【ラブライブ!】真姫「夢を見る夢を見る」 (147)

ラブライブSSです。地の文過多シリアス気味。
苦手な方はブラウザバックでどうぞ。

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眠い目をこする。
本日十六時締め切りの講義のレポートが二つほど残っている。
伸びをしながら午前二時を指す時計を睨みつけた。

こんな時は諦めて眠ってしまうのも、一つの手だ。
そうして朝早く起きて、大学に行く前にレポートを仕上げる。
私もこの大学に入って二カ月、慣れたものだった。
慣れ過ぎている自分に、少し腹が立たなくもない。
高校生活――バラ色という形容が全く過剰でない――をあれだけ満喫していたのに、いざそれが終われば私たちはバラバラになる運命だったのか。

高校の友達は一生のものとなるとはよく聞かれる話で、私もそれを当然期待していたのだけれど、そうはうまくいかないものだった。
あれだけ楽しかった高校生活、一年目。
前部長に指名された、頼りない花陽を支え、下級生を率いてライブに精を出した二年目。
ディフェンジングチャンピオンはならなかったが、なんとも幸せなひとときだった。
 
二年生の終わり、花陽が部長のバトンを手放したのは、高校三年生の七月だった。

アイドル活動に精を出し過ぎていて、いつも一位だった学力試験の結果は、このころ八位くらいまで低下していた。

音ノ木坂学園は進学校ではないし、普段の勉強を怠りずっと作曲と踊りの練習をしていたこともあって、このことはかなり衝撃的だった。
ならばいっそのこと音楽大学を志望するという手もあるにはあった。
クラスの担任は私にそうすすめた。
けれど、私は私の道を進むことはずっと前から決まっていたのだ。

私は医者になる。

都内にある医大は全て眼鏡にかなわなかった。
レベルが高すぎるか、あるいは低すぎるかのどちらかだった。
お金は全く問題ではなかったが、できれば国立の大学に進学したかった。
それは、お世話になった学校への、進路一覧と言うところでの心ばかりの恩返しという想いもあった。

そこからの努力については省くが、そういうわけで、私は今、隣の県の大学の医学部一年生として、勉学に励んでいる。

椅子からベッドに転がり落ち、まどろむ。

夢を見るように――夢を見るように、あの頃に戻りたい気がする。

もう戻れないのだということは、分かり切っていた。

数滴の涙を、あの頃の私たちに捧ぐ。

今回はここまでになります。

次回は三日以内にはなんとかします

ほのまき期待

再開します。と言っても少しですけれど。

>>8
お楽しみ、ということで

目覚めてまずは、あの頃の写真を眺める。
μ'sのみんなの集合写真。
私は心の底から、それを見て微笑むことができなくなってきていた。

会いたい、のだろうか。

一応高校を卒業したみんなの進路は把握している。

海未とことり、花陽は都内の私立大学へ、希と絵里は地方の大学へ仲良く二人で進学した。
凛はなんと、ラーメン店に弟子入りしたらしい。
そして穂乃果は家業のお菓子屋の手伝いをしているようだ。

彼女らに会いたいという気持ちは強いようでもあるし、後ろめたさもあった。
二年生が卒業したとき、携帯電話でひとこと穂乃果からメッセージが入っていて、「これからもみんなで仲良くしようね!」というものだったが、それに返信をしていたら、今頃世界は変わっていたのだろうか。

私の住んでいるマンションから大学までは、歩いて十分もかからない。
両親の反対を押し切るまでに、大分労力を要したが、世間並みの生活についても知らなければいけないと思うから、という話を何度も繰り返し、折れさせた。

私は隣のベッドで寝ているこんまい小学生みたいな女の子の布団を引っぺがした。

「ほら、にこちゃん、きょうバイトあるんでしょ?」

「うーん、後二十四時間と30分も余裕あるじゃない……」

「職場から電話が来ても知らないわよ」

にこちゃんは目をこすって洗面台へと消えて行った。
私はレポートの続きをすることにする。

「なんだか最近、背中が痛いのよね……」

「立ち仕事だから、仕方ないわよ」

私はほとんど上の空の返事をする。

はい解散

公式から供給あったくせに何故ssまでにこまき?もうみんな飽き飽きしてんのが分からない池沼?

「もうちょっと心配してくれたっていいじゃない!」

「うーん、じゃあいたいところ見せて? 大丈夫かな、不安で大学行けないかもしれないな。マッサージしておく、それとも湿布を貼る?」

「ごめん真姫、さっきの発言撤回で」

「ほらね」

私はそそくさと準備をして出ていくにこちゃんの小さな背中を横目に見た。
私はにこちゃんの小さくて華奢な所も好きだ。
けれど今日のは心なしか、いつもより小さく、悲しく見えた。
にこちゃん自身が気づいているのかそれとも無意識なのか、わずかなおびえを宿した背中のようだった。

今回はここまでになります
短くて済みません

三日以内に次回はなんとかします。
気持ち多めでがんばります

>>16
お楽しみ、ということで。


お菓子屋ではなく和菓子屋ではないのか?

えーでは再開しようと思います。
短いけど許してくれ……

>>27
あ、誤記ですね……ご指摘くださりありがとうございます。

にこちゃんが朝一でバイト先に行き、このアパートは完全に私一人になった。
うるさいにこちゃんがいなくなって、レポートに集中できるようになった。

わたしはかつて与えられた課題を黙々とこなす作業が、あまり得意ではなかった。
高校生時代、家に帰って勉強する部屋と言ったら、グランドピアノの置いてある防音室だった。
ちょっと学校の宿題をやってはピアノを弾き――の繰り返しで、勉強をしていた。
それが性に合っていた。

今、このアパートにはピアノ、あるいはキーボードはない。
家賃の安いぼろアパートなので、壁も薄く、楽器の演奏は認められていなかった。
こういう部屋を選んだのには、早く大人になりたいという理由があった。

私は小さなころからピアノを弾き、ずっとピアノと一緒に過ごしてきた。
それを大学に入ってまで続けるということは、まるでぬいぐるみを捨てるのをぐずる子供のようだと感じた。
そもそも、もう私には作曲をする必要はないのだから。

実家の防音室のグランドピアノは、今頃埃をかぶっていることだろう。

私はもう今年で十九になるのだ、しっかりしなければ。
 
人間に備わる慣れという感覚は恐ろしいもので、入学から二カ月程たった今、私は深夜にPCを目の前に黙々とタイピングを続けることが苦ではなくなっていた。

しかしにこちゃんを眺めた時、私の心の中に溢れるのは、あなたも早く大人になりなさいよ、という叱咤の言葉ではなく、
この子を養ってあげたい、という優しく、言葉にはできないけれども強い想いだった。
ラブライブ優勝で箔が付いているとはいえ、やはりプロのアイドル業界から見れば、彼女は素人に毛が生えた程度らしい。

にこちゃんは高校を卒業後、実家から出、フリーターをしながら各アイドル事務所の開催するオーディションを受ける日々を送っている。

バイトをたくさん入れれば、歌や踊りの練習がおざなりになる。
かといってバイトをしなければ、生活ができなくなるのだ。
そこで私に白羽の矢が立てられた。
私はにこちゃんにルームシェアの話をもちかけられた時、どんな表情で、どんな言葉を口にしたか全く覚えていない。

知らないったら知らない。

ただ、礼儀正しそうなにこちゃんのお母さんの、「この子をどうかよろしくお願いします」というへりくだった挨拶だけは覚えている。
勿論それに敵うだけの仕事を私はしているつもりだ。

にこちゃんを毎朝起こしてるのは私だし。

一人でやっていけていたのか、と不安になるくらいだった。
料理ができるのはいいとして、その他の生活態度がなっていなかった。
朝起きられないのは勿論のこと、夜中に大きな音で自分の歌った曲を流すし、挙句に踊りだして下の階の住民から苦情が来るし。
それに謝罪したのも私だし。

そうこう考えながら、課題のレポート二枚は完成した。
午前の講義が一時間だけあったので、私は家を出る支度をはじめる。

大学の講義をする教授も様々だが、講義を受ける生徒も多種多様だ。
つねに大教室の前の方の席を独占し、教授の話を熱心に聴きメモ書きを何枚も書いていく者もいれば、
後ろの席で教授が話をしているのに関わらず雑談をはじめる者もいる。
私は前者よりなのだ。
正しくは、前者になろうという努力をしている。

国立大の医学部だけあって、周りのみんなの学力レベルはかなり高かった。
私も音ノ木坂ではトップ辺りを独占していたが、ここにきて大学は全国区だということを痛感させられている。
もっと勉強しなければならない。それが一人前の医者になるための近道なのだ。

夢をかなえるための近道なのだ。

午前の講義が終わり、学食で一人昼食をとる。
食堂では何人かの学生が群がって、ワイワイと楽しそうに食事をとっている。
笑い転げる男子学生の口から、ご飯粒がこぼれた。

大学で友達を作ろうという気持ちはあまりなく、サークル活動にも入ることはなかった。
私には、にこちゃんという最高の友達がいるから。

食堂を出る。
次の講義は五時間目だったので、二時間ほど手持無沙汰になる。
図書館へ行って勉強でもしようと、そちらの方向へ向かった時、不意に携帯の着信音が鳴った。

花陽からだった。

今回は以上になります

全体の構想が出来上がったので、しばらくは二日に一度くらい更新できそうです。


細かいこといってすまん

こんばんは、再開します。
コメントをありがとうございます、励みになります。

>>48
細かいところまで丁寧に読んでくださって、ありがたい限りです。

私はいきなりのことに驚いて携帯を落としそうになる。

ほぼ三か月ぶりに花陽の声を聴くことになるので、特に彼女を意識している訳ではないが、少し緊張する。
深呼吸をして、着信ボタンを押す。

「もしもし~!?」

聞こえてきたのが、毎日耳にしている声だったので、逆にまた驚いてしまった。

「なんで花陽の携帯からにこちゃんが電話かけてくるのよ! 意味分かんない」

「あ、あの……にこちゃんそろそろ携帯返して……」

後ろから小さく声が通じてきた。

「いや~バイト帰りに急に出くわしちゃってさー! これって運命だと思わない?」

「はいはい、わかったから花陽に携帯返しなさい」

「なんだかつれない……」

しぶしぶといった感じでにこちゃんは花陽に携帯を返す。

「にこちゃんに、家帰ったらたっぷり相手してあげるから、って言っておいて」

「う、うん、分かった」

「それにしても、偶然だったわね」

「ホントに。今日は大学休みだったから、たまたまこっちまで来てたんだけど、驚いちゃった」

何の示し合わせもなく、ばったりと鉢合わせたのだろうか。
だとしたら奇跡に近い。

「へえ……」

「ねえ、まきちゃんもよかったら、今から会わない? 今そっちの大学から三十分ぐらいのところにいるんだけど」

ふと、違和感を覚える。
これまで花陽と接してきた中で、向こうから遊びの誘いがきたことは一度もなかった。
口調もなんと言うか、いつものおどおどした感じではなくて、芯の通った声だった。
まるで、ライブパフォーマンス中のように堂々としていた。

「あ……今日は、ごめん。午後の講義入っててさ。レポートも出さなきゃだし」

「そっか……こっちこそ忙しいところごめんね。というか、今時間大丈夫だった?」

「うん。今は昼休み」

「じゃあまた今度、会おうよ。久しぶりに」

「え、ええ、いいわよ」

「うん、ありがとね。えっと、今二人で住んでるんだよね?」

「ええ、そうよ」

「にこちゃんに、詳しい日程を伝えておくね。じゃあ」

「うぅ~、もっと私にかまいなさいよ……」

「じゃあ」

後ろで唸っているにこちゃんを無視して、私は通話を切った。

時計を見ると、四時間目の十分前だった。
花陽のことを不思議に思ったが、深く考える暇もなく次の講義の準備をしなければならなかった。

昼からの眠い講義に懸命についていき、教授にレポートを提出して、私は帰途についた。

バスに揺られる二十分。
高校時代を思い返すこの時間が、最近一番気に入っている。
MP3プレイヤーに入れた、μ'sの曲をシャッフルで流しながら、ぼんやりと梅雨時の薄暗い街並みに目をやる。
ひと雨きそうな感じだった。
にこちゃん、折り畳み傘は持って行ったのかな。

帰宅しても、私は一人だった。
テレビを付け、ソファに座ってそれを眺める。

にこちゃんの日課として、バイトが終わった日は歌と踊りの練習をして帰ってくる。
家賃は折半、ダンススクールやボーカルスクールに通う費用はにこちゃんが全て出している。
私が少し出してあげようかという気にもなるものだが、そう提案するとにこちゃんの母親に猛反対を食らった。

他人の親に、あれほど怒られたのは初めてだった。

そうして月に二十万送られてくる――これでも、両親は食べていけるのか、と心配していた――仕送りはたまる一方だった。

よく考えれば、私はお金持ちなのにお金の使い方を知らない。
欲しいものはほとんど両親が手に入れてくれたし、週に一回の外食は高級フレンチだったが、私自らお金を使おうと思って使ったことはない。
お金を使うことに消極的なのだ。
私はにこちゃん仕送りのほとんどを貯金していると打ち明けると、大人ね、という返答を貰った。
だがこう言っては嫌味かもしれないが、裕福とは言えない家庭で必死に働いて稼いだお金を、自分のために投資できるにこちゃんの方こそ大人なのだと思う。

がちゃり、と玄関のドアが開く音がした。
どう見ても二十歳とは思えない「少女」が、重そうなビニール袋を三つほど手に提げて帰ってきた。

「買い出しぐらい、私が行ったのに」

「いいのいいの」

にこちゃんは笑って荷物の中身を冷蔵庫に入れ始める。

「背中、痛むんでしょ? 重いもの持って大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫大丈夫。ってか真姫ちゃんに本気で心配されると、深刻な感じがしてちょっと怖いんだけど」

「な、なによ、人がせっかく心配してあげてるのに!」

にこちゃんは自分のベッドに倒れこんだ。

「……ありがと」

にこちゃんの素直な感謝の言葉を、いつぶりに聞いただろうか。

「マッサージしてあげようか」

「お願いするわ」

私はソファから立ち上がり、うつぶせに寝ている華奢なにこちゃんにまたがる。

「どのあたり?」

「そうね、背中の、左の方なんだけど……」

私はにこちゃんに言われた所を、揉んだり、押したりする。

「あいたたた……」

「痛い? 強すぎたかしら」

それほど、力を入れた訳ではないのだが。

「いや、このくらいの方が効くから大丈夫よ」

「……痛みが酷いようなら、ダンスのレッスン休んだら? 酷くなるよりはましよ」

「これしきのことで、休んでいられないのよ」

にこちゃんはこちらを向かずに言っているが、その背中から、決意のオーラをひしと感じる。

「私が本当にアイドルになったら、背中が痛いとか言ってられないじゃない? それでライブを休めるほど甘い世界じゃない。今から甘えていちゃいけないのよ」

「……医者志望の私から言わせてもらうと、無理してパフォーマンスを続けて体を壊す方がよっぽど世間に迷惑をかけると思うけど」

「なによ偉そうに。第一、まだ真姫ちゃんは医者じゃないじゃない」

私は言葉に詰まる。
私はまだ、医者を夢見るただの学生にすぎないのだ。
私ににこちゃんを止める強制力は、世間的に言ってもない。

「それに、私には時間がないの、真姫ちゃんも知ってるわよね」

「……うん」

私は黙って、にこちゃんの背中のマッサージを再開した。

高校卒業から、三年。
それがにこちゃんに、両親から与えられた期限だった。
三年を過ぎたら、アイドルの夢を諦めて実家に帰り、就職活動をしなさい、と言われているのだ。
今年が、その期限の三年目にあたる。

「この前のオーディションも最終選考まで残ったじゃん。小さなオーディションだったけど。少しずつ実力は付いてきているのよ。ここで波に乗らなきゃいけないの、私は」

私はにこちゃんの、夢への決意の強さを、本人以外で誰よりも知っているという自覚がある。

その熱意を、にこちゃんの両親は上手く斟酌していないように思える。
にこちゃんがこの前のオーディションの結果を両親に報告したときも、電話の向こうの母親はそれほど嬉しそうではなかったのだ。

大人とは、そういうものなのか。
我が子の夢を潰えさせ、安定した――子供にとってなんの面白みのない――生活を望む人たち。
まだまだ遠い先の話だが、私がもし所帯を持つことになったとき、そう言った教育だけはすまい。
そんな冷たい大人にはなりたくない。

「……こんなことしか言うことはできないけど……にこちゃん、がんばってね」

にこちゃんは返事をしなかった。
どうしたのか、と思い顔を見ると、その瞳は閉じられていた。

「毎日くたくたになるまで頑張って……にこちゃんは、すごい」

午後七時を回ったところだった。

にこちゃんの指導のおかげで、高校時代より少しは料理ができるようになっている。
今日は私がにこちゃんの代わりに晩ご飯を作ってあげようと思った。

出来上がったみそ汁は凄く薄味で、野菜炒めは逆にしょっぱすぎた。
お世辞にも上手いとは言えない料理。

「はっ……私寝てた!?」

「毎日練習お疲れさま」

「あ、いい香り――真姫ちゃんが作ってくれたの?」

「ほ、他に誰がいるのよ」
 
にこちゃんは私に抱きついてきた。
シャンプーと汗とが混じり合ったにこちゃんの匂いがふわりと漂う。

「えっ……ちょっと」

「そんなに照れなくてもいいじゃない、同居人なんだから。なんなら、この先に進んじゃう?」

私はにこちゃんとの「先」を想像し、顔が熱くなるのを感じた。
こういうとき、私は平静でいられない。
何故だかわからないが、温かくも苦しい感覚が私を襲うのだ。

それになんと名前を付けたらいいのだろうか。

「もう……ひ、ひっつくの、止めてよ。ご飯冷えちゃうよ」

「うぶなんだから……はいはい」

にこちゃんの誘惑から解放された私は、一つ大きな深呼吸をしてから、料理を二人分のお皿に盛りつけてちゃぶ台の上に乗せる。
二人でいただきますを言って、料理に手を付け始めた。

「うん、このみそ汁と野菜炒め、一緒に食べると塩味がちょうどよくなっていい感じね!」

にこちゃんは私の料理に対し、ほめることこそあれ、けなすことは一度もなかった。

私はにこちゃんの笑顔のために料理をしているのかも知れないな。
胸がきゅっと熱くなる。

「にこちゃん」

「ん?」

「私ね、にこちゃんと、できるだけ長くいたい。もっと料理が上手くなって、本当においしい料理を食べさせてあげたい」

「なに言ってるの、これ美味しいわよ」

「聞いて。もしかしたら、にこちゃんと一緒に長くいられるの、今年くらいかもしれない。でも――長く一緒にいたいの」

にこちゃんはお箸を置き、私の頭を軽く叩いた。

「なにするのよ」

「なによそれ。かわいすぎるのよ……」

ぼそりとつぶやく声を聞いて私は再び顔を赤くしてしまう。

と、それがなんでもなかったかのように、

「今年で同居生活が終わりになることなんてないわ。だって私は、今年中にアイドルになるんですもの!」

「うん――頑張ってね」

「真姫ちゃんも頑張って、絶対お医者さんになること。いいわね!?」

「あ、あたりまえよ!」

晩ご飯を食べ終えるとにこちゃんは、シャワーを浴びて早く寝た。
私も課題レポートをする気分ではなかった。
眠ることさえ惜しい。
ただ、この羽毛のような、温かい気持ちに浸り、大切にしていたかった。

にこちゃんとの生活がずっと続くことを、切に願った。

今回はここまでです。

また二日後に会いましょう。

この二日体調不良で寝込んでおりました……
更新はもう少しおまちください。
申し訳ない。

お待たせしました。再開します。

目が覚めたのは八時ごろだった。
私は昨日の午後の講義が全て埋まっていたので、その復習に時間をとられ、よく眠ることができなかった。
にこちゃんは私より早く起きていて、もう歯を磨いていた。

「ワクワクして昨日あまり眠れなかったんでしょ」

にこちゃんは私をからかったけれど、私はそんなにこちゃんの声が上ずっていることに気づいて吹き出しそうになる。

「私たちって子供ね」

「たちってなによ、たちって!」

「……昨日にこちゃん、寝返り結構打ってたわよね。五分に一回くらい?」

「うっ、そ、そうよ、ワクワクして何が悪いのよ! お互いさまでしょ!」

「私は子供であることは認めたけれど、今日ワクワクして眠れなかったということは認めていないわ」

「……ぶー。にこちゃんのそういうリクツっぽいところ、嫌い」

「私はにこちゃんの素直なところ、好きだけど?」

そういう単純な言葉を口にするだけで、目の前の小さな少女は相好をくずしてくれるので、たまらなく愛しい。

時計を見ると8時。休日にしては早起きだ。

「あ」

「どうしたのよ」

「電車の時間間違えた……」

にこちゃんはスマートフォンの時刻表アプリとにらめっこしている。

「ちょっとあんた、昨日は九時って書いてたでしょ!」

機械に向かって話をしているにこちゃんに向かって私は、

「見間違い」

「……ほんと、すいません」

「時間の管理をにこちゃんに任せた私が悪かったわ」

何故か丁寧語で謝り続けてきて、意味分かんなかったけれど、

「正しくは八時四十五分の電車です……」

ここからバスで駅まで最低でも二十分はかかる。
のんびり支度をしている場合ではなかった。

私たちはそこから会話を交わさず、無言で準備をした。
にこちゃんが洗面台で何やら頑張っているが、化粧の乗りを気にしているのだろう。
化粧がなくても、にこちゃんはかわいいのだが。

「ちょっとにこちゃん、急いでるのよ。早く代わって」

「もうちょっとだから……はい!」

出てきたにこちゃんに、その労力を他の準備に費やせ、と怒鳴りたくなる。
が、そうも言っていられないので、私は洗面所に入ると軽く髪を梳きドライヤーを当て、さっと顔を洗って二分ほどで歯をみがいた。

そして二人して玄関のドアを開けてバス停までダッシュをはじめた。

散歩に出ようとしていたアパートの隣人には、それはそれは怪訝なまなざしを向けられただろう。

にこちゃんがバス停に着くのが見えた。
にこちゃんと私の間には五十メートルほどの差があった。
私が遅れてバス停につくと、

「たまには運動もいいでしょ?」

にこちゃんは息一つ切らしていなかった。

「はあ、はあ……体力の衰えを感じるわ」

「荷物持ってあげようか」

「背中は大丈夫なの?」

「ああ。まきちゃんのおかげで、大分ましになったわ」

私はその言葉に素直に甘えることにし、膝に手をついて呼吸を整えはじめた。
が、元通りの呼吸を取り戻す暇もなく、満員のバスがやってくる。
にこちゃんと密着しながら、不意に笑いがこみあげてきた。
それはにこちゃんも同じようで、二人で周りに怪しまれないよう必死に声を抑えて笑った。

「やっぱり今日の私たち、まるで子供みたいね」

「全くもって、そうよ」

家を出る前何気なく、「にこちゃんの素直なところが好きだ」と言った。
それはそれは素直さへの無意識の憧れであるかも知れない。
そして私は憧れに対して、影響されにくいはずなのだが、どうしてかにこちゃんと二人して、自分たちは子供のようだと笑っている私がいた。

私たちは駅に着き、そこから東京方面行の電車に乗る。
混んでいたが、幸い二人分の席が空いた。
私たちはそこに腰掛ける。

電車に揺られること、一時間ほど。
私たちの音ノ木坂は、車窓からでは遠くに見えた。
けれどそれだからこそ、あそこに帰るのだ、という気持ちが引き立てられた。
胸の鼓動は高まっている。

それはにこちゃんも同じだろうと思ってふと隣を見ると眠っていた。
神経が図太いのか、なんなのか。

車内にアナウンスが流れた。次の駅で私たちは降りなければならない。

「にこちゃん、ほら起きて」

呼びかけても、ピクリとも動かない。
車内で彼女をゆさぶり起こす姿は、さぞ面白く見えただろう。

私たち二人が駅のホームに着き、改札を抜けたところで、

「おーい、二人ともー!」

花陽の元気な声に出迎えられた。

今回はここまでになります。
明日も筆が乗っていれば更新できそうです。

おはようございます
再開します

「花陽、久しぶり!」

「もう、にこちゃんはこの前あったばっかりじゃないですか! 真姫ちゃん、久しぶり」

「え? ああ、久しぶりね」
 
私は花陽を一目見て、少し見とれてしまっていた。
うっすらとした化粧は、花陽らしいかわいらしさを一層引き立てていたし、涼しげな白のブラウスに紺の短めのスカートを合わせ、サンダルを履いた彼女は、いい意味で垢ぬけていた。

彼女は少し見ないうちに、確実に大人になっていた。
けれどこう言った時、どのような言葉をかけたらいいのか分からなかった。

「でね、穂乃果ちゃんも今日たまたま予定空いてたらしいから、まずは穂乃果ちゃん家に寄り道しようと思います」

「穂乃果に会えるのね」

これまた偶然である。

――ふと、そんなものなのかもしれないと思った。
離れ離れになった私たちが再び交流することには神様のいたずらが絡んでいるのだろう。
そう考えて、とても不快になった。自分自身に対してだった。

神様のいたずらがなければ、私たちはずっと疎遠のままだったと言うことか。
そんな考えを抱くことが、間違っているような気がした。
そうだ、今回の偶然がなくても、どうせ穂乃果がみんなを呼び集めていただろう。
そうに決まっている。

「じゃあ早速行きましょう!」

花陽が先頭に立って、音ノ木坂に向かって歩きはじめる。
ちなみに彼女がアイドル研究部長の時、みんなをリードしていたのは私だ。

十分ほど歩くと、辺りは駅前の、コンクリートビルの立ち並ぶ様子が嘘のような、古びた街並みとなった。
それがいいのだ。
私たちが三年間を過ごした思い出の場所。
一歩一歩、道路を踏みしめることすら心地いい。
心の奥の方に大切にしまわれていた、記憶の織物の糸がどんどんほどけていく。
楽しかったことも辛かったことも、全部。

でも不思議と、懐かしいという感情は芽生えなかった。

「ていうか、ちょっと。真姫ちゃんも話に入ってきなさいよ!」

物思いにふけっていて、にこちゃんと花陽の会話に加わることを忘れていた。

「ノスタルジーに浸ってたの? 邪魔してごめんね?」

「ええ、まあそんなところ」

違う。
郷愁ではない。
自分でもよく分からないが、私はこの土地に見守られ続けている、それは住居が変わった今も同じ。
そういう思いが私の中に、確かにあった。

「それより大学生活はどう?」

「そうね、まあまあってところかしら」

「真姫ちゃん大学で友達できないのよね」

「そうなの?」

心配そうに花陽が上目づかいで聞いてくる。

「つ、作れないんじゃなくって、作らないだけよ。みんながみんな、表面上の付き合いっていう感じがして嫌なのよ」

「うーん、でもわかるな。にこちゃんっていう親友がすぐそばにいるもんね。大学での友達なんて、薄っぺらに思えちゃうかも」

花陽は納得したようにうなずく。
その口元が緩んでいるように見えるのは、気のせいだろうか。
どうして笑っているのか、よく分からなかった。

「私、大学の友達は、色んな価値観を持った人との交流っていう風に考えてるな。
人と関わることで、自分の世界も広がっていくんだよ。
薄っぺらでもいい。むしろ薄っぺらでないと、大学の中で自分っていう価値観が埋もれてしまうから」

なるほど。
そういう考え方もあるのかと、私は妙に納得してしまった。
納得しただけで、自分の考えを改めるつもりはなかったが。

それにしても、花陽はそういう考えをいつの間に培ったのだろうか。
大学に入ってからだとしたら、たったの二か月ほどでここまで思考が至るというのは驚きだ。

「なんだか、花陽、大人になったね」

「えへへ、そうかな?」

花陽はややうつむきになって、照れたように笑う。
それだけの仕草でも、高校時代とは違って、なんというか、品があった。

「なによ……二人で話しこんじゃって」

にこちゃんが私と花陽の間に割り込んできて言った。

「私にも大学に行ける学力があればなあ」

「にこちゃんでも入れる大学、いっぱいあると思うけど」

「なんだか馬鹿にされてる気分だけど……私立大学に通うお金は、出してくれないのよ」

「にこちゃんの両親、厳しいもんね」

「あー! 私も大学行きたかったなー! この前花陽に、大学のいろんな楽しいところ聞かされたから……」

私はにこちゃんがどれだけ本気なのか分からなかった。

「……そう思うのなら、今からでも勉強したらいいじゃない」

「なに言ってるのよ。本気な訳ないじゃない。私はアイドルを目指してる今の状況に満足してるわよ。他の私なんて考えられない」

「うん、そうだよね」

それなら、どうして大学に行きたかったなどと言うのだろうか。

「……意味分かんない」

「なによ、まともに受け取り過ぎるあんたが頭固いのよ。ただ会話に加わりたかっただけじゃない!」

「ごめんね、にこちゃん。高校のころの話をしよっか!」

花陽がそう言ったとき、穂乃果の家はもうすぐそこだった。

今回は以上であります。
次回は明日を予定しています。

再開します。遅くなってしまい申し訳ない。

和菓子屋「穂むら」の風情ある戸を開くと、穂乃果のママがエプロン姿で出迎えてくれる。

「いらっしゃいませ、って、ああ、花陽ちゃんたちじゃない! お菓子用意して待ってたわよ」

「ありがとうございます」

花陽は慣れた感じで受け答えした。

「にこちゃんに真姫ちゃんも、久しぶり」

「久しぶりです」

「お、お久しぶり」

「うーん、にこちゃんは流石に変わったけど、真姫ちゃんはあまり変わらないわね」


穂乃果のママは口角を釣り上げながら言った。
どういう意味なのか分からないが、私はとりあえず微笑みを返した。

「ちょっと待っててね、穂乃果呼んでくるから」

彼女はそう言って店の奥の方へと消えていった。

「花陽。穂乃果には、何度か会ってるの?」

「そうだね、月に二回くらいは、ここに遊びに来てるかも。あ、ことりちゃん、海未ちゃんとか、凛ちゃんとも一緒に来るよ」


私の予想通りだった。
私とにこちゃんが二人で隣の件に行っている間にもμ'sのメンバーは交流をしていたのだ。
私たちだけが孤立していたのだ。
けれど、偶然のおかげでこうして再び関わりを持てるようになった。

「あとは、エリーと希だけね。九人で再会したいわ」

「……二人とも関西の大学に行っちゃったから、帰省した時に会えるといいね」

花陽のその口調には、少し含みがあるようだった。どうしてだろう。

「よいしょ……と。真姫ちゃんにこちゃん、久しぶりー!」

元気いっぱいの声が、建物の中に響いた。
いつもの声。いつも聴かせてもらっていた声。

「変わらないわね」

「えーそんなことないよー。もう高校卒業してから二年もたってるんだよ? ちょっとは大人になったよ!」

穂乃果ちゃんも、着るものは大人びていたし、ばっちり化粧もしている。
どうしてそういった言葉をかけようと思ったのだろうか。
いや、分かっている。
私は味方を見つけたかったのだ。
穂乃果ちゃんなら、高校の頃の心をそのまま持っていてくれているという期待が、心の中にはあった。

「まあ和菓子とお茶しかないけど、ちょっとゆっくりしていきなよ」

睡魔には勝てず……すいません。
書き溜め分の残りは明日投下させていただきます。

更新がとどこおっております……申し訳ない
しばらくは遅いペースでの更新となりそうです

ひとまず再開します

二階に上がり、穂乃果の部屋に入る。

私たちはゆったりとした時を過ごした。
私はずっと穂乃果の方を、なにか高校生の頃と変わらないような発言をしまいかと窺っていた。
しかし、私たち四人の間の話題と言えば、高校生活をなつかしむものしかなく、それはすなわち高校生活は過去のものとみなしているということだった。
私は美味しいお菓子とお茶を口にしながら、内心落胆していた。

三十分ほどそういった、建設的でない時が流れた。
私は探りを入れてみることにする。

「またさ、九人集まったら、カラオケとかいってみない?」

「……それは、止めておいた方がいいと思うよ」

花陽が答える。

「私たちもうスクールアイドルじゃないんだよ。いまも変わらず歌が上手いの、にこちゃんぐらいだと思うよ」

「失礼ね! 高校の頃の私とは比べ物にならないくらい、今の私の方が歌上手いわよ」

「にこちゃんは、強いね」

穂乃果がそう言い、話がとぎれる。
にこちゃんの現況の話になると、その話題から逃れるように、花陽と穂乃果が別の話をはじめる。
それが、たまらなく嫌だった。
まるで夢を追うにこちゃんを避けているかのようだった。

またしばらく、他愛のない――それであるがゆえに私には苦痛だった――話が続き、そろそろ家を出てどこかへ遊びに出ようというところで、

「私たち、あの頃が一番輝いていたんだよ」

しまいには穂乃果がそう言いだすので、私は自分の中で、何かの切れる音を聴いたような気になった。

「私トイレー」

にこちゃんがちょうどそう言って席を立ったので、私はすかさず、

「あの頃って言い方止めない?」

「どうして?」

何の悪気もなさそうに穂乃果はきいてくる。

「私たち、歳をとったみたいじゃない。スクールアイドルとして歌って踊っていたの、ほんのちょっと前のことなのよ?」

「……真姫ちゃんも、強い人間だね。今もしっかり、若いころと同じ心を持ったまま、夢を追い続けてる」

「強い強いって、さっきから何なのよ。そう言って私たちを馬鹿にしてるんでしょう。まるで――まるで、私たちを子供扱いしてるみたい」

「――子供でいられるうちは、子供でいた方がいいんだよ」

穂乃果ちゃんはあの頃となにも変わらない瞳で、世間を知り尽くした、疲れた大人のように呟いた。

「……穂乃果にとって、スクールアイドルっていうのは、数年でもう思い出にしまいこんでしまう、その程度のものだったの? スクールアイドルは、うわべだけのものだったの?」

「うわべじゃなくって、青春だったんだよ」

穂乃果はやはり表情を変えずに淡々と言った。
私は、穂乃果に青春という言葉を回顧の意味で使ってほしくなかった。
けれど、言葉が出ない。
不思議な説得力があった。

「私も「穂むら」で本格的に働いてもう二年目だけど、今の自分には満足してる。
でも、もちろん高校生活だって、かけがえのない楽しいものだった。
だから、あの頃は青春。
真姫ちゃんは強いよ。
だって、今も青春してた頃と変わらない心を持っているんだもん。
もちろん、にこちゃんも」

「……」

「ほらにこちゃん帰ってくるから、この話はおしまいにしよ?」

「うーん……」

「そろそろさ、神社に行こうよ。久しぶりにお願いごと、していかない?」

私ははぐらかされた気分だったが、ともかくこの話をにこちゃんの前ですることだけはできなかった。
なぜなら、にこちゃんは私よりもずっと大人だからだ。
馬鹿にされていると感じるに決まっている。

にこちゃんが戻ってきてから、神社へ行く支度をはじめ、そしていざ移動する段になっても私は、先程の穂乃果の発言について考えていた。
心の隅から、穂乃果に反抗する気持ちが滲んできて、少しずつそれは穂乃果への好意を侵食していった。

いつもの神社につく。お賽銭をいれて、みんなで願い事をする。

「なにをお願いしたの?」

にこちゃんが穂乃果に尋ねる。

「うーん、みんなが健康で過ごせますようにって」

「歳寄りくさっ!」

「でも健康って大事なことだよ。私仕事してて最近腰が痛くってさー。困ったよ」

花陽が笑って穂乃果の愚痴に応じる。そして、

「私はね、もっと自分の世界が広まりますようにってお願いしたよ」

「……難しくて分かんないわそれ」

にこちゃんがげんなりした顔で言う。

「もちろん、私はプロのアイドルになれますように、ってお願いしたわ!」

「知ってる」

「相変わらず突っ込み早い!」

「元気ね」

私とにこちゃんのそのやりとりに、花陽と穂乃果は懐かしいような笑いを見せる。

「真姫ちゃんはなにを?」

「そうね、お医者さんになれますようにって」

「そっか、そうだよね。応援してるよ!」

穂乃果がにっこりと笑う。
けれどその笑顔をそのまま受け取ることはできなかったし、第一穂乃果に言ったことは嘘だった。

(もう一度、もう一度だけ、九人揃ってライブがやりたい――)

私は、そう願ったのだ。

ここまでになります。

次回は五日以内にできれば投下したいと考えていますが……確実にできるとは申し上げられません、すみません

更新が遅れてしまい申し訳ありません。
書きながら、進めていきます。投下ペースはゆっくりになりますが、ご了承ください。

すいません、筆が進まず……また後日、更新します。

生存報告をば。
もうすこし待ってくだされ……

短いですが、更新します。

8号館302号室で、私は驚きを隠しきれずにいた。

(こんなに簡単に、入れちゃうのね……)

ワードで十分くらいで作成した、という入部届は裏面が広告になっていて、学生は無料でコピーできる用紙だった。

「はい、ありがと。これで西木野さんもサークル員だよ。よろしくね!」

サークルの事務長をしているという男が、私が入部届を書き終わる少し前にそう言って笑みを見せた。

「あ、西木野さん、ピアノ弾けるんだ?」

「は、はい、一応」

「じゃあ我がサークルに貴重なキーボード要員が一人増えたわけだ!」

横から声を出したのは部長を名乗る男だった。
私がライブを見学しに行ったとき、その野太い声とは裏腹な、繊細な歌い方をする人だと思ったものだ。

「歓迎するよ」

生存報告をば。

お待ちいただいているなかで申し上げにくいのですが、正直なところちょっとすぐに手をつけられそうにありません

書き進められても非常に少しずつになるかと思います。

大変長らくお待たせいたしました。
再開します。

昨日は寝てしまって申し訳ありません。一週間以内には更新したいと思います。

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