女提督「甘えてもいいんだよ?」 (955)

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いきなりミスしてますね
女提督「甘えさせたり甘えたり」
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の続きのようなものです

提督「さあ!」

曙「はあ?」

提督「甘えてもいいんだよ!」

曙「…………」

提督「…………」

曙「…………」

提督「………どうしたの?」

曙「それはこっちの台詞よ!何?ついに頭おかしくなったの?」

提督「えー、私は至って正常だよ」

曙「ならなんでいきなり馬鹿みたいなこと言い出したのよ」

提督「ん?いやあ、曙というか駆逐艦の子ってみんな可愛いし、なんだか甘えられたいな〜って」

曙「あっそ、なら他を当たりなさい」

提督「あー!!ちょちょ、待ってよ曙ー!」

曙「何よクソ提督、まだ用があんの?」

提督「曙はそれでいいの!?」

曙「ええ」

提督「甘えたくないの?」

曙「ええ」

提督「えぇ…ドライすぎるよ曙…」

曙「というかさっさと仕事しなさいよ。加賀さんに怒られるわよ」

提督「ぶー、曙のケチ」

曙「まだ言うようならスネ蹴るわよ」

提督「はーい、分かりましたー」

曙「まったく…」

バタン

曙「………〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」グググ

潮「あの、曙ちゃん…素直に甘えてもよかったんじゃ…」

曙「絶っ対ダメ!!そんなことしたらまたあのクソアホロリコン提督が調子に乗るでしょ!」

潮「そこまで言わなくても…」

曙「実際そうじゃない!あんたも何かされたんでしょ!?」

潮「まあ、なでなでされたりとか、MVP取った時にハグされたりとか…えへへ…」

曙「なんでそんなに嬉しそうなのよ!洗脳でもされてるの!?」

潮「いや、普段なかなか言い出せなくて甘えられないから嬉しくて…」

曙「もう完全に躾られてるじゃない…」

潮「なら、曙ちゃんはいつ甘えるの?」

曙「えっ?え〜っと…えっと、そ、そりゃあまたの機会によ」

潮「曙ちゃん、ほんとは提督の顔を見るのも恥ずかしいんだよね。私知ってるよ」

曙「ん、んなわけないでしょ!!誰があんなクソ提督なんかに!」

潮「ふふ」

曙「な、何笑ってんのよ!!///」






提督「んふww………あっ」

曙「えっ」

提督「あけぼのぉー」ニッコリ

曙「なによその気持ち悪い笑顔!いつから聞いてたの!?」

提督「んー?ずっとだよぉ?」ニコニコ

曙「なっあっ、えあ、あうあ////」カァアア

提督「甘えたいなら甘えたいって言えばいいのに〜…ほら、おいで?いいよ?」

曙「こっ、この」








「クソ提督ぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!」

導入編おわり
あとは適当にだらだらと書いていきます

『似てる?』

あきつ丸「提督殿、任務完了の報告をしていただきたいのであります」

提督「ああうん、ちょっと待ってね…何の任務かな?」

あきつ丸「こちらの報告書を…」

提督「どれどれ…」





瑞鶴「……ねえ、翔鶴姉」

翔鶴「ええ…」

瑞鶴「…あの二人、似てるよね」

加賀「そうかしら」

赤城「私は似ていると思いますけど…」

瑞鶴「どっちも黒軍服に帽子だし…あきつ丸さんはスカートだけど」

翔鶴「そうね、髪の長さも同じだったら見分けが付かないかも…」

加賀「………そう言われてみればそうね…」

瑞鶴「でしょう?」

加賀「でも、眼鏡も掛けているしどちらかと言うと大淀さんに似ているような…」

翔鶴「あー、私もそう思います」

赤城「一時期は大淀さんと提督が入れ替わっているという説が流れたこともありましたね…」

瑞鶴「胸の大きさですぐ判明したけどね」

瑞鶴「………胸?胸……胸………」ペタペタ

翔鶴「瑞鶴……」

加賀「でも…そうね、提督の方が少し垂れ目気味に見えるわ」

赤城「確かに…」

翔鶴「つまりこれまでの統計をまとめると…あきつ丸さんの胸と軍服を持った大淀さんということになりますね」

加賀「ところでなぜ提督が任務完了報告の受理をしているの?」

赤城「まだ大淀さんが復帰出来ないほどの傷を負っているので…」

瑞鶴「誰かさんが暴れるから…」ボソッ

加賀「うぐ…」

翔鶴「まあまあ、落ち着いて…」

加賀「まだ何もしてないでしょう」

加賀「というか、まだ終わらないのかし……ら………」






提督「あ、あきちゃん…ちょっと近い、よ……」

あきつ丸「これくらいなんの問題もないであります。さ、報告の続きを」

提督「う、うん……ひゃっ!?ちょ、ど、どこ触って…!」ビクッ

あきつ丸「ふふふ、少しくらいよいではありませんか…ほら…」サワサワ

提督「こ、こら…んぅ…!」

あきつ丸「ふふ、ふふふふ…」





加賀「」ブチッ

瑞鶴「うわっ!?か、加賀さん落ち着いて!!翔鶴姉も手伝ってよ!」ガシッ

翔鶴「え、ええ!…すごい力!?」ズズズ

赤城「元気ですねぇ…」モグモグ

あきつ丸は腹パン一発で済みました

『二航戦サンド』



提督「……………」ペラッ

「……て〜い〜と〜くっ!」ガバッ

提督「わっ!?えあ、なに、あっ、飛龍…どうしたの?」

飛龍「えへへー、提督が何してるのかなーって」

提督「何って…見たら分かる通り、本読んでるけど…」

飛龍「へー、何の本?」

提督「恋愛小説」

飛龍「え?でも提督、恋人いますよね?」

提督「うん…いや、男女の恋ってどういうものなのかなって思って…」

飛龍「へー…」

提督「……………」ペラッ

飛龍「……………」パタパタ

提督「……………」ペラッ

飛龍「……………」パタパタ

飛龍「……………」パタパタ

提督「……………」

飛龍「……………」パタパタ

提督「………ねえ飛龍」

飛龍「なーに?」

提督「暇なの?」

飛龍「うん!」

提督「……もしかして暇だから私の部屋に来たの?」

飛龍「バレた?」

提督「…いいよ、かまってあげるよ」

飛龍「ほんと!?だってさ、蒼龍!」

提督「へ?」

ガチャ

蒼龍「お邪魔しま〜す…」

提督「ありゃ…最初からこれが狙いだったんだ?」

飛龍「えへへ、ごめんね」

提督「というか蒼龍、枕を二つ抱えてるということは…」

蒼龍「…………」コクン

提督「……大人三人、入れるかなあ?」

飛龍「提督が真ん中で私達が提督にくっついたら大丈夫なんじゃないかな?」

提督「そうだね…というか飛龍はずっとくっついてるけど」

飛龍「えへへ、あったかいでしょ?」

提督「まあね」

蒼龍「…………」

提督「………あー、なんだか前が寒いなあ〜」

蒼龍「……!」ピクッ

提督「誰か暖めてくれる人はいないかな〜」チラッ

蒼龍「えっ、で、でも」

飛龍「ほら蒼龍、提督が寒そうだよ?」

提督「うぐあああ、凍え死ぬゥ〜ッ」

蒼龍「わ、分かったから、もう!……えいっ!」ギュッ

提督「おほー♪」

蒼龍「うぅ〜…」チラッ

提督「あはっ、あったかいねえ」ニコニコ

蒼龍「…………///」フッ

提督「ん、なんで顔伏せるのさ」

蒼龍「近いよお…恥ずかしいよぉ…///」

飛龍「蒼龍ってば、ウブすぎるよ!」

蒼龍「だって正面から抱き合ってるんだもん…密着してるんだもん…///」

飛龍「そんなの私だってそうだもん!」

蒼龍「飛龍はあすなろ抱きだから顔見えないじゃん…私の方はすごいんだもん…」

提督「すごいってなにさ」

蒼龍「だって…提督の顔、優しいんだもん…///」

提督「優しい?」

蒼龍「うう…///」ギュム

提督「うわお…どうしたの?みんな胸に顔埋めるの好きなの?」ナデナデ

蒼龍「あ〜〜〜〜〜……」

飛龍「うーん…?多分、提督に包まれたいとかそういうのじゃないかな?」

提督「包まれたいって?」

飛龍「知らないの?提督、包容力がすごいってみんなに言われてるんだよ。全員が出来ることならめちゃくちゃに甘えたいって」

提督「…そんなに?」

飛龍「うん」

提督「蒼龍もその一人ってことかぁ…よしよし…」ギュウ

蒼龍「ぁぅあ〜…//」

飛龍「……むう、私も正面から抱き付けばよかった」

提督「というか、お暇してたんじゃないの?何もしなくていいの?」

飛龍「んー?んー、私はこのままでもいいよ。蒼龍は?」

蒼龍「私もこのままがいい…」

提督「そう言うならそれでいいけど…何かしてほしいこととかないの?」

飛龍「ううん、このままでいいよ。このままがいいの」

蒼龍「私達、加賀さん達や翔鶴達に比べたら影が薄いから…これでもすっごく嬉しいよ!」

提督「そっか…ならこのままでいっか」

飛龍「うん♪」

飛龍「………えい」

チュッ

提督「ひゃっ…ふふ、いきなり何?」

飛龍「んー、提督可愛いなーって思って」

蒼龍「わ、私も!」

チュッ

提督「ひひ…首筋はちょっとくすぐったいな…///」

蒼龍(うわ、可愛い…)

飛龍「こんなところ加賀さんに見られたら怒られるかなあ?」

提督「多分ねぇ…今日はいないから大丈夫だけど」

飛龍「まあそうだよね、いない時ぐらいしか提督とこんなこと出来ないし…でも、そっちの方が背徳感があっていいような気も…うーん…」

提督「私はいつでもオッケーだよ?」

蒼龍「そういうこと言うからたらしとか言われるんだよ?」

提督「むう…私はただ愛されること愛することをしたいだけなんだけど」

飛龍「……やることもないし、そろそろ寝よ?」

提督「そうだね、もういい時間だし」

蒼龍「はい飛龍、枕」

飛龍「ん、ありがと」

ゴロン

提督「…………」

飛龍「…………」

蒼龍「…………」

提督「……二人とも見事に私の方向いちゃって」

飛龍「えへへ」

蒼龍「えへへ」

飛龍「ねー提督、手繋いで寝よ?」

提督「うん」

ギュ

蒼龍「私は腕を抱き枕にさせてもらってもいい?」

提督「いいよ」

ギュウ…

提督「ふふふ、二人とも甘えん坊だね」

飛龍「提督が甘やかしてくれるからねえ」

蒼龍「いつまで経っても離れられないんだよ」

提督「あはは、ならずっとこのままでいいよ」

飛龍「えへへ」

蒼龍「えへへ」

提督「はぁ…これだけあったかいとすぐ眠れそうだね…」

飛龍「うー…私ももう眠くなってきた…」

蒼龍「私も…提督、あったかくて落ち着くから…」

提督「よしよし…おやすみ、二人とも…」

飛龍「おやすみ〜…」

蒼龍「おやすみ、提督…大好き…」

提督「ん……私もだよ…」

仲良きことは美しきかな

前スレの加賀と寝るちょっと前の話です

『弱みを見せるのは』




霧島「……………」カラン…

ガチャ

提督「ごめんね、待った?」

霧島「あ、司令…いえ、私もさっきぐずるお姉様を寝かしつけたところです」

提督(寝かしつけたって、ほぼ恐喝なんだろうなあ…)

霧島「司令?」

提督「え?あ、ああうん、お疲れ様」

霧島「司令こそ、お疲れ様です」

提督「うん、ふふふ」

霧島「ふふ…」

提督「さてと……お酒、飲むんでしょ?」

霧島「はい。もうおつまみも用意していますよ」

提督「わお…すごいねこれ、全部霧島が作ったの?」

霧島「ええ、司令のために頑張りました」

提督「気合入ってるね〜…」

霧島「司令と二人きりでこんな事が出来るのは滅多にありませんから…少しでもこの時間を良いものにしたいと思いまして」

提督「うふふ、ありがとね、霧島」ナデナデ

霧島「もう…そんな、子供じゃないんですから」

提督「ダメ?」

霧島「…もう少しだけ」

提督「ところで、なんのお酒飲むの?」

霧島「あ、はい。これです」ゴトッ

提督「おおっ、黒霧島!いいねえ、王道って感じするねえ」

霧島「ふふ、私の名前も入ってますよ?」

提督「黒霧島…霧島ァ、何か腹黒いところでもあるんじゃないの?」クス

霧島「まさか、私はいつだって素の私を見せてますよ」

提督「だよね、あはは!」

霧島「さ、グラスを」

提督「おっ、お願いしまーす♪」

クイ…

提督「……ふはぁ…あー、いい香りだねえ…」

霧島「はい、これをどうぞ」

提督「おー、ごぼうチップス…うん、美味しいねえ、ふふふ…」パリパリ

霧島「お口に合ったようで何よりです、ふふっ」

提督「霧島も飲みなよ、美味しいよ」

霧島「ええ、では」ゴクッ

提督「う〜ん、いい飲みっぷりだねえ」

霧島「やだ、そんなに見ないでくださいよ」

提督「まあまあいいでしょ、二人きりなんだし」

霧島「……司令のいじわる」

提督「ふふっ、霧島はお堅いねえ」

霧島「司令は無遠慮すぎます…」

提督「そうかな?」

霧島「そうですよ…もう…」

ポスン

提督「おっと…」

霧島「そういう態度を取るから、こうやってみんな勘違いするんですよ……」

提督「…………」グイ ポンポン

提督「どうしたの?なんだかいつもの霧島じゃないみたいだけど」

霧島「……司令…」

提督「……ふふ、なに?悩み事があるなら聞いてあげるよ」

霧島「……私、怖いんです」

提督「怖い?なにが?」

霧島「司令は、普段私に指揮を任せているじゃないですか。頼りにしてくれているというのは伝わるんですけど…でも…」

提督「うん」

霧島「私のせいで戦果を挙げられなかったり、作戦に失敗したり、最悪の場合、誰かが死んでしまうことになるかもしれないと考えると、怖くて怖くて…私、どうしたらいいのか…」

提督「うん…」

提督「……ごめんね、霧島」

霧島「え?」

提督「私の不安を全部霧島に押し付けて…」

霧島「いえ、そんな…私は司令のお役に立てるだけで…」

提督「ううん、私だってみんなの指揮を取れるか心配で怖くて、結局逃げ出してそれを霧島に押し付けただけだから…ね、代わりと言っちゃなんだけど」

霧島「……?」

提督「霧島が成功した時はいっぱい褒めて、失敗した時はぎゅっと抱き締めて、泣き言も弱音も全部全部受け止めて、私が頷いて、肯定してあげるから…ね?」

霧島「………!」

提督「……なんて、ちょっと臭すぎたかな?」

霧島「い、いえ…なんていうか、あの、心に響いたというっ、か、えと、うっ、うう」ジワッ

提督「あらら…」

霧島「あ、あれ、おかしいな、なんでだろ、涙が止まらない…っ」カチャ グシグシ

提督「……よしよし」ギュウ ポンポン

霧島「う、うう〜…司令ぃ……」グスッ

提督「………落ち着いた?」

霧島「………はい」ズズッ

提督「これで少しでも楽になってくれてたらいいんだけど…」

霧島「いえ、ほんと、聞いていただいただけでも救われま……し………////」カァアア

提督「?」

霧島「…落ち着いたら急に恥ずかしくなってきました…」

提督「えぇ…もっと弱音吐いてもいいのに」

霧島「素面じゃこんな話出来ませんよ…」ゴクゴク

提督「ちょ、そんな勢いで飲んだらすぐダメになっちゃうよ?」

霧島「私お酒強いから大丈夫ですよ。なんなら飲み比べでもします?」

提督「……やめといた方がいいと思うけど」

霧島「むっ、自信満々ですね…」

提督「…本気でやるの?」

霧島「ええ、もちろん!絶対負けませんよ!」

提督「はぁ…まあ、いいけど…」

〜〜〜

〜〜〜

霧島「」

提督「だからやめといた方がいいって言ったのに…」

霧島「うぐぉ…わ…私が負けるなんれ…」///

提督「ほら、もう遅いし部屋まで運ぶよ」グイ

霧島「うぅぅ〜……ごべんなざい、しれぇ〜……」///

提督「いいよいいよ、止めなかった私が悪いんだから」

霧島「おえっぷぉ……し、司令、もうちょっとゆっくり…」///

提督「はいはい…」

提督「霧島、明日はゆっくりしてていいからね」

霧島「ひゃい……」///

提督「…………」スタスタ

霧島「あ”〜〜……」///

提督「ちゃんと布団で寝なきゃダメだからね」

霧島「わかってまふ…」///

提督「…………」

霧島「う〜〜〜……司令…」///

提督「なーに、もう」

霧島「だいしゅき……」ギュー

提督「……はいはい…♪」

お酒はほどほどに

『鎮守府の雪』




提督「…………」ペラッ

吹雪「…………」モグモグ

白雪「…………」カチカチ

初雪「……ふふん…」カチャカチャ

深雪「うげ!?昇竜精度良すぎだろ!?」ガチャガチャ

吹雪「白雪ちゃん、みかん取ってー」モグモグ

白雪「…吹雪ちゃん、あんまり食べると太るよ?」

吹雪「んー、これぐらい大丈夫だってー」

提督「……うあ…こたつで本読んでたら寝そう…」ゴソゴソ

白雪「風邪引きますよ?」

提督「うん…眠気覚ましにちょっと歩いてくる」スクッ

深雪「ふっ!ほっ!はっ!」ガチャガチャ

初雪「………!」カチャカチャ

吹雪「おおっ、頑張れ深雪ちゃん!」

深雪「よっしゃ!このまま押し切るぜええええ!!」ガチャガチャ

初雪「っ………」カチャカチャ

提督「ふあぁ…」ガチャ

バタン





ドドドドドドドド

バァーン!!!

提督「わあああああああああ!!??」

深雪「あっ!?」

初雪「ケーブル抜けた…」

深雪「ちょっと!いきなりなんなんだよ司令官!」

提督「えっ!?あっああ、違うの!外見て外!」

白雪「何をそんなに大騒ぎして…」シャッ

深雪「外に何が………ッ!??」

吹雪「こ、これって……!!」

初雪「わぁ…」

提督「もう積もってる…!こ、これが本物の…」

「「「雪だぁーーーーーーーーーー!!!!」」」

この鎮守府はまだ真冬です
ここで区切って寝ます

イベント猫りました(半ギレ)

初雪「……………」

白雪「…初雪ちゃんは行かないの?」

初雪「ん……私は外で元気に遊ぶタイプじゃないから……」

白雪「………それもそうね」

初雪「寒い外に行くより、こたつでぬくぬくしていたい……」ゴソゴソ

白雪「ふふっ、そうね」


バァーン!!!

深雪「うおおおおおおお!!見ろ初雪!!すげーぞ!!冷たいぞ!!」バタバタ

初雪「……冷たい………」バッ

提督「こらー!この雪の中こたつむりになるとはどういうことだー!子供は元気だ風の子だー!外で遊びなさーい!!」

吹雪「司令官が一番はしゃいでますけどね」

提督「だって雪だよ雪!!こんなの滅多にないよ!?」

提督「ほら、初雪も来なよ!一緒に雪遊びしよっ!」

初雪「……私はいい…」

提督「えー、つれないなあ…」

深雪「まーまーいいじゃん、気が向いたら来るだろうし。それより、雪合戦しようぜ雪合戦!」

吹雪「あ、私もやる!」

提督「白雪も来ないの?」

白雪「はい、私も外を眺めるだけで十分です」

提督「そっか…うわわ、深雪、引っ張らないでって」

深雪「司令官、はーやーくー!」グイグイ

提督「分かった、分かったから…それじゃ気が向いたら来てね!絶対だよ!」

初雪「………考えとく……」

バタン

大和「…なんだか外が賑やかね」

武蔵「む?ああ、そうだな。雪が降っているからだろう」

大和「雪……積もってるの?」

武蔵「ああ。どっさりだな」

大和「ふうん…そう…」

武蔵「…………」

大和「…………」ソワソワ

武蔵「……行きたいのか?」

大和「えっ!?えっえー、え、ええ」

武蔵「はぁ……ならそうと言えばいいだろうに」

大和「い、いいの?」

武蔵「ああ。私も行こう」

大和「やったぁ!」

白雪「……だいぶ積もってきてるね」

初雪「うん……駆逐艦の子達、みんな外に出てる…」

白雪「ええ……長門さんが混ざってるのが謎だけど…」

初雪「う、うん……」

白雪「………いいなあ、みんな楽しそうだなぁ…」

初雪「……行く?」

白雪「……うん」

初雪「ん…なら行こう…」

提督「お、二人とも!遊ぶ気になったんだ!」

初雪「みんな楽しそう……」

白雪「うわあ…真っ白ですね…」

提督「よーし、人も集まってきたし雪合戦でもしようか!」

北上「おっ、いいねえ、燃えるねえ」

大井「提督、私北上さんと同じチームがいいです!」

提督「はいはーい、じゃあ適当に分かれてー」

長門「よし!陸奥、お前はこっちだ!」

陸奥「えぇ、私もやるの?」

長門「当たり前だ!」

陸奥「はぁ……別にいいけど…」

雪風「長門さん、頼りにしてます!」

長門「ああ、任せろ!」

天津風「やるからには負けられないわね!」

時津風「勝つぞー!」

提督「雪壁、準備出来たー?」

雪風「しれぇ、呼びましたか!?」

提督「呼んでない呼んでない、向こうで待機してて」

雪風「はいっ!」

ザフッ

木曾「マスター、作戦は?」

提督「そうだね、作戦の伝達をしないと…三人とも、集まって!」

暁「はーい!」

響「司令官、頼りにしているよ」

雷「司令官、こう見えても作戦指揮はすごい優秀だからねぇ」

提督「こう見えてもとは失礼な」

木曾「というか、なんで俺がここに入ったんだ?」

提督「いやー、電が争い事は好きじゃないから観戦する、って言ってたから代わりに入ってもらおうかなと」

木曾「そういうことか…なら仕方ないか」

提督「よろしくね、木曾」

木曾「ああ、お前達に最高の勝利を与えてやる」

提督「わー、カッコいい!」

提督「………以上、異論は?」

木曾「ナシ」

暁「完璧な作戦ね」

響「ああ、これは信頼出来る」

雷「それを遂行するのは私達よ。しっかりやりましょ!」

木曾「ああ!」

提督「よーし……」シュル ギュッ

雷「あ!司令官、ポニーテール!」

暁「気合い入ってるわね」

提督「ふふっ、勝ちに行きたいからね!」

木曾「……………」ジー

提督「……ん?なに?どしたの?」

木曾「あ、いや…なんていうか、活発な印象になったというか、その………す、すごく可愛らしい、ぞ…//」

提督「うぇ、ちょっ、い、いきなりそんな口説き文句言わないでよ///」カァ

雷「なにイチャついてるの!早く準備しなさい!」

那珂「えーでは、ルールを確認します!5vs5のチームに分かれて、雪合戦で勝負!雪玉が身体のどこかに当たればその時点でリタイア、相手を全員脱落させるか陣地奥のフラッグを取れば勝利となります!」

神通「なお、各チームに一つずつ胴体を守れるサイズの小盾が支給されます。その小盾に雪玉が命中した場合は脱落扱いとならず、そのまま試合を継続することが出来ます」

川内「守るも攻めるもこの小盾がキーになるってことだよ!というかこれ夜にやりたかった!」

那珂「ルールの確認は以上です!それでは皆さん、優勝賞品の一日提督を自由に出来る券を賭けて頑張ってくださいねー!」

提督「…………はぁ!?えっ、ちょ、そんなの聞いてないんだけど!?」

\ウオオオオオオオオオオオオオ!!!/

木曾「もう止めるのは無理そうだぞ…」

提督「まずいまずいまずい…!一日自由って何をされるか分かったものじゃない…!!」

木曾「そうだな、無事じゃ済まないかもしれないな」

提督「木曾っ!!」

木曾「おう!?」ビクッ

提督「勝つよ!!絶対!!!」

木曾「お、おう…」

那珂「ではAブロック第一回戦!提督率いるチーム迅雷VS長門型率いるチーム疾風!配置についてください!」

提督「よっし…」

長門「ふっふっふ、容赦はしないぞ!」

提督「徹底的に潰す」

長門「」

提督「…………」ザッ ザッ

陸奥「ガチムードじゃないの…」

長門「こ、このくらいで怖じ気付くんじゃないぞ!」

陸奥「怖じ気付いてるのあなただけでしょ…」

那珂「それでは、始めっ!!」

パーン

提督「よし……まずは作戦通りに動いてね」

暁「了解!」

響「任せて」

雷「司令官、後ろは頼んだわ!」

提督「うん、安心して行っておいで」

木曾「俺は盾だな…屈んでてくれ」

提督「うん、任せたよ」

シーン…

時津風「……動きがないね」

天津風「雪風、双眼鏡で偵察頼める?」

雪風「うん!」スチャ

ソー……

ビュンッ!!

バスッ

雪風「うぎゃ!?」

長門「なに!?」

天津風「うそ…!?」

那珂「まさかまさかの先制攻撃!頭を出した一瞬の隙を見事に撃ち抜かれました!しかしこんな技術を持っているのは…!?」

提督「ごめんね、雪風」ニヤ

那珂「これはダークホース!!電光石火の一撃で雪風ちゃんを沈めたのは我らが総司令官、提督だったーーーー!!!」

那珂「ここで先ほどのリプレイを見てみましょう!………これはまさにスナイパー!美しいほどに真っ直ぐでブレのない弾道、速度、そして精密性!侮っていたこの女、やってくれます!」



長門「くっ、どうする…早速戦力が減ってしまったが…」

陸奥「落ち着いて、あの子、狙う時は壁の前で立ってる。今はただの的よ」

天津風「なら誰かが囮になってる間に別方向から撃てば…時津風、囮をお願い!」

時津風「うん!」

サッ

時津風「こっちだよー!」

提督「!」ビュンッ

時津風「うわ、速っ…!」ササッ

天津風「今っ!!」ビュン

バスッ

長門「やったか…!?」

陸奥「………!」

木曾「ふっ、残念だったな」

那珂「これはイケメン!!小盾を持った木曾ちゃんが提督をしっかりガード!木曾ちゃんが男だったら惚れていた人も少なくはない!」

長門「まずいな…」

天津風「迂闊に顔が出せない…!」

那珂「まさに要塞!木曾ちゃんの的確なガード、そして提督のスナイピング!この二人の突破は困難を極める!さあ疾風チーム、どう動く!?」

木曾「……どうだ?」

提督「勝ったね」

木曾「だろうな」

提督「よし、畳み掛けるよ」

提督「暁型総員、前方に展開!全力攻撃を仕掛けて!」

暁「了解!」ダッ

響「この瞬間を待っていたんだ!」ダッ

雷「司令官は私達のものよー!!」ダッ

長門「しまった…!総員迎撃態勢!」

陸奥「ダメ、もう遅いわ!」

天津風「きゃあ!?」

バスッ

バスッ

時津風「わぁ!」

雷「このままフラッグ奪取よ!」

長門「まずい、陸奥、援護を!」

提督「させないよ!」ビュンッ!

長門「うっ!?」バスッ

陸奥「ダメね、もう一人じゃどうにもならないわ…」

響「Ураaaaaaaaaa!!!!」バッ

ズザアアア

那珂「ここで響ちゃんがフラッグを奪取!!完封で勝利を抑えました!優秀な作戦指揮を見せた提督に盛大な拍手を!」

ワーワー パチパチパチパチ

木曾「完璧な作戦だったな」

提督「えへへ…でもまだ一回戦だからね、次の作戦を練らないと」

陸奥「完敗だわ…やっぱりチームワークは大切ね」

長門「悔しいな…だが、楽しい戦いだったぞ」

提督「あ、二人とも…お疲れ様」

長門「すごい作戦指揮だったな。実際に出撃する時も提督に指揮を頼みたいものだ」

提督「うーん…考えとく」

陸奥「でもそれ以上にすごいのはチームワークだったわ。これなら本格的に優勝を狙えるかも……頑張ってね」

提督「うん、ありがと!」

アイムスリーピー

雷「さて、次の作戦ね」

提督「さっきは勢いで攻略出来たからいいものの、同じ手はもう使えないだろうしね…」

響「基本フォーメーションは同じでいいと思う。さっきのチームワークを見ればあれで不足はなさそうだ」

暁「なら誰がどう動くか、ね…」

木曾「俺に考えがある、聞いてくれ」

提督「うん」




那珂「さーあ先ほどの試合によって会場は熱狂的な盛り上がりを見せています!このまま皆さんにも熱い試合を見せてもらいたいものです!」

那珂「では続きまして、Aブロック第二回戦!ビスマルクさん率いるチームジャーマニーソール!迎え撃つはしおいちゃん率いるチーム伊号!それでは各人、ポジションについて…」

『始めっ!』

\ワーッ!!/

〜〜〜〜〜


提督「………ふぅ。これで一通りの作戦は完成だね」

木曾「ああ。どうしてもって時は各々アドリブで動いてくれ」

暁「そうね、暁達ならやれるわ!」

雷「はー…長いこと喋ってたら喉乾いたわね。何か持ってくるわ!」

暁「あっ、暁も!」

響「私も行く」

雷「司令官と木曾さん、何がいい?」

提督「私ココア!」

木曾「熱いお茶が飲みたいな」

雷「分かったわ!ちょっと待っててね!」パタパタ

提督「……うー、落ち着いたら寒くなってきたなぁ…」ブルッ

木曾「まあ雪が積もるほどだしな…というかまだ降ってるし」

提督「はふ、手袋なかったらしもやけコースだったねこれ…」

バサッ

提督「わお」

木曾「ふふ、どうだ?二人で入れば暖かいだろ?」

提督「わあ、マント…えへへ、あったかいね」

木曾「さらにこうすれば…」ギュッ

提督「うわー、あすなろ抱き…あは、お姉さんときめいちゃうかも…」

木曾「お姉さん?」

提督「なに?なにか言いたいことでもあるの?」ジト

木曾「いーや、なんでも」

提督「ならよし」

提督「…………」スンスン

木曾「どうした?」

提督「ん?いや、いい匂いだなーって思って」

木曾「……変態くさいぞ?」

提督「ふふ……木曾の匂い、優しいね…」ニコ

木曾「んなっ…!?い、いきなり変なことを言うんじゃない!///」

提督「あはっ、珍しく照れちゃって!」

木曾「馬鹿、茶化すな!///」

ダンッ!!

雷「お・ま・た・せ♪」

提督「うえっ!?い、いつの間に…」

雷「ふふっ、二人で楽しそーーーーになにやってたのかしら??教えて欲しいわねぇ???」

提督「え、え〜っと…ほ、ほら!ただのスキンシップだよ!ねえ、木曾!」

木曾「風花…もうお前を離さない…」キリッ

提督「ちょっと、木曾!?」

雷「(#^ω^)」ビキッ

提督「ま、待って雷、これは木曾の……!!うわっ!うわうわ、うわーーーーーっ!!!」

ねりゅううううううううう
書いてて思ったんですけど、那珂ちゃんってすごい実況似合いますね

雷「まったくもう、司令官のバカ!」

提督「あはは…ごめんごめん、つい調子に乗っちゃった」

木曾「俺も悪ノリしすぎたな、すまなかった」

雷「むぅ…まあ、別に怒ってないけど…」

提督「優勝したら一日中甘えてもいいから、ね?」

雷「……それもそうね。よし!気を取り直して頑張りましょう!」

木曾「よかったな、嫌われなくて」

提督「だねぇ…ところであと何回勝てばいいの?」

木曾「そうだな、参戦してるチーム数的に………三回だな」

提督「私達はあと何人殺せばいい?私はあと何回あの子とあの子犬を殺せばいいんだ?ゼロは私に何も言ってはくれない……教えてくれ、木曾!」

木曾「何を言っているんだお前は」

提督「ごめん、言いたくなっただけ」

木曾「………W面白いよな」ボソッ

提督「!?」

雷「さあ司令官、次は私達の出番よ!」

提督「スー……」コックリコックリ

雷「……司令官!!」

提督「…んえ?あ、ああ、試合?」

暁「司令官、今寝てたでしょ」

提督「ね、寝てない寝てない!ちょっと目瞑ってただけだから!」

雷「なんでもいいわ、早く行きましょう!相手チームが待ってるわ!」ザフ

提督「……はっ、くしゅん!」

木曾「大丈夫か?」

提督「うー、マントがあるとはいえさすがに寝ると体温下がるなあ…」

木曾「無理はするなよ?」

提督「うん……よし、身体あっためるために前行くね!」

木曾「わかった、活躍ぶりを見せてくれ」

那珂「さあ再びやってまいりました、我らが提督率いるチーム迅雷!前回は会場が沸き立つようなプレイを見せてくれました!さて今回は提督が前に出ていますが、どんなプレイを見せてくれるのでしょうか!?実況の那珂ちゃんも胸が躍ります!!」

\ウオオオーーーーーーーーッ!!!/

ザワザワザワ…

<がんばれ提督ーっ!!

提督「なんか、すごい期待されてるんだけど…」

那珂「対するは深雪ちゃん率いるチーム雪走!
持ち前のコンビネーションを活かして、彼女達は一回戦を突破しました!言わずとも通じ合うその心に作戦などなし!アドリブの嵐をどう攻略するのか!?これも熱いカードです!」

叢雲「はぁ、なんで私まで…」

初雪「まあ、同じ型だし……」

吹雪「そんなこと言って、叢雲ちゃんもさっき楽しそうだったよ?」

叢雲「う……ま、まあ、否定はしないけど…「

深雪「よっしゃあ!みんな、深雪さまについて来いっ!」

白雪「そうね、私達ならやれる!」

深雪「司令官!司令官達には負けないからな!」シュビ

提督「うん、手加減なしだよ」

深雪「それでよし!全力で来いっ!」

提督「ふふ……いい覚悟だね」

那珂「この寒さなど知らないかのような会場の熱気!早く始めろ、コールをしろと那珂ちゃんに痛い視線が突き刺さります!ああ、なぜ!アイドルなのに、どうして!そんな疑問も熱く熔かせ!天を焦がせ!!銀色の世界に走るのは迅雷か、それとも真っ白な吹雪か!白熱の第二回戦!!」





『───始めっ!!!』

提督「ほっ!」ズシャッ

深雪「はっ!」ズシャッ

那珂「両者、まずはキーとなる小盾を取りました!早くも前衛が決まりましたが、ここがどう動くかによって試合が一転も二転もすることでしょう!」

提督「おりゃ!」シュッ

深雪「おっと!」バッ

那珂「提督の先制攻撃!しかし深雪ちゃんも盾でしっかりと防いでいます!さらに続く提督の攻撃!深雪ちゃん、たまらず雪壁に隠れます!」

提督「おりゃ!出てきなさーい!」シュッ シュッ

白雪「くっ、こう弾幕を張られると迂闊に出られない…」

那珂「あっという間に制圧してしまいました!これは早くも勝敗が決したか!?」

深雪「………初雪!」

バッ

初雪「えいっ……!」シュッ

提督「うわっ!?」バッ

那珂「おっと!?これは初雪ちゃん、鋭いカット!予想外の攻撃でしたがかろうじてガードしています!」

深雪「今だ!かかれ!」

吹雪「白雪ちゃん!挟みこんで!」

白雪「うん!」

暁「司令官!」

木曾「待て、迂闊に出るな!お前まで巻き込まれるぞ!」

暁「でも…!」

木曾「あの子を信じろ、きっとどうにかなるはずだ…!」

那珂「ピンチ!ピンチ!ピンチ!提督、一気に追い詰められました!さすがのコンビネーション、一人での突破は不可能!」

深雪「いけ!潰せ!」

白雪「もらった!」シュッ

吹雪「そこぉっ!」シュッ

提督「はぁっ!!」ブンッ

バスッ バスッ

白雪「な…!?」

吹雪「うそ!?」

那珂「なんと!?F91を彷彿とさせるシールドバッシュ!二つの雪玉を同時に砕きました!!」

提督「でぇい!!」シュッ

白雪「きゃあ!」

バスッ!

深雪「白雪!くっそ、よくも白雪を!」バッ

吹雪「今だよ!雪玉を集中させて!」シュッ

深雪「くらえ!」シュッ

初雪「白雪の仇…!」シュッ

提督「甘いっ!!」バシュシュン

初雪「くっ…!」

吹雪「ああ、また…!」

叢雲「今!!」ダッ

深雪「うおおおおっ!!」ダッ

提督「やばっ……」

深雪「もらったぁ!!」シュッ

叢雲「終わりよ!」シュッ

提督「っ………死なば諸共ォッ!!」ダッ

深雪「なにぃ!?」

叢雲「深雪!?」

提督「ずあっ!!」

シュッ!

バスッ! バスッ!

那珂「あぁっと!ここで追い詰められた提督が深雪ちゃんを道連れに!大きすぎる置き土産を残していきました!」

叢雲「く…まずいわね…」

吹雪「ど、どうしよう…」

初雪「落ち着いて…まずは一旦引かないと…」

響「逃がさない!」シュッ

叢雲「危ない!」ガバ

吹雪「きゃ!」

暁「逃しちゃったか…」

木曾「こうなると迂闊には追えないな…」

吹雪「ごめんね、叢雲ちゃん…」

叢雲「気にしないで…それにしても四対三はちょっと厳しいわね…」

初雪「……作戦、ある」

木曾「………動きがないな」

響「何か企んでいるみたいだね…」

雷「どうする?下手に動かなければこっちの有利は変わらないけど…」

暁「でも、盾が遠くにあるぶん完全にこちらに分があるとは言いづらいわね…なんとかあれを回収出来たらいいんだけど」

木曾「誰か、頼めるか?」

響「……なら私が行く」

雷「気をつけてね!」

那珂「両者共に膠着状態!お互いに攻めあぐねているのか、出方を伺っているのか、それとも作戦を立てているのか!会場も緊張に静まり返っております!那珂ちゃんうるさいという視線が刺さります!」



提督「おおー、熱いねえ」

白雪「司令官、おしるこ飲みます?」

提督「あ、飲む!」

深雪「おー、あたしも!」

響「…………」タタッ スッ

雷「敵影なし!」

木曾『いいぞ、行け!』

響「ふっ……!」バシッ ゴロンッ

那珂「チーム迅雷、ここで盾を奪取!これでさらに優勢に持ち込めるか!?」

木曾「よし!よくやった、早く戻ってこい!」

叢雲「そうはさせないわ!」バッ

初雪「チャンス…!」

吹雪「逃がさない!」

暁「これは…!?」

那珂「あっと!?これは盾を構えた叢雲ちゃんを筆頭に、吹雪ちゃんと初雪ちゃんが並んだ単横陣です!一気にフラッグを掴みに行くのか!?さあどう食い止める!?」

響「私はもうダメか…!……木曾さんっ!」ブンッ

木曾「なっ…!」

那珂「響ちゃん、盾を木曾ちゃんパス!自らを犠牲にして、勝利を仲間に託す!!これは熱い!!熱い展開です!!」

響「私のことはいい!だから…」

吹雪「もらったぁっ!!」シュッ

木曾「お前っ……!」

響「勝ってくれ!!」

木曾「………ああ!」

暁「響!」

バスッ

那珂「無情のアウト…!さあこれで人数はイーブン、しかし勢いはチーム雪走に向いている!まだ先は見えません!!」

叢雲「このまま押し切るわよ!」ダッ

雷「まずいわ…!」

暁「回り込めない…!」

木曾「俺が先行する!援護を!」

木曾(一列なら盾を構えていれば攻撃も通らないはずだ…!)

木曾「行くぞォ!!」

那珂「木曾ちゃん、盾を突き出して突撃!!受け取れぇえええええええッッ!!!」

叢雲「ふふっ…!」

暁「!? 待って木曾さん!」

叢雲「この瞬間を待っていたのよ!!」

木曾「何!?」

叢雲「散っ!!」

吹雪「了解!」

初雪「作戦通り…!」

那珂「ああ!?これはまずい!木曾ちゃんを援護する陣形に対して個別にぶつかり合う形になった!勢いに乗っている方が投げる速度も速い!大ピンチです!!」

深雪「おやっ、これはあたし達の勝ちかな〜?」

提督「むっ、まだ分からないよ」

白雪「司令官、お茶をどうぞ」

提督「おっ、ありがと〜」



叢雲「この勝負、もらったわ!」

木曾「まだだ!暁っ!」ブンッ

暁「え、ええ!」パシッ

那珂「なんと!?ここでさらに盾をパス!防御なしで盾を持った叢雲ちゃんに立ち向かいます!」

叢雲「ふふっ、気でも狂っちゃった?」

木曾「まさか。まだまだ、ここからさ」

暁「木曾さん!」

木曾「暁!雷を守れ!なんとしてもフラッグは守るんだ!」

暁「でも…!」

木曾「安心しろ。俺は絶対負けないからな」

暁「………! 了解!」

暁「ここは通さない!」

雷「なんとしても、守り抜くのよ!」

吹雪「お願い、通して!私達は負けられないの!」

初雪「勝って、司令官と…!」

那珂「激しい攻防!互いに押し、退き合い、両者一歩も譲りません!インファイトを思わせる打ち合いに会場は大興奮!歓声で耳が潰れそうです!!」

叢雲「クライマックスには丁度いいムードね…」

木曾「ああ…これで幕を引こう」

叢雲「私達の」

木曾「俺達の」

「「勝利を以って!!」」

叢雲「はぁっ!」ダッ

木曾「!」ザッ

那珂「先に動いたのは叢雲ちゃん!盾がない木曾ちゃんを潰して決着を付けに行くか!?」

叢雲「私の勝ちね!これで終わりよ!」ブンッ









木曾「どうかな」

叢雲「!?」

木曾「だあっ!!」




ザンッ




叢雲「えっ!??」

木曾「もらった!」シュッ

叢雲「しまっ……!」

バスッ

那珂「え…!?い、一体何が起こったのでしょう!?木曾ちゃんの服に雪がついていないということは、盾を持っていたはずの叢雲ちゃんが負けている!?りっ、リプレイ!モニターに回してください!」

『だあっ!!』



那珂「こ、これは……!?雪の剣です!!雪を固めて作った剣で叢雲ちゃんが投げた雪玉を切り裂いています!!」

深雪「ウソぉ!?」

提督「木曾ー!!カッコいいよーーーっ!!!」




木曾「すぐ崩れるから一度きりだけどな…!」ダッ

初雪「しまった…!」

吹雪「えっ!?ちょっ、うそでしょ!?」

那珂「慌てて追いかけるがすでにその差は大きく開いている!もはや止めることは不可能!!そして走って、走って…!跳んだ!!見事フラッグをその手に掴みました!!雪も溶かすような熱い激戦を制したのはチーム迅雷!みなさん、盛大な拍手をーッ!!」

\ワァーーーーーーッ!!/ パチパチパチパチパチ

叢雲「まさか雪を剣にするなんてね……完全に予想外だったわ」

木曾「普段軍刀で砲弾を弾き返してるのを思い出してピンと来てな…まあ、そう何度も使えるわけじゃないし、時間もかかるから前には出られないんだけどな」

叢雲「一瞬の閃きね…負けたわ。でも、楽しかった」

木曾「ああ、俺もだ」

ドドドドド

「木曾ぉーーーーーーーーーーーっ!!!」

叢雲「あ、司令官がきt……うわっ!?」サッ

ガバッ

木曾「ん?うおおおぉ!?」ドサッ

提督「木曾ぉおお〜!よくやったよ木曾ー!!」

木曾「わ、分かったから!分かったから離せ!」

提督「えへへぇ木曾ぉ〜、大好きだよ〜愛してるよ〜♪」チュッチュ

木曾「ぬわ!?や、やめろ!みんな見てるから!こら!!///」

加賀「…………」モグモグ

赤城「おしるこ、美味しいですね」

加賀「ええ」モグモグ

赤城「………あ。加賀さん、見てください、あそこ」

加賀「?」

赤城「提督が木曾ちゃんに……ふふ、仲睦まじいようでなによりですね」

加賀「………………」グググ メキメキバキッ

赤城(箸を握り潰した!?)

亀更新ほんとごめんなさい

提督「えへへぇ、よくやったよ木曾〜」スリスリ

木曾「分かった、分かったから早く離れろってば!………うげっ!」

ダッ

提督「うわっと!?木曾、どこ行くの!?木曾ー!?」

赤城「ぷっ、ふふ」クスクス

加賀「お疲れ様」

提督「あ、加賀!試合、見てたの?」

加賀「ええ、いい健闘だったわ」

提督「ほんと!?……木曾も褒めてもらえばよかったのに」

赤城「加賀さんが怖いオーラ出すから…」

加賀「別にそういうつもりでは…」

提督「加賀は雪合戦しないの?」

加賀「私はあまりこういうことは…」

赤城「おしるこやお餅の方が気になるんですよね?」

加賀「それは赤城さんもでしょう…」

赤城「あら、バレました?」

加賀「はぁ…まあ、そういうことだから」

提督「そっかー、ちょっと残念かも」

『えーでは、間も無く次の試合に移りたいと思います!出場者はコートの方に集まってくださーい!』

提督「あ、もうそろそろ次が始まるみたい…応援行ってくるね!」

加賀「あ、ちょっと待って」

提督「?」

ゴソゴソ

加賀「はい、これ」スッ

提督「ん…これは?」

加賀「弾除けの御守り。さっきみたいに当たってほしくないから」

提督「おお…あ、ありがと!えへへ…」

加賀「風花」

提督「?」

加賀「勝ってね」

提督「………うん!」

<しれいかーん!はやくー!

提督「今行くー!それじゃあね、二人とも!」ダッ

加賀「ええ」

赤城「頑張ってくださいね〜」フリフリ

ザッ ザッ ザッ

加賀「…………」

赤城「どうですか?雪は女性を三割増しで美人に見せると言いますけど…」

加賀「そうね、今のところそうとは思えないわ」

赤城「あら、意外」

加賀「…………けど」

赤城「?」

加賀「………三倍可愛く見えるわ」

赤城「………一理ありますね」

提督「やー、お待たせ」

雷「ほら司令官、もう始まってるわ!」

提督「おー、ほんとだ!」

木曾「……ん?なあ、それなんだ?」

提督「え?ああ、これ?加賀がくれた弾除けの御守りだよ」

木曾「へえ、弾除けの御守り…」

木曾「…………」

木曾「…………」

木曾「…………ん?」

木曾(弾除けの、御守り………?)

木曾(……え?えっ?ということはあの中には…!?)

提督「木曾、どうしたの?」

木曾「えっ!?あ、い、いや、なんでもないぞ!」

提督「そう?体調悪いならすぐに言ってね?」

木曾「あ、ああ。心得てる」

木曾(マジか、加賀…なかなか大胆だな…)

赤城「…………?」モグモグ

加賀「…………」モグモグ

赤城「……あの、加賀さん?」

加賀「なに?」

赤城「弾除けの御守りということは……その、アレ……」

加賀「入ってるけど」

赤城「ワオ……」

加賀「本物を入れないと効力なんて出るはずがないわ」

赤城「そ、そうですよね。願掛けは大事ですよね」

赤城「あのー…すごく気になるんですけど…」

加賀「なにが?」

赤城「提督って、そのぉ…よ、夜の方はどういう感じ…なのでしょうか…」

加賀「…………」ジロ

赤城「ち、違うんです!別にやましい気持ちがあるわけではなくて、ただ興味があるだけなんです!」

加賀「………はぁ…そうね…何から聞きたいの?」

赤城「えっ?い、いいんですか?」

加賀「ええ。早くしないと気が変わるわ」

赤城「え、え〜っと、じゃあ、どういう態度になるのかを詳しく…」

加賀「態度ね…」

加賀「…あの子、普段は可愛らしいというか、結構子供じみてるでしょう?」

赤城「そうですね、それを言うと怒りますけど…」

加賀「けど、夜戦の時はそれがまるでなくなって…しおらしくなるというか…いきなり美人に見えてくるというか…」

赤城「はぁ、なるほど…」

加賀「で…普段の比じゃないほど甘えてくるわ」

赤城「と、言いますと?」

加賀「いつもなら金剛さんに抱き着かれたり陸奥さんに頭を撫でられたりするだけで「みんな見てるから〜」…って真っ赤になって恥ずかしがるのに、夜戦する時になると自分から抱き着いてくるし首筋に鼻先を擦り付けてくるし…ええ、可愛すぎて死にそうね」ニコニコ

赤城「そ、そうですか…」

赤城(まさかこんな惚気話を聞かされるとは)

加賀「ずっと手を握って離さないし、キスしただけでスイッチが入って求めてくるし、終わった後のあどけない笑顔が可愛いし…」

赤城「はぁ…」

加賀「赤城さん、聞いてる?」

赤城「あ、はい、聞いてますよ、はい」

加賀「これだけじゃなくて私と二人きりの時には普段見せないような一面もあって…」

赤城「はあ」

加賀「私が居るのを見たらすぐ犬みたいに隣に来るし、私に寄り添っているとすぐ眠るし、本を読んでいると表情がころころ変わるのも本当に可愛らしいわ…ふふ…」

赤城「はあ」

加賀「あとは…そうね、好きな食べ物が出たら露骨に機嫌が変わったり、駆逐艦の子達が遊んでいるのを見ると一緒になって子供みたいにはしゃぐ笑顔も可愛いし、執務中の真面目な顔も可愛らしいわ」

赤城「はあ」

加賀「聞いてます?」

赤城「聞いてます」

赤城「でも、提督って他の子とも仲良くしてるじゃないですか?」

加賀「ええ、確かにそうね…けど、あの子はそういう人だから」

赤城「そういう人とは…?」

加賀「誰かに愛されるために、誰かを愛する。自己満足のようにも思えるけど、私があの子にもらった愛は本物だから。この愛に偽りはないわ」

赤城「……なるほど」

加賀「絶対に裏切らないと約束もしたし…それに」

赤城「?」

加賀「あの子が甘えてくるのは私だけだから」ドヤァ

赤城(うわ…ムカつく…)

赤城「しかし……提督って少しおかしいですよね?」

加賀「そう?」

赤城「だって、そんな愛情の形、歪んでいると思いません?」

加賀「……そう言われてみればそうかも」

赤城「一見普通に見えますけど…なんだか、何かが違うというか…普通の人ではないような…」

加賀「…前に本で人間は子供の頃にあった出来事が精神状態や性格に影響する、と見たわ」

赤城「だとしたら、子供の頃に何かが…?」

加賀「……………」

赤城「……………」

加賀「……………」

提督「………おーい」

赤城「……………」

加賀「……………」

提督「………わっ!!」

赤城「!?」ビク

加賀「!」ビク

提督「二人とも、そんな真剣な顔してどうしたの?考え事?」

加賀「え?あ、いえ…少し気になることがあって…」

提督「気になること?」

赤城「提督、小さい頃になにかありました?」

提督「小さい頃?うーん…」

提督「………うん、あるよ」

赤城「! それはどういう出来事でしたか?」

提督「うーん、分かんないや」

赤城「えっ?」

加賀「どういうこと?」

提督「いやね、何かあったのは覚えてるんだけど…その内容がどうしても思い出せないんだよね」

赤城「……そうですか。突然すみません、変なことをお聞きして」

提督「ううん、いいよ」

加賀「…もう試合は終わったの?」

提督「あ、うん!次は私達の決勝戦だよ!」

加賀「そう。なら私も見に行くわ」

提督「うん!先に行って準備してるね!」

加賀「………はぁ…」

赤城「真相は闇の中、というわけですね…」

加賀「少しでもあの子のことを理解してあげられればと思ったのだけど…ダメみたいね」

赤城「そんな、もう十分加賀さんは提督のことを知っていますよ」

加賀「……そうね。それに、過去になにがあったとしてもあの子はあの子よ」

赤城「そうですね、また何か思い出すことがあればその時聞きましょう」

加賀「ええ。…そろそろ試合が始まるわ」

赤城「私達も行きましょうか」

那珂「レディースエーン……レディース!!さーあ皆様、長らくお待たせいたしました!Aブロック決勝戦!!幾多の強敵を打ち倒し、ここまで登り詰めてきた雪の英雄達をご紹介しましょう!」

提督「那珂ちゃん、すっごいMC上手いなぁ…」

那珂「さあまずは青コーナー!持ち前のチームワークと完璧とも言える作戦!そしてそれを指揮する優秀な提督!普段の態度がアレなせいで驚いた人も多いことでしょう!」

提督「アレってなにさアレって!失礼な!」プンスカ

那珂「しかし優秀なのは作戦を指揮する提督だけではありません!木材だけでは火が起こらぬように、その火付け役が必要なのです!それがこの、第六駆逐隊の三人!子供と思って侮ると痛い目を…いや!冷たい目を見ることになるぞっ!」

暁「子供じゃないってばー!!」プンスカ

響「はいはい、早く準備しようか」

那珂「そして最後に、これまでの試合で幾度となくそのイケメンっぷりを見せつけてきた抱かれたい艦娘ランキング推定ナンバーワン!まさか…男!?いや違う!おっぱいのついたイケメンこと、球磨型の末っ子!木曾ちゃんです!!」

\木曾ー!カッコいいよー!!/

\木曾、勝ったら好きなもの奢ってやるクマー!/

\木曾ー!/\木曾ー!/\木曾ー!/

木曾「やめろよ!顔出しづらいだろ!!///」

那珂「続いては赤コーナー!なんとこのチーム、全員が重巡洋艦です!妙高型四姉妹と、人数合わせのために入れられた……と思いきや、かなりの活躍を見せる古鷹ちゃんです!」

古鷹「なんで私まで、と思ったけど…ここまで来たからにはやるしかないですね」

足柄「勝負事に負けるつもりはないわ!勝つのよ!!絶対!!」

妙高「久しぶりに燃えてきました…!」

那智「ああ…勝って提督と…」

羽黒「わ、私も司令官さんと…!はい!頑張ります!」

那珂「意気込みは十分!いよいよ試合が始まります!泣いても笑ってもこれが最後…提督を一日自由に出来る券を賭けたラストバトル!!」

提督「………そういえばそういう体だった」

那珂「それではいざ、尋常に……」




『始めっ!!!』

提督がいるところ以外書くのめんどくさい(屑並感)

那智「まずはこちらかr」バッ

提督「はぁっ!!」シュッ

那智「何!?」

バスッ

提督「ひとつ!」

妙高「那智!」

提督「まだまだっ!」シュッ

妙高「………!」

バスッ

提督「ふたつ!」

羽黒「ひいっ!」ササッ

提督「みっつ…はダメか…」

那珂「速い!速すぎる!提督の十八番が炸裂しました!!精密射撃によって早くも二人撃沈!大きくリードを奪いました!!」

木曾「いいぞ!」

正直なところ、もうネタがないんです…

提督「暁!」

暁「ええ!」ダッ

那珂「日和った隙に盾を取りました!早速見事な連携を見せています!」

羽黒「ど、どうしよう…!」

古鷹「落ち着いてください!まずはこちらに!」

羽黒「は、はい!」ササ

提督「!」ピクッ

足柄「待って!まだ提督が…!」

ビュンッ!

羽黒「きゃあ!?」バッ

提督「!?」

木曾「避けた!?」

那珂「提督の精密射撃を躱した!?偶然か、それとも…!?」

木曾「…どうする?」

提督「いや、このまま押し切る!みんな行くよ!」

雷「了解!」

那珂「作戦決行!このまま勢いに乗って押し潰せるか!?」

古鷹「来ます!羽黒さん、迎撃態勢を!」

羽黒「は、はい!」

足柄「私達は少しでも多く数を減らすわ!」ダッ

暁「盾もなしで来るなんて!」

木曾「畳み掛けるぞ!」

提督「………!?待って木曾!様子がおかしい!」

木曾「なに?」



暁「せいっ!」シュッ

古鷹「くっ…!」サッ

響「逃がさない!」シュッ

バスッ

古鷹「っ……足柄さん!」

足柄「ええ!」シュッ

暁「まずっ…!」

バスッ

雷「暁の仇ぃー!」シュッ

足柄「ここまでね…」

バスッ

那珂「さらに二人ノックアウト!一人犠牲になりましたが、四対一!これは試合が決まってしまったか!?」

雷「このまま挟み込んで!」

響「わかった!」



提督「ダメ!二人とも戻って!」

木曾「…聞こえていないみたいだ」

提督「うあぁ…私のミスだ…」

木曾「……何がだ?これなら俺達の勝ちじゃないのか?」

提督「ううん…どうして相手チームが決勝まで残ったのか分かる…?」

木曾「…どういうことだ?」

提督「一人一人は強いけど、古鷹がいる分五人全員の連携は取れていない…これは五人全員が協力して勝つ競技。ならそれであのチームがどうやって勝ってきたのかって」

木曾「………!まさか…」

提督「そう……」

妙高「……そろそろでしょうか」

那智「ああ…少し心許ないが」

足柄「そう?少なくとも二人はやれそうだけど」

古鷹「完全に油断していたみたいですしね…」

那智「意外だっただろうな。一回戦の時のあいつと同じで誰もその存在を警戒していない。まさかそんな、と思うだろう…そう」









『「ダークホースという、存在を」』







ヒュヒュンッ

雷「え?」

バスッ バスッ

響「……え?」

提督「ごめん……」

那珂「え……な、何が起こったのでしょう!?雪玉をぶつけられ痕跡が見えますが…え、え?雪玉を…投げた?一瞬で?二人に向かって同時に!?あ、り、リプレイが届いているようです!モニターに回してください!」

ザワザワ…

那珂「……た、確かに両方に投げています!しかもどちらとも当たっています!恐るべし羽黒ちゃん!!最後の最後で、秘められし力を発揮しました!これは大番狂わせか!?」



木曾「まずいな…一気に二対一まで持ち込まれたぞ…」

提督「………まさか羽黒があそこまでやるなんて…完全にノーマークだった…私のミスだ…」

木曾「お、おい…弱気になるな、まだ負けたわけじゃない」

提督「……うん。まだ、策はあるよね」

女提督が加賀に監禁されるSS書きたい(唐突)

書くとしたら別スレ建てることになりそうです
話に矛盾が生まれるので

ココロの処方箋が要りそうなタイトルですね
そのタイトルで建てるかもしれません

提督「…………」ソーッ

羽黒「うぅ…ご、ごめんなさい…」

木曾「……どうだ?」

提督「動く気配はないかな…防衛に徹してるみたい」

木曾「さすがに二人といえど単身で突っ込めば的になるだけだからな…動きながらあの投げ方は出来ない、ということか」

提督「……けどこのままじゃジリ貧だよ…」

バスッ!

羽黒「は、早く降参してください!」シュッ

バスッ!

木曾「試合時間もあるしな…焦り始めた向こうが雪壁の上から叩き込んでくる可能性もある」

提督「だからと言って迂闊には出られないし……」

提督「…………!!」

木曾「どうした?」

提督「…思い付いたよ、打開策」

木曾「! 本当か!?」

提督「うん、まずは………」

提督「………どう?」

木曾「……確かに決定力はあるが…本気か?」

提督「相手があれじゃどう策を講じても突破は無理だと思って、ね…」

木曾「………まあ、それもそうだな」

提督「でしょ?」

木曾「ああ、どうせやるなら当たって砕けろだ」

提督「うん!私達なら出来るよ、きっと」

木曾「……よし!行くぞ!」

提督「ラストバトルだああああ!!」

羽黒「!」ピク

木曾「俺が先陣を切る!後に続け!」

提督「わかった!」

那珂「決死の突撃!木曾ちゃんが盾を前面に突き出し、提督が続きます!何か策があるのか、それとも雪合戦の女神に全てを委ねるか!?」

羽黒「ひっ!こ、来ないでくださいぃぃ!」シュッ

木曾「うおっ!」

ボスッ

提督「木曾!」

木曾「大丈夫だ!だがカバー出来ていないところを的確に狙われた、次はないぞ!」

提督「分かってる!行くよ!」

木曾「ああ!」

提督「羽黒ォーーーーー!!!」

ビュン

羽黒「ひぃっ!」サッ

提督「今のうちに!」

木曾「ああ!」ザッ

那珂「!? 木曾ちゃんが屈みこんで、盾を頭上に……えっ、えっ!?」ガタッ

木曾「跳べッ!!」

提督「おおおおあああああああああ!!!!」ダンッ

バッ

羽黒「うそ…」

那珂「木曾ちゃんを踏み台にしたぁ!??」

足柄「ええええええええええ!!???」

那智「なん……だと……」

妙高「これは……ダメみたいね…」

古鷹「チームワークがここまでとは…」

提督「だあああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」ギュオオオオオオオ

那珂「そのまま一直線!向かうはフラッグ!!もう止められない!そして!そして!!」






提督「私達のおおおおおおお!!!勝ちだああああああああああああああ!!!!」



ズザアアアアァァァ



那珂「フラッグをゲットオオオオオオオオオオオオオ!!!これが!!チーム迅雷の絆だああああああああああああああ!!!」

\ワアアアアアアアアアア!!!!/

\キャアアアアアアアアア!!!!/

\提督カッコイイー!!抱いてー!!/

提督「へへ…えへへへ……」

〜〜〜

羽黒「うう…最後まで動きが読めませんでした…」

妙高「負けましたね…まさか、上を攻められるとは」

古鷹「チームワークの勝利ですね…私達に足りなかったのはそれだったのでしょう」

足柄「あ”ーーーーーーーーっ!!!くやしいいいいいいいっ!!!」バタバタ

提督「あはは…足柄、みっともないよ…」

雷「というかかなり跳んでたわね。見る限り3m以上は…」

暁「木曾さんすごかったわ!」

木曾「ふっ、まあな。愛のなせる業さ」

提督「も〜、またまたぁ」バチーン

木曾「〜〜〜〜〜〜!!!」

響「うわぁ…」

那珂「お聞きくださいこの大歓声!寒さを忘れ、汗すら流すほど熱狂的な叫び!Aブロック優勝は、チーム迅雷!!今一度この英雄達に惜しみない拍手を!!」

パチパチパチパチパチパチ

暁「うわー、耳が壊れそう…」

木曾「ああ。だが、悪くない」

提督「みんなで勝ち取った勝利だからね」

雷「司令官、見て見て!ほら、これ!」

提督「ん?なにこれ?」

響「何って…司令官を一日自由に出来る券だよ」

提督「………あ!!そういえばそういう話だった!」

木曾「優勝して良かったな、ほんと…」

提督「危ない危ない、他のチームに渡ったら何をされるか分かったものじゃなかった…」

電「みんな、優勝おめでとうなのです!」

提督「おー電!ふふっ、見てたの?」

電「はい!司令官さん、カッコよかったのです!」

提督「えへへぇ、照れるねえ」

雷「ねえ、これの使い道どうする?」

暁「そうねえ、悩みどころね…」

響「そう焦らずとも、ゆっくり考えればいいさ」

電「あ………」

木曾「……………」

電「…………」

木曾「……ほら」

電「え?」

木曾「これ、やるよ」

電「えっ…!で、でも…!」

木曾「なんだ?これを誰かに渡しちゃいけないなんてどこにも書いてないだろ?」

電「そ、そんな…木曾さんに悪いのです!ダメなのです!」

木曾「いいからもらっておけ、お前達に比べたら提督といる時間は長いからな」

電「……でも…」

木曾「そんな顔するなよ、あいつの幸せは俺の幸せなんだ。お前達が一人でも欠けたらあいつも幸せになれないぞ?」

電「…………ありがとう、なのです」

木曾「ああ」

雷「電、もうやりたいことは決まった?」

電「…はい、大丈夫なのです!」

提督「私に出来る範囲でお願いね?」

暁「分かってるわよ!はい、司令官!今日の夜12時ちょうどから明日が終わるまで、ずっと一緒がいい!」

雷「私も!」

提督「おお…すごくまとも…うん、約束ね!電は?」

電「えっと…電は…」

木曾「……………」

電「電は…司令官さんとお姉ちゃん達と、木曾さんも、一日ずっと一緒がいいのです!」

木曾「んお……お、おい?」

電「ダメですか…?」

提督「もとより私に拒否権なんてないだろうしねえ…もちろんいいよ。私も、木曾に一緒に居てほしいし」

電「本当ですか!?やったのです!」

木曾「………はは…こりゃ一本取られたな」

提督「さて、響は?」

響「ん?私は司令官のおっぱ」

提督「は?」

響「私も一日ずっと一緒がいいな」

提督「そっか、やっぱりみんな考えることは同じなんだねえ」

響「……………」

提督「なに?」

響「なんでもないです…」

提督「よし…じゃあみんな、寝る時間になったらみんなを起こさないように私の部屋に来てね」

暁「了解!」

雷「ふふっ、楽しみねえ」

電「もちろん木曾さんも一緒なのです!」

木曾「はいはい、分かってるさ」

響「……フフ、みんなと一緒なら悪くないかな…」

提督「それじゃあ私、そろそろ他の子達見てくるね!」

暁「はーい、行ってらっしゃーい」

雷「司令官も大変ねえ…」

木曾「一番はしゃいでるのはあいつだがな」

響「違いない」

提督「うー、寒い寒い…」サスサス

提督「……あれ、他の子の姿が見当たらない……おぉっ!?なにこのかまくらの群れは!?」

ヒョコ

深雪「お、司令官!司令官もかまくらの中で餅食べよーぜ!」

提督「お餅?みんなお餅食べてるの?」

吹雪「えっ、司令官いるの!?」ヒョコ

提督「あ、みんないるんだ」

深雪「ほら、みんなで食べた方がおいしいから!なっ!」

提督「そうだね、そういうことなら」

深雪「やーりぃ!」

提督「おじゃましま〜す」ザフザフ

叢雲「あら、いらっしゃい」

提督「どうも〜」

初雪「お皿……」スッ

提督「あ、ありがと」

吹雪「今焼いてるところなのでもう少し待ってくださいね」

提督「はーい…いやー、しかしよく出来てるねえ」コツコツ

深雪「へへー、みんなが試合してる間に作ったんだよ!身体冷えると思ってな!」

提督「おお…深雪はえらいねえ」ナデナデ

深雪「へへへ…♪」

初雪「私も頑張った……」ススス

提督「よしよし、初雪もえらいえらい」ナデナデ

初雪「ふふん……」

吹雪「わ、私も頑張りました!」

叢雲「わ、私だってやったわ!」

提督「うんうん、みんなえらい子」ナデナデ

吹雪「きゃ〜♪」

叢雲「ふんっ、それでいいのよ///」

白雪「司令官、醤油をどうぞ」

提督「ん…あれ、醤油しかないの?きな粉は?」

叢雲「きな粉、あるにはあるけど…ここ、誰も食べないからもらってないわよ?」

提督「えー、きな粉おいしいのに」

深雪「他のところにならあると思うけど…まだ焼けないし今のうちにもらってきたらいいんじゃない?」

提督「うん、そうする」ザッ

提督「んっと…ここならあるかな…失礼しまーす」ヒョイ

北上「ん?おー、ふーちゃん」

大井「あ…提督…」

球磨「何か用クマ?」

提督「えっとね、きな粉ないかな?私がいるところになくって…」

多摩「ここにあるにゃ」スッ

提督「お、ありがとー」

大井「はぁ………」

提督「…大井、どうしたの?元気ないみたいだけど」

北上「さっきからずっとこの調子なんだよね、何があったか分からないんだけどさ」

提督「大井?体調でも悪いの?」

大井「………」フルフル

大井「……一日提督を自由に出来る券…」

提督「ああ、あれ…あれが欲しかったの?」

大井「はい…悔しいです…」

北上「まあ負けちゃったものはしょうがないからねえ」

提督「なるほど…ところで一日自由になって、何がしたかったの?」

大井「提督の貞操を」

球磨「…………」ササ

多摩「」ススス

北上「うわ……」ジリ

提督「私帰るね」クル

大井「違うんです!!!」

大井「待ってください提督!!」ガシッ

提督「やめてください触らないでください」ググ

北上「さすがにそれはキモいよ大井っち…」

多摩「死ね」ボソッ

大井「違います!私はただ提督を愛しているだけなんです!だから貞操を奪いたいんです!!」

提督「何その理屈!?どうあがいても変態でしょ!?」

大井「違いますゥー!他の誰かに取られたくないんですゥー!提督のものは全部私のものにしたいんですゥー!」

提督「やだよそんなの!?そもそも私もう処女じゃないし!」

大井「えっ?」キョトン

北上「えっ?」

球磨「えっ?」

多摩「えっ?」

提督「えっ?」

大井「今、なんと」

提督「え?い、いや、もう処女じゃないって…」

大井「………………………」

提督「……あ、あの」

大井「どこの男ですか?」

提督「へ?」

大井「どこの男ですか?誰ですか?どういう関係ですか!?いつのことですか!?今すぐ私がその首捻じ切ってああああああああああああああああああ!!!!!!」

提督「うわあ!?お、落ち着いて大井!」

球磨「大井がぶっ壊れたクマ!!」

多摩「もともとにゃ」

球磨「それもそうクマ」

北上「そんなこと言ってる場合じゃないってば!大井っち!」

大井「ウオアアアアアアアアア!!!殺す!!ぶち殺してやるうううううううううう!!!」

提督「大井!話を聞いて!まだ続きがあるから!!」グググ

大井「離せええええぇぇぇぇ!!殺す!!今殺す!!すぐ殺す!!骨まで砕いてやるうううううううううう!!!!!」

提督「話を聞けええええぇぇぇぇ!!!」グアオオオ

大井「おお!?おっおっおっおおおお!??」

提督「どりゃあ!!!」

ゴシャァッッ

球磨「うわ……」

多摩「すごいにゃ…」

北上「直下式ブレーンバスターなんて初めて見たよ…」

提督「ハァ……ハァ……話、聞く?」

大井「ききまふ」鼻血ダラダラ

球磨「で、続きってなにクマ?」

提督「え?ああ、うん…えっと…」

提督「…………////」カァアアア

多摩「え?ど、どうしたにゃ?」

提督「いや…なんかこれ言わなきゃいけないとなるとすごい恥ずかしくなってきて…///」

大井「どんな羞恥プレイさせられたんですか」ミシミシ

提督「そんなんじゃないってば…というか崩れるから壁に拳突き立てるのやめなよ…」

北上「もー、じれったいなぁ…ならどういう理由だったのさ」

提督「………あの…」

球磨「…………」

多摩「…………」

大井「…………」

北上「…………」

提督「………自分でやりました……」

大井「…………」

大井「…………」

大井「………えっ?」

北上「えっ?」

球磨「えっ?」

多摩「えっ?」

提督「……………/////」

大井「え……じ、自分、で?って?」

提督「うん、一人で…」

北上「ど、どうやって?」

提督「……イヤ、その…高校生の時に…あの…お…」

球磨「お?」

多摩「お?」

提督「お………オモチャで………/////」

北上「………えと、あの……なんていうか、ごめん…」

提督「いいよ別に…どうせ誰かに捧げる予定もなかったし…あの頃は盛んだったし…」

大井「…………」グスッ

北上「そんなに嬉しいんだ…」

大井「いや……提督、料理上手だし掃除も洗濯もするしお裁縫出来るし面倒見いいし、家庭的だから彼氏の一人や二人居てもおかしくないんじゃないかって……」ズズッ

北上「まあ、確かに…」

提督「残念ながら生まれてこのかた一度も彼氏なんて出来なかったんだよね…」

多摩「作ろうとは思わなかったにゃ?」

提督「うーん…いや、そもそも男の人を好きになるっていうのがよく分からなくて…私、小さい頃からずっと幼馴染にべったりだったし…」

球磨「告白?とかされたことは?」

提督「何回かあるなぁ……男の子に七回、女の子が十回だったけど…」

球磨「モテモテクマ」

提督「まあ、全部断った結果が独身アラサーという有様なんだけど…」

大井「いや…でも良かったです、どこの馬の骨とも知れない男に奪われるぐらいなら提督自身の
手の方がよっぽど綺麗です」

提督「当時は相当なショックだったけどね…」

北上「というか、そろそろ戻らなくていいの?」

提督「おっと、忘れてた…それじゃあきな粉もらっていくね」ザッ

球磨「片付けは任せたクマ」

提督「はーい」

多摩「ばいばいにゃ」

ザッザッザッ…

大井「さて北上さん!私達もお餅食べましょう!」

北上「切り替え早いね…」

ザフザフ

提督「よいしょっと…ただいまー」

深雪「ん、おかえりー」モグモグ

提督「あ、もうみんな食べ始め………あれ?私のお餅は?」

叢雲「あんたが帰ってくるの遅いからもう私が食べたわ」モグモグ

提督「あー!?なんてことを!!」

白雪「まあまあ、まだ数はありますから」

吹雪「もう一度焼きましょう、私達も食べますから!」

提督「むー…食べ物の恨みは恐ろしいんだからね」

叢雲「ちょっとは節制しなさい」

提督「」グサッ

初雪「…………」モグモグ

パチンッ パチッ…

提督「うわっちち、あちちち」

深雪「もっとこっち寄りなよ、火花飛ぶよ」

提督「うん」

プクー

提督「あ……ふふ、膨らんできた…」

白雪「もうちょっとですね」

提督「楽しみだなぁ…」

叢雲「誰かに取られないように気を付けなさいよ」ニヤ

提督「そんなことしないもーん、べーっだ」

提督「いや〜……しかし、静かだねえ…」

吹雪「そうですね…やっぱり、雪がずっと降り続いているからでしょうか」

提督「うん………」

深雪「…………」

初雪「…………」モグモグ

白雪「…………」

叢雲「…………」

提督「…………」

提督「………なんだか、こうして降り積もっていく雪を見ていると昔のことを思い……出、す…………?」





『……みて!…おね…ちゃ…………だよ!ゆき…』

『い…ぱい………つも…る!ゆ…がっせ……み…なでや………』

『………ちゃんも、おと……んも…かあさ……!』

『み…な…一緒に──────





提督「───………?…、…?」

深雪「おいっ、司令官?司令官?」ユサユサ

提督「………え?あ、ああ、なに?」

深雪「いや、もう焼けたって言ってるのにずっと反応がないからさ…食べないの?」

提督「あ、食べる!食べるから、叢雲ォ!!」

叢雲「あ、バレた」

提督「バレたじゃないでしょもう!」

初雪(……よかった、いつもの司令官だ…)

提督「まったく、もう…」

提督「……………」

提督(私……さっき、何を思い出そうとしたんだっけ……)

〜〜〜

深雪「くぁ〜……もうすっかり夜だな〜…」ググッ

提督「そうだねえ、そろそろお開きにしよっか」

深雪「そだなー、なんか名残惜しいな」

白雪「明日には溶けてなくなっているでしょうね…」

初雪「でも、今だけでも楽しめたから……感謝……」

吹雪「ありがとうございました、雪さん」

提督「雪に感謝!」ビシィ

深雪「感謝!」ビシィ

提督「それじゃあ私、みんなの誘導してくるから」

深雪「おー!七輪はあたしらが片づけとくなー」

提督「うん、よろしくー」

深雪「よーし、じゃあ戻ろうぜー」

「楽しかったねー」

「次雪合戦やる時は絶対勝つわよ!」

「叢雲ちゃん、一番楽しんでる……」

「べ、別にそんなんじゃないけど!?」

「まあまあ、恥ずかしがることじゃないから…」

ゾロゾロ…



提督「………さてと!私もみんなの誘導済ませて電達が来るための準備しよっと」

提督「〜〜出会ったこ〜ろは〜…♪」


鎮守府の雪おわり
そろそろ提督の過去も掘り下げていきたいです

大井「提督を産みたいですね」

提督「」

『勝てなかったよ……』





〜まだ鎮守府がそれほど大きくなかった頃〜

秋月「秋月型防空駆逐艦、一番艦、秋月です!本日付けでここに配属となりました!」

提督「私達の鎮守府にようこそ、秋月!これからよろしくね!」ギュッ

秋月「は、はい!よろしくお願いいたします!」

秋月(優しそうな人だなぁ…)

提督「ところで君、お腹すいてない?」

秋月「へ?あ、ええっと、はい、少し…」

提督「そっか、じゃあ何か食べたいものはある?」

秋月「えっ?」

提督「なんでもいいよ!好きなものを言ってね!」

秋月「あ…な、なら、肉じゃがとおにぎりが食べたいです!」

提督「肉じゃがとおにぎりだね…うん、分かった!食堂までおいで、すぐ作ってあげる!」

秋月「あ、は、はい!」タタッ

スタスタ……

飛龍「……………」ヒョコ

蒼龍「………見た?」

龍驤「ああ、見たで」

鳳翔「確かに」

瑞鳳「見た!」

飛龍「ねー。ああやって新しく配属された子がどんどん買収されていくんだね」

蒼龍「そう言う飛龍だってご飯で買収されたクチでしょ?」

飛龍「それは蒼龍もでしょ!あんなのずるいもん!」

龍驤「まあ食の誘惑には勝てんからなぁ…」

鳳翔「ということは、龍驤ちゃんも?」

龍驤「うん。そっちは?」

鳳翔「かく言う私も…」

瑞鳳「実を言うと私も…」

飛龍「もしかしてここの鎮守府の人って、全員ご飯で買収されたんじゃ…」

蒼龍「いや…でも、ほんとに提督の作るご飯美味しいし…」

瑞鳳「一度食べたら忘れられないよね、あの優しい味…」

鳳翔「それでいて人当たりもいいですしね…惚れない方がおかしいんじゃないでしょうか」

龍驤「あーもう!みんな意志が薄弱すぎるんや!あの誘惑に耐えられるやつはいないんか!?」

飛龍「そういう龍驤ちゃんだって」

蒼龍「買収されたんじゃない」

龍驤「う、うるさい!うちのことはええねん!///」

響「騒がしいね」スタスタ

龍驤「おお響!ちょうどよかった!なあ、キミはあのたらしのどこに惹かれたんや?」

響「おっぱいかな」

瑞鳳(うわあ…)

飛龍(この子…)

蒼龍(ブレない…)

〜一方その頃…〜

秋月「わあ…」モグモグ

提督「どう?美味しい?」

秋月「あ、はいっ!とっても美味しいです!」

提督「そう?えへへ、よかったぁ…」ニコニコ

秋月「………!」ドキッ

秋月(うわ、すごい可愛らしい…)

提督「良かったら他に好きなものも教えてよ、また今度作ってあげるからさ」

秋月「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます!!」

こうしてハーレム(無自覚)が形成されていくのでした
おわり

ドイツ艦はマックスが変態なイメージありますね(ゲス顔)

『もしかして?』




木曾「そういえば、気になったことがあるんだが」

提督「なに?」

木曾「もしかしてお前……かなり強いんじゃないのか?」

提督「へ?なにが?」

木曾「いや…この前の雪合戦、すごい動きだっただろう?」

提督「そう?」

木曾「ああ。大絶賛されてたぞ。みんなかなり驚いていた」

提督「そんなに!?」

木曾「しかも球磨姉さんに聞いた話だと、暴れ回る大井を担ぎ上げて直下式ブレーンバスターを決めたそうじゃないか」

提督「ああ、あれは気持ちよかったな〜…」

木曾「それで、鎮守府中で提督強い疑惑が出始めているんだが…実際のところどうなんだ?」

提督「どうもなにも、私が測ることじゃないし…」

木曾「……まあ、確かにそうだな」

木曾「…………」ジッ

提督「…………?」

木曾「後ろ!」

提督「えっ?」クル

木曾(今だ!)シュッ

提督「!」

パシッ

木曾「…………」

提督「…………」グググ

木曾「……すごいな、完全に不意打ちのつもりだったんだが」

提督「いや、なんだかそういう空気になってたから…」

木曾「……そうか」

木曾(それでも常人の反応速度とは思えないんだがな…それに掴んで離さない、なんて力だ…)

提督「………えい」サワサワ

木曾「あぅん!?」ビクッ

提督「おー、可愛い反応」

木曾「ひへっ、こ、こら!いつまで触ってるんだ!」

提督「木曾、指細い上に柔らかいねー」プニプニ

木曾「く、くすぐったいから!離さないか!」ブンブン

提督「まんざらでもないくせにー」フニフニ

木曾「くくっ、や、やめろってば!あははは!」

提督「ほれほれー」サスサス

木曾(マジで外れないぞ!?どんな怪力してるんだ!?)

提督(ふふん、私に手を出そうとしたお仕置きだもんねー!)ググ

母(?)は強しよ
おわり

『異文化交流』





提督「…………」カリ…

ろー「ていとくー!」バッ

提督「あ、ま、まった!そこでストップ!」

ろー「?」ピタッ

提督「うん、そこでじっとしててね、まだ危ないからね…」

ろー「危ない?てーとく、なにしてるの?」

提督「ん、これ?耳かきだよ」

ろー「ミミカキ…?」

提督「あれ、知らない?」

ろー「うん…」

提督(あ…そうだった、外国には耳かきの文化がないって前に本で読んだな…)

ろー「ミミカキって、危ないの?」

提督「ううん、耳かき自体は気持ちいいよ」

ろー「そうなの?」

提督「うん」

ろー「じゃあ、なんで危ないの?」

提督「この棒が奥まで入っちゃうとね、鼓膜ってところが破れちゃうんだよ」

ろー「破れると痛いの…?」

提督「うん。痛いだけじゃなくて、何も聞こえなくなっちゃうの」

ろー「うぇ…ミミカキこわい…」

提督「そんなことないよ、ちゃんとやればとっても気持ちいいんだから」

ろー「ほんと…?」

提督「うん、なんなら私がしてあげようか?」

ろー「! してくれるの?」

提督「いいよ。ほら、おいで」ポンポン

ろー「わーい!だんけっ♪だんけっ♪」ピョンピョン

提督(可愛い…)

ろー「膝に頭を乗せればいいの?」

提督「うん」

ポスン

ろー「えへへ、膝枕ー」

提督「///」キュン

ろー「? ミミカキ、しないの?」

提督「ん、ああ、そうだね、それじゃ横向いてくれるかな」

ゴロン

提督「そうそう、じゃあじっとしててね…」

ろー「はーい」

提督(ん……左はあんまりないかな…けど奥の方に結構大きめのやつが…)

提督「入れるよー」スッ

ろー「…………!」ピクッ

提督「…………」

ろー「…………」プルプル

提督「…………」ジー

ろー「…………」プルプル

提督「…………」ジー

ろー「………あれ?」

提督「ぷっ…」

提督「あはは、そんなに緊張しなくてもいいよ」

ろー「はうぁ、今ので力抜けちゃった…」

提督「うんうん、そのままリラックスリラックス」

ろー「…………」グデー

提督「よーし…」スッ

コシュ…

ろー「んっ……」ピク

提督「あんまり動かないでね…」

ろー「うん……」

提督(普段水に潜ってるせいかな…ちょっとだけ湿ってる…)カリ…

ろー「ひゃんっ!?」ビクン

提督「うわお!?い、痛かった?」

ろー「ち、ちがうの、なんか、ひゃーって…」

提督「ひゃー?」

ろー「あれ?なんだろ、ぞわぞわー?かな?」

提督「あー…まあ、慣れてないからかもしれないね」

ろー「でも、イヤじゃなかった、って」

提督「イヤじゃないならもっかいする?」

ろー「する!」

提督「おー、その意気込みや良し」

提督「じゃあもう一回入れるよー」スッ

ろー「…………」

カリッ

ろー「…………!」ピク

提督「大丈夫?」

ろー「ひゃい…」

提督「よーし…」

ゴソ…

ろー「んぅ……」

提督「もうちょっとだからね…」

ろー「うん……」プルプル



提督「………はい、取れたよ」

ろー「ふぁ…」

提督「…もしかして痛かった?」

ろー「ううん…気持ちよかった…」

提督「そ、そう…」

提督(心なしか息が荒いように思えるんだけど…緊張してるだけだよね…?)

提督「えと…右も、する」

ろー「して…」

提督「お、おおう…じゃ、向き変えて」

ろー「ん……」ゴロ

提督「……くふひひ、鼻息くすぐったい…」ピクピク

ろー「えへー…お腹、あったかい…」ツンツン

提督「ひゃっ…こら、耳かき出来ないからおとなしくしてなさい」

ろー「はーい、えへへ」

提督(あ、いつもの調子に戻った)

ろー「てーとく、ミミカキ、気持ちいいねー、って!」

提督「そんなに?」

ろー「うん!なんだか、ふわふわーってする!」

提督「ふわふわー…?……それって…」

ろー「?」キョトン

提督「あ、ううん、なんでもない」

提督(まさかそんな…それはないよね、耳かきで…)

ろー「……あれ?しないの?」

提督「ん、あ、ああ…じゃあ、いくよー…」

ろー「うん!」

提督「…………」ドキドキ

ろー「♪」パタパタ

提督「…………」ドキドキ

提督(おおおお落ち着け私!なんでこんなにドキドキしてるの!?違う違う、まだそうと決まったわけじゃない!こんなにも純粋で幼くて可愛らしい子が【自主規制】るはずがない!落ち着け落ち着けろーちゃんは合法ろーちゃんは合法ろーちゃんは合法ろーちゃんは)

ろー「まだー?」

提督「さあ、やろうか」キリリッ

ろー「う、うん」

うわあああああああああ!!!合法じゃなくて違法だったああああああああああああああああ!!!!!

>>242

ろー「……あれ?しないの?」

提督「ん、あ、ああ…じゃあ、いくよー…」

ろー「うん!」

提督「…………」ドキドキ

ろー「♪」パタパタ

提督「…………」ドキドキ

提督(おおおお落ち着け私!なんでこんなにドキドキしてるの!?違う違う、まだそうと決まったわけじゃない!こんなにも純粋で幼くて可愛らしい子が【自主規制】るはずがない!落ち着け落ち着けろーちゃんは違法ろーちゃんは違法ろーちゃんは違法ろーちゃんは)

ろー「まだー?」

提督「さあ、やろうか」キリリッ

ろー「う、うん」



に修正してやる!!

提督「力抜いてねー」ススス

ろー「はーい」

提督「…あ、こっちは結構溜まってるねー」

ろー「ほんと?じゃあ、いっぱい綺麗にしてほしい、って!」

提督「任せなさい」スッ

ろー「あっ」ビクッ

提督「ははは」カリカリ

ろー「あっ…や、んっ…」ピクッ ビク

提督「ははは」コシュコシュ

ろー「んんんっ///」ビクビク

提督「^^」コリコリ

ろー「ひあっ、う、にゃ…」ピクピク

提督(ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!)

提督(これ耳かきだよね!?耳かきと称した性感マッ【自主規制】とかじゃないよね!?なんでこんなに反応するの!?どうしちゃったのろーちゃん!?)

ろー「はー……はー……///」トロン…

提督(うわすごい見つめられてるなにこの目どう見てもオンナの目だよこれ完全にせがまれてるよ完全にセッ【自主規制】アピールだよもうゴールしてもいいよね)

提督(うわああああああああ!!!なに考えてるの私!!何も知らない純粋でいたいけな女の子を!!違法だよ!!ろーちゃんは違法!!ロリだよ!!?お酒も飲めn………!!!???そういえばろーちゃんワイン飲んでたよね!?ということは合法!?ろーちゃん合法なの!?セーフなの!??)

ろー「てい、とく……///」ボソッ

提督「いただきます」

※ここから先は字幕のみでお楽しみください

「んっ…あ、あっ、あっ…」

「声、出ちゃってるよ…」

「んんっ…んっ、ふ……!」

「いいんだよ…もっと可愛い声、聞かせて…」

「やぁっ…ひんっ…」

「そんなに気持ちいいの…?」

「きもち、いっ……///」

「そっか…なら、もっと気持ちよくしてあげるからね……」

「はぁ……はぁ…てい、とくぅ…」

「いっぱい出してあげるね…」

「あ、あぁっ……」

「すごいビクビクしてるね…気持ちいいんだね…」

「あっ、はぁっ、ら、りゃめ……」

「ダメ?何がダメなの?」

「はっあ、あ、な、き、きちゃう、なにかきちゃうぅっ…!」

「それはダメじゃないんだよ、ごく自然なことだからね…」

「でも、んやぁっ、こわい、よぉ…!」

「うん…手握っててあげるから…」

「ああぁっ…ていとく、ていとくっ…!」

「今楽にしてあげるからね……」

「っあ…!??や、あ、あ、あああああ!?あああああああっ!!」

ろー「はっ………はっ………///」グッタリ

提督「…………」ギュー

提督(ヤってしまった)

提督(いや耳かきだけど、ただの耳かきだけど)

提督(しかしこの私の膝に垂れるとろっとした液体、これは間違いなくアレ)

提督(そして今思い出した)

提督(外国には耳かきという文化がない、そのせいで未知の快楽に絶頂すらしてしまう人もいると)

提督(ヤってしまった)

提督(よりにもよってろーちゃんで)

提督(ヤってしまった…)

ろー「てーとく……」

提督「はっ…ち、違うのろーちゃん、私はただ耳かきを」

チュッ

提督「!?」

ろー「えへ…とっても気持ちよかったよ……ミミカキ、またしてね、って…」ニコッ

提督(あっもう死んでもいいや)

その後しばらくはろーちゃんの口コミでミミカキが広まって夜な夜な提督の私室を訪れるドイツ艦達がいたとか
おわり

提督「……まあ、そういうことがあったわけなんだけど」

木曾「…………ロリコン」

提督「へぇ!?ちちち違うもん!!別にそんなつもりはなかったんだもん!!」

木曾「ふーーーん……」

提督「なにその目!?私ほんとにロリコンじゃないもん!!」

木曾「どうだか」

提督「なんで信じてくれないのさぁ!」

木曾「だってお前、駆逐艦の子達とそれ以外の奴らだとまるで態度が違うじゃないか」

提督「うっ」

木曾「あと軽空母。あれにも甘いだろ」

提督「ソ、ソンナコトナイヨ」

木曾「はぁ…とんだ変態提督だな」

提督「な、なにその肩書き」

木曾「……で、だ」

提督「?」

木曾「その、お前の耳かき……そんなに気持ちいいのか?」

提督「ふふっ、なに?してほしいの?」

木曾「……まあ、そういうことだな」

提督「素直に言えばいいのに?」

木曾「は、恥ずかしいだろ」

提督「結構乙女だよね、木曾って…ほら、おいで」

木曾「ん……じゃあ失礼するぞ」

ポスン

木曾(うお…お、思ったより…)

提督「えへへ、なんか新鮮だね、木曾にこういうことするの」

木曾(近い………///)カァ

提督「んふふ、どうして赤くなってるのかな?」

木曾「う、うるさい!いいから早くしてくれ!///」ゴロン

提督「あー、照れてるぅ」

木曾(くそ、なんでただの耳かきでこんなにドキドキしてるんだ…しかも垂れかかった髪、すごいいい匂いするし…)スンスン

提督「んしょ…あ、髪邪魔だね」スッ

木曾「あ……」

提督「?」

木曾「な、なんでもない…」

提督「そっか。じゃあいくよ?」

木曾「ああ」

提督「…………」スッ

木曾「…………」

カリ…

木曾「ふぁ…」

提督「…………」カリカリ

木曾「んぁ〜……」

提督「ふふ…」カリカリ

木曾「うにゃあ……」

提督「くくく…なーに、その気の抜けた声」

木曾「しょうがないだろ…気持ちいいんだもん…」

提督「そーれ」コシュコシュ

木曾「あ……あー…それ、そのふわふわ好きだ…」

提督「これ?これ、ぼんてんっていうんだよ」

木曾「へえ、そうなのか」

提督「それじゃこっちは終わったから、反対向いてね」

木曾「ん…よっと」ゴロン

提督「………よしよし」ナデナデ

木曾「わ、い、いきなりなんだ」

提督「いや…木曾、可愛いなって」

木曾「な、なに言って…」チラッ

提督「ふふ……」ニコニコ

木曾「!?」ドキッ

木曾(な、なんだこの感じ…!?すごい、暖かいというか、優しいというか、な、なんだ!?これが母性というものなのか!?いやしかし俺に母親なんて……まさか、俺がマザコン…!?)

提督「どうしたの、顔真っ赤だけど…熱でもあるの?」

木曾「えっいや、ちょ、なんで顔近付け」

コツン

提督「……うーん、平熱みたいだけど…」

木曾(ひょあああああああああああああああああああああ!!!???!!?)

木曾(お、落ち着け俺!元々恋していた相手だろう!?なのになぜ今日に限ってこんなに優しく見えるんだ!?)

提督「大丈夫?具合悪いなら医務室まで…」

木曾「いや、いい!続けてくれ!」

提督「でも…」

木曾「本当に大丈夫だから!」

提督「…そこまで言うならやるけど…」

木曾(俺はマザコンじゃない俺はマザコンじゃない俺はマザコンじゃない…)

提督「よいしょっと…」カリカリ

木曾「へぇぁ……」

提督(…大丈夫そうかな…)

木曾「んぁー……」グデー

提督「………ふふ」

提督(懐かしいな……昔、妹にもこうしてあげたっけ…)





『動……いでね、…いたら危な……だから』

『お姉ちゃ…のひざ、あ…たかい…』

『えへへ、そのまま寝ててもいいからね───





提督「───風音……」ボソッ

木曾「え?」

提督「……え?」

木曾「かざね?って、誰だ?」

提督「あ、ああ……えっと、確か、一番下の妹」

木曾「確かって…またあやふやだな」

提督「あはは…もうほとんど憶えてないや」

木曾「そんなに長い間会ってないのか?」

提督「ん…それもわかんない」

木曾「……お前、もしかして…」

木曾「記憶が、ないのか?」

提督「……まあ、一部分だけどね」

木曾「一部分と言っても…前にお前の部屋にあった本で読んだぞ、記憶喪失は相当精神がやられない限りそうそうないって…それとも大怪我でもしたのか?」

提督「うーん…それはないと思うけど」

木曾「じゃあ何かショッキングな出来事でもあったのか?」

提督「それもわかんない」

木曾「本当に何も憶えてないんだな…」

提督「うん…ごめんね?」

木曾「あ、いや、謝られるようなことじゃないさ」

木曾(しかし、妙だな…いくら記憶喪失になったと言えど、家族なんだから順番なんて忘れてもすぐに思い出させられるんじゃないのか…?)

木曾(もしかして、この子がこんな性格になったのも何か関係があるんじゃないのか…?)

木曾(なんとかして聞き出したいところだが…この子自身が思い出さない限りそれは無理か…)

提督「…………」ゴリッ

木曾「いってぇ!!??」

提督「あ、ご、ごめん!ぼーっとしてた…」

木曾「いてて…気を付けてくれよ」

提督「ごめんごめん、もう終わったよ」

木曾「え、そうなのか?」

提督「うん。考え事でもしてたの?」

木曾「ああ、お前と同じでな」

提督「えへへ…なんならこのまま考えててもいいんだよ」

木曾「お前……誰にでもそんなこと言ってるわけじゃないだろうな?」

提督「ふふ、どうかな」

木曾「……まあいいさ、少し寝てもいいか?」

提督「ん、いいよ」

木曾「悪いな…夕方になったら起こしてくれ…」

提督「うん」

木曾「…………」スゥ

提督「…………」ナデナデ

いつもの短編おわり
もしかしたら加賀より木曾の方が登場回数多いんじゃないだろうか

大淀「こんにちは、大淀です」

大淀「本日皆さんに集まってもらったのは他でもありません」

大淀「皆さんも知っての通り、我らが提督はモテモテです」

大淀「惚れてない人なんてほぼいない…というか全員惚れているのが現状です。かく言う私も惚れています。掘りたいです」

大淀「提督御守りしたい勢から一気に睨まれたのでそれは置いておくとして、ただ優しいだけでは恋慕の感情は生まれません」

大淀「ましてや相手は同性、普通に暮らしていれば女が女に惚れるなど一般世間ではありえません」

大淀「ならばなぜこうなっているのか?今一度考え直してみましょう、誰もがこれを疑問に思ったはずです」

大淀「そこでこの大淀、夕張さんに青葉さん、その他の方々へ取材をし、データを採ってきました。普段提督がどんな立ち振る舞いをしているのか、そしてそれがどういう結果をもたらすのか。どうかご静聴ください」

大淀「では夕張さん、プレゼンをスクリーンに」

ブゥン

case:1

提督「じゃあ、この資材でよろしくね」

明石「はい、お任せください!」

ガサゴソ…

提督「…………」ジー

明石「スパナどこにやったかな…お、あったあった」ゴソゴソ




大淀「はい、ここでストップ。みなさん、提督の視線がどこに向いているか分かりますか?」

大淀「………夕張さん、拡大を」

ジーッ

大淀「そうです、ここです。スカートのスリットです」

大淀「確かにこんなに開いていたら気にもなりますよね。きっと今提督の思考はなんだろうこれ?どういう意味があるんだろう?という疑問で埋め尽くされていることでしょうね」

大淀「……さて、問題はその先です」

大淀「考えるのだけなら問題はありません。が」

カチッ




提督「…………」スッ

明石「にゃああぁっ!?」ビクンッ





大淀「はい、ここでそれを実行するのが提督です」

大淀「見てくださいこの眼、下心など一切ありません。提督は好奇心だけでここまで出来るのです」




提督「おお…?」スリスリ

明石「ひぃっ!?や、ちょ、て、提督!?なにをしてるんですかぁ!///」

提督「あー動いちゃダメだよ!じっとしてて!」

明石「あっ、ん…!?///」ビクビク




大淀「まさぐってますね。提督は一度興味を惹かれると止まらなくなるようです」

大淀「というかこれ私もされました。はい、とても気持ちよかったです」

大淀「声だけ聴くともはや夜戦ですね…あ、終わったようです」





明石「は、はひ……て、提督っ!いきなりなにをするんですか!///」

提督「いやあ、ちょっと気になっちゃって…」

明石「気になったじゃないですよ、もう!びっくりしちゃったじゃないですか!」プンスカ

提督「ごめんごめん、お詫びに開発が終わったらなんでも好きなもの作ってあげるからさ」

明石「うっ…な、納得がいきませんけど、まあ、ゆ、許してあげます」




大淀「そしてこのナチュラルな餌付け。一度提督の料理を食べてしまったらもう戻れません、私もやられました」

大淀「さて、映像が終わったところでこのケースについてまとめてみましょう」

大淀「まずはこれですね。はい、一見奥手そうに見える提督が、興味を惹かれたものにはなんの躊躇いもなく近付きます。まるで子供のようです」

大淀「そしてこの駆け引きの強さ、相手の好物を引き合いに出して事態を収束させていますね。しかしこれも無自覚、彼女は天然なのでしょうか」

大淀「最後に、一番大事なことです。さて、明石さんはこの後、ぼそっと『オカズ決まっちゃった…』とつぶやいていました」

大淀「そうです。この行き過ぎたスキンシップによって相手にもしかして私に気があるのかな?けど相手は同性だし、でも優しいし可愛いし、この想いを裏切るのは〜…っと意識させてしまい、自然とまた提督に会いに行ってその優しさの本質に触れて落ちてしまう、というパターンがよく見られます」

大淀「距離が近いんですよね、あの人。報告書を渡す時や分からないところを聞く時とか…なのにそれを指摘したら『ご、ごめんね…』って顔を真っ赤にしながら少し離れるしなんていうかもう可愛いというか今すぐ唇を奪いたいというか押し倒したいというか犯したいというか」

大淀「こほん……すみません、少し取り乱してしまいました。空母の方々、どうかそのまま加賀さんを抑えていてください、割と真面目に殺されそうですので」

\殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…/

大淀「……だ、誰かMC代わりませんか?」

シーン…

大淀「ダメですか、そうですか…あとで詫び入れます…」

case:2

大淀「えー、気を取り直してケースその2です」

大淀「それでは引き続き夕張さん、映像をお願いします」

パッ

大淀「これは去年の冬…つまりちょうど今くらいの時期の映像です。この頃はまだ提督に対する明確な恋愛感情を抱いている人はそう多くなかったのではないでしょうか…はい、ちらほらとそういった声が挙がっていますね」

大淀「私は春先、自分の気持ちに気付きました。そのきっかけはですね………え?うるさい?そうですか…」

大淀「では映像の方に戻りましょう…」





提督「ねえ、長門」

長門「なんだ?」

提督「この寒空の下、お腹出したら寒くない?」

長門「ん……心配してくれているのか?ふっ、私なら大丈夫さ」

提督「でも、見るからに寒そうだけど…」

長門「なに、艦娘としてこれしきのことはな」

提督「うーん…」





大淀「どうやら遠征部隊の帰還を待っているようですね。あとで聞いた話によると、提督が一人で待っている時に長門さんも待つと言い出したそうです」

大淀「真冬なのに外で待つなんて…それだけ私達が愛されてるということですね…」

大淀「しかし本題はここではありません、次のシーンを見逃さないでください」




長門「………っ」ブルッ

提督「やっぱり寒いんじゃない?中で待ってていいんだよ?」

長門「いや、問題ない。私だけ楽をするわけにはいかないのでな」

提督「でも風邪引いたら…」

長門「それはお互い様だろう、問題ないったらないんだ」

提督「もー………えいっ」ギュッ

長門「!!???」




大淀「はい出ました、いつものです」

長門「な、な、なっ、なにを…///」

提督「どう?あったかい?」

長門「え、あ、な、あ、ああっ、と、とても暖かい、ぞ///」

提督「そっか…えへへ」

長門「〜〜〜〜〜〜!!!!」キュンキュン




大淀「きっと別の意味で熱くなってるはずでしょう。こんなものを見せられた人達は冷めると思いますが…ああ陸奥さん!長門さんを殴らないで!」




長門「ま、まだ帰ってこないな」

提督「うん……私はもうちょっとこのままがいいけどね」

長門「/////////」マッカ




大淀「陸奥さん、長門さんもうグロッキーです!やめてください!!」

大淀「さて、陸奥さんが落ち着いたところで本題の方に戻りましょう」

大淀「お聞きしましたかみなさん。『私はもうちょっとこのままがいいけどね』ですよ。何か狙っているわけでもなく素でこれが言えるのが提督クオリティです。小悪魔とでも呼ぶべきでしょうか、この天然たらしは」

大淀「私も『大淀の手はあったかいね〜』と言われながら手を握られて、それを指摘したら慌てたように真っ赤になって……え?惚気話を聞きに来たんじゃない?それもそうですね…」

大淀「こほん…さて、このケースのまとめに入りましょう」

大淀「まずはこの人を思いやるという当たり前にして人間の鑑の行為。寒空の下艦隊の帰還を待つなんて、生半可な心構えじゃ出来ないことですね」

大淀「そして決定的なのがこれです。はい、聞いててこっちが恥ずかしくなるような台詞をさらっと言えること。本人に自覚はまるでないようですが、1/3はこれで落とされたのではないでしょうか」

大淀「……はい?青葉さん、どうしました?………ふむふむ。はい……はい…なるほど。えー、提督に言われた魅惑の台詞がアンケート形式で青葉さんが取材してくれたそうです。では、イニシャルで読み上げて参りましょう」

A『写真を撮られるより一緒にいる方が好き、と言われました!』

H『私の作るカレーなら毎日でも食べたいな、と言われました。もしかして、プロポーズ…なのでしょうか…』

K『眼鏡がなくても、私があなたの目になってあげると言われました。司令ってば、もう…』

S『いい雨だね、と言ったら、私も雨は好きだよ、と見つめられながら言われたよ』

T『お母さんというか、お嫁さんみたいだよね…どう?今、幸せ?という新婚さんみたいなことを言われました。その日一日はずっと顔が真っ赤でした』

Y『夜戦夜戦って騒いでたら膝枕して子守唄で寝かしつけてくれた!あれはあったかかったなぁ〜…』

A『自分がまだここに着任したての頃、何も分からず困っていた自分に『ゆっくりでいいからね、ちゃんと教えてあげるから』と優しく諭してくれたであります。今でこそ軽率な態度をとれますが、あれには本当に心から感謝しているであります。この場を借りてお礼をするであります』

大淀「素晴らしい口説き文句の数々ですね…それぞれの心にぐっさり刺さるような言葉を選んでいるように思えます」

大淀「さて…ここまで結構なスピードで進めてきましたが、何か質問はありますでしょうか」

大淀「はい。武蔵さん、どうぞ」

大淀「………提督が普段どんな下着を着けているのか、ですか。なるほど、いい質問ですね」

大淀「提督の服装はほぼいつもの黒い軍服、確かにこれではガードが固く、提督の素肌すら見えないことも多々あります」

大淀「しかし私達に死角はありません。青葉さんが一晩でやってくれました、写真をどうぞ」

\おおおぉーーーーーーーっ!!??/

大淀「まず一枚目ですね。淡い水色の上下セットです。これはいいシチュエーション…ワイシャツを羽織りながら目を擦る提督が朝の日差しに照らされて…これだけで一枚の絵になるようです」

大淀「しかし目線が合っていないということはこちらに気付いていないのでしょう。隠し撮りでここまで鮮明に映せるとは、さすがは青葉さんですね」

大淀「はい、盛大な拍手をありがとうございます」

ほんとだYって誰だ
眠気がピークの時に書くものじゃないですね

>>288

A『写真を撮られるより一緒にいる方が好き、と言われました!』

H『私の作るカレーなら毎日でも食べたいな、と言われました。もしかして、プロポーズ…なのでしょうか…』

K『眼鏡がなくても、私があなたの目になってあげると言われました。司令ってば、もう…』

S『いい雨だね、と言ったら、私も雨は好きだよ、と見つめられながら言われたよ』

T『お母さんというか、お嫁さんみたいだよね…どう?今、幸せ?という新婚さんみたいなことを言われました。その日一日はずっと顔が真っ赤でした』

S『夜戦夜戦って騒いでたら膝枕して子守唄で寝かしつけてくれた!あれはあったかかったなぁ〜…』

A『自分がまだここに着任したての頃、何も分からず困っていた自分に『ゆっくりでいいからね、ちゃんと教えてあげるから』と優しく諭してくれたであります。今でこそ軽率な態度をとれますが、あれには本当に心から感謝しているであります。この場を借りてお礼をするであります』



に訂正で 川内のYは夜戦のY(暴論)

大淀「さて、次ですね。……あ、これはかなりセクシーな…スクリーンへどうぞ」

ブンッ

\おおぉ……/

大淀「感嘆の声が挙がりましたね…確かにこれは芸術レベルの美しさですね、はい」

大淀「膝に手をついて前屈みになりながら、上着を脱いだワイシャツ一枚の姿。駆逐艦の子達と遊んで汗をかいたのか、赤く染まった肌が艶めいていますね」

大淀「そしてそれを拭う純白のタオルと、熱を逃がすために大胆にも開けられたボタン、そこから覗くピンク色の下着。ものすごいチラリズムですね…言葉に出来ない良さを感じます」

大淀「これだけでは終わりません、後ろから撮ったものもあります。どうぞ」

ブンッ

大淀「綺麗ですね…汗を吸って透けた白シャツ、うっすらと見える下着。ええ、売ってくれという声が聞こえます。はい、それに関するご案内はまた後ほど行いますので皆様どうか落ち着いてください、提督にバレます」

大淀「………はい、ありがとうございます」

大淀「それでは最後の写真……加賀さん!八つ当たりで瑞鶴さんにジャイアントスウィングをかけるのはやめてください!空母の方々、お願いします!加賀さんを止めてください!」

大淀「………えっ?赤城さん、どうしました?………はい。はい。……はい?」

大淀「……おとなしくする代わりに後でお前を殺す?えっ、ちょ、加賀さん!?加賀さーん!?」

バタン

大淀「………死刑宣告ですかね、今の……出て行ってくれたからやりやすいといえばやりやすくなったんです…けど……」

ドゥルルルンドゥルルルンドドドドドドド

大淀「な、なんですかこの駆動音……へっ?工廠の……チェーンソー?」

大淀「………………」

大淀「あの、今からでもお開きに……痛い!物を投げないで!やりますから!やりますから!」

大淀「というか赤城さんもそんな伝言しないでくださいよ…もう気が気じゃないですよ…こんなことなら一度くらい無理やりにでも提督の唇奪っておくんだった……」

ドゥルルルン

大淀「………いいでしょう、やってやりますよ。こうなったらとことんやるまでです、続けますよ、最後まで」

大淀「はい、では次が最後の写真です。これを見たからにはみなさんも地獄まで行く覚悟をしてもらわなければなりません。それでもいいですか?私は出来ています」

大淀「見たい人達はここに残って、それ以外は外へ出てください」

シーン…

大淀「……………本当にそれでいいのですね?後悔はしませんね?」

大淀「………それでこそソウルメイトです。では、どうぞ」

ブンッ

ブンッ

大淀「おお……おぉ……」

大淀「…………」

大淀「…………あ、す、すみません、つい見惚れてしまって…」

大淀「なんというか……こう、素晴らしいの一言に限りますね」

大淀「着替え中に部屋に入られ、慌てて上着を抱えて身体を隠そうとしていますね。しかしその少女を思わせるような純白の下着を隠すことは出来ていません」

大淀「美しい、真っ白な肌ですね…そして対照的とも言える真っ赤に染まった顔。驚きと羞恥で満たされたこの表情……提督押し倒したい勢には堪らないものではないでしょうか」

大淀「はい、一枚200円からです。順番です、ちゃんと並んでください。大井さん、一人三枚までです、落ち着いてください」

大淀「……さて、一つの質問にだいぶ時間を食ってしまいましたね。統計を出すとするなら、提督は少女というか乙女らしい下着を好んで着用しているといったところでしょうか。胸がキュンキュンしますね」

大淀「えーでは、次のケースへ移りたいと思います」

大淀「……え?まだやるのか、と?」

大淀「当たり前でしょう、それともそんな甘い覚悟で提督を愛していたのですか?私は本気です、目を覚ましてください」

case:3

大淀「えー、一言に提督ラブと言っても色んな派閥があるのをご存知でしょうか」

大淀「提督御守りしたい勢、提督に護られたい勢、提督と遊びたい勢、提督可愛がりたい勢、提督に餌付けしたい勢、提督に餌付けされたい勢、提督犯したい勢……など、様々なものがあります」

大淀「そこで各々の派閥から、提督にしたいことされたいことの一例としてアンケートをいただきました。これもまた匿名で発表したいと思います」

大淀「ちなみに私は提督可愛がりたいと提督犯したいの混合性です」

大淀「まずは提督御守りしたい勢からのコメントですね。読み上げていきます」



M『一見タフそうに見えるけど、長い間一緒に居ると結構弱い部分も見えてくるのよね。辛い時、苦しい時、いつも支えてくれたのはあの子だったから…お返しと言っちゃなんだけど、そばにいて、守ってあげたくなっちゃうな』

H『榛n……わ、私が提督の手をとって、御守りしますと言いたいのですけど…いざ提督を前にすると気恥ずかしくてなかなか言えませんね……この場を借りてお伝えします。提督、お慕いしています』

S『いつも酒ばっか飲んでちゃらんぽらんだけど、こんなあたしでも護りたいって思える存在が出来たんだよなー。生きる意味を与えてくれたってことでもあるから、さ……提督、ありがとなっ』

T『あやつ、つついてやると可愛らしい反応が返ってくるのじゃ。小動物みたいなリアクションを見ていると…庇護欲、というのか?それが湧いてきての……別にいじめておるわけじゃないぞ?』

H『司令官には感謝してもしきれないな…ずっと独りだった私をまた第六駆逐隊のみんなと巡り合わせてくれたんだ。この気持ちで司令官を護れるのなら、それ以上に幸せなことはないかな』





大淀「泣かせてくれますねぇ……確かに提督の見た目は庇護欲を煽りますよね。その逆も然り、ですが」

大淀「次は提督に護られたい勢ですね。大方気の弱い子や甘えん坊な子が多かったのですが…意外な方もいたようです。どうぞ」




H『わ、私なんかが司令官さんに護ってもらうなんて厚かましいかもしれない、けど…けど、司令官さんは優しくて、暖かくて、すごく安心するんです…』

K『いやあ、あたしはずっと隣であたしの安眠を守ってくれたらいいんだけどな〜。……へ?これってプロポーズ?あー、まあ、それでも困らないけどさ』

I『えぇっと、あの、提督は伊良……間宮によく来てくれるんですけど、その度にお疲れ様、いつもありがとう、って笑顔で労ってくれるんです。なんだかそれに包まれるみたいで、護られたくなるっていうか…』

T『えっとね、司令は優しいよ!ぎゅーってしたらぎゅーってし返してくれるし、ずっと甘えたくなっちゃう!』

K『私がここに書くなんて変に思われるかもしれませんが…この前司令と呑んだ時に少ししんみりとした話になって慰められていたんですけど、その時に確信しましたね…私、この人に支えてもらっていたんだって』





大淀「なるほど…子供じみたところもあれば、一変したように大人の包容力を持つ時もありますからね。この多面性がどれだけの罪なのかも知らずに」

えっ…つ、次ホラー書こうと思ってたんですけど…(震え声)

大淀「えー…あまりにも派閥が多すぎて全て紹介すると時間が大変なことになるので、本日は比較的健全なこの二つまでにしておきたいと思います」

大淀「……はい?過激な派閥にはどんなものがあるか、ですか?」

大淀「えぇっと…駆逐艦の子達もいるのでそれはちょっと…」

大淀「………どうしてもですか?なら、一つだけ…」

大淀「こほん…あー、そのままの意味で、提督食べたい勢ですかね。はい」

大淀「いや…私にはちょっと理解出来ませんね…」

case:4

大淀「えーではこれが最後ですね。と言っても、私達のデータと皆さんの意見を合致させた結論を出すための映像です」

大淀「まず前提として、数十日ほど前からこの鎮守府に黒猫が住み着いているのを知っているでしょうか」

大淀「提督が付けたそうですが、名前はあすかといいます。さて、そのあすかちゃんですが、普段は外にいるのですがお腹が空いたり暇になった時にこの鎮守府に来るようです」

大淀「隠しているようですが、提督は大の猫好きです。あすかちゃんが来る度にそわそわしてしていますが、人の目というものがある手前なかなか触る機会がないようですね」

大淀「……しかしあすかちゃんと二人っきりになると、ものすごくデレます。どれくらいデレるかと言うと、駆逐艦の子達にぐらいデレます」

大淀「そしてなんと、今回はその様子を撮影した映像を入手しました。提供は大井さんです」

大淀「何回かカメラを壊されたそうですが、今回は無事に生還出来たそうです。では、どうぞ」

ジーッ

カリカリカリカリ…

「…………」

「……あ、あすか」

「ウニャウニャ……」

キョロキョロ

「だ、誰も見てない……よね……?」

「?」

「……よーし…さ、触ってもいいかな…?」

「…………」

スリスリ

「あ、あっ、あ…!い、いいの…?」

「ゴロゴロ…」

「そ、そっか…ふふ、よしよし…」




大淀「大井さん、気を確かに」

ペタン

「ふふ…そんなにお腹見せていいの…?」

「にゃあ」

「そっかそっか……君は私の事が好きなんだね、ふふ…♪」

「フニャ…」

「えへへ……私も君の事が好きだよ…」




大淀「」ブバッ

大淀「か、か、会場の皆さま、お手元のティッシュで鼻血をお拭きください」

大淀「も、ものすごい破壊力ですね。私も思わず鼻血を噴出させてしまいました」

大淀「あとでこの部分だけを切り取った音声データを販売しますね」

大淀「……聞こえてますかね、これ。ほぼ全員が鼻血噴出してますけど…」

大淀「………さて、そろそろ落ち着きましたでしょうか」

大淀「まあすでに皆さん分かりきっていることでしょうが、結論としては提督可愛いですよね。異論は?」

シーン

大淀「満場一致、ですね。なんですかこのハーレム、羨ましい限りです」

大淀「………しかし覚えておいてください、提督という立場である以上、提督は自分自身の手で選んだ人でない限り、誰のものでもありません」

大淀「つまり皆さんが胸の内に秘めた欲望も、提督との合意の上でなければ罪になる…引いては提督を悲しませることになります」

大淀「誰も提督が悲しむところなんて見たくないはずです。それだけは、忘れないでくださいね」

大淀「………さて、ではそろそろお開きにしましょうか。いつまでもこんなところに残っていると提督に見つかりそうですし」

ガチャ

提督「あ、みんないないと思ったらここにいたんだ!ねえ、なにしてたの?」

一同(ヤバイ……!!)

加賀「終わったみたいね」ドッドッドッドッドッ

大淀「ヒィッ!!」

提督「うわっ、加賀!?なんでそんな物騒なもの持ってるの!?」

加賀「あなたは向こうに行ってなさい、少し刺激が強いから」

大淀「たた、助けてください提督!か、加賀さんが私を解体しようと!」ガクブル

提督「はぁ!?チェーンソーで解体って…そんな、バイオ4じゃあるまいし…ちょちょ、落ち着いてってば!」ガシッ

加賀「離しなさい、さもなくばあなたでも殺すわ」

提督「漫画版エックスの真似とかしなくていいから!というかどうしてこうなった!?」

加賀「あなたが着替えたり汗で下着が透けている写真が公開されていたのよ?許すわけにはいかないわ」

提督「えっ、そんなことなの!?」

大淀「えっ!?」

加賀「えっ」

提督「えっ!?」

加賀「えっ、は、恥ずかしくないの?」

提督「いや、そりゃ多少は恥ずかしいけど…女同士だし別に気にすることもないでしょ?」

大淀「そ、そうです!もっと言ってやってください!」

加賀「あ?」ドゥルルルルォォオオオン

大淀「なんでもないです」

提督「というか見られてる人には裸より恥ずかしいところ見られてるし…今さら気にもならないよ」

加賀「で、でもあの写真で得をしてる者がいるという事実が…」

提督「普段私に話しかけてこられない子がそれで救われるのなら嬉しいよ?」

加賀「どれだけ慈悲深いのあなた」

大淀(勝った…ッ!)

加賀「ねえ、どうしてそんな考え方が出来るの?私には分からないわ」

提督「どうしてって言われてもなあ、人を愛せばそれだけ同じ愛が返ってくるし、それに私は絶対みんなが裏切らないって信じてるから」

加賀「……………」

提督「どしたの、呆気にとられたような顔して」

加賀「……いえ、あなたがそれだけ愛される理由が分かった気がして」

提督「ふーん?」

大淀(ああ、そうだ…提督が持っている、人を惹きつけるものがなんなのかやっと分かった…)

大淀(遠慮なく人に踏み込めるタフネスと、そうされても人を笑顔にさせる愛と、そして…)

提督「大淀、大丈夫?立てる?」スッ

大淀「あ…ありがとうございます…///」

大淀(この優しさ。それが人に愛される秘訣なんだ…)

加賀「頬を赤らめるな」ゲシッ

大淀「ぬふぅ!」

提督「こら!」バシン

加賀「ぬふぅ!」

大淀(……強いのは、おまけかな?)

おわり
提督が大好きですとは艦娘達の談
夜に短編更新して明日ホラー書こうと思ってます

『意外と純情』




提督「…………」ジー

大井「えっと…資材関係のファイルは…」

提督「…………」ジー

大井「提督、この書類はここにしまえばいいんですよね?」

提督「ん?うん」

大井「分かりました、ありがとうございます」

提督「…………」ジー

大井「えーっと…で、これが…あれ…?あ、あの、提督…」

提督「うん?」

大井「私達の装備に関する書類は…」クルッ

提督「そこの右上」

大井「あ、ありがとうございます…」

大井「…………」チラッ

提督「…………」ジー

大井「…………」

大井(す、すごい見られてる…?久々に秘書艦に任命されたから張り切ろうと思ったけど、私もしかして空回りしてる…?)

大井「…………」チラッ

提督「…………」ジー

大井(やっぱり見てる!わ、私なにかまずいことでもしちゃった…!?)

提督「…………」ジー

大井「……あ、あの、提督?」

提督「なに?」

大井「その…そんなに見られていると仕事がしづらいというか…」

提督「ああ、気になってた?ごめんごめん」

大井「あの、何か気になることでも?」

提督「ん、ああ、まあちょっとね」

大井「なんですか?もったいぶらないで教えてくださいよ」

提督「ん〜…」

提督「大井ってさ」

大井「はい」

提督「普段よく想像を絶するような変態発言するでしょ?」

大井「想像を絶するって…た、確かに言いますけど」

提督「なのに二人っきりになっても何もしてこないんだなーって思って」

大井「えっ?」

提督「いや、それこそ二人っきりになった瞬間ケモノのように押し倒して無理やり…してくるかなーとか思ってたんだけど」

大井「さ、さすがにそんなことはしません!私をなんだと思ってるんですか!」

提督「へー…なんか意外」

大井「当たり前ですっ!そ、それに…その…そんなことして……」

提督「それに、なに?」

大井「……提督に、嫌われたくない…ですし……」

提督「…………」

大井「………////」カァッ

提督「へえ〜」ニヤニヤ

大井「な、なんですかもう!お仕事しますよ!////」クルッ

提督「そっかそっか、私に嫌われるのが怖いんだねえ」

大井「もうその話はいいですから!提督も早くお仕事に戻ってください!」

提督「じゃあ、さ」

ガタッ

スタスタ

大井「え?」クル

パシ

大井「きゃっ…」

ドンッ



提督「こういうことしたら、どうなるのかな」

大井「えっ…な、あ、え、ちょっ…!?/////」カァアアア

大井(な、なにこれ…!?私今、提督に壁ドンされてる!?腕抑え付けられてるし、そ、そういうことだよね!?)

大井「…………//////」プシュー

提督「ふふっ……耳まで真っ赤になっちゃって…」サワ…

大井「んぅ…///」ビクッ

提督「ほら、俯いてちゃ可愛い顔が見えないよ?」クイ

大井「あっ……!て、てい、と、く…////」

提督「大井……」スッ

大井「あ、あ、あ、あっ、あっ…!?」ドクン

大井(ちかっ、近付いてくる、提督が、提督の唇が!!)ドクンドクン

大井(に、逃げ……られない…!)ドクンドクンドクン

提督「…………」

大井「だっ」







大井「ダメぇえええーーーーーーーー!!!!」バッ ドドドドド

提督「うわっ!?お、大井!?大井ー!?」

大井「ちゃんと順序を踏んでからあああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

ガチャ バタンッ!!

提督「…………やりすぎたかな」

ガチャ

北上「ねえふーちゃん、さっき大井っちがすごい笑顔で廊下を全力疾走してたけど…なんかあった?」

提督「ああ、北上……んっとね、まず大井がね………


〜〜〜〜〜



北上「……そりゃやりすぎだよふーちゃん」

提督「や、やっぱり?」

北上「大井っちああ見えても純情なんだからさぁ…もっと乙女心理解した方がいいよ」

提督「…そんなに驚くことかなあ」

北上「……はぁ」スッ

提督「え?ど、どうしt

グイッ

ドンッ

北上「…………」

提督「………え、あ、な、あっ……///」

北上「いきなりこんなことされたら驚くでしょ?」ギュウ

提督「う、うん///」ドキドキ

北上「それと同じだよ、分かった?」

提督「わ、わかった…///」

北上「……じゃあいいや」スッ

提督「………えっ、ちょ、ま」

チュッ

提督「んっ、ふ……」

北上「んー………」ギュッ

提督「…………」

北上「………ぷはっ」スッ

提督「はー……いきなりすぎるよ…///」

北上「同じこと大井っちしようとしてたんでしょ?」

提督「やるのとやられるのじゃ違うもん…」

北上「そう?」

提督「そうだよ!」

北上「じゃあ……今度はあたしがされる方がいいな」

提督「………うん」

短編おわり
レズレイプダメ、ゼッタイ。

みんなは、見たことあるかな。
うん、何人かはあるだろうね。特に川内は、ね。
え?何の話って……ああ、まだ言ってなかったね。夜の海にぼーっと浮かぶ光の話。

……この様子だと誰も知らないみたいだね。なら、教えてあげる。

高校生の頃の話なんだけど、私は海沿いの方に住んでてね。まあ田舎町だったせいか何も遊ぶものがなくてさ…やることと言えば家でゲームしたりとか昼寝したりとか、海に遊びに行ったりとかだったんだ。
……違うもん!確かに寝るのは好きだけど当時はもっとアグレッシブだったもん!
話戻すよ?いい?

………で、ね。学校が終わる度、毎日のように友達と海に遊びに行ってたんだ。
……水着?いや、私は裸足になって波打ち際を歩いてたりしただけだったけど…なんでそんな残念そうか顔するのさ。
ああ、もうっ!話逸れすぎ!ちょっとみんな静かにしてて!

それで、何回も行くうちにその海が好きになっちゃってね。月を眺めたくて、夜に一人で砂浜まで来たりしてたの。
潮風と足にぶつかる波が気持ち良くて……その時だけは、唯一孤独でも安らげる時間だったかも。
……けど、それもすぐになくなっちゃった。目を瞑って波の音を聴いてたら、ふと妙な気配を感じたの。はっとして目を開けたら、すぐ近くに黄色に輝く光が浮かんでいてね?
真っ暗だったせいか、人魂にも見えてちょっと不気味だったな…
………けど、好奇心の塊だった当時の私は……え?なに?今も?ま、まあそれはいいとして…その光に触れてみようと、手を伸ばして、一歩踏み込んだんだよね。
一歩一歩、足を波に浸して光に近付いて行ったら……いつの間にか、腰あたりまで水に浸かってたんだ。夜の海は危険だって、何度も友達に言われてたからね……慌てて砂浜まで引き返そうとしたんだけど、足が動かないの。
そう、まるで、誰かに掴まれてるみたいに。

必死に足を動かそうとするけど、まるで動かない。それどころかどんどん向こうまで引きずり込まれて、ついには全身が完全に浸かっちゃったの。

肺にまで水が入ってきて、苦しくて、いよいよダメか〜…ってなって、ふっと意識が飛んだの。うん、私も死んだとは思ったなあ…
…けど、目を覚まして最初に見えたのは幼馴染の心配そうな顔だった。
その時期はテスト中だったからね、気分転換に散歩してる途中、砂浜で寝転んでる私を見つけて慌てて駆け付けたんだって。
私も飛び起きて、あの光は…!?って訪ねたんだけど……何のことか見当もつかないみたいだったし、落ち着いてよく見てみたら服も濡れてなかったの。

その時は幼馴染に茶化されるがまま、砂浜で寝落ちして悪い夢を見たってことにしたんだけど……それっきり、あの海には近付いてないな。

うん、これでこの話はおしまい。特に盛り上がりがなかったかな?
でもさ、もしあれが人をどこかへ連れて行くものだったとして、失敗したら何もかもなかったことにするものだとしたらさ……そんなの、ずるくない?

提督「………どうだった?」

飛龍「こわっ!怖いよ普通に!」

蒼龍「すごい臨場感だったね…」

瑞鶴「加賀さんなんて、ほら」

加賀「」ブルブル

赤城「アルマジロみたいに布団に丸まってますね…」

翔鶴「頭に枕乗せて聞こえないようにしてますよ」

提督「か、加賀…」

布団<ベツニコワクナイケレド

提督「じゃあ怪談話、する?」

布団<ワタシモウネムイカラエンリョスルワ

提督「だってさ」

飛龍「えぇ?」

蒼龍「抜け駆けは」

瑞鶴「良くないわよねえ?」

赤城「今寝たら明日の夕飯私が全部食べますよ?」

加賀「…………」バサッ

提督「おはよう」

加賀「おおそよ人のすることとは思えないわ」

提督「そんなに怖い?」

加賀「別に怖くなんてないけど?」

提督「…………」

赤城「…………」

瑞鶴「…………」

翔鶴「…………」

飛龍「…………」

蒼龍「…………」

加賀「何、その目は」

提督「そんなに言うなら一人で寝てきなよ」

加賀「怪談話聞きたいわ」

提督「そう、なら続けよっか」

加賀「ッ……!!」ピクピク

赤城(この人、加賀さんいじりが巧い…!)

瑞鶴「しかし夜の海に浮かぶ光ね…誰か見たことある?」

飛龍「私、あるかも…」

蒼龍「どんなのだった?」

飛龍「うーん…提督の話だと黄色って言ってたでしょ?」

翔鶴「ええ」

飛龍「けど、私が見たのは赤色だったな…同じ編隊だった駆逐艦の子も、その光を見たって言ってた。その時はみんな無事に帰ったけど…」

提督「赤色……なにか違いがあるのかな…」

加賀「その二人に何か共通点はなかったの?」

飛龍「………あ!二人とも大破してた!」

赤城「大破…ということは、死が近い状態だったということでしょうか」

提督「ならあれは…もしかして、死神?」

蒼龍「でも提督は死にかけてもなかったのに連れて行かれそうになったんだよね?」

提督「うん……もしかしたら、黄色は無差別なのかも」

加賀「……お、恐ろしい話ね」ブルッ

提督「みんなも気をつけてね」

提督「加賀は何か怖い話とか持ってないの?」

加賀「そうね……怖い話、なのかどうかは分からないけど…時々、書類を作る時に図鑑が必要になって書斎に行くことがあるでしょう?」

提督「うん」

瑞鶴「書斎ね…私、なんだかあそこの雰囲気苦手…」

飛龍「私も…」

蒼龍「飛龍は勉強嫌いなだけじゃない?」

飛龍「失礼な!」

加賀「続けていい?」

飛龍「あ、はい!どうぞ」

加賀「……その、書斎の最奥の本棚なのだれけど…あそこで図鑑を見ていると、壁の向こうから声がするような気がして…」

提督「…………」

赤城「それ、私も聞いたことがあります…女性が呻くような、高い声でしょうか…」

加賀「ええ、そうだったわ」

蒼龍「うわ…何か出てきそう…」

翔鶴「怨霊でも封じ込められてるんでしょうか…ねえ?」

提督「…………」

翔鶴「……提督?」

提督「……そうだね」

翔鶴「は、はぁ…」

提督「他に怖い話、ないの?」

飛龍「じゃあ蒼龍、アレ…」

蒼龍「ああ、アレね…」

瑞鶴「アレ?」

飛龍「うん、駆逐艦の子達が言ってた話で、私達が見たわけじゃないんだけどね」

蒼龍「夜になるとたまに軍服を着た幽霊が出るんだって」

加賀「………」ビク

提督「それ、もしかして運動場に出る幽霊の話?」

飛龍「あ、それそれ!」

蒼龍「ずっと歩き回ってるみたいだけど…なにか目的でもあるのかな…」

提督「うーん…でも、今のところ悪さはしてないんでしょ?」

飛龍「うん、駆逐艦の子達も悪い気配じゃないって言ってたし…」

提督「そっか…なら、そのうちお祓いに来てもらうよ、ずっと彷徨ってるのも可哀想だし」

翔鶴「幽霊って悪さをするものなんですか?」

提督「中にはそういうのもいるね、俗に言う悪霊ってやつ」

蒼龍「そうならなきゃいいけどね…」

赤城「幽霊を見た…と言えば、駆逐艦の子達はよく何もない場所でも誰かいると言いますね」

提督「子供は見えるって言うからねえ。もし駆逐艦の子達が何か見つけても近付かないように言っておいてね」

赤城「はい、お任せください」

蒼龍「ところで提督は幽霊見えるの?」

提督「見えるよ」

飛龍「あはっ、やっぱり子供だー」

提督「なっ、失礼な!私は大人だもん!」

瑞鶴「幽霊に悪さとかされたことある?」

提督「んー…ないなぁ、されそうになったことはあるけど」

翔鶴「どうやって切り抜けたんですか?」

提督「塩を握って思いっきり殴る、それだけ」

瑞鶴「随分大雑把ね…」

加賀「塩を握って……なるほど……」ブツブツ

翔鶴(本気だこの人…)

提督「ところで加賀、幽霊ってさ」

加賀「なに?」

提督「こういう話してると寄って来るって言うよね」

加賀「!?」ビクッ

赤城「ぷふ…」

提督「加賀の周りにうわわわーって…」

加賀「あっあっあっあっ」

瑞鶴「ブフ、くくく…やめなよ、提督さん…くく…」プルプル

加賀「あ、ああ、全然怖くないけどなんだか寒くなってきたわ、一緒の布団に入ってもいいかしら」

提督「えー、暑くなるからやだ」

加賀「」ガーン

提督「冗談だよ、おいで」バッ

加賀「」パアアキラキラ

提督(可愛い…)

ゴソゴソ

加賀「暖かいわ」ギュウウ

提督「ちょっと痛い…まあいいんだけど」

加賀「ふふ」

飛龍「イチャイチャしおってぇ…」

蒼龍「むー、加賀さんばっかりずるい…」

提督「まあまあ、また今度かまってあげるから」

飛龍「ほんと?約束だよ?」

提督「もちろん」

蒼龍「やったぁ!」

翔鶴「ところで怖い話は…」

加賀「まだ続けるの?」

提督「そりゃそうだよ、まだ全員回ってないし」

加賀「そ、そう…」

瑞鶴「次翔鶴姉じゃない?」

翔鶴「え?いえ、私は特にそういうお話はないから…」

瑞鶴「そう?なら私でいい?」

提督「うん、いいよ」

瑞鶴「よーし……」

───これは艦娘の間で囁かれる、都市伝説?みたいな話なんだけど。

私達艦娘って、それぞれ固有の名前と身体を持って生まれてくるでしょ?けど、みんながみんな必ずそうなるわけでもないんだって。

建造の際の異物混入、妖精さんのミス、手違いその他諸々……色んな要素が積み重なって、ある程度の差異が生まれるんだとか。
性格の違いや目の色、髪色、肌色の違いとか多少のものなら問題なく世に送り出されるんだけど……
………これがね、人間の子供と同じで、酷い時は知的障害だとか奇形だとか…とても外に出せないようなものが生まれてくる事があるんだってさ。

で、本題はそのなりそこないがどこで解体処理されるかなんだけど………ここって結構大きい鎮守府じゃない?そういう大きめの鎮守府には解体処理用の地下室があって、そこで極秘裏に解体処理されるんだって。
………ただ、問題はその地下室に続く道がどこにあるか、だよね。もしかしたらこの鎮守府にも処理場があったりして!

なんてねっ!

瑞鶴「………っていう話なんだけど、どう?」

翔鶴「それ、本当だとしたらちょっと怖いわね…」

赤城「ですね、極秘裏ということはもし見てしまったら……」

飛龍「………消される、だろうね」

蒼龍「………こわっ」

加賀「実際のところ、どうなの?」

瑞鶴「まあただの都市伝説だし、そんなこと有り得ないよね!」

提督「……………」

瑞鶴「ねっ、提督さん!」

提督「………そうだね、そんなこと私も知らないし」

翔鶴「………?」

提督「もう夜も遅いし、そろそろ寝よっか」

瑞鶴「えーっ、まだ怖い話したいのに」

提督「加賀が怖がってるから、ね?」

加賀「私は別に怖がってないけど」

提督「そんなことより加賀、早くトイレ行かないと一人で行くことになるよ」

加賀「提督、あなた一人だと怖いでしょう?今なら私がついて行ってあげるから早く行きましょう」

提督「はいはい…飛龍は?」

飛龍「私はさっき行ったから大丈夫ー」

蒼龍「私もー」

瑞鶴「同じく」

翔鶴「お、同じく」

提督「なら私達二人だけかぁ。戻ったらもう寝られるように準備しておきなよー」

「「「はーい」」」

飛龍「よいしょっと…はい、枕」

蒼龍「あっ、ありがと」

飛龍「ふふっ、一緒に寝る?」

蒼龍「もう、子供じゃないんだから…」

翔鶴「…………」

瑞鶴「翔鶴姉、どうしたの?」

翔鶴「……え?」

瑞鶴「さっきからなんか考え事してるみたいだけど…」

翔鶴「あ、いえ…なんだか、さっきから提督の様子がおかしいような気がして…」

瑞鶴「提督さん?別にいつも通りだと思うけど…」

翔鶴「いや、でも…すぐにさっきの話を切り上げたり、なんだかまるで……」

瑞鶴「考えすぎじゃない?きっと気のせいよ」

翔鶴「………だといいんだけど」

提督「……………」

「ねえ、風花」

提督「なに?」

「さっき瑞鶴が言ってた話……」

提督「ふふっ、もしかして加賀、信じちゃった?」

「そういうわけではないけれど……」

提督「安心してよ、ここにそんな場所はないからさ」

「でも………」

提督「ね?」

「…………」

提督「ねえ?」

「……そうね、確かに何の信憑性もない話だったわ」

提督「でしょ?だからただの都市伝説だって」

ガチャ

加賀「風花は嘘を吐かないから大丈夫ね」

提督「えへへ、そう言ってもらえ る と嬉しイ なあ。」

加賀「………?」

提督「さ、戻ろっか」

加賀「……ええ」

ガチャ

提督「ただいま〜…おっ、みんなもう寝る準備出来てるみたいだね」

飛龍「あ〜…布団かぶったらもう眠くなってきた…」

蒼龍「…………」ウトウト

瑞鶴「私はまだ起きてられるんだけど…」

翔鶴「ダメよ、明日も早いんだから」

瑞鶴「はーい…」

提督「よーし、じゃあ電気消すよ〜」

飛龍「おやすみ〜…」

蒼龍「………ぐぅ…」

提督「はい、おやすみ」

パチッ

提督「よいしょっと…」

ゴソゴソ

提督「………なにナチュラルに私の布団入ってるのさ」

加賀「ダメ?」

提督「………こっちの方があったかいよね」ギュウ

加賀「ふふ、でしょう?」

提督「はいはい、おやすみ」

加賀「ええ、おやすみ」

〜〜〜〜

飛龍「すー……すー……」

蒼龍「むにゃ………」

翔鶴「…………」コロン

加賀「ん……すぅ……」

赤城「んぁ…もう食べられ……ふふ……」

提督「…………」

瑞鶴「…………」

瑞鶴(眠れない……)

瑞鶴(昼寝しすぎたからかなぁ…不思議と目が冴えてる……)

瑞鶴(……せっかくだし提督さんの寝顔でも……?)

ゴソ…

提督「…………」ムク

瑞鶴(あれ?)

提督「…………」スタスタ…

瑞鶴(トイレ、かな……?でも寝る前に行ってたし……)

───さっきから提督の様子がおかしいような気がして……

瑞鶴(………もしかして…)

ガチャ…

…パタン

瑞鶴「…………」

瑞鶴(…こんな夜中に一人で用事なんて……何があるの…?)

瑞鶴(……ダメ、好奇心に勝てない…)

ガチャ…

……パタン





提督「…………」スタスタ…

瑞鶴(あ、いた……見つからないように、そーっと…)ソー…

眠気が
明日
書く

提督「…………」スタスタ…

パタパタ…

サッ

瑞鶴(バレてない…よね。玄関口にいるってことは外に行くのかな…?)

提督「…………」キョロキョロ

瑞鶴「!」サッ

提督「………よし」

ガチャ

瑞鶴(え……?あの制服って、憲兵さん…?)

憲兵「……どうも」

提督「はい、じゃあ行きましょうか」クル

瑞鶴「!」

瑞鶴(こっちに来る…!)

タタッ

憲兵「…………?」

提督「どうしました?」

憲兵「………いえ、なんでも」

提督「そう……」

スタスタ…

瑞鶴「…………」

瑞鶴(ふぅ、危ない危ない……ってなんで見つかるのを恐れてるんだろう、私…)

瑞鶴(……あの二人、どこに行くんだろう…どっちも敬語だし、仲が良いようには見えないけど…)

瑞鶴(一応、バレないように後をつけてみようかな…)

パタパタ

提督「…………」

憲兵「…………」



瑞鶴(二人とも全く話さない……何が目的なの…?)

ガチャ

提督「…………」キョロキョロ

瑞鶴「!」バッ

憲兵「………見られてないですね?」

提督「ええ、どうぞ」

パタン

瑞鶴(……え?あそこって、書斎…よね?書斎に何かあるの…?)

瑞鶴(………気になる……)

瑞鶴(ちょっと覗くだけ…ちょっとだけ…)

ガチャ…

瑞鶴「…………」ゴクリ

瑞鶴(……!提督さんがいるのって、加賀さんが言ってた最奥の…)

提督「…………」カチッ

ガタッ ゴゴゴ…

瑞鶴「………!?」

瑞鶴(棚が、動いた…!?)

憲兵「……先導を頼みます、慣れていないもので」

提督「分かりました、では後に続いてください」

ギイィ……

バタンッ

瑞鶴(何あの扉……あの向こうに何があるの…?)

瑞鶴「…………」ソワソワ

瑞鶴(き、気になる……)

───もし見てしまったら……

スタスタ…

ピタリ

瑞鶴「…………」

瑞鶴(………ちょっと見るだけなら、大丈夫だよね…?)

グッ

「っ………」

小さく削られたドアノブに手を掛ける。加賀の言っていた話を思い出したせいか、それとも深夜の空気に飲まれたのか、それだけで重苦しい雰囲気に包まれたような感覚に陥る。
しかし今の瑞鶴は、それよりも好奇心の方が勝っていた。意を決したように深く息を吸って吐き、力を込めて手首を捻る。

重い。見た目の威圧感や場の空気のせいではなく、実際に分厚いつくりになっている。
そう、まるで中の何かを封じ込めるように。

鉄を思わせるような重厚な音と共に、扉が開く。その扉の先は瑞鶴が予想していた通り、地下へと続く階段が伸びていた。

自然な緊張と高揚感に、口が渇く。喉を鳴らして唾を飲み、一歩一歩音を立てないよう慎重に階段を降りる。
奥の扉までの距離から計算すると、提督達はまだそう遠くないところにいる。そう考えながら階段の中腹あたりまで降りたその時───

「………っ!?」

音もなく、扉がひとりでに閉まった。思わぬ出来事に心臓が高鳴るが、風のせいだ、こっちの気圧の都合で云々……と心で言い聞かせ、すぐに前に向き直って歩を進める。

「……………」

暗闇に目が慣れ始め、突き当たりの扉に表記されている文字が見えた。
関係者以外立ち入り禁止。
ありふれたフレーズだが、血を連想させるような赤いインクと、状況が状況なため言い知れぬ恐怖感をこみ上げさせる。
瑞鶴自身も次第に雰囲気に飲まれ始めていたが、まだ何も見ていない、中途半端に終わるのはイヤだ、と。迷うことなくその扉を開いた。

「…………!」

扉を開けた先に広がっていたのは、まさにそう形容するしかないような地下道だった。壁はおろか、床すら舗装されておらず、支柱となる無骨な木材と土が剥き出しになっている。
灯になるものと言えば、天井を支える梁から吊り下げられている古めかしいランプだけ。光が行き届かないほどに広いのか、それだけだと自分の足元すら見えない程薄暗い。

「あっ…!」

通路の奥に、固定されているランプとは違う、揺れる光が見える。時々その光を覆うように、二つの影が動く。
間違いない、提督達だ。二人は自分から数えて三つ目の通路を曲がった。
そう脳に刻み込み、後を追う。瑞鶴がそうしなければいけないのは、見えるだけでもこの地下道にいくつもの分岐路があったからだった。

揺れる光を見失わないように、かつ音を立てずに迅速に的確な距離を保ち、必死に追いかける。こんなところで迷ったらもう出られないかもしれない、という焦燥感からか、真冬の地下というのにも関わらず瑞鶴の額には汗が浮き出始めていた。

しばらく歩き詰め、足に疲れが生まれ始めた頃。
提督と憲兵が唐突に立ち止まり、慌てて角に身を隠す。

「…………?」

そこから顔だけを出し、二人の行動を監視する。何やら鍵を出しているようだ。その間も二人の間に会話はない。
幾重にも錠が掛けられているのか、鍵同士がぶつかり合う金属音だけが響き、あまりに無機質な時間が過ぎていく。

「はぁ……」

長い間歩き続け、くたびれた足の疲れを癒そうとへたり込むように腰を下ろす。
同時に視線も足元に降り、地下水で湿った土を眺めていると、土に埋もれるように白い何かがその一面を出しているのが目に留まった。
ほんの興味本位でそれに手を伸ばし、指先を器用に使い掘り返す。
意識の端で音が鳴り止まないのを確認しながら、何かに取り憑かれたように指を土に埋めて一気に引き抜く。

勢い余って、顔の高さまでその白い物体を持ち上げてしまった。
そして、ぽっかりと空いた二つの眼窩と目が合う。それだけではその物体が何か分からず、少し目元から離してまじまじと見つめる。
眼窩の間の小さい穴と、ところどころ抜け落ちてはいるが綺麗に並んだ歯。

「ひっ……!!」

そう、瑞鶴が躍起になって掘り起こしたそれは人の頭蓋骨だった。振り払うようにそれを放り投げ、声を漏らさないように慌てて口に両手を当てる。
しかしその瞬間、金属音が鳴り止んだ。

「………!」

見つかってしまった。一瞬そう考えただけで、脳裏に嫌なイメージがいくつも駆け巡る。何度も何度も、バレていない、バレていない、と自分に言い聞かせ、心臓の音すら聞こえないようにぎゅっと胸の前で手を組む。
ここまできて、やっと瑞鶴は後悔した。帰り道も分からず、普段頼れる存在である提督が今は畏怖の対象となっているという事実。
好奇心で満たされていた心も、今は恐怖の色で埋め尽くされてしまっている。
しかし、まだ希望は捨て切っていない。震えを止めるように肩を抱き、思案を巡らせる。提督達が来る気配もない。気休めでしかなかったが、それでも今の瑞鶴にとっては十分救われるものだった。

深く息を吸って吐き、心を落ち着かせる。
背後の方で扉の閉まる音が聞こえた。どうやら気付かれていた訳ではなく、解錠が済んだだけだったようだ。

「……提督さん……」

一抹の希望を胸に、後に続くようにドアの前に立つ。
いつも優しい提督なら、自分の存在を知れば元の場所まで案内してくれるかもしれない。きっとそうだ、あの提督が長い間一緒に過ごしてきた人をそう簡単に消すはずがない。
その願いを縋り付くように信じながら、また扉を開く。瑞鶴にはもうこの道しか残されていなかった。

「………のですか?」

「ええ、…………誰…も……です…ら」

遠くの方から声が響いてくる。先ほどまでの土とは打って変わって、舗装された硬い床をそっと歩く。
ここで、瑞鶴はある違和感に気付いた。

「………?」

そう、通路のつくりが真新しい。電灯もあれば、壁も床も舗装されている。まるで、ここで重点的に何かを見るように。
ところどころに病院で使われるようなワゴンや、その上に乗ったメス、血の付いた白布、そして真っ黒に染まったハサミ。
まさか、本当にまずいところまで来てしまったのでは…と、暗い想像を首を振って振り払う。

気付けば、提督達はもう通路の奥から差し込む光の先、つまり大広間に出ようとしていた。
その入口の淵にあるプレート。そこには大きく『第一処理場』と表記されていたが、そんなことには気付く気配もなく、瑞鶴は提督に声を掛けようと手を伸ばした。

「提督さ……!?」

目の前の異様な光景に、思わず伸ばしかけていた手を止める。
ドーム状の構造、眩しすぎる程に強く照明が当てられた大広間。その中央に、ソレは鎮座していた。

「ウg……ア、ぁギッ……」

人の体内と同じピンク色の巨大な肉塊。それに張り付けられたようないくつもの顔、いずれも目は抉り取られていてそれぞれが不揃いに呻き声を挙げている。
肉塊から疎らに生えた数十を超える手足と、どこか見知ったような様々な色の髪。自重を支えることすら出来ないのか、歪んだ床にめり込んでいる。

「う、おえっ……!!」

想像もしたくなかった。が、他に考えようもなかった。どういう細工かは知りようもないが、あの肉塊は、できそこないの艦娘達を詰め固めて結合させたもの。

軽く嘔吐し、涙の溜まった目を上に向ける。提督は、その肉塊に餌付けをするようにバケツから何かを取り出しては口と思われる穴へ次々と放り込んでいた。
飲み込まれる度に響く、硬い何かを砕くような小気味良い音。それに続く咀嚼音。そして、提督が持つその『何か』の端に見える先が分かれた五本の突起。

それが見えた瞬間、瑞鶴は今すぐこの場を離れなければ何をされるか分からない。そう確信した。
それもそのはず、提督が穴に放り込んでいたのは紛れもなく人の腕と足であったからだった。

普段優しい提督の、裏の顔。何を企んでいて、何を望んでいるのかが全く見えてこない。そのギャップのせいか、瑞鶴の恐怖心はすでに精神を振り切りかけている。
逃げ出そうとするも、足がすくんで一歩足りとも動けない。

「え………?」

ずっと姿を消していた憲兵が、キャスターの付いた寝台と共に現れた。その上に乗せられたものを見て、目を丸くして硬直する。

「これで最後ですね」

「ええ」

毎日同じ時間を過ごし、見てきたそれを見間違うはずがない。その寝台に乗せられていたのは、紛れもない、自分の姉である翔鶴だった。

「な、なんで……!?」

翔鶴は眠らされているのか、足場の悪い床に寝台が激しく揺れても目覚める気配は一向にない。

「…………」

提督は何も言わずに、翔鶴を抱き上げて例の肉塊の方に向き直る。

「え…う、嘘、でしょ…?」

何の躊躇いもなく、それを肉塊へと投げ込んだ。先ほどの手足と同じように、骨の砕ける音と肉をしゃぶり尽くす音を鳴らして咀嚼していく。
思考と意識がまるで追いつかない。
瑞鶴はただ、その様子を呆然と眺める事しか出来なかった。

「アァ…bゲ、ウー…ウ…」

大量の手足も、翔鶴も食べ尽くしたというのに、肉塊は飯を強請る赤子のように、その巨体を揺らして呻き声を挙げる。

「まだ物足りないという感じですね」

「そうですね、でもちょうどいいんじゃないですか?」

提督と憲兵、二人顔を見合わせて相談をするようなトーンで話す。瑞鶴は、今だ意識をふわふわと浮かせている。
そして互いに相槌をうつと同時に、今まで聞いた事のないような声色で提督が言う。




「活きの良いのが、居ますから」




それを合図に、二人が瑞鶴の方を振り返った。突き刺さる視線にはっと自分を取り戻して身を翻して逃げようとする……が、すでに手遅れだった。

「きゃあっ!?」

背後から飛びかかってきた何かに押され、勢いを止められずに床に押し倒される。すぐに身体を起こそうとするが、小さい感触に反して大きすぎる力で押さえつけられてまるで動かない。首だけを捻って背中に乗った何かの正体を視認する。
と、同時に背筋に冷たいものが走る。瑞鶴を押さえつけている何かは、身体こそ小さいものの、確実に顔の右半分が抉れた翔鶴だった。

「ひっ…!!」

床に取り押さえられている間に、提督はすぐ側まで近付いてきていた。

「ふふ、アハはは」

口を三日月型に歪ませながら、ゆらゆらと覚束ない足取りで詰め寄ってくる。
もはや提督にいつもの面影はない。その姿は、狂人と形容する他なかった。

「っ……!」

必死に身を捩る瑞鶴の前にしゃがみ込む提督。先ほどまで狂気に満ちた笑い声を発していたはずなのに、その表情は怒りとも侮蔑ともつかない完全な無表情だった。

「た、助けて…!」

涙目で訴えかける瑞鶴を見下ろしながら、口を開く。

「見ちゃ ったね 、 ぇ?」

機械のように冷たい声。ところどころアクセントが狂っており、人間ではないのかとすら思わせる。

「ダメな んだ、よ、ミち ゃった のなら」

憲兵は肉塊の方でメモか何かを記入しているようで、こちらの様子には全く興味を示さない。ただただ、ひたすらに何かを書き殴っている。

「見ちゃッっっったのなら、ねえ、ねえ」

「消えてもらわなきゃ、ね?」

「ひっ……!!」

いつもの、優しい提督。そのトーンで、そう言った。そう言いながら、どこからか蛍光色の液体が詰まった注射器を取り出した。
それが、瑞鶴にとって何よりの恐怖だった。
振り切った恐怖心で、狂ったように叫びのたうちまわる。が、片手のない翔鶴、片足のない翔鶴、半身が薬品のように真っ白に染まった翔鶴に次々と床に叩きつけられる。
そして四肢を完全に押さえつけられ、顎を引かれ顔を固定された。

「ダメだよ、ダメだよ、ダメだよ、消えてもらわなきゃ、消えてもらわなきゃ、消えてもらわなきゃ消えてもらわなきゃ消えてもらわなきゃ」

うわ言のように淡々と何度も何度も繰り返し呟きながら、注射器を掴み瑞鶴の顔へ向ける。その先端は眼の中心を指していた。

「あ……あ、ああ、ああっ、あああああ!!!い、いやっ!!やだっ、誰か助けて!!いやああああああああああああ!!!」

広間に絶叫が木霊する。これから起こる惨劇を想定し、かろうじて動かせる指先だけでも動かして抵抗にならない抵抗をするが、それに反応して翔鶴のなりそこないが指に食い付き動きを止める。

「あは、フふふはっ、あはははハハハはハははははは」

眼に針が近付くごとに喧しくなる提督の笑い声と、瑞鶴の荒い息。垂れる涎も、溢れ出る涙も、拭うことすら出来ない。
やがてそれは絶叫へと変わり、右目から零れる涙は赤い色に染まる。

「ああああああああああああああ!!!!っぎ、いぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!!」

尋常を超える痛みによる絶叫を最後に、瑞鶴の意識は途絶えた。

ーーーー瑞鶴、瑞鶴っ!」

「ああああ……あ、あ…?」

翔鶴「瑞鶴、どうしたの?悪い夢でも見たの?」

瑞鶴「え……あ…?」

翔鶴「ずいぶんうなされてたみたいだけど…」

瑞鶴「あ、あれ……翔鶴姉、食べられたんじゃ…?」

翔鶴「何を言ってるの、もう……明日は早いんだから、早く寝なさい…」

瑞鶴「う、うん…」

翔鶴「はぁ……」ポスン

瑞鶴「…………」チラッ

提督「すぅ……」

瑞鶴「………ほっ」

瑞鶴(よかった…ただの夢だったんだ…)ポスン

翔鶴「………zzz」スヤァ

瑞鶴(はぁ……なら、私ももう寝よう…)

瑞鶴「…………」





ゴソ…

瑞鶴「…………?」パチッ

提督「…………」ムク

瑞鶴(え?)

提督「…………」スタスタ…

瑞鶴(何、このデジャヴ…)

ピタッ

提督「…………」

瑞鶴「………?」










提督「今度は何も見ないようにね」








瑞鶴「」

ーーーーー

「こら」

瑞鶴「んぐぅ……zzz…」

「起きなさい」

ペチッ

瑞鶴「んぁ!?な、なに!?」

加賀「いつまで寝ているの、もうとっくに演習の時間よ」

瑞鶴「えっ?あ、う、うそ!?もうこんな時間!?」

加賀「私は先に行ってるから。食堂に提督が作ってくれた朝食があるからそれを済ませてから来なさい」

瑞鶴「あ、は、はい!」

パタパタ…

加賀「はぁ……」

ガチャ

加賀「…………」

提督「あ、加賀。瑞鶴起こしてくれた?」

加賀「ええ、食堂に向かったわ」

提督「そっかそっか、ありがと」

加賀「…………」ジッ

提督「どうしたの?」

加賀「………昨日、あの子と何かあったの?」

提督「何もなかったよ?」

加賀「……そう、ならいいけど」

提督「うん、じゃあ演習頑張ってね」

加賀「ええ」

スタスタ…

提督「…………そうだよ」





提督「何もなかったんだよ。何も」

………あれから特に私の身に何かがあったわけでもないし、あとで聞いてみたら翔鶴姉も何も知らないって。

翔鶴姉と一緒に書斎の奥の本棚も調べてみたけど、何もなかったし、壁にスイッチもなかった。加賀さんが言ってた声も聞こえなかったし…空耳か何かだったんだろうね。
提督さんもいつも通りの優しさだし、変わったこともない。


やっぱり、あれはただの夢だったのかな?それとも………

おわり

ーーーー

ーーーーーー

『ごめ……さい、風花』

『おかあ………ど…してあやま……?』

『あの…達とは、……なくなっちゃ………』

『え?』

『お父…んとお母さんが落ち……まで、それまで…』


「……ーかん」


『や、やだ…やだよ、そんなの…』


「…れーかんってば!」

『それまでの、お別れだから』





「司令官!」

提督「!」ビクッ

提督「んえ、あ、な、なに?」

雷「もー、司令官ってばさっきから何回も呼んでるのに何の反応もないんだから!」

提督「あ、あはは…ちょっと、考え事してたから…」

暁「ふあ……」

響「そんなことよりもう一番上のお姉さんが眠そうにしてるよ」

電「電ももう眠いのです…」

木曾「日付も変わってるからな。子供は早く寝た方がいいだろう」

暁「子供じゃないもん…」ゴシゴシ

提督「あ、そっか、今日一日中ずっと一緒なんだっけ」

雷「忘れてたの?」ジロ

提督「ちゃ、ちゃんと覚えてたよ!ほんとだから!」

雷「…ならいいけど」

暁「………う〜」フラ

木曾「おっと」

ガシッ

響「布団に入らないとダメそうだね。司令官」

提督「あ、うん…おいで」

雷「はーい!」ピョーン

電「なのです!」ピョンッ

提督「ちょっ」

ボフッボフッ

提督「こ、こら!危ないでしょ!」

雷「ふふ、でも司令官はしっかり受け止めてくれたじゃない?」ギュウ

電「えへへ…司令官さん…」スリスリ

提督「もう…」

響「ウラー」スタスタ

木曾「ほら、ちゃんと自分の足で歩きな」

暁「ふぁい…」フラフラ

ボフ

暁「ふご……zzz……」

提督「そういえば、木曾はどこで寝るの?」

木曾「ん、俺は床に布団敷いて寝るよ」

提督「一緒に寝なくていいの?」

木曾「そう言いたいところだが…その人数だとはみ出るだろ」

提督「………まあ、確かに」

響「悪いね」

雷「木曾さん、ごめんなさいね」

木曾「気にするな。そんなことよりほら、布団敷いて寝るぞ」バサッ

提督「そうだね、おやすみ木曾」

木曾「ああ、おやすみ」ゴロン

雷「司令官、おやすみなさい!」

電「おやすみなさい、なのです」

提督「はい、おやすみ〜」

響「司令官のおっぱい枕で」ムンズ

スッパーン

響「おやすみ司令官」

提督「はいおやすみ」

提督「……………」

電「すぅ……」

雷「んぐ……しれいか……」

響「ふへ…うへへ…zzz」

暁「むにゃ……」

木曾「……………」

提督「……………」

木曾「………なあ」

提督「………なんでしょーか」

木曾「……やっぱり起きてたか」

提督「バレてた?くふふ……」

ムク

木曾「寝付けないのか?」

提督「……うん、ちょっと」

木曾「そうか……なら、一杯やるか?」

提督「ふふ、いいねえ。好きだよ、そういうの」

カラン

木曾「こうしてお前と二人きりで飲むのは久しぶりだな」

提督「そうだっけ?」

木曾「そうさ、いつもお前は他の人にかまってるからな」

提督「……なんか、ごめん」

木曾「いいんだ、お前の立場も理解してるし、お前がみんなに好かれているのも分かってるから」

提督「木曾、前にずっとそばにいたいって言ってたよね」

木曾「出来ることならな」

提督「しようとは思わないの?」

木曾「そんなことをしたら他の人達に迷惑がかかるだろ、あいつらが悲しんでるところを見たらお前が悲しむし、お前が悲しむことはしたくないし」

提督「………前々から思ってたけどさあ、木曾ってすごいイケメンだよね」

木曾「少なくとも女に向けて言う台詞ではないな」

提督「顔赤いよ?」

木曾「………酒のせいだよ///」ゴク

提督「素直じゃないなあ」

木曾「素直じゃないのはお前もそうだぞ」

提督「なにが?」

木曾「…寝付けない理由のことだよ、お前が眠れないなんて相当だぞ」

提督「……………」

木曾「昔のことを思い出していたんだろう?」

提督「……すごいね、よく分かってるね」

木曾「お前のことはずっと見てるからな。少しでも様子が違えばすぐに分かるさ」

提督「……………」ゴク

木曾「………何か、思い出せたのか?」

提督「………うん、でも、辛い思い出だったと思う」

木曾「そうか……苦労してたんだな…」

提督「……まだ明確には思い出せてないんだけどさ、それでもやっぱり、その時の事を考えてると…なんだか、怖くなってくるんだ…」

木曾「……ああ」

提督「大切な誰かに置いて行かれるんじゃないかって……そんな、怖い思い出だった気がするの…」

木曾「…………」グイ

提督「! ふふ……慰めてくれるの?」

木曾「強がらなくてもいい」

提督「………うん」

木曾「辛い思い出を無理にでも思い出せとは言わない。誰かに話せとも言わない。……ただ、これだけは覚えておいてくれ」

提督「うん……」

木曾「昔なにがあったのかは分からないが、今のお前にはみんながいる。お前が悲しんだり苦しんだり、辛い時は共に泣いて励ましてくれる仲間がいるんだ。誰もお前を裏切らないし、俺もお前を裏切らない。この海に誓うよ」

提督「………ふふっ」

木曾「む、なにがおかしい」

提督「ううん、やっぱり木曾はイケメンだなって思って」

木曾「……そうか、ふふ」

提督「………ありがとう」

木曾「ああ」

提督「はぁ……まだ眠れそうにないや。もうちょっとだけ、付き合ってくれる?」

木曾「いいぞ、明日は何もないからな。とことん付き合おう」

提督「えへへ、そうこなくっちゃ!」

提督「……そろそろ寝よっか」

木曾「そ、そうだな……」

木曾(俺の二倍近く飲んだのに顔すら赤くなってないぞ…)

提督「ふあぁ…いい感じに眠くなってきた…」

木曾「お、おう…じゃあ、改めておやすみ…」ゴソゴソ

提督「おやすみ〜……」

ゴソゴソ

木曾「…………」

提督「…………」

木曾「………なあ」

提督「なにぃ…?」

木曾「すごいナチュラルに俺の布団に入ってきたよな?」

提督「う〜ん…なんか、そんな気分…」ギュウ

木曾「はぁ……はいはい、おやすみ…」

提督「………ぐぅ」

木曾(早い…)

提督「…えへ……zzz…」

木曾「………いい夢見ろよ」ナデナデ

〜〜〜〜〜

ゲシッ

提督「………んぁ…」パチ

ゲシッ

提督「いた……なに…?」

暁「んご……」ゴロゴロ

提督「……………」

「あー、やっと起きた」

提督「ん?」

雷「おそよう、司令官!」

提督「……おそよう…」

ゴシゴシ

提督「………今何時?」

響「ヒトヒトマルマル。もうお昼前だよ」

提督「そっか……というかなんでみんな木曾の布団に…」

響「司令官がいなくて寂しかったんじゃないかな」

雷「………一番に行ったくせに」ボソ

響「…………///」

提督「ふあぁ…電と木曾と暁はまだ寝てるんだ…」

電「んぅ…」パチ

提督「あ、電も起きたみたい」

電「……ぁー…」

提督「?」

電「………あむ」カプッ

提督「っひぃ!?」

電「ん〜……」チュッ チュパ

提督「ちょ、いいい電!?何をしてるのです!?」

雷「寝ぼけてるんじゃない?たまにあるわよ、電の寝ぼけ癖」

響「さすがに指を舐められたことはないけど」

提督「そ、そうなんだ…へえ〜…」

電「ん……れろ…」ペロッ

提督「……………」

提督(なんだろうこの背徳感…すごい…)ゾクゾク

雷「……司令官、すごい気持ち悪い顔してない?」

響「………まあ、ロリコンだし…」

電「んむ………?」

提督「あ、起きた」

電「…あれ…?」

提督「おはよう、電」

電「あ、は、はい…おはよう、なのです…」

提督「いやー、赤ちゃんみたいだったねえ」

電「へ……?………!!////」カァッ

提督「ふふふ、可愛かったよ」

電「はわわわ……ご、ごめんなさい///」

提督「謝らなくてもいいよ、寝ぼけてる時は仕方ないことだし」

雷「仕方ないことなの?」

響「それはないと思う」

響「私も寝ぼけたふりしておっぱい揉もうかな」

提督「響はお昼ご飯抜きでいい?」

響「今のは寝言だから」

雷「お昼ご飯…そういえばもうそんな時間ね」

暁「……おひるごはん……?」パチ

電「あ、お姉ちゃんも起きたのです」

提督「おはよう暁、もう十一時だよ」

暁「え……えっ!?遅刻じゃない!!」バッ

雷「もしかしてこっちも?」

響「ああ、寝ぼけてるね」

提督「暁ー、今日は休みだよー」

暁「……へ?あれ、というかなんで司令官がここに…」

提督「ここは私の部屋だよ、それに今日一日は一緒って言ってたでしょ」

暁「………あ、ああ!そうだった!」

提督「はー…長女がこれだと心配だねえ…」

電「でも、おかげで目も覚めたみたいなのです」

提督「………さて、問題は……」

五人「「「「「…………」」」」」チラッ

木曾「ぐー……」

雷「………ねえ」

電「………なのです」

暁「考えてることは…」

響「同じだろうね」

提督「うん……ずっと気になってた」

木曾「zzz…」ゴロン

「「「「「この眼帯……!」」」」」

提督「………じゃあ、外すよ?いい?」

暁「……………」コク

雷「し、慎重にね」

響「もしかしたら爆発するかもしれないしね」

電「!?」

提督「んなわけないでしょ…」

木曾「うぅ〜…ん…」

提督「……………」ゴクリ

スッ

グッ…

一同「「「「「…………」」」」」ドキドキ

木曾「……………ん?」パチ

提督「わああああああ!??」ドタドタ

電「ひゃああああああ!!?」ザザザザ

木曾「…なにやってんだお前ら」

響「なんでもないよ」

木曾「いやそれは無理があるだろう」

木曾「なあ、なにやってたんだ?」チラッ

提督「えっ!?い、いやあ、ちょーっとその眼帯が気になって、ね?」

木曾「眼帯?これか?」スッ

提督「へぇあ!?」

暁「そんな簡単に外しちゃうの!?」

木曾「外すも何も別に怪我してるわけでもないしな」

提督「あ、ほ、ほんとだ…というか、右目金色なんだ…」

木曾「え?そうなのか?」

提督「そうなのかって…鏡で見たことないの?」

木曾「いや、風呂入る時も着けっぱなしだから…」

提督「ダメだよそんなの!目悪くなるよ!?」

雷「司令官だってお風呂入る時も寝る時も眼鏡掛けたままだって言ってたじゃない」

提督「それは昔の話!」

木曾「というかそもそも中破した時は眼帯吹き飛んでるだろ」

提督「そうなの!?」

木曾「見たことなかったのか!?」

提督「いや、だって木曾が改二になってから中破した回数って何回か覚えてる?」

木曾「………二……いや、一回きり……じゃないか…?」

提督「その一回の時、私いなかったよね?」

木曾「あ、ああ。大本営に呼び出されてたな」

提督「なんで勝手に出撃してたの?」

木曾「……………」

提督「……………」

暁「……………」

響「……………」

雷「……………」

電「……………」

提督「………仮にも私、上官なんだけど」

木曾「すみませんでした!!!」

提督「ところでさ、その眼帯、何か意味でもあるの?」

木曾「ん?いや、特にはないが」

提督「えー、じゃあなんで着けてるのさ」

木曾「ファッション」

暁「えっ」

響「うわあ」

雷「厨二病…」

電(それはないのです…)

提督「カッコいい…」キラキラ

木曾「だろう?」

四人((((えっ))))

木曾の眼帯は元々少ない水上機の搭載量とそれに伴って使われなくなった格納庫にかぶせる天蓋をイメージしたものらしいですね

木曾「そろそろいいか?」

提督「あ、うん」

スッ

木曾「はぁ…やっぱこれが落ち着くな…」

提督「なんていうか、眼帯着けてる時はカッコいいけどさ、眼帯着けてないとすごい可愛らしく見えるね!」

木曾「!?///」

響「出た」

電「天然たらしなのです」

提督「ねえ、また今度でいいから眼帯外したところ見せてもらってもいい?」

木曾「むう…割と恥ずかしいからな…」

提督「じゃあ二人っきりの時に、ね!」

木曾「………まあ、それならいいか…」

提督「やったー!」

響(こうやって色んな人を落としていくのか…)

暁「ねえ司令官、お腹空いたわ…」

提督「ん?そういえばもうお昼前だったね」

木曾「俺はまだだな」

雷「私も」

電「電もなのです」

響「響もなのです」

電「もう!真似しないでほしいのです!」

提督「私もまだあんまりお腹空いてないんだよね…暁、先にご飯食べる?」

暁「い、いいわ!暁はお姉さんだから、我慢してあげる!」

響(そんなこと言ってまた)

電(絶対司令官さんと一緒に食べたいだけなのです)

提督「そっか……じゃあ、お昼まで散歩でもしよっか」

木曾「このままでか?」

提督「うん、たまにはいいでしょ?」

木曾「まあ……悪くはないか」

提督「よーし、なら行こっか」

電(あれ………司令官さん、下着どっちも着けてないんじゃ…)

提督「電ー?」

電「あ、はい!」タタ

ガチャ

提督「う〜ん…あー、差し込む陽射しが眩しいねえ…」

木曾「ああ、ちょうどいい暖かさだな」

提督「はあ〜…なんだか眠くなってくるね…」

雷「司令官、だらしないわよ?」

提督「はいはい、分かってますよ〜」スタスタ

暁「散歩するって言っても、どこに行くの?」

提督「さあ…適当にぶらぶら」

響「計画性がないね」

提督「散歩なんてそんなもんだよ」

電「電は、みんなと歩くだけでも楽しいのです」

提督「ああ〜、電はウルトラいい子だねぇ〜」ワシャワシャ

電「ふふ、えへへへ…///」

木曾「親子みたいだな」

提督「ふふっ、じゃあ私がお母さんで木曾はお父さんかな」

木曾「……!///」ドキッ

提督「えへへ、なんちゃって〜」スタスタ

響「……真性だねアレは」

木曾「ああ…困ったもんだ」

※前スレレス230ぐらいを参照に

ガチャ

提督「ああ〜……やっぱり今日はかなりあったかいねえ…」

木曾「まだ二月なのにな」

提督「うーん、絶好の昼寝日和…」

電「……………」ジー

提督「じょ、冗談だよ、うん」

暁「ねえ司令官、外に出て何するの?」

提督「そうだねえ、せっかくだし演習場の方行ってみようか」

響「視察というやつかな?」

提督「サボりの子がいたらお尻叩かなきゃ」

雷「あんまり痛くなさそう…」

木曾「……………」ガクブル

雷「…………!?」

ドーン ヒュンッ ダダダダ

鳳翔「あら、提督…それにみなさんも」

提督「やっほー、ちょっと見学してもいいかな?」

鳳翔「はい、お好きにどうぞ」

電「みんな元気にやってるのです」

木曾「ん、姉さん達が手振ってるな」

響「那珂さんが水上で歌って霧島さんに怒られてるね」

雷「うわあ、加古さん立ったまま寝てる…」

暁「……今さらだけど、大丈夫かしらこの艦隊」

鳳翔「ま、まあ、どの子もやる時はやりますから…」

提督「ところで、なんで加賀は赤城にジャイアントスウィングかけられてるの?」

鳳翔「えっと…昨日夜食を食べられたとか…」

提督「で、的に縛り付けられてる瑞鶴は?」

鳳翔「八つ当たりかと…」

提督「ああ…」

提督「ちょっと加賀にお叱り入れてくる」ザッ

鳳翔「は、はぁ…」




電「声をかけたのです」

響「加賀さん、心なしか嬉しそうに見えるね」

雷「……あ、司令官がお説教始めた」

暁「………反省してるようには見えないけど」

鳳翔「……まずいですね」

暁「へ?なにが?」

鳳翔「いえ、このままだと……あっ」

電「あっ……」

響「すごい……見事な大外刈りだ…」

鳳翔「ああ…やっぱり…」

雷「なるほど、こうなるのね…」

雷「加賀さんが本気で頭下げてる…」

電「滅多にこんなところ見られないのです…」

暁「あ、帰ってきた…」




提督「ただいまー」

木曾「お前……」

提督「なに?」

木曾「いや……可愛い顔してえげつないことするな……」

提督「やだ、可愛いなんて…そんな…///」ポッ

響「論点はそこじゃない」

電「というか、なんでそんなに綺麗な技が…」

鳳翔(というか、なぜ下着を着けていないのでしょう…)

鳳翔「そういえば提督、もう朝ご飯は食べられたのですか?」

提督「ううん、さっき起きたところ」

鳳翔「なら、食堂に作り置きのお味噌汁がありますので、それと…」

提督「うん、あとは私が作るね」

木曾「いいぞっ!」

暁「司令官のご飯食べられるの!?やったわ!」

響「これは実にハラショーだ」

電「実にハラショーなのです!」

響「む」

電「ふふん」

提督「そうだね、もうそろそろいい時間だし、食堂行こっか」

雷「はーい司令官!」

提督「それじゃあ鳳翔さん、みんなの面倒見てあげてね」

鳳翔「はい、任せてください」

一方その頃



飛龍「ねえ、見た?」

蒼龍「うん、見た!」

瑞鶴「提督さん、ノーブラだった!」

翔鶴「ゆさゆさしてたわ…」

雲龍「ふふ…パジャマ姿の提督、可愛かった…」

飛龍「なんかもう……色々と、わああああ!!」バタバタ

蒼龍「ねー、セクシーだったねー」

赤城「オカズが決まりましたね…」ボソ

加賀「……………」ギリギリ

赤城「おや、加賀さんどうしました?」

加賀「だまれ!!」ガスッ

赤城「ゲハァ!!」

提督「なに作ろうかなあ、なにがあったかなあ」

木曾「昨日見たけど卵がたくさんあったぞ」

提督「う〜ん……じゃあオムライスでも作ろっかな、みんな忙しくてキッチン空いてるみたいだし」

暁「オムライス?そんな子供みたいな…」

提督「じゃあ暁は卵かけご飯にする?」

暁「…オムライスがいい!」

提督「よーし、決まりだね」

雷「私、たくさんケチャップがかかったのがいいわ!」

電「電はちょっとすっぱいのを抑えてほしいのです」

提督「了解、響は?」

響「私は司令官のならなんでもいいよ」

提督「本音は?」

響「…ご飯を醤油風にしてほしいな」

提督「おー、大人だねえ」

木曾「俺は…」

提督「木曾も響と同じのでいい?」

木曾「あ、いや……その…」

提督「?」

木曾「お、俺もケチャップがいっぱいかかったのがいい…」

提督「……意外と子供だね」

木曾「いいだろ別に…」

提督「……可愛い」

木曾「…………///」カァ

響「暁、オムライスに旗を立ててもらったらどうかな?」

暁「絶対バカにしてるでしょ」

ガチャ

提督「……うん、やっぱり誰もいないね」

「ウニャー」

提督「おっと、あすかがいた」

木曾「あすか?」

提督「うん、あの黒猫の名前」

暁「ああ、前に大淀さんが言ってた…」

提督「そうそう」

響「…………」ソー

あすか「フシャー!!」

響「」ビクッ

提督「ダメだよ響、この子お腹空いてる時は怒りやすいから」

響「…………」ショボーン

提督「そ、そんなに落ち込まなくても…ほら、ご飯食べてからまた触ればいいから…」

響「…それもそうだね」

提督「よーし、じゃあご飯作りましょうかね」

雷「手伝うわ!」

電「電も手伝うのです!」

提督「いいよいいよ、すぐ出来るから、みんな座って待ってて」

暁「でも…」

提督「上官命令でもかな?」

暁「うう…了解です…」

提督「それでよし、おとなしくしててね〜」

パタパタ

木曾「…………」ガタ

雷「木曾さん?」

木曾「お前達は座って待ってな」

提督「お米は……うん、ちゃんと炊いてる」

バサ

木曾「よう、手伝うぞ」

提督「あれ、木曾?座ってていいって言ったのに」

木曾「そうは言ってもなあ、さすがに六人分作るのに一人だとちょっとキツいだろ」

提督「まあ……確かにそうだね、断っても聞かないんでしょ?」

木曾「そういうタチだからな」

提督「ふふ…ならお願いしようかな」

木曾「よし!まず何からすればいいんだ?」

提督「このボウルに卵を割って入れて、15個ぐらい」

木曾「そんなに要るのか?」

提督「卵分厚い方が好きでしょ?」

木曾「! そうだな!」

提督(ああ…木曾も子供だなぁ…可愛いなぁ…)

木曾「…………」コンコン

パキッ

提督「…………」

木曾「…………」コンコン

パキッ

提督「…………」

木曾「……なんだ?」コンコン

提督「いや、器用だなーと思って」

木曾「まあ、これぐらいはな」パキッ

提督「木曾って料理出来るんだっけ?」

木曾「カレーくらいだけどな」コンコン

提督「へー…いいお嫁さんになれるね」

木曾「嫁はお前だろう」

提督「あ〜らまあ、カッコいいこと言っちゃって」

木曾「いや、でもお前は本気で優良物件だと思うぞ」

提督「そう?」

木曾「面倒見いいし、優しいし、美人だし、料理上手だし、掃除洗濯家事にぬかりもないし」

提督「う〜ん…美人以外は自覚してるんだけどさ…」

木曾「なんだ?」

提督「それって、人として普通じゃないの?」

木曾「」ピキィン

提督「当たり前にご飯作って掃除も洗濯もして、当たり前に人に優しくして…美人かどうかは人それぞれだけど、一人で何も出来ないってそれ人としてどうかしてるよ」

木曾「……すごい納得した」

提督「でしょ?」

木曾「卵終わったぞ」

提督「ん、じゃあこれでかき混ぜて」

木曾「ああ」ガシャガシャ

提督「ちょっと強すぎるかな、もっと優しく」

木曾「こうか?」カチャカチャ

提督「そうそう。子供をあやすみたいに」

木曾「よ〜しよ〜し…いい子だねぇ〜…」カチャカチャ

提督(木曾って天然なのかな…)

提督「さてと、私も作り始めないと」

木曾「ご飯の方か?」

提督「うん、ちゃんとケチャップ多めにするからね」

木曾「ふふふ…いいぞ」

提督「ここに刻んだタマネギニンジン、そして鶏胸肉があります」

木曾「へえ。それをどうされますか?」

提督「油を引いたフライパンにぽいぽい」

木曾「ぽいぽい」

提督「一旦これは置いといてご飯に和えるソースに移ります」

木曾「そうっすか」

提督「二点。時間がないからソースの素とケチャップを混ぜ合わせ、煮ます」

木曾(二点…)

その辺の描写はまだしてなかったですね…提督の過去の話が終わったら書こうと思ってます

提督「よし、あとはちょっと放置かな」

木曾「何もやることがないのか?」

提督「うん」

木曾「そうか……」

提督「…………」

木曾「…………」

提督「………ねえ、前々から気になってたんだけどさ」

木曾「なんだ?」

提督「その軍刀ってさ、使う機会あるの?」

木曾「これか?……そうだな、闇討ちとかする時に使えるんだが…なんせ砲撃が出来る分あまり使いはしないな」

提督「へえ〜…」ジー

木曾「………そんなに気になるのか?」

提督「うん」

木曾「………ちょっとだけだぞ」カチャ

提督「わあ…!」

提督「やっぱりこれって切れ味すごいの?」

木曾「それなりにな」

提督「木曾、卵一つ取って」

木曾「? ほら」

提督「ありがと……よっ」ポイッ

チャキッ

提督「はぁ!!」

スパァン!!

木曾「!?」

提督「おおおおお!!ほんとだ、すごいよく切れる!!」

木曾「バカ、危ないだろ!怪我したらどうするんだ!?」アセアセ

提督「しないしない、大丈夫だって!」

木曾「するから言ってるんだ!とにかく返しなさい!」パシ

提督「あー」

木曾「まったく…洒落にならないぞ…」

提督「えへへ、ごめんね」

木曾「はぁ…」

木曾(……いや、しかし見事な太刀筋だったな…常人なら目視出来るかどうか…)

木曾「そういえばさ」

提督「なに?」

木曾「お前のその料理上手の秘訣ってなんなんだ?」

提督「秘訣というか……好きこそ物の上手なれというか」

木曾「へえ?」

提督「私が料理し始めたのは、確か十歳ぐらいの頃からだったかな?作り始めた当時は簡単なものしか出来なかったんだけどね」

木曾「ふむ」

提督「作ったご飯は幼馴染に味見してもらってたんだけど……いつも美味しい美味しいって言ってくれるから、それが嬉しくて張り切ってたらいつの間にか色んなものが作れるようになっちゃった」

木曾「そうか…なるほど、練習あるのみだな」

提督「うん……」

提督(懐かしいなぁ……いつも口いっぱいに頬張っては笑って美味しいって言ってくれたっけ……)

提督「…………」

木曾「……おい、焦げるぞ?」

提督「………ん、あっ」

木曾「また考え事か?」

提督「えへへ、そんなところ……ボウル貸してくれる?」

木曾「ああ」

提督「別の熱したフライパンに卵を流し込みまーす」ジュワァ

木曾「おお、いい匂いだな」

提督「木曾、ソースを具材の方に入れて」

木曾「ほい」ダバア

提督「で、そこに大量のお米を」

木曾「こうか!」ドバッ

提督「いいねえ、ワイルドだねえ」

木曾「ふふ、料理も戦いもこうでなくっちゃな」

提督「じゃあそれを焦がさないように炒めておいて」

木曾「任せろ!」

ボウルの上で真っ二つにしてます…(小声)

木曾「こんなもんか?」

提督「そうそう、いい色合いだね」

木曾「美味しそうだな…ふふ、楽しみだ」

提督「あとはこれを卵に包むだけだから、向こうで待ってていいよ」

木曾「ああ、わかった。期待してるぞ」

提督「うん、任せて」

スタスタ…

提督「さて………ん?」

ヒョコ

赤城「……………」ジー

提督「……ちょっとだけだからね」

赤城「!!」パアア

木曾「よっと……ん?」

響「にゃー。にゃー、うにゃにゃあ」

あすか「…………」

電「にゃ、にゃあ……」

雷「違うわ、もっと大きくよ!」

電「にゃー!」

木曾「………なにやってるんだ?」

雷「あ、木曾さん!なんとかしてこの子の気を引こうと思ってるんだけど、なかなか懐かなくて…」

木曾「その子、確か野良だったろう?すぐ懐かせるのは難しいんじゃないか?」

暁「そんなのじゃダメよ、暁がお手本を見せてあげるわ!」

響「うにゃあ、みゃー」

暁「にゃー!ごろごろごろ、ふにゃあー!」

あすか「シャーッ!!」

暁「ひいっ!」

木曾「……………」

響「にゃーん、にゃんにゃん」

ガチャ

加賀「……………」スタスタ

暁「あ、加賀さんだ」

雷「お腹空いたのかしら?」

電「キッチンの方に向かってるのです」

木曾「今日何かしら仕事がある人はまだ飯の時間じゃなかったはずなんだけどな…?」

響「みゃーお。しゃー、にゃー」

あすか「…………」

提督「はい、あーん」

赤城「あー……」

スパァン!

赤城「痛い!?」

提督「あ、加賀」

加賀「突然いなくなったと思えばやっぱりこんなところに…お昼はまだのはずよ」グイ

赤城「ち、違うんです加賀さん!私はサボろうとしたわけじゃなくて、ただちょっと小腹が空いただけで!」

加賀「そう、ならあと少し我慢しましょうか」

赤城「あっ、あっあっ、ああ〜〜〜っ!て、提督っ、助けてくださいぃぃぃ!!」ズルズル

提督「ま、待って加賀!ちょっとぐらい許してあげてよ!」

加賀「へえ。普段よくサボっているあなたがそれを言うの?」

提督「…………………」

赤城「提督!?」

提督「ごめん何も言い返せない」

赤城「ヘァッ!?」

加賀「さあ、演習に戻りましょうか」

赤城「あ、ああっ…い、いやあああああ……」ズルズル

提督「………がんばれー」

提督「出来たよー、取りにおいでー」

ドタドタドタ

雷「はーい司令官!」

暁「待ってたわ!……ってなんで暁のだけ旗が乗ってるのよ!!」

提督「かわいいでしょー」

暁「もう!司令官のバカ!子供じゃないんだからこういうのはもがもご〜〜〜!!」

木曾「はいはい、文句は食べてからにしような」

提督「はい、これが電のね」

電「わあ…ありがとうなのです」

提督「あ、私の分も持って行っておいて」

雷「わかったわ!」ダッ

木曾「あっ、おい!そんなに走ると危ないぞ!」

提督「ごめんね木曾、あの子達を見てて」

木曾「ああ。子守は親の役目だな」

提督「ふふっ…そうだね」

響「司令官」

提督「ん……ああ、響のぶんは今から作るからね」

響「すぐ出来る?」

提督「うん、五分もあれば」

響「そうか…ならここで待っててもいいかな」

提督「いいけど…なんで?」

響「司令官と一緒にいたいから」

提督「………へえ〜」

響「……なに、その顔は」

提督「いやあ、響ってそういうこと言う子だったんだなって」

響「…まあ、こんな機会でもないと司令官のそばに居られないからね」

提督「そんなに私のこと、好き?」

響「……………」

提督「………あれ?」

響「司令官のことは好きだけど……正直なところ、その好きの感情がどういうものか分からないんだ」

提督「うん」

響「愛だとか、恋だとか、そういうものは……まだ、私には分かっていない」

提督「なるほど」

響「司令官は……加賀さんみたいに、私のことを恋愛の対象として見てくれる?」

提督「う〜ん……」

響「……………」

提督「…………無理かな」

響「………!」

提督「少なくとも今は、だけどさ…響を含めた駆逐艦の子達は妹のようにしか思えないんだ」

響「そう、か…なら、ちょっと、悲しいな…」

提督「それを言われてそう思うのなら、やっぱり私のことを恋愛対象として見てるんだと思うよ、響は」

響「………うん、ありがとう」

提督「響は美人になるよ…その時になったら、また私の価値観も変わるかもね」

響「………うん、ふふ…」

提督「そういえば響ってさ」

響「?」

提督「なんで私の胸を揉もうとするの?」

響「…………興味本位?」

提督「…………そ、そう…」

響「いや…大人の胸ってどういう感触なのかなと思って…」

提督「大人……そうだね、大人…ふふふ……」

響(ちょろいな)

提督「……ってそうじゃなくて、それってセクハラだよ?」

響「非合意の方が興奮する」

提督(ダメだこの子)

提督「はぁ……」

響「そんなに嫌だったかな…」

提督「そういうわけじゃないんだけど……いくら同性とはいえ、ここまで好き勝手にされると自分の胸がそんなに安いものなのかと思っちゃって」

響「安心するといい、司令官の胸は安くない。私が保証しよう」

提督「……それどう考えても響が言うことじゃないよね」

響「まあ、本気で嫌ならやめるけど…」

提督「いや、うーん…それで響が少しでもいい気分になるなら私は構わないよ」

響「そうか。なら遠慮せずに……えいっ」フニョン

提督「〜〜〜〜〜っ!!///」カァッ

ガッ

提督「あああああもう!!この変態ガキンチョめ!!」ギリギリギリギリ

響「う、うそつき……ギブギブ…」パンパン

提督「いきなり触るのをやめなさい!!わかった!?」

響「そっちの方が興奮s

\スッパーン/

提督「わかった!?」

響「了解」ヒリヒリ

提督「まったくもー、いつからこんな捻じ曲がった子に育っちゃったのかねえ」

響「司令官も十分捻じ曲がってると思うけど…」

提督「? なにが?」

響「いや、なんでもない」

響(無自覚か…)

提督「ほら、響」

響「ん…?」

提督「オムライス出来たよ。向こう持って行ってみんなで食べよう?」

響「……うん」ギュ

提督「どうしたの、手なんて握ってきて」

響「ちょっと手が冷えたから」

提督「そう?ふふっ」

提督(あったかいのになぁ…照れ屋さんめ)

響(それでも、この愛情は本物だから余計に…)チラッ

提督「?」ニコ

響「……なんでもない」

提督「変な響」

響「司令官には言われたくないね」

提督「口が減らないねえ」

響(……余計に人に惚れられるんだろうなあ)

…………

…………………

〜〜〜

木曾「はーっ、美味かった!」

雷「ごちそうさま、司令官!」

提督「お粗末様です」

暁「なかなかいけたわね」

提督「はいはい、口周り綺麗にしてから言おうね」フキフキ

暁「んぐぐ……」

響「で、これからどうするの?」

提督「ん?ああ、えっとね…一日一緒と言ったところ悪いんだけど、実は明日が期限の書類を提出するのを忘れててね」

電「無能……」ボソッ

提督「うぐ……で、一旦執務室に行ってそれを書き上げないといけないんだ」

雷「もう!しっかりしてよね、司令官!」

木曾「すぐ終わるのか?」

提督「うん、あとサインだけだから…」

暁「なら暁達はここで待ってるわ」

提督「悪いね」

雷「もー…司令官ってば、だらしないんだから…」

電「仕方ないのです、誰だって忘れることもあるから」

木曾「まあな。あいつ、最近色々と思い詰めてたみたいだし」

暁「思い詰めてた?」

木曾「ああ、昔のことをよく思い出してるそうだ」

雷「昔のことで悩む?なにか嫌な思い出でもあるのかしら…」

木曾「さあ…それは分からないが、まだ記憶が完全ではないらしい」

電「辛いことなら無理に思い出さなくてもいいのに……」

木曾「……知っておきたいんだろう。自分のことだから」

響「…………」ガタ

暁「響?」

響「お花を摘んでくる」スタスタ

バタン

木曾「すごい大人な言い方だな。なあ?」

暁「なんで暁に言うのかしら?」ピキピキ

カリカリ…

提督「………よし」キュッ

ガチャ

響「司令官」

提督「あれ、響?どうしたの?」

響「司令官の仕事ぶりがどんなものか気になってね」

提督「それが目的ならごめんね、もう終わらせちゃった」

響「ん…そうなのか」

提督「ちゃんと真面目にやってるからね」

響「なら司令官のおっぱいでも揉もうかな」

提督「『なら』の使い所おかしいよね」

パタパタ

響「よいしょ」ノシッ

提督「ちょっ……あ、軽い」

響「うん、執務室の椅子は座り心地がいいね」

提督「今響が座ってるの私の膝だけどね」

響「………しかし、あれだ」

提督「?」

響「パジャマとこの部屋の雰囲気は合わないな…」

提督「……あとで着替えるから」

響「そう…それはいいとして」ワキワキ

提督「うっ」

響「ふふふ、お楽しみの時間だ」

提督「はぁ……いいよ、好きにして」

響「…………」

提督「……どうしたの?」

響「いや……もっとこう、ないの?」

提督「はっ?」

響「そんなに素直になられるとこっちも燃えないというか…」

提督「何様のつもりじゃお前」

響「すみません」

ムニ

提督「…………」

響「…………」ムニムニ

提督「…………」

響「………どう?」モミモミ

提督「どうって、なにが」

響「気持ちよくない?」フニフニ

提督「全然」

響「我慢しなくてもいいんだよ」モミモミ

提督「してないよ」

響「………なぜだ」

提督「ムードってものがあるから」

響「ムード?」

提督「空気っていうのかな…たぶん響とはどう向き合っても無理だと思うけど」

響「ムード……ムード……そうか……!」ピコーン

響「ふふ……可愛いよ、司令官……愛してるよ…」モミモミ

提督「…………」

響「ああ、君は美しい…どこまでも綺麗で……えっと…うん……」モミモミ

提督「…………」

響「オウイエース……ナイスおっぱい…」モミモミ

提督「…………」

響「うへへへ、姉ちゃんええ乳してまんなぁ〜!」モミモミ

提督「…………」

響「…………」

提督「さて、いつまでもくだらないことしてないでみんなのところ戻ろっか」ギュ ガタッ

響「あ、ちょ、それずるい。逃げられない」バタバタ

提督「暴れたらパワーボムするよ」

響「…………」ピタッ

提督「よしよし、聞き分けがいい子は好きだよ」ナデナデ

響(力持ちだな…片手で私を支えてる)

提督(はー…考えてることは大人でもやっぱり子供だなあ、軽い軽い)

ユサユサ

響「…………ん?」

ユサユサ

響「…………」スッ

ムニ

響(ほう…ぱふぱふも悪くない)スリスリ

提督(やっぱり変態だこの子…)

ガチャ

提督「お待たせ〜」

響「…………」

木曾「戻ったか…ってなんだ、それ」

暁「響、セミみたいになってるじゃない」

響「……ヴィーッヴィーッヴィーッヴィーッジジジジジジジ」

電「!?」

響「ヴィーッヴィーッヴィーッヴィーッジジジジジジジ」

雷「ブッフォwwwww」

木曾「くっくくwwwwwなんだこいつwwww」

提督「ちょっ、こらwwwやめなさいwwwww」

スパーン!

響「ギッ」ボト

木曾「があああああwwwwwwwwww」

雷「木曾さんが壊れた…」

電「……ギッ」ボソ

雷「ん、ふ……」ピクッ

暁「くく…ふ、ぐぐ……」プルプル

提督「なに、この地獄絵図は…」

木曾「ひっ……ひひひひ、死ぬ…」ピクピク

響「ちょっとやりすぎたかな」

提督「ちょっとどころじゃないよ…いや面白かったけどさ」

響「ハラショー」グッ

提督「なにがハラショーなのさ…というか電もだよ、変なノリに付き合っちゃダメ」

電「ジジジジ…」

提督「電……」

電「…ごめんなさいなのです」

木曾「はーっ、はーっ、ふっ……ぐひひひ……」プルプル

提督「まだ笑ってるし…」

暁(姉として、時々響がどこに向かってるのか心配になるわ…)

響「実にハラショーだ」

提督「ほら木曾、起きて、着替えるよ」

木曾「あっ、ああ…はぁ、死ぬかと思った」

雷「着替えてなにするの?」

提督「運動!付き合ってもらうよ〜」

響「ダイエット?」

提督「そう!そろそろ本格的に絞らないといけないからねえ」

暁「でも司令官、そんなに太ってないじゃない?」

提督「色々あるんだよ、女にはね」

電「色々………」

電「………あっ」

電(ああ……加賀さんに、裸見られるからかぁ…)

暁「電?」

電「…な、なんでもないのです///」ポッ

木曾「そんなにというか、むしろすらっとしてる方じゃないか?」

響「じゃあなんで重いんだろうね?」

提督「さあ…」

雷(………もしかして司令官、筋肉のせいで重いんじゃ…)

提督「さてと、それじゃあ各自着替えてからグラウンドに集合ね!」

雷「了解!」

木曾「あんまりキツいのはなしで頼むぞ」

提督「わかってるよ」

暁「司令官、またあとでね!」フリフリ

提督「はーい」

スタスタ

提督「…………」

響「…………」

ガシ

クルッ

提督「響も向こうね」

響「ちっ」

ガチャ

提督「さてさて、ジャージはどこにしまったかなと……」

提督「…………ん?」

提督「あれ……なんで私のブラが机の上に…?あ、置き手紙…加賀の字だ」



『これからは気をつけなさい。みんな見ていたから』



提督「…………」

提督「…………!?」

提督「えっ……」フニョン

提督「…………」

提督「う、うわああああああああああああああ!!!!???ずっとブラ着けるの忘れてたあああああああ!??!!?」

提督「思い返してみればそうだった……!加賀にお説教してる時、空母のみんなは変な目で見つめてくるし、青葉は写真撮ってるし、長門は鼻血出してたし榛名はあわあわしてたし……!!」

提督「響にも完全にノーブラの感触楽しまれてたよね、やっぱり…」

提督「はああぁ…なんで忘れてたんだろ…恥ずかしすぎてもう死にたい…」ペタン

提督「…………」

提督「……着替えよ」

提督「身体動かせばスッキリするよね…」

提督「…よーし」

プチ

スルッ パサ

木曾「でな、酔っ払った球磨姉が俺を二階の窓から投げ飛ばして…」

提督「やー、お待たせー」

雷「あ、司令官!」

暁「おっそい!」

提督「ごめんごめん、ちょっとジャージ見つけるのに時間かかっちゃった」

木曾「なんでもいいさ、それより早く身体を動かそうぜ」

提督「おっ、いいねえ、ノってるねえ」

電「運動といっても、何をするのです?」

提督「ん?そうだね、普段から私がやってたことかな」

響「結構キツそうだけど」

提督「そうでもないよ、それに暁達には付き合ってもらうだけだし」

暁「なら、司令官に協力してあげるわ!」

提督「ふふ、ありがと」

木曾「………しかしあれだな」

提督「?」

木曾「そのポニーテール、すごく似合ってる」

提督「そう?えへへ」

木曾「……髪で遊ぶのも楽しそうだな」

提督「木曾も髪伸ばす?」

木曾「そうだな、考えておこう」

電「司令官さん、まずはなにをするのです?」

提督「ん、そうだね…じゃあ電、私の背中に乗って」スッ

電「い、いいのですか?」

提督「遠慮しないで」

電「は、はい…」

ノシッ

提督「よーし……久しぶりの運動だし、最初はトラック二周ぐらいでいいかな」

雷「その状態で走るの!?」

提督「うん」

暁「準備運動、しなくていいの?」

提督「これが準備運動だよ?」

木曾(えっ…)

雷(司令官ってすごい体育会系なんじゃ…)

響(脳筋だ)

提督「じゃあ、まずは軽く小走りで行こうかな。しっかり掴まっててね」

電「は、はい」ギュッ

提督「よーし、後に続けー!」ダッ

木曾「お、おう」ダッ

暁「け、結構速くない?」

響「足の長さが違うからね」

暁「くぅ…暁も大人なんだから!」ダッ

雷「元気ねえ」

響「電が羨ましいな」

雷「……サボりたいの?」

響「正直」

提督「ほっ、ほっ」

電「お、重くないですか?」

提督「うん、軽い軽い」

木曾「これで本当に軽く流してるのか?」

提督「そうだよ」

木曾(冗談キツいぜ……普段俺達が演習中に走る時と同じペースだぞ)

提督「あ…もしかして辛かった?」

木曾「い、いや。そんなことはない」

木曾(まるで息も切らしてない…なんなんだこの子…)

提督「暁、響、雷、遅れてるよー」

暁「司令官が速いのよ!」

響「はっ、はっ…」

雷「なんでそんなに速く走れるの!?」

電(背負われててよかった…)

ズザッ

提督「ふぅー…」

木曾「はぁ、はぁ…お前、どんな体力してるんだ…」

提督「え?そんなにキツかった?」

木曾「後ろ見ればわかるぞ…」

暁「ひぃ…し、司令官…」

響「こ…この体力バカ…」

雷「ふ、普段から走りこんでるのに…」

提督「……ありゃ」

木曾「もうちょっとペースを考えてだな…」

提督「だいぶ抑えてたつもりなんだけどなあ…」

電「司令官さん、とっても速かったのです…」

提督「むう…ならどうしようかな…」

提督「………じゃあ雷、ちょっとこっちに来て」チョイチョイ

雷「なあに?」

提督「で、電越しに私の肩に腕回して」

雷「こう?」ギュッ

提督「そうそう。電、苦しくない?」

電「大丈夫なのです」

雷「ねえ司令官、もしかして…」

提督「うん、このまま走るよ」

木曾「冗談だろ…」

響「いったいどこにそんな力が…」

暁「というかもう走り出してるし…」

『三人とも座ってていいよー!』

木曾「……信じられないな…」

暁「二人背負って走るなんて…」

響「とても人間とは思えない…」

木曾「…しかもさっきと走るスピード変わってないぞ」

響「むしろ速くなってるような…」

暁「………戻ってきた」

雷「あははは!ゴーゴー司令官!」

電「デビルバットハリケーンなのです!!」

提督「にょわああああああああああ!!!」

ドドドドド…

響「………バカだ」

木曾「ああ、違いない…」

提督「ふうっ、いい汗かいたねー!」

電「とっても楽しかったのです!」

雷「お馬さんに乗ってるみたいだったわ!」

木曾「…………」

暁「…………」

響「…………」

提督「あれ、みんなどうしたの?変な顔して」

木曾「いや……なんだか、とてつもない敗北感を味わった気がして…」

提督「敗北感?」

暁「暁達も普段鍛錬してるはずなのに…」

提督「ああ…まあ、元が違うからねえ」

響「元?」

提督「学生時代に色々とねー…いやあ、懐かしいなあ…」

提督「しかしこの分だと持久走はダメかあ…なら他に何しようかなあ」

雷「たぶん司令官の鍛え方がおかしいのよ。いつも私達がやってることをやればいいんじゃない?」

提督「それもそうだね。じゃあ普段なにやってるの?」

木曾「なにやってるのって…あのプログラム組んでるのってお前じゃないのか?」

提督「ん?うん、いつも大淀に任せてる」

木曾(それでいいのか…)

暁「そうねえ。暁達が得意って言ったら、やっぱりメートル走じゃないかしら」

提督「よーし、ならそれで行こう!」

提督「じゃあ、計測よろしくねー!」ブンブン

木曾「任せろー」

暁「これ、何メートル?」

雷「五十ね」

響「…別の人も参戦してるけど」

島風「」フンスフンス

雷「…まあ、問題はないでしょ」

提督「ハッハッハ、私と戦うつもりかね」

島風「ふふん、提督には負けないもんね!」

電「えっと……位置についてー」

提督「いざ尋常に!」

島風「勝負!」

電「よーい、どんっ!」

島風「ほおあああああああああああ!!!!」ドドドドド

提督「ふんぬおおおおおおおおおお!!!!」ドドドドド

響「うわあ」

雷「二人ともはっやーい!」

暁「いい勝負してるじゃない」

ザザッ!!

提督「はーっ、はーっ、はーっ」ゼェゼェ

島風「はぁ、はぁ…し、島風がいちばん…」

電「ど、どっちが勝ったのです?」

木曾「タイムは……なっ!?」

暁「え?な、なにかあったの?」

木曾「……風花が6.3、島風が6.2だ」

島風「やったぁー!!」

提督「くっそぉ!負けたあー!!」

雷「速っ…」

電「……とてもアラサーのタイムではないのです」ボソッ

提督「ふぐぅ!?」グサッ

木曾「……………」

提督「はーっ…悔しい…」ゴロン

島風「ふふん、どーお?これが私の本気なんだから!」

提督「むう…次は負けないもん!」

暁「でも司令官、走るの久しぶりだったんでしょ?なら勝ち目はあるんじゃない?」

雷「そうよ!司令官、とっても速かったもの!」

提督「ふふふ…なら次走る時は私の勝ちだね」

島風「なにおぅ!?私だって次は本気で走るもん!」

提督「本気じゃなかったの!?ぐうう、舐めプレイしおって〜…!」

電「……?木曾さん?」

木曾「……………」

木曾(ずっと前から気にはなっていたが…なにぶん普段の物腰が柔らかいせいか、いまいち確信は持てなかった…)

木曾(しかしこの前の雪合戦と、今分かったことが一つ…この子の運動能力は常人のそれを遥かに上回ってる)

木曾(そしてもう一つ……異常なまでの反射神経)

木曾(普段はなんともないが…気を張っている時は死角からの攻撃にも反応していた)

木曾(最後に、今日の昼見せたあの太刀筋……)

木曾(………この子は、強い)

木曾「……………っ」ゾクリ

木曾(この子を相手に、俺はどこまでやれる…?もしかしたら、勝てるかもしれない…いや、勝ちたい…!)

木曾(この子と、戦いたい…!!)

木曾「……………」スタスタ

電「き、木曾さん…?」

響「………ずいぶんと怖い顔をしていたね」

雷「そうね…なんだか、出撃する時みたいな…」

ザッ

木曾「なあ、お疲れのところ悪いんだが」

提督「ん……なーに?」

提督(ピンク…)

木曾「………俺と、勝負してくれ」

提督「……………えっ!?」

暁「!?」

響「ほう」

雷「!?」

電「!?」

島風「おぅ!?」

寝転がってる提督
見下ろす木曾
そこから導き出される結論

提督「ちょ、ちょっと待ってよ、勝負って…」

木曾「文字通りの意味だ。俺は、お前に決闘を申し込む」

提督「本気……の目だよね……」

木曾「…………」

雷「な、なんで!?どうしていきなりこんなこと!?」

暁「そ、そうよ!司令官達が戦う理由なんてないじゃない!」

木曾「お前達は黙っていてくれ。決断をするのは風花の問題だ」

提督「…………」

電「し、司令官さん…」

提督「……いいよ。受けて立つ」

木曾「…そうこなくちゃな」

暁「ちょっと!?」

響「戦いを止めるなんて無粋なことはしないよね」

暁「うぐ…」

木曾「勝負の方法は?」

提督「剣でいいよ。慣れてるでしょ?」

木曾「……ああ。確かにそうだが、お前は」

提督「私は大丈夫」

木曾「………ふっ、そういえばそうだったな、お前は剣の心得がないとは言わなかったもんな」

提督「あれ、そうだっけ」

木曾「いつ何をしていたかは聞かないが…お前、剣に関しては相当な腕前だろう?」

提督「………バレた?」

木曾「そりゃあな、少しでも剣を嗜んでいたら嫌でも分かるさ」

提督「うう〜ん…やっぱり分かっちゃうよね…」

木曾「俺はこの軍刀を使う。お前はどうする?」

提督「どうするって言われても、私剣なんて持ってないし……あ」

スタスタ

ヒョイ

提督「これでいいかな」

雷「これでって…ただの棒切れじゃない」

木曾「…………」

木曾「くっくく……ははははは!!」

提督「なに、そんなに面白かった?」

木曾「ふふふ…ハンデのつもりか?」

提督「そういうわけじゃないけど……勝てないわけではないし」

木曾「棒切れで?剣にか?」

提督「うん」

木曾「そうか……なら、その自信ごと叩き斬ってやろう」

提督「どうかな」

木曾「…………」チャキ…

提督「…………」キッ

木曾(……自信に満ちた目だ……虚勢を張ってるわけではないな…)

電「は、はわわ……」

暁「空気がピリピリしてる…」

雷「お互いに本気、ね…」

提督「…………」

木曾「…………っ」ジリッ

響「動く……!」

木曾「おおおっ!!」グッ

提督「!」ザッ




「しれぇー!!」

木曾「!?」

提督「うわっ!!」ガッ

キィーン

暁「わっ!?」

提督「あたた…」ビリビリ

木曾「あ…わ、悪い」

提督「あ、ううん、大丈夫だよ。ごめんね」

雪風「あ、あれ…?雪風、お邪魔でしたか…?」

提督「ん…いや、そんなことはないよ。なにか用?」

雪風「はっ、そ、そうでした!大変なんです!」

提督「た、大変?なにかあったの?」

雪風「とにかく来てください!こっちです!」グイグイ

提督「う、うん」

木曾「…………」

暁「木曾さん?行かないの?」

木曾「……ん?あ、ああ…」

響「なにか引っかかることでもあるの?」

木曾「いや……お前は見ていただろう?」

響「ああ、見てたね」

木曾「あいつが持っていた棒切れ…俺が全力で振り下ろしたのに、折れるどころか横に弾き飛ばしやがった」

響「偶然ではない?」

木曾「それは考えられないな。偶然にしては求められる要素が多すぎる」

響「……そうか」

木曾「ああ…さっきの一瞬で分かったよ、あの子は強い……強すぎる」

響「ふうん。まあ、私には関係のない話かな」ザッ

木曾「…………」

木曾「…………」

木曾(あの棒切れそのものは、どこにでも落ちているなんの変哲もないようなものだ…精錬された軍刀なら切り裂くことなんて難しい話じゃなかったはずだ)

木曾(なら切り裂けなかった原因は……あの子だろうな)

木曾(響だけは目視出来ていたようだが………俺の剣と棒が触れ合う瞬間…いや、それよりもっと前に俺の動作を見て、剣と斜めからぶつかり合うように棒を立てていたんだ……)

木曾(ただの棒でも、軸をずらされればインパクトの瞬間に想定していた結果とは違うものになる…)

木曾(もしあれが本物の剣だったら、あのままバランスを崩した俺は………)

木曾「…………」ゾク

木曾「………俺も、まだまだか…」

電「木曾さーん!」

木曾「今行く」ザッ

雪風「しれぇ、こっちです!」グイグイ

提督「う、うん……ん?人だかりが出来てるけど、もしかしてあれ?」

雪風「はい、その上に…」

妖精さん「ヘルプミー…」

天津風「あっ、あなた!」

提督「ああ、天津風…あれって確か、九九艦爆の妖精さんだよね?」

天津風「ええ、演習中に編隊からはぐれちゃったみたいで…他の子達のところに戻ろうとした時に木に引っかかっちゃったみたい」

雷「大変じゃない、早く助けてあげなきゃ!」

提督「それは困ったね…でもこの木、結構高いし、そんなに枝も多くないから登れないんだよね」

時津風「あたしに任せてー!」ダッ

提督「ま、待った!」ガシ

時津風「うぎっ!?な、なんで止めるのさ!?」

提督「危ないからダメ!登ったところで降りられるような枝がないから、かえって危険になるの!」

時津風「うー…わかった…」

提督「うん…ちゃんと待っててね、お願いだから…」

天津風「登れないなら、どうするの?」

提督「……確か倉庫に脚立があったはずだから、それ持ってくるね」

木曾「なら俺も手伝うぞ」

提督「うん、ありがと」

提督「……………」

ガタッ

ゴソゴソ…

木曾「うえ…ずいぶんホコリをかぶってるな」

提督「倉庫と言っても、普段使わないものを押し込めたようなものだからね…元はと言えば私が大掃除の時にサボり癖出したせいなんだけど」

木曾「ああ、曙にこっぴどく怒られてたな」

提督「うん……」

木曾「………なあ」

提督「なに?」

木曾「少し、元気がないように見えるが…そんなに俺と戦うのが嫌だったか?」

提督「え?いや、そういうわけじゃないんだけど…」

木曾「なら、何か他の理由があるんだな」

提督「………!」

木曾「時津風が木に登ろうとした瞬間、見るからに顔色が変わったぞ」

提督「……よく、見てるんだね」

木曾「…別に問い質そうとしているわけではないんだがな」

提督「……ううん、いいんだ。ほら、脚立見つけたし、移動しながら話すね」

木曾「あ、ああ…」

時津風「む〜……」パタパタ

天津風「……ちょっと、少しは落ち着きなさいよ」

時津風「だって退屈なんだもん!」

雷「まあまあ、すぐ二人とも帰ってくると思うから」

電「…でも、早く助けてあげないと、可哀想なのです…」

妖精さん「ヘールプ…」

時津風「そうだよ!もう待ってられないもん!」ガッ

天津風「ちょ、時津風!?」

暁「あ、危ないわ!降りなさい!」

時津風「だいじょーぶだいじょーぶ!こんなの簡単だって!」ヨジヨジ

雷「司令官が戻ってくるまで待ちなさいってば!」

時津風「やー!」

響「もうあんなところまで…」

木曾「……なるほど…そんなことがあったのか…」

提督「もう、ずいぶん昔の話だけどね……」

木曾「……ん?ってお前、記憶は戻ったのか?」

提督「うん、もうほとんど思い出した」

木曾「そうか…なら、よかった…のか?」

提督「どうだろ。あの時のこと思い出すだけで心臓がドキドキするし、時津風がもしそんなことになっ………たら……」

木曾「?」

提督「………そうだ、時津風は!?」

木曾「え?い、いや、グラウンドじゃないのか?」

提督「嫌な予感がする……!」ダッ

木曾「あ、おい!」

提督(木曾を残して行くべきだった…時津風の性格で辛抱出来るはずがない…!)

時津風「ほっ…もう少し…」グググ

天津風「ちょ、ちょっと!危ないから降りなさいってば!」

暁「落ちても知らないんだからね!」

時津風「大丈夫だって……ほら!妖精さん取れた!」

妖精さん「センキュー!」

ザッ

提督「時津風!?やっぱり…!」

時津風「あ、しれえ!ほら、見て見て!妖精さん助けたよ!」ブンブン

提督「わ、わかったから!落ち着いて、早く降りてきて!」

時津風「えー、なんでさー?」

提督「危ないから!ほら、脚立も持ってきたからここから降りて!」

時津風「むう、結構いい眺めなんだけどなあ…まーいっか!よいしょっ」スッ

ズルッ

時津風「うわっ!?」

電「ひっ!」

雷「落ちっ…!」

提督「時津風!!」

ズザッ

ドスンッ

提督「うう…」

時津風「あいたた……あれ、しれぇ…」

雷「だ、大丈夫!?」

響「間一髪、といったところだね」

提督「っ……なんで言いつけを守らなかったの!?」

時津風「へっ…?」

提督「危険だから登らないでって言ったのに!下手したら死ぬかもしれなかったんだよ!?」

時津風「し、しれぇ…?」

天津風「ちょっ…あ、あなた、そんなに怒鳴らなくても…」

木曾「お、おい、どうしたんだ?空気が悪いぞ」

時津風「う、うぅ…」ジワッ…

提督「……あ……」

暁「……って、二人とも怪我してるじゃない!」

木曾「本当だ…大したことはないみたいだが、とりあえず医務室に行こう」

時津風「……うん…」グスッ

医務室



明石「………はい、これで大丈夫ですよ」

時津風「ありがと…」

天津風「木から落ちた時に擦り剥いたみたいね…痛まない?」

時津風「ヒリヒリする……けど、司令の方がもっと気になる…」

響「かなり怒ってたね。普通の様子じゃなかったけど」



雷「もう!じっとしてなさいってば!」

提督「いたっ、痛い!染みるんだって!」

雷「じゃなきゃ消毒出来ないでしょ!もう大人なんだから我慢しなさい!」

暁「まあ、腕擦り剥いただけでよかったんじゃない?」

木曾「ああ、骨折とかじゃなくて本当によかった」

電「でも、司令官さんは頑丈すぎるのです…」

提督「うぐぎぎ…な、なんで?」

木曾「いや…だってそりゃあ、なあ?」

電「あの高さから落ちてきた人を受け止めるなんて、とても人間のやることとは思えないのです…」

提督「そうかなあ…」

雷「そうでしょ…」

雷「はい、これで終わり」

提督「へぇあ…よかったー」

響「司令官、時津風が二人でお話したいって」

提督「え?ああ、うん…わかった、じゃあちょっと…」

木曾「ああ、お邪魔みたいだからな。出て行くよ」

雷「しっかりとケアしてあげなきゃダメよ!」

暁「ふふん、出来る大人は空気も読めるのよ」

電「えーっと…ちゃんと仲直りするのです!」

雪風「雪風もお供します!」

天津風「ダメ、あなたもこっち」グイ

雪風「ぐえぇ!」

明石「何があったのかは分かりませんけど…ケンカはダメですよ?」

バタン

提督「……別にケンカしたわけじゃないんだけどなあ」

時津風「……しれえ」

提督「ん?」

時津風「しれえ、まだ怒ってる…?」

提督「ううん、怒ってないよ」

時津風「あの、ね……ごめんね」

提督「うん……私の方こそごめんね、あんなに大きい声出して…」

時津風「うん…あと、助けてくれてありがとう」

提督「えへへ、どういたしまして。それよりさ」

時津風「?」

提督「ずっとそこにいたら声が聞こえづらいから…ほら、こっちおいで」

時津風「……うん!」

ボスッ

提督「わっ…ふふっ、膝の上じゃなくて隣って言ったつもりだったんだけどなあ」

時津風「こっちの方が好きだもん」

提督「だよね、ふふふ」ナデナデ

時津風「〜〜♪」

時津風「ねえ、しれー」

提督「なあに?」

時津風「ぎゅーってして」

提督「うん」ギュウ

時津風「……やっぱりしれぇは優しいなあ」

提督「急にどうしたの?」

時津風「えっとね、いつも優しいからあんなに怒られて怖かったなーって」

提督「ああ、そういうこと……ごめんね、怖がらせちゃって…」

時津風「ううん、もう気にしてないよ。でもなんであんなに怒ってたの?言うこと聞かなかったから?」

提督「……二割はそれかな」

時津風「? 残りの八割は?」

提督「…………」

提督「…私が七歳の時、だったかな。その日は日曜日で、妹二人と家の近くにある公園に遊びに行ったんだ」

時津風「うん」

提督「しばらくは普通に遊んでたんだけど…ブランコとか、滑り台とか…」

時津風「なにそれ、面白いの?」

提督「うん、今度鎮守府にも置いてあげるね」

時津風「ほんと!?」

提督「うん、約束する。で、ここからが問題なんだけど……その公園の真ん中に、グラウンドにあるみたいな大きい木が一本あったの」

時津風「7メートル…ぐらいの?」

提督「そう、それぐらい。その木の上に、猫が登っててね?降りられなくて困ってるのを見た一番下の妹が助けるーって言い出して木に登り始めたの」

時津風「あたしと同じだ…」

提督「その時私は、危ないから大人の人を呼んでくるって家に母さん達を呼びに戻ったんだけど……これがダメだったなあ…」

提督「私が母さん達を連れて公園に戻った時には、泣きながら身体を揺さぶる妹と、動かなくなった一番下の妹がいて……そこから、ずっと大変だったから…」

時津風「そうだったんだ…」

提督「うん……頭から落ちたらしくてね、しばらくずっと意識が戻らなくて、その間、ずっと私も妹も大泣きしてたんだって。数日間起きては泣いて、泣き疲れては寝て、また起きて泣いて…って感じだったみたい」

時津風「それで、どうなったの?」

提督「ん?その後は妹が目覚めて、奇跡的になんの後遺症もなかったからすぐに退院したよ」

時津風「そうなんだ…ならよかったね」

提督「うん……」

ガチャ

木曾「もういいか?」

天津風「って、ちゃっかり膝の上に乗せてもらってるじゃない。仲直りは出来たみたいね」

時津風「ふふん、羨ましいの?」

天津風「ばっ……そんなんじゃないわよ!///」

時津風「それにしても、しれぇの妹さんも頑丈なんだねー」

木曾「? なんだ、昔の話か?」

時津風「うん、しれぇの妹さん、7メートルぐらいの木から頭から落ちたんだって」

木曾「頭から!?」

雷「えっ、そ、それでどうなったの!?」

時津風「なんにもなかったんだって」

木曾「えっ」

提督「何もなかったよ?三日ぐらい意識不明だったけど」

木曾(信じられない…)

暁(司令官の家系はおかしいのかしら…)

響(気が狂ってる…)

雷(普通死んでてもおかしくないわよね…)

電(頭おかしい…)

提督「……もうこんな時間かあ」

明石「そうですね、そろそろお腹も空いてきましたね」

木曾「もう演習も終わってる頃なんじゃないか?」

提督「そだね、みんな戻ってくるし……食堂の方に行こっか」

暁「もうご飯出来てるの?」

提督「ううん、鳳翔さんのお手伝い。早く美味しいご飯食べたいでしょ?」

暁「むう、それもそうね」

雷「なら早く行きましょう!腕が鳴るわ!」

電「電も手伝うのです!」

提督「はいはい、分かったから引っ張らないで」

響「私も同行しよう」

木曾「なんでそんなネタしってるんだお前」

キッチン



提督「鳳翔さーん」

鳳翔「あら、提督…」

大鯨「あっ提督、お疲れ様です」

提督「あ、大鯨!大鯨も鳳翔さんのお手伝い?」

大鯨「はい、料理を教えてもらおうと…」

鳳翔「ちょうど提督もいることですし、見てあげてくれませんか?」

提督「私?私でいいなら教えてあげるけど…」

大鯨「本当ですか!?よろしくお願いします!」ギュッ

提督「私じゃ役に立てるか分からないけど…頑張るね」

鳳翔「それで、あなた達は…」

雷「鳳翔さんのお手伝いよ!」

鳳翔「あら…ふふ、助かります」

暁「で、今日は何を作るの?」

鳳翔「今日は揚げ物をしようかと…」

響「エビフライとか…かな?」

鳳翔「はい、そんなところです」

響「ほう、なるほど…まずは何をすればいいのかな?」

鳳翔「ええっと、まずこのエビの殻を剥いてもらって…」ガタッ

電「いっぱいあるのです…」

鳳翔「この鎮守府の全員分ありますからね、結構大変ですよ」

暁「暁も大人なんだから、これくらい余裕よ!」

響「任せてくれ、やってみせる」キラキラ

パタパタ

鳳翔「響さん、なんだかキラキラしていましたね」

電「お姉ちゃん、エビフライ好きだから…」

鳳翔「ああ…」

雷「鳳翔さん、私達は何をすればいいの?」

鳳翔「あ、今持ってきます」タッ

電「持ってくる…?」

ドスドス

鳳翔「お待たせしました〜」

雷「うわっ!?すごいお米…」

鳳翔「ふぅ、ふぅ…これを、研いでくれますか…」

電「こんなにたくさん……ようし、頑張るのです!」

鳳翔「目安としては研ぎ汁が薄くなるまで…」

雷「その辺は分かってるわ!ほら電、やるわよ!」

電「電の本気を見るのです!」

鳳翔「ふふ、頼もしいですね…」

鳳翔「さてと……私も私のやることを…」ストン

雷「……?」

電「やることって…ただ椅子に座ってるだけなのです」

鳳翔「ふふ、これからですよ」

雷「?」

電「へ?」

パタパタ

赤城「ご飯ご飯……あっ!?ほ、鳳翔さん!」

鳳翔「ダメですよ赤城さん、まだご飯は出来ていません」

赤城「で、でも…小腹が空いて…」

鳳翔「つまみ食いしたい気持ちも分かりますが、我慢することも大事です。それに、これでは他の子達に示しがつきませんよ?」

赤城「そ、そうですね……はい、我慢します…」

鳳翔「美味しいご飯を作りますからね」

赤城「はーい」

パタパタ

鳳翔「ふぅ…」

雷「おぉー…」

電「なるほど…」

鳳翔「こうやってつまみ食いしに来る子をやんわりと追い返すのも、大事な仕事ですよ」ニコ

電「すごいのです…」

暁「くっ……」パリ…

響「苦戦してるみたいだね」パキパキ

暁「いえ…もう慣れてきたわ」パリパリ

響「そうか、それはよかった」パキパキ

暁「…………」パリパリ

響「…………」パキパキ

暁「…………」パリパリ

響「…………暁」スッ

暁「ん?なn……くさっ!!」

響「ふむ、やっぱり臭いのか」

暁「なんで暁で試すのよ馬鹿!!」プンスカ

響「ほれ」スッ

暁「臭い!!」

提督「じゃあ私達も始めようか。今日は何を作るの?」

大鯨「あ、はい!揚げ物と、炊き込みご飯と言ってました」

提督「ふんふん…なら私達はご飯担当だね」

大鯨「はい、よろしくお願いします」

提督「……とは言ってもねえ、うーん…」

大鯨「どうしました?」

提督「大鯨の料理は美味しいし、他に教えることなんてないんだよね、正直……」

大鯨「ほえっ!?」

提督「そうだなぁ……じゃあ、味だけじゃない大切なことを教えてあげようかな」

大鯨「は、はい!」

提督「料理って難しいものでね。大鯨は嫌いなものってある?」

大鯨「え?えぇっと…特には」

提督「大人はそうでも、子供はそうじゃないことってよくあるの。たとえば、このニンジンとか」

大鯨「ニンジン?」

提督「特に多いのが駆逐艦の子達。カレーは好きでもニンジンは嫌いだーって子はいっぱいいるからね」

大鯨「ああ…まだ味覚が子供だから…」

提督「そう。味が良くても、嫌いなものが入ってるだけで苦手意識を持つ子も多いんだ」

大鯨「なるほど…困ったものですね」

提督「だから嫌いなものだけ端に寄せて残す子とかいて…それも可愛いんだけど、そのままだと教育に悪いからなんとかしないといけないよね」

大鯨「は、はあ」

提督「? 分からないことでもあった?」

大鯨「い、いえ…」

大鯨(それも可愛いって言う必要あったのかな…)

提督「そこで活躍するのが、この型取りです」トン

大鯨「ほお、星の形をしてますね」

提督「まずニンジンを切ってみて」

大鯨「こうでしょうか」

ストン

提督「そうそう。で、その輪切りにしたニンジンの真ん中にこれをどーん」

大鯨「どーん!」サクッ

提督「もっともっと、別のところにもどーん」

大鯨「どーん!どーん!」サクッ サクッ

提督「はいお疲れ様。するとどうでしょう、ニンジンが綺麗なお星さまになりました〜」パッ

大鯨「まあ、可愛らしい」

提督「こうやって興味を引いてあげるのが大事なんだ。ニンジンを食べてるって意識がなくなるでしょ?」

大鯨「ほえぇ…なるほど…」

提督「でも、これだと及第点」

大鯨「えっ?」

提督「ほら、見て。色んなところから型を取ったせいで、色合いがまばらになってるでしょ?」

大鯨「あ、確かに…」

提督「このままだと彩りにムラが出ちゃうからね…どうせなら、みんな一緒にしてあげなきゃいけないから、こうするの」スル

大鯨「身を桂剥きにするんですか?」

提督「そう。少し厚めに、するするーって。はい、出来た」

大鯨(すごい…早くて綺麗…)

提督「で、これをさっきの型取りでどーんってやると…」ストン

ポロ

大鯨「あ…色が均一になりましたね」

提督「こっちの方が綺麗でしょ?」

大鯨「ええ、本当に…大人の目から見ても興味を惹かれますね」

提督「手間はかかるけど、こうすれば子供達も食べてくれるからねえ。私は時間をかけてでもやるよ」

大鯨「わ、私もやります!」

提督「うん、みんなも喜ぶよ」

ストン

提督「そういえばさっき、鳳翔さんが揚げ物するって言ってたね」

大鯨「はい、エビフライやコロッケなどを作るそうです」

提督「え?コロッケあるの?」キラキラ

大鯨「ええ。たくさんジャガイモを用意していたので」

提督「ほんと!?やったぁ!!」

大鯨「コロッケ、好きなんですか?」

提督「うん!……あっ、こ、子供っぽかったかな…?///」カァ

大鯨「………〜〜〜〜!!!」

大鯨(何この大人可愛すぎる…!)キュンキュン

提督「た、大鯨?」

大鯨「い、いえ。可愛らしいですよ」ニコ

提督「ん…なら、よかった…///」

大鯨「〜〜〜〜〜〜〜!!!」

大鯨(提督可愛い…愛でたい…撫で回したいぃ……)

大鯨(だ、ダメダメ…何か別の話をして気持ちを落ち着かせないと…)

大鯨「そういえば提督って、嫌いな食べ物はないんですか?」

提督「なんで?」

大鯨「いえ、私が提督に料理をお出しした時に嫌いなものがあると提督を困らせてしまいますので…」

提督「大鯨の料理ならなんでも食べられるよ?」

大鯨「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

大鯨(そういうことを聞いたんじゃなくて…!そんな殺人級の返事を聞きたかったわけじゃなくてえぇ…!!)キュンキュン

提督「た、大鯨、大丈夫?さっきから様子が変だけど」

大鯨「だ、大丈夫れす」

提督「噛んでるし……ちょっとじっとしててね」スッ

大鯨「え?ちょ、提督、顔が近

コツン

大鯨「ほえっ」

提督「うーん……熱はない……よね」

大鯨「………!!???!?//////」カァアアア

提督「具合が悪いなら一応医務室に…」

大鯨「」ブシャッ

バターン

提督「わああああ!!??大鯨!!?」

提督「ほ、鳳翔さん!大鯨が鼻血噴き出して倒れた!!」

鳳翔「はい、見ていました」

提督「ど、どうすればいいの!?医務室連れて行った方がいい!?」

鳳翔「いえ、そのあたりに寝かせてあげてください」

提督「えっ!?そ、それで大丈夫なの!?」

鳳翔「はい、命に関わる問題ではないと思うので…」

提督「ほ、鳳翔さんがそう言うなら…」

大鯨「ほえぇ……」グッタリ

提督「よいしょっと…動かないでねー…」グイッ

鳳翔「…………」

響「うわあ…」

電(ナチュラルにお姫様抱っこ…)

雷「むぅ…」

提督「……あれ、みんなどうしたの?そんなに見つめて」

暁「……しれーかんのバカ!」

提督「えぇー…」

大鯨「うあう……」

提督「大鯨、しっかりー」

大鯨「ふぁい……」パチ

提督「大丈夫?」ズイ

大鯨「」ブシャッ

提督「うわぁ!?」サッ

大鯨「し、しあわせ……」ガクッ

提督「……幸せなら大丈夫……かな?」

木曾「……うおっ!?な、なんだこれ、どうかしたのか?」

提督「あ、木曾……いやちょっとね、大鯨が鼻血噴き出したから寝かせてるんだけど…」

木曾「医務室に連れて行った方がいいんじゃないのか?」

提督「そう思ったんだけど、鳳翔さんが大丈夫だって」

木曾「そ、そうか…ならいいが」

提督「ところで木曾、今までどこにいたの?」

木曾「ん?ああ、みんなをもう飯の時間だぞって呼びに行ってたんだ」

提督「へー……」ジー

木曾「……なんだ?」

提督「いや、木曾もご飯作ればいいのになーって思って」

木曾「俺がか?そんなガラじゃないぞ」

提督「でも、木曾のご飯美味しいよ?」

木曾「お前や鳳翔さんに比べたらまだまださ」

提督「そうかなぁ…」

木曾「……その、さ」

提督「うん?」

木曾「お前が俺の料理を美味いって言う根拠はなんなんだ?」

提督「うーん……やっぱり、他の子との食べ比べかなあ」

木曾「え?そんなに多いのか?」

提督「うん、一応ほぼ全員にご飯振舞われたけどその中でも木曾のは上位に入るぐらい美味しいよ」

木曾「そ、そうか……なるほどな…そうか……///」クルクル

提督(髪巻いてる。かわいい)

木曾「……ところでさ」

提督「なに?」

木曾「上位がどうとかってことはさ、やっぱりマズいやつも……」

提督「………うん、いるね」

木曾「………例えば?」

提督「………言わずと知れた比叡カレー」

木曾「ああ……あれはもう二度と食べたくない…」

提督「比叡はまだいいよ…食べられないレベルじゃないし…」

木曾「…そういやあの姉妹って、他に料理上手なやつはいるのか?」

提督「そうだね、金剛はすごい上手だったかな。スープカレーとスコーンを作ってくれたんだけど、どっちも美味しかった。まだ日本食を作るのは慣れてないみたいだけど」

木曾「なるほど。他は?」

提督「榛名も霧島もそれなりに上手だったなあ…もっとも、カレーの話だから別の料理も美味しいかは分からないけどね」

木曾「そうか……で、さっき比叡はまだいいって言ってたよな?」

提督「そうだね……言ったね…」

木曾「……誰なんだ?その良くない方は」

提督「…………磯風」

木曾「!」

提督「あれは料理じゃない…人間の食べるものじゃない…」ガタガタ

木曾「そ、そんなにか」

提督「吐くとかそういうレベルじゃなかった、まさか体調に支障をきたすほどだとは思いもしなかった」

木曾「うわあ…」

提督「磯風の何がいけないって、同型の三人が同じ部屋に居てその三人はまともな料理を作れるしアドバイスももらえるのに我流を貫いてまずい料理を作ることなんだよね」

木曾「それって、メシマズの特権じゃないか」

提督「そうなんだよ、しかもまずい癖に自分から進んで作ろうとするしさ、なんかもうそれって食材と食べる人への冒涜としか思えないよね」

木曾(……あれ、なんかキレてないか?)

提督「なんでそういうことするかなあ、人のアドバイスも聞けばいいのにそんなことで人が喜ぶとでも」

木曾「な、なあ、もしかしてお前、料理下手なやつは嫌いなのか?」

提督「………別に、そんなことないけど」

木曾(目が笑ってねえ…)

木曾「じゃ、じゃあ、逆に美味い料理を作るのは誰なんだ?」

提督「え?うーん……そうだなあ、意外だったのは暁かなあ…」

木曾「へえ。あの小さい子が」

提督「レディーの嗜みだー、って言って練習してたよ。長女らしいところもあるね」

木曾「他は?」

提督「他?………深雪も意外だったねえ、曰く司令官のために頑張ったーって」

木曾「ふっ、健気だな」

提督「あとはみんなだいたい美味しかったねえ…八割がカレーなのはどうかと思うけど」

木曾「はは…お前は愛されてるな」

提督「そう?」

木曾「愛されてないなら他になんて言うんだ?」

提督「………それもそうだね」

提督「………ねえ、木曾」

木曾「どうした?」

提督「愛って、なんなのかな」

木曾「いきなりなんだ?」

提督「…ごめん、やっぱりいいや」

木曾「そう言われると気になるんだがな」

提督「あはは…確かに」

木曾「そうだな、愛か…難しい話だな」

提督「うん……小さい頃からずっと考えてるけど、今もまだ分からないまま」

木曾「……自論でしかないが、誰かと一緒に居て、その時間が満たされているものならそれは愛なんじゃないか?」

提督「じゃあ、今木曾とこうしてる時間も愛?」

木曾「ああ、俺は満たされてる」

提督「そっか…なら私も木曾を愛してるんだね」

木曾「ふっ、相思相愛か?」

提督「それだとこの鎮守府の子達みんなとも相思相愛になっちゃうよ」

木曾「ははは!違いない!」

提督「でも、やっぱりよく分かんないや」

木曾「くくく、なんだそれ」

提督「だって…愛って言っても色々あるでしょ、家族愛とか、兄妹愛とか、性愛とか、恋愛とか…」

木曾「? お前のは恋愛じゃないのか?」

提督「……正直、自分でもよく分かってない」

木曾「んん?お前には恋人がいるだろう?」

提督「うん…好きなことは好きなんだけど、これが恋愛感情かと言われたらどうなのかなーって」

木曾「ならなんで好きになったんだ?」

提督「………似てるから」

木曾「似てる?誰に?」

提督「…似てるんだよね、お母さんに」

木曾「……??」

提督「ごめんね、変な話して。もうこの話は終わりにしよう?」

木曾「あ、ああ…」

大鯨「うう…ん…」パチッ

提督「あ。おはよう、大鯨」

大鯨「……おはようございます…?」

木曾「まだ寝ぼけてるな」

大鯨「あれ…私、なんで眠っていたんでしょうか…?」ゴシゴシ

提督「えっとね、ご飯作ってたらいきなり鼻血噴き出して倒れたんだよ」

大鯨「ええっ!?そ、それはどうもご迷惑をおかけしました…」

提督「いいよいいよ、気にしないで」

大鯨「うーん…でも、なんだか幸せだったような記憶が…」

木曾「……幸せだったって、お前何やったんだ?」

提督「ん?おでこくっつけて熱がないか確認しようと」

木曾「ああ…」

提督「何その顔」

木曾「いや…天然ジゴロだなと思って」

提督「??」

大鯨「……あ、そうだ、ご飯作らなきゃ!」ガタッ

提督「ああ、大丈夫だよ、あとは鳳翔さんがやってくれるって」

大鯨「そ、そうなんですか。なら、もうちょっとだけ休憩してようかな…」ストン

提督「うん、ゆっくり休んで」

大鯨「……あ、あのう」

提督「なに?」

大鯨「その…まだ体調が優れないので、お、お膝を借りてもよろしいでしょうか…」

提督「膝枕?いいよ、ほら」ポンポン

大鯨「! し、失礼します…」

ポスッ

提督「どう?」

大鯨「と、とても柔らかくて気持ちいいです…」

提督「そっか、ならよかった」ナデナデ

大鯨「ほえぇ…///」

大鯨(いい匂い…)スンスン

木曾「……………」

提督「…どうしたの?」

木曾「なんでもない」プイ

提督「……ははあ、さては嫉妬してるね?」

木曾「そんなのじゃない」

提督「うぇへへへ、可愛いやつめ」

木曾「うるさい!///」

暁「……さて、響」

響「ああ。ついにこの時がやってきた」

暁「揚げ物初挑戦…!」

響「とは言っても油に入れるだけなんだけど」

暁「そうね。じゃあさっさと済ませちゃいましょうか」

ヒョイ

ポチャン

ジュワッ…

響「……うん。上出来だと思う」

暁「なんだか、思ってたよりあっけないわね…」

パチッ

暁「へっ!?」

パチッ パチパチパチパチッ

暁「きゃあ!?」バッ

響「あつっ」バッ

暁「ちょ、ちょっと!?これってまずいんじゃないの!?」

響「そうみたいだね」

暁「なんでそんなに落ち着いてるのよ!!とにかくどうにかしないと!」

響「……水でもかければいいんじゃない?」

暁「それよ!よーし…」キュッ

ジャー

鳳翔「ああっ!だ、ダメです!ストップ!」パタパタ

暁「へっ?」

鳳翔「油に水はダメです!大変なことになりますから!」

暁「そ、そうなの…?」

鳳翔「はい、大爆発します。冗談抜きで」

暁「!?」

響「ぶふっ、くくく……」

暁「! 響〜!!」

響「ふふ、悪かった、まさか本当に信じるとは…」

暁「危うく大事故だったじゃない!もう!」

暁「でも、あれはどうすればいいの?」

鳳翔「ああ…これくらいならなんの問題もありませんよ。あとは色がついたところであげるだけです」

暁「そうなんだ…」

鳳翔「揚げ物はまだ早かったみたいですね…横で見ていてください」

暁「はーい」

響「…………」ポリポリ

暁「……なに食べてるの?」

響「落ちた衣」ポリポリ

暁「そう……」

響「いる?」スッ

暁「いらない」

提督「でね、その時母さんが……」

鳳翔「提督、あとはご飯が炊けるまで待つだけですよ」

提督「あ、そうなの?ならお皿並べてくる」

木曾「俺も手伝うぞ」

大鯨「あ、お膝、ありがとうございました」

提督「うん、よかったらまた今度耳かきでもしてあげるね」

パタパタ

大鯨「耳かき…」

鳳翔「ふふ、楽しかったですか?」

大鯨「へ?あ、い、いえ!そんな、私は…」

鳳翔「そんなに否定しなくても…顔が嬉しいって言ってますよ」

大鯨「うう、すみません…働きもしないでこんな…」

鳳翔「いえ……でも、ちょっとだけ羨ましいです」

大鯨「えっ?どうしてですか?」

鳳翔「私みたいに大人になると、素直に甘えられなくなるので…私も、あんなふうに提督と一緒に過ごせたらなと思うんです」

大鯨「えっと……言えば普通に甘えさせてくれますよ?」

鳳翔「……えっ」

大鯨「えっ」

〜〜〜

木曾「おお。この炊き込みご飯のニンジン、星の形になってるぞ」

暁「ほんとだ!可愛いじゃない!」モグモグ

提督「…………」ジー

木曾「……ん、どうした?」

提督「……え?あ、いや、なんでもないよ」

木曾「…さては俺のコロッケが欲しいんだな?」

提督「い、いや、そんなんじゃなくて…」

木曾「遠慮するなよ、俺とお前の仲じゃないか」スッ

提督「あ…ありがとう」

提督(小細工がウケたのが嬉しくて見てたんだけど…こっちもちょっと得したなあ)サクサク

響「…………」ジー

木曾「なんだ、お前も欲しいのか?ほら、エビフライ」

響「……! これは実にハラショーだ……スパスィーバ、木曾さん」

木曾「ふっ、いいってことさ」

提督(木曾ってほんとにイケメンだよねぇ…もし男だったらモテてたのかなぁ)モグモグ

鳳翔「あの、提督…」

提督「んぁ、どうしたの?」

鳳翔「これを開けてもらってもよろしいでしょうか…」

提督「黒豆の瓶?開かないの?」

鳳翔「はい、みなさんにお配りしようとしたのですが、前に食べた人が強く閉めすぎたようで…」

提督「なるほど…ん゛っ」

グッ

提督「……これは固いねえ…」

木曾「どれ、貸してみな」

提督「はい」

木曾「ふんっ…!」ググッ

パカッ

提督「おおー!」

木曾「ふふ、こういうのにはコツがあるのさ」

提督「やるねー男らしいねー」パチパチ

鳳翔「助かりました…ありがとうございます」

〜〜〜

提督「ふぅ、ごちそうさま」

木曾「いやあ、今日の飯も美味かったな」

雷「しれーかん、私達も食べ終わったわ!」

提督「そうだねえ。じゃあ何しようか」

暁「お風呂は?」

提督「うーん、先に食べ終わった子達が入ってるだろうしねえ。私達は後回しかな」

響「眠い」

提督「じゃあ寝る?」

響「それはやだ」

電「でも時間があるのです」

提督「私釣りしたいんだけどなあ」

雷「釣り?」

提督「そう、夜釣り。大きいのが釣れるから」

木曾「お前……さてはハマったな?」

提督「えへへ、バレた?」

雷「そうと決まれば早く行きましょう!明日の朝ご飯になるわ!」

提督「それもそうだね。じゃあ行こうか」

暁「響、ランタン取りに行くわよ」

響「ん…わかった」

木曾「なら俺達は釣り竿と餌取りに行くか」

電「はい、ついていくのです」

提督「とは言っても三本しかないんだけどねえ…雷、私達は先にバケツ持って行こうか」

雷「ええ!」

カタン…

雷「ふぅ……夜の海は暗いわねえ」

提督「やっぱり夜戦の時もこれくらい暗いの?」

雷「んー……いや、こっちも深海棲艦もお互いに探照灯持ってるからそうでもないわ」

提督「へぇー…」

雷「どう?司令官は夜の海は怖い?」

提督「……そうだね、吸い込まれそうでちょっと」

雷「ふふん、安心して!たとえ幽霊が相手でも私が司令官を守ってあげるわ!」

提督「ふふ…頼りになるね」

雷「でしょ?もーっと私を頼ってくれてもいいのよ?」

提督「なら針に餌付けてもらおうかな」

雷「ええ、任せて!」

提督「…………」

木曾「どうした、また考え事か?」

提督「木曾……うん、そう」

木曾「……昔のことか?」

提督「ううん、別のこと」

木曾「ふーん…それにしてはずいぶん悲しそうな顔だな」

提督「悲しいっていうか…不安になるっていうか…」

木曾「不安?」

提督「うん……この戦いは、いつ終わるのかなって」

木曾「……また難しい話だな」

提督「だって……このまま戦いが続けば、沈む子だって出てくるかもしれないし、もしかしたら向こうの勢力が衰えずにジリ貧になって負けるなんてことになったら…」

木曾「………そうだな。確かにそれは避けられない運命なのかもな」

提督「どうすればいいんだろう……平和な世界にするには……」

提督「…………そもそも、どうして私達は戦わなきゃいけないの?」

木曾「え?そりゃあ…向こうが攻撃してくるからじゃないのか?」

提督「違う、そうじゃなくて…本当は戦う理由なんてどこにもないんじゃないの?」

木曾「どういうことだ?」

提督「だって、何かを目的にして争っているわけでもないんだよ?なら、和解するっていう道もあるかもしれないし」

木曾「和解、か……でも、あいつらに言葉は通じるのか?」

提督「喋ってた子いたじゃん」

木曾「そういえば」

木曾「しかしそいつとどう接触するか、だよな…」

提督「うん…他の深海棲艦達もいるし、厳しいだろうね…」

響「あ、カニだ」

暁「うそ!どこどこ?」

電「網で取るのです!」

提督「危ないからあんまり遠くまで行ったらダメだよー」

暁「はーい!」

木曾「……まあ、叶わない話ではなさそうだな」

提督「うん…きっと出来るよね」

木曾「ああ、平和な世界の為にもな」

提督「力が脅威となるならば、力を抑止力とせよ。か」

木曾「?」

提督「昔おじいちゃんがよく言ってた言葉。力をぶつけ合ってもお互いに壊れるだけだから、あくまでそれを留めるだけの力を持って話し合えって意味があるんだって」

木曾「なるほど……いい言葉だ」

提督「意思を持つ者同士が殺し合うなんて、悲しすぎることだからね…分かり合う事が出来るのなら、それが最良の道だよ」

木曾「ああ……そうだな。俺達の力を戦うための力じゃなくて、戦わないための力にするんだ」

提督「ふふっ、どこまで付き合ってくれる?」

木曾「無論、この身が滅びようとも」

提督「うん……私も諦めない」

木曾「………ところでさ」

提督「なに?」

木曾「釣らないのか?」

提督「あっ」

カララララ

ポチャン…

提督「…………」

木曾「…………」

雷「あー!逃げちゃう!」

暁「ちょっと電、早く早く!」

電「はわわわ!」パタパタ

響「ほら、怖くない怖くない…挟むな挟むな」

提督「…………」

木曾「…………」

提督「…………」

木曾「…………」

パシャッ ザァー…

提督「…………」

木曾「…………」

雷「ほら見て、ここ」

暁「クラゲね」

電「この時期に出るクラゲは危険だー…って司令官さんが言ってたのです」

響「クラゲ……ふよふよしてて可愛いな…」

暁「それはないわ…」

電「可愛いのです」

雷「可愛いわよね?」

暁「え゛っ」

提督「…………」

木曾「…………」

提督「…………」

木曾「…………」

提督「…………」

木曾「………ふわぁぁ……」

提督「…………」

木曾「………釣れないな」

提督「うん………」

木曾「夜は大きいのが釣れるとか言ったのは誰だ」

提督「むう、すぐにおっきいの釣ってみせるもん」

木曾「まったくアタリがないが?」

提督「ぐぬぅ…私が悪いんじゃないもん…」

木曾「くくく、粘れ粘れ」

クイクイッ

提督「! ほら、来た!」

木曾「おおっ、持ってるな」

ググ

提督「うわ……け、結構強い!」

木曾「大物か!?」

グイッ

提督「わあ!?ひ、引っ張られる!」

木曾「こいつはかなりでかいぞ!俺も手を貸す!」ギュ

提督「こんのっ……」グググ

木曾「落ち着け!体力を削ってからだ!」

提督「う、うん…!」

提督「! 引きが弱まった…!」

木曾「よし、リールを巻け!」

提督「わかった!」ギュルギュル

木曾「いいぞ、もう少しだ!」

提督「ふぬうあああああ!!」ギュルギュルギュルギュル

ザパァーン

木曾「おお!やっt……」

提督「え?なんか魚じゃn……」






ヲ級「」プラーン

提督「」

木曾「」

提督「わああああああああ!!???」ザザザザザ

木曾「おおおおおおおおお!!!??」ザザザザザ

ヲ級「」ベチャ

提督「なななななんで空母ヲ級がぁ!?どどどどうしよう!??」

木曾「おおお落ち着け!!俺が守るからお前は後ろに!!」

提督「ああぁ……ん?ちょ、ちょっとまって」

木曾「え?な、なんだ?」

提督「艤装……着けてないよね?」

木曾「ん?……確かに」

ヲ級「……………」モグモグ

提督「あ、針にかかってた魚に食いついたんだ…」

木曾「冷静に分析してる場合か!」

提督「でも、敵意を向けられてるわけでもなさそうだし…」

木曾「それは……まあ、そうだが…」

ヲ級「…………」モグモグ チラッ

提督「!」ビクッ

木曾「!」ササッ

提督「ちょ、見えないから」グイ

木曾「えぇー…」

ヲ級「…………」

モグモグ…

提督「どうする?」

木曾「いや…攻撃してくる気配がないなら逃げるなりなんなり出来るが…」

提督「魚生で食べてるよ…調理しなくていいのかな…」

木曾「そこかよ」

ヲ級「…………」ゲフ

スクッ

提督「あ……ま、待って!」ダッ

木曾「っちょ、おい!?」

ヲ級「…………?」クル

提督「えっと、君……言葉は分かる?」

ヲ級「…………」コクン

提督「! あ、あのね、私はあなたと話を」

ヲ級「…………」

クル

スタスタ

提督「さ、最後まで聞いて!私達はあなたを攻撃するつもりなんてないから!」

ヲ級「…………」ピタッ

提督「その……今は何か用事とかがあるのならここに居なくてもいいから、だから…」

ヲ級「…………」

提督「……一週間後!一週間後の朝、またここに来て!」

ヲ級「…………」

ヲ級「…………」クルッ

スタスタ

提督「朝の五時ぐらい!分かるよね、少し明るくなり始めるくらいだよー!頑張って早起きするから!」ブンブン

ヲ級「…………」ピョンッ

ザブン

提督「………行っちゃった」

木曾「お前……すごいな」

提督「う、うん……」ヘニャ

ストン

木曾「お、おい。大丈夫か?」

提督「あ、あはは……ほんとは、かなり怖かった…」

木曾「はぁ…馬鹿なやつめ…」グイ

提督「ん、ありがと…」

木曾「しかし、なんで言葉が通じるってわかったのに引き止めなかったんだ?」

提督「えっとね……みんながいたから」

木曾「え?」

提督「普段敵として戦ってるみんながいたから…あの子、怖かったんじゃないかって…」

木曾「………そう言われてみれば」

提督「だから、次会う時は私一人で…」

木曾「……!正気か!?殺されるかもしれないんだぞ!」

提督「ううん、あの子はそんなことしない…優しい目だったから」

木曾「なんだその根拠…」

提督「信じる理由にならない?」

木曾「………お前が言うと説得力がすごい」

提督「ふふ、ありがと」

木曾「ただしだな、危ないと感じた時はすぐに逃げるんだぞ」

提督「うん、分かってる」

タタタ…

雷「司令官、大きな声を出してたけどどうかしたの?」

提督「ん?ああ、ちょっとおっきいイカが水面を泳いでてびっくりしちゃったの」

暁「え、どこどこ?」

提督「もういないと思うけど…」

暁「なーんだ…」

響「で、魚は?」

提督「あはは…一匹も釣れなかった」

電「ボウズなのです?」

提督「うん、ボウズ」

木曾「もういい時間なんじゃないのか?」

提督「そうだね、もうみんなお風呂出てるだろうし…戻ってお風呂入ろっか」

雷「はーい!」

〜〜〜

暁「一番乗りー!」タタタ

提督「あ、こら!ちゃんとタオル巻きなさい!」グイ

暁「ぐぇっ!?別にいいでしょタオルくらい!」

提督「ダメ!はしたないでしょ!」

響「でも司令官、私達は普段タオルなんてしてないから」

提督「えっ」

暁「そうよ!みんなもしてないわ!」

提督「えっ、恥ずかしくないの?」

雷「別に」

提督「」ガーン

暁「まあ司令官がそこまで言うなら巻くけど…」シュル

提督「」ズーン

木曾「どうしたそんな世界の終わりみたいな顔して」

提督「いや…若い子達ってみんなああなの…?」

木曾「まあそうだな。駆逐艦は電みたいな子じゃない限り全員だぞ」

提督「」ガーン

木曾「おいおい…」

提督「私の考えは古いのかなあ、常識という眼鏡で子供達の世界は覗けないのかなあ」

木曾「時代は移り行くものだぞ」

提督「すごいジェネレーションギャップを感じる…」

ガラッ

暁「いやっほー!」ピョーン

響「Ура!」ピョーン

雷「そーれっ!」ピョーン

電「なのです!」ピョーン

ザバァン!!

暁「はーっ、気持ちいいーっ!」

響「ふふん…ハラショーだ…」

雷「ねえ、もう一回やりましょ!もう一回!」

電「電もやるのです!」



木曾「……おい、あれ、いいのか?」

提督「ヤッヒイイイイイイィィィィwwww」ピョーン

木曾「お前もやるのかよ」

ザバァン

提督「はぁー!木曾もやってみなよ、気持ちいいよー!」

木曾「いいよ俺は…そんなことしないって」チャプン

提督「むう、面白いのに」

木曾「いや……軽巡もとい雷巡としての威厳がだな」

提督「威厳?威厳なんて末っ子が考えることじゃなくない?」

木曾「………お前は姉さん達の性格を踏まえた上でそう言うのか?」

提督「………いや、でもさすがにお風呂に飛び込んだりは…」

木曾「するんだよ……」

提督「するんだ……」

木曾「まず球磨姉が飛び込むだろ。それに連れて多摩姉も飛び込む」

提督「うわあ、よりにもよって上の子達が」

木曾「で楽しそうだーって言いながら北上姉も飛び込んで、北上姉が飛び込んだら当然大井姉も」

提督「飛び込むだろうね」

木曾「ああ、俺以外全員飛び込むんだ。だからせめて俺が威厳を保とうとだな…」

提督「なんか……木曾も苦労してるんだね…」

木曾「で、お前は?」

提督「わ、私?私はそのー……暁達に合わせてあげてるだけだから…」

木曾「……ふーん……」

提督「なにその目!?全然信用してないでしょ!」

木曾「いや、どうも嘘くさいなと思って」

提督「そんな子供みたいなことするわけないでしょ、あは、あはははは!」

バシャッ

提督「ごぼがが」

暁「あははは!司令官、口にお湯いっぱい入った!」

提督「げぼっふ……やったな!このー!」ザブザブ

雷「きゃー!」

木曾(絶対やってるな……)ブクブク

キャーキャー
コノォー
アハハハ

木曾「はぁ〜……いい湯だな……」

大井「そうね……」

木曾「ああ……」

大井「…………」

木曾「…………」

大井「…………」

木曾「………うおお!??」ビクゥ

大井「どうしたの、そんなに驚いて」

木曾「な、なんでここにいるんだ!?」

大井「いえ、北上さんの残り湯を全身で味わおうと…」

木曾「変態かよ!!」

大井「あんまり大きい声出さないでよ、酸欠でくらくらしてるんだから…」

木曾(ずっと潜ってたのか……)

大井「提督と北上さんのブレンド湯……ふへへへ……」ゴクゴク

木曾「うっわぁ……」

大井「さて……明日はこの残り湯でご飯を炊こうかしら」

木曾「…………」ドンビキ

大井「それじゃあのぼせる前に私は上がるから、じゃあね」

木曾「あっ……ああ……」

ザブザブ

ガラッ

パタン

木曾「…………」

提督「あれ、誰かいたの?」ザブザブ

木曾「いや……俺は何も見ていない……」

提督「?」

提督「はぁ〜生き返るわぁ〜…」

木曾「……………」ジィ

提督「………んん?どこを見てるのかな?」

木曾「うっ……いや、浮いてるなと…」

提督「まあ、脂肪の塊だからねえ」

木曾「よくもまあそこまで育ったな」

提督「木曾もそれなりにあるでしょ?」

木曾「俺?どこがだよ、嫌味か?」

提督「……ああ、大井がいるから」

木曾「……別にコンプレックスとかじゃないし」ブクブク

提督(可愛いなあ…)

提督「……………」ススス

木曾「……………」ブクブク

提督「………えいっ」

モニュ

木曾「ひょあああああ!!??」バッシャア

提督「うーん、揉めるぐらいにはあるし…木曾、前より成長したんじゃない?」モミモミ

木曾「っ!!////」カァッ

\スッパーン/




提督「いたい…」ヒリヒリ

木曾「堂々とセクハラするなバカチン!!」プンスカ

提督「いやー、しかしまあこうしてみるとやっぱり木曾も女の子だねえ」

木曾「どういう意味だ」

提督「普段カッコいいからなんか……こう、ギャップ萌えっていうのかな?すごいキュンキュンする」

木曾「………だからってもう一回やろうとか思ってないだろうな」

提督「…………」

木曾「…………」

提督「………なんで分かったの?」

木曾「なんとなく」

提督「ちぃ…いい勘を持ってらっしゃる…」

木曾「お前、ほんとにいい肝してるよな」

提督「なにが?」

木曾「いや、人にそうやってグイグイスキンシップかけてくる割に自分がそういうことされたら恥じらうだろ」

提督「…………そう?」

木曾「無自覚か…俺を押し倒した時は笑ってたくせに俺が押し倒した時は女の顔になっただろ」

提督「そう言われてみれば……ああ、あの時の木曾、可愛かったなあ!私の腕の中でびくびくして…」

木曾「ばっ、やめろ!こんなところでそんなこと言うな!!」

提督「ああーもう一回見たいなあ…くふふ…」チラッ

木曾「ひいっ」

提督「うぇへへへへへ、木曾ぉー!」ガバッ

木曾「うわあああああ!!来るなあああああ!!」



雷「なにあれ」

暁「暁知ってるわ、ああいうのを痴話喧嘩って言うのよ」

電「たぶん違うと思うのです…」

響「…………」スイー

ワシャワシャ

提督「かゆいところないー?」

木曾「ああ」

響「はっ」ピュッ

暁「ぎにゃあーー!!?」

雷「こら!泡飛ばさないの!」

電「はわわわ、なにも見えないのです」

提督「もう!ちゃんと静かにしてないとお風呂上がりの牛乳なしにするよ!」

響「む……ならしょうがない」

雷「ほら電、頭流すわよ!」シャー

電「ほあぁ…」

暁「目が!目があああああ!!」

暁「うぅー、ひどい目にあったわ…」

響「目だけに?」

暁「あんたねぇ…」

提督「はいはい、喧嘩してないでちゃんと頭拭こうね」ワシャワシャ

暁「あいたた、もうちょっと優しくしてよ!」

響「私はこれくらいがちょうどいいけど。暁はお子様だね」

暁「なんですってぇー!?」

提督「じっとしなさい!!」

木曾(親子か)

雷「電、なに飲む?」

電「電は普通の牛乳がいいのです」

雷「司令官は?」

提督「私はコーヒー牛乳かなー」ゴソゴソ

響「フルーツ牛乳」

提督「わかったー。はい、暁も」

暁「ありがと……ってなんでフルーツ牛乳なのよ!」

雷「いいじゃない、他に飲むものもないし」

暁「そもそもなんでここ牛乳しかないのよ…もっと別のもの置いたら?」

提督「うーん、でも勝手に何か置いていいのかなあ」

雷「え?司令官が置いてるんじゃないの?」

提督「え?いや、私はてっきり鳳翔さんか誰かが補充してるんだと思ってたんだけど」

響「……この前聞いたら鳳翔さんじゃないって言ってたけど」

暁「えっ」

提督「……白百合鎮守府七不思議の一つだね」

木曾(やっぱイチゴ牛乳だな……)ゴクゴク

まず加賀さんを突破しなきゃ…(畏怖)

雷「七不思議?」

提督「そう、私がここに着任した当時から伝わる奇怪な現象がいくつもあってね…その一つがこれ、いつ誰が補充してるのか分からない牛乳なんだ」

暁「他のは?」

提督「……………」

木曾「何も考えてなかったんだろ?」

提督「……えへへ、バレた?」

雷「えー!?ちょっと期待しちゃったじゃない!」

提督「ごめんごめん、怖い話でもしようかなーと思ったけどなんにも思いつかなかった」

響「そもそもこの牛乳のサーバーは司令官が設置したものだしね。無理がある」

提督「おー、よく知ってるね」

電「書類整理の時に見つけたのです」

提督「なるほど、抜け目ないね」

提督「さて、もうみんな飲み終わったしそろそろ私の部屋に戻ろうか」

暁「ねえ司令官、あのゲームの続きやっていい?」

提督「いいよ、データ残してるから」

暁「やったぁ!ほらみんな、早く戻りましょう!」

響「元気だね」

雷「ふふ、もう眠いの?」

響「ああ、正直」

電「でも一日一緒だからもったいないのです」

響「…それもそうだ」

パタパタ

木曾「……で、結局誰が牛乳補充してるんだ?」

提督「え?知らないよ」

木曾「え?」

提督「え?」

〜〜〜

暁「ねー司令官、ここの氷どうやったら壊せるの?」

提督「えっとね、青い氷はウェイブバーナーとかスプレッドドリルとかで壊せるよ」

暁「別のステージで取るの?」

提督「そうだね、ここクリアしたらアイスウォール取れるからそれでウェイブバーナー持ってるボス倒せばいいよ」

暁「わかったわ!」

電「……電、ここの音楽好きなのです」

提督「ねー、このゲームの音楽いいよね」

木曾「……スーパーファミコンっていつのゲーム機だ?」

提督「私が生まれて……二年か三年ぐらいのじゃなかったかな?」

木曾「なんでそんな古いものがあるんだ…」

提督「この前実家から持ってきた」

響「ペンギンだ……」

提督「他にもあるよ、F-ZEROとかマリオカートとかスーパーメトロイドとか……ほら、不朽の名作星のカービィスーパーデラックス」

雷「かーびぃ…可愛らしい子ね」

響「マリオカート……」

提督「やりたい?」

響「うん。やる」

提督「でもこれマルチタップ対応してないから二人までなんだよね…暁、まだー?」

暁「このボス結構強いのよ!」カチャカチャ

提督「もー、そんなんじゃ最後まで行けないよ」

暁「むぅ…!これぐらい…!」カチャカチャ

電「動きがよくなったのです」

提督「さてと、一回ごとにコントローラー代わればいいよね」

暁「やったわ司令官!ボス倒した!」

提督「おー、よくやったね」ナデナデ

暁「ふふ、えへへへ……」

提督(フォルテでやってたんだ…絶対ロックの方が楽だよ…)

〜〜〜

雷「よーし!このままぶっちぎるわ!!」

電「あ……」

雷「ああああー!?」

暁「自分の投げたコウラに当たってる…」

響「……………」ゴシゴシ

提督「……響、眠い?」

響「…………」コクコク

提督「そっか…なら先にお布団入ってようね」グイ

響「うん……」ギュ

スタスタ

木曾「お前達もそろそろ寝た方がいいぞ、明日は遠征なんだろう?」

暁「あ、あと1レースだけ!」

木曾「……仕方ないな、これが終わったらちゃんと寝るんだぞ」

暁「やった!」

電「……これで一日一緒が終わりだと思うとなんだか名残惜しいのです」キュ

雷「そう?司令官ならいつでも甘えさせてくれるじゃない」

提督「そうだよ、遠慮してるのは電の方だよ。もっと積極的に来てもいいんだよ」

電「……はい、えへへ」

暁(目が本気だわ…)

提督「よしよし……それじゃもう遅いから寝ようね」

雷「おやすみ、司令官!」

電「ん……おやすみなさい、司令官さん…」ギュウ

暁「おやすみなさーい…」

提督「はい、おやすみ…」

木曾「……………」

木曾「……………」

提督「……………」

木曾「………寝たか?」ボソッ

提督「……………」ツン

電「んぁ…にゃ……」

提督「…………寝たみたい」

木曾「………よっし」

バッ

木曾「やるか」

提督「やりますか」

木曾「へへへ、よく気付いてたな」

提督「まあ視線が釘付けになってたからねえ。やりたくてしょうがないんでしょ?」

木曾「ああ。明日は非番だから思う存分出来るぞ」

提督「ふふん、なら私もサボっちゃおうかな」

木曾「悪い大人だ」

提督「くくく、人のこと言えないでしょ」

提督「はい、カセット」スッ

木曾「おう、コントローラー握るの俺でいいよな?」

提督「もちろん。それじゃ、電源入れるよ」

木曾「ああ」

カチッ

提督「きたきた、懐かしいなぁ」

木曾「こんや、12じ、だれかがしぬ」

「「かまいたちの夜…!」」

ーーー

ーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

望月「はぁ〜…なんであたしがこんなこと…ふーちゃんなら加賀さんが起こす方がいいじゃん……」

望月「ふーちゃーん。ふーちゃーん」コンコンコン

望月「……………」

望月「………反応がないな、まだ寝てるのか…」

ガチャ

望月「入るよ……うわっ、なんだこれ」

提督「」zzz

木曾「」スピー

望月「なんで二人ともスーファミの前で寝てるんだ…」

望月「……んぁ?かまいたちの夜…?」

望月「……………」

望月「……なるほど、夜通しやってたのかぁ…そりゃそーなるわけだ…」

提督「」zzz

木曾「」スピー

望月「…………」

望月「そっとしておこう」

スタスタ

ガチャ

バタン

提督「」zzz

木曾「」スピー

ながいのおわり
かまいたちの夜久々にやったら気付いた時には朝になってました(半ギレ)

瑞鶴「…………」

翔鶴「…………」



提督「あ、そうだ加賀」

加賀「なに?」

提督「もうすぐお仕事終わりそうだから、今日は一緒に寝られるよ」

加賀「そう……わかったわ」

提督「それじゃ、またあとでね」

加賀「ええ」

スタスタ…

瑞鶴「……ねえ」

翔鶴「?」

飛龍「どしたの?」

瑞鶴「気にならない?」

蒼龍「なにが?」

瑞鶴「提督さんと加賀さんが、どこまで行ったかよ」

赤城「それはまあ、確かに」

瑞鶴「ですよね?」

翔鶴「具体的に言うと?」

瑞鶴「………夜戦ね」

飛龍「うわあ」

蒼龍「いきなりそんなディープな」

赤城「でも気になりますね、どれくらいの頻度でどんなことをしてるのかとか…」

翔鶴「提督、かなりの恥ずかしがり屋なのでもしかしたらなにもしていないということもあり得るかもしれませんね…」

飛龍「……そこまで言われるとなんだか気になってくる」

蒼龍「私も」

瑞鶴「ね?だからそれを聞き出したいのよ」

赤城「と言っても、加賀さんが素直にそれを喋るとは思えませんね」

瑞鶴「そこが問題なんですよねえ、提督さんに聞いても恥ずかしがって何も言わないだろうし…」

翔鶴「この前も下着の色を聞いただけで真っ赤になってたし…」

飛龍「いやそれただのセクハラだから」

瑞鶴「うーん、他の子達に頼んでも無理だろうし…」

翔鶴「酔ってる時に聞いてみればいいんじゃないかしら?」

飛龍「おおー、それだ!」

蒼龍「でも加賀さん、私達の前で酔うくらいお酒飲むと思う?」

瑞鶴「……そう言われてみればそうね」

赤城「提督は酔いませんし…」

瑞鶴「あー、難しい話ねぇ…なんとか聞き出す方法は……」

カタン

鳳翔「どうぞ、食後のお茶です」ニコ

瑞鶴「…………!!」

鳳翔「? どうしました?」

瑞鶴「鳳翔さんなら、いけるかも…!」

鳳翔「へっ…?」

〜〜〜

加賀「……………」ガタ

鳳翔「あの、加賀さん」

加賀「鳳翔さん…どうしました?」

鳳翔「その……これから一緒に、どうですか?」スッ

加賀「お酒……晩酌、ということでしょうか」

鳳翔「はい、たまにはいいかなと…」

加賀「………そうですね。鳳翔さんがそう言うのなら付き合いましょう」

鳳翔「! なら、向こうのお部屋で」

加賀「ええ」

ガラ

加賀「…………」ピク

瑞鶴(来た…!)

翔鶴「ど、どうも…」

飛龍「あ、加賀さん!」

蒼龍「こっちですよー!」

加賀「……他の子達もいるのですね」

鳳翔「えと、ダメでしょうか…」

加賀「あ、いえ。そんなことは」

鳳翔「そうですか…ふふ、ならよかった」

加賀「…………」

瑞鶴(くくく……加賀さんは鳳翔さんに弱い!それを利用して、酔わせれば…!)

加賀「……ちょっと、なにを一人で笑っているの?」

瑞鶴「へっ?あ、な、なんでもないわ!」

加賀「ふうん…」

鳳翔「加賀さん、お酌しますね」

加賀「あ、はい」

瑞鶴(いける…)

〜〜〜

加賀「…………//」ポー

鳳翔「zzz……」

瑞鶴「いい感じに酔いが回ってきたんじゃない?」ヒソヒソ

翔鶴「ええ、肩肘ついてぼーっとしてるわ」ヒソヒソ

飛龍「というか鳳翔さん寝てるし…」

赤城「鳳翔さん、お酒飲んだらすぐ寝ちゃいますから…」

蒼龍「毛布かなにかない?」

瑞鶴「あ、ここにちゃんちゃんこがあるわ」

蒼龍「とりあえずこれ掛けておいたら風邪は引かないよね…」

翔鶴「ところでそれ、誰のちゃんちゃんこ…?」

飛龍「提督のじゃない?」

瑞鶴「うそ!?」

鳳翔「ん……」ゴロ ギュウ

蒼龍「無意識に抱き締めてる」

瑞鶴「ぐぅ…羨ましい…」

瑞鶴「って、本題はそうじゃないわ。加賀さんと提督さんがどんなことをしてるのか聞き出すのよ」

翔鶴「簡単に話してくれるかしら…?」

瑞鶴「お酒入ってるから大丈夫だとは思うけど…それとなく誘導した方がいいわね」

飛龍「ねーえー加賀さーん」

加賀「……なに、そんなに楽しそうにして」

蒼龍「提督とはどこまで進んだんですか〜?」

加賀「どこまで、って?」

飛龍「やっぱり夜戦とか……するんですか?」

蒼龍「やっちゃうんですか〜?」

加賀「…………」

瑞鶴「ちょっ、そんなストレートに!?」

加賀「………そうね、夜戦ね……」

瑞鶴「!」

飛龍「ほら、やった!」

赤城「で、どうなんですか?どうなんですか?」ワクワク

翔鶴(この人何気に子供っぽいわ…)

加賀「………してないわ」

赤城「えっ!?」

瑞鶴「うそでしょ!?」

加賀「あ……少し違ったわ……」

蒼龍「なにが違うんですか?」

加賀「あの子からはなにもして来ないけど…いつも私から手出ししてるから……」

赤城「と言いますと?」

加賀「……私が一方的にあの子を弄っているというか……まあ、そうね…そういうことになるわね…」

瑞鶴「えっ、じゃあ提督さんはバリネコってことですか?」

加賀「…よく分からないけれどそうなんじゃないかしら」

瑞鶴「マジか…マジか!!」

翔鶴「瑞鶴、テンションおかしくなってるわ」

飛龍「でも、それって嫌がられたりしません?」

加賀「いえ……拒絶するどころか、むしろ嬉しそうにしてるというか…あの子、キスしたらすぐスイッチ入って目がとろんとして濡れてくるから…」

蒼龍「うわあ///」

飛龍「な、なんか一気にディープな話になったね///」

加賀「こう、一方的にされるというのが好きみたいなのよね……誰かに気付かれそうな状況で手を出しても『ダメだよ』とか『バレたらまずいから…』とか口先だけで実際は抵抗もなにもしないし……」

瑞鶴「そ、そんなことしてるんですか」

加賀「………執務室の扉越しに駆逐艦の子と喋っている時に後ろから性感帯弄っただけでもうぐしょぐしょに濡れていたわ。あの時が一番興奮した」

飛龍「はぇ…」

蒼龍「い、いいのかな、こんな暴露話聞いちゃって」

赤城「なんですかね、提督は……割とそういうのも好きなんですかね」

加賀「……そうね、恥ずかしがるけど…それがまた可愛くて、手を出してしまうというか…危ないプレイもしたくなるというか…」

瑞鶴「なにこのノロケ話」

翔鶴「あの、加賀さん」

加賀「ん……なに?」

翔鶴「ここまで聞いていて、思ったことがあるんです」

加賀「ええ」

翔鶴「その……提督は、もしかしてMなのではないでしょうか」

瑞鶴「えっ」

加賀「…………」

翔鶴「…………」

加賀「………そうね。あの子、割とマゾっ気があるのよね」

翔鶴「! 本当ですか!?」

瑞鶴「いやなんで嬉しそうなのよ」

加賀「ええ、多少痛いことをしても許してくれるというか…まあ、具体的に言うと濡れるというか…」

翔鶴「もっと詳しくお願いします」

加賀「こう……例えば、下を弄りながら首筋とか噛むじゃない」

翔鶴「はい」

加賀「それだけで指が痛いくらい締め付けられるから…マゾで間違いないわ」

翔鶴「おおお〜!!」

瑞鶴(なんか分かり合ってる!)

翔鶴「ち、ちなみに道具とかは……」

加賀「道具……そうね、道具……そうね………」

飛龍「道具?」

蒼龍「ほら、SM用のアレ」

飛龍「ああ…」

加賀「………そうね、鞭までいったわ」

翔鶴「鞭!?」(歓喜)

瑞鶴「鞭!?」(驚愕)

加賀「鞭といっても一本鞭ではなくて、あの……先が分かれた、バラ鞭っていうの?あまり腫れないもので叩くといい声で啼くの」

翔鶴「いいですねぇそういうの!!」キラキラ

瑞鶴(うわあ…翔鶴姉めっちゃキラキラしてる…)

翔鶴「でも、どうしてバラ鞭なんですか?痕が残る方が自分を刻み付けられたようで興奮しません?」

加賀「それもいいけど……痕が残るのはさすがに女として可哀想だし、自分の証を残すのならいつも首筋にキスマークを付けているから……」

赤城「……超イチャイチャしてるじゃないですか」

蒼龍「私達なに聞こうとしてたんだっけ…」

飛龍「さあ…」

加賀「……でもあの子、根っからのマゾというわけでもなさそうよ」

翔鶴「えっ?」

加賀「前に……私が使ってたバラ鞭に興味を示したのか、振り回してる時に偶然私のお腹にそれが当たったことがあって…」

赤城「なにやってるんですか…」

加賀「思いの外痛くて私はその場にうずくまるように倒れたんだけど……痛がる私を見る目が、完全に愉悦を感じているものだったわ」

翔鶴「つ、つまり…?」

加賀「……そうね、大元はサドね」

瑞鶴「サド!?」(歓喜)

翔鶴「サド!?」(驚愕)

瑞鶴「や、やっぱり叩かれる側とも相性はいいんですかね?」

加賀「私の趣味は逆だから分からないけど…たぶんそうなんじゃないかしら…」

瑞鶴「っしゃあ!!」

飛龍「でも、SとMを持ち合わせてるってどう呼べばいいのか…」

加賀「……さしずめ両刀といったところね」

瑞鶴「両刀!?」(歓喜)

翔鶴「両刀!?」(歓喜)

蒼龍「そうそう、一緒に寝る日はいつもしてるんですか?」

加賀「……そういうわけでもないわ、私がそういう気分になった時か、あの子が誘ってくる時ね」

赤城「誘ってくる、とは」

加賀「と言ってもそんな明確なことをするわけでもないけど……ただ、寝ようとしてもずっと目を開けてるだけ」

飛龍「へぇ〜…自分じゃ言い出せないんだ」

加賀「そう。そこが可愛いのよ」

蒼龍「加賀さん、提督にメロメロだね」

加賀「だって……可愛いじゃない、あの子…可愛い……」

赤城「あー……そろそろ限界みたいですね」

赤城「加賀さん、もうこんな時間ですよ」

加賀「んぁ……本当…それじゃ、私はあの子と寝るから」ガタ

飛龍「あ、お疲れ様でした」

瑞鶴「一人で大丈夫?」

加賀「問題ないわ」

パタン

瑞鶴「……もう話すこともないし、鳳翔さん起こしてお開きにしよっか」

翔鶴「そうね、明日も早いし」

赤城「ええ。それでは、みなさんもお疲れ様でした」

飛龍「おつかれ〜」

蒼龍「おやすみなさーい」

瑞鶴「はぁ、ねむ…」スタスタ

翔鶴「ちゃんと布団まで歩かなきゃダメよ?」スタスタ

瑞鶴「分かってるわ…」スタスタ

『きゃあ!?』

瑞鶴「ん?」

『っちょ、加賀!?いきなりどうしっ……ん、んんんっ……!』

翔鶴「…………」

『……っは…あ、ま、待っ……ひゃあっ!』

瑞鶴「…………」

『だ、ダメだってば…まだ起きてる子もいるかもしれないの、にぃっ……!』




瑞鶴「………聞かなかったことにしよう」スタスタ

翔鶴「そうね……」スタスタ

惚気おわり
深夜テンションって怖いですね(適当)

提督「……………//」ボー

加賀「………風花」

提督「……………」

加賀「………風花ってば」

提督「………え?なに?」

加賀「大丈夫?」

提督「なにが?」

加賀「顔が赤いし、さっきからぼーっとしているから…」

提督「え……ほんと?」

加賀「ええ…もしかして風邪?」

提督「そんなこと……げほっ!」

加賀「!」

加賀「…今日はもう休んだ方がいいわ、本格的に熱が出たら大変よ」

提督「うん、この書類書き上げたら…」

加賀「ダメ、すぐ寝なさい」

提督「ほ、ほんとに大丈夫だって!簡単なものだから!」

加賀「なら私がやっておくから。あなたは寝ていなさい」

提督「やだよ、加賀に迷惑なんてかけられないもん!」ガタッ

加賀「あ、ちょっと」

提督「これくらい明日になれば治るから!」ガチャッ

バタン

加賀「はぁ……」

提督「報告書仕上げるための図鑑……図鑑は書斎にあった、はず……」

提督「う……」フラッ

ドン

提督(あれ……私、なんで壁にもたれかかって……休んじゃダメなのに…)

提督「はぁ……はぁ……」

提督(身体が熱い…頭も回らない……景色が……歪んで………)ズル…

ストン

提督「だ、め……」

提督(これを終わらせなきゃ…加賀に……)

提督「……ぁ………」

提督(ダメだ……力が、入らない…なんで…)

提督「……………」

加古「ん………おや?」

パタパタ

加古「…………」キョロキョロ

提督「……………」

加古「…うおーい、提督ー、さすがにこんなところで寝てると風邪引くぜー?」ユサユサ

提督「……………」

加古「……あれ?」

提督「……………」

加古「え…お、おい、冗談だろ?提督?提督っ!?」

〜〜〜

キィ…

パタン

提督「……ん………」パチ

「あ……起こしてしまいましたか…?」

提督「……鳳翔、さん…?」

鳳翔「はい、鳳翔です。よかった、ちゃんと意識が戻って…」

提督「え……?私…」

鳳翔「昨日の夜、廊下で倒れていたんですよ。大変だーって、加古さんが大慌てで私を呼んで…」

提督「………?なんで…?」

鳳翔「なんでって……提督、昨日は40度も熱があったんですよ?」

提督「……えっ」

鳳翔「どうですか?自覚症状、あります?」

提督「………うん。頭は痛いし、意識はぼんやりしてるし…身体も熱い…」

鳳翔「身体のどこかが痛む、とかは…?」

提督「ん……ない…」

鳳翔「そうですか…なら、とりあえずインフルエンザの心配はありませんね」ニコ

提督「……ごほっ…」

鳳翔「おでこ、失礼しますね」スッ

ピト

提督「ん……」

鳳翔「…………」

鳳翔(……まだ、40度近くはある……かも…)

鳳翔「熱……下がりませんね…」

提督「…………」

鳳翔「大丈夫ですよ、しっかりみんなで看病しますから」

提督「うん…………鳳翔さんの手、ひんやりしてて気持ちいい…」

鳳翔「…ええ、先ほど水仕事をしていたので…」

提督「そっか……この時季は…すぐ冷えるから、気を付けてね……」

鳳翔「もう…あなたは人の心配ばかり…」

鳳翔「日頃の無理が祟ったみたいですね…」

提督「……私、無理なんてしてないんだけどなあ…」

鳳翔「疲れというのは、気付かないうちに溜まっていくものですから…しっかり休まなきゃダメですよ」

提督「……鳳翔さんは?いつ休むの?」

鳳翔「もう、提督ったら…今は人の心配なんてしなくていいですから…」

提督「でも、心配になって…」

鳳翔「……分かりました、なら近いうちにどこかへ連れて行ってください」

提督「……うん」

鳳翔「もちろん、ちゃんと風邪を治してからですよ?」

提督「……うん」

鳳翔「………そろそろ戻りますね、本当はずっと見ていてあげたいんですけど…」

提督「あ………うん、わかった…気にしなくていいよ…」

鳳翔「……提督は素直じゃないですね」

提督「え…?」

鳳翔「寂しいって、顔に書いているみたいですよ」

提督「……そんな、私は…」

鳳翔「他の子達もちゃんと見に来てくれますから…安心してください、提督は一人じゃありません」

提督「…………うん……」

鳳翔「それでは…また、夜に来ます」

提督「うん…頑張ってね」

パタン

提督「……ありがとう……」

提督「………ん…?」

提督(そういえば、パジャマになってる…)

提督(鳳翔さんが着替えさせてくれたのかな…)

提督(……ん?だとしたらブラとかは……)

提督「……………」ゴソ

提督「……………」

提督「…………///」カァ

提督(ない……見られた…下もない……)

カチャ…

提督「ん………」チラ

時雨「……あ…提督、起きてる?」

夕立「提督さん、大丈夫っぽい…?」

提督「ううん…大丈夫じゃないっぽい…」

夕立「……!」

パタパタ

ストン

夕立「提督さん、ごめんなさい…」

提督「ふふ…どうして謝るの?」

夕立「だって…この前、大雨だったのにあたしが無理やり連れ出して外で遊んでたから…」

提督「それ、もう一ヶ月くらい前の話じゃない…今私が寝込んでるのとは無関係だから、夕立は悪くないよ」

夕立「でも……」

提督「ちょっと、頑張りすぎてただけだから…休んでいればすぐ良くなるよ」

夕立「………うん」

時雨「提督、辛そうだね」

提督「……そう?」

時雨「うん。顔は赤いし、声も掠れてるし…頭は?痛い?」

提督「…うん、ズキズキする」

時雨「そっか……」

キュ

時雨「ごめんね…僕に出来ることはこれくらいしかないんだ」

提督「そんな…これだけでも十分だよ…」

夕立「あたしも握るっぽい!」ギュ

提督「ふふふ……よしよし」ナデナデ

夕立「きゃー♪」パタパタ

時雨「あはは…」

提督「んく……げほっ、ごほ…」

時雨「! 大丈夫?」

提督「うん、大丈夫…それよりほら、風邪移ったら大変だから……もう戻った方がいいよ」

夕立「う〜…でも、提督さんが心配っぽい…」

提督「ちゃんとお薬飲めば楽になるから…」

時雨「そうだ、お薬…咳止めも頭痛薬もあるんだけど、食後の方がいいよね…」

提督「そうだね…今はまだ飲めないや」

時雨「本当はお粥作ってあげたかったんだけど…もう時間だ。行こう、夕立」

夕立「うん……」

提督「……そんな顔しなくても大丈夫だよ、元気になればまた遊べるから」

夕立「……うん」

時雨「それじゃあ…何かあったらすぐ誰かに言うようにね」

提督「うん…」

パタン

提督「げほっ……」

提督「……今何時だろ……」ムク

提督「う……」

クラッ

提督「うぅ……」

提督(すごいくらくらする…世界が回ってるみたい……)

提督(こんなにすごい熱出たの、いつぶりだっけ…)

提督(苦しい……辛い……)

ボフッ

提督「はぁ……はぁ……」

提督(なんでこんなに苦しい思いしなきゃいけないの…?このまま死んじゃうの……?)

提督(痛い…頭がいたい…)

提督(母さん………)

『…………』

『風花、あなたはよく頑張ったわ』

『お母さん……うん、私、頑張ったよ……』

『ええ…見ていたわ、ちゃんと…』

『うん、お母さんを助けた』

『………ええ』

『私、頑張ったから…これなら、また風音達も戻っ───』

『………風花、あなたは頑張ったわ』

『うん』

『だから……今は、休んでていいのよ』

『え?』

『もう…もう、いいの…』

『お母さん?どうして泣いてるの?』

『ごめんなさい……全部、私が悪かったの……』

『お母さんは何も悪くないよ?だから、泣かないで…そんなに泣いたら、私まで……うっ…うぅ…』

「う……うぁ……」

「───風花!」

提督「あ………え……?」

木曾「……大丈夫か?」

提督「……?今の……」

木曾「今のって……ああ、多分、悪い夢でも見てたんだろう」

提督「夢……」

木曾「身体の調子が悪い時はよくそういうものを見るからな…気分はどうだ?」

提督「……くらくらする」

木曾「その分だとまだまだ回復しそうにないな…」

提督「…………」

木曾「あ、そうだ」

提督「………?」

木曾「ほら。お粥、持ってきたぞ。食べた方がいい」コト

提督「お腹空いてないんだけど……」

木曾「ダメだ、食欲がなくてもこういう時は食べなきゃ逆に辛くなる」

提督「むぅ……」

木曾「ちゃんと食べさせてやるから文句を言うな」

提督「……わかった」

木曾「ああ、それでいい」

カチャ

木曾「ふー…ふー……ほら」スッ

提督「ん……」パク

木曾「……どうだ?」

提督「………味、分からない……」

木曾「はは、だろうな」

提督「……これ、木曾が作ったの?」

木曾「ん?ああ、そうだが」

提督「………美味しいよ」

木曾「………ああ」

提督「ほんとだよ?」

木曾「わかってるって」スッ

提督「あつっ!」

木曾「あ、悪い」

提督「……照れてる?」

木曾「…まあ、そんなところだ」

提督「あはは…可愛いね」

木曾「はいはい…」

提督「ふぅ…」カチャン

木曾「ちゃんと全部食べられたな。えらいぞ」

提督「早く風邪治して、みんなに元気な顔見せたいから…」

木曾「ああ、ならこれも飲まなきゃな」

提督「うえぇ…お薬…」

木曾「ダメだぞ。頭痛薬と咳止め、食後に二つずつだ」

提督「うん……」

木曾「ほら、水」

提督「カプセル剤って、どうも苦手なんだよね…喉に詰まりそうっていうか…」

木曾「飲めないのか?」

提督「出来れば飲みたくないんだけど…」

木曾「なんなら、鳳翔さんが置いてった座薬もあるが…」

提督「飲みます飲みます!!」

提督「んぐ……はぁ……」

木曾「ちゃんと飲んだか?」

提督「うん、全部…」

木曾「よし…よくやった」

提督「……そういえば、今何時?」

木曾「今?ヒトロ……四時だな」

提督「四時……もうそんな時間なんだ…」

木曾「まあ昨日気を失ってから、十二時ぐらいまでずっと眠っていたそうだからな」

提督「うそ…」

木曾「それだけ疲れてたってことだ」

提督「……気付かなかった…」

木曾「ああ……お前は頑張りすぎてるからな」

木曾「考えてもみろ、普段俺達なんて遠征ぐらいしか行かないのにいつもお前は忙しいじゃないか」

提督「そうだっけ……」

木曾「ああ。常に書類とにらめっこしてるイメージがあるぞ」

提督「………そっか……」

木曾「まあ、資源の消費と供給が激しい分報告書とか作らないといけないんだろうが……休める時はしっかり休んで、誰かを頼るのも大事だぞ」

提督「うん……」

木曾「……さて、ちょっと体温計るぞ」スッ

プチ

提督「あ………ぬ、脱がされちゃう……」

木曾「意味深なこと言うな」

提督「えっち…」

木曾「ボタン二つ開けただけだろ!!」

木曾「まったく…ほら、自分で出来るか?」

提督「うん……」スッ

カチ

木曾「すぐに計れるからな」

提督「そうなんだ…最近の体温計って優秀なんだね」

木曾「昔のは時間がかかったのか?」

提督「うん、少なくとも私が知ってる限りでは一分以上…」

木曾「へぇ……」

ピピピピ ピピピピ

木曾「っと、言ってるうちに」

提督「んしょ…」クイ

木曾「貸してみな」

提督「ん…」スッ

木曾「…………」

提督「ん゛ん゛っ…」

木曾(三十九度七分……下がったとは言えないな…)

提督「……どう?」

木曾「ん?ああ、もう一日も寝ていれば治るさ」ニッ

提督「そっか……よかった……」

木曾「さっきまで寝てたから眠れないだろうが…それでも安静にしておくんだぞ」

提督「うん…」

木曾「それじゃあ、俺はもう行くからな」

提督「うん」

木曾「退屈なら本でも読んでていいんだぞ」

提督「うん」

木曾「不安になったらすぐ呼ぶんだぞ」

提督「うん」

木曾「スポドリと水もここに置くからな」

提督「う、うん」

木曾「あと…」

提督「早く行きなよ…」

木曾「あー、いや…すまない、やっぱり心配で…」

提督「あはは……大丈夫だよ、私一人でも…」

木曾「ん…そうだよな、ちゃんと薬も飲んだもんな」

提督「それに、もう子供じゃないから…」

木曾「……そうだな、大人だもんな…心配しすぎだったな」

提督「うん……だから、大丈夫…」

木曾「…ああ。それじゃあ、また後で来るからな」

提督「頑張ってね…」

ガチャ

パタン

提督「大人…かあ…」

提督「…………」

提督「…………」ゴロン

提督「…………」

提督「………う〜ん……」

提督(眠れない……)

提督(暇だなぁ…駆逐艦の子達と戯れたい…)

提督(でも安静にしてなきゃダメだし……)

提督「…………」

提督(お薬飲んでちょっと楽になったし……本でも読もうかな…)ムク

ペラッ

提督(あ…しおり、挟み忘れてる…)

提督(どこまで読んだっけ……)ペラッ

〜〜〜

提督「……………」ペラッ

『ねえ、早く入りましょう?』

『わ、こら!お、押すなって!』

提督「…………?」

『そっと入った方がいいって!寝てるかもしれないだろ、起きたらどうするんだ!』

『うふふ、その時はその時ね〜』

『ちょっ、まっ……うおぉ!?』

ガチャッ ドタッ

バタン!!

提督「!?」ビクッ

天龍「よ……よう…」

提督「ど、どうも…」

龍田「お邪魔するわね〜」

天龍「いてっ、いてて!というか龍田、早く退けぇ!!」グイグイ

龍田「あら〜、ごめんなさい」

提督(なにこれ…)

天龍「えーっとだな…その、今日来たのは…」

龍田「お見舞いに来たんだって、天龍ちゃんったら行くって言って聞かなくて〜」

天龍「い、言うなよ!恥ずかしいだろ!」

提督「ああ、そうなんだ……えへへ、ありがと…」

龍田「はいこれ、差し入れ」スッ

提督「ん、これは……プリンにゼリーに…ってプリン多くない?」

龍田「天龍ちゃんが食べたいって言うから…」

天龍「言ってねえ!!」

提督「へぇ、天龍がねぇ…」

天龍「言ってないって言ってるだろ!?」プンスカ

提督「ふふふ、冗談だってば」

天龍「ったく……で、どうなんだ?少しは良くなったのか?」

提督「うん、さっきお薬飲んでちょっと楽になったかな」

龍田「起きてても大丈夫なの?」

提督「さすがに退屈だからねえ…あんまり眠くもないし」

天龍「熱は?」

提督「ん…さっき木曾に計ってもらったら、あと一日で治るって」

天龍「どれどれ……」スッ

提督「えっあ、ちょ

ピト

天龍「………うーん」

提督「ほっほ、ほああぁ」プルプル

天龍「……ダメだ、全然わかんねえ」

提督「//////」ボンッ

天龍「うおぉ!?どどどどうした!?真っ赤になってるぞ!??」

龍田(天龍ちゃんも何気にジゴロよねえ…)

龍田「大丈夫よ天龍ちゃん、提督はちょっと照れちゃっただけだから」

天龍「そ、そうなのか?」

提督「う、うん…というか、近い…」

天龍「っ…わ、わりい///」

提督「………///」

龍田(いい雰囲気になっちゃって…)ムスッ

天龍「おい龍田、なんでそんな顔してるんだ」

龍田「別に、なんでもありませんー」

天龍「えぇ…俺なにかしたか…?」

提督(ギャルゲーの主人公みたい…)

龍田「それにしても提督、今はかなり弱ってるみたいね〜」

提督「え?ああ、まあ……うん、身体が重いよ」

龍田「うふふ、なら好き放題しても何も出来ないってことかしらぁ」ニコォ

提督「えっ」

天龍「龍田…」

龍田「……分かってるってば、冗談よ〜」

提督「よかった…」

天龍「はぁ…お前のは本気か嘘か分からないからな」

龍田「あら、じゃあ私が冗談って言わなかったら本気にしてもよかったの?」

天龍「そういう意味じゃないっての」

提督「何も抵抗出来ない………そういうのもあるんだ………」ボソボソ

龍田「え?」

提督「なんでもない」

龍田「そうだ提督、ゼリー食べる?」

提督「うーん…プリンの方がいい…」

龍田「そう、ならこっちね」

パキッ

龍田「よいしょ……はい、あーん」スッ

提督「…………」

龍田「食べないの?」

提督「………いや、自分で食べ」

龍田「食べないの?」

提督「………あーん」パク

龍田「うふふ、どーお?」

提督「……美味しいよ」

龍田「そう、よかったわ〜。はい、あーん♪」

提督(結局食べさせられるんだねえ…)

提督「……うん、やっぱりこういう時は喉に優しいものが美味しく感じるね」

天龍「そうか?いつでも美味いと思うぞ」

龍田「それは天龍ちゃんが風邪引いたことないからでしょう?」

天龍「ん?まあそうだな!俺は強いからな!ははは!」

提督(馬鹿は風邪を引かないって本当なのかなあ…)

龍田(馬鹿は風邪を引かないって本当よねえ…)

天龍「というかそのプリン美味そうだな」

龍田「市販のやつだけど…天龍ちゃんも食べたいの?」

天龍「えっ、いいのか!?プリン食べていいのか!?」

提督(食べたかったんだ…)

龍田(子供ねえ…)

龍田「はい、あーん♪」

提督「あー…」パク

龍田「うふふ、なんだか餌付けしてるみたいで楽しいわ〜」

提督「もうちょっとゆっくり食べたいんだけど…」

龍田「あら〜、ごめんなさいね〜」

天龍「いやーやっぱプリンは美味いな!な、もう一つ食ってもいいか?こんなにあるんだからいいだろ、な!」

提督「うん、全部食べてもいいよ」

天龍「マジ!?やったぜ!!」

提督(プリン好きなんだ…)

龍田「いいの?」

提督「私だけじゃ食べきれないだろうし…あとゼリーだけ貰っておくね」

龍田「そうね、ちょっと張り切って買いすぎちゃったわ〜」

提督「それだけ心配してくれてるの?」

龍田「少なくとも天龍ちゃんはね?」

提督「龍田は?」

龍田「もちろん私もよ?ちゃんと伝わればいいけど…」

提督「………うん、ちゃんと伝わってるよ」キュ

龍田「あら〜///」

天龍「おいお前ら、なにいい雰囲気になってんだ」

龍田「え〜?別にそんなつもりじゃなかったんだけどなぁ〜」ギュルルルル

提督(うわっ、すっごい回転してる)

天龍「……まあそれはいいとして、そろそろ俺らもお暇した方が良さげだな」

龍田「そうねぇ、他の子達も来るみたいだし」

提督「そうなの?」

龍田「うふふ、提督は愛されてるからね〜」

バァン

雷「司令官、起きてる!??」

天龍「噂をすれば」

ガバッ

ドスン

提督「ぐえっ」

雷「司令官、大丈夫!?寂しくなかった!?苦しくない!?お薬は!?なにか欲しいものとかある!?」

提督「お、落ち着」

雷「熱はあるの!?なら寝てなきゃダメよ!!ほら、お布団かぶって!!大丈夫よ、私がついてるかr

ドスッ

雷「」バタン

提督「ひっ!?」

龍田「うふふ、ちょっと眠らせただけだから安心してね〜」

提督「は、はい…」ビクビク

響「失礼するよ、司令官」

暁「司令官、大丈夫ー?」

電「お見舞いに来たのです」

天龍「おー、こりゃまたぞろぞろと」

龍田「私達はお邪魔みたいね〜…それじゃあ提督、私達はここでお暇するわ〜」

提督「あ、うん、ありがとうね」フリフリ

バタン

暁「司令官、寝てなくていいの?」

提督「うん、ちょっと前までずっと寝てたし…薬も飲んだから今は平気だよ」

電「司令官さんが風邪なんて……珍しいのです」

提督「あはは……みんなも気をつけてね」

響「……ところでなんで雷は寝てるんだい?」

提督「うーん…寝かされたというかなんというか…」

響「??」

響「まあそれはいいとして……よいしょっと」

提督「ん、どうし……

モミュ

響「ふむ、やっぱり熱いな」ムニムニ

提督「……………」

暁「あのさぁ…」

電「お姉ちゃん…」

響「ん、なんだい司令官、そんな顔して」

提督「いや……普通熱があるか確かめるならおでこ触るんじゃ…」

響「それもそうだね。えいっ」ペチッ

提督「わっ、いきなりなに……ん?なにこれ、ひんやりする……」

響「冷えピタ。鳳翔さんがそろそろ熱を下げる段階だから持って行ってくれって」

提督「あ、そうなんだ…ありがと」ナデナデ

響「ん……///」

提督「はー……冷たくて気持ちいい…」

暁「結構辛いみたいね、顔も赤いし…」

電「司令官さん…」

提督「そんな心配そうな顔しないで、すぐに治るよ」

電「………はい」

提督「ごめんね、元気になったら一緒に遊んであげるから……」

電「……待ってるのです」

提督「あー…暁も、それまでみんなのこと頼むね」

暁「! ええ、もちろん!」

響「私は?」

提督「…………えっと、怪我しないでね」

響「そんなに言うことがないか」

提督「正直…」

響「まあいいか……それじゃ、そろそろ私達は出て行くよ」

提督「うん、長居して風邪移したら大変だもんね」

暁「雷ー、雷ってば!」ユサユサ

雷「うぅーん……司令官……」

提督「あぁ…暁、おぶってやってくれないかな…」

暁「ええ…よいしょっと」

電「それでは…司令官さん、お大事に、なのです」ペコリ

提督「うん、またね」

響「司令官」

提督「ん?」

チュッ

提督「わ」

響「じゃあね」パタパタ

バタン

提督「…………」

提督(やっぱり響はませてるなぁ…)サスサス

提督「…………」ペラッ

提督「ん……げほっ、ごほ…」

提督「う〜……」

提督(なんだか、またぼーっとしてきちゃった…)

提督(薬の効果が切れてきたのかな……頭も痛いし、身体も熱くなってきた…)

提督(ちょっとだけ、寝ようかな…)

ガチャ…

羽黒「し、失礼します…」

提督「あ、羽黒…どうしたの?」

羽黒「い、いえっ、鳳翔さんに頼まれて、その…夕飯はいるのかどうかを聞きに…」

提督「ああ…ごめんね、もう寝ようと思ってたから…」

羽黒「わ、分かりました、そう伝えておきますね」

羽黒「じゃ、じゃあ……お風呂に入っていないでしょうから、身体だけ拭かせてもらいますね」

提督「ああ、うん…悪いね」

羽黒「い、いえ!そんな、気にしないでください!」

提督「あはは…じゃあ、お願いね…」プチ

スルッ…

羽黒「わ……」ドキン

羽黒(す、すごい……綺麗……)

羽黒(肌、真っ白…雪みたい……)

羽黒(なのに顔は赤くて、目はちょっと虚ろだし……な、なんだかとっても……)

羽黒「…………///」ドキドキ

提督「………?拭かないの…?」クル

羽黒「あ……ご、ごめんなさいっ!ふ、拭かせていただきます!」

提督「う、うん…?」

羽黒「い、いきますよ…」スッ

提督「うん…」

ピト

提督「…………」

羽黒「あ……」

羽黒(タオル越しにも分かる…すごい熱……)フキフキ

羽黒(汗も拭き取ったそばから滲んでくるし……相当辛いんだろうなぁ……)フキフキ

羽黒(それにしても……)

羽黒(…………汗で艶が生まれて……せ、セクシー…というか……)

提督「んっ」ピクッ

羽黒「!!?」

提督「あ…ごめん、続けていいよ」

羽黒「は、はひ…」

羽黒(な、なんなの今の声…ううぅぅ…)///

提督(咳我慢しないと…風邪移っちゃうかも…)

キュッ…

羽黒「あ、あの…」

提督「……ん?なに…?」

羽黒「背中、終わりました…」

提督「ああ、ありがと……」

羽黒「そっ、そ、その、ま、ま、ま、前、は」

提督「ん、前はいいよ自分でやるから…」

羽黒「ですよね……」シュン

提督「タオル、貸して」

羽黒「あ、は、はい」スッ

提督「……うわ、すごい濡れてる…こんなに汗かいてたんだ……」スル

グイ

羽黒「!!!」

羽黒(む、胸が持ち上がって……すごく、すごい……!!)

提督(………なんだか、前より重くなったような……)フキフキ

提督「………ふぅ…ありがと、拭き終わったよ」スッ

羽黒「は、はい」

提督「よいしょ…」

スル

提督「それじゃ私、そろそろ寝るから……ごめんね、相手してあげられなくて…」

羽黒「い、いえ、そんな、私は…無理にお話なんてして、風邪が悪くなる方が嫌ですから…」

提督「ふふ、そっか……じゃあ、おやすみ…」

羽黒「あ………ま……待って、ください……」

提督「………?なにかあるの…?」

羽黒「え、えと、ですね、その、は、早く風邪を治して、司令官さんと、お話、したいから……だから、その……」

提督「………?」

羽黒「きっ……きき、キス、したら、風邪が治るらしいです………よ………?////」カァア

提督「…………」

羽黒「…………///////」

提督「………ダメだよ、聞いたことはあるけど…それだと羽黒に風邪が移るから……」

羽黒「で、ですよね…はい、ごめんなさい…」ショボン

提督「……でも、羽黒の気持ちは嬉しいよ…早く元気になって、その時にいっぱい…お話しようね」

羽黒「……!は、はい!」

提督「うん……それじゃ、今度こそ、おやすみ……」

羽黒「お、おやすみなさい…」

提督「…………」スゥ…

提督「くぅ……」

羽黒「…………」ナデ

羽黒(ちゃんと寝付いたかな……よし、そろそろ私も部屋に戻らなきゃ……)

羽黒(あ、その前にタオルを鳳翔さんのところに……)スッ

羽黒「…………」

羽黒「…………」

羽黒「…………」

羽黒(………ちょ、ちょっとだけ……)スッ

スンスン

羽黒「わぁ………///」

羽黒(優しくて、ほんのりと甘くて…いい匂い……汗じゃないみたい……)ボフ スンスン

羽黒(はぁ……安心する…司令官さん……)スーハー

羽黒(あぁ……ダメ、こんなの…変態さんみたい………)ギュウウッ

羽黒(ダメなのに、やめられないよぉ……)スンスン

羽黒「…………」チラ

提督「すぅ………」

羽黒「………可愛い寝顔……」ツン

提督「ん………」

羽黒「ふふ……」プニ

提督「んぁ……むにゃ…」

羽黒「唇も……柔らかい………」ピト

提督「zzz……」

羽黒「…………」キョロキョロ

羽黒(だ、誰も見てない……よね……)

羽黒「し……失礼、します……」スッ

提督「すぅ………」

羽黒「…………////」ドキドキ

羽黒(こ、これは、司令官さんの風邪を早く治すためだから……)

提督「んん……」

羽黒「!」ピタッ

提督「………ぐう……」

羽黒「…………」…スス

羽黒(あ、あとちょっと……あとちょっと……!こ、こ、このまま、このまま…)ドクンドクン




チュッ

提督「……ん……う………」

羽黒「………………っは」スッ

羽黒「…………」

羽黒「/////」ボッ

羽黒(きゃああああああああ!!!やっちゃった!!?やっちゃった!!!わっわっ、私、司令官さんになんてことを!!)

羽黒(ででででも、と、と、と、とっても柔らかかった…暖かいし優しい味がしたし、あ、安心する……)ドキドキ

羽黒「…………」チラッ

提督「んう〜………」ポリポリ

羽黒(お、起きてない………よね………)

提督「……zz…」

羽黒(寝てるよね……な、なら、も、もう一回だけ……)スッ

チュッ

羽黒(……も、もう一回……)

チュッ

羽黒(もう一回だけ……もう一回だけ……)

チュッ チュッ チュッ

〜〜〜

羽黒「…………はぁ……」

羽黒「………あれ?」

羽黒(…も、もう十五分以上経ってる!?)

羽黒(うそ……わ、私、その間ずっと………)

提督「…………っくしゅ…!ごほ……」

羽黒「!」ビク

羽黒(し、司令官さん…ごめんなさい…こんな、ずるいことしちゃって……)

羽黒「…………」

羽黒(……あ、そろそろ戻らなきゃいけないんだった……)ガタ

提督「うう……んぐ…」ゴロン

羽黒「……お、お大事に」

ガチャ

パタン

羽黒(はぁ……あんなところ、誰かに見られてたら……)

足柄「あっ」

羽黒「えっ」

足柄「…………」

羽黒「…………」

足柄「………あ、あのね、これはちが」

羽黒「見てたの?」

足柄「いや、そんなつも」

羽黒「見てたの?」

足柄「ミテマシタ…」

足柄「で、でもねほら、言いふらすとかそういうことはしないから、ね?」

羽黒「……なら、いいけど……」

足柄「いやあ、びっくりしたわ…提督かちゃんと寝てるか見に来たら、羽黒が何回も何回もキスしてるんだもの」

羽黒「い、言わなくていいからっ!」

足柄「はいはい…しかしあの羽黒がねえ、大胆になったわねえ」

羽黒「でも、見つかったのが姉さんで良かった…青葉ちゃんに見つかったら他の子達になにを吹き込まれるか……」

ビュン

青葉「特ダネゲットオオオオオオオオオオ!!!」ドドドドド

羽黒「」

足柄「」

桟橋

ドッドッドッドッ

ガチャンッ
シュー…

赤城「ふぅ……みなさん、お疲れ様でした」

島風「ああ〜疲れたぁ〜…」

雪風「zzz……」

加賀「……みんな相当疲れてるみたいね」

赤城「無理もないですよ、朝から今までずっと海の上だったのですから」

加賀「……そうね。あなたたち、今日はもう部屋に戻って休みなさい」

天津風「時津風、歩ける?」

時津風「・ー、きつい…」

赤城「あら、なら私がおぶってあげますね」グイ

時津風「やったぁ!おー、らくちんらくちん♪」

加賀「あなたはおぶらなくてもいいの?」

天津風「私は平気、疲れてないわ」

島風「そんなこと言って、さっきすっごいあくびしてたよ?」

天津風「んなっ、い、いちいち言わなくていいから!」

赤城「ふふ、どれだけ強がってもまだ子供ですね」

加賀「ええ……ところで」

赤城「はい?」

加賀「なぜ私まで遠征に?」

赤城「えっと、駆逐艦の子達だけで行く予定だったんですけど……提督の指示がないぶん、心配だからって鳳翔さんに頼まれて…」

加賀「………なら仕方ないわ」

赤城(相変わらず鳳翔さんには甘いですよねぇ…)

加賀「……………」

赤城「そんなに提督のことが気になりますか?」

加賀「………別に、そういうわけでは…」

赤城「でも、いつもより早足になってますよ?」

加賀「…………」

赤城「ふふ、提督のところに行ってきてあげてください。資材の運搬は私達に任せてくれて大丈夫ですよ」

加賀「赤城さん……」

赤城「さあ、行ってください」

加賀「いえ、でも…」

赤城「? なにか理由でも…」

加賀「赤城さんがつまみ食いしないか心配で…」

赤城「しません!!」

ガチャ

キィ…

加賀「…………」

パタン

提督「…………」zzz

スタスタ

ストン

加賀「……なんだか長い間会えなかったような気分ね」ギュ

加賀「一人で……辛かったでしょう?」

提督「……ん、う…うぁ……」ビクッ

加賀「………うなされているの?」ナデ

提督「うっ……あ…」キュ

加賀「……怖かったのね……」

加賀「でも、大丈夫よ…今は…私達がいるから……」

提督「……ん……」

加賀「…………」スゥ…

そういえば護衛艦「かが」が進水したそうですけど、この子をこのSS的に見ると提督と加賀さんの子供ってことになりませんかね(大発見)

〜〜〜

加賀「……ぅ……?」パチ

提督「すー……すー……」

加賀「…………」ボーッ

加賀「………あ」

加賀(あのまま寝てしまってたのね……)

加賀「………?」

提督「う…げほ……」ギュー

加賀(汗が……一晩中握られていたのかしら…)

提督「んんっ………ぁ……」パチ

加賀「あ…起きた…?」

提督「……お母さん……?」

加賀「え?」

提督「大丈夫だよ、心配しなくても……」

加賀「…………」

提督「私なら……一人でも…」ゴロン

加賀「………ええ」

提督「だから、お仕事に………」

加賀「…………」

提督「………ん?」

提督「…………!!!」ガバッ

加賀「どうしたの?」

提督「か、加賀!?なんでここにいるの!?」

加賀「お母さんはあなたを心配して来たのよ」

提督「いやああああ!!忘れて!!さっきのは寝ぼけてただけだから忘れて!!」ブンブン

加賀「そんなに叫んだら喉を傷めるわ」

提督「ああぁ〜…なんで母さんだと思ったんだろ恥ずかしい死にたい……///」

加賀「熱でぼーっとしてるみたいだし、仕方ないでしょうね」

提督「………忘れて」

加賀「ええ、お母さんはすぐ忘れるわ」

提督「もう!」

加賀「ふふ、冗談よ」

スッ

ピト

提督「!」

加賀「熱、ずいぶん下がったみたいね」

提督「ん……そういえば、昨日よりかなり楽になった気がする」

加賀「鳳翔さんが看病してくれたの?」

提督「うん、他の子達もね」

加賀「そう……よかったわ」

提督「みんな、変わり代わりに来てくれるから…寂しい気持ちも紛れたよ」

加賀「あ………その、ごめんなさい…」

提督「え、どうして謝るの?」

加賀「いえ、ずっとそばに居てあげられなかったから…寂しかったでしょうに…」

提督「そのくらい大丈夫だよ、確かに寂しかったけど……けど、ちゃんとこうして来てくれることが、それよりも嬉しいから…」

加賀「風花……」スッ

提督「加賀……」

クイ

提督「………ってなにナチュラルにキスしようとしてるのさ!」グイ

加賀「うぐっ」

提督「風邪移るからダメ!ちゃんと治ってからにして!」

加賀「お固いのね」

提督「加賀ががっつきすぎなんだよ」

加賀「でも、あなたにしかしないわ」

提督「………もしかして私が他の子とキスしてたりするの、怒ってる?」

加賀「怒ってなんていないわ。まあ、少し悔しい気もするけど」

提督「………やっぱり、加賀は…」

加賀「?」

提督「私のことが好きだから、そういうことをするんだよね」

加賀「ええ、そうね」

提督「……ごめんね、加賀」

加賀「? いきなりどうしたの?」

提督「自分でもよく分かってないんだけどね……私、本当は加賀に恋愛感情なんて持ってないんじゃないかって…」

加賀「どういうこと?」

提督「………私、加賀を母さんと間違えてたでしょ?」

加賀「ええ」

提督「私の母さんね、加賀に似てたの。加賀と同じ髪型で、物静かで、いつも仏頂面で………けど、優しかった」

加賀「私、そんなに無愛想な顔してる?」

提督「うん」

加賀「…………」ニマァ

提督「な、なにその気持ち悪い笑顔…無理しなくていいよ…」

加賀「…………」

提督「おほん…で、ね?そんな母さんが大好きで、妹が生まれるまではずっと母さんに甘えてたの。母さんもちゃんと私を甘えさせてくれてた」

加賀「…………」

提督「五歳の時に一人目の妹が生まれて、それから母さんはその子に付きっきりになって…私はお姉ちゃんらしくなれるように、母さんがいなくても一人でなんでも出来るように色んなことをしてたと思う」

加賀「上手く甘えられなかったの?」

提督「まあ、結論を言うとそうなんだけど………二人目の妹が生まれて、私が…九歳…十歳だったかな?それくらいの頃に、色々あって父さんも妹二人も家を出ちゃって…」

加賀「……離婚?」

提督「ううん、一応別居っていう形だった。で、その後から……あの人が来てから、全部、おかしくなって……」

加賀「…………?」

提督「………全部おかしくなる前、ね。その時が、最後だったんだ。母さんが、甘えさせてくれたのは」

加賀「え……お母様、もう他界して…」

提督「あ、いや、まだ元気なんだけどね。語弊のある言い方でごめん」

加賀「そ、そう…ならよかった」

提督「今でも鮮明に覚えてる…私が好きだった歌を歌いながら、お気に入りの櫛で髪を梳いてくれた、母さんを…」

加賀「…………」

提督「………変な話して、ごめんね。たぶん、私は……うん、加賀を擬似的に母さんとして見て、甘えたがってただけなんだと思う」

加賀「なるほど…つまり、家族愛みたいなものというわけね」

提督「親友とも恋人とも付かないような気持ちだったから、これだって気付いて……なのに深く考えもせずに、恋人だとか言って、申し訳なくて……」

加賀「それがなにか問題なの?」

提督「…………へっ?」

加賀「たとえ恋愛感情を持っていなかったとしても、それでもあなたは私に愛してると言ってくれたわ」

提督「……でも、私は…」

加賀「それに、もう決めたの」

提督「え……?」

加賀「これから行く先に光など見えなくても、何があってもあなたを信じるって」

提督「…………」

提督「…………」ブワッ

加賀「えっ」

提督「えっ?」ポロポロ

加賀「えっ、ちょ、な、ど、どうして泣くの?そんなに嫌だった?」

提督「え?あ、あれ、なんで私泣いてるんだろ、あっ、ちが、ただ、ちょっと嬉しくて、なんだろ、なんだろうこれ」ポロポロ

加賀「………ぶふっ」

提督「わ、笑わないでよ!私だって何がなんだかもうわかんなっ………うっ、うっ、うえぇぇ…わかんないよおぉぉぉ……」ボロボロ

ギュウ

加賀「よしよし……私はあなたを裏切ったりなんてしないから」ナデナデ

提督「うん……うん……」ギュウウ

加賀「もうあなたは一人じゃない…だから、好きなだけ泣いても、甘えてもいいから」ポンポン

提督「う…っ、う、わあああああん……!」

加賀(しばらく泣き止みそうもないわね…)ナデナデ

〜〜〜

提督「…………」

加賀「……落ち着いた?」

提督「……うん、ありがと」スッ

加賀「そういえば、あなたが泣いてるところなんて見るの、初めてね」

提督「うん…お姉ちゃんは泣いてるところを下の子に見せちゃダメだって、ずっと母さんに言われてたから」

加賀「そう……長い間我慢してたのね」ナデ

提督「…………////」カァア

バッ

加賀「?」

提督「っご、ごめん、なんだか今そういうことされると、すっごい恥ずかしいっていうか…その…」

加賀「ええ」

提督「い、意識しちゃうというか……///」

加賀「…………」

提督「………か、加賀?」

加賀「なに?」

提督「手、握ってもいい?」

加賀「ええ」

提督「し、失礼します…」

ギュ

加賀「どうしてそんなに緊張しているの?」

提督「…………///」カァッ

加賀「ちょ、ちょっと…」

提督「あ、も、もういいよ。うん、やっと分かったから」

加賀「分かった…?」

提督「うん……あの、その、先に謝っておくね?」

加賀「え、ええ」

提督「そのぉ………さっきは恋愛感情なんて持ってないかもしれないって言ってたけど…やっぱり私、加賀のことが好きみたい…っていうか……」

加賀「はあ」

提督「こうして来てくれたのも嬉しいし、今みたいに手を握ってもらうだけでドキドキするというか…うん、あったかい気持ちになるっていうか……その……」

加賀「…………」

提督「………好き、だよ」

加賀「…………」

提督「…………な、なにか言ってよ//////」

加賀「え?ああ、正直私も混乱してるからよく分からないわ」

提督「えぇ…」

加賀「けど、私達が両想いということは分かるわ」キュ

スッ

提督「あ、ま、待っ…」

加賀「……口はダメだったわね」

チュッ

加賀「ここなら風邪は移らないでしょう?」

提督「…………///」

加賀「赤くなってばかりね。熱、計る?」

提督「………おでこ、汗出てると思うんだけど」

加賀「そうね、少し塩辛いわ」

提督「…………バカ!」ギュム

加賀「痛い」

加賀「…それで?私のことが好きということは、恋人同士という関係でいいの?」

提督「うん、加賀が良ければ…だけど」

加賀「今さら拒む理由もないわ」

提督「そっか……なら、改めて、これからよろしくね」

加賀「ええ。あなたと一緒なら海の底に沈むのだって怖くないわ」

提督「………なんだかその発言は危ない気がする」

加賀「………私も言った後思ったわ」

提督「あ……」

加賀「どうしたの?」

提督「その……私、加賀だけじゃなくて、他の子ともそういうこと、してる…っていうか、されてるんだけど…」

加賀「前にも言ったけど…そんなこと気にしないわ、最後に私のところに帰ってきてくれて、私を愛してるならそれでいいの」

提督「で、でも、恋人同士だし…やっぱり私もちょっと躊躇ってしまうというか…」

加賀「恋人の幸せを願うのが、恋人の本道でしょう?」

提督「………何も言い返せないや」

加賀「さっきも言ったわ、何があってもあなたを信じるって」

提督「……うん、なら他の子達ともどんどんスキンシップしようっと!」

加賀「その開き直りはどうなの…」

加賀「それじゃあ、私はもう行くから」

提督「え?今日、非番じゃないの?」

加賀「ここにいたらどうせあなたが風邪が移るだのなんだの言って出て行かせるじゃない」

提督「………まあ、そうだけど」

加賀「それに私、昨日ずっとここで寝ていたから…身体が痛いの」

提督「え、そうだったの?」

加賀「少し部屋で寝たら、また来るから…じゃ」スッ

提督「うん、またあとでね」ギュウウ

加賀「…………」

提督「………行かないの?」

加賀「行かせる気、あるの?」

パッ

提督「でへへ、離れたくなかったものでつい…」

加賀「また来ると言ってるでしょうに…」

提督「うん、ごめんね、戻っていいよ」

加賀「ええ…そうそう、朝ご飯は鳳翔さんが持ってきてくれるそうよ」

提督「うん、わかった」

加賀「ちゃんと薬、飲まなきゃダメよ?」

提督「分かってるって」

加賀「熱は下がったとはいえ、まだ風邪だからあまり無理はしないように」

提督「うん」

加賀「辛くなったらすぐに寝るのよ?」

提督「うん」

加賀「あと…」

提督(一緒だ…木曾と一緒だ…!!)

加賀「………あと、これ」シュル

スッ

提督「え?髪留め?」

加賀「これを私と思えば、少しくらいは寂しさが紛れるかもしれないから」

提督「………うん、ありがとう」

加賀「それじゃあ、私は寝てくるから」

提督「うん、しっかり休んでね」

パタン

提督「…………」

スンスン

提督(髪留め……いい匂い…)

提督(加賀の匂い……安心する……)

提督「えへへ……」

バタンッ!!

提督「っ!?」ビク

大井「提督うううううううううううう!!!!」ドドド

ガバッ

提督「うわっ!?ちょ、ひええぇ!?」

ドサッ

大井「わあああああああん!!元気そうでよかったでずううううううう提督うううううう!!!」ギュゥゥゥ

提督「ぐえ……わ、分かったから大井…は、離れて……うぐぐ…」ギリギリ

大井「会いに来られなくてごめんなさい!!でも、ずっと心配でしたあああああああ!!」ギュゥゥゥゥゥゥ

北上「やっほーふーちゃん、元気になっ……」

提督「ぐげっ……こひゅっ……」ビクン ビクッ

北上「うわあああ!??大井っち!キマってる!!キマってる!!」

提督「げっほ……死ぬかと思った……」

大井「ご、ごめんなさい…つい気持ちがはやって…」

北上「もー、一日会えなかったぐらいで大げさだよ」

大井「提督が高熱を出したと聞いて、心配で心配で…」

提督「あはは…まあ、気持ちは十分に伝わったよ」

大井「ちょっと、失礼しますね」スッ

ペタ

大井「………やっぱり熱いですね」

提督「これでも昨日よりはかなりマシになったんだけどね…」

大井「どれどれ…」ペタ ペタペタ

提督「んっ…?」

大井「ふむふむ…なるほど」サワサワ

提督「やっ、ちょ……///」ビク

大井「ふ…ふくく、ぐへへへ……」ゴソゴソ

提督「あんっ…!」ピクッ

北上「……………」



ガスッ

北上「いやーごめんねー、うちの大井っちが迷惑かけてねー」ギギギ

大井「げご、ぐぎぇっ、ごひゅ」パンパン

提督「う、うん…まあ、嫌ではないから……というか…」

北上「なに?」

提督「完全にキマってない?」

北上「そう?」

大井「きっ、ぐっ、ぐっ」ブクブク

提督「泡吹いてるけど…」

北上「ああ、これはもっとやってほしいってサインだから」

提督「そ、そう…」

北上「ほら、そうでしょ?そうって言えよ」ググ

大井「うごげぐ…は、はひぃ…」

北上「ね?」

ゴキン

提督「あっ」

大井「」ビクンビクン

北上「あっ」

大井「折れたかと思ったわ…」

北上「ごめんねー、さすがにお仕置きしなきゃまずいと思ったからさ」

大井「私と提督以外にこんなことしちゃダメですからね?」

北上「うん、わかった」

提督「なんで私も含まれてるの?」

大井「愛だからに決まってるじゃないですか。ねえ、北上さん」

北上「ん?うん、そだねー」

大井「ねー♪」

提督(ダメだ、ついていけない…)

提督「…………うっ」ブルッ

北上「ん、どしたの?」

大井「具合、悪くなったんじゃ…」

提督「いや……ちょっと、も、催しちゃって…」

北上「あー、なるほど」

大井「! ちょっと待っててくださいね、今尿瓶を持ってきますからねフヒッ」

提督「待って、なんでここで出す前提なの」

大井「…………よし、録音完了」カチッ

北上「…………」バキッ

大井「ああー!!??」

ジャー

ガチャ

提督「ふぅ……あれ?二人ともどうかしたの?」

北上「いや、なんでもないよー」

大井「わ、私の録音機が…」

北上「なんでもないよね?」ギュム

大井「あ☆%○>〒〜〜!!??」

北上「うん、なんでもないってさ」

提督(この二人、もしかして仲悪いんじゃ…)

北上「というかふーちゃん、もう歩いて大丈夫なの?」

提督「うん、ちょっと頭が痛むぐらいだから平気だよ」

大井「うふふ、一応倒れたりなんてしないように支えておきますね」ギュッ

北上「あ、ずるーい。あたしもやるー」ギュッ

提督「あはは、歩きづらいよ〜」

北上「いいじゃんいいじゃん、このままゆっくり行こー」

大井「行きましょー」

提督「はいはい」

ボスッ

提督「はぁ〜…なんだか久々に歩いた気分だったよ」

北上「まー長いこと寝てたみたいだからねえ」

大井「あ、北上さん、そろそろご飯の時間ですよ」

北上「そうなの?ならもう行くね」

提督「うん、しっかり補給して頑張ってね」

北上「そうそう、言い忘れてたんだけどさ」

提督「なに?」

北上「キスしたら風邪治るらしいよ?」

提督「ぶっ」

北上「まあそんなことしたらふーちゃんに迷惑かかるからやらないんだけどね」

提督「もう…変なこと言わないでよ…」

大井「提督から移された風邪なら辛くないかもしれない……いやむしろ幸せなのでは……」ボソボソ

提督「へ、変なこと言わないでよ…」

北上「じゃ、また風邪治ったらしようねー」

提督「う、うん…?」

バタン

提督「……なんて大胆なことを…」

提督「…………」グゥ

提督「………私もお腹空いたなあ」

提督「どうしようかなあ…ご飯、持ってくるって言ってたけどみんなと食べたいしなあ…)

提督(でも食堂に行ったら怒られるだろうしなあ…)

提督「う〜〜……」

ガチャ

提督「!」

浦風がムラ風だった(クソザコ語彙)

摩耶「よう、元気か?」

提督「摩耶…来てくれたんだ」

摩耶「鳳翔さんにご飯持って行ってあげてくれって言われたんだよ」

提督「えー、じゃあ心配されてないの?」

摩耶「別にそうは言ってないだろ」

提督「なら心配してくれてるんだ?」

摩耶「はいはい、それでいいよもう」

提督「ふふっ、ありがと」

摩耶「ほら、米。もう食べられるだろ?」

提督「うん、ありがと」

摩耶「おかずもあるからな。無理して食べなくてもいいぞ?」

提督「わかってるよ」

摩耶「ん?」

提督「どうかした?」

摩耶「これ、花瓶。もう水ないじゃねーか」

提督「あ、ほんとだ…ごめんね、変えておいてくれないかな」

摩耶「ったく、しょうがねーな……もし今枯れたりしたら縁起悪いどころじゃないぞ…」

提督「あはは…」

摩耶「ちゃんと定期的に変えるんだぞ?じゃなきゃお花が可哀想だからな」

提督「お花?」

摩耶「? お花はお花だろ?」

提督「あ、う、うん、そうだね」

摩耶「…変なヤツだな」

提督(お花って…!お花って、超可愛い…!!)

摩耶「ほら、味噌汁。身体あっためろよ」

提督「うん」

ズズ…

提督「…………?」

摩耶「どうした?」

提督「いや、味噌汁の味、いつもと違うなーって思って…」

摩耶「! ど、どうだ?美味いか?」

提督「うん、美味しいよ。ほんとに毎日飲みたいぐらい…」ズズズ

摩耶「〜〜〜〜〜〜〜!!!////」グッ

提督(なんでガッツポーズしてるんだろ…)

ガチャ

鳳翔「提督、おはようございます」

提督「あ、おはよう鳳翔さん」

摩耶「よっ、もう全部食べ終わったみたいだぜ」

鳳翔「あら…もうそんなに食欲が戻ったんですね」

提督「うん、美味しかったよ」

鳳翔「ふふっ、よかったですね、摩耶さん」

摩耶「!!!」ドキン

提督「えっ?」

鳳翔「え?あ、あら、言ってなかったんですか?摩耶さんが提督の朝ご飯を作ったと…」

提督「そうなの?」

摩耶「へっ!?あっ、ああ、それはだな、その、えっと」

提督「なんだ、そういうことなら隠さなくてもいいじゃない!摩耶のご飯、美味しかったよ!」

摩耶「〜〜〜〜〜〜!!!/////」ブルブル

摩耶「〜〜〜〜〜っ!!!///」ダダダ

提督「あ、摩耶!?」

ガチャ

バンッ!!

提督「………行っちゃった」

鳳翔「よほど恥ずかしかったのでしょうか……顔が真っ赤でしたね…」

提督「うん……鳳翔さん、あとで摩耶にまた作ってねって言っておいてくれる?」

鳳翔「はい、お任せください」

提督「ありがと…それにしても、あんなに照れることないのにねぇ」

鳳翔(想い人の前でなら、仕方ないと思いますけども…)

提督「ねえ?」

鳳翔「……そうですね、ふふ」

鳳翔(私も、そのうちの一人なんですけどね…)

鳳翔「おでこ、失礼しますね」スッ

ペタ

鳳翔「……もうかなり熱は下がったみたいですね。体調はどうですか?」

提督「んー、たまに頭が痛くなるくらいかな」

鳳翔「なら…はい、解熱剤と頭痛薬です」

提督「これだけでいいの?」

鳳翔「はい、あとは熱を下げるだけなので…明日には治りますよ」

提督「そっか……よかった」

鳳翔「ちゃんと自分で飲めますか?」

提督「うん、大丈夫」

鳳翔「あ、なんならゼリーでも…」

提督(子供扱いされてる気がしてならない…)

ゴクッ

提督「ふぅ…ほら、ちゃんと一人で飲めるよ」

鳳翔「ふふっ、よく出来ましたね。えらいえらい」ナデナデ

提督「………鳳翔さんって、誰に対してもそうなの?」

鳳翔「え?あ、いえ、辛い時は子供をあやすみたいに接すると気持ちが落ち着くみたいなので…」

提督「ふーん……なら、悪い気はしないかなあ」

鳳翔「提督が子供扱いされたくないというのは分かっているのですが…弱っている人を見ると、優しくしてあげたくなるというか…」

提督(これが母性か…!)

鳳翔「それでは、私はそろそろ行きますね」

提督「うん…ごめんね、洗濯とか手伝ってあげられなくて」

鳳翔「いえいえ、少し休むくらいがちょうどいいんですよ」

提督「……うん、鳳翔さんもたまには休んでね」

鳳翔「はい、今日は非番なのでゆっくりさせてもらいます。では」

提督「またねー」

バタン

提督「…………」

提督(……加賀、まだ寝てるのかなあ)

〜〜〜

提督「……………」

キィ…

提督「…………ん?」



天津風「……………」ジイ



提督「………天津風?」

天津風「……入っていい?」

提督「うん、いいよ」

天津風「ん…ありがと」

パタン

提督「一人?雪風に時津風、島風は?」

天津風「まだ寝てるわ、昨日は相当疲れたみたい」

提督「……ああ、そっか。一日遠征だったもんね。天津風は?疲れてない?」

天津風「疲れてない……なんて、嘘言ってもあなたには分かるわよね」

提督「うん…一人じゃ眠れない?」

天津風「………そこまで見通されてるんだ」

提督「素直に言い出せない子、ここにはいっぱいいるからね。顔を見たらわかるよ」

天津風「そう…優しいのね…」

提督「……ほら、おいで」ポンポン

天津風「……ええ」

パタパタ

ギシッ

ポスン

天津風「抱き付いてもいい?」

提督「いいよ」

ギュム

天津風「…………」

提督「今日はやけに甘えてくるね」ギュウ

天津風「………なんだか、こうしてると安心するの…」

提督「…………そっか」

天津風「………昨日、ね」

提督「うん」

天津風「昔の頃の夢を見て…ちょっと、怖くなっちゃって…」

提督「昔のって、前の鎮守府?」

天津風「………ええ」ギュウ

提督「………そっか」

天津風「………ねえ」

提督「うん?」

天津風「私、ここに居てもいいのよね」

提督「うん」

天津風「私、あなたに必要とされてる?」

提督「うん、天津風は私にとって大切な人だよ」

天津風「………そう、なら……嬉しい…わ…///」ポポポ

提督「もう辛いことは何も思い出さなくていいからね。ここに居れば、何も怖いことはないから…」ナデナデ

天津風「…………///」ポポポ

提督「………とは言っても、まだまだ時間はかかりそうだね」

天津風「そう、ね……今だに大きい音が鳴ったりすると、怖くなるから…」

提督「…ゆっくりでいいよ、誰も天津風を見捨てたりなんてしないから」

天津風「…ええ、ありがとう…」

提督「…………ところで、天津風ってさ」

天津風「? ええ」

提督「照れたり嬉しい時はさ」

天津風「ええ」

提督「その煙突?というかラジエーターから、ハート型の煙が出るよね」

天津風「っ!?///」ポポポ

提督「あ、今も」

天津風「えっ、ちょ、や、やだ、見ないでよ!!///」ポポポポ

提督「他にも楽しい時は音符型の煙とか、何か閃いた時は豆電球型の煙とか…」

天津風「う、うそ!?そんな、私いつの間に…!///」ポポポ

提督(まあさすがにそれは嘘だけど…というかこれ、無意識だったんだ…)

天津風「ううう〜……止まれ止まれ止まれ〜っ……/////」ポポポポポ

提督(かわいい…)

提督「ほら、もう止まったから。一緒に寝よう」ゴロン

天津風「ん…そうね」ボフッ

提督「はい、枕」

天津風「いらないわ、あなたの胸で寝かせて?」

提督「はいはい、どうぞ」

天津風「ありがと……うん、安心する…」

提督「ふふ、どうも」ギュム

天津風「………あなた、身体あったかいのね」

提督「そう?」

天津風「ええ……優しくて…心地いい……わ……」スゥ…

提督「…………」ポンポン

天津風「すぅ……すぅ……」

提督(もう寝付いちゃった……やっぱり疲れてたんだろうなぁ…)

提督(まだ子供だもんね……人間に換算したら、十五も行ってないだろうに……)

提督(こんな………子供に………)ギリッ

天津風「ん……」コロ

提督「…………?」

提督(首の後ろに………これは、火傷の痕……?)

提督(………今度、改装の時に消してあげなきゃ……)

提督(辛かっただろうな……ずっと、誰も味方してくれなくて……)

天津風「ぅ……あな、た……」

提督「………よしよし、私はここにいるからね」ナデナデ

天津風「……んぅ……」

提督「…………」

〜〜〜

提督「……………」ペラッ

天津風「……ぅ……」ゴロン

提督「ん……起きた…?」パタン

天津風「………あなた…?」

提督「うん、私。もうお昼の時間だよ」

天津風「……そう……お昼……」グラ

提督「おっ…まだ眠い?」

天津風「………いただきます…」

提督「へっ?」

カプ

提督「ひょわぁあ!?」ビクッ

天津風「あむ……ん……」アグアグ

提督「おっあ、あっあっあっ」ドキドキドキドキ

天津風「んんっ…ふ……」チュウ

提督「んひいっ!?」

提督(だだだだダメダメダメダメ!!ね、寝ぼけてるだけだから!子供に惑わされちゃダメだから!!耐えろ私!!)

天津風「………んぁ…?……あれ?」

提督「はっ……はっ……」

天津風「……あっ!?わ、私、あなたに変なこと…ごめんなさい!」

提督「いや……いいよ、大丈夫…」ゼェゼェ

天津風「え、ええ…」

天津風(なんでこんなに息切らしてるのかしら…)

提督(理性の勝ち……!)

提督「そ、そんなことよりほら、もう十二時過ぎだよ。お腹空いてない?」

天津風「ん……?そうね、朝食べてないから結構…」

提督「なら、食堂行っておいで?」

天津風「あなたは?」

提督「私は……まだお腹空いてないからいいや。またあとで、一緒におやつ食べよっか」

天津風「……ええ、そうね。じゃ、行ってくるわ」

提督「うん、今日はゆっくりしててね」

天津風「わかったわ!」ガチャ

パタン

加賀「…………」スタスタ

天津風「〜♪」パタパタ

加賀「………?天津風…」

ガチャ

加賀「起きてる?」

提督「あ、加賀!もう寝なくていいの?」

加賀「ええ、あまり寝すぎると今夜眠れなくなるから。それより…」

提督「なに?」

加賀「あの子…一緒にいてあげたの?」

提督「うん、二度寝だって」

加賀「そう…なら私と同じね」

提督「何か気になることでもあるの?」

加賀「いえ……あの子、ここに来た時よりいい顔をするようになったと思って」

提督「ああ……前の鎮守府のこと、ずっと引きずってたみたいだから…」

加賀「………虐待?だったの?」

提督「うーん…まあ、そうなるのかな…特別海域開放で、労力をかけた割に役に立たない奴だって、そこの提督が見捨てたみたいで…」

加賀「…ひどいことをするものね」

提督「うん……それがトラウマになったのか、今でも大きい音が鳴ったら必要以上に反応したり、火を見たら怯えたり…」

加賀「なるほど…だからお風呂にも一人で入ろうとするのね」

提督「………天津風の背中、見たことある?」

加賀「…ないわ」

提督「あの子の背中ね……今は改装のおかげでなくなってるけど、ここに来た当時は火傷の痕でいっぱいだったんだよ」

加賀「火傷?」

提督「うん、私は吸わないから見たことないかもしれないけど…たぶん、煙草とかで焼かれたんだろうね」

加賀「…………」

提督「……ごめんね、変な話して」

加賀「いえ、その……あの子の気持ちが、少し分かるような気がしたわ」

提督「……うん、力になってあげてね」

加賀「…とは言っても、あの子はあなたに懐いているみたいだけれど」

提督「あはは…みんなの前で甘えるのは恥ずかしいみたいだけどね」

加賀「素直じゃないのね」

提督「加賀も人のこと言えないでしょ?」

加賀「私?私は素直よ」

提督「じゃあなんでみんなの前じゃ風花って呼んでくれないの?」

加賀「それは……えと……」

提督「ほら、加賀もツンデレじゃない」

加賀「………私は別に、そういうのじゃ…」

提督「それ言うともっとツンデレみたいだよ」

加賀「……………」

加賀「……素直じゃないのはあなたもそうよ」

提督「なんで?」

加賀「他の子達がいる前で抱き締めようとしたりキスしようとしても振り払うでしょう」

提督「いやそりゃそうでしょ」

加賀「どうして?」

提督「こっちが聞きたいよ」

加賀「抱き締めちゃいけないの?」

提督「そういうわけじゃないけどさ、もっと時間と場所を考えなよ」

加賀「なに?金剛さんに洗脳でもされたの?」

提督(もしかして加賀もアホなんじゃ…)

提督「とにかくほら、私は素直だから。ちょっとこっち来てみて?」

加賀「……はあ」

ギシ

提督「そうそう、そのまま座って」

加賀「こう?」

提督「うん」

ポスッ

加賀「…………」

提督「ね?」

加賀「ね?と言われても」

提督「なんでさ、素直に甘えてるでしょ」

加賀「いつも通りじゃない」

提督「そう?」

加賀「二人きりの時は大抵こうだと思うけれど」

提督「他は?」

加賀「……海を眺めたり、一緒に本を読んだり、たまにお酒を飲んだり…」

提督「なんか、おばあちゃんみたいだね」

加賀「………私、いくつくらいに見える?」

提督「まだ二十代前半ぐらいでしょ。私は?」

加賀「え?」

提督「私は?」

加賀「………えっと」

提督「うん」

加賀(……何、この威圧感は…)

加賀「…………そうね、あなたも二十代くらいに見えるわ」

提督「んふふ、ありがと」

加賀「この鎮守府で最年長なのって、誰なの?」

提督「え?竣工日から考えて、金剛じゃないの?」

加賀「あ、いえ、そうじゃなくて、見た目から人の年齢に換算するということで」

提督「………人の年齢かあ。なら……鳳翔さん……は、まだ若いよね…」

加賀「でも私よりは歳上じゃない?」

提督「んー、まあ加賀が二十二ぐらいだとしたら鳳翔さんは二十五かそれ以上になるね」

加賀「なら、それより上」

提督「足柄とか…」

加賀「ああ…」

提督「………不毛な話はやめようか」

加賀「そ、そうね…」

提督「…しかし、こうしてみると私達って結構恋人らしいことしてるね」

加賀「………言われてみればそうね」

提督「どう?私と一緒に海を眺めたり、本を読んだり、お酒飲んだりすると楽しい?」

加賀「ええ。いつどの瞬間よりも満たされているわ」

提督「そっかそっか、えへへへ」

加賀「ふふ…」ギュ

提督「うーん、でもなあ」

加賀「なに?」

提督「せっかく恋人なら、その証として何か残したいよね」

加賀「いい考えね」

提督「証……あ」

加賀「なにかある?」

提督「ちょっと、手見せて?」

加賀「こう?」

提督「ん、ありがと…」ニギニギ

加賀「く、ふふ…くすぐったいわ…」

提督「あ、もう少しだけ我慢して」ニギニギ

加賀「ふ…くくく…」プルプル

提督「…………」ジーッ

加賀「……私の手に何かついていて?」

提督「…ん?ううん、今はまだ…何も付いてないよ」

加賀「今は?」

提督「うん……ね、加賀」クルッ

加賀「どうしたの?」

提督「加賀の練度ってさ、もう最大だったよね」

加賀「ええ、自分でも限界を感じるわ」

提督「そっ、か……」

加賀「それがどうかしたの?」

提督「…………」

提督「ねえ、加賀」

加賀「?」

提督「私と……」

加賀「ええ」

提督「…………」

加賀「…………」

提督「………ごめん、やっぱりいいや」

加賀「え?気になるわ」

提督「また今度、ちゃんと言うよ。この風邪を治して、元気になってからね」

加賀「……そう、楽しみにしているわ」

提督「うん……待っててね」

加賀「ええ」

提督「加賀」

加賀「なに?」

提督「大好きだよ」

加賀「…あなたから言い出すなんて、珍しいわね」

提督「そう?」

加賀「……なんでもいいわ、私もよ」

提督「えへへ…やっぱり、加賀が一番だな…」

加賀「ふふっ、嬉しいわ」

提督「こうしてると、安心するから…母さんみたいで……」

加賀「…………」ナデナデ

提督「………くう……」

加賀「……おやすみなさい」ギュウ

長いのおわり
加賀に死亡フラグが立ったような気がするのは気のせいです

次は提督の過去の話ですが、オリジナル要素が強いので苦手な人は…ナオキです。

提督「……………」キィ クルクル

翔鶴「……………」

瑞鶴「……………退屈ねえ」

飛龍「ねー…」

提督「私はいつもこれくらい暇だといいんだけどなあ」

蒼龍「提督、毎日忙しそうだからねえ」

赤城「そうですね、付近の海域が平和な分私達は時間がありますが」

加賀「その割に鎮守府が大きいから、資材の増減が激しくて…」

翔鶴「書類の作成、提出に追われると」

提督「大変だよ、毎日毎日…文字ばっかり見て…」

加賀「よくサボるくせに」

提督「でへへへ」

提督「さてと……どうせ暇ならゲームでもやろうかな」

飛龍「なになに?なにやるの?」

提督「悪魔城」

蒼龍「悪魔城?」

加賀「今日は何をやるの?」

提督「んー、みんないるしHDかなあ」

瑞鶴「複数人で出来るの?」

提督「四人までだけどね」

飛龍「やりたい!」

蒼龍「私も!」

瑞鶴「私もやってみたい!」

翔鶴「わ、私も…」

提督「あ、なら私は後ろから見てるよ。はい、コントローラー」

飛龍「やったぁ!」

加賀「……………」カチッ

ペポゥ

赤城(白夜の協奏曲…)

飛龍「あれ?一人しかいないよ?」

蒼龍「ぷれす…すたーと?って読むのかな?」

瑞鶴「どういう意味?」

翔鶴「すたーとを押せってことじゃないかしら…」

蒼龍「すたーとぼたんってどれ?」

飛龍「これじゃない?同じ字が書いてあるし」ポチ

チュキーン

蒼龍「おおー!入った!」

瑞鶴「ここ?」ポチ

翔鶴「えいっ」ポチ

チュキーン チュキーン

飛龍「おおー、これで四人揃ったね」

蒼龍「ここからどうするの?」

翔鶴「キャラクターを選択って書いてあるけど…」

飛龍「どうせならみんな別々のキャラがいいよね」ポチ

蒼龍「うわー……いっぱいいる」

瑞鶴「へー、女の子もいるのね」

飛龍「じゃあ私は………シャーロットちゃん」

蒼龍「あー、ずるい!?私もそれ選ぼうと思ってたのに!」

飛龍「ふふん、早い者勝ちだよ。ほら、早く決めてよ」

蒼龍「むうぅ……なら、マリアちゃん…」

翔鶴「瑞鶴、次決めていいわ」

瑞鶴「うん……ねえ、この人翔鶴姉に似てない?」

翔鶴「そ、そう?」

瑞鶴「似てる似てる!じゃあ私アルカードさんにする!」

蒼龍「えー、男の人使うの?女の子なんだから女の子使えばいいのに」

瑞鶴「なんでもいいでしょ、好きなの使えば」

翔鶴「私が最後ね………えっと……シャノアさん、で…」

飛龍「この人は提督に似てるねえ」

提督「そうかなあ」

蒼龍「うん、眼鏡かけたらそっくり」

瑞鶴「えぇ?どう見てもそんなに似てないでしょ」

翔鶴「確かに提督の方がもっと柔らかい雰囲気というか…」

飛龍「えー!?絶対似てるよ!ほら、見比べてみなよ!」

瑞鶴「似てませんー!提督の方が可愛らしいですー!」

翔鶴「ま、まあまあ、早くゲームを始めましょう?」

飛龍「むう、それもそうか。じゃあ始めるよ?」

蒼龍「おっけー!」

提督(誰もジョナサン選ばないんだ…)

ピリリリ ピリリリ

飛龍「ん?」

蒼龍「なんの音?」

提督「あ。ごめん、私だ」ゴソゴソ

加賀「携帯?」

提督「うん…こっちにかかってくるなんて珍しいな…」

瑞鶴「誰から?」

提督「ちょっと待ってね……ん?」

ピリリリ ピリリリ

提督「公衆電話から……?誰だろ…」

翔鶴「分からないなら出ない方がいいのでは…」

提督「うーん…でも、一応出てみるよ」

ピッ

提督「もしもし?」

『もしもーし』

提督「…………!そ、その声、雪菜!?」

『そだよー』

加賀「?」

飛龍「なになに、誰?」

蒼龍「お友達?」

提督「あ……ちょ、ちょっと待ってね!……ごめんね、すぐ戻るからね」

パタパタ

バタン

赤城「………気になりますよね?」

瑞鶴「なるなる」

飛龍「ならないはずがないよね」

翔鶴「でも、提督に悪いわ」

蒼龍「聞き耳立ててるくせにい」

加賀「…………」

ガチャ…

ソー

加賀「…………」チラッ




提督「うん……そう、だから公衆電話からなんだ」

提督「あはは、誰かと思ってびっくりしたよ…今時公衆電話でかけてくるなんて変態しかいないよ」

提督「ん……ガラケー?うん、そうだよ。いや、まだ現役だから…そろそろ変えようと思ってるけど」



飛龍「なんだか楽しそうだね」ズシッ

蒼龍「やっぱりお友達なのかな?雪菜って言ってたけど」ズシッ

加賀「前にあの子が言っていたわ、雪菜という幼馴染がいるって」

瑞鶴「ならその人なんじゃない?」ズシッ

加賀「ええ……というか、重い…」

提督「それで、どうかしたの?失敗でもした?」

提督「忘れてたって……相変わらず抜けてるなあ」

提督「……うん。…うん。………えっ!?」

提督「ちょっ、ちょっと待って!来るの!?ここに!?」

提督「い、いつ?………明日ぁ!?ど、どうしよう、何も用意してないよ!?」

提督「お構いなく、って言われても………うん……分かった、じゃあ、楽しみにしてるね」

提督「うん、気を付けて帰ってね。それじゃ、また明日」

提督「……んなっ…///も、もう…切るよ!」

提督「………うん、待ってる」

ピッ

提督「………ふふっ……」



飛龍「よほど仲がいいようで」

蒼龍「すっごい楽しそうだったねえ」

赤城「私にも見せてください」グイグイ

加賀「ちょ……赤城さん、そんなに押したら……うっ!」

ドサドサ

提督「!?」ビクッ

瑞鶴「………ど、どうも」

翔鶴「あっ…す、少しみんなでお花を摘みに行こうかと…」

提督「う、うん…もう少し上手な嘘つこうよ…」

飛龍「うっ」

蒼龍「やっぱり分かるよね〜…」

赤城「すみません、どうしても気になってしまって…」

提督「いや、別に悪いことでもないし…気にしてないよ」

加賀「ぐ……し、死ぬ……」プルプル

提督「うわっ!?ちょ、み、みんなどいてあげて!加賀が潰れちゃう!」

飛龍「お?おおっ!?」

〜〜〜

飛龍「そりゃ!ダークインフェルノ!」

蒼龍「飛龍、それあんまり効いてない!」

瑞鶴「私のソウルスチールも効かないわ…」

翔鶴「雷よ!」

赤城(結構ノリノリですねえ…)

提督「みんなもう寝る時間だよー」

飛龍「分かってるけど、ドラキュラ強いよー!」

『デモニックメギド!!』

蒼龍「うわあ!?」

瑞鶴「全滅……」

翔鶴「つ、強い…」

提督「ああー…お疲れ様、続きはまた明日にしようね」

飛龍「はーい。よーし、次こそ勝つぞ〜」

蒼龍「提督、おやすみなさい」

瑞鶴「おやすみなさーい」

翔鶴「それでは提督、失礼します」

提督「うん、おやすみ」

バタン

加賀「…………」カチカチ

提督「加賀ももう寝なきゃダメだよ?」

加賀「今日は一緒に眠れないの?」

提督「ごめんね、まだ書類が残ってるから…」

加賀「そう…分かったわ」

赤城「うふふ、お熱いですねえ」

加賀「茶化さないでください……それでは」

提督「二人とも、おやすみ」

赤城「はい、おやすみなさい」

バタン

提督「……さてと、お仕事お仕事…」

〜〜〜

提督「…………んーっ……」ググ

提督「はぁ……お仕事終わりと…」

提督「…………」チラッ

提督(もう二時かあ……)

提督「…………あ」

提督(今日の見回り担当私だっけ…)

提督「………よいしょっと」ガタ

提督「ふぁ……ねむ…」

提督「何もありませんように…と」ガチャ

バタン

その頃……

明石「…………よおおぉっし……!!」

明石「出来た……!足柄さんに頼まれてたお肌が若返る化粧水…!」

明石「二徹した甲斐があった………なんたって報酬は提督の……ぐひひひ」

明石「ふふ……あははは!あーっはっはっはっはっは!!」

明石「はっは……はぁ…」

明石「…………」

明石「試験、明日でいいや…ねよ…」

ドサッ

明石「ぐごぉ……」

提督「うー、さむっ……」ブルッ

提督「もう三月になったとはいえ、さすがに夜は寒いなあ……」スタスタ

提督「…………」

提督(静かだなぁ……みんな、ぐっすり寝てるんだろうなあ……)

提督(私も早く寝なきゃ…明日……もとい、今日は雪菜が来るし…)

「う〜………」

提督「ん……誰?」

「う〜………」

提督「幽霊さんならちゃんと成仏してくださいねー…」

「は〜い……」

提督(ずいぶん聞き分けのいい幽霊だなぁ…)スタスタ

提督「まっくらくーらいー……」

提督「…………ん?」

提督(工廠の裏口から明かりが……明石、まだ起きてるのかな?)

スタスタ

ガチャ

提督「戸締りしてないし……明石ー?」

提督「明石ー、まだ起きてるのー?」

提督「明石ー?……あ」

明石「ぐう……ぐう……」

提督「………もう、こんなところで寝てたら風邪引くよ」グイッ

ズルズル…

提督「よいしょ、っと……」

バサッ

明石「んん〜………くぅ……」

提督「ここ、あったかいから毛布一枚でも大丈夫…だよね」

提督「さてと……他に見回る場所もないし、私もそろそろ寝ようかな……」

提督「…………ん?」

スッ

提督(なんだろ、このボトル…中身は水?)

提督(作業中の水分補給のために明石が持ってきたものかな……)

提督(…まあいいや、ちょうど喉が渇いてたし……ちょっとだけ)

提督「いただきます…」ペコリ

グイッ

提督「………うっ…!」

提督「うぇ……まずっ……」

提督(ちょっと粘度もあるし…これ、飲んじゃダメなやつだったかな…)

提督「……あ」

提督(そういえば間接キスだ…ごめん、明石…)

提督「…………」

提督「………ふあ…」

提督「…………戻ろ」

ガチャ

バタン

明石「んぐ…ごぉ……」

〜〜〜

翌朝

「すー……すー……」

ドドドド

バァン!!

雷「しーれーいーかーーーん!!」

パタパタ

雷「司令官、朝よ!いつまで寝てるの!」

「んん……うるさいよ……」

雷「こらー!布団に包まってたらいつまで経っても起きられないでしょ!……って、あれ…?」

雷(なんだか、丸みが小さいような…)

雷「……まあいいわ、ほら!起きなさい!」バサッ

雷「……………」

雷「…………………え?」





少女「………?」

雷「えっ」









「えええええええええええええええええええええええええええええええ!!??!??!!?」

バタバタ

電「ど、どうしたのです!?」

暁「今の大声、なに!?」

響「敵襲か?」

少女「……お姉ちゃん達、誰?」

電「へっ?」

響「雷、その子は…」

雷「わ、分からないわ…司令官が寝てると思って、起こしにきたらこの子が布団の中に入ってて…」

少女「………?」キョロキョロ

暁「ね、ねえあなた」

少女「ここ、どこ?」

響「え?」

雷「どこって…なにも覚えてないの?」

少女「…………」

電「ど、どうするのです?」

響「どうって…私達だけじゃ何も分からないし、大人の人を呼ぶしか…」

暁「大人ならここにいるわ!」

雷「私、加賀さん呼んでくる!」ダッ

暁「…………」

雷「こっちこっち!」グイグイ

加賀「わ、分かったから…あまり引っ張らないで」

飛龍「なになに?なにかあったの?」

蒼龍「提督がどうかしたの?」

雷「とにかく来て!ほら!」

ガチャ

雷「みんな!連れて来たわ!」

少女「…………!」ピク

加賀「え?その子は…?」

少女「お母さん!」

加賀「!?」

飛龍「へ?」

蒼龍「え?」

暁「えっ!?」

電「ええっ!?」

少女「……じゃ、ない……」シュン

飛龍「な、なんだ…びっくりした…」

蒼龍「知らないうちに加賀さんが結婚したのかと思っちゃった…」

加賀「………?待って、お母さん、ということは…」

暁「なにか心当たりがあるの?」

加賀「ねえ」スッ

少女「……なに?」

加賀「あなた、名前は?」

少女「……ふうか」

雷「えっ」

響「ということは…」

飛龍「この子は…」

蒼龍「て、提督ってこと!?」

少女「?」

加賀「信じ難いけど……そういうことになるわね」

飛龍「で、でも、こんな、急に身体が小さくなるなんて…」

蒼龍「あの様子を見ると、精神まで子供に戻ってるみたいだし…あり得ないんじゃ…」

加賀「なら、提督がここにいないことはどう説明するの?」

飛龍「それは……」

加賀「よく見てみなさい、提督の面影はあるわ」

飛龍「………」チラッ

少女「………?」

蒼龍「そう言われてみれば、結構…」

飛龍「いつも眼鏡かけてるから見慣れなかったけど…目が垂れてるところとか、雰囲気とか……うん、提督だ…」

加賀「それに、ね」

飛龍「?」

加賀「小さい提督も可愛いわ」

蒼龍「…………」

暁「うーん…この子が司令官、ね…」

風花「しれいかん?私はふうかだよ?」

雷「ねえ風花ちゃん、眼鏡はかけないの?」

風花「私、目いいよ」

電「そうなのですか?」

風花「うん、向こうの文字も読めるもん」

雷「じゃあ……」

パタパタ

雷「これは?」

風花「………ず…?」

暁「図鑑、ね」

電「目はいいけど、漢字は読めないみたいなのです」

雷「なるほどねえ…じゃあこれは?」

提督「………!その本、読みたい!」

雷「え?ええ」パタパタ

暁「なんの本?」

雷「ペンギン大好きって本」

電「わあ…可愛らしいのです…」

響「……………」

風花じゃなくて提督になってりゅう…

注意

とりあえず楽しめればいいにわか勢

球磨型動物枠以外がカワイイ

この子出してっていうのは無理(安価は出すかも)

鈴谷は適当な選出

以上が無理という方は
ホッポ「カエレ!!」

提督「我が鎮守府の艦娘について語りたい」鈴谷「きんもー」
提督「我が鎮守府の艦娘について語りたい」鈴谷「きんもー」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1443088506/)

風花「フンボルト……ペンギン…」

響「ちょっといいかな」ストン

風花「? なに?」

響「あなたは……あー、私達の知っているあなたは、普段は司令官と呼んでいたんだ」

風花「うん」

響「でも、今のあなたは私達の知っている司令官じゃない」

風花「そうなの?」

響「ああ、だから少し調べたいことがあるんだ」

風花「? いいよ、なんでも調べて」

響「なら、手を背中の方に回しておいてくれるかな」

風花「ん…こう?」クイ

響「そうそう……そのままだよ」スッ

ペタ

風花「ひゃっ」

響「動かないで…」ペタペタ

風花「お姉ちゃん…?」

響「……………」スッ ワキワキ

電「右手が」

雷「普段の司令官ので」

響「……………」スッ ワキワキ

電「左手が」

暁「今の司令官の」

響「……………」ワキワキ ワキワキ

暁「……………」

雷「……………」

電「……………」

響「……………」




響「」ズーン

雷「撃沈した…」

飛龍「でも、これからどうすればいいんですか?」

加賀「そんなこと、私に聞かれても…原因がわからなければ対処のしようもないもの」

蒼龍「とりあえず…このだぼだぼのパジャマ、なんとかしてあげられないですかね?」

加賀「そうね、さすがに服までは縮まらなかったみたいだし…」

暁「本人は気にしてないみたいだけど…」

雷「どうする?」

電「あ、電達の制服があるのです」

雷「それだわ!私、持ってくる!」

パタパタ

バタバタ

雷「あったわ!ほら、これ!」

風花「へ?なにこれ?」

飛龍「お着替えの時間だよ、朝だからちゃんとした服に着替えないとね?」

蒼龍「一人で出来る?」

風花「……うん」

ヌギヌギ

飛龍「あら」

蒼龍「こ、ここで着替えさせちゃっていいの?」

暁「見られて困るようなことでもないし、本人が恥ずかしいと思ってないならいいんじゃない?」

加賀「…………………」ジーッ

電(な、なんだか加賀さんの視線が怪しいような…)

風花「……ほら、出来たよ。一人で」

飛龍「おー、えらいえらい」ナデナデ

風花「………」

雷「似合ってるじゃない!可愛いわ!」

蒼龍「そうだ、下は?」

暁「下?」

蒼龍「下着。このままだとノーパンでしょ?」

雷「あれ、一緒に持ってきたはずだけど…」

風花「これ?」

雷「あ、それ。どうして履かなかったの?」

風花「いつもはいてるのと、ちがうから…」

暁「ああ…まあ、仕方ないわ、とりあえず今日はそれで我慢して?」

風花「うん…」

スッ

一同「!!」

風花「?」

飛龍「け、結構危ない履き方するんだね」

蒼龍「まさか直でやるとは…」

加賀「」ボタボタ

電(うわあ…鼻血出してるのです…)

飛龍「うわっ!?か、加賀さん、ティッシュ!」サッ

加賀「あ……ああ、ありがとう…」フキフキ

蒼龍「で、これからどうします?」

加賀「そうね、とりあえずこのことを鎮守府全体に伝える必要があるわ。食堂にみんなを集めてもらえるかしら」

飛龍「りょーかい!」

蒼龍「任せてください!」

加賀「さて…じゃあ私達も行きましょうか」

風花「どこに?」

加賀「食堂よ」

風花「しょくどう………って、ご飯食べられるの?」

加賀「ええ」

風花「! 行く!」キラキラ

加賀「ええ、おいで」スッ

風花「うん!」パタパタ

ギュ

加賀「よいしょ…っと」グイッ

風花「わっ…落とさないでね?」

加賀「ええ、安心して」

電(上手く乗せたのです…)

〜〜〜

風花「お腹すいた…」

加賀「もう少し待ってね」ボソ

飛龍「………え〜というわけで、提督が小さくなっちゃったのでみなさん協力してあげてください……って」

一同「」キラキラ

飛龍「聞いてる…?」

蒼龍「触りたくてうずうずしてるって感じしかしないけど…」

飛龍「と、とにかく、あまり提督を困らせないようにしてください。それでは、解さn

一同「提督うううううう!!!」ドドドドド

飛龍「ひえええ!?」

バッ

大井「キエエエエ!!!」ピョイーン

加賀「!?」

蒼龍「ま、まずい!提督が襲われる!」

北上「ほっ」ガシ

大井「おおおおお!?」グイーン

ビターンッ!!

大井「げぶっ」

北上「おー、危ない危ない…ごめんね、大井っちがねー」

風花「う、うん…お姉ちゃん、大丈夫…?」サスサス

大井「あ、ああ…浄化されるぅ……」

「テイトクゥー!!ワタシにもするデース!!」

「キャー!こっち向いてー!」

「あら〜、提督ったらもっと可愛くなっちゃったわね〜」

「うぉーー!?しれぇ、なんでちっちゃくなっちゃったのー!??」

風花「あのお姉ちゃん達、どうしてこんなに喜んでるの…?」

加賀「あなたは気にしなくていいわ、朝ご飯にしましょう」

風花「あなたじゃなくて、ふうかだよ」

加賀「…ごめんなさい、風花」

風花「うん、行こ」ギュ

加賀「ええ」ニコ

風花「…………」モグモグ

加賀「美味しい?」

風花「うん、おいし……っ」ビクッ

加賀「どうかした?」

風花「み、みんな私のこと見てる…なんで…?」

加賀「え?」クル

一同「………………」ジーッ

加賀「ああ……ちょっと待っててね、すぐ言い聞かせてくるから」

風花「う、うん…?」

飛龍「あはは…ほ、ほら、ご飯冷めちゃうよ」

風花「あ、それはやだ」モグモグ

ススス…

風花「………?」

瑞鳳「んふふふ」

風花「なんで笑ってるの?」

瑞鳳「ん?なんでもないよ、それよりほら、これ」コト

風花「…?これ、なに?」

瑞鳳「卵焼き。食べる?」

風花「! たべりゅ!」

瑞鳳「りゅ?」

風花「たべりゅ…あれ?たべ…りゅ…」

瑞鳳(可愛いなぁ…)

加賀「あら、瑞鳳…」

瑞鳳「加賀さん…って、それは…」

大井「」

加賀「この子に手を出そうとした者には容赦しないわ」

瑞鳳「そ、そう…」

加賀「で、あなたは何をしているの?餌付け?」

瑞鳳「そういうつもりじゃ…あ、加賀さんも食べる?」

加賀「ええ、いただくわ」

風花「この卵焼きおいしいよ、はい」スッ

加賀「え?」

風花「食べさせてあげるから、あーんして?」

加賀「あ、あー…」

パクッ

風花「ね?おいしいでしょ?」

加賀「……ええ、美味しいわ」

瑞鳳(うわあ…加賀さん、すごい嬉しそう…)

加賀「瑞鳳、あなた他の料理も出来るの?」

瑞鳳「え?あ、ああ、まあ…」

加賀「なら、少し教えてもらってもいいかしら」

瑞鳳「いいけど……誰かに作ってあげるの?」

加賀「その……」チラッ

風花「?」

瑞鳳「……ああ、なるほどね!そういうことなら任せて!」

加賀「助かるわ、ありがとう」

クイ

風花「お姉ちゃん」

加賀「なに?」

風花「遊んできていい?」

加賀「いいけど、あまり離れないでね」

風花「うん」

パタパタ

瑞鳳「じゃあ、まずは基礎からね……」

パタパタ…

隼鷹「でなー、鳳翔さんが猫にエサをあげててなー」

飛鷹「ええ…あ、隼鷹」

隼鷹「んお?なに?」

飛鷹「ほら、これ」

隼鷹「んー?」

風花「…………」ジー

隼鷹「おっ、提督じゃんか」

風花「ていとく?」

隼鷹「あー、今は何も覚えてないんだっけ…まあ座んなよ、ほら、隣」

風花「うん」ストン

風花「お姉ちゃん……もしかして、朝からお酒?」

隼鷹「ん?おー、そだよ。飲む?」

飛鷹「こら、隼鷹!」

隼鷹「へへへ、冗談だよ冗談。お嬢ちゃんにはまだ早いね」

飛鷹「もう…」

風花「ダメだよ、朝からお酒飲んじゃ。ダメな大人になっちゃうから」

隼鷹「くくく、子供に言われちゃったよ」ゴク

飛鷹「また鳳翔さんに怒られるわよ?」

風花「そうだよ、怒ってくれるうちにやめないと、どうしようもなくなるよ」

飛鷹「こ、子供なのに深いことを言うのね…」

隼鷹「まあまあ、今日は一日非番だからさ。勘弁してよ」

風花「ヒバン?」

隼鷹「なんにも仕事がないってことだよ」

風花「ニート?」

隼鷹「あっはははは!合ってる合ってる!」ケラケラ

飛鷹「隼鷹…あなたもう出来上がってるでしょう」

龍驤「お、ここにおったんやな。うわ、マジで小さくなってるなぁ」

風花「? おねえ…………あれ?」

龍驤「ん?どしたん?」

風花「……お兄ちゃん、男の子なのにスカート履いてるの?」

龍驤「違うわ!!うちは女や!!」ムキーッ

風花「え…そ、そうなの?でも、お胸がないし…」

龍驤「あるわ!!ないけど!ないけどあるわ!!」

隼鷹「あっはっはっはっは!!ふひゃっひゃひゃははは!!」ゲラゲラ

飛鷹「く、ふふふ…間違えられてる…」プルプル

龍驤「笑うな!笑うなアホー!!」プンスカ

風花「女の子なのにお胸がないなんて…かわいそうだね…」

龍驤「やめろ…やめてくれ…」

風花「…………」チラッ

隼鷹「くっくっくっく、ひーっひっひっひっひ…」ピクピク

龍驤「アンタはいつまで笑っとるんや!いい加減黙らんかい!」

飛鷹「ん、どうかしたの?」

風花「うん、同じ服のお姉ちゃん二人はおっきいなって」

隼鷹「んっふへへ、羨ましい?」

風花「うん。私もそんな風になれるかな?」

隼鷹「あー、そだねえ」

飛鷹「その心配はないと思うわ、うん…」ナデ

風花「?」

ポン

風花「…?」

榛名「提督、おはようございます」

霧島「あら、本当に小さくなってしまったんですね」

金剛「ワーオ!近くで見るともっとcuteネー!」ギュ

グイッ

風花「わっ…」

比叡「あっちょ、お姉様!いきなり抱き上げたら怖がりますって!」

金剛「ノープロブレム!ちゃんと支えてマース!」

風花「怖くない……けど、もうそんな歳じゃないよ」

霧島「ふふ、結構大人びてるんですね。ほら、下ろしてあげてください」

金剛「むー、もうちょっとだけ抱きたかったけど…しょうがないデース」

スッ

風花「ほっ」ストン

風花「ねえ、お姉ちゃん」

金剛「どうしマシタ?」

風花「その変な喋り方、お姉ちゃんは外国人さんなの?」

金剛「ンー……そうですネー、英国で生まれましたが、ハートは日本人そのものネー!」キラッ

霧島「そう、私達に敬語で話されるのは嫌なのね」

風花「うん、私の方が歳下だし…」

比叡「ごめんねー、普段の感じが抜けなくてねー」ナデナデ

金剛「聞けよ」

金剛「ンー、やっぱりテイトクは小さくなっても可愛いデスネー♪」ナデナデ

風花「……私、ていとくじゃない…」

金剛「へ?」

風花「私、風花なのに…みんな、私のこと、しれいかんとか、ていとくって呼ぶの」

霧島「お姉様、この子はまだ子供ですから。ちゃんと自分の名前で呼んでくれないと、安心しないのでしょう」

金剛「なるほど……なら、フーカちゃん、デスネー!」ギュ

風花「! うん!」

榛名(笑った…)

比叡(かわいい…)

瑞鳳「………で、あとはキツネ色になるまで揚げて…」

加賀「なるほど…」カキカキ

飛龍「加賀さん」

加賀「なに?」

飛龍「提督のことなんですが…」

加賀「何かあったの?」ガタ

飛龍「あ、いや、そういうわけじゃなくて」

加賀「そう…で、用件は?」

飛龍「えっと…あの子、知ってる人が誰もいないからか、ちょっと不安そうで…」

加賀「ああ……そうね、なんとかしてあげないと…」

瑞鳳「んー…」

瑞鳳「提督と同年代のお友達でもいればいいんだけど…さすがに子供にはなれないよねえ…」

加賀「同年代の友達、ね……」

飛龍「友達……」

瑞鳳「んー…」

飛龍「…………ん?」

加賀「…………友達?」

飛龍「…………あーーーーーーっ!!???」

瑞鳳「うわっ!?い、いきなりなに!?」

飛龍「そうだ、友達!!今日提督の友達が来るんだった!!」

瑞鳳「え、えっ?こ、この状態で?」

飛龍「だって、提督が小さくなったのも昨日だし、どうしようもないし…」

加賀「どうにか治す方法はないのかしら…」

飛龍「でも、何も原因が分からないし…」

飛龍「とりあえず、提督の部屋に戻ってみません?なにか痕跡があるかもしれませんし…」

加賀「そうね、なら連れ戻しに行きましょう」

飛龍「はい。えっと、風花ちゃーん」



風花「らにー?」

金剛「フーカちゃ〜〜〜〜ん♪」ムギュウ スリスリスリ

比叡「こっち向いて!ほら!」パンパン

榛名「すごい!もちもち!」ムニムニ

霧島「これは……いいものね…」ムニムニ

加賀「」ブチッ

飛龍「あっ」

提督の私室

加賀「はぁ……」

飛龍「お、お疲れ様です…」

風花「お姉ちゃん、あんまり怒っちゃダメだよ」

加賀「ごめんなさい…」

飛龍「えーっと……さっき部屋中見て回ったんですが、特にめぼしいものはなかったですね」

加賀「そう…どうすればいいのかしら」

飛龍「うーん……」

風花「?」

ピリリリ ピリリリ

飛龍「あ、提督の携帯ですね」

蒼龍「加賀さん、出てくださいよ」

加賀「え、私?」

飛龍「ほら、早く早く!切れちゃいますよ!」

加賀「え、ええ…どうやるの?」

蒼龍「ここをピッて」

加賀「こうかしら…」

ピッ

加賀「はい、もしもし…」

『やっほー……って、その声、風花じゃないっぽい?』

加賀「ええ、私は加賀よ」

『加賀……もしかして、艦娘さんの?』

加賀「そうね」

『へー、すっごい!あ、でも鎮守府にいるから当たり前か』

加賀「え、ええ…」

加賀「あの……用件は?」

『あ、そうだ忘れてた!風花は?もしかして今取り込み中?』

加賀「えっと…」

『ちょっと急な仕事が入っちゃってさ!そっちに着くの、夕方になりそうなの!って伝えといて!』

加賀「わ、わかったわ」

『ごめんねー、楽しみにしてただろうに』

加賀「……その、話していい?」

『え?ああ、いいよ。一方的に話しすぎちゃったね』

加賀「…落ち着いて聞いて」

『え、なに?風花に何かあったの?』

加賀「風花は……あの子は、小さくなってしまったの」

『……………はっ?』

『ちょっと待って』

加賀「なに?」

『小さくなったって、どういう意味?』

加賀「文字通りだけれど…」

『……マジ?』

加賀「ええ」

『そんなのあり得な……………いや、でも、あの子のことだし、あり得るかも……』

加賀「納得してくれた?」

『まあ、嘘ついてるようには思えないし……とりあえず信じてみるよ。小さくなったって、年齢で言えばどれくらい?』

加賀「そう、ね……」チラッ

飛龍「ほら、こうやって艦載機を飛ばすんだよ」ブーン

風花「なにそれ!?すごい!!」キラキラ

加賀「………八歳、くらいかしら」

『八歳、ね……八歳?』

加賀「?」

『それって、もしかして精神も子供になってるの?』

加賀「ええ、そうよ」

『だとしたら、変わった様子とかない?何も喋らないとか、部屋から出ようとしないとか』

加賀「………?いえ、特にはないわ」

『そっか、なら……あれからしばらく経った頃あたりかな……』

加賀「え?」

『……ん!ごめんごめん、ちょっと考え込んじゃった!えっとね、その子は………え、なに?はぁ!?また仕事入ったの!?』

『ドタバタ…』

加賀「…?」

『………っごめーん!さらに緊急の用事入っちゃってすぐ行かなきゃいけないの!またそっちに着いたら色々と話すから、それまで風花のお守り頼むね!それじゃ!』

加賀「ちょっ、そんないきなり…」

ブツッ

ツー ツー ツー

加賀「…………」

蒼龍「どうかしたんですか?」

加賀「切られたわ」

飛龍「なんて言ってました?」

加賀「夕方くらいに来るから、それまでよろしくと…」

蒼龍「……えっ」

飛龍「どうします?」

加賀「とりあえず、面倒を見てあげるとしか…」

蒼龍「でも、私達もう午前の演習ですよ?」

加賀「そう、よね…」

ガチャ

球磨「失礼するクマ」

多摩「同じく失礼するにゃ」

北上「いやー悪いね、大人数で押しかけて」

加賀「あなた達…」

大井「加賀さん達、もうすぐ演習があるんですよね?私達がこの子の面倒を見ますよ」

木曾「俺もいるぞ!」

加賀「………そうね、頼めるかしら」

球磨「任せろクマ!」

飛龍「それじゃ、私達は行くね」

蒼龍「あとは任せたよ!」

加賀「いい子にしてなきゃダメよ?」ナデ

風花「うん」

加賀「よし…ならいいわ」

ガチャ

バタン

風花「……ねえ、お姉ちゃん」

球磨「ん?なんだクマ?」

風花「お姉ちゃんはクマなの?」

球磨「球磨はクマじゃないクマ」

風花「あ、え……?」

球磨「球磨は球磨クマ」

風花「………???」

風花「えっと……こっちのお姉ちゃんは?」

多摩「多摩にゃ」

風花「…にゃ?」

多摩「にゃ」

風花「猫さんなの?」

多摩「猫じゃないにゃ」

風花「え……違うの…?」

多摩「にゃ」

風花「じゃあ、なんでにゃって言うの?」

多摩「さあ?」

風花「…………」

風花「ねえ、目隠ししてるお姉ちゃんはなんて言うの?」

木曾「目隠しって………まあいい、俺は木曾だ」

風花「キソ?キソって、どこの国の動物?」

木曾「いや、俺は動物じゃなくて…」

風花「キソお姉ちゃんはなになにキソーって言わないの?」

木曾「え?えっと…」

北上「言わないの?」

大井「ねえ、言わないのー?」ニヤニヤ

木曾「そ、そんなの言うわけ…」チラッ

風花「…………」ジーッ

木曾「うっ……!」

木曾「………き、木曾だキソー………///」カァッ

風花「わあ……」

球磨「グッ……」

多摩「ニャフっ……」

北上「ぶく……くくくく…」

大井「ンフ……ンフフフフ……」プルプル

木曾「わ、笑うんじゃない!!///」

風花「キソお姉ちゃん、キソはキソーって鳴くんだね!」

木曾「そ、そうだな…ははは…」

風花「キソお姉ちゃん、女の子なのに俺って言うんだね」

木曾「ん?ああ、そうだな」

風花「ふーん……可愛いのに、もったいないよ?」

木曾「えっ」

風花「ちゃんと女の子らしく私って言った方が可愛いよ、絶対」

木曾「あ、ああ…」

風花「でもそのままのキソお姉ちゃんもかっこよくて好きだよ、強そうだし」

木曾「っ……っ……!///」プルプル

北上「うわあ……」

大井「小さい頃からあんな殺し文句を…」

球磨「木曾が恥ずかしがるって滅多に見ないクマ…」

大井「ねえ、風花ちゃん?」

風花「なに?」

大井「はい、お手」スッ

風花「?」ポン

大井「はい、おかわり」スッ

風花「うん?」ポン

大井「よしよしよしよし」ワシャワシャ

風花「わぁー」

大井「北上さん!!この子可愛いです!!」

北上「ああうん、大井っちが楽しそうで何よりだよ」

木曾「犬か」

大井「ほら、わんわんって」

風花「わんわん!」

大井「ウフフ、可愛い犬ね…首輪を付けましょうね〜」

木曾「おい…」ガッ

北上「分かってるとは思うけど…」

球磨「変なことしたらただじゃおかんクマ」

大井「は、はい…」

風花「? 首輪、付けないの?」

大井「うん、怒られちゃったからダメみたい。でもね…」ゴソゴソ

風花「?」

大井「ほら、尻尾!これ付けましょう!」スッ

風花「……?このビーズみたいなの、なに?」

ガッ

大井「うぐえっ」

球磨「お前!!子供になんてもの見せるクマァ!!」ゲシッゲシッ

多摩「いい加減にするにゃあ!!」ガスッガスッ

北上「死ねっ!!」バキッ

大井「冗談です!!冗談です!!」

大井「んヌウウウおおおおおおおおおお」ググググ

北上「ごめんねー、大井っちがねー」

多摩「妹が粗相をしてすまんにゃ」

風花「うん、よくわからないけどいいよ」

球磨「オラ、もっと気張るクマ。椅子としての自覚を持てクマ」

大井「ハイッ!!」グググ

球磨「さて…風花、こっちに来るクマ」チョイチョイ

風花「? うん」

スタスタ

球磨「よっと」ヒョイ

風花「わっ」

ストン

球磨「お馬さんごっこだクマ」

風花「おー…」

球磨「叩くと走り出すクマ。やってみるクマ」

風花「えい」ペチッ

大井「んほぉ!!」

ドドドド

風花「っうわあ!!これすごい!あははは!」

球磨「楽しそうで何よりクマ」

木曾「大井姉…」

球磨「今のあいつに人権はないクマ」

大井「ぜぇ……ぜぇ……」

球磨「もう無理クマ?」

大井「ぜぇ……ぜぇ……」コクコク

球磨「よし、なら休んでいいクマ」

大井「うげぇ……」ドサッ

風花「お姉ちゃん、おつかれさま!楽しかったよ!」ギュッ

大井「!!???!?!!!!?」

風花「えへへへ、大井お姉ちゃんは優しいね」

大井「ああ……………」シュワァ…

北上「ん……?」

木曾「なんだ…大井姉の影が薄くなっているような…」

多摩「……マジで薄くなってるにゃ!!」

球磨「うおぉ!?大井、消えるなクマ!!帰ってくるクマ!!」

大井「ふぅ……危ない危ない、もう少しで消えるところだったわ」

球磨「お前がその子抱えてると危険クマ、こっちに寄越すクマ」ヒョイ

風花「おー」

球磨「さて、しばらくは球磨が遊んでやるクマ」ワシャワシャ

風花「ん……髪、くしゃくしゃになっちゃう」

球磨「おっと、すまんクマ。ならブラッシングしてやるクマ」クルン

多摩「多摩もやるにゃ」

風花「優しくしてね?」

球磨「任せろクマ」

木曾「……………」

北上「あの二人って、割と面倒見いいよね」

大井「結構お姉さんらしいところがあるというか…」

木曾「ああ…お守りは任せるか」

〜〜〜

風花「立ってる!」ギュ

球磨「クマァ!?いてて、髪を掴むなクマ!」

多摩「大変そうにゃあ…」

球磨「見てないで助けるクマ〜!」

ガチャ

天津風「失礼するわね」

時津風「うおぉー!?しれぇ、ほんとに小さくなってるーー!?」バタバタ

卯月「うーちゃんにも見せるぴょん!」

球磨「うお、いきなりなんだクマ」

弥生「ごめんね…騒がしくて」

球磨「遊びにきたクマ?」

弥生「うん、そんなところ」

球磨「そうか、ならバトンタッチだクマ」

弥生「いいの?」

球磨「子供の相手は子供が一番いいクマ」

北上「ぶっちゃけ疲れただけでしょ?」

球磨「………子供の体力を侮っていたクマ」

弥生「…まあそういうことなら任せて、他にも司令官と遊びたいって子はたくさんいるから」

球磨「じゃあ、頼んだクマ。ほら、撤収クマ」

風花「またねー」

大井「♪」フリフリ

バタン

卯月「んふふふ〜」

風花「……?」

卯月「ねえふーちゃん、うーちゃんのこと覚えてる?」

風花「………?ごめん、覚えてない…」

卯月「そっか、なら改めて自己紹介するぴょん!うーちゃんは、卯月って言うぴょん!」

風花「ぴょん……うさぎさん…?」

卯月「そうっぴょん!ふーちゃんもぴょんぴょんするぴょん!」

風花「ん……っぴょん!」ピョン

卯月「ぴょん!」

時津風「ぴょん!」

弥生「ぴょん」

天津風「…………」

風花「…………」ジー

天津風「……いや、やらないから」

卯月「ノリが悪いぴょん」

風花「ねー」

卯月「ねー」

卯月「さて、これからはうーちゃん達が遊んであげるぴょん」

風花「うん」

卯月「とは言っても、この部屋だけじゃ出来ることは限られるし、大人もだいたい出払ってほとんど子供しかいないぴょん」

風花「じゃあ何するの?」

卯月「逆に言えば止める人がいないから好き放題出来るぴょん!!」

風花「うん

時津風「おおー!いいねえ!!」

天津風「ちょっと、あまり危険なことは…」

卯月「だから!鎮守府全体かくれんぼを開催するっぴょん!!」

風花「おおー」パチパチ

時津風「いぇーーーい!!!」

弥生「…………」パチパチ

卯月「そうと決まれば食堂にみんなを集めるぴょん!ゴー!!」ダッ

風花「ごー!」ダッ

天津風「…………」

時津風「行かないの?」

天津風「いや……付き合うわ」

〜〜〜

卯月「というわけで!駆逐艦全員で鎮守府全体かくれんぼをやるぴょん!みんな、ふーちゃんのためにこぞって参加するぴょん!」

「「「ワアアアアアアア!!!」」」

天津風「さすが、子供はノリがいいわね」

時津風「天津風はノリ悪いけどね」

天津風「うぐ…ほっといてよ」

卯月「駆逐艦じゃなくても、参加したいって人はご自由にどうぞっぴょん!」

曙「なにがかくれんぼよ、バカバカしい…あたしは部屋に戻るから」

卯月「はーい!それじゃあ第七駆逐隊が鬼でスタートぴょん!」

曙「はぁ!?」

卯月「一人も見つけられなかった鬼はふーちゃんと会話出来る権利を永久に剥奪されるぴょん。じゃ、百数えたら探しにくるぴょーん!」ダッ

「「「ワアアアアアアア!!!」」」

ドドドドド…

曙「ちょっと!?」

潮「まあまあ…提督を喜ばせるために、ね?」

曙「釈然としないけど……まあいいわ、ふん捕まえてお尻叩いてやるんだから!」

漣(なんだかんだで楽しんでるじゃん…)

時津風「わはー!早く隠れないと鬼がくるよー!」バタバタ

風花「どこがいいかな」

ビュン

時津風「うわお!?」

島風「てーとくおっそーい!隠れるのも島風が一番速いもんねー!!」

天津風「あの速力バカ…」

風花「………」ムッ

ビュンッ

島風「おぅっ!?」

風花「私の方が速いもん!」

島風「なにをー!?一番速いのは私だもん!!」

白露「一番!?一番ならあたしだよ!!」

風花「私!」

白露「私!」

島風「私!」

「「「おおおおおおおおお!!!」」」

ドドドドド

時津風「うわ、はやっ!」

天津風「ちょっ、追いつけないじゃない!」

「「「おおおおおおおおお!!!」」」

ドドドドド…

ズザッ

風花「はぁ…はぁ………ほら、私が一番速……?」

風花「あれ……みんな、置いてきちゃった…?」キョロキョロ

風花「……………」

風花「……まあいっか、隠れるところ探さなきゃ…」

風花「………ここ、どこだろう…?」

パタパタ…

加古「ふぁ〜……ねっむ……」テクテク

加古「昼飯前に一眠りすっかな〜……お?あれは…」

風花「うーん…」パタパタ

加古「……抱き枕発見」




風花「ど、こ、にっ、し、よ、う、か、なー…」

ギュ

風花「う?」

加古「お持ち帰り〜」スタスタ

風花「???」

ガチャ

古鷹「あ、戻ってきた……って」

加古「おやすみ〜……」ボフッ

風花「……?もう寝るの?まだお昼だよ?」

加古「ぐう……」

風花「お姉ちゃん?」

古鷹「えっと……風花ちゃん、だよね?」

風花「え?うん、そうだよ」

古鷹「ごめんね、その子、一度寝たらなかなか起きないから…そっとしておいてあげて?」

風花「…だらしないんだね」

古鷹「あはは…」

パシャッ

風花「!」ビク

青葉「んー、小さくなった司令官!可愛らしいですねぇ〜」

古鷹「もう、青葉!いきなりフラッシュ焚いたらこの子がびっくりしちゃうでしょう!」

青葉「いやーすみません、ちょっと興奮しちゃったもので」

風花「……写真?」

青葉「はい、そうですよ!もう一枚撮ってもいいですか?」

風花「うん、好きなだけ撮っていいよ」

青葉「あは、きょーしゅくです!じゃあピースしてもらってもいいですか?」

風花「こう?」

青葉「はい!で、もっと笑って!」

風花「うん」ニコ

青葉(やば、可愛い…)

パシャッ

青葉「うわお……いいですねえ!次は古鷹も一緒に並んで!」

古鷹「いいの?」

青葉「こんなチャンス二度とないですからねえ、記念です!」

古鷹「じゃあ…よろしくね」

青葉「はい、二人とも笑って笑って〜……一足す一はー?」

風花「にー♪」

古鷹「にー♪」

パシャッ

〜〜〜

風花「いっぱい写真撮ってもらっちゃった…」パタパタ

ギュ

風花「ん?」

大鯨「ふふ、捕まえた♪」

風花「…お姉ちゃん、おに?」

大鯨「ううん、違うけど…お腹空いてない?」

風花「ん………すいてる」

大鯨「やっぱり?ちょうどその頃だと思ってきたの。もうお昼時だから…」

風花「そうなの?」

大鯨「うん、ご飯食べに行く?」

風花「行く!」

大鯨「ふふ、なら行きましょうか」ギュ

食堂

ガチャ

大鯨「連れてきました〜」

武蔵「お、来たぞ」

風花「ごはん…」

大和「あ、提督……じゃない、風花ちゃん!」

風花「うん?私?」

大和「ご飯、何が食べたい?なんでも好きなものを言っていいのよ?」

風花「んっと……オムライスがいい」

大和「オムライスね、すぐ作るわ!」

大鯨「あ、私もお手伝いします!」

パタパタ…

武蔵「珍しく大和が敬語じゃないな…」

風花「?」

武蔵「……まあ、君がこの状態じゃ仕方ないか」

武蔵「…………ん?」

風花「…………」ジー

武蔵「ふっ……遊んで欲しいのかい?おいで」

風花「だ、ダメ」

武蔵「? なぜだ?」

風花「そんな服で遊んだら、脱げちゃうから…」

武蔵「服?ああ、これは服じゃなくてサラシというものでな」

風花「服じゃない……え、じゃあ裸なの!?」

武蔵「いや、そういうことでは」

風花「それじゃへんたいさんだよ!ちゃんとした服着なきゃダメだよ!」

武蔵「…………」

大和「もう少しで出来るから待っててね……って、武蔵、どうして頭を抱えてるの?」

武蔵「いや……子供と話すのは存外疲れるものなんだと思ってな…」

風花「そんな格好で外出たらおまわりさんに捕まっちゃうよ」

武蔵「教えてくれ大和、私はおかしいのか?」

大和「え、ええ…?いきなりそんなこと言われても…」

風花「お姉ちゃんも、こんなに横が空いたスカート危ないよ?変な人に見つかったらなにされるかわからないもん」

大和「そ、そうなの?」

風花「そうだよ!」

武蔵「子供の道徳心はすごいな……」

パタパタ

大鯨「大和さーん、もう仕上げられますよー」

大和「あ、はい!それじゃあ、すぐ持ってくるからね」

風花「うん」

武蔵「大和の料理は美味いぞ」

風花「ほんと?」

武蔵「ああ、この武蔵が保証する」

パタパタ

大和「お待たせしました」カタ

風花「わあ…」

武蔵「くくく、ケチャップでハートとはな。やるじゃないか」

大和「ふふ、武蔵のも書く?」

武蔵「本当か?」キラキラ

大和「えっ」

大鯨「ちょっと机が…高いですね」

大和「ほら、ここ。おいで?」ポンポン

風花「うん」

トタタ

風花「よいしょっと」ポスン

大和「ああ、かわいい……」

風花「いただきます」

大鯨「あ、武蔵さんの分も持ってきますね」

武蔵「む、ありがたい」

ガチャ

明石「うー……おはようございま〜す…」ゴシゴシ

武蔵「おはよう……って、今起きたのか?」

明石「まあ、二徹ぐらいしてたもので…まだ寝てたいんですけどね…」

武蔵「そ、そうか…」

大和「美味しい?」

風花「うん、おいしい……おかわりある?」

大和「ええ、もちろん。たくさん食べてね♪」

明石「……ところで、その子は誰です?」

武蔵「ん?ああ、提督だ」

明石「ああ、提督…………ん?」

武蔵「どうかしたか?」

明石「提督?」

武蔵「ああ」

明石「その子が?」

武蔵「ああ」

明石「………………」




「えええええええええええええええ!!??」

明石「えっなっんっあ、えええぇ!?」

武蔵「もう少し静かにしないか」

明石「いやだって、ええっ!?」

武蔵「まあ言いたいことは分かるが…どうしてこうなったかも分からん以上、何も出来ないのが現状だ」

明石「は、はぁ………今の衝撃で目が覚め…………あれ?」

武蔵「どうした?」

明石「………確か、成分を配合する段階でやった試験にヒトの細胞だと若返りすぎた記録を書いたような…」

武蔵「え?」

明石「でもそれだと艦娘には効果が薄すぎるから、そのまま運用して……」

武蔵「お、おい、分かるように説明してくれ」

明石「……え?あ、ああ、すみません」

明石「………というわけで、提督が小さくなってしまったのはその化粧水を飲んだからかもしれないんですよ」

武蔵「なるほどな…艦娘用に作った肌を若返らせる化粧水を、提督がそのまま飲んでしまったからか」

明石「理屈ではそうなりますね…それが完成したことは足柄さんには伝えてませんし、そもそもボトルだけ空になってるということは昨日の晩に見回りをしていた提督が誤飲した可能性が高いでしょう」

武蔵「ふむ……原因は分かったが、これをどうにかする手段はないのか?」

明石「ありますよ。実験の段階で、提督が飲んだものと真逆の性質を持った薬品が出来たんです。それを少し飲ませてあげれば元に戻ると思います」

武蔵「そうか、いつ頃治るんだ?」

明石「効果が出るとしたら、早くて明日の朝といったところですかね…」

武蔵「明日、か……」

明石「それじゃあ私、薬取ってきますね!」ダッ

武蔵「ああ」

風花「げふ……」

大和「すごい、二杯全部食べちゃった…」

風花「おいしかった……ありがと、お姉ちゃん」

大和「ふふ、どういたしまして」

明石「ちょっといいですか?」

風花「なに?」

明石「えーっと……このお薬を飲んでくれるかな?」スッ

風花「おくすり?私、病気じゃないよ?」

明石「あー、そうじゃなくて………そう、これを飲めば、病気を予防出来るの!」

風花「予防……お注射、しなくていいの?」

明石「そうそう!これで済むからね!」

風花「なら、飲む」

ゴク

風花「うぇ……にがい…」

明石「ごめんね、でもお薬はそういうものだからね…我慢出来る?」

風花「うん…」

明石「よしよし、えらいねー」ナデナデ

大和「何を飲ませたの?」

武蔵「元に戻る薬だと。明日にはいつも通りに戻るそうだ」

大和「そうなの…私はこのままでもいいんだけど…」

武蔵「そうもいかんだろう…」

ガチャ

時津風「あーっ、いた!!」

天津風「あなた、かくれんぼ中に抜け出しちゃダメでしょ!」

風花「あ…忘れてた」

天津風「みんなあなたを探してるわ、行きましょう」ギュ

時津風「次はあたし達が鬼だよ!」

風花「うん。お姉ちゃん達、またね」

大和「ええ、またね」

バタン

〜〜〜

加賀「ただいま帰投しました」

飛龍「はーつっかれた〜…」

蒼龍「あれ?」

飛龍「どしたの?」

蒼龍「提督の友達さん、まだ来てないの?」

飛龍「そう言われてみれば…」

加賀「夕方あたりに来るとは言っていたけれど…」

『執務室、誰かいますか』

飛龍「あ、大淀ちゃんだ」

ガチャ

加賀「どうかしたの?」

『提督のお友達がお見えになりました。誰か、迎えに行ってあげられませんか?』

加賀「私達、まだ艤装の片付けが…」

ガチャ

電「なら、電が行ってくるのです」

『電さんですね、よろしくお願いします』

電「なのです!」

飛龍「ごめんね、任せた」

パタパタ

「ううーさっぶ……いつまで待てばいいんだろこれ…」

「……お?あの子かな?」

パタパタ

電「お待たせして申し訳ないのです!あなたが司令官さんのお友達の……」

雪菜「そうそう、雪菜だよー。よろしくね」

電「はい、よろしくお願いします、なのです」ペコリ

雪菜(礼儀正しい子だなー…)

雪菜「ねえ、もしかして君って艦娘さん?」

電「へ?はい、そうなのです」

雪菜「だよね!ねね、ちょっと触ってみてもいい?」

電「は、はい…どうぞ」

雪菜「わー、ありがと!」ペタペタ

電(よく分からない人なのです…)

雪菜「ふんふん…」ペタペタ ムニムニ

雪菜(やっぱりどう見ても普通の人間だよねえ…これが海で戦ったりするのかー…)

電「あの、もういいですか?」

雪菜「ああうん、ありがとね」

電「それじゃ、案内するのです」

雪菜「はーい」

ガチャ

雪菜「うっわー……外観で想像はついたけど、玄関ですらここまで広いとは……」

電「向こうが司令官さんの私室なのです」

雪菜「ほー、廊下もこんなに長いんだ…すごいところに住んでるもんだねえ…」

電「普段はみんながいるから、結構騒がしいのですが…今日はほとんどの人が遠征や出撃でいないのです」

雪菜「へえー…ここって、どれくらいの艦娘さんがいるの?」

電「えっと……だいたい百人くらいなのです」

雪菜「百人!?そんなに多いの!?」

電「はい、その指揮をとっているのが司令官さんなのです」

雪菜(はえー…あたしの知らないところですごい役割担ってるんだ…風花ってば…)

電「ここが司令官さんのお部屋なのです」

雪菜「うん、ありがと。電ちゃんだっけ?小さいのに偉いね」ナデナデ

電「そ、そうでもないのです///」

コンコン

雪菜「失礼しまーす」

ガチャ

加賀「ん…来たのね」

雪菜「どーもどーも、比嘉雪菜と申します」

加賀「あ…ええと、航空母艦、加賀です…でいいのかしら…」

雪菜「あ、加賀さんって朝電話出てくれた艦娘さん?だよね?」

加賀「ええ、その通りね」

雪菜「やっぱり!いやーごめんね、急に仕事が入っちゃって」

加賀「気にしなくていいわ、仕事なら仕方ないことでしょう」

電「お茶を淹れてくるのです」

雪菜「お構いなく…って言っても、あの子みたいな性格じゃ聞かないか」

加賀「そうね」

加賀「仕事って、何をしているの?」

雪菜「んー……まあ、カウンセラーみたいなものかなあ」

加賀「カウンセラー?」

雪菜「そっか、艦娘さんって外の世界のことは詳しくないんだっけ。簡単に言うと、心の病気を治す人のことだよ」

加賀「なるほど……忙しいの?」

雪菜「そりゃあもう!結構都会の方に店あるんだけど、精神科って言ったらあたし一人ぐらいしかいないからさあ」

加賀「それは大変ね」

雪菜「まあ慣れたら軽いもんだけどさ…それより、艦娘さんの方が大変じゃないの?ほら、戦場で一つ状況を読み違えれば死ぬ可能性だってあるんでしょ?」

加賀「確かにそうだけど…私達には優秀な指揮官がいるもの、怖くなんてないわ」

雪菜「ふーん…あの子、そんなにすごいの?」

加賀「そうね……戦場で一人も死人を出していないと言えば伝わるかしら」

雪菜「むむ…そりゃすごい」

雪菜「あ、そうそう、風花はどこにいるの?小さくなっちゃったんでしょ?」

加賀「さっきまで遊んでいたから、そろそろ戻ってくる頃だと思うけれど…」

ガチャ

風花「お姉ちゃーん」

雪菜「うわー風花!久しぶりだね〜!」

風花「え、雪菜!?なんで大人になっちゃってるの!?」

雪菜「あははは!違うよ、風花が子供になっちゃったんだよ!」

加賀(一目で分かるのね…)

風花「え?な、なんで…?私、大人だったの…?」

雪菜「ん〜、まあ難しいことは考えなくていいよ」

風花「う、うん…」

風花「ん〜……」ソワソワ

加賀「ほら、立ってないで座りなさい」

風花「お姉ちゃん、だっこ…」スッ

加賀「はいはい…」ギュ

ストン

風花「ん…ありがと…」

雪菜「あはは、そうしてると風花のお母さんみたい」

加賀「…それ、この子にも言われたわ。そんなに私とお母様は似ているの?」

雪菜「似てる似てる、あたしもさっき加賀さん見た時風花のお母さんかと思ったもん」

加賀「そうなの…」

雪菜「いやーなんだか思い出すなあ、あの頃を…」

加賀「……この子とはいつからの付き合いなの?」

雪菜「いつからも何も、産まれた時から一緒だよ。この子の妹より親しい間柄なんだから」

加賀「へえ…聞かせてもらえる?」

雪菜「ん、いいよ」

ガチャ

電「お茶、置いておくのです」

雪菜「と、その前に…」ゴソ

加賀「?」

雪菜「ここって禁煙?」チンッ

加賀「いえ、特には決まってないはずよ」

雪菜「そっか、なら一本だけ吸わせてもらうね」

加賀「ええ」

雪菜「いやあ悪いねえ、今日一本も吸ってなかったからさ」スタスタ

ガラッ

加賀「吸わなきゃいけないものなの?」

雪菜「そういうわけじゃないけど、仕事柄吸わなきゃやってらんないっていうかね。結構ストレス溜まるもんだから」

加賀「そう…大変なのね」

風花「…………」カクン

加賀「眠いの?」

風花「うん……」

加賀「このまま寝てもいいのよ」

風花「うん…」ギュ

加賀「…………」ポンポン

雪菜「あはは、ずいぶん懐いてるみたいだね。やっぱりお母さんに似てるからかな?」

加賀「…そうかしら」

雪菜「それともあれかな、昔甘えられなかった分を今取り戻そうとしてるのかな」

加賀「この子、昔なにかあったの?」

雪菜「あ、そういや昔の話だっけ。窓開いてるからちょっと寒いけどいい?」

加賀「ええ」

雪菜「そだね、まずは生い立ちから話さなきゃね」

加賀「産まれた時から一緒と言っていたけれど…」

雪菜「ああ、あれはウソ。同じ病院で産まれたのは確かだけど、実際のところはあたしの一日遅れで風花が産まれたんだよね」

加賀「…まあ、間違ってはいないわね」

雪菜「もともとあたしの母さんと風花のお母さんって、家が隣同士だったから仲良しでさ。それで、出産のタイミングもかぶったからあたし達も仲良くなったわけ」

加賀「なるほど…」

雪菜「赤ちゃんの頃だからよく覚えてないけど、いつも一緒にいた気がする。大きくなっても、ずっとそうだったから」

加賀「そんなに仲良しだったの?」

雪菜「そりゃもう、お風呂に入る時も寝る時もずっと引っ付いてたよ」

加賀「…そう」

雪菜「ん?もしかして嫉妬しちゃった?」

加賀「いえ…そうでもないわ、今はこの子がいるから」

雪菜「へ?この子がいるって?風花のこと?」

加賀「ええ。私の恋人」

雪菜「………はっ?こ、恋人?」

加賀「そうよ」

雪菜「え?加賀さんと風花が?」

加賀「ええ」

雪菜「……マジで!??やっぱりこの子、レズ脱却出来なかったの!?」

加賀「え?」

雪菜「あ、いや、ごめん。こっちの話。あー…そうなんだ、ダメだったかー…ちょっと積極的にしすぎたかな…」

加賀「何の話?」

雪菜「………いや、ぶっちゃけね。この子が女色家になったの、私のせいなんだよね」

加賀「どういうこと?」

雪菜「それはまた後で話すから、続きをしていい?」

加賀「まあ、そういうことなら…」

雪菜「どこまで話したっけ…インパクトが強すぎて記憶が吹っ飛んだ」

加賀「あなたと風花が小さい頃からずっと一緒にいたところまで聞いたわ」

雪菜「ああ、そうそう…で、この子の一人目の妹が産まれてからだったかな、だんだん遊ぶ時間が減ったのは」

加賀「仲が悪くなったわけではないのよね?」

雪菜「うん、むしろ妹が出来たーって喜んでる風花を応援してあげてたよ。産まれる前からよくいいお姉ちゃんになるって張り切ってたから」

加賀「そう…その後は?」

雪菜「そうだね、特に何かあったわけでもなく二人目の妹が産まれて…よく遊びに連れて行ったり世話を焼いてたよ」

加賀「…いいお姉ちゃんだったのね」

雪菜「うん…その時はまだ、ね…」

加賀「…?」

雪菜「…この子が八歳ぐらいの頃、だったかな。私達が住んでた街に、大きな木がある公園があったの」

加賀「ええ」

雪菜「いつも通りそこに妹達と遊びに行ったら、木の上に降りられなくなった猫が居たらしいの」

加賀「……」

雪菜「風花は大人の人を呼んでくるって言ったんだけど、上の妹が待ち切れずに木に登っちゃって…」

加賀「…落ちたの?」

雪菜「そうだね、それで妹さんが意識不明になって病院に運ばれて…三日ぐらいずっと泣いてたよ」

加賀「それは…そうね、辛いことね…」

雪菜「まあ、特に後遺症もなく無事に退院出来たんだけど………問題はその後でさ…」

加賀「なにかあったの?」

雪菜「……風花の両親がさ。そのことで喧嘩しちゃったんだよね」

加賀「どういうこと?」

雪菜「命に関わるような問題だったからね。二人とも気が立って、なんでちゃんと見てやらなかったんだってお互いを傷付けあってた」

加賀「…離婚?」

雪菜「あ、離婚はしてないよ。ただ風花のお父さんが妹二人を連れて、別居状態になってただけ」

加賀「今もそうなの?」

雪菜「ううん、今はちゃんと仲直りして一緒に暮らしてるよ。でも、この出来事が風花に与えた傷はかなり大きかったみたい」

雪菜「妹達がいなくなってからは、ほんとにもぬけの殻みたいだったよ。あたしが部屋に行っても反応すらしなかったし、揺すぶってもどこを見てるか分からないような目だった」

加賀「…………」

雪菜「言葉が出ない?」

加賀「………まだ小さいのに、そんなの、あんまりすぎるわ…」

雪菜「…そうだよね。感性豊かな子供がそんな重い現実に直面出来ると思う?」

加賀「無理よ、そんなの…」

雪菜「そう、それっきり風花は変わってしまったの。いつも笑顔で、明るい性格だったのに…あたしが何をしても笑わなくなった。たぶん、あの頃は相当病んでたんだと思う」

加賀「………で、どうなったの?」

雪菜「風花がおかしくなったのはこれだけじゃなくて…お父さん達が出て行って、お母さんが働きに出てる時は親戚の人が来てたらしいんだけど、その人が典型的なアルコール依存症でね…」

加賀「アルコール依存症?」

雪菜「うん。お酒が切れると、すぐに暴力に走ったり物を壊したりして、よく風花の家から怒鳴り声と物音が聞こえてた」

加賀「…………」

雪菜「風花は殴られたりしなかったみたいだけど、いつも風花のお母さんは暴力を振るわれてたんだって。仕事の帰りが遅かったり、疲れで料理を焦がしたりしただけで…殴られてたって…」

加賀「…それを、見てたの?」

雪菜「うん、長い間。それで決定的だったのが、ある事件なんだ」

加賀「事件?」

雪菜「………あの子が、八歳になる時の誕生日だったっけ。その日は早めにお母さんがケーキを買って帰ってきて、二人でお祝いをしようとしてたんだ。けど…」

加賀「…………」

雪菜「…ギャンブルに負けた、親戚の男が家に戻ってね。その腹いせにケーキを床に放り投げて、お母さんに当たり散らしたの」

加賀「……最低の人間ね」

雪菜「で…あとでお母さんに聞いた話なんだけど、腹の虫が収まらない男が棚に置いてた家族の写真を投げ捨てたんだよね。それを見た瞬間、風花の目の色が完全に変わって…何をしたか分かる?」

加賀「怒ったの?」

雪菜「怒ったとかそういうレベルじゃないよ。刺したんだよ」

加賀「……は?刺した?」

雪菜「タガが外れたって言うのかな、それまでずっと溜め込んできたものが爆発したみたいで…すぐ近くに置いてあったケーキナイフで腹を刺したの」

加賀「……まだ、小さいのに…」

雪菜「何度も何度も『返してよ!私の世界を返してよ!!』って叫んでたって。この子にしてみれば、自分の世界は大切な家族達がいるものだったんだろうね」

加賀「…その後は?どうなったの?」

雪菜「傷が浅かったおかげで死にはしなかったみたい。まあ、その一件ですっかり風花を畏怖の対象として見てたからすぐ蒸発したみたいだけど」

加賀「……この子は?」

雪菜「ああ、まだ子供だからってことで警察には厳重注意で済まされたよ。ただ…この子が本当に望んでたものは得られなかったんだよね」

加賀「どういうこと?」

雪菜「男を刺してるこの子を止めようとした時、お母さんは半狂乱になった風花に腕を切り付けられたの。刺した時のことは夢中でほとんど覚えてないらしいんだけど、この時のことは正気に戻ったから覚えてるんだって」

雪菜「風花はそのことに負い目を感じてて、お母さんに話しかけようとしなかったんだ」

加賀「お母様の方は?この子に何かしてあげなかったの?」

雪菜「心労もあったんだろうけど…あとで話された時には、どう接してあげればいいのか分からなくなった。母親失格だって、泣きながら言ってたよ」

加賀「そう……そんなことがあったのね…」

雪菜「んまあ、これだけだったらただの暗い子になってたんだろうけど、ここまでメンヘラみたいになったのは間違いなくあたしのせいなんだよねえ…なんだか、ほんと申し訳ないや」

加賀「気にしなくていいわ、続けて」

雪菜「そだね……ま、当然そんなことがあったらまともな精神状態でいられるはずがないでしょ?ましてやまだ子供だし、もう限界寸前だったよ」

加賀「…そうね」

雪菜「で、その日から風花はあたしに甘えてくるようになったんだよね。小さい頃上手く甘えられなかった子は常に愛に飢えるようになるってよく言うけど、まさにそれを体現したみたいだったよ」

加賀「助けてあげたの?」

雪菜「そんなつもりじゃなかったんだけど…まあ、結果的にそうなったかな。それこそあたしがいないだけで泣き出したりとか、とにかくあの頃は精神状態がまともじゃなかったよ」

加賀「……苦労してきたのね」

雪菜「あれが依存って言うのかな?学校でも常にそばに居られるように校長に無理言って毎年同じクラスにしてもらったり、あたしが風邪引いて学校休んだ時はこの子も一緒に休んでたよ」

加賀「文字通り、いつも一緒だったのね」クス

雪菜「ほんと、すごかったよ。高校受験の時、この子あたしより成績良くなかったのにさ、あたしと同じ高校行くーって猛勉強したんだよ」

加賀「そんなに?」

雪菜「うん、実際のところやってたのは数学ばっかりだったけど…寝る間も惜しんでやってたよ。結果、あたしより遥かに上の成績で合格しちゃった」

加賀「ふふ…極端な子ね」

雪菜「元々努力する派の人間だからね、本気でやればなんでも人並み以上には出来るんじゃないかな」

加賀「ねえ、他に面白い話はないの?もっと聞きたいわ」

雪菜「ん?面白い話かあ、そうだなー…」

雪菜「…………あ。そうだ、ここの子達ってこの子本気で怒らせたことある?」

加賀「え?ええ、一度寝不足の時に騒いでいた子達が怒鳴られていたような…」

雪菜「あー、それ本気じゃないよ。怒鳴ってるうちはまだ優しい方」

加賀「…と、いうと?」

雪菜「さっき、風花とは常に一緒に居たって言ってたでしょ?けど、高校でも同性とベタベタしてたら当然それを快く思わない連中もいるんだよね」

加賀「何かされたの?」

雪菜「ん?まあ、放課後体育館裏に一人で呼び出されてさ。どんな時代だよって思ってたら「キモい」だの「イチャついてんじゃねーよ」だの罵詈雑言を吐かれて殴る蹴るの暴行だったね」

加賀「それ、そんな笑って言うことじゃ…」

雪菜「いいんだって、昔のことだし。さすがにあの場に男がいたら犯されてただろうから笑えないだろうけど」

加賀(犯されてただろうって…なぜ笑いながら言えるのかしら…)

雪菜「でさ、その現場を風花に見られちゃってさ。何やってるのって聞かれて、いじめられてましたって簡単に言うわけにもいかないでしょ?だからまあ、ただ遊んでるだけって言ったら「そっか」とだけ呟いて一緒に帰ったんだけど…その日はそれ以降一言も喋らなくてすごい不気味だったね」

加賀「…変な人達に絡まれたものね」

雪菜「うん、その翌日なんだけど…なぜか風花とそのあたしを呼び出したグループが学校を休んだんだよね。まあここまで言えば理由は分かるだろうけど…」

加賀「報復をしたの?」

雪菜「何をやったかまでは知らないけど…それからしばらくは、そのグループは学校に来なかったね。で、最後に見たのが退学届を学校に持ってきた時だったよ」

加賀「た、退学?」

雪菜「うん、四人いたんだけど…一人は眼帯になってて、二人は片腕、もう一人は両腕を骨折してたよ。そのことについて風花に聞いたら何も知らないって言ってたけど」

加賀「……そこまでやったの?」

雪菜「全員顔が怯えきってたからねえ、たぶん中身はもっとひどかったんじゃないかな」

加賀「…………」ゾク

雪菜「あ……そうだ、加賀さん、この子と付き合ってるんだっけ」

加賀「? ええ、そうね」

雪菜「いいなあ…あたしも、あの時ちゃんと返事してたらなあ…」

加賀「……?もしかして、あなたもこの子に何か言われたの?」

雪菜「ん?ああ、まあ、そんなところ」

加賀「聞いてもいい?」

雪菜「いいよ。………きっかけは…いつだったかな?確か、この子が恋文もらった時だったっけ…」

加賀「恋文?異性からも人気があったの?」

雪菜「そりゃまあ、こんなに可愛くて家事出来る子ほっとく人の方が珍しいでしょ。男より女の子の方が多かったけど」

加賀「そ、そう…」

加賀(どんな台詞回しで女を落としてきたのかしら)

雪菜「で、初めて風花が恋文もらった時にさ、風花はどんな人とお付き合いするのかなー?って茶化してみたんだけど…困ったような顔で「うん、そうだね…」って言って、それからしばらくは口数が少なくなってたんだ」

加賀「その恋文は男の人が送ったの?」

雪菜「ん、そう。その日から様子がおかしくて、あたしのことを見つめるようになったり、あたしが抱き付いたりほっぺにチューしたりしても反応がないというか…」

加賀「ちょっと待って」

雪菜「なに?」

加賀「いくら親友とはいえ、普通そんなことする?」

雪菜「しないんじゃない?」

加賀「なら、それが同性愛に目覚めた原因なのでは…」

雪菜「まあそうだろうね、ぶっちゃけ風花もあたしのこと好きだったしあたしも風花のこと好きだったし」

加賀「…そこまで行ったのになぜ恋仲に発展しなかったの?」

雪菜「意外にも先に告白してきたのは風花の方だったんだよね。それで、気が動転したっていうか…」

加賀「どんな風に?」

雪菜「いきなりベッドに押し倒されて、『ねえ、恋ってなんなの?あの人はどんな気持ちで私に好きだって言ったの?私みたいに…苦しくて、ぎゅってなるような気持ちだったの?ねえ、教えてよ。私は、雪菜に恋をしているの?』って。泣きそうになりながら言われたよ」

加賀「…で?返事は?」

雪菜「……たぶん、今でも後悔してる。あたしもこの子のことが好きで、恋人になりたいってずっと思ってたの。けど、いざそう言われるとなんだか怖くなっちゃって…さ…」

加賀「逃げたの?」

雪菜「………うん。あたしのせいでこの子が変な人みたいに思われて、その責任があたしに来ると思ったら怖くて……ただの勘違いだって、嘘ついて逃げちゃった」

加賀「………そう」

雪菜「いつかまたそんなチャンスが来るとか、甘い考えでいたけど…先、越されちゃったなあ…」

加賀「……………」

雪菜「……ねえ、加賀さん」

加賀「なに?」

雪菜「この子…風花のこと、よろしくね」

加賀「ええ」

雪菜「そうそう、今度はあたしが質問してもいい?」

加賀「ええ、答えられることなら」

雪菜「ここの人達って、一応軍人って扱いなんだよね?」

加賀「まあ、戦場に出るから…」

雪菜「あなた達艦娘が兵士なら、それを率いている風花は指揮官ってことになるんだ」

加賀「そうね」

雪菜「この子の階級、どれくらいのものなの?」

加賀「………どうだったかしら。確か、軍服にバッジが付いていたような…」

雪菜「軍服…これ?」

加賀「そう。確認してみて」

雪菜「どれどれ…」

雪菜「えーっと……この襟の模様は……」

加賀「どうだった?」

雪菜「…………これ、ほんとに風花の?」

加賀「え?ええ、私がかけておいたから間違いないわ」

雪菜「………えええっ!?マジで!?風花めちゃくちゃ偉い立場じゃん!!」

加賀「そうなの?」

雪菜「そうだよ、今この国に十人いるかどうか…」

加賀「それほどすごい人だったのね」

雪菜「はー…道理でこんな大きい鎮守府にいるわけだぁ…」

雪菜「………ん?だとしたら、給料もすごいんじゃ……年収いくらなんだろ……」ゴクリ

加賀「よく分からないけれど…ワゴン車?というものを現金で買ったと言っていたわ」

雪菜「ワゴン車!?キャッシュで!??」

加賀「ええ、外に止めてあったでしょう?」

雪菜「あれ風花のだったんだ!?へえー、どこかから他の客が来てるのかと思ったよ…」

加賀「……そんなに?」

雪菜「あたしもそれなりにはあると自負してたんだけど…それが霞むレベルかも…」

加賀「そ、そう…ちなみにあなたは?」

雪菜「………850万ぐらい」

加賀(…聞いたはいいものの、どれくらいあると多いのか分からないわ…)

雪菜「……風花に養ってもらうのを考慮すべきかもしれない……」

雪菜「……というか、こんなにくつろいでて大丈夫なの?」

加賀「どうして?」

雪菜「いや、ここって戦場だし…いつ敵が攻めてきてもおかしくないんじゃ…」

加賀「ここはそうでもないわ。それなりに忙しい時はあるけれど、基本的には平和よ」

雪菜「へぇ〜…意外」

加賀「世間一般から見て、私達はどう思われているの?」

雪菜「んー……あたしは政治とかそういうの詳しくないからよく分からないけど、大抵の人は危機から守ってくれる存在みたいに思ってるんじゃないかな」

加賀「なるほど…」

雪菜「ただやっぱり、戦争ってことになるからねえ。武力扱いで反対してる人もいるよ」

加賀「そうなの…」

雪菜「日本人は頭が固いからね…自分達が置かれてる状況とか、どうすればいいのか考えようともせずにデモとかやってるし」

加賀「…外の世界のことも、色々と聞かせてもらえる?」

雪菜「ん、もちろん。じゃあコーヒーでも淹れよっか」

加賀「ええ、ありがとう」

〜〜〜

雪菜「………おっ、もうこんな時間だ…」

加賀「え?ああ…本当」

雪菜「はーっ…んじゃあたし、そろそろ帰るわ」

加賀「いいの?」

雪菜「うん、これからまだ仕事もあるからね」

加賀「そう…大変なのね」

雪菜「いいよ、これから暇になる時期だし。今日は残念だったけど、また近いうちに来られるから」

加賀「ええ、待っているわ。この子もきっと」ナデ

風花「ん……」

雪菜「……うん、ありがと」

玄関

電「今日は来てくれてありがとうございます、なのです。特におもてなしも出来なくて申し訳ないのです…」

雪菜「いやいや、こちらこそ。急に来てごめんね、今度はちゃんと連絡するから」

電「はい、司令官さんも喜ぶのです」

雪菜「それじゃ、またねー」ブンブン

電「はい!」ペコリ

バタン

雪菜「うおー……もう太陽があんな向こうに…」

雪菜「六時半か…間に合うかなー…」

雪菜「うー…さっぶ…」

ビュオッ

雪菜「ううう…早く戻ろ…」

バタバタ

「きゃー!寒い寒いー!」

「あ、ま、待ってよ!置いてかないで!」

「あははっ、ちゃんとあたしについてきなさーい!」

「もうっ……一人にしないでよ!怖いんだから!」

雪菜「……………」

「あれえ、まだ暗いのが怖いの?ふふっ」

「だ、だって、何か出てきたら怖いし…」

「はいはい…ならちゃんと手繋いでてあげるから」

「うん…」

「二人で、一緒に帰ろう?」

「うん」

パタパタ…

雪菜「……二人で一緒に、か…」

雪菜「……………」

『ねえ、教えてよ』

『恋ってなんなの?』

『人を愛するってどういうことなの?』

『私は多分、あなたを愛してる』

『私は、あなたに愛されているの?』

『私は、必要とされているの?』

『私は……ずっと、二人で一緒に───

雪菜「……………」

雪菜「………大丈夫」

雪菜「その答えはきっと、すぐそばにあるから…」

ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー

提督「…すぅー……」

提督「はぁー………」

提督「…………よしっ」

ガチャ

加賀「失礼するわ」

提督「あ、加賀…ごめんね、非番なのに呼び出して」

加賀「気にしなくていいわ。それで、用ってなに?」

提督「ん、うん…ちょっと渡したいものがあって」

加賀「渡したいもの?」

提督「うん。これ」スッ

加賀「………?この箱は……」

提督「開けてみて」

加賀「……ええ」

パカ

加賀「…………!!これって……」

提督「うん、そういうことだよ」

加賀「………え、あ…」

提督「ど、どうしたの?嫌だった?」

加賀「ち、違うの……嬉しいけど…けど、私、感情表現が……その、これでも、とても嬉しいの…」

ポタッ

提督「あっ」

加賀「え?」ポロポロ

提督「あ、いや、ううん。加賀が嬉しいっていうのはよくわかったよ」

加賀「……??」ポロポロ

加賀「………嵌めてもらってもいい?」

提督「うん、手出して」

加賀「はい」

提督「ようし……」

スッ…

加賀「……………」

提督「…………ねえ、加賀」

加賀「?」

提督「私と、ずっと一緒に居てくれる?」

加賀「ええ」

提督「後悔しない?」

加賀「ええ」

提督「……私を愛してくれるって、誓う?」

加賀「ええ。誓うわ」

スッ

提督「………私も、誓うよ」

加賀「………ええ」

提督「あ……そうだ」

加賀「どうしたの?」

提督「あのね、この指輪は練度の上限を解放するっていう効果があるんだけど…もう一つ、意味があるの」

加賀「…?なに?」

提督「えっ、と……その、これは…エンゲージリングみたいなものだから…」

加賀「…………」

提督「あの……将来的には…っていうか、法が変わったら………その時は本当の…仮じゃない、結婚を、しよう?」

加賀「…………」

ガバッ

提督「うわっ!?」

加賀「嬉しい…嬉しいわ、私、あなたとずっと一緒に居る、ずっとそばで、護るから」ギュウウッ

提督「うぐぐ…そんなに抱き着かれたら苦しいよ…」

加賀「もう離さないわ、このまま暮らしましょう」

提督「そんなアホな…」

加賀「あなたと一緒がいいの」スリスリ

提督「はいはい、分かったからとりあえず離れなよ」ポンポン

ゴトッ

提督「んっ?」

青葉「あっ、あ、あ、あっあ」ワナワナ

提督「あ…」

青葉「だっ」

「大スクープですうううううううううううううううううううううっっ!!!!!」

ドドドドド

提督「あ、青葉!……って、こうなったら止められないか…」

加賀「…ぷっ、くく…」

提督「もー、加賀がずっと抱き付いてくるからだよ」

加賀「ふふ…いいじゃない、どうせすぐ分かることでしょう?」

提督「…それもそっか」

「司令官と!加賀さんが!!ケッコンしましたああああああああああああああ!!!」

司令官と加賀さんがケッコンしたことは、青葉の新聞によってあっという間に鎮守府中に広がりました。
その日、司令官と加賀さんはずっとみなさんに囲まれて、質問責めに遭っていました。
中には司令官を攫おうとしたり、薙刀を振り回して奪おうとしたりしてた人もいましたけど…というか、大井さんと龍田さん…危ないです…

それからしばらくして、司令官は休みを利用して実家に帰りました。なんでも、このことを報告するのと、昔のことを謝りたかったそうです。
戻ってきた司令官には、いい笑顔が浮かんでいました。
辛い思い出のことをちゃんと話し合って、当時の誤解やすれ違いを正せたそうです。
…今?今はですねえ…

お二人とも、幸せそうに笑ってます。

終(完とは言ってない)
ちなみに時系列的にはヲ級ちゃんと再会するちょっと後の話です

新スレはこっちです…(小声)
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1447160420

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月24日 (金) 23:50:36   ID: a38UmoIp

やった~ 
続き嬉しいです。

2 :  SS好きの774さん   2015年05月10日 (日) 08:07:53   ID: GMIx8jQf

提督さんが負けてくれてもいいんですよ?

3 :  SS好きの774さん   2015年05月22日 (金) 16:30:10   ID: nQl43clK

木曾との行為はまだなの

4 :  SS好きの774さん   2015年05月23日 (土) 19:55:48   ID: LhbWIYbv

楽しいわ
この艦娘が提督について会議しとるとこ

5 :  SS好きの774さん   2015年05月26日 (火) 21:58:59   ID: OUn4dysY

ホラーに少し期待

6 :  SS好きの774さん   2015年06月22日 (月) 06:27:52   ID: DvLg_dVX

電が時々ぷらずま化しとるwww

7 :  SS好きの774さん   2015年08月06日 (木) 07:41:08   ID: 8uk3lRu_

風邪の時間を待ってたよ

8 :  SS好きの774さん   2015年09月25日 (金) 07:04:51   ID: bZEvy78A

待ってた、と思ったらめちゃくちゃ気になるところで終わってた、高度な焦らしプレイ(暴論)

9 :  SS好きの774さん   2016年09月18日 (日) 01:00:21   ID: bHMXcrF0

夢小説かよ
個人サイトでやれ

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