男「俺は君と付き合えるならストーカーになることだって厭わない」 (124)

学校までの道のりを歩いていく中でいつも考えてしまう

代わり映えしない毎日

それを無為に消化していた

こんなことでいいのだろうか

しかしならばどうすればいいのだろうか

大してやりたい事もなりたい物もないのだ

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「どうした?考え事か?」

隣から話しかけて来たのは幼稚園から仲良くしてきた幼馴染だ、男だが

明るいしイイ奴だから一緒に居て楽しい

でもいつも俺なんかが仲良くしてて良いのか

相応しくないんじゃないかと不安になってしまう

幼馴染には友達もたくさんいる

俺は幼馴染にとって邪魔になっていないだろうか?

「いやあ、昨日夜更かしたせいでなんかダルくてな

おかげで頭働かなくてずっとぼーっとしてたよ

学校めんどくせーよな」

なんとなく、嘘をついた

学校の授業は面白い、なんて感じたことはないが

有意義な時間を過ごしている、そう感じられるので

嫌いではなかった

しかし、やはり移動教室などは一々歩くのが面倒臭い

今日はないが、正直体育も着替えから何から面倒臭い

「なあなあ、やっぱり教室で数学とか英語とかうけると

どうしても眠くなっちまうけどさ、教室移動して化学の実験とかなんか楽しくなるよな?」

幼馴染がそう言ってきた

「確かにな、眠い中授業受けるとキッツいし、一日一回は

実習か体育やりたいよな。」

また、嘘をついた

化学の実習室に向かっていると

目の前から違うクラスの集団が歩いてきた

違う授業への移動教室だろうか

どうせ俺にはほとんど知り合いなんていないのだ

出来るだけ顔も合わせないようにしてやり過ごそうとした

だが意思に反して俺の足は止まり立ちすくんでしまった

ある一人の女の子を見つけてしまったのだ

(かわいい・・・)

正直、それ以外に思ったことはなかった

全く知らない人だったが彼女はただひたすらに、狂おしいほど

可愛かった

全く知らない人だったので幼馴染に誰か聞いてみた

「なあなあ、今の女の子が誰か知ってる?」

「あの子か?○組の子で確か生徒会役員をやってた気がするな

相当かわいいって結構二年の中じゃ有名だよ」

有名だというがこんな時期になるまで何にも知らなかった

自分の情報網には穴でも空いているのか

少し泣きたくなった

実験の授業も終わり、昼休みになると

俺は幼馴染に宣言した

「俺、あの子に告白してくる」

「やめといたほうがいいぞー、話したこともないんだろ?」

至極当然な反応だった

_____

「すみません、ちょっといいですか?」

俺は彼女の教室まで行くと女子グループの中で弁当を食べている彼女に話し掛けた

「何かしら?」

「話したいことがあるんですが、少し時間を貰えませんか?」

そう言った瞬間、彼女は少し嫌そうな顔をした

何を言われるか分かっているみたいだった

「良いわよ」

この時点で断られなくて良かった

なんて思うのは弱気すぎるだろうか

彼女を校舎裏まで呼ぶと俺は早速言った

「付き合ってください!」

彼女はもう、嫌そうな顔はしていなかった

彼女は俺に聞いてきた

「私達、会ったことないわよね?」

そうだ

「今日廊下ですれ違うまで俺は君のことは

何も知らなかった、だから会ったことはないと思う」

俺は整った顔立ちをしている訳でもない

「ごめんなさい、私、よく知らない人となんとなく

付き合うことなんてできないわ」

今まで彼女と親交を深めたこともおそらくない

「あなたのことは申し訳ないけれど、名前も知らないの」

だからもちろん俺の告白が受け入れられる訳なんてなかった

「だから‥‥」

でも

「嫌だ」

「え?」

「俺は君のことは諦めない、諦められない」

やっと、なりたい物ができたんだ

「俺は君と付き合えるならストーカーになることだって厭わない」

この気持ちは絶対に忘れたくない

「俺はどうしても君のことが好きなんだ、この気持ちは抑えられないんだ!」

俺は、何としてもこの子の恋人になりたいんだ

付き合ってくださいではなく

ストーカーだって厭わない

それが俺が幼馴染に宣言した”告白”だったんだ

彼女は少し固まっていた

無理もないだろう、俺ももしストーカーするくらい好きです

何て言われても気の利いた返しなんて出来ない

困ってあたふたした挙句に頑張ってください

何て意味の分からない返答をするのが関の山だろう

彼女はしばらくして落ち着きを取り戻した後言った

「あの、ストーカーはされたら警察呼ぶので」

それはそうだ

「警察のお世話になるようなことは絶対にしないよ」

そんなことをしたら、絶対に嫌われてしまうだろう

俺の目的はこの子となんとしても付き合うことなんだ

そのためには生半可な努力、アピールでは無理だとは思うけど

やり過ぎて嫌われては全くもって本末転倒だ

「そう・・ならいいけど」

「警察のお世話になるギリギリまでは粘るけど」

「一番タチ悪いじゃない」

彼女は少しだけ微笑んだ

彼女の微笑みを受けたのだと感じるとどうしても顔が綻ぶのを我慢することはできなかった

「ねえ?ところでなんで私が好きになったの?

今日廊下ですれ違っただけなんでしょ?」

そうやって聞くのも当たり前だろう

きっと彼女は俺のことを顔だけで告白してきた軽薄な奴だとでも思っているのではないだろうか

でもまあ一目惚れなんて普通それしかないかと思うし仕方ない事だけど

「一目見た時からかわいい顔だなって思ったんだ

しかも顔だけじゃなくてスタイルも良いし髪の毛もサラサラで

俺が君の髪の毛を撫でつけられたらどんなに嬉しいかって思ったし

でもそれだけじゃないんだ、それだけなら君はただの学校が同じだけのかわいい女子だ

俺が君を好きになった理由は・・・」

「理由は?」

「君の、綺麗な笑顔が眩しくて

もし君の笑顔が俺に向けられたらって思うと君は高嶺の花だから

なんて諦めることができそうになくて」

廊下で彼女が友達と話していた時の笑顔

それだけで好きになってしまうなんて俺は本当に惚れっぽいのかなんて思った

でも今まで女子に興味があったことなんてなかったのだ

一日位死ぬほど惚れっぽい日があってもいいじゃないか

”告白”の後教室に戻ると幼馴染に話しかけられた

「おーいどうだった~告白は?」

「振られた」

「まーしゃあないわな、あれに告白できただけ大したもんだよ」

「まだ諦めてはないけどな」

「いややめとけよ」

ごもっとも

昼飯を食べながら幼馴染と話す

「諦めないならどうやってアタックするんだ?」

「そりゃあ・・・」

言いかけて口をつぐむ、女の友達もほとんどいないのに

何をすればいいかわかるはずもなかった

「まずあの人とお前ってほぼ接点ないから話し掛ける口実すらないんじゃないか?

学年は同じだけどクラスは全然ちがうし、お前は部活もやってねえし

あの人文系だから勉強教えて下さい、なんて言いに行くこともできねえし

あとあの人電車だから自転車の俺らとは帰り道会うとかすらありえないしな

帰る時自転車置き場とかで偶然会っても挨拶ぐらいしかできないだろ」

ほとんど知らない情報だらけだが確かに口実のこの字もないようだった

「てかなんでそんなこと知ってるんだよ」

「あの人結構有名だから他クラスの奴らと話したりするとこれぐらいの情報割とはいってくるぞ」

俺の情報網には網が張ってないのか、そう思った

「な、なんか他にはないのか?」

「前カラオケ行く時偶然会ったからカラオケとか結構好きだと思うぞ

それとテレビゲームはあんましなくて放課中とか電車のなかでは読書してるとかも聞いたな」

何一つかすっていない、隙がなさすぎてむしろ笑えた

そんな俺の様子を見て、幼馴染は俺に言った

「な?やめとけって」

ちょっと頷きかけた

次の日の昼休憩、秘策を幼馴染から伝授された俺は早速彼女の所に向かった

「ボランティア活動に興味があるんだけどちょっと相談をきいてくれないかな?」

この学校のボランティア活動は生徒会主導で行っている

奉仕の精神など一ミリもなく推薦入試などにも興味がなかった俺は

存在自体を忘れていたが藁にもすがる思いだ

「んー、別にいいよ」

俺の無茶苦茶な提案を受けて彼女は笑っていた、面白がっているみたいだった

相も変わらずかわいかった

これはマズイ

職員室に向かう道のりで彼女と俺は無言だった

どうしても会話を切り出せない

何とかここで次回話す口実を見つけるか相手の連絡先でも入手しないと

次からは特に用はないけど遊びに来たよー

とかそういった意味不明な事を言わねばならなくなる、それは避けたかった

でも喉がカラカラに渇いて何も喋れなかった

昨日の告白の時のようにはいかなかった

「君ってさ」

「へっ?」

相手から話しかけてきた

「面白いね、ボランティア活動のそうだんーなんて言って話しかけてくるなんて」

「いやあ、頑張って探したんだけど信じられないくらい話のタネがなくてさ」

「それでボランティア活動?」

「そうそう、友達にそう提案されたんだけどもう選り好みなんてしてられねえよって言われて」

「あはっ、面白い友達だねー」

「あ、あのさ」

「なあに?」

「君が好きなものってなに?」

なんとか突破口を探る

「そうだなー、私結構純文学とかが好きでさー、後は結構友達とカラオケとか映画とかに行くよ」

やっぱりテレビゲームしかやらない俺とは全然合わないようだった

でも何とか頑張らないと

「映画って最近なにか面白いやつやってる?」

「最近で言うとねー」

彼女が言った映画も名前しか知らなかった

「それ、一緒に見に行かない?」

「なになに?興味湧いてきたー?」

「興味はそこまでだけど、君と話す口実がなんとか欲しくてさ」

何故か嘘はつかなかった

彼女はまた笑いながら言った

「えー何その変な理由

まあ良いや私今度行く時に一緒に行く友達に君を連れてきてもいいか

聞いてみるね」

一緒に行けることになったがのは嬉しいが少し気になることがあった

「一緒に行く友達って男?女?」

「同じクラスの女子三人だねー」

そんなの俺絶対場違いじゃねえか

映画館に行くのが恐ろしくなった

とても申し訳ないんだけどキャラ設定とかほぼ考えてなかったせいで口調がブレブレ
だからキャラの口調を変えた前回の修正版から投下させてもらいます

次の日の昼休憩、秘策を幼馴染から伝授された俺は早速彼女の所に向かった

「ボランティア活動に興味があるんだけどちょっと相談をきいてくれないかな?」

この学校のボランティア活動は生徒会主導で行っている

奉仕の精神など一ミリもなく推薦入試などにも興味がなかった俺は

存在自体を忘れていたが藁にもすがる思いだ

「そうね、別にいいわよ」

俺の無茶苦茶な提案を受けて彼女は笑っていた、面白がっているみたいだった

相も変わらずかわいかった

これはマズイ

職員室に向かう道のりで彼女と俺は無言だった

どうしても会話を切り出せない

何とかここで次回話す口実を見つけるか相手の連絡先でも入手しないと

次からは特に用はないけど遊びに来たよー

とかそういった意味不明な事を言わねばならなくなる、それは避けたかった

でも喉がカラカラに渇いて何も喋れなかった

昨日の告白の時のようにはいかなかった

「あなたって」

「へっ?」

相手から話しかけてきた

「面白いわね、ボランティア活動のそうだんーなんて言って話しかけてくるなんて」

「いやあ、頑張って探したんだけど信じられないくらい話のタネがなくてさ」

「それでボランティア活動?」

「そうそう、友達にそう提案されたんだけどもう選り好みなんてしてられねえよって言われて」

「あははっ、面白い友達ね」

「あ、あのさ」

「なにかしら?」

「君が好きなものってなに?」

なんとか突破口を探る

「そうね・・、私は本・・特に純文学が好きなの、後は結構友達とカラオケとか映画とかに行くこともあるわ」

やっぱりテレビゲームしかやらない俺とは全然合わないようだった

でも何とか頑張らないと

「映画って最近なにか面白いやつやってる?」

「最近で言うと、そうね・・」

彼女が言った映画も名前しか知らなかった

「それ、一緒に見に行かない?」

「なに?映画に興味でも湧いたの?」

「興味はそこまでだけど、君と話す口実がなんとか欲しくてさ」

何故か嘘はつかなかった

彼女はまた笑いながら言った

「可笑しな理由ね

まあ、良いわよ

私今度行く時に一緒に行く友達にあなたをを連れてきてもいいか

聞いてみるわ」

一緒に行けることになったがのは嬉しいが少し気になることがあった

「一緒に行く友達って男?女?」

「同じクラスの女子三人よ

私が一緒にお昼を食べていた相手」

そんなの俺絶対場違いじゃねえか

映画館に行くのが恐ろしくなった

職員室に来るたび、なんとなくドキドキしてしまう

大して緊張するようなことでもないのに先生を呼ぶだけで一息準備が必要なのだ

全く情けない

「君もボランティア活動に参加するのか?」

「はい、こういったことは今まであまりしたことはなかったのですが

彼女と話してから興味が湧きまして」

もちろん嘘だ

「うむ、良い心がけだな

資料を渡すからボランティアをしたい場所が決まったらまた伝えてくれ」

「わかりました」

職員室を出るとまた彼女に話しかけられた

「さっきの話の続きだけれど

映画館に行く詳しい日取りとかきめたいから連絡先交換しましょう」

彼女の方から提案してくるとは

というか自分から提案できる気もしなかったのでとても嬉しい

「おー、いいよ」

さっきまで連絡先のことなんて毛ほども意識になく今気づいた

みたいな風を装い連絡先を交換した

「そんなににやにやして

私の連絡先知れてそんなに嬉しい?」

バレバレだった、もう色々と

「一つ聞きたいんだけど良い?」

「なにかしら?」

「昨日俺色々引かれそうな言ったじゃんか?」

「それはもう言ってたわね」

肯定かよ

「なんで普通に遊ぶ約束断らなかったの?」

「ストーカーしてでも~みたいな事をいってたじゃない?

逆にそこまでタチの悪い存在にならないんじゃないかと思ったのよ」

そういうものなのか

自分にはストーカーの知り合いなんて一人もいないから全く分からないが

ストーカーの知り合いが居ようとおそらく分からないだろうが

「それにね、ごめんなさいって告白を断った後って

すごく申し訳ない気持ちになるのよ、だからそれからは話しにくくなったりするんだけど

君は別に諦めないから良い、みたいに言ったじゃない?」

まあそういう風にも受け取れるか

「諦めなさいよとは思ったのだけれど、でも申し訳なさとかはあまり感じなくなったからまあ一緒に遊んでもいいかと思って

あなたって結構面白いし」

なんだかんだ言って自分への印象はそこまで悪くはないようだ

むしろ良いとすら言えそうではないか

つい笑みがこぼれてしまう

「え・・、じゃあさ・・・」

もしかしたら

「でも、あなたと付き合いたいとは微塵も思わないけれど」

せめて言わせて欲しい

彼女の教室が近づく

「そういえば私の友達があなたなんかと映画館行きたくないって言ったり、女子だけがいい、とか言ったらどうしようかしら」

「さ、さあ」

「もしそうなったら、あなたに申し訳ないから

違う日に二人だけで行きましょう」

何とも魅力的な提案だった

女子4人が仲良くしているのを横目にみながら居心地悪くついていくか

彼女と二人で一緒に映画を観るか

どうか俺みたいな奴とは一緒はイヤだと言ってくれ

なんて悲しい願いだろうか、そう自嘲した

その日の夕方

彼女から連絡が来た

この映画の原作から大好きな人がいるのだけれど一緒に映画館に連れて行って良いかしら?

と聞いたらOKを貰えたらしい

その映画は原作すら知らないとメールで抗議を送ったが

同じ映画を二回見るのはちょっと嫌だったの(笑)

と返された

この野郎

その気持ちはわかるけども

それから明日渡したいものがあるとも言われた

何を渡されるのだろうか

期待してもどうせ大したものなど渡してはくれないだろう

そうわかっていても胸の高まりは止まらなかった

何をもらえるか検討もつかない

だからこそ期待値は天井知らずだった

ドキドキして余りねむれなかった

次の日彼女はやはりというか昼放課に来た

「昨日渡すと言っていたものをもってきたわ」

「それって、本?」

「そう、見ようと思っている映画の原作よ

同年代でこの本持ってる人って少ないのよ

だから、”映画の原作から好きな”君がきたら

原作談義だけで小一時間つぶれるわね」

「おい、それってつまり・・・」

「この本が好きな友達の話に付いていくには

最低でも2、3回読んで好きなシーンとキャラについて話せるようになった方が良いわね」

宿題かよ

「君の俺への扱いひどすぎない?」

正直な思いだ

「でも元々四人で行こうかと考えていたのに

私達と大して仲良くもないあなたも連れて映画に行くには

この人は原作が好きだから一緒に行ったら面白い

とかそういう付属オプションがないと提案しにくいのよ」

「それは、そうかもしれないけどさー

二回も同じ映画見たくないとかなら

俺と行く時は違う映画観に行くとかもあったわけだしさ・・」

「私が同じ映画を二回も見たくないからって

あなたが観る映画を変えてしまうの?

本末転倒じゃないかしら」

ここまで即座に返されてしまってはぐうの音も出ない

こちらにも言い分はあるはずなのに

屁理屈と正論を混ぜ込んだ口撃は俺には防ぎようがなかった

でも確かに皆原作を知っている中で一人だけ知らなかったら

グループの中で浮く確率が100%に跳ね上がるだろう

元々が何%かは知らないが

「そういえば、この本の映画化が決まった時には

やっぱり皆で喜んだの?」

「いいえ、元々この作品は一人しか知らなかったわ」

ん?風向きがおかしい

「その子があんまりにも熱心に進めるものだから

一度四人で確かめてみようって話になってね」

「でも興味があるって・・・」

「主人公の親友が主人公のために女装して携帯片手に・・

まあネタバレになるからこれ以上は言わないほうがいいかしらね

そのシーンを一度だけ見てみたいと思ったのよ」

それは確かに意味不明すぎて気になる

「あれ?じゃあなんでこの本もってるの?」

「その友達に借りたのよ、あの子布教用に三冊も持っているのよ」

筋金入りのファンのようだ

「その布教用、君は読んだの?」

「読んでないわよ」

コイツは本当に

「もう君性格悪すぎ」

「あははっ、ごめんなさいね

あなたなら別にいいかと思って

でも本当にちょっとは申し訳ない気持ちもあるから

後で何か埋め合わせしてあげるわ」

散々な扱いを受けているはずなのに

最後に笑顔とちょっとのアメをもらっただけで

幸せな気持ちになれた

俺は本当に愚かな男だ

その後幼馴染に彼女について色々聞かれたりしながらも授業を終え、家に帰った

その後渡された本を読んでみたのだが

これが意外と笑いあり涙あり感動ありでとても楽しめた

特に終盤親友が主人公のために女装しわざと敵に捕まり

敵軍基地の内部構造その他を命掛けで入手する前後のシーンでは涙もこぼれたほどだ

好みは分かれそうな作品だが布教する気持ちもよく分かった

というかしたい

彼女達と行った後幼馴染とまた行こう

そう思った

しばらくすると彼女からメールで連絡が来た

どうやら目的の映画が放映されるのは来週らしいのだが

来週の土日は四人の予定が合わないらしい

再来週の土日も合わないらしい

その次の週はテスト直前の週なので勉強したいらしい

だからその次の週の土曜か日曜に行く流れになっているらしい

だからその日に予定があるかを知りたいらしい

・・・・・

長すぎないか?

予定は空いていると伝えた、が

積極的なアピールをし、第一歩を踏み出せたとぬか喜びしていたが

成果が出る(かもしれない)のは一ヶ月後とは

今までで一番堪えた

そもそも一ヶ月もたったら俺のことなど忘れられないだろうか

やっぱり俺を抜いて四人だけで行くことになったりしないだろうか

思考はどんどん悪い方へと進んで行く

そこまで悪くはならないだろうと頭では思っても

それでもどうしても胸が苦しくなる

こんなことが一ヶ月も続くのだろうか

本当に嫌になる

「お前そんなに悩んでるなら思い切ってまた話しかけに行こうぜ」

後日悩んでいることを幼馴染に話すとこんなことを言われた

「いや、それはちょっとなあ・・」

「恥ずかしがってる場合じゃないって!

あの子を手に入れたいならガンガン行かないと始まらねえよ!」

「それは、まあそうだけどよー…」

会いに行きたくない理由は恥ずかしがっているからではない、いやそれも少しはあるが

行きたくない理由は単純に俺が行くと迷惑な気がするのだ

大して格好良くもない男が頻繁に訪ねてくる

彼女が俺のように友達の少ない奴だったら多少は許してくれるかもしれないがもちろんそんなことはない

彼女は人気者だ

これは幼馴染に対する感情と似たものだろう

負い目があるのだ

こんな自分が話しかけていいのか、という

もちろん付き合いたい相手に釣り合わないと感じるなど、馬鹿だ

そんな相手、さっさと諦めて仕舞えばいいのに

諦められない

本当に愚かだ

「多分大丈夫だって!この前この教室でお前と話していた時も

普通に楽しそうにしてたし

あの子が読んでる純文学のこととか聞きに行けばいけるよ!」

「そううまくいくかなあ・・」

「いくって!またその後は適当に聞いた本読んでまたその本のはなししにいってさ!」

「・・よし、じゃあもう一回頑張ってみるわ」

「きっとなんとかなる!だから頑張れよ」

やっぱり幼馴染はいい奴だ

本当に俺にはもったいないくらいだ

早速今日の三時限目の放課に話しかけに行くことに決めた

彼女の教室の前の廊下までは来た

でも結局彼女に話しかけることはできなかった

別に何かがあったわけではなかった

ただ静かに本を読んでいる彼女をこんなつまらない理由で邪魔していいのか

そう思ってしまった

負い目を感じるような相手ならさっさと諦めてしまえ

頭ではそう思った

何があっても彼女を諦めたくない

心ではそう思った

結局話しかける決断も出来ず、彼女を横目に見ながら

諦めて自分の教室に戻ったのは四時限目の授業が始まる直前だった

昼放課になると幼馴染に首尾を聞かれた

「どうだった?彼女とどんな話が出来た?」

「いや、なんか結局話しかけれんかった・・・」

「ちょっと前にお前が告白しに行った時みたいな勢いでガーっていくしかないぞ」

「もうあの時みたいに勢いでいける気がしないよ」

「じゃあどうすりゃいっかなあ」

今のままではどうしようもないだろう

告白なんかのように絶対話しかけに行かないわけには行かないというような理由でないと話しかけられない

意味なく話しかけに行っては相手に迷惑になる

自分はそんなバカみたいな事を考えてしまうような奴だとついさっき再認識したのだ

これほど自己評価が低いとは流石に思わなかったが

「また後でもう一回挑戦してみるよ」

今のままじゃいけないことくらいは分かっている

今変わらなければ一生彼女との関係は深まらないだろう

初めて彼女をみたときにこれをきっかけに自分は変われるかもしれないと思った

今動かなければその予感は所詮予感で終わる

変わらなければ

「頑張れよ、さっきは煽ったけど時間はまだあるんだから

いける!って思ったときに行けばいいんだからな」

「おう、ありがとう」

それでもあまり時間を置く気は無かった

昼はきっと友達と昼食を食べるだろう

おそらくそこに割って入る勇気は今の自分にはない

その次の放課に話しかける

読書をしている彼女に話しかけるとき躊躇はしない

俺と彼女はきっと、ちゃんと友達と言える関係であるはずだ

だから遠慮する必要はない

今度は臆病風には吹かれない

五時限目の放課になり、彼女のいる教室に向かう

恥ずかしいのがなんだ

ずっと話せず苦しいよりはいいはずだ

彼女の教室に到着するとひとまず教室の中の様子を伺う

彼女は男子と話しているようだった

さっきは本を読んでいるだけの彼女に話しかける勇気も無かった

そんな俺に話しかけられるわけがなかった

結局彼女の姿をみるやいなや自分の教室に戻ってきたのでほとんど時間は経っていなかった

今ほど自分が情けないと思ったことは無い

いや、やっぱり何回かはある

「おお~い、なんかすげえへこんでるみたいだけどだいじょうぶか?」

「もうつらい、粒子に還元されたい」

「ガチへこみじゃん、意味不明なこと言ってるし」

「ダンス踊りたい」

「勝手に踊ってろよ」

流された

「はあぁ~、やっぱりあの人って男友達とか沢山いるのかなぁ」

「そりゃそうだろな~、俺も一応連絡先知ってるし」

「えぇ!?なんで?どういった理由で?」

「いや、だからそれはまえカラオケで会ったって言っただろ?

そのときちょっと話したついで他の奴らと一緒に交換したんだよ、まだ使ったことはないけどさ」

「よくカラオケで偶然会ってすぐそんな風に話せるよね」

「その人と一緒に来てる女子の一人が俺の知り合いだったからな

そしたらなんとな~く話せるもんだよ」

なんとな~くってなんだよそこが知りたいんだよ

それにしても幼馴染の話を聞いてさらに自分が情けなくなった

話しかけられなかったのも相当情けなかったが同じ位情けなかったことがあった

というのも俺は今まで彼女が男子と話しているのを見たことがなかった

もちろん彼女に男友達が一人もいない、とは考えなかったはずだが

あまり男子とは交流を図らないタイプの物静かな女子だと勝手に考えていた

だからそんな彼女と約束を取り付けた自分はまあまあ進んでるとか思っていたのだ

馬鹿だ

そんなわけないだろう、彼女は人気者なのだ

俺は精々彼女の男友達Nだ

思い上がりも甚だしい

情けない、というか恥ずかしい

むしろ消えたい

一週間程経ったが彼女とは一言も会話していなかった

とても寂しい

彼女は俺のことなんて気にも留めていないだろうと考えると悲しい

でも話しかけに行くのは恥ずかしいし怖い

彼女から俺に話しかけてくれないだろうか

偶然どこかで鉢合わせてくれても良い

でもそんなことあるわけなかった

化学の座学を受けながら考えていた

二週間程前この時間が実習だったから彼女とすれ違うことが出来た

面倒だった化学の実習をもう一度やりたくなった

そうしたらもう一度廊下で彼女とすれちがえる

挨拶だって交わせるだろう、それだけでも十分だった

実習なんてしばらくない、そもそもすれ違えるとも限らない、所詮は妄想だ

どうせならもっと大それた妄想をしてみたいものだった

一日の授業が終わり帰る時間になった

幼馴染はいつも部活で忙しいのでいつも一人で自転車置き場まで向かう

ここに彼女が居たなら何か話せたかもしれない

そう考えた

部活は知らないが生徒会の仕事がある彼女が授業が終わっていの一番に帰ることなんてないだろうからあり得ないが

それに、どうせ他の友達と一緒にいて話しかけられないだろう

考えながら自分の自転車を持って自転車置き場から出た

出口で彼女一人と鉢合わせた

「さようなら、気をつけてね」

「う、うんさよなら」

反射的に挨拶をした

「あ、じゃなくてちょっと待って!」

「なあに?どうかしたの?」

「今日一緒に帰る相手いる?」

「いないわよ」

「あ、あのさ…その、一緒に帰らない?俺ん家駅の方面にあるし」

「んー、まあ良いわよ、自転車取ってくるからちょっと待っててくれるかしら?」

彼女は小走りで自分の自転車に向かった

よくやったと自分を褒めたい気分だった

「どうしたの?そんなにニヤニヤして」

こちらに来るなり彼女はそう言った

「い、いや別に何もないよ、うん」

「何もないのにニヤニヤしてたの…?ドン引きするわね」

「あ、や、やっぱり何もないわけじゃないけどさ

その…まあなんでも良いじゃん!」

「ふふっ、まあそうね」

また笑ってくれた、自分が馬鹿な事をしてとても恥ずかしかったけど

それで彼女が笑ってくれるならまあ良いか

そう思った

「そういえばさ~、最近何か読んでる本ある?」

「そうね、今読んでるのは…」

彼女が言った題名は、やはり聞いた事もなかった

幼馴染に言われた事を反芻した

本を借りればそれが話のタネになるし返す時には会う口実にもなる

よし

「あのさ、その本読んでみたいからちょっと貸してくれない?」

「だから、今読んでるのよ、その本は」

俺は馬鹿か

「今のなし!やっぱりその本より一個前に読んでた本を貸してくれない?」

「さっき私が今読んでる読んでる本を借りたいって言ったじゃない

それじゃなくて良いの?」

「全然大丈夫大丈夫」

「あなた、本当に適当ね…

まあ良いわよ、明日渡すわね」

彼女は苦笑いをしていた


「ありがとう

そういえばさ今日帰るの早いね、部活とか生徒会とか良いの?」

「私部活は一年の時にやめちゃったわ

運動部に入ったんだけど忙しくて自分の時間が全然取れないから嫌になっちゃった

生徒会の方はそこまで忙しくもないのよ」

「へえ~そうなんだ、ちょっと意外かも」

「そうかしら?」

「そうだよ」

色々と話していたら自分の家まではすぐだった

「駅ってこの先真っ直ぐのあそこだよね?

俺の家ここ左に曲がった所だから」

「わかったわ、また明日ね」

「うん、また明日ね~」

自分の家に着いてから駅までついて行っても良かったんじゃないかと少し思った

やっぱりそれはうっとうしいな、やめておこう

次の日には彼女は話していた本を持ってきてくれた

「はいこれ、昨日言っていた本よ」

受け取ってすこし流し読みをしてみる

「うわ~、結構細かいね、表現も難しいしくて回りくどいし」

「うふふっ、最初はそう思っても意外と楽しめるものよ」

「そういえば、この前渡した本は読んだかしら?」

「読んだ読んだっ!、あの本ヤバいよめっちゃ面白い!

君はあれまだ読んでないんでしょ?絶っ対読んだ方がいいよ確実にはまるからさ!」

「そ、そうなのね…とりあえず映画見た後に決めるわ」

正直に思いの丈をぶつけたら相当引かれた

後悔はしていない

「そういえば、あなたって私の家の場所、知っているかしら」

「え?知らないけど…どうして?」

もしも俺が知っていたら学校の殆どの人が知っている事態になっているだろうが

「…まあ、ちょっと気になっただけよ」

なんなのだろうか

「君の家ってどこにあるの?」

なんとなく聞いてみた、他意はない、はずだ

「電車で△△駅まで30分くらいかけて行ってね、そこは相当小さい駅なんだけど

そこから更に20分くらいかけて山の方に入っていくのよ

周りには他の家少ししかないし目の前には雑木林が広がってるからたまに虫が家まで入ってくるのよ」

「うわ~、それは大変だね…しかも学校と駅の行き帰りだけでも10分以上かかることも考えると学校に行くだけで毎日一時間もかかるってこと?」

「そうなのよ、だからこの辺りに住んでる人が羨ましいわ」

「まあそれはそうなるだろうね…」

その後彼女と別れ、学校から帰った後に彼女から借りた本を読んでみた

全然面白くなかった

読まなければならないのに読める気がしなかった

映画の原作の本は面白かったが、この本は自分の好みではないようだった

そういえば彼女は原作本の方を食わず嫌いしていたが、好みが全然違うのだろうか

この時既に映画の方の本は5回くらいは読んでいたが

彼女からもらった本を読みきるのに帰宅部の力をもってしても結局十日以上掛かった

つまりテスト週間までもつれ込んだ上、その間彼女と全く話さなかった

本末転倒以外の何物でもなかった

「なあ、もう明日のテスト用の課題全部終わったか~?」

「明日のっていうかもう全部終わったよ」

「だよな~、俺まだ全く手付かずだわ」

「お前いつもそんなんの癖にテストではいつも八割九割取っててずるいよな」

しかも明るくて友達も多いし運動もできるし

俺は割と勉強頑張ってテストでは平均7割程度で幼馴染以外は友達という程仲が良い人物はいないうえ運動も得意ではないというのに

不公平だ

「頼む!課題写させてくれ!」

「え~」

「本当にお願い!」

「まあいいけどね別に、どうせそうだろうと思ってたし」

その後しばらく学校に残って俺の課題を写している幼馴染を尻目に俺は彼女のもとに向かった

「借りてた本を返しに来たよ」

「あら、ありがとう

どうだったかしら、この本は面白かった?」

「一応読んだけど正直難しすぎて良く分かんなかった、主人公の内面の描写とか読んでるだけで疲れたし」

「そうなの、残念ね」

「なんかごめんね」

「良いのよ、こういうの好きな人の方が珍しいし」

その後幼馴染の元に戻り、課題を見せてもらったお礼に分からない所を教えてもらった後に家に戻った

その後のテストは、いつもどおりの結果だった

俺はそこそこ、幼馴染は数学と物理で満点を取っていた

もちろん課題は俺の物を写していた

理不尽だった

映画を観に行く日になった

なにやら原作から知っている友達がこの作品について

俺と語り合ってから映画を見たいということらしく

映画館の近くの店で昼食を食べてから映画を観に行くらしかった

いつものように余裕を持って15分前に店の前に来ていた

嘘だ、緊張して落ち着かなかっただけだ

しかしそれよりも早く彼女は店に来ていた

なんだか疲れた顔をしていた

「早いね、他の三人はまだ来てないの?」

「みんな時間にはきっちりしてるから五分前くらいには来ると思うわ

私もそうしたいのだけれど電車の本数が少ないからどうしても待たなきゃいけなくなるの」

「そっかあ、俺は普通に理由もなく早く来ちゃったよ」

「まあ、早く来るのは悪いことではないからそれで良いと思うわ」

その後電車は遠くて大変そう、とか家が近くて楽そうとか話していると五分ほどで残る三人もやってきた

「お二人さーん、待たせましたあ?」

そう言ってまず一人がやって来た

この人の呼称はなんとすべきか

Aさん、で良いか

「まだ集合時間ではないから、待たせる待たされるというのは変な感じがするわね」

「ん~?まあそうかもだけどじゃあなんて言えば良いかって言われるとわかんないよね

あっ、そういえば君ってさ…」

そう言ってAさんは俺の名前を言ってきた、なぜ知っているのだろうか

無論俺は彼女とは話したこともない

なぜ知っているか聞くと幼馴染が俺のことをAさんに話していたらしい

あいつの交友関係の広さはなんだ

「あいつが君のことやけに褒めるからさ、一緒にいた男子が『お、ホモか?ホモなのか?』とか言って煽り始めてすごく盛り上がったから記憶に残ってたんだあ」

幼馴染も色々大変そうだな

「その君も私が大好きなこの作品を好きとか聞いたからもうとうとうこの作品を知っている人が現れたかって思ってね」

どうやらAさんが彼女達のグループの中で唯一この作品を知っている一人らしい

「もうみんな知らないから全然話ができなくて鬱憤がとんでもなかったよ」

「それは確かにそうなるかもね」

俺は有名な作品だろうが無名な作品だろうが元々話せる相手が家族と幼馴染ぐらいしかいないが

「ねえねえ君はどのキャラが好き?私はやっぱりあの主人公の親友の…」

Aさんはそうして急に主人公の親友のかっこよかった場面の事を話し始めた

なぜほとんど初対面の相手にこれほど饒舌に話せるのだろうかと思った

その上急にテンションを上げて話しかけられたのでちょっとだけ引いた

それでも自分もすきな内容だったので話は盛り上がった

少しだけ緊張もほぐれた

「あれ?もうかなり仲良くなってる感じ?」

「好きなものが同じらしいですからね」

「さっすが変態やるじゃん」

「もう変態ってよぶのは止めてよお」

Aさんと話していると残る二人もやって来たようだった

この二人もBさんとCさんでいいか

いや、それよりも聞かねばならない事がある

「変態ってどういう事?」

「この子のあだ名、ピッタリって感じでしょ?」

「全然ピッタリじゃないよお、ひどいよね?このあだ名」

「でもこのあだ名になった原因は全部あなたでしたよね?」

「それはそうだけどさあ…女の子のあだ名じゃないよお」

「そんな事よりとりあえず店にはいらないかしら?」

「そんな事じゃないよお」

なんとなくAさんの立ち位置がわかった

店の中でAさんについての話を聞いた

「この四人で縁日に行った事があるんだけど

すごく混んでたからこの子がはぐれちゃってさ~

電話も上手く繋がらなかったし、どうしよって感じになるじゃん?

それで私たちはちょっと心配だったんだけどこの子その場所で知り合った男の子とよろしくやってたみたいで」

「ねえその言い方だと誤解を招いちゃうよお

ただ迷子の男の子がいたから親を探してただけだったでしょ?」

「え?それだけなら別に変態って呼ばれるようなことないよね?」

「本当にそれだけなら良かったんですけどね

この子その男の子が可愛かった可愛かったと何回も繰り返してきて

ことあるごとに縁日の時の同じエピソードを繰り返し言ってきたんですよ」

「ああ…それは確かにちょっとうんざりするかも」

「だからこの子はショタコンの変態ということで落ち着いたのよ」

「いや、確かに色々言ったけどやっぱりショタコン扱いはおかしいよお」

「おかしくないわ」

「おかしくないですね」

「ショタコン扱いっていうか実際にショタコンじゃん」

「じゃあせめて変態じゃなくてショタコンのほうにしてよお

まだそっちのほうがいいよお」

「「「いやです」」」

「うう~」

俺もAさんのことはこれから変態さんと呼ぶことにしよう

(主に変態さんと)映画についての話をした

映画を見終わった後俺と変態さんの機嫌は最高潮だった

しかし彼女達は眠そうにしていた

価値観の相違が浮き彫りになった

「ね?みんな面白かったでしょこの作品」

「映画を見たら絶対興味湧くって言われたから見たけど見終わった今も全く興味が湧いていないわ」

「ごめんなんか最初の方がつまらなすぎて速攻寝ちゃった」

「最初から最後まで寝ませんでしたけど結局どういう話かよくわかりませんでした」

「俺は普通に楽しめたけどね」

「そっかあ、おっかしいなあ、面白かったの私達だけ?」

「例の女装するところはちょっと面白かったわよ」

「だからそこは、面白い所じゃなくて感動する所なんだってばあ」

「あーそっか、私その場面見逃しちゃったじゃん

その場面だけは起きてなきゃじゃんね」

「もおだからその場面場面だけじゃなくてずっと起きててよお」

「無理だよつまらなかったもん」

「だから面白いんだってばあ

本当にもう皆いじわるだよね」

いじわるというよりみんなで変態さんに対してだけイジっているという感じだろうか

変態さんも慣れているからかわからないがそんなに嫌そうではなかった

映画の後は再び近くの店に移動して映画のことについて語り合った

俺と変態さんだけでなく意外と彼女とCさんも話に参加していた

寝ていたというBさんも時々話に参加して変態さんが見ていて面白かった場面などを聞いていた

今までほとんど話したこともない俺がいたのに話は驚くほど盛り上がった

俺が疎外感を感じることもほとんどなかった

とてもいい人達だった

彼女が少しだけ羨ましくなった

映画についてだけでなく様々な話をした

学校の勉強の話や面白い友達の話、テレビでみた面白かった番組

とりとめのない話だったけれどそれでどんどん時間が過ぎていくのは嫌ではなかった

そのうち俺と彼女がどんな経緯で仲良くなったかという話になった

「なんか初めて君が教室に来た時この子を呼び出してたじゃん?

だから告白でもした感じなのかな?とか思ってたんだけど次の日また君来てたし

違うのかな、じゃああれってなんなんだろうって思ってたんだけどなんの用事だったの?」

「それは私も気になりますね、彼女に聞いても教えてくれませんでしたし」

「私は彼の許可を得ずに話すべきじゃないと思ったのよ

でももしあなたがこのことについて話しても良いと言うなら私は構わないわよ」

俺はもうこの三人は告白について知っていると思っていたが彼女は黙っていてくれたらしい

俺の諦めが悪いのもありなぜ俺が彼女を呼び出したのかも三人はわからないようだ

きっと適当な嘘をついてごまかしてもわからないだろう

「予想した通り告白したんだよ、すぐに振られちゃったんだけど」

正直に話した、理由は良くわからない

「え、でもなんか次の日またボランティアとかなんとか言ってまた来たじゃん」

「振られた後も諦めないって宣言したんだ、彼女も別にいいよって言ってくれて」

「うっわメンタルつっよ、もうホントに大好きじゃん」

「うん、もうかわいすぎて一瞬で心を奪われちゃった

本当に大好き」

「私がいるのによくそんなこと普通に言えるものね」

「でもこの子本当にかわいいよねえ

もう本当にお人形さんみたいでお持ち帰りしたいぐらい」

「ショタコンだけでなく百合まであるんですか、やっぱり変態ですね」

「もう冗談なのになんで私の時だけそんなにきびしいのよお」

「それでどんな感じに告白したの?」

「ストーカー出来るくらい君が好きだって言ったんだ」

正直に言うと話を聞いていた三人の表情が強張った

それぞれが顔を見合わせていた

「彼は違うわよ、そんなことするような人じゃないわ

私が明らかに嫌がるようなことはきっとしないわ」

彼女が助け舟を出してくれた

なので最終的には誤解は解けた

誤解ではなかったかもしれないが

店でしゃべっているだけで三、四時間は経過し、そろそろ解散する運びになった

電車を使うのは彼女だけだった

皆それぞれが帰って行ったが俺は彼女が駅に行くまで一緒について行っていいか提案した

彼女は笑いながら許してくれた、他の三人も笑っていた

二人きりでないと聞けない事、そしてどうしても聞きたい事があった

「今日君、俺は君が嫌がるような事はしないって言ったよね?」

「そんな事も言ったかしらね」

「そういう気持ちは本当に俺たくさんあってさ、まあ自分で言うような事じゃないんだけどね

でも俺君の気持ちがよくわからないから何がいやかもよくわからなくて

本当は話しかけられて迷惑なんじゃないかって思ってて

やっぱり俺に話しかけられるの、迷惑かな?」

「そんな事、そこまで考えこまなくても良いわよ

迷惑だなんて思った事はないわよ、むしろ君は面白いから飽きないわ」

「本当!?じゃあこれから毎日5回ある放課の度に話しかけに行っても…」

「限度を知りなさい」

「はい」

当たり前の事だった

それから俺は毎日学校がある日は昼放課の度に弁当を幼馴染と食べた後彼女の所に遊びに行った

それくらいなら構わないと太鼓判ももらったのだ

いつも彼女と一緒に昼ご飯を食べている三人ともたくさん話した

とても楽しかった

でもそんな状態は長く続かなかった

本当に読みづらいですよね

申し訳ないです

四人と映画を観に行ってから二週間程経過していた

その間、昼放課の度に俺は彼女の所に遊びに行った

その度に彼女はまた来たの?と言って微笑んでくれた

彼女と一緒にいた三人にからかわれても気にはならなかった

彼女に面白い、来ても迷惑じゃないと言われたのだ

他の奴らに俺の行動について陰で何を言われようとも気にならない

はずだった

掃除の時間に廊下で掃き掃除をしている時だった

友達同士で掃除をさぼっている女子からの話し声が聞こえてきた

おそらく隣のクラスの知らない女子だった

彼女の話をしていた

「ねえあの子って男子から何回告白されたか知ってる?」

「知らなーい、何回?」

「確か八回だよ、ヤバくないあの子?」

「何それーめっちゃ告白されてるじゃーん、どうして?」

「ほらあの子いっつも男子に媚びたような態度とるじゃない?だからよ

しかも散々媚びて告白させといて全部振ってるのよ

ホントあの子性格最悪よねー」


いつの間にか箒を持つ手の動きは止まっていた

彼女の何が気に入らなかったのか知らなかったが良くもそんな事を考えつくものだと思った

怒りを堪えるため無心で箒を動かそうとした

でもそのあとの発言が聞こえてしまった

いや、聞こえてよかったのかもしれないが

「そうだね、でもあの子可哀想だよねー、確かストーカーにあってるんでしょ?」

時間が止まったようだった

この話の真意はわからなかった

彼女本人が言ったのかもしれないし周りが言っているだけかもしれない

どちらにせよ俺が彼女の教室に行く事はなくなるだろう

だが俺はこの事の真意を知らねばならない

それなのに俺はこの事を彼女に聞く勇気がなかった

だから帰りのHRが終わった後俺は幼馴染に変態さんの連絡先を教えてもらった

変態さんから聞こうというのだ

俺は臆病者だ

変態さんにメールを送ると返信はすぐに来た

顔文字が沢山使ってあり、どこからこの連絡先聞いたの?なんていうようなことを言われた

幼馴染に聞いたと言ったら怒った顔文字を送ってきて少しだけ笑った

本題に入るのが怖くてしばらくはなんでもない話をした

やはり沢山の顔文字つきで返信はすぐに来た

だがとうとう何か用があるんじゃないのかと言われた

そこでようやくストーカーの話について聞いた

しばらく経ってからきた返信には顔文字はついていなかった

しっかりと彼女は説明してくれた

その事に感謝した後もうしばらくは彼女達の所には行かないと送った

それに対する変態さんからの返信は無視した

彼女がこの事を教えてくれれば良かったのに、そうすれば…

そんな風に思った

だがそんな事はありえないだろう

俺がもし彼女の立場だとしても何も話さないに決まっている

ストーカーについての問題が確実に解決する方法がある

ストーカーがいなくなればいい

言うまでもない、当たり前の事だ

そして俺はその方法を達成する秘策を考えていた

それは俺がただ頑張るだけでほぼ確実に解決する魅力的な策だった

もちろん俺が彼女と会うのをやめるわけではない

だがその策は一歩間違えば俺が犯罪者になりかねない危険な策でもあった

覚悟はできていた

決行は二日後だ

次の日、俺は作戦に必要なものを店で買い集めた

暗い色の雨合羽は少し高価なものにした

そして次の日に行なう行動を何度も確認した

その日はあまり眠れなかった

そして決行の日になった

俺は学校が終わると駅に向かった

彼女の家の近くだという△△駅への切符を買った

片道で五百近くの値がついていて痛い出費になると思った

その後駅の目立たない場所で彼女が駅に来るのを待っていた

彼女が駅に到着し電車に乗るのを確認すると

彼女が乗った車両の一つ後ろの車両に乗った

人がほとんどいないガラガラの車内で目的地の△△駅に着くまでの間俺はずっと彼女を見ていた

彼女はずっと本を読んでいた

何度も話しかけたいと思った

△△駅に到着すると俺は自転車に乗る彼女を尾行した

かなり距離を空けて尾行していたのでばれることはなかった

また相当の田舎らしく他に人がほとんどいなかったのもあり見失うこともなかった

ただ自転車を尾行するのは体力を使った

彼女の家は山の中にぽつねんと一軒だけ存在していて隣家もないようだった

家の前には林が広がっていた

彼女の苦労が窺い知れた

彼女の家もわかり一安心した俺は一先ず9時頃まで時間を潰していた

田舎すぎて時間を潰せるものがなかった

9時頃になると俺は合羽を着て彼女の家の前の林の中に入っていった

沢山気持ち悪い虫がいて、都会育ちでそういったものに耐性のない俺には地獄のような場所だった

虫のことは考えないようにして林の中で丁度良さそうな場所を見つけると

俺はそのジメジメと湿った地面の上にうつ伏せで寝転がった

合羽のフードをかぶり、俺は林に同化した

彼女の家の二階のある一室のカーテンから灯りが漏れていた

彼女があの家にいて、俺はその近くにいる、そう思うとなぜか少しだけ顔が綻んだ

静かに虫の鳴く声だけが聞こえた

綺麗な鳴き声だった

この鳴き声を発しているのはさっき近くにきたあの気持ち悪い虫だろうか

それともまだ見かけてもいない虫だろうか

知識の無い俺にはわからないことだった

もちろんわからなくてもいいことだが

時間は11時になっていた

12時頃に二階の灯りは消えた

彼女は寝る前に何をしていたのだろうか

学校の課題を終わらせていたのだろうか

テレビを見ていたのだろうか

本を読んでいたのだろうか

それとも…

馬鹿な妄想だった、あの部屋が彼女の部屋かも知らないのに

その後は寝転がりながら彼女とのことをずっと考えていた

もしも彼女とカラオケに二人でいけたら

もしも二人で水族館に行けたら

そして、もしも彼女が俺のことを好きだったら…

やっぱり馬鹿な妄想だった

でもその馬鹿な妄想は俺の支えになっていたのかもしれない

5時頃まで寝転がって彼女の家を見ながら彼女の事を考えていたが

その後合羽を脱ぐと△△駅に戻り始発の電車に乗り家に帰った

家に荷物を置くといつもの時間に学校に登校した

やっぱり初日に現れてはくれないか、教室でそう考えていると幼馴染に話しかけられた

「おーいお前大丈夫かよ目の隈やべえぞどうしたんだよ」

そんなことを言われる

「昨日オールした」

「そんなに面白いゲームがあったのか?

お前がオールすると心配になるくらい顔色悪くなるからまじでほどほどにしとけよ」

「ちょっと無理そうかな」

俺がそう答えると幼馴染は苦笑いをしていた

先生に注意されても構わずほとんどの授業で居眠りを強行した

もちろん昼休み、彼女のクラスには行かなかった

彼女と直接話さなくても遠くから見ているだけでも満足出来ていた

学校が終わるとすぐ家に帰って仮眠をとった

そして8時頃に家を出て彼女の家に向かった

彼女の家の前につくと昨日と同じ場所に寝転がった

そのあとは彼女の家を見ながらずっと彼女のことを考え続けていた

しばらくあとに考えながら空を見上げた

田舎だからだろうか

空は星が綺麗に瞬いていた

星を見るために外に出る人の気持ちもわかる気がした

こんな夜なら星を二人っきりで見る事が出来るだろう

誰にも知られず邪魔されずに…

その日の11時頃のこと

彼女の家の前を警察官が見回りに来た

だが彼は林に紛れている俺を見つける事は出来なかった

隠れているのだから見つけられては困るが

その日二階の灯りは一時頃に消えた

また昨日と同じ事を考えた

昨日と同じく馬鹿な妄想だと自分自身を嘲けるしかなかった

その日も5時まで彼女の家を見張った後始発で家に帰った

この日は休日だった

いつもなら課題を終わらせた後はずっとゲームをしているが流石にこの日はその余裕はなかった

仮眠はとったが二徹なんてした事はなかった

帰ったらすぐに寝てしまった

だが夕方頃には起きて家を出た

また彼女の家に行かねば

その夜は警察官は10時頃に現れた

見つかる事はなかった

そのまま朝まで監視し続けた

日曜日も昼間は寝て、夜に出かけた

彼女の家の前まで移動し、林の中に潜り込んだ

今日で4日目、ようやくだ

そう思った

もうすぐのはずだ、変態さんの言うことが正しければ今日か明日にきっと…

空を見上げた

今日も星は綺麗だった

俺は初日から持ってきていた縄をカバンから取り出し、その具合を今一度確かめた

いつものように彼女の家の灯りを見ながら色々な事を考えていた

彼女は今何をしているだろうか

何を考えているだろうか

俺がもう会わないと変態さんに言った事を知った時どう思ったのだろう

少しは気にしてくれていないだろうか

そんな願望を思うだけなら自由だろう

叶わないから願望なのだ

彼女の家の灯りが消えてから数時間後

とうとう俺の待っていた人物が現れた

その人物は暗い色のコートを着て両手をコートのポケットに突っ込んでいた

コートについているフードを目深に被っており顔などはわからなかった

その人物が持っている小さめのショルダーバッグにはあまり物は入っていないようだった

しきりに周囲の様子を伺っていたが俺には気づかないようだ

彼女の家に向かっているのか、彼女の家の前がただの通り道なのかはまだわからない

俺はその人物を注視し続けた

その人物は彼女の家の敷地内に入っていった

郵便受けの前に立ち、ガサゴソと音を立てながらバッグの中の何かを探しているようだった

興奮していたのか、玄関の灯りに照らされた彼はニヤニヤと笑っていた

もう迷う事は何もなかった

俺は音を立てないようゆっくりと立ち上がった

合羽が暑かったので林の中に脱ぎ捨てた

まだ彼は気づいていない

ゆっくりと林を出て、音を立てないように少しづつ彼に近づいていく

それでも彼は気づいていない

家の前の道路を渡りきると彼女の敷地の中に足を踏み入れた

その瞬間彼は何かに気づいたのか、作業が終わったのか後ろを振り返ろうとした

俺は雄叫びをあげ彼に向かって走り出した

「こんの野郎おおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

「な、なんなんだ!?お前どこから来たんだよ!」

「うるっせえんだよ馬鹿が!彼女を苦しませやがって!絶対に逃がさねえ!」

「くそっ、なんだコイツはっ!?でかい声出しやがって家人に気付かれたらどうするつもりだよ!」

「気付かれるようにやってんだよ!!テメエを逃がさねえ為にな!」

俺はひるんだ彼の両肩を掴み、そのまま押し倒した

彼はなんとか俺から逃れ、この場から逃げ出そうと俺の顔を何度も殴ってきた

俺は顔を上に反らして彼の攻撃からできるだけ逃れようとしたが組み合っているような状態なので限界があった

彼は俺が肩を押さえているのであまり力は込められないようだったが

それでも両手が塞がっていて反撃が出来ない俺から逃れようと

何度も何度も何度も何度も殴られた

それでも

俺は決して両手を離さなかった

いくら殴られても手を離さない俺を見て、彼は怯えていた

「な、な、なんなんだよお前は、急に現れて、な、何者なんだよ」

「んなもん決まってんだろっ!!俺は、テメエの、ストーカーだクソッタレ!!」

『ストーカーの事なら、君には多分関係のない事だと思うよ

君が初めて私たちの教室に来てから数日後の事なんだけどね

彼女の家って結構田舎の方にあるから星が綺麗に見えるらしいんだ

だからなんとなくたまに星が見たいときなんかに外に出て家の近くの星が良く見える場所に行ったりするらしいんだけど

星を見た次の日郵便受けに気持ち悪い事が書いてある紙と一緒にその様子を撮った写真が入っててね

それから怖くなって夜星を見る事は無くなったらしいんだけど

それでもやっぱり学校での盗撮写真とかが気持ち悪い事が書いてある紙と一緒に郵便受けに入ってて

警察にお願いして夜見回りとかしてもらったらしいんだけどそれでも終わらなくて

他には何かあった訳じゃないんだけどやっぱり心配

とにかくそういうことだから君が何か言われてるとかじゃないんだよ』

『それってもう解決したの?』

『まだだと思う、でもどうすれば良いかわからなくて』

『どの位の頻度で来るの?』

『最初は二週間くらいだったんだけど、今は六日から十日に一回位だと思う』

『最近のは何日前だった?』

『三日前だったかな』

『しばらく俺君達の所に行くのやめる』

『どういう事?ストーカーにあってるような子には会いたくないって事?』

『返信してよ、どういう事なの?』

『ねえ!!』

俺が彼と組み合ってからしばらくして彼女の家から二人の男女が出てきた

おそらく彼女の母親と父親だろう

特に母親の方は顔が痣だらけになっている俺を見て驚いている様子だった

その二人を見て観念したのか彼は俺を殴るのをやめた

父親が俺達に聞いてきた

「何をしているんだ」

安心した俺は落ち着いてゆっくりと言った

「彼女のストーカー野郎を捕まえようとしてるんです、手伝ってください」

「違うっ!!コイツがストーカーだ!!俺は無関係だ!!」

なんとかこの場から逃れようと彼は大声で叫び出した

俺はそれを見て少し笑いながら言った

「なら二人とも捕まえて貰えばいいよな?無関係って事がわかればすぐ帰れるしそれくらいいいだろ?」

俺と彼は逃げられないように彼女の父親にそれぞれ手首を掴んでもらい

母親が後ろから見守る中林の俺が身を潜めていた所の前にに移動した

「あそこにカバンがあって縄が入っているのでそれで俺とコイツを縛ってください

そのあとで俺とコイツの話をそれぞれ聞いてどちらが悪いか判断して貰えると嬉しいです」

母親はそう言われると林の中に入っていった

彼はずっと何か状況を打開する手段がないかしきりに周囲を見回していた

そんなものある訳がないのに

愚かだと思った

俺と彼は両手を縛られた

薄暗い林の前から彼女の家の玄関の前に移動した

「コイツがストーカーなんだ!俺はコイツを止めようとしただけだ!!」

「ではなぜ君はさっき自分は無関係だと言ったのだ?」

「それは…あの」

「それにどうやって俺を止めようとしたんだ?」

「えっと…その」

「諦めろよ、もう無理だろ」

「うるさい!じゃあお前はどうなんだよ!どうせできねえだろうが!!」

「何言ってんだよ、出来なかったら今俺はここにいねえだろうが

俺はさっきカバンが置いてあった場所に合羽をきて潜んだままずうっとお前が来るのを待ってたんだ」

「嘘つけ!!大体俺がいつ来るかもわかんねえじゃねえか!!そんなの出来っこねえよ!!」

「ああ、いつ来るかはわからなかった、だから今日で4日目だ

だからお前に殴られまくったせいでわかりにくいけど今俺は目の隈がやべえし しかも超眠いよ」

「そんなの、そんなのできる訳が…」

「だから出来たから今こうなってんだよ

それにさっきの発言はストーカーしたって認めたってことで良いよな?」

「ち、違う!!俺は…俺は…」

「諦めろよ」

彼はもう抵抗するのをやめた

彼女の父親は警察を呼んだ

彼女の母親は俺になぜそんなことをしたのか聞かれた

彼女が好きだからと答えた

ありがとう

母親からそう言ってもらえた

父親からも感謝の言葉をもらえた

手の縄を解いてもらった

やっと全部終わった




そう思った時家から彼女が現れた

「起きちゃった?ごめんね、騒がしくしちゃって」

「どうしたの?なんでここにいるの?なんでそんなにボロボロになっているの?」

「君のストーカーを捕まえようとして

捕まえることは出来たんだけどボコボコに殴られちゃって」

「なんで4日前から私達のクラスに来てくれなかったの?」

「だって目の隈とかでひどい顔だからそんなものを君に見せたくなくて

まあ、今は顔が痣だらけだと思うからもっとひどい顔になっちゃってるかもしれないけどね」

言いながら少し笑った

笑い事じゃないと怒られた

その後彼女は父親と何か話していた

そのあとに俺についてきて欲しい所があると言ってきた

言われるまま駅への方向とは逆方向の道へと進んでいった

そのうち小高い丘のような場所に着いた

「なんでこんな所に来たの?」

「さっきの場所にはお父さんとお母さんも居るから二人きりで話したいこともあったし

あなたにはこの場所を知って欲しいと思ったのよ

私はここから見える星が大好きなの、星が綺麗に瞬いていてなんとなく落ち着けるのよ」

「ありがとう、そんな場所を教えてくれて

ここは僕の住んでいる所よりもずっと綺麗に星が見えるね」

「でしょう?ここは不便だし大変なことも多いけど私はこの町が大好きなの」


「それで、話したいことって何なの?」

「まあ大したことじゃないのだけれどね

私のためにこんなことまでしてくれて本当にありがとう

しばらくあなたが遊びに来てくれなくてとても悲しかったけれど

その間こんなことをしてくれていたなんて

私、あなたのことを分かっていなかったわ

あなたってすごく優しくて、強くて、格好良かったのね」

「俺はそんな大した奴じゃないんだよ」

「違うわ、あなたはいっつも自分に自信がないみたいだけどそんな風に自分を蔑むことなんてない

あなたはもっと自分を認めてもいいのよ

あなたは格好良いわ」

「…ありがとう」

「俺からも言いたい事があるんだ、きいてくれる?」

「もちろん、良いわよ」

「俺が最初に告白した時の事、覚えてる?」

「よく覚えているわ、あんな強烈な事を言われたら忘れたくても忘れられないわよ」

「あの時俺”君と付き合えるならストーカーする事だって厭わない”って言ったよね

あれ、やっぱり嘘かも」

「どういう事?」

「俺は今日までストーカーを捕まえる為にストーカーのストーカーを頑張っていたけどそれは君と付き合う為なんかじゃない

そんな事はどうでも良かった

ただ君に苦しんでほしくないから、君に喜んで欲しいから

そして

俺が大好きな君に笑顔になって欲しいからなんだ」

「あはは、あなたって本当に面白いわね

ストーカーするのは私に対してじゃなくてしかも私と付き合うのもどうでも良いだなんて」

「だから本当はね”俺は大好きな君が笑顔になれるならストーカーする事だって厭わない”だったよ

別に君と付き合えなくたって君の笑顔は見れることに気づいたんだ

そして俺は君の笑顔が見れるだけで十分みたいだから」

「ありがとう、私も、あなたの事… 」



            大好きよ



そう言ってくれた彼女は、恥ずかしそうに微笑んでいた

終わりです

オチ考えず書き溜め用意せずで書き始めるんじゃなかった本当に
話思いつかなかったし話の終わらせ方も全然わからなかったし
ちゃんと伏線考えとけばよかった

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