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調整屋
令「うん、ユニオンの広報に載せるネタが欲しいんだ。助手の桜子さんと一緒にここでの取材を許可してもらえないかな?」
桜子「 |人の感情を理解するいい機会になるだろうから是非手伝ってきなさいって、ねむに言われた| 」
みたま「どんな取材をするの? インタビューとか?」
令「そういうのは佐鳥ちゃんがやってるからね、観鳥さんは違ったアプローチがしたい。魔法少女の素顔に迫りたいんだ」
みたま「素顔?」
令「お客さんが来ている間、観鳥さんたちはどこかの物陰に隠れて隠し撮りを―――・・・こほんっ、もとい、観察をしたいんだ。ここは魔力を強化するだけでなく、相談所みたいな感じもあるからね」
みたま「う~ん・・・そういう取材の仕方はちょっとねぇ・・・」
令「や、やっぱり難しいかな・・・? 調整屋は秘密厳守だから」
みたま「そうねえ・・・」
令「そっか・・・」
トサッ
令「おっと、観鳥さん秘蔵の魔法少女パンチラ写真集をうっかり落としてしまった。これは危険な物だから、安全に保管してもらえる親切な人がどこかにいないものか」
みたま「あそこの二階の通路なら姿を隠せるしこっちも見えやすいし声も聞こえやすいわよぉ」
令「ははっ、そうこなくっちゃ!」
< みたまーっ! みたまーっ!
みたま「あっ、早速誰か来たわよ。早く隠れて隠れてっ」
令「よしきたっ、桜子さん、隠れるよ」コソコソ
桜子「 |うん| 」コソコソ
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鶴乃「うわーん! みたまーっ! 聞いてよーっ!!」
みたま「まあまあっ、鶴乃ちゃんどうしたの?」
鶴乃「やちよししょーったら酷いんだよ! わたしが引っ付こうとしたらそれを防いでさーっ!」
みたま「いつものことじゃない?」
鶴乃「違うんだよーっ! 最近は引っ付く前に気配を察知して回避状態になっちゃうの! わたしをあしらうのが日に日にうまくなっていってえ!」
みたま「あらあら、世知辛いわねえ」
鶴乃「わたしはこーんなにもやちよのことが好きなのにーっ! やちよはわたしのこと好きじゃないんだー! うわーん!」
みたま「うーん、そうかしらあ? こういうご時世だし、それにやちよさんってそもそもスキンシップをしたがるような人じゃないから、それだけで鶴乃ちゃんが好きじゃないってことにはならないと思うけどぉ」
鶴乃「そうかなあ・・・」
みたま「それじゃあこうしてみたらどうかしら。やちよさんが避けられないように、不意を突いて鶴乃ちゃんじゃない誰かをやちよさんに抱き着かせるの」
みたま「それでやちよさんがその人を引きはがそうとしたら、やちよさんは鶴乃ちゃんだけをあしらっているとは限らない証明になるんじゃないかしらぁ」
鶴乃「うーん・・・。そうかも」
みたま「そろそろ やちよさんが来るから早速やってみましょ」
--------------
みたま「はい、調整は終わり。もう起きていいわよ」
やちよ「ええ、ありがとう」
みたま「調整で魔力を強くするはいいけどぉ、もう歳なんだから無理しちゃだめよ~」
やちよ「報酬を踏み倒されたいのかしら」
やちよ「ところで みかげちゃんは元気? あんなに可愛い妹がいるってなんで今まで黙ってたのよ。ちょっとでいいから みかげちゃん をみかづき荘に預けてみない? みかげちゃんてお医者さんごっことか好きだと思うの」
みたま「ソウルジェムの中にわたしの料理を詰め込まれたいのかしら」
鶴乃「やっちよししょーーー! だーーー!」
ガバッ
やちよ「あぐっ?! ・・・ちょっと鶴乃! いつも言ってるでしょ! いきなり飛びつかないで! 暑苦しいのよ、引っ付かないで離れなさいっ」ググッ
鶴乃「にっひひ~。ひっついてないよ~」
やちよ「えっ・・・? じゃあ今飛びついてきたのは誰?」チラッ
いろは「えと・・・いろは、でした・・・///」
やちよ「あっ・・・そ、そう・・・」
いろは「はい・・・・///」ギュッ
やちよ「・・・・・」ギュ...
鶴乃「ええ~っ! ちょっと待って、なんでなんで~っ!? わたしが引っ付いたらいつも全力で剥がすのに、いろはちゃんだとなんで抱き返すの~っ!?」
やちよ「っ、そ、それは・・・あれよ・・・・・・・。答える必要はないわ」
鶴乃「納得いかないーっ! やっぱりわたしもひっつくーっ!」ガバッ
やちよ「ちょ!? や、やめなさい、さすがに二人も支えられない―――・・・あっ」フラーッ
いろは「きゃあっ!?」
鶴乃「わーっ?!」
ドワチャァ
みたま「あらあらぁ~」ニコニコ
令「う~ん・・・。一応撮ったけど・・・。ま、いっか、タイトルは『今日のみかづき荘日記』くらいにして、広報の隅っこにでも載せておくかな」
桜子「 |なんで? いろはが写ってるんだから、これがトップ記事じゃないの?| 」
令「桜子さん的にはそうかもしれないけど、我々ゴシップ部・・・じゃなかった、新聞部として大事なのはそうじゃないんだ」
令「大事なのは大衆の目を引くこと。それには、誰も予想すらしなかった事実を速報するとか、噂の真相を暴くとかさ。観鳥さんはそういう意外性が欲しいんだ。今のみたいなみかづき荘の日常なんて意外性ないだろ」
桜子「 |観鳥報は “今日のネコ日記” が一番の人気記事だけど| 」
令「いやまあ、そうなんだけどさ・・・。なんていうのかな。観鳥さんはもっともっと人気の出る記事が書きたいんだよ。意外性があって面白くって価値がある記事をさ」
令「そしていつかは観鳥さんにしかできない観鳥砲をぶっ放して世間を大爆発させたいんだよね。それが記者の本懐ってやつだよ」
桜子「 |なるほど| 」
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あやか「ごめんくださ~い」
みたま「は~い。あらー、あやかちゃん、いらっしゃ~―――・・・い゙っ?!」ビクッ
あやか「あ、今日は調整じゃなくて、ちょっと雫ちゃんと待ち合わせをさせてほしくて」
みたま「あ、う、うん・・・それは構わないけどぉ・・・」
あやか「それじゃ、少し失礼して・・・」
みたま「・・・・・」
あやか「・・・・・」ソワソワ.....
みたま「えーと・・・。ちょっと聞いてもいいかしら?」
あやか「?」
みたま「これから雫ちゃんとお出かけ? どこに行くの?」
あやか「雑誌で話題になっていた喫茶店をいくつか周って、お店の雰囲気とか良い所を研究しようってことになってて」
みたま「そ、そう・・・。お笑いライブに行くとかじゃないのね・・・」
みたま「そ、それで、あやかちゃん、そのお化粧は自分でしたの?」
あやか「う、うん・・・。ど、どう・・・? 似合ってる、かな・・・?」
みたま「えーと・・・・」
みたま(そのお化粧は・・・・・・・・)
雫「お邪魔します」
あやか「あっ! 雫ちゃん!」
雫「あやか、先に来てたんだ―――ぷっ?!」
あやか「?」
雫「ぷふふっ、あははっ! ちょっと待ってあやかっ、ふふっ、さすがにそれは卑怯だって、あはははっ!」
あやか「えっ・・・?」
雫「ピエロでもそんなお化粧しないよっ。そのお化粧でここまで来たの? あやかはすごい。そこまでお笑いに体を張れるなんて」
あやか「え、違っ・・・・」
雫「ただの待ち合わせって言う何の変哲もないシチュエーションの中で、突然奇抜なお化粧を見せて意表を突く。どうしちゃったのあやか、いきなりこんなにお笑いの技術を上げて」
あやか「・・・・・・・・・・・・う、うんっ! すごいでしょーっ! あたしのこの抱腹絶倒メイク! これなら絶対雫ちゃんを笑わせられるって思ったんだー! いやーあっはっはっはっ大成功~っ!」
雫「本当だよ、こんなに笑ったの久しぶり。涙が出てきちゃった」
あやか「あははっ。あっ、ごめん! あたしちょっと用事思い出しちゃった! お出かけはまた今度にしようっ!」ダッ
雫「えっ?」
あやか「・・・・・・っ」タッタッタッ.....
雫「あやか・・・・・?」
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あやか「ハァッ、ハァッ・・・・」タッタッタッ.....
あやか「ハァッ、ふぅー・・・・」
あやか「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ」
あやか(・・・逃げてきちゃった。あたし、何してるんだろ)
チリン....
あやか(全神祭で雫ちゃんにもらったイヤリング・・・。これを付けた あたしが可愛いって、雫ちゃんに言われて・・・それが嬉しくて・・・・・)
あやか(だから、今日の雫ちゃんとのお出かけでもイヤリングを付けて、それに合うようにと思ってがんばってお化粧なんてしたけど・・・)
あやか(笑われちゃった・・・)
あやか(あんなに笑った雫ちゃんを見たのは初めて・・・・)
あやか(雫ちゃんを笑わせる・・・。そのために今まであたしはがんばってきたんだもん。涙が流れるほど雫ちゃんを笑わせられてすごく嬉しい)
あやか(嬉しい・・・うれしいはずなのに・・・・)
あやか(あはは・・・なんでだろ・・・あたしも涙止まんないや・・・)グシグシ
あやか「はぁ・・・・」
あやか(お化粧なんて、慣れないことはするもんじゃないなあ・・・)
あやか(このイヤリングも泣いてるねきっと・・・)
あやか(ごめんよ、こんな持ち主で・・・)
みたま「おかえりなさ~い」
衣美里「あー・・・。確かにこれはすぎょい」
梨花「あれ? 泣いてるの?」
あやか「・・・・・えっ?」
あやか「えっ? えっ? あれっ? ここ調整屋さん・・・? あれ、なんでっ、あたしさっき走って外に出たのに」
雫「私の空間結合の魔法で連れ戻した」
あやか「雫ちゃん?! えっ、な、なんで・・・?」
雫「あやか。さっきはたくさん笑わせてもらったけど、冷静に考えてみると、面白くないって思った」
あやか「面白くない・・・?」
雫「私が全神祭であやかに贈ったイヤリング、今も付けてくれてるよね」
あやか「う、うん・・・」
雫「そのイヤリングはあやかに似合うって思ったからあやかに贈ったの。なのにそれをお笑いに使われたら面白くないよ」
あやか「あ、うん、ごめんね・・・」
雫「だから今すぐそのお化粧を直してほしい」
あやか「えっ・・・そ、そんなこと言われても・・・」
雫「大丈夫。お化粧に詳しそうな子に来てもらったから。それじゃふたり共、お願いできる?」
衣美里「おっけおっけ! 宇宙船に乗ったつもりで任せな!!」
梨花「ほい来たー! まずは涙拭いてー」ポンポン
あやか「んむっ・・・・」
梨花「あーして」サッサッ
衣美里「こーして?」
梨花「そーして」スーッ
衣美里「どーなった?」
梨花「こーなった!」
衣美里「おーすんげー! きゃんわいいー!」
梨花「ほい鏡。どお?」
あやか「わっ・・・う、うん・・・いい、かも・・・?」
あやか「雫ちゃん。ど、どうかな・・・? あたし、かわいい・・・?」オズオズ.....
雫「ん・・・。かわいい・・・くない・・・」
あやか「ゔっ・・・・」ションボリ.....
雫「可愛いというより、大人っぽくて、美人でビックリしちゃった」
あやか「・・・・・えっ?!////」ドキッ
雫「素敵だよ、あやか」ニコッ
あやか「・・・・あっ、うぁっ////」フルフル....
雫「どうしたの?」
あやか「うわああああああ!!! やっぱりこんなのあたしじゃなああああい!!!!!/////」ダッ
梨花「あっ! 逃げた!」
衣美里「追え追え~っ!」
雫「大丈夫。あやかの気配を探って空間結合を使えばどこに逃げても捕まえられる。今日は絶対あのあやかと喫茶店巡りしたい」シュンッ
衣美里「魔力じゃなくて気配を探るんだ! すんげーラブラブだっ! さっすがコーヒー博士!」
梨花「やったれやったれー!」
みたま「あらあらぁ~」ニコニコ
令「そうそうこれだよこれ。こういうのが撮りたかったんだよ」
令「タイトルはそうだな、『毬子あやか16歳、滑り芸人からまさかのラブコメヒロインに電撃転向?!』ってところかな」
桜子「 |こういうのが大衆の目を引くの?| 」
令「そうだね。今まで面白くなかった芸人が、急に面白いことをやって、しかもそれが素のリアクションだったりしたら余計に面白いね」
令「そんな誰も予想しなかったような意外性のある事実を世間に広めるのが我々の使命だよ」
桜子「 |なるほど| 」
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こころ「こんにちはー・・・・」
みたま「はぁい、いらっしゃい、こころちゃん」
みたま「あららー? なんだかごきげんななめ?」
こころ「はい、ちょっとだけ・・・。まさらが・・・」
みたま「まさらちゃん? 何かあったの?」
こころ「まさらって私の考えていることをよく当てるから、私ばっかり心を見透かされているのが、悔しいというか、腑に落ちないというか・・・」
こころ「でも心を見透かされているのは私の事をよく理解して大切に想ってくれているからできることだからそれは嬉しくはあるんですよ。でもまさらって、普段自己主張しない子じゃないですか。だから私がリードしてあげるのが自然な関係のはずなのに、まさらってば突然さらっと私の事を褒めたりすることがよくあって、その度に私の方がペースを乱されちゃって・・・だってまさらって正直にしかものを言わない子だから、他の人に褒められるより余計にドキッてしちゃうんです・・・。逆に私がまさらの考えている事を当てようとしても当たらなくて、私ばっかり空回っているのも恥ずかしくて・・・。他にも外を一緒に歩ている時に、私が寒いって言ったら手を繋いでくれるし、私が編んだものを嬉しそうに使ってくれるし、一緒に山を登ってくれるし、私にチョコをくれるし、水泳をやってるからすごくスタイルいいし、美人だし、声も綺麗だし、髪も綺麗だし頭もいいし、顔もいいし、魔法少女服がえっちだし・・・。そういうのがあって最近は私だけ負けっぱなしで・・・。だけど、私がまさらと初めて会った頃はこうじゃなかったんですよ。まさらは『他人に興味がない』って口では言いながら、子犬みたいに私の後を付いてきては構ってそうな顔をして、私に追い付いたら私の顔を覗き込んでニコニコしてて、あの頃のまさらは可愛かったなあ・・・」
こころ「だから、あの時みたいに今ももうちょっと私の方が、順当にまさらより有利な立場になりたいというか、なんといいましょうか・・・」モジモジ....
みたま「なるほど、なるほどねぇ~」
みたま「あ、そうだ。だったらこうしたらどうかしら。今度まさらちゃんに会ったら、まさらちゃんが絶対に思いつかないような事を、こころちゃんが考えてみるの」
こころ「まさらが思いつかないこと?」
みたま「そうそう。それで、『私が今何を考えている?』って質問をして、絶対に正解できないイジワルをするの」
みたま「そうしたら、『私はそんなに単純な女じゃないのよー!』っていうアピールになるんじゃないかしら~」
こころ「あっ、はい。面白そうですね、やってみます!」
まさら「こんにちは」
みたま「あらぁ、噂をすれば」
まさら「?」
こころ「ねえっ、まさらっ!」
まさら「どうしたの?」
こころ「今私が何を考えているか当ててみて!」
まさら「いいよ」
まさら「・・・・・・」ジーッ
こころ「・・・・・・」
まさら「・・・・・・」ジーッ
こころ「・・・・・・」
まさら「・・・・・・」スッ.... (こころの頬に手を添え
こころ「えっ?」
まさら「んっ、ちゅっ」
こころ「んんっ?! うっ、ふあっ・・・・」
まさら「んっ、んむっ、ぷぁ・・・」
まさら「・・・・合ってた?」
こころ「んっ・・・。あ、あってる・・・」
まさら「そう」
こころ「あの・・・。私は嬉しいけど・・・まさらは抵抗なかった・・・? こういうこと・・・」
まさら「別に何も思わないわあなたなら分かってると思うけど私ってこういうことに特別な感情とかない今日は北養の山に登るんでしょ日が暮れないうちにさもう早く行きましょ」フイッ スタスタ
こころ「う、うん・・・・」
こころ「・・・・・」
こころ(『別に何も思わない』。まさらはそう言ったけど、普段落ち着いている まさら らしくなく、今だけは妙に早口で説明口調で)
こころ(何かを隠すように口元に手を当てて、忙しなくここから離れようとするし)
こころ(慌てるようにそむけた顔は、銀色の横髪の隙間から綺麗に赤く染まった頬が覗いてる)
こころ(普段はクールで感情が読めないまさらだけど、ふとこういう姿を見せてくるのが、可愛くて愛おしい)
こころ(まさらと過ごすこういう時間が私にとって一番の思い出になって、そしてまさらは何度だって、その一番を塗り替えてくれる)
こころ(これからもそんな貴女の側に居たい、って思いました)
みたま「あらあらぁ~」ニコニコ
令「はっはっはっ、こいつはとんでもない特ダネが飛び込んできたね」
令「タイトルはそうだな・・・『祝報。お二人の初めての共同作業で見つけた高山植物は “百合の花” 』にするか」
桜子「 |あの二人は以前から仲の良い友達以上の関係性を匂わせていたから、周囲で噂になっていた。それを裏付けるから特ダネになる。合ってる?| 」
令「そうそう。桜子さんも分かってきたじゃないか。なんにせよトップ記事はこれで決まりだね。特にあいみさんをコッチの世界に引きずり込むのに使えそうだ」
桜子「 |コッチの世界って?| 」
令「えっ? う~ん・・・そうだねえ・・・」
令「例えば、さっき環さんがやちよさんに抱き着いていたけど、それを見て桜子さんはどう思った?」
桜子「 |私にも抱き着いてほしい| 」
令「それじゃあ、天音工房のタケさんが環さんに抱き着いたら?」
桜子「 |タケを殺す| 」
令「そういうことだよ」
桜子「 |なるほど| 」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
令「さて、調整屋での取材はこんなものでいいかな。八雲さんありがとう」
みたま「ど~いたしまして~」
桜子「 |学校の観鳥報の方は大丈夫?| 」
令「あー・・・。そっちの方はまだ全然なんだ・・・。いつもならネタがあればピンとくるんだけど・・・最近は学校の人向けの良いネタになかなかありつけなくてねえ・・・。どうしたものか・・・」
みたま「ネタがない、ね~・・・。それじゃあいっその事、令ちゃんが何か事件を起こしてネタを作っちゃえば?」
桜子「 |自分でネタを作る・・・?| 」
令「いやいや・・・やらないよそんなこと・・・。そんなことして記事を書いても、後でむなしくなるだけだって・・・」
令「はあ・・・。なんでもいい・・・。何か大衆の目を引くようなネタが転がってないものか・・・」
桜子「 |・・・・・・・・| 」
令「うーん・・・。なー、桜子さん・・・。何かネタになることないかな・・・?」
桜子「 |最近学校で噂になっていることがある| 」
令「噂?」
桜子「 |うん| 」
令「へえっ、ウワサが仕入れた噂か。ゴシップ記者としてはその話は聞き逃せないね。詳しく聞かせてよ。桜子さんも新聞部なんだからしっかり協力してもらうよ」
桜子「 |いいよ。ある部活の先輩と後輩の噂なんだけど| 」
令「ほうほう」
桜子「 |先輩は学校で評判のすごく美人の人。後輩は学校で評判のすごくかっこいい人。二人ともその外見で学校ではとても人気者。なんでもその二人が恋人同士なんじゃないかって言う噂| 」
令「生徒同士の恋愛か! いいねえ、観鳥さんの得意とするところだよ。それでそれで?」
桜子「 |その先輩と後輩は人気者だから、憧れて好きになっていた人は多かった。告白しようと思っていた人も多かった| 」
桜子「 |だけど憧れていた人たちは、その先輩後輩同士が恋人同士になったらしいという噂を聞いてがっかりした。でもその反面、美人とかっこいい人でお似合いだから、それはそれで目の保養になるし尊いからアリだとかなんとか| 」
桜子「 |でも二人が恋人同士になったという証拠が今の所ないみたい。本人達に聞いてもはぐらかされるから| 」
令「分かった! その疑惑のカップルが抱き合ったりキスでもしている現場を押さえればいいんだな! それができれば観鳥報の人気もうなぎのぼり間違いなしだ! 腕が鳴るよ!」
令「さっそく張り込みでもしよう! 桜子さん、まずはその二人が所属している部活が何かを教えてくれるかな?」
桜子「 |新聞部| 」
令「そうかっ! 新聞部か!」
令「・・・んっ? いや、まてまて・・・。えーと・・・なんの部活だって?」
桜子「 |新聞部| 」
令「・・・・・・・・・・」
桜子「 |・・・・・・・・・| 」
令「き、聞き違えかな・・・? その噂の二人が所属していr―――」
桜子「 |新聞部| 」
令「・・・・・・・・・・」
桜子「 |・・・・・・・・・| 」
令「・・・・あー、これは関係ない話だろうけど、観鳥さん最近、クラスメイトから妙に、『新聞部のあの美人の先輩と付き合っているの?』って、質問されるんだ・・・」
桜子「 |・・・・・・・| 」
令「その度に、観鳥さんは笑って『そんなわけないだろ~』って言い返していたけど・・・ははっ、ま、まあこれは関係ない話だよね?」
桜子「 |私も似たような質問をクラスメイトからよくされる。『新聞部のあのかっこいい後輩と付き合っているの?』って。今日は涼子にその質問をされた| 」
令「そ、そう・・・・・・・」
桜子「 |うん| 」
令「・・・・・・・・・・」
桜子「 |・・・・・・・・・| 」
桜子「 |令は| 」
令「な、なにかな・・・?」
桜子「 |初めて私を取材してくれた時のことを覚えている?| 」
令「そ、そりゃあ覚えているけど・・・」
桜子「 |あの時の私はすごく寂しい思いをしていた。いろはに会いたいのに会えない。それが寂しくて寂しくてしょうがなかった| 」
桜子「 |でも、そんな寂しい思いをしていた私に、令は手を差し伸べてくれた| 」
令「うん、まあ・・・ネタになりそうだったからね。あっ、いやっ! もちろん桜子さんのことが心配だったってのもあったよっうんっ」
桜子「 |令は私にできた初めての友達。令が友達になってくれて私は寂しくなくなった。そして私の世界が広がった| 」ジリッ...
令「ちょ、ちょ・・・な、なんで観鳥さんに にじり寄ってくるのかな桜子さん・・・?」タジッ....
桜子「 |令はいつも色んな事を私に教えてくれる。死んで消えて忘れ去られるのが怖くて泣いていたあの時の私にも、令は優しく寄り添って、私に生きる意味を教えてくれた| 」ガシッ
令「う、なっ、なんで観鳥さんの手首を掴んでいるのかな桜子さん・・・?!」
桜子「 |令、聞いて。私は令の側に居ると、胸がぽかぽかと暖かくなるの。私が寂しくなっても、令は励まして、優しく寄り添ってくれるから、令の側は安心できる。ずっと令の側に居たい。こんな気持ちになるの、令だけなの| 」ズイッ
令「そ、そう言ってくれるのは嬉しいけど・・・。で、でも観鳥さんよりずっといい人は世の中にいるかもしれないよ・・・? 桜子さんは生まれたばっかりなんだし・・・」
令「だからちょっと・・・桜子さん、ちょっと一旦落ち着こう? 落ち着いて。ねっ?」アセアセッ
桜子「 |この胸のぽかぽかした気持ちは何? これが恋愛感情なの? 私は色んな気持ちの意味を知りたいの| 」
桜子「 |だから教えて令。私に生きる意味を教えてくれたあの時と同じように、この気持ちの意味を教えて。初めて私に手を差し伸べてくれたあの時と同じように、私の世界を広げて、令| 」
桜子「 |私の令に対するこの気持ち、これが恋なの?| 」ズズイッ
令「さ、さあ・・・・観鳥さんも経験ないからちょっと分からないかな・・・? と、とりあえず落ち着こうっ」
桜子「 |令・・・。何でそんなに焦っているの・・・? もしかして、今の令は困ってる・・・?| 」
令「びっくりはしているよ・・・」
桜子「 |私は令の恋人になりたい・・・。ダメ・・・?」
令「こ、恋人って・・・。えーっと・・・桜子さんっ。桜子さんは色々あって今ちょっと混乱しているみたいだっ。だって桜子さんの一番大切な人は環さんたちだよねっ? 環さんたちを差し置いて観鳥さんが恋人になるのは違くないかなっ?」
桜子「 |確かにいろはたちは私にとって一番大切な人。だけどいろはたちは私にとって家族みたいな人。家族と恋人同士になるのは一般的ではないって、データベースにある| 」
桜子「 |でも部活の先輩と後輩が恋人同士になるのは一般的だって、データベースにある。違う?| 」
令「う、うーん・・・多分違くないだろうけど・・・」
桜子「 |みたま。そこの寝台を借りていい?」
みたま「ど~ぞ~」
令「寝台・・・? なんで・・・?」
桜子「 |令と性交する| 」
令「な!?//// 待って待ってっ、なんでいきなりそうなるかな?! 冗談はやめてって! あ、いや、桜子さんは冗談なんて言わないか・・・。と、とにかく、それは本当に待って!」
涼子「なーはっはっはっはーーーっ! やーっぱりお前さんたちはそういう関係だったか! こりゃあ大スクープだあ!」●REC
令「えっ、涼子さん?! そこで何してるの?!」
涼子「なにって、みりゃ分かンだろ。盗撮してンだよっ」●REC
令「盗撮?! 趣味悪くない?!」
涼子「はあっ? 趣味が悪いだあ? どの口が言ってんだ。お前さんがいつも平気でやっていることじゃあーないか。撮られる方が悪いって言ったのは誰だー?」
令「ぐっ・・・何も言い返せない・・・」
涼子「ささ、ほらほら、あたしの事は気にしないで早くおっぱじめなよ。ははっ、この映像は高く売れるだろうからなあ!」●REC
令「煩悩まみれだねえ!?!?!?!」
桜子「 |令・・・| 」スルッ... サワッ...
令「くぁッッッ!?//// さ、桜子さん!? どこ触ってるの?!」ビクッ
桜子「 |分からない・・・。自分でもなんでこうしているか分からない・・・。令を見ていたら自然と令の体を触りたくなった・・・| 」サスーッ.....
令「あっ/// うっぅぁ/////」
涼子「おほっ/// こ、こりゃ目が離せねえ・・・!」●REC
令「ふっ、ううっ・・・だ、ダメだ桜子さん! 本当にダメ! ストップ!」ドンッ
桜子「 |うっ・・・| 」フラッ....
令「はぁっ・・・はぁっ・・・」
桜子「 |・・・令は私を拒んだの? どうして・・・どうして・・・| 」
令「どうして、って・・・」
桜子「 |私は人間じゃなくてウワサだから・・・。だからダメなの・・・? ウワサの私には恋人は作れないの・・・?| 」シュン....
令「うっ、くっ・・・。あーもうっ」 頭抱え
桜子「 |・・・?| 」
令「反則だよそれは・・・。ダメもなにも・・・そんな整った顔でそんな悲しい顔をされちゃあ、ダメでもダメじゃなくなっちゃうじゃないか・・・」
桜子「 |いいの?| 」
令「ん・・・まあ・・・」
桜子「 |令と恋人同士になれた。嬉しい| 」ニコッ
令「そ、そりゃよかった・・・///」
桜子「 |どう? 記事書けそう?| 」
令「えっ? 記事?」
桜子「 |うん。記事| 」
令「記事って・・・? えっ?」
桜子「 |令は最近、ネタが無くて学校向けの観鳥報の記事が書けなくて困っていた。でも令は自分でネタを作ることを嫌がった。だから私が代わりにネタを作った。私も新聞部だから頑張ってやったよ| 」
令「桜子さんがネタを作った・・・?」
桜子「 |コッチの世界の意外性のある噂の真相を誰よりも早く速報する。これで大衆の目を引いて観鳥砲を大爆発できる?| 」
令「はっ・・・?」
桜子「 |タイトルは『これが噂の真相だ! 新聞部部員同士の爛れた関係! 公正中立な報道姿勢を掲げた記者にあるまじき不祥事!』とかがいい?| 」
令「え・・・。えーっ!? うっそ、待って待って・・・。それじゃあ今の桜子さんの告白は記事のネタのための演技だったってことかい・・・?」
桜子「 |?| 」キョトン
令「なんだよそれ・・・。ドッキリじゃないんだからさあ・・・。さっきの迫り方は映画撮影の賜物かい・・・? 本気にしちゃったよもう・・・。無駄にどぎまぎしていた観鳥さんがバカみたいじゃないか・・・。なんかすごいショックなんだけど・・・」
桜子「 |??? 私、演技なんてしてないよ| 」
令「んん・・・? 演技じゃない・・・?」
令「か、確認させて・・・。桜子さんは本気で観鳥さんと恋人になりたい?」
桜子「 |さっきからずっとそう言ってるつもりだけど| 」
令「あ、ああ、うん、そおか、そうだよね。うん、忘れてたよ。常識に捉われないというか、なんかズレているというか・・・桜子さんはそういう人だよね・・・」
桜子「 |それじゃあ私と性交する?| 」
令「だ、だからなんでそうなる?! 飛躍しすぎだよねっ?!」
桜子「 |恋人同士が性交するのは一般的だってデータベースにある| 」
令「そ、そりゃそうかもしれないけど・・・」
桜子「 |調整屋は魔法少女同士が性交する際に用いられる一般的な施設。って、みたまが言ってた| 」
令「生まれたばかりで何も知らない純粋無垢な桜子さんになんてことを吹き込んでるんですかあなたはっ!!?」
みたま「うっふふ~」
令「と、とにかく! こういのはいきなりするようなことじゃないんだ。物事には順序ってものがあってだね・・・」
桜子「 |そうなの? それじゃあ最初に何をすればいいの?| 」
令「そりゃあ、あれだよ。・・・・えーと。なんだろうね・・・? 例えば・・・う~ん・・・」
みたま「仲良く手を繋いだりとかぁ」
桜子「 |分かった| 」ギュ
令「あっ・・・」
桜子「 |何か違う?| 」
令「い、いや合ってると思うよ、多分・・・。で、でも、妙に恥ずかしいねこれは・・・///」
桜子「 |次はどうすればいい?| 」
みたま「デートできゃっきゃっうふふしたりぃ」
令「で、デート・・・か・・・な、なるほどね、うん・・・」
桜子「 |分かった。それじゃあ令とデートに行く| 」
令「そ、そうだね・・・/// コホンッ。そ、それじゃあ、とりあえずどこに行くか―――」
桜子「 |あっ| 」
令「んっ?」
桜子「 |灯花が私を呼んでる。行かなきゃ| 」
令「え、ええっ?! ちょ、ちょっと! デートはっ?」
桜子「 |また今度。バイバイ| 」タッ
令「あ、ああ・・・。行っちゃったよ・・・早いなあ・・・」
令「分かってたけど、桜子さんは桜子さんだねえ」
令「あんなにも独特な感性を持っている桜子さんの恋人役は、世界中どこ探したって観鳥さんにしか務まらないだろうねえ、ははっ。ある意味誇らしいや」
令「さて・・・。観鳥さんの方は、いつの間にか居なくなった涼子さんを捕まえて、映像を消さないと・・・!」
みたま「あらあらぁ~」ニコニコ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
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南凪自由学園 化学部部室
桜子「 |・・・・・・| 」カキカキ
ひなの「・・・ん? 誰かいるのか?」
ひなの「うわっ?! すごい散らかってる?! また令か! オマエは何度言ったら分か―――・・・あれ? なんだ、桜子か」
ひなの「ここで何してるんだ?」
桜子「 |観鳥報を書いてる| 」
ひなの「あ、ああ・・・観鳥報、ね・・・」
桜子「 |聞いて、ひなの。今度こそ令を驚かせられるネタを思い付いた| 」
ひなの「令を驚かすネタ? ああ、そういえばハロウィンの時に、どうやったら令を驚かせられるか思い付かないって言ってたな。どんなネタなんだ?」
桜子「 |これ| 」
ひなの「どれ。へえ、桜子が令にガチ告白するのか。ははっ、確かにこれならさすがの あいつも驚くだろうな」
桜子「 |うんっ、そうだよねっ、そう思うよねっ| 」パァ
ひなの「おっ、楽しそうだな桜子。ちょっと前まで いろはたち が側に居ないといつも落ち込んでいたのに」
桜子「 |令のおかげ。私は令の文章が好きだから、それをきっかけに私は私が楽しいと思えることが増えた| 」
ひなの「そっか。それは良いことだな」
ひなの「写真が色々あるな。他にはどんなネタがあるんだ?」
ひなの「これはネコの写真? 今日のネコ日記か。アタシもこの記事は好きだったから、続きが読めるのは嬉しいな。ん? なんかこの写真のネコ、みんなカメラ目線じゃないか?」
桜子「 |うん。令の写真みたいに自然な姿を撮りたいのに、私がカメラを向けると何故かみんな近寄って来ちゃうの。ちょっと困ってる| 」
ひなの「令も言ってたけど、妖とか神様みたいな、なんかそういう不思議な雰囲気があるもんな、桜子って」
ひなの「他の写真は・・・って、うわっ、お、おい、なんだよこの写真・・・」
桜子「 |私のクラス担任の女の先生を ひとけ のない所に連れ込んで関係を迫っている。涼子が| 」
ひなの「オマエはどうやって仕入れてくるんだよ、こんなヤバいネタ・・・」
桜子「 |こっちの写真も特ダネ。真里愛が授乳をしている。ひなのに| 」
ひなの「え、ちょ、おま、ま、待て、なんだその写真―――」
桜子「 |私は令の助手をして新聞部として大事なことをたくさん教わった。だからこうしてたくさん特ダネを集められた| 」
ひなの「はあ・・・やれやれ・・・。この手の写真を撮られることはもうないって思ってたけど、まだまだ落ち着けないな・・・」
ひなの「・・・・どうだ? 観鳥報、続けられそうか?」
桜子「 |続けるよ| 」
ひなの「・・・・・・」
桜子「 |観鳥報は、私が外の世界で初めて楽しいって思ったことだから、終わったら 寂しい| 」
桜子「 |終わらせないために、誰かが続きを書けるとしたら、それはきっと、令と同じ新聞部の私だけ。だから私が続きを書く| 」
ひなの「・・・・分かった」
ひなの「それでた。令のやつは許可してもいないのにここでよく作業していたが、桜子の作業だったら特別に許可しよう」
ひなの「近くにいるなら、アタシも桜子の面倒を見やすい。部活動として必要なことを教えたり、他にも記事の文章の校正とかしてやるから」
桜子「 |うん、ありがとう。ひなのならそう言ってくれると思ってここで作業してた| 」
ひなの「オマエなあ・・・。いつの間にそんなに逞しくなったんだよ・・・。そういう所も令に似たなあ」
ひなの「まあ、でも、逞しくないと観鳥報なんてヤバい物、続けられないか」
桜子「 |お礼にひなのの良い所をいっぱい空想して記事に書くね。私、空想が得意だから| 」
ひなの「それはいいな! 空想ならアタシは高身長セクシーリケジョお姉さんで引く手あまたのリア充に・・・って、なにが空想だっ クォラ~!」
桜子「 |ふふっ| 」ニコッ
ひなの「・・・ふっ。ノリツッコミも分かるようになったか。成長したな、桜子」
桜子「 |うん、令が私に外の世界の広さを教えてくれたから| 」
ひなの「そうか。こんなにも人間味あふれる桜子がいることも、きっと令が生きた証の一つだろうな」
桜子「 |そうだと思う。令が消えてしまわないよう、忘れさられてしまわないよう、これから私が令の生きた証を繋いでいく| 」
桜子「 |令との楽しい思い出は、私の心の中にあるから| 」
おわり
ありがとうございました。
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