男「騙された!」幼馴染「騙してない!」(115)

男「何が南国の楽園だ!」

幼「沖縄だよ?南国の楽園であってるじゃん!」

男「確かにここは沖縄だけど…」

男「祭りの屋台で焼きそば作らされるってのは…」

男「聞いてねーよ!」

幼「そりゃ、言ってなかったからね」

男「だから騙されたって言ってるんだよ!」

幼「えー。旅費も宿泊費もちゃんとタダだよ?」

男「それは…そうだろうけど…」

男「でも、今の状況は…」

男「楽園っつーより、地獄に近いだろ!」

幼「あ、水分補給はこまめにね?」

男「わかってるよ!ポカリがぶ飲みしてなきゃ、やってらんねーよ!」

おっさん「ハハハ。さすが幼が目をつけた奴だな?」

幼「凄いでしょ?男は焼きそば作らせたら、ウチの町内一だよ!」

男「範囲狭いな!」

幼「男、お前がナンバーワンだ!」

男「…それは褒めてるの?バカにしてるの?」

幼「もちろん男の腕前を認めてるんだよ!」

幼「そうだなー…食べ物で例えるなら、ガリガリ君くらい?」

男「おぉ…俺、そんな評価なんだ…」

幼「!」

男「何だよ…」

幼「今、評価と氷菓をかけたわけね?」

幼「さすが男!持ってるわー」

男「何をだ!」

幼「あっちの方で、飛び入り参加オーケーのお笑い大会あるみたいだから」

幼「男、出てきたら?」

男「一人でかよ!てか、そんなの誰が行くか!」

幼「いいじゃない。旅の恥はかき捨てだよ!」

男「100%恥かくって解ってて、そんなのに出るわけねぇだろ!」

おっさん「ハハハ。お前ら二人で出てくれば?夫婦漫才で」

男「おっさん、適当な事言わないでよ!」

男「本気にされたら迷惑なんだから!」

幼「…め、夫婦だなんて、ねぇ?」
モジモジ

男「何をモジモジしてるんだ?」

幼「夫婦だって…キャッ!恥ずかしいっ!」

男「幼…そう言うのいいから」

幼「ノリ悪いなー。そんなんじゃ、予選敗退だよ?」

男「そもそも出ねーからな?」

幼「そうかそうか…そんなに仕事がしたいのね?」

男「…う」

幼「さぁ、お客さんどうぞどうぞ!」

幼「町内一焼きそば焼くのが上手い男が焼いた焼きそばですよ!」

幼「今日食べないと、明日は食べられないかもしれませんよ!」

幼「さぁどうぞどうぞ!」

男「おい!変な客引きするな!」

男「て言うか、明日もここで焼きそば焼くんだろ?」

男「だから明日も食べられるだろ!」

幼「微妙なツッコミしてる暇が有ったら、焼きそばを焼くのよ、男!」

男「くっ…不本意なツッコミだったが…微妙って言われたら悔しいっ!」

男「でも焼いちゃう!ビクンビクン!」

幼「…」

男「…何だよ、何か言えよ」

幼「フフ」

男「何だよ、その気の抜けた笑い!」

男「笑えよ!この滑稽な俺を!」

幼「ゲラゲラゲラゲラゲラ」

男「無表情でゲラゲラ言われたら怖いですすいません」

客「すいませーん。焼きそば2つ下さい」

幼「あ、毎度ありがとうございます!」

男「あざーっす」

おっさん「しかし、高2にしてはなかなかの腕前だぜ、少年」

男「ど、どうも…」

おっさん「なぁ少年、オレと一緒に…天下、取らねぇか?」

男「取らねーよ!」

男「てか、天下って何の天下?焼きそば世界一?」

男「どこで決まるんだよ、そんな天下一!」

おっさん「ソース焼きそばは日本の誇る食文化の一つだぜ?」

おっさん「決勝は中国あたりと戦うんじゃねーの?富士山の麓辺りで」

男「…幼の叔父さんって言うから、変な人じゃないかとは思ってたけど」

男「おっさん、自由過ぎるだろ!」

男「バイトに任せきりで、自分は夕方からビールかよ!」

おっさん「ハハハ!少年!こまけぇこたぁいいんだよ!」

男「細かくねーよ!」

おっさん「あんまり駄々こねると、今晩の宿が…」

男「何だよ」

おっさん「幼ちゃんと同じ部屋から…」

男「え?俺、幼と同じ部屋で寝るの?」

おっさん「俺との相部屋へとグレードアップしちゃうぜ?」

男「そ、それは嫌過ぎる…」

おっさん「なら働けよ、若人!」

男「…はい、店長」

おっさん「お、わかってるじゃねーか、少年」

男「…高2の夏休み、こんな事をしてる場合だろうか?」

幼「ほら、愚痴ってないで、さっさと、焼く!」

男「…」

男(こんなはずじゃなかったんだけどなぁ)



1か月前

幼「ね、男」

男「あー?」

幼「夏休みにさ」

男「おう」

幼「一緒に南国の楽園に行ってみない?」

男「は?どこだって?」

幼「楽園だよ、楽園」

男「どこだよ、楽園って」

幼「沖縄だよ、沖縄!」

幼「7月21日から沖縄に行かない?」

男「え?沖縄?」

幼「一緒に行こうよ、沖縄に」

男「はー。そんな金ねーよ」

男「オンシーズンの沖縄なんて、旅費いくらするんだよ…」

男「俺、夏休みは短期のバイトでも探そうと思ってるんだ」

幼「大丈夫、旅費も宿泊費もタダだよ!」

男「…どんなウラがあるんだ?」

幼「ウラなんてないよ、何?沖縄行きたくないの?」

男「いや、行ってみたいではあるけどさ…」

幼「じゃあ、行こうよ!楽しいよー?きっと!」

幼「ちゃんと往復、飛行機だよー。無料だよー?」

幼「白い砂浜!青い海!」

幼「照りつける太陽!」

幼「ビバ!南国!ビバ!沖縄!」

男「…」

幼「いいから、行こうよ!男!」

幼「て言うか、行くって言えっ!」

男「お、おう…じゃあ、行こう…かな…?」

幼「やったー!決まりね!」

男(幼と二人で旅行…マジかよ…)

男(………イェーイ!)




幼「着いたね、沖縄!」

男「すげー暑いな!日差しがキツい!刺されてるみてーだ」

幼「それじゃ、早速…」

男「おう、宿泊先はどこだ?空港から遠いのか?」

男「リゾートホテルとか?まさかな?」

幼「あ、居た居た。おーい!叔父さーん!」

男「ん?」

おっさん「おー、幼ちゃん、久しぶりだなー!」

おっさん「前に会った時は身長80センチくらいだったのになー」

おっさん「こんなに大きくなっちゃってなー」

幼「今年の正月、おじいちゃんの家で会ったでしょ!」

おっさん「それじゃ、たった半年で80センチも背が伸びたのか!」

幼「そんな訳ないじゃん!」

幼「そんな事になったら、ギネスに載るよ!」

おっさん・幼「ドヤッ!」

男「…」

おっさん・幼「ドヤッ?」

男「…あの、これどう言う事?」

おっさん「なんだ、少年。ノリ悪いなキミは」

幼「叔父さん、男は長旅でちょっと疲れてるの。許してあげて?」

男「あの、状況を説明してくんない?」

おっさん「オッケー!そんじゃ、そこのカッコ良い車に乗ってくれ!」

おっさん「チップは要らないから、荷物は自分でトランクに入れてよね」

おっさん「話しはそれからだ!」

男「え?これってベンツ?マジで?」

男「うわー!俺、ベンツなんて初めて乗るよ!」

おっさん「あ、嘘ですすいません」

男「…」

おっさん「そんな目で見るなよぅ。少年」

おっさん「俺が傷つくだろ?」

おっさん「大人だって泣くんだぜ?」

おっさん「いいのか?俺がここで泣き出しても?」

男「…すみませんでした」

幼「叔父さん、時間大丈夫?」

おっさん「おぉ。早くいかねーとな」

おっさん「車はあっちに停めてあるんだ」


男「…ハイエース」

おっさん「何だよ、少年。ハイエースの文句は…俺に言え!」

男「ハイエースはとても良い車だと思います。文句なんてありません」

おっさん「…ならいいんだけどよ」

幼「叔父さん、あとどれくらいで着くの?」

おっさん「あぁ、もうすぐだぜ」

男「ここまで、一切状況説明無いんだけど」

男「幼、これ、ドユコトー?」

幼「サプライズってコトー」

男「マジでどう言う事なんだよ!」

おっさん「ほら、もうすぐ着くから、落ち着けよ、男」

男「いきなり呼び捨て?」

おっさん「何だ?駄目か?なんなら、ちゃん付けで呼ぼうか?」

男「いや、呼び捨てでいいです…」

男(意味わからんのだが…この二人は説明する気ゼロだな)

男(もう黙っていよう…)



『第35回浦添てだこまつり 会場』

男「え?何何?」

幼「さ、男!行くよっ!」

男「え?何何?意味わかんない!」

おっさん「完全無料で沖縄旅行なんてよぅ」

おっさん「そんな甘い話しある訳ねーだろ、少年!」

おっさん「お前らには、今日と明日、俺の屋台で働いてもらう!」

おっさん「宿泊先は俺んちだ!」

おっさん「さぁ、張り切って働くのだ、いたいけな少年少女よ!」

幼「任せてよ、叔父さん!」

幼「なんたって、この男は…この男こそは…」

幼「私の中の美味い焼きそばランキングを…」

幼「常に塗り替えている男なのだから!」

男「なのだから!じゃねーよ!」

男「はぁ?今から焼きそば焼くって?」

男「しかも二日間?」

幼「その通り!」

男「はぁ?白い砂浜は?青い海は?」

おっさん「ここからは一切見えねーな」

男「…」

幼「さ、男!出番よ!思う様焼きそばを焼きなさい!」

幼「てだこまつりの王者に、あんたはなりなさい!」

男「うっさい!話が違うじゃねーか!」

幼「いいから!早く早く!」

男(あ、これダメだ。俺の意見通らないパターンだ…)



男「暑い…夕方6時なのに、何でこんな真昼みたいな日差しなんだ…?」

幼「男、大丈夫?そんなの小学生の頃に習ったでしょ?」

男「…あぁ、そうだな」

男「勉強で知る事と、実際体験して識る事は、全く別物だな」

男「日差しの暑さと、鉄板の熱さで、死にそうだ…」

男「マジ、ギブアップ寸前なんですけど…」

幼「それじゃ、男、ちょっと休もう!」

幼「叔父さん、そろそろ良いよね?」

おっさん「おう、そろそろ交代すっか!」

おっさん「俺のカミさんもそろそろ来る時間だしな」

男「!」

おっさん「何だよ、少年。ハトがカービン弾喰らった様な顔して」

男「おっさんみたいな人でも結婚出来るって思ったら、何か勇気出てきた!」

男「ありがとう、おっさん!」

おっさん「…」

男「それじゃちょっと、裏で休んできます」

おっさん「おう。ゆっくり休んでこい。30分だけ」

男「30分…」

幼「男、こっちこっち」

男「どこ行くんだよ…」

幼「はい、これ」

男「何?この紙袋」

幼「男の分の浴衣が入ってるから」

男「は?」

幼「男、自分で浴衣着られるでしょ?」

男「そりゃ着られるけど…」

幼「叔父さんの車の中で着替えてきてよ」

男「はー。休憩じゃねーのかよ…」

幼「早くしてよねっ。男が着替え終わったら、私が着替えるんだから!」

男「はぁ?」

幼「早く早く!40秒で支度しな!」

男「わ、わかったよ…」



幼「おー。やっぱり似合うね!」

男「何か、柄がちょっと…」

幼「私の見立てに文句でも?」

男「無いです…」

男(ドクロ柄の浴衣…)

幼「それじゃ、次、私が着替えるから!」

幼「見張っててよ?」

男「お、おう…」

幼「見ないでよ?」

男「み、見ねーよ!」

幼「絶対、見ないでよ?」

男「だから、見ねえってばよ!」

幼「…ぜっっったいに、見ないでよ?」

男「なんだ、それは。フリか?見られたいのか?」

幼「いや、本当に見ないでよね」

男「後部の窓、黒いフィルムが貼られてるから、中見えねーよ」

男「周囲も少し薄暗くなって来たし」

幼「…じゃ、見張り頼んだ!」

男(うぁー、超ドキドキするな、コレ)

男(すぐ後ろで、幼が着替えてるって…)

幼(うぁー、男、こっち向かないかな?)

幼(まぁ、見られたら、見られたで、いいんだけどなー)

幼(…ちゃんとデオドラントボディペーパーで身体も拭いて…)



幼「…どう?」

男「おう、すげー似合ってるぜ」

幼「あ、ありがと」

男「アサガオの柄なー。綺麗な柄だな」

男(あと、何かいい匂いもする…言えないけど)

幼「さ!行こう!南国の祭りを堪能しようっ!」

男「おう!行くか!」

幼「いっぱい食べるぞー!」

男「おうよ!」

男「ソースの匂いは嗅ぎたくないがな…」

幼「何ていうかさー」

男「ん?」

幼「不思議な感覚だよー」

男「何が?」

幼「同じお祭りなのに、何か空気が違うよね」

男「そうか?気温は違うと思うけど」

幼「ここなら、絶対知り合いに合わないよね」

男「まぁ、そうだろうなぁ」

幼「…じゃあ、こんな事してもっ!」
ギュッ

男「お、おい…」

幼「腕組んで歩いても、誰にも何も言われないねっ?」

男「おっさんに見られたら、何か言われるだろ」

幼「叔父さんは屋台があるから、近づかなければいいじゃん」

男「そうだけど…な、何か照れるな、コレ」

幼「旅の恥はかき捨てだよ、男!」

幼「それとも、私と腕組むのは嫌?」

男(上目遣いとか反則だろコレ)

男「あー、断言するが」

幼「ん?」

男「嫌じゃないです!」

幼「ならいいじゃん!ね?」

男「…おう」

幼「ふふふー。さ、まずは何を食べようか?」

男「焼きそば以外なら何でもいいぜ!」



幼「…ふぅ。取り敢えず腹は満たされた!」

男「お前、お祭り価格の食いもんを、よくあんだけ食えるな?」

男「腹にも財布にも優しくないぜ?」

幼「朝から何も食べてなかったからさー。腹ぺこだったんだよ」

男「まぁ、俺も大概だけどさ」

幼「さて、次はどうするかなー?」

男「もう余裕で30分過ぎてるけど、良いのか?戻らなくて…」

幼「あ、それは大丈夫だから」

幼「元々、手伝いは口実だったんだから」

男「口実?」

幼「おっと、それはまだ言えません!」

男「どう言う事?」

幼「サプライズって事ー」

男「ま、戻らなくて良いなら、それが良いんだけどさ」

幼「お?男、あっちのステージで何かやってるよ?」

男「おー。沖縄ならではの演物か?」



男「どうしてこんな事に…」

幼「イェーイ!イェーイ!」

司会「お、女の子の方はノッリノリだねー!」

司会「それに比べて、隣りの男の子、ノリが悪いねー!」

幼「彼、緊張してるんです。ほんとはやれば出来る子なんです!」

司会「お?これは?何か面白い事を?言っちゃう感じ?」

幼「会場のみなさーん!今からこの人、超面白い事言いますからねー?」

男「言わねーよ!なんだ、そのフリ!」

司会「ワーオ!ナイスツッコミ!イイねー!ノってきたじゃない?」

男「ノってねーよ!何だこの会話!」

幼「信じてたよ、男!」

男「何をだよ!」

幼「男のノリの良さを…だよ!」

男「あぁ…恥ずかしい…」

司会「照れないで照れないで!君、よく見るとなかなかイケてるよね?」

男「よく見ないと解らないなら、イケてないって事じゃね?」

司会「わかってるじゃない、君!」

男(名前も知らない地方のお笑い芸人に、馬鹿にされた…)

司会「さて、会場も温ったまってきた所で!」

男「…」

司会「お二人はどこから来たのかな?」

幼「船橋です!あ、千葉の船橋から来ました!」

司会「おー!県外からの参戦でしたかっ!」

幼「どーも!どーも!」

司会「二人、凄くお似合いのカップルですね?バカップル?」

幼「そんな、カップルだなんて…ねぇ?」

男「…」

幼「あ、私達、実は幼馴染なんですよー」

司会「はー!幼馴染でカップル!漫画か!って話しですね!」

司会「爆発してもいいよ?男の子の方だけ!」

男「…」

司会「あれ?黙っちゃう系?さっきのノリはどこいったの?」

司会「会場冷えちゃうよ!ホラ、さっきのノリツッコミは?」

幼「もう、ほんとに照れ屋なんだから、この子は!」

幼「ボケにはツッコミでしょ?何度言えばわかるの、男!」

司会・幼「はいっ!」

男「…」

司会・幼「はいっ?」

男「だー!幼!お前にそんな事言われたことねーよ!」

男「もう良いだろ、何だこの辱め大会は!」

男「司会のおっさん!あんたも調子乗りすぎだろ!」

男「素人の俺が、そんなに面白い事言える訳ねーだろが!」

男「何なの、その『はい、今!面白い事言って!』みたいな顔!」

男「て言うか、二人でネタ合わせしたみたいに無茶振りしやがって!」

男「もうやってられんわ!」

幼「はい!どうも、ありがとうございましたー!」
ペコッ

司会「会場の皆さん、見事な夫婦漫才を見せてくれた…」

司会「船橋からの可愛らしい刺客に、惜しみない拍手を!」
パチパチパチパチパチ

男「ねぇ!これ、漫才大会じゃなくて、浴衣コンテストだよね?」

男「面白い事言う場所じゃないよね!」

司会「クドいツッコミもイケるね!腕、持ってるね、君!」

男「持ってねぇ!納得いかねー!」

司会「さて、次の挑戦者は!」

幼「さ、男、下がるよっ!」

男「ゆ、浴衣の話し、一個も…」

幼「戦は引き際が大事ですぞ、殿」

幼「それとも、まだ舞台で喋りたい?」

男「…」



2位の女の子「…あの、どうもありがとうございました!」

司会「はーい、どうもありがとうございました!」

司会「さぁ、2位までの発表が終わりました」

司会「いよいよ1位の発表です!」

司会「時間も巻きでって指示が出てるんでね」

司会「もうサクサク発表しちゃおう!」

司会「厳正な審査の結果…」

司会「今日この会場で!一番浴衣が似合っていたのはー!」



幼「はー、楽しかったね!」

男「お前は良い度胸だな、本当に!」

幼「楽しかったでしょ?」

男「…まぁまぁだったよ」

幼「フフフ。ツンデレか!っちゅー話しですよっ」

男「ツンデレなんて物はこの世に存在しない!」

幼「じゃあ、そう言う事にしといてあげるよ」

男「随分上から目線だな…」

男「しかし、まさか幼が優勝とはなー」

幼「私の可愛さを解ってくれる人が沢山居て、嬉しいよ!」

男「そうだけどさ」

男「その優勝賞品、いらなくね?」

幼「まぁ、3泊4日のディズニーランド旅行券って…ねぇ?」

男「ウチの近所っちゃ、近所だしなぁ」

幼「あ!あそこに立ってる人って、2位の人じゃない?」

男「そうだな。2位だった人だな」

幼「ね、これ、あの人にあげちゃってもいい?」

男「幼の物なんだから、どう使おうが構わないんじゃね?」

幼「うん!」



幼「プレゼントしてきた!」

男「ん?手に持ってるのは?」

幼「2位の賞品。いらないって言ったんだけど」

幼「どうしてもって言うから、貰ってきた」

男「賞品の交換になっちゃったな」

幼「まぁ良いじゃん!」

男「良いけどさ」

男「で、これからどうする?」

幼「んー。そろそろかなー」

男「ん?そろそろおっさんの屋台に戻るか?」

幼「違うよー」

幼「…」

男「…ん?」

幼「ちょっと移動しよう!」

男「お、おう」

男(どこに?って聞いても、答えないんだろうな…)



男「おい、幼。祭り会場から結構離れちゃったけど、良いのかよ?」

幼「良いから良いから」

男「すげー疲れるんだが、この上り坂はまだ続くのか?」

幼「そろそろ着くよ!」

男「…ここ、なんだ?駐車場?」

幼「穴場なんだよ!ここ!」

男「まぁ、高台だから景色が綺麗に見えるけどさ…」

男「周囲にかなり人が居るんだけど」

男「これって穴場って言えるのか?」

幼「こまけぇこたぁいいんだよ!」

男「まぁいいんだけどさ」

男「ここで何をするんだ?」

幼「良い場所ゲーット!」

男「良い場所?」

幼「それに、良い時間っ!」

男「そろそろ正解を教えて下さいよ、モリアーティ教授」

幼「人を天才犯罪者みたいに呼ばないでよ!」

男「で、何だ。言いたい事があるんだろ?」

幼「え、な、何の事?」

男「…」

幼「もう、せっかちだなぁ、男は」

男「まあ、付き合い長いからなー」

男「今回の沖縄旅行も、理由があるんだろ?」

幼「バレていたか、ホームズ君」

男「ははは。バレバレだ、幼」

男「お前はモリアーティ教授にはなれないな」

幼「あのね、男…」

男「うん?」

幼「わ、私ね…」

ヒューーーーーーーーーードーーーーーーーーーーーン!パラパラパラ

男「おわっ!びっくりしたぁ!」

幼「あ、花火!花火始まった!」

ドーーーーン!パラパラ

男「近いな!花火!」

幼「だからここ、穴場なんだよ!」

幼「打上げ場所に近いから、花火の破片とか落ちてくるよ!油断しないで!」

男「あぁ、油断せず、花火見るよ」

ドーーーーーーン!パラパラパラ

男「近いから、音が腹に響くなー」

幼「綺麗だねー、男!」

男「…あぁ、綺麗だな」

幼「…」

ドーーーーーン!パラパラパラ

幼「あ、今のスマイリー!?」

男「あ、あぁ、そう見えたな」

幼「凄いねー!花火なんて、久しぶりに見たね?」

男「去年の夏にも地元の祭りで見ただろ?」

幼「そうだっけ?」

男「そうだったよ」

幼「あ、あのさ、男」

ドーーーーーーーン!パラパラパラ

男「なに?」

ドーーーーーーーン!パラパラパラ

幼「私、男の事が…」
ドーーーーーーーン!パラパラパラ
ドーーーーーーーン!パラパラパラ
男「えー?なーにー?」
ドーーーーーーーン!パラパラパラ
ドーーーーーーーン!パラパラパラ
ドーーーーーーーン!パラパラパラ

幼「だ…」
ドドドドーーーーーーーン!パラパラパラ

男「…」

幼「…」

男「ぷっ」

幼「な、何よぅ」

男「あはは。花火師、空気読んでるよな!」

幼「まぁ、ある意味ね!」

ドーーーーーーーン!パラパラパラ

男「まぁ、さ」

幼「ん」

男「しばらく花火見ようぜ?」

幼「それもそうだね」



ドーーーーーーーーーーーン!!!パラパラパラ

男「でかっ!」

幼「今のはデカかったねー」

男「…これで終わりかな?」

幼「そう…かな?」

男「…」

幼「あ、あのさ男、ちょっと言っておきたい事があるんだ」

男「なんだよ、改まって」

幼「私、男の事が…」
ドーーーーーーーン!パラパラパラ

男「…」

幼「だ…」
ドーーーーーーーン!パラパラパラ

幼「…もー!」
ドーーーーーーーン!パラパラパラ

幼「私は!」
ドドドドドドドーーーーーーーン!パラパラパラパラ

幼「男の事が!大好きなのっ!」

幼「…」

男「お、おう…」

幼「はっ!?」

周囲の人達「オメデトー!」
パチパチパチパチパチ

幼「は、恥ずかしい…」

男「まぁ、俺もだよ」

幼「お、叔父さんの所に戻ろうか…」

男「そうだな。恥ずかし過ぎる…」


アナウンス『これで本日の花火は終了です』

周囲の人達「ワー!」
パチパチパチパチパチ

男「ははっ」

幼「あははっ。ちゃんと終了のアナウンスあるじゃん!」

男「はははっ。そうだな」

幼「えっと…さっきの、ちゃんと聞こえたよね?」

男「おう。ばっちり聞こえたぞ」

幼「まぁ、そう言う訳なんだよ!」

男「はぁ…それを言う為に沖縄に来たのか?」

幼「まぁその…南国の雰囲気と言うか、旅の勢いと言うか」

幼「そう言う感じで、言えるかな?と思って、ね?」

男「そんな事しなくても、普通に言えよ」

男「いや、違うな。もっと早くに俺から言うべきだったな」

幼「え?」

男「幼、俺もお前の事が大好きだぞ」





男「騙された!」

おっさん「騙してない!」

男「…だって話しが違うじゃねーかよ」

おっさん「違わねーよ!屋根あるし、布団もあるだろうが!」

男「確かに宿泊は可能だろうさ…」

男「だけど…昼間と同じくらい暑くて、眠れんのだが?」

幼「はぁ…それには私も同意するよ…」

男「何故この暑さでエアコンがないんだ…」

男「それに…」

男「右隣りに幼が居るのは良い…が!」

おっさん「うるせぇな、ブツブツ言うなよー」

男「左隣りにおっさんが寝てるのも話が違うんだが?」

おっさん「かてぇ事言うなよ、男」

おっさん「旅の醍醐味だろ?」

男「…」

男「しっかし、これじゃ眠りながら熱中症になっちまうよ…」

幼「た、確かに…これはさすがの私もギブアップだよ、叔父さん」

おっさん「仕方ねぇなぁ…」

おっさん「じゃあ、こんな居間じゃなくて…」

おっさん「エアコンある寝室に移動すっか」

男「エアコンあんのかよ!」

おっさん「あるに決まってんだろ?沖縄の暑さ舐めんな!」

おっさん「夜でも気温は28度だぜ!」

男「じゃあ、真っ先にそこに通せよ!この1時間は何だったんだよ!」

おっさん「これも旅の醍醐味ってコトー」

男「…どんな醍醐味だよ」

おっさん「南国っぽいだろ?この気温と湿度の高さ!」

男「こんな醍醐味はいらん!」

おっさん「ツンデレ?」

男「違う!」

幼「叔父さん、ちょっと、マジで暑い!」

幼「クーラーのある部屋に移動したい!」

おっさん「わかったよ。幼ちゃんに言われちゃしょうがねぇ」

男「…」

おっさん「大丈夫。俺はカミさんの部屋で寝るから!」

男「…」

おっさん「あとは若い2人で…な?」

男「な?じゃねえよ!」

幼「…」
モジモジ

男「幼も!モジモジしてんなよ!」

おっさん「グッドラック!」
グッ!

幼「ん!」
グッ!

男「サムズアップしてんなよ、二人とも!」

男「何もねぇから!」



幼「ね、ホントに何もしないの?」

男「しません!」

幼「えー!さっき好きって言ってくれたじゃん!」

男「それはそれ、これはこれだよ」

幼「むー」

男「幼の事、大事に思ってるからこそだよ」

男「責任取れるようになるまで、そう言うのはナシ!」

幼「…えー。我慢、出来るの?」

男「将来の事考えれば、あと数年くらい、余裕っす!」

幼「…真剣に考えてくれて、ありがと、男」

幼「でも、私、結構勇気出したんだから…」
チュッ

男「んなっ!?」

幼「キスくらいは、良いよね?」

男「…あんまり俺の理性を過信するなよ?」

幼「ふふっ。私はオッケーなんだから、いつでもどうぞ?」

男「寝る!お休み、幼」

幼「お休み、男。明日も頑張ろうね…」

男「おう」




男「いやー、楽しかったなー」

幼「そうだねー。主に一昨日から今日にかけて、楽しかったねー」

男「青い海と白い砂浜も堪能出来たしなー」

おっさん「なんだよ、祭りの2日間は楽しく無かったってか?」

幼「叔父さんの家と、リゾートホテルとじゃ、天と地ほどの差があったよー」

おっさん「あーそーっすかー」

男「浴衣コンテストの2位の賞品がなー」

男「まさかリゾートホテル2泊3日とはなー」

幼「ねー?しかもダメ元で電話してみたら」

幼「たまたまキャンセルが出て、1室空いてて…」

幼「オーシャンビューの部屋が取れるとはねー」

男「凄いラッキーだな?」

幼「凄いラッキーだったね!」

おっさん「出来すぎだろ、二人とも」

おっさん「それで二人はもうアレか?アレな関係になっちゃったか?」

男「…」

幼「叔父さん、それはセクハラです!」

おっさん「まぁ、二人とも、来年も来いよ!」

幼「出来れば来たいね!」

男「あぁ、焼きそば焼くのは嫌だけど、また来たいな!」

おっさん「今度は新婚旅行で来るか?ハハハ」

幼「し、新婚…旅行」
モジモジ

男「…まぁ、考えておきますって事で」

幼「そろそろ時間だね。行こっか、男」

男「おう。それじゃ元気でな、おっさん!」

幼「叔父さん、本当に色々ありがとね!」

幼「叔母さんにもよろしく言っといてね!」

おっさん「おう!」

おっさん「んじゃ、とっとと千葉に帰れ!またな、二人とも!」



男「ところでさー」

男「ずっと気にはなってたんだけど」

男「今回の旅費はどこから出てきたんだ?」

幼「えへへー。実はねー…」

男「あー、ひょっとしてだけどさ」

幼「ん?」

男「あの貯金箱、開けた?」

幼「…うん」

男「やっぱりあの貯金箱、開けちゃったのか…」

男「小さい頃から二人で貯めてた、あの貯金箱をな…」

幼「うん。総額で30万以上あったよ!」

男「使っちゃったのか、アレ…」

男「て言うか、30万もあったのか?」

幼「私も驚いたよっ!」

幼「毎月の500円貯金以外にもさー」

幼「ちょっとずつ貯金箱に入れてたんだけど」

幼「あ、男もちょこちょこ入れてたでしょ?」

男「まぁ、そうだな」

幼「旅費はそこから出たんでした!」

幼「私んち、ほら、お父さんがパイロットだからさ」

幼「飛行機代、かなり抑えられたんだよ」

幼「男の分も1ヶ月前に予約してたから、安かったし」

幼「宿泊も最初の二泊は叔父さんが泊めてくれたから、タダだったし」

幼「その後の二泊は無料でリゾートホテルだったし」

幼「総額はかなり安かったんだよね」

幼「結局、一番お金かかったのは食費だったね」

男「…て言うか、それじゃ、タダじゃねぇじゃん!」

男「普通に自腹じゃねーか!」

幼「ぶっちゃけそう言う事です!」

男「騙された!」

幼「ごめん!騙した!」

男「…でもまぁ、アレだ」

幼「ん?」

男「俺たちの関係が決定的に変化したんだ」

男「…良い旅だったな!」

幼「うん!」

男「これからもよろしくな、幼」

幼「うんっ!」

男「あー、でも、こう言うサプライズは控えめにな?」

幼「えへへ。気をつけます…」

男「大体あのお金は…」

幼「え?何?」

男「何でもねーです。さ、行こうぜ」

男「飛行機に乗り遅れたら、シャレになんねーし!」

幼「ちょっと、待ってよ男!」

男(あの金は…結婚資金って言って貯め始めたんだって事)

男(忘れちまってるのかな…)

男(でもまぁ、こんな関係になれたんだから)

男(ある意味、目的通りって事だから、いいか)



幼(…婚前旅行って考えたら、使い道は間違ってないよねっ!)

幼(って、叫びたいけど…)

幼(これは結婚した時のサプライズに取っておこうっと!)



おわり

これで終わりです
読んでくれた人が居たら嬉しいです

次スレは
幼馴染「ラッキー!」男「また?」
ってタイトルで立てると思います

見かけたら読んでくれたら嬉しいです
では。

乙。

いつも思うのだが、実は>>1は物書きなんじゃ・・・。

乙!
1、ホントに物書きなん?

どうも。1です
読んでくれた人、本当にどうもありがとうございます

>>106
>>109

物書きではないですよ
乙くれるだけでもありがたいのに
そんなに言って貰えて、この上なく幸せです

これからも細々と幼馴染ss書いていきます
また読んでくれると嬉しいです

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