女「あの…私、ずっと男君のことが好きでした」
男「うん、僕も女さんが好きだったんだ」
女「オトコの人を好きになるなんて、初めてで……」
男「お互い様だよ」
女「その……今までは…」モジモジ
男「いいよ、だいたい解ってる」クスッ
女「手とか繋いだ事もないの──」
男「あー、僕もだな──」
女「──踏みつけた事はあるけど」
男「──にっこり笑って叩き除けた事はあるけど」
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女「初めてよ……あなたみたいに、私に隷属しないヒト」
男「僕だってだよ、別に誰かれ構わず従属させようとしてるわけじゃないけど」
女「解ってるわ、勝手に好きになって勝手に犬と化していくんでしょう」
男「さすが女さん、話が早い」ニコッ
女「同じだもの」
男「もちろん僕に特別な感情を抱かない人も多くいるけど、女さん……君は違うよね?」
女「ええ、私はあなたが好き。どういうわけか、あなただけは例え私に恋をしても奴隷にはならない気がしたの」
男「素晴らしいな、僕と全く一緒だ。そしてそんな君をずっと見ている内に、確かに僕は君に恋をした」
女「だから、なんとしてもあなたという静かな暴君を……」
男「……女王様のような君を、僕だけの犬にしたくなったんだ」
女「とにかく、あなたを好きって気持ちに偽りは無いわ」
男「うん、女さんほど僕の心を捉えてはなさない人はいないよ」
女「私をあなたの彼女にしてくれる?」
男「喜んで、いつこっちから申し込もうかと思ってた」
女「先に根負けした分、今はあなたが一歩リードしてるわね」
男「心にも無い事を、僕を油断させるのが君の狙いのはずだよ」
女「お見通しだったみたい」
男「本心まで見通せてるかは解らないけどね」
女「一緒に帰ってもいい?」
男「もちろん、恋人同士でしょ」
女「……初めてよ」
男「うん?」
女「手を…繋ぎたいわ」モジモジ
男「いいよ」…ギュッ
女「私の命令、きいたわね?」ニヤッ
男「簡単に捻り潰せそうな手だね」クスッ
女「まだまだ寒いけど、少しずつ日が長くなってきたわね」
男「そうだね、もう二月も半分過ぎたし」
女「……上着、貸してくれないのね」
男「君の犬とは違うからね。むしろ去りゆく冬をもう少し感じてみたらどう? そんな暖かそうなマフラーなんかとってさ」
女「嫌よ、寒いのは嫌い」
男「ふうん……」ニヤリ
女(……しまった、嫌いな事を教えるなんて)
男「僕、女の子の鎖骨周りが好きなんだ。見せてよ」ニヤニヤ
女「マフラーを取らなくったって見ようと思えば見えるじゃない」プイ
男「じゃあ見せてもらってもいいのかな」
女「ちょっと恥ずかしいけど……いいわ」
男「失礼」グイッ
女「きゃっ…乱暴にしないで」ヨロッ
男「ふーん……素直にされるままなんて、意外とチョロいんだ」ボソッ
女「たかが胸元見るために必死になっちゃって、発情した犬みたい」フッ
男「いつも何時くらいに帰ってるの?」
女「まちまちよ、19時~20時くらいが多いかしら」
男「モスでも寄って帰る?」
女「今日、お金あんまりないの」
男「付き合い始めた記念日だもの、そのくらい奢るよ」
女「あら、いつも周りで尻尾振ってる犬と同じ事しようとするのね」
男「奴隷に餌をあげるのは主人の務めだからね」
女「………」
男「………」
女「素直にご馳走になるわ」ニコッ
男「うん、ありがとう」ニコッ
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