モバP「飛鳥の口調をどうにかしたい」 (41)

モバP「と、思うんですがいかがでしょう?」

ちひろ「いかがでしょうもなにも……それを踏まえたうえでスカウトしたんでしょう?」

モバP「それはそうなんですけどね……ただ俺も他の娘のプロデュースがうまくいってなかった時期ですし」

モバP「素材は抜群で、難点であるキャラも芸能界向きではあるから多少は我慢できると思っていたんですが」

モバP「その、なんていうか、あいつと仕事をするたびに……」

ちひろ「ああ、中二病だった過去を思い出しちゃうんですね」

モバP「なんでわかるんですか!?」

ちひろ「バレバレですよ。蘭子ちゃんの言葉もわからないフリしてますけど不意に声を掛けられればちゃんと反応しますし」

モバP「そうだったのか……」

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ちひろ「第一飛鳥ちゃんはもうあのキャラで売り始めていますし取り返しがつかないじゃないですか」

モバP「それはもうしょうがないと割り切っています。ただ、俺としゃべっている時もあの調子なのは耐えきれないんです」

ちひろ「蘭子ちゃんは平気そうじゃないですか。なんで飛鳥ちゃんはダメなんですか?」

モバP「蘭子はごっこ遊びの延長ですからね。光をみて微笑ましいと思うようなものですよ」

モバP「でも飛鳥はスレてるんですよ。もっと素直になればいいのに、それがカッコ悪いと思ってるからスレる」

モバP「それが昔の俺とダブって……うわああああああああ!!!!!」

ちひろ「よくわかりませんねえ……」

ちひろ「私は別になんとも思いませんし相談されてもどうしようもありませんから自分で考えてください」

モバP「そ、そんな……」

ちひろ「まあ敢えて一言いうなら私なんかに相談せずに素直に飛鳥ちゃんに言ったらいいんじゃないか、ってことくらいですね」

モバP「うーん、そうですかねえ……」

ちひろ「傍目から見る限りは飛鳥ちゃんはプロデューサーのことを信頼しているので、ちゃんと話せば聞き入れてくれると思います」

モバP「うーん……」

ガチャ

飛鳥「おはよう……おや、取り込み中だったかい? それなら席を外した方がよかったかな」

ちひろ「ああ、ちょうどよかった。飛鳥ちゃんのことでプロデューサーと話してたんですよ」

モバP「えっ! いや、まだ心の準備がっ」

ちひろ「なに告白する前みたいなこと言ってるんですか」

飛鳥「ボクの話? 良いことか悪いことか、それ次第では容易く耳を傾けるわけにはいかなくなるけど」

モバP(ああもういきなりイテエエエエエエエエエ!!!!)キリキリ

ちひろ「悪い話といえば悪い話かもしれないけど、将来的には良い話だと思いますよ」

飛鳥「ふぅん、つまりボク次第ってことかな。いいよ、受け入れようじゃないか」

モバP「あー……あのな、飛鳥。その、お前の喋り方のことなんだが……」

飛鳥「これがどうかしたのかい?」

モバP「その、なんだ。もうすこし素直に話してみたらどうかと思うんだ」

飛鳥「……どういうことだい?」

モバP「お前くらいの歳の時は俺もそんな風だったからわかるんだよ。人と違うことに憧れてひねくれた喋り方をするのは」

モバP「それだけじゃない。本当は人と違ってなんかいないのにそういう態度を取っていることを自覚してるけど」

モバP「色んな言葉で自分を守って、結局態度が変わらないまま周りから本当にズレていく。飛鳥がそうならないか、心配なんだよ」

飛鳥「……でもキミは今の所真っ当な人間としてこうしてボクと向かい合ってるじゃないか」

飛鳥「なら仮にボクが元の世界に戻ろうとしても、結局はどうにかなるという証拠だろう?」

モバP「そうするにもそれなりの苦労はあるんだよ。今なら遅くはない、苦労は少なくなる」

飛鳥「よく理解らないな。キミは曲がりなりにもボクのこういう性格をわかった上でスカウトしてくれたと思っていたんだが……」

ちひろ(言葉遣いを直せ、嫌だ、と簡潔にまとめられないんですかね、この人たちは……)

モバP「それは悪いと思ってる。でも、一方で徐々に直してやろうとも思っていたんだ」

モバP「もちろん、時間はかけてもいい。お前はそういうキャラで売ってるから、テレビや雑誌では思う存分そういうキャラでいてもいい」

モバP「ただ、俺の前では普通の二宮飛鳥で居てくれないか?」

飛鳥「……これはキャラじゃないんだけどな。あくまでもボクの素直な姿のつもりだよ」

モバP「いや、違う。何度も言うが俺がそうだったからこそわかる」

飛鳥「じゃあ尚更じゃないのかな。自覚してるんだよ、ボクは痛い奴なんだろうなって」

飛鳥「それを理解った上で、けれど今更素直になんてなれない。なぜなら素直でいると馬鹿を見るとわかっているから」

飛鳥「それをボクより理解っているのは、キミなんじゃないのかい?」

モバP「……」

ちひろ(なんだろうなあ、この……痴話喧嘩?)

飛鳥「……まあ考えておくよ。けれど簡単ではないと思っていてくれ」

飛鳥「キミが時間をかけて元の世界へと戻っていったように、ボクにだって時間は必要なんだろうからさ」

ガチャ バタン

モバP「……」

ちひろ「あー、要するにあれは、ふてくされた、ってことでいいんでしょうかね」

モバP「ああああああああああああちくしょおおおおおおおおおお!!!!!!!!」バタバタ

モバP「なんだよあれはまさに俺じゃねえかよ頭をフル回転して逃げる口実だけを作るのは一丁前でえええええええええ!!!!!!」ガンガンッ

ちひろ「机に頭をぶつけないでください、天引きしますよ?」

モバP「まあ、確かにそうだよな。自分のアイデンティティを否定されるのは誰だって嫌なもんさ……」

ちひろ「段々地金が出てきてますね」

モバP「でももう耐えられん……」プルプル

ちひろ「なにやってんだか……」ハァ

ガチャ

蘭子「闇に飲まれよ!」

モバP「おう、やみのまー……」

ちひろ「お疲れ様です」

蘭子「ところでわが友よ、先程闇の眷属とすれ違ったのだが……(プロデューサー、さっき飛鳥ちゃんとすれ違ったんですが……)」

モバP「ああ、飛鳥とちょっと色々あってな」

蘭子「まさか諍いか!?(喧嘩ですか!?)」

モバP「喧嘩というかなんというか……ていうかなんで喧嘩だと思ったんだ?」

蘭子「闇の眷属の顔に憂いがうかがえた。そのような事は極めて稀なり……(飛鳥ちゃん、寂しそうな顔してました。そんな顔めったに見せないのに……)」

モバP「あー、そうだよなあ……」

蘭子「よもや冷たき言霊を浴びせてなどおるまいな? わが友といえど許さんぞ!(飛鳥ちゃんに冷たくしたんですか? 駄目ですよ!)」

モバP「冷たくしてなんか……いや、あれは確かにそうかもな……」

蘭子「あっ、あ、あのそんなつもりじゃなくて……」アワアワ

ちひろ「よく意志疎通が出来ますね、ほんと……」

蘭子「と、ともあれ闇の眷属のためにも失われた絆を取り戻すがよいっ(と、とにかく飛鳥ちゃんのためにも仲直りしてくださいねっ)」

モバP「ああ……ごめんな、蘭子。余計な心配かけちゃって」

蘭子「無用の懺悔をするな、その懺悔は他者にこそ捧げるべきだ(謝るべきは私じゃなく飛鳥ちゃんですよっ)」

蘭子「それでは我は試練の場に参る!(ではレッスンに行ってきますね!)」

ガチャ バタン

モバP「はあ……蘭子はホントいい子だなあ……」

モバP「ちひろさん、見ましたか? 結局ああいうわけなんですよ」

ちひろ「こちとら何を言ってるかさっぱりわからなかったんですか……」

モバP「蘭子はあのとおり難しい言葉は使っているけれど根は素直なんですよ」

モバP「対して飛鳥は本当は良い子のはずなのにわざとひねくれたように振る舞っている、ってことです」

ちひろ「まあ、言わんとすることはわかる気がします」

モバP「そういう態度を取り続けているとどうなるか。孤立していくのがオチです」

モバP「周囲から見捨てられるだけではありません。ひねくれた態度を取る本人も、周りとどう接したらいいかわからなくなるんです」

ちひろ「随分実感が伴っている言葉ですね」

モバP「……ううっ」ウルッ

ちひろ「涙ぐむくらいなら話題に出さないでください」

モバP「うちの事務所は良い子の集まりなので飛鳥も今のところは溶け込めています」

モバP「けれど将来どうなるかはわかりません。俺のためでもあるけど、飛鳥のためでもあるんです」

ちひろ「はぁ、それがさっきの飛鳥ちゃんとのやり取りのまとめなわけですね」

モバP「どうしたらいいもんかなあ……見たところ蘭子相手には素直に接してるみたいだが……」

ちひろ「……だったら、こうしたらどうですか?」

モバP「ん?」

屋上

飛鳥「……」ボー...

飛鳥(なんて澄んだ青空なんだろう、陽気なものだね、ボクの心はこんなにも……)

飛鳥(いや、景色に当り散らしたってしょうがないか。けれどね、流行歌の歌詞みたく、天気を見習って心を入れ替えるなんてできないんだよ)

飛鳥(世界とボクはいつだって切り離されている。だからどれだけ春の陽気に照らされても、心は充たされない)

飛鳥「P……どうして……」

ガチャ

飛鳥「?」クルッ

モバP「飛鳥……さっきは、すまなかった」

飛鳥「P……」

モバP「さっきお前の言った通りだ。思春期っていうのは、大人の心と、子供の心が混ざり合う時期だからな」

モバP「一度大人の側に立ってしまったら子供が馬鹿らしく見えてしまう。ただ、完全に大人っていうわけでもない」

モバP「結局、大人の側に立っているようなつもりでも、心は子供のままなんだ。だからこそ、一層苦しいんだよな」

飛鳥「……」

モバP「だから、その……」ムズムズ

飛鳥「……?」

モバP「逆戻りする春みたいなものなのさ。お前の心は……」

飛鳥「P……?」

モバP「暖かさと冷たさ、その二つが混ざり合った、半端なぬるい心」

モバP「ぬるいままじゃ物足りないから人の肌に触れたいけれど、触れあいすぎたら熱くなってしまって耐えきれなくなるから離れざるを得なくなる」

モバP「そのうちまた触れ合いたくなるけど、その頃には愛想をつかされて、二度と暖かさを知らない心になってしまう」

モバP「そしてずっと凍えたままの心になってしまって、もう春には戻れなくなるんだ……」ファサッ

飛鳥「……」

モバP「……っ」カァ...

ドアの陰

ちひろ「ふ、ふふっ、ふふふふっ」プルプル

ちひろ(恥ずかしがりながらも言葉のチョイスとポーズはサマになってるっ)クスクス

蘭子「か、金の亡者よ、あのような振る舞いで真の救済が成されるのか?(ち、ちひろさん、あれで本当に仲直りできるんですか?)」

ちひろ「い、言ってること、よくわからないけど、だいじょうぶ、よっ、くくくっ」バンバン

蘭子「そ、そうか……」チラッ

蘭子「カッコいい……」ポー...

ちひろ(ほらぁ、蘭子ちゃんも見とれちゃってるじゃないですか)

ちひろ(飛鳥ちゃんみたいな言葉遣いで恥ずかしさを思い知らせたらどうかって提案はしたけれども)

ちひろ(あそこまで力を入れろとは言ってませんよ、プロデューサーさんっ)プークスクス

飛鳥「……言ってることがよく理解らないな。さっきとは、違う理解らなさだ……」

飛鳥「一つ、聞かせてほしい。ボクは、冷たい、のかな?」

モバP「言ったろう? ぬるいんだって。暖かさと冷たさの間を揺らいでいる」

モバP「冷たい人間になるか、暖かい人間になるかは、あくまでもお前次第、さ……」プルプル

モバP(く、くそう、ちひろめぇ……)プルプル

モバP「もっとも、俺だって今も揺らいだままだけどな。それこそ、さっきお前に冷たく接したみたいに……」キリッ

飛鳥「そ、そうかい……」

モバP(よ、よし、ともかく効いてるみたいだな……)

飛鳥「……」

飛鳥(これはどういうことなんだろう? いきなりPの口調がおかしくなった)

飛鳥(ボクだって痛いことは重々自覚してるつもりだったけれど、それでもPの言葉はわからない……)

飛鳥(そもそもさっきは普通の言葉遣いに直せと言ったにもかかわらず、なんでこんな……はっ)

飛鳥「……そうか、キミはキミのありのままをさらけ出そうとしているんだね」

モバP「……ん?」

飛鳥「キミも元々痛いヤツだった。というか、それこそが本当の姿だ」

飛鳥「本当の姿で見せることで、キミはボクに対しても本当の姿を見せるよう求めている、そうだね?」

モバP「……は?」

飛鳥「でも、ボクにはまだキミの言葉が理解できない。なぜだろう、キミはボクに歩み寄ってくれたというのに……」

モバP「えっ、ちょっとっ」

飛鳥「もっとお互いにコミュニケーションが必要みたいだね。遠慮することはない、ボクもキミを信じるから、キミもボクを信じてくれ」ッギュッ

モバP「ち、ちがうぞ、そんなつもりじゃないぞ!?」

飛鳥「何を恥ずかしがっているんだい? 君はさっき解放されたように振る舞っていたじゃないか」キョトン

モバP「あ、あれはだな、確かに練習したことは何回もあるけど、別に本当の姿とかじゃなくてな!」

飛鳥「さぁ、もっとボクに見せてくれ、キミの本当の姿を」

飛鳥「キミの本当の心を理解できた時、ボクも初めて素直になれる気がするんだ」ギュッ

モバP「ちがあああああああああう! 断じてちがああああああああああう!!」

ドアの陰

ちひろ「あはっ、あははっ、はぁーっ、ふふっ」ゲラゲラ

蘭子「おお、なんと睦まじき様子であることか!(よくわからないけれど仲直りできたみたいですね!)」

数日後

モバP(あれから事あるごとに飛鳥が俺に中二口調を求めてくるようになった……)

モバP(自分が素直になるため、とか何とか言っておきながらアイツの口調も輪をかけてひどくなってる気がする……)

モバP(それどころか蘭子はキラキラした目で近寄ってくるし、他のアイドルには笑われるし……)

モバP「はぁ……」

?「お疲れみたいね?」トントン

モバP「ん?」クルッ

奏「んぅ……」ソー...

モバP「なにしとんじゃお前は」ビシッ

奏「あんっ、いけず」

モバP「振りむきざまに不意打ちでキスするような子に取り合うつもりはありません」

奏「心配してるのは事実よ?」

モバP「あーどうも」

モバP(そういえば奏の口調も大概だよなあ……態度はストレートすぎて困るくらいだが)

奏「気候の変わり目だし、体調にも気を付けてね?」

奏「そうそう……それこそ暖かさと冷たさがまじりあった、ぬるい心なんだから」

モバP「なっ、お前どこでそれをっ」ガタッ

奏「さぁ、どこかしら?」クスクス

奏「ぬるいままじゃ人肌が恋しくなって……だっけ?」

モバP「や、やめろ、やめてくれっ」

奏「キスしてくれたら考えてもいいかなーって」

モバP「ぐううっ」

奏「ふふっ、冗談よ。こんな手段であなたの唇を奪ったってつまらないもの」

モバP「冗談でも割ときついんだよ……」キリキリ

奏「ふふ……ああ、そうだ。飛鳥のことだけど、これで行ってみたら?」

モバP「どういうことだ?」

奏「変な言葉遣いしたら、キスするぞ、って感じで」

モバP「ばっ、そんなことできるかぁ!」

奏「あはは、でもあの子の口調はそうでもしなきゃ治らないと思うけど」クスクス

奏「実際にキスする必要はないの。ちょっと近づいてドキッとさせれば、意外に素直になるんじゃない?」

モバP「できるわけないだろ……アイドルとプロデューサーなんだから」

モバP「仮にアイドルとプロデューサーでなくても、あいつが気持ち悪がって関係が壊れかねん」

奏「そんなことはないと思うけど……」

奏「まあ、考えてみてよ。でなきゃ諦めるほかないわね」

奏「それじゃ、仕事に行ってくるわ。あなたも体調には気を付けてね」

ガチャ バタン

モバP「まったくあいつは……」ドサッ

モバP「おっと、座ってる場合じゃないな。仕事だ仕事だ、えっと今日付き添いに行くのは……」ペラッ

モバP「ゲッ、飛鳥かよ……いや、嫌ってわけじゃないが……」

『変な言葉遣いしたら、キスするぞ、って感じで』

モバP「……気まずいわ!」

収録現場

「はーい、オッケー! 飛鳥ちゃんお疲れ様ー!」

飛鳥「お疲れ様です」ペコリ

モバP(よそ様に対する態度は普通なんだけどなあ……)

飛鳥「お疲れ、どうだった? ボクは世界の中でうまく踊れていたかな?」

モバP「……あぁ、いい仕事ぶりだったぞ」

飛鳥「そうかい。でも、慣れてくるにつれて空しくもなるね。それこそ幼さから成熟へと移り変わるみたいに……」

モバP「……っ」キリキリ

『実際にキスする必要はないの』

モバP(いやいや、待て待て……)

飛鳥「でもキミがいることは救いかな。キミはいつだってボクが幼いと思い知らせてくれるんだから」ウワメヅカイ

モバP「そうかい……」

モバP(こいつ唇きれいだな……)ジー...

飛鳥「ん、どうかしたかい?」キョトン

『ちょっと近づいてドキッとさせれば、意外と素直になるんじゃない?』

モバP(くそう、首をかしげて誘ってきやがって……)ズイッ

飛鳥「えっ、ちょっ、P、ちかっ」

ピタッ

モバP「……!」ガバッ

モバP(あ、あぶねええええええええええ!! 何してんだ俺!!)

モバP(すんでのところで飛鳥が引いたから良いもののもうちょっとのところで触れてたぞ! スキャンダルだよスキャンダル!)

モバP(だ、誰もいなかったよな、誰も見てないよな!?)キョロキョロ

飛鳥「……っ」カァ...

モバP「わ、悪い飛鳥、今のはジョークだ、ジョーク……」

飛鳥「……べっ、別に……」

モバP(あ、あれ……?)

飛鳥「ボクは別に、Pなら、いい、よ……?」ダキッ

モバP「ちょっ」

モバP(え、なに抱き付いてんの、この子マジなの? マジで俺でもいいと思ってんの!?)

モバP「あ、飛鳥、本当にさっきのはジョークなんだっ」

飛鳥「えっ、ボ、ボクをからかうつもりで……?」ウルッ

モバP「うわああああ! 違う違う! 泣くな泣くな!」

モバP「まあなんだ、確かにお前は歳の割に綺麗だから、そういうことを考えないでもないけど、だなっ」

モバP(いやいや何言ってんだ俺! そうじゃないだろ!)

モバP「俺とお前の立場を考えてみろ、俺とお前の年齢差を考えてみろ!」

飛鳥「じっ、自分からやっておいて、そんなっ……」グスッ

モバP「あああああああ!! 確かにその通りです、その通りなんですけど!」

飛鳥「ひくっ、酷いよ、こうやって抱き付いてるボクが、馬鹿、みたいじゃないかっ……」グスッ

モバP「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」ナデナデナデナデ

飛鳥「ぐすっ、じゃ、じゃあキス、して……?」ウルウル

モバP(ええー……?)

飛鳥「んぅ……」ソー...

モバP(ええー……?)オズオズ

チュッ

飛鳥「んっ……え、えへへっ」デレデレ

モバP(くそう、やっぱりこいつ素直になったら可愛いじゃねえか……)

モバP(以来俺は飛鳥が中二口調でしゃべるたびに、人目がないところではキスをするようになった)

――――

飛鳥「そうだな、エスプレッソにしようか……んんっ」

チュッ チュパッ

モバP「……ふぅ。カフェオレにしたほうがいいんじゃないか?」

飛鳥「う、うん……」ドキドキ

モバP「素直でよろしい」ナデナデ

飛鳥「ふあっ……」トローン...

沙紀「なんか最近飛鳥くん素直じゃないっすか?」

みちる「フゴッ?」フゴフゴ

志保「ああ、確かにそうかもしれませんね。口調はそのままなんですけれど、態度が変わったというか」

志保「コーヒーを頼むのは相変わらずですけど、ちゃんと砂糖をいれるようになりましたし」

沙紀「大人になった、っていうことっすかね」

若葉「さ、砂糖を入れても大人なんですか~? 私はブラックで飲んでこそ大人って教えてもらったんですが~」

沙紀・志保「……」

沙紀「若葉さんはどうあがいても子供っすねえ……」

志保「残念ながら……」

若葉「ええ~!?」

みちる「大人になるにはパンをいっぱい食べたほうがいいですよ!」フゴフゴ

飛鳥「オーストラリアの海は美しいね……美しさは普遍的だからこそいい……んんっ!?」

チュパッ レロッ ジュルッ

モバP「……ぷはっ」

飛鳥「はぁーっ、はぁーっ……っ」ピクピク

飛鳥「も、もっとぉ……」ハァハァ

モバP「いや、ちょっとまて……」

飛鳥「……?」

梨沙「ちょっと、Pと飛鳥どこいったのよ!?」

裕子「ふふふっ、こういう時こそサイキック念視におまかせあれっ」

裕子「ぬぬぬーっ……ふんっ! わかりました、あっちです!」

晴「ホントにそれ当たるのかよ……」

ネネ「……」チラッ

ネネ「……はぁ。皆、裕子さんを信じてみましょう?」

飛鳥「……よかった、のかな?」ドキドキ

モバP「さぁな……それともいますぐあいつらのとこにいくか?」

飛鳥「……それをボクに言わせるのかい?」

モバP「言ったろ、素直になれって」

飛鳥「ううーっ……ボ、ボクはPとずっとこうして、いたいな……」

モバP「はいはい」チュッ

飛鳥「んっ、あっ、ふあっ」ビクッ

飛鳥「なんでまた事務所の屋上じゃなくこんなところに? まあ、たまには外から僕たちのセカイを見るのも悪くな……んぅっ!」

チュウー...チュパッ

モバP「……ふぅ」

飛鳥「はぁ、はぁ……そうか、そういうことか。ここなら、確かに誰にも見られないもの、ね」

飛鳥「いわばここはボクたちのセカイ。世界に囲まれながらも、世界から見放され……んんっ」

モバP(段々こいつもどうすればキスされるかわかってきたみたいだな……)チュパッ

飛鳥「ん、れろっ、んー……」チュッ

モバP(キスもうまくなってきたし……顔つきや体つきも……)ムラッ

飛鳥「ぷはっ、はぁ、はぁ……P?」

モバP「飛鳥、ちょっと乱暴にするけど、許してくれ」ガバッ

飛鳥「ふあっ!?」ドサッ

飛鳥「は、はじめてをこんなところでなんて、そんなっ」

飛鳥「あぁんっ!」ビクンッ

事務屋上

ヘレン「……」

ガチャッ

光「あっ、ヘレンさんだ」

千佳「ほんとだー、でもヘレンさんなら少し騒いでも大丈夫かなー?」

ヘレン「子どもは立ち入り禁止よ」

千佳「えー、なんでー? ヘレンさんは入ってるじゃん!」

ヘレン「なぜなら私は世界レベルだから……でもそうね、それなりの対価は支払わないといけない」

ヘレン「なんならあなたたちが世界レベルになるための手助けをしてあげるわ」

光「ど、どういうことだ?」

ヘレン「平たく言うとあなたたちと遊んであげる、ということ」

千佳「えーいいのー? ヘレンさんが遊んでくれるなんてめずらしー!」

ヘレン「ヒーローの敵でも魔法少女の敵でも完璧に演じ切ってみせるから遠慮することはないわ」

ヘレン「なぜなら私は世界レベルだから!」


おわり

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