国王「よくぞ来た、勇者よ。」
勇者「ははっ。」
国王「お主は我が国最強の剣士だ。勇者の称号を受け取ってもらえるか?」
勇者「謹んで。」
国王「そなたには、魔族との戦争を終わらせるために魔王を倒して欲しい。」
勇者「魔王…ですか。」
国王「うむ…。新たな魔王が現れたそうだ。」
魔族との戦争は、何百年も続いていた。
種族の違いから、お互いに相手を忌み嫌っていたからだ。
少しずつそれはなくなっていったが、時既に遅く…
お互いに傷つけられた同胞のために報復が行われ…
差別から敵討ちへ変わっていたのである。
国王「戦争は早く終わらせたい。しかし、魔族側は引かないだろう…。」
勇者「そのために…魔王を…。」
国王「うむ…。お主には苦労をかける…。」
勇者「いえ…。」
国王「大勢で動いては動きを悟られよう。三人の仲間と旅立つのじゃ。」
勇者「三人ですか?」
国王「一人はお主も知っておる男よ。」
勇者「わかりました。」
国王「入れ。」
戦士「よろしくな、勇者よ。」
勇者「あなたは…戦士?」
国王「剣術大会二位、お主の次に強い我が国の剣士だ。」
戦士「お前は剣の腕前で俺に引けをとらないのに、魔法も使えて動きも早いからな。ずるいわ。」
勇者「でも、あなたも物凄く強かったよ。魔法がなかったらこっちが先に疲れて倒れてた。」
戦士「そういうことだ。俺は魔法は使えず動きも遅いが、筋肉なら誰にも負けねえぜ。パワーと壁は任せな。」
勇者「頼りにしています。」
戦士「仲間なんだぜ?タメ口でいいさ。」
勇者「…ああ、よろしくな!」
魔法使い「私たちもいるんだけど…見えてる?」
僧侶「戦士さんに隠れちゃってますねえ…。」
勇者「魔法使いか?」
魔法使い「ええ、久しぶりね。」
国王「なんと、知り合いか?」
魔法使い「はい、学校の同級生でした。」
勇者「それでどうしたの?」
魔法使い「どうしたって!?私も国王様に任命されたのよ?」
勇者「凄いじゃん。」
国王「魔法使いは我が国きっての大魔道士が才能を認めておるゆえ、旅に同行させ開花させようと思ったのじゃ。」
勇者「なんだ、てっきり王国一になってたのかと驚いた。」
魔法使い「わ、悪かったわね!」
魔法使い(…勇者は私のことどう思ってるんだろ。)
国王「そして僧侶。彼女も魔法使いと同じじゃ。才能がある。」
僧侶「ちょっと紹介が雑に…まあいいですけど…。」
国王「無理はしなくてよい。その上で、全力を尽くしてくれ!」
勇者「はっ!」
勇者「そして旅が始まったわけだが…。」
戦士「気をつけろ、魔族がどこから襲ってくるか…。」
魔族「あ、人間。」
魔法使い「出たわ!」
僧侶「戦闘の準備を!」
魔族「ひえええ!お助けええええ!!!」
勇者「…。」
勇者「大体の魔族が逃げてくんだけど。」
戦士「たまに襲ってくるのは野盗とかばっかだな。」
魔法使い「人間も襲ってきたわね…。」
僧侶「予想と大分違いますね…。」
勇者「何はともあれ、疲れたな。」
戦士「宿屋に泊まろう。」
魔法使い「じゃあ、私たちは隣の部屋で寝るから。」
僧侶「おやすみなふぁい…。」
勇者「おう、おやすみ。」
戦士「さて…状況を整理しようか。」
勇者「ああ、魔族が襲ってこない。」
戦士「もっと凶暴でこう、人間皆殺し!って感じだと思ってたんだがな…。」
勇者「でも、低級魔族だったし…。」
戦士「俺たちに恐れをなした、か。」
勇者「きっとそうだろ。」
戦士「納得した。」
勇者「じゃあ、俺寝るわ。」
戦士「俺はもうちょい起きてるわ。」
勇者「なんで?」
戦士「戦いに疲れた時の、癒しは必要だろ?」
勇者「いかがわしい予感。」
戦士「今はネットで検索できて便利だからなあ。」
勇者「音出さないでくれよ?」
戦士「いや、健全なのにするって。」
勇者「ならいいけど…。」
戦士「ほう…ふむふむ…。」
勇者「今日も一日頑張るぞい。」
戦士「ぞいぞい。」
魔法使い「な、何それ。」
僧侶「が、頑張るぞー!ってことでは?」
中級魔族「人間が出たぞ!」
中級魔族「こ、殺される!」
中級魔族「軍隊を呼べ!」
勇者「」
戦士「なんだこれ。」
魔法使い「みんな逃げてくわね…。」
僧侶「経験積めないですね…。」
勇者「なんかおかしいよなあ。」
戦士「ああ、おかしい。」
魔法使い「二人とも、町で聞いてきたわ。」
勇者「どうだった?」
僧侶「ここらの魔族は大人しいみたいですよ。町に被害が出たことは少ないそうです。」
魔法使い「ほとんどが空き巣とか強盗とか、人間からの被害もあるみたいだし。」
勇者「そうか…他の場所はきっと酷いんだろうな…。」
戦士「ふっ!ふっ!」
勇者「頑張ってるな。」
戦士「戦えない以上っ!自主訓練しかっ!経験積めないんでっ!なっ!」
勇者「…だな、俺も付き合うよ。」
戦士「手合わせか、来いよ。」
勇者「もう無理。」
戦士「はははっ、魔法なしルールじゃ俺には敵うまい。」
勇者「まるで大木を相手にしてるかのようだ。」
戦士「だーれが大木か。」
勇者「はあ、疲れた…。」
戦士「では、癒しにいい物を教えてやろう。」
勇者「余計疲れるんじゃないか?」
戦士「なんでそういう方面だと思うの。」
勇者「いやー…。」
戦士「そういうんじゃなくて、これよこれ。」
国王「はあ…。」
国王「仕事がない…。」
国王「大臣、この書類頼む。ワシはこっちやるから。」
大臣「ああ、これらはまとめて私がやっておきます。」
国王「え?あ、そう…。」
国王「兵の様子はどう?」
騎士長「骨のあるやつばかりです、最近は厳しめに訓練しているのですが…。ついてきますね。」
国王「ワシ、視察とかしようか?」
騎士長「そんな、恐れ多い!まだ練度自体は国王様にお見せできるものではありません!」
国王「そうなの?」
騎士長「彼らならば、もう少しの期間で必ずや!国王様にお見せできる実力に育ちますゆえ!」
国王「わかった。」
国王「政治面はこういう感じで行こうと思うんだけど。」
司祭「ふむ、それでよろしいかと。」
国王「え?宗教側からの意見は特にない?」
司祭「なんら問題はありませんね。」
国王「これ、大臣はもうOK出してるからすぐ通るよ?」
司祭「お願いしますね。」
国王「う、うん。」
国王「暇だわ…。勇者たちも心配だけど、何もしてやれないしなあ。」
国王「…なんか暇潰し見つけよう。」
国王「検索検索ぅっ。」
国王「…ほう。」
魔王「…何か、趣味が欲しいな。」
魔王「人間との戦争で忙しい。忙しいのだが。空き時間はどうしても出る。」
魔王「その間、ずっとボーっとしているのはどうだろうか。」
魔王「人間が造ったというねっとわーくなる物を導入できたのだったな。」
魔王「検索検索。」
魔王「…ふむ。」
勇者/国王/魔王「オンラインハンティング、か。」
戦士「俺は昨日登録したぜ。」
勇者「ふむ…。ぶっwww筋肉ってwwww」
戦士「俺らしいだろ?」
勇者「確かにそうだけどなwww」
戦士「一緒にやろうぜ。」
勇者「でもこれってRPGだろ?レベル上げとか必要だろうし…俺ら忙しいからきつくね?」
戦士「これはRPG方式なだけの、生活ゲームなんだよ。」
勇者「というと?」
戦士「レベルを上げなくてもゲームの本質は楽しめる。」
勇者「レベルを上げると?」
戦士「ダンジョンの奥地を攻略できていい素材が手に入る。」
勇者「それらを手に入れなくても?」
戦士「ゲームの本質を楽しむのになんら問題はないな。」
勇者「なるほど…。」
戦士「よくわかってないだろ?」
勇者「まあ、やってみよう。」
戦士「名前どうする?」
勇者「ゆう。」
-ゆう さんが ログイン しました-
ゆう「ほう」
筋肉「ゆうとかwww安直wwww」
ゆう「いいじゃんか」
筋肉「とりあえず、始めるか。」
ゆう「まずはどうする?」
筋肉「グループ作らね?」
ゆう「グループ?」
筋肉「生活を一人から集団に切り替えるんだよ」
ゆう「とりあえずやってみて」
-筋肉 さんから グループ招待が届きました-
ゆう「ふむ」
筋肉「これで俺らの共同生活が始まる」
ゆう「むさい男と二人暮らしとかやだわ」
筋肉「じゃあ女の子仲間にすればいいじゃん」
ゆう「緊張するから無理」
筋肉「www」
ゆう「次いこ次」
筋肉「狩りをしよう」
ゆう「近場なら何が出るかな」
筋肉「食用牛とかかな」
ゆう「RPGならバッファローなんだけどな」
筋肉「あと森なら果物が取れる」
ゆう「野菜は?」
筋肉「町で種買って栽培するか買うかだな」
ゆう「農業ゲームじゃないのかこれ」
筋肉「牛も捕らえて牧畜すれば増えるよ」
ゆう「乳牛も?」
筋肉「いるね」
ゆう「RPGじゃねえよこれ」
筋肉「四人までパーティー組めるよ」
ゆう「じゃあ二人誘おうぜ」
筋肉「序盤で四人はオーバーだから同じ初心者しか来てくれないだろうなw」
ゆう「魔法使いと僧侶が欲しいな、女の子」
ゆう「どうしてこうなった」
ヒゲ「よろしく、ゆうに筋肉」
まお「よろしく頼む」
筋肉「おーっす」
ゆう「いや、まおって名前だから女性ワンチャン」
まお「男だ」
ゆう「ガッデム」
ヒゲ「男ばっかりじゃねえか、若い姉ちゃんいねえの?」
まお「じじいとむさいのとうるさいのかよ」
ヒゲ「ワシは事実だからいいけど」
筋肉「爺さんまでやってるなんて、流石だなこのゲーム」
まお「魔族グラってのがあったから試してみたわ」
ゆう「とりあえず、牛狩り行くか」
筋肉「動物愛護団体から非難されそうな状況だなこれ」
筋肉「俺のアイアンスピアからプロテインがあふれ出すwwww」
ヒゲ「ワシのスパークロッドもスパークするわwww」
まお「俺のダークサーベルもデスフレア発射するしwwww」
ゆう「俺のシャインブレードも聖なる光放出してるwwww」
筋肉「グループ作ってるんだけど、お前らもどうだ?」
まお「入ろう」
ヒゲ「ぜひ」
ゆう「やったぜ」
勇者「めっちゃ楽しかったんだけどwww」
戦士「だなwwww予想外wwww」
勇者「ってこんな時間じゃねえか!」
戦士「おやすみなさい。」
国王「始めたばっかだけど、気の合うやつ見つけたなあ。」
国王「楽しかった。」
国王「部下にバレるのはちっとまずいし、時間気をつけないとなあ。」
魔王「ふむ、人間も愉快な奴らなのだな。」
魔王「しかしそれは私も人間だと思われているからだろう。」
魔王「魔族であることは、バレてはならぬな。」
魔王「…でも魔族グラ使っちゃった。」
勇者「こいつは襲ってきたぞ!」
戦士「ああ、奴らは魔族の強盗団だ!」
魔法使い「援護するわ!」
僧侶「回復は任せてください!」
魔王「そうか、勇者がこちらへ向かっているという情報があったのか。」
側近「はい…。」
魔王「迎撃部隊を出すべきか…。しかし勇者とことを構えれば人間も本気を出してくるやもしれん…。」
国王「勇者たちは順調なのか…。」
騎士長「ええ、どうやらもう魔族の領域目前のようです!」
大臣「きっと、やってくださるでしょう!」
司祭「神のお導きです…。」
ゆう「回転斬りwww」
筋肉「マッスルタックルwwww」
ヒゲ「ヒゲヒゲタイフーンwwww」
まお「魔撃、天封殺」
ゆう「痛すぎわろたwww」
まお「うっせばーかwww」
側近「魔王様、配下の不満が高まっております。」
魔王「なんだと!?」
側近「勇者の侵攻を知ってしまったようです…。」
魔王「ぐぬ…勇者の正確な位置が分かれば私自ら出向くのだが…。」
側近「そんな、危険すぎます!それに人間の地域に魔王様が現れたら!」
魔王「私自らが和平を頼めば、人間もわかってくれるのではないだろうか…。」
側近「なんで魔王様は人間の肩を持つのですか!?彼らは無抵抗な私たちに刃を向けているのです!」
魔王「しかし…しかしな…。」
魔王(ゲームの中で接した彼らは、悪い奴とは思えないんだ…。)
大臣「ふう、仕事ひと段落…。なんか息抜きしよう。」
大臣「オンラインハンティング…今話題のゲームかあ。」
-モフチョ さんが ログイン しました-
モフチョ「どんな感じか、やってみるかな…」
モフチョ「うーん…難しいな」
ゆう「こんー」
ヒゲ「ちゃお」
モフチョ「な、なんでしょう?」
筋肉「パーティー組まない?」
モフチョ「えっ」
ヒゲ「今三人でな、あと一人欲しかったんだよね」
モフチョ「始めたばっかで弱いんですけど…」
ゆう「ノープロブレム」
モフチョ「じゃ、じゃあ失礼します」
ヒゲ「そんでワシのスパークロッドがwww」
モフチョ「俺のミートボディには敵わねえwwww」
ゆう「グループへようこそ」
筋肉「歓迎しよう、盛大にな」
モフチョ「もふちょ」
大臣「楽しかった…はまった…。」
大臣「今後も仕事の合間にやろ!」
司祭「半年かけてようやくレベルカンストか。」
司祭「今後もアップデートで上がるらしいけど、大したことはないな。」
司祭「さーて、どっかのグループに入って無双してやるか。」
-みんなで仲良くし隊 に加入申請しました-
-承認されました-
神「用があればいつでも呼べ」
勇者「だ、誰こいつ。」
戦士「なんか承認しちゃったみたいだ。」
勇者「痛すぎだろ…どうするよ。」
戦士「危ないやつっぽいし蹴るか…?」
勇者「でも承認しちゃったのにそれは悪いよな。」
戦士「仲良くなれるか試そう。」
神「ふん」
勇者「痛すぎわろwwww」
戦士「でも強すぎwwww」
ゆう「カンストかよwww」
神「造作もないこと」
筋肉「さっき守ってくれたよな」
神「気まぐれだ」
ゆう「ツンデレktkr」
神「ふん」
筋肉「よろしく」
神「ああ」
司祭「やべえ、照れる。」
司祭「ってか痛くて受け入れてもらえないかと思ったけど、思いのほか受け入れてくれて調子に乗っちゃったわ。」
司祭「まずけりゃ普通に敬語使おうかと思ったけど。」
司祭「私は…ここなら自分が出せるんだ…!」
それからしばらくの月日が経ち
勇者がいよいよ魔族との国境に近づいた
しかし勇者一行は疑問を抱いていた
襲ってくるのは人も魔族も関係ない、野盗や山賊たちばかり
中には人と魔族が仲良くしている町さえあった
彼らは勇者が来たことで、反逆罪に問われることを恐れていた
この町の存在を、国は知らないということになる
ここら一帯が偶然特別だった
その一言では、片付けられなくなっていた
しかし、戦争が起こっているのは事実
それだけで進行をやめるわけにもいかない
国王への報告も、その点に触れることはできなかった…
少し席を外します
戻りました
側近「魔王様、もうダメです…。勇者は魔族の地域へ足を踏み入れようとしています…。」
魔王「どうすればよいのだ…。人間の地域に足を踏み入れてはならぬのだな?」
側近「宣戦布告と同義に捉えられるでしょう…。」
魔王「しかし勇者が魔族の地域に入れば…。」
側近「人間側からの宣戦布告と皆が受け取るでしょう。いいえ、宣戦布告なのです!」
魔王「そう…か。」
側近「何故人間のことまで考えるのですか!彼らは悪魔です!私たちを苦しめる!」
魔王「…。」
側近「どうしたのですか…。」
魔王「側近、お前だけには、話そうと思う。」
側近「…。」
魔王「ゲーム、なんだが…。」
側近「このような緊急事態に…ゲーム、ですか。」
魔王「真面目な話なのだ。私は、人間が悪魔とは思えぬ。」
側近「もう、いいです。」
魔王「待ってくれ!」
側近「…魔王様。」
魔王「最後まで聞いてくれ。納得いかなければ…それでいい。」
側近「…わかりました。」
側近「つまり、人間と気が合ったから悪い人とは思えない?」
魔王「ああ。」
側近「私も、そのゲームは多少やっていますよ。」
魔王「そうだったのか?」
側近「ええ、正直楽しかったです。」
魔王「ならば…。」
側近「でも、彼らは私や魔王様を魔族だと思って接してはいません。」
魔王「…。」
側近「魔族だと知れば、態度を変えてくるでしょう。」
魔王「それは…。」
側近「わかりましたね?」
魔王「あいつらはそんな…。」
側近「もう、いいでしょう。」
魔王「なあ…。」
側近「なんですか。」
魔王「側近はなんで、人間と戦いたがるのだ…?」
側近「…っ!馬鹿っ!」
魔王「ど、どうした…?」
側近「私だって…私だって戦争なんて嫌ですよ!」
魔王「な、ならば…。」
側近「でも彼らは!無抵抗な魔族も殺しているんです!私の家族も…魔王様も殺されてしまう…。」
魔王「側近…。」
側近「死んじゃ…嫌です…。」
魔王「…すまない。お前のことを誤解していた…。」
側近「…撫でてくれたら許します。」
魔王「え?わ、わかった…。」
側近「…グループ、入れますか?」
魔王「急にどうした?」
側近「魔王様がそこまで気を許す人間と話してみたいと思いました。」
魔王「…そうか。」
側近「ただそれだけです。私はまだ信用していませんから。」
魔王「…うむ。」
側近「勇者が攻め込んできたら、人間に対する情は捨ててください。私はもう、捨てる覚悟はあります。」
魔王「…わかったよ。」
そして…
モフチョ「というか魔族がね…人は犯罪者くらいしか魔族と争ったりしてないのに…」
側近「まるで魔族が悪いみたいな言い方ですねこの人…。」
魔王「…ふうむ。」
側近「くぅぅ…。」
魔王「え、あ、側近…。」
側近「あ、あぁ…。」
めいめい「私…魔族です…」
側近「魔王様…申し訳ございませんでした。」
魔王「ん?」
側近「魔族であることを…話してしまいました…。魔王様のタイミングで伝える予定だったのに…。」
魔王「あいつらは受け入れてくれた。気にすることもあるまい。」
側近「はい…。」
魔王「それでな、一つ決心をした。」
側近「なんでしょうか…。」
魔王「和平の手紙を送る。」
側近「本気ですか!?」
魔王「うむ。」
側近「彼らが嘘を言っている可能性は!?」
魔王「ない。」
側近「そんな!?」
魔王「だってな。」
魔王「あいつらとはずっと一緒に戦ってきた。こんな嘘はつくはずがない。」
側近「彼らが私たちの警戒を解こうとしている罠かもしれないのですよ!」
魔王「一魔族だと思っているのにそんなことをしてどうする。」
側近「しかし…!」
魔王「側近、少し顔が緩んでいるぞ?」
側近「…。」
魔王「少し嬉しいのではないか?憎むべき存在がいなくなるかもしれないのだ。」
側近「…少しは。でも、それよりも怖いです…。」
魔王「ふっ、彼らが嘘をついていて、人間が魔族を蹂躙しようとするならば。先陣を切って戦おう。」
側近「魔王様…。」
魔王「だが約束する。愛する者の元へ帰ってくる、とな。」
側近「…はい。」
魔王「側近、今は人間を信じなくていい。私を、信じてくれないか?」
側近「魔王様を…。」
魔王「ああ。私はもし、側近がその目で人間が一方的に侵攻しているのを見たというならばそれを信じる。」
側近「そうだと思っています。しかし、この目で見たことはありません…。」
魔王「では。」
側近「…あなたを、信じます。」
魔王「…ありがとう。」
側近は、誰よりも平和を願っていた
しかし、実家は魔族の国境付近にあり、愛してしまった相手は魔族の王
人間側が襲ってきたならば、どちらも必ず被害に遭う
ゆえに人間を恐れ憎む感情を抑え切れなかった
だが、人間と魔族の戦争は
差別、敵討ちから、お互いに戦争の終わりを望む状況に変わっていた
戦争の恐怖から、犯罪者の存在を一般的に捉えてしまう者が多く
どちらもが、相手はまだ戦争をやめる気がないと誤解していたのである
国王と魔王が同じ日に和平の手紙を送る
この奇跡のような出来事に
人間と魔族の共存する地域はそれぞれの王に報告しなかったことへの謝罪をした
人間に関しては、そのことを黙っていた勇者一行も立ち会った
防衛線の間では、それぞれの兵士が交流試合を行い始め
大半が和平に賛同した
昨日までの緊張がなかったかのように
この事態に、側近は涙せずにはいられなかった
愛する家族、愛する相手に、危険は訪れず
憎みたくはないが、恐れゆえ憎まずにいられなかった相手がいなくなったのだ
これほど幸せなことは、ないと思った
側近(でも今日は…その日と同等かそれ以上に幸せですよ。)
魔王「私は、いかなる時も側近を愛すると誓う。」
勇者「おめでとう、魔王。」
国王「とうとうこの日が来たのじゃな。」
大臣「涙が…涙が止まりません…。」
魔法使い「おめでとう…二人とも…!」
戦士「めでたいな、ああ、めでたいぜ。」
僧侶「二人とも素敵です!」
騎士長「おめでとうございます。」
司祭「では、誓いのキスを。」
側近「魔王様。」
魔王「側近…。」
側近/魔王「愛しています。/愛している。」
勇者「今夜もオンラインハンティングやろーぜ」戦士「おk」
勇者「オフラインハンティング?」戦士「おう」
勇者「オフラインハンティング当日」
騎士長「オンラインハンティング…ですか?」
の続編でした
ネタが尽きた分、タイトルなどから気づけないサプライズにしてみましたが
良い意味で驚いていただけていれば幸いです
今回は過去編でしたが、第一作を思いつきで書いたために整合性が取れているか心配です…
一応今までのを読み返して照らし合わせましたが、それでも矛盾点があったら申し訳ございません…
側近のキャラ…崩壊まではしてないと思います…
ちなみに前々作で魔王が宣言した通り、結婚前提のお付き合いから始めています
今作は前作からそれなりに時間が経過しており、
今回のラストの前に前回ラストで触れた王様の城でオフ会もあったという設定です
ややこしくて申し訳ありません
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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