阿良々木暦「こよみジョーカー」 (30)
仮面ライダー、という言葉を聞いたことがあるだろうか。
バイクにまたがり、異形の仮面を被り異形の化物を倒す戦士。
僕がまだ小学生に上がったばかりぐらいの頃に、『仮面ライダーと呼ばれる鎧の戦士が、人々を襲う未知の生命体から人々を守るため日夜バトルを繰り広げている』という都市伝説が流行りだしていた。
当時、正義の味方なんてものがいて、まるで都合の良い神様の様に、助けを求める人に救いの手を伸ばす存在なんてものを信じていた僕は、この都市伝説を聞いた時、こう思った。
ーーーほら、やっぱり、ヒーローはいるんだ。 助けを求める手を掴み取ってくれる人がいるんだ
……まだ幼い子供だった頃に無邪気に抱いた思いだ。 出来れば笑って寛大な心で流して欲しい
そう…本来なら子供の頃に抱いた思いなんて、いずれはどうにもならない現実を知り、現実とはどうにもならないと知り、心の片隅にも置かなくなる物のはずだ。
邪気が無いから無邪気
邪気を知らないから、無邪気
なのに何故か僕は、恥ずかしながらこの思いを高校一年、あの、正しさが多数決によって定められてしまった学級裁判の日にまで持ち続けてしまった。
心の片隅に、忘れずにしまっておいてしまった。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1423309323
今から話す話しは、僕こと阿良々木暦が、子供の頃に抱いた思いを、何故忘れずにいたのか、という事を思い起こすだけの話しである。
何かが変わった訳でも、何かを失う訳でもない、ただ、僕が仮面ライダーと出会って、別れるだけの、話しである。
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