【艦これ】梅雨矢矧【短編SS】 (155)

矢矧初めての秘書艦業務。短編SSです。
梅雨をテーマにしている以外前作↓と何の関係もありません。



【艦これ】梅雨祥鳳【短編集】
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【矢矧】


雨が降り続く間は、満足に出撃なんか出来やしない。

そんな日は、普段出撃組にいる艦娘に秘書艦が割り当てられる。

・・・そう。丁度私みたいに、ね?


着任してからずっと、出撃組。

戦場の方が性に合うとは分かっていても、秘書艦業に興味がなかった訳じゃない。



だって。




「ああ、矢矧。今日はお前だったか」

「ええ。初めての秘書艦業務、完璧にこなしてみせるわ!」




だって今日は一日中、貴方の隣にいられるのだから。

梅雨の時期の秘書艦指名。

噂に聞いたときから、どんなにこの日を待ち望んでいたか。



阿賀野型でふだん秘書艦を務めているのは能代ねえだけ。

出撃の暇を見つけて、さりげなく能代ねえに教わるのは苦労したわ。

だってあんまり聞きすぎると悟られちゃうものね。



何でそんな事聞くのって言われたら、答えようがないんだもの。

しばらく短編はいいかなって言ってたじゃないですかーやったー

他にもベテランの秘書艦組に話を聞いているし、心構えは万全のはずだ。

さて・・・まず、何よりも最初に提督に言っておくべき事はっと。


「私が来たからには今日一日、サボらせないわよ!?」


うん、バッチリね。幸先の良いスタート。

先輩たちの教え通りに言えただなんて、一人で満足していると。



「いやいやいや、ちょっと待てちょっと待て」



異議を唱える声が隣から。もう、何か文句でもあるの?

能代ねえはじめ、他の秘書艦組のみんなのアドバイス通りなんだけれど。

>>4
だって
矢矧が
可愛い

能代ねえに赤城加賀、長門に夕張。その他エトセトラ、エトセトラ。

普段秘書艦をしている面子に聞いたのだから間違いはないハズよ、と。

会話を続けながら、椅子を引いて秘書艦用の席に着く私。



「ちなみに、他にはどんな?」

「椅子に括り付ける用の縄があると便利だとか」

「何て冗談真に受けてんの、そこまでしてサボらんわ!」



ふうん、まあそうかもね。

いつも出撃後の報告をしている時も、縛られていたことなんてないもの。

流石に縄まで用意してなくてちょっとホッとした私は、何気ない口調でこう話を続ける。

「あと、いやらしい目で見てくるから気を付けろとか」


こっちの方が無いわよね。こう見えてこの人、誠実そうだし。

私なんかをそういう目で見て楽しむ趣味があるなんて、信じられそうにないもの。

なーんて考えて、さっきみたいにハイテンションで突っ込みが入るかと思っていたら。



「・・・」

「提督?」

「ミテナイヨ」



・・・何よこの、図星を疲れたみたいな怪しい返事は。

え、ちょ。もしかして・・・ええ!?

>>6
なら2ヵ月は持つんだしこのスレは終わっても依頼出さずにとっといたらどうすかね?

「提督、貴方まさか私の事を―――」

「見てない見てない。決して!」


まさかの展開に声が上ずる。早速仕事どころじゃない。


「う、嘘よ。だって今の返事怪しかったもの!」

「見てないし思ってないから、結構スタイル良いんだなとか思ってないから!」



「ススス、スタ・・・あ痛っ」


思わず立ち上がりかけて、机の抽斗に膝を思いっきりぶつけてしまった。

尻もちをつくかたちで思いっきり執務室の床にへたり込んでしまう・・・ああ、情けない。

「大丈夫か、矢矧・・・って、うお!」



私の様子を見て慌てて提督が駆け寄って来てくれる。

何よ、優しいじゃない。そういう気配り、嫌いじゃないわ。


ちょっとダサいけど仕方ない。貴方の紳士的な態度が見れたから良しとするわ、だなんて。

そう思って見上げた彼の表情に疑問を抱く。

「どうしたの、提督?」


顔を赤くして視線はこちらを向いて固まって。

何とも言えない照れた表情にクスリと来てしまいかけて、あれっと思う。



「え?」



照れた、ですって?

転んだ私に手を差し伸べるのが、そんなに恥ずかしいのだろうか。

そう思って固まった提督の視線の先―つまり私の足元―に目をやって・・・。

「きゃっ!?」

「・・・」



尻もちをついて、惜しげもなく広げていた両脚を慌ててたたむ。

お気に入りの、でも今だけは短さが気になって仕方ないスカートの裾を必死に手繰り寄せて。



阿賀野型の制服はスカートがすごく短い。

普段はあまり気にしたことがないけれど、今だけはそれが気になって仕方がない。

だって、あの体勢で正面から見られたらきっと・・・。

「み、見た?」


よせばいいのに、聞いてしまう私。


「み、見てないよ?」


よせばいいのに、答えてしまう彼。




ああ、駄目ね。さっきは心の中で褒めてあげたけれど。

その返事は駄目。全然、まったくもって紳士の対応じゃないんだから。



カアア、と顔が赤くなる。

そして私は、よせばいいのにまたしても聞いてしまうのだ。

「見てないって・・・“何を”?」

「そりゃあもちろん・・・あっ」



鈍感。信じられない!

本当に誤魔化すつもりなら、そう。


見てないよ、じゃなくって何のこと、と惚ければ良かったのだ。

何のことか分からないよ、ならばまだ、うやむやに出来たのに!

ああ、でも。すうっと大きく息を吸って思い直す。

矢矧、ダメよ。怒っちゃダメ。そう自分に言い聞かせて恥ずかしさに耐える。

だって悪いのは勝手に転んだ私で、見てしまった彼に落ち度はないんだもの。

だから、手袋越しにぎゅっと握った拳はほどかなきゃ・・・。



「ご、ごめん・・・」

「い、いえ。いいのよ。悪いのは転んだ私だし」

「みっともない所を見せたわね、ごめんなさい」



恥ずかしすぎて早口で。もう身体中が熱くて仕方がない。

そんな姿を見かねたのか、目の前で縮こまる私に提督が言葉を重ねる。

「みっともない、なんてそんな。に、似合ってたぞ?」

「・・・・・・・・・は?」


余計なことを言うのは、今日だけでお互い何度目かしら。


「いや、だから・・・白が」

「ななな、何のこと言ってるのよ!」



最後まで言い切る前に、身体が動いた。

握っていた拳を開くことが出来たのは僥倖だと私は思う。


「バカ、エッチ、スケベ!もう知らない!」


パチーン、と平手で頬を張る心地の良いが執務室に鳴り響いて。

人生初の私の秘書艦業務は、最悪のスタートを切ったのだった。

本日ここまで、これだけでもオチがついた様な気がしますが思ってる着地点はまだ先なので続けるつもりです。
矢矧が可愛すぎて生きるのがつらい

>>9
なるほど、終わったスレをキープしておくという発想が無かった
読み手からすればそっちの方が分かりやすいか、ありがとう

あんまり人のスレ見てないって言ってたけど矢矧ならこのスレオススメ(余計なお世話)

提督「矢矧が好きだ」【艦これ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1424176787/)

>>20
あまり人のSSを見ないというのは興味がないからではなく時間が取れないからなんですねー、お目当てを探す手間もあるしこうして紹介してくれると有難い
今読んできたけどこの作者と矢矧のイメージはそんなに違わないはず、だけど書き手によってこうも雰囲気が変わるのかと思うと面白い

今日は地の文多めになってしまいました

降り続く雨をBGMにして、静かな一日を過ごしていく。

水雷戦隊を預かるのなら、二つ返事で任せなさいという私だけれども。

陸に上がるとどうも弱い。だって、これが初めての秘書業務なのだから…。


執務室の机はアルファベットのLを横向きにしたような形になっている。

当然横に長いほうに提督が座って、もう片方が秘書艦の定位置になる。



「どうだ、調子は?」

「やっぱりまだ慣れないわね」


危なげない手つきで少しずつ書類を片付けていく私に、提督から声がかかる。

虚勢を張っても仕方がないので、私は正直な心境を口にした。

「はは。いきなり何でもできちゃ、俺の立つ瀬がないさ」

「簡単なものしか回してないからな。気楽に行け、気楽に」


いきなり重たい仕事を任されても困るけれど。

でも、出来なくても良いなんて言われるのもまた困ってしまうわ。



だって、私は貴方の役に立ちたくてここに来たんだもの。



気負っても仕方ないという思いと、頑張らなきゃという思い。

どちらも正直な私の気持ちで、だからこそ心が落ち着かない。

「手が止まってるぞ?」

「わ、分かっているわ」


あたふたしている私を楽しそうに見て、提督が言う。

もう、やらしいわね。私をからかうのがそんなに楽しいのかしら!



「あら、これは……?」

「お、それか」



ふと目に付いた書類。今までのよりも少し重要度が高そうなそれは…。

「資材消費量の報告書?」

「まあ、読んでごらん」


これは…どうやらその日に出撃や演習、開発なんかで消費した資材の記録のようね。

確かに重要だろうけれど、何かを期待しているような顔で促されるのは何故かしら。



そう思いながら、何気なくページを開く。



「え?」

「新人秘書艦はみんな驚くんだ」



小さな悪戯の成功に満足した声が聞こえる。

資材の消費量が示されたそのページの意味するところに気づいて、私は本当に驚いた。

「資材消費量の報告書?」

「まあ、読んでごらん」


これは…どうやらその日に出撃や演習、開発なんかで消費した資材の記録のようね。

確かに重要だろうけれど、何かを期待しているような顔で促されるのは何故かしら。



そう思いながら、何気なくページを開く。



「え?」

「新人秘書艦はみんな驚くんだ」



小さな悪戯の成功に満足した声が聞こえる。

資材の消費量が示されたそのページの意味するところに気づいて、私は本当に驚いた。

え、嘘。だって…これ、ホントに一日の消費量なの?

五日とか一週間とか、そうじゃなくって一日!?

にわかには信じられないくらいの鎮守府の資材消費量に、私はしばし言葉を失う。



燃料に弾薬、鋼材、ボーキサイト。この大量の資材の消費は一体?



「だって、昨日も雨で出撃はなかったハズで……」



まず第一に、出撃が無くても演習がある。そう提督が前置いて授業が始まった。

「雨の日の方が各艦娘の艤装の点検、修理、改修がしやすい。みんな鎮守府にいるからな」

「そしてもちろん、新たな艤装の開発、建造…これらに莫大な資材を使う」


結局、雨が振ろうが晴れようが資材が沢山必要なことに変わりはないのさ。

こういうところは普段、あまり目に付かないからなと。

そう言った提督の真意に気づかずに、何気なく返事をする私。



「ふうん、今まで何も知らなかったわ」

「だからこそ、こうやってお前を呼んだのさ」

その言葉に私はあ、っと声を上げる。

何故、普段秘書艦をやらない自分が呼ばれたか。

誰もが思いつくだろうその疑問が浮かばなかったのは、私がこの人の役に立ちたいと気負っていたから。


さささ、っと書類を片付けて。

この人が調べ物をする時には必要なものを用意してあげて。

サボらないように首輪をかけて、時には目を瞑って甘やかしたりして。



そんな、自分がなりたい憧れの姿ばかりに気を取られて、大事なものを見落としていた。

「私は特に、着任してから出撃、出撃で、遠征任務なんかにも就かなかったから…」


「自分がどれだけ他の艦娘に支えられていたか、こうして見ないと分からないよな」


ええ、と頷く私。

出撃以外の任務を蔑ろにしていたわけじゃないけれど。


でも、目を向けれていなかったのも確か。

鎮守府の仲間たちがどんな苦労をしているか、私はまるで分かっていなかったのかもしれない。

「今、気づいた。それでいいじゃないか」


私が落ち込むと思ったのだろうか、先回りする提督の思いやりが少し嬉しい。

多分、そう言ってくれなかったら…ちょっと、ヘコんでたかもしれないもの。



「ええ、そうね。せっかく貴方が気づかせてくれたんだもの。無駄にはしないわ」

「ふふん。ためになったかね、矢矧クン?」



躍けながら言う彼に私は笑いながら、はい先生、と返事して。

この人の秘書艦をやるには、まだまだ足りないモノだらけだと言うことを悟る。

もっともっと、頑張らなきゃいけない。素直にそう思う。

でも、フォローされて、教えてもらうばかりじゃ少し悔しい。

だから私は、澄ました顔でいる彼の事を少しだけからかってやることにした。



「貴方が出撃ばかりの娘を秘書艦にするのは、そういう理由があったからなのね」

「まあ、な。ベテラン組に頼ってばかりもいられんし、人材も育てなきゃな」

「てっきり私は、普段と違う女の子を隣に置きたいからだと思っていたわ?」



げふっと変な咳をする提督をみて、私は少しだけ満足する。

慌てて弁解しようとする彼の姿が可愛いとすら思えてしまうから、面白いわね。

「そ、そんな訳無いだろう。俺は至って真面目にだな」

「へえ、そうなの。がっかりだわ?」


「……お前、俺のことからかってるだろ?」

「あはっ、どうかしらね?」


自分がからかわれる立場になるのは嫌なのか、提督は拗ねて仕事に戻った。

余程悔しかったのか、今のやり取りがなかったかのように没頭し出すのを見て、まるで子供みたいだわと笑ってしまう。

さて、雑談ばかりしてもいられないから…。

一矢報いることが出来て機嫌を良くした私も仕事に戻る。


でも、甘かったわ。人をからかうことが得意なこの人に挑むのがどういう意味を持つか。

なんだか今日の私は、今まで分かっていなかったことばかりに気づかされる。



「まあ、それもあるんだがなあ」

「えっ」



今この人は、いったい何て言ったのかしら!?

ぼそっと呟いた提督に瞬間、反応しようとして慌てて堪える。

馬鹿ね、私ったら。ここで反応したら、それこそこの人の思うツボじゃない。

その証拠にほら、提督が慌てる私を見ようとこっちを向いているに決まって…あら?


「~~~♪」


私の動揺なんて、どこ吹く風。

提督は本当に自分の執務に没頭していて、私のことなんか見てなかった。


…え、それじゃあ、どういう事?

さっきのあれは、私をからかうための言葉じゃなくって。

無意識のなか本心がふと漏れたと、そういうことなのだろうか?

それともこれは演技で、またしても私の事をからかっている…とか?

だって、この人はえっちだ。スケベだ。

私の…を見たんだから、きっとそうに決まってる!


ドキドキドキと、胸が高鳴っていく。気持ちが落ち着かない。

一緒にいたい女の子を秘書艦に据えるというのが冗談じゃないとしたら、今日秘書艦に選ばれたのはまぎれもない私な訳で。

それが例え冗談だとしても、嘘では無い訳で。



私を秘書艦に指名したということだけは厳然たる事実。


それはもちろん仕事を教えたかったという理由もあるだろうけれど…。

万分の一でも、私と一緒にいたかったという気持ちもあるハズ…。

ああ、もう駄目。そんな事ばかり考えて肝心の仕事が手につかない。

今まで知らなかった仕事を沢山知る機会なのだから、しっかりしないといけないのに。

今まで知らなかった”一番知りたいこと”はいま、目の前の書類の中には無いのだ。



トントンと、両手で書類をまとめるフリをして持ち上げて顔を隠しながら。

私は先ほどの彼のことばの真意を探るようにして、恐る恐る視線を向ける。

「ねえ、さっきのは…」

「ん、何か言った?」

「な、何でもないわ!」


やっぱり、聞けるわけがない。

私と一緒にいたいから秘書艦に呼んだの、だなんて、そんな事。



だってもう既に、顔がこんなにも赤い。

この上、もし…ありえないことだけれど、もしもそうだよなんて言われたら。

私、どんな顔をしたらいいか分からないもの。

たとえそれすら冗談だったとしても、冗談には聞こえないだろうから。

聞きたい、でも、聞けない。冗談でもいいから言って欲しい。

矢矧を隣に置きたいから呼んだんだよ、だなんて…そんな甘い事を言って欲しい。



内心の緊張と紅潮した顔を悟られないように、書類を読むフリをして俯く。

今ばかりは腰まで届く長い黒髪を後ろでに縛っているお気に入りのこの髪型を後悔する。

阿賀野ねえみたいに伸ばしていたら顔を隠せるのにだなんて、そんな事を思ってしまったから。

「そんなに食い入るように見んでも…何か分からない所あるか?」

「分からない事だらけよ、バカ」

「ハハハ、違いない」



どうせ意味なんて伝わってないに決まってる。



雨の中、鎮守府の一日はゆっくりと過ぎていって。

それでも、私の仕事は一向に進まない。

本日ここまでです。矢矧は好きすぎて困る。

少しだけ置いていきます、青葉改二はまだですか

「ああ、仕事が進まんな」

「誰のせいよ、誰の」


静寂を破ったのは、案の定提督の方からだった。

重要な案件が無いとはいえ、時折私に話しかけてからかうんだから、仕事が進まないのは当然よね。



「もう、私が慣れてないからってサボろうとするのは駄目よ!?」

「…ちょっと矢矧さんは俺の評価が低すぎないかな?」


あら、そんな事はないわ。だって能代ねえたちに聞いてきた通りに言ってるだけだもの。

ああ、あと、これも言っておかなきゃね。

「密室に二人きりなのをいいことに口説いちゃ駄目よ?」

「ねえお前秘書艦組の奴らに何言われてきたのねえ!?」


「あら、他に聞かされてきた貴方の所業から見れば、正当なアドバイスだと思うわ?」

「…奴らに何聞かされて来たか教えてください」


「あはっ、秘密よ、秘密」

無意識に口説いて来るのよね、とか。

こんな事でからかってきた、とか。

急に優しくなるんだから、とか。



みんな被害報告だの、私への忠告だの。そういった体で自慢してくるんだから…。

その手のお話は耳にタコが出来るほどよーく聞いていますとも!



だからこそ、私はその手に乗ってやらない。

ちゃんと私が監督して、あなたにはバリバリ仕事をしてもらうわ。

「なあ、ちょっとだけ。俺のこと褒めてる奴もいたよな?」

「ふふ、どうかしらね。褒められるようなこと、したのかしら?」


「うう…それを言われると何も言えない」

「日頃の行いが垣間見える様で面白いわ」



…って。

「もう、また雑談しちゃってるじゃないの。貴方のせいよ!」

「ええ、矢矧だってさっきまで楽しそうだったじゃんか!?」

「大体俺、いつも真面目にやってるからな。お前が話かけなければ今も仕事してたし」



あら、私のせいですって?

じゃあ他の娘が秘書艦の時は真面目にやってるのかしら。


それに、この人は他の艦娘をどう評価しているのだろう。

ちょっと…いえ、大分気になるわ。ちょっと、聞いてみようかしら。

「ねえ、貴方が一番頼りにしてる秘書艦って誰?」

「…何故、そんな事を聞く」


これからの秘書艦業務の参考にしようかと思って、だなんて。

…口実としては少し苦しかったかしら?


だって気になるんですもの、貴方が誰を頼りにしているか。

”秘書艦組の中で”だなんて範囲を区切ったのは、そこまでしか聞く勇気が無かったから。

「そうだな、まずは…」


私の真剣な顔をどういう風に捉えたのかしら。

提督の方も真剣な顔になって考えはじめてくれたようだ。


私のためを思っての行為なのだから、本来それは喜ぶべきものなのだろうけれど。

…他の艦娘たちに自慢出来るものじゃなさそうね、だなんて。



次々に挙がっていく秘書艦娘の名前を、私はそんな不純な気持ちで拝聴していた。

嫉妬矢矧、一先ずここまでです。
イカンなせめて10レスはいかないと進まんとは思いつつ眠い・・・

??「一刻経ったら起こせ」
はじめます

「まずは矢矧、お前の姉の能代かな。真面目で堅実、細かな事務まで行き届いている」

「ちょっと杓子定規なところもあるけれど、そこがまたアイツの美徳だろう」


能代ねえの名前が上がったのが誇らしい。

阿賀野ねえの奔放さに鍛えられたあの性格は、秘書艦業務でも遺憾なく発揮されている様だった。




「同じ軽巡なら夕張もな。兵装の開発ならアイツだ。一緒にいて楽しいし、気が楽」


おっちょこちょいだけどな、と付け加えて提督。

彼女の親しみやすい人柄は得難いものよね。新しく着任してきた頃は助かったわ。

「他には長門や加賀さんだろう。流石に全体をよく見ているから、大きな作戦の時は頼ってしまうな」

「ただ…」

「何よ、何か問題があるの?」


一瞬だけ言い淀んで提督が続ける。


「ちょっとでも気を抜くとお説教が」

「それは貴方が悪いと思うわ、提督」



長門や加賀にまで冗談が通じると思うのは、流石に無謀すぎるんじゃないかしら。

その後も赤城や翔鶴、妙高や那智なんかの…提督が優秀と判断した秘書艦娘の名前が挙がっていく。

多分新米の私の参考になるようにだろう、それぞれの長所や特徴を上げながら。

「…っと、こんなものかな。どうだ矢矧、参考になりそうか?」

「ええ、そうね。自分に合ったスタイルの艦娘を参考にしようかしら」


そうやってスラスラと秘書艦の名前が挙がっていくことが、何だか痛い。

自分で聞いたくせに、何をしているのかしら私は。



「ならやっぱり能代かな。お姉ちゃんな分聞きやすいだろうし」

「私もそう思うわ。能代ねえほどじゃないけど真面目なつもりだもの」


「その割には今日、結構俺と雑談したがな」

「う、うるさいわねっ。貴方がからかうからじゃない!」

ああ、失敗。またこの人の手に乗ってしまったわ。

こうやって私をからかうのが目的なのに、またしても。

私も加賀や長門くらい睨みを鍛えなきゃダメかしらなんて結論づけて。



それにしても、と心の中で思う。

私の名前、挙がらなかったなって。




分かってる。今日が初めての秘書艦なのだから、優秀な秘書艦として名前が挙がらないことくらい。

でも、悪戯好きな彼なら…嘘でも私を動揺させるために呼んでくれるかなって、そう期待していたんだ。


それなら”秘書艦の名前”にしない方がいいくせに。変なところが臆病よね、私ったら。

「後はそうだな、瑞鶴や夕立は内務が嫌いなくせに何故か秘書艦をやりたがるんだよな」


…多分それは私と同じ理由。

あの二人が書類仕事をやりたがるなんてそうとしか考えられないもの。



あの二人は提督からもう少し慣れれば頼りに出来るだろう、という少々辛い評価が下された。

戦場での活躍が凄いのとは分けて考えているのが分かる誠実な寸評。



「二人の熱意は見ていて気持ちいい。俺も教えがいがあるってものさ」

まだまだだけどな、と微笑みながら、提督は秘書艦談義を締める。

あまりにも優しくて厳しい心のこもった評価に、私は最初の浮ついた気持ちを内心で恥じた。


一片の私情も贔屓もない秘書艦評価なのに、それはどこか聞いていて温かくて…。

この正直さこそが、提督としてのこの人の艦娘に対する愛情なのだと私は悟った。




冗談は言うくせに、嘘はつかないんだわ、この人。




胸の前でぎゅっと手を握って、私は思う。

逆に言えば、私が秘書艦として信ずるに足る存在まで成長すれば…。

躊躇なくこの人は私の名前を挙げてくれるだろう、今挙がった先輩秘書艦たちみたいに。

「先は長いわね」

「どういう事?」


「貴方の秘書艦を名乗ることよ」

「そんなに厳しくないから安心しなさい」



クスリと笑いながら言う提督に、心の中でそうじゃないのよと答える。

だって本当に、とってもとっても、先は長いんだから。


「じゃあ次からも私を秘書艦に指名してくれる?」

「出撃の方が性に合うって言ってたのにどうしたんだ、急に」

私の異様な張り切りようを不思議に思ったのだろうか。

確かに今回の私の秘書艦指名は臨時のものだから、疑問に思うのも不思議じゃないかも。


そういえば瑞鶴もそうだったな、と提督。


「元々出撃組だったのに、臨時に指名した後秘書艦もやりたいなんて言い出した」

「えっ…」

「どうしたんだ、アイツみたいないきなりの心境の変化は」


まるっきり私と同じパターンじゃない!

あの娘が出撃を減らしてでも内務をやりたい理由なんて、私と同じく一つしかない。

ライバルの存在を意識するとなんだか焦ってしまって、思わず口走ってしまった。


「貴方の助けになりたいからよ」


提督の目を真っ直ぐ見ていられなくて、そっぽを向いて呟いた。

ふだんの私には似つかわしくない、歯切れの悪い小声でぼそぼそと。



「ん、何て言ったんだ今?」

「何でもないわ、何でも!」


おかげで今の私の心は提督に伝わらなかったらしい。

秘書艦業務はまだこれから、寝食合わせて明朝まであるのだ。

ここで(主に私だけが)気まずくなったら取り返しがつかないもの。

「ほ、ほら!またサボってしまったわ。仕事に戻るわよ、仕事に!」

「…自分から話しかけて来たくせに」

「うるさいわね、ほらほら仕事よ、仕事!」



恥ずかしさを誤魔化すために声を張り上げて、ガサガサと書類を整えながら。

さっきの私の呟きが聞こえてなくて良かったと、そっと胸を撫で下ろすのだった。

一先ずここまで、書けたらまた来ます
??「提督さんはスレンダーな女の子の方が好きって言ってたずい」

お互いに交代で夕食を取って、執務室は夜の業務へと移っていく。

その日の出撃結果が各艦隊旗艦から届くのはこのくらいの時間からで、これは私が旗艦の時もそうだった。


戦闘結果の評価、MVP選出、艦娘や艤装の状態確認が最優先で行われるみたい。

ただ今日は雨で出撃が少なかった事もあり、私でも確認が十分な質と量だったことは間違いがなさそうね。



「はい、提督。出撃結果の報告よ」

「おう、早いな。まあ今日の出撃数だとこんなモンか」

秘書艦の判をついた書類を提督に回すと、私がかけた時間の半分くらいでチェックが終わる。

それでいて内容は全て頭に入っているのだから大したものよね。


そうして感心してばかりではいけない、何故なら提督の目がギラリと光ってこちらを見たからだ。


…何か見落としがあったかしらと不安に思っていると。

「浦風と浜風、潮に曙が入渠中…」


ゴクリ。


「ちょっと風呂行ってくる」

「呼ぶのは長門と加賀、どちらがいいかしら」



もう、ホントに呆れた。

二人の名前を聞いてスゴスゴと机に戻る彼をみて私はため息をつく。



「全く、遊び心が無いとイカンぞ矢矧」

「貴方がありすぎるの!いやらしいわね!」

「胸の大きさばかり…私のこともそんな目で見てないでしょうね!?」

「~♪」


その反応に私は両手で自分の身体を抱いて、ある部分を隠すように腰を捻る。

提督の余裕の表情に、私はよせばいいのに言葉を続けてしまう。



「ちょ、ちょっと」

「曙目当てかもしれないだろ!?」

「なお悪いんですけど…」


ああ、もう。さっきはこの人の事を尊敬したのに。

気を抜けばまたしても雑談してしまって、すっかり相手のペース。


でもどうやらこれは、この人なりの話の枕だったみたい。

無事書類を回せたと思って油断していた私は、突然切り込まれる。


「今日の出撃で一番褒める艦娘と、叱る艦娘がいるとしたら誰かな?」


与えられた仕事だけをこなすことに精一杯だった私には予想外の求め。

でもこうしたことに応えるのが、この人の秘書艦なのよね。



「えっと…その」

「ゆっくり考えて良いよ」

そう言って提督は自分の書類に目を戻して執務を続ける。

どうやら時間をもらった私は、焦りながら内心で考えを巡らせた。


さっきの出撃報告の書類内容、全部はもう覚えてない…でも印象に残ったのは…?

考えをまとめて、恐る恐る意見を言った。



「褒めるのは神通で叱るのは天龍かしら…?」

「なるほど、なるほど」

書類に書き込んでいた彼の手がピタリと止まる。

私の意見を咀嚼して…どうやら私が彼女たちを選んだ理由まで見当が付いているみたい。


二人とも今日は旗艦の任だから、こうやって話題に上るのも間違いじゃないハズ。

そして神通は今日出撃した艦隊の中一番の戦果を上げていて、反対に天龍は一番少ない。



「俺と真逆だな」


そうして呟かれたことばに私はえっ、と声を上げた。

私は誰を評価するかという指標を戦果・・・つまり敵の撃破数の多寡で決めた。

提督が別の指標を持ちだして、それぞれ他の艦娘がトップとワーストに挙がるなら分かるけれど、反対ということは。



戦果が一番少ない天龍が褒められて、一番多い神通が叱られるということよね…?



訳が分からないと言った感じで固まる私に提督は話を続ける。

俺が絶対に正しい訳じゃないけどなと前置いた後で、けれどもその判断に微塵の迷いも見られないほどしっかりとした口調で。

「二人とも今日の任務は、新海域の威力偵察を兼ねた出撃任務だったな」


まだ、まだ分からない。だからといって何故、私と提督の評価が真逆になるのかが、まだ。


「じゃあ、新しい敵を沢山倒した神通の方が…」



でも、私の反論は鋭い口調で遮られる。



「今日の天候は大荒れだった、出撃数を日頃の半分以下に絞るほどに」

「それでも深海棲艦の勢力を知るために、新海域だけは調査しなければならない」

ここまで聞いても私はまだ提督の真意を理解出来なかった。

だって、情報が欲しいのなら尚更沢山敵を倒した神通の方が天龍より役立ったはず。


そう口にした私は、今日はじめて提督から窘められた。

傍点付きで聞いてくれよだなんて洒落た前置きは、私を落ち込ませないためだろう。




「矢矧、ここは執務室だ」

「あっ」

ことばが胸に突き刺さる。

『秘書艦になる』ということに頭が切り替わっていなかった証拠。


だって、私のさっきまでの考え方は提督が言った通りで…。

敵を倒せばそれで良いというのは戦場での考え方だもの。

「今日は一日中天候が荒かった、ここからの無線指示も途切れやすい程に」

「当然海も荒れていただろう。そんな中未知の海域に進撃しなければならないリスク」


最小限の被害で情報を持ち帰った天龍。
最大限の被害で情報を持ち帰った神通。


提督の評価基準はそこにあったのだ。

あるいは、”そこ”に判断基準を置きたいという想いの現れかしら。




「神通の出撃はいつもヒヤヒヤしながら見送る事になる」


待つ身にもなって欲しいよ、と提督は寂しげに笑った。

>>83訂正。

「今日は一日中天候が荒かった、ここからの無線指示も途切れやすい程に」

「当然海も荒れていただろう。そんな中未知の海域に進撃しなければならないリスク」


最小限の被害で情報を持ち帰った天龍。
最大限の被害で情報を持ち帰った神通。


提督の評価基準はそこにあったのだ。

あるいは、”そこ”に判断基準を置きたいという想いの表れかしら。


「神通の出撃はいつもヒヤヒヤしながら見送る事になる」

待つ身にもなって欲しいよ、と提督は寂しげに笑った。

轟沈の可能性。


それを考えれば”秘書艦”として評価すべきのはどちらか…それが分かってくる。

戦場で評価される武勇も、見方を変えれば蛮勇だという事を身を持って知る。


でも、と出撃一辺倒だった私は、すぐに価値観を切り替えることができないでいる。

だって、神通の考え方は戦場における旗艦としては褒められるべきことであって…。




「神通が間違っている訳じゃないさ」


私の思考に提督の言葉が追いつく。そう、神通が間違っている訳じゃないんだ。

「俺の役に立ちたいと言って…でも仲間には気を配って、自分だけ傷ついて帰って来る」

「自分が秘書艦の時はアイツ、天龍の無茶を叱るんだぜ。どうか沈まないでって。」



分かっててやってる、だからこそ歯がゆいんだよと付け加えて、提督は戦闘評価を打ち切った。

戦果を上げてくる艦娘は褒めてやりたい。


でも…自分のためにと、沈むかもしれない地へ飛び込んでいく私たちを。

戦場に立てない彼はどんな気持ちで見送り、どんな気持ちで帰りを待つのだろうか?

キュン、と胸が悲鳴を上げる。

それはさっき感じたドキドキと違って一瞬の刺激で、でも今までのどれよりも痛い。



今の痛さの理由は何なんだろう?



秘書艦としての至らなさを感じた事への悔しさ?

この人の切なさ、心の深いところへ触れた事への共感?

分からない、分からない。今日は分からないことが多すぎる。



そんな私がただ一つ、分かったことは。

「…」



「おいおい、落ち込まないでくれ。俺が全て正しい訳では無いんだ」

「戦果を上げるのは軍人として正しいこと。お前の見方が本筋なんだからな?」



違うの、そういう事じゃないの。

貴方の役に立ちたい。今までは幾分憧れを含んだ気持ちだったのが。



いま本当の意味で、決意として私の中に宿った。

さっきの痛みは、きっとその祝砲なんだわ。

「提督。やっぱり私、秘書艦としても頑張りたい」

「そうか、分かった」




ねえ、提督。貴方はホントに分かってる?

私がいま、どれだけ本気の想いを口にしたのか。




ねえ、ちゃんと分かってる?

書き溜め吐き出しました、また来ます。
ラストっぽい雰囲気ですがもう少し続きます、宜しくお願いします。

まさかの土曜日に終わらないという事態にびっくり、行きます

「じゃあ俺は先に風呂へ行ってくるが…」

「後は任せておいて!」


まだ入る気にならない、と断った私の代わりに提督がお風呂へと向かう。

今の時間なら大浴場も貸切だから、提督が入っても問題ないわよね。



「何か緊急の事件が起きたときは―」

「すぐに呼ぶから、安心して行ってらっしゃい!」


なんだかえらく張り切ってるな、なんて微笑を残して提督が出て行った。

「当たり前でしょう」



ひどく当然の考えに行き当たる。

これからも秘書艦をやりたいという私の気持ちに分かった、と返してくれたけど。



それは心意気を買ってくれただけで、必ず呼ばれるとは限らない。

だってあくまでも主力はベテラン秘書艦組な訳で。

もしかしたら次は来年、なんてこともあるかもしれないもの。


そうならない様に、自分が出来るってことをアピールしないと。

だから一人になったこの時間は絶好のチャンスなのだ。



やるのよ、矢矧っ…ここで決めなきゃ女が廃る!

そう気合を入れ直して、これから提督に教わりながらこなすハズだった書類の山に取り掛かる私だった。

「さて…」


秘書艦としてもっとも大切なことはなんだろうか?

色々あると思うけれど、まずは鎮守府のスケジュール管理だと思う。



この時間の秘書艦は今日あった任務の結果を整理したり、まだ残っている任務があればその消化に奔走したりする。

能代ねえが徹夜で焦っていたのを見たことがあるわね。



ちなみにその次の日には、普段しっかりしたねえが目の下にクマを作って、乱れたシャツで朝を迎えていたのだからびっくりしたものだ。

阿賀野ねえに注意される能代ねえを見たのなんて、あの時が最初で最後かも知れない。

>>96訂正

「さて…」


秘書艦としてもっとも大切なことはなんだろうか?

色々あると思うけれど、まずは鎮守府のスケジュール管理だと思う。



この時間の秘書艦は今日あった任務の結果を整理したり、まだ残っている任務があればその消化に奔走したりする。

能代ねえが徹夜で焦っていたのを見たことがあるわね。



ちなみにその次の日には、普段しっかりした能代ねえが目の下にクマを作って、乱れたシャツで朝を迎えていたのだからびっくりしたものだ。

阿賀野ねえに注意される能代ねえを見たのなんて、あの時が最初で最後かも知れない。

ちなみに今日はというと…初心者の私に大量の任務を残すのは良くない、ということで。

昨日の秘書艦である赤城が提督をひと睨み。あらかた片付けてくれていたのだ。


「後は…っと」


もちろん、今日の任務さえ終わればいいというものではないから。

任務にはその日だけでなく週単位、月単位で進行していくモノがあることくらい知っている。

出撃組は気にしないでも勝手に秘書艦が割り振ってくれたから考えたこともなかったけど。


「えっと、マンスリー任務の進行度がこれ、ウィークリー任務がこれね」

一番大規模なマンスリー任務はこの時期に3割達成、と。

これは早い方なのかしら、それとも…?



ガリガリとメモに書き出してみてもいっこうに埒が明かない。

じゃあ過去の達成度はというと、これが月掛け任務をクリアしている月もあればほったらかしの月もあるわで、基準が分からない。



「ああん、もう。いったいどうしたらいいんだか!」


そうして何も結論が出ないまま、10分ばかりが経過してしまった。

「提督、お風呂にどれくらい時間をかけるのかしら…?」


もう上がって来てしまっては困るというもの。でも、男の人は早いって言うし…。

能代ねえに聞いとけば良かった、だなんてそんな馬鹿な事を思った。



「提督ってどれくらいお風呂に入ってるの、だなんて。馬鹿よね」


それでも、万事几帳面な能代ねえなら時間を測ってるかもしれないから侮れない。

矢矧、提督の入浴時間の平均は12分と34秒よ、だなんて言われたらどうしていいか分からないもの。

「ふふ…って、いけないいけない!集中しないと!」


これじゃあ提督にサボりはいけないだなんて注意する資格ないもの。

任務の方はやっぱり分からないわ、何か別のところで挽回しないとっ。



そう思って、今度は開発計画書を開いていく。

現在艦娘たちが所持している兵装、予備に保管されているもの、破損したもの…。

そして開発に回せる資材量が明記されており、各秘書艦は提督と相談しながら兵装を開発していくのだ。



でも一つ問題が。開いたページに目を走らせた私は、ポツリとこう呟く。


「これって多いのかしら、少ないのかしら…?」

兵装はどれだけあっても足りない。それは、今まで使うだけだった自分でも分かるけど。

でも、この計画書に記された一日に使える資材量の目安を見るに、資材もそうなのだ。

秘書艦は決して余裕がある訳じゃない資材をどうにかやりくりして、最高の結果を出さなければならない。



「今足りないのは…重巡と軽巡の砲かしら。でも、電探も欲しいし…」



実戦基準で良いのなら、私の考えは正解に近いはず。

さっきはそれで失敗したから何とも言えないけれど…。

パラリとページをめくる。昨日の赤城はどうしたのかしら?

「夕張と長門に任せて41砲の開発かぁ」


戦艦の装備が足りているかどうかなんて、そんなの知らない。

でもこれを見るに赤城は把握していたのよね、彼女は空母なのに…。


自分たちが欲しい艦載機だって、数は知らないけれど余裕は無いはず。

なのに戦艦の主砲を優先する判断は、ちょっと私では出来そうにない。



秘書艦は任命された日だけじゃなくって、いつもこうした鎮守府の情報を取り入れているのだろう。

能代ねえも影でそうした努力をしているんだろうな、私に悟らせないだけで。

「そういえば、あんな事もあったわよね」



…と、私は以前出撃の時に夕張に謝られたことを思い出す。



あの時は確か、私がいつも使う主砲である3号砲も、抑えの2号砲も破損で在庫が無かったんだ。

だから仕方なく演習の時でしか使わない20.3砲を引っ張り出して出撃したんだっけ。



夕張が仕切に謝っていたのはその時秘書艦だったからだろうし、そんな彼女に私はしょうがないわね、だなんて苦笑して。

何とかして見せるわ、だとか言って抜錨した覚えがあるけれど…。

「今思うと何様よねって感じだわ…」



あれ以降、何回か経験した大規模作戦の時だって兵装に不満を感じた事なんか一度もない。

それはその時の秘書艦娘たちと提督の管理のおかげなのだろうし、だからあの時は余程のことがあったのだと思う。

裏でそうした努力をしている人たちの事など気づかず、私は存分に出撃させてもらっていたのだ。



出撃と内務のどちらが偉くて尊いだとか、そういう話じゃない。

鎮守府をまわす両輪の、私は今まで片方だけしか知らずにいたのよね。

「遠いなあ、秘書艦…」


そして、あの人に一番頼られる存在になるのはもっと遠い。

開発計画書をパタンと閉じて、私は物思いにふける。


楽勝だなんて舐めていた訳じゃないけれど…。

出撃と秘書艦業務がこんなにも畑が違うとは思わなかった。




「やっぱり私には、向いてないのかしら?」


不器用だし、たまに阿賀野ねえもビックリのドジするし。

今日だって、提督に話の主導権を握られっぱなしだったし。

「――ぎ」

「これじゃあ次に呼んでもらえる機会なんて無いわよね…」


机に両手で頬杖をついて、ぼんやりと視線を前にやって呟く。

別に秘書艦だけがあの人の役に立つ道な訳じゃないもの。

出撃で戦果を上げてくる今だって、立派な任務なのだから。




「―矧っ」

「秘書艦、やりたかったなぁ」


そう言ってため息。

でもまあ、仕方ないか。

私よりも秘書艦向きの艦娘だっていっぱいいるものね…。

提督がお風呂へ行くついさっき固まったばかりの決意が、ガラガラと崩れていきそう。

思考がどんどん後ろ向きなものになって行って、全然私らしくない。



「やーはーぎー」

「はあ」



提督…、そう言えば提督はまだかしら?

そろそろ上がって来ても良い時間な気がするのだけれど。

そんな事をぼんやりと考えていて…私は何も気づかずにいたツケを払うことになる。

「…それっ」

「ひゃん!」



私の長い長い黒髪を縛っている付け根のところを、後ろからぐいっと引っ張られる。



な、何!?いったい何が起こったというの!?



すっかり混乱した私は、椅子に座ったまま足をバタつかせて暴れてしまう。

ちょっと女の子がしていい動きじゃないけれど、ビックリしたんだから仕方ない。

「もっかい」

「えっ!?」


またしても、お気に入りのポニテをぐいっと。

今度は素直に頭も持って行かれて、視線が上を向いてしまう。


「やんっ…何、何なの!?」


悲鳴の先に見たものは、味気ない天井じゃなくって。




「やあ、矢矧」

「て、て、提督!?」


落ち込みながらぼんやりと思い描いていた、私の理想の人の顔。

今日一日、私の心をかき乱した人が…まだ足りないって、トドメを刺しに来た。

「な、何で提督が!?」

「お風呂、お先にな?」


顔が近い。

瞬間、沸騰する私。



頬まで真っ赤に染まっているのが鏡を見なくても分かって、それを提督に悟られたくなくて…。

気づいたら、何故だか思い切り床を蹴っていた。




椅子が、後ろ向きに勢いよく傾く。

「えっ」

「おい、やは―」



ガタン!



椅子から投げ出された私は、次の瞬間訪れるであろう衝撃に備えて固く目を瞑る。

ああ、なんだか今日は失敗してばかり。格好いいトコ、見せたかったのにな…。

そんな事を思って、何秒が経っただろうか…?覚悟してた衝撃は、まだ来ない。


「あ、あれ。何で?」

「ったく、危ないな」



不思議に思って恐る恐る目を開けると、目の前には…

倒れこむ私を間一髪で抱えて、床にどっかりと座り込んだ提督と。

そんな彼と向き合って、まるで恋人の様にその胸に踞る私が、いた。

肌と肌が密着している。湯上りの彼の身体の熱が私に伝わってきて、何だかすごくいけない気持になってしまう。

…ああ、おかげで私の身体もいま、なんだかすごく熱いわ。


トロンと、蕩けてしまった瞳で提督の方を見ると、彼もまた私を見つめていた。



「…」

「…」



見つめ合って、中途半端に口を開けて…けれどお互い何も話さない。


ドッドッドッドッドと、自分の心臓の音なのにまるで背後で鳴っているかのような錯覚。

その鼓動が身体を揺らすたびに、行き場のない感情が爆発しそうになる。


ダメよ矢矧。これ以上見つめていたら、どうにかなってしまいそう。

「あ、ありがとう。助けてくれて」

「あ、ああ。すまないな」




ようやく、それだけの言葉を絞り出して…私はこの天国という名の地獄から抜け出すために立ち上がる。

提督の肩に両手を載せて勢い良く立ち上がろうとすると…。



彼も私を手助けしようとしたのだろう、一緒に立ち上がる。

必然、二人は向き合ったまま…今までにない距離で見つめ合うことになった。

さっきよりも、二人の顔も身体もずっとずっと近い。

…尚更、ダメじゃない。これじゃあ恋人同士が抱き合っているみたいだもの。


「…」

「…」


キスの距離まで、あと一歩。


どちらかが境界を侵せば、提督と艦娘という関係は簡単に崩れてしまいそうで。

それは私自身が夢にまで思い描いていたことなのに…それを叶えるにはまだ、何かが足りない気がして。



だから私は、その一歩を踏み出せなかった。

もうちょっと先まで用意がありますが眠いので起きてから投下します、では

恋人設定ではないですからね、うん
では行きます

「た、助けてくれてじゃ、ないわね。元はと言えば貴方が原因だもの!」

「だってお前、いくら話しかけても上の空だったんだぞ?」


「だからって、女の子の髪引っ張ったりする!?」

「ごめんごめん、もう二度としないから」

「ふうん…」



別に、もうするなとは言ってないんですけどっ。



…あら。思考がピタリと止まる。

いくら話しかけても、って…?

「いつから…」

「ん?」

「いつから、聞いていたの…?」


恐る恐る聞く。やめておけば良いのに聞いてしまう。


「『やっぱり私には、向いてないのかしら?』からかな?」

「ほとんど最初じゃない、バカっ!」

「だから俺は話しかけてたってば!」


恥ずかしい恥ずかしい。

まさか私、あの人のためにとか、そういうことは口に出して無いわよね!?

そうだったとしたらもう、死んでしまうわ。

「はあ、それで…と」

小さなため息をついて、提督が私の机の上を―色々な書類を広げて格闘した後を―見やる。


「俺がいない間に仕事を片付けて驚かせよう、ってか?」

「ええ」



浅はかな考えを見破られて言葉もない。

さっきまでの勢いは何処へやら、私はすっかりしょげてしまった。



「…で、初めての仕事に戸惑って何もできずに、自分には才能が無いと」

「え、ええ…」

「まったく…お前って奴は」


俯いた私の頭に、提督の手が伸びてくる…撫でて、くれるのだろうか?

そうした私の期待は、三度私の髪を掴んだ提督に裏切られる事になる。


「ひゃん…さっき、もうしないって!」

「そう言ったら不満そうにしてただろ?」

「そ、そんな事…!」



あ、あるけれど!

だけど言えるわけない。

「最初から何もかも出来るはずがないだろう?」

「だ、だけど…。今まで私はホントに何も知らなくて」

「だから、これから俺が教えてやるんだろう?」



「取り敢えず風呂入って来い。今日の残りはその後な」

「そんで続きは…そうだな、明日は加賀が秘書艦だから明後日だな」



…へ?

明後日って。

明後日も私を秘書艦に呼んでくれるの?

「何だ、やっぱり嫌なのか?」

「ううん、やるわ。やります!」


次は何時になるか分からないだなんて気負っていたけれど。

思わず転がり込んできた好機に、私は目を輝かせた。

でも、提督の次の言葉の方がもっとびっくりしたわね。



「やっぱりお前は能代の妹だなあ」


え、だって。

そう言うってことは。

「能代ねえも、私と同じ様な失敗を?」

「秘書艦成り立ての頃にな、自分には才能無いって」

「今度、クマのぬいぐるみって言ってみれば分かる」


だからまあ、と続ける提督。


「お前も能代みたいになれるさ、大丈夫だろ」

「何せ、俺が教えるんだぜ?」


何それ、それじゃやっぱり不安だわ。

そう言ってやったら、またしても髪をぐりぐりされた。

これで四度目ね。

ふうん、いいわ。



「貴方、私を困らせるのが好きなんじゃないかしら?」

「とんでもないぞ、お姫様?」


おどけた顔で、わざとらしくも仕事仕事と呟く提督を見て確信する。

勝ち誇って自分の机に向かうために踵を返した彼を見て思う。



絶対、わざとだ。

私を困らせて遊ぶのを楽しんでる。

…ふふ、面白いわね。


この人の秘書艦を続けるなら、そう。

舐められてばかりじゃいられないわ。



「提督、それじゃあ私お風呂に行ってくるから」

「ああ、それまで仮眠してるよ」



こちらを振り返らず、手で挨拶する彼を見て…今ね。

彼の背後まで駆け寄って、ポンポンと肩を叩く。

「ところで提督」

「何だ、やは―ふぎゅ」



相手が振り返ったところに指を立てる、古典的な悪戯。

それは見事に成功して、振り返った提督の頬に私の指が突き刺さった。




「そ~いうコトするのなら、私からも仕掛けても良いのかしら。ね?」

これから先、私ばかりがやられてちゃ不公平だもの。

これは宣戦布告。良きパートナーでありましょうという私からのメッセージ。



「お、お前っ」

「じゃ、行ってくるわ!」



提督の文句なんて無視してやって。

私はさっさとお風呂に入るために執務室を後にするのだった。

一先ずここまで
書けたらまた来ます

短編では・・・ないですねこれ
今回の投下で矢矧編は完結です

上気した頬はお風呂に入った余熱のせい。

この身体の熱も、心臓の鼓動も全部お風呂のせい。

湯上りの私は出来るだけ時間をかけて、ゆっくりと執務室へ続く廊下を歩いた。



「この格好で大丈夫…よね?」



お風呂上がりにいつも着ているジャージ、変じゃないかしら?

あと、頭のてっぺんじゃなくて髪の毛先をまとめる、阿賀野ねえみたいなこの髪型も。

今日の秘書艦業務は明日の準備を提督と一緒に済ませて終わり。

だからいつもの、寝る前のスタンスでいれば間違いがないハズ。


もう少しだけ夜ふかしして、明日の秘書艦である加賀への引継ぎをして寝る、それだけだ。

その後は…そう、明後日を心待ちにして一日を過ごせばいい。



「あら…?」



カチャリと執務室の扉を開けると、その暗さに少し驚いた。

ああそうか、そういえば仮眠を取るだなんて言っていたわね。

机の上に置かれたランプだけが室内を頼りなく照らしていて、目が慣れるまで動くのはためらわれた。

執務室の入口から室内を見渡すと、ランプの灯に照らされた誰かさんの姿が浮き上がってくる。

どうやらソファをベッド代わりにしているようね。



制帽を顔の上に乗せているから、寝顔を見てやることが出来ないのが残念だわ。

私はそっと、寝ている彼のそばに忍び寄る。大丈夫、大丈夫、起きやしないわ。

床に腰を下ろしてソファの端に上半身を寄せると、静かな寝息が聞こえてきて私の心を和ませた。

ふふ、ちょっとは可愛らしいところもあるじゃない。


ソファに頬杖をついて、じっと彼の事を見つめる。

いま、この瞬間に時が止まってしまえばいいのにだなんて。

そんな馬鹿なことを、思った。



「だって…いま、止まっちゃダメよね」



そう。だって、このままじゃ…。

さっき戸惑った一歩を踏み出すことが、永遠に出来なくなってしまうもの。

さっき、私がもう少しの勇気を出せていれば…何かが変わっていただろうか?

いいや、そうは思わない。




だって私は、この想いを伝えたわけではないし。

それに、この人の想いを確かめた訳でもない。


急に距離が縮まってただ少しだけ、変な雰囲気になってしまっただけの話。

私の求めているのは、そうじゃない。あくまでも真っ直ぐ、正攻法で行きたい。




「だから、私は…」

制帽で隠れた寝顔を見つめながら、私は誓う。



この人の秘書艦だって、誰にも胸を張って言えるようになろう。

そして、その時に…さっき踏み出せなかった一歩を踏み出すんだ。



憧れでもなく、決意でもなく。

ひたむきな誓いをいま、この心に刻もう。

私の目指している道は、果てしなく遠い。

この誓いを実現できる日は、いつになるのだろうか、見当もつかない。


そう思ったら…なんだかヘンな気持ちになってきた。



「ねえ、提督」



予約くらい、させてもらっても…いいわよね?



貴方が他の女の子に心奪われないように、ちょっとした魔法をかけさせて欲しい。

さっきはあれだけ躊躇ったくせに。

相手が寝ているとなると、途端に積極的になれる自分がいて。



もう一度だけ耳を澄ませて彼の寝息を確かめたあと。

そっと、自分の顔を近づけていく。



ジワリ、ジワリと心臓を鷲掴みにされている様な痛みが身体に染み込んで。

それでも、この接近がやめられない。やめられる訳が、ない。

俯くと顔にかかる自分の黒髪を片手でかき分けて。

さっき指でつついた彼の頬に、今度は私の唇が迫っていって。




ちゅ、っと…短くて高い音が執務室に響いた。




ああ。やっちゃった、やっちゃった、やっちゃった!

後悔でも喜びでもなく、ただやっちゃった、という衝動が自分を支配する。

初めてのキスは、彼の頬に捧げた。

そう意識したらもう駄目。感情のうねりが収まらない。

彼の耳元で、囁くように口にする。


「貴方の助けになりたいの」


お昼に、聞こえなくて良かったと思った言葉をもう一度。


「貴方のことが、好きだから」


今まで胸に秘めていた、その理由までも。



他の誰も知らない、私だけの深夜の告白が貴方のもとへ届くのは。

さて…いったい何時になるのかしらね?

「う…ん?」

「ひゃっ」


突然の提督の反応に、思わず悲鳴を上げる私。


「あ…れ、矢矧、か?」

「そ、そうよ。起きたのね?」



ああ、と返事をして提督が寝ていたソファから起き上がる。

つられて私も立ち上がって、何とか取り繕うことに成功した。

「風呂、上がった?」

「え、ええ。おかげさまでサッパリしたわ!」

「それじゃあ続き、行きますか。ラストスパートだ」



ふわあ、と大きな欠伸を一つして提督が呟いた。

そうね、本業を忘れちゃいけないわ。まだまだ学ぶ事は沢山あるんだから。


でも、その前に。気になることが一つだけある。

「ね、ねえ」

「どうした矢矧?」


こればかりは聞かずにはいられない。


「さっきの、聞こえた?」

「聞こえたって何が?」


返ってくるのは不思議そうな問いかけだけ。

「あ、さてはお前、また悪戯したな!」

「寝顔に落書きなんかしてないだろうな!?」

「してないわよ、バカ!」



その。別の悪戯はしたけれど、ね…。

でもどうやらこの様子だと、本当に聞こえなかったみたいね。

その事実に、でも私は昼間のようにホっとすることはなかった。

さっき立てたあの誓い。

この人の秘書艦だって、誰にも胸を張って言えるようになって。

そうして、この人に想いを伝えるというあの誓いを果たすには…。


もう一度、今度はちゃんと起きているこの人に向かって。

今日と同じ告白をしなければならないという事実に、私はようやく思い至ったのだから。



「えっと、嘘よね?」

「嘘!?やっぱりお前、俺の顔に落書きを―」

「だからしてないって!」


仮に秘書艦として成長出来たとして…そんな勇気が私に出せるのかしら?

「そんな事よりも、さっさと残りの仕事を片付けるわ!」

「矢矧さんが自分で振った話なんですが…」



何で聞こえてなかったのよ、バカ、だなんて…そんな理不尽な事を思う。


想いを伝えるのは、立派な秘書艦になってから。さっきそう誓ったばかりなのに。


お昼には自分の呟きが聞こえなくて良かったと胸を撫で下ろしたばかりなのに。

「貴方の助けになりたい」

「貴方のことが、好きだから」



私の秘密の告白が、いっそ聞こえてしまっていたら良かったのにだなんて。

秘書艦の席に着きながら、私は内心でそんな身勝手な事を思うのだった。



【矢矧編】 了

【後書き】

矢矧、好きです(直球)。軽巡の中では神通改二と並んでツートップです。
夕張、球磨、川内、能代も好きなですがこの二人はほんとにたまらなく好きです。
キリっとした外見なのに意外と打たれ弱そうで女の子らしい一面があると思います。好きです。

梅雨○○編は今度こそ店じまいかな、当初思い描いた艦娘とそのネタを全て吐き出させて頂きました。
それではここまでお読みいただいた方がいましたら、ありがとうございました。

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