「…ご、ごめんね。でも嫌だったから…あの時を引きずるのは…」

海未「…う。そう、ですよね…。きっとあの時、一番嫌な思いをしたのは…ことりですものね…」

海未「私と穂乃果に挟まれて、気の休まる時間が微塵もなかったことでしょうし…忘れたいと思うのも自然かもしれません」

ことり「なんだか…わからなくなってきちゃった。どっちが正しい選択なのかな…」

ことり「やり直すのと、やり直さないの…」

海未「…私には、わかりかねます」

ことり「だよ、ね…」




穂乃果「…ねぇ、雪穂」


雪穂「ん、何ー?あ、お客さん用の湯のみは棚の奥だよー」

穂乃果「うん、わかってる。…聞きたいことがあって」

雪穂「聞きたいこと?」

穂乃果「…強さって、なんなのかな」

雪穂「へ?」

穂乃果「ずっと信じてた強さを、…最近、めっきり信用できなくなってきちゃって」

穂乃果「私を支えてきた何かが、ポッカリ抜け落ちちゃってる気がするんだ」

穂乃果「このまま私は…あの二人と仲良くしていいのかな…?」

穂乃果「仲良くしたら…私は弱くなってしまうんじゃないかって、少し怖いよ」

雪穂「お姉、ちゃん…」

穂乃果「今まで強くなるために自分を殺して、悪夢にうなされながらも甘さを捨ててここまできて…」

穂乃果「そこから信じるものを失ってどっちつかずで…どうすればいいのかわからなくなってきてる」

穂乃果「自分だけを信じて突き進めるほど私は…強い人間じゃなかった…!」

穂乃果「ねぇ教えてよ雪穂ぉっ…!私は…」

雪穂「お姉ちゃん!」

穂乃果「っ…な、何…?」

雪穂「そんな暗い話、あとにしてよ!今は二人が来てるんだから、パーっと行こう!」

穂乃果「パーっと…って」

雪穂「というわけでそんなお姉ちゃんに朗報です!じゃじゃん!」

穂乃果「朗報…?」

雪穂「私ね…」


雪穂「…UTX、受験してみることにした」

穂乃果「え…?」

雪穂「元々さ、入るつもりはなかったけど志望校には一応入れてて…」

雪穂「まぁ、もしもって時のためにね」

穂乃果「どうして入る気になったの…?前は…」

雪穂「亜里沙が行きたくない、っていうから私も、だったんだけどね」

雪穂「この間のクリスマスライブね、私…見に行ったんだ」

穂乃果「えっ…?聞いてないよ?」

雪穂「言ってないからね。こっそり、せっかくのお姉ちゃんの晴れ舞台なんだし、ってことで」

雪穂「もちろん、忍び込んだりはせずに、柵の外からモニター越しだったけどね」

雪穂「亜里沙も誘って、一緒にライブ、見に行ったんだ。そしたらね…」

雪穂「すごかった。こういうのがスクールアイドルなんだ、って思った」

穂乃果「そう…?ありがとう」

雪穂「…A-RISEじゃないよ。C☆cuteが」

穂乃果「えっ…」

雪穂「私がもし、投票権を持ってたら…C☆cuteに1票あげたい」

雪穂「それまでは直接見たことなかったC☆cuteのライブ…肌で直接感じたとき」

雪穂「胸の奥からこみ上げてくる、キラキラした感情を…確かに受け取った」

雪穂「ほんの数分間に夢中になって、虜になって…あの人達がいるUTX学院に入ってみたいって、そう思ったんだ」

穂乃果「…」

雪穂「お姉ちゃん、私はさ。強さって…ああいうことだと思う」

雪穂「完璧じゃなくて、完全じゃなくて…どこか危なっかしいところがあるけど」

雪穂「みんなを笑顔にしてくれる。キラキラしたものを振りまいてくれる」

雪穂「一緒に頑張ってみようって気持ちにさせてくれる。多くの人の心を動かしてくれる」

雪穂「終わりじゃなくて、続きを見させてくれる。…そんな強さ」

雪穂「お姉ちゃんが目指してた強さは、誰にも到達できないほどの高み、だったわけじゃん」

雪穂「それはすごいよ。すごいけど…そんなに高いところ、誰も行こうと思えない」

雪穂「みんなと手を繋げば登れるかもしれない、そんな高さが…私にとってのC☆cuteだった」

穂乃果「それは…強さなの?」

雪穂「そうだよ。強いってことと、強さは別物だよ」

雪穂「私はお姉ちゃんに、誰かの心を引き寄せるスクールアイドルになって欲しいな」

雪穂「楽しいスクールアイドル。そんなお姉ちゃんも見てみたい」

穂乃果「楽しい…私は、楽しませてなかった…?」

雪穂「楽しかったよ!A-RISEのライブは最高だった!凄いって思えた!」

雪穂「…だけど、肝心のお姉ちゃんが心の底から楽しんでなかった気がする」

雪穂「その場にいるすべての人が楽しむほうが、もっと素晴らしいライブになれるよ。きっと」

穂乃果「…わからないよ。今までやってきたことと、まるで違うから」

雪穂「うん、素人の言うことだからそんなに気にしないでいいけど。少しでもお姉ちゃんの参考になればいいなって」

雪穂「じゃ、ぜんざいもできたし、持っていこう!」タタタッ…


「お待たせしましたー!!」


穂乃果「…楽しい、スクールアイドル…」

今日はここまで 時間かかった割に全然進んでねぇ…
起承転結の承はどうしても進みが遅くなるようなのでまぁのんびり待っていただきたし
今回短かった分次回はなるべく早く更新したいと思います たぶん ほなな

早くなりませんでした 今日は15分間隔くらいで貼っていきます

昼過ぎ

希の家


凛☆「ふへー…、早朝からのバイトは疲れるにゃー…」

真姫☆「そういえば…希はまだ帰ってないのね。どこをほっつき歩いてるのかしら」

凛☆「さぁねー…、凛たちも歩いて絵里ちゃんの情報探すー?」

真姫☆「そこら辺に落ちてるものじゃないしわざわざ歩く必要もないでしょ…」

真姫☆「…糸口も、少し見つかったしね」

凛☆「糸口?」

真姫☆「私たちの世界と、この世界との差異よ」

真姫☆「絵里のコンクールの成績が私たちが知っているよりも優秀になっていたこと…これはかなりの手がかりだと思う」

凛☆「そ、そうなの?」

真姫☆「えぇ。そもそもこの世界の絵里は私たちの世界の絵里と性格も大幅に異なっているわ」

凛☆「それは穂乃果ちゃんや凛だって一緒でしょ?」

真姫☆「まぁ、そうね。海未やことりも、多少私たちの知っている彼女らの性格よりかは変わっているし」

真姫☆「でもそれらの原因はわかっている。穂乃果と凛は厳しいアイドル専攻の体制から性格が変化した、って考えられるし」

真姫☆「海未やことりは穂乃果の性格が変化したことの影響に依るものでしょう」

真姫☆「けれど絵里は…絵里はどうしてああなってしまったのか、まだ私たちは知らない」

真姫☆「当初は私たちの世界でも穂乃果たちに反感を持っていた絵里なら…とは考えていたけど」

真姫☆「さすがにいくらなんでも、夢を持った才能ある人材を、より強い者を強くするための糧へ、なんて考え方するような人間じゃなかった」

真姫☆「彼女がそうなってしまった原因は?去年から?中学以前?…それとも、もっと前?」

真姫☆「おそらく絵里が変わってしまった原因、そのルーツに、絵里の夢が…あるのだと私は思うわ」

凛☆「はぁ…よくわかんないにゃ」

真姫☆「ここまで喋らせておいてその反応は物悲しいものがあるわね」

凛☆「勝手に喋ってただけじゃん…。それより、神社でもなんか前に差異があったとかどうとか、つぶやいてなかった?」

凛☆「あれはなんだったの?」

真姫☆「あぁ、そういえばそうね…。えっと、そうなの。前にも私たちの世界とは歴史が食い違った何かがあって…」

真姫☆「…あ!思い出した!」

凛☆「にゃ?なになに?」

真姫☆「UTX学院の創立年が私たちの世界より10年ほど早くなっていたのよ」

凛☆「へぇ…。それが?」

真姫☆「それが…どう絡むかはわかんないけど」

凛☆「むー、イマイチ決め手に欠けるね…。結局どうすればいいの?」

真姫☆「とりあえず今できるのは、過去を探ることよ。絵里の過去…それを少しでも知りたい」

真姫☆「凛、調べられる?」

凛☆「過去…?うぅん…できないことはないかもだけど、時空壁のせいでクリニックの力に頼るのは無理そうだし…どうかなぁ」

凛☆「でも、とにかく頑張ってみるよ!絵里ちゃんの過去を調べればいいんだね!了解にゃ!」

真姫☆「あ、あとは…UTXの創立年の頃、何があったかについても調べて!よろしくね!」

凛☆「はいはーい!じゃ、ちょっくら足で稼いでくるねー!にゃはーんっ!」タタタッ…

真姫☆「結構元気じゃない。…ふぅ、それにしても、希…ホント、どこにいるのかしら」

真姫☆「帰ってくれば応援部の頃のこととかも詳しく聞けるのに…」

秋葉原


トボトボ…

希「…」

希(マネージメントのチーム…A-RISEの…)

希(確かに嬉しい。嬉しいけど…)

希(素直にはい、って答えられなかったのは、なんでかな)

希(アイドル応援部で部長やって、A-RISEの役に立つために色々勉強して)

希(自分でも驚く程のマネージメント力が身について、それがやっと、誰かに認められて…)

希(うちにとってはこれ以上ないほどの居場所だと、思うんだけど)

希(…やっぱり、今はC☆cuteって別のスクールアイドルだから、なんだか違うところに行っちゃうみたいで、気が引けてるからかな)

希(マネージメントのチームに行ったとしても、C☆cuteのみんなとは友達で、仲間でいられるってわかってるのに)

希(それとも他に、なんか引っかかる理由があるのかな…)

希(自分でもそれがわからなくて)

希(その辺りをぶらついてみたけど、答えは見つからず)

希(結局、家まで帰ることに)



希の家前


トボトボ…

希「はぁ…。なんなんかな、この気持ち…」


ガチャッ ダッ

凛☆「行っくにゃー!!」

希「うわっ!凛ちゃん…!?」

凛☆「あ、希ちゃん!やっと帰ってきた!なにしてたの?」

希「ん?まぁ…ちょっと考え事をね。凛ちゃんこそ、どこ行くの?」

凛☆「過去を探しに行くんだにゃー!じゃ、いってきまーす!」タタタタッ…

希「過去を探す…?これまた意味深な発言を…」

ガチャッ

希「ただいまー」


真姫☆「あら、希。遅かったじゃない」

希「考え事しながらフラフラしてたらこんな時間になっちゃってね。ごめんごめん」

希「お昼ご飯、作ろうか?」

真姫☆「いいわ。先に頂いたから。…私はてっきり福袋でも買いに行ってるのかと思ってたわよ」

希「あ!それもあったなぁ…。忘れてた。今から行く?」

真姫☆「いえ、それより…希に聞きたいことがあるのよ」

希「聞きたいこと?」

真姫☆「アイドル応援部時代の、絵里について」

希「えりち…?」

希「どうして真姫ちゃんがえりちのことを知りたがるん?」

真姫☆「まぁ、ちょっとこっちも色々あって。彼女の過去が知りたいのよ」

希「む、そういえば凛ちゃんも過去を探しに行くとかどうとか…またなんかやってるんやね」

真姫☆「…えぇ」

希「ま、それで真姫ちゃんの力になれるのならいいけどね。えりちの過去、って言っても、うちは去年一昨年くらいのことしか知らんよ?」

真姫☆「それでもいいわ。絵里と最初に出会ったときから、教えて」

希「うちが最初にえりちと出会ったとき…か。確か、高校1年生のとき、同じクラスでね」

希「最初は無愛想で元気がなくて、ちょっと怖い雰囲気があった子、やったね」

真姫☆「…根暗だった、ってこと?」

希「んー…根暗、ってほどではなかったよ。ただ常にイライラしている…みたいな感じかなぁ」

真姫☆(常にイライラ…この時点で私の知ってる絵里とは大分異なってる気がする)

真姫☆(やはり中学生以前に何かあった、と見ていいわね)

希「でね、うちがA-RISEを応援する部活、作ろうって友達と会話してる時に、えりちが話しかけてきて」

希「『それ、私も参加していい?』って。その時初めて喋ったからうちビックリしたわ~」

希「結局、えりちはアイドル応援部の創立メンバーの一人で、その頃から精力的にアイドル専攻への手伝いを頑張ってたね」

希「最初は元気なかったけど、応援部を続けるうちに活発になっていって、うちやうちの友達とも、よく話すようになって…」

希「2年の夏が過ぎる頃には、親友、って言ってもおかしくないくらいの仲やったんよ、うちら」

希「…今じゃ、考えられないけど」

真姫☆「そう、ね…」

真姫☆「その…、2年生までは、アイドル専攻に対する厳しい仕打ちとかはなかったの?」

希「ん?うん、至って真面目で、うちの考えた通りのことをやってくれてたね。えりちの提案も過激なことは一切なかったし…」

希「だからどうして、2年の終わり頃にあんな凶行に走ったのか、今でもわからないんよ」

希「…本当に、そんなことする子じゃない、って信じてたのに」

真姫☆「希…」

希「…どうして…」

真姫☆「希は、絵里のこと…今はどう思ってるの?」

希「え?」

真姫☆「これまで非道なことをしてきた絵里のこと、もう友達とは思ってない?」

希「えりちの、ことを…?」

真姫☆「…それとも。まだ…絵里のこと…」

希「…それは、ないと思う」

希「えりちが専攻生にしたことや、西木野さんにしようとしたこと、もう…なかったことにすることなんてできない」

希「前に一度、西木野さんを救う作戦のときに、一度手を差し伸べられたけれど」

希「…うちは二度と、えりちの腕を掴むことは、しないよ。絶対に」

真姫☆「…そう。まぁ…そうでしょうね。私だって、絵里のしたことを許すことはできないわ」

真姫☆「…」


真姫☆(でも、希。気づいてる?あなたは…)

西木野総合病院

凛の病室


凛「ふわぁぁ~…お正月、家族と一緒に初詣…」

凛「…行きたかったにゃぁ…。うぅっ…ぐすんっ…」


ガララッ…

花陽「凛ちゃん、あけましておめでとう」


凛「あ、かよちん!あけおめ!…来てくれたの?」

花陽「うん。やっぱり、凛ちゃんと年明けの挨拶しておきたくて」

花陽「毎年言ってたのに、今年は言えなかった…なんて悲しい思い出には、したくないしね」

凛「うん…。そうだよね。もしかしたらかよちんと、こうして一緒にいることすら、できなかったかもしれない、からね…」

凛「…へへ。なんだかそう思うと、怪我してよかった気がするにゃ」

花陽「えぇっ!?そう、なの…?」

凛「やりたいことが決まってからね。色々なものが違って見え始めたんだ」

凛「あれだけ死に物狂いで目指してたA-RISEも、いっぱいあるうちの一つのスクールアイドルでしかないんだな、って思ったら…」

凛「きっと凛もいつか、掴めるんじゃないかな、って、前向きに考えることができるようになって」

凛「でね、一番嬉しいのが…」

凛「こうやってかよちんがそばにいてくれる、ってことが、何よりも尊いタカラモノだって気づけた」

凛「大好きだよ、かよちん。本当に…ありがとう」

花陽「っ!?!?!?!!?!」

花陽「だ、だだだだ、大好きっ…!?凛、ちゃんがだ、だいすきってわ、わた私に…!」

凛「えへへー、かよちん顔真っ赤にゃー。かわいいよ、愛おしいよかよちん」

凛「凛の大切な大切な友達…。ずっと、一緒にいてね…」ギュッ…

花陽「っ…と、友達…」

花陽「そ、そうだよね…。うん、友達…。友達友達…」

凛「にゃ?どうしたの?」

花陽「な、なんでもない!ちょっとよこしまな想像しちゃったとかそんなことないから!」

凛「よこしまって?」

花陽「えっ!?あ、え、その…り、凛ちゃんと…ち、ちゅぅ…とかする…関係に、なんて…」

花陽「ってぇっ!!違うよ!?そんなこと微塵も思ったりなんかしてないというか私は至って健全であって何も」

凛「ちゅーして欲しいの?いいよ」

花陽「え」

凛「んー…ちゅっ」

花陽「ふぇっ」

凛「えへへ、おでこちゅー。大好きの証にゃ」

花陽「」

凛「かよちん?」


フラッ… バターンッ


凛「うわぁっ!!?かよちんがぶっ倒れたにゃ!?」

花陽「…ご、ごめんね。急に倒れちゃって」

凛「どこか調子悪いの?あ、怪我のせいかな…。帰ったほうがいいんじゃ…」

花陽「い、いいの!私は元気だから!むしろさっきのちゅーでいっぱい元気もらえたから!」

凛「そう?あ、じゃあもう一回…」

花陽「それはいいから!」

凛「む、そうなの?かよちんがそう言うならまぁ…」

花陽「え、えっと…それより、そう。ちょっと聞きたいことがあって」

凛「聞きたいこと?」

花陽「うん。えっと…凛ちゃんって、人見知りってどう治せばいいかわかるかな…?」

凛「え?人見知り?」

花陽「その…私の友達が人見知りを気にしてて。もっと誰とも分け隔てなく喋れるようになりたい、って」

花陽「凛ちゃんはアイドル専攻の子いっぱいととても仲良しだったじゃない。だから、人と仲良くなる秘訣とか知ってるのかな、って思って」

凛「仲良し…かぁ。そんなことないよ、たぶん」

花陽「え…?」

凛「アイドル専攻の子たちは、友達じゃない。お見舞いに来てくれた子は、誰ひとりいないし」

凛「たぶんきっと、凛の空いた席を今から奪おうと必死なんだよ。だからお見舞いに来る暇なんてなくて」

凛「…凛も、凛が元気で、誰かが怪我したとしたら、お見舞いなんか絶対に行かなかったと思う」

凛「そんな関係、友達とは言えないでしょ」

花陽「う、うん…そうかも、しれない…」

凛「だから凛に聞いても、仕方ないと思うにゃ。それならまだ、かよちんの方が友達たくさんで羨ましいな」

凛「凛はひとりぼっち…。うぅん、穂乃果先輩と、にこ先輩だけが友達で、仲間だった」

凛「A-RISEの人たちはあこがれで、仲間ってわけじゃ…ないかな」

花陽「そっか…ごめん、変なこと聞いちゃって…」

凛「うぅん、いいの。でも…一番になるって、大変なこと、だよね」

凛「誰かを蹴落として、倒れてる人を踏んづけて。そんなことしてたら、友達なんか出来っこないよ」

凛「いつか誰も寄ってこなくなって、ずっとひとりぼっちのまま、死んじゃう…のかな」

花陽「えぇっ…、ま、またネガティブな方向に思考が…」

凛「あ、ごめん。でもかよちんは違うよね!まだ一番ってわけじゃないけど、そんな誰かを踏みにじるようなことなんてせずにてっぺんを目指して…」

凛「ついに、ってところまで来ちゃったんだもん!絵里先輩のやり方を上回る勢いだにゃ!」

花陽「うん…。私もびっくりしてる。ここまで来られるなんて、夢みたい…。うぅん、夢だったんだ」

花陽「夢が、叶った。真姫ちゃんが、いてくれたから」

花陽「…真姫ちゃんがもし、この世界にいなかったら。何も…変わってなかったのかも」

花陽「真姫、ちゃん…」

凛「かよちん…?」

花陽「え、なに?」

凛「…さっきから真姫ちゃん真姫ちゃん、なんか妬けちゃうにゃ」

凛「せめて凛といるときだけでも凛のことだけを見てー!」

花陽「あ、あはは…そうだねー。凛ちゃん大好きだよー」ギュー

凛「わーい!凛もかよちん大好きだにゃー!!」ギュー

メイドカフェ


真姫「…ぅ」

にこ「…」


にこ「…なんで、ここにいんのよ」

真姫「そ、そっちこそなんで…」

にこ「いいでしょ!新年早々メイドカフェに来てても!悪い!?」

真姫「わ、悪いなんて言ってないじゃない…」

にこ「そっちこそ、どうしているのよ。ここに」

真姫「わた、私は…その…」

真姫「…ブツブツ…」

にこ「聞こえないんだけど」

真姫「こ、こういうと、ところなら、えっと…気があう人とか、見つけられるかも、って思って…」

真姫「め、メイドさんとかと、話す練習にも、なれるかな、なんて…」

にこ「話す練習…?どういうことよ」

真姫「…うぅ、それは…」



にこ「…なるほど、人見知り、ね」

真姫「…///」

にこ「別に恥じることじゃないわよ。人と話すのが怖い、なんて誰でも一度は抱く感情だわ」

にこ「私なんて自分と話すのが怖いからね。笑えるでしょ」

真姫「自分と…?」

にこ「そういう心の病気、みたいなもんよ。…ったく、同じ顔してるのに私のこと、なんにも知らないから笑えるわ」

真姫「え…?同じ顔…って、気づいてたの?」

にこ「ハァ?当たり前でしょ!?気づかないとでも思ってたの?」

にこ「あっちの真姫ちゃんとはまるで性格が違うじゃない。だからずっとアンタのことは『真姫』って呼んで区別してたのよ」

真姫「真姫…私のこと、名前で…」

にこ「ん?そうね、真姫って呼んで…」

真姫「…っ」ササッ

にこ「ど、どうしたのよ。顔隠して」

真姫「…恥ずかしいのよ…。下の名前ってなんだかこそばゆくて…」

真姫「ずっと仲間にはキノ、って呼ばれてて…それも『私』に『真姫』って名前が奪われたみたいで嫌だったんだけど」

真姫「改めて名前で呼ばれるのも…なんだか照れちゃうのよ。はぁ…どうしたらいいの…」

にこ「知らない」

真姫「なっ…」

にこ「誰かに答えなんて求めるものじゃないわよ、人見知りなんて特にね」

にこ「一気に治る病気なんてないもの。徐々に慣らしていくことが私は先決だと思う」

にこ「手始めに慣れない誰かと仲良くなってみるとかすればいいんじゃないの?それで治るかはわかんないけどね」

真姫「な、慣れない誰かと…」

真姫「じゃあ…手始めに…あなたと仲良くなってみるとか…?」

にこ「は?」

にこ「そ、そっちのジュースはどう…?ま、真姫…」

真姫「お、おいしいわよ…にこ先輩…」

にこ「よ、よかったわねー…おほほほ…」

真姫「うん…」

にこ「…」

真姫「…」

にこ「全っ然話進まないんだけど!」

真姫「こういう時何話せばいいのよ!?ジュースの味を事細かに伝えればいいの?」

にこ「私にもわかんないわよっ!仲良くなるってこういうことじゃないからぁっ!」

真姫「じ、じゃあどうすれば…」

にこ「だから知らないって…。ん~と…アレよ。私と真姫なら共通の話題があるじゃない」

真姫「共通の?」

にこ「アイドルよ、アイドル。アンタだって好きでしょ?」

真姫「好き、って言えば好きだけど…そこまで知らないし」

にこ「アイドルに対する情熱さえ持っていれば誰でもすぐ友達になれるのよ!」

真姫「そういうものなの?」

にこ「そういうものなの!」

にこ(…なのになんでにこは一人ぼっちなのかな)

にこ「いい?…実はね、私がこんなお正月にこんなメイドカフェにきているのには理由があってね…」

真姫「友達を作るため?」

にこ「違うわよ!聞いた噂で、冬休み期間のほぼ毎日、昼過ぎの時間にライブをやっているメイドがいるらしいの」

真姫「ライブ?」

にこ「えぇ、グラサンをして顔はよくわからないんだけどかなり可愛いらしくてね…。一度は見ておきたいと思って、練習のないこの日に来たのよ」

にこ「正月まで開店しているこの店もこの店だけど、まさかこんな日にまでライブをするなんてその子も熱心よね」

真姫「というか…ホントに来るの?そんな子…」

にこ「まぁ、それはまだわかんないんだけど。冬休みは大体毎日出てるっていうらしいからいると思う…」

にこ「で、そう!だから、その子のライブを見て感情を共有する!そうすれば自然と誰かとお話が出来て、人見知りも治るってワケよ!」

真姫「な、なるほどね…。知らないって割には詳しい解決方法を教えてくれるのね…」

にこ「べ、別にこれで治るかどうかは知らないってこと!結局はアンタの心持ち次第なのよ」

真姫「心の問題…ね。そうよね…」

真姫「ありがとう、にこ先輩。なんだか励まされちゃったわね」

にこ「別にそんなんじゃ…ん?お、なんだか店内の雰囲気が変わってきたみたいね…」

にこ「これは、来るんじゃないかしら!?」

真姫「え、ホントに…」

にこ「言ってたら来た!」


『みなさん、こんにちはー!』

『謎のメイドといいます!突然でびっくりされている人もいるかもしれませんが…今からライブをします!』

『ライブって言っても歌と小さなダンス程度ですけど…よければ、見ていってくださいねー!』


にこ「か、可愛い…!高校生…?いや、もしかして中学生かしら!?」

真姫「ホント…綺麗ね。あの髪…」

穂むら


海未「すみません、長居してしまって…」

雪穂「いえいえ、全然!また遊びに来てくださいねー!」

ことり「うん、じゃ、またね。バイバイ」

穂乃果「…うん、バイバイ」


穂乃果「…ふぅ」

雪穂「もー!お姉ちゃん全然喋ってなかったじゃん…。もっと話そうよ」

穂乃果「ご、ごめん…でも海未ちゃんもそんなに喋ってなかったし…」

穂乃果「ほとんどことりちゃんと雪穂ばかり話してたね」

雪穂「…やっぱまだ、去年のこと気にしてるのかな」

穂乃果「…」

雪穂「ま、まぁでも絶交ってわけじゃなくなったんだし…いいんじゃない?」

雪穂「時間が解決してくれるよ、うん」

穂乃果「時間が…ね」



穂乃果の部屋


穂乃果「わかんないな…」

穂乃果「私の求める強さも、ことりちゃんや海未ちゃんと、どう接していいのかも…全然わからない」

穂乃果「私って…こんなだっけ…」

穂乃果「昔の私は…こんなことで悩んだりする穂乃果だったかなぁ…」


(穂乃果「行こう!海未ちゃん、ことりちゃん!あの夕日が沈む場所まで!」)

(海未「む、無理です~!」)

(ことり「たどり着く前に日が暮れちゃうよ~…」)


穂乃果「なんにも考えないで、自分の思ったこと、思ったとおりにやっちゃうお調子者で…」

穂乃果「でも悩んだりなんか、したことなかった…」

穂乃果「したとしても、誰かに相談してすぐに解決して…」

穂乃果「ねぇ、穂乃果」

穂乃果「私は…弱くなっちゃったのかな…?」

穂乃果「…」

穂乃果「…過去の自分に問いかけても、返ってくるはずもないよね」

穂乃果「私は…」


(真姫☆「やっぱりあなたは…私のよく知ってる穂乃果、だった」)


穂乃果「違う世界の西木野さんが知っている私…」

穂乃果「彼女が目指したスクールアイドル…笑顔で満ち溢れた…そんなアイドル…」


(雪穂「楽しいスクールアイドル。そんなお姉ちゃんも見てみたい」)


穂乃果「…違う、私」

穂乃果「…うぅん、そうじゃない」

穂乃果「何も違わない…私は私。ただ、時間が過ぎてしまっただけなんだ…」


(ことり「穂乃果ちゃんはもう、昔みたいに笑えないのっ…?」)


穂乃果「昔みたいに…笑う」

穂乃果「…そうだ、そうだよ」

穂乃果「昔持っていて、今持っていないものがあるのなら…取り戻せばいいんだ」

穂乃果「自分の全てを貪欲に引き出して、全部吸い上げて」

穂乃果「私の生きてきた人生に、無駄なものなんて何一つない」

穂乃果「全部私の強さだったんだ…」

穂乃果「…無駄だと思って捨ててきた強さ、それを拾いに戻ろう」

穂乃果「以前希さんも言ってたし。進むべき道がわからないとき、振り向いてみればいい…」

穂乃果「そこには、今まで自分の歩んできた道がある。様々な分かれ道のあった人生が」

穂乃果「多くの取捨選択をしてきた人生…。全部取り戻すんだ…!」

穂乃果「…っ、よしっ!!」


ガララッ…

穂乃果「すぅっ…」

穂乃果「わーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」


ビリビリ…


雪穂「お、お姉ちゃんっ!?」

ほのママ「穂乃果!?ちょっと、何大声出して…」


穂乃果「お母さん、雪穂!ちょっと…今から走ってくる!」


ほのママ「えぇ…?」


穂乃果「体が疼いて仕方ないんだ!うおおぉぉぉぉぉっ!!!」ダダダッ


ほのママ「…ど、どうしちゃったのかな。穂乃果…」

雪穂「んー…、でも、元気出たみたいだし」




穂乃果「はぁっ…はぁっ…!」タタタタッ…

穂乃果(細く鋭く、磨き上げてきた高坂穂乃果という強いつるぎ)

穂乃果(でももうその剣は、自分すらも傷つけてしまうほどに鋭くて)

穂乃果(だから今は…くっつける!これまで生きてきた私を、捨ててきた私をくっつけてくっつけて…!)

穂乃果(丸く!大きく!!太陽のように!)

穂乃果「はあああぁぁぁぁぁぁっ…!!」タタタタッ…!!

ダッ!!


穂乃果(高く飛んで、太陽だって掴める!無理なんて、1ミリたりとも思わないっ!)

穂乃果(それがっ…!)

穂乃果「それがっ!!」

穂乃果「私なんだ―――!!」

今日もあまり進まなかった また次回 ほなな

>穂乃果(高く飛んで、太陽だって掴める!無理なんて、1ミリたりとも思わないっ!)
>穂乃果(それがっ…!)
>穂乃果「それがっ!!」
>穂乃果「私なんだ―――!!」

…グキッ

とかズッコケてもギャグ補正が効きそうな穂乃果に戻ってきた

ちんちん生えてる奴ならMuse1スレ目の10話あたりだったと思うます
そんじゃ、脳みそフルスロットルでやっていくよん

真姫☆(みんながそれぞれに抱く思い、悩み)

真姫☆(各々が抱く夢が叶う寸前に、それを阻むように湧き出てくる)

真姫☆(叶いそうだからこそ、新たに悩む)

真姫☆(夢を叶えるということは、世界を変えると言うことだから)

真姫☆(自分にとっての理想郷を、新しく構築することなのだから)

真姫☆(未知の体験に、悩みは付き物であるのだから)

真姫☆(初めはみんな、ひとりで抱え込む悩み)

真姫☆(でも私は、私たちは、どんな時でもそれを解決してきた)

真姫☆(やり方はいつだって一緒)

真姫☆(…そうよね?)



数日後


希の家


真姫☆「…むむむ」


真姫☆(穂乃果から依頼された、絵里を助けるためのピース)

真姫☆(未だ一向に、集まる気配がなかった)

真姫☆(凛は外に出向いて過去のことを色々と探してきてくれているけど…収穫は乏しいわね)

真姫☆(とにかく、私は今までの絵里の行動を思い出し、そこから彼女の夢を探ろうと考えていた)


真姫☆「…今まで絵里がしてきたことは」

真姫☆「次代のA-RISEを強くする…、そのために弱者を餌にする…、その計画に邪魔になりそうなスクールアイドルが居れば排除する…」

真姫☆「何度考えても絵里は過激な方法でA-RISEを頂点に導くため、だとしか思えない…」

真姫☆「うーん…、うーん…」

真姫☆「…私ってば、また一人で悩んで…。困ったときは誰かを頼る、って散々言ってきたことなのに」

真姫☆「頼る…か。思えば穂乃果も、私を頼ってくれたのよね」

真姫☆「今まで誰も頼ることなく、一人の力で頂までのし上がってきた穂乃果が、初めて誰かに頼った」

真姫☆「それが…絵里を助ける、か…」

真姫☆「…それは、穂乃果が特別優しいからなのか。絵里の人心掌握が上手だったのか」

真姫☆「はたまた…本当に絵里は、穂乃果から尊敬されていたのか」

真姫☆「どれにしろ、深刻に考えてくれる誰かがいる、っていうのは…崖っぷちの中の唯一の希望よね…」

真姫☆「穂乃果。あなたも今、絵里を救おうとしているのかしら」

真姫☆「…それとも、別のことで悩んでいたり?」

穂むら


にこ「なんで…なんで今日は穂乃果の実家なわけ…?」


穂乃果「にこちゃん、今日はうちで話したいことがあって」

にこ「練習は…まぁ、いいけど。適度に休日を入れるのも、ある意味新鮮よね」

穂乃果「そうかもね。あ、雪穂ー、お茶」

雪穂「はいはーい。もー、人使い荒いんだからー」

にこ「…で、話って?」

穂乃果「あのね、私…絵里さんを今の状況から救ってあげたいって思ってるの」

にこ「え…絵里を、今の状況からって…」

穂乃果「彼女の夢が破れて、暗い深い闇の底に閉じ込められている…そこから救い出したい」

穂乃果「そのために、にこちゃんにも知恵を貸して欲しいんだ。お願い」

にこ「…絵里を、救うの…?」

にこ「ば、バカげてるわ…。絵里のことなんか放っておきなさいよ。確かに、アイツの指導のおかげで私たちは強くなれたかもしれない…」

にこ「でもっ…、それ以上に大事なものまで失いかけたのよ…。私を食い物にされかけたの、穂乃果だって知ってるでしょ…?」

にこ「…絵里のための力なんて、貸したくない」

穂乃果「…」

穂乃果「…にこちゃんがそう言うって、わかってた」

穂乃果「わかった上で、お願いなのっ…!」

穂乃果「にこちゃんが絵里さんのことを憎んでいるのは私にだってわかる、私だって…彼女が正しいだなんてもう思ってない!」

穂乃果「でもっ…、私が助けたいって思ってるから!」

穂乃果「にこちゃんが絵里さんのために力を貸してくれなくてもいい…だから」

穂乃果「仲間のために…私のために、力を貸して欲しい。な、なんだってするから…」

穂乃果「お願いしますっ…」グイッ

にこ「…」

にこ「…驚いたわね。あの穂乃果が、私に対して…頭を下げるなんて」

にこ「なんだか穂乃果に…別の人の影を重ねちゃったわよ。一瞬」

穂乃果「…」

にこ「…頭、あげなさい。仕方ないから協力してやるわよ」

穂乃果「にこちゃん…ありがとう」

にこ「だけど、なんだってするって言ったからには、なんだってしてもらうわよ?」

穂乃果「…う、うん。できるだけ頑張る」

神田明神


パンパン…


希「…よっ、っと…」

海未「希、足のタイミングがずれていますよ」

希「あ、ごめっ…あわったったっ…!」

真姫「きゃっ!希せんぱっ…ごめんなさい!私がぶつかったせいで…」

海未「二人共…先ほどから上の空では?やる気がないのなら…」

ことり「そう言う海未ちゃんも、手拍子ずれてるよ」

海未「あっ…」

ことり「…みんな、上の空、だね。私も全然集中できてなくて」

真姫「せっかく、A-RISEに後一歩、ってところまでたどり着いたのに…これじゃあ…」

海未「…」

希「…悩んでる時は…」



花陽「あ、みんなー!練習頑張ってる~?」



ことり「花陽ちゃん!」

真姫「それに…」

凛「えへへ、こんにちは」

希「凛ちゃん!?いいの…?病院から出てきて」

花陽「はい。今日やっと外出許可が付き人ありの条件で下りて。こうして車椅子で凛ちゃんを外に連れ出してるんです」

海未「あの神田明神の階段を車椅子押して上がってきたんですか…?無茶しますね…」

真姫「肩は…大丈夫なの?」

花陽「うん?あぁ…、もうほとんど平気。明日から練習、再開しようかなって考えてて」

凛「凛もかよちんの練習してるところ見たいにゃー!」

花陽「うん、だから凛ちゃんも毎日連れてきてから練習…」

花陽「…ん?なんかみんな…元気ない?」

ことり「え、えっ…?どうして?そんなことないけど…」

花陽「なんだか…どんよりした空気だった気がしたから。気のせいならいいけど…」

真姫「そうそう。気のせいよ。私たちはいつも通り元気なんだし!」

海未「練習、明日から再開するのでしたら、ちゃんと見学に…」


希「…待って」


花陽「希さん…?」

希「やっぱり…、無理はいけないよ」

希「みんなそれぞれに悩み事があるなら、こういう時、いつもどうしてたん?」

ことり「いつも…」

真姫「だ、だから悩み事なんてっ…」

花陽「やっぱり、あるんだ。うん、だったら一人で抱え込んじゃダメ」

花陽「困ったときは、みんなに相談する。私が学んだことでもあるよね」

海未「…そうでしたね」

花陽「でも、でもさ…いつだってそうだったよね」

ことり「いつだって?」

花陽「私たちみんな、同じだった」

花陽「誰もが、みんな最初は、一人で悩んでて」

花陽「自分ひとりで、なんとかしなきゃって…そう思い込んでた」

ことり「あ…」

希「…自分ができる範囲じゃないって、わかってたはずなのにね」

海未「恥ずかしかったのでしょうね…。悩みを人に打ち明けるというのが」

花陽「でもね、解決するときも…いつも同じ」

花陽「ガマンできなくなって、誰かを頼ったら…びっくりするくらい上手くいく」

真姫「たった一人で背負い込んでた悩みが、嘘みたいに消えていく…」

ことり「まるで、きっちりとはめ込まれた歯車のように噛み合って」

花陽「私たちみんな、そうだったよね」


(花陽「私が夢見たアイドルは…どこにも、いない、のかなぁ…?」)


ことり「…うん」


(ことり「じゃあやっぱり…、このまま…変わり続けない方が、いいってことですか」)


海未「まるで誰かさんに導かれたかのように」


(海未「…決まってます!恥ずかしいからです!!」)


希「実際、導かれててんけどね」


(希「…せやね、悩み事…相談したいことあったんよ。西木野さんのことについて」)


真姫「…腹立たしいくらい、私たちのこと、心配してくれるおせっかい焼きだものね」


(真姫「わ、わたしで…いい、の…?わたしっ…なんか、でっ…!」)



凛「…?むー、なんかみんなだけいい雰囲気共有しててズルいにゃー」

花陽「あ、ごめん凛ちゃん…。あ、でも凛ちゃんも、その誰かさんのおかげで助かったんだよ?」

凛「お、そうだったの?へー、その人すごいね」

ことり「うん、すごい子だよ」

海未「そして、無茶しすぎる子でもあります」

希「そういえば…また何か厄介事、抱えてた気もするなぁ~ふふふ…」

真姫「…そうね。今度は私たちが」

花陽「導いてあげよう!」

凛「にゃ?どうするの?」

真姫「今から行くのよ!」

希「ほな、行くよーっ!目標は勿論っ…!」

希の家


真姫☆「くぅっ…あぁ、もう…どうすれば…」


ガチャッ!!


希「ただいまー!」

ことり「お邪魔しますっ!」

海未「あがらせていただきますよ」

真姫「あぁ、希先輩の家の匂い…。芳しいわね」

花陽「えへへ、久しぶりだね。この家も」

凛「あ、お邪魔します…」


真姫☆「」

希「んふ、ただいま」

真姫☆「あぁ、おかえり…じゃないわよ!?何この大所帯っ!」

海未「何、ではありません。聞きましたよ?なにか悩んでいることがあると」

真姫☆「なっ…、なぜそれを」

真姫「希先輩よ」

真姫☆「あぁ…。で、でもそれは私の問題でっ…!」

ことり「あぁもうダメダメ!悩みは共有するのが私たちのルール、そうでしょ!」

真姫☆「いつ決めたの…」

花陽「暗黙の了解だよ、ね?」

真姫☆「…まぁ、そうね」

凛「わ!よく見たら西木野さん二人いる!?」

真姫☆「…それは後でね。はぁ…仕方ないわね!」

真姫☆「そうよ!クリスマスから私悩みっぱなしよ!だから…」

真姫☆「助けて、みんな!」

ことり「うんっ!」 海未「いいでしょう!」 希「あたりまえやんっ!」 真姫「やってあげるわ」 凛「お?…んー、じゃあオッケー!」

花陽「…もちろん」

真姫☆「…ふふっ。ありがとう、みんな」

真姫☆「じゃあ、この問題について…私たちみんなで考えましょう」

真姫☆「一人では思いつかないことも、みんなでなら考えつくわ!」

穂むら


にこ「絵里の夢…?」

穂乃果「私はそれが、絵里さんを救う鍵になるんじゃないかと思ってるんだ」

にこ「…確かに、度々口に出してはいたけど、それがなにか具体的には知らないわよね。私たち」

穂乃果「うん。だから」

にこ「って言われても…アイツの考えてることなんて何一つわかんないわよ」

穂乃果「…にこちゃんにもムリ、かな…」

にこ「絵里は所詮、人の痛みがわからない人間なのよ。そんなヤツの夢なんて私たちの考えつかないことに決まってるわ」

にこ「A-RISEを強くして世界征服とか…、A-RISEで東京を火の海に沈めるとか…そんなテロリストまがいのことでも考えてたんじゃない?」

穂乃果「さすがに発想が飛躍しすぎだよ…。絵里さんだってそこまでじゃ…」

穂乃果「…」

にこ「…ん?どうしたの?」

穂乃果「…そこまでじゃない。絵里さんは…」

穂乃果「人の痛みがわからない…?本当にそこまでの…人間なの?」

にこ「は?何言ってるの…」

穂乃果「彼女はアイドル応援部に過去所属し、かつてのA-RISEメンバーに信頼されうるほどの実績を挙げていた」

穂乃果「そんな人が、人の痛みがわからない人?」

にこ「で、でないとあんな指導はしないでしょ!人を使い捨てるような真似…」

穂乃果「…その指導も、全てわかった上でだとしたら」

にこ「わかった上…?」

穂乃果「切り捨てられた彼女たちの痛み、思い…それらが最強のA-RISEを生み出すための致し方ない犠牲」

穂乃果「そうじゃなくて、それも彼女の夢の一部だったとしたら…」

にこ「穂乃果…?」

穂乃果「そもそも、絵里さんを…絵里さんを指導できるようにしたのは誰…?」

穂乃果「誰が絵里さんを指導して、多くのコンクールを受賞できるほどの強さを…」

にこ「おーい、ちょっと…?」

穂乃果「…」

穂乃果「もう少しで、何かが繋がりそう」

穂乃果「なにか、橋渡しをしてくれる何かがあれば…」

にこ「ひ、人の話を聞きなさいよ…」

穂乃果「…」ブツブツ…

にこ「にこを呼んでおいてこの扱い!?いいわよ!だったら一人で喋ってるから!」

にこ「あのね、この間なんと元日によ!?元日にメイドカフェに行ったらねー、そのメイドカフェですごいことがあって…」

穂乃果「…」ブツブツ…


雪穂「あ、お茶煎れたよー…。ってお姉ちゃん?にこさん…?なんか異様な雰囲気…」


にこ「実はそのメイドカフェでメイドがライブをしてたのよ!見るからに中学生っぽい風貌の…」

雪穂「え?」

にこ「え、何?」

希の家


花陽「絵里さんを救う…」

海未「これはまた、予想外な…」

ことり「穂乃果ちゃんから頼まれた…か」

希「えりちを…ねぇ」

真姫☆「今は彼女の夢が何かを掴むために色々脳内で模索してはいるんだけど…あまりピンと来なくて」

真姫☆「彼女、やることは過激だけど…絵里のしていた行動には『A-RISEを強くする』というハッキリとした芯があった」

真姫☆「だから、それ以外に考えられないのだけど…」

希「今までのやり方からするにしっくりこない、か…。うーん、確かにね」

海未「大体、強いというのであれば今でも十分に強いですし…」

花陽「指導の権力を奪われたからといって、A-RISE自体は続いていくんだし…もうさほど期間が残ってたわけでもないのに」


一同「…」


「…あの」


真姫☆「ん?」

真姫「いいかしら。意見なんだけど…」

希「何かな?」

真姫「さっき…あなたは、絵里の行動に『A-RISEを強くする』という芯がある、って言ってたけど…」

真姫「…私にはそうは思えないわ」

ことり「そうなの?どうして?」

真姫「だって、彼女が…絵里が私に指導補佐を任せようとしたときに言われたことは…」

真姫「…A-RISEを目指す少女たちを、まるで憎んでいるかのような言葉だったから」

海未「指導補佐…そういえばそうでしたね」

真姫☆「確かにそのときのこと…まだ聞いてなかったわね。なんて、言われたの?」

真姫「私が絵里に、アイドル専攻生にして欲しいと言われた指導は…」



~回想~




……


絵里「…今は、どっちつかずの状態、ってことよね」

絵里「過去に、嫌いになったという事実がある…」

絵里「今はなりを潜めて、胸の奥深くで眠っている…」

絵里「そして、才能に溢れている…」

絵里「…そんなあなただからこそ、いいのよ」

真姫「どういう…こと?」


絵里「アイドルが嫌いだったのなら…いっそ壊して」

真姫「…え?」

真姫「壊す…?」

絵里「えぇ、アイドル専攻でA-RISEを目指す少女たち。彼女らを…散々いたぶって欲しいのよ」

絵里「肉体的なやり方は…多少はまぁいいけど、傷が残っちゃダメだから」

絵里「精神的に、もうアイドルが大嫌い、ってなっちゃうくらい、キツい仕打ちをお願い」

真姫「はぁ…?」

絵里「…安心して。これはアイドル専攻に必要なことなのよ。A-RISEが最強であるために必要な…ね」

絵里「非道な教官になりきって、彼女ら自身から汚泥に塗れてもいいと思えるような地獄を味わわせて欲しい」

絵里「そうすれば彼女らは強くなれる。そして…あなたが私の言うことを聞いてくれるなら…あなたの渇きを癒してあげるわ」

真姫「渇き…?」

絵里「誰かに、愛されたいって気持ち」

真姫「っ…!」

絵里「アイドルを、アイドル専攻を嫌いになればなるほど、私のことを好きになってくれればいいの」

絵里「そうすれば私もあなたを愛してあげる。あなたの欲するように…ね」

真姫「…」

絵里「…ってことなんだけど…どう?」

真姫「えっ…」



~回想終わり~


真姫☆「アイドル専攻生を…壊すっ…!?」

真姫「最初はそれが指導の一環となるんだ、って思ってたんだけど…」

海未「…明らかにやり方としてはおかしいですね」

希「えりちは、やり方は過激であれども…練習という体は崩さずに指導していたはず、なのに…」

希「西木野さんに頼んだことは、明らかに…アイドル専攻生の心を直接折りに来るような行為…」

真姫☆「以前絵里が言ってた、キノから反逆する誰かが現れるための布石…にしても…」

花陽「ちょっと…やりすぎな気がする。反逆する前に、アイドルする気をなくしちゃったら元も子もないよ…」

ことり「来年のA-RISEは決まっているとしても、再来年、どうなるかわかんないんだもんね…」

凛「絵里先輩はアイドル専攻をやめる子に対しても、最後まで優しく接する人だって聞いてた」

凛「そうやって絵里先輩の指導じゃなくて、アイドル専攻自体や、指導についてこれなかった自分に憎しみが集まるように…って」

希「えりち自身にヘイトが溜まらないようにする処置やね。けど…」

真姫☆「さっきの話を聞くと…まるで生徒にアイドル専攻を嫌いにさせようとしているみたいね…」

ことり「ねぇ、真姫ちゃん…。やっぱり絵里さんのやり方は、『強いA-RISE』を作るだけじゃない…んだよね?」

真姫☆「えぇ、そのようね」

ことり「だったら、考え方を変えてみよう?」

海未「変える?」

ことり「今までやってきた絵里さんのやり方のうち、『強いA-RISE』を求めるにあたって反してる行動…それを思い出してみたらどうかな?」

真姫「A-RISEを強くするために必要でない行動ってこと…?」

花陽「もしくは、必要なのにしてこなかった事…?」

真姫☆「…それって…」

穂むら


にこ「実はそのメイドカフェでメイドがライブをしてたのよ!見るからに中学生っぽい風貌の…」

雪穂「え?」

にこ「え、何?」

雪穂「メイドカフェって…アキバのキュアメイドカフェですか?」

にこ「え、まぁ…そうだけど」

穂乃果「…ん?雪穂…知ってるの?」

雪穂「う、うん…、もしかしたらなんだけど…。そ、その子って…」

雪穂「…金髪ですか?」

にこ「え?あぁ…そうね、すごい綺麗な色の薄い金髪で、あれは長年染めないとでない色なんじゃ…」

雪穂「じゃあ知ってます!その子、私の知り合いなんです!」

にこ「あ、そうなんだ。じゃあ…」

穂乃果「ま、待って雪穂っ!それって…」

雪穂「うん、亜里沙だよ。実はさ~…、亜里沙も私と一緒にクリスマスライブ、見に行ったんだけどね」

雪穂「お姉ちゃん達とC☆cuteのライブに心奪われてなんと!UTXでスクールアイドルをやりたい!って言い出して!」

雪穂「なんか冬休みは返上してひたすらアイドルの特訓!って張り切っちゃってさぁ…。私も誘われそうでちょっと怖い…」

雪穂「そのメイドカフェでのライブもスクールアイドルの特訓の一環とかで…」

穂乃果「なっ…!そ、そんなっ…!!」

にこ「へ…?どうしてそんなに驚いてるのよ…。ビビるほどのこと?」

穂乃果「驚くに決まってるよ!だって…亜里沙ちゃんは絵里さんの妹なのに…」

穂乃果「なのになんでロシアにいないのっ!?」

にこ「あっ…!そういえば…。絵里は今帰郷してるのよね…」

雪穂「え、そうなの?…でも、ホンキで今からスクールアイドルやりたい、って張り切ってたから…」

雪穂「もしかしたら一人残ってメイドカフェでバイトしてる、的な…」

にこ「そんなむちゃくちゃな…」

穂乃果「でも、亜里沙ちゃんは今日本にいるってこと…だよね!?」

雪穂「ま、まぁそういうことになるかな…?」

穂乃果「今日も、メイドカフェでバイト…!?」

にこ「ま、毎日やってるらしいから…そうなんじゃない?」

穂乃果「いつから!?」

にこ「たぶん…もう少しくらいで…」

穂乃果「行こう!!」

にこ「へっ!?」

雪穂「行くって…メイドカフェに!?どうして…」

穂乃果「亜里沙ちゃんならっ…もしかしたら!!」

穂乃果「このつながりかけた切れ端に…答えをくれそうだと思ったから!!」

メイドカフェ


『こんにちは~!私は謎のメイドと申します!』

『今日はこれから、もはや冬休み恒例となった…』



穂乃果「ホントに亜里沙ちゃん…実際に会ったのは初めてだけど…」

雪穂「なんでも前にもこのメイドカフェで度々ライブをしてた通称謎のメイドって人の噂を聞きつけて、それを踏襲する形でバイトすることになったみたい…」

にこ「あ、その謎のメイドの噂は聞いたことあるわ!グラサンしてるけどパフォーマンスはなかなかで、結構な人気だったらしいわね!」

穂乃果「へぇ…どんな人だったんだろう。その謎のメイドさん…」

雪穂「今はそれより、亜里沙に話を聞きたいんでしょ?どうするの?」

穂乃果「…ライブの邪魔するのもアレだし…少し待って落ち着いてから聞きに行こう」

にこ「そうね…。いや、それにしても亜里沙ちゃん…いいじゃない。すぐにでもスクールアイドル目指せるんじゃない?」

穂乃果「…それは、どうだろうね」

にこ「へ?」



数十分後…



亜里沙「ほ、穂乃果さぁんっ!!?それに、にこさんまで!雪穂、どういうことなの…?」

雪穂「お姉ちゃん達が聞きたいことがあるんだって」

亜里沙「聞きたいこと…?は、ハラショー…」

穂乃果「…その前に、亜里沙ちゃん」

亜里沙「はい?なんですか?」

穂乃果「サングラスで目線は隠れてるけど…ライブ中はちゃんとお客さんの目を見ようね」

穂乃果「それがスクールアイドルとして欠かせないことだから」

亜里沙「そ、そんなことまでわかるんですかっ…!?すみません、まだ緊張してて!次から参考にして気をつけます!」

にこ(全然気付かなかったわ…)

穂乃果「それで、聞きたいことなんだけど…どうして日本に?絵里さんはロシアに帰郷したって聞いたけど」

亜里沙「はい、お姉ちゃんはロシアへママと行きました。亜里沙はこのバイトをどうしてもやりたかったので、パパと残ることにしたんです」

にこ「ふぅん…よくオッケーが出たわね。いいの?そういうことして」

亜里沙「本当は毎年、亜里沙もロシアに帰っているんですけど…今年はお姉ちゃん、一人きりにしてあげたくて」

亜里沙「亜里沙がそばにいると、無理に元気を出そうとして…痛々しくて見てられないんです…」

穂乃果「…絵里さん、やっぱり…亜里沙ちゃんの前では…」

亜里沙「元旦には毎回ロシアでお墓参りもしているので、本当は行かなきゃいけなかったんですけど…今年だけはワガママを言って」

にこ「ふぅん…」

亜里沙「あの、聞きたいことってこのことですか?」

穂乃果「うぅん、もう一つ…。絵里さんは昔、小学生位の頃にバレエをやっていたらしいけど」

穂乃果「その指導をしていたのは誰なのかなって」

にこ「バレエ…?なんで今更その話を…」

亜里沙「お姉ちゃんのバレエの指導は…おばあさまがしていました。亜里沙は小さかったので、あまり覚えてませんが」

雪穂「へぇー…、おばあさまってロシアの人?」

亜里沙「うん。私たちがクォーターだから…おばあさまが純血のロシア人…ってことになると思う」

穂乃果「…絵里さんは、そのおばあさまに会いにロシアへ?」

亜里沙「はい。…ただ…」

希の家


真姫☆「A-RISEを強くするために必要だったにも関わらず、しなかったこと…それは…」

真姫☆「『熱狂』よ」


花陽「熱狂…?」

凛「盛り上がるってこと?」

海未「どういう意味ですか…?」

真姫☆「A-RISEに関して、アイドル専攻はガチガチに報道規制を敷いているわ」

真姫☆「A-RISEと廊下で出会っても決してアイドルとして関わってはいけない」

真姫☆「A-RISEが行動しているところに、会話をしてはいけない」

真姫☆「A-RISEが活動するホール内に、アイドル専攻生やその関係者以外が入ってはいけない。出待ちも禁止」

真姫☆「そのアイドル専攻生ですら、会話ができない者がほとんど」

真姫☆「アイドル応援部も、希や絵里のような上層部は会話できても、一年生のにこちゃんみたいなひよっこは一度も会話できてなかった」

真姫☆「『A-RISEというアイドルに憧れさせる』という名目にしては、彼女らに対する扱いが厳しすぎるとは思わない?」

真姫「確かにそうね…。でもA-RISEへの憧れが強くなれば人気も上がるものじゃない?加減が効かなかっただけじゃ…」

真姫☆「甘いわね。私たちの世界では、スクールアイドルがどうして人気になったのか…その理由が明確なのよ」

希「どうしてなん?」

真姫☆「…プロじゃないからよ。もっと言えば、身近な存在だから」

真姫☆「アイドルになりたいと考える女の子達から身近な存在である現役の高校生がアイドルをするから、スクールアイドルは人気となった」

真姫☆「今のA-RISEの扱いは明らかに…プロ級のものだわ。高校生でありながら、全く身近な存在となりきれていない」

真姫☆「だから、日頃の熱狂が起こらない。UTXの生徒が騒ぎ出すのは、ライブがある時か新曲の発表の時だけ」

真姫☆「それはUTX生にとって唯一、A-RISEがアイドルでいてくれる日だからよ」

真姫☆「でもそんなの…余りにもおかしいわ。もっと日頃から多く触れ合う方が、人気出るに決まってるもの」

海未「しかしそれは、アイドルと学業の両立を目的とした規制なのでは…」

真姫☆「だとしても極端すぎるわ。ファンとのふれあいが大事だなんて、アイドル応援部に所属していた絵里ならわかって当然のはずなのに」

真姫☆「クリスマスライブの直前まで、私たちは私たちを宣伝しまくって、学内を熱狂に包み込んだことで、C☆cuteへの熱意を増幅させた」

真姫☆「ある意味ではそのおかげで、C☆cuteはギリギリのところまでA-RISEに近づけたと言えるかもしれない」

真姫☆「つまり今のA-RISEは、完全にパフォーマンスのクオリティだけで人を惹きつける存在になっているの」

凛「…いいことじゃないの?」

真姫☆「良くないわよ。パフォーマンスのクオリティを追求しすぎた結果が、あなたなんだから」

凛「あ、そっか…」

真姫☆「このように、簡単に人気を集めることのできる要素を捨て置いて、絵里はA-RISEを強くしようとした」

真姫☆「このことから絵里は…『A-RISEに人気になって欲しくなかった』と考えられるわ」

海未「ど、どういうことですか!?A-RISEを人気にしたくて、あれほど頑張っていたのでは…」

真姫☆「絵里が求めていたのは、A-RISEをスクールアイドルの頂点に立たせることよ。そして、かつ…UTX生からの人気を最低のものとしたかった」

ことり「強いけど、人気がない…。よくわかんないなぁ…」

真姫「で、そうなると…A-RISEはどうなるの…?」

真姫☆「…以上から鑑みると、このままが続けばどうなるかはわかるのだけど」

真姫☆「でも、肝心の…」


ピリリリリ… ピリリリリ…

花陽「うん?電話の音?だれの…」

希「うちちゃうよ?」

真姫☆「…私だわ。ったく、人が調子よく喋ってるのに…」ピッ

真姫☆「もしもし…」

凛☆『あ、もしもしー。凛だにゃ』

真姫☆「あ、凛じゃない。どう?絵里に関して収穫はあった?」

凛「え、凛はここにいるんだけど…」

花陽「ま、まぁ色々あるから…」

凛☆『絵里ちゃんに関して調べることはできなかったんだけどねー、一応この世界の過去のことについては収穫ありだよ!』

真姫☆「へぇ、やるじゃない!でかしたわ!」

凛☆『って言っても、役に立つ情報かどうかはわかんないんだけど…』

真姫☆「いいから早く言いなさい」

凛☆『はいはい。…この世界ってさ、UTX学院が凛たちの世界より10年も早く設立された世界って言ってたよね』

真姫☆「えぇ、そうらしいわね」

凛☆『それでね、その影響かどうか知らないけど実は…』

真姫☆「実は…?」

凛☆『実は…』


凛☆『音ノ木坂学院が廃校になってたのが、UTXが設立した数年後らしいんだ!』


真姫☆「…はぁ」

凛☆『これってなにかの役に立たない?』

真姫☆「ちょっとわからないわ…。まぁでも、歴史が変わってるのは間違いないみたいね」

真姫☆「でも音ノ木坂学院が十数年前に廃校になっても、絵里の何かが変わるとは思えないわ…」

凛「音ノ木坂?なんの話?」

真姫☆「え、だから…って、そっちか。電話の方からとこっちからとで凛の声がしたらこんがらがるじゃない」

凛「知らんし…」

ことり「真姫ちゃん、音ノ木坂の話してるの?また懐かしい名前だね」

希「知ってるん?ことりちゃん」

ことり「うん。実はお母さんの前職が音ノ木坂学院の理事長だったの」

花陽「そ、そうなんだ…!」

海未「あぁ、そういえばそんな話を聞いたことがあります。実は私の母も音ノ木坂のOGらしく…」

真姫「えっ!海未ちゃんもなの?私のママも…」

花陽「実は私のお母さんも…」

希「音ノ木坂のOG、多くない…?」

真姫☆「仕方ないわよ、昔このあたりで高校と言えば音ノ木坂って感じだったらしいし」

ことり「お母さん、廃校が決定したときは普段通りだったらしいけど、いざ取り壊しになったときひどく寝込んだみたい…」

海未「私の母も落ち込んでいたと聞きました。母校が無くなるのはショックだったのでしょうね」

真姫「もし今もまだ音ノ木坂があったらどうなってたんでしょうね」

花陽「私たちも、音ノ木坂に行ってたのかなぁ?」

真姫☆「ふふっ…、そういう世界が私たちの世界で…」

メイドカフェ


亜里沙「…――なので」



穂乃果「…ッ!!!」

にこ「えっ…そう、なんだ…」

雪穂「あ、だから亜里沙…、ん?お姉ちゃん…?」

穂乃果「…」

穂乃果「『その理由』が…、もし、……だったとしたなら」

穂乃果「…絵里さんの目的が…繋がる…!」




希の家


真姫☆「ふふっ…、そういう世界が私たちの世界で…」

真姫☆「…」


真姫☆「…あ?」


花陽「うん?どうし…」

真姫☆「あ…」

真姫☆「ああぁぁぁぁぁっ…!!」

真姫☆「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

ことり「うわっ!?どうしたの…?」

真姫☆「嘘…、嘘よっ…!!でも、でももしかしたら…そう、なの…?」

希「な、何…?」

真姫☆「希っ!!絵里の過去について…この間話した以上のことは、本当に知らないのね!?」

希「う、うん…。うちの知ってるえりちは高校2年間のことくらいで…」

真姫☆「じゃあ、私のこの推測を知ってる人は…」

真姫☆「…もしかしたら、穂乃果は?」

真姫☆「絵里のことを調べている穂乃果は、もしかしたら…っ!」

真姫☆「凛っ!電話、切るわよっ!!」

凛☆『え、あ、ちょっ…』ピッ

真姫☆「穂乃果…穂乃果ぁっ!!」ポピピ…



穂乃果「…っ、西木野さん…!!」ピッ

にこ「な、なんなのよ…!?なにか、今ので分かったの…?」





真姫☆・穂乃果「「もしもしっ!!」」

真姫☆「穂乃果っ…!その声、もしかして何か掴んだのね…!?」



穂乃果「西木野さんこそ…聞きたいことに応えてよね…!!」



真姫☆「もしかして、絵里のっ――……」


穂乃果「ひょっとして、絵里さんにとって――……」





メイドカフェ


ピッ

穂乃果「…」


にこ「穂乃果…?」

雪穂「お、お姉ちゃん…」

亜里沙「穂乃果さん…?」



穂乃果「…繋がった」

穂乃果「彼女がしたかったこと…!全部、わかった…!!」

にこ「そ、そうなのね…?」

穂乃果「にこちゃん」

にこ「な、なによ…?」

穂乃果「私、言ったよね。なんでもするって」

にこ「は?あ、あぁ…確かに言ってたわね…」

穂乃果「私、今から…」

穂乃果「なんでもする。何をしても…絵里さんのところへ行くっ!だから…」

穂乃果「にこちゃんも付き合って!」

にこ「はああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?!!?!」





希の家



真姫☆「…ふ、ふふ…ふふふ…!」

真姫☆「なんて、ことなの…!」


海未「ま、真姫…?何が、あったのですか…」

希「さっき、穂乃果ちゃんに聞いてたこと、って…それ…」


真姫☆「…ねぇ、花陽」

花陽「え?わ、私…?ここで…?」

真姫☆「あなた、旅行へ行きたい、って言ってたわよね」

花陽「う、うん…。冬休み中に行こうって…」



真姫☆「今から、行きましょう」

めっちゃ急いで書いたので文章グチャグチャかもしれませんが今日はここまで
じゃ、また次回をお楽しみに 眠いんじぇー ほなな

最近ホント遅くてごめんね 今日は早めに更新
それじゃ、やっていきます

同日 朝

ロシア 絵里の実家



絵里「…」


コンコン

「…エリー、今日も部屋に篭もりきり?せっかくロシアまで来たのに…」


絵里「…放っておいて…。もう、いいから…」


「…わかったわ。でも、今日の夕方には日本に帰るから、荷物の支度だけはしておいてね」


絵里「わかってる。…母さん」

絵里「…」



絵里(…私は)

絵里(私は何をしているのだろう)

絵里(いや、何もなすことができなかったんだ)

絵里(私が幼き頃から胸に刻んだ強い思い)

絵里(強い『憎しみ』を原動力として、成そうとした私の『夢』)

絵里(それは…儚く露と消えた)

絵里(結局、私は何もしてこなかったのと同じだ)

絵里(思えば馬鹿なことをしたものだった)

絵里(夢のための手段だったはずが、いつしかそれが私の愉しみとなってしまっていた)

絵里(私は弱者を…アイドルを夢見る少女たちをいたぶって遊んでいたんだ)

絵里(憎しみのはずが知らぬ間に、愉悦を原動力として動いていた)

絵里(だから…そんなだから成せなかった。後一歩のところで、選択を誤った)

絵里(何もかもを無くしてしまおうとした私)

絵里(無くなってしまったのは、私自身だった)



(亜里沙「お姉ちゃん、私ね…昨日のクリスマスライブ、見に行ったんだ」)

(亜里沙「すごかった!A-RISEも、C☆cuteも、…アイドルってあんなに、素晴らしいものなんだ…!」)

(亜里沙「亜里沙ね、急だけど、これからスクールアイドル目指してみようかな、なんて思ってるの」)

(亜里沙「それで、お姉ちゃんは嫌だってたけど…亜里沙、UTX学院に行きたいな。A-RISEやC☆cuteのようになりたくて…」)

(亜里沙「お姉ちゃんが指導していた学校だもん!きっと、いい学校なんだよね?だから…」)



絵里「…違う。違うのよ…」

絵里「私は…あなたに行って欲しくない…」

絵里「UTXなんかに…絶対に…っ!!」

絵里「あそこは…」

絵里(…言えるはずもなかった。家では善良な姉を装ってきたから)

絵里(まさか姉が…こんなとんでもない夢を抱えているなんて、亜里沙は夢にも思っていないでしょう)

絵里(結果的に、私の嘘が…私から亜里沙まで連れ去ってしまった)

絵里(もう私に残されているものは…何も…ない…)

亜里沙「お姉ちゃん」


絵里「…」


絵里(亜里沙の声が聞こえる)

絵里(きっと夢か幻聴か何か。そうなるまで私は…亜里沙を欲しているのかしら)

絵里(なんて烏滸がましい。私への信頼すら、スクールアイドルに奪われた私が…)



亜里沙「…お姉ちゃん。私…私ね」

亜里沙「スクールアイドルになりたい」


絵里「…やめて。スクールアイドルなんて…」

絵里「あんなの…もうたくさんよ…」


亜里沙「スクールアイドルって、見ていてとっても楽しい気持ちになれるんだって気づいたの」

亜里沙「お姉ちゃんは、楽しくない…?」


絵里「…ない。楽しくなんか…ないわ」

絵里「スクールアイドルは…A-RISEは…手段に過ぎないの…!!」

絵里「私が目指していたのは…」

絵里「復讐なんだから…!!」


亜里沙「…」

亜里沙「顔をあげて、お姉ちゃん」


絵里「え…」

絵里「…え?」


絵里(頭を上げると、亜里沙がいた)

絵里(幻覚…違う。間違いなく、亜里沙)

絵里(どうして…?どうして。だって亜里沙は、東京に残ったはず)

絵里(一人でロシアまで…?もしくは父さんと一緒に…)


亜里沙「私、A-RISEも、C☆cuteも大好き。だけど、この前のクリスマスライブで票を入れるとしたら…」

亜里沙「亜里沙はC☆cuteに入れたい」

亜里沙「きっと、お姉ちゃんを元気にしてくれる力の源を、C☆cuteは持ってると思うから」

亜里沙「復讐にばかり…縛られちゃダメだよ」


絵里「…」

絵里「…何が」

絵里「私の気持ちも知らないで…、元気に…なんて…!!」

絵里「あなたの一票がなんだというのっ…!そんなのあったところで、何も変わらない…!!」

絵里「人の心も、現実も…そう易易と動かせるものではないのよっ…!!」



「…いえ、変わったわ」

「ついに、追いついたのだから」

「この世界の凛。雪穂ちゃん。そして、亜里沙ちゃん」

「この3人の票で、C☆cuteはついにA-RISEに追いついたわ」

「変わらないものなんてない。現実も…そして、人の心ですら」



絵里「…この声…!まさか…」



真姫☆「…おはよう、絵里。ロシアは6時間前なのね」



絵里「…西木野、真姫…!?」

絵里「真姫っ…、あなたが、どうしてここに…」


穂乃果「…西木野さんだけじゃないよ」

にこ「私たちも、C☆cuteもいるわ」


絵里「なんっ…で…!どうして…?」


凛☆「にゃはーん!ま、軽くクリニックでお空を飛んでね!ちょっとした不法入国ってやつ?」

花陽「堂々と言うのはどうなの…」

海未「この歳で私たち大犯罪者ですよ…」

真姫☆「…まぁ、誰にも知られなければ問題ないのよ」

絵里「不法入国だかなんだか知らないけど、何しに来たのよ…!今更、もうあなたたちと話すことなんて何もないわ…!!」

希「うぅん。何もなくないことない。今まで多くの人を傷つけて、夢の芽を摘んできたえりちだから」

希「…しっかりと、えりち自身の夢も摘む。それが、報いってやつよ」

絵里「私の…夢を…?」

穂乃果「あなたには、あなたの夢の全てを諦めてもらいます。そして…」

穂乃果「諦めた上で、立ち直ってください。新しく夢を見つけてください」

凛「絵里先輩、強いんだから…そんなとこでへばってちゃ笑われるよ?」

絵里「私の夢…私が、強い…?何を、知ったふうな口を…ッ!!」

絵里「あなたたちに私の何がわかるというのっ!!私が、どんな思いで…っ!どんな気持ちで指導をしていたかも知らないくせに!!」

絵里「あなたたちにはわからないっ!わかるはずがないわっ!!」

ことり「…うん。わからないよ。わかりたく、ない」

ことり「人の夢を、道具のように使い捨てる人の気持ち、なんか…!」

真姫「でも、気持ちはわからなくても…あなたの夢は、わかったみたいよ」

絵里「ぇ…?」

真姫☆「今から看破してあげるわ。あなたの夢、野望…幼い頃からの、異様とも思える執念」

真姫☆「そして、それを粉々に打ち砕く。あなたを救うには、その方法しかないからね」

真姫☆「さぁ、これが…この世界での、私の…最後の戦いよ」

真姫☆「この世界の絵里を雁字搦めに縛り付けた、夢…いえ、呪いから」

真姫☆「解放する、戦い」

凛☆「で、絵里ちゃんの夢ってなんなのかにゃ?まだ聞いてないんだけど」

にこ「そうね…。結局聞かされないままここまで来ちゃったし…」

海未「今のところわかっているのが、穂乃果と真姫だけですか…」

希「早く説明してくれる?」

真姫☆「えぇ、わかったわ」

真姫☆「まずは、絵里の幼少時代から遡りましょう」

絵里「…」

凛「幼少…絵里先輩がバレエをやってたっていう?」

穂乃果「うん。絵里さんはロシアのコンクールで数々の輝かしい賞を獲得している」

穂乃果「私たちがアイドル専攻に入ったとき、その賞の写真と、絵里さんの美しいダンスを見せてもらったこと、深く覚えている」

真姫「…そうだったわね。一度見たら忘れられないような、華麗な…っと。また惚けそうになっちゃったわ…」

ことり「それが、夢と関係あるの…?」

真姫☆「えぇ。…その前に、私は異世界人であるのは周知の事実でしょうけど」

凛「え、異世界人だったんだ!?」

にこ「はぁ…。そうだったのね…。双子か何かだと思ってたんだけど…」

花陽「周知の事実じゃなかったね…」

真姫☆「…まぁ、そうなのよ。で、当然のこと、私の世界にも絵里がいるの」

真姫☆「この絵里は、あなたとは違って優しくて少し抜けている頼れる先輩よ」

絵里「…あぁ、そう」

真姫☆「どうして私の知る絵里とあなたがここまで違うのか。その原因はあなたの過去の差異にあると感じた」

真姫☆「私の世界の絵里は、多くのコンクールを駆けては来たけれど、それなりの成績しか残せなかった」

真姫☆「頂点へと輝いたことは、ほとんどなかったって言っていたわ」

真姫☆「でも、あなたは違うでしょう?絵里」

真姫☆「あなたは多くの頂点を獲っている。この差はどういうことか。…何もなかったら、こんな差は生まれない」

花陽「…何が、あったの?」

真姫☆「彼女の幼少期、ほぼ同時期に…あなたたちの通っているUTX学院が創立された。私の世界より10年ほど早くにね」

にこ「な、なによいきなり…」

穂乃果「…関係ある話だよ。聞いて」

真姫☆「これも、私の世界との差。これに関しての理由はわからなかったけれど…でも、この差が生まれたことで、また新たなる差が生まれてしまった」

海未「それが…音ノ木坂学院の廃校…ということですか?」

真姫☆「えぇ、そう。私の通う音ノ木坂が、既に十数年前に廃校になってしまっていて、今は大きな空き地を残すのみとなっている」

真姫☆「長く伝統のある、由緒正しき女子校。それだけに愛着を持っている人も多いわ。自分の親のように感じている人もいるんじゃないかしら」

ことり「うん。お母さんも存外にショック受けてたな…」

真姫☆「…えぇ。そこに通うOGに、多かれ少なかれ、衝撃と悲しみを与えてしまった」

真姫☆「そして、変わってしまった人も、いたのよ」

希「変わってしまった人…?」

穂乃果「…絵里さん。あなたに見せてもらった写真。賞を獲得した年数…よく調べてみました」

穂乃果「初めて金賞を受賞したのは……年。これは…」

真姫☆「音ノ木坂が廃校になったのと、同じ年よね」

絵里「…っ」

真姫☆「音ノ木坂が廃校になって変わってしまった人。それは…あなたの指導をしていた人でしょう?」

真姫☆「あなたが敬愛して止まなかった、そして、音ノ木坂をこよなく愛していた」

真姫☆「あなたの、祖母」

凛☆「聞いた話だと、絵里ちゃんのおばあさまって優しい人だって聞いたにゃ」

凛☆「コンクールに入賞できずに泣いていても、励ましてくれたおばあさまだったって」

凛☆「結構なおばあちゃんっ子で、毎年数度は会いに帰ってるって聞いて…」

絵里「っ…!!?なぁっ…」

亜里沙「え…?会いに…?」

穂乃果「…」

凛☆「え、なんか変なこと言った?」

真姫☆「…凛。少し黙っていて」

真姫☆「きっと、あなたの祖母も、とても優しい人だったのでしょう。…音ノ木坂が廃校となるまでは」

真姫☆「ねぇ…教えてくれないかしら。あなたの祖母が変わったと、あなたが感じているのなら」

真姫☆「どう変わってしまったのか。…そこまでは、私も知らないから」

絵里「…」

絵里「…おばあさまは、本当に優しい人だったわ。彼女のバレエの写真を見て、私はバレリーナを志したのだもの」

絵里「でも、彼女の母校が廃校になったと聞いてから、性格が一変してしまったわ」

絵里「全ては、他校に生徒を取られてしまうような弱さがいけないのだと…弱さなんて存在してはいけないのだと」

絵里「半ば八つ当たりのように、私にきつい指導を行うようになった」

絵里「毎日毎日、新品の靴がボロボロになるまでバレエの練習を行って」

絵里「食事の仕方や、生活態度の端々に至るまで…全てを矯正された」

絵里「強くあれと。それ以外に…意味はないのだと。身体の隅々に染み込まされて」

絵里「おかげで私は強くなれたわ。多くの賞も頂けた」

絵里「だけど…」



穂乃果「…おばあさまは、亡くなってしまった」



絵里「…」

海未「っ…!え…っ!」

真姫「亡くなったって…でもさっき凛は!」

亜里沙「…おばあさまは、亜里沙が本当に小さい頃に、お亡くなりになっています。私は顔も知らないほどに…」

凛☆「ウソ…」

真姫☆「これも、私の世界との差。絵里の祖母は…もう遠く昔に、逝ってしまっていた」

真姫☆「きっと音ノ木坂が廃校になったことがかなりのストレスになったかして…私の世界との差を生んだのね」

にこ「…ねぇ、もしかして…!私…気づいちゃったんだけど…」

にこ「復讐って…まさか、そういう…ことなの…!!?」

希「…うちも、わかった。えりちが今までやってきたことは…」

真姫☆「そう。全て復讐だった」

真姫☆「祖母を殺した原因…UTX学院そのものへの、復讐」

真姫☆「絵里、あなたの夢…それは」

真姫☆「UTX学院を、廃校に追い込むことだったのね」

花陽「えっ…!?ど、どういうこと!?」

凛「い、意味わかんないよ…。だって絵里先輩はA-RISEを最強のスクールアイドルにしようとしてたんでしょ…?」

凛「現にA-RISEは…強いアイドルになってるよ。そしたら学校に来る人も多くなるんじゃ…」

穂乃果「そうかもしれないね。A-RISEに憧れて入学してくる人は、きっと今年は多くなると思う」

穂乃果「でも、…来年までそうとは限らない」

ことり「それって…」

真姫☆「絵里の計画は、彼女が卒業してからが本番だったのよ」

真姫☆「彼女の計画が思い通りに行った場合の、来年度のUTX学院について考えてみましょう」

真姫☆「凛の足はまだ骨折せず、穂乃果たちのA-RISEは最強に君臨し続けたままとして」

真姫☆「アイドル専攻に多くの新入生が参加するでしょう。けれど、…そうね、キノ。そこではあなたが指導しているのよ」

真姫「え?あ、あぁ…そうなるのね…」

真姫☆「あなたの、指導とも言えないような、ただ心を痛めつけ壊す試練が執り行われている」

真姫☆「この時点で相当数のアイドルを夢見る少女はA-RISEを諦める」

真姫☆「数少ない耐えた生徒も、厳しすぎる指導の末身体を壊し諦めざるを得ない人が多数となるわね」

真姫☆「そんな中、誰かがこの環境を変えようとキノを陥れる。アイドル専攻はかなりの混乱の渦と化す」

真姫☆「新しく作られた環境でも、絵里と変わらないような指導が続いて。その中でほんのひと握り、耐え切った生徒が来年度のA-RISEとなれる」

真姫☆「そんな彼女らがもはや、誰かを笑顔にできると思う?」

希「…もう、絶望的やろうね」

穂乃果「UTX内部は、今以上の混沌となってしまう」

穂乃果「そして、そのうちのいつかに…凛ちゃんの足が耐え切れず負傷する」

海未「…ここで、そうなるのですね」

穂乃果「でも凛ちゃんが負傷した責任と言える人はもう…UTXにはいない。体制は、何も変わらず続けられると思う」

凛「…凛の自己責任、ってことで済まされちゃうのかな…」

真姫☆「もう驚く程の地獄絵図しか浮かんでこない。でも、A-RISEは頂点に君臨し続けるわ」

真姫☆「それほどの苦痛を耐えてきたんだもの。そんじょそこらのスクールアイドルには想像もつかない世界でしょう」

真姫☆「誰かを笑顔にすることができなくても、多くの人に驚きと感嘆を与えるアイドル。…A-RISEはそんな存在となる」

真姫☆「だけどそれはもう…遠すぎる存在なのよ。誰かがなりたいと、憧れることすら無くなる最強」

にこ「そこから先は私でもわかるわ。そこまであからさまにきつい指導が続けばアイドル専攻に近寄る人も少なくなるでしょ」

にこ「アイドル専攻だけじゃなくて…UTX自体を敬遠する人も多くなる」

希「今以上に、学院中がピリピリムードになるなら…そうなるかもね」

真姫☆「そして、UTXの評判は地に落ち、高い学費を払ってまで行くような人はいなくなり廃校…」

真姫☆「それが絵里、あなたの思い描いた最良のストーリーなのでしょうね」

絵里「…」

海未「しかし、そこまで上手く事が運ぶでしょうか…。UTX学院はアイドルだけの学校ではないのですし…」

穂乃果「飽くまで最良のルートを辿れば、ってことなんだろうね…。たどり着くのは最悪の未来なんだけどさ…」

穂乃果「けれど、そこまでと行かなくても…遠くない将来、アイドル専攻はUTXの評判を著しく下げる要因になっていたと思う。絵里さんのやり方のままなら」

花陽「少なからず、傷跡は残せる…」

真姫☆「…これが、私と穂乃果が考えた、あなたの復讐計画の全貌よ。…当たっていたかしら」

絵里「…」

亜里沙「お姉、ちゃん…」

絵里「…ふ」

絵里「ふふふふふふ…すごい、のね…」

絵里「…正解よ。泣きたくなるほど、全部正解…」

にこ「…まさか本当に、そんなテロリスト紛いのことしでかそうとしてたなんて…」

凛「他の子達だけじゃなくて、凛たちも…A-RISEも所詮は駒に過ぎなかったってこと…?」

希「そういうことなんやろうね…。最初からえりちは…復讐だけを目的に動いていたんやし」

希「…アイドルなんて、ホントはどうでも良かったんやね…!」

絵里「…えぇ」

絵里「ただそれだけを目標に動いてきた…。A-RISEをひたすらに強くして強くして…」

絵里「行き着く先は孤独なんだと、誰にも悟られぬように…」

穂乃果「…『お前の目指しているものは…それでは頂点ではない。ただの、孤独だよ』」

穂乃果「英玲奈さんの言葉…。本当に目指していたのは、孤独だったんですね」

絵里「アイドル専攻は私のものになっていた…。学校からの信頼すら得ていて…絶対に上手くと思っていたのに」

絵里「なのにっ…!」

真姫☆「私たちが現れた。アイドル専攻ではない、スクールアイドル」

真姫☆「今まであなたが執拗に避けてきた、学内のスクールアイドルに対する熱気」

真姫☆「それを誘発させるような存在が現れたのね」

海未「UTXの生徒がスクールアイドルの楽しさを覚えてしまえば、計画は崩れ去ってしまうワケですからね…」

絵里「あの時に…!あの時に潰しておけばっ…!!」

絵里「真姫の殺気の篭った目に怯えてしまったせいで…、全てが水泡に帰してしまうなんて…」

絵里「もっと早くにっ…!!」

亜里沙「…どうして、そこまで…」

亜里沙「なんでそんなに、執着できるの…?お姉ちゃんにとって…、復讐はそんなに大切なものだったの…?」

絵里「…っ!!そうよっ!!私はっ…、UTX学院が憎くて憎くて堪らなかった!」

絵里「あんなに優しかったおばあさまを変えてしまったUTXが…!!」

絵里「地獄のような特訓を強いられた苦しみが…!」

絵里「ようやく得られた勲章も、もう褒めてくれる人すらいない悲しみが…!」

絵里「死ぬ気で掴んだ頂点という座が、ただの孤独の別称だった時の寂しさが…!」

絵里「そして…、そんなに頑張ったのに、もう私は…」

絵里「五分以上、踊ることができない体になってしまった悔しさが…!」

にこ「え…」

穂乃果「…絵里さん、確かに…ダンスを披露してくれたときも、ほんの2,3分だけだった…」

凛「…そう、だったんだ」

絵里「…全てが憎らしくて堪らない」

絵里「愛する家族も、友人も、地位も、名誉も、夢も…何もかも私から離れていった」

絵里「だったら、私をこんな目に合わせたヤツにも、同じ目にあってもらおうって考えたら…おかしいかしら…?」

絵里「UTX学院のA-RISEには、強く、強く強く、誰にも負けないほど強くなってもらって…」

絵里「得られた名誉が、絶望だったときの衝撃を味わわせてあげたいって思ったらダメなのかしら?」

絵里「夢を求めて努力して、たどり着けずにボロ雑巾のように朽ちてゆく様を見るのはとても滑稽で面白かったわ…!」

絵里「まるで昔の自分を見ていたようだったから…!強くて、強いだけの…弱い私のよう」

絵里「穂乃果…にこ…あなたたちはまだいい方じゃない。友人もいる。人気もある」

絵里「少なくとも来年までは、A-RISEは人気もあるスクールアイドルであれたのだから…」

絵里「…いえ、きっともうこの先ずっとそうなんでしょうね…。A-RISEがUTXを自滅に追い込むことなんて…」

絵里「未来永劫…訪れないのでしょうね…」

絵里「ねぇ…凛」

凛「え…?な、なん…ですか」

絵里「どうして…どうしてもっと長く耐えてくれなかったの…?」

凛「耐え…何?」

絵里「本来なら、あなたの骨は…来年の夏頃に折れるはず、だったのに…」

凛「えっ…!?」

花陽「気づいて、たの…!?」

絵里「凛は最高の逸材だった。ダンスが上手で、人を惹きつけられて…」

絵里「そして、起爆剤になってくれる。あなたがもっと耐えてくれたら、私もこんな思いしなくて済んだのに…」

花陽「き、気づいてたのならどうしてっ…!!どうして止めてくれなかったんですかぁっ…!!どうし…」

真姫☆「それを絵里に言っても無駄なことよ。絵里は凛を最初から怪我に追い込むつもりだったのだから」

凛「ぅ…。そんな…」

真姫☆「きっと、凛の怪我が予想より早く爆発したのは…私たちの存在のせいでしょうね」

真姫☆「拮抗するライバルの登場で、想定以上の練習量が重なったせいで」

真姫☆「凛の足の骨は早々に限界を迎えてしまったのよ」

絵里「…そう。あなたたちの…せいなのね」

絵里「何もかも…あなたたちが…あなたたちさえいなければ…」

絵里「…どうして、あなたたちがいるの?」

絵里「なんで、ここに来てしまったの…?どうしてよ…なんで…ふざけないでよ…」

真姫☆「…どうして、なんでしょうね」

真姫☆「私はどうして、この世界に来てしまったのか…」

真姫☆「きっと私がいなかったら、こんなことは起こり得なかった…。うぅん」

真姫☆「アイドルという夢に裏切られながらも、それでも理想を貫き通そうとした少女が」

花陽「真姫、ちゃん…」

真姫☆「友人の笑顔を取り戻すためなら、どれだけの気苦労も厭わない不屈の少女が」

ことり「…私のことかな」

真姫☆「アイドルを理解するためにアイドルを超えた、不器用で一本気で、意志の強い少女が」

海未「…恥ずかしいですよ」

真姫☆「困っている人を見かけたら放っておけない、優しいおせっかい焼きの少女が」

希「…うちも少女扱いしてくれるん?」

真姫☆「誰かに染まりやすくて、気難しくて…でも、やるときはやれる気丈な少女が」

真姫「…そんなかしら」

真姫☆「私たちのうちの誰かが一人でも欠けていたなら、こんな結果にはならなかったのかもしれない」

真姫☆「A-RISEの3人だってそう。穂乃果が、にこちゃんが、凛がいなければ…あなたを追い詰めることはできなかったかもしれない」

真姫☆「今私がここにいる理由。それを答えるとしたら」

真姫☆「そうなる運命だったのよ。絵里、あなたの復讐を阻止しろって、誰かからの命令だったのね」

絵里「誰から…?」

真姫☆「そんなことは知らないわ。でも、こうなってしまったならもう観念して」

真姫☆「あなたの復讐は…成されない。UTX学院は、A-RISEは、C☆cuteは…この世界のスクールアイドルはこれからも続いてゆく」

真姫☆「誰もが笑顔になれる、夢に向かってね」

絵里「…」

絵里「…ふ、ふふ…夢…」

絵里「私の夢がなくなった世界で…笑顔の…ふ、ふふふふ…」

絵里「…ふざけ、ないでよ…」

絵里「う、うぅぅぅっ…。く、ぅぅ…」



真姫☆(…復讐が成せなかった現実を絵里に突きつけたことで、絵里の心は最後の支えを失ってしまった)

真姫☆(現実から逃避することで、辛うじて耐えていた柔い心)

真姫☆(それが今、砕けた)

真姫☆(…そして…その心をガチガチに縛るギプスが今は必要なのよ)

真姫☆(ここからは、私の出番じゃない。そうよね…穂乃果)



穂乃果「ふざけていません」

絵里「え…?」

穂乃果「だってあなたの夢は…まだ何も始まっていないから」

穂乃果「あなたが叶えようとしていたのは復讐です。それは…夢じゃないです」

穂乃果「夢って言うのはもっと…キラキラしてて、みんなが笑顔になれる…そんな素敵なものであると思うんです」

穂乃果「まだあなたは、そんなもの、見つけていない」

穂乃果「…と、思ってたんですけど」

絵里「はぁ…?」

穂乃果「これ、見覚えあります?」サッ

絵里「これは…?」

希「えっ…、そ、それ…。うちの写真やん。いつの間に」

真姫☆「私が持ち出しておいたのよ。必要かもって思って」

穂乃果「あなたがアイドル応援部にいた頃の写真。去年のA-RISEとあなたと希さんが、共に笑顔で写っている写真です」

穂乃果「…この笑顔は、偽物ですか?」

絵里「…」

穂乃果「希さんから聞きました。去年の絵里さんは、こんなことをするような人じゃなかった、って」

穂乃果「それは、本心を隠していたからではなくて、心の底から…アイドルを応援することに喜びを覚えていたから…そうじゃないんですか?」

真姫「…盗聴したときに言っていたじゃない。今でも希さんと友達でいたい、って…」

ことり「それは…アイドル応援部の頃が楽しかったから…ってことなのかな?」

にこ「確かに、アイドル応援部の頃の絵里先輩は…頼れる優しい先輩だったわよ」

にこ「あのままじゃ、ダメだったの…?」

絵里「あの、まま…」

希「…きっとあの時のえりちは、うちらと応援部することに本当に喜びを見出してたんやろうね…」

希「でも、UTXに対する憎しみが勝って…アイドル応援部を捨て、復讐に走った…」

希「あのままが続けば…憎しみを忘れられたかもしれないのに」

絵里「…忘、れ」

絵里「そん、なこと…できな、かった…」

絵里「だって…おばあさまは、私にとって…大切な人で…」

絵里「おばあさまを、ころした…ヤツを、私は…許せ、なくて…だから…だから…」

穂乃果「…過去は大切なものです。人を形成する大きな要素だといってもいい」

穂乃果「あなたのおばあさまに対する想いは、並々ならぬものがあるんでしょう」

穂乃果「でもそれは…楽しい今を捨ててしまうほど、大切なものなんですか?」

絵里「な、にを…」

穂乃果「私は、…私個人の見解ですけど、復讐っていうのは、それでしか心の満たされない人がする行為だと考えています」

穂乃果「けれどあなたは、復讐に頼らなくても心を満たすことができたはずなのに」

穂乃果「それを捨ててしまって、復讐に全てを費やし…数々の人の心を傷つけて」

穂乃果「身体すら傷つけて、今こうして…何も満たされずに座っている」

穂乃果「これが、あなたの望んだ未来ですか?」

絵里「私はっ…!こんなの望んでいないわ…!私の思い通りに事が進めば、私は満たされていたはずよ…!私の夢は…!」

穂乃果「人を傷つけて叶う夢なんて…夢じゃありません」

穂乃果「仮にあなたの計画が叶って、卒業しても…あなたは一人のままだったじゃないですか」

穂乃果「誰も信頼できる人がいない地獄に、ただ孤独に佇むだけ、だったじゃないですか」

穂乃果「…それが、あなたの望んだ未来ですか?」

絵里「…」

穂乃果「あなたは、数々の人を苦しめ、夢を奪ってきた」

穂乃果「その償いは、しなければいけない。こんなところで、座っていちゃいけないんです」

穂乃果「立ち上がりましょう。立って、自分の行いを悔いて、そして…新しい夢を見つけましょうよ」

穂乃果「本当に心が満たされる夢を」

絵里「…わ、たしは…でも、おばあさまの、復讐を…」

真姫☆「復讐なんて残された人の自己満足でしかないわ。あなたがあなたのおばあさまのためにしていると思っているのなら考えを改めなさい」

真姫☆「その復讐で、あなたの心が満たされないと気づいたのなら…そろそろ目を覚ましてもいいんじゃないの?」

絵里「…っ」

亜里沙「…お姉ちゃん」

絵里「亜里、沙…」

亜里沙「…わ、私ね」

亜里沙「スクールアイドルになりたい」

絵里「アイ、ドルに…」

亜里沙「お姉ちゃんの目的が復讐だったとしても…お姉ちゃんが育てた穂乃果さんとにこさん…A-RISEはとっても素晴らしいものだよ」

亜里沙「亜里沙も、お姉ちゃんにアイドルの仕方、教わりたい。そして…みんなを笑顔にするスクールアイドルに、私もなりたいの」

亜里沙「これが亜里沙の、夢なんだよ」

絵里「…夢」

絵里「…」

絵里「ふ、本当ね…。夢って…キラキラしてる…」

絵里「…こんな夢を、叶えることなんて…もう、私には…」

穂乃果「…難しいかもしれません。過ちを悔いながら、新たな夢を探し求めるのは」

穂乃果「一人で、なら、ね」

絵里「…ぇ?」

穂乃果「…絵里さん。うぅん、絵里ちゃん」

穂乃果「あなたが立ち上がってくれるのなら…私は、あなたの隣を歩いてあげたい」

穂乃果「だから、私と友達になってください」

海未「穂乃果…っ」

ことり「穂乃果ちゃん…」


絵里「と、友達…」

絵里「私と…?どう、して…」

穂乃果「理由なんていらない。私が、友達になりたいって思ったから友達になるんです」

穂乃果「友達になるのなんて、それで十分だから」

絵里「…」

穂乃果「さぁ、手をとって。立ち上がってください」

穂乃果「一緒に、歩き出そう。一緒に、探そうよ。新しい夢」


スッ…


絵里「…!ほ、のか…!!」

絵里「こんな、私が…夢を、探しても…いいの…?本当に、いいのね…?」

穂乃果「えぇ、ちゃんと償いながら、ですけどね。…ね、凛ちゃん?」

凛「うん!凛の足の怪我、謝ってくれたら許してあげる!」

絵里「…っ!」

にこ「私はまだアンタのこと気に入らないけど…だからってこのままの方がいいとも思わないわ」

にこ「誰であろうと、一人でもにこみたいな目にあわずに済むのなら、それで越したことはないしね」

絵里「…うん。ありがとう…穂乃果、凛、にこ…」

絵里「そして、亜里沙…真姫、希…C☆cute…」

絵里「今更…気づけたみたい。復讐を成した未来にも、私には何も残されていなかったことが」

絵里「既のところで私は…本当の深淵に嵌ってしまうところだった」

絵里「…多くの人を傷つけてしまった私ですら、助けようとしてくれて…本当にありがとう…」

絵里「私…やり直してみるわ。夢を壊してしまった人たちに、ちゃんとごめんなさいと言うために」

絵里「そして…私も救うことのできる…夢を探すために…」

絵里「…穂乃果」


グッ…!


絵里「よい、しょっ…」スクッ…

亜里沙「お、お姉ちゃんっ…!!お姉ちゃんっ!!」ギュッ!!

絵里「ごめんなさい、亜里沙…。心配、かけてしまって」

絵里「もう、こんなことしないから…本当に、優しいお姉ちゃんでいるからね…。亜里沙…」ギュッ…



真姫☆「…終わった、わね」

凛☆「これで、一件落着…ってことかな?」

真姫☆「そうであってほしい、ところね。もうこれ以上は…私も持たな…うぅっ…」ヨロッ

凛☆「…っと。そだね。少し、クリニックでおやすみしよっか。真姫ちゃん」



絵里「…そういえば穂乃果…その手のひら、どうしたの?包帯巻いて…」

穂乃果「あぁ…これですか?ふふ、これはですね…」

穂乃果「太陽を掴んでしまったとき、ヤケドしちゃったんです」

絵里「…はぁ?」

穂乃果「ふふ、冗談ですよ。…うん、冗談です」

今日はここまでです 皆が納得できる展開に出来たか不安
されど物語はまだまだ続きます 次回もまたお楽しみにね ほなな

次の更新で一気にラストまで行っちゃいたいので少々間空きます 悪しからず
息抜きに遊戯王が挟まるかも挟まらないかも

ビビるくらい進捗遅いので今日か明日あたりに一旦途中まで貼ります
ここにきてスローペースになってすまない

というわけでほんのちょっぴりだけ進んだので貼っていきます
一週間も待たせてこれだけしか書けない非力な私を許してくれ…

西木野☆星空クリニック内


真姫☆「長くに続いた絵里との因縁もこれでおしまい…かしらね」

花陽「絵里さんの心が復讐とは違う理由でいつか満たされるようになるといいね…」

海未「…ところで、そろそろ帰らないのですか?いつまでもロシアにいるのは、その…」

真姫☆「ん?」

海未「ふ、不法入国なのですよ!?これ以上こちらにいてはいつか私たち、逮捕されて牢獄に…」

凛☆「平気平気!バレやしないにゃー!ステルス機能のおかげでロシアの誰も凛たちが不法入国したなんて気づいてないしー」

ことり「き、気づかれなければいいって問題でも…」

真姫☆「なんなら、ちょっと観光に行く、って言うのもアリかもね」

真姫「か、観光…!?いいの…?」

凛☆「んー、いいんじゃない?悪いことするわけじゃないんだし、ロシアに半日いた程度で誰も咎めはしないにゃ」

真姫☆「花陽も、この程度じゃ旅行と言えないでしょ?ちょっとそこいら、回ってきたら?」

花陽「え、あ…うん。そうしよっか、凛ちゃん」

凛「わーい!かよちんと新年にロシア!すごいにゃー」

海未「うぅ…、いけませんいけません。不法入国なんて…うぅぅ…」

にこ「ま、まぁ…どうしても嫌ならここで待機していればいいんじゃないの?」

ことり「うん、そうするね。海未ちゃんはここで私と一緒にいよう?」

海未「わ、分かりました…」

真姫「に、にこ先輩は外へ行くの?」

にこ「まぁね。せっかくここまで来たなら楽しまなきゃ損だし。アンタも一緒に来る?」

真姫「え…うぅん…どうしよう…。一人じゃ不安だし…でもにこ先輩と二人きりっていうのも…」

にこ「なによ、はっきりしなさいよ」

真姫「えっと…あれ、希先輩は…?」

真姫☆「…希は、少し考え事があるからって今は一人よ。そっとしておいたほうがいいかも」

凛☆「もー、いいじゃんいいじゃん!にこちゃんと一緒に行きなよ!ね?」

真姫「わ、わかったわよ…行きましょう」

にこ「はいはい」


真姫☆「さてと、じゃあ私も行く場所があるから、後でね。凛」

凛☆「え、どこに…?」

真姫☆「ま、ちょっとね。あなたもどこかうろついてきたら?」

真姫☆「…それぞれ、話したいことがある人もいるみたいだし」

凛☆「はぁ…」

ロシアの街


凛「わぁ…こうして見てみるとすごい雪…」

花陽「そうだねぇ…」

凛「うぇ…ぶぇっくしゅ!!ふいぃ~…、さぶいにゃあぁぁ…。やっぱり外に来ないほうが良かったかなぁ?」

花陽「1月のロシアだもんねー。そりゃ寒いよ。天気が良くて助かったね」

花陽「でも、こんな綺麗な雪景色、私初めて見たかも…」

花陽「こうやって凛ちゃんとこの景色が見れたなら、寒くても外に来た甲斐があったと思うよ」

凛「そう?かよちんがそう思うなら、凛もそれでいいかなー」

凛「あ、かよちん。車椅子押すの大変でしょ?凛、自分で立つよ。松葉杖も持ってきてるし…」

花陽「いいよ、座ってて。雪の上で歩くのは危ないよ」

凛「でもかよちんもキツいんじゃ…」

花陽「私はいい。凛ちゃんの車椅子を押しながらゆっくり歩くのは楽しいよ」

花陽「今まで、…本当に大変な中で過ごしてきた私にとって」

花陽「こんなにゆっくりな歩みは、やっと…平穏が戻ってきたんだなぁって思えてね」

凛「かよちん…」

花陽「今は腕にかかる重さも心地よいくらい。朝の露の静けさをこうして、凛ちゃんと感じていたい」

花陽「だから。凛ちゃんは無理せず座ってて。ね?」

凛「んー…、わかった。歩いたらぎゃくにかよちんに心配かけちゃうもんね。じゃ、行こっか」

花陽「うん。ゆっくりゆったり、昔のことや今のことや、未来のことを話しながら、ゆっくり…」



クリニック前


希「…」


真姫☆「こんにちは」

希「あぁ…真姫ちゃんか。どうしたん?」

真姫☆「こっちこそどうしたん?よ。何か悩んでるんでしょ?」

希「んー…まぁ、ね」

真姫☆「話したくないこと?」

希「…真姫ちゃんにならいいか。一人で悩んでても仕方ないって、わかりきってることやもんね」

希「実は…」


真姫☆「へぇ…A-RISEにね」

希「サポートメンバーに誘われたっていうんはすごく嬉しいんよ。嬉しいんやけど…」

希「なんだかしっくりこない。本当にそれでいいのかな、ってモヤモヤして、決めかねてるんよ」

真姫☆「ふぅん…」

希「それに、なんだかC☆cuteのみんなを、少し裏切るような感じがして…相談できずにいたんだけど」

希「自分で進めないときは誰かを頼る。ずっとやってきたこと、だから」

真姫☆「だから…もうC☆cuteじゃない私に、相談ね」

希「そういうこと、かな。真姫ちゃんはどう?なうちはどうしたらいいと思う…?」

真姫☆「…そうね」

真姫☆「どう思うか…と聞かれれば、あなたの好きにすればいいと思うわ」

希「う…その『うちの好き』が何かわからへんから悩んでるんやけど…」

真姫☆「まぁ、そういうことでしょうね」

真姫☆「…悩むほどのことじゃないわよ、希」

希「え?」

真姫☆「あなたのやりたいことをすればいい。たったそれだけ」

希「うちのやりたいこと、って…だからそれが…」

真姫☆「思い出して、希」

真姫☆「あなたのやってきたことを。あなたは、何をしたかったのかを」

真姫☆「それをたどってゆけば、自ずと答えは見つかるはずよ」

希「うちの…やってきた、こと…」

真姫☆「右か、左か、道に迷ったなら…」

希「…後ろを振り返れ、か」

希「ありがとう、真姫ちゃん。考えてみる」

希「考えて…答えを出してみるよ。相談に乗ってくれておおきにね」

真姫☆「お礼は結構よ。…相談に乗ることが、ドクター真姫のお仕事みたいなものだもの」



ロシアの商店街


にこ「うぃぃ…さぶぅ…。ロシアってこんなに寒いのね…想定外…」

真姫「いつもの服じゃ…風邪ひいちゃうわね…」

にこ「な、なんか服…買っていく?」

真姫「って言っても、ロシアのお金なんか…あ!そういえば…」

にこ「な、なになに…?」

真姫「…いざという時のために外貨を少しは持ち歩いているんだったわ」

にこ「どんな時のために普段から外国のお金持ってるのよ!?」

真姫「って言ってもほんの少しよ?ロシアで使えるお金は」

真姫「服なんて1着買えるか買えないかの微妙な…」

にこ「それじゃあ片方しか暖まれないじゃない…」

真姫「そ、そうだけど」

にこ「…そうだわ。私にいい考えがある」

真姫「い、いい考え…?」

にこ「少ないお金で二人共暖まれるとっておきの手段よ」



『お買い上げありがとうございましたー』



真姫「…」

にこ「どう?暖かくない?」

真姫「…顔だけは、熱くて死にそうよ」

にこ「なら効果的じゃなーい♪さ、もっと近寄って近寄って」

真姫「ヤダ!」グイッ

にこ「ぐえぇぇっ!首が絞まる首が絞まる!!」

絵里の部屋


絵里「…穂乃果」

穂乃果「はい?」

絵里「私はね…正直」

絵里「あなたはもう、友達の作ることのできない子になったんだと思っていたわ」

穂乃果「…え」

絵里「私の徹底した練習環境のせいで、心まで凍てついて…」

絵里「誰もに心を閉ざした、未来のUTXの破滅の象徴…そんな存在になると私は思っていたの」

穂乃果「…ひどく、嫌なものと考えられてたんですね」

絵里「ねぇ、教えてくれないかしら。どうしてあなたは…そうなれたの?」

絵里「言い方は悪いけど…あなたは私の同類になってしまったと感じていたのに」

絵里「何があなたを…?やっぱり、真姫…?」

穂乃果「西木野さんは…直接は関係ありませんよ。間接的には関わっているのかもしれませんけど」

穂乃果「そもそも私は…心を閉ざすことなんて出来ませんでした」

穂乃果「あなたのように強くありたいと思って、無駄なものを全て削ぎ取って、冷静で、冷酷でいよう、なんて…去年は思ってましたけど」

穂乃果「…結局、そうはなれなかった。上辺だけ…ただ他人と自分を傷つけた、それこそ無駄な、冷たさでした」

穂乃果「何かを捨てるたびに泣いて、悪夢を見て。妹だけに本音を吐いて、慰められて」

穂乃果「そうして、外では強くて冷たい高坂穂乃果を演じてきました。だから本当は私は…弱い人間のままだったのかもしれません」

絵里「…そう。そう、なのね…」

絵里「だとすれば、私も…まだまだね」

絵里「人の心を完全に掌握した気でいたつもりが、まさか…一番似ていると思ったあなたの心を、一度も読むことができなかったのだもの」

絵里「もう、完全に凍てついたものだと思っていたのに…そうなのね。だからあなたは…」

絵里「…そんなに、優しくなれるのね」

穂乃果「優しい…?」

絵里「えぇ。冷たくなんかない…本当のあなたは、暖かくてとても優しい子」

絵里「こんな、どうしようもなく落ちぶれた私にまで、手を差し伸べてくれるのだもの」

絵里「でも、だったらね。…私なんかに構っていちゃダメよ、穂乃果」

穂乃果「どういう、ことですか…」

絵里「あなたが手を差し伸べるべきは、あなたが冷たい人間を演じることで傷つけてきた人」

絵里「私には勿体無いわ。あなたの手のひらは暖かすぎて、火傷しそうだもの」

絵里「行ってあげて。あなたを本当に必要としている子たちの元へ」

穂乃果「絵里、さん…」

絵里「…これが、最初で最後の…真の指導者としての私の言葉」

絵里「友達はこれで、おしまい。さぁ、…行きなさい。高坂穂乃果」

穂乃果「…っ!わ、分かりましたっ…!!」ダダッ…

絵里「…」

絵里「…これで、いい」

絵里「あの子の手のひらの暖かさだけで…私は十分に救われたもの」

絵里「寂しくなんて、ない…」

西木野☆星空クリニック 一室


雪穂「亜里沙、どうだった…?」

亜里沙「あ、雪穂。うん、もう大丈夫。お姉ちゃん、元気になったよ」

雪穂「そ、そっかぁ、よかったね!」

亜里沙「雪穂も一緒に来たら良かったのに。穂乃果さん、すごくかっこよかったよ!」

雪穂「私はほら…そういう空気ニガテだったから…。うん、でも亜里沙のお姉ちゃんが元気になったのならロシアまで来てよかったよね」

亜里沙「うん!それに、空飛ぶクリニックに乗ったのも初めて!日本ってすごいハラショーなのね!」

雪穂「…いや、こんなものはこの世界の日本には存在しないと思うよ…。ワープまでしてたし…」

亜里沙「そうなんだ…。あ、それより…お姉ちゃんがもっと元気になったら、私のダンスのレッスンしてもらうの!」

亜里沙「それでね、私もA-RISEみたいな…C☆cuteみたいなスクールアイドルを目指すんだ!」

雪穂「へぇ…」

亜里沙「楽しみだなぁ…」

雪穂「ね、ねぇ亜里沙…。スクールアイドルって…一人でやるの?」

亜里沙「え?うーん、どうだろ。UTXで一緒にできる友達が居れば、一緒にやってみたいって思ってるけど…」

雪穂「あの、さ…その、亜里沙がイヤじゃなければ…なんだけど」

亜里沙「うん?」

雪穂「わ、私も…UTXさ、受けるから。その、スクールアイドル…やってもいいよ」

亜里沙「えっ!?」

雪穂「や、やってもいいっていうか、やりたい!亜里沙と!ダメ!?」

亜里沙「は、はっ…!ハラショーっ!雪穂、ハラショーだよ!」

雪穂「お、おぉっ…!」

亜里沙「やろう!一緒に、私たちのスクールアイドル!!」

雪穂「う、うんっ…!!」

西木野☆星空クリニック


海未「はぁ…。帰るのはいつごろになるでしょうか」

ことり「観光もしてるみたいだから、もう少しかかるんじゃないかな?」

海未「うぅ…。いつ地元の警察官が乗り込んで来ないか心配です…」

ことり「まぁ、傍目からは全く見えないようになってるんだし、誰も来ることはないんじゃないかな…」

海未「というかそれも謎技術過ぎます…。一体何をどうしたら建物が完全に透明になるというのですか…」

ことり「さぁ…?」


「あ、あれ…?どこにあったっけ…」


ことり「…ん?外から声が…」

海未「この声…穂乃果?」



ガチャッ

海未「穂乃果…?」


穂乃果「うわっ!急に何もないところからドアが…」

ことり「あはは、びっくりするよね、これ…」

海未「ここに用事ですか?」

穂乃果「まぁ…、うん。ここにっていうか…海未ちゃんとことりちゃんに」

ことり「私たちに…?」

穂乃果「…話が、あるの」



海未「それで、話とは…」

ことり「…」

穂乃果「あの…えっと…」

穂乃果「…いざ言おうとすると、なんだか気恥ずかしくて言いづらいな…」

ことり「頑張って、いくらでも待ってるから」

海未「ことり、なんだかそれでは小さな子供に言うようですよ」

穂乃果「…小さな」

穂乃果「うん、そっか…。思い出そう…その頃を」

海未「はい…?」

穂乃果「ん、んんっ…!行くよ…」

穂乃果「ことりちゃんっ!海未ちゃんっ!!」

ことり「はぇっ…!?」

海未「急に大声…!?」

穂乃果「あのっ…わ、私と…!」

穂乃果「私ともう一度、友達になって!」



海未「っ…!!」

ことり「友達…」

海未「穂乃果…それは…!」


穂乃果「…絵里さんから言われたの。私が差し伸べる手は他にある、って…」

穂乃果「今までずっとずっと無駄だと思って押し殺してきた私の気持ち…もう、削ぎ落とす必要もないって分かったの」

穂乃果「もう一度、友達に…なろう」

穂乃果「もう一回、あの時みたいに…笑い合いたい!海未ちゃん、ことりちゃんと一緒に!」

穂乃果「お願いしますっ…!友達に…なってください…!」

海未「ほ、穂乃果っ…!!」

ことり「…」

海未「もちろんですっ!!穂乃果っ…穂乃果あぁっ…!!」ギュッ

穂乃果「っ…、海未ちゃん…!」

海未「その言葉を…どれだけ待ちわびたと思っているのですか…!」

海未「断る理由なんてありません…!もうこれから、私たちはずっと友達です…!!」

穂乃果「海未ちゃん…うん、うんっ…!!」

海未「ことりも、そうですよね?」

ことり「…私は」

海未「…ことり?」

穂乃果「…もしかして…嫌?」

ことり「うぅんっ…!嫌じゃない…そうじゃないけど」

ことり「でも、友達になるなら、私は…」

ことり「この一年間は、なかったことにしたい…」

ことり「決別も諍いも、全部全部忘れた上でなら…友達になりたいよ」

海未「ことり…。この一年…本当にことりにとっては、重い一年だったのですね…」

ことり「…ねぇ、それじゃ、ダメかな」

穂乃果「…」

穂乃果「…ダメ、だよ」

ことり「えっ…、どうして…?」

穂乃果「ことりちゃんにとっては、思い出したくもない一年だったかもしれない」

穂乃果「私が強さを求めたことが海未ちゃんを苦しめて、そして…海未ちゃんの苦しみと私が、さらにことりちゃんを傷つけていたのかもしれない」

穂乃果「それは…ごめんなさい。辛い思いを強いてしまって、ことりちゃんには謝っても足りないくらい」

穂乃果「…でも私には、この一年をなかったことにはできない」

穂乃果「私はこの一年で…多くのことを学んだから」

穂乃果「A-RISEとして誰かを喜ばれるための強さ、人を想う気持ちの強さ、誰かを助けたいと願う強さ」

穂乃果「色んな強さを知った。そしてそれが…全部正しい、無駄じゃない強さだった」

穂乃果「もう私は、何かを捨てるなんてできない。全部吸収して、それを自分の強さにしていくって決めたから」

穂乃果「だから…私には忘れるなんてできないよ。ごめん、ことりちゃん…」

ことり「…そう」

海未「ことり…」

穂乃果「…でも、でもね。ことりちゃんにとってこの一年は…辛いだけの一年だった?」

ことり「え…?」

穂乃果「秋までは、辛い思いばかりだったかもしれないけど、でもさ」

穂乃果「西木野さん…真姫ちゃんが来てからのことりちゃんは、素敵な笑顔だったよ」

穂乃果「私と同じラインに立つためにアイドルを始めて、けれど私とは違う道を走っていたことりちゃん」

穂乃果「その道は…ただ辛いだけの道だったかな?」

ことり「…それは」

海未「そうですよ。この一年を忘れるということは…真姫たちとの思い出も忘れるということです」

海未「涙も、笑顔も…とても貴重なものだったではありませんか」

海未「はじめから、を選択してしまえば…それも消えてしまうのですよ?」

ことり「う…」

穂乃果「ことりちゃん、やり直そう。でもそのやり直しは、はじめからのやりなおしじゃない」

穂乃果「辛いこと悲しいこと、全部背負った上で、それ全部を塗り替えるくらい楽しい思い出を積み上げていくために」

穂乃果「続きからの、やり直し。ことりちゃん…それじゃ、ダメ?」

海未「…ことり」

ことり「…」

ことり「…だ、ダメ、だよっ…!」

穂乃果「えっ…」

海未「な、なぜですか…。やはり、全部なかったことに…」

ことり「うぅんっ…うぅん、違うのっ…うぅっ…違う…!」

ことり「そう、だよね…!私、楽しかったもんね…!!アイドル、海未ちゃんやみんなとやってきて…!」

ことり「すごく、楽しかった…!なのに、それもなかったことにしようなんて…私って、バカだなぁ…」

ことり「続きから…うん、続きからがいい…!!ぐすっ…、やり直したい、私っ…!!穂乃果ちゃぁんっ…!!」

穂乃果「うん…。あれ、でもだったらなんで…」

ことり「だ、だって…うぅ…約束、だったから…」

海未「約束…?」

ことり「…今度は、今度は私から、友達になろうって言うんだって…。だから、穂乃果ちゃんから言うのは…ダメなんです…!」

穂乃果「ぷっ…あはは…。なんだ、そんなこと…」

ことり「私にとっては大切なことなの…っ!大切な…、友達になるための、方法なんだから…」

海未「…なら、最初で最後。忘れてあげましょう。穂乃果から友達になろう、と言ったことくらい」

穂乃果「うん?…あぁ。うん、そうする。はい、忘れたよ。さーて、ことりちゃんは何を穂乃果に言ってくれるのかなー?」

ことり「ぶ、ふふっ…。なにそれ…。変だよ、穂乃果ちゃん」

穂乃果「変でもいいもん。さ、ことりちゃん」

海未「ことり」

ことり「…うん。穂乃果ちゃん…、私と、友達になってください」

穂乃果「うん。勿論…友達だよ、これからもずっと」

ことり「っ…!うんっ…!!ずっと、ずっとずっとずっと友達だよ、穂乃果ちゃんっ!!」

ロシアの商店街


花陽・凛「「あ」」


にこ・真姫「「あ…」」



真姫「ぐ、偶然…ね」

花陽「うん、こんなところでバッタリ会うなんて…」

凛「何そのマフラー」

にこ「うぐっ…」

凛「二人で一つのマフラー巻いて…恋人?」

真姫「ち、ち、違う違う、違うわよっ!!寒いからなるべく二人共暖まれる方法をねぇっ…!!」

にこ「そこまで否定されるとなんだか悲しいわね…」

真姫「どうしてそんな反応なのよぉっ!?なんで私がにこ先輩とこ、こっ…恋人…なんてっ…!」

花陽「ぷふっ…」

真姫「は、花陽ォ!?ナニヨ…、まさか花陽まで私とにこ先輩を…」

花陽「あははは、うぅん違うよ。キノ…真姫ちゃん。人見知り、してないなって」

真姫「えっ…」

にこ「あぁ、そうね。もう十分仲良くなったんじゃない?私とは」

真姫「あ…そういえば普通に会話できてる…」

凛「ふーん…、かよちんが言ってた人見知りの友達ってこっちの西木野さんのことだったんだ」

花陽「うん。自分の弱点だから克服したいって」

凛「弱点かぁ…。そんなに気にすることでもないと思うけどなー」

真姫「ほ、星空さんにはこの気持ちがわからないだけよ!結構辛いんだから…」

凛「む!だから星空さんはやめてって…」

真姫「え?」

凛「あそっか…。これを言ったのはあっちの…むふ、じゃあじゃあ!」

凛「まーきーちゃんっ!」

真姫「うぐっ…!!」

凛「真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃーんっ!」

真姫「は、恥ずかしいからやめてよっ!そんな大声で…」

凛「あははははっ!!もう顔真っ赤っか!たのしー!!真姫ちゃーん!かわいいにゃぁ~!!」

真姫「ば、ばかぁっ!!だったら私も…凛!凛凛凛っ!!りーんっ!!」

凛「全然痛くも痒くもないにゃー!あはははははは!」

花陽「ふふふふ…」

にこ「なんだ。もう人見知り、平気そうね」

花陽「…はい、そうですね。ふふ…」



凛「真姫ちゃんっ!」

真姫「だから…あー、もぉぉーっ!!やめてったらあぁぁっ!!」

絵里の部屋


絵里「…これで、いい」

絵里「あの子の手のひらの暖かさだけで…私は十分に救われたもの」

絵里「寂しくなんて、ない…」


希「ホントに?」


絵里「…希」

希「えりちほど心を見抜くのに長けてないうちでもわかるよ」

希「…ホントは、寂しくて仕方がないって思ってるんやって」

絵里「何…?私を笑いに来たの?…まぁ、別にいいけどね」

絵里「あなたにもひどいこと、たくさんしてきて…見下されているのは重々承知よ」

絵里「だからあなたにどれだけの報復をされようと…」

希「うちはね」

希「今まで自分のやってきたこと振り返ってみて…うちは本当は何がしたかったのかって考えてみてんよ」

希「この3年間、アイドル応援部や生徒会長や、スクールアイドルまでやったりして…」

希「結局その根幹にあるものは何か、って」

絵里「希…?」

希「簡単だった」

希「うちは、誰かの役に立ちたかったんよ。特に、困っている誰かの」

希「友達が欲しくて困っている自分自身を助けるためにアイドル応援部を始めて」

希「アイドル専攻の厳しさに心折れてしまった子たちを助けようと生徒会長になって」

希「えりちに篭絡されようとしていた西木野さんの勇気となるために、スクールアイドルを決意した」

希「うちはそんな…どうしようもないおせっかい焼きなんやって、気づいたんよ」

希「だから、ね」


スッ…


絵里「えっ…」


希「うちは、今困ってるえりちの役に立ちたい」

希「強がり言って、穂乃果ちゃんを遠ざけたえりちの…そばにいることが、今のうちのやりたいこと…なんよ」

絵里「希…、どうして…。あなた、私のことを恨んでいたんじゃ…」

絵里「私は、あなたから全てを奪った人間なのに…!そんな私にどうして、手を…」

希「もちろん、うちは穂乃果ちゃんほど優しくないよ。えりちのこと、全部を許せるなんて思ってない」

希「だからえりちのこと、友達とは言いたくない。ただ…そばにいるだけで、えりちの役に立てるなら」

希「たったそれだけの関係でなら…えりち。あなたと共に、いられる」

絵里「っ…!!の、ぞみ…!」

希「…なんてね。結局うちは、ずっとえりちのこと…諦めきれなかったんかも」

希「こんな関係になってもまだ、えりちのこと、『えりち』って呼び続けちゃうんだもん」

希「…さぁ、寂しがり屋で困ったさん。うちの手のひらなら、火傷しないよ?」スッ

絵里「えぇ、希…。あなたの手のひらが、私には…」

絵里「…ちょうどいい、暖かさだわ」


ギュッ…

西木野☆星空クリニック モニター室


凛☆「休日はインドア派な凛に外をうろつくなんて面倒にゃ。モニターでみんなを監視するのがお似合い」

凛☆「おーおー、皆青春してるねー」

凛☆「…っと、そろそろ帰る時間だにゃ。帰ってくる頃合かな~」

凛☆「凛も帰る準備…」ゴソゴソ

凛☆「ん?あ、これ…この映像、こんなところにも置いてたんだ。懐かしいにゃぁ…」

凛☆「ま、いいや。哀愁に浸ってる暇はないし…よいしょ…」ゴソゴソ…



夕方


真姫☆「それじゃあ、私たちはそろそろ帰るわね」

絵里「えぇ、また東京で…。会えるかどうかは、わからないけどね」

にこ「もう立ち直ったんだから、明日から練習、指導しに来なさいよ」

絵里「え、でも…」

穂乃果「前のような権限はなくても、A-RISEの指導のお手伝いくらいなら許可されると思いますよ」

穂乃果「だから、絵里さんの元気な姿…アイドル専攻のみんなにも見せてあげてください」

凛「絵里先輩を尊敬してる人、結構多いんだもんねー!」

絵里「私を…、そう、そうだったわね…。復讐のことしか考えていなかった私でも、尊敬してくれる子は、いたんだもんね…」

亜里沙「ふふ、そうだよ!お姉ちゃんはやっぱり亜里沙の尊敬するお姉ちゃんだもん!」

絵里「…うん。ありがとう。また、アイドル専攻…行ってみるわ」

花陽「私も時々、見に行ってもいいですか?凛ちゃんと一緒に…」

絵里「ん?…えぇ、私にどうこうできるわけではないけど、もういいんじゃないかしら。アイドル専攻を閉鎖的にする必要性はなくなったのだし…」

凛「凛も見学に行きたいにゃ!将来のやりたいことのために~…」

花陽「うん、そうだね」

真姫「やりたいこと?なにそれ」

凛「真姫ちゃんには内緒~。かよちんとA-RISEの人たちにしか伝えてないことだもん」

真姫「ふぅん…。って!真姫ちゃんはやめてってば!」

希「ふふ、西木野さん。凛ちゃんとも仲良くなってるやん」

真姫「そういうんじゃ…」

海未「こほん。長話もなんですからそろそろ…」

ことり「そうだね。絵里先輩、さようなら」

絵里「えぇ、…穂乃果と、仲良くね」

穂乃果「…っ!絵里さ…」

ことり「はい!言われなくてもずっと仲良くしてあげます!」

海未「今度こそ、もう過ちは起こさないように…ね?」

穂乃果「…うん」

凛☆「よーし、じゃあみんな西木野☆星空クリニックに乗り込むにゃー!」

真姫☆「目標、日本東京秋葉原!一瞬でたどり着くから覚悟しなさいよ!」

花陽「またあの酔うのは勘弁して欲しいよ…」



ヒュゥゥゥンッ…!!



絵里「…不思議な子だったわね。異世界の…真姫か」

というわけでここまでです
次こそ本当のラストとなります 一週間以内には完成できればいいなぁ…
まだ早いですがここまでもしライブ!にここまで付き合ってくれた人たち 本当にありがとうございます
クライマックスもどうぞお付き合いくださいね それじゃ ほなな

~進捗状況報告~
今ようやく3分の2か5分の3くらいです
今日の夜にあげたかったですが難しそうです…
何か息抜きで挟もうかとも思いましたがどうせならこのまま綺麗に通したいのでもう少々お待ちを
出来上がったら時間を予告して五分おきくらいに貼っていくので時間に余裕がありましたらリアルタイムで楽しんでいただけると嬉しいです
それではまた

まだ終わりきってませんがだいたい書ききれそうな目処はついたので、明日か明後日
遅くても明々後日までには投稿出来ると思います!
めっちゃ遅れてごめん!あともう少しの辛抱なので楽しみにしててください!!

大体書けた
ただ明日は無理そうなので休日明けだけど月曜の深夜前に始めようと思うます
結構な文章量なので3分おきくらいに貼っていきます 良ければ覗きにきてくださいホント
もう報告のレス数だけで別のssが書けるくらいになりそう これが最後の報告になりますように それでは ほなな

おまたせ それではやっていきます
思いついたこと書いてたら非常に上長になってしまったが終わらせたくない故の情熱のせいなの
難産の末にようやく完結までこぎつけましたが最後まで楽しんでいただけると信じて いざ

それから時は過ぎ…


新学期

UTX学院 講堂


『それでは、次に生徒会長の挨拶です。高坂生徒会長、どうぞ』


穂乃果「はい」


スタスタ…



穂乃果「…えー、ごほん」

穂乃果「皆さん、こんにちは。生徒会長の高坂穂乃果です」

穂乃果「冬休みは誰とどう過ごしましたか?家族とでしょうか、友達と過ごした方もいるでしょう」

穂乃果「夏休みほど長い休暇ではないので、盛大な旅行の計画は建てられなかった人も多いでしょうが…」

穂乃果「今年の冬休みは一度きり、そして、そこで体験した出来事も、一期一会の貴重な思い出になるんです」

穂乃果「…って、ふふ、何言ってるんでしょうかね、私…」



ザワザワ…

「穂乃果さん…?」「生徒会長、なんか雰囲気変わった?」「まさか冬休みに…!?」「いやそんなまさかー…」



穂乃果「…お静かに」


シーン…


穂乃果「話は少々ずれますが、私自身も…この冬休みに、貴重な体験をした一人になります」

穂乃果「それは規律も規範もなく、奔放でやや危ない体験でした」

穂乃果「けれど何にも縛られない…とても自由な、そんな思い出です」

穂乃果「以前、生徒会長に就任した際に言った言葉とは異なりますが…」

穂乃果「ルールからはみ出す、というのも…存外悪くないことなのかも、しれませんね」

穂乃果「あ、ただし、本分に悪影響を及ぼさない程度に、ということですが」

穂乃果「えー…、とまぁ、長くなってしまいましたが要するに…」

穂乃果「素敵な家族と、素敵な友達と…良い時間を過ごせたのなら、最高だよね、ってことで」

穂乃果「以上を持って、私の挨拶とさせていただきます。ご清聴、ありがとうございました」スッ…


パチパチパチ…


『え、えー…、はい、生徒会長挨拶、ありがとうございました。それでは、以上を持ちまして始業式を終了とさせていただきます。生徒は…』





海未「…ふふ。穂乃果、少し柔らかくなってましたね」

ことり「むしろ、ちょっと不器用になっちゃったかも?」

にこ「いいじゃない。ちょっとくらい欠点があったほうが可愛げがあるってものよ。…私みたいにね」

花陽の教室


花陽「…」ポチポチ…


親衛隊A「花陽、メール?」


花陽「あ、うん。凛ちゃんに、そろそろ病院の方へ行こうかなって…」

親衛隊B「あれ、今日からアイドル再開するんじゃ…」

花陽「その前に寄ってから。凛ちゃんも学校に連れてきてあげたいの」

花陽「凛ちゃんにめいっぱい、アイドルの練習の仕方、覚え込ませなきゃだから」

親衛隊C「へ?なんでですの…?」

花陽「…まぁ、色々とね。それで…」


ガララッ


真姫「花陽、いる?」


親衛隊A「あ、西木野さん。花陽ならここだよ」

真姫「あぁ、ありがと。花陽、今日放課後すぐに部室に来て欲しいんだけど…」

花陽「え、すぐに…?」

真姫「うん。次の曲のことで相談があって」

花陽「えーっと…今日は凛ちゃんをお迎えに行かなきゃだから…」

真姫「えっ、あ!そうだったわ…。忘れてた…」

花陽「ごめんね。凛ちゃんを病院に迎えに行ったらすぐに部室行くから」

真姫「…あぁ、うん。別にいいのよ。いつぐらいに部室に来る?」

花陽「うーんと…1時くらい、かなぁ?学校終わったらすぐに行こうと思ってるから」

真姫「わかった。1時ね」

花陽「うん」

真姫「遅れちゃダメよ?」

花陽「うん…?わ、わかってるよ…」


親衛隊B「なんだか西木野さんも明るくなったよねー。私たちとも普通に話すようになったし」

花陽「そうだね。随分みんなとも打ち解けることができて…学校が楽しそうでよかった」

親衛隊C「…あ、西木野さんといえば」モゾモゾ…

親衛隊C「これ」スッ

花陽「え、これ…」

親衛隊A「こないだのプリクラよ。渡しそびれちゃってて」

親衛隊C「彼女、学校には来ないんですのよね?小泉さんから渡して頂ければと思って」

花陽「あ…」

花陽「…」

親衛隊B「…小泉さん?」

花陽「…う、うん。わかった。預かっておくね」

花陽「渡して…おくから」

UTX学院 食堂


ガヤガヤ…


希「うわぁ…」



モブA「あの!次のライブはいつごろになるんですか!」

ツバサ「そうねー、予定しているうちでは今月中に一回はしようかなって」

モブB「プロになったらファンクラブとか作るご予定は!?」

あんじゅ「うーん、考え中かしら?マネージメントのチームとの兼ね合いでおいおい決めていくわ」

モブC「私もそのチームに参加させてください!」

英玲奈「残念だがその件に関しては全面的に却下させてもらっている。すまないな」

あんじゅ「でーもぉ…、人手が足りなくなったら優先的にUTXの後輩を採用する…って言うのはあるかもぉ?」

モブズ「「「本当ですか!?」」」

ツバサ「えぇ。何もかも未定だけれどね。御用命の際はここにメールか連絡を頂戴。はい、名刺。はい、名刺」サッサッ



希「放課後ならファンとのふれあいオッケーになってからここまで囲まれるとは…」

希「A-RISEも大変やね…っと、席はどうしようかな…」


絵里「希っ!こっちこっち!」


希「あ、えりち!」

絵里「ここ、空いてるわよ!座りましょう!」

希「うん、そうしようか」



絵里「A-RISEもあと数ヶ月で卒業…、プロになるのね」

希「スクールアイドルの世界以上に厳しいやろうけど、最後まで王座を守りきったツバサちゃんたちならきっと…行けるよ」

絵里「えぇ。…希、よかったの?」

希「何が?」

絵里「…チームへのお誘い」

希「あぁ…。うん、いいんよ」

希「うちは気楽なポジションの方がお似合いよ。あっちも納得してくれたしね」

絵里「そう。なら、いいのだけど」

希「さ、親子丼が冷めちゃう。はよ食べよ。こう賑やかな場所で食べるのも、なかなか乙なものやね」

絵里「ふふ、そうかもね。それじゃ…いただきます」

多目的ホール


にこ「行くわよー!はい、にっこにっこにー!!」


専攻生ズ「「「「にっこにっこにー!!」」」」


にこ「声が小さい!もっと笑顔で!はい、にっこにっこにー!!」


専攻生ズ「「「「にっこにっこにー!!!」」」」


にこ「やればできるじゃない!」



穂乃果「…楽しそうでなにより」

穂乃果「私は私で、にこちゃんが指導している間に何かできることは…」


ガチャッ

海未「こんにちは、穂乃果」

ことり「やってるー?」


穂乃果「あ、海未ちゃん、ことりちゃん。どうしたの?」

海未「いえ、特に用事はないのですが。花陽が少し遅れて来るので、その間お邪魔させていただこうかと」

ことり「ダメだったかな?」

穂乃果「うぅん。存分に見ていって。…ふふ、あれ、どう思う?」



にこ「じゃ、お次はー!にこにーって覚えてラブニコ!はい!」

専攻生ズ「「「「にこにーって覚えてラブニコ!!」」」」

にこ「んー!なかなかできるわねー!」



ことり「…あれが指導?」

海未「ま、まぁ…いいのではないでしょうか。にこのにこらしさが受け継がれるなら…」

穂乃果「にこちゃんみたいな子、あんまりいないから、ちょうどいいのかもね」

穂乃果「にこちゃん自身も、とっても嬉しそうだし…」

海未「にこの全力が存分に発揮できてにこもテンション上がりっぱなしなんでしょう。わ、私も体が疼いて…!!ら、ラブアロ…」

ことり「抑えて抑えて。…でも、A-RISEと交代で穂乃果ちゃんとにこちゃん、それに絵里さんが指導することになったのはいいけど…そのあとはどうするの?」

穂乃果「…もう、次の指導役は決まってるって、ツバサさんが言ってた」

ことり「え?誰?」

穂乃果「それは、教えてくれなかったけど。まぁでも…」



海未「それではまだ足りませんっ!いきますよー!ラブアローシュート!ばぁんっ!!」

にこ「ちょっ、いきなり割り込んでこな…ゔっ!ばたりっ」

専攻生ズ「「「にこ先輩がやられた!?」」」

海未「これがコールアンドレスポンスというものです!」

にこ「…なんかちょっと違う…」



穂乃果「…あのままでも、あれはあれで面白そうだけどね」

ことり「あははは…抑えてって言ったのに…」

街道


カラカラ…


花陽「…でね、今日からアイドル専攻も、練習に迷惑をかけないのなら一般の生徒も出入りが自由になったって」

花陽「それに、A-RISEへの会話も放課後の時間に本人の許可があるなら、好きにしていい…ってことになったみたい」

凛「ほぇ~…いきなり随分と緩くなったものだね~…」

花陽「うん…。UTXに仕切られていた、学生とアイドルとの壁が取り払われて…」

花陽「やっと、本当の意味でやっと…スクールアイドルとしての夢が始まったんだなぁって」

花陽「この幸せな現実を…誰かの夢にできるようになったんだなぁ、って…」

凛「UTX学院が、アイドルを志す子の夢の舞台になることができるように…だね!」

花陽「ふふ、そうだね。現実と夢との差に傷つく人も、もう誰もいないようになれば最高だよ」

凛「うーーん…でも甘すぎるのも良くないと思うな~…」

凛「必死で食らいついてこそ、見える世界もあるんだし!」

花陽「うん、それも…あるよね。C☆cuteも、A-RISEという強大な存在に追いつく…って目標があったからこそ、折れないで頑張ってこられたんだし」

花陽「だからこれからも、A-RISEはA-RISEとして、最強のアイドル…って存在は貫いていって貰いたいとも思ってるんだ」

花陽「伝説のA-RISEに並ぶようなスクールアイドルになる…そんな具体的な目標さえあれば、みんな夢に向かって本気になれると思う」

凛「ふんふん…かよちん、意外と考えてるんだね。これからのスクールアイドルのこと」

花陽「えっ…ふふふ。だってそれが、私の夢だから」

花陽「私にとっての理想が、アイドルを目指す誰かの夢になれるようなUTX学院になれるように…」

凛「そうだったんだ…。ただA-RISEに追いつくだけのスクールアイドルじゃ満足できないってことだね、かよちんは」

花陽「ちょっと欲張りかな?」

凛「うぅん!もっと欲張ってもいいくらい!だってかよちんはそのくらい…すごいアイドルなんだもん!!」

凛「凛もいる病室に、声を届けられるくらい…すごい、アイドルだよ…」

花陽「そっか…。じゃあもっと欲張っちゃおうかな?」

凛「それがいいにゃ!」

花陽「でも…欲張るって具体的には何をすればいいのかな…?」

凛「うーん…ま、おいおい考えればいいことだよ!」

花陽「そだね。じゃ、みんなも待ってるし…早くアイドル応援部に行かなきゃ」

凛「おー!こんなゆっくりだと迷惑かけちゃうぞー!」

花陽「あ、あわわ…そういえばそうだ…。話してる場合じゃなかったね…急ごう!」


タタタタッ…

アイドル応援部前


花陽「凛ちゃん、ここに来るのは初めてだったよね」

凛「うん。C☆cuteのみんながいるんだよね」

花陽「そうだよー。改めて、みんなも紹介しよっかな。じゃ、中に…」

ガチャッ


パンッ!! パパパンッ!!


「「「「新部長就任、おめでとう~!!」」」」



花陽「…はぇ?」

凛「びびび、びっくりした!?何?」


希「おぉ、凛ちゃんも一緒かー。驚かせちゃった?」

ことり「ふふ、サプライズパーティちゅん」

海未「花陽の新部長就任を祝うための、ね」

真姫「さぁさ、今日の主役はここに座って。新部長?」

花陽「え…えぇーっ!!?」


凛「かよちん…新部長なの?」

花陽「き、聞いてないんだけど…」

真姫「まぁ、言ってないからね」

花陽「もしかして、今日早く来て、って言ってたの…」

真姫「そういうこと。花陽が来年からの部長になるってこと、ここで発表しようってみんなで決めて」

花陽「で、でもどうして私が…」

ことり「希さんに、来年の部長をそろそろ決めないと、って尋ねられて」

海未「そうしたら、全員一致だったので。これはもう花陽に決定でしょうということで」

希「まぁ、どうしても嫌だって言うならまた考えるけどね」

花陽「えと…私が、ぶ、部長だなんて…ちょっと荷が重…」

凛「いいじゃんいいじゃん!もっと欲張っていこうってさっき言ったばかりでしょ!」

花陽「あ、あぅぅ…。そういえばそうだね…。うー…、っよし!決めた!」

花陽「やります!是非、やらせてください!アイドル応援部の次期部長!!」デデーン

真姫「よく言った!いえいっ!」

希「それでは襲名の儀式として…アイドル応援部に代々伝わる…!」

花陽「な、何かあるんですか…!?」

希「…特に何もないけど。その代わり…これ!」

花陽「こ、これは…!?」

ことり「部長の証としてのブローチ!手作りです!」

希「ま、二代目部長としてこれから受け継がれていってくれることを願ってるわ」

花陽「おぉ…ありがとうございます!来年も、再来年も…これからの応援部の部長の証として残していきます!」

海未「変顔の写真と一緒に」

希「それは…破棄してもらってもいいかなぁ…」

花陽「あ…!そうだ、どうせだからこの際に…ね?」

凛「ん?…あぁ!そうだね!」

真姫「うん?どうしたの?」

花陽「ふふ…実は私からも重大な発表がありまして!」

ことり「おぉ!なんだろ?」

花陽「今日からなんと…凛ちゃんもアイドル応援部の仲間入りです!」

凛「にゃーっ!!」

海未「そ、それはつまり…凛が入部するということですか!?」

凛「そういうことです!」

希「へぇ~…それはいいけど…どうして入部する気に?」

凛「もう凛はA-RISEにはなれないし、それにアイドル専攻にも長らく参加はできそうにないし」

凛「だったら応援する立場になって、またアイドルをやるときのために色々勉強しようってかよちんと話し合って決めたの!」

凛「自分の思ってる強さだけが強さじゃないって穂乃果先輩も言ってたし…今度こそもっともっと強くなって!」

凛「かよちんをギャフンって言わせてやるんだ!…あ、無理しない程度にね」

希「おやおや、前向き志向なのはいいことやね」

真姫「花陽に対する敵対意識はまだ少し残ってるのね…」

凛「もちろん、今度は仲良く…隣に立ってともに踊れるような…そんなライバルになれるようにね」

花陽「…うん」

ことり「親友に負けないって気持ち…非常にグッドだよ!歓迎するよ、凛ちゃん!」

海未「えぇ。ギャフンと言わせてあげましょう。応援しますよ、凛」

凛「おぉー!心強い味方にゃ!海未先輩、ことり先輩、これからもよろしく!」

真姫「わ、私も凛が入ってきてくれるのは嬉しいわ…。…と、友達だもんね」

凛「むふっ…!真姫ちゃんはやっぱり可愛いにゃー!目を逸らさずに言えるようになれば及第点だね!」

真姫「むぅっ…、ばか…」

希「うちは…もう一緒に過ごすことのできる時間は少ないけど、その分濃密な時間が過ごせるよう、みっちり応援部のワザ、叩き込んだげるね!」

凛「はいっ!希先輩のこと密かに尊敬してます!ご指導ご鞭撻のほどお願いします!」

希「あはは…、そこまでかしこまらんでもいいけどね」

花陽「それじゃ改めて…これからもよろしくね、新入部員の凛ちゃん」

凛「うんっ!…あ、あと!…あの時の悔しさも、晴らしたいの!」

真姫「あの時の悔しさ…?」

凛「…うん。昨日のライブ。あのライブ…凛もしたかったから」

花陽「あ…」

凛「もう一度…凛もあのみんなと、一緒に踊ってみたい。絶対に…絶対!」

ことり「もう一度…か。できるかなぁ…?」

海未「どうでしょう。もう二度とないものと考えていましたが」

希「うちもえりちも、関わることのできる時間、少ないやろうし…」

凛「う、無理かな…」

花陽「…うぅん。できるよ。いつの日か、もう一度同じ夢を…今度は、もっと多くの人の前で」

花陽「彼女にも、恥じることのない…最高のライブを披露しよう」



花陽「異世界の、真姫ちゃん。彼女との、最後の一週間。最後の…ライブ」

一週間前

絵里の家から帰るときでの出来事…


西木野☆星空クリニック内


真姫☆「…ふぅ、一瞬って言ったはいいものの…やっぱり少しは時間かかるわよね…」

凛☆「酔わない程度にワープの速度も調整してるからね」

真姫☆「あまり動き回るとひどく酔っちゃうし微妙に時間を持て余すわね…」


海未「…そういえば帰ったらもう真夜中なのでしょうか…」

花陽「確かロシアとの時差は6時間って真姫ちゃん言ってたし…結構な夜ではあるかも」

亜里沙「あう…!お父さんに怒られちゃう…」

雪穂「うちも両親に怒られるかも…」

穂乃果「雪穂は私と一緒にいたって言っておけば…」

凛「…というか凛は外出時間派手にオーバーしてるんじゃ…」

花陽「あ、忘れてた…」

真姫「あらら…」


真姫☆「なんだか話も怒られる云々になってきちゃったわ。なんとか話を入れ替えたい…」

凛☆「お、そんな時に最適のものがここに!ばばーん!!」サッ

真姫☆「…なにそれ」

凛☆「さっき帰ろうとしてた時に見つけたDVDにゃ!ふふ、懐かしの一枚だね」

真姫☆「映画か何か…?今から見てもほんの十分程度しか…」

凛☆「まぁまぁ見てのお楽しみ!それじゃ、みんなこのスクリーンに注目~!」


ギュイーン…



ことり「なになに?何か始まるの?」

希「修学旅行の帰りのバスを思い出すなぁ~」

にこ「あぁ…いいところで切られちゃうやつね」


凛☆「みんな見たねー?それじゃ…挿入!」ズニュッ

凛☆「再生ボタン…ぽちっ!」


~♪

『これからやる曲は、私たちが9人になって初めて出来た曲です!私たちの、スタートの曲です!』


真姫☆「っ…!こ、これって…」



穂乃果「私が、喋ってる…?」

~♪


にこ「わ、わぁっ…!?穂乃果と私と凛が…!」

海未「A-RISEとC☆cuteが、共に歌っている…!?」

真姫「ななな、なによこれ!?」


真姫☆「凛、これ…」

凛☆「うん、オープンキャンパスの時の映像。DVDに焼いて置いてたやつが偶然ね」

真姫☆「なんで今流したのよ…?」

凛☆「だって面白くない?この世界の人にとってμ'sって…」


希「す、すごっ…えりちが、踊ってる…!」

亜里沙「5分しか踊れないお姉ちゃんがおどっ…は、ハラショォォッ!!」

雪穂「亜里沙、興奮しすぎだって…でも、ホントにすごいや…」

穂乃果「…うん。まるで…夢、見てるみたい…」


凛☆「…だよね?」

真姫☆「まぁ、確かに…夢みたいなものね。この世界じゃ絶対に有り得ようもない光景だもの」

真姫☆(花陽の目指す笑顔のスクールアイドル…、あの日、あの時…涙する花陽に私が指し示してあげたかったもの)

真姫☆(…はぁ。こんな映像があれば、花陽のやる気を底上げする材料としては最適だったのに。大事な時に持ってないものね)

真姫☆(けれど…今はもう、必要ないかな。花陽にはちゃんと、これに近い光景も、見させてあげられたんだし…)

真姫☆「…私の世界じゃ、簡単なことなのに、ね」

真姫☆「たどり着くまでに、随分かかっちゃったわ」

凛☆「お疲れ様だにゃー」




花陽「…」

凛「…かよちん?見とれてる?」

花陽「え、あ、あぁ…うん。すごいなぁ…って」

花陽「…」

凛「確かにねー。合成映像かと思っちゃうくらい。こんなの現実じゃありえないにゃー!あははははは!」

花陽「ありえない…」

花陽「…よしっ」

凛「にゃ?」

バシュゥッ


真姫☆「っと、ワープ完了ね。そろそろ降りる準備をしておいて」



音ノ木坂学院跡地


ヒュゥゥゥゥ… シュタッ


凛☆「到着にゃー!東京~、東京~、お降りの際は忘れ物の内容にご注意ください~」



ガチャッ


ことり「うわ、真っ暗…」

亜里沙「お父さん、心配してるかも…。亜里沙、先に帰ります!今日は色々と、ありがとうございましたー!」タッタッタッ…

にこ「あぁ、行っちゃった…」

雪穂「私たちも、帰ろっか」

穂乃果「うん。じゃあ…ことりちゃん、海未ちゃん、また新学期に会おうね」

海未「はい。機会があれば、冬休み中にでもまた」

ことり「ばいばーい!」

にこ「私も帰るわ。貴重な体験どうもありがとう。じゃあね」

凛「かよちーん、一緒に病院まで行こう~?」

花陽「あ…うん。そうだね」

花陽「でも、その前に…」



真姫☆「さて、じゃあ私たちは…」

希「もう、帰るん?」

真姫☆「…」

花陽「ま、真姫ちゃんっ!やっぱり、今日でお別れ…?」

凛☆「真姫ちゃん…?」

真姫☆「…ふぅ」

真姫☆「いつまでも、ってわけにはいかないの、わかってるわよね?」

花陽「それは…わかってるつもり、だよ」

花陽「でも、もう少し…もうほんの少しだけ、一緒に…いたいよ。真姫ちゃん」

真姫☆「…花陽」

希「うちの家なら、いつでも空いてるよ」

真姫☆「…ふっ」

真姫☆「あーあ、仕方ないわねー!…凛も、いいかしら?」

凛☆「え?今日も希ちゃんちに泊まるんでしょ?元よりそのつもりにゃ」

真姫☆「もう、凛ったら。…ってわけだから、今日もお邪魔させてもらうわ」

花陽「それで…いつまで?」

真姫☆「そうね…。最悪でも、今月中には帰りたいところね。余りにも長く居すぎると元の世界に帰ったとき浦島真姫ちゃんになっちゃうし」

花陽「じ、じゃあ…始業式…学校が始まる前日まで…じゃ、ダメかな?あと、一週間…」

真姫☆「あと一週間…。わかった。じゃあその日に、本当にお別れね。それまではまた、希の家に居候させてもらうから」

希「おっけー。まぁ真姫ちゃんにしても、引き上げる準備も色々必要やと思うし、ちょうどいいくらいやない?ね、花陽ちゃん」

花陽「…はい」

病院への道


カラカラ…


花陽「本当に、遅くなっちゃったね。なんて言い訳しようか…」

凛「ねぇ、かよちん」

花陽「うん?なにかな」

凛「…あっちの真姫ちゃんのこと、そんなに気になるの?」

花陽「え?」

凛「すごい気にしてたから。…大切?」

花陽「…それは、もちろんだよ。とても、大切な友達だもん…。いなくなっちゃうのは、寂しいから。少しでも、長くいたいよ…」

凛「…ふぅん。そんなものなんだ…。凛とどっちが大切?」

花陽「え?凛ちゃんと…、…そんなの、比べられないよ。友達に優劣はつけられない」

花陽「凛ちゃんがどこか遠くへ行っちゃう、ってなったら、同じくらい気にすると思うよ。だから…」

凛「…ま、そうだよね。一緒にアイドルやってきた仲間だもんね。凛も穂乃果先輩やにこ先輩がどっかいっちゃったら気になるにゃ」

花陽「うん。それに…真姫ちゃんは私にスクールアイドルをやるきっかけを与えてくれた人だから」

花陽「見ることを諦めていた景色を、見せてくれた人、だから…」

花陽「…何か、お返しがしたいんだ。最後に」

凛「お返し?」

花陽「もう、やることは考えているんだけどね。…出来るかどうかは、わからないけど」



希の家


ガチャッ

真姫☆「ただいま、我が家」

希「お帰りなさい。住人さん」

凛☆「すっかり住み慣れちゃったね、ここにも」

真姫☆「ホントね…。それもあと一週間だけど」

希「寂しいこと言わんと、最終目的も一応は済んだことやし…さ、駆け付け一杯!」ガチャッ…

凛☆「お、お酒かにゃ!?」

希「コーラやよ!はい、真姫ちゃん。凛ちゃんも」

真姫☆「飲み会じゃないんだから…。まぁ、頂くけどね」

プシュッ…!! 

凛☆「んぐっ…んぐっ…、ぷはーっ!久々の炭酸飲料は骨身にしみるにゃー!」

真姫☆「けぷっ…あんまり一気には飲めないわね…」

希「炭酸ダメな子やっけ?」

真姫☆「そんなに強くはないわね…。飲めないことはないけど」

希「そっか…。うち、まだまだ真姫ちゃんのこと知らんなー。うふふ」

真姫☆「そうね…。私だって希のこと、まだ全然知らないわよ」

希「…せやね。まだ、知らないことたくさんあるのに。お別れ、って言うんも、少し…寂しいものがあるね」

真姫☆「…そっちが寂しいこと言っててどうするのよ。いつかは、って前々から言ってるでしょ!はい、罰として一気!」グイッ

希「あぶぶっ…!ご、ごめんって…そんな急に飲めな…ぶふっ!」

凛☆「あはは!希ちゃん吹き出してるにゃー!おもしろい!」

希「ぐぶふぅっ…。びしょ濡れやん…。あははは…」

真姫☆「ふふふふ…」



花陽の家



花陽「…」

花陽「…よし、やろう」


ピッピッピッ…

プルルルル… プルルルル… ガチャッ



花陽「あの、もしもし…。夜遅くにごめんね。頼みがあって、明日…」

翌日 朝


希の家


真姫☆「むにゃむにゃ…もう、これ以上は飲めないわよぉ…げぷっ…」

凛☆「そんなこと言わずに、ほらほら~…一気、一気…ぐごおぉぉぉぉぉぉ…」

真姫☆「む、ムリぃぃぃ…ん、むむ…っは!?」

真姫☆「はぁ…はぁ…。コーラで溺れ死ぬところだったわ…。夢か…」

真姫☆「…あれ、希は…もう起きてるのかしら」



ガラッ

真姫☆「希?」


希「…」


真姫☆「あ、いた…。起きてたのね」

希「あ、あぁ…真姫ちゃん。もっとゆっくり寝ててもいいんよ?」

真姫☆「ちょっとした悪夢のせいで目が覚めちゃってね。…希は、何してたの?」

希「ちょっとメールの確認。…そういえば、色々とやらないけないことも、うちにはまだ残ってたわ」

真姫☆「やらないといけないこと…?また悩みかしら」

希「うぅん。もう答えは出てるから、真姫ちゃんの手を煩わせることはないよ」

真姫☆「ふぅん…。それならいいけどね」

真姫☆「はぁ~…それにしても、冬休みなのに早起きしちゃったわね。練習もしないし、今日は何して時間潰そうかし…」


ピンポーン…


希「うん…?呼び鈴?誰か来たんかな」

真姫☆「こんな朝早くから?いったい…」


ガチャッ


真姫☆「うげっ…!?」


親衛隊A「やっほ!おはよう、西木野さん!」

親衛隊E「き、急に来ちゃって、すみません…」

親衛隊D「ほわ~…西木野さんって本当に東條先輩と一緒に住んでるんだ…すごっ」


真姫☆「ち、ちょっと!?なんで親衛隊のみんながここに…」


親衛隊F「冬休みって微妙に時間持て余すじゃない?だから、せっかくだし真姫ちゃんと遊びに行きたいってみんながね~…」

親衛隊C「ちょうど実家から帰ってきて暇してたので、よければ遊んで差し上げますわ!」

真姫☆「誰も遊んで欲しいなんて…」

親衛隊B「いいからいいから!今日だけ!ね?行こう!!」

真姫☆「え?いやあの…きゃあああああぁぁぁぁぁぁ…」



凛☆「ふわぁぁ…。なんか、起きたら真姫ちゃんがさらわれてたんだけど…。何があったの?」

希「…さてと。じゃ、凛ちゃん。ちょっと協力してもらいたい事があるんやけど」

凛☆「…え?」

秋葉原


親衛隊B「ねーねー、どこ行く?」

真姫☆「あのねぇ…、だからこんな朝早くにはどこも…」

親衛隊E「あ、あの…!この近くに朝からやってるおいしいカフェが、あって…!!」

親衛隊E「そ、そこ行きたい…!!ダメ、かなぁ…?」

親衛隊A「お?アンタが提案するなんて珍しいじゃん!じゃ、そこ行こう」

真姫☆「あぁもう…どうにでもして…」



カフェ


親衛隊C「お、お、おいしいですわっ!ここのケーキ…!」

真姫☆「あ、ホントに…ほろ苦いチョコレートが実にちょうどいい塩梅で…」

親衛隊E「はふ~…心温まるね…」

親衛隊F「そういえばここ、前にも花陽ちゃんと来たことあったっけ」

真姫☆「へぇ…そうなんだ」

親衛隊B「練習がない日とかは、割と小泉さんとお出かけしたりしてるんだけど…」

親衛隊A「そういえば西木野さんやほかのC☆cuteのメンバーは誘ったこと、なかったよね」

真姫☆「はぁ…。結構花陽も知らないところで付き合い上手ね。日々の練習もしつつ休日はお出かけなんて」

親衛隊D「えっ?休日は出かけるものでしょ?」

真姫☆「…私はもっぱらクリニックで…あっ」

親衛隊B「クリ…何?」

真姫☆(異世界人であることは伝えてても西木野☆星空クリニックのことは一切言ってなかったわ、そういえば)

真姫☆(…さすがにあんな変態じみた素性はこういうところで話したくないし…)

真姫☆「…別荘みたいなところで、友人と駄弁ってるのが私の休日の過ごし方よ」

親衛隊A「へぇ…。ショッピングとか、したりしないの?」

真姫☆「欲しいものは大体持ってるし…行くとしても月一じゃないかしら」

親衛隊F「わぁ。お金持ちっぽい発言。なんだか憎たらしー」

親衛隊C「休日はもっとアクティブに過ごすべきですわ!だらけていては脳みそが蕩けてしまいますわよ!」

真姫☆「…あぁ、私と一緒に駄弁ってる子は確かに蕩けてそうな脳みそしてるわね」


(凛「あぁ~…、毛布が凛を包んで話してくれないにゃぁぁ~…。もう凛おふとんと結婚する…。真姫ちゃんとは重婚だけどごめんね…」)


真姫☆「アイツも休日はめっきりインドアだし。私よりだらけてるわ」

親衛隊B「西木野さんもそうならないように…さ?」

親衛隊E「そ、そだ!今まで…小泉さんと一緒に、い、行ったところ…西木野さん、と…一緒に行くってどう、かな…?」

親衛隊F「お!小泉花陽親衛隊の聖地巡り、みたいな感じー?いいねいいね!」

親衛隊A「脳みそ蕩けるよりいいんじゃないの?」

真姫☆「…ふぅ。わかったわよ。休日の花陽がどういうところ行ってるのか、私も少しは気になるし…付き合ってあげるわ」

親衛隊C「よぉしっ!決まったら早速次の目的地に行きますわよっ!」

親衛隊A「あんたが仕切んなって…」

真姫☆「ふふ…たまにはこんな賑やかなのも悪くないわね」

とある喫茶店


ガチャッ… カランカランッ



ツバサ「…おまたせ」


希「うん。急に呼び出してごめんね。この際だし…って思って」


あんじゅ「いいの。希ちゃんのお願いならこっちは全然オッケーよぉ」

英玲奈「それで…話とはなにかな、東條」

希「うん。…この間の、マネージメントチームへの勧誘の件について。答えが出たから」

英玲奈「おぉ!それで…?」

希「…ごめんやけど、見送らせてもらう」

英玲奈「うっ…そ、そう…か…」

あんじゅ「あはは~、れなっち落ち込んでるぅ~」

英玲奈「れなっちって言うなって!」

ツバサ「…理由を聞かせてもらってもいい?」

希「うちは…、誰か困ってる人の役に立ちたいって言うんが、自分のやりたいことの根本にあることでね」

希「アイドル応援部で身についた、他人への体調管理能力もその内のひとつだった」

希「それが評価されてこうして誘ってくれてるんは、とっても誇らしいことやと思う」

希「…だけど、もっと困ってる子が近くにいたから。そして、うちはそれを助けてあげたいって思ったから」

希「うちは、うちのやりたいことを貫く。その困ってる子のそばにいてあげるんが…今のうちのやりたいこと、かなって」

ツバサ「なるほどね…」

あんじゅ「まぁ私たちは、困ってる、ってワケでもないしね~。希ちゃんがそうしたいなら、こちらがどうこうする権利はないわ」

英玲奈「…私は、いつでも東條を待っているから」

希「…うん。覚えとくね、れなっち」

ツバサ「ふふ、英玲奈ってば一途ね」

英玲奈「悪いか。…あと、れなっちって言うな」

希「それじゃ、うちはこれで…」スクッ

あんじゅ「あれぇ?もう行っちゃうの?」

希「うん。今日はちょっと予定が詰まってるから。ちょっとしたサプライズの…」

ツバサ「サプライズ!?」

希「えっ…」

英玲奈「あぁ…ツバサが食いついたか」

あんじゅ「ツバサちゃんサプライズ大好きだもんね~」

ツバサ「そ、それ…!私たちも参加しちゃいけないかしら!!ね?ね!?」

希「あはははは…うーん、でも…」

希「…これは、うちらにしかできないこと、だから。ちょっとムリかなぁ…」

ツバサ「なんだ…残念」

希「あ、でも…もしかしたら何かできることはあるかもしれないし、暇だったら今から一緒に来る?」

ツバサ「行くわっ!いいわよね二人共!?」

英玲奈「やれやれ…うちのリーダーはこれだから…」

あんじゅ「…これだから、最高なのよね」

カラオケ


真姫☆「らららら~…♪」


親衛隊C「やっぱりとても歌が上手ですのね…!」

真姫☆「まぁね。最初に歌が下手って言われたこと、忘れてないわよ?」

親衛隊A「あ、あれはわざと下手に歌ってたんだろぉ…?」

真姫☆「ふふ、そうだけどね」

親衛隊B「さて、じゃあ次は…」


ジャカジャカジャカジャカ… ギュイィィィィィンッ


真姫☆「うわ、バリバリのヘビーなメタルっぽい曲…誰よこれ入れたの」

親衛隊E「あの…わ、私、です…」

真姫☆「っ!?」

親衛隊F「あはははは、この子のカラオケでの変わり具合パないよ?まぁ見てなって」

親衛隊D「はいマイク」

親衛隊E「ありがと…!じ、じゃあ歌うね…」ドキドキ …



親衛隊E「しゃああああああああぁぁっ!!!行くぞオラアアァァァァッ!!」

親衛隊E「オイッ!オイッ!オイッ!!フゥーッ!!」

親衛隊E「(超デスボイス)」



真姫☆「」

親衛隊D「あの子超が付くレベルのバンギャでしかもああいうのが大好きなんだって」

親衛隊C「デスメタル寄りの少々卑猥な曲も難なく…」

親衛隊B「少々どころじゃないけどね…。何回犯すって口にしてんのよ…聞いてるこっちが赤面しちゃうわ」

真姫☆「あの子だけキャラ濃すぎない?」

親衛隊A「おとなしめの子がこういうの好きなのって結構あるあるでしょ」

真姫☆「…確かに花陽にも百合趣味があるし珍しいことじゃないのかもしれないわね…」



親衛隊E「あ、ありがとうございました…」ペコリッ

真姫☆「…上手だったけど普段からその半分くらいの声が出てるとちょうどいいと思う」

ゲーセン


親衛隊A「よっしゃぁ!格ゲーは超得意なんだ!任せといて!」

真姫☆「負けないわよー!うりゃりゃりゃ…」ガチャガチャ…

親衛隊B「うわ、すごいレバガチャしてる…」

親衛隊D「そんなんじゃ勝てないと思うよ~?」

バゴォォンンッ!!

真姫☆「よし、勝ったわ!」

親衛隊A「嘘だああぁぁぁぁ!」

親衛隊C「すごい格闘センスですわ…」



親衛隊F「はいはい、次こっち!UFOキャッチャーしよ!」

真姫☆「ちょっと急ぎすぎじゃ…」

親衛隊A「この後もまだまだ予定入ってるからね!」

親衛隊E「あ、もう少しで…取れそう…!」

真姫☆「あらホント。よぉし、ここはUFOキャッチャーの天才真姫ちゃんに任せなさい!」カチャリンッ

真姫☆「コツはこうやってじっくり…」カチッ カチッ

真姫☆「よし、いい位置!来い…!!」

モギュッ

親衛隊B「掴んだ!」

ポトッ…

親衛隊C「落ちましたわ…」

真姫☆「ちょっと店員さんっ!?このアーム設定おかしいんじゃないの!?詐欺よこんなの!」

親衛隊F「ま、真姫ちゃん…そこまで本気にならなくても…」

親衛隊D「よ、よーし、次はプリクラ撮ろうプリクラ!」



親衛隊A「それじゃ、フレームはこれにして…」

親衛隊E「う、上手く笑えるかな…」

真姫☆「はぁ…はぁ…。ハイペースすぎよ…ちょっと休ませ…」


『カメラに向かって笑顔で~…、はい、チーズっ!』


真姫☆「え、あ、ちょっ…」

パシャッ


親衛隊B「お、いい感じに撮れてんじゃん」

真姫☆「すごい不細工な顔してるわね、私…」

親衛隊F「こういうのも新鮮でいいじゃない」

親衛隊E「じ、じゃあ次はダンスゲームに…」

真姫☆「ま、まだ続くのーっ…!?」

親衛隊C「当然ですわっ!!」

メイドカフェ


謎のメイド「みなさーん!今日も私、謎のメイドの…」


親衛隊E「わ、ホントにいる…。中学生メイドさん…」

親衛隊D「あの噂は本当だったのね…。サングラスをかけたミニライブをする小さなメイドって…」

真姫☆「あれって亜里沙ちゃんじゃ…」

親衛隊A「知ってんの?」

真姫☆「…まぁ、知ってるといえば知ってるような…あんなことしてるなんて聞いてないんだけど。海未の後継人かしら…」


謎のメイド「…しかし、残念なことに亜里沙の学校は明日から新学期なんです…。なのでライブは今日で最後になります」


親衛隊C「そ、そうなんですのね…。偶然最後のライブを見ることができてよかったですわ」

真姫☆「それはいいけどあの子自分で自分の名前言っちゃってるじゃない…。謎のメイドの癖に詰めが甘いわよ…」


謎のメイド「なので、今日見に来てくれたお客さんには、これまでで最高のライブをお届けしたいと思います!」

謎のメイド「では…行きますよー…!ミュージック~…スタート!!」


~♪


親衛隊F「あ、この曲…A-RISEの歌だね」

真姫☆「ふぅん…さすがにオリジナルの曲ではないのね」


謎のメイド「こころっのせつなっさーわかるっひとだけどー…」


親衛隊B「結構歌上手じゃん。可愛らしいし、最後なんてもったいないよね」

親衛隊A「そだね。花陽がアイドル専攻行かないくらいもったいない」

親衛隊C「ま、まだそんなこと言ってますの…?」

親衛隊A「あはは、冗談冗談」

真姫☆「…問題ないわよ」

親衛隊A「え?」

真姫☆「あの子はきっと…ここで終わるような子じゃないから」

真姫☆(花陽が叶えた理想を、夢見てくれる子になるはず)

真姫☆(きっと亜里沙ちゃんも、笑顔のスクールアイドルに…)



謎のメイド「…はい!それでは、私のライブはここまでとさせていただきます!」

謎のメイド「冬休みの間楽しみにしてくださった方々、偶然見に来てくれた方々にも、感謝を込めて!」

謎のメイド「今まで、ありがとうございました!亜里沙は普通の女の子に戻ります!」


パチパチパチパチパチパチ!!


謎のメイド「で、ではあとはごゆっくりカフェをお楽しみください~」スタスタスタ…



親衛隊E「か、かわいかったねぇ~…」

親衛隊D「意図せずライブも楽しめたし、そろそろ次の目的地に行こっか」

親衛隊F「賛成!次はどこがいいかな~…」

真姫☆「そろそろ体が疲れてきたわ…。というか亜里沙ちゃんは最後の台詞をどこで覚えたのやら…」

夕方


親衛隊A「今日は付き合ってくれてありがとね~。楽しかったよ!」

真姫☆「ははは…想像以上にハードな一日だったわ…」

親衛隊B「じゃあまたねー!小泉さんにもよろしく言っておいて!」

親衛隊C「次に会うのは新学期ですわね。それでは」

スタスタ…


真姫☆「あっ…」

真姫☆(…そっか。まだあの子たちには私が元の世界に帰る云々の話はしてなかったっけ)

真姫☆「さよならの言葉も、言えなかったわね」

真姫☆「…そういえば結局、だれの名前も覚えてない気がするわ。不思議ね」



希の家


ガチャッ

真姫☆「ただいまー。ふぅ、疲れちゃった。ねぇ凛…」

真姫☆「…凛?」


シャー…


真姫☆「シャワーの音…。ま、まさか凛っ…!!お風呂場でリストカッ…」


凛☆『うん?真姫ちゃん帰ってきたの?』


真姫☆「…まぁ、そんなわけ無いわよね。うん、帰ってきたの。そっちこそこんな中途半端な時間にシャワー浴びてどうしたのよ」


凛☆『え?あー…ちょっと汗かいたからさ。久しぶりに運動して』


真姫☆「運動…?どこか走ってきたの?」


凛☆『まぁそんな感じー。希ちゃんはもう少ししたら帰ってくるから、それまで夕御飯は待っててってー』


真姫☆「ふぅん…。お腹すいてるのだけどしかたないわね。テレビでも見て待ってましょう」



数十分後…



ガチャッ

希「ただいまー。遅くなってごめんねー…」


真姫☆「あ、希。お帰りなさい。もうお腹ペコペコなんだけど」

凛☆「疲れてるところ申し訳ないにゃー」

希「待っててー。今すぐ作るから」

真姫☆「…というか、もうそんなに疲れる練習してるの?すでにダンスは出来上がってるってことかしら」

希「うん?…あー、まぁ、そんなところかな」

真姫☆「…?なんだかはっきりしない答えね。まぁ、いいけど…」

凛☆「そんなことよりお腹すいたにゃー!はよはよ!」

希「うんうん、待っててなー」

翌日 朝


真姫☆「ふわぁぁぁ~…、おはよう…」

凛☆「お、今日は凛より遅起きにゃ」

真姫☆「そりゃあ昨日あれだけ遊べば疲れも溜まるわよ」

希「ん、おはよう。朝ごはん、できてるよ」

真姫☆「いただくわ。…もぐもぐ」


ピンポーン


凛☆「にゃ?呼び鈴がべーだにゃ。誰だろ…」

真姫☆「…なんだか嫌な予感がするんだけど」


ガチャッ


花陽「おはよ、真姫ちゃん」


真姫☆「あれ…。花陽?どうしたのよ」

花陽「うん、実はね…これから…」

花陽「一緒に遊びにいかない?」

真姫☆「えぇっ!?き、今日も…?」

花陽「うん。ダメかなぁ…?」

真姫☆「だ、ダメってわけじゃないけど…でもあなたはアイドルの練習があるんじゃ…」

花陽「それなんだけど…」

希「真姫ちゃんがいられるのも、今日をいれてあと6日やん?日曜日に帰るとすれば、一日自由に空いてるのは五日間」

希「もういられる時間も多くはない…みんなもできるだけ長く真姫ちゃんと一緒にいたい。だから、今日から一日ずつ、C☆cuteのみんなで真姫ちゃんと一緒にいられる時間を作ろうって」

真姫☆「えっ…」

花陽「今日は私が真姫ちゃんと一緒に遊んで、明日がことりちゃん、明後日が海未さん、って感じで…」

真姫☆「つまり私は帰るまでの5日間、毎日遊び続き、ってこと…!?」

希「せやね」

凛☆「わー、ハードだにゃー」

真姫☆「そんなぁ…」

花陽「ホントは、みんな毎日真姫ちゃんと一緒に居たいけど、ライブの練習もあることを考えて、出した結論がこうなの」

花陽「そんなに疲れるところにはいかないつもりだから…ね?」

真姫☆「…はぁ。わかったわよ。私も、あなたたち一人一人に、言い足りないこともあるしね。ちょうどいいわ」

花陽「よし、それじゃ今から行こう!」

真姫☆「はいはい…。ふぅ、大変な一週間になりそうね」


スタスタ…



凛☆「…そんじゃ、凛たちも…」

希「真姫ちゃんが出かけたことやし、そろそろ行こっか」

スタスタ…


真姫☆「それで…どこに行くつもり?」

花陽「うん。もう場所は決めてあるの。こっちだよ」



CDショップ


真姫☆「ここは…」

花陽「真姫ちゃんと一番最初に秋葉原に来た時に寄ったCDショップ。覚えてる?」

真姫☆「…えぇ。スクールアイドルの夢を決心しきれずにいたあなたをどう説得しようかって、必死に悩んだ末の秋葉原巡りだったからね」

花陽「おかげで私、ここまで来られた。本当に感謝してるんだ。ありがとう…真姫ちゃん」

真姫☆「あなたの力があってこそよ。私は、ほんの少し背中を押してあげただけ…だから」

花陽「ふふっ…あ、それでね。今日ここに来たのは…少ししたいことがあって」

真姫☆「したいこと?」

花陽「えっと、どれだったかなぁ…。あ、あった。これだよ、これ」スッ

真姫☆「これ…?これ、昔のアイドルのCDよね?どうして今更…」

花陽「このCD、前にここに来たときに聴いたの、覚えてる?」

真姫☆「…え。そうだったかしら」

花陽「そうだよ。でね、これを二人で聴きながら、こんなことを話してたの」



(真姫「こうやって聴いてると、どことなく思い出される過去の思い出…」)

(真姫「音楽ってこうやって時代を感じさせてくれる、一種のアルバムのようなもの、よね」)

(花陽「そうだねぇ…。人生を歩んでいれば誰だってその中に自ずと音楽が入ってくる」)

(花陽「CMソングだったり、街のスピーカーから流れる音だったり…」)

(花陽「その曲は自分の中の思い出と結ばれて、心の中に保存されて…」)

(花陽「ずっとずっと未来、ふと何かの拍子にその曲を聴くとその時の情景がぱっと頭の中に蘇る」)

(花陽「それまではほとんど覚えてなかったことなのに、ちょっと前の出来事かのように一瞬で、鮮明に」)

(花陽「ふふ、そう考えると不思議だよね、音楽って」)

(真姫「えぇ。そして…素晴らしいものだと思うわ」)

(花陽「…うん。きっとこうして、真姫ちゃんと一緒にこの曲を聴いたこの思い出も」)

(花陽「心の中のアルバムに保存されて、ずっと遠くの未来にまた、開かれるのかな」)

(真姫「…かも、しれないわね」)



真姫☆「…あぁ、そういえばそんなことを言った覚えもあるわね」

花陽「この半年弱の間に、色んなことがあって」

花陽「もうこの思い出も、ずっとずっと昔のことのように感じられる」

花陽「だから、もう一度ここで、同じ曲を聴いて」

花陽「この音楽と一緒に、心のアルバムに真姫ちゃんとの思い出を保存しておきたいなって」

花陽「今より、ずっと遠い未来…ふとした拍子にこの曲を聴いて、真姫ちゃんのことを思い出せるように」

花陽「ずっと、真姫ちゃんのことを忘れずにいられるようにって」

真姫☆「…花陽。…ふふ」

真姫☆「そうね。私も…この世界での出来事、きっと忘れない。忘れないように、心のアルバムに記録しておかなくちゃね」

花陽「…うんっ」

夕方


花陽「ふふ、今日は楽しかった!帰るのが惜しいくらい」

真姫☆「私も。二人きりって久々だったからね」

花陽「次は…日曜日だね」

真姫☆「…えぇ。最後の日。そこで本当に、花陽とはさよならね」

花陽「寂しいな…。でも、私…真姫ちゃんがいなくなっても頑張るから!」

花陽「絶対に、真姫ちゃんが見せてくれた景色を…同じ景色を多くの人に見せられるように!」

真姫☆「うん、期待してる。あなたならできるわ。この私が認めたんだもの。誇りを持ちなさい」

花陽「ふふ…じゃあ、さよなら。明日はことりちゃんが迎えに来ると思うから、明日も楽しんでね。それじゃ、バイバイ」

真姫☆「えぇ、バイバイ。…と、明日も外出ね…。家が恋しいわ」




希の家


ガチャッ

真姫☆「ただいまー」


凛☆「っ!」ビクゥッ!!

希「おぅっ…」ビクッ


真姫☆「…うん?何してたの?」

凛☆「べべ、別に何もしてないよ!?」

希「お、おうおうおうおう!何もしてへんよ!?」

真姫☆「あからさまに怪しいんだけど…くんくん」

真姫☆「なんだかあなたたち…汗の臭いがするわね」

凛☆「ぎくっ」

真姫☆「練習で忙しい希はいいとして…凛、どうしてあなたまで汗をかいてるの?今日も走ってきたとか?」

凛☆「う、うぅ…それは…」

真姫☆「何か隠し事してるわね…!」

希「…実はね、凛ちゃんは…」

凛☆「の、希ちゃっ…!!」

希「長らくライブをしてこなかったブランクを、この間に取り戻そうとしてるんよ!」

真姫☆「え…」

凛☆「あぁ、言っちゃったにゃ。恥ずかしいから黙ってて欲しかったのに…」

希「だからうちらと一緒に今日も練習してたんよね。真姫ちゃんにナメられたくないからー!って張り切って」

真姫☆「…あぁ、なんだ。そういうことね。別に隠すほどのことでもないでしょうに」

凛☆「凛は見えないところで努力するタイプなんだもん!しかし周りには天才で通したいおマセさんなのにゃ」

真姫☆「自分でおマセとか笑わせてくれるわね。…はぁ、あなたたちに付き合ってたら疲れがぶり返してきたわ。シャワー浴びてくる」

凛☆「ごゆっくりどうぞにゃー…」

凛☆「…ふぅ」

希「…焦ったね」

凛☆「ナイスアシストにゃ」

翌日 朝


ことり「おはよー」


真姫☆「…」

ことり「あれれ、聞こえなかったのかな?おはよー」

真姫☆「聞こえてるわよ」

ことり「あ、おはよう。真姫ちゃん」

真姫☆「…重い」

ことり「何がぁ?」

真姫☆「あなたよあなた!!朝起きたらなんで布団の上にあなたが馬乗りになってんのよ!?」

ことり「えへへー。凝った趣向でしょ?」

真姫☆「なんにも凝ったところなんてないわよっ!ただただ乗っかてるだけじゃない!!早くどけ!」

ことり「もう、朝からハイテンションだなぁ。高血圧になるよ?」

真姫☆「怒らしてるのは誰よ…。で、なんでことりが私の寝室にいるわけ…?」

ことり「ふふ、今日は私が真姫ちゃんを一日自由にしていい権利を得ているからね」

真姫☆「なんだかその言葉だけ聞くと非常に嫌な気分になるわね」

ことり「だから通い妻?みたいな感じで、今日は朝ごはんを真姫ちゃんに作ってあげようかなと」

真姫☆「朝ごはんを…?…って、通い妻ってあなた…」

ことり「ささ、用意はできてますよー。こっちこっち」



真姫☆「わ、わぁぁ…!!」


凛☆「あ、真姫ちゃんおはようにゃ。見てみてこれー!すごいよねー!?」

希「ことりちゃん、料理もできたんやねー。この張り切りっぷりは驚きやけど」

ことり「さぁさぁ、たーんと召し上がれ?」

真姫☆「しかし…オムライスにポーチドエッグにチーズケーキにミルクセーキに…朝からかなり重い…」

真姫☆「ってよく考えたら全てのメニューに卵が使われている!?」

ことり「ことりが産んだ卵なのです。泣く泣く食材にしたんだよ…およよ…」

希「うちの冷蔵庫にあった卵やけどね」

真姫☆「知ってる。まぁ、ことりが丹精込めて作ってくれたメニューなら残さず食べさせてもらうわよ。…いただきます」

真姫☆「コレステロールがマッハで上がるけど…もぐもぐ…うん、すごく美味しい」

ことり「わぁ嬉しい!リアクションもっと大きくてもいいんですよ?」

真姫☆「朝から体力使わせないで」



ことり「じゃ、いってきまーす!」

真姫☆「いってきまーす…」


凛☆「いってらっしゃいにゃー」

希「今日は帰りに卵買ってこないとね。それじゃ、うちらも行こうか」

凛☆「オッケーにゃ!今日もたっぷり指導してあげるからね!」

「いらっしゃいませー」


真姫☆「ここは…」

ことり「衣装を作るための生地屋さん。ちょっと足りなくなっちゃって、買い足し」

真姫☆「衣装…もう作ってるのね。気が早いのね…」

ことり「え?あぁ…そうかも。今すごい頑張って仕立てあげてるんだー。アイドル専攻の手伝いしてたときのお友達にも手伝ってもらって」

真姫☆「へぇ…」

ことり「ふふ、でも意外だったなぁ。手伝ってもらえるかその友達に頼んだら、二つ返事でオッケーしてくれて」

ことり「友達って言ってもね?ほとんど話もしてなかった人ばかりなんだよ。衣装製作の時だけ関わっていたような」

ことり「だから、そんなにすぐ引き受けてくれるなんて思ってなくて。…なんだか、不思議だなぁ」

真姫☆「前も、似たようなことあったわよね。ステージが壊されちゃったとき」

ことり「あ、そうだね。あの時も、一度か二度話したくらいの他の部の人たちがこぞって手伝ってくれて…」

ことり「ほんの少しの繋がりが、私たちを助けてくれたんだよね」

真姫☆「えぇ、そうね。困ってる時助けてくれるのは、遠い友達より近くの知り合いなのよ」

真姫☆「助けを求める人の気持ちさえ伝われば、案外動いてくれる。人って、結構優しいから」

ことり「…うん。私ね、それで思い直したんだ」

ことり「9月からの思い出は大切だけど、それ以前は最悪だったって、思ってたけど」

ことり「…でも、そうじゃないよね。どれだけ辛い思い出で満ち溢れていても、全てがそうじゃないんだって」

ことり「服飾手伝いをしていたときの友達を頼ることができたのは、この一年間、私が存在していたから、なんだよね」

ことり「全てをなかったことにしちゃったら…その繋がりも、なくなってたんだって」

真姫☆「はじめからのやり直しのこと?」

ことり「うん。あの時…穂乃果ちゃんに一度別れを告げたときは、それでいいんだって思ってた」

ことり「でも、違ってた。それじゃダメだって。なかったことにできないくらい、たくさんの大切が、この一年間に詰まってた」

ことり「それに気づかせてくれたのが…穂乃果ちゃんだったなんて、なんだか…すごいなぁって」

真姫☆「…ことり」

ことり「真姫ちゃん。海未ちゃんに笑顔をくれて、ありがとう」

ことり「あの海未ちゃんの笑顔を見ることがなかったら私…今でもスクールアイドル、やってなかったかもしれない」

ことり「選んじゃいけない道を選んで、無くさないための停滞を選択して…本当に大切なものを失っていたかもしれない」

ことり「この世界に来てくれて、ありがとう。真姫ちゃん…」

真姫☆「…今更、そんな改まって言われるようなことでも」

ことり「ぎゅーっ!!」ギュッ!!

真姫☆「ひゃわぁっ!!?いきなり何っ!?」

ことり「なんだか無性にギュッってしてあげたくなったの!抑えられぬリビドーってやつだよぉっ!」

真姫☆「いや抑えて!恥ずかしいから!店内の人みんな見てるからぁぁぁぁあぁぁぁぁっ!!」



夕方


ことり「今日は買い物に付き合ってくれてありがとうね。週末、帰るときもまた会おうね」

真姫☆「えぇ。あ、生地大丈夫?そんなにたくさん…持って帰るの手伝う?」

ことり「いいよー。真姫ちゃんは明日もお出かけだもん。私のための優しさを是非海未ちゃんにどうぞ♪」

真姫☆「…わかったわ。海未には優しくしてあげるわよ。じゃ、気をつけて帰ってね。また、日曜日に」

ことり「うん。今日は楽しかったよ。バイバイ、真姫ちゃん」

翌日 早朝

希の家


海未「おはようございます」

真姫☆「…今、何時だと思ってるのよ」

海未「えっと…朝の5時ですね」

真姫☆「5時なんてまだ夜よ!なんでこんな時間…」

海未「最近真姫は遊び呆けているらしいので、早朝でのランニングで鈍った体を鍛え直そうかと」

真姫☆「あなたたちが毎日連れ出してるんでしょうが!むしろ練習とかより知らない場所に行ったりする方が体力使って…」

海未「おや、では見知った場所のランニングならいい気分転換にもなりそうですね。さぁ、今すぐ行きましょう」

真姫☆「う、ぐぅっ…」



タッタッタッ…


海未「ふっふっ…」

真姫☆「はぁっ…はぁっ…」

海未「もう息が切れているのですか?やはりたるんでいるようですね」

真姫☆「勘弁してよぉぉぉ…」



ガチャッ…

真姫☆「はぁーっ…、はぁーっ…」


凛☆「あ、おかえり真姫ちゃん!海未ちゃんも!」

海未「ただいま。ほら真姫、朝ごはんが出来ていますよ」

真姫☆「ちょっと…まずシャワーに…」

海未「疲れた身体こそ美味しい朝ごはんを食べる秘訣です!シャワーは後でも浴びられるでしょう?冷えないうちに頂きましょう」

真姫☆「なんなのよもう…」


真姫☆「もぐもぐもぐ…」

海未「どうです?早朝ランニングの後の朝食は美味しいでしょう?」

真姫☆「ま、まぁ美味しいけど…希の作った料理はいつでも美味しいわよ」

希「んふ、嬉しいこと言ってくれるやん。でも、いつもよりも美味しく感じられるんと違う?」

海未「えぇ!ランニングの力で!!」

真姫☆「別にそこまで…」

海未「なんですか!?」

真姫☆「すごく美味しいわ!チクショウ!!」

凛☆「いつも以上に騒がしい食卓でなによりにゃ」



メイドカフェ


真姫☆「…それで、行きたかった場所ってここなの?」

海未「はい。バイトを辞めてから行く機会が今までなかったもので。久しぶりに来てみたかったんです」

真姫☆「へぇ…。あ、そういえばこのメイドカフェで海未と同じことしている子いたわよ。サングラスかけてライブしてた」

海未「なっ…!それは本当ですかっ!?何時頃からの何曜日でしょうか!?」

真姫☆「それを言うなら何曜日の何時頃じゃ…でも、もうやってないみたい。その子の学校はもう冬休み明けちゃったみたいで」

海未「そ、そうですか…。残念です、見てみたかった…」

真姫☆「その子、絵里の妹の亜里沙ちゃんだったから、来年UTXに入学してきたら見せてもらえるわよ、好きなだけ」

海未「なんと…彼女だったんですか。でも私はこのメイドカフェのライブが見てみたかったので…」

海未「自分の後を追ってくれる人がいる、というものは、なんだか…とても嬉しいものですね」

真姫☆「ふふ、そうよね」

海未「はい。それに…このメイドカフェで、というのも、感慨深いものがあります」

海未「ここは私に、色々なきっかけを与えてくれた場所でもありますから」

真姫☆「きっかけ…」

海未「仮面の自分でも、笑顔を作るきっかけを貰えた。アイドルというものに興味を持つきっかけを貰えた」

海未「ステージの上で輝きたいという自らの欲望に気づくきっかけを貰えた。そして…」

海未「あなたたちとこうして、スクールアイドルをするためのきっかけを貰えました」

海未「初めは穂乃果の言葉から、半ばヤケクソで始めた謎のメイドとしてのアルバイトでしたが…」

海未「結果的に、私の人生にかけがえない彩りを与えてくれた…素晴らしい場所になってくれました」

真姫☆「今でも、スクールアイドル始めたこと…後悔してない?」

海未「えぇ!後悔なんて、これっぽっちもあるわけがありません!」

海未「今では毎日が楽しくて楽しくて…本気でプロを目指そうかとも考えているんですよ」

真姫☆「えっ…!そ、それはすごいハマりようね…」

海未「…昔の自分では考えられないほど、今の私は笑えています。自然に、朗らかに…」

海未「あなたがいなければ、こんな私はもしかしたら、ありえなかったのかもしれません。…真姫」

海未「もっと、あなたと一緒にいたかった。できるならば、これからもずっと…笑い話を聞かせて貰いたかったです」

真姫☆「それは…できないのよ。ごめんなさい」

海未「いえ!もう、それはわかりきっていることですから!なので今日は是非!」

海未「…たっぷりと、真姫と笑える話がしたくて。日が暮れるまで、語り尽くしましょう」

真姫☆「ふふっ…、えぇ、いいわ。話のネタなら、尽きないほどに溢れているもの」





夕方


海未「…今日は、頬が痛くなるほどに笑わせていただきました。いつか一人の時間に、思い出し笑いをさせてもらいますね」

真姫☆「もしまた会えた時のために、色々話のネタを補充しておくわ。その日は遠い未来になるかもしれないけど」

海未「お願いします。いつまでも…いつまでも、待っていますから」

翌日

希の家


真姫☆「むにゃむにゃ…ふわぁあぁぁぁ~…」

真姫☆「あれ、もう朝…?はぁ、今日は誰と…」

真姫☆「…」

真姫☆「布団が妙に暖かい…まさか…」

希「…うん?あ、起きたんかー」

真姫☆「…どうして希が私の布団の中で寝て…」

希「真姫ちゃんの温度を感じたかったから~」

真姫☆「気持ちわるいわよ…早く出て!って、今日は希と遊びに行く日でしょう?こんなゆっくりしてていいの?」

希「いいのいいの。だってうちは…」

希「今日は、ここで真姫ちゃんと過ごそう思っててね」

真姫☆「ここ…ってもしかして、この家で?一日?」

希「うん。真姫ちゃんも連日外出で疲れてるやろと思って。うちってば気が利くやん?」

真姫☆「ま、まぁ…そうね。なんだか拍子抜けした感じもあるけど…」

希「うちはこうして真姫ちゃんと思う存分おうちデートを楽しむんよ~」

真姫☆「おうちデートって表現はその…恥ずかしいからやめて」



真姫☆「あれ、そういえば凛は…?」

希「今日も出かけたよ。用事で」

真姫☆「用事って…この期に及んであの子はどこになんの用事が…」

希「真姫ちゃんほどではないにしろ、凛ちゃんも凛ちゃんでこの世界に思い入れがあるんと違う?」

希「最後にお別れする前に、色々とやっておきたいこともあるんやって」

真姫☆「やっておきたいこと、ね…。じゃあ朝ごはんは?」

希「うちと二人で、やね。ふふ、こうするのもなんだか久しぶりかも」

真姫☆「そうね…。凛がやってきたのもなんだか随分前に感じるわ」

希「もうこの家も、だいぶ賑やかになってきて…」

希「静かだった頃が、思い出せないくらいやよ」

真姫☆「…でも、それは…」

希「うん。明後日までのおはなし」

希「それからは再び、静かな我が家が帰ってくる」

真姫☆「そう…ね」

真姫☆「もうこの家にも、厄介になって長いわね…。この家に帰らなくなる未来が想像できないくらい」

真姫☆「なんでだろ…。みんなとお別れするのは寂しくないのに、この家からバイバイするのは少し…切ないわね」

希「真姫ちゃんはおうちに愛着が湧いちゃうタイプなんかもね。言っちゃえばうちらの誰よりも、付き合いが長いわけやし」

真姫☆「かも、しれないわね。だとすれば希がこうしてどこにも行かずに、家で一日を過ごさせてくれたのは…私にとってもちょっと嬉しいことだったのかも」

希「でしょ?やっぱうちって気が利くやん!」

真姫☆「そういう余計なことさえ言わなければ、もっと気が利くんだけどね」

希「んふ、手痛いなぁ。やっぱり真姫ちゃんは真姫ちゃんや。さ、じゃあふたりっきりの朝食と行こうか」

真姫☆「えぇ。今日くらいはゆっくり食べたいものだわ」




真姫☆「はふぅ…こうしてダラダラと時間を過ごすほうが私はしあわせだわ…」グテー

希「もー、だらしないなぁ」

真姫☆「凛がいないとどうしても私がだらしなくなっちゃうわね…。希の甘えさせてくれるオーラのおかげかしら」

希「ま、うちはダラダラと真姫ちゃんとこの時間を堪能するんもいいんやけど…もう残されている時間もごくわずかなわけだから、濃密な時間も過ごしたいよねぇ…」

真姫☆「濃密って…ど、どんなことするのよ」ドキドキ

希「ま、思い出話でもと」

真姫☆「あぁ…なんだ」

希「うふ、どんなこと想像してたんかなぁ~?やらしいことぉ~?」

真姫☆「ふ、ふざけないでよ。そんなこと…」

希「うちは真姫ちゃん相手ならちょっとしたやらしいことでもしちゃっていいけどね~なんて」

真姫☆「何言ってるのよ…」

希「まぁ、そう思っちゃうくらいに…もう真姫ちゃんとの付き合いも結構なもんやんね」

真姫☆「あぁ…そうね。なんせ毎日一緒に寝てるくらいだもの。夫婦かって感じよ」

希「最初に真姫ちゃんと出会ったときはこうなるなんて思ってもなかったなぁ…」

希「てっきりうちは数日で帰るものやと思ってたけど…もはや当然のごとく住み着いちゃって」

希「これはおかしいなぁ、って思ったんが、真姫ちゃんと出会って1ヶ月くらい経ってからやね」

真姫☆「そのくらいから、私がこの世界の住人じゃないって?」

希「うん。というよりも、前に一度出会った西木野さんとは、別の真姫ちゃんやないかなって」

希「最初に真姫ちゃんに話しかけた頃は、もう春に西木野さんを家に泊めた頃のことなんかほとんど記憶してなかったけど…」

希「どんどん思い出していくと、つじつまの合わないことも多いな、なんて気づいて」

希「うちはもしかしたら、ヤバい子を家に泊めてしまったんじゃないか、とか思ってたよ」

真姫☆「なのにそれでもまだ、私を追い出さなかった。…どうして?」

希「それは…うちのしたいことが、困っている誰かの役にたちたいってことやから」

希「真姫ちゃんが何も言わずにうちの家に帰ってきてくれるのは、うちと、そしてこの家を必要としてくれているってことだから」

希「もううちには、それだけで十分やった。真姫ちゃんがどんな子であろうと、それを見捨てるなんて、ましてや追い出すなんてことは考えないよ」

希「それにうちは…」

希「…やっぱいいや」

真姫☆「え」

希「なんだか言ってて気恥ずかしくなってきちゃった。そんなことよりプロレスごっこしよか」

真姫☆「ちょっと!?話の続きは?!気になるじゃないっ!!」

希「いいの!やっぱ休日の部屋でやることと言えばプロレスやよ!さぁ戦いのゴングは今鳴らされた!よっしゃー!!」ガバッ

真姫☆「えぇっ!!あ、ちょっ…このぉっ!!私だってちょっとくらいは…!」



夕方


ガチャッ

凛☆「ただい…何してんの二人共」

真姫☆「えっ…あ、これはその…プロレスごっこよ、プロレスごっこ」

凛☆「…ほぉ、プロレスごっこですか…。そんな半裸で…」

希「暴れてたらなんか、熱くなってきちゃって。あははは…」

凛☆「…まぁ、夜に寝てる隣でやられるよりはいいですけどね。別れが近いからといって一時の過ちに流されるのも凛はどうかと…」

真姫☆「盛大に勘違いしてんじゃないわよーっ!!」

翌日 朝

希の家


真姫「おはよう」

真姫☆「え、あ、あぁ…おはよう」

真姫「…はい、これ」

真姫☆「これは…?」

真姫「制服よ。あなたが着てきたものでしょ?」

凛☆「お、ホントだにゃ。真姫ちゃんの音ノ木坂の制服だ」

真姫☆「あぁ…そうだったわ。私の制服、あなたの家にあったのだったわね。ありがとう、わざわざ届けてくれて」

真姫「別に…置いててもかさ張るだけだし」

真姫☆「あ…じゃあUTXの制服、私返したほうがいいかしら」

真姫「いいわよ。もう新しいの買っちゃったし。持って帰って」

真姫☆「え…」

希「いいんやない?この世界にいた、って記念に。真姫ちゃんも短い間だけど、UTX学院の生徒であったわけなんだし」

凛☆「遠慮なくもらっちゃいなよ!」

真姫☆「…わかった。もらっておくわね、キノ」

真姫「…うん」

真姫☆「それで…今日で最後、だったわよね。明日帰るんだから」

真姫「そうなるわね」

真姫☆「あなたは私をどこへ連れて行ってくれるの?疲れる場所はもう勘弁願いたいんだけどね」

希「真姫ちゃん体力ないねー」

真姫☆「…アンタと昨日プロレスごっこしまくってたのが原因だけどね」

真姫「ぷ、プロレスごっこ…!?希先輩と…!?」

凛☆「半裸でね」

真姫「はんらぁっ…!!なんてことを…」

真姫☆「ほぼ練習着と変わらない状態で互いの身体を触りあっただけじゃない…。いつもと変わらないでしょ」

希「言っちゃえばそうだけどね」

真姫☆「昨日の話はどうでもいいのよ!どこ行くかって聞いてるの」

凛☆「真姫ちゃんが言い出したことなのに」

真姫☆「あぁん!?」

凛☆「何でもないです」

真姫「…別に、疲れるようなところに行く気はないわよ。私だってちょっと疲れてるし」

真姫「それに、どこか楽しめるような場所も、私は知らない。何ヶ月引きこもり生活してきたと思ってるの」

真姫☆「自慢できることじゃないような…」

真姫「…だから、私が行くのは見知った場所よ。あなたも、よく知っているところ」

真姫「見知った場所に、なれたところ」

UTX学院


真姫☆「…休日のUTXね。確かにあまり来たことはなかったかも」

真姫「絵里の指導体系が廃止されるに伴って、結構学校の規律も変化してきてね」

真姫「特に用事がなくても、申請なしで休日でも学校に入ることができるようになって」

真姫☆「へぇ、そうだったのね…。アイドル専攻…というか絵里はUTXにどれだけ影響を与えていたのよ…」

真姫「A-RISEはUTX学院の名看板でもあるから、それを振りかざすことで色々とやりくりしていいた…って聞いたわ」

真姫☆「ふぅん…。誰から?」

真姫「え」

真姫☆「つい最近人見知りが克服出来たあなたがそこまで知ってるってなんだか違和感があって。誰からそんな内部の情報を聞いたのかしら」

真姫「え、あ、いや、それは…」

真姫☆「…」

真姫「…え、絵里よ。本人から聴いたの」

真姫☆「絵里から…?」

真姫「うん。昔のわだかまりは忘れて、今はよく話すようになったのよ」

真姫☆「絵里とあっているの?個人的に?」

真姫「えっと、個人的にというか…うぅん…」

真姫「ま、まぁ私にも色々とあるのよ!全部あなたに話さないといけない理由、ある!?」

真姫☆「…それはないけど」

真姫「…はぁ。じゃ、それは置いておいて。こうしてあなたと二人きりでいるのって、思えばあの日以来じゃないかしら」

真姫☆「あの日…あぁ、あなたが登校してきた時ね。あの時は驚いたわ…」

真姫「それはこっちのセリフなんだから!おかしいでしょ、学校へ来たら私がすでにいるなんて!」

真姫「危うく卒倒しそうになったの、今でも覚えているわ…!それに、あなたと話をつけた後でも…」

真姫☆「後?」

真姫「…まだ、人に慣れていなかったから、C☆cuteのみんなやあなたの友達に話しかけられる度に、心臓がどきりとして」

真姫「誰かと話すたびにこんな、寿命が縮まりそうな思いをするなら…学校で友達なんていらないって、本気で思ってた」

真姫☆「…それを、希が助けてくれたのよね」

真姫「えぇ…。学校を、好きにしてくれた。外に居場所がない私に、こんな素晴らしい…見知った場所を与えてくれた」

真姫「希先輩には、感謝してもしきれないくらい。まぁ…少し歯向かっちゃったことも、あったんだけど」

真姫☆「絵里の策略に引っかからなければ、もう少し希も気が楽になったでしょうにね」

真姫「そ、それを言われると辛いかも…。でも、あなたも…」

真姫「あなたも、私にとってとても特別な人間。本当に、姉妹のような存在…とも思ってる」

真姫「同じ顔のクセに、私の全然知らない世界を知っている。知らないところへ、みんなを引っ張ってくれる」

真姫「もっともっと前に…幼い頃からあなたと共にいられたらどんな人生になったのか…ふふ、そういう世界も体験してみたかったわ」

真姫☆「…あははっ!」

真姫「えっ…な、ナニヨ。そんなにおかしいこと、言った?」

真姫☆「えぇ、とっても。だって私がこんなに…そう、あなたの言ったような、みんなを引っ張るようになったのは」

真姫☆「つい、最近のことなんだもの」

真姫「えっ…」

真姫☆「私は、ただの真似っこよ。そもそも、あなたと私はほとんど同じ人生をたどってきているんだから、そんなに劇的に変わるわけ無いでしょう?」

真姫「あ、まぁ…確かにそうかも」

真姫☆「だから、もしあなたが…今の私に憧れるのだとしたら」

真姫☆「簡単になれる。だって…あなたは私なんだもの!」

真姫「…!えぇ、そうね!」

夕方の少し前


真姫「最後が学校巡りじゃ少し味気なかったかしら…?」

真姫☆「いえ、ちょうどいいくらい。あなたも、こんな早くでいいの?もっと私と居たくない?」

真姫「何言ってるのよ…。まぁ、いいの。長い間学校にいたら、もしかしたら誰かにふたりでいるところを目撃されちゃうかもしれないし」

真姫「それに私はまだ完璧に…」

真姫☆「完璧?」

真姫「あ、あぁいえ!何でもないわ!!」

真姫☆「…はぁ。薄々感づいてたけど、あなたたち私に何か隠してる?」

真姫「か、隠してなんか…」

真姫☆「目を逸らさない。…何かを隠しているのは明白のようだけど」

真姫☆「それはどうしても私に知られたくないことなのかしら」

真姫「…ぅ」

真姫☆「…」

真姫「私からは…何も言えないわ」

真姫☆「…そう。まぁいいわ。どうせ明日までの付き合いなんだし。何を隠されていても私には関係ないものね」

真姫「そ、そんな寂しい考え方は…」

真姫☆「別に、そんなつもりはないけど。じゃ、また明日。見送りには来てくれるんでしょう?」

真姫「えぇ…。音ノ木坂学院跡地、だったわよね」

真姫☆「うん。来るなら遅れずに来るのよ。それじゃぁ…今日は楽しかったわ。バイバイ」

真姫「ば、バイバイ…」



真姫☆「隠し事…気になるけど」

真姫☆「誰かに素直に聞いても教えてもらえそうにないわね」

真姫☆「…いいわ。帰るときに堂々と聞けば教えてくれるでしょ。帰る時なんだし」

真姫☆「とりあえず今日はもう帰って、明日の準備をしましょう…」

真姫☆「ついに、この世界ともお別れ。…もう急なめまいや吐き気に悩ませれる心配もなくなる」

真姫☆「寂しいって気持ちや、心残りがない…ってことは、ないけど」

真姫☆「…もう、花陽は、ことりは、海未は、希は、キノ…真姫は」

真姫☆「C☆cuteは、己の力で成し遂げていける」

真姫☆「そしていつかきっと…」

真姫☆「頂点を、掴むことが、できる」

真姫☆「穂乃果の真似事で始めた、穂乃果以上の無茶をして支えた、私のスクールアイドル」

真姫☆「飛ぶこともままならない小鳥だったあなたたちも、もう、羽ばたいて行ける」

真姫☆「UTXを」

真姫☆「この世界を」

真姫☆「…笑顔に、包み込んであげてよね。任せたわよ、スクールアイドル、C☆cute」



希の家



凛☆「むにゃぁ…すやぁ…」


真姫☆「…」

真姫☆「…やばい、寝れない」

真姫☆(みんなの隠し事が気になりすぎて…目が冴え渡ってる…)

真姫☆(それと、何かやり残したことがないかとか、色々気になってどうしようもないわ…)

真姫☆「…はぁ」

真姫☆「これじゃ、カッコつかないわね…。堂々と去っていきたかったのに…」

真姫☆「…私も、まだまだ寂しがり屋なのかしら」

凛☆「むにゃぁ…ん、んんっ…真姫ちゃん…?」

真姫☆「あ、凛…。ごめんなさい、独り言で起こしちゃったかしら」

凛☆「うぇ…今何時…って、こんな時間…。寝れないのぉ…?」

真姫☆「うん。ちょっとね…」

凛☆「ふーん…、そっか。ま、仕方ないよね」

凛☆「凛も明日は緊張するにゃー…」

真姫☆「は?」

凛☆「でも早く寝ないとだから、おやすみね…。むにゃむにゃ…」

真姫☆「え、ちょっと…」

真姫☆(凛まで緊張するって何事?)

真姫☆(…まさか、凛まで私に隠し事を…)

真姫☆(あーっもう!もしかして私だけのけ者なの!?なんなの!?)

真姫☆(気になる気になる気になる気になる…!!)



翌朝


真姫☆「…」ノソノソ…

希「あ、おはよう真姫ちゃ…目の下真っ黒やね」

真姫☆「一睡もできなかったわ…」

凛☆「凛はぐっすりだにゃ。最後なのに締まらないねー、真姫ちゃんは」

真姫☆「誰のせいだと…ふわああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ…」

希「大きなあくびやねー。朝ごはんだけはちゃんと食べてきね?」

真姫☆「わかってるわ…。もぐ…」

希「それで、今日はいつ帰るんやっけ」

真姫☆「できれば長くいたいところだけど…キリがないからね。昼には帰らせてもらうわ」

希「昼…か。わかった、みんなにも連絡しておくね」

凛☆「よろしくにゃ」

真姫☆「色々あったけど…ついについに、お別れね」

希「ま、最後は明るく行こうよ。笑顔でさよならのほうが真姫ちゃんも気持ちいいでしょ?」

真姫☆「そうねー…もぐもぐ…」

真姫☆(少し腑に落ちないところはあるけど…まぁ、いいわ)

真姫☆(別れ際に感涙するなんて、真姫ちゃんらしくないものね)



音ノ木坂学院跡地前


真姫☆「ふぅ…なんだかドキドキしてきた」

凛☆「帰るのが?」

真姫☆「住み慣れたところからさよならするのは多かれ少なかれ緊張するものよ」

凛☆「ふーん…。っと、さてさて、ゆっくり歩いてきたせいでやっとオトノキにたどり着いたにゃ」

真姫☆「凛の歩くスピードが遅いからよ」

凛☆「凛は真姫ちゃんの歩調に合わせてただけなんだけどねー」

真姫☆「…ったく、もうみんな来てるんじゃ…」

真姫☆「あれ」


シーン…

真姫☆「誰もいないんだけど」

凛☆「わぁ、ホントだね」

真姫☆「え、えっと…希はちゃんとみんなに帰る時間伝えたのかしら?言い忘れたとか…?」

真姫☆「私が早く来すぎちゃった…!?え、でもゆっくり歩いてきたんだし…えぇ…」

凛☆「ところで真姫ちゃん」

真姫☆「それとも私のことなんか結局どうでもいいって…」

凛☆「真姫ちゃん」

真姫☆「な、ナニヨ!?少しパニクってるんだからあとにし…」

凛☆「こっちきてこっち」グイグイ…

真姫☆「え?え?」


トトトトト…

真姫☆「ちょっと!どこまで連れて行く気…?クリニックはもっとあっちの…」

凛☆「いいからいいから!」


トトトトト…


凛☆「うーんと…うん!このあたりかな!」

真姫☆「な、なんなのよ一体…!ここに何があるって言うの!?」

凛☆「ねぇ真姫ちゃん。ここ、どこかわかる?」

真姫☆「ハァ?どこって…音ノ木坂学院跡地で…」

凛☆「そうじゃなくて、オトノキがあった時代なら、ここはどこに相当する場所かなって」

真姫☆「え…ここは…わかんないわよそんなの。もう一面地面しかないんだし」

凛☆「ここはね。もう芝も枯れちゃってるけど、よく運動部がランニングしてたグラウンドにゃ。真姫ちゃんはここに、何か思い入れない?」

真姫☆「思い入れ?運動部のグラウンドになんか特に…」

真姫☆「あ…」

凛☆「分かっちゃった?」

真姫☆「わかったっていうか…確かに思い入れはあるけど…」

真姫☆「…オープンキャンパス。その日、私たちが9人で、初めて…」

凛☆「そう!さぁみんなっ!!行くよっ!」


バサァッ!!


真姫☆「…え?」

~回想の回想~



一週間前

西木野☆星空クリニック


~♪


凛「かよちん…?」

花陽「…よしっ」

凛☆「にゃ?」



その夜

花陽の家



花陽「…」

花陽「…よし、やろう」


ピッピッピッ…

プルルルル… プルルルル… ガチャッ



花陽「あの、もしもし…。夜遅くにごめんね。頼みがあって、明日…」

花陽「真姫ちゃんを、遊びに誘ってくれないかな…?うん、ちょっと…理由は聞かないで欲しいんだ」

花陽「真姫ちゃん、目ざといから…何か気づかれちゃうかもしれないし」

花陽「…うん、大体そういう感じ。ありがとう…それじゃ」ピッ

花陽「あとは、みんなにメールを入れよう。手伝ってもらえるかはわからないけど」

花陽「これが真姫ちゃんへの…恩返しになるかもしれないなら」


翌日

希の家


親衛隊B「いいからいいから!今日だけ!ね?行こう!!」

真姫☆「え?いやあの…きゃあああああぁぁぁぁぁぁ…」



凛☆「ふわぁぁ…。なんか、起きたら真姫ちゃんがさらわれてたんだけど…。何があったの?」

希「…さてと。じゃ、凛ちゃん。ちょっと協力してもらいたい事があるんやけど」

凛☆「…え?協力って…」

希「メールで花陽ちゃんに呼び出されてね。凛ちゃんも一緒に来て欲しいんよ。それと…例のDVDも貸して欲しい」

凛☆「DVD…それって、昨日見た?」

希「うん。お願いや」

凛☆「…な、なんだかよくわかんないけど、そこまでお願いされちゃ断れないにゃ!」

希「ありがと。それじゃ、凛ちゃんは先花陽ちゃんち行っといて。…うちはちょっと、先に済ませておきたい用事があるから」

凛☆「わ、わかったにゃ…」



花陽の家


花陽「…」


ことり「えっとー…」

海未「いきなり呼び出されるとは思ってなかったのですが」

真姫「一体なんなの?」

花陽「うん、ちょっとね。話したいことがあって」

穂乃果「…それは、私たちにも関係していること、なのかな」

にこ「どうしても来て欲しい、って書いてたから、仕方なく来ちゃったけど。ご丁寧に住所まで添付してたし」

凛☆「凛はまだ状況を把握できてないにゃ…。急に希ちゃんにかよちんの家に行けって言われただけで。あとこれ、DVD」

花陽「あ、ありがと。…話はみんな揃ってからにしたいんだ。もう少し待ってて欲しい」

真姫「みんなって…あとは希先輩くらい…?」


ガチャッ

希「ごめん、少し先に用事を済ませて置きたくて。待たせちゃった?」

海未「いえ、そこまでは。これで全員揃いまし…」

希「あ、うちだけやなくて…」


ツバサ「ほほぉ…ここが小泉さんの…」

英玲奈「…お邪魔している」

あんじゅ「ごめんね~、急に来ちゃって」


花陽「あ、あ、あ、A-RISEっ!!?どうして…」

希「どうしてもついてきたいっていうから…」

ことり「これは花陽ちゃんも想定外なんだね…」

真姫「ま、まぁいいんじゃないの?これでようやく揃ったんだし早く本題に…」

花陽「…ごめん。まだ、もうひとり」

穂乃果「え…?」

花陽「もうひとり、呼んでいる人がいるの」

にこ「もうひとりってまさか…」


コンコン

「…入ってもいいかしら」


花陽「どうぞ」

希「この声…」


ガチャッ


絵里「…お邪魔します」

ツバサ「え、絵里…。あなたまで?」

にこ「やっぱり…!花陽、あなた私に絵里の連絡先を聞いたのはそういうことだったのね…!」

花陽「うん。どうしても、呼びたくて」

絵里「急に連絡が来た時は驚いたけど…そこまでして私を呼びつけるということは、よほどなんでしょう?」

花陽「はい。どうしても…この9人でないと、いけないことなんです」

凛☆「この9人って…え、もしかして凛も…!?あっちの凛じゃなくて…!?」

花陽「うん。…今、凛ちゃんは動けないから、できればあなたに頼みたい」

ことり「それって…?」

花陽「来週、真姫ちゃんがこの世界から元の世界へ帰っちゃう時」

花陽「サプライズライブをやりたいって思って」

あんじゅ「わぉ。サプライズ…!」

ツバサ「いい響きね」

希「うん、サプライズとまでは聞かされてるけど…」

にこ「…何のライブをするつもり?」

花陽「これ、です」スッ

英玲奈「…これは?」

花陽「凛ちゃんに持ってきてもらった、昨日見たライブのDVD」

海未「なっ…!そ、それって…!!」

花陽「うん。…真姫ちゃんの世界のスクールアイドル、μ'sの初めてのライブ映像…なんだったっけ」

凛☆「微妙に違うけど、そのとおりにゃ」

絵里「あの子の世界の、ライブ…」

花陽「私は…このライブを」

花陽「μ'sのライブを、この世界を去る真姫ちゃんに、最後に見せてあげたいの」

ことり「μ's…って、C☆cuteじゃなくて…」

穂乃果「A-RISEでもなくて…」

真姫「…C☆cuteとA-RISE…その二つのスクールアイドルが、一緒に…ライブするってこと?」

花陽「…うん」

英玲奈「ほぅ…これはまた、大きく出たな…」

あんじゅ「確かに、私たちは出る幕はないけど…とても面白そうね!」

ツバサ「見てみたいわね。それ」

海未「しかし、それは…どう、なのでしょう…」

にこ「私たちが、一緒に…」

花陽「…どう、かな?協力して…もらえない、かな…」

一同「…」



「私、賛成」



一同「えっ…」


穂乃果「…やろうよ。みんなで!」

にこ「穂乃果…。でも…」

穂乃果「何か、いけないことでもあるの?私たちが一緒にライブしたら」

ツバサ「そうね。…クリスマスのライブ、私たちはひとつと宣言しておきながら」

英玲奈「本当の意味でひとつになったことは、まだなかったじゃないか」

あんじゅ「いい機会だと思うけど~?」

にこ「本当の意味で、ひとつに…」

希「うちも賛成かなー」

真姫「希先輩…」

希「このライブは、ただ真姫ちゃんに、真姫ちゃんの世界のアイドルを再現してみせる…ってことだけじゃない」

希「今まで交わることのなかった、C☆cuteとA-RISEっていう二つのスクールアイドルが、手を取り合って一つのライブをする」

希「真姫ちゃんが成し遂げようとした革命の集大成って意味合いも込められてると思うんよ」

凛☆「もう何ヶ月も真姫ちゃん、μ'sのみんなと会ってないからねー…最後のサプライズにしては面白いかも!」

真姫「で、でもっ…ライブをするって言ったって…ど、どうするのよ!?何もないのよ!?」

にこ「そうよ!それよ!!音源も衣装も…ダンスも何もかもないのに…!」

花陽「なければ、今から作ればいいんだよ!!」

一同「「えぇぇっ!?」」

花陽「何も一から作るってわけじゃない!映像を見たらダンスも曲も、衣装だって出来上がってるんだから!それを真似すれば、いつもよりずっと早く出来上がるよ!」

ことり「で、でも…真姫ちゃん帰っちゃうの、一週間後だし…」

ツバサ「あら?一週間あればライブのひとつくらい…出来て当然じゃないかしら」

あんじゅ「そうよねー?にこちゃんっ♪」

にこ「え゙っ…!!と、当然でしょ!A-RISEの名に泥を塗るわけには行かないわ!」

英玲奈「…こちらはできると豪語しているけど、そちらはどうかな?」

花陽「海未ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃん」

海未「ここまで言われては…」

ことり「できるって返すしかないよ!!できるっ!!」

真姫「や、や…やってやろうじゃないっ!!」

ツバサ「うん、いい返事ね」

希「でも、一番の問題は…」

絵里「…私ね」

穂乃果「あっ…絵里、さんは…」

にこ「昔の厳しいレッスンのせいで、5分も踊ったら足が動かなくなる…んだったわよね」

花陽「それをわかってて、絵里さんを呼び出しました。絵里さん…」

花陽「無理に…とは言いません。ここに呼んだのも、せめて話だけでもと思ったからです」

花陽「だから…」


絵里「やるわ」


花陽「えっ…!」

絵里「…やる。私…そのライブ、踊る」

穂乃果「そんなっ…!大丈夫、なんですか…?」

にこ「もう数年以上まともなダンスを踊ったことなんてないんでしょう!?」

絵里「ライブなら…5分もかからないでしょう?平気よ」

にこ「でもっ!一週間でどれだけレッスンすると思って…」

絵里「休憩を入れながらだったら、続けて練習もできるわ。だから…やらせて欲しい」

絵里「塞ぎ込んで、自らの精神を燃やそうとした私を…真姫は助けてくれたのだから。少しでも恩を返さなくちゃ」

絵里「どれだけ練習が辛くたって、倒れてなんていられない。私はそんな子たちを…容赦なく切り捨ててきた身分なんだし」

絵里「彼女たちへの贖罪を思えば…やれるわよ」

にこ「絵里…」

絵里「それに、体調管理には頼もしいマネージャーもいるからね、希」

希「ふふ、任せとき。肉体面の管理ならえりちの慧眼にも劣らんよ~?」

英玲奈「東條の技術は確かなものだ。やるなら、全力でやれ。…みんな」

凛☆「ってことは…!」

海未「どうやら、決定のようですね…!今から一週間で…!!」

ことり「あのDVDのライブを、完全コピー!うわぁ、大変だぁ…衣装も作らないと…」

あんじゅ「私たちも手伝うわ。なるったけ完璧に近づけるように万全を期さないと、真姫ちゃんにも幻滅されちゃうもの」

真姫「じゃあこの一週間、完全にライブの練習…」

花陽「うぅん!それじゃ…勘の鋭い真姫ちゃんは気づいちゃうかも!」

凛☆「一週間帰るの引き伸ばして一切構ってもらえなかったら何してるんだって勘ぐるよね、普通」

花陽「だから、C☆cuteのみんなで一日ずつ、真姫ちゃんと一緒に過ごす日を作るの!」

花陽「最後に過ごす二人きりの一日を作る、っていうのもあるけど、それなら真姫ちゃんも私たちがやってることに気づかないと思うから」

海未「なるほど…。真姫の足止め…ということですか。しかし…」

にこ「スケジュール、ただでさえ忙しいのに大丈夫なの?貴重な一日を使って…」

花陽「大丈夫です!できるっ!人間その気になればなんだってできるもんっ!」

絵里「無茶苦茶ね…。でも…」

穂乃果「その無茶をやるのが…私たち、だもんね」

海未「…分かりました。この際覚悟を決めましょう!」

ことり「全部全部やっちゃおう!私たちが望むことぜーんぶっ!」

希「こんくらいの無茶、今まで真姫ちゃんがやってきたことに比べれば大したことないもんね!」

花陽「はいっ!」




花陽「…そして、一週間。限りなく本物に近づくため練習して。一度も一緒に練習したことのなかったA-RISEと一緒に踊って」

花陽「連続して5分以上踊ることのできない絵里さんも、何度もこけながら立ち上がって」

花陽「ついに、こうして…ここまで来たんだよ」

花陽「どうかな…真姫ちゃん」



真姫☆「あ…!」

真姫☆「その、服…」


ことり「ふふ、映像の中の衣装を見よう見まねでね。どうかな、うまくできてる?」

海未「一週間で間に合わせる…だなんて、不可能かと思っていましたが」

にこ「やれば結構、なんとかなるものよね」

希「えりちも…あんなに頑張ってたし」

絵里「もう当分、踊りたくはないけど…。ここが私の最後の見せ所だから!」

真姫「できれば最後まで隠し事がバレて欲しくなかったけど…多少は感づかれちゃうわよね」

凛☆「でも結局気づいてなかったみたいだし、凛のナイスアシストのおかげにゃ!」

穂乃果「こうやってC☆cuteとA-RISEがひとつになれる…。これもあなたのおかげ…」

穂乃果「あなたが、私たちを動かしたんだよ。本当に…すごい存在だよ」

真姫☆「そ、そんな、こと…っていうか、さ、さっきまでどこにいたのよ!?影も形も…」

凛☆「にゃははーっ!凛の透明マントを忘れてないかにゃー?」

真姫☆「あっ…まさかそれで…」

凛「みんな、被って隠れてたんだ。びっくりしたでしょ?」

ツバサ「無駄に私たちもいるわ」 英玲奈「最近私たち端役だな」 あんじゅ「出過ぎると主役食べちゃうから仕方ないわよー」

真姫☆「あなたたちまで…。あ、あははは…たったこれだけの観客のために、そんな急ピッチでのライブの練習…なんてことを…」

ツバサ「…うぅん。違うわ」

真姫☆「え…」

英玲奈「私たちは観客ではない。彼女たちのアシストだ」

あんじゅ「だから、今日このライブを見るのは一人だけ。真姫ちゃんだけのライブ」

凛「たったひとりのためのライブ…なんだよ」

真姫☆「…!」

花陽「真姫ちゃん…覚えてる?一番最初のC☆cuteのライブ。私とことりちゃん、二人のライブ」

花陽「あの時も、たった一週間の練習で、ライブを成功させたんだ」

花陽「あれから随分と時間が経って…最初はふたり、三人だったC☆cuteが、段々、だんだん大きくなっていって」

花陽「ついに、A-RISEも含めて、9人でライブができるようになった…」

花陽「今、このステージ…とも呼べない、ただの空き地のステージから、私の見たかった景色を、真姫ちゃんが見せてくれた。…だから」

花陽「私も…お返しに。真姫ちゃんの見たい景色を、見せてあげたい」

真姫☆「花、陽…っ」

花陽「行くよ、みんなっ!!」

花陽「これは…これからやる曲は、私たち9人の…初めての曲ですっ!!」

花陽「UTXのスクールアイドル…その深い闇から抜け出した、証の曲ですっ!!!」

花陽「…聞いてください」



「僕らのLIVE 君とのLIFE」

曲が始まった。


聞き馴染みのある…だけど、少し違う。ほんの少し、アレンジが加わってる。


私の知ってるようで、知らない…そして、とても近くなのに、初めてこうして…観客として見るライブが、目の前で。



「  確かな今よりも 新しい夢 つかまえたい  」

「  大胆に 飛び出せば O.K.マイライフ  」


「  望みは大きくね 背伸びだってば 高く遠く  」

「  まぶしいあした 抱きしめに行こう  」

「  全部叶えよう  」



ふふ、と小さな声が漏れる。


ダンス、ミスってる。キノ…まだドジなんだから。


その点、やっぱり穂乃果とにこちゃんはすごい…。さすが、A-RISEね。


花陽は、あんな宣言しておきながら、センターじゃないのね。まぁ、コピーだから仕方ないけど。


でも、みんなを引っ張るのが板についてきて。本当…リーダーって感じになった。



「  そうだよ 信じるだけで  」

「  ぐんぐん 前に進むよ、君が!  」



この一年、限りなく遠かった穂乃果と、海未と、ことり。


今は、限りなく近い場所で、笑顔を振りまいている。


絶望的なほど、亀裂の入った仲だった、絵里と希。


今は、共に、同じステージの上で煌めいている。


私が、この世界にたどり着いて、そして、この世界と、私の世界との差を痛感して。


故に、絶対にありえないと思っていた、景色が。


今、ここで…。


目の前、で、私の、目の…。



「  答えなくていいんだわかるから  」


胸にえがく、場所は同じ…。


「  何度でも諦めずに  」


探すことが…僕らの挑戦…。


口ずさむ。彼女らの歌とともに、私が。


頬に、暖かな雫を流しながら。

元気の温度は下がらない。


「  熱いままで羽ばたいてく  」


あこがれを語る君の。


「  ゆずらない瞳が  」


…だいすき。


「…ダイスキっ!」





花陽「はぁっ…!」ビシッ!!


ツバサ「…」パチパチパチパチパチパチ

英玲奈「よくやった…」パチパチパチパチパチパチ

あんじゅ「ちょこっとミスもあったけれど、素晴らしいライブだったわ」パチパチパチパチパチパチ

凛「ほわぁぁぁ…す、すごいにゃー…!」


絵里「はぁっ…はぁっ…。たった数分のライブでも、本番となるとキツいわね…」

希「おつかれさん。っと…当の真姫ちゃんはどうしたんかな?」

にこ「こら、真姫ちゃん!まだライブの感想、聞いてないわよ!」


真姫☆「…」


ことり「真姫ちゃん…?」

凛☆「あ…にゃふふっ。これはこれは…」

海未「凛…?なんですかいやらしい笑顔を湛えて…」

穂乃果「もしかして、真姫ちゃん…」

花陽「…泣いてる?」


真姫☆「えぐっ…う、うぅっ…!あ、うぅぅっ…!!ぐじゅっ…!ずる、いわよぉぉっ…!!こん、なの…!な、泣くに決まってるでしょぉっ…!」

真姫☆「こんな、こんなの、見せられちゃったら…う、うぅっ…!!じゅっ…えへぇぇぇぇんっ…!!」

真姫☆「絶対に、泣かないって決めて、たのにっ…!笑顔で、さよならしたかった、のに…!」


真姫「…ふふ。いいじゃない。みんな、一度は誰かに泣き顔を見られてるんだし」

希「あ、ホント。この中で誰にも泣き顔を見られてないん、真姫ちゃんだけやん!」

花陽「これで、真姫ちゃんも私たちと同じ、だね!」

真姫☆「う、う、うぅぅっ…!!やだぁぁぁ、もう…!泣いてる顔なんて、見られたく、なかったぁぁぁ…!!」

凛☆「ずっとずっと、気丈に振舞ってきたんだもんね。真姫ちゃんだけは、絶対に折れちゃいけないからって」

凛☆「…でも、今だけは、泣いていいんだよ。泣けば泣くほど、みんな、笑顔になっちゃう素敵な涙だにゃ」ギュッ

真姫☆「り、んっ…!う、ああぁぁぁぁぁっ…!バカッ…ばかばかぁっ…!こんな、ときだけ…いいカッコしてんじゃ、ないわよぉぉっ…!!えっぐっ…!」

花陽「…見せられたかな、真姫ちゃんの見たかった景色。私の言葉にできないくらいの、真姫ちゃんへのありがとうを…伝えられた?」

真姫☆「も、もうばっちり…!すごい、すごい伝わった…。びっくりするくらい、つたわっ、うぎゅぅっ…!!うええぇぇぇぇぇぇんっ…!!」

凛☆「おー、よしよし。真姫ちゃんはいい子だにゃー」

海未「…こうして、泣いている真姫を見るのは、なんだか不思議な気持ちになります。真姫はてっきり、泣かない人間だと思っていましたから」

ことり「そだねー。真姫ちゃんもヒトの子なんだー」

真姫☆「あ、あたりま…ううぇぇぇぇぇっ…だ、だめ…もう何もしゃべれない…」

数分後…


真姫☆「ずっ…ずずっ…。あー、鼻痛い」


穂乃果「落ち着いた?」

真姫☆「…うん。あぁ、もう…恥ずかしいところ、見られちゃったわね」

希「全然!むしろ、真姫ちゃんの可愛い一面が知れてよかったわぁ~♪」

花陽「…けど、もうさよなら、だね。本当の本当に…」

真姫☆「えぇ。最後に…最高のライブを見せてくれてありがとう。C☆cuteとA-RISEで」

真姫☆「今日の出来事は一生忘れない。私の生涯で一番の心に残るライブだったわ」

凛「羨ましいにゃ。凛もあんなライブ…貰いたいな」

凛☆「ふふふ。うちの真姫ちゃんの人望は厚いからね!そんじょそこらの凛じゃ追いつけないにゃ!…ま、凛は別だけど~」

凛「な、何を…!」

にこ「凛同士が言い合ってるのはこれまた新鮮ね」

凛☆「…っと、じゃあそろそろ、帰ろっか。真姫ちゃん」

真姫☆「…えぇ」

ツバサ「最後に何か言い残したことはないの?」

真姫☆「…もう、ひとり一人への言葉は言い尽くしたわ。だから…ひとつだけ」

真姫☆「私がこの世界にたどり着いてから、色々なことがあって…それが全部全部大変なことだったけど」

真姫☆「でも、…やってよかった。この世界に来て、本当に良かったって思ってる」

真姫☆「かけがえない思い出をくれた、みんな…ありがとう」

穂乃果「…うん。私たちこそ」

ツバサ「私からも、言わせて。西木野さん」

ツバサ「私も、あなたがこの世界に来てくれて…本当に感謝しているわ」

ツバサ「私たちのUTXを、スクールアイドルを取り戻してくれたこと…ありがとう」

英玲奈「おや、ここで出しゃばるのか」 あんじゅ「やっぱり主役を食っちゃうスタイル~?」

ツバサ「い、いいでしょ…言いたかったんだから」

真姫☆「ふふふ…。あなたたちのよく知らなかった本性も知れて、勉強になったわ」

真姫☆「…じゃあ、行きましょうか。凛」

凛☆「オッケー!クリニックに乗り込むにゃー!!」

西木野☆星空クリニック内


凛☆「それじゃ、西木野☆星空クリニック、はっし…」

真姫☆「…ずずっ」

凛☆「泣くな泣くな。それでも男かにゃ!?」

真姫☆「…まごう事なき女の子よ」

凛☆「うん、真姫ちゃんはか弱い女の子だね。…だけど、最後は笑顔で」

凛☆「そう言ったのは真姫ちゃんだにゃ」

真姫☆「…わかってる。泣かない。もう、泣いてやるものですか」

真姫☆「笑顔が、アイドルには一番大切なんだもの」

真姫☆「どんな、ときでも」

凛☆「…そうだよ。さぁ、行くにゃっ!!」

凛☆「西木野☆星空クリニック~…!」

真姫☆「発進よっ!!」ポチッ



ゴゴゴゴッ…!!



花陽「わわっ…!」

にこ「うわ、本当にクリニックが浮いた!こんな大きい建物が…」

海未「乗りはしましたが、実際に外から浮くところを間近で見ると得がたいものがありますね…」

絵里「あ、見て窓!」


真姫☆「みんなーっ!さようならー!!」ブンブンッ!!

真姫☆「だいすきーっ!あなたたち全員…愛してるばんざーいっ!!」


真姫「ぷふっ…なによそれ?愛してるばんざーい?変なのっ…私も愛してるわ!また、どこか出会えるのを期待してるからねっ!!さようならっ!!」

ことり「私、真姫ちゃんのこと絶対に忘れないよっ!いっぱい写真もあるからっ…だから、ううぇえええんっ!!」

穂乃果「ことりちゃん…。っ!真姫ちゃーんっ!!ありがとうっ!!ありがとー!!私も大好きだーっ!!ばいばーいっ!」

海未「お元気でっ!またこの世界に来た時は、美味しいお饅頭を用意して待っていますからねー!」

希「困ったときはいつでもうちに訪ねてきたらいいからねー!なんてったってうちは…」

絵里「泣く子も黙る…東條希様、だものね。…真姫っ!もう私…誰かを泣かせるようなこと、しないようになるっ!約束、約束よっ!!」

にこ「へんっ!いつか…あんたのいるところまで手が届くような、声が届くような…!ビッグなスーパーアイドルになってやるわ!絶対にね!!」

凛「足が治ったら凛、凛ね…!かよちんと一緒にライブする!もう…思い出を捨てるようなこと、しないよっ!これからは、もっともっと増やすんだっ!!」

花陽「真姫ちゃんっ!!…さようならっ!!私、私ね…!」

花陽「真姫ちゃんと一緒に立ち上げたこのC☆cuteで、次は…スクールアイドルの頂点、目指してみるからっ!だからっ!!」

花陽「次会うときはっ!ら、ラブライブ、優勝してみせるんだっ!それまで、それまでは、さよならっ!!真姫ちゃんっ!!真姫ちゃーんっ!!」



真姫☆「…っ。ふ、ふふ…!!ホント…素直に笑顔にさせてくれない子たちだわ…!早く出して、凛…!!」

真姫☆「もう、ヤバい…。出そう…」

凛☆「なんか一見キタナイものが出そうかと」

真姫☆「いいから!」

凛☆「ほいほい。じゃあお別れの挨拶はこれで!次に真姫ちゃんと出会うのはあなたかもね?せーのっ…」

真姫☆・凛☆「「まじ☆えんじぇーっ!!」」


ピシュゥゥンッ!!




現在

アイドル応援部部室


ことり「…昨日のライブ、真姫ちゃん、とっても喜んでくれて。そうだね、もう一度…今度は怪我の治った凛ちゃんと一緒に」

凛「うんっ!」

希「う、うちとえりちはもうアイドル続けないと思うんやけどねー…」

花陽「いえ、無理やりにでもやります!凛ちゃんのやりたいこと、だもんっ!!」

海未「…えぇ。UTXの生徒に絵里さんのライブ、見せつけてあげましょう。きっと驚いた顔が見れますよ」

真姫「ふふ、あのツバサさんが喜びそうなことじゃない。いいわね、今度は絵里を知るみんなにサプライズ♪」

希「全くもう…。でも、うちも楽しそうやと思ってきたかも。せやね…またいつか、大学生になってもステージに立ちたいもの、やね…」

海未「感傷に浸っている場合ではありませんよ、希」

希「うん?あぁ…せやったね!」

ことり「まだ3学期は始まったばかり!卒業式までは時間はたっぷりあるんだから!」

真姫「もうやめる気で話してもらっちゃ困るわよ?希先輩っ」

希「うんうん!次のライブ、まだ何も決まってないけど…」

凛「次も、その次も、みんなを笑顔にさせるライブをお願いするにゃ!」

花陽「そうだね、私たちは…笑顔のスクールアイドルなんだもん」

花陽「じゃあ、始めよう!次のライブの相談!」



花陽(こうしてC☆cuteは、UTXのスクールアイドルはこれからも続いてゆく)

花陽(子供の頃に思い描いたほど、華々しく、煌びやかな世界ではなかったけれど)

花陽(でも、今の私が見ている景色は、誰かが涙するような、そんな世界ではなくて)

花陽(だれもを笑顔にしてくれる…そんな、楽しいステージ)

花陽(この私の「今」を、いつか誰かが夢に見てくれるように)

花陽(あなたの夢見た世界は、ここにあるんだよって、伝えるために)

花陽(あなたの見せてくれた景色を、私も見せられるように)

花陽(私たちは、続いてゆく)








もしライブ! 最終回

おわり

感想ありがとう…! これだけあれば十分だよ!




まだまだ終わらないよ!

エピローグ




…拝啓、西木野真姫様。


突然のお手紙で、驚かせて申し訳ありません。

明日に備えて今日は練習を控えるように言われたのですが、これといってやることがなく、

突発的にこうして手紙を綴ろうと考えたのが経緯になります。


もう、あなたがいなくなって半年以上が過ぎました。

既に衣替えも終わり、あなたの着たことのない夏服がUTX学院に溢れかえっています。

ライブの時の衣装も、どんどん露出の多いものが増えて、ちょっと恥ずかしいです。

私たちが進級してから、いろんなことがありました。例えば…




花陽「…うーん」


そこまで書いてから、何を書けばいいのか、迷った。

元々文章を書くのが得意ってわけじゃないから、あえてこんな文体に挑戦しなくてもいいと思うけど。

でも、真姫ちゃんに向けた手紙なんだから、丁寧に書かなきゃ。

…届くことはない、私の自己満足、なんだけどね。


花陽「さてと…どうしようかな」


書く事がないわけではないの。

ただ、書きたいことが多すぎて、何から書けばいいのかわからないや。

そうだなぁ…、じゃあとりあえず、思いついたことから書いていこう。

まずは…穂乃果さん。あの人は、とても変わりました。

とても笑って、とても泣く、感情表現が激しい…ふふ、まるで真姫ちゃんのような人に。

海未さんやことりちゃんによれば、この穂乃果さんが本当の穂乃果さん…だそうなんだって。

真姫ちゃんの世界の穂乃果さんも、そうなのかな?

どうして一番初めに思いついたが穂乃果さんなのか…それは、後で説明するとして、次は。

じゃあ、海未さんとことりちゃん。二人は、あまり変わっていません。

アイドルも今までどおり続けていて、海未さんは作詞をして、ことりちゃんは衣装を作って。

でも、ひとつ変わったことがあるとするなら、それは。

今まで、ふたりでいることが多かった海未さんとことりちゃんが。

今は、三人でいるところをよく見るようになった、ってことかな。

笑顔も、心なしか多くなったような気もします。

次は、真姫ちゃん。…あ、あなたのことじゃなくて。

私と同じクラスの、真姫ちゃん。そう、今年は同じクラスになったの。

そして、なんとね!真姫ちゃんは、今学期のクラス委員長に選ばれたんだ!

もしかしたら、あなたの印象が色濃く残っていて、それも一因になっているのかも知れないけど。

でも選ばれた真姫ちゃんはね、しっかりとその役目を果たしているの。

前の物怖じした真姫ちゃんは何処へやら…、今ではクラスのみんなの意見をよく聞く、リーダー気質のある子になりました。

赤いメガネを光らせて、ホントに委員長キャラみたいで…。

最近はよく、三年のにこ先輩と話しているところも見かけます。アイドルのことだったり、世間話だったり。

上級生でしかもライバルのA-RISEの一人だっていうのに、とても親しげで…私が羨ましいくらい。

知らない人ともよく話してて、真姫ちゃんもとても、変わったと思う。

…そう、変わったといえば。

アイドル専攻も、変わりました。とても、去年のアイドル専攻とは思えないくらいに。

今でも三専攻で成績トップの子をA-RISEに選抜する、ってスタンスは変わってないんだけどね。

でも、ある程度スクールアイドルとしての基本が身に付いたら、そこから抜けて。

自分たちで別のスクールアイドルを目指す、って選択肢を選べるようにもなったんだよ。

A-RISEと比べると、ハンデもあるけれど。でも、誰もアイドルの道を諦めないで済む、そんなUTXに…変わってきています。

きっとこれも、真姫ちゃんのなそうとしていた革命、なんだよね。

あ、それでね。ツバサさんも絵里さんもいなくなったアイドル専攻を、誰が指導しているか、なんだけど。

これは実は、去年から決まっていたことで。

実はね…凛ちゃんが、アイドル応援部の凛ちゃんが、今はアイドル専攻の指導をしています。

ふふ、すごいよね。アイドル応援部がアイドル専攻の指導…だなんて。

けど、希さんの時代を考えたら、元の鞘に戻った、ってことなのかな。

凛ちゃんは、足のリハビリをしながら、今年度からずっと指導を続けています。

松葉杖をついて、私のプレゼントしたアンクレットをつけて。

病室で凛ちゃんから、アイドル専攻の指導がやりたい、って聞かされたときはビックリしたけれど。

ツバサさんたちから正式に任されたことだって聞くと、私も応援して。

今では優しすぎず厳しすぎずの名指導者として、名を馳せているそうです。

そのおかげ、でもあるのかな。

UTXは今では、スクールアイドルがたくさん在籍しています。

絵里さんと穂乃果さんの妹さんたちも、今では立派なスクールアイドルのひとりになっていて。

ただ、練習場所の確保も必要で、まだまだ問題は残されていそうです。

これからはこういう問題も、私たちで解決して行かないと…ね。

そういえばこの間、街中で希さんに出会ったんだ。

絵里さんも一緒にいて、仲良さそうにしてた。

休日にふたりで遊びにいくくらいに、親密な仲になってるみたい。

顔合わせればにらみ合っていた頃が、嘘みたいです。

C☆cuteの噂も街に轟いているようで、明日のライブも、見に来てくれるって。

絵里さんは、ちょっと悔しそうにしてたけど、でも応援してくれるって言っていたよ。

街中では時々、メジャーデビューした前A-RISEのポスターを目にします。

名前も少し変えて、新しく活動を始めた3人だけど、やっぱりプロの世界は厳しいみたいで。

けど、ツバサさんたちならきっと…プロの世界でも頂点を取れるよね。

私も、ファンの一人として目が離せない限りだよ!



花陽「…そして」



最後に、C☆cute。

ここまで、隠してきたけれど。

実は、第2回ラブライブがこの春から夏にかけて開催されて、そして。

私たち…ラブライブの本戦に出場します。

地区予選で、今のA-RISEを打ち倒して。

今日は、明日の決勝大会に向けて、身体を休めてるってことなんだ。

自分でも信じられないけど、私たち…あのA-RISEに勝ったんだよ!

追いつけないほど遠くに感じていた穂乃果さんとにこさんを、追い抜いて。

その結果が発表されたとき、穂乃果さんは…とても泣いてた。

ツバサさんに顔向けできない、本戦に行けなくて悔しい、とにこさんや海未さん、ことりちゃんに抱きついて。

始まる前から、どちらかが本戦には残れない戦いだったけど…それが分かっていても、悔しいものは悔しくて。

その穂乃果さんの泣き顔が、今でも私の心に残ってる。だから、最初に思いついたのが穂乃果さんだったんだ。

けど、昨日穂乃果さんに直接言われた。絶対に優勝してって。

A-RISEとしては連覇は無理でも、UTXのスクールアイドルとして、優勝してほしいって。

私の手を握って、ファイトだよって。

前、握手してもらった頃の手より、ずっとずっと、火傷してしまいそうに温かい手のひらの温度。

彼女の思いも、ステージの上に連れて行く。

そして、優勝するんだ。絶対に…!

だから、この手紙を読んだら、真姫ちゃんも…見に来て欲しいな。

私たちのライブ。ラブライブの、決勝大会に。

届くことのないこの手紙が、何かの手違いで届くことを祈って。



小泉花陽より



花陽「…ふぅ」


思いついたことをゆっくり書いていたら、もう日が沈みそう。

手紙はこのくらいにして、封筒にしまおう。

渡せなかったプリクラ写真を、封の代わりに貼って…よし。

引き出しの中にしまって、ベッドに横たわる。

明日のために、これでもかというほど練習してきて。

それでも私は、不安で仕方ない。

ごまかそうとしてきた胸の高鳴りを、どうしても意識してしまうの。

ラブライブ、優勝…。

夢見てきたこの絶対的な目標を前に、私は恐れているのかな。

名ばかりでも、C☆cuteというスクールアイドルのリーダーとして。

数々の想いを背負って、何百人、何千人…ひょっとしたら何万という人の前に立つことを。

こんな私で、できるのかな。

どうしてもあなたに頼ってしまいそうになるの。

真姫ちゃん。

そんなことを思って、届くはずのない手紙を書いてしまった。



花陽「ダメだなぁ、私って…」



真姫ちゃんは、困ったときは誰かを頼れって言ったけど。

当のあなたは、誰かに頼る時も迷わなかった。

私は…迷ってしまう。

リーダーとして、頼ることに、迷ってしまう。

チームまで不安にさせたくないから、誰にも言えず。

一番頼りたいあなたは、ここにはいない。

考えれば考えるほど、緊張してしまう。



花陽「…はぁ」

花陽「もう一度、あの時みたいに…」

花陽「…背中を、押してもらいたいよ。真姫ちゃん…」



考えることに疲れてしまったからなのか、日々の練習疲れからなのか。

そのまま次第に瞼は落ちていき。

夕方なのに私は…ぐっすりと眠ってしまった。

「ねぇ、花陽」


ん?なにかな。


「あなたは、どんなアイドルになりたいの?」


どんな…アイドル?


「難しい質問かもしれないけど、思ったことを素直に聞かせて欲しい」


そうだなぁ…私がなりたいアイドル…。

やっぱり、みんなを笑顔にするアイドル、かなぁ…。


「んー…それでもいいけど、でも、本当にそれだけ?」


え?


「笑顔にするアイドルってだけなら、A-RISEだって、きっと世界中のアイドルだってそう」

「あなたの目指した笑顔のスクールアイドルは…それだけ?」


え、えっと…私が目指した、笑顔…。

それは…。


「…答えは、もう持っているはず」

「迷ったときはね、まず振り向いてみることよ」

「あなたの辿ってきた道が、そこにはあるんだから」スタスタ…


え、あっ…い、行かないでっ!!

まだ、まだ一緒にいたい…!

置いていかないでよっ!


真姫ちゃんっ!!

真姫「花陽っ!!」


花陽「ひゅびゅぇっ!!?」ビクゥッ!!


真姫「おわぁっ…!き、急に起きないでよ…」

花陽「ま、真姫ちゃ…?どうして…」

真姫「どうしてじゃないってば!今何時だと思ってるの!?」

花陽「何時って…」


時計に目をやる。

まだ8時だ。寝て2時間ほどしか経っていない。

でも、それにしては外が明るいような…?


花陽「も、もしかして今日って…」

真姫「ラブライブの本戦よ!!起こしに来て正解だったわね…」

花陽「う、う、嘘ぉっ…!?」


私はあれから、どうやら14時間も寝てしまったみたい。

どうしよう…!まだ出て行く準備してないよ!!


真姫「とりあえず着替えて!荷物は私が準備しておくから!」

花陽「ご、ごめん…!」アタフタアタフタ…



うぅ…最後までこれだ…。



真姫「はい!これ!」

花陽「う、うん…!」

真姫「忘れ物がないかチェックして!私下で待ってるからね!」タタタッ

花陽「わかった!…えっと、忘れ物、忘れ物…!」


念入りに持っていくものを確認する。それと、机周りに何か置いていないか。

衣装の小道具は基本ことりちゃんに任せているけど、自作のものは自分でチェックしないと…。

全部揃っているとは思うけど、一応、念には念を入れて机の引き出しを開く。

すると。


花陽「…あれ?」


入れておいたはずの手紙が、ない。

ここに確かに、昨日寝る前にしまったのに。

それとも、違う引き出しだったっけ…?



真姫「花陽ー!まだー!?」



下から真姫ちゃんが急かす。

時間も危ないんだった!は、早くしないと…!!

忘れ物はもうないと判断して、走り出す。

ラブライブ本戦会場

C☆cute控え室



海未「…えー、リーダーが集合に遅刻するハプニングもありましたが」

花陽「ご、ごめんなさい…」

ことり「緊張もしてるし、仕方ないよね…。数分だけなんだし許してあげようよ~」

海未「別に怒ってはいません。衣装も、全員着替え終わりましたね」

真姫「ふぅ…。ついにここまで、って感じね…」

ことり「本当なら希ちゃんもここに連れてきたかったけど…でも!」

海未「様々な人の思いを背負って、この決勝の舞台にたどり着いたのです」

海未「悔いのないように…全力のライブをしましょう!」

花陽「…うん」

真姫「花陽…やっぱり緊張してる?」

花陽「え…あ、えっと…その…」

ことり「し、深呼吸しよう!そうしたら落ち着くって!!」

花陽「あ、う、うん…。すぅ~…」


ガチャッ!!


花陽「っ!げ、げほっ!げほっ!!」

海未「だ、誰ですか急に…って」

真姫「凛…!どうしてここまで…」

凛「えへへ!いてもたってもいられなくて!一応凛もアイドル応援部のメンバーだしさ!」

ことり「そうだけど…」

凛「はいこれ!差し入れにゃ!!」

花陽「差し入れ…?ってこれ、ど、ドーナツ…」

海未「今からは食べられませんよ…」

凛「え、そうだっけ…」

ことり「くすっ…あははは!もう、凛ちゃんってばドジっこ~!」

真姫「もっと栄養ドリンクとかなかったわけ~?ふふふふ…」

凛「えへへへ…やっちゃったにゃ!」

花陽「ふふ…凛ちゃんのおかげで、少し緊張が和らいだかも。ありがとう」

海未「凛はアイドル応援部のムードメイカーですね。やはり、凛いてこその私たち…なのかもしれません」

凛「そう?そう言われると照れちゃうなぁ…。でも、来てよかったよ」

花陽「うん。…あ、そろそろ…」

真姫「次が、私たちの出番ね…」

ことり「…うん。じゃあ…」

海未「はい。…行きましょう」

舞台裏


花陽「…」ドキドキ…


真姫「やっぱりまだ、緊張する?」

花陽「あ…、…うん」

海未「しっかりしてください、花陽。それでは…」

花陽「わかってる。わかってるよ…」

ことり「…」

花陽「…もう、もう目前なんだ」

花陽「なのに…不安が…」

花陽(…不安が止まない)

花陽(助けて…!助けてっ…!!)



(「あなたは、どんなアイドルになりたいの?」)



花陽「…っ!」

花陽「私の、なりたいアイドル…」

真姫「…花陽?」


花陽(…そっか。そういう、ことだったんだ…)

花陽(うん、わかってたはずだよ。笑顔のスクールアイドルって、そういうことなんだって…)


花陽「…よしっ!」

花陽「みんな、聞いて!」

海未「な、なんですか…?」

花陽「私…緊張してた。こんな私が、こんなに…今までないほどの大勢の前で立って、大丈夫なのかなって」

ことり「そんなの、みんなそうだよ。わたしだって、不安だった…」

真姫「…私もよ」

花陽「うん。だから今までその不安に触れないように…押さえ込んできたけど、でも!」

花陽「今はその緊張を、その不安を楽しもう!」

海未「不安を、楽しむ…?」

花陽「うんっ!だって、こんなにドキドキするの、この大舞台でないと味わえないよ!」

真姫「…ふふっ。確かに、そうかも」

花陽「楽しんで、笑顔になろう!だって、私たちは…笑顔のスクールアイドルだもん!」

花陽「みんなを笑顔にして、そして私たちも笑顔でいられる…夢のようなスクールアイドルが、私たちだよっ!!」

ことり「…うん!知ってる!それがC☆cute!それが私たちのアイデンティティー!」

海未「おや、難しい言葉を…。そうです。笑いましょう。笑顔は見ている人を幸せにする魔法なのですから」

真姫「私たちが心から楽しんで、最高の魔法を見ているみんなに届けないと!」

花陽「私たちの心はひとつ!みんなを笑顔に…!」

花陽「私たちも含めて、全員!」

ラブライブ本戦会場

観客席



キャアアアアアァァァァッ!!



絵里「…すごい盛り上がり…」

希「そりゃあまぁ…多くのスクールアイドルを退けた全国の猛者たちが集まってるもんね」

にこ「一瞬たりとも目が離せない熱い戦いだわ…!」

穂乃果「あーあ、私もあそこに立ちたかったなぁ…。次は絶対に勝つんだから!」

希「次はC☆cute&A-RISE連合軍で出場する?」

絵里「ふふ…アリかもしれないわね」

にこ「それはさすがに…」


「…失礼。隣、座っても?」


にこ「え、あぁ…どうぞ」


「ありがとう」スワッ


にこ「いえいえお構いな…ん?え…、えぇぇぇぇぇっ!!!?!?!」

穂乃果「に、にこちゃん、急に叫んでな…えぇっ!?」

絵里「あ、あなた…!どうして…」

希「…その、手紙…」



「…約束、したからね」

「次に会うときは、ラブライブを優勝した時だって」

「しっかり、見てるんだから。負けたりしたら、承知しないわよ」

舞台裏


花陽「いくよっ!!」ビシッ!!

一同「はいっ!!」ビシッ!!

花陽「今まで頑張ってきた全てをぶつけよう!そして…」

花陽「絶対に、優勝する!」

ことり「うん!」 海未「当然です!」 真姫「もちろんよ!」

花陽「すぅっ…、1っ!」

ことり「2っ!」

海未「3っ!」

真姫「4っ!」

花陽「C☆cuteっ!ミュージック…」


「「「「スタート!!」」」」



ことり「よーし!いっくぞー!」タッタッタッ…

海未「待ってくださいよ!」タッタッタッ…

真姫「私が一番、目立つんだからっ!」タッタッタッ…


花陽「…」


みんなの士気は高まった。

これでいいんだ。


…けれど。

私の足はまだ、震えっぱなし。

強がり、言っちゃったかな。

緊張も、不安も、楽しもうとしているけど。

恐怖だけは、どうにもならない。

ガクガクと震えて、前に進めない。

早く、行かないと。

みんなが、待っている。待って、いるのに…!

動け、なくて…!!




トンッ



私の背中を、二つの手のひらが、押した。

私の足は、驚く程すんなり、前に進めた。



花陽「えっ…?」

振り返ると、そこには。



花陽「…凛ちゃん?」


凛「ど、どうしたのかよちん。みんな、行っちゃうにゃ」


花陽「…うん。ねぇ、凛ちゃん…」

凛「うん?」

花陽「今、私の背中…押した、よね?」

凛「うん!元気が出るようにって」

花陽「…それ、両手で?」

凛「えっ…うぅん、右手だけだけど…」

花陽「右手、だけ…?」



確かに私の背中には、ふたり分の温かみがあった。

二人に、背中を押された感触が、あった。



花陽「あ…」



(「私の勇気をあげたの。片手分だけ、ね」)


(「もう片手分は、きっと花陽が必要とした時にもらえるわ」)



花陽「…そっか」

凛「ん?どうしたの?」

花陽「うぅん、何でもない。早く、行かないとね」

凛「うんっ!頑張れかよちん!ファイトだよ!」




もう片手は、この時のために、だったんだね。


もう震えは、感じない。

恐れも、微塵も感じてない。

今はただ、楽しさを。


さぁ行こう。

みんなが待っている。


私は踏み出す。



輝かしい、夢のステージへ向かって。






もしライブ! ~もしもμ'sのみんながUTX学院生だったら~

おしまい

真姫「終わった…ついに終わってしまった…」

凛「えっと、リターンズで思いついたときが11月の終わりくらいだから…」

真姫「約10ヶ月。ビビるわ…自分でもビビるわ…」

凛「安価SSだったりで長く続けてる人もいるけど、安価ナシでひとつの物語があるラブライブ!SSでは最長記録…?」

真姫「他のSSをほぼ全く知らないからどうかはわからないけど、文章量だったら負ける気がしないわね…」

凛「えーっと、じゃあまずはここまで読んでくださった皆様に感謝感謝だね」

真姫「最後の最後に結構な時間待たせてしまって申し訳なかったわね…」

凛「モチベーションの維持もそうだけど、サボってたりもしてて…うぅ、ごめんにゃ」

真姫「最後の最後まで余すところなく楽しんでくれるといいわね」

凛「楽しむといえば…ふふふ、またまたやらせていただきましたァン!終わる終わる詐欺!」

真姫「報告で執拗なまでにリアルタイムを望んでいたのはこのためなのよね。終わったあとの感想が欲しかったのよ」

真姫「そうすれば後から読んでくれた人たちも、『あぁ、終わっちゃったんだな』って思ってくれる」

凛「リアルタイムで時間開けたとしても、感想がなかったら後から読んだら、すぐ下に続き、見えちゃうもんね」

真姫「だからほんの少しのインターバルが欲しかったの。つまり、読んでくれる人の感想も演出のひとつ?って感じね」

真姫「感想が少なければ自演してやろうかと思ってたけど、そうしなくて済んで良かったわ」

凛「あの映画が終わって、さぁ帰るか、ってスタッフロールが流れ終わったあとに続きがあった時のワクワク感…!」

凛「それが凛たちは大好きなんだ!みんなにも楽しんでもらえるといいなー」

真姫「…って言っても、もし!、うろ!合わせて既に何回も終わる終わる詐欺をやっているからワンパターンだって飽きられている可能性もあるけどね」

凛「何回でもサプライズは楽しいものだよ!」

真姫「そうだといいわね。…っと、ラストだけで実に第二話以上…第一話ほどの文章量になってしまったわね」

凛「舞台装置になってくれたリアルタイムで読んでくれた人には感謝してもしきれないにゃ」

真姫「それは言い方が悪い気が…。その他、ここまで読んでくれたみんな、ありがとう」

凛「それで、このあとは…」

真姫「劇場版うろ!だけど…記憶を頼りに劇場版をSS形式で書いた人がもう出ちゃったのよね」

凛「結構くおりちー高かったにゃ。ということは劇場版うろ!は二番煎じ…」

真姫「まぁ、やるけどね。正直もう記憶が曖昧だから全くの別物になってもそれはそれで面白そうだわ」

凛「それまで待っててねー!」

真姫「それとは別に、このスレの終わりもそろそろ…近づいてきているわ」

凛「もう時間は長くは残されていないけれど、精一杯楽しんで、最高に楽しめるSSをお届けするね!」

真姫「じゃあ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次に約束を果たすのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」




ここまで付き合っていただいて、本当にありがとうございます。

そして、これからもまだまだよろしくお願いします。

うぅ…沢山の感想ありがとう めっちゃ嬉しいです
おかげでモチベーションが上限知らずなので早速明日の夜にでも劇場版うろやろうかと思ってます もちろん安価なので参加してくれると助かります
いずれもし!も再編集して一つ…は無理だと思うから二つのスレに纏められるといいな

あと、穂乃果の包帯は本当に太陽に向かって手を伸ばしたら火傷した(太陽を掴んだ)って意味です
雨止めと同じ感じで本来あり得ないことを現実に起こしちゃった、みたいな
ついでに火傷しそうなほどの温かみが手のひらに宿った、って意味もあります これは後付けだけど

Lover Hand錯覚…?なんかそれっぽい
真姫ちゃんに何がしかが生えた世界に関しては誠に残念ながら打ち切りとさせていただきます

じゃあ、遅くなったけどそこそこに始めていきます ほんの触り程度しかできなささそうだけどね

真姫「というわけで…今回は事前に予告した劇場版うろライブ!をやっていこうと思うわ」

凛「既に映画の全セリフを書きおこした人すらいるんですけど…?」

真姫「だからなによ!知ったことじゃないわ!」

真姫「この時のために…この時のためにねぇ…!」

真姫「まだ劇場版挿入歌のCD一回も聞いてないんだからね!」

凛「…それはPCに入れるのが面倒だったからじゃ」

真姫「限りなくうろ覚えに挑戦するためよ」

真姫「映画は6回程度見に行ったけれどもう時間も結構経っちゃったし割とヤバめに忘れちゃってるわ」

凛「そんなボロボロの記憶を頼りに物語を紡ぎ上げていくのでむしろ合ってるところのほうが少ないと思うにゃ」

真姫「今までうろ!と若干毛色は違うけど、まぁ…なんとなく理解してね」

凛「挿入歌の歌詞もうろ覚えで書いていくにゃ。これは…面白くなるかはわかんないけど」

真姫「数枚買わざるを得ないBDを鑑賞しながらこのスレを見返して、『全然違うんだけどwww』って笑えるようなものになれればいいわね」

凛「別に買わなくてもいいんだよ?もう何回も見に行ったんだからむしろ今更いらないよねそうだよね」

真姫「露骨に敵を減らそうとしない。…じゃ、説明はこれくらいにして」

凛「よーし!そろそろ始めるにゃー!劇場版うろライブ!ミュージック…」

真姫「待ちなさい。その役目は私たちではないわ」

凛「え?」

真姫「思い出して。映画が始まる前に必ず挿入されていたものを」

凛「え?ア○ルバイブ?」

真姫「私たちによる映画鑑賞時の注意よ。あなたは映画観るときに必ずそんなもの挿入するの!?」

凛「いやしないけど…。そういえばそうだったにゃ」

凛「で、それが?」

真姫「ふふ、もちろんこの劇場版うろライブ!にもそれは存在するわ!」

真姫「ただし…どんな組み合わせかは自由だけど」

凛「あー、必ず3人でやってたけど、毎週変わってたんだよね」

凛「初めにそれを安価で決定するわけだね!」

真姫「そういうことよ!既存の組み合わせになればそれをうろ覚えでやってみるけど…」

真姫「…内容を多少でも覚えているのはPrintempsとBiBiだけよ」

凛「その3人に映画開始の宣言をしてもらうにゃ。ま、好きな子選んでいいよ」

真姫「ちなみに、かぶったら安価下…じゃないわ。そのまま、被った子が二人いる状態で進めるから」

凛「もうしょっぱなからめちゃくちゃだよ」

真姫「じゃ、上映前に注意してくれる三人は…」

凛「>>615>>616>>617にゃ!」

穂乃果

穂乃果

真姫

穂乃果「みんなーいつもの行くよ!…せーのっ、ファイトだよ!」

穂乃果「ちょっとちょっと!ここは映画館なんだから大きな声出しちゃいけないんだってば!」

穂乃果「っは!そうだった!いやー、穂乃果としたことがやっちゃいそうだったよ~。失敗失敗」

穂乃果「もう!穂乃果は穂乃果がついていないとダメなんだから、しっかりしてよね!」

真姫「ちょっと!いきなりイミワカンナイなんだけど!?」

真姫「なぁんで穂乃果が二人いるのよ!?」

穂乃果「え、いやそれはほら、このあとの映画の内容に関わる…」

真姫「上映前から映画のネタバレしてるんじゃないの!それに彼女は穂乃果だと決まったわけじゃ…」

穂乃果「しー!真姫ちゃん、声が大きいよ!」

真姫「あっ…。くぅ…穂乃果に注意されるなんて…」

穂乃果「というわけで、わかりづらいかもだけどこのまま進めるよ!」

穂乃果「ところで穂乃果、映画館でやっちゃいけないことってわかる?」

穂乃果「そんなのわかるよ!殺人でしょ、強盗でしょ、恐喝に詐欺、放火窃盗…」

真姫「そんなのどこでだってやっちゃいけないことだわ!映画鑑賞のマナーっていうものがあるって話!」

穂乃果「そうだよ!そんなこともわからないなんて穂乃果はバカだなぁ!」

穂乃果「あれ、ということは私はバカということ…?うわ、凹む…」

穂乃果「元気だして、穂乃果はそんなにバカじゃないよ!」

真姫「もうどっちが喋ってるかイミワカンナイ」

穂乃果「映画鑑賞のときのマナーといえば!一つ!」

穂乃果「>>621は切る!」

穂乃果「二つ!前の人の>>622は蹴らない!」

穂乃果「三つ!カメラ等での>>623は禁止!あと大声で喋らない!以上!」

メンチ

ボール

ハメ撮り

穂乃果「一つ!メンチは切る!」

穂乃果「上映中は周りの人に睨みを利かせておきましょう!ナメられたらそこでおしまいです!」

穂乃果「なるほど…映画上映終了と同時に掴みかかりの喧嘩に発展しそうだね!」

真姫「イミワカンナイ」

穂乃果「二つ!前の人のボールは蹴らない!」

穂乃果「前の人がベースボールプレイヤーやサッカーボールブレイヤーだった場合、友人であるボールと映画を見に来ている場合があります!」

穂乃果「そんな友人を足蹴にされては彼らはたまったものではないので、やらないようにしましょう!」

穂乃果「たまったものじゃないよね!たま、だけに!なんて…」

真姫「イミワカンナイ」

穂乃果「三つ!カメラ等でのハメ撮りは禁止!」

穂乃果「喘ぎ声が隣の人に聞こえると映画に集中できないからね!おうちでやろう!」

穂乃果「映画館でイチャつくカップルは死滅すればいいのにね」

真姫「イミワカンナイ」

穂乃果「あと大声でしゃべったら即刻退場!迷惑ラブライバーは駆逐あるのみ!」

穂乃果「みんなはマナーを守って楽しくデュエルしようね」

真姫「イミワカンナイ」

穂乃果「それじゃ、そろそろはじめよう!」

穂乃果「せーのっ…」

穂乃果×2「「ムービー…」」

穂乃果×2「「スタート!!」」



真姫「…イミワカンナイ」






      生      畜







  S  A  N  R  i  S  E





何年か前

どこか  時間的にはたぶん夕方あたり




穂乃果「はぁっ…はぁっ…」タッタッタッ



ことり「穂乃果ちゃんっ!!」

海未「うぅ…」



穂乃果「はぁーっ!」


ピョイーン…



ビシャンッ



穂乃果「つめたーい!!」




… dokodattakke presents




穂乃果「うぅぅぅ…!!」


ことり「もう帰ろうよー!」

穂乃果「まだやる!」

穂乃果「この…絶対にできる!次こそ!!」

穂乃果「うりゃああああああああああ…!」タタタタタタッ…



「  …らららんらー らららんらー ららーらららーらららー…  」



穂乃果「うん…?」タタタタッ…



「  …らららんらー らららんらー ららーららららー…  」



穂乃果「おぉ…」タッ タッ タッ…


ピョイーンッ

フワァ…



ことり「わぁ…!」

海未「ほえー…」



「  らららんらー らららんらー ららーらららー…  」




国立音ノ木坂高校 廊下


タンッ!!


穂乃果「よぉわっ…!!」


私、高坂穂乃果!

今日は…今日は、えっと…えー…

なんだか大変なことに!!




アイドル研究部 部室


ガチャッ!!

穂乃果「花陽ちゃん!?モスラは!?花陽ちゃんフェイスのモスラはどうなったの!?」


花陽「…ドームです…」


穂乃果「はぁ?」


花陽「デュームです…!!」


穂乃果「でゅ、でゅーむ…?」


花陽「ドーム大会です!」

花陽「えー…次の、ラブライブ!のあの…えっと…」

花陽「秋葉ドームで行われることになりました!!」


穂乃果「え、そんな話だったっけ…」




花陽「…前回の反響が大きかったからか各メディアがどうたらこうたら…」

花陽「収容人数は前回の十倍!」

にこ「十倍!?」

海未「秋葉ドームって…あの野球とかやっている場所でしょうか」

凛「ちょっと遅れてないかにゃー?」

絵里「えーっと…そんなに人が集まるかしら…」

希「うちらも大会に出れるん?」

にこ「ちょっと!もう私たちは卒業して…」


理事長「なるほど、そういうことね…」


絵里「理事長!」

ことり「お母さん!」

理事長「えー…なんだったかしら。そう、あなたたちも気づいたのね」

海未「何に、でしょうか…」

理事長「その…アレよ!あれの…あー、えー…」

理事長「>>628よ」

真姫「すごい丸投げね」

自分たちの特殊能力

理事長「自分たちの特殊能力よ」

ことり「特殊能力…?」

理事長「思春期の一時期にだけ発症する、まぁ…病気みたいなものね」

理事長「どこか不完全な特殊能力をあなたたちは、うん、持ってるの」

絵里「亜里沙、呼んできましょうか…?」

希「引くわ」

花陽「あの、ラブライブ!の次の大会の話をしていたんですが…」

理事長「え…、あ、あぁっ!そ、そうそう!それよね!」

理事長「なんでも、大会優勝者であるアナタ達に海外からオファーがかかってね」

理事長「向こうへいって盛り上げて…ラブライブの宣伝、そう宣伝をして欲しいの!」エアメールササッ

真姫「それって…まさか…!」

穂乃果「まさか…!!」





U R O   L I V E !

Short Story the Movie




♪BGM 始まりの朝(ってタイトルだった気がする)



空港


海未「えー、パスポートは…!あの、パスポートは持ちましたか!?」

ことり「持ってるよー!枕も!」



こころ「いきますよー…!せーの」

矢澤家族「「「「「にっこにっこにー!!」」」」」



絵里「…なんか、ここで私、何かを話していた気がするの」

雪穂「は、はぁ…」

亜里沙「お土産買ってきてね!」

絵里「うん、そんな感じの何かを…」



凛「かよちん、こっちこっちー!!」グイグイ

花陽「ひぃぃっ…だ、ダレカタスケテー!!」



真姫「ここまでありがとう。…いってきます」

真姫「ちゅー♪」



希「ふっ…」ススッ

希「確か星のカード…うちらのこれからの、あの…いい感じやん!」



絵里「あとは穂乃果だけね」

海未「いえ、もう着いていると」


穂乃果「…」


ジャンボジェットゴォー


絵里「穂乃果っ…!」



穂乃果「行くんだね、私たち…」

穂乃果「あの空の向こうに!」


ジェットゴォォ

チャクリクー ハイツイター



おそらくNY


タクシー乗り場


金髪のお姉さん「プリーズセレクトユアキャラクター」


海未「なんか言ってますよ」

穂乃果「たぶんタクシーに乗ればいいんだよ」

絵里「ほら、後ろつっかえてるんだから早く!」

海未「い、嫌ですよ!どこか変なところに拉致監禁されるんでしょう!?」

希「大丈夫やよ!正規のタクシーなら安全だから!」

ことり「あとは穂乃果ちゃんからもらった>>633を運転手さんに見せれば!」

拳銃(本物)

ことり「あとは穂乃果ちゃんからもらった拳銃(本物)を運転手さんに見せればどこへだってタダで!」

穂乃果「何言ってるのことりちゃん!?」

にこ「そうよ!?こんなところで笑えない冗談…」

穂乃果「ちゃんと隠語でハジキって言わないと怒られちゃうよ」

ことり「あそっかー」

にこ「…」


(後で希がちゃんと説明しました)




タクシーの中


花陽「ここで私が何かを喋っていた気がします」

穂乃果「そもそも…私たちこの組み合わせだったっけ?」

希「たぶん合ってる気がする…。にこっちは真姫ちゃんと一緒だったし…」

花陽「希ちゃんが一番怪しいんだよね…。どうだったっけ」

希「…ところでラブライブ!の話をしなくていいん?」

花陽「あ、そうでした!えーっと…」

穂乃果「そもそもどうして私たちこんなところまできたんだったっけ?」

花陽「それはその…」

花陽「>>636(詳しい経緯)…ということだったはずです!」

イチローの応援

花陽「イチローの応援…ということだったはずです!」

穂乃果「イチローってあのマリナーズの…?はぁ…」

希「それとラブライブ!に何の関係があるん?」

花陽「イチローがすごい、その、スクールアイドルが好きなんです!」

花陽「だから、わざわざNYまで行って、なるべく近くでPV撮影をしてイチローさんのテンションを上げるってやつです!」

穂乃果「誰が撮影してくれるの?」

花陽「え、あ、地元のテレビ局の人!取材も!」

穂乃果「英語喋れる人いるのかな…」

希「おっ」



別のタクシー


絵里「まさかのBiBiが固まっちゃったわね」

真姫「絵里、座席間違えていると思うわ」

にこ「それにしてもトンネルの暗い中で車のガラスに反射して映るにこの顔って超可愛いわよね~!」

真姫「キモチワルイ」

にこ「なんですってー!?」

絵里「話をすっとばしている感覚がすごい」

真姫「あ、あれ!」

にこ「トンネルを抜けたら大都会じゃない!しかも隣には犬を乗せたでっかいトラックよ!すごい!」

真姫「オプティマスプライムだわ!オプティマース!!」

絵里「あなたたちハイテンションね」




別のタクシー


ことり「何話してたっけ」

海未「…いいんです。これからどうせ私たちだけ別の場所に拉致監禁されるオチなんです」

凛「あははは…まっさかー!ちゃんと絵里ちゃんのメモを写した穂乃果ちゃんから渡されたメモを運転手さんに渡したんだから大丈夫だにゃー!」

凛「穂乃果ちゃんが写し間違えたとかでない限りそんなことはないから平気だよ!もし万が一そういうことになっても…!」

海未「凛がホテルの名前を覚えているのですね!?」

凛「えっ」

海未「えっ」

ことり「…」

HOTEL SUNSET


穂乃果「うおー!でかーい!!」

穂乃果「うおー!でっかーい!シャンデリア!!」

穂乃果「他に特に言う事はない」

希「あとは海未ちゃんたちだけやね…」

にこ「ホントに大丈夫なんでしょうねー?」

絵里「任せて!」

絵里「…任せて!」

花陽「なんでにかいいったの」

絵里「…えーっと、穂乃果に、渡したでしょ!?メモ、行き先を書いたやつ」

穂乃果「うん?あ、うんうん。それを海未ちゃんに渡したから大丈夫だよ」

穂乃果「後ついでにチャカも渡したし」

真姫「だからそういう冗談はやめなさいって…」



HOTEL SUNBET



ボログシャァッ


ことうみりん「「「…」」」



ヒュオオォォォォッ…



ことり「まさかの事態に…」

海未「ど、どうするのですっ!?どこなんですかここは!?」

凛「あ、今変な髭面のグラサンかけたオッサン通ったにゃ」

海未「どうでもいいですそんなこと!?あなたの言っていたことが現実に起きてしまったではないですか!?」

凛「そんなこと言ってたっけ…」

海未「言っていたような気がします」

ことり「ホテルの名前…凛ちゃん、わかる?」

凛「わかるわけないじゃん」

海未「ですよね…。最近はローマ字の理解すらおぼつかない私たちに…」

ことり「凛ちゃんはいいとして海未ちゃんはどうやってそんな状態で作詞をしているのかな…」

海未「直感とひらめきです」

凛「とにかくどないかして帰らないと…」

凛「とりあえず、>>641してみるにゃ!」

ことりちゃんの厳重を使う

凛「ことりちゃんの拳銃を使うにゃ」

海未「穂乃果から渡された拳銃ですか…?」

ことり「この拳銃(本物)?使ってもいいけどこれオモチャだよ?」

凛「え!?本物じゃないの!?」

ことり「拳銃(本物)までが商品名の玩具。対象年齢6歳」

凛「そっか…。残念だにゃ」

海未「そもそも凛は拳銃が本物だとして何に使っていたんですか…」

凛「脅し?」

海未「やめてください」

ことり「うーん…。今手元にあるのは穂乃果ちゃんから渡されたメモと拳銃のオモチャ…」

ことり「ちょっとのお金とパスポート飛行機チケット旅のしおりタオル歯ブラシくすり類ケータイ電話音楽プレイヤー充電器筆記用具メモ帳…」

ことり「あとはステージ衣装小道具アクセサリーシャンプーコンディショナーヘアセット用グッズ練習着と運動靴に着替えとパジャマと防寒用のグッズくらいだよね」

海未「詳細すぎませんか…」

凛「じゃあ今持っているものを駆使してなんとか凛たちを本当のホテルの場所まで誘導して欲しいにゃ!」

海未「誰に言ってるんですか…」

ことり「いわゆるTRPGだね、凛ちゃん」

凛「頭の柔らかさが要求されるにゃ」

海未「…まぁ、どうせならこういう場面を詳しくするのもいいのかもしれませんが」

ことり「じゃあ…>>644(今持っている道具をどのように使うか詳細に)」

あれ?普通に電話すればよくない?

ことり「…あれ?普通に電話すればよくない?」

凛「天才だにゃ」

海未「そこに気づいてしまわれましたか…」

ことり「穂乃果ちゃんに電話電話~…」プルルルル…


ガチャッ

穂乃果『あ、ことりちゃん!?今どこにいるの!?遅いよ!!』


ことり「うん、あのね、今…」

穂乃果『えぇ!?穂乃果の書いたメモが間違っていて違うホテルに着いた!?』

ことり「何も説明してないのに理解が早くて助かるよ」

ことり「それでね、そっちのホテルの名前を教えてもらいたくて…」

穂乃果『あー、うん。わかった』

穂乃果『ここはホテルパシフィックだよ』

ことり「ホテルパシフィック…?なんだかショウナーンなイメージなんだけど…」

絵里『穂乃果代わって!!』

穂乃果『わぁっ!?』

絵里『…もしもし、絵里よ。そんなサンサンに焼けた肌にジンジンと胸が疼くようなホテルじゃないから』

絵里『ホテルサンセット!ローマ字だとえすゆーえぬえすいーてぃーよ!』

ことり「わ、わかった…。ホテルサンセットだね」

凛「あぁ、たしかそんな名前だったにゃ」

海未「殴りますよ」

ことり「さてと、ホテルの場所もわかったし、あとは合流するだけだね」

凛「TRPGって文明の利器があると楽勝だね」

海未「ふぅ、一安心です!これで笑顔でたどり着けますね!」



HOTEL SUNSET 一室



海未「うぅっ…!うぅぅぅぅぅっ…!!」


穂乃果「う、海未ちゃん、ごめんって…」

海未「ふざけないでくださいっ!!まさか、あんな目にあうなんて…怖かったんですよ…」

絵里「電話越しに聞いた感じだと結構冷静じゃなかった…?」

ことり「まぁ、あのあとにちょっといろいろ…」

凛「一つ女を知ったにゃ」

にこ「なんだか妖艶な響きね…」

穂乃果「う、海未ちゃーん、レイプされただかなんだか知らないけど…元気出してよー。ほら、シャンデリア見に行こう?シャンデリアシャワー~♪」

海未「うぅぅぅぅぅっ…」

穂乃果「でっかいお風呂もあるの!」

海未「うぅぅぅぅぅぅっ…」

希「いつまでも凹んでても仕方ないよー?」

絵里「どうしたら泣き止んでくれるかしら…」

穂乃果「じゃあ穂乃果の唇をあげるから」

海未「いただきます」

絵里「おい」

真姫「今日はここまでかしら」

凛「まだ全然序盤だけどなんとなくこんな感じで進行するってわかってもらえると嬉しいにゃ」

真姫「言っておくけどまじ☆でこのレベルでしか覚えてないから」

凛「途中シーンが抜けたり逆にいらないシーンが追加されることがままあるけど気にしてるとハゲるよ」

真姫「完全にネタバレだらけだけどあえてこっちから先見て劇場版を見てもまた別の楽しみ方もあるかもしれないわね」

凛「凛たちこそもう一回劇場版を見直したいくらいだよ」

真姫「…えっと、じゃあ今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次に穂乃果ちゃんの唇を奪うのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

そうか… イチローはもうマリナーズじゃない上にヤンキースでもなくてマイアミにいるんだね…
マリナーズ時代が印象強すぎて知りませんでした うろ覚えですらない
こんな自分のボケも笑ってもらえれば儲け物 じゃ、続きやっていきます

レストラン


絵里「今日は…何しましょうか、これから」

希「もう夜やけどなんかするん…?」

穂乃果「まずは晩ご飯だよ!どこか行こう!」

花陽「既にレストランにいるんだけど…」

絵里「えー…そう、これからのことを話そうと思って」

ことり「明日から何するか?」

絵里「えぇ、あの、アレじゃない?ライブ…の、ね?」

にこ「未だにここに何しにきたかイマイチわかってないんだけど…」

海未「明日からはここでライブするための練習です!もちろん外へは出ずに!」

凛「女を知っちゃうからね」

穂乃果「えー!?つまんないよー!!」

海未「幸いホテルにはジムもあるそうです。もうそこでやるしかないですね」

真姫「え、ドム?」

希「あぁ!?」

真姫「何でもないわ」

絵里「海未…。レイプされて怖かったのはわかるけど」

海未「レイプはされていませんよ!?凛の言うことを真にうけないでください!」

花陽「じゃあ何があったの?」

海未「そ、それはっ…」

ことり「実は>>653に巻き込まれちゃったの…」

交通事故

ことり「実は交通事故に巻き込まれちゃったの…」

にこ「交通事故!?ほ、ホントなの…?」

海未「…はい」

真姫「よくそれで無事だったわね…。怪我がなかったからいいものの、どこか怪我しちゃったら…」

穂乃果「何が原因でそんなことに?」

凛「さぁ?ただことりちゃんの拳銃(本物)をタクシーの車内で取り出して遊んでたら運転手が勝手にビビりだしてハンドル操作を誤って」

絵里「完全にあなたが原因じゃないの!?」

凛「凛は悪くねぇ!ことりちゃんがやれって、そうだことりちゃんがやれって言ったんだ!」

ことり「言ってないんだけど…」

花陽「あんまり、幻滅させないで…」

海未「そんなこんなで外で交通事故に巻き込まれるのはもう勘弁なのです。完全に引きこもって日程を乗り切りましょう」

穂乃果「せっかくここに来てそれはないよ…」

絵里「別に、ここだから交通事故が多発するってわけじゃないでしょ。全然平気よ」

希「それに、えー…なんかこの辺を見て回らないといけない理由があった気がするんよ」

海未「何ですかそれは…」

希「カードがうちに語りかけてるんよ。うろちょろ観光しろと」

絵里「希は相変わらず意味不明だけど、でも引きこもってるなんて楽しくないでしょ?ね?」

海未「…あまり説得力を感じませんが納得せざるを得ない気がします。分かりました」

絵里「うん。じゃあ明日は早起きして練習。それから街の観光と行きましょう!」

穂乃果「よし、決まり!もうおなペコだよ~!はやくレストランに行こう~!」

花陽「だからここがレストランだって…」



一同「えぇ~~!?」

穂乃果「これ頼んだの、ことりちゃん?」

ことり「こっちに着いたら一度食べてみたかったんだ~」

真姫「これ…>>655よね?」

ほのパン

真姫「これって…穂乃果のパンツよね?」

穂乃果「ほぇぇっ!?いつの間に…」

ことり「本場のチーズケーキと穂乃果ちゃんのパンツ、一緒に食べたらおいしいだろうなって~」

真姫「き、キモチワルイ…」

にこ「うわ、真姫のリアルなキモチワルイが出たわ…」

海未「流石の私もそれは引きます」

絵里「やってもいいけどできれば見えないところでやってほしかったわ…」

穂乃果「うわ、今私ノーパンじゃん…。すごい興奮する…」





ホテル


海未「次こそ勝ちます!」


ことり「う、うぅぅ…!明日も早いし、そろそろやめにしない…?」

海未「いえ、何か勝つ方法があるはずです…!」

ことり「…はぁ。わかったよ…」

ことり「じゃあペンデュラムスケールにEmヒグルミをセット、もう片方にラスターPセット」

ことり「ラスター効果ヒグルミ破壊、効果でヒグルミ手札に」

ことり「ヒグルミ効果、破壊されたのでデッキからジャグラーSS」

ことり「ヒグルミスケールセットからのペンデュラム・A-RISE発動。ジャグラー墓地に送ってPマジSS」

ことり「Pマジ効果ヒグルミとラスター破壊からのラクダウンとドクロバット手札に」

ことり「ヒグルミ効果デッキからジャグラーSS」

ことり「ドクロバットNS効果リザードローサーチ」

ことり「墓地ジャグラー効果デッキからハットトリッカーサーチ」

ことり「自身の効果でハットトリッカーSS。エクシーズプトレノヴァインフィ」

ことり「P召喚でヒグルミヒグルミラスターSS。エクシーズ…」

海未「もういいです!!サレンダーします!」

ことり「ごめんね海未ちゃん♪」

海未「なぜなのですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ…!!!」

真姫と希の部屋


希「なんか喉渇いたね」

真姫「え、そうかしら」

希「ほら…好きな子と一緒にいると緊張して喉渇くやん?」

真姫「えっ…そ、それって…!」

希「なーんて!冗談よ」

真姫「…でしょうね」

希「うち、なんか飲み物買ってくるから。真姫ちゃん何か飲みたいものない?」

真姫「別に、なんでもいいけど」

希「そっか。…じゃあ、行ってくるねー」

真姫「行ってらっしゃい…」

真姫「…ふぅ、一人になったし…」ゴセンフパラッ…

真姫「ふんふんふふ~ん…」カキカキ

真姫「…うーん、先のメロディが思いつかないわね…」イライラ

真姫「こういう時は身体を洗ってリフレッシュするしかないわ!」



お風呂場


シャワー…

真姫「ふー…温かい…」

真姫「…」


(希「ほら…好きな子と一緒にいると緊張して喉渇くやん?」)


真姫「…っ!ば、バカバカ!何考えてるのよ、私…」

真姫「わ、私には…その…って、これも違う!」

真姫「はぁ…。…あ!そういえば…炭酸は苦手だって希に言ってなかったわ…!」

真姫「言ってこないと!」ガチャッ


ガチャッ

真姫「の、希!」

真姫「え、あー…しまった」

真姫(…希が出て行ったのはもう数分前なんだから今出て言っても意味ないじゃない…)

真姫「な、何やってるの私…こんなバスタオル一枚で部屋の外に出てくるなんて…」

真姫「はぁ…馬鹿らしい。湯冷めしちゃうからはやく中に…」ガコッ

真姫「…あ、アレッ。開かない…!!お、オートロックだった…!!」

真姫「ま、ま、ま、まずい…!こんなとこ、誰かに見られたら…!!」


にこ「ま、真姫…?半裸で何してるの…」


真姫「っ!!」

真姫(よ、よ、よりにもよってにこちゃんにこんなところを…!?どうしよう、な、なんか言い訳しなきゃ!)

真姫「え、えと、これはね…っ!?」

真姫「急に半裸で>>658したくなったの!そう、なぜなら私は>>660だから!!」

希をお出迎え

すまんミスった

真姫「急に半裸で希をお出迎えしたくなったの!そう、なぜなら私は変態だから!」

にこ「えっ」

真姫「あっ」

にこ「ま、真姫って…変態だったの…?半裸で希をお出迎えって…まぁ…」

真姫「え、え…い、嫌!違う違うそうじゃないの!変態なのは希のほうなの!」

にこ「え!?希が変態なの!?だから真姫にそんな格好を共用して!?」

真姫「それも違う!やっぱり変態なのは私で、半裸は私の意思で!?」

真姫「え、そ、そう!ジュースを買いに行ってもらってるのよ!でも私は入れなくて…!」

にこ「え、ジュース…入らない…?」

にこ「ぺ、ペットボトルが入らない的な…!?だからこれから拡張!?」

真姫「ちがうのぉぉぉぉぉっ!!!鍵よ!鍵がかかって…」

にこ「て、貞操帯の…!?希にそこまで管理されて…!?」

真姫「ふぉあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


希「ま、真姫ちゃん…?どうしたん、そんな格好で…」


真姫「の、希!お願い、にこちゃんに説明して!私はペットボトルが入らないわけじゃないって!」

にこ「やっぱり入るの!?」

真姫「入るわけないでしょう!?」

にこ「どっちなの!?」

希「あ、あー…えっと…」



真姫と希の部屋


真姫「…赤っ恥かいた…」

希「ま、まぁまぁ…誤解も解けてよかったやん」

真姫「シャワー浴びなおすから…」バタンッ

希「鍵持って出てて良かったなぁ…。よいしょ」カミホドキッ

希「ふふふ、ここで買ってきたジュースを冷蔵庫に入れる前に髪型を結いなおすんや…。なんでそんなことしてるかはうちにもわからない」

希「よし、お部屋用の髪型にチェンジ!完璧やん!」

希「じゃあちょっと結露のついちゃったレモンスカッシュを冷蔵庫に…おや?」

希「これ、真姫ちゃんの五線譜…?」

希「…」パラパラ…

希「あっ…!こ、これって…!」

真姫「何勝手に見てるのよ」

希「あ…」

真姫「…あれが最後のライブだと思ってたけど、そのあといろいろあったじゃない。だから…」

希「ノートの隅にうちとにこっちを天秤に載せている落書きがあってんけどこれは…?」

真姫「ふぁあああああああああああああああああああっ!!!!」

凛と花陽の部屋


「ふぁあああああああああああああああああああああああああっ!!!」


凛「なんか隣、うるさいね…」

花陽「うん…」

凛「かよちん、寂しいの…?」

花陽「…ちょっとね」

凛「凛が、温めてあげる…」

花陽「あっ…凛、ちゃん…」

凛「もっと、肌を寄せ合って…ん、くぅっ…!あ、ふっ…」

花陽「ダメ、ダメだよぉ…そこ、っ…声、聞こえちゃうぅぅ…!」

凛「でも凛、我慢できないよっ…!かよちんっ…!かよちんっ…!!」

花陽「んああぁぁっ…!凛ちゃんの、ゆ、指がぁっ…!」

花陽「あ、あったかい…」




海未とことりの部屋


海未「もう一度です!!」

ことり「ヒグルミラスターセット効果…」

海未「ほのかあああああああああああああああああああああああああああああああっ…」

真姫「にこちゃん…!」

にこ「ま、真姫…ちゃん…!」

真姫「もう、私…抑えてきた欲望、我慢できない…!」

にこ「にこも、覚悟できてる…さぁ、一緒に…」

真姫「だから…!」

真姫「私の股間のアルパカで思いっきりブチ抜いてあげるっ!!」

股間のアルパカ「めぇえぇぇぇぇぇぇぇぇ」

にこ「ひいぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!?で、デカいっ!?」

真姫「さぁ、はやくお尻を突き出しなさい!」

にこ「だ、ダメっ!ダメよ!どんだけでかくてもね!?私は二本差しされないと満足できないのよ!」

にこ「だ、だからそんなんじゃ…」

真姫「なんと奇遇な!」デデンッ

股間の茶アルパカ「ふしゅぅぅぅぅぅぅぅっ…!!!」

にこ「げええぇぇぇぇぇぇぇぇっ…!!」



にこ「そ、そんなの突っ込まれたらにこ、死んじゃうぅぅぅぅぅ…」

にこ「う?」

穂乃果「もう食べられないよおぉぉぉぉ…」ドスゥゥゥ…

にこ「…」

にこ「どけぇっ!」ドスッ

穂乃果「へぶっ」

にこ「なんでにこたちの部屋だけハネムーン仕様になってるのよぉぉぉぉっ!!」ハートノナニカグイグイ

にこ「おかげで変な夢見ちゃったじゃないのよぉぉぉぉぉぉ…!」

穂乃果「わ、わらひに言われてもぉ…」

にこ「絵里もなんとか…」

絵里「…んんん…おばぁさまぁ…むにゃむにゃ…」

にこ「絵里…」

絵里「おばあさま…おばあさま…」

にこ「絵里って結構、甘えん坊さんなのかもね」

穂乃果「だね」

絵里「おばあさま…もう、そんなに練習できません…あぁ…許しておばあさまぁぁぁ…!!」

絵里「いかないで…死なないでおばあさま…私、どんなコンクールにも優勝できるようになったのだから…う、うぅぅぅ…」

にこ「って、どんな夢見てんのよコイツ…」

穂乃果「…そうそう、旅行の醍醐味といえば」

にこ「うん?」

穂乃果「最後に寝てる人の顔に落書きすることだよね」

にこ「お、おい…」

穂乃果「というわけで絵里ちゃんの顔に>>666って落書きしよう」

Fuck me

穂乃果「Fuck meって落書きしよう」

にこ「ふぁ、ふぁっくみー…?どういう意味なの…?」

穂乃果「んー?えっとー、多分日本で言うところのひたいに肉的な感じ?」キュッキュッ

穂乃果「アメコミにいるんじゃない?キンファックミーマンみたいな」

穂乃果「よし出来た!みんなの反応が楽しみ~」

にこ「うわ…結構派手に書いたわね…ぷぷっ…!」





公園


絵里「…」


穂乃果「ぷふふふふ…」

にこ「くふっ…」


絵里「…なに笑ってるのよ」

穂乃果「べ、別に…」

希「それじゃあ、今日はこの公園をランニっ…えりち…」

絵里「何?」

希「い、イカしたふぁっそんやね…。ナイス…」グッ

絵里「え…?いつもの練習着なのだけど…まぁ褒められて悪い気はしないわね…」

凛「…絵里ちゃん気でも狂ったのかな」ボソボソ

花陽「さぁ…」ボソボソ


海未「…」チロッ


絵里「海未?いつまでそうしている気?」

海未「い、いつどこから車が衝突してくるかわからないのですよ!?気を緩めたら空から突っ込まれるかも…!」

ことり「どこまで心配してるの…」

真姫「早く行かないとおいてっちゃうわよ~?」

穂乃果「一緒に走ったげるから、さ!」

海未「し、仕方ありません…。で、絵里…その顔は…」

絵里「か、顔…?」

にこ「わ、わー!いいメイクよね、って言いたいのよね!?」

海未「あぁ…まぁメイクといえばメイク…」

絵里「今日はノーメイクなんだけど…」

凛「話してないでそろそろ…いっくにゃー!!」タタタタッ

花陽「あぁ、待って~」タタタッ…


タッタッタッ…


黒人お姉さん「コニチワー」

海未「こ、こんにちは…」

黒人お姉さん「コニチ…Oh…」

絵里「な、何か…」

黒人「Very Cool…!Good Luck!!」

絵里「な、何語だったの…?」

公園のなんか変なのの前


凛「ふー、休憩にゃ」

希「うわぁ…なんか変なのや…」

ことり「本当だ、なんか…言葉じゃ言い表せない変なのがあるね…」

穂乃果「ちょうど9人くらい並べるんじゃない?」

絵里「もう面倒だからここでライブやっちゃいましょうか」

海未「そうしましょう!そしてもう外には出ない!」

にこ「いやもっと派手なところで…」

花陽「でも、練習には使えるんじゃないかな」

穂乃果「お、いいねそれ!」


ヨコナラビー

穂乃果「よーし、じゃあ行くよー!μ's、ミュージック…」

真姫「待って!!」

穂乃果「へ?」

希「どうしたん真姫ちゃん…」

真姫「穂乃果…私たち…」

真姫「そんなグループ名じゃなかったでしょう!!」

一同「はっ!!」

凛「本当だにゃ…!余りに違和感なくて気付かなかったけどそういえば凛たちはみゅーずとかいう名前じゃないにゃ…」

花陽「え、でも…なんてグループ名だったっけ…」

海未「グループの名前を忘れたのですか!?」

ことり「海未ちゃんは覚えてるの?」

海未「も、もちろんです!!私たちの名前は…」

海未「>>670です!」

園田と愉快な仲間たち

海未「園田と愉快な仲間たちです!」


一同「えぇ…」


海未「な、なんですかその反応は!?」

穂乃果「さすがにそれはないわ…」

ことり「ドン引きだよ…」

真姫「死ねば?」

花陽「正直嫌いになりました」

凛「ちょっと寒くないかにゃー?あ、ちょっとどころじゃないわ」

絵里「私脱退してもいいレベル」

希「うちの名付け愛を否定された気分やわ…」

にこ「いや案外悪くないわね…」

海未「ひ、ひどいですみんな揃いも揃って否定して!!」

にこ「にこはナチュラルにスルーなのね」

海未「確かに本当の名前はアネックス1号ですが園田と愉快な仲間たちでもいいではないですか!?」

希「あ、そうそう。アネックス1号やったね」

海未「あ、言ってしまいました…」

穂乃果「おぉ!そんな名前だった気がする!よし、じゃあ仕切りなおして!」

穂乃果「アネックス1号、ミュージック…」


異国人A「Hello!」


穂乃果「わわ…え、誰?」


異国人B「ナントカカントカ」

異国人C「ペラペラペラペラソース」


海未「な、なな…なんと言っているのですか…」

穂乃果「お、怒ってはないみたい」

海未「それは私でもわかります」


希(こ、ここは南極にもいったことのあるうちの出番や!)

希「ないすちゅみーちゅー!うぃーあーすくーるあいどーぅ!ぷりーずこーるあすあねっくすなんばーわん!」

異国人A「s,School Idle? Call ass?」

希(全然理解されてへんやん…)

異国人B『その…金髪のお嬢さん、顔にひどいこと書かれているけど大丈夫なの?』←英語

異国人C『気づいてるなら教えてあげたほうがいいわよ』

異国人A「s,See you…」

絵里「なんて言ってたの…?」

希「え、えっと…」

希(正直全く聞き取れなかったけど…て、テキトーに言えば当たるやろ!うちスピリチュアルやし)

希「右の人が『>>672』って言ってて、左の人が『>>673』って言ってたよ」

後で迎えに行く

そこの金髪もらってもいい?

希「右の人が『後で迎えに行く』って言ってて、左の人が『そこの金髪もらってもいい?』って言ってたよ」

海未「後で迎えに…!?つまり誘拐ということですか!?」

にこ「金髪…つまり絵里を…っ!?」

希「今日のえりちはなんかもう…挑戦的やからね。ついつい街のお姉さま方からお声がかかっちゃうんよ」

絵里「ウソォ…」

凛「え、絵里ちゃんが誘拐されちゃったらどうするの!?今回の曲!?」

真姫「次の曲は異国感を出すために絵里がセンターなのに…」

穂乃果「こ、これは私たちが活躍するのを恐れた敵組織の□…もとい刺客!?」

花陽「どどど、どうしよう~~~!?」

希(あれぇ…話がややこしい方向に進んでる…)

穂乃果「どうする絵里ちゃん!?今日は部屋に引きこもる!?」

海未「そうです!いつ命を狙われるかわかったものではありません!」

絵里「い、いやでもライブにいい感じの場所を探さないと…」

ことり「私たちで探しておくから!絵里ちゃんは今日は大事をとって…」

希「ま、まぁ…うちらがえりちを護衛してあげればええんと違う?えりちだけ仲間はずれなのも寂しいやん?」

真姫「まぁ…確かにそうね。私たちが全力で絵里を守ればあるいは…」

にこ「そうよ!一人ぼっちはさみしいもの!」

絵里「う、うぅ…ありがとう…!私も、みんなと一緒にいたいわ…!」

凛「じゃあ絵里ちゃんを囲んで行動しよう!」

一同「おー!」


希(またうちの発言でややこしいことに…)



フェリーの上


ゾロゾロ…

絵里「お、落ち着かない…ちょっと離れない?」

海未「ダメです!いつ誰が襲って来るとも限りません…」

穂乃果「なんかもう飽きた」

海未「えぇっ!?え、絵里がどうなってもいいというのですか!?」

穂乃果「まぁ…いざとなれば別の金髪用意すればいいんじゃない?あ、静岡に知り合いの金髪がいて…」

絵里「私の価値は金髪だけなの!?」



別の公園


穂乃果「あはは…、そっか…、そう、だ…」

穂乃果「やっぱり…、バカ、だなぁ…、わたし…」

穂乃果「でも…、楽しかった…。今まで…、希ちゃんや、真姫ちゃんと、一緒に…」

穂乃果「悪者退治、できて…、とっても…、楽し、かった…」

穂乃果「また…、一緒に…、ね…、希、ちゃ…」

バタリッ

希「穂乃果ちゃあああああああああああああんっ!!!」


ことり「穂乃果ちゃんヒーローみたーい」

花陽「へっくしゅんっ!あ、カメラが…」



穂乃果「ねぇねぇこれ似合うと思わない!?」

海未「恥ずかしいです…」

ことり「きゃーかわいー」



希「にこっちの靴えーい」

にこ「ぎゃああああ私の靴ー!?」



真姫「せんきゅー」ズゾゾゾゾ…


穂乃果「ここの人ってティファニーってところで朝食食べるんでしょーいいなー」

凛「羨ましいにゃー!」

穂乃果「でも何食べるんだろ…にこちゃん知ってる?」

にこ「あ、当たり前じゃない…」

凛「何食べるの?」

にこ「す、ステーキ、とか…?」

ほのりん「「おぉー!」」

真姫「全部間違ってる!」



絵里「これ全部食べるの…?」

ことり「しあわせー♪」

花陽「…くまい…くまいがない…!」

にこ「へ?」



絵里「さっきからやたら男性にホテルに誘われるんだけどなんでかしら…唐突なモテ期?」

穂乃果「さぁ…?」




夕方

なんか高いところ


希「ふー、結構歩いたねー」

絵里「いくつか回ってないところがある気がするけどまぁ…いいんじゃないかしら」

にこ「なんかどこも捨てがたいわねー…」

穂乃果「何が?」

にこ「…なんとなく言ってみただけ」

海未「ライブをする場所の話ですね」

絵里「そうね…なんだか…そうね。えーっと…うん、えー…あぁ、そうね」

真姫「セリフ忘れたなら素直にね」

凛「…そっか」

ことり「うん?どうしたの?」

凛「わかったよ!ここが…えっと、>>676な理由!!」

凛「ここって、>>678なんだよ!」

秋葉原ににている理由

キモオタやDQNみたいな奴らがひしめいてて臭いから

凛「わかったよ!ここが秋葉原に似ている理由!!」

海未「そもそも誰かここが秋葉原に似ている旨のこと言いましたっけ」

凛「ここって、キモオタやDQNみたいな奴らがひしめいてて臭いからだよ!」

花陽「辛辣だね…」

凛「にゃっははーん!毒凛語だにゃ!」

凛「次々といろんな人種が集まって、次々と進化していく!にゃはー!」

凛「そんでもって汗臭い!だから、この街はアキバに似ているんだよ!」

ことり「実は私もそう思ってたの」

にこ「マジか」

ことり「あの街行く男どものネットリとした視線…アキバでメイドやってた時と一緒…」

穂乃果「え、メイドとかやってたの?」

絵里「そうね…。でも極力ポジティブに解釈したら私たちはこの街のどこでだってやっていけるとかそんな感じの…」

希「すごい擁護するね…」

ことり「…やっぱり女の子同士が一番だよ…」

海未「同意します」




ところ変わって…


ザー…


穂乃果「あ、雨だ…」

絵里「傘、持ってきてないわよ」

希「濡れちゃうね…」

にこ「…」



穂乃果「残念だなぁ…」


凛「…むふっ」



凛「大丈夫にゃー!!」バッ!!

凛「ハーロー!歌に呼ばれて~!」


凛「光あふれる街は神が見た~」

凛「は~ろ~、呼ばれてみたら~きっと!」

凛「いっぽーずつー、せかーい広がるよハーロー!」


凛「にゃにゃにゃにゃにゃ…ビシッ!」



凛「踊りだす、交差点で~、みんな驚かな~」


真姫「何もかも、普通なの~」

花陽「流れる人の波に~」

真姫「飲み込まれそうになるよ」

花陽「ふふふふんふんふん…メロディ!」

まきりんぱな「不思議と力が湧いてくる~!」



「ハーローほしをかぞーえてー!」

「これからであうたびをうらなえば~!」

「波浪予測不可能~!きっと!」

「いっぽずつー、せかーいひろがるよはろー!」

「明日起きたら~、どうなるかっな~!?」

「どうしよっか…な~!」




凛「めちゃくちゃにゃ!」

真姫「今日はキリがいいしここまでね」

凛「歌詞はこんな感じだったと思うにゃ…。歌詞カードみて確認してね」

真姫「観光シーンは何か欠けている気がしなくもないけど全く思い出せないわ」

凛「次回はついにあの人物が東條!?」

真姫「それじゃ希じゃないの…」

凛「ということで今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

真姫「次に顔に落書きされちゃうのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

今まで学校が嫌いだったキノがC☆cuteに加入したことで笑顔になっているのを見て
笑顔だらけのC☆cuteの中に、もう「学校が楽しくない」だなんて言う子はいないよね、つまりキノがみんなに溶け込めた、ってことになります
よくにこが使う「ま、まさかこのにこが~…!」と似たようなまさかの使い方ですね 少しわかりにくい表現だったかもしれない

なんかそのまさかの使い方も微妙な気がしてきた 「まさかいないよな?」的な反語?みたいな用法かなぁ…
じゃあ、少々遅くなりましたが多少やっていきます

レストラン


花陽「う、うぅぅぅぅ…!」


絵里「花陽…?」


花陽「うぅぅぅぅぅっ…!」


穂乃果「どうしたの?」

希「お腹でも痛いん?」

凛「にこちゃんが泣かせたんだにゃー!」

にこ「えっ…そ、そうなの…?」

凛「いや知らないけど…」


花陽「くまいが…」


穂乃果「くまい?熊井って誰…」

海未「あぁ、あの…」

ことり「知っているのか海未チュァン!!」

海未「あの、店員さん。追加注文いいですか」

真姫「知らないみたいね」



花陽「くまいが…」


花陽「>>691!!」

ライス

花陽「ライス!!」


一同「!?」

凛「ど、どうしちゃったのかよちん。いきなり意味不明な言語叫んで…」

真姫「たぶんご飯のイングリッシュだったと思うわ、たぶん」

海未「イングリッシュってなんですか…」

絵里「そこからなのね…」


花陽「…すいまセーン…ワタシウソついてまーした…」

にこ「花陽が急にカタコトに…!?」

花陽「パンとかヘドが出るほど嫌いデース…ワタシの国ではみんな…白飯と白米しか食べませーん…」

希「日本人が稲しか食べてないことになるんやけどそれ…」

穂乃果「どうしちゃったのさ花陽ちゃん!?」

花陽「つまり白米が食べたいんです!!」

ことり「白米…?」

海未「ご飯なら付け合せのサフランライスが昨日…」

花陽「ご飯は付け合せじゃなくて主食!メインなの!」

凛「いて座午後九時どんびれー?」

真姫「あなたは黙ってなさい」

花陽「ごにヴィンセントヴァンゴッホと書いてご飯…!」

絵里「それこそ何語よ…」

花陽「ご飯があってこそ、人生が始まるのです…!」

花陽「なのにここに来てからはパン、パン、パン!!パンなんてクソくらえだ!!」

花陽「家畜すら顔を背けるようなファッキンブレッドなんかもう顔も見たくな、あ、このパンおいし」モフモフ

絵里「…このまま花陽を放っておけばなんか…いろいろと大変なことになりそうだわ」

希「って言っても…、真姫ちゃん、どこかいいお店知らない?」

真姫「な、なんでそこで私に振るのよ…」

希「まぁなんとなく。で、どこかいいお店…」

真姫「えっと…>>694

ラブホ

真姫「ラブホ」

希「えっ」

真姫「ら、ラブホテルならあるんじゃない?白米」

花陽「あるの!?」

絵里「いやいやいや!ないわよ!」

にこ「ホントに?」

絵里「え、えぇ…多分ね。よく知らないけど」

ことり「…カマトトぶんなよ」

絵里「なに!?」

ことり「え~?何も言ってませんよ~?」

真姫「まぁその確認のためにもラブホ行ってみましょうよ!初体験でしょ!?」

海未「い、いけませんよはしたない!!私たちはまだ未成年なのですよ!?」

真姫「ほぉ…」

海未「な、なんですか…」

真姫「なら既に18歳以上のにこちゃんと希ならイケルわよね!?よし、行きましょう!私は連れ添いで!!」

希「はあぁぁっ!?」

にこ「どうしてそうなるのよ!?」

絵里「あれ、私は…」

凛「絵里ちゃんは街中歩いてれば自然とラブホに入っていけそうだにゃ」

絵里「え」

花陽「待って!私の白米は!?」

ことり「…一回行ってみたいな、ラブホ」

海未「だだだ、ダメですよ!?いけませんいけません!!」

絵里「私も18歳なのに…」

穂乃果「じゃあ行ってみようよ!みんなで!」

一同「え?」

穂乃果「みんなで行けば怖くない!!よーし、いっくぞー!!」



ラブホ前


海未「ほ、本当に来てしまいました…」

花陽「ここに白米が…!?」

希「まぁ、白くて温かいものなら大量に分泌されてそう…」

穂乃果「う…いざ目の前にしたら緊張してきたな」

穂乃果「だ、誰か先行って!」

にこ「みんなで行こうって言ったの穂乃果じゃない!」

穂乃果「直前でビビるタイプなの!言いだしっぺなんだから真姫ちゃんお願い!!」

真姫「え!?ひ、一人でなんて嫌よ!?せめてにこちゃんか希が…」

絵里「だから私は…?」

花陽「白米…!白くてドロッとした白米が食べたいんですぅぅぅ…!」

凛「凛はザー…ラーメンが食べたいな!」

ことり「もうめちゃくちゃだよ…」

穂乃果「こうなったら…みんなで>>697だ!」

ビリヤード

穂乃果「こうなったら…みんなでビリヤードだ!」

海未「ビリヤード…?」

凛「あぁ、パントマイムするポケモンね」

真姫「バリヤードね」

ことり「ビリヤード…つまり玉突き!?」

希「ほぅ…玉突き…。つまりホテルでお楽しみ中の男性がたのアレを(自粛)」

にこ「ひぃぃっ…!!想像しただけでお股がキュンって…!」

絵里「なんであなたがキュンってするのよ…」

にこ「え、あー…まぁいろいろと」

花陽「もうなんでもいいです!お米が食べられるなら!!」ドヒューン!!

穂乃果「あ!花陽ちゃんがラブホに行っちゃった!!よーし、穂乃果たちも続けー!!」ドヒューン!!


一同「…」

海未「まぁ、行きませんけど」

希「帰ってくるのが楽しみやね」


<オーノォォォォッ!! <ワツパプンッ!? <マイガー!! <サノバビッチ!!


凛「ラブホの中から子々孫々の団地妻が聞こえてくるにゃ…」

真姫「死屍累々の断末魔ね」


ドヒューン

穂乃果「みんな、逃げるよ!!」

花陽「げぷっ…お腹いっぱい…」

ことり「花陽ちゃんなんかイカ臭い!すごいイカ臭い!!」

穂乃果「早く行かないと!捕まっちゃう!!」

海未「何してたんですか!?大体予想は付きますが!」

穂乃果「説明は後でー!」


タタタタタッ…



穂乃果「はぁっ…はぁっ…。ふぅ、撒いたか」

海未「ついにこちら側でも犯罪に走ってしまいました…」

にこ「バレなきゃ犯罪じゃないのよ…。うん」

凛「かよちんめっさ臭いにゃ」

花陽「げふっ…おめk…お米の中の白いものをいっぱい食べてきたから…」

凛「寄らないで臭いが移る」

真姫「はぁ…。いっつもこれね…」

絵里「ふふ、…でも、これが私たちにとってのいつも、なのよね」

絵里「不思議な話よね。卒業してもこうしてあなたたちと一緒にいられることが」

絵里「もう、わずかな時間しか残されていない…」

穂乃果「ソーリー、悪いが聞こえないよ。耳に肉バナナが刺さっていてね」

絵里「ちぎってきたの…!?」

真姫「キモチワルイ」

ステーション


アハハアハハ…


穂乃果「よっ」ピッ

ブー!!

穂乃果「わっつ!?お金足りないのかなぁ…」


花陽「それでその人の量ったらすごくてー」スタスタ…

ことり「あはは~口からすごい異臭~」スタスタ…


穂乃果「うわ、置いていかれる!早くチャージしないと!」


穂乃果「って人いっぱい…!え、エクスキューショナー!!」


穂乃果「やっとチャージできた!急がないと…」ガコンッ

穂乃果「どいてどいてー!」タッタッタッ…

穂乃果「とべよおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」ヒュオッ

シュタッ

穂乃果「10点!そしてタッチダウーン!!」ダッ!!

ドゴォッ


穂乃果「ふぃ~…ざっとこんなもんよ!」

穂乃果「う、頭打った気がする…。痛い…」



にこ『あれ、向こうの車両に穂乃果に似た子が…』

海未『あはは、そんなまさかってうわああぁぁぁ穂乃果ああぁぁぁぁぁっ!!?』



プオーン…





別のステーション


穂乃果「…」ポツーン

穂乃果「もしかして…はぐれた?」

穂乃果「…」

穂乃果「>>700

そこら辺の女の子でもレイプしよっと

穂乃果「そこら辺の女の子でもレイプしよっと」

穂乃果「ふふ…みんながいるところだと性癖を打ち上げづらいからね…!存分にレイプを楽しむんだ…!」

穂乃果「って言っても…」



スタスタ…


穂乃果「うぅ…土地勘がないから路地裏とかに連れ込みづらいなぁ…。まずは地理の把握から…」

ドンッ

穂乃果「あうっ…」

異国人D「sorry」

穂乃果「え、小渕…って、歩きスマホしてる!しね!!!!!」

穂乃果「ふぅ、言ってやったぜ」

穂乃果「…誰も止めてくれる人がいないと寂しいなぁ…」

穂乃果「とりあえず性欲を発散して、その後みんなを探そう…」


トボトボ…


穂乃果「でも私黒人とか白人、好みじゃないんだよね…」

穂乃果「やっぱり和モノに限る…。でも日本人なんてそうそう…」


~♪


穂乃果「ん?この歌…」


「クーラーファッション、ネーバートゥデ~イ…」


穂乃果「なんだか少し日本語訛りのある英語…な気がする…!」


「サーンゴーズバァ~イ…」


穂乃果「おぉぉぉ…び、美人さんだぁぁあぁぁぁ…!!」パチパチパチ


「…センキュー!センキュー!」

「…ん?」



電車


女性シンガー「それでここまで…うん、来たの?」

穂乃果「え、あ、まぁ…はい。それで、本当にホテルの場所わかるんですか!?」

女性シンガー「あ、あなたの言ってるラブホテルに行く気はないけど…大きいシャンデリアがあるところでしょ?」

穂乃果「はい!」

女性シンガー「ならあそこで間違いないわ。私も昔…おっと」

穂乃果「ほん?あ、それより私とほのぼのレイプ…」

女性シンガー「あっ!!」

穂乃果「えっ…ど、どうしたんですか…」

女性シンガー「…>>702

まずい、追っ手だ

女性シンガー「…まずい、追っ手だ」

穂乃果「え、追っ手?」

女性シンガー「実はね、私はとある組織に狙われているの…。不法に時間跳躍を行った犯罪者として…」

穂乃果「え」

女性シンガー「ほら、あのニット帽かぶった女性…。彼女は私を追うエリート取締官で」

穂乃果「…降りて行きましたよ」

女性シンガー「…」

穂乃果(この人厨二病か…。萎えたわ)


女性シンガー「ごめーん!変なこと言っちゃって!」

穂乃果「いいですよ。あ、マイク持ちます」

女性シンガー「あ!マイク忘れた!」

穂乃果「今私が持ってます」



穂乃果「…いつもここで歌ってるんですか?」

女性シンガー「え?いやいやいやwwwwいろいろ場所は変えて歌ってますけどwwwww?」

穂乃果「こ、この国でってことです」

女性シンガー「ん?あーそういう…まぁ、そうかな。私も昔は…えっと、バリバリ鳴らしてたのよ。日本で仲間と一緒に」

穂乃果「へー、仲間と」

女性シンガー「今はもう解散しちゃって…。しちゃったんだったっけかな?」

女性シンガー「まぁ、楽しかったようなそうでもなかったような…」

穂乃果「はぁ…曖昧ですね」

穂乃果「…あの!」

女性シンガー「うん?」

穂乃果「…何言うか忘れちゃいました。ごめんなさい」

女性シンガー「あ、あぁ…いいけど。よくあるよね。忘れごとってさ」

女性シンガー「私も昔はよく忘れたけど、今は英語の歌も歌えるくらい上達したのよ?どや」

穂乃果「おぉ!しょごい!英語、覚えるの難しくなかったんですか!?」

女性シンガー「…簡単、だったよ。簡単だった。すごい…簡単だった」

穂乃果「えぇ…ホントですかー?ウソついてません?」

女性シンガー「すぐにわかるよ」

穂乃果「はぁ…」

穂乃果(…なんかとても重要なイベントをすっとばした感覚があるなぁ)


穂乃果「…ん?あ!!」


海未「あ、穂乃果っ!!」


穂乃果「海未ちゃんっ!みんなっ!!」タッタッタッ…

海未「穂乃果っ…!」

穂乃果「みんなー!!!」


海未「何やっていたんですかっ!!!」


穂乃果「っ…!」


海未「…どれだけ>>704したと思っているんですか…!」

ラブホまわった

海未「…どれだけ、ラブホ回ったと思っているんですか…!」

海未「もうあちらこちらのラブホに行って、花陽のお腹は大変なことに…」

海未「絵里もいつの間にか顔に卑猥な落書きがされていて…」

絵里「ほんとにね。なによファックミーって…」

凛「朝からされていた気がするにゃー」

希「ま、見つかったからよかったやん。どうやって帰ってきたん?」

穂乃果「うん、ここまで…あれ?」

海未「…どうしました?」

穂乃果「おかしいな…。ここまで送ってきてくれた人が…」

凛「誰もいなかったにゃ」

絵里「また穂乃果の悪い癖じゃないの?思い込みっていうか…」

穂乃果「そう、なのかなぁ…」

海未「疲れたでしょう…。今は身体を温めましょう。一緒にお風呂に…」

絵里「明日のライブに備えて休みましょう」

穂乃果「うん。そうするね」

海未「ぁぅ…」


ことり「あ、穂乃果ちゃん!」

にこ「ようやく帰ってきたのね」

真姫「心配かけさせてくれるわね」

花陽「げぷっ…」


穂乃果「あぁごめっ…うわくさっ!!花陽ちゃん何食べたの!?」


花陽「行く先々のラブホでその…白いどろどろしたアレを」

凛「かよちん、とんでもない変態になっちゃってるよ」

にこ「あ、明日までに消化できるといいわね…」

凛「よーし、じゃあ気合入れて寝るにゃー!」

真姫「まぁ、寝ている間に胃袋には気合入れてもらわないといけないわね…」



穂乃果「…」

穂乃果「…なんか、大事な話が抜けてるような…」

翌日

交差点の一角




「…」



~♪



「君は誰?待って 言わないで わかってる」

「夢に見た熱い蜃気楼なのさ」

「ここはどこ?なんて 言わないよ わかってる」

「お互いの願いが呼んだ出会い」


「遠ざかるほど ヒカルイチバンボシ いつか」

「そんな恋してみたかった」

「もういらないよ 次のステージは」

「惹かれあうために 生まれた二人になってく」


「Ah もしもは 欲しくないのさ もっとが好き☆えんじぇー」

「ツバサをただの 飾りにはしない」

「Ah もしもは 欲しくないけど ほっとが好き☆えんじぇー」

「明日じゃない 大事な時は」

「今なんだと気がついて 心の羽ばたきは」

「止まらない~」




~♪…

真姫「今日はここまでにしましょう」

凛「結構ゆっくりめだけどいつ終わるのかにゃー」

真姫「さぁ。…あ、今回の歌詞は自信あるわよ!AA自体好きな曲だし!」

凛「なぜかヒカルイチバンボシを一発変換したらカタカナになっちゃったからそのまま採用にゃ」

真姫「歌詞カードは一回見たかどうかだから本当にそうなってるかも知れないけど…ま、知ったことじゃないわ」

凛「一部凛たちの要素が含まれている気がするけどそれも知ったこっちゃないね」

真姫「というわけで今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「次にラブホに突入して大量ザー飲しちゃうのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

真姫「ググったらヒカルイチバンボシって競走馬なのね…」

凛「偶然だろうけどね。ことり杯ミナリンスキー賞があったらしいしどこに潜んでるかわからないものにゃ」

前回は少々お下品だったと深く反省しているので今回はそうでないように気をつけます
というわけで今日もやっていくよ ここらへんから結構あやふや

飛行機内


穂乃果「ん、うぅぅ…シーザーサラダドレッシングの洪水が押し寄せてくるぅぅ…嬉し怖い…」

穂乃果「はっ…夢か」

ことり「ちゅん…ちゅん…」

穂乃果「うわ、寝息キモッ。かわいいけど」

穂乃果「今は何時くらいだろう…外の景色は、っと…」ガバッ

穂乃果「わあぁぁ…!なんか…なんかいい表現はできないけど…しょごい!」

ことり「ん、んんっ…あれ、穂乃果ちゃん…」

穂乃果「ねぇ見てことりちゃん!窓の外、なんかすごい!」

ことり「ホント…綺麗」

穂乃果「あ、そうそう…綺麗キレイ」

ことり「ずっと起きてたの?」

穂乃果「うぅん、さっき起きたところ」

ことり「へぇ…」

穂乃果「うん…」

ことり「…」

穂乃果「…他に何かないの?」

ことり「特に何も」

穂乃果「そっか…」

穂乃果「あ、そうだ!一番後ろの席の希ちゃんや絵里ちゃんにもこの景色を見せて…」スタスタ…

穂乃果「希ちゃん、絵里ちゃ…じゃない!?誰だこのオッサン!?」

真姫「…何騒いでるのよ、ウルサイ」

穂乃果「ま、真姫ちゃんの後ろにいたはずの希ちゃんが変な人に変わってるよ!!?誰この人…」

真姫「どうでもいいでしょそんなの…おやすみ…くぅ…」

穂乃果「謎だ…」

凛「むにゃむにゃ…おっぱいがいっぱい…」

穂乃果「凛ちゃんのアイマスクかわいい」

ことり「まだ到着には時間あるし寝よ」

空港


穂乃果「ふにゅぅぅぅ…やっと着いたー!帰ってきたよニッポン!!」

海未「大きな声を出さないでください」

ことり「あ、枕忘れたような…」

海未「さっき寝てる時に使っていたでしょうが…」


真姫「ふぅ、アカデミークラスで往復ってこんな感じなのね」

にこ「なにそれ自慢!?」

真姫「そんなつもりじゃないし」

希「エコノミーな」

真姫「あっ…はずかし」

希「それより真姫ちゃん…」

真姫「うん?」

希「…>>715はできた?」

にこっちとの子供

希「…にこっちとの子供はできた?」ボソッ

真姫「」ブッ

真姫「ななな、何言ってんのよぉっ!!?」

希「えー?うちはてっきりやってることはやってるんかと」

希「真姫ちゃん、あっちにいる時ずいぶんとダイタンやったしー」

真姫「そんなことぉ…!」

にこ「なによ、なんの話?」

真姫「べ、別ににこちゃんには関係ないでしょ!あっち行っててよ!!」

にこ「えっ…あ、ご、ごめん…」ショボン…

真姫「あっ…そういうつもりじゃ…」

希「むふふ…これで更に意識すればそのうち…」

真姫「ど、どういうつもりで…」


キャー!!


真姫「な、何…?」



キャー スゴーイ カワイイー!!



絵里「な、なんなの…」

花陽「凄い…女学生に見られている気がします…」

凛「もしかして凛たちの命を狙うスパイダーなのかにゃ!?」

海未「スナイパーなのでは」

凛「いやいや、蜘蛛が擬態して凛たちを襲おうと…」

ことり「すごいどうでもいい妄想だね」


女学生A「あの、μ'sの高坂穂乃果さんですよね!?」

穂乃果「えっ…そ、そうです」

女学生B「あなたは、μ'sの南ことりさん!」

ことり「ことり様とお呼びちゅんちゅん」

女学生C「あなたもμ'sの園田海未さんですよね!?」

海未「違います」

一同「えぇっ!?」

凛「どうして嘘つくにゃー!」

穂乃果「一人だけ逃げるつもり!?」

海未「だ、だって私は…」

海未「園田と愉快な仲間たちの園田海未ですので!」シャキーンッ

一同「あぁ…」

海未「な、なんですかその冷ややかな目は!?愉快な仲間たちなんだからもっと愉快な微笑みをですね…」

穂乃果「彼女は重大な精神疾患があるんで放っておいてあげてください。それで、私たちになんのようで…」

女学生ズ「「「あのっ!…サイン、お願いします!!」」」

ことり「サイン…?」

穂乃果「サインってつまり…」

穂乃果「>>717って言葉の略!?」

ブレーキランプ5回点滅は愛してる

穂乃果「ブレーキランプ5回点滅は愛してるって言葉の略?」

海未「はぁ…?なんですかそれは」

穂乃果「えぇっ!!?知らないの!?きっと何年たってもこうして変わらず気持ちで…的なさぁ!?」

凛「かよちん、知ってる?」

花陽「ぜ、全然…」

穂乃果「う、嘘だぁ…!これがぜねれーしょんがっぷってやつか…」

真姫「ほとんど年代変わらないわよ私たち」

絵里「ま、まぁ私もよくわからないけど…こ、心に描く未来予想図は思った通りにかなえられていくといいわね」ボソッ

希「小声で言わんで堂々と知ってるって言えばいいのに」

穂乃果「…で、何の話だっけ」

花陽「サインの話だよ…」

ことり「サインっていうのは…ほら、有名人が求められて、固有のなんか…アレだよ!」

穂乃果「おぉ!アレか!!」

にこ「今のでよくわかるわね…」


サインカキカキ…



穂乃果「でもどうしていきなりこんな…」カキカキ

ことり「なんでだろうねー」カキカキ

海未「ふむぅぅ…」カキカキ

凛「もしかしてこれは…夢!!」

穂乃果「ありうる!」

ことり「ねぇよ」

海未「ふむぅぅ…」

凛「でも夢だとしてどこからが夢?…あれ、凛なんで自問自答…」

穂乃果「やっぱり、旅行に行く前からとか!?」

ことり「そんなまさか…」

海未「やはりもう少し凝った感じのサインがいいでしょうか。この…umiのiのてんてんがハート的な…いや、ふむぅぅ…」

凛「いやいや、ラブライブ優勝!からかも!!」

穂乃果「も、もしかしたら、廃校!?のところからだったりして…」

ことり「えぇ…」



…今訂正しようとしたら!
ごめん、でもいいんだ 後付けでなんとかなるんだ

ユッサユッサ…


「穂乃果…」「穂乃果ちゃん…」


穂乃果「…ん、んん、何、もう…まだ眠いよぉ…」


海未「穂乃果!」

ことり「穂乃果ちゃん、起きて!」

穂乃果「はっ!な、何…?」

海未「…はぁ。いつまで気絶しているのですか」

ことり「もう下校時間になっちゃったよ?」

穂乃果「げ、下校…?あの、空港、は…?海外は?」

海未「はい…?まだ寝ぼけているのですか…?」

ことり「や、やっぱりあのことがショックで…」

穂乃果「寝ぼけてなんか…。ん?あのこと、って…」

海未「それも忘れているのですか?…廃校ですよ。廃校」

穂乃果「えっ…」

ことり「って言っても、すぐに廃校になっちゃうわけじゃないんだよ?今の一年生が卒業してからで…」

穂乃果「ま、待ってよ!廃校はなくなったんだよ!?私たちがスクールアイドルで、オトノキを盛り上げて!!」

穂乃果「来年もまた、新入生がたくさん入ってくるって…」

海未「…やはり、寝ぼけているようですね」

ことり「スクールアイドル、ってなぁに?」

穂乃果「えっ…」


穂乃果(本当に…今までのこと、夢、だったの…?)




穂むら


穂乃果「…ただいま」


雪穂「あぁ、おかえりー」


穂乃果「雪穂…」

穂乃果「ねぇ、雪穂。おねえちゃんの顔、つねってみて」

雪穂「うん」ツネェェェッ

穂乃果「いだだだだだっ!!早いよ!何も聞かずにやるなんて!!」

雪穂「お姉ちゃんが突拍子ないなんて今に始まったことじゃないじゃん。で、どうしたの?」

穂乃果「とほほ…うぅん、夢じゃないってわかっただけ…。あ、雪穂は…アネックス一号のこと、知ってる?」

雪穂「え、何?漫画の話?」

穂乃果「じゃなくて!スクールアイドル!」

雪穂「へ?なにそれ…」

穂乃果「あ、A-RISEとかもあるじゃん!UTX学院の!!」

雪穂「UTX…?何言ってるのお姉ちゃん、それはUTXじゃなくて…」

翌日


穂乃果「嘘だ…」


秋葉原UDX前


穂乃果「UTXが、ない…」

穂乃果「学校じゃなくなってる…」

穂乃果「そんな…そんな…今まで私が見てたのは、本当に…」


ドンッ

穂乃果「あいたっ…」


花陽「あ、ごめんなさいっ」

凛「もう、前見て歩かないから!」


穂乃果「あっ…!花陽ちゃん、凛ちゃん!!」

花陽「えっ…」

凛「凛たちのこと知ってるのー!?いつの間に有名人に…」

穂乃果「ねぇ、二人共!私たちスクールアイドルで…」

花陽「アイドル!?お姉さんアイドル好きなんですか!?私も好きなんです!」

穂乃果「う、うん…スクールアイドルの…」

花陽「AKBとかNMBとか!あと乃木坂もいいですよね~!あ、ももクロも結構ハマってるんです!」

穂乃果「え…」

凛「かよちん、楽しみたいのはわかるけど…」

花陽「あ、そうだった。遅刻しそうなんだった!ごめんなさい!!また会うことがあったらぜひ!」

タッタッタッ…


穂乃果「あ…」

穂乃果「二人共、違う学校の制服、着てた…」



穂乃果の教室


穂乃果「ねぇ、二人共…。私がアイドルやる、って言ったら、ついてきてくれる?」

海未「あ、アイドルですか…?」

ことり「えぇっと…。どうしたの?いきなり…」

穂乃果「アイドルで学校を盛り上げるの!入学希望者を増やせばオトノキは廃校にならないはずでしょ!?」

海未「確かにそうかもしれませんが…その手段がアイドル、なのですか?」

ことり「自主制作、だよね…?見れるモノになるかなぁ…。私たち3人じゃ、限界があると思うよ」

海未「そんなことして学校を盛り上げようとしている人たちなんていませんし、やるなら他の方法を…」

穂乃果「いるよ!スクールアイドル、いっぱいいるんだって!!」

海未「…どこに?」

穂乃果「それは…わからないけど」

穂乃果(スクールアイドルを特集した雑誌は、軒並みなくなってて)

穂乃果(ネットで検索しても、スクールアイドルはほとんどヒットしなかった…)

穂乃果(…私が今まで見ていたの、って…夢、だったんだ。本当に、夢…)


穂乃果「っ…!そうだ!アイドル研究部!!」

穂乃果「にこちゃんならスクールアイドルだって前向きに考えてくれるかも知れない!」


タッタッタッ…


穂乃果「ない…」

穂乃果「鉄道研究部になって…」

穂乃果「ま、真姫ちゃん!作曲をしてくれる人がいれば…」



一年の教室


モブA「でさー…」

真姫「えーマジ!?アハハハ!おかしいでしょそれー!」


穂乃果「あっ…、ま、真姫ちゃん…」


真姫「はいー?なんですかー?パイセン?てか誰?」

穂乃果「あ、あの…さ、作曲とかできないかなーって…」

真姫「なにそれウケる!え、できるできる!!超できるけどそれが何!?」

穂乃果「え、えと…うぅん、何でもない!バイバイ」


モブA「誰よあれ」

真姫「知らなーい。あ、てゆーかこのコーデマジよくなーい?」



生徒会室


穂乃果「お願い!入って!アネックス1号に入ってよ!!」

絵里「ち、ちょっと…」

希「なんなのこの子…」

絵里「私にもわからないわよ…」

穂乃果「みんな忘れちゃってるの!お願いだから、スクールアイドルやってよ、絵里ちゃん、希ちゃん…」




校門前


穂乃果「…う、うぅぅぅ…」


海未「穂乃果…」

ことり「そんなに、スクールアイドル…やりたいの?」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん…」

海未「…仕方ありません。穂乃果がそれほどならば、部活の合間にやってみてもいいですよ。アイドル」

ことり「私も。どうなるかはわかんないけど」

穂乃果「ホント!?よかった…!やろう!そして、盛り上げようよ、オトノキを!!」

新入生歓迎会当日

講堂



穂乃果「…」


新入生A「おぉー、すごいすごい!可愛い衣装!」

新入生B「がんばってくださーい」パチパチパチ

新入生C「でもあれドンキのやつじゃないー?」


ことり「ごめんね。急に3着は間に合わなくて…」

海未「歌も既存のものでしかありませんが、それでも精一杯ライブするので、見ていってください!」

穂乃果「…3人…」

海未「良いではないですか。来ていただけただけでも」

ことり「さぁ、やろう!」



パチパチパチ…



海未「ありがとうございました!スクールアイドル、アネックス一号をよろしくお願いします!」

ことり「一緒にアイドルやってくれる人、募集してまーす」

穂乃果「お、お願いします…」



海未「ふー…、思っていたより上手に出来て一安心です。どうでしょうか」

ことり「私も!海未ちゃん、上手だったよ!」

穂乃果「…」

海未「しかし、穂乃果は初めてだというのにあんなに踊れるだなんて…ふふ、隠れた才能でしょうか」

穂乃果「全然、ダメだった…。こんなの、じゃ…ラブライブ!に優勝なんて…」

ことり「ラブ、ライブ…?」

穂乃果「…あぁ、そっか。それも、ないんだよね…」

穂乃果「…どうやって、これで…これで、廃校、なんて…」




下校中


海未「その…穂乃果としては満足の行かない出来だったのですか?ならば次回、頑張ればいいじゃないですか!」

ことり「今日はパーっと打ち上げ行こう!えへへ、ケーキバイキングのお店、予約してるんだー」

穂乃果「…うん。そう、だね…今は、楽しいことだけ考えよう…」


穂乃果(そうやって、ずっとずっと、今の楽しさだけ考えて…)

穂乃果(何も変えられないまま…終わっていくの、かな…)

穂乃果(そん、なの…)

飛行機内


穂乃果「そんなの、嫌だっ!!」バッ

ことり「きゃあぁっ!!?な、何…?どうしたの穂乃果ちゃん…」

穂乃果「はぁっ…はぁっ…。え、何ここ…飛行機…?」

ことり「ライブで疲れちゃったの?おぉよしよし…」

穂乃果「ライブ…私たちって…」

ことり「アネックス1号?」

穂乃果「…!!ゆ、夢だったぁぁぁっ!!よかったああぁぁぁっ!!」

ことり「えぇっ…あ、あぁ、悪い夢見てたの?大変だったね…」

穂乃果「うん、うん…怖かった!怖かったよぉ…」

穂乃果「はぁ…やっぱり今が最高だなぁ…。夢なんて見るものじゃないよ…」

ことり「大事なのは今なんだって気がついたの?」

穂乃果「そんな感じ…」



空港



サインカキカキ…


穂乃果「…って夢をついさっき見ててさぁ。ビックリしたんだー」

凛「まるで別のSSがいきなり挟まったかのような驚きだねそれは」

海未「何が始まったのかとびっくりしましたよ…」

ことり「で、私たちがサインを求められる理由は…?」

穂乃果「あ、そうだった!どうしてこうなった!?」

穂乃果「…あ。あ、あぁっ!!見てあれ!!あの大きなモニター!!」

絵里「あれって…!」

希「あっちで撮ったライブ!!?」

にこ「ま、ま、まさかっ…全国中継!!?」

真姫「いや、中継ではないでしょ…」

花陽「でも私たちの映像が、ラブライブ!応援に使われている、ってことは…!」

凛「だから凛たち、大人気なのかにゃー!!?」

路地裏


海未「どうしましょう…。街中でも私たちのポスターが所狭しと張り巡らされていて…」

ことり「そこまでではなかったよね…」

凛「ちょっとでも外を出歩けばアラート状態!死が待っている!!」

花陽「物騒すぎる表現だよ…」

真姫「でも、人気が出て良かったじゃない」

穂乃果「そうだね、貢いでくれる男性の一人二人くらいできそう」

真姫「ファンの子みんな女の子だったけどね」

凛「揃いも揃ってなぜか学生だったにゃ…」

海未「なんて限定されたファン層のコンテンツなんでしょう…。逆に男性の心を掴めなかったのが悔やまれます」


にこ「今はそんなことどうでもいいわ!」


穂乃果「えっ…ファンが増えたってにこちゃんなら喜びそうなのに…」


希「今はここを抜けるのが先よ」

絵里「ほんとにね」

にこ「だってわたしたち…」

絵里「ほんとにね」

にこ「まだ何も言ってないわよ!」

絵里「ほんとにね」

にこ「…だって私たち、>>728なんですものー!!」

全裸

にこ「だって私たち、全裸なんですものー!」

ことり「え、あ、ホントだ!脱いでる!!気がつかなかった…」

凛「いつの間に…」

海未「というかなんでそんな変態的なことを!?破廉恥です!!」

にこ「逆に考えるのよ」

海未「逆…」

にこ「こうして顔以外が目立つような格好にしておけばみんなそっちに目がいって私たちだって気がつかれないわ!」

穂乃果「なるほど!頭おかしい!!」

希「んふ、まぁここからならにこっちの家が一番近いってことで、ちょっとしたスリルを楽しもうってね…」

絵里「はぁっ…!はぁっ…!ま、街中で全裸…たまらないわぁ…!」

海未「…いいのでしょうか、こんなので。こんなので、人気出てしまって」

花陽「もうどうだっていいや」



~♪


にこ「…っは!どこからともなくいい感じのメロディが!」

にこ「これは…歌うっきゃないわ!」



にこ「ランナウェイだ ランランナウェイだ なんでなんで突然?」

希「ランナウェイだ ランランナウェイだ いきなり人気者!」

にこ「あーあーまさかのタイブレイク?」

「ランナウェイだ ランランナウェイだ ランランランナウェイ!」


絵里「おかしいな …なんだっけ」

絵里「おかしいな 本当は 夢見てるのーかーな」

希「お互いをつねろ!」

にこ「痛いほどつねろ!」

にこ「え、あー…ここから全く覚えてない!」

絵里「えぇ…」

希「ぬー…消えない!消えない!」


「楽しいと 思う暇がないほどに」

「ナントカドートカ ?←HEART BEAT」

「もうこの部分記憶曖昧すぎて何も思い出せない」

「なかなか 進めない さぁどうしよう!」



にこ「歌ってたら家に着いたわ」

希「お邪魔してまーす」

絵里「はぁ…!はぁ…!み、見られてる…!」



こころ「お、お姉さま…!?どうして外から全裸で…」

ここあ「おねーちゃんすげー」

こたろう「…」ギンギン

ここあ「こたろうのズボンが膨れ上がってるー。これもすごーい」

真姫「今日はここまでね」

凛「え、下品を反省して気をつけるってなんだったの?」

真姫「さぁ…私にもわからないわ」

凛「なんかいきなり途中に挿入された創作もあるし…」

真姫「『ホントに最初から夢の上、設定が現実的だったら』ってSSを前書こうとして諦めたからどうせだし突っ込んでみた結果よ」

凛「なんだか寂しいよ…。現実なんてクソ喰らえだね!二次が最高!」

真姫「みんなは現実も大事に受け止めて生きてね」

凛「それでは今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

真姫「次に今までの人生が全て夢だったと気づくのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!」」

現実的なやつは、もちろんこっちに集中したいからという理由もあるのですが
若干設定がもしとかぶってたり、もう長編は当分書きたくなかったりとまぁ色々な理由もあっておそらく書かないです
じゃあやっぱり遅いけど誰かいてくださいますように ここからは本当に曖昧だからどうなるか

穂むら


雪穂「なんかネットでもすごい噂になってるよ!お姉ちゃんたち」

穂乃果「へぇ~…アネックス1号ってすごいんだねぇ…」

雪穂「すごいなんてもんじゃないよ!」

穂乃果「え…」

ことり「もんじゃないとどうなの?」

雪穂「え…あー…そうですね、えっと…」

雪穂「めっちゃすごい!ってレベルです!!」

海未「…最近雪穂の発言が姉に近くなってきている気がします」

にこ「あながち間違ってないわよ!私たちはめっちゃすごいスクールアイドルになっちゃったのよ…!」

にこ「めっちゃすごいスクールアイドルとなるともう…こんな感じだわきっと…」



モブ「にこちゃん、今日はプライベートですか!?」

にこ「なによもう…仕方ないわねー」

にこ「にっこにっこぬぃ~~~~~~」



にこ「ぬぃ~~~~ぬぃ~~~~~~」

希「にこっちに悪霊が取り憑いてる」

凛「にこちゃんは元から悪霊みたいなものだにゃ」

にこ「ぬぃ~~~~~」

絵里「ちょっと…、くだらない話題してる場合?そんなことより…」

絵里「>>737

真姫「>>738

スクフェス全世界2000万DL達成よ

希との子供ができたわ

絵里「スクフェス全世界2000万DL達成よ」

真姫「希との子供ができたわ」


一同「!!?」


希「ま、真姫ちゃん、今なんて…!」

花陽「なんだか同時に言われたせいで被さってよく聞こえなかったような…」

凛「凛には『希との子供が全世界2000万達成』って聞こえたにゃ!」

穂乃果「な、なんだってー!!?」

にこ「ええええ、絵里!?真姫まで…希と全世界に2000万人の子供を作ってたの!?」

海未「少子化が一気に解消ですね」

ことり「馬鹿なこと言ってないで…」

絵里「なっ…、んなわけ無いでしょう!?私が言ったのはスクフェスが…」

真姫「絵里とはもう行きずりの仲でね…希とまぐわってはあっちでポンポンこっちでポンポンなのよ」

絵里「何言ってるのよ真姫!?正気!!?」

真姫(にこちゃんとの仲を茶化されたから希には復讐よ。すごい爛れた関係だと勘違いされればいいわ)

希「う、うち…!自分の知らないところでそんなことを…!?」

真姫「あれっ」

希「そんな…!うちがえりちと真姫ちゃんとっ…は、はわわぁぁぁぁぁ~~~…」バタリッ

にこ「希が死んだ!?」

凛「絵里ちゃんの人でなし!」

絵里「わ、私は何もしてないわよ!?それよりね、スクフェスが2000万DLよ!?まだまだデレステなんかに引けは…」

真姫「にこちゃん、実は私は希とは一切過ちは犯したことがなくて全部絵里が産んでるの。2000万人」

にこ「なんて生産能力なの…!?まさに産む機械…」

絵里「真姫、あなたは一体何がしたいの…」

海未「つぎのライブとか催促されそうですよね。ここまで人気だと」

穂乃果「かもねー」

ことり「そうだねー」

花陽「もうあっちのゴタゴタと付き合う気ゼロだよね…」

雪穂「アネックス1号って大変だね」

穂乃果「結構楽しいよ」



次の日?

学校



穂乃果「次のライブ!?ないないない!そんな話されるなんて想像もしてなかった!」

ヒデコ「もうみんな待ちきれないって!」

フミコ「穂乃果ー!」ガムテープペタペタ

ミカ「穂乃果ー!!」ロープマキマキ

穂乃果「むぐぐー!!」

部室


海未「…次のライブですか。そんなことを言われるとは、想定外ですね」

ことり「だね」

花陽「相変わらず脳みそ空っぽだね」

穂乃果「でも、どうしようか…」

海未「確かに、えー…確かにそうですね」

真姫「内容ゼロの応答しないで」

海未「…そう!アネックス1号は3年生の卒業をもって解散すると、外部には伝えて…伝えてなかったのです!!」

海未「ですからこんな事態に…」

ことり「そうだっけ…」

凛「そもそも凛たち解散するんだっけ?」

絵里「そういうつもりだったはずだけど…」

穂乃果「だけど、みんなは私たちに期待してくれてる…あぁ、こういう時、どうすれば…」

海未「どうすれば…」

絵里「どうす」

希「やってもいいんと違う?ライブ」

絵里「空気読んでよ希!ここは私と一緒に…って」

一同「えっ…」

花陽「やってもいいって…」

にこ「でも私たちは解散…」

希「3月いっぱいまではまだうちらもアネックス1号。それに…」

希「歌いたい曲もあるしね。ね、真姫ちゃん」

真姫「えっ…急に振られても…」

凛「もしかして真姫ちゃん、歌を作ってたり…!?」

真姫「え、作ってないわよ!?」

希「え、いや…作ってたやん。海外に行ってた時に…」

真姫「あ、あぁ…そういえば作ってたわ。すっかり忘れてた」

穂乃果「どうして…?もうライブはやらないって話だったのに」

真姫「え…どうして、と聞かれると…そうね…」

真姫「しいていえば、>>741だから…かしら」

欲求不満

真姫「欲求不満だから…かしら」

海未「よ、欲求不満…?」

真姫「最近寝ても覚めてもエロいことばかり考えちゃうのよ。体中がビンビン勃っちゃって仕方なくて」

真姫「どれだけ自慰行為を行なっても解消されない不満…。私の妄想を実行に起こせば解消されるんでしょうけど、でも」

真姫「そんなこと出来るはずない。…だけどね、曲を考えている時だけは、そこに集中できるの」

真姫「エッチな妄想も浮かばず…うぅん、妄想すらも曲を作るためのリビドーとして活用できる」

真姫「だから、ライブをするつもりがなくても、曲を作ってたのよ」

海未「それはつまりその…真姫のえっち妄想のチカラで作られた曲、とのことですか…?」

凛「なんかちょっと歌いたくないにゃ」

真姫「そう思うでしょ?どっこいすごいいい曲だから」スッ

穂乃果「え、どれどれ…」~♪

穂乃果「…なにこの神メロディ。イントロから既に泣かしに来てるとしか思えない」

海未「ふむ…確かに。破廉恥の力、侮り難しですね…」

凛「えぇっ!そう言われると俄然興味が湧いてくるよ!凛にも早く聞かせてー!」

穂乃果「後で。…海未ちゃん、これで歌詞作れる?」

海未「はい。私も少し書き溜めていましたので」

ことり「私も書き溜めてたんだ、衣装デザイン」

にこ「私も書き溜めてたのよね。アイドルちから」

希「そう言われるとうちもスピリチュアルパワーを書き溜めていたと言わざるを得ない」

絵里「言わなくていいから」

凛「早く聞かせて!」

真姫「うるさいわね…。はい」スポッ

凛「にゃは~ん」

絵里「じゃあ…する?ライブ」

穂乃果「その方向でいいと思う。いつになるかわかんないけど」

花陽「というか今は3月の何日だったっけ…。4月まで、だよね…?間に合う?」

穂乃果「できる!」

絵里「そうね…私たちの力をもってすればここから更に百人以上の衣装を作って秋葉原の一角を貸し切った上に全世界のスクールアイドルを集めてライブをしたとしても余裕で間に合いそう」

にこ「それはさすがに無理だと思うけど…、でもやると決まったからには全力でやりましょう!」

穂乃果「うん!」


コンコン…


穂乃果「…うん?」


理事長「大盛り上がりのところ悪いけど…ちょっと、いいかしら」



理事長室


ことり「えっ…」

穂乃果「>>743て欲しい?」

3年生は留年

穂乃果「3年生は留年して欲しい?」

海未「どういうことですか、理事長」

理事長「言ったとおりよ。3年生には留年して欲しいの」

海未「…」

海未「そう欲する理由をお聞きしているのですが」

理事長「えっ…あぁ、そうね。つまり…」

理事長「…私が説明するまでもないわ。説明してあげなさい」

ことり「お母さんしかいないんだけど誰に言ってるのかな…」

理事長「…仕方ないから自分で説明します」

理事長「今、アネックス1号の人気は絶頂期なの。3年生が卒業することによって解散するのなら…」

理事長「…3年生には留年してもらいたい。そしてスクールアイドルを続けて欲しい」

穂乃果「そんなっ…そのために留年、なんて…ひどすぎるよ」

理事長「…って言っても、これは強制じゃないわ。一つの選択肢として用意できる、ってこと」

理事長「3年生の3人には、もう一度高校生をしてもらうけど…それによって学歴に傷は付けないわ」

理事長「理事長パワーで彼女たちが将来不利になるようなことにはさせない。だから…」

ことり「まだ9人で、スクールアイドルを続ける道もある…ってこと?」

理事長「えぇ…」

海未「それは…そう言われると…」

理事長「あなたたちがスクールアイドルを続けることは、音の木坂にとっても大きな利益になるの」

理事長「だからどうするか…じっくり考えて欲しい」



中庭


一同「…」


真姫「…3年生は留年…?そしてスクールアイドルを続ける…」

真姫「フンッ!そんなの、私は賛成よ!」

花陽「賛成なんだ…」

真姫「まだもう一年、にこちゃんや希と、一緒にいられるってことでしょ」

真姫「…だったら、私はそうしたい。例えもうやめる、って決めてたとしても…」

絵里「うん。私もいるんだけどね」

希「うちは…」

にこ「私は反対っ!こんなのおかしいでしょ!生徒を自主的に留年させて、スクールアイドルを続けさせるだなんて!」

凛「に、にこちゃんが珍しく正論を言ってるにゃ…!」

希「でもにこっち…次のラブライブ!は…」

にこ「うっ…、で、出たいわよ!私だって!でも、でも…!」

にこ「みんなで決めたじゃないっ!これで終わりにしようって!」

にこ「…一度決めたことを、取り消したくない。あと何より学費がキツい」

凛「本音がチラ見えしちゃってるにゃ」

海未「学費は免除するとも言っていましたが」

にこ「…どうしよっかな」

絵里「意思弱いわね…」

穂乃果「…ホント、どうしたらいいんだろう…」

もう時間も時間なんですごい少ないけどここまでにしておきます
一気にやろうとするとやる気が持たないのでこれからは昼間にもチビチビ書いて行くかもしれません 未定だけど
ゆっくりだけど終わるまで失踪はしないと思うので安心してね それじゃ ほなな

MGSやっててサボり気味でごめん 昼間なんてなかった
じゃ、やっていきます

穂乃果の部屋


穂乃果「はぁ…」

穂乃果「何の話してたんだっけ」

穂乃果「何か悩み事があったような…」

穂乃果「というかいつの間に自分の部屋に戻ってきてるんだ私…謎だ」


ガチャッ

雪穂「おねえちゃ…って、またそんなグータラして~」

穂乃果「あ、雪穂…それに、亜里沙ちゃんも」

亜里沙「お邪魔してます!」

穂乃果「で、何の用?」

雪穂「あ、えっと…なんだっけ」

亜里沙「なんだっけ?」

穂乃果「二人まで記憶があやふやになってきちゃったんだね…可哀想」

雪穂「お、お姉ちゃんに言われたくないよ!…あ、そうそう!思い出した」

雪穂「お父さんとお母さんが『よくも出番すっ飛ばしてくれたな』って…」

穂乃果「な、何の話なの…」

雪穂「さぁ…?」

亜里沙「あ、そうそう!それで、来年は音ノ木坂に入ってふたりでスクールアイドル、やるんです!」

雪穂「おぉ、そうだった!そのことでお姉ちゃんにアドバイスをもらおうとしてたんだっけ」

穂乃果「アドバイスって…どんな?」

雪穂「練習場所、どこにしよっかってふたりで相談してて」

穂乃果「練習場所?屋上でいいじゃんそんなの」

雪穂「え、でも…屋上にはお姉ちゃんたちがいるんでしょ」

穂乃果「あっ…」

穂乃果(そっか。なんか解散する云々の話をしていた気がする)

穂乃果(でも理事長から意味不明な解散するな宣言をいただいてその事でなんやかんや揉めてたような)

穂乃果(雪穂と亜里沙ちゃんには解散することは伝えてなかったな、そういえば…)

穂乃果(このタイミングでカミングアウトは少々間が悪いよね…。変なこと口走っちゃったけど取り繕わなきゃ)

穂乃果「え、えっとー…確かに屋上には私たちもいるけどー?でも雪穂もそこで練習したら…」

穂乃果「なんと!>>751できちゃう特典が!」

私たちの生歌が聞ける

穂乃果「なんと!私たちの生歌が聴けるという特典が!」

雪穂「生歌って…大体お姉ちゃんたちの歌は毎回直接聴いてるじゃん!」

穂乃果「うっ…そう言われると…」

亜里沙「は、ハラショーっ!あのアネックス1号の生歌を超間近で聴ける!?」

亜里沙「こんなの普通じゃ考えられない!屋上で練習しよう!」

雪穂「…ま、まぁ日本一のスクールアイドルの発声練習を参考にできるって点では確かにいいかもだけど」

穂乃果「でしょー?それで、雪穂たちの発声に毎回ケチつけに行くんだー。なってないぞーって!」

雪穂「な、なにそれー!好きにやらせてよー!!」

穂乃果「あははははは…」

穂乃果「…」

雪穂「もう、お姉ちゃんったら…ふふふ…」

穂乃果「…」

雪穂「…お姉ちゃん?」

亜里沙「…楽しく、ないの?」

穂乃果「…楽しい?何が?」

亜里沙「私、アネックス1号には楽しいスクールアイドルでいてほしいんです!」

亜里沙「しょれれ…わらひっ…」ガブッ

亜里沙「い、痛っ!!舌噛んじゃったよぉ~~…」

雪穂「い、いい感じの台詞言いそうだったのに何やってんのさ…」

穂乃果「楽しい、スクールアイドル…」

雪穂「…私もね、アネックス1号にはずっと笑っていて欲しいって思ってる」

雪穂「笑って…笑って…えー…あー…」

雪穂「よし、ファイト!」

穂乃果「なにそれ…」

雪穂「よさげな言葉が思いつかないの!お姉ちゃんの忘れ病が感染っちゃったんだよ!」

雪穂「これ以上ここにいたらもっとひどくなりそう。亜里沙、行こ」

亜里沙「あ、うん…。穂乃果さん、これからも頑張ってくださいね!」ドバー…

雪穂「あ、亜里沙!口から大量出血してる!早く手当しないと!!」



穂乃果「…」

穂乃果「楽しい…か…。楽しい…」

穂乃果「あーん!もうどうしたらいいかわかんないよーっ!!」

穂乃果「こんな時…こんな時私の理想の王子様が颯爽と駆けつけて悩みをスパッって解決してくれたら…」


プルルルル… プルルルル…


穂乃果「はっ!!電話!?誰から…ま、まさかっ…!私の理想の王子様っ!!」バッ


穂乃果「げっ」

穂乃果「はぁっ…はぁっ…」タッタッタッ



UTX学院前


穂乃果「あ…ちゃんと学校のままだ…。良かった」

穂乃果「で、たしかこのあたりに…」


ツバサ「お帰りなさい、高坂さん」


穂乃果「あ゙っ…」


ツバサ「って、なんて声出してるのよ…」

ツバサ「というかその格好も何!?」

穂乃果「えっ…おかしいですか…」

ツバサ「…少々目に余るというか…」

ツバサ「そのレオタードは…」

穂乃果「ごめんなさい、急いでたから…」

ツバサ「急いでそんな格好になるものかしら…。まぁいいわ」

ツバサ「車を待たせてあるの。行きましょう、穂乃果さん」

穂乃果「く、車…?はぁ…」

ツバサ「…」

穂乃果「…あれ、いかないんですか?」

ツバサ「ねぇ、私…あなたのことなんて呼べばいいと思う?」

穂乃果「は?」

ツバサ「高坂さん?それとも穂乃果さん?年下だし、馴れ馴れしく穂乃果、とか…?」

ツバサ「いえ、もう二人は相思相愛なのだし、ほっちん、ツバりんの愛称で呼び合うのもアリかも…!」

穂乃果「あの…」

ツバサ「なんなら、だ、ダーリン…いやあえて私が穂乃果お姉ちゃんと言うっていうのも…!?」

ツバサ「そしたら行っちゃうところまで行っちゃって穂乃果様…閣下っ!」

ツバサ「あるいは甘甘に穂乃果ちゃん…。喃語でほぉかたん…」

ツバサ「逆にSっ気を最大に名前で呼ばず、そこの豚、クズ女…ちょっと過激的すぎるかしら…」

穂乃果「え、えっと…車を待たせてあるって…」

ツバサ「シンプルにあなた…メイドっぽくご主人様、あるいは旦那様…いえ、この場合はお嬢様?」

ツバサ「プリンセス…っていうのもファンシーで魅力的よね~!」

ツバサ「我が永遠の強敵(ライバル)…厨二チックだけど燃えるわ…!」

穂乃果「…」

ツバサ「ねぇ!?どれがいい!?いやむしろあなたの呼ばれたいようにあなたが決めて!!」

穂乃果「はぁ?…じゃあ、だったら…」

穂乃果「>>754

佐藤

穂乃果「佐藤で」

ツバサ「えっ」

穂乃果「佐藤」

ツバサ「さ、佐藤…?いいの?それで…」

穂乃果「構わないが」

ツバサ「じ、じゃあ…佐藤さん、行きましょう」

穂乃果「佐藤、だって。誰がさん付けていいって言った」

ツバサ「…さ、佐藤、行きましょう」



車内


ダンシンダンシンドンストッパダンシーン


穂乃果「うわっ…広い…。これが車…?動く部屋の間違いでは…」


ツバサ「二人共、改めて紹介するわね。アネックス1号の佐藤よ」

穂乃果「お久しぶりです。高坂穂乃果です」

英玲奈・あんじゅ「「…」」

英玲奈「ちょっと与えられる情報量が多くて混乱してるんだけど」

あんじゅ「こ、高坂さん…よね?アネックス1号の」

穂乃果「はい」

英玲奈「ツバサは…なんて言った?」

ツバサ「彼女は佐藤よ」

英玲奈「…」

穂乃果「気にしないでください」

あんじゅ「本来私たちが言いそうなセリフなんだけどね、それ」

穂乃果「ところで、どうして私呼ばれたんですか…。ツバサさんから急に来い、来なければ路上でホノニーするぞと脅されてきたんですけど…」

英玲奈「そんなこと言ったのかお前…」

ツバサ「言ってないわ。ちゃんと直球でオナ」

あんじゅ「えっとね、今日あなたを呼んだのは…」

英玲奈「…なんかキミが悩んでいそうな気がしたからだ」

穂乃果「えっ…そんな曖昧な理由で?」

ツバサ「私の佐藤レーダーで佐藤の悩みなんてすぐにわかっちゃうの。愛のなせる業ね」

あんじゅ「大体のことは察しはつくわ。メンバーが卒業して、続けるかどうか悩んでいたんでしょう?」

穂乃果「そ、そんな感じです」

ツバサ「でしょうね。私たちも、同じだから」

穂乃果「えっ…」

ツバサ「でも、私たちは決めたの。学校を卒業しても>>756を続けるって」

決闘者

ツバサ「私たちは決めたの。学校を卒業しても決闘者を続けるって」

穂乃果「あれ…スクールアイドルの話じゃないんだ…」

ツバサ「大学に入っても食堂で大きな声で口上を叫びながら友人とのデュエルであろうとガチ環境デッキで挑み続けるのよ」

穂乃果「それ誰からも嫌われちゃうやつですよね」

英玲奈「…ツバサ、私たち、って言っているけど。一緒にしないでくれないか」

穂乃果「よかった、英玲奈さんはまともだった…」

英玲奈「私はMTGだ」

穂乃果「何も変わらないよ!!」

あんじゅ「はぁ…この中では私たち少数派なのね」

穂乃果「そ、そうですね…。いつもはむしろ私がおかしい子扱いされる側なんだけどなぁ…」

あんじゅ「もちろん穂乃果ちゃんはレンジャーズストライク派よね」

穂乃果「ダメだ。私だけが孤独だった」

穂乃果「…というかなんですかレンジャーズストライクって」

あんじゅ「レンストを知らないなんて非国民ね。特撮モノのカードゲームよ」

あんじゅ「渋い絵もさる事ながらフレーバーテキストが超カッコイイことで有名なの。プレイ人口が少なすぎるのが難点ね」

穂乃果「ドマイナーってことじゃないですか…。私はどちらかといえば決闘者側なんですけど…って、こんなTCG話じゃなくて!」

穂乃果「3年生が卒業してもスクールアイドルを続けるか否か、って話をしようとしてたんですけど…」

ツバサ「あぁ、なんだ。そんな話」

英玲奈「無論、死ぬまで…じゃない。無論、私たちは続ける」

あんじゅ「限られた時間の中でやり抜いて、やり抜いた先に終わりを迎えるのはとても美しいことだと思うわ」

あんじゅ「――ドクター真姫の手記」

穂乃果「何フレーバーテキストっぽく言ってるんですか」

ツバサ「でも私はそんなの…、うまく言えないけど、そう。嫌なのよ」

ツバサ「だって私たちにとってA-RISEは、もうなんかその…すごい、すごいやつだから」

ツバサ「高校を卒業しても続けるって決めたの」

英玲奈「…」

英玲奈「あっ、これ」スッ

穂乃果「えっ、なんですかこれ」

あんじゅ「これから私たちをマネージメントしてくれるチームよ。こんなタイミングで渡す予定だったかしら」

英玲奈「なんだか期を逃した気がして」

ツバサ「そんなわけだから、佐藤」

ツバサ「あなたにも、続けて欲しい」

ツバサ「ゆうぎお」

英玲奈「スクールアイドルを。アネックス1号を」

ツバサ「それそれ」

穂乃果「…」

ツバサ「決めるのは…、さと…、高坂さん。あなたたちよ」

ツバサ「さてと、話したいことも話したしここで降りてね」ガチャッ ズイッ

穂乃果「えっ…ここ知らないとこ…」

ツバサ「じゃあねー」バタンッ


ブロロロロロロ…


穂乃果「…なんてこった」

翌日


ザー…



穂乃果「はぁ…はぁ…。ひたすら道に迷いながらやっと知ってる場所までたどり着けた…」

穂乃果「コンビニに置いてた傘、パクって持ってきちゃったし…ごめんなさい誰か…後で返しに行きますから許して…」

穂乃果「…で、なんだっけ…。なんか…そう。続けるかって話…」

穂乃果「昨日今日歩き続けて何も考えてないよ…はぁ…」


~♪


穂乃果「うん…?この歌…どこかで…」



コンビニ前


女性シンガー「さーんごぉぉぉぉずばああああぁあぁぁぁぁぁ」


穂乃果「…!」

穂乃果「あ、あなたはあの時の…!!」


女性シンガー「あら、久しぶりね」


穂乃果「ど、どうしてここにいるんですか!?あ、このマイク家にもあります!!どうして何も言わずにどこか言っちゃったんですか!?」

女性シンガー「ご、ごめんごめん。あの時は急いでたから…」

穂乃果「あの、家に取りに来てください!」グイグイ…

女性シンガー「え、ちょっ…荷物まだだしー!!」




穂むら前


穂乃果「ここです。どうぞ、中へ…」

女性シンガー「いいよ、ここで。じゃあね」

穂乃果「え、なんで!せっかくここまで来たのに…」

女性シンガー「なんでって…そりゃあまぁ…」

女性シンガー「>>760だから…?」

連れ込まれてレイプされそう

女性シンガー「連れ込まれてレイプされそうだから…?」

穂乃果「え゙っ…。や、やだなぁ!そんなことしませんよーアハハハハハハ…」

女性シンガー「最初に会った時ホテルに誘ったのは誰だよ…」

穂乃果「うぐっ…で、でも今ちょっとすごい疲れてるんで多分ないです!たぶん」

女性シンガー「怪しいなぁ…じゃ、そんなわけで!」

穂乃果「えっ…あ、ちょっ!せめてお話を少々!」

女性シンガー「お話…?」

穂乃果「あの…あなたはどうしたんですか?えっと…昔やってたんですよね。日本で、グループ組んで…」

女性シンガー「あぁ、うん。バリバリ鳴らしてたね」

穂乃果「でも、やめちゃったって…その時、どうしたんですか…」

女性シンガー「…どうしたか?」

穂乃果「はい…」

女性シンガー「言ったよね。簡単だったって」

女性シンガー「あなたにも、すぐ分かる時が来るよ」スタスタ…

穂乃果「えっ…あ、抽象的ィ!!」

女性シンガー「…ふぅ」

女性シンガー「目を閉じて」

穂乃果「え?」

女性シンガー「いいから」

穂乃果「こ、こう…ですか?」



女性シンガー「…飛べるよ」



穂乃果「飛べる…?」


ビュオオォォォォッ…!!


穂乃果「わっ…ぷっ!!?風がっ…!」

バヒュオォッ!!

穂乃果「あぁっ!借りパクした傘が!ごめんなさい顔も知らぬ誰か!!」

穂乃果「って…ここ…」



女性シンガー「…」



穂乃果「なんだこれ…お花畑ぇ…」

穂乃果「はっ!私の主線が赤っぽくなってる!なにこれ細田守演出…?」

穂乃果「あっちには大きな池…というかあれは…」

穂乃果「水溜り…?」

穂乃果「…飛べる」




女性シンガー「飛べるよ!」

女性シンガー「いつだって飛べる!!」

女性シンガー「あの頃のようにっ!」

希んち


絵里「…」スマスマ…

にこ「何してんの」

絵里「うん?…さっき話してたこと、忘れないうちにメールしておこうって」

希「ふふ、自分のことよくわかってるね、えりちは」

絵里「…えぇ、分かりすぎちゃうくらいよ。私のことも、みんなのことも」

にこ「ふぅん…。なによ、真面目ぶっちゃって。私にも書かせなさい!」

絵里「えっ、ちょっとま…もう、やめて!つい最近メールのやり方覚えたのに…」


ポチポチ…



穂乃果へ


お元気ですか、私は元気です。

そうじゃなくて。えっと、にっこにっこにー!

あぁ、今のはにこが勝手にうちました。私じゃありません。

わたしってかしこくてかわいくて非の打ち所がないよねー♪

違う!↑は希です。私じゃありません。

あれからみんなで話し合いました。

今の3年生が卒業して、アネックス1号を続ける稼働か。

今のは変換みすです。突っ付けるかどうかって書きたかったんです。

ごめんなし、上野もみす。続けるかどうか。です。

答えはみんな、同じです。



穂乃果「はぁっ…」タッタッタッタッ…



私たちの答えは、かわりませんでした。

アネックス1号は、私たちの卒業をもって解散します。

ってそんなのヤダヤダー(。・?д?・。)

え、なにこれかわいい↑ あとで出し方教えてください。にこに聞いても教えてくれないです。

でなんだったかしら。



穂乃果「はぁっ…!はぁっ…!!」タッタッタッタッ!!



言葉が上手にでてきません。予測変換にも、いいカンジな言葉は出てくれません。

だから、思ったままのこと、適当に書くよ。

ファンのみんなは悲しむかも知れない。このまま、続けて欲しいって思う人もいるかも知れない。

他のスクールアイドルもがんばれえりち卒業しても続けるひともいるかもしれない。

希やにこは私が文字の消し方を知らないのを知っていやがらせしてきます。だから気にしないでね。

↑↑の続き でも、私たちは



穂乃果「はああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」ダダッ



スクールアイドルであることに、こだわりたい。










私たちは、スクールアイドルがすき。








限られた時間の中で、精一杯輝こうとするスクールアイドルが大好き。

だから、この一年で終わりにしようって決めました。

なんか、ごめん。

ほのかがいやだったら続けてもいいよ。

ほのかも話し合おうと思ったら昨日家にいませんでしたし。ばかー

最後に決めるのは穂乃果だよ。

それじゃまったねー♪ ばいばーい(ヾ(´・ω・`)

↑これめちゃくちゃかわいいんだけど!!!!おしえて!!

PS えりちにはあとで絵文字変換教えておきます。気にしないでね。 by希

PSのPS 屋上で待ってるから。

てゆかままだかきたりぬこ





翌朝

穂乃果の部屋


穂乃果「…」

穂乃果「ん、んんっ…」

穂乃果「あれ、私…寝てた…?いつから…」

穂乃果「あ、メール来てる…。絵里ちゃんから…」

穂乃果「…」

穂乃果「…なんだこれ」

穂乃果「最後のは暗号か何か…?まぁ、いいか…」

穂乃果「…限られた時間の中で精一杯輝こうとするスクールアイドルがすき、か…」

穂乃果「伝わったよ、みんなの思い」

今日はここまで ほなな

2時間後くらいからやります

タッタッタッ…


穂乃果「はぁっ…はぁっ…!」


穂乃果(学校のためにアイドルを始めた)

穂乃果(最初は廃校を救う目的で9人が集まって)

穂乃果(でもそれから次第にあれやこれやであーなってこうなって…)

穂乃果(なんだかんだで私たちは…えーっと…)

穂乃果(す、スクールアイドルなんだ!)




音ノ木坂学院 屋上


ガチャッ

穂乃果「みんなっ!」


海未「穂乃果っ…!」

絵里「もうみんな揃ってるわよ」

希「練習、やるんでしょ?」

穂乃果「うんっ!」

にこ「ま、まぁにこはどっちでも良かったんだけどー」

穂乃果「え、メールで屋上にって書いてたのにこちゃんじゃないの?」

にこ「だ、誰が私が書いたなんて言ったのよ!わ、私じゃないから」

穂乃果「ホントかな~?」

真姫「…めんどくさいわよね。なんか…めんどくさいわよね」

ことり「めんどくさいなら帰ってもいいけど」

真姫「そういうことじゃないの!なんかそう…心が通じ合ってると…オラァッ!」ゲシィッ

凛「ばぶふっ!」

花陽「なんで凛ちゃん殴るの!?」

真姫「私のパッションを拳に込めたから凛には伝わったはずだわ」

凛「つまり…なんでもわかっちゃうから、悩みとかそこらへんも共有しちゃってめんどくさいってことらしいです…」

にこ「ホントにわかるんだ…」

花陽「けど、解散するのなら、次のラブライブ!は…」

穂乃果「それも必ず実現させる!」

一同「えっ!?」

穂乃果「>>をやるんだよ!!」

穂乃果「間違えた、>>772をやるんだよ!!」

コミケ(R18オンリー)

穂乃果「成人向けのコミケをやるんだよ!」

一同「えっ」

穂乃果「いかにスクールアイドルが素晴らしいかを伝える全国のスクールアイドルオンリーイベントを!」

穂乃果「それで世の男性のハートと股間を鷲掴み!次回のラブライブ!も大盛り上がりってやつさ!」

海未「…スクールアイドルはファン層がほとんど女子のコンテンツだったような気がしますが…」

穂乃果「だからエロで男性を釣って…」

絵里「大体コミケってことは漫画を描くわけでしょう!?今からやって間に合う訳ないじゃない!」

にこ「そうよ!!入稿までの締切日が刻一刻と迫る緊張感の中で落とすか落とさないかの瀬戸際…!」

にこ「当選してから余裕がある普通のコミケですら原稿間に合わない人が多数いる中で急にスクールアイドルのエロ漫画を描けと言われてパッと描けるわけないわ!」

凛「なんだかにこちゃんの語気に迫真のものを感じるにゃ」

花陽「まさかにこちゃん描いてたり…?」

凛「マス?」

花陽「え…鮭…?」

真姫「ややこしい会話はおしまい」

穂乃果「うぅ…そっか…。今からコミケは現実的じゃないよね…。はぁ、だったらどうやってスクールアイドルの魅力を伝えれば…」

ことり「スクールアイドルなんだしライブとかどう?」

穂乃果「そ、その手があったか!!」

海未「アホですね」

穂乃果「な、何その言い方!それだとまるで穂乃果がバカみたいじゃん!

海未「バカなんです」

希「ってライブも今からって…それもキツくない?」

穂乃果「ふっ…そういうことなら任せて!私にいい考えがあるの!」

穂乃果「ゴニョゴニョ…」

一同「えーっ!!?」

穂乃果「どう?いいアイデアだと思わない?」

絵里「それこそ今から間に合うの!?」

穂乃果「間に合う間に合わないじゃない!間に合わせる!そして必ず成功させる!!」

にこ「次のラブライブ!のために…!燃えるじゃない!」

海未「なんだか理論としては破綻している気がしますが…穂乃果がいうのなら大丈夫でしょう。おそらく」

ことり「不安は拭えないけど…やっちゃおっか!」

穂乃果「うんっ!もうなるようになれ!!」



UTX学院


ツバサ「ライブをする?」

穂乃果「はい、それでA-RISEにも一緒に参加していただけないかな…って」

ツバサ「ふぅん…。なるほど、面白そうね」

穂乃果「じゃあっ…!!」

ツバサ「でも、条件があるわ」

穂乃果「条件?」

ツバサ「>>774

佐藤ではなく穂乃果さんって呼ばせて

ツバサ「佐藤ではなく穂乃果さんって呼ばせて」

穂乃果「却下」

ツバサ「自由に呼んでいいって言ったけどやっぱり佐藤はいくらなんでも…って却下早くない!?」

穂乃果「だってそっちから言い出したことを取り下げるのはよろしくないことだと思われますし」

ツバサ「むむむ…じゃあA-RISEはライブには参加しないけど!?いいんですか佐藤!?」

穂乃果「うぐっ…そう言われるとちゅらい…。分かりました…穂乃果さんって呼んでいいです」

ツバサ「ふぅ…これでモヤモヤがスッキリしたわ。これからは存分に名前で呼ばせてもらうからね、ダーリン」

穂乃果「いきなり違う呼び方になってるんですけど」

ツバサ「あ、それともう一つ条件…!」

穂乃果「まだあるの…?」

ツバサ「みんなで一つの曲を歌いたい」

穂乃果「みんな…?」

ツバサ「え、反応するのそこ…?スクールアイドルを集めてライブをするって話だったんでしょう?」

穂乃果「え、そんなこと言ってたっけ…」

ツバサ「あなたが言ったんじゃない!?だ、だからぁ…誰の曲でもない、スクールアイドルの曲」

ツバサ「それをみんなで歌ったら素敵じゃない?って思って」

穂乃果「ほ、ほぉ…よくわからないけどなんかいいですね」

ツバサ「なんでよくわからないのよ…」

穂乃果「よくわからないけど分かりました!!ゴクゴクッ…ぷぱー!!うまいっ!もう一杯!!」

ツバサ「え?あ、あぁ…どうぞ」コポコポ…

穂乃果「ありがとうございます…じゃなかった!もう帰ってみんなにも伝えてきます!!」ダダッ

ツバサ「な、なんなのかしら…。もう…どこから見てもかわいいわね…穂乃果さん」ゴクゴク…

ツバサ「あっつ!!!!!!!注ぎたてじゃないこれ!!!!!!!」



部室


花陽「お、おぉぉぉ…!!もうメールが何件か返事来てます…!」

穂乃果「え、なんの…?」

花陽「だ、だから…」

海未「穂乃果には私があとで説明しておきます」

花陽「お願いします…。あ、でも、中には話を聞いてからにしたいって人も…」

海未「まぁいきなりアレですよね。アレがアレだと、アレしてしまうアレですから」

絵里「確かにね…」

にこ「よく伝わったわね…。どうするの?チンタラやってる暇はないんじゃなくて?」

真姫「こういう時は…」

穂乃果「直接会いに行こう!」

真姫「そう!愛に訴えるのが一番!」

花陽「なんか違う…って、えぇぇっ!!?」

一同「あいにー!?」

穂乃果「えっ…いきなり中国語で告白されても反応に困っちゃうよ…」

ことり「なんでこのタイミングで中国語はわかるの…。っていうか、会いにいくって…費用は?遠いところに住んでる人だって…」

穂乃果「それなら問題ないよ!」

穂乃果「>>776ちゃん!>>777!!」

ドラミ

どこまでもドア

穂乃果「ドラミちゃん!どこまでもドア!!」


一同「…」

ことり「ドラミちゃん…って?」

希「あの青たぬきの妹ちゃんやんね?なんでこのタイミングで…」

海未「いえ、あの穂乃果のことです。きっと頭がおかしいように見えてちゃんと考えているに違いありません」

絵里「毎回頭おかしいだけだったような気がするんだけど…」

海未「しかし今回は違うはずです。みんな、ドラミちゃんのフォルムを想像してください」

真姫「想像したけど…それが?」

海未「ドラミちゃんは黄色いネコ型ロボットですね?」

花陽「まぁ、ネコっていうか起きあがりこぼしみたいな見た目だけど…」

海未「当たり前ながら、この場にドラミちゃんはいません。しかし…」

海未「黄色がイメージカラーでにゃーにゃー言ってるネコっぽい子なら一人…」

にこ「はっ!!つ、つまり…!!」

凛「凛のことかにゃー!?!」

海未「そうです!穂乃果は凛にどこまでもドアを作成しろと命じているのです!!」

穂乃果「そ、その通りだよ海未ちゃん!まさか理解されるとは思ってなかった…!」

絵里「理解されないって自分でもわかってて言ってたの…?」

凛「む、無理無理無理ー!!凛にそんなの作れるわけ…っていうかどこまでもドアって何!?それじゃあただドアが無限に続いてるだけじゃん!!」

ことり「まぁなんかそんな感じでワープ装置を作ればいいんじゃない?なんだか凛ちゃんって万能感半端ないし」

真姫「そうね…なんでも作ってくれそうな雰囲気あるわよね」

凛「むちゃぶりにも程があるってー!作れるわけな…」

穂乃果「よし、あとは凛ちゃんに任せて私たちは歌おう!」

海未・ことり「「うんっ!」」

凛「ハアァァァァァァァァッ!!!?!?!!?」



~♪


ことり「聞いてもらいたいんだ ずっとどろり続けて~」

ことり「ふんふんふふ~ん…てみーたら~…」

海未「新しい~ヒヴィーのなーかで~少しずつ、生まれたみるぁーい」

穂乃果「応援したいね 飛べるね~」

穂乃果「なんたーらかんたーら…したら~」


「Future Style 会いたいよこの瞬間 待っててね」

「今こそ全部叶えたい I will be スターリン」

「刺激への夢を形に するときだと」

「声が 聞こえる~」




海未「ワンコーラス抜けた感ありますよね」

ことり「うん、いいんじゃないかな。もう」

どっか遠い県



「はぁっ、はぁっ…!」


にこ「まさか、本当にワープ装置が完成するなんてね…」

花陽「ドアを一つ一つ加速装置として改良し、螺旋状に無数に設置することでラージハドロンコライダーの要領で肉体だけを一瞬にして遠方に射出…」

花陽「更には記憶と人格をインストールしたデータを同時に脳内に埋め込まれたチップに送信することで擬似的なワープを可能とするなんて…」

にこ「凛は別次元の天才だったのね…。もうこの発明だけで延々食べていける気がするわ」

にこ「まぁその話はいいとして、あの子達に話しかけてきてよ花陽」

花陽「えっ、そんな急に話しかけたら迷惑だって思われ…」

ことり「こんにちは。日本一のスクールアイドル、アネックス一号の超キュート担当、南ことりです」

モブドルA「え、うわっ!モノホンだ!!」

モブドルB「超可愛い~!!」

モブドルC「な、何の御用ですか!?」




他の県


モブドルD「大会に出て欲しかったら勝負よ!」

モブドルE「路上ライブで勝負しなさい!」

絵里「ふんっ!受けてたとうじゃない!!」

穂乃果「ま、待って絵里ちゃん!」

絵里「何!?こんなところで怖気づいちゃ何も…」

穂乃果「まだ真姫ちゃんの記憶と人格がインストールされてなくて…」

真姫「ほえ~」

絵里「うわ、すごい気の抜けた顔になってる」

真姫「…っは!!」ビクンッ!!

穂乃果「あ、やっとシャキってなった」

真姫「にゃー!ホントにワープできたにゃー!すごーい!…って、あれ?声が変…」

絵里「…ねぇ、あなた…名前は?」

真姫「うん?凛は星空凛だけど…」

絵里「間違ってインストールされるんだけど!?」




別の県


「ライブやりまーす。おねがいしまーす!」


海未「さて、どう話しかけましょうか…」

希「ふふ、ここは凛ちゃん。前に言ってたアレをやるんよ!」

凛「え、あ、アレ…?何かしら…」

希「何ボケてるんよ!この参考書とソフトクリームで…」

凛「わ、わかったわ…。やってみる…」

海未「…なんか喋り方おかしくないですか?」


モブドルF「あ、あれ…あなた…」

凛「私は>>780!」

渋谷凛よ

昨日は書いてる途中に気分悪くなって寝てました
映像見ずに記憶を引っ張り出して本筋からは大幅に逸脱しないように書こうとすると
思ってたより体力使うようで進捗がこれまでで最悪の状況になっててすまない…
スローペースだったせいか安価を出してくれる方も大分減ってしまったようで待っている時間で夜が深くなって
さらに安価が少なくなる悪循環になっているので、ここからは安価少な目にしてなるべく綺麗に終わらせようと思ってます
他のことに気を取られてこちらに集中出来ないというのもあって劇場うろを期待しててくれた人にも大変申し訳ない
誰か一人でも楽しみにしていただけているのなら、責任をもって最後までやり遂げるつもりではあるので
これまでの稚拙な出来にも愛想を尽かせずに見てくださっている方は、どうかこのまま最後まで付き合って頂けると助かります
遅くて本当にすみません 今月中に完結出来るよう目指します
夜遅く長々と失礼しました

無理はしてないので心配ご無用ですお
じゃあ相変わらずこんな時間ですが始めます 安価は数レスに一回くらいはするかも

凛「私は渋谷凛!アイドルユニットニュージェネレーションの狂気の一人!属性はクールのアイドルよ!」

モブドルG「え、だ、誰…っていうかあなた、アネックス1号の星空凛さんじゃ…」

凛「ち、違っ…渋谷凛よ!星空凛でもましてや西木野真姫でもないわ!!」

凛(な、なんか気づいたら体が凛と入れ替わっててよく分からないこと口走っちゃってる…!!!もうなるようになれ!)

凛「ほ、ほら!私は渋谷凛だからこうやって参考書を片手にソフトクリームだって食べちゃう…」



海未「…あれで本当に彼女たちが乗ってきてくれるのですか…?」

希「どうしたんや凛ちゃん…気でも狂ったんかな…」

海未「あなたも想定外なのですね…」


凛「なんやかんやで参加してくれることになったわ」

希・海未「「嘘ォッ!?」」




部室


花陽「おぉ!何件かメールが来ました!割といっぱい!」

絵里「すごいじゃない!」

花陽「これだけ集まれば世界征服も夢じゃない…!」

凛「なんか目的変わってないかにゃー」


ガチャッ

あんじゅ「はろ~」

穂乃果「もんじゃさん!」

あんじゅ「手伝いに…あんじゅよ、あんじゅ」

ツバサ「高坂さんを傍に感じるためにわざわざ古臭い音ノ木坂にまで出向いてあげたわ。感謝するのね」

海未「誰かこのオデコを引っ張り出してくれませんか」

英玲奈「え、えと…これ、謝罪の品だ」

真姫「ど、どうも…」



試着室的なところ


あんじゅ「ふぅん…いっぱい服があるのね~」

ことり「ま、まぁ…衣装を考えるためにね…」

あんじゅ「衣装…そういえば集まったスクールアイドル全員分の衣装を私たちが製作するんだったかしら…?」

ことり「えぇ…まぁ…。とんだハードワーク…」

あんじゅ「…お互い強引な相棒を持つと大変ね」

ことり「愛…棒…!?穂乃果ちゃんに愛の棒が生えてるんですか!?」

あんじゅ「えっ」

穂乃果「みてみて~、衣装、考えて…」

ことり「その衣装今すぐ脱いで股間を見せつけてっ!!」ガバッ

穂乃果「えっ、何、ちょっ…うぎゃああああああっ!!犯される~~~!!」


あんじゅ「…ホント、大変ね…」

音楽室


真姫「…あなたがA-RISEの作曲担当なの?」

ツバサ「いえ、別にそういうわけじゃ…」

真姫「なら私の邪魔はしないでよ。私は私の気のお赴くままに作曲をすることで云々…」

ツバサ「でも…例えばこんな感じはどうかしら…」ポロロンッ…

真姫「っ…!」

真姫(この旋律…なかなかやるわね…。でも、それ以上に…)

真姫(前かがみになった瞬間おっぱいが豪快にポロロンって出てきた…。ちっちゃいくせに…)

真姫(でも何故か気づいてないし妙に近いし…や、ヤバイ…変にドキドキしてきた…)

真姫(これだけ近いんだからちょっとくらい吸っても文句は言われないわよね)

真姫「むちゅっ」

ツバサ「おふぅっ!!?何!?今の感触はっ…!!」

真姫「ちゅぱちゅぱ…」

ツバサ「はぁっ…!!し、新感覚っ…!!んあぁぁぁっ!!」



音楽室の外


<ンアー!!


にこ「ぬ、ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ…!!!珍しく直球な百合…いえ、レズ描写がぁぁぁぁぁ…!!ぬふふふふ…!!」

希「何してるん?」

にこ「ぎょええぇぇっ!!!!べ、べべべ、別に…」

希「ぬっ…」ノゾキッ

希「あぁ、真姫ちゃんかぁ…いや待ってよく見たらそれ以上にすごい光景…」

にこ「そ、そんなことよりアンタもこんなところで油売ってていいの!?何かあるでしょ!?」

希「え…って言われても作詞も作曲も衣装もうちの担当じゃないし…」

にこ「そう言われると反論に困るわね…。そ、そうだわ…どうせならにこと直球レズ描写を…」

希「えっ…、に、にこっちはうちと、その…えっちなことしたいん?」

にこ「そうよ!もうなんか誰でもいいからしたいの!あんなのを見せ付けられたら…!」

希「で、でもそんな…うちなんかでいいの?」

にこ「えぇ、希がいい!ね?ここじゃなんだからあっちの空き教室で一緒に…」

希「だが断る」

にこ「」

希「この東條希の最も好きな事の一つは百合を要求してくるにこっちに『NO』と断ってやることやよ!フハハハハ!!」

にこ「ひ、ひどい…」



部室


海未「ほへ~…」

英玲奈「見ろ、全国から集まっ…なんだその顔は…」

海未「ほほひへひるとかひがほもいとぅくのれふはぁぁぁ~~…」

英玲奈「こうしていると歌詞が思いつくのですふはー?…そ、それなら仕方がないな…。でもここから選んだほうが…」

海未「えへへへ~…ぷわぷわ~…」

英玲奈「こんな変顔に考えられた歌詞だとは思われたくないな…」

街角


穂乃果「皆さんこんにちは!スクールアイドルアネックス1号の高坂穂乃果です!」

穂乃果「今度このあたりでスクールアイドルを集めてみんなでライブをやります!是非!是非!!清き一票を!」

海未「選挙でもするんでしたっけ…」

穂乃果「このライブはみんなでつくる手作りのライブです!大会なんていう営利目的の汚れたショーではなく純粋な気持ちで…」

ことり「ラブライブ!のためにやってることだったような…」

穂乃果「まぁ色々慮るところもあるでしょうが是非参加してくださーい!」


雪穂「お姉ちゃーん!」


穂乃果「おっ!あそこにおわす超絶かわいい美少女は一体!?はっ…あれはまさか私の妹の高坂雪穂ではないか!相変わらず可愛いね!!」


雪穂「すごい身内を褒め殺してきた…。え、えっと…私たちも参加するよー!!」


穂乃果「おぉ!ありがとう!」


雪穂「でも、私たちまだスクールアイドルじゃないけど参加して 亜里沙「やっぱりイナバは百人乗ってもー?」



「「「だいじょうぶ!」」」



雪穂「…何この打ち合わせでもしたのかと言わんばかりの息ぴったり」




ライブ前日


花陽「ふー!ふー!!」

真姫「…」シュコー

花陽「ふー!!ふー!!!!」プク~

真姫(口で膨らませたら空中に浮かないのに何やってるのかしらこの子は…)

真姫「…それはともかく、花陽のお尻にこれ(ヘリウムガス入れるやつ)突っ込んだらどうなるのかしら」

花陽「ふー!!ふふー!!」プク~

真姫「失礼、パンツ下ろすわよ」ズリッ

花陽「っ!!?ひゃにを…!」

真姫「えいっ!!」ズボッ

花陽「ぬひぃぃいぃぃっ!!?」

真姫「うりゃうりゃ」シュコシュコ

花陽「お、お、おぉぉぉぉぉぉ…!!!」

真姫「す、すごい…!花陽がみるみるうちに>>791になってゆく…!!」

ふたなり

真姫「す、すごい…!花陽がみるみるうちにふたなりになってゆく…!」

花陽「変なガスが先っちょに集まってどんどん膨張して…!は、はふぅぅうぅっ!!」ビュルルルルッ

真姫「は、花陽…!!海外でたらふく摂取した例の白い液体が作用して男性ホルモンのなんか色々がどうたらこうたらしてふたなりになっちゃったのね!」

花陽「う、うぅぅ…!こんな身体になっちゃうなんて…もう生きていけない…」

真姫「諦めないで花陽!こんな身体になってもきっとあなたが役に立つ場面が来るはずよ!!」

真姫「はっ!あっちから何かあなたを求めている気配がするわ!行きましょう!」ズリズリ…

花陽「えっ…あ、ちょっ…ダレカタスケテー!!」



凛「スクールアイドルが作った美味しいメニューがありますよ~!!」

にこ「ふぅ…結構繁盛するわね…」

凛「うん。…でもなんでこんな売店みたいな真似してるのかな、凛たち」

凛「ただでさえ衣装を百数十人分作成するのに人手が足りてないっていうのにわざわざ屋台まで作って…」

にこ「実は意外と余裕なのかしら…」

凛「人集めだとしてもここまでする必要…ま、まぁ気にしないでおこっか!」

にこ「そうね!こんなとこだけ目ざとくなっても人生損するばかりだわ!」

学生モブA「あのー、ここにある白米スムージーって…」

凛「うん?あーそれは…」

にこ「もう超美味しい新感覚のお米を使ったスムージーなのよ!ほのかな甘みがあなたの喉を潤す!」

学生モブB「ホントですかー?なんか珍しいし買っていこうかなー」

にこ「毎度ありがとうございまーす!!」


凛「…にこちゃんの商売センスには驚かされるよ…」

にこ「ふふんっ!アイドルよりむしろこっちの方が向いてるかもしれないわね!」

凛「それは誇るべきなの…?あ、でもにこちゃんの売り方が上手いせいでもう白米スムージー売り切れにゃ…」

にこ「な、想像より売り切れが早いっ…!!?なんでもっと用意しておかなかったのよ!」

凛「こんなに売れるなんて想定外だにゃー!」

にこ「どどど、どうしよう…!主戦力の白米スムージーがなくなれば超痛手だわ…!」

凛「なんだか目線がもう商売人だよにこちゃん」

にこ「何か他の手は…」


真姫「お困りのようね!」


にこ「真姫!…と花陽…、そ、その股間のそれは…?」

花陽「ヘリウムガスの力です…」

凛「ヘリウムすげぇ…」

真姫「白米スムージーが売り切れて困っているそこのあなたたち…代わりにこんな新商品はどうかしら」シコシコ

花陽「はぁんっ!!ま、真姫ちゃっ…そんな激しく…うああぁぁぁっ!!!」ビュルルルルッ

にこ「こ、これは…!」

真姫「これこそ白米スムージーに変わる新たな白いドロッとした液体…!名前は『花陽スムージー』にしましょう!!」

真姫「花陽と言えば白米、白米と言えば花陽。もはや白米の代名詞と化している花陽の名前を使えば、傍から見れば『あ、名称変更かな?』としか思われないわ!」

にこ「なるほど…!!さすが真姫、天才ね…!!」

にこ「花陽!今からあなたのスムージーを絞りに絞りまくるわよっ!!ふふふ、燃えてきたわ~!!」

花陽「き、気持ちいいから、いいかな…?」

凛「アホだなぁ」

アキバレポーター「み゙ん゙な゙ぁぁぁぁ!はっぢゃげでる゙がい゙ー!!」

アキバレポーター「なんと明日ここで…なんと!なん…なんだっけ!?」

カンペ「全国のスクールアイドルたちがライブをしてくれる」

アキバレポーター「そう!全国のスクールアイドルがライブをしてくれるんだってー!すごいねー!かっちょいいねー!」

アキバレポーター「もうお姉さんも昔にゃんにゃん言わせてた頃を思い出して熱くなっちゃうよ~…おっと!この話は聞かなかったことにしてよね!」

アキバレポーター「てなわけでスタジオにお返ししまーす!え?生放送じゃない!?じゃあいつ流すの!?今でしょ!」



海未「…」

海未「急にでかい筆を持ち出して大きな半紙に一筆奏上してステージに飾りたくなりました…が」

海未「なんと書きましょうか…」

海未「まぁ私といえばラブアローシュートですからラブアローシュートとしたためましょう」

海未「しかし書道でカタカナはあまり映えませんし、そうですね…。当て字で何とかしてみますか」

海未「いざという時にと持ってきていたこの漢和辞典でラブアローシュートっぽい当て字を考えてみましょう」

海未「うむむ…よし、決めました!」


海未「はああああああああぁぁぁぁぁっ!!!」



羅  武  愛  楼  集  徒



バババンッ!!


海未「ふふ…いつもは修羅と化し、武を持って己が実力を競い合うスクールアイドルたちが…」

海未「こうして愛を持ってこの楼閣の街、秋葉原へと集う…!なんと美しい当て字なのでしょう!!」

海未「作詞者としてのセンスが光ります。将来は本格的にシンガーソングライターでも目指してみますか」

海未「さてと、これを…あ、しまった…。昔の書き方に倣って右から左へ読むように書くつもりだったのに…」

海未「…いえ、簡単なことです!半紙は薄いので、裏返せば右から左に読むことができます!ふふふ、機転も利くとはやはり私は天才ですね…」

海未「では早速せっせと貼りましょう…」セッセ…




にこ「花陽スムージー!ほんのり生臭いけれど精力がみなぎる花陽スムージー!どうですかー!!」

凛「当たり前のように全く売れないにゃ…」

花陽「…もう、でない…」

真姫「やはり臭いが強烈なのが敗因ね…。今度は売り方を考えないと」

凛「もうやらないからね」

にこ「…うん?あそこに貼ってあるやつ…何語?あれ…」

真姫「漢字を鏡写しにしたようにも見えるけれどそんなアホな事する人はいないでしょうし中国のことわざかなにかじゃないかしら。多分」

凛「へー、真姫ちゃんはなんでも知ってんだね」

真姫「なんでもは知らないわ、知ってることだけ」

にこ「そういうのいいから」

夕方


穂乃果「おぉー!できた!!なんか…バルーンアーチってやつ?」

海未「珍しく正解です」

絵里「ちょっと曲がってるけどね」

真姫「花陽は右曲がりだったわね」

ツバサ「それも味でしょ」

にこ「味は…まぁ、悪くはなかったけど」

花陽「しぼんで良かった…」

凛「なんかステージ、ってかんじになったねー!」

希「なんならもうここで踊っちゃおうか」

海未「踊るって…本番は明日ですよ?」

ことり「リハーサルみたいでいいんじゃない?」

海未「しかしA-RISEは…」

英玲奈「構わないが」

あんじゅ「オッケーよ♪」

穂乃果「ももんじゃさん!」

あんじゅ「ドラクエには出演してないわよ」

穂乃果「よぉし、A-RISEもこう言ってるんだし踊っちゃおう!」


オォーッ!! ヤルゾー!! アライズアネックスニツヅクゾー!!


穂乃果「ふふふ…」

穂乃果「…」

海未「…穂乃果?」

ことり「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「あの!皆さん、聞いてもらいたいことがあります!」


ザワッ…


穂乃果「あの…っ、うっ…実は…」

穂乃果「私たち、アネックス一号は…」

穂乃果「このライブをもって、>>795すると決めました!」

プロデビュー

穂乃果「このライブをもって、プロデビューすると決めました!」

一同「!?」

みんな「!?」


穂乃果「限られた時間の中で、輝くスクールアイドルがすき…だから」

穂乃果「スクールアイドルはもうこのライブでおしまいにしようと思います」

穂乃果「でもだからといってこのまま終わりたくない!もっと目立っていたいんだもん!」

穂乃果「だから、このライブが終われば、スクールアイドルを卒業して…プロの世界を生き抜こうって決めたの!」

穂乃果「アネックス1号の名前を捨てて…プロになるときはバグズ2号として!」

絵里「あ、あの…聞いてないんだけど…」

穂乃果「えっ!?絵里ちゃんがみんなと相談して決めたんでしょう?アネックス1号は解散するって…」

穂乃果「だからみんなの気持ちを汲んで、アネックス1号を解散して改めてプロデビューするんじゃ…」

一同「」ポカーン

ツバサ「なんだ、あなたたちも続けるんじゃない。アイドル」

英玲奈「一緒だな」

あんじゅ「これからもライバルとしてよろしくね」

穂乃果「はい、よろしくお願いします!こうそくじょうしょきゅろもんじゃさん!」

あんじゅ「高速増殖炉言えてないししもんじゃじゃなくてもんじゅだし私の名前はあんじゅよ」


ワーイ!! バグズ2ゴウガンバレー!! キャー!!


雪穂「そ、そうだったんだー!お姉ちゃんすごーい!!」

亜里沙「ハラショーです!おねえちゃーん!」



海未「ち、違っ…私たちは…」

ことり「ってみんなもう、聞こえてないね…」

希「これはもう…続ける流れになっちゃってるんと違う…?」

花陽「ぷ、プロなんて…ちょっと憧れちゃうけど…」

凛「なんだか楽しそうにゃー!!」

にこ「…まぁ、私もプロは目指す予定だったから…ふふ、いいんじゃないの?最後に決めるのは穂乃果、なんだし」

絵里「もうめちゃくちゃだわ…」

真姫「今更何言ってるのよ。私たちがめちゃくちゃじゃなかったことなんて…」


穂乃果「そうっ!ただの一度もないっ!」

穂乃果「これからもめちゃくちゃを貫き通す!だから、明日はさよならの歌は歌いません!!」

穂乃果「私たちの終わりと始まりのライブ!明日は盛大に盛り上げよう!」

穂乃果「思いを共にした、みんなと一緒に!!」

いい感じに差分化を図れた気がします プロデビューするμ'sも夢があっていいね
次回劇場版うろ完結です! サニデイソンはマジでサビ以外覚えてないので一度聞いてから頑張るます
それじゃ次回をお楽しみに ほなな

こっからすごい短い気がする のにまた間開けてごめんなさい
まだギリギリ9/30の深夜だから今日終われば今月中に終わる目標は達成できるね それじゃあ安価も少なくなるでしょうが誰か、お願いします

翌日 朝

穂むら前


穂乃果「んんんー!おはよう!!」

海未「おはようございます」

ことり「穂乃果ちゃん気合入ってるね!」

穂乃果「あったりまえだよ!なんてったって今日は…」

穂乃果「今日は…」

穂乃果「…」

穂乃果「バレンタイン」 海未「ライブですね」

穂乃果「そう!バイブ!!」

ことり「ライブな」

海未「何故か出てきたバレンタインとごっちゃになって大変なことになっていますね」

穂乃果「全国のスクールアイドルのみんなが集まって一つのライブをする…うぅ!なんていい計画なんだ!」

海未「はぁ…今更ですね。ところで、昨日の話はホンキなのですか…?」

穂乃果「昨日…?何か言ったっけ」

ことり「アレだよ、アレ。みんなの前で盛大になんの前置きもなく発表したやつ」

穂乃果「えっ…、そんなのあったかなぁ…」

海未「ありました!アレですよ!私たちはこのライブをもって>>802すると言った!」

全宇宙真っ姫患者化計画を開始

海未「私たちはこのライブをもって全宇宙真っ姫患者化計画を開始すると言った!」

穂乃果「な、なにそれ…」

ことり「言ってたっけそんなの…。というか何かすらわからないんだけど」

海未「ですから、全宇宙に住まう生物全てを真姫がいなければ生きていけないほどの依存性に陥らせてしまう…」

穂乃果「え、怖っ。海未ちゃんそんなこと考えてたの…?」

ことり「なんで真姫ちゃん…?」

海未「わ、私は考えていませんよ!?穂乃果がそうすると言っていたんでしょう!」

穂乃果「え、あ、えっ!?そうなの!?」

ことり「そうじゃないと思うけど…」

海未「え、そうでしたっけ…。てっきり穂乃果がまた昔のように真姫に対する恋心を再発させて奇特なことを言いだしたのではと…」

穂乃果「真姫ちゃんに対する恋心…?ダレがそんなものを…」

ことり「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「えぇっ!私が!?嫌だよあんな…めんどくさい子」

海未「ひどい言い草ですね…。まぁでも、そうでないのなら安心です」

ことり「…安心できるんだっけ…?やっぱり何か忘れてるような…」

穂乃果「あ、でも全生物が真姫ちゃん目掛けてやってくるってなんか面白いからそれも頑張ろうかな」

ことり「やめてあげようね」



花陽「あ、おはよー」

凛「遅いにゃー!何してたの!?」

穂乃果「ちょっと家の前でこれからのことを話し込んでたら遅くなっちゃって」

ことり「そっちはもう3人揃ってるんだね」

真姫「え、あぁ…まぁね」

凛「むふふ、昨日真姫ちゃんがねー」

花陽「ねー」

真姫「な、ナニヨ。私が何か言ったって言うの?」

凛「みんなでかよちんの家に泊まったの!真姫ちゃんが>>804で眠れないっていうから!」

心霊現象

凛「真姫ちゃんが心霊現象で眠れないっていうから!」

ことり「え、心霊…?」

真姫「ち、違うわよ!!あんなの幽霊とは認めないわ!」

海未「あんなの…って、じゃあ幽霊みたいな何かは見たんですか…!?」

真姫「…実は長髪の幽霊っぽいなにかなら…」

穂乃果「え!?なになに!すごい気になる!」

真姫「昨日の夜、布団に入ろうとしたら、枕元にうっすらと立っているのよ…白い服を着て長髪の…」

ことり「う、うん…!」ドキドキ

真姫「金髪の女の人…」

海未「なんだか一気にアメリカナイズされましたね」

真姫「私を睨みつけながら、まき…まき…って囁かれて…もうそれが嫌で花陽の家にお泊りにアポなしで行ったら凛と花陽が情事に発展していて」

ことり「えっ」

真姫「そんなわけでお泊りしてたの。だから私が二人が恋しくて一緒にお泊りしたわけじゃないのよ」

ことり「待って待ってなんだか聞き捨てならない出来事があったような…」

海未「というかそんな経験してるのにそれを幽霊と認めないってどんな判断基準なんですか」

穂乃果「ねぇ、もしかしたら霊界からも真姫ちゃんの真っ姫患者がやってきて真姫ちゃんを求めていたんじゃ…!」

穂乃果「ということはもう真姫ちゃんは全生物からモテモテどころか幽霊にもモテモテ!?羨まし…くない!」

花陽「モテモテとか何の話…」

穂乃果「真姫ちゃんが全生物から依存されうるって話!ほら、今にも真姫ちゃんを呼ぶ声が…」


「真姫ちゃーん!!」


凛「おぉ!本当!」 真姫「って、あれは…」


真姫ママ「真姫ちゃーん!私も応援行くからねー!ママ友も誘ってライブにも参加しちゃう!」

真姫「ママよ…」

穂乃果「えっ、ママにもモテモテ…!?」

海未「近親相姦ってレベルじゃないですね」

真姫「モテモテから離れて」

花陽「え、でもライブにも参加するって…それってママライブ!?」

ことり「もっちー王国の成人向け同人誌の話?」

花陽「それこそ何の話…」

穂乃果「なんだかんだ賑やかになりそうだね!よし、そろそろ行かないとマジで遅刻しちゃう!」



希「おはようさん。一応誰も遅刻してないみたいやね」

絵里「…おはよぅ…」

穂乃果「おはよ…あれ、絵里ちゃんどうしたの?」

希「なんかえりちが言うには『今日のライブってオレンジが基調じゃない?だから本番に向けて心までオレンジにしようと思ったのよ!』」

希「『そのために昨日TSUTAYAで時計じかけのオレンジって映画を借りてきて見てたらいつの間にか記憶がないの!あ、でも何故か真姫の部屋に行った覚えはあるかも!』やって」

真姫「もしかして私の枕元に立ってたのって…」

海未「アメリカではなくロシアでしたか…惜しいですね」

絵里「まぁ…いいの、本番までには映画のことは忘れるから…。うん、これでみんな揃ったわね…」

凛「…なんか忘れている気がするにゃ」

花陽「うん?そうだっけ…」

穂乃果「あ、そう!>>806がいない!」

私の恋人のにこちゃん

穂乃果「私の恋人のにこちゃんがいない!」

真姫「なっ…!なんですって!?」

海未「穂乃果!?に、にことは…!」

ことり「にこちゃんと恋仲だったの!?」

海未「にこって誰ですか!?」

絵里「え、メンバーだけど…。でも恋人って…あなた気が多いわね…」

希「にこっちと恋仲なん?いつの間に」

穂乃果「え、うぅん。違うけど…」

凛「ずこー!じゃあなんだったの!?恋人のにこちゃんって…」

穂乃果「まだ恋人じゃないから、恋人のにこちゃんがいない、ってこと」

穂乃果「恋人になってくれるにこちゃんはいつ現れてくれるのかな~?」

真姫「すごいめんどくさいわね、アナタ」

海未(先ほどめんどくさいと言った真姫からめんどくさいと言われる穂乃果…)

絵里「ま、まぁ…いつか出会えるんじゃないの…?いいわよそんな話…行きましょう…」


にこ「…」


花陽「あ、にこちゃ…いたんだ」

ことり「顔、すごい真っ赤っか」

凛「もしかして聞いてた?さっきの」

にこ「な、な、な、なんのことかしらー!?し、しら、知らないわねー!」

希「なんやにこっちも意識してるん?」

にこ「い、意識って…なんの意識よ!?知らないから!私何も聞いてないからぁ!!」

穂乃果「お、もしかして脈アリ…!?」

海未「なんだか腹が立ちますね」

ことり「同感だよ」

にこ「もういいでしょ!そんな話は!!それより…」

にこ「…昨日、あんなこと言ってよかったの?私たちのこと」

穂乃果「え、真っ姫患者の話?」

にこ「え、まっ…なに??」

ことり「気にしないであげて」

絵里「このままプロになる、って話でしょ?」

穂乃果「えぇぇっ!!!?そうだったの!?」

希「そうやよ…穂乃果ちゃんがそう宣言したんやん…」

花陽「あれからネットでかなり拡散されて、これからプロになるアネックス1号、期待!みたいな記事がクズアフィブログでたくさん…」

にこ「もうここまで来ちゃったら後戻りはできないわよ…。こんなの撤回しちゃったらそれこそ音ノ木の評判がガタ落ちよ」

希「だからプロはやらざるを得ない?ホントはにこっちが一番やりたいんでしょー?」

にこ「ぐっ…」

絵里「…まぁ、いいの。プロになるにしろ、やっぱりならないにしろ、これが私たち…アネックス1号の最後のライブなんだし」

絵里「スクールアイドルとして全力を尽くしましょう?ね、穂乃果」

穂乃果「絵里ちゃん…うん!」

絵里「よぉし!UTXまで競争!!」

一同「え!?」

絵里「負けた人には衝撃的な悲劇が!!」タッタッタッ…

一同「」ポカーン…


凛「衝撃的な悲劇って何…」

希「なんか急に元気になったね。ま、元気なら元気でいっか。よし、うちも負けへんよー!」タッタッタッ

ことり「あ、待ってよー!」タタタタ…


タタタタッ…


穂乃果「よし、私も…」


フワッ…


穂乃果「…っ」

穂乃果(花びら…?)

穂乃果「……」

穂乃果「あ、ヤバイ。チンタラしてたら最下位になっちゃう!!」


タタタタタタッ…






飛べるよ。


いつだって飛べる。


あの頃のように!




穂乃果「ふふふっ…」タタタタッ…





絵里「穂乃果ぁっ!!」



穂乃果「えっ…」

穂乃果「あっ」



ガシャアアァァンッ!!!


穂乃果「ぐ、ぶっ…!」



穂乃果(ちゃんと前を向いて走っていなかったからか、私は)

穂乃果(車道から走ってきた大型トラックに追突され)

穂乃果(そのまま、永遠に意識は、戻らなかった…)




穂乃果「ってオチになるかとちょっと不安になるよね、このシーン」

海未「あなただけです」

ことり「それより見てよ!見て!ほら!!!」

穂乃果「わかったからわかったから…おぉ!すごい人!!人がすごい!!」

花陽「語彙力のなさ」


ツバサ「ふふっ、見ての通り…彼女たちは穂乃果さんを奉るために集った…」

英玲奈「違うわ」

あんじゅ「あなたたちの言葉を聞いて集まったのよ、これだけの人数が」

ツバサ「あんじゅ…反語を使うなんて日本語が上手なのね」

英玲奈「倒置法だ」


凛「あれがA-RISE…!手ごわいにゃ…!!」

にこ「別に戦いに来てるわけじゃないから」


ツバサ「…っさぁ!ときは来たれり!!」

あんじゅ「今は大会と違ってライバル同士でもない!!」

英玲奈「ワレワレハヒトツ!!」


「私たちは、スクールアイドル!!」



穂乃果「…っ!!」

穂乃果「うん!みんな、今日は集まってくれてどうもありがとう!!いよいよ本番です!」

穂乃果「今の私たちだったらきっとどこまでだっていける!どんな夢だって叶えられる!!」

穂乃果「伝えよう!スクールアイドルの素晴らしさ!」

~♪



「楽しいねこんな夢 笑顔で 喜び歌おうよ」

「それが始まりの合図」


「一歩ずつ君から 一歩ずつ僕から」

「恐れず ふふふん… 心のステップ」


「受け止めてみせることで ホント少しためらっても」

「受け止める場所があるって もっともっと知って欲しくなるよ なるよ」



「SUNNY DAY SONG SUNNY DAY SONG 高く飛び上がれ」

「どんなことも乗り越えられる 気がするよ」

「SUNNY DAY SONG SUNNY DAY SONG 口ずさむ時は」

「明日への期待が 膨らんでいい気持ち」



「3,2,DAY War SUN POWER」

「3,2,DAY War SONG POWER」



穂乃果(…やばい、ここから歌詞がすごい…曖昧だ…)

穂乃果(でもこれ以上鼻歌で誤魔化すわけにも…えぇい!テキトーでも形になるよ!なーるーよー!!)




「本気出す ここから本気出す まじだよ本気だよ」

「それが喜びのサイン」


「二歩目はゆったりと 三歩目はダイタンに」

「今にも 消えそうな 予感にダンス」


「忘れても ひねり出すことで もっともっと面白くなるよ …なるの?」



「SUNNY DAY LIFE SUNNY DAY LIFE 輝きになろう」

「なんて言える今の自分は ラブライバー」

「SUNNY DAY LIFE SUNNY DAY LIFE 君も踊りだす」

「頑張れば 誰だって人間 なんでも できそうさ」





あんじゅ「…なんだか歌詞ちがくない?」

ツバサ「これも味でしょ」

英玲奈「味であってたまるか」

穂乃果(うぅ…次ソロパートだあぁぁぁぁぁ…緊張してきたぁぁぁぁぁぁ…!!)

穂乃果(あ、あれ…!?歌詞、歌詞なんだったっけ!?ヤバい!!全然覚えてない!!緊張しすぎで全部吹っ飛んだ!)

穂乃果(もはやメロディすら…どう…したら…)



らららんらー  らららんらー


穂乃果「…え?」



ららららーらーらーらら~…



穂乃果(このメロディ…どこから…。で、でも…よし!)

穂乃果「…らららんらー らららんらー…」



海未「穂乃果…!?」

ことり「歌詞、忘れちゃった…?」



穂乃果(これでいいの!なんだかそれっぽい!)


穂乃果「ららららーらーらーらら~… ららら、ららら、ららららららら~…ららーらーらーらー~」

穂乃果「…らららんらー らららんらー… ららららーらーらーらら~…」

穂乃果「ああぁぁあああああ~~!!!」




「SUNNY DAY SONG SUNNY DAY SONG 高く飛び上がれ」

「どんなことも乗り越えられる 気がするよ」

「SUNNY DAY SONG SUNNY DAY SONG 口ずさむ時は」

「明日への期待が 膨らんでいい気持ち」



「3,2,DAY War SUN POWER」

「3,2,DAY War SONG POWER」(歌うよ~)

「3,2,DAY War SUN POWER」

「3,2,DAY War SONG POWER」(踊ろよ~)





穂乃果(う、歌いきった…のか…?)

海未(…まぁ、そういうことにしておきましょう)

夕方


希「ほないくよ~!」


「おっけー!」「こいこい!」


希「よっ…」トトトトッ…

凛「むひゅっ!」

希「えへへー」

花陽「二人共重いよ。特に希ちゃん」

希「あぁ!?」

花陽「なんでもございません」

絵里「ちょっとにこ押さないでよ~!」

真姫「そこ誰もいないわよ」

絵里「」

にこ「嘘嘘、気にしない気にしなーい」

ことり「みんなふざけんなよ」

穂乃果「ふふふふ…」

海未「うふふふ…」


ツバサ「じゃあみんな!練習したあれ、行くわよ!」

ツバサ「せーの!!」



「ラブラ「ファイトだ「にっこに「アローシュー「イエロォォォォォだよぉぉぉぉぉぉ!!」わいいかし」ぷしゅ」お米」ちゅんちゅん」☆えんじぇー」イブ!!」


パシャッ





モーバラバラー!! リンダケコエオオキスギー アハハハハハハハハハハハ…

2年後…



「おまたせー!」

「うぅん、今来たところ!」

「誰も待った?なんて聞いてないんだけど…」



「それでね、まず私たちの活動を…」

「うん、任せて!」

「何も言ってないから」

「大丈夫だよ~。全部バッチリ!」

「ホントかな~?」





理事長「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」

理事長「…以下略。頑張ってください」




アイドル研究部


「…スクールアイドル、アネックス1号。それは、この音ノ木坂学院で生まれ」

「学校を廃校からしゅくっ…救い、大会が…えー、うん!!」

「…亜里沙、みんな笑ってるよ…」

亜里沙「…えへへ、ごめんごめん。次はちゃんとやるから、雪穂」

雪穂「全くもう…そして、アネックス1号は去り、新たにプロアイドルグループ、バグズ2号が生まれました」

亜里沙「バグズ2号はプロになってからもめちゃくちゃで、スクールアイドルの祭典ラブライブ!に、呼ばれてもないのにゲストで出演して…」

雪穂「…まぁでも、それのおかげで今年もまた、大盛況で、…なんだっけ、どこかで大会が行われることになったのです」

亜里沙「ドームだった気がするなぁ」

雪穂「うん、ドームドーム。そして…」


「「バグズ2号の最初のライブは」」

アキバドーム



穂乃果「…ヤバイ、緊張する」

海未「なにせアレですからね。運営にすら何も言ってませんし」

ことり「完全乗っ取りゲリラライブ…!最高に興奮する!やろう!!」

穂乃果「よし!行くよ!!」

穂乃果「1!」

ことり「2!」

海未「3!」

真姫「4!」

凛「5!」

花陽「6!」

にこ「7!」

希「8!」

絵里「9!!」


ガシッ


穂乃果「アネックス…いや、バグズ2号!!」


「ミュージック~…!!スタート!!!」

~♪



「Ah ほのかな予感から 始まり」

「Ah 望みが星空駆けて」

「花を 咲かせる にっこり笑顔は」

「ずっと おんなじさ 友情の世界」


「忘れない いつまでも忘れない」

「こんなにも 心は一つになる」


「世界を見つけた 喜び(喜び) 歌おう 最後まで」


「(僕たちはひとつ)」



「小鳥の翼がついに 大きくなって 旅立ちの日だよ」

「遠くへと 広がる海の色 温かく」

「夢の中で描いた 絵のようなんだ 切なくて」

「時を巻き戻して みるかい?」

「NoNoNo~」


「今が最高!!」





劇 場 版

う ろ ラ イ ブ !



おわり

みんなと 出会えたこと 嬉しくて離れたくないよ ホントだよ


涙はいらない このまま踊ろう




手を振って もっと振って




光を追いかけてきた 僕たちだから


さよならは言わない


また会おう 呼んでくれるかい 僕たちのこと


素敵だった未来につながった夢 夢の未来


君と僕のLIVE&LIFE





小鳥の翼がついに 大きくなって 旅立ちの日だよ


遠くへと 広がる海の色 温かく


夢の中で描いた 絵のようなんだ 切なくて


時を巻き戻して みるかい?


NoNoNo~


今が最高!


だって だって



今が最高!!



Ah ほのかな予感から 始まり


Ah 光を 追いかけて 来たんだよ

凛「…っは!終わった!!なんか約3週間くらい映画を見ていた気がするにゃ…」

真姫「気のせい気のせい。…というわけで、劇場版うろライブ!だったわ」

凛「やっとのこと終わったにゃ」

真姫「特に語ることもないわね。…付き合っていただいて本当にありがとうね」

凛「安価に参加してくれる人が最後までいてくれて感謝の言葉もないにゃ…」

真姫「あ、ちょっと語ることあったわ」

凛「なに?」

真姫「自信満々だった部分の歌の歌詞が間違ってるとちょっと恥ずかしいわね」

凛「どうでもいいよ!」

真姫「…で、このスレの今後だけど…」

凛「まだ未定だにゃ。…このまま終わりにするかもしれないし、まだ何かあるかもしれない」

真姫「まぁ、今度はそんなに長く待たせはしないわ。多分ね」

凛「何もかも未定ですね」

真姫「じゃあ、今日の西木野☆星空シアターはここまで!」

凛「お相手は、星空凛と!」

真姫「西木野真姫でした!じゃあねー!…ってこんな締め方だったかしら!?」

凛「次にほのかな予感から始まるのはあなたかもね?」

真姫・凛「「まじ☆えんじぇー!!」」

クリニックの要望があるようなのでクリニックします
デュエルはリプレイデータ紛失してしまったので打ち切りになるますごめんなさい 後結構書くのキツい
急に安価しても来るかどうかは定かではないがいっちょやってみっか

真姫「ハロー、お久しぶり。西木野☆星空クリニック院長のドクター真姫よ」

凛「べーたかよちん!ナース凛だにゃ」

真姫「ついにうろライブ!ももしライブ!も完結しちゃったわね…」

凛「シアターとしての役割は完璧に終わってしまったにゃ」

真姫「というわけでお茶を濁す程度にクリニックを始めてみるけど…誰か患者を呼んでたりしないの?」

凛「誰も呼んでないよ」

真姫「えぇ…じゃあ完全見切り発車になるのね…」

凛「毎回のことだにゃ。ちゃっちゃと始めないとまた終わるのが深夜になるってば!」

真姫「そうね。それじゃ西木野☆星空クリニック…開院よ!」



♪OP beat in Angel

ここは星の見える丘。そこに建てられた一軒の診療所。
今日も二人の女の子が様々な病に悩む患者を待っています。




真姫「うーんと…じゃあどうしましょうか」

凛「クリニックといっても別に患者を呼ぶタイプでなくてもいいんだけどね。別次元行ったり」

凛「なんならお薬関係なくテキトーに駄弁ってるだけでも成り立つは成り立つにゃ」

真姫「と言っても余りにも自由すぎると却ってやることに困っちゃうわね…。うーん…」

凛「なんなの?ネタ切れなの?」

真姫「ネタ切れかそうでないかと言えばもはや3回目くらいからクリニックはネタ切れよ」

凛「よくもまぁここまでやってこれたものだね…」

真姫「確かにね。…だから今更何をすると言われても…」


チンチンッ



凛「…うん?今、呼び鈴の音がしなかった?」

真姫「私には卑猥な言葉が聞こえたような気がするのだけど」

凛「それは真姫ちゃんの脳みそが腐ってるからです。…もしかして、誰かお客さんかな!?」

真姫「お客…?まさか患者があっちから来たって言うの?」

凛「わかんないけど、ちょっと受付の方に行ってみるにゃ!」



??「…来ないね。やっぱり空家なのかな」

??「当たり前でしょう?こんな丘の上にポツンと一軒だけのクリニックなんてどう考えてもおかしいもの」

??「え~。でもこんなに綺麗だし…」


凛「あ!ホントにお客さん!!?ど、どうもいらっしゃいにゃ!」


??「あ!な、ナースさん!?かわいい~!同い年くらい…かな?」

??「ど、どうしてあんな人がこんなところでナースを…?」


凛「え、えっと…それに関しては気にしないで!それにしても…」

凛(まさかμ'sのみんな以外の子がここに来ちゃうなんて…どう対応していいのか…)

凛「ん、と…じゃあちょっとここのドクターを呼んでくるね!座って待ってて!」

??「はい!」

凛「えー…っと、なんて呼べばいいのかな?」

??「あ、私ですか…?私は…」


千歌「高海千歌です!気軽にチカって呼んでください!で、こっちの子は津島善子ちゃ…」

善子「よ、よっ…よしこって呼ばないで!私の名は…そう、ヨハネ!黒き翼の堕天使、ヨハネなのっ!」



凛「…はぁ、そうですか」

真姫「…ふむ、高海千歌さんに津島善子さん、ね…」


善子「善子じゃなくてヨハネ。不幸を呼ぶ悪魔よ」

真姫「ヨハ…ヨハネ…?」

千歌「善子ちゃん、いつもこんな感じですけど気にしないでください!」

凛「ていうかさっきは堕天使って言ってませんでした…?」

善子「あら、天使が堕ちれば悪魔になるのよ?だから堕天使は悪魔。何もおかしくはないでしょう?」

真姫「なんかこの子ウザいわ」

凛「真姫ちゃん直球すぎるよ…。こんなでもお客さんにゃ」

善子「…こんな、って言い草もひどいと思うの。はぁ…やっぱりヨハネって不幸なのね」

凛「その不幸は自分が呼び寄せてるんだけどね」

善子「そう、だって堕天使は不幸を呼び寄せるものだもの」

真姫「ところでご要件はなにかしら?」

凛「もうスルー安定だにゃ」

千歌「要件…ですか」

真姫「何か病気で悩んでるからクリニックに来たんでしょう?」

千歌「それがその…何故か気がついたらこの丘に来ていて。誰かいないかと訪ねてきたんです」

真姫「気がついたら…?はぁ…。お住まいはどこなの?」

千歌「静岡の小さな島なんですけど…」

凛「静岡…?それは東京のどこらへんだにゃ?」

真姫「アホなのあなたは!?し、静岡って…かなり遠いじゃないの!」

善子「…もしかしてここは東京なの?」

真姫「え、えぇ…東京って言っても外れの方だけどね」

千歌「わ、私たち東京に来たの!?う、嘘…!!」

善子「な、なんて不幸…!さっきまで静岡にいたはずが一瞬で東京にだなんて…!」

千歌「うぅん!不幸どころか超のつくほどの幸運だよ!」

善子「…あら?」

千歌「だ、だってだって!!東京って行ったらあの…あのμ'sの聖地なんだよ!?い、一度行きたかったんだ!!やったー!」

真姫「えっ…」

善子「あぁ…千歌のμ's病がまた始まってしまったのね。はぁ…いい病院を紹介してあげたいわ」

凛「厨二病の君が言えたことではないと思うけど…。それより二人共、み、μ'sを知ってるの?」

千歌「はい!もちろん!あの伝説のスクールアイドルを知らない人なんていませんよ!!」

真姫「そ、そうよね…。うーん、でも…」

真姫(…なんで私たちには気づかないのかしら)

千歌「あっ…よく見たらお二人…」

真姫「げっ…ば、バレたかしら…」

千歌「μ'sのメンバーに似てますね!そっくりです!!」

凛「あ、あぁ…そうだね…」

善子「ホント…。μ'sはあまり詳しくないけど、二人共とても似ているわ。もしかして本人…?」

真姫「え、あ、えーっと…」

千歌「善子ちゃん!そんなわけないよー!だってμ'sはもう解散しちゃったんだし…」

凛「解散?え、凛たち解散したの…?」  善子「だからヨハネだって…」

真姫「…というかこのクリニックでの時系列っていつごろなのよ…」

凛「大体秋ぐらいで時間が止まってる設定のはずなんだけど…」

凛「…その頃にはμ'sの解散なんて話にも出ていないはずだよ。この時空の人間がμ'sの解散する未来なんて知っているはずない」

真姫「ってことは…もしかしてこの子たちは…」

凛「間違いないにゃ。別次元から紛れ込んできちゃった子…」

真姫「…なんてこと。時空を跳躍する次はまさか別次元の子からこっちに訪問してくるなんて…」

凛「うーん…、でも二人は凛たちのこと、μ'sの西木野真姫と星空凛だとは気づいていないみたいだし…」

凛「普通に接していれば別に問題ないんじゃないかな?」

真姫「ま、まぁ…そうかもね…」

善子「…さっきから二人でなにをコソコソと喋っているの?」

真姫「うっ…き、聞こえていたかしら」

善子「ふっ…、このヨハネの耳は特別製なの。遠くの声だって聞き分けられ…はしないけど」

善子「だけどこの距離なら全然聞こえていたわ!ズバリあなたたちは…!!」

凛「ぎくっ…」

善子「ドクターとナースなのね!」

真姫「こいつアホだわ」

凛「アホの子だね」

千歌「気にしないでください。善子ちゃんつい最近まで自分の学年も間違えてたんで」

真姫「それはアホ過ぎるでしょう…」

善子「…ふっ、いいのよ。どこに居たって同じ。私の居場所は今私がいるここでしかないのだから…」

真姫「で、あなたたちはこれからどうするの?静岡に帰るつもりなら私たちが送ってあげるけど」

千歌「えーっと…でも私たちお金持ってないし…」

凛「大丈夫大丈夫!凛…わ、私たちに任せてくれたらタダでどこにでも一瞬で送ってあげるにゃ!」

善子「そもそもお金がないのなら誰かを頼る他ないでしょう?こう言ってくれているのだから遠慮なく頼りましょうよ」

真姫「えぇ、こういうところだけは気が合いそうね。…どうする?」

千歌「…えと、じゃあ…お言葉に甘えて、お願いします。あ!でも…」

千歌「せっかく東京に来たのなら、存分に聖地巡礼がしたいんです!それからでもいいですか!?」

凛「いつでもオッケーにゃ。帰りたくなったら教えてね」

千歌「はい!ありがとうございます!」

善子「じゃあ私たちはこれで…」

千歌「あ、その前に!ここって診療所…クリニックなんですよね?少し病気で悩んでいることがあって…それについても相談しておきたくて!」

善子「え、そうなの?」

真姫「なんの病気かしら?」

千歌「じ、実は…ミカンが食べられないんです!!」

千歌「善子ちゃんが!!」

善子「…え、ヨハネのこと!?」

凛「みかんって…そうなの?」

千歌「はい!善子ちゃんは私がどれだけみかんを勧めても食べてくれなくて!これって深刻な病気ですよね!?」

善子「ま、待って待って待ちなさい!みかんが嫌いなことがどうして病気になるのよ!?」

千歌「だってあの土地で育ってみかんが嫌いなんて頭おかしいよ!!」

善子「言うに事欠いて頭おかしいってことはないでしょう!?好き嫌いくらい人には誰しも…」

凛「え、人なの?」

善子「えっ、そりゃあ人…あっ!そ、そうじゃなくて、堕天使にも好き嫌いは存在するの!」

千歌「みかん、あんなに美味しいのに?」

善子「あれは…そう!みかんには堕天使を跳ね除ける聖なる力が込められているのよ…だからどれだけ食べたくても触れることすらできなくて」

千歌「とのことなんで!善子ちゃんもみかんを食べられるようにしてあげてください!!」

善子「ちょっとぉっ!!!」

凛「…ってことだけど、どうする?」

真姫「…らしいわ」

凛「はん?」

真姫「素晴らしいわ!!まさかっ…まさかみかん嫌いに出会えるなんて!!」

凛「うわぁそういえばそうだった」

真姫「そうよね!みかんなんて食べ物じゃないわよね!?」

善子「そ、そうよ!あんなの悪魔の食べ物…だったらダメだから…天使の食べ物よ!!」

千歌「確かに天使の食べ物ってくらい美味しいけど…」

真姫「さっきまではすごいウザったい子かと思ったら…なかなか気が合いそうじゃない!」

善子「そうかしら…?っふ、でも心強いわ…。うちのメンバーはみんな程度はあれどみかん好きだから居場所がなくて…」

凛「なんかみかん嫌い同盟ができちゃったにゃ」

千歌「えぇっ!お医者さんまで頭おかしいんですか!?」

凛「この子みかんをなんだと思ってるの…」

千歌「お願いしますナースさん!こうなったらナースさんにか頼れる人はいなんです!どうか善子ちゃんにみかんを!善子ちゃんを救ってあげて!」

凛「う、うぇぇぇ…この中でまともなのは私だけか…」

凛「って言ってもみかん嫌いを治す方法かぁ…。そうだなぁ…」

凛「>>830なんてどうかにゃ?」

妖怪体操を踊る

凛「ようかい体操を踊るなんてどうかにゃ?」

千歌「ようかい体操…?」

凛「ほらほら、妖怪ウォッチにはミカンニャンって妖怪もいるから、ようかい体操を踊ればその子を召喚して二人をみかん好きにすることだって…」

千歌「妖怪ウォッチ…あぁ!子供の頃流行ってました!懐かしい~」

凛「…つい最近なはずなんだけどなぁ…」

千歌「そのようかい体操を踊ればみかん食べてくれるんですか?」

凛「わかんないけどね!?脳みその容量1%くらいしか使わずに出したアンサーだから信用には足らないと思うけどね!?」

千歌「でもとりあえずやってみます!えーっと確か…」

千歌「ヨーデルヨーデルヨーデルヨーデル…ってやつですよね?」

凛「おぉ!そうそう!ダンス上手じゃない!」

千歌「えへへ…よぉし!気合入れて踊るぞぉ!!ようかい出るけんでられんけん!」

凛「…」

千歌「ようか~いようか~いようか~い…ウォッチッチ!」

凛(なんかすごい真面目に踊ってくれてるから罪悪感ハンパないにゃ…。そんなことしてもミカンニャンは召喚されないと思う…)

凛(こ、ここは凛が裏で何かしら暗躍しなければ…!)スススス…



凛「…真姫ちゃん真姫ちゃん」

真姫「…む、何よ。今みかん嫌いの集いで盛り上がっていたのに」

凛「お、お願いだからその子がみかんを食べられるよう手伝ってくれないかなぁ…。千歌ちゃんがなんか哀れで…」

真姫「えっ…私にそれを頼むの!?せっかくの同好の士を見つけたのに…」

凛「真姫ちゃんにとってのみかん嫌いはそこまでの域なんだね…。で、でもお願い!一時的でもいいから!」

真姫「…」

真姫「>>832

貴方も一緒に堕天しましょ

真姫「貴方も一緒に堕天しましょ」

凛「なんだオイ」

真姫「私気づいたのよ…。私は闇が似合うって」

善子「彼女…ヨハネと同じ空気を感じるの…。そう、いわば『孤独のオーラ』が…」

凛「…うん、ぼっちだしね」

真姫「私は今日から悪の道へと突き進むわ…。堕天使恋塚フルーネティとして」

凛「また懐かしい名前を…」

真姫「だから凛には協力はできない!いえ、むしろあなたもみかん嫌いへと堕ちるのよ!」

凛「やだよ!」

善子「生意気な黒猫ね…。捕らえて使い魔として飼ってあげるわ…!」

凛「凛に黒要素なんてないんだけど!!?えぇい…真姫ちゃんまで染められてんじゃないか…」

凛「ここは一時撤退にゃ…!」ススス…

真姫「あ、こら!」



千歌「よ・う・か・い・の~せいなのねそうなのね!ウォッチ!今何時!?」


凛「…千歌ちゃんは何も疑わずに今もようかい体操を踊り続けてるにゃ。どうしよう…」

凛「まさか真姫ちゃんも善子ちゃんみたく堕天使になって…まさかの堕天姉妹になってるにゃ。地獄兄弟みたい」

凛「うぅ…中間管理職ってつらいにゃ」

千歌「もういっちょ、いってみようかい~」

凛「あ、ダメだ。そろそろ千歌ちゃんに言わせられないパートになる。ちょっと、千歌ちゃん!」

千歌「どうしてウン…なんですか?」

凛「あぶねぇギリセーフ。…えと、多分ようかい体操じゃ二人をみかん好きにすることはできないと察したにゃ」

千歌「そ、そうなんですか…。じゃあどうすれば…」

凛「ここは最終手段…私の作ったお薬を二人に飲ませれば!」

千歌「お薬!?ナースさんが作ったんですか!?」

凛「そう!クリニック特製の万能薬!」

千歌「それでみかんが食べられるようになるって…一体どんな薬を!?」

凛「ふふ…この薬を飲んだものはたちまち味覚が>>834になって、>>835が異常に>>836になってしまうのだにゃ!」

凛「その結果みかんが食べたくて仕方のない状態になるって寸法よ!」

ミカン味にしか感じられなくなる

みかんを使っただじゃれを言いたくなる

凛「この薬を飲んだものはたちまち味覚がミカン味にしか感じられなくなって、舌が異常にみかんを使ったダジャレを言いたくなるのだにゃ!」

凛「その結果みかんが食べたくて仕方のない状態になるって寸法よ!」

千歌「す、すごい…!…あれ?ミカン味にしか感じられないってそれじゃあみかんを食べなくても全部みかん味なら余計みかんなんて食べたくなくなるのでは…?」

凛「…」

凛「ち、違う違う!ちょっと語弊があって、みかんの味しか感じられないの間違いにゃ!他は全くの無味なの!」

千歌「それは怖いですね…」

凛「そんなグリードになりかけている状態の上にみかんのダジャレを言いたくて仕方のない舌が追加されるとなるともうみかんのことしか考えられなくなり…」

凛「結果誘惑に負けてみかんを食べてしまうんだよ!」ババーン

千歌「ナースさんかっこいいです!!」

凛「というわけで早速この劇薬を堕天姉妹に飲ませに行くにゃ」

千歌「はい、お供します!」



善子「ふっ…魔に魅入られし黒猫さん。懲りずにまた来たようね」

凛「それ私のこと…?」

真姫「何を言われたって私たちはみかんを食べたりはしないわ!あなたたちこそみかん嫌い同盟に入りなさい!」

千歌「嫌です!だって…だって私にとってみかんは友情の証だから!」

千歌「みかんは私の魂なんです!みかんを嫌いになるくらいなら…死を選びます!!」

凛「この子も違うベクトルで狂ってるね…」

千歌「さぁナースさん!あの薬を…!」

凛「オッケーにゃ!」

真姫「薬…!?ハッ!凛は私たちになにか危ないものを飲ませようとしてくるわ!油断しちゃダメよ!」

善子「ふふっ…そんな見え透いた罠に引っかかるおマヌケなヨハネじゃないわ…。誰が薬なんて…」

凛「口をパクパクさせると小顔になるらしいよ」

善子「え、本当!?」パクパク

凛「おりゃっ」ポイッ

善子「むぐっ…ごくんっ。…なにかが喉に入ったような」

真姫「ダメ…この子はおマヌケだったわ…!わ、私は油断なんてしないからね!!」

凛「真姫ちゃん、ちゅー」

真姫「ちゅ、ちゅー…///」

凛「むちゅっ…にゅるっ」

真姫「むぐっ…ごくん」

凛「口移し完了にゃ」

真姫「ずるいわ!!私の凛に対する恋心を弄んで!!」

凛「さぁこれはなんでしょう?」スッ

真姫「…?コーヒー缶の上にみかんを置いて何を…」

善子「アルミ缶の上にあるみかん!…ッハ!私は一体何を!?」

千歌「あ、あの善子ちゃんがあんなにつまらないダジャレを!でもどうしてお医者さんはダジャレを言わなかったの…?」

凛「真姫ちゃんは善子ちゃんほどアホじゃないからね。…これスチール缶だし」

真姫「でもなんだか無性にみかんに関するダジャレを言いたくなってくる…!でも、何も思いつない…!」

真姫「…っは!あの缶をスチールにすることによってハードルの低いダジャレを先に善子に答えさせて私には別のみかんのダジャレを考えさせる…そういう作戦なのね!」

凛「ふふふ…そういうことだにゃ!もう一度使ったダジャレは使えないでしょう?さぁ…言うにゃ!!」

真姫「く、くぅっ…!!」

真姫「>>838(みかんを使ったダジャレ)」

未完のみかん



てきとーでごめんなさい...

真姫「未完のみかん」













凛「…空気が凍りついたにゃ」

千歌「ここはロシアですか…?」

善子「さすがの私でもそれは引くわ」

真姫「ノォォォォォォ!!!!!!だって思いつかないんだもん!!」

善子「悪い予感はしてたのよね…いよかんだけに」

真姫「頭がチンポンカンプンになってたのよ…ぽんかんだけに」

善子「うまいこと考えようとするとあぶはシトラス(虻蜂取らず)な結果になっちゃうわね」

真姫「底なし沼にザボンと浸かっているような居心地の悪さだったわ」

千歌「なんで他の柑橘類のダジャレなら息を吸うように出てくるの…」

凛「真姫ちゃんは若干卑猥な言葉も入ってるけど…」

善子「う、うぅぅっ…!頭がみかんのことばかり考えてしまうの…!なんとかみかんでうまいこと言いたくなってしまう…!」

真姫「頭がみかん一色…これほど屈辱的なことはないわ…!」

千歌「さぁ!そんな時こそみかんだよ!みかんを食べよう!」

善子「はっ…!こんなに頭がみかんまみれだとみかんも美味しそうに…」

真姫「ダメよ!誘惑に負けちゃ!別のものを食べて気を紛らわせ…」モグモグ

真姫「マズい!なにこの…味の抜けたガムみたいな…。まさかこれも薬の効果!?」

凛「その通りだにゃ!さぁ、早く軍門に降るにゃ!!」

善子「うぅ…ヨハネもう我慢できない…。どうしますかボス…」

真姫「誰がボスよ!でも、これ以上は辛い、無理…!」

善子「私もそろそろ巣立ちの時が来たのかもしれないわね…」

真姫「手を伸ばしちゃダメ!気のっ遠くなるような誘惑にも耐えるのよ…!」

善子「この誘惑を前にしちゃったらみかん嫌いのプライドはもう譲るしかないの…!」

真姫「っ…!もう私を無視…トロンとした目をしているわ…!れも…もう私も…」

凛「カボスにライムにキノットにユズにシトロンにレモンによく柑橘類の名前知ってるね君達は。ホントは好きなんじゃないの?」

千歌「焦らなくても、美味しいみかんはいっぱいありますよ♪はい、どうぞ」

真姫「っ…!」ゴクリッ

善子「う、うぅっ…」ゴクリッ

千歌「はい、ナースさんも」

凛「おぉ!熟していて美味しそうなみかんだにゃ!それじゃ…」

千歌・凛「「いただきまーす!」」

真姫「い、いただきます…!」

善子「大悪魔よ、ご加護を…!」


パクッ

数分後



真姫「…意外と悪くないわね。みかん」

善子「はぁ…甘くて美味しい。まさに天使の食べ物だわ…♪」


凛「なんだ、結構食べれるんじゃん」

千歌「ふふ、善子ちゃんとこうやって一緒にみかん食べるの、楽しいな~」

善子「だから善子じゃなくって…!…はぁ、もういいわよ」

凛「でも薬の効果は一時的なものだから、もしかしたらまたみかん嫌いになることもあるかも…」

千歌「じゃあその時は、私が私の力で善子ちゃんをみかん好きにしてみせます!」

善子「う…不幸だわ…」

真姫「幸せものだと思うけどね」

凛「同感にゃ」




千歌「善子ちゃんにみかんを食べさせることにも成功したので、一度降りて秋葉原に行きたいと思います!」

善子「アキバに行けばゴスロリ衣装もたくさんありそうよね…♪楽しみかも」

凛「んー。静岡に帰りたくなったら、またここに戻ってきてねー」

千歌「はい!お願いします!」

真姫「それじゃあ、東京観光、楽しんできてね。もしかしたらもう2度と来れないかもしれないんだし」

凛「あはは、さすがにそんなことは…」


千歌「そんなことありません!絶対に…絶対にもう一度東京へ来てみせます!」

千歌「ラブライブ!で優勝するために!…でしょ?善子ちゃん」

善子「…やるなら優勝以外ありえない、ね。もう耳にタコができるくらい聞いた言葉」

善子「これでもスクールアイドルの端くれだもの。全国をヨハネが魅了してあげる♪」

千歌「だから、次東京に来たら…もう一度ここに来ますね!約束です!絶対!」

千歌「それじゃ、いってきまーす!」タタタタッ…

善子「もう、はやいったら!待ちなさいよ、千歌ー!」タタタタッ…





真姫「…」

凛「…」

真姫「あの子たち…スクールアイドルだったのね…」

凛「ほぇぇ…意外だね。でも、ダンスも上手だったし…」

真姫「ふふ…これからどうなっていくのか…見ものね」

凛「うん!」




おわり





凛「…なんか尻すぼみだったけどこれでいいのかにゃ?」

真姫「まぁ、未完ということで」

凛「面白くないにゃ」

真姫「久しぶりのクリニック、そろそろ1stシングルが発売ということでゲストにラブライブ!サンシャインからAqoursの二人を招いてみたわ」

凛「凛たちの中では二人はあぁいうキャラ付けだったけど、みんなのイメージを合致してたかな?」

真姫「千歌ちゃんはμ's(穂乃果)キチかつちょっと天然入った真面目な子で、善子ちゃんは設定のゆるいアホ厨二病ね」

凛「アニメ化したら千歌ちゃんは『だって、穂乃果ちゃんは…!穂乃果ちゃんはこうだったから!』みたいな理由で暴走してダイヤちゃんとかに窘められるんだよきっと」

真姫「展開が無印1期と駄々かぶりじゃないそれ…」

凛「Aqoursが9人なのは千歌ちゃんがμ'sを真似して設定はどこかに入れてくると予想しているにゃ」

真姫「μ'sが結果的に9人になったのに対して、Aqoursは9人を目標にして、ってこと?まぁ、ありそうではあるけど…」

凛「なんだかんだサンシャインの物語も楽しみにしてるから、みんなは是非1stシングル、『君のこころは輝いているかい?』を購入してみてね!」

真姫「10月7日発売よ!初回生産特典にはイベント応募券もついてくるわ!」

凛「凛たちはお金ないから買うかは未定だにゃ」

真姫「おい」

凛「というわけで~クリニックはこれでおしまいだけど…このあと、どうするの?」

真姫「…これからのこと?一応、決めてはいるわ」

凛「うん?なになに?」

真姫「…そろそろ、潮時かな、って」

凛「えっ…」

真姫「今回をもって、西木野☆星空クリニックシリーズは一旦、閉院ということにさせてもらおうと思っているの」

凛「な、なんだってー!?」

真姫「もう1年10ヶ月も前に始めた西木野☆星空クリニックだけど、設定を長く続けすぎちゃったからね」

真姫「ほとんど関係のない催眠ベルとMuseシリーズにも出張しちゃって、今までの作品ほぼ全てに関わってきているわ」

凛「それまで全部を読んでくれてる人はいいけど、それ以外の人にはちょっとハードル高いよね」

真姫「今までで一番の超大作だったもしライブ!も、クリニックの設定が足を引っ張っている感じがして」

真姫「いつまでもクリニックに縛られるのも良くないわよね、ってことで…そろそろ白衣とナース服は脱ごうって決めたのよ」

凛「ホントに、終わっちゃうの…?」

真姫「…うん。もう、本来の西木野真姫と星空凛からだいぶかけ離れた性格になってしまった私たちだけど…いざ終わってしまうと寂しいわね」

凛「西木野☆星空クリニック、ってSSがそういえばあったな、って何年後かに心の隅で思い出してくれる程度には爪痕を残せたら本望だにゃ」

真姫「これまで付き合ってくれた数々の人たちには…ふふ、言葉じゃ言い表せないくらい、感謝しているわ」

凛「うん!凛もだにゃ…!うぅっ…」

真姫「…さて、そろそろ締めましょう。今度こそ正真正銘、最後のまじえんじぇーよ」

凛「おぅ…ぐずっ…!よし…!涙はいらない、このまま踊ろう、だもんね」

真姫「えぇ、さよならの手を振りましょう。ちぎれるくらいにね」

凛「よーし!じゃあ…西木野☆星空クリニックはここまで!」

真姫「次に診察されるのはあなたかもね?」



「「まじ☆えんじぇー!!」」





西木野☆星空クリニックシリーズ

完結



凛「ばいばいにゃー!!」

真姫「バイバイ!」

というわけで、西木野☆星空クリニックの名が冠するSSはこのスレが最後となります
今まで西木野☆星空クリニックを愛してくれたみんな、ありがとう

SS自体はこれ以降も続けていくと思うので、どこかでこのトリップを見かけたら一言声かけてあげてください
今書こうとしてるのは「にこが1年生組とエロゲを作る話」と「みんなですごろく(人生ゲーム)を作って遊ぶ話」と「仮面ライダーオーズパロ」です
どれができるかはまだ未定だけど、できれば全部やれるといいな
多分全部そこそこ長くなると思います… エロゲの話はシリアスはないと思うからいつかそれっぽいスレタイがあったら覗いてみてね

MGO3がそろそろ始まってしまうのですぐに始めるかどうかはわからないけど、まぁ、いつかどこかのSSでまた会おう
TwitterとかPixivもやってるのでそれっぽそうなやつがいたら一声くらいかけてくれてもええんよ
じゃ、おやすみね ほなな

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