セイバー「初の会話かと思えばいきなり何を言い出すんですか」
切嗣「いいから聞いてくれ、英雄様にでも話さないとやっていられないんだ」
セイバー「まぁ、マスターである切嗣とこうして話せるのは嫌いじゃありませんから別に構いませんが」
セイバー「それで、アイリスフィールがヤンデレだと?」
切嗣「あぁ、どれだけヤンデレているかはエピソードと共に語ろう」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428035790
-1ヶ月前-
アイリ「切嗣、紅茶を淹れたから一緒に飲みましょう」
切嗣「分かった、それじゃあ一緒に飲もうか」
ズズズズ
アイリ「どう、美味しい?」
切嗣「あぁ、とっても美味しいよ」ニコッ
アイリ「本当!? 一生懸命愛情込めてよかったわ」
切嗣「(この紅茶鉄の味しかしない上に、アイリの手首に痛々しく巻かれた包帯がすごく気になるんだけど)」
切嗣「あぁ、引き続き調査を頼む」
ガチャ
アイリ「切嗣、誰と話していたの?」
切嗣「現地にいる部下と定期連絡さ。何か動きがあった場合すぐに把握しないといけないからね」
アイリ「そういえば、もうすぐ聖杯戦争が始まるのよね……」
切嗣「あぁ、僕はこの戦争に勝ち残って恒久的世界平和を実現させる」
アイリ「切嗣の立派な夢だものね……でもね、切嗣」スッ
アイリ「切嗣が願いを叶えた後も、私の魂はずーーーーっと、永遠に……何度生まれ変わっても切嗣と一緒よ」ギュッ
切嗣「っ!?」ゾクッ
-1ヶ月前-
アイリ「切嗣、紅茶を淹れたから一緒に飲みましょう」
切嗣「分かった、それじゃあ一緒に飲もうか」
ズズズズ
アイリ「どう、美味しい?」
切嗣「あぁ、とっても美味しいよ」ニコッ
アイリ「本当!? 一生懸命愛情込めてよかったわ」
切嗣「(この紅茶鉄の味しかしない上に、アイリの手首に痛々しく巻かれた包帯がすごく気になるんだけど)」
切嗣「あぁ、引き続き調査を頼む」
ガチャ
アイリ「切嗣、誰と話していたの?」
切嗣「現地にいる部下と定期連絡さ。何か動きがあった場合すぐに把握しないといけないからね」
アイリ「そういえば、もうすぐ聖杯戦争が始まるのよね……」
切嗣「あぁ、僕はこの戦争に勝ち残って恒久的世界平和を実現させる」
アイリ「切嗣の立派な夢だものね……でもね、切嗣」スッ
アイリ「切嗣が願いを叶えた後も、私の魂はずーーーーっと、永遠に……何度生まれ変わっても切嗣と一緒よ」ギュッ
切嗣「っ!?」ゾクッ
切嗣「ぅ……あれ、ここは」
アイリ「おはよう切嗣、よく眠れた?」シャッシャッ
切嗣「……アイリ、何をしているんだい?そして、何故僕はベッドに縛り付けられているんだい?」
アイリ「何って、明後日には切嗣は冬木に旅立っちゃうから一緒にいられなくなるでしょう?」
アイリ「だから、その間寂しくないように切嗣の肋骨を切り取って傍においておこうかなって」
切嗣「僕の肋骨、起源弾の材料になったんだけど。そして今そんな事したら戦争に支障が出るから!!」
アイリ「大丈夫よ、痛くないように魔術をかけてあげるし、代わりに私の肋骨を足りない分含めて移植するわ」ニコッ
切嗣「わかった、わかったから!じゃあ一緒に冬木に行こう!!それなら寂しくないだろう!?」
アイリ「本当!?ありがとう切嗣!」
切嗣「……と、まぁこれはほんの序の口だ」
セイバー「なんというか、ヤンデレというよりメンヘラのような気もしなくはないですが」
切嗣「いやいや、アイリのはメンヘラ的なかまってちゃんじゃなくて本当に重すぎる愛なんだ」
セイバー「は、はぁ。ですが嫌なら本人に言ってみては?」
切嗣「そんな事したらどうなるかわからないだろう?良い船ENDや監禁ENDにはなりたくない」
セイバー「では、どうするつもりなのですか?」
切嗣「明日、セイバーにはアイリとイリヤを連れて街を歩いてもらう」
セイバー「私が、ですか?」
切嗣「あぁ、君が表で戦い、アイリをマスターと誤認させる。その間に僕が裏でマスターを叩く」
切嗣「これが僕達の作戦だ。その為には君にアイリとイリヤを抑えてもらう必要がある」
セイバー「アイリスフィールはともかく、何故イリヤスフィールまで?彼女は天使ではないですか」
切嗣「そう思っていた時期が、僕にもありました」
-冬木行き当日-
切嗣「それじゃあ行って来るよ、イリヤ」
イリヤ「キリツグ、行っちゃやだ!」
切嗣「僕は大事な仕事があるから、しばらく戻れない」
切嗣「けど、仕事が終わったら必ず迎えに行く。それまで……」
イリヤ「だめよ、私がいないところでキリツグが死んじゃったら迎えに来れないじゃない。
だから私も一緒に行くの、私も一緒ならキリツグに危険が迫った時守ってあげられるもの
それにキリツグが勝手にいなくなったら私どうしていいかわからないのだから私も
一緒に連れて行ってくれるよね?連れて行ってくれなきゃやだよ連れて行って連れて行って
つれていってつれていってつれていってつれていってつれていってつれていってつれ……」
切嗣「」
切嗣「と、まぁイリヤも初期症状とはいえヤンデレを発症し始めているとは思わなかったよ」
セイバー「妻と娘、両方から重い愛を受けていると」
切嗣「愛情が僕に向けられている事自体は嬉しいんだけどね……その愛が重すぎる」
切嗣「今は二人共寝静まっているけど、この先どうなるかを考えるとそれだけで胃痛がするよ」
セイバー「……胃薬、置いておきます。明日は私が出来る限り二人を抑えておくのでご心配なく」
切嗣「頼むよ、僕が裏でマスターを叩こうとしている時に二人からのプレッシャーが向けられたら怖いからね」
セイバー「出来る限り善処します」
切嗣「本当に……頼む。顔色が悪いのを心配してくれているから、善意ではあるんだけどね」
セイバー「(切嗣はこういっていますが、まぁ大丈夫でしょう)」
切嗣「それじゃあ舞弥、準備も出来ている事だし倉庫街に向かおう」
舞弥「わかりました……切嗣、顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
切嗣「大丈夫だよ、僕は心配ない」
舞弥「そうですか……その、辛ければ私に相談してください」
切嗣「舞弥……」
舞弥「切嗣の辛そうな顔を見ると、私も辛くなってしまう」
切嗣「……そうだね、すまなかった」
切嗣「けど、今は戦いに集中しよう。この戦いを最後の犠牲にしなければ」
舞弥「……はい」
舞弥「(切嗣、貴方の行動は就寝や食事は勿論排便や入浴、大人の事情まで余さず把握しています)」
舞弥「(だから、貴方がどんな悩みを持っているかも知っています。どうか限界が訪れる前に相談してください)」
舞弥「(その時は、私が力になりますから)」
切嗣「っ!?」ゾクッ
一旦ここまで
短編になる予定です
切嗣「それじゃあセイバー、アイリとイリヤの護衛を頼む」
セイバー「はい、お二人の安全は私が保証します」
アイリ「切嗣……その、あまり危ない事はしないでね?」
イリヤ「ちゃんと帰ってきてね、約束だからね!」
切嗣「あぁ、ちゃんと帰ってくるよ」
セイバー「それではアイリスフィールとイリヤスフィールは私と共に街を探索しましょう」
アイリ「えぇ、わかったわ」
切嗣「(お手並み拝見といこうか、かわいい騎士王さん)」
舞弥「切嗣、罠は仕掛け終えました。私達も動きましょう」
切嗣「わかった、セイバーがサーヴァントを察知次第僕達も向かう。それまでは別行動で敵陣営を探ろう」
舞弥「わかりました」
切嗣「(……今夜までは、羽を伸ばせるだろうか)」
ランサー「よくぞ来た、一日中街を練り歩いたが、俺の挑発に乗って現れた猛者は……」
セイバー「…………(死んだ目)」
アイリ「やっぱりサーヴァント……見た所ランサーかしら?」
イリヤ「お母様、あの人すっごいかっこいいよ!」キラキラ
ランサー「……そこの金髪の女性の目が死んでいるが、大丈夫か?」
セイバー「えぇ、大丈夫です。それより始めましょう」チャキッ
ランサー「ふっ、どうやら幼子一人を除けば女といえど我が魔貌を退けているようだな。戦う前から戦意がなくなっては話にならん」
アイリ「チャームの呪い……イリヤはまだあれを防ぐ術を知らないからチャームにかかってしまったのね」
セイバー「アイリスフィール、ここからは激しい戦闘になる……イリヤスフィールを安全な場所まで誘導してください」
アイリ「えぇ、お願い」スッ
イリヤ「んっ……ぅ……」スゥ……スゥ……
アイリ「今、解呪してあげるから待っててね」
セイバー「はぁああああああ!!」ガキィン
ランサー「せぇい!!」キィン
セイバー「くっ、2つの槍を同時に扱う相手か……やり辛い!」キィン
ランサー「さすがだな、セイバー。俺の攻撃をここまで防ぐとは」
アイリ「すごい……これが、サーヴァント同士の戦い」
イリヤ「わぁ……すごいすごいすごーい! ねぇお母様、私もあんな風に動きたーい!!」(対魔ブレスレット装備)
アイリ「え、えぇーと……たくさん修行しても、多分あそこまでの動きは出来ないと思うわ」
イリヤ「えぇー」
-同じく倉庫街-
切嗣「(ランサーとセイバーが戦っているな……舞弥、ランサーのマスターは発見したか?」
舞弥『いえ、こちらからはそれらしきものは見当たりません』
切嗣「そうか、なら……見つけたぞ、舞弥」
舞弥『切嗣、気をつけてください。高台にアサシンが現れました』
切嗣「アサシン? くそっ、ランサーのマスターを仕留めるチャンスだというのに」
舞弥「私が注意を引きますか?」
切嗣「だめだ、僕達ではアサシンを凌ぐ手段がない……ここは様子見に徹しよう」
舞弥「わかりました」
セイバー「なるほど、一筋縄ではいかないようだな」
ランサー「生き生きとしているじゃないか、セイバー。先程の死んだ目とは大違いだぞ」
セイバー「えぇ、貴方と出会うまでのじご……貴方のような猛者と戦う事が出来て私は嬉しい」
ランサー「そうか、それは俺も同じだ!!」ガキィン
ケイネス「何をしているランサー、そこのセイバーは難敵だ。早々にケリをつけろ、宝具の開帳を許可する」
ランサー「我が主からケリをつけろとの命だ、名残惜しいが決めさせてもらう!」
セイバー「(ランサーの宝具が来る……!)」
セイバー「ぐっ……!!」
ランサー「判断を誤ったなセイバー、鎧を解除しなければこの必滅の黄薔薇を防げたというものを」
セイバー「くっ左手の腱が……アイリスフィール、速く治癒を!」
アイリ「もうかけているわ……セイバーの傷はこれで完治している状態なの!」
セイバー「なっ……まさか、治癒阻害の呪いか!? 2つの槍それぞれが宝具、そのチャーム……そうか、貴様の真名は輝く貌のディルムッド!」
ランサー「ほう、我が真名に行き着いたか。だが俺の実力も捨てたものではないな、かのアーサー王に一矢報いる事ができたのだから」
セイバー「くっ……」
アイリ「セイバー、このままだとまずいわ」
ランサー「悪いがこの勝負、取らせてもらう!!」
ライダー「まてぇええええええええい!!」ズガガガ
アイリ「な、何!?」
セイバー「なんだ一体!?」
ライダー「余は征服王うんぬん」
セイバー・ランサー「断る!」
ライダー「つれないのぉ、だが他にもこの戦いを見ているものがなんたらかんたら」
ギル「この我を差し置いて王を名乗る輩が二人もいるとはな」
バーサーカー「■■■■■!!」
ランサー「サーヴァントが5騎も集まっただと」
セイバー「(カオスだ)」
アイリ「セイバー、ここは一度帰りましょう」
セイバー「ですが、ここで敵に背を見せればどうなるか」
アイリ「切嗣に危険が迫っているのかもしれないのよ?」ニコッ
セイバー「」ゾクッ
セイバー「……そうですね、帰りましょう」
ギル「……」
ブゥウウウウウン……
アイリ「きゃっほう!」ズギャギャギャ
セイバー「だ、大胆な運転ですね」
アイリ「でしょう?切嗣に買ってもらったおもちゃの中でも一番のお気に入りなの!」
イリヤ「すごいすごーい!」キャッキャ
セイバー「う、運転手を雇ってもよかったのでは」
アイリ「だめよ!そんなのつまんな……危険でしょう?」
セイバー「そ、そうですね」
セイバー「(いくら切嗣が心配だからってそんなに飛ばさなくても……っ!)」
セイバー「止まって!」スッ
ガシッ
セイバー「えっ?」
アイリ「だめよセイバー、止まったら切嗣に会いに行くのが遅れちゃうわ」
セイバー「ですが……」
キャスター「おぉジャンヌぅ!あいたかっ」
バガァン
ジル「うわらばっ!?」
ドシャッ
セイバー「今誰か轢き殺しましたよね?」
アイリ「私達の行く道に立ってるのが悪いのよ、早く切嗣の所に行かなくちゃ」
セイバー「は、はぁ……」
キャスター「……ジャン……ヌ」ガクッ
-アインツベルン城-
切嗣「まさかキャスターがここにやってくるとはね」
アイリ「あれ、この人どこかで見た事があるような」
セイバー「アイリスフィールが思いっきり轢いてましたが」
アイリ「気のせいね」
切嗣「それでだ、何故キャスターが僕達を狙ってきたのか。心当たりはあるかい?」
アイリ「セイバーに執着してるみたいだけど……」
切嗣「なら奴は泳がせておく。キャスターに釣られてやってきた他陣営を僕達が叩く」
セイバー「切嗣、どういう事ですか!?」
切嗣「セイバーはアイリとイリヤの護衛を頼む。奴に気を取られて二人に何かあったら僕達がピンチになる」
切嗣「アイリも魔術を使えるが、サーヴァントと遭遇した場合はなすすべもない。だからこそセイバーがそばで守る必要がある、いいな」
セイバー「切嗣……」
切嗣「頼む、アイリとイリヤを野放しにしたらどんな惨劇が起きるかわからないんだ」ボソッ
セイバー「!!」
セイバー「わかりました、アイリスフィールとイリヤスフィールの身柄は私が守ります!」
キャスター「ジャンヌゥ!! 何故出てこないのですか!?」
ランサー「貴様がキャスターだな、関係のない子供達を虐殺した非道な行い、この俺が許さん!」
キャスター「貴様に用はない!私はジャンヌをこの手で保護し、何者にも穢されぬように地下深くに監禁せねばならない!!」
ランサー「どういう理屈かは知らんが、セイバーと倒したくばこの俺を倒してからにしてもらおう!!」
キャスター「アァーッ!! 待っていてくださいジャンヌゥ、今行きますからねぇ!!」
アイリ「ランサーとキャスターが交戦しているみたいね」
舞弥「切嗣がランサーのマスターと交戦を行う準備をしています、私達は一度退避しましょう」
イリヤ「それじゃあキリツグが危ないじゃない!」
舞弥「ご心配なく、切嗣にとってランサーのマスターは格好の獲物」
舞弥「むしろ私達がいる方が邪魔になります。二人が安全な所に退避する方が彼の助けになる……切嗣の事を思うのであれば行きましょう」
アイリ「……そうね、イリヤもここにいたら危ないわ、早くいきま……っ!」
セイバー「どうかしましたか?」
アイリ「また新手が来たみたい……それもよりによって、切嗣が最も恐れている相手……言峰綺礼よ」
舞弥「!」
アイリ「セイバーはイリヤをお願い、私達は言峰を足止めするわ」
セイバー「それでは本末転倒です。いいですかアイリスフィール、この時の為に私がついているのです」
セイバー「言峰は私が止めます、その間に3人で安全な場所に避難してください」
舞弥「……わかりました、言峰は任せます」
言峰「(衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣)」シュタタタ
一旦ここまで!類は友を呼ぶ
切嗣「起源弾!」タァン!
ケイネス「ぎゃああああああああ!!」ドサッ
切嗣「……」チャキッ
ランサー「はっ我が主が危機に」
キャスター「ジャンヌとの再会を邪魔する者は一人足りとも生かして帰さん!!」ドバババ
ランサー「ぐっ、キャスターが邪魔で救援にいけない!」
タァン!
ケイネス「」
切嗣「まずは一人か。アイリ達は無事避難しただろうか」
切嗣「(アイリとイリヤをセイバーが見てくれているからだろうか……身体が軽い)」
切嗣「(二人共重い愛じゃなくて、普通の愛情を向けてくれればいいんだけどね)」
切嗣「(セイバー、今だけは君に感謝するよ)」
綺礼「(衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣)」シュタタタ
セイバー「止まれ!」
綺礼「誰かと思えばセイバーか、そこをどけ。今回はお前達に用はない」
セイバー「切嗣の所に向かうつもりですか」
綺礼「そうだ、お前のマスターである女には用はない。そこをどいて貰おう」
セイバー「断る、言峰綺礼にはここで退場してもらう」チャキッ
綺礼「そうか……だが、私にも退く訳にはいかない理由がある。無理やりにでも押し通らせてもらうぞ」
セイバー「……っ!!」
ガキィン
セイバー「なっ……!?」
綺礼「衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣衛宮切嗣」ブツブツ
セイバー「(なんだ、この恐ろしい狂気は!? 一体何が彼にこれ程の力を出させている!)」
セイバー「はぁっ!」ヒュッ
綺礼「ふっ!」バッ
セイバー「逃がさん!」
ヒュッ
セイバー「っ!?」キィン
セイバー「短刀? 一体どこから……まさか!?」
綺礼「どうやら気付いたようだな。そう、私のサーヴァントであるアサシンが四方八方からお前を狙っている」
セイバー「くっ……ですが暗殺者に遅れをとる程私は未熟ではありません」
綺礼「アサシンがお前だけを狙っているならな」
セイバー「何?」
セイバー「(どういう事だ? アサシンは私を狙っている以上切嗣やアイリスフィールまでは狙えない)」
セイバー「(だが、奴の言葉ではアサシンが私と切嗣を同時に狙えるという事になる。それは一体……)」
ヒュッ
セイバー「っ!」キィンキィン
セイバー「左右から同時に短刀……まさか!?」
綺礼「気付いたようだな。そう、私のアサシンは一人ではない」
セイバー「では貴方の狙いは……っ!」
綺礼「さぁどうするセイバー、私にかまっていれば他のアサシンがお前のマスターを狙うぞ」
セイバー「くっ……!」
セイバー「(このままではアイリスフィールが! しかし切嗣を放置すれば言峰とアサシンが間違いなく切嗣を襲う)」
セイバー「(だが、この男を殺そうにもおぞましい何かを纏っていて殺せる気がしない。どうすればいい)」
セイバー「(アイリスフィールか、切嗣か……どっちに……どっちに向かうか。ここで運命が分かれると私の直感が告げている!!)」
綺礼「……いけ、アサシン達よ」
セイバー「っ!!」
セイバー「アイリスフィール!!」バッ
綺礼「……女の方に向かったか。なら私は衛宮切嗣の元に向かうとしよう」
切嗣「……さて、僕もアイリ達の元に向かおう」
切嗣「新しい拠点、気に入ってくれるといいんだけどね」
綺礼「ほう、ランサーのマスターを倒したか。さすがは魔術師殺しだ」
切嗣「っ!!」
綺礼「会いたかったぞ、衛宮切嗣」
切嗣「言峰……綺礼!!」
切嗣「なるほど、他の陣営の強襲に紛れて僕を潰しにきたのか」
綺礼「何を言う、私は万が一お前が他の奴らに先を越された場合を恐れて来たにすぎない」
綺礼「私はお前に会う事をずっと望んでいた。さぁ、邪魔者はいない!思う存分二人だけで語り合おうではないか!お前はどのような答えを得た?衛宮切嗣は様々な戦地を渡り歩いた結果何を悟ってアインツベルンに足を降ろした?私のこの気持ちはなんだ!?聞かせてくれ、お前の口から直接私に!!」
切嗣「」
切嗣「(なんだこいつは、関わったら最後……地獄の果てまで追ってくるかのような狂気は!?)」ジャキッ
切嗣「お前と語り合う気はない!」ズガガガガガ
綺礼「逃げる必要はないぞ、今ここには私とお前しかいない。恥ずかしがる必要はない、お前の答えを聞かせろ!!」キンキンキンキンキンキン
切嗣「(タイムアルター……ダブルアクセル!!)」ダッ
綺礼「逃がさん!」ダッ
切嗣「なっ……!?」
切嗣「(2倍速に平然と追いつくだと!?なんなんだこいつは、アイリやイリヤとは違う類の執着を感じる)」
切嗣「(反動が大きくなるが、振り切るにはこれしかない……タイムアルター、トリプルアクセル!!)」ギュンッ
綺礼「何を戸惑う、お前は私に答えを聞かせてくれるだけでいいのだぞ!!」ギュンッ
切嗣「(3倍速にまで!? こいつ、本当に人間なのか!?)」
切嗣「(まずい、固有時制御の反動が……っ!!)」ガクッ
ガシッ
綺礼「捕まえたぞ、衛宮切嗣」
切嗣「う、うわぁああああああああああああああああああああああああああ!!」
-その頃、セイバー一行は-
セイバー「はっ!」
アサシン「ぐわぁっ!」ズバァン
アサシン「つ、強すぎる!」
アサシン「なんて強さだ、デタラメすぎる」
アサシン「これが……最優のサーヴァント」
セイバー「3人とも、無事ですね?」
アイリ「えぇ、私達はセイバーのおかげで無事よ」
舞弥「ですが、この数のアサシンは一体……」
セイバー「奴らが何人いるかはわからない、油断しないでください」
アサシン「……マスターからの指示だ、撤退するぞ」
セイバー「!?」
アサシン「命拾いしたな、女達」バッ
アイリ「……行っちゃったわ」
セイバー「撤退した? これ以上いたずらに戦力を消耗するわけにはいかないと判断したのか」
イリヤ「ねぇ、キリツグは?キリツグは大丈夫なの!?」
舞弥「切嗣……はっ!!」
アイリ「舞弥さん、どうしたの?」
舞弥「切嗣が危ない!!」
アイリ「っ!!」
イリヤ「!!」
セイバー「っ!?」ゾクッ
セイバー「(なんだ、今3人から得体の知れない恐怖を感じたような)」
ギル「……帰ってきたかと思えば妙な拾い物だな、綺礼」
綺礼「この男には私が求めていた答えを出してもらわなければならない。起きろ衛宮切嗣」ガッ
切嗣「がっ……! ここ、は?」
綺礼「お前の監禁場所だ。なに、安心したまえ。聞きたい事を全て聞くまでは殺しはしない」ニタァ
切嗣「……っ!!」
ギル「ほう……どうやらこの男、とんでもないものに憑かれているらしい」
綺礼「何?」
ギル「くくく、こいつを取り囲む者はつくづく我を興じさせてくれる。気に入ったぞ」
ギル「綺礼、お前の気が済んだらその男を俺によこせ。暇つぶしの余興としては最適だ……言っておくがまだ殺すなよ」
綺礼「……いいだろう」
ギル「では、せいぜい楽しむがいい」スゥ
切嗣「…………」
綺礼「さて、これで思う存分語り合う事が出来るな……衛宮切嗣」
切嗣「何が目的だ」
綺礼「安心しろ、私はお前から答えが聞ければいい。お前がどのような答えを得てアインツベルンに足を降ろしたか、それを言ってくれればいい」
切嗣「(こいつは何を言っているんだ、僕がアインツベルンに婿入りしたのも恒久的世界平和の為)」
切嗣「(そこに答えなんてない。一体こいつは僕から何を聞きたいんだ。考えられる事としては、アインツベルンの秘密が妥当か)」
切嗣「言っておくが、僕からアインツベルンの秘密を聞き出そうとした所で無駄だ」
ザクッ
切嗣「がっ……!?」
綺礼「おっとすまない、手が滑ってしまった。お前が答えを隠さず話してくれれば手が滑って黒鍵が手足を切り刻む事もないと思うのだが」ニタニタ
切嗣「拷問して無理にでも聞き出すつもりか……僕はそんなものっ!?」ザクザクッ
綺礼「あぁ、安心しろ。殺しはしない……最も、殺してくれと泣き叫んだ所で楽にするつもりはないが」ニヤァ
綺礼「(この高揚感はなんだ?私はこの男が苦しむ姿を見て楽しんでいるのか?)」
綺礼「(もっとこの男を苦しめたい、絶望する姿がみたい……私のこの気持ちは、一体)」
切嗣「狂っている……お前は狂って」
ザクッ
切嗣「がっぁああああああああ!!」
綺礼「……」ニヤァ
一旦ここまで!ケリィのSAN値がマッハ
切嗣「……」
綺礼「最早何の反応も返さんか」
ギル「随分と楽しんだようだな、綺礼。しかし酷い姿よ……手足は切断され、片目も潰され、更には急所を外して身体中を突き刺されているのだからな」
綺礼「衛宮切嗣からは結局、私の求める答えを聞く事は出来なかった。だが、人が苦痛に歪む顔というのは……こうも気分を高揚させるのだな」
ギル「よかったじゃないか、お前は愉悦がなんたるかを理解したのだぞ」
綺礼「だが、この気持ちは……聖職者にあるまじき感情だ。これを神に仕える私が持っている等、あってはならない事だ」
ギル「ではどうする?一生自身の感情と葛藤しながら生きていくのか?」
綺礼「……」
ギル「綺礼、そう自分を黙殺する事はない。自らの愉悦を見つけたのだ、それを否定して何になる」
綺礼「だが……」
ギル「(まだ足りぬか、ならば……)」
ギル「……お前がそれでも尚自らの愉悦を否定するのならばそれはそれで構わん。秘めたる感情に一生悩まされる姿も暇つぶしにはなる」
ギル「それはそうとして、言い忘れていたが急事態だぞ綺礼」
綺礼「緊急事態だと?」
ギル「先程教会が襲撃され、お前の父親が殺されてしまった」
綺礼「なんだと!? そんな、父上が……」
ギル「主犯は恐らく、その男の仲間だ。どうする綺礼、仇討ちをするか?」
綺礼「……少し出かけて来る。その男に用があると言っていたな、ならば私がいない間に済ませておけ」ガチャ
切嗣「……」
ギル「さて、この何時死んでもおかしくない男だが……お前を取り巻く者は中々に面白い」
ギル「喜べ、今しばらく生かしてやる。そして苦しみもがく姿を見せてみよ」グイッ
切嗣「ぁ……ぐ」ゴクッ
切嗣「……っ!!?」ビクッ
切嗣「っあぁあああああああぐがあああああああああ!?」ガクガク
ギル「……」ニヤリ
アイリ「切嗣……どこにいるの」
舞弥「しかし、使い魔の映像が途中からすり替えられていたとは……申し訳ありません、マダム」
アイリ「ううん、舞弥さんは頑張ってくれたわ。それよりも今重要なのは切嗣がどこに囚われているか」
舞弥「GPSにも反応は……ん?」
イリヤ「どうしたの?」
舞弥「反応が復活しました、ここから400m程北に向かった所で、今は遠坂邸に向かっています!」
アイリ「行きましょう、舞弥さん!」
ヒュンヒュン
セイバー「ふっ!」キンキン
綺礼「さすがに今のは防がれたか、セイバー」
セイバー「言峰……綺礼!」
綺礼「父上がお前達に殺害されたと聞いてな。柄ではないが、報いを受けてもらおう」
アサシン「……」ズラッ
舞弥「アサシン……っ!」
イリヤ「なんか黒い人一杯いる」
アイリ「イリヤ……私から絶対に離れたらだめよ」ギュッ
イリヤ「う、うん」
綺礼「さぁどうする、セイバーの偽マスター。夫である衛宮切嗣を助けたいのだろう?」
アイリ「……切嗣はどこ」
綺礼「ここから北に向かった所にあるビルの地下に監禁している、早く助け出さねば衰弱死するかもしれんぞ」
アイリ「……っ!!」
舞弥「マダム、騙されてはいけません。GPSの反応は今も動いている……この男が戯言を言っている可能性が高いでしょう」
アイリ「でも、本当だったら……」
舞弥「……ならば手分けをしましょう、私は反応を追います。マダムとご息女は北の建物を」
アイリ「わかったわ」
綺礼「話は終わったか?ならばこの窮地、どう切り抜けるか見せてもらおう」スッ
セイバー「3人とも、私に捕まってください」
アイリ「セイバー?」
セイバー「時間がありません、早く!」
アイリ「わ、分かったわ!」ガシッ
舞弥「ご息女も早く!」ガシッ
イリヤ「う、うん!」ガシッ
綺礼「何のつもりだ?それでは身動きが……」
セイバー「魔力放出!!」ゴウッ
アサシン「ぎゃあああああ!?」バッタバッタ
綺礼「何ぃ!?」
ヒュウウウ
綺礼「……チッ、逃げられたか」
綺礼「アサシンも全滅してしまうとは、師になんと報告するか」
時臣「……王よ、その男は一体?」
ギル「なに、こやつをこの屋敷に置いておけば餌に釣られて面白いものが寄ってくる。くれぐれも屋敷の外には出すなよ」
時臣「はっ」
時臣「……衛宮切嗣、何故このような姿に」
時臣「(まさか、王が?だとすればセイバーのマスターをおびき出すためか)」
時臣「(恐らく、セイバーのマスターが釣られた所を返り討ちにしてみろと、そういう考えかもしれない)」
時臣「ならば」スッ
時臣「この遠坂時臣が、セイバーのマスターを倒してみせよう」
時臣「」
舞弥「切嗣はこの屋敷の中ですか」
ギル「はっはっは! 実力的に時臣が勝つと予想していたが、人の思いとは存外侮れぬものだな」
舞弥「っ!!」バッ
ドスドスドスッ
ギル「ほう、今のをよく避けたな」
舞弥「時臣のサーヴァント……こんな時に!」
ギル「さて、お前が時臣を殺したおかげで我は憑代がなくなってしまったが……それでもまだ活動する事は出来る」
ギル「この無数の宝具、どこまで避ける事が出来るかな?」ブォンッ
舞弥「(なんてでたらめな数……これら一つ一つが、宝具だというのか!?)」
ギル「散り様で我を興じさせよ」スッ
雁夜「バーサーカー、時臣の屋敷に襲撃しろぉ!!」
バーサーカー「■■■■■!!」
ギル「何!? ええい、こんな時に邪魔をするか、狂犬!!」ヒュンヒュンヒュン
バーサーカー「■■■■■!!」パシッパシッ
ギル「くそっ、憑代が不在では力が発揮出来ん!」
舞弥「(今の内ですね)」ススッ
切嗣「……」
舞弥「切嗣、助けに来ました」サッ
切嗣「まい……や?」
舞弥「マダム達も心配しています、早く戻りましょう」
切嗣「……すまない」
舞弥「謝る必要はありません、私は切嗣と一心同体。私の命運は、切嗣と共にありますから」スッ
バーサーカー「■■■■■!!」
ギル「おのれぇえええええ!! こんな所で魔力切れだと、許さんぞ狂犬がぁああああああ!!」シュウウ
雁夜「よくやったバーサー……ゲホッガハッ」
バーサーカー「■■■■■!!」
雁夜「おいやめろ、バーサーカー!!暴走するな……ゴバァ!!」ドサッ
舞弥「という訳で、切嗣を無事保護しました」
アイリ「切嗣……こんな姿になって、ひどい」
舞弥「残った片足ではまともに戦う事も出来ない、ここからは私達の戦いになります」
アイリ「切嗣に渡したいものがあるから、少し時間を頂戴。その後、作戦を立てましょう」
舞弥「わかりました」
イリヤ「ねぇ、なんで今はキリツグに会っちゃだめなの?」
セイバー「切嗣達は今忙しいのです、待っている間私と一緒に遊びましょう」
セイバー「(言えない、切嗣が達磨寸前のスプラッタな状態だなんて、幼いイリヤスフィールには絶対に言えない)」
イリヤ「ぶー、キリツグじゃないとつまんなーい!」
セイバー「ですが……」
イリヤ「いいもん、私から直接キリツグに会いに行くんだから!」ダッ
セイバー「だめです、イリヤスフィール!行ってはいけません!」ガシッ
イリヤ「やー! キリツグの所にいくのー!」
セイバー「絶対にだめで……無理やり進まないでください、引きずられます!!」ズルズル
切嗣「(僕は、この先一生監禁生活を送らなければいけないのだろうか)」
アイリ「切嗣、晩御飯作ってみたの。身体によさそうなもので作ったから、きっと元気になるはずよ」プスプス
切嗣「あ、あぁ……ありがとう、アイリ」
切嗣「(何を混ぜたらこんな呪われた泥みたいな色になるんだ……正直食べたら何かしらの異常が起きる気配しかしないから食べたくない)」
イリヤ「はい、キリツグあーん」スッ
切嗣「あ、あーん」パクッ
切嗣「っっっっっ!!!!!!!?」
アイリ「どう、切嗣。イリヤとふたりで作ったんだけど……美味しい?」
切嗣「あ、あぁ……おいしいよ」ガクガク
イリヤ「ほんとう!?」パァッ
切嗣「あぁ、本当だ」
イリヤ「やった!」
アイリ「青汁?っていうのも淹れてみたの。苦いかもしれないけど、飲んでみて」スッ
切嗣「(本当に青いんだけど)」
切嗣「……」ゴクッゴクッ
切嗣「っ」ガクガクブルブル
アイリ「き、切嗣!?」
イリヤ「どうしたの、大丈夫!?」
セイバー「(あれから、切嗣はアイリスフィールとイリヤスフィール、舞弥の介護を受けて生活している)」
セイバー「(足一本で動くに動けない切嗣は、精神をすり減らしている……このままでいいのか?)」
セイバー「(このまま、私はマスターの惨状を……切嗣が心の隅で助けを求めているのを見て見ぬふりして、聖杯戦争を続けるのか?)」
セイバー「(私は……)」
ライダー「大量大量!これで当分はゲームに困らんぞ」
ウェイバー「ライダー、お前聖杯戦争そっちのけでゲーム三昧する気かよ」
ライダー「何を言うか、せっかく現世を堪能出来るのならば楽しまない手はない!無論、その上で聖杯戦争も……ん?」
セイバー「……」トボトボ
ライダー「セイバーではないか、このような所でどうしたのだ?」
セイバー「ライダーか……実は」
ライダー「ふむ、マスターが狂気に囲まれて助けを求めていると」
セイバー「はい……ですが、囲んでいる狂気も本心では私のマスターの事を思っている。それ故に、どうすればいいのか……」
ライダー「なるほどなぁ……」
セイバー「マスターをその中から助け出すという事は、同時に大切な伴侶を裏切る事になる。私には……」
ライダー「よしわかった、ならばこの征服王イスカンダルに任せよ!」
セイバー「何か方法があるのですか?」
ライダー「うむ!」
ウェイバー「嫌な予感しかしないぞ……」
ドゴォオオオオン!!
ライダー「ふはははは、セイバーのマスターは貰っていくぞ!」ガバッ
アイリ「きゃあっ!?」
イリヤ「お母様!?」
舞弥「くっ、こんな時に敵襲……! ご息女は切嗣の元へ、私はライダーからマダムを奪還します!」
ライダー「おっと、悪いがお前さん達にかまっておる暇はない。さらばだ!」ズガガガガ
舞弥「待て!」
ライダー「と、言う訳でお前さんのマスターを連れてきたぞ」
アイリ「……えっと、セイバー?」
セイバー「……」
アイリ「正直に話して、これは一体どういう事なの?」
ライダー「どうした、何かおかした点でもあったか?」
セイバー「ちがぁああああああああああああああああああう!!」ズガァアアアアアアン!!
ライダー「ぬわぁああああああああ!?」シュウウウ
ウェイバー「ライダーが死んだ!?」
セイバー「はぁ……はぁ……」
セイバー「帰りましょう、アイリスフィール」
アイリ「え、えぇ」
セイバー「(思いつめていたからと、敵に頼った私が馬鹿だった)」
ウェイバー「……なんなんだよこれ」
セイバー「アイリスフィールが倒れてしまった……まさかサーヴァントが脱落する程人としての機能をカットしているなんて」
舞弥「残るはバーサーカーとキャスターです、この2騎を倒せば、聖杯によって切嗣の願いを叶える事が出来る」
舞弥「マダムは自らが犠牲になることを承諾しています、どうか最後まで油断なさらないように」
セイバー「……切嗣は、聖杯で何を?」
舞弥「恒久的世界平和の実現。それが、切嗣の願いです」
セイバー「恒久的……世界平和?」
舞弥「はい、数々の地獄を見てきたあの人はこの戦いを人類最後の流血にしようと考えている」
舞弥「その為ならば、手段は選びません」
セイバー「……その願いを叶えた後、切嗣はどうするつもりなのですか?」
舞弥「願いを叶えた後は、私とご息女が切嗣の世話を死ぬまで行います」
セイバー「貴女達が切嗣をどうするかではなく、切嗣はどうするのかを聞いているのです」
舞弥「それは……」
セイバー「……切嗣と話を通してきます。でなければ私は、安心して戦う事が出来ない」
舞弥「……わかりました」
イリヤ「すぅ……すぅ……」
切嗣「……」
セイバー「切嗣、話したい事があります」
切嗣「……どうしたんだい、セイバー」
セイバー「(切嗣……傍目から見ても分かる程に精神をすり減らしている。どうしてこんなになってまで彼女達と共にいるのですか)」
セイバー「切嗣、貴方の願いは恒久的世界平和の実現と聞きました。それは事実ですか?」
切嗣「あぁ、事実だ」
セイバー「では、それを実現したとしましょう。その後、切嗣はどうするのですか?」
切嗣「そんな事はどうでもいい、僕は世界平和を実現させる事ができれば、それで……」
セイバー「それでは、貴方が救われない」
切嗣「僕には救いを受ける資格なんてないよ」
セイバー「そんな事はありません」
切嗣「それに、僕はこの様だ。誰かの助けを借りなければどこにも行く事が出来ない身体で、どうしろと」
セイバー「……聖杯の力なら、その身体を治す事も出来ます」
切嗣「お断りだ。そんな事に聖杯の力を使う位なら、僕は世界平和を実現させる」
セイバー「……それは、誰のためですか?」
切嗣「誰の為でもない。これ以上どこかで、地獄が繰り広げられる世界を変えたいだけだ」
セイバー「名前も顔も知らないだれかの為に、貴方は……」
セイバー「……分かりました、貴方がそこまでいうのであれば、願いに関しては私からは何も言いません」
セイバー「残る陣営はキャスターとバーサーカー……この2陣営を倒して、聖杯戦争を終わらせます」
切嗣「ならいい。僕はもう戦う事は出来ない、セイバーに負担をかける事になるが……サポートとして舞弥をつける。上手く協力してくれ」
セイバー「……っ」
舞弥「行きましょう、セイバー」
セイバー「……はい」
キャスター「ジャンヌゥウウウウウウウウウウ!!」シュウウウ
セイバー「これで、後はバーサーカーのみ」
舞弥「次が最後の戦い……っ!」
セイバー「どうしましたか?」
舞弥「切嗣から通信が……マダムが、攫われたと」
セイバー「!?」
雁夜「ぜぇ……ぜぇ……よくやった、バーサーカー」
バーサーカー「■■■!」
綺礼「よくやった、間桐雁夜。もうすぐ聖杯は降臨するだろう」
アイリ「……」
雁夜「けど、本当にこんな美人が聖杯なのか?」
綺礼「あぁ、聖杯だとも。もうすぐ殻が燃え、聖杯が降臨する」
雁夜「聖杯が手に入れば……桜ちゃんを」
綺礼「喜べ、これでお前の願いは成就される」
雁夜「桜ちゃん……桜ちゃん……!!」
綺礼「(早く来い、衛宮切嗣……あの時の続きを、決着を付けるのを楽しみにしているぞ。そしてお前の絶望顔を堪能させろ!!)」
セイバー「……」
切嗣「留守を突かれるとはね……僕が動けたなら、まだ時間稼ぎを出来たというのに」
セイバー「アイリスフィールは、どこに?」
切嗣「発信機の反応を見る限りだと、冬木市民会館にいる。けど、恐らく生存は絶望的だ」
セイバー「……それは、どちらの意味で言っている?」
切嗣「どちらでも変わらないさ。残りが2騎ならもうすぐ聖杯が降臨する。その過程でアイリはどうあがいても死ぬ」
切嗣「まだ生きていたとしても、次の瞬間には聖杯になっていてもおかしくない」
セイバー「……なら、すぐに向かいます」
切嗣「待ってくれ、セイバー。君に渡しておくものがある」
セイバー「?」
切嗣「これを……」スッ
セイバー「これは……聖剣の鞘!?」
切嗣「僕がこれを所持しているメリットはもう無い……ここでセイバーに返すのが、一番勝率を高める選択だ」
セイバー「切嗣……貴方は、この鞘の効果を」
切嗣「知っている。だが、僕はもう一命を取り留めている。君が倒れたらこれまでの事が全てパーになってしまう」
切嗣「だからこそ、君に返す。必ず勝て、セイバー」
セイバー「切嗣……わかりました」
-市民会館-
バーサーカー「■■■■■!!」
セイバー「バーサーカー……最後の戦いだ、決着をつけるぞ!!」ダッ
キィンキィンガキィン
セイバー「はぁあああああ!!」ガキィン
バーサーカー「■■■■■!!」
雁夜「いけ、バーサーカー!聖杯を手に入れれば、桜ちゃんを助ける事が出来る……!!」
バーサーカー「■■■■■!!」ブォンッ
セイバー「くぅっ!」ガキィン
雁夜「桜ちゃんは今も苦しんでいるんだ……俺が、助けて……あの地獄から、開放……ゲホッゴホッ」
セイバー「桜……貴方達は、その桜という人物の為に戦っているのか」
雁夜「そうだ……後はセイバー、お前さえ死ねば……ゴバァッ」
バーサーカー「■■■■■!!」
セイバー「ぐっ……だが、私にも負けられない理由がある!!」
セイバー「絶対に……負ける訳にはいかない!!」ヒュンッ
ギィン
バーサーカー「■■■!?」
セイバー「はぁあああああああああああ!!」
ザクッ
バーサーカー「■■……■……」シュウウウ
雁夜「バーサーカー……そん、な」
セイバー「これで……聖杯は」
ガシャアアアアアアアン
セイバー「なっ!?」
雁夜「なんだ!?」
ドバァッ
セイバー「(なんだあの禍々しい呪いは!?あんなのを浴びればひとたまりもな……っ)」ドバァッ
しね
しねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね
セイバー「(膨大な呪いが……身を蝕んで!!)」
セイバー「(私が……私じゃなくなる。このままだと、自我が……っ!!)」
セイバー「うわぁああああああああああああああああああああ!!」
カッ!
セイバー「(……な……んだ? 内側から……呪いが弾かれて)」
セイバー「(これは……そうか)」
セイバー「(全て遠き理想郷……アヴァロンが、この呪いを弾いているのか)」
セイバー「(だったら……!!)」カッ
バシャア
セイバー「これがアヴァロンの真の力……どんな極大の呪いだろうと、無効化する究極の力!」
セイバー「そしてこの呪いの元凶は……」
ドロ……
セイバー「聖杯……こんな禍々しい呪いを放つものが、聖杯だというのか」
セイバー「こんなものに願えば、間違いなく人類が滅びてしまう」
舞弥「セイバー……これは」
セイバー「舞弥……私は、聖杯を破壊します」
セイバー「あれは万能の願望器等ではない。あのような呪いを垂れ流す代物に世界平和を願えば、地獄絵図になる」
セイバー「そうなる前に、私が破壊します。いいですね」
舞弥「……切嗣も通信機越しに視聴し、現状を把握しています」
セイバー「そうですか……では」
『セイバー、令呪をもって命じる。聖杯を……破壊しろ』
『重ねて命じる、聖杯を……破壊しろ』
セイバー「エクス……カリバァアアアアアアアアアアアアアア!!」
ズガァアアアアアン
セイバー「ぐ……ここ、は?」
綺礼「まさかこのような結末を迎えるとはな」
セイバー「っ!」
綺礼「衛宮切嗣は不在か。まぁ、あの状態ではさすがにここに来る事は出来んか」
舞弥「言峰綺礼……今更何をする気ですか?」
綺礼「今の所は、別に何をするという訳でもない。強いて言うならば、この地獄を楽しむ、と言った所か」
セイバー「地獄? どういう……っ!?」
セイバー「なんだ……これは!?」
舞弥「辺りが、焼けている」
綺礼「お前が聖杯を失って尚この世に留まり続けている理由は知らん。もしかすると、あの泥を浴びた事が原因かもしれんな」
セイバー「……どこに行くつもりですか?」
綺礼「言ったはずだ、私はこの地獄を楽しむと」スッ
セイバー「……」
雁夜「……ぁ」
舞弥「バーサーカーのマスター……生きていたのですか」
雁夜「俺……は……そうか、負けたのか」
セイバー「……」
雁夜「ははっ……結局、桜ちゃんをあの爺から開放する手段はなくなっちまった」
雁夜「ちくしょう……ちくしょう!!」
セイバー「……バーサーカーのマスター、後で話があります。そこを動かないように」
舞弥「何処へ行くつもりですか?」
セイバー「生存者を探しに……何故このような惨状になっているのかはわからない、だが生きている人がいるならば助けなければ」
私は、突然目の前で繰り広げられた地獄を歩いた。
ほとんどの建物が焼かれ、人がいたと思えばぼろぼろと崩れてしまう。
歩くが、生存者は見つからず……そして、雨が降った。
セイバー「……こんな、事が」
セイバー「誰も……助かっていないのか」
セイバー「誰か……一人だけでも……ん?」
セイバー「あれは……っ!」ダッ
士郎「……」
セイバー「生きてる……まだ生きている!」ガシッ
士郎「……?」
セイバー「よかった……本当によかった」
セイバー「貴方だけでも助けられて……本当に」
雨の中見つけたのは、一人の生存者。
だが、その命は消えかかっており、何時死んでもおかしくない。
この場で助ける手段はただひとつ、私は……
セイバー「アヴァロン……この少年に、生きる力を」スッ
取り戻したアヴァロンを、少年に埋め込んだ。
そして……
臓硯「ぐわぁあああああああ!!」
セイバー「……」
雁夜「セイバー、この奥だ」
セイバー「わかりました、今向かいます」
ギィ
桜「……」
セイバー「こんな小さな娘を……非道な」
セイバー「はぁっ!!」ゴゥッ
セイバー「桜を無事救出しました」
雁夜「桜ちゃん……桜ちゃん!!」
桜「……おじさん、なんでこんなことしてるの?」
セイバー「……」
桜「早く戻らないと、お爺さまにひどいことされてしまうから……」
雁夜「もうあの蟲爺はいない……桜ちゃんが怯える心配はないんだ!」
桜「……でも」
雁夜「もう桜ちゃんは怖がらなくていい、自由なんだ!」
雁夜「もうあの蟲蔵に入る必要なんてない……一緒に、普通の生活に戻ろう」
雁夜「また……葵さんや凛ちゃんと、皆で」
桜「……遠坂さんと一緒に、いてもいいの?」
雁夜「あぁ……あぁ……!!」
舞弥「残念ですが、それは難しいでしょう」
雁夜「え?」
雁夜「そんな……それじゃあ、桜ちゃんは」
舞弥「母と姉に引き合わせても、再びどこかに養子にやられるでしょう」
雁夜「そんなのあんまりだ……それじゃあ桜ちゃんが可哀想すぎる!!」
舞弥「ですが、何時でも二人と会う事が出来るようにする方法はあります」
雁夜「ほ……本当か!?」
舞弥「はい、本当です」
雁夜「お、教えてくれ!その方法って一体」
舞弥「私達が、養子として引き取ります。対策を万全にすれば、余程の事をしない限り魔術師に目をつけられる事もなくなる」
舞弥「そして、桜も二人と何時でも会う事が出来る」
雁夜「……確かに、それなら」
雁夜「桜ちゃんは……どうしたい?」
桜「……私、は」
セイバー「大丈夫です、貴女には選ぶ権利があります。好きな道を選ぶ権利が」
桜「私、は……」
……5年後……
俺の名前は衛宮士郎。5年前の災害の生き残りだ
俺はあの災害で、金髪の女性に助けられた。セイバーっていう名前の人だ。
セイバーに助けられた後、彼女が住む家に引き取られた俺は家事を覚えて、家の専業主婦みたいなポジションに収まっている。
奥にいる爺さん?は両手を失っていて、片足も失っている。義足で自宅を歩くのがやっとの爺さん?の傍には娘のイリヤが着いている。
セイバーは、警備会社のバイトで働いている時以外は常に家にいる。剣道がすごく強くて、何回挑んでも歯がたたない。
舞弥さんっていう女の人もいて、この人も常に爺さん?を支えている。
イリヤと舞弥さんは爺さん?の事をとっても大切に思っているのがよく分かる。一生介護する気まんまんだ。
そして、俺と年が近い家族がもうひとりいる。
桜「兄さん、お味噌汁出来ましたよ」
士郎「サンキュー桜、こっちも魚を焼き終わった所だ」
桜「では、お父様達を呼んできますね」
士郎「わかった、俺はセイバーを呼んでくる」
衛宮一家は、今日も平和だ。
完
くぅ疲
少し間が空きましたがこれにて完結です。
見てくれてありがとうございました。
オマケの補足
Q:ケリィ令呪どうした
A:舞弥「私が回収してなんとかしました」
Q:アヴァロン埋め込んでるなら復活するんじゃ?
A:セイバー「この世界だと内蔵再生で精一杯だったようです」
Q:何故セイバーはアイリを連れて行かなかった
A:セイバー「あの威圧に怯えながら戦えと?」
Q:セイバーなんで5年後もいるの?
A:セイバー「泥を浴びたのが原因でしょうか? アヴァロンが無ければ取り込まれてました」
Q:衛宮家の相関図もとい印象ってどんな感じ?
A:
イリヤ「キリツグは私と舞弥が一生守るの!でも、士郎と桜も弟・妹として面倒見ているわ。セイバーは……姑?」
舞弥「私は切嗣を支えて生きていきます。ご息女やセイバー、士郎と桜も当然親代わりとして接しています」
セイバー「舞弥とイリヤが暴走しないように見張りながら切嗣を陰ながら支えています。士郎と桜もすくすく育ってくれて嬉しいですね」
士郎「爺さん?の事は嫌いじゃないぞ。イリヤと舞弥さんの愛情は正直ドン引きだけど……何時かセイバーから一本とって、隣に並ぶんだ!桜も最初の頃は無表情だったけど、最近は笑ってくれるようになってよかったと思う」
桜「あの地獄から救い出してくれた雁夜おじさんとセイバーさんには本当に感謝しています。新しいお義父さんも優しいですし、遠……姉さん達とも時々会いにいっていますよ。最近は兄さんと一緒に家事を手伝うのが一番の楽しみです。イリヤ姉さんと舞弥さんのあれは、正直ドン引きですが」
切嗣「舞弥とイリヤの愛情が重すぎて生きるのが辛いです。まさか毛嫌いしていた英雄様が癒しになってくれるとは思わなかったよ。士郎と桜も良い子だし、3人がすくすく成長するのを舞弥・セイバーと共に見守るのが楽しみかな」
Q:そういえば雁夜おじさんどうなったの?
A:舞弥「さすがに死んでます。元々1ヶ月持つかどうかの身体でしたから……ですが、穏やかな顔をして旅立たれました」
Q:龍ちゃんどうなったの?
A:どこかで猟奇的殺人を繰り返しています
Q:ソラウどうなったの?
A:母国に帰りました
Q:ウェイバーどうなったの?
A:世界を旅しています
Q:葵さんどうなったの?
A:夫の死を悲しみましたが廃人にはなってないです。生きてます。
Q:凛はどうなったの?
A:時々桜達と交流しながら立派に父親の跡を継いでます。
今度こそ終了
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