小中学校時代をいじめっ子として名を馳せたジャイアンであったが、
勉強を怠ったため、偏差値の低いヤンキー高校にしか受からなかった。
筋金入りのヤンキーの集まる場所で、ジャイアンはいじめのターゲットとなった……。
ジャイアン「くそっ!なんで俺がこんな目に!」
ふて腐れ、無為に過ごすジャイアンの前に、懐かしい人物が姿を現した。
のび太である。
のび太「あれ? ジャイアンじゃない」
小学校こそ運動・勉強共にからっきしだったのび太だが、
中学校で始めた陸上で頭角を現し、スポーツ推薦で高校に入ったのだった。
ジャイアンの目には、のび太がとても大人びて見えた。
ジャイアン「お、おうのび太か……へへへ」
のび太「なんだか顔色が悪いよ? 大丈夫かい?」
ジャイアン「ん? そうか? 心配ありがとよ(のび太なら……)」
ジャイアン「(のび太なら虐めてもいいよな! ウヒヒ!)」
数日後、ジャイアンはのび太を呼び出した。
「この前会って懐かしかったから、色々話したい」
とってつけた理由だったが、優しいのび太はジャイアンの思惑どおり呼び出しに応じた。
のび太「ジャイアン!」
ジャイアン「おう! のび太ぁ!」
のび太「数日ぶりだね! アハハハ」
ジャイアン「(スポーツのエリート街道歩んでるからって調子にのんな! 制裁だ!)」
のび太「ところでジャイア…!?」
ジャイアンは機敏に体勢を変え、のび太に殴りかかった。突然のできごとに
のび太はジャイアンのパンチをモロに喰らってしまう。
のび太「な、なにすんのさ! ゴフッ!?」
倒れたのび太の腹を、思いっきり踏み付ける。体格では、まだジャイアンのほうが上である。
ジャイアン「お前が調子に乗ってっからだ、自分はバカでノロマなのび太ってことを思い出せよ」
のび太「……」
ジャイアン「分かったか!? ああああ!?」
のび太「ジャイアン……」
久しぶりにあった友人の、あまりにも惨めな姿にのび太は
イラ立つどころか悲しくなった。その表情でジャイアンは勝ったと勘違いし、満足したようである。
ジャイアン「そうそう、分かったら良いんだ。今日はこれで勘弁してやる。次に俺の前でヘラヘラしたら、お前の足をヘシ折るからな」
最後の言葉がのび太を怒りで包んだ。
のび太「足を……ヘシ折るだと……?」
ジャイアン「なんだ、お前……」
のび太「ランナーの僕にとって足は命だ! それを……ふざけるなぁああああ!!!!」
ジャイアン「うごぉっ! て、てめぇ!」
思わぬ反撃にうろたえたジャイアンは、近くにたまたまあった鉄パイプを掴み、
のび太を徹底的に殴った。我を忘れて。
ジャイアン「はぁ……はぁ……」
のび太「……」
ジャイアン「お、おい……のび太……のび太?」
平静を取り戻し、自分のやったことが急に怖くなったジャイアンは、その場を走り去った。
小学校の頃、のび太を追い掛け回していたのとは何もかも違っていた。
test
翌日
テレビ「続いては、昨日起きた東京都の高校生撲殺事件についてです」ピッ
ジャイアン「……俺は悪くない、のび太が悪いんだ」
ジャイアンはテレビを消し、座布団を頭に押し付けた。身震いが止まらない。
世界が無言で自分を責めているようだった。
ジャイアン「そうだ……全部のび太のせいなんだ……」
ジャイアン母「タケシ! これ、今朝の新聞に載ってる野比って」
ジャイアン「ああ、小学校中学校の同級生だったのび太だ……犯人め、許せねえ」
母親をだますことに成功し、ジャイアンはいくばくかの自信を取り戻した。
新聞をチラっと見た限り、のび太殺しの犯人にまだ目星はついていないようだ。
ジャイアンは、籍を置く高校という名の"ヤンキー集会所"で、
今日もいじめられていた。
いじめている奴らは、世間を騒がす高校生殺しの犯人がジャイアンとは知る由もない。
ヤンキー「おう剛田ぁ~」
ジャイアン「……(俺は人を殺してるんだぞ)」
ヤンキー「うひぃ~はぁ~あははあはは」
ジャイアン「(お前らだっていつでも殺せるんだ)」
ジャイアンの中で、何かが目覚めていた。
警察ではのび太殺しの捜査本部が立ち上げられ、捜査が進められており、
一般にも情報提供を呼び掛けていた。
警察官「高校生殺し……野比は陸上大会で準優勝の実力者……」
警察官「リア充が死んで喜ばしいじゃねえか(笑)」プルルルプルルルガチャ
警察官「はい、こちら○○警察署ですが」
警察官「はい…『事件の日、被害者に良くにた青年と、大柄な青年が歩いているのを見た』?」
ジャイアン家
ジャイアン「はぁ……今日もアイツらにたんまりいじめられたぜ」
ジャイアン「あいつらを殺すとしたら、やっぱナイフかな……鉄パイプはもう試したもんな」
ジャイアン「ウヒヒ、ウヒ、ウヒヒヒ……」
ジャイアン母「どちらさまですか? えっ、警察?」
ジャイアン「!」
ジャイアン「ヤ、ヤバイ……事件のことがバレた……?」
口から心臓が飛び出そうになった。もう時間がない――そう悟ったジャイアンは、
部屋の窓から外へ飛び出した。ふところにナイフを忍ばせて。
ヤンキー達を探し、大通りで彼らを見つけ出したジャイアンは、
躊躇なくナイフを取り出した。
目が逝ったその姿は傍から見たら、さながら薬物中毒者であった。
ヤンキー「あはは、あはは」
ジャイアン「よお!」
ヤンキー「あん……? お前、剛田じゃねえか」
ジャイアン「ウヒヒ……」
ヤンキー「お、お前何持ってんだ?」
通行人「ひ、ひぃっ!」
ジャイアン「ウヒヒ、そこの電気屋のテレビででかでかとやってる高校生殺し……犯人は俺だ」
道行く人に打ち明ける。もう無くすものはなにもない。
通行人「なんだって?」
ジャイアン「覚悟しろぉおおおおおおお!」
ヤンキー「ぐはっ!」
通行人「あああああああああああ!」
ジャイアン「ウヒヒ、ウヒ、ウヒヒヒ……」
ジャイアンはヤンキーの死体を切り刻んでいるところを、
通報によって駆けつけた警察官に逮捕された。通りは騒然となった。
その後の取り調べで、のび太殺しも自供した。
ジャイアン「全部あいつが……のび太が悪いんだ……」
ジャイアン「くそっ!なんで俺がこんな目に!」
完
オフスプリングは遠慮してください(笑)
このSSまとめへのコメント
ただただつまらん