律子「デートしてくれますか?」 (21)
P「律子、プレゼント何がいい?」
律子「…はい?」
P「今日、誕生日だろ? 何か欲しいものとかあるか?」
律子「開口一番それですか。おめでとうの一言でもくれるのかと思ったら…」
P「あ、誕生日おめでとう」
律子「ありがとうございます。で、なんなんですか?」
P「何って、律子の誕生日プレゼントについて」
律子「こうして聞いてくるってことは何も用意してないってことですよね?」
P「まぁ、そうだな」
律子「厚かましいですけど、どうせ聞くなら前もって聞いてくれればいいじゃないですか」
P「悪い。昨日ギリギリまで自分で選んでたんだけど結局良さそうなものが何も見つからなくてさ」
律子「別になんでもよかったのに」
P「なにか凄いもん用意して律子を驚かせたかったんだよ」
律子「で、結局見つからなかったと。こんなこと聞いてくるのが一番の驚きですよ」
P「ま、それでだ。昨日までに用意できなかったお詫びも兼ねて、何か一つ律子の欲しいものをあげようと思って」
律子「ふーん…」
P「…駄目かな?」
律子「あ、いえ。駄目だなんてことはないですよ。まぁ、ちょっと呆れましたけど」
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律子「予算はどれくらいですか?」
P「…あんまり無茶苦茶言わなければ、出来る限りは」
律子「うーん、具体的な数字がわからないとちょっと困るんですよね。えーと、プロデューサーの手取りが毎月これくらいだから…」
P「なんで俺の給料知ってんのかはさておき…予算に合わせようとか考えずにさ、律子の本当に欲しいもの言ってくれよ?」
律子「私が本当に欲しいもの、ですか…」
律子「………」ジッ
P「…ん? どうした?」
律子「それって、物じゃなくてもいいんですか?」
P「物じゃない? と言うと…旅行とか、か?」
律子「んーと、まぁそんな感じです」
P「よし、じゃあ旅行会社行ってツアーでもプレゼントするか! どこ行きたい? 京都か? 北海道とか? 海外でも…まぁ、誕生日だしな! なんとかするぞ!」
律子「ああ、待ってください! そんな感じとは言ったけど、旅行じゃなくて!」
P「へ?」
律子「今日は、仕事は午前中で終わりですよね?」
P「ああ。番組はあらかた収録終わってるし、今日は誕生日記念の小さなイベントがあるだけだな」
律子「ふむふむ」
P「律子? 結局、プレゼントは何がいいんだ?」
律子「えーと、それはですね…」
P「? それは?」
律子「その…プロデューサー! 今日の午後から、そっ、そっ、そのっ!」
P「お、おう?」
律子「すーっ、はーっ…よしっ」
律子「デートしてくれますか?」
P「えーと、待ち合わせ場所は…ここで合ってるよな」キョロキョロ
P(律子の奴、いないな…)
P(そもそも、午前中一緒だったんだから待ち合わせる必要なんてなかったんだけど…)
律子『待ち合わせするのもデートの醍醐味ですから』
P(とかなんとか言うから…)
P「まぁ、まだ約束の時間より早いし、座って待つか」ドスッ
P(しかしまさか律子がデートしてくれ、なんて頼んでくるとはなぁ…せっかくの誕生日だし、二つ返事でOKしてしまった)
P(アイドルとプロデューサーだし、最悪写真なんか撮られたりしてもスキャンダルにはならないと思いたいが…周囲には気をつけないとな)
P(もちろん、律子を楽しませるのが第一だけど)
「あ、こんなところにいた」
P「え?」クルッ
律子「えーっと…うん、時間ピッタリですね」
P「………律子?」
律子「あ、はい。私です」
P「その髪…」
律子「流石にそのままの髪型だと、誰かに気づかれるかもって思って。下ろしてきたんですけど…自意識過剰ですかね?」
P「眼鏡は…」
律子「えっと、世間一般的には眼鏡をかけてない方が好きだって人が多数派だと思うので、こっちの方が少しはいいかなと…」
P「えーと、つまり…?」
律子「いえ、なんでもありません! 髪と同じ理由です。眼鏡かけてたら私だってバレバレじゃないですか」
P「ま、まぁ…傍から見ると普段の律子には見えない…よな…」
P「なるほど、これなら周りに騒がれることもない。わざわざ待ち合わせしたのはこれが理由だったんだな」
律子「別に、それだけじゃないですけど…」
P「いや、本当にビックリしたよ。今朝は俺の方がビックリさせようと思ってたのにな」
律子「…感想はそれだけですか?」
P「それだけって?」
律子「なんでもないです! そうですよね、私なんてそんなもんですよね!」
P「ど、どうしたいきなり…?」
律子「ほら、プレゼントの代わりにデートに付き合ってくれるんでしょ!? 行きますよ!」タッ
P「あ、律子! 前! 人いる!」
律子「え? きゃっ!」ドンッ
P「っとぉ!」ガシッ
律子「あ…」
P(なんとか転ぶ前に止められたな、危なかった…)
P「すみません! …律子、お前眼鏡なくて見えてるのか?」
律子「そ、その…あんまり」
P「お前なー…コンタクトとか…持ってたらつけてくるか。変なところで抜けてる奴だなぁ」
律子「…すみません」
P「よく、ここまで来れたな」
律子「ここは家から近いので」
P「そっか、律子の家が近くにあるのか」
律子「…あの、プロデューサー。やっぱり今日は…」
P「うーん…よし。律子、手」スッ
律子「へ?」
P「そのまま歩き回ると危ないだろ」
律子「あ、はい…」
ギュ…
P(律子はゆっくりと手を伸ばし…腕を絡めてきた)
律子「………」
P「あのー…律子?」
律子「えっ!? あ、は、はい! そうですよね、手繋ぐだけですよね! すみません、間違えました!」
P「い、いや…こっちの方が安全だし」
律子「そう…ですか…?」
P「それに、今日はせっかくのデートだから…な?」
律子「そ、そうですよね。誕生日だし…これくらい、いいですよね…?」
P「ああ、それじゃ気を取り直して行くか」
P(家まで眼鏡を取りに行くのが一番いいのかもしれないけど…せっかく律子がこの格好で来てくれたんだ、無駄にはさせたくない)
P(…ん? あれ? 律子の奴、よく見えないんだよな?)
律子「………」ギュッ
P(じゃあ、なんで俺が居る場所がわかったんだろ…?)
P(まずは昼食を取ろうということで、俺と律子はファミレスに来た)
律子「うーん…」
P(律子は食い入るようにメニューを見ている)
P「律子、好きなもの頼んでいいぞ。今日のデートの代金は俺が全部払うからさ」
律子「では、ミックスグリルとあさりと海藻のパスタと…」
P「ちょっと待って、一品だけな」
律子「もう、好きなもの頼んでいいって言ったじゃないですか。予算は気にするな、みたいなことも」
P「デートはこれからだろ?」
律子「む!」
P「また途中で何か食べるかもしれないし、ここで食べすぎても動けなくなるぞ」
律子「…それもそうですね。では、ミックスグリルで」
P「よし。店員さーん、チーズハンバーグとミックスグリルお願いします」
「かしこまりました~」
「お待たせいたしました~」
P(しばらくすると、テーブルまで料理が運ばれてきた)
トンッ
律子「あれ? 飲み物は頼んでませんよ?」
「本日キャンペーン中で、カップル様にドリンク一杯サービスしております~」
律子「え…? カ、カップルって…私達、そんなんじゃ…」ソワソワ
P「カップルだろ? 今はデートしてるんだし」
律子「う! そ、そうです…かね」カァァ
P(律子は下を向いてしまった)
P(予期せず得をしてしまったな。でも…カップルへのサービスが、なんでドリンク一杯だけなんだ?)
ザンッ!!
P「!?」
律子「!?」
P(店員さんが、メロンソーダにストローを刺した…2本!!)
「では、ごゆっくり~」
P(店員さんはニコニコした顔のまま行ってしまった…)
律子「な、な、な…こ、これは…ただのドリンクだったのに…!」
P「今の時代に、こんなことをやってくるとは…なんて恐ろしいファミレスなんだ…」
P(昼食を食べ終わっても、俺たちはその物体に手をつけられずにいた…)
律子「ど、どうします…? これ…」
P「せっかくだし、二人で飲むか?」
律子「飲みません!」
P「でもさ、これ二人で飲むのを想定して持ってきたんだろ? 一人で飲んでたら、俺嫌われてるみたいじゃないか」
律子「そんな、嫌ってなんかないですよ。ただ、周りに人が居ると思うと…」
P「…よし。二人でさっさと飲んでここから出よう、そっちの方が衆目に晒されずに済む」
律子「そ、そうですね。二人の方が…早いですからね」
スッ…
P(律子が身を乗り出して、ストローを咥える。俺もそれを追いかけるようにストローを口に含んだ)
律子「………」
P「………」
P(まずい…想像以上に恥ずかしいぞ、これ…)
律子「………」ブクブクブク
P(律子は飲むどころか、メロンソーダに息を吹き込んでいる)
P「………」ブクブク…
P(俺逹はしばらく互いに固まったまま、ただひたすらジャグジーのように水面を泡立たせていた…)
律子「あーっ、恥ずかしかった!」
P(あの後、突如正気に戻った俺逹は示し合わせたようにドリンクを飲み干し、会計を済ませると弾かれるように店を出た)
P「今俺の腕に抱きついてるのは恥ずかしくないのか?」
律子「これは…し、仕方ないじゃないですか。いじわる…」
P「っと、すまん」
律子「つん」プイ
P(拗ねてしまったのか、律子は顔を逸らしてしまった)
律子「………」ギュッ
P(腕は掴んだままだけど)
律子「ところで」
P「ん?」
律子「これからどこへ行くんですか、プロデューサー」
P「んー…どこ行こう? 律子、行きたいところあるか?」
律子「え、何も考えてないんですか」
P「考えてるぞ? 考えてるけど、律子の意見も聞かなきゃってただそれだけだぞ?」
律子「ふーん…」
P「信じてないな…」
律子「信じてますよ? 私は行きたい所とかないですから。どこに連れてってくれるんですか、プロデューサー殿?」
P「…よし、律子。お前近くにあるものなら少しは見えるよな?」
律子「はい?」
P「着いた」
律子「えーと、水族館ですか」
P「ん? なんだ、駄目だったか?」
律子「あ、いえ。そんなことはないですよ。ただ、子供みたいにはしゃぐようなものでものでもないので」
P「とりあえず、入ろう。大人二枚」
律子「おおー、結構いい感じですね。実際に見てみると、風情があっていいですね」
………
律子「え、この水槽の中にクラゲいるんですか!? あ、いた! ちっちゃい! 可愛いですね!」
………
律子「え、なんですかこれ!? オウムガイ!? わー、これがあの…」
………
律子「あ、ダイオウグソクムシ! ネットで話題になってるやつです! でっか!」
………
律子「あはははは、なんですかこれ、エクレアナマコ!? ほんとにエクレアみたい…あはははおいしそー…!」
………
律子「伊勢海老! うわ、うわ、うわ、でっかぁ…赤い!」
………
律子「え、サメがいるんですか? よく見え…きゃっ!? み、見ましたかプロデューサー!? 今、目の前通り過ぎて行きましたよ!!」
………
律子「わぁ、水槽から何か生えてると思ったら…魚なんですね、なんていう名前なんですか?」
律子「…はい? チンアナ…セ、セクハラですよ! え、本当にそういう名前なんですか? し、失礼しました…」
………
律子「あ、ペンギン! いっぱいいるー! 可愛い! おおぅ、泳いでる! 速い! すっごーい!」
P「いやー、思ったより楽しかったな」
律子「………」
P「お姫様にも満足いただけたようで」
律子「ひ、姫って! もう、茶化さないでくださいよ!」
P「いやー、律子があんな子供みたいにはしゃいじゃってなぁ…」
律子「うっ…! ううー! い、いいじゃないですか、もー!」
P「ははは。…楽しかったか?」
律子「…ええ! ええ、ええ、とっても! 楽しかったですよ! 楽しかったですとも! 悪いですか!?」
P「誰も悪いなんて言ってないだろ」ワシワシ
律子「ちょっ…! 頭撫でるのやめてください…!」
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