幼馴染「恋と魔法の物語」 (147)

大輔。その人とは幼稚園に入る前から一緒だった。

彼のことを兄のように慕っていた。

彩花「お兄ちゃん、って呼んでいいかな?」

大輔「いや、むしろ俺は弟だろ。お前がお姉ちゃん。」

大輔「お前のほうが1日早く生まれたんだから。」

彩花「でも私は弟はいるから、お兄ちゃんが欲しいな、って。」

大輔「俺も妹はいるんだけどな。」

大輔「まあお前がそう呼びたいならそれでいいよ」

彩花「やったー。」

彩花「お兄ちゃん」

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男子「お前うぜーんだよ」

私はよく男の子にいじめられた。

大輔「お前ら、俺の友達に何を・・・」

男子「おりゃー」

男子「なんだお前。荒川のくせに偉そうなこと言いやがって。」

彼は私を守ってくれた。でもそのせいで彼までいじめられた。
本当は彼は力があまり強くない。

男子「こいつは女だから手加減してやってたけど、お前は男だから容赦しねえ。」

気付けば彼は私以上に重傷に。

彩花「なんでわたしのためにそこまで・・・。」

彩花「本当ごめん・・・」

大輔「言っただろ。俺はお前のお兄ちゃんだって。だから妹を守れないとな。」

大輔「なのにこのザマとは。情けない兄でごめん。」

彩花「いいんだよ。わたしを守ってくれたんだから。」

ある日は、彼がいじめにあった。
どうやら私と仲良くしてることが原因らしい。

男子「荒川のくせに女とイチャイチャしてるなんて、生意気なんだよ。」

彩花「ちょっと、あんたたち!」

男子「あ、またあの女が来たぞ。お前を助けに来たのかな?」

彩花「いじめはよくないよ。」

男子「だからどうした?」

男子「お前、俺と喧嘩するのか?」

彩花「え?それは・・・」

男子「こいつを守りたいんなら、力尽くでこいよ。どうせ勝てないんだろうけど。」

彩花「話し合いで解決しない?」

男子「は?」

彩花「喧嘩はよくないと思う」

男子「ふざけんな、何が話し合いだ!この野郎!」

大輔「大丈夫か?」

彩花「うん、大輔君のほうこそ」


そういえば結婚式ごっこなんてやってたときもあった

彩花「わたしはおよめさん。大輔くんはおむこさん。」

大輔「彩花ちゃん可愛い」

彩花「大輔くんもかっこいいよ」

彩花「およめさんとおむこさんは腕を組んで歩くんだよ。」

彩花「せーの、いちに、いちに」

そして2人は向かい合う

彩花「ここで向かい合って、愛を誓うの。」

彩花「そしてチューするんだよ。」

大輔「チュー?」

彩花「わたしとじゃいやかな?」

大輔「ううん、むしろ彩花ちゃんとじゃなきゃダメだと思う。」

彩花「よかった。」

彩花「じゃあ誓うよ。」

彩花「雨の日も、風の日も、たとえどんな日も、わたしは大輔君を愛することを誓います。」

大輔「ぼくは彩花ちゃんを幸せにし、どんなときでも○○ちゃんを守り」

大輔「彩花ちゃんを永遠に愛することを誓います。」

そして2人は口づけをする。

大輔「ねえ、大きくなったら大輔くんのおよめさんにしてくれるかな?」

大輔「うん、そうなったらいいな。」

他に、私の親友のクラスメート

唯「あたしは小原唯っていうの。」

彩花「わたしは高翌梨彩花。」

唯「じゃああやちゃんって呼んでいい?」

彩花「好きに呼んでいいよ。」

唯「私のことは唯でいいよ。」

彩花「わかった。でもわたしのなかで、あやちゃんって人は他にいるんだよね。」


香苗「ぼくは荒川香苗っていうの。」

この子は大輔君の妹で、1つ下。先輩後輩の上下関係なく、普通に接している。

香苗「ぼくもあやちゃんって呼ぶね。ぼくのことはかなちゃんって呼んでよ」

彩花「うん。」

香苗「ぼくは末っ子で、3人の兄の妹。女の子1人だけだからなんていうか心細いんだ。」

香苗「だからあやちゃんや唯ちゃんが仲良くしてくれたら嬉しいな。」

彼女の一人称が「ぼく」なのは男兄弟だからなのだそうだ。

中学2年生の10月ごろ。

達也「彩花お姉ちゃん、朝だぞ、起きて~。」

彩「おっきろー!」

彩花「うにゃあ」

彩花「あ、彩ちゃん、達也くん。」

姉の高翌梨彩、弟の達也。

わたしにとってのあやちゃんとはこのお姉ちゃんのこと。

彩「今日はこのリボンをつけて行きなよ。」

彩花「えー、ちょっと派手過ぎない?」

母「それくらいでいいのさ。これなら彩花の隠れファンもメロメロだ。」

彩花「いないよ、そんなの」

圭一「おはよう荒川君。」

大輔「おはよう北野。」

圭一「今日僕の家の隣に新しい人が引っ越してくるんだって。」

大輔「そうなんだ。」

圭一「噂だとこの学校に転校してくるらしいぞ。」

大輔「へえ、それは楽しみだね。」

この日、食パンを加えて登校する。

彩花「大輔君、北野君、おはよう。」

彩花「あ!」

石につまづき転倒。このときスカートがめくれて水色のパンツを見せてしまう。

彩花「見たでしょ?」

大輔「いや、別に・・・」

彩花「不幸だ。」

彩花「まあ男子に下着を見られる不幸には慣れてますよ。特に大輔君にはね。」

圭一「相変わらずラブラブだな。」

彩花「そうでもないよ。」

大輔「今日の彩花のリボン可愛いな」

彩花「えー、これお母さんとお姉ちゃんが選んだんだけど、派手過ぎると思うんだよね。」

帰り道

道端につまづき、プラスチックのおもちゃの弓を池に落としてしまった。

彩花「弓が・・・」

彩花「不幸だ」

そのとき、池からイタチのような生き物が現れて

「君が落としたのはこの金の弓かい?」

彩花「いいえ違います。」

「ならばこの銀の弓かい?」

彩花「いいえ違います。」

「ならばこのプラスチックの弓かい?」

彩花「はい、それです。」

「君は正直な人だ。ではこのプラスチックの弓を返してあげよう。」

彩花「ありがとうございます。」

彩花「・・・ん?あれ?」

彩花「こういうときって、わたしは正直だから金の弓と銀の弓もくれるんじゃないの?」

「え、これ欲しいの?」

「嫌だー。これは僕の大事な弓なのにー。」

彩花「だったら見せびらかさないでよ。最初からプラスチックの弓だけを持って来ればいいでしょ。」

「だいたい金の弓や銀の弓なんて君には何の役にも立たないと思うな。銃刀法違反で捕まるだけじゃない?」

彩花「確かにそうだね。」

オラフ「ということで、正直な君にはご褒美に弓よりももっといい物をあげよう。」

彩花「いい物?」

「魔法だよ。」

「君を魔法少女に任命する。」

彩花「魔法少女?」

「僕はオラフ。今日から君のご主人様だ。」

「時期にこの街には別の魔法少女がやってくる」

彩花「え? そうなの?」




こうして魔法少女になった。

彩花「魔法少女って何するの?」

オラフ「主にナイトメア退治だね。」

彩花「ナイトメア?」

オラフ「人が夜寝るときに見る夢、悪夢に取り付く魔物だ。」

オラフ「まずはあの人のナイトメア退治だ。」

彩花「ねえ、あの人は誰?」

オラフ「私は福原由紀、魔法少女の1人。」

由紀「あなたが新人の魔法少女?」

彩花「はい。わたしは高翌梨彩花です。」

彩花「あれは、大輔君?」

オラフ「おそらく、荒川大輔のナイトメアだね。」

こうして私は

彩花(へえ、こんな感じで変身できるんだ。)

オラフ「君の武器は弓。その弓でナイトメアを撃つんだ。」

彩花「うん」

そうして私は弓を放つ。
私はナイトメアに襲われそうになる。

由紀「その程度じゃダメだね。こうやるのよ。」

彼女は銃を放つ。
解放された私は再び弓を放った。

その後彼女とともにナイトメアを退治した。

彩花「すごい。さすがベテラン。ピンチのときも助けてくれたし。」

彩花「どうもありがとう。」

由紀「あなたも初仕事にしてはなかなかやるね」

オラフ「そういう君もまだベテランって言える芸歴じゃないんでしょ?」

由紀「う・・・、確かにまだ2ヶ月くらいだけど・・・」

ちなみに戦闘シーンは、漫画なら2ページくらい使いたいところだ。

北野の家

由紀「隣に引っ越してきたので伺わせていただきました。」

由紀「初めまして、福原と申します。」

圭一「これはご丁寧にどうも。」

由紀「これ、つまらないものですが。」

圭一「どうもありがとう。」

由紀「来客中でしたか?」

圭一「僕の友達の荒川。気にしなくていいよ。」

由紀「それでは失礼します。」

学校

彩花(どうやら大輔君に昨日の夜の記憶はないみたいだね)

先生「今日は転校生を紹介する。」

先生「それでは自己紹介行ってみよう」

由紀「福原由紀です。よろしくお願いします。」

彩花「あ、あの人・・・」


女子生徒「福原さんって前はどこの学校だったの?」

由紀「京都の学校」

女子生徒「部活とかやってた?運動系?文化系?」

由紀「やってなかった」

彩花「なんか人気だね」

大輔「そういえばさっきの彩花の反応からして、あの人と知り合いなのかな?」

彩花「まあ、この前1度だけ会っただけなんだけど。」

大輔「へえ、それは運命の出会いって奴?」

彩花「そうでもないでしょ。」

大輔「北野の家の隣に引っ越してきたのってあの人?」

圭一「うん。」

圭一(正直俺としては隣の家に同級生の女子が引っ越してきたというのはかなり辛い状況だ)

オラフ「福原由紀、あだ名はふゆき、ってとこかな。」

由紀「何それ。それ悲惨な転校生じゃん。最終回前にまた転校しちゃう。」

オラフ「まあメインヒロインは彩花で、君はただのサブキャラだから。」

オラフ「[たぬき]でいう雪の精みたいなもの。」

由紀「それ1話で消えちゃう人じゃない。」

オラフ「好きな人のために[ピーーー]たらかっこいいと思うけどな。」

オラフ「なら水中バギーとか、ウソ800(エイトオーオー)とか。」

由紀「それひみつ道具だし、映画にしか出てない。」

彩花「よくそんなちょい役のマイナーキャラ知ってるね。せめて出来杉君かドラミちゃんにしてあげなよ。」

オラフ「それじゃあ主人公の君より優秀なキャラになってしまうではないか。」

彩花「まあ現に福原さんのほうが強いし」

圭一「うん。」

圭一(正直俺としては隣の家に同級生の女子が引っ越してきたというのはかなり辛い状況だ)

オラフ「福原由紀、あだ名はふゆき、ってとこかな。」

由紀「何それ。それ悲惨な転校生じゃん。最終回前にまた転校しちゃう。」

オラフ「まあメインヒロインは彩花で、君はただのサブキャラだから。」

オラフ「どらえもんでいう雪の精みたいなもの。」

由紀「それ1話で消えちゃう人じゃない。」

オラフ「好きな人のためにしねたらかっこいいと思うけどな。」

オラフ「なら水中バギーとか、ウソ800(エイトオーオー)とか。」

由紀「それひみつ道具だし、映画にしか出てない。」

彩花「よくそんなちょい役のマイナーキャラ知ってるね。せめて出来杉君かドラミちゃんにしてあげなよ。」

オラフ「それじゃあ主人公の君より優秀なキャラになってしまうではないか。」

彩花「まあ現に福原さんのほうが強いし」

由紀「私、父の転勤でよく転校するんだよね。小学校のときは6年間で7回転校したし。」

由紀「だから友達できなくて・・・」

彩花「そうなんだ。」

彩花「わたしでよかったら友達になってあげてもいいけど。」

由紀「別に友達いなくていいんだ。お別れが辛くなるから。」

彩花「そうなの?」

彩花「できればわたしは福原さんと仲良くしたいな。」

彩花「わたしだけじゃなく、大輔君や、隣に住んでるっていう北野君とも仲良くできたら。」

唯「あやちゃん、魔法少女になったんだ。」

彩花「うん、そうなの。」

唯「あたしも魔法少女なのよ」

彩花「そうだったの?」

唯「でもあたしは妖怪担当だから。あやちゃんはナイトメアのようだけど。」

彩花「そうなんだ。」


唯「魔法少女の専門分野はいくつかあって、あたしとかなちゃんは妖怪。あやちゃんはナイトメア。」

香苗「ちなみに妖怪とは人の感情によってとりつくものなの。」

唯「妖怪は世界そのもの、生き物と違って世界と繋がっている。」

彩花「そうなんだ。」

香苗「ぼくが目指すのは、みんなの夢をかなえる魔法少女。名前が香苗だけに。」

彩花「そうですか。」

香苗「お互い担当分野は違うけど、一緒に頑張っていきましょう。」

第1話 終わり

第2話

・・・
ある日の体育の着替え

唯「あやちゃんのブラかわいい」

彩花「ありがとう。」

女子「なによペチャパイのくせに。」

女子「彩花ってブラいらないよね」

女子「Aカップもないんじゃない?」

彩花「・・・」

唯「あいつら気にしなくていよ」

・・・
私は不幸な女の子である。

いろんな男子に下着を見られたり、胸を揉まれたり。
そのせいでクラスの女子にも変態、露出狂扱い。なんで私ばっかり。

しかも胸もぺったんこ。一部の女子からはブラなんかつける必要ないじゃんとからかわれる。

・・・
中2のときのとある日

大輔「なあ、誰かいるのか?」

大輔がドアを開けると

彩花「あ・・・」

大輔「彩花、来てたのか・・・」

彩花の着替え、下着姿を見てしまった。

大輔「すまん。」

彩花「不幸だ・・・」

彩花「ねえ、わたしの下着姿を見ておいて、ただで帰る気?」

大輔「まさか一発殴らせろって言うのか?」

彩花「そんなことしないよ。」

彩花「大輔君も脱いで」

大輔「わ、わかった。それで許してくれるなら。」

ということで俺もここで着替えた。

彩花「大輔君の下着姿を拝めて最高」

大輔「そういえば、彩花もブラジャーを着けるようになったんだな。」

彩花「そうだけど。わたしにはまだ早いとでも?」

大輔「そんなことないよ。別に俺には関係ないことだ。」

大輔「まあ彩花がブラ着けるようになったというのは感慨深いものがあるな。」

彩花「さすが大輔君。男の子として普通の反応です。」

・・・
別の日

その日は雨だった。傘をさしていても濡れる。
この日も大輔君と登校。そしてそのとき

彩花「うわっ」

横を通りかかった車の水しぶきで制服が濡れてしまった。

彩花「濡れちゃった」

大輔「大丈夫?」

彩花「うん。タオル持ってるんで。」

大輔「・・・。今日はピンクか。」

彩花「え?」

これは濡れたときのお約束のパターンか。ブラが透けてしまった。
顔を真っ赤にしてあわてて胸を隠す。

近くにいた男子たちも見て見ぬふりをしているが明らかに見てしまった表情をしている。

彩花「不幸だ。」

大輔「彩花がブラ見られたくらいで赤くなるとか意外だな」

彩花「そりゃわたしだって女の子なんだから。男の子に下着見られたくないよ。」

大輔「これ学校についても透けてたら嫌だな。」

多分昼近くまで透けてるんだろうな。
なんで私はいつも男子の前で下着を見せてしまうんだろう。

大輔「まあ彩花はメインヒロインであって、視聴者サービス要員なんだから。むしろ俺なんかじゃなくいろんな男子に見せないとな。」

彩花「わたし、サービス要因なんだ。」

彩花「どうせわたしの透けブラ見た男子の何人かは、なんで貧乳のくせにブラつけてるんだよとか笑ってるんだろうな。」

大輔「それ誰が言ったんだ?」

彩花「クラスメートの女の子のほとんどだよ」

大輔「そりゃ女子はそういう奴いるかもしれないけど、少なくとも男はそうは思ってないぜ。」

大輔「むしろ貧乳なのにそんな可愛いブラつけてたら萌えるだろうが!」

大輔「これに萌えない男なんていないよ」

今日もナイトメア退治に向かう

オラフ「ここは多分君も知らない人かな」

彩花「そうだね。こないだは知ってる人だったけど、知らない人だと緊張するな。」

由紀「あんたも来たんだ。」

彩花「福原さん、よろしくお願いします。」

由紀「私はアニメ史上最強の魔法少女。すべての魔法少女は道を譲りなさい。」

オラフ「由紀、それって死亡フラグなんじゃ。」

由紀「さあ、今日こそは速攻で片付けるわよ。」

オラフ「それも死亡フラグなんじゃ・・・」

そして変身シーン。しかし・・・

彩花「キャー!」

変身に失敗し、下着姿を晒すことに。

彩花「不幸だー。」

由紀「私は高翌梨さんのパンティとスポーツブラを拝めて幸せ。」

由紀「別にいいじゃない。私に見られるくらい。女同士なんだし。」

彩花「それはそうだけど・・・」

気を取り直して、再び変身。

由紀「ねえ、高翌梨さん、私と友達になってくれるの?私の傍にいてくれるの?」

彩花「うん、もちろん」

由紀「うれしい。ダメだなー。私、先輩ぶってなきゃいけないのに。」

由紀「じゃあこの戦いが終わったら、パーティをしましょう。私と高翌梨さんの魔法少女コンビ結成記念よ。」

由紀「ご馳走とケーキを用意しよう。最高におっきくて贅沢なお祝いのケーキ。」

彩花「ケ、ケーキ?」

オラフ「だからそれ死亡フラグだって」


由紀「彩花ちゃん最高!」

彩花(彩花ちゃん・・・、親しくなったな・・・)

由紀「体が軽い。こんな気持ち初めて。もう何も怖くない!」

オラフ「それ最強の死亡フラグ!」

オラフ「彩花、これはなんとしても由紀の死亡を阻止しなければ。」

彩花「わかった」

こうして私の弓でナイトメアを退治した。

彩花「よかった・・・」

オラフ「彩花のおかげとはいえ、あれだけの死亡フラグを立てながら生き残ったのは奇跡だ。」

由紀「何言ってんの。私の実力よ。あやちゃんの助けなんていらなかったのにな。」

彩花(あなたもあやちゃんって呼ぶんだ。親しくなったな。)

由紀「そうだ。これからは私のことは由紀でいいよ。」

彩花「うん。」

彩花「あやちゃんって呼ぶのは別にいいし、友達もそう呼ぶことあるけど、わたしにとってはあやちゃんは別の人なんだよね。」

由紀「それって誰のこと?」

彩花「姉の、高翌梨彩。」

由紀「そうなんだ。」

由紀「そういえば、あやちゃんは戦闘中いつもパンチラしてるのね。」

彩花「えー、先に言ってよ!」

由紀「いいじゃないの。あやちゃんは視聴者サービス要員なんだから。」

由紀「今日の戦闘はどうだった?」

彩花「相手も強くなってきてるけど、力を合わせれば勝てるね。」

由紀「そうでもないでしょ。大したことなかったわね。」

由紀「とりあえず魔翌力不足さえしなければ殺されそうな気しなかったから、大したことなかったわ。」

彩花「さすが、ベテラン。強気だね。」

由紀「そうね。魔法少女との戦闘のほうがよっぽどしんどかったわね。相手も強いし。」

由紀「こんな相手に負けたら唯ちゃんやかなちゃんにも申し訳ない。」

オラフ「もしかして、あいつは美樹さやかより弱いかな?」

由紀「そうね。さやかちゃんのほうが強いかもね。」

彩花(引き合いに出されるさやかちゃん可哀想)

オラフ「平成生まれにはわからない元ネタだけど、とりあえず。死亡フラグを明日に回したね」


とはいえ結局その後の戦闘でも由紀ちゃんは無敵だった。
舐められてるナイトメアがなんか可哀想になってくる。

・・・
私は高翌梨(たかなし)彩。この家の長女。

今日は妹の彩花が友達を連れてくるらしい。

唯「お邪魔します。小原唯です。」

香苗「荒川香苗です。」

彩花「この人が私のお姉ちゃん。」

彩「初めまして。高翌梨彩です。」

唯「この人が彩ちゃんのいうところのあやちゃんか。」

香苗「姉妹だから名前が似てるんだね。」

唯「じゃああたしたちはこの姉妹のことをなんて呼べばいいのかな。どっちもあやちゃんじゃややこしいし。」

彩花「わたしのことは普通に彩花って呼んでよ。」

唯「わかった」

唯「ふつうに彩花」

彩花「元宮崎県知事の芸名かよ!」

唯「さすがあやちゃん・・・、彩花ちゃんはするどい突っ込みするね。」

彩「そういえば提案なんだけど、私たち漢字まで同じなのよね。姉妹だから仕方ないけど。」

彩「このままだと検索サイトで『高翌梨彩』って検索したら両方出ちゃって探すの大変になりそうじゃない?」

彩「だから区別のために、彩花のことは『高翌梨綾花』って表記すればいいんじゃないかと。」

彩花「『綾』より『彩』のほうが人気あるから、それだと彩ちゃんに人気を取られそう。」

彩「冗談冗談。主人公兼メインヒロインの名前を変えるわけにはいかないね。」

彩「平仮名で『たかなしあや』って表記にすればいいんじゃないかな。」

彩花「それはそれでいいね。」

リビング

彩花「達也君も帰ってたんだ」

達也「初めまして。弟の達也です。」

あや「唯ちゃんは初めてだね。香苗ちゃんは前にも来たことあったよね。大輔君の妹だったし。」

香苗「はい。」

香苗「お姉ちゃんがいてうらやましいな。ぼくは兄がいるけど、姉妹がいないんだよね。」

彩「ぼくは兄が3人。ちなみにそのうち1人は彩花ちゃんのボーイフレンドの大輔お兄ちゃんだね。」

彩「末っ子で、女の子1人だけだから心細いんだ。」

達也「そうだよね。僕も男1人だから肩身狭いかも。」

達也「でもお姉ちゃんたちの姉妹愛が見れるのはいいけど、どうしても僕は家での居場所がない気がするんだ。」

香苗「男の子って女の子に囲まれたら嬉しいんでしょ?ハーレムとか望んでるって聞いたけど」

達也「そういうのは二次元だけだよね。実際は女の子がいっぱいのところに男1人ってのは肩身が狭い。」

達也「それに引き換え男多数に女1人ってときのほうがその女の子は大事に扱ってもらえそうな気がする。」

香苗「でもお兄ちゃんたちが見せ合ってるエロ本見ても、ぼくは楽しめないし。」

香苗「ブラジャー着けるのもなんか恥ずかしい。」

唯「あたしも。初めてブラジャー買いに行ったとき一緒にいたのお母さんだけだった。彩花ちゃんはお姉ちゃんと行けるからいいよね。」

彩花「確かにお姉ちゃんいたけど、あまり関係なかったな。」

香苗「ぼくは家ではブラ着けてないんだよね。家に帰ってきたらいつも外してる。」

彩花「わたしも胸小さいから夏場はブラつけてないこともある。」

彩花「そういえば唯ちゃんは胸大きいよね。わたしは胸小さいからうらやましい。」

唯「いや、胸が大きいというのもいいことばかりじゃないよ。」

唯「かわいい柄のブラはだいたいCカップくらいまでしかないし。」

唯「ブラの値段、カップ数が大きくなるほど高いからね。」

唯「下着代がかすむよ。だからあたしはブラはそんなに何枚も持ってない。」

唯「中1くらいまではあたしもかわいいブラ着けてたけど今は地味なのしかない。」

唯「かわいいブラ持ってる彩花ちゃんがうらやましいよ。」

彩花「そうなの。」

唯「あたしは胸が大きかったから小3のころからブラ着けてたんだよね。最初はスポーツブラだったけど。」

唯「そのころはブラつけてるの恥ずかしかったよ。小学校低学年だとまだ体育の着替えは男女一緒だし。」

唯「そういえば3年生のとき、あたしが初めてブラをつけてきたら体育の着替えのとき男子にからかわれて泣いちゃったんだよね。」

彩花「そんなことあったね。それでクラスの女子の何人かが唯ちゃんのためにブラつけてくるようになったんだっけ。」

彩花「でもわたしは最近までブラ着けてなかったな。」

唯「胸が大きいのって結構女子にからかわれるよ。」

彩花「そうなんだ。」

唯「子供のころはブラにあこがれるって女の子あんまりいないと思う、」

彩花「わたしはあこがれてたよ。」

彩花「女子の間でブラをつけた子=大人みたいな状態で競争するかのようにつける子が増えたな。その頃からあたしも胸が痛くなりはじめてたからお母さんにお願いしてつけるようになった。」

彩花「でもやっぱりわたしは胸が大きいほうがいいな。」

彩花「それより、わたしは本当は男の子に生まれたかったかも。」

唯「なんで?」

彩花「だって。男の子に生まれてたら胸が小さいの気にする必要なかったもん。」

彩花「あと男の子に生まれてホモになりたかったって思うこともある。BLって、女じゃ永遠に届かない世界だし。」

唯「それならブラにあこがれるのはなんで?」

彩花「だって、せっかく女の子に生まれたら可愛いブラを着けたいと思うよ。」

・・・
彩花「ねえ、唯ちゃんとかなちゃんは自分で告白するタイプ?それとも相手に告白してもらいたい?」

唯「私は相手に告白されたいな。」

香苗「ボクも」

彩花「わたしは自分から告白するよ。幸せは自分でつかまなくっちゃ。」

香苗「その勇気、見習いたい。」

第2話 終わり

第3話

別の日の夜

彩花「なんとしてもこの本だけは絶対に手放さない。」

私はこっそりある本を買いに行った帰りだった。
それと同じころ、クラスメートの北野君も本を買いに行っていた。

店員「ありがとうございました。」

圭一「早くこれをTKに届けるだけだ」

そして曲がり角でうっかりぶつかってしまう。そのとき

北野君が私の胸にタッチした

彩花「うにゃあ・・・」

圭一「あ、ごめんなさい。」

彩花「いいの。こちらこそごめんなさい。別にわざとじゃないから・・・」

彩花(男の子におっぱい触られた・・・。)

圭一「女の子だったの?本当にすいません。よりにもよってこんなところ揉んじゃって」

彩花(不幸だ。男の子だと思ったのかな?)

彩花(どうせわたしのぺったんこな胸なんか触りたくもないだろうね。)

手元の袋を取り、家に帰った。

北野の家

TK「ご苦労だった。」

TK「お前もこういう本見て少しは訓練しないとな。」

・・・
TK「なあ、俺のこと好き?」

TK「ああ」

TK「お前とキスしたい。」

TK「キスどころか、今夜はセクロスしたい。」

TK「お前の精子が欲しいんだ!」

TK「ってなんじゃこりゃー!」

圭一「そんなバカな・・・」

TK「誰がこんな漫画を買ってこいと言った!」

圭一「すまん。確かにメモに書かれた通りのエロ本を買ってきたつもりなんだが・・・」

圭一「あ!」

圭一「あそこでぶつかった人・・・」

・・・
彩花(なんてこと・・・)

彩花(わたしはこんなもののために・・・)

・・・
TK「あの娘たちはどこで・・・」

圭一「必ず取り返します。」

彩花「北野君、ちょっと来て。」

体育倉庫近く

彩花「昨日ぶつかったの、あなただよね?」

圭一「はい。ごめんなさい。」

彩花「もういいの。それより・・・」

彩花「あの本を返してほしいの。」

圭一「わ、わかりました。」


圭一「どうするんだよ。あの本TKがビリビリに破いちゃったじゃないか。」

TK「仕方ないだろ。ついかっとなって。」

圭一「このままじゃエロ本も返してもらえないぞ。」

TK「それは、こうすればいい・・・」

夜、路上

男子「北野とTK、またエロ本交換会か?」

男子「いや、相手女の子だぞ。」

男子「あれ高翌梨さんじゃないか?」


北野「実はあのエロ本、もう必要ないんだ。僕が他の奴に頼んで入手した。」

TK「で君の本なんだけど、ついかっとなってビリビリに破いてしまったんだ。まあ俺のエロ本も返す必要ないし、水に流してくれないかな。」

彩花「・・・」

彩花「何軒も、何軒もはしごしてやっと見つけた最後の一冊だったのに・・・」

彩花「今月号はついにタカヤと純一の絡みが見られるはずだったのに・・・。」

彩花「それを、どうしてくれるの・・・」

彩花「あなたはそれでいいかもしれないけど、わたしの楽しみは帰ってこないのよ・・・」

TK「別にいいじゃねえか。」

圭一「本当にごめん。僕が探してくる。」

TK「は?お前何言ってんだ。こいつのことなんかどうでもいいだろ。」

圭一「だって可哀想だろ。TKもなんか言えよ。ぶつかって取り違えたのは俺だけど、破いたのお前なんだし。」

彩花「いいよ。気持ちだけ受け取っておく。」

彩花「TKとやら、あなたのことは絶対に許さないけど。」

彩花「不幸だ。」

唯「あやちゃん、これ・・・」

唯「私が買っておいた。親友なんだし。」

彩花「唯ちゃん・・・」

彩花「ありがとう。心の友よ」

唯「なにそれ。」


彩花「あの本はわたしの友達のおかげで無事入手できた。」

圭一「それはよかった。」

圭一「たかなしさんに相談があるんだけど」

彩花「相談?」

圭一「実は俺、好きな人がいるんだ。それが相手は男なんだ。」

彩花「えー?」

彩花(それ、わたしにとってはすごいおいしい展開。)

彩花「でも相談ってそれだけなのかな?」

圭一「それだけって?」

彩花「男の子が好きってことだけじゃなくて、もっと別の秘密があるんじゃないかと思うんだけど。」

彩花「実は何か特異体質があるんじゃないかと」

圭一「え?」

圭一「な、なんでわかったんですか?」

彩花「わたしの魔翌力。詳しくは言えないけど。」

彩花「その特異体質ってのは何かをみると吐き気を催すんだよね」

圭一「!? そこまで・・・」

圭一「実は女性アレルギーなんです。」

圭一「女の人の裸とか水着とか見ると吐き気がして、場合によってはゲロを吐く。」

圭一「高翌梨さんの転んでパンチラしたときとか、ブラが透けてたのを見たときも危なかった」

彩花「えー?」

圭一「ごめん。高翌梨さんにとっても恥ずかしいことなのに。」

彩花「別にいいよ」

彩花「わたしは不幸少女ですから。男子に下着姿を見られることにはもう慣れた。」

彩花「わたしならその女性アレルギーも克服できるかもしれない」

圭一「本当?それは助かる」

彩花「多分妖怪がとりついてるんだと思う。」

彩花「あと好きな男の子って誰のことなの?」

圭一「それが・・・」

彩花「・・・そうなんだ。」

・・・
圭一「TKとエロ本でも見て訓練してるんだけど、なかなかうまくいかないんだ。」

彩花「まあ、エロ本なんかじゃ無理だろうね。」

彩花「妖怪退治を専門としている魔法少女に相談に行こう。」

彩花「こんにちは、お邪魔します。」

唯「あやちゃん、いらっしゃい。お茶とケーキの準備をするわね。」

唯「あら、あやちゃんが男の子を連れてくるなんて珍しいわね。」

唯「荒川君と一緒に来たことはあったけど。」

彩花「彼、少し相談があって。」

唯「小原唯です。学校で会ったことあると思うけど。」

圭一「北野圭一です。」

唯「それで相談っていうのは?」

彩花「実は北野君には特異体質があって。」

圭一「僕、女性アレルギーなんです。」

唯「女性アレルギー?」

圭一「女の人の裸とか水着とか見ると吐き気がして、場合によってはゲロを吐く。」

彩花「わたしの魔翌力で、北野君に妖怪がとりついてることがわかったんで。」

唯「そうね、確かに検出されるわね。」

唯「今回北野君に取り付いているのは、牛の妖怪、ベコだね」



唯「あるものに嫌悪感を示す。」

唯「もともとはテレビもない、ラジオもない、電話もない、電車もない、バスは1日1本というような田舎が嫌な人の妖怪。」

唯「でもこれって妖怪というより、ただの特異体質なのよね。」

唯「北野君にはいいところを紹介します。」

圭一「いいところ?」

唯「行けばわかる、行かないわからない、プールハウス♪」

彩花「それ2011年のクラブワールドカップの中継でよく見たCMじゃないですか。」

・・・
唯ちゃんによると水泳がなぜかこの体質改善にいいってことなので
これから市民プール、プールハウスに行きます。
今日は唯ちゃんは都合で来られなかったけど、代わりに大輔君と香苗ちゃんが一緒に。

大輔「彩花とプールって久しぶりだな。父さんや母さん抜きだと初めてだな。」

香苗「でもなんでぼくなの?」

彩花「わたしと北野君だけじゃ心細くて。それに唯ちゃんがいないと妖怪に対する知識がわからないし。」

彩花「かなちゃんなら知ってると思ったから」

香苗「そうね、ぼくはあやちゃんの願いならかなえてあげられるわ。」

・・・
香苗「ぼくなんで胸が小さいのかな。ダブルAカップなんて。」

彩花「ダブルAカップはまだマシだよ。わたしはトリプルAカップ。最も小さいサイズ。」

彩花「かなちゃんってこの前からブラつけるようになったんだっけ?」

香苗「うん、でもこの胸じゃやっぱ必要なさそうだから普段はノーブラ。」

彩花「えー、それよくないよ。」

彩花「小さくても胸は揺れるし、わずかであれ(笑)その形を整えていないといけないって。」

彩花「あと第二次性徴期で胸が成長する時期は乳首が擦れて痛いし」

香苗「確かに」

・・・
大輔「お待たせ」

圭一「・・・」(口に手を抑える)

彩花「やっぱり女性アレルギーなんだ。水着姿見ると吐き気を催す。」

圭一「いや、そうでもなかった。」

彩花「なんだ。」

圭一「一応数年前よりはこの体質は克服してる。けどビキニとか見るとまだ吐き気はするんだけどな。」

圭一「なんでだろう?」

香苗「もしかしてボクたちの胸が小さいから・・・」

圭一「いや、そう決まったわけじゃないし。」

彩花「始めよう。」

彩花(ぺったんこで悪かったわね)

その日は大輔君の水泳教室のようなものだった。
もはや女性アレルギーのことはすっかり忘れたようなものだった。

圭一「ねえ、高翌梨さんと荒川君っていつごろから一緒にいるんだ?」

大輔「幼稚園に入る前からだったな。」

大輔「ほとんど生まれた頃から一緒だった」

圭一「そうなんだ。」

大輔「彩花って昔は泣き虫だったんだぜ。」

彩花「大輔君もよくクラスメートの男子にいじめられて、わたしが助けてあげてたでしょ。」

彩花「あとこれは北野君も知ってると思うけど、小学校のころ勉強も運動も学年でビリだった。」

大輔「そうだったな」

彩花「でも大輔君のいいとこはわたしが一番よく知ってる。」

彩花「なんていうか兄妹みたいな関係なんだよね。大輔君が兄でわたしが妹。」

大輔「本当は彩花が姉で俺が弟だろ。誕生日は彩花のほうが早いんだから。」

彩花「1日違いなんだからあまり関係ないよ。」

圭一「やっぱ仲いいんだな」

彩花「北野君、今日は少しは大輔君と仲良くなれたんじゃないかな。」

圭一「どうだろう。本当は荒川君と仲良くなるためではなく、女性アレルギーの体質改善のためだったんだが。」

数日後、再びプールハウスに来た。その日は唯ちゃんと。

彩花「お待たせ」

圭一「うわっ・・・」

圭一「これは無理・・・」

圭一「ゲーホッ」

彩花「北野君、こないだは大丈夫だったのに・・・」

彩花「唯ちゃんのせいか。やっぱり巨乳だと女性アレルギーを発症するんだな。」


その後北野君は病室に

圭一「僕はもう大丈夫だ。せっかくプールに来たのに泳いで帰っては意味ない。」

圭一「体質改善のためにも」

彩花「そうだね。でも無理しちゃダメだよ。」

こうしてこの日は北野君と唯ちゃんの平泳ぎ

唯「巨乳のビキニ姿も見慣れてきたかな?」

圭一「そうだね」

唯「あ・・・」

そのとき、唯の水着が外れてしまう。お約束のポロリといったとこか。

唯「キャッ!」

普通の思春期の男子なら当然興奮して鼻血を出すところだが、女性アレルギーの北野君にはそんなもんではなかった。
北野君は失神してしまった。


圭一「ごめんな。恥ずかしいのは小原さんのはずなのに、俺のせいで二重に傷つかせてしまって。」

唯「別に気にしてないよ。むしろ北野君も大変だなって思って。」

彩花「今回の水泳で、北野君の体質を改善できてると思う。」

圭一「さすがにまだ生身の裸は無理みたいだけどね。」

彩花「そうか。」

それより私には北野君に別の何か、別の妖怪が取り付いていることを感じていた。

第3話 終わり

あげ

第4話

小学校4年生のとき

僕は荒川大輔。それまで何もかもがクラス最下位、学年最下位だった。

帰り道

彩花「大輔君やけに嬉しそうだね。今までこんな笑顔見たことないよ。」

彩花「テストが5点や10点だったのがそんなに嬉しかったの?いつもと変わらないのに。」

大輔「だってあの転校生に勝ったんだぜ。あいつは全教科0点。」

大輔「僕は5回に1回の割合で0点取るだろ?」

大輔「ところがどっこい、あの北野って奴は2~3回に1回の割合で0点だってよ。アハハハハ。」

大輔「かけっこも僕より遅いし、それでいてなわとびは二重跳びはおろか後ろ跳びできない。」

大輔「ああ、なんてすばらしいことだろう。この世に僕よりダメな子がいたなんて。」

大輔「北野君がきた」

大輔「おーい、いらっしゃい。」

その日は一緒に宿題する約束をしていた。

大輔「さあ始めよう」

圭一「うーん」

大輔「えー、お前はまだ宿題できないの?」

圭一「母さん、僕のと北野君のどっちがあってる?」

母「大輔の・・・」


彩花の家の前

大輔「今から僕と北野君の2人で走るから審判やってよ」

彩花「わかった」

大輔「よっしゃー、勝った勝った」

大輔「それからサッカーやバスケでも対戦したんだけど、どうしてもぼくが勝っちゃうんだ。アハアハアハ・・・」

彩花「へえ(呆れ気味)」

大輔「あいついいやつだよ。ずっと友達でいよう。」


先生「忘れ物するなんてやる気があるのか!ふたりとも立ってなさい!」

大輔「お前もか。だから好きさ。」

大輔「な、これからは協定をむすぼうじゃないか」

大輔「そろって0点をとったり忘れ物したり、かけっこも2人ともビリで。なかよくしていこうよ。」

圭一「いやだ。ぼくはできれば100点取りたいし、かけっこは1番になりたいし、忘れ物もしたくない。」

大輔(生意気だ。格上の僕に逆らうなんて。)

ガキ大将「なあ、特別にお前を野球に誘ってやるよ。どうせ暇なんだろう。」

大輔(いやだなあ。エラーしたり三振したら殴られるし。)

大輔「僕、今日は調子悪いし、用事もあるんだ。」

大輔「そうだ。かわりに北野君を誘ったらどうだ?」

ガキ大将「お前がそう言うなら・・・」


大輔「是非こっそり見に行こう。どんな試合になるやら。想像するだけで笑っちゃうよ。アハハハ。」

試合は予想通り北野の度重なるエラーで次々失点

大輔「ウハハハハハwwwwwwww 笑いがとめんねえwwwwwwwwww 腹痛えwwwwwwwwwwww」

大輔「ハハハ・・・・」

自分の中で静まり返った。
確かに下手だ。僕より下手だ。しかしなんだろう。この必死さは。
いつも途中でやる気をなくして捨て身になり、試合を投げている僕と比べて、純粋に野球を楽しんでるように見える北野が何倍も立派に見えた。

ガキ大将「お前がエラーと三振ばっかりのせいで負けた。」

男子「せっかく敵のエラーで出塁できてもルンバ、もとい走塁ミスで台無しだし。」

ガキ大将「かくごしろっ」

圭一「やだー、ゆるしてえ」

大輔(あれはいつもの僕・・・。北野君が僕みたいに・・・)

大輔「やめろ!」

ガキ大将「なんだよ荒川。」

大輔「北野君ならいい選手になると思ったんだけどな。僕の見る目がなかったよ。」

ガキ大将「お前は何が言いたいんだ」

大輔「だから、北野君を推薦した僕の責任だ。殴るんなら僕を殴れ。」

ガキ大将「そうか、そういうんなら・・・」

ボカボカボカ

圭一「荒川君・・・」

圭一「僕をかばってここまで・・・」

大輔「僕が間違っていたよ。2人で0点取って、忘れ物して、いじめられてばっかりじゃいけない。」

大輔「一緒に頑張って、テストでは100点を取ろう。野球も練習して、あいつらを見返してやろう。」

圭一「うん」

こうして僕たちの進撃が始まった。
しばらくの間、僕と北野君でビリとブービー、下位2人を入れ替わりで分け合うときが続く。

小4の学年末テスト、ついに僕たちは下位2つを脱出した。

圭一「やっと指定席を抜け出せたね。」

大輔「よし、これからだ。」

小5に上がってからは僕たちは中の下のラインにまで上がった。

大輔「やった、65点!こんな点数初めて。」

大輔「北野は何点?」

圭一「70点」

大輔「負けた!」

大輔「でも算数は60対55で俺の勝ちだからな。」

圭一「そうだね。やっぱり荒川君はすごい。」

大輔「そうでもないよ。お前がいたから俺もビリから脱出できたし。」

彩花「なんていうか、2人の点差っていつも15点以上開かないよね。」

彩花「大輔君の成績が上がり出したら、それについてくるように北野君の点数も上がったし。」

彩花「1回くらい片方がいい点取って、片方が沈むって展開もありそうなんだけど。」

大輔「そう考えると確かに不思議だな。」

運動会

圭一「徒競走、僕は3位だった。」

大輔「俺は2位。あとちょっとで1位だったのにな。」

大輔「でも初めてビリにならなかった。すごいうれしい。」

圭一「僕もいつもビリだったから、この順位は満足してる。」


そしてついに

大輔「ひゃ、100点・・・」

大輔「先生、これ。」

先生「いや私も目を疑ったがね、何度調べても100点なんだ。荒川君、よくやったね。」

大輔「北野、やった、100点取ったよ。」

圭一「おめでとう。実は僕も100点なんだよ。」

大輔「北野もだったのか。」

大輔「おめでとう。お前前からずっと言ってたもんな。100点取りたいって。」

大輔「俺も100点だったけど、なんかどうでもよくなった。北野が100点取れたことが自分のことより嬉しい。」

そして北野と出会って2年が経った小学校5年生の終わり

圭一「せっかく友達になれたのに、また転校することになったんだ。」

圭一「今まで君ほど仲良くしてくれた友達はいなかった。」

圭一「勉強やスポーツを一緒にやってくれたり時にはいじめっ子からかばってくれたり」

圭一「君のこと忘れない。」

大輔「なあ、手紙書いてよ。俺も手紙書くからさ。」

圭一「わかった。」

大輔「いつかまた、きっと会えるよね。」

・・・
そして中学校に進学し、2年生になった春。

先生「転校生を紹介する。北野圭一君だ。」

大輔「北野・・・」

先生「ん?知ってる奴いるのか? そういえばこの街に来るのは2度目とか言ってたかな。」


大輔「北野、また会えたね。」

圭一「うん」

・・・
ある日、この街に怪物のようなものが現れた。
いわゆる妖怪である。

ここ数日、私ばかりを狙ってくるようになった。

彩花「うわっ!」

私は魔法少女なので防御もできるけど、これほどの敵は初めてだった。

彩花(なんなのこの妖怪?)

彩花「あれは・・・、北野君?」


圭一「ごめんなさい。今回の件は僕のせいだ」

圭一「この妖怪が僕のせいで暴れるようになった」

彩花「この妖怪って一体なんの妖怪なの?」

圭一「魔法少女養成妖怪、インディアンだ。」


唯「インディアンね。」

唯「実は私もその妖怪の存在に何となく気づいてたの。女性アレルギーより、他の何かがあるんじゃないかって。」

彩花「じゃあなんで言わなかったの?」

唯「確信が持てなかった。知ったかぶりになっちゃうかもしれないから。」

圭一「高翌梨さん、小原さんは魔法少女なんだよね?」

圭一「僕はいわゆる魔法少年なんだ。」

彩花「魔法少年?」

圭一「これは1ヶ月ほど前」

・・・
インディアン「僕はインディアンだ」

インディアン「君の願いを叶える代わりに、僕と戦ってほしい。」

圭一「それってどういうこと?」

インディアン「魔法少年だよ。」

インディアン「オタク男子の憧れだよね?」

・・・
彩花「なんかそれ、いつしかの『僕と契約して、魔法(ピー)以下略』の生物に似てるよね。」

彩花「あの生き物と契約するとろくなことないんでしょ?1つの願いのために魂まで差し出さなきゃいけない。」

彩花「名前は、イン・・・、なんだっけ?インディアンじゃないし。」

圭一「インディアンは今僕と契約してる生き物だから」

彩花「そういえばどっちもインだね」

圭一「まあインディアンは某円環の理のアニメのインなんとかと違って、願いは変更可能、戦いでの実績に応じていくらでもできると言ったんだ。」

・・・
圭一「俺の体質、女性アレルギーを治してほしいんだ。」

インディアン「承知しました。契約は成立だ。」

・・・
第2話から

圭一「高翌梨さんに相談があるんだけど」

彩花「相談?」

圭一「実は俺、好きな人がいるんだ。それが相手は男なんだ。」

彩花「えー?」

彩花(それ、わたしにとってはすごいおいしい展開。)

彩花「好きな男の子って誰のことなの?」

圭一「それが・・・」

圭一「荒川君なんだ。」

彩花「・・・そうなんだ。」

圭一「高翌梨さん、荒川君のこと好きなんだよね?」

彩花「うん、大好きだよ。」

圭一「すまんな。これじゃ気まずい関係になってしまう。」

彩花「別にいいよ。北野君が大輔君のことが好きなら、私たちはライバルってことにしとこうよ。」

彩花「大輔君もいろんな女の子と仲いいけど、その娘たちのことを憎んだりしないし。」

彩花「北野君とは良きライバルで。」

彩花「もちろんたとえ相手が男の子だとしても、大輔君のことは誰にも渡さない。」

彩花「でもまだ付き合ってるわけじゃないし、公平にチャンスは与えないとね。わたしだけ抜け駆けしちゃずるいから。」

彩花「なんていうか、北野君が大輔君のこと好きなの少し気づいてたかも。」

彩花「大輔君がいつも勉強も運動も学年でビリか、ビリから2番目をうろうろしてたのを、小4のとき北野君が転校してから変わったんだよね。」

圭一「俺も昔はビリだったんだよな。荒川君がいたから今の自分がある。」

圭一「荒川君が俺の初めての友達だった。荒川君といるだけで楽しかった。」

圭一「いじめられたとき、荒川君がかばってくれて、2人でいじめっ子を見返してやろうって誓ったこともあった。」

圭一「俺が小5のころ転校して離れたあとも、荒川君と手紙のやり取りをしたこともあったな。」

圭一「中2になってまたこの街に転校してきて、真っ先に話しかけてくれたのも荒川君だったし。」

圭一「だが何年か会ってない間に、荒川君との距離は自然と離れていた。」

圭一「荒川君と一緒にいる時間はどんどん減っていった。」

圭一「それでも荒川君のことを見てるだけで幸せだった。今の彼は最高にかっこよかったからね。」

圭一「でも荒川君には仲のいい女の子がいた。高翌梨さんだった。」

圭一「荒川君は小学校のときも俺に見せたこともないような笑顔でいつも高翌梨さんと一緒にいる。」

圭一「俺は高翌梨さんに嫉妬したんだ。荒川君と一緒にいるのはなんで俺じゃないんだって」

圭一「俺が男だからダメなのか。女だったらよかったのか。」

圭一「荒川君にとって男友達はどうでもいい存在なのかって。」

彩花「そうだったんだ。」

圭一「どうして男の子同士で愛し合っちゃいけないんだろう」

圭一「それならなんで俺は男に生まれてしまったんだって。」

圭一「俺って情けないな。高翌梨さんは俺のことを良きライバルだって言ってくれたのに、俺は高翌梨さんのことを嫉妬することしかできなかった。」

・・・
圭一「高翌梨さん、俺にも荒川君と付き合えるチャンスを与えてくれたんだよね。」

圭一「それでも僕は気づいてた。荒川君にとって、僕のことはただのクラスメートにしか思ってないってこと。」

圭一「そりゃそうだろうな。男同士なんだし。男に恋愛感情抱くほうがどうかしてる。」

彩花「わたしは男の子同士もいいと思うよ。」

圭一「そりゃ高翌梨さんはああいう本を読んでるんだからそう思うだろうな。荒川君がわかってくれるわけがない。」

・・・
インディアン「君の願いって、女性アレルギーを治すことじゃないよね?」

圭一「え?何言ってるんだよ。僕は女性アレルギーを治すために」

インディアン「違うね。君はもう女性アレルギーなんかどうでもいいと思ってる。」

インディアン「君の本当の願いは、荒川大輔と恋人になること。」

インディアン「そのくらいの願いお安いご用だよ。」

男同士で恋人になれるわけない。そう思ってた。もうあきらめかけていた。
でもインディアンに頼めば・・・

そうして僕は願ってしまった。

圭一「荒川君と付き合いたい。荒川君の恋人になりたい。」

インディアン「承知しました。契約は成立だ。」

その願いがどんな形で叶えられたかは、想像もできなかった。

翌日、インディアンは・・・

圭一「な、何やってるんだ。」

インディアンは高翌梨さんに次々と魔翌力で襲いかかる。

インディアン「君は荒川の恋人になりたいんだろ?」

圭一「ああ」

インディアン「なら決まってるじゃないか。あの邪魔な女を殺してしまおう。」

インディアン「そうすれば晴れて君は荒川大輔とカップルだ。」

圭一「やめろ!その人は荒川君の大切な友達なんだ。高翌梨さんが死んだら、きっと荒川君は悲しむ。」

圭一「そしたら荒川君は僕を一生恨み続けることになるんだぞ。」

インディアン「そんなわけない。高翌梨彩花を[ピーーー]のは僕だ。君は関係ない。それに僕は人間じゃないし、証拠も残すことなく綺麗に殺せる。」

インディアン「安心して荒川と結婚すればいいよ。」

圭一「やめろ!僕は人を殺してまで荒川君と付き合いたくなんかない。」

インディアン「へえ。じゃあ君は荒川をあきらめるのかい?」

圭一「もっと他に方法がある・・・」

インディアン「ないね。高翌梨彩花は荒川大輔にベタ惚れだ。そして荒川も高翌梨のことを女の子として意識し始めている。」

インディアン「残念ながら高翌梨彩花を殺さない限り、君に勝ち目はない。」

圭一「そんな・・・」

インディアン「君自身、高翌梨彩花に嫉妬してるではないか。」

インディアン「ならば[ピーーー]しかないだろう。」

インディアン「それが嫌なら願いを取り消すかい?」

圭一「・・・」

僕はそのままインディアンの暴走を見ることしかできなかった。

確かに人を殺したくはないけど、でも荒川君と一緒にいたい・・・

救いは高翌梨さんが魔法少女だったということだ。インディアンの攻撃なんかでは簡単に死ななかった。

インディアン「ないね。高翌翌翌梨彩花は荒川大輔にベタ惚れだ。そして荒川も高翌翌翌梨のことを女の子として意識し始めている。」

インディアン「残念ながら高翌翌翌梨彩花を殺さない限り、君に勝ち目はない。」

圭一「そんな・・・」

インディアン「君自身、高翌翌翌梨彩花に嫉妬してるではないか。」

インディアン「ならばころすしかないだろう。」

インディアン「それが嫌なら願いを取り消すかい?」

圭一「・・・」

僕はそのままインディアンの暴走を見ることしかできなかった。

確かに人を殺したくはないけど、でも荒川君と一緒にいたい・・・

救いは高翌翌翌梨さんが魔法少女だったということだ。インディアンの攻撃なんかでは簡単に死ななかった。

・・・
唯「今回の解決策は2つある。1つは、彩花ちゃんがインディアンに殺されること。」

唯「2つ目は、彩花ちゃんが北野君をころすこと。」

彩花「え?」

唯「人間1人死ぬくらいで解決するなら、買い物としては安かろうってことさ。」

圭一「君は人間1人をなんだと思ってるんだ。」

彩花「わたしだって、死にたくない。」

唯「自分の恋のためだよ。命を懸けるくらい、当然のことだろう?」

圭一「そんな・・・」

彩花「北野君はわたしを殺したいわけじゃない。ただ荒川君と一緒にいたいだけ。」

唯「一緒にいたいだけ?笑えるね。あやちゃんは本当に優しいよね。」

唯「本当に一緒にいたいだけなのかな。」

彩花「違うっていうの?唯ちゃん」

唯「どうしてインディアンはあやちゃんを殺そうとしたのかしら。」

彩花「それはインディアンは相手の本当の意に沿わない形で叶えたからだよ。」

唯「契約は契約。本当はそのまま荒川君と両思いになるように動くはずだよ。」

唯「おそらく、北野君もあやちゃんを殺したいと思ってたんでしょうね。」

彩花「え?」

圭一「そんなわけない。僕は人を殺したりなんか・・・」

唯「そんなことを願ったのは無意識のうちでしょうね。」

唯「加害者の男の言い訳を信じるなんて、あやちゃんは人がいいわね。」

唯「大好きな男の子と仲の良い女の子を、殺したいくらいに嫉妬したとしてもおかしくないでしょう。」

唯「高翌梨彩花を殺害することが北野圭一の願いだったってこと。」

唯「ここまで来たらやるしかないわね。」

彩花「やる?」

圭一「やるって何をだ?」

唯「決闘。」

彩花「決闘?」

唯「2人で戦うの。どちらの愛情が上か、2人で戦って決めたらいいわ。彩花ちゃんと北野君で。」

圭一「えー!」

彩花「何言ってるの?中学生の男子と女子が決闘って。」

唯「仕方ないじゃない。彩花ちゃんはともかく、北野君は彩花ちゃんを殺したいとまで嫉妬しちゃったんだから。」

唯「それにもし北野君と荒川君が付き合うことになったら、今度は彩花ちゃんが嫉妬しちゃうんじゃないかと思うわ。」

唯「その前にケリをつけるべきよ。」

圭一「そんな無茶苦茶だ」

結局その日は決着がつかないまま家に帰った。

・・・
しかしその夜、私は決意した。

翌日

彩花「北野君、あなたにこれを渡す。」

圭一「これは何だ。果たし状?」

彩花「今日の夕方、わたしは北野君に決闘を申し込む。」

彩花「唯ちゃんの言うとおり、北野君はわたしを恋敵として憎み、殺そうとした。ならばもう戦うしかないじゃない。」

圭一「・・・」

圭一「わかった。この果たし状、受けるよ。」

圭一「本当はどうして友達と決闘しなきゃいけないのかと思ってるけど・・・」

唯「青春ってそういうものじゃないかしら?」

彩花「でも男女で1人の男の子を争って決闘だなんて」

唯「別にいいじゃない。BLモノの次回作になりそうね。」

唯「彩花ちゃんと北野君と荒川君の三角関係、女→男←男の奇妙な三角関係。」

彩花・圭一「・・・」

唯「1つだけいいかしら?」

彩花「何?」

唯「あやちゃんはどうして自分を殺そうとした相手まで助けようとするの?」

唯「北野君はあやちゃんのことを憎むべき恋敵ととらえていたわけなのよ。」

彩花「北野君が大輔君にあこがれていたこと、わたしは知ってたからね。なのにわたしは大輔君と小さいころから一緒にいるし、現に大輔君のこと好きだし。」

彩花「そりゃ誰だって嫉妬するでしょ。殺されるのはご免だけど、嫉妬するくらいは許せるかな。」

・・・
由紀「さっき北野君に渡していたのはラブレターかしら?」

彩花「いや、そんなんじゃないよ。」

由紀「そうよね。あやちゃんには他に好きな男の子がいるんだし。」

由紀「じゃあ宿題の答えを移したのかしら?」

由紀「いやそれもないね。北野君は中の下くらいだけど宿題忘れはしないし。」

由紀「まあそんなことはどうでもいい」

由紀「それより私の出番が少ないのはなんで?これでもあやちゃんと同じ魔法少女なのに」

彩花「あれだけ死亡フラグを立ててたからでしょ。出番が少なくなったくらいで済んでよかったじゃない。」

由紀「はあ、あれは出番が少なくなるフラグだったのね。」

由紀「これじゃ[たぬき]でいう雪の精・・・」

由紀「どころか妖怪ウォッチでいうじんめん犬じゃない」

彩花「それだと出番増えてるけどね」

・・・
唯「荒川君、今日は1人で帰ることになると思うけど、気にしないで。」

大輔「え?彩花は?」

唯「ちょっと用事があるの。大丈夫、荒川君を仲間外れにするわけじゃないから。」

大輔「そ、そうなんだ。小原も?」

唯「うん。」

大輔「大丈夫だよ。大事な用があるんでしょ?彩花と小原、あと香苗は仲いいしね。」

第4話 おわり

第5話

ところが思わぬ登場人物の出現でこの三角関係はさらに複雑になる。

ここからは何も知らない大輔君の視点で。

・・・
中沢祐樹。彼は5歳のとき父親が浮気をし、浮気相手に子供ができたためそのまま離婚して家を出て行ってしまった。

祐樹「お父さんが別の女のものになっちゃったんだ。」

大輔「それは悲しいことだったね。」

大輔「なんだったら僕の父さんを貸してやってもいい。僕たちは兄弟ってことにして。」

祐樹「荒川君・・・。」

・・・
2年生からこの学校に転校してきた中沢祐樹。幼稚園と小学校1・2年生のクラスメートと再会した。

大輔「久々に会えてよかった。元気そうで。」

祐樹「うん。」

祐樹「ねえ、荒川は好きな子いるの?」

大輔「好きな子、というか気になる子はいる。」

祐樹「高翌梨さんか」

大輔「いや、あいつとは別になんとも思ってないし・・・」

祐樹「毎日一緒に登校してるのに? 気になる子がいるとしたらその子以外いるの?」

大輔「まあ、好きか嫌いかで言ったら、好きだ。」

祐樹「そうか。正直でよかった。」

祐樹「実は俺にも好きな子がいるんだ。相手は言えないけど。」

大輔「へえ、もしかして俺に恋愛相談。悪いけど俺恋愛には詳しくないんだ。」

祐樹「だよな。荒川君に恋愛相談するわけにはいかないしな・・・。」

俺はその数週間前から中沢の視線が気になっていた。
さらに中沢は彩花のこともよく見るようになっていた。

それとさっきの会話から察するにつまり・・・

大輔「そういうことか。」

中沢は彩花のことが好きなんだと悟った。

・・・
大輔「中沢、ちょっと顔貸せ。」

祐樹「う・・・」

体育倉庫

大輔「最近俺のことをよく見てるみたいだし、さらに彩花のこともよく見てるみたいだな。」

大輔「お前が誰が好きなのか、なんとなくわかった。」

大輔「お前、彩花のことが好きなんだな。」

祐樹「え?」

大輔「それで彩花と仲がいい俺のことを憎んでいるんだろう。」

大輔「まあ、確かに俺もあいつのことが気になる存在だ。妹とか、ただの幼馴染だと思ってたけど、最近異性として気になるようになってきた。」

大輔「だけど彩花に近づくなとは言わないさ。彩花もお前のこと好きかもしれないしな。」

大輔「だったら俺たちは良きライバルでいようぜ。」

大輔「お前が俺に嫉妬して憎んでいるなら仕方ないし、それをやめろという権利は俺にはない。」

大輔「でも図々しいかもしれないけど、俺と彩花が付き合うようになったら、お前に応援すてほしいな、って思ったり。」

祐樹「・・・」

祐樹「荒川君、本当にいい奴だな。俺が荒川君を憎むわけないよ。」

大輔「それはよかった。じゃあ俺たちはどっちが選ばれても憎み合いなし、良きライバルでいよう。」

祐樹「俺が好きなのは高翌梨さんじゃない。」

大輔「え?彩花じゃないんなら誰なんだ?」

大輔「・・・まさか俺が他に片思いしてる女子がいることを知っているのか?それでお前もそいつが好きと。」

大輔「なんてことだ。クラスの誰にも気づかれてないと思ってたのに・・・」

祐樹「俺が好きなのは・・・荒川君なんだ。」

大輔「え?」

祐樹「俺は荒川君が好きだ。」

大輔「冗談だろ。俺たち男同士だぞ。」

祐樹「男でもいい。俺、ずっと荒川君のことが好きだった。」

祐樹「幼稚園から小学校2年生のころ、一番の友達といえる存在だったし。」

祐樹「転校してきて再会して、そしたら荒川君がこんなにかっこよくなってて。」

祐樹「俺、昔から男子を好きになっちゃう性質だったんだよね。」

祐樹「それで荒川君と仲がいい高翌梨さんに嫉妬して、憎んでたって言っても嘘ではない。」

大輔「そうだったのか。正直、男同士だから無理ってことはないけど。」

大輔「少し考えたい」

・・・
大輔「相談があるんだ。」

大輔「俺、告られた。男に・・・。」

彩花「えー?」

大輔「モテる男は辛いって言うけど、男にモテる男はもっと辛いわ。」

大輔「なんで俺、男にモテるのかな?別に嬉しくないのに。」

大輔「彩花にとってはこういう展開が好きなのかな。」

彩花「うん・・・ちょっと・・・」

彩花「誰に告白されたの?」

彩花(まさか北野君?いや、北野君の他にも・・・)

大輔「中沢」

彩花「そう。」

大輔「俺、中沢のことただの旧友とか、幼馴染にしか思ってなかった。ましてや男同士なんだし。」

大輔「だからどう答えていいのだか・・・」

彩花「大輔君って他に好きな人いるの?」

大輔「うん。」

彩花「ならば正直にそう伝えればいいと思うよ。」

大輔「そうか。」

・・・
彩花「北野君、今日の決闘はひとまず中止、というか延期になるかも。」

圭一「え?まさか逃げるのか?」

彩花「いや、もう1人参戦しそうなんだよね。」

圭一「もう1人参戦?どういうことだ?」

彩花「大輔君が好きな人、それも男の子が他にいてね。今からその人と話をしようと思って。」」

圭一「そうなのか。荒川君って男子にモテるんだな。」


彩花「ねえ、中沢君。大輔君のことが好きって本当?」

祐樹「本当」

彩花「そうか。つまり私たちはライバルってことだね。私だけじゃなく、北野君とも。」

祐樹「北野?」

彩花「そう。北野君も大輔君のことが好きで、実は今日の夕方2人で決闘をすることになってたの。」

祐樹「決闘だって?」

彩花「うん。だから中沢君も参戦して、3人で決闘ってことにしようと思って。」

彩花「もちろん今日だと中沢君の心の準備ができてないと思うから、明日に延期してもいいんだけど。」

祐樹「わかった。俺も高翌梨さんが荒川君のことが好きなのをわかってたんだから、そのくらいの覚悟はできてた。」

祐樹「その決闘を受けよう。明日な。」

彩花「明日だね。」

彩花「そういうわけで、決闘は明日、3人で行うことになりました。」

唯「まさか三角関係どころか四角関係だったとはね。」

唯「これではあやちゃんが不利になりそうだけど、魔法を使えばなんとか。」

彩花「魔法か・・・」

・・・
翌日夕方

唯「中沢君って魔法の能力とかはないの?」

祐樹「うん。」

唯「ならば公平にするために中沢君にも妖怪にとりついてもらいましょ。」

これで3人の戦力は互角に


唯「そうだ。決闘しなくても、3人で一緒に告白して、選んでもらうって手もあるわね。」

彩花「それは無理だよ。」

圭一「目の前で2人がくっついて、捨てられるほうのダメージがでかい。」

彩花「それより大輔君が一番辛い思いする。大輔君は誰かが自分を取り合ってるとこなんか見たくない、そういう人だから。」

祐樹「もしどちらか選んで付き合いだしても、絶対うまくいかないと思う。」

唯「そうだろうね。荒川君はそういう人だ。」

唯「ならば誰が告白するか、決闘して決めるしかないわね。」

彩花「そうだね。」

唯「今回の決闘、HPが切れたら負け。2人が脱落するまで続け、最後まで残った1人の勝ち。」

唯「いわばこれは聖杯戦争。」

圭一「3人じゃ聖杯戦争ってほどの規模じゃないけどな。」

彩花「わたしは大輔君のことが好きなの。幼稚園のころは大輔君のお嫁さんになるって約束したくらいだし。大輔君はそのこともう忘れてそうだけど。」

彩花「相手が男の子だろうと、大輔君だけは誰にも渡さない。」

圭一「そうだったのか。幼いころの可愛い婚約だな。」

圭一「高翌梨さんは荒川君の幼馴染だからね。本来先に荒川君に告白する権利は高翌梨さんにあるだろう。」

圭一「でも僕も荒川君が好きだ。たとえ荒川君の幼馴染でも、絶対に渡したくない。」

祐樹「幼馴染って1人忘れてないか。俺も荒川君とは幼稚園からの仲で、たった1人の大切な親友。」

祐樹「負けたくはない。」

彩花「大輔君はわたしの物!」

祐樹「いや、俺のだ!」

圭一「いや、僕のだ!」

そして始まった高翌梨彩花vs北野圭一vs中沢祐樹、魔法少女と妖怪の力をもつ魔法少年の戦闘。

しかし開始してまもなく、このままでは決着がつかないと思ったのか唯ちゃんが勝負を中断する。

唯「待った!」

圭一「待ったはなしだよ。」

唯「いや、一応審判はあたしだから。」

唯「やっぱり3人じゃ戦いにくそう。ここはリーグ戦にしよう。」

唯「3人で総当たり戦。それも想定してくじを用意したんだ」

圭一「くじ?」

唯「対戦順を決める抽選。1、2、3の番号が書いたくじがあるから、まず1番と2番が対決ね。」

唯「続いてその負けたほうが3番と対戦。」

抽選の結果、1番中沢祐樹、2番高翌梨彩花、3番北野圭一となった。

唯「ということは1回戦は中沢君とあやちゃんのカードね。」

そして始まった私と中沢君の決闘。
これは喧嘩というより、心理戦だった。誰が一番大輔君への思いが強いか。
私は誰よりも大輔君を愛してる。その思いから、私はこの最初の戦いに勝利した。

唯「中沢君、このあとどうする?次の試合は明日にしてもいいんだけど。」

祐樹「いや、ちょっと休憩したらすぐ始める。」

祐樹「勝負はこれからだ。」


2回戦、北野君と中沢君の決闘。
北野君のターンが続いたが、その後は中沢君のターン。

祐樹「俺は負けたくない。負けるもんか!」

圭一「男にだって、女にだって、荒川君は渡したくない・・・」

だが北野君の妖怪の力は予想以上だった。結果、北野君が勝利した。

これで北野君と私の一騎打ちに。

唯「最終戦、果たして大輔君はどっちのもとになるんでしょうか?」

彩花「妙な実況だね。」

運命の3回戦、私と北野君の決闘。

北野君はもはや自分の意志で私を攻撃していた。

圭一「憎い・・・、憎い・・・、憎い!」

妖怪の力は恐ろしかった。しかし私も魔法少女、簡単にはやられない。

圭一「いいんだ。高翌梨さんを[ピーーー]くらいなら、僕は荒川君を諦める・・・」

そう口で言っていても、北野君は大輔君を諦める気はないことは明白。

唯「強い・・・。これはあやちゃん絶対勝てない・・・」

唯「でもあやちゃんも強い・・・。」

私は北野君に必死で食らいつく

彩花「わたしの大輔君への想いは魔法や妖怪なんかより強いの。誰にも負けない!」

互角の戦いを続けてきたが、僅かに北野君が上回った。
私のHPが切れた。

唯「勝者、北野圭一。」

圭一「僕、勝ったのか?」

彩花「わたしの負けだね。北野君強いな。」

圭一「勝った気がしねえよ。」

彩花「え?」

圭一「確かに決闘に勝ったのは僕だが、荒川君への想いは高翌梨さんのほうが強かった。」

・・・
「わたしは大輔君のことが好きなの。相手が男の子だろうと、大輔君だけは誰にも渡さない。」

「わたしの大輔君への想いは魔法や妖怪なんかより強いの。誰にも負けない!」

これで北野君と私の一騎打ちに。

唯「最終戦、果たして大輔君はどっちのもとになるんでしょうか?」

彩花「妙な実況だね。」

運命の3回戦、私と北野君の決闘。

北野君はもはや自分の意志で私を攻撃していた。

圭一「憎い・・・、憎い・・・、憎い!」

妖怪の力は恐ろしかった。しかし私も魔法少女、簡単にはやられない。

圭一「いいんだ。高翌梨さんをころすくらいなら、僕は荒川君を諦める・・・」

そう口で言っていても、北野君は大輔君を諦める気はないことは明白。

唯「強い・・・。これはあやちゃん絶対勝てない・・・」

唯「でもあやちゃんも強い・・・。」

私は北野君に必死で食らいつく

彩花「わたしの大輔君への想いは魔法や妖怪なんかより強いの。誰にも負けない!」

互角の戦いを続けてきたが、僅かに北野君が上回った。
私のHPが切れた。

唯「勝者、北野圭一。」

圭一「僕、勝ったのか?」

彩花「わたしの負けだね。北野君強いな。」

圭一「勝った気がしねえよ。」

彩花「え?」

圭一「確かに決闘に勝ったのは僕だが、荒川君への想いは高翌梨さんのほうが強かった。」

・・・
「わたしは大輔君のことが好きなの。相手が男の子だろうと、大輔君だけは誰にも渡さない。」

「わたしの大輔君への想いは魔法や妖怪なんかより強いの。誰にも負けない!」

・・・
ましてや僕は一度は荒川君のことをあきらめると思ってしまった。僕の荒川君への想いなんてこんなもんだ。

彩花「ううん。北野君の想いはわたしに十分伝わった。」

彩花「北野君、大輔君に告白してきなよ。勝ったのは北野君なんだから。」

圭一「そうだな。わかった。」

圭一「今回の決闘、勝ったのは僕だけど、まだ勝負はついてないよ。」

圭一「僕が荒川君に告白しても、荒川君が僕を選ぶとは限らない。」

圭一「それにこの時点でもまだ高翌梨さんのほうが有利だろうね。」

圭一「荒川君が好きなのは、多分高翌梨さんだろう。」

彩花「そんなことないと思うよ。大輔君はわたしのことを、ただの妹か、幼馴染にしか思ってないし。」

彩花「わたしは決闘に負けたし、大輔君と北野君が付き合うようになっても、素直に応援するから。」

彩花「正直わたしは大輔君が誰と付き合うことになっても許せるくらい、大輔君のことが好きだし。」

彩花「大輔君と2人で切磋琢磨しあってきた北野君なら全然OKだよ。もちろん中沢君でも。」

圭一「そう。ありがとう。」

圭一「じゃあ玉砕覚悟で行ってくる。」

・・・
圭一「実はさ・・・」

圭一「僕は荒川君にすごく感謝してるんだ。僕をいじめっ子からかばってくれたし、学年ビリから抜け出せたのも荒川君のおかげなんだ。」

大輔「前転校するときもそんなこと言ってたな。まさかまた転校しちゃうのか?」

圭一「そうじゃないんだけど。」

大輔「じゃあなんでいきなり。」

圭一「このままずっと荒川君といられるか不安になって。」

大輔「いられるさ。だって俺とお前は小学校のときかたずっと学力が同じくらい、テストの点もいつも僅差。」

大輔「ならば高校も同じとこに行けるんじゃないかな。」

圭一「そうだよね。」

大輔「俺も感謝してる。北野が俺についてきてくれて。俺も北野のおかげでビリから抜け出せたからね。」

圭一「僕はずっと前から、荒川君のことが好きだ。」

大輔「え?」

圭一「友達とかじゃなくて、恋愛的な意味で。」

大輔「あの、俺たち男同士だよね?」

圭一「男同士でもいい。僕は男が好きなんじゃなくて、君のことが好きなんだ。」

大輔「ありがとう。すっげー嬉しい。北野がそんなこと言ってくれるなんて。」

大輔「でもごめん。俺、好きな子いるんだ。小さいころからずっと一緒だった。」

圭一「そうだよね。知ってた。」

圭一「その子のこと、幸せにしてあげて。」

大輔「わかった」

大輔「俺たち、友達以上恋人未満の関係でいよう。」

・・・
大輔「こないだの答えなんだけど、俺は他に好きな人がいる。だからごめん。」

祐樹「そうか。」

大輔「でもありがとう。俺のこと好きでいてくれて。俺もお前のこと、友達として好きだ。」

大輔「友達以上恋人未満の関係でいたいと思う。」

祐樹「それでいい。」

祐樹「高翌梨さんのこと、幸せにするんだぞ。」

・・・
圭一「というわけで、高翌梨さんの勝ちだ。やっぱり荒川君が好きなのは高翌梨さんだ。」

彩花「わたし、ずっと大輔君はわたしのこと女の子として見てくれてないと思ってた。わたしの片思いだった。」

彩花「今は想いが通じたのかな?」

圭一「そうだね。」

彩花「北野君の大輔君への想いも伝えられたね。」

圭一「でも・・・、フラれちゃった。とても悲しい・・・」

圭一「でも高翌梨さんなら仕方ないよ。こんな僕にも優しくしてくれるくらいいい人だし。」

圭一「荒川君が高翌梨さんのこと好きな気持ちわかるな。僕も女の子のことが好きだったら、高翌梨さんを好きになってたかも。」

彩花「なんか照れるな。」

圭一「荒川君とたかなしさんが幸せなら、僕は荒川君のことをあきらめる。」

祐樹「俺もだ。本当は高翌梨さんのことが好きな、荒川君が好きだったんだ。だから高翌梨さんと荒川君が幸せなら、俺も幸せ。」

彩花「ありがとう。」

圭一「それでも荒川君と1回くらいデートしてかったな」

彩花「そうだ」


私は大輔君を追いかける

彩花「ねえ大輔君」

大輔「彩花か、なんだ?」

彩花「中沢君と北野君とデートしてあげてくれないかな?」

大輔「なんで男とデートしなきゃいけないんだ?」

彩花「中沢君と北野君に1つ、思い出を作らせてあげたいなって思って。」

彩花「わたしのことは気にしなくていいから」

大輔「そうか」

彩花「ほら、たまには男の子同士でどこか遊びに行くのも楽しいんじゃない」

大輔「そうだな」

第5話 おわり

第6話

・・・
とある遊園地

大輔「そういえば初めてだな。お前と遊びに行くの。」

圭一「荒川君と来れて嬉しい。」

祐樹「この3人で行くのもいいな」

大輔「ここは両親と彩花とよく遊びに来たな。」


彩花「ここはわたしの思い出の場所でもある遊園地」

彩花「唯ちゃんやかなちゃんと来るのは初めてだね。」

唯「でもなんで私を誘ってくれたのかな、って思ったけど、荒川君と北野君と中沢君のデートが見れると聞いたら見に行くしかないでしょ。」

彩花「わたしが1人で見てるだけだと3人の邪魔になりそうだから、唯ちゃんも誘ったんだ。」

香苗「ぼくはいつもお兄ちゃんたちの絡みをいつも見てるけど、同級生ライバルコンビってのもいいよね。」

祐樹「でも3人だと誰か1人が邪魔になりそうだよね。」

祐樹「俺は見てるから荒川君と北野君の2人きりで話してきなよ。」

祐樹「そのあと俺に変わってくれればいい。」

大輔「そうだな。」

圭一「さあ、次はあれに乗ろう」

大輔「うん」

今日の北野君は今まで見たこともないような笑顔だった。
大好きな大輔君とのデートだもんね。
中沢君に、大輔君も楽しそう。

彩花「北野君楽しそうだね」

香苗「ぼくたちも行こう」

唯「いいなぁ。イケメンの男の子同士って。」

唯「でもそこにあたしはいらないんだよね。」

彩花「わたしもすごくそう思う。なんていうか男の子に生まれたかったな、って。」

彩花「だけど女の子に生まれたからBLを美しいと思えたんだと思うだ。」

由紀「そこにいるのは彩花ちゃんたち」

彩花「由紀ちゃんも遊びに来たの?」

由紀「パトロールよ。いわば奉仕活動。」

由紀「あなたも魔法少女ならそのくらいしないといけないわよ。」

由紀「それよりさっき荒川君と北野君と中沢君も見かけたんだけど、一緒にいなくていいの?」

彩花「今日はいいの。男の子同士で楽しませてあげたいんで。邪魔しちゃ悪いから。」

由紀「そう」


祐樹「実は荒川君と2人で話がしたいと思ってたんだ。」

祐樹「今日は相談っていうか、俺の母と姉のことなんだけど。」

大輔「相談ってなんだ?」

祐樹「奇跡ってあるのかな?」

大輔「奇跡?」

祐樹「俺の母さんと姉ちゃん、2人が今生きてるのは奇跡みたいなもんなんだよね。」

祐樹「実は俺、小学校5年生のときにちょっとお腹が痛くなって病院に行ったんだよ。」

祐樹「原因はただの食べ過ぎだったんだ。笑っちゃうよね。でも笑えないことが起きた。」

祐樹「そのとき偶然調子悪かった母さんも診てもらったんだけど、そしたらガンが見つかったんだ。」

祐樹「ギリギリセーフだった。もし俺が食べ過ぎでお腹壊してなかったら母さんは助からなかったかもしれない。」

祐樹「今は癌から回復して元気に暮らしてる。」

祐樹「母さんはなんとなく俺に感謝してるようだけど、そんなの単なる偶然。」

祐樹「どちらかといえば母さんは自分の行いがよかったから神様に救われたんだと思う。」

祐樹「母さんは昔骨髄バンクに登録して、そしたらその1年前、俺が小4のときに俺と同い年の女の子が白血病になって、母がドナーとして一致した。」

祐樹「母さんは白血病の小学校4年生の女の子のドナーになって命を救ったんだ。だからそのご褒美みたいなもんだ。」

大輔「へえ。そういうこともあるんだな。」

祐樹「次に姉ちゃんのことなんだが、桜ヶ丘航空の墜落事故。」

大輔「ああ、今年の夏か。それがなんか関係あるのか?」

祐樹「実はあの飛行機に、姉ちゃんも乗ることになってたんだ。」

大輔「なんだって?」

祐樹「友人と旅行に行くことになってて、帰りに予約してたのが例の便。」

祐樹「ところが出発の1週間前、母さんが風邪をひいちゃって、それを姉ちゃんにうつして高熱。」

祐樹「やむを得ず姉ちゃんだけ旅行はキャンセルした。」

祐樹「そしたら乗るはずだった飛行機があの事故だ。乗員乗客全員死亡。」

祐樹「風邪をひいて旅行に行かなかった姉ちゃんは助かったわけだ。」

大輔「それはよかったね。」

祐樹「それがよかったとは言えない。旅行に行った姉ちゃんの友達は亡くなった。」

祐樹「自分だけ偶然助かってしまったことを、喜べるわけがない。」

祐樹「姉ちゃんはあれ以降クラスメートからまるで人殺しみたいな白い目で見られているとのことだ。」

祐樹「ついに学校を休むようになった。俺はなんて言ってやればいいのかな、って。」

大輔「そうか。」

大輔「そういうのは時間が解決してくれるんじゃないかな。お前のお姉さんだけでなく、事故で亡くなった人の遺族も。」

祐樹「そうするしかないね。」

祐樹「なんていうか、俺も荒川君と話せてすっきりした。」

大輔「さあ、次行こう。」

・・・
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

圭一「今日はありがとう。すごく楽しかった。」

大輔「こちらこそ、楽しかった。」

祐樹「今度は高翌梨さんとデートしてあげて。」

大輔「そうだな。彩花と2人きりって意外にないんだよな。」

圭一「僕に荒川君とデートさせてくれた高翌梨さんにお礼を言わないとね。」

圭一「荒川君には誰よりも自分のことを思ってくれる子がいていいな。」

・・・
中2の冬休み

大輔「こうやって2人で遊びに行くの久しぶりだね」

彩花「そうだね。やっぱり大輔君と一緒だと楽しいな。」

ここは大輔君との初デートの場所でもあった

大輔「小さい頃の思い出は、大輔君との思い出でもあるんだよね。」

ずっと私のことをただの幼馴染にしか思ってくれなかった大輔君が、1人の女の子として見てくれるようになった。

彩花「わたしたち、これからもずっとこのままでいれるのかな。」

大輔「そうだな。今の関係でいれたらいいな。」

彩花(わたしは、できれば恋人同士になりたいな。)


この日は冬なのに花火大会をやっていた。

彩花「わたし・・・、好きだよ。」

大輔「俺も好きだ。」

彩花(え?)

大輔「・・・花火」

彩花(なにそれ、ラブコメのお決まりの発言。)

冬なのに花火やったのはこの展開にするためだったのね。

・・・
中2 冬休み明けの3学期の席替え

わたしの隣は中沢君
大輔君は2年生の2学期に転校してきた由紀ちゃんの隣の席になった。


中学生になって、私は恋をした。

今まで普通に接してきた男の子に初めて心を奪われた。
相手は荒川大輔。幼稚園のころから接してきた男の子。

幼馴染を好きになってしまったのはある意味おかしいかもしれない。
誰かに相談したくても、できない。笑われてしまいそうで。

大輔君とは今までどおり普通に接していきたい。
だけど恋をしてしまうと、どうしても特別に意識してしまう。
恋はこんなにも辛いものなのか。

大輔君は小学校時代の運動音痴とは対照的に、今は野球部のレギュラーになってる。

・・・
彩花「彩ちゃん」

彩花「恋の相談なんだけど。」

彩花「わたし、今好きな子がいるんだよね。」

あや「そう。相手は多分、大輔君だね。」

彩花「図星か。」

彩花「あの子以外考えられないじゃない。」

あや「私も好きな人ができて去年告白したけど、フラれちゃったのよね。」

あや「だから今は好きな人いない。」

あや「あれから恋をするのが怖くなっちゃった。」

あや「すごく好きだったから。多分今でも好きだと思う。」

彩花「そうなんだ。」

あや「でも彩花ちゃんの恋は実ると思う。だって誰よりも可愛い彩花だもの。」

あや「彩花が嫌いな男子なんていないって」

・・・
彩花「達也」

私の弟の達也

彩花「達也は好きな女の子とかいる?」

達也「いるよ。」

彩花「え?誰?」

達也「彩花お姉ちゃん」

彩花「クラスメートとかで、好きな子いないの?」

達也「いない。僕はお姉ちゃんたちが大好きだから。」

彩花「そうか。」

彩花「わたしは今クラスメートに好きな子がいるんだ。」

達也「そうなんだ。」

達也「恋してる女の子って素敵だと思う。」

達也「僕は彩花お姉ちゃんのどんなところも好きだけど、恋してるときはなお輝いてるね。」

彩花「えー。恥ずかしいよ。」

秋、思わぬライバルが現れた。
1人は北野圭一。小学校のころから大輔君と仲のよかった北野君も彼のことを好きになっていた。
もう1人は中沢祐樹。大輔君の幼馴染の1人。

私は中沢君、北野君と争った。2人の恋は報われることはなかった。
今は2人とも私の恋を応援してくれている。

北野君のためにも、私は幸せにならなければならない。

・・・
圭一「僕が荒川君を高翌梨さんに告白させるよう仕向ける。」

彩花「いや、わたしが告白するって。」

圭一「なんでだ。男が告白しなきゃダメだろ。好きな女の子に告白できない男はダメだ。」

彩花「わたしから告白しない限り、大輔君を自分のものにできないと思う。」

彩花「それにわたし、幸せは自分でつかみたいから。」

・・・
2月上旬

彩花「よし! 告白をしよう!」

古臭いやりかただが、バレンタインデーにチョコレートをあげて告白することにした。

彩花「唯ちゃん、わたしとチョコ作ってくれないかな?」

唯「ちょうど良かった。私も誰かにチョコあげようと思ってたんだ。」

唯「誰にあげるかは言えないけど。」

彩花「わたしは・・・、今思いを寄せてる男の子に告白したくて。」

唯「相手は誰だかわかるな。多分D君でしょ。」

彩花「やっぱりわかるか。」

唯「かなちゃんも渡す相手いるんだって。」

・・・
それはバレンタインデーの2日前、突然訪れた。

由紀「あやちゃんに相談があるの。恋の相談。」

彩花「恋の相談?」

由紀「私、荒川君のことが好きなんです。」

彩花「え?」

由紀「私、バレンタインデーに荒川君にチョコを渡して告白しようと思います。」

彩花「・・・」

由紀「そういえば彩花ちゃんは、こないだ北野君と荒川君をかけて決闘したんだって?」

彩花「よく知ってるね」

由紀「クラスの噂になっていたんで」

由紀「ならば、私とも荒川君をかけて決闘しましょうか?」

彩花「何?」

由紀「冗談です。そんなことしても荒川君は喜びません。」

彩花「そう。」

彩花「わたしも告白することにしたんだ。バレンタインデーに。」

由紀「そう。ならば勝負ですね。」

由紀「彩花ちゃんは荒川君の幼馴染だからね。私の先を越す権利があると思って、言っておきました。」


オラフ「それより君は今まで出番が少なかったのに、急に出番が増えてきたね。」

彩花「オラフ、いつの間に・・・」

由紀「そうみたいね。それが何か?」

オラフ「死亡フラグだよ。影の薄かったキャラに急にスポットライトが当たるってのは」

由紀「何また縁起の悪いことを・・・」

彩花「やめとこう。由紀ちゃんには死亡フラグとか通用しないんじゃないかと。」

由紀「そうかもね。でも恋の勝負、負けるのは由紀、君だろう。」

・・・
たかなし家

唯「あやちゃんは料理が上手だから羨ましいな。お姉ちゃんのほうのあやちゃんより上手いし」

彩花「それあやちゃん(姉)の前では言えないけどね。」



唯「チョコの形が完成したら、冷蔵庫に入れて1時間ほど待つんだよ。」

彩花「チョコ作りって初めてやってみたけど結構難しいんだね。」

唯「まあ今回は彩花ちゃんの恋を応援するためだから」


それから一時間ほどで、チョコの形は完成した。
型に入ったそれは、冷蔵庫の中で固まることを待つだけとなった。

彩花「わたしのチョコへ。美味しく固まってください」

私にとって、あのチョコレートは勝負の道具だ。

バレンタインまであと2日
私の恋の決戦まであと2日なのだ。

・・・
彩花「わたしは大輔君に告白するの。」

彩花「わたしは傷つくかも知れない。フラれるのは怖い。」

彩花「だってずっと好きだった男の子だし。」

あや「大丈夫。あやちゃんをフる男の子なんていないよ。だってこんなに可愛いんだし。」

彩花「でも今までわたしのことを女の子として見てくれてなかったからなあ。」

第6話 おわり

第7話

・・・
2月14日

目が覚めた。
今日、私は傷つくかもしれない。
だって、ずっと好きだったもの。怖いよ。
フラれるのは――恐い。

朝は早く起きて、シャワーを浴びた。
今日は少しでも可愛い自分でいるために。制服も、埃一つ見逃さない覚悟で綺麗にする。
今日は一番お気に入りの下着を着けてきた。自分にとっての勝負下着かもしれない。

――鏡を見る。
完璧だ。
完璧な私。今日の私は最高に可愛い。

冷蔵庫からチョコレートを忘れずにカバンに入れる。今日は教科書を全て忘れても、こればかりは忘れられない。

あや「彩花、今日はこっちをつけて行きな」

それは赤いリボンだった

あや「今日は彩花にとって勝負の日だからな」

母「そう、それがいいね。」

彩花「え~。派手過ぎない?」

あや「それぐらいでいいのさ。女は外見でナメられたら終わりだからね」

あや「ん、いいじゃん」

あや「完璧だ。今日の彩花は最高に可愛い。」

あや「どうしたんだ達也?」

達也「なんていうか、恋してる女の子って素敵だなって」

あや「ほほう。あんたも女のよさがわかったか。」

・・・
彩花「おはよう」

唯「お?可愛いリボン」

彩花「そ…そうかな?派手過ぎない?」

唯「勝負の日だからってリボンからイメチェンですかな?」

唯「可愛いなー!そこまでしてモテたいか。でも今日は許す。」

唯「でも今日は許す!行ってこい!」

香苗「これは義理なんだからね! って渡しちゃだめだよ。」

彩花「うん、ありがとう。」

私は魔法少女の卵だけど、恋に関しては魔法でもどうにもならない。
私の恋は実るのか。それとも儚く散るか。

通学路は、いつもとは違う雰囲気だった。

私と同じく誰かにチョコを渡して告白するのか、ドキドキしてる女子生徒。
チョコをもらえるかドキドキしてる男子生徒。
今まで特別に意識しなかったからだろう。
バレンタインデーという日が、ここまで思春期の男女を惑わすなんて。


その日、隣の席の中沢君、そして北野君と話した。

祐樹「今日、荒川に告白するんだってな。」

彩花「うん。でもフラれるのが怖い。」

祐樹「大丈夫だよ。高翌梨さんは誰が見てもとても可愛い、必ず上手くいく。」

圭一「僕はたかなしさんと出会ってから本当に色々と救われてんだ。君の言葉、一つ一つに。どこまでも優しい君に。そんな高翌梨さんが振られるなんてあるはずがない。」

圭一「僕はたかなしさんに負けた。高翌梨さんじゃ負けても仕方ないと思えた。」

祐樹「俺はたかなしさんだから荒川のことをあきらめたんだ。だからたかなしさんと荒川君が幸せになってもらわなきゃ俺も困る。」

彩花「ありがとう。」

圭一「僕はバレンタインデーに同級生の女子にチョコをもらったことなんてない。まあ別に欲しくないさ。今まで荒川君一筋だったからね。」

祐樹「俺もだ。男以外好きになったことない。」



彩花「大輔君、放課後体育倉庫裏に来て。」

大輔「わかった。」

・・・
放課後


ドキドキする。心臓が最高潮に達した。

大輔「彩花、お待たせ」

大輔「何の用だ? ってなんとなく想像つくけど」

そこにはあこがれの人がいた。
体育倉庫に大好きな2人きり・・・

彩花「あの、これわたしの本命チョコ・・・」

大輔「本命チョコ?」

彩花「わたし、大輔君のことが好き。」

彩花「幼馴染とか、兄弟ではなく、もっと別の意味で・・・」

彩花「男の子として、あなたのことが好きです。」

勇気を振り絞って言った一言。

沈黙。
永遠にも思える、沈黙。
聞こえるのは帰り道の生徒の声と、部活動に生徒たちの喧騒だけ。
それすらも、私には聞こえなかった。

顔をあげて、彼の顔を見るのが

「・・・」

声を聞いて、顔をあげる。

「──────」

なにも、聞こえない。
聞きたくない。

大輔「気持ちは嬉しいけど、俺、他に好きな人がいるんだ。」

大輔「俺、福原さんのことが好きなんだ。だからごめん。」

そんな声聞きたくない・・・。

それからの帰り道は、覚えていない。
泣いていたのか。
笑っていたのか。
否、笑ってはいないだろうな。
悲しいことが、あったんだから。

唯「あやちゃん」

彩花「唯ちゃん」

彩花「う・・・うえーん」

唯「よしよし。大丈夫だよ。あやちゃんをフったなんて荒川君もったいないことしたね。」

唯「大丈夫だよ。私がいる。」

・・・
由紀「荒川君」

由紀「私、荒川君のこと好きなんです。これ受け取って。」

大輔「ありがとう。俺も福原さんのことが好きだったんだ。」

由紀「嬉しい・・・」

由紀「でも高翌梨さんにも告白されたんだよね?」

大輔「うん。正直に言った。俺は福原さんが好きだって。」

大輔「実は恥ずかしいけど一目惚れだったんだ。福原さんが転校してきた最初の日から、ずっと片思いしてた。」

由紀「私も一目惚れだったな」

・・・
家に帰ってからも部屋で1人で泣いていた。
こんなに泣いたのは生まれて初めてだった。

家に帰ってから届いた彼のメール

・・・
俺にとって彩花はパーフェクトな存在だった。
俺も彩花のことを1人の女の子として見ていた。だけど・・・

幼馴染じゃなかったら、君と付き合ってたんだろうな・・・

本当ごめん

・・・
彩花「なんでわたしを振った理由がよりにもよってそんな理由なの・・・」

そのメールをみてまた泣いた

母「今日は彩花のの好きなもの作ってあげるからね・・・」

夕日が沈み、もうすぐ夜になっていた。

食欲もなかった。
そんなとき

達也「そっとしておいてあげたほうがいいのかもしれないけど、僕は女の子が泣いてるのを見ると放っておけないんだ。」

達也「今日は僕がそばにいてあげるよ。」

あや「私もそばにいていいかな?」

達也「お姉ちゃんはいつかきっと幸せになれると思うよ。」

達也「泣かないで、お姉ちゃん。」

彩花「優しいね」

達也「僕の大好きな人が悲しんでいると僕も悲しいから。」

私は弟に慰められた。

あや「あたしも彩花ちゃんが泣いてるところ見るの悲しいよ。」

あや「だから泣かないで」

あや「でも本音を言うと・・・」

あや「あたしも一緒に泣いていいかな?」

あや「だって、彩花の恋ずっと応援してたから、自分がフラれたときより辛いの。」

彩花「うん、一緒に泣いてくれる人がいたらいいな。」

あや「うえーん。」

そこには私以上に涙を流している姉の姿があった。
サッカー日本代表が負けて選手以上に泣いているサポーターとか、高校野球で自分の学校が負けて球児以上に泣いている女子生徒みたいなものかもしれないけど、
私のために私と一緒に泣いてくれてる彩ちゃんが心地よかった。

・・・

その日は久しぶりに姉と一緒に寝た。

彩花「あやちゃんもう寝たのかな?」

あや「彩花、まだ起きてたんだ」

彩花「あやちゃんも起きてたんだ」

あや「なんだか眠れなくて」

彩花「わたしも」

あや「ねえ、悲しい?」

彩花「時間が経ったからそれほど」

あや「泣きたい?」

彩花「うん。・・・ちょっと、泣きたいかな?」

あや「ねえ、泣いてるよね?」

彩花「・・・そう、かな・・・」

あや「彩花ちゃん、泣かないで…。」

彩花「涙が止まらないの・・・」

あや「彩花ちゃんが泣いてるところはみたくないよ」

彩花「毛布、かぶってるから・・・」

あや「やだ、にこにこしてない彩花ちゃんなんていやだよ。」

あや「うわーん」

彩花「あやちゃん・・・泣かないで・・・」

彩花「あやちゃん・・・ごめんね・・・」

「・・・」

あや「私より、彩花ちゃんの方が辛いのに…ごめんね」

彩花「いいの。ありがとう。」

・・・

その日は久しぶりに姉と一緒に寝た。

彩花「あやちゃんもう寝たのかな?」

あや「彩花、まだ起きてたんだ」

彩花「あやちゃんも起きてたんだ」

あや「なんだか眠れなくて」

彩花「わたしも」

あや「ねえ、悲しい?」

彩花「時間が経ったからそれほど」

あや「泣きたい?」

彩花「うん。・・・ちょっと、泣きたいかな?」

あや「ねえ、泣いてるよね?」

彩花「・・・そう、かな・・・」

あや「彩花ちゃん、泣かないで…。」

彩花「涙が止まらないの・・・」

あや「彩花ちゃんが泣いてるところはみたくないよ」

彩花「毛布、かぶってるから・・・」

あや「やだ、にこにこしてない彩花ちゃんなんていやだよ。」

あや「うわーん」

彩花「あやちゃん・・・泣かないで・・・」

彩花「あやちゃん・・・ごめんね・・・」

「・・・」

あや「私より、彩花ちゃんの方が辛いのに…ごめんね」

彩花「いいの。ありがとう。」

・・・
それでも数日間落ち込んでいた。

唯「あやちゃん、フラれちゃったみたいね。」

香苗「元気出して」

彩花「ありがとう。」

唯「初恋は儚いものね」

彩花「わたし、もう人を好きになることないかもしれない。」

香苗「今は、失恋した直後はそう思うかもしれないね。でもいつかまた新しい恋に巡りあえるよ。」

彩花「小さいころからずっと一緒だった大輔君の代わりなんているかな・・・」

こうして中学2年生の、高翌梨彩花の初恋は失恋した。

私はもう泣かない。いつかあいつを後悔させてやるんだと。
私をフッたことを。

私はいつか、大輔君以外の人を好きになるだろう。
大輔君以外の誰かと恋に堕ちる日がきっとくる。

1ヶ月後の3月14日

大輔「あの、これバレンタインデーのお返し」

1つの飴玉だった

彩花「ありがとう」

大輔「一応もらったんだからお返しはしないとと思って」

彩花「でもあれだけはっきりフラれたんだから、わたしは大輔君のことは諦めるよ。」


由紀「荒川君は私を選んだの。この勝負は私の勝ちってことね。」

彩花「そうだね。由紀ちゃんの勝ち。」

由紀「彩花ちゃん、荒川君はこれから私と付き合うことになったの。だから今後一切荒川君には手を出さないでくれる。」

彩花「え、そんな・・・」

大輔「ああ、俺たちの邪魔はしないでくれ。」

彩花「大輔君まで・・・」

・・・
物語にはどんでん返しがつきもの。スポーツには大逆転や番狂わせがつきもの。
最後の最後まで何が起こるかわからないのだ。

この物語におけるどんでん返し、番狂わせというのは、メインヒロインである彩花が恋愛面で負けてしまったことだろう。

オラフ「やっぱり本命が負ける波乱ってあるんだな。少女漫画で主人公がフラれるなんて未だかつてあっただろうか。」

彩花「波乱なんかじゃないよ。最初からわかってたこと。」

オラフ「わかってた?」

彩花「やっぱり、幼馴染は恋人にはなれないんだな。」

・・・
中学3年生に上がってから、私は由紀ちゃんから酷いいじめを受けた。
しかも、私が大好きだった大輔君まで私をいじめるのを手伝った。
さらに北野君も私をいじめる側に回った。

ある日学校に来ると、机に「史上最強バカウンコ 高翌梨[ピーーー]」と書かれていた。
そして椅子の上に大量の画鋲が貼り付けられていた。ボンドのようなものでとめられていたらしく剥がせなかった。

教師「始めるぞ」

教師「早く座れ!早く座る!」

男子「はい。・・・高翌梨、何やってるんだ?早く座れ。」

彩花「あの・・・」

男子「さっさと座れよ。みんな待ってんだろ。」

由紀「学年ワーストバカは座り方も知らないの?」

由紀「学年じゃなくて学校、いや県内、いや日本、いや世界、いや宇宙一頭が悪い高翌梨さん。」

教師「おーい、早く座りなさい。」

仕方なく画鋲がお尻に刺さらないようにして座ろうとしたら

彩花「痛い!」

私の前の席の大輔君に机を押されて椅子にお尻がつき、お尻に大量の画鋲が刺さった。
お尻が血だらけになった。

靴の中に画鋲を入れられたこともあった。
下駄箱に「バカ」「[ピーーー]」の張り紙をつけられ、靴を泥だらけにされたこともあった。

そしてある日は

大輔「いって!」

大輔君に無理矢理ぶつかられた。

由紀「携帯落ちたよ!」

大輔「あー、壊れた!」

大輔「どうしてくれるんだ?」

彩花「え?」

大輔「え、じゃねえよ。携帯が壊れたって言ってるんだよ。」

彩花「でもぶつかってきたの・・・」

大輔「は?俺のせいだって言うのかよ?」

大輔「どうしてくれるんだよ。これ限定モデルだぞ。」

大輔「チッ、しょうがねえな。3万でいいよ。」

彩花「え?」

大輔「明日までに3万持ってこい。」

大輔「無理ならお前の親に払ってもらうから」

圭一「絶対持ってこいよ!」

由紀「行きましょう」

由紀「じゃあね」

由紀「本当に限定モデルなの?」

大輔「そんなわけねえだろ。ていうかこれ本当は壊れてないし。」

由紀「酷いね。」

大輔「あいつから金を取るくらい安いって。」

彩花「友達の携帯を壊しちゃったんだ。弁償しなきゃいけないから、3万円貸して。」

お母さんに友達の携帯を壊したことを正直に話して3万円貸してもらった。翌日にちゃんと払った。

ある日の休み時間には由紀ちゃんと大輔君と北野君に鞄を回し投げされて、鞄を窓の外に捨てられた。
またある日の給食の時間には、由紀ちゃんに泥を入れられた。大輔君もそれを手伝った。

大輔「調味料でーす」

由紀「それ食べなさいよ」

またある日は砂を投げられた。

大輔「おりゃー」

あんなに優しかった大輔君が、あんなに私の味方になり、私の味方をしてくれていた大輔君が私の敵になった。

そして私は一人ぼっちになった。

靴の中に画鋲を入れられたこともあった。
下駄箱に「バカ」「[しねの張り紙をつけられ、靴を泥だらけにされたこともあった。

そしてある日は

大輔「いって!」

大輔君に無理矢理ぶつかられた。

由紀「携帯落ちたよ!」

大輔「あー、壊れた!」

大輔「どうしてくれるんだ?」

彩花「え?」

大輔「え、じゃねえよ。携帯が壊れたって言ってるんだよ。」

彩花「でもぶつかってきたの・・・」

大輔「は?俺のせいだって言うのかよ?」

大輔「どうしてくれるんだよ。これ限定モデルだぞ。」

大輔「チッ、しょうがねえな。3万でいいよ。」

彩花「え?」

大輔「明日までに3万持ってこい。」

大輔「無理ならお前の親に払ってもらうから」

圭一「絶対持ってこいよ!」

由紀「行きましょう」

由紀「じゃあね」

こんなこともあった

由紀「彩花ちゃん、今日もよろしく。」

彩花「え?何を?」

由紀「テストに決まってるでしょ。テスト。」

大輔「またばっちりに教えてくれよ。」

彩花「でもバレたら・・・。今回はやめといたほうが・・・」

由紀「大丈夫だって。うちの教師とろいし。」

私にカンニングの手伝いをさせようとしていた。

由紀「あんたの大好きな大輔君が困ってるのよ。」

彩花「大輔君は関係ないでしょ。」

由紀「教えなきゃまたあんたを酷い目に合わせるわよ。」

彩花「・・・わかった。」

教師「じゃあテスト始めるから、机のものをしまって。」

彩花「大輔君もカンニングしてるの?」

大輔「そうだけど」

彩花「できは悪くっても不正だけはしなかったじゃない!」

彩花「0点取ったって、カンニングだけはしてこなかったでしょ」

大輔「だからなんだって言うんだ。」


女子「荒川君から」

そこのメモに書いてあったのは

「終わったら体育倉庫に来い。バックレたらマジころす。」

由紀「来なさいよ!」

彩花「やめてよ!」

大輔「来いって!」

大輔「これ結構効くんだよね」

彩花「うわー!」

スタンガンで攻撃された。

彩花「やめて!やめて!」

彩花「うわー!」

彩花「うわー!」

大輔「今日はこのくらいでいいんじゃね?」

由紀「そうだね」

大輔「でも明日もやるからな」

彩花「ウウッ」

その日の夜は大声で泣いた。

別の日も

彩花「痛い痛い痛い!お願いやめてよ!やめてよ!」

彩花「死にたくないんだよ!」

大輔「死ぬの怖い?」

彩花「怖い!死にたくない!」

彩花「死にたくないんです!」

大輔「死んだらこのいじめからも解放されるよ?」

大輔「まあ俺は死刑になりたくないから殺したりはしないけどね」

大輔君にもスタンガンで攻撃された。
というより、スタンガン自体大輔君の提案だったようだ。


大輔「俺が由紀にアドバイスしたんだよね。もっと酷いいじめじゃないと彩花は屈しないよってね。」

北野「でもなんでそこまで」

大輔「あいつは泣き虫だけど強いからね。これくらいやんないとダメなんだよ。」

北野「さすがにやりすぎじゃないか?死んでたかもしれないし。」

大輔「護身用だよ。死にはしないでしょ。」

大輔「でも結構バチバチ言ってたよな。フフフ。」

由紀「ねえ、いじめを手伝ってもらって悪いね。」

大輔「手伝ってないよ。俺が自分からあの彩花って女をいじめてるんだよ。」

大輔「まあ俺は愛する由紀のためならなんでもするよ。」

由紀「じゃあ今度デートに行かない?」

大輔「うん、行こう」


そしてある日

母「彩花、お友達からお電話。」

彩花「誰?」

母「大輔君」

なぜ大輔君から?
大輔君からの電話、ちょっと前なら喜んで出たけど今は話したくない・・・。

彩花「いないって言ってよ」

母「『いないって言ってよ』と言ってるわ。」

・・・
大輔「いないって言ってよと仰ってるわ、だって。じゃあいるってことじゃん、バカだね彩花の奴ww」

・・・
彩花「ちょっとなんてこと言うの!」

この母も何を考えているのかわからない。

彩花「わかったよ、わたしが出る。」

彩花「もしもし」

大輔「彩花?俺はあんたと話したくないんで、今由紀に代わるから。」

由紀「明日学校が終わったら、大輔君の好きな漫画買ってほしいんだけど。」

彩花「そんなの自分で買ってよ。わたし、あまりお金持ってないし。」

由紀「誰がお金払えって言った?」

彩花「どういうこと?」

由紀「お金がないなら、払わないで帰っちゃえばいいじゃない。」

彩花「万引きってこと?」

由紀「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」

彩花「でも、わたし明日用事あるんだ。」

由紀「逃げたらどうなるかわかってるよね?」

そこで電話を切られた。

私は逃げた。由紀ちゃんと大輔君からは酷い仕打ちを受けたけど。
実際に万引きをしてたらどうなってたかと思うと、それよりマシだ。

・・・
私はいつか、大輔君以外の人を好きになるだろう。
大輔君以外の誰かと恋に堕ちる日がきっとくる。

・・・わけがないじゃない
たとえフラれても、どんなにひどいいじめを受けても、私は大輔君を嫌いになることなんてできない。
大輔君以外の人を好きになることなんてできない。
きっと私はいつまでも大輔君のことを好きでいるだろう。

夏休み近くになると進学に響くと思ったのか、大輔君はいじめをしなくなった。

彩花「大輔君はどこの高校に行くの?」

彩花「できれば私と同じ東高に行ってほしいけど、やっぱり甲子園を目指して桐皇に行くのかな?」

彩花「でも桐皇じゃレギュラー取れないから普通の県立校に行くとも言ってたよね。」

大輔「どちらでもない。俺は他県の学校に留学する。」

彩花「え?なんで?」

大輔「由紀が中学を卒業したら、引っ越すことになったんだ。」

大輔「そしたらちょうど由紀の引越し先の県の学校から推薦の話があってね。」

大輔「俺は由紀についていくことにした。」

大輔「というのも理由の1つだが、俺も由紀が引っ越すからという理由だけで他県の学校に行ったりなんかしない。それじゃあ両親も納得しないだろう。」

大輔「だが俺の親父がその学校を気に入ってて、母さんも大賛成なんだ。」

彩花「う・・・」

大輔「って彩花!?」

私、泣いてる・・・
なんで私、泣いてるんだろう。

理由はわかる。大輔君が離れていってしまう。進学先まで由紀ちゃんに合わせた。
完全に大輔君を由紀ちゃんに取られてしまったんだ。

私には他県まで大輔君についていくことなどできない。姉と弟のことが心配だからだ。
家を離れることも不安だった。

・・・
そして1年が過ぎ、中学校の卒業式。
生まれた頃から一緒だった大輔君と登校するのもこの日が最後になる。

彩花「今日で最後だね。」

大輔「明後日、家を出ることになってる。」

彩花「そうなんだ。」

そして別れの朝

大輔「じゃあ、休みができたらまた帰ってくる。」

彩花「由紀ちゃんと仲良くやってね」

彩花「じゃあ・・・」

彩花「うえーん・・・」

大輔「彩花・・・」

涙が止まらなかった

彩花「ごめん。泣かないって決めてたのに・・・。笑ってお別れするって決めてたのに。」

彩花「でも大丈夫だから。すぐに慣れると思う。」

彩花「さようなら・・・」

さようなら、大好きな人。さようなら、私の初恋。

第7話 おわり

エピローグ

大輔君と由紀ちゃんは20歳で結婚し今年で結婚45年目。
4人の子供に恵まれ、長女と長男も結婚。もうすぐ孫もできるそうだ。

中沢君と香苗ちゃんと唯ちゃんも30歳までには結婚していた。
北野君は男性と同棲してる。ある意味同性婚というところか。
中沢君は女性を好きになれて無事に結婚できたことにホッとしている。

・・・
30歳を過ぎたころ

母「本当に結婚しないつもりなの?お見合いの話も断るなんて」

彩花「私、大輔君以外の人と結婚するなんて考えられない。それをしたら、大輔君を好きだったことを否定することになるから。」

母「なんて頑固なの。ちょっと、お父さんも説得しなさいよ。」

父「素晴らしいじゃないか。たとえフラれても、幼馴染の男の子を一生好きでいたいだなんて。」

父「自分の娘がそんな一途な子でよかったよ。」

母「何言ってるのよ。これではあなたも私も孫に会うこともできないのよ。」

父「それがどうした。どこの馬の骨かわからない男に彩花をやれるか。」

母「まさか、彩花が婚約相手を連れて来ても結婚に反対するつもりだったんでしょ?」

父「そんなことしねえよ。彩花が好きな相手なら喜んで結婚に賛成する。」

父「だが彩花は一生独身でいいって言ってるんだ。俺は彩花の意思を尊重する。」

母「彩も達也も結婚しないつもりよ。三兄弟揃って生涯独身なんて、こんな親不孝ある?」

父「独身のどこが親不孝だ。親不孝とは働かずに親の金で生きてるニートのことだ。」

父「しかし彩花はちゃんと働いている。むしろ生涯独身なら俺やお母さんを老後まで養ってくれると思うぜ。」

父「そうだろ?」

彩花「うん。そのつもりでいる。」

結局母も首を縦に振るしかなかった。

・・・
50歳を過ぎたある日、3ヶ月も生理が来てないことに気づく。もちろん妊娠なんてあるわけない。
つまり終わったんだ。閉経したことを意味した。私が子供を産める可能性が完全になくなった。
むしろ子供を産むことはもうないのに50歳まで無駄な生理が続いたことのほうが苦痛だった。もっと早く生理が終わればよかったのに。

そしてあれから50年が経った。
私は今年65歳、処女で独身のまま定年を迎えた。
同期入社で独身のまま定年退職した女は私1人だけだった。
同期の女性のほとんどは結婚して会社を辞め、私の他にもう1人定年まで働いた女性も結婚して子供も孫もいる。

私の人生は本当にこれでよかったのか。そりゃ幸せだったと言ったら嘘になるかもしれない。
小さい頃からずっと大輔君と結婚することを夢見ていたから。
でも大輔君にフラれたあの日から、ずっと大輔君を好きでいようと決めていた。
大輔君以外の男性と結婚することなんて考えられない。ならばずっと独身でいようと決めていた。
私はその中学生のときの言葉通り、最後まで大輔君を好きでいれてよかったと思う。

お見合いの話もあったがすべて断った。
ラブコメのお約束、ヒロインは決して主人公以外の男性と付き合ってはいけない。
負けたヒロインは一生独身でいなければいけないのだ。
なんてことはない。たとえ幼馴染は報われないことはわかっていても、生まれてからずっと大輔君が好きだった私は大輔君以外の人と結婚するなんて考えられないのだから。

両親は既に亡くなっている

あや「私たち、独身のまま生涯を終えるんだね。」

彩花「これでいいんだよ。できれば大輔君と結婚する人生が一番よかったけど。」

彩花「大輔君以外の人と結婚して長続きするわけないと思ってたから。」

彩花「何より、大輔君のことをずっと好きでいる。そのことを否定したくなかった。」

あや「私も。初恋の彼のことを今でも好きでいたい。そのためにずっと処女で、独身でいれてよかったと思う。」

彩花「三姉弟揃って独身。高翌梨家の子孫を私たちで途絶えさせちゃったことになるね。」

あや「父さんと母さんに、孫の顔も見せてあげられなかったし。」

彩花「仕方ないよ。お父さんとお母さんもわかっていたこと。」

・・・
それからさらに25年。90歳。

あやちゃんと達也君も亡くなり、残るは私1人だけ。その私の寿命ももう長くない。
今病院に入院している。その病院に勤めている医師は荒川大輝。大輔君と由紀ちゃんの息子である。

大輝「僕の父親は何年も前に亡くなってしまったんですが、父の古い友人であるたかなしさんを担当できたのは何かの縁なんですかね。」

彩花「そうですね。」

彩花「医者か。あなたのお父さんじゃ想像もできなかったな。小学校のときいつも学年最下位だったし。」

大輝「そうだったんですか?」

彩花「でもそれでもある人のおかげで、中学校では中の中くらいの成績にはなってたな。」

彩花「大輝君はいつも学年トップだったのかな?」

大輝「そうでもないです。上には上がいました。」

・・・
遺言書を書いた。遺産の受け取り人だが、両親も兄弟も既に他界し、旦那も子供もいない独り身の私に受取人などいない。
このままだと恐らく税金という扱いになるのだろう。

だから遺言書にはこう書いた。「遺産は医療の役に立ててほしい」。
小学生のとき、白血病になった。あるドナーの女性のおかげで私は救われた。
私にとってこれは小さな恩返しのつもりだ。

私の人生はいたって平凡なものだった。普通の学生生活を送り、普通に就職し、代表取締役まで出世して、定年退職まで勤めることができた。
これ以上の目標はない。
しかしそんな私でも叶わなかった夢。それは結婚。
どんなに充実した人生を送っていても、やはりこの夢が叶わなかったのだけは心残りだ。
でもそれは来世にとっておこう。

・・・
そして最期の日

大輝「高翌梨さん・・・」

彩花「わたしが言うのもなんだけど、家族と幸せにね。」

大輝「はい。」

彩花「旦那も子供もいなくて、一人で寂しく人生を終えることになると思ってたけど、最期に見たのがあなたでよかったです。」

彩花「できれば大輔君と結婚したかったけど、大輔君のお子さんに見送ってもらえるなら、いい人生の最後だったな。」

彩花(もし生まれ変われるなら、今度こそ結婚したいな・・・)

・・・
こうして高翌梨彩花の長くて短い人生は終わった。誰に見守られることもなく、強いてあげれば幼馴染の息子医師に見送られるだけだった。

たかなしさんには身内がいないため、葬儀と火葬は病院内で済まされた。
最後は俺に見送られていい人生だったと言っていた。その意味が今でもわからない。
本当は荒川大輔、すなわち俺の父親と結婚して幸せな家庭を築きたかっただろうに。
それだと俺の母親は高翌梨さんということになって、それはそれで複雑だが。

生涯独り身で、最後にかつて自分を振った幼馴染の、その息子に見送られることだけで幸せなんて、どんな幸せなんだろう?
俺にはそんなことでいい人生だったなんて言えるわけがない。
きっとたかなしさんだって、生涯独身の人生に満足してるはずがないんだ。

俺にできることはただ一つ。
神様、どうかたかなしさんが生まれ変わったら、今度こそ彼女が幸せな結婚生活が送れますように。

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