南条光「アタシが悪役! ……そっ、それは本当か!?」 (25)


モバP「監督さんが、どうしても光の悪役を撮ってみたいらしくってな。すまな……光?」

光「…………」

モバP「嫌ならちゃんと交渉をするが」

光「……ふふふふふふふ……」

モバP「光?」

光「……悪役、キターーッ!」

モバP「なに!?」

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南条光(14)

http://imgur.com/fL12k1w.png


光「悪役は演技力を試されるんだ。こんなに燃えることはない……やらせてよ、P!」

モバP「いや、もう引き受けてる。事後承諾になったのは申し訳ない」

光「なら良かった。Pなら外したりしないからな! スケジュールは?」

モバP「このように」

光「ふんふん。了解!」メモメモ

モバP「それにしても意外だ。悪役をそんなに喜ぶなんて」

光「前に心さんが言ってたんだけどさ、ヒーローのカッコいい活躍には、悪役が必要なんだ」

モバP「みんなが正義の心を持てばいい、は?」

光「それはそれ。いい画にするためには、ライバルが必要なんだよ!」

モバP「確かに、ヒールのいないプロレスは味気ないだろうな」

光「うん。強い悪役がヒーローを引き立てるから、より応援したくなるんだ」

モバP「ライバルの重要性というわけだな。必要な資料があったら早めに連絡をくれ」

光「『そんなもの必要ない。私は私の力で演じる』」キリッ

モバP「おお、もう役作りか」

光「早いに越したことはないからな。もっと、もっと急がなきゃなんだ、それじゃっ!」ダッ

モバP「気をつけてなー」

バタン

モバP「まったく。足下が見えてないんだから、光は……」


中庭

光(……飛び出したはいいけど、悪役に必要な物ってなんなんだろう)

光(ライバルなんだから、カッコよくないとダメだよね。あと、たいてい独りで行動してた。誰にも頼らない強さかぁ)

光(……あれ、それってヒーローと同じなんじゃないか? ヒーローはたとえ独りでも戦うものなんだし)

光(じゃあ、悪役とヒーローのどこに差があるんだろう。人を愛する心があるかどうか? いや仲間を大事するライバルはいる。知らない誰かを守る心? うーん……)

ビュオッ

ヒラリヒラリ

光「うおっ。……いい桜なのに、もう散っちゃうんだなぁ」

??「万物流転の理に従って、ね。散りゆくカタチを嘆いても、この世は無常なりと……」

光「飛鳥か?」クルッ


二宮飛鳥(14)

http://imgur.com/FyzvSjz.png


飛鳥「ごきげんよう。どうかしたのかい?」

光「どうしてそう思うんだ?」

飛鳥「顔を見れば一瞬で理解るよ」

光「たは……なんか超能力みたいだな」

飛鳥「滅相もないよ。キミに似合わない顔をしていればね」

光「そうなのか?」

飛鳥「そうさ。ボクが聞いてもいい話なら、聞かせて欲しいな」

光(……一人で考えたって、ドツボにはまるだけだよな。よし!)

光「うん。実はさー」


………………
…………
……

飛鳥「何が善悪の差を感じさせるか、か」

光「見たら一目でわかるのにな。モヤモヤしてるんじゃダメな仕事になるし、きっちり言葉にしたいんだ」

飛鳥「言葉に出来ないフィーリングのままに、とは思わないのかい?」

光「言葉にすると、すっきり目標が見えるだろ? 言葉にはそういう力があるから」

飛鳥「正しい理屈だね。けど、それだけが正しいと思うかい」

光「思わない。正義だって沢山あるし」

飛鳥「セイギに関して、一日の長があるみたいだね。……でも、これで一つゴールに近づいた」

光「近づいたのか?」

飛鳥「両者が正義を表題してるにも関わらず、どうして『神の視点』から善悪の区別がつくのか。ヒーローが『神の視点』の味方である以上の理由とは何か、とね」

光「おお……わかりやすくなったような、そうじゃないような!」

飛鳥「キミが言ったことを要約しただけだよ」

光「してくれたのが嬉しいんだよ。わかりやすくなったし」

飛鳥「その誉め方は、こそばゆくなるね」

光「へへー」

飛鳥「誉めてない」

光「……そうなのか?」ショボーン

飛鳥「落ち込まないで欲しいな……」


飛鳥「まぁつまり。キミは、正しさが正しさである為に必要なものは何、と求めているんだね」

光「そう……かも!」

飛鳥「明文化されたようで何よりだよ」

光「サンキュッ! 簡単には見つからないけど、探してみる!」

飛鳥「行くのかい?」

光「うん。走ってる時、一番頭が回るんだっ!」

飛鳥「キミが立ち向かうのは、芸と孤独の深淵だ。それを理解して、進むのかと聞いているんだ」

光「当たり前だろ。もっと強くなって、皆を笑顔にしたいから!」

飛鳥「皆じゃなく、キミだけに聞いてるんだ」

光「皆の笑顔は、アタシのエネルギー源なんだよ!」

飛鳥「……ならボクはキミに、yellを送らせて貰うよ」

光「あ、それ最近習った。応援だったよね?」

飛鳥「…………」

光「……どうして黙るんだ?」

飛鳥「応援しようか、考え直そうかな……」プイッ

光「何でーっ!?」


飛鳥「冗談さ。ただ、ボクなりにヒントを送りたくてね」

光「聞かせて聞かせて!」

飛鳥「聞き上手は長生きするよ、長生きすればね。……桜は散るから風情がある、ってことかな」

光「風情って?」

飛鳥「年中通して桜が咲いていたとすれば、桜は春のシンボルでは無くなるだろう?」

光「確かに、特別って感じが無くなるよな」

飛鳥「そう。散ること自体に意味があるとしたら?」

光「……滅びの美学!」

飛鳥「イグザクトリィ」パチン


光「そっか、それを意識して演じてみる!」

飛鳥「グッドラック。迷っても動き続けるなら、どこかで描いてた理想と希望が出会うはずだから……」

光「そういうものだろ?」

飛鳥「む、不要だったみたいだね。彼方に見えるセカイを、彩ってみせてくれ」

光「任せろ。アタシは、立ち止まったりしないから! ……ところでさ」

飛鳥「ン?」



光「そろそろ降りたら?」

飛鳥(樹の上)「……この場所が懐かしくなるような、予感がしてるんだ。もう少し……」プルプル

光「大丈夫、飛鳥なら降りられるって! こい!」バッチコーイ!

飛鳥「こわい」

光「自分を信じろ! 飛鳥は本当に強いんだから!」

ワーギャー!……


………………
…………
……


数日後


撮影所

監督「プロデューサー、南条の雰囲気が変わったな?」

モバP「三日会わずんば刮目せよって、誉めてあげてください。仕事のたびに伸びる子ですよ、ウチの南条光は」

監督「こんな時にまで売り込みかい」

モバP「そりゃしますよ。何卒よろしくお願いしますね」

監督「言われるまでもない。打てば響くようで、撮っていて面白いのだよ……じゃ、そろそろ」

モバP「はい」

監督「本番五秒前! 四! 三! 二! 一! ーーアクションッ!」カチンッ

『ーー戦え。私で正義を証明しろ!』


撮影後:控え室

モバP「お疲れさま。ゾクゾクする名演だった」

光「ホント?」

モバP「ホント。良く練り込んであった」

光「っしゃあ! 特訓の甲斐があったぜっ!」

モバP「いつもそれだな」

光「それ以外の何があるんだ? ……あのさ、ちょっといい?」

モバP「何が?」

光「特訓中、色々考えてみたんだ。ヒーローと悪役の違いをさ」

モバP「人を傷つけるとか、どうとか?」

光「それはヒーローも同じなんだ。だから、結局、後になってみないとわかんないんだ……だから!」

光「P! ずっと、カッコいいPでいてくれるか?」

モバP「善処しよう。それだけか?」

光「うんっ、それだけ!」

モバP「そうか」


光(たった独りでも戦うヒーローと、孤高を貫くライバルの違いがやっとわかった。自分を信じるのがヒーローで、自分しか信じられないのが悪役なんだ)

光(そして、自分しか信じていなかったら、アタシだって道を踏み外す……自分は正義を貫いてると、信じたまんまにだ)

光(でも。自分以上に信じられるものがあれば、きっと道を間違えない。正しさが正しさである為に必要なのは、自分の運命すら任せられるくらいに信じられる人なんだ!)

光「Pには、飛鳥には、皆には、そんな人であり続けて欲しい!」

モバP「どうした?」

光「決意を決めたんだ。さぁ、そろそろ行くぞっ!」

モバP「別にいいが、今日はもうあがりだろう?」

光「飛鳥にさ、特訓のお礼をしたいんだ。だから、急ぎたいんだよ!」

モバP「飛鳥は別の現場だが……」

光「だから急ぐんだろ?」

モバP「いや、今日は飛鳥に用事は無い予定だったから、一昨日くらいに言ってくれれば調整したのに」

光「……ホント?」ヒヤッ

モバP「ホント。電話かけるから、先に車に向かってくれ」

光「おうっ! すぐに来てくれよーーっ!」タッタッタッタ

モバP「はーい」ピポパポ

バタン

モバP「……三日も離れてないのに、刮目させられたな。もしもし俺だ、いや詐欺じゃない。待って切らないでーー」

おわり


前作

南条光「アタシがウェディングドレス! ……そっ、それは本当か!?」


またコラに感動したから書きました。案外ライバル属性あると思います。

よろしければ、南条光と二宮飛鳥に一票を投じていただけないでしょうか。その一票が再登場に繋がります。依頼出してきます。

http://imgur.com/96XhdlM.png

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