シスター「この街に残りたい。けど勇者様との旅もありますし…」男兵「……」 (27)

兵士A「聞いたか?街に勇者達が来ているらしいぞ。」

兵士B「だからなんだよ?サインでも貰いに行けってか?
俺達には関係ないだろ。」

男兵「……そのせいでこの辺の警備が薄くなってるのか?上の奴ら、街にいる勇者の護衛に人員を割きやがったな。
こんな時に魔物に襲撃されたらどうすんだよ?こんな抜け空の砦じゃ一瞬でお仕舞いだな。」


兵士C「勇者が街に居るってのに、魔物がくるわけないだろ。逆に怯えて逃げて行くさ。」

兵士B「どうだか……。むしろ勇者がいる今だからこそ、狙われちまうかもしれないだろ?」


男兵「そういう物騒な話はやめろよ。こういう時に限ってそういう読みはあたるんだからな……」




少女「ごめんくださ~い。」

兵士B「ん?……って、おい!お前何こんな所にまで来てるんだ!」

兵士A「誰だ?あの可愛いお嬢ちゃんは?」

男兵「あいつの妹。街の定食屋で働いてるらしい。」

少女「あ、男兵さんもご苦労様です。兄にお弁当を持ってきたんですけど、よかったら男兵さんや皆さんもどうぞ。」

男兵「ん?お、サンキュー。」

兵士B「お前……こんな危険な所には来るなって言っただろ…」

少女「大丈夫。だって、いざというときはお兄さんと皆さん達が守ってくれるでしょ?」

兵士B「なっ……」


兵士A「え?マジでくれるの?ちょうど腹減ってたから助かるわ~。」

兵士C「ありがて~。今朝なんて握り飯一個だったしな。」

男兵「おいコラ!エビフライは1人1つまでだ!誰だ2個食ったのは!?」


兵士B「……お前ら…」

少女「ふふっ。皆元気だね。」

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兵士A「し~かし!お前にこんな可愛いらしい妹がいたなんてな!」

兵士D「全然似てねーな。可愛過ぎる!
お前の遺伝子が遺伝しなくて良かった。」

兵士B「うるせー!この酔っ払い……つか、お前!なに任務中に酒なんか!」

兵士A「お~い、妹ちゃ~ん!一緒にジュースでも飲まねーか?最高にハイになれるジュースだぜ。」

兵士B「てめぇ!未成年になに飲酒をすすめてるんだ!」

兵士A「はははっ!!お兄さまがお怒りだ~い!!」



少女「あははは……。大丈夫かな?お酒なんか飲んじゃって……」

男兵「心配すんな。あいつは酔拳が使えるから。」

少女「……え?」

男兵「嘘だと思うんなら、その瓶で後ろから殴りかかってみな。瞬間で殴り返されるからさ。」

少女「本当に?……へぇ~……さすがは帝国軍人さん。凄いですね~。」

男兵「そうだな。皆凄いよな。
……あんただってな。弁当、品揃えや個々の味付けも前よりもよくなってる。また料理の腕が上がったな。」

少女「ホント!?嬉しい!男兵さんのお墨付きなら、完璧だね!」

男兵「ああ。味にうるさい俺の舌を黙らせるんだから立派なもんだ。」

少女「そっか。料亭での修行も、ちゃんと身についてるってことなんだね。」

男兵「料理の修行か。立派だな。ホント。
………俺も、兵士をやめて料理人を目指そうかな……」

少女「男兵さんが?どうして?そりゃ男兵さんは料理得意だけど……。」

男兵「俺、兵士なんか向いてないと思うんだよな。」

少女「え?そ、そうかな?男兵さん、強いし……。兄も、男兵さんのことは良い同僚だって褒めてたよ?」

男兵「……強さ……ね。確かに、喧嘩事の腕には自信あるけどさ。」


少女「じゃあ、どうして……?」

男兵「……さぁね。なんとなく……」



兵士E「おい!!男兵!皆を集めてすぐに来てくれ!!」

男兵「なんだよ、いきなりどうした?」

兵士E「時間がない!早く鎧と剣を持て!!急げ!!」

【1時間後】


魔法少女「じゃじゃ~ん♪さっき街のカジュアルショップで買ってきた服なんだぁ~♪
勇者様~♪似合う?似合ってるよね?」


勇者「え?あ、ああ。そうだな。似合ってるよ……」


女剣士「勇者。またあいつに無駄買いさせたら、今度こそ財布が底つきますよ?」

勇者「そうさせないと、また朝飯にわけの分からない薬品混ぜられるだろ。
全く……あいつは拗ねると無茶苦茶だから……」


猫剣士「あらあら、勇者様って子供の扱いが下手なんですね~。そんなんじゃ良いパパにはなれそうにありませんわね。」

魔法少女「だ、誰が子供だー!!このケモナーがぁ!!」

猫剣士「あらら、子供って本当に短気なのね~。」

女剣士「ゆ、勇者様がパパに!?
と、ということは……マ、ママは……わ、わたしに……?」


勇者「お、おい……こんな所で喧嘩は……」


女弓兵「お待たせ!皆揃ってる?」


勇者「あ、ちょうどよかった!また猫剣士と魔法少女が喧嘩を……」

女弓兵「また~?ならさ、前みたいにシスターちゃんのほんわかムードで2人を癒して……。
……ん?シスターは?」

勇者「シスターなら、まだ教会にいるみたいだな。
全く……また何時間も待たされるんだろうな……」

女弓兵「あー……またお祈りをしてるの?
シスターは真面目で良い娘なんだけどな~……真面目過ぎるというか……信仰オタクというか……」




警備兵A「急げ!皆を向かわせろ!!」

警備兵B「怪我人が多数!死者も出てるぞ!」


勇者「……?なんか騒がしくないか?」

女弓兵「……ですね。何かあったのでしょうか?」

勇者「おい!そこのアンタ!」

警備兵「ゆ、勇者どの!?」

勇者「何かあったのか?死人が出てるとか言ってたが……」

【街の教会】


シスター「……神よ……私は今幸せです……。」

神父「……」

シスター「貴方の下で勇者様と出会い、素敵な皆様と一緒に旅が出来、そして多くの人々を救い続けてきました。」


シスター「私は、幸せです。この世界の……皆の為に、私は為すべきことが為せているのですから。」


シスター「私は……私は、全ての人の笑顔の為に………。
例え、それが不可能なことであっても……私は、進んで行きます。理想であったとしても、私はその為にこの身を捧げます。」


神父「貴方の強い信念。その純粋なる心。さぞかし神も賞賛していることでしょう。」

シスター「……それはおそれ多いことです。私はまだ使命を終えていません。
私は、私の使命を果たすまで……賞賛に値する存在にはならないでしょう。」



修道女A「あの娘が勇者様の……?」

修道女B「凄い……。純粋な目、純粋な物言い……。
あんな聖女みたいなシスター……。さすがは勇者様のお仲間……」




警備兵C「神父様!郊外の砦にて非常事態が起きました!救援をお願いしたいのですが……!」


神父「ふむ。分かりました。今すぐ向かいましょう。
シスターどの。」

シスター「はい。」

神父「……貴方の言葉を受けるには、貴方の素晴らしさの前では私もまだまだ未熟であった様だ。
私からかける様な言葉などございませぬが、ただ……貴方の心。それはこの世で最も清らかな癒しの道具であり、魔を討ちぬく武器でございましょう。

どうか、貴方は貴方の心を信じて下さい……。」

シスター「はい。ありがとうございました。」


神父「では、失礼いたします。」

警備兵C「急いでください!こちらです!」



シスター「………」

シスター「郊外の砦……?」

【街郊外の砦】


警備兵A「急げ!!怪我人を運べ!」


警備兵D「……怪我人なんてほとんど居ないじゃねーか。どいつもこいつもご臨終だよ。」

警備兵E「つべこべ言わずに運べ!死体とはいえ、俺達の仲間だ……」


勇者「ちょっと待ってくれ!!」

警備兵E「なんだアンタは?」

勇者「……この死体?女剣士。この傷痕は?」

女剣士「これは……剣によるものだな。しかも、この傷口の広さだと……」

魔法少女「なんだ!?相手はオークか!?スカル兵か!?」

猫剣士「ひょっとして狼人間とか?なら私はパス。あんな獣臭いのは御免だわ。」

女剣士「いや……この傷痕は、帝国軍人の常装備の剣によるものだな。」

勇者「何!?」

魔法少女「ん?つまりどういうこと?」

勇者「おい!ここに魔物が現れたんじゃないのかよ!?なんで兵士が兵士の剣で殺されてるんだ!?」


警備兵D「よ、よくは知らないが、喋る魔物が兵士達に謎の魔法をかけて、そしたら気が狂った様に兵士達が仲間に襲いかかったらしいんだ。」

勇者「魔法……?」

魔法少女「洗脳ってことか!?……ってことは、その魔物は只者じゃないね……」

女弓兵「魔王の差し金!?」

勇者「……かもしれない。その魔物はどこに?」

警備兵D「森の方に逃げたらしい。生き残った砦の兵士達が後を追っていったとか……」

女弓兵「もし魔王の部下なら、兵士達が相手出来るとは思えないわ!」

勇者「早くその兵士達を助けに行かないと!」

魔法少女「ちょっと待って!相手は洗脳を使うんでしょ!?
なら、何か対策をしていった方が……」

勇者「時間がない……対策は後回しだ!」

魔法少女「え!?マジで言ってんの!?」

猫剣士「ま、魔法関連なんだからね。もしもの時は頼んだわよ~。魔法少女ちゃん♪」

魔法少女「な、なこと言われても……」

少女「……う……ぅう……」

女弓兵「勇者様!生きてる人がいましたよ!」

勇者「おい!大丈夫か!?」


少女「………え……?」

勇者「大丈夫か!?何があったんだ!?」

少女「……お兄…さん……」

勇者「え!?」

少女「お兄さん……が……私に……私のお兄さんが……」


勇者「お兄さん?」

女弓兵「その死体のことじゃない?
……もう既に死んでるけど。」

少女「……お兄さん……やめて……殺さないで……」

勇者「落ち着け!!もう大丈夫だ!大丈夫だから!!」

女剣士「……この死体も帝国軍の剣で斬られている。」

猫剣士「洗脳された仲間の兵士が襲い掛かってきて、妹さんを庇って死んだ、ってところかしらね。」

勇者「クソ!魔王の仕業だって言うんなら、許せねぇ!!」

猫剣士「もし魔王の仕業なら、狙いは私達だったのかもしれないわね。」

勇者「なに!?」

女剣士「そう。街にいる私達を狙っての……。
私達が街に居たから……この人達は……巻き添えに……?」

勇者「そんなこと言ってる場合じゃない!!早く魔物を追うぞ!」

猫剣士「そうね。私達が狙いだったっていうんなら、なおさら鉄槌報復でボコボコにしてやらないとね。」

魔法少女「………。」

女弓兵「行くよ!魔法少女ちゃん!」

魔法少女「あ、うん。分かった。」


少女「……お兄さん……お兄さん……お兄さん……」

魔法少女「……なんだろ?この死体から微量の魔力を感じる。このお兄さんとか人はむしろ洗脳されてた側なんじゃ……。
……あれ?でも洗脳されてた兵士がなんで殺されてるんだろ?あれ?」



少女「……お兄さん……やめて……殺さないで……。
………男兵さん……お兄さん………やめて………」

【街の外の森】


悪魔「……はぁはぁ……あの人間共め……」


悪魔「……くそっ!!まさか人間同士で……あんな馬鹿な………」


サキュバス「おい。何をしている?」

悪魔「サ、サキュバス様!!」

サキュバス「お早い帰りね。もう任務が遂行できたの?」


悪魔「と、砦の兵士達は我が術で手中にしました……」

サキュバス「ふ~ん。それで?勇者の首はどうしたの?」


悪魔「………て、手違いがございまして……。
砦の兵士達が……その……」


サキュバス「……お前、失敗したのね。」

悪魔「い、いや!私は……!!」

サキュバス「それで?まんまと人間のネズミを私の所にまで連れてきてくれたわけね。」

悪魔「……はぁ?」




男兵(……バレてるっぽいな。尾行したのが。)

兵士A(クソ!あの幼女、かなりヤバいぞ。羽も生えてるし……悪魔か?)

男兵(しゃーない。俺が出るから。お前は戻って勇者にでも報告してこい。)

兵士A(はぁ?お前正気か?)

男兵(ああ。絶対に許さねぇ。あいつらの頭を叩き落とすまでは街に帰らねぇから。)

兵士A(おい!馬鹿!)



サキュバス「……あら、出て来るのね。黙って逃げちゃえば良いものを。」

男兵「……」

サキュバス「……人間……よね?砦の兵士ってところかしら。」

悪魔「き、貴様!!あの人間……」

サキュバス「ん?何よ?何者か知ってるの?」

悪魔「い、いえ……この人間が私の“兵士”達を……」


男兵「……おい、女悪魔。魔王の知り合いかなんかか?」

サキュバス「………」

サキュバス「………」

男兵「………」



サキュバス「……人間みたいなゴミクズと言葉を交わす様な、下級魔属ではないのよ。私は……」

男兵「あ、そう。ならゴミクズに言葉を発したアンタは下級魔属ってことなんだな。
見た目通り、威厳も何もないお子ちゃまってわけか。」

サキュバス「いえ。私は由緒ある上流魔属よ。」

男兵「……?」

サキュバス「悪魔を目の前にしてその対応。その目付き。ひ弱で臆病な人間にしては中々なものね。
貴方はゴミクズじゃないわ。いうなら、ゴミ山の中で白く輝く鉄クズってところかしらね。」

男兵「……俺は自分を、多分人間の中じゃ最下位争いをしてる底辺人間だと思ってるからな。
だからあんたもやっぱり下級魔属どころか最底辺魔属なんじゃね?」



サキュバス「……底辺であれなんであれ、人間なんかが魔属と対等になれるわけないわよ。
……だけど、貴方の肝に銘じて、ちょっとだけ良心を見せてあげるわね。」


悪魔「サ、サキュバス様?一体何を?」

サキュバス「私は何もしない。見てるだけで居てあげるから。
人間。あんたの怒りの力でこの無能な私の部下を倒させてあげるわ。」

男兵「はぁ?」

悪魔「サキュバス様!」

サキュバス「貴方のミスよね?あんな人間を私の面前に連れてくるなんて。
自覚があるんなら、さっさと対処しなさい。」

悪魔「わ、分かりました……。」

男兵「………」

サキュバス「さ、さっさとやっちゃいなさいよ。
最低底のゴミクズ君♪」

兵士A「くそっ!あの馬鹿!イカれちまったのかよ!?」

兵士A「魔族とまともにやり合って勝てるわけねーだろ!!」

兵士A「死ぬ気かよ!あの野郎は……」



兵士A「………ま、まさかあいつ……死んで詫びる気か……?」


勇者「おい!そこの!」

兵士A「だ、誰だお前達!?援軍か!?」

魔法少女「その通り!魔法少女ちゃんと勇者と愉快な仲間達が、悪い魔族を一網打尽にしにきたよ~♪」

兵士A「勇者!?あんたが!?」

勇者「悪魔は!?皆に洗脳魔法をかけた奴はどこにいったんだ!?」

兵士A「それならこの先に!な、仲間が一人で足止めをしてくれてる!」

女剣士「一人で!?なんて無茶な……」

猫剣士「それで?貴方1人で逃げてきたの?その仲間置いて?」

兵士A「俺も連れて行こうとしたさ!だが……あいつが自分から……」

魔法少女「勇敢だね~。それともただの馬鹿なのかな~?」

猫剣士「あるいは自殺願望が強いのかしらね。」

女剣士「恐らく、仲間の兵士達の死に責任を感じてヤケになってるんだ。」


兵士A「ああ……そうだろうな。あんなに仲間の血を浴びたんだ。そりゃ頭もおかしくなるさ……」

勇者「仲間の血?仲間が身代わりになったとか?」

猫剣士「仲間を盾にしたとか?」

兵士A「違う!返り血だ!仲間を斬ったから、返り血を浴びたんだ!!」


勇者「……え?」

女剣士「返り血?仲間の……?」


猫剣士「そっか。なるほどね。洗脳された仲間を躊躇せず斬り倒したってことね。」

女剣士「え!?」

女弓兵「仲間を……って、仲間ですよ!?同じ軍人の!!
そんな、いくら洗脳だからって、仲間を殺すなんて……」

魔法少女「……ま、魔術師がいない状況なら……せ、洗脳を、て、手っ取り早く解きたいんなら……ね……」

女剣士「だからといって、仲間に剣を刺すなど…!!」

勇者「……いや、今それどころじゃない!!早くその兵士を助けにいかないと!!」

悪魔「ぐぁあああ!!!身体がぁ……焼ける!」


サキュバス「その剣、ただの鉄の塊じゃないわね?」

男兵「ユニコーンの……なんたらから作った剣とか言ってた。
魔族にはキツい代物らしいけど、大当たりだな。」

サキュバス「ふ~ん。つーかさ、あんたも人間の斬撃じゃ死なないからって、避けもせずにまともにくらうからそうなるのよ。」

悪魔「がぁ……ああ……サキュバス様……助けを……」

サキュバス「でもよくやったわね人間。闇魔法が一発でもあたってたらあんたが一撃死だったってのに。
素早いわね。軽い身ごなしで相手の一瞬のスキをつくのも良い筋してた。」


男兵「……死ね」

サキュバス「ん?」

悪魔「あがぁ……」


ザクッ


サキュバス「うわっ……そこまでする?」

男兵「悪魔だからな、」

ザクッ…グシャッ…グチャッ


男兵「何をどうしたら死ぬのかが分からない。こんだけやれば死んだか?」


サキュバス「……そうね。その途中でとっくに死んでたけど。」

男兵「そっ。なら、次はあんたの番な。」

サキュバス「え?何を言ってるの?」

男兵「絶対に逃がさねぇ。ここで仕留める。」

サキュバス「人間。それ本気?」

男兵「ああ、マジだ。」

サキュバス「……その目付き、本気な様ね。」


サキュバス「……あれ~?おかしいわね。」

男兵「何が?」

サキュバス「貴方、この私を殺そうとしてるのよね?」

男兵「……だから?」

サキュバス「え?だってさ。私の姿……可愛らしい人間の幼児の姿よ?
人間の男なら誰もが見惚れるであろう、この姿の私を、貴方は殺せるっていうの?」

男兵「………」

男兵「はぁ?お前何言ってんだ?」

サキュバス「……あれ?おかしいな。効果ないの?あれ?
……勇者みたいな若い男なら、私のこの姿を見ただけですぐに堕ちるって御姉様達が言ってたのに……」

男兵「随分視野の狭い意見だな。全人類がロリコンとでも言いたいのか?」

サキュバス「……そっか。やっぱり衣類なんて着てるから中途半端なのかな。」


ザクッ


サキュバス「何!?」

男兵「……ちっ」

サキュバス「お前!!衣服を脱ごうとしてる幼女にスキを見て切り掛かるだなんて……!!」

男兵「……剣が効いてないのか?」

サキュバス「当たり前でしょ!ユニコーンだかなんか知らないけど、上流魔族に通用すると思ったの!?」

男兵「……ならどうしたらいいんだ?」

サキュバス「どうしたらって……そもそも私に勝てるつもりでいたの?」

男兵「いや、ハナから負けるつもりだった。」

サキュバス「潔い答えね。そんなに素直にならなくてもいいのに。」

男兵「当たり前だろ。俺なんかが、魔族に勝てるわけないんだから……」

サキュバス「そうね。仕方ないわよね。貴方は人間なんだから……」

男兵「くそっ……」

サキュバス「……ねぇ、人間。貴方は本当に私の身体を見て何も感じないのかしら?」

男兵「………」

サキュバス「そんなに絶望した顔で落ち込まないで。
ほら、元気出して。貴方は人間だけど、ただのゴミクズなんかとは違うわ。」


男兵「………」


サキュバス「なんたって……私が見定めてあげたんだからね……」

男兵「……何も守れないただの人間で、ただのゴミクズだよ……俺なんか。」

サキュバス「守れない……ね。あの“少女”は守れたんじゃなかったの?」

男兵「………」


女弓兵「そこまでよ!」

サキュバス「あら?貴方は……」

魔法少女「あれってサキュバスかな?うわ~、やらしぃ~!」

勇者「お前が!この事件の黒幕!?」

サキュバス「ま、まーそうなのだけど。事件っていうか……事故っていうか……」


男兵「あんたは?」

勇者「名前も持たない凡人さ。ただ、魔王を倒すことを使命とした。」

男兵「はぁ!?あんたが勇者なのか?」

勇者「はぁ!?とはなんだ!?」

男兵「いや……自称凡人つっても、凡人臭丸出しじゃん……」


魔法少女「うわ……この兵士、かなりの毒舌だ…」

猫剣士「正直なだけなんでしょ。多分。」


サキュバス「そうか勇者。初めて会ったな。」

勇者「てめぇ……よくもこんなことを……」

サキュバス「お~、怖い怖い。勇者とまともにやり合う気はなかったからね。
ひとまず退散させてもらわね。」


男兵「………」


サキュバス「それじゃ~ね。“人間”さん♪」


勇者「ま、待て!!」

女弓兵「くっ……身軽そうでしたし、逃げ足は速いですね。」


男兵「………」

女剣士「……あの…」

男兵「ん?ああ、助けてくれてどうも。」

魔法少女「棒読み感MAXな感謝だね……」


女剣士「礼などどうでもよい。お前、仲間を殺したのか?」

女弓兵「け、剣士さん!?」


男兵「ああ。」

女剣士「何故そんなことを!?」

男兵「魔術師がいない状況で手っ取り早く洗脳された奴らに対処しただけだ。
街を守る為にやった。」

魔法少女「……お、おう…」


女剣士「守る為に?守る為にお前は仲間の命を……」

男兵「……悪ぃ。先に帰られせて貰う。」


女剣士「おい!話はまだ……!!」

勇者「いいから!もう、そっとしておいてやれよ。」

女剣士「……しかし……」



猫剣士「………」

魔法少女「あれ~?猫耳ちゃん。今回はあの兵士を毒舌で非難しないんだね。」

猫剣士「そうね……。彼に会ったら色々言ってやるつもりだったんだけど。
いざ本人を見たら、なんか拍子抜けたわね。」


魔法少女「……私も。もっとクレイジーなの想像してたのに……」



女弓兵「……あの人間、何故魔族と一緒に居たんだろ?」

勇者「兵士があの魔族に挑んだんじゃ……」

女剣士「なら何故あの男は生きてる?
何故魔族に殺されていない?仲間を殺したあの男が……」


女弓兵「……ひょっとして、魔族と関わりがあるとか……?」

猫剣士「そうかしら?あの兵士の魔幼女を睨む目付きは本気だったわよ?」

魔法少女「ただロリコンなだけだったんじゃない?」


勇者「……分からない。ただ、なんとなく、あの魔族は兵士のことを気に入ってた様な気がした……」

女弓兵「や、やっぱり魔族の仲間なんじゃ……!?」

魔法少女「サキュバスだし、ただの餌として見てるだけかもね。」

猫剣士「そうね。あの幼女魔は危険よね。普通の人をもロリコンに変えてしまいかねないもの。」

女弓兵「もう!どうしてさっきから話題を反らせるのよ!?」

猫剣士「え?ああ、あの兵士があのサキュバスと関係があるって話ね?」

魔法少女「サキュバスと兵士の関係。もうすでに一線を越えている!?」


女弓兵「だーかーら!!なんでそっち系の話にばっか……」

【郊外の砦】

男兵「………」



シスター「あ、あの……」

男兵「え?あ、ああ。なにか?」

シスター「砦の兵士様ですよね?け、怪我とかは大丈夫ですか?」

男兵「ああ。怪我の方は大丈夫だ。」

シスター「そうですか。それは良かったです。」

男兵「……全然良くはないけどな……」


シスター「……私、来るのが遅かったみたいです。
着いた時には、もう全ての片付けが終わっていて……」

男兵「いや、修道女が来てもやれることはほとんどなかったよ。」

シスター「そうでしょうか?」

男兵「それより教会で、傷ついた兵士達の看病をしてくれた方が助かるな。」

シスター「……でも、事件は現場で起きてるんですし……」

男兵「だからこそ、疲れた当事者が現場から離れて安らげる場所が必要なんだろうな。
特に、あんたみたいな素敵なシスターがいてくれたら心も癒されるだろうし。」


シスター「そんな……私なんか、そんな……//」

男兵「もうここに居たって出来ることはないだろ。
教会に帰るんなら送ってくぞ?ちょうど行こうと思ってたし。」

シスター「はい?あ、ひょっとして心の安らぎをお求めでした!?
ごめんなさい!私に安らぎを与える能力が足りないので、私と話してても安らげませんでしたよね……」


男兵「いや、十分安らげたよ。あんたのおかげで。」

シスター「ほ、本当ですか!?」

男兵「ああ。それに、教会には別に用事があるんだ。“守ったもの”を確認する為に……」

シスター「はい。……はい?それはつまり…?」


男兵「まぁ、守ってるのは俺一人じゃないけどな……」


【市街地】

男兵「勇者の仲間なのか?」

シスター「はい。勇者様と共に旅をしています。」

男兵「勇者の仲間か。なら、なんか凄い魔法とか使えたり?」

シスター「魔法ですか?回復魔法などでしたら心得があります。」

男兵「それだけ?勇者の仲間ってんなら、なんかもっと……」



修道女A「あら、男兵様。」

男兵「ん?よぉ、買い物か?」

修道女A「はい。夕食の買い出しです。
あら?そちらは先ほどのシスター様?」

シスター「はい。貴方は教会の方ですね?」

男兵「ちょうどいい、今から教会に行こうと思ってたんだ。」

修道女A「ああ、今日もあの子達の相手をしてくださるのですね。」

男兵「ちょっと暇が出来たからな。せっかくだから……」


シスター「あの子達……?」


【教会横孤児院】


女児A「あ、兄ちゃんだぁ~!」

女児B「どうしたの~?仕事は~?また首になったの~?」

男兵「クビじゃねぇって!有給だよ!労働者の権利ってやつ。」


シスター「皆さん、男兵様とはお知り合いなのですか?」

修道女A「はい。男兵さんはたまにこの孤児院にやってきて、施設の設備や子供達の世話をしてくれてるのです!」

シスター「本当に?それはなんと素晴らしい方なんでしょうか!?
軍人であり、聖職者でもあられたのですね!」

修道女A「いえ、あの人は神を信仰してるのではありません。
ただ、優しいお方なのですよ。」


女児C「男兵さん!今日もケーキ作ろう!」

男兵「そうだな。庭のベリーの木の実、あれを使ってなんか作るか!」


修道女A「本当に……ただ優しい方なんです。」

シスター「それでも、やはり素晴らしい方だと思います。」

修道女A「そうですね。初めはどういうつもりなのか分からなかったですけどね。
信仰もしない人がいきなり教会にやってきましたからね。」


シスター「……あの子達が、男兵さんの守りたいものなのでしょうか……」

女児A「お姉さんは誰~?男兵さんのお友達~?」

女児B「ひょっとして愛人さんなの~?」


男兵「お姉ちゃんは勇者の仲間だ。世界を救う旅の途中なんだと。」

女児D「ホントに~!?」

女児B「じゃあ勇者様の愛人さんなんだぁ~!」

シスター「はい。私は勇者様と共に旅をしています。
世界に平和をもたらす為に……」

女児A「世界を平和にするの~?どうやって~?」

女児D「勇者と一緒に魔王をやっつけるんだよねぇ~?」

女児B「魔王をぶっ殺だね!ぶっ殺!!」

男兵「女の子がそういう言い方すんなよ。やっつけるとか、お灸をすえてるとか……」

女児C「もし男兵さんが勇者だったら、魔王をどうするの?」

男兵「跡形も残さない勢いでぶっ殺す。」

女児A「さすがお兄ちゃ~ん!」

女児B「討ち首だね~!首を落とせ~!」



シスター「……本当に、魔王と私達人間は共存出来ないのでしょうか?」

男兵「なに?」
女児A「ほえ?」
女児C「え?」

シスター「魔王にだって心があります。私達と同じ、悲しみを知り、喜びを感じる心が……」

女児B「魔王の心にあるのは無慈悲な残虐さだけだよね~。ね?お兄ちゃん。」

男兵「魔王に心があるとして、だからどうだって言うんだ?」


シスター「魔王は喜びを感じる。私達の喜びとそれは同じなのでは?
私達は分かち合えないのでしょうか?本当に、私達は戦いという方法でしか魔王とは渡り合えないのでしょうか?」



女児A「……ねぇ、お兄ちゃん。お姉ちゃんは何を言ってるの?」

男兵「………」


【街の軍事施設】

兵士長「面目もない。勇者殿の間近でこの様な事態を……」

勇者「あんた達のせいじゃない。むしろ……俺達が街に居たから……」

兵士長「それは関係ない。魔族のやることに道理などないのだから。」


女剣士「兵士長殿。被害の方は……?」

兵士長「襲われた時には砦には兵士が40人、民間人20人ほど居たが兵士15人近くが殉死した。
幸い他の民間人や街側には被害が出なかったが、15人も兵を失うとなれば帝都への報告が少々やっかいだな。」

魔法使い「たった15人で済んでたんだ~。魔族に攻められたのに意外と少なめだね~。」

兵士長「我が街は常に魔物の襲撃を受けているからな。
街を守る兵士達も並大抵の兵士達ではない。とくに郊外の砦にいるもの達はな……」


猫剣士「でも、15人死んじゃったのよね?」

兵士長「情報によると、突然味方の兵士が他の兵士を襲いだしたらしいんだ。
こういったケースは今までなかった。」

勇者「魔王の部下の仕業だ。洗脳魔法で兵士達を……」

兵士長「やはりそうか。魔王の部下ともなれば、さすがに我々であっても……」


女弓兵「それで、洗脳された兵士達はどうなったの?」

兵士長「騒動の間に全員死んだ様だ。まぁ、仕方ないのことだよ。」


勇者「魔王の部下は必ず探しだす。そして俺が絶対に倒す!」

兵士長「勇者殿。それは我々も同じ気持ちだ。」

猫剣士「それは分かるわ。でも、貴方達で手に負える輩じゃないわよ?」

兵士長「我々にもプライドがある。仲間を殺されて何もしないわけにもいかない。」

女剣士「兵士長殿。しかし……」


兵士長「……と、若い時の私なら考えるところでしたがね。
我々はあくまで街を守る者。仲間の仇討ちの為に守りを疎かには出来ない。
ここは勇者殿に任せるとしましょうか。」

女剣士「兵士長殿……ご立派です。」

猫剣士「そうそう。人には役目ってのがあるのよね。」

魔法使い「魔王やその部下を倒すのは私達の役目ってことだね!」


副兵士長「兵士長。先ほど勇者様と話されていたことですが……」

兵士長「ん?どうした?」

副兵士長「兵士の中には、すでに独断で魔族の探査を行ってる者達がいます。
特に砦の件で同僚を失った者達を中心に……」

兵士長「声の届く奴らにはやめるように言っておけ。
……今は勇者殿の任せるべきだ。」


副兵士長「わかりました。それともう一つ。」

兵士長「まだ何かあるのか?」

副兵士長「兵士の中に、男兵の行いを問題視する者達が……」

兵士長「それはお前の方で上手く火消しをしといてくれ。」

副兵士長「では、兵士長も男兵の行いを無問にするおつもりで?」

兵士長「あいつが何か間違いを犯したのか?」

副兵士長「いえ。洗脳された兵士を彼が率先して殺してくれたおかげで、被害は最小限で済みました。」

兵士長「そうだな。他の兵士達が足を止める中、やつはしっかり敵を排除しただけだ。」

副兵士長「はい。ただ、1人や2人ではなく洗脳された15人の大半を彼1人で仕留めた。
今まで仲間だったはずの者達を……」


兵士長「それがあいつなんだ。敵相手には全く容赦しない……」


副兵士長「兵士長は男兵と長い付き合いでしたね。
彼が新兵時代の教官だったとか……」

兵士長「ちょうど2年前のことか。軍に入りたてのあいつはただの活気ある若造だった。」

副兵士長「たった2年で最前線に立つ兵士になったのですか?」

兵士長「2年どころじゃなかった。あいつが新兵になって半年経った頃に私は遠征部隊の隊長へ着任した。そしたら男兵も新兵隊を抜けて私の部隊に入ってきた。
それからというもの、やつはいつも戦場を駆け回っていたさ。」


副兵士長「なるほど。彼には兵としての優秀な素質があったというのですね?」

兵士長「いや、大してことは無かった。剣術は並。弓も半端。魔術に至っては全く扱えていなかった。
……ただ、奴には迷いがなかった。どんな敵を前にしても、敵の急所を狙って一直線に駈け込む。」


【教会】

男兵「シスターも子供の扱いになれてたな。子供達がだいぶ懐いてぞ。」

シスター「はい。私自身、孤児院出身でしたのね。義妹達の世話をよくしてましたし。」

男兵「孤児院出身?意外だな。勇者の仲間だから、もっと貴族かなんかかと思ってた。」

シスター「いえ。私はただの聖職者です。神を信仰し、世界の平和を願う……」

男兵「その世界ってのには、魔王や魔族も含まれてるんだな……」

シスター「はい。もちろんです。」


男兵「あ、そう。なら、勇者が魔王と戦ってる時に、シスターは何をするんだ?」

シスター「勇者様が傷ついたなら、勇者様を癒してさしあげます。」

男兵「なら、魔王が傷ついたらどうするんだ?」

シスター「それは……」


男兵「勇者ってのは、魔王を倒す為に旅してるんだろ?もちろん、シスターもそのつもりなんだよな?
じゃなきゃ、何のために勇者と旅してるんだよ?」


シスター「……世界を、平和にする為に……」

男兵「魔王を倒す以外に、世界を平和にする方法は何があるって言うんだ?」


女弓兵「シスターさん!やっぱり教会にいたんだ!」

シスター「あ、弓兵様……」

女弓兵「もう、探してたんだよ………って、あれ?
あんた、あの時の兵士?」

男兵「お前、勇者の仲間の……」

女弓兵「どうしてここに?つか、シスターさんと一緒に!?」

シスター「あの……この方は……」


男兵「シスターに懺悔をしてただけだよ。
こっちの用はすんだから。」

女弓兵「懺悔って……。と、とにかく!行くよ!シスター!」

シスター「は、はい。」

女弓兵「ねぇ、あんた!サキュバスなんてろくな輩じゃないんだから!
魔族と手を繋いだって良いことなんかないよ!」


男兵「はぁ?」

女弓兵「魔族と手を組むんなら、私達が許さないからね!!」


男兵「サキュバス?手を組む?なんのことだ?何言ってんだよ?」




女児B「ふぁ~……トイレトイレ~……」


サキュバス「ふぅ~ん。なんで男兵はこんな孤児院に来てるのかしら?」

女児B「あれ~?誰?お客さん?新しい孤児?」

サキュバス「あら、私が孤児なんてみすぼらしい存在に見えるって言うのかしら?」

女児B「喋り方は貴族っぽいけど、なんか胡散臭いよねぇ~。成金?」

サキュバス「ふふっ。面白い人間の子供ね。貴方こそ、この孤児院の孤児なのでしょ?」

女児B「そうだよ~。ママが貴族の愛人だったんだけど、捨てられちゃって~。
お金に困ったママに私が捨てられちゃたの~。」

サキュバス「それは可愛いそうに。さぞかし寂しくつらい人生を送って、そのお母さんへの恨みもたっぷりたまってるのかしらね?」

女児B「別に~。今は孤児院の皆が居るから寂しくないし~。」

サキュバス「皆がいるから……。なるほど。
なら、もし皆が居なくなる様なことがあったら?」


女児B「え~?どういう意味?」

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