魔法少女「悪しき魔物よ! この一撃で!」(128)

魔法少女「セイントフレア!」カッ

魔物「グギャーーー!」ジュッ

魔法少女「ふう……良し」

魔法少女「平和はあたしが守る!」

ドゴオオォォン
魔法少女「爆発?!」ォォォ

魔法少女「あのあたりは居住区の外だけど……」ゾク

魔法少女「なに……この魔力」

魔法少女「とにかく、行かなくちゃ!」ビュン

「……」キョロキョロ

魔法少女(黒い格好にお面……? この爆発の犯人?)

魔法少女「そこの人、私は魔法協会に所属する魔法少女です」

「……!」ビク

魔法少女「あなたにはここで起きた事の事情を伺わせていただきます」

『――――』パチ パチ

魔法少女「ご同行……え、この感じは魔法?」

『――――』パチパチ

『――――』フッ

魔法少女「なっ……転移魔法? ど、何処へ?!」

魔法少女「……とにかく一旦、協会に報告しないと」

姉「正体不明の魔法使いねぇ」

少女「もうお姉ちゃんまで話が通っているの?」

姉「あんた達をサポートするオペレーターだからねぇ」

姉「それにここ最近、謎の魔力が感知されていたのも事実だしね」

少女「そうなの?」

姉「そうそう。これからは周辺地域の魔力探査の精度をもっと高めるって話」

姉「忙しくなって嫌だわぁ」

少女「今はその魔法使いの魔力は感知できないの?」

姉「協会に未登録の魔力が追えていれば、とっくに片付いているわよ」

姉「あんたと同じ、かなりの腕の魔法使いかもしれないわね」ポム

少女「……」

姉「そんな嫌そうな顔をしない。持って生まれた才能なんだから」

少女「……うん」

姉「ま、詠唱の長い謎の魔法についても、研究員の人が調査しているしね」

姉「あんたも黒服を探るのはいいけどあまり深入りしない事」

姉「負ける事は早々無いだろうけど、どれだけ危険かも分からないしね」

少女「うん、分かった……て黒服って?」

姉「その魔法使いの呼び方だってさ」

魔法少女「とは言ったものの」ビュー

魔法少女「何度か空から探したものの、この間と同じ魔力は感じられないなぁ……」

魔法少女(あたしや何人かは自分から発する魔力を抑えて、感知されないようにできるけども)

魔法少女(そういう人は大抵、魔法使いの平均値より高い魔力を有する)

魔法少女(協会に気づかれず暮らす? そうはありえる事じゃない)

魔法少女(何よりあの人はあたしより大きかった……むしろ大人の背丈だったし)ゴオオォォォ

魔法少女「火が……また人のいない地域っ」ビュン

黒服『――――』パチパチチ

魔法少女「止まりなさい!」

黒服「……」クル

魔法少女「申し訳ありませんが、あなたを魔法協会に連行させていただきます」

黒服『――――』パチ パチン

魔法少女「っ! これ以上抵抗を行った場合、私達はあなたを力でもって拘束する事になります!」

黒服『――――』パチチ

魔法少女「飽くまで抵抗するという事……」グッ

黒服『……無数の火の玉が待っている』ゴォォ

魔法少女(巨大な……火球が五つもっ)

魔法少女「マ、マジックウォール!」カッ

黒服「弾けろ『ファイアボール』」カッ

魔法少女「ぐっ!」ドドドドオオォォン

魔法少女「……え? 空中で爆散……」

黒服『――――』パチチパチ

魔法少女「ま、待って!」

黒服『――――』パチン フッ

魔法少女「……また、逃げられた」

少女「はい、聞き取れた詠唱内容はそれで間違いありません」

少女「それと……主観的な事になってしまいますが」

少女「黒服は……男性ではないかと思います」

少女「背丈があり肩幅もありました。声は……仮面でくぐもっていましたが低い感じでした」

少女「はい、私からは以上です。失礼致します」


姉「お、おかえりー相変わらず疲れた顔ねー」

少女「だって緊張するんだもん……」

少女「そうだ、今日の周辺で観測された魔力のデータってもう出てるの?」

姉「そんな気がしてデータ取っておいたわよ」パサ

少女「……やっぱり、魔法を詠唱していないと魔力が感知できないか」

姉「全く面倒な話よねぇ」

少女「あれ、魔物が一緒に?」

姉「そうそう。今、魔物を倒すために魔法を使ったのか、それとも魔物と協力関係があって何かの理由で魔法を使ったのか」

姉「その議論で持ちきりね」

少女「あんな人のいない郊外で魔法を使うのは、第三者を巻き込まない為……?」

姉「どうだろうねー」

姉「まあ、さ。皆も動いているし、あまり気を張り詰めない事」

姉「今日はあたしもこれで終わりだし、帰りに何処かに寄っていかない?」

少女「うん!」


姉「結構暗くなっちゃったねぇ」

少女「あはは、でも楽しかったな~」パタパタ

姉「こらこら、ちゃんと前向いてないと転ぶわよ」

少女「もう、そんな子供じゃ」ガッ

少女「あれ……」フラ

姉「少女!」

少女「っ……」ガシ

少女「……?」

男「大丈夫か?」

少女「え、あ……」

姉「すみません、ありがとうございます! ほら少女も!」

少女「あ、ありがとうございます! ご、ごめんなさい!」

男「いや、怪我をしなくて良かったよ」ニコ

姉「ちゃんと反省するんだぞぉ」

少女「う、ごめんなさい……」

姉「にしてもさっきの人、近くにいるの全然気づかなかったわ」

姉「っていうか転ばなくてもぶつかっていたかもって事よね」ギュウ

少女「ご、ごへんなひゃい」


男「……」

男「さっきの子供……」

男(直接接触があったのに魔力を感知されなかった?)

男(あの子供は魔法協会でも屈指の……確か魔法少女だったか)

男(ならば、魔法さえ使わなければ俺を察知する事はできないのか……)

男(あの少女の顔は覚えた……気をつけたほうがいいな)

一先ず今晩はここまで

数日後
少女「あれ……こんな時間に珍しいですね」

魔法使い剣子「少女ちゃんじゃなーい、久しぶりー」ヒラヒラ

剣子「いやーあたしの魔道具がいっちゃってさー」ポッキリ

少女「刀身が真っ二つですね……」

剣子「まーそろそろ換えないとだなぁって思っていたから丁度いいんだけどね」

剣子「で、少女ちゃんはどうしたのさ?」

少女「あの、例の魔法使いの件で……あれから何処かで魔力が感知されていないかと思いまして」

剣子「あー男の魔法使いねぇ」

イケメン「おや……二人ともどうしたんだい?」

剣子「よう。あたしぁー魔道具の修理」

少女「あたしは男の魔法使いの情報がないかと思いまして」

イケメン「ああ……例の。ただでさえこの地に眠るマナストーンを狙って魔物が頻繁に現れているというのに」

少女「膨大な魔力の結晶ですよね」

イケメン「ああ……それが魔物達の手に渡ったらと思うと夜も眠れない話だ」

剣子「協会の探索隊も発見は難しいって言っているしねぇ」


イケメン「それにしても謎な人物だよ。名前年齢住所も何一つ分からない……ごく最近この町に来たのだろうが……」

イケメン「だいたいにして男の魔法使いは本来ありえないというのに」

剣子「一応でも魔法使いのあんたが言うと説得力が無いんだけど」

少女「あの……よくその話を聞くのですがどういった理由があるのでしょうか?」

イケメン「少女君はまだ知らないのか……そうだな簡単に話しておいてもいいか」

イケメン「基本的に男性は気を外に放出するもの、要は魔力を体内に留め辛く」

イケメン「女性はその逆で留めるものなんだ」

剣子「だから本来、魔法使いは女しかいないわけなんだけども」チラ

イケメン「一言で言えば特異体質だな。魔力の性質も君達と違う」

イケメン「少女君は魔法の発生の仕組みは知っているかい?」

少女「あたし達の魔力だけでは攻撃力や防御力を多少底上げする程度であって」

少女「魔道具を通して炎や雷などの形に変換する、ですよね」

イケメン「その通りだ」

イケメン「私の場合はその変換が上手くいかないんだ……色々と調べては貰っているが未だにね」

イケメン「だから私のこの刀も特殊で、君達が使ったらろくに魔法も打てない代物なんだ」

イケメン「勿論私が使っても君達のように、魔法として炎などの力を飛ばす事はできないが」

イケメン「これは刀身に炎等の力を上乗せする……完全近接格闘型だね」

剣子「つってもイケメンの斬撃を受け止められる奴はそーはいないしね」

少女「そうすると……あの人の魔力はイケメンさんとも違うもっと別の……」

イケメン「謎の詠唱がある以上はそうなのだろうね」

イケメン「その件には関しては少女君も気をつけるように」

イケメン「彼の戦闘力は未知数だ……いくら君が天才的な魔力操作が出来ると言えど、単純な火力はトップクラスではない」

イケメン「何より君の魔法に含まれる聖属性の高さが火力を補っている。魔物戦なら頼もしい限りだが」

少女「はい、あの魔法使いとの戦闘になった場合、力不足に成り得る事は十分に分かっています」

イケメン「ならよろしい。深追いもしてはいけないからね」

剣子「イケメーン、男の魔法使いに遭遇したら助けてー」

イケメン「いや、君は自分で身を守ってくれ……」

男「……」バサァ

黒服(さて……)

黒服(あの少女は俺の詠唱に反応した……詠唱中の魔力に反応していたわけだが)

黒服(果たして遠距離からも感知するだけの探査能力があるか否か……)

黒服『これは遊びじゃないぞ 弾みはしないし投げれもしない』パチパチチ

黒服『蹴る事はおろか受け取る事など論外だ』パチパチ

黒服『魔法実行中止』パチン

黒服「……後は身を隠せそうな」ダッ

黒服「……」

黒服(15分経過……これは近距離でなければあの子も感知できないと見ていいな)

黒服(恐らく魔法協会の周辺地域に対する魔力探査の精度を上げているはずだ)

黒服(魔法を撃てば見つかる、か……厄介だな)

黒服(彼らの軍門に下る気は無いが正面衝突する気も無いからな)

イケメン「排除、ですか?」

「正体不明、謎の魔法……何より魔法協会の者と二度の接触において逃走」
「これだけの事があって、今後も平穏が保たれているとでも?」

イケメン「そうですね……しかし相手の目的は分からないままというのも」

「お前の言いたい事も分かる。だが、惨事が起こってからでは遅いのだ」
「全魔法使いに発せよ。男の魔法使い、黒服を排除せよ!」

イケメン「……」

「協会において唯一の男の魔法使いである、お前の気持ちも分からんでは無い」
「だが、しかしこれは非常事態である。お前も大人だ、私情は捨てろ」

イケメン「了解、致しました」

姉(うーんこの町に男の魔法使いがいるんだろうし)カチカチ

姉(携帯型の魔力探査で追えないかと思ったけど)ピ ピ

姉(まー反応の無い事)ピピピ

姉(業務連絡? ……黒服の排除指示か。協会上層部が動いたのね)

姉「あー止め止め。これから魔法使い達のオペレーションも忙しくなるだろうし」

姉「帰るかぁ……あ、信号変わ、えーい渡ってしまえ!」プァァァ

姉「あ……」キキィィィ

姉「……っ」ガッ

姉「あ……あれ」

男「お前は……」

姉「あ、あの時の……」

男「姉妹揃って何をしているんだ……しかも死ぬかもしれなかったんだぞ」

姉「あ、あははは……ごめんなさい」

姉「男、さんねー。ここは長いの?」

男「いや、先月からこちらで暮らしているよ」

男(あの魔法少女の姉か……できればあまり接触していたくないが、なにか情報を引き出せれば)

姉(優しそうな人だなぁー)

男「それでは俺はこれで」

姉「はい、本当に……ありがとうございました」

姉「あの……できれば何かお礼を」

男「成り行きでの話しだ。気にする事も無い」

姉「あー……行っちゃった」

姉「あ、メアドくらい聞いておけば良かったっ!」


男「……」ピク

男「……魔物か」

男(面倒だが……協会はまだ動いていないな?)バサッ

黒服(手短に済ませるとするか)

魔物「グルル……ガウッ!」

黒服(あれなら一撃で仕留められる)

黒服『強き風が吹き荒れる 空を飛び地を駆け木々を抜け』パチパチン

黒服『無数の矢となり降り注ぐ アロー レイン』シュバババ

魔物「ぎゃいん!」ズドドド

黒服(後は逃げれば……魔力の反応? しまった、奴等も向かってきていたのか!)

黒服(いや、自身から溢れる魔力を抑えられない連中なら大した事はないが)

イケメン「あれが……黒服」

魔法少女「……」ゴクリ

「……あんな奴が?」ザワザワ
「気を抜くなよ」

黒服(旗色が悪そうだ)

イケメン「我々がこうしてここにいる理由は分かっているだろう」

イケメン「これが最後だ。魔法協会に来てもらう」

イケメン「これに抵抗するのであれば……我々は君と戦わなければならない」

黒服「……」

黒服(あの男も魔法使いなのか? なら……参ったな)

黒服(イケメンか……確か奴も実力のある魔法使いだったな)

黒服(逃げるだけの魔法を唱えられるか……いや無理だな)

「おい、ゆっくりと仮面を取って両手を上げろ!」
「落ち着け……下手に刺激したら」

黒服(どれ……一つ動きを見てみるか)

黒服『強き風が吹き荒れる』パチ

イケメン「くっ……飽くまで、抵抗するのか」

魔法少女「イケメンさん……」

剣子「イケメン! 攻撃指示をよこせ!」

イケメン「……」

イケメン「総員……黒服を攻撃せよ!」

黒服『無数の矢となり降り注ぐ』パチチ

黒服(……総攻撃か。やはり協会は俺を殺す事で決まっていたか)

黒服『アロー レイン』シュババ

「くぉ! あぶなっ!」
「気をつけろ! 奴は殺る気だ!」

「フレイム!」ボゥ
「スライス!」ビュッ
「エアエッジ!」シュバ

黒服「……なんだ、他の連中は本当にこの程度か?」ヒョイヒョイ

イケメン「飛ぶ事もせずに回避を……?」

剣子「どうするの? 近接格闘でいく?」

イケメン「総員、落下系魔法に切り替えろ! 一気に畳み掛けるぞ!」

黒服(落下系? 自身から発せられる魔法では軌道を読まれ、避けられていると判断したか?)

黒服(優秀だな……)

黒服(だが負けてやる訳にもいかないんだ)

「フレイムレイン!」ゴゴゴ
「ボムボール!」ポポポポ
「サンダー!」ビシャッ

イケメン「剣子! 土煙が晴れたら飛び込むぞ!」

剣子「あいよ!」

魔法少女「……」ギュッ

ゴォォォ
剣子「……死んだかな?」

イケメン「油断はするな」

魔法少女「……魔力が! 来ます!」

黒服(今からでは遅いさ)パチチ

黒服『死んだようにやり過ごせ』パチン キィィン

黒服『ハイディング!』フッ

イケメン「……逃げ、た?」

剣子「……ふーん」ビュン

剣子「フレイムぅ……エッジぃぃ!!」ゴバアァァァ

剣子「手応え無しか……インヴィジ系の魔法じゃなさそうね」ジュウウウ

イケメン「町で待機している魔法使いは探索にあたれ。見つけ次第応援を呼べ、決して交戦はするな」

『了解』ザザ

魔法少女「……本当に、攻撃をしてきた」

イケメン「少女君?」

魔法少女「あたしが接触した時は……飽くまで目晦ましに魔法を使ってきたんです」

魔法少女「だから……本当は争う気がないのかもと思っていたのですが」

イケメン(我々が攻撃の姿勢を取ったから? いやしかし今回負傷した者はいない)

イケメン(最初に放たれた魔法はお世辞にも狙いを定めて撃ったようには見えなかった)

イケメン(牽制……? 我々は彼と対立すべきではないのだろうか?)

剣子「なに考えてんのか知らないけどさーとっとと町の方にいって黒服探したほうがよくない?」

剣子「それともこっちを探す? 郊外に暮らしている可能性もあるんだし」

イケメン「いや……町を探そう」フワ

イケメン「私は北を。二人は南と東の方面を頼む」ビュ

剣子「んじゃああたしは東」ビュ

魔法少女「南の方を当たりますね」ビュ

黒服「……行ったか」ピィィィン

黒服『ハイディング解除』バシッ

黒服「ふう……流石にきついな」

黒服(今まで転移魔法で逃げておいて正解だった……初見で無かったら転移魔法ではないと気づかれていたかもしれない)

黒服(特定範囲内にいる生物と魔力の存在を消す、か。それにしても魔力の消耗は激しいな……コスパが良いと言えるか否か)

黒服「いや……十分すぎるほど優秀だな」

剣子「見つからないわねぇ」

イケメン「逃げられたか……本部、魔力探査は……そうですか」

魔法少女「どうでしょうか?」

イケメン「我々が交戦した地点を最後に、魔力は感知されていないそうだ」

イケメン「手強いな……」フッ

剣子「笑っている場合かよ」

イケメン「今日の探索はこれで終わりだ……どうも彼は魔物が出現すると現れるようだ」

イケメン「これから魔物が出る度に大忙しだぞ」フゥ

剣子「嫌過ぎる話ねぇ」

男「……」カチッチチッボッ

男「……ふう」ゴォォォ

男(ここに来て一ヶ月……マナストーンの在り処がサッパリだ)ゴォォ

男(早く見つけ出したいのだが……と、そろそろ火はいいか)カラン

男「……つっ!」ブツッ

男「くぅ……」ブツッブツッブシュ

男「ぐ、あっ……はぁっ! はぁっ!」ブルブル

男(せめて魔力を封じる術式が、人体に直接刻むタイプじゃなければな……)

男「……」ジャーバシャバシャ

男「……ふぅ」キュッ

男(暴走さえしなければ、俺もこの魔力なんてほったらかしたり、魔法協会にくれてやったりするが)

男(愚痴っても仕方が無いか……早いところ見つけてこの町を去らないと)

男(皮肉だな……魔法協会の本社近くにマナストーンだなんて。捜査員と出くわしそうだな)

男(魔力の発散が楽に出来ればな……それこそ魔法協会に囲われるか)ハハ

「イケメン様ぁ~」

イケメン「おお、君は黒子君か」

黒子「はいっイケメン様がお困りと聞いて、お助けしたくて参りましたわぁ!」キャピキャピ

少女「えぇと」

剣子「そういえば面識無いっけ? ほら聖属性ゼロの超火力の魔法使い」

少女「あ……え、この子が?」

黒子「あらぁ? なぁにぃこの子供」

剣子「年齢あんたのが一個下だぞー」

黒子「ふーん、あなたがあの少女ねぇ。精々その低魔力で足を引っ張らないでほしいわぁ」

少女「むっ」

イケメン「こらこら黒子君、そうけんか腰にならない」

黒子「分かりましたわぁイケメン様ぁ!」

少女「むー……」

剣子「そうむくれない。あの魔法使いには黒子の突破力は必要になるだろうし、これが終われば黒子も帰るから」

男(やはり協会の手が行き渡った居住区からマナストーンへは辿れないよな)

男(外の……荒野を探す他無いか……山もあるし難航は必至だな)

姉「あっれ? 男?」

男「ああ……君は。こんな所でどうしたんだい?」

姉「いやーちょっと仕事でねー」

男「この先は郊外だぞ……まさか荒地に用があるのか?」

姉「そうなんだよねー」タハハ

男「外は魔物が出やすいんだぞ……誰か魔法使いはいないのか?」

姉「それがちょっと内緒で来ててねー」

男「お前……ああもう、俺もついていこう」

姉「いいの?」

男「荒地に女性一人を送り出すよりよっぽどましだ」

姉「やっさしー!」

男「ほらとっとと行くぞ」

男「……」ザッザッ

姉「……」ザッザッ

男(この辺りはこの間俺がいた……?)

男「お、おい何処まで行くんだ……いくらなんでも、いやそもそも目的は何だ?」

姉「あー……ちょっとした場所の土の採取をしたくてさー」

男「地質学者とか研究所の職員なのか?」

姉「そういうわけじゃあ……あれ、あんな所に人……」

男「……」ピク

魔物「ゥゥゥ……アァァァ」

姉「じゃ……ないよね……は、はは……」

男(最悪だ……どうする……?)ピク

男(もう一つ魔力が? くそ、こんな時に……いや狙われたのか?)

魔物「ガアァァァ!!」ダッ

姉「わあああ! 走ってきたぁぁぁ!!」

男(駄目だ……考えている余裕など!)

男「俺の後ろに下がっていろ、姉」

姉「はあ?! な、何言ってんの! 一緒に逃げようよ!」

男「……出会って大して時間も経っていないが、信じてくれ」

姉「……」

姉「分かった! ここでいい?」

男「……ああ、動くなよ」コク

魔物「ウガアアア! ガアアアアア!」ダダダ

男『燃えろ 劫火が大地を走り』パチチ

魔法少女「なに、この大きな魔力は……魔物、なの?」ヒュー

魔法少女「イケメンさんも気付いているだろうし……あたしは先行して様子を……弱い魔力?」

魔法少女「普通の魔物も現れているの? ああもう、先にそっちから……え?」


男『――――』パチチ

姉「……」

魔法少女「この魔力……黒……あ、あぁ」


(黒服『無数の矢となり降り注げ アロー レイン』)


魔法少女「だめ……いや、ぁ、いやぁ!!」

魔法少女「ソーラー レイ!!」ビッ

雷近いし一旦ここまで
再開は来週後半になるやも

男『地に有る全てを嘗め尽くす』パチチ

姉「え、ちょちょ、男? 何言ってんの? 意味分かんないよ!」

男『後には』ジュォ

姉「え、今……男に光……」

男「ぐく……『炭 が』ごふぉっ!」ビチャビチャ

魔法少女「お姉ちゃん!」

姉「……少女? まさか、あんたがこれを」

魔法少女「早く、お姉ちゃん逃げて! こっちに!」

姉「え……?」

姉「ちょ、何言って」

魔法少女「早く! イケメンさんに応援を要請して! ここはあたしが抑えるから!」

魔法少女「なんで、なんで……貴方が! 黒服なんですか!」

姉「……男? 男が黒服……?」

男「うぐ、はぁ……なるほど……お前達は、俺に隙を作らせる為に……近づいたのか」

姉「あ……違、違う、男……」

魔法少女「何が……隙ですか……例え貴方が何者であろうと、あたしの大切な人を傷つけるのなら容赦はしません!!」

魔法少女「セイントフレア!」ゴォ

男「くっ……」バッ

魔物「ガアアア!」ジュウ

男「ふぅ……」スゥ

男『暖かな陽射しに包まれ心地よい風に撫でられる』ベラベラ

魔法少女「な、早……そ、ソーラーレイ!」ビュッ

男『私を内包する世界が私の中に行き渡る』ヒョイ

男『そうして生命の活力となる ヒーリング』パアア

魔法少女「く……止められなかった!」

姉「しょ、少女待って! さっきのは」

イケメン「現れたな! 黒服!」

黒子「ふーん、あれが黒服ねぇ」

姉(こんな事になるなんて……どうして、こんな)

男(くそ……次から次へと)

イケメン「それがお前の素顔か……」

イケメン「状況から察するにそこにいる女性に危害を加え……」

姉「あ、違うの……! これは!」

イケメン「君か……なるほど」

イケメン(一般市民を装い黒服に接近したが、正体がばれてしまいといったところか)

イケメン「総員! 黒服を排除せよ!」バッ

「貴女は私と共に本社に避難しましょう テレポート!」
姉「ちょ、待って! 皆の誤解を」ヒュン

「フレイムアロー!」ビュビュ
「ロックアイス!」ドドド
「ショックボルト!」ビシャ

男『燃えろ 劫火が大地を走り 地に有る全てを嘗め尽くす』タタタ

「なんでだ! なんで避けられる!」
「バースト!」ドド
「オーブン!」ゴォォ

男(所詮、屈強以外はこの程度……溢れる魔力も抑えられず、攻撃の軌道さえ事前に読み取れるレベル)パチンパチ

男『生き残りたければただただ走れ フレイム スキャンパー』ゴアアァァァ

「うわわ、マジックウォール!」カッ
「ブ、ブリザード!」ビュアァァ
「きゃあああ!!」

魔法少女「サンダーボルト!」ビシャ

男『疲れた体で無理は良くない』ヒラリ

「マジックアロー!」ビシュ
「バースト!」ボッ

男『おやすみからおはようまで』ヒョイヒョイ

剣子「もらったあぁぁ!」バッ

イケメン「引け! 剣子!」

剣子「くたばれおっさん! アイス! エッ」

男『だから安心して眠れ スリーピー』パチン

剣子「じいぃ……?」クラッ

イケメン「くっ! 雷刃!」ズバァン

男「おっと」ヒラリ

男『――――』タタッタッ

「なんなんだあいつは!」
「こっちを見ずに避けなかった?!」

魔法少女「リフレッシュ!」パァ

剣子「あ、あれ……あたし?」

魔法少女「攻撃魔法だけじゃないみたいですね……」

剣子「くっそぉ……迂闊だったか」

イケメン「駄目だ! 黒子君!」

黒子「お初お目にかかりますわぁ……黒服の魔法使い」ストッ

男「戦地で挨拶とは余裕じゃないか」

男(不味い、この子は最大火力の……! 距離を!)バッ

黒子「あら? 逃げるなんてつれない方です事」

黒子「ですが無駄ですわよぉ? スパイダーネット!」ニィ

男「なっ」ガクン

男(攻撃だけじゃないのかっ)

黒子「フレイムブレイド……」ゴァ

男「不味い……この魔力の高さは……」ググ

男(駄目だ……魔法が足に絡み付いてっくそっ!)

男『温かな陽射しに包まれ心地よい風に撫でられる』ベラベラベラ

黒子「ソニックスラッシュ!!」ブァ

男「うっぐっ! 『ヒーリング』」ブシャァァ

男「く、はぁっ……」パァ

黒子「あらあら……避けられないなら受けて回復だなんて、肝が据わってらっしゃるのね」

剣子「そぅら! サンダーエッジ!!」ズバァ

男「くっ!」バッ

魔法少女「ボムボール!」ドドド

男「ぐああああ!!」ドカドカドカ

イケメン(これなら……追い込めるな)スラァン

黒子「あらあら皆さんいきりたって……まあ人間に存分に魔法を使う機会なんてそうそうないでしょうし」

黒子「黒服さんには存分に逃げ回って下さる事をお願いしますわぁ」ニコ

男『危機は常に迫り来る 未来は常に走り行く』パチチパチ

イケメン「総員! 包囲!」

剣子「おっとぉ、魔法は唱えさせないわよぉ!」ヒュン

男『スピーディ』フッ

魔法少女「消えっ……あれ、あんな所に?」

イケメン「限定的な転移魔法か? しかし我々には意味が無いな」フワ

男(くそ、瞬間的に超加速させる程度では彼らからはっ)

男『君は私を嫌悪するそれでも私は君を見ている』ベラベラ

イケメン「その魔法、食い止める!」ヒュォン

男『ふぅと一息ほらまた触れた シールド』バキン

イケメン(障壁?! 誘いこまれた?!)

男『これは遊びじゃないぞ弾みはしないし投げれもしない』ドゴッ

イケメン「ごほっ!」

男『受け取る事など論外だ』パチチ

魔法少女「この内容! 皆離れて!」

男『無数の火の玉が待っている』ドボボボ

イケメン(巨大な火球?! くそっ!)バッ

男『これは遊びじゃないぞ』ニィ

イケメン(また詠唱しなおした?! いや火球は残って……しまった!)

男『無数の火の玉が待っている』ドボボボ

魔法少女「そんな……二重に?!」

黒子「流石にいけませんわね……マジックシールド!」

剣子「全員、防御体制を取りつつ退避しろ!! 急げぇ!」

男『蹴る事はおろか受け取る事など論外だ』パチパチ

イケメン(く、完全に場を持っていかれた! これでは……奴が撃つまで迂闊に攻撃など!)

男「さあ受け取っておくれ……飛べ『ファイア ボール』」ドドドドドドド

ドゴドゴドゴドゴ
「きゃああああああ!」ビシビシ
「いやあ! いやああ! 障壁があぁぁ!」ビキビキ

魔法少女「ぐぐ!」ドドドドド

黒子「なんて威力、なのですの?!」ドドドド

イケメン「くそ……防御ができないというのは歯痒いな」

黒子「い、イケメン様は大船に乗ったつもりでお控え下さいませ」ドドドド

男(よし……これでしばらく時間を稼げるな)

男『君は目の前に 無があると思っている』パチチパチ

男『気付いていないだけで 見えも触れもしているよ』パチパチン


イケメン「状況を!」

「負傷者多数! 回復魔法で治療中! 戦闘続行可能です!」

魔法少女「げほげほ……なんて威力なの」

剣子「黒服は……? まさか逃げられた?」

黒子「何を言っているのです……強大な魔力が肌に突き刺さっていますわ!」

魔法少女「……こんな、さっきの魔法よりも強い魔法を?」

男『大きな力を知るといい それでは少し掃除をしようか』コオオォォ

男「はぁっ……はぁっ……」

男(たった二つでこの消耗か……成功するだろうか?)

男(いや……唱えきれれば成功する、はずだ)

男(あの男は頭が回る……だからこそ、こちらの思惑通りに動く。動かざるを得なくなる)

男(彼とてあらゆる犠牲を払ってまで俺を刺し違えるつもりではないだろう)

イケメン「総員、距離を取れ!」

黒子「いえ今こそ絶好のチャンスですわ! 先ほど同様、一つの魔法を重ねて詠唱しているのでしょう」

剣子「懐に飛び込めば、か……だけど接敵する前に魔法を撃たれそうね」

魔法少女「この土煙ではこちらからの攻撃は見えないはず……遠距離魔法で詠唱を足止めするのはどうでしょうか?」

イケメン「捨石の命令などできやしないさ……総員、黒服に向けて攻撃魔法を撃ち続けろ!」キィン

イケメン(なんだ……耳鳴りか?)

ドドドド
男(魔力を感知していれば軌道を読むぐらい訳もないというのに)ヒョイヒョイ

男『それを一つ 一つ 一つ 大切にかき集めよう』パチチチパチン

男『君が無だと信じて止まないそれの』パチパチ

男「おっと」ドゴォン

男『大きな力を知るといい』パチパチ

男(そろそろか……?)キィィン

イケメン「土煙が晴れるか……」

黒子「魔力はまだまだ高いままですわ」

剣子「魔法は残っているって事ねぇ……しっかしこの耳鳴りは魔法?」

魔法少女「……あれ? 天気がこんな?」ゴロゴロ

イケメン「天気を操る魔法か?」

男「ぜぇ……はぁ……」

男(これ以上……続けては唱えられないな)

剣子「なんだ? あいつの周りの景色が少し歪んで」ポッ ポッ

イケメン「降ってきたか」サー

魔法少女「あっ……あぁ……」ザー

黒子「な、何なんですの……あれ」

イケメン「二人とも? なっ」

男「……」ザー

「何もないはずなのに……雨が?」
「球体?」
「大きな球体があるのか?!」

イケメン(なんだあれは……何がある?)ザー

イケメン(耳鳴りと透明な球体……)

イケメン「あれは……空気の塊なのか?!」

イケメン「あの大きさで……? 雨水を遮るほどの?」ゴロゴロ

イケメン「不味い……」

イケメン(あれを飛ばされたら……とても、受け止めるだなんて)ブルル

魔法少女「あんな……強力な魔法があるなんて」カタカタ

男(そうだ、お前の憶測は正しい)ザー

男(これを撃てば……お前を含むトップクラスは生き残れるだろうが)

男(他の大勢は死傷する事になるだろう)

男(さあ叫べ、撤退せよと)


イケメン(ここで撤退指示は誰も納得しないだろう)ゴロゴロ

イケメン(だがしかし、私は……彼女達を守る事も役目なのだ)

イケメン(だが……!)カッ

「……」ジリ
「……」ジリ

魔法少女「だ、駄目です! 皆さん、動いてはいけません!」

黒子「イケメン様ぁ……」

剣子「イケメン、撤退指示を! あれがもし撃たれたら!!」

イケメン「……総員」ザー

イケメン「総員……撤退せよ」

イケメン「あの魔法を阻止する事はできない……そして撃たれれば過半数以上が死ぬ事になるだろう」

男(恐らく引いている最中に魔法を解けばすぐに追撃されるだろう)ゴロゴロゴロ

男(俺の扱える魔法は強力だが彼女らのようにインターバル皆無で撃てる訳ではない)

男(現状の優位性は発射準備が完了している事だけだからな)

男(転移魔法なんて唱えだしたら、唱えきる前にイケメンや黒子の追撃が入る……)

男(かと言って十分に距離を得てから唱えても、居住区には彼らが待ち構える形になる。それは避けねばならない)

男(だから次もお前の頭の回転を利用させてもらう)

男『魔法実行中止』バチバチバチン

イケメン「なに?!」

イケメン(何故このタイミングで展開していた魔法を?! 誘いこむにしてはあまりにも)ザー

男『遥かに聳える頂 万年氷が溶けぬ世界 身も凍る白銀』パチチ

魔法少女「冷たい魔力……これはっ」

イケメン(……詠唱内容からしても凍結魔法! くそっ!)

イケメン「総員! 障壁展開!」

男(そうだ、それでいい)

イケメン「私達を氷漬けにするつもりかっ!」

男『その身体は死体のように冷えわたる』バッ

男『ブリザード』ゴアァァァ

イケメン「なっ空に?!」

剣子「何を狙って……?」

黒子「イケメン様! 今の奴は無防備ですわ!」

「近接格闘用意!」
「了解!」

イケメン「駄目だ!! 障壁を解くな!!」

イケメン(こちらが完全に退いてしまっては、黒服の帰還先に我々がいる形になる)

イケメン(だからこの場にはりつけたんだ……しかも私が防御の構えを取ると予測して)

イケメン(で、あれば空へ撃ったのは何かしらの布石……意味が無いはずがない!)

剣子「どうすんのさ! このままここに足止めにされていろっていうの?」

黒子「一体あの男は何を……まさかっ」バッ

魔法少女「空から何か……」パキン

「え? なにこれ?」バキ ガゴ
「上から攻撃されてる?」バキバチガッ

魔法少女「……雹?」ドッガッガン

イケメン「これが狙いか……だがこの程度」

「きゃあ!」バキン
「ひぃっ!」ガッビキン

剣子「不味い……大粒が大量に来たら障壁がもたない」バキンッドッガッ

イケメン「総員一箇所に集まれ! 障壁が損傷した者は下に潜り込むんだ!」

魔法少女「あ……!」

黒子「黒服がいませんわ!」

イケメン「今はこれに耐える事を考えろ! これにはまった時から彼の逃走は成功していたんだ」

男「何とか逃げ切れたか……」

男「……くそっ嵌められたな」バサッ

黒服(最近、魔物の出現の仕方が不審だったが、やはり指揮する者がいたか)

黒服(あの時、姉の前に現れた魔物は敵意こそ示したが、一切攻撃をしてこなかった)

黒服(加えて別の魔力……少女が俺達の背後から来たのを考えると)

黒服(謎の魔力と俺達、そして少女はほぼ直線に位置する事になるだろう)

黒服(魔法を唱える俺と少女を鉢合わせさせ、交戦ムードを高めたか……相打ちが狙い、か?)


黒服(何れにせよ……そちらを抑えないと)

黒服(いや……抑えたところでもうこの町にはいられない、いや指名手配されるのか……嫌な話だ)

黒服(さっき感知した魔力は……)


イケメン「なんとか耐え切ったか……」

黒子「これからどうしますの?」

イケメン「魔法で完治出来なかった者は本部へ移動させろ!」

イケメン「動ける者は黒服を追う! 以上だ!」

魔法少女「あ……そうだ。交戦する直前に謎の魔力を感知したのですが……」

剣子「えぇー? ここにきて新しい勢力とか止めて欲しいわぁ」

イケメン(交戦する前に? 何か引っかかるが今はそこまで考えている余裕はないな……)

イケメン「黒服の追跡はこちらでやろう。少女君はその謎の魔力を辿ってくれ」

イケメン「くれぐれも深追いせずに。危険だと判断したらすぐ戻ること!」

魔法少女「はい!」

黒子「……」イラァ

イケメン「黒子君は私と共に来てくれ……黒服を抑えるには君の力が必要なんだ」

黒子「そのような事言わずもがなですわぁ!」パァ

剣子(マセガキ……)ハァ

黒服「この奥か……?」

黒服(ちょっとした洞窟だな……明かりもこちらが点けるしかない)

黒服(どう考えても罠だが……虎穴入らずんば、か)

黒服(壁に松明……? ご丁寧な事)

黒服『教えておくれ 見えぬ聞こえぬ触れぬ物を』パチチ

黒服『僅かな存在手繰り寄せ その全貌を知りたいのだよ サーチ』パチン

黒服(……内部はそんなに枝分かれしていないのか。 遭難って事はなさそうだな)タッ

黒服『火をつけるのも一苦労 僅かな灯火で構わない ファイヤ』ボッ

黒服「まだ三分の一くらいか?」

黒服(また魔力が……この先で間違いないのだろうが、何を考えているんだ?)

黒服(……面倒だな、魔法をぶち込むか?)

魔法少女「あっ!!」

黒服『強き風が吹き荒れる 空を飛び地を駆け』バッ

黒服「……っ」

黒服(魔法少女?! 何故ここに? ファイヤ程度の魔法で追跡された? それにしても早すぎる)

魔法少女(なんでこんな所に黒服が……! まさかこの先の魔力の源と関係が?!)

魔法少女「セイントシールド!」カッ

黒服(ただでさえ敵の目前だ。ここで戦闘は避けたいが……)

魔法少女(魔法を撃ってこない……なんで?)

黒服(そもそも俺を追ってきていたのなら、声をあげる前に先制で魔法を撃つはず)

魔法少女(戦意は無い……? うぅ……どうしよう、判断つかないよ)

黒服(この先の魔力の大きさで俺の魔力が隠れていた? なら狙いは飽くまでこの先なのか?)パァ

黒服(魔法陣っ!?)

黒服「逃げろっ!!」バッ

魔法少女「え、きゃあっ!」ガッ カッ

(……転移魔法? 何処に飛ばされた? 明かり一つ無いとは……洞窟か?)

「いたた……一体何が?」

「どうやら何処か別の場所に飛ばされたようだな……」

「……」ジリ

「そう警戒するな……お前はさっきの洞窟の魔力を追っていたんじゃないのか?」

「……はい」

「なら共同戦線と行こうじゃないか」

『月の無い晩 人里からも遠く離れ』パチチ

『灯り一つ見当たらない それでは怪我をしてしまう』パチパチ

『少しばかり手助けしよう ライト』ポァ

魔法少女「……なんだが可愛らしい内容ですね」

黒服「魔法によってだいぶ内容が違うけどな」

魔法少女「あの……それを維持するのって大変ですか?」

黒服「基本は唱える時に魔力を消費したら、後はもう持続し続ける」

黒服「まあ、難しい魔法は持続させるのに魔力を消費するのもあるのだがな」

魔法少女「便利ですね……」

黒服「君達の魔法は違うのか?」

魔法少女「自身の魔力を元にこの魔道具で変換しているだけです」

魔法少女「だから障壁やこういった持続させる魔法は燃費が悪いんですよ」

魔法少女(しまった……あたしはこの人に何を)

黒服「この呪文を必要とする魔法は自身の魔力を元に」

黒服「自然の中にある魔力の素みたいなものや、生物の体内にある生命力とも言える魔力の素を消費して形にしているからな」

黒服「そちらは瞬時に魔法を使えるが燃費が悪く、こちらは時間がかかるが燃費がいい、か」

黒服「一長一短。どんな事柄であっても、世の中は上手くできているよ」フゥ

魔法少女「あの……あたしもその呪文を唱えたら魔法が使えるのでしょうか?」

黒服「唱えるだけじゃ無理だな。というか内容を喋るだけじゃ詠唱にならないんだ」

黒服「集中力とイメージが必要なんだ。火なら火、氷なら氷。魔法として形にはならないが強くイメージすれば」パチ

魔法少女「あ、魔力が……」

黒服「強い魔法ほど詠唱中に発する魔力が多く、更に身体への負担も高い。集中力と暗記力だけでも駄目ってわけだ」

黒服「おっと忘れていた『教えておくれ』」パチ

魔法少女(この人は何を考えているんだろう……こんなに自分の魔法の事も)

魔法少女(もしかしてあたし達は勘違いを? そもそも魔法協会と争う気がなかった?)

魔法少女(だとしたら……あたしがこの人にした事はっ)ワナワナ

黒服『サーチ』パチン

黒服「ここも何処かの洞窟か……しかし出口らしい出口が無いな」

黒服「奥で敵が待ち構えているのだろうな」

魔法少女「地形を把握する魔法、ですか。凄い便利ですね」

黒服「飽くまで調べる魔法だがな。五感で知覚できないものまで調べられるよ」

魔法少女「それはそれで怖いのですが……」

黒服「……そうだ、さっきは助かったよ」

魔法少女「はい?」

黒服「雨が降り出した時、周りの突撃を制してくれただろう」

魔法少女「あれは……その、あまりにもあたし達が危険な状態でしたので」

黒服「あの時、君は自分達が劣勢にあると思うか?」

魔法少女「……え?」

黒服「確かに各個の生存を考えれば不利だっただろう。だが長い目で見て不利なのは俺の方さ」

黒服「顔は割れている中、そちらに死者が出れば協会は全戦力を投入してでも俺を滅ぼそうとするだろう」

黒服「最終的には俺の死は揺ぎの無いものになる……あれは賭けだ。あのイケメンが撤退指示を出すだろうと踏んでの事」

黒服「突撃されていたら撃つしかない……撃つ以外の対処ができない。それがあの時の俺の状況だった」

魔法少女「……なら、あなたの目的は何なのですか? 協会と争う気も協力する気も無いあなたは何をしにここへ?」

黒服「マナストーンは知っているか?」

魔法少女「……」コクリ

黒服「魔力が安定したものを探しているんだ」

魔法少女「……うん? え、どういう事ですか?」

黒服「知っているんじゃないのか?」

魔法少女「魔力が結晶化したものでこの近辺に眠っている、としか……」

黒服「あー……結晶化された魔力は様々なんだ」

黒服「単純に膨大な魔力だったり、魔力の素の塊……例えば炎に由来する魔力だったり氷だったり」

黒服「その中でも安定した魔力、周囲の不安定な魔力をも沈静させる物を探しているんだ」

魔法少女「沈静……一体何に使うつもりなのですか?」

黒服「自分にだよ」

魔法少女「えっ?」

黒服「君には俺の魔力が安定しているように見えているだろうが、刺青みたいな魔方陣を体に刻んでいるからだ」スッ

黒服「なにもしなければ……巨大な爆発系の魔法が勝手に起こるようなもんだ」

黒服「何れ魔方陣では止めようがなくなる……そうなる前にマナストーンを見つけ出したいんだ」

魔法少女「……そんな」

魔法少女「だったら……あたしがあなたにした事は」ワナワナ

黒服「いいんだよ」ポムポム

黒服「洞窟の魔力は俺と協会を交戦させる事を目論んでいたのだろう」

黒服「あの時、俺もそれに気付ければ良かったが……まあお互い嵌められた訳だ」

イケメン「なっ」

黒子「あっ!」

黒服「げっ」

魔法少女「えっ」

イケメン「……」

黒子「ふふふ、ここが会ったが百年目ですわ」ジャリ

黒服「……」

魔法少女「……」

黒子「という雰囲気ではないですわねぇ」ハァ

イケメン「少女君は何故黒服と?」

魔法少女「先ほどお話した魔力が洞窟から発せられていて、進んでいくうちに黒服の魔法使いと接触しました」

魔法少女「そうしたらこちらの洞窟に転送されてしまい、今協力して進んでいるところです」

イケメン「こちらは黒服の魔力が感知できたから追っていたが……あれはなんだ。黒服、お前の仕業ではないのか?」

黒服「俺ではないし、魔方陣による魔法は知識と正しく陣を画ければ、多少のものなら誰でも使える」

黒服「が、転移魔法を魔物がやっていたとも思えない。何者かが魔物の魔力を手に入れ、魔物を従えているとかだろうか?」

イケメン「ふむ……」

魔法少女「あの……お二人に話したい事が」


黒子「あなたそれを信じるわけ?」

イケメン「いや……だがそれなら今までの行動も辻褄が合うな」

黒子「その通りですわぁ!」

魔法少女「……」イラァ

黒服(不憫な……)ウッ

イケメン「私としても協力を申し出よう」

イケメン「だがそれもここを出るまでだ。どう事情があれ、協会に対し攻撃を行った罪は重いぞ」

黒服「構わない。外に出たら逃げさせてもらうだけだ」

黒子「あらぁ逃げられると思いで?」

黒服「……むしろ問題はその前にこの先の奴なんだがな」

魔法少女「やはり戦闘になるのでしょうか?」

黒服「避けられないだろうな」

魔法少女「凄い、魔力が……」

イケメン「こんな相手と戦うのか」

黒子「どんな相手だろうと私が叩き潰して差し上げますわぁ」

黒幕「魔方陣が多いな……トラップのつもりか」


「ほう……これはこれは協会の御三方の噂の魔法使いがご一緒とは」

黒服「やはり魔物の魔力を得た人間か」

「人間などと止めていただきたいな。私は世界を統べる力を持った魔人なのだからなっ!」

イケメン「愚かな……魔法協会を敵に回そうと?」

黒子「ふふん、例えあなたがなんであろうと、この場で私が止めて差し上げますわ」

魔法少女「……あたし達は絶対に負けません」

黒服(魔力が高まっている……魔方陣が作用しているのか)ズォォ

魔法少女「イケメンさん! マナシールド!」カッ

黒子「スパイダーネット!」キィン

イケメン「魔人よ! この一太刀で! 雷突!!」ビッ

魔人「ふんっ」ガキィン

イケメン「なっ……いや、こちらの魔法が?」

魔人「愚かな男だ……滅べ!」

黒服『全てを追い越し駆けて行け スピーディ』パチン

イケメン「」ビュンッ

ドゴォォン
イケメン「……い、今のは」

黒服「……俺の魔法よりあいつをどうにかするのが先だ」

黒子「これならどうかしらぁパルフレア!」ドドドド

魔人「ぬるいぬるい」シュゥ

魔法少女「魔法が消えた……?」

黒服「……」ニタァ

魔人「さあ次はこちらの番だ」キィィン

黒服「お前らを外に逃がすぞ」

イケメン「な、お前はどうするつもりだ」

黒服『分かっておくれ もう君を連れてはいけないよ』パチチ

黒子「ヘルフレイム!!」シュゥ

黒子「駄目ですわ、魔人を止められませんわ!」

黒服『大丈夫 私は一人でも歩いていける』パチ

魔法少女「黒服さん!」

黒服「悪いが俺が倒さないといけないんだ『ゴー ホーム』」パチン

イケメン「黒服!」フッ

魔人「ほう……倒さないと、か。何ゆえだ」キィィン

黒服「お前の持つマナストーンが必要だからだ」

黒服「沈静の魔力……だから彼らの魔法も無効化できた」

魔人「くっくく……だがどうするというのだ?」ィィィィン

魔人「魔方陣による爆発もあと僅か。お前は打つ手があるのか?」

黒服『――――』パチパチ

魔人「ふ、いいだろう……凌げるなら凌いでみせよ!」カッ

イケメン「ここは……あの洞窟の入り口?」

黒子「あんな状態で一人で残ってなにをなするというのかしら」

ドゴオオォォォン

魔法少女「なっ……まさかさっきの洞窟もこの山の?」

魔人「おや、お三方はこちらでしたか」ガラガラ

イケメン「……黒服は」

魔人「さあて? 消し炭どころか跡形も無かったですよ」ハハハ

魔人「ふははは! その程度ですか!」

魔法少女「セイントフレア!!」ボッ

黒子「ソニックスラッシュ!!」ブア

魔人「弱い弱い……なんともか弱い!」シュォォ

イケメン「はああああ!」ガキン

魔人「魔法が効かないなら物理的にですか……ですがそれでは勝てませんよ」

黒子「スパイダーネット!」シュゥ

魔人「はっはっはっ何度やっても無駄なのですよ!」

イケメン「これではジリ貧か……」

魔人「これでお終いですよ」スッ

少女黒子「マナシールド!」

イケメン(この位置なら魔法は消されないが……魔人の攻撃を受け止められるかっ?!)

黒子「ウィンド!」ブア

魔人「うん? 何ですこのネットは? 魔法ではない……本物ですか」バサァ

魔人「今更動けなくしたところで何ができるのです?」バチバチチ

魔人「……なんだ、この魔力は?」バチバチ

黒子「今更お気づきになられても遅いですわぁ」ニィ

魔法少女「黒服さん……? だけど魔法じゃあ……」パチバチチ

イケメン「なんだ……この魔力は……」バチバチ

黒服『これでさえ 小さな小さな一角に過ぎない』バチバチ

魔法少女「まさかあの刺青を……ひ、引きましょう! ここにいては巻き込まれてしまいます!!」

イケメン「……確かにこの魔力は尋常じゃないな」

黒子「悔しいけれども仕方がありませんわ」

魔人「……やれやれ、巨大な魔法から逃げられなくしたつもりですか? 如何なる魔法とて私の前では無力ですよ」

黒服「はーっ! はーっ! 流石に、疲れるな」バチ

黒服『輝く世界が降り注ぐ』バチチバチバチ

魔人(とは言え、これほどの魔力……私も本気でかからねば押しつぶされてしまいそうですね)ゴクリ

黒服「止められるなら止めてみろ……『ロック アイス』」バチン

ズズ ズォォォォ
イケメン「なっ!」

魔法少女「空から……巨大な氷塊……」

黒子「あれが全て消えるとは思えませんわ! 破片を防ぎますわよ! マナシールド!」カッ

魔法少女「せ、セイントシールド!!」カッ

魔人「ぬおおおお!」ゴオオォォ

魔人「ふ、ふはははは!」ジュオオォォ

魔人「消える! 消せるぞ! 男の魔法使い!」ォォォォ

魔人「お前の渾身の魔法も無駄よ!!」


黒服「ぐっ!!」ブッブツッ

黒服(これで魔方陣は全部取り除かれた……もう後には引けないぞ)バチバチバチ

黒服『君は目の前に 無があると思っている』バチバチ


魔法少女「?!」

イケメン「更に魔力が……馬鹿な!」

黒子「な、なんなのですの? 黒服の魔力は無尽蔵にあるというのですの?」


魔人「無駄だ! その魔法も消してくれるっ!」

黒服『大きな力を知るといい』スラァ

黒服『それでは少し掃除をしようか』ポイ


イケメン「……短剣?」

黒子「何をするつもりですの?」

魔法少女「まさか……」


黒服(成功するかは分からないが……動けないお前にはおあつらえ向きだ)

黒服「受け取れ……『エア バレット』」ドッ

魔人(剣? 剣を風で飛ばしている?!)

魔人(や、やつの狙いは……駄目だ! 逃げられない!)

魔人「ぐ! うおおお!」ジュォドシュ

魔人「うぐ、ごふぉ」ビチャ


黒服「魔法は消せても、運動エネルギーまでは消せない」

黒服「せめて弾いたりする力があれば、空気の塊と共に飛んできた剣を逸らす事もできただろうが……」

黒服「あの洞窟であれば対抗策の魔方陣があったのだろうが」

黒服「俺さえ倒せば完封できると洞窟諸共吹き飛ばしたのが間違いだったな」

ゴォォォ
イケメン「く、黒服! あの魔法を早く止めろ!」

黒子「まだ後四割近く残っていますわ!」

黒服「一度発動させた魔法は止められないさ」ダッ

魔人「」

黒服「……あった」ゴソゴソ

魔法少女「宝石……?」

黒服「そうだな……とても危険でとても輝かしい宝石だ」バッ

ジュオオォォォ
黒子「あれだけの大きさが一瞬で」

イケメン「一体何がどうなっているんだ?」

魔法少女「もしかしてそれが……マナストーン」

イケメン「なに?!」

黒服「……」パキパキ パキン

黒子「く、砕け散ってしまいましたわ……もしかして最後のあれで力を?」

黒服「いや……マナストーンがあの程度で力を失う訳が無いだろう。残りの魔力を全て頂いただけだ」

黒服「俺の目的は達せられた」

黒服「見逃してはもらえないだろうか? 俺はもう魔法使いとして表舞台に立つ気は無い」

黒服「やっと……平穏に暮らせるようになったんだ」

黒子「あれだけの事、それも貴重なマナストーンを利己的に利用しておいて、黙認できるとでも思いで?」

イケメン「もう抵抗する気が無いのなら協会に連れて行く。理由を説明すれば納得だって」

黒服「お前の所ご主人はそんなに頭が柔らかいのか?」

イケメン「……」

黒服「どう説明しようと殺すか利用するかの二択だろうな」

黒服「少女。君はどうする?」

魔法少女「あたしは……あたしはどうする事もできません」

魔法少女「あなたが魔法協会と交戦するきっかけを作ってしまったのはあたしですし」

魔法少女「立場上、あなたを見逃すとは言えません」

黒子「見なかった事にするというの? 貴女それでも……」サッ

イケメン「私はそれでいいと思う。何れにせよ、私と黒子君でお前を抑えるだけの話だ」

黒服「そうか……ならあまり手荒く扱わないで欲しいな」スッ

イケメン「……悪いが腕は拘束させてもらうぞ」チャキ

黒服『――――』ボソボソ

黒子「……? 魔力?」キョロキョロ

魔法少女「く、黒服さん!」

イケメン「っ! 貴様っ!」

黒服『だから安心して眠れ スリーピー』パチン

黒子「あ、ぐっ!」クラァ

イケメン「催眠、魔……」ドサ

魔法少女「あ……な、何をしているんですか!」

黒服「危害そのものは加えないさ」

魔法少女「指名手配され、逃げ続けるのですか?」

黒服「君は見なかった事にするのだろう?」

黒服「できれば剣を持っている子もしたかったが……まあいいさ」

黒服「君が俺の事を忘れてくれればそれで済む話だ」

魔法少女「な、何をするつもりです?」

黒服「……俺が扱う魔法でまだ言っていない事がある」

黒服「どれだけあるかも把握できない。使う事が禁じられた魔法がある」

黒服「大概、危険だからだろう。そして術者の負担も一際だ」

黒服「俺の魔力を抑える魔法陣が全部あっては、さっきの氷塊は詠唱しきれなかっただろうな」

魔法少女「禁止魔法……確かにあの氷塊は……禁止されるのも分かります」

黒服「そしてこれからもう一つ禁止魔法を行使する」

黒服「魔法陣を全て消した今となっては失敗する事は無いだろうが」

黒服「俺も試すのは初めてだ。もしかしたら君にも効果が及ぶかもしれない」

魔法少女「どんな魔法を?」

黒服「記憶を消す。細かく指定できないが俺と魔人の事。顔どころか声の一つ思い出せなくなるだろう」

黒服「これほどの魔法を見る機会は無いだろうな」

黒服「巻き込まれる覚悟があるようなら、ここで見ているといい」

黒服「もし今すぐにこの場を去るなら……そうだな、あの剣を持った魔法使いに俺については忘れるよう、取り計らってくれると嬉しいな」

魔法少女「……」

魔法少女「この場に残ります」

黒服「そうか……では……」パチ

魔法少女「あの……できれば仮面を外してもらってもいいでしょうか?」

黒服「うん……? まあいいか。これが最後だろうからな」カパ

男『白い霧が漂う』パチ

男『触れる物は全てあやふやで』パチチ

魔法少女(詠唱が丁寧……? 試すの初めてって言っていたっけ)

男『私が誰か分からない』パチチパチ

魔法少女(凄い真剣な眼差し……そういえばあの時も、魔法を唱える時は)

男『溶けて溢れる』パチ

男『雫となって零れる』パチパチ

男『もう形を成していない』パチチ

男『黒服という魔法使いの事 魔人という者の事』パチチ

魔法少女「……あ、れ?」クラァ

魔法少女(いけない……これが黒服さんの言う……魔力を高めて抗わないと!)バチバチ

男「……」チラ

男『それはうたかたの夢なのだ』パチパチン

男『イレイス』キィン

少女「記憶こそ失わなかったけども、魔法の影響であたしはそこで意識が途切れて」

少女「目が覚めた時は男さんはいなかったよ……この仮面を残して」

姉「そう……」

少女「男さんから色々と話は聞いたよ……ごめんなさい。あの時、お姉ちゃんの言葉をしっかり聞いておけば」

姉「いいのよ。仕方の無いことだったんだし」

姉「何より、あいつを悪者して追いかける人はいないんでしょ?」

少女「剣子さんには話をしてあるから……他に顔が分かる人はいないし、大丈夫だと思う」

少女(公式としてはイケメンさん達は、黒服の魔法使いに記憶障害の魔法を放たれ)

少女(容姿などの情報を失った。あたしも同様に思い出せないという扱いになっている)

少女(特定する情報を失った今、上層部がいかに黒服さんを追い詰めたくてもどうする事もできない)

少女(これで……良かったんですよね)

姉「少女?」

少女「ううん、何でもないよ」ウィーム

男「……」アリガトウゴザイマシター

姉「」

少女「」

男(買出しはこのくらいでいいか……)ガサガサ

男(念の為に前もって他に部屋を借りておいて良かったが、如何せん物資までは揃えていなかったからな)スタスタ

姉「ちょちょ、ちょい待ち!」

少女「何普通に通り過ぎようとしているんですか?!」

男「おお、お前達か。久しぶりだな」

姉少女「えーーー?!」

少女「ここを出たんじゃ……」

男「何時でも逃げられる準備をしてしばらく潜伏していのだが」

男「俺を特定する情報無しに実りの無い捜査を続けるようだし、無理に離れる必要もないだろう」

男「まあ……正確に言えば行く当ても無いから」

姉「故郷とかは?」

男「滅んださ。俺の魔力の暴走で」

少女「そんな……」

男「あ、もしかしてここで暮らすのは流石に不味いのか?」

姉「多分大丈夫だろうけど……」

男「なら一安心だな。ああ、今は大して魔力の探査を行っていないのだろう?」

男「町の外なら魔物対峙を手伝う事もできるだろう。声をかけてくれれば消し炭にしてやろう」

少女「あ、はい。じゃなくて! そんな……故郷がだなんて。なんで平然としていられんですか?!」

男「お前……十何年前の話だと思っているんだ。だからこそずっとアレを探していたんだぞ」

姉「ていうか魔法を使ったら男が生きている事がばれるよ?」

男「今まで感知されていた魔力なんて、実際の四半分にも満たないんだ」

少女「あ、あれで四分の一以下……」ブル

男「それだけの魔力があるんだ。町全体を魔力で覆ってジャミングをかけるなんて訳じゃないからな」

男「事前に準備をしておけば、離れたところから魔力を発生させる事も出来る」パチ

姉「何でもありね」

男「暴走さえしなければな」

少女「……!」

男「魔物だな」

姉「何処? 郊外?」

少女「あたし、行って……」ブル

少女「な、周りが魔力で……男さん?」バチバチ

男『地の底より吹き出る罪焼きの炎 公開や懺悔の時間も与えはしない』バチバチチ

男『焼き落とせ ヘル ファイア』ドッ

姉「……なにあの火柱」ゴオオォォォ

少女「もう……あたし達の魔法の威力とは次元が……」

男「これでも禁止されていない魔法なんだがな。俺の魔力の所為であの威力だ」

男「これからは平和に暮らすつもりだが必要ならいくらだって手を貸すからな」

男「如何なる魔物も薙ぎ払ってやろう。この一撃で」


   魔法少女「悪しき魔物よ! この一撃で!」 完

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