海未「ことり……私とシませんか……?」 (18)
※閲覧注意
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いつからでしょうか。
彼女のことを純粋な気持ちで見遣れなくなってしまったのは。
私は、ことりのことが好きでした。陳腐な言葉ですが。
本来人間は異性同士で愛しあうもの。それなのに私はあろうことか、幼馴染の女性に恋をしてしまっていたのです。
さながら人間としては欠陥品でしょうか?
論ぜずとも、私はことりのことを最も大切に考えていましたし、それ故に自らの欲求で彼女を困惑させてしまうのは心苦しかった。
ですから、私のこの醜い想いは心の奥深くに閉じ込めておこうと、そう決心したのです。
私は、ただあの笑顔を一番近い場所から見られるだけで十分だと、そう思ったのです。
そんな矢先に、とある風の噂が私の耳へと届いて来たのです。
ことりに彼氏の殿方がいる……という。
最初は嘘だと思いました。
というのも、ことりは端正で愛らしい風貌をしているせいか、そういった噂には昔から事欠かなかったのです。
そんな私の強がりにも似た希望的観測は後日、あっさりと打ち砕かれることになったのですが。
ある日のお昼休みの時間。
私達はいつも通り、教室窓際の穂乃果の席に集合して小さな机の上にお弁当を三つほど置き、他愛もない話を繰り広げていました。
そしてそれまで話していた話題が途切れ、穂乃果が持ち出してきた次の話題は――。
『あっ、ねえねえ、ことりちゃん彼氏がいるって本当なの?』
意表を突かれて飲み込もうとしていた玉子焼きが喉に詰まりました。平静を装うために、咳を込むまいと喉周辺の筋肉を強張らせて耐えていましたが。
そしてことりはしばらく間を開けて噛みしめるような動作で、こくりと、頷いたのです。
正直その時は、もうなんというか……実感がありませんでしたね。
お昼休みから、午後の授業へ。午後の授業から部活へ。部活から家へ。
じわじわと、じわじわとその実感が私の心の中を侵食していきました。
私が顔……名前すら知らないどこかの馬の骨に向けられることりの笑顔が頭の中に浮かんでくる。
その度に私は親友の幸せを一緒に喜んでやるべきだと、そのイメージを払拭しました。依然として黒い感情の侵攻は強まるばかりでしたが。
さて、それから数ヶ月が経ち、ことりはすっかり変わってしまいました。
口を開けば惚気話の毎日。
最初の恋人でしたから……影響を受けやすいのでしょうか。
ことりは彼氏がいたとしても惚気話を積極的にするようなタイプではないだろうと勝手に思っていたので驚きを隠しきれませんでした。
穂乃果は自分の感想を素直に伝える人なので、あまりの惚気話に『もういいよ!』となったのですが、私は……そういう方でもないので。
笑顔を取り繕ってことりの話を聞いていました。
余程嬉しいのでしょうか、もうほとんど毎日話して頂けるのです。
それがどんなに罪深いことか、ことりは知る由もなかったでしょう?
当然です。
ことりは頻繁にリップクリームを塗り直すようになりました。
唇が乾燥するからだそうです。どうしてか。
そう尋ねると『キス……しちゃって』と火照った顔で言うことり。
当然、私は不純だとことりを叱りつけましたが……まあ、無意味ですよね。
家に帰ってから熟考したのですが、唇が乾燥してしまうほどのキスとなると、やはり……深い方ということになりますよね。
それも一度や二度ではなく。
―
そんなことりの一挙手一投足、一言一言に心を悩ませる。
それが、ここ最近の私、園田海未のハイライトです。
こう日記のように綴っていると……いえ、むしろ書いていない部分が多いのですが、いかに私が嫉妬に塗れてしまっているのか自分で呆れてしまいますね。
一足早く着いた生徒会室で、そんなノートを消しゴムで消していく。
私の黒い感情も一緒にまとめて消えてくれることを祈りつつ。
「海未ちゃーん」
ことりがやってきました。
ページ下半分までの消しかけのノートを急いで閉じて応対します。
最近はもうすっかり、ことりの恋愛相談における全幅の信頼を獲得いたしまして……ええ。
ことりは私の横の椅子に座るなり、バッグを漁って携帯を取り出し、私に見せてきました。
「ねえねえ、見て?」
ディスプレイに映しだされたものは、連絡先のアプリ。
その異変に、私が気付けないわけがなく……。
「えっ……連絡先、削除したんですか?」
私を含め、μ'sのメンバーやことりのお母様、そんな最低限のメンバーだけが登録された連絡先。
ことりの連絡先はもっと、沢山の人で埋め尽くされていたはず。
中学時代の友人、特に中学校は共学でしたし、男女共にかなりの連絡先を持っていましたよね、貴方は。
「うん、そうしろって」
最近ことりの話を聞いている限りでは、その彼氏はどうやら独占欲が強く、束縛的なようで。
どの口が、ことりにそんな命令を下せるのですか?
名前すら知らない男性に対して、私の反感は強まるばかり。
すみません…ほのぼのなことうみを書いていたらこれを書くのが居た堪れなくなってしまいました
依頼出してきます…
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は?