小蒔「敬意をもってあたりましょう」(149)


小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに、小蒔ちゃん」ニコニコ

小蒔「いっぱいの“い”を、“お”に変えて?」

霞「ふんふむ……」

小蒔「……」ワクワク

霞「……おっぱい?」ニコッ

小蒔「ぷっ」

霞「ん?」ニコニコ

小蒔「正解は“おっぱお”でしたー!」ニヤニヤ

霞「……あっ、ほんとうね」ニコニコ


小蒔「おっぱいとか、エロ!」ニヤニヤ

霞「……」ニコニコ

小蒔「いつもそんなこと考えてるの?」ニヤニヤ

霞「……」ニコ

小蒔「あっ、今私の胸見た!」ニヤニヤ

霞「……」

小蒔「ほんとうにエッチ。だからそんなに胸がでかいんだね!」ニヤニヤ

霞「……」ジワッ

小蒔「!?」

霞「……」ポロポロ

小蒔「あっ、あ、泣かないで霞ちゃん!」


初美「あー、また姫様が泣かせてますよー」

小蒔「ま、またとはなんですか!」

初美「さっきも泣かせてたじゃないですかー」

小蒔「そんなことありません。私は全ての人に敬意をもってあたっています」ニコッ

初美「むー、それならいいんですけどねー」

小蒔「ほら霞ちゃん、行こう」

霞「え、ええ」グスッ

初美「……怪しいですねー」


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに、小蒔ちゃん」ニコニコ

小蒔「宝石って10回言って」

霞「宝石宝石……ほうせき」ニコニコ

小蒔「一万円札に載っている人は?」

霞「夏目漱石かしら」ニコニコ

小蒔「ブッブー!」

霞「あらあら」ニコニコ

小蒔「正解は野口英世でしたー」ニヤニヤ

春「……福沢諭吉」ニヤニヤ

小蒔「!?」


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに、小蒔ちゃん」ニコニコ

小蒔「問題です!」

霞「なにかしら」ニコッ

小蒔「あなたはバスの運転手です。さて、この運転手は何歳でしょう」

霞「ふんふむ……」

小蒔「ちっく、たっく、ちっく、たっく」

霞「運転手は私だから、17歳ね」ニコッ

小蒔「ブーッ! 正解は34歳子持ち団地妻でした」ニヤニヤ

霞「……」ゴゴゴ

小蒔「!?」ビクッ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「おはよう、小蒔ちゃん」ニコッ

小蒔「あのね、ダジャレを考えたの」

霞「あらあら、すごいわ」ニコニコ

小蒔「聞いてくれる?」モジモジ

霞「もちろんよ」ニコッ

小蒔「おりゃっ」ピューッ

霞「……」ベチャア

小蒔「……どう?」モジモジ

霞「これは何かしら」ニコッ

小蒔「イカスミ!」


………

小蒔「……」ウトウト

霞「……あら、眠そうね」ニコッ

小蒔「あっ、霞ちゃん。最近寝不足で……」

霞「そういうときは羊を数えればいいのよ」

小蒔「羊が一匹、羊が二匹……」

霞「そうそう、その調子」ニコニコ

小蒔「牛が一匹、乳牛が二匹……」ウトウト

霞「……ん、ん?」

小蒔「霞ちゃんが一匹、霞ちゃんが二匹……」グー

霞「連想ゲームじゃないんだから……」


霞「って、連想ゲームって何よ!?」

巴「落ち着いてください」


………

霞「小蒔ちゃん、こんにちは」

小蒔「あっ、お母さ……、じゃなくって!」アセアセ

霞「あらあら、今なんて言ったのかしら?」ニヤニヤ

小蒔「あ、あう……」

霞「もう一度言ってみてくれる?」ニヤニヤ

小蒔「お、ぉ」モジモジ

霞「聞こえないわ」ニヤニヤ

小蒔「お母さん!」カーッ

霞「誰が子持ちよ!」ゴゴゴ

小蒔「……」ニヤニヤ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「小蒔ちゃん、こんばんは」

小蒔「これ買ってきたの」

霞「トイレ用のスッポン?」

小蒔「これを霞ちゃんの胸にあてて……」ギュッ

霞「きゃっ」ニコニコ

小蒔「えいっ!」ギュー!

霞「い、痛い痛い! 痛いわ!」

小蒔「それっ!」ギュー!


ポンッ!


霞「……あらあら、良い音ね」

小蒔「でしょ?」ニコッ


………

小蒔「か、か、霞ちゃーん」

霞「なあに?」ニコッ

小蒔「ささ、さっきね、スゴいもの見たの!」

霞「落ち着いて、深呼吸」

小蒔「すー、はー」

霞「なにを見たのかしら」

小蒔「露出狂!」

霞「きっとハッちゃんね」

小蒔「初美さん?」

霞「ううん、国広一」ニコッ

小蒔「なーんだ」ニコッ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「どうしたのかしら」

小蒔「えいっ」ピラッ

霞「きゃっ、エッチねえ」ニコッ

小蒔「えいっ」モミ

霞「きゃっ、エッチねえ」ニコッ

小蒔「えいっ」サワッ

霞「きゃっ、エッチねえ」ニコッ

小蒔「なんで余裕なの……?」

霞「うふふ、大人だからよ」ニコッ



霞「だから17歳だって言ってるでしょ!」クワッ

小蒔「!?」ビクッ


………

小蒔「霞ちゃんっ」トタトタ

霞「あら小蒔ちゃん、なにを持ってるの?」

小蒔「クッキーだよ。いる?」

霞「ええ、ほしいわ」ニコッ

小蒔「はい上ーげた!」ニコッ

霞「……あら、ちょうど口の高さね」

小蒔「あーんして?」

霞「ん、あーん……」パクッ

小蒔「どう、おいしい?」

霞「ええ、とってもおいしいわ」ニコッ

小蒔「よかった!」ニコッ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに?」ニコッ

小蒔「握手しようよ」スイッ

霞「ええ、いいわよ」スイッ

小蒔「あっ、手洗ってなかった!」スカッ

霞「……」ジワッ

小蒔「う、うそうそ! はい握手!」ガッチリ

霞「あっ、手を洗ってなかったわ」

小蒔「!?」

霞「……」ニコニコ


………

小蒔「霞ちゃーん、……あれ?」トタトタ

霞「……」スースー

小蒔「寝てる……」

霞「……」スースー

小蒔「おっぱいさわっちゃおう」サワサワ

霞「……ん」スースー

小蒔「やわらかい……」モミモミ

春「……」ジー

小蒔「!」

春「……」ニヤニヤ

小蒔「な、内緒ですよ!?」

春「……黒糖、買って?」ニヤニヤ

小蒔「うう……」


………

藤田「去年は鹿児島の神代、今年は宮永咲……」

久「なにが?」

藤田「パイに愛された子だ」



小蒔「きゃっきゃ」

霞「うふふ」

咲「きゃっきゃ」

和「ふふふ……」



久「……ああ、ね」

美穂子「だったら、久もですね」ニコッ

久「!?」


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「小蒔ちゃん」ニコッ

小蒔「私と霞ちゃんって、血が近いんだよね?」

霞「ええ、そうよ」

小蒔「じゃあ結婚できないの?」

霞「うーん、難しい質問ね」

小蒔「どうなの?」

霞「結婚なんて所詮、紙切れ一枚だから」ニコッ

小蒔「さすがバツイチ!」

霞「団地妻じゃないってば!」クワッ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに、小蒔ちゃん」ニコッ

小蒔「おっぱい大きいね」

霞「そうねえ。肩こりが酷くて……」

小蒔「揉んであげようか?」

霞「あらあら、ありがとう」ニコッ

小蒔「よおし……」モミモミ

霞「……ん、いい感じ」

小蒔「……」モミモミ

霞「もっと、強くてもいいわよ……」

小蒔「はい、終わり。……ん」

霞「なにかしら、この手は」

小蒔「お小遣い、ちょうだい」ニコッ

霞「……10円ね」


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「どうしたの?」ニコッ

小蒔「1+1は?」

霞「2よ。小学生じゃないんだから」

小蒔「田んぼの田でしたー、残念!」ニヤニヤ

霞「証明は?」

小蒔「えっ」

霞「田になる証明を数学的帰納法によって示せ」

小蒔「え、えーと、……あう」シュン

霞「小蒔ちゃんかわいい」ニヤニヤ


………

小蒔「かかか、霞ちゃん」トタトタ

霞「ん、なあに?」ニコッ

小蒔「春ちゃんに追われてるの、助けて!」

霞「あらあら。私の後ろに隠れてていいわよ」ニコッ

小蒔「ありがとう!」



春「……姫様、見なかった?」

霞「ここにいるわ」ニヤニヤ

小蒔「!?」

春「勝手に私の黒糖を食べた罪、万死に値する……」ゴゴゴ

小蒔「お、落ち着いてください、春ちゃん」アタフタ

霞「怯えてる小蒔ちゃんかわいい」


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに、嬉しそうねえ」ニコッ

小蒔「春ちゃんに復讐してきたよ」

霞「復讐って……。何をしたのかしら?」

小蒔「黒糖を小麦粉にかえてきたの」ニヤニヤ

霞「あ、あらあら」

小蒔「手を突っ込んだ瞬間に粉まみれだよ!」ニヤニヤ



霞「小蒔ちゃんがやったらしいわよ」

春「……」ゴゴゴ


………

先生「テスト開始!」

小蒔「……」ウトウト



霞「小蒔ちゃん」ニコッ

小蒔「あっ、霞ちゃん」

霞「テスト、どうだったかしら」

小蒔「全教科満点だよ!」

霞「……一番頭のいい神が降りたのね」

小蒔「余裕だったね」ニヤニヤ

霞「がんばり屋の小蒔ちゃんはどこに……」ヨヨヨ


………

小蒔「ねえ、霞ちゃん」シャクシャク

霞「なにかしら、小蒔ちゃん」シャクシャク

小蒔「スイカって、野菜なの?」

霞「さあ。メロンかもしれないわねえ」

小蒔「メロンは野菜なの?」

霞「メロンは胡瓜よ」

小蒔「胡瓜は野菜なの?」

霞「うーん、多分ね」

小蒔「じゃあスイカも野菜だね」シャクシャク

霞「そうねえ」シャクシャク


………

小蒔「だーるーまーさーんが……」

霞「……」ソロリ

小蒔「転んだ!」ガバッ

霞「……」ピト

小蒔「うごいたーっ!」

霞「止まってたわよ、ちゃんと」

小蒔「胸が揺れてたよ」ニヤニヤ

霞「もうっ、スケベさん」


………

小蒔「……」

巴「……姫様、私の眼鏡知りません?」

小蒔「……さあ、知りませんね」

巴「……あの、姫様って、眼鏡かけてましたっけ」

小蒔「……はい、今日から」

巴「……私の眼鏡ですよね?」

小蒔「……なんのことやら」

巴「……」

小蒔「……」

巴「……似合ってませんよ、それ」

小蒔「……!」


………

小蒔「霞ちゃーん」トタトタ

霞「あら、小蒔……ちゃん?」

小蒔「どう、似合う?」

霞「……その眼鏡はなにかしら」

小蒔「似合うでしょ?」

霞「ふんふむ……」

小蒔「ね?」

霞「似合ってないわ」ニコッ

小蒔「……」ジワッ

巴「ぷっ」ニヤニヤ


………

小蒔「春ちゃん」トタトタ

春「なに、姫様」

小蒔「知恵を貸してください」

春「……何をたくらんでるの」

小蒔「霞ちゃんに、初美さんの巫女服を着せたいんです」ニコッ

春「……」

小蒔「なにとぞ、お知恵を」

春「ううん……」

小蒔「なにとぞ、なにとぞ」

春「盗んで着せれば?」

小蒔「それだっ!」ピカー


………

霞「なにか変ねえ……」

小蒔「どうしたの、霞ちゃん」

霞「今日の巫女服、やけにきつくて……」

小蒔「わわっ、胸がこぼれてるよ!」カーッ

霞「太っちゃったのかしら。困ったわ」

小蒔「大丈夫、霞ちゃんはスタイルいいしきれいだよ!」

霞「うふふ、ありがとう」ニコッ

小蒔「だから写真撮るね」カシャッ

霞「うん、どういうこと?」


………

霞「小蒔ちゃんのいたずらにも、困ったものねえ」

巴「何とかなりませんか?」

初美「私にいわれても……」

春「……やり返せばいい」

霞「私、お尻ペンペンしたいわ」ニコッ

巴「じゃあ私は、姫様のお茶に豆乳を混ぜますね」ニヤニヤ

初美「姫様の下着を全部洗濯してやりますよー!」フンッ

春「……やれやれ」


………

小蒔「まま、まずい……」

霞「あらあら、どうしたのかしら」

小蒔「換えの下着が一つもないの……」

霞「全部洗濯してるわよ、今」

小蒔「うう……、いいもん。下着換えないから」

霞「まあ、不潔ね」ニヤニヤ

小蒔「……」ジワッ

霞「下着なんて無くても平気よ。あとは寝るだけなんだから」

小蒔「……変なことしない?」

霞「もちろんよ。だから、ね?」

小蒔「……わかった」


………

小蒔「……」ポケー

霞「……」ポケー

小蒔「……雲だあ」

霞「……そうねえ」

小蒔「綿菓子たべたいね」

霞「ううん、そんなことないわ」

小蒔「……そっかあ」

霞「……」

小蒔「私は食べたいんだけどなあ……」チラッ

霞「あらあら、そうだったのね」

小蒔「うん、そうなの」

霞「で?」ニヤニヤ

小蒔「……」


………

小蒔「かかか、霞ちゃーん」トタトタ

霞「なあに、小蒔ちゃん」

小蒔「春ちゃんが私のこといじめる!」

春「いじめてない。いじってるだけ」ニヤニヤ

小蒔「むむむ、……年下のくせに、その口のきき方はなんですか!?」

春「姫様だって、霞にだけため口」

小蒔「私たちはいいんですー。ね?」

霞「……困った子たちねえ」


………

春「……霞」トタトタ

霞「なあに、春ちゃん」ニコッ

春「霞ともっと仲良くなりたい」

霞「あらあら、大歓迎よ」

春「……だからあだ名で呼ぼうと思う」

霞「あだ名、つけてくれるの?」

春「うん」ニコッ

霞「嬉しいわ。聞かせてくれるかしら」ニコッ

春「かーちゃん」

霞「……却下」


………

小蒔「私は姫様」

春「私ははるる」

初美「私はハッちゃんですよー」

霞「……」

巴「……」

小蒔「石戸霞だから、イワちゃんとか」

霞「もっとかわいく!」

春「狩宿巴だから、カリやんとか」

巴「なんで名字からとるの!?」

初美「トモちゃんとカーちゃんでいいじゃないですかー」

霞「誰が母ちゃんよ!」

初美「ひっ!?」ビクッ


………

小蒔「あだ名と言ったら、特徴からとるのもアリですね」

春「……なるほど」

初美「特徴ですかー」

小蒔「巴さんはですね……」

春「メガネ?」

初美「赤毛?」

巴「もっと捻ってくれませんか!?」

小蒔「霞ちゃんはね……」

春「おっぱい」

初美「黒髪ロング」

小蒔「お母さん」

霞「小蒔ちゃん、ちょっとこっちに来なさい」ゴゴゴ


………

霞「……巴ちゃん」

巴「はい……」

霞「元気出して。あだ名なんてなくても、あなたには眼鏡があるじゃない」

巴「……眼鏡」

霞「永水で眼鏡といったらあなたよ」

巴「霞さん……」

霞「ね?」

巴「あまり、嬉しくないです」

霞「ですよねー」


………

小蒔「春ちゃん、あなたは一年生でしょう」

春「……うん」

小蒔「もう少し、先輩方に敬意をはらったらどうですか? 特に私に」

春「……」ベー

小蒔「んなっ」

春「姫様、あなたはもう少し落ち着きをもつべき」

小蒔「わ、私は落ち着いています!」

春「どうだか……」

小蒔「ぐぬぬ……」

春「……」ベー


………

小蒔「カスえも~ん!」

霞「殴り飛ばすわよ」

小蒔「また春ちゃんにいじめられたよ~」シクシク

霞「また? しょうがないわねえ」

小蒔「道具! 道具出して!」

霞「道具は出せないけど、一つわかっていることがあるわ」

小蒔「なになに?」

霞「あなたが悪い」ニコッ

小蒔「うわぁーん!」


………

霞「春ちゃん」トタトタ

春「……なに」

霞「あんまり小蒔ちゃんをいじめたらダメよ?」

春「いじめてない。いじってるだけ」

霞「あらあら」

春「だいたい、姫様は子どもっぽい。全てにおいて」

霞「ふんふむ」

春「あれじゃ姫様なんて呼べないレベル。むしろわがまま姫」

霞「なるほどねえ」ニコニコ

春「……なんで笑顔」

霞「あなたが饒舌になるくらいは、小蒔ちゃんのこと好きなんでしょう?」ニコッ

春「……」カー


………

霞「小蒔ちゃん、ごめんなさいは?」

小蒔「五円野菜?」

霞「まあ、安いわね! 違うわよ!」クワッ

小蒔「ひっ」ビクッ

霞「春ちゃん、ごめんなさいは?」

春「午前火災?」

霞「危険ねえ……。違うわよ!」クワッ

春「!」ビクッ

霞「謝り合いっこするんでしょう」

小蒔「やだ。私悪くない」

春「私の方が確定的明らかに悪くない」

霞「……」プルプル


………

霞「どうしたものかしら。ねえ?」

初美「いいんじゃないですかー、ほっとけば」

巴「喧嘩するほど、と言いますし」



小蒔「春ちゃんなんだから桜ぐらい咲かせてくださいよ!」プンプン

春「もうその思考が子ども。笑っちゃう」プクク



霞「……まあ、見てる分には楽しいんだけど」

初美「本人たちも、きっと楽しんでますよー」

巴「……そうですね」


………

霞「春ちゃん、こっち」

春「……ああ、霞」ポリポリ

霞「また黒糖? 体に良くないわよ」

春「若いからだいじょうぶ」

霞「そうだ、今度みんなでスポーツしない?」

春「……いいけど、何を?」

霞「バドミントンとか。ほら、小さい時はよくやったでしょう」

春「みんなが集まった時は、よくやってた」

霞「ね、どうかしら」ニコッ

春「……いいんじゃない」ポリポリ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「どうしたの?」ニコッ

小蒔「スカートが破れちゃったから、縫って」

霞「あらあら、引っかけちゃったのかしら」

小蒔「うん、多分」

霞「じゃあ脱いで?」

小蒔「だめ。このまま」

霞「危ないわよ」

小蒔「いいの。霞ちゃんを跪かせたいから」ニコッ

霞「たまにはいいわね」ニコッ


………

小蒔「はーるよこい♪」

春「……」

小蒔「はーやくこい♪」

春「うるさい」

小蒔「えっ、なんですか?」

春「……うるさい」

小蒔「はっくしゅん! はい?」

春「……姫様、肩のところに毛虫がついてる」

小蒔「んなっ!?」

春「じゃあね……」

小蒔「ちょまっ、とってくださいー!」


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「あら、小蒔ちゃん」ニコッ

小蒔「逆上がり、できる?」

霞「ええ、できるわよ」

小蒔「教えて!」

霞「体育の授業かしら?」

小蒔「うん」

霞「いいわよ。じゃあタオルを持って、校庭に行きましょう」

小蒔「タオルがいるの?」

霞「ええ。あるのとないのとじゃ大違いなんだから」ニコッ

小蒔「ふうん。持ってくるね」トタトタ


………

初美「姫様、お聞きしたいんですがー」

小蒔「はい、なんですか?」

初美「姫様が降ろせる神様って、どんなのがいるんですかー?」

小蒔「そうですね……、例えば麻雀神だったり」

初美「あー、はいはい」

小蒔「勉強神だったり、運動神だったり、いろいろですね」

初美「ずいぶん便利そうですねー。……うらやましいですよー」

小蒔「悪戯神もいますよ」ニコッ

初美「嘘つかないでくださいねー」


………

小蒔「巴さん」トタトタ

巴「なんですか、姫様」

小蒔「巴さんのあだ名、考えてきました」ニコッ

巴「はい、やめてください」ニコッ

小蒔「まあ聞いてくださいよ」

巴「……聞くだけなら」

小蒔「ヤドカリ!」

巴「……」プルプル

小蒔「これはですね、狩宿を逆にして……」ニヤニヤ

巴「うっさい小娘!」クワッ

小蒔「!?」ビクッ


………

小蒔「春ちゃん」トタトタ

春「なに、姫様」

小蒔「霞ちゃんの胸を触ったことあります?」

春「愚問。埋もれたこともある」

小蒔「うわあ……、ドン引き」

春「姫様だっていっぱい触ってる」

小蒔「私はいいんです。姫ですから」

春「私にも分けて」

小蒔「うーん……、では半分こしましょう!」ニコッ

春「最高」ニコッ

霞「勝手に決めないでくれる?」ニコッ


………

初美「はるる」トタトタ

春「なに、初美」

初美「私のこと、ハッちゃんって呼んでみてくださいよー」

春「……は、はっ」

初美「うんうん!」

春「はっくしゅん!」

初美「……」

春「……」ズビー


………

初美「姫様ー」トタトタ

小蒔「なんでしょう」

初美「私のこと、ハッちゃんって呼んでみてください!」

小蒔「そ、そんな……、なんだか恥ずかしいです」

初美「いいからいいからー」

小蒔「う、うう。……では」

初美「はい!」

小蒔「ばあちゃんが池に落ちた!」

初美「えっ?」

小蒔「ばっちゃーん!」ニヤニヤ

初美「……」プルプル


………

小蒔「霞ちゃん」

霞「あらあら、まだ寝てなかったの?」

小蒔「おやすみのちゅうをもらいにきました」

霞「どこにしてほしいのかしら」

小蒔「もちろん口に!」

霞「はいはい、おでこね」

小蒔「……せめてほっぺたがいい」

霞「ふふ、……こっちに来て」

小蒔「はあい」トタトタ

霞「……」チュッ

小蒔「ありがとう。……ふふ、明日春ちゃんに自慢してやろっと」ニヤニヤ

霞「……ほどほどにね」


………

春「……霞」

霞「おやすみのちゅう?」

春「うん」

霞「困ったちゃんねえ、もう」

春「口にして。姫様に自慢するから」

霞「ほっぺたね」

春「だめ。口じゃなきゃだめ」

霞「聞き分けない子にはしてあげません」

春「……」

霞「……」

春「……じゃあほっぺた」

霞「うん、お利口さんね」チュッ


………

小蒔「あっるぇー? 春ちゃんもほっぺただったんですね」ニヤニヤ

春「……」ピクピク

小蒔「私は口にしてもらうから、なんて言っておいて」

春「……」

小蒔「春は当分来ないみたいですね!」ニコッ

春「……姫様、あなたは何もわかってない」

小蒔「どういうことでしょうか」

春「霞にとって、あなたは所詮妹みたいなもの」

小蒔「そそ、それは春ちゃんだって」

春「私はあれ。……恋人、的な」テレテレ

小蒔「いつそうなった!」クワッ


………

巴「特技は柔道です」

霞「ふんふむ」

巴「ともえ投げ! なんちゃって」

霞「つまらないわ」

巴「……ですよね」

霞「無理に個性をつけなくてもいいんじゃないかしら」

巴「と言うと?」

霞「永水で一番かわいいのはあなた、という噂を聞いたの」

巴「……めちゃくちゃ嬉しいです」ポロポロ

霞「な、泣かなくても……」


………

巴「ひっめさまー」

小蒔「……テンション高いですね」

巴「いやあ、なんせ私、永水で一番かわいいらしいですからね」

小蒔「聞き捨てなりません。私を差し置いて」イラッ

巴「えへへ、霞さんが言ってくれたんですよ」

小蒔「なっ、ななな……」

巴「お前のことが好きだ、巴! ですって!」デレデレ

小蒔「なな、なっ……!?」


………

小蒔「それでは、第一回狩宿巴会議を始めます」

春「有罪」

小蒔「異議なし!」

巴「会議でしょ!?」

春「罪状の発表を」

小蒔「えー、霞ちゃんの発言を大げさに受け取ってしまった罪、です」

巴「遊び心ですよ……」

春「罰として」

小蒔「境内の掃き掃除をやってもらいましょう」ニコッ

巴「……自分がやりたくないだけでしょ、どうせ」ボソボソ


………

初美「永水女子、麻雀部かわいさランキングを教えてくださいー」

霞「私の独断でいいの?」

初美「もちろんですよー」

霞「ふんふむ。……ではまず、一位から」

初美「でけでけでけでん!」

霞「私です!」

初美「異議あり!」

小蒔「異議なし!」

春「異議なし」

霞「賛成多数により、可決といたします」ニコッ

初美「ずるいですよー……」


………

霞「ちなみに二位は」

小蒔「私だよね?」

春「ありえない。私に決まってる」

霞「巴ちゃんです!」

巴「えっ、そんな……」テレテレ


小蒔「……」ゴゴゴ

春「……」ゴゴゴ

巴「あっ、これ私が悪い流れ?」

初美「理不尽すぎますよー……」


………

霞「結論としては、みんな違ってみんな良いってことね」

小蒔「そうです。容姿で優劣をつけるなんて、浅はかですよ?」

春「まったくその通り」

巴「こ、こいつら……」プルプル

初美「おお、落ち着くですよー!」

霞「もう。小蒔ちゃん、謝りなさい」

小蒔「ごめんなちい」

巴「誤るな!」クワッ

初美「あわわ……」


………

小蒔「巴さん」

巴「なんですか、姫様」ブー

小蒔「私、巴さんのことかわいいと思ってます」

巴「……なにを企んでるんです?」

小蒔「なにも。ただ言いたくなっただけです」

巴「は、はあ。ありがとうございます」

小蒔「私、巴さんのことも好きですから」ニコッ

巴「……常に今の姫様でいてくれませんか?」

小蒔「ダメです。私からイタズラをとることはできません」ニヤニヤ

巴「……はあ」


………

春「霞、宿題教えて」

霞「いいわよ。どれどれ……」

春「……」

霞「ふんふむ……、ああ、ね」

春「……」

霞「なるほど。ここがこうなって……」

春「……」

霞「あっ、……そうきたか」

春「……どう?」

霞「宿題は自分の力でやるものよ」ニコッ

春「……役立たず」


………

春「巴、宿題教えて」

巴「いいですよ」ニコッ

春「さすが。ここ一番で頼りになる」

巴「い、いやあ。そんなことないですよ」テレテレ

春「早く教えて」

巴「あっ、はいはい。ええとですね、ここをこうして……」

春「……」ピト

巴「それからここがこうなり……」

春「……」ジー

巴「……どうしました?」

春「ううん、なんでも」ニコッ


………

巴「私、気づきました」

霞「なあに?」

巴「はるるのたまに見せる笑顔の破壊力に」

霞「なるほどねえ」

巴「ハッちゃんの露出、姫様の寝顔、霞さんの胸、はるるの笑顔」

霞「……」

巴「……そして、私のメガネ」

霞「あ、あらあら」

巴「永水の天下も近いですよ!」

霞「そうかしら……」


………

小蒔「……」スピー

春「……姫様、寝てる」

小蒔「……」スピー

春「股関のところに水をかけておこう」ニヤニヤ




小蒔「うわぁーん!」

霞「どど、どうしたの小蒔ちゃん!」

小蒔「も、も、漏らしちゃった……」シクシク

霞「とりあえず、着替えてきなさい。ね?」

小蒔「うん……」シクシク



春「やりすぎたかな……」シュン


………

春「姫様」トタトタ

小蒔「春ちゃん」

春「これあげる」

小蒔「……クッキー、ですか?」

春「手作り。黒糖を混ぜてある」

小蒔「あ、ありがとうございます」

春「うん」

小蒔「しかし、珍しいですね。春ちゃんがお菓子づくりなんて……」ポリポリ

春「別に……」

小蒔「あっ、おいしいですよこれ」ニコッ

春「……当然」ニコッ


………

小蒔「台風だね、霞ちゃん」ソワソワ

霞「絶対に外に出ちゃダメよ」

小蒔「そそ、そんなことしないよ。小学生じゃあるまいし」ソワソワ

霞「……お昼ご飯の仕度してくるから、じっとしててね」

小蒔「う、うん」ソワソワ

霞「……」





小蒔「……」ビッショリ

霞「……楽しかった?」

小蒔「……とても」ビッショリ

霞「……そう」


………

小蒔「霞ちゃんがお風呂に入ってるときに、乱入したらどうなるでしょうか」

春「裸が拝める」

小蒔「なるほど、確かに」

春「まず私がお手本を見せるから」

小蒔「いえいえ、ここは私が」

春「じゃあ一緒に行こう」ヌギヌギ

小蒔「そうですね」ヌギヌギ




霞「一緒に入りたいならそう言えばいいのに」ニコニコ

春「……」プカー

小蒔「……」プカー


………

小蒔「霞ちゃん、おやすみ……!?」

霞「どうしたのかしら?」

小蒔「な、なんだっけ、それ。ミルフィーユ?」

霞「キャミソールね」

小蒔「……もしかして、誘ってるの?」カー

霞「……」

小蒔「いやん、霞ちゃんのエッチ!」

霞「……」

小蒔「でも私、そんな霞ちゃんも……」チラッ

霞「おやすみなさい」ニコッ

小蒔「まま、まってえ!」


………

霞「今日の晩御飯はハヤシライスよ」

巴「あれ、マッシュルームがありませんね」

霞「ええ。代わりにこれを」

巴「し、椎茸ですか」

霞「けっこう合うのよ、これが」

巴「なるほど、勉強になります」

霞「お子様舌の2人にも食べてもらえるといいんだけどねえ」

巴「あ、ナスもいれるんですね」

霞「正直、カレーやハヤシライスって何でも合うのよね」

巴「ふむふむ……」


………

小蒔「ポニーテールにしてみました」

霞「ううん、似合ってないわ」

小蒔「どうです、春ちゃん」

春「キャラが被るからやめて」

小蒔「どうです、巴さん」

巴「キャラが被るからやめて」

小蒔「……どうです、初美さん」ウルウル

初美「かか、かわいいですよー」アセアセ


………

小蒔「雨だねえ」

霞「ええ、湿気がキツいわ」

小蒔「霞ちゃんの天気だね」

霞「私の?」

小蒔「暇な日に降る雨。太陽を隠す雨。……霞」

霞「なんだかかっこいい、……のかしら」

小蒔「でも、落ち着く。やっぱり霞ちゃんだね」

霞「あらあら」

小蒔「今日は縁側でゆっくりしようよ」

霞「たまにはいいかもね、そんな休日も」


………

春「……」サッサッ

霞「あら春ちゃん、お掃除?」

春「うん。姫様はサボり」

霞「まったくあの子ったら……。ちょっと待っててね」トタトタ

春「……?」




霞「お待たせ。私も手伝うわ」

春「……ありがとう」

霞「終わったらお茶にしましょうね」ニコッ

春「うん」 ニコッ


………

春「……」ニヤニヤ

小蒔「ぐっ、うう……」

春「役得だった。姫様、掃除をサボってくれてありがとう」ニヤニヤ

小蒔「私としたことがっ、私としたことが……!」

春「一緒にお煎餅を食べさせあった」ニヤニヤ

小蒔「もうやめてっ……」

春「しかも頭撫でられた」ニヤニヤ

小蒔「……うう、ぐす」

春「好きって言われて押し倒された」ニヤニヤ

小蒔「それは絶対に嘘です!」クワッ


………

小蒔「霞ちゃーん」トタトタ

霞「なにかしら」ニコッ

小蒔「私、境内の掃除してくるね!」チラッ

霞「あらあら、がんばってね」

小蒔「う、うん。……一人で、がんばるね?」チラッチラッ

霞「えらいわ、応援してる」

小蒔「うーん……、あっ、でも一人じゃ大変かも!」チラッチラッ

霞「やってみなきゃわからないわ。諦めちゃダメよ!」

小蒔「霞ちゃんのバカ!」

霞「!?」


………

小蒔「霞ちゃんのバカスミ……」サッサッ

霞「……掃除、終わった?」トタトタ

小蒔「……もうちょっと」

霞「がんばって。冷たい麦茶と、おやつが待ってるわよ」ニコッ

小蒔「霞ちゃん……」

霞「サボったぶん、ちゃんと自分一人でやること。終わったら縁側までいらっしゃい」

小蒔「うん! 押し倒して!」

霞「なんでそうなるの」


………

巴「ハッちゃん、お茶ですよ」

初美「ありがとうございますー」

巴「いやあ、和みますねえ」ズズ

初美「ほんとうですねー」ズズ

巴「私たち、巫女服着てる意味あるんですかねえ」パリッ

初美「私なんて改造してますからねー」ポリッ

巴「あっ、姫様」

初美「はるると追いかけっこしてますねー」

巴「……和みますねえ」ズズ

初美「……そうですねー」ズズ


………

春「まてー」トタトタ

小蒔「あははー」トタトタ

春「まっ、まてー」ゼェ

小蒔「ま、またなーい」ハァ

春「……」ゼェゼェ

小蒔「……」ハァハァ

春「……体力ないね、姫様」

小蒔「春ちゃんこそ、若いのに情けないです」

春「私はそういうキャラだから」

小蒔「私だって、おしとやかキャラです」

春「捕まえたっ」ギュッ

小蒔「わっ、やられました……」


………

霞「あらあら、お茶会かしら」

巴「霞さん。洗濯終わったんですね」

霞「ええ。お邪魔するわよ」

初美「どうぞどうぞ―」

霞「何だかんだで、あなたたちといると一番落ち着くわ」ズズ

巴「ふふ、子ども二人の面倒を見るのはキツそうですね」

初美「たまには代わりますよー」

霞「たまには、じゃないわよ。もう……」


………

巴「見てください、あの二人」

初美「まだ追いかけっこしてるんですねー」

霞「暑いのに、よくやるわねえ」

巴「私、タオルと帽子持ってきますね」スタスタ

初美「私、うちわとお冷やを持ってきますねー」スタスタ




霞「……あなたたちも、二人のお世話をするのが楽しそうね」ズズー

巴「それは、まあ」

初美「だいじな妹分ですからねー」


………

小蒔「春ちゃん、明日の朝虫捕りに行きましょう」

春「めんどくさいから、いや」

小蒔「ダメです。絶対行きます」

春「ラジオ体操はどうするの」

小蒔「一回休むくらいどうってことないでしょう」

霞「ダメよ、その一回が尾を引くんだから」

小蒔「聞いてたの……」

霞「どうしても行きたいなら、ラジオ体操が終わった後でね」

小蒔「むう……」


………

小蒔「……」ソソクサ

春「姫様、どこに行くの」

小蒔「……は、春ちゃん。起きてたんですね」

春「虫捕りに行くつもり?」

小蒔「はい。春ちゃんも来ますか?」

春「ダメ。行かせない」ギュッ

小蒔「春ちゃん、私は行きたいんです」

春「絶対ダメ。初美が心配する。巴が悲しむ。……霞が傷つく」ギュウ

小蒔「春ちゃん……」


………

霞「どうしても早朝に行きたいの?」

小蒔「……うん」

霞「ふんふむ……」

小蒔「ダメ……?」

霞「……私たちもついていくわ。それでもいいなら」

小蒔「うん、わかった!」

霞「決して、黙っていなくなったらダメよ。あなたはもう子どもじゃないけど、私たちの妹なんだから」

小蒔「……はい。ごめんなさい」シュン

霞「ん、わかったならよし」ニコッ


………

霞「……と言うことで、明日は4時30分起床ね」

初美「はあ……。ま、しょうがないですねー」

巴「少し過保護過ぎる気も……」

霞「姫様だもの。普段は忘れがちだけどね」

巴「そう、ですね。鎮守の森には獣道すらないですし……」

霞「鎮守の森には入らないわ。森林公園まで行くつもり」

初美「と、遠くないですかー?」

霞「姫様のご要望よ。叶えてあげましょう」

巴「まったく、仕方ないですね……」


………

小蒔「カブトムシ!」

春「こっちにも」

霞「ふんふむ、バナナトラップは有効だったようね」



小蒔「ほら巴さん、カブトムシですよ!」

巴「ひいっ! 近づけないでください!」

小蒔「かわいいのに……」



春「初美、カブトムシ」

初美「あ、大きい方の角持っちゃダメですよー」

春「そうなの?」

初美「足や関節を痛めてしまいますからねー」


………

小蒔「名前をつけましょカブトムシー♪」



春「アームストロング」

小蒔「却下です」


初美「ホンダ・スーパーカブ」

小蒔「長いです」


巴「害虫」

小蒔「違います」


霞「かぶりん」

小蒔「なんか惜しい」

霞「自分で考えなさい」

小蒔「そうする」


………

巴「カブトムシをどうにか抹殺したいです」

霞「ダメよ。小蒔ちゃんが悲しむわ」

巴「その姫様が私に触らせようとしてくるんです!」

霞「あらあら……。カブトムシくらい、いいじゃない」

巴「あのフォルムですよ!? 地球のものとは思えない……」

霞「そのうち愛着がわくわよ、きっと」

巴「地獄です……」


………

小蒔「春ちゃんって」

春「なに、姫様」

小蒔「甘いものが好きなんですか?」

春「黒糖が好き」

小蒔「だから、甘いものが好きなんでしょう」

春「黒糖が好きなだけ。……ただ、それだけ」

小蒔「意味深に言わないでください」

春「姫様も食べるといい。健康にも良いんだから」

小蒔「実はですね」

春「なに?」

小蒔「その黒糖には、微量の味噌が入っています」

春「……」ピク

小蒔「春ちゃんなら気づくと思ったのですが……」

春「……」ゴゴゴ


………

春「……霞」トテトテ

霞「なあに、春ちゃん」ニコッ

春「……」ギュッ

霞「あらあら、どうしたのかしら」

春「姫様が黒糖にイタズラした」ギュウ

霞「あの子ったら、懲りないわねえ」

春「簀巻きにして鳥居に吊したい」

霞「はいはい、私で我慢してね」ナデナデ

春「ん……」ギュウ


………

春「……巴」ギュッ

巴「はるる? どうしたんですか、いきなり」

春「……70点」

巴「えっ?」


春「……初美」ギュッ

初美「おー、よしよしですよー」ナデナデ

春「50点」

初美「えっ!?」


春「……姫様」ギュッ

小蒔「んー」ギュッ

春「……惜しい。80点」

小蒔「どうせ100点は霞ちゃんでしょう」

春「もちろん」ニコッ


………

小蒔「霞ちゃん」トタトタ

霞「なあに、小蒔ちゃん」ニコッ

小蒔「最近スキンシップが足りない気がする」

霞「そうかしら」

小蒔「……」

霞「……そういえばそうね。いらっしゃい」

小蒔「ん……」

霞「膝枕でいいの?」

小蒔「うん。頭も撫でて」

霞「はいはい」

小蒔「ん、よきかなよきかな」ニコッ

霞「うふふ。……ゆっくりおやすみなさい」


………

小蒔「はるるる」

春「るが1つ多い」

小蒔「はるんけあ」

春「なんだっけ、それ」

小蒔「ぱーるはーばー」

春「真珠湾」

小蒔「よくわかりましたね」

春「バカにしてる?」

小蒔「まあ、私よりは、ねえ」

春「ない。私の方が頭良いし、あとかわいい」

小蒔「かわいい関係ないです」


………

巴「ひひひひ、姫様ー!」

小蒔「どっ、どうしました!?」

巴「害虫が籠から出てますー!」

小蒔「害虫って言わないでください……」

巴「あわわわ……、畳張り替えなきゃ」

小蒔「どんだけ嫌いですか」

巴「早く、早く籠の中へ!」

小蒔「ようしカナブン、巴さんに攻撃だー」

巴「きゃあー!」



霞「名前、カナブンにしたの……?」

小蒔「思いつかなかったから……」

霞「そ、そうなんだ……」


………

小蒔「あーつーいー……」

霞「アイス、持ってきたわよ」

小蒔「わあ、ありがとう霞ちゃん」

霞「どういたしまして」

小蒔「ねえ、夏はどうして暑いの?」

霞「南中高度が云々……」

小蒔「よくわかんない。アイス食べる」

霞「わかるまでお預けよ」

小蒔「とけちゃうよ!」

霞「あのね、太陽の位置が云々……」

小蒔「アイスぅ……」


………

春「……」プルプル

霞「が、我慢しないで黒糖食べたら?」

春「ダメ……。糖尿病になる」プルプル

小蒔「ああ、黒糖美味しいです!」ニヤニヤ

春「ぐっ……」

小蒔「こんな美味しいものが食べられないなんて」ニヤニヤ

春「……我慢我慢」

小蒔「黒糖キャラは私に任せて、安心して散ってください」ニコッ

霞「小蒔ちゃん、太るわよ」

小蒔「……」


………

巴「参拝客を増やすにはどうすればよいでしょうか」

小蒔「不思議ですよね。こんなに美少女が揃っているというのに」

巴「いっそ、ハッちゃんを脱がせましょうか」

小蒔「逆に客足が遠のくでしょう……」

巴「うーん……」

小蒔「縁結び、とか騙ってみます?」

巴「アリかもしれませんね」


………

小蒔「私と霞ちゃんでモデルケースになろうと思う」

霞「なにのかしら」

小蒔「縁結びの」

霞「あのねえ……」

小蒔「まずは優しく抱きしめて……」

霞「真面目に考えなきゃダメよ」

小蒔「わりと真面目なんだけど……」

霞「抱きしめるくらいなら、いつでもしてあげるから」

小蒔「ほんとう? 約束だよ」

霞「代わりに、ちゃんとした案をだすことね」ニコッ

小蒔「はあい」


………

春「そもそも、今時巫女は古い」

小蒔「えっ!?」

春「時代遅れ。誰も食いつかない」

小蒔「そ、そうだったんですか」

春「ニーズに応えなきゃやっていけない」

小蒔「世知辛いですね……。で、今の流行りは?」

春「……さあ」

小蒔「役立たず……」

春「でも、制服は万能だと聞いた」

小蒔「なるほど。早速明日からやってみましょう!」


………

小蒔「たぶんですけど」

春「なに?」

小蒔「一番巫女が似合わないのって、初美さんですよね」

春「うん。改善すべき」

小蒔「服だけでもキチンとしてくれれば……」

春「あと、日焼けもなんとかしてほしい」

小蒔「髪も、下ろした方がいいですね」

春「まだまだある。他には……」




初美「私だって、私だって……」シクシク

霞「よしよし」ナデナデ


………

小蒔「巫女はまた、舞姫とも呼ばれます」

春「姫様の神楽を見てみたい」

小蒔「神楽なんて舞えません」

春「修行不足」

小蒔「春ちゃんは?」

春「あんなの、適当に揺れてればいいだけ」

小蒔「信じがたい思考をしますね、あなたは」

春「私は祈祷専門だから」

小蒔「祈祷しかできないんでしょう?」

春「そうとも言う」


………

小蒔「霊力を高めると幽霊が見えたりします」

巴「そそ、そんなバカな……」

小蒔「巴さんの右肩に一体いますね」

巴「えっ!?」ビクッ

小蒔「恨み、妬み、嫉み、やっかみ、……これは怨霊です!」



巴「はるるー! お祓いしてえ!」

春「めんどくさいから、いや」

巴「お願いしますう!」


………

小蒔「霞ちゃんの制服って、おかしいよね」

霞「なんのことかしら」

小蒔「だって、胸の形に合わせて変化してるもん」

霞「……?」

小蒔「普通だったらあんなに都合よくならないよ。あれなに?」

霞「うーん、何って言われても……」

小蒔「特注なの? 形状記憶繊維なの?」

霞「あなたの制服だってそうじゃない?」

小蒔「巨乳七不思議だね……」


………

小蒔「スカートに顔つっこんでもいい?」

霞「小蒔ちゃんがしたいことをしなさい」ニコッ

小蒔「おっぱいに埋もれたい」

霞「はい、どうぞ」ニコニコ

小蒔「わあい!」モフッ




霞「そろそろおしまいよ」

小蒔「気持ちよかったあ」ニコニコ

霞「六時間だから、九万円ね」

小蒔「うそ……」


………

巴「あの……、霞さん」

霞「あら、なにかしら」

巴「私もっ、そ、その」

霞「なあに?」

巴「わ、私も、霞さんの、おお、っぱいを」

霞「ええ」

巴「さわ、触ってもいいでしょうか……」

霞「もちろん、いいわよ」ニコッ

巴「ほんとうですか!? ありがとうございます!」モフッ!




霞「三十分だから、五万円ね」ニコッ

巴「姫様の時より高い!?」


………

春「私は許可を得ずとも触る」

霞「せめて一言ほしいわねえ」

春「愛してる」

霞「何時間でもどうぞ」ニコッ

小蒔「ずるいっ!」

巴「払い戻しを要求します!」

霞「一人一回私に愛してると言うことね」

小蒔「愛してる愛してる!」

巴「愛してるてる!」

霞「いらっしゃい、春ちゃん」ニコッ

小蒔「そんな!?」


………

霞「初美ちゃんは、いいのかしら?」

初美「胸に魅力を感じませんからねー」

霞「コンプレックス?」

初美「いいえ、諦観ですよー」

霞「寂しいこと言わないの」

初美「私はスポーティーなキャラで勝負しますからー」

霞「正直言うとね」

初美「なんですかー?」

霞「日焼け跡、……そそられるわ」

初美「ドン引きですよー……」


………

霞「スクール水着よね?」

初美「ノーコメントですよー」

霞「ちょっと脱いでくれないかしら」

初美「いやですよー……」

霞「日焼け跡をなぞらせてほしいのだけど」

初美「うわあ……」

霞「舌で」

初美「おかーさーん!」

霞「ちょちょちょっ! 冗談よ!」アワアワ


………

霞「小蒔ちゃん」ギュッ

小蒔「わっ、……霞ちゃん?」

霞「たまにはいいでしょう?」

小蒔「大歓迎だよ! ちゅー!」

霞「やーめた」パッ

小蒔「なんで!?」

霞「ちゅうはイヤ。抱きしめさせて?」

小蒔「我慢する……」

霞「いい子いい子」ギュッ

小蒔「私からも、ぎゅっ」

霞「あったかい。柔らかい」

小蒔「気持ちいいねえ」

霞「……胸が邪魔ね」

小蒔「無茶言わないで」


………

春「夏だし、旅とかしてみたい」

霞「あらあら、楽しそうねえ」

春「膝栗毛で全国を回ったり」

霞「徒歩かあ……、いつかはしてみたいわ、私も」

春「霞も一緒に行こう」

霞「ええ、もちろんよ」ニコッ

小蒔「はい、もちろんです」ニコッ

春「……姫様は荷物持ち」

小蒔「何故ですか!?」


………

巴「……」ゲッソリ

霞「ど、どうしたのかしら、巴ちゃん」

巴「……朝目覚めると、枕元に虫かごがあるんです」

霞「あらあら、また小蒔ちゃんかしら」

巴「……今日はきつく言ってやるつもりです」ゴゴゴ

霞「ほ、ほどほどにね」ニコッ




小蒔「うわあーん!」

霞「はあ……。よしよし」ナデナデ


………

小蒔「……巴ちゃん、きらい」グスッ

霞「あのねえ……。いい加減にしないと私も起こるわよ」

小蒔「ちょっとからかっただけだもん!」

霞「あなたは、理不尽に怒られたと思っているの?」

小蒔「……ううん」グスッ

霞「だったら、謝れるでしょう」

小蒔「……」グスッ

霞「小蒔ちゃんは、優しい子だもの。ね?」ニコッ

小蒔「……うん」グスッ


………

小蒔「……ごめんなさい、巴さん」シュン

巴「……」

小蒔「巴さん……」ウルウル

巴「……ふふ。もう怒ってませんよ」ニコッ

小蒔「……うう」グスッ

巴「姫様は偉いです。ちゃんと謝れるんですから」ナデナデ

小蒔「子どもじゃないです……」ギュッ

巴「よしよし……」ナデナデ


………

霞「小蒔ちゃん、お使いに行ってきてくれないかしら」

小蒔「いいよ。何買うの?」

霞「大根とお味噌、あとは好きな物を買っていいわよ」

小蒔「わあい!」




巴「姫様、お使いをお願いしたいんですけど」

小蒔「姫をパシりにする気ですか?」

巴「もうちょっと私に優しくしてください」ウルウル

小蒔「冗談、冗談ですよ」アタフタ


………

小蒔「お詫びに巴さんに抱きついてみます」ギュッ

巴「嬉しいような、嬉しくないような……」

小蒔「むしろ私が嬉しいです」

巴「じゃあそれでいいです」ニコッ

春「私も抱きつく」ギュッ

初美「私もですよー」ギュッ

霞「楽しそうねえ」ギュッ

巴「……幸せです」ニコッ

小蒔「そうですね」ニコッ


………

小蒔「霞ちゃん、あれ見て」

霞「あれは……、キリシマツツジね」

小蒔「今年はね、開花しているのを見たよ」

霞「私はすっかり忘れてたわ。綺麗だったでしょう?」

小蒔「毎年見てるけど、ぜんぜん飽きないからねえ」

霞「ふふ、そうね」

小蒔「花は霧島、煙草は国分~」

霞「鹿児島おはら節ね。来年はみんなで観に行きましょう」

小蒔「うん!」ニコッ


………

霞「今日は日本神道の歴史について学びましょうか」

小蒔「春ちゃーん、ゲームしましょう!」ピューッ

春「やるやる」ピューッ

霞「逃げ足はやっ!?」

巴「……」ソローリ

霞「……」ギロッ

巴「ひっ」ビクッ

霞「……」ニコッ

巴「……」シュン


………

小蒔「わっつ、ど、どぅーゆーみーん?」

春「うん」

小蒔「どうゆう意味ーん?」

春「そういう意味」




小蒔「秋は、おーたむ……」

初美「もうすぐ冬ですねー」

小蒔「オー、タムい」

初美「だから秋なんですよー」

小蒔「なるほどなるほど」


………

小蒔「鉛蓄電池……」

巴「化学ですか?」

小蒔「難しいです……。なんで溶けたら電流が?」

巴「電子がうんたらかんたら……」

小蒔「もっと分かりやすく」

巴「要するに、電気が流れると溶けちゃうくらい気持ちいいってことです」

小蒔「なるほどなるほど」

霞「巴ちゃん、ちょっとこっちにいらっしゃい」ゴゴゴ

巴「ひっ!?」ビクッ


………

霞「小蒔ちゃんに変なこと教えたらダメよ」

巴「あれで納得する姫様にもビックリですよ……」

霞「とにかく、小蒔ちゃんの前で下品な話は禁止!」

巴「はい……」




小蒔「霞ちゃん、胸触っていい?」

霞「……」ギロッ

巴「えっ、私のせいですか!?」


………

初美「姫様がエッチなのは昔からですよー」

霞「そう言えば、そうね」

初美「霞さんが原因なんですよー?」

霞「そんなことないわ」

初美「何をおっしゃるやら」

霞「心外ねえ」

初美「はるるも姫様も、一番に霞さんを見て育ちましたからねー」

霞「うーん……」

初美「……私の日焼け跡、どうですかー?」

霞「そそられるわ!」

初美「ほら、やっぱり」

霞「……」


………

霞「巫女とは神聖、純白な者……」ブツブツ

初美「ほらほらー」チラリ

霞「うっ、……煩悩退散!」

初美「サービスサービス!」チラリチラリ

霞「ぐっ……、手強いわね」

初美「霞さん、……我慢しなくていいんですよー?」

霞「初美ちゃん……」

小蒔「……へーえ」ゴゴゴ

春「……ほう」ゴゴゴ

初美「さ、さようならー!」ピューッ

霞「あらあら……」


………

小蒔「今日は真面目に修行します」

霞「普段から真面目にやりなさい」

小蒔「まずは神楽から!」

霞「がんばってね」




小蒔「足くじいた……」

霞「……今氷持ってくるわ」

春「姫様、幻滅」

小蒔「自分だってできないくせに!」クワッ

春「私は祈祷専門だから」

小蒔「だからそれ、言い訳でしょう!」プンプン


………

小蒔「花火がしたいです」

春「どこで?」

小蒔「境内でやりましょう」

春「絶対ダメ。怒られるだけじゃすまない」

小蒔「何をされるんですか?」

春「お尻さわさわ」

小蒔「ペンペンじゃなくて!?」

春「霞がやるらしい」

小蒔「花火買ってきますね」

春「冗談だから待って」


………

小蒔「この前、風呂場にゲジゲシが……」

巴「きゃーっ!」


春「この前、台所に油虫が……」

巴「ひゃーっ!」


初美「この前、庭に蜂の巣が……」

巴「もうやめてーっ!」



霞「聞いて巴ちゃん、この前ねえ……」ニコニコ

巴「うるさいです!」ピューッ

霞「百円拾ったんだけど、って、……え?」


………

霞「巴ちゃんの虫嫌いは異常ねえ」

小蒔「寝るときも、一人だけ蚊帳の中だしね」

霞「なんとかしてあげたいけど……」

小蒔「私に任せて!」

霞「それだけはダメ」ニコッ

小蒔「なぜ!?」

霞「自分の胸に聞いてみなさい」

小蒔「胸は喋らないよ」

霞「蹴ってもいいかしら?」ニコッ


………

小蒔「新発売、ハッちゃんイカです」

初美「どこかで聞いたことありますねー」

小蒔「さっそく味わってみたいと思います」

初美「へっ?」

小蒔「さあ、初美さん!」

初美「し、舌なめずりしないでくださいー」アセアセ

小蒔「初美さーん!」

初美「きゃーっ!」ピューッ


………

小蒔「ちりん、ちりん」

霞「風鈴の音が聞こえるわ」



小蒔「ちりん、ちりーん」

春「夏って感じがする」



小蒔「ちりりん、ちりりー」

初美「涼しげでいいですねー」


小蒔「ちりりりりん! ちりりりりん!」

巴「電話電話!」アセアセ


………

小蒔「たまには麻雀でも打ちませんか?」

春「負けた人は罰ゲーム」

小蒔「の、望むところです。明日、明日の朝打ちましょう」

春「……いいけど」




霞「ね、眠そうねえ、小蒔ちゃん」

小蒔「か、神を、降ろさないといけないから……」ガクッ

霞「まったく、……卓に着く前に力尽きたら意味がないわ」


………

春「私の不戦勝」

小蒔「悔しいですが、認めましょう……」

春「罰ゲームは、語尾にプリンを付けること」

小蒔「なんですプリン、その罰ゲーム!?」

春「ぷっ、くく……」ニヤニヤ

小蒔「笑うなプリン!」プリンプリン

春「ぶふっ……」ニヤニヤ

小蒔「悔しいプリン……」


………

春「やっぱりやめて。お腹痛い」

小蒔「どうするんですか?」

春「霞に謝ってきて」

小蒔「なにを?」

春「おやつ勝手に食べてごめんなさい、って」

小蒔「自分で言ってくださいよ!」

春「やだ。怒られる」

小蒔「私が怒られるじゃないですか!」

春「じゃあ二人で行こう。ね?」ニコッ

小蒔「今世紀最大のとばっちりですね……」


………

小蒔「私たちって、春ちゃんの笑顔に誤魔化されてるところがあると思う」

霞「まあそれは、あるでしょうねえ」

小蒔「果たしてそれでいいのだろうか」

霞「いいんじゃない? かわいいんだから」

小蒔「……」ニコッ

霞「ふふ。小蒔ちゃんもかわいいわよ」

小蒔「ふふーん」ニコニコ


………

小蒔「……」ピッ

春「……」パシッ、ピッ

小蒔「……春ちゃん」ピッ

春「……なに、姫様」パシッ、ピッ

小蒔「私、ドラマを観たいんですけど」ピッ

春「私はサッカーを観たい」パシッ、ピッ

小蒔「サッカー? 境内で蹴鞠でもしてればいいですよ」ピッ

春「ドラマ? 現実を見よう、現実を」パシッ、ピッ

小蒔「ぐぬぬ……」ピッ

春「ふん」パシッ、ピッ


………

小蒔「夏と言えば祭りだね」

霞「祭り、祀り、奉り。神楽の練習は?」

小蒔「聞こえない聞こえない」

霞「獅子舞なんかもやってみましょうか」

小蒔「霞ちゃんがやればいいと思うよ」

霞「あなたがするから意味があるのよ」

小蒔「もう出家してやる!」

霞「それを言うなら家出じゃないかしら」

小蒔「歩き巫女として暮らしていきます」


………

巴「姫様ー」

小蒔「どど、どうしたのですか、それ」

巴「歩き巫女になるって聞いて、準備しました」

小蒔「……弓?」

巴「梓弓ですよ。これくらいは持ってないと」

小蒔「……ああ、梓巫女なんて言いますもんね」

巴「はい。……あの、私応援してるので、がんばってください!」

小蒔「引き留めてくださいよ!」


………

春「歌舞伎の創始者、阿国も歩き巫女だったらしい」

小蒔「ふむふむ、なるほど」

春「一芸を持っているのも、渡り巫女としては条件」

小蒔「私の一芸……」

春「でも、姫様は神懸かり、口寄ができる」

小蒔「じゃあ安心ですね!」

春「さようなら」

小蒔「……だから、引き留めてくださいって!」


………

小蒔「みんなのバーカ……」トボトボ

初美「姫様、顔を上げてくださいー」

小蒔「……初美さん」

初美「みんな、いつも通り冗談で言っているんですよー」

小蒔「わかってますけど……」

初美「でもですねー」

小蒔「でも?」

初美「広い世界を見てほしい。そうも思っているのですよー」

小蒔「広い、世界ですか……」


………

巴「そうですね。姫様も全国大会で実感したと思いますけど」

小蒔「はい」

巴「色んな人がいますから。私だって、まだまだ世間知らずです」

小蒔「巴さんは、私に出て行ってほしいのですか?」ウルウル

巴「ふふ、そんなこと思ってないですよ」ナデナデ

小蒔「……」

巴「願わくば、ずっとみんなで一緒にいたいです……」

小蒔「……」ギュッ


………

春「……私は」

小蒔「……はい」

春「私は、姫様と離れたくない」ギュッ

小蒔「春ちゃん……」ギュッ

春「姫様のことが好きだから」

小蒔「私も、春ちゃんのことが大好きです」

春「……いつかはきっと」

小蒔「……」

春「離れてしまうと思う。だから、姫様との今を楽しみたい」ニコッ

小蒔「……そうですね。夏は、始まったばかりですし」ニコッ


………

霞「……いい? 小蒔ちゃん」

小蒔「うん」

霞「あなたは姫様なの。だからこそ、縛られているわ」

小蒔「……そう、かなあ」

霞「今はまだ。だけどいつかは、必ず」

小蒔「……うん」

霞「私たちはみんな、あなたのことが大好きだからね」

小蒔「うん、知ってる」

霞「今のうちに、あなたに色々なことを見ておいてもらいたいの」

小蒔「……」


霞「そして、それはきっとあなたの、私たちの宝物になるわ」

小蒔「うん……」

霞「あなたが一人になっても、その宝物があなたを守ってくれるように」

小蒔「……私は、ここから離れられないんだね」

霞「……そうね。でも、私たちは違う」

小蒔「私を置いて、行っちゃうの?」

霞「そうかもしれないし、そうならないかもしれない」


小蒔「そっかあ……」

霞「……ええ」

小蒔「……イヤだなあ」グス

霞「楽しい夏は終わるわ。でも……」ギュッ

小蒔「うっ、……ぐす」

霞「夏なんて、また来るから。ね?」

小蒔「その夏に、みんなはいるの?」

霞「約束するわ。みんなで戻ってくるって」

小蒔「だったら、……我慢する」

霞「うん、えらい」ギュウ

小蒔「……子どもじゃないもん」グス


………

……



小蒔「それでは、巴さん、初美さん、霞ちゃん」

春「……大学生、がんばって」

巴「はい、がんばります」

初美「まあ、目標もないですけどねー」

霞「あらあら、そんなこと言わないの」

小蒔「皆さんの、前途をっ……」ポロポロ

春「姫様……」グスッ

巴「わ、私まで……、ぐす」

初美「ふふ、困ったものですねー」


………

霞「またすぐに会えるわ」

小蒔「霞ちゃん……」

霞「その時までに、神楽の練習をしておくこと。ね?」

初美「暇ができたら、遊びに来てくださいねー」

小蒔「……はい。必ず!」

春「……うん」

巴「……それじゃあ、行きましょうか」

初美「そうですねー」


小蒔「お元気で!」ブンブン

春「お達者で」ヒラヒラ

巴「二人も、元気でね!」

初美「あんまりケンカしちゃダメですよー?」

霞「……またね」ニコッ



小蒔「……行っちゃった」

春「私たちも帰ろう、姫様」


小蒔「……ようし」

春「……?」

小蒔「私、帰ったら神楽の練習をします!」

春「……うん」

小蒔「そして次会った時、驚かせてやるんです!」

春「ふふ。うん、私も一緒にやる」

小蒔「頑張りましょう。あの三人に負けないくらい!」ニコッ

春「おー」ニコッ




おわり

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