女騎士「今日から前線……え?」 (11)
警備騎士団長「喜べ、女騎士は第一騎士師団への栄転だ」
女騎士「はい!……はい?」
警備騎士団長「前線で北方の魔物との厳しい戦いが待ってるぞ!はっはっは!」
女騎士「一体どういうことですか!いきなり転属だなんて聞いてませんよ!」
警備騎士団長「はっはっはっは!」
女騎士「笑ってないで答えてください」
警備騎士団長「いやだってお前、勤務中に酒浸りだしスリ集団から賄賂貰ってるだろ?一回前線行って根性叩きなおしてこい」
女騎士「」
警備騎士団長「まあ、安心しろ。腐っても騎士だし尉官待遇だ。最初から部下付き三食個室アリだぞ」
女騎士「えぇ……でも前線何て危ないじゃないですか。それに私ここ何週間か剣なんて握ってませんよ」
警備騎士団長「大丈夫大丈夫、こっちが優勢だし冬になる前に終わって帰れるから大丈夫」
女騎士「大丈夫って言葉使い過ぎて信用も減ったくれもないですよ!」
警備騎士団長「行かなきゃ抗命罪で縛り首な」
女騎士「……末代までたたってやる」
警備騎士団長「はっはっは!まあ、頑張れ!」
女騎士「クソッタレ!」
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~定期便馬車の中~
女騎士「クソッタレクソッタレクソッタレクソッタレ……」
兵士A「なあ、あの姉ちゃんヤバくないか?」
兵士B「綺麗な女だが、それだけに残念な感じがするな」
兵士A「声、かけるか?」
兵士B「正気かお前」
兵士A「止めとくか。触らぬ神に祟りなしだ」
兵士B「そうだな、休暇終ったばっかりで厄付きじゃあしょうもない」
兵士A「ただでさえ長期戦狙いの魔物相手で骨が折れるしな」
兵士B「冬に持ち込まれたらオーガ相手は大分厳しいぞ」
兵士A「ワーウルフなんかもな」
兵士B「ゲリラ戦法が多くなってきているし、本拠地もころころ変えて補給線狙い。うちの将軍閣下にどうにかできるとは思えない」
兵士A「シッ……止めとけ、それ上に聞かれたらやべぇぞ」
兵士B「おっと、軽い口はどうにもいかんな」
女騎士「……おい」
兵士B「ん、何だ」
兵士A「正気に戻ったのかこいつ」
女騎士「私は元から正気だ!それより今の話もっと聞かせろ」
兵士A「話って言ってもな、冬にまで討伐遠征が伸びそうだって話だよ」
女騎士「冬に伸びるとどうなるんだ」
兵士B「こっちの兵隊は北部の冬慣れしていない、向こうはホームグラウンドで圧倒的に有利ってことだ」
兵士A「まあ、そういうことで損害が増えるってことだ。ところで、姉ちゃんは何しに前線に行くんだ?」
女騎士「私は警備騎士団から前線に左遷だ。あのクソッタレの騎士団長のせいでなんで私が……クソッタレ」
兵士B「へぇ、騎士団の方からか。そりゃあご愁傷様」
兵士A「向こうは平和だっただろうなぁ。けど前線も良いぞぉ。良い兵士は死んだ兵士だけってな!」
兵士B「はっはっは!」
女騎士「……それで、第一師団長はどんな奴だ」
兵士B「やけに勉強熱心だな。流石は貴族御用達の警備騎士団」
兵士A「あー、騎士あがりの糞真面目なお人だ。本人の腕っぷしは良いんだが、何分頭でっかちで人を動かすのは下手と見える」
兵士B「お前それも聞かれたら不味いやつだぞ。けど間違っちゃあいない!」
兵士A「だろ!へっへっへ!」
女騎士「………口軽すぎだろこいつら」
兵士A「ん、なんか言ったか?」
女騎士「いいや何でも」
兵士A「まあ、もし俺らがあんたの下についた時はよろしくな!」
兵士B「師団長もあれで女好きだから直ぐ昇進できるかもしれないぞ」
兵士A「そういうこった!じゃあ俺らはここで降りるぜ、じゃあな!」
女騎士「ああ、その時は頼む。それじゃあまた」
兵士AB「おうよ!」
女騎士「……あいつら仲良すぎだろホモかよ」
女騎士「それにしたって騎士団長、聞いた話と違うじゃないか。絶対後であいつ[ピーーー]」
女騎士「本当あいつらが言ってた通り師団長に取り入るか?そうすれば後方勤務に回してくれるかもしれない」
女騎士「いやけど、気に入られてしまえばずっと使われ続けるぞ」
女騎士「フーム……いやけど考えても始まらなさそうだ。そんな時はこいつを」つ酒
女騎士「ゴッゴッゴッゴ……ふぅー…………なんかもうどうでもいいや」
フードの女「いいんかい!」
女騎士「おおっ!?何奴!」
フードの女「いやそこの物陰にずっといたんだけどさ。アンタがあまりにもアレだったから思わず」
女騎士「で、貴様は何者だ」キリッ
フードの女「いや今更体裁整えられてもねぇ」
女騎士「……いいから答えろ。場合に依っちゃ切り捨てるぞ」
フードの女「フーン……まぁ、いいか。私は……そうねぇ、お花売りよお花売り」
女騎士「……売女か。騎士団まで出稼ぎなんてご苦労だな」
フードの女「あら、前線の騎士団相手は良いわよぉ。コレは持ってるし、周りのうるさい目も無いから気兼ねなく買ってくれるの」
女騎士「それで、何で物影なんかにいたんだ」
フードの女「金もってなさそうな兵士二人にぶつぶつ言ってる女一人じゃあねぇ。目をつけられたら厄介そうだから」
女騎士「ずけずけ言ってくれるなお前。まあ、事実だけど」
フードの女「そこが良いって言うお客さん多いのよね」
女騎士「あー、分からんでもない。最近は控えめな女より活発な女のがモテるって聞いた」
フードの女「そうよぉ。けど男を立てないとダメ。我が強すぎても匙を投げられちゃうし」
女騎士「私は男関係はさっぱりだからなぁ。見てくれは良いと自分でも思ってるんだけど」
フードの女「けど話してみるとあなた結構残念よねぇ……。モテるタイプではなさそう」
女騎士「うっせぇ」
フードの女「まあ、もっと言葉づかいとか直したらモテるんじゃない?」
女騎士「そうか?」
フードの女「騎士口調にところどころ柔らかい口調が混じってなんか変なのよねアンタ」
女騎士「それは、まあ、なぁ……?」
フードの女「直した方が良いわよ」
女騎士「考えとく……」
女騎士「……そういえば、お前はどこの出だ?」
フードの女「え、マウルビエよ。王都から南街道をまっすぐ行って山を越えた先の農村」
女騎士「へぇ、良い所じゃあないか。それが何でまた商売女なんかになったんだ。旦那でも貰えば不自由ない暮らしが送れたろうに」
フードの女「食いつくわねぇ。ただ私は遊び足りなかっただけよ。お金も欲しかったし」
女騎士「そうか。フムフム……よく西方訛りは隠せてるが、売女のマネは下手なようだな」チャキ
フードの女「な、何よ剣なんか握って……」
女騎士「コロンの香りもしないし、売り物を一人で移動させる娼館の男も居ない。怪しすぎるんだよ」
女騎士「それに、あそこは裕福な場所ではない。領主が4年前に代わってから重い徴税と不作が続いている」
女騎士「こちとら娼館は頻繁に出入りしているし、西の方は色々都合上回ってるんだよ。えぇ、西の間諜さん?」
フードの女「へぇ、なかなか頭は回るの。まあ良いわ、丁度いいし」
女騎士「何が丁度いいんだ。首を交換する時期がか?」
フードの女「そうね、まあ聞きなさい。アンタだったらこの話ノるでしょうから」
フードの女「我々、アーグア共和国でも魔物は脅威に感じているの。あなた達の国と同じくらいにはね」
フードの女「けれど今の戦況は膠着気味で冬を待ってあなた達が不利になる一方。これは美味しくないの」
フードの女「できればどっちも痛手を負ってほしい。どちらも与力を残して私たちに矛を向けない程度の、ね。だから現在の日和見な第一騎士団トップにはご退場願いたいわけ」
女騎士「私に師団長を殺せとでもいうのか?」
フードの女「いいえ、それじゃあ私たちの方に目が行ってしまうし本末転倒よ」
女騎士「じゃあ、何だというんだ」
フードの女「師団長さんが前線から下がってくれるだけでいいの。情報筋からの話だと帝都のタカ派の将軍さん達が手柄を欲しがっているじゃない?第一師団が何かしら不始末をやってくれれば彼らが付け入るスキができる。そこで頭がすげ変われば戦況は変わる。相手の被害もあなた達の被害も増えてLOSE-LOSEってわけ」
女騎士「なるほどな。そうすれば私もさっさと帰れるってわけか」
フードの女「そうそう。あなたはちょこっと手伝ってくれるだけで良いの。あなたにとっても良い話じゃない?」
女騎士「へぇ、そりゃあ良い。凄く良い」
フードの女「でしょ、でしょ!ねえ、お願い!」
女騎士「といっても、私もリスクを負うのは間違いないんだよなぁ。うん。流石に騎士団入りの身を危険にさらすのは、ねえ?」
フードの女「それは前線に居るのだって変わらないんじゃない?」
女騎士「私はね、魔物相手の危険よりかは人間相手の危険の方が分かってるんだよ。国を敵に回すのは恐いんだよなぁ」
フードの女「……わかったわよ、これでどう?」
女騎士「指三本……三百万オールドねぇ……」
フードの女「フフッ、ゼロが一個足りなくてよ?」
女騎士「……乗った!」
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