P「『[親の顔が見てみたい]』」 (43)

※注意

・モバマスSS初投稿
・アイドルは諸星きらりだけ出演
・地の文、オリキャラ、オリ設定あり
・書いてるのはおっさん(JS)

それでも宜しければ、生暖かく見守っていただけると幸いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426910414

『【親の顔が見てみたい】などと言うと、蔭口の一種というのが通り相場でしょう。

眉をひそめるような仕儀の子供に、面と向かって難を言ったところで仕方がなく

代償として その子の親をこっそり貶める。

そんなときによく遣います。』

『しかし下世話ではありますが、純粋な興味として”親の存在が気になる子”というのも

確かにいるものです。

今回はそういう”いい意味で”親の顔が見てみたい一例として

私が担当するアイドル【諸星きらり】のご両親へ 色々と お話を伺うことで

ちょっと不思議な彼女の素顔を、ちらりとご紹介しようかと思います。』

<Proflie>

諸星きらり(17)

出身地:東京

身長:182cm

特徴:変わった言葉遣い、通称「きらり語」

特技:すぐに友達をつくれる

趣味:かわいいもの集め

『お陰様でご縁に恵まれ、少しずつではありますが様々な媒体で

きらりの名前と姿を目にする機会が増えてきたように思われます。

ありがたい限りです。


彼女のもっているプロフィールで、なんといっても目を引くのは

その大きな体躯ではないでしょうか。

テレビでたまたまご覧になった視聴者の方から「あの大きい娘はなんという名前なのか」

という問い合わせが局あてに来たと、たびたび言われます。』

『そんな彼女のご両親は、意外なことにどちらも標準的な背丈でした。

初対面--きらりの芸能界入りを許可していただくために訪れたときでしたが--のとき、

正直驚いて いきおい話題はそちらに流れて行きました。


 「父方の祖父が、雲を突くような大男だったので、それが遺伝したのかもしれない、って

 我が家では専ら言っています」


お母様がにこやかに答えると、隣でしずかに私を品定めする様に眺めていたお父様が


 「あまりに両親と違う背丈なので、幼い頃は 我々二人の子供ではないんじゃないか と

 本気で悩んだりしていたようです」


ふとそんな話を切り出し、きらりが恥ずかしさに顔を赤らめながら必死に


 「パパとママは、昔も今もずーっと、パパとママだにぃ…」


などと弁解していました。

終始なごやかな雰囲気の中、実にあっさりと きらりがアイドルになることを許可して

いただけました。』


『ご両親の人となりは穏やかそのもので、思わず独り言のように


 「やっぱりご両親あっての、きらりさんですね」


と述べさせていただいたりしました。

またもういやですよ、などとお母様は照れていらっしゃいましたが、アイドル諸星きらりの

心根のやさしさは、ご両親の愛情という器に包まれて、しっかりと受け継がれて

いるように思われます。』


『唐突ですが、すこし宣伝をさせてください。

今おおくの方が目にする、というか耳にする【諸星きらり】という娘の横顔は、おそらく

毎日夕方に放送されているラジオ番…』



??「うゆー??」


風に乗って雲が流れてきたかと思うような影がさす。ここは屋内のはずだが。

顔をあげると、不思議そうな顔で手元の原稿と俺の顔を交互に見ている、担当アイドルの

姿があった。


きらり「Pちゃん、それ何なのかにぃ?」

P「これか…これはな、きらりをいろーんな人に知ってもらうための、虎の巻」

きらり「ふーみゅ…あ、ねねね、見して見して☆」

P「まだだめ」

きらり「むぅー、Pちゃんのいぢわるぅ、むすぅー」


P「すまない、これからまだ裏を取ったり内容を選んだりしなきゃならないから」

P「今は見せるわけにはいかない…それに」

きらり「それに…なーに??」

P「これは、きらりへのプレゼントでもある」

きらり「うきゃ!?Pちゃん、ほんと?」

P「ああ、本当だ」

P「プレゼントっていうものは、自分で開けてみたいものだろう」

P「だから、きらりに渡せるようにこしらえるまで、もうちょっと待って欲しいんだ」

きらり「うん!きらり、待つにぃ☆…ありがとーPちゃん」

P「こちらこそありがとう」


P「…というか、打ち合わせとかはいいのか」

きらり「うん!ばっちしばっちし☆」

P「それは何よりだ…といっても、メールの相談に答えるだけだから」

P「あんまり打ち合わせることないのか」

きらり「うん、だからね、打ち合わせ終わったらコソーリ外のお客さん」

きらり「見てきちゃった、うぴゃ☆」

P「そうか…いっぱいお客さん、いたか」

きらり「うん!」ニコニコ

P「よかったな、いつも以上に頑張らなきゃな…そろそろ時間だろう、行っておいで」

きらり「はぁーーい、Pちゃんも、きらりのことちゃぁーんと見ててね」

P「ああ」


書きかけの原稿を鞄にしまい、スタジオのブースに顔を出す。

モニタ窓越しに見えるオープンスタジオのお客さんは、きらりの言う通り

駆出しのアイドルにしてはたくさんいるようだ。


番組ディレクタ氏(以下D)と挨拶をかわす。この人もきらりの大事な理解者の一人だ。


 「どうすれば、あんなおもしろい娘を見つけて来れるんです?」


などと、何気ない会話の折々に訊いてくるのがお約束になっている。


 「ティンときたので」


これもお約束の返しだ。


D「なかなかあんな娘はいませんよ、大事に育てたげて下さいな」

P「ありがとうございます、無論です」


番組開始のキューが入る直前に、ブースにいる自分の姿を見て

きらりの表情がぱぁっと花のように咲いた。

嬉し…くないといえば嘘だが、いまは番組収録が最優先。

観客も見ている。

そっちに集中しろ、と指で向こう側を指す。


D「お熱いねぇ、こりゃスタッフの割り込む余地ないですなぁ、ははは」

P「いや、その…申し訳ないです、よく言っておきます」


きらりの視界から隠れるくらいの位置まで下がり、耳でラジオを聴きつつ

テーブルがあるのをいいことに、さっきの原稿の続きを思案しはじめる。

ちゃんと担当アイドルを見つめておかねば、という後ろめたさはあるのだが。

きらり「≪諸星きらりの きゅんきゅん人生相談ぱわー☆≫」

きらり「午後のひととき、みなすぁまいかがお過ごしですかー、アイドルの諸星きらりだよぉ」

きらり「今日はぁ、いつものスタジオをどかーーーんって飛び出して」

きらり「どんぐり山スタジオから公開録音でーす☆うっぴょー」



---------------------

『…【諸星きらり】という娘の横顔は、おそらく毎日夕方に放送されているラジオ番組

[諸星きらりの きゅんきゅん人生相談ぱわー☆]のイメージから得られたものではないかと思われます。』


『駆出しのアイドルであるきらりに、人生相談のパーソナリティの話が来たとき

じつは最初、お断りしようかと考えていました。

役者さんなどもそうですが、様々な考え方や生き方を参考にして、悩める人へアドバイスを

示すには、単純に言えば齢を重ねている人のほうが圧倒的に有利だからです。


弱冠17歳の女の子では、アドバイスをするどころか相談相手の人生の重みに

自分が潰されてしまいかねない。

そう懸念していました。』


『しかし、ラジオ局のディレクタが


 「17歳にできる範囲で、一生懸命答えてもらうだけでいいですから。」

 「ただ体がでっかくて喋り方が変な女の子、っていう評価を見返してやりましょう。」


などと我々を熱く説得し、きらり本人も乗り気だったこともあり、半ば押される形で

請けることとなりました。


蓋を開けてみると、批判の声も無論ありますが、真面目なきらりへの一定の評価は

いただいているようで、とりあえず安堵すると共に、担当プロデューサとして見込みが甘かったと

忸怩たる思いです。』


『ただ言い訳がましいですが、きらりの人生相談に成算がなかったわけではありません。

というのは、かつてご両親からきらりの幼少時代の一面を聞いていたのです。


 「小学校高学年から中学校くらいまで、学校で孤立していたりいじめられていたりする

 子がいると、いっしょに遊ぼう、と言って我が家に連れてきていたんです。」


多いときには10人近くの子が、諸星家にごちゃまんと集まっていたようで


 「みんなどこの家の子だろうと思うほど、いつでも家にいたものです。」


つまはじきにされてしまう子供の事情というのはいろいろあったようで、中には


 「父がお酒を飲んで包丁を振り回して暴れてるんです、2~3日匿わせて下さい、って

 転がり込んでくる子もいましたね」


など自分でままならない運命を背負った子もいたようですが、たいていの子は

ちょっと世間と折り合いがつきにくくて付き合いのボタンが掛け違っているだけだったようで


 「『偏見を持たずにちゃんと話を聞いたら、みんな素敵な世界を持ってるんだよ』

 と、よくきらりは目を輝かせて話してくれていました。

 親ながら、きらりに気づかされることも多かったですよ。」


大好きな相手にすべてを見せて、すべて受けとめることで、きっと人はわかりあえる。

きらりにはそんな確信が、昔からあったようなのです。』


『長身のきらりは、学校でもいろいろ身体的特徴を揶揄されていたようです。

容易にその頃の話はプロデューサである私にもしてくれないのですが、


 「あるとき、おどけて”きらり、こんなにちっちゃいのにー”と言ったら

 みんなが大笑いしたことがあったらしいんですよ。

 そのときひらめいたらしいんですね、(言うべきことは言うけれど、自分の事は

 ユーモアにしてしまえばいい)って。」


以来、きらりの周囲に友人の輪が途切れることはなくなったそうです。


 「きらりの”にょわー”という喋り方も、確か家に連れてきた友達と話している

 うちにだんだんできていった、ものだったと記憶していますが。」


お父様の記憶を補うように、お母様が


 「そうそう、ちょっと舌足らずでからかわれていた子の喋り方を

 ”一人よりも、きらりと二人で喋れば仲間が増えて心強いから”とかいって真似ていたら

 いつの間にやら きらりの喋り方、みたいに言われるようになったんです。」


きらり自身もひょっとすると忘れているかもしれませんけれど、と仰るご両親の目には

あらゆるものが愛おしいと思える、きらりと同じ優しさと強さが宿っている様でした。』


『つい思い出話(諸星家の)に話が横滑りしてしまいましたが、きらりの身の回りには

出口のない人の突破口になるヒントが 幼い頃からたくさんあったらしい、という逸話が

人生相談番組出演への後押しになったのは事実です…』



---------------------

気付くと、スタジオの中にいるきらりの声のトーンがぐっと落ち着き

外のファンもしっかり聞き耳をたてている。

相談に対する答えが佳境に入ったようだ。


D「やっぱりきらりちゃんは、ものの見方が愛にあふれてるねぇ」

D「若いのに大したもんだ」


番組ディレクタが手放しに誉めてくれるのは、悪い気はしない。

しかしこの人、ただのファンである。


きらり「…とゆーわけで、†新世界の覇者†さーん、就職活動頑張るにぃ☆」


きらり「この番組でわ、メールを大募しゅーちゅーですっ」

きらり「きらりと一緒に、お悩み解決して、みんなではぴ☆はぴ☆なりゅー」

きらり「でわまた明日ー、じゃなかた、また来週ー」

きらり「 」ブースの外のみんなもありがとにぃ☆



D「お疲れ様、今日もよかったよ」

きらり「おっつおっつー、みんなきゅんきゅんでしたかー」

D「おう、きゅんきゅんだったよ、なぁPさん」

きらり「あ…Pちゃん、今日のラジオ、どうだった?」

P「ああそりゃもう、かわいかったし、ぐっときたぞ」

きらり「…うそつき」

P「え」

きらり「影でコソーリ原稿カキカキして、ラジオ上の空だったにぃ」


P「あ゜、あの…その、なんだ…すまない」

D「ほら、ちゃんときらりちゃん、見てるじゃないですか」

きらり「『きらりのこと、ちゃぁーんと見ててね』ってゆったら『ああ』てゆったのに」

きらり「約束破りー、ぷんぷーんだ」

P「面目ない…相談進むにつれて聴いてる人の空気が変わったのは、感じ取れたんだが…」

きらり「だーめ」

きらり「言い訳よくないんだにぃ、お約束は守ること、いーですかー」

P「はい」

きらり「きらり見ないで原稿カキカキしながら、ラジオ聴いたりしません、お約束」

P「はいもうしません、誓います」

D「ははは、きらりちゃん、Pさんのお母さんみたいだねぇ」

きらり「やーだもうDちゃん、きらりそんな大人の落ち着き、まだないゆ」


楽屋から出てきたきらりに改めて詫びると、


きらり「…じゃあ、【なでなで】してほしいにぃ、そしたら許してあげゆ」

P「ああ、お許しを請いましょう、きらり姫」


一瞥して、周囲に人がいないのを見計らい


P「悪い、膝、落としてくれるか」

きらり「うんっ☆」


見上げてばかりだったきらりの顔が、小柄な自分の真横くらいまで降りてきた。

いそいそと栗色の髪を撫で下ろすと、うぇへへ、と相好が崩れ

冗談でも何でもなく、赦された、と実感できた。

パッションさながらの、太陽のような存在だと思えた。


一応関係者通用口があるのだが、まだそこまで売れていないきらりの場合

さっきまでお客さんのいた表通り側の出口から、普通に出てしまっても

特段騒ぎが起きたりはしない。

あ、きらりちゃんだ!と寄ってくる人や、でけぇ!と呆気に取られたまま

すれ違う人。

そういう様々な人とふれあいたい、というきらりの要望もあって、公開収録後は

誰が言うでもなく【きらりとのふれあいタイム】みたいになっている。

サインに応じたり、子供を他界他界したりするきらりを、それとはなしに

護衛するのも、きらりのプロデューサのつとめである。


たぶん。


「お、チビPだ」

「チビPお疲れっす」


昔からのきらりのファンに、俺は【チビP】と言われている。

あまりに即物的な名前だが、難を言うも何も、きらりと40cmも身長が違っては

チビの名を冠せられるのも致し方ない。

開き直って最近では自分から名乗ったりしている。


チビP「おう、いつも応援有難う」

ファンA「いえいえ」

チビP「…いいのか、きらりにサイン貰ったり話したりしないで」

ファンB「俺らはいいっす、っていうか、俺らよりも最近ファンになった人に」

ファンB「もっときらりちゃんのこと、知ってもらうほうがいいっすから」


よく見れば古参のファンが、恥ずかしいのかきらりに近寄れない新入りさんに

なにやら話しかけて、ふれあう機会をさりげなく作っているようだ。


チビP「…殊勝だなお前らは、恩に着るよ」

ファンC「いえいえ、こんくらいしか出来ませんから」


ファンA「ところで今日はきらりちゃん、これで上がりですか」


普通はアイドルのスケジュールを いちファンがプロデューサから訊いたりなど

御法度なはずだが、どうもきらりの界隈はそのあたり、ゆるい。


チビP「まあ、な…それにここはどんぐり山スタジオだろう」

ファンA「ああ…やっぱり里帰りですか」


公開収録のスタジオは、実はきらりの実家から割と近い場所にある。

月に一度の収録の後、両親に顔を見せに戻るならいになっているのを

ある程度のファンならtwitterなどで知っている。


チビP「今日は俺もちょっとご実家に用があるから、いつも通りだが…頼むよ」

ファンB「ええ、皆してここできらりちゃんを見送ります」


こういうファンとアイドルとプロデューサの関係も、いつまでも続くものでは

ないよなぁ、売れたら売れたで痛し痒しだなぁ。

などと取らぬ狸の皮を勘定しているうちに、きらりが戻ってきた。


きらり「みんな、今日もありがとー☆」

ファン’S「「ありがとー」「最高っした」「あぁ^~」「おっつおっつー」」

チビP「お、戻ってきたか、じゃそろそろ行くか」

ファン’S「「チビPお疲れー」「Pおっつおっつ」「あぁ^~」「PかわいいよPー」」

チビP「…お前らなぁ、俺を応援してどうすんだよ」

きらり「しゅごーい、Pちゃん人気者ー、えらいえらーい」ナデナデ

チビP「ちょ、きらり恥ずかしいから、まてまておい」

ファン’S「「「「うわぁ…」」」」


ここまでテンプレである。


きらり「ただーまーー」

???「お帰りなさい、お父さんももう帰っているわよ」

きらり「うきゃ、パパもいゆー?うれすぃーなー」

きらり「あ、今日はPちゃんも一緒だにぃ」

???「おやまぁ…こんばんは、どうぞお入りください」


お母様が玄関まで出てきて、招じ入れて下さる。


チビP「あ、お構いなく、ちょっとお顔出ししたらもう戻りますので」

きらり父「おう、プロデューサ君じゃないか」

チビP「や、どうもこれはこれは…」

きらり母「どうですか、せっかく夕餉も整っていますので、しばらくごゆっくりなさっては」

きらり父「どうぞおあがりなさい、きらりの話も聞きたいしな」

きらり「Pちゃんいいでそ、あがってあがって」

チビP「いやあ…すみませんそれでは、ちょっとおじゃまして…」


どうやら今晩は、諸星家の皆様ととっくり過ごすことになりそうだ。

あとで事務員さんには戸締りのお願いを兼ねて、お詫びの電話をかけておこう。


---------------------

『諸星きらり、というアイドルを花咲かせる役目を、私はご両親から任されています。

プロデュースの方針について、親御さんにも青写真をお持ちの方が多く、三者面談のように

方針を決めてゆく人もいると聞きますが、こと諸星家からは、ああしろ、こうしろ、という

注文は全くと言っていいほどありません。


かといって放任しているわけではなく、きらりに不自由のないようにと、折に触れて

電話をかけて調子を伺っていらしたり、いつでも帰っておいで、と ご実家に居場所をととのえて

いらしたり、蔭ながらきらりを支えて下さっています。


 「きらりにはきらりの考えや人生がありますから、親であるからといって過度に干渉したり

 しないで、ちゃんときらりの意思を尊重したうえで、そっと見守ることにしているんです」


ご両親の愛情という、いちばんの養分をたっぷり吸収し、すくすく育ち続ける

アイドル・諸星きらり。


その大輪の花が咲くのを、プロデューサとして ご両親と同じくらい端正を込めて

お手伝いしようと思っております。(了)』


---------------------

きらりに怒られながらも書き上げた原稿を、お相伴に与ったカキフライ越しに

ご両親へ手渡し、読んでいただいた。


きらり「…それ、有名な雑誌でしょー、ほんとなのPちゃん」

チビP「ああ、まさか自分のところに連載のリレーがまわってくると思ってなかったんだが」

チビP「世の中なにがあるかわからないな」

きらり母「ときの人のご両親に取材する企画、でしたね、確か」

チビP「ええそうです」

チビP「[親の顔が見てみたい]というタイトルで、きらりさんのカラー写真も載ります」

きらり「さっきゆってた【プレゼント】って、これのこと?うれすぃー☆ありがとう」

チビP「お礼だったら、きらりを育ててくれたお父様お母様に、だろう」

きらり「そだね、パパ、ママ、ありがちゅー」

きらり「…そっかぁ、パパとママも雑誌デビュー、しちゃゆー」

きらり父「…」

チビP「あ、ご両親の顔写真などは、希望なさらない限りは掲載されませんから、ご安心を」

きらり「あるぇー、パパ載る気満々だったのかにぃ?」

きらり父「/////」

きらり母「まぁお父さんったら、ふふふ」

きらりチビP(カワイイ)


拍子抜けするほど、というか、やはり、というか、手記に対する注文や修正の要望は

ご両親から出なかった。

ただ、ちょっとこそばゆいし、親よりきらりの方にもっとスポットを当ててあげたいですね

などとご意見いただいた。


チビP「いつもいつも…のびのびプロデュースさせていただいて、本当に有難うございます」

きらり父「なに、案じずともいい」

きらり父「プロデューサ君の原稿にもあった通り、きらりを後ろからそっと手助けするのが

きらり父「我々親の役目だからな」

きらり母「きらりは、どう?」

きらり「うん!Pちゃんと一緒ならばっちし世界征服できちゃうにぃ☆」

チビP「ああ、頑張ろうな」


近況の話などをとりとめなく交わしていると、だんだんきらりが船を漕ぎ出した。


きらり「うみゅ…ねむく、なっちゃったにぃ…」

きらり父「こらこら、食べながら寝るとは行儀悪いぞ」

きらり母「疲れたんでしょう、もうごちそうさまして、横になったらどうかしら」

きらり「ふぁぁぁーい、きらりの…元気、おしまーい…Pちゃん、おやすーん」

チビP「ああおやすみ、身体を冷やさないようにな」



きらり父「…すまないな、せっかくプロデューサ君の前なのに、きらりがあんなぐあいで」

チビP「ああ、お気になさらなくとも」

チビP「ひさしぶりの実家で、安心したのでしょう…私は構いませんので」



きらり母「バタンキューでしたよ、布団敷くのと競争するみたいに」

チビP「ははは…」

きらり父「…ところで、プロデューサ君」

チビP「はい」

きらり父「きらりを間近で見ていて、どうだろう最近【例の悪い癖】は出ていないかね」


さっきまで書いていた手記の中で『ご両親からプロデュース方針への注文は殆どない』と

書いたが、実はたった一つだけ念押しされていることがある。

話が散らかると思い、敢えて書かなかったこともあってか、案の定お父様が心配を

示された。


チビP「目の届く限りは、大丈夫なようです」

きらり父「うむ…何かあったらきらり自身から話し始めるのを待つべきとは思うが」

きらり父「なにぶん、あの性格だからな」


きらりは、誰とでも打ち解けられるのはいいのだが、友達に全力で

あたる代わりに、心の痛みまで全部ひきうけてしまって、ついには

 【友達が幸せになるためだったら、自分なんかいなくなっちゃえばいい】

とまで思い詰めてしまうことがままある。


ご両親から「きらりの心を孤立させないでほしい」と予めお願いされていたので

まずはきらり自身が自分の辛さや弱さを、プロデューサ相手には曝け出せるような空気を

作ることに腐心している。

情けない話だが、プロデュース当初はきらりに、そんな後ろ向きの傾向があることを

見抜けていなかった。


チビP「人生相談が始まった頃は、相談者に同情するあまり感情の起伏が激しくなって」

チビP「何日かふさぎ込んだりすることもありましたが」

チビP「今は割とすぐ心の内をうちあけてくれますよ」

きらり母「そうですか…よかった…」

きらり母「やっぱりアイドルになって、多少前向きになってきているのかしら」


きらり父「私たちもなるべくフォローはするが、プロデューサ君もどうか」

きらり父「アイドル諸星きらりを最大限認めてくれるよう、改めてお願いするよ」

きらり父「…ああいう奔放なところがあって、難しいとは思うがね」


お父様が、きらりが寝ている(であろう)部屋の方をちらと見ながら仰る。


チビP「はい、任されました」


力強く約束した。

無論、ほかにできることなど俺にはないのだが。


チビP「…あ、こんな時間だ、そろそろおいとましなければ」

きらり母「どうもお構いしませんで」

チビP「こちらこそ長居してしまって、夕食まですみませんでした」

きらり父「またどうぞおいで下さい、我が家だと思って」

チビP「いえいえそんな…ありがとうございます」


…天然自然に外堀が埋まっているような気がしないでもないが、

まぁ、いいか。


きらり母「きらりはすっかり寝ちゃったのかしら…」

きらり母「プロデューサさんどうですか、中に入ってちらと言葉をかけてあげては」

チビP「え、大丈夫ですか女の子の部屋に入ってしまって」

きらり母「たぶん大丈夫でしょう、ちょっと見てきますが…」


きらり母「…むにゃむにゃ云いながら寝ていました」

きらり母「話はできそうにないですが、お顔だけでも」

チビP「ではまぁ、お言葉に甘えて…おじゃまします」


月明かりだけが射す蒼い部屋の中で、きらりは抱き枕を抱えて

すやすや寝息を立てていた。

俺が入ってきたことには、全く気付いた様子もない。


きらり「…うぇへへ…P、ちゃ…んー…」


どんな夢を見ているのやら、寝言にも俺の名前が出てきている。

嬉しいと同時に、背負っているものの重さもずっしりと感じた。


これから先、生きてゆく先にどんな山坂が待っているか、誰にもわからない。

人生相談に寄せられるメールが示すように、みんな不安があるだろう。


だからこそ、手を携えて進んでゆけることがどんなに幸せで心強いか

諸星家の人々はよく知っている。


俺は、きらりと、そのご両親に出会えた幸せを

万分の一でも返せているだろうか。

精々頑張らねばならない。


寝返りを打った拍子に、俺の座っている横の辺りまで

きらりの寝顔が寄り添ってきた。


ごく無意識のうちに手を伸ばし、きらりのゆるいウエーブをそっと撫でていた。


普段はきらりに背を落としてもらわないと絶対にできない仕儀である。


きらり「…………Pちゃん………だいすき……ありがと………」


太陽の匂いがした。




おしまい


おそまつさまでした。

ほんとうはきらりのお当番回の前までに書きたかったんですが

我が遅筆を恨むばかりです。

きらりかわいいよきらり。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom