【ラブライブ】凛「三種の返し技にゃ!!」 (90)
更新遅め
百合注意
のぞりん
以上のことが大丈夫な方はぜひお付き合いください。
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――部室
海未「返し技、ですか?」
凛「そうだよ! 凛が開発したんだ!」フンスッ
海未「……??」キョトン
凛「ちょっと、海未ちゃん! 反応薄いにゃ!」
海未「そ、そう言われましても……」
凛「海未ちゃんにはこのすごさが分からないの!?」
海未「正直な話、まったく……」
凛「えーっ!?」ガーン
海未「そんなにショックを受けることですか……」ハァ
凛「受けるよっ! だって、これを考えてたせいで、昨日も寝るの2時過ぎだったんだよっ!」
海未「……早く寝てくださいよ」
凛「それを! それをっ! ……うぅぅぅ」ヨヨヨ
海未「…………」
凛「うぅぅぅ……」ヨヨヨ
海未「はぁぁぁ」
海未「そもそも、返し技と言ってますがなにを返すつもりなんですか?」
凛「ふ、ふっふっ……ふっふっふっ!」
海未「……凛?」
凛「よく聞いてくれたにゃ、海未ちゃん!」
海未「まぁ、それは……はい」
海未(聞かないと話が進みませんし……)
凛「聞いて驚くがいいにゃ!!」
海未「あ、はい」
凛「凛が編み出した三種の返し技。それは!」
海未「それは?」
凛「希ちゃんへのカウンターにゃ!!」
海未「!!!」
海未「希への……カウンター!?」
凛「その通り!」
凛「凛たちは、μ's の中でも一番希ちゃんと一緒にいるでしょ?」
海未「まぁ……そうですね。同じユニットですし」
凛「その分、凛たちは希ちゃんからの攻撃を受けてるのにゃ……」
海未「…………攻撃?」
凛「ほら、ワシワシとか」
海未「あぁ……」ゲンナリ
凛「やっぱり、海未ちゃんもあれには参っちゃうでしょ?」
海未「ま、まぁ……あんな破廉恥なこと……///」
凛「だから、凛は考えたんだ」
凛「希ちゃんの攻撃(セクハラ)に対抗する方法――そう、『三種の返し技』を!」
凛「ねっ! 海未ちゃんも聞きたいでしょっ」
海未「…………」
凛「驚いて声も出ないかにゃ?」フフンッ
海未「あの……」
凛「?」
海未「……正直に言ってもいいですか?」
凛「なに? なんでも言って!」
海未「上手くいく想像ができません」
凛「えっ!? な、なんでっ? 凛、昨日2時まで必死で考えたのに!」
海未「それでも、です。相手はあの希なんですよ?」
凛「うっ……」
海未「希の反応を考えて作りましたか? 先の先まで予想しましたか?」
凛「え、えっと……」アセアセ
海未「正直に言います」
海未「夜、考えた。それだけの案に、あの希の攻撃を返せるほどの実用性はないと思います」キッパリ
凛「…………」
海未「凛?」
凛「うぅぅぅぅ……」
海未「え、えぇと……?」
凛「もうっ!! そんなにいうならいいよっ! 海未ちゃんは見ててっ!」バンッ
海未「り、凛!? な、なにをするつもりなんです!?」
凛「凛が証明してみせるっ!」
凛「凛が編み出した『三種の返し技』で希ちゃんを倒せるんだって」
凛「海未ちゃんに見せつけてやるにゃ!!」
――――――
――――――
さて。
時は流れて放課後のことです。
μ's の練習も終わり、皆が部室を出て行きます。
私も穂乃果たちと一緒に帰ろうとしたのですが……。
凛「海未ちゃん! ちゃんと見ててね!」
と言われてしまいました。
結局、穂乃果たちには先に帰ってもらい、二人だけで帰る凛と希の後を、コッソリと尾行することになったのでした。
――――――
――帰り道
凛「~♪」
希「ふふっ、ご機嫌やね?」
凛「そう?」キョトン
希「ウチにはそう見えるよ? 練習で疲れてるのに、元気やなぁって」
凛「うーん? そんなことないと思うけど……」
希「いつも通り?」
凛「うん」
希「……ふふっ」
凛「? なにか変?」
希「ううん、なんでもな~い♪」
凛「むむむ? なんだか気になるよ?」
希「んー? ただ、微笑ましいなぁって思ったんよ」
凛「???」
希「気にせんでいいよ。ウチにはそう見えるって話やし」
凛「……うん、わかったにゃ」
希「それにしてもよかったん?」
凛「よかったって?」
希「花陽ちゃんと一緒に帰らんで、ってこと」
凛「うん!」
希「いつもはあんなに一緒なのに?」
凛「大丈夫にゃ! それに――」
凛「凛は今日、希ちゃんと帰りたかったんだ♪」ニコッ
希「っ!?」
凛(希ちゃんのワシワシを破るためにねっ!)
希「……ふ、ふーん。そうなんやぁ///」
凛「……希ちゃん?」クビカシゲ
希「え? あっ! 嬉しいこといってくれるやん♪」
凛「えへへぇ」
希「…………///」
希「…………」
希(あ、あかん……凛ちゃんが可愛すぎて顔見られへんっ)
希(……平常心! 平常心になるんよ、ウチ!)
希(ほら、こういうときは、素数を数えるんよ!)
希(えぇと、1、2、3、5、7……あれ? そもそも1って素数やったっけ?)
凛「――希ちゃん?」
希「ひゃっ!?」ビクッ
凛「わっ!?」
希「……び、ビックリしたぁ。急に顔覗き込まんでよ……」
凛「えーっ! 希ちゃんがボーッとしてたのが悪いんだよ!」
希「むっ? ふ、ふっふっふっ……そんなことを言う凛ちゃんには~♪」ワシッ
凛「っ!」
凛(来るっ! 間違いない! あの構えは、希ちゃんの伝家の宝刀、ワシワシにゃ!)
凛(今こそ『三種の返し技』最初のひとつを繰り出す時っ!!)
希「ワシワシ~MAXっ♪」
凛「今にゃっ!!!」バッ
―― モギュゥゥ ――
希「っ!?!?!?」
凛「ぎゅぅぅぅ!!」
希「ちょっ!? り、凛ちゃん!?」
凛「なに? 希ちゃん?」モギュゥゥ
希「な、なにやってるん?」
凛「なにって……」
凛「希ちゃんを抱きしめてるんだよっ!」
希「それは、見ればわかるけど……」
凛「えへへ!」ギュゥゥ
希「う、うぅぅぅ……」
凛(ふっふっふっ! 成功にゃ! )
凛(ワシワシをしてくる直前に、希ちゃんに抱きついてワシワシから逃げる)
凛(これが、最初の返し技『ワシワシ封じ』にゃ!)ババンッ
凛(運動神経がいい凛だからこそ、ワシワシの直前に動ける!)
凛(これでもう、ワシワシは怖くないにゃ!)
凛(海未ちゃん、思い知ったかぁ!)キョロキョロ
希「……ね、ねぇ、凛ちゃん?」
希「な、なんで……」
凛「えっ?」モギュッ
希「なんで、いきなり抱きついてきたん?///」
凛「…………」
凛(はっ!? しまったにゃっ)
凛(言い訳を考えるのを忘れてた! もし、もし正直に言ったら……)ブルッ
希「ね、凛ちゃん? なんでなん?///」
凛「え、えっとねっ……」アセアセ
希「……凛ちゃん……」
凛「………………!!」
凛「の、希ちゃんに抱きつきたかったからっ!」
凛「それじゃあ……ダメ?」ウワメ
希「…………」
凛「…………」
希「……ううん、ダメじゃないけど///」
凛「……ふぅ、助かったにゃ」ボソッ
海未「…………」ジッ
――――――
――――――
『ほらね! ちゃんと効いたでしょ!』
海未「……まぁ、確かにそうでしたが……」
『むむ? もしかして、まだ海未ちゃん信じてないのっ!?』
海未「……いえ、そういうわけでは……」
『じゃあ、いいよっ! 次の返し技もちゃんと効くって証明してあげるにゃ!』
海未「ちょ、そういうことではなくっ――」
『明日、また見ててねっ!』
海未「あっ!? り、凛!?」
―― ブツンッ ――
海未「……切れてしまいましたね」
今日、見た限りでは。
確かに、凛の『三種の返し技』とやらは通用していました。
完全に希のワシワシを封じていたと言っていいでしょう。
しかし……。
海未「希のあの様子は……」
凛に抱きつかれて、顔を赤くしていた希。
夕日のせいか、不意打ちのせいなのか。
それとも……?
……いえ。
私はそういうことには疎いですから、もしかしたら私の思い違いかもしれません。
……えぇ、そうに決まってます、よね?
海未「……明日一日だけ様子を見ましょう」
そうすれば、きっと。
私のこの荒唐無稽な考えは、間違いだったと分かるはずですから。
――――――
今日はここまで。
仕事が一段落したらもう少し更新量は増えるかと思います。
ちょい更新
――3年教室
希「はぁぁぁぁぁ……」
絵里「希? どうかしたの?」
希「えりち……」
絵里「せっかくの昼休みなのに、ため息なんて」
希「ちょっと、な」アハハ
絵里「…………悩みごと?」
希「…………」
絵里「やっぱりそうなのね」
希「え、えぇと……うん」
絵里「……話しにくいこと?」
希「……」コクリ
絵里「そう」
希「…………」
絵里「…………」
希「……あ、あのな! えりち!」
絵里「無理に話す必要はないわ」
希「えっ?」
絵里「だから、慌てないで。ちゃんと心の準備ができたら、ね?」パチンッ
希「…………ありがと、えりち」
凛「あっ! 希ちゃ~ん!」ブンブン
希「あっ……」
絵里「ほら、凛が来てくれたみたいよ?」
凛「お弁当一緒に食べよ~!」
希「…………」
絵里「いってらっしゃい」フフッ
希「うん」タッタッタッ
「お、おまたせ、凛ちゃん♪」
「ほら! 早くいくにゃ!」
絵里「…………」
にこ「……希、とられちゃうわよ?」
絵里「にこ……いたのね」
にこ「ずっといたわよっ!」
絵里「…………」
にこ「……いいの?」
絵里「いいもなにも、希が幸せになれるなら」ニコッ
にこ「…………」ジッ
絵里「…………」
にこ「はぁぁぁ、しかたないわねぇ。ほら、これ!」
絵里「……これは?」
にこ「昨日作りすぎたクッキーよ。チビたちだけじゃ食べきれないし、μ's全員分はないから」
絵里「……ふふっ、ありがたくいただくわ」
にこ「ん」
絵里「…………」モグモグ
絵里「おいしい」
――――――
――屋上
凛「んーっ!! 疲れたぁ!」
希「ふふっ、とかいって午前中の授業も寝てたんやないの?」
凛「ギクッ!?」
希「あ~ぁ、海未ちゃんが知ったら怒るやろねぇ」ニヤニヤ
凛「!?」
希「あ、そういえば、ウチ、海未ちゃんから言われてるんやったなぁ」
凛「……な、なんて?」
希「凛ちゃんがしっかりしてない時は教えてって♪」
凛「にゃにゃっ!?」
希(ま、嘘やけどね)
希(昨日の仕返し、って訳じゃないけど、昨日調子が出せなかった分、今日たっぷりからかってあげんとね♪)
凛「な、なんでもするから、それだけはっ!!」
希「う~ん? どうしようかなぁ」ニヤニヤ
凛「ら、らーめん奢るにゃ!!」
希「ウチ、そこまでらーめん好きやないし?」
凛「うっ!? それじゃ、焼き肉……は高いから……焼き肉味のお菓子!!」
希「凛ちゃんは、ウチをお菓子で陥落するような軽い女だと思ってたんやねぇ」ヨヨヨ
凛「にゃっ!?」ダラダラ
凛「じゃ、しゃあ! どうすればいいのっ!?」
希(来たっ! その言葉を待ってたんよ!)
希「そうやねぇ……例えば――」
希「ワシワシ、とか?」
凛「っ!?」
希「ほら、どうする?」
凛「う、うぅぅぅ……」
希「喋っちゃおうかなぁ?」ニヤニヤ
凛「わかったよっ! ワシワシしていいからっ!」
希「ふふっ、計画通りやね♪」
凛「…………」ウツムキ
凛(ふふっ、希ちゃん、ワシワシはもう凛には効かないのを忘れてるみたいにゃ)
凛(凛の『ワシワシ封じ』で返り討ちに――)
希「あ! 昨日みたいに、抱きついてくるのはなしね?」
凛「」
凛(ど、どうする、凛)
凛(ワシワシに対する返し技は『ワシワシ封じ』だけ……)
凛(でも、それが使えないってことは……)
凛(……なにかあるはずにゃ! 他の返し技なら……ううん、それは無理にゃ)
凛(希ちゃんが可愛いって凛に言って来たときに、希ちゃんを可愛いって褒め返す『可愛い返し』)
凛(それに、もうひとつはまだ使いたくないし……)チラッ
希「?」
凛「……うぅぅぅ」
凛(しかたないにゃ……覚悟を決めて……)
凛「っ! さぁ、来いにゃっ!!」
希「ふふふっ♪ それじゃあ行くよぉ♪」
希「ワシワシ~MAX♪」ワシッ
凛「っ!?」
希「ふむふむ……」ワシワシッ
凛「っ……」
希「やっぱりまだ発展途上やねぇ」ワシワシッ
凛「……んっ、にゃっ///」
希「花陽ちゃんやえりちに比べるとまだまだやけど」ワシワシッ
凛「んっ……にゃ……んっ///」ピクッ
希「これはこれでありやね♪」
凛「あっ……れっ? っんん///」
希「って、あれ? り、凛ちゃん?」
凛(あれっ? な、なんでだろ……なんか希ちゃんにワシワシされて……)
凛「っ、あっ、んっ///」ビクッ
希「凛ちゃんっ!?」
凛「はぁっ……んっ……にゃぁ///」ビクンッ
凛(なんか、すごく……きもちいい?)ポーッ
希「っ///」バッ
凛「んっ、あっ……」ポーッ
凛(やめちゃった……)
凛「…………」ポーッ
希「り、凛ちゃん?」
凛「……のぞみちゃん?」
希「あ、ごめんなっ」アセアセ
凛「? ……なんであやまるの?」
希「な、なんでって……///」
凛(あやまらないでよ、のぞみちゃん)
凛(べつに、りん、いやじゃなかったよ?)
凛(……むしろ――)
凛「ねぇ、のぞみちゃん」
凛「もういっかい――」
――――――
海未「な、なにをしてるんですかっ!?」バンッ
――――――
希「う、海未ちゃん!?」
海未「屋上に上がっていった二人を追ってきてみればっ!!」
海未「は、破廉恥ですっ!!」キッ
希「……なんのことやろうなぁ」
海未「目をそらさないっ!!」ギロッ
希「ひいっ!?」
海未「そもそも、希! 貴女はですねっ!」
凛「…………」
――――――
――――――
海未「わかりましたか、希?」
希「は、はい……」
海未「わかればいいのですっ」
海未「……さて」チラッ
凛「…………」
海未「凛?」コソッ
凛「…………」
海未「凛っ!」コソッ
凛「……えっ? あっ! なに、海未ちゃん!」
海未「……あれが、次の返し技とやらですか?」
凛「えっ?」
海未「さっきのですよ。ワシワシを受けたときの、反応のことです……」
凛「あっ! う、うん! そうにゃっ! す、すごかったでしょ!」
海未「…………」
凛「海未ちゃん?」
海未「…………あれは禁止です」
凛「え、なんでっ!?」
海未「は、破廉恥だからですっ///」
凛「は、破廉恥?」キョトン
海未「……凛、とても……えっと///」
凛「?」
海未「い、色気のある表情だったので……あれはなしですっ///」プシュー
――――――
――――――
色気のある表情なんて。
海未ちゃんからそう言われて、そんなの凛からは遠いものだと思った。
けど、凛は実際にそんな表情をしてたみたい。
海未ちゃんには、あれが『三種の返し技』だって言ったけど、本当は違う。
あれは狙ってやったことじゃなくて、ほんとの反応。
凛は、希ちゃんにワシワシされて。
なんだかよくわからない気分になったんだ。
嬉しいような、気持ちがいいような、そんな気分。
…………。
あれ?
そもそも、凛はなんで『三種の返し技』なんて考えたんだっけ?
希ちゃんのイタズラが嫌になったから?
希ちゃんにイタズラし返したかったから?
それだけのために、凛は夜遅くまで考えてたんだっけ?
わかんないよ。
自分の気持ちがなんだかよく分かんない。
凛は一体、なにがしたいんだろう?
――――――
今日はここまで。
ゆるいのぞりんを書こうとしてたのにどうしてこうなった?
ちょっとだけ更新
――教室
凛「うにゃぁぁぁ……」グデー
花陽「凛ちゃん?」
凛「あっ、かよちん……」
花陽「朝から元気ないけど、どうしたの?」
凛「なんでもないにゃ……」
花陽「……なんでもないようには見えないよぉ」
凛「…………」
花陽「凛ちゃん?」
凛(……どうしたらいいんだろう?)
凛(かよちんに相談してみる?)
凛(でも、そもそも何に悩んでるのかも、今の凛は分かってない)
凛(だから、相談したくても……)
凛「はぁぁぁ……」
花陽「凛ちゃん……」
凛「ごめんね、かよちん」
花陽「えっ?」
凛「凛もホントはかよちんに聞いてほしいんだけど、なにをしゃべったらいいかわかんないんだ」
花陽「……うん」
凛「……ほんと、心配かけてごめんにゃ」
花陽「う、ううん! 気にしないで! 花陽が勝手に心配してるだけだもん!」
花陽「だから、もし凛ちゃんが話せるようになったら教えてね!」
凛「……うん、ごめん」
花陽「…………」
――――――
――部室
花陽「海未ちゃん!」
海未「っ!? は、花陽!?」
放課後のことです。
部室の扉を荒々しく開いて現れた花陽に、私は思わず体を固くしてしまいました。
海未「ど、どうしたんですか?」
行儀のよくないその行動を戒めることもできず、ただそう訊ねます。
だって、普段の花陽からは想像できないようなことでしたから。
窮鼠猫を噛む。
なぜかそんなことわざを思い出してしまって。
だからなのでしょうか。
つい萎縮してしまいました。
花陽「海未ちゃん、聞きたいことがあります!」
海未「はい……な、なんでしょう?」
萎縮したままでそう答える私。
そんな私の様子に気づいてないのか、花陽はそのままズンズンと私に近づいてきて……。
―― ガシッ ――
両肩を掴まれました。
そして、
花陽「海未ちゃん!」
海未「ひっ!?」
鬼気迫るその形相に、思わず目を閉じてしまいます。
何が来るのか、びくびくしていた私。
そんな私に花陽がかけた言葉は――。
花陽「凛ちゃんに何があったか知らないっ!?」
予想外の言葉に、目を開けた私の前には。
目を潤ませて私を見つめる花陽の姿がありました。
――――――
――――――
海未「……凛の元気がない、ですか」
花陽「うん。だから、心配で心配で……」
深いため息を吐きながら、花陽はそう言いました。
花陽の話によると。
凛が今日の朝から元気がないとか。
しかも、その元気がない理由と言うのも、凛自身はっきりと自覚していないらしいとのこと。
花陽「ユニットで一緒にいることも多い海未ちゃんなら、なにか知ってるかなって思ったんだけど……」
海未「……すみません。特に思い当たる節はありませんね」
花陽「そっかぁ……」
シュンとする花陽を見て、少しいたたまれない気分になります。
けれど、やはり思い当たることはありません。
そもそもユニット練習もあると言っても、一緒にいる時間は花陽の方が多いんです。
その花陽がわからないのなら、私に分かるはずが……。
海未「ん?」
花陽「海未ちゃん? どうかした?」
海未「……あっ」
そこで思い至ります。
そう。
そうですよっ!
あったじゃないですかっ!
昨日の昼休みに、凛が変になっていたときが!
そういえば、そうです。
確かに、放課後の練習も凛はあまり身が入っていない印象を受けました。
ということは、やはり――。
花陽「…………」
海未「……花陽」
花陽「なに? 海未ちゃん」
海未「……少しだけ心当たりがあります。話を聞いていただけますか?」
花陽「……うん。聞かせて、海未ちゃん」
――――――
――――――
凛が『三種の返し技』なるものを考え付いたこと。
それを希に使っていること。
そして、一昨日の帰り道でのことや昨日の昼休みのことも。
私は、凛の悩みの原因になっていそうなことを花陽に話しました。
もちろん、一昨日の希や昨日の凛の様子も。
花陽「…………うん」
私の話を聞き終えて。
ゆっくりと目を閉じた花陽は、ひとつコクリと頷きました。
凛とずっと一緒だった花陽のことです。
恐らく私が話した凛の様子だけで、凛自身ですら分かっていない凛の気持ちを理解したのでしょう。
そっか。
そうだったんだね。
目を閉じたまま、花陽はポツリとそう呟きました。
そして、
花陽「ふぅ……」
ため息を吐きました。
それはきっと、凛を悩ませる原因が分かったことへの安堵のため息なんでしょうね。
花陽「海未ちゃん、ありがとう」
海未「……お役に立てましたか?」
花陽「……うん。とっても」
海未「……そう、ですか」
花陽「だから」
花陽「あとは花陽がやるね?」
海未「…………」
なぜでしょう。
親友の元気を取り戻そうと意気込む彼女の表情が、少し悲しげに見えたのは……。
あぁ。
もしかしたら、それも。
なにかに疎い私の、思い違いだったのかもしれません。
――――――
今日はここまで。
次かその次の更新で終わります。
更新
――屋上
海未「ことり! もっと動きを大きく!」
ことり「はいっ!」バッ
海未「凛、ターンが遅れてます!」
凛「にゃっ!」クルッ
希「…………」ジーッ
花陽「……希ちゃん?」
希「っ!? 花陽ちゃん、もう歌の練習の方は終わったん?」
花陽「うん。それより、さっきから凛ちゃんのことじーっと見てるけど……どうかしたの?」
希「っ、あははっ、なんでもないんよ♪」
花陽「…………」
希「今日も、凛ちゃんは元気やなぁって思ってただけ」アセアセ
花陽「……そっかぁ」
希「うん」
花陽「…………」
希「…………」
花陽「ねぇ、希ちゃん」
希「ん?なに?」
花陽「凛ちゃんのこと、好き?」
希「なっ!?」
花陽「好きじゃないの?」
希「え、えっとっ、好きに決まってるやん? μ's の仲間のこと好きじゃないわけないしな」アセアセ
花陽「……μ's の仲間としての好きなんだね」
希「そ、そうやね。当たり前やん」コクコク
花陽「……じゃあ、凛ちゃんが誰かと付き合ったら喜んでくれるよね?!」
希「えっ……」
花陽「アイドルに恋愛はタブーだけど、凛ちゃんも女の子だもん。きっとだれかのことを好きになったりもするよ」
希「……で、でも」
花陽「うん。今の凛ちゃんを見てたら想像つかないよね」
希「……」コクリ
花陽「でもね。もし、それで凛ちゃんが幸せになれるなら、そんなに嬉しいことはないでしょ?」
希「……」
花陽「だって、仲間が幸せになるんだもん。とっても嬉しいよね?」ニコッ
希「……それは、そうやね」
花陽「…………」
希「…………」
花陽「……もし」
希「えっ?」
花陽「その相手が、例えば、花陽でも。希ちゃんは喜んでくれる?」
希「っ、そ、それはっ!」
花陽「それは……なに?」
希「……っ」
花陽「……言っておくね?」
花陽「花陽は……凛ちゃんが好きなの」
花陽「っ……だから」
花陽「明後日、わたしは凛ちゃんに告白します」
希「…………」
――――――
――希の家
希「…………はぁぁぁ」
夜。
ベッドの上でクッションを抱きしめながら、深いため息を吐いた。
そして、呟く。
希「……告白、か」
今日の花陽ちゃんを思い出す。
いつもとは違って、花陽ちゃんは言い切った。
凛ちゃんが好き、だって。
希「…………」
自分の気持ちはよく分かってる。
ウチはこういうところ聡いっていう自覚もあるし。
うん。
ウチは――。
希「……でも、ウチはそれを伝えられるんかな?」
正直な話、無理やと思う。
自分の気持ちを直接伝える。
そういうキャラじゃない。
だから、こんなヘンテコなしゃべり方になってるわけだし。
それに、
希「明後日なんて……」
余計に無理。
そんな簡単に覚悟が決まるほど、ウチは肝が座っている訳じゃないから。
希「……凛ちゃん」
名前を呟いて。
だけど、なにをするでもなく。
夜は更けていく。
――――――
――1年生教室
真姫「花陽! 先に行ってるわよ?」
凛「部室、行ってるね……」
花陽「うん!」
「ほら、行くわよ」
「……うん」
「まだ悩んでるの?」
「……よくわかんないにゃ」
「なによそれ」
花陽「……ふぅ」
花陽(きっと、今の凛ちゃんは自分の気持ちに気づいてない)
花陽(それが初めて感じる感情だから……)
花陽(だから、ずっとモヤモヤしてる)
花陽「…………」
花陽(……でも、やっぱりそうなんだよね?)
花陽「わたしには分かるよ、分かっちゃうんだ……」
花陽「ずっと、見てきたんだもん」
花陽「……うん、大丈夫。大丈夫」ボソッ
花陽「…………」
花陽「部活、行かなきゃ」スッ
――――――
――――――
――――――
花陽「……遅れました、ってあれ?」
海未「……花陽」
花陽「海未ちゃんだけ?」
海未「はい」
花陽「えっと……みんなは?」
海未「先に練習に行きました」
花陽「そっか。じゃあ、花陽も急がないとっ」
海未「……少し、いいですか?」
花陽「えっと?」
海未「……凛のことです」
花陽「…………うん」
海未「花陽は……凛の悩みを解消するつもりなんですよね」
花陽「うん。やっぱり凛ちゃんには笑顔でいてほしいから……」
海未「それは私も同感です。ですが、どうしてもこの間のあなたの表情が、私の頭から離れなかったんです」
花陽「…………」ウツムキ
海未「何かを覚悟したような、どこか悲しげな表情。あんな表情をしていたのは、一体なぜですか」
海未「あなたは……一体、なにをするつもりなんですか?」
花陽「……」
海未「花陽っ!」
花陽「…………それは、きっと海未ちゃんの気のせいだよ」ニコッ
海未「えっ?」
花陽「花陽はただ、凛ちゃんに元気になってもらおうとしてるだけ」
花陽「なのに、悲しい顔するわけないです♪」ニコッ
海未「…………花陽」
花陽「話はおしまい! 早く練習に行きましょう!」
海未「…………」
――――――
――帰り道
凛「それじゃあね、かよちん!」ブンブン
花陽「待って! 凛ちゃん」
凛「どうしたの、かよちん? 帰らないの? もういつもの別れ道だよ?」
花陽「…………」
凛「?」
花陽「…………明日、部活が終わったら屋上に来て」
凛「?? 屋上に? なんで?」
花陽「大事なお話があるの」
凛「……わかったにゃ」
花陽「それとね。皆が帰った後に来てほしいんだ」
凛「……えっと、皆が学校をでた後ってこと?」
花陽「うん」コクリ
凛「ん。了解にゃ」ビシッ
花陽「……それじゃ、また明日ね」ニコッ
凛「バイバイにゃ!」
―― タッタッタッ ――
花陽「…………バイバイ、凛ちゃん」ボソッ
――――――
――――――
今日はここまで。
表現力が足りない。
どうしても地の文を書いてしまう。
予想以上に仕事が立て込んでおり、完結するのは次々回になるかと……。
レス感謝
少しですが更新します
――屋上
花陽「…………」
―― ガチャッ ――
凛「かよちん、ごめんね! お待たせ!」
花陽「……ううん。こちらこそわざわざ来てくれて、ありがとう。凛ちゃん」
凛「? こんなことでお礼なんて水くさいよ」
花陽「…………」チラッ
「…………」ビクッ
花陽「……うん」コクリ
凛「かよちん?」
花陽「あっ、ごめんねっ」
凛「えっと、別に大丈夫だけど……なんでドアの方見てるのかにゃ?」
花陽「な、なんでもないのっ!」アセアセ
凛「?」
花陽「……そ、それよりね、凛ちゃん!」
凛「なに? かよちん?」
花陽「あのね、今日、ここに呼び出したのは理由があるの」
凛「うん。大事な話があるんだよね?」
花陽「そう。大事なお話……」
凛「それって、どんなことなの?」
花陽「…………」チラッ
「……っ」
花陽「……すぅ、はぁ……」
凛「……?」
花陽「……よしっ」グッ
花陽「ねぇ、凛ちゃん」
花陽「凛ちゃんは好きな人っている?」
凛「好きな、人?」
花陽「うん。お母さんとかμ's のみんなとか、そういう好きじゃなくて……」
凛「じゃなくて?」
花陽「付き合いたいなって……そう思う方の好き」
凛「えっ!?」
花陽「…………」
花陽「……花陽はね、いるんだ」ボソッ
凛「……かよちん?」
花陽「いつも元気一杯で、誰よりも女の子らしくて、昔から花陽を助けてくれた」
花陽「わたしが好きなのは、そんな女の子」
凛「そ、それって……」
花陽「ねぇ……凛ちゃん」
花陽「……凛ちゃんには好きな人、いるの?」
凛「えっと…………」
―― 凛ちゃん♪ ――
凛「……あっ///」カァァァ
花陽「……やっぱりいるの?」
凛「えっ!? そ、そんなんじゃないよっ!」アセアセ
花陽「ほんとう?」
凛「ほ、ほんとだよっ! 可愛いなっては思うけど……。好きとかじゃないにゃっ///」
花陽「…………」
凛「好きとか……そんなんじゃない、はずだもん……」
花陽「…………そっかぁ」チラッ
「っ!?」
花陽「うん。やっぱりこうするしかないのかな……」ボソッ
凛「えっ?」
花陽「ごめんね、凛ちゃん」グイッ
凛「にゃっ!?」ヨロッ
―― ギュッ ――
凛「か、かよちんっ!?」
花陽「…………」ギュゥゥ
凛「…………なんで……?」
花陽「……わ、わたしはね、凛ちゃんのこと――」ボソッ
凛「……っ」
花陽「…………凛ちゃん、してもいい?」
凛「え、えっ?」
花陽「……凛ちゃん、花陽のこと嫌い?」
凛「そ、そんなことないよっ! 凛はかよちんのこと大好きだにゃ!」
花陽「なら――」
花陽「――花陽にちょうだい?」ギュッ
凛「っ」ビクッ
―― スッ ――
――――――
希「だ、だめっ!!!」バンッ
――――――
凛「の、希ちゃん!?」
花陽「…………希ちゃん」
希「凛ちゃんをはなして!」グイッ
凛「にゃ!?」
希「…………」ギュゥゥ
凛「っ///」
花陽「…………」
希「…………」キッ
凛「あ、あの……希ちゃん?」
希「っ、あっ!?」バッ
凛「あっ……」
希「ご、ごめんなっ!? つい、反射的に抱きしめちゃって……」カァァァ
凛「う、ううん。別にいい、にゃ……」
希「…………///」
凛「…………///」
花陽「ねぇ、希ちゃん」
希「っ、なに? 花陽ちゃん」
花陽「……なんで止めたの?」
希「それはっ……」
花陽「…………花陽言ったよ。凛ちゃんが好きだからって」
希「花陽ちゃん」
花陽「……もしかしたら、凛ちゃんは受け入れてくれたかもしれないんだよ? なのに、希ちゃんはそれを強引に止めたよね?」
花陽「希ちゃん」
花陽「希ちゃんには、花陽を止める資格はあるの?」
希「…………」
花陽「…………」
希「…………」
花陽「…………」ジッ
希「――うん、あるよ」
花陽「っ」
凛「?」
希「ねぇ、凛ちゃん」ジッ
凛「にゃっ/// の、希ちゃん!?」アセアセ
希「あんな……ウチ……」ズイッ
凛「ち、ちかいよ、希ちゃんっ///」ワタワタ
希「っ、ウチっ!」ギュッ
凛「」ビクッ
凛「にゃ、にゃぁぁぁぁぁっ!!」ダッ
希「凛ちゃんのことっ……って、凛ちゃん!?」
「にゃぁぁぁー!!」
花陽「…………行っちゃった」
希「そ、そうやね……って!」
希(お、追いかけないとっ! で、でも……)
希「……」チラッ
花陽「…………」ボーッ
希(花陽ちゃん、大丈夫なんかな?)
希(変に動揺していたせいで、気づけなかったけど、冷静になってみれば、花陽ちゃんの行動はどこかおかしい)
希(花陽ちゃんらしくない)
希(なんだかいつもと様子も違うみたいやし……)
希(このままここに置いていくわけには――)チラッ
花陽「希ちゃん」
希「え、あっ! な、なに?」
花陽「早く行かないとだめだよ」
希「……花陽ちゃん?」
花陽「きっと……凛ちゃん、待ってるから」
希「っ!?」
花陽「だから」
花陽「いってらっしゃい」ニコッ
希「っ、うん。いってきますっ」ニコッ
――――――
――――――
行っちゃったな。
凛ちゃんも、希ちゃんも。
花陽「……ひとり」
ポツリと呟く。
屋上には、もう誰もいない。
花陽を除いて。
……もう、いいかな?
「はい。もういいんですよ」
えっ?
驚いて、声のした方を振り返る。
そこには、
海未「頑張りましたね、花陽」
優しげに微笑む海未ちゃんがいた。
って、いつからそこに?
海未「……最初からですよ。希は凛のことに意識が向いていて気付かなかったようですが」
そう、なんだ。
海未「……ですが、私はいないものと考えてください」
えっ?
な、なんで?
海未「…………」
海未「ここにいるのは、花陽一人だけです」
海未「誰も今の花陽のその表情も、その涙も見ていませんから」
花陽「っ、ひっく、あっ……うっ」
海未「……よしよし」
花陽「ぐすっ、うみちゃ、んっ……わたし、わたしねっ」
海未「……はい。貴女は頑張りましたよ」
花陽「うんっ、うんっ!!」ギュッ
海未「自分の恋を犠牲にしてまで、幼馴染みの無自覚な恋を叶えようとした貴女は――」
海未「――泣いたっていいんですよ」
――――――
――――――
それから、声が枯れるのにも構わずに、わたしは泣きました。
その間ずっと、涙を流すわたしを隠すように、温かさが包んでくれていて。
そんな温もりを感じながら。
わたしの初恋は幕を閉じたのでした。
――――――
今日はここまで。
仕事のため更新かなり遅いですが……。
読んでくださっている方、本当にありがたいです。
恐らく次で終わります。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
――――――
凛「はっ……っ、はっ」
息が切れる。
いつも練習でこれよりずっと走ってるのに、なんでだろう?
…………。
ドキドキしてる、からかな?
さっき、希ちゃんはなにかを言いかけた。
普段絶対しないような真剣な表情で。
凛「っ、はぁ、はぁ……ここまで来れば……」
立ち止まって振り返る。
誰も、いない。
そりゃそうだよね。
凛、逃げてきちゃったんだもん。
凛に希ちゃんが追い付けるはず――
「逃げる子はいねがぁぁ!」
―― ワシッ ――
凛「にゃんっ///」
気付けば、後ろから凛の胸に手が回されていた。
その手の感触はいつもの感じ。
いっつもワシワシされてたその感覚。
凛「の、希ちゃん……?」
希「……うん、ウチやで」
後ろから声。
凛は振り向かない。
凛「…………」
希「…………」
そのまま、しばらく二人とも黙っていた。
希ちゃんの手は、凛の胸を軽く触ったままだったけど……。
それから少しして。
凛「ねぇ、希ちゃん」
凛は口を開いた。
追いつかれちゃったんだもんね。
追いかけてくれたんだもんね。
……うん。
凛「希ちゃんは、凛のこと……好き?」
振り向かずにそのまま。
だって、振り向くのは怖いもん。
今だってそれを聞くのは、少し怖い。
だって、後戻りできなくなっちゃうから。
ばかみたいにはしゃいで。
いたずらも一緒にして。
たまにはお互いにいたずらをして。
そんな楽しいだけの関係じゃなくなっちゃうかもしれないから。
でも、凛は聞いた。
怖いけど、凛は聞きたかった。
……そっか。
凛がなんで『三種の返し技』を必死になって考えてたか、わかったよ。
凛はきっと、希ちゃんに構って欲しかったんだ。
ワシワシされるだけじゃ、μ'sの他のメンバーと変わらない。
だから、希ちゃんにカウンターして対抗する。
そうしたらきっと希ちゃんはそれを封じようとなにかしてくる。
ずっと、ずっと。
希ちゃんとじゃれあっていられる。
凛はね、そう考えてたんだよ。
だから、教えて?
希ちゃんは凛のこと、どう思ってるの?
――――――
希「好き」
希「ウチは凛ちゃんのこと、大好き」
――――――
思っていたよりすんなりと。
その言葉はウチの口から出ていた。
……いや。
すんなりとではないかな。
この言葉をこの場で言えたのは、きっと花陽ちゃんのお陰。
きっとなにもないままのウチだったら、こんな真剣な言葉は言えない。
でも、ここで花陽ちゃんの想いを踏みにじって誤魔化したりしたら、ウチは自分が許せなくなる。
だから、
希「凛ちゃんが好きっ」
希「誰にも負けないくらい大好きっ!」
そう、言葉にする。
まだこっちを見てない凛ちゃんに、しっかりと届くように。
凛「…………っ」
希「…………」
凛「にゃっ……にゃぁぁ」
希「……凛ちゃん?」
って、あら?
なんだか凛ちゃんの様子がおかしい気が……。
希「えっと、大丈夫?」
そう言って、顔を覗き込もうとして、
凛「み、みないでっ!」
止められた。
え、えぇぇ……。
見ないでって。
ど、どうしたらいいんよ?
と、そんなウチの心の声に答えるように、凛ちゃんはこう言った。
凛「わ、ワシワシしてほしいにゃ……」
希「は?」
予想外の言葉に固まってしまった。
ワシワシしてほしいって……。
希「えっと、凛ちゃん……ええの?」
凛「いいからはやくっ!」
えっと?
もしかして、そういう気分になっちゃったとか?
まだ返事もらってないのに……。
そう思いながらも、ウチは凛ちゃんの言う通りにすることにした。
希「いくで?」
凛「……うんっ」
希「ワシワシMAX~!!」
凛「っ!」
―― ギュッ ――
手に予想していた感触はなくて。
その代わりに、ウチの腕のなかには凛ちゃんの小さな体がすっぽりと収まっていた。
腕というか、胸に顔うずめてるんやけどね。
希「えっ、あっ、凛ちゃん?」
凛「…………」
凛ちゃんは無言でウチに抱きついている。
その表情も見えないし。
って、なんだかすごく恥ずかしいんやけど……。
希「えっと?」
凛「……ぎゅってしてほしいにゃ」
希「…………うん」
―― ギュッ ――
抱きしめる。
あったかい。
希「…………」
凛「…………」
無言でお互いの温度を感じる。
それがとっても心地いい。
希「ふふっ、凛ちゃんかわえぇな♪」
凛「……希ちゃんの方がかわいいもん」
希「ありがと♪」
そんな風に言えることが、言ってくれることがとっても嬉しい。
……あぁ。
ほんとに心から思う。
希「なぁ、凛ちゃん」
希「ウチ、凛ちゃんのこと大好きや」
凛「……うん、知ってるにゃ」
希「そっか」
凛ちゃんはまだ顔を上げない。
その代わり、ウチの腕の……胸の中でぼそりと呟いた。
凛「……『大好きのお返し』するね」
希「えっ?」
それから、凛ちゃんは顔を上げて――
凛「凛もね!」
凛「希ちゃんのこと、すっっっごく大好きにゃっ!!」
満面の笑み。
それは、ウチの見せてくれた、初めての『恋人』の顔だった。
たぶん。
ううん、一生。
ウチはこの笑顔を忘れない。
―――――― fin ――――――
以上で
『凛「三種の返し技にゃ!!」』完結になります。
レスをくださった方
読んでくださった方
稚拙な文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
蛇足かもしれませんが、少しだけかよちんのafter書きます。
恐らく日曜辺りにでも。
日曜といったな
あれは嘘や
というわけで少ししたら更新します。
にこえりsideも要望が多ければ少しだけ書きます。
――――――
花陽の初めての失恋から2ヶ月が経ちました。
傷は完全に癒えたとは言えません。
けれど、凛ちゃんとも普通に話せるくらいには回復しました。
もちろん希ちゃんとも。
未だに二人が一緒にいるのを見ると寂しくなっちゃうけど……。
それでも、花陽はどうにか頑張っています。
それに――
――――――
――部室
凛「じゃあね! かよちん!」
花陽「うん。また明日」
花陽の言葉を聞いてすぐ、部室を出ていく凛ちゃん。
今日は希ちゃんが生徒会で来れなかったから、迎えに行くのかな?
花陽「…………ふふっ、幸せそう」
寂しさも感じちゃうけど……。
……うん。
大丈夫、大丈夫。
そんな風に自分に言い聞かせます。
と、そんな花陽に、
「花陽」
声がかかりました。
着替え終わったみたい。
わたしは振り向いて答えます。
花陽「海未ちゃん」
海未「すみません。待たせてしまいましたね」
その声の主、海未ちゃんはそう言って、ペコリと軽く頭を下げました。
花陽「ううん。大丈夫だよ? わたしも少し前に着替え終わったところだから」
そう言ってくださるとありがたいです。
花陽の言葉にそう返す海未ちゃん。
花陽「…………」
海未「……花陽?」
なんだか少し罪悪感。
実は、あの日から海未ちゃんは欠かさず花陽のことを家まで送ってくれるんです。
部活のある日はもちろん、μ'sの練習がない日も。
だから、そんな風に未ちゃんに謝らせちゃうのが悪い気がして……。
花陽「……いつも、ご、ごめんね?」
そんな罪悪感から、わたしはそんな言葉を口にした。
海未ちゃんも練習でつかれてるはずなのに。
そう思うと、言わずにはいられない。
けれど、海未ちゃんは
海未「……いいえ。好きでやっていることですから」
そう言いました。
にこりと笑って。
海未「帰りましょうか、花陽」
花陽「……う、うん」
――――――
――帰り道
海未「…………」
花陽「…………」
二人だけの帰り道は静かです。
いつも黙ったままではないけれど、わたしも海未ちゃんも、そこまで率先して話すタイプじゃないから。
けれど、それが気まずいっていうわけじゃなくて。
むしろ、少しだけ安心できる静けさです。
けれど、今日は――
海未「あ、花陽」
花陽「えっ?」
海未「花陽、今日の練習頑張っていましたね」
花陽「あ、そのっ、うん……」
海未ちゃんが誉めてくれた。
突然のことだったけど、どうにか返事を返すことができて、少し安心。
……って、あれ?
花陽「今日、ユニット練習だったよね?」
練習してた場所も別だったのに、あれ?
首を傾げていると、そんな疑問が伝わったのか、海未ちゃんは
海未「花陽たちの様子を覗いてたんですよ。ほら、今日は希もいませんでしたから」
花陽「あ、そっか……」
事情を説明してくれます。
そういうことなら納得かも。
確かに、二人だけだと練習もあんまりはかどらないもんね。
って、あぁ!?
それじゃあ今日、練習の時に音程外しちゃってたのも……。
花陽「うぅぅぅ……」
海未「花陽?」
失敗したのを海未ちゃんに見られた恥ずかしさに、思わず俯きます。
と、そんな花陽に海未ちゃんは、
海未「あ、誤解しないで下さい! いつもは頑張っていないというわけではないんですよっ!?」
そんな風に誤解して、焦っちゃった。
花陽「……ふふっ」
花陽の前ではいつもキリッとしてる海未ちゃん。
珍しくアタフタしてる姿を見て、つい笑い声をもらしてしまいました。
って、あっ!
花陽「ごめんなさい……」
笑ったらダメだよ。
せっかく誉めてくれたんだもん。
……怒られる、かな?
そんなことを考えて、身を丸めていた花陽。
だけど、海未ちゃんがわたしにかけてくれたのは、怒るのとは全然違う言葉だった。
海未「ふふっ、やっと笑ってくれました」
海未「今日はあまり笑ってなかったみたいでしたから」
花陽「え……あっ」
言われて、気づきます。
そういえば、今日はあんまり笑ってなかった、かも?
花陽「……うん。今日はその……」
海未「……凛のことですか?」
花陽「う、うん」
希ちゃんが部活に来れないことで、少し落ち込んでたから。
花陽もそれにつられちゃって……。
凛ちゃんが寂しそうだと、やっぱりわたしも寂しい気持ちになる。
フラれちゃった身だけど、やっぱり幼馴染みとして凛ちゃんはすごく大切な人だから。
そんなことを海未ちゃんに話すと、
海未「はぁぁぁぁ」
おっきなため息を吐かれちゃいました。
うぅぅぅ。
やっぱり未練がましいよね……。
海未「えぇと、そういうわけではないんです」
花陽「え? じゃあ……」
未練がましい以外にため息の理由が思い付かなかった花陽は、大きく首を傾げます。
そんな花陽を見て、困り顔で海未ちゃんはこう言いました。
海未「花陽は……本当に優しすぎますよ」
困り顔だけど、やさしい瞳と口調。
それから――
―― ナデナデ ――
花陽「あ……」
花陽の頭を優しく撫でてくれて。
すごくあったかい。
そして、花陽の手よりも少しだけ大きな掌。
花陽「…………」
海未「…………よしよし」
いつかしてくれたみたいに、海未ちゃんは花陽の頭を撫でます。
その間、花陽はずっと黙ったまま。
海未「――さて」
花陽「あっ……」
それからしばらくして。
海未ちゃんは撫でるのを止めちゃいました。
海未「そろそろ帰りましょうか。もう、すぐそこですし」
花陽「…………」
海未ちゃんの声がぼんやりと聞こえてくる。
しょうがないんだけど、なんだかちょっとだけ寂しいような……。
花陽の中にそんな気持ちがあるのを感じた。
けれど、
―― トクン ――
それに負けないくらい、あったかい。
胸の奥がなんだかぽかぽかしてる。
花陽「……えへへ」
海未「…………花陽?」
花陽「あっ!な、なに?」
海未「大丈夫ですか? なにやら胸を押さえていますが……」
花陽「あ、うんっ! 大丈夫だよっ」
慌てて、大丈夫だって答えます。
心配かけちゃうのは嫌だもん。
海未「そうですか? なにかあったらすぐ電話するんですよ」
花陽「……うん。ありがとう、海未ちゃん」
ありがとう。
心配してくれて、優しくしてくれて。
そんな感謝の気持ちが今になって、不意に溢れてきた。
だから、
―― ギュッ ――
海未「は、花陽!?」
夕方とはいえ、こんな道の真ん中で抱きついちゃうなんて、自分でも大胆だと思う。
けど、抑えたくなかったんだ。
花陽「えへへっ……また明日、海未ちゃん♪」
それから、パッと離れて駆けていく。
―― トクン ――
胸の奥があったかい。
この気持ちは『ありがとう』っていう気持ち。
そして、もしかしたら――――。
―――――― fin ――――――
花陽afterもこれで完結です。
改めて感謝を申し上げます。
過去作を貼っておきます。
よろしければどうぞ。
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ことほのうみ、ほのゆき書けなくて申し訳ないです。
また次も気まぐれで変わりそうなので、予告はしないでおきます。
にこえりに関しては明日くらいまで様子を見てから決めようと思います。
では。
このSSまとめへのコメント
いいゾ^〜
早く続きオナシャス!