時雨が主人公のアトリエシリーズ(アーランド、黄昏)とのクロスSS。
注意
・慣れてないので登場する仲間は非安価。行動などが安価です
・エロなし。要望があれば、別トピでやります(ただし>>1の趣味でふたなり百合です)
・更新遅し。更新宣言なし。まったりsage進行
Q.なぜ主人公が時雨?
A.趣味嗜好、好みです
Q.なぜアトリエ? そのキャラ?
A.趣味嗜好です
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1430670500
それは、突然やってきた。
時雨「提督が、行方不明……?」
ある朝。いつものように起きた僕に知らされたのは、衝撃的な報告。
提督が突如として行方をくらませた。
あの仕事に対して真面目で、それでいて艦娘にちょっかいを出す暢気な――みんなから好かれていた提督が。
信じられない想いで僕は小さな声で呟いた。
明石「提督が行方不明。これは、確かな情報です」
会議室に集められた艦娘たちがざわざわとざわめく。
いつもと違った真面目な明石のトーン。冗談やエイプリルフールなどではないとすぐ分かる。
夕立「で、でもそれならなんでみんなのんびりしてたの?」
夕張「確かに。普通に見えたけど?」
当然、疑問の声が上がる。
提督の行方不明。いきなりそんなことを伝えられてもさっぱりだろう。
明石「それが……」
けれど明石は、そんな当然の質問に表情をくもらせた。
明石「私にも分からなくて」
多分、この部屋にいる全員が首を傾げたくなっただろう。
報告をしている明石自身もわけが分からなそうな、困惑した顔をしている。
時雨「分からないのに僕達を呼んだのかい?」
とにかく、僕達は情報が不足している状態。
明石から話を聴くしかない。話を先に進めるためにも、僕はまずそう問いかけた。
明石「えっと――あなた達を個人的に呼んだんじゃなくてですね、呼びかけに応じてくれた――」
明石「――うう。説明し難いから、最初から話しますね」
こくり、と明石の言葉に全員が頷いた。
明石「まず私は、朝になってから提督に会いに行きました」
明石「でも自室、執務室にも提督の姿はなくて、ひとまず艦娘の子達に提督の行方を尋ねることにしたの」
うん。ここまではおかしくない。
司令官はどこにでも適当に出歩くような人だったし。
明石「そしたら――」
明石は困惑に染まった顔を一層青ざめさせ、言う。
明石「――みんな、提督のことを忘れていたのよ」
一瞬、意味が分からなかった。
でもすぐに察しがついた。
『司令官のことを忘れていた』。
そして、『呼びかけに応じてくれた』。
この二つから、なんとなく現在の状況の予想ができる。
つまり、
山城「私たち以外、みんな提督のことを忘れているの?」
そういうことだ。
時雨「『提督に関係している者のみ会議室に集合』って放送では言っていたからね」
夕立「……え、ええっと」
夕立が会議室を見回す。
中には僕、夕立、山城、夕張、明石。その五人だけ。
夕立「ピンチっぽい!」
司令官のことを覚えているであろう艦娘が鎮守府に五人だけ。壊滅的だ。
山城「どどどどどうするのよ、これ」
時雨「――そうだ。上には訊いてみたの?」
明石「はい……。でも提督のことを忘れていて、存在を証明するようなものもなかったようです」
夕張「これって……みんな揃って夢を見てる、とか?」
提督が突然行方をくらませただけでなく、その戸籍ですら抹消。
これは夢、ともすれば魔法だと思うしかないだろう。もしくは何らかの大規模なトラブルにでも巻き込まれたか。
――いや、でもそれだと提督のことを忘れていたみんなの説明がつかない。
夕立「夢じゃないっぽい! 現実よ、これ!」
結論は、それしかなく。けれど原因は分からず。
全員「……」
どうしようもなく、理解もできない現状に僕たちはただ沈黙した。
とりあえず解散。
様子見ということで、みんなは日常へと戻った。
金剛『のんびり一日ティータイム……贅沢デース!』
島風『あ、時雨ー。島風と一緒にかけっこしない?』
長門『平和だな……こんな日は、釣りをするに限る』
赤城『最近は時間もありますし、料理に凝っているんですよ。時雨さんもどうですか?』
――でも僕はどうも、これを日常だとは思えなかった。
一通り鎮守府を回ってみたけどみんな提督のことを忘れてのんびりと、まるで休日をエンジョイするようにくつろいでいる。
会議室に来ていたみんなも同じような気持ちを抱いているのだろうか。
時雨「……はぁ」
思わず、ため息が出る。
多数決の多数派が持つ力は理解していた。けれど、こっちが完全に正しい立場でも少数派がこれほど堪えるとは思わなかった。
埠頭。海が見える芝生の上に座り、僕は考える。
味方が全然おらず、情報もないこの状態で、僕はなにができるのだろう。
時雨「そう都合よく分からないよね……」
分からないからこそ、みんなあの場で解散したんだろうし。
???「あ! やっと人を見つけられた……!」
もう一度ため息――をつきかけたところで、声がかかる。
後ろを振り向くと、そこには見知らない女の子がいた。
【今日はここで落ちま】
誰、だろうか。
見たことのない奇抜な服を着ている。緑色でふわふわしていて、なんだか森の妖精みたいな。
彼女は僕の近くへやって来ると、ちょっと緊張した様子で笑顔を浮かべた。
???「あの、ちょっとお話いいですか?」
時雨「うん、いいけど……」
間違いなく鎮守府の関係者じゃないだろう。
でも今はまともに鎮守府が機能していない状態。気にするだけ無駄だ。
それに悪い人ではなさそうだし。
???「この辺りで、人がいなくなった――みたいな事件ってありました?」
時雨「……あったよ」
驚いた。まさかそんなピンポイントに訊かれるとは。
???「そうですか……詳しく話してもらえますか?」
時雨「いいよ。今朝あったことなんだけど」
僕は今朝の出来事をかいつまんで話した。
もしかしたら、この子が知っている情報を得られるかもしれない。そんな期待を抱いて。
???「うーん……なるほど。ありがとうございます」
時雨「なにか収穫はあったかい?」
???「はい。あんまりなかったですけれど……やっぱり、ここでもあの異変が起こっているんですね」
時雨「あの異変?」
???「ある日突然人がいなくなって、記憶からも姿を消す――神隠しって私達は呼んでます」
時雨(記憶からもいなくなるって神隠し以上だと思うけど……まぁ、黙っておこう)
???「ありがとうございました。それじゃ、私は行きますね」
話が終わり。するとあっさり妖精風の少女は去ろうとする。
僕は慌てて引き止めた。
時雨「ちょっと待って」
???「はい?」
時雨「その神隠しの原因は? 解決法は? 君はどこまで知っているんだい?」
???「私は……全然知ってません。異変に名前をつけて、今調査している最中ですし」
時雨「そっか……」
なにか知っているかと思ったけど、僕と同じ情報量らしい。
……でも、彼女は自分で調べようと動いている。どうしようか悩んでいる僕よりも、はるかに前にいるのだろう。
他になにか質問はないか。
頭を悩ませていると、ふと目の前の少女が口を開いた。
???「あなたは、その司令官さんを探すつもりですか?」
時雨「うん。僕達に必要な人だから」
???「……大切な人ですか?」
時雨「勿論、大切な人だよ」
僕達艦娘を導いてくれる司令官。
ただそれだけの関係じゃなくて、彼女と僕らはいい親友――みたいなものなのだと思う。
司令官を探すつもりか否かは愚問だ。
???「私も前まで大切な人を探していて、それでやっと見つけて……」
???「今、また別の人を見失っちゃって」
???「だからお気持ちはよく分かります」
丁寧な口調で、苦笑しながら彼女は語る。
見失った、ということは神隠しに巻き込まれたのだろう。
ありがとう、と口にする僕へ、彼女はポーチから取り出した本を差し出す。
???「これをどうぞ」
時雨「これは?」
???「錬金術のレシピです。きっと、役に立ってくれると思います」
にっこりと笑い、女の子は僕の手に本を握らせる。
ちょっとした辞典サイズはありそうなそれは、ちょっと古くさい印象を受けるなんの変哲もない本だった。
時雨「錬金術って――」
???「それでは、私は行きますね! お互いにがんばりましょう!」ダダッ
満面の笑みを浮かべ、走り去っていく少女。
僕が質問する間もなく、外見に似合わない俊足っぷりを見せてどこかへ行ってしまった。
時雨「錬金術……」
取り残された僕は本の表紙をじっと眺める。
神隠し。日本では見ないであろう浮世離れした少女。そして錬金術。
……頭が、痛くなりそうだった。
それから、一年が経った。
神隠し――人が記憶ごと消えていく不可解な現象は世界のあちこちで起こり、最初は報道こそされていたものの今ではその現象を覚えている人間すらごく少数派。
人々は、人が消えていることにも、消えていたことにも気づかず、生活を続けている。
外では魔物に遭うのが当たり前。交通機関はまともに機能しなくなり、魔物と戦う術を身につける人間も少なくはない。
武器、格闘、それだけでなく、最近は魔法じみた不思議な力を使う人もいたり――世紀末という単語がしっくりくる。
狂った世界で、当然のように暮らす人々。
その間も、艦娘らは深海棲艦と戦い続けていた。
――ある、一つの鎮守府を除いて。
舞鶴鎮守府。
仕事をせずマイペースに過ごす艦娘、不在の提督。
もはや鎮守府と呼んでもいいのか分からないそこは、あの神隠し以来、一年も出撃していない。
近所の街に住んでいる人ですら、舞鶴鎮守府の存在を忘れかけている。
それでも上層部から給料や資金は支払われるのだから不思議だ。
のほほんとした、休日雰囲気の中。提督のことを覚えているごく少数派の艦娘である僕たちは、異変の解決を目指して活動をしていた。
――それでも、この一年で得られた情報はほぼ皆無に等しく。
時雨「……ここで、これを入れて」
僕は提督の執務室を勝手にアトリエとし、錬金術に熱中していた。
あの女の子に貰ったレシピ本をもとに錬金釜を用意。それから調合について勉強し――最近ではようやく貰ったレシピ本のアイテムの一つを調合できるようになった。
僕は釜を見つめ、傍らに用意しておいた草を入れる。
それからタイミングを見計らい、かき混ぜた。
錬金術はレシピこそあるものの、自分の身体で憶えた感覚が大切らしい。几帳面にレシピどおりこなして失敗していたけど、思ったままやってみると成功することも増えてきた。
時雨「……よし」
後はちょっとかき混ぜて、しばらく放置。それでいいはず。
夕立「時雨ー!」
あと少し。そんなタイミングでドアが騒がしく開き、夕立が部屋に入ってくる。
【落ちますー】
【今日また更新できるかは未定です】
夕立「お仕事来たっぽいー」
時雨「――うん、分かった」
仕事。それは大切だけど、調合を途中で止めるわけにはいかない。
僕は手を動かしたまま、短く返事。視線は動かさない。
夕立「時雨ー」ソワソワ
時雨「……」
夕立「まだ?」
こういう時、本当夕立は犬っぽいんだなぁと実感する。
見ていなくてもそわそわと落ち着きなさそうに歩いているのだと、聞こえてくる足音で分かってしまう。
時雨「……うん」
かき混ぜることちょっと。錬金釜が落ち着いてきた。
これで後は完成を待つだけだ。
時雨「おまたせ。仕事だよね?」
ふうと息を吐き、僕は夕立へと振り向いた。
夕立「うん! 明石さんから、一つもらったっぽい」
時雨「明石からだね。なら、また調達の依頼とかかな?」
提督がいなくなって一年。
まともに機能しなくなった鎮守府をなんとか維持させるため、明石と夕張は尽力してきた。
僕と夕立、山城はそんな彼女達に協力することも多くて、こうして仕事を依頼されることがほぼ日常と化している。
夕立「ええと……鉄石が5個欲しいっぽい」
メモを取り出し、依頼の内容を読み上げる夕立。
鉄石。あまり質がいい鉱石だとは言えないけど、近くで採れる鉱石では上等なものだ。
時雨「了解。それじゃ、一緒に行こうか」
夕立「うん! いつもの冒険だね」
時雨「ついでに採取もしておきたいな。あそこだと、あれが採れるから……」
手帳を取り出し、鉄石の採れるエリアで採取可能な材料を確認。
いくつかついでに採れそうだ。
夕立「時雨、錬金術にはまりすぎっぽい……」
時雨「――そうかな?」
夕立「夕立より錬金術が大切に見えるっぽい」
時雨「それはないから大丈夫だよ。夕立の方が大切だから」
夕立「……そこは相変わらずなんだね」カアァ
時雨「……? うん、夕立のことはずっと好きだよ」
夕立「わーわーっ! いいから、仕事行くっぽい!」
時雨「調合が終わったらね。ちょっと待ってて」
夕立から目を離し、錬金釜へ。
最後の仕上げをし……ヒーリングサルヴを完成させた。
最初のものと比較すると、かなりいいものができた。それでもレシピに載っている効能には遠く及ばない。
やっぱり錬金術というのは、奥深いものだ。
【調合終了】
回復アイテム ヒーリングサルヴ を調合しました。
『ヒーリングサルヴ 品質 50』
・効果
傷を治す 小 (ダメージ判定と同じ計算を行い、その半分の値分、対象の一人のHPを回復)
使用回数 4
特性 ・品質アップ 小
チュートリアルです。
ルール
時雨を操作し、あちこちを旅。
各地で人々が行方不明になり、残された人の記憶から忘れさられている謎の現象を解決するのが目的です。
制限期間はありません
【ステータス】
レベル(強さ。形だけのもので、あまり関係しません)
HP(体力。ゼロになると戦闘不能)
MP(メンタルポイント。スキルを使用の際に消費)
LP(ルーンポイント。行動の度に消費。なくなると、ダメージ判定に±30%の『悪』影響)
攻撃力(戦闘の際の攻撃の威力)
防御力(その名の通り防御力)
素早さ(行動順に係る数値。敵の攻撃に対する回避率)
基本的に拠点である鎮守府でコマンドを選択。
目的を果たすため行動していきます。コマンド一覧は現在こちら。
・アトリエ外へ
・交流
・錬金
・クエスト
その他、細かい説明がこちら。
【戦闘】
採取地、イベント、様々な場で戦闘は避けられません。
基本的に1ターンに一度行動。素早さ順に行動します。攻撃する度LPが減少します。
ステータスに加えてコンマ判定で攻撃、防御を行います。
ダメージ計算式
攻撃力 × コンマ(43が出た場合、0.43をかける) - 攻撃対象の防御力 = ダメージ
【素早さが相手より高い場合、味方側のみコンマが奇数だと回避】
【また、コンマがゾロ目だとクリティカル。30%増しのダメージ】
先にHPがゼロになったほうが負けです。
主人公が攻撃する時、攻撃されるとき、アシスト攻撃、サポートガードをすることができます。、
【アシスト攻撃】の時は時雨の攻撃コンマ判定の時に誰がアシスト攻撃するのか記載。【サポートガード】の時は敵攻撃コンマ判定時に誰が防御するのか書き込み。
どちらもアシストゲージを1消費します。時雨はか弱いので護ってあげましょう。
攻撃、アシスト攻撃をする度に必殺技ゲージが貯まります。
満タンになると必殺技を発動可能。一番高いダメージが出るため、ガンガン使っていきましょう。
【交流】
仲間と交流します。親密度が上昇。親密度の十の位でアシストゲージがたまる(例:親密度54で5)ため、戦闘で有利になります。
親密度を貯めるとキャラのイベントを見ることもできます。
【錬金】
錬金術で調合をします。
錬金レベルによって作れるものが変わります。
錬金の流れは
作るもの決定 → 素材決定 → 特性決定 となります。
作るもの、素材決定は一つにまとめて安価に記載することが可能。
特性決定は、特性が3つ以下の時は自動的に素材に残っている特性が選ばれます。
特性が4つ以上ある場合は安価で三つ、完成品に継承する特性を選択します。
品質によって効果や評価が変化するので頑張っていいものを作りましょう。
【アトリエ外へ】
アトリエ、鎮守府の外へ出ます。
基本的に時雨と護衛二人。護衛は【アトリエ外】選択後、もしくは【アトリエ外へ】を選んだ際に記載することも可能です。
アトリエ外に外出し移動する時、LPを消費します。遠ければ遠いほど大量にLPが消費されてしまうため気を付けましょう。
戦闘が起こるのはほとんどこのコマンドで出かけたときです。
アトリエ、鎮守府に戻るとHP、MP、LPのステータスは回復します。
【クエスト】
明石のもとに集まった依頼をうけることができます。
ストーリー上の必須のものから、仲間からの依頼など種類は割りと多め。
【と、説明したところで今日は落ちま】
【明日はステを書いてから、コマンド選択を】
『ステータス』
【時雨】
レベル 1
HP 21
MP 40
LP 20
攻撃力 10
防御力 2
素早さ 1
アイテム所持枠 3つ
スキル
・『幸運』 パッシブ
あらゆるコンマ判定に±5の良い影響
【夕立】
レベル 3
HP 39
MP 25
LP 25
攻撃力 20
防御力 5
素早さ 10
親密度 15
スキル
・『掃射』 敵全体にコンマ判定+30のダメージ 消費MP10
【ヒーリングサルヴを装備しました】
時雨「さて……すぐ外に行ってもいいけど」
夕立「いいけど、なに?」
時雨「鎮守府の中を散歩していってもいいよね? みんなの様子も気になるし」
夕立「……まぁ、しょうがないっぽい」
時雨「ありがとう。――どこに行こうかな」
なにをしよう?
・アトリエ外へ
・交流
・錬金【選べません】
・クエスト
安価↓1
【交流コマンドは一回の外出毎に一回だけできるようにしておきます】
アトリエ(元執務室)から出て、鎮守府内を歩く。
鎮守府の中は相変わらずのほほんとしていて、世紀末的な世界とは全然関係してもなさそうだ。
時雨「相変わらずだね」
夕立「うん。全然変わってないっぽい」
そんなみんなの様子を見ていると、こっちまでのほほんとしてしまいそうだけど……ちょっと心配だ。
自分たちまでいつかこんなふうに司令官のことを忘れて、暢気に過ごしたら、なんて考えると怖くなる。
時雨「みんなが元に戻ると嬉しいんだけど――あ」
呟きつつ、散歩を続行。すると前方、ちょっと先に見知った顔を見つける。
僕は小走りで彼女へと近づいていった。
時雨「山城」
山城「ん? あ、時雨。それに夕立」
腰に日本刀をさげた山城は立ち止まり、僕らの方を見る。
山城。僕らの仲間側の人間であり、おそらく現在地上戦でもっとも強い艦娘だろう。
なんだかんだ文句を言いながらも提督を探すための仕事をしてくれていて、根は優しいいい子だ。
夕立「おまけ扱い……」
山城「目につかなくて。ごめんなさい」
夕立「うぐぐぐ……」
最近は夕立との対立が目立っているけど。
いつからだったかな。確か、山城と夕立の戦闘力にはっきり差が出た時だったっけ。
時雨「最近はどうだい? なにか手がかりとか」
山城「全然よ。でも――各地で怪しい情報が入ってきているわね」
時雨「怪しい情報?」
山城「ええ。やたら強い人間がいたり、変な格好の人が目撃されたり」
変な格好……。
そう聞くと、僕に本をくれた女の子が思い浮かぶけど……どうだろう。
山城「お互いに手がかりなしと……進展しないわね」
時雨「一年間そうだからね。簡単な話ではないさ」
山城「……そうね。それじゃ、私は行くから」
時雨「ちょっと待って山城」
去ろうとする山城へ声をかける。
時雨「これから仕事に行くんだけど、一緒にどう?」
夕立「ちょっ! 時雨!」
山城「嫌よ。二人は私と全然実力が違うじゃない」キッパリ
時雨「あはは……けど、一緒の方が嬉しいし。駄目かな?」ウワメヅカイ
山城「だだだだだ駄目よ」
夕立(真顔ですごい吃りっぽい……)
時雨「そっか。うん。効率は大事だし、仕方ないかな」
そこまではっきり言われたら、諦めるしかない。
前みたいに三人で行動したかったんだけど。
山城「ふーっ……。そ、それじゃあ、行くわ」
山城「――夕立。しっかりやるのよ」
夕立「言われるまでもないよ」
山城「それでいいわ」
時雨「……?」
去り際に意味深な会話をする二人。
意味はよく分からなかったけど……なんだかかっこいい。
【山城の親密度が3上がりました】
時雨「……鎮守府に変化はなかったね」
夕立「今更変化があっても、なんか怖いような気がするけど」
時雨「まぁ、そうだよね」
さて、と。
どうしようか。
・アトリエ外へ
・交流【選べません】
・錬金【選べません】
・クエスト
安価↓1
【アトリエ外へ】
【通常は行き先を安価とりますが、今回は近所の山へ】
夕立「久しぶりのお出かけっぽい!」
時雨「そうだね。うーんと……」
夕立「どうしたの時雨? 早く行こう?」
時雨「荷物の確認をしておこうと思って。なにか忘れてたら大変だから」
夕立「几帳面っぽい……」
傷薬に食料、念のためのうに。その他必要なものはポーチに入って……る。杖は持った。
よし、これでいいかな。
時雨「うん、大丈夫。行こうか、夕立」
夕立「終わった? じゃあ、行こー!」
はしゃいだ様子で夕立が駆けていく。
僕はそんな彼女をのんびりと歩いて追いかけた。
【LPを2消費します】
近所の山へ。
のんびりと時間をかけ、安全に気をつけて魔物を避けつつ移動し――ようやく到着した。
時雨「徒歩だと時間がかかるね……ちょっと疲れちゃったよ」
夕立「前は提督さんの車とか、自転車だったしね……夕立も疲れたっぽい」
時雨「……さ。採取しようか」
目的の物は鉄石。
それを最低でも3つ。
ポーチには大体アイテムが40個入るから、まぁ余裕はある。
【時間制限がないため、アイテムは好きなだけ採っていけます】
【ただしポーチの容量制限があるため、中に入っている装備アイテムなどと合計して40個まで】
【現在ポーチにはヒーリングサルヴのみ入っているので、39個のアイテムを選べます】
――なにをどれだけ採ろうか。
『採れるもの』
・鉄石
・青色の草
・パラパラした土
・キラバッタ
【鉄石】 (カテゴリ:鉱石類、薬の材料)
品質 30 特性:防御力+4
その辺りの何の変哲もない石――のように見えるけど、鉄が大量に含まれているれっきとした鉱石。
質はよくないんだけど、採りやすくて重宝する素材。サプリメントの材料にもできなくもない。
【青色の草】 (カテゴリ:植物類、野菜)
品質 40 特性:回復量増加Lv1
青い草。ブルーなのではなく、緑色。そういう意味の青い。
すなわち普通の草。けど普通の雑草とは違って、身体にいい成分が含まれている。食べると以外に美味しい。
【パラパラした土】 (カテゴリ:火薬、粘土)
品質 25 特性:破壊力増加
さらさらとした土。手触りがよく掘りやすくて集めやすい。雨が降った日はねとねととし、歩きづらい。
調合でよく使う素材の一つ。
【キラバッタ】 (カテゴリ:虫、宝石、エリキシル)
品質 30 特性:会心の効果
太陽の下で宝石のように輝くバッタ。
草原で何かが光ったと思ってしゃがみこむと、このバッタが飛び跳ねてきた――などと、老若男女問わず悪評が多い。
安価↓1
時雨「採れるだけとろう」
夕立「えっ!?」ギョッ
せっかく外に来たんだ。それくらいは採らないといけないよね。
夕立は驚いていたけど――素材は錬金術士にとって必需品。採っておかないと。
【採取を行いました 鉄石 10
青色の草 10
パラパラした土 10
キラバッタ 9
を取得しました。ポーチ満タンです】
数日後。めぼしい素材を集め、ポーチに詰めていき――ようやく採取が終わった。
時雨「これでしばらく困らないね」
夕立「疲れたっぽい……精神的に」
休み休みやったからそれほど疲労感はないけど、確かに精神的に疲労した感覚はある。
時雨「一回休もうか」
夕立「賛成! あの木の下に行こう?」
僕の手をとり、にこにこと笑いながら引っ張る夕立。
時雨「うん。良さそうな――」
夕立が見ている木へと視線を向ける。
するとその影から、タイミングを計っていたかのように青い何かが姿を現した。
時雨「出たね」
夕立「出たっぽい」
魔物が出るようになってしばらく。
僕らが知る中でもポピュラーでちょっと弱い魔物。
青ぷにが一匹、僕らの前で珍妙な鳴き声を上げた。
【青ぷに】
HP 20
攻撃力 20
防御力 3
素早さ 5
夕立「時雨は下がってて。私が前に出るっぽい!」
武器である銃と、ナイフを取り出す夕立。
それを両手で持つと、彼女は僕より一歩前に出た。
時雨「うん。サポートに徹しておこうかな」
僕も持っていた杖をゆるく構える。
艤装を着けていない状態の僕は弱い。ここは夕立に任せておいたほうがいいだろう。
夕立「先手必勝!」
魔物が動き出すよりも早く、夕立が駆け出す。
流石は夕立。動きが素早い。
『夕立の攻撃です』
『スキル使用の際は使用するスキル名を記載してください』
安価↓1
【攻撃対象忘れてましたね】
【攻撃時は攻撃対象、スキルを使うなら選択して――その投稿のコンマからダメージ計算、という流れにします】
【スキル使わないときは対象だけでOKです】
【山城ちゃんはちょろ――いい子です】
【時雨ちゃん戦闘BGMはSweep!のイメージ】
【青ぷにに攻撃 コンマ53】
20 × 0.53 - 3 = 8 (小数点以下は四捨五入で)
青ぷにに8のダメージ HP 20 → 12
アシストゲージが1貯まりました(現在1。一回使用するためには10必要です)
夕立「とうっ!」
牽制も兼ねた銃撃から、一気に肉薄してナイフで斬りつける。
何回か見たことがある動きだ。ナイフで切りつけられたぷには身体を揺らし、小さく呻くような声を出す。
けど、まだ倒せないみたいだ。
『青ぷにの攻撃です。コンマ判定を行います』
『対象は時雨。回避は発生しません』
『現在アシストはゲージ不足のため使用できません』
安価↓1
【そういえば今回うにを数個持っていましたが、>>1が忘れていたため容量の計算から外します】
20 × 0.06 - 1 = 0
時雨に0のダメージ
攻撃を受けた青ぷにが動き出す。
夕立は警戒して構えをとるけど、青ぷには彼女の横を素通り。
僕めがけて転がってくる。
夕立「時雨!」
時雨「大丈夫!」
タイミングを見計らい横へ。
ちょっとかすったけど、なんとかダメージは受けずに済んだ。
時雨「今度は僕の番だね」
転がりをやめ、背中を見せているぷに。
今がチャンスだ。
『時雨のターンです』
『スキルはなし。アイテムはヒーリングサルヴ、うにを持っています』
『アイテムを使用する際はコンマ判定時にアイテム名と対象を記載してください』
安価↓1
【今日はここで落ちます】
【消費LPの計算を忘れたのでしておきます】
【夕立が攻撃して、夕立のLPが1減少。残り22】
【うに】 (カテゴリ:食材・野菜、植物類)
品質 40 特性:なし
アイテムとして使用した際の攻撃力 攻撃力プラス3 さらにコンマ判定に30をプラス(40が出た場合、70として計算する)
いつの間にか木で採れるようになった大きな栗――ではなく、うに。
どう考えても栗なのだけれど錬金術の本ではなぜかこの名称だった。
当たると痛く、持つときも注意しないと痛い。名前を呼び投げつけるのが決まりらしい。
13 × 0.64 - 3 = 5
青ぷにに5のダメージ 12 → 7
時雨のLPが1減少し 18 → 17
うにを一個消費し所持数が2個となりました
時雨「これで――」
うに。弱い僕にも扱える、錬金術士として初歩中の初歩である道具だ。
とげに注意し、ポーチから取り出す。そして構え――
時雨「うにー!」
投げつけた。投げつけたというよりは、近くにいる小さな魔物に当てたので、半ば叩き付けるような形になってしまったのだが。
効果はあったみたいだ。青ぷには短く声を上げ、こちらへと振り向いた。
夕立「時雨、『うにー』って……」
時雨「……決まりだから、仕方ないのさ」
覚悟していたけど割りと恥ずかしい。夕立の目がキラキラ輝いてるし。
『夕立の攻撃です』
『スキル使用の際は使用するスキル名を記載してください』
安価↓1
20 × 0.43 - 3 = 6 (小数点以下は四捨五入で)
青ぷにに6のダメージ 7 → 1
夕立のLP 22 → 21
アシストゲージ 1 → 2
夕立「とどめ!」
僕が横に移動するのを確認してから、夕立が銃を撃つ。
分かっていてもびっくりしてしまう轟音。銃弾は綺麗に青ぷにへと決まったようだけど――
青ぷに「ぷにに!」
まだ、だ。まだ青ぷにを仕留められてはいない。
夕立「しぶといっぽい!」
時雨「夕立。来るよ」
『青ぷにの攻撃です。コンマ判定を行います』
『対象は夕立。回避が発生します』
安価↓1
【回避不発】
20 × 0.82 - 5 = 11
夕立に11のダメージ HP 39 → 28
青ぷにが今度は夕立の方へ。
勢い良くころころと転がっていく。火事場の力といったところか、そのスピードはこれまでと違う。
当たれば大きなダメージを受けてしまうだろう。
夕立「――っ!」
けれど夕立はかわそうとせず、銃を構えた。
あとすこしで倒せそうな敵を前に焦ったのかもしれない。立ち止まったまま銃を発砲。
一発二発。転がるぷにめがけて撃つものの、命中はしなかった。
夕立「いったぁ!」
そして避けることもできず直撃。
大きなゴムボールが当たったかのように跳ね返され、背中から地面に倒れてしまう。
あれは痛そうだ……。
――って、見てる場合じゃないよね。
時雨「行くよ」
次は僕の攻撃だ。
『時雨のターンです』
『スキルはなし。アイテムはヒーリングサルヴ、うにを二個持っています』
『アイテムを使用する際はコンマ判定時にアイテム名と対象を記載してください』
安価↓1
10 × 0.34 - 3 = 0
青ぷにに0ダメージ
時雨「えいっ!」
力を込めて杖で殴りつける。
背後から近づいた虚をつく攻撃。普通なら綺麗に決まるシチュエーションだろう。
でも、外した。
力いっぱい下ろした杖は青ぷにの少し後ろの地面をえぐる。
青ぷに「ぷに?」
時雨「――あ」
夕立「時雨ー!」
艤装ありとなしでこんなに違うんだなぁ、なんて思わなくもない。
『夕立の攻撃です』
『スキル使用の際は使用するスキル名を記載してください』
安価↓1
【時雨のスキル忘れてましたね。本来ならもっとすぐ終わるかもしれませんでしたし、次のレベルアップ判定時にボーナスつけておきます】
20 × 0.90 - 3 = 15
青ぷにに15ダメージ HP 1 → 0
夕立のLP 21 → 20
前回の攻撃分の計算
時雨のLP 17 → 16
夕立「これで終わって!」
危機一髪。青ぷにからの反撃を覚悟していた僕だけれど、夕立が身体を起こし銃を放つ。
銃声から、一瞬の静寂。杖を構え身構えていた僕の前で青ぷには破裂した。
夕立「……はぁ。ぷにに苦戦するなんて」
時雨「――こんなんじゃ山城に怒られちゃうね」
ホッと安堵。草の上に寝転がる夕立と、その場にしゃがみこむ僕。
まさか青ぷににここまで苦戦するなんて。
疲れた……すごく。
でもいい経験にはなったはずだ。
『レベルアップ判定を行います』
『青ぷにはレベル5相当なので、時雨は2レベルアップ確定。夕立は1レベルアップ』
『更に追加でレベルアップ。安価のコンマで1~3は1レベルアップ。4~7は2レベルアップ。8~9・0は3レベルアップします』
『ここでは時雨のスキル効果は発動しないことにします』
↓1 時雨の判定
↓2 夕立の判定
【二人とも3レベルアップです】
【合計して時雨は5レベルアップ。夕立は4レベルアップ】
【今日はここで落ちます】
【戦闘時遅くなるのは、自分が片手間で書いてるのもあったと思うので、仕方ないかと思います】
【書こうと思ったら書きますので、気長に待ってください】
【更新遅めとも書きましたし、あっちはR18ですし書きづらいですし、そもそも別板ですし】
【書けないと思ったら依頼も出しますので】
【まず>>1に書いてある趣味と地の分でいつか特定されるとは思ってました】
【それにダメージ計算はもろですし】
【というわけで続きです】
時雨「うん。ちょっとは強くなれたかな」
【時雨】 レベルアップ!
レベル 6
HP 32 (+11)
MP 64 (+24)
LP 30 (+10)
攻撃力 15 (+5)
防御力 3 (+1)
素早さ 3 (+2)
アイテム所持枠 3つ
スキル
・『幸運』 パッシブ
あらゆるコンマ判定に±5の良い影響。
夕立「強くなったっぽい!」
【夕立】 レベルアップ!
レベル 7
HP 56 (+17)
MP 34 (+9)
LP 30 (+5)
攻撃力 30 (+10)
防御力 6 (+1)
素早さ 20 (+10)
親密度 15
スキル
・『掃射』 敵全体にコンマ判定+30のダメージ 消費MP10
・『俊足』 パッシブ。常に戦闘で行動順が一番になる 【New!】
時雨「一匹、だけだったみたいだね」
夕立「何匹かいたら危なかったっぽい……」
それから少し休憩。
僕らは立ち上がると周囲を確認し、ホッと息を吐いた。
時雨「さて――青ぷにから採取を」
夕立「あーっ!」
時雨「……? どうしたの?」
いきなり声を上げる夕立。
青ぷにの亡骸から素材を集めようとしていた僕は、顔をそちらへと向ける。
するとそこには――
選択
1・黒髪ロングの少女がいた
2・巨大な剣を抱いて寝る少女がいた
3・白髮の少年がいた
↓2
時雨「……男の人だね」
その人は、あまり見たことのない服を着ている男の人だった。
年齢は10台後半くらいだろうか。腰に剣を差していて、手にはなにやら機械みたいなものが見える。
夕立「だね。なんでこんなところに寝てるんだろう?」
夕立が問いかける。
何故寝ているか。それも勿論気になったけど、僕は他のことを考えていた。
僕たちはここに何日かいた。採取で時間がかかって、結構な時間作業をしていたはずだ。
その間、この人が寝ている場所に何度か来たこともある。
けど、確かに誰もいなかったはずだ。それどころかこの周辺に人を見たこともない。
そんな状況なのに、この人はいつの間にかここに来て、眠っている。
――不可解だ。
時雨「とにかく、声をかけてみよう」
思考を切り上げ、僕は歩き出す。
眠っている男性に近づき、杖で軽くつつく。
夕立「よかった……生きてるっぽい」
時雨「僕達より強そうだし、そのあたりは心配なさそうだけど」
スカートの中が見えないよう寝ている彼の横に座り込み、今度は肩を揺さぶる。
時雨「あの。起きてくれるかな?」
???「……っ、ん?」
反応を微かに示す男性。
彼はうっすらと目を開くと僕を見、そして視線をちょっと上に。空を見て伸びを一つ。
???「そうか。外で寝ていて――いや、それはない!」
そして勢いよく身体を起こした。さながら遅刻した朝である。
夕立「わあっ! びっくりした」
???「あ、悪い。……ここは? 君たちは?」
混乱した様子だけれど、しっかり謝罪する男性。悪い人ではなさそうだ。
時雨「僕は時雨。こっちが夕立。ここは――京都、のちょっと外れかな」
???「京都? 聞き覚えがないな……」
夕立「あなたの名前は?」
ロジー「ああ、そうか。俺はロジックス・フィクサリオ。ロジーって呼んでくれ」
――すごい名前だ。海外の人だろうか。
時雨「ロジーさんは、どうしてここに?」
ロジー「……憶えてない。部屋で寝たのは憶えているんだが」
夕立「ここが部屋……」ガタガタ
ロジー「絶対に違う」
だろうね。
部屋で寝て、いつの間にかここへ。
京都という単語に聞き覚えがないのもそうだし、おかしな点が多々ある。
考えこむ僕。その前でロジーもまた思案顔で沈黙していた。
ロジー「なぁ」
不意に、ロジーが口を開く。
ロジー「良かったらこの周辺とか、君たちについて聞かせてくれないか?」
時雨「うん。それくらいなら」
僕らには情報が足りない。そう思えた。
なら、話し合うのが上策だろう。
僕はここ、日本やその周辺国のこと、艦娘や鎮守府、敵のことなど幅広く適度に浅く語った。
その中盤辺りでロジーが頭を抱えていたりしてたけど――乗りかかった船だ。最後まで遠慮無く話した。
ロジー「……すまない」
僕の話が終わると、ロジーは一言ぽつりともらし、
ロジー「まったく理解できない」
きっぱりと答えた。
時雨「まったくって……」
夕立「ロジーさんって、どこから来たの?」
ロジー「どこから、か。多分話しても分からないと思うぞ」
まったく理解できない。
それはどうやらロジー側だけという話ではないらしい。
お互いにお互いの世界のことを理解できない。それはつまり――。
僕の頭に一つ、結論が浮かんだ。
まるでそれを先読みしていたかのように、ロジーが口を開く。
ロジー「俺は元の世界とは別の世界にやって来たみたいだ」
あり得ない結論。
でもそれ以外に筋が通った理由などなく。
僕らは頭を悩ませるのだった。
【と、ロジーさんが登場したところで一旦ご飯。落ちます】
夕立「……とりあえず、ロジーさんも一緒に帰る?」
無言が続き、夕立は不意に口を開く。
時雨「そうだね。行くあてもないだろうし……」
ロジー「ありがとう。助かる」
時雨「それじゃ、行こうか。明石と夕張、山城にも話しておかないと」
立ち上がる三人。ロジーは服の汚れをかるく手で払う。
ロジー「艦娘のいる鎮守府、だったよな? 時雨たちの住んでる場所って」
夕立「うん。大勢いるっぽい」
時雨「だね。あぁ、でも気にしなくて大丈夫だよ。きっと明石達がいい場所をくれるから」
ロジー「そうか? なら気兼ねなくついていけるな」
安堵した表情を浮かべ、ロジーは言う。
鎮守府にたった一人の男性……不安だろう。それに加えて、他の世界から来た可能性もある。少しでも力になれるといいんだけど。
【鎮守府に帰還します】
【HPMPLP全回復です】
【一旦と言いましたが、思ったより眠いので落ちます】
鎮守府に戻った。
途中街も経由して帰ってきたんだけど――
ロジー「……」グッタリ
鎮守府入り口をくぐる頃にはロジーが軽くダウンしていた。
なんでも、街の文明レベルがまったく違うらしい。見たこともないあれこれを目にして疲れてしまったようだ。
夕立「ロジーさん、大丈夫?」
ロジー「あ、あぁ……大丈夫だ」
時雨「まったく大丈夫そうには見えないけど」
ロジー「はは……正直、びっくりしたよ。でもこれではっきりした。ここは俺の世界とは違う」
時雨「うん……それについてははっきりしてきたね」
まだ信じられないけど、そうなのだろう。
――あり得ない。でも、ここ数年の異常事態を考えればこれくらい起きてもおかしくはないのかも。
時雨「とりあえず、僕達の本部に行こう」
夕立「賛成っぽい! お腹も減ったし」
ロジー「本部? そんなものがあるのか」
時雨「憶えている艦娘達の基地みたいなものかな。今はすごく少数だけど、結構広いんだよ」
喋りつつ僕らは鎮守府のはじっこへ。
そこは指令棟とも呼ばれている、現在使われていない場所。
出撃をしなくなった鎮守府で最も不要となった場所である。
ロジー「立派な場所だな」
時雨「必要だった場所だからね。設備は充実しているさ」
中へ足を踏み入れ、まず近くの部屋へ。
リビング兼、会議室。『神隠し対策本部』と書かれた掛け軸がある広い部屋。
長テーブルの周りに置かれたソファに僕と夕立は座る。
時雨「ロジーもどうぞ?」
ロジー「ああ。失礼する」
脱力してソファに寄りかかる。
ふかふかとした感触が気持ち良い。歩き通しだったから、結構疲れていたみたいだ。
時雨「誰もいないね」
夕立「珍しいっぽい……」
のんびりしながら部屋を見る。
いつもなら誰か一人はいるんだけど、今日に限って誰もいない。
放送を使うべきだろうか。
???「あ、二人とも帰ってたんですか」
動こうか。でもダルい。
ぼんやりと前にある窓を眺めていると、リビングのドアが開いた。
顔を出したのは――大鯨だ。
最初の放送では集合しなかったけど、彼女もまた提督を憶えている仲間の一人。
現在では対策本部の料理長を担当している。
時雨「ただいま、大鯨」
大鯨「はい。お帰りなさい」
夕立「みんないないっぽいけど……なにかあったの?」
大鯨「――あ! そうでした。実は――」
選択
1・おどおどしたショートヘアの女の子が迷いこんできて
2・ハ――じゃなくて、大きな男の人が
3・マントをつけた自称雑貨店店長さんが――
↓1
大鯨「おどおどしたショートヘアの女の子が迷い込んできて……」
ロジー「おどおどしたショートヘアの?」
大鯨「はわっ!? 誰ですか!?」ビクーン
夕立「今気づいたの?」
ロジー「喋らなかったから、仕方ないさ」
夕立(ロジーさん、夕立と時雨の間にいたっぽい……)
時雨「みんなその女の子のところにいるんだね?」
大鯨「はい。今は事情をあれこれ聞いていて」
時雨「ならちょうどいいね。女の子のことも気になるし、ついでにロジーさんのこともみんなに話しておこう」
ロジー「――そうだな。できるだけ早く挨拶をしておきたい」
夕立「ええーっ、ご飯は?」
時雨「後で食べよう。ほら、行くよ」
夕立の手を引っ張り、僕は立ち上がる。
僕ら三人は大鯨の案内に従い、件の女の子がいる場所へと向かった。
そしてやって来た、資料室。
書類の入った棚と数々の机。普段は静かなその場所で――
明石「あはは、なるほどねー。そこでそういう仕事を勝手に」
夕張「かわいそうに……」
???「そ、そんな真面目なトーンで言わないでくださいよぉ」
夕張「ごめんごめん。いやでも、フィリーは頑張ってるわよ」
フィリー「そうですか? よかったです」
三人『ウフフフフ』ノホホン
――見知った顔と、見知らない女の子が酒盛りをしていた。
時雨「これは……」
大鯨「ごめんなさい……止めてたんですけど、止まらなくて」
ロジー「初対面の人間とよく呑めるな……」
夕立「気があったっぽい」
何があったのかは分からないけど――話をするしかないよね。
時雨「みんな」
明石「あー、時雨。帰ったんですね!」
夕張「おかえり!」
フィリー「お帰りなさい!」
すっかり馴染んでしまっている。
夕立「もう! みんなしゃっきりするっぽい!」
夕張「えへへ、しゃっきりしてるわよ」ニヘー
ロジー「重症だな」
大鯨「ですね……まだ10分も経ってないのに」
時雨「どうしよう? これじゃあ、みんな話せそうにないけど」
山城「――まったく。誰もいないと思ったら、こんな馬鹿げたことを」
みんなの意見を求めようと後ろを向く。
するといつの間にか山城がロジー達の中に混ざって立っていた。
彼女はむすっとした顔で泥酔している三人へ視線を向ける。
夕立「あ、山城さん!」
山城「しっかりしなさい、あなた達。こんなことで困らせるなんて」
大鯨「……? 時雨さんを、ですか?」
山城「ばっ!? そんなこと誰も言ってないわ!」
ロジー(分かりやすい人だ……)
困らせる? 僕を?
意味がよく分からないし、聞き間違えだろう。多分、山城の言う『馬鹿げたこと』を前に何もできないで、考えているだけの僕に山城は困っているんだ。
時雨「ごめんね、山城。困らせちゃって」
全員『……』
あれ? なんか白けてる?
山城「確かに困らせてるわ……今」ハァ
山城「まぁいいわ。ここは私に任せておきなさい」
言って、山城は悠然と三人の前へ歩いていく。
とても頼もしい後ろ姿だ。
山城「夕張、明石。あんた達、しっかり仕事をしなさい」
明石「あ、山城。今日も可愛いわね」
山城「……あのね、そんなお世辞を言ってる場合じゃないの。みんな来たんだから、話を――」
夕張「まぁまぁ呑んで呑んで。主役がいないと」
フィリー「わぁ、お姉さんも綺麗ですねぇ。彼女っているんですか?」
山城「や、やめてって。あと彼女ってなによ」
頼もしい――のだけれど、速攻で絡まれていた。っていうか囲まれた。
根が真面目なだけに一人一人に対応して、手がいっぱいになってしまっているのが原因だろう。
ロジー「包囲されたぞ」
時雨「山城はああいうの向いてないからね……」
夕立「っぽい」
大鯨「そうですね」
さて、今度こそ万策尽きた。
どうしようか……。腕を組んで考えていると、僕達の横を誰かが通りすぎていった。
すたすたと自然体で歩いていくその人物は四人の前で立ち止まると、バケツに入っていた水を思い切り放った。
???「……ほい」
拍子抜けしてしまいそうなゆるい掛け声とともに。
ばしゃーと水が全身にかかる四人。
呆然とする彼女らの前。バケツを持った人物はフッと笑う。
雲龍「――目が覚めた?」
僕らの仲間の一人、雲龍。
普段はなにを考えているのか分かり難い、掴みどころがない艦娘だけれど……ここぞという時頼りになる人だ。
山城「……」ワナワナ
明石「は、はい……すごく」
夕張「楽しかったのに……」
フィリー「美少女に囲まれてはしゃいでました……」
雲龍「よろしい。……さて、これで解決ね」
ふんすと鼻をならす雲龍。そこへ即座に反論が入る。
山城「解決じゃないわよ。なんで私にまで――」
雲龍「あら、山城。濡れて綺麗になったわね」
山城「――そう? って、そうじゃない」
山城「あぁもう、いいわよ。不幸だって思うことにするわ」
雲龍「ちょろい」ボソッ
山城「なにか言った?」
雲龍「いえ全然」
仲がいいのか悪いのか……。多分、良い方なんだろうけど。
時雨「えっと……それじゃあ、話をしようか」
明石「はい。――あれ? そちらの方は?」
普段どおりに戻った明石が、ロジーへ顔を向ける。
ロジー「ロジーです。時雨と夕立のお世話になって、ここへ」
明石「ああ、いいんですよ、敬語は。私はクセで使ってるだけですから」
ロジー「そうか? なら、そうさせてもらおうかな」
山城「男が鎮守府に……なにか特別な理由があるのよね?」
時雨「うん、まぁね。ちょっと事情があって」
夕立「今から説明するっぽい」
夕張「じゃあまずそっちから。次は私達がフィリーのことについて話そっか」
大鯨「そうですね。現状を把握するためにも」
雲龍「ようやく変化がきたわね」
約一年間膠着していた状況。
それがようやく動きはじめた。僕らは不安と期待を抱きつつ、自分たちに起こった変化を語った。
【今日はここで落ちます】
夕張「……なるほどね。そういうことがあったのね」
全員が全員の情報を交換。
その場にいる全員が何かを考えるような、難しい顔をしていた。
話の内容をまとめるとこうだ。
フィリーはいつの間にか鎮守府の中にいて、それを大鯨が保護したらしい。
で、ロジーと同じく自分がどこにいるのかすら分かっておらず、話していた自分の元いた場所は浮世離れしすぎている世界であり――やはりロジーと同じく別世界から来てしまった人間だと予想ができた。
明石「大体の事情は分かりました。お二人はこれからどうします」
【途中で投稿してしまいました】
夕張「……なるほどね。そういうことがあったのね」
全員が全員の情報を交換。
その場にいる全員が何かを考えるような、難しい顔をしていた。
話の内容をまとめるとこうだ。
フィリーはいつの間にか鎮守府の中にいて、それを大鯨が保護したらしい。
で、ロジーと同じく自分がどこにいるのかすら分かっておらず、話していた自分の元いた場所は浮世離れしすぎている世界であり――やはりロジーと同じく別世界から来てしまった人間だと予想ができた。
明石「大体の事情は分かりました。お二人はこれからどうします?」
ロジー「ここの世話になれるなら、それがいいが」
フィリー「私もかな……よければ、ですけど。でも行くあてがないし」
夕立「二人なら大歓迎っぽい!」
時雨「うん。僕も歓迎するよ」
大鯨「お部屋は沢山ありますしね」
みんな、異論はないらしい。
まぁここには行くあてがない人間を放置するような人はいないからね。
山城「――けど、あなた達もここに来たんだから、何かしてもらうわよ」
雲龍「働かざるもの食うべからず……」コクコク
ちょっと厳しい人はいるけど。
フィリー「それなら私は書類仕事とか、お仕事関連を……あっちの世界でもしてたから」
明石「おおっ、それは有り難いですねぇ」
ロジー「なら俺は……錬金術はこの世界にあるか?」
時雨「!」
夕立「それなら時雨がしてるっぽい」
ロジー「そうなのか? この世界にも錬金術が――」
若干嬉しそうにロジーが僕を見る。
けれど彼は僕の手にある杖を見るとテンションを戻した。
ロジー「錬金釜、か?」
時雨「うん。よく分かったね」
ロジー「杖を持っていたからな。知り合いに似ているんだ」
なるほど……ということは、ロジーの世界にも錬金術士がいるんだ。
それに錬金釜を使わないタイプもいると……いずれ二人で色々話したいな。
ロジー「けどそうなると俺のできることはないかもな……」
山城「――なら、時雨の護衛についてあげれば?」
雲龍「そうね。それがいいかも」
ロジー「護衛か? 戦いは向いてないんだけどな……ま、何もしないわけにもいかないか」
苦笑し、ロジーは山城、雲龍を見ると僕へ視線を戻した。
ロジー「ということだ。誘ってくれればいつでもついていくから、気軽にな」
時雨「うん。よろしくね、ロジー」
【ロジーを誘えるようになりました】
【外出を経て夕立の親密度が2上がりました】
【夕立】
レベル 7
HP 56
MP 34
LP 30
攻撃力 30
防御力 6
素早さ 20
親密度 17(+2)
スキル
・『掃射』 敵全体にコンマ判定+30のダメージ 消費MP10
・『俊足』 パッシブ。常に行動順が一番になる
時雨の仲間であり親友。
時雨の護衛のため、銃とナイフの練習をしてきた。速さと駆逐艦顔負けの攻撃力は艤装がなくとも健在。防御は薄い。
が、山城や雲龍の実力にはまだまだ及んでいないらしい。
【ロジー】 異界の錬金術士
レベル 10
HP 50
MP 45
LP 58
攻撃力 37
防御力 12
素早さ 15
アイテム所持枠 2
親密度 15
スキル
・『ハイスラーヴァ』 敵単体にコンマ判定+50のダメージ 消費MP15
・『錬金術の知識』 パッシブ。アイテム使用の際の効果にコンマ±10の良影響
異界からやってきた錬金術士。我らがロジーさん。
錬金術士なのでアイテムも使える。ステータスもそれなり。頼りになる。
【鉄石を五個納品し、報酬である1000円を入手しました】
【アイテムをコンテナに移しました】
【さて、ここから本格的にコマンドが入ります】
【イベントがあるコマンドでは【!】マークが右端に出ますので、参考にしてください】
【交流は外出一回毎に一回。外出コマンドだけでなく、誰と交流するかも選択可能です(ただしステータスが開示されている仲間のみ)。けれどイベントマークが出ている時はその回数が消費されません】
【!マークがついてる場合は、交流人物指定は無効になりますのでご注意を】
【その他、その場説明など――質問があれば、その場で訊いていただければ】
ロジーとフィリーを空き部屋に案内して、僕らは休息をとった。
そして翌日。
時雨「……さて、これからなにをしようかな」
新しく仕事が入っているかもしれないし、誰かと話すのもいいかもしれない。
勿論、錬金術を極めるのもいいかもしれない。
でも、レシピ本は一冊しかないし……。
現在のレシピ
・ヒーリングサルヴ
植物類 + エリキシル + 水
・中和剤
なんでも×2
・うにクラフト
うに×2
所持素材
【鉄石】 (カテゴリ:鉱石類、薬の材料) 『所持数5』
品質 30 特性:防御力+4
その辺りの何の変哲もない石――のように見えるけど、鉄が大量に含まれているれっきとした鉱石。
質はよくないんだけど、採りやすくて重宝する素材。サプリメントの材料にもできなくもない。
【青色の草】 (カテゴリ:植物類、食材・野菜) 『所持数10』
品質 40 特性:回復量増加Lv1
青い草。ブルーなのではなく、緑色。そういう意味の青い。
すなわち普通の草。けど普通の雑草とは違って、身体にいい成分が含まれている。食べると以外に美味しい。
【パラパラした土】 (カテゴリ:火薬、粘土) 『所持数10』
品質 25 特性:破壊力増加
さらさらとした土。手触りがよく掘りやすくて集めやすい。雨が降った日はねとねととし、歩きづらい。
調合でよく使う素材の一つ。
【キラバッタ】 (カテゴリ:虫、宝石、エリキシル) 『所持数9』
品質 30 特性:会心の効果
太陽の下で宝石のように輝くバッタ。
草原で何かが光ったと思ってしゃがみこむと、このバッタが飛び跳ねてきた――などと、老若男女問わず悪評が多い。
【うに】 (カテゴリ:食材・野菜、植物類) 『所持数2』
品質 40 特性:なし
アイテムとして使用した際の攻撃力 攻撃力プラス3 さらにコンマ判定に30をプラス(40が出た場合、70として計算する)
いつの間にか木で採れるようになった大きな栗――ではなく、うに。
どう考えても栗なのだけれど錬金術の本ではなぜかこの名称だった。
当たると痛く、持つときも注意しないと痛い。名前を呼び投げつけるのが決まりらしい。
コマンド
・アトリエ外へ
・交流 【!】
・錬金
・クエスト 【!】
安価↓1
【イベント 先輩錬金術士と】
時雨「そういえば……」
ふと、思い出す。
休んでいた時は忘れていたけれど、ロジーから錬金術についてあれこれ聞こうと思っていたんだった。
時雨「行ってみようかな」
錬金術もお出かけも後回し。まずは貴重な錬金術士から話を聞くとしよう。
そうと決まれば話は早い。僕は身支度を終えるといつもの制服姿で、ロジーの部屋へと向かった。
○
ロジー「……あぁ、時雨か。どうしたんだ? 護衛か?」
ロジーの部屋。ドアをノックすると、ロジーがすぐ顔を出した。
彼は僕を見ると人の良さそうな笑顔を浮かべ、問いかける。
世間一般で言うイケメンというやつなのだろうと僕は思う。嫌味というものがまったくない。
時雨「ロジーと話がしたくて。いいかい?」
ロジー「ああ。いいけど――」
快諾したロジーの視線が僕の後ろへ。
なにかあるのだろうかと後ろを見てみれば――
山城「……」
壁に背を寄りかからせる山城がいた。
時雨「……えっと、山城?」
どうしたんだろうか。
僕らのことを鋭い目で見ているけれど。
山城「時雨。男の部屋に入るのはあんたにはまだ早いわ」
山城は静かに言った。
時雨「そうなの? それって……なにか儀式的な?」
ロジー「違うと思う」
二人から呆れられたような顔をされる。
ずれた質問だったらしい。
ロジー「外で話をするか。どこがいい?」
時雨「外でかい? それなら中庭のベンチでも」
山城「――」スタスタ
ロジー(保護者だな……気持ちはわかるけど)
ロジー「分かった。行こうか」
ロジーが頷いて、部屋から出てくる。
いつの間にか山城はさっきの場所からいなくなっていた。
で、中庭。
ロジー「……ええと、何の話をするんだ?」
ベンチに座って少しすると、ロジーは首を傾げた。
時雨「錬金術士について、ちょっと訊きたくて」
ロジー「錬金術士か。この世界だと錬金術は普通の技術じゃないのか?」
時雨「うん。今は科学だとか、論理的なものが発達していて……錬金術はどちらかと言うと空想の産物扱いされてるかな」
ロジー「そうなのか……なら、時雨はなんで錬金術を学んでいるんだ?」
時雨「それはね……」
僕は自分にレシピ本を渡してくれた錬金術士、そして自分の錬金術に対しての取り組みを話した。
ロジーはそのすべてをしっかり真面目に訊いてくれて、なんだか僕は嬉しい気分になってきた。今まで錬金術なんて言ったら、みんなからかうか疑うかだったから、そんな真面目なリアクションをしてくれる彼の存在が、僕には特別に思えたのだ。
ロジー「なるほど。時雨はその人に影響されて錬金術を学んだんだな」
時雨「うん。役立つ、って言ってたから」
ロジー「確かに役立つかもしれないな。錬金釜の錬金術は古臭いけど可能性は未知数だからな」
どこか嬉しそうに語るロジー。
彼は僕の目を見て、にっこりと笑う。
ロジー「俺の知っている錬金術士も、そうだった」
時雨「ロジーの知っている錬金術士?」
ロジー「ああ。最初はドン臭いと思っていたけど――」
懐かしむような、ロジーの優しい目。
彼の目を見て、僕は思う。その錬金術士は僕よりはるかに偉大な錬金術士なのだと。
ロジー「最後は、俺を越えていった」
ロジー「時雨もきっとそうなるはずさ」
いつかそうなれればいいな……。僕は、彼の表情を見て、心から思った。
【ロジーの親密度が2上がりました】
時雨「錬金術士にも色々あるんだね……」
僕もあの、本をくれた錬金術士くらいには立派になりたいものだ。
それで誰かに錬金術を教えられたら――きっと幸せなのだろう。
ロジーとの話を終えた僕は、しみじみ思った。
コマンド
・アトリエ外へ
・交流
・錬金
・クエスト 【!】
安価↓1
【錬金】
時雨「調合でもしてみようかな……」
出掛けるにも、異変の調査をするにも戦う力は必要。
ならば自分の強化をするのが自然な流れというもの。
――なにを錬金してみようか。
『現在錬金可能なアイテム』
・中和剤
なんでも×2
・うにクラフト
うに×2
『どうする?』
↓1
【うにクラフトは素材選択の余地がないため、自動的に調合します】
時雨「まずは戦闘用に……」
うには二つ。
うにクラフトはうにが二つ必要。となれば、今後のためにも調合しておくべきだろう。
時雨「やるしかないよね」
即決。残りのうにを投入し、僕はうにクラフトの調合を開始した。
【うにクラフトの調合に成功しました】
【錬金レベルが1アップし、2となりました】
【完成品】
『うにクラフト 品質 40』
・効果
針を飛ばす 小 (敵単体を攻撃。ダメージ判定の際に攻撃力を10プラス。コンマに35プラス)
・使用回数 3
・特性 なし
時雨「――うん。うまくできたかな」
初めてヒーリングサルヴと中和剤以外を調合したけど、うまくできてよかった。
【うにクラフトを装備しますか?】
【時雨、ロジーが装備可能です】
【装備する場合は時雨かロジーを選択。装備しない場合は装備しないと記載】
安価↓1
時雨「これでちょっとは強化になるといいけど」
ポーチの外ポケットにしっかり入れておく。
そうでなくても杖での戦闘は苦手なのだ。少しでも役に立てるようにしないと。
時雨「……いつか新しい武器とか欲しいなぁ」
今は適当な枝を杖っぽくしているだけだし……。
ため息を一つ。苦笑すると僕はこれからの予定について考えた。
コマンド
・アトリエ外へ
・交流
・錬金
・クエスト 【!】
安価↓1
【メインイベント 受付嬢のお仕事】
なにをするにもまず目標。
僕はなんとなく仕事の受付カウンターに。
指令棟の入り口から入ってすぐ前。
前は明石がアイテム屋と称して、探索に必要なあれこれを売っていたり、書類を置いていたり乱雑な状況になっていたけれど――今その場所は小奇麗に。
時雨「おお……」
たった一日でここまで変わるものか。
感心する僕だけれど――
フィリー「フフフ……」
そのカウンターでフィリーが怪しい顔をして本を呼んでいた。
一応彼女のことを気遣ったけれど、彼女の今の台詞は『グフフ』に近い。危ういなこれ。
時雨「フィリー」
フィリー「――あ。時雨ちゃん。ようこそ。お仕事?」
声をかけると、ちょっとおどおどしながら彼女は僕へ笑いかける。
まさに可憐な美少女。さっきまでのあれがなければ。
時雨「うん、そうなんだけど……」
フィリー「だけど?」
時雨「今、何読んでたの?」
フィリー「ふぇえ!? あ、あの、あれは……夕張ちゃんからおすすめされたもので」
時雨「夕張? あ、漫画か小説?」
大体察しがついた。問いかける僕へ、フィリーはこくこくと頷く。
そうか、夕張の友達が増えたわけだ。異界同士の文化交流。微笑ましいことだ。
フィリー「時雨ちゃんもよく読んだり?」
時雨「僕は……あんまりかな」
フィリー「そっか……。でも、いいよね……日本」
フィリー「この鎮守府は私の理想郷だよ」ウットリ
昨日のフィリーはどこにいったというのだろう。
まさかここまで適応するなんて。
時雨「あはは、気に入ってくれたみたいでよかったよ。で、仕事についてなんだけど」
フィリー「あ、そうだよね。ちょっと待ってて」
言って、フィリーは一冊のファイルを取り出す。
まだまだ挟まっている紙が少なく薄いそれを捲り、彼女はあれこれと仕事の説明をしてくれた。
フィリー「まず一つ目。『蒼い海』で小さい女の子が人を襲う――なんて噂が立っているらしいの」
・『蒼い海調査』
小さい女の子が人を襲う。
そんな噂が街で立っているらしい。なんでも、めっぽう強いのだとか。危険そうだ。
報酬 3000円
フィリー「それと二つ目。『近所の山』大剣を持った女の子がいるらしくて」
・『大剣の少女』
特に危険はない――らしいが、食料品をねだってくるとのこと。
なにか食べ物でも持って行こうか。
報酬 2000円
フィリー「それからもう一つ。『暗い洞窟』で大きな魔物を見た人がいるの」
・『洞窟の魔物』
危険な魔物が洞窟に住み着いて、資源が回収できずにいるようだ。
錬金術士の仕事――でもないが、倒してあげよう。
報酬 5000円
フィリー「いやー……今はこれくらいしかないかな」
フィリー「後はヒーリングサルヴ、中和剤の納品が報酬2000円で出てるくらいかな」
時雨「……うん。わかったよ」
フィリー「わかりづらかったりシなかったかな?」
時雨「いや、全然明石より分かりやすいよ。流石は本業だね」
フィリー「えへへ……ありがとう、時雨ちゃん」
さて――何の依頼を受けようか。
【何の依頼を受けますか?】
【依頼は複数うけることができますが、依頼によっては採取地に入った瞬間戦闘がはじまり、勝てないと採取できない――なんてことも】
安価↓1
時雨「これにしようかな」
とりあえず、危険がなさそうなものを選択する。
大剣の少女。単純に気になったものでもある。
それに食べ物に困っているなら、助けてもあげたいし。
フィリー「うん。あんまり無茶はしないようにね」
時雨「気をつけるよ」
フィリーが意外に手早い動きで書類を僕へ手渡す。
依頼内容の詳細をコピーしたものみたいだ。これでいつでも依頼のことについて確認ができるということか。
フィリー「あ、そうだ。あと一つ説明することがあって」
時雨「うん? なんだい?」
フィリー「明石ちゃんが手が空いたから、このさきの売店スペースで本格的にお店をするみたい」
フィリー「お水とか、鉱石とか、あとは簡単な武器とかもあったり」
時雨「そっか。時間ができたら行ってみるよ」
明石のお店かぁ。期待ができそうだ。
食べ物、今は草しかコンテナにないし――買っていくのもいいかもしれない。
【『大剣の少女』の依頼を受けました】
【コマンドにお店が追加されました】
コマンド
・アトリエ外へ 【!】
・交流
・錬金
・クエスト
・お店へ【!】
安価↓1
【今日は落ちま】
【メインイベント 開店!】
売店スペース。
それは指令棟の中にある、とある一室のことだ。
この鎮守府が鎮守府としてまだ機能していた頃、その部屋は自販機や戦闘配食を作る艦娘らで賑わっていた。
けど今は誰も出撃などせず――がらんとしている。
自慢できる点といえば、焼きおにぎりとかたこ焼きとかホットドッグとかを売っている自動販売機だろうか。
これが身近にあるのは中々嬉しい。……と、司令官は言っていた。
明石「あ、時雨ちゃん。いらっしゃいませ」
さて。そんな部屋に明石が一人、にこにこと上機嫌に立っていた。
人がたくさんいたこの部屋を知っているからか、こうも少数だとやっぱり広く思える。
時雨「お店をやってるって聞いたから、来てみたよ」
明石「おおう、早速宣伝効果がありましたね」
明石「では、今ある商品を。錬金術士の時雨ちゃんに役立ちそうなのは……」
商品一覧
・【水】 (カテゴリ:液体) 『所持数0』 価格:30円
品質 50 特性:なし
そこらにあるお水。もはや売り物になるのかも怪しい。
売ってお金を増やす錬金術は今回できないようだ。
・【おにぎり】 (カテゴリ:料理) 『所持数0』 価格:300円
品質 50 特性:なし
・効果 懐かしい味
(LPをコンマ判定を行い、その半分の数値回復)
・使用回数 1
・特性 なし
・【酒】 (カテゴリ:液体、香料、毒の材料) 『所持数0』 価格:400円
品質 60 特性:効果アップ 小 (判定にプラス10)
時雨「……これ、あそこの自動販売機の方が」
明石「言わないでください! しょうがないんです! 私達艦娘だから!」
時雨「――まぁ、それでも助かるけど」
品質が高い液体は必需品だ。
だからここで水とお酒を買えたりするのは嬉しかったりする。
――さて、何をどれだけ買おうか。
現在の所持金 1000円
なにをいくつ買う?(複数可)
↓2
【今作、カゴ――ポーチに入るのは採取地で採取した素材のみです】
【面倒そうなので、うにも装備アイテムの仲間入り。今度手に入れたら、素材及び装備アイテム扱いをします】
【ということで、アイテムをポーチに大量に入れてストックしておく――なんてこともできなくなります】
【で、使用回数は黄昏シリーズルール。鎮守府に帰ると補充されます】
【採取した素材は一度コンテナに入れると、いつでもどこでも利用可能になります】
間違えました。ここから↓1で
【酒を二個、水を三個購入しました】
【860円消費で、残り140円です】
時雨(草でも大丈夫かな……)
できるだけ、錬金術に役立ちそうなものにお金を使いたい。
食べ物を要求してくるという人には草で我慢してもらうことにしよう。
明石「どうもありがとうございます。商品はこれから頑張って仕入れていく予定ですから、また来てくださいね」
時雨「うん。期待してるから、頑張ってね」
できればレシピがあったらなぁ……なんて。
自分でレシピが考えられるようになったらいいんだけど。
僕は明石に挨拶をし、お店から出ていった。
コマンド
・アトリエ外へ 【!】
・交流
・錬金
・クエスト
・お店へ
安価↓1
【基本的にイベントなどがあるとき以外は三人パーティーでお出かけです。以下も以上もないです】
【なので今回は時雨、夕立、ロジーさんの三人で外出】
【メインイベント 本格的な旅】
鎮守府の門へやって来た。
事前に伝えておいた時間通り、僕は門へ。
すると既に二人、今回の旅に同行する仲間が到着していた。
ロジー「お、来たな時雨」
夕立「遅いっぽい!」
時雨「待たせてごめん。さぁ、行こうか」
二人へ軽く謝り、僕は最後にポーチの中身を確認する。
――うん、大丈夫だ。
時雨「よし。――それにしても」
視線を上げ、僕は口を開く。
時雨「二人とも結構仲がよさそうだね」
僕が来る前。ちょっと遠くから見た時、二人はなにやら笑い合って話していた。
距離も近めだし、これはちょっと嫉妬しちゃうかな、なんて。
夕立「仲はいいよ。さっきも色々お話してたんだ」
ロジー「ああ、そうだな。この世界のことを教えてもらってた」
夕立「電気とか、ガスとか」
時雨「なるほどね。話を聞く限りあっちの世界にはなさそうだし」
大げさな技術といえば、錬金術――みたいな世界で、あまり科学が発展していないという印象だ。
中世の西洋みたいな。ファンタジーな世界だよね。
ロジー「うん。この世界の常識はすごいな。効率化の極地みたいだ」
夕立「あはは、ロジーまた『効率』って言ってるっぽい」
――まぁ、二人が仲良くしてくれてなによりだ。なんか髪の色も似ているし、兄妹みたいで微笑ましい。
今までろくに男性と接してこなかったし、いい機会だ。
時雨「……さぁ、行こうか」
話もそこそこに、僕は二人へ言う。
これからが本格的な旅になるだろう。なんとなく、僕はそう感じた。
さて、どこに行こう?
マップ一覧【表の下に行くほど移動の際にLPを消費します】
・近所の山【!】 採れる素材 鉄石、青色の草、パラパラした土、キラバッタ
出現モンスター 青ぷに
・暗い洞窟 採れる素材 ???、???、???
出現モンスター ???
・広い草原 採れる素材 ???、???、???
出現モンスター ???
・蒼い海 採れる素材 ???、???、???、???
出現モンスター ???
安価↓1
【LPを5消費】
蒼い海。
名前の通り蒼色をした海のことで、白い砂浜、穏やかな波音。
海といえばおおよそ頭に浮かぶであろう、オーソドックスな場所である。
時雨「……海だね」
夕立「そうだね」
ロジー「海か……この世界では――いや、これが海ってものなのか」
……なんだか分からないけど、ロジーが感動している。
今まで海がないところにいたのかな?
さて、と。依頼が出ていた場所はここだけど――今のところ気配はない。まぁそもそも受けていないから関係ないのだけど。
コマンド
1・採取(素材を採取します)
2・探索(辺りを探索します。コンマゾロ目でいいこと)
3・移動(場所を移動します。一回目では選択不可)
↓1
時雨「――ひとまず、採取しようか」
決断。兎にも角にも素材。錬金術士として常識だ。
夕立「また採取ー?」
ロジー「了解だ。錬金術では大切だからな」
夕立は渋々、ロジーは快く頷いてくれる。
僕らはてきぱきと素材の採取をはじめた。
【岩塩】 (カテゴリ:調味料、鉱石類) 『所持数0』
品質 30 特性:使用回数+1
岩のような塩の塊。かじると信じられないくらいしょっぱく、ちょっとでも充分な塩味がつく。
ミネラルの力というやつだろうか。これで作る料理は風味が違う。
【蒸留石】 (カテゴリ:鉱石類) 『所持数0』
品質 45 特性:軽い (アイテム使用時、コンマが4だと再度行動可能)
小さな穴があちこちに空いた石。すかすかでとても軽い。
【コヤシイワシ】 (カテゴリ:魚) 『所持数0』
品質 25 特性:なし
小さなイワシ。商品価値はなく、味も苦味くらいしかない。
漁師からは水揚げの際にくっついてくる不要品――のような扱い。コヤシにするくらいしか使い道がない。
【白砂パウダー】 (カテゴリ:砂) 『所持数0』
品質 50 特性:品質アップ 小
きらきらとした綺麗な砂。何が含まれているのかは分からないが、ふわふわしていて触っていて気持ちがいい。
これで調合したアイテムは出来がよくなる気がする。
ポーチの空きは40です。
なにをどれだけ採りますか?
安価↓1
【全部10個ずつ採取しました】
【戦闘はなし】
時雨「……これでいいかな」
ポーチ満タンに全素材をまんべんなく。
いい感じに素材が採れたと思う。
ロジー「そうだな。ここでは、これくらいだろう」
夕立「また何日も……疲れたっぽい」
ロジー「大丈夫か? 夕立。無理なときはちゃんと休むんだぞ」
流石ロジー。錬金術士なだけあって慣れている。
僕も疲労は感じているし……見習わないと。
時雨「二人とも手伝ってくれてありがとう。次は――」
コマンド
1・採取(素材を採取します)
2・探索(辺りを探索します。コンマゾロ目でいいこと)
3・移動(場所を移動します。一回目では選択不可)
↓1
【いいこと決定です】
【では今日はここで落ちます】
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