お嬢様「経営!ダンジョンマイスター!!」 (456)

お嬢様「よーし!みんな集合だー!!私から直々に話がある!!」

オーク娘「うにゃー」

メイド「お茶が入りましたわお嬢様」

お嬢様「うむ!それでだな皆の衆よ……」

オーク娘「あ、今日宝くじの当選発表の日なのにゃ。新聞新聞……」

メイド「おや、茶柱が立っていますわ。吉兆ですわお嬢様」

お嬢様「話を逸らすな貴様らーーーーーーーーー!!」





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お嬢様「いいか!!我々の現状を忘れたワケではあるまいな!!」

オーク娘「うにゃ?なんか特別な事でもあったかにゃ?」

お嬢様「……活動資金が底を付きました」ズーン

メイド「気を落とさないでくださいましお嬢様。実家に帰ればお金など……」

お嬢様「うるしゃーい!!なんだこの状況!!昨日までちゃんと働いていたはずなのに!!」

オーク娘「正当な報酬も貰っていたはずだにゃ」

メイド「はいお嬢様。しかし今はこうして苦肉の策として洞窟の中で野宿ですわ」

オーク娘「近所の岬に住むお婆さんから教えてもらった場所にゃ、静かでいい所にゃ」

お嬢様「そもそもここにお宝があると聞いて来たのにそれも見つからず……チクショーーーーーー!!」ダンダンダンッ!!


オーク娘「まーそう焦らずに、今まで通りのんびりするにゃ。はいお菓子」

お嬢様「わーい!……って誤魔化すな!!貴様ら今まで我々が行ってきたここ三日の活動内容を思い出してみろ!!」

オーク娘「えっと、三日前は……何だったかにゃ?」

メイド「町で清掃業者のバイトで大掃除ですわ」

オーク娘「それで結構お金入ったにゃ」

お嬢様「二日目!!」

オーク娘「んー……何だったかにゃ?」

メイド「宅配業者のお手伝いで配達していましたわ」

オーク娘「それでさらにお金が入ったにゃ」

お嬢様「昨日!!」

オーク娘「それは覚えているにゃ!露店を開いて食べ物を売り歩いていたにゃ!」

メイド「ガス爆発に巻き込まれ全て消し飛びましたわ」

お嬢様「……」

お嬢様「……」ジワッ

メイド「お嬢様の泣き顔が可愛いですわ」

オーク娘「慰めろよ」


お嬢様「嘆かわしい!なんと嘆かわしい事か!!世の人々はこんなにも頑張っている我々に冷たい視線を浴びせるだけで誰も手を差し出そうともしなかった!」

メイド「御労しいお嬢様。お嬢様を蔑ろにするとはあの町の連中め……ッ!!」

オーク娘「ボス、爆発の後に飴ちゃん貰って頭撫でられて慰められていたにゃ」

お嬢様「奴ら私を子ども扱いしおってーーーーーーー!!」ジタバタ

オーク娘「そこ?」

メイド「私のお嬢様に気安く触りやがってあの町ぶっ壊してやろうかァ!?ああァン!?」

オーク娘「何だこの……何だ?」


お嬢様「くっ……そ、それでこれからの方針だが」

オーク娘「うにゅ?うにゃにゃ?」

メイド「お嬢様のありがたいお話が始まるというのに、その臭い口を閉じろメスブタ」

オーク娘「私の口臭はミント味にゃ!!それよりコレを見てみるにゃ!」

メイド「(味……?)で、何ですか新聞なんて指さして。貴女の役にも立たないようなそんな行動で飯が食えますか、さぁお嬢様そんな事より麗しきその声で私にどうか罵……いえ、ご命令を」

お嬢様「んー?ん!?」

オーク娘「なんか宝くじの数字が完全一致しているにゃ。これどれだけお金がもらえるんだにゃ?」

メイド「」


――――――
―――


お嬢様「だーっはっはっは!大金持ちなのだーッ!」

メイド「やりましたわお嬢様」

オーク娘「私の買った宝くじが当たったのに何で取り上げられているにゃ」

メイド「黙れ醜悪生物。お前が我々の活動資金から着服して買ったもんだろ、文句を言うな」

オーク娘「違うにゃ、月のお小遣いだにゃ……」グスン

お嬢様「なに安心しろ!お前へのお小遣いはしばらく弾ませてもらう事にする!何と言ってもお前の手柄なのだから!」

オーク娘「うにゃー!」パァァ

メイド「チッ、私からお嬢様を事あるごとに奪いやがってコイツ……」ボソッ


お嬢様「それで、この金を使って少々やってみたいことがあるのだが」

オーク娘「うにゃ?」

メイド「それは構いませんわお嬢様。そのお金は 全 て お嬢様のものなのですから。お菓子を買うなり贅沢するなりどうぞご自由に……」

お嬢様「馬鹿者!私は金持ちになる為に家を飛び出してきたわけではないのではない!私が一人で生活が出来る事を実家に知らしめる為にために大金が必要なのだ!何よりいい考えがある!」

メイド「し、失礼しました……と、申しますと?」

お嬢様「うむ!この金を元手に商売でも始めようと思ってな!」

メイド「聡明ですわお嬢様。さらに増やしていこうという算段ですわね」


オーク娘「商売にゃ?というと定食屋さんとか?パスタ売るにゃ?」

お嬢様「何でパスタオンリーなんだよ。ともかく、チマチマするより高収入の物を一発当てようと思っている!」

メイド「それはいい考えですわお嬢様。具体的には……」

オーク娘(ダメなパターンな気がするにゃ)

お嬢様「クックック……既に手筈は整っている!!」

メイド「流石ですわお嬢様」

お嬢様「偶然にも我々に協力してくれると申し出てくれた人材がいるのだ!では来てくれ!かむひあー!」


商人「はいはーい!ありがとうございます、通りすがりの旅商人の者でーす。以後、お見知りおきを」

オーク娘「着物着た犬の獣人にゃ。東洋人とはまた珍しい」

商人「狼です。そこはお間違えなく」

メイド「それはどうでもいい話ですわ。それで貴女、どうして我々に接触を?」

商人「いやぁ、そこのお嬢さんがとても凛々しくも美しかったもので、高貴な方だとお見受けしましてね?」

商人「そこで!まぁ私のちっぽけですが質のいい商品をもしかしたら有効活用してくれるのではないかと踏んだわけですよ!!」

お嬢様「フフン!そうかそうか、私から出るオーラは隠しきれなかったという訳か!」

メイド「眩しいですわお嬢様。この女性も見る目があるようで、ウフフフフフフ」

商人(ホントは換金所から大金もって出てくるのをたまたま見てただけですけどね。いやー楽な商売できそうだなオイ)


お嬢様「でだ、商人さん。今の私に相応しいものを売ってくれるとのことだが、早速見せてくれぃ!」

商人「はい!そちら方の要望にお応えして、一発ガツンと収入が見込めるツールをご用意いたしました!それがこちら……」ゴソゴソ

商人「お手軽簡単ダンジョン製作キットー!」濁声

お嬢様「おお!いかにもそれっぽい!!」

オーク娘「ダンジョン?」

メイド「製作キット?何を目的としてそんなものを……」

商人「上がる税収減る収入、そんな厳しい世の中だから、当ててみようか一攫千金!」

商人「夢見る少女じゃいられない、食っていくには元手が必要!そんな悩みを解決してくれる逸品がコイツという訳なのです!」


お嬢様「そ、それでそれで!どうやって使うのだ!?」ワクワク

メイド「期待に胸を膨らませるお嬢様……ああ、可愛いですわお嬢様」

商人「使い方は簡単、今ここにいる洞窟に設置して……よっこらセット。スイッチを押すだけ!!」ブイーン

オーク娘「うみみゃあああ!?なんか辺りが歪み始めたにゃ!!」

商人「洞窟を異界化させますので悪しからず」

メイド「地味にとんでもない事をしてますね」


お嬢様「おお、なんか広くなったのだ」

商人「擬似的に作り出したとはいえ、ダンジョンは発生した時点で誰の所有物でもありません。ここが誰かの所有地という訳ではない限り、冒険者ギルドに書類を提出すればすぐにダンジョンとして運営できるようになりますよ」

メイド「う、運営!?」

オーク娘「にゃ!?ダンジョンって誰かが開いてるものなのかにゃ!?」

商人「はっはー、お客さん知りませんね?今のご時世そんな危険な天然ものを国が放置しているワケないじゃないですか。冒険者ギルドとグルになって冒険者たちを誘き寄せるエサにしてるんですよ、こういうのは」

商人「そうすりゃ町の活性化にも繋がりますし、人の流れや物品の流れも容易に操作出来ますからねぇ」

メイド「あ、あまり聞きたい情報ではありませんでしたね……」

オーク娘「世界って怖いにゃ……」


お嬢様「うおー!すっげー!」

オーク娘「ボス!こっちに何かあるにゃ!」


商人「HAHAHA、気に入ってもらえたようで何よりです」

メイド「……それで、おいくらでしょうか」

商人「まぁ本体価格はザッとこんなもんで」カタカタ チーン

メイド「ンな!?足元見ている訳ではないでしょうね?」

商人「そーんな怖い顔しないでくださいよ。今回サービスで80%オフとお菓子つけますらかー、ホラホラ。ドーンと買っちゃってくださいな」

メイド「胡散臭い値引きですわね」

商人「……維持費も馬鹿にならない上に中身ほぼ空っぽのオプション別売りなのに誰がこんなもん通常価格で買うんですか。私もとっとと掃きたいんですよコレ」

メイド「ああ、そういう……」


メイド「しかし、それなら購入するのを渋ってしまいますわね」

商人「そう言わずに!ダンジョン経営は当てたら以後の収入は爆発的ですし、名のある冒険者さえ釣れれば一気に知名度も上がります。なんなら追加料金払って頂ければサクラも用意して……」

メイド「貴女、自分でコレを使わないのですか?」

商人「私は一攫千金当てるよりも、レアなアイテムを地道に売り買いしている方が性に合ってるので」

メイド「……」ジー

商人「そ、そんな目で見ないでくださいよー、アッハッハ」


お嬢様「ねーねーコレ買おうー?」

メイド「お、お嬢様!?」

商人「ほーらー、お宅のお嬢さんもそう言ってますしね?今ならリンゴ飴も付いちゃいますよー!」

お嬢様「わーい!」

メイド「ハァ……分かりました。資金もまだ余裕がありますし、お嬢様が喜ぶならそれで」

商人「毎度アリー!んじゃあここに手続きのサインを」


オーク娘「ボスー何食べてるにゃ?」

お嬢様「リンゴ飴ー。お前の分もあるぞー」

オーク娘「わーい!……じゃなくて見てみるにゃ!宝箱にゃ!」

お嬢様「おお!こんなものまで付いてくるのか!」

商人「おんや?異空間を作り出すだけだった気がしたんですがねぇ。前のコレの所有者の忘れ物ですかね?」

メイド「待て中古かよオイ」

オーク娘「早速開けてみるにゃ!」

お嬢様「ワクワクドキドキ……」


ボフン


オーク娘「うみみゃ!?」

お嬢様「グヴォッフォ!?」

メイド「お嬢様ああああああああああああああああ!?テメェなに晒すド腐れオーク!?お嬢様を傷物にする気かボケェ!!」

オーク娘「私のせいじゃないにゃ!宝箱の罠にゃ!!つーか私が一番の被害者だにゃ!?」

商人(!)

お嬢様「ケホッケホ……酷い目にあったのだ」

メイド「ええい処分ですわ処分!!こんなもの焼き捨ててしまいなさい!!」

オーク娘「えー、勿体ないにゃ」

メイド「ボケカスアホんだらぁ!!そんな事お嬢様が許す訳ねぇだろミミクソォ!!」

お嬢様「そうだな、釣った冒険者達に対してのトラップも必要だ。これも有効活用させてもらうとしよう」

メイド「仰せのままにお嬢様」ニコッ

オーク娘「何だこの扱いの差は」


商人「よっぽどでしたらそちら、私が引き取りましょうか?もう少し良い物と交換も出来ますが」

お嬢様「いいや!私に一杯食わせた罠箱だ!私が使ってやらんで誰が使うというのだ!」

メイド「寛大ですわお嬢様」

商人「うーん……ま、いいでしょう。了解です、それなら大切に扱ってください。ともかく今日は私は失礼しますね」

お嬢様「もう行ってしまうのか?」

商人「私も忙しい身ですのでねぇ、今後の商売の仕入れや弱みやなんたらや。色々と準備が必要になると思いますので。あ、これ私の携帯の電話番号です。何かあったら連絡ください」

メイド「はいどうも」

商人「それじゃあまた近いうちにー!」スタコラサッサ

お嬢様「行っちゃったな」


お嬢様「さーて!それでは手続きをしてダンジョンの経営を開始するとするぞ!」

メイド「英明ですわお嬢様。おいそこのオーク、お嬢様と私は冒険者ギルドへ行くのでとっとと馬車を用意してきなさい」

オーク娘「へいへーい、分かったにゃ用意してくりゃいいんだろもう」

お嬢様「フフフ、お宝に釣られた馬鹿な冒険者共よ……我が術中にはまるがいい!!」

メイド「勇ましいですわお嬢様」

お嬢様「そう!このダンジョンに数々の仕掛けに手も足も……仕掛け……釣るお宝……」

メイド「……あっ」

オーク娘「うにゃ?」

お嬢様「……」






お嬢様「そんなものどこにあるというのだあああああああーーーーーーーーーーーー!!?」


――――――
―――


数日後


商人「やーやー、まーたご指名いただいて光栄です」ニヨニヨ

メイド「テメェ始めからそのつもりだったろ」

商人「ええまぁ、先にもちゃーんと"オプション有り"という種の事を貴女に伝えたハズですが」

お嬢様「そうなのか?」

メイド「ぐっ、サラリと流れた話でしたので……不覚ッ!」

オーク娘「それより、どうして呼び出してから来るまで時間がかかったにゃ?」

お嬢様「そうだぞ、私が電話したのはあの後すぐだったのだぞ」

商人「こちらも色々と準備がありましてねぇ。ダンジョンのオブジェクトなんてそうそう扱ってませんので」

メイド「後から仕入れたのかよオイ」


お嬢様「それでどんなものがあるのだ!見せてくれ!」

商人「ほいほい、例えばこんなのですね。ライトアップ松明ー!」

メイド「……松明は元々ライトアップ代物でなくて?」

商人「ふふん、そんじょそこらの松明と一緒にしてもらっちゃあ困りますねぇ奥さん!」

オーク娘「じゃあ何が違うにゃ」

商人「ダンジョンの通路内って場所にもよりますが、まぁ基本的に暗くて狭くて進みづらい!これが何を意味するか分かりますか?」

お嬢様「?」

メイド「さぁ?そんなものなのではないですか?」

商人「分かってないですねぇ。落ちるんですよ!」

オーク娘「なにがにゃ?」

商人「客入りの回転数が」

メイド「身も蓋も無い事を言いますね」


お嬢様「まぁ確かにヒトが多く出入りするのは重要だが……」

オーク娘「あからさまに作られた感じがするにゃ。流石に私でも変だって気が付くにゃ」

商人「商売する上で客の出入りは計算に入れておいてください。とにかく今はお金が欲しい時期!変な拘りは破産に直結ですよ!」

商人「不自然だと思われない程度に散漫させておけばいいんですよ。ほら洞窟に掛けてあっても不自然じゃないナチュラルタイプ!20本セットでお安くしておきますから」

お嬢様「もっとこう罠とかを期待していたのだが」

商人「よくぞ気が付きました!!そんな希望もあるだろうと思いましてこんなものもご用意いたしました!!」

お嬢様「うおお!!」

オーク娘「こ、これは!!」




商人「振り子式ギロチン」

お嬢様「まって」


商人「何ですか、こういうの望んでたんでしょう?ほーら、こんなキュウリもスパンッと!」スパンッ!!

お嬢様「ダメだろ!?死人が出るぞ!?」

商人「ごっこ遊びでダンジョン経営出来ると思うなよ!!そんなんで世界を取れると思うなーッ!!」

お嬢様「取らねぇよ!?いや他にもっとあるだろ!?何で突然殺意に満ち溢れたもの出すかな!?」

商人「ダンジョンでの取得物は基本的に見つけた者勝ちになるんですよ。なのでダンジョン経営での利益は冒険者に追剥かけるか副収入かのどっちかになるんですよ」

メイド「何と合理的な事か」

お嬢様「納得するなよ!?流石に殺生は認めないぞ!?」

メイド「とのことです、もっとマイルドなのはございませんか?」

商人「まー私も血なまぐさい物は勘弁被りたいので一種のジョークですよ、あんまり死者を出すと国に目を付けられますからねぇ」

お嬢様「だったらやめろよ!?」


……


商人「お買い上げありがとうございましたー☆」

メイド「ま、また出費を……」

お嬢様「必要経費として割り切るのだ!」

オーク娘「まだまだお金はタップリあるにゃ!」

商人「まーダンジョンとしては一応形にはなった所でしょうか」

メイド「してやられた感がありますが……」

商人「今後冒険者の出入りが増えるにあたって物足りなさも出てくるでしょう。その時はまた私を呼んでください」

お嬢様「ああ!また頼むのだ!」

商人「ではではー」


お嬢様「フッフッフ!内装の準備も整った、冒険者ギルドに届けでも出した、適当なアイテムも買い足してダンジョンにばら撒いてやった!さぁ来たれ冒険者共!その身朽ち堕ち我が糧となるがよい!」

メイド「勇猛ですわお嬢様」

オーク娘「流石ボスだにゃ!それじゃあそろそろ外に出て様子を見守るにゃ」

お嬢様「え?」

メイド「は?」

オーク娘「ん?」

お嬢様「いや、我々の拠点はここだぞ?」

メイド「監視も兼ねなければなりませんし」

オーク娘「こんなダンジョンのど真ん中に居たら魔物だと間違われて冒険者から襲われるにゃ。下手すりゃ適当な理由付けてボコッてきそうにゃ。冒険者とはそういうものにゃ」

お嬢様「……」

メイド「……」

お嬢様「管理部屋とか無いの?」

メイド「ありませんわお嬢様」


お嬢様「ど、どどどどどどうしよう!このままでは我々が討伐されてしまうではないか!」アワアワ

メイド「こんな時こそ平常心ですわお嬢様、まだこのダンジョンの存在は知られてはいないハズ。正式にここの存在を知られるにはまだ時間が必要です、今からゆっくり脱出すれば何の問題もありませんわ」


「お、ここが新しく発見されたダンジョンか」

「一角千金狙ってきたが、どんな宝が眠っているのやら」

「フフフ、腕が鳴るわ!!」


オーク娘「にゃあーーーー!!冒険者がゾロゾロ入ってきたにゃー!!」

メイド「」

お嬢様「もうダメだぁ……お終いだぁ……勝てる訳がない……」

ピロン♪

お嬢様「ん?」


―case1・冒険者を撃退せよ―

お嬢様「ファ!?」

オーク娘「なんだにゃこの表記は!」

メイド「我々の頭上に浮かび上がりましたわね」

商人『お、繋がった繋がった』ザザー

オーク娘「そして突然の通信にゃ」

お嬢様「お、おい商人さん!これは一体何なのだ!?」

商人「まぁまぁ落ち着いて。軽ーいゲームですよ」

お嬢様「ゲーム?」


商人『このダンジョンキット、まぁ知っての通りマジックアイテムの一種なのですが』

商人『侵入してきた冒険者に合わせて、製作者側が行えるミッションが発生するんですよ』

メイド「また難儀な……」

商人『ダンジョン内を駆けずり回って冒険者たちの身ぐるみを剥いでやってください。彼らもそういう事承知でこの職業やってますし』

お嬢様「そ、そうは言われてもだな」

商人『大丈夫大丈夫!内部の事については貴方達に理がありますし、力で叶わなくとも仕掛けられたトラップの数々で応戦してやってください』

商人『それに、ミッションをクリアすればダンジョンに色んな機能が追加されていったりするのでなるべく消化してくのをお勧めしますよ』

オーク娘「本当にゲームみたいだにゃ」


お嬢様「くっ!こうなったらやってやる!二人とも!明日の生活がかかっている以上迷ってはいられぬぞ!」

メイド「承知いたしましたわお嬢様。例え日の中水の中お嬢様のスカートの中、どこまでもお供いたしますわ」

オーク娘「にゃ!!こんなところで潰れたくはないのにゃ!何とかして乗り切って見せるのにゃ!」


「ん?おーいそこのヒト達ー」


お嬢様「く、来るなら来い!相手になってやろるぞ!」

オーク娘「やろるぞー!」

「(やろるぞ?)ああいや、ひょっとして同業者?」

お嬢様「へ?」


「私達、ここのダンジョンの噂を聞きつけていち早く来たんだけれど」

「一番乗りだと思ったら他の冒険者が先に来ていたとはな」

「新しく発見された場所だから、まだ踏破もされていないと思ったんだがなぁ」

お嬢様「ん?あれ?」

メイド(お嬢様!ここは話を合わせますわよ!彼らは私達の事を冒険者だと思っております!)

お嬢様(お、おう!つまりこのまま油断させて罠に嵌めてしまえばいいという事だな!)

メイド(鋭敏ですわお嬢様。ではさっそく……)

オーク娘「あの部屋に沢山罠があるにゃ!行くんだったらあの部屋からの方がいいにゃ!」

お嬢様「」

メイド「」


メイド「テメェこの雌豚ァ!!何抜かしてやがる手筈と違うだろゴルァ!!」ギリギリ

オーク娘「はにゃ!?罠がある部屋に連れていくんじゃないのかにゃ!?」

お嬢様「何でそんな事を口に出した!?言え!!」

「お、あっちは罠部屋なのかい?」

「ありがとう、警戒して進めるよ」

「ええ、助かるわ。開けた場所に罠部屋が設置されているという事は、そこにお宝があるかもしれないって事だし」



メイド「……」

オーク娘「……誘導出来たにゃ」ドヤッ

お嬢様「お前そこまで考えて……」

メイド「ワケないですわお嬢様」


お嬢様「ともかく結果オーライというやつだ。それよりも、あそこの部屋にはどんな罠が仕掛けてある?」ヒソヒソ

メイド「罠の配置は全てアイツに一任したので私には……オイ、ちゃんと作動するんだろうな?」

オーク娘「私は工作の成績だけは良かったにゃ!大丈夫にゃ、問題にゃい!」

メイド「お遊戯でやってんじゃねぇんだよこっちは……」


「部屋が見えてきた」

「ん、随分と明るいな」

「怪しいわね……警戒しましょう」


オーク娘(見るにゃ!!この誰もが引っかかるような渾身の罠の配置を!!)


「……」

「……」

「……」

メイド「……バナナですわ」

お嬢様「バナナが部屋の中央に吊るしてあるな」

オーク娘「むっふん」ドヤァァ


オーク娘(誰もがあのバナナに目を向けるにゃ。釘付けにゃ!!そしてバナナを中心に罠が作動するにゃ!!)

お嬢様「……」

メイド「ここでコイツをあのバナナのある場所まで投げ飛ばせば罠が全始動してコイツを始末出来るのでしょうか」

オーク娘「酷い!?」


「あ、明らかに……何だ」

「このダンジョン踏破はそう難しく無さそうだな……」

「と、ともかくバナナは避けて行きましょうか」


お嬢様「全てにおいて後手後手だよ!?どうすんのせっかく用意したお宝持ってかれちゃうよ!?」

オーク娘「大丈夫だにゃー」


「しかし、バナナを中央に置いてそこを重点的に松明でライトアップって」

「しかも妙に部屋が広いし。まぁおかげで回り道が出来るんだけど」

「アッハッハ!案外バナナ祭る為に作ったダンジョンかもな!その名もゴリラのダンジy」ズボッ

「!?」

「え?何!?」

メイド「!?」


「あ、穴だ!!落とし穴だ!!」

「そ、そんな!?何でこんな隅っこの方に!?」

「先に進むのは不味い!!一旦引き返……うわああああああああああああああ!!」ズドンッ!!

「あ、アレーーーーーーーーーーーン!!」

お嬢様「引き返した瞬間壁があのヒト押し出したぞ!?」

メイド「あ、あれではしばらく立ち上がれませんわ」

「ぐッ!お、俺の事は気にするな……に、逃げるんだァ……」ガクッ

「クッ!後で必ず助けに来るから!!」


パッ


お嬢様「ファ!?」

メイド「今度は何ですの!?」

「あ、明かりが消えて……ッ!」


お嬢様「何も見えないのだ!」ウルウル

メイド「お嬢様、私にしっかり捕まっていてください!何が起こるか見当もつきませんわ!!」


ズガンッ


ドサッ


お嬢様「ヒィィ!!」

オーク娘「いっちょ上がりにゃ」

メイド「はい!?」


オーク娘「今明かりを点けるにゃ」パッ

「」

お嬢様「し、死んでいる!」

メイド「死んでいませんわお嬢様」

オーク娘「峰内ちにゃ、命に別状はないにゃ」モグモグ

メイド「こんな時になにを食ってんだよテメェは」


お嬢様「一体何が起こったのだ?」

オーク娘「中央のバナナに気を逸らせて置いて部屋の隅にいくつか落とし穴を設置しておいたにゃ」

オーク娘「同じルートで引き返した場合に壁のプッシュトラップが発動して他の落とし穴に落下させる手筈だったけどこっちは失敗にゃ。気絶したから良かったけど」

メイド「……部屋をやけに明るくしていた理由は……」

オーク娘「物理行使しなければならない場合の最終手段にゃ。生物が一番に反応して動きを止めるのは光、二番目が音にゃ。突然部屋の明るさが変われば誰だって驚くにゃ」

お嬢様「で、部屋の明かりを消した……と」

オーク娘「得物を誘い込むような情報工作は得意だと言ったハズにゃ」ニヤッ

メイド(コイツこええええええええええええええ)


オーク娘「ボス、さっさと身ぐるみ剥ぐにゃ。初の収入だにゃ」

お嬢様「お、おう!よくやった!それでは戦利品をいただくとしよう!!」

メイド「切り替えが早くて優秀ですわお嬢様。それではこの冒険者のようなボロ雑巾たちはダンジョンの外に捨ててきますわ」

お嬢様「お前の方が順応してるよね……」

メイド「ま、貴女にしては及第点といったところでしょうか。所で、仕掛けを無視してバナナを取りに行った場合はどうするつもりだったのですか?」

オーク娘「最悪、あのバナナは保険にするつもりだったにゃ。アレ、腐っているにゃ」

お嬢様「ハハ、またエグイ事をする」

オーク娘「食べたら最後、吐き気がしばらく止まらなくなるにゃオエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」

メイド「さっき食ってましたね」

お嬢様「そんなこったろうと思ってたよ」


……


―mission complete!―


商人「いやーやりましたね皆さん!」

メイド「肝が抉り取られるような気持でしたわ」

お嬢様「大丈夫?」

オーク娘「自分のお腹の欲求に耐えられなかったにゃ……」


商人「ノした冒険者さんたちは冒険者ギルドの方に送り付けておきます。これでここのダンジョンの危険度も他の冒険者さん達に認知されるでしょう!」


お嬢様「ん?それじゃあ誰も寄り付かなくなるんじゃないか?」

商人「ダンジョンは危険であればあるほど、いいお宝が眠っていると相場が決まっているんですよ。冒険者さん達はその最奥に眠る宝箱を開けた時の一喜一憂、カタルシスを欲しているのです」

商人「高難度のダンジョンを攻略したとなれば名前も売れて更なる利益につながりますからね。願ったり叶ったりですよ」

メイド「そしてより強い装備を持った冒険者たちがまた入ってくる……と」

商人「ご明察!!リンゴ飴一個プレゼントゥ!!」

メイド「あ、どうも」

お嬢様(いいなぁ)


お嬢様「あ、それでダンジョンから指定されたミッションをクリアしたのだが、何がもらえるんだ?」

商人「おお、そうでしたね!ダンジョン内で使える仕掛けが増えましたよ」

メイド「へぇ、何が出来るようになったのですか?」

商人「それは次の改築のお楽しみって事で」

お嬢様「クックック……これで私は一歩ダンジョンマイスターへと進んだという訳か!」

商人「アハハ……唐突に一番初めに見たような単語が初登場しましたが……」

商人「ともかくお疲れ様です。今日はもう侵入してくる冒険者さんは居なさそうなので、ゆっくり休んでください。ダンジョン内で欲しい機能があれば私に仰っていただければ追加しておきますよ」

お嬢様「そうかー」

メイド「そうですかー」

お嬢様「……」





お嬢様・メイド「管理室、ください」

商人「ですよねー」

オーク娘「うにゅぅ……」オエエエエ

小休止

書き溜め分終了
ここからどうなるかはゴッドミソスープ

再開

――――――
―――



お嬢様「やーど宿宿ー♪」

オーク娘「フカフカのお布団にゃー♪」

メイド「……」

お嬢様「どうした、浮かない顔をしているな」

オーク娘「久しぶりの宿にゃ、そんな険しい顔をしなくてもいいにゃ」

メイド「いえ、お嬢様。一つお伺いしたいことが」

お嬢様「何なのだ?」

メイド「今我々がいる宿の事なのですが」

メイド「何 故 ダ ン ジ ョ ン の 真 横 に 存 在 し て い る の で す か」


お嬢様「はッ!そういえば昨日まで無かった気がするぞ!!」

オーク娘「ほ、本当にゃ!!今まで宿代ケチってずっとダンジョンで寝泊まりしていた気がするにゃ!!」

お嬢様「ど、どういうことだ!?まるで一夜城のように突然現れたではないか!!」

メイド「博識ですわお嬢様。しかしそもそもおかしいと思いませんか、こんな場所に宿が出来るなんて」

オーク娘「何でにゃ?近くに冒険者が待機できる場所があれば何かと便利にゃ」

メイド「必要時間的に考えてオカシイっつってんだろチビオーク」ギリギリ

オーク娘「うみみぁあああ!!そんな事で頭を締め付けるのはやめるにゃあ!!」


商人「あ、そこらへん気が付きました?」ヒョコッ

メイド「ま た お 前 か」

商人「いやぁ、保険として副収入も必要になるかなーと思いましてこちらも用意させてもらったんですよー」

お嬢様「なに!?この宿をか!?」

商人「はい、限りなく人件費と材料費を削りまくって急ピッチで作らせました!!お気に召しましたか?お値段こんな感じなんですがー」カタカタ チーン

メイド「そういえばそんな話してましたねぇ……ですが、まだ購入するとも何とも言っていないのですが」

商人「あー大丈夫です。名義は他人のものとなっていますので、こちらは無理にご購入していただかなくともいいですよ」

メイド「ほっ、これ以上出費がかさむのは痛手ですからね。ねぇお嬢様?」

お嬢様「いや、確かにダンジョンだけでやっていくのはまだ心許ない。いっそ商人さんが言うようにこの宿も買い取ってしまうのも手だろう!」

メイド「そういう訳です、ほらこのお金を持っていきなさい!」

商人「毎度アリー☆いやぁ太っ腹ですねぇ!!」

オーク娘「金銭感覚狂ってるにゃこの人達」


お嬢様「フハハハ!これで私たちの寝泊りする場所も確保できたわけだ!ついでに馬鹿な冒険者たちから財布の中身まで搾り取ってやるのだ!!」

商人「あ、人材までは派遣しませんので自分たちで何とかしてくださいね。あんまりな対応をしているとお客さんが寄ってこないので気を付けてください」

お嬢様「」

メイド「そこは私の家事スキルでなんとかいたしますわお嬢様」

オーク娘「それにしてもどうやってこんなに早く宿なんて作ったにゃ?」

メイド「まぁ気になりますわね、普通に考えて在り得ない事ですし」

商人「ああコレはですね私の人脈みたいなもんですよ、HAHAHA」

トントン

商人「おんや?誰でしょうね?どうぞー」


ガチャ

「うぃーっす」

お嬢様「?誰なのだ?」

商人「大工さんですね。今二階部分を作ってもらってたんですよ」

お嬢様「まだ未完成なの!?今はガワだけしか無いの!?」

「そろそろ上がっていいっすか?暗くてもう見えないんすよ」

商人「あ゛ぁん゛?何言ってんだお前ら!?まだ二階部分の屋根の取り付け終わってねぇじゃあねーか!!」

「そ、そう言われましても……こんな時間まで俺ら動かすってアンタどうかしてるよ……」

商人「うるせぇ!!テメェンとこの会社の顧客情報と裏帳簿を世に出されたくなかったらキリキリ働けオラァ!!社長からも素直に従えって命令来てんだろうが!!」バンッ!!

「ヒィッ!?」

お嬢様「」

オーク娘「」

メイド「」


商人「あのさ?何も金払わないなんて言ってなのよ?わかる?アンタらは言われたことだけしてりゃあいいの?OK?了解?ならとっとと続きを始めろ!!お客さん待たせてんだよこっちは!!」ガンガンガンッ!!

「し、失礼しました!!」

商人「総動員でやってんだからとっとと終わらせんかい!!手抜き工事常習犯のテメーら使ってやってるだけでもありがたいと思え!!そんで、帰ったらいつかニーア商会ぶっ潰してやるって社長に伝えとけコンチクショウ!!」

「で、でも休憩くらい……」

商人「二 度 と 商 売 道 具 握 れ な い よ う に し て や ろ う か ?」ゴリゴリ

「ヒィィィ!?」

メイド「あ、あの……」

商人「それじゃあダンジョン改築の件で話を進めましょうか!あ、私が見張っている内は建物の強度は大丈夫ですよ?安心してください!」ニコッ

オーク娘(このヒト物凄く怖いにゃ)ガクガクガク

お嬢様(堅気じゃない……堅気じゃないのだ……)ガクガクガク

メイド(人脈ってなんでしたっけ……?)


商人「あのさ?何も金払わないなんて言ってなのよ?わかる?アンタらは言われたことだけしてりゃあいいの?OK?了解?ならとっとと続きを始めろ!!お客さん待たせてんだよこっちは!!」ガンガンガンッ!!

「し、失礼しました!!」

商人「総動員でやってんだからとっとと終わらせんかい!!手抜き工事常習犯のテメーら使ってやってるだけでもありがたいと思え!!そんで、帰ったらいつかニーア商会ぶっ潰してやるって社長に伝えとけコンチクショウ!!」

「で、でも休憩くらい……」

商人「二 度 と 商 売 道 具 握 れ な い よ う に し て や ろ う か ?」ゴリゴリ

「ヒィィィ!?」

メイド「あ、あの……」

商人「それじゃあダンジョン改築の件で話を進めましょうか!あ、私が見張っている内は建物の強度は大丈夫ですよ?安心してください!」ニコッ

オーク娘(このヒト物凄く怖いにゃ)ガクガクガク

お嬢様(堅気じゃない……堅気じゃないのだ……)ガクガクガク

メイド(人脈ってなんでしたっけ……?)


――――――
―――



お嬢様「経営二日目なのだ!!」

メイド「朗らかですわお嬢様」

オーク娘「朝は弱いにゃぁ……」スヤァ

メイド「寝るなよ」

商人「皆さんおはようございまーす!無事に宿の方も完成したので、今日の終わりにまた覗いてやってください」

メイド「外に放置されている大工さんの屍の山は?」

商人「ニーア商会ってとこに送り返しておくので心配なさらず」

メイド「お嬢様の教育に不適切ですわ。とっとと片づけをお願いします」





(ひ、ひでぇ……)クタッ



お嬢様「いやー、しかし立派な管理室なのだ」

メイド「電子機器が盛りだくさんですわ」

オーク娘「うみみゃあ……機械いじりは得意じゃないにゃ。頭痛いにゃ」

商人「さて、前回ミッション達成をしたという事で今回から魔物の召喚が出来るようになりましたよ」

お嬢様「む、そういやダンジョンなのに何も住み着いていないのはおかしいと思っていたのだ」

商人「こうやって機能がアンロックされていく形のものですからね」

メイド「初っ端から魔王クラスや勇者クラスの冒険者が現れたらどうするつもりだったのですか」

商人「……では、この機能について詳しくお話しますね」

メイド「答えろよ」


商人「基本的にいつでも好きな時に召喚することが出来ます」

お嬢様「うおお!!それでは呼び放題ではないか!」

メイド「強い魔物を大量召喚すれば楽勝でなくて?」

商人「それがそうも上手くいかないのが世の常。呼び出す魔物の強さに比例して安くは無いコストが要求されます」

オーク娘「そりゃ魔物もタダ働きなんてまっぴらゴメンだにゃ」

メイド「具体的には?資金面ならまだ余裕がありますが」

商人「はい、お金は勿論ですが」




商人「規定以上の雇用費と住み込みですので最低限の衣食住、三年契約の生命保険の加入と最低週1日の休暇、加えて10時間以上の労働の禁止。あ、ですが残業が発生する場合はまた別途で給与の支払いが発生しますのでそこら辺気を付けてください」

お嬢様「ハハ、えらく現実的な事を言う」


商人「あ、これ召喚出来る魔物のカタログです。ザッと目を通してください」

メイド「お、お嬢様。割と馬鹿に出来ないお値段になってしまいますわ……」

お嬢様「魔人とか神とか載ってるぞ……」

オーク娘「そのヒト達の下に見た事が無い0の羅列が書いてあるにゃ……」

商人「まーそこら辺のカリスマを雇うにはこちらも魔王クラスにドカーンと稼いでなきゃ無理なんですけどねぇ」


メイド「大変差し出がましいと思いますがお嬢様、今回は見送りという形を取っても……」

オーク娘「そうにゃボス!高いお金出して呼び出しても役に立つかは分からないにゃ!私の罠設置だけで十分だにゃ!」

お嬢様「んー、でもなぁ。お前のトラップ部屋も結構限界があるだろう?だとしたら手数を増やす意味でも魔物を召喚した方がいいと思うのだが」

オーク娘「えー!」

商人「あ、ダンジョン内に置けるオブジェクトの数は限界があるので気を付けてくださいね。つーかもう結構いっぱいいっぱいですね」

メイド「魔物の召喚には大賛成ですわ!!テメェ反論するなら今すぐ追い出すぞオラァ!!お嬢様が絶対なんだよ!!文句あるか?ああ!?」

オーク娘「この熱い手のひら返しよ」


メイド「……お嬢様、こっちのちっこいのにしておきましょうね?」

お嬢様「えー……んー、分かった。お前が言うのならそうする」


オーク娘「しかしちゃっかりグレードを落としてくるにゃ」

商人「あはは……人材を召喚は私の管轄外なので流石に私も口を挟みませんが」

メイド「決まりましたわ」

お嬢様「この子を2体召喚するぞ!」

商人「どれどれ……ほほう、マネマネンドですか。対象に変身して惑わし混乱させる、ダンジョン内で意表を突くには中々いい選択だと思いますよ。コストも軽いですし」


商人「それじゃあダンジョンの機能を使って……」

お嬢様「ちょちょいのちょい!!」ボフン

「マネー」

「マネマネー」

オーク娘「おお!カタログで見るより可愛いにゃ!よぉ~しよしよしよし」

お嬢様「抱っこしたらヒンヤリしてそうなのだ!代わるのだ!!」

メイド「博愛ですわお嬢様」

商人「いや、愛玩用に召喚されても困るんですけどね」


「……あんまり気安く触らないでくれよ」

オーク娘「!?」

「俺たちだって仕事で来てんだよ……」

「それが仕事内容だったら付き合うけどよ」

「生活掛かってんだよ……」

お嬢様「」

オーク娘「」


商人「ま、彼らには彼らの事情ってもんがあるので、過度な馴れ合いは禁物ですよ」

メイド「こう現実を突きつけられると胸が締め付けられますわ」


オーク娘「お?なんか画面に映ったにゃ」

お嬢様「ヒトだ……冒険者か!」


―――


銃剣士「ここだね、依頼のあったダンジョンは」

女盗賊「何だかなぁ。身にならなさそうな依頼なんて受けて……私まで何でアンタの手伝いしなきゃいけないのさ」

銃剣士「そう言わないで。人助けのついでに路銀を稼ぐのも悪くは無いでしょ」

女盗賊「悪 い ね。興味ないのに付き合わせて……ったく!」


―――


お嬢様「D A T E」

オーク娘「デートかよ」

メイド「ま、相手方の事情は知りませんが……」


「そんじゃあ一働きしてきますかな……よっこらせっと」

「あんまり、期待しないでくれよ。給料に見合った働きはするけどよ」

お嬢様「アッハイ」

メイド(それじゃあ期待できませんね)

「始めだけ適当に撹乱しておいてくれよ」

「変身してからお互いに入れ替わってあいつ等を罠に嵌めるからよ」

オーク娘「トラップ管理なら任せるにゃ!」


商人「そんじゃあ私はこの辺でお暇しますかね」

お嬢様「見ていかないのか?」

商人「次の仕入れがありますので」

メイド「どうせまた我々に吹っかける気でしょう」

商人「それは後ほどのお楽しみって事で……それでは!」


メイド「チッ、お嬢様!あの商人をなんとかしないといつか喰われてしまいますわ!」

お嬢様「ギブアンドテイクが成り立っている相手なのだ!そういう事を言うんじゃない!」

メイド「し、しかし……」

オーク娘「ボスのいう事は絶対にゃー。刃向うとメイドパンチが飛んでくるにゃー。本人も例外じゃないにゃー」

メイド「黙れ小娘」ギリギリ

オーク娘「痛い!?痛いにゃ!?」

お嬢様「さて、マネマネンド達は上手く出来るだろうか」


―――


女盗賊「そこ、落とし穴」

銃剣士「おっとっと」

女盗賊「動くな!すぐ横がバーナーの射程範囲内!」

銃剣士「うわっち!?」

女盗賊「引き返すな!!天井にロードローラーが引っかかってるの見えてないの!?」

銃剣士「何で!?」

女盗賊「知らないよ。実際あるんだもん」

銃剣士「ど、どうしてこうも罠に引っかかりそうになるかな……」

女盗賊「アンタは動きが正直すぎるの!何の疑いなく進みすぎ!」

銃剣士「アハハ……疑うって事は好きじゃないからさ」


―――

オーク娘「トラップがことごとく避けられているにゃ」

メイド「この役立たずめが!!」

オーク娘「むむむ、女の方は名のある冒険者と見たにゃ。フェイクは無視して隠れた罠を的確に看破しているにゃ」

お嬢様「うむうむ!これなら魔物を召喚した甲斐があったというものだ!」

メイド「流石ですわお嬢様。自身に絶対の自信を持つどこかのオークとは大違い」

オーク娘「言ってくれるにゃ……!よし!モノマネンドが二人に接近中にゃ!!ここで私がすかさず手助けするにゃ!!ぽちっとな」


―――


(よぅし、ここまで接近すれば大丈夫だろう)

(嬢ちゃんたち、いっちょやってくれや)


パッ


銃剣士「!?」

女盗賊「明かりが一斉に消えた……」

銃剣士「ッ!こっちの通路に一緒に来るんだ!僕から離れないで」

女盗賊「言われなくても。戦闘は一任するから、しっかりアタシを守りなさいよ」

銃剣士「ハハ、大丈夫だよ」

女盗賊「もう……!」


パッ


銃剣士「おっと、どうやら一時的なものだったみたいだね」

女盗賊「安心した、じゃあ行こうか」


―――


メイド「上手く分断出来たようですわね」

オーク娘「入れ替わりも出来たみたいだにゃ!」

お嬢様「フッフッフ!後は二手に分かれた連中をそれぞれ必殺の罠部屋に連れ込めば……!」


―――


銃剣士「うわー、ビックリしたね。突然松明の明かりが一斉に消えるなんて」

女盗賊「……」

銃剣士「どうしたの?」

女盗賊「ううん、明かりが消えたときに何かがこっちに向かって走ってきたような気がしたんだけど」

銃剣士「え、ええ!?本当かい?」

女盗賊「んー、その後何もなかったから気のせいだと思うんだけど……」

女盗賊「それに、さっきから罠が何だか人為的なものに感じるし」

銃剣士「多分要塞化かなにかされているんじゃないかな?個人でダンジョンを作る場合はあり合わせで罠を作ったりするようだし」

女盗賊「そうなの?」

銃剣士「うん。半自動化出来るから、人為的だとしても道楽でない限りは人が直接動かしているって事はあまり無いと思うよ。管理だけコンピューターに任せて本人が近くにいないって言うのはよくある事だから」



―――


お嬢様「よしよし!我々の存在を隠そうとしているな!」

メイド「出来た魔物ですわね。報酬を上乗せでもしておいてモチベーションを上げてやりましょう」

オーク娘「フフン!私のアシストがあったおかげにゃ!」

メイド「勿論貴女のお小遣いから引かせてもらうに決まっていますわ」

オーク娘「」

メイド「さて、もう片方も見てみますか」

お嬢様「そうだな。そっちも気になるぞ」


―――


ギヤアアァァァァァァァァ!!


女盗賊「やーんこわーい!」ダキッ!

銃剣士「ちょッ!?」

女盗賊「だってー!何だか悲鳴のようなものが聞こえるんだもーん!それに私か弱い女の子なんだもーん!だから私の事まもってー!」

銃剣士「はい!?」

女盗賊「いやーん!あふーん!」

銃剣士「こ、これは困ったなぁ」


―――


オーク娘「こ れ は ひ ど い」

メイド「オイ誰かあの粘土止めろ!!」

お嬢様「アイツは強制送還だな」


―――


銃剣士「そ、それより見てみなよ!そっちに何か部屋があるよ!」

女盗賊「むっふ~ん!あら!素敵な部屋があるわね!!アタシも行きたいわ!ぜひ行ってみるわよ!!」


―――


メイド「よし、なんとか罠部屋に誘いこむことには成功したみたいですわ」

お嬢様「結果良ければ何とやらというやつか。その後仕留められるかで今後の事も考えてやろう!」

オーク娘「んー、んん?」

お嬢様「どした?変な顔して」

オーク娘「もう一組の動向がおかしいにゃ」

お嬢様「おかしい?」


―――


女盗賊「あ、こんなところに」

銃剣士「通路だね……隠してある」

女盗賊「ニヒヒ♪盗賊の感が働く働く♪行ってみようよ、ちょっと狭いけどさ」

銃剣士「こんなところを!?男の僕じゃちょっと無理じゃないかな?」

女盗賊「いいからいいから!それ突撃ィー!!」

銃剣士「うわあああああ!!」


―――


メイド「お嬢様、非常に不味いですわ!!あの女が入った通路は……」

オーク娘「ここにゃ!!管理室への隠し通路にゃ!!」

お嬢様「にゃにーーーーーーーーーーーー!?」


オーク娘「あわわわ!ヤバいにゃ!非常にヤバいにゃ!!殺られるにゃ……危険が危ないにゃあああ!!」

メイド「お嬢様、ここはモノマネンドに指令を出すべきですわ!」

お嬢様「クッ!仕方がない、プラン変更だ!!男に化けてるモノマネンドに通信!今すぐ変身を解いてとにかく驚かせて逃げ回れ!!注意を逸らすだけでいい!何とか持たせろ!!」


―――

(おっと、緊急事態ってやつかい)

―――

(やーれやれ、仕方がない。じゃあ変身解くぜ!)

「解!!」

ボフン!!


女盗賊「!?」

「へへ、まんまと騙されてくれたな」

女盗賊「あ、アンタ……ッ!!」







ボフン!!

「あ」

「……よう」

「……」

「……」


―――


お嬢様「」

メイド「」

オーク娘「」


―――


「すまねぇな嬢ちゃん」

「暗がりの中で手を握ったのはコイツだったみてぇだ」


―――


お嬢様「アホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

オーク娘「にゃああああああああああああああああああああああああ終わりにゃあああああああああああ!!」

メイド「は、腹を括りましょうお嬢様。こうなったらお嬢様だけでもお護りせねば……!!」チャキンッ!!


ガチャ

女盗賊「ここは……」

銃剣士「機械がやたらと多いみたいだけれど……」


オーク娘「きたあああああああああああああああああああ!!」

お嬢様「ぎゃああああああああいやあああああああああ!!殺されるーーーーーーーー!グワーーーーーーーーーー!!」

メイド「オラ!!行って来い脳筋!!テメェの役割は戦う事と盾になる事だオラァ!!」グイグイ

オーク娘「にゃあああ!?聞いてないにゃあ!?何をするやめろーーーーー!!」


女盗賊「ああ!!」

銃剣士「君たちは!!」

お嬢様「ヒィィ!!」


銃剣士「可愛いゴブリンの女の子にスライムのメイドさん!」

女盗賊「それにオークの娘……間違いないね」

お嬢様「……うぇい?」

銃剣士「依頼達成だ。ほらね、人助けも無駄ではなかっただろう?」

女盗賊「はいはい言ってろ」

銃剣士「君は"もうどうせ死んでる"って切り捨てた癖に」

女盗賊「いいでしょ別に!」

メイド「あ、あの……話が見えないのですが」


銃剣士「ああ、失礼。僕達、冒険者ギルドの依頼でここに来たんだけど」

女盗賊「その依頼って言うのが、"昨日ダンジョンで一緒になった少女達の安否を確かめてほしい"って随分とお人好しな依頼だったわけで」

銃剣士「彼ら、凄く神妙な顔をしていたよ。"自分たちが至らなかったばかりに彼女達を置き去りにしてしまった"って」

女盗賊「生きているなら生きているでギルドに顔出さないと余計な心配されるから、そこら辺マナーなんだけど?」

メイド「あー……」

オーク娘「昨日の……」


銃剣士「さて、元気そうに生きているって分かったんだし僕達はそろそろ行くね」

女盗賊「まったく、端金にしかならないような依頼受けて……時間の無駄ッたら無駄!」

銃剣士「だーかーら!いいだろこういうのも!!」

女盗賊「良くない!効率悪い!!大体アンタねー……」

銃剣士「でも、きっと彼らも喜ぶだろうね。もう僕はそれだけで十分だよ」



お嬢様(ああ……)

オーク娘(なんか……)

お嬢様・メイド・オーク娘(申し訳ねぇ……(ですわ))


――――――
―――



商人「み、皆さん。撃退の方は……う、うまくいったよう……で」ヨロヨロ

オーク娘「撃退は出来てないにゃ」

お嬢様「上手く回避できただけだぞ」

商人「そ、それは……何より……」

メイド「所で商人さん、貴女やけにボロボロですが。何かありましたのですか?」


商人「い、いえね?帰り道に突然ダンジョンの明かりが全部消灯いたしまして……」

商人「一つコイル発条を踏んだが最後、飛ばされて粘液まみれになるわフロアバーナーでコンガリ燃えるわアローウォールに引っかかるわ坂道で滑って岩に押しつぶされるわ連鎖連鎖で……コンチクショウ!!」

お嬢様(あー……)

オーク娘(さっき聞こえていた悲鳴はそれかにゃ)

メイド(ざまぁ)


商人「そ、それで。あの役立たずの魔物共はいかがいたしましょうか」

メイド「結果を残せなかった者は不要ですわ」

お嬢様「しばらく宿のほうでタダ働きさせてやるのだ」

オーク娘「商人さんの災難も元を辿ればコイツらの責任にゃ」

「ひでぇ!!」

「そんな殺生な!!」

メイド「シャラップ!!貴様らお嬢様を危険な目に合わせておいて無事で帰れると思うなよ!?」

商人「ま、まぁ今回の事は明らかにネンドさん達に非がありますので処遇はそちらにお任せします」

メイド「いい働き手が見つかりましたわぁ♪」ギリギリ

「ぐあああああああ」

「やめろォ!!」


商人「そ、それでは私はこれで……か、身体が痛い……」

オーク娘「お大事ににゃー」

メイド「今度は役に立つような機能の追加をお待ちしておりますわぁ♪ウフフフフフフフ」

小休止
定食屋書いてた時みたいな気分になってきた

再開

――――――
―――


メイド「さぁキリキリ働きなさい!!奴隷共よ!!」

「くそぅ……」

「こんなハズでは……」


お嬢様「宿屋って結構忙しいのだな」ズズー

オーク娘「お客さん数組泊まっているだけで大混乱にゃ」ズズー


メイド「お前も働けボンクラオーク」

オーク娘「ボスと作戦会議中にゃ、忙しくて手が離せないにゃ。そっちこそ働くにゃ」

メイド「シメるぞ……と言いたいですが、私も用事があって少し外出しなければならないのですが」

オーク娘「うにゃ?」


お嬢様「ふぅ、しかしダンジョンの効率化を図らねば……現状宿の方が収入が大きいのが何とも言えんぞ」

オーク娘「あれから一週間経ってるけどなんか冒険者の入りが凄く悪いにゃ」

メイド「一時期話題になった程度ですからねぇ。今宿に泊まっている半数も冒険者ではなく通りすがりですし」

商人「それはこのダンジョンに目玉となる物が無いからですよ!」ニョキッ

お嬢様「うわ出た!?」

オーク娘「神出鬼没にゃ」

メイド「しばらく姿を見せないと思ったら」

商人「いえいえ、こちらも準備が整ったので話を持ち掛けに来ただけですよ」


メイド「で、何を売る気ですか?」

商人「ああ、大丈夫ですよ。そんなに身構えないでください!今回は貴方達に助っ人を用意しようと思いましてね?勿論無料の貸し出し!!」

お嬢様「助っ人?」

商人「はい!役に立たない魔物なんて召喚させてしまった心ばかりの謝罪をですね」

オーク娘「なんか信用ならんにゃ」

メイド「商人は損得で動く者。裏くらいあるのでしょう?」

商人「言ってしまえばそうなんですけどねー。まぁそう言わずに、受け取ってください!私の全身全霊!!カモーン用心棒!!」


剣士「通りすがりの剣士だ、三食飯付きで働いてやらんでも無い」

お嬢様「初回から高圧的なの来ちゃったよ」

剣士「……四食でも構わんぞ」

お嬢様「何で増えた!?」

幽霊「通りすがりの幽霊です。こんな球体な成りですが強いです、使ってください」

オーク娘「何だこの丸いの」

幽霊「うるせぇデブ!!ちぃとばかし胸が大きいからって調子に乗るなよ!!」

オーク娘「デブにデブって言われた!?」

子ウサギ「ウキュ!」

メイド「……」

子ウサギ「ウキュンウキュキュウ!」キメッ

メイド「お、おう」


商人「どうですか!!」

お嬢様(何だこの……何だ!?)

商人「ともかく戦力的に不安が残る貴方達にはちょうどいいんではないですか?」

メイド「お嬢様、流石にこれは怪しいですわ」

お嬢様「う、うむ。私の一存では決め兼ねるな、お前はどう思う?」

オーク娘「うにゅー……私の仕掛けた罠の邪魔にならなければどっちでもいいにゃ」

メイド「参考になりませんわ。やはり今回は引いてもらうべきかと」

お嬢様「しかし人手が欲しいのも事実だし……うーむ」


商人「分かりました、こうしましょう」

商人「この娘達に一冒険者としてダンジョンに挑んでもらいましょう」

お嬢様「なに?」

メイド「どういうことですか?」

商人「前にも言った通りサクラになってもらうんですよ。冒険者ギルドに来る冒険者たちはとりあえずダンジョンの情報を欲しがります」

商人「そこでこの娘達にダンジョン内で起きる在ること無い事を他の冒険者たちに振りまいてもらうんです」

商人「そうですねぇ、例えば……ダンジョンに珍しい魔物が現れた!とか、見た事の無い秘宝がそこらじゅうに眠っていた!とか」


お嬢様「私達が自分で出来る事じゃないか?」

商人「貴方達、以前の件で冒険者ではないとバレた上に元気そうに生還したって噂が広がっちゃってるんで裏で動くのには適していないと思いますよ?」

お嬢様「ぐぬぬ、自らの行動を制限してしまっているとは」

メイド「心中お察ししますわお嬢様」

オーク娘「仮に噂を広めたところで噂は噂にゃ。誰か信じるのかにゃ?」

商人「それなら大丈夫です。町のスーパーで半額セールやってるって聞いたらとりあえず顔を出すだけ出してみるでしょ?それと同じです」

オーク娘「た、確かに!?」

メイド「明らかに同系列ではないのですがそれは」


商人「話に尾ひれがついて行けばまた冒険者も多くダンジョンを訪れることになるでしょう。真偽が怪しいなんて言われたら、珍しい魔物だったらこの娘達に演じて貰えばいいし」

お嬢様「秘宝はどうするのだ?」

商人「元々ここのダンジョン……になる前の洞窟には"海鳴りの鈴"というレアなアイテムが隠されていたという事でしたので、それも誤魔化しきれるかと」

メイド「情報収集に余念がないですわね。ひょっとして貴女はそれを狙ってきたのではなくて?」

商人「欲しい物ではありますね。ま、今こうして貴方達が洞窟を弄って見つかっていないのなら本当にただの噂かもしれないですし」


お嬢様「このくらいならやらせてみてもいいかもしれんな」

メイド「了解ですわお嬢様。許可が下りましたのでどうぞご勝手に」

お嬢様「我々の邪魔をになるようなことは絶対にするのではないぞ!」

商人「だーいじょうぶ大丈夫!任せてください!オラお前ら!!気張っていくぞ!!」

剣士「……ふぁ……眠いな」

幽霊「あーメンドクサイなー」

子ウサギ「ウッキュウ」

オーク娘「このやる気の無さよ」


お嬢様「とりあえず方針は決まったな。連中を使って他の冒険者と接触させまくろう」

メイド「分かりましたわお嬢様、一時も奴らから目を離さないようにいたしますわ」

オーク娘「そういえばさっきどこかへ行くって言っていなかったかにゃ?なんか手紙をもっていたような気が」

メイド「ギクッ」

お嬢様「……おい、どこへ行こうとしていたのだ?」

メイド「わ、わわわわわたくしはどこへも行きませんわぁ!お嬢様一筋ですわ!!」

お嬢様「ジィー……」


メイド「……」ドキドキドキドキ

お嬢様「ふん!まぁいい、用を済ませたら早く帰ってくるのだぞ!」

メイド「承知いたしましたわッ!!」

お嬢様「それでは私は先にダンジョンへ行く。ではな」

メイド「行ってらっしゃいませお嬢様ァ」ニコニコ


オーク娘「にゃーんだ、私の見間違えだったかにゃ。それじゃあ私も……」

メイド「ブ チ 殺 し て や ろ う か 糞 ア マ ァ ア ア ア ア」ギリギリギリ

オーク娘「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛。なにするにゃ!?」

メイド「私がこっそりと隠していたものをワザワザ口に出すかコイツは!!にゃーにゃー言いやがってあざといんだよ!!猫かテメェーはよぉー!!」

オーク娘「うみみゃ!?オーク訛りだから仕方がないにゃ!!それより本当に手紙だったにゃ?」

メイド「はぁ……後で追及されても困りますので言ってしまいますと、お嬢様の実家へ送る手紙ですわ」

オーク娘「ボスの?」


メイド「貴女は途中で我々と合流したから知らないでしょうが、お嬢様は銘家の生まれで本物の大金持ちですわ」

オーク娘「マジかにゃ!?成りだけだと思ってたにゃ!?」

メイド「そんな人にメイドが付き添いますか」

オーク娘「いや、ただのロリコンの変態が付きまtに゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」ギリギリギリ

メイド「口を慎めよ下郎が。事情があって家を飛び出したお嬢様ですが、流石に旦那様も奥様も心配していらっしゃいますのでこうして定期的に手紙を」

オーク娘「痛いにゃ……ボスはその事知ってるのにゃ?」

メイド「勿論知りませんわ。知ったら私がお嬢様に怒られてしまいますし」



オーク娘「そうかにゃ、それなら黙って言ってくるにゃ。私も黙っておくから安心するにゃ」

メイド「……それ以上聞かないのですか?」

オーク娘「親しい中にも礼儀ありにゃ。ボスにはボスの考えがあって行動しているにゃ、私がボスの家庭事情に首を突っ込むべきではないにゃ。今楽しんでいるボスを暗い顔にはさせたくないにゃ」

メイド「貴女は……」

オーク娘「それじゃあ私も行ってくるにゃ。ボス一人にさせたら寂しくて泣いちゃうにゃ」

メイド「……フフ、分かりました。それではしばらくお嬢様をお願いします」

オーク娘「任せるにゃ!ボスとお話して私はもっと仲良くなるつもりでいるにゃ!」

オーク娘「ボスー!待つにゃーーーーー!!」

メイド「私は……彼女に対して少しキツく当たり過ぎていたかもしれませんね……」





お嬢様「おお、それでアイツはどこに行くって?」

オーク娘「ボスの両親に手g」

メイド「野 郎 ぶ っ 殺 し て や る」

オーク娘「に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

小休止

今回♂は無いのかな?

本日休業

>>106
男いたよ!?

本日も休業申し訳ない

再開

―――――
―――


オーク娘「まったく酷い目に合ったにゃ」

お嬢様「さてと、ダンジョン内はどうなっているかな」

オーク娘「何だかんだでヒトは入っているにゃ」

お嬢様「人数は少ないがな……ん?そういえば4層以降に進んでいる冒険者がいないな」

オーク娘「罠の配置が熾烈過ぎたかもしれないにゃ。これじゃあ最終の15層に辿り着くのも夢のまた夢にゃ!頑張ボウケンシャー!」

お嬢様「むぅ、タワーディフェンスの勝利パターンが構築されてしまったみたいだ」


お嬢様「しかし、システム的にそういうのは不可能になっているのではないか?」

オーク娘「そうにゃ。攻略不可能の設置は出来ない様になっているにゃ。そんなことしたらあんまりにもあんまりにゃ」

お嬢様「うーむ……なんか本当にゲームみたいなことになってしまっているぞ」

オーク娘「魔物の配置もしていないから完全に罠師のダンジョン状態にゃ」

お嬢様「攻略したら罠が扱えそうな腕輪を手に入れそうだな」

オーク娘「勿論このダンジョンにそんなお宝は無いにゃ、多分」


お嬢様「ダンジョンの機能も完全に把握出来てないし、色々と不便だなぁ」

オーク娘「説明書的なものも無かったからにゃ。ともかく今は冒険者達の動向を見てみるにゃ」

ピロン♪

オーク娘「にゃ!?」

お嬢様「うわビックリした!?ここでミッション!?」


―case2・1時間経過まで冒険者の5層突破を防げ―

オーク娘「防衛ミッションみたいだにゃ」

お嬢様「うーむ、そもそも最高が4層止まりなのに」

オーク娘「まーいいにゃ。今回のミッションもいただきにゃ。私の罠配置にかかればちょちょいの……」

幽霊『あーあー、管理室管理室。聞こえますかー』

お嬢様「お、通信だ」

オーク娘「どうしたにゃ、宣伝は上手くいっているかにゃ?」

幽霊『うん、丁度冒険者の女の子と出くわしたから上手くあること無い事吹き込みまくったんだけどね』

幽霊『突 然 張 り 切 り だ し て 4 層 突 破 し て い き ま し た』

オーク娘「」

お嬢様「」


―――


少女「あー怖かったぁ、一気に駆け抜けるんだもん。私ドキドキしちゃったよ」

少女「え?……無理だよ!私はそこまで運動神経よくないもん!そっちと違って魔法専門!」

少女「で、でも大丈夫かな?5層まで来た冒険者っていなかったんだよね?私達が初めて……なら、前知識の無いエリアだから慎重に……」

少女「それはダメー!お願いゆっくりで!!私がついていけないから!!」


―――


オーク娘「どんな子が突破したのか見てみたら」

お嬢様「一人で延々と喋っている電波少女を見てしまったぞ」

メイド「アレですわお嬢様、一人になるとつい技名を叫んでしまったり気持ちよく歌を歌い始めちゃうアレです。私にも多々覚えがありますわ」

お嬢様「おおう、戻ったのか」


メイド「しかし、私が抜けている間に易々と突破されるとは情けないですねぇ!!ええ!?」

オーク娘「わ、私の罠は悪くないにゃ!先の冒険者たちのせいで設置位置がバレているせいにゃ!あとあの球体幽霊のせいにゃ!!」

お嬢様「……」

メイド「お嬢様?いかがなさいましたか?」

お嬢様「……いや、何でもないのだ」

お嬢様(……お前が何をしていたか知っているから、素直におかえりと言えなかった自分が恥ずかしいのだ)


メイド「それで、どういたしましょうかお嬢様?」

お嬢様「む、そうだな……この際商人の連れにはしっかり働いてもらおう。おい聞こえるか!今から皆5層へ向かいあの冒険者をあの手この手で止めるのだ!」

幽霊『すみません、おっかけて5層まで来たんだけど私トラバサミ踏んでさっきからずっと動けないんですよ』

オーク娘「幽霊なのに!?」

オーク娘「足が無いから身体半分がトラバサミにハマってるにゃ。何やったらそうなるにゃ」

メイド「まったく使えませんね。剣士さん、今どこにいますか?」

剣士『大丈夫だ、私なら既に5層のとある部屋にいる』

お嬢様「おお!流石だ!」

メイド「追加でタダ飯を要求してくるだけの度量はありますわね」

剣士『ああ、食い物を追っていたら5層の行き止まりの部屋に閉じ込められてしまった』ガシャーン

お嬢様「アホーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

剣士『美味いな。それに食べ物も豊富だ、これなら30分ぐらいはこの場で待機できる』モグモグ

お嬢様「喰っとる場合かー!!早く脱出して向かえー!!」

オーク娘「いや1日分程度の食糧を30分手……てかあの罠に引っかかる単純な奴がいるとは思わなかったにゃ」

メイド「貴女、確か数日前に自分で作って自分で引っかかっていませんでしたかしら?」


―――


少女「え?あ、うん、なんかあったのかな?騒がしいね」

少女「って、うわぁ!!」ビシュンッ!!


―――


お嬢様「よし!あの女、罠に引っかかったぞ!」

オーク娘「十字路に仕掛けた転移の罠にゃ。確率で壊れちゃうけどギャンブル性のある面白い罠にゃ!お、今回は壊れなかったにゃ」

メイド「あら、罠の扱いに長ける癖に確実性の無い方法を試すのですか?」

オーク娘「ある程度の法則性は見つけてあるにゃ。1,絶対に詰みにならない場所に飛ぶ2,同階層にしか飛ばない3,飛んだ先で罠は踏まない4,他の人物がいる場所に飛ぶ可能性が高い。なおこの項のみ1の条件を無視して優先される、にゃ!」

お嬢様「ほえー、よく調べたなそんな事」

オーク娘「自分で仕掛けたのを忘れて踏みまくったにゃ……」

メイド「だ ろ う な」

お嬢様「ん?ってことは……」


―――


ビシュンッ!!

少女「ッ!ああビックリした……あれ?ここどこ?」

剣士「ん?なんだお前は?」


―――


お嬢様「邂逅したな」

メイド「邂逅しましたわ」

お嬢様「何だろう、あんまりいい予感がしない」

メイド「私も同じ感想ですわお嬢様」

オーク娘「うにゃ?」


―――


少女「あ、冒険者さんですか?」

剣士「今はそういう事になっている、貴様は?」

少女「私も冒険者です!それはそれとして……ここはどこでしょう。出口がふさがれているように見えますが」

剣士「ああ、塞がれているんだ。この食料と引き換えにな」

少女「えぇー!じゃあここの食糧を全て食べないと出られないって事ですかー!?」

剣士「そうとも言う」モグモグ


―――


オーク娘「あの女サラッと嘘をついているにゃ」

メイド「ええいせめて宣伝をしろ宣伝を!何のためにお前をわざわざダンジョンに招き入れたと思ってんだ!」

お嬢さま「仕方がない。とにかく今はあの冒険者を止めることに専念した方がいい、閉じ込められたとはいえ安心できん。おい剣士さん聞こえるか?出来ればそこの女の子の足止めを頼みたい」

剣士『ん?了解だ、足を止めればいいんだな?』


ガシャーーン!!

お嬢様「なぬ!?」

オーク娘「な、何の音にゃ!?」


―――


少女「きゃああああああああ!?」

剣士「ほぅら、足を氷漬けにしてやったぞ?これで動けまい」

少女「な、何でこんなことをするんですか!!」

剣士「足を止めろと言われたんだ、だから止めてやっただけだ」

お嬢様『なに物理行使してんだよ!?もっと他にあるだろ!?』

剣士「魔法は物理じゃない、特殊だ」

お嬢様『何の話!?』


少女「い、いやぁ……助けてください……」ウルウル

剣士「まぁ安心しろ、そこでジッとしていれば私も何もせん。さて、食事の続きを……」

少女「ごめん……代わって」ボソッ

剣士「ん?今何か言ったか?」

少女「……」

少女?「……フフッ……」

剣士「ッ!」


少女?「よぉ、やってくれるじゃねぇかクソ女」

剣士「(気質が変わった……)お前、何者だ」

少女?「何者だって構わねぇさ。だが、"俺"を氷漬けにした落とし前くらいは付けてくれるんだろう?」

パキンッ

剣士「氷をいともたやすく砕いたか……クッヒヒヒ……面白いッ!!」チャキンッ

少女?「テメェ、魔法を使っておいて最終的には刀まで使うのかよ。まぁいい、得物は俺と同じ……いざ尋常に!!」

剣士「斬姫の錆にしてくれる!!」バッ

少女?「勝負ッ!!」バッ


―――


ガキンガキンッ

バチューンッ

お嬢様「あ、なんか始まったけど」

メイド「擬音だけでお楽しみくださいですわ」

オーク娘「ともかくこれで一時間が過ぎれば……」


ズドンッ!!


お嬢様「……そうはいかないよね」


―――


剣士「クヒヒヒヒヒ!!楽しい、楽しいぞ!!」ガギンッ

少女?「クッソ!!なんだよこいつ!?ああいう性格の奴は大体噛ませだろ!!滅茶苦茶強え!!」ギッ

お嬢様『くぉらあああああ!!フロア破壊しながら移動すんな!!』

剣士「そんなもの!いくらでも直せるだろう!だがこんな強い奴には中々出会えん、我慢しろ!!」

オーク娘『直すのは私にゃ!!我慢なんて出来ないにゃ!!』

剣士「鬱陶しい!通信切るぞ!!」ピッ


―――


メイド「アイツッ!通信機切りやがりましたわ!!」

ガッシャーン!!

ズガガガガガガ

お嬢様「ああ……ダンジョンが壊れていく……」

オーク娘「罠が……完璧な配置が……」


―――


剣士「ふん!威勢がいいのは始めだけか?」

少女?「戦いを楽しみやがって……チッ、シャーねぇ、こっちも全力で行くしかねぇか!!」

剣士「何だ、力を隠していたのか、気に入らん。さっさと来い、正面からぶっ潰してやる!」

少女?「ん?ああ、大丈夫だ、手筈通りに頼むぞ」

剣士「よそ見を……するなあああああああああああああ!!」バッ

少女?「ッ!速い!!」

剣士「終わりだ」


少女「ライズフラッシュ!」

剣士「魔法ッ!?くっ!目つぶしだと!?」

少女「こ、これでいいの?」

少女?(いいんだ!引くぞ!)

剣士「……」

剣士「チッ、逃げたか」チャキン


少女?(あっぶねぇ、あのまま攻撃してたら多分真っ二つになってたぞ)

少女「そ、そうなの?」


少女?(よし、走るのはここまででいい)

少女「う、うん……あ、ここは」

剣士「利口だな、目つぶしの後にてっきり追いうちをかけてくると思ったが……」

少女「あ、あのまま攻撃していたら真っ二つになっていた……だそうで」

剣士「ああ、悪いな。咄嗟の反撃になると手加減が出来ないからな。生憎、私は殺しはするなと姉からキツく言われていてな、感謝するぞ」

少女?(ケッ、生意気な口開けるのも今の内だ!)

剣士「さて……お前の中にいる"男"を出せ。もう一度奴と戦わせろ」

少女「き、気づいてたんですか!?」

少女?(見た目が女のままなのに性別まで指名だぜ、コイツ凄いな)

剣士「出さないのなら……こちらから引き摺りだす!!」バッ


少女?「アッハッハハハ!!バーーーーーーーーーーカ!!」ベロベロ

剣士「何ッ!?」ビシュン

少女?「アッハッハッハ!!ザマァ見ろ!!転移トラップだよ!!さっきの部屋へ逆戻りだ!かなり遠いぞ!」

少女(さっき私がふんじゃったやつだね)

少女?「ああ、あんなのまともに相手してたら疲れるだけだっての。さ、逃げてる最中に階段も見つけてあるから次の階層へ行くぞ」

少女(頼もしいんだか情けないんだか)

少女?「俺は確実に勝てる相手としか戦わねーの。お前の身体を守りながらやってんだから察しろ」

少女(フフ、ありがと)


―――


お嬢様「何だよあの二重人格!卑怯だろ!」

オーク娘「あーあー負けちゃったにゃ」

メイド「ギミックを逆に利用されてしまいましたね」

お嬢様「ふむ、しかしこうした強かな冒険者が攻略していくのだな」

オーク娘「あ゛ー、この階層罠の配置を見直すにゃ」

お嬢様「うむ、そうしてくれ……ん?」

メイド「おやおや、戦いはまだ終わっていなかったようですね」


―――


少女?「こ、コイツ……ッ!」

剣士「……ああ、次の下り階段に来ると思っていたよ」

少女(あー、あの罠ランダム転移だったかー)

剣士「さて、確かに私は頭がいい方ではないが、バカ呼ばわりされるのは心外だな」

少女?「ハァ……で、どうするつもりだ?」

剣士「続きだ……この境界線の狭間でな!!」スタッ


―――



ビー

―mission loss―

お嬢様「は!?」

オーク娘「何で!?」


―――


少女?「やるしかない……か!」

剣士「喪失、絶望……どんな表情を浮かべたところで強さなど変わらん、無意味だ!」←ドヤ顔で階段に足をかけている


―――


お嬢様「……」

メイド「……」

オーク娘「……」


「「「お前かああああああああああああああああああああああああああああ!!」」」キィィィィィン


剣士『ンが!?耳が!?』

少女?『今の内だ!!逃げるぞ!!』

剣士『あ、まて!!私と戦え!!今ならこの食いかけのパンやるから!!待て!!』ダダダダダ


メイド「後でお説教ですわね」

お嬢様「酷いオチだ……」

幽霊『あ゛ーあ゛ー、管理室管理室、聞こえますかー』

オーク娘「ボス、また通信だにゃ」

お嬢様「あーどした?何かあった?」

幽霊『なんか対応が雑だね……』

メイド「こっちは落ち込んでいる最中でございますわ。とっとと用件だけ言って引っ込みやがれ役立たず」

幽霊『酷い!?って、そうじゃなくてね』

お嬢様「ん?」


―――


ゴギャー!

ギャーッス!

ギエピー!

幽霊「フロアに突然魔物が沸いたーーーーーーーー!!助けてーーーーーーーーーーーッ!!」

お嬢様『』

メイド『』

オーク娘『』


――――――
―――



お嬢様「これはどういうことなのだ!」バンバン

メイド「説明を求めますわ!」バンバン

商人「え、ええとですね、説明と言われましても私からはどうにもこうにも……」

お嬢様「というかマニュアルくらい出せマニュアル!」

メイド「そうですわ!こういう珍妙な事態が発生した原因と対処も書かれているハズですわ!」

商人「いえね?あるにはあるんですが……」

お嬢様「何を渋っている!早く出せ!」

商人「も、もう……これですよコレ!」


オーク娘「えっと何々?……技名:ヴァニシュメンツ・アルティミット=アーム」

お嬢様「現実世界をも亡ぼしかねない高エネルギー波を拡張・分散させる。相手は魂の一欠けらさえ残さず消滅する。多元宇宙からエネルギーを供給しており、この技を使うたびに一つの異世界の生命エネルギーが枯渇し崩壊する」

商人「あ、それ私の黒歴史ノートだ。返してください!こっちですこっち!!」

メイド「読めたものではありませんわね」

お嬢様「酷いなオイ」

オーク娘「今度は随分と分厚い物が出てきたにゃ」


商人「読めるもんなら読んでみてください!」

お嬢様「ええっと、何々?」パラパラ

オーク娘「……うにゃ?」

メイド「これは……」

商人「読める訳ないじゃないですか、だって……」

お嬢様「……」






お嬢様「ヒエラティックテキストだコレーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

オーク娘「翼神竜でも出てくるのかにゃ」

メイド「スフィアモードですわ」


お嬢様「何だよこれ!!なんだよ!!」バンバン

メイド「説明書を今の今まで渡さなかった理由がこれですか」

商人「あ、アハハハ……このダンジョンツール自体かなりの年代物でしてね?私の調べ得た範囲のもので貴方達に使用方法をお教えしたのですが……」

メイド「危険性があったにも関わらず売りつけるとは、見上げた根性ですわ!!」

お嬢様「通りで安かったワケだ」

オーク娘「詐欺師め!!訴えてやるにゃ!!」

商人「訴えるだと!?ふざけんなコンチクショウ!!いいか私はな!?いいかよく聞け!?私は誤魔化しはすれど騙すようなやり口で物売りなんて絶対にやらないからな!?」

お嬢様「ダメだろそれ!?」


商人「ともかく、何かこの状態になるまでに変わった事はありませんでしたか?」

オーク娘「んー。変わった事かにゃ?」

メイド「あのオトコオンナと貴女の所の剣士が大暴れした程度でしょうか?」

お嬢様「……あ、ミッション」

商人「あー……失敗したんですか」

お嬢様「まさかペナルティとかあったり……」

商人「多分それですねー。あ、ほら、テキスト読めないですけど図解で何となく描かれていますよ。ミッション失敗したであろうヒトが挫折のポーズをとりながら魔法陣から次々と召喚される魔物の絵が」ペラペラ


商人「一か月間苦悩している日々が赤裸々に綴られているので効果もそのくらいの範囲なんでしょう」

お嬢様「やけに具体的な図解だな!?テキストいらないんじゃないか!?」

メイド「ともかく機能の一部なら安心ですわ。それに助かります」

オーク娘「何故ににゃ?」

メイド「お金を出して狙った魔物を召喚するよりも安上がりで大量に呼び出せるんですもの。まさか別料金とは言わないですわよね商人さん?」

商人「図解のどこにも書かれていないから恐らくノーコストでしょうね」

お嬢様「図で見るなよ……」


商人「ただ、問題が一つあって」

メイド「問題?」

商人「こちらで用意した魔物と違って、湧いて出た連中は完全に野生。以前貴方達が呼び出した者とは違い人間的理性と知性も持ち合わせていない。言う事を聞かないのはちょっと問題かと」

オーク娘「むー、不味いにゃ」

メイド「貴女もですか。何がですか?」

オーク娘「野生の魔物はピンキリにゃ。勘のいいやつは罠を避けて進むからまだいいけれど、極端に頭の良い奴や悪い奴は対処しにくいにゃ」

お嬢様「どういうことだ?」

オーク娘「頭の良い奴は罠を逆に利用して自分の狩りの道具に、下手すりゃ解除するのもいるにゃ。そして頭の悪い奴は……」

メイド「勝手に引っかかりまくって設置した罠を台無しにしてくれると」

オーク娘「困ったにゃ、こっちで指示出せないからどうしようもないにゃ」


商人「思うんですけど、こういうのって魔物の数が減ってくれるからいいんじゃないですか?」

オーク娘「設置には手間もコストがかかるにゃ。それに魔物はそれぞれ特性も違うからそいつに合った罠を使わないと無駄が多すぎるにゃ」

商人「へぇー、勉強になります。私普段は汎用性のあるものしか扱ってませんでしたからそこら辺の専門知識は抜け落ちていて」

メイド「貴女、罠関連の時だけやたら頭が良くなりますわね」

オーク娘「罠というより狩りにゃ。実家が魔物狩りで食いつないでるにゃ。そのおかげで私も狩りの技能だけは学校でも上位だったにゃ」

お嬢様「うむ!以前ニヤッとしたせいでそうじゃないかと疑っていたが、お前がそんな狡猾な性格じゃないと分かっただけでも嬉しいぞ!」

メイド「暖かですわお嬢様。なるほど、阿呆でも一つに特化はしているという事ですわね」

オーク娘「何だか褒められた気がしないにゃ」

メイド「褒めてませんからねぇ」


商人「それはそれで、冒険者ギルドでダンジョン難度が上がって冒険者を誘う餌に出来そうですね」

お嬢様「うむ、ここで方針を帰れば新たな集客が期待できるかもしれん。よし!早速作戦会議だ!後に続け!!」

メイド「勤勉ですわお嬢様」

オーク娘「あー、罠の種類と設置位置の考え直しにゃ」

商人「それじゃあ私も何か皆様をサポートする物でも考えておきますかねー……ん?なんか忘れてる気が……」








ギャーッス ゲシゲシ

幽霊「誰か助けてーーーーーーーー!動けないのーーーーーーーーーー!!蹴られてる!?殴られてる!!」ポヨンポヨン

ミュー ドスッドスッ


子ウサギ「ウッキュウ」ヤレヤレ←助けに来た

小休止

本日休業

ちょこっと再開

――――――
―――



メイド「お嬢様、ご報告があります」

お嬢様「……言ってみろ、いや!!言わなくても分かる!!だからやっぱり言うな!!」

メイド「はい、貝のように口を閉ざしますわ」

オーク娘「宝くじのお金が尽きたにゃ」

メイド「言うなバカやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ガッガッ

オーク娘「止めるにゃ!!現実を見るにゃ!!」

お嬢様「クッ、ダンジョンに注力し過ぎたせいで後先考えず投資してしまったか!」


メイド「幸いというのか何というか、宿の収入が爆発的に増えているおかげで喰うには困りませんわ」

お嬢様「我々も中々しぶといな……ともかく、ダンジョンに魔物が出現した事が大きかったな」

メイド「はい、腕試しも兼ねて低階層で駆け出し冒険者が。深階層では宝を求めてベテラン冒険者が多く入るようになりましたわ」

お嬢様「商人さん達が噂を広めてくれていたのもこの結果に繋がったのだろう、魔物が徘徊している事でレアアイテムがあるのではないか、という心理的な面も燻られているのだろう」

オーク娘「その分私の作業量が増えて大変にゃ」

メイド「嬉しい悲鳴と言いなさい、貴女は宿の仕事が出来ないのですからそれくらいやって当然ですわ」


お嬢様「それでだ、宝くじは使い切ったが宿で稼いだお金は実際に十分に溜まっている……そこで!」

メイド「保守的に行くのですね、分かりますわ。ここで下手にダンジョンに投資すると以前のような規格外の連中に突破された時のダメージの方が大きくなりますわ。ここは一度無駄を省くために規模の縮小を……」

お嬢様「ここいらで宿屋を大きくしようと思うのだ!!」

メイド「素敵な考えですわお嬢様!!」

オーク娘「何 故 攻 め に 入 る」

商人「アハハ……右に倣えもここまで来ると感服しますよ」

メイド「出たな諸悪の根源」

商人「夢を売る私に失礼な言い方をしますね」

お嬢様「半分ナイトメアを売られた気分だがまぁいい!相談があるのだ!」


商人「宿屋の拡張ですか?」

お嬢様「うむ、実は最近ダンジョンに入る冒険者が増えてな」

商人「部屋数が追いつかなくて客が他所に洩れてしまっているという訳ですね。ふーむ、宿の拡張は正直言うと私の専門外なんですけどねぇ」

お嬢様「ハハ、一夜で建てておいて何を言うか。ともかく頼む、検討だけでもしてほしいのだ」

メイド「実際に様々なご意見が寄せられていますわ。読み上げなさい!」

オーク娘「ほいほい、"出入りしている従業員みたいな娘達は可愛いけど対応する粘土野郎が不愛想"、"町から遠いから物資の補給が不便、ダンジョンの隣に建ってるならそのくらい対応しろバカ"、"もっと量のある飯を提供しろ、質より量だ、いいな?"」

オーク娘「"プレイルーム的なものが欲しい、俺たちだって四六時中冒険に従事してる訳じゃない、ふざけんな"、"スライムのメイドが小さい女の子をよく物色している、怖い"、"オークの女の子が壺割ってるの見た、もっとそこら辺徹底しろ"、"ゴブリンの女の子が突然高笑いをし始めた、うるさい"」

メイド「と、このような……」

商人「半分くらいアンタらに対しての悪口じゃねーか!?そこは自力で治せるだろ!?」


剣士「ちなみに言うと、食事量を要求しているのは私だ」

商人「お前は黙れよ!?早くダンジョン言って仕事してこい!!」

剣士「連れん奴だ、では行ってくる」

商人「ハァ……私達もお金出して泊まっている以上客として意見を言わせてもらいますけど、メイドさん以外対応がなっていないというのもまぁ事実です」

メイド「当然ですわ」ドヤァ

商人「だからといって出入りする小さい冒険者さんやそちらのお嬢さんを事あるごとに凝視しないでください。傍から見たら変態にしか見えませんよ」

メイド「ではお嬢様を優先で見るようにしますわ。今後気を付けましょう」

商人「お前、私の言葉通じてるか?」


商人「では分かりました。部屋数の方は明日までに何とかしましょう」

お嬢様「おお!出来るのか!」

商人「フフン!林檎ちゃんに不可能は無いのです!あ、費用の事ですが」カタカタチーン!

メイド「あー……以前よりもかなり高くなっていますが」

商人「これ以上は勘弁してくださいよ。今までは在庫処分でお安くしていたんですから、今回は完全に私の予想を超えたものですし」

お嬢様「サラッと酷い事を言ったのだ」


商人「それと、働き手がそろそろ必要だと思いましてそこらへんは先に知り合いに声を掛けさせてもらいました」

オーク娘「わざわざ商人さんが見つけてきたのかにゃ?」

商人「はい、見つけたというより相談を受けたというか。店を宿内に入れて欲しいとあちらからの申し出なので、コレは仲介費や彼らのお給料はいりません、むしろテナント代でお金取れますよ」

お嬢様「それならばさっそく連れて来てくれ!」

商人「はいはーい、そういうと思いましてもうこちらに来てもらいましたー!」






パスタ「どもー」

お嬢様「スゲェ名前の奴が来た」


パスタ「うわ!?なんだこの名前!?勇者名義じゃねーのか!?」

店員「勇者さん、勇者は飽和状態ですし紛らわしいからその名前で統一しましょう」


オーク娘「パスタにゃ!紛れも無いパスタにゃ!!」

メイド「大興奮ですわね。好物でしたっけ?」

オーク娘「いや、別に」

メイド(なんだコイツ……)



商人「こんな名前ですが、色んな料理を作れる腕利きなので厨房を貸切させて完全に任せるって言うのはどうでしょうか」

メイド「そうですわね、私一人でもいっぱいいっぱいでしたし」

商人「最悪なぜか客の私がヘルプに入ってましたからね」

メイド「料理できるの私達しか居ませんから……」

お嬢様「うむ!毎日おいしい料理を感謝しているのだ!」

メイド「その言葉で私は天に昇るような気持ちになりますわお嬢様ぁ!!」

オーク娘「いつもご苦労にゃ」

メイド「DEATH!!」


お嬢様「では準備もあるだろう、明日から入ってくれ」

パスタ「了解!じゃあ厨房はこっちが使いやすいようにさせてもらうよ」

店員「それでは今後ともよろしくお願いします!」

商人「絶対にパスタ作らないでくださいね」

パスタ「えー」

店員「えー、じゃねーよ」


お嬢様「な、なんか不安だがまー人手不足の一端は解消という事でイイか!」

オーク娘「粘土はどうするにゃ?」

「呼ばれて来てみたんだが」

「何だ?用済みかい?」

メイド「いいえ、使えないのなら使えないで裏方に回しましょう。これでも貴重な男手ですわ」

お嬢様「……変身させて娼婦でもやらすか」ボソッ

オーク娘「!?」

メイド「!!?」

「「ッ!?」」ビクッ

お嬢様「ん?勿論冗談だぞ?」

メイド(度重なる疲れでお嬢様が穢れてしまった……ッ!!)ガクガクブルブル

オーク娘(め、目に光が無かったにゃ……)ガクガクブルブル


商人「それと、プレイルームについてですが、そちらも是非働かせてほしいと申し出た方がいるのですが」

お嬢様「うむ、通せ通せ!人手が足りない今ならどんな人材でもウェルカムなのだ!」

商人「えーっと、後悔しませんね?」

メイド「はて?」

オーク娘「よっぽどなのかにゃ?」

商人「会えば分かりますよ、会えば……ではお入りください」


ガチャ


触手「……」

お嬢様「……」

メイド「……」

オーク娘「……」

商人「……」




触手「ど こ 見 て ん の よ !!」

お嬢様「お引き取り下さい」ニコッ


商人「はいはい帰った帰った、お呼びじゃないんだとよ」ズリズリ

触手「何よ!!ガン攻め拘束SMプレイルームを作ってくれるって話じゃなかったの!?」

商人「誰も何も言ってねぇよ」

触手「うっさいわね!!名前が微妙に私と被ってて気に入らないのよアンタ!!」

商人「被ってねぇよ!?"しょ"の字しか合致してないよ!?」

触手「キー!!ちょっと人気があるからって調子に乗らないで!!私だって本気を出せば筋骨隆々ダンディやほっそりハンサムなんてイ・チ・コ・ロよ!!」

触手「そう、私はヴァニティラヴハンター☆」

お嬢様「えい」グッチャアアアア

触手「ぎゃああああああああ!!?やめッ!やめろおおおお!!男に責められるならまだしも女の子供になんて、あああああん///やめろっつってんだろ!?」

お嬢様「アハ、アハ、アハハハハハハ」グシャッグシャッグシャアアア!!

触手「ぎゃあああああああああ!!」


触手「」チーン


メイド「過労が限界を超えましたわ、トリップしていらっしゃるようで」

商人「申し訳ないです……」

お嬢様「さて、ゴミは片付けたしダンジョンの整備だけして今日は休もう」

メイド「痛々しいですわお嬢様……それは私どもでやっておきますので今日はもうお休みください」

オーク娘「後でちゃんと報告するにゃ、だからもう休むにゃ」

お嬢様「アハ、アハ、アハハハハハハハ」



休憩

再開

――――――
―――


商人「はい、先日の事は忘れて色々と整理しましょうか」

お嬢様「何があったのだ?あの日実はパスタと話をしてからの記憶が無いのだ」

メイド「あの後ぱったりと眠ってしまったのですわお嬢様、お気になさらないて下さいまし」

オーク娘「何も見なかった聞かなかったにゃ、いいにゃ?」

お嬢様「お、おう?」


商人「とりあえずご要望通り宿の拡張が終わりました。前回の会社は使えなかったので日が経ってしまいましたが形にはなりました」

オーク娘「あの大工さん達呼べなかったのかにゃ?」

商人「以前使ったニーア商会という会社の建築部が暴動を起こしたそうで。何でも理不尽な扱いと低賃金、並びに業務上の不正の露出で腹を立てたとか」

メイド「貴女のせいでなくて?」

商人「ただでさえ落ち目で仕事が無かったところを使ったんです。ああは言ってましたが個人的にチップも出してたのでこれでも感謝されたんですよ?」

お嬢様「案外律儀なのだな」

商人「そのおかげで今回は別の業者さんに頼みました。ま、こっちはこっちで普通で面白くないですね」

お嬢様「面白さを求めないでくれるかな?」


商人「それと、ご要望が多かったみたいなので宿泊スペースより先にプレイルームを作らせてもらったのですが……」

お嬢様「そっちはかなり好評なのだ。戦いに疲れた冒険者たちが阿呆のように遊戯に金を落としていくのだ。笑いが止まらんぞ!アッハッハ!」

メイド「お、お嬢様!?」

オーク娘「性格がひん曲がってきてるにゃ……」

商人「換金所はアイテム交換という事で別所で私が出していますが、これ以上台を増やしたり換金などの行為を行うと認可を取っていないので国にガサ入れされますので気を付けてください」

お嬢様「構わん、スロット10台とカードテーブルをもう二台追加で頼むぞ!」

商人「ど、どうなっても知りませんよ……」


お嬢様「そういえばパスタの料理も評判がいいそうだな」

商人「はい、そちらも安定していますね。料理はおいしいし店員さんが可愛いですし」

オーク娘「そういえば、メニュー表に10倍パスタなる物があったにゃ。アレはなんなのにゃ?」

商人「あの野郎!!あれほどパスタ作るなって言ったのに何やってんだ!?」

メイド「……彼がパスタを作るとどうなるのですか?」

商人「原初の地へ誘われるそうです」

メイド「??」


オーク娘「で、何が違うのにゃ?」

パスタ「おう!この生地自体には原料には―――と―――と―――が主に使われてるな!」

オーク娘「?よく聞こえなかったにゃ?」

パスタ「え?だから、―――と―――と―――……あれ、どうしてそこだけ声が出ないんだ……」

店員「聞くも悍ましいモノだからではないですか?」


ピィギャアアアアアア


メイド「……厨房から何かの叫び声が聞こえるのですが」

パスタ「いかんいかん、材料が」

お嬢様「材料!?」

店員「ちょっと黙らせてきますねー」テトテト

お嬢様「……よし」

商人「よしじゃねぇよ」


吟遊詩人「おーい、こっちに10倍パスタなる物を頼むよー。なにが10倍なのかなー」ポロロン


パスタ「あ、はーい、出来上がりがあるので持っていきまーす。ほら、頼むぞ粘土」

「何故俺たちがウェイターをしているんだ……」

「裏方じゃなかったのか……」

パスタ「つべこべ言うな、賄をパスタにするぞ」

「「ヒィッ!?」」

メイド「あら、上手く調教が出来ているようで」

オーク娘「パスタの何が恐ろしいのにゃ……」


お嬢様「あ、道具屋はどうなっているのだ?冒険者たちにとっては回復薬やマジックアイテムの補充は死活問題だろう」

商人「ヌッフッフ、ここにいるじゃないですか。最高の旅商人が!」ドヤッ

メイド「ああ、ちゃっかりしてますわ」

商人「……と、言いたかったんですけどねぇ」

オーク娘「最高じゃないと自覚したのかにゃ?」

商人「違ぇよ。外見てください外」

お嬢様「外?」


ガヤガヤ


「いらっしゃーいいらっしゃーい!」

「こっちの道具は安いよー」

「角ー、角はいらんかねー。出来立てほやほやユニコーンの角ー、100万だよー」ガラガラ

「ねぇ!!ネバネバ粘液いらないそこのボウヤ!!今ならお姉さんの斬りたて触手ついてるわよ!!これを毎日撫でまわして!!あああん///」

「オラ!!金の斧と銀の斧だ!!特価価格で何と1000万!!今なら何と泉の精霊のパンツ付き!そこのブルジョワ冒険者共!!買っていきやがれ!!」


ガヤガヤ


オーク娘「かなりの数の出店が出来ているにゃ」

お嬢様「アイツらーーー!!誰の許しを得てこんなところで物売りなどしているのだーーー!!」ガンガン

メイド「落ち着いてくださいませお嬢様」

商人「誰の土地でもないですから認可も必要ないですしねぇ。ダンジョンがあれば自然と集まってくるんですよ。つーかなんか見覚えのある連中が混ざってるなオイ」

オーク娘「記憶に新しい触手がいるにゃ」

お嬢様「触手……ウッ、頭が」

メイド「全てお忘れになってくださいお嬢様」


幽霊「それじゃあ私たちの仕事もそろそろ終わりかなー。これだけ繁盛すればもう問題ないよね」

子ウサギ「ウッキュウ」

お嬢様「……だれだっけ?」

商人「……何か頼んでましたっけ?」

幽霊「ヒデェなオイ!?こっちはずっと薄暗いダンジョンの中待機したんだよ!?宣伝しまくれ言ったのアンタだろ!?」

子ウサギ「ギュー」バタバタ

商人「あー、そんな事言ってましたね。はいお小遣い、適当に出店でなんか買ってきてください」

幽霊「わーい……じゃねーよ!?ふざけんなよ騙されないぞ!?ええいこうなったらこっちはこっちで勝手にダンジョン攻略して計画ぶっ潰してやる!!行こうウサギちゃん!」プンプン

子ウサギ「ウッキュウ!!」プンプン


お嬢様「止めなくていいのか?」

商人「トラバサミに引っかかって動けなくなるようなヒトですから攻略とか無理でしょうHAHAHA」

オーク娘「しっかり覚えてるじゃにゃいか」

剣士「……」

商人「貴女は貴女でどうしました」

剣士「ぶっちゃけてしまうとダンジョンに興味は無い。出店を回るから金をくれ」

商人「だ ろ う な」


「そうだ、お嬢」

お嬢様「どうしたのだモノマネンド1号」

「1号て……まぁいいか。お嬢宛てに手紙が来ていたぞ」

メイド「ッ!」

お嬢様「これは……」

オーク娘「うみみゃ?なんか立派なマークが付いているにゃ」

商人「おんや?見た事がありますね、確か銘家の……」

お嬢様「……」ビリッ

メイド「ああッ!」

オーク娘「や、破っちゃったにゃ!?」


お嬢様「どうせ帰って来いという催促だろう。今は必要無いのだ。さ、二人とも、ダンジョンに向かうぞ。今日も冒険者から搾り取ってやるのだ!!ニヒヒ!!」

メイド「お、お待ちくださいお嬢様ァーーー!」


オーク娘「……ボスは自分の親の事嫌いなのかにゃ」

商人「親御さんからの手紙でしたか……間が悪すぎですよ1号さん」

1号「だからその呼び方やめ……ッ!?名前が!?」

2号「それじゃあ俺は2号かよ……」


商人「深く首を突っ込む気はありませんが、お嬢さんも何か訳があるのでしょう」

オーク娘「私はお父さんもお母さんも大好きにゃ。だからボスがどうしてああいう態度を取るのがよく分からないにゃ」

商人「誰しもが貴女と同じようにとは行きませんが……流石に心底嫌っているという訳ではないみたいですよ。メイドさんから聞いた話だと、いい親子だって言ってましたし」

商人「ですが、親の言いなりにはなりたくない気持ちもあるんじゃないでしょうか。相当な箱入り娘だって話もしていましたし」

オーク娘「むー、何だか贅沢な悩みにゃ」

商人「私にもまぁ……覚えがあるのでお嬢さんの方に肩入れしてしまいますけど」


オーク娘「……ところで」


吟遊詩人だったもの「」


パスタ「ダメかー。まさか身体がトランスフォームを始めるとは」

店員「ダメでしたねー。もうこうなるって分かってやってたでしょ」


オーク娘「……」

商人「とりあえずパスタ禁止令を発令しましょうか」


――――――
―――



メイド「踏破率最大62%、冒険者12層に突入しましたわ」

オーク娘「20層まで開拓しておいてよかったにゃ。罠も配置し直してちゃんと機能しているにゃ」

お嬢様「よし、このまま経過を見るのだ」

メイド「しかし、有名どころの冒険者も来るようになりましたわね」

オーク娘「臆病風のジョニー、穴掘りビー、マッスル武田、騎士竜ヴェイド……うにゃ?ヴェイド?」

お嬢様「その筋ではない我々でも半分くらいは聞いたことのある有名人たちなのだ」

メイド「珍妙な名前が多いですわね」


お嬢様「だが、順調に進んで行っているのは……」


―――


銃剣士「OK、モンスターの方は処理出来るよ」

女盗賊「それじゃあ私は罠の解除するから、引きつけておいて」

銃剣士「ん、分かった。気を付けてね」

女盗賊「そっちも私ほったらかしにして勝手に死なないでよ?」


―――


少女「あわわわ……大した実力も無いのにこんな場所まで来ちゃった……」アタフタ

少女?(オドオドすんな。田舎もんに見られるぞ)

少女「だ、だってぇ……」

少女?(よっぽどヤバい時は俺が代わるから、お前は前にいる連中の後ろについて行け。そうすれば安全だ)


―――


オーク娘「結構前から入っていた二組にゃ」

メイド「あの白い衣装の変な剣を持った男と盗賊、そしてオトコオンナですわね」

お嬢様「有名どころを抑えてのトップなのだ。攻略が早い訳ではないからいいが」

メイド「そういえば一つ問題になっている事がありますわ」

お嬢様「何だ?」


メイド「ええ、冒険者のマナーがなっていないというか何というか……」

オーク娘「ダンジョン内がゴミだらけになってしまっているのにゃ。これで罠が上手く作動しないって事もたまにあるにゃ」

お嬢様「む、それは問題だな。自然身溢れる洞窟美が穢されてしまう」

オーク娘「人工物だけどにゃ」

メイド「口答えはしない!丁度いいですわ、私とこの脳ミソ筋肉で簡単に掃除をしてまいります」

オーク娘「うにゃ!?私もかにゃ!!」

メイド「当たり前ですわ。お嬢様の手を煩わせるわけにはいかないので」

オーク娘「うー……確かに魔物も闊歩しているから迂闊にボスをダンジョン内に出せはしにゃいけど」

お嬢様「では頼むぞ、私はここで管理を続ける。何かあったら呼ぶぞ」

メイド「了解しましたわお嬢様」ニコッ


……


オーク娘「ハァ、中々の重労働にゃ」ズガーーン

メイド「軽々魔物を叩き潰しておいてよく言いますわ」

オーク娘「アイツら邪魔だからどけなきゃいけないにゃ。今のうちに掃除するにゃ」

メイド「ええ、そのつもりですわ」

オーク娘「……何か、話があるにゃ?」

メイド「そういうところは察しがいいのですね。お嬢様の事でお話したかったのですが」


メイド「お嬢様はそりゃあもう大事に大事に育てられましたわ。それはもう目に入れても痛くないくらいに」

オーク娘「うにゃ」

メイド「私が」

オーク娘「お前かよ」

メイド「ですが、そんなお嬢様も日々の生活で退屈なさっていましたわ」

メイド「ある日、私に声を掛けられてある計画を話されたのです……」



―――
――――――

お嬢様「私は外が見たいのだ!連れて行くのだ!」

メイド「いけませんよお嬢様、ご主人様と奥様に言われたハズです。まだその時ではないと」

お嬢様「しかし、このままでは腐ってしまうのだ!銘家に生まれたかどうかなど私は関係ない!それでも私は一ゴブリンなのだ!外を見たいと思って何が悪いのだ!」

メイド「お嬢様、私も雇われている身。ご主人様を裏切るような事は出来ませんわ」

お嬢様「……う、うう」

メイド「お、お嬢様?」

お嬢様「どうしてダメなの?いつも一緒に色んなことして遊んでくれるのに……えぐっ、ううう」

メイド「」


――――――
―――


メイド「その日の夜、私は警備を掻い潜り、制止に入ったご主人様に目つぶしを食らわせお嬢様を連れて屋敷を脱出しましたわ」

オーク娘「誘拐だああああああああああああああ!?」

メイド「失礼な!愛の成せる技ですわ!!」

オーク娘「いや、アンタ目つぶし食らわせる必要も皆無だったろ。しかも計画って、計画にすらなって無いにゃ!?誘拐の段取りにゃ!?」

メイド「愛の逃避行の邪魔者を排除したまでですわ」

オーク娘「……誰が誰に雇われてたにゃ?」

メイド「お嬢様、ああお嬢様、お嬢様」

オーク娘「五七五読んで誤魔化すにゃ」


メイド「私も、1日2日程度でお嬢様が音を上げてお屋敷に帰られると思ったのですが、これがまた思っていた以上にハングリー精神に溢れていて」

メイド「せめて飛び出した事を無意味なことにしたくないと、ご主人様たちに"自分は守られていなくても立派に一人で生きている"と、そう伝えたいのでしょう」

メイド「きっと、それが出来るようになるまでお屋敷に戻られる気は無いでしょうし、何よりご主人様と奥様の言葉にも耳を貸さないでしょう」

オーク娘「一人って言うのは間違いにゃ。ボス一人じゃ何も出来ないにゃ。私達が3人揃って初めて大きいことが出来るにゃ」

メイド「……」

オーク娘「うにゃ!?な、なんだにゃ!?また殴るのかにゃ!?」

メイド「いいえ、きっとその考えでいいのでしょう。お嬢様も分かっていますわ。だからこそ、せめて自分で自分を認められるまでまだご両親に顔を見せたくないのでしょうし」

オーク娘「うにゃ?」

メイド「さて、長話でしたね。掃除も終わりましたし次のエリアに向かいましょう。オラとっとと歩け!!」

オーク娘「感情の起伏が激しいにゃ……」


……

お嬢様「……」

お嬢様「こっちは全部のエリアを覗けるんだ」

お嬢様「聞こえているぞ、バカ……」


―――


メイド(聞こえるように言ったのですわ、お嬢様)


剣士「しかし、お前もどうしてそう怒る。奴も冗談で言ったに決まっているだろう」モグモグ ポイッ

幽霊「あんね?流石に丸1日放置は辛かったのよ?ウサギちゃんが颯爽と助けに来てくれなかったら私あのまま魔物にグニャグニャに変形させられてたよ?」

子ウサギ「ウッキュン!」モグモグ ポイッ

剣士「アイツもアイツで忙しいんだ、私達まで頭が回らなかったのだろう。まぁいい、怒りは全てそこらの魔物にぶつけろ」モグモグ ポイッ

幽霊「つーかさっきからやたらゴミの出るもの食べてるよね……」

剣士「構わんだろう、どうせ魔物共が漁って食うか土に還る。放っておけ」モグモグ ポイッ


メイド「……」

オーク娘「……」


メイド・オーク娘「「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」ガクガクガクガク

幽霊「」ビクッ


小休止

本日休業

再開

……

メイド「とりあえずゴミと原因を排除してまいりましたわ」

オーク娘「言っても厳重注意だけにゃ。あの娘達は話が通じて助かるにゃ」

お嬢様「うむ!ご苦労だったぞ!しかし……不味いな」

メイド「何か至らぬ点がございましたでしょうか?」

お嬢様「いや、そうではない。思った以上に進行が早い者が現れてしまったのだ」

オーク娘「うにゃ!?もう13層突破されてるにゃ!?」

メイド「驚くべき速さですわ……あの二組ですか?」

お嬢様「新参だ、昨日まで見かけなかったやつだ!」

オーク娘「にゃんですと!?」


―――


「纏え、応剣」

「応えよ、刃よ……ッ!」


グギャアアアアアア


「下らん、この程度か」

「私達が出張る程でも無かったですね」

「だが不自然なダンジョンの形成だ。調べるに越した事はない」

「そうですかそうですか、私はただ貴方が普段の鬱憤晴らしに政務をサボってここに来たようにしか思えなかったのですが」

「……チガウヨ?」

「今の間は何ですか」


―――


メイド「た、たった一撃でフロアの魔物が……」

お嬢様「け、消し飛んだのだ……」

オーク娘「んー?んんー?」

メイド「何ですか、いの一番に貴女がビビって変な声を上げると思っていたのに。期待外れですわ」

オーク娘「何を期待してたにゃ!?いや、何だろう。顔を隠しているからにゃんとも言えないけど、どこかで見た事のある太刀筋だと思ってにゃ?」

メイド「貴女にそんな実力の離れた冒険者がいる訳がないじゃないですか。頭腐ってるんですか?」

オーク娘「失礼だにゃ!?これでも昔は勇者候補として王都で学んでいたんだにゃ!?」

お嬢様「あら意外」

メイド「無駄なキャリアですわ。頭がよろしくない癖に」

オーク娘「筆記試験は壊滅だったにゃあ」


お嬢様「って!そんな会話をしている場合ではないぞ!」

メイド「そ、そうですわ!新参者がこうもあっさりとダンジョンを解体していくのは由々しき事態ですわ!!」

お嬢様「一度攻略されたという手垢が付けられたダンジョンというものはそれだけで著しく価値が落とされてしまうのだ……ッ!」

オーク娘「あ、そういう間にも他の三組も14層に突入してきたにゃ!」

メイド「キーーーーー!!っつーか何で三組なんだよ!?サラッと混ざってんじゃねーぞ商人ズ!?」

お嬢様「商人ズと言いつつ商人さんはこの中にいないけどな」


―――

「今日はこの辺にしておきましょう。道筋も分かっているし、明日にでも攻略できるでしょう」

「本当ならもっと早く下まで付き進めたんだけどな」

「何分、こういったダンジョンに挑む際には隅から隅までマッピングしなければ気が済まないタチで」

「へいへい、そーですかい」

―――


メイド「た、助かりましたわ!今日はもうお帰りになられるようで!」

お嬢様「あの覆面野郎とフード深く被った女を見かけ次第宿に無理やりにでも押し込めろ!!何としてでも時間を稼がせるぞ!!」

オーク娘「他はどうなってるかにゃあ」


―――

銃剣士「14階に降りてきたはいいけど……」

女盗賊「酷い荒らされ方だねぇ。幸い宝箱は触れられていないみたいだけど」

銃剣士「今日は引こう。この先に進んでもいい予感がしない」

女盗賊「宝は惜しいけど仕方ないか……引き際を見誤ると命がいくつあっても足りないしねぇ」

―――

少女?(化け物が爪痕残して立ち去った後みてーだな)

少女「さ、流石にこれ以上進むのは……」

少女?(俺たちの名前を売るにはまだまだ"箔"が必要なんだ。多少無理してでも進むぞ!)

少女「ヒィィ……もう帰ろうよぉ……」

少女?(あーもうわかったよ!!泣くな!!今日はもうこれでお終いだ!!)

―――

剣士「進めええええええええええええええ!!」バシッ!!バシッ!!

子ウサギ「ウッキュウ!!」バシッバシッ

幽霊「私の上に乗って楽するなよオラあああああああああああああ!!」シュゴオオオオオオ

―――

メイド「14層の惨状を目の当たりにした組は次々と帰還しているようですわ。これを幸いと取るべきか……」

お嬢様「一組おかしくない!?」



短いけど小休止
終わりどころが不明になってしまった

再開

――――――
―――


翌日

お嬢様「……皆、集まったな?」

メイド「全員いますわお嬢様」

オーク娘「突然作戦会議とは何なのにゃ?」

お嬢様「昨日の出来事は覚えているな?」

商人「突如として謎の二人組が14階層で暴れまわったんでしたっけ?私はその場に居合わせなかったので伝手で聞いただけですが」


お嬢様「ダンジョンというものは攻略されていないからこそ価値が見出されると、そういう話だったな商人さん?」

商人「はい、その通りです。一度攻略されてしまうと、後はおこぼれや取り残し目当てかあるいは腕試しに来る冒険者くらいにしか収益は望めなくなります」

メイド「眼に見えて人が目減りすることが考えられますわ」

オーク娘「うにゃー、困るにゃ。せっかくここまで大きくしたのに」

お嬢様「階層をもっと深くして時間稼ぎなどは出来ないのか?」

商人「その場合は多くのコストをまた要求されますね。楽に出来る方法もあるようですけどこちらは不定期に発生するミッションのクリア報酬ですし」

メイド「難しいですわね。何としてでもあの二人を止めないと大変なことに……」



パスタ「た、たたた大変だあああああああああ!!」ダダダ

お嬢様「む?」


メイド「どうかなさいました?貴方のお店で中毒者でも出ましたか?」

オーク娘「飯食ってぶったおすくらいの事は平気でやってるにゃ。間違いではなさそうにゃ」

お嬢様「ウチは一切の責任は取らんぞ」

パスタ「違うよ!?俺ってそんなに信用無いかな!?」

店員「そんなことより大変なんです!外を見てください!!」

お嬢様「外?」

パスタ「ちょっ、そんな事って……」


1号「おうおう、酷いなこりゃ」

2号「誰だこんな事しやがったのは」


お嬢様「な、何があったのだ!?」

1号「ああ、嬢ちゃんいいとこに来た」

2号「見てみな、死活問題だぜ」

お嬢様「……?」

お嬢様「!?ああああああああああああああああああああああ!!」


ズズーン

メイド「だ、ダンジョンの入り口が……」

オーク娘「瓦礫でふさがれてしまっているにゃ!!一体誰がこんなことを!!」


少女?「ンな!?オイオイこっちは結構急ぎなんだぜ?」


女盗賊「うえぇ!?私のお宝は!?ねぇ!昨日取り漏らした宝箱の山々は!?」

銃剣士「参ったな、ギルドからの調査で来ていたのに。これじゃあ仕事が出来ないぞ」


「酷いな、自然に崩落したにしても偶然としては出来過ぎている」

「私達を警戒した……と考えてもいいかと」


オーク娘(んー、この二人やっぱりどこかであった事ある気がするにゃ)


商人「ハッ!この崩れ方は!」

メイド「知っているのか商人!」

商人「ああいえ、コレ単純に中から連鎖式に崩れたっぽいですね。下の階層のどこかが脆くなってたんじゃないですか?それでズガガーンと」

お嬢様「階層が?」

メイド「脆く?」

オーク娘「えーっと、確か昨日の時点で破損が酷かったのは14層だけにゃ。原因はそこにあるにゃ」


「ですって」

「oh...」


お嬢様「既に探索を始めていた冒険者たちはどうした!?無事か!?」

商人「あ、次々に帰還アイテムで脱出しています。一応入る冒険者さん達にはお配りしていたので。帰還ポイントもほら、そこに設置してあります」

メイド「ナイスサービスですわ」

商人「はぁ?サービスゥ?帰還アイテムと帰還ポイント設置も安くないんですよ?」

メイド「そんなこったろうと思ったよ」


「……用事を思い出した、今日は帰るか」

「そうですね、ここに居ても特に意味は無くなりましたし」

オーク娘「ちょっと待つにゃそこの怪しい二人組!事務所まで来てもらうにゃ!」バッ

「やべっ!逃げるぞ!」

「ったく、面倒事を……」

オーク娘「待つにゃ変質者ーーーー!!」ダダダ


お嬢様「不味いな、こんなタイミングで崩落事故(?)とは……この状態が長引けばせっかく大量に増えた冒険者たちを逃してしまう事になる」

商人「一応宿屋の施設自体は魅力的なので、ここを拠点にして他所へ向かう冒険者もいるからまだ何とかやっていけますが……」

メイド「しかし、それも入口をどうにかしなければ話になりませんわ。私達は宿屋の経営ではなくダンジョンの経営をしているのですから」

商人「公になっていないとはいえ、そりゃそうですよねぇ……」

お嬢様「……中に入ることが出来れば何とかなるか?」

商人「え?あ、はい、一応管理室から数値をチョメチョメすればある程度は修復できるハズです」

お嬢様「ふむ……」


お嬢様「クックックック、アーッハッハッハッハッハ!!」

メイド「お、お嬢様が!?」

1号「とうとう、壊れっちまったか」

2号「南無三」

お嬢様「違う!?馬鹿にすんな!?いい事を思いついたのだ!」

メイド「と、申しますと?」


お嬢様「この状況を逆手に取ろう!至急冒険者ギルドに宿屋名義で依頼を出すのだ!ダンジョンの入り口を塞いでいる瓦礫の除去作業だ!」

メイド「利発ですわお嬢様!冒険者にやらせればこちらが目立たずに済みますわ!」

商人「宿屋名義で出すのもまぁ利益の問題からしても不自然ではないですね」

お嬢様「更にだ!脱出用に作っておいた管理室直通の通路も設置してある!そこから管理室でダンジョンの数値をチョメチョメする!」

メイド「用意周到ですわお嬢様!」

お嬢様「ふふん!それだけでは終わらん!今のうちに冒険者の上位勢に対抗すべく仕掛けをありったけ用意しておくのだ!」

商人「なるほど、このアクシデントは準備期間として取ると」


お嬢様「崩壊の程度は分からんが、ダンジョン自体は完全に元に戻す必要も無い。新たな仕掛けを作り、冒険者たちにここを"不思議のダンジョン"と錯覚させるのだ!」

メイド「えっと、不思議のダンジョンってなんでしたかしら?」

商人「入る度に用意されたパターンのマップからランダムに抽選されて形を変えるダンジョンの事ですね。このキットにはその機能は備わっていないですが、手動でなら擬似的に出来ない事もありません。冒険者がその階に居ない事が条件ですが」

お嬢様「あえて新たな地形を現す事で知名度を上げる!古参の冒険者にはモチベーション的な意味で悪いが、ここいらで"後戻りはできない"という緊張感を持たせる!」

メイド「敏腕ですわお嬢様!冒険者たち自身の練度を上げるのですね!」

お嬢様「そうすれば自ずといい装備を持ってまたここに挑んでくるだろう。我らの肥やしとなる為にな!!」

お嬢様「では早速行動なのだ!1号2号パスタ組と商人さん!みんなで手分けして上位の冒険者達と接触して奴らの特徴を探るのだ!」

商人「管轄外ですが……ま、乗り掛かった舟ですし、そのくらいなら付き合いましょう!」

1号「聞き込みか……」

2号「苦手なんだよな」

パスタ「パスタの件で利用客減っちゃったから保障しかねる」

店員「私が間を持たせますから何とかしてください。あと自覚があるならパスタ作るな」


お嬢様「勝負は開通するまでの数日……ッ!本当ならば連中にはお引き取り願いたいところだがそんなそぶりは見せない!」

メイド「我々こそがやるしかありませんわ!」

お嬢様「ん?それよりアイツはどこ行ったのだ?」

メイド「あのオークめ……お嬢様が再起の計画を立てているというにも関わらずどこ行ってんだ!」

オーク娘「ここにいるにゃ、つーか逃げられたにゃ」ボロッ


商人「……あれ?ところで私の連れの二人と一匹みませんでした?昨日から姿を見せないんですけど……まさかダンジョンの中に入りっぱなしとかじゃないだろうな?」


―――


幽霊「瓦礫の中に隠れるのよ!!」

剣士「閉じ込められた!!」

子ウサギ「ウキュキュ……(罠か……)」



小休止
あと2回更新くらいで終わる

本日休業

再開

――――――
―――



銃剣士「しかし、ツいていないね。こんなことに巻き込まれるなんて」

女盗賊「あーもう!!なんで瓦礫の除去作業なんてしてんだか!」

銃剣士「ハハ……君はやってないじゃないか」

女盗賊「依頼を受けたのはアンタ!私は知らない!」

銃剣士「誰かがやらないと行けない事だし、何より他の冒険者も数多くこの依頼を受けている」

メイド「人数も集まっていますし、前金を出していますので悪い依頼では無いと思いますわ」

銃剣士「あ、メイドさん。こんにちは」

メイド「お茶が入りましたわ。どうぞ」

女盗賊「どうもどうもー」

メイド「貴女は依頼を受けてないでしょうに……」

女盗賊「まー堅い事は言わずにさ♪」


銃剣士「しかし、どうして貴女方がこのような依頼を?」

女盗賊「除去作業なんてほっといても誰かが勝手にやりそうなものだけどねー」

メイド「私どももこうしてダンジョンの真横に宿を経営している身、目玉となる物が無ければ商売あがったりですわ」

メイド「故に、こうして冒険者ギルドに依頼することで迅速に素早くダンジョンも再開できるというもの。放置していただけではいつ再開されるか分かりませんし」

銃剣士「なるほどね。一つの事柄で共倒れしてしまうとは、随分とシビアな業界だ」

女盗賊「いや、食い扶持潰される私達も笑えないから」

メイド「外に来ている商人のヒト達も意気消沈していますわ」


メイド「それよりも、お聞きしたいことがあるのですが」

女盗賊「聞きたい事?ダンジョンの収集物とか隠し場所は教えなよ、こっちだって仕事でやってんだから」

メイド「別にそんなものは興味ありませんわ(知ってますし)。私が知りたいのはお二人の関係ですわ」

女盗賊「は、ハァ!?な、なんだよそれ!!」

銃剣士「僕達の関係か……」

女盗賊「ちょッ!?アンタも何まんざらでもない顔してんだ!!」

メイド「おやおや、微笑ましいことで」


銃剣士「何てことは無いよ。僕と彼女は道を同じくした仲間ってところかな」

女盗賊「そっ、男女の仲を期待したのならお門違いってワケ」

メイド「男と女が旅をしていればそりゃあそう思われても仕方がないのではなくて?」

銃剣士「ハハ、まぁそうなるよね」

女盗賊「ならない!つーかそんな踏み込んだこと聞くな!」

メイド「これは失礼を。楽しそうに旅をしておられるのだと思いましてついつい」

銃剣士「こっちもこっちで訳ありだからあまり聞かれたい事ではないけれどね」

女盗賊「迷惑だっちゅーの」


メイド「利害の一致という事ですか……それでは、もし片方がピンチに陥ったら、貴方達は片方を助ける気でいますか?それとも……」

銃剣士「僕は助けるよ。彼女は僕の数少ない味方だ、仲間だ。決して見捨てるようなことはしない」

女盗賊「私は自分が一番だからコイツを差し出せと言われたらとっとと置いて逃げるけどね」フフン

メイド「と、申しておりますが?」

銃剣士「こんな娘だよ。"もしも"の事が起こればちゃんと行動してくれるいい子だよ」

女盗賊「今までそんな場面無かっただろうが」

銃剣士「フフ、どうだったかな。僕はいつも君に助けられている気がするんだけど」

女盗賊「勝手にそう思っとけ!」

メイド「ウフフ、仲が本当によろしいことで」

女盗賊「どこがだ!!」ダンダン


メイド(……よし決めた!)

メイド(こいつらは私が直々に手を下してやる。こんの甘ったるい関係の連中など根絶やしにしてくれるわ!!)ギリギリ


……

少女?「"小国の姫行方不明、同盟国であるジストの捜索協力を拒否。その真偽は……"」パサッ

店員「Aランチセットお待たせしましたー」

少女?「あいよ、どうも。ん?テレビ欄?そんなもん見てどうすんだよ……」

パスタ「……」

店員「……」

少女?「何だよ、二人して俺を見て」

店員(独り言がちょっと多すぎないですか?)ヒソヒソ

パスタ(ちょっと痛い子かしら)ヒソヒソ

少女?(聞こえてるっての)

少女(アハハ……口に出して喋るとああなるよね)


少女?「ところでさ、なんかこの店ヒト少なくないか?ヒトもいなきゃあ活気も無いが」

パスタ「悪かったな」

店員「あー……ちょっとあのパスタってヒトが問題を起こしまして」

少女?「ふぅん。ま、安くて美味いからいいけどさ」モグモグ

店員「飲食店の問題とか真っ先にその食べているモノの関連なのによく食事を続行しますね」

1号「お客さん。お客さんって双子か何かか?ほい、コーヒー」

少女?「ん、どうも。で、どうしてそう思う?」


2号「お客さんによく似た可愛らしい女の子をダンジョンでよく見かけると聞いているからな」

1号「宿でもよく見かけるとよ」

少女?「どこにでもいるじゃねぇか……ま、アレも俺だよ。気にすんな」パサッ

パスタ「一粒で!」

店員「二度おいしい!!」

少女?「何がだよ」


少女?「そうだ、俺からも二つほど質問させてほしい」

パスタ「答えられる事ならな」

少女?「この写真の人間を探しているんだが」ピラッ

店員「あら、可愛い子」

パスタ「そうかァ?釣り目で生意気そうにしか見えないけどな」

少女?「悪かったな!?」

1号「どうしてアンタが反応するんだよ」


2号「悪いが知らんな」

少女?「そか、ならいい。ヒトが集まる所なら誰かしら知っていると思ったんだがなぁ」

1号「で、もう一つの質問は?」

少女?「ああ、魂を身体から無理矢理にでも引き離す魔法を知らないか?似たような物でもいい、それを探している」

パスタ「それなら知っているぞ」

店員「"契約魔法"ってやつですね!」

少女?「マジか!?」

少女「当たりだ!」

1号「うわビックリした!?」

2号「突然声色が変わったぞ……」


少女「あ、し、失礼しましたー!」

少女「そ、それで、どんな魔法なのでしょうか!私にも習得できるものなのでしょうか!」

パスタ「あー、残念ながら遥か古代の魔法の上に禁術扱いでな……」

店員「今扱えるヒトって多分いないんじゃないですかね?」

パスタ「理論が確立されてはいるが何故か成功しないんだったか?」

店員「最近挑戦した大魔法使いの人は失敗しちゃって2か月意識が戻らなかったそうですよ」

少女?「そういうの求めてないから!!もっと現実的なもの!!」

パスタ「我が儘だなぁ」

1号(魂抜き出す時点で現実離れしてるよ)


少女?「しゃーない。当初の予定通り、冒険者ギルドに名前だけ売って路銀稼ぎに戻るか」

少女(元の場所に帰らなきゃいけないしねー)

2号「お客さん、もしもその写真の男が居たり魔法の使い方が分かったりしたら飛びつくタチかい?」

少女?「当たり前だ!その為にやりたくも無い旅してんだよこっちは!」

1号「……」ニヤッ

2号「……」ニヤッ


パスタ(今更だけどあのハニワみてぇな粘土って何者なんだろうなぁ)

店員(ホント今更だな)


……

「除去作業の依頼、受けたいんだけど」

「ダメです。立場を考えてください」

「俺は勇者として俺の勤めを果たしたいだけだっての!」

「ダメなものはダメです、今はそれ以上でしょう。大人しく傍観でもしておいてください。大体ダンジョンの調査なんてのもオマケなのに攻略しようだなんて……」ブツブツ

「大義名分があって飛び出してきたんだが……ハァ、やっぱお前と来るんじゃなかった」

「半人前の癖に口だけは達者なのですね。ほとほと呆れかえります。実の無い空っぽの果実のような上辺だけ着飾った貴方が一人でふらついて何になるのです」

「ヒデェ毒舌だな」

「暴言を吐いているだけです」


「だが、目的の人物はしっかり見つけたからそれでいいだろう」

「後は"あの娘"のプライドを傷つけずにどう連れていくかが問題ですが……」


オーク娘「見つけたにゃ!!不審者二人!!こんな崖の上から宿屋を見つめてどうするつもりにゃ!!」ズザー


「まーた出たよ」

「あのヒトも何も変わっていませんね」


オーク娘「さあここでお縄を頂戴するにゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァ……」ズササー


「……」

「……そのまま崖下に滑り落ちて行ったぞ」

「相変わらずおバカなことで。やれやれってやつですね」


――――――
―――



ダンジョン管理室


ピコピコピコ

お嬢様「フ、フフフ……フフフフ!!自分の才能が恐ろしい!!」

お嬢様「手に入れた奴らの弱点を元にダンジョンの再構築をここまで完璧に行えてしまうとは!!

メイド「ご立派ですわお嬢様!!」

オーク娘「私の設置したトラップも絶好調にゃ!!ただ、完全に連中用に作ってあるから汎用性は無くなっているにゃ」

お嬢様「それもまた一興!!フッハハハハハハハ!!今回の大改装で並の冒険者たちは一からの出直し!!」

お嬢様「そしてトップ3の奴らは深階層にて各個撃破!!私のプランは完璧なのだ!!」


ピロン♪

オーク娘「うみみゃ!?」

メイド「ここでミッションだとぅ!?」

お嬢様「フフン!願ったり叶ったりだ!!最終決戦の場に相応しい課題を私に課すがいい!!」


―cace3・最下層の秘宝を守り抜け!―


メイド「最下層の?」

オーク娘「秘宝?そんなのあったかにゃ?」


お嬢様「む?20層には何があった?」

メイド「えっと……冒険者たちから奪った装備がズラッと並んでいる部屋がありますわ」

オーク娘「そういえば物置同然になっていたにゃ」

お嬢様「ふむ、もしもの為をためを思ってあれらを攻略者にくれてやろうと思ったのだが」

メイド「ダンジョンの攻略を根本から否定するようなミッションですわね」

お嬢様「しかし!やるしかないのだ!!」

オーク娘「時間制限書いていないけどどの程度守ればいいにゃ?」

商人「ヒエラティックテキストの図解を見ると、どうも一番初めに最深部に侵入したパーティを倒せばいいようですね」

メイド「居たのかよ。ってか図解ってそれもテキストの意味ないのでは……」


お嬢様「ならばよし!!あと数日以内に連中を仕留め!そして20層で覆面とフードの二人組に最後の戦いを挑む!!」

お嬢様「皆の者!私に続け!!私たちの戦いはこれからなのだ!!」

オーク娘「ご愛読ありがとうございましたにゃ!!」

メイド「次回の新作にご期待くださいですわ!」

商人「何言ってんだアンタら!?」

※続きます



小休止
2回じゃ終わらねぇわコレ

本日休業
書く時間が取れん

連続休業
スマヌ、スマヌ……

再開

……

銃剣士「参ったねこれは」

女盗賊「あ゛ー、私のお宝ー……」ガクッ

銃剣士「迷宮変化まで行われているとなると相当な技術がこのダンジョンに使われている……僕たちのいる世界では考えられないな」

女盗賊「魔術的要素をあまり感じないから多分そうなんだろうね」

銃剣士「ま、先に進めば色々と見えてくるよ。ほらそこ、宝箱があるよ」

女盗賊「うっひょー!拝借拝借♪」


―――

メイド「あの銃剣使いと盗賊のチームが7層のチェックポイントを回りましたわ」

お嬢様「クックック、知らず知らずのうちに誘き寄せられているとも知らずに」

オーク娘「やっぱり一度ダンジョンをリセットしちゃうと進みが悪いにゃ」

お嬢様「ふむ、他の冒険者達の歩みも遅いがそれも狙いだ」

メイド「早く深階層に辿り着くのはあの3チームでしょうし、余計な横やりが入らなくて済みますわ」

お嬢様「上の階層の冒険者達はそっちはそっちで四苦八苦しているしな!アッハッハッハ!」

オーク娘「徘徊している魔物の分布まで変わってるから準備不十分で脱落者続出にゃ」

メイド「装備品の回収が捗って美味しいですわ」


商人「あのヒト達はワザワザ8階層を丸々使って退治するそうですが……」

お嬢様「ああ、皆が手に入れた情報を元にそれぞれの弱点を付いた仕掛けを用意したのだ!」

オーク娘「覆面とフードの連中は情報を掴めなかったけどにゃ」

メイド「役立たずめが」

オーク娘「仕方ないにゃ!!あの二人が逃げるのが悪いのにゃ!」

メイド「あからさまに追う方もどうかと思いますわ」

お嬢様「まーまー落ち着け、その件についてはこちらも手は打ってあるさ」

メイド「柔軟ですわお嬢様」

商人「アンタ毎回違う言葉でお嬢さん褒めてるな」

メイド「その程度の事、メイドの嗜みですわ」


商人「それで、彼らに対する対策とは?」

お嬢様「まー見ていれば分かる!」

オーク娘「8層の突入を確認したにゃ!」

メイド「オーッホッホッホ!!それではこのワタクシめがあのノロケ組に裁きの鉄槌を下しますわぁ!」


―――


女盗賊「あー疲れた、よっこらせ」

銃剣士「結構あっさりここまで入れたね」

女盗賊「ダンジョンの構造自体に慣れたからじゃない?いくつかパターンがあるみたいだし、それで慣らされたのかも」

お嬢様(そりゃそうだ、そうなるように誘導していたのだからな)


ゴゴゴゴゴゴゴ

銃剣士「ん?」

女盗賊「何だろ、どこかで罠でも作動したのかな?」

銃剣士「僕は何も触っていないよ?」

女盗賊「私も同じく。じゃあ他の冒険者が引っかかったんでしょ。あーあー可哀想に」

メイド(可哀想な目にあうのはお前たちだ!そのもたれ掛った壁に運命を委ねるといいですわ!!)ピッ


ベコン

銃剣士「ッ!危ない!!」

女盗賊「へ?なっ!?壁が!!ちょっ!うわああああああああ!!」

銃剣士「しまった!間に合わない!!」

ズズズ……

銃剣士「閉じてしまった……どうして壁にいきなり穴なんか。おーい!!大丈夫かーい!?」

イテーヨ!!タスケロー!!

銃剣士「……うん、大丈夫そうだね。すぐにそちら向かう道を見つけるから待ってて!」


―――

商人「おんや、分断と来ましたか」

メイド「名付けて!!"死が二人を別つまでに合流できるかトラップ"ですわ!!」

商人「なんじゃそのネーミングセンスは」

メイド「黒歴史ノートぶちまけた貴女には言われたくはありませんわ」

お嬢様「あの二人の強みは戦闘は銃剣士に、探索は盗賊に任せていた所にあるのだ!」

メイド「はいお嬢様。しかしそれは時として弱点にもなり得ますわ」

オーク娘「どういうことにゃ?」


メイド「では、おつむの緩い貴女に特別解説をしてあげましょう」

オーク娘「にゃー」

メイド「あの手の役割を明確に分けたツーマンセルの冒険者は基本的に二人で行動していなければ機能しなくなりますわ」

商人「それで二手に無理矢理別れさせたと。でも、それでは不完全ではないですか?盗賊さんも戦闘が出来ない訳ではありませんし、あの銃剣士さんも探索が出来ない訳ではないですよ?」

メイド「ノンノン!次がこの二人の重要な所!」

お嬢様「あの銃剣士の男は決して仲間を見捨てはしないと言い切ったのだ。それは今までの行動を見ていても偽りはないだろう」


オーク娘「にゃるほど。そこを付け込んで罠に嵌めるのかにゃ?」

お嬢様「まだ生ぬるい!もう片方の盗賊の性格を存分に使わせてもらうつもりだ!」


―――


女盗賊「痛たたた……ったく、何でこんな仕掛けがあるんだよ」

女盗賊「ともかく、あいつは止めても私を探して回るだろうし。ここで大人しく待っていた方がいいかな」

ピロン♪

女盗賊「んー?なんだこれ?」


―隠し部屋解放!お宝解禁!―

女盗賊「なぬ!?どこだ!言え!!」

―表示される地図を参照―

女盗賊「うっへへへ、こりゃこんなところに止まってる訳にゃいかなくなったワケだ」


―――

オーク娘「……凄い勢いで引っかかったにゃ」

お嬢様「勿論罠の一種だからそんな隠し部屋なぞ存在しないぞ。この手の人間の扱いなんて造作もないことだ!操作する側からしてみれば楽なものなのだ!」

メイド「大賢ですわお嬢様。それではあの女を捕まえる準備をいたしましょう」

商人(やっべぇアレ私も多分引っかかるわ)


―――


銃剣士「……?」

銃剣士「……??」

銃剣士「!?!?おかしいぞ!?ここさっきも通った気がするんだけど!?」


―――

商人「こっちはこっちで何をしているんですか」

お嬢様「ん?そこには私は特に仕掛けを仕込んではいないぞ?」

オーク娘「時間経過と道を通った回数で通路が変形するようにしてあるにゃ。予想より早く合流されても困るからこういう措置をしたにゃ」

お嬢様「ハハ、地味にえげつない事をする」

メイド「お嬢様に黙って仕掛けを作るとは、首を刎ねられても文句は言えませんわ!!」

オーク娘「何でにゃ!?」


―――


銃剣士「さて、ようやく少し広い部屋に出たけれど……高い壁だなぁ。登るのは少し辛いか」


―――

オーク娘「うにゃ?今いる部屋は何にゃ?」

メイド「あ、あれ?おかしいですわね、もうとっくに盗賊の方が捕まっていてもおかしくないのですが」

お嬢様「本来ならあの場で捕えた盗賊をエサに銃剣士を仕留める罠が次々と作動する予定だったのだが……えぇっと」ピッポッパ


―――


女盗賊「おっ宝おっ宝楽しいな~♪」

女盗賊「おお!あっちに宝箱ー♪……ぎゃあああ!!モンスター!!」

女盗賊「あ!あっちにも宝箱ー♪……ぎゃあああ!!モンスター!!」


―――

オーク娘「罠は踏まない癖に変なところで学習してないにゃ」

メイド「蛇行し過ぎて目的の場所にまだ辿り着いていないですわ!!」

お嬢様「ええい!ヒトという生き物はこれだから!!」

商人(私も絶対同じことしてるだろうなぁ)


―――


女盗賊「よっし!隠し部屋付近に到着!!」

お嬢様(よ、ようやくか……無駄に精神的に疲れたぞ)

メイド(アクシデントは付き物ですわお嬢様。後で疲れに効く特性ゼリーをお持ちいたしますわ。さ、気を取り直しましょう)

女盗賊「確か、この壁に向かって三回ノックして。現れるパネルにコマンド入力っと。上X下BLYRA……」

女盗賊「開いた!それじゃあ早速中のお宝を~♪……ん?」




触手「フフフ、待っていたわ可愛い坊や!!さぁお姉さんと一緒に夜のランデv」

女盗賊「……」ガシャン

触手「痛い!?何でヒトが喋っている途中で閉める!?つーか男じゃねぇのかよ!?女かよ!?消え失せろ女にゃ興味ねぇんだよ!痛い!?お願い止……やめろっつってんだろ!?」

女盗賊「……」ガシャンガシャンガシャン

触手「」


―――

オーク娘「……」

メイド「……お嬢様」

お嬢様「使えそうなモノはとことん使おうとした結果なのだ。それ以上は聞くな」

メイド「お嬢様の行動を信じますわ」

商人「はーい触手さん聞こえますかー?そのヒト連れて指定の部屋まで来てください。そこで貴女好みの男のヒトが居ますから」


―――


女盗賊「はーなーせー!!」

触手「放せと言われてそうですかと放す奴がいると思わない事ね。さ、貴女をエサにあの可愛い子をゲットしちゃおうかしらね」

女盗賊「フン、アイツを舐めない方がいいぞ。正確な射撃でお前のそのずんぐりむっくりの本体から伸びた触手を一本ずつ削ぎ落とす事も出来るんだからな」

触手「あら、私は責めるのも責められるのも好きよ」

女盗賊(聞きたくなかったそんな事)

触手「目標地点に到着よ!!さぁ命乞いをおし!!この下にいるあの子に武装解除を促し自分だけが助かりたいと声高々に叫ぶといいわ!!」

女盗賊「くそっ!私に構うな!!早く私ごとコイツを撃てーーーーーー!!」

触手「……」

女盗賊「……」





触手・女盗賊「「 い ね ぇ し 」」


―――

お嬢様「……」

メイド「……」

オーク娘「あーもうグダグダにゃ」

商人「来るまでに時間をかけすぎましたね。とっとと他の場所の探索に向かったみたいです」


―――


女盗賊「……もう怒った」

触手「何がよ?ってぎゃあああああ!!仕込みナイフううううう!?」ザシュッ!!

女盗賊「私が戦闘出来ないと思ったかマヌケ!頭来た!!もう帰る!!」

触手「ちょッ!斬りつけておいて何よその態度!!私の乙女の柔肌あああああああああああ!!」ザシュッ


……

銃剣士「あ、いたいた!おーいどこ行っていたの?」

女盗賊「来るのが遅い!!もう帰るよ!!」

銃剣士「へ?お宝は?」

女盗賊「いらん!!」

銃剣士「アハハ、分かったよ。それじゃあ脱出アイテムを使おうか」

女盗賊「……理由は聞かないの?」

銃剣士「さしずめ、僕が君を見つけるのを遅れたから機嫌を悪くしたってところかな」

女盗賊「……迎えに来るって言ったのに」ムスッ

銃剣士「ゴメン、僕の配慮が足りなかったね」

女盗賊「ふん!まーいいけど、次遅れたら今度こそただじゃおかないからね!」

銃剣士「フフ、肝に銘じておくよ」


―――

お嬢様「なんだこの茶番」

メイド「落ち合ったときに大喧嘩で破局するという筋書きを想像していたのですがダメでしたわ。爆発しろ」

オーク娘「呆気ない幕切れだったにゃ」

商人「性格悪いですね貴方達」

メイド「最後まで甘ったるいモノを見せつけられましたが、まぁ結果オーライですわお嬢様」

お嬢様「う、うむ!なんか全てにおいて納得が出来んがまぁ良しとしよう!!」

商人「ふぅ、一つは片付いたって事ですね」

オーク娘「先が思いやられるにゃ……」




触手「……私は……何のために……」ガクッ


小休止
30レスくらいで全部収まると思っていた自分が浅はかだった

再開

……

少女?「さぁて、話を聞きつけてまたダンジョンに潜ってみたが……」

少女(契約魔法の情報があるって話だったよね)

少女?「ああ、身体を手に入れなきゃ使えないが、学んでおくに越した事はない。元の身体に戻る為だったらなんだってやってやるさ」


―――

オーク娘「ん?」

お嬢様「今なんでもするって言ったよね?」

商人「聞こえてない聞こえてない」

メイド「手筈通り、彼女は9層で仕留める手筈となっておりますわ」


商人「6層には何を用意したのですか?別段他の階層と変わった所は無いようですが」

オーク娘「今回は誘き寄せまくって罠に嵌める戦法を取るにゃ!」

お嬢様「先の二人組は変にグダグダな状態で終わったが今回はキッチリと戦略を立てさせてもらったぞ!説明パネルかもーん!!」パチンッ

メイド「こちらに用意させていただきましたわぁ!」ガラガラ

商人「えっと、何々?」

お嬢様「まず奴らが居る階層にある画面を表示させるのだ!」

メイド「その後、引っかかった彼女が指定したポイントに一直線!」

オーク娘「そこでズドーンドギャギャーンといった具合にゃ」

商人「へぇ、何言ってるか全然分かりません」


お嬢様「まぁ見ているがよい!粘土どもにコピーさせた写真を6層に公開するぞ!」ピッ


―――


ピンポンパンポーン♪

少女?「ん?なんだ?」

―迷子のお呼び出しをします―

少女(迷子だって。大変だね、こんなダンジョン内で)

少女?「いや大変ってなんだよ!?何で洞窟内でアナウンスが流れるんだよ!?そこに疑問持てよ!?」

―この男の人が9層にて赤髪の女の子を待っています。心当たりのある方はすぐにお迎えに来てください―

ブォン

少女?「……」

少女(あれー、この顔どこかで……)

少女?「俺の身体あああああああああああああ!!」

少女(うわ!?脅かさないでよー!)


少女?「どこだ!?最短のルートはどこだ!!」

少女(お、落ち着いて!ダンジョンの構造が前と変わってるからそう簡単には……

―こちらの地点にエレベーターをご用意させていただきました、すぐにでも……―

少女?「あっちかあああああああああああ!!」ダダダダ

少女(キャーーーーーーー!!)


―――

お嬢様「フハハ!あっさり引っかかりおったわ!!」

メイド「見事ですわお嬢様」

オーク娘「さぁ9層に降りてきたが最後!私が用意した罠の数々が襲い掛かるにゃ!!」


―――


ゴウンゴウン

少女(本当にあったねエレベーター……)

少女?「ふ、フフフフ……飛んで火にいる夏の虫ってやつだ。こうもあっさりと目的の物を見つけるとはな」

少女(……)

少女?「どうした?喜べよ、ようやく元に戻れるかもしれないんだぜ?」

少女(絶対におかしいよ、こんな都合よく魔法の情報が入ったり身体が見つかったり……)

少女?「どうあれ行動しなきゃいけないだろ、例えそれが罠だったとしても。俺は一縷の望みにかけてその罠を踏んでいく覚悟をもってるんだ」

少女(それは知ってるけど……)


少女?「大丈夫だ、俺がいる限りはお前を危険な目に合わせたりはしねぇ。約束する」

少女(……うん!分かったよ。取り戻そうね、全てを!)

少女?「ああ、この先にあるすべてを!!」

―ピンポーン 9階です―

少女?「扉が……」

少女(開く……)








剣士「ん?」

少女?「あっ」

少女(あっ)

お嬢様()


剣士「……」

少女?「……」

剣士「見つけた」ニヤッ

少女?「いやああああああああああああああああああああああああ!!」ピピピピピ

少女(え!?ちょっと!?何で扉閉めるの!?何で逃げようとしてるの!?)

少女?「無理ッ!!絶対に無理!!蹂躙されて終わる!!前戦って歯が立たなかったんだもん!!」

少女(さっきの意気込みは何だったの!?)

少女?「夢でも見てたんじゃねぇか!?俺は俺の命が大事なんだよ!!元の身体とか知るか!!」

少女(酷い自己矛盾を見た)


剣士「逃がすかッ!!」ガキンッ!!

少女?「うわああああああああ!!エレベーターが氷漬けにされた!!」

少女(いやああああああ!!早く逃げてええええええええ!!)

剣士「クッヒヒヒ……アッハッハッハッハ!!」ガンッガンッガンッ


―――

商人「あーもうあの娘ったら、ここ数日見ないと思ってたらまーだダンジョン内をうろついてたんですか!」

オーク娘「……」

メイド「……お、お嬢様?」

お嬢様「だ、ダンジョン改築中になぜ弄れない階層があったのかと思っていたが、まだ中にヒトが居たのか……」

オーク娘「何で気が付かなかったにゃ!?」

お嬢様「だ、だってしばらくしたら弄れるようになってたから誤作動程度にしか思っていなかったのだ!」ウルウル

商人「他の階層に移動してただけですねそれ」

メイド「テメェお嬢様泣かせてんじゃねぇよ?あぁん!?」ギリギリ

オーク娘「そんなつもりはないにゃ!!誰かが突っ込まないと突っ込み不在になる状況だったから仕方なくにゃ!!」


オーク娘「あ!そ、それでも結果はいい方向に転がっているにゃ!画面を見るにゃ!」

メイド「あん?」


―――


剣士「逃げながら戦うのがお前のスタイルか?つまらん、見損なったぞ!」ジャキンジャキンッ!!

少女?「チッ!だったら見逃せっての!!」

剣士「生憎、一度標的を決めたら倒すまでとことん追跡するタチでな。悪く思うなよ」

少女(氷が後ろまで来てるよ!!)

少女?「畜生!手当たり次第凍らせたり切り刻んだりしやがって!少しは手加減しやがれ!!」


―――

お嬢様「ああーーーーーーー!!アイツ何してくれているのだ!!」

オーク娘「罠をぶっ壊しまくってるにゃ!!何考えてるにゃ!!」

お嬢様「それどころかダンジョンの備品まで次々と……ああ!あのフロアの柱、高かったのだぞ!!」

メイド「ああ宝箱まで……!これでは9層がハズレ階層扱いされてルート開拓後に素通りされてしまうのが目に見えてしまいますわ」

お嬢様「商人さん!アイツを止めろーーーーーーーーー!!」

商人「いやぁ、今あの娘達も冒険者扱いですので。神様視点の私たちが直接介入するのもどうかと」

お嬢様「誰が連れてきた疫病神だと思ってんだ!?」

オーク娘「うみみゃあ!?最後の罠部屋まで来てしまったにゃ!?」

お嬢様「にゃにーーーーー!!」


―――


剣士「フン、やれば出来るじゃないか。ここまで粘るとは……」

少女?「化け物が……」

少女(ど、どうするの?私の魔法で切り抜ける?)

少女?(無理だ。前みたいに反撃準備に入られたらお前じゃ避けられない)

少女(むぅ……)

剣士「まぁ、追いかけっこもそろそろ終わりとしよう。諦めて私に斬られるか、それとも有り金全部置いていくか……」

少女?「追剥目的だったのかよ!?タチ悪いなアンタ!?」

少女(ッ!!)

少女?「どうしたこんな時に!」

少女(あ、あれを見て!!)


ズーン

剣士「……ん?随分と存在感のある箱だな」

少女?「あの隙間から見えるのは……まさか!!」

少女?(俺の顔だ!!)

少女(……あれ?ちょ、ちょーっと近くに寄ってもらえる?)

少女?「ん?ああ、分かった」

剣士「……嫌な予感がするな」スッ


少女?「ほら、ここでイイか?っつーか早くここから俺の身体出そうぜ」

少女(あのさ、よーく見てからそういう事言おう?ね?)

少女?「んー?あれ?」

少女(……これ、ただの……)

少女?「写真引き延ばしたやつ貼り付けただけじゃねーか!?つーか中身何が入ってるんだよコレ!!」ガバッ

少女(ちょ!?そ、そんな不用意な……)


―はずれ―


少女?「」イラッ


少女?「」ゴゴゴゴゴゴ

少女(あ、あの……)

少女?「散々期待させやがってコレかよ!!管理者出て来い!!俺がぶった切ってやるああああああああ!!」グシャ

少女(ああ、そんな酷い……大体こんなダンジョンに管理者なんているわけ……)

―管理者権限により、条件が達成されました。自爆装置起動、爆発まで3・2・1―

少女?「へ?」

少女(あーあー……)


*チョドーン*


―――

オーク娘「や っ た ぜ」

お嬢様「結 果 だ け が 残 る」

メイド「貴女のところの娘は回避したみたいですわね」

商人「なんか申し訳ないですねー。あの娘危機回避能力高いもんで」

お嬢様「フフフ!気にするでない!誘き寄せてくれたと思えば大したことではない!」

メイド「お嬢様、今回の被害総額は軽くこのくらいかと」カタカタチーン

お嬢様「……必要経費だ!(泣)」

メイド「太っ腹ですわお嬢様……うう、懐が寒い」

オーク娘「ボスの前では口答えは厳禁だにゃー」

メイド「うるさい!!分かっていますわ!!」

商人「あのー、まぁ少しくらい私が負担しても……」

メイド「当たり前ですわ!!さぁ貴女はさっさと今の冒険者の装備品を回収して外に追い出してやりなさいな!!」

オーク娘「人使いが荒いにゃまったく」


―――


少女?「」プシュー

少女(そんなうまい話がある訳ないよねー……って言うか、このダンジョンって人工的なものなんだ。ふーん……)



小休止

本日休業

再開

……

お嬢様「だーっはっはっは!飲め飲め食え食え!今日は私の奢りだー!」

メイド「鷹揚ですわお嬢様」

商人「いいんですかね?私まで参加しちゃって」

オーク娘「当面の敵だった二組を撃破したにゃ。商人さんの協力もあったからこそ出来た事にゃ!」

剣士「ああ、感謝しろ」ガツガツ

メイド「お前は出て行けよ」

商人「他の二人はどこに行ったか分かりませんか?貴女と一緒に行動していると思ったのですが」

剣士「知らん。二手に分かれた後、合流しようと思ったときには待ち合わせ場所の構造が変わっていて結局逸れたままになってしまった」


店員「追加のお料理お持ちしましたよー」

オーク娘「よーし!そろそろ一緒に食べるにゃ!」

パスタ「いいのか?」

メイド「ええ、勤務時間外に作らせてしまったお詫びですわ」

1号「……」

2号「……」

メイド「お前たちは早く明日の準備でもして寝てろ」

1号「この扱いの差よ」

2号「賄い貰っているから文句も言えんが」


お嬢様「しかし、残る一組はかなりの強敵だ」

オーク娘「出来る限りの妨害はしたけど16層まであっさり突破されてしまったにゃ」

商人「罠を手当たり次第壊されていないだけマシですね。他の冒険者は大体5層前後をウロウロしてますし」

メイド「今日もまた引き上げてくれたからよかったものを、明日は無いと思った方がよろしいですわ」

お嬢様「うむ、奴らの事は探れなかったが、私が持てる全力をぶつけるつもりだ。なんなら最終手段も用意してある」

メイド「最終手段とは?」

お嬢様「それは秘密なのだ!だがミッション達成もしたいから出来るだけ20層でケリを付けるつもりでもいる!」

オーク娘「ハイリスクだにゃあ」


メイド「そうだ、お嬢様。デザートのゼリーをお持ちしましたわ」

お嬢様「わーい!青いプルプルのゼリーなのだ!」

パスタ「ほぉ、綺麗に作るもんだな」

メイド「お嬢様がいつも喜んでお食べになるので。私も身を削る思いで張り切って作っていますわ」

店員「作る側にとっては、食べる人の喜ぶ顔が一番嬉しい物。そう思いますよね?」

パスタ「えっ」

店員「えってなんだよクズ料理人」


お嬢様「甘くておいしいのだ~♪」モニュモニュ

オーク娘「美味しそうだにゃあ」

メイド「"おいしそう"ではなく"美味しい"のです」

商人「よっぽどの自信作なんですか」

メイド「そりゃあもう」

お嬢様「うむ!口の中でプルプルと、まるで生きているかのように小躍りしているのだ。それでいてお腹の中でジワーっと広がっていく感じで……」

パスタ「好さげだな……なぁ、材料だけでも教えてくれないか?最悪作り方は自己流で出来るけど」

メイド「お嬢様だけが味わうものでございますわ。全てが秘匿情報となっておりますゆえ」

パスタ「ありゃ、残念」


剣士「……」

メイド「おや、どうなさいました?私をじっと見つめて。私はロr…小さい女の子にしか興味ありませんわよ?」

商人「言い直しても意味変わってねーぞ」

剣士「いや、お前」

メイド「何でしょう?」

剣士「……少し背が低くなったんじゃないか?」

メイド「私はスライムですので多少は可変しますわ。栄養でも取れば元の大きさに戻りますし」

剣士「そうか」ガツガツ


商人「アンタホントどうでもいい事に気が付くんだから。ウチの財布事情にも気が付いてほしい位ですけどね」

剣士「知っているが口に出さんだけだ」

商人「オイ」


お嬢様「おお!見ろ!ゼリーが私を目の前にして伸び縮みを始めたぞ!」プルプル

オーク娘「本当にゃ、ボスの言った通りまるで生きているみたいにゃ!」

メイド「ウフフフ、お嬢様に食べられることで至高の喜びを感じているのですわ」


プルプルプル


パスタ「……」

店員「……」

商人「……あの、ゼリーの材料ってもしかして」

パスタ「言うな」

店員「身を削るってそういう……」


メイド「お代わりもありますわ、お嬢様ァ。ウフフフフフフフフフフ」


お嬢様「いや、もういいのだ。ふぁ……私はそろそろ眠るとしよう」

メイド「ならば私が添い寝をして差し上げますわ!!」シュバッ

パスタ(動きキモッ)

お嬢さま「うむ、それでは部屋に戻ろう」キュッ

オーク娘「わかったにゃーボス」

メイド「!?」


メイド「お、お嬢様……何故そこのブタ娘の手を握っておられるのですか……」

オーク娘「ブタとは失礼にゃ。オークは普通のヒトと顔は変わらないにゃ」

商人「旧魔王軍にオークらしいオークの総隊長が居たそうですが」

オーク娘「それはヒトそれぞれにゃ」

メイド「シャラーップ!!テメェに話なんざしてねぇ!!お嬢様!!ワタクシめがお嬢様が眠りにつくまで隣で子守唄を歌い続けますわ!!」

お嬢様「イヤダー」

メイド「ホワイ!?何故!?」

お嬢様「だってお前」





お嬢様「寝る前にベタベタ引っ付いてきて嫌なんだもん」

メイド「」ピシッ


商人「あ、石化した」

店員「流石にロリコンメイドさんの視線には気づいてますよねー……」

お嬢様「小柄ながらもこっちの方がオッパイも大きくて抱き心地がいいのだ」パフパフ

オーク娘「ボス、早く寝るにゃ。明日が正念場にゃ、ボスが一番頑張らないといけないにゃ」ナデナデ

お嬢様「ふぁ~い……」ネムネム

商人「あら意外な包容力」

メイド「」


お嬢様「それではお休みなのだー……」

オーク娘「適当に寝かせつけたらまた戻ってくるにゃ。料理はまだ残しておくにゃ!!」

メイド「」

店員「め、メイドさん?」

メイド「」

パスタ「し、死んでるッ!?」


……

オーク娘「……」

お嬢様「……」

オーク娘「ボースー、ちゃんと話をするのは私じゃなくてあっちにゃー」

お嬢様「分かっているのだ。しかし、どう切り出していいか分からないのだ」

オーク娘「私よりも二人の方がずっと付き合いは長いにゃ。ご両親の事でちゃんと話を付けないとボスの中でモヤモヤが残ったままになってしまうにゃ」

お嬢様「うむ……」


オーク娘「迷ってるにゃ?メイドを通してご両親に自分の意志を伝えるか、それともまだやれることをやっていくか」

お嬢様「お父様もお母様も心配しているのは分かっているのだ。それに、奴も私を優先してくれているとはいえ両親に雇われている身。やつにもまた大きな迷惑をかけているのだが……」

オーク娘「多分それは全然気にしてないと思うにゃ。そういう奴にゃあのロリコンは」

お嬢様「でも……連絡が取れてしまえば、きっとお父様もお母様も私を連れ戻そうとするのだ。絶対に……」

オーク娘「……ボスはどうして家を飛び出したにゃ?」

お嬢様「……美味しい物を食べて、ドレスを着飾って、ヒトにいい顔をして……そんな変化の無い毎日だったのだ」

オーク娘「羨ましい限りにゃ」


お嬢様「……それに、結婚の話ももう出ていたな」

オーク娘「うにゃ!?ボスはまだ12歳にゃ!早すぎるにゃ!?相手はロリコンにゃ!!世の中ロリコンばかりなのにゃ!!」

お嬢様「それは言い過ぎだが……あくまで候補としてなのだ。相手は一国の王、正妻に慣れずとも妾として出されることもあるだろうと教えられていた」

オーク娘「うーん、よく分からない話にゃ」

お嬢様「その国王の祖父母には我が一族の先代が大変世話になったのだ。それを報いるために、せめて私が嫁に行こうと……な」

オーク娘「望んでいない結婚は悲しいのにゃ」

お嬢様「私もそのヒトに会ったことはあるのだが、とてもいい王であったのだ。悪い気はしない、でも……」

オーク娘「でも?」


お嬢様「話が逸れたな……私が家を出た理由。私は、誰かのお人形ではないのだ」

お嬢様「自分で物を選び、自分で生き方を決め、自分で歩んでいける……そんな強さが欲しくて私は飛び出してきたのだ」

オーク娘「気持ちは分かるけど責任放棄にゃ、自分勝手にゃ。完全にメイドに頼り切っているから今でもそういう生き方は出来ていないにゃ」

お嬢様「ズバズバ言うんだな、お前は」

オーク娘「ボスが大好きだから言っているにゃ」

お嬢様「そっか……」


お嬢様「私が家に帰る時は……自分で生きる術を身につけたとき。そうして初めて、私は私に成れる気がするのだ」

オーク娘「それじゃあ、私達はそれを全力サポートする形でいいのかにゃ?」

お嬢様「家に帰れとは言わないんだな」

オーク娘「方針を決めるのはボスにゃ。私はボスの考えを否定しないにゃ」

お嬢様「……」

オーク娘「煮え切らない顔をいているからここで一発……」


オーク娘「騎士の誇りにかけて、私は貴女を守ります。メイドも命を賭けて貴女を守るでしょう。ですので、貴女が必要なものを身につけるまで、安心して旅を続けて下さい、お嬢様」


お嬢様「お前……普通に喋れるんだな」

オーク娘「これでも勇者選抜を卒業しているにゃ!このくらいは出来るにゃ!」


オーク娘「問題の先延ばしではなく、ちゃーんとメイドと話し合って今後の事を決めていけばいいにゃ。あっちもあっちでボスの両親と手紙のやり取りをしているのをコソコソ隠しているつもりでいるにゃ」

お嬢様「そうだな……あいつの心労の一つくらい、そろそろ減らしてやらないとな!」

オーク娘「その意気にゃ!ともかく、明日の決戦に向けてまずは英気を養うにゃ!!」

お嬢様「うむ!では明日!皆私の後に続くがよい!決して其方たちを飽きさせぬ結末を用意しようぞ!」



メイド「……」

メイド(ご立派ですわ、お嬢様)


メイド(貴女に一目ぼr……お仕えして役8年、無理矢理屋敷に乗り込みメイドとして雇われ歳月は流れ)

メイド(貴女は鳥籠の中の小娘ではなく、自分の考えを持つよう成長なさって……感涙いたしましたわ)

メイド(そうだ!私もこうしてはいられない!お嬢様に手紙の事を全て話そう!出来れば明日!全てを成功させてから!!)



お嬢様「ではもう眠るのだ」

オーク娘「うにゃ!お休みなのにゃ!」

お嬢様「その……一緒に眠ってもらっては……ダメか?」ウトウト

オーク娘「しょうがないにゃあ」

メイド「テメェぶっ殺すぞあぁん!?私のお嬢様に何手を出そうとしてんだゴルァ!!」バァン!!

オーク娘「ぎゃああああああああああ!?どこから沸いて出たにゃ!?」

メイド「ずっと部屋の外で待機してたわああああああああ!!お嬢様あああああああ私をお選びになってくださいましー!!」

お嬢様「スヤァ……」


小休止
ぶっちゃけゼリーの下りを書きたくてこのSS始めた

本日休業

再開

――――――
―――


お嬢様「さぁお前たち!今日が正念場なのだ!心の準備はいいか!」

メイド「……」ボロッ

オーク娘「……」ボロッ

お嬢様「……何故そんなボロボロなのだ」

メイド「お嬢様の貞操をお守りするための戦いを昨晩しておりましたので」

オーク娘「どの口が言うにゃ」


メイド「それでお嬢様、奴らの動向は」

お嬢様「うむ、バッチリ捉えているのだ」

オーク娘「何度か刃を交えた相手として言わせてもらうと、正攻法で行くにはかなり厳しい相手にゃ。どうするにゃ?」

メイド「逃げて追ってを繰り返してただけだろ」

お嬢様「現状ダンジョン内の設備で持たせるしかあるまい。それと……最悪、私自らが出陣する!」

メイド「ッ!?お、お嬢様いけません!そんなことは……」

お嬢様「大丈夫だ、無茶はしないのだ!」

オーク娘「昨日絶対護るマン宣言しておいてボスを直接戦地へ行かせるのは私としてもどうかと思うにゃ」

メイド「お嬢様はこれでも魔族の血を引いておられます、そこら辺のゴブリンとは格が違うのですわ!」

お嬢様「どうだ!恐れ入ったか!」ドヤァ

オーク娘「にゃんと!ここに来て中二御用達のとんでもない設定が飛び出してきたにゃ!」

商人「設定とか言うなよ」

お嬢様「おー、いたのか」


商人「それはともかくとして、そろそろ連中が17層に入りますよー」

お嬢様「おっと!こうしては居られない!トリガーはこちらに!タイミングを全て私に委ねるのだ!」

メイド「これほどまでに実力があるのならば装備もそれなり。ここで奴らを仕留めて身ぐるみ剥いで大儲けですわ」

お嬢様「我が家の生活の糧となるがいい!!」

商人「なんか締まらないですね……あ、それじゃあ私はこの辺で」

お嬢様「ん?もう行くのか?」

商人「はい、そろそろ私も頃合いだと思いましてね」

お嬢様「悪巧みか?」

商人「ま、そんなようなものですね」


商人「このまま黙って出ていくのもフェアではないので伝えておきますが。以前話したレアなアイテムを手に入れる目処が立ったので行動に移させてもらいます」

お嬢様「……なんだっけ?」

オーク娘(な、なんの話にゃ……)

メイド(覚えている人はどのくらいいるのやら)

商人「盗むという形もアレですし、機会を伺っていたのですが今がちょうどいい時期かと思いましてね」

お嬢様「盗むだなどとはとんでもない、ダンジョン内にあるというのならそれは見つけた者勝ちなのだ、好きにするといいぞ」

商人「ヌッフッフ、そういうと思っていましたよ!それでは私はこの辺で~」スタコラサッサ


メイド「放っておいてよろしいのですか?」

お嬢様「逆を言わせてもらえばダンジョン内の落とし物は私の物!何かしようにもこのダンジョンは我が手中にある!」

お嬢様「宝物に手を出そうというのなら奴も我々の敵!始末して身ぐるみ剥いでとっととポイなのだ!」

オーク娘「相変わらず物騒なのにゃ……おっとっと。目標、動き出したにゃ!」


―――


フード「しかし驚きましたね、ダンジョンの構造が変わるとは」

覆面「余計な手間食っちまったが、まぁいいだろう。どこまで続いているかは分からんが、そう深くは無いだろう」

フード「以前私が見積もった通りならば20~23、4階層程度でしょうね」

覆面「何でそんな事分かるんだよ……」

フード「経験談です。貴方の十数倍は生きていますので」


―――

お嬢様「便宜上名前を付けておいたぞ!」

メイド「どうやら片方は長寿の種族のようですわね」

お嬢様「ヨボヨボの婆さんか?」

オーク娘「それにしたって若い声にゃ。身体も小さいし」

お嬢様「フフフ、だがその覆面とフードの下の顔を今日拝んでやろう!トラップ発動!奈落の落とし穴!!」ポチッ


―――

ガコン

覆面「だったら、そろそろ引退したらどうだ?ほら、みんな育ってきているんだ」

フード「貴方達に小言を言わなければいけないので、まだしばらくは現役引退は出来ないですね」

覆面「余計な世話までしなくていいと思うが?」

フード「余計な心配を掛けさせる貴方が言いますか」


―――

お嬢様「……」

オーク娘「……」

メイド「今の……見えましたか?」

オーク娘「い、いつの間にか穴の向こう側に居たにゃ!?瞬間移動したようにしか見えなかったにゃ!?」

お嬢様「ふ、フフフフ……そうでなければ面白くは無い!!」ガタガタガタ

オーク娘「ボス、膝が震えているにゃ」

お嬢様「武者震いだ!!だがしかし!これは小手調べにすぎん!!次ッ!!」


お嬢様「風圧で押し飛ばしコイル発条で上昇!!後プッシュトラップで押しつぶす!!」

―――

覆面「それで、このダンジョンの調査は進んでいるのか?」

フード「今更ですが、上層ならばまだ罠の設置が他の冒険者によるものの可能性もありましたが、私達しか足を踏み入れていないであろうこんな層にも罠があるという事は……」

―――

オーク娘「そもそも風で飛ばされないにゃ!?」

お嬢様「ええい!道を誘導して魔物部屋に突撃させるのだ!!」

―――

覆面「ま、十中八九人工物だろうなぁ」

フード「はい、実は今日の朝に冒険者ギルドの掲示板にも注意書きが書かれていました」

―――

メイド「世間話をしながら全部叩きのめされましたわ!!」

お嬢様「とっておきだ!通路で大岩を転がせー!!」

―――

覆面「その注意書きってのは?」

フード「追剥が多発していると。ある女の子の証言ではモニターのようなものが現れたとの事ですので、現在進行で管理されている可能性が高いですね」

―――

オーク娘「岩を破壊……18層に突入にゃ」

メイド「しかも何だか冒険者たちにダンジョンの事がバレている気が……」

お嬢様「ぐぬぬ、強敵撃退に少々派手にやり過ぎたのが仇となったか……!」


お嬢様「だが!しかし!ここまでは小手調べだ!私の力を甘く見るなよ!!」

オーク娘「随分長い小手調べにゃ」

メイド「口を閉ざしなさい。お嬢様はまだまだ考えがあるようですわ」

お嬢様「物理的に奴らを引っかけるのは無理だろう。ならば我が宿屋の経済力をフルに使って改装しておいた変則ダンジョンをお見舞いしてやるのだ!」

オーク娘「宿屋頼みも辛い所にゃ」

―――


覆面「18階到着っと……ここは?」

フード「ダンジョンの中に森ですか」

覆面「日の光もある。地下潜っててこんな場所に出るなんて変な感覚だな」


―――

メイド「これはどういう仕組みなのですか?」

お嬢様「森林タイプのマップチップがあったから使用したのだ。環境的な制限が色々厳しいからこの層でしか使えなかったのだが、今までと違ってより強力な仕掛けも使えるぞ!」

オーク娘「えっと、説明書の図を見るに綺麗な水や豊かな土、日の光が必要と書いてあるにゃ」ペラペラ

メイド「難儀ですわね」

オーク娘「太陽も付いていたのかにゃ?」

お嬢様「日の光は現在使える付属の物では明るさがいささか足りなかったから、これは商人さんから購入した"自然に優しい擬似太陽光発生装置(ガソリンタイプ)"を別途で購入したのだ」

メイド「足りないものは他で補う応用力。見事な手腕ですわお嬢様」

オーク娘「燃料が自然に厳しそうにゃ」


―――


覆面「まぁいいか。とりあえず進もう」

フード「下手に進むよりも、こんなもの燃やしてしまった方が早いとは思いませんか?どうせ誰も困りませんし」

覆面「あー、そうだな」

お嬢様(ちょっ!?悪魔かコイツは!?)

覆面「そんじゃまぁ魔法で」グッ


フード「あ、ちょっと待ってください」

覆面「あ?待てって言われてもそんな突然……」

フード「待てと言っているのが聞こえないのかー」ズガッ

覆面「」

メイド(……ハイキックで覆面の首が変な方向に曲がりましたわ)

オーク娘(一体何があったにゃ)


フード「よしよし」ナデナデ

子ウサギ「ウキュ?」

フード「ダメですね。この人工の森にもこんなにも可愛い何の罪も無い生物が生きています。生けとし生けるもの、無意味な殺生は避けるべきでしょう。聞いていますか?」

覆面「」

メイド(聞こえてない聞こえてない)

オーク娘(というかあのウサギ、商人さんのとこの子にゃ。こんなところまで来てたのかにゃ)

お嬢様(何だか分からんが助かったのだ!よし、このままモノマネンドをけしかけるぞ!)


1号「マネー」

2号「マネネー」

フード「おや、まだ生物がいたのですか」

メイド(変身させないのですか?)

お嬢様(可愛いモノならば今のように油断するハズなのだ!ネンドたちには臨機応変に対応しろと既に伝えてある!)

1号(ここいらで活躍しとかねーとな)

2号(いい加減タダ働き脱却しておきてーしな)


1号「マネマネー」トコトコ

2号「マネマー」スリスリ

フード「……」






フード「さ、行きましょうか」グシャッ

2号「うげあああああああああああああああああ!!」

1号「2号うううううううううううううーーーーッ!!」


―――

オーク娘「踏 み つ け た !?」

お嬢様「な に ゆ え !?」


―――


覆面「痛たた……ん?なんだこのグニョグニョしてる奴は」

フード「好みじゃないです、さっさと立ってください、行きますよ」


―――

メイド「生けとし生けるものとは何だったのかとは」

1号『管理室!!至急救援を!!2号が……2号があああああーーー!!』

2号『悪くない……人生だったぜ……』ガクッ

オーク娘「んー、比較的軽症そうにゃ」

お嬢様「むぅ、とことん役に立たんな」


―――


覆面「ん、また分岐か」

フード「単純に厄介ですね、当たり外れを運任せにされるとやたらと時間を喰われてしまいます」

覆面「変化前のダンジョンで細かくマッピングしていた奴が言う事かい」


―――

オーク娘「ボスー、何だか18層には分岐道が多い気がするにゃ」

お嬢様「安いのだ!」

オーク娘「安い?なにがにゃ?」

お嬢様「コストが」

オーク娘「ああ……」

メイド「洞窟だろうと森林だろうと分岐道一つ作るのにコストがかかるというダンジョン作りにおいて不便極まりない仕様ですわ」

お嬢様「改築だから何もないって言うのは逆におかしい話だがな……」


―――


覆面「まだ出口が見つからないのか?」

フード「参りましたね。他所でもありましたが、一定周期で一部の道が変わっています。ここからだと……通っていない道はかなり遠回りになりますね」

覆面「広いだけならまだしも、確実にこちらを迷わせに来るとは……道から逸れて森を突っ切るってのは?」

フード「出来ません。あくまで"壁"としての役割なのでしょう、ある程度まで進むと引っかかる上に余計迷ってしまうでしょう」

覆面「さて、どうしたものかね」


―――

オーク娘「効いてる効いてる」

お嬢様「今時間稼ぎをしても決定打が無いと意味が無いのだ」

メイド「動かせるコマが多い訳ではありませんし……こちらもこちらで困りましたわ」

お嬢様「普通の罠では効かない事は明白なのだ。出来るなら仕留める時には奴らが逃げられない状況を作りたいのだが……」


オーク娘「片方を人質に取れば逃げなくなると思うにゃ!」

メイド「殺されたいのならそうするといいですわ」

オーク娘「御免こうむるにゃ、言ってみただけにゃ」

お嬢様「前二つの撃退劇から学ぶに、やはり釣らせて分断するのがいいかと思うのだが」

メイド「それで脱出アイテムでも使って逃げてくれればまたこちらも準備期間が生まれるのでありがたいのですが」

お嬢様「引き伸ばしはダメなのだ。いつかは対面しなければ……ッ」

メイド「……どうかなさいましたか?」

お嬢様「……いや」

お嬢様(余計な事を考えるな私!今は目の前の事を成功させるのだ!)

オーク娘(頑張るにゃーボスー)


お嬢様「と、いう訳で。こんな事もあろうかと、準備しておいた釣りアイテム!ぽちっとな」ピッ


―――

パサッ

フード「おや、何か落ちてきましたね」

覆面「本……?何でこんなところに」

フード「迂闊に近づくと何があるか分かりませんよ。とりあえず周囲を警戒してまずはここから目視してください」

覆面「えーっと何々……?"大丈夫!○通のダンジョン必勝攻略本だよ!"」

フード「……」

覆面「……全く信用ならんものが出てきたもんだ」

フード「ハァ……」


―――

メイド「お、お嬢様?ちょー…………っとあからさま過ぎでは?溜息つかれてますわ」

お嬢様「フハハハハハ!人間の心理というものは不思議なものなのだ!イエスと言えばノー!触るなと言えば触る!それがダメかもと分かっていてもちょっとは信じてしまう!天邪鬼が心の中を巣食っているのだからな!」

メイド「慧眼ですわお嬢様」

オーク娘「うみみゃ!?必ずしもそうとは限らない気もするにゃ!?」

メイド「何ですか貴女はさっきから!お嬢様のやる事なす事全てに突っ込みを入れて!そんなキャラですか!」

オーク娘「ボケまくるボスとイエスウーマンしかいないから必然的に私がこっちに回ってしまうにゃ」


覆面『とりあえず何もなさそうだし読むだけ読んでみるか』

フード『構いませんが正直時間の無駄だと思いますが』


お嬢様「フィーーーーーーーーーーッシュ!!」

メイド「阿呆が一匹釣れましたわ!」

オーク娘(私だったら多分何の疑いも無くあの本の内容を信じそうだという事は黙っておくにゃ)


―――


覆面「中々面白いな、このダンジョンの事色々書いてあるぞ」

フード「誰かが意図的に用意したものと考えていいでしょう。こんな場所に都合よく落ちているのは不自然です。コミックス1巻で1巻の宣伝するのと同じくらい不自然だと思います」

お嬢様(言いたい放題言ってくれるなオイ)

覆面「採取できる確率は0パーセントと表示されるが、このダンジョンでは小数点以下を切り捨てているため、実際は小数点以下の確率で取れる。気が遠くなるほど低い確率だがゼロではない。」

フード「絶対に許しません」

メイド(別の攻略本の内容が混ざっていますわ)


覆面「ああこれネタコラムだったわ。本攻略はこっちの袋とじ……どれどれ」ビリッ

フード「あ、いけませんそれ」

覆面「ん?ッ!?」

フード「魔法陣が施されていましたね。まんまと引っかかったようで」

覆面「どうして止めなかった!?さっきは力づくで止めたのに!?」ズゴゴゴゴ

フード「私のヤル気の問題です。安心してください、単距離移動の空間魔法のようですからそこら辺に飛ばされるだけでしょう」

覆面「まぁいい!お互いに固まって動く必要もないし下り階段で落ち合おう!」ズゴゴゴゴ

フード「分かりました。精々いしのなかにいる状態ならない様に気を付けてください」

覆面「は!?ちょおま」ビシュウウン

フード「……」

フード「やれやれってやつですね、まったく……」


小休止
もっとコンパクトにまとめられないだろうか

再開

―――

お嬢様「さて、どうにか分断することが出来たが……」

メイド「あのフードの女、中々に曲者ですわ。本に仕込まれていた罠に気が付くとは」

オーク娘「何でバレたにゃ?」

メイド「恐らく魔法使い系と見ていいでしょう。さっきは思いっきり覆面を蹴り上げていましたが……」

お嬢様「武術が得意な魔法使いだって多いんだ、そこはまぁ気にしなくていいだろう」

オーク娘「でもでも、覆面の方も侮れないにゃ。変化させる前のダンジョンで魔物を蹴散らしていたのは大体アイツだにゃ」

お嬢様「そうだな、ならばフードの方を魔物の生息域に。覆面の方を罠の仕掛けてある地帯へ誘き寄せるか!ルート準備!」

オーク娘「合点承知!」


―――


……

子ウサギ「ウーキュー」

フード「もふもふ……♪」モフモフ

フード「……おや?」

グルルルル……

フード「……」

フード「……死にますか?」

ビクッ!

フード「怪我をしたくなければ消えなさい」

キャウン……

フード「尻尾を巻いて逃げる姿は中々可愛かったですね」モフモフ

子ウサギ「」


―――

オーク娘「……」

お嬢様「……対応相手間違えたかな」


……

子ウサギ「ウッキュキュー」

フード「随分と遅かったですね」ナデナデ

覆面「……」ゼーハー

フード「またこんなに汚して……洗濯するのは私なのに」

覆面「わ、罠が熾烈過ぎるだろ……」

フード「その程度で」

覆面「穴ひとつくらいならともかく二重三重になれば話は別だ!」

フード「先の先を読むのは武術を嗜む者として当然です。なにをやっているのか」


―――

メイド「片方は効果覿面でしたわ」

オーク娘「穴を飛び越えその先の沼にハマり、続けて飛んできた矢を往なしたと思ったら上から飛来してきた鉄球を対処出来ず、さらにカミツキウオの接近に気が付かず全身に魚を引っ付けたままごり押ししたにゃ」

メイド「その他にもブービートラップを避けた矢先にオイルトラップに引っかかりそのまま滑って崖下へ。着地は成功しましたが、次の瞬間に崩れた崖の下敷きに。何だか大したこと無いですわね」

お嬢様「よくそれで死ななかったな!?いや死なれても困るんだけどさ!?じゃなくてそれでほとんど無事に次の階層に向かおうとしているんだから十分脅威だろ!?」

メイド「ですがお嬢様、逆に言えば弱点が分かったとも言えますわ。覆面の方はマヌケ、フードの方は……なんとかなりますわ!」

お嬢様「根本的解決になっていないのですがそれは」

オーク娘(にゃー……ここまで来たら流石に誰だか分かっちゃった気がするにゃ……)


―――


フード「さて、次の階ですが……」

覆面「ん……随分とまぁ……」

フード「なるほど……まるで古代遺跡ですね」


―――


メイド「お嬢様、この階層は?」

お嬢様「かつて旅行した事のある砂漠都市の地下遺跡をモチーフにした階なのだ!結構マップをチョメチョメしたのでかなり無茶な作りになっているが、それを補って余りある罠の宝庫となっているのだ!!」

オーク娘「ここには沢山の宝箱が設置されているにゃ!これじゃあまるでボーナスステージのようなものなのにゃ!」

お嬢様「安心するがいい!私が釣り目的以外でそんなもの用意するはずがないのだ!」

メイド「そのお考え、一流ですわお嬢様」


お嬢様「少し嵩んでしまったが!ここに在る宝箱のほとんどは雇っておいた擬態箱(ミミックモンスター)!!多数の中のフェイクに混ざる貴重な品!!冒険者は一つ味を占めてしまえば全てを開けてしまうもの……!」

お嬢様「その僅かしかない当たりを引き当てるために奴らは命を惜しまず開けて開けて開けまくる!!そう!そこにお宝があるのだから!!」

メイド「冒険者の心理……いえ、真理を付く!素晴らしいですわお嬢様!!」

オーク娘「ありそうでなかったミミックをここまで引っ張るとは、相手もきっと油断して不意を突かれる事間違いなしにゃ。所で強さの方は大丈夫かにゃ?」

お嬢様「擬態箱系によくありがちな超攻撃力と即死魔法(気絶させるだけだけど)を完備している!基礎を守った手堅い良い連中だ!」

お嬢様「しかも脳波通話が出来る!しかも手足を使わずに通話できるこの魔物を使う私を見下す者などいないのだ!」

オーク娘「モノマネしか出来ない粘土とは大違いなのにゃ!」

1号「……」

2号「……」

メイド「あら、帰ってきていたのですか役立たずの屑どもめ」

1号「何も言えねぇ……」

2号「涙しか出てこねぇ……」


―――


(へーい、こちらボックスA。目標そっちに向かっているぜ)

(ボックスN、了解だ。思いっきり脅かしてやるぜ)

(ボックスUだ、こっちにも残しておけよ!)


メイド(……どのくらい雇ったのですか?)

お嬢様(このくらい)パッ

オーク娘(アルファベット表そのまま取り出したにゃ……)


フード「どこかで見た事のある地形だと思っていましたが……なるほど、砂漠都市の有名な地下遺跡を模しているようですね」

覆面「ああ、2回来た事があるな。崩落の恐れがあるから普段は立ち入り禁止だが……」

フード「我々は客人でしたからね。見学くらいは許可してもらわないと困ります」


―――

お嬢様「……?」

メイド「お嬢様、いかがなさいました?」

お嬢様「いや……」

お嬢様(あの遺跡に入るなんてそれこそ、相当な位のものしか許可は出されないぞ……私だって一度しか見た事が無いのに。奴らは一体……)

オーク娘「宝箱に接近!各人戦闘に備えるにゃ!!」


―――


(来たッ!)

覆面「お、宝箱」

フード「おや、ここだけではなく見えにくいですが他所にも置かれているようで」

覆面「そんなにあるって事はここが最下層って事か」

フード「それはどうでしょうか。ともかく次の階段を見つけましょう、存在しなければここが最下層で我々の調査は終了という事になります」

覆面「そうだな、先を急ぐか」

(……)

(アレ!?)

子ウサギ「フー!フー!」

フード「よしよし、どうしたのですかそんなに毛を逆立てて。近くに魔物でもいるのですか?ああ、そういえば貴女も魔物ですね」ナデナデ

覆面「何してんだ、とっとと行くぞー」

フード「はいはい」テトテト


―――

お嬢様「……」

メイド「……」

オーク娘「……」

お嬢様「何 故 こ う も 思 い 通 り に 動 い て く れ な い !?」

オーク娘「奴らの狙いは宝じゃなくてダンジョンそのものみたいだにゃ」

メイド「悲劇ですわお嬢様……こ、こうなったら私自らが奴らに引導を……」チャキン

(管理室!こちらボックスS!接近する人影あり!)

お嬢様「なに!?よし!お前は戦闘態勢に備えろ!」

オーク娘「うみゃ!?あの二人は別の場所でノンキしてるにゃ!」

メイド「そ、それでは一体誰が……まさか新たな伏兵!?」

お嬢様「こうなったら雇った金を無駄にしないためにキリキリ働いてもらうぞボックスS!」

(り、了解!!)


―――


商人「いやー、いいですねぇダンジョン!落し物が全部私のものになるなんて夢みたいですよ!笑いが止まりませんねこりゃ!フッヘヘヘ、お、ラッキー宝箱みっけ」


お嬢様(何 や っ て ん だ ア イ ツ !?)

メイド(ふ ざ け ん な 馬 鹿 野 郎 !?)

オーク娘(うわ、漁ってる漁ってる……)


商人「む、当たりという名のハズレでしたか……ふむ、お宝には違いありませんが私の求めている物ではありませんね。"あの箱"はどこへ行ったのやら……」

商人「うお!?あっちにも宝箱♪ゲットゲットー♪」


(……どうしますか?)

お嬢様(喰え)


商人「ハッハー!こりゃ笑いが止まりませんねーHAHAHA」

ガブッ

商人「」


―――


オーク娘「頭から豪快に行ったにゃ」

メイド「ダンジョン内で警戒を怠った彼女が悪いのですわ」

お嬢様「なんだこの……なんだ」

小休止
次回20層ですべてが終わる!といいな
今回出てきたアルファベットを順に並べると……

再開
ラスト

―――


商人「こんの……」ググッ

「ちょっ!?」

商人箱「旅商人舐めるなあああああああああああああああ!!」ダダダダダ


―――


お嬢様「上半身食われたまま走り出したあーーーーーーッ!?」

メイド「もう放置しましょうお嬢様」

オーク娘「商人箱ってなんだよ」


お嬢様「しかし困ったぞ、ここまでほとんどノーダメージで20層に突入されてしまうとは……」

オーク娘「覆面の方は精神的にそこそこやられてるにゃ」

メイド「お嬢様、ここから先は……」

お嬢様「仕方ない、当初の通り私が出るのだ!どの道、ミッションクリアの為に20層の始めの客人は持て成差ねばならんからな」

メイド「私としては引き留めたい所ですが、お嬢様の決意に水を差すようなことは致しませんわ。ではご用意させていた来ました正装を持って参ります」

お嬢様「うむ!私自身の士気向上に必要だ!頼むぞ!」

メイド「お嬢様の仰せの通りに」


オーク娘「正装なんてあるのかにゃ?」

お嬢様「我が一族は先祖代々名を馳せていたものの、魔族の血が入り強さを手に入れたのはほんの数代前の事なのだ」

お嬢様「ま、正装もそんな不安を掻き消す願懸けのようなものだ!だが今の私にはまだ必要なもの!」

お嬢様「家を出た身と言えど、我が家の誇りを忘れたわけではない!その名を汚さぬために!正装で私は出陣するのだ!」

オーク娘「カッコいいにゃ!」

メイド「お嬢様、お持ちいたしましたわ」

お嬢様「うむ!着替えるのだ!」


……


お嬢様「誰がスクール水着やメイド服やその他露出の高い服を用意してこいと言った?ええ?」ビリビリビリッ

メイド「しまったああああああああ!!私のお嬢様着せ替えコレクションがああああああああああ!!」

オーク娘「突っ込みも疲れたにゃ」


お嬢様「まったく!こっちだこっち!」シュルシュル

メイド「お嬢様の生着替え……複眼ですわ」ジジー

オーク娘「おいそのビデオカメラ今すぐ止めろ」

お嬢様「では気を持ち直して出陣なのだ!」

メイド「お気を付けください、我々も同行するとはいえ連中も一筋縄ではいきませんわ」

オーク娘「もしもの時の為にボスだけ逃げられるようにするにゃ」

お嬢様「お前たち……安心しろ!玉砕するときは我々3人とも一緒だ!!」

メイド「感動しましたわお嬢様!!」

オーク娘「流石ボスにゃ!!一生ついて行くにゃ!!」

お嬢様「フフン!」

お嬢様(……何で玉砕覚悟の出陣前提の話してるんだろう私)ズーン

メイド(口には出しませんわお嬢様)ズーン

オーク娘(二人は何を神妙な顔しているにゃ)


お嬢様「だが私とて一ダンジョンマイスター、真っ向勝負ではなく小細工は仕掛けさせてもらうぞ!」

メイド「抜かりなしですわお嬢様。20層にはどのような仕掛けを?」

お嬢様「強固な罠を多数と強力な魔物の召喚陣を用意した。深層のためワンランク高い魔物を召喚出来るぞ!」

オーク娘「ただこれもギミックの一つだからこっちで召喚する魔物を選べない上に操る事も出来ないにゃ」

メイド「要はペナルティで発生した魔物と同じ類の魔物を呼ぶという事ですわね」

お嬢様「それと、準備もあるからある人物達に覆面を引き留めるように頼んでおいたのだ!」

メイド「おや、まだ使える手駒は残っていのたのですか?」


―――


覆面「どういうことだ……」

フード「20層に入った直後に空気が変わりましたね」

子ウサギ「ウキュ」

覆面「ああ、これは……」



店員「あ、いらっしゃいませー!」

パスタ「どもー、勇者の定食屋!ダンジョン支店にようこそー!!」


覆面「えー、空気変わり過ぎじゃね?」

フード「どこかで見た事のあるような間取りの定食屋。とうとう人工物だという事を隠すのをやめてきましたね」

覆面「自分からプライドを投げ捨てていくスタイル」

お嬢様『だーっはっはっは!!プライドで飯が食えるかーーーー!!』デュン!


覆面「ンなッ!?モニター!?」

フード「なるほど、事の首謀者は貴女という訳ですか」

お嬢様『ご明察だ名も無き冒険者達よ……我がダンジョン最終階層へようこそ』

メイド『そしてここが貴方達二人の墓標となるのですわ!』

オーク娘『よっぽどな事が無い限り死にはしないにゃ』

覆面「随分とまぁ手の込んだものを作る……」

フード「経営の手腕は褒めておきましょう。中々スリリングなアトラクションとも取れますし」

お嬢様『アトラクションだとぅ!?』

フード「それ以外に何が?こんなもの、おままごと以外の何物でもないですよ。冒険者ギルドの裏を利用したつもりでしょうが、それこそ上位の冒険者たちにとっては遊びでしかないですし」

お嬢様『うるしゃーい!!今すぐ私がそちらに向かい直々に相手をしてやる!』


お嬢様『貴様らを襲う今までとは次元の違うトラップに魔物!そして最後に待ち受けるは魔人の力を受け継いだ我が刃!』

お嬢様『生き残るのは貴様らか!それとも我らダンジョンマイスターか!いざ尋常に勝負なのだ!!』

フード「フフ、悪の組織に名前を改訂したらどうですか?貴女にはそちらの方が似合っていると思いますよ?」

メイド『お嬢様、高速エレベーターの準備が出来ましたわ。早速あちらへ向かいましょう!!』

お嬢様『フハハハハ!今更謝っても遅いぞ!身ぐるみ剥いで空の彼方へぶっ飛ばしてやるのだ!フハハハハハハ!!』



覆面「助かるのが命のやり取りをする気が無いって事だな。こっちもその方がやりやすいが」

フード「冒険者ギルドが設けたダンジョンの経営規約は守られていますのでそこに突っ込みを入れる気はありませんが……さて、どうやってあの娘を連れ出すか」

オーク娘『おーい、聞こえているかにゃー』

覆面「お前……」


オーク娘『ボスはあの通りまだ子供にゃ、プライドを傷つけない程度にちょっと手加減してあげてほしいにゃ』

フード「元よりそのつもりですよ。というか、流石に貴女は私達の正体に気が付きましたか」

オーク娘『なんのことかにゃ?それじゃあ20層最奥にてお前たちを待っているにゃ!!首を洗って待っていろにゃ!!』

プツン

覆面「待っているのか待たされているのかどっちだっての」

フード「相変わらずですね、まったく」


パスタ「おーっすお二人さん!俺たちを忘れて貰っちゃ困るぜい!」

店員「ではここまでお疲れ様です、コーヒーでもどうぞ♪」

覆面「毒入りじゃないだろうな?」

パスタ「安心しろ、雇われたとはいえ立派な料理人!そんなものを入れる程落ちぶれちゃいない!」

フード「嘘は言っていないようですね。頂きましょう」


覆面「で?アンタ達はどうしてここに?まさかワザワザ敵を労うために来たわけじゃないだろうな?」

店員「あはは、実はその通りなんですよー」

フード「おやおや、敵に塩を送るとは。フェアな精神を持っているようですね」

パスタ「おうよ!ここで俺の飯を喰って力(リキ)入れて頑張って攻略してこいよ冒険者!」

覆面「ハハ、俺たち本当は冒険者じゃないんだけどな」

フード「それでは……おや、メニューは無いのですか」

店員「すみません、こちらで既に用意させていただいたものがあるんですよ」

パスタ「それがコイツだ!!」


ズモモモモモモモモモ
ゴゴゴゴゴゴ
ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ

覆面「……」

子ウサギ「フー!フー!」

フード「何ですか"コレ"は」

パスタ「特性!100倍パワーパスタ!!」

店員「これで天元突破な力を付けていざ行けボウケンシャー!!」


フード「シェフ、原材料を聞いても構いませんか?」

パスタ「ああ!それってハネパスタ?」

フード「答える気は無しですかそうですか。どうします?」

覆面「俺、あんまり腹減ってないからいいや」

フード「私もです、先を急ぎましょう」

パスタ「おっと残念!コイツを食べなきゃここから出られない構造になってるんだ!大丈夫!食えるものしか入れてないから!」

覆面「oh...」

店員「一皿だけですから頑張ってください!!」

覆面「頑張る!?パスタ一皿食べるのに頑張らなくちゃいけないのか!?」

フード「嵌められましたね。あの娘、よくやる……」


……


お嬢様「ファーーーーッハッハッハッハッハ!!今頃奴ら、天にも昇る気持ちでパスタを貪っている頃だろうな!!」

メイド「多分このダンジョン一番の難所ですわ」

オーク娘「実に恐ろしいことをするにゃボス」

お嬢様「フン、仮に突破できたとしても五体満足ではない身体で数々の罠を掻い潜って到達せねばならんのだ!私の敵ではないわ!」

メイド「策士ですわお嬢様」

お嬢様「この後ろに見ゆる扉がこのダンジョン最後の部屋なのだ!ここには冒険者達から根こそぎ奪った貴重品が多々保管されている!」

メイド「一部のみだけですけどね。他は全部運営費として売っぱらいましたわ」

お嬢様「ダンジョン制覇した者にくれてやらんでもないと考えてはいるが!まだそれも時期早々!!蹴散らしてくれよう、今ここであいつらを!!」

オーク娘「今いるこの大部屋の端っこの方に置いてある宝箱は何なのにゃ?」

お嬢様「それはただのちょっと高価な装備が入った箱なのだ。ひょっとしたらそれに満足してこっちの扉に気が付かず帰る冒険者が居るかもしれないと思って設置したのだ」

オーク娘「地味にセコイ事するにゃ。よく見るとこの扉も遠くから見たら壁と色が居っしょで見つけにくいし」

お嬢様「空箱も混ざっているぞ!」

メイド「徹底していますわ」

オーク娘「なんだかにゃー」


お嬢様「しかし、やけに時間がかかっているな」

メイド「まずアレを食べきる事が不可能に近い気もしますが」

オーク娘「罠も一級品な上に入り組んでいるにゃ。仕留めたか迷ったか、どっちとも取れるにゃ」

お嬢様「それならそれでいいのだ!どっち道この階層で再起不能にしてやればミッションクリアで我々の勝ちなのだ」

メイド「いつの間にかミッション成功=勝ちという図式になっていますわお嬢様」

お嬢様「まぁ同じような物だろう。ここまで接近を許してしまったのは痛手だが」


ズシーン
ズシーン

お嬢様「む!ようやく来たか!!」

オーク娘「フフフ!待ちくたびれたにゃ!!でも弱ったお前たちなんて目じゃないにゃ!!いざ尋常に勝負!!」

メイド「弱らせて尋常とはこれいかに、しかし手段は選んでいられませんわ!!」

お嬢様「さぁ冒険者よ!!我らのダンジョン経営の糧となるがいい!!」


ズズズ……


魔物「があああああああ!!!」

お嬢様「」

メイド「」

オーク娘「」


お嬢様「な、ななな!?なんなのだコイツは!?」

メイド「お、お嬢様!?まさか他の部屋に設置した魔法陣から現れた魔物では!?」

お嬢様「ええい!こんな距離を移動してくるとは!説明書に書いてなかったぞ!!」

オーク娘「トコトン信用ならない説明書だにゃ」

お嬢様「仕方ない!自分で召喚した魔物だが、やっつけなければ邪魔になるだけだ!幸い私で倒せないような奴はいないと思うのだ!」

メイド「了解ですわ!私はアサシンの為あまり前には出られませんが、状態異常をばら撒いてやりますわ!」チャキン

オーク娘「アンタ暗殺者だったのかにゃ……ともかく!私が前に出るにゃ!ボスは援護をお願いするにゃ!」

お嬢様「おうよ!!」


魔物「ぎヒヒヒヒ!!」スッ

メイド「おや?」

オーク娘「何か取り出したにゃ」

お嬢様「あああああああああああ!!アレは"偉大腕怒(だいわんど)"!!」

オーク娘「何なのにゃそれは?」

お嬢様「東洋の業物の武器なのだ!!つーか私が設置した宝箱の中身!!」

メイド「ファッ!?」

オーク娘「勝手に盗って勝手に使ってるにゃーーー!?」


魔物「だーーーーーーん!!」

ボーンッ

オーク娘「ニャーーーーーー!!」ビョーン

メイド「あ、アホみたいな擬音が立っていますが小爆発がおこりましたわ!」

お嬢様「あの武器は、魔力を通す事で先端の丸い物体を叩きつけた箇所に小爆発を起こす大槌なのだ!槌に見えないけど!」

オーク娘「何でそんな危ないもの宝箱に入れたにゃ!?」

お嬢様「だ、ダンジョンやっている以上中身は良い物を用意しないとダメだろ!!でもあんな大槌扱える奴そうそういないと思ったから嫌がらせも混ざっているのだ!!魔物に奪われるなんて思ってなかったのだ!」

メイド「まったく!あの召喚陣、こんな理から外れた魔物を呼ぶなんて欠陥もいい所ですわ!!商人を訴えたら金を踏んだくれるんではないですかお嬢様?」

お嬢様「む、確かにそうだな。よし!奴を見つけ次第脅して金品強奪するのだ!」

魔物「だだーーーーん♪」

ボーンッ

オーク娘「ギニャーーーーー!!そんな話をしている場合じゃないにゃーーー!!」ビョーン

メイド「こっちもアホっぽく避けていますがあの魔物かなり強いですわお嬢様!!」ビョーン

お嬢様「ぐぬぬ!召喚された分際で!!しかもノリノリだし!!」ビョーン

魔物「♪♪」ボーンッ


お嬢様「作戦会議なのだ!みんな走りながら集合!!」

メイド「いい案がありますわ」

お嬢様「はい言ってみるのだ!」

メイド「そこのオークが盾となって我々が逃げる。これでハッピーですわ」

オーク娘「ふざけるにゃ!?誰が人柱になるかにゃ!?」

メイド「お嬢様と私の為に命を賭けなさい!!以上!!」

お嬢様「却下だ!!」

メイド「えー」

オーク娘「えーじゃねぇよ」


オーク娘「はいはーい、私からも提案にゃー」

お嬢様「よし!言ってみるのだ!」

オーク娘「私とメイドが囮になるからボスは覆面達と合流して守ってもらうにゃ、足止めはするから安心して欲しいにゃ」

メイド「さっきと何が違うんだってんだ!?ええ!?」

オーク娘「あくまでボスの生存率が高い方を取るにゃ。あの魔物、ちょっと様子がおかしいにゃ。多分私一人だとすぐにやられちゃうにゃ」

メイド「……だから私に足止めを協力しろと?お嬢様を逃がす為に?」

オーク娘「そうにゃ。他の魔物は召喚者のボスでも勝てそうだから一人でも大丈夫にゃ。あの二人と合流すれば一番確実だけどにゃ」

メイド「……分かりました、癪ですが乗りましょう。それが一番お嬢様を守ることに繋がるのなら」

オーク娘「うにゃ!」


お嬢様「却下だ」

オーク娘「うにゃ!?」

メイド「お、お嬢様!?」

お嬢様「アレが規格外だというのは身に染みて理解した、だからこそ言っているのだ!」ダクダク

オーク娘「飛んできた破片が頭に突き刺さって流血してるにゃ」

メイド「身に染み過ぎですわお嬢様!?すぐに手当てを!!」

お嬢様「ふ、フラフラするけど必要ないのだ!」


お嬢様「私は……上に立つ者として、お前たち家臣を見捨てる事は出来ないのだ!」

メイド「お言葉ですがお嬢様……命の優先順位というものがあります。生き残らなければならない者、捨石となる者。その最も高い順位に居るのが貴女なのです」

お嬢様「ふざけるな!そんなものなんて無い!!私は逃げないと決めたのだ!現実現状に向き合って、お前たちと一緒に行くと決めたのだ!これは決して覆していい事ではない!!」

オーク娘「分からず屋が……ッ!己の目的を忘れるな!私たちは貴女を護ると、命を賭けると決めている!そんな貴女の甘さはいらない!」

メイド「あ、貴女……」

お嬢様「甘くて結構!!甘納豆よりずっと甘い私だが!お前たちを見捨てるほど腐った引き納豆になった覚えなどないのだ!!」

オーク娘「???」

メイド「???」

お嬢様「ゴメン、今の忘れて!!」


魔物「だああああん!!」ボーンッ


オーク娘「ッ!!」

メイド「お嬢様!!グッ!!」

お嬢様「ああ!?」


魔物「ぎっひひひ♪」


メイド「フフ……万事休す、追い詰められましたわ……」

お嬢様「お前……私を庇って……!!」

メイド「かすり傷にすらなりませんわ、だって私はスライム娘なのですから……ッ!!」

オーク娘「結構な痛手になってるにゃ、怪我人はとっとと子供を引き連れて撤退するにゃ」ズイ


お嬢様「お前まで……!」

オーク娘「私はしっかり避けたにゃ、だから万全な状態で戦えるにゃ」チャキン!

メイド「貴女に……撤退しろなんて言われたくありませんわ」チャキン!

お嬢様「二人とも……」

メイド「私はお嬢様の甘々納豆っぷりに惚れ込んでいるのですわ。あんな事言われたら、お嬢様の正しさの証明の為にはここで引くわけにはいきませんわ!」

オーク娘「私だってボスの甘々納豆が大好きにゃ。だからこうして文句ひとつ言わずに戦えるにゃ!!」

お嬢様「ゴメン!これ以上私を弄るのやめて!!」


魔物「ぐごごごごご……」ズズズズ……


メイド「正念場ですわ」

オーク娘「お互い、覚悟は決まったにゃ!」

お嬢様「覚悟を決めたのは私もなのだ!!」ドワォ!!

メイド「お嬢様!!」

お嬢様「魔人の力を解放した……これで対等とは言わずとも、奴に一泡吹かせた上でみんなで……」






お嬢様「皆 で 逃 げ る こ と が 出 来 る か も し れ ん !!」

オーク娘「うにゃ!!」

メイド「そうですわ!!命あっての物種ですわ!!正面きっての戦闘なんて以ての外!!」

お嬢様「こちとらダンジョン経営に身を削った身なのだ!!今の生活をそうそう手放してたまるかーーーーーー!!なのだ!!」

オーク娘「結局いつものノリにゃ。ま、これが好きなんだけどにゃ」


お嬢様「皆の者!!私にィ!私に続けーーーーーーーー!!我らの力を見せつけてやれーーーーーーーーー!!」

オーク娘・メイド「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


魔物「だーーーーーーーーーーーーーーーーん♪」ボーンッ


オーク娘「ギニャーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」ビョーン

メイド「ぎゃあああああああああああああ!!身体半分削れたああああああああああ!!」

お嬢様「やっぱりダメだーーーーーーーーーーー!!撤退!!撤退ーーーーーーーーーーーーー!!」


「応えろ!!刃よ!!」

ズァッ

魔物「――――――ッ!?」


お嬢様「何!?」

オーク娘「うにゃ!?」

メイド「これは!?」


魔物「ガ……フ……」ドサッ



覆面「間に合ったか!」

フード「ギリギリですね。とんでもない無茶をする……」

お嬢様「た、助かったの……か?」

メイド「重畳ですわお嬢様!!」

オーク娘「遅すぎるにゃ!!何してたにゃ!!」

覆面「そっちが用意した罠に手こずってたんだよ馬鹿!!」

オーク娘「馬鹿にバカって言われた!!」

覆面「うるせぇバカ!!」


フード「御怪我はありませんか」

子ウサギ「ウーキュー」

お嬢様「だ、大丈夫なのだ……」

フード「あの魔物は恐らく魔法陣から出てきたものではなく、このダンジョンの元となった場所に始めから生息していた種族……幾分かランクが違っていたので間違いはありません。それだけでは無かったですが……」

メイド「しかし、何故貴方達が私どもを助けたのですか?」

お嬢様「そうなのだ!明らかに敵しか作らない言い分でお前たちに喧嘩を吹っかけたのだ!何故助けた!」

フード「そりゃ、連れ戻してきてくれと言われた相手を死なせるような事、出来る訳ないじゃないですか」

お嬢様「ッ!お前たち、一体……」


オーク娘「そろそろ顔を見せるにゃー」

覆面「ったく、俺だって好きでこんな恰好してる訳じゃないっての……よっと」

お嬢様「な!?」

メイド「ファ!?」

勇者王「俺の国で好き勝手ダンジョンなんて作りやがって。余計な仕事までしなきゃいけないことになったぞ」

側近「同じく。それで、私はこの人の側近です」パサッ

オーク娘「ガの字が三つ付きそうなロボットの名前してるにゃ」

勇者王「うるせぇ、馴れ馴れしいぞ」

オーク娘「うーにゃー」


メイド「お、おおおおおおおお嬢様!とんでもない大物が来てしまいましたわ!!」

お嬢様「国王……様!」

勇者王「久しぶりだな……姫」

オーク娘「姫ェェェェェエエエエ!?」

メイド「あ、そういえば貴女は知りませんでしたね。ホンマモンの姫ですよ、お嬢様は」

オーク娘「あうあうあうあわわわ……今までとんでもない狼藉を働いていたにゃ……私は打ち首かにゃ!?それとも絞首刑かにゃ!?」ガクガクガク

お嬢様「怯えるな、豆粒のような小さな国だ。それに今まで隠していた私が悪いのだ、お前が気にすることではない」

オーク娘「ほ、本当かにゃ!?死ぬ心配はしなくていいにゃ!?」ジョワアアア

メイド「漏らすな汚い!?」


勇者王「同盟国のお姫様が消えたって聞いていたんでな、国に捜索願の協力を申し出たが拒否られちまってな」

側近「こちらの手を煩わせる程ではない……とのことでしたが、私どもは建国時、まだお互いに国も持っていない時期に貴女の祖先に大きな借りを作ってしまったので」

勇者王「個人的に心配だったし、無理言って独自に動くことになったってワケだ。姫、俺の話だけでも聞いてくれないか?」

お嬢様「……うん」



オーク娘「なんでコイツの話は素直に聞くにゃ?」

メイド「図が高い!!控えろ!!お前さっきから国王に対して馴れ馴れしすぎるぞ!?それこそ死刑になるぞ!?」

オーク娘「私は無礼講にゃ。コイツと同級生だし」

メイド「にゃんだってーーーーーー!?」

側近「同じ学び屋……勇者選抜の生徒でしたので。そういう意味ではお友達といったところでしょうか」

メイド「こ、こいつの交友関係正直舐めてた……」

オーク娘「エッヘンにゃ」


勇者王「姫、先に言っておく。あんまり両親を心配させるような事はするな」

お嬢様「ッ……」

勇者王「俺は親が居なくて爺さんに育てられたからそういう事よく知らないけど……でも、それでもお前には心配してくれる家族がいる、仲間がいる」

メイド「……」

オーク娘「うにゃ」

勇者王「飛び出して自分の力を試したいって気持ちも分かる。そういう年頃だもんな、頭ごなしに言われた親の敷いたレールの上を歩きたくないとも思うよな」

お嬢様「うん……」


勇者王「ずっと屋敷の中で過ごして、見も知らない男の……俺の嫁になれなんて話も嫌だよな」ナデナデ

お嬢様「そ、そんなこと……」カアァ…


側近「ロリコンめ」

オーク娘「そっちも嫌なら嫌で断ればいいにゃ」

側近「お互いの面子もありますから、そういった関係は迂闊にNoと突っ張る事は出来ません」

メイド「お嬢様がお嫁に行くなんて、胸が張り裂けそうですわ……死ね国王」ボソッ

オーク娘「ロリコンめ」


勇者王「悟ったような事を言うが、だとしたら尚更だ。お前はお前の両親と話を付けろ、逃げずにまっすぐに自分の考えを伝えてみろ!」

勇者王「そうやって、自分を確立出来た時に、本当に一人前ってやつになれるんだ」

お嬢様「そのつもりなのだ……!」

勇者王「お?」

お嬢様「もう迷わないのだ!!」

メイド「お嬢様!」

お嬢様「すまないのだ!お前がずっと両親と文通しているのを知っていたのに、私はずっと黙っていたのだ!」

メイド「いいえ、コレは私から伝えなかった故に起きたすれ違い。お嬢様が頭を下げる事はありませんわ」


お嬢様「私はずっと逃げていた。もし認めてしまえばお前も私を屋敷へ連れて帰るのではないかと心配していた」

メイド「お嬢様の意志を尊重します……と、言いたいですが。私もお嬢様を屋敷へ返すという選択肢を取っていたかもしれません」

お嬢様「旅が終わってしまうのが怖くて言い出せなかったのだ……でも、今は違う!!」

お嬢様「国王、ありがとうございます!なのだ!貴方と出会って色々吹っ切れたのだ!」

勇者王「よしよし、聞き分けのいい子は好きだぞ」

お嬢様「はにゃ~ん」ボッ

メイド「お嬢様に手を出すな軟派野郎ううううううううううう!!」



オーク娘「元々そういうつもりでいたにゃ、ウチのボスは」

側近「お説教のタイミングが合致しただけですね。どの道今回の事が無くても近いうちにそうなっていたでしょうに」

オーク娘「どうしてそう思うにゃ?」

側近「そんな気がしただけですよ、貴方達を見ていればそうも思えてきます」

オーク娘「うにゃ!」


勇者王「そういったところでホレ、手紙だ」

お嬢様「これは……」

勇者王「最近預かってきたものだ、見つけたら渡しておいてくれってさ」

お嬢様「……」


―我が愛しい娘へ―
怪我はしていないか?
風はひいていないか?
いや、そんな心配をすることも無いだろう

私に目つぶしをした勇敢なメイドと、話に聞いたにゃーにゃー喋る気高い騎士様が傍に居るのだから

お前がこの生活に窮屈さを感じているのは知っていた、でもどうする事もしてやれなかった
こんな親ですまない。けれど忘れないでくれ、いつでもお前を大切に思っている事を

ああ、短い文でどう書いていいのか分からないが……
お前の旅路の無事を祈っているよ

父と母より


お嬢様「お父様……お母様……」

勇者王「どうやら、この冒険は続行のようだな」

メイド「お嬢様、貴女が音を上げればいつだって屋敷に連れて帰っていたのですよ。ですが貴女は一度だって弱音を吐かなかった」

メイド「旅を続けていいと私の口から言ってしまうのは簡単です。しかし、お嬢様が本当に向き合えるまでは黙っておこうと、ご主人様と奥様に申し付けられました」

お嬢様「フフ……アハハハハハハハ!!本当に……グスッ、本当にヒトが悪いのだ!お前も!私の親も!」

メイド「お嬢様……」


勇者王「連れて帰って来いって言われたんだけどな……それも出来そうにないな」

側近「ご両親もきっと初めから期待はしていないですよ。彼女達の意志を優先するでしょうし」

勇者王「何はともあれ一件落着ってやつだ、家族問題は解決してこのダンジョンの謎も解明できた」

側近「後は城に戻って"異常無し、ここは通常のダンジョンだ"とお触れを出せば終わりです。やれやれ、まさか捏造しなければならないとは」

お嬢様「側近!」


お嬢様「あ、ちょっと待つのだ二人とも!」

勇者王「ん?」

側近「なんですか?」

お嬢様「えい」ポスッ

勇者王「おっと?」ドサッ

側近「危ないですよ姫」ドサッ

お嬢様「……今の見たか?」

オーク娘「しっかり見たにゃ」

メイド「バッチリですわお嬢様」

勇者王「??」


お嬢様「"一番初めに侵入したパーティーを倒した"ぞおおおおおおおおおお!!」

勇者王「はぁ!?」

側近「なんですかそれは」

メイド「ま、それはそれ。こちらの事情ですわ」

側近「はぁ……」

オーク娘「ところで気になってたんだけど、パスタ……どうしたにゃ?」

勇者王「パスタ?ああ、パスタな……」


―――

パスタ「」

店員「大丈夫ですかー?」ツンツン

パスタ「」

パスタ「」

パスタ「コパッ……」

―――


勇者王「誰が食うなんて指定が無かったから……」

側近「食わせました」

オーク娘「oh...」


お嬢様「よっしゃああああああ!ミッションもクリアしたしまた明日からダンジョン経営の続きが出来るのだーーーー!!」

メイド「国王お墨付きですわお嬢様」

勇者王「こういうのって宣伝とかダメなの?」

側近「ダメです、ダンジョンは冒険者ギルド主導の裏経営ですので国が表立って認めてはいけません。それに、奴ら全世界に独自の権力を持っているおかげで我々も手を出せませんし」

勇者王「国がギルドを支援しているのか、ギルドが国を支配しているのか……」

オーク娘「難しい話はよく分からないにゃ」


お嬢様「……おかしいな、そろそろミッションコンプリートと表示された画面が出て来てもおかしくないのに」

子ウサギ「ウキュ?ウキュー!」ピョン

側近「あ、どうしたのですかウサギさん」



幽霊「あったよ!宝箱が!」

子ウサギ「ウキュキュキュ!(でかした!)」

幽霊「おお、やっと合流で来たねウサギちゃん」

子ウサギ「ウーキュー」


メイド「アレは……」

お嬢様「商人の連れなのだ。つーかひょっとしてずっとダンジョンに潜っていたのか……」


ボフンッ!

幽霊「うわ!?この宝箱煙噴き出した!?」


オーク娘「ああ、そんなの超冒頭らへんにあったにゃ」

お嬢様「最下層に罠箱として設置したんだった。懐かしいな、1か月前くらいか」

メイド「それはどっちの意味でしょうかお嬢様」


幽霊「確かこれが二重底になってて……」ゴソゴソ

幽霊「あったよ!"海鳴りの鈴"が!」

子ウサギ「ウキュキュキュ!(でかした!)」


―mission loss―

お嬢様「……」

メイド「……」

オーク娘「……」


お嬢様・メイド・オーク娘「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」


お嬢様「あ、ああ……まさか……」

メイド「20層のお宝って……」

オーク娘「一番初めの侵入者って……」


ドドドドドドド


商人箱「テメェら!!目当てのモン見つけたか!!」

幽霊「うわビックリした!?何でそんなもん上半身に被ってるの!?」

子ウサギ「ウキュ!?」

商人箱「ンなもんどうでもいいわ!!ぶっちゃけこれ以上に価値のあるものは無いんだし、目当てのモン手に入れたならとっととズらかるぞ!」

幽霊「はいはい分かってるよもー、ヒト使い荒いなぁ」フヨフヨ

子ウサギ「ウキュ」テトテト


お嬢様「今までの苦労は一体……しかもなんか一番貴重なもん取られたし……」

メイド「お、落ち込むことはありませんわお嬢様!ほら、ダンジョンは健在ですわ!まだ誰にも攻略されていないピカピカの新品ですわ!!」


―ペナルティ・既存アイテム没収・オブジェクトのランダム配置・迷宮変化―


お嬢様「ファ!?ペナルティキツすぎだろ!?」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


オーク娘「ま、不味いにゃ!!ダンジョン自体が揺れ動いてるにゃ!?」

側近「配置のし過ぎですね。地形変化が起こるかもしれないのでとっとと脱出しましょう」

勇者王「ほら何やってんだ!!早くしろ!!」

メイド「急ぎますわお嬢様!!」

お嬢様「わ、私の数日が……集めた宝が……滅茶苦茶に……」


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


――――――
―――



オーク娘「ふぅ、なんとか変化に巻き込まれずに済んだにゃ」

お嬢様「」

メイド「い、命あっての……ですわお嬢様」

お嬢様「」

勇者王「……おーい」

お嬢様「」

側近「ま、今まで多くの冒険者を飲み込んで来たダンジョンの末路としては上出来なのではないでしょうか」

お嬢様「」グサッ

勇者王「何故トドメを刺した」


お嬢様「あは、あは、あははははははははははははははは」

オーク娘「ボスがまた壊れたにゃああああああああああ!!」

お嬢様「こ、壊れてなんかないさ、これが現実……フフフ、向き合わねばならん確かな現実!!」

お嬢様「決してもう逃げたりはしない!!私は再起するぞ!!何度でも!不死鳥の如く!!それが今の私にできる最大限の事なのだから!!」

メイド「最高ですわお嬢様ああああああああああ!!」ダキッ

オーク娘「今回の一件でボスはまた強くなったにゃ!!一生ついて行くにゃ!!」ダキッ

お嬢様「みんなーーーーーーーーー!!」ダキッ



勇者王「アイツなんでお姫様に仕える事になったんだろうな」

側近「大方夕飯をご馳走になった、程度の下らない理由でしょう。彼女の場合は」ピリリリリ

側近「おっと、電話が……」


「いたぞー!あそこだー!!」


オーク娘「うにゃ?」


少女?(アイツらだ!!俺から装備を根こそぎ奪っていった奴ら!!)

少女「間違いありません!!私見たんです!!倒れた私の身体を弄って……うう!」

オーク娘「うにゃ!?」

「おかしいと思っていたんだ!最初に挑んだ俺たちも彼女らと合流してから罠にはまるようになって……」

メイド「あ、貴方達は一番初めの!?」

女盗賊「こんな都合のいい場所に宿なんて経営して!私達から金品奪おうとしてたろ!ええ!?」

銃剣士「なるほど……管理されていたと思ったら、こんな近くに管理人が居たとは」

お嬢様「うあああ……」


勇者王「助けなくていいのか?3、40人くらいに囲まれてるが……」

側近「もしもし、はい、はい……そうですか、ならこちらで適当な理由を付けて接収します」ピッ

側近「あ、すみません何ですか?」

勇者王「……いや、いい内容の電話では無かったみたいだな」

側近「ええ、まぁ」


「さぁ!どうしてくれる!!」

少女?「俺の刀返しやがれ!!」

「俺たちの装備一式!!」

剣士「私の食事!」←?

触手「私の触手!!」←??

女盗賊「私のお金!!」

銃剣士「こらこら嘘を言わない」


お嬢様「た、助けるのだお前たち~!!」ウルウル

メイド「ど、どうしようもありませんわお嬢様~!」ウルウル

オーク娘「姿を見られている以上言い訳できないにゃ~!!」ウルウル


側近「はい、ストップ。そこまでです貴方達」

ザワザワザワ

「お、おいアレ……」

「ウチの国王とその側近じゃ……」

「何でこんなところに……」

触手「あら、可愛いオ・ト・コ・ノ・コ」


勇者王「なんか変なの混ざってるがまぁいい。お前ら、このダンジョンは国の所有物だ、そいつらは何も関係ない!」

お嬢様「……はぇ?」


側近「たった今調べたところ、ここの土地は我が国……というより、国王様の直接的な所有物という事でした」

お嬢様「はああああああああ!?」

勇者王「つーわけで……ここはジスト王国の管理下という事になった、コイツは一部の冒険者たちから金品を奪っていたに過ぎない。姿を見ていない連中はタダの思い過ごしだ」

側近「別に記憶にないのでしょう?彼女たちに盗られたという事も……」


「た、確かにそうだが……」

少女?「俺 は 盗 ら れ た っ て の !!」


勇者王「そう事を荒立てるな。魔が差したってだけだろ。庇うつもりもないがそこらへんはお互いに話し合ってくれ」

メイド「あわわわわ……」

お嬢様「ど、どうしたのだ?」


メイド「お、お嬢様思い出してください!」

―――

商人「ここが"誰かの所有地という訳ではない限り"、冒険者ギルドに書類を提出すればすぐにダンジョンとして運営できるようになりますよ」

―――

お嬢様「誰かの……」

メイド「所有物でしたわ……」

お嬢様「……こ、この場合はどうなるのだ側近?」

側近「速やかに冒険者ギルドの手続きを解約させて新たに我々の名義に変更という形になります、つまり貴方達はもうこの土地に縁もゆかりも無くなったという事です」

お嬢様「」


側近「まぁ、いいのではないですか?ウチは経営する気はありませんし、これでダンジョンの権利は事実上の宙ぶらりん、自然に還ることに」

側近「見られていない貴方達の罪は帳消し、というより冒険者ギルドが暗に認めているだけで窃盗は十分犯罪ですよ?」

側近「それに、手引きした人間の取り締まりもしなきゃいけないですし……」チラッ


商人箱「」ビクッ


オーク娘「あんなところに隠れているにゃ……」

メイド「上半身がまだ食われているせいで隠れられていないですわ……」

側近「協力者にも……話を聞きませんとね」チラッ


パスタ「」ビクッ

店員「」ビクッ


少女?「さぁて……盗られた覚えのあるやつはここに残っているが……」ジリジリ

「どうしてくれようか……」ジリジリ

オーク娘「あわわわ……それでもまだ半分は残っているにゃ!こんな崖まで追い詰められてしまったにゃ!!後ろは海にゃ!!」

メイド「多分あわよくば弁償してもらおうとしている連中もいますわ!!卑怯ですわ!!(盗ったの確実に我々ですが!!)」

お嬢様「ち、違うのだ!!別人なのだ!!それは他人の空似なのだ!!私達ではないのだ!!」

「往生際が悪いぞ!!」

「お縄を頂戴する!!」

お嬢様「ヒィィィィ!!た、助けて国王様!!」

勇者王「……しゃーない、ここは助け船を」

側近「ダメです、手遅れです」

お嬢様「え?」


側近「はい3人ともここに注目。視力検査です、ここには何と書かれているでしょう」

お嬢様「えーっとなになに?」

メイド「ゲッ!?」

オーク娘「わ…うぉ……なんて読むにゃ?」


―Wanted!!―
この顔にピンときたら警備隊まで!

巨大な茶髪ツインドリルのゴブリン娘

メイド服を着た目つきが嫌らしいスライム娘

淫乱ピンクのオーク娘



側近「まぁ、要は指名手配です」

お嬢様「」

メイド「」

オーク娘「」


お嬢様「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!アバババババババババババババ!!」

メイド「お気を確かにお嬢様ああああああああああああああ!!」

オーク娘「淫乱ってなんだよ!!髪がピンクなだけでなんだよこの扱い!!」

側近「やれやれ、一国の姫とそのメイド、そして同級生が指名手配とは。世も末ですね国王」

勇者王「俺に話を振るな!」

オーク娘「助けるにゃ!!国家権力で握りつぶすにゃ!!」

側近「嫌 で す 。クリーンな国家を目指しているのに犯罪の片棒を担がせないでください」

お嬢様「こ、こうなったら……!!海へ飛び込む!!」

メイド「止めてくださいお嬢様!!」ガッ

オーク娘「身投げはダメにゃ!!ダメ絶対!!」ガッ

お嬢様「離せーーーー!!もうお父様にもお母様にも顔向けできんこの出来の悪い娘を止めるなーーーー!先立つ不孝をお許しくださいーーーーーー!!」ジタバタ


1号「おーい!お嬢たちーーーーー!!」

2号「こっちだーーーーーーー!!」


メイド「アレは!!」

オーク娘「粘土にゃ!!ネンドが船を漕いでいるにゃ!!」

お嬢様「ッ!!みんな……準備はいいか?」

メイド「……」コクッ

オーク娘「うにゃ!!」



―――飛び込めーーーーーーーーーーーーー!!



「逃げられたなー」

少女?「あーあー、ちょいと追い詰めすぎたかな」

少女(迫真だったね)

「盗られたものはとっくに取り返してるっての」

「さっきの騒動でダンジョンから吐き出されたからな」

側近「おや、冒険者の皆さんやけにサバサバしていますね」

「盗られたのは俺たちの責任だしな。冒険者って言うのはそういう仕事だ」

「冒険者ギルドにそういう仕組みがあるってのは風の便りで聞いたことがあるしな」

少女?「こっちは盗られたものが帰ってこればそれでいいってワケ」

女盗賊「奴らを許すなーーーーーーー!!金返せーーーーーーー!!」

銃剣士「君は一度詐欺罪で捕まった方がいいんじゃないかな?」


側近「どいつもこいつも人がいいというか……やれやれってやつですね、国王」

勇者王「そういう連中の集まりだからな」


勇者王「ところで、それ……手配書とは違うだろ?」

側近「ちょっと捏造しましたが、普通に捜索願の張り紙ですね。一時期あの子の両親が張り出していたものですが、無事が確認されたので必要なくなったものをチョメチョメさせてもらいました」

勇者王「からかうにはいい材料になったな。だがあのオークの手配書は……」

側近「手作りです」

勇者王「お前、意地が悪いな」

側近「褒め言葉として受け取っておきます。さて、同盟国に報告をしたらとっとと城に帰りますよ。今回の件の資料をまとめないといけないので」

勇者王「うへぇ……やっぱりか」

側近「当然ですよ、勇者様」


――――――
―――



ザザーン


お嬢様「あーあ、また無一文になってしまったのだ」

メイド「楽しい1か月だったと思えばまたいい思い出ですわ」

オーク娘「ボス、安心するにゃ。コイツを回収してきたにゃ!」ヌッ

お嬢様「あああああああ!!偉大腕怒!!」

オーク娘「魔物から奪い取っておいたにゃ。これを売ってまた一からやり直すにゃ!」

メイド「貴女にしてはいい考えですにゃ……おっと口調が」

オーク娘「私に感化されたにゃ?いいですわよマネしても!オホホホホホ」

メイド「私はそんな喋り方してない」ギリギリギリ

オーク娘「にゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


お嬢様「いや、それはお前が持っておくのだ」

メイド「お嬢様!?」

オーク娘「いいのかにゃ?」

お嬢様「うむ、それでまた私を守る剣となってくれることを期待するのだ!槌だがな!」

オーク娘「そういう事なら了解にゃ」

メイド「……フン!まぁ、戦闘以外で役に立ちそうもありませんでのそれは認めて差し上げますわ!」

オーク娘「ツンデレにゃ」

お嬢様「ツンデレなのだ」

メイド「……」プイッ


1号「それでお嬢」ギコギコ

2号「どこへ行きやすか」ギコギコ

お嬢様「そうだなぁ……指名手配されてしまったことだし、行く当ても無くなってしまったな……」

オーク娘「この際だから悪の道を究めるにゃ」

メイド「おや、そんな言葉が貴女の口から飛び出してくるとは。それでも騎士ですか?」

お嬢様「悪の道か……うむ、悪くはないな」

メイド「そしてそれに乗っかりますか……ハァ」

お嬢様「苦労をかけるな」

メイド「苦労の内に入りませんわ、慣れっこですわ」

オーク娘「素晴らしい適応力にゃ」


お嬢様「もっともらしい理由を付けよう!そうだな……この世界は悪であふれかえっている!」

お嬢様「私たち自身もその悪に飲まれてしまい此度の件が起きてしまった!!」

お嬢様「その悪を憂い!そして我らが絶対悪となることで、世界に真なる正義の心を芽生えさせるための悪と私はなろうぞ!!」

メイド「美しき自己犠牲ですわお嬢様!!」

お嬢様「これから我らは!!"悪の組織"と名を付け行動する!!」

お嬢様「人員3名ペット2匹!!目指す先は世界の果ての、そのまた果ての果てまでずっと!!」

1号「俺らはペットか……」

2号「ま、昇格だな。じゃあその世界の果てに面舵一杯!」

お嬢様「私が世界を征服する前に、真の勇者が私を討つ事を願って……」

メイド「どこまでもお付き合いいたしますわ!!」

オーク娘「ボスを護る為にずっと一緒に居るにゃ!!」


お嬢様「新たな旅立ちに!出発進行なのだーーーーーーーーーーーーーー!!」



お嬢様「経営!ダンジョンマイスター!」 おわり!

終わった
ウソみたいだろ?150レス程度で終わる予定だったんだぜ。これで
正直モチベーション維持が出来なかったから面白い箇所が自分でも数か所しかないと思ってる

もしお付き合いしていただいた方がいましたら、どうもありがとうございました

過去作
http://blog.livedoor.jp/innocentmuseum/

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