海未「穂乃果がいない」 (134)
海未(それはある日突然起こりました)
ことり「おはよう♪ 海未ちゃん」
海未「おはようございます。ことり」
ことり「今日は暑いね」
海未「そうですね。今年は残暑も厳しくなるようです」
ことり「えー。暑いの苦手だなぁ」
海未「私もどちらかと言えば苦手です」
ことり「平気そうな顔してるけど?」
海未「やせ我慢です」
ことり「ふふっ、海未ちゃんらしいね」
海未「私らしいとはどういう意味でしょう?」
ことり「どうだろうね♪」
海未「ふぅ。それにしても穂乃果は遅いですね。また寝坊ですか?」
ことり「?」
海未「ことり?」
ことり「穂乃果さんって誰?」
海未「……え?」
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海未「またまた、ことりはたまにそう言って冗談を言うから性質が悪いのです」
ことり「? 冗談は言ってないよ?」
海未「穂乃果ですよ? 高坂穂乃果!」
ことり「高坂さん?」
海未「和菓子屋の娘で、犬みたいに人懐っこくて、気が付いたら昼寝をしていて、パンが大好きな穂乃果です!」
ことり「……あぁ! 穂むらの娘さんだよね。あれ? でも、確か雪穂ちゃんって名前じゃ……」
海未(な、何を言っているのですことり!? それじゃあ、穂乃果のことを知らないみたいではないですか!?)
ことり「海未ちゃん?」
海未「穂乃果の携帯に連絡をしてみます」プルルル
音声『この番号は現在使われておりません。番号をお確かめの上──』
コツン
ことり「う、海未ちゃん! 携帯をそんな風に落としたら割れちゃうよ! 海未ちゃん?」
海未(え? なんですか、これは? 穂乃果の番号が使われていない? ことりが穂乃果のことを知らない? ……何の冗談なんですか!?)
ことり「海未ちゃん! 顔が真っ青だよ!?」
海未「……学校に行きます」
ことり「病院に行った方が──」
海未「きっと、皆だったら知っているはずなんです!」
絵里「あら? 海未にことり、おはよう」
ことり「あ、おはようございます、絵里先輩」
海未「……」
絵里「海未!? あなた大丈夫なの? 顔が真っ青よ!?」
ことり「そうなんです……。でも、海未ちゃん、学校に行くって言ってきかなくて」
海未「絵里!」
絵里「は、はい?」
ことり「海未ちゃん、いくら同じμ'sだって言ってもいきなり呼び捨ては駄目だよ」
絵里「ふふっ、良いのよ、ことり。以前から先輩後輩はなしにしようか考えていたんですもの」
海未「穂乃果、絵里は穂乃果を知っていますよね!?」グワッ
絵里「う、海未少し落ち着いて」ガクガク
海未「穂乃果、穂乃果なんです!」
絵里「ええと、私が度忘れしているかもしれないけれど、穂乃果さんの苗字は何だったかしら?」
海未(度忘れ? 穂乃果を度忘れするなんてありえないでしょう!?)クラッ
絵里「海未!?」
ことり「海未ちゃん!?」
海未(穂乃果……)
海未(気が付けば、私は保健室に居ました)
海未(保健室の先生はもう少し休んでいくよう言っていましたが、私には確かめなければならないことがありました)
海未(教室に戻り、ことりに心配され、他の同級生に穂乃果のことを聞き、……絶望した)
海未(穂乃果の机がなかった。あのだらしない寝顔をした机の主が居なかった)
海未(昼休み、私は他のμ'sのメンバーに穂乃果のことを聞いて回った)
海未(……穂乃果なんて、初めから居なかったように誰も知らなかった)
希「なぁ、海未ちゃん。ちょっといいかな?」
海未(気が付けば、放課後。私は部室の椅子の上で微動すらしないで動きを止めていた)
希「穂乃果ちゃんのことなんやけど……」
海未「思い出したのですか!? 希!?」
希「あ、いや、そうやなくて。もう少し詳しく穂乃果ちゃんって言う子のことを教えてもらいたいと思ってな?」
海未(私は一瞬の高揚もすぐに沈み、淡々と穂乃果のことを説明した)
希「うーん。μ'sを始めた最初の一人か……」
凛「園田先輩。μ'sは絢瀬先輩と東條先輩が始めたスクールアイドルですよ」
海未「絵里と希が……?」
絵里「ええ。アライズみたいに有名になれば廃校も阻止できるかと思って」
海未(違う! それは穂乃果が行ったことだ! 何で……なんで……誰も、穂乃果のことを……)
真姫「園田先輩。失礼かもしれませんが、ノイローゼの可能性がありますので、通院を一度おすすめします」
ことり「海未ちゃん、きっと疲れているんだよ。ね? 真姫ちゃんの言うことを聞いてね?」
花陽「凛ちゃん。園田先輩大丈夫かな?」
凛「うん、心配だね」
にこ「……皆、一度黙りなさい」
絵里「ニコ……?」
にこ「ねぇ、海未ちゃん。ここに居る皆の名前を呼んでみて?」
海未「……何を言っているのです? ニコ?」
にこ「大事なことよ。ほら、そっちから順番に」
海未「ことり、花陽、凛、真姫、希、絵里、ニコ……これで良いですか?」
にこ「ありがと。ねぇ、ことり、私の認識では海未は相当お堅い人間で、体育会系の気質よね?」
ことり「はい。海未ちゃんは弓道部に入っていますし」
絵里「なるほど。そういうことね、ニコ」
にこ「そう。この真面目が服を着たような海未ちゃんが、三年生の私たちを意味もなく呼び捨てにするはずないでしょう?」
希「なるほどなぁ」
にこ「ねぇ、海未。どうして私たちを呼び捨てにしているの? あ、別に怒っているわけじゃないのよ。そこにある理由が大切なんだと私は思うから、ね」
海未「……絵里と希がμ'sに加入した時に、絵里が先輩後輩禁止と言い出したんです」
にこ「なるほど、ね。そこも私たちの記憶にないわけね」
絵里「私と希が加入と言うことは、やっぱりμ'sを作ったのはその穂乃果って子なのね」
海未「……やっぱり、とは?」
海未(μ'sを作ったのが穂乃果だとは伝えてあったが、その一言だけ妙に気になった)
絵里「あら……? 自分でもよく分からないけど、そう言っていたのね」
にこ「穂乃果ちゃんの残り香かもね」
希「ニコっち。でも、そうなるとおかしいのはウチら全員と言うことになるで?」
にこ「そういう可能性もあるでしょ? 海未が正常で、私たちが異常だって」
海未「……ニコは私の話を信じてくれるんですか?」
にこ「正直、半信半疑よ? 普通に考えれば穂乃果ちゃんって言う子は居ないと考える方が正しいもの」
海未「……そうですよね」
にこ「でも、海未が真剣な表情で、真に迫る迫力で私たちに聞いて回っていたのよ? 無下にできるわけないでしょ?」
海未「にこ……」
にこ「さあて、こんな不可思議に強いのは誰だったかしら?」
希「ウチやね」
にこ「スピリチュアルパワーでなんとかしなさい」
希「ニコっち、それは無茶ぶり過ぎる」
花陽「あ、あの……」
にこ「ん? 何、花陽?」
花陽「ええと、園田先輩の話とは違うんですが、私も変な記憶と言うか居ないはずの人を覚えているんです」
絵里「花陽、話してみて」
花陽「はい。ええと……私にお兄ちゃんが居たんです。でも、お父さんもお母さんも、凛ちゃんも知らないよね?」
凛「うん。そう言えば、昔もかよちんがそんなことを言っていた気がするよ」
にこ「花陽ちゃんもなのね」
絵里「私も良いかしら?」
希「え? えりちも?」
絵里「そういうわけではないのだけれどね。ねぇ、希」
希「ウチ?」
絵里「μ'sの名付け親は希よね」
希「せやね」
絵里「意味は九人の女神、でも居るのは八人の女神よね?」
希「んー、前にも言ったと思うんやけど、九人目はお客さんのことやで」
にこ「あー、言われてみれば違和感よね」
絵里「でしょ?」
希「え? 九人目がお客さんじゃ駄目なん?」
にこ「いや、別に良いんだけど、しっくりこないのよ」
絵里「メンバーが九人でμ'sと言う方が自然なのよ」
真姫「そうなってくると、園田先輩の件以外にも不確かなことが幾つかある、そう言うことですか?」
にこ「真姫ちゃん、正解」
絵里「海未、穂乃果さんと誰か特定のメンバーでの強い思い出とかあるかしら?」
海未「……穂乃果、にこ、凛ですね」
凛「にゃ?」
海未「三馬鹿でした」
にこ「ちょっと! 海未ちゃん! 怒るわよ!?」
凛「どうせ凛は馬鹿だにゃ。ねぇ、穂乃果ちゃん? ……あれ?」
海未「凛!? 思い出したのですね!?」
凛「え? よく分からないけど、自然に言葉が出た、出ました」
にこ「三馬鹿って言うのは気に入らないけど、これでますます穂乃果ちゃんの信憑性が増してきたわね」
海未(その後、学校が閉まるまでの間、私たちは穂乃果のことを話し合った)
海未(結局、有力だったのは凛の発言くらいで、話題は明日へ持越しとなり、帰宅することになった)
海未(帰り道。何故か私の隣には真姫が居た)
真姫「ねぇ、園田先輩」
海未「何ですか? 真姫?」
真姫「あぁ、やっぱりじれったい! 海未ちゃん」
海未「真姫!? あなた、もしかして!?」
真姫「ごめんなさい。私は穂乃果ちゃんを知っているわ」
海未「何故、黙っていたんですか?」
真姫「イレギュラーだったからよ」
海未「イレギュラー?」
真姫「そう、イレギュラー。たぶん、ここから全て崩れていくわ」
海未「崩れていく?」
真姫「そう遠くない日にあなたもきっと知るわ」
海未「真姫、言っていることが分かりません!」
真姫「困ったら相談してちょうだい。きっと力になれるはずよ。それじゃあ、お休みなさい」
海未「真姫……?」
海未(これ以上、いったい何が起こると言うんです?)
海未(翌日。私は穂乃果のことを、真姫との会話の意味を考え、ほとんど一睡もできていなかった)
ことり「おはよう、海未ちゃん? 凄いクマだけど大丈夫?」
海未「おはようございます、ことり。大丈夫です」
穂乃果「おっはよう! 海未ちゃん、ことりちゃん」
海未「おはようござい──穂乃果っ!?」
ことり「あ、おはよう。って、あれ? どちら様でしょう?」
海未「ことり……?」
穂乃果「えー、ことりちゃん。穂乃果のこと忘れちゃったの?」ウルウル
ことり「ご、ごめんね、穂乃果ちゃん。ちょっと度忘れしちゃった」
穂乃果「もう、ことりちゃんったら?」
ことり「えへへ」
海未(このやり取りを見て、私は始めて疑問を抱く)
海未(穂乃果、あなたは何者なんですか?)
穂乃果(海未ちゃんが疑惑の目で私を見ている)
穂乃果(たった一日『ログアウト』していただけなのに、その間も、どうも彼女は私のことを覚えていたらしい)
穂乃果(ふーん、海未ちゃん凄いじゃん)
穂乃果(少なくとも、昨日の海未ちゃんの行動は行動ルーチンに含まれていない)
穂乃果(『NPC』が意思を持って行動する時代か)
穂乃果(まったく凄いゲームだよ。『ラブライブ! オンライン』は)
穂乃果(さあて、今日も穂乃果として頑張るぞー)
ブツン
穂乃果(え……? 真っ暗……?)
*エラー コネクトが強制解除されます。
*緊急信号受信 プレイヤーの生命維持機能に重大なエラーが発生。
*プレイヤー名『高坂穂乃果』 ログアウト
ことり「あれ? 海未ちゃん、何のお話をしていたんだっけ?」
海未(!? 穂乃果が急に消滅した!?)
*プレイヤー名『高坂穂乃果』ログイン
穂乃果「おはよう、海未ちゃん、ことりちゃん」
ことり「あ、おはよう。穂乃果ちゃん」
海未(これはなんだ? 何が起きているのですか!?)
穂乃果「ねぇ、海未ちゃん」
海未(穂乃果じゃない。姿かたちが同じであっても、一瞬で彼女が別の誰かだと分かった)
穂乃果「海未ちゃんの中身は誰がログインしているの?」
海未(これが、まさか生死をかけた日常の始まりとなるとは夢にも思っていなかった)
続
シリアスな話の時のにこえりまきの安心感は異常。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 ???
海未 プレイヤー? にこ ???
ことり NPC 絵里 ???
真姫 プレイヤー(不明) 希 ???
凛 ???
花陽(『ラブライブ! オンライン』漫画やアニメにあるようなヴァーチャルリアリティを体験できる夢のゲーム)
花陽(このゲームの本来の目的は精神・身体に重病を抱えた人間のために作られたもの)
花陽(五感のどこかが失われていても脳に直接アクセスするこのゲームには関係なく、本来は機能しない器官も正常に再現する)
花陽(それはとても画期的なものではあったのだけれど、過去のフィクションの例から人体への悪影響も数多のごとく想像された)
花陽(しかし、その負の面を払しょくするように医療面で多大な成果を上げる)
花陽(……小泉兄妹はその医療行為のケーステスターだった)
花陽(兄は生まれつき五感に脆弱を抱え、妹は精神に多大な傷を負っていた)
花陽(『ラブライブ! オンライン』の前バージョン。そこで兄と妹は初めて言葉を交わした)
花陽(そして、その中には現実以上の家族があって、兄妹は徐々にその傷を癒していく)
花陽(結果から言ってしまえば、兄は亡くなった)
花陽(でも、それは苦痛にまみれた死ではなく、穏やかな一生懸命に生きた最期だった)
花陽(だから、このゲームが『ラブライン! オンライン』になってからも、私は兄の残り香を残すように過ごしていた)
花陽(『ラブライブ! オンライン』は廃校の危機を迎えた国立音ノ木坂学院の生徒となって、スクールアイドルを目指すゲーム)
花陽(最大の魅力は現実の世界に限りなく近づけたリアリティで、中には本来の目的であるスクールアイドルは目指さず、一住民として過ごす人々も少なくなかった)
花陽(医療用として兼用している人の大半の目的はそれだった)
花陽(私も最初はそんな人々の一人だったけれど、穂乃果ちゃんというカリスマプレイヤーに誘われ、スクールアイドルμ'sのメンバーとなる)
花陽(お兄ちゃん。私、ゲームの中だけど、こんなに立派になったんだよ)
花陽(今の自分の姿を兄に見て欲しかったけれど、どこかで見守ってくれていると自己完結している)
花陽(充実している毎日だった。しかし、昨日からこのゲームにはエラーが発生していた)
花陽(原因は不明だが、穂乃果ちゃんが強制ログアウトされ、NPCたちの記憶から彼女が消えた)
花陽(NPCだと思っていた海未ちゃんだけど、あの様子だとプレイヤーだったのだと思う)
花陽(早朝、エラーが修正されたというアナウンスがあった)
花陽(また穏やかな日々が続いていく。そう思っていたのに──)
*エラー コネクトが強制解除されます。
*緊急信号受信 プレイヤーの生命維持機能に重大なエラーが発生。
*プレイヤー名『小泉花陽』 ログアウト
花陽(初めてのことだった。基本常時ゲームに接続されている私がログアウトされることはない)
花陽(だから、私は随分久しぶりとなる現実へと帰ってきた)
花陽「ま……ぶし……ぃ……」
花陽(地声はとても細くなっていた。スクールアイドルとして歌って踊っていた人と同一とはとても思えない)
??「おはようございます。小泉花陽」
花陽「……だ……れぇ……せん……せ……ぃ……?」
??「ふふっ。残念ながら違いますよ。少しあなたのアカウントを借りようとしている者です」
花陽(この人は何を言っているのだろうか? 私のアカウント? それを借りる?)
花陽(そこにどんな意味を見いだせるのか私には分からない。でも、感じるのは恐怖。この人は良くない人だ……)
??「大丈夫ですよ。あなたが死ぬ前には現実に戻るつもりですから。それまではゆっくり眠りなさい」
花陽(チクリとした鈍痛が首元にし、私は意識を手放した──)
*プレイヤー名『小泉花陽』ログイン
花陽「ふふっ」
凛「あ、かよちん。おはようにゃ!」
花陽「おはようございます。凛」
凛「? かよちんの話し方、海未ちゃんみたいだよ?」
花陽「ふふふ、失礼失礼。おはよう、凛ちゃん」
凛「……誰?」
花陽「うふふふ、小泉花陽だよ、凛ちゃん」
凛「かよちんじゃない! 誰なの!?」
花陽「ふーん、NPCの分際で私に意見するのですか?」
凛「聞いているのは、凛だよ!」
花陽「あはははっ、面白い面白い! 最高だよ、凛ちゃん!」
凛「ッ!?」キッ
花陽「さあ、これからどうしようか? 凛ちゃん?」
続
伊達に幼馴染をやっていない凛ちゃん。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 プレイヤー(不明)
海未 プレイヤー? にこ ???
ことり NPC 絵里 ???
真姫 プレイヤー(不明) 希 ???
凛 ??? ログアウト 穂乃果・花陽
にこ(私は『ラブライブ! オンライン』のNPCだった)
にこ(それを知ったのはいつからだっただろうか? たぶん、初めからかしらね)
にこ(私の思考はゲームにプログラムされた思考ルーチンでしかない)
にこ(と今までは思っていた)
にこ(けれど、昨日の海未ちゃんの様子を見て、私たちNPCもプレイヤーと同等の知能を持つようになっていたのが分かった)
にこ(まぁ、言ってみれば自立なのかしら)
にこ(ただ、昨日一日穂乃果ちゃんのデータが消えていたから、完全にプレイヤーと同等と言うわけではないのだろうけどね)
にこ(さて、穂乃果ちゃんがこの世界に戻ってきたのは確認できた。でも、一瞬だけど再ログインしていた形跡がある)
にこ(どういうことなの?)
にこ(と言うのも、このゲームは再ログインまで数分のラグが発生する。プレイヤーの脳に負担をかけないための処理だったはず)
にこ(それにもかかわらず、穂乃果ちゃんが再ログインしたということは……)
真姫「ニコちゃん!」
にこ「真姫ちゃん?」
真姫「想像していたよりも、崩壊が早いわ!」
にこ「え? 崩壊? なに言ってんの?」
真姫「あなた、自己を持つNPCでしょ? 分からないの?」
にこ「!?」
にこ(真姫ちゃん、なんでそれを?)
真姫「『何で?』って顔してるけど、そういう面倒くさいのは後にしてくれない」
にこ「あんた、先輩に対する口の聞き方がね──」
真姫「先輩後輩禁止でしょ!」
にこ「まぁ、そうね」
にこ「それでニコはどうすれば良いって言うのよ?」
真姫「穂乃果と花陽のアカウントが乗っ取られた」
にこ「はぁ!?」
真姫「穂乃果と花陽のアカウントが乗っ取られた」
にこ「いや、聞こえたわよ! そうじゃなくて、どういうことよ!?」
真姫「穂乃果と花陽の中身が別の誰かになっているってことよ」
にこ「分かるけど……何か問題あるの?」
真姫「穂乃果と花陽は生命維持装置とこのゲームが結ばれているの!」
にこ「……はぁっ!?」
真姫「私の患者の命にかかわるの! ニコちゃん手伝って!」
にこ「え、あんた、もしかしてこのゲームの管理者なの?」
真姫「……そうよ。もっとも今は管理権限もログアウト機能も剥奪されているけどね」
にこ「どういうことよ!?」
真姫「それは私の台詞よ!」
真姫「昨日、穂乃果ちゃんがログアウトした時から権限が剥奪されてしまっていたの」
にこ「え? それじゃあ、犯人は穂乃果ちゃん?」
真姫「無理。あの子にはできない」
にこ(……ああ、そういう重い病気なのね)
真姫「現実世界が今どうなっているのか分からないけど、マズイことになっているのは間違いないわ」
真姫「昨日はただのバグだと楽観していたけど、危惧の方が現実になってしまうなんてまったく私らしくないわ!」
にこ「まぁ、真姫ちゃん。落ち着きなさいよ」
真姫「えっ? 落ち着いてるわよ、めっちゃくっちゃ!」
にこ「いやいやいや、動揺しているでしょ?」
真姫「……はぁ、ごめん。落ち着いたわ」
にこ「それじゃあ、状況をもう少し詳しく教えて」
真姫「良いわ」
真姫「──っていうわけなのよ」
にこ「マズイわね」
真姫「ええ」
にこ「どっちか分からないけど、片方は間違いないわね」
真姫「ええ、私もそうだと思うわ」
にこ「とにかく捕まえるわよ!」
真姫「そうね。それじゃあ、私は花陽の方へ行くわ」
にこ「私は穂乃果ちゃんの方ね」
真姫「ええ。でも、気をつけなさいね」
にこ「……ニコでどうにかなるのかしらね?」
真姫「私にも同じことが言えるわ」
にこ「まぁ、そうね。それじゃあ、止めるわよ」
にこ「現実世界の海未ちゃんを!」
続
にこまき。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 プレイヤー(不明)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 ???
真姫 プレイヤー(真姫) 希 ???
凛 ??? ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
元はダンロン2かな
>>30
あ、今回は元ネタなしです
あえて言うなら、SAOとか.hackとかの技術が利用されている世界ですね
まじか
海未ちゃんやラブライブオンラインの使用目的とか色々似すぎてた
SAOでも医療目的に作られたメディキュボイドってのがあったね
希「ねぇ、希」
絵里「何? えりち?」
希「穂乃果はどうなったのかしら?」
絵里「うーん、NPCは覚えていないみたいやし、何かのバグみたいやね?」
希「長年、プレイしているけど、こういうのは初めてよね?」
絵里「そうやね」
希「まぁ、穂乃果も昨日はただ眠っているだけだったようだし、運営もしっかりしているから、修正はもうされているのでしょうけどね」
絵里「なら、ウチらのすることはいつものように日常を過ごすことやね」
希「ええ。それにしても、このゲーム、とてもハラショーよね」
絵里「でも、一昔くらいには実現できてた技術らしいで」
希「当時は安全面で危険があったんでしょ?」
絵里「せやね。それを乗り越えたからこそ、ウチらは楽しく日常を送れるんやしね」
希「ふふっ。こんな風に入れ替わることもできるわね」
絵里「誰か気付いている人いるんかね? ウチらのこと」
希「うーん、真姫かしらね」
絵里「ああ、あの子、たぶん管理者やよね?」
希「え? そうなの?」
むずかしいかんじつかうときはふりがな付けて
絵里「いや、確証はないで」
希「ぽいってだけなのね」
絵里「せやね」
希「それにしても、私たちの夢がこんな形で叶うなんてね」
絵里「……うん。穂乃果ちゃんがあんなことになって、海未ちゃんも、ね」
希「穂乃果、海未、希、私。μ'sのメンバーには全然足りていなかったけれど、楽しかったわよね」
絵里「うん、本当に楽しかった……」
希「でも、あの後、あのままだったら誰一人幸せになれなかったわ」
絵里「でも、ウチらは『ラブライブ! オンライン』に出会えた」
希「奇跡よね。音ノ木坂が舞台で、私たちの理想とするメンバーが居て……何よりも穂乃果が歌って踊ることができる」
絵里「うん……うん……」ポロポロ
希「もう泣かないの。お互いに約束したでしょ?」
絵里「せやったね」
希「もう……」
希「そう言えば、現実の方の音ノ木坂に凛に似ている子が居なかった?」
絵里「ん? ああ、あの目つきの悪い子?」
希「ええ。一度話しかけたことがあるんだけど、『何ですか?』って怖い声で返されたことがあるわ」
絵里「えりち、勇気あんね」
希「まぁ、生徒会長ですし」
絵里「ウチなんて副会長やで」
希「ふふっ」
絵里「あーあ、今日も良い一日になりそうやね」
ニャー
絵里「……黒猫が目の前を通り過ぎたんやけど」
希「私なんて下駄の鼻緒が切れたわ」
絵里「何で下駄はいとるん!? えりち!?」
希「え? 気分?」
絵里「ウチのイメージがぁ」
希「良くなる?」
絵里「なわけあるかい!」
>>37
気を付けます
今のところ重篤(じゅうとく)とかでしょうか
希「ふふっ、冗談よ──ってあれ、凛と花陽かしら?」
絵里「おおっと、こっからはウチはえりちやで」
希「うん、ごほん。なーなー、えりちー」
絵里「なんか私がバカっぽいわ」
希「バカっぽいとはなんやん?」
絵里「って待って、何だか様子がおかしいわ」
希「……あかん!」
絵里「えりち!?」
希「あれは花陽じゃないわ!」
絵里「え?」
希「希、急ぐわよ!」
絵里「……了解や!」
続
のぞえりは入れ替わり。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 プレイヤー(不明)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(希)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(絵里)
凛 ??? ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
>>42
あ、昨日時点では絵里(絵里)、希(希)と言う感じで一日毎に入れ替わっています
凛(隣の家の小泉さんには私と同い年の女の子が居るらしい)
凛(私の記憶には残っていないけど、その女の子と私は一緒に遊んだことがあるそうだ)
凛(でも、小泉さんの家には上にお兄さんが居て、そのお兄さんは生まれつき身体が弱かったそうだ)
凛(お兄さんのお世話に疲れていたのか、小泉さん夫婦は女の子に虐待……をしていたらしい)
凛(気づいた時には、その女の子の心は壊れてしまっていた)
凛(そんな時に医療機器として新しいヴァーチャルリアリティ?という機械が開発された)
凛(その機械でお兄さんと女の子はその傷を癒していく。きっと、小泉さん夫妻もそうだったんだろう)
凛(お兄さんは安らかに亡くなったらしい)
凛(お母さんはそれを幸せなことだと言ったけど、当時の凛には今一納得がいっていなかった)
凛(だって、死んじゃうと何にもなくなるんだよ?)
凛(そう思うと、私が女の子の友達だったら、また違う結末があったんじゃないかと今でも後悔している)
凛(まぁ、この歳になってそれが傲慢な考えだと気付いたけど)
凛(その女の子と友達になりたいと私が願ったのは、きっと私が一人ぼっちだったから)
凛(私は友達を作るのが下手だった。と言うか一人も居ない)
凛(元々目つきが悪いので誰も近づいて来ない。まぁ、いじめられなかっただけマシだったのかな?)
凛(そんな私も高校生になり、いつも通り一人の学生生活を送っていた)
凛(どっかのおせっかいな生徒会長が一度だけ話しかけてくれたけど、私はそれを拒絶してしまった)
凛(と言うかあれ、絵里ちゃんだよね?)
凛(しかも、希ちゃんもこの世界と同じように副会長やっているし)
凛(そう、私の世界が一変する出来事が起きた)
凛(小泉さん家の女の子も使っている医療兼用ゲーム『ラブライブ! オンライン』が発売されたのだ)
凛(ぼっちだった私にお金の使い道なんて特になかったから、それなりに高額なそのゲームを買うことができた)
凛(そして、私は小泉さん家の女の子、小泉花陽ちゃんと出会った)
凛(出会いは偶然だった。同じクラスで隣の席で、名前を見たら小泉花陽で)
凛(私は現実の私とは真逆に明るく花陽ちゃんに話しかけた)
凛『星空凛にゃ! 友達になろ?』
凛(『にゃ』とか自分は何を言っているんだろうと思ったが、口が滑ってしまったのだから仕方がない)
凛(……こうして私の猫キャラが誕生した。じゃなくて、かよちんはこう返してくれた)
花陽『う、うん。私は小泉花陽。よろしくね、凛ちゃん』
凛(ひまわりみたいな温かい笑顔だった。その出会いは私の一生の思い出だ)
凛『花陽ちゃん……花陽ちゃん……』
花陽『どうしたの? 凛ちゃん』
凛『むっ、ピンときたにゃ!』
花陽『え? 何?』
凛『かよちん! 花陽ちゃんは今日からかよちんにゃ!』
花陽『ふふっ、花(か)陽(よう)からとったの?』
凛『にゃ!』
凛(現実の自分とは思えない程のフットワーク。このゲームは凄いと改めて思った)
凛(そんな幸せな毎日を送っていた私たちは穂乃果ちゃんと出会った。μ'sに入れられた。凛よりフットワークの軽い人が居たよ!?)
凛(でも、とても充実した毎日を送ることができた)
凛(これが青春なのかなとも思った)
凛(隣でいつもかよちんが笑っている)
凛(私はそれで満足だ)
凛(それなのに──)
花陽?「ふふっ、凛ちゃん。どうしたの?」
凛「お前は誰だっ!?」
凛(私はこいつを許さない。かよちんの姿をしているこいつを絶対に許さない!)
続
りんぱな。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 プレイヤー(不明)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(希)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(絵里)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
海未「ログイン? 何を言っているのですか?」
穂乃果「ログインはログインだよ。この『ラブライブ! オンライン』のね」
海未(『ラブライブ! オンライン』? この人は何を言っているのでしょう? ラブライブはスクールアイドルの大会ですよ?)
海未(いえ、それよりも)
海未「あなたは誰なんですか?」
穂乃果「ふふっ、穂乃果だよ」
海未「違います。あなたは穂乃果ではありません!」
穂乃果「それが分かるということは、あなたはプレイヤーでしょう?」
海未「プレイヤー?」
穂乃果「またとぼけちゃって。どこから海未さんのアバターを手に入れたの?」
海未「あなたの言っていることはさっぱり理解できません」
穂乃果「ふーん。あくまで白を切るんだ……」
ことり「う、海未ちゃん? 穂乃果ちゃん?」
穂乃果「黙りなよ。NPC」
ことり「え?」
穂乃果「このくだらないゲームのくだらないキャラクターごときがっ!」
ことり「え? え……?」
海未「意味は分かりません。ですが、ことりを侮辱することは許しません!」
穂乃果「NPCごときにカッとなっちゃって」クスクス
海未「何がおかしいのです!?」
穂乃果「全部。でも、いっか。とりあえず学校行こうよ」
海未「本物の穂乃果を返してください!」
穂乃果「私が穂乃果だよ? どこからどう見ても穂乃果だよ?」
海未「中身が違います。あなたのように邪悪ではありません」
穂乃果「邪悪、邪悪だって」ププッ
海未「あなたって人は!!」
ことり「良いんだよ……海未ちゃん。学校行こ?」
穂乃果「このNPCも言っているでしょ? 学校。遅刻するよ?」
海未「くっ……」
ことり「大丈夫、私は大丈夫だから」
海未「ことり……」
穂乃果「こんな偽物、何の意味があるんだろう、ね?」
海未(間違いありません。この人は私を挑発しています。それならば)
海未「分かりました。ことり、学校に行きますよ」
ことり「うん!」
穂乃果「あれ? 穂乃果は良いの?」
ことり「穂乃果ちゃんも行こ?」
穂乃果「うん、分かったよNPC」
にこ「海未ちゃんっ!」ゼーハーゼーハー
ことり「ニコちゃん!? どうしたの!?」
にこ「はぁはぁはぁ……ことりちゃんも無事?」
ことり「う、うん、大丈夫だけど……」
海未「ニコ? どうしてここに?」
にこ「そこに居る穂乃果ちゃんの偽物に用があってね」キッ
穂乃果「へぇ? あなたは誰がログインしているの?」
にこ「おあいにくさま。ニコは立派なNPCよ!」
穂乃果「冗談言わないで! あなたのようなNPCが居るわけないじゃない!」
にこ「……ああ、こっちは外れか」
穂乃果「何、私を無視しているのよ!?」
にこ「外れ、大外れ。と言うことは花陽ちゃんが海未ちゃんなのね」
穂乃果「!? なんでそれを!?」
にこ「はい、バカ見っけ! 花陽ちゃんが海未ちゃんで確定かぁ」ハァ
穂乃果「くっ!?」
海未「ニコ……あなたもいったい何を言っているのですか?」
にこ「うーん、説明してあげたいけど、真姫ちゃんが気になるから、後にしても良い?」
海未「真姫!? 真姫にも何かあったんですか!?」
にこ「と言うより危険に飛び込んでいる? みたいな感じね」
穂乃果「へぇ、海未さんのところにあのクズ医者が向かっているのぉ?」
にこ「こいつ、いちいちムカつくわね」
海未「私のところに真姫? 医者? 何なんですかぁ!?」
海未(皆何を言っているのか本当に分かりません!)
ことり「大丈夫。海未ちゃんは海未ちゃんだから。自分に自信をもって」
海未「?」
ことり「ことりは海未ちゃんが海未ちゃんだってきちんと知っているから」
海未「……正直分かりませんが、今はことりのことを信じます」
ことり「ありがとう」ニコッ
穂乃果「なに、あの茶番?」
にこ「んー? あんたの性根より随分と綺麗なんじゃない?」
穂乃果「……あなたの中身が分かったらただじゃおかないから」
にこ「はー、ニコはNPCだって言っているでしょ?」
穂乃果「うるさい!」
海未(昨日は穂乃果の存在が消え、今日は別の穂乃果が現れて、NPCとかログインとかわけの分からないことばかり)
海未(だけど、私が知っているのは──)
海未「ことり、行きましょう」
ことり「うん♪」
海未(ことりが大切な幼馴染だと言うこと)
続
それぞれの話がようやく一つにまとまっていく。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 プレイヤー(海未)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(希)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(絵里)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
希「はいはい、のんたんが通りまーす」
凛「希ちゃん!?」
絵里「私も居るわよ?」
凛「絵里ちゃんも!?」
花陽「……絵里に希ですか」
希「そういうあなたは花陽ではないようね?」
花陽「……なるほど。希が絵里で絵里が希ですか」
凛「え……?」
絵里「ごめんね。今日はウチとえりち入れ替わってログインしているん」
凛「東條先輩……?」
絵里「いつも通りのんたんでええで」
希「いや、凛はのんたんって呼ばないでしょ」
真姫「はぁはぁはぁはぁ……」
絵里「うわっ!? 真姫ちゃん、ボロボロやん」
真姫「ゼーハーゼーハー、わ、私は、頭脳派、だから、よ……はぁはぁはぁ……」
花陽「来たんですか、偽善者!」
真姫「はぁはぁ……どうやら私の方が正解だったようね」
凛「? 真姫ちゃん、何なの? 何が起きているの?」
花陽「凛、相変わらず頭が弱いですね」
凛「うるさい! 偽物!」
花陽「知っていますよ。学校では一人ぼっちなんですよね? だから、このゲームに逃げ込んだんですよね?」
凛「うるさいっ!!」
希「あら? 私の大切な後輩にそんな言葉をかけるなんて、いくら海未でも許さないわよ!」
花陽「……まぁ、バレますよね」
絵里「でも、一つだけ分からんよ。いつもの海未ちゃんと全然違うやん。こんなんだとあの頃の──」
花陽「何を言っているのです、希? 私はあの時から、穂乃果がああなった時から、変わっていませんよっ!!」
絵里「海未ちゃん……」
花陽「良いですね! あなたたちは楽しそうで!」
希「海未……」
花陽「この仮初めの世界で! 仮初めの穂乃果と過ごして!!」
希「違うわ! この世界はただの仮初めの世界なんかじゃないわ! それに穂乃果だって──」
花陽「黙りなさい!」
凛「……海未ちゃん、なの……?」
花陽「ええ、私は海未です! 穂乃果の親友の海未ですっ!!」
凛「だって……海未ちゃんはいつも……」
花陽「汚らわしい! 何でこの世界には私の偽物が居るんですか!? 誰がログインしているんですか!?」
希「え……?」
絵里「なんやて……?」
希「何言っているのよ、海未! この世界であなたはいつも楽しそうにしていたじゃない!?」
絵里「そう、そうやで! 今更何を言っとるん!?」
花陽「はぁ? 私が好き好んでこんなゲームをすると思っているのですか?」
希「じゃ、じゃあ、あの海未は?」
絵里「誰、なん?」
真姫「──海未よ」
花陽「はぁ? 海未は私ですよ」
真姫「それも正しいわね」
花陽「イライラさせないでください! はっきり言いなさい!」
真姫「……大体把握したわ。とりあえず、皆で学校に行って、授業でも受けましょう?」
花陽「ふざけたことを言わないでください!」
真姫「ふっ」
花陽「何を笑って──」
真姫「あなたは花陽に害を加えるつもりはないんでしょ?」
花陽「……」
凛「何が、何なの……?」
絵里「ウチもちょっと理解が追い付いてないわ」
希「……現実の花陽の安全が保障されたんでしょ?」
真姫「あら? 流石絵里ね」
希「身体は希だけれどね」
真姫「それじゃあ、今日も普通の日々を送りましょう」
花陽「誰があなたの言うことをきくと」
真姫「ねぇ、海未。あなた自身、本当はどうすれば良いのか分からないのでしょう?」
花陽「そんなことは──」
真姫「それじゃあ、これからどうするの? 花陽ちゃんの身体を使って何をするの?」
花陽「それは……」
真姫「あなたは自分の不満をぶちまけたいのでしょう? それなら、この世界での一日を体験してからにしなさい。そうすれば見えるものも変わるかもしれないわよ?」
花陽「……」
凛「ねぇ、真姫ちゃん、ちょっと待って。凛はこの偽かよちんが誰であろうと許さないよ!」
真姫「あー、あなたも頭に血が上りやすいわね」
凛「凛は冷静だよ!」
真姫「はいはい。冷静冷静」
凛「真姫ちゃん!」
絵里「はい、ワシワシの刑やで」ワシワシワシワシ
凛「や、止めて! 希ちゃん!!」
真姫「ねぇ、海未。この世界、あなたが思っているよりは尊いのよ」
花陽「……勝手に言ってなさい」
真姫「はいはい。それじゃあ、皆、学校に行くわよ」
希「分かったわ」
絵里「せやね」
凛「」ビクビクッ
花陽「……くだらない……」
続
海未ちゃんサイドと凛ちゃんサイドが遂に交わる!?
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(不明) 花陽 プレイヤー(海未)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(希)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(絵里)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
にこ「あ、真姫ちゃん」
真姫「あら? にこちゃん」
にこ「お互い無事だったようね」
真姫「まぁね。このマッキーに任せて安心よ」
花陽「……」ギリッ
穂乃果「海未さん!」
花陽「……ああ、雪穂ですか」
海未「え? 海未は私ですが?」
花陽「……っ……、こいつッ!!」ブンッ
海未「は、花陽!? 何をするんです!?」
花陽「私が本物の海未よ!!」
海未「はぁ? 意味が分かりません」
真姫「はいはい。そう言う青春は放課後にやりなさい」
花陽「くっ……」
海未「青春ですか?」
にこ「ねぇ、真姫ちゃん。あなた実は結構良い歳でしょ?」
真姫「な、何を言っているのニコちゃん!?」
穂乃果「この女、三十路ですよ」
真姫「くぅ……!? 何てこと言うんですか! 高坂さん!」
希「へぇ、真姫の素ってそういう感じなのね」
絵里「反応が三十路っぽいんよ」
ことり「あれ? 絵里ちゃんと希ちゃんが反対だね」
にこ「あぁ、この二人、入れ替わりでログインしているのよ」
ことり「なるほど♪」
海未「あの……今日随分出てくるログインと言う単語なんですが、どういう意味なんですか?」
ことり「海未ちゃんはまだ知らなくていいんだよ」
海未「? まだ、ですか?」
にこ「まぁ、いずれ分かるものよ」
海未「はぁ……」
真姫「それじゃあ、海未ちゃんに雪穂ちゃん」
花陽「……何ですか?」
穂乃果「……話しかけないでください」
海未「海未は私ですが?」
真姫「あ、本体の方の海未ちゃんは良いのよ」
海未「はぁ……(本体の方? どういう方角ですか?)」
真姫「魂的な海未ちゃんは私と一緒に一年生の教室に」
花陽「……」
海未(魂的な?)
真姫「高坂さんはことりちゃんと一緒に二年生の教室に行って」
穂乃果「……NPCごときとですか?」
真姫「NPCごときね……。それじゃあ、肉体的な海未ちゃんと一緒に行って」
海未(肉体的な? マッチョですか、私?)ズーン
穂乃果「まぁ、良いです」
真姫「三年生組はいつも通りに。あと、絵里と希はできれば途中で入れ替わって。ややこしいわ、色々」
絵里「了解やで」
希「分かったわ」
にこ「ふっ、このニコニーに任せておきなさい!」
真姫「ニコニーさん意味が分からないわ」
にこ「にこぉ……」
ことり「♪」
海未「ことり、上機嫌ですね?」
ことり「うん♪ たぶん、ことりが生まれてきたのはこの日のためだから」
海未「え……?」
凛「希ちゃん! ワシワシはもう止めてにゃ!」
絵里「おおう。凛ちゃん、復活やね」
真姫「はーい。それじゃあ、皆、それぞれの日常に戻りなさい」
にこ「はいはい」
希「そうね」
絵里「そやね」
ことり「うん♪」
凛「納得はしていないけど、とりあえず分かったにゃ」
穂乃果「……ふん」
花陽「……くだらないことを」
海未(……私には分からないことがたくさん起きている。その結果がたぶん今この瞬間なのだ)
海未(それに、さっきのことりの言葉……)
海未(もしかしたら、私も──)
続
ようやく全員判明?
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(雪穂) 花陽 プレイヤー(海未)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(絵里)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(希)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
雪穂『お姉ちゃんが事故にあった!?』
雪穂『じょ、冗談、だよね……?』
雪穂『おねえ、ちゃん……?』
真姫『……高坂さん。できる限りの処置はしました。……ですが、ですがっ……! 力不足でした……』
雪穂『お姉ちゃんが何をしたって言うの!? こんなの、こんなの……酷いよ!?』
海未『ほ、のか……っ……!』ガリッ
絵里『……ほのか……』ポロポロ
希『ほのか、ちゃん……』
雪穂(ある日、お姉ちゃんは事故にあいました)
雪穂(お姉ちゃんの友達三人の目の前で事故にあいました)
雪穂(植物人間って知っていますか?)
雪穂(それがお姉ちゃんなんです……)
雪穂『それが、お姉ちゃん、なん、です……!』
雪穂(偽りの世界のお姉ちゃんの席に、私は居る)
雪穂(隣の席は、海未さんの偽物だ)
雪穂(それ以外は全員NPCだろう)
雪穂(こんな偽物だらけにどんな意味があるの?)
穂乃果『グーグー』
海未『こらっ! 穂乃果! 起きなさい!』
雪穂「えっ……!?」
穂乃果『ごめん、海未ちゃんごめん、許して』テヘペロ
海未『反省していませんね』ゴゴゴォ
雪穂「なにこれ……?」
ことり『穂乃果ちゃん、海未ちゃん、先生が』コソコソ
穂乃果『海未ちゃん、前、前』ヒッシ
海未『誤魔化そうとしたって、そうはいきませんよ! ってあれ? 先生……?』
雪穂「なんなのよ……?」
穂乃果『……』
穂乃果『幸せだな……。海未ちゃんが居て、ことりちゃんが居て』
穂乃果『絵里ちゃんが居て、希ちゃんが居て、ニコちゃんが居る』
穂乃果『まきりんぱなも居るね』
穂乃果『あとは、雪穂が居れば完璧かな?』
穂乃果『でも、あと一年待たないといけないかぁ……』
穂乃果『雪穂には感謝だね。毎日、お見舞いに来てくれる』
穂乃果『穂乃果は言葉を出せないけど、見ることも、こっちから触ることもできないけど』
穂乃果『いつも感謝しているよ』
穂乃果『いつか、この気持ちが雪穂に伝われば、なぁ』
雪穂「……ッ……」ポロポロポロ
雪穂(これは、お姉ちゃんの記憶……?)
雪穂(……変なの……身体だけなのに、なんでお姉ちゃんの記憶があるの……?)
穂乃果『雪穂』
穂乃果『ぶーぶー、ゆきほー』
穂乃果『えぇ!? 音ノ木坂行かないの!?』
穂乃果『あー、これはもう駄目かな……?』
穂乃果『本当に走馬灯って見えるんだ……』
穂乃果『雪穂』
穂乃果『ねぇ、雪穂。穂乃果は精一杯生きられたかな?』
雪穂「……あきらめ、ない、でよ! おねえちゃん……!!」
雪穂「ばか……きらい……」
穂乃果『おぉっ! 穂乃果生きてるよ!』
穂乃果『あ、でも身体動かないや』
穂乃果『退屈だな』
雪穂(こんな状況でもおねえちゃんはどこまでもおねえちゃんなの……?)
穂乃果『あー、マイクテスマイクテス』
真姫『穂乃果ちゃん、普通にして良いのよ』
穂乃果『あ、そうなんだ』
穂乃果『いえーい!』
真姫『クスッ。はしゃがないの』
穂乃果『はーい、西木野先生!』
真姫『真姫で良いわよ』
穂乃果『え? でも、先生、三十路じゃ……』
真姫『歳のことは良いでしょ!?』
雪穂「……」クスッ
穂乃果『いやー、穂乃果は幸せ者だなぁ』
真姫『……ごめんなさい。私にはこれが精一杯だったの……』
穂乃果『違う違う! 真姫ちゃん! 穂乃果は本当に嬉しいんだよ?』
穂乃果『現実の穂乃果は確かに動けないけど、ここだと思いっきり動ける』
穂乃果『現実の穂乃果も雪穂や海未ちゃんがお見舞いに来てくれる』
穂乃果『こんな幸せ者ってなかなか居ないよ?』
真姫『……ありがとう……穂乃果ちゃん……』
雪穂「……」
雪穂(そっか……そっか)
雪穂(お姉ちゃんは幸せだったんだね……)
雪穂(私が勝手に決めつけていただけなんだね……)
雪穂(なーんだ……なーんだ……)
雪穂(西木野先生も良い人じゃん……)
雪穂(……バカみたい……私……)
海未「雪穂」
雪穂「……」
海未「良いんですよ」
雪穂「……」
海未「もう、泣いても良いんです……」
雪穂「……ッ……」
海未「だって、ここはそういう場所なんですから」
雪穂「海未さん……」
海未「……」ヨシヨシ
雪穂「……ぅ……うわーん!!……」
海未(そうですか、私はそのために居たのですね)
海未(穂乃果、ごめんなさい)
海未(もう私はあなたに会えないかもしれません)
海未(でも、あなたの傍には、こんなにも素敵な人たちが居るのですから、大丈夫、ですよね?)
続
穂乃果の想いは雪穂に届く。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(雪穂) 花陽 プレイヤー(海未)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(絵里)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(希)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
ことり(ことりはこの『ラブライブ! オンライン』の初めてのNPCだ)
ことり(正確にはその前の医療機器としてのみ作られた頃の)
ことり(患者さんの誰とでも仲良く、患者さんの傍にいつでも居られるように)
ことり(そんな風にことりは作られている)
ことり(だから、μ'sが主人公でない音ノ木坂にもことりは居るし)
ことり(いくらだって代わりが効く)
ことり(だから、ことりには心がない。人間にはあるという心がない)
ことり(平気だよ。だってことりなんだから)
ことり(でも……でも、何でだろう?)
ことり(穂乃果ちゃんと海未ちゃんと一緒に居る時が一番胸が熱くなる)
ことり(ことりは壊れちゃったのかな?)
ことり(このバグは取り除かないといけないのかな?)
ことり(嫌だな。それは嫌だな)
ことり(ことりも人間だったらなぁ……)
ことり(あっ! でも、それじゃあ、穂乃果ちゃんとも海未ちゃんとも仲良くなれない!?)
ことり(それじゃあ、このままでもいっか)
ことり(……)
ことり(あっ!? 穂乃果ちゃん、じゃない雪穂ちゃんが泣いている!?)
ことり(海未ちゃんの胸の中で……。良いなぁ、うらやましいなぁ)
ことり(!? あれ? なんかことり変なことを考えちゃった)
ことり(うーん、よしっ!)
ことり(気合を入れなおして、雪穂ちゃんにもこの世界を楽しんでもらわなきゃ)
ことり(それがことりの役割なんだから)
ことり(えへへ……)
ことり(変なの。嬉しいのに、頑張ろうと気合を入れたのに)
ことり(なんで、涙なんて、出てくるんだろう……?)ポロポロポロ
ことり(これもバグなのかな?)ポロポロポロ
続
誰よりも優しい彼女は誰も知らないところで涙を流す。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(雪穂) 花陽 プレイヤー(海未)
海未 NPC? にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(絵里)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(希)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
花陽「こらっ! 凛! 授業はしっかり聞きなさい!」
凛「ご、ごめんなさいにゃ!」
絵里「あら? すっかり、二人とも仲良くなっている?」
花陽「ありえません」
凛「ありえないにゃ」
海未「息ぴったりですね、二人とも」
花陽「……」
凛「……」
花陽・凛「フンッ!」
希「はらしょー」
ことり「あれ? 希ちゃんだよね?」
希「えりちの真似」
絵里「ちょっと、希」ワイノワイノ
穂乃果「に、西木野先生!」
真姫「はい。高坂さん」
穂乃果「ごめんなさい!!」
真姫「? あなたが謝る必要はないのよ?」
穂乃果「私、誤解していました。先生のこと……」
真姫「いいえ。私はあなたのお姉さんを助けることができなかった駄目医師よ」
穂乃果「違うんです! おねえちゃんの記憶が……おねえちゃんがあんなに幸せで……」
穂乃果「だから、絶対……おねえちゃんは、救われていて……」
穂乃果「西木野先生に、助けてもらって……!」
穂乃果「ごめんなさい! ごめんなさい! 西木野先生……ッ!」
真姫「ありがとう。高坂さん」
真姫「あなたのその言葉だけで、私は何度も救われるわ」
穂乃果「にしきの、せんせいっ!!」
花陽(……そうですか、雪穂は救われましたか……)
海未「あの、花陽……?」
花陽「海未は私ですが?」ムカッ
海未「それでは、海未。……これ変ですよね? 自分の名前呼んでいるだけですよね?」
花陽「……何ですか?」
海未「少し、話しませんか?」
花陽「……良いでしょう。私もあなたが、誰のログインで存在しているのか知りたかったところです」
にこ「──これなら、海未同士で解決しそうね」
絵里「ニコ、一つ聞いても良い?」
にこ「良いわよ? スリーサイズ以外だったら」
希「ニコっち、それはあかん。ウチら同性やから意味ないで」
にこ「突っ込まないでよ!」
絵里「まったく、二人とも……。それで、ニコ」
にこ「はいはい」
絵里「あなた、NPCなの?」
にこ「そうよ」
希「こんなに人間らしいのに?」
にこ「あら? 嬉しいこと言うわね」
絵里「もしかして冗談で言ってる?」
にこ「そんなわけないでしょ? ニコは本当にNPCよ」
にこ「ついでに言えば、ことりちゃんも、海未ちゃんも、ね」
希「……ことりちゃんは分かる。あの子は良い子過ぎるから」
絵里「ええ、そうね」
にこ「え? ニコは悪い子?」
絵里「そうじゃなくて、ことりは人に尽くし過ぎなのよ」
にこ「まぁ、それがあの子の役割だからね」
にこ「それも、今はどうなのかしらね……」チラッ
ことり「? ニコちゃん?」
にこ「ああ、気にしないで。そのまま凛ちゃんとお話してて」
ことり「うん♪」
希「ええ子や」
絵里「本当に」
にこ「それで、海未ちゃんだっけ?」
絵里「ええ。あの子もNPCなの?」
にこ「ええ、間違いないわよ。と言うか花陽でログインしているのが海未なんだから当たり前でしょ?」
希「いや、でも、それやと……」
にこ「なに? 現実世界での、かつての海未ちゃんに似すぎている?」
絵里「ニコ! 何でそれを!?」
にこ「まぁ、ニコはNPCの中でも特に新しいから、凄いのよ」
希「え、突っ込みどころ?」
にこ「うっさい! エセ関西弁!」
希「ひどい……」
絵里「それよりも、なんでニコは私たちの事情まで把握しているの?」
にこ「把握していないわよ。でも、今日一日の会話で大体予想がつくでしょ?」
希「流石最新鋭」
にこ「あったりまえでしょ! と言うのは一旦置いておいて」
にこ「あんたたちがあの海未ちゃんを本当の海未だと誤解していた理由、それは──」
花陽「それで、話とは何ですか?」
海未「そうですね。実は話と言うよりはお願いですね」
花陽「お願い……?」
海未「はい」
花陽「あなた、本当に何者?」
海未「園田海未ですよ」
花陽「ここは冗談を言う場面じゃないわ」
海未「いえ、冗談ではありません。かつての在りし日の園田海未、そのものです」
花陽「……どういう意味?」
海未「薄々勘付いているのではないですか?」
花陽「……いえ、……まさか──!?」
海未「そのまさかですよ、私」
にこ「──絵里ちゃんと希ちゃん、二人がこのゲームに初めてログインした日、今の海未ちゃんが置き去りにされてしまったのよ」
希「……どういう、意味なん?」
にこ「海未ちゃんもその日、ログインしていた。ただそれだけの話よ」
絵里「ええ、だから海未のアバターが存在している」
にこ「そうね。このゲーム、初ログインは必ず本人のアバターが作成されるものね」
絵里「私もそう思って今日まで、海未と一緒にμ'sで活動をしてきたわ。でも、海未本人が花陽の姿で否定してきた」
にこ「……海未ちゃんはね、現実の方の海未ちゃんよ? アバターと一緒に大切なものをたくさん置いて行ってしまったの」
希「大切なもの?」
にこ「海未ちゃんらしさって言った方が良いかしら? 花陽の中に居る海未ちゃんは少し私たちの知っている海未ちゃんとズレている。そう思わない?」
絵里「……言われてみれば確かに」
希「言葉遣いが時々、海未ちゃんじゃない?」
にこ「希ちゃん正解。海未ちゃんはね、一度ログインしたものの、この世界を激しく拒絶したの」
絵里「何故……?」
にこ「あー、これ言って良いのかしら?」
希「ニコっちの判断に任せるで」
にこ「うーん……。良いわ、その代わり海未ちゃんを大切にしなさいよ」
絵里「ええ」
希「もちろんや」
にこ「……海未ちゃんにはお姉さんが居たの」
絵里・希「え?」
にこ「多分、二人が海未ちゃんと出会う前の話よ。それにこんな話、軽々しくできるものじゃないしね」
にこ「『ラブライブ! オンライン』その一段階前、要はプロトタイプ。そのケーステスターが海未ちゃんのお姉さん」
にこ「私も情報でしか知らないけど、海未ちゃんのお姉さんは安らかに眠れたはずよ」
にこ「でも、海未ちゃんは、そうは思わなかった」
にこ「言ってみれば、この空間自体が海未ちゃんの敵なのよ」
絵里「……知らなかった……」
希「……ウチは、なんて残酷な、ことを……」
にこ「知らなかったから仕方がない。これはそういう部類のお話よ?」
にこ「だって、海未ちゃん自身が一度ログインしているのだから、一瞬でも『ここ』に対して前向きな気持ちだったはずよ」
にこ「……たぶん、大切な友達二人と一緒だったから。穂乃果ちゃんと話をしたかったから。そんなところかしらね」
にこ「まぁ、なに? あんたたちがどうしても罪を背負いたいんだったら、一つ言えることはあるわよ?」
絵里「お願い、教えてちょうだい」
希「ニコちゃん、お願いします」
にこ「はぁ、まさか希ちゃんにニコちゃんって呼ばれる日が来るとはね。良いわ、教えてあげる」
にこ「あんたらの罪、それはこの世界の海未ちゃんに安心して、現実世界の海未ちゃんをないがしろにしたこと」
にこ「……二人とも顔、青白いわよ? 続けても良いの?」
絵里「ええ……」
希「お願い……」
にこ「……要するに、あんたたち二人はこの世界に依存し過ぎなの」
にこ「確かにね、この世界は設定で実時間でも、数倍速の時間でも可能だから、あんたらが丸一日この世界に居るわけじゃないのは知っている」
にこ「でもね、海未ちゃんは現実の学校に来ないでしょ?」
にこ「だって、海未ちゃんの時間は穂乃果ちゃんが事故に遭った時から止まっているから」
にこ「もし、後悔しているのなら、もし、海未ちゃんとこれからも友達で居たいのなら、あんたらの罪、背負いなさい。重いわよ?」
にこ「はぁ、なんでニコがこんな説教臭いこと言わなければならないのよ……」
にこ「まったく……。美人二人が台無しじゃない。良いわよ、声出しても。ここは元々医療機関、そういう場所でしょ?」
絵里「……ごめん、なさい……海未……」
希「……許して、なんて……言えへんよ……」
にこ「はいはい」ポンポン
にこ「海未ちゃん同士の話が終わったら、その気持ち、海未ちゃんに伝えてあげて」
にこ「大丈夫。何とかなる。このニコニーが保障してあげる」
にこ「……はぁ。大きな子供を二人持つと大変よね」
にこ(存分に泣きなさい、二人とも)
にこ(それが新しい明日を創る糧となるはずよ)
続
うちのにこちゃんはいつもこういう役回りです。
【ステータス情報】
穂乃果 プレイヤー(雪穂) 花陽 プレイヤー(海未)
海未 NPC にこ NPC
ことり NPC 絵里 プレイヤー(絵里)
真姫 プレイヤー(真姫) 希 プレイヤー(希)
凛 プレイヤー(凛) ログアウト 穂乃果・花陽(共に重篤)
残りは海未海未と、エピローグのみですが、
多分明日になると思います
即興で書いているので、なかなか辛い
では。
100get!
海未「そのまさかですよ、私」
花陽「あなた、本当にNPCなの!?」
海未「初めからそう言っていますよ?」
花陽「ありえない。……こんなにも私に近いNPCなんて……」
海未「近いと言うか、当時の前向きな私自身と言った方が良いでしょうか?」
花陽「……」
海未「私は、あの日ログインをしました。ですが、姉の記憶が蘇ってしまい……拒絶」
海未「そうして、ここにその直前の私がアバターと一緒に残されてしまいました」
花陽「……」
海未「もっとも、それを知ったのはさっきなんですが」
花陽「……は?」
海未「ええとですね、私は正直、本人だと思っていたんですよ。さっきまで」
海未「ですが、雪穂の横顔が穂乃果と重なった時、気付いてしまったんです」
海未「あ、私はNPCだったんだ、って」
海未「どうしてか、ですか? 何ででしょうね。……きっと、雪穂の泣き顔を私は記憶の中でしか知らなかったからでしょうかね」
海未「そこから一気に現実感が喪失していき、残ったのはNPCと気付いた私だけでした」
花陽「……あなた、本当に園田海未ですね」
海未「はい、海未は私ですが?」
花陽「……誰かの悪影響を受けていませんか?」
海未「そうかもしれませんね」
花陽「はぁ……完敗です」
海未「おぉ、いつの間にか勝っていました」
花陽「まぁ、最初から結果は見えていたのです」
海未「と言うと?」
花陽「西木野院長、真姫のお父さんが協力してくれていたんです」
海未「なるほど」
花陽「ですので、穂乃果も花陽も安全です。真姫の管理者権限ももう復活しているのではないでしょうか?」
海未「ふむふむ」
花陽「どうせ引きこもっていた私の行動なんて、頭の回転が速い人なら分かり切っていたんです」
海未「それを初めから理解しているのも、私ではないですか?」
花陽「そうですね。結果は分かっていました。私はそこに至る過程を欲していたのです」
海未「……それだけ前向きだからこそ、再度この世界に来ることができたんですね」
花陽「自分に言われると、なかなか心をえぐられますね」
海未「ところで私?」
花陽「何ですか? 私?」
海未「私には時間がないようです」
花陽「……」
海未「まぁ、気付きますよね。どんどんあなたはかつての園田海未に近づいている」
海未「それは、私の役目の終わりを示します」
海未「バトンを渡しても良いですか?」
花陽「……駄目、です」
海未「何故です?」
花陽「この世界の園田海未は間違いなくあなただからです」
海未「元々はあなたのものです」
花陽「……穂乃果のことは良いのですか?」
海未「正直に言えば未練ですね」
花陽「それなら!」
海未「いえ、本当に時間がないのです。ほらっ」スウー
花陽「身体が透けている……!?」
海未「泡沫の終わりです。園田海未、あとは託します」
花陽「駄目です! それはあなたの役割です」
海未「だからこそ、託します」
花陽「……もう、駄目なんですか……?」
海未「はい」
海未(終わりは本当に呆気ない。生死を懸けた日常とはこのことですね)
海未(穂乃果、あなたは皆と新しい未来を開いてください)
海未(そして、私。色んな人から怒られてください。それがあなたの罰です)
海未(……ああ、楽しい日々でした……)
花陽「……何が、色んな人から怒られてくださいですか……」
花陽「あなたはどこまでも、園田海未だったんですね……」
続
;エピローグ
花陽(突然ですが、小泉花陽です)
花陽(事の顛末は全て海未ちゃんから聞きました)
花陽(あと、凄く謝られました)
花陽(私は別に気にしていないんだけどなぁ)
凛「かよちん! かよちん!」
花陽「なあに? 凛ちゃん?」
凛「ラブライブにゃ!」
花陽「うわぁ!? 思い出させないでー」ダレカタスケテー
花陽(なんと、なんと私たちμ'sがラブライブに出場しているんです!?)
花陽(あのアライズを破ったんです! 凄いんです!)
凛「ねぇ、かよちん」
花陽「なあに、凛ちゃん」ガタガタガタガタ
凛「……凄い震えているね、かよちん」
花陽「そ、そうかな」ガタガタガタガタ
凛「……凛はいつまでもかよちんの親友だよ」
花陽(凛ちゃんがそうささやくと私の震えは一瞬で収まりました)
花陽「うん! 花陽もいつまでも凛ちゃんの親友だよ!」
穂乃果(突然ですが、高坂穂乃果です)
穂乃果(え? さっき花陽ちゃんがやった? もーうるさいなぁ、海未ちゃんは)
穂乃果(ご、ごめん、怒らないでぇ)
穂乃果(と言うか、海未ちゃんは皆に酷いことしたよね?)
穂乃果(あ、そんな震えるウサギみたいにならないで!)
穂乃果(……そんなわけで、穂乃果はここまでのいきさつを全て知っています)
穂乃果(一言で言うと、穂乃果は幸せ者だということです)
穂乃果(誰かに愛されることってとても素敵だね、って漫画で読んだかな?)
穂乃果(人はいずれ死にます。それが早いか遅いかただそれだけです)
穂乃果(穂乃果みたいにラッキーな人は延長戦があるけどね!)
穂乃果(ねぇ、もう一人の海未ちゃん。私は今ラブライブに出場しています)
穂乃果(皆の夢だったライブライブだよ!)
穂乃果(終わったら、また会おうね! 海未ちゃん!)
にこ(ラブライブ優勝したわよ。一応、報告)
にこ(それにしてもここも寂しくなったもんね)
にこ(人の命はいずれ尽きる。穂乃果も言っていたかしら?)
にこ(まぁ、仕方がないわ)
にこ(それにしても、人間って罪深いわね)
にこ(人間は死すれど、NPCは死なず)
にこ(それって、一つの拷問じゃない?)
にこ(ねぇ、ことりちゃん?)
ことり(あはは。ことりには少し難しいかな?)
にこ(まぁ、あんたはそれでも良いわよ)
にこ(はぁ、また海未でも現れないかしらね)
にこ(え? 海未は私ですが?)
にこ(……。空しい。やめよう)
真姫「あのねぇ、流行ってるの? その悲劇のヒロイン的な芸?」
にこ「あ、真姫ちゃんじゃない? 定期メンテナンス?」
真姫「そうよ」
にこ「よしっ。μ'sミュージックスタート!」
真姫「あのねぇ……。私の歳を考えなさいよ」ギャーギャー
にこ(まぁ、ニコは元気でやってるわ。そっちはどう? ──?)
海未(やはり、この物語を閉めるのは私の役割でしょうね)
海未(結果から言いましょう。私が最後に残りました)
海未(憎まれっ子世にはばかるでしょうか?)
海未(あ、絵里と希には感謝しています。凛とも仲良くなれました)
海未(真姫も歳の割には頑張っていました)
真姫「あの、聞こえているんだけど?」
海未「え? 真姫邪魔です。今テープレコーダーに記録しているんですよ?」
真姫「古っ!? あなたいつの時代の人よ?」
海未「真姫よりは若いですよ」
真姫「何? 喧嘩売っているの?」
希「まぁまぁ、真姫ちゃん落ち着いて」
絵里「海未もからかわないの」
花陽「突然ですが、小泉花陽です!」
凛「そんなかよちんも凛は好きにゃ」
海未「あ、凛は無事ボッチ脱出しました」
凛「海未ちゃん、うるさい!」
ことり「あはは」
にこ「何? 今日は宴会?」
穂乃果「ニコちゃん、オジさんぽいよ」
雪穂「お姉ちゃん、失礼だよ!」
海未「……」
ことり(海未ちゃん、眠っているのかな?)
にこ(疲れたんでしょ、休ませてあげなさい)
ことり(笑ってる。良い夢を見てるのかな?)
にこ(きっとそうね)
海未「……」
海未(お疲れ様でした、私)
海未(あなたのバトンをしっかり引き継げましたか?)
海未(そうですね……)
海未(園田海未が満足できていたなら、そうなんじゃないですか?)
海未(そうですか。それなら良いんです)
海未(お休みなさい)
海未(はい。おやすみなさい)
海未「……」
海未(ねぇ、私? あなたは今、どんな夢を見ていますか?)
終
これにて終了です。10レスくらいで終わらせようと思ったらこれですよ
分かりづらい、意味が分からないとかあったと思います。即興なので許してください
説教くさいのもごめんなさい。話の都合です。色々試しています
エピローグはどういうことですか? これは邪推しても良いです
お付き合いいただいた方、ありがとうございました
またどこかで出会えましたなら
では
補足
↓序盤でプレイヤーが穂乃果を認識していない理由
バグのせいです。世界がおかしくならないようにする処置でも良いです
真姫が覚えていたのは、管理者だったから
海未は存在自体が特殊だったから
乙
乙です
過去作あったら知りたいです
お昼休みにこっそり
>>120、121
ありがとうございます
>>122
古いのだと穂乃果「悲しみに二つの祝福を」(元ネタ有)、穂乃果「ねぇ穂乃果ちゃん?」穂乃果「なあに穂乃果ちゃん?」
最近のだと穂乃果「恋愛チャッカー?」、ハイパージャンボ~、星空凛「部長!」、星空凛「矢澤先輩」
実験作(駄目だったやつ)だと真姫「マッチ売りの少女」、『μ's戦隊! リリーホワイト』
当分書く予定がないので、全部上げてみました
結構書いてますね、自分
てっきり現実の皆も実年齢同じだと思ってたから真姫ちゃん三十路で少しだけ混乱したわww
でもどんどんパーツが埋まっていく感じは面白かった!乙!
感想いっぱいで凄い嬉しいです
>>128 前作のコピペですが
古いのだと穂乃果「悲しみに二つの祝福を」(元ネタ有)、穂乃果「ねぇ穂乃果ちゃん?」穂乃果「なあに? 穂乃果ちゃん?」
最近のだと穂乃果「恋愛チャッカー?」、ハイパージャンボ~、星空凛「部長!」、星空凛「矢澤先輩」
実験作(駄目だったやつ)だと真姫「マッチ売りの少女」、『μ's戦隊! リリーホワイト』、海未「穂乃果はもういない」、(そこそこ)海未「穂乃果がいない」
*注意:各作出来に差あり。作風独特。 読みやすいのは凛ちゃんシリーズ 恋愛~、シリアスなのは悲しみ~、海未ちゃんシリーズ
>>130
スレ間違いました
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