男「最近の爺さんは電車で席を譲ると逆に癇癪を起すものらしい」女「それは本当か」
男「最近の爺さんは電車で席を譲ると逆に癇癪を起こすものらしい」女「それは本当か」 - SSまとめ速報
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を自分なりに書いてみたものです
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1425386275
山の上にある山野高校
普通科高校という言葉が全く適当であるというほどに偏差値も部活動も普通の高校だ
この会話は、そこの男子寮の一室である、B太郎の部屋で交わされたものである
とはいっても発言者は部屋の主ではなく、部屋を訪れていた3人のうちの1人、A介により発せられたものだった
A介、C男、X子
この3人は高校に入りB太郎と出会ってから、寮生であるB太郎の部屋にたむろするようになっていた
そしてこの日も、金曜の夜だというのに暇人どもはB太郎の部屋へと転がり込んでいたのだった
C男「そりゃまたどうしてさ?」
童顔で中性的な顔立ちであるC男がA介の発言に聞き返した
A介「なんでも、『自分はまだ若い!余計な世話をするな!』という感じらしいぜ」
X子「そりゃまた難儀なじーさまだな」
紅一点でありながら醤油せんべいをバリボリと貪りながら、X子は呆れたように呟いた
しかしこんな彼女だからこそ、夜に男子3人と同室で過ごすという、ともすれば問題となる行動も周囲から黙認されているのだった
B太郎「確かに俺も老人扱いされては堪らんな。しかしそれでは今後老人を見つけたときはどうすればいいのだろう」
柔道部に属しており男らしいと老若男女問わずに評判のB太郎が困ったように唸った
確かに彼が年を取った時には、席を譲られたら説教で返す元気ではた迷惑な老人となることだろう
そしてその疑問は、他の3人も同様だった
ここで『そんな爺に席なんか譲る必要はない!』という意見が出ず、老人に席を譲るという前提で悩んでしまう、普通に人の良い若者4人組であった
そして結局、解決策は見つからなかった
次の日、B太郎を除いた3人は久々に映画を見るために電車に乗り込んだ
B太郎はこの日部活があり映画には行けなくなったのだが、3人は映画を見る予定を一切変えようとはしなかった
そのためB太郎から『薄情者め…』というありがたいお言葉を賜っての映画鑑賞であった
A介「危なかった…。え~と、全員乗れてるな」
C男「うん!あ、隣の車両の奥の方の席が3つ分空いてるよ!」
ギリギリで乗車した後すぐに周囲の席の状況を把握するC男の抜け目なさに2人は感心しながら隣の車両へ移り、3人並んで腰を下ろした
ここから映画館のある駅までは7駅もある
いくら若いからと言っても座れるならば座れるに越したことはない
運転手「次は~光坂~光坂~」
これから見る映画と、それを見れなかったB太郎をどのようにからかおうかを語り合っていると、次の駅に着いた
この駅は利用者が非常に多く、すぐに車両は人で溢れ空席は存在しなくなった
X子「ふむ、どうやらラッキーだったようだな」
A介「そうだな。この混みようは目的駅に着くまで変わらないだろう。もし席を見つけてなかったら東京のサラリーマン気分を味わうところだった」
C男「ホントだn……っ!」
その時C男が、目の前を見て固まった
何事かと思い2人はC男の目の前の方へ視線を向け、そして納得した
そこには一人の老婦人が杖を突きながら立っていた
3人はお互いを見やった
3人はまるでサトリのようにお互いが何を考えているか分かっていた
昨夜に話した席を譲る云々の会話を思い出していたのである
X子「どうする…?」
A介「まずいな…こんなに早くこのシチュエーションに出会うとは…。完全に予想外だ」
C男「でも譲るなら早くしないと…。あんまり時間かけると譲りにくくなっちゃうよ」
A介「だが待て…。もしここで善意を説教で返されたとしたら、俺達の気分は最悪だ。せっかくの映画も楽しめず、B太郎に『ザマーミロ!』と笑われることになってしまう…」
X子「いや、だけどお婆ちゃん、なんかプルプルし始めてんだけど…」
A介(くっ、どうする…?どうすればいい?)
どうして俺達はこうして出会ってしまったのだろうと、変な方向に行きそうになった思考を修正しつつ、A介はその頭脳を激しく回転させた
そして追い詰められたA介は、ある策を思いついた
A介「これだ!!」
思わず叫ぶA介に、同じ車両の人間は怪訝な目を向けた
しかし残りの2人は逆に賞賛の眼差しでA介を見つめた
そんな2人に、まかせろという頼もしい表情を返して、A介はすっくと立ち上がった
そして大きな声で言い放った
A介「お腹が痛いっ!!」
居合わせた乗客は、ピシッと背筋を伸ばした状態で腹が痛いと宣言したA介に呆気にとられていた
もちろんそれは横にいた2人の友人も同じだった
しかしA介はそんなことに気付きもせず策を遂行し続ける
A介「ああっ!急にとんでもなくお腹が痛くなってしまった。これは残念だが、急いでトイレに向かわねば!」
そう芝居がかったように宣言して、A介は妙に良い姿勢を保ったまま、優雅にトイレのある方へと歩いて行った
老婦人に気を使わせないようにと動きを変に意識したためか、その歩き方はまるで紳士の様に優雅だった
周囲が呆然としている中、空いた席によろよろと座った老婦人が、隣にいたC男に心配そうに話しかけた
老婦人「お友達、大丈夫かねぇ…」
この言葉により、堰を切ったかのように車両は爆笑の渦に包まれた
その中でC男は顔を真っ赤にして俯き、X子は静かにため息をついていた
一方車両間の通路にあるトイレに入ったA介は、後悔に頭を抱えていた
A介「なんで俺はあれを良い策だなんて思ってしまったんだろう…」
A介のとったやり方は確かに老婆に自然に席を譲ることに成功した
だが結局、彼はこの後後悔の念から映画を楽しめず、またX子により事の顛末を教えられたB太郎に『腹痛紳士』と卒業までからかわれることになってしまったのであった
当てつけか!ウワーン!
>>12
いや、純粋に他人の書いたものを自分だったらどう書くかとか考えられていい経験だと思ってつい…
原作者さんありがとう!
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