川内「神通、もう一回聞く。相手は誰だ？」

神通「……言えません」

川内「私にも言えないって言うのか！？」

神通「はい」

川内「じゃあそのお腹の子をどうするつもりだ！？」

神通「私が育てます」

川内「提督なしでか？」

神通「はい」

川内「提督なし子か！　私は提督なし子のおばさんか！！」

那珂「那珂ちゃんはアイドルだから、おばちゃんにはならないんだからねっ☆」

川内「那珂は黙ってろ！　いいか、提督なし子だぞ！！」

神通「姉さんにも那珂ちゃんにも、面倒はかけません」

川内「どういう意味だ……？」

神通「この子は私が一人で育てます」

川内「馬鹿なことを言うな！」

吹雪「せ、川内さん！」

睦月「まあまあ、ちょっと落ち着きましょー！」

夕立「ぽいぽい」

神通「いいのよ３人とも。姉さん、馬鹿なこと……ですか？」

川内「当たり前だ！　ご鎮守府に対する世間体ってもんがあるだろ！！」

神通「私はそんなこと、気にしません」

那珂「那珂ちゃんのファンも、理解があるからだいじょーぶっ☆」

川内「だから那珂は、黙ってろ！　大体、どこの馬の骨とも知れない提督の子供を……」

神通「わかりました」

吹雪「え？」

川内「なにがわかったんだ、神通」

神通「私、鎮守府を出ます」

睦月「そ、そんな！　嘘ですよね、神通さん！」

川内「なにを言ってるんだ？」

夕立「ぽい？」

神通「姉さんにも誰にも迷惑をかけないよう、私は鎮守府を出ます。この子と二人で生きていきます」

吹雪「そんな！　ダメですよそんなの！！」

睦月「一人でなんて無理ですよ！　ね、川内さんも止めてください！！」

川内「……好きにしろ」

夕立「ぽい！？」

川内「私の言う事が聞けないなら、どこへでも行け！　二度と私に顔を見せるな」

那珂「そ、そんなの……じ、神通ちゃんも謝ろうよ。ねっ！」

吹雪「そ、そうですよ神通さん！」

睦月「川内さんも、落ち着いたらきっと……」

川内「私は冷静だ！　ああわかった神通。今日から私と神通は、一番艦でもなければ二番艦でもないからな！！」

那珂「ちょ、ちょっと川内ちゃん！」

夕立「ぽい！」

神通「……姉さん。今までお世話になりました」

川内「……フン！」

吹雪「神通さん……」

睦月「川内さんも……」

那珂「うう……」

夕立「ぽい……」

那珂「川内ちゃん、神通ちゃん本当に出て行っちゃったよ」

川内「ああそうか」

那珂「ねえ、いいの？」

川内「神通にも言っただろ！　もうあいつとは、一番艦でもなければ二番艦でもないって！！」

那珂「そんなの……」

吹雪「ねえ、今からでも川内さんに謝りましょう！」

睦月「そうですよ。今は頭に血が上っているかも知れませんけど、川内さんだって……」

神通「……ありがとう、二人とも。でも、もう決めたの」

夕立「ぽい？」

神通「姉さんを……お願いね。みんなで助けてあげて」

吹雪「どうなっちゃうのかな？　私たち第三水雷船隊」

那珂「旗艦の神通ちゃんがいなくなっちゃって……な、那珂ちゃんはセンターの役目があるから代わりはちょっと……」

睦月「旗艦もだけど、戦力も低下したし……ううん、それよりも神通さんがやっぱり心配だよ」

夕立「！」ﾎﾟｲﾎﾟｲ

吹雪「……うん。私、やっぱり神通さんを追いかける」

睦月「そう……そうだね！　私も！！」

夕立「ぽい！！！」

那珂「ありがとう、みんな」

川内「神通……なんで……あんなに素直で真面目な娘が……」

川内「いっつも私を『姉さん、姉さん』って追いかけて……」

川内「優秀で……自慢の妹、二番艦だったのに……」

川内「神通……」

那珂「川内ちゃん？」

川内「な、ななな、那珂か！？　な、ななな、なんだ！？　どうした！？」

那珂「駆逐艦の娘らが、神通ちゃんを探しに行ってくれてるよっ」

川内「あ！？　余計な事を！！　いいからほっとけって打電しろ！！！」

那珂「いいかげん、素直になってよ！　本当は川内ちゃんも、神通ちゃんが心配なんでしょ！？」

川内「誰が！！　私は神通のことなんか……」

吹雪「大変です！」

川内「帰ってきたな特型駆逐艦。神通なんてほっとけ……」

吹雪「神通さんが、鎮守府の外れでお腹を押さえて倒れて！」

川内「！　神通！！！」



ダッ

川内「神通！　神通！！」

神通「姉さん……」

川内「しっかりしろ、神通！」

神通「姉さんの言うことを聞かなかった……罰があたりました……」

川内「いいから黙ってろ。ああ、誰か！」

睦月「明石さんを連れてきたよ！」

川内「頼む！　神通を……神通を助けてやってくれ！！　頼む……頼むから……」

明石「これは……すぐに神通さんを運んであげて」

夕立「ぽい！」

川内「明石！　お願いだ！！　私の身体をバラバラにしてそれ全部使っていいから神通を……神通を……」

明石「……今はとても危険な状態です。とにかく冷静に」

川内「ああ、神通……！！！」

吹雪「それで神通さんの容態は？」

睦月「予断を許さない状況だって……ずっと川内さんがつきそってる」

夕立「ぽい……」



ポコッ



那珂「！　今の音は！！！」

吹雪「え？」

睦月「？」

夕立「ぽい？」

川内「よくがんばったな、神通」

神通「ありがとう……姉さん」

吹雪「あの……」

睦月「この丸いのは……」

夕立「ぽい？」

那珂「産まれたんだ！　神通ちゃんの卵」

吹雪「た、卵ぉ！？」

睦月「私たち鑑娘って、卵胎生だったんですか！？」

夕立「ぽい！？」

川内「明石も元気な卵だって言ってくれたぞ」

那珂「はーい。那珂おばちゃんですよーっ☆」

神通「姉さん、あの……」

川内「私がお前のおばちゃんだぞ。立派な艦娘になって、一緒に戦おうな」

神通「え？　姉さん、あの……」

川内「私も一緒に育ててやるからな！」

神通「姉さん……ありがとう」

吹雪「なんだかわからないけど」

睦月「うん。よかったね」

夕立「ぽい！」


お　わ　り