子猫「……寒い」 (14)


子猫「こんなに人がいるのに、皆随分と足早に通り過ぎていく」

子犬「そりゃそうですよ」

子猫「誰だお前」

子犬「子犬ちゃんです」

子猫「誰だよ」

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子犬「捨てられたんですよ。あなたと同じにね」

子猫「オレは別に捨てられてねーよ一緒にすんな」

子犬「そんな段ボールに入ってですか」

子猫「中にお気に入りの毛布が入ってんだ。あったかいぜ」

子犬「それはそれは」

子猫「ばっ 何入ってきてんだてめえ」

子犬「まあまあ、雨降ってたから寒いんですよ」

子猫「毛布びっしゃびしゃじゃねーか殺すぞ」

子犬「どうぞ」

子猫「いいのかよ!てか本気で言ってねーよ! ムカつくなコイツ」


子犬「しかし、女の子がそんな乱暴な言葉遣いをしてはいけませんよ」

子猫「! ……わりーかよメスで」

子犬「いえいえ」

子猫「おしとやかに生きてりゃこんなとこで段ボール入ってねーんだよ」

子犬「何だ、やっぱり捨てられたんじゃありませんか」

子猫「……だからちげーっつってんだろ……」

子犬「私も捨てられましてね」

子猫「聞いてねえ」

子犬「だからもっと仲良くしましょうよ、捨てられた者同士」

子猫「仲良くなんかしねーよあっちいけ。濡れてるし臭いから寄んなよ」

子犬「手厳しい」


子犬「っくしゅん!」

子猫「……風邪かよ、オスのくせに情けねえ」

子犬「しばらくっ……くしゅん! 降られっぱなしだったので、身体を冷やしてしまいました」

子猫「うつると嫌だからもっと端っこに行けよ」

子犬「はい……」

子猫「ったく」

子犬「……」

子猫「……」

子犬「……くしゅっ」

子猫「……毛布」

子犬「はい?」

子猫「びしゃびしゃになったからよ、誰かのせいで」

子犬「すみません」

子猫「責任もってお前が持ってろよ。乾くまで」

子犬「え、でもこれお気に入りの奴じゃ」

子猫「いーから」

子犬「……ありがとうございます」

子猫「ちっ」


子犬「ところで」

子猫「あん?」

子犬「私はご主人に捨てられたのですが、あなたはどうしてここへ?」

子猫「……」

子犬「いつからいるのですか?」

子猫「……一週間、くらい、前」

子犬「そうですか」

子猫「……」

子犬「……」

子猫「……」

子犬「……あの」

子猫「待ってろって」

子犬「?」

子猫「……ここで待ってろって……言われたんだ、ご主人に」

子犬「……」


子猫「すぐもどるから、って」

子犬「……」

子猫「オレは捨てられてなんかいねーんだよ。お前と一緒にすんな」

子犬「……そう、ですね」

子猫「何で捨てられたんだろうな、お前」

子犬「え?」

子猫「あ、いや、単純に疑問に思っただけだよ!変な意味じゃねーからな!」

子犬「……んーそうですね」

子猫「……」

子犬「まあ兄弟がたくさんいましたから。一番下の私は、まあこうなりますよ、はっはっは、ドンマイとしか」

子猫「……何へらへらしてんだよ」

子犬「え?」

子猫「本当は怒ってんじゃないのか?数が多いからって自分勝手に捨てられたんだぞ?」

子犬「はは、その通りですね。でも、逆の立場だったら私もそうしたかもしれませんから」

子猫「だから何だよ! 理由があったら誰かを傷つけていいのか?!仕方なかったら許されるのか?!」

子犬「……」

子猫「逆の立場だったらじゃねーだろ……逆の立場にはなれないんだから、好き勝手言っていいんだぞ……」

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