絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」ver2.0 (296)

絢瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」シリーズを書いた者です。

綺羅ツバサ「本当の犯人は・・・誰なの!?」綺羅ツバサ「本当の犯人は・・・誰なの!?」 - SSまとめ速報
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絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」ver2.0絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」 ver2.0 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1427639622/)

の続きになります。

結末が気に入らなかったんで三万字程修正しました。

前回読んでくれた方も、読んでくれるとうれしいです。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1427824056

前回のラブライブ!!

なんやかんやあって無事にラブライブを優勝した私たち!!

ラブライブ優勝を祝してお祝い旅行をを企画した!!

旅行先は真姫ちゃんの別荘である無人島!!なんでもこの島は色々いわくつきなんだとか!

それでも関係ないよ!私たちは楽しむんだ!

船では新しい出会いが!

穂乃果「雪穂!?どうしてここに!?」

絵里「亜里沙!?あなたもどうして!?」

雪穂「お姉ちゃんだけずるいんだよ!!私も行くもん!」

亜里沙「本当に、帰ってきたんだ・・・。
疑っていた訳では無いけど、この目で見るとやっぱりすごい・・・。」

ことり「穂乃果ちゃん、後で大事な話があるんだけど・・・。」

穂乃果「・・・えっ何?ことりちゃん・・・?」

真姫「にこちゃんそれテニスボール?珍しい色しているわね?」

にこ「へっへーんにこ色にしたのよ!アイドルたるもの身の回りの物も揃えないとね。
後でやるわよ!にこちゃん!」

こうしてお祝い旅行は11人で始まった!

○月×日 ~音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から10年後~

沖縄 真姫家別荘

その島は、無人な島にしては少しおかしかった。

沖縄から船で数十キロの所にあるその島は、

無人なはずなのに森も無く、雑草もなく、かと言って整備された道も無く、建物もない。

この島はそれなりに広いはずなのだが遮蔽物が全く無い。

なので端から見たら反対側の端まで見える気がした。

ただ、そんな何も無い島に一つだけ、この日本ではめったに見る事の出来ないものがあった。

巨大なクレーターである。

十年前の爆発により、このクレーターが出来てからこの島は日本中の関心を集めた。

当時はこのクレーターの原因を求めて様々な学者が無人島に訪れていたものだ。

あれから十年。

今ではその感心もすっかり薄れ、ここは無人の島に戻ってしまった。

そんな無人の島に、クレーターの中心部に、一人の女性がいた。

真姫母「・・・真姫、10年も過ぎちゃったけど・・・やっとここに来れたわ。
ごめんね、遅くなっちゃって。」

真姫母である。

十年前の美貌は見る影も無く、顔はしわ塗れで、髪がボサボサだった。

実年齢よりさらに十年老けて見えるその顔は、苦労した証なのだろうか。

あの日、西木野家が所有する無人島が爆発してから。

あの日、自分の娘を失った日から。

真姫母はあの日の事を鮮明に思い出せる。

真姫たちが合宿に入ってから3日目の朝だろうか。

金策を考えていて、ろくな考えも出ないまま、いつの間にか寝てしまった真姫母に、突然警察から電話がかかってきた。

警察と聞いて真姫母に思い浮かんだのは例の訴訟事件についてだったが用件は違う事だった。

真姫母「えっ・・・?」

その言葉を聞いて、真姫母は思わず受話器を二度見してしまった。

この警察の人は今なんて言ったのか。

だからもう一度聞いた。

すると同じ答えが返ってきた。

西木野家が沖縄に所有している無人島が爆発したと。

最初は何かの悪質なイタズラかと思った。

誰がそんな事を信じられるだろうか。

しかし、テレビをつけても、その日の新聞を見ても、

ニュースはその事でいっぱいだった。

真姫母は当然その無人島には何回も行った事がある。

その島は屋敷と森しかない。

しかし、テレビに映っている島の様子は、屋敷はおろか、森はおろか、文字通り何も無かった。

ホール状のケーキの上の飾りを取ったらこんな感じなのかもしれない。

それくらい、真っ白だった。

そして、行方不明者の中に自分の娘の名前があったのを見つけた時、ようやく真姫母は自分の娘が死んだ事を理解し、涙を流したのだった。

真姫母「ホント、正直今でも信じられないわ、真姫。
あなたが死んだなんて。」

真姫母はクレーターの中心に花束を置いた。

真姫母「・・・ほんとに何もかも吹き飛んでしまったのね。」

真姫母がこの島に来たのはこれが初めてだ。

爆発してからの十年は早かった。

他のメンバーの保護者からは何回も問い詰められ、記者からは毎日のように追いかけられた。

泣きたいのは娘を亡くした真姫母も同じなのに、まるで真姫母がメンバーを殺したかのような扱いを受けた。

それもこれもあの流出がわるいのだ。

最初は不発弾による不幸な事故として処理される予定で、真姫母は一人娘を亡くした不幸な母だと世間から認識されるはずだった。

しかし、事件から数年して、掲示板に流出したある手記のおかげで事件は一変する。
その手記の書き手は絢瀬亜里沙

真姫の友達の妹だと言う事しか知らないが、内容は、自分は碑文を解き、その結果命を狙われている事を訴えている悲痛な文書だった。

この流出により、
マスコミは真姫母の身内に強引な取材に行い、碑文が西木野家の祖父が隠した財産の隠し場所を示している事を明らかにすると、 あの島では財産を巡る連続殺人が行われていたのではないか?と、世間を騒がせる事になる。

真相は爆発事故により全て有耶無耶になってしまった事もあって、ネットや週刊誌には、様々な根拠の無い憶測を面白おかしく書かれる事になった。

これによりこの『事故』は音野木坂スクールアイドル殺人『事件』と世間で言われるようになる。

その後、メンバー全員の家庭の事情をすっぱぬかれ、全員の家庭に何かしらの金銭の、火急を要するトラブルに巻き込まれている事が判明してしまった。

その結果、推理ゲームの様にメンバーの誰々が犯人、と根拠のない考えがネット、週刊誌で書かれるようになった。

それによりメンバーの親族は心を病むようになる。

真姫母の場合は例の病院の訴訟の件もある。

西木野総合病院を救うにはお金が沢山必要だったがそのお金は用意できなかった。

結局裁判では敗訴し、手術を行った真姫母は業務上過失致死で職を失ってしまった。

その後も今度はメンバーの遺族に危機管理の問題で訴えられてしまった。

もちろん親族も、真姫母を訴えたところでどうにもならないのは分かっている。

真姫母も自分の娘を亡くしているのだ。

しかし、親族もこの悲しみと怒りを誰にぶつけていいのか分からない。

結局無罪で済むことができたが、その後のゴタゴタもあって、つい先日やっと真姫母は十年ぶりに落ち着く事ができた。

真姫母「まぁ有罪でも良かったんだけどね・・・、もう今更何も残っていないんだし・・・。」

職と娘を失って西木野家はぐちゃぐちゃになった。

夫は酒びたりになり、お金を湯水のように使ってしまい、借金を残してどこぞの女の所に行ってしまった。

真姫母もこの十年の無茶がたたり、余命半年を宣告されてしまっていた。

医者の不養生とはこの事だ。

真姫母「ねぇ・・・真姫、あの日、何があったの?なんであなた達はいなくなってしまったの?」

警察によるならば、爆発の原因は戦前に残っていた不発弾による暴発だ。

しかし小さい島とはいえ、それを全壊させるような爆発・・・一体地下にどれほどの爆弾が眠っていたのか。そして何故この島にあったのか。

この島を買い、別荘を建てた真姫の祖父からそんな事は聞いた事がない。

警察による捜査でも何も分からずに終わってしまった。

所謂、迷宮入りという訳だ。

まさかそんな言葉を小説以外で聞くとは思わなかった。

真姫母「でも、そんな事はもういいのよね。どうだっていいわ。真姫、ゴメンね。私もう疲れたの。

真姫の所に行っても・・・いいわよね。」

真姫母がこの島にきたのは墓参りに来ただけでは無かった。

真姫母はポケットからケースを出す。

そして、ケースからカプセルを手のひらに出した。

・・・そのカプセルがどの用途で使われるのか、それは医者だった真姫母が一番わかっていた。

この島に行けば何か分かると思ったけど、行くのが遅かったみたい・・・。

ううん、例え速く来たとしても、警察でも分からなかった事を、私が分かるとは思えない。

真姫母「・・・真姫、今から行くわね。・・・ングッ!」

真姫母はカプセルを飲んで水を飲むと、静かに目を閉じた。

その顔は安らかだった。

とりあえずここまで

前作のも含めてここ意味わからんってのがあれば指摘してもらえるとうれしいです。

今回も大半亡くなるのか……

頑張って下さい!

船は順調に島に向けて進んでいく。

太陽はこれでもかといわんばかりに照らしている。

このピーカンな天気が次の日には土砂崩れの様に崩れるとは誰が想像できるのだろうか?

完全に、○月×日だった。

亜里沙(ピンクの女に行ってこいと言われて目の前が眩しくなり、気づいたら船の上にいて、お姉ちゃんに説教されていた。 )

これからあの島で私達はこのメンバーの誰かに殺されるのだ。

私の目的はこれから起きる殺人を止める事、また止められなくても犯人を見つける事だ。

その為に亜里沙は再び『ここ』に戻ってきた。

今度は絶対に犯人を見つけてやる。

証拠を突きつけて!

絵里「もう、本当に解ったの!?亜里沙!??」

亜里沙「分かったてば!悪かったよ、お姉ちゃん。」

希「もうその辺でええやん絵里ち。亜里沙ちゃんも反省しているんやから。」

絵里「希ぃ・・・、まぁ真姫も良いって言ってるからこの辺にしましょうか。」

真姫「そうよエリー、いいじゃない二人くらい。それに今から東京まで帰れって言うのはさすがに酷よぉ。」

にこ「真姫ちゃん先輩ぶってカワイイ!」

真姫「もう!にこちゃん!」


穂乃果「雪穂も反省しなさいよ!」

雪穂「はーいわかりましたよ~~~~。」

海未「・・・ようこそμ’sの合宿へ。歓迎しますよ。
お二人とも。」

ことり「全くの部外者って訳でもないしね!良いんじゃないかな!」

亜里沙「ありがとうございます!」

この和気藹々している中に私達を皆殺しにした犯人がいる。

誰かは思い出せないが、それは確かだ。

亜里沙が一周目から引き継いでいる記憶は事件と関係の無い合宿の一日目と自分が殺された時の記憶だけ。

それ以降は魔女によってきれいさっぱり忘れさせられていた。

亜里沙「そういえば、あの島には碑文っていう物があるってお姉ちゃんから聞いたんですけど本当なんですか?」

絵里「え?そんな事話したかしら・・・?」

真姫「あら、よく知っているわね。そうね、確かにあるわよ。おじい様が残した遺言みたいな物なのかしら。

その暗号を解いた人には黄金が見つかると言われているわね。」

ことり「何それ?興味あるよ!」

海未「黄金・・・それは具体的にはなんでしょうか?まさか、本当に黄金なんでしょうか?」

真姫「さぁ・・・?でもこの時代に黄金って言われてもいまいちピンと来ないわね。

おじい様は戦前は貧乏だったけれど、戦後沖縄から帰ってきた時にはすでに大量のお金を持っていたとおばあ様から聞いたわ。
一体どこから持ってきたのかしら。」

希「なぁ?それって沖縄で黄金を見つけたって事じゃないん?」

真姫「沖縄で?でも沖縄は戦地だったのよ?空爆とかで何もかも壊れちゃったんじゃない?」

希「被害が無い所ならどうや?例えば土の中とか。」

花陽「土の中?埋められていたって言うこと?」

凛「埋蔵金を想像するにゃ~。」

穂乃果「ははは!そうだね!」

希「実はその通りなんやよ。聞いたことない?沖縄って地下鉄がない事。」

ことり「え!?そうなの!?」

真姫「聞いたことあるわね。
確か地下に不発弾が眠っている可能性があるからおいそれと掘れないんだっけ?」

沖縄は太平洋戦争末期の激戦地である事で有名だ。

1972年から不発弾の処理が開始されているが2008年までで百三十七万発分が発見され、処理されている。

これに加え、まだ二千五百万トンもの不発弾が沖縄の地下に残っていると言われている。

穂乃果「へぇ~。でもそれと埋蔵金ってどう関係があるの?」

希「いやね?表向きは不発弾があるからって理由で地下鉄は作れないってなっているけど、

本当は琉球王朝の財宝が埋まっていて、それを政府が発見されないようにって言われているのよ。」

凛「えぇ!?」

真姫「ただの都市伝説でしょ・・・?」

花陽「それってどんな都市伝説なんですか?」

希「沖縄には地下鉄が一個も無いんや。
理由はさっき話した通り、不発弾が埋まっているからって言うのが表向きの理由なんだけど、 本当は琉球王朝の財宝が那覇市に埋められているから政府がそれを発見されるのを防ぐのが理由らしいで。」

海未「私も聞いた事があります。
王家の末裔の人たちが財宝の隠されている地図を発見したそうですが自分たちでは掘れないために、 県に依頼して財宝を見つけてもらう代わりに利益のいくつかを県に譲るって密約を結んだという話ですよね?」

絵里「へぇ~。それっぽい話よね。」

亜里沙「沖縄って何もない所に地下駐車場がとても多いらしいんですが、それもこの都市伝説の信憑性を補強していますよね。」

雪歩「何で?」

亜里沙「雪歩は何もない所に駐車場を作る?作るならデパートの地下とか、駅の近くに作らない?」

雪歩「確かにそうだね・・・。別の目的で掘られたって事なのかな。」

穂乃果「つまり、企業や県が財宝を探して掘ったはいいけれど、何も見つからないから仕方なく地下駐車場にしたって事だね?」

海未「その通りです。ま、都市伝説なんですけどね。」

凛「つまり、希ちゃんはこの財宝の一部を真姫ちゃんのお爺ちゃんが発見したって言いたい訳にゃ?」

希「そや。沖縄のお宝って言えばそれが思い浮かぶなぁ。」

雪穂「それってどれくらいのお宝が眠っているんだろうね!」
亜里沙「琉球王国はアジア各国から様々な品物が入ってきたと言われているんだって。

繁栄ぶりを記した万国津梁の鐘という書物があるんだけど、そこには珍しい宝が那覇市のあちこちにある事が書かれていたそうだよ。」

ことり「へぇ~、それならおじい様がその一部を発見してもおかしくはなさそうだね。」

例えば、首里城では中国の陶磁器の他に世界で四つしか確認されていない水差しや杯が発見されている。

他にも絵画も発見され、それは十二億円で落札されたそうだ。

そのお宝がまだ沖縄の那覇市にそこかしこに埋まっていると言われている。

凛「じゃあその中に黄金もあるってことなのかにゃ?」

絵里「戦後は普通貧乏になるものだけど、真姫ちゃんのお爺さんはお金持ちになって帰ってきたんでしょ?ならその可能性もあるわよね。」

真姫「確かにそうかも。
屋敷に着いたら碑文もあるから生で見たらいいと思うわ。
あっ、そう言っている間に見えてきたわよ。」

ことり「うわぁ、すっごいねえ~。」

にこ「すごい大きさね・・・。羨ましい。」

船からは真姫の別荘が見えていた。

『最初』に見たときと全く同じ・・・。

穂乃果「楽しみだねぇ~亜里沙ちゃん!・・・亜里沙ちゃん?」

穂乃果が亜里沙を見ると、笑みを浮かべていた。

笑みは笑みでも、まるで待ち構えていた獲物が目の前に現れた時の笑み。

亜里沙「はい・・・。とっっっても楽しみですよ。穂乃果さん。」

船はもうじき島に着く。

今、たった一人の孤独な戦いが始まろうとしていた。

西木野家別荘 22:00

雪穂「にこさんごはん美味しかったです!」

穂乃果「前も思ったけどにこちゃん本当に料理うまいね!! 」

真姫「そうね!どこかで習ったの?」

にこ「別にこれくらい毎日作っていればできるわよ。
あんた達もアイドルである前に女なんだからこれくらい・・・。」

ことり「えぇ!?にこちゃん毎日作ってるの!?すごい!!」

海未「それはすごいですね。私も料理は苦手で。」

雪穂「私もあれほど上手に作れたらなぁ~。
あ、そういえば、お姉ちゃん!さっきことりさんと二人で何を話していたの?」

ことり「っえ、ええっとぉ・・・。」

穂乃果「その・・・ね、いや、なんでもないんだよなんでも!」

ことり「まだ秘密!明日発表するね!」

絵里「なんで顔赤いの二人とも。」

海未「・・・?」

にこ「ま、まぁまぁ、この話はいいじゃないの。
ほら、でかい肖像画ね!」

メンバーの目の前に肖像画と例の碑文が彫ってある石碑が現れる。

碑文の内容も一周目と同じだ。

真姫「あれは船の上で話したおじい様の肖像画ね、んで、下に書いてあるのはおじい様の碑文よ。」

希「これがあの碑文かぁ~この石だけでも高そうやなぁ。」

花陽「すごいです・・・。」

凛「ひんやりしてるにゃ。」

亜里沙「・・・。」

亜里沙にとっては二度目となる碑文。
前回もここで碑文について話し合ったが結局解く事は出来なかった。

亜里沙(今回は必ず解いてみせる・・・!)

凛「これってさ、解いたらもらえるって書いてあるけど部外者の私達でももらえるのかにゃ?」

にこ「っ!?」

希「・・・。」

凛のふとした発言に場は一瞬騒然となる。

絵里「ど、どうかしらねー?でも元は真姫の家の財産な訳だから無理じゃないかしら?」

真姫「ま、まあね、でもそうね。
見つけた人には一割くらいはあげてもバチは当たらないんじゃないかしら?ハハハッ。」

希「いや、うちはそのまんまの意味やと思うで。
見つけた人に全部あげるんやと思う。」

真姫「!?っ・・・何故そう思うの?希?」

希「簡単な話や。
碑文にそう書いてあるからやで。」

確かに碑文には見つけたものに授けると書いてある。

希「そもそも真姫ちゃん家のおじい様は何で遺産を隠したんやろうな?しかも莫大な遺産やで?普通なら家族に何も無く与えるのが普通と違う?」

亜里沙「確かにそうですね・・・。
遺産なんて本人の死後、一番デリケートな問題です。
家族同士ですらいざこざが多いと聞きますし・・・。」

希「そうやろ?こんな見つけた者に・・・なんて文章を残したらそれこそ西木野家が遺産を相続するのにノイズにならへんか?」

碑文の一部に書いてある、『解いた者に授ける』は西木野家が遺産を受け取るのを危ぶむ意味しか持たないという事だ。

海未「そうですね・・・。遺産とは家族に遺す物です。
それを隠したという事は考えられるのは・・・。」

花陽「・・・。」

ことり「・・・。」

真姫のおじい様と西木野家は仲が良くなかった。
それは今この場にいる全員が想像できた。

真姫「ちょ、ちょっと待ってよ!別にそれだけで仲が悪いって考えるのは総計よ!もしかしたら面白半分で・・・。」

希「面白半分で隠すような額やないと思うで?何がどれほどあるのかは知らんけどな?」

パキンっ!世界が割れるような音と共に、亜里沙を除いたメンバーが止まった。

いや、静止したと言った方が良いかもしれない。

黒い女「何故隠した・・・か。
どうやら新たな謎が出てきたけど大丈夫なのかしら?亜里沙。」

黒い女が碑石に座りながら紅茶を飲んでいた。

亜里沙「何の様よ?黒い神様。」

黒い女「正直待ちくたびれたのよ。この後続くのは前回もあった碑文に関する考察よ。

内容も全く同じだから早送りさせてもらうわ。」

亜里沙「勝手な事をしないでくれませんか?時間を勝手に飛ばされちゃ考える時間も無いですよ。」

黒い女「だから、その分あなたに知識を与えるわ。」

亜里沙「知識?何ですか?それは。」

黒い女「そう、さすがに前回のあなたの記憶だけじゃ同じ結果になると思ったのよ。

だから、碑文を解くヒントを与えようと思ってね。」

亜里沙「それはありがとうございます。
でもヒントをくれるっていうからにはもう解いたんですか?」

黒い女「ほぼ、ね。最後がちょいと怪しいけれど、それも現地に行けば解ると思うわ。」

亜里沙「・・・。」

黒い女「ま、そう落ち込む事も無いわよ。

今思えばこれはここにいるメンバーの中では真姫しか解けないかもしれないわ。

真姫は偶然碑文のヒントになるきっかけを思い出したからこそ解く事が出来た。

つまり亜里沙にもそのきっかけを見せてあげようと思ってね。」

亜里沙「・・・。」

現状、亜里沙はこの碑文はまだ何も解けていない。

これから事件が起きると魔女から予告されている。

その事件を解くためにも今解ける謎は出来る限り早く解いておきたい。

亜里沙の反応を見てか、ベルンは機嫌をよくしたようで、

黒い女「さすがに碑文を解いた時の所は見せられないけどね。じゃ、始めましょうか、ん。」

黒い女は手を出す。

亜里沙「・・・?なんですかその手は。」

黒い女「この手に触りなさい、それで記憶は継承される。」

亜里沙「は、はぁ・・・。」

亜里沙は恐る恐る手を握る。すると・・・・、

亜里沙「あっ!?あああああああああああああ!!!!!」

亜里沙の頭に真姫を主観とした映像が流れてくる。

見たことも無い映像、知識、思い出。

それらが無理やり詰め込まれていくような、そんな感覚。

亜里沙は初めて知識を無理やり詰め込まれる感覚を知った。

黒い女「気分はどうよ?」

亜里沙「はぁ・・・はあ・・・、頭がシェイクされているようよ・・・。」

黒い女「それはよかった、で、どう?頭の方は。」

亜里沙「確かに・・・私が見たことの無い記憶があります。
すごい違和感ですよ、私の頭じゃないみたい。」

黒い女「まぁその辺は慣れるしか無いわね、じゃあいくわよ。」

そういうと、黒い女は指を鳴らす。

すると目の前に空間ができた。

そこに映っているのはメンバーと碑文。

どうやら碑文について話し合っている所らしい。

黒い女「まずは前回真姫が黄金へとたどり着いた事柄をまとめるわね。」




※ここからは絢瀬亜里沙「・・・犯人はあなたですよね?」ver2と見比べながらやると分かりやすいかもです。

>真姫「火払いの印・・・を志す・・・王・・・火・・・そういえば昔おじいちゃんに・・・。」

それは真姫がまだ子供の頃、祖父に祭りに連れて行ってもらった時の事・・・。

ある演目をやっていて、それでその時に私は指を指して聞いたんだ・・・『あの形はなんだって・・・』

あの頃は幸せだったなぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの形・・・形・・・え・・・?」

真姫は眠気がぶっ飛ぶほど覚醒する。火払いの印ってもしかして・・・。

亜里沙の前に空間が裂け、そこに映像が映る。

亜里沙「これは確か碑文を解く寸前に真姫さんが思い出していた事ですよね?」

黒い女「そうね。真姫はここから答えに至った。

つまりこの『形』から連想できるのが火払いの印につながるって事なのよ。」

亜里沙「そしてそれは・・・祭りに関係しているって事ですか・・・?」

黒い女「そうね。そしてその印は祭りの中のある演目の最中にあった。」

亜里沙「でも結局その祭りの『演目』が解らないと話にならないですね。」

黒い女「あら、そこで思考停止?祭りの演目は確かに地域によって色々あるけれど、それが形ならば話は別よ。

そして、その形とは、火払いの印。つまり火を払う、防火の印って事じゃないかしら?」

亜里沙「防火・・・!まさか!!!」

黒い女「あら、もう分かったのかしら?なら、もう助言はいらないわよね?」

亜里沙「ちょっと待ってください!最初の文が解ったとしても・・・『川』の所も・・・。」

そういうと、黒い女はめんどくさそうに、指を鳴らした。すると、また空間に真姫が現れた。

>真姫「にこちゃんが言っていた・・・船が旅をするって・・・下る・・・上がる・・・あっ・・・。」

あった!!!

真姫「国・・・あった!村も!これも!これも!!これなんだ!!!」

真姫の頭の中でピースが組みあがっていく。黄金の扉を開けるためのピースが。

真姫「鍵も解った!欠片も分かった!!これをこうして・・・できた・・・五文字!!」



>海未「いいえ、何かヒントになるかもしれません。川から連想できる物、それくらいの抽象的なイメージの方が発想が柔軟になっていいと思います。」

黒い女「真姫はこれらをヒントにして川にたどり着いたわ。」

亜里沙「つまり、実際の川じゃないって事ですよね?」

黒い女「そうよ。そして、この『川』の意味が解れば真姫は欠片までをあっという間に解いている。

つまり、『火払いの印を志す王』と『川』の意味が解れば碑文にあった五文字まで簡単に解けるってわけよ。」

亜里沙「・・・。」

黒い女「・・・もう少しだけヒントを上げましょうか。にこは実にいい事を真姫に言ったわ。

にこがいなければ真姫は黄金にたどり着かなかったでしょうね。

最初の方はver1と同じ?

>にこ「ほら、碑文?だっけ?を見てみると使いが王から命令を受けて何かを届けているように見えない?

それで川を下っている。ってことは下る乗り物が必要じゃないの?」

絵里「下る乗り物・・・」

真姫「下る・・・下り・・・下り・・・?乗り物・・・上がり・・・っ上がったり下りたりするもの・・・川・・・。」

亜里沙「・・・。」

黒い女「あら、もう何かをつかんだ感じかしら?」

亜里沙「そうですね・・・何となくつかんだような気がします。」

黒い女「さ、ヒントはこれくらいでいいかしらね。」

亜里沙「えぇ・・・後は書庫か何かがあれば・・・多分。」

黒い女「そう。書庫はこの別荘にあるわ。頑張ってね。」

亜里沙「ありがとうございます。頑張ります。」

黒い女「助けるのはここまでよ。あなたが真実にたどり着ける事を、祈っているわ。」

バキンッ!!!

その瞬間、再び世界が割れる音を発し、空気が動き始める。

真姫「大分話し込んじゃったわね、今日はもう終わりにしましょ。」

海未「そうですね。明日もありますし、その時にでもこの話をしましょうか。」

雪穂「そうですね。もう休みましょう。」

ことり「じゃ、お休み~。」

「「「お休み~。」」」

ことり「海未ちゃん、ちょっと話があるんだけど~。」

海未「ことり・・・?わかりました、私の部屋で話しましょうか。」

凛「もし黄金が見つかったら~凛は~。」

花陽「凛ちゃん気が早いよ!」

希「えりち、行こっか!」

絵里「そうね。お休み。」

メンバーは自分の部屋に帰って行った。

穂乃果「うーん!うーん!」

・・・穂乃果以外は。

亜里沙「・・・穂乃果さん、戻らないんですか?」

穂乃果「うん!何だか寝付けなくてさ!」

亜里沙「穂乃果さん、これから碑文を解こうと思うんですが、一緒にどうですか?」

書庫

穂乃果「でもビックリしたよ~。亜里沙ちゃんの頭が良いことはさっき知ったけれど、まさか碑文の一部分が解った、だなんて~。」

亜里沙「解ったかもしれない、ですよ穂乃果さん。」

穂乃果「それでもすごいよ!じゃあ聞かせてくれないかな?」

亜里沙はうなずくとある本を取った。

穂乃果「その本は何?」

亜里沙「これは、」





                       亜里沙「沖縄の歴史書、です。」


亜里沙「じゃあ説明していきますね、まずは最初の文。」

『火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。』

亜里沙「まず火払いの印から。
これは言い直すと防火、つまり防火の印、ということなんです。」

穂乃果「防火の印?火の用心とか?」

亜里沙「その通りです。穂乃果さん、このマーク、見覚えありません?」

亜里沙はある形を書いた。

※参考画像http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Tomoe.jpg

穂乃果「うーん、あっ!あるある。祭りとかであるよ!太鼓とか、はっぴとかについているやつだよね!」

亜里沙「その通りです。
この様な模様を『巴』と言います。」

『巴』とは勾玉のような形をした日本の伝統的な模様の一つだ。

この模様の由来は様々あり、弓の鞆絵である説、勾玉を図案化した説などがある。

陰陽道や風水などにも使われている所を見たことがあるだろう。

これは勾玉には霊的パワーが宿っているので それにあやかろうと、この模様に影響を受けた国も沢山あり、日本では家紋としても使われている。

そして、この巴という模様は平安時代に防災、火災避けとしても使われていたと記録に残っている。

穂乃香「へぇ~!じゃあ火払いの印ってこれの事なんだ!」

亜里沙「・・・多分ですけどね。
この『巴』という字に後は海未さんが言っていたように、『志す』を足すと・・・。」

穂乃果「巴志・・・?どういう意味?」

亜里沙は沖縄の歴史書を広げ始めた。

亜里沙「人物名ですよ穂乃果さん、ここを見てください。『尚巴志王』(しょうはしおう)とあります」

穂乃果「・・・!!すごいよ亜里沙ちゃん!よく見ると志すの後の『王』って字もついてるし!よく知っているね!でもこの人って何をした人なの?」

亜里沙「簡単に言うと、琉球王国の王だった人です。
『火払いの印を志す王』は多分これの事ですよ。」

穂乃果「すごいね!さっきから同じ言葉しか言えていないけど!よく解ったね!」

亜里沙(本当は真姫さんと黒い魔女さんのおかげなんですけどね・・・。)

亜里沙はこうして簡単に解いている。

しかし、ここにたどり着くには真姫が諦めずに必死に解いたからなのだ。

諦めないという絶対の意志は奇跡を与える。

その真姫を覗いたからこそ、同じ所に立てている。

穂乃果「じゃあこの川っていうのは?亜里沙ちゃんは解いたの?」

亜里沙「・・・多分ですけどね。」

穂乃果「教えてよ!もったいぶらずに!」

亜里沙「まず言うことは川ではないということです。」

穂乃果「さっき海未ちゃんが言っていたね!川からイメージできる事をって!」

亜里沙「そうです。
それは、上がったり、下りたりできるものです。
川じゃなくて、流れるものを考えてください。」

穂乃果「水以外が流れる何か・・・?流れる物・・・。物・・・?たとえば・・・電流とか・・・。」

亜里沙「そうです。発想はあっています。」

穂乃果「物流とか・・・?鉄道とかかな?上がったり下がったりできるし。」

亜里沙「大変惜しいです。さっき物流と言いましたが、物じゃないんです。」

穂乃果「物じゃない・・・?じゃあ人って事かな・・・?人が上がったり下がったり・・・。」

亜里沙「人であっています。
ですが、そのまんまの意味ではありませんよ。」

穂乃果「人であってるけど、物体として上下するものじゃないんだよね・・・?
でも上がったり下ったり・・・。っ!!あっ!!」

亜里沙「分かりましたか?」

穂乃果「わかった!!!位!!階級だね!?」

亜里沙「正解です、穂乃香さん。」

穂乃果「じゃあこの川を三つ下った・・・ていうのは、階級を三つ下げたって事なんだね!」

亜里沙「イエス。
私も事前に解いたのはここまでです。
ここから本を見ながらと行きましょう。
・・・あった。これかな?」

亜里沙は沖縄の歴史書物を開いた。

穂乃果「これは・・・?」

亜里沙「これは琉球王府行政機構図。つまり役職ですよ。」

※参考HPhttp://ryukyux.files.wordpress.com/2012/11/e79089e79083e78e8be5ba9ce6a99fe6a78be59bb3.jpg?w=645

穂乃果「いっぱいあるね!えっとまずは尚巴志王の位である『王』から階級を三つさげると・・・表十五人っていう役職にたどりつくね!」

亜里沙「川を下った先には二つの国・・・。『物奉行所』と『申口方』かな?」

これで最初の『火払いの印を志す王より命を承りし使い、川を三つ下ったその先に、二つの国有り。』は全て解いた事になる。

次は『一の国に三の村、二の国に四の村有り。三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り。』

亜里沙「これも簡単です、一の国、恐らく物奉行所の数を言っているんでしょう。」

物奉行所は用意宝物奉行所、給地方物奉行所、書体方物奉行所の三種類。

穂乃果「二の国の四の村ありは申口方の種類だとすると・・・確かに数は同じだね!」

申口方は平等方、泊地頭、双紙庫理、鎖之川、と四種類。

穂乃果「順調だね!次は『三の村に二十四の鍵、四の村に二十六の鍵有り』か・・・。」

亜里沙「役所の数ですね、物奉行所の下に二十四個の役所があって、申口方には二十六個の役所があります。」

穂乃果「次は・・・。」



『使い、黄金に至る鍵を得る。

宮殿より古来から作られし鍵、

納殿の鍵、

庫理の鍵、

田の鍵。

これらを砕いて一つの鍵を作り、使い、黄金に至った。

鍵を一つにして二十の破片に砕き、三十七の欠片に分けよ。』

亜里沙「鍵とはこの合計五十個の中から選ぶのでしょう。そしてこれらはそのヒント。」

穂乃果「『宮殿より古来から作られし鍵』は『古』って字があるから『宮古蔵』かな?」

亜里沙「『納殿』はその名の通りですね。納殿という役職があります。庫理も・・・『下庫理』がありますね。」

穂乃果「『田の鍵』・・・。漢字で『田』が使われているのは『田地方』だけです。」

亜里沙「後はこれらの鍵を砕いて一つにする・・・。」

穂乃果「希ちゃんが言っていたね!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>凛「アナグラム?」

希「文字遊びの事や。国とか村とか出ているけどこれは別に地形の事を差しているんじゃなくて、一種のなぞなぞって事や。」

>真姫「なるほどね。つまり最後の欠片がうんぬんってあるけど、欠片は文字の事で、上の暗号から出した言葉三十七文字の中から特定の文字を引き抜けって訳ね。」

穂乃果「そう考えると面白いね!ということはこの暗号の答えは五文字になる訳だ!」

亜里沙「言語が解りませんが、抜き出した答えを日本語にしてくっつけてみますか。」

日本語にするとこうなる。

みやこぐらおさめどのしちゃぐいたかどころ

穂乃果「ビンゴだね!!!ちょうど二十文字!次は三十七文字!」

亜里沙「とりあえずローマ字にしてみますか。」

miyakoguraosamedonosichaguitakadokoro

亜里沙「あたりですね。三十七文字!」

穂乃果「さらにビンゴだね!!」

亜里沙「はい。黄金は近いです。」

亜里沙たちの顔にも笑みが見える。

『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』

穂乃果「ラスト!六つ目、九つ目、十六個目、十八個目。三十六個目の文字を引き抜く!

引き抜いた文字は

o r d n r

これで・・・五文字!


亜里沙「でも・・・。」

穂乃果「これが何だっていうのだろうね・・・?」

亜里沙は頭の中で字を回転させる。すると、ある事に気が付いた。

亜里沙「穂乃果さん、こうじゃないですか!?」

rord n

穂乃果「こんな単語あったっけ?どういう意味なの?」

亜里沙「正確にはこうです。」

l o r d n

穂乃果「!!・・・そうか・・・Lでもラ行は言えるよね。」

亜里沙「そうです。lord n !!西木野卿!!!これが黄金に至る鍵です!!」

穂乃果「そうだね!!!間違いない!!・・・んで・・・この先どうするの?」

亜里沙「それなんですよね・・・。」

穂乃果達は鍵を探し手に入れた。

・・・しかし、肝心の扉は何処にあるのか解らない。

碑文にもこれ以上は書いていない・・・。

亜里沙「後は名前しか書いてありませんね。

うーんこの推理が間違っていたのでしょうか・・・。」

穂乃果「そんな~。ここまできたのに~。あってると思うんだけどなぁ~。」

穂乃果は碑文のメモを逆さにしたり、横にしたりする。どうにも分からなかった。

亜里沙「今日はここまでですかね・・・、穂乃果さん、無駄骨でスイマセン・・・。」

穂乃果「ううん、私は楽しかったよ!ありがとう!」

亜里沙「いえいえ、あ、穂乃果さん、最後の英語の綴り間違ってますよ?」

亜里沙が指を指したのはこの碑

文に書いてある最後の行。真姫の祖父の名前だった。

穂乃果の書いたメモにはRとあるが本当はLだ。

穂乃果「あ!いけないいけない!人の名前を間違えるのはいけないね!年下に言われるなんて反省反省!」

亜里沙「フフフ、紛らわしいですよね。
ローマ字の綴りって。」

穂乃果「本当だよ!他は日本語で書いてあるのになんで名前だけローマ字なんだろ!読みにくいよね!」

亜里沙「確かにそうですね。ここだけなん・・・で・・・ローマ字・・・。」

亜里沙「・・・・・・。」

そんな事考えても無かった・・・。

言われてみれば、確かにそうだ。

あえて、この名前だけをローマ字にした理由・・・。

真姫の爺様は洋裁かぶれとかそんな事だろうと思って気にしなかったが・・・。

名前だけがローマ字な理由を考えたとき、

亜里沙「あっ・・・・あっ・・・・!」

全てのピースがつながった。

亜里沙の心臓がバクバクとなり始める。それは確信めいた考えだった。

穂乃果「亜里沙ちゃん・・・?どうかしたの・・・?」

穂乃果は何かまずい事を言ったのかと亜里沙を見る。亜里沙は目をカッと開けて、

亜里沙「穂乃果さん!あなたは天才です!!」

穂乃果「えぇ!?」

亜里沙「謎が解けました!!行きましょう!!!」

穂乃果「どこに!?」

亜里沙はドアを開けて振り向きざまに元気よく言った。

亜里沙「黄金の待つ扉へですよ!」

ホール 

亜里沙「はぁはぁ・・・。」

穂乃果「亜里沙ちゃん、はぁ・・・はぁ・・・、扉って、石碑の事なの?」

亜里沙「はい。おそらく・・・ここにくぼみとか・・・。」

穂乃果「あ、亜里沙ちゃん!?」

亜里沙は碑文が書いてある石碑に向かって爪を使い、でっぱりが無いかを探しているようだ。

亜里沙「たぶん・・・あっ!!」

亜里沙は祖父の名前の書いてある『L』の字を押したり引っこ抜いたりしようとした。

そして、Lと書いてあるマス? と言えばいいのだろうか?それが取れた。

その下には何かスイッチのようなボタンがあった。

穂乃果「なるほどね・・・その碑文の名前がローマ字なのはそういう事なんだね。」




亜里沙「スイッチになっていたんですね・・・。ビンゴです。」

その後、 O R D Nの文字を同じ様にいじっているとマスが取れて下からスイッチを現れた。

穂乃果「これは・・・もしかして。」

亜里沙「いきますよ?穂乃果さん・・・。」

亜里沙と穂乃果は顔を合わせてうなずく。

亜里沙はL O R D Nの順にスイッチを押す。

ガコン!!!

最後のNを押した時、何か起動したような音がした。

その後、

ゴゴゴゴ!!!

近くにあるライオンの像の手が動く。

手の指す方向を見ると、さらにライオンの像があり、指だけが違う方向に向いていた。

亜里沙「指の指す方向に行け、という事でしょうか・・・?」

穂乃果「そうみたいだね・・・。」

亜里沙「行きましょう穂乃香さん。
黄金の正体をこの目で見てやろうじゃないですか?」

穂乃果「うん!行こう。」

二人はライオン像の指す方向を歩き始めた。

碑文を解いた所を上位の空間から二人の魔女は見ていた。

一人は紅茶を飲みながら優雅に、もう一人はポップコーンを食べながらキュートに。

黒い女「ふぅ・・・なんとか碑文は解いたわね。」

ピンク女「ちょっとズルイんじゃない?あれじゃあ猿でも解けるわよ?」

黒い女「私は真姫が解いた材料を亜里沙に見せただけよ。
そこからどう見るかは亜里沙次第だわ。」

ピンクの女「まぁ、答えは教えなかったしね。
でも今回だけよ?こんな事は。」

黒い女「安心して。もうこんな事はしないわよ。
これから起こるであろう事件に関しては私はノータッチよ。」

ピンクの女「当たり前よォ。
じゃ、見ていきましょうか。碑文が解かれて何が起こるのか、楽しみね!」

黒い女「もう全て知っているのに何を言っているんだか・・・。」

ライオンの指す方を歩いてもう1分くらい歩いた気がする。

亜里沙はそう思った。

屋敷は3階だが何せライオンの像が至る所にあるのだ。

何回も同じ所を歩かせられる。

しかし、歩いた先には違うライオンの像があり、亜里沙はこの仕掛けに芸術めいた物を感じた。

そうして歩いた先、それは書庫だった。

穂乃果「ここは書庫室だよね・・・?どこに・・・あっ!」

亜里沙「・・・っさっきはこんな穴無かったですよね」

書個室の奥の暖炉の底が外れていた。

奥を覗きこんでみると、階段が出来ていた。

穂乃果「行こう!黄金を見たい!」

階段はらせん状になっていた。

少し暗かったが、目を凝らすと明かりをつけるスイッチがあったので亜里沙はそれを点ける。

そして何度か折り返すとそこには一つのドアがあり、文字が書いてあった。

『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』

穂乃果「正解・・・だね。」

亜里沙「はい。じゃあ・・・ドアを開けますよ。」

穂乃果「うん・・・っお願い。」

亜里沙はドアを開けた。

ギイイイイイイイイイイイイ

亜里沙「こ、これは・・・。」

その部屋は見るだけで豪華そうな部屋だった。

絵画やツボ、ベッド、ソファ、など、まるで高級ホテルの一室と言った方が良いだろうか。

そして、奥の方に、ここまで来た賢者を迎える様に、 それはあった。

穂乃果「あった・・・!本当に・・・黄金だ!!!!」

亜里沙「これは・・・すごいですね・・・!!それしか言葉が出てきません!」

黄金が、インゴットというべきだろうか?が、それはそれは高く、深く積みあがっていた。部屋の明かりが少し弱くてよかった。

これで少し強かったら黄金に光が反射して眩しくてこの目でよく見れなかったかもしれない。

これはまさに百万ドルの景色だ・・・と亜里沙は思った。

これを見るなら1万円くらいは払ってもいい・・・真剣にそう思った。

それほどに・・・この光景は美しかった。

穂乃果「これ全部でいくらあるんだろうね・・・!亜里沙ちゃん!」

亜里沙「解りませんが・・・余裕で10億はあるんじゃないでしょうか・・・。
何せこれだけあるんですから・・・!」

亜里沙「じゃあ、さっそくこれを報告しに行きましょうか?もう夜も遅いですがこれ程の事です。皆許してくれますよ。」

穂乃果「そうだね!じゃあさっそく・・・っ」

亜里沙「・・・っ!?ちょっと待ってください!穂乃果さん、こっちの机に何かありますよ!」

亜里沙が見つけたのは黄金が見える位置からは完全に死角になる場所にある机だった。

机の上には様々な古い本が置いてある。

その上には昔作られたのだろうか、年期の入った古時計がある。

穂乃香「・・・?どうしたの?亜里沙ちゃん。うわ、豪華そうな時計だね!」

亜里沙「上じゃありません!下ですよ下!」

亜里沙が指したのは机に置いてある封筒だった。

そこには『碑文を解いたものへ』と書いてある。

穂乃果「なんだろう・・・。真姫ちゃんのお爺さんが書いたのかな?」

亜里沙「かなり古いですね。年期が入っていそうです・・・。」

封筒には手紙が入っている大きさだったが何やら厚い。

他にも何か入っているみたいだ。

亜里沙「開けてみますか?」

穂乃果「うーん本当なら真姫ちゃんに見せるべきだろうけど・・・。」

笑いながら悩むふりをして、

穂乃果「あけちゃおっか?私達が碑文を解いたんだし!」

亜里沙「そうですね!」

亜里沙は封筒を開けて中身を取り出した。

中には一枚の手紙と通帳、そして印鑑が入っていた。

穂乃果「・・・?手紙と・・・これは・・・?」

亜里沙「通帳、印鑑・・・ですね。手紙はっと・・・。」

亜里沙は通帳を机に置いて手紙を流し目で読む。

真姫の祖父の字は達筆だったのか、読みにくかった。

亜里沙「うわぁ・・・夜中にこの字はきついですね・・・。」

穂乃果「見るだけで目がしょぼしょぼしてきたよ・・・。」

亜里沙「書いてあるのは遺産の分配についてと・・・えっ・・・!!!!」

亜里沙は自分の眠気が一気に引いていくのを感じた。

黄金の謎を解いた時とはまた別の興奮とでもいえばいいのだろうか、心臓がドキドキしている。

亜里沙は自分の胸を握りしめ、手紙から目を離した。

震えている。その感情の招待がわかった。

・・・それは人の原初の感情。

亜里沙「そうか・・・怖いんだ。私。」

穂乃果「!?どうしたの!?亜里沙ちゃん!!」

穂乃果は亜里沙の顔を見る。その顔は真っ青だった。

亜里沙「なんて、恐ろしいものを・・・!」

黄金を見つけてから1時間後 隠し部屋 24:10

その後、穂乃果と亜里沙はメンバー全員に碑文を解き、黄金を発見した事を公表した。

亜里沙「・・・以下の経緯からこの部屋で黄金を発見した訳です。」

絵里「スゴイ!すごすぎるわ!まさか本当にあったなんて・・・。」

希「はぇ~すっごいきれいやわぁ~。
何年も前のがこうして傷一つつかずに残っているなんて、スピリチュアルやなぁ・・・。」

雪穂「よく碑文を解いたね・・・、スゴイよ亜里沙、お姉ちゃん・・・。」

真姫「・・・これで病院も救われるのね・・・、やったわ!ママ!」

にこ「・・・。」

海未「本当に・・・、あったんですね・・・・。」

ことり「穂乃果ちゃんと亜里沙ちゃんがこれを解いたの?すっご~い!」

凛「これっていくらになるのにゃ?」

花陽「想像もつかないよ・・・。
でも宝クジの1等賞をもらうよりはもらえるんじゃないかな・・・。
本当に信じられない・・・。」

メンバーは驚愕の表情を隠せない様子だった。

無理もないのかもしれない。

目の前に自分の身長よりも高い金塊を積まれたら誰だってこうなる・・・。

人の世が金で決まるならば、この黄金はまさに魔法・・・!これを溶かす事で世を思うがままにできる・・・。

穂乃果「私は何もしていないよ。
全て亜里沙ちゃんが解いたんだんだし。」

亜里沙「いえ、最後の穂乃果さんのひらめきが無ければ解りませんでした。」

希「二人とも、羨ましいわぁ・・・。
この黄金は全部二人のものや。
もう働かなくてもいいんと違うか?」

にこ「・・・!」

真姫「ちょ、ちょっとまってよ・・・!何で二人だけのものなの!?」

希の言葉に真姫が反応する。

真姫には家庭の事情でどうしても金がいるのだ。

そしてその金はこの黄金を金に換えれば十分返せる額だ。

希「さっき話したやろ?西木野家のおじい様が何であの碑文を作ったのかを考えれば一目瞭然や。碑文を解いた人にあの黄金を授けるってことやろ?」

真姫「明確に授けるとは書いていないわ!それにここは西木野家の土地よ?そこにあったんだから西木野家に所有権はあるはずよ!」

希「穂乃果ちゃん、何かおじい様が残した手紙とかは無いの?碑文を遺したおじい様や。
それを見つけた後の事もどこかに文書で残してあるんじゃない?」

亜里沙「それは・・・その・・・。」

穂乃果「・・・亜里沙ちゃん・・・。」

亜里沙は考える。確かにあった。真姫の祖父が残した手紙。
そこにはこの遺産の所有権についても書いてあった。が・・・。

亜里沙「・・・。」

亜里沙「・・・はい、確かにありました。ここに、」

そう言って亜里沙は手紙を出す。

真姫「貸して!」

真姫は亜里沙から奪い取るとようにして手紙を読む。

希「なんて書いてあるん?」

真姫「ええっとねぇ・・・昔の言葉だから何て読むのかは解らないけど・・・、
この碑文を解いた時にこの別荘にいた 人たち全員に黄金を分配するようにと・・・書いてあるわ。」

希「!?・・・ほぉ~ふとっぱらなおじい様や。全員って事はうちらにも入るよな?」

絵里「その手紙に書いてある通りに従うならば・・・そういう事になるわね・・・。」

にこ「私達にも・・・もらえるのね・・・。」

真姫「全員・・・全員か・・・。」

真姫からしても全員に分配とは思わなかったが、もらえないよりは何倍もマシだ。

分配しても真姫の取り分は病院を救うには十分な額だった。

真姫「わかったわ、正確な手順はまだちゃんと出来ないけど、その手紙に従ってこの場にいる全員で分配する事にしましょう。」

凛「ホントかにゃ!?凛たち一夜にして大金持ちにゃ~!」

花陽「本当にいいんですか!?うわぁ・・・億って・・・ご飯何杯食べられるんでしょうか・・・。」

にこ「本当にいいの・・・?真姫ちゃん、ありがとう!ありがとう!」

絵里「私と亜里沙で一人分の分け前でいいわ。それだけでも十分すぎるもの。ありがとう真姫。」

亜里沙「そうですね、それだけでも十分すぎます。
ありがとうございました。」

穂乃果「私と雪穂もそれでいいよ!いやぁ~どうしよっか?雪穂?」

雪穂「UTX学園に入る資金にしようかな。」

穂乃果「こら!雪穂!」

ドッアハハハハハハ

海未「・・・。」

凛「海未ちゃんどうしたにゃ~?」

海未は部屋の隅っこに行き、壁を軽く叩いたり、考え事をしている。

海未「上が書庫室・・・この部屋・・・書庫室の形からして・・・。もしかして・・・。」

凛「海未ちゃん・・・?」

海未「いえ、何でもないのですよ。何でも。」

亜里沙「それから、渡すのが遅くなってしまいました。
別にネコババする気はなかったんですが、話の流れで返すのが忘れてしまいました。」

真姫「・・・?これは?」

亜里沙「通帳と印鑑です。
手紙と一緒に封筒の中にありましたよ。
通帳には5千万入ってましたよ。」

凛「ご、5千万!?」

にこ「貸して!いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、・・・すごい・・・本当だ・・・。」

希「通帳にこないな沢山の0が書いてあるのをうちは初めてみたわぁ・・・。」

真姫「穂乃果と亜里沙には感謝しかないわ。
ありがとう。あなた達は恩人よ。」

亜里沙「偶然ですよ、奇跡のようなものです。」

亜里沙(真姫さん、あなたの記憶を見させてもらったおかげです。)

海未「亜里沙、よく碑文を解きましたね。さすがです。」

亜里沙「っ海未さん!ありがとうございます!」

ことり「あっ亜里沙ちゃん顔真っ赤~!」

亜里沙「っ!?からかわないでください!」

穂乃果「眠気もぶっとんできたよ!よーし飲むぞ!~!」

海未「お酒はありませんよ、穂乃果。」

凛「祭りにゃ祭りにゃ~!」

絵里「さすがに眠いわよ、続きは明日にしましょ。」

雪穂「眠れないんですけどー!これからの人生がバラ色なんてさぁ!」

穂乃果「雪穂ってこんな性格だったっけ?」

海未「大金を一度に持つと人の性格は変わるって言いますけど本当なのかもしれませんね・・・・。」

ことり「じゃあ私は自分の部屋に戻るね・・・。穂乃果ちゃん、話があるんだ。」

穂乃果「え?話?何?」

ことり「うん。海未ちゃんも、いいよね?」

海未「はい。かまいません。」

ことりと海未の顔は二人と付き合いの長い穂乃果が見たことのない程深刻な顔をしていた。

何か、覚悟を秘めているような・・・。

穂乃果「わ、分かったよ。でも私は後少しだけこの黄金を見ていくよ。」

ことり「わかった。私の部屋で待っているね。」

海未「ゆっくり来てもいいですよ。私にも心の準備がありますから。」

海未が心の準備をする程の話がある・・・。

一体どんな話なのか。

絵里「亜里沙も行くわよ~。」

亜里沙「分かったよ。穂乃果さん、おやすみなさい。」

穂乃果「うん。亜里沙ちゃん。おやすみなさい。」

亜里沙達は2階に上がる。

亜里沙たちの部屋は2階と3階に分かれているのでここで別れる事になる。3年は2階。他は3階だ。

絵里「じゃ、ここでお別れね。あ、明日は12時に1階のリビングに集合よ~。最後に来た人3人が朝食当番だからね~。」

「「「はーい」」」

希「ほな、おやすみ~。」

にこ「おや~。」

ガチャン。

三年はそう言って部屋に入る。

花陽「じゃ、私達も上に行こうか。」

凛「そうだね。さっきは興奮していたけど、もう眠いよ~。」

雪歩「そうですね。もう遅い時間ですし・・・。亜里沙、どうしたの?」

亜里沙「ごめんなさい、私書庫室に忘れ物をしてしまったみたいです。
皆さん先に行っていてもらえませんか?」

真姫「あら、そうなの?じゃあ先に行っているわね。」

凛「亜里沙ちゃんもおっちょこちょいなのにゃ。」

亜里沙「あはは・・・。」

凛たちはそう言って階段を上がる。

亜里沙「フフフ・・・。」

亜里沙はにやりと笑う。

無論、亜里沙は忘れ物なんてしていない。

しかし、今から行う作業は人に見られてはまずい。

それに二階から行えば、三階から人が降りてくるかどうかも見張る事ができる。

亜里沙「この屋敷の階段は一つしかない。
つまり、下に降りるにはこの階段を使うしかない・・・。」

黒い女「どうするの?一日目が終わった訳だけど。」

何もない所から黒い渦が出る。

それはどんどん広がっていき、女性の形を作った。

黒い魔女だ。

亜里沙「どう、とは?」

黒い女「明日には誰かが殺される、それはもう運命で決まっている事だわ。
あなたは真犯人を見つけたいのでしょ?」

亜里沙「そうですね。だからこんな所で油を売っていないで、今から行動しろと?」

黒い女「そうよ。ま、いつどうやって、何人殺されるかはわからないけれど、それでも見張るくらいは出来るはずよ。」

推理小説では、殺人事件が発生してから警察なり探偵が行うのはアリバイ調査と決まっている。

それは地盤を固めるのに必要な行為だからだ。

が、それを調べる警察はここには来ない。

亜里沙は前回の一日目で見た天気予報の記憶から、二日目は雨と激しい風が来る事を覚えている。

ここはクローズドサークルの環境下で起きる殺人事件。

そういう魔女の『シナリオ』なのだ。

警察の代わりに亜里沙がアリバイを十人全員を調べなければいけない。

黒い女(思えばこのアリバイをちゃんと調べなかったから前回は殺されたっていう事もあるのよね・・・。)

記憶を失った亜里沙には知る由も無い事だが、前回亜里沙はメンバーのアリバイを殆ど把握出来ていなかった。

最初の犯行はメンバー全員がアリバイの無い深夜に行われ、次の犯行は全員がアリバイを証明できない空白の時間がある時に犯行が起こった。

なので亜里沙は犯人はおろか、『誰が犯人でないか』それすらも推理する事が出来なかったのだ。

結果、その者が死んで初めてシロ!と容疑者を絞り込むのに後手に回ってしまい、最後は何者かに殺されてしまった。

真姫の発言と証拠から希を殺した事だけは認めさせたが、他の者の殺人やトリックは解らず仕舞い。

せめてあの時アリバイを意識した行動をしていればもう少しどうにかなったはずである。

前回の結末を知っている黒い女としては、遠回しに助言を与えに来たのだが・・・。

亜里沙「大丈夫ですよ、ちゃんと考えてあります。どうやら前回の私は犯人に完敗したみたいですね。
あなたの言葉を聞くに、容疑者を絞り込めなかった、って所でしょうか?」

黒い女(相変わらず理解が早いわね。)

黒い女「さぁ・・・。どうかしらね。」

亜里沙「心配しないでください。ちゃんと考えてありますよ。

少なくとも、今から朝の12時までのメンバー全員のアリバイは把握できます。」

黒い女「・・・?そんな事できるのかしら?」

今現在メンバーは誰もがアリバイがない状態だ。

メンバー十人のアリバイは把握しておきたい・・・。

が、亜里沙の体は当たり前だが一つしかない上に十人の部屋は二つの階に分断されている・・・。

亜里沙「前回の私と違う所は、予め殺人事件が起きる事が分かっている、という事です。
船で沢山考えましたよ。」

亜里沙はポッケからあるものを出した。

亜里沙「書庫室からくすねておきました。
これが、これから朝まで全員のアリバイを把握できる、方法です。」

黒い女「・・・?何よそれは?」

亜里沙はそれを投げ、手のひらでキャッチする。

亜里沙「ガムテープ、です。」

隠し部屋にて 24:45

穂乃果「・・・誰!?」

亜里沙「私ですよ穂乃果さん。
忘れ物をしてしまって、取りに戻ってきたんです。
・・・メールですか?」

穂乃果「あっ・・・そう!そうなんだ!
お母さんに一応メールしておかないと、と思ってね!
アハハ・・・。」

穂乃果はイソイソと携帯をしまう。

誰かと通話でもしていたのだろうか?

亜里沙「穂乃果さんは、まだこれを見ているんですか?」

穂乃果は山の様に積まれた黄金の前でじっとそれを見ていた。

穂乃果「うん、でもこの目で見ても信じられないよ。」

亜里沙「そうですね、この黄金もしかして私達を騙すためのドッキリじゃないですよね?」

穂乃香「ハハハッ、それはそれでおもしろいかも!」

亜里沙「はははは・・・。」

穂乃果「・・・。」

場が静まりかえる。

穂乃果「亜里沙ちゃん、結局あれ、見せなかったんだね。」

亜里沙「見せる必要もないでしょう、切っておいて正解でした。」

テーブルには真姫に見せた遺産の分配の仕方が記してある手紙が置いてある。

亜里沙は自分の懐からもう1枚手紙をだした。

もともと手紙は1枚だったが、亜里沙は皆を呼ぶ前に手紙を二枚に切ったのだ。

亜里沙「これは、これから幸せになる私達には必要の無い事ですよ。」

亜里沙はその手紙をビリビリに破いてしまった。

穂乃果「うん。確かにそうだね、私達には、こんな物はいらない・・・。」

亜里沙「穂乃果さん、ことりさんから呼ばれているんでしょう?
行ってあげたらどうですか?」

穂乃果「え・・・う、うん。
な、何か恥ずかしいなぁ・・・。」

亜里沙「その顔を見ると、何の用で呼ばれたのか分かっているようですね!教えてくれませんか?」

穂乃果「えーっ!そ、そんなぁ!」

亜里沙はイタズラを思いついた笑顔で、

亜里沙「教えてくださいよう!碑文を一緒に解いた仲間じゃないですかぁ!」

そう言って、穂乃果の脇腹をつつく。

穂乃果は観念したようで

穂乃果「もー、しょうがないなぁ・・・!」

まだ誰にも言わないでね?と前置きをして

穂乃果「穂乃果ね、ことりちゃんと付き合う事にしたんだ。」

そう発言した。

亜里沙は一瞬何を言われたのか分からなかったが、

亜里沙「っえぇぇぇぇえ!!」

穂乃果「亜里沙ちゃん、しィ!」

亜里沙「っっと!スイマセン、いやでも、二人ってあれ・・・女性・・・。」

それを聞いて、穂乃果の顔が曇る。

穂乃果「やっぱり、亜里沙ちゃんもそういうの気にするタイプ?」

亜里沙「いえいえいえいえ!私は恋愛の価値観は人それぞれだと思っていますから!

それにほら、最近はIPS細胞とかあるといいますし!」

穂乃果はこんなにわたわたとする亜里沙は初めて見た。

それはこの島で始めて見る年相応の顔だった。

穂乃果「呼ばれたのは多分海未ちゃんにまだ言っていないからその事を言いに行くんじゃないかな?」

亜里沙「だったら今ここで皆に話しても・・・。」

穂乃果「海未ちゃんには、一番最初に言っておきたいんだ。

メンバーの中でも一番最初に・・・。」

亜里沙「・・・そうですか、よく分かりませんが、頑張ってください。」

穂乃果「じゃあ、行ってくるね。亜里沙ちゃんも、頑張りなよ~、知っているよ~。

海未ちゃんの事チラチラ見てたでしょ!」

亜里沙「え!?いや、そんな事・・・な、ないですよ!」

穂乃果「ハイハイ、じゃっあね~。」

穂乃果はそう言って、上がっていった。

ああいう所、やっぱ憧れるなぁ・・・。

亜里沙「私の気持ち、ばれていたのか・・・。」

プシュー。

亜里沙は自分の顔が熱くなっている事を感じた。

亜里沙「・・・。」

亜里沙「よし!じゃあ、始めますか!」

亜里沙は気持ちを切り替えて『作業』をすることにした。

25:10 廊下にて

穂乃果は書庫室からことりの部屋に向かった。

穂乃果「海未ちゃんに言うの、ドキドキするなぁ・・・。」

船の上でことりから話があると言われて心のどこかでそんな気はしていた。

いや、そうだったらいいなぁ・・・という願望だった。

昔から穂乃果の女性らしいかわいさにずっと憧れてきた。

その憧れが恋愛感情に変わったのはつい最近だったと思う。

でも、穂乃果たちは同姓。それはイケナイ事なんだ、と自分の気持ちを封じ込めてきた。

ことりが穂乃果を慕っていた事は気づいていたが、それはあくまで友達としてなのだと。

そして今日、(正確にはもう昨日だが)ことりから告白された時は何かのイタズラかと思った。

1日目 時間未定

ことり「あのね・・・私は、穂乃果ちゃんの事が、好きです。」

穂乃果「っ・・・え?」

ことり「恋愛対象として・・・好きです。」

穂乃果「っえっえええ!?」

ことりの顔は真っ赤だった。

そしてそれは穂乃果の顔もだった。

聞いた瞬間、顔が真っ赤になり、心臓がこれ以上ないほどバクバクした。

ことり「穂乃果ちゃんは・・・どうなの・・・かな?私の事・・・どう思っているの・・・かな?」

俯きながら、顔を真っ赤にして、目を潤ませて聞くことりに、

穂乃果は倫理観とか同姓だからとか、そんな物は吹っ飛んでしまった。

ことり「ご、ごめんね!やっぱり気持ち悪いよね!

私と穂乃果ちゃんは女の子どうしなのに・・・そんなっ・・・きゃっ!」

穂乃果はことりを力いっぱい抱きしめる。

ことり「え・・・?」

穂乃果「ことりちゃん、聞いてくれないかな。」

ことり「うん。」

穂乃果「私ね、好きな人がいるんだ。」

ことり「っ!うん・・・。そっか・・・。」

穂乃果「その子は女の子なんだよ。
だから、女の子同士だからダメなんだって穂乃果はその気持ちを我慢していたんだ。」

ことり「うっうん・・・。」

穂乃果「でも、ね。その子が必死に告白してくれた姿を見ていて、そんなものどうでもいいやって思ったんだ。」

ことり「そ、それって・・・!」

穂乃果「うん。ことりちゃん、私もね。ことりちゃんの事が好き。
友達としてじゃなくてね?
大好き。
私と付き合ってくれないかな?」

ことり「ほ、穂乃果ちゃん・・・。」

穂乃果「そしてゴメンね。先に言わせちゃって。」

ことり「穂乃果ちゃああああああああああああん!」

穂乃果「いや~あの時の事は今でもあんまり覚えていないなぁ・・・。くう~。」

そうして物思いにふけりながら、穂乃果はことりの部屋の前に着く。

穂乃果「緊張してきたな・・・。よしっ!」

穂乃果は覚悟を決めて部屋をノックした。

コンコン

穂乃果「・・・あれ?」

コンコン

穂乃果は聞こえなかったのかと思い、もう一度部屋をノックするが返事は返ってこなかった。

穂乃果「あれー・・・?あっ開いている。」

穂乃果は思わずドアノブを捻ると部屋は開いていた。

部屋は暗い。同じベッドにことりと海未は入っていた。

穂乃果「寝ちゃったのかな?うーん。まぁいいや、今日は穂乃果もここで寝よーっと。」

穂乃果はベッドの中央に入る。

ツインベッドに三人はいささかせまい。だが穂乃果はこの窮屈な感覚も懐かしく思えた。

穂乃果「小さい頃はこうしてよく三人で寝たよね・・・。
ふわ~あ。」

穂乃果はあくびをして、

穂乃果「お休みなさ~い。」

静かに夢の中へと落ちて行った。

2日目 11:30 ことりの部屋

ピピピピピピピピピピピピ!

穂乃果「もう・・・うるさいなぁ・・・。」

穂乃果は目覚まし時計の音で目を覚ました。

寝不足な穂乃果は目をつぶり、毛布を頭まで被りながら、誰かが止めてくれるのを待つ。

ピピピピピピピピピ

・・・しかし音は鳴りやまない。

仕方なしと、穂乃果は目覚まし時計を手さぐりで止めて時間を確認する。

穂乃果「・・・まだ時間あ・・・ないね!」

時刻は十一時三十分。

約束の時間までは三十分あるが、乙女には朝から準備しなければいけない事が山ほどある。

あまりモタモタはしていられない様だ。

穂乃果は時計を置き、目をこする。

カーテンを閉めていたのと天気の影響、で殆ど明かりは入ってこなくて薄暗かった。

穂乃果「天気予報は大当たりかぁ・・・、ハズレて欲しかったなぁ・・・。」

にしても、と穂乃果は疑問に思う。

寝坊助の自分はともかくとして、こんなにうるさい目覚まし時計が鳴っていたら誰か起きるはずなんだけどな・・・。

いまだに二人は起きる気配も無いまま布団を頭までかぶっている。

身じろぎ一つしないその姿を見て、穂乃果はしっかり者の二人でもこんな時もあるんだと
微笑んだ。

穂乃果「あー起きるのメンドイ。」

まぁ昨夜は色々あったしね、と自分を納得させた。

穂乃果「も~しょうがないな~、よーし。」

穂乃果は布団から起き上がると、しずかに閉まっているカーテンをつかむ。

そのまま勢いよくカーテンを引いて引いて、ビックリさせるつもりなのだ。

穂乃果「よーし、起きろぉぉぉ!!!!」

びしゃあああああああああ!

穂乃果は勢いよくカーテンを開ける。するとそこには・・・

「きゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

11:45 ことりの部屋

花陽「これは・・・ひどい。」

花陽は青ざめながら顔をそむけた。

絵里「花陽、もうよしましょう。
二人ともこんな無体な姿をメンバーに見られたいはずがないわ。」

絵里が花陽を抱きしめる。

凛「どうして・・・な、何がどうしてこんな事に・・・。」

凛は茫然としていた。

無理もない。

目の前にある光景はとても目を背けたくなる光景だった。

穂乃果「ことりちゃああああああああああああああん!!!!海未ちゃんまで!なんで!?どうしてええええええええ!!!!!うわああああ!」

穂乃果は泣きじゃくりながらことりと海未に縋り付く。
その体はピクリとも反応しなかった。

何故なら・・・二人の首はきれいに鋭利な刃物で掻っ捌かれているのだから・・・。

あまりに深く、広く裂けているせいか、第二の口とも形容できた・・・。

絵里「誰がこんな事を・・・。」

穂乃果「っっ・・・うわあああああああああ!!!っ!そうだ!救急車!医者を呼んでよ!ほら!早く!」

絵里「穂乃果・・・、もう・・・手遅れなのよ。」

穂乃果「・・・そんな・・・。」

穂乃果はその場で崩れ落ちる。

絵里は花陽に目で合図をすると、花陽は毛布でことりと海未の遺体を覆った。

毛布を血が吸い、赤黒く染める。

毛布で隠しても・・・余りにも無残な惨劇の跡は残るのだった。

だから花陽はさらに毛布で覆った。

ことりと海未。

この部屋には、二人の人間の首がばっさりと切り裂かれていた。

多分、それは昨夜からなのだ。

穂乃果はそうとは知らずに布団をかぶって寝てしまった。

状況から判断すると、そういう事なのだろう。

三人とも、二人の喉の切り傷を奥まで見てしまった。

下手をすれば骨まで至っているかもしれない。

しかし、他に傷跡は無い。
・・・だから首の傷さけ見なければ、きれいな遺体だったのかもしれない。

しかし・・・、この傷は無残すぎた。

どんな殺しもきれいも汚いもない。

どれも無残だ。

しかし、これはあまりに無残としか・・・。

亜里沙「皆さん、その・・・こんな時になんて言ったらいいのか分かりませんが・・・おはようございます。」

亜里沙が部屋の前で声を掛ける。

どうやら今来たようだ。

絵里「亜里沙・・・。
事情は分かったわね?あなたは外で待っていなさい。
もうすぐ真姫たちが来るから・・・。」

亜里沙はそこまで取り乱している様子ではない。

むしろ、来るべき時が来たと言わんばかりな表情をしていた。

亜里沙は彼女らの傷口は見ていない。

しかし、返り血を浴びたこの部屋を見て大体の事は察したようだった。

亜里沙は絵里の言葉を無視して部屋に入り、改めて現場を確認する。

亜里沙「この感覚・・・初めてですが、懐かしい気持ちがしますね。」

亜里沙は『前回』殺人現場に何回も立ち会っている。

記憶はないがこの血生臭い、死の匂いと良いのだろうか?は体が覚えていた。

それを嗅いでか、亜里沙の表情が本人も知らず知らずのうちに変わる。

それはまるで、子供が自分の出番が来たと浮かべる笑みのようだった

亜里沙「話は廊下でお聞きしました。
亡くなったのは、二人ですか・・・。」

絵里「亜里沙!?入っちゃダメってわからないの!?」

花陽「亜里沙ちゃん!見ない方がいいよ!部屋で待っていて!」

亜里沙「本当にスイマセン。
ですが私は『これ』のために来たのです。・・・邪魔をしないで下さい。」

凛「な、何を言っているんだにゃ・・・。」

亜里沙「むしろ皆さんこそ、部屋を出て行ってください。分かっているんですか?ここは殺人現場ですよ?
証拠が隠れているのかもしれないんですよ?」

メンバーどころか、実の家族である絵里も亜里沙の発言に茫然とするしかない。

絵里「亜里沙・・・?」

穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃん・・・。」

亜里沙「どいてくれませんか?現場を調査しないと。」

亜里沙はうずくまっている穂乃果にそう伝える。

亜里沙の目は冷え切っていて、邪魔だと言わんばかりだった。

絵里「亜里沙!いい加減にしなさい!必要なら私達がするし、警察の仕事よ!」

亜里沙「・・・やっぱり使った方がいいですね。」

前回の亜里沙も現場検証をメンバーに邪魔されて海未の遺体や部屋の中を詳しく調べる事が出来なかった。

もちろんそれは殺人現場を素人が荒らしてはいけないという意味では当たり前の事・・・。

だが、亜里沙はこの合宿中に事件を解かなければいけない。

しかしそれを説明しても分かってくれる訳もない。

亜里沙「しょうがないか・・・。」

亜里沙は深呼吸をして、

亜里沙「探偵権限を使わせてもらいます。
黒い神様、お願いします。」

パキン!!!

空気が割れる音がしたかと思うと、亜里沙を止める声はピタリと止まる。

亜里沙の静かな迫力により、何故か誰も亜里沙の調査を拒めない不思議な空気が充満した・・・。

亜里沙「もう何でもありですね・・・。
これって手助けにならないんですか?」

その声を聞いて黒い女が現れる。
どうやら亜里沙にしか見えていないようだ。

黒い女「別に、今のあなたは調査をしても誰にも妨害されない。
ただそれだけよ?」

亜里沙「・・・記憶無いですけど、前回もこの力があればなんとかなったんじゃないですかね・・・?」

黒い女「前回はあなたが素のポテンシャルでどこまでいけるか知りたかったのよ。
まぁ、引き分けに持ち込んだだけでも評価できるけど。」

亜里沙「過大評価ですよ。」

黒い女「あなたには探偵権限を授け、自らのレートを上げた。

賭け金が高いという事は負けた時のリスクも高いという事。・・・意味は解るわよね?」

亜里沙「・・・負けた時はただじゃおかないって事ですよね。」

黒い女は何も慈善で亜里沙をサポートしている訳ではない。

あくまで賭けに勝つためにやっているだけだ。

当然・・・負けたら一切の容赦もないだろう。

それは死ぬよりもキツイ目に合うのは・・・間違いない。

何しろ彼女は、人間の上位にいる魔女なのだから。

亜里沙「ご心配なく。
死体を荒らす事が目的ではありません。
喉の切り口なんて怖いもの見たくはありませんし。」

花陽「・・・じゃあ何を・・・?」

亜里沙「私はただ、この事件を誰が起こしたのかを知りたいだけです。
これから皆さんに色々お尋ねしますので、ご協力をお願いします。」

メンバーの中でも一番年下で、部外者のはずの亜里沙・・・。

しかし拒めない・・・。

当たり前だ・・・。

プレイヤーに逆らえる駒など、ありはしないのだから。

亜里沙「では、まず現場の状況からお聞きしましょうか?」

11:45

一方、その頃、雪穂はまだ起きてこないメンバーを起こしに行っていた。

元々12:00にリビングで待ち合わせだったのだが亜里沙から連絡を受けて雪穂は他のメンバーを迎えに行き、 絵里たちは穂乃果の部屋に来るように言われたのだ。

時間よりはまだ少し早いのだが・・・。

今は希の部屋に向かっている最中だ。

雪穂「それにしてもこんなに寝坊するなんて珍しい・・・。」

雪穂は首をかしげる。

雪穂「それにこのガムテープ・・・。」

朝、雪穂が準備をして部屋をでると、ドアの上部にガムテープが貼られているのを発見したのだ。

それは扉の枠と跨ぐように貼られていて、中央にはハサミか何かで切れ込みがあった。

どうやら少しでも扉を開けたらこのガムテープは破れる仕組みになっているらしい。

そして切れ目の上にはマジックペンで複雑なサインらしきものが書いてある。

これをマネしようと書くのは骨が折れそうだ。

絵里たちに話したら同じものが扉に貼ってあったと言う。

どうやらメンバーの部屋の扉と、 屋敷を出入りできるドアに貼ってあるようだった。

雪穂「一体だれがこんな事を・・・。」

雪穂は不思議に思いながらも希の部屋にたどり着く。

案の定、希の部屋にもガムテープは貼りつけてあったが切り取られていた。

雪穂はガムテープを引きはがすと、ドアノブを捻る。

雪穂「あ、開くみたい。
希さーん!開けますよー!」

雪穂はドアを開ける。

カーテンが閉まっているので部屋は薄暗い。

しかし、ベッドに毛布の膨らみがあるのが見えた。

雪穂「おはようございます!希さん!」

雪穂はベッドをゆすってみる。

ゆさゆさ

雪穂「起きない・・・ん?」

雪穂の手に何か、液体の様な物が付いた。

それなんというか・・・粘り気があるというか・・・。

雪穂「っ・・・!」

その手はとても赤く、そして黒く染まっている。

雪穂「えっえっ何これぇ!?」

雪穂は怖くなったからか、カーテンを開ける。

雪穂「えっ・・・いやああああああああああああああ!!!!」

毛布に赤いシミがついている。

いや、それはシミというほど小さいものではない。

雪穂「なにこれぇ!?何これぇ!!!」

シミと言うよりは模様と言った方が正しいだろう。

雪穂の手を染めた様に、布団を赤く、黒いハスの葉の模様が希の毛布を彩っている。

雪穂「・・・っ!」

雪穂は希の毛布を指でつまみながら剥ぐ。

布団は水滴を吸っているからか、重く感じた。

雪穂「はぁはぁ・・・んっ!」

雪穂は勢いよく、何かを振り払うように掛布団をはぐ。

雪穂「いやああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

この模様は何を塗料に描かれたのか・・・その答えは、希の首から溢れんばかりに出ていた 。

希の首を中心にそれは飛び散っていて喉の中はそれでいっぱい!

中は筆で泡立てた様に気泡が沢山あって、その液体が首から、口から、目からでていた。

雪穂「いやああああああああああああああああああああ!!!!」

希の首は見下ろしたら喉の奥まで見えるのではないか、

それほど深く切られていた。

ここまですっぱり切るならば相当鋭利な刃物でなければここまでの切り口はできないだろう。

雪穂「これは、し、し、し、死んでる!」

雪穂は足をばたつかせながら、一刻も早く希の部屋から出る。

それは、これ以上この部屋を荒らしてはいけないと思ったのと、

この呪われた血なま臭い部屋にこれ以上いたら自分もその仲間入りしてしまいそうで・・・。

雪穂は急いで絵里達の所に向かうのであった。

黒い女「今回は静かにやってるのね。前回が派手すぎたからかしら?」

ピンクの女「そうねー、前回は顔をグシャグシャにしたり、色々したからねー。
今回はその逆をイってみたわ。」

黒い女「一応の確認だけど、警察に電話は出来るのかしら?」

ピンクの女「電話は出来るわよ?部屋についている電話を使ってもいいし、携帯電話を使ってもいい。

でも雨と風で外側から干渉する事は出来ないわ。
これがクローズドサークルの完成ってやつね!」

警察の介入は、この合宿中はクローズドサークルの完成によって完全に否定された。

これで、亜里沙は自由に調査が出来る。

黒い女「さぁ・・・もうお膳立ては十分にしてあげたわ。
亜里沙、あなたがどこまでヤれるのか・・・見せてもらうわよ!」

ピンクの女「楽しくなってきたわぁ・・・。
碑文なんて所詮は前座も前座。これからが本番よねぇ・・・!」

黒い女「クスクスクスクスクスクスクスクス!!」

ピンクの女「ぷっあっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!」

黒い女「やっぱり一番の退屈しのぎは」

ピンクの女「魔女とのゲームに限るわよねぇ・・・?」


「「くすくすくすくすくすあっはっはっはっはっ!!!!」」


とりあえず今日はここまで 誤字脱字わからない所があれば指摘おなしゃす

ここまではあんまり変わらないな……

2階リビング 11:50

絵里「希!?希まで殺されたって言うの!?」

絵里は戻ってきた雪穂から事情を聞いていた。

穂乃果「そんな・・・。希ちゃんまで・・・。」

花陽「さ、3人も殺されたっていうんですかっ・・・!」

雪穂「はい、でも海未さんとことりさんまで・・・そんなっ!」

絵里「思い出したくはないだろうけど・・・希も首を?」

雪穂「・・・はい。首を横に思いっきり切られていました。」

凛「海身ちゃん達と同じ殺し方にゃ・・・。」

雪穂「海未ちゃん達も・・・その首を・・・?」

花陽「うん、首を左からななめに切り裂かれていたよ・・・。」

絵里「凛、警察には電話したのよね?何て?」

凛「・・・今日はこの天気でヘリも船も無理みたい。
戸締りをしっかりしてはぐれないようにって・・・。」

穂乃果「そんなっ!?今日は来れないって・・・!嘘でしょ!」

凛「嘘だと信じたいよ・・・。でもこれじゃあね・・・。」

凛はそう言って窓を見る。

朝から降っている雨と風は、時間が経つにつれてどんどん激しくなっている。

今日一日はヘリも船も無理だろう。

凛「でもそうなると犯人はまだこの島・・・いや、この屋敷にいるのかもしれないわよね・・・?」

雪穂「ひっひいいいい!でもそうですよね!私達がこの島から出られないように、犯人も出られないんですから・・・。」

花陽「大丈夫ですよ!皆で一緒にいれば大丈夫!」

穂乃果「私達は殺されなんてしないよ!海未ちゃんとことりちゃんの敵を討ってやる!」

亜里沙「皆さん、静粛に。
泣いて事件が解決するならば、推理物は流行りません。
落ち着きましょう。
クールに、ね。
そういえば今日はまだにこさんと真姫さんを見ていませんが・・・?」

雪穂「そういえばそうですね・・・。元々の待ち合わせ時間も過ぎているし・・・、
っまさか真姫さんとにこさんも!?」

凛「そんなっ!?」

亜里沙「まだそうと決まった訳ではありません。
・・・そうですね、とりあえずにこさんの部屋に行きましょうか。」

真姫「おはよー皆。
何かあったの?何かすごく騒がしいけど・・・。」

凛「真姫ちゃん!?生きていたのにゃ!?良かったにゃ!」

真姫「はっ!?どういう事!?」

絵里「真姫こっちに来なさい。
事情を話すわ。」

絵里は真姫を呼んで耳打ちする。

真姫「・・・えっ!?冗談でしょ!!」

真姫の顔が青くなる。

絵里「・・・。」

絵里は頷くしか無かった。

真姫「・・・そんな、三人が首を縦にって・・・。
それに海未も・・・って事は海未じゃないの・・・?」

花陽「真姫ちゃん・・・?何を・・・?」

亜里沙「じゃ、真姫さん来た事ですし皆で一緒に行きましょうか。

はぐれた者から死ぬというのが推理物のテンプレですし・・・。」

回想 真姫の部屋
11:00

ジリリリリリリリリリ

真姫は目覚ましの音で目が覚めた。

12時に集合なのだが乙女には色々準備する時間があるのだ。

真姫は久しぶりに熟睡することはできた。

合宿に行くまでの真姫の心労の不安と言ったら計り知れない。

何せ、いつ西木野総合病院が潰れてもおかしくは無いのだ。

金策も尽き、残りは真姫の祖父が残した隠し遺産だったのだが・・・。

昨日穂乃果と亜里沙はそれを見つけてくれた。

碑文に従い全員に分ける事になったが、真姫の取り分どころか、通帳の中のお金で病院を救う事ができる。

たぬきの皮算用をあてにしていた身としては十分すぎる結果だろう。

真姫「っん~っ!と!」

真姫はベッドに座りながら背筋を伸ばす。

と、そこへ・・・

プルルルルルルルルルル・・・

プルルルルルルルルルルルルルルルル・・・・。

真姫「・・・誰よこんな朝早くに・・・。」

それは電話の鳴る音だった。

この別荘は部屋の一つ一つに電話がついていて、各部屋に内線で繋ぐ事が出来る。

もちろん普通の電話も出来る。

真姫は布団から起きると瞼を擦りながら受話器を取った。

取った時に画面を見ると非通知、と表示されていた。

真姫「(非通知・・・?)はい、もしもし。」

??「よぉ・・・俺が誰だかわかるか?」

電話の声はよくテレビのプライバシー保護とかで音声にノイズがかかっているような、そんな機械音?だった。

真姫「??誰よ?こんなイタズラをするのは。少々悪趣味よ?」

真姫はどうせ、いつもの三馬鹿がドッキリか何かを仕掛けたのかと思っていた。

??「よくそんなエラそうな口を聞けるなぁ・・・。

俺の機嫌が少しでも傾けばお前ら西木野家はあっと言う間に、

お終いだって、い、う、の、に、よ!」

真姫(誰よこれ・・・?凛やにこちゃんじゃない・・・!?)

真姫「誰よ?誰よあんた。私に何の用なの?どうしてこの番号を知っているのよ!?」

??「ひゃはははははは!言いたい事、聞きたい事はあるだろうが、それに答える権利も義務もない。

俺から言いたいのはただ一つ。お前にお願いがあって来たんだ。」

真姫「お願い?」

??「そう。お願い。1つ目。昨夜碑文が解かれたな?

その黄金が置いてある部屋には、今日一日、はメンバー全員の立ち入りを遠慮願いたい。」

真姫「!?」

??「2つ目。今日の15時に1階の管理室にホウキとかを入れるロッカーがあるよな?
そこで30分間隠れている事。」

真姫(何で管理室と碑文が解かれたことをを知っているのよ・・・。)

この別荘は真姫の祖父が建てた物で、もう何十年と経過している。

当然この別荘にはかつての祖父の知り合い、母の客なども尋ねた事もあるだろう。

管理室の事を知っている者がいてもおかしくはない。

しかし碑文は昨日偶然解かれた物だ。それを知っているという事は・・・。

真姫「あなた!碑文を知っているの!?いや、それ以前にどうして碑文が解かれたのを知っているの!?」

??「簡単だよ。俺もこの島にいるからだよ。」

真姫「!?」

真姫はとっさにカーテンを閉める。手は震えていた。

真姫「嘘よ!今この島には行きたくても雨と風で行けないはずよ!」

??「天候が変わるまでに行けばいいだろ?簡単な話だ。」

真姫「それでもどうやって来たのよ!?この島は私有地だから自分の船でもないとたどりつけないのよ!?」

??「それくらい自分で考えろよ、めんどくさい。
俺が聞いているのはさっきのお願いを聞いてくれるのかどうか、だ。」

真姫「誰があんたのお願いなんて聞くと思う訳?」

??「ほほぉ・・・、それはこういう事か?お前の病院の院長、お前の母親が、

医療ミスを犯したと世間にぶちまけても良い。と言うことだな?」

真姫「・・・!なんで・・・その事を・・・!!!!」

??「オイオイオイオイオイ!口のきき方が違うんじゃねえか!?

お前が今まずしなければいけないのは、俺に無礼な口を働いた事に対する謝罪じゃねえのかよ!?」

男?の口調が変わる。
この男の声は誰なのか、何故碑文を解いた事を知っているのか、この島にいるのか、

いくつもの謎が恐怖となって真姫を襲う。

真姫「・・・。スイマセンでした。許してください。」

男は機嫌をよくしたようで、

??「ようし。謝ればいいんだよ謝れば。
じゃあさっきのお願いは聞いてくれるって事で・・・いいな?」

真姫はもはや従うしかなかった。

この男(機械音?を使っているから性別すらわからない。)

の正体はおろか、目的も解らないのだから。

真姫「はい・・・。わかりました・・・。」

??「あ、それっとぉ・・・、俺は常にお前を監視出来る場所にいる。
お願いを破ったらすぐにわかる。
その時はぁ・・・。」

真姫「・・・!?」

受話器の向こうでガサゴソと音が聞こえる。

そして受話器が誰かにあてられる音がした。

にこ「・・・むぐう!!むぐぐ!!!むぐ!」

真姫「にこちゃん!?そんな・・・どうしてにこちゃんが・・・!」

にこ「ちょ・・・あんた卑怯よ!!むっぐうう!!!」

真姫「にこちゃん!?にこちゃん!」

そしてまた受話器をあてる音がした。

??「あーもしもし?聞こえる?聞こえてくれたかなぁ!?この子がどうなっても・・・知らないから。」

真姫「どうしてあんたがにこちゃんをどうにかできるのよ!?どうして!っ・・・あんたもう・・・。」

にこは昨日まで確かに同じ別荘にいた。

今の声はどう考えてもにこだ。

ということは・・・。

真姫「あんた今、この別荘にいるっての!?」

??「当たり前だろ?こんな雨の中外で電話なんて出来るかっての。
そんなに驚く事か? 今回の旅行だって、来るはずの無かったのが二人も来たじゃないか。
そこにもう一人入り込んだだけさ。」

真姫(来るはずのって、亜里沙と雪穂・・・!)

二人は今回の旅行には元々来るはずの無い人間・・・。

にも関わらず、来たことを知っているという事は・・・。

??「なんだかだんまりしちまったみたいだが・・・、このカワイイ子を俺が預かっているって教えるんも当然アウト。
まぁ頭のいい君ならわかるよね?じゃあヨロシク頼むわ。」

真姫「ちょっと待って!最後ににこちゃんの声を・・・」

??「あんたが今頼んだお願いを叶えてくれたら明日の朝には解放するよ。

それと、俺が電話した履歴等をちゃーんと消しておけよ?」

ガチャン!

電話はそこで切れてしまった。

真姫「・・・どうしましょう。」

せっかく病院を救えると思ったのに・・・!

今度は変なやつからの電話・・・!

トントン

真姫「!?」

その音は扉からだった。

トントン

どうやらノックのようだった。

トントン

真姫(誰かしら・・・?)

トントン

メンバーなら名前を言いながらノックする。

じゃあこれは・・・

真姫「ま、まさか電話のやつが・・・。」

トントントン

ノックは続いている。

出るまで叩くつもりなのか・・・。

真姫「・・・。」

真姫はテニスラケットを持って扉に近づく。

ダンッ!

真姫はドアを勢いよく開ける。しかし・・・

真姫「なんなのよ!!もう!!」

廊下には誰もいなかった。

真姫にとって最悪の目覚めだった。

ピンクの女「その後、皆はにこの部屋に向かうわ。ガムテープは切れていて、鍵は開いていた。

中に入るとにこの死体は無いものの、沢山の血痕が残されていた。」

黒い女「あら、死体は無いの?」

ピンクの女「ないわねぇ・・・。」

黒い女「・・・ふーん、なら生きているかもしれないわね。」

ピンクの女「かもしれないわねぇ・・・あっはっはっはっはっはっ!!!」

黒い女「・・・。クスクスクスクスクス!!」


にこの部屋 12:15

絵里「にこは一体どこに行ったのよ!?」

穂乃果「にこちゃんまでそんな・・・!?もういやだよぉぉ!!」

雪穂「この血塗れの部屋じゃ・・・。」

絵里「・・・そうね。
考えたくないけれどすでに・・・と考えるのが妥当よね・・・。」

花陽「うん・・・、この量じゃ・・・うん。」

亜里沙「しかし変ですよね・・・?
何故にこさんだけ死体を持って行ったんでしょう・・・?
それにこの血の跡は・・・?」

血はベッドにひどくぶちまけられる様に撒かれていた。

恐らく寝ている所を襲われたと考えるのが妥当だろう。

しかし血はベッドだけで床、窓には少ししか垂れていなかった。

絵里「にこの死体を持って行ったのならもう少し垂れていてもおかしくは無いわよね・・・。」

亜里沙「そうだね。どういう事なんだろ・・・?」

真姫「・・・。」

・・・もちろん真姫は知っている。

電話のにこの声からは身動きは出来ないようだが怪我をしている様子は無かった。

つまりこの血痕の跡は見せかけということ。

ペンキか何かだろう。

真姫(でもあの人・・・誰なの・・・?うちに恨みを持つ人・・・?)

真姫(今回の事件を起こしたのは電話をかけてきた者と見て間違いはない。

一体何のマネなのかしら・・・。)

亜里沙「次は希さんの部屋に行きますか・・・まだ部屋を見ていないんで。」

メンバーは希の部屋に向かう。

雪穂「またあの部屋に行くの・・・?嫌だよ・・・。」

凛「・・・。」

穂乃果「・・・。」

亜里沙「私もですよ・・・でも、しょうがないんです・・・。」

希の部屋の扉を開ける。まず入ると嫌でも目につくのが血まみれのベッドだ。

雪穂以外は初めて見るので絶句した。

亜里沙「・・・あれ・・・?」

雪穂「・・・え!?」

凛「どうしたの・・・?これは!?」

絵里「希の死体は・・・どこにあるの・・・?」

雪穂「そんな・・・ない!!希さんのが・・・そんな・・・!!」

花陽「これはどういう事・・・!?」

見るのも悍ましい首がすっぱり切られている死体・・・。

希の死体が消えていた。

きれいさっぱりと・・・。

亜里沙「一体誰が・・・。希さんの死体はここにあったのよね?雪穂。」

雪穂「え、ええ。ええ。間違いないよ!そんな馬鹿な!」

絵里「私達はずっと一緒に行動していたわ!つまり私達以外の誰かよ!」

花陽「それってこの島に私達以外の人がいるっていう事ですか!?そんな馬鹿な!?」

凛「でもそれしか考えられないにゃ・・・。」

亜里沙「・・・。」

ピンクの女「その後、もしかしたらことりと海未の死体も消えているかもと思ったメンバーは、 ことりの部屋に行くわけなんだけど、ことり達の死体も消えていたわ。」

黒い女「今回はよく死体が消えるわねぇ・・・。
前回も海未の死体が消えていたけど何か訳でもあるのかしら?」

ピンクの女「生き残っているメンバーはずっと一緒にいた。
にも関わらず死体は消えた。おっかしいわねぇ!?」

黒い女「例えば全員死んだフリだったならどうかしら?亜里沙たちが出て行った後に身を潜めた。」

ピンクの女「ほほぉ・・・。あの傷口で死んだフリ・・・ねぇ・・・。」

黒い女「他にもにこが死体を隠したっていうのも面白そうね。

にこは正体不明のやつに拉致されたように見えるけど、実際はにこが犯人の一人で、

電話は自演、自由に動けるのかもしれない。」

ピンクの女「ほぉほぉ。」

ピンクの女は薄ら笑いを浮かべながら話を聞いている。・・・ぶん殴りたい・・・。

ピンクの女「なるほどね!真姫への電話は全部ウソだったと・・・!」

黒い女「あっているかしら?」

ピンクの女「言う訳ないでしょぉ~。
まぁ死んだフリなどの可能性は当然亜里沙も意識しているはずだし・・・見ものよね。」

14:50 2階リビング

凛「うん、そうにゃ。
二人の首は・・・真っ直ぐに横に切り裂かれていて・・・。」

亜里沙は犯人を捜すために関係者に聞き込みをしては確かめていた。

アリバイを聞き、事件現場を検証するなど、もはや亜里沙が探偵気取りな事に誰も疑問を抱かなくなっていた。

真姫「ちょ・・・っそれはどういう意味!?私が疑わしいって事?」

亜里沙「そうは言っていません。
あなたが自室に戻り、待ち合わせの12時まで部屋から出なかったお話は聞きました。
しかし、それを証明しないとアリバイには・・・その・・・。」

真姫「証明!?どうやってよ!?」

亜里沙「どうやってでもです。
客観的に真姫さんには犯行は不可能だったと証明してくれればいいんです。」

真姫「何よそれは!?そんな事言ったら穂乃果だって怪しいじゃない!?

何せ海未達と一晩中一緒にいたのよ!むしろ一番に疑う所でしょうが!?」

真姫は穂乃果に指を指す。

穂乃果「真姫ちゃんそんな!?私がことりちゃん達の首を何度も刺したって言うの!?ひどいよ!!」

亜里沙「穂乃果さんが犯人で無い事は私が証明できます。理由は後でご説明しますが・・・。

他の方も出来るんです。

しかし犯人でない事を証明できていないのあなただけなんです。」

真姫「馬鹿な事を言わないで!何で私が自分の別荘で人を殺さなきゃいけないの!?」

花陽「落ち着いて真姫ちゃん!私達は全員疑われているよ!」

絵里「そうよ真姫、悲しいけれど、身の潔白を証明しなければいけないのよ・・・。」

凛「そうにゃ、私だって昨夜のアリバイを証明しようと必死に頭働かせているんだよ?」

雪穂「そうですよ・・・キツイ言い方かもですが、真姫さん、自分の潔白を証明する何かを探した方がいいんじゃ・・・。」

穂乃果「・・・そうだよ真姫ちゃん・・・。私達は等しく容疑者。
だから亜里沙ちゃんに協力しよ?」

皆、何故か亜里沙だけは犯人ではないと思っているのか、誰も亜里沙のアリバイについては聞いてこない。

・・・当たり前だ。

探偵が犯人ではいけないと・・・ノックスでもヴァンダインでも決まっているのだから・・・。

黒の女「あ、当然だけど亜里沙は犯人ではないわよね?」

ピンクの女「当たり前じゃない。」

ピンクの女『亜里沙は犯人ではないわ。』

黒い女「この世界には赤字は無いからねぇ・・・やり辛いわぁ・・・。」

メンバーは疑われているのは全員同じ、と言わんばかりだが、場の空気はそうではなかった。

何故なら亜里沙は真姫以外のアリバイを証明できるというのだ・・・。

それが本当ならば真姫だけが容疑者になる。

時間が進むたびに真姫の立場は危うくなっていく・・・。

真姫にとっては自分の別荘なのにも関わらず、針の莚に座っている気分だった。

バンッ!

真姫は机を叩くと立ち上がった。

真姫「ばかばかしいわ!私だけアリバイがないからって犯人に仕立て上げるなんて・・・・。こんな屈辱初めてよ!!」

穂乃果「じゃあどうするの?無いんだよね?でも私達にはあるよ?無いなら真姫ちゃんが犯人だよ?真姫ちゃんが人を殺した事になっちゃうんだよ?真姫ちゃんが海未ちゃんとことりちゃんと希ちゃんを殺した事になるんだよ?そうじゃなかったら早く証明してよ!!アリバイを!!できないの!?じゃあ真姫ちゃんが犯人だよね!?」

絵里「穂乃果!!落ち着きなさい!!真姫もよ!皆少し疲れているのよ・・・。

思えば朝食も食べてないわ。少し休みましょう・・・。」

花陽「そうですね・・・、少し疲れているんですよ。」

雪穂「あっ!真姫さんどこにいくんですか!?」

真姫「アリバイ捜しも犯人捜しもくだらない。
私達がする事じゃないわ! 明日になれば警察が来て、全てが解るのよ。
私達が探偵ごっこをする必要なんてないの。
私は自分の部屋で引きこもっているわ!いいわね!」

花陽「そんな!今一人でだなんて危険すぎます!」

真姫「うるさい!!私を疑うのならご勝手に。
全ては警察が解決してくれる。
それじゃあね。」

亜里沙「真姫さん!待ってください!今離れるのは危険です!」

真姫「うっさい!あんたが言った癖に何を言っているのよ!!」

ばんっ!!

全員に見送られながら真姫はリビングを退室する。

・・・真姫だってミステリー小説くらい読んだ事はある。

最初に不和を持ち出して一人になる者が次の犠牲者になる、

というミステリーのテンプレな行為を自分がしていると当然わかっていた。

が・・・真姫には部屋を抜け出さなければいけない理由があった。

真姫はにこをさらわれて脅迫されているのだ。

もうじき約束の15時。

これから30分の間は、管理室のロッカーに隠れなければいけない。

海未達が殺された後のこの命令は、自分を次のターゲットに選ぶと疑うには十分だった。

相談する事も考えたが、人質を取られて、身近で監視していると思われる犯人の前では出来なかった。

真姫はその命令に従う事で、にこの安全を守っている被害者である事を主張するしかない・・・。

約束の時間が近いので真姫はどう客間を抜けようかと思っていたがいい口実が出来て良かった。

・・・今はどんな卑劣な罠でも逆らえない。

にこはメンバーの中でも大事な親友。

守らなければいけない・・・。

真姫「・・・。」

真姫は管理室のドアを開ける。

管理室のドアに鍵がかかっていたら・・・と危惧したがそんな事は無かった。

この部屋に先ほど電話をかけてきた者がいる。

真姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

今真姫は自室にいる事になっている。

その真姫が今この場で殺されたら、おかしな事になってしまうのではないか?

そんな事を考えながら、覚悟を決める。

いつまでもここにいると部屋から出てきたメンバーに鉢合わせしてしまうかもしれない。

真姫「いいわよ・・・犯人の顔を見てやるわ・・・。」

真姫はゆっくりとドアを開ける。

真姫「・・・。」

管理室の空気は冷え切っていて、誰かがいたような、そんな温かい空気と言えばいいのだろうか?は無かった。

ただ窓を叩く雨の音が聞こえるだけだった。

真姫は周囲を見渡した。

どうやら管理室には誰もいないらしい。

奥の方にポツンとロッカーがある。

ロッカーを開けるとそこには箒が3本と塵取りが1個入っていた。

箒と塵取りを覗けば入れそうだ。

真姫はそれらを取り除く。

・・・中には特に何も無かった。

この中に犯人がいるとは思わないが、指示の書かれた紙はあるかと思っていたのだが・・・。

真姫「この中に30分・・・結構きついわね・・・。」

真姫は悪態をつけながら中に入る。

ロッカーの隙間から光が少しだけ射したがそれでも中は真っ暗だった。

真姫「あ、時計するの忘れちゃった・・・。」

これでは何時真姫がロッカーから出ればいいのか分からない。

真姫「どうしよう・・・。」

真姫は途方にくれる。

しかしやるしかない。

真姫「それにしても一体だれなのよ本当に・・・。」

悪態の一つでもつかないと、もしこの部屋に犯人が入ってきて、このロッカーを開けてきたら・・・そんな悪い妄想ばかりしてしまう。

犯人は昨日碑文を解かれていて、亜里沙と雪穂が飛び入りで来ていたにも関わらずそれを知っていた人物・・・。

真姫「考えたくはないけど・・・やはりメンバーの誰かなのかしら・・・。」

碑文を解いたことは親にもまだ言っていない。

真姫「でもメンバーは私の家庭の事情は知らないはず・・・。
じゃあ誰が・・・。」

電話の者に全てを覗かれているようで鳥肌が立つ。

真姫「っ!そういえば一度海未にこの事を相談した気がする・・・!」

家庭の事情が原因で練習に集中できない事があった。

それを海未はいち早く気づいて相談に乗ってくれた事があったっけ・・・。

あの時はうれしかったなぁ・・・。

真姫「って事は海未が・・・?でも海未は殺されたはず・・・。」

どういう事なのだろうか・・・?

もしかしたら海未はメンバーにこの事を話していたり・・・?

しかしこの事はかなりのヒントになるかもしれない。

警察に話すとしよう。

真姫「でも・・・どういう事なのかしら・・・。」

謎が次々と生まれる。

もう沢山だった。

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

その時、扉が静かに開く音がして真姫は思わず声を出しそうになる。

真姫「っ・・・!!」

花陽「開いていたんですね・・・。」

その声は花陽だった。

どうやら施錠されていると思っていたらしい。

真姫(花陽が・・・どうしてこの部屋に・・・!?)

足音が入ってきて、扉を閉めて、チェーンをかける音が聞こえる。

真姫(まさか花陽が・・・犯人!?)

真姫の頭がオーバーフローを起こしている。

この場で真姫に危害を加えるつもりなのか・・・?

花陽がロッカーを開けて何をするのか・・・真姫は怖くて想像もできなかった。

真姫(ひっひィィィィィィ!)

花陽はロッカーに近づいてくる。

真姫の心臓はこれ以上ないほど音を発していた。

真姫からはロッカーの隙間から辛うじて花陽の姿が見える。

花陽「ここなら・・・大丈夫ですね・・・。」

花陽は真ん中でしゃがみこむと・・・手を目にあてた。

・・・何をしているんだろう?

電話の者は花陽じゃないのか・・・?

いや、もし花陽が電話の者じゃないとすれば・・・。

真姫(!っもしかして・・・!)

真姫(電話の者が来る前に花陽が来てしまって、花陽が施錠をしたから電話の者は入りたくても入れないんじゃ・・・!)

電話の者は花陽が管理室に来ることを計算に入れていなかったのだ・・・。

そう考えると・・・チャンスは今しかないのかもしれない。

花陽は話が分かる人だ。

もし穂乃果だったら気が動転しているからうまくいかないだろう。

花陽には全部を打ち明けて助けを求めるか・・・?

いや!それが何かの拍子でばれて、にこが殺されてしまうかもしれない・・・。

花陽に相談しても事態が改善するとは思えない。

それに花陽も仲間かもしれない。

やっぱり余計な事はしない方がいい・・・。

打ち明けるのは危険すぎる・・・。

花陽「っ・・・うぇっ・・・。」

その時何か花陽が鼻をすするような音が聞こえてきた。

真姫(これは・・・。)

真姫はなんだろうと思い耳を傾ける。

花陽「っうぇ・・・うええええええええん!」

・・・それは花陽が泣いている所で、真姫は茫然とした。

真姫(そうか・・・花陽は・・・メンバーが亡くなった事を一人になる事でようやく泣けるようになったんだ・・・。)

花陽と初めて会った時は何をするのもおずおずとしていて、泣き虫な印象だった気がする。

それが、今では仲間を気遣って、泣くのを我慢するように・・・。

真姫「・・・・・・・・・・・。」

真姫は花陽が泣き終わるまで、俯いていた。

真姫(こんな優しい花陽が犯人の訳ない・・・。
そうと決まれば・・・っ!?)

真姫がロッカーを開けようとしたその時、

花陽「だ、誰ですか!?」

真姫(!!?)

花陽が急に立ち上がった。

真姫(気づかれた・・・!?)

しかし花陽はロッカーの方を向いてはいない。

ロッカーの隙間からだから少ししか見えないが・・・花陽の肘を見る事ができた。

この事から花陽はロッカーとは反対方向を向いているのだとわかる。

花陽「な、どこから入って・・・っ何ですかそのナイフは!?やめてください!」

ガタンガタン!!

花陽が視界から消える。

音から誰かと争っているのは確かだった。

でもチェーンが掛かっているのにどうやって・・・?

真姫(いや!誰がとかどうやってとか、そんな事は考える時間はない!)

恐らく犯人が花陽の命を奪おうとしているのだ。

ここを飛び出して、加勢した方がいいのでは・・・?

それとも人を呼びにいくとか・・・。

しかしそれをしたら何故ここに隠れていたのかを問い詰められるし、いやでも仲間の命には・・・。

こんな事を考えている場合ではない。

今すぐ助けないと・・・でも助けたら・・・にこの命を見捨てる事になるかも・・・。

でも、犯人が一人とも限らないんじゃ・・・?

ここでもし犯人の一人を捕まえたとしても、もし二人以上いたら・・・。

花陽の命と、にこの命。

二人とも親友なのに真姫はそれを天秤に掛けている。

なんて罪深いのだろうか・・・!

ガチャン!!

その時扉が開き、チェーンを引っ張る音がした。

誰かが扉を開けようとしたのだ。

凛「かよちん、そろそろ部屋に戻った方が・・・かよちん!?」

花陽「凛ちゃん!た、たすけ・・・グホオ!」

凛「かよちん!?かよちん!!どうしたの!!かよちん!!!開けて!!ここ開けて!」

花陽「ぐっ・・・あっ・・・・・・・・・・・・。」

凛「かよちん!!!誰かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!誰かきてえええええ!!」

凛が大声を上げながら廊下を走る。

部屋は静まり返った。

真姫(これは・・・もしかして・・・。)

真姫は恐ろしい想像をする。

今、真姫は花陽を殺した電話の者と同じ部屋にいるんじゃないのか!?

ならば何故犯人は逃げずにこの部屋にいるのか。

ロッカーの隙間からは何も見えない。

何も聞こえない・・・。

真姫(!っもしかして・・・。)

犯人が息を殺してこのロッカーの隙間から見えない所で自分が飛び出してくるのを待っているんじゃ・・・!

花陽が死んだ今、この部屋にいつまでも残っているのはマズイ気がする・・・。

でもどうすれば・・・。そもそもこのロッカーをでていいのかすらわからない・・・。

すると、大勢の足音が聞こえてくる。

真姫は再び息を殺して気配を断った。

凛は全員を連れて駆け戻ってきた。

絵里の手にはコンパクトな斧が握られていた。

凛は扉を開けようとしてチェーンが掛かっているのを確認して絵里に合図する。

絵里はチェーンに斧を振り下ろした。

ガンガンッ!!ガツンッ!!

絵里は斧を振り下ろし、三回目でやっとチェーンが切れた。

凛「かよちん!!!」

絵里を押しのけて凛が中に飛びこむ。

そしてその後に残りのメンバーも続く・・・。

凛「かよちん!!しっかりして!!!かよちいいいいいいいいいいいいいんん!!!」

真姫は凛の叫び声を聞くことで、もはや花陽は手遅れだと理解した。

雪穂「こんな・・・ひどい・・・。」

凛「かよちん!!かよちいいいいいいん!!誰か医者を!医者を!!」

絵里「こんな事って・・・。花陽が休むと言って出て10分くらいよ!?なのに・・・。」

穂乃果「ひどい・・・!また首を切られている・・・!ひどい!!」

雪穂は近くの部屋から毛布を持っていき、花陽の遺体にそれをかける。

毛布が血を吸って赤く染まった。

雪穂「くっ・・・。見ていられないわ・・・。」

穂乃果「・・・ことりちゃん達と・・・同じだ・・・。首が縦にぱっくり・・・いやあああああ!」

凛「だから一人じゃダメって言ったのに・・・うわあああああああああああああ!!!」

絵里「多分犯人は油断してバラバラになるのを待っていたのね・・・。」

凛「くっそおおおおおおおお!!!!!どこにいるの!!?」

雪穂「・・・っ待ってください!!おかしくないですか!?

窓も閉まっていて、この部屋にはチェーンがかかっていたんですよ!?

犯人はどこから脱出したんですか!?」

絵里「そもそもどうやって部屋に入ったのかしら・・・。

この部屋は施錠されていたのに・・・。」

穂乃果「もしかして・・・密室殺人って訳なの・・・!?」

凛「そ、そんな・・・。あ、でもドラマとかで見たけど窓ごと外せるようになっているとか・・・」

亜里沙「それはありません、確認しましたから。」

絵里「亜里沙・・・!」

穂乃果「今までどこに・・・。」

亜里沙は廊下に立っていた。

亜里沙はこの部屋で何かあったかを知るや凛たちとは逆に走って行った。

どうやら外に行き、外からこの部屋に入る事が出来るかを調べていたらしい。

亜里沙「死体は首から縦にぱっくり、から居ました。
室内はどんな感じですか?」

絵里が廊下まで行き、説明する。

絵里「扉にはチェーンがかかっていて、私達は切断して入ったわ。
窓も施錠されているわよ。」

亜里沙「奥は何をもめているんですか?」

亜里沙が管理室の中を軽く覗き込むと、凛と穂乃果と雪穂が言い争っているのが見えた。

凛は花陽の遺体をリビングに運びたいと主張しているようだった。

しかし穂乃果と雪穂がそれを止めている・・・。

凛「海未チャン達の死体はそうしたらどうなっていたのよ!?消えちゃったんだよ!?

かよちんも消えたらどうするのよ!?犯人は殺すだけじゃなくて遺体に残酷な事をするつもりなのかもしれないんだよ!?」

雪穂「でも・・・警察が来たときに・・・その・・・。」

凛の言い分も分かる。

海未達の遺体は犯人によって運び去られた。

絵里「亜里沙・・・その、今回は遺体を運ばせてもらうわよ?」

亜里沙「・・・いいでしょう、どうぞ。」

絵里は近くの部屋から持ってきたもう一枚の毛布でタンカを作り、凛と協力してその上に乗せる。

毛布から血が垂れていて、この大量の血の出所を考えるだけで嗚咽がでた。

亜里沙「あ、すいません。どきますね。」

亜里沙は廊下の今いる位置は邪魔だと思い、位置を変える。

凛「かよちん・・・かよちいいいいいん!」

絵里「花陽は・・・2階のリビングに寝かせるわ。」

雪穂「でもどうやって中へ・・・。こんなの不可能だよ!!!」

亜里沙「・・・。」

亜里沙は部屋を観察する。

その目に焼き付ける様に、繊細に。

亜里沙の記憶力は探偵権限によって写真並になっている。

ならばこの数秒間びっちりと見るだけで十分なのだ・・・。

後は頭の中で思い出しながら推理すれば良い。

亜里沙「今日ほど血を見る日も無いでしょうね・・・。」

亜里沙「・・・ん?」

亜里沙はロッカーを見つける。

箒などをしまう、変哲もないロッカー。

しかし・・・ロッカーのまわりには箒やちりとりがある・・・。

まるで誰かが箒や塵取りを出して何か大きい物を入れたかの様に・・・。

亜里沙「・・・。」

亜里沙はロッカーに近づく。この大きさなら、もしかしたら・・・。

亜里沙はロッカーに手をのば

ガシン!

絵里「こーらいい加減にしなさい!行くわよ!」

すのを絵里が肩に手を置いて止め、亜里沙を引きずった。

亜里沙「・・・まぁいいでしょう。」

凛「ほら早くするにゃ!!」

凛が急かす。

亜里沙はロッカーをにらみながらリビングに戻るのだった。

真姫(・・・、行ったかしら・・・。)

真姫は汗を伝うのを感じながら亜里沙たちの足音が聞こえなくなるのを聞いた。

真姫は慎重にロッカーを開けてゆっくりと部屋に飛び出す。

・・・大丈夫だ。誰もいない。

真姫(鍵をかけられなくて良かった。)

もし施錠されていたら部屋をでた後に施錠が出来なくておかしなことになる。

真姫(とにかくここから早くでないと・・・。)

真姫は自室にいる事になっている。

そこで寝ていたとでも言おう。

真姫はそう思い扉を開ける。

廊下には誰もいない。真姫は急ぎながら駆け足で自分の部屋へ移動する。

真姫の部屋は3階だ。

真姫は階段を上がって2階に上がる。

皆はおそらく2階のリビングにいるのでここを上がれば・・・!

亜里沙「あれ、真姫さん。」

真姫「ヴェエエ!?あ、亜里沙!?」

階段を上がり切ろうとしたその時、リビングからひょいと顔を出した亜里沙と出くわす。

亜里沙「・・・ちょうど今真姫さんにも知らせようと思っていたんですけど。」

真姫「・・・何?何かあったの?なんか外で騒いでいたけど。」

真姫は寝ていたという言い訳を捨てて『聞こえていたから感心を持って外に出ようとした』という話の流れに持っていこうと考える。

亜里沙「・・・今真姫さん、階段を上がっていく所でしたよね・・・?どうしたんですか?」

真姫(クソッ!階段を上がっている所を見られていたか・・・!)

真姫は心の中で舌打ちをした。

真姫「外がしばらく騒がしかったから様子を見ようと1階まで下りてみようと思ったのよ。
そしたらもうあなた達が上がった後だったから一人で行くのは怖くなって途中で帰ってきたの。」

亜里沙「・・・そうですか。
私は探し物を・・・と思って。
ほら、大変な事になったじゃないですか・・・?」

亜里沙が深海を覗き込むような目で真姫を見る。

亜里沙はもう真姫を不審がっているのだ。

だからその場にいなかった真姫が知らないはずの事を話させようとしてきている。

殺人が起こった事を知らないふりをすれば・・・大丈夫だ。

真姫「・・・管理室で何かあったの?」

亜里沙「・・・・・・・。」

真姫「・・・ど、どうしたの?」

亜里沙「・・・私は今探し物をすると言いましたが何処でとは言っていません。

何故管理室だと思ったんですか?」
真姫(しまった・・・!)

真姫「あそこはゴミとかゴチャゴチャしていて足元が見えないからね。
私もよくあそこでイヤリングをなくしたから、もしかしてと思って。」

亜里沙「・・・。」

真姫「・・・・・・・・・・・・。」

亜里沙「・・・そうですか、 実は真姫さんにお伝えしたと思いまして、花陽さんが殺されました。」

真姫「・・・えぇ!?それは本当なの!?」

いかにも今知ったかのように振る舞う真姫。

亜里沙「・・・はい。それも含めてちょうど皆さんに今から大事な話がありまして・・・。

真姫さんには不愉快だと思いますが一度、来ていただけませんか?」

真姫「・・・。わかったわ。」

亜里沙が真姫を疑っている以上、下手な事は出来ない。

しかも階段を上がってくる所を目撃されてしまった。

真姫は亜里沙とリビングに向かうのだった。

リビングに行くと、凛がオイオイと泣いていて、穂乃果と雪穂がそれを慰めている。

絵里は部屋を意味も無く歩き回っていた。

亜里沙「皆さん、真姫さんが見つかりましたので、重要なお話ししたいと思います。」

真姫「・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

真姫が入室した瞬間、部屋の温度が下がった気がした。

真姫(大丈夫よ!大丈夫!)

真姫は不審がられているがロッカーに隠れていただけだ。

殺人は犯していない。

警察に話そう。

それまでの辛抱・・・。

にこが人質な今、この状況を今打ち明ければ犯人の耳に入り、にこが殺されてしまうかもしれない。

絵里「重要な話?」

亜里沙「うん。最初の事件から全てを整理したいと思います。」

真姫「そういう事なら私は・・・。」

亜里沙「まぁそうおっしゃらず。お聞きくださいな。」

真姫「・・・。」

真姫はしぶしぶソファに座る。

凛が気を効かせて扉を閉めた。

さらに、防犯のために鍵を閉める。

カチャン

真姫にとってその音は自らを閉じ込める牢獄の錠前に鍵をする様に感じた。

・・・真姫は気づいていない。

探し物があって外に出たはずなのに、真姫に会った途端それをせずに部屋に戻った亜里沙の真意に・・・。

亜里沙「犯人が・・・わかりました。」

凛「・・・っ!?嘘でしょ!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

黒い女「あら、少し早いわね。もう解けたの?」

ピンクの女「あらら・・・ふふふふふふ。お手並み拝見・・・、フフフフフフフフ。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

15:40 二階リビング

亜里沙「海未さん、ことりさん、希さん、花陽さんを殺した犯人は・・・。」

亜里沙「真姫さん、あなたですよね?」

亜里沙はゆっくりと真姫に指をさす。

真姫「・・・何を言うかと思えば私が犯人・・・?もしかして話し合いってその事?」

亜里沙「はい、そうです。
あなたが4人を殺したんですよね?」

真姫「冗談じゃないわ!私は何もやっていないわよ!」

絵里「・・・真姫をかばう訳では無いけど、証拠も無しに言う物じゃないと思うわ。」

凛「そうだよ!そこまで言うからには証拠はあるんだよね?」

亜里沙「もちろんです。
これから説明させて頂きます。」

亜里沙「まず花陽さん殺し、これはとてもシンプルです。
真姫さん以外は常に私達は一緒にいたのですから。」

それはこれ以上もない単純な答えだった。

一人以外全員のアリバイが解る時間に殺人が起きた。

つまりアリバイが無い人物が犯人・・・。

穂乃果「これ以上もない、というかどう考えてもそれしか考えられないよ・・・。
真姫ちゃん以外に花陽ちゃんは殺せない・・・。」

真姫「知らないわよそんなの!アリバイがないからって犯人な訳!?」

亜里沙「じゃあお聞きしますが、あなたは花陽さんが殺された時間、どこにいたんですか?」

真姫「・・・亜里沙には言ったけど、部屋で寝ていたわよ。」

亜里沙「それを証明できる物は・・・?」

真姫「ないわよ!!」

絵里「でも待って、おかしいわ。
あの部屋は密室だったはずよ。
真姫が犯人だったとしてもどうやって・・・。」

亜里沙「簡単ですよ、あの部屋にずっと隠れていたんです。」

凛「えっ!?」

亜里沙「真姫さんは部屋にいたと言っていますが、私は1階の階段から上がる所を目撃しています。

例えばですが、花陽さんを指定の時間にメールか内線で管理室に呼び出すんです。
後は予め隠れていた真姫さんが花陽さんを殺して扉にチェーンを掛けて自分は隠れる。
例えばロッカーとかどうでしょうか?
これで密室殺人の完了です。」

絵里「そう言われてみれば、確かにそうかもだけど・・・。」

真姫「ふざけないでよ!私が隠れていたって証拠でもあるの!?それに最初の事件はどうなるのよ!?」

亜里沙「それもお話しします。
昨日の24時ごろ、インゴットが見つかった後です。
その場で解散となりました。」

真姫「そうよ!つまりその時点で全員のアリバイは解らなくなるじゃない!」

亜里沙「そうですね・・・普通なら、その通りです。

なので、私はその時にちょいと仕掛けをしておいたんですよ。」

雪穂「仕掛け・・・?」

亜里沙「そう、全員のアリバイを追える仕掛けをね。」

亜里沙はそう言ってある物を出した。

絵里「ガムテープ・・・?」

亜里沙「うん。順番に説明していくね。
解散になって二階に上がった後、私は忘れ物があると言って3階に上がらなかったでしょ? あの時皆が3階に上がった後、私はこのガムテープをことりさんの部屋以外のメンバーの扉に貼りました。」

凛「えっ!?じゃあ、あれは亜里沙ちゃんが・・・。」

亜里沙「その後黄金の置いてあった部屋に行き、穂乃果さんとお話しをしました。
まぁ内容はここでは割愛しますけど・・・。
そして穂乃果さんはことりさんに話があると呼ばれていたのでことりさんの部屋に向かいます。 それからごめんなさい、私は穂乃果さんの後を着いていきました。」

穂乃果「えっ!?」

亜里沙「そして穂乃果さんが部屋に入ったのを見届けてから、私はこのガムテープをことりさんの部屋に貼りました。」

凛「どういう事にゃ・・・?」

亜里沙「何しろ黄金が発見されて何が起こってもおかしくは無いと思っていたので。

私は何かの事件が起こると思って予めアリバイを確認できる細工をしておいたんです。」

雪穂「そのガムテープでどうやって全員のアリバイを追えるって言うの・・・?」

亜里沙「このガムテープはドアがほんの少しでも開けられたら破れる様に細工して貼りました。
ロシア語でサインもしましたので複製も不可能です。
つまり、事件発覚時にこのガムテープが破られていない部屋にいた者は部屋から出ていないという事です。
皆さんから死体の証言を聞いた所、毒殺やトラップなどの遠距離から殺せる物ではなかったので、 発覚時まで別の部屋にいた者のアリバイは最初の事件においては保障されます。」

凛「確かに・・・そういう事になるにゃ・・・。」

亜里沙「はい。10人分とは言え、中々手間でしたけどね。」

雪穂「なんてことを・・・。」

傍から見たら不審者極まり無い行動だ。

しかし彼女は普通の人間ではない・・・。

同じ世界をループしてきた魔女の駒・・・!

亜里沙「事件の発覚時、私の部屋はことりさんの部屋のとなりという事もあり、穂乃果さんの悲鳴にはすぐに気づきました。

私はガムテープの有無を確認した後メンバーに連絡。

お姉ちゃん達が集まった所で穂乃果さんの部屋に行ってもらい、私は外にある事を確認しに行きました。」

亜里沙「事件発覚時の各部屋のガムテープはこんな風になってました。」

事件発覚時のガムテープの有無


絵里 有
希  無
にこ 無
花陽 有
真姫 無
凛  有
海未 ことり 穂乃果 有

亜里沙「この事からも、穂乃果さん、花陽さん、凛さん、お姉ちゃん、雪穂はアリバイがあるという事になります。

にこさんと希さんは襲われた時に犯人が開けたという事で説明出来ますが・・・真姫さん、あなたはどういう事なんですかねぇ・・・?」

真姫「・・・くっ!」

絵里「あのガムテープからそんな事が分かるなんて・・・いやでもちょっと待って?

部屋からでていない事が証明されたからって穂乃果は違うんじゃない?同じ部屋なんだから。」

亜里沙「ことりさん達は刺殺だったんですよね?私はお姉ちゃん達にことりさんの部屋に向かわせました。

あの時、穂乃果さんは部屋から出ましたか?」

凛「ううん。」

亜里沙「私は最初にことりさんの部屋に入った時、徹底的に部屋中を調べつくしましたが、凶器は出てきませんでした。

これが何を意味しているかは分かりますよね?」

雪穂「なるほどね・・・刺殺なら必ず凶器があるはずだけど、

お姉ちゃんが部屋に入ってから絵里さん達が開けるまで扉が一度も開いていない事はガムテープが証明している・・・。」

凛「もし穂乃果ちゃんが殺したなら部屋に必ず凶器があるっていう訳にゃ?」

亜里沙「その通りです。
先ほども言いましたがことりさんの部屋は事件発覚時はガムテープは付いていました。
ことりさんの部屋は徹底的に調べましたが凶器はでませんでした。
ことりさんの部屋から出る前に皆さんの身体検査も行いましたが凶器は出ませんでした。
これがどういう事か分かりますか?」

雪穂「・・・お姉ちゃんが殺人を起こす事は共犯者がいても不可能って事だね・・・?亜里沙。」

亜里沙「その通り!これによりガムテープを貼ってから殺人が発覚するまでの間にことりさんの部屋で殺人を犯す事は出来ない、 という事が証明されました。」

絵里「じゃあ真・・・犯人はいつ海未達を殺したのよ?」


亜里沙「私が隠し部屋で穂乃果さんと話している時にだよ、お姉ちゃん。
ことりさんの部屋にガムテープを貼ったのは、穂乃果さんが部屋に入ってからだから、ガムテープは破れていなくても殺せるって訳。」

真姫「ちょっと待って!扉から入れなくても窓から入る事は出来るんじゃないの?
いくら三階とはいえ、梯子等を使えば上るのは不可能じゃないんじゃない?」

亜里沙「先ほどは言うのを忘れていましたが、私はこの屋敷を出入りできる扉にもガムテープを付けていました。
このガムテープを付けたのは私たちが海で遊び終わり、全員が屋敷に入った事を確認した時です。
この屋敷の出入り扉は一つしかなく、ガムテープの有無を確認した時は破れていませんでした。 つまりガムテープを貼ってから事件が発覚するまで扉は一切使用されていませんよ。」

真姫「・・・じゃ、じゃあ外部犯かもしれないじゃない!例えば窓から入ったとか、私達が海で遊んでいる時に屋敷に侵入したとか!」

亜里沙「そうですね。しかしもちろん予想していました。
もちろん貼らせて頂きましたよ?

窓にもガムテープを、今度はこの屋敷の全ての部屋にね。」

真姫「!?なんてことを・・・。」

絵里「あの雨が降って風が吹いている中、全部の部屋を・・・。」

穂乃果「信じられない・・・。」

それはどんな風に想像できるだろうか・・・。

雨の中、夜中にまだ何も起きていないにも関わらず、一階から三階までの全ての部屋の窓にガムテープを貼り続ける。

それは遠くから見たら毒蜘蛛が這いずる様に見えたかもしれない・・・。

皆、亜里沙の行動に狂気を感じるしか無かった。

殺人事件が起こるなんて誰にも分からないのに何故そこまで・・・。

亜里沙以外の、メンバー全員の疑問に答えられる人間はいない・・・。

時をかけた事のある人間か、時をかける事の出来る魔女にしか答えられない・・・。


真姫「あなたって人は・・・せっかく招いてあげた人の屋敷にペタペタと勝手に・・・。」

亜里沙「真姫さん、あなたには私を責める権利があります。
しかしそれはあなたが殺人をしていないという証明をしてからです。
・・・話を戻しましょう。
第一の事件で私がことりさんの部屋に行くのが遅かったのは、窓にガムテープが付いているかどうかをチェックしに行ったからです。
結果、ガムテープは全ての窓についていました。
窓から侵入するのは不可能です。」

真姫「・・・。」

亜里沙「それに、海で遊んだ時の話を言い出すならば、私は全部屋を確認し、窓の戸締りを確認しました。
その時に扉の施錠をしたのは真姫さんでしたし、鍵を持っていたのも真姫さんですよね?
扉の鍵穴も確認しましたが、無理やり開けられた後はありませんでした。
この状況でガムテープが扉につけられる前に外部犯が入ったならば、あなたが中に招き入れたと考えてしまいますが・・・?」

亜里沙はにやりと笑いながらあざとく聞き返す。

真姫「・・・いや、それは・・・。」

真姫の言った事が次々と論破されていく・・・。

もう真姫の頭はこんがらがっていた。

真姫は殺人を犯した覚えは無い。
無いのだが、状況を客観的に見てみると真姫にしか犯行は無理かもしれないと思えてきたのだ。

自分以外、全ての者が解散してから部屋を一歩も出ていない事が証明され、外部犯の可能性も無くなってしまった。

正直第三者が自分と同じ状況だったら間違いなく自分も疑っていただろう。

・・・しかしやっていない物はやっていないのだ。

真姫は何か、他にことり達を殺す事の出来るトリックを苦し紛れに考えて亜里沙に訴えるが、

ガムテープの存在によって論破されていた。

黒い女「さすがじゃない。
前回の失敗を活かしているわね。」

ピンクの女「そうねぇ。記憶がないのによくぞここまでやれる物だわ。」

黒い女「亜里沙は言っていなかったけど、窓と扉に貼ってあったガムテープが生きている事で、 中から外部犯を招き入れる事も出来なくなったわね。」

ピンクの女「あら本当ねぇ、つまりこれで完璧に外部犯の事は否定されたのかしら?」

黒い女「さぁね。でもこれでことりの部屋にガムテープが付けられてから、
事件が発覚するまでに殺人を起こすのは無理だと証明されたわね。」

ピンクの女「もちろんこれは、ことりと海未の殺人に関してだけどね。」

黒い女「窓と扉が封じられた訳だけど、まだ誰にも見つからない秘密の扉から入ったとか言い訳が残っているけれど・・・?」

ピンクの女「そんなせこい事しないわよ・・・、これはミステリーなのにそれがオチなら萎えるでしょ? 少しヒントと補足でもしておこうかしら。」

ピンクの女『ことりの部屋にガムテープが貼られてから事件が発覚するまでの間にことりと海未は殺されていないわ。
ついでにもう一つ、ガムテープが破られた事、貼られた事を偽装するのは不可能よ。
例えば扉を開けて破った後に真似たガムテープを張り直したりとか、
扉を開けていないのにカッターか何かでガムテープを切って扉を開けた様に偽装した、とかね。
あくまで扉を開けないとガムテープは破れない、と思う様にしておいて。』
黒い女「そうしないと色々崩れそうだしね。」

ピンクの女「事件もいよいよ終盤ね!そろそろあれを起動しときましょうか。」

黒い女「そうね、今度は探偵権限を持たせてるから大丈夫だと思うけど。」

亜里沙が吸いこまれた球体型のジオラマ、その横にもう一つ、それと全く同じジオラマがあった。

ピンクの女「一周目の世界を亜里沙に探偵権限を持たせてもう一度・・・。よくやるわよ全く。」

黒い女「謎が一つでも残ると納得いかないタチなのよ。」

ピンク「そのせいで亜里沙はもう一度仲間の死を味わう事になるけど、それでこそベルンね・・・。」

亜里沙「・・・だからそれは窓にガムテープが貼ってあるので無理ですよ。」

真姫「っ・・・!」

真姫が苦し紛れのトリックを発言し、それを亜里沙によって論破されるごとに、絵里達の真姫に対する不信感は強くなる。

真姫がそれに気づいたのは、もう思いつくトリックが無くなり、周りを見た時だった。

絵里「・・・。」

穂乃果「・・・・・・。」

雪穂「まさか・・・本当に・・・?」

凛「・・・・。」

亜里沙「・・・真姫さん、質問します。
事件発覚時にあなたの扉のガムテープは切られています。
つまり開けた形跡があるんです。
どういう用で開けたのか説明して頂いてもよろしいですか?」

真姫「・・・。」

もはや電話の事を話さなければ自分が疑われてしまう・・・いや、もう疑われている。

真姫「ノックをされたのよ・・・。」

亜里沙「ノック・・・?誰にですか?」

真姫「知らないわよ!今日の朝、電話をしていて切った後にノックされて、出たら誰もいなかったのよ!」

亜里沙「・・・それを証明できる物は・・・?」

真姫「出来る訳ないでしょぉ!?」

亜里沙「さっき電話をしていた、と言っていましたね?それは、誰と、どの様な話をしていたんですか?」

真姫「っ・・・!!」

どうすればいいのだろうか・・・。

ここで話せば、にこの身は・・・。

真姫「・・・プライベートな話よ。ここで言う話じゃないわ。」

穂乃果「はぁ!?あんた今自分がどういう状況に置かれているのか分かっているの!?
プライベート!?そんな事を言える権利があると思っているの!?
さっさと白状しなさいよ!私が殺しましたって!」

穂乃果が真姫の方を掴み襲いかかる。

メンバーは急いで穂乃果を止めた。

穂乃果「離してよ!真姫ちゃんが殺したんだよ!今亜里沙ちゃんが話した事を聞いたら分かるでしょ!? 真姫ちゃんしかいないんだよ!」

亜里沙「・・・ちょっと待ってください。実はまだ解決していない事があります。
こればっかりは真姫さんには出来ない事です。」

絵里「・・・!?そんな大事な事早く言いなさいよ!?それは本当なの!?誰よ!?」

亜里沙「私達が希さんの死体を確認しに行ったとき、死体が消えましたよね?
希さんの死体は真姫さんがやったとしても辻褄が合いますが、ことりさんと海未さんの死体は一緒にいた真姫さんでは無理です。
犯人が単独犯ならば、真姫さんではありません。」

絵里「そういえば・・・そうね、それだけは・・・真姫には無理ね。」

凛「じゃあ、誰が・・・?」

亜里沙「にこさんです、にこさんでも、全ての筋は通りますよ。」

真姫「に、にこちゃ・・・そんな・・・。」

にこはいまだに行方不明。

ガムテープも破られていたので部屋を出て海未とことりを殺し、遺体を隠す事も出来るし、

花陽が予め花陽が管理室に来ると解っていればどこかに隠れていて花陽を殺し、また隠れれば密室の完成となり、筋も通る。

・・・しかし真姫は知っている。

にこは何者かに捉えられていて軟禁ないし監禁されているのだ。

いや、でもあれが自演ならば・・・。

いや、違う!

にこちゃんは被害者だ!

犯人は私とにこちゃんに罪を押し付けるのが目的なのだ!

・・・誰もが疑うならば、自分だけは信じてあげなければいけない。

にこちゃんは親友なのだ。

親友を疑うなんて、ありえない・・・。

亜里沙「どうでしょう真姫さん?真姫さんが犯人でなければ今からにこさんを探しに行きませんか?」

真姫「えっ!?」

亜里沙「にこさんがもし犯人でないのなら、・・・言いにくいですが、にこさんは無事ではないと思います。
先ほど確認しましたが、ドアも玄関の扉もガムテープはまだ付いていました。」

絵里「つまりにこは・・・この屋敷にいるって事ね。」

亜里沙「うん、ついでに希さんやことりさん達の死体を探しに行きましょう。
希さんの死体を私はまだ見ていませんので。」

こうして一同は各部屋を順番に探していくことにした。

外部犯がいる事も考えメンバーはそれぞれ武器を持って移動した。

三階の部屋からメンバーの部屋も含めてしらみつぶしに探していく。

三階の、『ある一部屋』以外を探したが何も見つからなかった。

そしてその『ある一部屋』にたどり着く。

・・・真姫の部屋だった。

真姫「・・・私の部屋なんて探しても何も見つからないと思うけどね・・・。」

亜里沙「それならそれで良いじゃないですか?疑いが少しは晴れるんですから。」

真姫「・・・。」

真姫は釈然としながらも扉を開ける。

そこには・・・

凛「きゃあああああああああああああああ!!!」

絵里「え?え?こ、これは・・・。」

真姫「何を叫んで・・・きゃああああああああああああああ!!!!」

真姫の部屋には・・・希の死体、にこの死体が床に無造作に置いてあった。

凛「お、おぇぇぇぇぇ・・・ひ、ひどい・・・。
・・・あ、あれぇ?どういうこ・・・。」

穂乃果「え、ちょっとこれって・・・え?え?し、死んでる!
そ、そんな!!」

真姫「そんな・・・なんで・・・どうして・・・。」

亜里沙「え・・・?どういう・・・。もしかして・・・。」

絵里「ひどい・・・。」

亜里沙は死体を触って確かめる。

希の死体は首を右上から左下に斜めにからくっぱりと切られていて、第二の口と形容してもいいほどだった。

他に外傷がない事から寝ている間に襲われたのが妥当だろう。

そしてにこ。

にこの口の周りと手首には赤い痕があった。

恐らくロープか何かで縛られていたのだろう。

そんなにこは、腹を同じく右上から斜めに切られていて、少し服を開けたら中が見えそうだ。

二人とも誰が見てもはっきり死んでいると解る。

そんな死体だった。

亜里沙「あれ・・・。これは・・・。」

亜里沙は改めて死体を見て、

亜里沙「どういうこと・・・?」

今の時刻は十七時だ。

希が殺されたとする時間は・・・。

亜里沙は希とにこの死体に触れる。

少し、体温が下がっただけの様に感じた。

亜里沙「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

穂乃果「真姫ちゃん、これ、どういう事?」

穂乃果がぼそっと、それでいてはっきり聞こえる声色で言う。

メンバーはその声から殺気を感じた。

真姫「知らないわよ!こんなんどう考えてもおかしいでしょ!私をハメる為の罠よ!
何で私の部屋に死体があるのよ!こんなん私が犯人ですって言っている様な物じゃない!
私が犯人なら違う部屋に隠すわよ!」

穂乃果「うるさああああああああい!!!じゃあ何でここに遺体があるの!?誰がいつ置いたのよ!?」

凛「確かにそうにゃ!真姫ちゃんの話を信じるなら、真姫ちゃんはずっと自分の部屋にいて、 その後私達と合流したって事だよね?
私達はずっと一緒にいたから遺体を置くことはできないし、真姫ちゃんが自分の部屋にずっといて、それから私達と合流したならば、
犯人は一体誰がいつどうやって真姫ちゃんの部屋に置いたの!?」

真姫以外のメンバーはずっと一緒にいたから遺体を置く事は出来ない。

真姫がずっと部屋にいて、メンバーと合流したならば遺体を置く事は出来ない。

両方が本当ならば遺体を置く事は出来ないのだ。

亜里沙「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

・・・しかし実際は遺体がここにある。

つまり片方は嘘をついている事になる。

もちろんこれは外部犯が存在しない場合の話だが・・・。

ピンクの女「そうなのよねぇ・・・。
真姫が自分の部屋にいたと言っているけど本当は管理室で犯人に脅されて隠れていたのよね。
多分その時に遺体を置かれたんでしょう。」

上界から覗いている魔女からは全てが見えている。

もちろん肝心な所はピンクの女が隠しているので犯人が誰かは見えない。

真姫がロッカーに隠れていた所はピンクの女が特別に見せてくれた物だ。

黒い女にも見えているがそれを亜里沙に教える事は出来ないし、するつもりもない。

亜里沙が一人で推理してこそ価値があるのだ。

ピンクの女「それと、もう終盤だから言っちゃうけど、」

ピンクの女『この事件の犯人はμ’sと雪穂の中の誰かだから。』

黒い女「・・・いいの?一応まだ第三者が介入する余地は残っているけど。」

ピンクの女「これでもノックスを『ある程度は』沿って作ったつもりよ。

こんだけ疑心暗鬼にさせといて全く関係の無い第三者が犯人とか一番白けるでしょ。」

黒い「まぁ・・・そうね。」

ピンクの女「亜里沙、真姫が犯人って事にしちゃいなさいよ。
一応全ての筋が通るわ。
もう悩む必要もない。
疑わしきは黒よ。
甘い蜜がそこにあるのよ。」

黒い女「目の前の宝箱に目を奪われずに、その奥の宝にたどり着く事が亜里沙は出来るのかしらね・・・?」

ピンクの女「ところで、ベルンはこの事件、どこまで解ったのかしら?」

黒い女「・・・大体解ったわよ。
でもそれは上界から真姫が犯人でない事を知っているから解った事よ。
真姫が犯人じゃないと信じる事、そしてそこから明らかになる残酷で悲しい真実を受け入れなければ難しいかもしれないわ。」

ピンクの女「さっすがベルン!まぁ結構ヒントを与えたしね。
これで解けなければ・・・ねえ・・・?」

黒い女「亜里沙の視点からでも十分に解けるわ。
そうじゃなきゃ、意味がないし。
ただ、その真実を信じられるかどうか、亜里沙だからこそ、この事件は難しいのかも知れないわね。」

17:30 3階リビング

その後、メンバーはことりと海未の遺体もどこかにあると思ったのだが・・・しかし見つからない。

あれから手がかりはゼロだった。

凛「ねぇ・・・いい加減白状してよ!真姫ちゃん!あなたが犯人かどうかは知らないけど!

あなたは何かを知っているんでしょ!?どうして黙っているの!?」

絵里「そうよ、真姫、あなたが殺したと疑っている訳では無いのよ・・・?
でもあなたが何かを隠していると私は思っているわ。
教えてよ、私達仲間でしょ?」

真姫「・・・。」

真姫は目から涙を流しながら黙ってメンバーの尋問に耐える。

内心、真姫だって叫びたかった。

にこが殺されて、約束が違う!どういうことだ!そう叫びたかった。

しかし・・・にこの事が無くなっても真姫はまだ家の事を人質に取られていた。

真姫が知っている事を話してそれが犯人に伝わったら、犯人はただちにマスコミに病院の事情を話されて西木野家はオシマイだ。

恐らく電話をした者とことり達を殺した犯人は同じなのだろう。

もう時間は過ぎているが真姫は黄金のあった部屋に指定の時間までは誰も入室を禁じる様に言われていた。

そこに遺体を隠しておいたんだろう。

ことりと海未の遺体もそこにあるのだ。

しかしそれは言えない。

真姫は拳を握りながら目をぎゅっとつむった。

悔しかった。

だが今は、家の為に我慢しなければいけない。

真姫「・・・。」

亜里沙「・・・真姫さん。これ以上黙るつもりなら、私もあなたを犯人と認める事になっていまいます。
何かしゃべってくれませんか?」

真姫「・・・さっきも言ったでしょ?あなたの探偵ごっこに付き合うつもりはないわ。警察が来たら全てを話すわよ。」

穂乃果「・・・!このっ!!」

亜里沙「穂乃果さん!・・・わかりました、真姫さん、あなたを一室に軟禁させてもらいます。いいですね?」

真姫「・・・勝手にしなさいよ、好きにしなさい。」

真姫は希の部屋で軟禁する事になった。

亜里沙「真姫さんは私が連れて行きます。」

凛「一人で!?大丈夫なの!?」

絵里「危険よ!せめて一緒に・・・。」

もはや周囲は完璧に真姫を犯人だと疑わない空気だった。

真姫はそれを他人事のように感じながら、友情なんて、こんな物か・・・と思った。

亜里沙「大丈夫ですよ、皆さんは2階のリビングで待っていてください。
ほら、行きますよ。」

亜里沙と真姫は希の部屋に入った。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

希の部屋

真姫「ここにいればいいんでしょ・・・。」

亜里沙「真姫さん、お話ししたい事があります。」

真姫「・・・え?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

17:45 2階リビング

亜里沙「ただ今戻りました。」

絵里「亜里沙!どうだった?大人しくしてた?」

亜里沙「うん、大人しく従っていたよ。
食糧も残していたから明日までは大丈夫だよ。」

穂乃果「でもどうやって閉じ込めたの?中からなら鍵も無く開ける事が出来るけど・・・。」

亜里沙はポケットからボンドを出した。

亜里沙「書個室にありました。
これを真姫さんのいる部屋の扉の鍵穴に塗りました。
これで、真姫さんは扉を開ける事ができません。」

絵里「なるほどね、とりあえずこれで安心か・・・。」

穂乃果「うん。これでもう安心だね!」

凛「でも何で真姫ちゃんが・・・。」

亜里沙「解りません・・・、しかし真姫さんにしか、犯行は不可能なんです。」

穂乃果「そうだよ!海未ちゃん達の時は、真姫ちゃん以外のアリバイはガムテープから証明された訳でしょ?花陽ちゃんの時だって、真姫ちゃんにしか無理だよ!」

凛「確かにそうだけど・・・、っじゃあ海未ちゃん達を隠したのは結局だれなの!?
さっきはうやむやになっちゃったけど・・・。」

亜里沙「恐らくにこさんでしょう。
にこさんの死体は誰も発見していませんからね。
私達が希さんの部屋に行っている間に、どこかに隠れていたにこさんが遺体を隠したんです。
その後に真姫さんはリビングを抜け出した後、待ち合わせていたにこさんを殺害し、管理室に行って花陽さんを殺害したって所ですかね。」

絵里「確かにそれなら筋が通るわね・・・。
でもそれなら何で真姫の部屋に死体を置いたの?
疑いを逸らしたいなら違う人の部屋にするんじゃ・・・。」

亜里沙は自分の推理に茶々を入れられたのが悔しかったのか、少し不機嫌になり、

亜里沙「・・・わーかりました!そこまで言うならある実験をしようじゃありませんか!」

凛「実験・・・?」

絵里「どういう事・・・?」

亜里沙「いいですか・・・?皆さん、耳を貸して下さい。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

亜里沙「・・・という訳です。」

穂乃果「・・・いやでもそれは危険すぎるんじゃ・・・!?」

亜里沙「それは、皆さん次第です。」

凛「でも・・・。」

亜里沙「大丈夫ですよ、任せて下さい。」

絵里「・・・分かったわ、合図を見逃さない様にするわ。」

雪穂「亜里沙・・・。」

亜里沙「大丈夫だよ、雪穂。
くれぐれも、さっき言った事は忘れないでね!」

雪穂「・・・分かった。」

穂乃果「絵里ちゃん、本当にいいの?」

絵里「・・・亜里沙の決めた事よ・・・、それに、まぁ大丈夫でしょう。」

亜里沙「じゃあ解散しましょう、後は指示通りに。」

絵里「分かったわ。」

亜里沙「はい。じゃ、また。」

亜里沙以外の皆が部屋を出る。

亜里沙はそれを見届けた後、部屋の明かりを落としてケイタイをいじり、ソファに向かった。

そこには毛布をかけられている花陽の死体があった。

亜里沙「・・・失礼します。花陽さん。」

亜里沙は無礼の無いように毛布をどける。

あれから時間の経っているせいか、血が服にこびりつき、黒ずんでいた。

亜里沙は死因を確認する。

亜里沙「嘘だよね・・・。」

花陽の首は刺突による穴が開いていて、そこから血が垂れだした後があった。

ランダムに刺されてはいるが、首の中心から左側を多く刺されているようだ。

亜里沙「・・・・・・・・・。」

手を震わせながら、花陽に触る。

亜里沙「あっ・・・。」

亜里沙「・・・っ!」

手に伝わる温もりを感じる。

亜里沙は震える手で花陽に毛布をかけると、拳を握る。

亜里沙「っ・・・くそ!」

その拳をテーブルに静かに押し付けた。

亜里沙「・・・、これが真実ですか、どうして・・・!!!」

誰もいない部屋で嘆きが上がる。

それに応える者は誰もいなかった。

18:00  2階リビング

??「・・・。」

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

体を血に染めた者が、扉を細心の注意を払って開ける。

ボタ・・・ボタ・・・。

その者の足音は無音だったが、体から、ナイフから垂れる血の音によって完璧に無音では無かった。

??「・・・・・・・・。」

その者は寝ている亜里沙のソファの前に立ち、亜里沙を見下ろす。

亜里沙は毛布を頭までかぶっていた。

??「・・・フフフ。」

ポケットに入っていた二本のナイフを両手で静かに持ち、片方を逆手に持ち変える。

その姿は完璧な殺人鬼だった。

両手が凶器でふさがった今の『彼女』は扉を開ける事も、弓を射る事も、ダンスをする事も出来ない。

そういった意味で、彼女は完璧な殺人鬼だった。

??「・・・っ・・・ハァ!!!!」

両手に持ったナイフを一気に毛布を突き刺す。

その後もメチャクチャに何度もめった刺しにする。

ドスドスドスドスザシュザシュグシャソシュソシュグシャアアアアア!!!!!!

ナイフを刺すごとに音が聞こえる。

それはまるで、ナイフが獲物にありつけて狂喜している様だった。

??「っ!!っ!!あぁ!!っ!!」

ドスドスドスドスドスドスドスドシドスドスザシュグシャ!

??「シャアアアアアアアアア・・・えっ・・・?」

何かがおかしい。

その者は思った。

毛布はナイフでめった刺しにしたせいで穴だらけだ。

当然その下にある亜里沙も穴だらけで、血が飛び散るはず。

しかしなんというか・・・人を刺した時の感じるぬちゃっとした音と感触が無いと言うか・・・。

??「・・・っ!?」

その者が刺すのを止めて、毛布を取る。

??「バカな!!」

そこには亜里沙の姿は無く、デカイ人形が置いてあり、ナイフで刺されたからか、

中からは綿は沢山出てきていた。

亜里沙「やっぱり、あなたが犯人だったんですね・・・。」

??「・・・亜里沙!?・・・ちょっ!」

その者が振り向く前に何人かがその者の体の自由を奪い、凶器を弾かれ、毛布やロープで拘束された。

??「・・・くっ・・・。」
カチッ

亜里沙は部屋の明かりを点けると、その者は眩しそうに目を瞑る。

絵里「どういう事よ・・・。」

凛「そんな・・・。」

穂乃果「まさか・・・。」

雪穂「どういう事・・・?」

絵里、凛、穂乃果、雪穂がその者の体を拘束していた。

しかし、四人は拘束した相手を見て、茫然としている。

絵里「これはどういう・・・。

私達は真姫が襲いかかってくるからってメールを・・・亜里沙!?」

亜里沙はそんな絵里の問いには答えずポケットに入っている携帯に手を伸ばす。

亜里沙「真姫さん、もう大丈夫ですよ、入ってきてください。」

??「・・・!?」

メンバー「!??」

その者がやっと目を開けるとドアから真姫が入ってくる所だった。

真姫「・・・あなたが犯人だったのね。」

真姫は憐れんだ目でその者を見る。

亜里沙は残念そうに、しかしはっきりとした意志を持って、指をさす。

亜里沙「犯人は・・・あなただ。」

黒い女「チェックメイト・・・!」

黒い女は興奮ぎみに言いながら席を座り直す。

ピンクの女「あらあら・・・、事件解かれちゃったかー。
やるわねー亜里沙、おめでとベルン。」

黒い女「あら、一週目の方も、ちょうどシメの所らしいわよ?」

亜里沙が吸いこまれたジオラマの隣に、もう一つのジオラマがあった。

ジオラマの空にはホールで対峙している二人の姿があった。

ピンクの女「二つとも解かれちゃったかー。
やっぱ探偵権限はすごいわね。
持たせるべきじゃなかったかなー。」

黒い女「今更変更は受け付けないわよ。」

黒い女「さぁ、ここから探偵にとって一番おいしい所よ。
バッチリ決めなさい、亜里沙。」

一周目の世界(Re)

ことりは刺殺、希は撲殺、海未は毒殺で死亡した。

凛は刺殺、花陽は撲殺、にこは刺殺で死亡した。

穂乃果、雪穂、絵里は全員刺殺で死亡した。

ここはそんな世界。

そんな死者の怨念が渦巻く血塗られた別荘のホールで二人は対峙していた。

一人は西木野真姫。

真姫は服を血で濡らしながらもう一人と対峙する。

その一人は絢瀬亜里沙。

しかし亜里沙は今まで真姫に向けていた身体を後ろに向けた。

??「・・・。」

いつからそこにいたのか、そこには血まみれのシャツを着て、血まみれのナイフを持った者がいた。

その者は笑っていた。

まるで、亜里沙の推理が合っていた事を賛美する様に。

まるで、やっと解放されると言わんばかりに。

亜里沙「残念です、・・・本当に、残念です。」

亜里沙「見ていましたよね?私達を殺す為に。」

亜里沙「そして今までの話を聞いていましたね? 以上の事から、希さん以外のメンバーを殺したのは・・・。」

亜里沙は静かに、その者に指をさす。

亜里沙「犯人は・・・あなたですよね?」


              


                     亜里沙「「海未さん。」」

二週目の世界

海未「・・・。」

全身をロープで縛られた海未は抵抗もせず静かに寝転がっていた。

亜里沙「あなたですよね・・・?海未さん。」

その姿は血まみれで、綺麗だった髪は血に染まり、凛々しかった顔は殺人鬼たるに相応しい顔だった。

凛「あ、亜里沙ちゃん、これはどういう事!?

話と違うじゃない!?
自分を囮にして真姫ちゃんが犯人の証拠を掴むから自分がメールしたらすぐに来て拘束してくれって・・・。」

穂乃果「海未ちゃんもだよ!確かに計画ではそういう風にしてたけど・・・。」

絵里「穂乃果!!!!」

真姫「・・・っ!絵里、穂乃果。
今のどういう事なの・・・?計画っていうのは・・・?」

絵里「・・・。」

穂乃果「・・・。」

亜里沙「真姫さん、とその他の皆さん。
各々方が今頭に抱えている疑問は違うと思います。
私が今からそれらを全て説明します。
が、説明する前に言わせて下さい。」

亜里沙は怒っていた。
普段冷静で大人しく優しい亜里沙からは考えられなかった。

亜里沙「もしこれから説明する事が全てあっているならば、
私は今日でμ’sのファンを辞めさせてもらいます。皆さんは最低です、クズです。
よくもまぁここまで・・・。ここま・・・で。」

絵里「亜里沙・・・。」

亜里沙は涙ぐむ。

それだけこれから話す事が辛い事なのだろうか・・・。

亜里沙「・・・、話します、では最初の事件から・・・。」

最初の事件。

海未、ことり、希が殺され、にこが失踪した事件。

しかし、見ての通り海未は生きている。

亜里沙「最初に・・・というかこの別荘で起こった事件ですが・・・。

全て、真姫さんを除いたメンバー全員の狂言ですよね?」

真姫「・・・はっ!?どういう事よ!?私を除いた狂言って・・・にこちゃんや希は実際に死んでいるじゃない!」

亜里沙「正確には狂言のはずだった・・・ですよね?」

真姫「・・・どういう事なの!?凛!あんたも知っているんでしょ!!言いなさいよ!」

凛「・・・。」

亜里沙「さすがに自分達のした事を自分で説明できるほど、開き直ってはいないようですね。
説明に戻ります。
黄金が発見されて、解散した時から皆さんの計画は始まっていました。
目的は真姫さんの持っている、5000万円の入った通帳です。」

絵里「・・・!」

真姫「通帳って・・・黄金が見つかった時に亜里沙からもらったあの通帳の事!?」

亜里沙「そうです、あの通帳です。
ことりさん達は、その通帳を奪う為に今回の事件を起こしたんですよ。」

真姫「どういう事・・・?」

亜里沙「第一の事件の被害者であることりさんと海未さん、にこさんと希さんは死んだふりをして第一の事件を起こしたんですよ。」

真姫「そんな・・・でもさっきも言ったけどにこちゃんと希は死んでいたじゃない。

あれが偽物とは思えないわ・・・。」

亜里沙「はい。真姫さんの部屋で発見した二人は私も検死しましたし、確かに死亡していました。
しかし、最初の時点では生きていたんだと思います。
そもそも真姫さん、思い出して下さい。
私達は真姫さんの部屋で発見した、希さんとにこさん以外の死体を見ましたか・・・?」

真姫「え・・・?そういえば・・・見てないわ!見ていない!」

絵里「・・・。」

亜里沙「最初の事件で死体を発見したのは私と真姫さん以外の全員です。
私が来た時には海未さんとことりさんは毛布でくるまっていたので直接死体は見ていません。
花陽さんの時もそうです。
希さんに至っては、死体すら見ていません。」

真姫「・・・確かにそうよね。
直接死体を見たのは希の部屋でのにこちゃん達が最初だわ・・・。 」

亜里沙「そう考えると馬鹿な話です。
私は皆さんの狂言に踊らされて、必死こいて推理していた訳ですから。
最初は全然解りませんでしたよ。
まさか私と真姫さん以外の全員がグルになっているなんて、思いもしませんでしたから。」

海未「・・・どこで気づいたのですか?」

亜里沙「初めて狂言の可能性に気付いたのは、希さんの死体を見た時です。

希さんの首は縦にばっくり切り裂かれていました。
でも・・・。」

亜里沙は雪穂の方を向く。

雪穂「亜里沙・・・。」

亜里沙「・・・、雪穂、あなたはこう言っていたよね・・・?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>絵里「思い出したくはないだろうけど・・・希も首を?」

雪穂「・・・っオエっ。はい。首を横に思いっきり切られていました。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

雪穂「・・・!」

亜里沙「雪穂は首を切られていたとか、曖昧な表現では無く、はっきりと『横に切られていた』と言っていました。

おかしいですよね?

証言と遺体の状態が違うだなんて。

おかしいと思った点はまだあります。

それは希さんとにこさんの死後硬直時間が矛盾していたからです。」

真姫「矛盾って・・・?」

亜里沙「死後硬直は八時間程で四肢の関節が硬直します。

もし希さん達が今日の朝に殺されているのなら、四肢は硬直しているはず。

しかし、希さんたちはまるでそれが無かった。

希さん達はつい最近、一時間くらい前に殺したんですよね?海未さん。」

海未はにやりと笑って亜里沙を見る。

その顔は血にまみれていて、恐ろしく、美しかった。

亜里沙「・・・恥ずかしながら、希さん達が朝に殺されたのでは無いと確信して、
初めて私は今回の事件が元々は狂言だったのではないか、と考える事が出来ました。
そう考えて思い出してみると、皆さんの発言は矛盾だらけでしたよ。
例えばことりさん達の事もそうです。 」

>雪穂「海未ちゃん達も・・・その首を・・・?」

花陽「うん・・・。首を左からななめに切り裂かれていたよ・・・。」



>絵里は真姫を呼んで耳打ちする。

真姫「・・・えっ!?冗談でしょ!!」

真姫の顔が青くなる。

絵里「・・・。」

絵里は頷くしか無かった。

真姫「・・・そんな、二人が首を縦にって・・・。




>凛「うん、そうにゃ。二人の首は・・・真っ直ぐに横に切り裂かれていて・・・。」




>真姫「何よそれは!?そんな事言ったら穂乃果だって怪しいじゃない!?

何せ海未達と一晩中一緒にいたのよ!むしろ一番に疑う所でしょうが!?」

真姫は穂乃果に指を指す。

穂乃果「真姫ちゃんそんな!?私がことりちゃん達の首を何度も刺したって言うの!?ひどいよ!!」

絵里「・・・!」

亜里沙「同じ死体を見たにも関わらず、どうやって切られたかは、三人共、バラバラです。」

真姫「・・・!」

亜里沙「恐らく急に決まった計画だったので、そこまで綿密な打ち合わせは出来なかったのでしょう。
それでもすごいですよ、チームワークで完璧に騙し通したのですから。
花陽さんを死んだ様に見せかけた時のケンカとか、迫真の演技でしたよ。
あれは、私が死体を検死させない雰囲気を作るためだったんですよね?
今思うとお姉ちゃんが死体の状況をスラスラ教えてくれたのもおかしな話ですよ。」

凛「・・・。」

亜里沙「腐ってもラブライブ優勝チームって所ですか?反吐が出ますわ。

最初の事件はことりさんと海未さんは死んだふりをしていて、希さんとにこさんはどこか開いている部屋に隠れていたんですよね?

それを他のメンバーが協力して死んだ様に見せかけた。

次の事件も同じです、メンバー全員で狂言の密室殺人を構築した。

どちらも、真姫さんにしか犯行が出来ない様な状況を作って!」


真姫「・・・嘘よ。」

穂乃果「真姫ちゃん・・・。違うの、これは!」

真姫「嘘よね!あなた達がそんなひどい事をグルでやっていたなんて!冗談なんでしょ!亜里沙の思い込みよね!?

冗談って言ってよ!」

真姫は穂乃果に掴みかかる。

真姫は信じられなかったのだ。

凛「・・・。」

真姫「凛!!何とか言ったらどうなの!?」

真姫は凛にも掴みかかる。

凛「うっさいなぁ!!真姫ちゃんが悪いんだよ!!

一人でお金を持ち逃げなんてするから!!」

真姫「はぁ!?遺産の事を言っているの?それなら私達で平等に分配しようって決めたじゃない!
あなたもその場にいたでしょ!!それともまだ足りないって言うの!?」

亜里沙「真姫さん、違うんです。そのお金はまだ手に入れていないんです。」

真姫「はぁ・・・!?何を言って・・・。」

亜里沙「正直分けてもらった身としてこんな事を言いづらいのですが、

正確には・・・『数十億物円もの価値があるインゴットを手に入れた』、です。

お金はまだ手に入れていないんですよ。

もっと言うと、お金を手に入れたのは、五千万円の通帳を持っている真姫さんだけです。」

真姫「いや・・・それはそうだけど・・・そんな事対して関係ない・・・。」

亜里沙「あるんです、それが。真姫さん、あなたが手に入れたと言っている
数十億もの価値がある黄金ですが・・・どうやってお金に換えるんですか・・・?
また、それはいつ頃お金に変わるんですか・・・?」

真姫「・・・え?それは・・・。」

亜里沙「真姫さん、地下にあったインゴットを思い出してください。
あのインゴットは、正式な刻印は打たれてありませんでした。
刻印の打たれていないインゴットをどうやって換金するっていうんですか?」

真姫「え、そ、それは・・・。」

インゴットには打たれていなくてはいけない4つの事柄がある。

1つは精錬業者登録マーク。

いわゆる国のマークだとかライオンのマークだとか、インゴットの画像を調べて見れば、大抵何かしらマークが打たれているそれだ。

2つ目は品位だ。

金の中に何割不純物が入っているかが打ってある。(純金の場合は999.9)

3つ目は重量。

4つ目は企業のシリアル番号だ。

別に刻印は法律で必ず打つ様に言われている訳ではない。

が、これが付いていないのは偽物か、古物だけだ。

何故なら、刻印はインゴットが本物か偽物かを分かりやすくする為に出来たシステムだからだ。

インゴットが本物か偽物かを見分けるのはプロでも難しいという。

そこで、もっとてっとり早く判断をしやすくする為に、業者はインゴットを作る際に刻印を打つことにしたのだ。

刻印ならば番号や品質はそれを打った企業に問い合わせれば本物かどうか分かるし、

打たれた刻印を見るだけで本物かどうかを判断する事も、プロならばそう難しくは無い。

しかし、逆に言えば刻印の打たれていないインゴットは本物か偽物かは簡単には解らず、信用できないという事。

インゴットは買う者がいなければ金にはならず、本物か偽物か分からない物を買う馬鹿はいない。

西木野家の地下で見つかったインゴットは琉球王朝の時代にできた物だ。

そんな古い物に刻印なんて打たれている訳が無い。

・・・つまり、あのインゴットが本物であるという客観的な証明が出来ないのだ。

亜里沙「理解できましたか?確かにあのインゴットの山は数十億円以上の価値があるでしょう。
ですが、それは世間にこのインゴットは本物だと認められ、換金を経ればの話なんです。
地下に眠っているあのインゴット、黄金の山は、世間から認められていない以上、ただの鉄くずの山なんですよ。」

もちろんこのインゴットをしかるべき所に調査を依頼すれば本物かどうかは『いずれ』分かるだろう。

刻印が打たれていないとはいえ、純金である事は確かなのだ。

調査は難しいが時間を掛ければできない事ではない。

・・・が、メンバーにはそれぞれどうしても今すぐ大金が必要な事情があるのだ。

インゴットが本物と認められ、買い取ってくれる者が現れるのを待つ時間は無い。

それに県との問題もある。

こうしてインゴットが見つかった以上、沖縄の都市伝説は本物だと思った方が良い。

正式に公開すれば奪われる事は無いと思うが、色々とクリアすべき課題はあるだろう。

それらを全部解決するのに、どれだけ月日を待てばいいのか・・・?

つまり、今この場にある大金は、真姫の持っている5千万円しかないのだ・・・。

絵里「私達の家は全員火急で大金を用意しなければいけない事情があった。
でもそれはその通帳の5千万円があれば真姫以外は全員が救われる金額だった。」

絵里が淡々と言う。

自分がどれだけ恥知らずで勝手な事を言っているのかは理解している様だった。

絵里「でも真姫、あなたの家の事情を解決するにはその通帳のお金を全部使う必要があった。
だから、・・・インゴットが発見された後、グループ電話で相談したのよ。
どうやって、その通帳を奪うのかを・・・。」

絵里「そしたら海未が提案してくれたの。
狂言をして、脅迫してお金を誰かの講座に送ってもらおうって!
真姫達には死体を見せないようにして、外部から来た人に見せた仕掛けにしようって!」

真姫「・・・。」

開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。

真姫は今日にこを助けるためにメンバーからの誹謗中傷に耐え、

犯人からの要求に恐怖と不安を感じながらも実行したのだ。

それが、この仕打ち・・・!

事件は狂言で、にこは人質どころかお金を奪う為に真姫を騙していて・・・。

真姫の平衡感覚がぐらついてきた。

漫画やドラマで金のために友達を裏切るシーンがある。

その時は共感したが、まさか自分が裏切られる立場になるとは思いもしなかった。

苦しい。

とても苦しかった。

なんで?どうして?

お金のために自分を・・・。

汚れていく・・・。

メンバーと過ごしたキラキラした日々が・・・。

全て、お金と、黄金で、汚く・・・。

もう、誰も信じられない・・・。

真姫「そんな・・・あっあっあぁぁ・・・」

真姫「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

真姫は胸に手を当てながら絶叫する。

亜里沙「真姫さん・・・。」

真姫はどこにもケガをしていない。

しかし、亜里沙には真姫がボロボロのズタボロで、深い傷を負っている様に見えた。

亜里沙「もう一度聞くけど・・・お姉ちゃん、雪穂、あなた達もこの狂言に加わっていたのよね?」

雪穂「・・・。」

絵里「・・・えぇそうよ。亜里沙と真姫以外、全員関わっていたわ。」

亜里沙「・・・そう、ですか。」

亜里沙は浅くため息をつく。

真姫程ではないが、亜里沙も大きいショックを受けていた。

自分の尊敬している姉と、親友が、こんな事件に関わっているなんて・・・。

亜里沙はやってもいないのに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

犯罪者の身内とはこんな感じなのだろうか。

いや、事実その通りだ。

亜里沙「最低ですね。もう口も利きたくないです。」

穂乃果「・・・でも、しょうがなか・・・。」

亜里沙「恥を知りましょうよ!いくら自分の家の事情でも!よそ様に迷惑をかけるのだけは違うでしょ!!」

凛「・・・そうも言っていられない事もあるんだよ。」

亜里沙「っ・・・!」

凛の言葉に亜里沙はカっとなり手を振り上げる。

凛「っ・・・・!」

海未「フフフフフフフフ・・・クッフフフフフフフフ!!!」

今まで黙っていた海未が突然笑い始める。

亜里沙「・・・。」

海未「アッハハハハハハハハハハハハハ!!!見ましたか!?亜里沙。あなたが憧れていたμ’sの本性ですよ!

家の事情とはいえ、お金のためならメンバーすらも切り捨てる!フッハハハハハハハハハハハハハ!!!」

穂乃果「っ・・・!あなたが言わないでよ!!っそうよ!海未ちゃん、これはどういう事なの!?
なんでにこちゃんと希ちゃんが本当に死んでいるの!?何があったの!?」

亜里沙「・・・やっぱりそうですか、殺したのは海未さんの独断だったんですね。」

穂乃果「当たり前でしょ!っ・・・どういう事なの!海未ちゃん!話が違うじゃん!」

亜里沙「海未さん、あなたはお金が理由でこの狂言に参加したのではないですよね?
海未さんの狙いは最初から私達を皆殺しにするつもりだった。違いますか?」

絵里「・・・!?私達の・・・」

凛「皆殺しって・・・。」

雪穂「どういう事なの・・・?」



メンバーは唖然とする。

今回の狂言を主導したはずの海未がメンバーを皆殺しにしようとしていたなんて・・・。

亜里沙「私は希さん達の遺体を見てこれが狂言だと思った時、それと同時に狂言とは違う目的で動いている者がいると思いました。
狂言で済ますつもりなら殺すなんてもっての他ですし、
私達の目の前に遺体を出したら遺体の状況から直前まで生きていた事がばれてしまい、
雪穂のついた嘘がばれてしまいます。」

亜里沙「希さんが生きていたと分かったならばもう真姫さんだけが容疑者ではありません。
それに、私が死体を見ていないのは事実なので、きっと疑ったでしょう。
もしかしたら、他にも死んだと言って嘘をついている人がいるんじゃないか?ってね。」

まぁ実際には違う事が原因で狂言である事が分かったのですが・・・と亜里沙は付け加え、

亜里沙「そうなれば穂乃果さん、おねえちゃん、凛さん、花陽さん、死んだふりをしているかもしれないことりさん、海未さん。
更に攫われたフリをしているかもしれないにこさん、つまり全員のアリバイが白紙に戻ります。
狂言をしている者たちにとっていい事はありません。」

海未「なるほど・・・、狂言を行っている人たちには遺体を置くメリットは無い。

だから狂言とは別に目的を持った人物が動いていると・・・。」

亜里沙「ええ。
問題は、その人物を誰か、という事。
死体の状況から、希さん達が最低でも昼を過ぎてから殺された事は分かりましたので、
その時間アリバイの無かった人物は、自分の部屋に籠っていたと証言している真姫さんと、
死体のフリをしていたことりさん、海未さん、花陽さんです。」

海未「・・・それで?」

亜里沙「まずは花陽さんについてですが、これはあなたが一番よく知っているでしょう・・・。」

絵里「そ、そういえば花陽はどうしたのよ!確か計画では万が一の事も考えて死んだ振りを・・・。」

亜里沙「花陽さんの遺体はこのリビングに運ばれましたが・・・。」

凛「そ、そうだったにゃ。
かよちん、もう起きるにゃ、終わったんだニャ!かーよちーん!!」

凛が殺された事になっている花陽の元に駆け込み、毛布を取る。

凛「かよち・・・っ!!かよちん!?かよちいいいいん!!!うわあああああああ!!!!!どうしてぇ!!!
いやあああああああああ!!」

凛の叫び声が木霊する。

花陽の首はナイフで刺された箇所が沢山あり、水風船から水が漏れ出る様に、止めどなく血があふれ出ていた。

目はぎゅるっと突き出すように上を向いていて、揺すると黒目が昔遊んだ人形の様に上下に動く。

・・・それだけで、花陽は死んでいるんだと、誰もが確認できた。

凛「かよち、かよちいいいんん!!!誰かぁ!!誰か救急車を!!誰かぁ!」

凛の叫び声が木霊する。

亜里沙はそれを流し目で見ていた。

亜里沙「真姫さんを閉じ込めてからリビングで解散した時に確かめた時にはもう・・・。

私達はにこさん達を探しにこの部屋を一度空にしました。

恐らくその時に殺されたのでしょう・・・。」

絵里「・・・そんな。」

雪穂「こんな事って・・・。」

海未「フフフ・・・。正解ですよ、亜里沙。」

亜里沙「ちなみにですが、私が穂乃果さんから聞いたのと殺し方が違うと言う点、
花陽さんが管理室に入室した時鍵をかけていた事を姉が知っていた事も
狂言の手がかりになります。
チェーンがかかっていて部屋から退室する事は難しいですがお姉ちゃんは入室をするのが難しいと言っていました。
どうして花陽さんが鍵をかけていたのを知っていたのか?それは狂言の計画でそうなっていたからでしょう。」

>穂乃果「ひどい・・・!また首を切られている・・・!ひどい!!」

穂乃果「・・・ことりちゃん達と・・・同じだ・・・。首が縦にぱっくり・・・いやあああああ!」

>雪穂「・・・っ待ってください!!おかしくないですか!?

窓も閉まっていて、この部屋にはチェーンがかかっていたんですよ!?

犯人はどこから脱出したんですか!?」

絵里「そもそもどうやって部屋に入ったのかしら・・・。

この部屋は施錠されていたのに・・・。」

亜里沙「真姫さんについては・・・、希さん達の死体を調べ、この事件が狂言だと分かった時点で疑いはほぼ晴れていました、」

真姫「・・・。」

真姫はやっとの思いで顔を上げる。

亜里沙「何故ならば、この殺人を行った犯人は、狂言をしたメンバーの中にいるからです。
失踪したにこさん達の居場所を知っていて、花陽さんが死んでいない事を知っていた人物。
花陽さんの死体の状況から、私達が部屋を出てから殺されただろうという事は分かっていましたので それからずっと一緒にいた真姫さんには不可能です。
ただ、真姫さんには管理室で花陽さんが狂言を行った時にアリバイがなかったのでその事について、真姫さんを部屋に閉じ込めた時にお聞きしましたけどね。」

真姫「・・・。」

亜里沙「真姫さんは自分がにこさんと家の事で脅されている事を言いませんでした。
しかし、今回の事件が全て狂言である事の可能性を説明し、これから犯人を誘い出すから協力してほしい。
そう話したら、全てお話しして下さいました。
もちろんまだ不確定な事は伏せて話しましたけどね。」

=========================
真姫を閉じ込めた時の話。

真姫「ここにいればいいんでしょ・・・?」

亜里沙「真姫さん、お話しがあります。」

真姫「えっ・・・?」

亜里沙「真姫さん、あなたは犯人なんですか?」

真姫「・・・もういいわよ。どうせ信じられないんでしょ・・・?」

亜里沙「もういちど、真姫さんの口から聞きたいんです。
私の目を見て言ってください。」

亜里沙は真姫をじっと見つめる。

真姫は亜里沙の真剣な顔を見る。

そこには緊張したような、真実を見極めようとする、そんな複雑な顔だった。

真姫「・・・私は誰も殺していないわ、本当よ。」

亜里沙「・・・真姫さん、私は希さんの死体を発見するまであなたが犯人だと思っていました。
でも、今はあなたは犯人では無いと思っています。」

真姫「・・・え?」

亜里沙「これから、私は犯人を捕まえるために囮となります。」

真姫「っ!?危険よそれは!!」

亜里沙「一応手は打っておくつもりです。
もちろん殺される可能性もあります!真姫さん、私はなんとしてもこの事件の真相を暴きたいんです! もしあなたが犯人でないのなら・・・何か知っている事があるならば、どうか教えてくださいませんか!?」

亜里沙は土下座をする。

真姫は頭を上げる様に言うが、亜里沙は頭を上げなかった。

真姫「・・・分かったわ、あなたは犯人じゃない
。なんでか知らないけど、そんな気がする。
私の知っている事を、全て話すわ。」
・・

・・・

・・・・

・・・・・

真姫「・・・という事があったのよ・・・。亜里沙?」

亜里沙「・・・。」

亜里沙は理解する。

この事件の真実に。

それは、

亜里沙にとって信じられない、筆舌しがたい真実。

========================

亜里沙「全てを聞いて、この事件の裏側が見えてきましたよ。

よくぞかつてのメンバーに、ここまでえげつない事が出来た物です。

これを思いついたのは海未さんですか?」

海未「・・・ええ、真姫の事情は知っていましたからね。

おかげで都合通りに動いてくれましたよ。」

亜里沙「っ・・・!最後にことりさんと海未さんですが・・・。
私はこの二人に絞れた時点で、十中八九、海未さんが犯人だと思っていました。」

絵里「・・・!!」

穂乃果「ど、どうして!?」

海未「ほぉ・・・。何故ですか?」

亜里沙「あなたが殺したにこさんと、希さん、花陽さんの死体ですよ。

希さんは首を右上から斜め下に、にこさんは腹を同じく、花陽さんは首を刺されていましたが、 この三つの死体には、共通点があったんです。
それは、よいしょ。」
亜里沙は身代わりとなった人形を持ち上げてみせる。

亜里沙「それは、左利きの人が刺した、と言う事です。
この人形も滅多刺しにされていますが、人形の中心から左に多く刺し傷がありますよね?
そして、海未さんは左利き、ことりさんは右利きです。
この事から犯人は海未さんだろうと思っていました。
・・・信じたくは無かったですけどね。」

海未「フフ・・・私が左利きな事はプロフィールにも書いていなかったのに・・・さすがμ`sのファンですね。」

※海未が左利き、ことりが右利きな事は漫画から参考にしました。もしかしたら間違えているかもしれません。


亜里沙「伊達にファンやってないんですよ、・・・もう辞めましたけどね。」

亜里沙「後は海未さんを拘束する為にワザとスキを作って罠を張りました。
姉たちにはこう話しました。
『真姫さんが犯人だという証拠を見つけるために自分が囮となる。 自分がメールを送ったらすぐにリビングに来て襲っている真姫さんを拘束してほしい』とね。
メンバーの中にも共犯者がいて、海未さんを捕まえると知ったら邪魔をするかもしれないと思ったんで、 真姫さんと言い、海未さんだと分からない様に部屋を真っ暗にしておきました。」

海未「なるほど・・・まんまと引っかかった訳ですか・・・。」

亜里沙「後はこの通りです。
自分のダミーを用意して、私は隠れていました。

そしたらまんまと海未さんが来てくれたので、則メールをして取り押さえてもらった訳です。」

・・・こうして聞くと淡々と犯人を捕まえた様に聞こえる。

しかし、ここまで来るのに葛藤はあったのだ。

まず真姫に今回の事件が狂言だといい、自分に協力してほしいと言った所。

少ない可能性だが、真姫が本当に殺人を起こしている可能性もあった。

もし真姫が犯人だったらいい様に誘導されていたのかもしれない。

もう一つは今生き残っているメンバーと海未が犯人である可能性もあった。

雪穂、穂乃果、凛、絵里はまだ死んでいない訳だから、海未と手を組んでいたのかもわからない、

もし手を組んでいたら亜里沙は生きていなかっただろう。

亜里沙「海未さん、ことりさんは・・・もう生きていないのですか?」

穂乃果「っ・・・!そうだよことりちゃんは・・・。」

海未「えぇ・・・ことりは、一番最初に殺しました。

今はインゴットのおいてある部屋の『奥の』部屋に置いてありますよ。」

穂乃果「あぅ・・・ああああああああああああああああ!!!そんな・・・・。あぁ・・・。」


穂乃果はその場で蹲り、泣き叫ぶ。

自分の無二の親友の一人が殺人を犯し、もう一人はその一人によって殺されたのだ。

真姫にした事を思い出すと、とてもではないが同情なんて甚だ出来はしない。

だが、・・・。

亜里沙「最後に・・・改めてお聞きします。
にこさん、希さん、花陽さん、ことりさんを殺したのは・・・あなたですよね?」

海未は付き物の落ちた様な、やり遂げたような顔で、

海未「・・・はい、私が犯人です。」

そう、答えた。

パキン!!!

その瞬間、亜里沙の目の前の空間にヒビが入る。

空間だけではない。

さっきまでそこにいた、穂乃果も、海未も、凛も、屋敷さえ割れる。

まるでガラスが割れる様に、割れて、割れて、割れて、そして最後には自分すら割れた。

亜里沙はそんな割れた自分を茫然と見ながら、目の前にある黒い渦に吸い込まれていく。

その先に、また、大きな渦があった。

今度は亜里沙を吸い込まず、その代わりに映像が映る。

それは、亜里沙たちが映っていて、石碑の前に集まって会話をしている。

亜里沙「これ・・・真姫さんの別荘だ!・・・て事は・・・。」

亜里沙にとっては数時間前の事・・・。

これは○月×日の映像だった。

亜里沙「あれ・・・でも。」

映像ではちょうど一通り議論が出尽くした様だ。

確かこの後は亜里沙と穂乃果が残り、碑文を解いていくのだが・・・。

亜里沙「石碑の前で残っているのは・・・真姫さんだけだ。」

映像の亜里沙は欠伸をしながら自分の部屋に帰っていく。

真姫は何かを呟きながら書庫室に向かった。

このパターン・・・これは・・・。

亜里沙「・・・そうだ!この映像は、私が殺された一周目の世界なんだ!」

映像には真姫が映っていて、熱心に碑文を解いている。

亜里沙「てことは・・・あの日の事が・・・分かるかもしれない。」

亜里沙はその映像を食い入る様に見る。

まもなく、真姫が碑文を解いてインゴットの置いてある部屋に行く所だった。

23:00 一周目の世界 隠し部屋

真姫「はっはははははははははっ!!お金よりもこの世には素晴らしい物がある!!

お金で買えない物なんていくらでもある!!そう思ってたわ!!

でも、そんなものは嘘だってはっきりわかったわ!!!そんなのはねぇ、持ってないやつの愚かな自分への言い訳だったのよ!」

真姫「この黄金を溶かす事で、この世のありとあらゆる幸せを得る事が、生み出す事ができる!!

やったぁ!!やったぁ!!!うううううう!!!」

ギイイイイイイイイイイン

真姫「誰!?」

真姫はとっさに振り向く。
ドアを開ける音がしたのだ。するとそこには・・・

真姫「希!?あなた何で・・・。」

希「・・・いやっほー、真姫ちゃん。」

希が笑みを浮かべながら、立っていた。

真姫「・・・!?」

とっさの事に頭が回らない真姫。

希はそんな真姫を無視してつかつかと黄金の元に歩いていく。

希「はぇ~すごいインゴットの山やね。

碑文に書いてある事は本当だったんやなぁ・・・。」

真姫「あなた・・・碑文を解いて・・・?」

希「いや?ウチは寝付けなくてこのデカイ館を散歩していただけよ?

そしたらライオンの像の手がいろんな方向を向いているから気になってついて行っただけやで。」

今日はここまでで

社畜になってしまったんで貼る体力すら…

誤字脱字があれば指摘おなしゃす…

今日はここまでで

社畜になってしまったんで貼る体力すら…

誤字脱字があれば指摘おなしゃす…

今日はここまでで

社畜になってしまったんで貼る体力すら…

>>148
三連投とは体力がありあまってる証拠

ここまで来たら最後まで頑張ろうぜ

>>110でにこの死体が出てきてるのに>>117でにこさんの死体は出てないって話になってない?

>>151めちゃくちゃ分かりにくいですが、>>116で亜里沙が言った

>亜里沙「恐らくにこさんでしょう。
にこさんの死体は誰も発見していませんからね。

は最初の死体が発見された時は誰もにこの死体は目撃していないって意味です。

ですが、これだけだと確かに分かりにくいですね。

指摘して頂いた>>151ありがとうです。




真姫「・・・。」

希「そしたら、書庫室の奥にあからさまに隠されていた様な扉があるやん?

ウチは誰かが碑文を解いたと思ってなぁ・・・下に降りてみたって訳や。」

真姫「・・・そう。」

希「そんな怖い顔しなくてもええやん?うちは何も盗ったりはせえへんで?
ただほんのちょっと、お小遣いが欲しいと思ってなぁ・・・?」

真姫「は・・・?」

真姫は希の言葉に燻がる。

希「いやな?身内の恥だから言いたくは無いんやが、ウチの家庭は今金銭的なトラブルに巻き込まれていてな? お金が一銭でも欲しいねん。
やから、ほんのすこーし、この黄金を見つけた、そう!ご祝儀がほしいんや!
ゴルフでホールインワンしたら打った側がお金を渡すやろ?そんな感じや。」

真姫「そんな感じって・・・いくらなのよ?その借金。」

真姫は100万か、そこらなら渡しても良いと思っていた。

しかし・・・。

希「XXXXX万円。」

真姫「・・・冗談でしょ?」

希「冗談じゃないから困っているんやで、なーにお金持ちの真姫ちゃんの事や。
そんぐらいすぐやろ?」

真姫は幹部から家の事情を聞いているので経済状況は知っている。

全財産はどんなにかき集めても5000万円が限度だ。

真姫「・・・悪いけれど、すぐにはそんなお金は出せないわ。
黄金を換金したら、少なからずメンバーにはお金を渡してあげるから、それで我慢してよ。」

希「アカン!!!それじゃあかんのや!!」

希は切羽詰まったような顔で希の肩に手を乗っける。

真姫「ちょ、希・・・い、痛い!!」

希「そんな換金なんて待っていられへんのや!!!最低でも後ひと月以内になんとかせんと!! う、うちは・・・うちは・・・。」

それはまさに悪鬼迫った表情だった。

普段冷静で温厚な希が見せる表情ではない。

真姫は希のこんな焦った表情を初めて見た。

真姫「の、希、落ち着いてよ!うちにはそんな大金無いわよ! この黄金を換金しないと・・・。」

希「も、もううちはあんな事はしたくないの!!嘘や!!!絶対持っているはずや!!」

希は真姫を押し倒す。

いつの間にか、肩に掛けられていた手は首にかかっていた。

真姫「の、希・・・苦しい・・・!」

希「なぁ・・・なぁ?なんでお金くれへんの!?別にいいやん。
これからぎょうさんお金手に入るんやさかい。
ええやろ?そんくらい払えるやろ?どうして嘘をつくんや?答えてみぃ!!!」

ギュウウウウ

希の手が首を閉める。

真姫「い、いや・・・。いやぁぁぁぁぁ!!!!!」

ドンッ!!!

真姫は最後の力を振り絞って希を押し出す。

希「えっ!?きゃっ!」

希がよろけてしまったのが原因なのか、それとも真姫の押した力が強かったのか、

希は勢い余ってインゴットの山の角に頭をぶつけてしまう。

希「あっ・・・あああああああ!!!!!痛い!!!痛いよぉぉぉお!!!!!」

希の頭からは微量だが血が流れていた。

真姫「え・・・その・・・ごめ・・・。」

希「真、真姫ちゃん、私を殺そうとしたの・・・?」

真姫「ち、違うわよ!!希が首を絞めてきたから・・・。」

希「私を殺そうと・・・い、いやああああああああああ!!!!」

希は錯乱していた。頭を打たれた事の混乱もあるかもしれない。

今の希は正気ではないと真姫は判断した。

真姫「希!!冷静に、クールになって!怪我も軽傷よ!消毒をして、包帯を巻いていれば
すぐ直るわ!縫う必要もない!だから冷静になって!」

希「う、うわあああああああああ!!」

希はインゴットの山から一つをプルプルと震えながら持つ。

重たいのか、両手で持っても上げる事は出来ないらしい。

真姫「希!!!な、何を!!」

希「あああああ!!!!」

希はそれをなんとか上に挙げて真姫に突っ込み、振り下ろしてきた。

真姫「きゃ、きゃああああ!!!」

真姫はなんとかそれを避ける。

希が振り下ろした先にあったPCは、今の衝撃で粉々になった。

・・・完全に運だった。

次は除けられない。

真姫「希!!!落ち着きなさいよぉ!!!」

真姫はそこから後ずさる。

希はもうインゴットを持って体制を立て直していた。

希「死ねぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!」

真姫は後ろに無意識に下がるがインゴットの山に腰が当たってしまう。


真姫「・・・いやああああ!!」

希「っ・・・あ!!」

女子の手でインゴットを持ち上げるのキツイのだろう。

希「あっ!」

希の振り上げたインゴットは狙いが外れてインゴットの山に当たる。

希「あっ・・・!」

希は衝撃でインゴットを落としてしまう。

真姫はそれを奪おうとしたが予想以上に重くてよろけてしまった。

希「あああああああ!!!」

希もそのインゴットを奪おうとする。

二人はそのインゴットを奪おうとへし合いになった。

希「・・・くっ・・・!」

真姫「希・・・!あっっ!」

力負けをしたのは真姫だった。

インゴットは真姫の手を離れ、希の手に渡す。

しかし、引っ張る力が強すぎたのか、インゴットが重かったのもあるのだろう。

引っ張る力とインゴットの重力で、インゴットを持った手は希の意志とは離れて180度回転してしまう。

まるで、観覧車の様に、そしてスタートからゴールまで移動し終わった時、

希の手はインゴットと地面の板挟みになった。

希「ああああああああ!!!!!!痛い痛い!!!!!あああああ!!!!」

・・・真姫は必至だった。

家を守らなければいけないという思い。

その為にはこのインゴットを守らなければという思い。

それらを掛け合わせた時、生まれた思いは・・・。

今こうして、二人っきりでいる間に・・・

なんとか・・・

ナントカシナケレバ・・・・

・・・後は、全てがおかしな光景。

真姫の視覚はぐにゃりと歪み、真姫の視界は水面越しに覗く様な気分になっていた。

そしてそれは触覚、聴覚などの五感もそうだった。

水面越しから見えるその世界からは、自分の手がインゴットを掴んで

希の頭に思いっきり、振り下ろしている所だった。

真姫は子供のころに、せっかく組み立てた積み木のお城を壊してしまった事を思い出した。

ブンッ!!

グシャ!!!

・・・あの頃は幸せだったなぁ・・・ママもパパもいっぱい遊んでくれたっけ。

あの頃はママみたいなお医者さんになりたいとか思っていたっけ。

それがどうしてこんな事になってしまったんだろう・・・。

ブンッ!!

グシャ!!!

私はお医者さんになって人の命を救う事が夢だったはず・・・。

でも今私がしているのは・・・。

ブンッ!!

グシャアッ!!

水面から帰ってきた時には、

両の手で数えきれないほど希をインゴットで殴っていた。

希の頭は血まみれで、目はぎろりと上を向き、口からは血と涎とも泡ともつかない物を

たらし始めている。

真姫「はぁ・・・はぁ・・・。」

真姫は最後にインゴットを振り上げる。

そして、角を、よーく、よーく狙いを定めて・・・

振り下げた。

グシャアッ!!!

そして、至った。

真姫「・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

希の体はピクリとも動かない。

真姫は人を殺した経験はもちろん無い。

しかし、この一撃で確実に殺した、そんな予感がした。

真姫「・・・、そうだ、脈を・・・。」

真姫は脈を計り、目を見る。

・・・脈は無く、目は焦点が合っていなかった。

真姫「はぁ・・・終わった。
っ・・おぷ!!!」

・・・殺人を犯した実感が沸いてくる。

真姫は罪悪感と、初めて見る人の死体に、恐怖を感じた。

何よりその死体はメンバーの希で、誰が殺したのかを改めて理解して、真姫は嘔吐を我慢できなかった。

真姫「お、おえええええええええええええ!!!!」

正当防衛だったのだ。

そう真姫は自己弁護をする。

やらなければやられていた。

自分は家を、家族を守らなければいけない。

そうだ、これは当然の事。

・・・しかし、例え正当防衛だと認められようと、真姫が親友の一人を殴り殺してしまった事に代わりは無い・・・。

希はそこに、死んでいた。

真姫はしばらくそこでうずくまって嘔吐していたが、

真姫「・・・。よし。」

真姫は覚悟を決める。

もう殺してしまったのだ。後悔しても始まらない。

なら後悔をする必要はない。

希が死んで真姫が生きているならば、これからも生きてやる。

その為にも希の死体を隠さなければいけない。

真姫「・・・どうしよう。」

希がいなくなった事はいずれ騒ぎになる。

希の死体はこの部屋に隠しておけば、メンバーには碑文さえ解かれなけば分かりはしないだろう。

しかし、警察はどうだろうか。

・・・どこかで聞いた事がある。

警察は失踪事件となれば何百人もが捜査するとかなんとか・・・。

この島は狭い。

何かの拍子で見つかってしまうかも・・・?

真姫「海に流してしまえば、事故として処理できる・・・か?」

しかし、今例えば沖にポイと投げても波に流されて島についてしまうだろう。

やるならば迎えの船が来てから、海のど真ん中から捨てなくては・・・。

とりあえず、それまでする事は特にない・・・。

それより今は、この部屋に繋がる仕掛けを解かなくては・・・。

真姫は地上に上がり、仕掛けを解こうと地上に続く階段に・・・、

ゴトッ

真姫「・・・!?誰!?」

何か音がしたので真姫はすぐにその音の方向に向かう。

音は地上に続く階段から洩れた。

真姫「・・・、誰もいないわね。」

真姫は暫くその場で立ち尽くす。

・・・しかし音は聞こえてこなかった。

真姫は気のせいだと思うことにして、地上に出る。

そして、碑文のローマ字、LORDNの順にボタンを押すと、

ゴゴゴ・・・石像の首が元に戻った。

これで部屋も見つからないだろう。

真姫は書庫室に隠し部屋が出ていないか確認した後、

静かに部屋に戻るのだった。

そんな静けさの戻ったホールに、正確には石碑に後ろに隠れている一人の少女がいた。

海未「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

海未は真姫がホールから出て行ったを見て、石碑の後ろからやっと息を上げた。

海未も部屋に戻ってから眠れなくて碑文に挑戦し、自分で解いたのだ。

そして石碑のあるホールに行くと、石像の首が動いているのを発見し、後を着いていくと

インゴットの部屋に着いた、という訳だ。

海未は一部始終を全て見ていた。


当然希が襲われている所も、最終的には殺された所も、全てだ。

何故助けに行かなかったのか、それは海未だけが知る事・・・。

海未「・・・オエ・・・!」

海未は希の死体を思い出して、嘔吐する。

だが同時に笑ってもいた。

人は嘔吐しながら笑うことも出来るんだと海未は知る。

海未「これは使えるかもしれません。」

海未はニヤリと笑いながら再び碑文の仕掛けを発動させる。

そして、隠し部屋に行くと、インゴットの山・・・では無く注目すべきはその真後ろにある、 大きな時計の下にあるテーブルだ。

このテーブルはインゴットの山を真正面から見たら、ちょうど死角になる位置に置いてある。

真姫はインゴットを見てすぐにインゴットに近づいた事、すぐに希に襲われた事もあって、

このテーブルの存在に気付かなかったのだ。

無理も無いだろう。

誰だって、自分の身長より大きいインゴットを見たら、一瞬で虜になる・・・。

しかし、海未は入口から隠れてじっと見ていたのでこの部屋の全体を見ることができた。

海未はそのテーブルの上にある封筒を手に取り、封を切って中を見る。

中には通帳と、印鑑、そして手紙があった。

書かれたのが随分昔なのか、少し黄ばんでいて、達筆だったが頭の良い海未なら造作も無く簡単に読む事ができた。

海未「学校の勉強も、捨てた物じゃないですね。」

手紙の半分は遺産を見つけた事についての取り決めと家族に対しての内容。

遺産はこの島にいる者に平等に配る事を書いてある。

そして、下半分は・・・。

海未「これは・・・本当の事なんですか・・・!?」

海未は上のデカイ時計を見る。

そして、その手紙をビリビリに破く。

この手紙は自分だけが知っていた方が良い。

そして、海未の中で組みあがる、殺人計画。

それを思いついた時、殺人鬼は生まれたのだった。

3:30 にこの部屋

コンコン、

コンコン!

海未はにこの部屋をノックする。

数回ノックすると、にこはパックをして、出てきた。

にこ「なによぉ・・・こんな夜中に・・・、あら海未、珍しいわね。」

海未「にこ・・・。大事な話があります。
中に入れてもらえませんか?」

にこは最初、凛や穂乃果だったら眠いので突き返そうと思っていた。

しかし、来たのは海未。

それに何やら真剣な顔をしていた。

にこ「・・・まぁ入りなさいよ。」

海未「ありがとうございます。」

にこはベッドに腰掛ける様に合図する。

海未はベッドに座り、にこはイスに座った。

にこ「・・・んで?何よ?つまらない話なら明日に・・・。」

海未「今、碑文を解いて黄金を発見しました。

にこ「・・・は?」

にこは最初海未に言っている意味が分からなかった。

しかし、それを理解した時、

にこ「・・・マジなの?」

海未「はい、大マジです。」

にこ「そっかぁ・・いいなぁ・・・あんたと言い、真姫といい、お金ってある人にはとことんあるけど、

無い人には本当に無いんだねぇ・・・、そっかぁ・・・。」

海未「真姫、私はあなたの事情を知っています。
あなたは家族の事情に腐らずにあんな事をしてまで家族を支えてきました。
そんなあなたを、私は助けられるなら助けたいと思っています。
これは同情ではありません。
あなたの仲間として言ったことです。」
にこ「海未・・・、本当に・・・いいの?」

海未「はい、にこ、あなたは頑張り屋です。
あんな事があったにも関わらず、妹たちのために働いて、働いて。
私はそんなあなたに何か良いことがあってもいいと思うんです。
私がそれを、してあげたい。」

にこ「・・・海未、私はこの事をあなたにだけしか相談していない。
ううん。出来なかった。
これを知ったら、メンバーやファンは、アイドルとして私を汚いと言うだろうと思ったから・・・。」

海未はにこを抱きしめる。

海未「汚いだなんて、少なくとも私は思いませんよ。
にこはキレイです。
キレイな心の持ち主です。
じゃなければ、あんな事はできませんよ・・・。」

にこ「海未・・・、じゃあ私はもらっても・・・・。いいのね!?」

海未「はい・・・と言いたい所なんですが・・・、事情がありまして・・・、

聞いてくれますか・・・?にこ?」

にこ「・・・何でも言って?」

海未「実はですね・・・。」

海未はにこに事の顛末を話した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^

にこ「ちょっと・・・!それ本当なの!?」

海未「えぇ、間違いありません。
これを見てください。」

海未は携帯を真姫に見せる。

にこ「こ、これは・・・。」

そこには、真姫が希を殺している瞬間が写し出されていた。

にこ「ひどい・・・、ひどすぎる・・・。」

にこ「でも、海未が言った事が本当なら、遺産は真姫の物になるはずじゃ・・・?」

海未はにこに、手紙の内容は言わなかった。

遺産はこの島にいる者に分配する事。

これを教えたら、にこはこれから言うことに協力しないだろう。

にこの協力は海未の計画にはどうしても必要だった。

海未「にこ・・・、この島の皆を・・・皆殺しにしませんか?」

にこ視点

海未「にこ・・・この島の皆を・・・皆殺しにしませんか?」

海未は私に向かってとんでもない事を言い出した。

え?何?ミナゴロシ?ミナゴロシってあの・・・?

私の頭で必死に他の言葉に変換してみる。

どうやっても『皆殺し』としか変換できなかった。

にこ「あ、あはは・・・な、何を言っているのよ?海未。

何で私がそんな犯罪なんて・・・。」

海未「これを見てください。
隠し部屋のテーブルに置いてありました。」

海未は私に通帳を見せる。

中を見ると・・・ひい、ふう、み、・・・

にこ「これ・・・5千万も入っているじゃない!!」

海未「はい、印鑑も入っていました。
これで、私達は5千万を得た訳です。」

にこ「で、でもこれ真姫の・・・祖父の・・・。」

海未「これは碑文を解読した者に対する正当報酬ですよ。
つまり、私ももらう資格があります。」

にこ「だ、だったら正々堂々ともらえば・・・。」

海未「えぇ、真姫が希を殺してなければ主張していましたね。」

にこ「え・・・?」

海未「良いですか?希が行方不明になる事はいずれ分かります。
無人島で11人の中の1人が失踪するなんて大事件です。
明日一日私達で探して、いなければ警察に通報しなくてはいけません。
それは私には止められない。
今は台風で警察も明日の昼までは来れないでしょう。
しかし、台風が止めば朝一で警察はやってくる。
その時、どうなるか分かりますか?」

海未は私に鬼気迫りながら話してくる。

しかし、分かりやすく話してくれたおかげで何となく事に深刻さは理解できた。

にこ「ど、どうなるって言うのよ・・・?」

海未「私達、逮捕されてしまうかもしれませんよ?」

にこ「た、逮捕!?なんでにこ達が!?」

海未「今希の死体は隠し部屋にあります。
しかし警察ならばその程度、簡単に見つけるでしょう。
日本の警察は優秀ですからね、その後、当然私達に容疑は降りかかるでしょう。
だって、警察からしたら、状況がまるで分からないのですから。
真姫が直接殺した事は判明すると思います。
しかし、私達が間接的に関わったかどうかは分かりません。
もしかしたら、何かの間違いで逮捕されるかもしれませんよ。
そして、何より今回は状況が少し特殊です。
にこは沖縄に隠されたお宝の都市伝説の話を知っていますか?」

にこ「・・・?いや、知らないわね。」

海未「簡単に言うと、沖縄に隠されたインゴットを県が狙っていると言う話です。
私も都市伝説と思っていましたが、これを見たら本当の事としか思えません。
警察が来れば、当然インゴットの事はばれてしまい、この通帳の事もばれるでしょう。
その時に県があらゆる手を使ってインゴットと、この通帳を奪いにくるかもしれないんですよ!」

にこ「そ、そんな事・・・。」

海未「私達個人では、県というでかい組織には勝てません。
それに、犯罪者の財産なんです。
警察ならばどうとでも出来るんじゃないですか?
そうなれば、この通帳も、名義は真姫の祖父ですから当然没収されるでしょうね。」

にこ「そんなの、絶対にいやよ!!!これは私達の物よ!!」
せっかくあんな事を、もうしなくて済むと思ったのに・・・絶対にいやよ!!

海未「そうですよね?私も、にこには幸せになってほしいと思っています。
でも警察がきたらそれも叶わない。」

にこ「ど、どうにかならないの!!?それは!」

自分でも焦る感情が抑えきれない。

海未が何故かニヤリと笑った気がした。

海未「そこで、さっき言った提案です、皆を、皆殺しにすれば、良いんですよ。」

にこ「はぁ・・・!?そんな事をすれば、ますます警察が来るじゃない!
それに皆殺しって事は私達以外の全員でしょ!?そんなの犯人って自白している様なものじゃ・・・。」

海未「それが、あるんです、皆殺しにすれば、私達が逮捕されない方法が。

この島の秘密を、お話しします。」

それから海未はその方法を語ってくれた。

それは、単純明快な方法。

私は必至にその案の欠点を探そうとした。

しかし、見つからない!!!

単純な故に・・・見つからない!!

海未「・・・というのが私の計画です、殺人は、私が行います。

しかし、ことり達も馬鹿ではありません。
私一人では無理でしょう、なので、にこには、その手伝いをしてほしいのです。」

にこ「・・・わ、私、人殺しなんて・・・そんな・・・。」

絶対無理よ無理よ!!!でもそれをやらないと・・・通帳は手に入らない。

手に入らないなら・・・あれをしなくちゃいけない!! それだけは絶対に・・・嫌だ!

私の体が震えるのを感じる。

海未はそれを見たのか・・・。

にこ「・・・あっ」

海未が、身体を抱きしめてくれた。

海未「にこ、ここで頑張らなければ、お金は手に入らないんです。

怖いのも分かります。大丈夫です。全て私がやりますから。

あなたは、ちょっと、細工をしてくれればいいんです。」

にこ「さ、細工・・・?」

海未「そうです、後は私がやります。
大丈夫、必ず上手くいきます。
二人で幸せに、なりましょう。にこ。」

海未は頭を撫でながら、耳元で言う。

そうだ。ここでさえ頑張れば・・・!!

もう、妹や母さんに苦労をさせないで食べさせてあげられる!

これは、やるしか・・・ないんだ!!

にこ「分かった、やるよ。」

そう決めた時、自分の中で驚く程冷静になる。

にこ「何をやれば良い?教えて。海未」

海未の顔は見えない、でも海未は、笑った気がした。

海未「取りあえず、貸してほしい物があるんですが・・・。」

▽月▽日 ~音野木坂スクールアイドル連続殺人事件から2か月前の話~

男A「ふぅ~気持ちよかったぜぇ~。世の中生きてりゃいいことあるってのは本当だなオイ!」

男B「そうっすねぇ先輩!まさか現役JKとヤれるなんて思わなかったっすよ!

しかもラブライブ優勝チームの一人と!」

男A「いくら優勝しても所詮はスクールアイドル。
本当のアイドルでもないから金も出ない。
精々ペラ紙一枚がもらえるだけだ。」

男B「またヤりたいっすわぁ!次もお願いしますよ!」

男A「大丈夫またヤれるさ。何せ、こいつの家庭じゃ借金は他から借りでもしないと返せないしな。

借金を返せるような裕福な親族もいない。精々利子を返すので精一杯さ。」

男B「本当なら借金の返済期日はとっくに過ぎている。にも関わらず、

こうして待ってやっている俺たちはなんて優しいんだろうな!」

男A「ま、待ってやっている代わりにちょいと『副業』させてはいるけどな!」
         
「「ぎゃはははははははははははは!」」

男達の下衆な笑い声がこだまする。それは、人の皮を脱いで代わりに欲望の皮を纏った獣のようだった。

??「・・・。」
男B「じゃ、そういう訳で、来週もお伺いに行きますわ。ちゃんとミミを揃えて返してくださいよ?借金っ!」

男A「ま、どーしても?どーしても返せないのであればぁ・・・?

今回のような『副業』でもいいですよ?クククッ!」

??「・・・。早く消えて。」

男B「おーこわぁ。
じゃ、これにて失礼しますわ、また来週。」

男A「失礼しますね。あ、この事をしゃべったら・・・わかりますよね?」

男A「矢沢にこさん。」
キイイイイイイイイイイイイイイイドン!

男B「そういえば、明日の借金の取り立て先の娘さんもスクールアイドルでしたよね?

男A「そういえばそうだな、確か名前は東條・・・」

男達がある一室から出ると、そこには少女が一人残された。

その少女は一言でいえば・・おかしかった。

少女は上履きを履いていた。ここは学校ではない。

少女はランドセルを背負っていた。

その少女はランドセルを背負う年齢ではない。繰り返すがここは学校ではない。

しかしその少女はそれ以外は何もつけていなかった。

いや、着ていなかったと言った方が正しいだろう。

学校でもないのにランドセルや上履きを履いているのは異常だったし、それ以外は何も

着ていないのも異常だった。そして男二人と一室でその姿でいたことも異常だったし、

ここがどこで、どのようないかがわしい事が行われていたのかを想像できたとしても、

それは全てが異常という言葉で示されるしかなかった。

にこ「・・・やっと行ったわね。あいつら、人をおもちゃか何かかと思っているのかしら。

仮にもスクールアイドルのにこちゃんとヤれるってのに・・・感謝しなさいよ。」

にこ「まったく・・・もう・・・っっっっ!うわあああああああああああああああああ!!!」

にこは男の足音が消えるのを知ると、そのまま情事後のベッドにへたり込み、

シーツを握りしめながら泣くのだった。

・・・よくある話だ。

にこの父は誰が見てもパチンコとアルコール中毒だった。

毎晩深夜にお金をスッカラカンにして酒臭い息を吐きながら家に帰ってくる。

母が朝から夜まで働いたナケナシのお金も父はパチンコと酒に使ってしまう。

父は娘たちに暴力を振るうこともあった。にこ達は耐えた。

ずっと耐えながら生きてきた。

そんなある日、前触れも何もなく父が死んだ。

どうやら飲酒運転の末の事故だったらしい。

アル中の父には相応しい死に方だ。

にこはそんな父が死んで喜んだ。

この奇跡に感謝した。

・・・だが拾う神があれば捨てる神もあるというものだ。

父が死に、葬儀を適当に済ませ、これから母と妹達と一緒に家族で助け合っていこうとした矢先。

・・・借金取りが現れた。

父は酒とパチンコで借金をしていたのだ。

父は借金を返すために借金をし・・・そんな自転車操業で借金はブクブクと、まさに肥えてしまっていた。

その額は軽く書類を見たにこでもにこ母が朝から晩まで働いてやっと利息の半分が返せる事が解る額だった。

書類にはトイチとかよく分からない単語があったが詳しい事はにこにはわからない。

にこ母「お願いします!!!後少しだけ!!お願いします!!」

それから地獄は始まった。

毎晩遅い時間に電話がかかってきたり、頼んでもいない出前がかかってきたり、

ドアの向こうから怒号が聞こえてきたり。

それはにこ達の精神を少しずつ蝕んでいった。

まず最初に、にこ母が倒れてしまった。

疲労とストレスによる胃潰瘍。

命に別状はないが医療費でまた借金は増えてしまった。

男A「どうしようかねぇ・・・。あ、ねぇにこちゃん。にこちゃんってスクールアイドルなんだよね?」

男B「お母様はしばらくお金を返す事が出来ない。でも借金は増えていく。じゃあ、どうしようねぇ?」

にこ「何が・・・言いたいの?」

男A「社会人って言うのはね?毎日毎日会社で暴言を吐かれてストレスを貯めながら仕事をしている訳ですよ。

それでね、そのストレスを癒すには、甘くて刺激的な『癒し』が必要なんだ。」

男たちの顔つきが変わる。それは獣と表現しても良いものだった。

にこ「私に・・・体を売れって言いたいの?」

男A「いやいやとんでもない!それじゃ売春で犯罪じゃないか!俺たちは犯罪はしないよ。」

闇金な時点で犯罪じゃないか!とにこは思った。

男A「ただ、ただね?俺たちは機械じゃない。

このまま君の家族が借金を返してくれないと俺たちは上に叱られてストレスが溜まり続ける。
そうなると、俺たちもストレスで何をしでかすか、わからなくなっちゃうなぁ!」

男B「確か・・・君はスクールアイドルをやっていたよね・・・?どうしようかなぁ。」

男はにこの体を見ながら

男A「ヤっちまうかもなぁ?」

にこ「やめて!!!メンバーは関係ないでしょ!」

男B「その通りさ。でもねぇ・・・?君の家族はお金がないでしょ?
だから俺たちはストレスを溜めちゃうなぁ・・・困ったなあ!」

男A「『癒し』さえあればねぇ・・・。

まぁ・・・君がしてくれないのであれば、『他』で発散するしかないよねぇ・・・?」

にこ「・・・っ!」

にこが相手をしてくれなければ、こいつらは他のメンバーを襲うと言っているのだ。

男B「そもそも俺たちがストレスが溜まる原因は君の家庭が借金はおろか、利子も返してくれないからなんだよ?」

男A「君はただ俺たちと一室に入って寝転がっていればいいんだ。
それだけで『癒し』になるんだよ。」

にこの頭の中は恐怖とメンバーの事でいっぱいだった。

こいつらが寝転がっているにこに何をするかは明白だ。
だがしかし・・・。

メンバーに危害を加えさせる訳にも・・・。

にこ「・・・とに・・・。」

男B「ん?聞こえないなぁ?」

にこ「本当に私が・・・『癒し』になればメンバーには何も起きないのね?」

男A「あぁ・・・。そうだねぇ。『癒し』があれば俺たちも生きていけるな。」

にこ「・・・わかったわ。それでいい。」

男B「契約成立・・・だな。
じゃあ、さっそく今週中の『癒し』をもらおうかな。」

ごめんね皆、何で謝っているのかは知らないけれど、何となく謝りたくなったんだ。

特になんでか真姫ちゃんの顔が浮かんできちゃった。なんでだろ。

はぁ・・・なんか憧れていた初めてと違うんだなぁ。

でも皆を守れると思えば・・・そもそも私の家族が原因なんだから責任を取るなら私がしないとね。

母さんが入院している今、私が家族を支えないといけないし・・・。

にっこにっこにー!大丈夫!私は大丈夫!こんなの全然怖くない!

にこ「・・・グスッ・・・グスッ・・・う、うう。

・・・・・・・・・・・・いたい!いっ痛いっ!」

にこ「・・・・・・・・・・痛い痛い痛い痛いっ!!!やめてやめてやめえぇぇぇぇえええええ!!!」

男A「お、処女かぁ!こいつはラッキーだぜぇ!」

男B「先輩羨ましいっすわぁ、俺にも後でさせてくださいね!」
ギシギシッ

    ギシギシギシ

        ・・・・・。

体中が痛い。

なんでこんな事をしているんだろう。

焼けた棒を体に突っ込まれたらこうなるのかな。

後どれくらいで終わるんだろう。

後どれくらい我慢していればいいんだろう。

心が壊れそうだよ。

真姫ちゃん。

・・・・・・・・・

男A「ふーっきもちよかったぁ!やっぱ初物JKは最高っすわぁ!」

男B「そうっすねぇ!!写真もばっちり撮りましたよ!

あ、学生書も撮っておかないとっと・・・。財布借りるねぇ~。」

え・・・?写真・・・?何それ聞いてない・・・。

男A「・・・写真?っああ。これはね。万が一ばれた時の予防線だよ。

なーに大丈夫大丈夫。君がこの事を誰にも言わなければこれは誰にも見せないよ。」

男B「でもこの事を誰かに言ったら・・・わかるよねぇ・・・?

君はおろか、君の所属していたメンバーにまで迷惑がかかるよ?」

にこ「あっ・・・あっ・・・。」

男A「ほら、ちょっと前にあった三○市の事件の女の子のハメ撮り画像も流出して、
ばらまかれたのを知ってるかい? 今はネットにばらまかれたら簡単に流出しちゃうしなぁ・・・。
君のその『かわいい』画像が流出されたらどうなるだろうね?
すぐに何処の誰か判っちゃうだろうなぁ。
ラブライブ優勝チームならなおさらだ。
そして君のメンバーは驚くだろうねぇ・・・。
それだけなら・・・いいんだけどね?」

にこ「い、いや・・・。お願い。誰にも言わないから!お願い!」

男B「もちろんにこちゃんを信じているよ。
君が誰にも言わなければ俺たちは誰にも見せるつもりはないよ。」

男A「ま、そういうわけで。よろしくお願いしますよ!にこちゃん。」

にこ「い、いやああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

にこはこの日、運命の袋小路に巻き込まれた事を知った。

それからも、これが続いた。

男たちの要求はとどまる事を知らない。

最初は『普通』の要求でもだんだんと『特別』な要求になっていった。

それでもにこはこれで家族が平穏な生活を出来るならと耐えた。

しかし、時が経つにつれ、男たちがにこを呼ぶ回数は増えて行った。

それは今やにこのささやかな平穏を犯し始めた。

平穏な日常を守るために身を捧げたはずの行為なはずなのに

・・・今はそれによって平穏を犯される。

にこは男たちに何故、体を捧げているのか、その意味がわからなくなっていった。

にこには相談できる友達はいなかった。

いや、親友は昔と違って沢山できた。

でもだからこそ、親友だからこそ言えない事もある。

誰が親友に、自分が家族の借金のツケを体で払っていると言えるのだろうか・・・。

また、言ったからってどうなるものでもない・・・。

27:30 2階 リビング

海未視点

にこは、私の計画に乗ってくれました。

もちろんそれは、こちら側が誘導させたのですが・・・。

普通殺人の共犯になってくれ、なんて余程追い詰められなければ無理でしょう。

にこは借金取りによってもう、壊れる寸前だった事は相談にのっていた私が一番よく知っています。

にこにはまず、この後起こす計画を説明し、

真姫に送り主のアドレスが解らない様に私の撮った画像を載せてメールを打つ様に頼みました。

また、密室を作る準備をお願いしました。

別にこれくらい私でも出来ますが、行動を起こさせる事が大事なのです。

そして私は、先ほど電話ででことりを呼び出しました。

多分もうじき来・・・、

ことり「海未ちゃん、どうしたの?電話じゃ言えない話って。」

海未「ええ、わざわざ来てくれてありがとうことり、その・・・聞きたい事があるんです。」

ことり「聞きたい事?何かな?」

ことり・・・あなたは私にとって二番目に出来た友達・・・、ずっと、親友だと思っていましたよ・・・。

まだあなたはしらばっくれるんですね。

海未「私、聞いてしまったんです。
あなたが穂乃果に告白してしまった所を。」

ことり「・・・!」

海未「何故ですか・・・?ことり、私達、告白は一緒にって約束したじゃないですか。
どうして、抜け駆けなんて・・・。」

ことり「・・・私、メンバーに相談していたの、穂乃果ちゃんが、女の子として好きって。」

海未「・・・。」

ことり「それは、世間から見たら許されない事、してはいけない事。
私は悩んでメンバーに相談した、でも皆は受け入れてくれたの。
それで・・・今日メンバーには気を聞かせてもらって・・・その。」

海未「ことり、答えになっていませんよ!私が知りたかったのは、どうして抜け駆けをしてかってk」

ことり「だって、それなら海未ちゃんを選ぶに決まっているんだもん!!!」

海未「・・・・。」

ことり「私と海未ちゃんなら、誰が見たって海未ちゃんを選ぶ。

海未ちゃんはかっこよくて、優しくて、何でもできて・・・。

順位でも平均で見れば負けているし・・・。

でもそんな私を、穂乃果ちゃんは私も好きって言ってくれたの!

そんな私が良いって言ってくれたの!」

海未「ことり・・・。」

ことり「順位も、センターも、何もかもあなたにあげる。
でも、穂乃果ちゃんだけは、絶対に渡せない!渡さない!」

ことりははっきりとした意志で海未に伝える。

海未はそれを黙って聞いていた。

ことり「だからもう、悪いけれど、私達の間に口を挟まない・・・きゃっ!」

ドンッ!

ことりは海未に引っ張られてテーブルに叩きつけられる。

そして、ことりの上に覆いかぶさると、海未は後ろポケットに隠し持っていたナイフを何のためらいも無く左肩に刺した。

ことり「くっああああああああああ!!!!」

ことりのパジャマが赤く染まる。

海未はナイフを斜めに抜く。

苦痛を与える抜き方だ。

海未「さっきから黙って聞いていればことり、よくもまぁそんな事がしゃあしゃあと言える物ですね。
先に穂乃果を好きになったのは私なんですよ?あなたもそれを応援してくださったじゃないですか?
なのに、あなたが穂乃果を好きになったと言うから、本来ならば、私が先に告白する所を、
一緒にって言ってあげたんじゃないですか!!その恩を忘れて、あなたって人は・・・!!」

ことり「確かに・・・一時は海未ちゃんを応援したよ。
でも海未ちゃんは全然穂乃果ちゃんに思いを伝えなかった。
さっき、本来ならば私が先に告白する所を・・・って言っていたけど!
本当は一緒じゃなきゃ告白できないからだよね!?」

海未「な・・・なっ!」

ことり「この恋愛処女!!海未ちゃんはただの臆病者だよ!
海未ちゃんが先に告白?ちゃんちゃらおかしいよ!
そんな事無理だよ無理無理!だって、恋愛映画を見るのも目を背けちゃうんだもんね!
恋愛は不謹慎なんでしょ!?あなたは穂乃果ちゃんが好きって言っているけど!
実際は自分を気にかけてくれる人なら誰でもいいんでしょ!?
所詮独りよがりの恋愛なんだよ!そんな人に、穂乃果ちゃんは任せられない!
穂乃果ちゃんは私が―!」

海未「こ、ことりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

ドンッ!!!!!

ナイフは右目に向かって振り下ろされる。

ことり「あっあっああああああああああ!!ぎゃああああああああ!!!」

海未「あなたに、私の、何が、分かるって!言うんですか!!

恋愛処女!?臆病者!?えぇ、その通りですよ!私にはメンバーの様に、
あんなに明るく振るまえない!私はあなたと比べて友達も少ない!
親友も、あなた達くらいです!
その親友を!好きになってしまった気持ちが分かりますか!?
あなたは私に勝てないと言っていましたが、 その言葉、そっくりそのまま返しますよ!
私と、ことりだったら!間違いなく穂乃果はことりを選ぶだろうと!
ずっと思っていますよ!!でも!それでも!穂乃果を愛しているんです!だから、だから・・・。」

ぐしゃっ!

ぐしゃっ!

ぐしゃ!!

ぐしゃあ!!!!

海未「あっ・・・。」

海未がことりを見た時、ことりの顔は見るも無残な顔になっていた。

顔の中心から左側はもう見る影も無い程穴が開いていた。

血は飛び散り眼球のあった場所と、口からは血があふれている。

海未はことりの体から、静かに離れる。

ボト・・・ボト・・・

静かにどいたはずなのに、自分の体から、ナイフから血が垂れて音がする。

海未「こ、ことり・・・。」

ことりはもちろん返事を返さない。

たとえ生きていても返事は出来ないだろう。

何故なら、もう舌はおろか、声帯も潰れているだろうから・・・。

海未「お、おぇぇぇぇぇ・・・。」

海未は初めての殺人という行為に嘔吐する。

自分の中の良心の呵責が悲鳴を上げているのだ。

海未「はぁ・・・はぁ・・・。

これに後何回耐えなければいけないのか・・・。」

2,3回ほど吐いた後、海未は口を拭って携帯を取る。

海未「もしもし・・・、にこ、こちらは終わりました。

そっちは・・・、はい、終わりましたか、了解です。

じゃあ後は知らないふりをして今後の指示を待ってください、では。」

海未は電話を切る。

真姫にメールを送り、希の死体を海未の部屋に誰にも気づかれずに運ぶ事に成功したようだ。

海未は自室の鍵と、希のポッケに入っていた希の鍵、そして真姫から昼に貸してもらい、そのままだった

2階の鍵を持っている。

海未はことりの遺体のポッケをまさぐる。

海未「・・・ありました。」

海未はことりの部屋の鍵を手に入れる。

後はこの部屋と海未の部屋、ことりの部屋、希の部屋に違う鍵を置いて海未が死んだふりをすれば 密室殺人は完成する。

何故密室にする必要があるのか。

難解にすればするほど、内部は混乱し、乱れを生む。

それだけで十分だ。

真姫視点 10:08

その日、真姫の世界はある一件のメールから地獄に変わった。

真姫「なによ・・・これは!!!」

誰から送られてきたのか、とにかく知らないメールアドレスから送られてきたメール。

中を開けるとそこには、昨日真姫が希を殺した瞬間を撮った画像が写っていた。

真姫「・・・どういう事・・・?」

他にメールに何か書いていないかを確認する。

そこにはこう書いてあった。

『今日一日、できるだけメンバーと別行動をしろ』

真姫「・・・何を・・・?いや、それより・・・。」

昨日の出来事がばれた事の方が一大事だ。

しかも、この別荘にいるのはメンバーだけだ。

・・・メンバーの中にこの事を知っている者がいるという事!

真姫にとっては、その事が重要だった。

真姫「いや、待てよ・・・?」

真姫は考える

。警察に通報するなら、こんなメールを送らずにとっとと通報すればいい話。

しかし、メールを送ってきたという事は警察に通報する気は無いんじゃ・・・。

真姫「・・・。どうする?」

真姫は必死に考える。

しかし、このメールだけじゃ向こうは何を狙っているのか・・・。

真姫「・・・うぷっ。」

思わず昨日の事を思い出してしまう。

気分は最悪だった。

コンコン

真姫「!?っ・・・。」

それは、ドアをノックする音だった。

真姫「だ、誰!?」

にこ「にこだよー、一緒にリビングいこーよ。」

真姫「に、にこちゃん!?ちょっと待ってて!」

真姫は急いで支度を整える。

ドアを開けるとにこは腕を組みながら待っていた。

にこ「あんたねーこの世界一アイドルのにこちゃんを・・・真姫ちゃん大丈夫!?顔が真っ青だよ!!」

真姫「え・・・?」

真姫は鏡を見る。とてもファンには見せられない、そんな蒼白な顔をしていた。

真姫「・・・ゴメン、大丈夫よ。リビングに行きましょう?」

にこ「・・・分かった、でも調子悪いなら早く言いなさいよ。
倒れられたら困るわ。」

真姫「うん、ありがとうにこちゃん。その時はちゃんと言うね。」

にこ視点 10:45 希の部屋。

希の部屋では海未が死んだフリをしていた。

真姫「嘘・・・嘘よ・・・!

なんで、どうして・・・!」

穂乃果「いやァ!!どうしてよぉ!!海未ちゃんが何をしたの!?いやああ!!」

海未は口から泡を出して、顔面を蒼白にしている。

芝居と分かっている私でも信じられないのに、知らない人が見たら誰でも死んでいると思うだろう。

真姫「もう何がなんだかわからない・・・。どういうこと?何で?どうして?」

真姫ちゃんは相当混乱していた。

心中お察しするわよ。

当たり前よね。

自分の殺した希が海未の部屋にいて、他に二人も殺されているんだから。

今日のメールも相まって、パニックになっているんじゃないかしら?

亜里沙「・・・。」

部屋内が悲鳴でいっぱいの時、ふと亜里沙が海未に近づく。

そして、亜里沙は海未の手首に手をあてた。

にこ「・・・!」

マズイ!!ドラマで見た事があるけど、あれは確か脈を計るやつ・・・!

ばれる!!!

亜里沙「・・・。」

にこ「ちょっと亜里沙!?ダメでしょ!」

私は注意する。

でも、とっさの事だったので反応が遅れてしまった。

・・・でも亜里沙は特に疑問に思っていないみたい。

ばれていないのかしら・・・?

亜里沙「・・・。」

話を変えようと、ことりの鍵を指して、

にこ「また鍵がおいてあったわ。多分ことりの鍵よね・・・?」

真姫「えぇ・・・そうね。」

なんとか話題は鍵の話にシフトしてくれた。

でもなんで亜里沙に脈を計られても大丈夫だったんだろう・・・?

昨日貸したアレを使ったのかな・・・・?

でもあれをどう使ったんだろう。

花陽「ん・・・?あれは・・・?」

部屋をでる時に後ろにいた花陽が声を上げる。

え・・・?何?

私は部屋を見る。

しかし、部屋が暗いせいか、よく見えない。

花陽「あれは・・・。何でここに・・・?」

凛「かよちんいくにゃ~。」

凛に急かされて花陽は部屋をでた。

何だったんだろう。

ことりの部屋には私が書いた手紙が置いてある。

海未から事情を聞いていたので、それに関する事を書いた。

『悔い改めろ。この犯罪者。金を払えば済むと思うな。』

まァこんなもんかしら?

真姫ちゃんそうとうショック受けているし・・・。

これなら昨日海未から言われた事を実行しやすいわね。

12:00 3階 リビング

にこ「警察はどうだった?絵里・・・?」

絵里「とりあえずどこか安全な場所に皆でいるように言われたわ。
しばらくはここで籠城ね。」

その後、私達は三階のリビングに籠城する事になった。

途中で穂乃果がもう一度海未の遺体を見たいと言ってきたから危なかったわ。

でもこの後はどうするのかしら・・・?

今は花陽が今回の事件は密室なのではないか?と話している。

良かった。

海未からは私にこの事件をより複雑にするように、そして真姫の信用を得る様に言われた。

事件を複雑にするのは分かるけど、何で真姫ちゃんの信用を・・・?

まぁ海未だから何か考えがあるんでしょ。

とりあえずこの事件が密室な事を言えば複雑になると思っていたんだけど・・・。

花陽自ら説明してくれてよかったわ。

花陽「そういう事です・・・。
一体犯人はどうやって犯行に及んだのでしょうか・・・?」

それになんか外部犯の仕業になっているわね・・・。よし、ここは・・・、

にこ「・・・トリックとかは別にして死んでいるのは確かよ。
それにさっきから外部犯の犯行の様に皆言っているけどさ、
・・・私達の中に犯人はいないってどうして言える訳?」

「「「!?」」」

真姫「・・・!!!」

穂乃果「そんな!?私達の中にあんな事をしたやつがいるって言うの!?そんな人いるわけないよ!!」

凛「そうだよ!!私達仲間なんだよ!?」

にこ「私だってこんな事口にしたくないわよ!でもしょうがないでしょ!誰かが言わなくちゃいけないのよ!!

絵里「ちょっと待って、今仲間割れしてる場合じゃないわ!」

にこ「そう言って、あんたが犯人なんじゃないの!?昨日のアリバイは無いんでしょ!?」

絵里「はぁ?そういうにこはどうなのよ!?ある訳!?」

良かった、いい具合に混乱してる。

この調子でかき回して・・・。

真姫「今ここでそんな事・・・はぁ・・・はぁ・・・言って何になるの!?

急にそんな事言われてもアリバイなんてある訳ないじゃない!

外部犯の可能性もある!数分後には殺されるかもしれない!今私達がしなきゃいけない事は何!?

こうやって仲間同士で疑いあって罵あう事なの!?違うでしょ!?」

穂乃果「・・・。」

にこ「・・・。」

真姫「今しなきゃいけないのは、警察が来るまで生きる事でしょ!違う!?」

絵里「そうね・・・その通りよ。こんな時だからこそ一致団結しなきゃいけないのよね・・・。」

穂乃果「そう・・・だよね・・・ゴメン。私冷静じゃなかった。」

にこ「私こそゴメン。変な事言ったわ。」

真姫ちゃんが流れを変える。

真姫ちゃんの仲間思いに少し感動する。

でも真姫ちゃんは希を殺したんだ。

今はこんな事を言っているけど・・・、でも本当は・・・。

真姫「そうよ・・・それでいいのよ・・・。」

真姫ちゃんは顔が真っ青になっていた。今にも倒れそうだ。

にこ「真姫ちゃん大丈夫!?わっすごい熱!」

花陽「私、風邪薬あります!」

絵里「ありがと!それ飲んで休みなさい。」

真姫「そうさせてもらうわ・・・。
隣りの部屋で休んでいるわね。」

絵里「隣り・・・?真姫、危険じゃない?」

亜里沙「そうですよ!少し窮屈でも外は危険かもしれないんですよ!」

にこ「大丈夫よ。私も一緒に行くわ。」

多分真姫ちゃんはメールにあった事を実行しようとしているんだろう。

でもここで真姫ちゃんから話を聞けば・・・。

隣部屋


真姫「にこちゃん、本当にうつるから少ししたらあっちに行きなさいよ?」

こんな時でもにこちゃんは私の事を信用してくれている。

でもゴメンね。

私、その真姫ちゃんの思いを、踏みにじるね。

にこ「うん、でもその前に真姫ちゃんに聞きたい事があるの。」

真姫「えっ?」

にこ「ことりの死体を発見した時、私は確かに聞いたわ。『どうしてことりが・・・?私はことりは殺してないのに・・・。』って。」

真姫「な、何を・・・。」

にこ「『は』ってどういう事なのかしら・・・。詳しく聞かせてもらうわよ・・・?」

真姫「・・・。」

真姫「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

同時期 2階リビングにて

花陽「凛ちゃん、話があるの。」

花陽は凛にだけ声が聞こえる様にこそこそとしゃべる。

凛は何かを察したのか、目立たない位置に花陽を連れて行く。

凛「かよちん・・・?どうしたの?」

花陽「実は・・・さっきの遺体の事で話があるの・・・、私、さっき思い出したんだけど・・・。」

隣部屋にて

真姫「に、にこちゃんなの!?」

にこ「えっ?」

真姫「あのメール、にこちゃんなの!?ねぇ!?どういうつもりなのよ!?こんな写真を撮って・・・。」

真姫ちゃんは案の定取り乱していた。

にこ「真姫ちゃん、何の話?写真って・・・?」

真姫「とぼけないでよ!あのメールはにこちゃんでしょ!?」

にこ「だから何の話よ?真姫ちゃん。」

私は真姫ちゃんの手を握る。

にこ「真姫ちゃん、話してみてよ!私、どんな真姫ちゃんでも受け入れられるよ!」

真姫は目に涙を貯めながら上目づかいに私を見る。

うわ・・・かわいい。

真姫「じゃぁ・・・話すね。」

真姫ちゃんは語ってくれた。

黄金を見つけた事、そこで希と争った事、最終的に希を殺した事、そして携帯に知らないアドレスでメールが来て、

自分が真姫を殺している画像が写っていたこと。

私は真姫ちゃんが全てを語ってくれた後、優しく抱きしめた。

にこ「真姫ちゃん、つらかったね、苦しかったよね。」

真姫「にこちゃあん!にこちゃああん!!うわああああああ!」

真姫ちゃんが私の胸の中で泣く。

年上の私のがちっちゃいのがちょっと恥ずかしかった。

にこ「じゃあ一端、となりに戻るわね。
大人しくしていなさいよ?」

真姫「すぐに帰ってきてよね。」

にこ「わかったわよ~。」

バタン。

にこは隣部屋の扉を閉めると、ポケットから白いハンカチを出す。

真姫がポケットに入れていた私物だ。

真姫がにこに甘えているスキに、ポケットからくすねてきたのだ。

海未から、真姫の私物をどれか一個手に入れてきてくれと言われていたから助かった。

部屋に戻ろうとすると、扉から絵里達が食糧を取りにいくかどうか議論している声が漏れて聞こえた。

私は部屋の前でこの事と、ハンカチをくすねてきた事を伝えるために海未にメールをする。

返事はすぐに返ってきた。

にこ「・・・了解。」

12:30 3階リビング

亜里沙「私は反対です。
別に明日まで何も食べなくても死にはしません。水もありますし我慢するべきです。」

にこ「私は一階から食糧を取りにいくのに賛成よ。」

穂乃果「にこちゃん!?真姫ちゃんは大丈夫なの!?」

にこ「今ようやく眠ったわ。それよりも一階にある食糧はやっぱり欲しいわね。食べる物もなければ薬も飲めないわ。」

花陽「私も賛成です。これから何があるかわかりません。それにこれ以上時間をおけばどんどん暗くなって危険です。」

凛「そうにゃ~今が一番安全にゃ!」

亜里沙「でも・・・。」

私は真姫ちゃんの状態を話して、なんとか食糧を取りに行くように話を持っていく。

絵里「・・・本当に行くの?でも確かにそうね、もし行くなら今しかないわ。」

花陽「それに真姫ちゃんは体調が悪いでしょ?空腹には出来ないよ・・・。」

絵里「わかったわ。十分に気を付けるのよ。」

凛「了解にゃ。んじゃ、行ってくるにゃ~。」

食糧を取りに行くのは花陽と凛に決まった。

凛と花陽はリュックサックを持って外に出てった。

にこ「じゃ、にこはまた真姫ちゃんの様子でも見ていようかしらね。じゃ。」

そう言ってリビングから出る。

私は凛と花陽が出て行った所をすぐにメールする。

またしても早くメールが返ってきた。

にこ「・・・え?でもこれって・・・。」

にこは携帯をすぐに閉じれなかった。

何故なら、そのメールには『1階の階段から私は仕掛けるから、にこは3階の階段から仕掛けてください。 挟み撃ちです。』

とあったからだ。

にこ「仕掛ける・・・って殺せって事・・・?」

にこの体が震える。

この手で・・・殺せって・・・メンバーを・・・。

その時もう一通メールが来る。

にこはすぐに開く。

『困惑しているのは分かります。しかし、相手は二人です。私一人では失敗する可能性もあります。

あなたの力が必要なんです。一緒に幸せを、掴みましょう、にこ。』

と書いてあった。

にこ「そうだ・・・一緒に幸せをつかむんだ・・・。」

そうだ、誓ったじゃないか。悪魔に魂を売ってでも、幸せになるって・・・。

もう、体を売るのは嫌なんだ!

にこはすぐにメールを送る。

解答は・・・イエスだった。

2F廊下

二人は早歩きで目的地を目指していた。

でもそれは1Fの食糧がある所ではない。海未が死んでいた、ことりの部屋だ。

花陽「凛ちゃん、急ぐよ!。」

凛「ちょっとまつにゃ~。かよちん、さっきの話、本当なのかにゃ?」

花陽「うん!!確かに見たんだ、あの部屋には、にこちゃんが持っていた、
ピンク色のテニスボールが落ちていたんだ!」

凛「でもそれが何で犯人に繋がる証拠になるのにゃ?」

花陽が先ほど凛に話した事、それはことりの部屋に犯人に繋がる証拠があるから取りに行こう、という話だった。

花陽「前に聞いた事があるんだ!脇にボールを挟んで脈を止める方法があるって!」

正確には『圧迫止血法』という立派な医療行為だ。

脇の溝にボールをあてて、肩の力を入れてボール挟み込むようにすると、腕の血管が

ボールに圧迫されて血が止まり、 肩から先に血液が回らなくなるので、脈が止まるのだ。

主に手から大出血した時に使う止血方法。

花陽はそれを偶然知っていたのだ。

凛「よく分からないけど、そのピンクのテニスポールあれば・・・。」

花陽「うん、密室の謎が解るかもしれない。」

凛「でもそれならば何故絵里達に話さなかったんだにゃ?」

花陽「それは・・・あの中に犯人がいるからだよ。凛ちゃん。」

凛「え!?」

花陽「凛ちゃん、私はずっと疑問に思っていたんだ。

何で海未ちゃんだけ毒で死んだんだろうって。

他の皆は武器で殺されているのに、おかしいと思わない?」

凛「言われてみればそうだね・・・、それに毒なんてそう簡単に飲んでくれると思わないし・・・。」

花陽「ナイフとかで刺した方が、はるかに手間はかからないよね?」

それに、と花陽は付け加える。

花陽「私、亜里沙ちゃんが死んだ海未ちゃんに近づいて手首を抑えているのを見たんだ。
多分脈があるか、計っていたんだと思う。」

凛「でも無かった、それは、そのトリックを使っていたからって言いたいんだね?」

花陽「そう、もし海未ちゃんが死んだふりをして容疑者から外れようとして

そのトリックを使ったならば、海未ちゃんだけ毒で死んだ事もとても納得がいくんだ。」

凛「でもそれって・・・。」

花陽「うん、そのボールはにこちゃんの物、つまり少なくてもにこちゃんと海未ちゃんは犯人だと思う。」

凛「・・・。」

花陽「でもまだ、そうと決まった訳じゃない。
もしかしたらまだ他に仲間がいるかもしれない。
それに、本当に毒殺されたのかもしれないし・・・、だからそれを捜しに行くの。」

凛「分かった。あ、ここだね。」

花陽「うん。入るよ!」

ことりの部屋

凛「あれを探そう!」

花陽「うん!っ・・・!?そんな・・・馬鹿な!」

花陽はある一点を示す。

凛「そ、そんな・・・嘘でしょ!?」

そこにあるはずの、海未の死体は消えていた。

花陽「じゃあやっぱり犯人は・・・!」

ギイイイイイイイイイイイイイ

海未「・・・・・・・・・・。」

花陽視点
音がしたので、後ろを向くと、そいつは、いや、海未ちゃんは笑いながら何かを逆さに掴みながら、

私に振り下ろしていきました。

私はただ立っているだけでした。

もうだめだ・・・私はそう思いました。

凛「かよちんあぶない!!」

その時、凛ちゃんが私を後ろに引き戻しました。

私はしりもちをついて後ろに倒れました。

凛「あああああああああ!!!痛いぃぃぃぃい!!!」

凛ちゃんが後ろに後ずさって痛がっています。

その時、手に柔らかい感触がありました。

それは私が探していたピンクのテニスボール。

花陽「見つけたよ!凛ちゃ・・・」

私がそれを持って、前を向くと、

花陽「あっあぁ・・・!」

凛ちゃんが海未ちゃんに羽交い絞めにされて逆さに持っている何かをもう一回振り下ろしている光景でした。

凛「あっああぁぁ!!」

それが振り下ろしきった後、凛ちゃんのお腹あたりから赤い何かがとびちりました。

凛「ごふっ・・・あああああああああああ!!!!!!!痛い痛い!!!!!」

それが海未ちゃんの顔につきました。

不覚にもそれは美しい。と感じてしまったと同時にそれは血で、どこから、

誰から出てきたのかに気付きました。

花陽「いやああああああああああああああああああああああああああああ!!

凛ちゃああああああああああああああん!」

逃げよう。

そう思っても、ひざが動きません。

怖くて息もろくに吸えません。

人は恐怖でマヒすると、この時初めて知りました。

花湯「あっあ・・・あっ・・・。」

海未「・・・。」

海未「・・・、フフフフフ。」

海未ちゃんは楽しんでいました。

人を刺して喜んでいました。

ワインを開けた時、快感を覚える人がいると聞きます。

この人もそれと同じ人なのでしょう。

私というワインを開けて、私から出る液体を浴びたいのです。

根っからの殺人鬼。

血が似合う犯罪者。

海未ちゃんの顔がドアの外からの光が漏れて見えました。

あぁ・・・あなたが殺したんですね・・・。血のメイク、とてもきれいですよ。

海未ちゃんと私の目が合い、私の所に向かおうとしました。

どこっ

そいつがしりもちをつき、その上に今度は凛ちゃんがのっかかりました。

凛「かよちん逃げてえええええええええええええええええええ!!!」

花陽「うわああああああああああああああああああああ!!!」

凛ちゃんの声と共に、私は立ち上がりました。

自分の意志では動かなかったのに凛ちゃんの声には言うことを聞くんです。

不思議です。

急いで部屋の出口まで向かいました。

出口までは五歩のはずなのに出口が遠ざかっている様な錯覚に陥りました。

三歩目でそいつが凛ちゃんに向かってなにかを・・・、

ナイフを振り下ろし、四歩目でナイフが刺さり、五歩目で血が飛び散りました。

花陽「いやああああああああああああああ!!!」

私はもうそこから逃げる事しか考えていませんでした。

凛ちゃんは見捨てても、この手に持っているこれは離しませんでした。

これを持ってはやく三階に・・・。その時、曲がり角から影が見つかりました。

しかし私は止まれず、その人にぶつかってしまいました。

にこ視点

にこ「はぁ・・・はぁ・・・。」

にこ「お、おええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

にこは激しく嘔吐する。

にこが花陽に振り下ろしたのは、海で遊んだ時にレジャーシートが風で飛ばないように置いたコンクリートブロックだ。

にこは前日のうちに、もしものために、各階に凶器を隠していた。

殺した!!殺した!!やってしまった・・・。

でも、でもでもしょうがないじゃない!

花陽たちが証拠を見つけようと二階に行くから!

もし一階に降りてくれれば海未がXXしてくれたのに!!!

こ、これは私のせいじゃないわよ私のせいじゃ・・・!

わ、私は、ただ見張りを、小細工を・・・小細工をすすす、すればいいって・・・。

でも今目の前で倒れているのは花陽で、これを殺したのはわた・・・。

にこ「おええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

にこ「はぁ・・・はぁ・・・・そうだ、海未は・・・。」

海未を探すと、海未は希の部屋から出てきた所だった。

にこ「ねぇ・・・、海未、私、やったよ!ちゃんとやったよ!!

また少し汚れちゃったけど!私ちゃんと成し遂げたよねぇ!?」

海未は段々と近づいてくる。

凛の血に塗れたその顔で微笑む。

ナイフからは血がボタボタと垂れていた。

私は神様に縋る気持ちで、海未に近づき、跪いた。

にこ「ねぇ!!もう私はこれで!」

海未「はい、そうですね。」

海未は私と同じ目線まで身体を下げる。

海未「もう、いいんですよ。」

にこ「そうだよね!!もう・・・っえっ・・・?」

ドスッ!!

海未「もうあなたは十分頑張りました。お休みなさい、にこ。」

にこ「・・・ゴフッ・・・。」

喉からせりあがってくる血を吐きながら。下を見る。

海未のナイフが、私のお腹を貫いていた。

にこ「何で・・・?海未・・・?」

ズボッ!

海未「あなた達のためですよ、今は眠りなさい。」

にこ「な・・・に・・・を・・・?」

私の芯から大事な物が抜けていく様な気がした。

支えを失って倒れるのが分かる。

手を見ると、真っ赤に濡れていた。

あぁ・・・、これ私の血なんだ・・・。

にこ「う・・・み。」

海未は倒れた私を見る。

そして、右手で頭を撫でながら、目に左手を易しく置いた。

海未「お休みなさい、お眠り。」

それは、まるで菩薩の様。

にこ「・・・う・・・ん、おや・・・す・・・」

私は、その手の中で、静かに自分の終わりを迎える。

余りいい人生では無かったと言えるけど、

殺人鬼に看取られる最後だったけど、

それでも最後は少しだけ、ほんの少しだけよかったと、思うことにしよう。

海未視点

にこの脈が止まった事を確認すると、海未はにこのポケットを探る。

海未「ええっと・・・ありました。」

海未が出したのはにこが真姫のポケットからくすねた刺繍の入っている白いハンカチ。

そして、今度は花陽を見る。

花陽の頭からは白い何かが見えていて、にこがどれだけ強く殴ったかが窺える。

海未「花陽、あなた、以外に頭が切れるんですね・・・知らなかったですよ。」

花陽が右手に持っているピンクのにこのテニスボール。

それを海未は回収し、代わりに真姫の白いハンカチを入れる。

これで、また場が荒れるだろう。

そして、花陽の死体を凛の横に、寝かせる様に置いた。

海未「そこで、二人でお休み。」

そして、また手紙を置く。

意味は特に無い。さっきのもそうだが、手紙は主に動揺をさせ、仲間割れさせる為の物だ。

海未「にこ、花陽、凛。
こんな事をして何言っているんだと思うかもしれないですけど・・・
私は今でもあなた達を仲間と思っています。
もちろんことり、希もね。」

海未「だから・・・。」

海未「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

海未は誰もいない廊下で一人呟く。

その声は、誰にも聞こえる事が無いだろう。

だが、それでいいのだ。

殺人鬼は、救いようもなく、憎まれた方が良い。

海未「さようなら。」

直に花陽達がいつまでも帰ってこない事を不審がるだろう。

いつまでもここにいるのはマズイ。

海未は遺体となったにこ達ををもう一度見定めて隠れる場所を探しにいった。

海未「・・・また会えますよ、今度は学校でね。」

14:58

真姫視点

真姫「私の、私のせいじゃない私のせいじゃない私のせいじゃない・・・。」

私は自分でもどこを走っているのか分からなかった。

花陽と凛、にこちゃんが死に、その花陽の手からは私のハンカチがあった。

それに、事故とはいえ、自分の不手際で穂乃果の目に怪我をさせる事になってしまった。

失明は無いと思うが・・・、しかし、この先どうすれば・・・。

真姫「にこちゃん・・・どうして・・・。」

真姫は一階に降りて、ホールに降りる。

そこには祖父のデカイ肖像画と、碑文の書いてある石碑があった。

思えば今回の事件はこの碑文を解いた事から始まった気がする・・・。

真姫が解っている事は希を殺した犯人が自分という事、その事を知っている者が、

最低一人はメンバーの中にいるという事、そして、にこや花陽、凛を殺してはいないという事だ。

そもそも花陽の手に握りしめられていた真姫のハンカチ、あれはにこが部屋を出て行ってから無くしたと気づいた。

つまりにこが持って行ったという事なのだろう。

廊下でハンカチの事を聞かれた時は気が動転していて忘れていたが・・・。

もしあそこに、にこの死体が無ければにこだと思った、しかし、にこは死んでいるし・・・。

真姫「どういう・・・っ!」

コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ・・・。

その音はホールを歩く音だった。

ホールの床はよく音が響く素材で作られている。

だから、人が歩く音がよく聞こえるのだ。

真姫は追いかけてきた亜里沙かと思い、振り向く。

真姫「亜里沙・・・あなたおいかけて・・・っ!!」

グサッ!

真姫は振り向いて信じられない物を二つ見た。

一つは死んでいると思っていた海未が、血まみれで目の前に立っている事。

もう一つは、海未の手に持っている物が血まみれのナイフで、それが真姫の腹に埋まっている事だ。

真姫「あっ・・・!う・・・み!」

ずりゅ!

ナイフを引き抜かれる。

真姫の腹から血が沢山あふれ出した。

真姫「っく・・・!!」

真姫はそれでも倒れずに目の前に殺人鬼の肩に手を掴む。

もはや、海未が犯人な事は、明らかだった。

真姫「あんたが・・・にこちゃ・・・達を・・・!」

海未は真姫がまだ立っていられる事に驚いた。

急所を刺したはずなのだが・・・。

海未「あなたも眠りなさい、真姫。」

真姫「何故・・・こんな事を・・・!?」

海未は再びナイフを『突き』に姿勢で構え、真姫に言う。

海未「あなた達のためですよ。」

真姫「何を・・・!ぐっふっ!」

真姫は再び腹を刺される。

今度は立っていられる事は出来なかった。

???? ??:?? 魔女の空間

亜里沙「・・・どういう事・・・?」

今まで一周目の映像を見ていた亜里沙だったがどうにも腑に落ちない事があった。

映像を見ていくうちに亜里沙は一週目の記憶を全て取り戻していた。

希の死亡理由、密室のトリック、花陽達が食糧を取りに行くと言って二階で死んでいる理由、

にこが花陽たちと一緒に死んでいる理由、にこの動機。

一周目の謎は全て解き明かされた様に見える。

恐らくこの映像は二週目の犯人を暴いた黒い魔女のお礼なのだろう。

しかし、それでも一つだけ、というかこれは二週目からなのだが、分からない事があった。

亜里沙「事件の首謀者の海未さんの動機がいまいち分からない・・・、というかピンと来ない・・・。」

二週目の事件は穂乃果達が真姫の通帳を奪おうと仕組んだ物だった。

理由は最低な物だったが理解は出来る。

だが、それを狂言では無く、本物の殺人事件にしてしまったのは海未だ。

一周目に至っては狂言すら起こっていない。

希が真姫に殺された事を海未が見ただけだ。

海未は希が殺される所を見てこう言ったのだ。

『これは使えるかもしれません。』と。

使える?何に?殺人計画にだろう。

この口ぶりから海未は殺人計画をこの合宿に来る前から考えていたという事になる。

そして、たまたま碑文が解かれて真姫が希を殺す所を目撃して、計画を思いついた・・・。

ことりと争っている時に穂乃果の事を意識している描写があったが、そんな事で皆殺しにするのか・・・?

でも人間関係が原因で刃傷沙汰な事件なんて腐るほどある。

案外そんな物なのか・・・?

亜里沙「何かもっと、大事な事を見逃している気がする・・・。」

映像では、三階のリビングで絵里と雪穂が殺され、目の見えない穂乃果が嬲られて殺されている所だった。

見るに堪えない映像だが、それに写っている海未は・・・。

確かに笑っている、人とは思えない笑い声を出しながら穂乃果達を殺している、だがその目は・・・。

亜里沙「とても・・・悲しそう・・・。

まるで・・・。」

亜里沙「まるで、何か、違う目的で、無理やりやらされている様な・・・。」

映像では亜里沙が海未に後ろから刺されて絶命した所が映し出されていた。

自分が死ぬ瞬間なんてそうは見れないと思ったが、中々心にクるもんがある。

-プツン-

映像が止まる。

どうやら亜里沙が死んだので一周目をこれ以上やる価値は無いと魔女たちが止めたのだろう。

黒い魔女の勝利条件は亜里沙が事件を解く事。

その亜里沙が殺されては解くことが出来ない。

ゲームオーバー、と言う訳だ。

亜里沙「結局分からなかったな・・・、それにこの後どうすr・・・!」

映像を映していた黒い渦が再び動き始める。

亜里沙「えっちょ、え!?」

それはドンドンデカくなり、亜里沙を飲み込んでいった。

・・・亜里沙が目を開けると、そこはほの暗く、寒い。

しかし、とても広かった。

亜里沙「ここは・・・?」

亜里沙は段々と感覚を取り戻し、気づけば狭い椅子・・・というか、映画館にあるような、

そんなシートに座っている事に気付く。

周りを見ると、亜里沙が座っているイスが沢山あった。、

亜里沙「映画館・・・?いや、劇場?」

前には赤のカーテンと、舞台があるからか、亜里沙はそう思った。

亜里沙「どういう事・・・?私は確か、事件を解いて・・・。」

いつからここにいるのか、ここがどこなのか、亜里沙は検討もつかない。

亜里沙「ん・・・ひっ!?」

亜里沙は人の気配がして驚く。

どこかと思い、前を見ると、舞台の上にはとてもでかい十字架があったのだ。

いや、十字架というか・・・この大きさなら人を張り付けにする張り付け台と言った方が良いのかもしれない。

そんな十字架にはすでに先客がいた。

亜里沙「・・・!!!海未さん!!」

海未が十字架に貼りつけられていたのだ。

もちろん、人が浮かぶ訳がない。

その手と、足にはずぶとい釘で打たれていて、そこから血が溢れていた。

そうとう痛いだろうに、海未は何の反応も示さない。

目は開いているが焦点は合わず、亜里沙の呼びかけにも答えなかった。

亜里沙「海未さん!!!!、今助けに・・・えっ!」

ガチャン!!

亜里沙は自分が何か、強い物に繋がれている事に気付く。

亜里沙「何・・・これは。」

亜里沙の両手首と両足首が鎖の様な物で繋がれているのだ。

全く動かせないという事は無いが、席を立って移動する事は出来ないようだった。

亜里沙「どういう事・・・?これは一体・・・?」

こんな異質な空間には覚えがある。

黒い魔女と、ピンクの魔女のいた、あの不思議空間。

どうやら自分が今異空間に閉じ込められていると亜里沙は分析する。

亜里沙「黒い魔女!!聞こえている!?これはどういう事なの!?私は事件を解いたわよ!」

フフフフフフフフヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・。

誰かが答える。

しかし、亜里沙が周りを見ても誰もいない・・・。

そして、その笑い声は何かの始まりを意味していた。

カっ!!

照明が上がり、舞台にライトが当たる。

そこには、

黒い魔女「亜里沙、お久しぶり、そして、よく事件を解決する事が出来たわね。

おめでとう。」

ピンクの女「まさか、こうもきれいさっぱりに解いちゃうとはねー。

でもおめでとう、亜里沙。」

黒い魔女とピンクの魔女が舞台にいた。

亜里沙「祝うにしては手荒い歓迎じゃないですか?これから何が始まるんです?」

黒い女「亜里沙、あなたは私の駒として、見事に事件を解いてくれたわ。
おかげで賭けに勝つ事が出来た。
だから、ご褒美をあげようと思って。」

亜里沙「褒美・・・?やっぱり先ほどの映像はあなたが・・・?」

黒い女「えぇ、亜里沙、あなたは事件を解く時にこの事件の全てが知りたいと願ったはずよ、だから、それを叶えてあげようと思ってね。」

亜里沙「あぁ・・・なるほど、でもさっきので大体の事は分かりましたよ。

それとも、まだ何かあるんですか?」

黒い女「・・・。」

ピンクの女「・・・。」

「「ぷっはっはっはっはっはっくすくすくすくすくすくすくすくすぷっーくすくすくすくすはははははは!」」

二人の魔女がゲラゲラ笑う。

まるで、自分が何か見当違いの事を話している様に感じた。

黒い女「あなたは、まだ何も知ってはいないわよ?何もね。」

ピンクの女「そうねーま、しょうがないんだけどね。
その時の記憶、消されているんだもんね。」

亜里沙「!?っ・・・消されているって・・・、一周目の時の記憶じゃなくて、ですか!?」

ピンクの女「そうよ、亜里沙、これからあなたに、あの合宿で何が起こったのか、本当の事を教えてあげる。」

亜里沙「何が起こったのかって・・・それは一週目の事じゃ・・・あなた達だって一周目って・・・。」

黒い女「えぇ、『ループして一周目』って事よ。

つまり、一周目が終わった段階であなたはすでに、二週しているのよ。あの合宿をね。」

亜里沙「・・・!?って事は、私は・・・。」

黒い女「そう。あの時に何が起こったのかは、何も知らないって訳
。まぁ記憶は私が消したからなんだけど。」

亜里沙「なんでそんな事を・・・!?それに何でここに海未さんが・・・!?」

ピンクの女「それも、全部見れば分かるわよ、今から見せてあげるわ。」

黒い女『今から見せる映像が、あの時、合宿であった真実よ。』

黒い女がそれをしゃべった時、何故かその言葉だけは嘘ではないと身体が、心が信じてしまう。

その言葉に乗せられたその力は魔女だけが使える物。

その力に乗せた言葉は、全て真実・・・!

真実の・・・言葉。

亜里沙は理解する。

これから見せられる映像は、全て本当の事なんだと。

黒い女「じゃ、始めるわよ。カーテンコール!」

黒い女の言葉と共に、赤いカーテンが開く。中からはシアターが出てきた。

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

どんどん拍手が大きくなる、しかし、亜里沙がいくら周りを見渡そうとも、その姿は欠片も見えない!

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

開場は、シアターから発せられる、目を開けられないほどの光で覆い尽くされた。

○月×日 真実の世界 合宿一日目。

真姫家別荘前

雪穂「これはすごいね!本当にでかい!ペンションみたいだよ!」

真姫「西木野家が持つ、一番でかい別荘よ。
でも良かったわ、 前使った別荘だったら、この二人の部屋を用意するのは難しかったから。」

亜里沙「この度は本当にスイマセン・・・。私は止めたんですが、雪穂がどうしてもと・・・。」

絵里「こら!雪穂ちゃんだけのせいにするんじゃないの!あなたもどうせ、悪ノリして付き合ったんでしょ!?

亜里沙「てへへ・・・。ばれちゃいましたか・・・。」

にこ「別にいいじゃない!全くの無関係って訳でもないんだから。」

花陽「そうだね。むしろ、仲間が増えて、うれしいよ!」

希「二人とも中学生だよね?高校はどこにしたん?」

雪穂「もちろんUTえっ・・・あいて!」

亜里沙「私達、二人とも音ノ木坂学園に入ります!もう合格届も来ました!」

凛「わぁ!つまり、凛たちの後輩って訳なのかにゃ!?」

真姫「なら、尚更送り返す訳には行かないわね、先輩として、示しがつかないわ。」

にこ(先輩ぶっている真姫ちゃんかわいい)

穂乃果「こうして後輩入ってくるって思うと、本当に存続は成功したんだなって思うよ。」

絵里「廃校が嘘みたいよね、それだけでも私達がやってきた事は価値があるなって思うわ。」

真姫「あ、やっと着いたわ。じゃ、開けるわよ。」

凛「楽しみだにゃ~!」

この時はまだ11人でした。

今思うと、どうしてこうなったのか、分かりません。

皆が少なからず家庭の事情で悩んでいた事は知っていました。

しかし、それでも皆、この時はそんな事なんて忘れて、まだ

仲の良い、ラブライブを優勝した名誉ある仲間だったと思います。

どうしてこんな事が起こってしまったのでしょうか。

楽しい合宿だったはずなのに、どうして、どうして、どうして。

一人消えて、二人消えて、三人消えて、四人消えて、最後に一人になっても、

私には、どうすればこの事態を回避できたのか、わかりません。

ただ、一つ思うことは、やはり、

あの碑文さえ解かなければ、こんな事は起きなかったのではないでしょうか?

~つひに行く 道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを~


これを書いている今、この句がやけに、心に残ります。

園田海未

22:00ホールにて

食事を終えて、ホールに行くと、真姫の祖父と碑文の書いてある石碑があった。

メンバーはそれを見て、議論を仕出す。

それは、過去二つのゲームと同じ展開。

連続殺人のスタートとも言える・・・。

黄金とは何か?

火払いの王とは?

この碑文の意味は?

いくつもの疑問が沸く、一日目。

そして、時間も時間だし、解散しようという話になる。

これもまた、過去二つと同じ展開。

真姫「私は起きているけど、あなた達は寝ないの?」

絵里「私は・・・もう少し起きているわ、この碑文をもう少し考えたくて・・・。」

亜里沙「私も、気になります。」

海未「私もです。こういうなぞなぞ、好きなんですよね。

小さい頃、ミルキィなんとかって探偵アニメがあって、そこのピンクが○○ですぅ~って」

にこ「ハイハイ。私も起きてるわ、寝付けないし。」

希「うちはもう寝るわぁ・・・。」

花陽「はえぇ・・・、皆元気だねぇ・・・、私はもう眠くて・・・。」

凛「凛もだよ・・・、さすがに疲れた。」

ことり「私も今日は限界・・・。」

雪穂「亜里沙元気だねー・・・。オヤスミ。」

穂乃果「私も今日はいいや・・・。オヤスミー。」

・・・・・・・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^

亜里沙「5人・・・?やけに多いですね・・・。」

過去の事件では一人だったり、二人だったりしたが五人とは・・・。

しかも犯人の海未までどうどうと参加している。

亜里沙「やはり、碑文が解かれた事が海未さんを殺人に駆り立てた動機・・・?」

亜里沙はてっきり、この合宿に行く前に何かあったのかと思っていたのだが・・・。

映像には5人が書庫室に向かっていくところだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ことりの部屋

穂乃果「え・・・、海未ちゃんに私達が付き合っている事を言ったの?」

ことり「うん、皆に言う前に海未ちゃんにだけは言っておこうって思って。」

穂乃果「そっか・・・、海未ちゃんなんて言ってた?」

ことり「おめでとう・・・。だって、同姓で大変な事も沢山あるだろうけど、

二人ならば乗り越えられるってさ。」

穂乃果「そっか・・・、応援してくれているんだ。」

ことり「・・・実を言うとね、海未ちゃんも、穂乃果ちゃんの事、好きだったみたいなんだ。」

穂乃果「えぇ!?それって本当なの!?」

ことり「うん、でも、それでもことり達を応援してくれるって。」

穂乃果「そっか・・・。叶わないなぁ・・・。」

ことり「ことりもそう思った、普通自分の好きな人取られて、応援しているって言えないよ。」

穂乃果「でも、応援してくれてるって言ったんだよね?」

ことり『うん。海未ちゃんは心から私達が付き合う事応援してくれるよ。』

穂乃果「じゃあ、それに応えられるように、頑張らないとね・・・。」

ことり「うん・・・。」

24:00 書庫室

にこ「んあっーそれにしても解けないわねぇ!」

にこが鉛筆を机に放り投げながら呟く。

海未「そりゃあ、真姫さん達家族が解こうとしても、解けなかったんですから、

部外者の私達にはそう簡単には解けないですよ、

でも、全く進んでないという訳ではありませんよ?そうですよね?希。」

真姫「うん、祖父が沖縄で黄金を見つけた事、この碑文を見れるのはここ沖縄の別荘

しかない事から、沖縄に何か関係があると思って歴史書を見ているんだけど・・・。

なかなか見つからないわ。」

絵里「どうした物かしら・・・。」

海未「そもそも『火払いの印を志す王』が分からなければどうにもなりません。

亜里沙、絵里、印の方で何か見つけましたか?」

亜里沙「いえ、本で探すのが予想以上に手で・・・、そもそも火を払う印なんて、いくらでもありますからね・・・。

もう少し絞り込めればいいんですが・・・。」

絵里「場所ごとに沢山あるしね、こういうものは・・・。せめてどこかに絞り込めれば・・・。」

にこ「あーもう!!どこにあるのよ!!お宝!!!」

あ、凡ミスしました。

>>208から>>211は無かった事にしてください。

>>213から前回と少し展開が変わります

前回と同じだと思ったら……

22:00ホールにて

食事を終えて、ホールに行くと、真姫の祖父と碑文の書いてある石碑があった。

メンバーはそれを見て、議論を仕出す。

それは、過去二つのゲームと同じ展開。

連続殺人のスタートとも言える・・・。

黄金とは何か?

火払いの王とは?

この碑文の意味は?

いくつもの疑問が沸く、一日目。

そして、時間も時間だし、解散しようという話になる。

これもまた、過去二つと同じ展開。

真姫「私は起きているけど、あなた達は寝ないの?」

穂乃果「あれ、皆はまだ寝ないの?」

真姫「えぇ、私はまだ起きているわ、この碑文をもう少し考えたくて。」

絵里「私も起きていようかしら、なんだかワクワクが止まらなくて。」

亜里沙「私もいつもならまだ寝る時間じゃないので・・・、付き合いますよ。」

海未「私もこういうなぞなぞ、好きなんですよね。
小さい頃に見た探偵アニメの影響で、ハマってしまいまして・・・。」

にこ「私も起きていようかしら、遊び足りないしね。」

希「うちもや、こんなスピリチュアル見逃せへんやろ。」

花陽「はえぇ・・・、皆元気だねぇ・・・、私はもう眠くて・・・。」

凛「凛もだよ・・・、さすがに疲れた。」

ことり「私は今日はいいや、穂乃果ちゃん、ちょっと話があるの。」

穂乃果「・・・?あっ分かったよ、じゃあオヤスミー。」

雪穂「亜里沙、もし解けたら一割分けてね~、おやすみ。」

前回?

亜里沙「六人・・・?やけに多いですね。」

過去の事件では一人だったり、二人だったりしたが六人とは・・・。

しかも犯人の海未までどうどうと参加している。

亜里沙「やはり、碑文が解かれた事が海未さんを殺人に駆り立てた動機・・・?」

亜里沙はてっきり、この合宿に行く前に何かあったのかと思っていたのだが・・・。

同じ目的を持った六人は協力して調べものをしようと書個室に向かう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

>>215
リメイク前のことでしょう

>>215

前回というか、綾瀬亜里沙「犯人は・・・あなたです。」とは少しだけ展開が代わります。

24:00 書個室

にこ「・・・ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!それにしても解けないわねぇ!」

海未「にこ、欠伸しないで下さいよ!移るんですよ?欠伸って。」

にこ「んな事言われても、訳わかめちゃんよ・・・。」

にこが鉛筆を放り投げながらスマホを弄る、

海未「真姫の親族が解こうとしても解けなかったんですから、
部外者の私達が簡単に解けるはずもないでしょう・・・。
でも全く進んでないという訳ではありませんよ、そうですよね、希。」

希「そうやねぇ・・・、おじい様が沖縄で黄金を見つけた事や
碑文を見る事が出来るのはここ、沖縄の別荘な事から、沖縄に関係があると思って
沖縄の地図を見ているんだけど、見つからないなぁ・・・。」

絵里「そもそも今と昔じゃ地形も違うしね・・・、これは骨だわ。」

亜里沙「そもそも『火払いの印を志す王』が分からなければどうにもなりません。
海未さん、お姉ちゃん、どう?」

絵里「ネットが使えないから本で探してはいるけど、それが予想以上に手間よ・・・。
せめて何かもう少し絞り込めれば良いんだけど・・・。」

海未「印なんて、それこそ星の数ほどありますしね・・・。」

にこ「あーもうどこにあんのよお宝ぁ!」
どさ!

にこが癇癪を起こして本が机から落ちる。

その中の一冊が偶然開いたまま落ちた。

希「こらこらにこちゃん、あら、これって・・・。」

希がその本を拾う。

希「懐かしいわぁ!皆みてみい!」

希が広げたその本は、祭りの歴史書だった。

海未「うわ、懐かしいですね!小さい頃に行きました。亜里沙はありますか?」

亜里沙「私は今年行きましたよ、すごいですよね!大きい所なら何発も花火を打ち上げるんですよね?」

にこ「そうよそうよー。花火とか見ながら枝豆を食べるの最高だわー。」

真姫「にこちゃんオッサン・・・。」

亜里沙「あれ、この印・・・。」

真姫「どうしたのよ、亜里沙。」

亜里沙が指したのは、太鼓をたたいている写真だった。

亜里沙「確か、この太鼓に書かれている模様、防火の意味があったと思うんですよね。」

真姫「防火・・・っ!火払い!!」

にこ「確かにそうともとれるわよね?この印って正確にはなんて言うのよ?」

海未「これは『巴』というんですよ、家紋としても有名ですよね、

意味は先ほど言った通り、防火・・・っ!」

にこ「どうしたの、海未。」

真姫「海未?」

海未「・・・!もしかして」

海未は碑文をメモした紙をよく見返す。

海未「これです!!亜里沙!よく見つけました!」

次に沖縄の歴史書をペラペラ捲る。

でてきたのは、琉球王国時代のページだった。

海未「尚巴志王!!これです!」

絵里「ちょ、どういう・・・?」

希「・・・なるほどな、『火払いの印』は『巴』、それに『志』す『王』で、巴志王って事か・・・。」

にこ「・・・なるほどね!!!」

真姫「にこちゃん分かってないでしょ・・・?」

亜里沙「・・・!私もそれが答えだと思います!でも次の『川を三つ下った~』 の部分が・・・。」

海未「それも・・・多分これです。」

海未が開いたのは琉球王国の位のページだった。

亜里沙「位を川と表現した訳ですか。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

亜里沙「すごい、真姫さんが解いた時よりも何倍も速い・・・。」

黒い女「そりゃ、自力で碑文を解いた事のあるメンバーが三人もいたらねぇ・・・。」

亜里沙(でもここから何が分かるんだろう・・・?多分オチとして海未さんが

誰かに協力してもらって殺人を起こすんだろうけど・・・。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ホールにて

絵里「真姫、この石碑の名前の所、外せる様になってるわよ!」

真姫「それで正解ね、にこちゃんがメモのアルファベットの綴りを間違えてくれたおかげで助かったわ。」

にこ「わ、わざとよわざと!」

希「スイッチらしき物があるなぁ、後はL,O,R,D,Nの順番で押していけばいいのかな?」

絵里「押してみるわ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

すると、近くのライオンの石像が動き出す。

やがて石像が止まり、手が指す方向を見ると、そこにもまた石像があり、その石像の向く先にも 石像があった。

亜里沙「ハラショー・・・。」

にこ「この石像の首が指す方向に行けって事かしら?」

海未「そうみたいですね、行ってみましょう!」

・・・黄金はすぐそこだった。

書個室

絵里「はぁはぁ・・・、散々歩かされて最後の場所が書個室とは・・・。」

希「灯台元暮らしやね・・・。」

海未「でもこれで終わりみたいですよ?見てください。」

海未が指を指した先には暖炉があり、その中には先ほどは無かった階段があった。

亜里沙「黄金は近い様ですね・・・。」

真姫「真っ暗だし、結構深そうよ?懐中電灯は・・・。」

海未「その必要はなさそうです、ここにスイッチが・・・ほら。」

海未がスイッチを押すと、階段の明かりが点く。

メンバーは階段を慎重に下っていく。

すると、階段の先に扉があるのを発見する。

その扉には、

『六の欠片、九の欠片、十六の欠片、十八の欠片、三十六の欠片を引き抜いて鍵に合わせた者だけが黄金に至る。』

と書いてあった。

絵里「あたりね!」

希「そうやな・・・。」

亜里沙「えぇ。開きますか?」

真姫「やってみるわ・・・おっ・・・。」

真姫が思っていたよりもスムーズに開けられそうだったので少し驚く真姫。

真姫「いい?開けるよ・・・?」

にこ「何があるのかしら・・・?」

海未「鬼が出るか、蛇がでるか・・・。」

亜里沙「それとも黄金か、ですね。」

ギイイイイイイイイイイイイイイ

重そうな扉がゆっくりと開く。

そして、黄金の積まれた部屋が彼女らを迎えた・・・。

隠し部屋

希「こ、これは・・・!」

希たちが思っていたよりは部屋はキレイだと内装に感想を持ったのは一瞬の事。

なぜならば、その中央にある山と積まれたインゴットに心を奪われ、絶句したからだ。

そして、その絶句は時が経つにつれて驚嘆へと変わる。

海未「素晴らしい!フフ、フフフフフフ!」

亜里沙「こんなに沢山・・・、見たことないわ・・・。」

絵里「ハラショー・・・。価値にして何十億以上の黄金・・・。」

にこ「目がつぶれそうよ・・・眩しい山だわ・・・。」

希「スピリチュアルやわ・・・!」

「「やったああああああああああああああああああああ!!!!」」

これほどの黄金の山は魔力を持つ。それは、人間の素直な感情をむき出しにするのだ。

・・・だから、彼女らが黄金を見つけた事は、本当にうれしかったのであろう。

彼女らはしばらくの間、まるで園児の様に笑い、抱き合い、そして転げまわったのであった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

亜里沙「何・・・?この展開は?」

黒い女「あら、ご不満かしら?」

亜里沙「不満って事は無いけど・・・、何の事件も起きずに碑文が解かれるなんて・・・。」

黒い女「今までに無かった展開って言いたい訳?」

もしかしたら、現実では殺人事件なんて全く起こらなかったという事か?

まぁ・・・その方が現実味あるけれど・・・。

ならば、これで終わり・・・?私達は一人数億を持って家まで帰宅・・・?

じゃあここにいる私は・・・?それにこの鎖・・・。

手と足に繋がっているこの鎖はなんだろうか。

これは嫌でもこの映像を見せようとする明確な悪意を感じる。

それに舞台で貼り付けになっている海未は・・・。

海未「・・・。」

海未はやはり、目の焦点が合わない。

その虚空の目に何も映してはいない様に感じる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

亜里沙「・・・ん?これは・・・!」

亜里沙の稀有な一言に馬鹿騒ぎが終わる。

絵里「どうしたの!?」

亜里沙「いや・・・、ここに手紙があって・・・。」

黄金の山を中央から見たら、死角にあるテーブルにその手紙はあった。

テーブルの上にあるデカイ時計が今の時間を指している。

絵里「真姫のおじい様が書いた手紙でしょ?私達が勝手に見てもいいのかしら?」

にこ「でもここに、『黄金を見つけた者へ』ってかいてあるにこ?」

海未「・・・開けてもいいんじゃないですか?」

希「せや、真姫ちゃん、良いやろ?」

真姫「えぇ、良いでしょ。」

亜里沙「じゃあ開けますね、よっと・・・これは、通帳と印鑑ですね、

それと手紙が入っています。」

にこ「通帳?どれどれ~いくら入っているに・・・こ・・・?」

にこは愕然とする。

だって、その通帳には0が1,2,3,4,5,6,7個!!

にこ「ご、五千万円!!」

真姫「ヴェエ!?嘘でしょ!?」

にこ「嘘じゃないわよ!ほら!」

にこが通帳を真姫に見せる。

最初は半信半疑だった真姫も、0の桁を一つずつ数える度に表情を変えていった。

真姫「本当ね・・・!!!!あ、中にパスワードも書いてある。」

絵里「もうなんか・・・すごいわね・・・。」

海未「手紙にはなんと書いて・・・?」

亜里沙「えーと、うわ達筆ですよメンドクサイ。」

希「読める?」

亜里沙「なんとか、えーっと、最初に遺産の事が書いてありますね。

遺産の分け前は、遺産を見つけた時にその島にいる全ての者に平等に分け与える事。」

絵里「平等!?」

海未「って事は私達にも分け前がでるって事ですね・・・。」

にこ「本当に・・・!?やった!!!!」

真姫「なんとかなったって訳ね・・・。これで病院が・・・。」

絵里「他には・・・?」

亜里沙「えーっと家族に対して書いてありますね。どうやら、真姫さんの家族は
あまりおじい様の事を良く扱わなかったみたいですね。
結構キツイ事が書いてありますよ。」

真姫「そんな・・・希の言うことは当たっていたって事ね・・・。」

希「やっぱりなぁ・・・。」

絵里「下手すれば、家族以外の者がここを発見する事もあったでしょうしね・・・。

素直に渡したくなかったんでしょう・・・。」

亜里沙「で、えっと次は・・・えっ?」

海未「どうしたのです?亜里沙?」

絵里「亜里沙?」

亜里沙「うそでしょ・・・!?」

希「どうしたん!?」

亜里沙「よ、読みますね。」

『以上として、私個人が伝えたい事は以上である。この遺産を見つけたという事は、
この島の本当の主と言うこと。なので、この島の秘密を伝える。』

海未「秘密・・・?」

『この島は戦時中、軍の基地として使われた記録を持つ。私はそこを買い取った訳だ。」

絵里「ほぉ・・・。」

『買い取ってから気づいたのだが、どうやらこの島には、大量の爆弾が眠っているらしいのだ』

にこ「大量の・・・爆弾!?」

『この事を政府に言い、除去してもらおうとも考えた。しかし、

この島を買った事を穿り返されると非常に 面倒くさい。

この島と病院は黄金を換金して建てた訳だが、あの黄金はずっと前から政府が狙っているものなのだ。

もし国に見つかったらあの手この手を使って全額取られる事は無いだろうが、

難癖をつけてかなりの額を取りにくるだろう。政府関係者はこの島には呼びたくはない。

しかし、大量の爆弾をこのまま放置しておくのも 忍びない。

そこで私は、管理の意味で、爆弾を自由に爆発させられる、そんな仕掛けを時計に施したのだ。』

希「・・・なんやて・・・?」

絵里「ちょっと待って?時計ってこの・・・時計?」

手紙のおいてあったテーブルの上にはアンティークで中々立派な貫禄のある時計がある。

にこ「この時計が・・・爆発するスイッチって事なの!?」

亜里沙「その時計で間違い無いみたいです、『この手紙が置いてあったテーブルの上の時計』と書いてありました。」

『この手紙が置いてあったテーブル、その上に時計があるな?その裏側を見てほしい。左右に押すことの出来るスイッチがあるはずだ。』

真姫「・・・あったわよ!スイッチ!」

海未「本当にあるとは・・・。」

『このスイッチを右側に押したままにすると、次の24時に爆発する様になっている。

眠っている爆弾の量はおよそ900トンだそうだ。島ごと吹っ飛ぶだろう。』

にこ「900トンって・・・!そんなの爆発したら、この屋敷どころか、クレーターができるわよ!」

亜里沙「昔ある国で、列車の爆発事故があったんですが、
その威力が1トン爆弾の100倍と言われているんです。
その時は半径五百メートルの住宅が完全に崩壊したそうですよ・・・。」

絵里「仮にそれが100トンの威力だと考えても、それの九倍でしょ!?
そんなのが爆発したら・・・!」

希「跡形も残らへんなぁ・・・。」

にこ「でもそれが爆発したら全員死ぬわよ?このスイッチを押した人も。」

亜里沙「それも書いてありますね。」

『なお、この爆発が何かの事故で動いてしまった時のために、脱出路も作っておいた。

テーブルの下にスイッチがあるはずだ。それを押すと脱出路への道が出来るはずだ。』

にこ「・・・あった!これね!」

にこはスイッチを押す。

すると、テーブルの横の壁が動き、通路が現れた。

中は真っ暗だ。

にこ「はーまるで映画みたいよね・・・!あいてっ!」

にこは何かに頭をぶつける。

にこ「海未!明かりをつけてー!」

海未が明かりをつける。

すると・・・

真姫「・・・なにこれ・・・。」

海未「嘘でしょ・・・。」

希「なんやこれ・・・?」

そこは通路と言うより、武器庫だった。

『その通路には、昔軍が使っていた武器もしまわれている。これも、国の者を呼べない訳の一つである事は分かるだろう。 この通路を5kmほど行くと、島の反対側にある小さな小屋にでる。その小屋の中なら爆発が起きても大丈夫だろう。 この島に隠されている事は以上だ。この手紙を読んだ者の幸福を願う。  西木野雷道朗』

亜里沙「きゅ、旧日本軍の武器庫・・・?」

絵里「ずいぶん沢山・・・。」

拳銃はもちろんの事、手りゅう弾、ヘルメット。防災ずきん、拳銃、博物館でしか見たことのない物がずらりと並ぶ。

にこ「す、すごい・・・。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
亜里沙「なんて島を買ったんですか、真姫さんのおじい様は・・・。」

黒い女「政府の人をこの島に呼べなかったのは、黄金が理由というだけじゃなかったのね。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

黄金、金とはこの世にある魔力の集合体だ。

数枚の札で簡単に人を殺してしまえるそれは、人を操る魔力を持っていると

考えていいだろう。

それと同等の価値の物が見上げる程に積み上げられていたら、この部屋にはどれほどの魔力が充満しているのだろうか。

にこ「馬鹿いわないでよ!山分けよ山分け!だって手紙にもそう書いてあったじゃない!」

真姫「それは、黄金の事でしょ!?この通帳の事は勘定に入っていないわよ!」

黄金を手に入れた者たちの叫び声が地下室を響かせる・・・。

・・・彼女たちは莫大な価値を持つ黄金を手に入れた訳だが、冷静に考えてみるとこのインゴットがすぐに 換金される訳ではない。

刻印も入って無い上に、歴史的に見てもかなり古いので、鑑定に時間がかかるだろう。

その上、県が狙っている事もある。

全額正しく換金されるかも怪しく、それがいつ頃済むのかも定かではない。

メンバーにはそれぞれ火急に大金が必要な事情があるのだ。

そして今、手元にある大金は、通帳の中の五千万しかない・・・。

彼女たちは数十億の価値のある黄金の前で、五千万の分け方について紛糾していた。

にこ「真姫ちゃん一人で謎が解けた?解けなかったでしょう!?その通帳も含めての

九等分でしょうが!」

真姫「そもそもこの遺産は私、西木野の遺産なのよ!?黄金の場所を解いてもらった事は
感謝しているけれど、それはこれ(インゴット)を換金してわけてチャラでしょうが!
それを通帳もだなんて、図々しすぎるわよ!」

希「それはあなたの親族はおじい様を邪険に扱った結果やん?
それを私達に言うのは逆恨みとちゃうんか?」

にこ「それにこの島には、銃とか爆発物とか、危ない物を分かっていて所有しているわよね?これってよく分からないんだけど、犯罪なんじゃないの?」

真姫「にこちゃん、脅そうって訳?」

亜里沙「だから、それをうやむやにする分も、全て含めてチャラにして、なーかよく九等分しましょうよ?悪くない話ですよね?」

海未「ちょ、にこも亜里沙も落ち着いて・・・。」

絵里「海未、少し黙ってて!」

真姫「そこまで言うなら上等じゃない!」

真姫は手紙を手に取る。

希「何をする気や・・・?」

真姫「あなた達に渡さなきゃいけないという制約はこの、 遺言状による物よ。
もしこれが破れて無くなればあなた達は受け取る資格を失うわ!それでもいいの!?」

にこ「それがどうしたのよ!?こっちには通帳と印鑑とパスワードがあんのよ!
あんたがそれを破いたら私達もこの通帳、どうするか分からないわよ!?あんたの焦り様を見ていると、 あんたもこの通帳のお金が欲しいんでしょう!?それも全額!私達はこのお金の一部で良いけど、 あなたの所は困るんじゃない!?」

絵里「それにこの島の事、全部を警察、マスコミ、ありとあらゆる所にぶちまけるわよ?
さぞスクープになりそうだけれど、大丈夫?」

真姫「そ、その程度の事で有利になったつもりなの!?」

海未「ひっ!」

真姫は通路にあった近くの銃を手に取るとそれをにこに向ける。

銃を持つ手はプルプルと震えていたが、目は獲物を狙う肉食獣の様に獰猛だった。

にこ「なーにその銃は!?それで私達を殺すの?いいわよ!やってごらんなさいよ!
あんたが殺人を犯したら、あんたの家の親はどうなるかしらねぇ?医者の娘が人の命を奪う殺人鬼とくれば、 こりゃあ大スクープよ!」

気づけば皆、武器庫にあった銃を知らず知らずのうちに持っていた。

それは、身の危険を感じての防衛本能なのか、それとも・・・。

黄金が人の本性を引き出す様に、武器には人の凶暴性を引き出す様だった・・・。

にこと真姫は相手を薄汚く罵りあいながら、とうとう取っ組み合いを始める。

豪華な地下室は、あっという間に低俗な場所と化した。

海未はその光景を訳が分からないと言わんばかりに茫然としていた。

海未「落ち着いて下さいにこ!真姫!黄金は逃げないんですよ!?
もっと冷静になってくださいよ!」

絵里「そうよ!まずは銃を下しなさい!」

希「そうや!銃を置くんや銃を!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

亜里沙「これは、ひどい・・・!」

亜里沙はこの光景に、出来る物なら目を瞑りたかった。

当たり前だ。

自分の憧れている人たちが、金の事で相手を罵り合っているのだから。

亜里沙「皆、黄金の山に冷静さを失っている・・・、ヒドイ・・・。」

黄金の山は逃げないが、この秘密が洩れてしまったら色々面倒になるのは明らかだ。

利益が減るどころか、受け取る事も出来なくなるかもしれない・・・。

つまり、メンバーが最大利益を得ようとするのなら、

まずはメンバーがこの黄金の秘密を守るという紳士協定が必要なのだ。

もし自分がその場にいたら、仲裁をしていただろう。

しかし、画面に映っている亜里沙は、

亜里沙「・・・。」

絵里と希がケンカを止めている中、亜里沙だけは、手を口に置いて、ケンカをじっと見ている。

自分の事だからよく分かる。

あれは、考えを纏めている時に亜里沙がよく行う癖だった。

亜里沙「こんな時に私は何を考えて・・・。」

黒い女「ククク・・・。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^

パアン!!!

その時、大きな爆発音が部屋内を響き渡った。

それを誰も銃声とは思わない。

だって、普通に暮らしていたら、そんな音、聞いた事がないのだから。

ボト、ボトボト・・・。

それは、真姫の顔、顎からでる血の音だった。

銃弾は真姫の顎から頭にかけて貫いていた。

海未「に、にこ・・・?」

にこ「わ、私じゃないわよ!!真姫ちゃんが突っ込んでくるから!」

にこはそう言って銃を落とす。

その銃口からは、煙が出ていて、それの役割を実行した事を表していた。

落とした金属音を合図に、真姫はゆっくりと後ろに倒れる。

ドシャア!!

海未「いやああああああああああああああああ!!!!!!」

絵里「真姫!?真姫!!!」

にこ「わ、私、私じゃない!!」

真姫が倒れた頭の位置からは、血が湯水の様にドクドクと出ている。

それが、真姫の顔を染めていく。

亜里沙「・・・・・・。」

絵里「にこ・・・、あんた!」

希「に、にこっち、あんた何で、真姫ちゃんを撃ったん!?」

にこ「わ、私は撃ってないわよ!!!ち、違うのこれは、やめろって言ったのに
真姫ちゃんが、と、とにかくこれは事故なのよ!!」

>>217>>218
だからver2だったのか
見てくるわ

そう言って一歩にこが踏み出すと、希が一歩後ずさる。

にこ「ちょっと・・・!何で逃げるのよ希ィ!?私は殺していないって言っているでしょ!」

希「こ、来ないでっ・・・!」

にこ「えっ・・・?」

希「来ないでよ人殺し!!来ないでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

にこ「こ、殺してない!!殺していないわよ!!!」

そう言いながらにこは今度は希に飛びかかる。

にこは疑惑を晴らしたいだけの様だが、希から見てみれば、親しい友達を撃った殺人犯だ。

それが近づいてきたのだから、希は恐怖でいっぱいだった。

希「来ないで!!来ないでぇぇえ!!」

にこ「ころ、殺してないってばぁぁぁぁぁぁあ!!!」

今度はにこと希が取っ組み合いになる。

海未「ふ、二人とも冷静になってくださいよ冷静に!!」

希「誰か助けて!にこちゃんがうちを殺しにくるううううう!!!」

にこ「ちがっ!!これは事故!!事故なのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

パアン!!!

再び爆発音が木霊する。

にこの顔に返り血がついた。

二人はにこの持っている銃で相手を押しあう様に取っ組み合いをしていたのだ。

その時にたまたま希の顎の下に入る様になって・・・銃が爆発した・・・?

希の口、いや、顎から血がとろりと出る。

それは一度出ると、勢いを増して止まらなくなった。

バタンッ!!

絵里「希ぃ!!!」

にこ「うわあああああああああ!!!!う、うわあああああああああ!!!!」

海未「にこ、あなた!!」

にこ「違う!!違うのよ!!希の指が引き金に・・・これは事故よ!!」

事故、事故と繰り返し叫びながら半泣きのにこに対して、海未、亜里沙、絵里は声をかけられない。

にこ「事故よねこれは!?皆!!見ていたでしょぉ!?海未、亜里沙、絵里!!」

海未「・・・私にはそれが事故かどうか、判断できません・・・。」

亜里沙「私もそうです、偶然暴発したのか、それを装って殺したのか、私は知りません。」

絵里「私もよ、分からないわ。」

三人の表情はとても冷やかで、それがかえってにこの冷静さを失わせる。

にこ「この馬鹿!!誰がどう見ても事故じゃない!!どうするのよ!?銃で死んだ・・・事故でごまかせないわよ! どうすれば・・・そうだ・・・ここに隠せば・・・それか森に!」

絵里「そんなんで誤魔化しきれる訳ないでしょ!?警察が島中を捜索するのよ!?
そもそもなんでこんな雨の中、未開の森に二人が出かけるのよ!?メチャクチャよ!」

にこ「だ、だったら、も、燃やせばいいじゃない!セカチューみたいに燃やして灰にして海にばらまけば!!!」

亜里沙「人の死体を燃やしてもそう簡単には灰になりませんよ。
骨にする事は出来ると思いますけど、それだと銃創がありますから殺されたとバレてしまいます。
そもそも無人の島で人ひとり失踪したとなれば、どんな言い訳をしても怪しまれてしますよ。」

にこ「じゃあどうすればいいのよ!?さっきから否定的な意見ばかり出していないで、あんた達も何か建設的な意見を出しなさいよ!!!」

海未「そ、そんな事を言われても・・・。」

にこ「ああああああああ!!どうすればいいのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」

気が狂った様ににこは頭を掻き毟る。

にこ「どうすればいいのよ!!!どうすれば・・・はっ!!!!」

感情をあらわにしていたにこが突然何か、天啓を受けたかの様に上を見ていった。

海未「な、何か思いついたんですか?」

にこ「事故に見せかけるのよ・・・。」

海未「だから、その事故にするのが無理なんですよ!銃創でばれてしまいます!」

にこ「だから、銃創すら残らない、もっと、もぉっと大きな事故にするのよ・・・。」

海未「・・・どういう・・・?」

にこはゆっくりとテーブルに向かい、あるものを叩く。

それは、時計だった。

にこ「爆発事故よ!全て爆発事故に見せかければいいのよ!!!!」

にこは時計の爆発スイッチをいじりながら、舌を出して、目をぱっちり開きながら、

狂気に満ちた顔と声で言う。

それはまさに狂人の考え。

時計のスイッチを右に入れて次の24時を待てば 九百トンの爆発でこの島は跡形も無く吹き飛ぶ。

死体?そんなの残る訳ない。

そもそも爆発前に何があったかなんて、絶対にわからない。

にこ「この島に爆弾があるのは手紙に書いてあった通り!
それが明日の夜、何かの拍子で爆発してしまう!
これならどう!?事故でいけると思わない!?警察にだって分からないわよ!
二人死んだのも誤魔化せるわ!!!」

海未「何を言って・・・。」

海未は何を馬鹿な事を、反論する事を考える。

しかし、ない。全てを吹き飛ばして何もかもを有耶無耶にできる!!

二人が死んだことを誤魔化せる!!!

にこ「完璧よ!さすが私!さすが矢沢にこ!!そうよ!!真姫ちゃん達が死んだのも
事故だもの!もう一個事故が起きるだけ!!!
警察への言い訳は私が考えるわよ!とにかく私達は全員明日、島の反対側にある
小屋にいた!そこで偶然爆発があって無事だった!そういう事にすれば良いのよ!」

絵里「・・・それはどんな言い訳なの?家主の真姫と希を残して全員で隠し部屋から通じる小屋に行っていて都合よく無事って・・・、無茶苦茶すぎるわよ。」

にこ「無茶苦茶でもなんでも、それはこれから考えるって言っているでしょうが!!何でもいいのよ!! 考えてよ!!あんたたちもほら!!何をぼーっとしているの!?
いいから考えてぇぇぇぇぇ!!!!!」

絵里「にこ、質問するわ。インゴットはどうするのよ?」

にこ「・・・はぁ?そんなの運べばいいじゃない運べば!!
爆発は明日の夜24時!まだ1日あるのよ!?1日あれば手分けして・・・。」

絵里「無茶も対外にして!!このインゴット何個あると思ってるの!?
500個以上はあるのよ!?・・・ライブで使うでかいアンプを二人で担ぐのもやっとな私達が、たった一日で一体何個のインゴットを、島の反対側まで通じる地下道を徒歩で往復して運べるって言うのよ!?無茶苦茶でしょ!」

にこ「このカードがあるじゃない!さっき封筒に入っていたカードが!これには
五千万入ってる!黄金は時間いっぱい運んで、それとは別に五千万円あるのよ!」

絵里「嫌よ。」

にこ「何が!?」

絵里「ここに数十億あるのよ?
どうして五千万を分割した数百万で我慢しなきゃいけないのよ?」

にこ「え、絵里・・・。」

絵里はあり得ないと言った態度で告げる。

にこ「あんた何言っているのよ!?協力する気はないの!?」

海未「もう無理なんですよ!!こんな事!!にこ、もう止めましょうよ!!」

海未が絵里とにこの間に入る。

海未「もう、止めましょう・・・?にこ、お願いがあります。」

にこ「な、何よ・・・?」

海未は半泣きになりながら、にこに告げる。

海未「素直に、素直に警察に・・・自首してください!」

にこ「は、はぁ・・・!?何を言うかと思えば・・・。」

海未「事故でも故意でも、二人はもう死んでしまったんです!!
ならもうしょうがないじゃないですか!?
全てを話しましょうよ!警察に!」

絵里「確かににこが自首して事件解決っていうのはアリよねぇ・・・?事件が単純ならば、警察もそんなに詳しく調べないからこの部屋まではバレないでしょ、ただこの部屋で事件が起こった事にはしたくないわねぇ・・・?コレがある事がバレちゃうし。
・・・森とかどうかしら?雨降ってるし誤魔化せるかもよ?にこ。」

海未「ちが、私はそういう意味で言った訳では・・・!!」

絵里「イイのよ海未、さっきから事故、事故って言っているけど、それで私達が不利益を被るのはおかしな話よ、自分の罪を人に押し付けないで。」

にこ「あ、あんた達!!!!!」

絵里「いいじゃない、少年院。
未成年だし、事故なんでしょ?だったら何十年も食らう訳じゃない。
数年で出てこれるのよ?出てきて罪を償ったら、その時にこの黄金の山を分けた数十億を好きにすればいいじゃない。」

にこ「ふざけないでよ!私が捕まったら妹たちはどうなるのよ!?」

絵里「知らないわよ、そんな物。」

にこ「え、絵里ィィィィ!!」

絵里は最初からにこの案に賛成する気などさらさら無いのだ。

真姫たちの死を隠ぺいできても、利益は増えるどころか少なくなってしまう。

利益だけを追求するならば、余計な工作をせずにこに自首をしてもらうのがベストなのだ。

ただ現場を変えてほしいだけ。

しかしにこは捕まりたくはない。

数十億が数百万に変わるのは悲しいが、ここで自分が捕まったら・・・。

そもそもにこの借金はその数百万で十分おつりがくるほどなのだ。

例え数十億吹き飛ばすにしても犯罪を隠ぺいしたい・・・!

自分が捕まればどうなる?あの下衆な借金とりの魔の手は必ず妹にまで伸びるだろう。

それだけは絶対に出来ない・・・!何のために自分の初めてを犠牲にしてまで・・・!!

しかしそれは、絵里からすれば世迷言なのだ。

にこ「え、絵里ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

にこは憤怒の形相で銃を構える。

絵里「何?今度は私を撃つの?ますます言い訳がし難くなるわよ?
三人の死に関わったなんてばれたら、いくら未成年でも相当な罪よね?
それでもいいの?にこ。」

にこ「え、絵里ィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」

ちりちりと、二人の間で導火線の様な物に火が付くのが分かる・・・。

黄金の部屋で、死神の鎌が、ゆっくりと首にかかるのがわかる・・・。

パアン!!!!

その時、またしても銃声が響き渡る。

にこと絵里はお互いに撃たれたと思って目を瞑るが、どこにも外傷は無い。

絵里「え・・・?」

にこ「・・・?」

二人が驚きを隠せないでいると、

バタンッ!

海未が倒れた。

それは、まるで人形が押されて倒れる様に・・・膝を折りたたまずに、無機質に倒れる。

にこ「う、海未!?・・・ち、違うわよ!!私じゃない!私、本当に引き金を引いていないわ!!」

絵里「わ、私でもないわよ・・・!!あ、亜里沙!?」

亜里沙「・・・。」

動揺する絵里、にことは違い、亜里沙は冷静だった。

亜里沙は銃を静かに下し、煙の出ている銃口を服で拭う。

・・・今撃ったのが誰なのかは、明白だった。

亜里沙は飽きれながら言う。

亜里沙「・・・さっきから聞いていたけどお姉ちゃん、考えが足りないよ。
人が死んだ今、無刻印の、大量のインゴットを世間から隠して換金するのがどれだけ
大変か・・・。
せめて真姫さんが生きていたらどうにかなったと思うけど、真姫さんはもうこの世にいないでしょ?無理だよ、換金なんて。
換金出来ない黄金の山なんて、鉄くずの山と同じだって。」

絵里「亜里沙・・・。」

にこ「・・・ははは、そうよね?」

亜里沙は腰に手を当てて、息を吐きながら言う。


亜里沙「・・・考えてもみて下さいよ。何百個ものインゴットが換金されるだけでも目立つのに、それを本来受け取るはずだった一家の娘が怪死して、全く無関係の私達が受け取るんですよ?これで怪しむなという方が無理な話です。
警察沙汰にしない様がいいです。さっきにこさんが仰っていたみたいに、この島を吹き飛ばして証拠隠滅、インゴットが欲しいならどうぞお好きに。
一人数百万円で十分、それが正しいと思いますよ。」

にこ「あ、ありがとう!亜里沙と同じ考えでとてもうれしいわ!
警察が介入すれば何が起こるか分からない!換金なんて、できる訳ないわ!
真姫ちゃんの祖父が残したあの五千万が私達にとって手に入れられる有一のお金なのよ!
そして、それだけで十分すぎる!」

絵里「・・・有一・・・分け前・・・。」

亜里沙「そういう事ですよ、この数十億に目が眩まなければ、 私達はお金を持ってここから出られる。
この島で起きた事を 無かった事にしてね。」

もはや銃の暴発とか、事故だとか、この島では意味をなさないのだ。

明日の24時に何が起きようと、全て爆発事故という結果で上塗り出来るのだから。

にこ「それを自首しろ・・・?頭が沸いてるんじゃない!? 分かった絵里!?」

絵里「・・・・・・。」

絵里は先ほどから手を口にあてていた。

それは、亜里沙と同じで、考えを纏める時にやる癖・・・。

にこ「分かった!?絵里!!」

にこが絵里に言うのと、絵里がそのポーズを止めたのは、ほぼ同時だった。

絵里はもう狼狽している様子はなく、蛇が獲物を捕食する時の様な、そんな目をしている。

絵里「・・・えぇ、やっと『分かった』わ。」

亜里沙「・・・。」

その目を見て、姉はやっと考えに至ったのか、と亜里沙は心の中でほくそ笑む。

亜里沙「やっと『分かった』のね、お姉ちゃん。」

絵里「・・・えぇ、理解が遅くてごめんなさい、亜里沙。」

亜里沙「えへへ、良いよお姉ちゃん。」

にこはそれを見て、皆が自分の意見に賛同したのだと思って、安心する。

にこ「でも亜里沙、海未を殺す事は無かったんじゃない?海未だって話せば分かってくれたわよ。」

それを聞いた亜里沙と絵里は思わず顔を見合わせて、苦笑する。

にこ「・・・何がおかしいのよ?」

亜里沙「何でもないですよ・・・。
殺す必要はありましたよ?だって、海未さんは銃を撃っていないんですから。」

にこ「・・・それはどういう意味?」

絵里「海未の銃はね、まだ発砲していないのよ、亜里沙以外が持っている銃は、一発撃つごとに撃鉄を起こさなきゃいけないの。
・・・簡単に見えて、結構難しいらしいわよ?」

にこ「何の話をしているのよ?あなたたち・・・?あり・・・っはっ!!!」

亜里沙はようやく分かったのかと、苦笑しながら銃をにこに向ける。

にこはやっと亜里沙が何の話をしているのかを理解した。

『海未はまだ撃てる銃を持っていたから先に撃った。』

そして、にこは最後まで気づかなかった。

にこと亜里沙の射線上にいた絵里がいつの間にか、亜里沙の後ろに移動していた事に・・・。

・・・なんでもっと早く気がつかなかったのだろうか。

さっきこの島では全てが爆発で上塗りできると、理解したはずなのに・・・。

にこがとっさに姿勢を低くするのと同時に亜里沙の銃が牙を剥く。

パアン!!

だが、人間が実弾より早く動ける訳はない。

にこ「っ!ああああああああああああああああああ!!!!」

亜里沙の弾は、にこの腹部に着弾した。

にこの体を激痛が襲い、思わず蹲り、腹に手を当てる。

にこ「はぁ・・・!はぁ・・・!」

その手は赤く染まっていて、腹からは泡立ちながら血が噴き出していた。

絵里「・・・ごめんなさいね、にこ。」

絵里はにこの持っていた銃を拾い、弾数を確認する。

にこ「え、絵里ィィィィィィ!亜里沙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!あ、っごふ!
・・・最初から、あんた達、これが狙いで・・・!」

絵里「私が気づいたのはさっきだけどね、亜里沙はそのつもりだったみたいよ?」

亜里沙「そろいもそろって、頭が弱いんですね、先輩方。
爆弾の仕掛けを聞いた時、この島から秩序が消え去った事に気がつかないなんて。」

もちろん絵里も亜里沙も最初から独り占めを狙ったわけではない。

亜里沙が最初に銃を取った時、亜里沙はこの銃の弾倉の見方を知っていたのだ。

何故ならば、亜里沙は勉強熱心で、日本が好きだからだ。

だから、日本の歴史についても勉強したし、日本が戦争で使った道具ももちろん勉強していた。

それでこの銃に入っている銃弾は二発と気づいた。

そう、亜里沙の銃では絵里を除いても一人殺せないのだ。

だから真姫、希が殺された時、亜里沙は驚いた。

事故が足りない銃弾を満たしたのだ。

実際に撃つのはもちろん初めてだが、銃の撃ち方と、リロードの仕方だけを覚えておけば

この距離なら誰でも当たる・・・。

二度目の暴発事故で、この虐殺劇はすでに約束されていたのだ。

にこ「あんた達ィ!!よくも!っ私をぉ!!」

にこは、亜里沙、絵里を呪い殺す様な目で睨む。

そんなにこを、亜里沙は見下ろしながら、

亜里沙「こういう時に言う言葉は日本なら確か・・・、悠々なる哉天襄、 遼々なる哉古今、 五尺の小躯を以て比大をはからむとす、 ホレーショの哲学竟に・・・なんだっけ?」

絵里「・・・『何等のオーソリチィーを値するものぞ、 万有の真相は唯一言にしてつくす、
曰く『不可解』、我この恨を懐いて煩悶終に死を決す。』よ。
でも亜里沙、辞世の句はこれから死ぬ人が言う物だし、必ずこれを言う訳じゃないのよ?」

亜里沙「へぇ~、また一つ勉強になったよ、ありがと、にこさん。」

そう言うと、亜里沙は落ちている海未の銃を拾い、にこの額に当てる。

・・・銃口は、嫌に冷たく感じた。

にこは己の死期を悟る。

にこ「あああああああああああぁああぁぁぁ・・・呪ってやる!!!あんた達!地獄に堕ちろ!!」

亜里沙「それが辞世の句?・・・じゃあね、にこさん。シーユーアゲイン、また、会いましょ?」

パアン!!

発砲音と共に、にこの頭はぶちまけられ、身体が一、二回跳ねた後、動かなくなった。

絵里「・・・五千万の通帳と印鑑は?」

亜里沙「えっと・・・、あった。床に落ちていたよ。」

亜里沙はそれらを拾い、ポッケにいれる。

真姫の祖父が残した五千万の通帳。

それだけで十分だ。

数十億の価値のある黄金があるから分からなくなる。

人はほんの数十万で十分殺し合いが出来るのだ。

それが、五千万。

今通帳の金は、絵里と亜里沙によって独占された。

絵里「この中に五千万かぁ・・・、
微妙な額よねぇ・・・、一生働かなくてもいいって言うほどの金額じゃないし。」

亜里沙「まぁ、借金は返せるからいいじゃないの、その後は『今』を片付けてから決めようよ。」

屍だらけの黄金の部屋で、二人はいつもと変わらない笑顔を浮かべあう・・・。

絵里「どうしましょう?これから。」

亜里沙「聞くまでもないでしょ?」

亜里沙は武器庫から銃を選ぶと、それに合う銃弾を見つけ、弾をこめていく。

亜里沙「時計のスイッチをオンにして、明日の二十四時を待つだけだよ。」

絵里「海未達の姿が見えないと、騒ぎになるわ。」

亜里沙「・・・騒がせなければ良いだけでしょ?」

絵里「・・・やっぱりそうなるわよね。」

亜里沙「覚悟を決めて。お姉ちゃん。ここまで来たら、五千万を得るか、死ぬかだよ。」

絵里「・・・そうね、そうよね。」

亜里沙はテーブルに上り、時計にある爆弾のスイッチをオンにする。

これで明日の二十四時に、この島は全て吹き飛ぶ。

亜里沙「じゃ、行こっか?」

亜里沙の声はこれから遠足にでも行くような、そんな明るい声だった。

絵里「・・・ええ、やりましょう。」

今、第二の虐殺劇が幕を開けたのだった。

亜里沙「そ、そんな・・・!」

こんなバカな話があるだろうか。

映像を見ていた亜里沙は驚愕する、

まさか自分が殺人犯になっているなんて。

亜里沙「しかも、別に誰に先導された訳でもなく・・・。」

完璧に自分の判断で行っている。

そして、これから行う事は・・・。

亜里沙「あ、ああああああ、あああああ、ああああ!!!」

亜里沙は段々と思い出す。

自分がどれだけ恐ろしい事を行ってきたのかを。

亜里沙「お、おえええええええええええええ!!!!」

黒い女「あらあら、汚いったらありゃしない、ちゃんと見なさいよ。

これが、あなたのしてきた事よ?」

亜里沙「う、嘘だ!嘘嘘だ嘘だ!!!嘘嘘嘘嘘嘘だ!!!!あなたは嘘をついている!!!

仮に私が殺したとしても、それはループした世界であって、現実の世界でh」

黒い女『今映っている映像は全て本物で、現実のものよ?』

亜里沙「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおうわああああああああああああ!!」

魔女にしか使えない力ある言葉で言われたら、身も心も信じてしまうしかない・・・。

それは、真実。

ただただ、真実でしかない・・・。

25:10 ことりの部屋

穂乃果「あれ、真姫ちゃんからメールだ。」

ことり「なんだって?」

穂乃果「起きている?だって。」

ことり「どうしたんだろ?碑文解けたのかな?」

穂乃果「ことりちゃんと、いるよ・・・っと。」

穂乃果「それならすごいよね!あ、またメール来た、早いな。
ええっと、見せたい物があるから、一人で管理室に来てくれだって。」

ことり「見せたい物・・・?一人で?なんだろうね?」

穂乃果「分からないけど、とにかく行ってくるね、メール返しとこ、りょ、う、か、いっと。」

ことり「はーい、行ってらっしゃーい。」

穂乃果は何の疑問も抱かず、管理室に向かった。

書庫室

亜里沙「お、返事返って来た返って来た。」

絵里「穂乃果から?」

亜里沙は真姫の携帯をポイと捨てる。

亜里沙「そうそう、これから管理室に来るってさ。」

絵里「そう、じゃあ決めた通り、私も先に行ってくるわね。」

亜里沙「お姉ちゃん、本当に私がやらなくてもいいの?」

絵里「・・・いいのよ、姉として、妹だけにこんな事させられないわ。」

亜里沙「・・・そうじゃなくて、お姉ちゃん、メンバーを殺せる?
今頃になって良心の呵責とか、出てきたんじゃない?」

亜里沙は絵里を見ながら冷たく笑う。

絵里「・・・見損なわないでよ、もう後には引けないわ。」

亜里沙「・・・。」

本来ならば、穂乃果を呼び出した所を二人で襲うのが一番安全だろう。

しかし、絵里自らが一人でやらせてくれと亜里沙に志願したのだ。

亜里沙は少し考えたが、結局はそれに賛成した。

絵里に覚悟を宿らせる為だ。

ここで亜里沙が全てをやってしまってもいいが、それだと絵里に『手を汚す』という覚悟が宿らない。

絵里自信に自ら手を汚させる事で覚悟をさせる事が出来るのだ。

・・・亜里沙は人間のそういう心理的な物をとても深く理解していた。

亜里沙「・・・・・・。」

絵里「・・・・・・・大丈夫よ、心配しないで。」

亜里沙の冷酷な視線に絵里はつい顔を背けてしまうが、すぐに振り向いて言う。

絵里「五千万が手に入るかどうかの瀬戸際なのよ、こんなチャンス二度と来ないわ。」

亜里沙「・・・、さっすがお姉ちゃんだよ、じゃ、行ってらっしゃい。」

絵里「えぇ、すぐに済ませてくるわ、亜里沙は?」

亜里沙「私は上にいることりさんと、・・・雪穂をやってくるよ。」

絵里「そう、お互いがんばりましょ。」

絵里は銃を持って管理室に向かった。

亜里沙はため息をつくと、返り血のついたエプロンを脱ぎ、放り投げる。

亜里沙「お姉ちゃん大丈夫かなー、どう思う?凛さん、花陽さん。」

放り投げたエプロンの先には、凛と花陽が血まみれで倒れていた。

凛は首をすっぱりと切られ、花陽は腹に穴が片手で数えきれない程空いている。

誰が見てもその最後が容易に想像できた。

亜里沙「さてと、穂乃果さんが管理室に向かうまで、隠れていようかな。」

亜里沙は二人を差し置いて隠れる場所を探す。

右手には銃、左手にはナイフを持っていて、今の亜里沙は完全な殺人鬼だった。

隠し部屋

海未「・・・ん?ここ・・・は・・・。」

確か自分は亜里沙に撃たれて・・・、

海未は体を確認すると、特に痛みは感じなかった。

弾は頭にあたったが、少しかすった程度で、致命傷には至らなかった。

この部屋には真姫、希、にこの死体。

まさに死屍累々という言葉が相応しい死の部屋・・・。

海未「そ、そうだ・・・!亜里沙と絵里は・・・!」

亜里沙はすでにいなかった。

海未はまわりを見渡すと、 時計の爆弾のスイッチがオンになっている事に気付く。

海未「まさか・・・にこが言っていた事を実行するために・・・。」

海未はそれを見て、まだ自分に出来る事があると気づく。

海未「穂乃果や皆が危ない!助けないと!!・・・!いっつ!」

海未は頭に手を当てる。

掠ったとは言っても銃弾だ。

少し出血していた。

海未はふらつきながらも武器庫に行く。

テレビでよく見るオートマチックの銃を選ぶとそれを持って試し打ちをする。

海未「亜里沙と絵里はきっと皆を殺す・・・。それだけはさせちゃいけない!!」

それは、銃弾の入っていた箱から銃弾が乱暴に掴み取りしていった痕跡があったからだ。

それは、それだけの量の弾を使うという意志が残されている。

海未「無事でいて下さい・・・皆!」

海未はゆっくりと一階を目指すのだった。

管理室

その後、管理室で迎えられた穂乃果は、リビングで見せたい物があると絵里に言われて後をついていく。

穂乃果「絵里ちゃん、見せたい物って何?それと真姫ちゃんはどこなの?」

絵里「真姫は今、ある物を持ってここに向かっているのよ。
ちょっと重いからね、少し手こずっているのかも。」

穂乃果「何それ!?もしかしてぇ!もしかするの!?」

絵里「フフー、穂乃果は驚くと思うわ、
まぁそこに座っていなさいよ、今紅茶を淹れてあげるわ。」

穂乃果「ありがとー!」

穂乃果はそわそわと落ち着かない様子で席に座る。

碑文を解くと言っていたチームの一人が見せたい物があると言うのだ。

期待しない方がおかしいだろう。

穂乃果が座った事を確認すると、絵里は予め机の上のバスケットに隠しておいた拳銃を取り出す。

それは、穂乃果から見れば背になっているので気がつかない。

穂乃果「絵里ちゃんは、何か知っているんだよね!?」

絵里「もちろんよ、きっと、喜ぶと思うわ。」

穂乃果「ねぇねぇ!?それってもしかして、おうg・・・、」

振り返った穂乃果の顔の鼻先に、小さい金属がぶつかる。

それが銃口だとすぐに認識すれば見てからでも回避出来ただろう。

・・・しかし、日本に住んでいる普通の女子高生には少々酷な事なのかもしれない。

穂乃果「・・・えr」

パアン!!!

雪穂の部屋

パアン・・・。

雪穂「・・・何?今の音は?」

雪穂はぐっすりと寝ている最中だった。

が、今の物音で思わず起きてしまう。

雪穂「雷・・・でもないよね?」

それは、子供のころにクラスの悪がきが仕込んだ爆竹を思わず踏んでしまった時の様な、そんな音だった。

雪穂「・・・?」

雪穂は上に服を羽織ると、ゆっくりと扉を開ける。

ギイイイイイイイイイイイイイ

廊下にひょいと顔を出すが、特に異常は見られない。

が・・・、

雪穂「あれ、何で扉開いているんだろ?」

部屋の一室の扉が開いているのだ。

確かあの部屋はことりの部屋なはず・・・。

何で開けっ放し・・・?

雪穂「何かあったのかな・・・?」

雪穂はことりの部屋に近づき、中を覗き見る。

雪穂「ことりさーん、います・・・きゃあああああああああああああああ!!!」

雪穂は、ことりが玄関の真ん前で死んでいるのを発見する。

何故倒れているでは無く死んでいると分かるのか?

雪穂「うわああああああああああああ!!」

緑色の可愛らしい服は、今や血塗られた花が咲き、首からは上は、やはり赤く染まっている。

その出所は、腹と、額のど真ん中。

そこから穴が開いていて、血が噴き出しているのだ。

雪穂「いや、いやああああああああああああ!!
何これ!?こと、ことり、いやあああああああああああ!!!!!!!」

雪穂は急いでドアを閉める。

それは、これ以上現場を荒らしてはいけないと思ったのか、

はたまた、これ以上死体を見たくないと思ったのかは分からない。

雪穂はへたり込みながら無意識に後ずさる。

コツン。

雪穂「えっ・・・?」

雪穂は背中に何かが当たったのと同時に、目の前に自分を覆う様に影が出来たのを感じる。

雪穂はゆっくりと上を見る。

雪穂「えっ、亜里沙、その姿どういう・・・、」

そこにはいつの間にか、血まみれの亜里沙が笑顔で立っていて、右手で何かを力いっぱい振り上げていた。

それは、廊下の明かりに反射してうまく見る事が出来ない。

たた、それは細長く、光が反射している事から金属の様な物なんだろうなぁ、と雪穂が思った所で振り上げられた何かが雪穂に向かって振り下ろされた。

ゴン!!

視界が揺れ、目の前が赤く染まる。

雪穂が倒れるのと、金属バットで頭を殴られた痛みを感じるのは同時だった。

雪穂「あああああああああああああああああ!!い、痛い!痛いよぉ!!!!」

亜里沙「・・・雪穂、来ちゃったんだ。ことりさんを殺す時に、拳銃を使ったのが失敗かぁ・・・。」

雪穂「くっ痛い・・・痛い!!あ、亜里沙・・・?亜里沙なんで・・・?ことりさんをってまさかっ・・・!?」

雪穂は何故か腰から下を動かす事は出来なかった。

亜里沙はゆっくりと雪穂に馬乗りになると、金属バットを振り上げて、頭めがけて振り下ろした。

ごんっ!!

ゴンッ!!

グシャアア!!!

雪穂「ああああああああああ!!!!!やめて!!痛いよ亜里沙!!!あああああ!!」

雪穂は頭を腕で庇うが亜里沙はお構いなしと頭を狙って何度も金属バットを振り下ろす。

頭に当たらない代わりに、手や指、腕に当たり、爪が飛び、小指と人差し指、薬指が折れた。

ごん!!

ごんっ!!

ごんっ!!

雪穂の言葉に亜里沙は答えず、頭を狙って振り下ろす。

雪穂「やめて、いたいいたいいたいいたいいたいよぉぉぉぉ!!指折れてるんだよやめてよおおおおおおおお!!!!あっ、ああああああああああああああああ!!!!!」

雪穂の左手が、力を無くした様にペタンと床につく。

肘にバットが当たり、骨が折れてしまったようだった。

亜里沙「はぁ・・・、はぁ・・・。」

亜里沙は静かにバットを下す。

雪穂「な、何で、何でこんな事するの!?ヒドイ!!ひどいよ亜里沙!」

亜里沙「・・・ごめんね?雪穂?痛い?本当なら痛みも感じる暇なく逝ける様に
寝ている所を襲おうと思っていたんだよ?でも雪穂起きちゃうから・・・。」

雪穂「何で?なんでこんな事するの?ことりさんを殺したのって亜里沙だよね!?
ねぇどうしてよ!?答えてよ亜里沙!!!!」

雪穂は半ば狂乱になりながら亜里沙を糾弾する。

それに対して亜里沙の返事はあっけない物だった。

亜里沙「雪穂、この事は忘れて?」

雪穂「は・・・?何を言って・・・。」

亜里沙「この事は忘れてよ、雪穂。
明日の夜には全てが無かった事になっているからさ、
突然の事故で、私とお姉ちゃん以外はみーんな死んじゃうの。
それまで私達は、これでもかって言うくらい楽しんでいたんだよ。
μ'sは、世界で一番仲が良くて、数いるスクールアイドルの中でも
とびっきり最高のチームで、私の憧れの先輩たち『だった』。
・・・そうなるんだよ。だから、これは夢なの、忘れて?雪穂」

亜里沙が何を言っているのか、雪穂に意味が分かる訳もない。

雪穂が分かるのは、亜里沙が自分を殺す事に、なんら躊躇していないという事・・・。

・・・かわいくて優しくて、頭の良い、一番の親友が、どうして・・・。

雪穂は訳も分からず、涙が溢れる。

雪穂「亜里沙ぁ・・・、どうして・・・こんな事を・・・。」

亜里沙「ゴメン、続きはまた『今度』にしよ?お姉ちゃんが待っているから。」

雪穂「っ・・・!絵里先輩まで・・・!どうして・・・。」

亜里沙は金属バットを静かに雪穂の額に乗っける。

それは、銃口を額に突きつける行為のそれと似ている・・・。

後は、銃なら引き金を引く様に、

バットなら、振り上げて、そこ目がけて思いっきり振り下ろすだけ・・・!

亜里沙「じゃあね、雪穂、私の一番の親友。シーユーアゲイン。」

亜里沙はバットを振り上げるが、一方で雪穂は片方の腕で頭を庇う事もせず、亜里沙を見ながら泣きじゃくっていた。

雪穂「もういやよ・・・、これは夢なの・・・、そうよ、じゃなきゃ・・・、亜里沙が
人を殺すなんて、信じられない。」

それを見て雪穂は何の躊躇いも無く、狙った場所目がけてバットを振り下ろす。

ゴンッ!!

ゴリッ!!

バットを通じて、何かが割れる感触を味わう亜里沙。

それでも何度も何度もバットを振り下ろしていく。

ゴンっ!!

ゴンッ!!!

ゴンッ!!!!

その度に、亜里沙の顔に、服に、真っ赤な飛沫が付いた。

亜里沙「ねぇ、ねぇねぇ?痛い?・・・雪穂痛い?私、今どんな顔しているのか、なっ!
多分笑っていると思うんだけどっ・・・さ!私を見てよ!雪穂!!雪穂!!」

ゴンッ!

ゴンッ!!

ゴンッ!!!

グシャアア!!!!

最初は振り下ろす度に反応のあった雪穂の体も、両の手で数えられない程振り下ろしたら、

何も反応しなくなった。

しかし、亜里沙はバットを振り下ろすのを止めない。

別に、亜里沙は雪穂に対してなんら恨みは持ってないし、親友だと今でも思っている。

じゃあ何故ここまでするのか・・・?

亜里沙自身、それは分かっていなかった。

普通、親友をこの手で殺したとなれば、悲観的な気持ちになるはずだ。

では、何故自分は、口角を釣り上げている?

何故、腹から声を出したくて、出したくてしょうがないのだろう・・・?

ゴンッ!!

亜里沙「くっくく。」

ゴンッ!!

ゴンッ!!

亜里沙「くっくっくくくく・・・クキキキキキキキキキキキ、クッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」

ゴンッ!!!

ゴンッ!!!!

破壊音、打撲音、金属音、粉砕音、そして、亜里沙の笑い声。

それらを混ぜた音がこの場を支配する。

すでに雪穂の顔は目は潰れ、鼻は折れ、歯も飛び、もはや血塗れの肉塊と化していた。

亜里沙「雪穂ぉ、この気持ちはなんだろう、教えてよぉ雪穂ぉ!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

グシャアア!!!!!!!

亜里沙はきっと気づくだろう。

この惨劇が、この音が止む頃には、きっと・・・。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一階ホール

パアン!!!

海未「!?」

海未は、今日だけで片手でも足りない回数を聞いた音を聞く。

海未「銃声!?穂乃果!?」

海未はよろけながらリビングを目指す。

そして、なんとかリビングにたどり着くと、

絵里「・・・。」

絵里が血まみれで倒れている穂乃果を見ている所だった。

海未「ほ、穂乃果・・・、穂乃果ぁ!!!」

絵里が海未に気付く。

絵里「海未っ!?あなた、生きていて・・・。」

海未「動かないで!!!」

海未は絵里に銃を突きつけた。

絵里「・・・。」

海未「よくもぉ・・・・、よくも穂乃果を・・・。」

絵里「・・・亜里沙の馬鹿、運が良いわね、海未。」

海未「えぇ、おかげ様で生きていましたよ!!でも穂乃果は、穂乃果はもう・・・、よくも!!!」

海未は涙を流しながら銃を構えてゆっくりと絵里に近づいていく。

絵里(躊躇は・・・、してくれないか・・・。)

悲しみと怒りに震える銃口が、自分の胸元を狙っている事を感じとり、絵里は
少しずつ後退りながら必死に知恵を絞る。

絵里(どうする・・・?拳銃にはもう弾は残っていない。
ポッケには入っているけれど、この状況じゃ・・・。
リロードするのに八秒、いや、せめて五秒あれば・・・っあれは!)

絵里は自分から見て三歩下がり、左に四歩進んだところにソファがあるのを発見する。

絵里(なんとか注意を逸らしてソファまで駆け込んでリロードできれば・・・いける!!)

絵里「お、落ち着いてよ海未!!その銃を下して!!私だって、こんな事望んでいなかった!仕方なかったのよ!!」

海未「人を殺しておいて、仕方なかったで済ませるんですか!?ふざけないで下さいよ!!」

絵里(なんとか、注意を逸らして、・・・そうだ!!)

絵里「と、とにかく話をしましょうよ!ことりもここに来る事になっているの!
あ、ことりー!!」

絵里はさも廊下からことりがやって来たかの様に、声をかける。

海未「えっ・・・。」

海未の関心がそちらに向き、後ろを向く。

絵里(やった!!)

絵里は海未が後ろを向くと同時にソファまで駆けて行った。

絵里(後二歩でソファに・・・、)

パアン!!

銃声が聞こえると同時に、走っていた絵里は姿勢を崩し、蹲る。

玉は絵里の腹に命中した。

絵里「・・・っくっ!!」

絵里は傷口を手で押さえながらソファに向かおうとするが、

パアン!!

絵里「ああああああああ!!!」

海未に足を撃ち抜かれ動けなくなった。

海未「絵里、あなたは私と同じで、嘘が下手くそなんですよ・・・!」

絵里「フフフ、ダメ・・・だったかぁ・・・。」

海未は絵里の銃を蹴り飛ばし、額に銃口を突きつけた。

海未「絵里!!!ことりは!?皆は無事なんですか!?」

絵里「・・・ゴメンね、海未、・・・・・・凛と花陽はもう殺したわ。
ことりと雪穂も・・・亜里沙が今頃、殺していると思う・・・。」

海未「そんな・・・!嘘・・・嘘ですよね!?絵里!?嘘って言って下さいよ!!」

絵里「・・・書庫室に花陽と・・・、凛がいるわよ。」

海未「絵里・・・、あなたって人は・・・嘘ですよ・・・!」

嘘と言いつつも、海未には絵里の言っている事が全て本当だと分かっていた。

たった一年間だが、ほぼ毎日の様に一緒にいたのだ。

だからこそ、分かってしまう。

今の絵里の言葉が、嘘ではない事を分かってしまう。

絵里「・・・どうして、こんな事に・・・、なったの・・・、かしら。
自分で引き起こしてナン・・・だけど・・・、わからなくなって・・・きちゃ・・・
ごめ・・・ね、・・・み・・・。」

海未「絵里!?絵里!!!」

海未が最初に撃った弾は急所を打ち抜いていたのだ。

絵里「ごめ・・・ね・・・。」

絵里はそういうと、目を閉じて息を引き取った。

海未「絵里・・・、そうだ穂乃果!!!穂乃果は!?」

急いで穂乃果の元に駆けつける。

が、穂乃果の顔は見れた物では無かった。

目は開いたままで、後頭部には飴玉ほどの大きさに、

ひき肉状の穴が開き、血をぶちまけながら中身を晒している。

その中はソーセージの皮の様な脳みそと、脳髄の真っ赤なゼリー。

それを中でグルグルにかき回してから降った後の様な汁が

頭と目、鼻、耳、口という穴という穴から出ていた。

海未「穂乃果ぁ・・・!くっ、うううううううううううう!!!!!!!」

海未「くうううう!!!!・・・いやっ!まだです!!」

海未は立ち上がる。

メソメソしていられない。

ことりと雪穂も今、命を狙われているのだ。

・・・もしかしたら、まだ間に合うかもしれない!

海未「急がなくては・・・!」

海未が部屋を出ようと振り向いたその時、




     亜里沙「あー・・・、やっぱりお姉ちゃんダメだったかぁ・・・。」

部屋の入口に、いつの間にか亜里沙が立っていた。

海未「・・・亜里沙!!!」

亜里沙「なーんか、嫌な予感はしていたんですよ。
こういう時の私の予感って大抵当たるんですけど、今回も当たっちゃったみたいですね。
こんな事なら、やっぱり一人ずつ呼び出して殺すべきだったんだよなぁ・・・。
そのせいで、雪穂を殴り殺す事になっちゃうし・・・。」

亜里沙の体は、血に塗れていて、髪から血をポタポタと垂らしている。

その風貌は、立派な殺人鬼たる姿だった。

絵里が死んだにも関わらず、亜里沙には焦りも狼狽も無い様に見える。

ただ目を瞑って手で頬に付いた血を拭い、ウンウンと頷いて目を開けた時には亜里沙は笑みを取り戻していた。

海未「なぐり殺すって・・・、亜里沙、あなた、その金属バット・・・。」

扉に立て掛けている金属バットはボコボコに凹んでいて赤く黒ずんでいる。

・・・どの様にして、その形状になったのかは明白だった。

亜里沙「あぁ、これですか?」

カランカラン・・・。

亜里沙は海未に向かって金属バットを放り投げる。

床に落ちたそれは血の線を引きながら、ゴロンゴロンと海未に向かって転がっていき

・・・海未の靴に当たり、紅く染めた。

亜里沙「しっかし、私もショックですよ、海未さん。」
あんだけ近くにいたのに、殺すどころか、傷一つ無いとは。
銃の才能は、私にはどうやら無いみたいです。」

海未「そんな事はどうでもいいんです!!ことりは、雪穂は!?
その金属バットはなんですか!??答えなさい亜里沙!」

亜里沙「ことりさんと雪穂ですか?お姉ちゃんから聞いていません?
殺しましたよ?この金属バットは雪穂を殺した時に使った物です。」

当たり前の事を聞くなと言わんばかりに顔をしかめる亜里沙。

海未「殺しましたよって、・・・!どうしてそんな事が出来るのですか!?
あなたは、私達に憧れていたのでしょう!?
雪穂だってそうです!!あなたの一番の親友じゃないのですか!?」

亜里沙「雪穂は今でも親友だと思っていますし、μ'sも私にとって、永遠の憧れですよ?
でも、それはそれ、これはこれです。
生かして朝を迎えれば、騒ぎになって面倒になります。
この島は別に連絡の取れない吹雪の中の山荘でもなんでもない。
今は雨と風で閉鎖的な空間になっていますが、メールや電話は使えるんです。
メンバーの一人がいなくなったら、誰かがそれを使って助けを求めるかもしれないですよね・・・?
爆発事故にしておきたい私にとっては、これが極めてベストな方法なんですよ。」

海未「あなたそれでも人間ですか!?お金の為に人を殺すなんて!!」

亜里沙「資本主義のこの世の中で、お金はいわば、命の様な物、栄養です。
それを養う為に他者を殺す事が、そんなに悪い事ですかね・・?
それに、あなただって、内心これで良かったと思っているんじゃないですか?」

海未「っ・・・!?どういう事ですか!?」

亜里沙「簡単な話ですよ、もしあのまま銃の暴発が起こらなかったら、私達は
ずっと口論を続けていたでしょう。
そうすれば、海未さんなら、いえ、あの場にいた全員が私と同じ答えにたどり着き、
実行したんじゃないですか?」

海未「そんな事・・・、考えもしませんよ!普通の人なら!!」

亜里沙「どうですかね・・・?現にお姉ちゃんは遅かったとは言え、私の企みに気づきましたし、にこさんもこの島を爆発させれば証拠を隠ぺい出来る所までは気づきましたよ?
賭けてもいいですが、もしあのままにこさんの策に乗っかって、私とお姉ちゃんと海未さんが気づかなければ、確実に殺されていたでしょうね。」

海未「・・・。」

亜里沙「そういった意味では、あの場にいた全員が殺人鬼なんですよ。
ただ、考えが早いか遅いかの違いなだけ・・・。
海未さんもですよ?あなたがならなかったのは、暴発に救われた事と、私とお姉ちゃんが先に考えに至ったから、ただそれだけです。
もし海未さんがあの中で誰よりも考えが早かったら、あなたが私の役をやっていたと思います。」

海未「・・・・・・・・・っ!」

・・・わからない。

しかし、海未も亜里沙に言われてうすうすそうかもしれないと思えてきた。

あの時、自分は暴発に救われただけで、口論が続けばにこや、亜里沙に殺意を持ち、それを実行したのかも・・・?

海未はその可能性を否定できない。

その答えは、欠片を渡る事の出来る、魔女にしか分からない。

・・・海未が殺人を犯していた未来も、あるのかもしれない。

だから海未は、銃を握りしめながら、沈黙するしかなかった・・・。

亜里沙「現に、あなただって、私のお姉ちゃんを殺したじゃないですか?」

海未「っ!ちが、違いますよ!あれは正当防衛です!仕方がなかったんですよ!」

亜里沙「『人を殺しておいて、仕方がなかったで済ませるんですか』って海未さん、お姉ちゃんに言いましたよね?」

海未「う、うるさい!!元はと言えば、あなた達が原因じゃないですか!!
あなた達が殺さなければ、こうは!!」

亜里沙「そうです、私達のせいですよ!いやぁ、凛さんも、花陽さんもとても良い悲鳴でしたよ、雪穂なんて、バットで振り下ろす度に体がビクビク震えてね、本当に楽しかった!」

海未「こ、この悪魔め・・・!!」

亜里沙「今この別荘で生き残っているのは、私達だけ。
勝った方が、五千万を手に入れる事が出来る。」

そう言って、亜里沙はポケットから銃を出し、海未の胸のド真ん中に狙いをつける。

亜里沙「さぁ、通帳と印鑑は、ポケットに入っていますよ!欲しいですよねぇ?五千万!私を殺せば手に入れる事が出来ます!同じ殺人鬼同士、殺し合いで決着をつけましょうよ海未さん!!ククク・・・あははははははははははははははははは!!」

海未「この、悪魔めえええええええええええええええええ!!!!!!」

亜里沙「クックックックッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒイヒヒヒ、あははははははははは!」

パアン!!

パアン!!

銃声が二つ重なる。

亜里沙「・・・。」

海未「・・・。」

ドシャア!

倒れたのは海未だった。

海未の撃った弾は外れたのだ。

亜里沙は銃を下して、高笑いをする。

亜里沙「ふっふっふっふっふっふっふっ!はははははははははははははははは!!!」

パアン!!!!

亜里沙「はっ?」

亜里沙は聞きなれた音を聞く。

それは、さっき自分が発した音と同じ音だったからだ。

亜里沙は自分の体が倒れていくのを感じながら、自分の胸を見る。

そこからは、血が吹き出し穴が開いていた。

亜里沙「バ・・・な・・・ど・・・し・・・。」

亜里沙は最後の力を振り絞ってなんとか顔を上げる。

海未はフラフラと血まみれの腹をかばいながら穂乃果の方へ向かって行った。

・・・なんて事はない。

海未は撃った瞬間、強い立ちくらみに襲われて姿勢を崩してしまっただけの事。

それで、亜里沙は狙った場所に当たらず、腹にあたり、海未に至ってはあたりもしなかった。

しかし、亜里沙がとどめを刺さずに銃を下げてくれたおかげで、海未はスキをついて撃つことが出来たのだ。


亜里沙「ちく・・・しょうが・・・。」

亜里沙は絶命する。

殺人鬼のあっけない最後だった。

海未「はァ・・・はァ・・・。」

海未はなんとか穂乃果の元へたどり着く。

即死は免れたが、急所を撃ち抜かれた事に変わりは無い。

海未は自分の命がもって後わずかだと確信した。

海未「穂乃果ァ・・・!」

ダンッ!!

海未は拳を地面に打ち付ける。

後少し早ければ・・・、助けられたのに・・・!

海未「あっ・・・」

海未が穂乃果の横で倒れる。

もう海未には目の前が何も見えなかった。

海未(くっそ・・・!)

海未の意識は深い底へ沈んでいった。

魔法の欠片 欠片番号1934348538938593942個目

海未「ここ・・・どこですか・・・?」

海未はゆっくりと目を覚ます。

そこは上下左右真っ黒な不思議な世界。

そこに海未は浮いていた。

まるで宇宙の中にいるみたいだ。・・・と思った。

その周りをまるで小惑星が飛ぶかの様に赤、白、黄色と、綺麗な色の欠片が動いている。

黒い女「あら、目覚めた様ね、おはよう海未、調子はどう?」

ピンクの女「ずいぶん派手な展開だったわねぇ・・・。ま、お疲れさま。」

海未「ここは・・・?あなた方は?」

黒い女「私達は魔女。
そうね、人間よりも上の存在だと思ってちょうだい。」

ピンクの女「それと、これを覚えてる?」

ピンクの女が指を振ると丸い球体が出てきた。

その中には小さい別荘のような建物が入っている。

海未「ジオラマ・・・?ですか?」

黒い女「そう。このジオラマは真姫の別荘、あなた、ここで殺されたでしょ?」

海未「・・・はい、そうですね、私は亜里沙に・・・殺されました。」

ピンクの女「本当なら、そのはずだったんだけど・・・私が生き返らせてあげたのよ!」

黒い女「感謝しなさいよ?こんな事滅多にないわ。」

海未「は、はァ・・・。ありがとうございます・・・。」

ピンクの女は気をよくしたようで、

ピンクの女「うんうん。素直な子は好きよ、私。ところであなた、大切な人、守りたくない?」

海未「え・・・?」

ピンクの女「今までの事は私達は全部見たわ、あの高坂穂乃果って子、好きなんでしょ?」

海未「べべ、別に好きとかそういうんじゃ・・・。」

ピンクの女「ああ、はいはい分かっているから。

それでね、助けたくない?穂乃果を。」

海未「・・・はい。助けたいです。」

ピンクの女「あなたを助けたのだから分かると思うけど、私達は人を自由に生き返らせる事なんてちょちょいのちょいなのよ。」

ピンクの女「だからもし言うことを聞いてくれれば穂乃果だけとは言わず、全員助けてあげるわよ。」

海未「本当ですか!?」

ピンクの女「えぇ本当よ。言うことを聞いてくれればね?」

海未「何ですか・・・?穂乃果を助けるためなら、悪魔にでも魂を売りますよ・・・!」

その言葉に二人の魔女はニヤリと笑う。

ピンクの女「上出来よ!実は今ね、そこにいるネクラな魔女と賭けをしているのよ。」

海未「賭け?」

ピンクの女「そうよ、賭け。これから起こる殺人事件を解くことが出来るか、それとも

その前に全滅するか、をね、あなたにはそれを手伝ってほしいのよ。」

海未「なるほど・・・つまり私にその事件を解けと・・・。」

ピンクの女「んにゃ?違うよ?だって私は『解けない』方に賭けているんだもの。あなたにやってほしいのは・・・。」



     ピンクの女「あなたの親友を含めたμ’sを皆殺しにする連続殺人鬼の役よ。」

海未「・・・!!」

海未は衝撃を受ける。

海未「私に・・・人殺しをやれと・・・言うんですか・・・。」

ピンクの女「そうよ、舞台となるのはあなたがさっきまで過ごした別荘よ。
状況も同じ、メンバーも同じ。
そこであなたには台風が去る前にμ’sを皆殺しにしてほしいのよ。」

海未「そんな・・・!そんな事無理・・・・!」

ピンクの女「じゃあこの話はオシマイね、違う人に任せよっかなァ・・・、高坂穂乃果とか。」

海未「分かりました・・・。」

ピンクの女「何がよ?」

海未「その役、引き受けます。」

ピンクの女「ほぉ・・・?二言はないわね?」

海未「ちゃんと、成功したら最後には全員生き返らせるんでしょうね?」

ピンクの女「もちろんよ。」

海未「じゃあ、やります。

ちゃんと皆を殺します・・・。」

ピンクの女「上出来よ、ルールを言うわ。

あなたにはこれから『殺人鬼』として『探偵』に完璧にばれずに殺人を実行してメンバーを皆殺しにする事。

仲間は何人いても構わないわ。でも最後には必ず殺しなさい。

もう一つ、絢瀬亜里沙を殺すのは最後にするか、亜里沙の推理を聞いて、犯人が間違っていたら殺してもいいわ。」

海未「亜里沙を最後に・・・?まさか・・・。」

ピンクの女「そう、賭けをしていると言ったでしょ?私があなたに賭ける様に、」

黒い女「私にも、賭ける人がいるのよ。それが、亜里沙。『探偵』よ。」

海未「なるほど・・・、あなた達、趣味の悪い屑野郎ですね。」

ピンクの女「その屑のゲームをやるあなたは、なんなのかしらね・・・?」

海未「覚悟はしてますよ。私はもう汚れています。しかし、いくら自分を汚しても、穂乃果だけは守りたいんです。」

ピンクの女「その覚悟よし!行ってらっしゃい!あの日へね!!!」

海未の前が緑から赤から黒くなり、眩しくなる。

海未は思わず目つぶった。

あの惨劇を、今度は自分の手で、起こさなくてはいけない。

海未(やってやります。そして、必ず!皆を生き返らせて見せます!)

一週目終了後

海未「何故ですか!?ちゃんと私は殺人を遂行したじゃないですか!?」

ピンクの女「完璧に、て言ったでしょ?確かに亜里沙を殺す事が出来たけど、
事件の一部は、過程はどうあれ解かれてしまい、真姫はそれを認めたわ。
あなたは『探偵』に事件を解かれずに殺人をしなければいけないのに、
一部とはいえ解かれてしまった。
これは頂けないわよね?」

海未「そ、そんな・・・!?」

ピンクの女「ただ、完璧に解かれた訳でもない。
私だって鬼じゃないわ、九の成功を、一の失敗があったからって台無しとは言わないわよ。
だから、今回は引き分けって事にしてあげるわ。」

海未「引き分け・・・、と言うと?」

ピンクの女「私も、向こうも、この結果で終わらせる気は無いって事よ。
だから、もう一回、再戦するのよ。
もう一回ね。」

海未「再戦って・・・、また私に仲間を殺させるのですか!?
また、十一人を、穂乃果を殺せって・・・、そんな!?」

ピンクの女「しょうがないじゃない、あなたがミスったんだから。
それとも降りる?別に良いわよ?そしたら、違う人にやってもらうだけだから。」

海未「っ・・・!くっ・・・、分かりました、殺します!今度こそは、完璧に、殺せばいいんですよね!?」

ピンクの女「そうよ、殺しなさいな、皆を救う為に、生き返らせる為に、その血塗られた手で、ね。
自分の手を汚してまで救おうとする絶対の意志が、あなたに力を与えるわ。
・・・ルールはおって、伝えるわね。
くっくっくっくっ!あははははははははははははは!!!!」

海未「今度こそ、今度こそ、完璧に、完璧に殺さなければ・・・、もう私は殺したくない、穂乃果を、皆を殺したくない、でも救わなければ、殺さなければ、救えない・・・。
っうっううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!」

亜里沙「あっあああああああああ!!!!!」

亜里沙は今こそ本当の真実を知る。

こういう事だったのだ!

亜里沙はずっと今まで海未が全ての元凶だと思っていた!

だが、違うのだ!

全て亜里沙が自ら起こした事で、それを助けるために海未が・・・!

亜里沙「うっうううううううううううう!!!!」

自分が愚かで、情けなかった。

どうしてこんな大事な事を忘れてしまったんだろうか。

ピンクの女「いやーやっぱ人が真実を知る時の顔はいいわァ・・・ぞくぞくするもん。」

ピンクの女「海未の時もすごかったわよ。引き分けってなった時の顔と言ったら!

やっとの思いで海未はかつての親友を殺したって言うのに亜里沙が中途半端に解くもんだから

もっかい初めからだもんねー。あんときの海未、気がくるってたんじゃない?」

黒い女「あなたが『完璧に』なんてつけるからよ。あなたの完璧主義には聞いて飽きれるわ。」

ピンクの女「中途半端に勝って後腐れが残るならすぱっとやってボロ負けした方がマシだわ!

別に勝つのは退屈を紛らわす手段であって目的じゃないもの。」

黒い女「あら、負け惜しみ?」

ピンクの女「そんなんじゃないもん!・・・さて・・・、負けた子には罰ゲーム、といきますか。」

亜里沙「!?海未さんに何をするつもりですか!!」

黒い女「簡単よ、一番ヒドイ欠片(平衡世界)に入れて死ぬまで遊びつくすの。」

亜里沙「!?そ、そんな!!辞めてください!するなら私にしてください!」

ピンクの女「だーめ、あなたは勝者でしょ?それに、あなたが代わっても、この子が

ぶち込まれるのはもう決定しているのよ。あなたは一人助かって、真姫の別荘を出る。」

亜里沙「そこを何とかお願いします!海未さんを助けたいんです!お願いします!!」

亜里沙は膝を折って、頭を下げる。

魔女たちはそれを黙ってみていた。

すると、ピンクの女はある事に思いついたのか、突然笑みを浮かべ、黒い女に耳打ちする。

黒い女「それは、いいわねぇ・・・。」

途端、黒い女も笑みを浮かべる。

ピンクの女「・・・亜里沙、顔を上げなさい。良いでしょう。
あなたのその態度、そして今までのゲームでのあなたの功績に免じて、
もう一度、ゲームをしましょう。
それをクリアする事が出来たのならば、メンバー全員を生き返らせてあげる。」

亜里沙「ゲーム・・・?」

黒い女「今までと同じ、真姫の別荘で起こる殺人事件。
あなたはそこで『探偵』になってもらう。
ね?簡単でしょ?」

亜里沙「・・・分かりました。『探偵』として、事件を解いて、『殺人鬼』が誰かを推理するんですね?」

ピンクの女「いいえ、事件はもう解かれているし『 殺人鬼』の正体はもう判明しているわ。」

亜里沙「事件はもう解かれている・・・?じゃあ何をしろと・・・?」

ピンクの女「その前に、次の対戦相手を紹介するわね。こいつよ。」

ピンクの女が、紅茶の入ったティーカップを垂らす。

紅茶は地面を濡らす前に煙と化し、人型の姿を作っていく。

亜里沙「・・・まさか!そんな!」

ピンクの女「今、現実の世界で、この事件について沢山の考察がされているわ。
その中で、今一番信憑性のある犯人説。それが・・・。」

煙から現れたのは、青と金色の、血まみれのドレスを着た、青い長髪のストレートの女性。

首には逆十字のネックレスを下げており、瞳は暗く、片手にはトゲの付いた鎖が何重にも絡みついて、

そのトゲを伝って血が垂れている。

亜里沙「海未さん・・・!?」

それは、見た目だけならば、園田海未の形をした物だった。

ピンクの女「紹介するわ、亜里沙。

彼女は現実世界において一番信憑性のある犯人説を概念化し、固定化した存在!『園田海未犯人説』、ウミよ!!」

亜里沙「そ、そんな!!現実の世界では、海未さんが犯人とされているんですか!?」

事件から六年後に流出した、『音野木坂文書』

事件の顛末は流出しなかったが、状況と人物のセリフから、ネットを通じて沢山の者が考察を始め、

沢山の推理、考察が掲示板に公開された。

その文書はある人物が犯人を紛らわせるために書いた者・・・。

だがネットの住民は、少し描写が細かなだけでそれを真実と捉えた。

その文書を元にした考察は、当然文章を作成した者の思い通りの考察となる。

星の数ある考察のうち、殆どが犯人は園田海未であると論じられていた。

『園田海未犯人説』と呼ばれたモノは、亜里沙をチラリと見て口を動かす。

その姿からは、これから処刑される魔女の様に、痛々しくも、禍々しいオーラの様な物を
感じられた。

ウミ「初めまして、『園田海未犯人説』、ウミと申しマス。本件において、『絶対』と『奇跡』、御両名の魔女の推薦により、あなたの対戦相手に選ばれまシタ。宜しくお願い致しマス。」

ピンクの女「ウミには『殺人鬼』、そして物語の語り手をやってもらうわ。」

絢瀬亜里沙「・・・あなた、海未さんじゃないんですか?」

ウミ「あなたの仰っている『うみ』と私は違いマス。
そもそも私は人間界において存在はせず、概念化した存在デス。」

亜里沙「・・・つまり、海未さんの形をした偽物って訳ですね?
・・・容赦しませんよ。」

ウミ「あなたが何を言おうと、私が犯人である事は多くの大衆によって望まれて決められた事実デス。真実とは、大衆が決めるものデス。大衆によってつるし上げられた魔女は、拷問より滴る血を持って赤き真実とし、火あぶりの刑を受けなければいけまセン。」

亜里沙「・・・あなた、海未さんじゃないですね。
海未さんは、ちゃんと自分の芯を持っている、とても強くて、
メンバーを助ける為であれば、自分の手を何度も汚す、そんなカッコいい女性なんですよ。
あなたみたいな弱い女性じゃない!!」

ウミ「・・・。」

ピンクの女「亜里沙、あなたがこれから開く物語、それはあなたが
何もしなければ、一人の人間が『犯人』として釣るし上げられ、処刑される。
まるで、証拠がない事を証拠とされる様な、魔女狩りの様にね。
あなたの勝利条件、敗北条件を伝えましょう」

ピンクの女は亜里沙にハートのシールの貼ってある、手紙を渡す。

亜里沙はそれを開けると、二つの条項が書いてあった。

=====================================
以下のゲームにおいて、絢瀬亜里沙の勝利、敗北条項を記す。

勝利条項
この物語において、『園田海未を除いた者から事件を推理し、犯人を探し当てる事』

敗北条項
この物語において、『園田海未が犯人と認める事』

========================================

亜里沙「これは・・・?」

ピンクの女「今からウミには、『園田海未犯人説』の物語を語ってもらうわ。
劇中では殺人事件が起きる訳だけどそこには、園田海未が犯人でなければ説明が出来ない事件が起き、犯人が園田海未だという証拠も沢山見つかる。
あなたはそれを聞いてもなお、『園田海未犯人説』を否定し、真犯人を見つけ出す事が出来るのか?そういうゲームよ。」

亜里沙「・・・園田海未が犯人だという証拠はあるが、園田海未が犯人ではないという証拠は無い・・・。そんな中でも私は海未さんを信じて犯人を捜さなくてはいけない。
まるで、悪魔の証明との対決ですね・・・。」

黒い女「その通りね。この物語はもう、園田海未が犯人という事でオチがついているわ。
物語の1から10までが決まっている以上、そこに入り込む余地は無いわ。
それでもやる?もちろん負ければ、分かっているわよね?」

魔女との取引だ。

もし負ければ、それは死よりもつらく、辱めのある罰を受けるだろう。

しかし、それでも亜里沙は迷わなかった。

亜里沙「やります!私は、絶対に負けません!!!」

ピンクの女「よく言ったわ!じゃあウミ、亜里沙!!始めなさい!!!!」

ウミ「・・・愚かな人でスネ。あなたは今、完結した物語を相手に、違う結末を与えようとしていマス。それがどれほど傲慢で、無謀な事か、知りなサイ。」

亜里沙(海未さん、絶対あなたを助けて見せます!!だから、もう少し待っていて下さい!!)

ピンクの女と黒い女は、舞台の上から姿の見えない客席に向かって、手を叩き、叫ぶ。

ピンクの女「さぁ!!ここに泣いても笑っても!最後のゲームが始まるわよ!!
今までのゲームとは少し違う、魔女のゲーム!お気に召してもらえると、大変うれしいわ!!」

黒い女「『絶対』と『奇跡』の名において、どちらが勝っても負けても、魔女好みの美味しい展開になる事は、保障するわ・・・。」

その言葉に、一斉に観客席からは、拍手が渦巻く。

パチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチ!!!!!!
パチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチ!!!!!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチ!!!!!!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!!

先ほどと同じく、その姿は見えず、拍手の音しか聞こえない。

ピンクの女も黒い女も、それは同様だった。

だが、この時、奇しくも彼女たちと客席の『ヤツラ』の表情は同じだった。

ピンクの女「くっくくくくくくくく!!魔女のゲーム!!あぁ・・・、楽しみだわ。
亜里沙、あなたが『真実』にどこまで対抗できるかどうか、楽しませてもらうわよ・・・。」

黒い女「フッフフ・・・!ほんっとうに退屈しない、良いオモチャを手に入れたもんよ。
でも、もうダメ、同じネタを四度もやれば退屈はすぐにでもやってくる!!
だからこれで最後。
その分、おもいっきり使って、使って!使って!!使い潰して!!!盛大にぶっ壊してあげるわ!!キッヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!!」

それは腹を空かせながらも、獲物を今か今かとじっと見つめる猛禽類・・・!

今、魔女による、魔女のための、最後のゲームが幕を開けたのだった。

「「きっひひゃ!!!くっひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひくっひゃははははははははははははははきひひひひひひひひひひくはははははははははは!!!!」」

<キャスト>

絢瀬亜里沙

園田海未

黒い女(ベルンカステル)

ピンクの女(ラムダデルタ)

ウミ(園田海未犯人説)

矢沢にこ

西木野真姫

絢瀬絵里

東條希    高坂穂乃果

南ことり   星空凛

小泉花陽   高坂雪穂

真姫母





絢瀬亜里沙「本当の犯人は、あなたです。」に続く。

これで前半は終わりでしたっけ……?


終わり!数日間あざした。

パク・・・参考にしたもの

うみねこのなく頃にEP1.2.3.4.5.6.7

スパイラル ~推理の絆~

です。

どちらも素晴らしい作品なので、興味が沸いたら見てみて下さい。

うみねこはEP1~7はPC版

EP8は漫画で見るのがオススメです。

最終話ですがまだ欠片も書けていないので、今回はここまでです。

社畜となってしまって書く時間は無いですが、来年までには投稿したいです。

HTMLは明日するので、ここおかしくね?変じゃね?意味わからんって所があれば指摘お願いします。

おつです

酉つけた方が良いで……
(まあもう終わったけど一応ね)

まだ続きがあるのか
とりあえず乙

名前とかの漢字が違うのは演出?

スパイラルって何
うみねこ以外の要素はどこら辺にあるのか教えてくれ

>>286
スパイラルは昔ガンガンでやってた漫画、アニメ、小説だな
推理もの(笑)で面白いよ


続きも待ってる


両作品知ってる身として楽しめた。

特に今回のラスト間での流れは、うみねこ本作を補っているように読めた。
次作も楽しみにしてる。


リメイク前共々楽しく読ませてもらった
オリジナル版はバットエンド+創作オチで完結だったけどそれも劇中の数ある考察SSの一つと解釈できるかな?

何はともあれグランドエンドを楽しみにまってます。ぜひ最後まで書ききってほしい

この作品はうみねこEP3 EP5のシナリオアレンジで、もう別EP書かないのかと思ってたから勝手にEP1 EP2の書き溜め作ってたんだけど…最後のEP7の部分でやりたいことやられてしまってどうしよう状態になってしまった…

ともかく次回作も期待してます!

作者です。

色々感想ありがとうございます。

以前は『絢瀬亜里沙 ss』で調べたらこのシリーズが一番に出てきたのですが。

今は『絢瀬亜里沙』と調べるだけでこのシリーズが最初のページに出てくるので

嬉しい反面、亜里沙のコンテンツ?の少なさに複雑な気持ちを感じます。

このSSの投稿でラブライブのミステリーSSが増えると嬉しいです。


以下レス返し

名前の間違え演出?→スイマセン、間違えました。

自分の経験からSSを読んでいて名前の間違えは読んでいて一番萎えるのは十分理解しているのですが・・・。

特に最後で間違えるとねー・・・かっこ悪いよねー・・・。気を付けます。


スパイラル~推理の絆~のどこをパクってるの?→腋にボールを挟んで脈を止めている所ですね。


>>291メチャクチャ見たいんではよ。



以上です。

最終回はどんなにかかっても必ず完成させるのでその時はまた視て頂けると嬉しいです。

赤字と青字バトルもありますので、うみねこ好きな人は少し楽しめるかも。

>>292
そう言ってもらえて助かりました
数ヶ月後に、雪穂「○○○」のタイトルで立てさせてもらいます

シリーズずっとファンで読ませてもらってます!
ニヤニヤが止まらない!
次回作めちゃくちゃ楽しみに待ってます!

>>273
海未はいれないから[ピーーー]人数は10人だよね

最後の方がだれて飽きた

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月03日 (金) 01:18:59   ID: wBZ-rB-2

頑張って

2 :  SS好きの774さん   2015年04月07日 (火) 01:56:35   ID: WqcXWwd1

めちゃくちゃ面白かったです!

3 :  SS好きの774さん   2015年06月09日 (火) 23:41:21   ID: VFi1hwb6

初めまして。私は高校生で、文芸部ををやっつているものです。、著者に質問があります。僭越ですが、あなたのこの作品の一部を、今度の自分の文化祭のノベルに使わせていただきたいのですが、よろしいですか?

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