ほむら「初めてのバレンタイン」 (160)

まどマギの百合物です
2回か3回に分けて投下する予定です

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まどか「うーん……」

まどか「……うーん。どうしようかなぁ」

さやか「おーい、まどかー」

まどか「……あ、さやかちゃん」

さやか「何か考え込んでたみたいだったけど、どうかしたの?」

まどか「あ、あはは……。ごめんね、大したことじゃないから」

さやか「ふーん……」

まどか「そ、それで何か用でもあった?」

さやか「あぁ、今日のお昼はほむらと2人で食べててよ。あたし、ちょっと出ないとだからさ」

まどか「そうなの?わかったよ」

さやか「じゃ、またあとでねー」

まどか「……行っちゃった。さやかちゃんの用って何だろう」

まどか「考えても仕方ない…かな。うん、お昼にしよっと」

まどか「ほむらちゃーん。お昼、食べよー?」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら「……違う。じゃあ、こっち……」

まどか「ほむらちゃんってばー」

ほむら「……いえ、でも……」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「……え?あ、まどか」

まどか「もう。さっきから呼んでるのに」

ほむら「そ、そうだったの、ごめんなさい。それで、何かしら?」

まどか「お昼にしようよ。さやかちゃんは用があるみたいで出て行っちゃったけど」

ほむら「わかったわ。……じゃ、お昼にしましょうか」

まどか「いただきまーす」

まどか「……そう言えば、ほむらちゃんは何を熱心に読んでたの?」

ほむら「え?」

まどか「だって、わたしが話しかけたのも気づかなかったんでしょ?何なのかなって」

ほむら「あぁ、大したものじゃ……」

まどか「……ふーん。ほむらちゃんはわたしが話しかけたのより、大したものじゃないのを読む方が大事なんだ」

ほむら「ちょっと、その聞き方は意地悪じゃない?」

まどか「ふーんだ」

ほむら「そんな拗ねないで。……ほら、これを読んでたのよ」

まどか「これは…チョコのレシピ?」

ほむら「えぇ。もうすぐバレンタインでしょう?だから……」

まどか「みんなに配るチョコを考えてたの?」

ほむら「それもそうだけど…その……」

ほむら「まどかに渡すものを考えていたの……」

まどか「……え?わたしに?」

ほむら「えぇ。私たちは…恋人でしょう?だから、特別なものを作ってあげたくて……」

まどか「そうだったんだ……。ごめんね、拗ねちゃって」

ほむら「だけど、なかなか難しいものね。溶かして固めるだけだと思ってたから……」

まどか「どうしてチョコを作ろうって思ったの?」

ほむら「……せっかくのバレンタインだもの。恋人に素敵なものを贈りたいと思ったっていいじゃない」

ほむら「それに、私たちが付き合ってから初めての恋人らしいイベントだから……」

まどか「……そっか。わたしたち、まだそういうイベントって経験したことがないんだっけ」

ほむら「恋人になったのが先月だものね……。恋人になって1ヶ月記念でもする?」

まどか「うーん……。それは何かバカップルみたいになっちゃうからやめよう」

ほむら「参考までに聞きたいんだけど、まどかは去年のバレンタインはどうだったの?」

まどか「どうって、特に何もないよ。さやかちゃんや仁美ちゃんとチョコを交換したくらいで」

まどか「だから、今年は初めての恋人がいるバレンタインだからどうしようかと悩んでたんだ」

ほむら「そう……。まどかも初めてなのね」

まどか「そりゃそうだよ。むしろ、恋人ができたのだって初めてなんだから」

ほむら「私だって。勿論、私の恋人は後にも先にもまどかだけよ」

まどか「や、やめてよ、そんな恥ずかしいこと……」

ほむら「ふふっ。ごめんなさい」

まどか「……ごちそうさまでした」

ほむら「ねぇ、まどかはさっき見せた中で食べたいものってない?」

まどか「え?……うーん、正直に言えばいくつかあったけど、でも教えたくないんだよね」

ほむら「あら、どうして?」

まどか「だって教えちゃったら、間違いなくそのチョコを作ってくれるでしょ?」

まどか「中身はなんだろうって楽しみも何もなくなっちゃうもん」

ほむら「……そう言われるとそうね。中身がわかっちゃってると嬉しさ半減ね」

まどか「でしょ?だから、内緒」

ほむら「内緒なら内緒で構わないけど…計画がボツになってしまったわね」

まどか「計画?」

ほむら「えぇ。バレンタインのチョコを一緒に作らないかと思ったのだけど……」

まどか「それだと、お互い何作ってるか丸わかりだからね。別々に作ろうよ」

ほむら「当日貰って開けるまでのお楽しみってわけね。少し楽しそうじゃない」

まどか「わたしも、何だかワクワクしてきちゃった」

ほむら「これだけは言っておくけど、まどかの手作りだったら何でも構わないわ」

まどか「それはわたしもだよ。ほむらちゃんが作ってくれたのなら、失敗してたって大丈夫だから」

ほむら「言ってくれるわね。当日を楽しみにしてなさい」

まどか「それじゃあ、お互いがんばろうね」

さやか「ただいまーっと。やー、今日はごめんねー」

まどか「おかえりー。どこに行ってたの?」

さやか「あー…言っちゃってもいいか。マミさんに相談があって……」

まどか「マミさんに相談?……ってことは」

さやか「お察しの通り、バレンタインのチョコをね」

ほむら「……でも待って。あなたって確か上条恭介にフられてなかった?」

さやか「ふ、フられてないわ。……ただ、あいつがあたしと仁美、どっちもとらなかっただけで」

さやか「だから、このバレンタインで少しでもあたしの方に手繰り寄せたくてね……」

まどか「そうなんだ……」

さやか「……2人はバレンタインに何かするの?もう付き合ってるけど」

まどか「うん。みんなと同じようにチョコを作ってあげるつもりだよ」

ほむら「私もそのつもりよ」

さやか「え、ほむらも?……できんの?」

ほむら「わからないけど、やる前から諦めても仕方ないわ」

さやか「まぁ、まどかのために頑張りなよ」

ほむら「そういうあなたも、早いところ上条恭介を物にしなさいよ」

さやか「わ、わかってるよ。……ただねぇ、あんたたちみたいに両片想いってわけじゃないからなぁ」

まどか「大丈夫だよ。さやかちゃんなら絶対うまくいくよ」

さやか「……ありがと、まどか。やるだけやってみる」

まどか「うん。がんばってね」

ほむら「2人とも、そろそろ授業の支度した方がいいんじゃない?」

まどか「あ、そうだね。……じゃあ、またあとでね」

ほむら「えぇ。またあとで」

ほむら「……それにしても」

ほむら(どうしたものかしらね……。ざっと見た感じだと、どれも手が込んでるわ)

ほむら(私1人じゃ心許ないし…相談するだけしてみましょうか)

ほむら(彼女ならきっと、私に最適のプランを用意してくれると思うし)

ほむら(……放課後、少し寄らせてもらいましょう。今のうちにメールを……)

――放課後――

ほむら(ふぅ。放課後ね……。まどかに今日は一緒に帰れないと……)

まどか「ほむらちゃん。ごめんね、今日は一緒には……」

ほむら「そう、なの?何か用事が?」

まどか「うん。ほら、チョコのレシピ買わないとだから……」

ほむら「私には秘密にしたいってことかしら。わかったわ」

まどか「ほ、ほんとにごめんね……」

ほむら「気になんてしてないから大丈夫よ」

さやか「まどか、本屋行くんでしょ?あたしも一緒に行っていい?」

まどか「いいけど、さやかちゃんも……?」

さやか「まぁ、一応ね。あと買ってない漫画があるから」

まどか「じゃあ、一緒に行こっか」

さやか「んじゃほむら、まどか借りてくよ」

ほむら「借りるからには返しなさいよ」

さやか「わかってるって。そんじゃ、またねー」

まどか「ほむらちゃん、ばいばーい」

ほむら「えぇ。また明日」

ほむら「……さて。私も行かないと」

ほむら「今日はごめんなさい。突然押しかけてしまって」

マミ「いいのよ、気にしないで。……と、言いたいけどあいにくクッキーくらいしか……」

ほむら「別にお菓子を食べに来たわけじゃないんだから、お構いなく」

マミ「そう……?」

ほむら「えぇ。……それより、相談があるとメールをしたと思うんだけど」

マミ「あぁ、そうだったわね。暁美さんの相談というのは……?」

ほむら「……バレンタインのことについてよ」

マミ「バレンタイン?」

ほむら「もうすぐバレンタインでしょう?だから、まどかにチョコを贈ろうと思ってレシピを買ったのだけど」

ほむら「どれもこれも手が込んでいて、私1人ではちょっと……」

マミ「それで、私に相談を?」

ほむら「お菓子作りが得意なあなたなら、私に最適なものを見つけてくれるんじゃないかと思ったのよ」

マミ「ふふ、暁美さんに頼られるなんて滅多にないから少し嬉しく思っちゃうわね」

ほむら「……それよりも、このレシピの中に私にもできそうなものはあるかしら」

マミ「そうね…って、これ……?」

ほむら「どうかしたの?」

マミ「……これ、結構いい値段しなかった?」

ほむら「えっと…ごめんなさい、わからないわ。レシピなんて初めて買ったから、こんなものだと……」

マミ「あなたが買ったこのレシピ、上級者向けのものなの。正直、私も作ったことのないものも多くて」

ほむら「そ、そうだったの?」

マミ「えぇ。……この中からというのは難しいわね」

ほむら「そう……。とんだ無駄遣いをしてしまったわね。仕方ない、何か適当なレシピを用意してもらない?」

マミ「……ごめんなさい。どこにあるか思い出せなくて」

ほむら「つまり、すぐ用意はできないってわけね……。さて、どうしたものかしら。明日買い直して改めて……」

マミ「……ひとつ考えがあるのだけど、いい?」

ほむら「勿論。何かしら?」

マミ「その…暁美さんが今相談しているのって、鹿目さんに贈るチョコのことだったはずよね?」

ほむら「えぇ、そうよ」

マミ「その贈り物についてなんだけど、私はチョコじゃなくてもいいんじゃないかって思うのよ」

ほむら「え?でも、バレンタインってチョコを贈るものじゃ……」

マミ「そんなことないわ、チョコ以外にも色々あるんだから。たとえば…そう、花束とか」

ほむら「……それは知らなかったわ。バレンタインはチョコしかないものとばかり」

マミ「それにね、ほら、チョコを贈るのって好きな人に想いを伝える為って感じじゃない」

マミ「でも、あなたたちは恋人同士。だから、無理にチョコでなくてもいいんじゃないかしら」

ほむら「でも、まどかにはもうチョコを贈ると言ってしまったし……」

マミ「そうだとしても、それ以外だったから駄目なんてことは言わないと思うわ」

ほむら「……そうかしら。あなたが思ってる以上に拗ねやすいのよ、まどかは」

マミ「あら、そうなの?でも大丈夫よ、きっと」

ほむら「それで、あなたの考えとやらは何かしら」

マミ「あぁ、ごめんなさい。えっとね……」

――翌日 放課後――

まどか「ほむらちゃん、帰ろー」

ほむら「ごめんなさい。少し用事があって一緒には……」

まどか「用事?」

ほむら「えぇ。昨日、バレンタインのことを相談しようとマミの家に行ったのだけど」

ほむら「そこであのチョコのレシピを見せたら、上級者向けのものだったらしくて……」

まどか「あー…昨日見たときも、何か難しそうだなぁとは思ったけど……」

ほむら「それで、もっと簡単にできるのを買いに行かないとだから……」

まどか「わたしには秘密ってことだよね。わかったよ」

ほむら「本当にごめんなさい。明日からはまた一緒に帰れるはずだから」

まどか「気にしないでよ。昨日はわたしの都合で一緒に帰れなかっただけだし」

ほむら「でもまどか、付き合ってから少し拗ねやすくなったような気がするから……」

まどか「……え?そう?」

ほむら「私はそんな風に感じるけど……」

まどか「む、むぅ…そうなんだ……。なんかごめんね?」

ほむら「いえ、いいの。拗ねてるまどかも可愛いから」

まどか「それならいい…のかな。じゃあ、わたしは先に帰るね」

ほむら「えぇ。まどか、また明日」

まどか「またね、ほむらちゃん」

ほむら「……さて、と。私は……」

さやか「あれ、ほむら?今日もまどかと別行動なの?」

ほむら「あら、さやか。昨日、少し手違いというかミスをしてしまって」

さやか「そうなんだ……。何でもいいけど、まどかを手放しててもいいの?」

ほむら「それはどういう……?」

さやか「ほむらが手放したんなら、あたしが奪っちゃおうかなーって」

ほむら「そのときは眉間に鉛玉が撃ち込まれると思うけど、構わないわね?」

さやか「うう、嘘に決まってるでしょ……。どうしてそう怖いこと平然と言えるのさ」

ほむら「……冗談よ」

さやか「目がマジだったんだけど……。まぁ何にせよ、まどかの機嫌を損ねないようにしなよ?」

ほむら「わかってるわ。明日からはまたいつも通りになると思うから、心配いらないわ」

さやか「ならいいけど。……んじゃ、あたしも帰るよ」

ほむら「えぇ、さようなら」

ほむら「……私も行かないと。えーと、買っていくものは……」

まどか「うーん……」

まどか(今日はどうしようかな……。わたしは何の用事もないからなぁ……)

まどか(やっぱりほむらちゃんがいてくれないと退屈だな。うーん、何しよう……)

まどか(……マミさんの家に遊びに行こうかな。ついでにチョコの作り方なんかも教わりたいし)

まどか(ほむらちゃんも用事でいないし、ちょうどいいよね)

まどか「よし、そうと決まれば早速……」ピッ

Prrrrrrrr

マミ『もしもし、鹿目さん?』

まどか「あ、マミさん。今大丈夫ですか?」

マミ『えぇ、大丈夫よ。何かしら?』

まどか「これからマミさんのところに遊びに行ってもいいですか?バレンタインのことも相談したくて」

マミ『うーん…ごめんなさい。今日はちょっと都合が悪くて』

まどか「そうですか……」

マミ『土日もあいにくと予定があるし、平日は時間が限られるし……』

マミ『……そうね、来週の水曜日はどうかしら?祝日でお休みだし』

まどか「わかりました。じゃあ、水曜日の午後に伺いますね」

マミ『えぇ、待ってるわね』

まどか「はい。それでは、また」ピッ

まどか「……ううん、どうしよう。マミさん、都合悪いみたいだし」

まどか「今日はこのまままっすぐ帰ろうかなー……」

まどか「……あれ、あそこ歩いてるの…杏子ちゃん、かな」

まどか「声、かけてみようかな。杏子ちゃーん」

杏子「んぁ?何だ、まどかじゃねぇか」

まどか「やっぱり杏子ちゃんだ。こんにちは」

杏子「おう。今、帰りか?」

まどか「うん。学校の帰りだよ」

杏子「そうか。……そういや、今日はほむらと一緒じゃないんだな。珍しい」

まどか「ほむらちゃんはちょっと用事があって。マミさんのところに遊びに行こうと思ったんだけど」

まどか「そのマミさんも今日は都合が悪いみたいで……」

杏子「退屈してたところでアタシを見つけて声をかけた、ってところか」

まどか「そうなの。ねぇ、もしよかったらどこか遊びに行かない?」

杏子「別にいいけど、アタシが思いつくのはゲーセンくらいなモンだぞ」

まどか「んー…せっかくだし、ショッピングモールに行ってみない?」

杏子「確かあそこにもゲーセン入ってたっけな。んじゃ、ちょっと行ってみるか」

まどか「うん!」

マミ「……」ピッ

ほむら「今の電話、まどかから?」

マミ「えぇ、これから遊びに行ってもいいかって。都合悪いってことで断ったけど」

ほむら「ありがとう。助かるわ」

マミ「でも、どうしてまたこんなことを?」

ほむら「当日までお互い何を贈るかは秘密って約束だから」

マミ「……まぁ、あなたたちが決めたのならいいけど」

ほむら「それより、そろそろ始めましょう。昨日言われたものは買ってきたわ」

マミ「わかったわ。それじゃまずは……」

――――――

マミ「……はい、今日はここまでにしましょう」

ほむら「……」

マミ「どうかしら、やってみて」

ほむら「……結構難しいのね。まだ少し不安な部分が」

マミ「今日始めたばかりなんだから、それは仕方ないわ」

ほむら「そうね……。家で練習しておくわ」

マミ「明日は今日やったことのおさらいをして、実際に作ってみましょう」

ほむら「わかったわ。……それじゃ、私はこれで。今日はありがとう」

マミ「暁美さん、また明日ね」

ほむら「えぇ。明日もよろしくお願いするわ」

バタン

マミ「……えぇと、ここから先はどうするんだったっけ……?」

マミ「私も久しぶりだけど、自分で提案してしまった以上はしっかり教えてあげないと」

マミ「……テキスト、買ってきた方がいいかしら」

ほむら「ふぅ……」

ほむら(何だかやたらと疲れたわ……。慣れないことをしたからかしらね……)

ほむら(今日はゆっくり休みたいところだけど、そうもいかないわ)

ほむら(家に帰って夕飯を食べたら、教わったことの確認をして…それから……)

ほむら(バレンタイン当日までに…間に合うかしら。……いえ、間に合わせないと)

ほむら(明日からまたマミが教えてくれると言ってるし、頑張りましょう)

ほむら「……とにかく、早く帰らないと」

ひとまずここまで
続きは14日の夕方頃に投下予定です

夕方、夕方ってなんだ…
今日中に終わらせたい
叛逆後のは次か次の次くらいの予定です


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――月曜日――

さやか「おはよー、まどか」

まどか「さやかちゃん、おはよう」

さやか「……あれ、ほむらは?」

まどか「それが、今日はまだ来てないの」

さやか「そうなの?珍しいな、寝坊か?」

まどか「さやかちゃんじゃないんだから……」

さやか「まどか、そりゃどういう意味さ」

まどか「あ、あはは……。あ、ほむらちゃんだ。ほむらちゃん、おはよ……」

ほむら「おはよう…まどか……」

まどか「ど、どうしたの?目の下、隈ができてるけど……」

ほむら「少し、寝不足で……。でも、大丈夫だから」

まどか「ほむらちゃんがそう言うなら……。でも、辛くなったら言ってよ?」

ほむら「えぇ……。じゃあ、行きましょうか……」

まどか「う、うん。……大丈夫かな、ほむらちゃん」

さやか「本人がそう言ってる以上は大丈夫だと思うけど……」

まどか「心配だなぁ……」

ほむら(眠い……。眠くて何だかぼんやりする……)

ほむら(授業も…いまいち頭に入ってこないし……)

ほむら(どう考えても…この土日、遅くまで起きてたせい…よね……)

ほむら(耐えられないことはないと思うけど…気を抜くと持っていかれそう……)

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「まどか…何かしら……?」

まどか「用らしい用はないんだけど…大丈夫かなって」

ほむら「え……?」

まどか「だってほむらちゃん、今朝から眠そうにしてたから……」

まどか「授業中も頭がぐらぐら動いてたし……」

ほむら「そう……。恥ずかしいところを見られてしまったわね」

まどか「そんなこと……」

ほむら「……余計な心配をさせてしまってごめんなさい。でも、本当に大丈夫よ」

ほむら「別に具合が悪いわけでも何でもないから。ただ、眠いだけで……」

まどか「じゃあ、お昼休みに少し仮眠を取ったらいいんじゃない?」

ほむら「それもどうかしら……。教室で寝るのは恥ずかしいし、ただの寝不足で保健室を使うわけにも……」

ほむら「授業中に寝るのはもってのほかだし……」

まどか「そっか……。ごめんね、力になれなくて」

ほむら「いえ、いいのよ。まどかのその気持ちが嬉しいから」

まどか「じゃあ、今日は早く帰って寝ちゃった方がいいね」

ほむら「いいの?休み前は一緒に帰れなかったし、土日も遊べなかったのに……」

まどか「少し寂しいけど、ほむらちゃんの体調がよくないのにわがままなんて言えないよ」

ほむら「別に体調が悪いわけじゃ……」

まどか「ほむらちゃん、わたしは保健係だよ?寝不足も体調不良なんだから、ちゃんと休まないとダメ」

ほむら「……ふふっ。まどかにそう言われてしまったら、そうするしかないわね」

まどか「寄り道とかお出かけはまた今度にしよう」

ほむら「えぇ。……そろそろ次の授業が始まるから、席に戻った方がいいわ」

まどか「うん。……授業の前にさやかちゃんを起こしてあげないと」

ほむら「また寝てるの……?」

まどか「授業の終わりくらいから……」

ほむら「羞恥心というものがないのかしら……。次の授業が始まる前に起こしてあげなさい」

まどか「わかってるよ。ほむらちゃんも寝ないようにがんばってね」

ほむら「ありがとう。頑張るわ」

ほむら(まどかと話をしたおかげで少しは目が冴えたし…大丈夫かしらね)

ほむら(とにかく、放課後まで何とか耐えないと……)

――放課後――

ほむら「……何とか今日1日を無事に終えられたわ」

まどか「お疲れさま、ほむらちゃん」

ほむら「えぇ……。眠いところを無理やり起きていたせいか、随分と疲れたわ……」

さやか「2人とも、今日は何する?どこ行く?」

ほむら「……どうしてあなたはそんなに元気なのかしら」

さやか「そりゃ、放課後だからだよ。決まってるじゃん」

ほむら「授業中に寝ていたという証言があるのだけど」

さやか「……それで、今日はどうしようか。どこに寄り道しちゃう?」

ほむら「あくまで聞かないというわけね……」

まどか「さやかちゃん、ごめんね。わたし、ほむらちゃんを家まで送らないとだから」

ほむら「まどか、そこまでしてもらわなくても……」

まどか「だって今のほむらちゃん、何だか危なっかしいから。いいでしょ?」

ほむら「……じゃあ、お願いするわ」

まどか「うん。……そういうわけだから、ごめんね?」

さやか「ちぇー、仕方ないなー。んじゃ、適当にぶらぶらしてよっと」

まどか「それもいいけど、バレンタインの準備は進んでるの?」

さやか「……も、もちろんだとも。あたし、用事思い出したからこれで……」

まどか「うん、またね」

ほむら「……あの様子だと、忘れてたみたいね」

まどか「そ、そうみたいだね。……わたしたちも帰ろっか。立てる?」

ほむら「えぇ、大丈夫……。じゃあ、行きましょう」

まどか「……ほむらちゃん、着いたよ」

ほむら「ありがとう、まどか……。助かったわ」

まどか「今日はゆっくり休んでね」

ほむら「えぇ、すぐにでも休むつもりよ。今日は色々と心配をかけたみたいでごめんなさい……」

まどか「いいんだよ、気にしなくても。こういうときに支えてあげるのも、恋人の役目だと思うし」

ほむら「まどか……」

まどか「……それじゃ、わたしはこれで。今日は早く寝ないとダメなんだからね」

ほむら「わかってるわ。……おやすみなさい、まどか」

まどか「うん、おやすみー」

バタン

ほむら「……はぁ」

ほむら(参ったわね……。まさか寝不足でここまでなってしまうなんて)

ほむら(この土日、明るいうちはマミの家に行って、帰ったら習ったことの確認をして……)

ほむら(それからどういう形にするのかずっと悩んで…それでもようやく決まったのよね……)

ほむら(あまり時間の余裕もないし、早く取り掛かりたいところだけど……)

ほむら(……ひとまず、仮眠を取った方がいいみたい。頭が上手く働かないわ)

ほむら(夕飯も…起きてから適当に……。今は…休みましょう……)

――水曜日――

マミ「いらっしゃい、鹿目さん」

まどか「マミさん、今日はありがとうござます」

マミ「いいのよ。本当は土日がよかったんだと思うけど…ごめんなさいね」

まどか「都合が悪かったんですから、仕方ないですよ」

マミ「そう言ってもらえると助かるわ。それで、相談って?」

まどか「あ、はい。えっと、バレンタインのことについてなんですけど……」

マミ「バレンタインのことについてとなると…暁美さんに贈るチョコのことかしら?」

まどか「う……。やっぱりわかっちゃいます……?」

マミ「あなたたちは恋人だもの。すぐにわかっちゃうわ」

まどか「そ、そうですか。……それで、そのチョコのことなんですが」

まどか「わたし、恋人にチョコを贈るなんて初めてで…どんなものを作ったらいいのかわからなくて……」

まどか「何を贈るかは当日までお互い秘密にしてるから、ほむらちゃんに聞くわけにも……」

まどか「お休みを使って必死に考えて…ようやく何を作るか決めたんです」

マミ「え、そうなの?それなら何も聞くことなんて……」

まどか「ただ…わたし、チョコを作るなんて生まれて初めてだから、不安で……」

まどか「本当にこれでいいのかなって考えちゃうし、それに……」

まどか「どうしたらうまく作れるのか、マミさんに教わりたくて……」

マミ「……つまり、鹿目さんが聞きたいのは何を作るかではなく」

マミ「どうしたら作りたいものをより上手に作ることができるか、ということかしら」

まどか「はい。……えっと、このレシピの…これなんですけど、教えてもらえませんか?」

マミ「それは構わないけど、少しくらい失敗しても暁美さんなら喜んでくれるんじゃない?」

まどか「そうかもしれませんけど…でも、少しでも上手に、おいしいものを作ってあげたいんです」

まどか「だから…お願いします、マミさん!」

マミ「……そこまで言われちゃやらないわけにはいかないわね」

マミ「鹿目さんのチョコ作り、私がお手伝いするわ」

まどか「マミさん…ありがとうございます!じゃあ早速……」

マミ「あ、もう少し待って。もう1人来るから」

まどか「え?もう1人って……」

ピンポーン

マミ「丁度いいタイミングね。はーい、今行くわ」

まどか(もう1人って…誰のことだろう。まさかほむらちゃんじゃないよね……?)

まどか(ほむらちゃんもマミさんに教えてもらおうとしてる…とか……)

さやか「お、まどか。やっほー」

まどか「……さやか、ちゃん?どうしてここに……」

さやか「どうしてって、あたしもマミさんに作り方を教わりに来たんだよ」

まどか「え?さやかちゃんも?」

マミ「そうなのよ。昨日、急に作り方を教えてほしいって電話が来て……」

さやか「ほら、この前まどかが言ってたでしょ。バレンタインの準備、進んでるのかって」

さやか「あのあと、材料買ってネットで調べて作ってみたんだけど……」

まどか「ダメだったの?」

さやか「……キッチンの使用禁止令が出されました」

まどか「そ、そうなんだ……」

さやか「あたし1人じゃどう頑張ってもお手上げだと思ってさ。マミさんに泣きついたってわけよ」

マミ「私としては2人別々でもよかったのだけど、当日まであまり時間がないでしょ?」

マミ「そういう理由で2人同時になっちゃったけど、いいかしら?」

まどか「はい、全然大丈夫です」

さやか「教えてもらう側が文句なんて言えませんって」

マミ「ありがとう、2人とも。それじゃ、始めましょうか」

まどか「はい!」

さやか「よーし、頑張るぞー」

――――――

マミ「……うん。2人ともよくできてるわ。これなら大丈夫よ」

まどか「ほ、本当ですか?よかったぁ……」

さやか「いやー…上手い人に教わるとこうもわかりやすいなんて……」

マミ「美樹さんはもう少し落ち着いて作業をしてね。危ないから……」

さやか「わ、わかりました」

マミ「出来栄えは問題なかったし、チョコ作りはこれでおしまい。お疲れさま」

まどか「マミさんも、お疲れさまでした」

さやか「それにしても、慣れないことしたせいか…疲れたなー……」

まどか「さやかちゃん、料理とかお菓子作りなんてしないもんね」

さやか「う……。そ、そう言うまどかはどうなのさ」

まどか「わたしだって、パパのお手伝いくらいしかしたことないよ。でも……」

まどか「それでも、ほむらちゃんにおいしいチョコを作ってあげたいから…今日、ここに来たんだよ」

まどか「さやかちゃんもそうじゃないの?」

さやか「それは…まぁ、ね」

マミ「きっと美樹さんの気持ちは届くはずだから。頑張って」

さやか「は、はい」

マミ「鹿目さんは…暁美さんに喜んでもらえるといいわね」

まどか「絶対、喜んでもらえるものを作ります」

さやか「……さて、と。そろそろ帰ろうかな」

まどか「そうだね。いつの間にか外も暗くなっちゃってるし」

さやか「こんなに時間かかるとは思わなかったなー。溶かして固めるだけって思ってたから……」

マミ「時間かかるものはもっとかかるわよ。挑戦してみる?」

さやか「い、いえ。遠慮しときます……」

まどか「わたしも今年は…今ので精いっぱいですから……」

マミ「ふふ、冗談よ。それじゃあ2人とも、気をつけて帰ってね」

まどか「マミさん、今日はありがとうございました」

さやか「おじゃましましたー」

バタン

マミ「……2人とも、上手く行くといいけど」

マミ「そう言えば暁美さん、作業は進んでるかしら。何だか心配ね……」

マミ「……ちょっと電話してみましょう」ピッ

Prrrrrrrr

マミ「……出ないわね。どうしたのかしら」

マミ「仕方ない。あとでまたかけ直して……」

ほむら『……もしもし。何か用かしら』

マミ「あ、暁美さん。電話出るのに随分時間かかってたみたいだけど」

ほむら『……何でもないわ。電話から離れていただけよ』

マミ「そう?それならいいんだけど」

ほむら『それで、何の用?』

マミ「あぁ、そうそう。順調に進んでるか、心配になって……」

マミ「詰まってるようなら、また教えましょうか?」

ほむら『いえ…今のところは大丈夫。順調よ』

マミ「バレンタインまであまり時間はないけど、大丈夫?」

ほむら『えぇ、問題無いわ。当日までには完成させるから』

マミ「わかってると思うけど、無理はしちゃ駄目よ。鹿目さんの為にも」

ほむら『当然よ。……他に用がないのなら、これで失礼するわ』

マミ「あ、ごめんなさい。それじゃ、頑張って」ピッ

マミ「……気のせいかもしれないけど、暁美さん…眠たそうな声だったような」

マミ「今日が水曜日で…14日は土曜日ね……」

マミ「……どの程度まで進んでるかわからないけど、大丈夫よね。きっと」

マミ「さて、そろそろ夕飯にしましょう。今日は何を……」

ピンポーン

マミ「……ふふっ、佐倉さんね。はーい、今行くわー」

ほむら「……」ピッ

ほむら「……はぁ」

ほむら「何が順調よ……。まだ3分の1も終わってないのに……」

ほむら「見栄張ったって仕方ないのに。私の馬鹿……」

ほむら「……言ってしまったものは仕方ないわ。とにかく、早く完成させないと」

ほむら「バレンタインまであと3日……。徹夜になりそうね、これ……」

ほむら「学校を休めば間に合うと思うけど、まどかに心配をかけるわけにはいかないし……」

ほむら「……ほんと、どうして私はこうも不器用なのかしら。器用なのは爆弾作るときだけなんて」

ほむら「泣き言を言っても始まらないわね……。もう、やるしかないのだから……」

――金曜日――

さやか「ふっふーん。ふーん」

まどか「さやかちゃん、何か浮かれてるね」

さやか「ほら、今日はバレンタイン直前の学校でしょ?だからだよ」

まどか「今年のバレンタインは土曜日だから、みんな今日のうちにって思ってるのかな」

さやか「だと思うよ。……あたしだってそうだし」

まどか「そっか……。みんな、いい結果になるといいな」

さやか「さすが彼氏…じゃないか、彼女持ちは言うことに余裕がありますね」

まどか「そ、そうかな」

さやか「そりゃもう。それで、その彼女は今日はどうしたんだろうね」

まどか「わたしにも……。ギリギリまで待っても来ないし、メールも返事がないし……」

さやか「あのほむらがまどかにメールを返さないなんて……」

まどか「風邪でもひいちゃったのかなぁ……」

さやか「わかんないけど、あれ以上待ってるとあたしたちも……?」

まどか「さやかちゃん?」

さやか「……あそこ歩いてるの、ほむらじゃない?」

まどか「え?……あれ、ほんとだ。何で?」

さやか「あたしに聞かれても……。とにかく、行ってみようよ」

まどか「う、うん」

ほむら「……ふ、ぅ」

ほむら(今日は…一段と辛いわ……。全然寝てないせいで……)

ほむら(頭はぼーっとするし…身体は思うように動いてくれない……)

ほむら(結局…今朝はどのくらい、寝たかしら……。2時間くらい……?)

ほむら(……とにかく、あともう少しで……。今日を何とか乗り切って……)

まどか「ほむらちゃーん」

さやか「おーい、ほむらー」

ほむら「……?あぁ、おはよう…まどか……」

まどか「おはよう、ほむらちゃん」

さやか「おはよ……?」

ほむら「……どうかしたの?」

さやか「あぁ、何でもないよ」

ほむら「そう……」

まどか「それよりほむらちゃん、今日はどうしたの?」

ほむら「どうした、って?」

まどか「いつもの場所で待ってても来ないし、メールに返事もないし……」

ほむら「……そう…だったわね。寝起きが悪くてぼんやりしてたせいかしら。ごめんなさい」

まどか「もう、心配したんだから。風邪でもひいちゃったのかなって」

ほむら「その心配はないわ。……特に不調は無いから」

まどか「そっか、それならいいの。じゃあ、学校行こっか」

ほむら「……えぇ」

さやか(おーい。もうちょっとさやかちゃんとお話しないー?)

ほむら(……わざわざテレパシーなんて…まどかに秘密にしておきたいことなの?)

さやか(何言ってんの。まどかに隠しておきたいのはあんたの方でしょ)

ほむら(何のこと…かしら……?)

さやか(あんた、まともに寝てないでしょ。すごい顔してたよ)

ほむら「……っ」

まどか「ほむらちゃん?どうかした?」

ほむら「……何でもないわ」

ほむら(……上手く誤魔化したつもりだったのに、気づかれるなんて)

さやか(多分、魔法でうまいこと誤魔化したつもりなんだろうけど…一瞬、隠すのが遅れてたよ)

さやか(こっち振り向いたとき、見えちゃったんだよね)

ほむら(そう……)

さやか(ここ最近ずっと眠たそうにしてるけど、大丈夫なの?)

ほむら(……えぇ。多少なり寝てはいるから大丈夫よ)

さやか(そう……?何してるかは何となく想像つくけど、ぶっ倒れたりしないでよ?)

ほむら(……わかってる。まどかに心配はかけられないもの)

さやか(ほむらのことだから、まどかに悟られないように過ごすつもりなんでしょ?あたしも協力するよ)

ほむら(……いいの?)

さやか(本当のこと、聞いちゃったしね。ここで知らぬ存ぜぬはちょっとどうかなって気もするし)

ほむら(……ありがとう。助かるわ)

さやか(お礼は友チョコで十分。とりあえず、まどかが感づかないようにがんばってみるよ)

ほむら(えぇ…わかったわ……)

さやか(ヤバくなる前にあたしに言いなさいよ?)

まどか「……」

まどか(ほむらちゃんとさやかちゃん、テレパシーで何か話してる……)

まどか(何話してるんだろう……。聞いてみようかな)

まどか「2人とも、今テレパシーで話してたでしょ。何話してるの?」

さやか「あ…あー、いやね。ほむらのチョコは何かなーって」

さやか「まどかの前でそういうの聞くのも悪い気がしてさ」

まどか「……そうなの?」

ほむら「えぇ。渡すまで秘密ということにしたけど」

さやか「ちぇー、教えてくれてもいいのに」

まどか(……今の話は…きっと嘘。さやかちゃんの顔を見るに、多分何かの相談事)

まどか(何の話なのかはわからないけど…もし、ほむらちゃんが何か相談事をしてたのだとしたら……)

まどか(……わたしじゃ頼りにならないのかな。自分で頼れる方じゃないってわかってはいるけど)

まどか(わたしたち…恋人なのに。どうして相談相手がわたしじゃなくてさやかちゃんなのさ……)

ほむら「まどか……?」

まどか「……ほむらちゃん、早く行こう!」

ほむら「えっ、ちょっ、そんなに引っ張らなくても……」

さやか「お、置いてかないでよー!」

ほむら「……っはぁ」

さやか「あー…朝っぱらから走るときっつい……」

ほむら「そうね……。急に走り出してどうしたの、まどか」

まどか「……何でもない。早く教室に行こうよ」

ほむら「え、えぇ。今履き替えるから、ちょっと待って……」ガチャ

ほむら「……これ、は?」

さやか「ほむら?」

ほむら「下駄箱の中に何か入ってる……」

さやか「うん?……お、チョコじゃん。それも3つも」

ほむら「え、チョコなの、これ……?」

さやか「もしかしたらチョコ以外かもしれないけど、間違いなくバレンタインの贈り物だね」

ほむら「そ、そう……。どうしたらいいのかしら……」

さやか「もらっておけばいいんじゃない?」

ほむら「カバンに入れるしかなさそうね……」

まどか「むー……」

ほむら「ごめんなさい、まどか。手間取ってしまって……」

まどか「……別にいいよ。ほら、行こう?」

ほむら「え、えぇ……」

ほむら(……まどか、どうしたのかしら)

さやか「……あー、教室は暖房入ってて暖かいなぁ」

ほむら「そう、ね……」

まどか「……」

さやか「……あの、まどか?どしたの?」

まどか「別に。何でもないよ」

さやか「そ、そっか。……そ、それじゃ今日はバンレンタイン…前日だけど、あたしからチョコをあげよう」

まどか「……ありがと、さやかちゃん」

ほむら「頂くわ。カバンはいっぱいだから、机の中にでも……」

ほむら「……机の中にも何か入ってる。チョコが2つに手紙、メッセージが3つ」

まどか「……ふーん」

さやか「や、やるじゃん。このー、このー……」

さやか(どうすんのさ、これ。まどか、すっごい不機嫌になっちゃってるよ)

ほむら「チョコはともかく、この手紙類はどうしたらいいのかしら……」

さやか「え、えーと…そうだなぁ……」

ほむら「こういうものを贈られても……。まどかはどうしたらいいと思う?」

さやか「ば、バカ!何でまどかに……!」

まどか「……ほむらちゃんの好きにしたらいいんじゃない?ほむらちゃんがもらったものなんだから」

ほむら「それはそうなのだけど……」

まどか「わたしのことじゃないから…自分で決めなよ。わたしは…知らないもん」

まどか「……わたし、席に戻るから」

さやか「ちょ、まど…あー、行っちゃった。何であんなこと……」

ほむら「だ、だって本当にどうしたらいいのかわからなくて」

さやか「だとしてもまどかに聞くかね。すっごい不機嫌そうだったよ」

ほむら「そう…だった……?多分、拗ねちゃったのだと思うけど……」

さやか「気が付かなかったの?呆れた」

ほむら「……今日はもう駄目だわ。頭が働かない」

さやか「……なるべくフォローするけど、あんまり突拍子もないこと言わないでよ」

ほむら「努力するわ……」

まどか「……」

まどか(ほむらちゃんのバカ……。チョコとか手紙もらったからって浮かれちゃって)

まどか(バレンタインが初めてだってのは知ってるけど、あんなことわたしに聞かなくてもいいのに)

まどか(……ほむらちゃんが人気だってことは何となくわかってたことだけどさ)

まどか(今のほむらちゃんはわたしのほむらちゃんなのに……)

まどか(あぁもう、モヤモヤする……。全部ほむらちゃんが悪いんだから)

――放課後――

さやか「はー。ようやく終わったー」

まどか「……ん、そうだね」

さやか「よし……。あたしは仁美と一緒に恭介に用があるからこれで。またねー」

まどか「……うん」

まどか(今日は…何か面白くない……。いや、理由はわかってるんだけど)

まどか(お昼休みにもクラスのみんなからチョコ、もらってたし……)

まどか「はぁ……」

ほむら「やっと…放課後……」

ほむら(授業は終わったけど…まだ、用件が……)

ほむら(早く用を済ませて…家に帰って、続きを……)

ほむら(……早く、行かないと……)

まどか「……ほむらちゃん。帰ろう?」

ほむら「まどか……。ごめんなさい、私は用があって……」

ほむら「なるべく急ぐけど、待てないのなら先に帰って構わないわ。……じゃあ、私は行くわね」

まどか「……行っちゃった。朝の手紙の件なのかな」

まどか「……帰ろう。待ってても仕方ないし」

まどか「はぁ……」

まどか(ほむらちゃん、わざわざ手紙の呼び出しに応じなくたっていいのに……)

まどか(わたし以外の誰かと付き合うなんてことは…万に一つもないって信じてるけど)

まどか(……一緒に帰りたかったなぁ)

まどか「ほむらちゃんもいないし、今日は早く……」

まどか「……あれ?あそこにいるの…ほむらちゃん?」

まどか「一緒にいるのは…誰だっけ、同じクラスの子だってのはわかるけど」

まどか(ほむらちゃんと一緒にいるってことは…もしかして、あの手紙のひとつはあの子が……)

まどか(バレンタインに手紙で呼び出して…することなんてひとつしかない、よね……)

まどか(何でいまさら告白なんて……。ほむらちゃんはもうわたしの恋人なのに)

まどか「……何だか気になるし…こっそりついて行ってみようかな」

まどか「大丈夫だよね…ほむらちゃん……」

――――――

ほむら「ふぅ……」

ほむら(やっと…3件、全部終わった……。随分と時間がかかってしまったわね……)

ほむら(まどかには寂しい思いをさせてしまったわね。でも、その分明日は……)

さやか「……あれ、ほむら。まだいたんだ」

ほむら「えぇ、今やっと戻って来たところで……」

さやか「ちゃんと断ったんでしょうね?」

ほむら「当然じゃない。私にはまどかがいるもの」

さやか「ならいいけど。しかし、人気者は辛いねぇ」

ほむら「別に人気者だなんて……」

さやか「いやいや、あれだけチョコもらっといてそれはないんじゃない?」

ほむら「……まぁ、嫌われるよりは好かれる方がいいとは思うけど」

ほむら「でも、まどか以外の特別な好意は受け取れないわ」

さやか「お熱いことで」

さやか「そう言うあなたはどうだったの。渡してきたのでしょう?」

さやか「あー…あたしが右頬、仁美が左頬、1発ずつ引っ叩いてきた」

さやか「もういい加減こっちも我慢の限界だっての」

ほむら「そ、そう……」

ほむら「……さやか、今日はありがとう。フォローしてくれて助かったわ」

さやか「まぁ、あんまり大したことしてないけどね。今日はさっさと寝なさいよ?」

さやか「明日に差し支えるとさすがのまどかも怒るだろうし」

ほむら「わかってるわ。……これ、今日のお礼にあげるわ」

さやか「んー?きちんとラッピングされてるけど…チョコ?」

ほむら「えぇ。……それじゃ、私は先に帰るわね」

さやか「1人で大丈夫?」

ほむら「子供じゃないんだから、大丈夫よ。……じゃあ、失礼するわ」

さやか「ばいばーい」

――――――

まどか「……はぁ」

まどか(わかっては…いたよ。ほむらちゃん、告白されるんだろうなって)

まどか(だけど、想像と実際見るのとじゃ……。ついていくんじゃなかった……)

まどか(……ほむらちゃん、告白されて…嬉しそうに笑ってた…よね)

まどか(何で嬉しそうにしてるのさ……。わたし以外の人に告白されて……)

まどか(ほむらちゃんにはわたしがいるのに……)

まどか(うー、もう。ほむらちゃんのバカ…バカバカ……)

まどか(明日、バレンタインだけど…いっぱいもらったチョコでも食べてればいいんだ……)

Prrrrrrrr

まどか「電話…ほむらちゃんから……?」ピッ

まどか「……もしもし?」

ほむら『もしもし、まどか?今、大丈夫かしら?』

まどか「……大丈夫だけど。何か用?大人気のほむらちゃん」

ほむら『まどかまでそんなこと……。別に私は人気者になりたいわけじゃないわよ……』

まどか「……それで、どうしたの?用があるんだよね?」

ほむら『えぇ。明日のバレンタインだけど……』

まどか「わたしの家」

ほむら『……え?家?』

まどか「うん。わたしの家。どこにも行かなくていいから、わたしの家に来て。いい?」

ほむら『それは構わないけど……』

まどか「じゃあ、決まり。あとで時間をメールするから、見ておいてね」

まどか「明日、待ってるからね。……それじゃ」ピッ

まどか「……材料、まだあったよね。確認しておこう」

――――――

ほむら「……」

ほむら「……やっと…やっと、完成した……」

ほむら「見た限り、失敗したような形跡も無い……。完璧に…仕上がった……」

ほむら「途中で間違えたことに後になって気づいたときはもう駄目かと思ったりもした……」

ほむら「間に合わないんじゃと…不安にもなったけど、でも…何とか……」

ほむら「あとは…綺麗にラッピングして、と……」

ほむら(思えばこの1週間…寝不足でぼんやりしていて…まどかに構ってあげられなかったわね……)

ほむら(昨日はそれに加えてあちこちからチョコを渡され、想いを告げられ……)

ほむら(そのせいでまどかはいじけてしまったのよね……)

ほむら(まどかに…喜んでもらえるかしら……)

ほむら「……これで、よし。まどかとの約束の時間までまだ少しあるから、仮眠を……」

ほむら「……いえ、駄目。起きられる自信がないもの」

ほむら「コーヒーか何かで誤魔化しておくしかないかしらね……」

ほむら「……っは、ぁ……」

ほむら(まずい……。一睡もしてないせいか、絶不調だわ……)

ほむら(身体が重い……。視界が回る……。思考がはっきりしない……)

ほむら(最悪、魔法でどうにかするしか…ないかもしれないわね……)

ほむら(とにかく、まどかとの予定が終わったら…泥のように眠りましょう……)

ほむら(その為にも…絶対に隠し通さないと……)

ほむら(まどかに…気付かれるわけには……)

ほむら「……まどかの家はこっちじゃなかったわね……」

――――――

まどか「いらっしゃい、ほむらちゃん」

ほむら「少し遅くなってしまってごめんなさい……」

まどか「信号にでも引っかかったの?」

ほむら「そ、そうね。そんなところよ」

ほむら(本当はぼんやりしてて道間違えたなんて口が裂けても言えない……)

まどか「それじゃ、あがってよ」

ほむら「えぇ……」

ほむら(……と、何とかまどかの家に来たのはいいんだけど)

まどか「……」ギュウ

ほむら(部屋に入った途端に抱きついてきて…もう20分近く経ってるような……)

ほむら「まどか…どうして何も喋らずに私に抱きついてるの……?」

まどか「……」

ほむら「えっと…いつまでこうしてるの……?」

まどか「……わたしの気が済むまで」

ほむら「そ、そう……」

ほむら(抱きつかれるのは…いつもなら嬉しいと思うところだけど……)

ほむら(今は正直、辛くなるわ……。暖かくて、柔らかくて…まどかの匂いがして……)

ほむら(多分、目を閉じたら数秒で寝てしまうわね……)

ほむら(会話が無いのは発言を考えなくていいから楽だけど…何だか寂しい……)

ほむら(……とにかく、声をかけてみないと)

ほむら「ねぇ、まどか」

まどか「……」

ほむら「……まどか。そんなに拗ねないで」

まどか「ふーんだ」

ほむら「もう……。今日はどうしちゃったの?」

まどか「……言いたくない」

ほむら「お願い、教えて」

まどか「……ほむらちゃんのバカ。浮気者」

ほむら「う、うわ……?ごめんなさい、身に覚えがないのだけど……」

まどか「当然だよ。わたしが…勝手にそう思っちゃってるだけだから……」

ほむら「まどか……?」

まどか「ほむらちゃん、昨日…同じクラスの子に告白されてた、よね……」

ほむら「え、えぇ。でも、どうして……」

まどか「……ごめん。ほむらちゃんと2人でいるところ、偶然見つけちゃって」

まどか「気になって…こっそりついて行っちゃったんだ」

ほむら「そうだったの……」

まどか「そこで…嬉しそうに笑ってたよね。わたし以外から告白されたのに」

ほむら「……それで、浮気者というわけなのね」

まどか「……そうだよ。何であんなに嬉しそうだったのさ」

ほむら「それは…嫌われるより好かれている方が嬉しいと思うし……」

まどか「そんなの…頭じゃわかってるんだよ。だけど……」

ほむら「……まどか、あなた……」

まどか「わたし…ほむらちゃんがみんなに大人気だったのが面白くなかったんだ……」

ほむら「電話でも言ってたけど、大人気って…チョコや手紙をたくさん貰ったから?」

まどか「……うん。わたし、みんなに嫉妬してたんだ。ほむらちゃんはわたしのなのにって」

ほむら「やっぱり…そうだったのね……」

まどか「だって…朝からチョコをたくさんもらって、手紙で呼び出されて…告白、されてたんだもん……」

まどか「するなってのが…無理な話だもん……」

ほむら「チョコはともかく、告白の方は丁重にお断りさせてもらったから……」

まどか「ほむらちゃんがわたし以外の誰かを取ることなんてないって、信じてたよ?でも……」

まどか「それでも…不安だよ。わたし以外の人にあんな素敵な笑顔、向けてたら」

まどか「……ほむらちゃんとの距離が…離れちゃうんじゃないかって」

ほむら「……ごめんなさい。まどかを…不安にさせてしまって」

まどか「今思えば…嫉妬なんてすること、なかったのにね。ごめんね、ほむらちゃん」

ほむら「それは…仕方ないわ。恋人が自分以外の人からちやほやされてたら…誰だって面白くないでしょうし」

ほむら「きっと私も嫉妬してしまうと思うし……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……今回は本当にごめんなさい。初めてのバレンタインだからって、好意を素直に受け取りすぎていたわ」

ほむら「そのせいで、まどかに嫌な思いをさせてしまって……」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。ほむらちゃんにとっての1番は…誰……?」

ほむら「私の1番は…まどかよ。私の1番特別で、1番…愛してる人……」

まどか「本当…だよね……?」

ほむら「当然じゃない。こんな嘘…言うわけないでしょう……?」

まどか「……うん。そうだよね」

ほむら「……大好きよ。まどか」

まどか「わたしも…大好き、だよ」

まどか「……さて、と。ほむらちゃんと無事仲直りもできたことだし」

ほむら「別に喧嘩してたわけでもないのだけれど……」

まどか「それはそうだけど…細かいこと気にしちゃダメだよ」

ほむら「わ、わかったわ」

まどか「じゃあ改めて…ほむらちゃん、今日は何の日でしょう?」

ほむら「今日は2月14日、バレンタインデーね」

まどか「うん。まぁ、わかってたとは思うけど」

ほむら「……まどかは…私にバレンタインのチョコを作ってくれたのかしら?」

まどか「もちろんだよ。わたしたちが恋人になって初めての恋愛に関するイベントだし、がんばったんだから」

ほむら「ふふっ。それは…楽しみね」

まどか「今持ってくるから、少し待っててね」

ほむら「えぇ……」

バタン

ほむら「……ふ、ぅ」

ほむら(やっと…解放してもらえた……。ずっと抱きつかれていたおかげで睡魔が凄いわ……)

ほむら(ただ、抱きつかれていただけなのに…どうしてこうも眠気を誘うの、あの子は……)

ほむら(まどかを抱き枕にしたら、間違いなくよく眠れる……)

ほむら(……思考が緩いせいで突拍子もないことを思案してしまうわ)

ほむら(でも…どうしよう……。本当に、限界かも……)

ほむら(何か、もう…頭、回らなくて…眠い……)

ほむら「……そう言えば…まどかの部屋、ベッドがあるのよね……」

ほむら「……だ、駄目よ。いくら私とまどかの仲でも、勝手に使うなんて」

ほむら「それに…ここで寝たりしたら、また拗ねちゃうだろうし……」

ほむら「……ごめんなさい…まどか。私…もう、駄目……」

ほむら「ベッド…借りる、わね……」

ほむら(まどかの匂いがする……。もう、これ以上…目を開けてられない……)

ほむら(おやすみ…なさい、まどか……)

――――――

ほむら「……うぅん…まど、か……?」

ほむら「……あら?私、何で……」

ほむら「確か…まどかの家に呼ばれて、まどかと話をして……」

まどか「わたしが席を外してるときに、寝ちゃったんだよ」

ほむら「そうだったわね。……えっ?」

まどか「おはよう。ほむらちゃん」

ほむら「お…おはよう、まどか。……えっと、その…ごめんなさい……」

ほむら「まどかがいない間に勝手にベッドを使って眠ってしまって……」

まどか「気にしないでよ。まぁ、まさかベッドで寝ちゃってたとは思わなかったけど」

まどか「戻ってきたら、ほむらちゃんが急に見当たらなくなって少しびっくりしたんだから」

ほむら「そ、そうだったの……」

まどか「それで、よく眠れた?」

ほむら「えぇ、それはもう。まどかの匂いがしたからか、よく眠れたような気がするわ」

まどか「も、もう。そんな恥ずかしくなるようなこと言わないでよ」

ほむら「仕方ないじゃない。本当のことなんだから」

まどか「いくら本当のことだからって…やめてよー……」

まどか「……でも、ほむらちゃんがよく眠れたのならよかったかな、なんて……」

ほむら「まどか……」

まどか「……さ、さーて。ほむらちゃんも目を覚ましたことだし、改めてチョコを持ってくるよ」

まどか「こ、今度は寝ちゃダメだからね」

ほむら「ふふっ。わかってるわ」

――――――

まどか「はい、お待たせー」

ほむら「何だかチョコにしてはやけに大きいわね……」

まどか「ふふん、がんばったんだから」

ほむら「それじゃ、開けるわね」

まどか「……どう、かな」

ほむら「これは…チョコケーキよね。これをまどかが……?」

まどか「うん。最初はパパと一緒に作ってみたりしたんだけど」

まどか「今、ほむらちゃんの前にあるそれは…100%わたしだけで作ったんだよ」

ほむら「そう……」

まどか「バレンタインだっていうのもあるし…もう過ぎちゃったけど、わたしたちが付き合って1ヶ月でしょ?」

まどか「だから…その記念というわけじゃないけど、ケーキにしてみようかなって思って……」

まどか「他のみんなみたいなチョコレートじゃないけど…受け取ってほしいな」

ほむら「……ありがとう。凄く嬉しいわ」

まどか「ほむらちゃんに喜んでもらえてよかったよ」

ほむら「……何だか食べるのが勿体ない気がしてくるわね」

まどか「そんなに日持ちするものじゃないから……」

ほむら「言ってみただけよ。じゃあ、頂くわね」

まどか「う、うん」

ほむら「……美味しい。こんなに美味しいチョコケーキ、初めて食べたわ」

ほむら「このケーキだったら、何個でも食べられそうよ」

まどか「もう1個作ってあるから、帰りにお土産で持って帰ってね」

ほむら「そ、そうなの?ありがとう」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

ほむら「何かしら?」

まどか「あ、食べながらでいいの。えっと……」

まどか「ほむらちゃん。今回はごめんね」

ほむら「え?」

まどか「ほむらちゃんのことに嫉妬しちゃって…素っ気なくしちゃったと思うし」

ほむら「あぁ…さっきも言ったけど、それは仕方ないと思うわ」

まどか「そうだとしても、ちゃんと謝りたかったんだ」

ほむら「私は何も気にしてないけど…まどかがそう言うのなら、受け取っておくわね」

まどか「……ほむらちゃんはわたしのこと、付き合ってから拗ねやすくなったって言ってたけど」

まどか「たぶん、ちょっと違う。わたし、自分で思ってる以上に嫉妬深いのかもしれない」

まどか「チョコをもらうのを見て、告白されてるのを見て」

まどか「ほむらちゃんの周りの環境に嫉妬してたんじゃないかって思うの」

ほむら「そう……」

まどか「ほんとは、ほむらちゃんにもすこーしだけ怒ってるんだからね?」

ほむら「わ、私に?」

まどか「だって…わたし以外の人に告白されて、あんなに嬉しそうに笑ってるんだもん」

ほむら「し、仕方ないじゃない。まさか仏頂面で迷惑だとか言うわけにもいかないでしょう」

まどか「うん。それはわかってるんだけど……」

まどか「わたし、少し心配なんだ。もし、ほむらちゃんの前にわたしよりも素敵な人が現れたりしたら」

まどか「ほむらちゃんは…その人について行っちゃいそうで……」

ほむら「そんなこと、絶対に有り得ないわ。私にとってまどか以上に素敵な人なんて存在するはずないもの」

まどか「……えへへ、やっぱりほむらちゃんはほむらちゃんだね。そんな恥ずかしい台詞、平気で言えちゃうんだもん」

ほむら「そ、そうかしら?」

まどか「でもなぁ……。事あるごとに嫉妬してたらみっともないよね……」

ほむら「そんなことないと思うけど……」

まどか「なんて言うか…わたしだけを見て、って言ってるような気がしちゃって」

ほむら「……?それは悪いことかしら?」

まどか「悪いかどうかはわかんないけど…ほむらちゃんに愛が重いとか思われたくないし……」

ほむら「ふふっ、大丈夫よ。まどかからの愛を重いなんて私が言うわけないわ」

ほむら「……それに、私の心、想いはいつだってまどかしか見てないから」

まどか「……も、もー、ダメだってば。恥ずかしい台詞禁止」

ほむら「私は何も恥ずかしくは……」

まどか「わ、わたしが恥ずかしくなっちゃうから」

ほむら「それなら仕方ないわね……」

まどか「……でも、たまには言ってほしい…かな」

ほむら「えぇ。わかったわ」

ほむら「……ごちそうさま。とても美味しかったわ」

まどか「よかったぁ。今回はすごく気合い入れて作ったから……」

まどか「……あ、もちろん愛もたっぷり入れてあるよ」

ほむら「言わなくたってわかってるわ。ありがとう、まどか」

まどか「……そ、それで…ほむらちゃんは、どんなチョコを作ってくれたのかな……?」

ほむら「え?チョコなんて作ってないけど……」

まどか「……嘘、だよね?だって今日、バレンタイン……」

ほむら「……あぁ、そういうことね。バレンタインプレゼントはちゃんと用意してあるわ」

まどか「もう。心臓に悪いこと言わないでよー……」

ほむら「ご、ごめんなさい」

まどか「あれ?じゃあ何でチョコを作ってないって?」

ほむら「それなんだけど…実は私、チョコというか、お菓子以外のものを作ったの」

まどか「お菓子以外のもの?」

ほむら「えぇ。……これ、受け取ってもらえるかしら?」

まどか「もちろんだよ。ありがとう、ほむらちゃん」

まどか「ね、開けてもいい?」

ほむら「い、いいけど…その、まどかのお気に召すかは……」

まどか「ほむらちゃんからのプレゼント、何かなー」

まどか「……わ…これ、マフラーだよね。売り物じゃない感じがするけど……」

ほむら「そ、それ…私が編んだの……」

まどか「え…ほむらちゃんが?」

ほむら「えぇ。この前、マミにバレンタインのチョコの相談をしに行ったとき……」

ほむら「せっかくだからチョコ以外のものにしてみたら、と言われて…それで、マフラーを編んでみたらって……」

まどか「じゃあ、最近眠たそうにしてたのって……」

ほむら「……まどかの想像通り、このマフラーを編んでいたからよ。私はこういうものを作るのは…どうにも苦手で」

ほむら「今日に間に合わせる為に毎日夜遅くまで取り組んでいたの」

まどか「そうだったんだ……。今日、寝ちゃったのもそれが原因なのかな」

ほむら「……そうよ。特に今日は…碌に寝てなくて……」

まどか「……」

ほむら「でも、その甲斐あって素敵なマフラーに仕上がったと思うけど……」

ほむら「まどか…どうかしら……?

まどか「わたしのプレゼントを作るのはいいけど…無理しちゃダメだよ」

まどか「わたしが離れてた間に寝ちゃうくらいだったんだから、下手したら倒れてたかもしれないんだよ?」

まどか「もう無理しちゃダメだからね。いい?」

ほむら「わ、わかったわ」

まどか「……と、建前兼保健係としての意見はこのくらいにして」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん。すっごく嬉しいよ」

まどか「ほむらちゃんって、さやかちゃんたちにはチョコあげたんだよね?」

ほむら「そうね、友チョコという奴をあげたわ。中身は市販品だけど」

まどか「じゃあ…ほむらちゃんからチョコ以外のものをもらったのは、わたしだけなんだね」

まどか「徹夜までして、わたしのために…編んでくれたんだよね」

ほむら「……えぇ。まどかは特別だから」

まどか「このマフラー…大事にするね」

ほむら「気に入ってくれたみたいでよかったわ」

まどか「気に入ったことはそうなんだけど…いくつか聞いていい?」

ほむら「何?」

まどか「このマフラーのデザインなんだけど…何で真ん中から紫とピンクに分かれてるのかなって」

まどか「それに、わたしひとりで使うにはちょっと長いような気もするし……」

ほむら「……答えてもいいけど…引かないって約束してくれる?」

まどか「……?うん、わかった」

ほむら「その、色が2色なのは…私とまどかがずっと一緒にいられるようにって……」

まどか「え?」

ほむら「紫が私で、ピンクはまどかで…2人の仲が切れたりほつれたりしないようにって願いを込めて……」

ほむら「長さについては…まどかのことだけを考えながら編んでいたら、いつの間にか長くなってしまったの」

まどか「そうなんだ……」

ほむら「これはあとで知った話だけど…手編みのマフラーの編み目の数や長さは愛の重さなんて言うこともあるらしくて」

ほむら「さっき、まどかは愛が重いとか思われたくないって言ってたけど…私も相当重いわね……」

まどか「……わたし、嬉しいよ。ほむらちゃんがそこまでわたしを想ってくれてるなんて」

ほむら「嬉しい……?」

まどか「うん。だって、ほむらちゃんがこのデザインにしたのも、やたら長くなっちゃったのも……」

まどか「全部、わたしのことが大好きって気持ちから来たものでしょ?」

ほむら「それはそうなのだけど……」

まどか「だったら、嬉しいに決まってるよ。ほむらちゃんの愛の気持ちなんだもん」

まどか「……ありがとう、ほむらちゃん。こんなに素敵なプレゼント、贈ってくれて」

ほむら「まどかに喜んでもらえたのなら…頑張った甲斐があったわ」

ほむら「でも…本当に私の気持ちが重いのなら遠慮なく言って。私の愛でまどかを潰したくないから」

まどか「そんな心配いらないよ。だって、ほむらちゃんの愛ならいくらでも受け取ってあげられるし」

まどか「どれだけもらっても多いとか重いなんてこと、ないもん」

ほむら「まどか……」

まどか「だから…ほむらちゃんのとびきりの愛、ちょうだい……?」

ほむら「……えぇ。もっと側に来て」

まどか「うん……」

ほむら「……大好きよ、まどか……」

まどか「わたしも…ほむらちゃんが大好き、だよ……」

ほむら「……っは、ぁ」

まどか「ほむらちゃん…今日は何だか一段と情熱的だったね……」

ほむら「ふふっ。今、まどかにあげられるだけの愛情…全部込めてあげたから」

まどか「確かに伝わったよ。ほむらちゃんの…わたしだけに向けた特別な気持ち」

まどか「いつも暖かくて、優しくて、気持ちよくて……」

まどか「心をかーっと熱くさせてくれて…毎日のように惚れ直して」

まどか「自分で重いって言っちゃうような大きい愛情を向けてくれているから、わたしは今…こんなにも幸せなんだよ」

ほむら「まどかがそう思っていてくれるのはとても嬉しいことなのだけど……」

ほむら「よくそんな恥ずかしい台詞…まどかも人のこと言えないじゃない」

まどか「えへへ、言われるだけじゃ不公平だからね」

ほむら「……私も、私の気持ちに負けないくらいの大好きをまどかに注いでもらえて…凄く幸せに感じてるわ」

ほむら「そんなあなただから、私はまどかの虜になってしまったのでしょうね」

まどか「わたしたち、似たもの同士なのかもね。お互いのことが大好きで、それしか目に入らなくて」

ほむら「かもしれないわ。付き合いだしてすぐだからというのもあるとは思うけど」

ほむら「……でも、きっといつまでもずっとお互いを想い合える恋人でいられるはずよ」

まどか「うん。来年も、再来年も、その先の年も…バレンタインの日はほむらちゃんと一緒に過ごしてるんだろうな」

ほむら「えぇ。そうね」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。これから少し出かけない?」

ほむら「私は構わないけど、まどかは出かけなくてもいいから家に来てって……」

まどか「そうだけどさ、ほむらちゃん、寝ちゃったんだもん」

まどか「バレンタインだし、2人きりになれるかなーって思ってたのになー」

ほむら「う……。ほ、本当にごめんなさい、まどか……」

まどか「……それに、こんなに素敵なマフラー、編んでくれたんだもん」

まどか「早く巻いて出かけてみたいんだ。ダメ?」

ほむら「……いえ、そんなことはないわ。まどかのせっかくのお誘いだし、出かけましょう」

まどか「行き先は…ショッピングモールでいいかしら」

まどか「うん。じゃあ、出かける準備しよっか」

ほむら「えぇ。……と言っても、私はコートを着るだけなのだけどね」

まどか「ちょ、ちょっと待ってね。長いせいかうまく巻けない……」

ほむら「手伝いましょうか?」

まどか「う、ううん。大丈夫、たぶん」

まどか「……こんな感じかな。よし、行こっか」

――――――

ほむら「……作った私が言うのもあれだけど、さすがに長すぎたみたいね」

まどか「あ、あはは……。わたしが使うには少し長いけど、でもいいの」

まどか「だって、ほむらちゃんがわたしのために編んでくれたんだもん」

ほむら「……まどか。マフラー、半分くらい解いてくれる?」

まどか「え?うん。……このくらい?」

ほむら「そうね、それだけあれば十分よ」

まどか「十分って、ほむらちゃんは何を……」

ほむら「……まどかが1人で使うには長いのなら」

ほむら「こうやって…2人で一緒に使えば丁度いい長さになるわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……私の方は大丈夫みたいね。まどかは足りないとかはない?」

まどか「それはないけど…でもちょっとびっくりしたよ」

まどか「まさかほむらちゃんがこんなことするなんて思わなかったから」

ほむら「いいじゃない。私たちは恋人なんだから」

まどか「……うん。ほむらちゃんと一緒だと、心も体も暖かい」

ほむら「私も。今が真冬の2月だなんて信じられないくらいに」

まどか「この先もずっと…今みたいな仲でいようね」

ほむら「……それは難しい話かもしれないわ」

まどか「えっ……?」

ほむら「だってまどかと一緒に過ごせば過ごすほど、今よりも深い仲になっていくのよ?」

ほむら「そうなると、多分今のままじゃ物足りなくなってしまってるんじゃないかしら」

まどか「ううん…そうかも」

ほむら「……ただ、ひとつだけ言えるのは…これから先、どれだけ時が流れたとしても」

ほむら「私の隣にはまどかがいて…2人で一緒のマフラーを巻いているんでしょうね」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……ほら、早く行きましょう?」

まどか「そんなごまかさなくてもいいのに。もしかして、照れちゃった?」

ほむら「……気付いてるのなら言わなくてもいいじゃない。まどかの馬鹿……」

まどか「……ほむらちゃん。わたしと付き合ってくれてありがとう。わたし、毎日が幸せだよ」

まどか「これからもずっと…色々と至らないわたしだけど、よろしくね」

ほむら「……えぇ。私の方こそ、不束者だけど…よろしくお願いするわ」

まどか「……えへへ、これじゃもう恋人じゃなくて夫婦になっちゃうね」

ほむら「ふふっ。そうね。私はまどかが相手なら構わないけど」

まどか「や、やだもうほむらちゃんってば、嬉しいこと言ってくれちゃうんだから……」

ほむら「私たち、ずっと…ずーっと一緒よ、まどか」

まどか「うんっ。いつまでも一緒にいようね、ほむらちゃん」


Fin

これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
合間にも書いたけど次か次の次くらいには叛逆後のを出したい…

・次回予告

ほむら「私の道しるべ」(仮)

ほむら「まどかと私」(仮)

タイトル未定 叛逆後の


最近気が付いたけど(仮)のものを改題して投下したとき最初に(仮)時の題書いた方がいいのかも…

またどこかで見かけたらよろしくお願いします

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