男「順番」(43)





男「暇だな」

友「そうだな」

男「しりとりでもするか?」

友「しない」

男「イカ」

友「だからしりとりはやらないっての」

男「暇じゃん」

友「なら抜けるか?」

男「散々待ったんだぞ? 誰が抜けるか」

友「おとなしく待とうぜ」


男「はぁー、暇だ」

友「暇もいいもんだろ」

男「まぁな。そういやお前どんなの選ぶの?」

友「選べるかなぁ。勝手に決められることもあるらしいぞ」

男「マジかぁー。これだけ並んでるから仕方ないのかもなぁ」

友「ちゃんと合ってる所に案内してくれるらしいぜ」

男「自分に見合った所か」

友「そう」

男「すぐ終わってまた並ぶことにならなきゃいいけどな」

友「まぁ、そうなることもあるわな。自分で選んだとしても」


男「それも運だよなぁ」

友「いつでもどこでも先のことはわからないよ」

男「そうだよなぁ。まさか俺らがここに並ぶことになるとはなぁ」

友「前にも並んだだろ」

男「覚えてねぇよ」

友「俺も覚えてないけど」

男「記憶力ねぇなぁ」

友「そういう問題じゃないけどな」

男「性別はどっちにすんの?」

友「それは俺らが決めることじゃないから」


男「何をもって決めてんだろうな?」

友「ランダムだったりしてな」

男「まさに神のみぞ知るってやつだな」

友「俺は男性がいい」

男「俺は女性」

友「マジか」

男「今までもあったと思うけどな、覚えていないだけで」

友「まぁ、そうだけどよ」

男「変わらないってのもつまらなそうだしな」

友「そうだな」


男「女性にするか?」

友「いや、男性がいいな」

男「変わらねぇか」

友「どのみち選べないけどな。俺ら程度じゃ」

男「もっと上だと選べるのか?」

友「そうらしいと聞いたけどな」

男「そうか。もっと頑張らねぇとな」

友「最近は荒れてて流されやすいからどうだろうな」

男「誘惑が多いからなぁ」

友「現実が荒れてるのと精神が荒れてるのとどっちがましだろうな?」


男「現実が荒れてたら考える暇なんかなさそうだけどな」

友「確かにな」

男「とはいえ平和すぎて考える事がおかしな方向に向かう事もあるしな」

友「難しいな。高みを目指すのは」

男「何が正しいかもわからないしな」

友「とりあえずはなるべく迷惑にならないよう親切にしてみんなに優しく生きていく、かな?」

男「簡単なようで難しいな」

友「ああ、やっぱり自分の利益を考えちゃうからな」

男「優しいだけでも迷惑になることもあるし」

友「そうだな、平和の為にやってたら身内の首を絞めてた、なんてこともある」


男「うまくいっても順調であればそのうち自分の欲が出てくる」

友「高みって難しいな」

男「だから大半が到達できないんだけどな」

友「欲を無くせって無茶だよな」

男「そうだよなぁ。高みに昇りたいってこと自体欲だしな」

友「ああ、そうだな」

男「矛盾してるよな」

友「まぁ、ここにいる限り理解できないのかもな」

男「このレベルにいるのも悪くはないと思うこともある」

友「さっき暇だと言ってなかったか?」


男「暇は暇だ。まだ順番こねぇのか」

友「そろそろじゃないか?」

男「そろそろ、と言ってからが長いんだよなー」

友「待てる幸せってのもあるだろ」

男「あぁ……落ちた奴等は並ぶことも出来ねぇんだもんな」

友「そうそう」

男「だけどあいつらは自業自得だろ」

友「まぁ、そうなんだけどな」

男「やっぱりしりとりしようぜ」

友「どんだけしりとりしたいんだよ」


男「り、からだり」

友「あー、りんご」

男「ゴリラ」

友「ラッパ」

男「パーリラパリラ、パーリラはいはい」

友「いや、待て」

男「鼎談……しまった! んがついた!!」

友「ていだん? あんまり聞いたことのない言葉を……って違うそうじゃない」

男「なんだよ。終わるのが早すぎるってか?」

友「それもそうだがそうじゃなくてだな」


男「鼎談(ていだん)ってのは三人が向かい合って話をすることだ」

友「ああ、そうなんだ……って違う! パーリラの時点で待てよ!!」

男「なんだよ」

友「ツッコミ所が多すぎんだよ。なんだよ、真顔でパーリラって」

男「ああ、そこか!」

友「すまん、違う。一番はしりとりでそれは違うんじゃないかと言いたかった」

男「別にいいだろ」

友「やるならちゃんとやろうぜ」

男「わかったわかった。そいじゃ理屈」

友「追悼」

男「うろこ」

友「こ――」


男「あ、お前呼ばれたぞ」

友「案外早かったな」

男「また会えるといいな」

友「繋がりのある奴とは会いやすいらしいぞ」

男「そうなのか。じゃあ次は俺女性になってるから気をつけろよ」

友「選べるのかわからないってのに」

男「なんとなくなれる気がするんだよ」

友「そうか、もう行くな」

男「おう。お互い良い両親だといいな」

友「ああ。生まれた先でもまた会おうな」

男「元気でな」



―――
――



母「公園についたわよ」

娘「わーい、公園!」

おばさん「ほら、どこ行くの」

男の子「こっちだよー」

母「あら」

おばさん「まぁ、最近引っ越してこられた方ね。こんにちは」

男の子「あ……」

母「どうも、こんにちは」

娘「……」

母「ほら、隠れてないでご挨拶は? はじめましてーって」

おばさん「あんたも挨拶しなさい」


男の子「……こ、んにちは」

娘「は、はじめまし、て」

男の子「しりとり」

娘「えっ?」

男の子「やろうよ」

娘「うん」

おばさん「この子最近しりとりにはまってて」

母「そうなんですか? うちの子もなんですよー」

おばさん「まぁ、気が合いそうね」

娘「続きからだよ」

男の子「……じゃ、‘て’からだね」

娘「うん!」




第一話【約束】 終


全五話。繋がりはなく他は短い
地の文形式もある





男「また殺られた」

A「そうか」

B「最近は罠も沢山仕掛けてある」

男「くそっ」

A「あのでかい奴等め」

B「力では勝てない。ひっそりと見つからずに生きていく他あるまい」

A「……そうだな、そうやって生きてきたんだ」

男「姿さえ見つからなければ殺される事も罠をかけられることもない」

A「だがうっかりものや子は奴等の前に出て存在を知られ、罠を仕掛けられる」

男「罠は上手く避けるしかないな」


B「このまま固まって動くのはまずいだろう」

男「そうだな、分かれるか」

A「じゃあ、達者でな」

B「死ぬなよ」

―――
――


男「ふぅ……今日も見つからず食べ物にありつけた」

A「おい!」

男「おお! 生きてたか」

A「最近な、奴等がいないような狭くて暗い場所にいい食い物を見つけたんだ!」


男「そうなのか」

A「ああ、凄くいい匂いがし……ぐっ」

男「どうした!?」

A「く……そ……毒……か……」ピクピク

男「おい!!」

A「」

男「そ、そんな……」

B「あ……」

男「! お前、生きてたのか!?」

B「く、くそぉ! あいつらぁぁ!!」

男「ば、馬鹿、やめろぉぉ!!!」


B「うおぉぉ!!」

男「あ、あいつ……ハッ!?」

男「駄目だ!! 逃げろ!!」

B「!?」

ブシュウゥゥ!!

男「うっ! まずい!! 毒ガスだ!」

B「ぐあぁぁ!!」

男「くっ、直接毒ガスを浴びちまってる……もう……間に合わない……」

B「」ピクピク

男「くそっ!」


―――
――


男「……」トボトボ

男「次々と死んでしまった」

男「今度は俺だろうか?」

ゴゴゴゴ……

男「!!」

ドシンッ!

男「しまった! 見つかった!!」

ドシンッ、ドシンッ


男「くっ! この隙間に入ってしまえば追いかけて来られまい!!」カササッ

ペタッ

「馬鹿! 来るんじゃない!!」

男「えっ?」

C「ああ……遅かったか……」

男「なっ!? これは!!」モゾモゾ

C「こうなってはもう逃げられんよ」

男「ベタベタして足が動かない!? 罠か!」

C「我々が逃げ込んだり隠れたりするような所に仕掛けられていたらしい」

男「そ、そんな」


C「あとは緩やかに死を迎えるだけだ……」

男「な、なんとか抜け出す方法は!?」

C「無理だ。周りを見てみろ」

男「!!?」

D「」

E「」

F「」ピクピク

男「あ……」

C「あいつらは儂より先に捕まったらしくてな……脱け出そうともがいていたが餓死したよ」

男「……」


C「諦めるしかあるまい」

男「くそっ、くそっ!! どうにか、どうにか逃げ出して――」

―――
――


子供「おかあさーん、これに逃げ込んだよー沢山いるー」

母「きゃあ!! 見せないでちょうだい、そんなもの!」

子供「さっき追いかけたらここに入ったの」

母「ああ、もう、気持ち悪い。そのホイホイ捨てちゃって」

子供「はーい!」



第二話【次々と】 終

またあとで。次から地の文形式





何故だ。

何故こんな苦しみを味わわなければならない。

急がなければならないというのに私はここから解放されない。

今更別の場所に行くことなんてできない。
そんなことをしては間に合わなくなってしまう。

ああ、ほんの一時間程前の自分をぶん殴ってやりたい。
わかっている。己が悪いのだ。因果応報というやつだ。

だが、だがこれはあんまりではないか。
こんな責め苦を受ける程の事を私はしたか?

今は責めが弱まっている。
今のうちに去ろうか?

そんな考えを見抜いたかのように第二の責めが襲ってきた。


痛い、苦しい。こんな苦しみを何度も味わうなんて……神はなんという苦痛を私に与えるのだ。

限界だ。叫んで逃げ出したい。
早く、早く早く早く!! 私を解放してくれ!

ああ、恐ろしい音がする。
彼らは今か今かと蠢き、私を辱しめようとその門をこじ開けたがっている。

否、彼らはそんな事を考えてはいないだろう。
ただ、自然の摂理に従い蠢いているだけだ。

その動きが私を苦しめるなど理解していない。

もう駄目だ。そう思った時、ついに扉が開かれた。
門ではない、扉だ。

周りに悟られぬよう、平然とした顔をし中へと入る。
個室、という時点でそれは然程意味は為さなかったであろうが。


扉の鍵を閉めるとほぼ同時に下に手をかけ下着ごと纏めて脱ぐと腰を下ろした。

助かった。
神よ、ありがとうございます。

快楽に蕩けきった顔をしながら一時の安らぎに身を委ねた。
朝一に冷たい牛乳を一気飲みをした私自身に心で叱咤をしながら。

既に乗らねばならない電車は出てしまった。遅刻は免れない。
だがそんなことはもういいのだ。

間に合った、それが全てだ。

ひとしきり褒美を満喫したのち、白きカミのおわす場所へと手を伸ばす。

だが、白きカミが鎮座されているであろうそこにカミがおられなかった。

またも私に試練がくだされた。



第三話【試練】 終





「うぜぇんだよ」


そう言うと彼は少年を蹴飛ばした。

蹴飛ばされた少年と同じ年頃、小学校低学年くらいの男の子達が少年を取り囲んでいる。
少年は泣いていた。


「うわっ、こいつ泣きやがった」

「泣き虫」

「きったねぇ」


次々と少年に侮蔑の言葉が投げ掛けられた。
少年は何か言い返そうか、何か反撃をしようかと思ったがやめた。

何故ならもうすぐ自分の‘番’は終わるからだ。

このクラスにはボスのような者が存在する。
名はA。


Aは気に入らないクラスメイトを毎日のようにいじめていた。
しかし、一定期間いじめると飽きてしまうのか標的が変わっていく。

長くても1・2ヶ月程だった。

――もうすぐだ。もうすぐしたら僕の番は終わる。

少年はそう思い、じっと我慢した。

教科書に落書きをされても、体育の時間にわざとボールをぶつけられても、
給食を牛乳まみれにされても、下校中に数人のカバンを持たされても少年は我慢した。

暫くすると、やはり標的が変わった。

――順番だ。これは順番なんだ。

少年はそう自分に言い含めた。
そして目の前でいじめられているクラスメイトを見て見ぬふりをした。


みんながそうした。
今標的になっている彼も少年がいじめられている時は同じようにしていた。

そうしなければ標的がまた自分に返る、もしくは定まってしまうかもしれなかったからだ。

標的は常にAの周りにいる取り巻きも例外ではなかった。
A以外の者は全て標的であった。

順番。そう思いながら少年は過ごしていた。

だがある時から少年のみが標的となることとなった。
それは少年が親友を庇った所為だった。

少年の親友は別のクラスだったのだがたまたまいじめを目撃し、止めに入ったのだ。
それまでは同じクラスの者しか標的にしていなかったAも邪魔をされた事に腹を立て、親友を標的にした。

別のクラスということもあり、いじめは陰湿なものだった。
こっそり下駄箱に泥を入れたり下校中に聞こえる声で悪口を言ったりと言い逃れができるようなものばかりだ。


咎めれば‘お前の事じゃない’‘馬鹿と言ったらお前なのか?’と更に悪口を言われるだけであった。

精神的に追い詰められていく親友を見ていられなくなり少年は親友を庇った。

下校中に1センチくらいの小さな石を投げてからかっているところへ「やめろ」と立ち塞がったのだ。

足は震え、涙目になりながらも少年は親友を守った。

その時の睨み付けるAの顔を少年は今でも忘れられない。

それから標的は少年となった。

別のクラスである親友は登下校では必ず一緒にいてくれた。
だがそれ以外で起きる事を止めることは出来なかった。

少年は我慢した。クラスが変わればまた変わる。
もしかしたらそのうち飽きるかもしれない。

――我慢だ我慢だ我慢だ。


少年は耐え続けた。その頃には人に言いたくないようないじめも受けていたからかもしれない。

誰にも、親友にも知られたくなかった。
だから少年は我慢をし続けた。

きっと順番だから。今は自分の番で、このまま耐えればもうずっと自分の番は来ないんだ。
先に纏めて来てるだけなんだ。これが終わったら良いことばかりになるんだ

何度も何度もそう言い聞かせた。

ある時、転校生がやってきた。
名をBといった。

早速Aは新しくやって来たBを標的に選んだ。

少年は正直安堵した。そしてこうも思った。

――やっぱり順番だった。


だが今までとは勝手が違った。
Bはとても強かった。肉体的にも精神的にも。

Bは簡単にクラスの組織図を塗り替えた。
クラスのボスはBとなった。

Bはガキ大将という古臭い名称がぴったりと嵌まるような者だった。

たまに我が儘にはなるが基本的には弱気を助け強気を挫く者であった。

Bという新たなボスが現れ、クラスは平和になった。

支配者が変われば全てが変わるものなのかと少年は驚いた。

Aは時々いじめをしていたが見咎められてはBに告げ口をされていた。
こういうことを幾度か繰り返しているうちに卒業となった。

少年はこの時の事が深く心に残った。


月日は経ち、少年は立派な大人に成長していた。

あれから少年は下の立場にならぬよう努力をした。
AやBを見て、上の立場であれば‘順番’は回ってこないのだと思ったからだ。

だから身体を鍛え、勉強にも励み、人望を得られるよう様々なものを参考に自分を磨いた。

その甲斐あってか少年は人に慕われ、また自身が勤務する会社において重要な人物となった。

そんな折り、ある人物が少年の下に付いた。

名を、Aといった。

Aは「初めまして」と手を差し出した。
少年は笑顔で握手を交わし、そうして思った。

――さあ、次は君の番だ。



第四話【君の番】 終





もう嫌だ。
ここに来なければならないのは嫌だ。


その為にはとにかく食べよう。
食べた分きっと成果として表れるはずだ。


俺は食べた。ひたすら食べた。
好き嫌いもなくして親に誉められる程食べた。


今は成長期だ。食べたらそれだけ反映されるはずだ。
華奢な体をでかくしてやる。


俺はとにかく暇さえあれば食べ続けた。
今までは少食であり、また虚弱で親からも心配されていた。



好き嫌いが激しい、ということもあったが食欲というものがあまりなかった。
だから食べ物を要求すると親は喜んで色々な物を食べさせてくれた。


三食以外にも間食として様々な物を用意し始めた。
祖父母も来る度にお菓子を持ってきてくれた。


沢山食べていくうちに胃も大きくなったのか、一回一回の量も増えていった。
小学校が休みの日は一日中食べ続けた。


しかして成果は表れた。
俺はクラスで一番でかくなった。


誰にも負けない体格になった。
俺を越せる奴はいない。



だがやはり俺は同じ場所に行かなければならなかった。
俺はここに来たくなかったから頑張っていたはずなのに。


その為に食べたくもない物も食べていた。
全ては両手を前に伸ばしたかったからだ。


一番前を陣取り、両手を腰にあてる。
あれだけ食べたというのに背には反映されなかったようだ。




最終話【成長期】 終

念の為の註釈
前にならえの一番前は両手を腰にあてる
地域によってはそうじゃない所もある


では、ありがとうございました

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