幼馴染「――教えて。好きになるのに、理由は……」(9)

Space is sweet.

男「......」

妹「お兄ちゃん。そこにいるの?」

男「いるよ」

妹「そっか。なら遊ぼ」

男「ダメだ」

妹「ええっ、ひどい」

男「出歩ける体じゃないだろ」

妹「平気だって──わ!」

男「ほら、危ないって」ガシッ

妹「うう。彼処に行きたい」ウルウル

男「どこ?」

妹「池のほとり」

男「ダメだ」

妹「ええっ、ひどい」

男「外は野性動物がいて危ないんだ。妹を連れだって行くのは無理」

妹「いーきーたーいー」

男「ダメだ」

妹「ふええ」

男「ダメ」

妹「......」

男「ダメ」

妹「......けち」

男「はいはい」

妹「ぶー」

男「......」プイッ

妹「......」

男「......」

妹「......ごめんなさい」シュン

男「......」

妹「でも、ね。本当に行ってみたいな」

男「そうか」

妹「うん」

────二週間後

妹「ひっ......ひっ......!」

妹「......」スゥゥゥ

妹「......」ハァ


あれから息が荒くなった
麻薬を打つことにより痛みを軽減させようとするが、妹の目からは涙が出ている
とても痛そうだ
白かった肌は黄色くなり、痩せていた身体は二の腕にしか肉がないほど細くなった

こうして観察すると昨日よりも息が絶え絶えになってきた
断続的なそれの間隔が広がると、僕を幾度となく煽り不安にさせる
もはや三十秒にも達しそうなくらいになっていると思う


男「あはは」


────そして、完全に呼吸が止まった

最期の願いを果たすことさえできずに
息を引き取り、黄色くなった身体は冷たくなっていく
曲がっている脚を伸ばし、だらんと放り出された手を組ませ、半目になっている目を閉じさせる

最期に言葉さえ紡げなかった妹は苦しみに満ちた表情をしている

なんで、こんなに僕たちが苦しまないといけないんだ
両親もいなくて二人でせいかつしてきたのに子の仕打ちはおかしい
性根が腐ったやつら、富裕層とは違って妹はいい子なのに......!


男「......」ポロポロ


僕はひとりになった
慈しむべき相手
生活を共にする相手
そして、僕を支えてくれた相手がいなくなったのだ


そう認識すると、途端に世界が怖くなる
誰とも知らない人間がウジャウジャ存在し、永遠とも言える時間のなか生きていくことに絶望してしまう


男「やだ......やだよ」ポロポロ

医者「死亡鑑定、終わりました──と。男君、大丈夫かい」

男「医者さん......」

医者「妹君はがんばった。私が予測していたのより半年以上生きたではないか」

男「あはは。そうですね」

医者「だからな気を落としてはいかんぞ。彼女のために強く生きなさい。応援しとるからな」

男「......ありがとうございます」

医者「でだ。彼女の亡骸はどうする? 火葬か? それとも土葬か?」

男「え、あ、あの......お金がなくて」

医者「無料になったんじゃぞ」

男「えっ!?」

医者「知らなかったのかい」

男「......」


医者「城前に張り出されていたではないか。チェックしとかなくては世間に取り残されるぞい」

男「......はい」

医者「まあ私ともう会うことはないと思うが、なにかあったら声をかけてくれ。微力ながら力になれるかもしれん」

男「ありがとうございます」

医者「ということでまたいつかな」

男「はい」

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