赤城「私のグルメ」 (57)
注意
駄文
独自解釈有
書き溜め投稿
提督日和
提督日和 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428430606/)
上記SSの設定
読んでいなくても大丈夫な内容で書くつもりです
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1429968177
夕立が去ったアスファルトの香りが初夏の街道を満たす
日は頭上に上がり雨の残党の始末に追われる
仕事に追われているのは太陽だけでない
第一航空戦隊、通称一航戦に属する赤城もまた仕事に追われている
仕事の中身自体は大したものはないが、その量に問題があった
先日行った遠征の報告書に不備があり、その後始末に駆られているのだ
彼女らしからぬミスであった
ミスを犯したのは彼女ではないが、部下の報告書のミスに気付けなかったのは
明らかに彼女の失態である
同僚には何かと心配をされたが、何の変哲もない凡ミスというやつである
お前が仕事でミスを犯すとは、と司令官にも驚かれた程に、彼女は
自分の仕事に余念がなかった
否、彼女には仕事しかないのである
これといった趣味はなく、休日は部屋で休んでいるか同僚たちと出かける
それ以外は仕事に打ち込む
その熱心ぶりは彼女の誇りから来ているのであろうか
兎にも角にも、彼女は仕事に余念がなかった
彼女自身も、自分を見直すべきであると感じている
深海棲艦との戦いも終結し、平和と呼べるようになった今
戦力としてその任を任されていた彼女たちにも転機の時がきた
赤城が属する鎮守府はその先駆けのような場所である
艦娘を一般の教育機関、または研究機関に通わせるなど
それぞれの進路に合わせた生活を送らせている
赤城の相棒である加賀もまた、自分の進むべき道を決めた
戦力としてではなく、一人の女として司令官を支える
それが加賀の、自分の親友が選んだ人生であった
司令官も加賀を求め、円満な夫婦生活を営んでいるようだ
もしかしたらと、赤城は万年筆の動きを止めた
自分は追いつめられているのではないか
そう思ってしまった。いや、無意識にそんなことを考えていたのかも知れない
今回のミスも、その焦燥感が生み出したものではないのか
そう思わざるを得ないほど、彼女の周りは変化していった実感はあった
赤城の部屋には元々加賀も住んでいた
この鎮守府は一部屋二人といったように、一部屋に複数人の住人が存在する
しかし赤城の部屋の住人は彼女だけだ
加賀が司令官の部屋で寝泊まりをしているからである
一度決めたことは徹底的に貫く、彼女らしい選択であった
その選択に相棒の固い決意と幸せを感じ取った赤城に残っていたのは
祝福と、小さな孤独であった
加賀とはいつでも顔を合わすが、寂しかった
いつもそばにいた人間が突如いなくなることに慣れを感じない
ましては本当の姉妹のように隣にいた加賀がいなくなることに
寂しさ、言い換えることが出来るならば、司令官への嫉妬を
感じてしまうことは仕方のないことであった
赤城「ダメね。疲れてるわ」
ちょっとした自己嫌悪に陥るが
寂しくなったら逢いに行けばよいだけの話で
立ち直るのに時間などかからなかった
しかし溜まった疲労の回復には時間を要する
明日も仕事である
早々に就寝して体力を回復する選択が優秀な回答であろう
赤城「こういう時こそね」
優秀な人間が常に堅実な回答をするとは限らない
特に我の強い人間は自分に合った行動を最優先する
彼女もそれに値する人間であった
午後九時
夜中に彼女が辿り着いた場所は、定食屋であった
若者が好みそうな装飾豊かな色彩は見当たらず
店内を照らす光が、年季の入った店にコントラストを刻み込む
その色彩は派手な装飾に劣らない安心感を与えていくれる
胸が高鳴った
鳳翔の営む居酒屋も大好きであるが
彼女の中ではこの店が一番なのである
店の名前は彼女も知らない
彼女だけでなく、他の客も、ましては若き店主すら名を知らぬ
ずいぶん昔から存在しており、その名刺たる看板も時代と共に廃れ
今では文字も読めないほどである
ここに来る客はこの店を『街道食堂』と呼んだ
赤城「こんばんはー」
店主「いらっしゃい」
暖簾をくぐった赤城を迎えたのは、調理場に立つ料理人兼店長の店主である
歳は自分と同じぐらいであったか、未熟性な声帯から感じる活気と
男性的な大きな体からエネルギーを感じる
店に人は少なく、愚痴をこぼし合っている客などがほとんどだ
赤城のように、しっかり飯を食おうという者はこの時間帯珍しいだろう
彼女自身も、今日の夕食はこれを入れれば二回目となる
夕飯を二度食う人物はそういないだろう
これは夜食なのだ、と自分に言い聞かせカウンター席に腰を下ろす
調理台とカウンター席の距離は近い
やろうと思えば調理過程を全て見ることだって出来る
揚げ物は危険なのか厨房の奥に設備されている
年季の入った調理道具には食材が落とした旨みが鉄の底まで染み込んでいるようだ
店内は木造で、壁の至る所にポスター、またはメニューが並んでいる
今日は何が出るのだろう?
赤城が頼むメニューはすでに決まっている
『日替わり定食』
定食屋の醍醐味である
どんな料理が出てくるのか、それは店主の気分によって左右される
赤城「日替わり定食で」
店主「あいよ」
待っていたかのような動きであった
それはそうだろう、赤城は此処の常連に他ならないのだ
毎回カウンター席に座り、毎回同じ料理を頼む
嫌でも何を頼むかがわかってしまう
長い間向かい合っていると、相手の好み以外もわかるようになってくる
店主「どうか、したんですか」
今日は妙に鉄仮面だな
店主は赤城の顔を見た途端にそう思っていた
赤城は常に、と言えば脚色しすぎな気もするが常に笑顔である
仏頂面の相棒、加賀が隣にいるのもあり彼女は感情豊かなイメージが強い
しかし彼女自体感情の起伏はそう大きくないものだ
それを言うのならば、加賀の方が激情家である
感情よりも理性が前に出てくる人物
それが店主の中の赤城の人物像であった
それが今日はどうであろう
いつもと変わりない顔といえばそれまでだろうが
何処か憂いを感じる
いや、感じて仕方がないのだ
思うものに対して必死に自分を殺している
そんなイメージを店主は持ってしまったのだ
赤城「えっ」
完全に意表を突かれた投げかけであった
そこまで感情を表にだしていただろうか
返事を待ちながら料理をする店主は何も言わない
元々寡黙な人物であるのは知っていたが
こうも何も言わないとなれば、自分が言うほかない
そもそも相手の投げかけなのだ、返事を待つこと自体不自然だ
赤城「仕事で失敗しちゃって」
どうも、調子が狂う
赤城は自分も知らない内に感情的になってしまっていた
仕事場でのことだとか、相棒のことだとか
心のダムが決壊したかのように喋ってしまった
いつもと違う自分に戸惑いもしたが
不思議と悪い気分ではなかった
赤城の心に生まれた影が、消えていくような気がした
店主「おまち」
そうこう胸の内を明かしていく内に料理が完成したようだ
待っていました
赤城は今日一番に感情的になった
冷静な部類の人種だと自分でも自負しているが
このときだけは他のことなど考えれない
食べたい時に、美味しいものを食べる
これが自分に与えられた最高の贅沢なのだと感じている
豪快に、かつ繊細に施された調理という名の着付けに
食材たちは一夜限りの舞踏会に足を踏み入れる
幾千の舞はどのような曲によって彩られるのであろうか
どのような形でその心を表現するのであろうか
どんな形で、魅了してくれるのであろうか
料理がカウンターに置かれるまでの間が果てしない
遊園地の開園を待つ少女のような気持であった
そこには冷戦沈着な赤城の姿などどこにもない
本日の日替わり定食
『カツ定食』
赤城(やわらかいっ!)
旨みの溶けた熱と共に感じたものは触感であった
決して薄くないはずなのに、肉から感じる抵抗が少ない
肉を守る衣もしっかりと肉に絡んでおり、噛むたびに
衣に染みた旨みが肉の旨みと舞を披露する
外はがっちり、中はトロトロ
赤城はたまらず湯気による自己主張が激しい白米を口に放り込む
赤城(うん!お米もいつも食べるものより美味しい!)
何よりも肉との相性が抜群に良かった
少し味が濃いめかも知れないカツをカバーする形で白米が曲を刻み始める
会場がヒートアップしてきた
豪快な舞と、新鮮な響きが会場全体を覆い尽くす
しかし、何かが足りない
この会場には主役が足りない
シャリっ
考える前に体が四重奏を求めた
キャベツを主とした野菜の数々だ
所謂スポットライト、充満した熱を払うように天から降り注ぐ
光と熱が相乗りする会場はさらに響きを増した
このままどこまで行けるのだろう
どこにでも行けそうな気がする
赤城はそう感じた
自分の中で渦を巻くエネルギーは螺旋を止めない
一口一口が無限の行動を連想させた
赤城(あっ)
切なさを感じた
祭りの後に感じるもの寂しさだ
カツが無くなり、米が絶え、野菜はその姿を消した
寂しい、誰かいないのか
訪れる静寂と孤独を、誰か埋めてくれないのか
無限の炎は熱をなくし、口の中に響いていた歓声は慟哭に代わる
赤城(私の隣には誰もいないの?)
自分の口の中に自分の姿があった
真に自分の隣にいてくれる人がいない、そんな姿であった
ちっぽけで、みじめで、誇りなんて感じない、そんな姿であった
店主「おまち」
赤城「えっ」
孤独を切り裂いたのは、寡黙な料理人であった
差し出されたものは白みそベースの味噌汁
様々な火薬が仕込まれており、流動を繰り返す味噌が食欲を誘う
店主「夜は少し冷える。サービスです」
少なくとも、私は孤独ではない
赤城はそう感じた
慢心するな一航戦赤城
何が艦娘だ。何が一人ぼっちだ。
ここに、この場にいる限り私は一人の客だ
ならば向かい合うものは一つであり、それも自分に応えてくれる
料理人は料理にて己を熱く語る
ならば、なのであれば
「いただきます」を口にした自分は
何億年もの地層を舌が貫いた
何種類ものの野菜から取れた旨みが味噌汁に染み込んでいる
農圧な旨みの断層が喉を穿つ
赤城(まだだ、まだ何かくる!)
瞬間、胸の炎がうねりを上げた
体の熱が一気に上がる感覚が心地よい
犯人はミョウガだ
独特な風味を持つ彼が、この事件の犯人だ
旨みの濁流に飲まれてしまった赤城に為すすべはない
その身を風味の海原に投げ込み、ただ流されるままに波を感じた
波がどこに向かうのかなど誰も知らない
ただ全身で感じる波に、心の影の居場所など存在しなかった
赤城「ごちそうさまでした」
合掌に続く残心
間違いなく、この食卓は自分を変えた
私は孤独なのではない
孤独を無理やり作り出していたのは、自分の弱い心
救済を悟られてほしい心が、孤独を作ったのだ
自分から、甘えにいこう
それでも不安になったり
一人を感じることがあったら
赤城「また来ますね」
店主「お粗末様」
店主の言う通り、初夏の夜は冷えていた
何か羽織ってくればよかったかと後悔したが、杞憂に終わった
なぜならば、彼がくれた熱の余韻が、全身に残っていたからだ
赤城は自分の心の中に
星々より小さな女を感じた
投下完了です
俺はいったい、何を書いているんだ…?
余談ですが
厚い肉でもコーラにつけて筋切とやらを施せば柔らかくなるらしいです
米は研ぐ時と水が重要だそうです
米同士をすり合わせる感覚です
水も良いものを使用すれば仕上がりが段違いです
味噌汁は沸騰させたらいけないそうです
味噌を入れる時も出来るだけ溶かさないようにすると美味しいらしいです
光を弾く波に、寒気の期待が高鳴る
早くあの海に身を遊ばせたい
そう思っているのは赤城だけではなかった
蒼龍「なんか新鮮だな~」
飛龍「わかるわ~」
湿り気のない砂にパラソルを突き刺す同僚もまたそう感じている
そう、海水浴にでかけているのだ
誰の提案であったか、司令官に企画を申し込んだところ
特に忙しいということもないので了解を得た
本音を言えば貸切、などを期待していたのだが
良い機会だから一般の海水浴場にいってみろとのことであった
とは言っても、団体客のみを扱っている海水浴場なので
結局は仲間内とのんびりできる空間である
気になると言えば、やはり周囲の目であろうか
特に男性からの熱い眼差しを艦娘一同感じている
ある程度予想していたものの
自分の周囲の人間を見て、熱い視線を受けるのも仕方ないと思う
赤城もその一人なのだが
艦娘の顔つきや体つきと言ったものは大変良いものである
最近ではファンクラブなども出来ているそうだ
同僚である蒼龍や飛龍もまた、その標的だろう
二人とも布の面積が大きい水着を着用しているが
その実った体つきはその防具すら魅力的に思わせる
赤城はといえば二人と同じような水着を着ているものの
少し抵抗があるのか、Tシャツを上から着込んでいる
飛龍「加賀さんたち遅いねー」
蒼龍「先に遊んじゃってもいいかな」
海を待ちきれない二人の視線が赤城に向く
赤城に与えられた立場は、第一陣の司令官だ
一度のバスでは全員乗れないことを理由に二つに分けられたのだ
赤城はその先発隊のリーダー
赤城「先に遊んでいていいわよ」
準備体操も終え、パラソルの設置も終えている
これ以上待たせるのも酷であろう
見慣れた海であるが、今日は接し方も違うのだ
いってきまーす、と元気よく海へ駈け込んでいく後ろ姿に少女を感じた
元気だな、と思える自分は少々歳なのではないか
赤城がそう思えるほどに、彼女たちの後ろ姿は元気の言葉が似合っていた
さて、自分はどうしようか
赤城に残された選択は
自分も遊びに行く
加賀たちを待つ
ゆっくりする
の三択である
何も目的がなければこの中から何かを選んでいただろう
赤城も今日という日を楽しみにしてきた
いつもと違う海もそうだが、もう一つの楽しみが彼女にはあった
海のグルメである
砂浜で開かれた店々から立ち込める香ばしい匂いが
先ほどから赤城の食欲を刺激する
こんなときまで、と赤城は赤面するが
性分なので仕方ないのである
赤城(加賀さんたちと合流してから海に行こう)
食欲に誘導された思考は、海を後回しにした
そうと決まれば行動あるのみ
赤城はズラリと並ぶ店々を遠目で吟味する
焼きそば、焼きイカ、焼きトウモロコシなどなど
鉄板と言われる所以はやはり人気にある
どれも食欲をそそるものだ
しかしこうも鉄板のメニューを看板に掲げているものばかりだと
何を選べば良いのか迷ってしまう
片っ端から食べるのを良しとしない性格もあり吟味に時間がかかる
食べれればなんでもよい訳ではないのだ
充実した時間を充実するためには、餓えたハイエナになる必要がある
空腹こそが最大のスパイス
それが限界に達した瞬間に、獲物を絞って全力で仕留める
これが赤城の食べ方である
赤城(餓えた猛禽類になるのよ一航戦赤城…)
並外れた視力で獲物を探る
目に見える形の熱気のカーテンに仕切られた食材たちは
網の上で炎と踊る
夏特有の活気もあってかどれもこれも上手そうに感じる
だがどれも彼女の闘争本能をむき出しにするには
浜辺における独創性が足りない
他の追随を許さない馬力を誇るものはどこかにないのか
焦燥感だろうか、この暑さだろうか
赤城の頬を汗が伝う
波の音が遠く感じた
赤城(ん?)
獣の瞳がある屋台を見据えた
灼熱の砂漠に存在するあの安心感は
赤城(街道食堂の店主!)
決まりだ
鉄板だろうが何だろうが、あの人なら私の胃を鷲掴みにしてくれるはずだ
距離にして二百メートル、やや速足に屋台に近づいていく
距離を詰めるに従って、彼がこの海で何を作っているのかが分かった
食欲を誘う独特なスパイシーな香り
赤城(カレー!)
王道とは言い難いその選択は赤城の闘争本能を丸出しにした
真冬のアイス、真夏のラーメン
対応する両者の激流に理性など存在しない
気づけば赤城は走り出していた
赤城「こんにちは!」
店主「いらっしゃい」
料理人はどんな環境に置かれようとも
その対応を変えたりはしない
彼ほどの男となれば、海すら調理場に他ならない
赤城「どうしてここに?」
店主「出張。そちらは?」
赤城「遊びに」
その証拠に、彼の服装は街道食堂にいる時と変わらない
灼熱すらその意志を焦がすことなど出来ない
赤城「カレーを」
店主「あいよ」
もう待ちきれない、遮るものなど何もない
赤城とカレーのラブロマンスは此処から始まる
赤城(…黒い?)
赤城の白馬の王子様は黒かった
黒いからどうだとかの問題ではない
見慣れたカレーをしていないことが、一筋縄ではいかないことを
物語っているのだ
ここでこれは何だと聞くのは公平ではない
彼は何の説明もせずに私の求めに応えたのだ
ならば私は施しを受けるものとして
赤城「いただきます」
一口、赤城のカレーの専制君主制に革命が起こった
築いてきた歴史の中に生まれた重圧と慢心
自らを神に祝福された者だと錯覚していた王は
民の反感を買い、権利を追われ始めた
赤城はこの時、カレーの怒りを感じた
お前のレール上にあるものだけがカレーではないのだ
この固形に近い黒色のカレーもまた
赤城(おいしい)
カレーはその言葉を待っていた
つまらない謝罪より、自分を認める言葉の方が大きいのだ
もっと自分たちを知ってほしい
もっと自分たちを味わってほしい
濃厚の一言が似合う味わいだった
何層にも連ねる味の歴史は紆余曲折を感じるものであり
食材たちの反発、和解、堕落
その全てがこの黒い歴史書に詰まっている
多くの歴史書を読み解いてきた赤城にも未知のエリアが存在していた
この濃厚すぎる、重すぎるルーの正体だ
ルーを濃厚にする行程は赤城も記憶にある
それはカラメルをルーに絡める過程を加えることだ
そうすることにより濃厚なルーに仕上がるとか
だがそれ以上のものを赤城は感じていた
カラメルを加えるだけの甘っちょろいものではない
もっと他の、想像を超えるほどの食材がこの黒にはある
赤城(ご飯!ご飯が足りない!)
必死であった
全力を持ってご飯を求める客は赤城だけでない
匂いに釣られた獣たちも、また白米を求める
その額にはおびただしいほどの汗
汗を拭えば、此処が浜辺であることを再認識された
追加された白米の量は大目に見える
騙されるな、こんな兵量ではあっという間に制圧されてしまう
この香りに、味に、全て飲み込まれる
杞憂には終わらず、白米は全滅
ルーも全滅したものの、その残り香は今も鼻に残る
赤城(…もう一杯)
素直にまた食べたいと思えた
乞うような目線を店主に向ける
赤城は目を見開いた
トッピング欄に、カツがあることを
この店主が作るカツは絶品であることを赤城の舌は知っている
それをこの黒のカレーに投入するという末恐ろしい
どうにかなってしまうようなたぎりが
赤城「カツをトッピングに」
赤城を動かした
再び対峙する赤城とカレー
抜かりはない
今度こそ、攻め切ってやる
じゅわぁあ
黒のカレーに濡れたカツから肉汁が溢れ出す
肉汁がルーと混ざり合い、強烈な旨みを発言させる
喉を通る確かな感触が五臓六腑に響き渡る
完全敗北
赤城の本能がこのカレーに屈した瞬間
されるがままの攻防戦であった
加えられたキャベツの軍勢も一癖あり、戦場を蹂躙した
赤城「ご馳走様でした」
店主「お粗末様」
赤城「一航戦赤城、負けました」
この女は何と戦っているのか
いつも通り料理を作る店主はそう感じていた
毎度のことであるが良いリアクションをしてくれる
料理人冥利に尽きるものを感じるが
彼女の感性はどういったものなのかを疑ってしまう
ともあれ、上手そうに食べる姿は良いものである
欲を言うのなら、彼女の水着姿をもう少し見たかった
自分も年相応の男なのだと再認識した後
店主は再び料理に向き合った
差し出された水は戦いを労う酒であった
赤城はそれを飲みほし、少しばかり気恥ずかしい気持ちになった
折角海に遊びに来たのに
カレーをたくさん食べてしまった
彼女の中にいる乙女が恥じらいを見せ始めた
チラリと店主を見る
料理に向き合う今の彼にきっと私の姿は映っていないだろう
自分の服装を確認する
露出を隠すためにTシャツを着込んでいる姿
殿方は露出がある方が良いのだろうか
もう少し頑張れたかな、という後悔を感じた
我ながら、何を考えているのかと馬鹿らしくなった
馬鹿な考えは一緒にご馳走様して、皆の所に戻ろう
どれぐらい時間が経っているかわからないが
加賀たちも到着しているであろう
美味しいものは食べた
後はこの有意義な汗を、海に舐めさせるだけだ
パラソルに加賀たちの姿を発見した赤城は
楽しみを胸に仲間のもとへと駈け出した
投下完了です
今回は石川県伝説のB級グルメを書かせていただきました
あのカレーなにでできてるんでしょうかね
本場はステンレス製の皿に
キャベツを乗せて
銀のフォークで食すそうです
仕事先で出会ったあの味は忘れそうにありません
通販でレトルトも扱ってるそうなので是非(直商)
>>48
本場じゃなくてもゴーゴーとアルバの加賀カレーはそのスタイルやで
>>49
今度見かけたらよってみようと思います
書き上げるのに少々時間がかかりそうです
ラブコメって面白いのに書くの難しい(コナミ
生きてます
一生懸命イベントに取り組んでいました
このSSまとめへのコメント
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