怜「竜華以外の人に膝枕してほしい…」竜華「え?」(285)


だれか頼む、わりとマジで


怜「もう竜華の膝枕には飽きたわ」

竜華「飽きたって……」

怜「ぶっちゃけクッションの方が気持ちいいし」

竜華「当たり前やろ」

怜「何が足りひんのやろ」

竜華「えっ、うちの太ももが悪いん?」

怜「うん」

竜華「えー……」

怜「なんか、惜しいねん」

竜華「そか……」


怜「……どうしょっかなあ」

竜華「……」

怜「うちもな、いろいろ考えてん」

竜華「うん」

怜「竜華の膝枕がダメなら、他の人にしてもらおうか、とか」

竜華「あかん!」

怜「せやな、うちも竜華以外考えられへん」

竜華「ならうちので我慢しいよ」

怜「足りんねん」

竜華「なんや」

怜「わからん。せやけど、何かが」

竜華「なんやろか」


怜「精神面からつめてくか」

竜華「うん」

怜「愛、とか」

竜華「いっぱいあるで」

怜「思いやり、とか」

竜華「溢れてしまいそうや」

怜「性欲、とか」

竜華「抑えきれんぐらいやわ」

怜「えっ……」

竜華「うそやん」

怜「どんくらい?」

竜華「ちょびっと」

怜「ちょびっとなん」

竜華「チョモランマくらい」

怜「あかんわ」


竜華「他には?」

怜「ソックスが蒸れるなあ、とか」

竜華「それはあるわ」

怜「やっぱりな」

竜華「夏やもん」

怜「脱げばええやん」

竜華「せやけどな、そんなこと言ったら」

怜「なんや」

竜華「全部脱ぐで、うち」

怜「あかんわ」

竜華「せやろ? 暑かったら脱げっちゅー理屈はおかしいねん」

怜「なるほどな……」


竜華「で?」

怜「精神面は合格や」

竜華「次は肉体面やな」

怜「肉体面か……」

竜華「どしたん」

怜「いや、竜華ってスタイル最高やと思うねん」

竜華「せやな」

怜「ぷにぷにやん、どこも」

竜華「お腹以外な」

怜「お腹もぷにぷにやん」

竜華「出てへんよ、ぷにぷにやけど」

怜「ほんま、だらしない体しとるわ」

竜華「なんや」


怜「熟れすぎや」

竜華「jkやで、うち」

怜「体はjjや」

竜華「なんやねん、それ」

怜「熟女」

竜華「ピッチピチやで」

怜「ほんまに?」

竜華「うん」

怜「触ってもええ?」

竜華「あかんわ」

怜「なんでやねん」

竜華「膝枕問題の方が先や」

怜「せやな」


竜華「うちの太ももはな、もう怜の頭の形を覚えとるねん」

怜「うそやん」

竜華「ほら、見てみ」

怜「いや、太ももはどうでもええねん」

竜華「なんや」

怜「太ももはどうでもええねん」

竜華「うん」

怜「竜華の膝枕に変わる枕を見つけたいねん」

竜華「もう他の人にしてもらい」

怜「あかんわ」

竜華「なんでや」

怜「竜華のことが好っきゃねん」

竜華「太ももは?」

怜「どうでもええねん」

竜華「愛せや。全てを愛せや」


怜「倦怠期や」

竜華「そか」

怜「どないしよかな」

竜華「うちな」

怜「うん」

竜華「胸にも自信あるで」

怜「でかいもんな」

竜華「しかも柔らかい」

怜「枕やん、それ」

竜華「せやろ?」

怜「やってみる?」

竜華「ばっちこい」

怜「ほなら寝そべって」

竜華「うん」


怜「おお、チョモランマや」

竜華「これはいけるで」

怜「よし」

竜華「仰向けに、うちの体に沿ってみ」

怜「うん」

竜華「どや」

怜「これは……」

竜華「……」

怜「ベッドやな。竜華ベッド」

竜華「ええやろ」

怜「最高や……」

竜華「しかもな、足を使ってホールドもできんねん」

怜「たまらんわ……」


竜華「胸枕with竜華ベッドや」

怜「でもお高いんでしょう?」

竜華「今ならなんとーっ」


ガチャッ


咲「あっ……」

竜華「税込み8000円!」

怜「……」

咲「……」

竜華「……」

咲「ごっ、ごめんなさい。トイレ探してて……」

怜「きゃーっ、竜華離してやー!」

竜華「!?」

怜「そこの人、助けてー!」

咲「え、えっ」


………

……



竜華「あかんわ」

怜「なんや」

竜華「なんで被害者ヅラなん」

怜「うちまで変態に見られるやろ」

竜華「そもそも誰やねんあの子」

怜「清澄のお花畑や」

竜華「ああ、トイレの花子さん」

怜「言いすぎや」

竜華「せやな」

咲「聞こえてますよ」

怜「まあ、胸枕は良かったわ」


竜華「じゃあ候補やな」

怜「うん、次いこうか」

竜華「次はどこにする?」

怜「お腹」

竜華「普通やな」

怜「なんや」

竜華「お尻かと思ったわ」

怜「お尻は最後やろ」

竜華「せやな」

怜「寝そべって」

竜華「はいはい」

怜「今回は地肌コース行ってみよか」

竜華「ん、じゃあめくるわ」

咲「わあ、くびれが素敵ですね」

怜「まあな」


竜華「なんで怜がえらそうなん」

怜「頭のっけるで」

竜華「うん」

怜「……」

竜華「……」

怜「これは……」

竜華「どや」

怜「あかんわ」

竜華「なんや」

怜「うるさい。胃がうるさい」

竜華「どうしようもないわ」

怜「感触は悪くないねん」

竜華「まあな」

怜「せやけど、胃がうるさい」


竜華「よく考えたら、昼ご飯食べたばっかりやんなあ」

怜「これは無しやな」

竜華「腹枕は無し、と」

怜「うん。それにしても、肌スベスベやなあ」

竜華「せやろ」

咲「私も触りたいなあ」

怜「胃の音さえ無かったら最高なんやけど」

竜華「ちょっと、あんま触らんでや」

怜「うりうり」

竜華「ちょっ、……ん」

怜「頬ずりしたる」

竜華「やめ、てや……」


怜「ああ、たまらんわあ」

竜華「怜、うちも……」


ガチャッ


淡「うートイレトイレっ、ってあれ……?」

竜華「……」

怜「……」

咲「あっ、淡ちゃんだ」

淡「あ、咲ちゃん。……なにこの状況」

竜華「ちょっ、怜やめてやー!」

怜「!?」

竜華「そこの人、助けてー!」

淡「えっ」


………

……



怜「あかんわ」

竜華「なんや」

怜「なんで被害者ヅラなん」

竜華「テンドンや」

怜「うちがもうやったわ」

竜華「そか」

淡「咲ちゃん、なんでこんな所に?」

咲「トイレと間違えちゃって」

淡「そうなんだ。実は私もなんだよね」

咲「えへへ、お揃いだね」

淡「そうだねー。ふふ」


竜華「気を取り直して、腹枕はなしっちゅうことやな」

怜「うん。今のところは胸枕の独走や」

淡「この二人はなんの話をしてるの?」

咲「膝枕に代わる新たな枕を探してるらしいよ」

淡「へー、面白そうだね」

竜華「せやろ」

怜「あんたらもやってみ?」

咲「えっ」

淡「膝枕を?」

怜「ちゃうちゃう。膝枕はオワコンや」


淡「今の流行りは?」

竜華「胸枕やな。……ぷぷ。あ、ごめん」

淡「笑うな」

咲「胸を見て笑うな」

怜「ぶふっ!」

淡「特にあんたは笑うな」

咲「怜さんもこっち側ですよ……」

竜華「まあまあ。見たとこ二人は仲良いみたいやん」

怜「せやな、これを機にもっと親睦を深めたらええよ」


淡「だって。……どうする、咲ちゃん」

咲「えっと、私は……淡ちゃんが、いいなら」

淡「いっ、いやいや。私こそ咲ちゃんがいいなら……」

咲「その、私は……」

淡「う、うん」

咲「……いい、よ?」

怜「あかんわ」

竜華「あかんわ」

怜「顔赤いで、竜華」

竜華「怜こそ、中国の国旗みたいになってるし」

怜「なんやて!」

淡「こいつら邪魔くさい……」


咲「じゃあ、よろしくね」

淡「いや、胸枕って具体的にどういう……?」

怜「要するに胸の上に頭のっけて、そのまま寝そべればええねん」

竜華「淡の方が身長高いし、咲ちゃんが上やな」

怜「せやな。胸の大きさは変わらんし」

淡「ぐっ……」

竜華「ああ、あんたちゃんとブラ外しや」

淡「えっ!?」

竜華「当然やん。ブラあったら邪魔やろ」


怜「咲たんに痛い思いさせたないやろ? 早よ脱ぎ」

淡「……あのテーブルの上に放置されてるブラは」

竜華「うちのや」

淡「どうりでさっきから揺れてると思った……」

咲「わ、私あっち向いてるねっ」

淡「別に裸になるわけじゃないんだから」

怜「う、うちもあっち向いとるわっ」

竜華「うちもうちも」

淡「逆に恥ずかしいわ」


………

……



淡「ほら、おいで咲ちゃん」

咲「うっ、うん。……お邪魔します」

淡「あっ、咲ちゃんすっごく上手……」

咲「なにが?」

淡「言ってみただけだよ」

咲「もう」

淡「んっ、もうちょっと上」

咲「ここらへん?」

淡「そう。……あんっ、いいわ。すごく上手よ」

咲「ノリノリだね……」

淡「でも、実際ちょっと良い、かも……」


咲「どんな感じ?」

淡「なんかこう、咲ちゃんと合体しそうな感じ」

咲「淡ちゃん、すごくあったかいね」

淡「気持ちいい?」

咲「うん、気持ちいい」


怜「あかんわ」

竜華「あかんわ」

怜「ほっとくと、すぐイチャイチャするんやから」

竜華「困ったもんやで」

怜「まあ、目の保養にはなるけどな」

竜華「せやな」

怜「ほら竜華、あれ教えたり」


竜華「そうやな。淡、ちょっと」

淡「なんですか。邪魔しないでくださいよ」

竜華「アホ、今あんたの両足はフリーやろ」

淡「それが?」

竜華「ギュッ、と挟まんかい。ギュッ、と」

淡「ギュッ、と……」

咲「わわ、淡ちゃん?」

淡「ギューっ」

咲「……これじゃ動けないよ」

怜「でも、ええやろ」

咲「……まあ、はい」

竜華「あっはっは、正にまな板の上の鯉やな」

淡「黙ってろデブ」


竜華「なんやと!?」

淡「はっ、口が滑った!」

竜華「誰がデブやねん!」

淡「お前だよ胸デブ」

竜華「なっ、なっ」

淡「はっ、口がトリプルアクセル!」

咲「もはや跳んでるよね、それ」

淡「お気づきでしょうか」

竜華「なんや」

淡「良く言えば巨乳、悪く言えば胸デブ」

竜華「はっ、胸にくびれがあるやつに言われたないわ!」

咲「はっ?」

怜「はっ?」

淡「はっ?」


竜華「みんな敵かい」

怜「ほら、咲たんの頭撫でてやり」

淡「あ、そうですね。なでなで」

咲「んっ、えへへ」

淡「うわあ、なんかすごく幸せ」

咲「これはすごいね。大発見だよ」

竜華「ふふん」

怜「まあな」

淡「やばい、手が止まらない」

咲「あっ、淡ちゃん……」

淡「ふふ。咲ちゃんは、乱暴なのはきらい?」

咲「ん……」


淡「咲ちゃん?」

咲「もっと強くても、いいよ……」

淡「ぐっは! 腕があああ!」

咲「わっ、わっ」


ガチャッ


霞「お手洗いはここかしら……?」

淡「……」

咲「……」

霞「あ、あら?」

怜「きゃーっ」

竜華「もうええわ」


………

……



霞「そう、ここはお手洗いじゃないのね」

怜「なんでみんなして間違えるねん」

竜華「淡と咲ちゃんは?」

怜「ホテルに行く言っとった」

竜華「宿泊先のホテルっちゅうことかな」

怜「どっちでもええわ」

霞「で、あなたたちは何をしてるの?」

竜華「そうや、膝枕問題をすっかり忘れとった!」

霞「?」


…………

霞「なるほどねえ。要するにマンネリ打破と」

怜「せやな」

竜華「よっし、じゃあ次いくか」

怜「うん。胸、お腹ときたら次は……」

霞「股関?」

怜「それは最後の方や」

霞「あらあら」

竜華「肩はどうや?」

怜「肩枕か……」

竜華「胸に比べたら固いけど、カップルぽくてええやろ」

怜「うん、それで行こう」


竜華「ソファーに座って、と……ほら怜、こっちおいでや」

怜「ん。なんやちょうど良い位置に肩があるなあ」

竜華「まあな。うちの体は怜専用っちゅうこっちゃ」

怜「はいはい。……うーん」

竜華「どや」

怜「これは、あれやな」

竜華「うん」

怜「竜華、うちの肩に手回してみ」

竜華「お、ますますカップルやん。こう?」

怜「んー、ええ感じや……」


霞「二人とも、すごく絵になってるわ」

竜華「なんや照れるなあ」

怜「せやな」

霞「写真撮ってもいいかしら」

竜華「いやあー、ええてええて」

怜「せやな」

霞「よっ、お似合いカップル!」

竜華「まあまあ、そらな」

怜「せやな」

霞「初キッスは学校の屋上かー!?」

竜華「空気読めや!」

怜「しつこいねん! 雰囲気壊すなや!」


霞「あらあら、照れちゃって」

竜華「こいつのお姉さんオーラをどうにかしてくれへん?」

怜「あかんわ」

霞「で、もうキッスは済ませたの?」

竜華「関係ないやろ」

怜「ぶっちゃけまだやけどな」

竜華「なんで律儀に答えんねん……」

霞「ふんふむ……」

竜華「絶対とんでもないこと言い出すで」

霞「じゃあ、今からここでやってみたらどうかしら!」

竜華「ほらな」


霞「そんなにベタベタしてるのにキッスはまだとか、有り得ないわ」

竜華「そのキッスっちゅう言い方やめてくれへんかな」

怜「竜華は照れ屋やからな、体は触るくせにキッスはしてくれへんのや」

竜華「怜、帰ってきて」

霞「あのね、初キッスっていうのはとても大切なものよ」

怜「せやな」

霞「けどそんな思い出も、時が経てばいずれ忘れてしまうわ」


怜「うん」

霞「だから私がここにいるの」

竜華「何言っとるかさっぱりわからんのやけど、鹿児島語?」

霞「あなたたちが忘れても、私が覚えてるわ」

怜「姉さんっ!」

竜華「あかんわ」

霞「さあ、この巫女の前で契りを結びなさい」

怜「……竜華」

竜華「えっ、する流れ?」

怜「竜華、目つぶって……」

竜華「えっ、ほんまに?」

霞「わくてか」


怜「りゅうか……」

竜華「と、とき……」


ガチャッ


小蒔「化粧室はここですね……、あれ?」

竜華「ちゅっ」

怜「ちゅっ」

霞「きゃっ」

小蒔「か、霞ちゃん……」

霞「あらあら、小蒔ちゃん。どうしたの?」

小蒔「ちょっとお花を摘みに……って、この二人はなぜトイレで接吻を?」

霞「ここはトイレじゃないわよ、愛の巣よ」


………

……



竜華「ちょっと聞いてもええかなあ」

小蒔「はい、何でもどうぞ」

竜華「あんたら揃いも揃ってなんでここをトイレやと思ったん」

小蒔「揃いも揃って……?」

霞「うふふ、私もお手洗いと間違えちゃったの」

小蒔「そ、そうだったんですね」

怜「なんや」

小蒔「霞ちゃんといっしょ……」

竜華「あかんわ」


怜「おい鹿児島」

小蒔「……」

霞「……」

怜「芋焼酎」

小蒔「……」

霞「……」

怜「黒豚」

小蒔「……」

霞「……」

怜「西郷どーん」

竜華「ほいたら行くぜよ!」

小蒔「ぶっふぉ!」

霞「く、くく……」

怜「竜華、分かりづらいネタはやめえ」

竜華「せやな」


小蒔「それで、お二人は何してらっしゃったんですか?」

竜華「膝枕に変わる新しい枕をやな……」

小蒔「えっ、でも先ほどは接吻を……」

竜華「あれはそこの胸デブがけしかけたんや」

霞「む、胸デブ?」

怜「私に言わせれば竜華もこまきんも胸デブやで」

竜華「そうや。あんたらもやったらええやん、胸枕!」

小蒔「はあ、胸枕ですか」


霞「なるほど、面白そうね」

小蒔「か、霞ちゃんの胸枕……」

怜「まあ、こまきんが上やろな」

竜華「せやな。ほら早よ」

霞「じゃあ失礼して……」

竜華「ちょい待ち」

霞「なにかしら」

竜華「ブラ外しや」

怜「なに、巫女服なのにブラ着けとるん?」


霞「着物用だけどね。大きいから大変なのよ」

怜「こまきんは?」

小蒔「付けてますよ。大きいから大変なんです」

怜「竜華は?」

竜華「付けとるよ。大きいから大変やもん」

怜「ちょっとは分けろや!」

霞「ぺたんこは楽そうでいいわね」

小蒔「絆創膏で十分なんですよね」

竜華「あれれ~、くびれの位置がおかしいぞぉ?」

怜「黙れ。特に竜華は黙れ」


竜華「冗談はさておき。霞、はよ脱ぎ」

霞「はいはい。ところで、あのブラはあなたたちの?」

怜「ん、二つあるな。一個は竜華のやけど、もう一個は?」

竜華「誰のやろー」

怜「まあええわ。うちとサイズ変わらんし、貰っとく」

竜華「今ごろあわあわしとるんちゃうかな」

怜「傑作やな」

小蒔「?」


霞「ほらほら、脱ぐからあっち向いてて」

小蒔「そ、そうですよ。あっち向いててください」

怜「あんたもやろ」

小蒔「私はいいんです」

怜「なんでやねん」

小蒔「だ、だって……」

霞「小蒔ちゃん……」

竜華「ほら怜、ええからあっち向くで」

怜「うん」

霞「小蒔ちゃん、そんな遠くからじゃよく見えないでしょ?」

小蒔「えっ、……うん」


霞「うふふ。もっと近づいていいのよ」

小蒔「で、でも」

霞「じゃあ、そうね。背中に手が届かないから、外してくれない?」

小蒔「それなら仕方ないね」

霞「でも私、小蒔ちゃんの顔も見たいから……」

小蒔「見たいから……」

霞「前から手を回して外してくれないかしら」

小蒔「そ、それなら仕方ないね」


怜「あかんわ」

竜華「あかんわ」


霞「さあ、もっと体を押しつけないと手が届かないでしょう?」

小蒔「そ、そそそれなら仕方ないね」

霞「もう、別にいちいち理由をつけなくてもいいのに」

小蒔「と、とれたよ」

霞「ありがとう。それはあそこのテーブルに置いといて」

小蒔「……」

霞「あらあら、釘付けね。……触って、みる?」

小蒔「!」


怜「なんやねん霞のあの余裕は」

竜華「あの胸やもん、羞恥心なんかあらへんのやろ」


小蒔「さ、さ、さわっ」

霞「さわっ?」

小蒔「さわっ、さわさわさわ」

霞「さわさわ?」

小蒔「……が、我慢する」

霞「うん、えらい」

小蒔「うう……」

霞「うふふ。小蒔ちゃんがもう少し大人になったら、いくらでも。ね?」

小蒔「……うん」


怜「知っとる? 霞ってうちらと同い年なんやで」

竜華「うそやん。絶対子持ちのアラフォーやろ」


霞「このまま仰向けに寝そべればいいのね」

怜「せや。ほら、こまきんも」

小蒔「で、では……、失礼して」

霞「……」

小蒔「……」

怜「……これは」

竜華「……思うてたんとちがうな」

怜「胸枕っちゅうか、これやと胸座椅子やないか」

竜華「でかすぎるんや胸が! なんで背もたれになんねんおかしいやろ!?」

霞「あらあら、私に言われてもねえ」

小蒔「ふかふか……」


怜「しかしこれは新たな可能性やで、竜華」

竜華「そんな期待した目で見んでや。うちには絶対無理やから」

霞「好きで大きくなったわけじゃないんだけどね」

小蒔「胸の大きい霞ちゃんも大好きだよっ」

霞「うふふ、ありがとう小蒔ちゃん」

怜「……竜華もあれぐらい言ってくれたらなあ」

竜華「胸の小さい怜も大好きやで!」

怜「あっ、今きたわ。かっちんきたわ」


竜華「どうせえっちゅうねん」

怜「歯の浮くセリフでも練習しとき」

霞「でもこれだと、小蒔ちゃんの顔が見れないわね」

小蒔「うん……」

霞「頭も撫でてあげられないし、なんだか寂しいわ」

小蒔「霞ちゃん……」

怜「なあ、霞相手やとこまきんってしおらしいな」

竜華「そりゃあ歳の差二十やもん、しゃーないわ」

怜「なっとく」

霞「やっぱり膝枕の方がいいかしらね」


竜華「好きにしいや」

怜「さすがに予想外すぎるわ」

霞「小蒔ちゃん、一回起きてくれないかしら」

小蒔「ん……」

霞「ほら、向こうで膝枕してあげるから」

小蒔「わかった……」

竜華「居座る気やで、あいつら」

怜「ほっとき。こっちまで火傷してまうわ」

竜華「うちらはうちらでやっとくか」

怜「おやすみな、こまきん」

小蒔「は、はい。ごゆっくり……」

竜華「こっちのセリフやで」


………

……



怜「なあ、なんか小腹すかへん?」

竜華「せやな、すっかりおやつ時や」

怜「コンビニでも行くか」

竜華「あの二人はどうするん?」

怜「眠っとるみたいやし、邪魔したら悪いわ」

竜華「そか。適当になんか買っといたろか」

怜「うん。じゃあ行くで」

竜華「おっけー」


―コンビニ―

怜「なに買うかな。ジュースとお菓子……」

竜華「巫女二人はお茶の方がいいんちゃう?」

怜「ちゅうと、和菓子? 無難に煎餅かな」

竜華「あっ」

怜「ん?」

久「あら」

怜「出たな清澄……」

久「竹井久よ。そんなににらまれる覚えはないんだけど……」

怜「清澄は要注意人物だらけや」

竜華「あんた咲ちゃん気に入っとったやん」


怜「咲たんはまだええねん。麻雀以外では常識人やからな」

竜華「そか」

久「失礼ね。私だって常識くらいあるわよ」

怜「やかましい。ミスノーマナーめ」

久「あー、気分がのっちゃうとどうもねえ」

竜華「まあええやん。麻雀しとるわけちゃうし」

怜「ちゃうねん。一番の問題はこれや!」

竜華「みたらし団子? おいしそうやな」


久「それが何か?」

怜「竹井久はみたらしならぬ、めたらしや!」

竜華「めたらし……」

久「?」

竜華「女たらし……ああ、ね」

久「ちょっと、納得しないでよ」

怜「この噂は国境越えて、はるか大阪の地にまで届いとるで」

久「同じ日本よ。いやそれでも心外だけど」

竜華「今日は一人なん?」

久「ううん。ほら、あそこで立ち読みしてる……」


美穂子「あら、あなたたちは……」

怜「出たな正妻」

美穂子「そ、そんな正妻だなんで……。もう、久ったら」

久「えっ、私?」

竜華「なんや、てっきり正妻は清澄のメガネやと思っとったわ」

美穂子「なんですって!?」

久「えっ、私?」

怜「竜華、うち思ったんやけど」

竜華「なんや」

怜「麻雀強い人って変人だらけやね」

竜華「言うな。自分に刺さるで」


久「で、三千里山の二人はなにをしてるの?」

怜「誰が母をたずねとるねん」

美穂子「久、千里眼ですよ」

竜華「ちゃうわポケモン。千里山や」

美穂子「ポ、ポケモン?」

久「あなたたちもデート?」

竜華「そうや」

怜「ちゃうわ。買い出しや買い出し」

久「ふうん」

竜華「おっ、怜。芋焼酎あるで!」

怜「ぷっ。鹿児島巫女にはぴったりのおみやげやな」


美穂子「鹿児島巫女というと、永水の方ですか?」

久「珍しい組み合わせね」

竜華「なんや、自分らも来るか?」

怜「竜華、デートの邪魔しちゃあかんで」

久「そうね。また今度お呼ばれしようかしら」

竜華「えー……。永水って言ったらあれやん」

久「なに?」

竜華「側室がおるやん、あんたの」

久「あのねえ」

怜「おっ、あの黒糖の子か?」


久「言っておくけどね、私は」

美穂子「美穂子一筋なんだから!」

久「セリフとらないで。いやそうなんだけどね」

美穂子「ほら、変な言いがかりはやめてください」

怜「必死やね」

竜華「正妻としての余裕がないな」

美穂子「そんな、正妻だなんて……」

久「もういいわよこの流れは」

竜華「せやな。怜、ジュース選ぼうや」

怜「うん」


竜華「私はサイダー」

怜「はっ? 午後スト一択やろ」

久「私は缶コーヒーでいいわよ」

竜華「うちらのカゴにいれんなや!」

美穂子「私は紙パックの午後ストで……」

怜「紙パックとか。ないわ」

竜華「口紅でも塗っとるんちゃうか」

美穂子「むっ」

竜華「せやからうちらのカゴに入れんなっちゅーに!」

久「あはは、悪いわね」


怜「あとはお茶やな」

竜華「適当でええやろ。烏龍茶とか」

怜「これにしようや」

竜華「ヘルシア緑茶……」

怜「体脂肪率が気になっとるらしいからな」

竜華「嫌がらせやろ……」

怜「黒烏龍茶も買っといたろ」

竜華「怜……」

久「美穂子の分もよろしく」

美穂子「えっ!?」

怜「竜華の分もな」

竜華「あかんわ」


怜「……竜華、うち今気づいたんやけど」

竜華「なんや」

怜「財布忘れてもうたわ」

竜華「……」

久「そんなすがるような目で見ないでよ」

美穂子「私もあまり手持ちは無いんですけど……」

竜華「そもそもなんでうちらが巫女の分まで買わんとあかんのや!」

怜「せやな」

久「そんなこと言わないの。貸してあげるわよ」

美穂子「久……」

竜華「なんであんたが顔赤らめんねん」


………

……



怜「いやー助かったわ」

竜華「このお礼はいつか」

久「いいわよ、気にしなくて」

美穂子「そうですよ」

怜「すまんな。うちらはもう帰るけど、あんたらは?」

久「適当にブラブラしようかな、って」

美穂子「まあ最終的にはホテルでラブラブなんですけどね」

竜華「あかんわ」

怜「ほな。また麻雀でも打とうなあ」

久「またね」

美穂子「お気をつけて」


竜華「なんやろか」

怜「どしたん?」

竜華「や、うちらは膝枕問題を解決しようとしとったやん?」

怜「せやな」

竜華「それはつまり、うちらがもっと愛し合うためやろ?」

怜「ちゃうわ」

竜華「せやのに、他の連中に見せつけられてはばっかりやん……」

怜「聞いてや、無視せんで」

竜華「不甲斐ないわ。……帰ったら、全身全霊で愛でたるからな」

怜「あかんわ」


………

……




ガチャッ


霞「あら、お帰りなさい。二人とも」

竜華「おっ、起きとったんか。これおみやげや」

怜「まてまてまて」

竜華「なんや」

怜「気のせいやろか。巫女が増えとるで」

竜華「んー……、ほんまや」

初美「増えてるとはなんですかー」

巴「私は制服だけどね」

春「……」


怜「なにしに来たん、こんな大勢で」

春「……姫様を迎えにきた」

初美「トイレに行ったきり帰ってこないんですから、心配しましたよー」

竜華「せやったらトイレに探しに行けや!」

巴「えっ、ここは……?」

竜華「トイレちゃうわ!」

怜「あんたらの姫様はトイレでも寝るようなやつなんか……?」

初美「ありえますねー」

竜華「ありえるんかい」


霞「そういえば、二人はどこに行ってたのかしら」

怜「コンビニや。あんたらの分まで買ってきたんやで」

霞「あらあら、ありがとうね。……ヘルシア?」

怜「うちからのプレゼント」

霞「……まあ、うん」

怜「……そんな目で見んなや」

竜華「煎餅もあるで」

初美「申し訳ないですねー」

怜「二人分しかないけどな」

巴「ですよねー」


春「……そろそろ帰ろう」

霞「そうね。ずいぶん長く居座っちゃったみたい」

竜華「気にせんでええよ」

怜「こまきんはどうするん?」

霞「私がおぶっていくわ。……んしょ、っと」

竜華「ほんま、オカンやな。腰に気いつけてや」

霞「腰より肩こりがひどいのよ」

怜「はいはい」

霞「うふふ。あなたたちはまだ続けるの?」

竜華「うん。こればっかりは譲れんからな」


怜「なにと戦っとるねん」

竜華「怜が発端やろ」

霞「それじゃあ、失礼するわね」

初美「お世話になりましたー」

巴「また遊びにくるね」

春「お礼に、黒糖のおすそわけ……」

怜「おっ、わるいな」

竜華「ほな、またなー」

霞「うん、またね」


………

……



竜華「さて、二人きりやな」

怜「せやな」

竜華「ちなみに、うちらいくつ試したっけ?」

怜「胸、腹、肩の三つや」

竜華「そか。次は?」

怜「うーん、どこにしょっかなあ」

竜華「無難に腕枕とかいっとく?」

怜「そしたら脱がなあかんやん」

竜華「なんでやねん」


怜「あほ、腕枕言うたら裸にシーツやろ」

竜華「怜はなにを見て育ったん?」

怜「常識やで」

竜華「まあええわ。脱げばええやん」

怜「ほんま竜華はアホやな! 救いようがないわ!」

竜華「なんでキレんねん……。なんでそこまで言うねん……」

怜「いつ誰が来るかわからへんやろ! 裸やったら弁解のしようがないわ!」

竜華「せやな……」


怜「竜華のそんなところがうちはたまらんねん!」

竜華「ごめんな、怜……」

怜「せやけどな、うちはそんな竜華が……」

竜華「と、とき……」


ガチャッ


いちご「ここ、トイレじゃろか……」

怜「めっちゃ好っきゃねん!」

竜華「うちもや!」

いちご「……トイレで告白かいな」

怜「……」

竜華「……」

いちご「新しいわ……」


………

……



怜「空気読めや」

いちご「ごめんなさい」

竜華「この部屋がトイレに見えるか?」

いちご「見えません」

怜「正座!」

いちご「はっ、はいぃ!」

竜華「あんたたしか、広島の……」

いちご「おっ、知っとるん?」

竜華「……佐々木?」

いちご「ちがう!」

怜「……佐世保?」

いちご「離れた! 広島から離れた!」


竜華「ああ、思い出したわ」

いちご「うんうん」

竜華「役満あがられた人やろ?」

いちご「……」

怜「あー、洋榎に振りこんだ人か」

いちご「……う」

竜華「どうかいの!」

怜「ロン!」

いちご「……うう」

竜華「そんなん考慮しとらんわ……」

怜「思ったより痛いんちゃうか?」

いちご「……うえぇーん!」

竜華「!?」

怜「ちょっ!?」


竜華「い、いい歳して泣かんでや……」

怜「ごご、ごめんな!」

いちご「うるさいうるさい! ちゃちゃのんをいじめるなあっ!」

竜華「……ちゃちゃのん?」

怜「竜華、いじったらあかん」

竜華「ちゃ、ちゃちゃのん……」

怜「竜華! 我慢しい!」

竜華「……ぶっ」

怜「あかんわ」

竜華「あっはっは! ちゃちゃのんて! 自分でちゃちゃのんて!」

いちご「びえぇーん!」


………

……



怜「空気読めや」

竜華「ごめんなさい」

いちご「ちゃちゃのんをいじっちゃダメじゃろ」

竜華「やかましい」

いちご「なんじゃと!」

竜華「だいたいなんであんたがアイドル的人気なん?」

いちご「なにか文句でもあるん?」

竜華「大ありや。うちの怜の方が数倍かわいいで」

怜「や、やめてや~」


いちご「まあ、顔は合格じゃの」

竜華「怜、こいつぶっ飛ばしてええ?」

怜「あかんわ」

いちご「でもスタイルが、なあ……」

怜「竜華、こいつぶっ飛ばしてええ?」

竜華「うちがやるわ」

いちご「暴力反対!」

怜「なら麻雀で勝負や」

竜華「せやな。チャンタから清老頭までキレイにあがったるわ」

いちご「ち、清老頭!?」

怜「トラウマやな……」


いちご「まま、まあやっちゃりたいとこじゃけど、三麻はようわからんし」

竜華「あー、うまく逃げたな」

怜「しゃーないわ。勘弁したる」

いちご「ふん! いずれ清老頭の借りは返すつもりじゃけどな」


ガチャッ


洋榎「なんやー、トイレで宣戦布告か?」

いちご「……なっ、な」

竜華「……あーあ」

怜「地雷踏みまくりやな、ちゃちゃのん」


洋榎「みんな久しぶりやなー」

竜華「せやな。相変わらずちっこいな、あんたは」

怜「お姉ちゃんは元気?」

洋榎「うちがお姉ちゃんや!」

いちご「……」

洋榎「ちょい待ち」

いちご「ひっ」

洋榎「そ、そんな怯えんでもええやろー。傷つくわ……」

竜華「あれ?」

怜「なんや思うてたんとちがうな」

竜華「まあ、洋榎は基本優しいしな」


洋榎「せっかく四人おるんやし、打たへん?」

いちご「い、いやー、ちゃちゃのんは遠慮しちょこうかな~なんて」

洋榎「えっ……」

いちご「そそそんな落ち込んだ顔されても……」

竜華「やろうや、ちゃちゃのん」

怜「せや。清老頭の借りを返すんやろ?」

いちご「う……」

洋榎「……ちゃちゃのん」

いちご「……あーっ、わかったやったるわ! 全員とばしちゃる!」


………

……



いちご「ツモ! リーヅモ三色タンヤオで2000、4000じゃ」

竜華「タンヤオ……」

いちご「これで清老頭の借りは返したな!」

怜「いやまあたしかにそうやけど、それでええんか……?」

洋榎「ちぇっ、最後でやられてもうたな」

いちご「これで満足じゃろ」

洋榎「どこ行くん?」

いちご「帰る」

洋榎「も、もうちょい遊ぼうや! な?」


竜華「せやけど、麻雀はもうええよ」

怜「ならあれやろうや、胸枕」

いちご「胸枕? なんじゃのんそれ」

洋榎「おもしろそうやな」

竜華「うちらが開発した新しい枕や」

怜「ちゃちゃのんが寝そべって、その胸を枕に洋榎が寝る、と」

いちご「えーっ、いやじゃそんなん」

洋榎「やるで! やったるでー!」

いちご「なんでノリノリなん……」


洋榎「か、関西人のノリや!」

怜「うそつきめ」

竜華「まあなんでもええわ。ほらちゃちゃのん、ブラとって」

いちご「えっ!?」

竜華「そういうルールなんよ」

いちご「絶対いや!」

洋榎「ちゃちゃのん……」

いちご「ぐっ、その顔はずるい……」

怜「覚悟きめ、女やろ」

いちご「こんなの考慮しとらんよ……」

竜華「ブラとったらあのテーブルの上にでも置いとき」


いちご「なんですでに二つあるん?」

竜華「ああ、霞も置いてったんやな……」

怜「竜華、いつの間に着けたん?」

竜華「コンビニ行くときや」

洋榎「はよはよ」

いちご「あっち向いちょって!」

洋榎「服の下から取ればええやん」

いちご「そんな器用なことできんよ……」

洋榎「せやったら、うちが……」

いちご「ひっ」

竜華「なんやねんお前ら」


………

……



洋榎「ちゃちゃのん。い、いくで」

いちご「……やるんじゃったら早くして」

洋榎「……ごくっ」

いちご「生唾飲むのやめえよ。身の危険を感じるけえ」

洋榎「で、では……愛宕洋榎、いくで!」

いちご「きゃっ」

洋榎「や、やわらかい……。柔軟剤も使ったんか!?」

竜華「アホやこいつ」

怜「元からや」


いちご「うう、なんでちゃちゃのんがこんな……」

洋榎「い、いやなん?」

いちご「いやっちゅうか、その……」

洋榎「う、うちは、めっちゃ嬉しいんやけど……」

いちご「じゃけえその顔やめて……」

洋榎「ちゃちゃのん……」

いちご「……いちご」

洋榎「えっ?」

いちご「ちゃちゃのんじゃのーて、いちご」

洋榎「……いちご!」


いちご「もう……、ほんと考慮しとらんよ、こんなん」

洋榎「うちのことは洋榎って呼んでな!」

いちご「……はいはい」

洋榎「ふっふー。いちごーん!」

いちご「んはつけんでええよ!」

洋榎「いちご、にご、サンゴや!」

いちご「わけわからんし……」


竜華「わけわからんのはこっちやっちゅーに」

怜「胸枕の効果は絶大やな……」


………

……



竜華「結局、手繋ながら出てってもうたな」

怜「ちゃちゃのん、まんざらでもない感じやったな」

竜華「ちょっと死にたくなるな」

怜「せやな」

竜華「なんでやねん! 怜にはうちがおるやろ」

怜「さっさと腕枕試そうや」

竜華「脱ぐんか!?」

怜「脱がんわ」

竜華「どっちやねん!」

怜「ほら、ちゃっちゃと」


竜華「はいはい。……ほらよ」

怜「なんや男らしいなあ。セーラやないんやから」

竜華「ええやろ別に」

怜「失礼するで」

竜華「ん……、どや」

怜「竜華、腕キツない?」

竜華「思ったよりは平気やな。せやけど髪がくすぐったいわ」

怜「我慢しい」

竜華「ちゅうか怜、なんで仰向けやねん」

怜「?」

竜華「こっち向いてよ」


怜「本気で言っとる?」

竜華「どしたん?」

怜「恥ずかしすぎてウサギも死ぬレベルなんやけど」

竜華「えー」

怜「やっ、ほら、胸枕と腹枕はあれやん。気持ちよさを求めとったやん」

竜華「ん? うん」

怜「ただ、肩枕とこれは……」

竜華「あー、普通にカップルみたいやもんな」

怜「これで霞とかおったら、うちほんまに……」


竜華「ふふーん?」

怜「なんやねん、その顔」

竜華「このまま左腕を曲げてやな」

怜「うん」

竜華「怜の頭を巻き込むようにして抱きしめるわ」

怜「ちょっ」

竜華「予告したで? 心の準備はええな」

怜「りゅうか、まってや」

竜華「ぶー。時間切れや」

怜「あっ……」

竜華「……」

怜「……」


竜華「ふふ、どや」

怜「……ほんま、アホやな」

竜華「まだ言うか」

怜「……心臓の音、丸聞こえやっちゅうねん」

竜華「あっ……」

怜「……アホ。ふふ」

竜華「わ、笑うなや。うちかて恥ずかしいんやもん」

怜「たまには男らしい竜華もありやなあ」

竜華「似合わんわ、やっぱり」

怜「んーん、そんなことないよ……」

竜華「……そか」


怜「はあ。竜華の胸はやわらかいな」

竜華「怜の髪はさらさらや」

怜「もっと撫でてええよ」

竜華「良い匂いがする……」

怜「あっ、心臓の音速くなった」

竜華「からかわんといてや……」

怜「んっ、……手、止まっとるよ」

竜華「撫でられるの、好きなん?」

怜「そうかも。……安心するわ、竜華に包まれとると」


竜華「うちも。……怜の温もりが、一番うちの体温と合うわ」

怜「他の人を知っとるような言い方」

竜華「茶化さんでよ。わかっとるやろ?」

怜「……当たり前や。うちが一番よく知っとる」

竜華「蛇の道は蛇?」

怜「竜の道は辰、や」

竜華「へー、辰って書いてときって読むんや」

怜「うちも竜華も、竜なんやで」

竜華「名前からおそろいやったんやなあ」


怜「竜になれるんは、滝を登った鯉のみや」

竜華「竜同士の恋は、どんなもんやろか」

怜「ゆっくり育んで行けばええよ……」

竜華「せやな……」

怜「今は、もう少しこうして」

竜華「眠くなってくるわ。夏やのに、春みたい……」

怜「……こんなにドキドキしとるのに?」

竜華「バレたか」

怜「バレバレや。隠し事は通用せえへんよ」

竜華「かなわんなあ」


怜「うちの勝ち?」

竜華「せや。うちの負け」

怜「罰ゲーム?」

竜華「……なんなりと」

怜「……そうやなあ」

竜華「……うん」

怜「……ずっと一緒やで」

竜華「……そらご褒美や」

怜「そか。なら、素直に受け取って」

竜華「いつか、うちが形にしたるわ。待っとき」

怜「……ほんま、今日の竜華は男前やわ」


竜華「怜がしおらしいからな」

怜「……うち、病弱やし」

竜華「病弱アピールやめえ、って?」

怜「そう言うやろ?」

竜華「……怜が病弱なら、うちが支えたるわ」

怜「……一生安心やん、それ」

竜華「ふふ。頼りにされるのも悪くないな」

怜「そか。……うん、そうやんな」

竜華「んー?」

怜「竜華はうちの枕やし」


竜華「怜専用やでー」

怜「抱き枕やし、ベッドやし、布団やし」

竜華「なんやねん、それ」

怜「安らぐっちゅーことや」

竜華「止まり木みたいなもんか」

怜「朱鷺には、羽根を休める場所が必要やから」

竜華「いつか飛び立つん?」

怜「竜なら追いつけるんちゃうかな」

竜華「捕まえとくこともできるかもな」

怜「ふふ、こわいわ」


竜華「こわいで。鋭い爪があるからな」

怜「あらま、悪い竜さんに捕まってしもたみたいやね」

竜華「そこばっかりは諦めてや」

怜「……なんなら、傷つけてみる? その鋭い爪とやらで」

竜華「この前爪切ったばっかりやから」

怜「……なおのこと都合ええんちゃうかな」

竜華「……せやな」

怜「……ん」


ガチャッ


玄「漏れそうな時はトイレにお任せあれ! ……ん?」

竜華「……うん」

怜「……わかっとったわ、この展開」


竜華「……トイレなら、ブラジルにあるらしいで」

怜「らしいな」

玄「おー、これはかたじけないね。行ってくる!」


ガチャッ


竜華「……とき」

怜「りゅうか……」


ガチャッ


玄「ってなんでブラジルやねーん!」

竜華「あかんわ」

怜「これはあかんわ」

玄「久しぶりだね千里山!」

竜華「ちょっとこっちきて座り」

怜「酷い目にあわせたるから」


玄「えっ? ツッコミ待ちじゃなかったの?」

竜華「うん、いろいろ突っ込んだるわ」

怜「なにがいい? リー棒? ペットボトル?」

玄「むむ、よくわからないボケだね」

竜華「ボケはお前やろー!」

怜「こいつとは一度本気で決着つけなあかんみたいやな」

玄「まあまあ、ツッコミならこの玄さんにお任せあれ!」

竜華「奈良県民が大阪人に何を言うねん!」


怜「ちょっと竜華、そいつ押さえとって」

竜華「了解や」

玄「わわっ、手荒い歓迎だね。お手洗いだけに!」

竜華「トイレちゃうっちゅーねん!」

怜「ほら見てみ、この紙縒」

玄「ティッシュをちねったやつ?」

怜「これを鼻の穴に差して……」

玄「!?」

怜「くりくりくり~!」

玄「ひゃっ、はっくしゅん! ちょま、っくしゅん! やめっくちゅん!」


竜華「おお……。これはきついわ」

玄「ひゅっ、めっ、ちょっ、はっくちゅん!」

怜「あかん、楽しくなってきた」

竜華「次うちにやらせてな」

玄「し、死んぢゃい゛ます……ふひゅん!」

怜「まあこんなもんかな」

竜華「怜ばっかりずるいで」

玄「……た、助かった」

怜「あんたトイレに行きたいんやろ?」

玄「今ので引っこんじゃったよ!」


怜「なんでどいつもこいつも、ここをトイレやと思うん……?」

玄「いやあ、漏れそうで頭の中真っ白だったから。玄なのに!」

竜華「……我慢我慢」

玄「最近トイレが近くてねえ」

怜「若い娘がそんなこと言うなや」

玄「巨乳なのに頻尿(貧乳)とは、これいかに!」

竜華「怜、そいつ押さえとって」

怜「よしきた」

玄「悪夢再来!?」


………

……



玄「なるほど、ここはトイレじゃなかったんだ」

怜「なんかい説明した?」

竜華「十はかるく越えてたな……」

玄「でもでも、ほんと久しぶりだね。元気だった?」

竜華「まず敬語使えや」

玄「倒れたときはビックリしたよー」

怜「あー、まあな。もう平気や」

玄「そっか、よかったね!」

怜「……ん、ありがとな」


竜華「なんや怜、ちょっとデレてへん?」

怜「アホ言うな」

玄「そう言えば、竜華と怜は何してたの?」

竜華「な、なにって、別に……」

玄「愛し合ってたように見えたんだけど……」

竜華「気のせいや気のせい!」

玄「バッチリ見ちゃったんだけど……」

竜華「なら聞くなや!」

怜「あかんで、竜華。こいつのペースにはまったらあかん」


玄「ふへへ、とっきー!」

竜華「!?」

怜「うわっ、ちょまち、まとわりつくなや!」

玄「連れないこと言わないでよー」

怜「酒でも入っとるんか!?」

竜華「なんで懐かれとるん……」

怜「知らんよ、助けて竜華!」

玄「よーしよしよしよし」

怜「くっ、こいつも胸でかいな!」

竜華「なんやねんその感想……」


玄「ほら、スキンシップだよー」

怜「なんでうちがあんたとスキンシップせなあかんねん」

玄「素直じゃないなあ。仲間でしょ?」

怜「なんや」

玄「一緒に怪物くんと戦った仲間じゃないか!」

怜「共闘した覚えはない!」

玄「私はあるよー」

怜「話通じひんわ……。竜華」

竜華「なんや」

怜「助けてや」

竜華「自分でなんとかしい」


怜「あかん、竜華が冷やし竜華になってしもた」

玄「頬ずりしちゃうよ!」

怜「やめえー!」

玄「照れない照れない。玄さんにお任せあれ!」

怜「なにをや! ……りゅうかあ」

竜華「つーん」

怜「ツンかわええ」

玄「むっ」

怜「きゃっ、髪がくすぐったいわ」

玄「すりすりすり~」

怜「くっ、……せや、竜華!」

竜華「なんや」


怜「か、霞のブラ持ってきて!」

竜華「はあ? ……まあええけど」

怜「よ、よし。……こらドラロー」

玄「どうしたの?」

怜「ちょっとだけ離れてや」

玄「ちょっとだけよ」

怜「むかつくわ……。これを見てみ!」

玄「ぶ、ぶらじゃー……」

怜「これをあんたの胸にあてがって……」

玄「……」

怜「……ぶっかぶかやな!」

玄「!?」


怜「あんた、実はぺったんこちゃうん?」

竜華「霞と比べちゃあかんやろ」

玄「た、たしかにお姉ちゃんよりは小さいけど……」

怜「この隙間、空気パッドやん」

玄「隙間!? で、でもとっきーよりは大きいもん!」

怜「はっ、うちと比べとる時点で高が知れとるわぐはあっ!」

玄「吐血した!?」

竜華「なんで自爆してんねん!」


怜「う、うち病弱やし……」

竜華「病弱関係ないわ」

怜「栄養不足やからな、成長せんのや!」

玄「胸張って言うこと?」

怜「やかましい。文句あるならそのブラ着けてみろや!」

玄「……」

怜「なんや」

玄「……ほい、お返し」

怜「ぐっはあ!」

竜華「あかん、致命傷や!」

玄「あわわわ、救急車!」

怜「……見えたで、十年先が」


竜華「ほんまか、どやった?」

怜「うちは、……ぺたんこやった」

竜華「ときぃー!」

玄「持たざる者の末路だね……」


ガチャッ


透華「ちょっと、騒がしいトイレですわね」

竜華「うん、もうトイレでええわ」

玄「あっ、龍門渕の……」

透華「あら、私のことをご存知でして?」

怜「な、仲間や……」

透華「……血を拭いなさい」


………

……



怜「それにしても、奇遇やな」

竜華「なんや」

怜「竜華に龍門渕にドラゴンロード……」

透華「言われてみれば、そうですわね」

玄「透華も略したら龍華だよね」

透華「略さないでくださいます?」

竜華「こう、被っとるのはええ気せんなー」

怜「キャラは全くちゃうけどな」

透華「あら、やる気でして?」


竜華「ふふん、上等や」

怜「普通にやるんは芸がないし、罰ゲームでも設けようか」

玄「楽しそう!」

透華「そうですわね……。では、最下位の方がトップの方の言うことを聞く、とか」

竜華「ベタやけど無難やな。それでええか?」

怜「異議なしや。覚悟しとき、玄」

玄「負けないよ!」

怜「今日からあんたを玄っちに改名させたる」


玄「そそ、そんなパンツみたいな名前やだなあ……」

透華「二人とも、下品ですわよ!」

竜華「早く始めるで。席につき」

怜「透華とは初めてやし、要注意やな」

透華「せいぜい楽しませてくださいまし!」

竜華「怜、あんま無茶したらあかんで」

玄「だいじょうぶ、介抱はお任せあれ!」

怜「余計なお世話や」

竜華「むー……」


………

……



透華「なんてことですの……」

竜華「うちが三位やと……?」

怜「今日はやけに弱いな、自分ら」

玄「そして私がトップやで!」
竜華「へったくそな関西弁使うなやあ!」

怜「竜華、そいつ奈良県民や」

透華「わ、私が負けるなんて……」

玄「ふふふのふ、あの準決以降調子が良くてね~」

透華「……認めませんわ!」


怜「透華、往生際が悪いで」

透華「たかが半荘一回で勝ち誇られても困りますわ!」

玄「何度やっても結果は同じだよ……」

透華「むきーっ!」

玄「なぜなら私はドラゴンロード……」

竜華「その心は?」

玄「そう、龍の主だからね!」

怜「あかんわ」

竜華「微妙にかっこいいのがむかつくな」

透華「あ、あ、主ですって!? この龍門渕透華に向かって……」


怜「なんでお前は顔赤らめんねん」

竜華「まあ言うてもドベはドベや。罰ゲームやな」

玄「ふへへ……、何でも言うこと聞くんだっけ? 言いなりになるんだっけ?」

怜「そこまで言うとったっけ?」

透華「いいい言いなり……!?」

竜華「アホ毛立っとるで。ビンビンになっとる」

玄「じゃあまず最初の命令だね……」

透華「し、仕方ないですわね。罰ゲームですから」


玄「ちょっと耳貸してくれる?」

透華「はい……」

玄「……」

透華「……!」

玄「……」

透華「……!?」

玄「……」

透華「……っ」

怜「むぇっちゃ気になるわ!」

竜華「ドラローはドsやったんやな」

怜「透華がドmやっちゅうのは知っとったけど」

竜華「ほんまに?」

怜「常識やで、竜華」


玄「……わかった?」

透華「はい。……ご主人様」


怜「あいたたた……」

竜華「態度変わりすぎやろ!」

玄「というわけで、玄さんたちはおいとまするね!」

透華「お邪魔しましたわ!」

怜「うちらには偉そうっちゅうのがマシマシむかつくわ」

竜華「ほんまやな」

玄「さあ、行くよ透華!」

透華「ああ、お待ちになって!」

竜華「まあ、……楽しそうやしええわ」

怜「そか」


竜華「しかしあれやな。こうなると次もある気がするわ」

怜「確実に誰か来るやろうね」

竜華「予知?」

怜「見るまでもなく明らかやん」

竜華「まあな……。ほな次は誰が来るか当てへん?」

怜「せやなあ。……誰が、となると難しいわ」

竜華「みんなここをトイレやと思っとったわけやろ?」

怜「うん」

竜華「せやったら、トイレが近そうなヤツ……」


怜「咲たん」

竜華「うん、うちもそう思った」

怜「けど咲たんは今ごろ淡とホテルにおるやろうしなあ……」

竜華「あいつら一年生やで? ええんかな」

怜「いやいや、宿泊先のホテルっちゅうことで」

竜華「せ、せやな」


ガチャッ


和「咲さーん、だいじょうぶですかー?」

怜「うわっ、ビックリしたあ!」

竜華「……?」


和「あれ……?」

竜華「どうかしたん?」

和「いえ、あの」

竜華「咲を探しとるの?」

和「は、はい。トイレに行ったきり帰ってこないので」

怜「何時間前の話やねん」

和「咲さんがどこにいるかご存知なんですか?」

竜華「あー、ここにはおらへんよ」

怜「どこ行ったんやっけ。竜華知っとる?」

竜華「うーん、うろ覚えやなあ……」


和「あ、よく見たらここトイレじゃないですね」

怜「今更かい」

竜華「いい加減変えようや」

和「それで、咲さんはどこに……?」

竜華「あー、たしかお姉ちゃんと遊ぶとかなんとか……」

怜「せ、せや。グラバー園見に行くとかなんとか……」

竜華「怜、長崎好きやなあ」

和「ぐ、グラバー園……、ですか。遠いですね」


怜「ささ、探さないでくださいっちゅう書き置きもあったで!」

竜華「駆け落ちやないか。どんだけウソつくの下手やねん」

和「……そう、ですか。それなら仕方ないですね」

竜華「そして騙されるんかい」

和「ふ、ふふふ。所詮お姉さんは東京人ですからね……」

怜「あかんわ」

和「いずれ帰ってくるのを待ちますよ……。ふ、ふふふ」

竜華「はあ。怜のせいやで」


怜「ま、まあ照ならなんとかするやろ」

和「……それでは、私は失礼します」

竜華「お、おう……。元気でな」

和「はい……」


ガチャッ


怜「……」

竜華「……で、今の誰やったんやろか」

怜「ええと、去年のm―1チャンプやなかったっけ」

竜華「ああ、ピンクブーブーか」

怜「せやせや」

竜華「んなわけあらへんやろ、いい加減にしろ!」

怜「どうも、ありがとうございましたー」


竜華「なんやねん今の寸劇」

怜「竜華がふってきたんやろ」

竜華「まあええわ。気を取り直して、膝枕問題解決したるで」

怜「……!」

竜華「忘れとったやろ」

怜「うん。……ああ、思いだしたら恥ずかしくなってきたわ」

竜華「腕枕は結局どないなん?」

怜「せやなあ。……まあ、一応候補っちゅうことで」

竜華「ふふん。だいぶお気に入りのようで」


怜「……うっさいわ、あほ」

竜華「なあ怜」

怜「なんや」

竜華「怜はほんまかわええなあ」

怜「まあね」

竜華「まるで荒野に咲いたエーデルワイスのようや」

怜「高野の間違いちゃう?」

竜華「そう、千里山という死の大地に咲いた、一輪の高貴な花……」

怜「母校をけなすなや」

竜華「怜、恥ずかしがらんとこっち向いて」


怜「あごくいってやるのやめえ。少女漫画の主人公か」

竜華「強がってる怜も、かわええよ……」

怜「両手首掴んで壁に押しつけんな。韓流ドラマの主人公か」

竜華「ほら、白い花弁が赤く染まるとこ、よく見せたってや……」

怜「んっ、……股に太もも押しつけんなや。昼ドラの恋敵役か」

竜華「ふふ、息がかかってくすぐったいわ」

怜「なら離れえ」


竜華「……あかんなあ、そういう態度」

怜「なんや」

竜華「そろそろ素直になっても、ええんちゃう?」

怜「本気で口説いとる?」

竜華「怜がもうちょっと前に進んだら、……キス、できるで」

怜「いや、そこは竜華がくればええやん」

竜華「いけずやなあ。この距離だけは、怜に埋めてほしいんや……」

怜「あかんあかん……落ち着け怜!」


竜華「空気の壁一枚の距離やん、簡単やろ」

怜「ああ、足動かさんでやあ」

竜華「めっちゃあったかいよ、怜のここ……」

怜「上の口か下の口か、どっちがほしいねん!」

竜華「あほう、両方に決まっとるやろ」

怜「とうとう奪われるんか……」

竜華「キスはさっきしたやん?」

怜「あんなんカウントせんわ。霞がおったし」

竜華「なら、……やり直そうや」


怜「……あー、あれやな」

竜華「んー、なんや」

怜「さっき玄っちに抱きつかれとったことで、怒っとる……、とか」

竜華「……そう思う?」

怜「竜華はなあ、うちを独り占めしたいときは、ほんま積極的になるんやもん」

竜華「ふふ、大正解や」

怜「まったく、……ほら、抱きしめたるから手首離してや」

竜華「あかんよ」

怜「な、なんでや」


竜華「こう、太ももに伝わる暖かさが予想外にええから」

怜「こんなん考慮しとらんよ、って感じ?」

竜華「ぶっ。ちゃちゃのんやめえ!」

怜「はいはい。うちの勝ちやな」

竜華「悔しい……。ちゃちゃのん許さへんで」

怜「しゃーないやつやね、竜華は」

竜華「……うっさい」

怜「ほら、枕の続きやるで」

竜華「あかんわ」

怜「なんや」

竜華「全てちゃちゃのんが悪い」


怜「さっきまで怜怜言っとったくせに、もうちゃちゃのんかい」

竜華「思い返してみれば、かわええやつやったな」

怜「……」

竜華「いじり甲斐あったし、泣き顔萌えるし、ちゃちゃのんやし」

怜「……はあ」

竜華「ぶっ、しかも一人称ちゃちゃのんて……、くく」

怜「……竜華」

竜華「なんや、……ん」

怜「……」

竜華「……」


怜「……ん」

竜華「……とき」

怜「……セカンドキスはいちご味、ってな」

竜華「……ふふ、お後が宜しいようで」

怜「リップクリーム、うちのとおんなじ?」

竜華「ちゅーか、怜の使っとる」

怜「なんでやねん!」

竜華「や、エコやん」

怜「エコやのーてエロやそれは」

竜華「うん、ならそれでええ」

怜「よくないわ……」


竜華「胸、腹、肩、腕ときたら、次はどこやろ」

怜「せやなあ。頭、お尻、股関くらいか」

竜華「頭はないわ」

怜「……股関、いく?」

竜華「……うちは、まあ、いけるで」

怜「いやいや、うちの方がいけるで? 竜華がビビっとるなら勘弁してやってもええけど」

竜華「なな、そんなわけないやん! 怜こそ、初めて触るうちの股関に心臓バクバクやろ!」


怜「さ、触る言うたって頭やで? 全く気にならんわ」

竜華「気にならんやて!? うちの股やで!」

怜「べべ別に誰の股やろうが関係あらへんわ!」

竜華「最低発言やないか!」

怜「ちゃう、今のは言葉のあやみたいなもんや!」

竜華「ただの言い訳やないかそれ!」

怜「落ち着け竜華! うちは竜華一筋18年、老舗の味や!」


竜華「その程度で老舗をかたれるわけないやろ!」

怜「どーしてほしいねん!」

竜華「うちの股を愛せやあ!」


ガチャッ


白望「えっ……」

竜華「えっ?」

怜「えっ?」

白望「……続けて」

竜華「まてまてまて」

怜「なんか勘違いしとる。うん、絶対」

白望「いや、股を愛すんでしょ……。ご自由に」

竜華「ああ、いかにもダルそうに言われた……」


………

……



竜華「……っちゅうわけや。わかった?」

白望「ん、……なんて?」

竜華「聞けや人の話を!」

白望「ダルいから怒鳴らないで……」

竜華「よっしゃ、体に聞かせたるわ」

白望「は、離して……」

怜「まあまあ落ち着け竜華。シロはこんなやつやん」

竜華「シロだか玄だか赤土だか知らんけど、こいつは一回教育すべきや」


怜「シロは何しにきたんや?」

白望「……お小水に」

怜「やろうなあ。ここトイレちゃうで」

白望「……動けない。ダルくて」

怜「よし竜華、あとは任せた」

竜華「いやや。うちの手には負えん」

怜「どないしよか……」

竜華「宮守の連中呼んでこよか?」

怜「ああ、頼むわ。あいつらなら慣れたもんやろ」

竜華「ほな行ってくるわ」

白望「……」


怜「ったく、シロもちょっとは運動せんとあかんよ」

白望「気になる言い方だなあ……」

怜「太るよ、って言いたいんや」

白望「……怜は、運動してるの?」

怜「うち? うちはまあ、病弱やし」

白望「ん、病弱アピールダルい……」

怜「初めて言われたわ。ほら、しゃきっと!」

白望「……ん」

怜「せめてソファに座り? 地べたに寝っ転がったらあかんよ」


白望「あー……、おぶって」

怜「ぶって? よし、任せてや!」

白望「ぼ、暴力はだめ……」

怜「なら自分で歩く。手ぐらいは貸したるから」

白望「……ん、ありがとう」

怜「うわ、細いなあ。ちゃんと食べとる?」

白望「どうだろう。……最近、ご飯を食べるのもダルくて」

怜「あかんわ」

白望「……怜って、意外と甲斐甲斐しいなあ」


怜「病弱や言うとるやろ。……しかし」

白望「……」

怜「細くて色白。シロの方が病人みたいやわ」

白望「……悪くない。いや、悪いかなあ」

怜「隣座るで」

白望「どうぞ」

怜「あー、……いきなり肩枕かいな」

白望「……ダメだった?」

怜「や、ええよ。竜華が来るまでは」

白望「竜華、うらやましい……」

怜「あんたには宮守の仲間がおるやん」


白望「……まあ、そうだね」

怜「友達が多いのは、素直にうらやましいわ」

白望「……怜は少ないの?」

怜「学校休みがちやったからね。変わらず付きおうてくれとるのは……」

白望「竜華……?」

怜「あと、セーラやな。ありがたいで、ほんまに」

白望「……ダルい」

怜「なんや」

白望「みんな、友達でしょ。……たぶん」

怜「……そか。そやね、うん」


白望「……」

怜「……ふふ。シロに励まされるとはなあ」

白望「……ん」

怜「まあ、なんや。シロもやで?」

白望「……」

怜「うん。シロも、うちの友達や」

白望「……」

怜「……シロ?」

白望「……」

怜「し、死んどる……」

白望「……生きてるよ」

怜「なら返事してよ。恥ずかしがりやなあ」


白望「……ダルいよ。友達とか、恋人とか」

怜「そうかもしれんなあ」

白望「そんなくくりなら、要らない。大切なものは、大切……」

怜「ふふ、うちには難しくてようわからんわ」

白望「怜は、大切?」

怜「シロのことが?」

白望「……」

怜「……そらまあ、大切、かもな」

白望「……どのくらい?」

怜「うーん……。少なくとも三時のおやつよりは」


白望「……竜華とだったら?」

怜「そういうのは、……比べるもんちゃうよ、やっぱり」

白望「……ん」

怜「変なシロ」

白望「……比べるまでもない、かあ」

怜「んー?」

白望「……ふふ、ダルいなあ」

怜「……うちも、ダルいわ。このまま二人でだらーっとしとこ」

白望「賛成」

怜「たまにはええな、こういうのも」


白望「……」

怜「夏の夕暮れ。ひぐらしの声が遠く。遠くに迫る夜、かあ」

白望「……夏が、終わって」

怜「どうせまた来る。名残惜しさは最期の時に、やな」

白望「……ん」


ガチャッ


竜華「ただいまー」

塞「失礼しまーす」

胡桃「まったく、こんなところでバテちゃうなんて」

エイスリン「シロー」


怜「……ほんま、風情っちゅうもんがないんやから」

白望「……台無しだなあ」

エイスリン「シロー!」

竜華「犬みたいやなあ、この子」

胡桃「ほらシロ、シャキッとしなさい!」

塞「暗くなる前に帰らなきゃね」

白望「……豊音は?」

塞「さあ。有名人を見つけたとかで、飛び出して行っちゃった」

竜華「相変わらずやな、あいつも」


胡桃「さっき、今から戻るって連絡きたよ」

塞「ならちょうど合流できるかもね」

エイスリン「ゴハン!」

白望「外食かあ……。いいんじゃない」

胡桃「お金あったかなあ」

塞「貸すよ、トイチで」

胡桃「よくないよそれ!」

エイスリン「トイチ?」

白望「……知らなくていいよ」


竜華「……怜?」

怜「……んー?」

竜華「どないしたん、目細めて」

怜「や、ちょっとな」



胡桃「ラーメン? うどん?」

塞「ファストフードは、……ないか」

エイスリン「オコメ?」

白望「うーん……」



怜「……まぶしいなあ、思うて」

竜華「……そうかも、な」

怜「うちらも、ああいう風に見えるんやろか」

竜華「きっとな。うん、見えるよ」


胡桃「シロの面倒見てくれてありがとね!」

塞「今度は豊音も連れてくるよ。会いたがってたしね」

エイスリン「マタネ!」

白望「……じゃあ」

竜華「うん、気いつけてな」

怜「……シロ」

白望「……?」

怜「……お大事に」

白望「……ああ、うん。そっちこそ」

怜「うん」

白望「……」

怜「ほな、またなー!」

胡桃「バイバーイ!」


竜華「台風みたいな連中やったなあ」

怜「台風、かあ。……ええな、夏にピッタリやん」

竜華「せやな。台風だらけの夏は勘弁やけど」

怜「すっかり暗くなったな」

竜華「どないしよか」

怜「とりあえず、ご飯食べいく?」

竜華「なに食べる?」

怜「うちはふつうに、ファミレスとかでええけど」

竜華「なら、うちも」

怜「あらら、腕組むん?」


竜華「離れとった分や」

怜「シロとくっついとったからやろ?」

竜華「そうかもな。とは言え、やっぱ暑いわ」

怜「もう。……ほら、手」

竜華「ん。へへっ、恋人繋ぎやで」

怜「今更やん。……竜華て、あれやな」

竜華「なんや」

怜「恋人繋ぎの時て、いつも軽めに握っとるよな」

竜華「夏はな。ぎゅっとしたら手汗かくもん」


怜「……んー、手汗が混ざる感覚も悪くないんやけどなあ」

竜華「むしろ好き?」

怜「かもね」

竜華「せやったら、ぎゅーっ、や」

怜「ん。はぐれんようにな」

竜華「祭りちゃうんやから。ちゅーか、うちが先導する!」

怜「どっちでもええやん」

竜華「並んで歩く?」

怜「それが一番やんな」

竜華「せやなー、ふふ」


―ファミレス―

怜「うーん……」

竜華「ここにもおるんかい……」

衣「おー、怜と竜華!」

純「奇遇だなあ。まあ座りなよ」

怜「まあ、座らせてもらうけど」

竜華「今年の二年生は敬語も使えへんのか?」

純「ははっ、衣にそんなの期待してもムダだよ」

竜華「お前もや!」

怜「ほら衣たん、いないいないばぁーっ!」

衣「きゃーっ!」


竜華「なにやっとんねん竜華……」

怜「や、つい幼稚園年長組の時を思い出して……」

純「それに喜ぶ衣も、まだまだ子どもだな」

衣「ぐっ、相変わらず無礼なやつめ……」

竜華「今から食うとこ?」

純「ああ、俺たちはもう注文してるよ」

怜「衣たんはなに食べるのん?」

衣「ダブルデミグラスペッパーハンバーグ和風チーズ!」

怜「はよ注文取り消しいや!」


竜華「案外いけるかもしれへんで」

怜「地雷の臭いがプンプンするんやけど」

純「いや、けっこう美味いぞ?」

怜「あるんかい……。食ったことあるんかい……」

衣「竜華! 竜華はこのお子様ランチを頼むべきだ!」

竜華「うん、なんで?」

衣「半分こしてやろう!」

竜華「自分、旗がほしいだけやろ……」

怜「うちが頼んだるよー」


純「おいおい、いいのか?」

怜「たまには悪くないわ」

純「ほら衣、ちゃんとお礼を言うんだぞ」

衣「ありがとう、怜! 怜は太っ腹だな」

怜「ちゃうで衣たん、こういうときはな……」

衣「……ふむふむ」

怜「うちが半分こしたる!」

衣「怜は太っ胸だな!」

竜華「空しくない?」

純「むしろこっちが空しくなるな……」


………

……



衣「わーっ、きたよ!」

竜華「なんやこれ……、食べ物?」

怜「ハンバーグの要素が見えへんのやけど……」

衣「ふっふっふ、刮目せよ!」

竜華「なんやソースに埋もれとっただけかい……、って、ちっさ!」

怜「ハンバーグちっさ!」

純「ば、ばか、声が大きい!」

衣「いいんだ、その分他が充実してるからな!」


竜華「おかしいやろ……。他を充実させるくらいならハンバーグでかくしたれや……」

怜「世知辛いわ……。大根おろしが山のように盛られとるで」

純「衣、我慢してないで、先に食べていいぞ」

衣「ほんとかっ! いただきまーす」

怜「なんやなごむなあ」

竜華「ええな、こういうのも」

衣「ひゃっ、あっちゅい!」

純「おいおい、ちゃんとフーフーしないからだよ」


怜「ほら、水やで衣たん」

衣「んっ!」

竜華「お子様やな、ほんまに」

衣「ろろろららいっ、ろろろら!」

純「舌冷ましてから言えよ」

怜「うーん、アリやな……」

竜華「怜、それはさすがにあかんわ」

怜「嫉妬?」

竜華「犯罪や」

衣「ジュン、怜、竜華! 一口ずつ食べていいぞ!」

怜「そうは言ってもやな……」


竜華「うちらが食べたら、無くなってまうで」

純「……お前が食えよ。気にしなくていいから」

衣「な、なぜみんな目が優しいんだ……?」

怜「ふふ、あれやな竜華」

竜華「なんや」

怜「純も、やっぱり女なんやなあ」

純「どういう意味だっつーの……」

怜「溢れてるで、母性が」

竜華「うん、ほんまやな」

純「や、やめろって」


衣「お母さんはトーカだ! ジュンはお父さんだぞ」

純「だから、俺は女だって!」

衣「きゃーっ!」

怜「……竜華」

竜華「んー?」

怜「……透華のことは、内緒にしとこうな」

竜華「……すっかり忘れとったわ」

衣「ん? トーカがどうかしたのか」

純「またなんかやったのか、あいつ」

怜「あーいやいや、ちょっとな」


竜華「今日は帰りが遅くなるかも、って言うとったで」

純「そうなのか? なにやってんだかな」

衣「デートに決まってるよ!」

純「えー……、ないわ」

衣「トーカお母さん、不倫だー」

純「人聞き悪いな、おい。外でそんなこといっちゃダメだぞ」

怜「……実際にあれ見たら腰抜かすんちゃうかな」

竜華「見事な従者っぷりやったもんな」


………

……



純「ふいーっ、食った食った」

怜「あんた、見た目通りの大食いやな」

衣「そうだぞ。ゆーきのタコスまで食べちゃうからな」

純「時効だっつーの」

竜華「ええんちゃう? その分育っとるみたいやし」

衣「竜華も大食いなのか?」

竜華「どこ見て言ってんねん」

衣「胸だ!」

竜華「言わんでええて」


純「俺たちはもう帰るけど、怜たちは?」

怜「んー、どうする?」

竜華「せやなあ……。ちょっとブラブラしてく?」

怜「ん、夜風も気持ちええしな」

純「そっか。じゃあここで」

衣「怜、竜華、また会おう!」

怜「うん、また」

竜華「暗いから気いつけて帰り」

衣「だいじょうぶ、子どもじゃないんだからな」

竜華「ふふ、せやったな。ほな」


怜「さて、行きますか」

竜華「怜、お手」

怜「わんっ。……なにさらすねん」

竜華「うっ……」

怜「竜華?」

竜華「もう一回言ってくれへん……?」

怜「……わんっ」

竜華「あふんっ」

怜「もう、はよ行こうや」

竜華「せやな。……来るときに見つけたんやけど」

怜「なんや」

竜華「銭湯。行かへん?」

怜「おお……、けどタオルとか持ってへんで」


竜華「100円くらいで買えるやろ」

怜「まあええけど、変なことせんでよ?」

竜華「さすがに人がおるとこではせんよ。……たぶん」

怜「なんやねん、たぶんて」

竜華「怜が裸になるんなら、うちは我慢できへんと思うねん」

怜「どうせえっちゅーんや!」

竜華「あれや、タオルで隠すとか」

怜「そのまま湯船につかれと?」


竜華「マナー違反やんな。どうするん?」

怜「竜華が我慢すればええだけの話や」

竜華「いっちゃん難しいわ、それ」

怜「だいたい、こんな貧相な体に欲情するとか……」

竜華「浴場だけに?」

怜「やかましい」

竜華「怜の体は最高やで」

怜「その言い方、語弊があるわ」

竜華「ほんまにそう思っとるもん。スラッとして、綺麗やし」


怜「まあな」

竜華「怜、自分ではけなすくせに、誉められたら否定せんのやな」

怜「プレゼントを無碍にするようなやつはおらんやろ」

竜華「プレゼントて思うんなら、お返ししてや」

怜「んー……」

竜華「なあなあ」

怜「……まあ、竜華のは、その、あれやんね」

竜華「なんやの?」

怜「言わんでも、……わかるやろ」


竜華「甘いで。男には気持ち、女には言葉や」

怜「……両方欲しがる竜華は、欲張りさん?」

竜華「ふふ、かもな。」

怜「その、な。……うちの枕だけあって、非の打ち所がないわ」

竜華「な、に、が?」

怜「あーもう! 竜華は胸大きいし髪はさらさらやし、くびれとるしプリンプリンで最高やっちゅーとんねん!」

竜華「……」

怜「……あれ?」


竜華「おかしいな。絶対誰か出てくると思っとったんやけど」

怜「うちも」

竜華「……まあ、空気読めへん連中ばっかやないんかな」

怜「で、うちは言ったよ?」

竜華「なに、誉め殺されたいん?」

怜「竜華にそこまでの語彙は期待してへん」

竜華「言うたなあ。今夜覚えとき」

怜「こ、今夜……?」

竜華「婚前交渉したるわ!」


怜「セーラに部屋代わってもらうわ」

竜華「あーあ、かわいそうやな」

怜「なんや」

竜華「間違えてセーラを襲ってしまうかもしれへん」

怜「……やっぱり代わらん。うちが竜華と寝る」

竜華「ふふん、楽しみやね」

怜「勘違いせんでや。セーラがかわいそうやからやな……」

竜華「わかっとるわかっとる。うちも無茶はせんから」

怜「無茶ってなんやの……」


竜華「あれや、あんまりシーツをぐちゃぐちゃにするのもあかんやろ?」

怜「どんなプレイしたらそうなるねん」

竜華「や、知らへんけど。初めてやし」

怜「あーあー! 変な前提で話が進んどるわ」

竜華「何の話しとったっけ?」

怜「セーラを簀巻きにして吊す話」

竜華「ああ、せやったな」

怜「鳥頭か! ちゃうわ」

竜華「あたふたしとる怜かわええ」


怜「ふん、覚えとき……」

竜華「おっ、銭湯ついたで」

怜「……入り口のとこに誰かおるな」

竜華「あれは……、こかじん?」

健夜「……せめて、すこやんって言って」

怜「プロ雀士がこんなとこで何を? 神田川?」

健夜「そう、赤い手ぬぐいマフラーにして……、って古いよ!?」

怜「や、すこやんの世代やん」

健夜「アラフォーじゃないもん!」


竜華「アラフォーでも古いわ……」

怜「で、ほんまは?」

健夜「それがね、こーこちゃんとご飯食べてたんだけど」

竜華「ああ、あの女子アナか」

健夜「宮守の、豊音ちゃんが来てね。サイン下さいって」

怜「あれ、すこやんのことやったんやな……」

健夜「そしたらこーこちゃん、宮守の取材に行くって……」

竜華「あらら、着いて行ったらよかったのに」


健夜「やだよ。……なんで私が女子高生に囲まれなきゃいけないの」

怜「目立つもんね」

健夜「なにが」

怜「う、うそうそ。違和感なさすぎ」

健夜「んーん、そんなことないよ……」

竜華「にやけすぎやろ!」

怜「微妙に絡みづらいな……」

竜華「しかし、夏の夜やっちゅーのになんかサブいなあ」

怜「せやな。早よお風呂入ろ」

健夜「ちょっと、……私は?」


竜華「すこやんさえ良かったら一緒に入ろうよ」

怜「せやせや」

健夜「やだよ。なんで女子高生と一緒にお風呂に入らなきゃいけないの」

竜華「どないせえっちゅーねん!」

怜「誰も体を比べたりせえへんわ!」

健夜「べ、べべ、別にそんなこと言ってないよ。ぴゅ~ぴゅ~」

竜華「あかんわ。バレバレや」

怜「口笛吹けへんのやね」


竜華「すこやんの周りだけ木枯らしが吹いとるみたいやな」

怜「どうりでサブいと思った」

健夜「だいたいあなたたち、まだ高校生でしょ?」

竜華「うん、そやで」

健夜「こんな時間に出歩いてたら危ないよ」

怜「えっ、普通に怒られた……」

竜華「なんかショックやな」

健夜「もうっ。愛宕さんに言っちゃうからね」


竜華「や、おばちゃんなら許してくれそうな気がするし」

怜「せやな」

健夜「はあっ、この子たちは……」

竜華「でもあれやんな、霞とすこやんやったら」

怜「霞の方が大人っぽいかもね」

健夜「永水の大将?」

竜華「そうそう」

健夜「私の方が、若そう?」

竜華「子どもっぽぐふっ!?」

怜「あんたなんて言ってほしいねん!」


健夜「年相応に見てくれたら……」

竜華「ぜ、善処しまふ……」

怜「りゅうかぁー!」

健夜「大げさなんだから。ちょっとつねっただけでしょ」

竜華「あれや、牌を掴みすぎて握力が異常やねん」

健夜「そんなことないからね!?」

怜「や、うちに言われても」

竜華「で、結局どうするん?」

健夜「お風呂?」

竜華「うん」


健夜「んーん、私はもう入ったし、遠慮しとく」

怜「そか」

健夜「決して、あなたたちに裸を見せるのがイヤなわけじゃないから」

怜「あら、そう」

竜華「あら、ふぉー」

健夜「ぷっつんきたよ、今」

怜「うち言ってへんで! 竜華やで!」

竜華「怜が言えってゆうたやろ!」

怜「いつ!?」

竜華「地球が三千回まわったときや!」

怜「だからそれはいつやねん!」


健夜「……仲良さそうで、うらやましいな。見せつけてる?」

竜華「そんなつもりは全くないです」

怜「せやから木枯らしはやめてください。寒いです」

健夜「ふん、いいもん。ばーか」

竜華「あかん、絡みづらいモードや」

健夜「中の二人もあんなだし、……麻雀でトラウマ植えつけてやろうかな」

怜「それだけは堪忍や。……ん?」

竜華「中の二人て?」


健夜「あなたたちも知ってる人だよ」

竜華「ふうん、誰やろか」

怜「そろそろ入ろか」

健夜「じゃあ、私行くから」

竜華「うん。また麻雀教えてな!」

怜「絶対やでー!」

健夜「はいはい」

竜華「アラフォーに幸あれ」

怜「ボソッと言うなや」

健夜「はあ。……何だかんだで楽しんでるあたり、私も私かなあ。じゃあね」


―脱衣所―

怜「……」

竜華「……」

怜「はよ脱ぎ」

竜華「怜こそ、はよ脱ぎや」

怜「竜華が脱いだらうちも脱ぐ」

竜華「あかんわ。怜が脱いだらうちも脱ぐ」

怜「あのな、あんま子どもみたいなこと言わんといて」

竜華「どっちがや!」

怜「とにかく、うちは脱がんから!」

竜華「ぐぬぬ……」

怜「ぬぬぬ……」


竜華「わかったわ。まずうちが靴下脱ぐから、怜はスカート脱ぎ」

怜「なるほど、フェアやな」

竜華「そしたらうちが靴下たたむから、怜は上脱ぎ」

怜「ふむふむ、効率的やな」

竜華「するとうちは靴下をロッカーに入れるから、怜はブラ外し」

怜「……ん?」

竜華「結果うちは靴下を脱いだから、怜はすっぽんぽんや」

怜「舐めてんのかあっ!」


竜華「ちっ」

怜「露骨に舌打ちすんな」

竜華「あーもうわかったわ! もうええわ!」

怜「なんや」

竜華「うちは見られても恥ずかしくない体やし? 皮まで脱いだるわ!」

怜「あかん、モザイクかかってまう」

竜華「ほらほらほらっ! どや?」

怜「……」

竜華「なんか言うてみ!」

怜「……かわいいお股ですね」

竜華「処理済みや」


怜「ずるいで、自分……」

竜華「あのな、夏やで? 当然やろ」

怜「うう……、余計脱ぎづらくなってもた」

竜華「手伝う!」

怜「いらん!」

竜華「むー……、ほな、先入っとるで」

怜「ん、うん……、ごめん」

竜華「ええて。その代わり、なるべく早く来てや」

怜「……ん」

竜華「……かわええなあ。もう満足かもわからへん」

怜「……はよ行け、あほ」


―浴場―

竜華「さあて、誰がおるんやろか……」

咲「あ、竜華さんだ」

竜華「おお、咲やないか」

咲「お昼ぶりですね」

竜華「せやな。ってことは、淡もここに?」

咲「はい。ほら、あそこ」

竜華「……金色のタコが浮いとる」

淡「ぶはっ! 誰がタコだ誰が」

竜華「淡水のタコとは笑えるな!」

淡「胸メタボリック女め……」


咲「淡ちゃん、お風呂に潜るのはやめようね」

竜華「せやで。久やあるまいし、マナーは守らなあかんよ」

淡「ちっちっち。甘いですねえ、竜華さん」

竜華「なんや」

淡「水中で目を開けると、あら不思議!」

竜華「あれ、あんたも変態キャラやったん?」

淡「冗談ですよ。ねえ咲ちゃん」

咲「冗談であってほしいよ……」

竜華「怜にそんなことしたら許さへんで?」


淡「あーはいはい」

竜華「めっちゃくるわあ、その言い方」

咲「ところで、その怜さんは?」

竜華「脱衣所。心の準備しとる」

淡「へー、怜さんにも羞恥心とかあるんですね」

竜華「そのイメージ今すぐ捨てろや」

淡「恥ずかしがっとる怜かわええ! とかいうノリじゃないんですか?」

竜華「からかうのも適度に、っちゅーことやな」


淡「勉強になります。ね、咲ちゃん」

咲「あう……」

竜華「一応聞くけど、あんたらどこ行っとったん?」

淡「ああ……」

咲「いろいろあったね、淡ちゃん……」

淡「今疲れを癒してるところなんですよ」

竜華「ほうほう、詳しく聞かせてや」

咲「えっと、まずお昼ご飯を食べに行って……」

淡「そこで穏乃と出会って一悶着です」


竜華「ん、仲悪かったっけ?」

咲「和ちゃんのことで、いろいろ言われて……」

淡「よくわからない話だったけどね」

竜華「あらら……、で?」

咲「その後、本屋でお姉ちゃんに出くわして……」

淡「なぜか三人で行動することになりました」

竜華「あんたら二人とも、照から愛されとるもんね」

咲「でも、振りまわされっぱなしで……」

淡「一番疲れましたね、正直」


竜華「愛とは重いもんやで。そんで?」

咲「その後、変わらず三人で行動してたら……」

淡「ピンクの悪魔が現れまして」

竜華「カービィやないんやから……」

咲「なぜか和ちゃんとお姉ちゃんが口喧嘩を始めたので」

淡「その隙に逃げてきたわけです」

竜華「あー……、なんやろか。咲」

咲「はい」

竜華「あんた刺されるで。いつか必ず」

咲「ええっ!?」


竜華「冗談や」

咲「び、びっくりするじゃないですか……」

竜華「でもな? はっきりした方がええんちゃうかな、とは思うねん」

咲「あう……」

竜華「面と向かって言うのは、そらあんたも辛いやろうけど」

咲「はい……」

竜華「けど、失礼になってまうで。気づかんうちにな」

咲「……」

淡「咲ちゃん……」

怜「こらっ、竜華」

咲「怜さん?」


怜「咲たんかて言われんでもわかっとるよ」

咲「……」

怜「どうするか、やなくて、どうしたいか、やんな」

咲「はい」

怜「まあいつでもフォローしたるで。うちも竜華も」

竜華「せやな。咲みたいな常識人は大歓迎や」

淡「さ、咲ちゃん……。あの、私」

咲「……私、は」

怜「うん」

咲「あ……、淡ちゃんと、いたい、かな」


淡「さっ、……ぐす、さきちゃあん!」

咲「わぷっ! ……淡ちゃん」

竜華「世話の焼ける後輩や」

怜「まったくや」

竜華「で、怜はもうええん?」

怜「なにが?」

竜華「お股は」

怜「……言うな、あほ」

竜華「ま、夜にじっくり見せてもらうしええけどな」

怜「……うちも」

竜華「んー?」

怜「……竜華の、見ていいんよね?」


竜華「……ぶっ」

咲「はなぢ!?」

淡「のっ、のぼせてる!」

怜「ほんま、あほなんやから」

竜華「は、鼻血ちゃう……。これは汗や」

淡「いや、そんな真っ赤な汗やばいですよ」

咲「あはは、かっこいいのか悪いのか、わかんないね」

淡「ちょっ、お湯につきますって鼻血!」

竜華「か、体洗ってくるわ……」

怜「うちもー」


竜華「うーむ、あかんな」

怜「なんや」

竜華「最近、ことごとく怜にやられとる気がする」

怜「むしろ竜華の自爆ちゃう?」

竜華「むう、特攻は控えたほうがええやろか……」

怜「そんなん、うちがつまらんやん」

竜華「そか。ま、怜が楽しいならええかな」

怜「竜華も楽しくないといややで」

竜華「なら怜、流しっこしようや」


怜「変なことせん?」

竜華「したい。けどせえへん」

怜「なら、背中頼むわ」

竜華「髪は?」

怜「あー、……せやな。髪もお願い」

竜華「ふふ、怜は頭撫でられんの好きやもんな」

怜「んー、頭っちゅーか髪やな。手櫛で梳かれたり」

竜華「たまらん?」

怜「うん。ポーっとする」

竜華「せやったら、優しくやったるわ」

怜「終わったら、うちが竜華のしてあげるわ」


………

……



竜華「かゆいところはありませんかー?」

怜「胸の谷間がかゆい」

竜華「どこにあんねん、その谷間は」

怜「寄せて上げて、出来上がりや!」

竜華「……」

怜「あ、あれ? この前はできたのに……」

竜華「……」

怜「やっ、ほんまやで? 今日はちょっと恥ずかしがっとるんや」

竜華「胸が?」


怜「うん」

竜華「……頭、流すでー」

怜「ちょっ、話ごと流さんでや……」

竜華「怜、あんた谷間つくる練習しとったりする?」

怜「この前はな、すごかったで!」

竜華「……なんや」

怜「泡がたまったねん! 感動して泣くかと思ったわ」

竜華「……」

怜「な、泣くかと思ったわ……」

竜華「……空しくて?」

怜「……うん」


竜華「ほら、こっち向いてみ」

怜「なんや……、なな、なんやねんこれ」

竜華「谷間の泡風呂や」

怜「ダイブしてええ?」

竜華「風呂場で暴れるんはダメやで」

怜「……つんつんしてええ?」

竜華「ん、それくらいやったら」

怜「……」

竜華「……」

怜「なにしとるんやろ、うち。あーあアホらし」

竜華「萎えんなや……」


………

……



竜華「こう見ると、背中ちっこいなあ」

怜「華奢やろ? 病弱やろ?」

竜華「撫で肩やったんや……」

怜「せやで。和服が似合うで」

竜華「うちは怒り肩やからなー」

怜「ええやん、かっこよくて」

竜華「そかな。撫で肩のが女子っぽくない?」

怜「せやったらうち、女子っぽいってこと?」

竜華「なんかこう、儚いわ」


怜「和の美しさかな。儚いっちゅーのは」

竜華「あかん、ぎゅってしたくなってきた」

怜「大声出すで」

竜華「……うう、そこをなんとか」

怜「……周り、人は?」

竜華「おらんよ。誰もこっち見てないし」

怜「はあ。……少しやで」

竜華「ん。……ん、はあ」

怜「幸せそうなため息やな」

竜華「怜、マイナスイオン出とるんちゃう?」


怜「うち、癒し系?」

竜華「一家に三台はほしいところ……」

怜「高いで。某社長もびっくりするお値段や」

竜華「あの人がびっくりて、そら激安やろ」

怜「お金の代わりに、あなたの人生を頂きます」

竜華「ほら、安いもんや……」

怜「一生分割払い、返品は……可、やけど」

竜華「ふふ、余計なオプションやね」

怜「……サインは、こちらに」

竜華「ん……」

怜「……ん」


淡「見て咲ちゃん、あれが春だよ」

咲「う、うん」

淡「春って言っても、黒糖じゃないよ」

咲「黒糖なんかよりはるかに甘いよ」

淡「確かにね。でも、お風呂場でキスってどうなの?」

咲「あはは……、誰も見てないし、いいんじゃないかな」

淡「私たちは、あてられちゃったね」

咲「じゃあ、私たちもあてちゃおっか」


淡「……湯船で寄り添って手をつなぐ、ね」

咲「……こ、これでも精一杯だもん」

淡「ううん、嬉しいよ」

咲「私も、嬉しいよ」

淡「左の、側面だけのぬくもりだけど」

咲「うん」

淡「今はこれくらいが、一番気持ちいいや」

咲「そうだね。今は……」

淡「私の淡い思いは、あわあわしてる間に泡と消えちゃいそうだったのになあ」


咲「……笑うところ?」

淡「うん、今となっては笑い話だよ」

咲「そっか……」

淡「私、麻雀やっててよかったな」

咲「色んな人と出会えたよね。麻雀のおかげで」

淡「八割は変人だけどねー」

咲「……ぷっ、あはは」

淡「咲ちゃん、なんで笑うのさ」

咲「だって、おかしくて」

淡「うー、咲ちゃんが常識人過ぎるんだよ」

咲「ううん。……変人だよ、私も」

チラ裏

>>1が見てるかわからんけど、お詫び
今気づいたんだが、スレタイ読み間違えてた。
全然違う話になってるな。ほんとすまん。


―脱衣所―

淡「じゃ、じゃあいきますよ……」

竜華「慎重にな……」

怜「焦ったらあかんで!」

咲「がんばって、淡ちゃん」

淡「よ、よし。……とうっ」

竜華「いったーっ」

怜「どやった、無事か?」

咲「どきどき……」

淡「……ぐふっ」

竜華「あわいぃー!」

怜「無茶しやがって……。咲たん、励ましたり」

咲「私がですか!?」


竜華「言葉選ばんと、淡死んでしまうで」

咲「あう……。あ、淡ちゃん」

淡「ひゃい……」

咲「きき、きっと胸が太ったんだよ!」

淡「……がはっ、うっ」

竜華「あかんわ」

怜「見事に止めさしよった」

咲「淡ちゃん、しっかり!」

怜「さあ竜華、次はあんたの番やで」

竜華「……思ったより緊張するな、体重計に乗るの」


怜「骨は拾ったるからな……」

竜華「くっ、きっと大丈夫や」

怜「今だけ、万有引力定数増さんかな……」

竜華「アホなこと言うな!」

怜「ほら、早く死刑台に立つんや!」

竜華「むむ、……ええい、ままよ!」

怜「……」

竜華「……」

怜「……どやった?」

竜華「……マイナス300、やな!」

怜「あーはいはい鯖読み鯖読み」


竜華「事実やもん!」

怜「めっちゃ萎えたわ……」

竜華「また勝手やなこいつ……!」

淡「お気づきでしょうか」

竜華「生きとったんかい。なんや」

淡「胸、小さくなってますよ」

竜華「なんでそうなんねん」

怜「ほんまか!?」

竜華「そんなわけあるか!」

怜「白々しいわ……。実はさっき1ミリほど浮いとったやろ」


竜華「エスパーか。とうとうエスパーか、うちは」

怜「こう、細い棒を差し込みたくなったもん。隙間に」

竜華「隙間とかないわ。ピッタリやったわ」

怜「怪しいなあ、咲たん」

咲「そこで私に振りますか……」

竜華「そないなこと言うたら、怜も鯖読みやろ!」

怜「なんでバレた!? あ、ちゃうちゃう、今のなし。ぴゅ~ぴゅ~」

竜華「むえぇっちゃむかつくわあ……」


………

……



淡「あー、そういえば」

竜華「なんや」

淡「私のブラ、今どうしてます?」

怜「うちが着けとるよ?」

淡「いやいやいや、返してくださいよ!」

怜「無くても平気やったやろ?」

淡「認めたくない……」

咲「あれ、じゃあ怜さんのは?」

怜「うちが着けとるよ?」

淡「重ね着!?」

竜華「どうりで普段より膨らみがあるわけや……」


淡「なんか落ち着かないので、返してください」

怜「ここで脱げって言いたいん?」

淡「ちなみに内側と外側、どっちが私のブラですか?」

怜「外側や。内側やったら竜華が嫉妬するからね」

竜華「べべべ別にそんくらい!」

淡「じゃあ竜華さん、あっちで怜さんのブラを外してあげてください」

咲「私たち、周り見張ってますね」

怜「しゃーないなあ。頼むわ、竜華」


竜華「はいはい、わかったわ」

怜「なるべく服がめくれんようにね」

竜華「しかしこれ、蒸れたやろ?」

怜「ほんまよ……。汗疹できたらどないしよ」

竜華「なんで二つもつけんねん」

怜「や、パッドみたいな感じになるかなって」

竜華「誰も気づかへんくらいの違いしかなかったで」

怜「竜華は気づいたやん」

竜華「うん、普段から見とったもん」

怜「どこ見とるん、エッチ」


竜華「……ん、取れたで」

怜「淡、咲たん、もうええよー」

淡「はい、じゃあ返してください」

竜華「ここで着けるん?」

淡「いえ、とりあえずバッグの中に入れておきます」

竜華「ふうん、そか」

淡「あっ、ちゃんと洗濯してから使うのでご心配なく」

竜華「なら安心や」

怜「うちに失礼や」

咲「淡ちゃん、もう帰る?」


淡「うん、そうだね。ぐっすり眠れそう」

竜華「あんたら、結局ホテルには行かへんかったん?」

淡「わーわー!」

怜「な、なんやいきなり」

淡「その話咲ちゃんにはしてないんですよ!」

竜華「近い近い!」

淡「流れで連れ込もうかと思ったんですよ!」

竜華「わかった、うちが悪かった!」

怜「なるほど、既成事実狙いやったわけか……」


咲「ホテル? きせいじじつ?」

怜「咲たんは清澄のオアシスやっちゅーことや」

竜華「ほんで、邪魔が入ったから諦めたと」

淡「はい……」

竜華「せやけど、結果オーライやったな」

怜「そうやね」

淡「あっ、……ふ、二人のおかげです」

竜華「ええよ。なっ、怜」

怜「先輩として当然のことやし」

淡「ああ、お二人がまともに見えます……」


竜華「淡て、ちょいちょい失礼やな」

怜「咲たん、悪い淡水ダコに捕らわれた時はいつでも呼んでな」

淡「その呼び方定着する感じですか……」

咲「淡ちゃん、私を捕らえるの?」

淡「うん、もう離さないよ」

咲「……絶対?」

淡「もちろん」

咲「じゃあ、約束だね」

淡「ほら、繋いだ手も離れないでしょ?」

咲「あっ、……ほんとだ」


竜華「あっま! でれでれやん、咲」

怜「まあまあ、今は二人きりにしといてやろうや」

竜華「いじりたいわ……」

怜「あかんで、竜華」

竜華「わかっとるって。空気の読める女やからね」

怜「ならええけど。……ほら、見てみ?」

竜華「……満開の、素敵な笑顔や」

怜「ふふ、淡水で咲いた花も、綺麗やん?」

竜華「うん。枯れる心配は、……せんでええみたいやな」


………

……



竜華「やっと部屋まで帰ってきたな」

怜「わっ、もうこんな時間やで」

竜華「せやな。すぐ寝てまう?」

怜「ん、なんや疲れたしなあ」

竜華「うちら、今日一日で何回つっこんだやろか」

怜「もう覚えてへんわ……。心なしか、声嗄れとる気がする」

竜華「明日はもうちょい穏やかに過ごしたいもんやで」


怜「ほんまやね。……っと、鍵開けるで」

竜華「ほいほい」

怜「よしっ、と」


ガチャッ


竜華「誰もおらへんけどただいまー」

怜「ただいまー」

照「……おかえり」

宥「……おかえりなさい」

竜華「……あっ、部屋間違えましたー」

怜「間違えてへん! 鍵使ったんやから」

竜華「な、な、なんでおんねん!」

照「……うるさい」


宥「……うう、寒いよお」

竜華「暗い。暗すぎんであんたら」

宥「この寒さをお裾分け……」

竜華「さっぶ! どんな能力やねん!」

怜「まてまて、一旦落ち着こうや」

竜華「せ、せやな」

怜「まず照、あんたなんでここにおるん?」

照「……そうか。お前たちも私を邪魔者扱い、か」

竜華「あかんわ。これ扱い方間違えたら消えて無くなりそうや」


照「ふふふ、……笑えるだろ?」

怜「なんや」

照「なにも照らせない私が、照を名乗っているなんて……」

怜「わ、わー、眩しいで照りん!」

竜華「せや、えーと、目が眩んでしまいそうや!」

照「え、そ、そうかな?」

怜「うん、さすが咲たんの姉や!」

照「……どよーん」

怜「……なるほど、咲たんは禁句、と」

竜華「分かっとって言ったやろ」


怜「ちょっと、竜華」

竜華「なんや」

怜「照りんの鼻の穴に指突っ込んでみ」

竜華「……こう?」

照「ふがっ。……竜華、お前この私になにを」

怜「咲たん」

照「どよーん」

竜華「ぶっ!」

怜「ほんま面白いな、あんた」

照「……うう。もう放っておいてくれ」

怜「そういうわけにもいかへん」

竜華「ここ、うちらの部屋やし」


怜「まあ、照りんはいったん横に置いとこ」

竜華「せやな。で、……宥」

宥「なあに?」

竜華「……太った?」

宥「……重ね着してるだけだよ。ああ寒い。ぶるぶる」

怜「なぜゆっちゃんまでここにおんねん」

宥「よく聞いてくれました……」

怜「トイレと間違えた、とか言ったら裸にして放り出すからな」

宥「実はね、玄ちゃんが姉離れしちゃったの……」


竜華「姉離れ?」

宥「うん。今夜もね、私はいつも通り玄ちゃんと抱き合って寝るつもりだったんだけど」

竜華「いや、いつも通りて」

宥「さっきメールが来て、今日は帰れないんだって」

怜「ああ、そう言えば透華と……」

竜華「朝帰りコースかい、早速」

宥「私は誰にあたためてもらえばいいの……?」

怜「ちらっちらこっち見んな」


竜華「それで、なんでこの部屋やねん」

宥「怜ちゃんと竜華なら、今頃あたためあってるかなあ、って。えへへ……」

竜華「あんた、混ぜてもらうつもりやったん?」

怜「誰でもええんやな、あったかかったら」

宥「うん、そうとも言うね……」

竜華「不純やなあ」

怜「ほら、ちょうどええ抱き枕があるで」

照「……」

宥「……照ちゃん、いたの?」


照「……うん、ずっといたよ」

宥「そうなんだ、全然気づかなかったよお」

照「……声も、かけたんだけどな。ははっ」

宥「えっ、いやあ、そうだったっけ?」

照「ふっ、ふふふ……。正にス照スか」

宥「え、えへへ……」

照「笑うな」

宥「へ、へ……」

竜華「怜、誰かに部屋変わってもらわん?」

怜「照のプレッシャーがヤバいな……」


竜華「要するにあれやろ? あんたら二人とも妹に冷たくされた、と」

宥「照ちゃんも?」

照「……うん」

宥「そうなんだ~。いくらなんでも、姉離れ、早いよねえ」

照「全くだ。反抗期、というやつかな」

宥「姉なんて悲しいポジションだよねえ」

照「うん。こっちが全力で愛しても、ふといなくなるんだから」

宥「わかってはいるけど、やっぱり寂しい……」


怜「むしろあんたらが妹離れするべきちゃうかな」

竜華「せやで。咲たんなんか、もう十分大人やし」

照「いや、咲が大人だなんて知ってるよ。でも……」

宥「照ちゃんと咲ちゃんは、離れて長いんだっけ?」

照「うん。もう何年も」

宥「そっかあ。……家族の縁って不思議だよね」

照「……ん?」

宥「離れちゃっても、絶対消えないんだもん」

照「ああ、そうだね」


怜「せやったら、もうそれでええやん」

竜華「離れとっても、きっと誰よりも繋がっとるんやで」

照「……うん」

宥「寂しいけど、仕方ないんだよね……」

照「……私にとっての咲は、一輪の花だったんだ」

宥「うん……」

照「私が照らしてあげなきゃいけないと、思ってたんだ」

宥「照ちゃん……」

照「……うう、ぐす」

宥「泣かないで、照ちゃん」


竜華「……うん、なんかめっちゃいい画なんやけど」

怜「妹を思って泣く姉。要はただのシスコンやな」

竜華「照の場合は別居やからなあ。いろいろ思うところがあるんやろか」

怜「せやね。まあ、照りん」

照「……」

怜「咲たんもあんたのこと好いとるよ」

照「うるさい。……知ってるよ、そんなことは」

宥「玄ちゃんも、私のこと好きなのかなあ」


竜華「あ、ああ、玄は今大人の階段登っとるとこやからな」

怜「決してゆっちゃんのこと嫌いになったわけやないで」

宥「そっかあ……」

照「……ところで、宥」

宥「ん、なあに?」

照「いつまで抱きしめてるんだ」

宥「だって照ちゃんが泣くから」

照「な、泣いてない。目汗だ」

竜華「うん、それ涙や」

宥「それにあったかいし~。今夜の抱き枕にけってい!」


照「抱き枕? このまま寝るの?」

宥「うん!」

照「む、ムリだそんなの! 離せーっ」

竜華「抱き枕がイヤなら、ええ方法があるで」

照「……なに?」

竜華「胸枕っちゅーてな、めっちゃ画期的な発明や」

怜「や、胸枕やったらゆっちゃんが寝苦しいやろ」

竜華「まあまあ、やり方だけ教えたるから」

宥「あったかいの~?」

怜「火照るで、体が」


照「それ、絶対私は得しないだろ」

竜華「なに言うてんねん。宥の胸見てみ」

照「いや、大きいけど……」

怜「しかも肉まんみたいに柔らかいらしいで」

照「なぜ肉まん……」

竜華「あんたも、一人で寝るのは寂しいやろ?」

怜「今日くらいは、ゆっちゃんに甘えとき」

照「うう……」

宥「おいで、照ちゃん」

照「……わ、わかった」


竜華「うんうん。照と宥はお姉ちゃん同士やし、きっと仲良くなれるで」

照「ただ、その、胸枕だっけ? ここではしないからね」

怜「当たり前や。うちらの部屋やで」

宥「えへへ、私と二人っきりになりたいんだね」

照「怜たちがいると恥ずかしいだけだよ……」

竜華「そもそも、照はどうやってこの部屋に入ったん?」

照「ああ、龍門渕のメイドに頼んでね」


怜「そういやこのホテル、龍門渕のやったね」

照「怜も竜華も関西人だから」

竜華「なんや」

照「落ち込んでたから、笑わせてもらおうかと思って」

怜「また、しょーもない」

竜華「夫婦漫才しかできんで?」

宥「わ~、見せて見せて」

竜華「……冗談や、冗談」

怜「まああれや、うちらも眠たいし」

竜華「そろそろお休みの時間やで」


照「もうこんな時間か」

宥「じゃあ照ちゃん、私の部屋に行こっか」

照「……はいはい」

竜華「おー熱い熱い。今晩は熱帯夜やな」

怜「ほどほどにな」

照「……そっくりそのまま返すよ」

竜華「なっ、なんや」

宥「今晩はお楽しみなんでしょ? 邪魔してごめんね~」

怜「なな、なんのことやら」

照「別に茶化すつもりはないよ。幸せにな」

竜華「余計なお世話や、はよ帰れー!」


………

……



竜華「……怜、どっちのベッド使う?」

怜「ん? どっちも変わらんやん」

竜華「い、いや、テレビに近い方がええとか」

怜「うちはどっちでもええけど」

竜華「そか。……じゃあ、うちは、こっち使うわ」

怜「なんでやねん」

竜華「えっ?」

怜「一緒に寝たらええやん」

竜華「……ええのん?」

怜「なんでここまできて遠慮すんねん……」


竜華「もしかしたら、うちの中の乙女が目覚めたんかもしれん」

怜「乙女やったら遠慮するもんなん?」

竜華「遠慮がちな方がいじらしいやん」

怜「いじらしい方が可愛いとは限らんで」

竜華「む、せやな。失念しとったわ」

怜「……そ、それにやな」

竜華「んー?」

怜「う、う、うちの分まで、積極的になってもらわな、……困るねん」


竜華「怜……」

怜「せやから、……たのむで」

竜華「うん、頼まれた」

怜「……ん。明かり、どないする?」

竜華「怜は、明るくても眠れる?」

怜「まあ、平気やね」

竜華「せやったら、スタンドライトの豆だけつけとこか」

怜「竜華、暗いのダメなん?」

竜華「やー、怜の顔を見てたいもん」

怜「……そか。なら間近で存分に見ると、ええよ」


竜華「ふふ、眠れんかもわからんわ」

怜「それは、……ダメや。ちゃんと眠り」

竜華「なんで?」

怜「うちかて、竜華の寝顔見たいもん」

竜華「なら、怜より早く眠らんとあかんなあ」

怜「……ずっとおしゃべりでも、ええけど」

竜華「怜も欲張りさんやね」

怜「なんでやろ。……いつもよりな、ドキドキすんねん」

竜華「とき……?」


怜「竜華見てるとな、胸のあたりが、変になるねん……」

竜華「うん……」

怜「いつもは、いつもはここまでやないのに……」

竜華「今日はいろんなやつのイチャイチャ見たからなあ……」

怜「……りゅうか、ベッドはいろ」

竜華「うん、……行こか」

怜「手、手つなご」

竜華「うん。ふふ、十分積極的やんか」

怜「竜華からも、その、……触ってや」


竜華「……せやな。うちが、リードしたる」

怜「んっ……」

竜華「……」

怜「押し倒して、それで……?」

竜華「……あかんわ」

怜「竜華?」

竜華「この眺め、あかんわ」

怜「うちも、押さえつけられるの、ええかもしれん……」

竜華「怜、目そらさんで……」

怜「む、ムリや、やっぱ恥ずかしいわ」

竜華「ダーメ。ちゃんとこっち向いてや」


怜「いけず……」

竜華「ふふ、……なあ怜、このままうちが顔を下ろしたら、どうなると思う?」

怜「あたるんちゃう?」

竜華「なにがあたるんやろか」

怜「……おでこ」

竜華「おでこを、あててほしいん?」

怜「うっ……、言わせる気? なんか無性に恥ずかしいわ」

竜華「言うたろ、女には言葉やって」

怜「うちも、女やし……」


竜華「ほしいんならいくらでも言葉にしたるよ」

怜「じゃあ、言うてよ」

竜華「……怜が先や」

怜「あ、なんやかんやで竜華も恥ずかしいんやな」

竜華「……」

怜「……」

竜華「……もーっ、恥ずかしいに決まっとるやん!」

怜「わっ」

竜華「いちいち茶化さんでや、もーっ!」

怜「りゅ、りゅうか、きつい……」

竜華「涙出てきたわーっ!」


怜「あっ、あー、ごめんな竜華」

竜華「……許さへんっ」

怜「んっ、涙、きれいやで」

竜華「舐めんな……」

怜「いやなん?」

竜華「いややない……、けどなんかちゃう」

怜「ああ、……そやったね」

竜華「よいしょっ、と。……質問に答えてや、とき」

怜「……うん」

竜華「どこが、あたるん」

怜「……くちびるや」

竜華「……」

怜「……ん」


竜華「……いかが?」

怜「あー、……うち、もしかしたらmかもわからん」

竜華「またえらいカミングアウトやな」

怜「なんちゅーか、こう……、されるがまま、みたいな?」

竜華「うん」

怜「そういうの、めっちゃええ。……かもしれん」

竜華「うちは、ちょっとやばい」

怜「なにが?」

竜華「言っても引かん?」

怜「もちろんや」


竜華「あー、絶対?」

怜「約束するで」

竜華「……怜の、ことをやな」

怜「う、うん」

竜華「め、……めちゃくちゃにしたいねん」

怜「なっ、なん、どういうこと……?」

竜華「わからん。わからんねんけど、……めちゃくちゃにしたい、感じ」

怜「暴力は、反対やで」

竜華「ちゃうねん。そういうのやなくて、うーん……」

怜「……」


竜華「なんかな、怜が変になっとるところ、見たい、みたいな」

怜「変て……」

竜華「恥ずかしいところも、綺麗なところも、怜の全てが見たい」

怜「なんやこわいわ……」

竜華「こう、少女漫画とかな? そういうシーンあるやん」

怜「ああ、うん」

竜華「怜も、ああいう風になるん……?」

怜「さささ、さあ。したことないし……」


竜華「自分でしたりせえへんの?」

怜「そっ、そんなこと聞かんでよう……」

竜華「教えて。知りたいねん」

怜「あっ、うう」

竜華「おねがい」

怜「……そら、何回かはあるよ」

竜華「どういう風にするのん?」

怜「竜華かてしたことあるやろ!」

竜華「怜のことを聞いとるねん」

怜「堪忍して……」

竜華「かわええなあ。顔真っ赤にして、涙目で」


怜「おだてても無駄やで」

竜華「……例えばな、ここを」

怜「ひゃっ! 竜華、あたっとる……」

竜華「ここを、自分で」

怜「膝、んっ、……あたっとるて!」

竜華「……いじったり、するんやろ?」

怜「する、よっ! せやから、膝、こすらんでえ……」

竜華「あかん。どんな風にいじって、どんな気持ちになるん? 誰を思い浮かべながら? 当然うちやんね?」


怜「いっ、いい加減に……」

竜華「とき、はよ答えて」

怜「しろやあーっ!」

竜華「ぶべっ!?」

怜「……」

竜華「舌、舌かんだ! 痛いやないか!」

怜「やかましい!」

竜華「えーっ!?」

怜「いきなりなに始めんねん、あんたはっ」

竜華「こっちのセリフやで……」

怜「アホ、なんでドsモードになるん!」


竜華「怜かてドm宣言したやんっ」

怜「ドちゃうわ! かもしれん言うたやろ」

竜華「なにが不満やったん? 怒らんから言うてみ」

怜「なんで自分悪くないみたいな笑顔!?」

竜華「もう、せっかくのってきとったのに……」

怜「あのなあ……、はあ」

竜華「ため息つかんでや」

怜「……は、初めてやで?」

竜華「うん、うちも」


怜「なんで初体験で、言葉責めやねん……」

竜華「あっ、え、言葉責め?」

怜「言葉責めやん、あんなん」

竜華「やっ、だって言葉がほしいて」

怜「誰も下の話せえとは言うてへんわ」

竜華「あれ、あれれ?」

怜「おまけにちょっとマニアックやし……」

竜華「マニアック?」

怜「なんで、一人でしてること話さなあかんねん……」


竜華「ん? うちスベった感じ?」

怜「だだスベりや。やっ、ちょっと良かったけどやな……」

竜華「なら、続きする?」

怜「……あかんわ。さっきも言ったけど、初めてなんやから」

竜華「うん」

怜「こう、思い出に残るような、ほら、あれよ」

竜華「うん、わかるよ」

怜「せやから、さっきみたいのはあれやし……」


竜華「……あー、あかんかったな。たしかに」

怜「竜華が、どうしても言うなら、あれやけど」

竜華「あれあれて……」

怜「どうなん?」

竜華「ん、うちも、悪かったわ」

怜「……」

竜華「慣れてく。かわええ怜見ても暴走せんように」

怜「ん、……なんか、ごめん」

竜華「なんで謝るん?」

怜「うち、わがままやんな」


竜華「何言っとるん。そんなん全然わがままやないし、わがまま言うても構わんし」

怜「ん……」

竜華「まあでも」

怜「……」

竜華「怜の、未処理のお股も見てみたかったけどな!」

怜「……見る?」

竜華「また爆発してまうで」

怜「抑えてや……」

竜華「怜が可愛すぎるのが悪い」

怜「未処理のまま、残しとくわ」

竜華「あかんやろ!」


怜「……あっ」

竜華「ん?」

怜「下着、濡れとるわ……」

竜華「わ、……言わんでええて、そういうこと」

怜「ご、ごめん」

竜華「……あっ」

怜「……?」

竜華「うちも、ちょっと濡れとるみたいや」

怜「ふふっ。……着替えよか」

竜華「せやなー。着替えたら、もう寝てしまお」

怜「おしゃべりしようや」


竜華「腕枕したろか?」

怜「しんどいやろ、ええよ別に」

竜華「なんやな、幸せやん、うちら」

怜「幸せやんな、うちら」

竜華「怜のおかげや」

怜「竜華のおかげや」

竜華「じゃあ、愛の力や」

怜「悪くない」

竜華「よっしゃ、明日は股枕と尻枕を試すでー!」

怜「忘れとったわ……」

竜華「ほんで怜の可愛さに慣れる、うちがんばれ!」

怜「うちも、がんばる」


………

咲「あ、淡ちゃん。暑いんだけど……」

淡「じゃあ離れて寝る?」

咲「……このままがいい」

………

霞「ねんねん~♪ ……あら」

小蒔「……」

霞「……寝ちゃったみたいね。ふふ、おやすみなさい。小蒔ちゃん」

………

照「あの、暑いんだけど……」

宥「うん、あったかいねえ」

照「……眠れるかな」


………

久「あの、暑いんだけど……」

美穂子「どこがですか? お股?」

久「……」

………

衣「うう、暑い。寝苦しいぞ……」

純「はいはい、寝付くまで扇いでやるよ」

衣「うん!」

………

透華「ああ、熱いですわご主人様!」

玄「ふふふ、じゃあもっと熱くしてあげるね……」

透華「ああん!」

………

健夜「……さむい」


………

洋榎「せやから今年は阪神がくるんやて!」

いちご「絶対カープの優勝じゃもん!」

洋榎「いちごのわからずや!」

いちご「洋榎の方がわからずやじゃ!」

………

塞「雑魚寝はいいね。なんか修学旅行みたい」

胡桃「わくわくするね。ガールズトークでもしようか」

豊音「ガールズトーク! いいねー」

エイスリン「シロ、ネムイ?」

白望「……たまには、付き合うよ」


………

竜華「……でな、そんときセーラが」

怜「……ん」

竜華「怜?」

怜「あっこの、カーペット」

竜華「あれ、血がついとるなあ」

怜「なんや気味悪いわ」

竜華「だいじょうぶや、うちがついとるからね」

怜「……腕枕して」

竜華「はいはい」

怜「ん。……ふふ」

竜華「どしたん?」

怜「……やっぱり、竜華の枕が一番やで」

竜華「……怜専用やもん。大事にしたってや」


………

……

……

桃子「たっ、ただいまっす」

ゆみ「おかえり。……って、鼻血でてるぞ?」

桃子「あ、あわわ、鼻が……」

ゆみ「トイレに行く途中でぶつけたのか?」

桃子「やっ、なんでもないっす……」

ゆみ「それならいいが。ほら、ティッシュ」

桃子(……なんであの二人は、トイレであんなことをしてたっすかー!?)



おわり

キリがいいので終わり
読んでくれた人と>>1、ありがとう
咲ssもっと増えろー

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