【艦これ】提督「ブルーハーツ」 (45)

1.夕焼け
2.TRAIN-TRAIN
3.終わらない歌
4.月の爆撃機
5.人にやさしく
6.脳天気
7.英雄に憧れて


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提督「はっきりさせなくてもいい」


朝潮「それは、どういう意味でしょうか?」

提督「それだよ」

朝潮「…………?」

提督「朝潮、お前の遠征の報告は正確で丁寧だ、見やすくていつも助かっている」

朝潮「はい、ありがとうございます」

提督「でもな、朝潮…うーん、なんて言うか…疲れないか?」

朝潮「いえ、そんなことはありませんが…司令官こそ、お疲れではないですか?」

提督「俺は…うーん、どうだろうなぁ…」

朝潮「…………」

提督「………………」

朝潮「………………?」

提督「……ん?ああ、俺の返事は『どうだろうなぁ』だよ」

朝潮「……!?」

提督「はは、意味が分からないって顔してるな」

朝潮「し、失礼ですが…それは質問の答えとしては不適切なのでは…?」

提督「んー、まぁそうだろうなぁ」

朝潮「ならなぜ…」

提督「だから言ったろ、はっきりさせなくてもいい。って」

朝潮「しかし物事ははっきりさせておいたほうが…」

提督「朝潮はそういう性格だからなぁ…でも俺はあやふやなまんまでもいいと思うんだよ」

朝潮「あやふやなままで…ですか…。…済みません…私には、分かりません…」

提督「君は…強いな」

朝潮「…………」

提督「朝潮みたいに何にでも真っ直ぐ向かい合える人は、人間として尊敬するよ」

朝潮「私はそんな立派な艦娘では…」

提督「誰にでも出来ることじゃない、素敵なことだ」

朝潮「……ありがとう、ございます」

提督「俺は責任とかってのが苦手でな、朝潮みたいな立派な生き方は出来そうにない」

朝潮「い、いえ、司令官はとても立派な人物です!」

提督「はは、ありがとう…だからまぁこうやってぼんやり話してるんだけどさ…一つだけ」

朝潮「一つだけ…なんでしょうか?」

提督「…んー…表現しにくいな…なんていうか…俺たちは、はっきりと生きてるだろ?」

朝潮「…?えぇ、はい…」

提督「な?それでいいんだよ」

朝潮「……やっぱり、分かりません」

提督「……そっか」

提督「…………」

朝潮「…………」

提督「……夕焼け空が綺麗だな」

朝潮「…そうですね」

提督「俺さ、この時間は好きだな」

朝潮「夕方がですか?」

提督「夕方が…と言うよりは、遠征から帰ってきた朝潮を迎えて、報告を聞きながら話をしてるこの時間が、かな」

朝潮「報告を聞くのが…ですか?」

提督「うーん…惜しいね…まぁ皆が無事に戻ってきてくれたことは嬉しいし、それ以上のものはないけれど…」

朝潮「………?」

提督「………そうだな、朝潮、考えてみてくれよ」

朝潮「わ、私がですか」

提督「ああ、君なりの答えでいいからさ」

朝潮「そうですね…もうすぐ職務を終える時間なのでそれが嬉しい、などでしょうか?」

提督「ふんふん、なるほど」

朝潮「……………」

提督「…うん、続けて」

朝潮「え、あ、はい…えっと…最近は暑くなってきましたから…気温が下がって丁度いい、などですか…?」

提督「うんうん、他には?」

朝潮「え、えぇっと…えぇっと…」



提督(君は気付かないんだろうなぁ)

朝潮「他には…他には…」グルングルン

提督(こうやって皆が無事で、夕陽を背に帰って来る君の姿は何よりも美しくて)

提督(こんな他愛のない話を続けられたなら、どれだけ良いだろう)

提督(だからこそ俺は、このささやかな幸せを全力で守り抜こうと思えるんだ)ナデナデ

朝潮「し、司令官…この手は何か新しい暗号でしょうか…?」

提督「はは、意地悪して悪いな」ナデナデ

朝潮「い、いえそんなことは…」

提督「…ありがとうな、いつも助かってるよ」

朝潮「……こちらこそ、ありがとうございます」

提督「……何だか、こういう真正面からってのは…性に合わないな」

朝潮「…済みません、結局、司令官の言うことはあまり分かりませんでした…」

提督「…そっか」

朝潮「…でも、いつか私にもその答えが理解できるように頑張ります!」

提督「…あーダメだこりゃ」

朝潮「!?」

提督「…はは、でもその方が朝潮らしくていいか」

朝潮「司令官!今のはどういうことでしょうか!?」

提督「はは、いいじゃないかそんなことは」ナデナデ

朝潮「し、司令官!」

今回はここまで、ゆっくりやっていきます

自分自身、にわかの権化のような性格なので叩かれるのも承知でスレ立てしました

スレタイは
提督「ローリングガールズ」
と悩んだのですが、楽曲自体はTHE BLUE HEARTS様のものなので…ということで

>>1のラインナップですが、ローリングガールズのソング集「英雄にあこがれて」に収録されているボーカル有りの楽曲を参照させて頂かせています

それではまた次回、よろしくお願いします

島風「天津風のバカ!もう知らない!」

天津風「あっ…!ちょっと待ちなさいよ島風!」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

島風「……はぁ…またやっちゃった…」

提督「ん、島風か…どうしたんだ?こんなところで」

島風「あ、提督…ううん、何でもないよ」

提督「そんな顔で何でもないって言われてもな…まぁ座れ」ポンポン

島風「………」チョコン

提督「これ飲むか?」

島風「……ん、ありがと」

提督「………………」

島風「…………………」

提督「……………………」

島風「………………………」


提督「…………………………」



島風「………あの、ね」

提督「……ん」

島風「私って、必要かなぁ…」

提督「……ああ、もちろん」

島風「それは戦力として、でしょ?」

提督「…どうしてそう思うんだ?」

島風「………………」

提督「…………………」

島風「………さっきね、天津風とケンカしたの」

提督「…おう」

島風「もっと周りと仲良くしなさい、って言われたの」

提督「…おう」

島風「私には連装砲ちゃんがいるから、って言ったら、そんなの寂しいないの、って」

提督「………」

島風「……何だか私、分かんなくなって…飛び出してきちゃった…」

提督「……そっか」

島風「提督…速いだけじゃ、ダメなの…?」

提督「…………」

提督「…島風」

島風「……………」

提督「…ここは、鎮守府だ。敵と殺し合う為の基地だ。悲しいが、ここは天国なんかじゃない」

島風「……じゃあ、私は…」

提督「聞け、確かにここは天国なんかじゃない、が…かといって地獄でもない」

島風「…………」

提督「…お前から見て、ここの連中はどうだ?」

島風「……加賀さんは怖いし、天龍さんは厳しいよ、でも…連装砲ちゃんもいるし、天津風は……」

提督「…………」

島風「天津風は…………」

提督「……はぁ…友達、だろ?」

島風「……うん」

提督「確かに加賀は無愛想だが、あれでも意外と周りに気をまわしてる。天龍が厳しいのだって、お前たちが心配だからだ」

島風「………………」

提督「良いヤツばかりじゃないかもしれないが…悪いヤツばっかでもない…な?」

島風「…………ん」

提督「お前たちはいつも戦っている。深海棲艦とも、戦うことの恐怖ともな…そんな日々の中で自分が分からなくなることもあるだろう」

島風「……うん…」

提督「でもな…俺はお前の提督だ、島風。悲しかったら俺に言え、嬉しかったら俺に言え」

島風「……うん…」グスッ

提督「俺はお前を見捨てない。絶対にだ…だから、本当の言葉を聞かせてくれよ」

島風「……うん…!うっ、ふぐっ…う、ぁぁあああ……!わぁぁぁああああん!」ポロポロ

提督「…よしよし…大丈夫、大丈夫だ」ポンポン

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

島風「…………」グスッ

提督「…落ち着いたか?」

島風「……うん」

提督「…なら良かった。……島風、さっきの質問…速いだけじゃダメなのか、だったな」

島風「…………」

提督「…ダメだろうな」

島風「!」ビクッ

提督「世の中、速いだけじゃ解決できないことの方が多いと思う」

島風「……そんな…」

提督「………はは、そんな死にそうな顔するなよ、大丈夫だって言ったろ」

島風「……………」

提督「俺がお前を守るよ、速さだけじゃダメかもしれないが、お前には俺がいるだろ?」

島風「……ぁ…」

提督「俺がお前を守る。だからお前は前だけ見てろ…な」

島風「……本当に?私は…ここにいてもいいの?」

提督「当然だ、俺はいつだってお前のそばにいる…だから、お前はどこまでも走っていけ」

島風「提督っ…!」

提督「おいおい、また泣くなよ?…ほら見ろ、俺以外にだってお前を必要としてるヤツはいるみたいだぞ」

島風「えっ…?」



天津風「あーっ!やっと見つけたわよ島風!まったく心配させて!」


島風「天津、風…」

天津風「ほら戻るわよ!時津風だって長波だって心配してるんだから!」

島風「え、えっと…天津風、さっきはごめんね!」

天津風「…もう怒ってないわよ、私もごめんね」

提督「良かったな、島風」

天津風「あなた、ここで島風と何の話をしてたの?」

提督「さぁ、何だろうな…島風、天津風が部屋まで競争したいそうだ」

島風「本当!?負けませんよ!」

天津風「えっいや私は…あぁもう分かったわよ」

提督「だってさ、良い友達だな天津風は」

天津風「なっ、急に何言ってんのよ!」

提督「さぁな…もう大丈夫だよな、島風?」



島風「もちろん!だってはやいもん!」



今回はここまで
もしかしたら今夜また書くかもしれません
俗に言う「行けたら行くWAR」
また次回

提督(……よし、夜間警備もこんくらいで切り上げるか…最後に回るついでに食堂でなんかつまんでいくかね)

提督(流石にこの時間は静かだな…誰もいない………って、あれは…)


那珂「………………」


提督(……那珂?真っ暗な食堂にたった一人で何やってんだ?)コソコソ


那珂「…………はぁぁああ…」

那珂「……………………」

那珂「………………………」

那珂「…………………………」



那珂「………………はぁぁぁぁああ……」



提督「お前ホントに那珂か?」

那珂「うひゃぁぁあああっ!?提督のオバケ!?」

提督「失礼な奴だな」

那珂「あービックリした、提督何やってるんですか?」

提督「夜間の見回りをな、お前こそここで何を?」

那珂「…いや、それは……あはは」

提督「………」

那珂「…………」

提督「……呑むか」

那珂「えっ」

提督「実は食堂裏の冷蔵庫の一部は俺の酒蔵でな、いくらでもある」

那珂「いや、そういうことじゃなくて…那珂ちゃんお酒はちょっとイケナイかな〜…なんて」

提督「…それは、お前が『アイドル』だからか?」

那珂「」ビクッ

提督「まぁお前が何で悩んでるのかは知らないし、話したくないなら干渉もしない…だが」

那珂「………だが?」

提督「………いや、何でもない。取り敢えず呑め」

那珂「…………じゃあ、ちょっとだけもらっちゃおうかな〜…」

提督「おう」







那珂「らからぁ!てーとく聞いへますぅ!?」ドンッ!

提督(出来上がんのはえーなー)ゴクゴク

那珂「私らってぇ、これでもちゃんとひてるんですよぉ」

提督「おーそうかそうか」

那珂「こーみえて練度はこの鎮守府で最高ですもんね!」

提督「おーそうかそうか」

那珂「てーとくがくれたこの指輪のおかげですよ!ありがとーございます!」

提督「おーそうかそうか」

那珂「らからぁ!てーとく聞いへますぅ!?」ドンッ!

提督「おーそうかそうか」ゴクゴク

那珂「もおおおお!」

提督「そう怒るなよ、折角の可愛い顔が台無しだ。アイドルはちゃんとしてないといけないんじゃなかったのか」

那珂「アイドル………」

提督「…………」チラッ

那珂「………………」

提督「……………………」

那珂「……………………」

提督「……………………」

那珂「……アイドルって、何なんだろうね」

提督「…………何かあったのか」

那珂「……アイドルね、疲れちゃった…」

提督「………………」ゴクゴク

那珂「…皆を笑顔に出来るのは、凄くやり甲斐を感じてるよ…でも、私のことをよく思わない人もいるみたいなんだよね」

提督「…人気者の宿命みたいなもんだ」

那珂「……例え極一部だったとしても…私には世の中全体に冷たくされたようにも感じて…つい泣いちゃったこともあったんだ…あはは」

提督「………………」

那珂「……海の上でさ、深海棲艦と戦ってきて…今まで何度も、もうダメだって思ったよ…私には無理だって」

提督「………俺の許可なく沈むことは許さねぇぞ」

那珂「大丈夫だよ、那珂ちゃん強いもん。…でもね、アイドルとして活動してて、最近ようやく少しずつ人気も出てきて…その辺自由にさせてくれてる提督には、すごく感謝してるよ」

提督「……………………」ゴクゴク

那珂「…それで、アイドルとしてお客さんの前に立つんだけど…あそこは戦場だよ、提督。ステージの上で死ぬかと思ったことあるもん」

提督「俺なら逃げ出してる自信あるわ」

那珂「…私もだよ」

提督「そうなのか?」

那珂「うん。逃げ出したくなったことだって何度もあったよ」

提督「でもここまで頑張ってきたじゃないか」

那珂「…うん、それで、何でこんなに頑張ってるんだろうって、誰の為にこんなに頑張ってるんだろうって考えたら…何だか、アイドルも、艦娘も、分かんなくなっちゃった」

提督「…アイドルってのは俺には良く分からんが、少なくとも艦娘としてのお前は俺は高く評価しているぞ」

那珂「………うん、まぁそうじゃなきゃ限界突破の指輪なんて渡さないよね」

提督「………ああ、いや…それは…違うな」

那珂「違うって何が?」

提督「あー何て言うか…その指輪は艦娘としてのお前じゃなくて、女性としてのお前に贈ったものだ…」

那珂「………?」

提督「………まぁ、渡すときに誤魔化してた俺に非があると言われれば、そうなんだが…」

那珂「………へ?…………ふぇっ!?なな、何言ってるんですか提督!」

提督「…………………」ポリポリ

那珂「そんなこと、今まで一度も言ってくれなかったじゃないですか!」

提督「……すまん」

提督「……俺自身、馴れ合いは好きじゃないからな…誤解されてもしょうがない」

那珂「しょうがないって…そんな理由で那珂ちゃんは振り回されてたの…」

提督「…でもまぁ、お前がグチグチ何を悩んでるか知らないけど…それでも俺だけはお前を見捨てないよ、アイドルの那珂ちゃんも、軽巡洋艦那珂も、そして、那珂と言う女性のこともない」

那珂「……あ…」

提督「お前はお前のやりたいことをやれ、俺は何だって、何度だって応援してやるからさ」

那珂「……提督……」

提督「だからほら、元気だせよ。少なくとも、こうやってグタグタ悩んでるのはお前らしくないだろ?」

那珂「……うん、そうだね!よーっし!那珂ちゃん完全ふっかーつ!」

提督「いいぞーっ!よっしゃそんじゃもっかい飲み直しだ!ほら飲め飲め!」

那珂「提督もほらほら!」

提督「うおっしゃあああ!」ゴクゴクゴク!
那珂「きゃっほーい!」ゴクゴクゴク!



那珂「那珂ちゃん!歌います!」

提督「いいぞやれやれー!」

那珂「たまには那珂ちゃんだってヤケクソだよー!こんな世の中知るもんかー!」

提督「那珂、それじゃ弱い!…そうだな!クソッタレの世界ってのはどうだ!」

那珂「あーっ!それいいね!よーしじゃあ!クソッタレの世界に向けて!那珂ちゃん歌いまぁあああす!」

提督「この世の全てのクズ共に向けて!」

那珂「それと那珂ちゃん自身のために!そして何よりも…提督の為に!歌いまぁぁあああす!」

提督「うぉぉぉぉおおお!」

那珂「提督!大好きぃぃいいいい!!」

提督「那珂!俺も大好きだあああああ!!」



那珂「あははははは!!」
提督「はーはっはっは!!」





曙「第3艦隊、遠征から帰投したわ」

提督「お疲れさん。報告書は確かに受け取った」

曙「…それじゃ、私はこれで」

提督「あ、ちょっと待った曙」

曙「…何よ」

提督「もし良かったら、これから一緒に間宮に行かないか?」

曙「……遠慮しておくわ」

提督「いやでも券が余っててさ、これから暇だろ?だからさ…」

曙「私は、行きたくないって言ってるの」

提督「っ……そっか…」

曙「それじゃ」バタン

提督「………」ポリポリ





曙(……ホント、冗談じゃないわ。)






朧「それで、聞きたいことって?」モグモグ

提督「ああ、曙のことなんだが…ここに来てもう半年にもなるが、心を開いてくれてないようでな…」

朧「はぁ…それで?」

提督「俺はどう思われようと構わないんだがな…艦隊に馴染めてるかが心配でな」

朧「ふむ」

提督「憎まれ役は慣れてるからいいんだけどな、あれで艦隊任務に支障をきたしたらマズイし…」

朧「……」

提督「そもそも曙はそういう性格じゃないとなだけじゃないのかって言われたらそれまでなんだけど何か違う気もするし…」

朧「つまり曙と仲良くなりたいと」

提督「」ブッ

朧「………」モグモグ

提督「何言ってんだ朧これはそんなんじゃなくてアレだ提督として当然の事というか義務というか職務内容というかいやそのアレてかコレ…」

朧「…………」モグモグ

提督「……何かいい手段、ないかな」

朧「そうだね、一緒に考えましょうか」

朧「具体的にどんな感じなの?」

提督「なんというか踏み込ませて貰えないんだよ…ここから一歩も通さない、みたいな…声は聞こえてるんだろうけど届いてない、みたいな…?」

朧「…………」

提督「すまん、分かりにくいな…」

朧「…ううん…でも、曙が変な態度取るのって多分提督だけだよ」

提督「え、本当に?」

朧「うん、部屋とかでは普通だし」

提督「その普通の曙ってのを知らないから何とも言えないんだよなぁ」

朧「これ、この間撮った写真」

提督「え、この真ん中の笑ってる子?」

朧「うん」

提督「何これ凄い可愛い」

朧「でしょ」

提督「……はっ、と、ともかく、円滑なコミニュケーションが取れるようになるため、協力してくれ」

朧「がんばる」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

提督(朧の助言通り来てみたが…本当にこんなところにいるとはな)


ザザアアアァァァァ…

曙「………………」


提督(しかし夜の海辺なんかで一体何を…)



曙「………………」

--今回の作戦は、「曙」は攻撃に参加せず、近海の哨戒を…
--全く…肝心なところで動き回る事もできないとは、役立たずが

--聞いたか?「曙」の奴、命令を無視して逃げ帰ってきたらしいぜ
--とんだお荷物だ


曙「っ……」

曙(いつでも、どこにいても私を蝕む、過去の記憶)

曙(ふと上を見上げれば、思い浮かぶのは月の光もを覆い隠す爆撃機)

曙(どんな風に逃げようか、全ては幻と笑おうか)

曙(…所詮、私はいつだって戦争の道具、大きな海の真ん中の黒い影)

曙(いっそ、このまま海に溶けてしまいたい)チャポン



提督「……!?アイツ何やって…!」


曙(艤装がなければ、こんな小さな波にも足を奪われる)

曙(こんな状態じゃまっすぐ歩くくとも難しい、気を抜けばこの真っ黒な海に倒れてドボンかもしれない)ザブッ

曙(例え誰かに…朧や潮、漣に相談してみても、私の行く道は変わらない)ザブッ

曙(……誰も信頼できない、それなら私は…)


提督「---曙ォッ!そこは———!」


曙(……提督?どうしてこんな———)


———ザボンッ!


曙「!?」ゴボゴボッ

曙(なっ…急にここから深く…っ!ダメだ、暗くてどっちが上かも分からない!)ジタバタ

曙(…っ!息が…苦しっ…)ゴボッ…





曙(…嘘でしょ…?こんなところで…また何も出来ずに…)

曙(……ああ、でも…私にはこんな終わり方が丁度いいってこと、なのかもね…)

曙(…あ、こっちが上か…もう上がる力もないけど、最後に良いものが見れたわ…)

曙(手掛かりにもならない…薄い、月明かり…)

曙(海の底には…何があるのか…な…)




曙(………?)



曙(……何よ、折角なんだから最後までちゃんと見せなさいよ)


曙(白い月明かりの真ん中の…黒い影)


曙(……全く、こんな無粋な真似するのはどこのどいつよ、深海棲艦だろうとぶっ飛ばしてやるのに)


曙(……さよなら、最後まで迷惑かけてごめんね…朧、潮、漣、それと……)





曙(………)













ガシッ




・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


曙「…ん…んぅ…ここ、は…」

提督「目を覚ましたか」

曙「…っ!私、何で…っ」

提督「…………」

曙「…っ!あんた、私に何かした!?」

提督「…………」

曙「黙ってないでなんとか言ったら———」

朧「提督はあなたをを助けてくれたんだよ」

曙「え…そうだ、私溺れて!…って…」

提督「………」グッショリ

曙「…その格好…」

提督「……別に」

曙「……何で私を助けたのよ!」

提督「………」

曙「あんた司令官でしょ!?私1人が死んでも何ともないけど、あんたは違う!あんたが無茶してわざわざ私を助ける理由なんて…!」


提督「馬鹿かテメェは!!」


曙「」ビクッ
朧「」ピタッ

提督「立場なんて関係ねぇ、俺はお前だから助けたんだよ!」

曙「…なっ…か、関係ないなんてことないでしょ!それでもし死んじゃったらどうする気!?」

提督「どうもこうもねえよ!それならお前だけでも助けるっての!」

曙「そういう話じゃないのよ!だからあんたが…!」



朧「2人共落ち着いて」ゴンッ


提督「いてっ!」
曙「いたっ!」


朧「まず曙は助けてもらったことにお礼を言うべき」

曙「何で私が!」

朧「いいから」

曙「っ…どうもありがとうござました!このクソ提督!」

朧「曙」

提督「朧、別に構わん」

朧「…曙、提督に心配かけた」

曙「別にこいつが私を心配なんてするわけないじゃない。あって戦力の心配でしょ」

朧「そんなことない」

曙「口ではなんとでも言えるわよ」

朧「…じゃあこれを」

曙「…何よ、それ」

朧「曙が気を失ってた間の提督の動画」

提督「!?」

『曙、死ぬな!死なないでくれ!』

『お願いだ…!頑張ってくれ、曙…!』

『………………』ソワソワソワソワソワソワソワソワ




曙「…………」ポカーン

提督「ぐあああああやめろおおおお」ジタバタ




『…提督、きっと大丈夫だから落ち着いて』

『でも曙が死んだら俺は!…俺は…!ぐっ…』


曙「…あんた…」

提督「………」ポリポリ

曙「何で…私なんかのために…こんな…」

提督「…お前の為だからだよ、だから私なんかとか…言うなよ…」

曙「提督…」

朧「それで、これが曙の写真見たときの提督の様子」

曙「え?」

提督「あっおい」



『これ、この間撮った写真」』

『え、この真ん中の笑ってる子?」』

『うん」』

『何これ凄い可愛い』

『でしょ』




曙「この…クソ提督!」ギロッ

提督「いや待てそれは違う!朧!何とか言ってくれ」

朧「提督は曙が好きだから仲良くなりたいって言ってた」

提督「朧!?」

曙「な、ななな…この、ク、クソ提督ーっ!」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


提督(あれ以来、曙は少しずつだが心を開いてきてくれている気がする)

提督「曙、良かったらこれから一緒に間宮に行かないか?」

曙「はぁ、何で私が」

提督「暇だろ?」

曙「私は行きたくないって…仕方ないわね、分かったわよ」


提督(ここから一歩も通さない、そんな風に君は周りに関心を向けないように装っているけれど)


提督「…ん、ありがとさん」

曙「そんなに必死にお茶の誘いって、一体何を企んでるのよ?」


提督(誰の声も届かない、そんな風に他人との関わりに怯えている君だけど)

提督「はぁいや馬鹿お前これは違うしそんな別に特別なアレとかないし単純に間宮券が余ってるからであって他意なんて微塵もそんな」

曙「…何よ、はっきりしなさいよこのクソ提督」

提督「……ま、とりあえず行こうか」

曙「……ん」


提督(そんな君だからこそ、僕は少しずつでも君に近づいていきたいと思うんだ)






提督「おー見てみろ、満月だ」

曙「そうね」

提督「お前もあの月みたいに丸くなってくれればいいんだけどなぁ」

曙「大きなお世話よ」

提督「はは、でもま、俺は今の曙もいいと思うぞ」

曙「な、何言ってんの!?ドMなの!?」

提督「……………」

曙「……………」

提督「……ははっ」

曙「………ふふっ」

曙「まぁクソ提督がどうしてもって言うから付き合ってあげるけど」

提督「その割には楽しそうだな」


曙「ふふん、私に十分感謝しなさい、このクソ提督!」



今回はここまで

何だかどうしても話が暗くなってしまいがちですが…本当は明るい話を書きたいんですがね

また次回

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