幼馴染「わたしの椅子になりなさいな」 (10)
幼馴染「ねぇ」
男「はい」
幼馴染「わたしのは?」
男「とは?」
幼馴染「入れといたんだけど」
男「だから何が」
幼馴染「飲みもの。ジュース。冷えたオレンジジュース」
男「......」
幼馴染「ねぇ」
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男「飲んでない」
幼馴染「ふぅーん」ガサゴソ
男「......」
幼馴染「ごみ箱にありました。洗いもせずにキャップまで着いています。このような分別もしない捨てかたをする人、さらにはこの場所に居て冷蔵庫を開ける用がある人はわたしとあなた。つまり──」
男「飲んでない」
幼馴染「......」ガゴッ
男「アルミ缶じゃないんだから潰さなくてもいいかと」
幼馴染「は?」
男「......」ビクッ
幼馴染「謝ったらどう? それとも何かある?」
男「だって、だって!」
幼馴染「また言い訳? したければどうぞ」
男「み......身内だしさ、幼馴染なら僕の自分勝手なわがままを許容できるかもしれないと期待してつい......」
幼馴染「赦されない」
男「ごめんなさい!」
幼馴染「一方的にあなたが悪い。絶対にそう」
男「だよねー僕が絶対に一方的に悪いよねー」
幼馴染「当たり前でしょ! じゃあなんで飲んだの!?」
男「ごめんなさい!」
幼馴染「謝るなっ!」
男「......」
幼馴染「なんで泣くの 」
男「だって......だって」
幼馴染「なに? 聞こえないんだけど」
男「......」
幼馴染「......」
男「......」
幼馴染「早く言ってよ」
男「......僕のせいだ」
幼馴染「なにがー?」
男「優しさ溢れる人を怒らせた原因は全て僕にあります。だから代わりに飲み物を買ってきます。ということで何か買ってきますね」
幼馴染「そうすれば赦されると思ってるんだ。だからあなたは人望がないの。わかる?」
男「わ、分かります」
幼馴染「なら早くしなさい」
男「行ってきまーす」
幼馴染「そっちじゃない! なんで分からないの!?」
男「ひいぃ!」
幼馴染「頭が足りていないんだ......この人は」
男「は......はい」
幼馴染「わたしたちは荷物を置きに来ただけ。だから時間を無駄にしている暇はないの。わかる?」
男「......」
幼馴染「ねぇ」
男「はい」
幼馴染「あなたのせいで、わたしが楽しむ時間が無くなっていくことにイライラしてくるんですけど」
男「じゃあ行こうか」
幼馴染「は? なんでわたしが遅い感じになってんの。そっちが悪いのに」
男「ごめんね」
幼馴染「......もういい。人の話をてんで聞いてないし」スタスタ
男「ちゃんと聞いてるよ」
幼馴染「......」
男「はい、準備できました」
幼馴染「あ、お疲れ」
男「まあどこに行けばいいかよく分からないけど。案内してほしいなぁ」
幼馴染「わざとらしくてウザい」
男「どこに行くの?」
幼馴染「あ、えっと、まずは──」
幼馴染「ねぇ......速い」
男「えっ? そうかな?」
幼馴染「わたしの足が遅いとでも?」
男「い、いやそういうことじゃなくて」
幼馴染「思ってるんだ」
男「一寸たりとも考えたことはないよ。たぶんバッグを持っているのと僕が速く行きたかったからだと」
幼馴染「嘘くさ」
男「ほんとだって」
幼馴染「その言葉は聞き飽きた」
男「持たせてほしいな!」
幼馴染「前に任せたら忘れたよね?」
男「......」
幼馴染「忘れてたんだ」
男「覚えてる」
幼馴染「どうだか」
男「本当です!」
幼馴染「......」ハァ
幼馴染「なにこれ」
男「行列」
幼馴染「は? は? はあ? なんで」
男「......」
幼馴染「なにその目は、わたしのせいだと言いたいの!?」
男「いやそんなことは」
幼馴染「い~や、絶対にそう思ってる! わたしにはわかる」
男「そんなわけない」
幼馴染「あなたがもう少し早くしてくれれば間に合ったかもしれないのに」
男「並んで待つことも楽しめばいいかと思います」
幼馴染「確かにそうだけど限度がある。わたしは我慢できるけどあなたは無理でしょ」
男「へ......平気です」
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