時雨「提督は無口だね」 提督「む……」 (28)
艦これ
なんとなく失望されるのもいい気がする
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時雨『マルロクマルマル。今日一日、僕が提督に時間を伝えるよ』
提督「おう。一日よろしく」カリカリ
時雨「うん、よろしくね」
提督「あぁ」カリカリ
時雨「……」
提督「…………む」ペラッ
時雨「……」
提督「…………」
時雨「…………ふふ」
提督「…………あー……なるほど」スッ
時雨「……提督」
提督「ん? 」
時雨「……君との時間、悪くない」
提督「そうか」
時雨「うん。こんな沈黙なら……一日中だってきっとそれは幸せなことさ」
時雨『マルナナマルマル。朝は僕も好きだな』
提督「……その印とってくれないか」
時雨「これかい? 」スッ
提督「ん、ありがとう」
時雨「……」
提督「……」
時雨「……」
提督「朝は辛くないか」
時雨「いや、大丈夫だよ。むしろ夜が苦手だね」
提督「そうか。俺もそうだな。軍人としては睡眠に負けていては、というところだろうが」
時雨「そうだね。僕ももっと夜に強くならないと」
提督「あぁ、そのうちな」
時雨「うん」
時雨『マルナナマルマル。朝は僕も好きだな②』
時雨「でも、さ」
提督「うん? 」
時雨「村雨や春雨は朝が弱いんだ」
提督「おう」
時雨「さっきも出撃がないから寝ていたよ」
提督「そうか」
時雨「弱いのは仕方ないけど、さ。
朝にだっていいことはあるから勿体無いと思うんだ」
提督「勿体無い? 」
時雨「あぁ。朝には朝のいつもとは違う提督と会えるからね」
提督「……」
時雨「秘書艦の仕事にだって役得はあるんだ」
提督「……そうか」
時雨「ふふ、そうだよ」
時雨『ここは譲れない』
提督「……八時か」
時雨「あぁ。もう僕がきてから二時間も経ったんだね」
提督「……飯は食べたよな」
時雨「うん。ガラガラの食堂でね」
提督「……」
時雨「……」
提督「……今度から」
時雨「うん? 」
提督「次回からは執務室に持ってこい。
食事は一人より二人の方が美味い」
時雨「いいのかい? 」
提督「おう」
時雨「……」
提督「……」
時雨「……やっぱり、君が僕の提督だよ」
提督「そうか」
時雨『マルキュウマルマル。世間は忙しないね』
提督「ん……だが軍務の細かさも世間や大衆には理解されまい」
時雨「確かに」
提督「……大体、時雨たちが怠惰にしていると言われているようで俺は不快だ」
時雨「提督も」
提督「……」
時雨「提督も、だよ。戦っているのは僕たちだけじゃない」
提督「俺は」
時雨「失望させないでほしい。僕は少なくとも提督を戦友だと思っているんだ」
提督「むっ……」
時雨「僕は君の苦しみを知っているつもりだ。
だから、君には僕たちの苦しみを知っていてほしい。
後方で安穏としている、なんて自分を卑下するのは僕たちを貶めるのと同じことさ」
提督「そうか……済まなかったな」
時雨「いや、わかってくれればいいさ」
提督「……それでも、な」
時雨『ヒトマルマルマル。提督の仕事は……まぁ、提督が仕事だよね、うん』
提督「……先程の通りだと思うが」
時雨「うん。提督も戦っている。確かに僕はそう言った」
提督「あぁ」
時雨「でもね。その……なんというか……提督の仕事は他にもあるんじゃないかなって」
提督「他に? 」
時雨「例えば……そう、僕たちを労うとか」
提督「……む」
時雨「……」
提督「……間宮でも行くか? 」
時雨「ありがとう。でも、提督が嫌なら僕はかまわないよ」
提督「……嫌ではない」
時雨「そうかい」
提督「そうだ」
時雨『ヒトヒトマルマル。僕も少しお腹が空いたなぁ』
提督「…………腹が、減らないか」
時雨「ん……そうだね。もうお昼が近い」
提督「しかし、ここで止めてもな。あまり区切りがよくない」
時雨「構わないよ。あくまで執務が優先さ」
提督「済まないな」
時雨「……そういうときは」
提督「ん? 」
時雨「そういうときはお礼がいいな。
別に感謝されたいわけじゃないけど……謝られるのはあまり好きじゃない」
提督「……」
時雨「……」
提督「…………」
時雨「? 」
提督「いつも……いつもありがとう。時雨」
時雨「! ……あぁ、こちらこそ。ありがとう、僕の提督」
時雨『ヒトフタマルマル。疲れたかい? 丁度いい、お昼にしよう』
提督「……そうだな」
時雨「久し振りに提督と食事な気がするよ」
提督「そうだったか」
時雨「そうさ。最近は他の人と食べるか執務室に籠っていたから」
提督「……そうか」
時雨「まぁ、過去のことはいいさ。今日この日、共にいることが大切だから」
提督「そうだな」
時雨「うん」
提督「……」
時雨「……」
提督「……何を食べる? 」
時雨「そうだね……君と同じものを」
提督(……俺も時雨と同じものを食べようと思っていたんだが)
時雨『ヒトサンマルマル。提督とお昼、嬉しいね』
提督「…………美味かったな」
時雨「そうだね。このために戦う人がいるのもわかるよ」
提督「……あれは少しいき過ぎだが」
時雨「ふふ……別にそこまで言うことでもないじゃないか」
提督「しかしだな……」
時雨「まぁまぁ……そういえば提督」
提督「ん? 」
時雨「もし僕が料理をすれば君は食べてくれるかい? 」
提督「……そうだな。それが食べることのできるものならば」
時雨「ふふ……大丈夫さ。君が喜んでくれるまで練習するよ」
提督「そうか……待っている」
時雨「あぁ、期待しててよ」
時雨『ヒトヨンマルマル。午後の任務も頑張ろう』
提督「……」カリカリ
時雨「……ん…………」
提督「……」カリカリ
時雨「…………ぅ……Zzz」
提督「……」ペラッ
時雨「Zzz……」
提督「…………時雨? 」
時雨「……Zzz」
提督「……寝てるのか」
時雨「ふふ…………てい、と……Zzz……」
時雨『頑張る提督もすてきだね。でも、無理しちゃだめだよ? 』
時雨「…………はっ」キョロキョロ
提督「…………」カリカリ
時雨「……あぁ、ソファまで連れてきてくれたのか」
提督「……あぁ。疲れているようだったからな」
時雨「僕としたことが。済まないね」
提督「……構わない。それより、勝手に身体を触って済まなかったな」
時雨「あぁ、確かに。でも勝手に仕事を放棄した僕もおあいこさ」
提督「そうか」カリカリ
時雨「でも……うん、君は優しいね」
提督「……」カリカリ
時雨「賛辞を素直に受け取れない不器用さも。僕は好きだよ」
提督「……………………そうか」
時雨「あぁ。……さて、僕も再開するよ」
時雨『ヒトロクマルマル。提督、お疲れ様』
提督「……時雨も、な」
時雨「いや、僕は少しだけ寝てしまったから。
提督にはその分押し付けてしまった」
提督「……」
時雨「……」
提督「…………時雨はそこにいるだけでもいい」
時雨「え? 」
提督「そこにいて俺を見ていてくれれば。俺を安心させてくれるだけでも本来はいいんだ」
時雨「……」
提督「……」カリカリ
時雨「……驚いたよ。提督でもそんなこと言うんだね」
提督「そうか? 」
時雨「うん。でも不思議と……悪くない」
時雨『ヒトナナマルマル。提督は忙しいんだね』
時雨「この執務量、普通なのかい? 」
提督「さてな。軍務に普通もなにもないだろう」
時雨「そうだろうか」
提督「……あまり他所を知らないというのもある」
時雨「……なるほど」
提督「それに」
時雨「うん? 」
提督「俺にはこれしかない。今更文句を言っても致し方あるまい」
時雨「……そっか」
提督「あぁ」
提督(執務の間は時雨を見ていられるから、な。悪くない)
時雨『提督、手紙が届いているよ』
ガチャ、バタン
提督「……なに? 」
時雨「手紙だよ。提督宛の手紙」スッ
提督「? ……ありがとう」
時雨「……」
提督「……むっ」
時雨「……」
提督「……」
時雨「……」
提督「……なるほど。捨ててくれないか」スッ
時雨「いいのかい? 」
提督「あぁ」
時雨「……」
提督「……」
時雨「……あまり、愉快な話ではないようだね」
提督「あぁ、あまり訊かれたくはない。親戚のことでちょっとな」
時雨「……殆どの手紙を大事に保管してる提督には珍しいことだね」
提督「! な、なぜそれをッ」ワナワナ
時雨「ふふ、気付かれてないと思っていたのかい?
ここでは皆が知っていることさ」
提督「…………嘘、だろ」
時雨『ヒトキュウマルマル。そろそろ、夕食の時間だね』
提督「……なぜ……なぜだ……まさか…………暴露て……」
時雨「そろそろ夕食だよ。もういい加減諦めたらどうだい」
提督「……しかし、あのように惰弱な」
時雨「大丈夫さ。ここには提督のことを優しいと思いこそすれ、
軟弱だとか考えるような人はいないよ」
提督「……むぅ」
時雨「でも……そうだね。確かに以外だったよ」
提督「……」
時雨「軍人の理想像みたいな提督にもあんな可愛らしいところがあるなんて、ね」
提督「…………はぁ」
時雨「……ま、いいじゃないか。これはもう忘れて。
夕食を食べにいこうよ」
提督「…………そうだな」
時雨『フタマルマルマル。そろそろ夜戦の時間か……。騒がしくなるね』
提督「そうだな。……夜間演習の時間でもあるし」
時雨「今頃は……僕らの仲間たちが海で戦っているのか」
提督「だろうな」
時雨「…………」
提督「…………どうした」
時雨「……僕はここにいていいのかな」
提督「む? 」
時雨「なんだか……ここで君といる幸せは誰かの不幸の上にあるような気がしてさ」
提督「…………」
時雨「…………」
提督「……戦え。時雨が出撃したときに今の幸せを噛みしめろ。
できるのはそれだけだ」
時雨「そっか」
提督「おう」
時雨「……」
提督「……」
時雨「君は今……幸せかい? 」
提督「……俺は」
時雨「いや、やっぱり答えなくていいや」
提督「……そうか」
時雨(僕が幸せなんだ。だからきっと……君も幸せだよね。
本来ならとても一人よがりな考えだけど……でも僕はそう信じたいんだ)
時雨「…………ふふ」
提督「……? 」カリカリ
時雨『フタヒトマルマル。すっかり夜か……』
提督「……眠いか? 」
時雨「そんなことは……いや、そうだね。
結構これは、キているっていうのかな」
提督「……そうか」
時雨「……」
提督「……」カリカリ
時雨「……」
提督「……少しだけ待ってくれないか」
時雨「え? ……うん、わかったよ」
時雨『フタフタマルマル。マイペースでいいんだ。うん、僕もそうさ』
提督「……」カリカリ
時雨「……」
提督「……よし」
時雨「……終わったかい? 」
提督「あぁ、時雨。ソファに来い」スクッ
時雨「うん」
提督「……」
時雨「……」トタトタ
提督「……膝に、寝てもいいぞ」
時雨「え? 」
提督「……」
時雨「ねぇ、今日はどうしたんだい? なんだか君らしくないことばかりする」
提督「…………たまには、な」
時雨「……そっか」
提督「……」
時雨「……」
提督「……嫌だったか? 」
時雨「まさか。お邪魔するよ」
時雨『フタフタマルマル。マイペースでいいんだ。うん、僕もそうさ②』
提督「…………」ナデナデ
時雨「…………ん」
提督「…………痛くはないか」ナデナデ
時雨「うん……とても気持ちいいよ」
提督「……そうか」ナデナデ
時雨「…………」
提督「……お前は俺との沈黙が嫌ではないと言ったな」ナデナデ
時雨「うん、言ったよ」
提督「あの言葉……俺も時雨にそのまま返そう。
沈黙を共有できる存在に出会えるとは思っていなかった」ナデナデ
時雨「…………」
提督「……ある哲学者は言った」ナデナデ
時雨「…………」
提督「『暫く二人で黙っているといい。
その沈黙に耐えられる関係かどうか』」
時雨「……僕はお眼鏡に適ったかい? 」
提督「あぁ。時雨が俺の…………俺の場所は時雨の隣だよ」
時雨『フタフタマルマル。マイペースでいいんだ。うん、僕もそうさ③』
時雨「ある科学者が言ったらしいんだけど」
提督「……」
時雨「A=X+Y+Z。この式がわかるかい? 」
提督「……いや、初耳だな」
時雨「Aが成功。Xは仕事。Yは遊び。そして、Zは、ね」
提督「……」
時雨「……」
提督「…………沈黙? 」
時雨「そう、正解だ」
提督「……」
時雨「成功=幸せだとすれば。そして今君が幸せならば。
僕も少しは役に立ったのかもしれないね」
提督「……」
時雨「……」
提督「……ありがとう。時雨」
時雨「あぁ、どういたしまして。お礼にもう少し撫でてほしいな」
提督「……お安い御用だ」ナデナデ
時雨「…………ふふ、僕も感謝しているよ」
…
………
……………
時雨『マルゴーマルマル。新しい一日がはじまるね』
提督「…………む」
時雨「……Zzz」
提督「あのまま寝てしまったのか…………少し寒いな」
時雨「…………Zzz…………ふふ」
提督(考えてみれば…………いつも隣には時雨がいた。
いてほしいときにはすぐそばに。
一人になりたいときにはいつの間にかいなくなっている)
時雨「……て、い…………く……」
提督(時雨がいなければ今の俺はない。それは確かなことだろう。
そして……俺は彼女になにか返すことができているだろうか)
時雨「……ん…………んぅ…………提督? 」
提督「ん、起きたか。どうやらあのまま眠ってしまったらしい」
時雨「そっか……ということはずっと寝顔を見られたいたんだね」
提督「そうだな」
時雨「……これは少し恥ずかしいかもしれない」
提督「……」
時雨「……」
提督「……とても」
時雨「ん? なんだい、提督」
提督「とても、可愛らしかった。いつまでも見ていたいくらいに」
時雨「……」
提督「……」
時雨「……おはよう、提督。二人ともきっと見るにたえない顔をしているよ」
提督「あぁ……やってしまった」
時雨「それでも……………うん、嬉しいよ。
やっぱり僕は朝がとても好きだな」
おわり
無口ってより口下手だったような気がする……
見てくれた方がいれば、ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
ほのぼのしてていいですねぇ。