キャスター「では、中継が繋がっています」 (131)
通訳『我々は未だかつて無い驚異にさらされている』
???「おお、大層なこった」
???「この女性は誰?」
???「アメリカの大統領だよ」
???「なんでも歴代初の女性大統領らしい」
???「可愛いルックスして、かなりの男と寝て得た地位だとよ」
???「ふーん、そうなんだ」
通訳『ここに各国を代表し宣言する』
通訳『今日から全人類は仮面を着用し生活することを義務付ける』
???「なるほどね」
???「まあ、そうなるよね」
???「だけど、これでいいんだよ」
???「貴男が言う理想郷がこれね」
???「ねぇねぇ、それよりあれ知らない?」
???「ん?ああ、冷蔵庫の中だよ」
通訳『神がいるなら祈りましょう』
???「神ねー、神様か。知らないな」
???「生憎俺が知ってるのは天使だけだ」ポチッ
キャーウワーキャーオーマイゴー
???「あった!スニッカーズ!」キャッキャッ
━日本のとある部屋━
???「んー……んー……」ネアセビショー
仮面A『お客様、今日はどういった髪にいたしましょうか』
仮面B『この間新しい仮面買ったから、それに合うような髪にしてよ』
仮面A『かしこまりました』
???「んー…」ネアセビショー
仮面C『彼氏がお揃いの仮面買ってくれたんだけどー』
仮面D『お、よかったじゃん』
仮面C『けど、見てよ、これ』
仮面D『なに?ブランド品じゃん!』
仮面C『と思うっしょ?偽物なんだって!あいつ騙されたんだよ!』プンプン
仮面D『うける!!!』ケラケラ
???「んーんーんー」ネアセビショー
仮面E『仮面のおかけで平等だ』
仮面E『全てあの方のおかけで』
仮面E『私はアナタ様を崇拝します』
仮面E『私たちの神……』
???「うわっ!!!」ガバッ
???「はぁーはぁー、また夢か……」ムニュ
???「ムニュ…?」ムニュムニュ
???「んっ……あっ……」ビクッ
???「だぁぁぁ!また、お前俺のベッドに寝てる!しかも全裸で!」
???「んもー、うるさい」ファァ
???「貴男がうなされてるから心配してあげただけなのよ、私は」ノビー
???「誰のせいでうなされてると思ってんだよ」ッタクヨー
???「あら、貴男があれを押したからじゃない」
???「……あん時は半信半疑だったから」ブツブツ
???「その後二人も殺してて?今更怖じ気づいたの?」
???「うっせーよ、お前が……っ!」
???「お前じゃない!私は!」
天使「天使よ、いい加減覚えてよ」
天使「毎日毎日隣でうなされてる声を聞く身にもなりなさい」
天使「男2って出会った時は内気な性格バリバリだったのに、今となれば暴言悪態ばかりか悪夢にうなされてるし」
男2「俺だって好きでうなされてるわけじゃねぇよ」
天使「なら殺さなければいいじゃない」
男2「……」
天使「出会ったあの日に一度押しただけ」
天使「それで終わらせてれば良かった」
天使「なのにどこぞの誰かも知らないアイドルを計三人も殺してて」
天使「今更私の責任だなんて、なんて割に合わない話なんでしょ」
男2「……」
天使「財布の中には結局使わなかった597円が入ってるんでしょ?」
男2「……あぁ、何故か使えないんだよ」
天使「あら、どうして?」
男2「一人死ぬ度に199円が俺の財布に入ってる
男2「この硬貨11枚が、その人自身に見えてきて」ブルッ
男2「ああ、俺は199円の為に人を殺めたんだなって思うと……」ガクガク
天使「はぁ、考え過ぎよ」
天使「なんだったけ?男2の好きな漫画……」ンーンー
男2「……デスノート、だろ」
天使「そうそう、それそれ」
天使「あんな重々しい話とは全く違うじゃない」
天使「デスノートは何か複雑なルールとか、ややこしい頭脳バトルとかでさ」
天使「正直天使な私でもお手上げな内容よ」
天使「けど、これは違う」
天使「たったポチッとするだけ」
天使「しかも、これは認められた行為なんだから」
天使「だから報酬もでるしね」
男2「報酬って、199円だけだろ?」
天使「あら、貴男は199円だけじゃ不満なの?」
天使「それ以上に価値のある生き方してる人っているの?」
天使「天使の私が価値の話をしたら天罰下りそうだから止めておくけど」
天使「貴男はちゃっかり597円手にしてるんだから」
天使「もう何の言い逃れも出来ないよ」
男2「……っ!」ドキッ
天使「まあ、今日も遅いし早く寝よ?」
天使「さあ、一緒に夢の世界へ」チュッ
男2「うっ……」クラッ
男2「ぐー……ぐー……」
━明くる日━
女「おっはよー」
男2「ん?ああ、女か。おはよ」ファァー
女「もお、大きな欠伸して」ヤダヤダ
女「また夜更かししてゲームでもしてたの?」
女「だから、こうも絵に描いたようなクソデブなキモオタになるのよ」
男2「……うっせぇよ」チッ
天使(ほんと、どうしてこんな見た目の奴に、こんな可愛い幼なじみの女がいるのか不思議で仕方ないわ)
女「悔しかったら変わってみなさいよ」
女「ゼミのオタ軍団の中にいるとは言え、それでも中心にはいなくて」
女「挙げ句の果てに自分から離れていくし」
女「唯一2人だけよね、君と仲良くしてくれてるのは」
女「あっ、私も入れたら3人か」
天使(いえ、私も入るので4人ですね)
男2(いちいち、うっせぇよ、馬鹿天使)
天使(……しゅん)
男2「ったく、朝からなんだよ」
男2「そんな事言うために遠回りして来てんのか?」
男2「それとも、なんだ?あれか?俺の事が好きなのか?」
女「……はぁ?有り得ないんだけど」
女「はぁ、もういいや。私そろそろ行くね、バスに乗り遅れるから」タッタッタッ
男2「……気をつけろよー」
天使「あの子も健気よね」
天使「大学違うのに毎朝貴男の顔を見に来て遅刻ギリギリで通ってるんだもん」
男2「健気というか、単なる暇つぶしだろ」
男2「幼なじみがキモオタっていうので、きっと合コンとかで笑い話にしてんだろ」
男2「はぁ、うぜぇなぁ」
天使「……なら、それ押したらどう?」
男2「……えっ?…あっ、いつの間に手に?」
天使「あの子が走り去った後にポケットから出してたよ」
男2「無意識の内に……だと……?」
天使「よっぽど憎いのね」ウフフ
男2「……」グッ
━大学━
講師「で、あるからして……」ビーーー
講師「おや、もう終わりか」ハァ
生徒「ガヤガヤ……ガヤガヤ……」キャッキャッ
講師「……コホン、次回の講義はテストをするから心しておくように」
男1「はぁ、やっと終わったぜ」
男1「この90分は苦痛でしかねぇな」
男3「っても、お前ずっと寝てたじゃねぇかよ」
男2「……」
男3「ってか、何黙ってんだよ」
男1「なんだよ、まだ自殺したアイドルの事引きずってんのかよ」
男3「ああ、結局あのアイドルグループも解散したもんな」
男2「……ん?なんか言ったか?」
男1「なんでもねぇーよ」
男1「お前本当に最近おかしいぞ?」
男3「大丈夫か?話ならなんでも聞くぞ」
男2「いや、なんでもない、大丈夫だよ」
男1「ふーん、そう言えばあのデスノートって漫画読んだぞ」エッヘン
男2「どうだった?」
男1「んー、よくわかんねぇけど、取り敢えず命のやり取りをしてるようには見えなかったなぁ」
男3「デスノートってなんだ?」ネェネェ
男1「お前オタクの風上にも置けないな、んなのも知らないのかよ」ヤレヤレ
男2「いや、お前も俺が説明してなきゃ知らなかったじゃねぇか」
男1「んなことねぇよ。名前くらいは知ってたしな」エッヘン
男3「で、なんだって?デスノートってのは」ネェネェ
男1「うるさいなぁ、勝手にネットでも漁って読めってぇーの」
男3「へいへい、わかりましたよー」
男3「じゃあ、早速帰って読んできますよーだ」ガタッ
男2「おっ、気をつけてなあ」
男1「ばいばーい」
男3「いつも俺はこんな役回りだ」グスン
男1「何言ってんだ、あいつ」
男2「……っ!?」カァァァ
男1「ってかなに、お前顔赤くしてんだ?」
男2「あっ、わりぃ、俺ちょっと先行くわ」タッタッタッ
男1「えっ、なに!?逆に俺が取り残されるパターン!?」
天使「はぁ、やっと話せる」ノビィー
男2「頼むから脱ぐのは止めてくれ」
天使「ああでもしないと貴男私をずっと放置しっぱなしでしょ」
男2「当たり前だろ、俺はお前と関わりたくねぇんだよ」
天使「あら、ならそれを捨てればいいじゃない」
天使「そうすれば私からも解放されるし、あの悪夢も二度と見なくて済むかもしれない」
男2「けど……」
天使「そうね、もし拾った誰かが貴男の顔を思い浮かべてしまったら」
天使「あらぁ、せっかく手放した悪夢も違う形で再会しちゃうね」
男2「……くっ」
天使「まあまあ、そんや暗い顔しないで」
天使「憂さ晴らしにパアアっとボタン押しちゃいますか?」
天使「出てきたお金は、そのままスニッカーズになるって寸法ですね」ウフフ
男2「……」
天使「……別にタイムリミットもなにもないんだし」
天使「気長く持ってたらいいじゃない」
天使「そのボタンがあれば」
天使「いつぞやの貴男より桁外れくらいに普通なんだから」
男2「……」
天使「私は時間という概念がないし、暇つぶし程度で近くにいるわ」
天使「でも、たまにはスニッカーズ買ってよね」
天使「お金ないなら押・し・て……ね?」ウフフ
男2「……」ゾワゾワ
━別の日の電車内━
女子高生A「ってかさ、まじで」
女子高生B「えっ、なになに」
女子高生C「早く言えよーてめぇ」
女子高生A「あそこにいる連中ってさ」
女子高生B「んー?」
女子高生C「ああ、あのチェックシャツのいかにもって奴ら?」
女子高生A「あんな顔して、あんな格好してても一応人間なんだよね」
女子高生C「うける、一応ってなんだよ」
ケラケラ
女子高生B「いや、もしかしたらエイリアンじゃね?」
女子高生A「可能性は否定できなくね?」
女子高生C「やっべぇ、そう言われたらそう見えてきた」
ケラケラ
女子高生A「ちょっ、写真取ってアップしよーぜ」
女子高生B「なんだったら『私たちをいやらしい目で見てくる奴らを晒す』って付け加えよー」キャッキャッ
女子高生C「てめぇらのが人間じゃねぇー」ケラケラ
男1「おお、女子高生やけに盛り上がってんねぇ」
男3「俺たち見て笑ってんぜ?」
男2「しかも、カメラ向けてる」
男1「おお、ご丁寧にフラッシュまで」
男2「無音でもなくて普通に“カシャ”って言うてるね」
男3「……俺らの時代きたんじゃね?」
男1「お前、顔も大概だけど頭はもっと酷いのな」
男3「へ?」
男2「結局、俺たちは馬鹿にされる分類なんだよな」
男2「ああ、イラってするなぁ」イライラ
天使(じゃあ、ポチする?ポチする?)ワクワク
男2「……はぁ」ギュ
天使(残念、しないのかぁ)ハァ
男1「まあ、今に始まったわけじゃねぇし」
男1「ブサメンにキモオタ、ハゲデブときた」
男3「役満だね」
男1「まだ学生で引きこもりしてないだけましか」
男3「まあ、ニート予備軍だけどね」ブフォッ
男1「へっへへ、確かにな」ブフフフ
男2「体格はどうにでもなるけどな」
男2「顔は、もうメスを入れても修復不能だもんな」
男3「ダイエット?する?」
男1「いや、俺と男3は百歩譲ってダイエットしなしゃならんとしても」
男1「男2はしなくてもいいだろ」
男2「はあ?しなきゃならんだろ」
男3「お前のそれでダイエットなら、俺たち骨まで痩せなきゃならねぇな」
男2「いやいや、お前たちゲームとアニメの見過ぎで視力馬鹿になったか?」
男2「現に俺は幼なじみにデブって言われてんだぞ」
男1「……!」
男3「……はい、出ましたぁ」
男1「幼なじみ自慢ですねえ」
男2「な、なんだよ」
男3「ことある事に幼なじみがー」
男1「異性と話す事を与えられなかった俺らに対する当て付けかってね」
男2「なんでいつもそうなんだよ、めんどくさいな」
男2「だいたい、お前等が想像してるような幼なじみじゃねぇよ」
男1「毎朝声をかけてくるのに?」
男3「毎朝遠回りしてるのに?」
男2「だから、アレは俺の事を馬鹿にするための話題を探してんだよ」
男2「合コンとかでの話題作りの為だよ」
男1「まっさかー」
男3「考えすぎだわ」ウンウン
男2「お前等のが幻想抱きすぎてんだよ」バーロー
天使(残念な会話だな)
天使(揃いも揃って不細工が)
天使(そりゃ、女子高生にも馬鹿にされるわ)ヤレヤレ
男3「でも、まあ、俺たちは一生懸命生きても異性には触れる事ないんだろな」
男1「金を払えばいけんべ?」
男3「馬鹿、それじゃ意味ねぇよ」
男1「……だな」
男2「……やっぱり見た目って大事だな」
男123「はああぁあ」
女子高生ABC「うわっ、きも」
天使(駄目だな、こりゃ)
━翌朝━
女「おっはよー」
天使(また懲りずに)
男2「おはよ」
天使(律儀に男2も挨拶してるし)
男2「ってかさ、なんでお前毎朝遠回りしてくんの?」
天使(いやいや、聞くだけ無駄でしょ)
天使(どう考えても好意あるからじゃない)
天使(それをストレートに言うタイプじゃないでしょ)
天使(この女は)
女「可愛い私に毎朝挨拶された元気でハッピーな1日過ごせるでしょ?」
天使(うわぁ、うざっ)
男2「……いや、ないな」
女「はあ?なんでお前如きに否定されなきゃなんねぇの?」
天使(出たよ、これ本性でしょ)
女「あんた馬鹿なの?」
女「せっかく!こんなに!可愛い!私が!声を!かけてんだよ?」
女「私じゃ、いやなの?」
天使(でも、結局こういう素振り見せるとか、やるよねぇ)
男2「……いやとかじゃなくて、大体俺そんなネタになるような事してねぇよ?」
女「ネタ?」
男2「お前の友達とか集まりの時に」
男2「私の幼なじみは絵に描いた様なオタクって題名で笑い話にしてんだろ?」
男2「まあ、昔は確かに笑い話に出来ることはあったけど」
男2「苛められてたし、けど」
男2「今は誰ともほぼ関わってないから、何も面白いことねぇよ?」
女「……本物の馬鹿ね」ハァ
女「じゃ、先に行くから」タッタッタッ
天使(ほっほー、なるほど)
男2「なんだありゃ?」
天使「いや、もう薄々気付いてるんでしょ?」
男2「なにを?」
天使「顔真っ赤にして?なにを?だって?」プークスクス
男2「……まじか」カァァァ
天使(こりゃ、面白い事なってきたわぁ)キャッキャッ
━とある公園のベンチ━
男2「と言うわけで、俺は幼なじみに告白してみようと思う」
男1「……いる」
男3「……だな」
男2「えっ?なに?」
男1「この中に裏切り者がいる!」
男3「さぁ、炙り出してやろう!」
男1「臭う、臭うぞー」クンクン
男3「ああ、これは裏切りの臭いだ」クンクン
男2「……」
男1「こいつの股間から臭うぞ」クンクン
男3「白状しろ!何回想像で幼なじみとやったんだ!」
男2「俺はお前たちにしか相談できねぇんだぞ」
男1「寧ろ俺たちしたら駄目な相談じゃねぇか!」
男3「冷静に考えてみろよ?」
男2「うっ……た、確かに」
男1「でも、まあ、なんだ。相談は乗れなくても背中は押してやれる」
男3「それにいつでも俺らは一緒だろ?」
男1「何があってもお前だけを孤立させねぇよ」
男3「当たり前じゃん」
男1「さあ、思う存分フられてこい!」
男3「当たって砕けてこい!」
男13「勘違い野郎!」
男2「馬鹿野郎!」
男2「でも、ありがとう!」
━次の日━
女「おっはよー」
男2「お、おおおおはよ」オドオド
女「えっ、やだ気持ち悪い」
男2「そ、そそ、そんななななことないよ」オドオド
天使(えっ、やだ本当に気持ち悪い)
女「ふーん、あっ、そうだ」ゴソゴソ
女「見て見てー」スマホキラーン
男2「ん?誰だこいつ」キョトン
女「実は昨日告白されたんだー」ウフフ
男2「えっ?まじで?」
天使(……)
女「イケメンでしょ?」
女「スポーツも出来て勉強も出来て」
女「そんな人に私告白されたんだよ?」
女「いいでしょ?」
男2「お、おおおう」
女「こんなに嬉しい報告を一番最初に聞いて欲しかったんだー」キラキラ
男2「お、おおおおう」グスン
女「んじゃ、また明日ね!」タッタッタッ
天使(……ふぅ)
男2「……えっ」イラ
男2「なんだこれ」イライラ
男2「……」サッ
天使(おっ……?)ワクワク
男2「……」
男2「……」ハァー
男2「やめだやめだ」
男2「なに考えてんだ」
天使(ちっ)
男2「……っ!」タッタッタッ
天使「ちょっ、どこいくの!?」
天使「学校は!?あっ、もお、待ってよー」
天使「……って、ここ女の大学じゃん」
男2「……」コソコソ
天使「しかも、こそこそして」
天使「何してんの?」
男2「うっさい」
天使「ねぇ、ねぇ、何してんの?」
男2「……あっ」コソコソ
天使「ん?」チラッ
女「でっさー」キャハハ
女友1「まじでー?」キャハハ
女友2「うけるー」キャハハ
天使「講義が終わったのかな?」
天使「貴男は行かないの?」
男2「……」ジーッ
天使「めちゃくちゃ無視する」
女友1「ん?」
女友1「あっ、女、女」チョンチョン
女「なに?」
女友1「お迎え来てるよ」
天使「やだ、貴男の事バレたの?」
天使「私が仁王立ちしてるから気配で気付いのかな?」
彼氏「おーい」
女「ちょっと待っててよー」
天使「って、んなわけないか」
男2「……」イライラ
天使「まあ、そうイライラしないで」
彼氏「寂しかったんだから早くしろよぉ」
女友2「あらら、お暑いことで」
女「もーやめてよー」カァァァ
女友2「でも、いいなーあんなにイケメンで」
女友1「けど、意外よね」
女「なにが意外なのよ?」
女友1「だって、あんなに幼なじみの事話したじゃん?」
女友2「そうだね」
女「んんー、あれは何というか……」
天使「……」
男2「……」ドキドキ
女「イケメンじゃないしオタクな奴だからね」
女「恋愛感情は抱けないもん」
男2「」
天使「……プッ」
女友2「なのに、なんであんな毎日会いに行ってんの?」
女友1「そうそう、てっきり気があるかと」
女「親同士仲良しだから頼まれてんのよね」
女「だから、しぶしぶ」
彼氏「おーい、まだかよー」
女「あっ、ごめんね」
女「じゃあ、私行くね」
女「やっぱり彼氏にするならイケメンじゃなきゃね」ウフフ
女友1「言うねー」
女友2「でも百里あるよねー」
女友12「イケメンサイコー」
女「本当に最高だよ、幼なじみとは大違い」ウフフ
女「じゃあ、また明日ねー」
男2「……」プルプル
天使「うわぁ、悪魔だねーありゃ」
男2「……」スッ
男2「……」
男2「……」ポチッ
天使「……」ニヤリ
男2「……」ポチッ
天使「……えっ」
男2「……」ポチッ
天使「ちょっ、ちょっ、えっ」
チャリーンチャリーンチャリーン
男2ハ597円手ニ入レタ
女友1「うっ……」ドサッ
女友2「きゃ、きゃーっ…!?ぐぅっ」ドサッ
オイオイドウシタドウシタ
ヒトガタオレタゾ
オイナンダヨ
彼氏「寂しかっ……ぶぅぐぅっ」ドサッ
コッチモヒトガタオレタ
キャーキャーコワーイーー
女「ちょ、彼氏!?だ、誰か!!」オドオド
女「誰か救急車を!!」ウェーーーン
男2「……」テクテク
女「男2!!」ウェーーーン
女「彼氏がね、彼氏がね……」ウェーーーン
男2「……イケメンでも死ぬんだね」
女「そんなことより早く救急車!!」ウェーーーン
男2「もう手遅れだよ、死んでるし」
女「うっせぇよ!!早く呼んでよ!!」グスングスン
男2「無駄だよ」
女「なんで、なんで、わかんのよ」ウェーーーン
男2「……だって俺が殺したもん」ボソッ
女「はぁ?何言ってんのよ!!早くしてよ」ウェーーーン
女「冗談は顔だけにしてよね!!」
女「てめぇは昔っからどんくさ過ぎなんだよ!!」ウェーーーン
女「だから苛められんだよ!!」
男2「」カチン
男2「……俺は」スッ
男2「悪くない」ポチッ
天使「わーお、カッコ良く決めたね」
男2「……」
女「うっ……」ドサッ
チャリーン
男2ハ199円手ニ入レタ
男2「……はぁ」
男2「やけに財布が重いや」
━男2の部屋━
天使「ねぇ、早くコンビニに行こうよ」
男2「……」
天使「せっかくお金も手には入ったんだしさ」
男2「……」
天使「なに怒ってんの?」
天使「自分で決断して下した裁きでしょ?」
天使「何も貴男は悪くないよ」
天使「自分でも言ってたじゃない」
天使「俺は、悪くない」キリッ
天使「もっと溜めてたかな?」
天使「俺は……悪くない」キリッ
男2「……」カァァァ
天使「顔赤くして案外余裕なのね」
天使「なに?」
男2「何もないんだな」
男2「俺は7人殺してんだぜ」
男2「普通に考えてみれば俺は捕まってるはずだしな」
男2「なのに警察は動いてない」
男2「女の葬式に行ったって結局俺も辛いだろうって周囲から言われてさ」
男2「辛いも何も俺が殺したんだぜ」
男2「なのに、なんで、誰も、俺を……」
天使「責めないのか……」
男2「責めてくれたら、きっと俺は」
男2「この殺したって事に罪悪感を抱くはずなんだ」
男2「でも、誰も責めないから」
男2「俺は内心正しい事をしたって思って」
男2「これからもボタンを押してしまうかもしれない」
男2「いや、きっと押すんだ」
天使「いいんじゃないの?」
天使「これを期に貴男の理想郷を築き上げたらさ」
天使「何度も言うけど」
天使「それを押したからって」
天使「貴男は天国に導かれるだけだからね」
天使「どんなに悪行したとて」
天使「そのボタンに選ばれたんだもん」
天使「私はそれをサポートするし」
天使「その代わりスニッカーズ買ってくれたらいいからね」
男2「……理想郷、か」
━とある公園━
男1「何というか、お前も大変だったな」
男3「これからハッピーな人生が待ち受けてると思ってたんだけどな」
男2「まあ、仕方ない。突然の心臓発作だもんな」
男2「それに俺告白する前にフられてたし」アハハ
男1「えっ、まじかよ」
男3「絶対脈ありだったじゃん」
男2「んー、なんか俺の勘違いだったみたい」
男1「勘違いって、あんな毎朝会ってたのに」
男2「やっぱりイケメンじゃないとな」
男3「イケメン、か」
男3「整形してもたかがしれてるしな」
男1「いっそのことみんながみんな同じ顔なら」
男2「……!?」
男1「俺らにもチャンスは巡ってくんだけどな」
男3「同じ顔でもお前性格もブサイクだからな」
男1「いや、おめぇに言われたくないし」
男2「……みんな同じ顔」フムフム
男1「とりあえず今日は俺が奢るから」
男1「呑みに行こうぜ」
男3「おっ、珍しいな。給料日か?」
男1「いや、ネットに動画投稿したら」
男1「案外広告料入ってきてさ」
男1「あんな適当な動画でも金になるんだ」
男1「今の御時世どうかしてるぜ」
男3「ふーん、どんな動画?」
男1「いや、こんな大衆の面前で話せる動画じゃねぇわ」
男2「……動画、ね」
男3「まあ、いいや」
男3「ただ酒ならなんでも」
男1「とりあえず行こうぜ」
男2「お、おう」
━男2の部屋━
男2「あの後男1から話を聞いたんだ」
天使「急にどうしたの?」
男2「あらかた動画の取り方や」
男2「どうやってアップロードするかも聞いたし」
天使「勝手に話が進んでる」
男2「海外のサーバーを駆使して」
男2「県外から投稿すればいいだろう」
天使「おお、自己完結したじゃん」パチパチ
男2「では、動画を撮影しようか」
天使「何してるの?」
天使「最近妙に生き生きしてるじゃん」
男2「俺の理想郷を見つけたんだ」
天使「理想郷?」
天使「どんなのかな?」
男2「まあ、今から動画にするから」
男2「それ観てよ」
天使「わかた」
『ああ、初めまして』
『こういう動画は初めてだけど』
『どうか伝わればいいな、と』
『ある日夢を見たんだ』
『ああ、具体的には言えないが』
『全てが統一されていた』
『当時は気味が悪いと僕ですら思った』
『けど、今の僕はその世界を肯定的に捉える事が出来る』
『さて、それを含め結果から言えば』
『君たちを殺すことにした』
『僕にはとある方法で誰にでも簡単にそれが出来る』
『信憑性がないだろうが』
『暫くしたら否が応でも信じざる得ないと思う』
『どうか僕の前に顔を見せないでくれ』
『これは天使の僕がいえる最後の言葉だ』
『時々こうして報告しようと思う』
『そうなると名前が必要だな』
『んー、そうだな』
『“月”が死神なら』
『天使の僕は“sun”にしよう』
『では、まず“sun”が裁く一人は』
『この国のトップにしよう』
『歴代の中でダントツに若く』
『しかも、ルックスがいい』
『僕はね、ルックスがいいってのが一番腹立たしいんだ』
『では、さようなら』
……ポチッ
キャスター「と言う、動画がですね」
キャ「先週とあるサイトから発信されました」
キャ「そして、皆さんがご存知の通り」
キャ「心臓発作で亡くなりました」
キャ「警察は何かしら関係があるかどうか」
キャ「捜査を始めました」
キャ「さて、この一連の流れ、どうお考えなりますか?」
コメンテーター「いや、嘘臭いでしょ」
コメ「たまたまが重なってるだけでしょ」
コメ「こんな動画探せば、うじゃうじゃあるでしょ」
キャ「しかし、現にこうして亡くなっていますし」
コメ「不謹慎ですが本当に偶々ですよ」
コメ「何かトリックとかあるなら教えて頂きたい」
キャ「ん?あっ、は、はい!!」
キャ「今我が報道局に“sun”と名乗る者から連絡が入りました!!」
コメ「ほお、面白い」
キャ「電話が繋がってます」
キャ「もしもし?」
『僕の事を疑う人は誰?』
コメ「私だが?」
コメ「あんな不謹慎な動画あげるなど」
コメ「お前はどう考えても幼稚なんだよ」
『今なら救いの手を差しのべるよ』
『唯一救いなのは君が不細工だからね』
『共感してしまうな』
コメ「私が不細工とか関係ないだろ!!」ドンッ
コメ「私は妻子もいるだ!!」
コメ「お前みたいな働かないで引きこもってる奴と同じにするな!!」
『あーぁ、せっかくの救いだったのに』
『天使の裁きを快く受け入れて』
『主の元におかえり』ポチッ
コメ「ふんっ、馬鹿馬鹿し……いっ!?」
コメ「イイイッィガァグッアッ」バタン
キャ「お、おい!!カメラ止めろ!」
スタッフ「おい、早くしろ!!」
キャーキャー
ワーキュウキュシヤーハヤクー
『ふふ、これでわかってくれたかな』
『さあ、もう一度言うよ』
『お願いだから僕の前に顔を見せないで』
天使「ひゅー、格好いい」
天使「でも、これで本格的に警察動くわね」
天使「大丈夫かな?」
男2「……んー、わかんねぇ」
男2「けど、もう動き出したんだ」ニヤ
男2「俺の理想郷計画」クックック
天使「……ねぇ、スニッカーズ食べたい」ソデクイクイ
男2「そうだな、ちょうど199円も手に入ったし」チャリーン
男2「買ってあげるよ」
天使「やった!!貴男大好き!!」ギュー
男2「これからの相棒に優しくしとかなきゃな」ナデナテ
天使「いつまでも貴男の側に私はいますよ」
━男2の部屋━
???「案外簡単に見つけ出せたわね」
???「ここはどこ?」
???「姉か妹がいる部屋よ」ウフフ
???「さあ、どんなカードがでるかしら」
━━━おわり━━━
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