モバP「俺の妹がこんなに清純令嬢なわけがない」 (34)

とある夕方 事務所からの帰り道


P「あー、今日も一日疲れたなあ」

P「家に帰ってゆっくり休もう」

P「狭いアパートの一室でも、心安らぐ俺の城だからな」


P「ふう、到着……あれ?」

P「部屋に明かりがついてる……朝に消し忘れたか」


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ガチャ


??「おかえりなさい。兄さん」

P「……ああ。なんだ、お前が来てたのか」

??「様子を見に来たらいないようだったので、合鍵で入らせていただきました」

P「そっか」

??「………」

P「ん、どうした」

??「『おかえりなさい』の返事がまだだな~と思いまして」

P「ああ、悪い悪い。ひとり暮らしだとそういう習慣を忘れそうになるんだ」

P「ただいま、ゆかり」

ゆかり「はい。お仕事お疲れ様でした、兄さん」ニコッ

芸能事務所で働き始めて2年目となる俺には、15歳の妹がいる。

水本ゆかり。フルートを吹くのが趣味で、自慢じゃないがかわいい女の子だ。

うちの家は裕福で、俺もゆかりも大事に育てられた。その甲斐あってか、わが妹は振る舞いからして上品な雰囲気が漂っている。

……俺? 俺はまあ、男だから……正直、気品はそんなにないと思っている。

ゆかり「最近、食生活が偏っていませんか?」

P「どうしてそう思う」

ゆかり「台所に、カップラーメンなどの空き容器が多かったので」

P「めざといな」

ゆかり「ふふ、妹ですから」

P「妹関係あるのか?」


大学を出た俺がひとり暮らしを始めて以降、ゆかりは学校帰りなどにちょくちょく俺のアパートを訪ねるようになった。

もともと両親に合鍵は渡していたので、俺が不在の時はそれを使って中で待っていることも多い。

ゆかり「一応、お母さんには報告しておきます」

P「えー。またお小言言われるなあ……見逃してくれないか?」

ゆかり「私にも、兄さんの生活の様子を観察するという役目があるので」

P「うへえ」

ゆかり「お金の問題があるなら、いつでも頼っていいんですよ? お父さんもそう言っていましたし……」

P「いや。別に金がないからカップラーメン食べてるわけじゃないんだ。単純に、家に帰った後は疲れて、料理とかいろいろ面倒くさがるだけで」

P「だいたい、社会人になったのに親に金をせびるのって相当カッコ悪いだろう」

P「大学までは好き勝手させてもらえたんだし、これからはできるだけ自分の力で頑張らないとな」

ゆかり「そうですか……なんだか、兄さんが頼もしく見えます」

P「いつかは父さんくらい背中がでかい男になりたいもんだ」

ゆかり「ふふっ。頑張ってくださいね。応援しています」

ゆかり「最近、お仕事のほうは順調ですか?」

P「まあまあかな。あんまり大きくない事務所だけど、みんなで頑張ってるよ」

ゆかり「アイドルの方達のお世話、ちゃんとできていますか」

ゆかり「兄さん、たまにデリカシーに欠けているところがあるので、少し心配です」

P「………大丈夫だよ」

ゆかり「少し気になる間ですね」

P「うっ……努力します」

とりあえずここで中断。続きは夜が明けてからにします
なんとなくおわかりかと思いますがゆかりさんはまだ事務所に所属していません

P「ゆかり。晩御飯はまだだよな」

ゆかり「ええ」

P「なら、今日はどっか食べに行くか。といっても、そんなに高いとこは無理だが」

ゆかり「無理をして高級なお店を選ぶ必要はありません。兄さんが普段利用するような場所でいい……というより、むしろそちらのほうが気になりますから」

P「なら、事務所の近くのファミレスにでも行ってみるか。デザートのプリンがおいしいんだ」

ゆかり「プリンですか。楽しみですね」

ところかわってファミレス


P「今日は俺のおごりだから、好きなもの頼んでくれ」

ゆかり「いいんですか?」

P「ファミレスでくらい、全額支払って兄貴の風格みたいなものを漂わせたいんだよ」

ゆかり「ふふ、兄さんは見栄っ張りですね」

ゆかり「どれにしましょうか……たくさんメニューがあって悩みます」



みく「あれ、Pチャンだにゃ」

卯月「こんにちは、プロデューサーさん!」

P「やあ、奇遇だな。君達もここで夕食?」

ゆかり「……兄さん。ひょっとしてこの方達が」

P「ああ。俺が今担当しているアイドルの子達だ」

P「紹介するよ。俺の妹のゆかりだ」

ゆかり「はじめまして。水本ゆかりと申します。いつも兄がお世話になっております」

卯月「い、妹さんですか! これはこれはご丁寧に……島村卯月です。こちらこそ、プロデューサーさんにはいつもお世話になっています!」

みく「前川みくだよ、よろしくね。Pチャンにこんなかわいい妹がいるなんて知らなかったにゃ」

卯月「私、はじめは新しいアイドルの子かと思っちゃいました」

ゆかり「アイドル、ですか」

P「よかったな、ゆかり。容姿を褒められてるぞ」

ゆかり「アイドルの方にそう言っていただけるのは、光栄ですね」

みく「……なんだか上品な子だにゃ。本当にPチャンの妹?」

P「どういう意味だそれは」

みく「べっつに~。ね、卯月チャン」

卯月「ええっ!? な、なんで私に振るんですかー!」

P「そうかそうか。卯月も俺には品がないと思っているのか」

卯月「そ、そんなこと思っていませんっ」

ゆかり「くすっ……元気な人達ですね」

ゆかり「兄さんも、楽しそうでなによりです」

帰り道


ゆかり「さすがはアイドル、という感じでした」

P「あの二人のことか?」

ゆかり「はい。どういえばいいのかわかりませんけど……おーら? のようなものがあったと思います」

P「ま、あの子達はデビューしてからそれなりに経ってるし、その前も養成所で下積みしてるからな」

ゆかり「ずっと前から、夢に向かって頑張っているんですね」

ゆかり「私とそう年は変わらないはずなのに、すごいです」

P「ゆかりくらいの年頃の子は、まだ目標も決まってないのが普通だよ。俺だってそうだったし」

ゆかり「そうでしょうか」

P「学生のうちは、いろんなことに手を出して、いろんなことを知るっていうのも大事だからな」

ゆかり「………」

ゆかり「兄さんは、もう夢や目標は決まりましたか?」

P「俺か? 俺はもう大人だからな、一応決まってる」

P「卯月やみく達が、一人前のアイドルになる手伝いをしてやりたい。今は、これかな」

ゆかり「なるほど」

P「なんならお前もアイドルになるか?」

ゆかり「えっ?」

P「なんてな。冗談だよ」

ゆかり「もう……驚かさないでください」

P「でも、ゆかりに資質がありそうっていうのは事実だけどな。見た目はいいし、音感もあるだろ」

P「ちょっと運動に不安があるのが難点か。ははっ」

ゆかり「………」

別の日


ゆかり「兄さんの家に来てみたけど……まだ帰って来ていないみたい」

ゆかり「……先に入って、少し片付けでもしてあげましょうか。あまり掃除には自信がありませんが」


パタパタ、ガサガサ


ゆかり「本棚に本を並べるくらいなら、私にもできます」フンス

ゆかり「あとは――」


ピンポーン


ゆかり「……誰でしょうか」

ゆかり「はい」インターホンポチー

卯月『あれ? 女の人の声?』

卯月『ここってプロデューサーさんの部屋じゃ……』

ゆかり「……ええと。島村卯月さん、ですか?」

卯月『あ……もしかして、ゆかりちゃん?』

ややあって


ゆかり「紅茶です。どうぞ」

卯月「ありがとうございます! わあ、いい香り……」

ゆかり「家からお気に入りの茶葉を持ってきたんです。味は保証しますよ」

ゆかり「それで、兄に何か用がおありで?」

卯月「あ、そうでした。これ、お菓子の包みをもらったんですけど、プロデューサーさんにもおすそ分けしようと」

卯月「事務所にはいなかったので、もう帰ったのかなと思ってここに来たんですけど……」

ゆかり「どこかを散歩しているのかもしれません。兄さん、そういうことが結構好きですから」

卯月「へえ、そうなんですか」

ゆかり「あの、島村さん」

卯月「卯月でいいですよ」

ゆかり「あ、はい。では卯月さん。ひとつ、お聞きしたいことがあるのですが」

卯月「なんでしょう」

ゆかり「卯月さんは……どうして、アイドルを志されたのでしょう」

卯月「アイドルを目指した理由、ですか?」

卯月「うーん、そうですねー……いろいろありすぎて、なかなか説明しづらいんですけど」

卯月「一言で言うなら、キラキラ輝いていたから、でしょうか」

ゆかり「輝いていた……?」

卯月「小さい頃に見た、アイドルのステージがすっごく綺麗に見えて、私もあの場所に立ちたいなって思って。そんな単純な思いから始まって、今では本物のアイドルになれました。まだ駆け出しの新人ですけど」

卯月「だから、プロデューサーさんには感謝してるんです」

卯月「養成所にいた私を見つけて、夢を叶えてくれたんですから」

卯月「今も一生懸命プロデュースしてくれていますし、私もそれに応えられるよう頑張らなきゃって」

卯月「あと、私のファンの人達にも……って、すみません。なんか勝手に熱くなって語り過ぎちゃいました」

ゆかり「いいえ。……それを聞いたら、兄も喜ぶと思います」

ゆかり「よいお話を、聞かせてもらいました」

P「ふう、ちょっとぶらぶらしすぎたかな……って、また部屋に明かりがついてる」

P「ゆかりが来てるのか。結構待たせちゃったかな」

P「ただいまー」ガチャ

P「……あれ」



ゆかり「……すう」

P「俺のベッドで寝てる……待ちくたびれたのか」

P「悪いことしたな」

ゆかり「……んぅ……にいさん?」

P「起きたか。ごめんな、ちょっとその辺ぶらぶらしてて――おわっ」

ゆかり「にいさんも、一緒に眠りますか……?」ポワポワ

P「お、おい。ベッドに引きずりこむな」

P「(こいつ、寝ぼけてるといろいろ突拍子のないことしだすんだよなあ)」

ゆかり「覚えていますかあ、にいさん……?」ポワポワ

ゆかり「昔はこうして、よく一緒に寝ていましたよね」

P「……そうだったな」

P「お前、寝つきの悪い日はいつも俺の布団にもぐりこんできてさ」

ゆかり「夜が、怖かったんです……だから、誰かのそばにいたくて」

ゆかり「にいさんの隣には、あたたかくて、おちつきました」

ゆかり「今も、あまり変わりませんね……」ギュッ

P「うおう、大胆だな」

ゆかり「先ほど、卯月さんがいらしてました」

P「卯月が?」

ゆかり「にいさん、卯月さんに感謝されてるんですね……」

ゆかり「もう、私だけのにいさんではないみたいで……ちょっとだけ、寂しいです」

P「……そういえば、昔のゆかりはお兄ちゃんっ子だったなあ」

P「いっつも俺の後ろをついて回ってた」

ゆかり「ふふ……でも、寂しいだけじゃないんです。うれしいような気もして」

ゆかり「私のにいさんは、ちょっと頼りないところもあるけれど、いい人ですよって。そう自慢できるから」

P「お前の期待に応えられるような兄ちゃんにならないとな」

ゆかり「がんばってください……私も……」

P「(ゆかりの意識がきちんと覚醒した後、俺はびっくりするような話を聞かされた)」

P「アイドルになりたいだって?」

ゆかり「はい」

ゆかり「兄さんも言っていましたよね。私には、資質があると」

P「それはそうだけど……急にどうした」

ゆかり「ただ学生生活を送るだけではなく、新しいことに挑戦したくなったんです」

ゆかり「私にも、きらびやかな舞台に憧れる想いはありますから」

P「大変だぞ。学校との両立もあるし」

ゆかり「わかっています。お父さんやお母さんに迷惑をかけるだろうことも……でも、私は」

P「……わかった」

ゆかり「許してくれるんですか」

P「お前、意外と気が強いもんな。それがあれば、なんとかなるかもしれない」

P「というか、ゆかりがアイドルやるかどうかはゆかりの自由だ。父さんや母さんはともかく、俺の許可は必要ない」

ゆかり「……ありがとうございます。お父さんとお母さんに許してもらえたら、オーディションなどを調べてみます」

P「あー、待て待て。実はうちの事務所、そろそろ新人をスカウトしようかという話になっていたんだ」

P「うまくいけば、うちで面倒見られることになるかも」

ゆかり「本当ですか? そうなったら、とてもうれしいですっ」

後日。両親の許可も得られたゆかりは、晴れてうちの事務所の一員となっていた。

ゆかり「兄さん……いえ、プロデューサーさんとお呼びした方が?」

P「好きな方でいいよ。どうせ一部の人間はもう俺達の関係を知ってるわけだし」

ゆかり「わかりました」

P「まずは、同じ新人ふたりと一緒に、レッスンに励んでくれ」

有香「ゆかりちゃーん、早く行きましょう!」

法子「限定ドーナツが売りきれちゃいますよー!」

P「ほら、呼んでるぞ」

ゆかり「はい」

ゆかり「あの、兄さん」

P「なんだ?」


ゆかり「これからも、よろしくお願いしますね」

ゆかり「私、今でもお兄ちゃんっ子ですから」


おしまい

アイチャレでゆかり嬢の魅力に気づいたのですが、最近特にSSが増えている様子もなかったので自分で書きました
お付き合いいただきありがとうございます

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