提督「執務室を模様替えしたい」 (33)


大淀「急ですね」

提督「何、ほんの気分転換だ」

大淀「確かに、机とジュークボックスしかないですから、幾分殺風景ではありますけれども」

提督「確か執務室改装用に予算が割り当てられていただろう?」

大淀「はい、それと遠征の際に艦娘達が持ち帰った資金もそちらに充てられています」

提督「ふむ、現状どのくらいプールしている?」

大淀「10万ほどです」

提督「おぉ、結構あるじゃないか」


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大淀「ただ、家具によっては職人の手を借りる必要があるものもあります」

提督「お抱えの職人が何人かいたはずだろう?」

大淀「はい、当鎮守府では5人の職人を抱えています」

提督「なら、問題ないだろう」

大淀「はぁ……」

提督「カタログはここにあるから早速選んでみよう」

大淀「くれぐれも予算にはお気をつけください」

提督「あぁ、分かっているよ」


大淀「それでは私は演習に行ってまいりますので」

提督「そうか、そんな時間か。うむ、しっかりとな」

大淀「はい。失礼致します」

すたすた

ばたん

提督「さて、どうするか……」


――――演習終了


大淀「ふぅ、皆さんお疲れ様でした」

長門「うむ、全体的に良く出来たと思う」

電「疲れたのです……」

長門「電、怪我はないか?」

電「はい、大丈夫なのです」

長門「そうか、なら、いい」


大淀「それでは提督への報告に……っと、今日はこの後、足柄さんと次作戦の打ち合わせでしたね……」

長門「なに、報告くらいなら私が行こう」

大淀「よろしいのですか?」

長門「あぁ、構わん」

電「あ、あの……。電も行きます」

長門「ふふっ、じゃあ、一緒に行こうか」

大淀「それではお二人にお願いいたします」

すたすた


長門「それでは行こうか」

電「司令官さんのお部屋に入るのは久しぶりなので、少し、緊張します……」

長門「ここ最近は大淀が秘書艦を務めていたからな」

電「それまでは長門さんでしたね」

長門「あぁ、だが、私なんかよりよっぽど大淀の方が向いている仕事だと思う」

電「……電もいつかなれるでしょうか?」

長門「なりたいのか?」


電「素敵な女性っていう感じがして、憧れるのです」

長門「そうか」

電「背も小さいし、失敗もしてしまうので、まだ難しいかもしれないけど、いつか、きっと……」

長門「……っふふ。なれるさ、きっと」

電「……えへへ」

長門「さぁ、着いたぞ」

電「やっぱり緊張するのです……」

こんこん

長門「提督、私だ。長門だ」

しーん


長門「返事がないな」

電「お留守なのでしょうか?」

長門「失礼する」

電「あっ」

がちゃ

長門「提督、いないのk……なっ!?」

電「長門さん? ……はわわっ!?」

長門「な、なんだこれは……」

電「お部屋の中に……砂浜が……もう冬なのに……」


長門「私が秘書艦から退いて、こんな事になっているとは……」

電「司令官さんの姿はやっぱり見えないのです」

長門「一体提督に何が……ん?」

電「どうしたのです?」

長門「いや、執務机の上にこんな物が」

電「これは、カタログ……?」

長門「あぁ、床の改装ページに付箋が挟まっている所を見ると、やはりこれは提督の仕業のようだ」


電「他にも色々付箋が挟まっています」

長門「壁紙、窓、装飾品に家具か……。殆ど一式揃えるつもりみたいだ」

電「大掛かりなのです……」

長門「一体どこからそんな予算が……」

電「多分、遠征先から持ち帰った資金だと思うのです」

長門「そうなのか?」

電「多分、ですけど……」

長門「そうか……」


電「司令官さんはもしかして家具の発注に出かけているのでしょうか」

長門「可能性は高いな」

電「いつ頃お戻りになるのでしょうか……」

長門「わからんな……」

電「報告をしないわけにもいかないですよね」

長門「そうだな」

電「どうしましょう……」


長門「ふむ、では……」

電「長門さん?」

長門「せっかく砂浜があるのだ、提督が戻るまで砂遊びでもしていようか」

電「ふぇ!? で、でも……」

長門「他にする事もあるまい」

電「はぁ……」

長門「それに……」

電「?」


長門「少し気になっているのだろう?」

電「はわわわっ、そ、それは……その……」

長門「ふふっ、ほら、おあつらえ向きにシャベルとバケツもある」

電「本当なのです……」

長門「そら、一緒に砂山でも作ろう」

電「……えへへ。はい!」

長門「まずはシャベルで砂を盛ろう」

電「はい。うんしょ、うんしょ」

長門「ほっ……っと、うん、こんな物だろう」


電「砂がさらさらなので、すぐに崩れてしまいますね……」

長門「確かにな……そうだ」

電「?」

長門「確か机のこの引き出しに……あった」

電「お水?」

長門「あぁ、提督が飲むやつだ。これで砂を固めよう」

電「そ、それは流石にまずいんじゃ……」

長門「大丈夫だ、秘書艦時代よく勝手に飲んでいた」

電(何も大丈夫じゃないのです……)


長門「それっ」

とぽぽぽぽ……

長門「よし、これで山を大きく出来るな」

電「そ、そうですね」

長門「ん? どうした電、手が止まっているぞ」

電「へ? あ、な、なんでもないのです! どんどん大きくしましょう!」

長門「ははは、あぁ、そうだな」


電「うんしょ、うんしょ」

長門「水をかけるぞ」

とぽぽぽぽ……

電「うんしょ、うんしょ」

長門「おぉ、大分大きい山になったな」

電「はい!」

長門「しかし、ただ山を作るだけでは物足りないな」

電「そうでしょうか?」

長門「……穴だな」

電「へ?」


長門「これはシャベルよりも手でやったほうが良さそうだな」

電「そうですね」

長門「よっ……ほっ……」

電「なの……です……なの……です」

長門「いい感じだ……」

電「こっちも順調なのです」

長門「んっ……?」

電「どうしたのです?」

長門「なにか、手に感触が……っっ」


電「長門さん!?」

長門「何だ!?」

電「……かにさん?」

長門「提督め……よもや蟹まで放っていたとはな……」

電「ちっちゃくて可愛いのです」

長門「あぁ、そうだな」

電「指、大丈夫ですか?」

長門「心配するな。この程度、風呂に入る迄もない」

電「良かったのです」


電「良かったのです」

長門「さぁ、続きを掘ろう。間もなく開通するはずだ」

電「はい!」

長門「それっ、おっ」

電「あ!」

ぴとっ

長門「開通したな」

電「はい! これ、長門さんの手ですね」

長門「あぁ、電の手だ」

長門「あぁ、電の手だ」

電「長門さんの手、おっきくてあったかいのです」

長門「電の手は小さくて温かいな」

電「えへへ…あっ」

長門「どうした?」

電「この穴を、かにさんのおうちにしたらどうでしょう?」

長門「ふむ、悪くない」

電「気に入ってくれるでしょうか?」

長門「きっと気にいるさ」


電「あ、いました。手に乗せて……穴の中へ……なのです!」

長門「入っていったな」

電「探照灯で照らしてみましょう」

ピカー

電「特に出てこようとしている様子はないのです」

長門「どうやら気に入ってもらえたようだな」

電「とっても嬉しいのです!」

長門「良かったな、電」

電「えへへ」


がちゃっ

提督「お? 珍しいな、二人してここに居るなんて」

長門「提督」

電「司令官さん!」

提督「どうした、何か用事か?」

長門「演習の報告に来たのだが、出かけていたようだったのでな、ここで待たせてもらった」

提督「そうだったのか、悪いことしたな」

電「い、いえ! そんな事ないのです!」

長門「久々に執務室に来たらこんな事になっていて少々面食らったが、まぁいいさ」


提督「すごいだろう、これ? やはり高級職人の技術は素晴らしいな」

長門「少々季節外れな気もするが」

提督「その割には楽しんでいたみたいじゃないか」

長門「んなっ!?」

提督「そこの山、お前と電で作ったんだろう?」

長門「……ふぅ、流石は提督だな」

電「どうしてわかったのですか?」


提督「そこに転がってる飲み水、それは俺のだろう? 勝手に持ち出すのは長門くらいしかいないからな」

長門「ふっ……」

提督「褒めてないぞ」

電「あ、あの……すみませんでした……」

提督「ははは、怒っちゃいないさ。それに、二人が楽しんでいたならそれでいい」

電「司令官さん……!」

提督「あぁ、用が済んだらちゃんと風呂に入るんだぞ」

電「へ?」


提督「泥だらけだ、二人ともな」

長門「ふむ、夢中になっていて気づかなかったな」

電「本当なのです」

提督「さて、それじゃあ演習の報告を聞こうか、長門」

長門「あぁ――――」


――――――――


――――


――


雷「それで電は砂遊びしてきたってわけ?」

電「えへへ……」

響「執務室に砂浜なんて、司令官も大胆だね。ハラショー」

暁「ふ、ふ~んそうなんだ。電もまだまだおこちゃまね~」

雷「とか言いながらそわそわしちゃってるじゃない」

暁「なっ!?」

響「分かりやすいね、暁は」

暁「一人前のレディは砂遊びなんてしないんだから!」


電「で、でも、長門さんは砂遊びしてくれたのです」

暁「そ、それは……!」

雷「はいはい、今度は皆で砂遊びしに行きましょうね」

暁「わ、私は別に……!」

響「うん、そうしよう」

暁「ま、まぁ、皆がどうしてもって言うなら……行ってあげても……」

雷「素直じゃないわねぇ」

電「えへへ、楽しみなのです!」


――


――――


――――――――



提督「さて、今日はこのくらいにしておこうか」

がたっ

提督「ん? ははは、あの二人、ちゃっかりサイン残していったな」

『なのです☆』

『ビッグ7』

提督「ビッグセブンって……ははは、あいつサイン考えるの下手くそだな。まぁ、しばらくは残しておいてやるか」





おしまい

終わりです。

何故今砂浜なのかはよく分かりません。

少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
それではお目汚し失礼しました。

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