ニセコイSS「アマザケ」 (25)

ニセコイ173話「ヘンヨウ」があまりにも焼き直しだったので、
設定をひっくり返して書きました。
エロ要素はあっさりめで。

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いつものメンバーが揃って二度目のお正月。
今年は近所の神社へと初詣にやって来た。
ふと去年はどうしてたんだっけ、という考えが脳裏をよぎったけれど、思い出そうとして
も記憶に何やら禍々しいモヤのようなものがかかっていて上手くいかない。
何だっけなー、と首を傾げながら、一条楽はトイレを後にして皆のところに戻るべく境内
に続く砂利道を歩いていた。

「おや、坊やは確か――」
「あ、ええと、確か神主の」
楽に声をかけてきたのはやけにファンキーな口調の神主さんだった。
「妹から聞いたよ、あんた京都でも大変な目にあったんだって?」
神主さんの双子の妹が同じく神主を務める、京都の神社を訪問したのは去年の修学旅行の
三日目。
千棘と橘、そしてあの小野寺までもが自分に矢を向けてきた理不尽な出来事の理由は未だ
にわからないままだった。

「ええ、まあ……。さっぱり意味は分かりませんでしたけど……」
「相変わらずの女難の相だね。そうだ、あんたにいいものをあげよう」
「いいもの?」
そう言うと神主さんは懐から一本の瓶を取り出した。

「これは私が作った特製の栄養ドリンクでね。多少の疲れなんか吹っ飛ぶさ。新年早々、
疲れた顔なんかしてたら辛気くさいからね。ほれ、一本いっときな」
「あ、ありがとうございます」

確かにクリスマスはバタバタと走り回るハメになったし、ゆっくりしようと思っていた年
末はまさかの無人島でのサバイバル生活。
そのまま新年を迎えての初詣なのだから、言われてみれば疲れていないはずが無い。
多少うさんくさい気はしたが、楽はそのドリンクを受け取ると、蓋を開けてぐいっと一気
に飲んだ。思ったほどマズくはない。

「それじゃあね、いい正月を過ごしなよ、ベイビー」
「ど、どうも」
ファンキーな挨拶とともに神主さんは楽を後に残して社務所へと戻っていく。
「ホント、残りの休みはゆっくり過ごしてえもんだ。あ、でも明日は橘の見舞いに行かな
きゃな。今回はホントに無茶したから心配だぜ……」

ぶつくさ呟きながら楽が他のメンバーの元へ歩き去った後、社務所の扉に手を掛けていた
神主さんが立ち止まり、少し慌てながら振り向いた。
「……しまった、今坊やにくれてやったのは私が特別にまじないをかけた魔除けの秘薬の方だった。
 並の人間が飲んだら大変なことになるとこだけど……都合のいいことに坊やの周りにゃ厄介な気配が漂ってたし、まあ、丁度いいか。
 なるようになるだろ。さて、そんなことより新しい縁結びのグッズでも開発するかね……」

◆プロローグ

あれは、ヤバい。
舞子集は少し離れたところから、境内に立ち上る禍々しいオーラを目にしていた。
花と着飾った和装の女子たちに似合わぬその気配。慌てて周囲を見回すものの、親友であ
る一条楽の姿は見当たらない。
警告してやらなければ。迂闊にアレに近づけば、今度こそタダでは済まないと。

「よう、集」
「!」
いつの間にか背後に楽が立っていた。

「ら、楽か! マズいぞ、急いでここを離れろ。俺も気付かないうちに女子たちがみんな甘酒を飲んでたんだ」
「甘酒を?」
「ああ、見ろあのオーラを。近づいたらどうなるか分かったもんじゃない。ここは俺に任せて――」
そう、俺に任せて。女子たちが心のうちに秘めたる禍々しい欲望を、俺がこの一身に受け止めてやる!

ぐい、と思わぬ強い力で脇に押しやられる。

「お、おい、何すんだ。俺の話を聞いてんのか、楽!?」
「……いいから、黙ってろ」
首だけこちらを振り返り、楽が言う。その声色は普段になく低くドスが利いていて。その
目は赤く危険な光を帯びていた。
「ら、楽、お前――」
その声はもう楽には届いていなかった。こちらを振り向くことも無くずんずんと境内へ近づいていく。
その身体からは、あの禍々しいものとはまた違う、オーラのようなものが立ち上っていた。

「お前……一体何を飲んだんだ……?」

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