吹雪「加賀さん！行ってきまーす！」


加賀「ええ」


夕立「まずいっぽいー！遅刻っぽいー！」


加賀「そんなに走ると転ぶわよ。夕立」


夕立「えへへ」


睦月「吹雪ちゃん、待って～！」


睦月「あ、加賀さん！睦月、行ってまいります！」


加賀「ええ。気をつけてね」




北上「うー、眠い…」


大井「北上さん、寝癖がついていますわ」


北上「ありがと、大井っちー」


大井「き…北上さんに褒められた…！」


北上「あ、加賀さん、行ってきまーす」


加賀「ええ。行ってらっしゃい」


加賀「大井さん、北上さんをお願いね」


大井「あ、は、はい！任せてください！」



加賀「……」

加賀「……さて」


加賀「洗濯物、干さなきゃ」




「あのっ、こ、こんにちは！」



加賀「ん……」


男性「……」


加賀「……どちら様かしら」


男性「あの、オレ、えっと……」


男性「りゅ、流星です！」


加賀「流星……？」


男性「はい！」


加賀「……私にそのような知り合いはいないけれど」


男性「え……」


男性「あ、そ、そうか。妖精の姿しか分からないですよね」


加賀「……？」


男性「オレ、に、人間になったんです！あの……加賀さんが使ってくれた武器の……！」


加賀「え……」

流星「いつも僕を、あの上空へ飛ばせてくれていた……戦闘機・流星のパイロットです！」


加賀「……」


加賀「確かに私は、昔戦線で流星を使っていたけれど」


加賀「妖精さんは全て女性だったのではなくて？」


流星「あ、はは……な、中には男性もいたのですよ」


加賀「……」


加賀「貴方もしかして、変質者か何かかしら」


流星「え？」


加賀「……ここは艦娘たちが住む居宅、めぞん加賀です」


加賀「男性は立ち入り禁止ですから、お引き取りを」


流星「あ、いや、ほ、本当にオレ、流星のパイロットなんです！」


加賀「……」


流星「う……よ、妖精が人間になるなんて、信じられませんか……？」


加賀「まあ、普通、信じないわね」


流星「で、ですよね……はは」


加賀「……」

加賀「それで……」


加賀「その、自称妖精さんが私になんの用？」


流星「え……」


加賀「……私は既に、戦線を去った身」


加賀「もう私は……戦えないし、何も守れない」


流星「……」


加賀「もしかして、武器をひどく使った私への報復のつもりかしら」


流星「い、いや、何を仰られるのです！」


加賀「……」


流星「加賀さんはミッドウェーで立派に戦われました！そしてオレも…貴方の武器となり幸せでした！」


流星「そんなオレが、貴方に報復だなんて…！」


加賀「……」


加賀「じゃあ……何の用ですか」


流星「え……」


加賀「嘲笑いに来たの？」


加賀「大破してもう兵器として能力のない私を。提督から見限られ、たかが艦娘の住む寮の寮長をやっている私を」


流星「ち、違いますっ！！」


加賀「……」

加賀「じゃあ……何……」


流星「オレ……加賀さんにどうしても伝えたいことがあって……」


加賀「……」


流星「妖精界の掟を破り、人間になるという願いを叶えました」


加賀「……まず、そこが非現実的よね」


流星「そ、そうなんですが……」


流星「願いは……叶ったみたいです」


加賀「……」



ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞｯ



麻耶「うおーーーっ！！やっべ、遅刻遅刻ーっ！」


麻耶「おりょ？加賀さん、誰だこいつ？」


加賀「……なんでもないわ」


流星「こ、こんにちは……！」


麻耶「……ふーん」


麻耶「ま、いいけどよー。男なんてあんま見ねえからな」


麻耶「加賀さんに手出してみろ、お前ぶっ[ﾋﾟｰｰｰ]からな！」


流星「あ、はは……」


加賀「……麻耶、それより時間が迫っているんじゃなくて？」


麻耶「うおお！そうだった！つーか起こしてくれよ加賀さーん！」


加賀「私は５度貴方を起こしに行きました」


麻耶「……あー、確かにそんな記憶あるかも」


加賀「……ふふ。気をつけていってらっしゃい」


麻耶「ういーっす」

流星「……」


加賀「……慌てんぼね……全く」


流星「か、加賀さん！」


加賀「……何かしら」


流星「もう……もう、戦線には出られないのですか！？」


加賀「……」


加賀「何度も言うのは嫌いなのだけれど」


流星「いや……えっと……」


加賀「私は既に、ミッドウェーで艦娘としての核を大破させてしまったのです」


加賀「ですから、もう、戦線に戻ることはできません」


流星「っ……」


加賀「……それを言うために、貴方はわざわざ人間に？」


流星「いや、ち、違います……」


加賀「……」


流星「オレ……」


流星「加賀さんと一緒に出撃するのが……誇りだったから……」


加賀「……そう」


加賀「光栄ね」


流星「……」


加賀「……でも、私はもう、戦線には戻れません」


流星「……」


加賀「……貴方のお仲間も、たくさんたくさん、殺めてしまった……」