筑摩「と、利根姉さんが提督とキスをくぁwせdrftgyふじこlp;」 (347)

それは私が出撃から帰ってきたときのことだった。

旗艦だった私は提督に戦果報告をするため執務室へ向かっていた。

(ふふっ、今日は被害がほとんどありませんでした。提督、褒めてくださるかしら)

執務室に入ろうとしたとき、中から利根姉さんと提督の声が聞こえてきた。



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「む、なんじゃ提督、今は執務中であろう?」

(ああ、今日は姉さんが秘書官だったのね。提督にご迷惑をかけていないかしら。姉さん、少し子供っぽいところがあるから。)

クスリと笑い、扉をノックしようとすると

「じゃから今は執務中だと言っ…ぅあ…ちゅっ…………」

「……き、急にそのようなことをする…ん……」

扉越しに聞こえる姉さんの声がおかしい。

いつもの快活な声ではなく甘味を帯びた色っぽい声。

嫌な予感がし、つい戸を少し開けて覗いてしまった。

「はあ、しょうがないやつじゃのう。…ちゅぱ…ん……」

見えたのは提督と姉さんが舌を絡ませながら口づけをしている姿だった。

「………」

なにも言葉が出てこなかった。

私は音を立てないように扉を閉め、宿舎へと向かった。

誰とも会いたくなかった。

相部屋なのは姉さんだけなので明日までは一人でいられるだろう。

と、部屋に向かっているときに戦果報告をしていないことを思い出す。

(あ、戦果報告をしていませんでした。)

だが、2人のあんな姿を見てしまったあとでまともに話せるとは思えなかった。

(艦隊の誰かにお願いしますか、と)

「不知火ちゃん」

「筑摩さん。はい、なんでしょうか?」

「ごめんなさい、ちょっと体調が悪いから戦果報告を代わりにしていただけないかしら?」

「わかりました。しかし先ほどの戦闘ではそれほど損傷を受けているようには見えませんでしたが。」

まさか『提督と姉さんがキスしていてショックを受けた』などとは言えない

「え、ええ。そうじゃなくて少し熱っぽいんです。」

「あら、そうでしたか。悪化しては大変です。すぐにお休みになることをお勧めします。」

「すみません。」

「いえ、それではお大事に。」

騙してしまったことに罪悪感を覚えたが今は何より一人になりたかった。

不知火ちゃんに頭を下げて部屋に戻り、服を着替えるのもそこそこに私は布団に横になった。

「はぁ。 ………うっ、ぐすっ。」

急に涙が出てくる。

私は提督のことが好きだった。

以前私が着任したての頃、艦隊旗艦になったことがある。

練度も低く着任したばかりで緊張していた私は作戦のミスで艦隊の艦娘を轟沈させてしまいそうになった。

本来ならありえないミスだったので帰投したあと、ひどく提督に叱られた。

けれど、彼は叱り終えたあと私に優しくこう言った。

『着任したてでみんなに追いつこうと焦るのはわかる。だが一人でなんでも背負い込むな。』

『心配しなくても大丈夫だ。君の努力はいつも見ている。焦らなくてもすぐにみんなを超える練度になれるさ。』

『だから…肩の力を抜きなさい。なにか溜まっていることがあるなら話を聞くから。』

その言葉で緊張が緩んだのだろうか。

私は涙が溢れて止まらなくなってしまった。

提督は私をソファーに促し、『飲み物を持ってこよう。』と言った。

数分後、戻ってきた彼は私に暖かいココアを手渡したあと向かいの一人がけソファーに座り、持っているコーヒーをテーブルに置いた。

私の飲み物がココアなのは以前提督に苦いものが飲めないと言ったのを覚えてくれていたからだろう。

ココアを飲み、少し落ち着いた私は提督にみんなに追いつけるのかという不安や、心配などを話し始めた。

一度話しだすと堰を切ったように止まらなくなってしまう。

けれど、彼は嫌な顔をするどころか真剣に私の話を聞いてくれた。

そして、私は気づいたら見覚えのないベッドの上に寝ていた。


(そうか、話し疲れて寝てしまって……ここは?)

服や靴ははかされっぱなしだったのでそのまま部屋を出ると、そこは執務室で、提督がソファーで寝ていた。

時計を見ると深夜2時を過ぎていたので置き手紙だけして部屋を出ようと思ったのだが、

提督は眠りが浅いのか起き上がって『すまない。誰かに部屋へ運んでもらうわけにも行かなかったので私の部屋で寝てもらったんだ。』と言った。

『いえ、とんでもありません。話を聞いて頂いた上にベッドまで貸して下さり本当にありがとうございます。』

と答え、『起こしてしまって申し訳ありません。』と最後に付け加えた。すると去り際に提督が

『なにかあったらいつでも話しにきなさい。』

と言ってくれた。

それから私は彼を見つけるとなんとなく目で追ってしまうようになった。

そうやって提督を目で追う日々を続けるうちに私は彼への想いが募っていくことに気づいた。

(ああ、私は提督のことが…。)

提督のことが好きになっていた。

そんな折、ケッコンカッコカリ制度があることを知る。

なんでも練度が99を超えた艦娘を更に強化できるものらしいが、私にとっては彼からもらった指輪を指にはめるということが大事だった。

私は彼とケッコンできるように努力した。

その結果私は利根姉さんと並んで鎮守府で一番練度が高くなった。

………重巡(今は航巡だが)である姉さんが一番練度が高かったという時点で違和感を感じるべきだったのかもしれない。

たまに提督と姉さんが話している姿を見ることがあったが、彼の姉さんに対する態度は他の艦娘へのものとは違っていた。

しかし、その様子が小さい子供をからかうそれにしか見えなかったので提督にはこんな一面もあるのだと牧歌的に考えていた。

だから私は姉さんと提督がまさかあんな関係になっているなんて夢にも思わなかったので、彼とケッコンできるものだと思っていた。

(子供だと思っていた姉さんがまさかあんなことをしているなんて。)

そのこともショックだった。

(執務中でもあんなことをするのだからきっと夜になったら…)

そう思うと寝ようと思っても眠れたものではなかった。

とりあえず書き溜め分投下

投下していきます

夜が更け、午前2時を回った頃だろうか。

扉が開く音が聞こえた。

(ああ、姉さんが戻ってきたのね。)

明日からどんな顔をして話せばいいのかと思うと憂鬱だった。

服を着替える衣擦れの音と歯を磨く音が聞こえた後、姉さんは二段ベッドの上段へと上がっていった。

はしごを登る姉さんからは、姉さんの香りがした。

~数時間後~

鎮守府に総員起床の放送がかかる。

…結局眠れなかった。

今日の出撃でみんなに迷惑をかけないように気をつけなければ。

重い体を起こし服を着替えていると、後ろから姉さんの声が聞こえた。

「筑摩よ、お主起き上がっても大丈夫なのか?」

正直、今は姉さんととても話せるような気分ではなかったが、無視などできなかった。

振り向いて

「あ、おはようございます。姉さん。はい、もう具合も良くなって…」

「ち、筑摩!?どうしたんじゃその顔は!」

姉さんが大声をあげた。

「顔?」

と言いながら昨日ずっと泣いていたためだと思い当たった。

「う、うむ。まるで泣きはらしたかのような。」

図星を突かれ、冷や汗をかいたが、肝心のところは気づかれていなかった。

「そんなに体調が悪かったのか?」

「え、ええ。でももう本当に大丈夫ですから。」

「じゃがその顔では人前に出れんじゃろう。」

そんなにひどい顔なのだろうか。

手鏡で確認してみる。

(ああ、これはひどいわ。)

本当にひどかった。目元が真っ赤に腫れて充血している。

(たしかにこれでは人前に出られません。)

「む! そうじゃ。少し待っておれ。」

「? はい。」

しばらくすると姉さんがおしぼりを2つ持って戻ってきた。

「これを数分おきで交互に目に当てるんじゃ。」

そういって私におしぼりを手渡す。

触ってみると片方は熱くてもう片方は冷たいおしぼりだった。

「これを目に当てるんですか?」

「うむ。そうすると腫れが良くなるんじゃ。泣いた時はそうするといい。」

「それから、泣いているときは絶対に目をいじるでないぞ。次の日、ひどいことになるからの。」

…どうして姉さんはそんなことを知っているのだろう。

「ありがとうございます。」

そう言って冷たいおしぼりを目に当てた。

泣きはらした目に冷えた感触が心地よかった。

「…気持ちいい。」

つい言葉がこぼれた。

「うむ、そうじゃろう?しばらくそうしているといい。皆には吾輩から言っておく」

「それに、その様子じゃと風呂にも入っていないようじゃな。ついでに入ってしまえ。」

「折角のべっぴんが台無しじゃぞ。くくっ」

朗らかに笑い、姉さんは「それじゃあ先に行ってるからの」と言って部屋を出て行った。

普段と変わらず優しい姉さんだった。

とりあえずここまでで終了します

投下始めます

(姉さん、何も変わっていませんでした。)

それはそうだろう。

変わってしまったのは自分なのだ。

姉さんと提督との関係を知ってしまったために。

もう昔のようには戻れない。

姉さんはさっきのように普段と変わらず接してくれるだろう。

けれど私はそうはいかない。

普段通りにしようと思ってもいつかきっとボロが出る。

今だって、普段通り接してくる姉さんに、私のいないところでは提督とベタベタしているくせにと嫉妬してしまった。

そんな自分が嫌になる。

(姉さんは別に悪いことなんかしていないのに……)

そうなのだ。

私は別に提督と付き合ってなどいないし、彼にほかの女性がいるという話も聞いたことがない。

だから2人がしていることは何もやましいことではないのだ。

けれど、だからといって心の中でそう簡単に割り切れるものではなかった。

私は提督のことも姉さんのことも好きだった。(姉さんへの思いは恋心ではないが。)

だから、昨日2人を見たとき、本当に辛かった。

大事な人たちから自分だけのけものにされているような思い。

そして、愛する人は大好きな姉さんと恋仲なのだという事実に胸が張り裂けそうだった。

また涙が出そうになる。

(いけません。腫れがひどくなっちゃう。)

少し落ち着いてからおしぼりをとって鏡で確認してみると元通り、とまではいかないがかなり良くなっていた。

(これなら外を歩いても大丈夫そう)

姉さんに言われたように昨日は風呂に入れなかったので、入渠することにした。

部屋を出て、大浴場に向かっている途中、向こうから提督が歩いてくるのが見えた。

ここまで。
今日はもう一回くらい更新するかもです。

投下はじめます

顔が固まってしまう。

その間にも提督は近づいてくる。

こわばる顔をなんとか動かし、笑顔を作って言う。

「あら、提督、おはようございます。」

いつものようにいつものようにと意識しながら。

「ああ、筑摩。おはよう。熱があったみたいだが大丈夫か?」

「え、ええ、はい。もう体調も良くなって出撃もできそうです。」

私はいつものように笑えているだろうか。

姉さんと話している時以上に提督と話すのが辛い。

「ならいいのだが。しかし目元がなんだか赤い。昨日は良く眠れたのか?」

「っ! …はい。」

提督の言葉で、昨日の姉さんとの様子が鮮明に思い出されてしまい、胸が痛んだ。

「そうか。 …あまり無茶はしないようにしなさい。」

「はい…。そ、それでは失礼しますね。」

そう言って足早に立ち去る。これ以上提督の顔を見ていられなかった。

ドックに着き、中に入ると、私以外誰もいない貸切り状態だった。

(みんな朝食を食べている時間ですしね。)

体を洗い流して髪の毛を結び、浴槽にはいる。

程よい熱さのお湯に体が包まれる。

(きもちいい。)

心が落ち着いてきた。

このお湯には精神的な痛みも和らげてくれる作用があるのだろうか。

すると引き戸の開くカラリという音が聞こえてきた。

(誰かしら。あら、あの子は…)

「不知火ちゃん。」

「あら、筑摩さん。そちらも朝風呂ですか?」

そう問いながら彼女は体を洗い始める

「ええ、昨日入れなかったから。」

「そうですか。ところで熱の方は下がったのですか?」

「は、はい。もう体調も万全です。と、ところで不知火ちゃんはどうして朝風呂を?」

昨日の嘘に触れられて少し気まずくなった私は話題を変えた。

「…嫌な夢を見て寝汗がひどかったからです。」

「あら、意外。不知火ちゃんでもそんなことがあるんですね。」

見た目は可愛らしいのにいつも冷然としている彼女が、悪夢にうなされているところを想像するとなんだか胸がときめいた。

「夢くらい誰だって見るでしょう。」

彼女は嘆息して答えた。

「そうね。うふふっ。」

「なにか面白いのですか。」

少し怒気をはらんだ声で彼女が言う。彼女のこの声は本当に凄みがある。

「いいえ、不知火ちゃんが夢でうなされるところを想像して可愛いなって思っただけよ?」

「…からかわないでください。」

彼女はまた嘆息した。

ふと気になった。

「…ねえ、不知火ちゃん。」

「なんでしょう。」

「もし、不知火ちゃんが大事な人と仲直りできないくらいに関係が壊れちゃったらどうする?」

いつも冷静な彼女だったら、大切な人との関係が崩れてしまった時にどうするのだろうか。

「…不知火は誰かとそこまで劣悪な関係になったことがないのでわかりません。」

「ですが、本当に大事な人だとお互いに思っているのなら修復できないほどに人間関係が壊れてしまうということはないのではないでしょうか。」

「そうかしら…」

本当にそうだろうか。こんなにこじれている状況でどこかが崩れてしまったら修復などできないのではないか。

「ええ、そう思います。あなたと利根さんの絆はきっと何があっても壊れませんよ。」

「えっ、利根姉さん? ど、どうして…」

「あら、違いましたか。急に真剣な様子になったので何かあったのかと思ったのですが…」

正確にはまだ何かあったわけではないが彼女の敏さには本当に驚嘆した。

「ところで筑摩さん。今日の出撃は午後すぐですが食事は取らなくてもよろしいのですか?」

「え? …ああっ、そうでした! 早くご飯を食べないと。」

補給をしないまま出撃なんかできない。急いで脱衣所へと向かう、が、

「不知火ちゃんはもう食事はとったの?」

「ええ。不知火は早めに済ませておきました。」

そうだったのか。

脱衣所で服を着替えて、食堂へ向かった。

朝食をとるにも昼食をとるにも半端な時間だったので食堂に人はほとんどいない。

間宮さんの「あら、今日はブランチですか?」という問いに

「はい、お風呂に入っていたら長くなってしまって。」と答え食事を取っていると、となりに姉さんがきた。

今日はここまでです。

すみません
2日空いてしまいました。
投下始めていきます。

「今から昼か?」

そう問いながら姉さんも席に着いた。

間宮さんの問いに対するものと同じような返答をする。

「ふむ、そうか。」

やはり姉さんの顔を見ると昨日のことが思い出されて、気まずさが拭いきれない。

ただ、入渠して心に少し余裕が出来ていたためか朝ほどの辛さはなかった。

と、ここで姉さんが手ぶらなことに気づく。

「あら、姉さん、ご飯はどうしたんですか?」

「吾輩はもう半時ほど前に済ませてあるんじゃ。」

…どうして1時間も前に食事を済ませているのにまだ食堂にいるのだろう。

「ところで、なかなか長風呂をしたようじゃの。」

姉さんが言う。

「はい。不知火ちゃんもお風呂だったのでお話ししていたんです。」

「ほう、奴も朝風呂か。」

「ええ。なんだか嫌な夢を見て朝起きたら寝汗がひどかったんですって。」

「なんと、常に泰然としている奴でもそんなことがあるのか。なんだか意外じゃのう。」

「私もびっくりしました。いつもはあんなにクールな子が夢でうなされているところを想像したらなんだか可笑しくって。ふふっ。」

彼女の様子を想像し笑いをこぼすと、

「……ふむ、大分いつものように戻ったようじゃの。」

「え?」

虚を突かれた私は言葉に詰まる。

「いやなに、朝の様子がひどかったからの。」

ああ、顔のことか。そう思い、

「は、はい。やっぱり病み上がりでしたから。お風呂に入って良くなりました。それに姉さんからいただいたおし…」

そこで姉さんが言葉を遮る。

「ああ、いやいや、顔だけじゃなくての、覇気の話じゃ。」

「覇気?」

「うむ。さっきはまるで死人のようじゃったぞ。まあ今はかなり良くなっておるが。」

「そ、そうですか。お風呂が効いたのかしら…」

苦笑しながら答える。ああ、まずい。この流れは、

「…じゃが何があったんじゃ?筑摩らしくない。」

…やはり。 案の定訊かれてしまった。

「い、いえ、別に何でもないんです。」

顔がこわばる。

「…むう、やはりなんだか今日の筑摩は変じゃ。何があったんじゃ?話してみるがよい。」

「で、ですから何もないと…」

「そうか?なら良いんじゃが……何かあったら相談するんじゃぞ?」

その姉さんの私を心配しているのであろう様子に、苛立ちを感じた。

その『何か』を作ったのはあなただ、と。

「は、はい。ありがとうございます。」

なんとか笑顔を作って言う。

「うむ。吾輩と筑摩の仲なんじゃ。我慢せずなんでも話すと良い。」

『なんでも』? 自分は私に隠れて提督と乳繰り合っているくせに?

急激に募っていく怒り。

(ああ、だめよ、このままでは)

爆発してしまう。

「提督も心配していたぞ?朝会った時お主の様子がおかしかったと。」

「本当に大丈夫か?また顔色が悪いようじゃが。」

「体調が悪いんじゃったら今日の出撃は控えたほうが……筑摩?どうし」

ここまでです。
コメントしてくださってるかた、ありがとうございます。
みなさんのコメントが>>1の力になってます。
こんな拙作ですがコメントをくださると嬉しいです。

投下始めます。

「うるさいです…」

(ああ、だめ、こんな…)

怒りと苛立ちのあまりに吐き出されたその言葉は、意外にも無感情な声で発せられた。

「なんじゃと?」

姉さんが眉をひそめる。

空気が凍りついたようだった。

しかし、一度口を開くと歯止めがきかなくなってしまう。

「うるさい、と言ったんです。上辺だけ私を心配しているかのようなふりをするのはやめてください。」

声が震えているのを感じる。

「ど、どうしたんじゃ筑摩、お主やはりどこか調子が」

困惑する姉さん。

「調子?ええ最悪です。良いはずがありません。昨日は一睡もしていませんから。」

(お願い、止まって…)

思いとは裏腹に紡がれていく言葉。

少しずつ声に感情がこもっていくのを感じる。

「そ、そうじゃったのか。部屋に入るとき起こしてしまったかの。すまぬ。も、もっと静かに入れば良かったの。」

私の様子がおかしいと察したのか、場を和ませようとするかのようにわざと溌溂とした声で言う姉さん。

そんな姿までもが今の私には癇に障る。

「いいえ、ですから昨日は一睡も出来ていないんです。姉さんたちのせいで。」

「吾輩『たち』のせい?」

姉さんの私を見る顔は訝しげなものではなく、なにかを危惧しているかのようだった。

「ええ…」

(だめ…これだけは言っては…)

心が最後の警告をするが…

「…昨日の秘書官業務は楽しかったですか?」

それも無駄に終わった。

(言ってしまった…)

その問いは、姉さんと私との絆、ひいては提督との関係までも粉々にするものに思われた。

「…!」

姉さんの顔がこわばる。

もう止めることなど不可能だった。

「私、本当は熱なんかなかったんです…」

口の動くままに言葉を発する。

「昨日、戦果報告をしようと執務室に行ったら、提督と姉さんがキスしているのが見えて……あれはなんだったんですか?」

「ち、ちく…」


「なんだったんですか!!」


思わず声を荒げてしまう。人が少ないためか食堂中に声が響き渡る。

「っ!」

姉さんが身を震わせた。

「私だって提督が好きでした!愛していました!」

「だから提督とケッコンできるように頑張って練度を上げたんです!」

「…でも、気づいたら彼には恋人がいて……その恋人は姉さんで…こんなの……どうすればいいんですか…?」

吐き出される心の内。

いつの間にか、発する声は怒りから悲哀に満ちたものになっていた。

「筑摩…」

「姉さん、さっき、私と姉さんの仲なんだ、なんでも話すと良いっておっしゃいましたよね? ………どうして、私には提督とのこと話してくれなかったんですか?」

「……」

姉さんは答えない。

「…姉さんなんか、大嫌いです。」

ここまでです。
みなさんコメントありがとうございます。
本当に嬉しいです。
物語もやっと終盤に差し掛かってきました。

投下始めます。
丸2日も空いてしまって本当にすみません。

そのうえ今日はあまり盛り上がりもないくせに長めです。
重ね重ね申し訳ありません。

ポツリと、そう呟く。

いつの間にか頬を涙が伝っていた。

「……」

なおも姉さんは黙りこくっている。

「どうして何も、言わないんですか…?」

「…」

何かを言おうとしたのだろうか、姉さんは唇を震わせていた。

しかしその口から言葉は発せられない。

「こんなの…あんまりです……」

涙で視界がかすむ。

「筑摩…吾輩は……」

やっとの思いで絞り出したかのような姉さんの声、それを私は遮り、

「…姉さんなんか…姉さんなんか……沈んでしまえばいいんです!」

決して口にしてはいけない言葉、それを言うと同時に頬をつたう涙が床に落ちた。

思わず駆け出す。辛くてこれ以上この場にいられなかった。

どこへ向かうかなど何も考えずにただ走る。

私は利根姉さんとの間に取り返しのつかない亀裂を入れてしまったこの現実から逃げ出したかった。

(ここは、)

気づいたら自室の前に立っていた。

(いつの間に私は部屋まで…)

しかしよく考えてみると、今の自分の姿を誰かに見られるのは非常に良くない。

無意識に部屋まで来ていたのは幸運だった。

部屋に入り鏡を見る。

(ひどい顔。)

案の定顔が涙でぐしゃぐしゃになっている。

走っていたときは、半ばパニックを起こしていたため、考える余裕がなかった。

しかし今、冷静になり、姉さんとの絆がボロボロに壊れてしまったのだという事実を再認識させられる。

(どうして私はあんなことを…姉さんに悪いところなんてないのに…)

そう。姉さんも提督もただお付き合いをしていただけだ。

後ろめたいことなど何もしていない。

(それなのに、おこがましくもケッコンできるなんて思っていた私は嫉妬なんかして…)

身勝手な自分が心底嫌になる。

『姉さんなんか…姉さんなんか……沈んでしまえばいいんです!』

(あんな言葉を…)

後悔と罪悪感で胸が張り裂けそうになる。

(ああ、このあと出撃があるのに…)

涙の止まらない目をハンカチで拭おうとした時、

『泣いているときは絶対に目をいじるでないぞ。』

(…そう、いじったら、いけないんでしたね…)

こんなときに姉さんの言葉が思い出されて余計に辛くなる。

(それから、おしぼり。)

(……温かいおしぼりってどうやって作るんでしょうか)

作り方がわからないので水を入れたヤカンにハンカチを入れて火にかける。

(これで適温になったら取り出しましょう。)

思えば、姉さんは私の様子がおかしいことに朝から気がついていたようだった。

そのとき深く言及しなかったのは私のことを気遣ってくれたからだろう。

食堂でだって私の心が少し落ち着いたのを察したからそれとなく訊ねただけで追い詰めようなどとは思っていなかったはずだ。

姉さんはあんなに私を思いやってくれていたのに、私は姉さんにたとえ嫌っている人へでも言わない言葉を言い放った。

「私は、最低です。」

ヤカンの水に映った自分の顔を見つめながら言う。

水面が揺れて顔がゆがんでいる。

まるで自分の心のようだ、そう思った。

(そろそろいいかしら)

菜箸を使ってヤカンからハンカチを取り出してみる。ちょうどいい温度になっていた。

ハンカチをもう一つ用意し、冷水にさらす。

(どうして、こんなことになってしまったの…)

2つのハンカチを絞りながら思う。

ほんの昨日までは姉さんと一緒に過ごし、楽しくおしゃべりもしていたのに、それがたった一日で消えてしまった。

そのことに、どうしようもない悲しみと虚無感を覚える。

(何もかも全て、なくなってしまえばいいのに…)

そうは思うが出撃の任を怠業するわけにはいかない。

ハンカチを目元にあてがう。

(出撃までに良くなるかしら…)

その心配は杞憂に終わった。

ハンカチを取って鏡を見ると人前に出られる程度には腫れが引いている。

時刻はちょうど出撃の30分前だった。

(腫れが引いて良かった)

あんな顔で誰かに会ったら絶対に何か言われただろう。

部屋を出て着装しに行く。

すると、また不知火ちゃんと出会った。

「あら、筑摩さん。今日はよく会いますね。」

正直、今は誰とも会いたくないのだが致し方ない。

どのみちこの後出撃で大勢の艦娘と会うことになるのだ、そう自分に言い聞かせる。

「本当ね」

言い聞かせているのだが返事がどうしても淡白なものになってしまう。

「? どうしたのですか? また体調が悪くなったのでしたら出撃は控えたほうがよろしいのでは。」

「い、いえ…大丈夫です。」

本音を言ってしまうと休みたかったのだが、自分のせいで他の艦娘に迷惑をかけるわけにはいかない。

「…そうですか、なら良いのですが。」

不知火ちゃんは目に疑いの色は残しているものの、そう答える。

その後は会話もなくなった。

この不知火ちゃんの心の機微を敏感に察してくれるところは本当にありがたかった。


「今日の任務は『鎮守府近海に現れる深海棲艦の掃討』です。」

「他海域から高い戦力を持った艦隊がはぐれているという話も聞きます、くれぐれも慢心はしないでください。」

旗艦の翔鶴さんの言葉を聞きながら艦装を着装し、海に出る。

海域を航行していると、索敵機に反応があった。

翔鶴さんに編成を伝える。

「敵艦隊を発見しました。編成は正規空母2、戦艦1、軽巡1、駆逐2です。」

こちらの編成は正規空母1、戦艦2、航巡1、駆逐2。

鎮守府近海に現れる程度の空母ならばそれほどの制空力も持っていないだろう。

翔鶴さんと私の瑞雲だけでなんとかなるはずだ。

(よかった、今のコンディションでも油断をしなければ大丈夫そう。)

そう思い胸をなでおろす私。

しかし、敵艦を目視で確認した時にそれはとんだ見当違いだったことを知る。

なぜなら、正規空母2隻と戦艦がflagship級、残りの艦がelite級だったからだ。

ここまでです。

次回は戦闘シーンが少し入る予定です。
ですが>>1は実際の艦同士のバトルなんて全くわからないので本当にちょろっとにするつもりです。

その道に通じている方は見ていて見苦しくなるかもしれませんがお許しください。

それからたくさんのコメント本当に嬉しかったです。皆さんありがとうございます。
こんな作品を読んでくださっている方は感想等レスしてくれると嬉しいです。

乙乙
今まで航巡はJK組に任せてたけどちょっととねちく触ってくるわ



とても面白い、毎回続きが気になってしょうがないです

投下していきます。

>>190 とねちくは至高です

>>192 ありがとうございます! その言葉が本当に力になっています!

「…どうやらはぐれ艦隊が紛れているという話は本当だったようですね。ですが、倒せないほどの戦力ではありません。」

「皆さん、輪形陣を取ってください!」

翔鶴さんの指揮で皆が陣形を整える。

「戦闘を開始します! 全航空隊、発艦始め!」

開戦の言葉とともに弓を射る翔鶴さん。

放たれた矢が見る間に艦載機へと変わる。

その様子をぼんやりと見ていると、

「…筑摩さん、水上機を。」

「…はっ! すみません!」

不知火ちゃんに声をかけられてようやく我に返った私は急いでカタパルトから瑞雲を射出する。

「筑摩さん、戦闘中です。 油断はしないでください。」

敵艦を警戒しながら翔鶴さんが私を諌める。

「はい…すみません……」

(いけません、しっかりしないと…)

航空戦を見るとこちらの優勢のようだ。

「制空はこちらが優勢のようですね。 皆さん、対空砲火の準備を!」

翔鶴さんの言葉に迎撃の構えを取る。

(…来た!)

皆が砲火を行う。敵機のいくつかが撃墜されていくが、私は寝不足と乱れた精神状態のためかほとんど撃墜することができない。

(駄目、全然当たらないわ……はっ!)

気づくと敵艦載機の爆撃がすぐそこまで迫っていた。

「きゃあ! …損傷は、」

幸いなことに、かすり傷で済んだようだ。

「筑摩さん! 大丈夫ですか!」

「は、はい。 なんとか。」

翔鶴さんにそう答え、砲撃戦の用意をする。

見ると、爆撃で敵駆逐艦の1隻を轟沈させたようだ。

「皆さん、制空権はこちらの優勢ですから敵艦は着弾観測が行えません。」

「ですが敵艦の火力が高いことに変わりはありません。くれぐれも被弾には気をつけてください。」

「それでは、砲戦開始!」

翔鶴さんがそう言うと同時に砲撃戦が開始される。

「全機、突撃!」

「全砲門、開け!」

「沈め…沈め!」

艦娘たちの鯨波とともに砲弾が飛び交う。

(今の状態だときっと戦艦や空母にはほとんど損傷を負わせられない…戦艦の砲撃に警戒しつつ駆逐艦を叩きます。)

敵駆逐艦に砲撃を開始する。

体調の悪さと敵の素早さのためになかなか砲弾が当たらない。

「砲撃が、当たりません……きゃっ!」

砲撃に集中していた私は敵軽巡に狙われていることに気付かなかった。

敵の砲弾に体が吹き飛ばされて水面を転がる。

(さっき被弾には警戒するように言われたばかりなのに。)

これが戦艦だったら、そう思うとぞっとする。

するとどこかから声が聞こえた。

 ―轟沈してしまえばよかったのに―

(えっ?)

私は戸惑う。

(この声は…)

 ―だってそうでしょう?―

(…私の声?)

 ―もしこの戦いに勝って鎮守府に戻ったところであなたに居場所なんかないわよ?―

これは自分の心の声だった。

 ―食堂であなたが姉さんに言い放った言葉をおぼえていないの?―

覚えている…痛いほどに…。

 ―あんなことを言っておいてどんな顔をして姉さんに会えるのかしら?― 

(っ! それは…)

 ―それに、あなたの大好きな提督は姉さんにご執心。 あなたと結ばれることはない。―

 ―姉さんとの絆も壊れて、提督と結ばれることもない…―

 ―そんなあなたに鎮守府に戻っても居場所なんかあるのかしら?―

返す言葉がなかった。

(そう、私はもうあそこに居場所なんか…)

 ―ならいっそ、ここで沈んでしまったほうが楽になれるわ。―

(…そうなのかしら…)

 ―ええ、そうよ。 このまま生きて一生苦しみ続けるよりここで死んでしまったほうがいいわ。―

(そう、そうよね。 このまま生きていたって…)

 ―それに敵の艦隊はもう戦艦と空母と軽巡が1隻ずつしかいない、あなたが沈んだってみんななら簡単に倒せるわ。―

 ―ほら、ちょうど戦艦があなたを狙っている。あなたはここから動かなければいいだけ。―

本当だ。戦艦の砲塔がこちらを向いている。

(死んでしまえば、この苦しみから解放される。)

 ―さあ、砲弾が放たれたわ。 もうすぐあなたは楽になれるのよ。―

砲弾が近づいてくる。

すると急に頭の中で過去の思い出がフラッシュバックした。

(ああ、これが走馬灯ね。)

ぼんやりとする頭でそう考える。

姉さんと出撃した思い出、姉さんと食事した思い出、姉さんと眠った思い出、姉さんとおしゃべりした思い出、姉さんとお風呂に入った思い出、姉さんと…喧嘩した思い出。

流れる思い出は全部姉さんとの記憶で、提督とのものはなかった。



(なんだ、私……
 
   姉さんが一番大切だったのね…)



自分の本当の想いに気づく私、しかし、気づくのが遅すぎた。

砲弾が目の前に迫っている。もう避けられない。

(姉さん、最後に謝りたかったです…)

不知火ちゃんや翔鶴さんがこちらへ駆けてくる様子を視界の端にとらえたのを最後に、私の意識は消失した。

ここまでです。
見てくださっている皆さん、レスを下さっている皆さん、ありがとうございます。

なんとか明日(今日)頑張れば終われそうです。
例のごとくこんな拙作ですがレスをいただけると嬉しいです。

面白いから早く続きを書くんだよ待ち遠しくて禿げるだろ

投下します。

>>211の髪の毛がまだ残っていることを祈ります。

(…ここは)

目を開くと、なぜか、見慣れた風景が目に入ってくる。

(ドック? どうして? 私は…)

沈んだはずではないのか?

そう思い、周りを見渡すと翔鶴さんも入渠している。

「あら、筑摩さん、気がついたんですね。」

そう声をかける彼女に私は問う。

「はい、あの…どうして私は…」

「轟沈していないのか?」

最後まで言う前に翔鶴さんに言葉を継がれる。

「…はい。」

「実を言うと、私たちも轟沈してしまったと思っていたんです。ちょっと…凄惨な被弾のしかたでしたから。」

そう言いながら顔をしかめる翔鶴さん。

私が被弾した時の様子を思い出してしまったのだろう。

翔鶴さんがその時の様子を語りだす。

「敵の砲弾を受けて吹き飛んでいくあなたの姿を見て、本当に申し訳ないのですが、『これは助からない。』そう思いました。」

「皆さんも同じ気持ちだったようです。絶望的な顔をしていました。」

「このまま仲間が沈んでいくところを見届けることしかできない自らの力不足を呪いながら、私たちはあなたの最期の姿を見届けようと見守っていたんです。」

「ですが、いつまでたってもあなたが沈んでいく気配がありません。」

「理由は分かりませんが、どうやら沈んでいく様子がない。」

「せめて亡骸だけでも鎮守府に連れて帰ってあげよう。」

「そう思い私は不知火さんに護衛退避を命じて、戦闘を続行したんです。」

「もう敵艦も残り少なかったのであなたたちが抜けてもなんとか勝利することができました。」

「戦闘が終了して、母校に戻ってくると、入渠を終えた不知火さんが私たちを待っていました。」

「私たちと筑摩さんのことを弔うために待っていたのかと思いましたが違うようです。」

「『筑摩さんは生きています。』彼女は言いました。」

「戸惑う私たちに彼女はこう続けます。『筑摩さんは応急修理要員を積んでいたようです。』」

「…えっ?」

翔鶴さんの独白に私は割り込む。

「私は応急修理要員を装備していたんですか?」

「…やっぱりあなたも知らなかったのね。」

「は、はい。 まったくそんなことは…一体どうして」

私の言葉に翔鶴さんが答える。

「ええ。私たちもそんなことは聞いていなかったから提督に聞きに行ったんです。」

「提督はなんと…?」

私が問うと、

「なんでも、利根さんが筑摩さんに応急修理要員を装備させるように進言してきたそうですよ。」

「え?」

一瞬思考が止まる。 

「出撃する1時間ほど前に利根さんが執務室に来て『今日の筑摩は体調が悪いから応急修理要員を積んでくれ』と言ってきたそうです。」

どうして姉さんが?

翔鶴さんの言葉で回想が始まる。

ここまでです。

今日はまだ投下します。
なんとか今日中に終わらせたい…

それから髪の毛のなくなってしまった>>211に心からお詫び申し上げます

まだなくなってないから!いくらか残ってるから!
でもあんま待たされると0本になっちゃうかもしれないなー(チラッチラッ

24時までには投下始めます。

>>224がハゲーザ様と化す前に。

それから今日中に完結は無理そうです。
日付またいじゃいますがなんとか頑張って明日の朝までには終わらせますのでお許し下さい。

投下開始

『今日の出撃はそれほど危険な海域ではないぞ、それに体調が悪いのならば休ませるが』

そう提督は言うが、姉さんは首を振った。

『今の筑摩にはどの海域であろうと危険じゃ。それにお主が無理やり止めでもせん限り奴は出撃をやめんじゃろう。』

『しかし鎮守府近海の敵の掃討程度の任務に体調が悪いという理由で応急修理要員を装備させるわけには…』

ためらう提督に姉さんは続ける。

『駄目じゃ。お主が無理やり止めるか応急修理要員を積ませんかぎり吾輩は絶対に出撃させん。』

『だが…』

『しかしもじゃがもない。 吾輩は絶対に認めんぞ。』

姉さんの強情な様子に負けたのか提督はため息をつきながら答えた。

『わかった… 応急修理要員の装備を認めよう。』

『本当か! 恩に着るぞ提督!』

姉さんは続ける。

『…それからこのこと、筑摩には内緒にしてくれんか? 妖精たちにも見つからんようこっそり装備品に紛れるように言って欲しいんじゃ。』

『別にいいが。 どうしてだ?』

姉さんが提督から目を逸らして言う。

『い、いや、あまり筑摩に過保護だと思われたくないだけじゃ。』

その様子を提督は訝しげに見る。

『…そうなのか?』

姉さんは少し焦りながら答える。

『う、うむ、そうじゃ。 別に何も他意はないぞ。』

提督の目はなおも不審げだったがそれ以上の追及はしなかった。

『そうか…。 それにしても、君が出撃を休むように彼女に言えば良かったんじゃないのか? 私の言うことよりも君の言うことのほうが彼女も聞くだろう。』

その言葉に利根姉さんは目を伏せる。

『い、いや、吾輩はこの後遠征があるしの。』




「と、こんなことがあったようです。 ふふ、妹思いなお姉さんですね。」

翔鶴さんが言うが私の耳には入ってこない。

(姉さん…私、食堂であんなことを言ったのに…私の体を気遣って提督にお願いを…)

「利根さん、本当に筑摩さんが大事なんですね。」

(私なんか嫌われて当然なのに…)

「そういえばこの間、瑞鶴が食堂で加賀さんの食べているご飯にこっそり粉唐辛子を入れたことがあったんです。」

(姉さんが私のために提督に頼んでくださっている時に、私がしていたことは何?)

「加賀さん、『五航戦、あなたたちの仕業ね。』ってカンカンに怒ってしまって。」

(部屋で一人いじけて、情けない。 姉さんに申し訳が立たないわ。)

「私はなにもしていなかったんですけど、瑞鶴の『翔鶴姉、一緒に謝って~』って涙目で頼んでくる姿を見てたら断れなくて…」

どうして姉さんは、あんなにひどいことを言われても私のことを気遣ってくれるのだろう…。

「やっぱりどんなことをされても妹って可愛いんですよね。」

「えっ?」

ここまでです。
今夜はまだ投下します。

今夜は夜戦だね!(白目)

夕張「あんたは」
熊野「座って」
瑞鶴「なっさい!」

寝落ちしてましたorz
ごめんなさい今夜(今朝)は投下できません( TДT)ゴメンヨー

投下始めます。

翔鶴さんとか筑摩さんみたく敬語と普通の言葉、両方使って話すキャラは書きづらい…

話し方とかキャラが崩壊していても大目に見てください┏〇ペコッ

いけない。 全然話を聞いていなかった。

「え? ですからどんなことをされても妹は可愛いと…」

「そうなんですか?」

「はい。 どんなことをされても、どんなことを言われても、妹を愛おしく思ってしまう…姉の性なんでしょうね」

はあ、と、ため息をつきながら言う翔鶴さん。

だから…利根姉さんは私を嫌わないでいてくれるのだろうか…。

でも、そんなの…妹である立場を利用して甘えているだけではないか。

翔鶴さんは続ける。

「そうやって甘やかしてしまうから瑞鶴はいつまでたっても甘えん坊なのかしら…その点筑摩さんはしっかりしていますよね。」

「っ! いえ、私なんか…全然、そんなことないです…」

そう…本当にしっかりしていたら姉に向かってあんなことは言わないし、嫉妬もしたりしない。

(姉さんが子供っぽいだなんて言っておいて、私のほうがよっぽど子供じゃない…)

「ふふ、利根さんと同じことを言うのね。」

「え?」

姉さんがそんなことを?

「以前利根さんに『奔放に甘えてくる瑞鶴も可愛いけれど、しっかりしている妹さんを持った利根さんが羨ましい。』って言ったことがあったんです。」

「姉さんはなんて?」

「『いや、皆やつをしっかりしていると言うが、存外甘えたがりでわがままじゃぞ。しかも本人がそれを自覚しておらんからタチが悪い』ですって。」

昨日の私だったらそうは思わなかっただろう。しかし今ならば納得できる。

(姉さん、本当に、なんでもお見通しなんですね…)

姉さんは子供っぽくなどない。私なんかよりもずっと大人で、私のことをわかってくれていたのだ。

姉さんへの申し訳ない思いが募る。

「姉さんに謝らないと…」

いつの間にか声が漏れていたらしい。翔鶴さんに尋ねられる。

「姉さんに? 利根さんと何かあったんですか?」

「い、いえ、なんでもないんです!」

焦る私を見て彼女は何かを察したようだった。

「…そうですか。 何があったのかは聞かないでおきます。」

詰問を受けずに済み胸をなでおろす私。

「はい…ありがとうございます。」

「いいえ。 でも早く仲直りしてくださいね。利根さんと筑摩さんが喧嘩しているところなんて見たくありませんから。」

その言葉に頷き、

「はい、今から謝りに行ってきます。 …お風呂先にあがりますね。」

「ええ。きっと利根さん、すぐに許してくれますよ。 お姉さんなんて単純なんだから。」

「そうだといいですけれど。」

いたずらっぽく微笑む彼女に苦笑しながら言ってドックを出る。

脱衣所に出ると着替えが用意されていた。妖精さんたちが繕ってくれたのだろう。

服を着替えていると急に不安になってくる。

嫉妬と逆恨みであんなことを言った人間を姉さんは許してくれるのだろうか、と。

『―鎮守府に戻ったところであなたに居場所なんかないわよ?―』

心の声が思い出される。

(もし姉さんに許してもらえなかったら私は…)

一人になってしまう。

翔鶴さんはあんなふうに言っていたがやっぱり仲直りができるか不安だった。

着替えを終え、脱衣所を出ようとすると、お風呂から翔鶴さんが私を呼ぶ声が聞こえた。

「筑摩さーん!」

引き戸を開き、返事をする。

「なんでしょう?」

「謝るで思い出したんです。 筑摩さん、不知火さんにも謝らないとダメですよ。」

「不知火ちゃん?」

どうして不知火ちゃんが、そう思う私に翔鶴さんはこう続ける。

「はい。あの子、多分あなたが被弾した時に一番動揺していましたから。」

「えっ? 不知火ちゃんが?」

あんなに落ち着いた子が動揺するなんて信じられなかった。

「ええ、だってあなたを母港に連れて帰るまで生きていることに気がつかなかったのよ? 普通なら退避するときに気づいてみんなに言うでしょう?」

「あっ。」

確かに、普段の不知火ちゃんならばありえないことだ。

「ね? それに、なんだかあの子、初めからあなたのことを心配している様子でしたし…」

「そうなんですか…」

勘のいいあの子のことだ。 きっと出撃前の私の様子から何かを察したのだろう。

「ですから、ちゃんと不知火さんにも謝ってくださいね?」

「はい、すみません…」

「私はいいんですよ、だってこうして生きていてくれているんですから。」

微笑んで言う翔鶴さん。

その笑顔に、なんだか胸が暖かくなる。

「ありがとうございます…」

「いいえ、一時はどうなることかと思いましたけど。 …さあ、はやく不知火さんのところに行ってあげてください。」

「はい、行ってきます。」

翔鶴さんに頭を下げて脱衣所を出る。

ここまでです。

全然話が進まない、皆さんすみません…

更新きてた!これで毛は生えなくても頭の緑化が進む進むゥ!

投下します

>>259
光合成をできるようになって、世界の食料問題を解決してください

…行ってきますとは言ったものの、やはりあんな言葉を言い放ち、提督への思いまで暴露してしまった姉さんに、真っ先に謝りに行くのは少し気が引けた。

(…まず不知火ちゃんに謝りに行こう。)

そう思い、彼女の部屋に向けて歩き出す。すると、誰かに後ろから声をかけられた。

「筑摩さん。」

後ろを振り向くと陽炎ちゃんが立っている。

「あら、陽炎ちゃん。 今からお風呂?」

彼女は私の問いに首を振って、質問を返す。

「ううん、ちょっとお願いがあって… 筑摩さんは部屋に戻るところ?」

「いいえ、今から不知火ちゃんのところへ行こうと思っていたの。 おね…」

『おねがいって?』そう答えようとした私に被せながら彼女は言う。

「本当! ちょうど良かった。 私もいま、あの子のところへ行ってあげるようにお願いしようと思っていたの。」

「あら、そうなの?」

首肯し、急に表情を暗くする陽炎ちゃん。

「ええ。 帰ってきてからあの子、ずっと元気がないのよ。」

彼女は少しためらってから続ける。

「…筑摩さん、出撃の時に轟沈しかけたんでしょう?」

うなずいて「ええ。」と答える。

「あの子、戦闘の時と怒っている時以外、ほとんど感情表現しないじゃない? なのに母港に帰投したときはひどく取り乱してて…」

どうやら不知火ちゃんが一番動揺していた、というのは本当らしい。

「だからそのことが原因じゃないかって思ったんだけど…」

「ちょうどそのことを謝りに行こうとしていたところなの。 不知火ちゃん、いまお部屋にいるかしら?」

そう聞くと、

「ええ、いるわ。 あの子、あの性格だから表面上はいつもどおり振舞っているんだけど、ご飯も食べてないし、お風呂にも入ろうとしないの…」

うつむいて、辛そうに言う陽炎ちゃん。

自分の身勝手のせいで、2人も傷つけてしまったことにとても心が痛む。

「ごめんなさい、私のせいで…」

陽炎ちゃんが両手を胸の前でブンブンと振る。

「う、ううん! 全然責めてるわけじゃないの!」

「でも…」

罪悪感の消えない私に、彼女は言う。

「…ただ、あの子を元気づけてあげて欲しいだけ。 お願い…」

真っ直ぐに私を見てくる陽炎ちゃん。 

妹の身を案じる彼女の目は、優しくて、暖かくて、…見ていると、また胸がポカポカしてくる。

(翔鶴さんと話した時と同じ感じ… 姉さんも提督にお願いをするとき、こんな目をしていたのかしら。)

「…ええ、行ってきます。」

「! ありがとう!」

「いいえ、もともと私に原因があるんだから当然よ。」

嬉しそうに言う陽炎ちゃんにほほえんで、その場を後にする。

ここまでです。
深夜なので誤表現多いかもですが大目に見てやってください(いつも多い? すみません…)

陽炎ちゃん書くためにこの子秘書官にしてボイス聞いたら「こんなに可愛い子だったのか!」って倒れそうになりました
陽炎型は可愛い子が多い

アカン、毛根が限界を迎えそうだ、早く来てくれ>>1

抜けるどころか、筑摩でチクニーしてたら乳毛生えてきたぞ…………

すみません
忙しくて全然書けてないんです。( TДT)ゴメンヨー
それでも明日までにはなんとか投下します。

待っていてください>>283
あなたの毛は>>1が守り抜きます

>>289 ちょっとレベルが高すぎて>>1には何を言っているか理解できませんね

投下始めます

(…不知火ちゃんのお部屋、ここでいいのよね?)

部屋を確認する。どうやら合っているようだ。

ノックをしてみる。

しばらく間があったあと扉が開き、不知火ちゃんが顔を出した。

「あら、筑摩さん。 なにか御用でしょうか。」

(うう…)

謝ると決心したものの、いざ彼女を前にすると気後れしてしまう。

(なんだか急に緊張が…)

「御用っていうか…お話っていうか…その、謝りに…」

緊張のあまりどもってしまい、ごにょごにょとした話し方になってしまったが、彼女はそれでも私が何を言いたいのかわかってくれたようだった。

「わかりました。 お入りください。」

「ありがとう…お邪魔します。」

察しのいい彼女に感謝してお邪魔する。

部屋は整理が行き届いていてとても綺麗だった。

「椅子におかけになってお待ちください。 飲み物を持ってきます。」

「え、そんな、気を使ってくれなくても……あ」

私の言葉を聞かず、彼女は飲み物を取りに行ってしまった。

(仕方ない。 座って待っていますか。 …え?)

椅子に座ろうとして私は固まる。

なぜなら、入口からは見えない部屋の3分の1ほどの空間が、色々なものが散乱し、足の踏み場もない状態になっていたからだ。

さっきも言ったようにそこ以外の空間はきちんと掃除されていて綺麗なのだ。そのため余計に汚さが目立つ。

よく見れば下着のようなものまで脱ぎ散らかされている。

しっかりしている不知火ちゃんがこんなふうに部屋を汚すとは考えられなかった。

「これは一体…」

「どうかされましたか?」

いつの間にか不知火ちゃんが戻ってきていた。

思わず上げた声を聞かれたらしい。

「いえ、あの、なんでもないの。」

ごまかそうとするが、目線で何を思っていたのかが伝わってしまったらしい。

彼女は散らかっている場所を指さし、

「そこのことですか。」

と聞いてきた。

「ええ…ちょっと、その汚し方はあなたらしくないと思ったから。」

私は仕方なく思っていることを言う。

「そこは雪風のテリトリーです。」

やはり、彼女のしたものではなかったか。

「そ、そうなの。 雪風ちゃんと同じ部屋なのね。」

『テリトリー』という言葉にさながら国家間の領域争いのような雰囲気を感じた私は苦笑しながら言う。

「はい。 陽炎と雪風との3人部屋です。」

それで部屋の3分の1ほどだったのか。

しかし、

「不知火ちゃんたちはこんなふうに同じ部屋でスペースを分けているのね。」

そのことは意外だった。他の艦娘も彼女たちのように同じ部屋内で空間を分けているのだろうか。

「いいえ、不知火と陽炎は残りの場所を2人で使っています。」

「あら、そうなの。」

『どうしてそんなことを?』と聞こうとしてやめた。

なんとなく理由が想像できたからだ。

「はい、不知火たちの再三の注意も聞かずものを散らかし続けたため、雪風だけのテリトリーを作りました。」

やはり。

しかし下着まで脱ぎ散らかしておくというのは女の子として大丈夫なのだろうか、と雪風ちゃんの将来が少し不安になる。

「それで、お話とは。」

ここで彼女が話題を戻した。

お茶を私に手渡し、椅子に座るように促しながら問う。

「は、はい。 ありがとうございます。」

私も覚悟を決めた。彼女が椅子に座るのを待ち、

「あ、あの、今日の出撃、心配をかけてしまって本当にごめんなさい。」

謝罪の言葉とともに頭を下げる。だが、

「…それだけですか。」

やはり相当心配させてしまったのだろうか。

彼女の声は冷ややかだった。

(本当に、申し訳ないことをしてしまいました…)

「…ごめんなさい。 私には謝る事しかでき…」

しかし彼女は私の言葉を遮り、今度は少し怒りといらだちの色が混ざった声で言った。

「そういうことを言っているのではありません。 他に言うことはないのですか。」

そう言われても私には心当たりなどない。

何を言えば良いのかわからない私は

「あの、ごめんなさい。」

と謝った。

「あなたが被弾したときのことです。」

今度は、確実に怒りを込めた声で彼女は言った。

しかしそう言われてもやはり心当たりはない。

(被弾したとき?)

私が何のことを言われているのか理解していないのを見てとってか、彼女は続けた。

「…わからないのですか。」

怒りのあまりか声が震えている。その姿のあまりの恐ろしさに身がすくんだ。

しかし、心当たりのない私にはただ謝ることしかできない。

「あ、あの、ごめんなさい…」

その私の言葉で彼女の怒りが頂点に達したのだろう。

彼女は唐突にこちらに手を伸ばし、私の頬をぶった。



パチンっ!



乾いた音が部屋に響く。

「あなたが被弾する直前の様子を不知火は見ていました。戦艦に狙われていることにあなたは気づいていたはずです…」

その言葉で、私の思考は固まる。

「…どうして、よけなかったのですか。」

ここまでです。

更新が遅れてしまい、本当にすみません。

スレタイからは想像も付かないシリassさだな

>>312尻毛濃そう、頭にくれないか?

すみません遅くなりました。
23時ちょうどに投下始めます。

>>312
シリアスですが尻でもアスでもありません。
スレタイは深夜テンションでふざけてつけてしまって若干後悔しています。

>>315
尻毛までも欲するほどに落ちぶれてしまったあなたを>>1は本当にかわいそうな目で見ています

彼女の声は、さっきとは打って変わって、静かだった。

「…」

私が黙っているのを見て不知火ちゃんは続けた。

「…死のうとしていたのですか。」

敵の砲撃に気づいていながらよけなかったのを見ればそう思うだろう。

実際それは事実だ。

けれど、正直に『死にたかった』なんて言えるはずがないし、かといって不知火ちゃんにまた嘘をつくのも嫌だった。

私は答えられない。

「…」

沈黙を肯定の意に取ってか、彼女は私に問う。

「…利根さんですか。」

「…!」

(どうしてそのことを…)

驚く私の様子を見て、不知火ちゃんは目を閉じ、嘆息する。

「朝、お風呂上がりに利根さんとすれ違った時、ひどく落ち込んでいるご様子でしたので何かあったのかと思ったのですが…どうやらその通りだったようですね。」

「それだけで私と利根姉さんに何かあったんじゃないかと予想できたの?」

彼女のあまりの勘の良さに驚愕する。

「いえ、お風呂でちょうど筑摩さんに変なことを尋ねられた後でしたから。」

いや、それでも十分敏いだろう。

彼女には隠し事をできそうにない、隠そうとしても勘づかれてしまう、そう思った私は仕方なく胸の内を打ち明けることにした。

「…ええ、実はそうなんです。 利根姉さんとちょっといろいろあって。」

「やはりそうでしたか。 …あなたと利根さんのご様子から相当のことがあったのだとお見受けします。 深く追及はしません。」

流石に姉さんに提督が好きだということや、沈んでしまえばいいと言ってしまったことを全て話すのは口が重くて出来そうになかったので助かった。

「ごめんなさい。助かります。」

「ですが、」

不知火ちゃんは言葉を切って私を射るような眼差しで見る。

「…たとえどのようなことがあったのだとしても、あんなふうにご自分の命を投げ捨てるような行動をしたことは許せません。」

私は言葉に詰まる。

「ごめんなさい…」

「ご自分の命の重さを、自覚してください。」

不知火ちゃんは私を諭すように言う。

「誓ってください。 二度と、自ら命を捨てるようなことはしないと。」

不知火ちゃんは私の目を見つめ直した。

「戦力としてではなく、単純にあなたがいなくなってしまったら悲しむ人がいるのだと、忘れないでください。」

私を見つめる彼女の目は刺すようなものから、優しくて、暖かい眼差しへと変わっている。

「もう一度言います。 二度と、ご自身の命を絶つようなことはしないでください。」

(なんだ…)

出撃の時の心の声が思い出される。

『―鎮守府に戻ったところであなたに居場所なんかないわよ?―』

(ここにあるじゃない…)

こんなに自分を思ってくれている子がいるのに、それに気付かず自殺を図った身勝手な自分が恥ずかしい。

また、それと同時に、彼女が自分をここまで大切に思ってくれているということに言いようのない感謝の気持ちが湧いてくる。

「ごめんなさい。 ありがとう。」

気持ちをいっぺんに伝えようとしたため、謝罪と感謝の言葉が同時に出てしまう。

「…誓います。 もう二度とあんなことはしません。」

私の瞳を真っ直ぐに見てくる彼女を見つめ返して、約束する。

こうして見ると彼女と陽炎ちゃんが姉妹なのだとよくわかった。

目を合わせた時の暖かい瞳がそっくりだ。

「そうですか…」

私の様子を見てほっとしたのか不知火ちゃんは少しだけ体を弛緩させて息をついた。

「…叩いてしまったこと、本当に申し訳ありませんでした。」

唐突に頭を下げる不知火ちゃん。

私は戸惑う。

「え…そんな、謝らないでください。 私は叩かれて当然のことをしたんですから。」

不知火ちゃんは引き下がらない。

「いえ、怒りに身を任せて友人をぶつなど最低のことです。 謝罪しなくてはいけません。」

「そんな、私をおもってしてくれたことでしょう? それに、あなたが言ってくれたこと、嬉しかったです。 ありがとう。」

「…?」

微笑んでもう一度感謝の気持ちを伝える私を、彼女は不思議そうに見る。

「感謝されることを言った記憶はないのですが。」

「え? 『あなたがいなくなってしまったら悲しむ人がいる』って言ってくれたじゃないですか。」

なんだか自分で言い直すととても恥ずかしい。

まして、言った本人はなおさらだったようで、

「…」

不知火ちゃんは、表情こそ変わらないものの、顔を少し赤らめて目をそらした。

(かわいい…)

端正な顔立ちをしているのに、普段ぜんぜん笑ったりしない子がこんなふうに恥ずかしがっている様子は、なんだかとても胸をときめかせる。



「………」

不知火ちゃんが黙りこくってしまったため、会話がなくなってしまった。

沈黙がとても気まずい。

なにか話題を、と考えていたらここに来る前の陽炎ちゃんの言葉が思い出された。

『あの子、あの性格だから表面上はいつもどおり振舞っているんだけど、ご飯も食べてないし、お風呂にも入ろうとしないの…』

これだ、と早速話題を振る。

「ね、ねえ不知火ちゃん。 一緒にお風呂かお食事に行かないかしら?」

話が見つかって胸をなで下ろす。

それは不知火ちゃんも同じだったようで、少しホッとした様子になった。

「構いませんが、筑摩さんは入浴後なのでは?」

「ええ。 だけど不知火ちゃんがずっとお風呂に入っていないって聞いたから。」

言ってから失言だった、と気づく。

(ずっとお風呂に入っていないって知られていたら、恥ずかしいに決まっているじゃない…)

心の中で頭を抱える。

不知火ちゃんの方を見ると案の定『どうしてそれを…』という顔をして、顔をほんのりと赤らめていた。

「あ、あの違うの。これは陽炎ちゃんに言われて、でも陽炎ちゃんも動転していたみたいで。決してあなたがお風呂に入っていないことを馬鹿にしているわけじゃなくて…」

なんとかフォローしようとするが焦ってしまい日本語がめちゃくちゃになってしまう。

しかし不知火ちゃんは私の様子を見てむしろ落ち着いたようで、いつものような口調で嘆息しながら言う。

「…陽炎があなたに言ったのですか。 はい、そうです。 不知火はお風呂に入れていません。」

…なんだかまた失言をしてしまったような気がするが落ち着いてくれてよかった。

「ただ、入れなかったのはどこぞの誰かに多大なる心労をかけられたからです。 不知火に落ち度はありません。」

『どこぞの誰か』という部分を少し強調しながら言う不知火ちゃん。

「う…ごめんなさい。 お詫びにお背中お流ししますから。」

『どこぞの誰か』の私は頭を下げる。

彼女は少し考えるような素振りを見せてから答えた。

「…ではお言葉に甘えるとしましょう。」

そう言って立ち上がる不知火ちゃん。

私も一緒に席を立つ。

「ええ。 行きましょう。」

同じ艦隊だったため、話すことはよくあったがこんなふうに冗談を交えたような会話はしたことがなかったので、なんだか新鮮だった。

彼女との仲が深められたことが嬉しくて自然と顔がほころんでしまう。

「…どうしたのですか。」

彼女は怪訝そうな顔で尋ねる。

「いいえ、なんでもありません。 不知火ちゃんと仲良くなれて嬉しいだけよ?」

私は彼女に微笑む。

「…何を言っているのですか。」

嘆息をつきつつも少し嬉しそうな彼女の手を取り部屋を出る。

「ふふ、さあ、行きましょう。」

ここまでです。
遅筆と駄作化が加速していく…

盛り上がりもクソもない部分ばかりですが読んでくださっている方はありがとうございます。
投下速度あげないとなぁ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 08:09:22   ID: 5HRvvozS

ここの作者さんとは艦娘の趣味がとても似ているので、
いいお酒が飲めそうです。

2 :  SS好きの774さん   2015年03月28日 (土) 11:24:14   ID: bu4CuU0l

続きはよ

3 :  SS好きの774さん   2015年04月02日 (木) 00:39:46   ID: MFl78Bfh

引き込まれていく感じがしてとても面白いです!
続き頑張ってください!

4 :  SS好きの774さん   2015年04月02日 (木) 00:42:46   ID: kd-DqX3h

禿げた

5 :  SS好きの774さん   2015年04月03日 (金) 20:03:02   ID: iORu7IiZ

愉えt…いや、なんでもないです

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